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特表2022-552566ベンゾフェナントリジンアルカロイド及びその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-16
(54)【発明の名称】ベンゾフェナントリジンアルカロイド及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4355 20060101AFI20221209BHJP
   A61K 31/395 20060101ALI20221209BHJP
   A61K 36/66 20060101ALI20221209BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221209BHJP
   C07D 491/153 20060101ALN20221209BHJP
【FI】
A61K31/4355
A61K31/395
A61K36/66
A61P35/00
C07D491/153
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523094
(86)(22)【出願日】2020-10-16
(85)【翻訳文提出日】2022-04-26
(86)【国際出願番号】 CN2020121431
(87)【国際公開番号】W WO2021073603
(87)【国際公開日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2019/111565
(32)【優先日】2019-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】522153769
【氏名又は名称】チェンドゥ アンタイキャンサー バイオサイエンス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ダン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ジン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン シェンユ
(72)【発明者】
【氏名】リ ジンファ
(72)【発明者】
【氏名】シ キン
【テーマコード(参考)】
4C050
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4C050AA01
4C050AA08
4C050BB07
4C050BB10
4C050CC17
4C050DD07
4C050EE01
4C050FF01
4C050FF02
4C050GG03
4C050HH01
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB22
4C086GA17
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZB27
4C088AB35
4C088AC13
4C088BA10
4C088BA11
4C088BA23
4C088BA33
4C088CA06
4C088CA14
4C088NA14
4C088ZB26
4C088ZB27
(57)【要約】
本明細書に記載されるのは、有糸分裂細胞を停止することができる化合物、及びがんなどの障害の治療における前記化合物の使用である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする対象においてがんを治療する方法であって、
治療有効量の式Iの化合物を前記対象に投与することを含み、
式中、
‐‐‐が、非結合または単結合を示し、
がHであり、
が、-OH及び-OC(O)CHから選択され、
またはR及びRが一緒になって、それらが結合する炭素と一緒にオキソを形成し、
が、H及びCHから選択され、
が、Hまたは非存在であり、
が、Hまたは非存在であり、
nが、0及び1から選択され、
mが、0及び1から選択され、かつ
但し、
‐‐‐が非結合を示す場合、R及びRの両方がHであり、
‐‐‐が単結合を示す場合、R及びRの両方が非存在であり、
nが0である場合、R及びRが一緒になってオキソを形成し、RがHであり、R及びRの両方がHであり、‐‐‐が非結合であり、mが1である、
前記方法。
【請求項2】
が-OHである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
が-OC(O)CHである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記がんが、卵巣癌、肺癌、胃癌、乳癌、肝癌、膵臓癌、皮膚癌、悪性黒色腫、頭頸部癌、肉腫、胆管癌、膀胱癌、腎臓癌、結腸癌、小腸癌、精巣胎児性5癌、胎盤絨毛癌、子宮頸癌、精巣癌、子宮癌、胚細胞性腫瘍、及びそれらの転移性形態からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記がんが、卵巣癌、肺癌、胃癌、及び乳癌からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
が-OHであり、前記がんが、卵巣癌、肺癌、胃癌、及び乳癌からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
が-OC(O)CHであり、前記がんが、卵巣癌、肺癌、胃癌、及び乳癌からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
それを必要とする対象において腫瘍細胞アポトーシスを誘導する方法であって、
治療有効量の式Iの化合物を前記対象に投与することを含み、
式中、
‐‐‐が、非結合または単結合を示し、
がHであり、
が、-OH及び-OC(O)CHから選択され、
またはR及びRが一緒になって、それらが結合する炭素と一緒にオキソを形成し、
が、H及びCHから選択され、
が、Hまたは非存在であり、
が、Hまたは非存在であり、
nが、0及び1から選択され、
mが、0及び1から選択され、かつ
但し、
‐‐‐が非結合を示す場合、R及びRの両方がHであり、
‐‐‐が単結合を示す場合、R及びRの両方が非存在であり、
nが0である場合、R及びRが一緒になってオキソを形成し、RがHであり、R及びRの両方がHであり、‐‐‐が非結合であり、mが1である、
前記方法。
【請求項9】
それを必要とする対象において細胞における細胞有糸分裂を停止する方法であって、
治療有効量の式Iの化合物を前記対象に投与することを含み、
式中、
‐‐‐が、非結合または単結合を示し、
がHであり、
が、-OH及び-OC(O)CHから選択され、
またはR及びRが一緒になって、それらが結合する炭素と一緒にオキソを形成し、
が、H及びCHから選択され、
が、Hまたは非存在であり、
が、Hまたは非存在であり、
nが、0及び1から選択され、
mが、0及び1から選択され、かつ
但し、
‐‐‐が非結合を示す場合、R及びRの両方がHであり、
‐‐‐が単結合を示す場合、R及びRの両方が非存在であり、
nが0である場合、R及びRが一緒になってオキソを形成し、RがHであり、R及びRの両方がHであり、‐‐‐が非結合であり、mが1である、
前記方法。
【請求項10】
それを必要とする対象において細胞の有糸分裂指数を調節する方法であって、
治療有効量の式Iの化合物を前記対象に投与することを含み、
式中、
‐‐‐が、非結合または単結合を示し、
がHであり、
が、-OH及び-OC(O)CHから選択され、
またはR及びRが一緒になって、それらが結合する炭素と一緒にオキソを形成し、
が、H及びCHから選択され、
が、Hまたは非存在であり、
が、Hまたは非存在であり、
nが、0及び1から選択され、
mが、0及び1から選択され、かつ
但し、
‐‐‐が非結合を示す場合、R及びRの両方がHであり、
‐‐‐が単結合を示す場合、R及びRの両方が非存在であり、
nが0である場合、R及びRが一緒になってオキソを形成し、RがHであり、R及びRの両方がHであり、‐‐‐が非結合であり、mが1である、
前記方法。
【請求項11】
有糸分裂制御因子を調節する方法であって、
有効量の式Iの化合物を投与することを含み、
式中、
‐‐‐が、非結合または単結合を示し、
がHであり、
が、-OH及び-OC(O)CHから選択され、
またはR及びRが一緒になって、それらが結合する炭素と一緒にオキソを形成し、
が、H及びCHから選択され、
が、Hまたは非存在であり、
が、Hまたは非存在であり、
nが、0及び1から選択され、
mが、0及び1から選択され、かつ
但し、
‐‐‐が非結合を示す場合、R及びRの両方がHであり、
‐‐‐が単結合を示す場合、R及びRの両方が非存在であり、
nが0である場合、R及びRが一緒になってオキソを形成し、RがHであり、R及びRの両方がHであり、‐‐‐が非結合であり、mが1である、
前記方法。
【請求項12】
腫瘍細胞成長を阻害するための方法であって、
有効量の式Iの化合物を投与することを含み、
式中、
‐‐‐が、非結合または単結合を示し、
がHであり、
が、-OH及び-OC(O)CHから選択され、
またはR及びRが一緒になって、それらが結合する炭素と一緒にオキソを形成し、
が、H及びCHから選択され、
が、Hまたは非存在であり、
が、Hまたは非存在であり、
nが、0及び1から選択され、
mが、0及び1から選択され、かつ
但し、
‐‐‐が非結合を示す場合、R及びRの両方がHであり、
‐‐‐が単結合を示す場合、R及びRの両方が非存在であり、
nが0である場合、R及びRが一緒になってオキソを形成し、RがHであり、R及びRの両方がHであり、‐‐‐が非結合であり、mが1である、
前記方法。
【請求項13】
が-OHである、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
が-OC(O)CHである、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記化合物が、コリダリス・ロンジカルカラタ(Corydalis longicalcarata)の根茎から単離及び精製される、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記化合物が有糸分裂阻害物質である、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記化合物が、細胞分裂に対する多面的効果を通して抗有糸分裂活性を促進する、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記多面的効果が、細胞分裂不全、染色体整列の防止、紡錘体チェックポイント応答不全、及び細胞分裂(cytofission)の遮断を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
化学療法である、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記投与することが、別のがん療法と組み合わせて実施される、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
腫瘍細胞成長を阻害するための薬学的組成物であって、
有効量の式Iの化合物を含み、
式中、
‐‐‐が、非結合または単結合を示し、
がHであり、
が、-OH及び-OC(O)CHから選択され、
またはR及びRが一緒になって、それらが結合する炭素と一緒にオキソを形成し、
が、H及びCHから選択され、
が、Hまたは非存在であり、
が、Hまたは非存在であり、
nが、0及び1から選択され、
mが、0及び1から選択され、かつ
但し、
‐‐‐が非結合を示す場合、R及びRの両方がHであり、
‐‐‐が単結合を示す場合、R及びRの両方が非存在であり、
nが0である場合、R及びRが一緒になってオキソを形成し、RがHであり、R及びRの両方がHであり、‐‐‐が非結合であり、mが1である、
前記薬学的組成物。
【請求項22】
が-OHである、請求項21に記載の薬学的組成物。
【請求項23】
が-OC(O)CHである、請求項21に記載の薬学的組成物。
【請求項24】
前記腫瘍細胞が、肝細胞腫細胞、食道癌細胞、頸部腺癌細胞、膵臓癌細胞、及び白血病細胞からなる群から選択される、請求項21~23のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項25】
前記化合物が、コリダリス・ロンジカルカラタの根茎から単離及び精製される、請求項21~23のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項26】
前記化合物が有糸分裂阻害物質である、請求項21~23のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項27】
前記化合物が、細胞分裂に対する多面的効果を通して抗有糸分裂活性を促進する、請求項21~23のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項28】
前記多面的効果が、細胞分裂不全、染色体整列の防止、紡錘体チェックポイント応答不全、及び細胞分裂の遮断を含む、請求項27に記載の薬学的組成物。
【請求項29】
がん細胞におけるアポトーシスを誘発するための組成物であって、コリノリン、アセチルコリノリン、ケリドニン、またはプロトピンを含む、前記組成物。
【請求項30】
がんを治療する方法であって、かかる治療を必要とする個人に、アポトーシスを誘導しかつがん細胞の増殖を阻害するのに十分な量のコリノリンまたはアセチルコリノリンを投与することを含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、部分的に、ベンゾフェナントリジンアルカロイド化合物、ベンゾフェナントリジンアルカロイド化合物を含む組成物、及びかかるベンゾフェナントリジンアルカロイド化合物を使用してがんを治療するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
