(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-16
(54)【発明の名称】仮想歯列に対する力ベクトルを決定するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61C 7/00 20060101AFI20221209BHJP
【FI】
A61C7/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022522765
(86)(22)【出願日】2020-10-15
(85)【翻訳文提出日】2022-04-15
(86)【国際出願番号】 IB2020059668
(87)【国際公開番号】W WO2021074828
(87)【国際公開日】2021-04-22
(32)【優先日】2019-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】リー,チャオディ
(72)【発明者】
【氏名】シナダール,ディヴィッド ケー.ジュニア.
(72)【発明者】
【氏名】ドムロエセ,ミカエル ケー.
(72)【発明者】
【氏名】ラビー,リチャード イー.
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052JJ10
(57)【要約】
本開示の態様は、第1の構成における、複数のセグメントを有する力部材の第1の集計力特性に基づいて、口腔の仮想歯列上の第1の位置における選択された点の第1の力ベクトルを決定し、第1の構成における力部材の第1の集計力特性に基づいて、仮想歯列上の第2の位置における選択された点の第2の力ベクトルを決定する、方法及びシステムに関する。この方法は、第2の力ベクトル(又はその力の大きさ)が第1の位置と第2の位置との間の変位の50パーセントで第1の力ベクトル(又はその力の大きさ)の90パーセント以内にあるかどうかの条件を判定することと、条件に基づいて動作を実行することと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピューティングデバイスによって、患者の口腔の仮想歯列を示すデータであって、前記仮想歯列を示すデータを受信することと、
前記コンピューティングデバイスによって、第1の構成における力部材であって、
第1の端部を有する第1のセグメントであって、第1の力特性を有する、第1のセグメントと、
第1の端部を有する第2のセグメントであって、第2の力特性を有し、前記第1のセグメントの前記第1の端部が、前記第2のセグメントの前記第1の端部に取り付けられている、第2のセグメントと、
を備える、力部材の第1の集計力特性を示すデータを受信することと、
前記第1の構成における前記力部材の前記第1の集計力特性に基づいて、前記口腔の前記仮想歯列上の第1の位置における選択された点の第1の力ベクトルを決定することと、
前記第1の構成における前記力部材の前記第1の集計力特性に基づいて、前記仮想歯列上の第2の位置であって、治療計画後の歯の移動に対応する第2の位置における前記選択された点の第2の力ベクトルを決定することと、
前記第2の力ベクトルが前記第1の位置と前記第2の位置との間の変位の50パーセントで前記第1の力ベクトルの90パーセント以内にあるかどうかの条件を判定することと、
前記コンピューティングデバイスによって、前記条件に基づいて動作を実行することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記コンピューティングデバイスによって、第2の構成における前記力部材の第2の集計力特性を示すデータを受信することと、
前記第2の構成における前記力部材の前記第2の集計力特性に基づいて、前記仮想歯列上の前記第1の位置における前記選択された点の第3の力ベクトルを決定することと、
前記第2の集計力特性に基づいて、前記仮想歯列上の前記第2の位置における前記選択された点の第4の力ベクトルを決定することと、
を更に含み、
前記条件を判定することが、前記第4の力ベクトルが前記第1の位置と前記第2の位置との間の変位の50パーセントで前記第3の力ベクトルの90パーセント以内にあるかどうかを判定することを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の集計力特性及び前記第2の集計力特性が、前記力部材における前記第1の力特性及び前記第2の力特性の変化に基づいて異なる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記選択された点が、前記第1のセグメントと係合するように構成された支持体の位置に対応する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の力特性又は前記第2の力特性が、弾性率、断面寸法、長さ、向き、幾何学形状、パターン、又はそれらの組み合わせから選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記動作を実行することが、
前記コンピューティングデバイスによって、表示のために、前記第2の位置における前記仮想歯列の少なくとも一部分を示すグラフィカルユーザインターフェースであって、前記条件が満たされているかどうかを示す、前記グラフィカルユーザインターフェースを出力すること、
を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記動作を実行することが、
前記第4の力ベクトルに影響を及ぼす前記力部材の前記第1の力特性又は前記第2の力特性に対する変更を推奨すること、
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記コンピューティングデバイスによって、前記仮想歯列上の前記力部材を修正して、前記力部材の1つ以上の力特性を変更することと、
前記コンピューティングデバイスによって、前記修正された力部材に基づいて、前記仮想歯列が目標位置にあるかどうかを判定することと、
を更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
力部材の集計力特性に基づいて力ベクトルを決定することが、前記力部材の一部分の力ベクトルを決定することを更に含み、前記一部分が、スパンである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記力ベクトルを決定することが、
2つの選択された点であって、選択された点が支持体に対応する、2つの選択された点間の選択されたスパンを受信することと、
支持体における前記スパンの力特性がデータストアから決定可能であるかどうかを判定することと、
前記スパン力特性が前記データストアから決定可能である場合、前記データストア内の情報を使用して、前記支持体における前記力ベクトルを決定することと、
前記支持体の前記力ベクトルが支持閾値内であるかどうかを判定することと、
前記力ベクトルが前記支持閾値内でないことに基づいて、前記スパン内のセグメントの1つ以上の力特性を修正することと、
を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記支持体の前記力ベクトルが前記支持閾値内であることに基づいて、複数のスパンに対する集計力特性を決定することを更に含む、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記スパン力特性が前記データストアから決定可能ではないことに応じて、前記集計力特性を決定するために、力部材全体について有限要素解析を実行することを更に含む、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
コンピューティングデバイスであって、
プロセッサと、
命令を記憶するメモリと、
を備え、前記命令が、前記プロセッサによって実行されると、
患者の口腔の仮想歯列を示すデータであって、前記仮想歯列を示すデータを受信し、
第1の構成における力部材であって、
第1の端部を有する第1のセグメントであって、第1の力特性を有する、第1のセグメントと、
第1の端部を有する第2のセグメントであって、第2の力特性を有し、前記第1のセグメントの前記第1の端部が、前記第2のセグメントの前記第1の端部に取り付けられている、第2のセグメントと、
を備える、力部材の第1の集計力特性を示すデータを受信し、
前記第1の構成における前記力部材の前記第1の集計力特性に基づいて、前記口腔の前記仮想歯列上の第1の位置における選択された点の第1の力ベクトルを決定し、
前記第1の構成における前記力部材の前記第1の集計力特性に基づいて、前記仮想歯列上の第2の位置であって、治療計画後の歯の移動に対応する第2の位置における前記選択された点の第2の力ベクトルを決定し、
前記第2の力ベクトルが前記第1の位置と前記第2の位置との間の変位の50パーセントで前記第1の力ベクトルの90パーセント以内にあるかどうかの条件を判定し、
前記条件に基づいて動作を実行する、
ように前記コンピューティングデバイスを構成する、
コンピューティングデバイス、
を備える、システム。
【請求項14】
前記命令が、前記プロセッサによって実行されると、更に、
前記コンピューティングデバイスによって、第2の構成における前記力部材の前記第2の集計力特性を示すデータを受信し、
前記第2の構成における前記力部材の前記第2の集計力特性に基づいて、前記仮想歯列上の前記第1の位置における前記選択された点の第3の力ベクトルを決定し、
前記第2の集計力特性に基づいて、前記仮想歯列上の前記第2の位置における前記選択された点の第4の力ベクトルを決定する、
ように前記コンピューティングデバイスを構成し、
前記条件を判定することが、前記第4の力ベクトルが前記第1の位置と前記第2の位置との間の変位の50パーセントで前記第3の力ベクトルの90パーセント以内にあるかどうかを判定することを含む、
請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
ディスプレイを更に備え、前記動作を実行することが、
前記ディスプレイを介して、前記第2の位置における前記仮想歯列の少なくとも一部分を示すグラフィカルユーザインターフェースを出力すること、
を含む、請求項13又は14に記載のシステム。
【請求項16】
前記コンピューティングデバイスに通信可能に結合されたデータストアを更に備え、力ベクトルを前記決定することが、
2つの選択された点であって、前記選択された点が支持体に対応する、2つの選択された点間の選択されたスパンを受信することと、
前記スパンの力特性が前記データストアから決定可能であるかどうかを判定することと、
前記スパン力特性が前記データストアから決定可能である場合、前記データストア内の情報を使用して、前記支持体における前記力ベクトルを決定することと、
支持体の前記力ベクトルが支持閾値内であるかどうかを判定することと、
前記力ベクトルが前記支持閾値内でないことに基づいて、前記スパン内のセグメントの1つ以上の力特性を修正することと、
を含む、請求項13~15のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
前記スパン力特性が前記データストアから決定可能ではないことに応じて、前記集計力特性を決定するために、力部材全体について有限要素解析を実行することを更に含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
製造システムを更に備え、前記動作を実行することが、
前記力部材の表現を前記製造システムに送信すること、
を含む、請求項13~17のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項19】
前記製造システムが、前記条件を満たす前記力部材を製造するように構成されている、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記力部材が、クリアトレイアライナであり、前記力特性が、3次元空間内の様々な厚さのパターンである、請求項13~19のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
歯科矯正の分野は、機能及び審美的外観を改善させるために患者の歯の位置を直すことに関する。歯科矯正デバイス及び治療方法は、一般に、歯を適切な咬合構成又は咬合へ歯を移動させるために、力を加えることを伴う。一例として、歯科矯正治療は、患者の前歯、犬歯、及び小臼歯に固定される、ブラケットとして知られるスロット付き装具の使用を伴い得る。力部材は、それぞれのブラケットのスロット内に配置することができ、所望の向き及び場所に歯の移動を誘導するための軌道として機能する。力部材の端部は、患者の大臼歯に固定される、バッカルチューブとして知られる装具内に受け入れられる。このような歯科装具は、患者の口腔内に留まり、適切な整列及び位置が達成されるまで歯科矯正医によって定期的に調整される。
【0002】
歯科矯正治療はまた、(また不透明であってもよい)クリアトレイアライナ(clear tray aligner:CTA)と呼ばれることが多い、透き通った又は透明なポリマーベースの歯の位置決めトレイなどのアライメントトレイの使用を伴い得る。例えば、CTAを用いる歯科矯正治療は、1つ以上の歯に係合するシェルを有するトレイを形成することを含むことができる。それぞれのシェルは、患者の歯の上に設置されると変形する形状を有し得る。CTAの対応するシェルの変形した位置は、対応する歯の初期位置と歯科矯正治療から生じる最終位置との間の中間位置である歯の所望の位置に向かって、対応する歯に力を加え得る。しかしながら、歯科矯正治療は、CTAが達成するのに困難である歯のいくつかの移動、例えば、犬歯及び小臼歯の歯根移動及び回転などを必要とし得る。これらの事例では、CTAが歯の表面に直接加えることのできる力及びモーメントは、所望の歯の移動を達成するのに不十分であり得る。
【0003】
デジタル歯学は、デジタル印象採得システムを使用する歯科医師の数の増加に伴い成長傾向である。これらのシステムは、患者の歯のデジタル3次元(3D)モデル(例えば、患者の上顎歯列弓及び下顎歯列弓)を生成するために、口腔内スキャンニングカメラ又は従来の物理的印象のスキャンニング、及び関連する処理システムを使用する。次いで、デジタル3Dモデルは、補綴修復を行うために及び歯科矯正治療計画のために使用され得る。
【0004】
歯列矯正治療計画プロセスの目標は、人の歯の治療前位置が不正咬合状態にあることを考慮して、該歯の治療後位置(セットアップ状態)がどこにあるべきかを判定することである。このプロセスは、典型的には、双方向型ソフトウェアを使用して手動で実行され、非常に時間がかかるプロセスである。不正咬合状態から最終状態への歯の中間段階診断(staging)は、歯が互いに衝突せず、それらの歯の最終状態に向かって移動し、かつ最適な(好ましくは短い)軌跡に従うように、正確な個々の歯の運動を決定することを含むことができる。それぞれの歯は6自由度を有し、平均歯列弓が約14個の歯を有するため、初期段階から最終段階への歯の最適な軌道を見出すことは、大きく、かつ複雑な検索空間を有する。
【0005】
正確な咬合は、このような歯科矯正治療計画を立てる上での1つの因子である。機械的咬合のための現在のデータ取得は時間がかかり、高価なアナログデバイスを必要とする。特に、現在の例示的な技法は、複雑な再構成のための下顎咬合データを取り込むために顔弓及び歯科技工室用咬合器を使用する手動プロセスを伴う。
【0006】
更に、多数の(例えば、複数の)セグメントを有さない典型的な力部材は、
図1に示すように、(正規化された)変位に対して高レベルの(正規化された)印加力低下を有することがある。複数のセグメントを有する力部材に由来する高レベルの力ベクトル分析(例えば、有限要素解析)に起因して、既存のシステムは、それらの設計プロセスにおいて複数のセグメント化された力部材を利用することができない、又は所与の変位にわたってほぼ一定の力を維持するように力部材を設計することができない場合がある。
【発明の概要】
【0007】
