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特表2022-552573羊水およびそれに由来する細胞から羊水間葉系幹細胞を得るためのプロセスならびに装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-16
(54)【発明の名称】羊水およびそれに由来する細胞から羊水間葉系幹細胞を得るためのプロセスならびに装置
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/077 20100101AFI20221209BHJP
   A61K 35/50 20150101ALN20221209BHJP
   A61P 43/00 20060101ALN20221209BHJP
【FI】
C12N5/077
A61K35/50
A61P43/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523150
(86)(22)【出願日】2020-10-16
(85)【翻訳文提出日】2022-05-18
(86)【国際出願番号】 SE2020050993
(87)【国際公開番号】W WO2021076042
(87)【国際公開日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】1930338-7
(32)【優先日】2019-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(31)【優先権主張番号】62/923,187
(32)【優先日】2019-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】2030100-8
(32)【優先日】2020-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(31)【優先権主張番号】2030101-6
(32)【優先日】2020-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】522154940
【氏名又は名称】アムニオティクス・アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・タルトス
(72)【発明者】
【氏名】ニルス-ビャルネ・ウッズ
(72)【発明者】
【氏名】コーレ・エングキルデ
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・ラーション
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AC20
4B065BC41
4B065BC50
4B065CA44
4C087BB58
4C087ZB21
(57)【要約】
高度な治療用医薬品の製造に使用される、新生児品質および成体組織特異性を有する間葉系幹細胞(MSC)亜集団を精製、培養、および選択する方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
満期羊水(term amniotic fluid)から満期羊水間葉系幹細胞(TAF MSC)を得るための方法であって、
満期羊水(TAF)を提供することと、
前記TAFから粒子状物質を除去して精製されたTAF細胞を得ることと、
前記精製されたTAF細胞の接着選択を行ってTAF接着細胞を得ることと、
前記TAF接着細胞を継代して、前記TAF MSCを含む細胞の集団を得ることと、
TBC1ドメインファミリーメンバー3K、アログラフト炎症因子1様、カドヘリン関連ファミリーメンバー1、ナトリウム/カリウム輸送ATPアーゼ相互作用4、ATP結合カセットサブファミリーBメンバー1、形質膜小胞関連タンパク質、メソテリン、L1細胞接着分子、A型肝炎ウイルス細胞受容体1、mal、T細胞分化タンパク質2(遺伝子/偽遺伝子)、SLAMファミリーメンバー7、ダブルC2ドメインβ、内皮細胞接着分子、A型γアミノ酪酸受容体β1サブユニット、カドヘリン16、免疫グロブリンスーパーファミリーメンバー3、デスモコリン3、ヘモグロビン化および赤血球細胞増殖の調節因子、カリウム電位依存性チャネル相互作用タンパク質1、CD70分子、GDNFファミリー受容体α1、Crumbs細胞極性複合体成分3、クローディン1、新規転写産物、ナトリウム電位依存性チャネルαサブユニット5、線維芽細胞増殖因子受容体4、カリウム2細孔ドメインチャネルサブファミリーKメンバー3、ジスフェリン、エフリンA1、カリウム内向き整流チャネルサブファミリーJメンバー16、膜結合RING-CH型フィンガー1、シナプトタグミン様1、カルシンテニン2、インテグリンサブユニットβ4、小胞関連膜タンパク質8、Gタンパク質結合受容体クラスCグループ5メンバーC、CD24分子、カドヘリンEGF LAG7回膜貫通G型受容体2、カドヘリン8、グルタミン酸受容体相互作用タンパク質1、デマチンアクチン結合タンパク質、F11受容体、細胞接着分子1、カドヘリン6、凝固因子IIトロンビン受容体様2、LY6/PLAURドメイン含有1、溶質担体ファミリー6メンバー6、デスモグレイン2、接着Gタンパク質共役型受容体G1、コレシストキニンA受容体、オキシトシン受容体、インテグリンサブユニットα3、Ig様ドメイン2を有する接着分子、カドヘリンEGF LAG7回膜貫通G型受容体1、およびEPH受容体B2からなる群から選択される少なくとも1つのA群表面マーカーを発現する細胞として前記集団から前記TAF MSCを選択し、それによって前記TAF MSCを得ることと、を含む、方法。
【請求項2】
TAF MSCを選択することが、IL13RA2、CLU、TMEM119、CEMIP、LSP1、GPNMB、FAP、CRLF1、MME、CLMP、BGN、DDR2からなる群から選択されるマーカーの発現が低下したTAF MSCを選択することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
粒子状物質を除去することが、前記TAFを濾過することおよび遠心分離することを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記精製されたTAF細胞の接着選択を行うことが、前記精製されたTAF細胞をビトロネクチンベースの基質でコーティングされた表面に接着させることを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
選択ステップが、蛍光活性化細胞選別(FACS)を使用して行われる、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記選択ステップが、前記マーカーまたは表面マーカーのうちのいずれかに対する抗体を用いて行われる、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記選択ステップが、前記A群表面マーカーから少なくとも2つのマーカーを発現するTAF MSCを選択することを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記選択ステップが、前記A群表面マーカーから少なくとも3つのマーカーを発現するTAF MSCを選択することを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記選択ステップが、前記A群表面マーカーから少なくとも4つのマーカーを発現するTAF MSCを選択することを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記選択ステップが複数の選別ステップを含み、各選別ステップが、それぞれのTAF MSCによって発現されるかまたは発現されないマーカーのセットに応じて、TAF MSCを第1の出力群または第2の出力群に割り当てることを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記選択ステップが、
A群表面マーカーを発現するTAF MSCを第1の出力群に割り当てるための第1の選別ステップと、