がんは世界で2番目に主要な死因であり、2018年には推定960万人の死因となっている。アメリカがん協会によると、これらの個体の少なくとも3分の1が疾患を生き延びることができないと予想されており、新しい革新的な治療の必要性を強調している。全身性化学療法は、がん治療の標準的な治療法であり続け、「抗有糸分裂剤」と呼ばれる有糸分裂紡錘体集合を破壊する剤は、多種多様ながんを治療するために一般的に使用される。従来の抗有糸分裂剤には、タキソール、他のタキサン、及びビンカアルカロイドなどの微小管毒素が含まれ、これらのすべてが臨床的に成功していることが証明されている。しかしながら、患者応答は依然として非常に予測不可能であり、薬剤耐性は一般的である。加えて、オフターゲット毒性は、これらの広範な作用物質の問題である。
【0003】
抗有糸分裂活性を有するより安全で効果的な化合物が、がん治療のために必要である。
【発明の概要】
【0004】
本明細書で提供されるのは、それを必要とする対象においてがんを治療する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の式Iの化合物を投与することを含み、
式中、‐‐‐が、非結合または単結合を示し、Rが、Hであり、Rが、-OH及び-OC(O)CHから選択され、またはR及びRが一緒になってそれらが結合する炭素と一緒にオキソを形成し、Rが、H及びCHから選択され、Rが、Hまたは非存在であり、Rが、Hまたは非存在であり、nが、0及び1から選択され、mが、0及び1から選択され、かつ但し、‐‐‐が非結合を示す場合、R及びRの両方がHであり、‐‐‐が単結合を示す場合、R及びRの両方が非存在であり、nが0である場合、R及びRが一緒になってオキソを形成し、RがHであり、R及びRの両方がHであり、‐‐‐が非結合であり、mが1である、方法である。
【0005】
本明細書でさらに提供されるのは、対象の細胞における有糸分裂紡錘体集合を破壊する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の式Iの化合物を投与することを含み、
式中、‐‐‐が、非結合または単結合を示し、Rが、Hであり、Rが、-OH及び-OC(O)CHから選択され、またはR及びRが一緒になって、それらが結合する炭素と一緒にオキソを形成し、Rが、H及びCHから選択され、Rが、Hまたは非存在であり、Rが、Hまたは非存在であり、nが、0及び1から選択され、mが、0及び1から選択され、かつ但し、‐‐‐が非結合を示す場合、R及びRの両方がHであり、‐‐‐が単結合を示す場合、R及びRの両方が非存在であり、nが0である場合、R及びRが一緒になってオキソを形成し、RがHであり、R及びRの両方がHであり、‐‐‐が非結合であり、mが1である、方法である。
【0006】
本明細書でさらに提供されるのは、対象の細胞における細胞質分裂の完了を遮断する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の式Iの化合物を投与することを含み、
式中、‐‐‐が、非結合または単結合を示し、Rが、Hであり、Rが、-OH及び-OC(O)CHから選択され、またはR及びRが一緒になって、それらが結合する炭素と一緒にオキソを形成し、Rが、H及びCHから選択され、Rが、Hまたは非存在であり、Rが、Hまたは非存在であり、nが、0及び1から選択され、mが、0及び1から選択され、かつ但し、‐‐‐が非結合を示す場合、R及びRの両方がHであり、‐‐‐が単結合を示す場合、R及びRの両方が非存在であり、nが0である場合、R及びRが一緒になってオキソを形成し、RがHであり、R及びRの両方がHであり、‐‐‐が非結合であり、mが1である、方法である。いくつかの態様では、細胞質分裂の開始ではなく完了が遮断される。
【0007】
本明細書でさらに提供されるのは、対象において腫瘍細胞アポトーシスを誘導する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の式Iの化合物を投与することを含み、
式中、‐‐‐が、非結合または単結合を示し、Rが、Hであり、Rが、-OH及び-OC(O)CHから選択され、またはR及びRが一緒になって、それらが結合する炭素と一緒にオキソを形成し、Rが、H及びCHから選択され、Rが、Hまたは非存在であり、Rが、Hまたは非存在であり、nが、0及び1から選択され、mが、0及び1から選択され、かつ但し、‐‐‐が非結合を示す場合、R及びRの両方がHであり、‐‐‐が単結合を示す場合、R及びRの両方が非存在であり、nが0である場合、R及びRが一緒になってオキソを形成し、RがHであり、R及びRの両方がHであり、‐‐‐が非結合であり、mが1である、方法である。
【0008】
一実施形態では、本明細書で提供されるのは、対象の細胞における細胞有糸分裂を停止する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の式Iの化合物を投与することを含み、
式中、‐‐‐が、非結合または単結合を示し、Rが、Hであり、Rが、-OH及び-OC(O)CHから選択され、またはR及びRが一緒になって、それらが結合する炭素と一緒にオキソを形成し、Rが、H及びCHから選択され、Rが、Hまたは非存在であり、Rが、Hまたは非存在であり、nが、0及び1から選択され、mが、0及び1から選択され、かつ但し、‐‐‐が非結合を示す場合、R及びRの両方がHであり、‐‐‐が単結合を示す場合、R及びRの両方が非存在であり、nが0である場合、R及びRが一緒になってオキソを形成し、RがHであり、R及びRの両方がHであり、‐‐‐が非結合であり、mが1である、方法である。
【0009】
別の実施形態では、本明細書で提供されるのは、対象における細胞の有糸分裂指数を調節する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の式Iの化合物を投与することを含み、
式中、‐‐‐が、非結合または単結合を示し、Rが、Hであり、Rが、-OH及び-OC(O)CHから選択され、またはR及びRが一緒になって、それらが結合する炭素と一緒にオキソを形成し、Rが、H及びCHから選択され、Rが、Hまたは非存在であり、Rが、Hまたは非存在であり、nが、0及び1から選択され、mが、0及び1から選択され、かつ但し、‐‐‐が非結合を示す場合、R及びRの両方がHであり、‐‐‐が単結合を示す場合、R及びRの両方が非存在であり、nが0である場合、R及びRが一緒になってオキソを形成し、RがHであり、R及びRの両方がHであり、‐‐‐が非結合であり、mが1である、方法である。
【0010】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、有糸分裂制御因子を調節する方法であって、有効量の式Iの化合物を投与することを含み、
式中、‐‐‐が、非結合または単結合を示し、Rが、Hであり、Rが、-OH及び-OC(O)CHから選択され、またはR及びRが一緒になって、それらが結合する炭素と一緒にオキソを形成し、Rが、H及びCHから選択され、Rが、Hまたは非存在であり、Rが、Hまたは非存在であり、nが、0及び1から選択され、mが、0及び1から選択され、かつ但し、‐‐‐が非結合を示す場合、R及びRの両方がHであり、‐‐‐が単結合を示す場合、R及びRの両方が非存在であり、nが0である場合、R及びRが一緒になってオキソを形成し、RがHであり、R及びRの両方がHであり、‐‐‐が非結合であり、mが1である、方法である。
【0011】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、腫瘍細胞成長を阻害するための方法であって、有効量の式Iの化合物を投与することを含み、
式中、‐‐‐が、非結合または単結合を示し、Rが、Hであり、Rが、-OH及び-OC(O)CHから選択され、またはR及びRが一緒になって、それらが結合する炭素と一緒にオキソを形成し、Rが、H及びCHから選択され、Rが、Hまたは非存在であり、Rが、Hまたは非存在であり、nが、0及び1から選択され、mが、0及び1から選択され、かつ但し、‐‐‐が非結合を示す場合、R及びRの両方がHであり、‐‐‐が単結合を示す場合、R及びRの両方が非存在であり、nが0である場合、R及びRが一緒になってオキソを形成し、RがHであり、R及びRの両方がHであり、‐‐‐が非結合であり、mが1である、方法である。
【0012】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、腫瘍細胞成長を阻害するための薬学的組成物であって、有効量の式Iの化合物を含み、
式中、‐‐‐が、非結合または単結合を示し、Rが、Hであり、Rが、-OH及び-OC(O)CHから選択され、またはR及びRが一緒になって、それらが結合する炭素と一緒にオキソを形成し、Rが、H及びCHから選択され、Rが、Hまたは非存在であり、Rが、Hまたは非存在であり、nが、0及び1から選択され、mが、0及び1から選択され、かつ但し、‐‐‐が非結合を示す場合、R及びRの両方がHであり、‐‐‐が単結合を示す場合、R及びRの両方が非存在であり、nが0である場合、R及びRが一緒になってオキソを形成し、RがHであり、R及びRの両方がHであり、‐‐‐が非結合であり、mが1である、薬学的組成物である。
【0013】
一実施形態では、本明細書で提供されるのは、がん細胞におけるアポトーシスを誘発するための組成物であって、コリノリン、アセチルコリノリン、ケリドニン、またはプロトピンを含む、組成物である。
【0014】
いくつかの実施形態では、本発明で提供されるのは、がんを治療する方法であって、かかる治療を必要とする個人に、アポトーシスを誘導しかつがん細胞の細胞成長を阻害するのに十分な量のコリノリン、アセチルコリノリン、ケリドニン、またはプロトピンを投与することを含む、方法である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
1つ以上の様々な実施形態に従って、本開示は、以下の図面を参照して詳細に記載される。図面は、例示のみを目的として提供され、本開示の例示的な実施形態を単に描写するに過ぎない。これらの図面は、本開示の読者の理解を容易にするために提供され、本開示の幅、範囲、サイズ、または適用可能性を限定するものと見なされるべきではない。明確で例示しやすいように、これらの図面は必ずしも縮尺どおりに作製されるわけではないことに留意されたい。
図1】コリダリス・ロンジカルカラタ(Corydalis longicalcarata)から抽出されたコリノリン及びアセチルコリノリンの例示、ならびに免疫蛍光顕微鏡法及びリン酸化ヒストンH3の分析及び倍数性のDAPI分析の両方を通じて有糸分裂における細胞を停止させるそれらの能力の評価を示す。
図2】発がん性因子を発現するRPE細胞株及び発がん性因子を発現するRat1A細胞株におけるアセチルコリノリンのIC50値を示す。
図3】ヒトがん細胞株におけるアセチルコリノリンのIC50値を示す。
図4】免疫蛍光顕微鏡法において、β-チューブリン染色によって見られるような、アセチルコリノリンで6時間処理した後の有糸分裂における異常な紡錘体分極、及びホスホ-ヒストンH3染色によって決定されるような、前中期で停止する多数の細胞を示す。処理後48時間でDAPIで染色すると、アセチルコリノリン処理条件における倍数性を示した。
図5】β-チューブリン染色によって示されるように、アセチルコリノリンで24時間処理した後の有糸分裂における多極紡錘体形成を示す。処理後48時間でDAPIで染色すると、アセチルコリノリン処理条件における倍数性を示した。
図6】アセチルコリノリンで6時間処理した後に動原体認識CREST抗体で染色された細胞の免疫蛍光画像を示す。処理後48時間でDAPIで染色すると、アセチルコリノリン処理条件における倍数性を示した。
図7】アセチルコリノリンで24時間処理した後に動原体認識CREST抗体で染色された細胞の免疫蛍光画像を示す。処理後48時間でDAPIで染色すると、アセチルコリノリン処理条件における倍数性を示した。
図8】アセチルコリノリン及びDMSO対照群で処理した後の細胞を比較するための、前期から始まり有糸分裂を追跡するタイムラプス顕微鏡法を示す。
図9】複数の細胞株にわたるコリノリン、アセチルコリノリン、及びタキソールのIC50値を示す。
図10】複数の細胞株にわたるコリノリン、アセチルコリノリン、及びタキソールのIC50値を示す。Aは、がん遺伝子を発現するRPE細胞にわたるコリノリン、アセチルコリノリン、及びタキソールのIC50値を示す。Bは、がん遺伝子を発現するRat1A細胞にわたるコリノリン、アセチルコリノリン、及びタキソールのIC50値を示す。Cは、ヒトがん細胞株にわたるコリノリン、アセチルコリノリン、及びタキソールのIC50値を示す。Dは、追加のがん細胞株にわたるコリノリン、アセチルコリノリン、及びタキソールのIC50値を示す。
図11】がん遺伝子を発現するRPE細胞株のコリノリン、アセチルコリノリン、及びタキソールのIC50値を示す。Aは、コリノリンのIC50値を示す。Bは、アセチルコリノリンのIC50値を示す。Cは、RPE細胞株についてのコリノリン、アセチルコリノリン、及びタキソールのIC50値の比較を示す。Dは、コリノリンに対するアセチルコリノリンのIC50値の比率を示す。
図12】がん遺伝子を発現するRat1A細胞株のコリノリン、アセチルコリノリン、及びタキソールのIC50値を示す。Aは、コリノリンのIC50値を示す。Bは、アセチルコリノリンのIC50値を示す。Cは、RPE細胞株についてのコリノリン、アセチルコリノリン、及びタキソールのIC50値の比較を示す。Dは、コリノリンに対するアセチルコリノリンのIC50値の比率を示す。
図13】複数のヒトがん細胞株のコリノリン、アセチルコリノリン、及びタキソールのIC50値を示す。Aは、コリノリンのIC50値を示す。Bは、アセチルコリノリンのIC50値を示す。Cは、RPE細胞株についてのコリノリン、アセチルコリノリン、及びタキソールのIC50値の比較を示す。Dは、コリノリンに対するアセチルコリノリンのIC50値の比率を示す。