本開示の態様は、コンピューティングデバイスによって、患者の口腔の仮想歯列を示すデータであって、仮想歯列を示すデータ、及び第1の構成における力部材の第1の集計力特性を示すデータを受信する方法に関する。力部材は、複数のセグメントを有する。この方法は、第1の構成における力部材の第1の集計力特性に基づいて、口腔の仮想歯列上の第1の位置における選択された点の第1の力ベクトルを決定することと、第1の構成における力部材の第1の集計力特性に基づいて、仮想歯列上の第2の位置における選択された点の第2の力ベクトルを決定することと、を含む。この方法は、第2の力ベクトル(又はその力の大きさ)が第1の位置と第2の位置との間の変位の50パーセントで第1の力ベクトル(又はその力の大きさ)の90パーセント以内にあるかどうかの条件を判定することと、コンピューティングデバイスによって、条件に基づいて動作を実行することと、を含む。
【0008】
本開示の態様はまた、システムに関する。このシステムは、プロセッサと、命令を記憶するメモリと、を更に含むコンピューティングデバイスを含み、この命令は、プロセッサによって実行されると、(例えば、口腔内スキャナからの)患者の口腔の仮想歯列を示すデータであって、仮想歯列を示すデータを受信するように、コンピューティングデバイスを構成する。
【0009】
この命令は、第1の構成における(例えば、データストアからの)力部材の第1の集計力特性を示すデータを受信するように、コンピューティングデバイスを更に構成する。力部材は、第1の端部を有する第1のセグメントであって、第1の力特性を有する第1のセグメントと、第1の端部を有する第2のセグメントであって、第2の力特性を有し、第1のセグメントの第1の端部が、第2のセグメントの第1の端部に取り付けられている、第2のセグメントと、を含む。
【0010】
この命令は、第1の構成における力部材の第1の集計力特性に基づいて、口腔の仮想歯列上の第1の位置における選択された点の第1の力ベクトルを決定するように、コンピューティングデバイスを更に構成する。コンピューティングデバイスは、第1の構成における力部材の第1の集計力特性に基づいて、仮想歯列上の第2の位置における選択された点の第2の力ベクトルを決定することができる。第2の位置は、治療計画後の歯の移動に対応する。コンピューティングデバイスは、第2の力ベクトル(又はその力の大きさ)が第1の位置と第2の位置との間の変位の50パーセントで第1の力ベクトル(又はその力の大きさ)の90パーセント以内にあるかどうかの条件を判定し、条件に基づいて動作を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
任意の特定の要素又は作用の考察を容易に認識するために、参照番号の最上位桁(単数又は複数)は、その要素が最初に導入されている図番号を指す。
【0012】
【0013】
【
図2】一実施形態による仮想咬合のための例示的なシステム200を示すブロック図である。
【0014】
【
図3】一実施形態による患者の歯のデジタル3D下顎歯列弓300の例を示す。
【0015】
【
図4】サーバ404及びクライアントデバイス406がネットワーク402を介して通信可能に結合されている簡略化したシステム400を示す。
【0016】
【
図5】一実施形態による歯科矯正装具500を示す。
【0017】
【
図6】一実施形態による歯科矯正装具600を示す。
【0018】
【
図7】一実施形態による歯科矯正装具700を示す。
【0019】
【
図8】一実施形態による歯科矯正装具800を示す。
【0020】
【0021】
【0022】
【
図11】一実施形態によるサブルーチンブロック1100を示す。
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
【
図15】一実施形態による異なる材料特性を有するセグメントを有する力部材1500を示す。
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
【
図20】一実施形態による断面パターン2000を示す。
【0032】
【
図21】一実施形態によるパターン2100を示す。
【0033】
【
図22】一実施形態によるパターン2200を示す。
【0034】
【
図23】一実施形態による市松模様パターン2300を示す。
【0035】
【
図24】一実施形態によるパターン2400を示す。
【0036】
【
図25】一実施形態によるクリアトレイアライナ2500を示す。
【0037】
【
図26】一実施形態によるクリアトレイアライナ2600を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
「集計力特性」とは、1つ以上のスパンに適用されるような力特性を指す。
【0039】
「印加力ベクトル」とは、歯の所与の変位にわたって力部材によって加えられる力を指す。
【0040】
「回路」は、少なくとも1つの個別の電気回路を有する電気回路、少なくとも1つの集積回路を有する電気回路、少なくとも1つの特定用途向け集積回路を有する電気回路、コンピュータプログラムによって構成された汎用コンピューティングデバイスを形成する回路(例えば、本明細書に記載のプロセス若しくはデバイスを少なくとも部分的に実行するコンピュータプログラムによって構成された汎用コンピュータ、又は本明細書に記載のプロセス若しくはデバイスを少なくとも部分的に実行するコンピュータプログラムによって構成されたマイクロプロセッサ)、メモリデバイスを形成する回路(例えば、ランダムアクセスメモリの形態)、又は通信デバイスを形成する回路(例えば、モデム、通信スイッチ、又は光電気装置)を指す。
【0041】
「接触点」は、歯科矯正装具が歯に力を加えることができる歯科矯正装具の部分を指す。接触点は、枢動点、連結点、又は支点などの一次元のみに拘束される点を指すことができる。
【0042】
「断面寸法」とは、(例えば、力部材の)長手方向軸に直交する断面から取られた寸法を指す。この寸法は、断面の形状に依存し得る。例えば、寸法は、断面が円形である場合には直径、断面が菱形である場合には側面の最大測定値、又は断面が楕円形である場合には短軸/長軸の長さであってもよい。
【0043】
「データストア」とは、データベースのようなリポジトリだけでなく、単純なファイル、電子メールなどのより単純なストアタイプも含む、データの集合を持続的に記憶及び管理するためのリポジトリを指す。
【0044】
「変位」とは、治療計画の段階後又は複数の段階(例えば、治療計画全体)が完了した後の歯の移動の距離を指す。距離は、移動方向に基づいて測定することができる。例えば、歯の移動は、並進又は回転に基づくことができる。
【0045】
「ファームウェア」は、読み取り専用メモリ又は媒体に記憶されたプロセッサ実行可能命令として具体化されたソフトウェア論理を指す。
【0046】
「力特性」とは、材料特性及び歯科矯正装具構造の関数として生じる力応答を指す。例えば、力特性は、弾性率、(平面内の寸法を含む)セグメントの断面慣性モーメント、セグメントの長さ、印加力、又はそれらの組み合わせに関連することができる。
【0047】
「力の大きさ」とは、スカラー量である力の量を指す。
【0048】
「力部材」とは、応力下で弾性変形する歯科矯正装具の活性部分を指す。力部材は、歯に力を送達する。力部材は、例えば、アーチ部材、クリアトレイアライナ、バンド、又はそれらの組み合わせを含む。
【0049】
「力ベクトル」とは、大きさと方向の両方を有する力の表現を指す。
【0050】
「ハードウェア」とは、アナログ又はデジタル回路として具体化された論理を指す。
【0051】
「歯科矯正装具」とは、歯列の少なくとも一部分の位置を直すために使用されるデバイスを指す。(クリア)トレイアライナ、少なくとも歯列矯正ブラケット及びアーチワイヤを含むデバイス、又はそれらの組み合わせを指すことができる。
【0052】
「歯列矯正ブラケット」とは、歯に取り付けられる、又は歯に適合するように成形され、かつ歯に力を伝達するように設計されたデバイスを指す。例としては、米国特許公開第2018/0338564号、「orthodontic appliance including force member」、又は米国特許公開第2020/0113652号、「Removable orthodontic appliance System」、又は米国特許公開第2019/0336247号、「Elastomeric orthodontic bracket」に登場するものなどの装具が挙げられ、これらは、不均一な断面の力部材のための従来とは異なるアンカー、又は更には単に力部材とブラケットフーチング若しくは歯シェルとの間の接続部材であってもよい。そのようなデバイスは、力部材及び/又はブラケットフィーチングと一体的に形成することができる。歯列矯正ブラケットの他の例としては、力部材と歯と結合するベース又はフーチングとの間に一体的に接続されたコネクタ、スタンドオフ、又はマウンドが挙げられる。
【0053】
「位置」とは、歯が配置又は構成される特定の方法を指す。別の歯、上顎歯列弓、若しくは下顎歯列弓に対する相対位置、又は3つ以上の寸法での歯の向きを指すことができる。
【0054】
「弛緩状態」とは、患者を治療しているときに歯列矯正ブラケットに取り付けられている間の治療計画の最終位置における力部材の位置を指す。弛緩状態は、力部材の弾性率、又はセグメント形状、セグメント長さ、及び負荷に依存する平均応力を有することができる。一実施例では、平均応力は、15MPa未満であり、非ゼロである。弛緩状態は、歯が治療計画の目標場所に到達したときの力部材の状態を説明することができる「最終状態」という用語と互換的に使用することができる。弛緩状態という用語は、力部材が応力状態に対して弛緩していて、かつ何らかの応力下にあってもよいことを意味することができる。
【0055】
「セグメント」とは、固有の力特性を有する力部材の一部分を指す。各力部材に、複数のセグメントが存在することができる。セグメントは、任意の軸に沿ったクリアトレイアライナの一部分を指すことができる。
【0056】
「選択された点」とは、歯上の歯列矯正ブラケットの位置に対応する点を指す。
【0057】
「ソフトウェア」とは、マシンメモリ(例えば、読み取り/書き込み用揮発性若しくは不揮発性メモリ又は媒体)にプロセッサ実行可能命令として実装された論理を指す。
【0058】
「スパン」とは、2つの接触点間の力部材の部分を指す。スパンは、複数のセグメントを含むことができる。各スパンは、セグメントの組み合わせから生じるそれ自体の集計力特性を有することができる。例えば、スパンは、両端で支持されたビームとして機能し、端部により偶力又はモーメントを形成して、圧縮、引っ張り、ねじり、曲げ、及び/又はせん断を含む、それらの間に任意の様々な合力を伝達することができる。
【0059】
「応力-ひずみプロファイル」とは、力部材が所与の治療計画内でどのように相互作用するかを決定する特性を指す。応力-ひずみ曲線に関連することができる。
【0060】
「応力状態」とは、患者を治療しているときに支持体に取り付けられた治療計画の第1の位置における力部材を指す。応力状態は、ブラケット及びワイヤを伴う場合だけでなく、弾性変形することができる力部材を有するクリアトレイアライナ又は任意の装具に適用することができる。一実施例では、応力状態は、少なくとも20MPaの平均応力を有することができる。
【0061】
「支持体」とは、歯と結合して、それを介して力を伝達するデバイスを指す。支持体が歯列矯正ブラケットである場合、支持体は、接着剤を介して歯に取り付けることができる。支持体がクリアトレイアライナである場合、支持体は、歯を印加力で移動させるのに十分な歯の一部分をカプセル化することができる。
【0062】
「目標位置」とは、理想的な咬合に対応する歯の位置を指す。
【0063】
「遷移領域」とは、各セグメントが異なる特性を有するセグメント間の領域を指す。好ましくは、遷移領域は、スパンに沿った歯間に存在する。
【0064】
「治療計画」とは、個人の歯の位置を直すことに合わせた詳細な計画を指す。治療計画は、下顎歯列弓の歯の位置を直し、次いで上顎歯列弓内の歯の位置を直すための計画で開始することができる。
【0065】
本開示の態様は、複数のセグメントを有する力部材を使用して患者を治療するシステム及び方法に関する。複数のセグメントは、所与の変位にわたる力の最小限の損失を維持しながら、治療計画を実施するのに有用であり得る。例えば、力部材は、力部材の材料の最大応力を制限して、患者に対して過度のリスクを伴わずにより長い期間にわたってより高い公称力を使用する設計を可能にすることができる。
【0066】
力部材の幅は、その長さに沿って内/外方向に変化させることができ、それによって、歯列矯正ブラケット間の力部材の断面を増加又は減少させて力部材の弾力性を修正しながら、歯列矯正ブラケットのスロットの近傍の一定の寸法を可能にする。
【0067】
少なくとも1つの実施形態では、咬合平面に垂直な力部材の形状の変化も生じさせることができる。例えば、ループ又は屈曲部は、複数の歯を治療するための特定の場所に配置される。実施例に示されるように力部材を屈曲させることに加えて、機構は、回転、先端、トルク、並進などのための設計戦略を開発するために適用可能である。
【0068】
本開示の態様は、細長い力部材を含まないが、代わりに、より多くの有機形状を有するアーチ部材を用いる他の歯科矯正装具、又は2次元若しくは3次元表面にわたって力を集中させる装具に適用することができる。いくつかの例としては、クリアトレイアライナ(CTA)、ばねアライナ、2Dアーチワイヤ、及び一体型アーチ部材を有するポリマー歯シェルが挙げられる。特定の場所のトレイの厚さ又は幾何学形状(厚さの変動、頂部及び谷など)を指定することによって、又は材料特性(弾性率、デュロメータなど)を修正することによって、トレイに同じ設計アプローチを適用することができる。
【0069】
少なくとも1つの実施形態では、力部材は、アーチ全体に沿って、又は特定の場所にのみ、アライナに埋め込むことができる。そのような設計により、特定の歯に加えられる力を制御することができる。ワイヤを埋め込むことの別の利点は、ポリマートレイアライナのクリープを最小化することである。そのようなワイヤ強化アライナは、歯科矯正治療中により一定の力を提供する。
【0070】
少なくとも1つの実施形態では、本開示の態様は、異なる力特性を有する複数のセグメントを有する力部材を設計するコンピュータで実施される方法に関することができる。力部材の各スパン間の複雑な力に起因して、選択された点に印加される結果として生じる力ベクトルは、コンピュータプロセッサの支援なしで決定することが不可能であり得る。更に、力部材全体に対する有限要素解析は、非常にプロセッサ集約的であり得る。したがって、セグメントの既知の関係を使用して有限要素解析をバイパスすることができることは、特に有利であり得る。
【0071】
少なくとも1つの実施形態では、有限要素解析は、症例をリアルタイムでセットアップするために使用される関係又は規則を作成するために使用されるツールのうちの1つとして事前に行うことができる。例えば、有限要素解析を使用することは、症例がセットアップされているときに、リアルタイムで実用的であり得、これにより、必ずしも有限要素解析の使用を完全にバイパスしない。
【0072】
ここで、図面に示される実施形態の説明を詳細に参照する。実施形態は、図面及び関連する説明に関連して説明されているが、本明細書に開示される実施形態に範囲を限定する意図はない。反対に、意図は、全ての代替形態、修正形態、及び等価物を網羅することである。代替の実施形態では、本明細書に開示される実施形態に範囲を限定することなく、追加のデバイス又は例示されたデバイスの組み合わせを追加する、又は組み合わせることができる。
【0073】
図1は、弛緩状態と応力状態との間の点114におけるセグメント化されていない力部材104の印加力106対変形距離102のグラフ100を示す。印加力106が最も高い点108では、力部材104は、最初に歯に係合することができ、シミュレーションした力部材112に示されるように、大量の変形が存在する。歯が移動すると、力部材104は、その元の状態に弛緩して戻ることができ、力ベクトルは、点110まで急速に減少する。力部材104の弛緩した形状は、歯を駆動する形状である。
【0074】
図2は、一実施形態による例示的なシステム200のいくつかの構成要素を示す。様々な実施形態では、システム200は、デスクトップPC、サーバ、ワークステーション、携帯電話、ラップトップ、タブレット、セットトップボックス、アプライアンス、又は本明細書に記載されるものなどの動作を実行することができる他のコンピューティングデバイスを含むことができる。いくつかの実施形態では、システム200は、