第2のマーカーのセットを発現する前記第1の出力群から第2の出力群にTAF MSCを割り当てるための第2の選別ステップと、を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
満期羊水から満期羊水肺間葉系幹細胞(肺TAF MSC)を得るための方法であって、
満期羊水(TAF)を提供することと、
前記TAFから粒子状物質を除去して精製されたTAF細胞を得ることと、
前記精製されたTAF細胞の接着選択を行ってTAF接着細胞を得ることと、
前記TAF接着細胞を継代して、前記肺TAF MSCを含む細胞の集団を得ることと、
PCDH19、DDR1、MME、IFITM10、BGN、NOTCH3、SULF1、TNFSF18、BDKRB1、FLT1、PDGFRA、TNFSF4、UNC5B、FAP、CASP1、CD248、DDR2、PCDH18、LRRC38、およびCRLF1からなる群から選択される少なくとも1つのB群表面マーカーを発現する細胞として前記集団から前記TAF肺MSCを選択し、それによってTAF肺間葉系幹細胞を得ることと、を含む、方法。
【請求項13】
肺TAF MSCを選択することが、CD24、ITGB4、TNFSF10、GFRA1、CD74、FGFR4、HAVCR1、およびOSCARからなる群から選択されるマーカーを発現するMSCを除外することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
選択ステップが、前記B群表面マーカーから少なくとも2つの表面マーカーを発現するTAF MSCを選択することを含む、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記選択ステップが、前記B群表面マーカーから少なくとも3つの表面マーカーを発現するTAF MSCを選択することを含む、請求項12または13に記載の方法。
【請求項16】
前記選択ステップが、前記B群表面マーカーから少なくとも4つの表面マーカーを発現するTAF MSCを選択することを含む、請求項12、13、14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記選択ステップが、CD248、DDR1、およびLRRC38の群から選択される表面マーカーを発現するTAF MSCを選択することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記選択ステップが、CD248を発現するTAF MSCを選択することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記選択ステップが、DDR1およびLRRC38の群から選択されるマーカーと組み合わせてCD248を発現するTAF MSCを選択することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記選択ステップが、CD248、DDR1、およびLRRC38を発現するTAF MSCを選択することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
請求項1~10のいずれか一項に記載に記載の方法によって得ることができる単離された満期羊水(TAF)間葉系幹細胞であって、前記細胞が少なくとも1つのA群表面マーカーを発現する、単離された満期羊水(TAF)間葉系幹細胞。
【請求項22】
満期羊水(TAF)間葉系幹細胞の単離された集団であって、前記細胞が、TBC1ドメインファミリーメンバー3K、アログラフト炎症因子1様、カドヘリン関連ファミリーメンバー1、ナトリウム/カリウム輸送ATPアーゼ相互作用4、ATP結合カセットサブファミリーBメンバー1、形質膜小胞関連タンパク質、メソテリン、L1細胞接着分子、A型肝炎ウイルス細胞受容体1、mal、T細胞分化タンパク質2(遺伝子/偽遺伝子)、SLAMファミリーメンバー7、ダブルC2ドメインβ、内皮細胞接着分子、A型γアミノ酪酸受容体β1サブユニット、カドヘリン16、免疫グロブリンスーパーファミリーメンバー3、デスモコリン3、ヘモグロビン化および赤血球細胞増殖の調節因子、カリウム電位依存性チャネル相互作用タンパク質1、CD70分子、GDNFファミリー受容体α1、Crumbs細胞極性複合体成分3、クローディン1、新規転写産物、ナトリウム電位依存性チャネルαサブユニット5、線維芽細胞増殖因子受容体4、カリウム2細孔ドメインチャネルサブファミリーKメンバー3、ジスフェリン、エフリンA1、カリウム内向き整流チャネルサブファミリーJメンバー16、膜結合RING-CH型フィンガー1、シナプトタグミン様1、カルシンテニン2、インテグリンサブユニットβ4、小胞関連膜タンパク質8、Gタンパク質結合受容体クラスCグループ5メンバーC、CD24分子、カドヘリンEGF LAG7回膜貫通G型受容体2、カドヘリン8、グルタミン酸受容体相互作用タンパク質1、デマチンアクチン結合タンパク質、F11受容体、細胞接着分子1、カドヘリン6、凝固因子IIトロンビン受容体様2、LY6/PLAURドメイン含有1、溶質担体ファミリー6メンバー6、デスモグレイン2、接着Gタンパク質共役型受容体G1、コレシストキニンA受容体、オキシトシン受容体、インテグリンサブユニットα3、Ig様ドメイン2を有する接着分子、カドヘリンEGF LAG7回膜貫通G型受容体1、およびEPH受容体B2を含む群から選択される少なくとも1つのA群表面マーカーを発現する、単離された集団。
【請求項23】
請求項18に記載の満期羊水(TAF)間葉系幹細胞の単離された集団と、前記TAF MSCのための薬学的に許容される担体と、を含む、組成物。
【請求項24】
請求項12~16に記載の方法によって得ることができる単離された満期羊水(TAF)間葉系肺幹細胞であって、前記細胞が、PCDH19、DDR1、MME、IFITM10、BGN、NOTCH3、SULF1、TNFSF18、BDKRB1、FLT1、PDGFRA、TNFSF4、UNC5B、FAP、CASP1、CD248、DDR2、PCDH18、およびCRLF1からなる群から選択される少なくとも1つのB群表面マーカーを発現する、単離された満期羊水(TAF)間葉系肺幹細胞。
【請求項25】
満期羊水(TAF)肺間葉系幹細胞の単離された集団であって、前記細胞が少なくとも1つのB群表面マーカーを発現する、単離された集団。
【請求項26】
前述の明細書および/または図の1つ以上の特徴を含む、単離された満期羊水(TAF)間葉系幹細胞。
【請求項27】
満期羊水から満期羊水腎臓間葉系幹(腎臓TAF MSC)細胞を得るための方法であって、
満期羊水(TAF)を提供することと、
前記TAFから粒子状物質を除去して精製されたTAF細胞を得ることと、
前記精製されたTAF細胞の接着選択を行ってTAF接着細胞を得ることと、
前記TAF接着細胞を継代して、前記TAF腎臓MSCを含む細胞の集団を得ることと、
HAVCR1、CD24、CLDN6、ABCB1、SHISA9、CRB3、AC118754.1、ITGB6、CDH1、LSR、EPCAM、AJAP1、ANO9、CLDN7、EFNA1、MAL2、F11R、L1CAM、GFRA1、IGSF3、TNF、MMP7、FOLR1、TGFA、C3、TNFSF10、PDGFBおよびWWC1からなる群から選択される少なくとも1つのC群表面マーカーを発現する細胞として前記集団から前記TAF腎臓MSCを選択し、それによってTAF腎臓MSCを得ることと、を含む、方法。
【請求項28】
満期羊水(TAF)腎臓間葉系幹細胞(腎臓TAF MSC)の単離された集団であって、前記腎臓TAF MSCが、HAVCR1、CD24、CLDN6、ABCB1、SHISA9、CRB3、AC118754.1、ITGB6、CDH1、LSR、EPCAM、AJAP1、ANO9、CLDN7、EFNA1、MAL2、F11R、L1CAM、GFRA1、IGSF3、TNF、MMP7、FOLR1、TGFA、C3、TNFSF10、PDGFBおよびWWC1からなる群から選択される少なくとも1つのC群表面マーカーを発現する、単離された集団。
【請求項29】