図14】細胞が丸くなることによる有糸分裂をアッセイするために、DMSO、コリノリン、アセチルコリノリン、及びビンブラスチンで処理された細胞の明視野顕微鏡画像を示す。処理後48時間でDAPIで染色すると、コリノリン及びアセチルコリノリン処理条件における倍数性を示した。
図15】コリノリン及びアセチルコリノリンが有糸分裂停止を誘発し、濃度依存性物質における倍数性を誘導することを示す。
図16】細胞が丸くなることによる有糸分裂をアッセイするために、DMSO、ケリドニン、及びプロトピン処理された細胞の明視野顕微鏡画像を示す。処理後48時間でDAPIで染色すると、ケリドニン処理条件における倍数性を示した。
図17】β-チューブリン染色によって示されるように、ケリドニンで24時間処理した後の有糸分裂における多極紡錘体形成を示す。処理後48時間でDAPIで染色すると、ケリドニン処理条件における倍数性を示した。
【発明を実施するための形態】
【0016】
例示的な実施形態の詳細な説明
本明細書に全体として記載されるように、本発明は、有糸分裂制御因子として作用する化合物を提供する。特定の実施形態では、かかる化合物は、がん(例えば、本明細書に記載の障害、腫瘍、がん細胞など)の治療のための治療剤として有用であることが想定される。本開示の特徴及び他の詳細が、ここでより詳細に記載される。本開示のさらなる記載の前に、本明細書、実施例、及び添付の特許請求の範囲で使用される特定の用語が、ここに集約される。これらの定義は、本開示の残りの部分に照らして読み取られ、当業者によって理解されるべきである。別段に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0017】
定義
本明細書で使用される用語「1つの(a)」及び「1つの(an)」は、「1つ以上の」を意味し、文脈が不適正でない限り、複数形を含む。
【0018】
投与が企図される「対象」としては、ヒト(すなわち、任意の年齢群の雄または雌、例えば、小児対象(例えば、乳児、小児、青年)または成人対象(例えば、若年成人、中年成人、または高齢成人))及び/または非ヒト動物、例えば、霊長類(例えば、カニクイザル、アカゲザル)、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、齧歯類、ネコ、及び/またはイヌなどの哺乳動物が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、対象は、ヒトである。特定の実施形態では、対象は、非ヒト動物である。
【0019】
疾患、障害、及び状態は、本明細書において互換的に使用される。いくつかの実施形態では、疾患は、がんである。いくつかの実施形態では、疾患は、有糸分裂紡錘体の機能の干渉によって引き起こされる。一実施形態では、疾患は、アポトーシスによって引き起こされる。一実施形態では、疾患は、有糸分裂期細胞死によって引き起こされる。
【0020】
概して、化合物の「有効量」とは、所望の生物学的応答を誘発するのに十分な量を指す。当業者には理解されるであろう通り、本発明の化合物の有効量は、所望の生物学的エンドポイント、化合物の薬物動態、治療される疾患、投与様式、ならびに対象の年齢、健康、及び状態などの要因に応じて変化し得る。
【0021】
本明細書で使用される場合、「治療する」または「治療」という用語は、対象、例えば、患者への化合物の適用もしくは投与、またはがんなどの疾患を有する対象、例えば、患者からの単離された組織もしくは細胞、例えば、細胞株への化合物の適用もしくは投与として定義される。
【0022】
本明細書で使用される場合、障害を治療するのに有効な化合物の量、または「治療有効量」とは、対象に単一もしくは複数用量を投与する際に、細胞を治療する際に、またはかかる治療の非在下で予想を超える障害を有する対象を治癒、軽減、緩和、もしくは改善する際に有効な化合物の量を指す。
【0023】
本明細書で使用される「アセチルコリノリン」という用語は、以下の構造:
の化合物、またはその薬学的に許容される塩を指す。アセチルコリノリンのCAS登録番号は、18797-80-3である。アセチルコリノリンの他の名称には、アセチルコリノリン(P)、(5bR,6S,12bR)-5b,6,7,12b,13,14-ヘキサヒドロ-5b,13-ジメチル-[1,3]ベンゾジオキソロ[5,6-c]-1,3-ジオキソロ[4,5-i]フェナントリジン-6-オール6-アセテート、コリノリンアセテート、O-アセチルコリノリン、[1,3]ベンゾジオキソロ[5,6-c]-1,3-ジオキソロ[4,5-i]フェナントリジン-6-オール,5b,6,7,12b,13,14-ヘキサヒドロ-5b,13-ジメチル-、及び6-アセテート,(5bR,6S,12bR)-が含まれるが、これらに限定されない。
【0024】
本明細書で使用される「コリノリン」という用語は、以下の構造:
の化合物、またはその薬学的に許容される塩を指す。コリノリンのCAS登録番号は、18797-79-0である。コリノリンの他の名称には、[1,3]ベンゾジオキソロ[5,6-c]-1,3-ジオキソロ[4,5-i]フェナントリジン-6-オール,5b,6,7,12b,13,14-ヘキサヒドロ-5b,13-、ジメチル-、(5bR,6S,12bR)-、(5bR)-5bα,13-ジメチル-5bα,6,7,12bα,13,14-ヘキサヒドロ[1,3]ベンゾジオキソロ[5,6-c]-1,3-ジオキソロ[4,5-i]フェナントリジン-6β-オール,13-メチルケリドナン-11β-オール、及びコリノライン(P)が含まれるが、これらに限定されない。
【0025】
本明細書で使用される「ケリドニン」という用語は、以下の構造:
の化合物、またはその薬学的に許容される塩を指す。ケリドニンのCAS登録番号は、476-32-4である。ケリドニンの他の名称には、5bR,6S,7,12bS,13,14-ヘキサヒドロ-13-メチル-[1,3]ベンゾジオキソロ[5,6-c]-1,3-ジオキソロ[4,5-i]フェナントリジン-6-オール、ケリドニン、ヘリドニン、ケリドニン、スチロホリン、スチロホリン、スチロホロン、及びケリドニンが含まれるが、これらに限定されない。
【0026】
本明細書で使用される「プロトピン」という用語は、以下の構造:
の化合物、またはその薬学的に許容される塩を指す。プロトピンのCAS登録番号は、6164-47-2である。プロトピンの他の名称には、7-メチル-6,8,9,16-テトラヒドロビス[1,3]ベンゾジオキソロ[4,5-c:5’,6’-g]アゼシン-15(7H)-オン、4,6,7,14-テトラヒドロ-5-メチル-ビス(1,3)ベンゾジオキソロ(4,5-c-5’,6’-g)アゼシン-13(5h)-オン、コリジニン(Corydinine)、フマリン、ビフロリン(Biflorine)、及びマケリン(Macleyine)が含まれるが、これらに限定されない。
【0027】
本明細書で使用される「オキソ」という用語は、ラジカル=Oを指す。
【0028】
「薬学的に許容される」とは、連邦の規制当局、州政府、もしくは米国以外の国の対応する機関によって承認されたもしくは承認可能である、または動物、より詳細にはヒトで使用するために米国薬局方もしくは他の一般に認められている薬局方に列挙されることを意味する。
【0029】
「薬学的に許容される塩」は、薬学的に許容され、かつ親化合物の所望の薬理活性を有する、本発明の化合物の塩を指す。特に、かかる塩は、無毒であり、無機または有機酸付加塩及び塩基付加塩であり得る。詳細には、かかる塩には、(1)塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸で形成されるか、または酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタン-ジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4-メチルビシクロ[2.2.2]-オクタ-2-エン-1-カルボン酸、グルコヘプトン酸、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、第三級ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸などの有機酸で形成される、酸付加塩;あるいは(2)親化合物に存在する酸性プロトンが金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、またはアルミニウムイオンで置換されるか、またはエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルグルカミンなどの有機塩基と配位される場合に形成される塩が含まれる。塩には、ほんの一例として、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、テトラアルキルアンモニウムなど、化合物が塩基性官能基を含む場合、ヒドロクロライド、ヒドロブロミド、タータラート、メシレート、アセテート、マレアート、オキサラートなどの非毒性有機酸または無機酸の塩がさらに含まれる。「薬学的に許容されるカチオン」という用語は、酸性官能基の許容されるカチオン性対イオンを指す。かかるカチオンは、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、テトラアルキルアンモニウムカチオンなどによって例示される。例えば、Berge,et al.,J.Pharm.Sci.(1977)66(1):1-79を参照されたい。
【0030】
「プロドラッグ」という用語は、生理学的条件下において、本発明の治療的に活性な剤に変換される化合物を包含することを意図する。プロドラッグを作製するための一般的な方法は、生理学的条件下で加水分解され、所望の分子を曝露する選択された部分を含むことである。他の実施形態では、プロドラッグは、対象の酵素活性によって変換される。
【0031】
「溶媒和物」は、典型的には溶媒分解反応によって、溶媒または水(「水和物」とも称される)と会合する化合物の形態を指す。この物理的会合には水素結合が含まれる。従来の溶媒には、水、エタノール、酢酸などが含まれる。本発明の化合物は、例えば、結晶形態で調製され得、溶媒和または水和され得る。好適な溶媒和物には、水和物などの薬学的に許容される溶媒和物が含まれ、化学量論溶媒和物及び非化学量論溶媒和物の両方がさらに含まれる。特定の事例では、溶媒和物は、例えば1つ以上の溶媒分子が結晶固体の結晶格子に組み込まれる場合に単離することができる。「溶媒和物」は、溶液相及び単離可能な溶媒和物の両方を包含する。代表的な溶媒和物には、水和物、エタノラート、及びメタノラートが含まれる。
【0032】
「立体異性体」:また、同じ分子式を有するが、それらの原子の結合の性質もしくは配列、または空間におけるそれらの原子の配置が異なる化合物は、「異性体」と称されることも理解されたい。空間におけるそれらの原子の配置が異なる異性体は、「立体異性体」と称される。互いに鏡像でない立体異性体は、「ジアステレオマー」と称され、互いに重ねることができない鏡像である立体異性体は、「エナンチオマー」と称される。化合物が不斉中心を有する場合、例えば、それは4つの異なる基に結合し、一対のエナンチオマーが可能となる。エナンチオマーは、その不斉中心の絶対配置によって特徴付けられ得、Cahn及びPrelogのR-及びS-配列決定規則によって、または分子が偏光の平面を回転させ、右旋性または左旋性として指定される(すなわち、それぞれ、(+)または(-)異性体として)方法によって説明される。キラル化合物は、個々のエナンチオマーとして、またはそれらの混合物として存在することができる。等比率のエナンチオマーを含む混合物は、「ラセミ混合物」と呼ばれる。
【0033】
「互変異性体」は、特定の化合物構造の交換可能な形態であり、水素原子及び電子の置換で変化する化合物を指す。したがって、2つの構造は、π電子及び原子(通常はH)の移動を通じて平衡状態にあり得る。例えば、エノール及びケトンは、酸または塩基のいずれかでの処理によって急速に相互変換されるため、互変異性体である。互変異性の別の例は、同様に酸または塩基での処理によって形成されるフェニルニトロメタンのアシ及びニトロ形態である。互変異性形態は、目的の化合物の最適な化学反応性及び生物活性の達成に関連し得る。
【0034】
投与が企図される「対象」としては、ヒト(すなわち、任意の年齢群の雄または雌、例えば、小児対象(例えば、乳児、小児、青年)または成人対象(例えば、若年成人、中年成人、または高齢成人))及び/または非ヒト動物、例えば、霊長類(例えば、カニクイザル、アカゲザル)、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、齧歯類、ネコ、及び/またはイヌなどの哺乳動物が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、対象は、ヒトである。特定の実施形態では、対象は、非ヒト動物である。「ヒト」、「患者」、及び「対象」という用語は、本明細書において互換的に使用される。
【0035】
本明細書で使用される場合、別途指定されない限り、用語「治療する」、「治療すること」、及び「治療」は、対象が特定の疾患、障害、または状態に罹患している間に生じる、疾患、障害、もしくは状態の重症度を低減させるか、あるいは疾患、障害、もしくは状態の進行を妨害または遅延させる作用(「治療的処置」)、さらに対象が特定の疾患、障害、または状態に罹患し始める前に生じる作用(「予防的処置」)も企図する。
【0036】