図2に示されるものより多くの構成要素を含むことができる。しかしながら、例示的な実施形態を開示するために、これらの一般的な従来の構成要素の全てが示されている必要はない。集合的に、様々な有形構成要素又は有形構成要素のサブセットは、本明細書では、特定の方法で構成又は適合された「論理」、例えば、特定のソフトウェア又はファームウェアにより構成又は適合された論理と呼ぶことができる。
【0075】
様々な実施形態では、システム200は、本明細書に記載の機能を集合的に提供する1つ以上の物理及び/又は論理デバイスを備えることができる。いくつかの実施形態では、システム200は、1つ以上の複製及び/若しくは分散型物理又は論理デバイスを備えることができる。例えば、システム200は、コンピューティングデバイス230を含むことができる。
【0076】
いくつかの実施形態では、システム200は、「クラウドコンピューティング」プロバイダからプロビジョニングされた1つ以上のコンピューティングリソース、例えば、Seattle,WashingtonのAmazon.com,Inc.によって提供される、Amazon Elastic Compute Cloud(「Amazon EC2」)、Santa Clara,CaliforniaのSun Microsystems,Inc.によって提供されるSun Cloud Compute Utility、Redmond,WashingtonのMicrosoft Corporationによって提供されるWindows Azureなどを含むことができる。
【0077】
システム200は、ネットワークインターフェース218、ディスプレイ216、プロセッサ220、及びメモリ214を含むいくつかの構成要素を相互接続するバス212を含む。
【0078】
メモリ214は、一般に、ランダムアクセスメモリ(random-access memory、「RAM」)、及びハードディスクドライブ又はソリッドステートドライブなどの恒久的非一時的マスストレージデバイスを含む。メモリ214は、オペレーティングシステム222を記憶する。
【0079】
これら及び他のソフトウェア構成要素は、DVD/CD-ROMドライブ、メモリカード、ネットワークダウンロードなどの非一時的コンピュータ可読媒体228に関連付けられた駆動機構(図示せず)を使用して、システム200のメモリ214にロードすることができる。
【0080】
メモリ214はまた、患者スキャンデータ224を含む。いくつかの実施形態では、システム200は、ネットワークインターフェース218、ストレージエリアネットワーク(storage area network、「SAN」)、高速シリアルバス、及び/又は他の好適な通信技術を介して、患者スキャンデータ224と通信することができる。
【0081】
いくつかの実施形態では、患者スキャンデータ224は、「クラウドストレージ」プロバイダからプロビジョニングされた1つ以上の記憶リソース、例えば、Seattle,WashingtonのAmazon.com,Inc.によって提供されるAmazon Simple Storage Service(「Amazon S3」)、Mountain View,CaliforniaのGoogle,Inc.によって提供されるGoogle Cloud Storageなど含むことができる。
【0082】
図2は、患者の口腔内スキャンからのデジタル3Dモデルを使用して、仮想咬合を実行し、仮想咬合からメトリックを計算するための例示的なシステム200の図である。システム200は、例えば、デスクトップコンピュータ、ノートブックコンピュータ、タブレットコンピュータ、又は任意のタイプのコンピューティングデバイスを用いて実装することができる。システム200は、患者スキャンデータ224を受信して、メモリ214に患者スキャンデータ224を記憶するように構成された、コンピューティングデバイス230を含む。メモリ214は、歯列分析モジュール236及びアーチ部材分析モジュール234を含むことができる。歯列分析モジュール236は、歯の投影された移動を含む口腔の仮想歯列を分析することができる。メモリ214はまた、歯に対して力ベクトルを提供するのに十分な力部材の特性を決定するように構成されたアーチ部材分析モジュール234を含むことができる。アーチ部材分析モジュール234は、歯列分析モジュール236と相互作用して、仮想歯列に対する効果を判定することができる。
【0083】
患者スキャンデータ224は、口腔内3Dスキャン又は歯の印象若しくは鋳造模型のスキャンからの、歯又は他の口腔内構造のデジタル3Dモデルを含むことができる。いくつかの実施例では、患者スキャンデータ224は、患者の下顎歯列弓(例えば、下顎及び下側の歯)及び上顎歯列弓(例えば、上顎及び上側の歯)のスキャンを含むことができる。
【0084】
患者スキャンデータ224は、患者の下顎歯列弓及び上顎歯列弓の3Dモデルを含むことができる。歯科市場におけるデジタル3Dモデルの使用は、ますます一般的になっている。一実施例では、患者スキャンデータ224は、口腔内スキャナ、コーンビームコンピュータ断層撮影(Cone Beam Computed Tomography:CBCT)スキャニング(すなわち、3D X線)、又は磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)を使用して、インビボ(in vivo)で直接取得することができる。他の実施例では、患者スキャンデータ224は、歯の印象又は歯の印象から作製された鋳造模型をスキャンすることによって間接的に取得することができる。間接的データ取得方法のいくつかの例として、産業用コンピュータ断層撮影(Computed Tomography:CT)スキャニング(すなわち、3D X線)、レーザスキャニング、及びパターン光スキャニングが挙げられるが、これらに限定されない。
【0085】
患者スキャンデータ224は、治療計画、クラウン前処理及びインプラント前処理、補綴修復、歯科矯正セットアップ設計、歯科矯正装具設計を含む様々な臨床タスクに使用することができ、診断補助において、例えば歯の摩耗を評価する又は視覚的に示すために使用することができる。以下により詳細に説明するように、システム200は、歯科治療計画の1つ以上の段階において仮想咬合を実行し、仮想咬合に基づいて、動的衝突メトリックを計算し、かつ、ユーザが歯科治療計画の有効性を判定し、特定の歯科治療計画を選択し、かつ/又は歯科治療プロセスを修正することを可能にするように、動的衝突メトリックを示すデータを出力するために、患者スキャンデータ224を使用することができる。
【0086】
システム200はまた、口腔内構造のスキャン及び力部材からのデジタル3Dモデルを表示するためのディスプレイ216を含むことができる。いくつかの実施例では、ディスプレイ216は、コンピューティングデバイス230の一部であり、他の実施例では、ディスプレイ216は、コンピューティングデバイス230とは別個であってもよい。ディスプレイ216は、例えば、陰極管(Cathode Ray Tube:CRT)、液晶ディスプレイ(liquid crystal display:LCD)、発光ダイオード(light emitting diode:LED)ディスプレイ、又は有機発光ダイオード(organic light emitting diode:OLED)ディスプレイなどの任意の電子ディスプレイを用いて実装することができる。ディスプレイ216はまた、ユーザが入力デバイス232を介して口腔の仮想歯列を修正するために使用する、グラフィカルユーザインターフェースを表示することができる。
【0087】
システム200は、ユーザコマンド又は他の情報を受信するための入力デバイス232を更に含んでもよい。いくつかの実施例では、入力デバイス232は、コンピューティングデバイス230の一部であり、他の実施例では、入力デバイス232は、コンピューティングデバイス230とは別個であってもよい。入力デバイス232は、情報又はコマンドを入力するための任意のデバイス、例えば、キーボード、マイクロフォン、カーソル制御デバイス、又はタッチスクリーンを用いて実装することができる。システム200の構成要素はまた、組み合わされてもよく、例えば、タブレットコンピュータは、プロセッサ、ディスプレイ、及びタッチスクリーン入力デバイスを単一のユニットに組み込んでもよい。
【0088】
不正咬合状態から最終状態への歯の中間段階診断は、歯が許容可能な低い量で互いに衝突し、歯が歯の最終状態に向かって移動し、及び歯が最適な(好ましくは短い)軌道に従うように正確な個々の歯の運動を決定することを含む。それぞれの歯は6自由度を有し平均歯列弓が約14個の歯を有するため、初期段階から最終段階への歯の最適な軌道を見出すことは、大きい複雑な検索空間を有する。歯科矯正医は、患者の歯の目標最終状態を規定する治療計画を規定し得る。治療計画はまた、歯の1つ以上の所望の中間状態と、目標最終状態を達成するために使用される治療様式と、を規定し得る。
【0089】
システム200は、治療計画202を受信するように構成することができる。いくつかの実施例では、ユーザ(例えば、歯科矯正医)は、入力デバイス232を使用してコンピューティングデバイス230に治療計画を入力することができる。コンピューティングデバイス230は、メモリ214に治療計画202を記憶することができる。いくつかの実施例では、治療計画202は、患者の歯についての仮想上顎歯列弓及び仮想下顎歯列弓の初期状態、並びに目標状態(例えば、治療後の最終位置)を含むことができる。後述の本開示の技術を使用して、システム200は、治療計画202についての目標状態の有効性を判定するために、仮想咬合を実行することができる。システム200はまた、治療計画202に含めるために1つ以上の中間状態を決定するように構成することができる。他の実施例では、システム200又はユーザは、目標最終状態の有効性及び望ましさが判定されるまで中間状態を決定しなくてもよい。
【0090】
他の実施例では、治療計画202は、1つ以上の中間状態と、目標最終状態と、を含むことができる。後述の本開示の技術を使用して、システム200は、治療計画202についての目標状態の有効性を判定するために、中間状態又は目標最終状態のそれぞれにおいて仮想咬合を実行してもよい。
【0091】
プロセッサ220は、本開示の技術に従って、仮想咬合を実行して、メトリックを計算するために、患者スキャンデータ224及び治療計画202を使用するように構成することができる。
図2の実施例では、プロセッサ220は、本開示の技術を実行するために、コードを実行するように構成されている。本明細書に記載されている技術は、例えば、プロセッサ220又は他のコンピューティングデバイスによって実行するために、ソフトウェア又はファームウェアのモジュールに実装することができる。他の例では、本開示の技法は、ハードウェアモジュール、又はソフトウェアとハードウェアとの組み合わせにおいて実施されてもよい。
【0092】
様々な実施例では、プロセッサ220は、プログラマブル処理回路、固定機能回路、1つ以上のデジタルシグナルプロセッサ(digital signal processor:DSP)、汎用マイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit:ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(field programmable gate array:FPGA)、又は他の同等な集積若しくは個別論理回路などの1つ以上のプロセッサ、並びにそのような構成要素の任意の組み合わせを含んでもよく、これらであってもよく、又はこれらの一部であってもよい。
【0093】
図2の実施例では、アーチ部材分析モジュール234は、スキャン修正器204、仮想咬合器206、及び力部材ひずみモジュール208を含むことができる。
図2に示すモジュールは、単なる例である。上述のモジュールのそれぞれの技法は、任意の数のソフトウェアモジュールに組み合わされてもよく、又は任意の数のソフトウェアモジュールに分離されてもよい。
【0094】
スキャン修正器204は、患者スキャンデータ224及び治療計画202を受信するように構成することができる。上述のように、いくつかの実施例では、治療計画202は、患者の歯の所望の最終状態を規定することができる。他の実施例では、治療計画202は、患者の歯の1つ以上の中間状態と、歯の所望の最終状態と、を規定することができる。
【0095】
スキャン修正器204は、治療計画202のそれぞれについての状態情報を抽出して、1つ以上の治療計画202のそれぞれについての目標状態における患者スキャンデータ224の仮想上顎歯列弓及び仮想下顎歯列弓を修正するように構成することができる。治療計画202が中間状態を含む場合、スキャン修正器204は、1つ以上の治療計画202のそれぞれについての中間状態のそれぞれにおける患者スキャンデータ224の仮想上顎歯列弓及び仮想下顎歯列弓を修正するように更に構成することができる。スキャン修正器204は、治療計画202の状態のそれぞれにおける歯の位置に一致するように、仮想上顎歯列弓及び仮想下顎歯列弓を修正することができる。
【0096】
仮想咬合器206は、治療計画202のそれぞれについての修正された仮想上顎歯列弓及び修正された仮想下顎歯列弓を受信して、修正されたスキャンに対する仮想咬合を実行することができる。一般に、仮想咬合は、治療プロセス中に様々な状態において患者の歯がどのように相互作用するかをシミュレーションするために、修正されたスキャンを様々な下顎運動を介して仮想的に移動させることを伴い得る。一実施例では、仮想咬合器206は、治療計画202のそれぞれについての目標状態における患者の歯の接触点を決定するために、修正された仮想上顎歯列弓及び修正された仮想下顎歯列弓を咬合させてもよい。他の実施例では、仮想咬合器206は、治療計画202のそれぞれについての1つ以上の中間状態と目標状態とにおける患者の歯の接触点を決定するために、修正された仮想上顎歯列弓及び修正された仮想下顎歯列弓を咬合させてもよい。
【0097】
仮想咬合器206は、患者の歯の運動の正常範囲をシミュレーションするために、修正された仮想上顎歯列弓及び修正された仮想下顎歯列弓を様々な下顎位を介して移動させるように構成することができる。例示的な下顎位としては、前方滑走運動、後方滑走運動、左側方滑走運動、又は右側方滑走運動のうちの1つ以上を含む運動が挙げられ得る。
【0098】
仮想上顎歯列弓を固定基準座標系として使用して、仮想咬合器206は、閉口位、特に、閉口位から開口位、閉口位から前方位、閉口位から左側方位、及び閉口位から右側方位に対する個々の種類の咬合のそれぞれについての様々な下顎位を表す変換を達成するために、仮想上顎歯列弓と仮想下顎歯列弓との間の相対関係を共有座標系に変換するように構成することができる。これにより、その特定の咬合位を達成するための下顎運動を反映する、閉口位と対応する咬合位との間における仮想下顎歯列弓の下顎位置及び向きの補間の様々な形態が可能である。次いで、仮想咬合モデルにおける全体的な下顎運動は、補間の様々な段階における個々の咬合変換の合成変換として表現され得る。
【0099】
閉口位から他の咬合位のいずれかへの下顎骨の移動は、それぞれの咬合位について、回転行列(座標軸x、y、zの周りの3つの回転の合成)と座標の原点の並進ベクトルとの組み合わせとして説明され得る。この組み合わせ(回転及び並進ベクトル)は、通常、「3D変換行列」と呼ばれる、又はより狭義には「剛体変換」と呼ばれる。
【0100】
ヒトの下顎移動の特定の場合、可能な移動は、「球関節」として機能する下顎頭及び下顎窩に機械的に条件付けられる。「球関節」移動のこの特定の条件は、(異なる咬合位に起因する)これらの下顎移動のうちのいずれかを、(任意の一般的な移動が必要とするような)回転及び並進の組み合わせではなく、(並進を伴わない)固有の純粋回転として説明することを可能にする。
【0101】
修正された上顎歯列弓に対して、修正された下顎歯列弓を様々な咬合位を介して移動させることによって、仮想咬合器206は、治療計画202の様々な状態(例えば、最終目標状態及び/又は1つ以上の中間状態)における歯の接触点を決定してもよい。
【0102】
一実施例では、接触点を決定するとき、仮想咬合器206は、追加的に、前方滑走運動/後方滑走運動及び左側方滑走運動/右側方滑走運動などの様々な下顎運動から生じる、これらの接触点における経時的な摩耗咬合小面を予測するように更に構成することができる。