請求項28に記載の満期羊水(TAF)腎臓間葉系幹細胞の単離された集団を含む、組成物。
【請求項30】
満期羊水から満期羊水皮膚間葉系幹細胞(皮膚TAF MSC)を得るための方法であって、
満期羊水(TAF)を提供することと、
前記TAFから粒子状物質を除去して精製されたTAF細胞を得ることと、
前記精製されたTAF細胞の接着選択を行ってTAF接着細胞を得ることと、
前記TAF接着細胞を継代して、前記TAF皮膚MSCを含む細胞の集団を得ることと、
TNFSF18、PCDH19、NCAM2、TNFSF4、CD248、DDR2、HTR2B、PCDH18、SULF1、MME、ADGRA2、DCSTAMP、PDGFRA、UNC5B、SCUBE3、CEMIP、BDKRB1、FLT1、BDKRB2、FAP、CASP1、およびSRPX2からなる群から選択される少なくとも1つのD群表面マーカーを発現する細胞として前記集団から前記皮膚TAF MSCを選択することと、
TAF皮膚MSCを得ることと、を含む、方法。
【請求項31】
満期羊水(TAF)皮膚間葉系幹細胞(皮膚MSC)の単離された集団であって、前記皮膚TAF MSCが、TNFSF18、PCDH19、NCAM2、TNFSF4、CD248、DDR2、HTR2B、PCDH18、SULF1、MME、ADGRA2、DCSTAMP、PDGFRA、UNC5B、SCUBE3、CEMIP、BDKRB1、FLT1、BDKRB2、FAP、CASP1、およびSRPX2からなる群から選択される少なくとも1つのD群表面マーカーを発現する、単離された集団。
【請求項32】
請求項27に記載の満期羊水(TAF)皮膚間葉系幹細胞の単離された集団と、前記TAF皮膚MSCのための薬学的に許容される担体と、を含む、組成物。
【請求項33】
満期羊水から満期羊水神経間葉系幹細胞(神経TAF MSC)を得るための方法であって、
満期羊水(TAF)を提供することと、
前記TAFから粒子状物質を除去して精製されたTAF細胞を得ることと、
前記精製されたTAF細胞の接着選択を行ってTAF接着細胞を得ることと、
前記TAF接着細胞を継代して、前記TAF神経MSCを含む細胞の集団を得ることと、
HAVCR1、ACKR3、OSCAR、C3、SIRPB1、SLC6A6、CCKAR、TNFSF10、CLSTN2、TENM2、SFRP1、PIK3IP1、SCNN1D、CLDN11、ALDH3B1、およびITGB4からなる群から選択される少なくとも1つのE群表面マーカーを発現する細胞として前記集団から前記TAF神経MSCを選択し、それによってTAF神経MSCを得ることと、を含む、方法。
【請求項34】
満期羊水(TAF)神経間葉系幹細胞(神経TAF MSC)の単離された集団であって、前記神経TAF MSCが、HAVCR1、ACKR3、OSCAR、C3、SIRPB1、SLC6A6、CCKAR、TNFSF10、CLSTN2、TENM2、SFRP1、PIK3IP1、SCNN1D、CLDN11、ALDH3B1およびITGB4からなる群から選択される少なくとも1つのE群表面マーカーを発現する、単離された集団。
【請求項35】
請求項30に記載の満期羊水(TAF)神経間葉系幹細胞の単離された集団と、前記TAF神経MSCのための薬学的に許容される担体と、を含む、組成物。
【請求項36】
前述の明細書および/または図の1つ以上の特徴を含む単離された満期羊水(TAF)間葉系幹細胞を単離する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高度な治療用医薬品の製造に使用するための新生児品質の組織特異性を有する間葉系幹細胞(MSC)亜集団を精製、培養、および選択するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
羊水は、妊娠中に胎児を取り囲み、保護する液体である。最後の三半期の間、羊水は、部分的に胎児の肺によって、また部分的に胎児の尿によって分泌される。羊水は、経口摂取され、胎児の腸に吸収されて胎児循環に再び入る。満期羊水(term amniotic fluid)は、電解質を含む水で構成されているが、タンパク質、炭水化物、脂質、リン脂質、および尿素も含む。代謝廃棄物に加えて、羊水は、胎児細胞、ならびに摩擦によって皮膚から剥がれ落ちる他の物質、例えば、毛および出生時に赤ん坊の皮膚を覆っている脂性の沈着物である胎脂も含んでいる。羊水と接触している組織界面は、細胞物質を含む羊水の内容物に寄与する。肺は、これらの表面の中で最大であり、TAF中に肺サーファクタントも分泌する。口腔および鼻粘膜、眼、ならびに尿路は、羊水と位相接触している非角質化上皮界面を有する他のそのような表面である。
【0003】
間葉系幹細胞(MSC)は、ほぼすべての組織に見られ、主に血管周囲のニッチに存在する。当業者によって理解されるように、間葉系幹細胞は、多数の細胞型に分化することができ、組織修復プロセスを指示するための抗炎症、血管新生特性を有する多能性間質細胞であり、そのため、間葉系幹細胞は治療的処置にとって価値あるものとなっている。帝王切開中に採取された満期羊水(TAF)には、MSCを含む多くの貴重な細胞が含まれている。しかしながら、MSCの抽出および増殖は、TAFの無菌的採取、処理、ならびにMSCの同定および抽出に関連する困難のために、以前は大規模に行われていなかった。さらに、MSCの特定の亜集団は、治療薬の製造に使用するのに特に適している可能性がある。以前は、MSCを得るために、成体骨髄、成体脂肪組織、または胎盤、臍帯、および臍帯血を含む新生児の出生関連組織から供給されるMSCが広く使用されていた。これらの新生児組織からのMSCは、成体供給源に由来するMSCと比較して追加の能力を有し得る。実際、いくつかの研究では、成体由来のMSCと比べて、出生関連組織からのMSCの増殖能、寿命、および分化能の改善等、より優れた生物学的特性が報告されている。しかしながら、これらの新生児MSC供給源のいずれも、成人の体内の対応する組織または臓器を有しない。したがって、組織特異性を有する新生児品質のMSCは非常に有益である。さらに、胎児物質の獲得は、乳児への悪影響に関連する場合がある。例えば、臍帯血の採取では、生存率、成長、および細かい運動能力の発達の向上のために、可能な限り多くの臍帯血を乳児に戻す必要があることが示されている。一方、羊水は今日、廃棄される医療廃棄物とみなされている。したがって、そのような未だ活用されていない資源を採取するための倫理的および実践的なインセンティブの両方が明確である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願第14/776,499号(US2016/0030489に対応する)
【発明の概要】
【0005】
特定の開示される例は、羊水およびそれに由来する細胞から羊水間葉系幹細胞を得るためのデバイス、細胞、方法、およびシステムに関する。本明細書に記載のデバイス、方法、およびシステムの適用は、特定の細胞または組織の種類に限定されないことが当業者によって理解されるであろう。さらなる例を以下に記載する。