本明細書で使用される「有糸分裂制御因子」という用語は、例えば、有糸分裂細胞周期を制御するように作用する化合物を指す。有糸分裂制御因子は、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、神経膠芽細胞腫、頭頸部癌、肺癌、肝臓癌、メラノーマ、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、肉腫、腎癌、結腸直腸癌、胃癌、神経芽細胞腫、扁平上皮癌、または急性骨髄性白血病(AML)を含むが、これらに限定されないがんなどの障害の治療に使用することができる。特定の実施形態では、有糸分裂制御因子が治療することができるがんなどの障害は、B細胞リンパ腫またはT細胞リンパ腫などの非ホジキンリンパ腫である。特定の実施形態では、非ホジキンリンパ腫は、B細胞リンパ腫であり、例えば、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、原発性縦隔B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫、節外辺縁帯B細胞リンパ腫、節性辺縁帯B細胞リンパ腫、脾辺縁帯B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、有毛細胞白血病、または原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫である。特定の他の実施形態では、非ホジキンリンパ腫は、前駆Tリンパ芽球性リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、結節外ナチュラルキラー/T細胞リンパ腫、腸疾患型T細胞リンパ腫、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、または末梢T細胞リンパ腫などのT細胞リンパ腫である。
【0037】
いくつかの実施形態では、有糸分裂制御因子は、高い増殖指数を有するがんの治療に使用される。高い増殖割合は、例えば、限定されないが、組織または細胞のKi67染色などの当技術分野で即知の方法によって決定される。
【0038】
特定の実施形態では、有糸分裂制御因子は、MYCを発現するがんの治療に使用される。MYCは、例えば、多発性骨髄腫において頻繁に調節不全である。MYCは、結腸癌において異常に頻繁に活性化される。加えて、MYCは、卵巣癌、乳癌、扁平上皮癌、小細胞肺癌、及び神経芽腫を含むが、これらに限定されない、約14%のがんにおいて増幅される(Kalkat et al.,Genes(2017)8(6):151))。特定の実施形態では、治療されるがんは、乳癌及び/または肺癌である。特定の実施形態では、治療されるがんは、乳癌である。特定の実施形態では、治療されるがんは、肺癌である。
【0039】
特定の実施形態では、有糸分裂制御因子は、異常なBCL-2発現及び/または活性化を伴うがんの治療のために使用される。
【0040】
特定の実施形態では、有糸分裂制御因子は、例えば、限定されないが、Castelman病、家族性大腸腺腫症、母斑、原発性硬化性胆管炎、ヒトパピローマウイルス感染症による傷害、及び骨髄増殖性障害などの増殖性障害の治療に使用される。
【0041】
化学的定義
特定の官能基及び化学用語の定義は、以下により詳細に記載される。化学元素は、元素周期表、CAS版、Handbook of Chemistry and Physics,75th Ed内表紙に従って識別され、特定の官能基は概して、その中に記載されるように定義される。加えて、有機化学の一般的な原理、ならびに特定の機能部分及び反応性は、Thomas Sorrell,Organic Chemistry,University Science Books,Sausalito,1999、Smith and March,March’s Advanced Organic Chemistry,5th Edition,John Wiley & Sons,Inc.,New York,2001、Larock,Comprehensive Organic Transformations,VCH Publishers,Inc.,New York,1989、及びCarruthers,Some Modern Methods of Organic Synthesis,3rd Edition,Cambridge University Press,Cambridge,1987に記載される。
【0042】
化合物
一態様では、本明細書で提供されるのは、式Iの化合物であり、
式中、‐‐‐が、非結合または単結合を示し、Rが、Hであり、Rが、-OH及び-OC(O)CHから選択され、またはR及びRが一緒になって、それらが結合する炭素と一緒にオキソを形成し、Rが、H及びCHから選択され、Rが、Hまたは非存在であり、Rが、Hまたは非存在であり、nが、0及び1から選択され、mが、0及び1から選択され、かつ但し、‐‐‐が非結合を示す場合、R及びRの両方がHであり、‐‐‐が単結合を示す場合、R及びRの両方が非存在であり、nが0である場合、R及びRが一緒になってオキソを形成し、RがHであり、R及びRの両方がHであり、‐‐‐が非結合であり、mが1である、薬学的組成物である。
【0043】
いくつかの実施形態では、‐‐‐は、単結合である。
【0044】
いくつかの実施形態では、‐‐‐は、非結合である。
【0045】
いくつかの実施形態では、Rは、-OHである。
【0046】
いくつかの実施形態では、Rは、-OC(O)CHである。
【0047】
いくつかの実施形態では、R及びRが一緒になって、それらが結合する炭素と一緒にオキソを形成する。
【0048】
いくつかの実施形態では、Rは、Hである。
【0049】
いくつかの実施形態では、Rは、CHである。
【0050】
いくつかの実施形態では、Rは、Hである。
【0051】
いくつかの実施形態では、Rは、非存在である。
【0052】
いくつかの実施形態では、Rは、Hである。
【0053】
いくつかの実施形態では、Rは、非存在である。
【0054】
いくつかの実施形態では、nは、0である。
【0055】
いくつかの実施形態では、nは、1である。
【0056】
いくつかの実施形態では、mは、0である。
【0057】
いくつかの実施形態では、mは、1である。
【0058】
いくつかの実施形態では、RはHであり、Rは-OHであり、RはCHであり、‐‐‐は単結合であり、nは1であり、mは0である。
【0059】
いくつかの実施形態では、RはHであり、Rは-OC(O)CHであり、RはCHであり、‐‐‐は単結合であり、nは1であり、mは0である。
【0060】
いくつかの実施形態では、RはHであり、Rは-OHであり、RはHであり、‐‐‐は単結合であり、nは1であり、mは0である。
【0061】
いくつかの実施形態では、nが0であり、R及びRが一緒になってオキソを形成し、RがHであり、R及びRの両方がHであり、‐‐‐が非結合であり、mが1である。
【0062】
いくつかの態様では、化合物は
である。
【0063】
いくつかの他の態様では、化合物は
である。
【0064】
いくつかの他の態様では、化合物は
である。
【0065】
いくつかの他の態様では、化合物は
である。
【0066】
一実施形態では、化合物は、コリダリス・ロンジカルカラタの根茎から単離及び精製される。一実施形態では、化合物は、有糸分裂阻害物質である。
【0067】
実施形態では、化合物は、細胞分裂に対する多面的効果を通して抗有糸分裂活性を促進する。いくつかの実施形態では、多面的効果は、細胞分裂の構成、染色体整列の防止、紡錘体チェックポイント応答不全、及び細胞質分裂の遮断を含む。
【0068】
一態様では、本明細書に記載の化合物(例えば、式Iの化合物)またはその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的組成物が、本明細書に提供される。特定の実施形態では、本発明の化合物は、薬学的組成物中の有効量で提供される。特定の実施形態では、本発明の化合物は、治療有効量で提供される。特定の実施形態では、本発明の化合物は、予防有効量で提供される。
【0069】
一態様では、本明細書で提供されるのは、本明細書に記載の化合物(例えば、式Iの化合物)の薬学的に許容される塩である。
【0070】
特定の実施形態では、化合物は、経口、皮下、静脈内、または筋肉内投与される。特定の実施形態では、化合物は、経口投与される。特定の実施形態では、化合物は、慢性的に投与される。特定の実施形態では、化合物は、例えば、連続静脈内注入によって連続的に投与される。
【0071】
使用方法及び治療
本明細書に記載の本発明の化合物は、特定の実施形態では、有糸分裂制御因子として作用し、例えば、正または負の方法のいずれかで有糸分裂をもたらす。有糸分裂の制御因子として、かかる化合物はがんを治療すると予想される。
【0072】
いくつかの態様では、本開示の化合物は、有糸分裂制御因子として腫瘍機能を抑制する。
【0073】
一態様では、本明細書に記載されるのは、それを必要とする対象においてがんを治療する方法であって、それを必要とする対象に、有効量の本明細書に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法である。
【0074】
本明細書に記載の化合物は、疾患または障害の治療において、それを必要とする患者において有糸分裂制御因子として作用することができる。疾患または障害は、例えば、がんであり得る。他の態様では、本明細書に記載の化合物は、腫瘍、例えば、固形腫瘍を治療することができる。他の態様では、本明細書に記載の化合物は、腫瘍、例えば、液体腫瘍を治療することができる。
【0075】
本明細書で提供されるのは、それを必要とする対象においてがんを治療する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の式Iの化合物を投与することを含み、
式中、‐‐‐が、非結合または単結合を示し、Rが、Hであり、Rが、-OH及び-OC(O)CHから選択され、またはR及びRが一緒になって、それらが結合する炭素と一緒にオキソを形成し、Rが、H及びCHから選択され、Rが、Hまたは非存在であり、Rが、Hまたは非存在であり、nが、0及び1から選択され、mが、0及び1から選択され、かつ但し、‐‐‐が非結合を示す場合、R及びRの両方がHであり、‐‐‐が単結合を示す場合、R及びRの両方が非存在であり、nが0である場合、R及びRが一緒になってオキソを形成し、RがHであり、R及びRの両方がHであり、‐‐‐が非結合であり、mが1である、方法である。
【0076】
いくつかの実施形態では、がんが、卵巣癌、肺癌、胃癌、乳癌、肝癌、膵臓癌、皮膚癌、悪性黒色腫、頭頸部癌、肉腫、胆管癌、膀胱癌、腎臓癌、結腸癌、小腸癌、精巣胎児性5癌、胎盤絨毛癌、子宮頸癌、精巣癌、子宮癌、胚細胞性腫瘍、及びそれらの転移性形態からなる群から選択される。
【0077】
本明細書でさらに提供されるのは、対象において腫瘍細胞アポトーシスを誘導する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の式Iの化合物を投与することを含み、
式中、‐‐‐が、非結合または単結合を示し、Rが、Hであり、Rが、-OH及び-OC(O)CHから選択され、またはR及びRが一緒になって、それらが結合する炭素と一緒にオキソを形成し、Rが、H及びCHから選択され、Rが、Hまたは非存在であり、Rが、Hまたは非存在であり、nが、0及び1から選択され、mが、0及び1から選択され、かつ但し、‐‐‐が非結合を示す場合、R及びRの両方がHであり、‐‐‐が単結合を示す場合、R及びRの両方が非存在であり、nが0である場合、R及びRが一緒になってオキソを形成し、RがHであり、R及びRの両方がHであり、‐‐‐が非結合であり、mが1である、方法である。
【0078】
一実施形態では、本明細書で提供されるのは、対象の細胞における細胞有糸分裂を停止する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の式Iの化合物を投与することを含み、
式中、‐‐‐が、非結合または単結合を示し、Rが、Hであり、Rが、-OH及び-OC(O)CHから選択され、またはR及びRが一緒になって、それらが結合する炭素と一緒にオキソを形成し、Rが、H及びCHから選択され、Rが、Hまたは非存在であり、Rが、Hまたは非存在であり、nが、0及び1から選択され、mが、0及び1から選択され、かつ但し、‐‐‐が非結合を示す場合、R及びRの両方がHであり、‐‐‐が単結合を示す場合、R及びRの両方が非存在であり、nが0である場合、R及びRが一緒になってオキソを形成し、RがHであり、R及びRの両方がHであり、‐‐‐が非結合であり、mが1である、方法である。
【0079】
有糸分裂の中断
細胞周期は、細胞が成長して分裂する過程である。細胞周期は、間期(G1、S、及びG2期からなる)、及び有糸分裂の2つの期からなる。細胞がS期にその染色体を複製し、分裂するシグナルを受け取ると、それはG2を出て有糸分裂に入る。
【0080】
有糸分裂は、複製された染色体が2つの新しい核及び2つの娘細胞に分離される細胞周期の一部である。それは、前期、前中期、中期、後期、及び終期の5つの段階によって特徴付けられる。有糸分裂の間、複製された染色体は最初に凝縮され、続いて紡錘体繊維としても知られる動原体微小管による結合が行われる。紡錘体線維は、間期のG1期でそれ自体を複製した中心体に由来する。前中期の間、紡錘体繊維は、中心体から投影され、整列した染色体と接続する。α-及びβ-チューブリンを含む微小管は、細胞運動、細胞質輸送、及び染色体整列の制御など、有糸分裂のこれらの初期プロセスにおいて重要な役割を果たす。しかしながら、微小管が破壊されると、単極及び多極紡錘体が生成され、有有糸分裂期細胞死を引き起こすことになる。長期有糸分裂、または有糸分裂停止は、細胞アポトーシスをもたらす。
【0081】
当該技術分野で既知の微小管活性の阻害物質、例えば、タキソール及びノコダゾールは、がんの治療のための最も初期の化学療法剤のうちの1つである。タキソール(パクリタキセル)は、微小管を安定化し、分解を防止し、有糸分裂停止及び細胞アポトーシスをもたらす微小管阻害物質である。微小管の重合を破壊し、有糸分裂における処理細胞を停止させる微小管阻害物質であるノコダゾールは、生物学的研究、例えば、学術及び産業生物学実験室のベンチワークにおいても頻繁に使用される。本発明の阻害物質、コリノリンまたはアセチルコリノリンもまた、生物学的研究、例えば、学術及び産業生物学実験室のベンチワークにおいて使用することが企図される。