【0103】
他の実施例では、仮想咬合器206は、適切な犬歯誘導が達成されるかどうかを判定するように構成することができる。仮想咬合器206は、下顎が側方にずれ(すなわち、側方滑走運動)、したがって臼歯を外す(disclude)(すなわち、開口させ、対向する歯の間の接触を取り除く)際に、上側犬歯と下側犬歯との間に起きる最初の接触の結果として、このような判定を行うように構成することができる。
【0104】
他の実施例では、仮想咬合器206は、適切な前歯誘導が達成されるかどうかを判定するように構成することができる。仮想咬合器206は、下顎が突出し、したがって臼歯を外す(すなわち、開口させ、対向する歯の間の接触を取り除く)際に、上側切歯と下側切歯との間に起きる最初の接触の結果として、このような判定を行うように構成することができる。
【0105】
仮想咬合は、治療計画のフレームワークを高度化する。例えば、仮想咬合器206はまた、治療計画202で使用することができる様々な力部材を含むことができる。各力部材は、歯列矯正ブラケットの複雑な位置決め及び応力に応答することができる。
【0106】
上述の幾何学的情報は、治療計画を通知し臨床医及び患者との有効なコミュニケーションを促進するように、物理的情報を提供するために使用され得る。スコアはまた、全体的な口腔衛生情報及び快適性情報を提供するために、ランドマーク、状態間の歯の移動、及び歯の位置を含む他の情報と組み合わされてもよい。このようなシステムは、歯科矯正ツールであることを越え、むしろ歯科医、歯科矯正医などのための一元化された治療プラットフォームとして機能する。
【0107】
アーチ部材分析モジュール234はまた、力部材ひずみモジュール208を含むことができる。力部材ひずみモジュール208は、力部材の各セグメントについての力部材力特性を有するデータストア238に通信可能に結合することができる。例えば、データストア238は、力部材の異なるセグメントの様々な形状、材料、及びひずみ下でのそれぞれの挙動を記憶することができる。
【0108】
力部材ひずみモジュール208は、治療計画202に関連する仮想咬合器206からの位置決めをとり、治療計画202を実施することができるように、歯上のブラケットの配置及び力部材の特性を更に決定することができる。
【0109】
少なくとも1つの実施例では、力部材ひずみモジュール208を使用して、力部材が歯列矯正ブラケット上に配置されているときの力部材の様々な点に対する応力又はひずみを決定することができる(したがって、力部材上の点は、歯列矯正ブラケットとの接触に対応する)。少なくとも1つの実施形態では、選択された点は、セグメントと係合するように構成された歯列矯正ブラケットの位置に対応することができる。
【0110】
力部材に対する応力は、力部材の場所に応じて変化し、歯列矯正ブラケットの位置決め、歯列矯正ブラケット間の距離、力部材の形状、力部材の材料組成、力部材の断面、及びそれらの組み合わせに関連し得る。力部材ひずみモジュール208は、仮想咬合器206からの情報を使用して、力部材の力ベクトル及び仮想歯列への応力の影響をシミュレーションすることができる。
【0111】
少なくとも1つの実施形態では、所与の点の力ベクトルは、隣接する歯列矯正ブラケットに対応する少なくとも1つの点を組み込むことができる。力部材ひずみモジュール208は、口腔の仮想歯列に対する応力を使用して、デジタルセットアップ210に影響を与える。デジタルセットアップ210は、力部材内のセグメントの様々な配置であってもよい。デジタルセットアップ210は、データストア226に記憶することができる。少なくとも1つの実施形態では、データストア226は、患者に基づいて力部材がカスタム製造される製造システム240によってアクセスすることができる。
【0112】
一実施例では、ユーザは、使用する治療計画202又は力部材構成のうちの特定の1つを決定するために、力部材ひずみモジュール208を使用することができる。別の実施例では、ユーザは、動的衝突メトリックに基づいて、治療計画202の中間状態及び/又は最終状態のうちの1つ以上を手動で修正することができる。別の実施例では、アーチ部材分析モジュール234は、選択された力部材に基づいて、使用する治療計画202を自動的に決定することができる。別の実施例では、アーチ部材分析モジュール234は、力部材の応力に基づいて、治療計画202の中間状態及び/又は最終状態のうちの1つ以上を自動的に修正することができる。例えば、アーチ部材分析モジュール234は、最終セットアップ全体にわたって力部材の力を維持する治療計画を選択することができる。他の実施例では、アーチ部材分析モジュール234は、選択された治療計画を、ユーザが確認及び受諾することができる推奨/示唆される治療計画として出力するように構成することができる。
【0113】
上記の技術に加えて、アーチ部材分析モジュール234はまた、仮想咬合及び力部材の応力の様々な態様がディスプレイ216上でユーザに表示される、1つ以上のユーザインターフェース機能を含むことができる。仮想咬合システムは、1つ以上の治療計画のそれぞれについての力部材の応力を示すデータを出力及び表示するように構成することができる。このデータは、不快感の程度を示すための接触点又は領域の色分けなど、本質的に視覚的であってもよい。例えば、下顎頭の蝶番軸に近い(例えば、顎関節(temporomandibular joint:TMJ)における、すなわち、より遠位又はより後方の)接触は、蝶番軸からより離れている接触よりも大きい不快感を生じさせる可能性が高く、これは、神経学的理由と、咬筋からの同じ入力の力を考慮して、機械的なてこの作用、したがって力又は圧力が増加するという基本的理由との両方のためである。アーチ部材分析モジュール234は、応力/ひずみの程度を示す異なる色(例えば、力部材に対する高応力に対して赤色、中間応力に対して黄色、低応力に対して緑色)を使用することができる。
【0114】
図3では、スキャンからの患者の下顎歯列弓300(例えば、患者スキャンデータ224)のデジタル3Dモデルの一例が
図3に示されている。同様のスキャンを、共に患者の口腔内に存在し得る、患者の上顎歯列弓で行うことができる。患者の下顎歯列弓及び上顎歯列弓のスキャンは、それぞれ、仮想下顎歯列弓及び仮想上顎歯列弓と呼ばれ得る。複数の視点(view)からの画像セットに基づいてデジタル3D画像又はモデルを生成するためのシステムは、米国特許第7,956,862号及び同第7,605,817号に開示されており、これらの両方は、完全に記載されているかのように参照により本明細書に組み込まれている。これらのシステムは、歯又は他の口腔内構造の複数の視点からのデジタル画像を得るために、口腔内スキャナを使用することができ、これらのデジタル画像は、スキャンされた歯及び他の口腔内構造を表すデジタル3Dモデル又はスキャンを生成するために処理される。3Dモデル又はスキャンは、例えば、スキャンされた物体又は口腔内構造の表面を表す多角形メッシュ又は点群として実施され得る。
【0115】
口腔内構造は、歯列、より典型的には、ヒトの歯列、例えば、個々の歯、クアドラント、全歯列弓、離れた状態又は様々な種類の咬合状態にあり得る対の歯列弓、軟組織(例えば、口腔の歯肉及び粘膜表面、又は唇、鼻、頬、及び顎などの口周囲構造)など、並びに骨及び任意の他の支持構造又は周囲構造を含む。口腔内構造は、場合により、口腔内の天然構造と、歯科用物体(例えば、補綴物、インプラント、装具、修復物、修復用構成要素、又は橋脚歯)などの人工構造物との両方を含み得る。一実施例では、点302は、選択された点であってもよく、補正されることになる下顎歯列弓300内の歯に対応する。
【0116】
図4は、サーバ404及びクライアントデバイス406がネットワーク402に接続されている、システム400を示す。
【0117】
様々な実施形態では、ネットワーク402は、インターネット、ローカルエリアネットワーク(local area network、「LAN」)、広域ネットワーク(wide area network、「WAN」)、及び/又は他のデータネットワークを含むことができる。従来のデータネットワークプロトコルに加えて、いくつかの実施形態では、データは、近距離通信(near field communication、「NFC」)、Bluetooth、電力線通信(power-line communication、「PLC」)などを含むプロトコル及び/又は標準に従って通信することができる。いくつかの実施形態では、ネットワーク402はまた、音声通信だけでなく、ショートメッセージサービス(Short Message Service、「SMS」)メッセージなどの非音声データ、並びに様々なセルラーデータ通信プロトコルを介して通信されるデータなどを伝達する、音声ネットワークを含むことができる。
【0118】
様々な実施形態では、クライアントデバイス406は、デスクトップPC、携帯電話、ラップトップ、タブレット、ウェアラブルコンピュータ、又は本明細書に記載されるように、ネットワーク402に接続して、サーバ404と通信することができる他のコンピューティングデバイスを含むことができる。
【0119】
様々な実施形態では、追加のインフラストラクチャ(例えば、ショートメッセージサービスセンター、セルサイト、ルータ、ゲートウェイ、ファイアウォールなど)、並びに追加のデバイスが存在することができる。更に、いくつかの実施形態では、サーバ404及びクライアントデバイス406の一部又は全てによって提供されるものとして説明される機能は、物理及び/又は論理デバイスの様々な組み合わせにより実装することができる。しかしながら、例示的な実施形態を説明するために、そのようなインフラストラクチャ及び
図4の実装形態の詳細を示す必要はない。
【0120】
少なくとも1つの実施形態では、サーバ404は、口腔の仮想歯列に対して分析を実行するように構成することができる。患者スキャンデータ224は、クライアントデバイス406によって受信して、サーバ404に送信することができる。患者スキャンデータ224の更なる分析は、サーバ404上で実行することができる。
【0121】
図5は、歯科矯正装具500を示す。歯科矯正装具500は、患者の歯列に取り付けることができる。少なくとも1つの実施形態では、歯科矯正装具500は、仮想歯列上でシミュレーションすることができる。歯列は、歯502、歯504、及び歯506を含むことができる。歯科矯正装具500は、各歯上の選択された点に配置された歯列矯正ブラケット508、歯列矯正ブラケット510、及び歯列矯正ブラケット512を含むことができる。歯科矯正装具500は、各歯列矯正ブラケットに接触して固定された力部材534を含む。少なくとも1つの実施形態では、力部材534は、(スロット付き装具又はスナップオン装具のように)歯列矯正ブラケット508に解放可能に係合することができる。少なくとも1つの実施形態では、力部材534は、ブラケットと一体的に形成されて、歯に解放可能に係合する(取り外し可能な歯シェルのように)又は歯に接合される(リテーナとしても機能する仕上げ装具のように)のいずれかである、単一の歯科矯正装具500を形成することができる。
【0122】
図示されるように、力部材534は、複数のセグメント、例えば、セグメント518、セグメント520、セグメント522、セグメント524、及びセグメント526から形成されている。各セグメントからセグメントへの遷移は、遷移領域によって定義することができる。例えば、セグメント518とセグメント520との間の遷移は、遷移領域528によって定義される。セグメント522とセグメント524との間の遷移は、遷移領域530によって定義され、セグメント524とセグメント526との間の遷移は、遷移領域532によって定義される。
【0123】
歯列矯正ブラケット間の空間は、スパンと呼ぶことができる。例えば、スパン514は、歯列矯正ブラケット508と歯列矯正ブラケット510との間に存在することができ、スパン516は、歯列矯正ブラケット510と歯列矯正ブラケット512との間に存在することができる。セグメントが異なる力特性を有することができるため、各スパンは、互いに異なる力特性を有することができる。スパンは、1つ以上の遷移領域を包含することができる。加えて、スパンは、少なくとも2つの端部を有することができる。例えば、スパン514は、歯列矯正ブラケット508によって支持された第1の端部536と、歯列矯正ブラケット510によって支持された第2の端部538とを有することができる。アーチ部材構成、例えば、セグメント長、直径(断面)、弾性率などによって、各スパン内で様々な集計力特性が可能である。
【0124】
図6は、歯科矯正装具600を示す。歯科矯正装具600は、所与のスパン610ごとに任意の数のセグメントが可能であることを例示するように示されている。例えば、歯科矯正装具602は、1つのセグメントを有し、歯科矯正装具604は、2つのセグメントを有し、歯科矯正装具606は、3つのセグメントを有し、歯科矯正装具608は、6つのセグメント(すなわち、複数のセグメント)を有する。
【0125】
図7は、歯科矯正装具700を示す。歯科矯正装具700は、複数のセグメント及びセグメント間の様々な遷移領域を有する力部材704を有することができる。
【0126】
各遷移領域は、それ自体の長さを有することができる。一定の直径だが、弾性率の観点から先細になっている遷移を有する、したがって、一方の端部で第1の弾性率を有し、遷移領域の他方の端部で第2の弾性率を有することも可能である。
【0127】
力部材704は、歯列矯正ブラケット716及び歯列矯正ブラケット718に取り付けることができ、スパン714が歯列矯正ブラケット間に形成される。スパン714は、断面寸法D1(例えば、円形の場合、直径)及び長さL1を有するセグメント702を含むことができる。スパン714はまた、セグメント702とセグメント708との間で先細になる長さL12を有する遷移領域710を含むことができる。セグメント708は、長さL2及び断面寸法D2を有することができる。遷移領域712は、セグメント708からセグメント706まで先細になる長さL23を有することができる。セグメント706は、長さL3及び断面寸法D3を有することができる。
【0128】
例えば、第1のセグメント及び第2のセグメントは各々、第1の端部及び第2の端部を有することができる。第1のセグメント及び第2のセグメントの両方は、互いに異なる材料特性を有することができる。第2のセグメントは、第1のセグメントに当接することができ、第1の端部は、接触することができる。少なくとも1つの実施形態では、第1のセグメントと第2のセグメントとの間の遷移領域は、第1のセグメント及び第2のセグメントの両方とは異なる特性を有することができる。少なくとも1つの実施形態では、遷移領域は、第1のセグメント又は第2のセグメントのいずれか長い方の長さの10パーセント以下、5パーセント以下、又は1パーセント以下、延びることができる。
【0129】
図8は、拡張された遷移領域を有さない様々な構成の歯科矯正装具800を示す。例えば、歯科矯正装具802は、2つの遷移を含むが急な遷移を有する(したがって、有意な遷移領域がない)スパン808を有する力部材828を有することができる。スパン808は、長さL1及び断面寸法D1を有するセグメント822を含むことができる。スパン808はまた、長さL2及び断面寸法D2を有するセグメント824と、長さL3及び断面寸法D3を有するセグメント826とを含む。セグメント822及びセグメント826は、歯列矯正ブラケットを通過して延び続けることができる。
【0130】
歯科矯正装具804は、スパン810を有する力部材830を含む。スパン810は、長さL1及び断面寸法D1を有するセグメント818と、長さL2及び断面寸法D2を有するセグメント820とを有することができる。少なくとも1つの実施形態では、セグメント820は、歯列矯正ブラケット834を通過してより厚い断面寸法を有するセグメント836に遷移することができる(したがって、スパン810の外側に遷移する。
【0131】
歯科矯正装具806は、断面積を変化させない(したがって、スパン812全体にわたって同じ一般的な断面形状を有する)スパン812を有する力部材832を含む。例えば、スパン812は、弾性率E1を有する第1の材料で形成されたセグメント814を含むことができ、セグメント816は、弾性率E2を有する第2の材料から形成されている。弾性率は、均一な直径の力部材に沿って変化することができるが、弾性率及び断面寸法を同時に修正することも可能である。少なくとも1つの実施形態では、セグメントは、長さ、断面寸法、及び弾性率を有するものとして説明することができる。セグメントは、特定の集計力特性を達成するために、任意の構成でスパン内で連続して直列に組み合わせることができる。