一態様において、本開示は、羊水から羊水間葉系幹細胞を得るための方法であって、満期羊水(TAF)を提供することと、TAFから粒子状物質を除去して精製されたTAF細胞を得ることと、精製されたTAF細胞の接着選択を行ってTAF接着細胞を得ることと、TAF接着細胞を継代して、TAF間葉系幹細胞(TAF MSC)を得ることと、TBC1ドメインファミリーメンバー3K(TBC1D3K)、アログラフト炎症因子1様(AIF1L)、カドヘリン関連ファミリーメンバー1(CDHR1)、ナトリウム/カリウム輸送ATPアーゼ相互作用4(NKAIN4)、ATP結合カセットサブファミリーBメンバー1(ABCB1)、原形質膜小胞関連タンパク質(PLVAP)、メソテリン(MSLN)、L1細胞接着分子(L1CAM)、A型肝炎ウイルス細胞受容体1(HAVCR1)、mal、T細胞分化タンパク質2(遺伝子/偽遺伝子)(MAL2)、SLAMファミリーメンバー7(SLAMF7)、ダブルC2ドメインβ(DOC2B)、内皮細胞接着分子(ESAM)、A型γアミノ酪酸受容体β1サブユニット(GABRB1)、カドヘリン16(CDH16)、免疫グロブリンスーパーファミリーメンバー3(IGSF3)、デスモコリン3(DSC3)、ヘモグロビン化および赤血球細胞増殖の調節因子(RHEX)、カリウム電位依存性チャネル相互作用タンパク質1(KCNIP1)、CD70分子(CD70)、GDNFファミリー受容体α1(GFRA1)、Crumbs細胞極性複合体成分3(CRB3)、クローディン1(CLDN1)、新規転写産物(AC118754.1)、ナトリウム電位依存性チャネルαサブユニット5(SCN5A)、線維芽細胞増殖因子受容体4(FGFR4)、カリウム2細孔ドメインチャネルサブファミリーKメンバー3(KCNK3)、ジスフェリン(DYSF)、エフリンA1(EFNA1)、カリウム内向き整流チャネルサブファミリーJメンバー16(KCNJ16)、膜結合RING-CH型フィンガー1(MARCHF1)、シナプトタグミン様1(SYTL1)、カルシンテニン2(CLSTN2)、インテグリンサブユニットβ4(ITGB4)、小胞関連膜タンパク質8(VAMP8)、Gタンパク質結合受容体クラスCグループ5メンバーC(GPRC5C)、CD24分子(CD24)、カドヘリンEGF LAG7回膜貫通G型受容体2(CELSR2)、カドヘリン8(CDH8)、グルタミン酸受容体相互作用タンパク質1(GRIP1)、デマチンアクチン結合タンパク質(DMTN)、F11受容体(F11R)、細胞接着分子1(CADM1)、カドヘリン6(CDH6)、凝固因子IIトロンビン受容体様2(F2RL2)、LY6/PLAURドメイン含有1(LYPD1)、溶質担体ファミリー6メンバー6(SLC6A6)、デスモグレイン2(DSG2)、接着Gタンパク質共役型受容体G1(ADGRG1)、コレシストキニンA受容体(CCKAR)、オキシトシン受容体(OXTR)、インテグリンサブユニットα3(ITGA3)、Ig様ドメイン2を有する接着分子(AMIGO2)、カドヘリンEGF LAG7回膜貫通G型受容体1(CELSR1)、EPH受容体B2(EPHB2)からなる群から選択されるマーカーを発現するTAF MSCを選択することと、を含む、方法を提供する。
【0006】
別の態様において、本開示は、本開示による方法によって得ることができる単離された細胞を提供し、該細胞は、TBC1ドメインファミリーメンバー3K(TBC1D3K)、アログラフト炎症因子1様(AIF1L)、カドヘリン関連ファミリーメンバー1(CDHR1)、ナトリウム/カリウム輸送ATPアーゼ相互作用4(NKAIN4)、ATP結合カセットサブファミリーBメンバー1(ABCB1)、形質膜小胞関連タンパク質(PLVAP)、メソテリン(MSLN)、L1細胞接着分子(L1CAM)、A型肝炎ウイルス細胞受容体1(HAVCR1)、mal、T細胞分化タンパク質2(遺伝子/偽遺伝子)(MAL2)、SLAMファミリーメンバー7(SLAMF7)、ダブルC2ドメインβ(DOC2B)、内皮細胞接着分子(ESAM)、A型γアミノ酪酸受容体β1サブユニット(GABRB1)、カドヘリン16(CDH16)、免疫グロブリンスーパーファミリーメンバー3(IGSF3)、デスモコリン3(DSC3)、ヘモグロビン化および赤血球細胞増殖の調節因子(RHEX)、カリウム電位依存性チャネル相互作用タンパク質1(KCNIP1)、CD70分子(CD70)、GDNFファミリー受容体α1(GFRA1)、Crumbs細胞極性複合体成分3(CRB3)、クローディン1(CLDN1)、新規転写産物(AC118754.1)、ナトリウム電位依存性チャネルαサブユニット5(SCN5A)、線維芽細胞増殖因子受容体4(FGFR4)、カリウム2細孔ドメインチャネルサブファミリーKメンバー3(KCNK3)、ジスフェリン(DYSF)、エフリンA1(EFNA1)、カリウム内向き整流チャネルサブファミリーJメンバー16(KCNJ16)、膜結合RING-CH型フィンガー1(MARCHF1)、シナプトタグミン様1(SYTL1)、カルシンテニン2(CLSTN2)、インテグリンサブユニットβ4(ITGB4)、小胞関連膜タンパク質8(VAMP8)、Gタンパク質結合受容体クラスCグループ5メンバーC(GPRC5C)、CD24分子(CD24)、カドヘリンEGF LAG7回膜貫通G型受容体2(CELSR2)、カドヘリン8(CDH8)、グルタミン酸受容体相互作用タンパク質1(GRIP1)、デマチンアクチン結合タンパク質(DMTN)、F11受容体(F11R)、細胞接着分子1(CADM1)、カドヘリン6(CDH6)、凝固因子IIトロンビン受容体様2(F2RL2)、LY6/PLAURドメイン含有1(LYPD1)、溶質担体ファミリー6メンバー6(SLC6A6)、デスモグレイン2(DSG2)、接着Gタンパク質共役型受容体G1(ADGRG1)、コレシストキニンA受容体(CCKAR)、オキシトシン受容体(OXTR)、インテグリンサブユニットα3(ITGA3)、Ig様ドメイン2を有する接着分子(AMIGO2)、カドヘリンEGF LAG7回膜貫通G型受容体1(CELSR1)、EPH受容体B2(EPHB2)を含む群から選択される表面マーカーを発現する。
【0007】
特定の例において、満期羊水から満期羊水間葉系幹細胞(TAF MSC)を得るための方法は、
満期羊水(TAF)を提供することと、
TAFから粒子状物質を除去して精製されたTAF細胞を得ることと、
精製されたTAF細胞の接着選択を行ってTAF接着細胞を得ることと、
TAF接着細胞を継代して、TAF MSCを含む細胞の集団を得ることと、
TBC1ドメインファミリーメンバー3K、アログラフト炎症因子1様、カドヘリン関連ファミリーメンバー1、ナトリウム/カリウム輸送ATPアーゼ相互作用4、ATP結合カセットサブファミリーBメンバー1、形質膜小胞関連タンパク質、メソテリン、L1細胞接着分子、A型肝炎ウイルス細胞受容体1、mal、T細胞分化タンパク質2(遺伝子/偽遺伝子)、SLAMファミリーメンバー7、ダブルC2ドメインβ、内皮細胞接着分子、A型γアミノ酪酸受容体β1サブユニット、カドヘリン16、免疫グロブリンスーパーファミリーメンバー3、デスモコリン3、ヘモグロビン化および赤血球細胞増殖の調節因子、カリウム電位依存性チャネル相互作用タンパク質1、CD70分子、GDNFファミリー受容体α1、Crumbs細胞極性複合体成分3、クローディン1、新規転写産物、ナトリウム電位依存性チャネルαサブユニット5、線維芽細胞増殖因子受容体4、カリウム2細孔ドメインチャネルサブファミリーKメンバー3、ジスフェリン、エフリンA1、カリウム内向き整流チャネルサブファミリーJメンバー16、膜結合RING-CH型フィンガー1、シナプトタグミン様1、カルシンテニン2、インテグリンサブユニットβ4、小胞関連膜タンパク質8、Gタンパク質結合受容体クラスCグループ5メンバーC、CD24分子、カドヘリンEGF LAG7回膜貫通G型受容体2、カドヘリン8、グルタミン酸受容体相互作用タンパク質1、デマチンアクチン結合タンパク質、F11受容体、細胞接着分子1、カドヘリン6、凝固因子IIトロンビン受容体様2、LY6/PLAURドメイン含有1、溶質担体ファミリー6メンバー6、デスモグレイン2、接着Gタンパク質共役型受容体G1、コレシストキニンA受容体、オキシトシン受容体、インテグリンサブユニットα3、Ig様ドメイン2を有する接着分子、カドヘリンEGF LAG7回膜貫通G型受容体1、およびEPH受容体B2からなる群から選択される少なくとも1つのA群表面マーカーを発現する細胞として集団からTAF MSCを選択し、それによってTAF MSCを得ることと、を含み得る。
【0008】