【0082】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、有糸分裂における中心体重複及び多極性紡錘体の形成を誘導することができる。
【0083】
別の実施形態では、本明細書で提供されるのは、それを必要とする対象において細胞の有糸分裂指数を調節する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の式Iの化合物を投与することを含み、
式中、‐‐‐が、非結合または単結合を示し、Rが、Hであり、Rが、-OH及び-OC(O)CHから選択され、またはR及びRが一緒になって、それらが結合する炭素と一緒にオキソを形成し、Rが、H及びCHから選択され、Rが、Hまたは非存在であり、Rが、Hまたは非存在であり、nが、0及び1から選択され、mが、0及び1から選択され、かつ但し、‐‐‐が非結合を示す場合、R及びRの両方がHであり、‐‐‐が単結合を示す場合、R及びRの両方が非存在であり、nが0である場合、R及びRが一緒になってオキソを形成し、RがHであり、R及びRの両方がHであり、‐‐‐が非結合であり、mが1である、方法である。
【0084】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、有糸分裂制御因子を調節する方法であって、有効量の式Iの化合物を投与することを含み、
式中、‐‐‐が、非結合または単結合を示し、Rが、Hであり、Rが、-OH及び-OC(O)CHから選択され、またはR及びRが一緒になって、それらが結合する炭素と一緒にオキソを形成し、Rが、H及びCHから選択され、Rが、Hまたは非存在であり、Rが、Hまたは非存在であり、nが、0及び1から選択され、mが、0及び1から選択され、かつ但し、‐‐‐が非結合を示す場合、R及びRの両方がHであり、‐‐‐が単結合を示す場合、R及びRの両方が非存在であり、nが0である場合、R及びRが一緒になってオキソを形成し、RがHであり、R及びRの両方がHであり、‐‐‐が非結合であり、mが1である、方法である。
【0085】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、腫瘍細胞成長を阻害するための方法であって、有効量の式Iの化合物を投与することを含み、
式中、‐‐‐が、非結合または単結合を示し、Rが、Hであり、Rが、-OH及び-OC(O)CHから選択され、またはR及びRが一緒になって、それらが結合する炭素と一緒にオキソを形成し、Rが、H及びCHから選択され、Rが、Hまたは非存在であり、Rが、Hまたは非存在であり、nが、0及び1から選択され、mが、0及び1から選択され、かつ但し、‐‐‐が非結合を示す場合、R及びRの両方がHであり、‐‐‐が単結合を示す場合、R及びRの両方が非存在であり、nが0である場合、R及びRが一緒になってオキソを形成し、RがHであり、R及びRの両方がHであり、‐‐‐が非結合であり、mが1である、方法である。
【0086】
いくつかの実施形態では、‐‐‐は、単結合である。いくつかの実施形態では、‐‐‐は、非結合である。いくつかの実施形態では、Rは、-OHである。いくつかの実施形態では、Rは、-OC(O)CHである。いくつかの実施形態では、R及びRが一緒になって、それらが結合する炭素と一緒にオキソを形成する。いくつかの実施形態では、Rは、Hである。いくつかの実施形態では、Rは、CHである。いくつかの実施形態では、Rは、Hである。いくつかの実施形態では、Rは、非存在である。いくつかの実施形態では、Rは、Hである。いくつかの実施形態では、Rは、非存在である。いくつかの実施形態では、nは、0である。いくつかの実施形態では、nは、1である。いくつかの実施形態では、mは、0である。いくつかの実施形態では、mは、1である。いくつかの実施形態では、RはHであり、Rは-OHであり、RはCHであり、‐‐‐は単結合であり、nは1であり、mは0である。いくつかの実施形態では、RはHであり、Rは-OC(O)CHであり、RはCHであり、‐‐‐は単結合であり、nは1であり、mは0である。いくつかの実施形態では、RはHであり、Rは-OHであり、RはHであり、‐‐‐は単結合であり、nは1であり、mは0である。いくつかの実施形態では、nが0であり、R及びRが一緒になってオキソを形成し、RがHであり、R及びRの両方がHであり、‐‐‐が非結合であり、mが1である。
【0087】
一実施形態では、化合物は、コリダリス・ロンジカルカラタの根茎から単離及び精製される。一実施形態では、化合物は、有糸分裂阻害物質である。
【0088】
実施形態では、化合物は、細胞分裂に対する多面的効果を通して抗有糸分裂活性を促進する。いくつかの実施形態では、多面的効果は、細胞分裂の欠損、染色体整列の防止、紡錘体チェックポイント応答不全、及び細胞質分裂の遮断を含む。いくつかの実施形態では、化合物は、多核細胞の形成を促進する。理論に拘束されることを望むものではないが、本開示の化合物の投与は、i)多極性有糸分裂紡錘体を形成する初期有糸分裂における過剰中心体の形成をもたらし、長期的な有糸分裂停止及びその後のアポトーシスをもたらすこと、ii)細胞質分裂の遮断をもたらすことで、有糸分裂期細胞死後にアポトーシスを受けるか、または老化状態に入り、腫瘍成長及び/または進行を阻害する多核及び多倍体細胞の蓄積をもたらすことが仮定される。
【0089】
実施形態では、方法は、化学療法である。いくつかの実施形態では、投与は、別のがん療法と組み合わせて実施される。
【0090】
いくつかの実施形態では、本発明で提供されるのは、がんを治療する方法であって、かかる治療を必要とする対象に、アポトーシスを誘導するのに十分な量、及び/またはがん細胞の細胞成長を阻害するのに十分な量、すなわち治療有効量のコリノリン、アセチルコリノリン、ケリドニン、またはプロトピンを投与することを含む、方法である。
【0091】
薬学的組成物
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、腫瘍細胞成長を阻害するための薬学的組成物であって、有効量の式Iの化合物を含み、
式中、‐‐‐が、非結合または単結合を示し、Rが、Hであり、Rが、-OH及び-OC(O)CHから選択され、またはR及びRが一緒になって、それらが結合する炭素と一緒にオキソを形成し、Rが、H及びCHから選択され、Rが、Hまたは非存在であり、Rが、Hまたは非存在であり、nが、0及び1から選択され、mが、0及び1から選択され、かつ但し、‐‐‐が非結合を示す場合、R及びRの両方がHであり、‐‐‐が単結合を示す場合、R及びRの両方が非存在であり、nが0である場合、R及びRが一緒になってオキソを形成し、RがHであり、R及びRの両方がHであり、‐‐‐が非結合であり、mが1である、薬学的組成物である。
【0092】
いくつかの実施形態では、‐‐‐は、単結合である。いくつかの実施形態では、‐‐‐は、非結合である。いくつかの実施形態では、Rは、-OHである。いくつかの実施形態では、Rは、-OC(O)CHである。いくつかの実施形態では、R及びRが一緒になって、それらが結合する炭素と一緒にオキソを形成する。いくつかの実施形態では、Rは、Hである。いくつかの実施形態では、Rは、CHである。いくつかの実施形態では、Rは、Hである。いくつかの実施形態では、Rは、非存在である。いくつかの実施形態では、Rは、Hである。いくつかの実施形態では、Rは、非存在である。いくつかの実施形態では、nは、0である。いくつかの実施形態では、nは、1である。いくつかの実施形態では、mは、0である。いくつかの実施形態では、mは、1である。いくつかの実施形態では、RはHであり、Rは-OHであり、RはCHであり、‐‐‐は単結合であり、nは1であり、mは0である。いくつかの実施形態では、RはHであり、Rは-OC(O)CHであり、RはCHであり、‐‐‐は単結合であり、nは1であり、mは0である。いくつかの実施形態では、RはHであり、Rは-OHであり、RはHであり、‐‐‐は単結合であり、nは1であり、mは0である。いくつかの実施形態では、nが0であり、R及びRが一緒になってオキソを形成し、RがHであり、R及びRの両方がHであり、‐‐‐が非結合であり、mが1である。
【0093】
一実施形態では、腫瘍細胞が、肝細胞腫細胞、食道癌細胞、頸部腺癌細胞、膵臓癌細胞、及び白血病細胞からなる群から選択される。別の実施形態では、化合物は、コリダリス・ロンジカルカラタの根茎から単離及び精製される。いくつかの実施形態では、化合物は、有糸分裂阻害物質である。いくつかの実施形態では、化合物は、細胞分裂に対する多面的効果を通して抗有糸分裂活性を促進する。一実施形態では、多面的効果は、細胞分裂不全、染色体整列の防止、紡錘体チェックポイント応答不全、及び細胞質分裂の遮断を含む。
【0094】
本明細書でさらに提供されるのは、がん細胞におけるアポトーシスを誘発するための組成物であって、コリノリン、アセチルコリノリン、ケリドニン、またはプロトピンを含む、組成物である。
【0095】
併用療法
本発明の別の態様は、併用療法を提供する。本明細書に記載される有糸分裂制御因子として機能し得る化合物は、がんを治療するための追加の治療剤と併用され得る。
【0096】
がんの治療における併用療法の一部として使用することができる例示的な治療剤には、例えば、放射線、マイトマイシン、トレチノイン、リボムスチン、ゲムシタビン、ビンクリスチン、エトポシド、クラドリビン、ミトブロニトール、メトトレキサート、ドキソルビシン、カルボコン、ペントスタチン、ニトラクリン、ジノスタチン、セトロレリクス、レトロゾール、ラルチトレキセド、ダウノルビシン、ファドロゾール、フォテムスチン、チマルファシン、ソブゾキサン、ネダプラチン、シタラビン、ビカルタミド、ビノレルビン、ベスナリノン、アミノグルテチミド、アムサクリン、プログルミド、エリプチニウムアセテート、ケタンセリン、ドキシフルリジン、エトレチナート、イソトレチノイン、ストレプトゾシン、ニムスチン、ビンデシン、フルタミド、ドロゲニル、ブトシン、カルモフール、ラゾキサン、シゾフィラン、カルボプラチン、ミトラクトール、テガフール、イホスファミド、プレドニムスチン、ピシバニール、レバミゾール、テニポシド、インプロスルファン、エノシタビン、リスリド、オキシメトロン、タモキシフェン、プロゲステロン、メピチオスタン、エピチオスタノール、フォルメスタン、インターフェロンアルファ、インターフェロン2アルファ、インターフェロンベータ、インターフェロンガンマ(IFN-γ)、コロニー刺激因子-1、コロニー刺激因子-2、デニロイキンジフチトックス、インターロイキン-2、黄体形成ホルモン放出因子、及び同族受容体との異なる結合、または血清半減期の増加もしくは減少を示し得る前述の剤のバリエーションが含まれる。
【0097】
加えて、免疫チェックポイント阻害物質は、がんの治療において本開示の化合物と併用することができる。例示的な免疫チェックポイント阻害物質には、(i)細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA4)、(ii)プログラム細胞死タンパク質1(PD1)、(iii)PDL1、(iv)LAG3、(v)B7-H3、(vi)B7-H4、及び(vii)TIM3のうちの1つ以上を阻害する剤が含まれる。例えば、CTLA4阻害物質イピリムマブ、またはPD1/PD-L1阻害物質ペムブロリズマブは、本開示の化合物と組み合わせて使用され得る。
【0098】
これらに限定されないが、シグナル伝達阻害物質(例えば、PI3K阻害物質、EGFR阻害物質など)、血管新生阻害物質(例えば、VEGF阻害物質)、及びモノクローナル抗体(例えば、抗体-薬物複合体)などの標的化タンパク質阻害物質も、本開示の化合物と併用して使用することが企図される。特定の実施形態では、MYC阻害物質は、本開示の化合物と併用して使用される。
【0099】
いくつかの実施形態では、本開示の化合物は、外科的介入と併用され、異常な組織(例えば、腫瘍)は、それを必要とする対象から外科的に除去される。いくつかの実施形態では、腫瘍は、腫瘍及び/または周囲組織を切除するためにメスまたは他の鋭利なツールを使用して対象の体から切断される。いくつかの実施形態では、レーザーを使用して、異常な組織(例えば、腫瘍)を切断することができる。外科的介入は、除去される腫瘍の種類に応じて開腹手術または低侵襲手術を伴い得る。いくつかの実施形態では、外科的介入を使用して、腫瘍全体を排除し、腫瘍を低減させる、またはがん症状を減少することができる。本開示の化合物は、手術の前に投与することができる。本開示の化合物は、手術と同時に投与することができる。本開示の化合物は、手術の後に投与することができる。
【0100】
有糸分裂調節因子及び追加の治療剤の量、ならびに投与の相対的なタイミングは、所望の併用治療効果を達成するために選択され得る。例えば、かかる投与を必要とする患者に併用療法を施す場合、併用療法における治療剤、または治療剤を含む薬学的組成物は、例えば、連続して、同時発生的に、一緒に、同時になど、任意の順序で投与することができる。さらに、例えば、有糸分裂制御因子は、追加の治療剤(複数可)がその予防または治療効果を発揮する時間中に投与されてもよく、またはその逆もまた同様である。
【0101】
薬学的組成物
一態様では、本明細書に記載の化合物(例えば、式Iの化合物)またはその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的組成物が、本明細書に提供される。特定の実施形態では、本発明の化合物は、薬学的組成物中の有効量で提供される。特定の実施形態では、本発明の化合物は、治療有効量で提供される。特定の実施形態では、本発明の化合物は、予防有効量で提供される。
【0102】
特定の実施形態では、薬学的組成物は、有効量の活性成分を含む。特定の実施形態では、薬学的組成物は、治療有効量の活性成分を含む。特定の実施形態では、薬学的組成物は、予防有効量の活性成分を含む。
【0103】
本明細書で提供される薬学的組成物は、経口(経腸)投与、非経口(注入による)投与、直腸投与、経皮投与、皮内投与、髄腔内投与、皮下(SC)投与、静脈内(IV)投与、筋肉内(IM)投与、及び鼻腔内投与を含むがこれらに限定されない、様々な経路によって投与することができる。