【0132】
図9は、力部材を分析する方法900を示す。方法900は、本明細書に記載のアーチ部材分析システムを使用して、歯科矯正装具内で使用するアーチ部材特性を決定することができる。
【0133】
ブロック902では、コンピューティングデバイスは、患者の口腔の仮想歯列を示すデータを受信することができる。データは、様々な歯の一連の空間3次元座標であってもよい。少なくとも1つの実施形態では、仮想歯列を示すデータは、患者の下顎歯列弓を表す仮想下顎歯列弓、若しくは患者の上顎歯列弓を表す仮想上顎歯列弓、又は仮想上顎歯列弓及び仮想下顎弓の両方のうちの少なくとも1つを示すデータを含む。様々なツール及びシステムを使用して、仮想歯列を捕捉することができる。口腔内スキャナの例は、3M Company,Inc.(Saint Paul,MN)から商品名3M True Definition Scannerで市販されている。
【0134】
ブロック904では、コンピューティングデバイスは、治療計画を決定することができる。治療計画は、位置を直される歯の目標位置を含むことができる。様々なソフトウェアを使用して、治療計画を開発することができ、そのような2つの例が、3Shape(Denmark)及びBlueSkyPlan(Libertyville,IL)から市販されている。少なくとも1つの実施形態では、治療計画はまた、歯上の歯列矯正ブラケットの位置を含む構成を含むことができる。
【0135】
ブロック906では、コンピューティングデバイスは、1つ以上の歯の変位を決定することができ、治療計画に基づくことができる。
【0136】
開放ループブロック908では、コンピューティングデバイスは、選択された点での歯の移動のための力ベクトル(又はその力の大きさ)を決定することができる。少なくとも1つの実施形態では、コンピューティングデバイスは、第1の構成における力部材の第1の集計力特性に基づいて、口腔の仮想歯列上の第1の位置における選択された点の第1の力ベクトルを決定することができる。第1の力ベクトルの決定については、本明細書で更に説明する。
【0137】
力ベクトルは、第1の構成における力部材の第1の集計力特性に基づいて決定することができる。少なくとも1つの実施形態では、第1の構成は、応力状態にあってもよい。少なくとも1つの実施形態では、力ベクトルは、仮想歯列の初期状態に、かつ治療計画に従って加えられる(シミュレーションされた)力を示す。
【0138】
力ベクトルは、仮想歯列上の複数の点に基づいて力部材が修正される、取り付けられた構成に基づいて決定することができる。したがって、複数のブラケットを通過する力部材は、最終的に、特定の点上の力ベクトルを決定することができる。少なくとも1つの実施形態では、力ベクトル分析は、スパン、及びスパン内のセグメントの変動性、セグメント間の遷移、歯列矯正ブラケットの配置、並びにそれらの組み合わせを考慮することによって分析することができる。
【0139】
ブロック910では、コンピューティングデバイスは、目標位置での歯の移動のための力ベクトル(又はその力の大きさ)を決定することができる。少なくとも1つの実施形態では、コンピューティングデバイスは、治療計画に基づいて、歯の位置及び向きが目標位置にあるかどうかを判定することができる。少なくとも1つの実施形態では、コンピューティングデバイスは、第2の力ベクトルが歯を目標位置に移動させるかどうかを判定することができる。少なくとも1つの実施形態では、第2の力ベクトルは、ユーザが(ユーザインターフェースを介して)歯を目標位置に実質的に移動させ、次いで結果として生じる力/モーメントが歯をその位置に移動させる可能性が高いかどうかを判定することによって、決定することができる。力ベクトルの計算は、歯の位置の仮定に基づくことができる。
【0140】
少なくとも1つの実施形態では、コンピューティングデバイスは、第1の構成における力部材の第1の集計力特性に基づいて、仮想歯列上の第2の位置における選択された点の第2の力ベクトルを決定することができる。少なくとも1つの実施形態では、第2の位置は、治療計画後の歯の移動に対応する。例えば、ユーザは、治療計画の進行に基づいて、口腔の仮想歯列内の歯の位置を修正することができる。歯の位置は、治療計画の各ステップと共に進行することができ、経時的な増分移動に基づく。各移動において、別の歯列矯正ブラケットの場所に対する選択された点の位置(例えば、変位)は、変化することができ、応力状態で力部材によって送達される力に影響を与えることができる。この「最終」力ベクトルは、力部材の弛緩状態の結果であってもよい。
【0141】
少なくとも1つの実施形態では、ブロック910は、歯に対する所望の力から始まり、その力を送達する力部材構成(セグメント長、断面、及び材料)を決定することによって、終わる。少なくとも1つの実施形態では、力ベクトルとは対照的に、力の大きさは、より有用であり得る(方向は、力部材が歯の目標位置/向きを定義する平衡形状に向かって弛緩するにつれて、力部材によって本質的に決定されるため)。
【0142】
判断ブロック912では、コンピューティングデバイスは、条件が存在するかどうかを判定することができる。例えば、コンピューティングデバイスは、点が第1の位置と第2の位置との間の変位の少なくとも30パーセント、少なくとも40、又は少なくとも50パーセントまで移動したときに、第2の力ベクトルが第1の力ベクトルの99、95、90、85、又は80パーセント以内にあるかどうかの条件を判定することができる。
【0143】
ブロック916では、条件が満たされていないことに応じて、コンピューティングデバイスは、力部材のスパン又はセグメントの特性を修正することができる。例えば、特性を修正することは、力部材に対して選択された異なるセグメント特性により開放ループブロック908に匹敵する、第2の構成における力部材の第2の集計力特性を示すデータにアクセスすることを含むことができる。第2の構成は、第1の構成とは異なるように配置されたセグメントの任意の組み合わせであってもよい。例えば、力部材の第1の構成は、セグメントの第1の組み合わせを有することができ、力部材の第2の構成は、セグメントの第2の組み合わせを有することができる。詳細な機械的分析に基づいて、指定された変数の値(例えば、最大力及び移動距離)は、セグメント断面又は任意の材料特性を調整することによって得ることができる。セグメントを微調整することによって、比較的一定の印加ワイヤ力を大きな移動範囲にわたって適用することができる。
【0144】
少なくとも1つの実施形態では、力部材の集計力特性はまた、力部材の個々のセグメントの応力-ひずみプロファイルを含むことができる。応力-ひずみプロファイルはまた、セグメントの又はセグメントの一部分の様々な組み合わせを含むことができ、それは、それらが2つ以上の個々のセグメントに関連するためである。応力-ひずみプロファイルはまた、セグメントの様々な組み合わせを含むことができ、それは、それらが全体として力部材に関連するためである。
【0145】
応力-ひずみプロファイルは、力部材上の様々な点に対してシミュレーションされた応力に基づいて測定することができる。例えば、応力は、2つのセグメント間、3つのセグメント間、又は力部材の遠位端でシミュレーションすることができる。
【0146】
少なくとも1つの実施形態では、コンピューティングデバイスは、力ベクトルに影響を及ぼす力部材の第1の力特性又は第2の力特性に対する変更を推奨することができる。
【0147】
少なくとも1つの実施形態では、コンピューティングデバイスは、集計力特性がどのように修正されるかの順序を割り当てることができる。例えば、1)アーチ部材/アライナタイプ、2)形状、3)断面寸法、4)弾性率、5)スパン間のセグメントの長さ。
【0148】
開放ループブロック908の第2の反復では、コンピューティングデバイスは、第2の構成における力部材の更新された集計力特性に基づいて、仮想歯列上の第1の位置における選択された点の力ベクトルを決定することができる。
【0149】
ブロック910の第2の反復では、コンピューティングデバイスは、第2の集計力特性に基づいて、仮想歯列上の第2の位置における選択された点の力ベクトルを決定することができる。判断ブロック912の第2の反復では、コンピューティングデバイスは、条件が存在するかどうかを判定することができる。例えば、条件は、新しい力ベクトルが第1の位置と第2の位置との間の変位の50パーセントで以前の力ベクトルの90パーセント以内にあるかどうかを含むことができる。
【0150】
閉ループブロック914では、コンピューティングデバイスは、条件が満たされていることに応じて、少なくとも1つの動作を実行することができる。
【0151】
少なくとも1つの実施形態では、動作は、力部材の表現を製造システムに送信することであってもよい。例えば、表現は、力部材の仕様に関するデジタル画像又はファイルであってもよい。少なくとも1つの実施形態では、表現は、力部材の一部(例えば、全てのセグメント未満)又は全てを描写することができる。例えば、カスタム歯列矯正(3つのセグメントのうちの1つを表す)を製造システムに送信して、2つの歯列矯正ブラケットと共に使用される力部材を製造することができる。
【0152】
製造システムは、力部材などの金属製又は熱可塑性構成要素を製造するように構成されたシステムであってもよい。製造システムはまた、以前に製造された力部材がカタログ化及び分類されている在庫管理システムを指すことができる。在庫管理システムは、条件を満たす力部材を識別することができる。
【0153】
少なくとも1つの実施形態では、動作は、コンピューティングデバイスのディスプレイを介して、第2の位置における仮想歯列の少なくとも一部分を示すグラフィカルユーザインターフェースを出力することを含むことができる。グラフィカルユーザインターフェースはまた、仮想歯列上の力部材の表現を含むことができる。コンピューティングデバイスは、力部材に対する応力を視覚的に識別することができる。
【0154】
少なくとも1つの実施形態では、動作は、決定された第2の力ベクトルに少なくとも部分的に基づいて、患者の1つ以上の治療計画を決定することであってもよい。例えば、条件が存在する場合、コンピューティングデバイスは、異なる構成の力部材を使用して、別の治療計画を開発することができる。少なくとも1つの実施形態では、治療計画は、より積極的であって、1つ以上の歯に対して追加の変位を実行することができる。
【0155】
少なくとも1つの実施形態では、動作は、第2の力ベクトルに基づいて、仮想歯列の歯の位置及び向きが目標位置にあるかどうかを判定することを含むことができる。例えば、コンピューティングデバイスは、条件が満たされると、力部材が治療計画に従って歯の正しい位置及び向きをもたらすかどうかを判定することができる。
【0156】
図10は、治療計画に基づいて力部材の力ベクトルを決定する方法1000を示す。方法1000は、仮想歯列の歯間の力部材の選択されたスパンに基づくことができる。スパンを選択することによって、有限要素解析により力部材全体の全てのセグメントを分析することとは対照的に、支持体(例えば、歯列矯正ブラケット)に対する力特性の個々の効果を分離し、次いで他の支持体と集計することができ、これにより、コンピューティングデバイスに対する計算負荷全体を低減することができる。方法1000の態様は、開放ループブロック908及びブロック910に適用することができる。
【0157】
方法1000では、コンピューティングデバイスは、ブロック1002で、選択されたスパンを受信することができる。少なくとも1つの実施形態では、スパンは、グラフィカルユーザインターフェース内でユーザによって選択することができる。スパンについては、本明細書に記載されている。選択されないスパンは、後で選択することができる。
【0158】
サブルーチンブロック1100では、コンピューティングデバイスは、データストア238を構築することができる。データストア238は、セグメント(例えば、複合ビーム方式)の各効果に関するデータを投入することができる。少なくとも1つの実施形態では、データストア238は、リレーショナルデータストア(例えば、データベース)であり、治療テーブル、力部材テーブル、及びセグメントテーブルを含むことができ、治療は、複数のアーチ部材(2つのアーチのみではなく、それぞれが1つ又は2つのアーチのいずれかを含む複数の治療段階のための)に関連してもよく、力部材は、複数のセグメントに関連することができる。セグメントは、正中線からの近心距離及び正中線からの遠位距離(したがって、長さ並びに開始位置及び終了位置を画定する)、断面形状(多角形として)、断面慣性モーメント(スカラー値として)、材料の参照、近心セグメントの参照(最も近心のセグメントの場合、同じ象限又は反対側の象限の)、及び遠位セグメントの参照(力部材の終端部ではない場合)を含むことができる。
【0159】
材料テーブルは、各材料のエントリを含むことができ、材料は、名称、化学式又は合金組成、弾性率、破断前の%伸び、降伏強度、極限強度などの特性を有する。リレーショナルデータストアはまた、ブラケットテーブルを含むことができ、各ブラケットエントリは、スロット幅、スロット深さ、スロット長、内/外、トルク、角形成、フック場所、意図する歯、材料、ブラケット列、バージョン番号、ベース-スロット変換などの、ブラケットのライブラリについての寸法の標準的なセットを構成する。リレーショナルデータストアは、ブラケットインスタンステーブルを含むことができ、各エントリは、親歯列弓形態の参照、標準ライブラリブラケットの参照、力部材に沿ったブラケットの位置を示す正中線からの距離、歯、歯列弓、若しくは口に対するブラケットベース変換、及び/又は歯、歯列弓、若しくは口に対するブラケットスロット変換を含む(技術的に、標準ブラケットが使用される場合は1つの変換のみが必要とされ、ベース-スロット変換は、ブラケットライブラリに記憶される)。あるいは、力部材テーブルは、歯列弓正中線からのそれらのそれぞれの距離と共に、ライブラリブラケットのリストを参照することができる。ほとんどの場合、正常な成人歯列の予想される歯に対応する一定数のブラケットを参照することが十分であり得る(第3大臼歯又は「親知らず」を含む、歯列弓あたり最大16個)。しかしながら、小さい割合の症例は、余分な予想外の歯である、過剰歯を有することがある。これらは、テーブルが本質的に長さが可変であってもよいため、ブラケットインスタンステーブルが力部材を参照するエントリを有する、前述のリレーショナルデータストアを使用して考慮することができる。リンクされたリスト、XMLファイル、又はBLOB(Binary Large Object、バイナリラージオブジェクト)などの他の構造もまた、そのような変動性を考慮することができる。力部材のセグメントがどのように定義され、かつ各ブラケットが力部材の長さに沿ってどこに位置するかに応じて、任意の2つのブラケット間のセグメントは、構成が変化して、可変断面のビームを形成することができることに注目すべきである。ブラケットによって各端部上で支持された各ビームの曲げ特性は、ブラケットの間に位置する1つ以上の力部材セグメントの特性、ブラケット特性、及びブラケットの向き(特定の患者の歯に適用されたブラケットの個々のインスタンス)によって決定することができる。
【0160】
少なくとも1つの実施形態では、データは、各セグメントについてのものであってもよく、材料特性(例えば、ヤング率及びポアソン比)、セグメント弧形状(例えば、弧に沿った中心線点座標)、弧断面形状(例えば、円形、長方形、楕円形)、サイズ(例えば、半径)、及び向き、並びにそれらの組み合わせを含む。力部材は、複数のセグメントを有することができる。力部材の各セグメントは、力部材の材料特性及び幾何学形状を全体として変化させる1つ以上の力特性を有することができる。例えば、アーチ部材の材料及び幾何学的特性は、幾何学的断面、材料組成、セグメント(単数又は複数)の長さ、複数のセグメントの形状、力部材の形状、及びそれらの組み合わせを含むことができる。
【0161】