いくつかの例において、TAF MSCを選択することは、IL13RA2、CLU、TMEM119、CEMIP、LSP1、GPNMB、FAP、CRLF1、MME、CLMP、BGN、DDR2からなる群から選択されるマーカーの発現が低下したTAF MSCを選択することを含み得る。粒子状物質を除去することは、TAFを濾過することおよび遠心分離することを含み得る。精製されたTAF細胞の接着選択を行うことは、精製されたTAF細胞をビトロネクチンベースの基質でコーティングされた表面に接着させることを含み得る。選択ステップは、蛍光活性化細胞選別(FACS)を使用して行うことができる。選択ステップは、マーカーまたは表面マーカーのうちのいずれかに対する抗体を用いて行うことができる。選択ステップは、A群表面マーカーから少なくとも2つのマーカーを発現するTAF MSCを選択することを含み得る。選択ステップは、A群表面マーカーから少なくとも3つのマーカーを発現するTAF MSCを選択することを含み得る。選択ステップは、A群表面マーカーから少なくとも4つのマーカーを発現するTAF MSCを選択することを含み得る。選択ステップは、複数の選別ステップを含んでもよく、各選別ステップは、それぞれのTAF MSCによって発現されるかまたは発現されないマーカーのセットに応じて、TAF MSCを第1の出力群または第2の出力群に割り当てることを含む。
【0009】
いくつかの例において、選択ステップは、A群表面マーカーを発現するTAF MSCを第1の出力群に割り当てるための第1の選別ステップと、第2のマーカーのセットを発現する第1の出力群から第2の出力群にTAF MSCを割り当てるための第2の選別ステップとを含み得る。
【0010】
特定の例において、満期羊水から満期羊水肺間葉系幹細胞(肺TAF MSC)を得るための方法は、
満期羊水(TAF)を提供することと、
TAFから粒子状物質を除去して精製されたTAF細胞を得ることと、
精製されたTAF細胞の接着選択を行ってTAF接着細胞を得ることと、
TAF接着細胞を継代して、肺TAF MSCを含む細胞の集団を得ることと、
PCDH19、DDR1、MME、IFITM10、BGN、NOTCH3、SULF1、TNFSF18、BDKRB1、FLT1、PDGFRA、TNFSF4、UNC5B、FAP、CASP1、CD248、DDR2、PCDH18、LRRC38、およびCRLF1からなる群から選択される少なくとも1つのB群表面マーカーを発現する細胞として集団からTAF肺MSCを選択し、それによってTAF肺間葉系幹細胞を得ることと、を含み得る。
【0011】
肺TAF MSCの選択は、CD24、ITGB4、TNFSF10、GFRA1、CD74、FGFR4、HAVCR1、およびOSCARからなる群から選択されるマーカーを発現するMSCを除外することを含み得る。選択ステップは、B群表面マーカーから少なくとも2つの表面マーカーを発現するTAF MSCを選択することを含み得る。選択ステップは、B群表面マーカーから少なくとも3つの表面マーカーを発現するTAF MSCを選択することを含み得る。選択ステップは、B群表面マーカーから少なくとも4つの表面マーカーを発現するTAF MSCを選択することを含み得る。選択ステップは、CD248、DDR1、およびLRRC38の群から選択される表面マーカーを発現するTAF MSCを選択することを含み得る。選択ステップは、CD248を発現するTAF MSCを選択することを含み得る。選択ステップは、DDR1およびLRRC38の群から選択されるマーカーと組み合わせてCD248を発現するTAF MSCを選択することを含み得る。選択ステップは、CD248、DDR1、およびLRRC38を発現するTAF MSCを選択することを含み得る。いくつかの例において、単離された満期羊水(TAF)間葉系幹細胞は、上記の方法によって得ることができ、該細胞は、少なくとも1つのA群表面マーカーを発現する。
【0012】
いくつかの例において、満期羊水(TAF)間葉系幹細胞の単離された集団は、TBC1ドメインファミリーメンバー3K、アログラフト炎症因子1様、カドヘリン関連ファミリーメンバー1、ナトリウム/カリウム輸送ATPアーゼ相互作用4、ATP結合カセットサブファミリーBメンバー1、形質膜小胞関連タンパク質、メソテリン、L1細胞接着分子、A型肝炎ウイルス細胞受容体1、mal、T細胞分化タンパク質2(遺伝子/偽遺伝子)、SLAMファミリーメンバー7、ダブルC2ドメインβ、内皮細胞接着分子、A型γアミノ酪酸受容体β1サブユニット、カドヘリン16、免疫グロブリンスーパーファミリーメンバー3、デスモコリン3、ヘモグロビン化および赤血球細胞増殖の調節因子、カリウム電位依存性チャネル相互作用タンパク質1、CD70分子、GDNFファミリー受容体α1、Crumbs細胞極性複合体成分3、クローディン1、新規転写産物、ナトリウム電位依存性チャネルαサブユニット5、線維芽細胞増殖因子受容体4、カリウム2細孔ドメインチャネルサブファミリーKメンバー3、ジスフェリン、エフリンA1、カリウム内向き整流チャネルサブファミリーJメンバー16、膜結合RING-CH型フィンガー1、シナプトタグミン様1、カルシンテニン2、インテグリンサブユニットβ4、小胞関連膜タンパク質8、Gタンパク質結合受容体クラスCグループ5メンバーC、CD24分子、カドヘリンEGF LAG7回膜貫通G型受容体2、カドヘリン8、グルタミン酸受容体相互作用タンパク質1、デマチンアクチン結合タンパク質、F11受容体、細胞接着分子1、カドヘリン6、凝固因子IIトロンビン受容体様2、LY6/PLAURドメイン含有1、溶質担体ファミリー6メンバー6、デスモグレイン2、接着Gタンパク質共役型受容体G1、コレシストキニンA受容体、オキシトシン受容体、インテグリンサブユニットα3、Ig様ドメイン2を有する接着分子、カドヘリンEGF LAG7回膜貫通G型受容体1、およびEPH受容体B2を含む群から選択される少なくとも1つのA群表面マーカーを発現し得る。
【0013】
いくつかの例において、組成物は、上記の満期羊水(TAF)間葉系幹細胞の単離された集団と、TAF MSCのための薬学的に許容される担体とを含み得る。上記の方法によって得ることができる単離された満期羊水(TAF)間葉系肺幹細胞は、PCDH19、DDR1、MME、IFITM10、BGN、NOTCH3、SULF1、TNFSF18、BDKRB1、FLT1、PDGFRA、TNFSF4、UNC5B、FAP、CASP1、CD248、DDR2、PCDH18、およびCRLF1からなる群から選択される少なくとも1つのB群表面マーカーを発現し得る。特定の例において、満期羊水(TAF)肺間葉系幹細胞の単離された集団は、少なくとも1つのB群表面マーカーを発現し得る。
【0014】
いくつかの例において、満期羊水から満期羊水腎臓間葉系幹(腎臓TAF MSC)細胞を得るための方法は、
満期羊水(TAF)を提供することと、
TAFから粒子状物質を除去して精製されたTAF細胞を得ることと、
精製されたTAF細胞の接着選択を行ってTAF接着細胞を得ることと、
TAF接着細胞を継代して、TAF腎臓MSCを含む細胞の集団を得ることと、
HAVCR1、CD24、CLDN6、ABCB1、SHISA9、CRB3、AC118754.1、ITGB6、CDH1、LSR、EPCAM、AJAP1、ANO9、CLDN7、EFNA1、MAL2、F11R、L1CAM、GFRA1、IGSF3、TNF、MMP7、FOLR1、TGFA、C3、TNFSF10、PDGFBおよびWWC1からなる群から選択される少なくとも1つのC群表面マーカーを発現する細胞として集団からTAF腎臓MSCを選択し、それによってTAF腎臓MSCを得ることと、を含み得る。
【0015】
特定の例において、満期羊水(TAF)腎臓間葉系幹細胞(腎臓TAF MSC)の単離された集団は、HAVCR1、CD24、CLDN6、ABCB1、SHISA9、CRB3、AC118754.1、ITGB6、CDH1、LSR、EPCAM、AJAP1、ANO9、CLDN7、EFNA1、MAL2、F11R、L1CAM、GFRA1、IGSF3、TNF、MMP7、FOLR1、TGFA、C3、TNFSF10、PDGFBおよびWWC1からなる群から選択される少なくとも1つのC群表面マーカーを発現し得る。
【0016】
組成物は、上記のような満期羊水(TAF)腎臓間葉系幹細胞の単離された集団を含み得る。
いくつかの例において、満期羊水から満期羊水皮膚間葉系幹細胞(皮膚TAF MSC)を得るための方法は、
満期羊水(TAF)を提供することと、
TAFから粒子状物質を除去して精製されたTAF細胞を得ることと、
精製されたTAF細胞の接着選択を行ってTAF接着細胞を得ることと、
TAF接着細胞を継代して、TAF皮膚MSCを含む細胞の集団を得ることと、