【0104】
全体として、本明細書で提供される化合物は、有効量で投与される。実際に投与される化合物の量は、典型的には、治療される状態、選択される投与経路、実際に投与される化合物、個々の患者の年齢、体重、及び応答、患者の症状の重症度などを含む関連する状況を考慮して、医師によって決定される。
【0105】
本明細書で提供される化合物は、典型的には、医師の助言及び監督の下、上記の用量レベルで状態を発症するリスクのある対象に投与される。特定の状態を発症するリスクのある対象には、概して、その状態の家族歴を有する対象、または遺伝子検査もしくはスクリーニングによってその状態を発症しやすいと特定された対象が含まれる。
【0106】
本発明の薬学的組成物は、様々な投与方法を使用してさらに送達され得る。例えば、特定の実施形態では、薬学的組成物は、例えば、血液中の化合物の濃度を有効レベルに上昇させるために、ボーラスとして与えられ得る。ボーラス用量の配置は、全身にわたる所望の活性成分の全身的なレベルに依存し、例えば、筋肉内または皮下ボーラス用量は、活性成分のゆっくりとした放出を可能にし、一方、静脈に直接送達されるボーラス(例えば、IV点滴)は、血液中の活性成分の濃度を迅速に有効レベルまで上げる、はるかに速い送達を可能にする。他の実施形態では、薬学的組成物は、対象の体内の活性成分の定常状態濃度の維持を提供するために、例えば、IV点滴によって、連続注入として投与され得る。加えて、さらに他の実施形態では、薬学的組成物は、ボーラス用量として最初に投与され、続いて連続注入されてもよい。
【0107】
経口投与のための組成物は、バルク液体溶液もしくは懸濁液、またはバルク粉末の形態をとることができる。しかしながら、より一般的には、組成物は、正確な投与を容易にするために単位剤形で提示される。「単位剤形」という用語は、ヒト対象及び他の哺乳動物のための単位投与量として好適な物理的に別個の単位を指し、各単位が、好適な薬学的賦形剤と関連して、所望の治療効果がもたらされるように計算された所定の量の活性物質を含有する。典型的な単位剤形には、液体組成物の事前に充填され、事前に測定されたアンプルもしくはシリンジ、または固体組成物の場合のピル、錠剤、カプセルなどが含まれる。かかる組成物において、化合物は、通常、軽微な成分(約0.1~約50重量%、好ましくは約1~約40重量%)であり、残りは、所望の投与形態を形成するのに役立つ様々なビヒクルまたは賦形剤及び加工助剤である。
【0108】
経口投与では、1日あたり1~5回、特に2~4回、典型的には3回の経口投与が代表的なレジメンである。これらの投薬パターンを使用して、各用量は、約0.01~約20mg/kgの本発明で提供する化合物を提供し、好ましい用量は、それぞれ約0.1~約10mg/kg、特に約1~約5mg/kgを提供する。
【0109】
経皮用量は、概して、注入用量を使用して達成されるものよりも同様またはより低い血中レベルを提供するように選択され、概して、約0.01~約20重量%、好ましくは約0.1~約20重量%、好ましくは約0.1~約10重量%、より好ましくは約0.5~約15重量%の範囲の量である。
【0110】
注入用量レベルは、約0.1mg/kg/時間~少なくとも20mg/kg/時間、すべて約1~約120時間、特に24~96時間の範囲である。適切な定常状態レベルを達成するために、約0.1mg/kg~約10mg/kg以上の前負荷ボーラスを投与することもできる。最大総用量は、40~80kgのヒト患者の場合、約5g/日を超えることは予想されない。
【0111】
経口投与に好適な液体形態には、緩衝剤、懸濁剤、及び分配剤、着色剤、香味料などを含む好適な水性または非水性ビヒクルが含まれ得る。固体形態は、例えば、微結晶性セルロース、トラガカントガムまたはゼラチンなどの結合剤、デンプンまたはラクトースなどの賦形剤、アルギン酸、プリモゲル、またはコーンスターチなどの分解剤、ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤、ショ糖またはサッカリンなどの甘味料、またはペパーミント、サリチル酸メチル、オレンジ香料などの香料の成分、または類似の性質の化合物のいずれかが含まれ得る。
【0112】
注入可能な組成物は、典型的には、注入可能な滅菌生理食塩水もしくはリン酸緩衝生理食塩水、または当技術分野で即知である他の注入可能な賦形剤に基づく。前述のように、かかる組成物中の活性化合物は、典型的には、約0.05~10重量%であることが多く、残りは、注射可能な賦形剤などである。
【0113】
経皮組成物は典型的には、活性成分(複数可)を含有する局所軟膏またはクリームとして製剤化される。軟膏として製剤化される場合、活性成分は、典型的には、パラフィン性または水混和性の軟膏基剤のいずれかと組み合わせられる。あるいは、活性成分は、例えば水中油性クリーム系を含むクリーム中で製剤化され得る。かかる経皮製剤は、当該技術分野で周知であり、一般に、活性成分または製剤の安定性の皮膚浸透を高めるための追加の成分を含む。かかる既知の経皮製剤及び成分はすべて、本明細書に提供される範囲内に含まれる。
【0114】
本明細書に提供される化合物は、経皮デバイスによって投与することもできる。したがって、経皮投与は、リザーバまたは多孔質膜型のいずれか、または固体マトリックス種のパッチを使用して達成することができる。
【0115】
経口投与可能、注入可能、または局所投与可能な組成物のための上記の成分は、単に代表的なものである。他の材料、ならびに加工技術などは、Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th edition,1985,Mack Publishing Company,Easton,Pennsylvaniaのパート8に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0116】
本発明の化合物は、徐放性形態で、または徐放性薬物送達系から投与することもできる。代表的な徐放性材料の記載は、Remington’s Pharmaceutical Sciencesに見出すことができる。
【0117】
本発明はまた、本発明の化合物の薬学的に許容される酸付加塩に関する。薬学的に許容される塩を調製するために使用し得る酸は、非毒性酸付加塩、すなわち、ヒドロクロライド、ヒドロヨージド,ヒドロブロミド、ニトラート、サルフェート、ビスサルフェート、ホスフェート、アセテート、ラクテート、シトラート、タータラート、スクシナート、マレアート、フマラート、ベンゾエート、パラ-トルエンスルホネートなどの薬理学的に許容されるアニオンを含有する塩を形成するものである。
【0118】
別の態様では、本発明は、本発明の化合物及び薬学的に許容される賦形剤、例えば、静脈内(IV)投与などの注入に好適な組成物を含む薬学的組成物を提供する。
【0119】
薬学的に許容される賦形剤には、所望の特定の剤形、例えば、注入に好適な任意の及びすべての希釈剤または他の液体ビヒクル、分散剤または懸濁剤、界面活性剤、等張剤、保存剤、潤滑剤などが含まれる。薬学的組成物剤の製剤化及び/または製造における一般的な考慮事項は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Sixteenth Edition,E.W.Martin(Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1980)、及びRemington: The Science and Practice of Pharmacy,21st Edition(Lippincott Williams & Wilkins,2005)に見出すことができる。
【0120】
例えば、滅菌の注入可能な水性懸濁液などの注入可能な調製物は、好適な分散剤または湿潤剤及び懸濁剤を使用して、公知の技術に従って製剤化することができる。使用することができる例示的な賦形剤には、水、滅菌生理食塩水もしくはリン酸緩衝生理食塩水、またはリンゲル液が含まれるが、これらに限定されない。
【0121】
注入可能な組成物は、例えば、細菌保持フィルタを通して濾過することによって、または使用前に滅菌水もしくは他の注入可能な媒体に溶解もしくは分散させることができる滅菌固体組成物の形態で滅菌剤を組み込むことによって滅菌することができる。
【0122】
全体として、本明細書で提供される化合物は、有効量で投与される。実際に投与される化合物の量は、典型的には、治療される状態、選択される投与経路、実際に投与される化合物、個々の患者の年齢、体重、応答、患者の症状の重症度などを含む関連する状況を考慮して、医師によって決定される。
【0123】
前記組成物は、正確な投薬を容易にするために単位剤形で提示される。「単位剤形」という用語は、ヒト対象及び他の哺乳動物のための単位投与量として好適な物理的に別個の単位を指し、各単位が、好適な薬学的賦形剤と関連して、所望の治療効果がもたらされるように計算された所定の量の活性物質を含有する。典型的な単位剤形には、液体組成物の事前に充填され、事前に測定されたアンプルまたはシリンジが含まれる。かかる組成物において、化合物は、通常、軽微な成分(約0.1重量%~約50重量%、好ましくは約1重量%~約40重量%)であり、残りは、所望の投与形態を形成するのに役立つ様々なビヒクルまたは担体及び加工助剤である。
【0124】
本明細書で提供される化合物は、単独の活性剤として投与することができるか、または他の活性剤と組み合わせて投与することができる。一態様では、本発明は、本発明の化合物と、別の薬理学的に活性な剤との組み合わせを提供する。組み合わせた投与は、例えば、別々、連続、同時、及び交互の投与を含む、当業者に明らかな任意の技術によって進行することができる。
【0125】
本明細書で提供される薬学的組成物の記載は、主に、ヒトへの投与に好適な薬学的組成物を対象とするが、当業者であれば、かかる組成物が、一般に、あらゆる種類の動物への投与に好適であることを理解するであろう。種々の動物への投与に好適な組成物を作製するために、ヒトへの投与に好適な薬学的組成物の修飾が十分に理解されており、当業者は、通常の実験でかかる修飾を設計及び/または実施することができる。薬学的組成物の製剤及び/または製造における一般的な考慮事項は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy 21st ed.,Lippincott Williams & Wilkins,2005に見出すことができる。
【0126】
一態様では、式Iの化合物を含む組成物を含むキットが提供される。
【実施例
【0127】
本明細書に記載の発明をより完全に理解できるようにするために、以下の実施例を示す。本出願に記載される合成及び生物学的実施例は、本明細書に提供される化合物、薬学的組成物、及び方法を例示するために提供され、それらの範囲を制限するものとしていかなる形でも解釈されるべきではない。
【0128】
材料及び方法
植物材料:
コリダリス・ロンジカルカラタの根茎は、2018年4月に中国四川省都江堰の北西に位置する龍池国立森林公園から採集した。この起源植物は、中国北京のInstitute of Medicinal Plant Development、Peking Union Medical College、及びChinese Academy of Medical SciencesのLinfang Huang教授によってコリダリス・ロンジカルカラタとして認証された。証拠標本は、MBICR-0728の番号を割り当てられ、J.Michael Bishop Institute of Cancer Research(MBICR)の植物標本室に保管された。
【0129】
化学物質及び試薬:
コリノリン及びアセチルコリノリンの参照標準物質は、Chengdu Must Biotechnology Co.Ltd.(Sichuan,China)から購入した。これらの2つの天然化合物の純度は、分析的HPLCによって社内で検証されたように98%よりも高かった。シリカゲル(200~300メッシュ)及び抽出及び単離のために使用したすべての溶媒は、Chengdu Kelong Chemical Co.,Ltd(Sichuan,China)から得た。調製TLCプレート(シリカゲル、200mm×200mm×1mm)は、Yantai Xinnuo Co.Ltd.(Shangdong,China)から得た。すべてのHPLCグレード溶媒は、Fisher Scientific(Fisher Scientific,USA)から得、さらに精製することなく使用した。タキソール及びビネブラスチンはSigmaから購入した。脱イオン水は、Milli-Qシステム(Millipore,Bedford,MA,USA)を使用して精製した。
【0130】
細胞培養及び処理:
異所性MYC及びBcl-2発現によって形質転換された網膜色素上皮細胞(RPE-MBC細胞)は、以前に記載されており(例えば、Goga et al.,2007,Nat.Med.,13(7):820-827)、5%CO2で維持した加湿インキュベーター内で5%ウシ胎児血清を補充したDMEM中で培養した。生物活性画分のスクリーニングのために、細胞を96ウェルプレートで培養し、図の凡例に示した濃度の粗抽出物、部分精製画分、または純粋な化合物に曝露した。曝露は、倒立顕微鏡を使用した有糸分裂における停止、または蛍光顕微鏡法による4’,6’-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)染色後のDNA含有量の変化のいずれかについて、細胞の分析の前に24時間または48時間行った。
【0131】
RPEシリーズは、ヒト網膜色素上皮に由来し、次いで、不死化のためにhTERT発現構築物で安定にトランスフェクトした。次いで、得られた細胞株を操作して、MYC及びBCL2がん遺伝子を過剰発現させ、RPE MBC細胞株を生成した。この細胞株は、MYC及びBCL2を過剰発現するがん細胞を模倣し、細胞質分裂が防止されると、容易に生存可能な多倍体細胞を形成する。