判断ブロック1004では、コンピューティングデバイスは、スパン力特性がデータストア238から決定可能であるかどうかを判定することができる。例えば、スパンの力特性は、力特性を決定するデータがデータストア238に存在する場合に決定可能であってもよい。データストア238は、様々なセグメントの関連付けに関するデータを含むことができる。例えば、データストア238は、スパン内の任意のセグメントの力部材直径を増加させることにより力送達の大きさを増加させる程度を示すデータを含むことができる。データストア238は、曲げ平面における力部材直径を増加させることにより増加のほぼ3乗だけ力送達の大きさを増加させることを示すデータを含むことができる。データストア238は、曲げ平面に垂直な方向のアーチ部材の直径を増加させることにより増加にほぼ比例して力送達の大きさを増加させることを示すデータを含むことができる。データストア238は、スパン内のより小さい直径のセグメントの長さを減少させると同時に、より大きな直径のセグメントの長さを増加させることにより、力送達のより大きな大きさをもたらす程度を示すデータを含むことができる。データストア238は、スパン内の任意のセグメントの弾性率を増加させることにより力送達の大きさを増加させる程度を示すデータを含むことができる。データストア238は、スパン内のより低い弾性率のセグメントの長さを減少させると同時に、より高い弾性率のセグメントの長さを増加させることにより、力送達のより大きな大きさをもたらす程度を示すデータを含むことができる。
【0162】
スパン力特性がデータストア238から決定可能ではない場合、コンピューティングデバイスは、ブロック1012で、有限要素解析を実行することができる。三次元有限要素解析は、全ての可能な自由度で任意の症例を取り扱うための選択のツールである。有限要素解析は、重い処理コストではあっても、力部材全体(複数のセグメントを含む)に沿った力のシステムを同時に分析することができる。
【0163】
スパンの力特性がデータストア238によって決定可能である場合、方法1000は、ブロック1006に続く。ブロック1006では、コンピューティングデバイスは、支持体(例えば、歯列矯正ブラケット)におけるスパン力を決定することができる。少なくとも1つの実施形態では、スパン力は、力ベクトルに関連付けることができ、データストア238からの力特性及び複合ビーム方式に基づくことができる。
【0164】
少なくとも1つの実施形態では、ブロック1006、判断ブロック1008、判断ブロック1010、及びブロック1014は、力部材の特定のスパンに対して反復的であってもよい。判断ブロック1008で、スパンの力ベクトルが支持閾値内であると判定されると、ブロック1002で、別のスパンを選択することができる。ブロック1016は、力部材の(複数のスパンに対して)集計力特性を更に決定するように、コンピューティングデバイスによって返されてもよい。
【0165】
ブロック1006に関して、力ベクトル(又はその力の大きさ)の決定は、力部材のスパンに関連することができる。力部材のスパンは、少なくとも2つの歯列矯正ブラケット(すなわち、選択された点と隣接する歯列矯正ブラケットに対応する第2の点と)の間の力部材の長さであってもよい。隣接する歯列矯正ブラケットは、力部材によって提供される力ベクトルに影響を及ぼすことができる。少なくとも1つの実施形態では、スパンは、少なくとも2つの隣接する歯列矯正ブラケット間の力部材の長さを含むことができる。
【0166】
少なくとも1つの実施形態では、コンピューティングデバイスは、1つ又は2つの隣接するビーム(力部材の長さ、各々が1つ以上のセグメント、好ましくはそれぞれが3つのセグメントからなる;力部材に沿って最遠位のブラケットの場合には1つの隣接するビームのみ)の結果として、ブラケットに作用する力を示すことができる。少なくとも1つの実施形態では、ブラケット間の力部材のねじり力及び複合曲げは、コンピューティングデバイスによる処理を簡略化するために無視することができる。
【0167】
本発明の目的は、安全かつ有効な範囲内にある力の大きさを達成し、かつ可能な限り最長の発現範囲にわたって可能な限り一定の力を送達することである。いくつかの実施形態では、力の大きさとブラケット間の力部材セグメントの構成(寸法、形状、及び材料)との間に明確な関係が存在することができる。
【0168】
しかしながら、他の実施形態では(複雑さに応じて)、構成を決定するために反復アプローチが必要とされることがある。例えば、第1の構成が設定されて、その構成の関数として力が計算されてもよい。
【0169】
判断ブロック1008で、力ベクトル(又はその力の大きさ)が支持閾値(治療計画に関連する)内でない場合、コンピューティングデバイスは、判断ブロック1010で、(第1の反復と第2の反復との間の)力ベクトル(又はその力の大きさ)の変化が減少しているかどうかを判定することができる。力ベクトル(又はその力の大きさ)の変化が減少していない場合、ブロック1014で、他の力特性を修正することができる、又はコンピューティングデバイスは、ブロック1012で、有限要素解析を実行することができる。少なくとも1つの実施形態では、コンピューティングデバイスがブロック1014を実行するか又はブロック1012を実行するかは、第1の反復と第2の反復との間の変化に依存することができる。
【0170】
ブロック1014では、コンピューティングデバイスは、スパン内のセグメントの力特性を修正することができる。例えば、力が大きすぎる場合、構成における1つ以上のパラメータは、力を減少させることが知られている方向(すなわち、+又は-)に変化させることができる。例えば、セグメント直径(又は曲げ平面内の断面慣性モーメント)のいずれかを減少させることにより、力を減少させることになる。
【0171】
隣接するセグメントの一方又は両方の長さを減少させると同時に、より小さい直径を有するセグメントの長さを増加させることにより、力を減少させることになる。所与のスパン内の任意のセグメントの弾性率を減少させることにより、力を減少させることになる。力の増加について、その反対が当てはまる。これらのパラメータのいずれか又は全ては、結果を目標の方向に押す方向に所与の増分又は増分のセットだけ変化させることができる。その後の反復は、結果として生じる力が所望の力よりも大きい、ほぼ等しい(許容範囲内)、又はそれ未満であるかを試験するべきである。それに応じて、構成の1つ以上のパラメータは、それに応じた方向(+又は-)に、かつ計算された力の大きさと所望の力の大きさとの間の差に少なくとも粗くスケール変更する大きさだけ、変化させるべきである。
【0172】
一例として、パラメータ値(単数又は複数)の変化の増分は、差の符号が変化する(例えば、+から-に)まで、各反復について一定であってもよく、次いで、パラメータ値は、次の反復に対して符号を変化させて、1/2の大きさだけ減少する。このアプローチは、各反復に対する目標のオーバーシュートを低減し、二分探索の様式で収束をもたらす。より洗練されたアプローチは、必ずしも正確な値ではないが、より大きな測定される出力値を達成するための入力パラメータ(単数又は複数)の必要な変化を計算することができる。したがって、目標に向かうステップは、誤差の任意の1/2ではなく、誤差により比例することになる。
【0173】
別のパスとして、又は場合によっては同じパスで、目標がスカラー力値である代わりに、目標は、問題の力部材のスパンに対する力対変位曲線の傾きであってもよい。同様に、目標は、発現の所与の長さにわたって達成される所望の力のパーセント、又は所望の力値の所与の許容範囲内で達成される発現の長さ、又は集計力特性を含む何らかの他の測定値であってもよい。
【0174】
少なくとも1つの実施形態では、同じ増加値と減少値との間の永続的なトグルを回避して、代わりに支持閾値に収束するために、コンピューティングデバイスは、(絶対値に関して)以前の反復からの増加又は減少の量を記憶して、現在の反復におけるそれから量を低減することができる。
【0175】
少なくとも1つの実施形態では、任意の所与の支持体に対する結果として生じる力は、支持体のいずれかの側に対して1つ又は2つのスパンの各々によって加えられる力のベクトル和である。クリアトレイアライナの場合、これは、単一の接触点又は接触領域に作用する複数の力であってもよい。力部材及び支持結合は、好ましくは剛性結合であってもよく、それにより、各スパンの力は、独立して計算することができる。少なくとも1つの実施形態では、分離された歯シェル及びそれらの間のアーチ部材又はジャンパを含む取り外し可能な装具の概念は、摺動機構の欠如により、最大の制御を呈することができる。クリアトレイアライナは、対照的に、接触点がかなり不定であり、かつ任意の所与のスパンからのモーメントがその隣接するスパン(単数又は複数)に効率的に伝達されるため、制御をほとんど有せず、これにより、本開示の態様に適用可能な力のシステムに自由度を追加することができる。
【0176】
少なくとも1つの実施形態では、方法1000は、分離した各スパンの端部における力を計算し、支持体のいずれかの側からの力を結果として生じる力に結合するのみである。少なくとも1つの実施形態では、方法1000はまた、2つ以上の隣接するスパンの力がスパン間の何らかの形態の結合により計算される場合に適用することができる。
【0177】
図11は、コンピューティングデバイスがデータストア238を構築することができるサブルーチンブロック1100の実施形態を示す。データストア238を構築することは、力部材の1つ以上のスパンに対する様々なセグメントの関係に関するデータをデータストア238に投入することを含むことができる。少なくとも1つの実施形態では、サブルーチンブロック1100は、ブロック1102を含むことができる。
【0178】
ブロック1102では、コンピューティングデバイスは、セグメントの設計パラメータ(例えば、力特性)と集計力特性/大きさとの間の関係を受信することができる。
【0179】
ブロック1104では、コンピューティングデバイスは、セグメントの設計パラメータに対応するスパン長、セグメント長、セグメント直径(断面寸法)、及びセグメント弾性率を受信することができる。
【0180】
図12は、力部材の力特性を修正する方法1200を示す。方法1200は、ブロック1014の実施形態であってもよい。
【0181】
方法1200は、シミュレーション又はデータストア238から得られた力の大きさが支持閾値に対して評価される、判断ブロック1206で開始することができる。
【0182】
力の大きさが支持閾値未満である場合、コンピューティングデバイスは、ブロック1204で、隣接するセグメントの力特性を修正して、力の大きさを増加させることができる。例えば、コンピューティングデバイスは、1つ以上のセグメントの力部材直径を増加させることができる。別の実施例では、コンピューティングデバイスはまた、より小さい直径のセグメントの長さを減少させると同時に、より大きな直径のセグメントの長さを増加させることができる。別の実施例では、コンピューティングデバイスは、1つ以上のセグメントの弾性率を増加させることができる。別の実施例では、コンピューティングデバイスは、より小さい弾性率のセグメントの長さを減少させると同時に、より高い弾性率のセグメントの長さを増加させることができる。
【0183】
力の大きさが支持閾値よりも大きい場合、コンピューティングデバイスは、ブロック1202で、隣接するセグメントの力特性を修正して、力の大きさを減少させることができる。例えば、コンピューティングデバイスは、1つ以上のセグメントの力部材直径を減少させることができる。別の実施例では、コンピューティングデバイスは、より小さい直径のセグメントの長さを増加させると同時に、より大きな直径のセグメントの長さを減少させることができる。別の実施例では、コンピューティングデバイスは、1つ以上のセグメントの弾性率を減少させることができる。別の実施例では、コンピューティングデバイスは、より小さい弾性率のセグメントの長さを増加させると同時に、より高い弾性率のセグメントの長さを減少させることができる。
【0184】
図13は、各々が異なる幾何学的断面及び長さを有する複数のセグメントを有する例示的な力部材1300を示す。力部材1300は、セグメント1306、セグメント1304、セグメント1302、セグメント1308、及びセグメント1310を有することができる。セグメント1306及びセグメント1310、並びにセグメント1304及びセグメント1308は、同じ特性及び力特性を有することができ、又は各セグメントは、異なる力特性を有することができる。例えば、セグメント1306は、セグメント1304よりも厚くてもよく、これにより、異なる力特性をもたらすことができる。力部材1300は全体として、アーチ形状であってもよく、これにより、また、集計力特性に影響を与えることができる。提供される実施例は、3つのブラケットのみを有する場合を表し、1つは、正中線に配置され、力部材の各遠位端に1つがある。他の実施例(口腔内で使用されるとき)は、より多くのブラケットを有する可能性が高く、ブラケット間のスパン長は、はるかにより短い。したがって、スパンを構成する様々な断面及び材料のセグメントは、更により短くなる。それにもかかわらず、各スパンに対する力対変位曲線(すなわち、力-変位曲線)を平坦化する効果は、依然として達成することができる。
【0185】
図示されるように、集計力特性は、最大力、移動距離、及び力勾配を含むことができる。力部材1300は、弛緩状態1314及び応力状態1312にあってもよい。力部材1300が(例えば、応力状態1312の第1の位置1326及び弛緩状態1314の第2の位置1328からの)変位1318にわたって発現されると、力部材1300は、変位1318にわたって変化する力ベクトル1316を生成することができる。この変化する力ベクトル1316はまた、応力-ひずみプロファイルで示すことができる。
【0186】
少なくとも1つの実施形態では、力部材1300に沿った様々な点は、異なる応力-ひずみプロファイルを有することができる。例えば、応力状態1312の第1の位置1322は、変位1318とは異なる、弛緩状態1314の第2の位置1320を有する変位を有することができ、力ベクトル1316とは異なる力ベクトル1324を生成することができる。力部材1300全体にわたるこれらの様々な力ベクトルの集計は、集計力ベクトルと呼ぶことができる。少なくとも1つの実施形態では、第1の位置1326及び第2の位置1328は、歯列矯正ブラケット上の接触点に対応することができる。平面構成で示されているが、本明細書で使用されるような力部材1300はまた、治療計画、及び3次元空間内で予測された力ベクトルに従って屈曲することができる。
【0187】
少なくとも1つの実施形態では、力は、明確に限定された結合の結果としてブラケットにのみ送達される。したがって、異なる点での力は、力部材に沿った可能なブラケット位置を指す。ブラケット間の中間接触点は、これらが力-変位曲線、したがって治療計画との干渉を構成するため、望ましくない。中間接触の例は、力部材が治療の何らかの持続期間にわたってブラケット間の点(単数又は複数)で1つ以上の歯又は補助装具に接触することである。
【0188】
図14は、力部材1300についての印加力対変形距離(正規化済)のグラフ1400を示す。正規化された力/変位応答が、グラフ1400に示されている。少なくとも1つの実施形態では、プロット1402は、力部材1300の応力-ひずみプロファイルを表すことができる。例えば、力部材1300は、印加力/力ベクトルが変位(すなわち、変位1318)の最初の50%において10%未満低下することを示している。少なくとも1つの実施形態では、プロット1402は、単一の点、例えば、第1の位置1326に関連することができる。
【0189】
図15は、異なる材料組成を有するセグメントを有する力部材1500を示す。例えば、力部材1500は、セグメント1502、セグメント1504、セグメント1506、セグメント1508、及びセグメント1510を含むことができる。セグメント1502及びセグメント1510、並びにセグメント1504及びセグメント1508は各々、同じ材料及び断面で形成されてもよく、また互いに対して異なる力特性を有することができる。別の実施形態では、セグメント1502及び1510、又は1504及び1508は各々、異なる2種のポリマーなどの、異なる弾性率を得るための異なる材料であってもよい。同じ材料だが、異なる弾性率の例は、その長さに沿って選択的に焼戻し又はアニールされたステンレス鋼、チタン、又はニックチタン(nick-titanium)であってもよい。例えば、より低い弾性率を有するセグメントは、力部材1500の長さに沿った特定の場所で使用することができる。力特性は、弾性率、断面寸法、セグメント長、幾何学形状、又はそれらの組み合わせの材料特性に起因し得る。