TNFSF18、PCDH19、NCAM2、TNFSF4、CD248、DDR2、HTR2B、PCDH18、SULF1、MME、ADGRA2、DCSTAMP、PDGFRA、UNC5B、SCUBE3、CEMIP、BDKRB1、FLT1、BDKRB2、FAP、CASP1、およびSRPX2からなる群から選択される少なくとも1つのD群表面マーカーを発現する細胞として集団から皮膚TAF MSCを選択することと、
TAF皮膚MSCを得ることと、を含み得る。
【0017】
特定の例において、満期羊水(TAF)皮膚間葉系幹細胞(皮膚MSC)の単離された集団は、TNFSF18、PCDH19、NCAM2、TNFSF4、CD248、DDR2、HTR2B、PCDH18、SULF1、MME、ADGRA2、DCSTAMP、PDGFRA、UNC5B、SCUBE3、CEMIP、BDKRB1、FLT1、BDKRB2、FAP、CASP1、およびSRPX2からなる群から選択される少なくとも1つのD群表面マーカーを発現し得る。組成物は、上記の満期羊水(TAF)皮膚間葉系幹細胞の単離された集団と、TAF皮膚MSCのための薬学的に許容される担体とを含み得る。
【0018】
いくつかの例において、満期羊水から満期羊水神経間葉系幹細胞(神経TAF MSC)を得るための方法は、
満期羊水(TAF)を提供することと、
TAFから粒子状物質を除去して精製されたTAF細胞を得ることと、
精製されたTAF細胞の接着選択を行ってTAF接着細胞を得ることと、
TAF接着細胞を継代して、TAF神経MSCを含む細胞の集団を得ることと、
HAVCR1、ACKR3、OSCAR、C3、SIRPB1、SLC6A6、CCKAR、TNFSF10、CLSTN2、TENM2、SFRP1、PIK3IP1、SCNN1D、CLDN11、ALDH3B1、およびITGB4からなる群から選択される少なくとも1つのE群表面マーカーを発現する細胞として集団からTAF神経MSCを選択し、それによってTAF神経MSCを得ることと、を含み得る。
【0019】
いくつかの例において、満期羊水(TAF)神経間葉系幹細胞(神経TAF MSC)の単離された集団は、HAVCR1、ACKR3、OSCAR、C3、SIRPB1、SLC6A6、CCKAR、TNFSF10、CLSTN2、TENM2、SFRP1、PIK3IP1、SCNN1D、CLDN11、ALDH3B1およびITGB4からなる群から選択される少なくとも1つのE群表面マーカーを発現し得る。組成物は、上記の満期羊水(TAF)神経間葉系幹細胞の単離された集団と、TA 神経MSCのための薬学的に許容される担体と、を含み得る。
特定の態様において、本開示は、前述の記載および/または図の1つ以上の特徴を含む満期羊水(TAF)間葉系幹細胞およびTAF間葉系幹細胞を含む組成物を単離するための方法および装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】MSC亜集団の精製、培養および選択のステップを示すフロー図である。
図2】羊水を採取するための方法を示す図である。
図3】一例による羊水を濾過するための装置の概略斜視図である。
図4】一例による羊水を濾過するための装置の概略側面図である。
図5】一例による羊水を濾過するための装置の概略側面図である。
図6】一例による羊水を濾過するための装置の概略側面図である。
図7】一例による羊水を濾過するための装置の概略側面図である。
図8】一例による羊水を濾過するための装置の概略側面図である。
図9】一例による羊水を濾過するための装置の概略側面図である。
図10】一例による羊水を濾過するための装置の概略側面図である。
図11】一例による羊水を濾過するための装置の概略側面図である。
図12図11の断面A-Aに沿った、一例による羊水を濾過するための装置の概略図である。
図13】一例による羊水を濾過するための方法のフローチャートである。
図14】一例によるMSC組織特異性スコアの計算ステップを示すフローチャートである。
図15】5%および15%の閾値を表すMSC組織特異性スコアを示すグラフの一例である。
図16】15%パーセンタイルを超える組織優先データを含む、組織優先データおよび組織低優先データを示すグラフの一例である。
図17A】誘発性肺線維症のラットを処理するためにTAF肺MSCを使用することの効果を実証する例示的な試験の結果を示す。
図17B】誘発性肺線維症のラットを処理するためにTAF肺MSCを使用することの効果を実証する例示的な試験の結果を示す。
図17C】誘発性肺線維症のラットを処理するためにTAF肺MSCを使用することの効果を実証する例示的な試験の結果を示す。
図17D】誘発性肺線維症のラットを処理するためにTAF肺MSCを使用することの効果を実証する例示的な試験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
好ましい実施例の詳細な説明
新生児品質および成体組織特異性を有するMSC亜集団を精製、培養、および選択する方法を図1に要約し、以下に詳述する。本明細書に開示される実施例は、羊水由来細胞を採取する、精製する、単離する、増殖させる、分化させる、および成熟させるための装置および方法に関する。本明細書に開示される実施例は、特定のタイプの羊水由来細胞の採取に限定されるものではなく、本明細書に開示される技術は、異なる細胞および組織に広く適用可能である。
【0022】
羊水採取
羊水は、参照によりその内容全体が組み込まれる米国特許出願第14/776,499号(US2016/0030489に対応する)に記載された方法に従って、満期羊水(TAF)を生成するために採取され得る。具体的には、図2は、本発明の例示的な例による、羊水採取の方法300の一例のブロック図である。方法300は、任意の数の追加または代替のタスクを含み得ることを理解されたい。図3に示されるタスクは、図示の順序で行われる必要はなく、方法300は、本明細書に詳細に記載されていない追加の機能を有するより包括的な手順またはプロセスに組み込まれ得る。
【0023】
図2に示されるように、方法300は、例えば、帝王切開中に、妊娠している母親の子宮壁301に切開を行うことを含み得る。ステップ301は、標準的な医師のメスによって行われ得る。図2にも示されるように、方法300は、ステップ301で作成された子宮壁の切開を通して羊水採取器302を挿入することを含み得る。方法300はまた、ステップ302の羊水採取器を使用して羊膜303を貫通することを含む。ステップ303はまた、絨毛膜を貫通することを含み得る。一態様において、先端は10cmの深さまで挿入される。いくつかの例において、先端は約3cm~約30cmの深さまで挿入される。いくつかの例において、先端は、約4cm、約5cm、約6cm、約7cm、約8cm、約9cm、約10cm、約11cm、約12cm、約13cm、約14cm、約15cm、約16cm、約17cm、約18cm、約19cm、約20cm、約21cm、約22cm、約23cm、約24cm、約25cm、約26cm、約27cm、約28cm、または約29cmの深さまで挿入される。
【0024】
方法300はさらに、ステップ302の羊水採取器を使用して羊膜嚢から羊水304を採取することを含む。ステップ304は、羊水採取器の入口バルブを開くこと等によって、羊水を羊水採取器の採取チャンバに移送するためにサイフォンを開始することを含み得る。ステップ304はまた、羊水採取器の採取チャンバを羊水採取器の入口の下に配置することを含み得る。ステップ304はまた、羊水の移送を開始するために、羊水採取器の出口に負圧源をすることを含み得る。ステップ304は、利用可能な羊水を実質的にすべて回収するために羊水採取器の入口を再配置することを含み得る。
【0025】
最後に、方法300は、羊膜嚢から羊水採取器905を除去することを含む。ステップ905は、羊水採取器の入口バルブを閉じることを含み得る。一例において、採取された物質中に血液は見えない。ステップ905はまた、さらなる使用/処理のために採取システムを空にし、デバイス全体の外部を滅菌することを含み得る。一例において、外部は、70%エタノールを使用して滅菌され、その結果、例えば、本発明による細胞物質の単離のため、および流体貯蔵のための層流ベンチ設定等の任意の後処理ステップで滅菌が維持され得る。