【0132】
免疫蛍光染色:
免疫蛍光染色は、Serでリン酸化されたヒストン3に対するマウスモノクローナル抗体を用いたものであり、以前に記載されている10。細胞を6ウェルプレートのカバーガラス上で培養し、4%パラホルムアルデヒドで固定し、PBS中の0.3% Triton X-100で透過処理した。一次抗体を、Jackson ImmunoResearchから購入したTexas-Red複合二次抗体で検出した。免疫染色後、EVOS FL蛍光顕微鏡(ThermoFisher)を用いた蛍光の検出のために、4’,6’-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)含有ベクタシールド実装溶液(Vector Laboratories)を用いて、細胞を顕微鏡スライド上に実装した。
【0133】
化合物1及び2の抽出、単離、ならびに精製:
コリダリス・ロンジカルカラタからの試料を空気中で乾燥させ、切断し、電気グラインダで粉末に粉砕した。3キログラム(kg)の粉末を、超音波処理(40KHz)下、室温で0.5時間、次いで、超音波処理なしでさらに24時間、70%エタノールで抽出した。抽出手順を3回繰り返した。毎回混合物を濾過し、回転式蒸発器(N-1300,Tokoyo Rikakikai Co.Ltd)を用いて真空下で溶媒を蒸発させ、残留物を脱イオン水に溶解した後、石油エーテル(PE)及び酢酸エチル(EA)に対して連続的に分配して、それぞれPE(PE、8.5g)及びEA(EA、9.7g)相を得た。
【0134】
真空下で蒸発させた後、PE及びEA相をカラムクロマトグラフによって分離し、それぞれ30(PE1-30)及び25(EA1-25)の異なる画分を得た。このプロセス中、PE相をシリカゲルカラム(100g)に負荷し、石油エーテル-酢酸エチル溶液の段階的勾配(10:1、5:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4、0:1、v/v)で、手動で溶出して、30画分(PE1~30)を生成した。EA相を、シリカゲルフラッシュカラム(330g)上で低圧分取液体クロマトグラフ(SepaBeanTM Machine,Santai Technologies Inc.)に供した。溶出を60mL/分の流速で行い、以下の石油エーテル(A)-酢酸エチル(B)勾配を用いて25画分(EA1~25)を生成した:0~5分、0→5% B;5~20分、5→30% B;20~30分、30→50% B;30~60分、50→80% B;60~90分、80→100% B。
【0135】
次に、各画分に存在する抗有糸分裂活性をインビトロアッセイによってモニターした。PE相からの10画分及びEA相からの3画分は、12.5μg/mlの濃度でこれらのアッセイにおいて陽性であり、これらの画分を、分取シリカゲルTLCプレートを使用してさらに分離して、62PE及び22EAのさらなる純度の細画分を得た。分取TLCプレート(シリカゲル、200mm×200mm×1mm)(Yantai Xinnuo Co.Ltd)上で実施したTLC分析を、254及び365nmでUV光で調査した後、Dragendorffの試薬を噴霧した。
【0136】
62PE細画分のうちの8つ及び22EA細画分のうちの3つが、6.25μg/mlの濃度で有糸分裂における細胞を停止させるために陽性であることを試験し、それらの分析HPLCスペクトルがピーク番号1または2として指定された共有ピークを含むかに基づいて、2つの群のいずれかに分類した(HPLC: 1260 Infinity II LC System (Agilent);カラム:Waters Xbridge C18、4.6mm×250mm、5μm(Waters);移動相:A、0.2%酢酸-トリエチルアミン溶液(pH=5.0);B、アセトニトリル。0~5分、10% B;5~10分、10→20% B;10~70分、20→60% B;70~75分、60→10% B;75~90分、10% B;カラム温度:30°C;流速:1mL/分;注入体積:10μL)。
【0137】
これらの活性細画分を分離するためのさらなる分取HPLC(LC-20AP,Shimadzu Corp.)を、20mm× 250mm、5μmのShimadzu Shim-pack PRC-ODS C18カラム(移動相:A、0.2%酢酸-トリエチルアミン溶液(pH=5.0);B、アセトニトリル。0~5分、10% B;5~10分、10→20% B;10~70分、20→60% B;70~75分、60→10% B;75~90分、10% B;カラム温度:30°C;流速:18mL/分)上で実施し、これにより、それぞれピーク1及び2に対応する化合物1(18mg)及び化合物2(21mg)の精製が可能となった。
【0138】
化合物1及び2の物理化学的特性:
得られた化合物の構造を、1H及び13C NMRスペクトル、ESI MS、及びUV吸収スペクトルの分析によって決定した。すべての1H-NMR及び13C-NMRスペクトルを、1Hについては400MHz、13Cについては100MHzで動作するBruker AvanceIII 400MHz NMR上のCDCl3に記録した。化学シフトを百万分率(ppm)でδ値として記録し、内部標準としてテトラメチルシラン(0.00ppm)に正規化した。化学シフトの多重度は、s=一重項、d=二重項、t=三重項、q=四重項、及びm=多重項として報告した。カップリング定数(J)はHzで与えた。
【0139】
13C NMRスペクトルは、化合物1及び2のそれぞれ21及び23個の炭素原子を明らかにした。化合物2の1H NMRスペクトルは、化合物1のものとかなり類似している。化合物1についてのδ 1.15(3H,s)及び化合物2についてのδ 1.27(3H,s)における1H NMRにおける特定の化学シフトは、両方の化合物において三級メチルの存在を意味する。さらに、化合物1及び2の両方は、δ 2.23(3H)でのN-メチル一重項、δ 5.97、6.00(4H)での2つのメチレンジオキシ基に対する2つの二重項、δ 6.65、6.66(2H)での2つの芳香族一重項、及びδ 6.79、6.91(2H,J=8.3Hz)での典型的なAB四重項を示す。化合物2は、δ 1.86(3H,s)での1H NMR及びδ 169.7及び20.8での13C NMRでの追加の化学シフトを有する点で化合物1と異なり、-OCOCH3基の存在を示す。
【0140】
LC-MS分析を、Agilent 6120 Quadrupole LC/MS機器(Agilent Technologies)を使用して実施した。Waters Xbridge C18カラム(4.6mm×50mm、5μm)を使用した。移動相:A、水(0.01mol/L NH4HCO3)、B、アセトニトリル。勾配:Bを5%~100%まで1.6分間、100%を1.4分間保持する。カラム温度:40℃;流速:2ml/分;注入量:1μL。NMRデータ、及びMSスペクトル(m/z 3 68.2[M+H]+及び410.2[M+H]+)によって明らかにされた367及び409のそれらの分子量は、化合物1及び2の分子式を、それぞれC21H21NO5及びC23H23NO6として決定することにつながる。
【0141】
特徴的なUV吸収スペクトルをNanodrop(Thermo Fisher)で取得し、メタノールに溶解した両方の化合物について290nmで最大吸収ピークを示した。
【0142】
これらのデータを公開データ4、6及びPubChemデータベースと比較した結果、化合物1及び2は、それぞれコリノリン及びアセチルコリノリンであるという結論に至った。同一性を確認するための化合物1、2の比較分析を、分析用HPLCを用いて市販のコリノリン及びアセチルコリノリンに対して実施した。HPLC/NMRによって確認した純度は、精製化合物1及び2では87%以上、市販のコリノリン及びアセチルコリノリンでは97%以上であった。
【0143】
略称の一覧:
CREST 石灰沈着、レイノー現象、食道運動障害、手指硬化症、及び毛細血管拡張症。
DMSO ジメチルスルホキシド
DNA デオキシリボ核酸
DAPI 4’,6’-ジアミジノ-2-フェニルインドール
EA 酢酸エチル
HPLC 高速液体クロマトグラフィ
hTERT ヒトテロメラーゼ逆転写酵素
IC50 半分最大阻害濃度
MBC ヒト髄芽腫細胞
MPLC 中圧液体クロマトグラフィ
MTT 3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド
MYC 骨髄細胞腫症
NMR 核磁気共鳴
PE 石油エーテル
RPE 網膜色素上皮
TLC 薄層クロマトグラフィ
UV 紫外線
【0144】
実施例1.抗有糸分裂活性のための植物化学物質の同定及び評価
天然物ライブラリの表現型スクリーニングは、コリダリス・ロンジカルカラタ根茎における抗有糸分裂活性を同定した。細胞が「丸くなる」ことを、有糸分裂停止についての代理マーカーとして使用し、倒立組織培養顕微鏡を使用して容易にアッセイすることができた。2,000植物種からの17,000試料の粗抽出物ライブラリを、有糸分裂で細胞を停止させる能力について、形質転換RPE-MBC細胞を播種した96ウェルマイクロプレートで表現型的にスクリーニングした。有糸分裂停止は、細胞をライブラリに曝露してから24時間後に倒立組織培養顕微鏡で観察した細胞が丸くなることによって判断した。
【0145】
コリダリス・ロンジカルカラタ(#1779)の根茎から作製した1つの抽出物が陽性であることが同定し、再試験して、その後のアッセイで複数の抗有糸分裂活性を有することを確認した。これらには、紡錘体チェックポイント応答の最初の誘発、その後の抑制、有糸分裂における細胞の維持、及び最終的な倍数性の誘導が含まれた。細胞分裂でのこれらの多面的効果を発揮するコリダリス・ロンジカルカラタ根茎由来の生物活性成分(複数可)を調査するために追加の研究を行った。
【0146】
コリノリン及びアセチルコリノリンを、コリダリス・ロンジカルカラタから精製した。DAPI染色及びホスホヒストンH3 Ser10染色を実施し、免疫蛍光顕微鏡法により検査した。図1は、2つの化合物が、治療の24時間以内に有糸分裂を停止し、48時間で倍数性を誘導することができることを示す。
【0147】
実施例2.コリノリン及びアセチルコリノリンの化合物生物活性の分析
方法:
細胞を分割し、適切な培養培地に播種し、接着させた。18時間後、コリノリン及びアセチルコリノリンを以下から選択した細胞株に添加した。72時間または96時間でMTTを添加し、75時間または99時間でA570nmを記録した。濃度は0.02μM~40μMの範囲であった。タキソールを陽性対照として使用し、これはすべて試験細胞株において、0.02μM未満の既知のIC50値を有する。
【0148】
以下のRPE細胞株をこれらの試験に使用した:RPE NEO、RPE MBH、RPE MBC、RPE MA、RPE MP、RPE MI、及びRPE MYC Nick。このRPEシリーズは、ヒト網膜色素上皮に由来し、次いで、不死化のためにhTERT発現構築物で安定にトランスフェクトした。次いで、得られた細胞株を操作して、MYCがん遺伝子(RPE-MYC)またはネオマイシン選択マーカー遺伝子(RPE-NEO)を過剰発現させた。RPE-MYC細胞では、Myr-AKT、BCL2、ID1、PI3KE454kなどの様々な他のがん遺伝子をさらに個別に導入して、それぞれ細胞株RPE MA、RPE MBC、RPE MI、RPE MPを生成をした。対照として、H2BGFPをRPE-MYC細胞に導入して、RPE MBHを生成した。
【0149】
以下のRat1A細胞株をこれらの試験に使用した:Rat1A C、Rat1A MYC、Rat1A E2F1、及びRat1A E2F3。次いで、細胞株を対照(C)として、MYCがん遺伝子(Rat1A-MYC)を過剰発現するように、E2F1がん遺伝子(Rat1A-E2F1)を過剰発現するように、またはE2F3がん遺伝子(Rat1A-E2F3)を過剰発現するように操作した。
【0150】
幅広いがんサブタイプを表す以下のヒトがん細胞株をこれらの研究で使用した:Hela、C32、NCI-H23、HCT116 p53-/-、HCT116野生型、MDA-MB-175IV、MDA-MB-231、MDA-MB-435、MCF-7、A431、H460、TUWI、CaoV-3、T98G、及びHTB135。
【0151】
結果:
図9は、試験したすべての細胞株にわたるIC50値を示す。コリノリン及びアセチルコリノリンのIC50は、およそ1~31μMの範囲である。タキソールのIC50は陽性対照であり、大部分の細胞のIC50は<0.02μMである。コリノリン及びアセチルコリノリンは、異なるがん遺伝子の発現モデル細胞株(がん遺伝子発現RPE及びRat1A)に有意差はない。コリノリンのIC50は、すべての異なる細胞株でアセチルコリノリンよりも低く、コリノリンがアセチルコリノリンよりも優れた生物活性を有することを示唆している。2つの化合物は、1つの細胞株において異なるパターンを示す。RPE細胞株において、Mycがん遺伝子の過剰発現は、化合物間の差を減少させた。
【0152】
図2は、がん遺伝子を発現するRPE細胞株のIC50値を示す。図3は、ヒト細胞株のIC50値を示す。示されるように、アセチルコリノリンのIC50値の大部分は、1μM~31μMである。
【0153】
図11は、コリノリン及びアセチルコリノリンの両方についてのRPE細胞株のIC50値を示す。異なる発がん性因子の過剰発現後、コリノリン処理細胞のIC50は、RPE MAを除いてすべて減少した。加えて、アセチルコリノリン処理細胞のIC50は、RPE MA細胞株を除いて、RPE NEO対照と比較してすべて減少した。これらの発見は、アセチルコリノリンの感受性がMyr-AKT遺伝子の過剰発現によって影響を受けたことを示唆している。
【0154】
図12は、Rat1A細胞株のIC50値を示す。異なるがん遺伝子の過剰発現後、コリノリン処理後のIC50をRat1A MYC細胞株で増加させた。アセチルコリノリン処理細胞のIC50は、Rat1A Cと比較した場合にすべて低下し、アセチルコリノリン-コリノリンデータのIC50は、MYC、E2F1、またはE2F3の過剰発現によって低減した。