【0190】
力部材1500は、弛緩状態1518及び応力状態1512を有することができる。力部材上の点は、距離1516の変位を有することができる。材料特性に基づいて、コンピューティングデバイスは、応力-ひずみプロファイルから力ベクトル1514を予測することができる。図示されるように、セグメント1504は、セグメント1502よりも低い応力を有することができる。
【0191】
図16は、力部材104と複数のセグメントを有する力部材1500とについての印加力対変形距離の比較を示すグラフ1600を示す。ワイヤのより弾性的なセグメントを力部材1500に導入することによって、軸方向圧縮下での座屈が非常に予測可能な場所で起こり、圧縮力は、曲げモーメントに変換される。変形は、低減された慣性モーメント又は弾性率を有するワイヤのセグメントで起こってもよい。
【0192】
複数のセグメントの結果は、プロット1602(力部材1500に対応する)及びプロット1604(力部材104に対応する)に示されるように、所与の変形距離にわたるより一定の力であってもよい。
【0193】
図17は、特定の幾何学形状を使用する力部材1700を示す。例えば、力部材1700は、特定の頂部及び谷を有することができる。力部材1700は、組成、弾性率、及び断面において均一であってもよいが、幾何学形状が変化する。例えば、力部材1700は、複数のセグメント;セグメント1714、セグメント1702、及びセグメント1704を有することができる。角度1706は、セグメント1714とセグメント1702との間に形成することができ、角度1712は、セグメント1702とセグメント1704との間に形成することができる。少なくとも1つの実施形態では、角度1706は、角度1712よりも大きい。
【0194】
力部材1700は、変形状態1708及び弛緩状態1710を有することができる。弛緩状態1710は、特定の応力-ひずみプロファイルを有して、応力状態から弛緩状態に遷移するときに力ベクトル1716をもたらすことができる。力部材1700の点は、距離1718だけ変位することができる。力ベクトル1716は、距離1718にわたって可変である。
【0195】
力部材1700は、制御された方法で座屈領域を成形することができる力部材における意図的な形状変化の結果であってもよい。例えば、セグメントが力ベクトルと実質的に同軸になるように向けられている場合、セグメントは、いくらかの量の圧縮を経験することができる。しかしながら、完全な同軸整列の可能性が低いと仮定すると、力の何らかの横方向成分が加えられ、これにより、セグメントの曲げをもたらす。
【0196】
曲げが起こると、同軸整列が更に損なわれ、更に力のより大きな成分により、力部材1700の横方向の動き及び曲げをもたらす。力部材1700が同軸に向けられたセグメント及び力軸に対して角度が付けられた軸外セグメントを有する場合、同軸セグメントは、最初に変形に抵抗することができ、曲げは、軸外セグメント及び2つのセグメント間の接合部で起こることができる。曲げは、完全な圧縮又は引っ張りよりも容易な変形モードであってもよい。これは、圧縮又は引っ張り中にワイヤ断面全体が応力下にあるのとは対照的に、曲げ中に力部材1700の断面の一部分のみが応力下にあるためである。
【0197】
印加力軸に対して戦略的な場所で力部材1700に曲げを導入することによって、曲げモーメントによるワイヤ変形は、制御された方法で達成することができる。これらの曲げモーメントは、セグメントの数及び向きに応じて、二峰性又は多峰性であってもよい。ワイヤのたわみ又は変位の量は、曲げにおけるセグメントの長さ及びワイヤ軸と力軸との間の角度の正弦に比例することに留意されたい。言い換えれば、セグメントが長いほど、より容易に曲がり、より軸外のセグメントほど、より容易に曲がる。逆は、変形に対してより耐性のあるセグメントをもたらすことができる。
【0198】
図18は、力部材1700と力部材104との力-変位を比較するグラフ1800を示す。プロット1604及びプロット1802によって示されるように、力部材1700の(力ベクトルによる)印加力は、ワイヤが(ゼロ変形距離から始まる)変位の第1の部分で発現されるときに、力部材104よりもゆっくりと低下する。
【0199】
図19は、様々な応力状態の力部材1900を示す。力部材1900では、セグメント1902は、セグメント1904よりも長い。力部材1900は、弛緩状態1906、半弛緩状態1908、及び応力状態1910で示されている。
【0200】
力部材1900の変形が生じるにつれて、印加された力ベクトルに対するセグメントの向きは、変化することができる。少なくとも1つの実施形態では、歯科矯正装具の少なくとも一部分において非線形力/変位応答曲線を達成するために、動的挙動が利用される。例えば、力部材1900では、印加された力ベクトルに対するセグメント1902の概ね同軸の向きを損なうためには、ほとんど変形が必要でなく、力部材1900は、セグメント1902が軸1912に対して曲がる半弛緩状態1908に示されるように、少なくともいくらかの量の曲げを迅速に受ける。
【0201】
セグメント1904は、印加力軸1912からより遠くてもよいが、変形の量は、その短い長さ及びたわみを引き起こすのに必要なより大きな力によって制限される。したがって、セグメント1902は、より大きな変形を経験し続ける。セグメント1902が変形し続けると、ワイヤセグメントの端部に垂直な力ベクトルの成分は、大きさが増加し、曲げがより容易になる。しかしながら、たわみの大きさが増加するにつれて、力部材1900を曲げるのに必要な正規化された力の量も増加する。したがって、この力が上昇するにつれて、曲げを達成するためにより大きな力が必要とされるセグメント1904において、より大きな変形が発生し始める。セグメント1904が加えられた力ベクトルの軸1912からより遠くなるにつれて、線形ばね力関数が支配的であるようにたわみが大きくなるまで、セグメント1904の曲げもより容易になる。これは、Tarsicio Belendez、Cristian Neipp、Augusto BelendezのLarge and small deflections of a cantilever beam(Eur.J.Phys.第23巻、371ページ(2002年5月8日))によって更に説明されている。
【0202】
したがって、曲げ動力学を利用して、力部材からの非線形応答を達成することができる。様々なセグメントの曲げモーメントは、セグメント1902が曲がるにつれて、力部材1900の最も活性な領域が形状及び向きの両方を変化させることを可能にする方法で組み合わされる。個々の応答曲線は、力の異なる範囲にわたって支配的であるが、互いに重なり合って、一緒に合計される。
【0203】
力部材1900の断面、材料特性、弛緩形状、及びそれらの組み合わせの仕様により、変形した力部材1900の形状を制御することができる。加えて、そのような力部材は、治療計画中に移動する際に、歯に比較的一定の力を加えることができる。
【0204】
図20~
図24は、(力部材の一種である)クリアトレイアライナを調製するのに有用であり得るパターンを示す。様々なパターンは、治療計画に影響を与えるのに十分に集計力特性を修正するのに有用であり得る。したがって、パターンは、力部材の力特性であってもよい。少なくとも1つの実施形態では、パターンの隆起特徴部は、確率的、すなわち、カオス又はランダムなパターンで配置することができる。確率的パターンの1つの利点は、周期的構造と偶然に整列する特定の軸に沿った力/変位曲線におけるバイアスが回避されることである。少なくとも1つの実施形態では、断面が市松模様パターンの正方形又はハニカムパターンの六角形の縁部に直交して取られるときに、周期は、規則的であり得る。しかしながら、断面が軸外で、斜めに、又は不特定の向きで取られる場合、周期は、より複雑であり得、これらの向きでの力-変位曲線は、直交軸に沿って取られたものとは異なる。
【0205】
そのような差を回避するために、確率的パターンを使用することができ、これにより、任意の所与の向きに有利に働くバイアスがほとんど又は全くなくなる。これは、接触点(すなわち支持体)、したがってスパンの向きが、治療の各段階中又は治療のいくつかの段階全体にわたってかなり不確定であり、かつ変化することができるため、クリアトレイアライナに有利であり得る。したがって、確率的パターンは、スパン向きの関数として比較的ほとんど変化しない、より予測可能な力応答を提供することができる。
【0206】
図20は、いくつかの異なる断面パターン2000を示し、それらは全て、構成材料の厚さの急激な変化に起因して、方形波に似ている。
【0207】
少なくとも1つの実施形態では、パターン2008、パターン2010、及びパターン2012は、最小厚さ及び最大厚さを有し、かつ中間厚さを有さない、単一の材料を含む。
【0208】
パターン2010では、高所及び凹部は、図示される異なる2つの周期を有する同じ幅を有する。パターン2008では、高所は、凹部よりも長い。
【0209】
パターン2002、パターン2004、及びパターン2006は、異なる2つの材料を含み、各弾性率は、2つの材料間で異なる。
【0210】
パターン2006では、第2の材料2014は、第1の材料2016の凹部を充填し、表面に露出したままである。パターン2004では、第2の材料2018及び第1の材料2020の両方は、同一の幾何学形状を有し、上面及び底面の各々が単一の材料のみを露出させるように嵌合している。
【0211】
パターン2002では、第1の材料2022及び第2の材料2024の両方は、シートの厚さ全体に広がるが、シートの平面に不連続が存在する。パターンは、シートを通って取られた断面に応じて変化することに留意されたい。
【0212】
図21は、最小厚さ、最大厚さ、及び可変中間厚さを有するパターン2100を示す。パターン2106は、半円形の特徴部を有し、パターン2104は、台形の特徴部を有する。両方とも周期的である。パターン2102は、多層シートであり、外層(層2110及び層2108)は、第1の弾性率を有し、内層2112は、第2の弾性率を有する。
【0213】
図22は、パターン2208のストライプ、パターン2202の市松模様、正方形ドットパターン2204、及び六角形ドットパターン2206を含む、いくつかの異なるパターン2200の直視図を示す。異なる陰影は、異なる全厚、材料の単一層内の異なる厚さ、又は異なる弾性率を表すことができる。少なくとも1つの実施形態では、2208は、隆起していてもよい、パターンのストライプになったものを有することができる。
【0214】
図23は、交互の上昇した正方形2304及び押し下げられた正方形2306を有する単一の材料を含む市松模様パターン2300を示す。基材は、一定の厚さである。断面2302は、市松模様パターン2300が対角線に沿ってスライスされた状態で示されている。断面では、上昇したセグメント及び押し下げられたセグメントは、異なる長さを有するが、繰り返しパターンで発生する。少なくとも1つの実施形態では、押し下げられた正方形2306は、基材を含み、上昇した正方形2304は、基材上に重ね合わされた異なる材料である。
【0215】
図24は、様々なハニカムパターン2400を示す。例えば、パターン2402は、均一な厚さの基材上の上昇した六角形から構成される。パターン2404は、均一な厚さの基材上の押し下げられた六角形から構成される。パターン2406は、均一な厚さの基材上の半球から構成される。
【0216】
少なくとも1つの実施形態では、ハニカムのユニットは、パターン2402及びパターン2404に示されるように、(正方形とは対照的に)六角形である。少なくとも1つの実施形態では、パターンは、パターン2406のような半球又は六角形内に存在する何らかの他の隆起特徴部であってもよい。
【0217】
図25は、
図23の市松模様パターンを有するクリアトレイアライナ2500の実施形態を示す。ビュー2502は、下顎切歯に取り付けられたクリアトレイアライナ2500の一部分を示す。
【0218】
ビュー2504は、歯がない、底部からのクリアトレイアライナ2500を示す。ビュー2506は、冠状面に沿って取られたクリアトレイアライナ2500の断面を示す。ビュー2508は、横断面に沿って取られたクリアトレイアライナ2500の断面を示す。ビュー2510は、わずかに傾いた矢状面に沿って取られたクリアトレイアライナ2500の1つのシェルの断面を示す。ビュー2512は、矢状面に沿って取られたクリアトレイアライナ2500の1つのシェルの断面を示す。
【0219】
図示されるように、市松模様パターンは、強度及び患者の快適さの理由から、クリアトレイアライナ2500の不可視側/内側に存在し、したがって、舌及び唇に滑らかな表面を提示し、対向する歯列弓上の装具との干渉を低減する。しかしながら、市松模様パターン、又はハニカムパターン2402、2404、若しくは2406などの他のパターンは、CTAの外面、若しくは内面及び外面の両方、又は内面でも外面でもない上の3次元レリーフを有することができる。パターンを形成する一方又は両方の材料は、異なる弾性率を有するにもかかわらず、光学的に半透明又は透明であってもよく、したがって、歯の自然な陰影を通して示して、「美的」と見なされることを可能にすることができる。いくつかの実施形態では、異なる材料は、透明性又は他の外観特性(色調又は色相など)において実質的に同様であってもよく、したがって、パターンを眼に実質的に見えなくすることができる。この属性は、装具の美観を更に改善することができる。
【0220】
図26は、クリアトレイアライナ2600の実施形態を示す。実施形態は、
図20のパターン2002の構造を有することができ、市松模様は、歯の周りに形成されたシート(又はシェル)の同じ曲面に交互に配置(インターリーブ)された異なる2つの材料を表している。ビュー2602は、下顎切歯に取り付けられて示されているクリアトレイアライナ2600の正面図を示す。ビュー2604は、クリアトレイアライナ2600の顔面図を示す。ビュー2606は、横断面に沿って取られたクリアトレイアライナ2600のシェルの断面を示す。
【0221】
本明細書で使用される用語は、関連技術分野におけるそれらの通常の意味、又は文脈におけるそれらの使用によって示される意味を与えられるべきであるが、表現定義が提供される場合、その意味が支配する。
【0222】
本明細書では、「1つの実施形態」又は「一実施形態」への言及は、必ずしも同じ実施形態を指すものではないが、同じ実施形態を指してもよい。別途文脈が明確に必要としない限り、本説明及び特許請求の範囲全体にわたって、「含む(comprise)」、「含む(comprising)」などの単語は、排他的又は網羅的な意味とは対照的に、包括的な意味で、すなわち、「含むが、これに限定されない」という意味で解釈されるべきである。単数又は複数を使用する単語は、単一の1つ又は複数のものに明示的に限定されない限り、単数又は複数それぞれも含む。加えて、本出願で使用されるとき、「本明細書」、「上記」、「下記」という単語、及び同様の意味の単語は、本出願の任意の特定の部分ではなく、全体としての本出願を指す。特許請求の範囲が、2つ以上の項目のリストに関して単語「又は」を使用する場合、その単語は、一方又は他方に明示的に限定されない限り、単語の以下の解釈:リスト内の項目のいずれか、リスト内の項目の全て、及びリスト内の項目の任意の組み合わせの全てを包含する。本明細書で明示的に定義されていない任意の用語は、当業者によって一般に理解されるような、それらの従来の意味を有する。
【0223】
本明細書に記載される様々な論理機能動作は、その動作又は機能を反映する名詞又は名詞句を使用して呼ばれる論理に実装することができる。例えば、関連付け動作は、「関連付け器」又は「相関器」によって実行することができる。同様に、スイッチングは、「スイッチ」、「セレクタ」による選択などによって実行することができる。
【0224】
「一実施形態では」、「様々な実施形態では」、「いくつかの実施形態では」などの語句は、繰り返し使用される。そのような語句は、必ずしも同じ実施形態を指すわけではない。別途文脈が指示しない限り、「含む(comprising)」、「有する(having)」、及び「含む(including)」という用語は、同義である。
例示的な実施形態のリスト
1.