【0026】
一例において、羊水採取手技は1分未満で行われる。一例において、羊水採取手技は1~2分で行われる。一例において、羊水採取手技は3分以内に行われる。一例において、方法は、例えば、手術創への羊水の漏出を防ぎ、視界および物理的アクセスを改善することにより、帝王切開の標準的な外科的手技と比較して単純化される。一例において、胎児の皮膚はデバイス先端の影響を受けない。
【0027】
精製
満期羊水(TAF)は、胎脂を除去するために満期羊水を濾過することによって精製される。「満期羊水」という用語は、本開示において本明細書および他の場所で使用されるが、本開示の方法、プロセス、およびデバイスは、満期羊水だけでなく、すべての羊水に適用され得ることを理解されたい。満期羊水は、例えば、閉鎖式カテーテルに基づくシステムを使用して、満期帝王切開分娩で採取された羊水であり得る。本明細書の目的のために、「満期羊水」は、妊娠37週以降の計画帝王切開で、または満期に近い計画帝王切開で、例えば妊娠36週後に採取された羊水であり得る。好ましくは、満期羊水は、妊娠37週以降の計画帝王切開で採取される。
【0028】
図3は、一例による羊水を濾過するための装置100の概略図である。羊水は、間葉系幹細胞等の胎児または羊膜嚢に由来する羊膜細胞を含む。羊水はまた、毛および胎脂等、摩擦によって皮膚から剥がれ落ちた他の物質も含んでいる。羊膜細胞以外の物質は、本明細書では粒子状物質と称され、胎便、血餅等を含む場合もある。粒子状物質は、20μmより大きいすべてのものとみなすことができる。濾過の目的のために、30μmまたは50μmより大きいすべてのものを粒子状物質として扱うことが特に有利である場合がある。任意選択的に、標的の羊膜細胞よりも大きいすべてものは粒子状物質として扱うことができる。したがって、羊水は一般に、羊膜細胞と粒子状物質の混合物を含む。装置100は、羊水から粒子状物質を濾過するためのフィルタ101と、フィルタ101を囲むチャンバ102とを備える。チャンバ102は、流体入口103および流体出口104を備える。フィルタ101を囲むチャンバ102は、フィルタ101がチャンバ102を取り巻く環境からチャンバによって隔離されており、そのため、チャンバ102内の羊水と該環境との間に流体連通がないと解釈されるべきである。したがって、チャンバ102を通る流体連通は、図3の例において、流体入口103および流体出口104を介して制御される。フィルタ101は、流体入口103と流体出口104との間でチャンバ102の内側に取り付けられている。図12は、図12に示されるような円形チャンバ102およびフィルタ101の断面A-Aの一例を示している。しかしながら、チャンバ102およびフィルタ101は、異なる用途への最適化のために様々な形状を有し得ることを理解されたい。装置100は、流体入口103と羊水サンプル供給源201(図4に示される)との間に密閉接続を形成するように配置された入口コネクタ105を備える。図4は、そのような羊水の供給源201の概略例を示している。流体入口103に接続され、流体入口103と羊水の供給源201との間に直接的に密閉接続を提供するように構成された入口コネクタ105を有することにより、汚染物質への曝露を最小限に抑え、羊水の効率的な無菌処理を提供する。これにより、羊膜細胞を得ることが容易になり、改善された品質基準での濾過後処理が可能となる。したがって、無菌医薬品の製造プロセスが容易になる。例えば、界面活性剤分子の調製が容易になり得る。装置100は、移植後の生着期の改善等の、羊膜幹細胞の機能の改善を提供する。そのような改善されたプロセスは、チャンバ102で囲まれたフィルタ101と、チャンバ102の流体入口103と羊水サンプル供給源201との間に密閉接続を形成するように配置された入口コネクタ105とを有することによって可能になる。羊膜幹細胞を細菌およびウイルス等の汚染物質に曝露するリスクが、そのようにして低減される。酸素への曝露も最小限に抑えられ、幹細胞の機能に悪影響を与える可能性のある酸素フリーラジカルの形成を減少させる。
【0029】
図3は、入口コネクタ105が、第1の密閉接続部114で流体入口103に接続された管105を含む例を示している。入口コネクタ105は、圧力嵌め接続、接着剤、クランプ、または他の固定要素を用いて、流体入口103と密閉接続を形成することができる。図4に概略的に示されるような別の例において、入口コネクタ105は、例えば、成形または他の材料形成技術によって単一の部品として形成されることによって、別個の固定要素を伴わない、流体入口103の連続的な延在部である。図3および4は、羊水を含む容器またはバッグ201等のサンプル供給源201と密閉接続を形成するように構成された第2のコネクタ115を示している。第2のコネクタ115は、解放可能な圧力嵌め接続、クランプ、もしくはそれらの組み合わせ、または他の解放可能な固定要素を備え得る。チャンバ102、フィルタ101、流体入口103、流体出口104、および入口コネクタ105は、滅菌パッケージ内のキットとして、例えば使い捨てキットとして提供され得る。そのようなキット、すなわち装置100は、このようにして羊膜幹細胞を濾過して得る、容易で改善されたプロセスを提供する。よって、使用において、羊水は、流体入口103から流体出口104に流れるときにフィルタ101を通過する。その結果、粒子状物質がフィルタ101上に堆積され、羊膜細胞を含む羊水が流体出口104を通って流れる。図12の例に見られるように、フィルタ101は、その周縁部116の周りでチャンバ102の内壁113に接続され得る。これにより、羊水が、濾過されることなく、入口103から出口104へと通過するのを回避する。フィルタ101は、チャンバ102内でのフィルタ101の折り曲げまたは湾曲が回避されるように、張力をかけるか、または他の方法で支持することができる。これにより、フィルタ101の領域全体にわたって定義されたメッシュ径または細孔系を維持し、ひいては定義された濾過特性を維持する。定義されたメッシュ径または細孔系を維持することは、フィルタ101を目詰まりさせるリスクも低減する。その結果、長期的性能を向上させることができる。
【0030】
装置100は、出口と、装置100の下流にある遠心分離機または他の羊膜細胞処理機器等の羊膜細胞受容デバイス202との間に密閉接続を形成するように、出口5 コネクタ106を備え得る。図4は、そのようなデバイス202の概略例を示している。これにより、汚染物質への曝露が最小限に抑えられ、濾過後の処理ステップで羊水の効率的な無菌処理が可能になる。図3は、出口コネクタ106が、第1の密閉接続部117で流体出口104に接続された管106を含む例を示している。出口コネクタ106は、圧力嵌め接続、接着剤、クランプ、または他の固定要素を用いて、流体出口104と密閉接続を形成することができる。図4に概略的に示されるような別の例において、出口コネクタ106は、例えば、成形または他の材料形成技術によって単一の部品として形成されることによって、別個の固定要素を伴わない、流体出口104の連続的な延在部である。図3および4は、遠心分離機202等の、装置100の下流にある羊膜細胞処理デバイスと密閉接続を形成するように構成された第2のコネクタ118を示している。第2のコネクタ118は、圧力嵌め接続、クランプ、それらの組み合わせ、または他の解放可能な固定要素を備え得る。したがって、第2のコネクタ118と、例えば遠心分離機202との間の接続は、繰り返し接続および切断され得、また、そのような手順において密閉接続を維持するために再密閉可能である。チャンバ102、フィルタ101、流体入口103、流体出口104、入口コネクタ105、および出口コネクタ106は、滅菌パッケージ内のキットとして、例えば使い捨てキットとして提供され得る。そのようなキット、すなわち装置100は、このようにして羊膜幹細胞を濾過および処理する、容易で改善されたプロセスを提供する。装置100は、羊水を加圧して流体入口103から流体出口104に流すように配置されたポンプ122、123を備え得る。これにより、羊水のより効果的な濾過が可能になる。より大きな体積をより短い時間で濾過することができる。
【0031】