【0155】
図13は、ヒトがん細胞株のIC50値を示す。T98G神経膠芽腫細胞株を除いて、アセチルコリノリンのIC50値はコリノリンよりも高かった。
【0156】
実施例3.紡錘体極集合及び初期有糸分裂の分析
微小管集合、特に紡錘体極集合は、アセチルコリノリンでの処理によって改変された。RPE MBC細胞をアセチルコリノリンで処理し、ヒストンH3セリン10リン酸化(ヒストンH3ser10p、図4及び図5に赤で示した)、β-チューブリン(緑)、及びDNA(青)を免疫蛍光顕微鏡で分析した。ヒストンH3ser10Pを使用して、初期の有糸分裂(例えば、前中期または中期)にあった細胞を決定した。βチューブリンを使用して、細胞内の微小管の局在及び紡錘体集合を調査した。図4は、6時間の処理後のアセチルコリノリンの効果を示す。H3ser10P染色によって示されるように、多数の有糸分裂細胞が前中期に凝縮したDNAを伴って蓄積した。β-チューブリン染色は、単極紡錘体が形成されたため、双極紡錘体構築の失敗を示す。図5は、24時間の処理後のアセチルコリノリンの効果を示す。β-チューブリン染色は、単極紡錘体を形成する代わりに、処理を受けた細胞で多極紡錘体が形成されたことを明らかにした。アセチルコリノリンを48時間処理した後、アセチルコリノリンは倍数性を誘導し、細胞が最終的に細胞分裂(cytofission)を伴わずに有糸分裂から抜け出し、結果として倍数性を生じたことを示す。
【0157】
実施例4.CREST抗体を使用した有糸分裂動原体の分析
アセチルコリノリンで処理した後、CREST血清を用いた免疫蛍光分析のためにRPE MBC細胞を調製した(図6及び図7に赤で示した染色)。CREST抗体は、細胞内の動原体を特異的に認識し、アセチルコリノリンで処理した細胞において動原体の配置が乱されたことを示した。加えて、48時間でのDMSO対照群と比較して、倍数性は10μM及び20μMアセチルコリノリンの両方で誘導されたが、対照群の細胞は明らかな細胞異常を有さなかった。これらのデータに基づき、アセチルコリノリン処理は、微小管の安定化を損ない、細胞中心への染色体の会合を防止し、細胞分裂を阻害する。
【0158】
実施例5.タイムラプス顕微鏡による有糸分裂を介した進行の分析
タイムラプス顕微鏡を使用して、前期から開始して、アセチルコリノリン及びDMSO対照群で処理した細胞の有糸分裂を介した進行を比較した。静止画像を図8に示す。タイムラプス実験は、アセチルコリノリンが細胞質分裂の開始に影響しないが、しかしながら、アセチルコリノリンは細胞分裂を防止したことを示した。驚くべきことに、アセチルコリノリンで処理した細胞は、対照細胞と比較して、初期有糸分裂に3倍長く費やし、アセチルコリノリンが初期有糸分裂において細胞を停滞させることを示した。
【0159】
実施例6.コリダリス・ロンジカルカラタ根茎からの抗有糸分裂化合物の単離及び精製
コリダリス・ロンジカルカラタ根茎からの化合物の単離
分画研究の成功及び生物活性成分の最終的な同定は、単純な96ウェルプレートスクリーニングアッセイの研究前の設計によって支援された。細胞が有糸分裂に入り、停止すると、それらはプレート表面から脱離し、プログラム細胞死を受けている脱離細胞とは異なる、滑らかな表面膜を有する丸い細胞として現れる。単純な視覚スクリーニング法を使用して、数千の抽出物をアッセイした。コリダリス・ロンジカルカラタの他の部分で活性をアッセイしたが、根茎抽出物が実質的な活性を含むことが判明したことに留意されたい。これは、植物の他の部分と比較して、植物のこの部分が生物活性化合物を合成または保存する優位性を示し得る。有糸分裂を防止することができる生体活性成分を同定するために、3kgのコリダリス・ロンジカルカラタ根茎を再収集し、生物活性誘導抽出、単離、及び精製を行った。空気乾燥した粉末状材料を、超音波への曝露によって補助された70%のエタノールで抽出した。次いで、この液体を石油エーテル(PE)及び酢酸エチル(EA)で順次分画し、合計で55の異なる画分をMPLCにより得た。これらを再び抗有糸分裂活性についてアッセイし、活性を有する10 PE及び3 EA画分を見出した。いくつかの画分はより低い濃度で活性であったが、より高い濃度では活性ではなかった。これは、アッセイ転帰を変化させることができた不純物に起因すると考えられ、TLCを使用して生体活性画分をさらに精製することが求められた。62 PE及び22 EA TLC画分のうち、11の保持された有糸分裂活性が、6.25μg/mlの最低濃度でアッセイした96ウェルプレートアッセイにおいて見出された。次のステップとして、8陽性PEサブ画分及び3陽性EAサブ画分を用いて、分析HPLCを実施した。11サブ画分中の2つの共有ピークの存在が、少なくとも2つの天然化合物が生物学的スクリーニングアッセイにおける抗有糸分裂活性に関与していることを示した。
【0160】
化合物1及び2をそれぞれコリノリン及びアセチルコリノリンとして同定
化合物1及び2の生理化学的分析を実施し、次いで、それらの化学プロファイルが、文献中のコリダリス(Corydalis)属の植物から単離された任意の既知の化合物のものと一致するかを求めた。化合物1及び2は、コリダリス・ロンジカルカラタで報告された植物化学物質と一致していなかったが、それらはそれぞれコリダリス属の他の2種、ムラサキケマン(Corydalis incisa) 1及びイヌエンゴサク(Corydalis bungeana) 2から同定されているコリノリン及びアセチルコリノリンと一致していた。3つのラインの証拠がかかる同定を裏付けた。第1に、質量分析によって決定したように、化合物1及び2の分子量が、それぞれ367及び409であり、コリノリン及びアセチルコリノリンの分子量と一致する。第2に、2つの化合物はまた、1H NMR、13C NMR、及びUVスペクトルにおいて、コリノリン及びアセチルコリノリンと区別できない。第3に、分析HPLC分析は、化合物1及び市販のコリノリンが27.07分の同時に溶出したのに対し、化合物2及び市販のアセチルコリノリンは、37.59分の全く同じ溶出時間を有したことを示した。
【0161】
実施例8.細胞分裂に対するコリノリン及びアセチルコリノリンの多面的効果
植物は、フラボノイド、タンニン、テルペノイド、サポニン、トリテルペノイドサポニン、アルカロイド、植物ステロール、カロテノイド、脂肪酸、及び精油を含む主要な植物化学物質クラスに分類される様々な二次代謝産物を産生する11。現代の薬物に変換されている代謝産物の主要なクラスには、テルペン(34%)、配糖体(32%)、アルカロイド(16%)、他(18%)が含まれる。コリノリン及びアセチルコリノリンは、ベンゾフェナントリジンアルカロイドのカテゴリに分類され、様々な薬理学的特性を有することが報告されているが、これらの化合物の有糸分裂活性への影響は報告されていない。
【0162】
化合物の細胞分裂への効果を、社内または商業的のいずれかで精製したコリノリン及びアセチルコリノリンを使用して評価した。これらの化合物のいずれかで処理した細胞は、同様の細胞分裂欠損を受けた。ほとんどすべての細胞が、処理の24時間後に有糸分裂で入り、停止した(実施例3で論じられ、図5に示されるように)。細胞の大部分は、中期プレート上の染色体の明らかな整列を伴わない凝縮したDNAを有し、有糸分裂紡錘体チェックポイントが活性化され、その後、停止が前中期であることを示した。しかしながら、有糸分裂における細胞の停止は一過性であった。倍数性は、処理の開始から48時間後に観察された(実施例3で論じられ、図4及び図5に示されるように)。したがって、有糸分裂紡錘体チェックポイントは活性化されたが、コリノリンまたはアセチルコリノリンの存在下で維持されなかった。処理細胞は、最終的に細胞質分裂の完了を伴わずに有糸分裂から抜け出し、多核細胞の形成につながった。
【0163】
有糸分裂停止及び倍数性を誘発するためのコリノリンならびにアセチルコリノリンの閾値濃度は区別できず、同じ有糸分裂制御因子の無効化が両方の効果の原因となり得ることを示した(図15)。アセチルコリノリンの最小有効濃度はコリノリンの2倍高かったが(図15)、アセチルコリノリンは有糸分裂停止及び倍数性の両方を誘発することにおいてコリノリンを模倣した(図14)。染色体パッセンジャータンパク質複合体の触媒サブユニットであるオーロラ-Bキナーゼは、染色体分離及び細胞質分裂を調整する上で重要な役割を果たす12。しかしながら、オーロラ-Bキナーゼ活性13、14の代替物であるSer10でのヒストン3のリン酸化は、コリノリンまたはアセチルコリノリンのいずれかの影響を受けなかったため、コリノリンの細胞分裂への効果は、オーロラ-Bキナーゼの阻害によって媒介されなかった(例えば、図4及び図5の陽性染色を参照されたい)。コリノリン及びアセチルコリノリンとは対照的に、タキソール及びビンブラスチンの両方は、48時間処理内に倍数性細胞の蓄積を引き起こすことなく、有糸分裂における細胞の持続的な停止を誘発した(図14及び図15)。したがって、コリノリン及びアセチルコリノリンは、がんの治療のための抗有糸分裂治療剤としてさらなる研究の必要性がある。これらは、化学療法剤としての利用に有利であり得る独自の抗有糸分裂活性を有する。
【0164】
実施例9.プロトピン及びケリドニンの単離ならびに精製
プロトピン
プロトピンを、バイオアッセイ誘導精製によってコリダリス・ロンジカルカラタから単離した。精製の手順は、以下の通りであった:乾燥したコリダリス・ロンジカルカラタ根茎からの試料を切断し、電気グラインダで粉末に粉砕した。3キログラム(kg)の粉末を70%水性エタノールで抽出し、粗抽出物を石油エーテル(PE)及び酢酸エチル(EA)に対して連続的に分配して、PE、EA、及び水(WA)相を得た。WA相をマクロ多孔質吸着樹脂カラム(XAD-4:AB-8、1:1)クロマトグラフによって分離し、10画分を得た。100%エタノールで溶出したFr.10(約1g)は、プロトピン(純度、90%超)として同定した。
【0165】
ケリドニン
ケリドニンをChelidonium majus L.から分離して濃縮した。簡潔に述べると、乾燥したChelidonium majus L.材料を、崩壊剤を使用して粉末化した。収集した粉末を60メッシュのふるいを通してふるった。得られた粉末(100g)を1000mLの80%水性エタノールで1時間還流抽出し、手順を2回繰り返した。抽出した溶液を真空下で濾過し、次いで粗抽出物を濃縮して乾燥させ、脱イオン水に溶解して試料溶液を形成した。試料溶液を分離し、D101樹脂(吸着時間、6時間)を使用して濃縮して、ケリドニンを得た。
【0166】
単離及び精製方法は、例えば、Pan et al.,“Enrichment of chelidonine from Chelidonium majus L. using macroporous resin and its antifungal activity[J].”Journal of Chromatography B Analytical Technologies in the Biomedical & Life Sciences,2017,1070:7に見出すことができる。
【0167】
実施例10.有糸分裂への影響の分析
化合物ケリドニン及びプロトピンの細胞分裂への効果を、上記のコリノリン及びアセチルコリノリンと同様に評価した。上の実施例6に記載したように、細胞が有糸分裂に入り、停止すると、それらはプレート表面から脱離し、滑らかな表面膜を有する丸い細胞として現れる。RPE-MBC細胞(がん遺伝子MYC及びBcl2を異所的に発現する)をDMSO、ケリドニン、及びプロトピンで処理し、対照のマイケルケトン(MK)及びタキソールと比較した。それぞれのIC50値を決定し、表1に示した。結果を、表2に示すように、細胞株のより広範なパネルにわたってIC50を分析することによって確認した。
【0168】
(表1)コリノリン、アセチルコリノリン、ケリドニン、マイケルケトン(MK)、またはタキソールで処理したRPE-MBCまたはRPE-MBH細胞のIC50値
【0169】
(表2)コリノリン、アセチルコリノリン、ケリドニン、マイケルケトン(MK)、またはタキソールで処理した細胞株のIC50値
【0170】
これらの化合物の投与により、同様の細胞分裂欠損が生じた。ほとんどすべての細胞が、処理の24時間後に有糸分裂に入り、停止した(図16に示される明視野画像)。しかしながら、有糸分裂における細胞の停止は一過性であった。倍数性は、処理の開始から48時間後に観察された(図16に示される免疫蛍光)。したがって、有糸分裂紡錘体チェックポイントは活性化されたが、ケリドニン及びプロトピンの存在下で維持されなかった。処理細胞は、最終的に細胞質分裂の完了を伴わずに有糸分裂から抜け出し、多核細胞の形成につながった。
【0171】
上記のコリノリン及びアセチルコリノリンと同様に、微小管集合、特に紡錘体極集合は、ケリドニンでの処理によって改変されたことを決定した。MYCを過剰発現するRPE-MBC細胞をケリドニンで処理し、24時間または48時間後に蛍光抗体法によって分析した。βチューブリンを使用して、細胞内の微小管の局在及び紡錘体集合を調査した。図17は、6時間の処理後のアセチルコリノリンの効果を示す。β-チューブリン染色は、中心体増幅及び中心体非クラスター化(矢印で示される)、単極紡錘体を形成する代わりに、処理を受けた細胞で多極紡錘体が形成されたことを明らかにした。48時間のケリドニン処理の後、DAPI染色を介した倍数性が観察され、細胞が細胞分裂を伴わずに有糸分裂から最終的に抜け出し、結果として倍数性を発現したことを示した。
【0172】
これらのデータは、コリノリン、アセチルコリノリン、ケリドニン、及びプロトピンが、中心体形成の調節不全、紡錘体集合、及び細胞質分裂の欠如を伴うメカニズムを通じて、有糸分裂に対して多面的効果を示すことを実証する。
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【国際調査報告】