コンピューティングデバイスによって、患者の口腔の仮想歯列を示すデータであって、仮想歯列を示すデータを受信することと、
コンピューティングデバイスによって、第1の構成における力部材であって、
第1の端部を有する第1のセグメントであって、第1の力特性を有する、第1のセグメントと、
第1の端部を有する第2のセグメントであって、第2の力特性を有し、第1のセグメントの第1の端部が、第2のセグメントの第1の端部に取り付けられている、第2のセグメントと、
を備える、力部材の第1の集計力特性を示すデータを受信することと、
第1の構成における力部材の第1の集計力特性に基づいて、口腔の仮想歯列上の第1の位置における選択された点の第1の力ベクトルを決定することと、
第1の構成における力部材の第1の集計力特性に基づいて、仮想歯列上の第2の位置であって、治療計画後の歯の移動に対応する第2の位置における選択された点の第2の力ベクトルを決定することと、
第2の力ベクトル(又はその力の大きさ)が第1の位置と第2の位置との間の変位の50パーセントで第1の力ベクトル(又はその力の大きさ)の90パーセント以内にあるかどうかの条件を判定することと、
コンピューティングデバイスによって、条件に基づいて動作を実行することと、
を含む、方法。
2.
コンピューティングデバイスによって、第2の構成における力部材の第2の集計力特性を示すデータを受信することと、
第2の構成における力部材の第2の集計力特性に基づいて、仮想歯列上の第1の位置における選択された点の第3の力ベクトルを決定することと、
第2の集計力特性に基づいて、仮想歯列上の第2の位置における選択された点の第4の力ベクトルを決定することと、
を更に含み、
条件を判定することが、第4の力ベクトル(又はその力の大きさ)が第1の位置と第2の位置との間の変位の50パーセントで第3の力ベクトル(又はその力の大きさ)の90パーセント以内にあるかどうかを判定することを含む、
実施形態1に記載の方法。
3.第1の集計力特性及び第2の集計力特性が、力部材における第1の力特性及び第2の力特性の変化に基づいて異なる、実施形態2に記載の方法。
4.選択された点が、第1のセグメントと係合するように構成された歯列矯正ブラケットの位置に対応する、実施形態1~3のいずれか一項に記載の方法。
5.第1の力特性又は第2の力特性が、弾性率、断面寸法、長さ、向き、幾何学形状、又はそれらの組み合わせから選択される、実施形態1~4のいずれか一項に記載の方法。
6.動作を実行することが、
コンピューティングデバイスによって、表示のために、第2の位置における仮想歯列の少なくとも一部分を示すグラフィカルユーザインターフェースを出力すること、
を含む、実施形態1~5のいずれか一項に記載の方法。
7.ディスプレイを介して、条件が満たされているかどうかを示すグラフィカルユーザインターフェースを出力することを更に含む、実施形態6に記載の方法。
8.動作を実行することが、
コンピューティングデバイスによって、決定された第2の力ベクトルに少なくとも部分的に基づいて、患者の1つ以上の治療計画を決定すること、
を含む、実施形態1~7のいずれか一項に記載の方法。
9.動作を実行することが、
第4の力ベクトルに影響を及ぼす力部材の第1の力特性又は第2の力特性に対する変更を推奨すること、
を含む、実施形態1~8のいずれか一項に記載の方法。
10.動作を実行することが、
コンピューティングデバイスによって、第2の力ベクトルに基づいて、仮想歯列の歯の位置及び向きが目標位置にあるかどうかを判定すること、
を含む、実施形態1~9のいずれか一項に記載の方法。
11.
コンピューティングデバイスによって、仮想歯列上の力部材を修正して、力部材の1つ以上の力特性を変更することと、
コンピューティングデバイスによって、修正された力部材に基づいて、仮想歯列が目標位置にあるかどうかを判定することと、
を更に含む、実施形態1~10のいずれか一項に記載の方法。
12.変更が、グラフィカルユーザインターフェースとのユーザ対話に起因する、実施形態11に記載の方法。
13.動作を実行することが、
力部材の表現を製造システムに送信すること、
を含む、実施形態1~12のいずれか一項に記載の方法。
14.動作を実行することが、
歯列矯正ブラケットの位置及び向きの表現を製造システムに送信すること、
を含む、実施形態13に記載の方法。
15.力部材を患者の歯列の少なくとも一部分と接触させることを更に含む、実施形態13に記載の方法。
16.第1のセグメントが、第2のセグメントとは異なる、実施形態1~15のいずれか一項に記載の方法。
17.力部材が、第1のセグメントに隣接する第3のセグメントを更に備え、第3のセグメントと第1のセグメントとの間に形成された第1の角度が、第1のセグメントと第2のセグメントとの間に形成された第2の角度とは異なる、実施形態1~16のいずれか一項に記載の方法。
18.第1の力特性又は第2の力特性が、力部材の幾何学的断面を含む、実施形態1~17のいずれか一項に記載の方法。
19.仮想歯列が、患者の下顎歯列弓を表す仮想下顎歯列弓、又は患者の上顎歯列弓を表す仮想上顎歯列弓のうちの少なくとも1つを示すデータを含む、実施形態1~18のいずれか一項に記載の方法。
20.力ベクトルが、選択された点と、第1の隣接する歯列矯正ブラケットの位置に対応する第1の点との間の力部材のスパンに関連する、実施形態1~19のいずれか一項に記載の方法。
21.力ベクトルが、第1の点と、第2の隣接する歯列矯正ブラケットの位置に対応する第2の点との間の力部材のスパンに関連する、実施形態20に記載の方法。
22.スパンが、複数のセグメントの一部分を含む、実施形態20に記載の方法。
23.力部材の集計力特性に基づいて力ベクトルを決定することが、力部材の一部分の力ベクトルを決定することを更に含む、実施形態1~22のいずれか一項に記載の方法。
24.一部分が、スパンである、実施形態23に記載の方法。
25.力ベクトルを決定することが、
2つの選択された点であって、選択された点が支持体に対応する、2つの選択された点間の選択されたスパンを受信することと、
支持体におけるスパンの力特性がデータストアから決定可能であるかどうかを判定することと、
スパン力特性がデータストアから決定可能である場合、データストア内の情報を使用して、支持体における力ベクトルを決定することと、
支持体の力ベクトルが支持閾値内であるかどうかを判定することと、
力ベクトルが支持閾値内でないことに基づいて、スパン内のセグメントの1つ以上の力特性を修正することと、
を含む、実施形態24に記載の方法。
26.支持体の力ベクトルが支持閾値内であることに基づいて、複数のスパンに対する集計力特性を決定することを更に含む、実施形態25に記載の方法。
27.スパン力特性がデータストアから決定可能ではないことに応じて、集計力特性を決定するために、力部材全体について有限要素解析を実行することを更に含む、実施形態25に記載の方法。
28.支持閾値が、歯の治療計画に基づく、実施形態25に記載の方法。
29.反復間の力ベクトルの変化が閾値内に減少しているかどうかを判定することと、そうでない場合、力部材について有限要素解析を実行することと、を更に含む、実施形態25に記載の方法。
30.反復間の変化が減少していることに基づいて、セグメントの1つ以上の力特性を修正することを更に含む、実施形態29に記載の方法。
31.コンピュータによって処理されると、実施形態1~30のいずれか一項に記載の方法を実行するようにコンピュータを構成する命令を含む非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
32.システムであって、
コンピューティングデバイスであって、
プロセッサと、
命令を記憶するメモリと、
を備え、命令が、プロセッサによって実行されると、
患者の口腔の仮想歯列を示すデータであって、仮想歯列を示すデータを受信し、
第1の構成における力部材であって、
第1の端部を有する第1のセグメントであって、第1の力特性を有する、第1のセグメントと、
第1の端部を有する第2のセグメントであって、第2の力特性を有し、第1のセグメントの第1の端部が、第2のセグメントの第1の端部に取り付けられている、第2のセグメントと、
を備える、力部材の第1の集計力特性を示すデータを受信し、
第1の構成における力部材の第1の集計力特性に基づいて、口腔の仮想歯列上の第1の位置における選択された点の第1の力ベクトルを決定し、
第1の構成における力部材の第1の集計力特性に基づいて、仮想歯列上の第2の位置であって、治療計画後の歯の移動に対応する第2の位置における選択された点の第2の力ベクトルを決定し、
第2の力ベクトル(又はその力の大きさ)が第1の位置と第2の位置との間の変位の50パーセントで第1の力ベクトル(又はその力の大きさ)の90パーセント以内にあるかどうかの条件を判定し、
条件に基づいて動作を実行する、
ようにコンピューティングデバイスを構成する、
コンピューティングデバイス、
を備える、システム。
33.第1の集計力特性及び第2の集計力特性が、力部材における第1の力特性及び第2の力特性の変化に基づいて異なる、実施形態32に記載のシステム。
34.命令が、プロセッサによって実行されると、更に、
コンピューティングデバイスによって、第2の構成における力部材の第2の集計力特性を示すデータを受信し、
第2の構成における力部材の第2の集計力特性に基づいて、仮想歯列上の第1の位置における選択された点の第3の力ベクトルを決定し、
第2の集計力特性に基づいて、仮想歯列上の第2の位置における選択された点の第4の力ベクトルを決定する、
ようにコンピューティングデバイスを構成し、
条件を判定することが、第4の力ベクトル(又はその力の大きさ)が第1の位置と第2の位置との間の変位の50パーセントで第3の力ベクトル(又はその力の大きさ)の90パーセント以内にあるかどうかを判定することを含む、
実施形態32又は33に記載のシステム。
35.動作を実行することが、
第4の力ベクトルに影響を及ぼす力部材の第1の力特性又は第2の力特性に対する変更を推奨すること、
を含む、実施形態34に記載のシステム。
36.選択された点が、第1のセグメントと係合するように構成された歯列矯正ブラケットの位置に対応する、実施形態32~35のいずれか一項に記載のシステム。
37.第1の力特性又は第2の力特性が、弾性率、断面寸法、長さ、向き、幾何学形状、又はそれらの組み合わせから選択される、実施形態32~36のいずれか一項に記載のシステム。
38.ディスプレイを更に備え、動作を実行することが、
ディスプレイを介して、第2の位置における仮想歯列の少なくとも一部分を示すグラフィカルユーザインターフェースを出力すること、
を含む、実施形態32~37のいずれか一項に記載のシステム。
39.命令が、プロセッサによって実行されると、実施形態1~実施形態31のいずれか一項に記載の方法を実行するようにコンピューティングデバイスを構成する、実施形態32~38のいずれか一項に記載のシステム。
40.コンピューティングデバイスに通信可能に結合されたデータストアを更に備え、力ベクトルを決定することが、
2つの選択された点であって、選択された点が支持体に対応する、2つの選択された点間の選択されたスパンを受信することと、
スパンの力特性がデータストアから決定可能であるかどうかを判定することと、
スパン力特性がデータストアから決定可能である場合、データストア内の情報を使用して、支持体における力ベクトルを決定することと、
支持体の力ベクトルが支持閾値内であるかどうかを判定することと、
力ベクトルが支持閾値内でないことに基づいて、スパン内のセグメントの1つ以上の力特性を修正することと、
を含む、実施形態32~39のいずれか一項に記載のシステム。
41.スパン力特性がデータストアから決定可能ではないことに応じて、集計力特性を決定するために、力部材全体について有限要素解析を実行することを更に含む、実施形態40に記載のシステム。
42.製造システムを更に備え、動作を実行することが、
力部材の表現を製造システムに送信すること、
を含む、実施形態32~41のいずれか一項に記載のシステム。
43.製造システムが、条件を満たす力部材を製造するように構成されている、実施形態32~42のいずれか一項に記載のシステム。
44.力部材が、アーチワイヤである、実施形態32~43のいずれか一項に記載のシステム。
45.力部材が、クリアトレイアライナである、実施形態32~44のいずれか一項に記載のシステム。
45a.力特性が、3次元空間内の様々な厚さのパターンである、実施形態45に記載のシステム。
45b.パターンが、確率的パターンである、実施形態32~45aのいずれか一項に記載のシステム。
45c.パターンが、ハニカムパターン及び隆起した又は押し下げられた六角形パターンを含む、実施形態32~45bのいずれか一項に記載のシステム。
46.力部材の第1のセグメントが、市松模様パターンの押し下げられた正方形であり、第2のセグメントが、市松模様パターンの上昇した正方形である、実施形態45に記載のシステム。
47.力部材の第1のセグメントが、平面であり、第2のセグメントの少なくとも一部分が、第1のセグメントの平面に対して上昇している、実施形態45に記載のシステム。
48.力部材の第1のセグメントが、任意の重ね合わされた部分なしに第2のセグメントに隣接している、実施形態45に記載のシステム。
49.患者を更に含み、力部材が、患者に解放可能に取り付けられている、実施形態43に記載のシステム。
50.動作を実行することが、
コンピューティングデバイスによって、決定された第2の力ベクトルに少なくとも部分的に基づいて、患者の1つ以上の治療計画を決定すること、
を含む、実施形態32~49のいずれか一項に記載のシステム。
51.動作を実行することが、
コンピューティングデバイスによって、第2の力ベクトルに基づいて、仮想歯列の歯の位置及び向きが目標位置にあるかどうかを判定すること、
を含む、実施形態32~50のいずれか一項に記載のシステム。
52.命令が、プロセッサによって実行されると、更に、
仮想歯列上の力部材を修正して、力部材の1つ以上の力特性を変更し、
修正された力部材に基づいて、仮想歯列が目標位置にあるかどうかを判定する、
ようにコンピューティングデバイスを構成する、実施形態32~51のいずれか一項に記載のシステム。
53.第1のセグメントが、第2のセグメントとは異なる、実施形態32~52のいずれか一項に記載のシステム。
54.第1の力特性又は第2の力特性が、力部材の幾何学的断面を含む、実施形態32~53のいずれか一項に記載のシステム。
55.仮想歯列が、患者の下顎歯列弓を表す仮想下顎歯列弓、又は患者の上顎歯列弓を表す仮想上顎歯列弓のうちの少なくとも1つを示すデータを含む、実施形態32~54のいずれか一項に記載のシステム。
【国際調査報告】