図6は、フィルタ101を通して示された矢印の方向に羊水を吸引するように、ポンプ122が流体出口104に接続された例を示している。ポンプ122は、フィルタ101を通して羊水を押し出すように、流体入口103に配置されてもよい。ポンプ122は、流体入口103、流体出口104、入口コネクタ105、または出口コネクタ106と一体化された、小型の手動ポンプであり得る。
【0032】
図7は、羊水を加圧して流体入口103から流体出口104に流すようにポンプ123が配置された、後により詳細に記載する別の例を示している。チャンバ102は、流体入口103と流体出口104との間に配置された導管119を備え得る。チャンバ102内の圧力は、導管119を通る流体および/または気体連通に応じて可変であり得る。したがって、フィルタ101を通る羊水の流れは、用途に応じて最適化することができ、例えば、フィルタ101を通る流量は、導管119を介してチャンバ102内の圧力を変化させることによって増加または減少させることができる。
【0033】
図5は、導管119がチャンバ102と連通している例を示す。コネクタまたはバルブ要素等のアクセスポート120は、流体もしくは気体が、チャンバ102から排出されること、および/またはチャンバ102内に注入されることを可能にするように作動させて、その中の圧力に影響を与えることができる。導管119は、図5において流体出口103とフィルタ101との間に配置されているが、別の例において、導管119は、流体入口103とフィルタ101との間に配置されてもよい。以下に記載する図5は、チャンバ102と連通している導管119のさらなる例を示す。図7に例示されるように、ポンプ123は、導管119と連通して配置され得る。これは、チャンバ102内の流れおよび関連する濾過プロセスの最適化を容易にする。図7の例において、導管119は、チャンバ102の上流空洞108およびチャンバ102の下流空洞109と可変連通している、すなわち、フィルタ101は、チャンバ102を上流空洞108と下流空洞109とに分割するように配置され得る。図7では、導管119は、上流空洞108および下流空洞109の両方に接続されている。ポンプ123は、羊水を加圧して、上流空洞108から下流空洞109に流すように、または下流空洞109から上流空洞108に流すように構成されている。後者の場合は、例えば、フィルタ101の目詰まりまたは閉塞を解消するために、瞬間的な逆流が所望される状況において有利であり得る。このような場合、図7に概略的に示されるように、バルブ120、120’、121、121’は、所望の流れ方向を提供するように操作される。例えば、逆流の場合、バルブ120および121’は開いていてもよく、バルブ120’および121は閉じていてもよい。通常の濾過モードでは、バルブ121、121’は開いていてもよく、バルブ120、120’は閉じていてもよい。上流空洞108は、そのような濾過モードでバルブ120’を開くことによっても加圧され得る。
【0034】
フィルタ101は、図8に概略的に示されるように、第1のフィルタ要素101aと、第1のフィルタ要素101aと流体出口104との間に配置された第2のフィルタ要素101bとを備え得る。第2のフィルタ要素101bは、第1のフィルタ要素101aのメッシュ径または細孔系よりも小さいメッシュ径または細孔系を有し得る。これにより、徐々に小さくなる寸法の粒子状物質を効果的に濾過することができる。したがって、フィルタの閉塞のリスクが低減される。これにより、羊水のより信頼性が高い、堅牢な濾過プロセスが可能になる。より広いサイズ範囲の粒子状物質を含む羊水の改善された濾過も提供される。さらに、目詰まりした細孔で幹細胞が失われないため、羊水中の幹細胞のより大きな画分を得ることができる。図8では2つのフィルタ要素101a、101bであるが、徐々に減少する寸法の粒子状物質の効果的な濾過のために、流体入口103から流体出口104への流体の流れの方向にメッシュ径または細孔系が徐々に減少する任意の複数のフィルタ要素が、チャンバ102内に順番に配置され得ることを理解されたい。第1および第2のフィルタ要素101a、101bは、図8の例に概略的に示されるように、流体入口103から流体出口104への羊水の流れの方向に沿って距離(d)だけ離れていてもよい。第1および第2のフィルタ要素101a、101bの間の羊水の動きは、場合によっては濁流を伴う可能性があり、第1および第2のフィルタ要素101a、101b上における粒子の望ましくない蓄積のリスクをさらに低減し得る。
【0035】
フィルタ101は、20~2000μmの範囲のメッシュ径を有するメッシュを含み得る。別の例において、フィルタ101は、100~500μmの範囲のメッシュ径を有するメッシュを含む。これにより、羊水から粒子状物質の特に効果的な濾過が可能になる。再び図8に戻ると、第1のフィルタ要素101aは、500~1000μmの範囲のメッシュ径を有するメッシュを含み得、第2のフィルタ要素101bは、30~150μmの範囲のメッシュ径を有するメッシュを含み得る。このようにして、第1のフィルタ要素101aが、より大きな細片を除去することができ、続いて、第2のフィルタ要素101bでより小さな粒子が除去される。これにより、目詰まりのリスクがさらに最小限に抑えられるため、様々なサイズの粒子状物質の特に効果的な濾過と、より長期間にわたる増加した量の信頼性の高い濾過とが可能になる。前述のように、任意の複数のフィルタ要素をチャンバ102内に連続して配置することができる。
【0036】
図9は、チャンバ102内に配置された3つのフィルタ要素101a、101b、101cを示している。いくつかの例において、図6のフィルタ要素101bおよび図9のフィルタ要素101c等の、チャンバ102の最も下流に配置された最小のメッシュ径または細孔系を有するフィルタ要素は、単一の羊膜細胞または10細胞よりも小さい羊膜細胞塊のみがフィルタ101を通過するような寸法のメッシュ径または細孔系を有し得る。そのような例における最小のメッシュ径または細孔系は、約30μmであり得る。フィルタ101は、ナイロンメッシュ等のメッシュを含み得る。フィルタ101は、流体入口103から流体出口104への羊水の流れの方向にフィルタ101を通る可変細孔径を有する多孔質材料を含み得る。すなわち、羊水は、フィルタ101を通って出口104に向かう方向に流れ、かつ細孔径が次第に小さくなるため、より大きな細片は、入口103に最も近いフィルタ101の表面で除去される一方で、より小さなサイズの粒子は、フィルタのより深いところで除去される。前述のように、チャンバ102は、上流空洞108および下流空洞109を含み得る。上流および下流空洞108、109は、例えば、成形プロセスにおいて、または他の材料形成技術によって、チャンバ102を形成するための一体部品として形成され得る。上流および下流空洞108、109は、別個のユニットとして形成され、次いで、密閉接続を形成するように、例えば、接着剤または溶接によって互いに接続されてもよい。フィルタ101は、そのような溶接プロセスと同時にもしくはその後に、または前述の接着剤によって取り付けることができる。
【0037】
図9に概略的に示されるように、上流および下流空洞108、109は、密閉接続を形成するように、接続要素110で互いに解放可能に接続可能であり得る。これにより、例えばフィルタ101を交換するために、チャンバ102を開くことができる。したがって、フィルタ101は、チャンバ102に解放可能に接続可能であり得、例えば、フィルタ要素101a、101b、101cは、図7のチャンバ102に解放可能に接続可能であり得る。これにより、異なる細孔径もしくはメッシュ径のフィルタ要素101a、101b、101c、または異なる数のそのようなフィルタ要素をチャンバ102に取り付けることができるため、異なる用途への容易なカスタマイズが可能になる。
【0038】
接続要素110は、上流および下流空洞108、109と密閉接続を形成するように構成され、上流および下流空洞108、109の周縁部の周りに延在する環状ガスケットを備えることができる。フィルタ101は、特定の羊水サンプルに合わせて調整することができる異なる細孔径を有する、異なる数のフィルタ要素101a、101b、101cのカートリッジを含むことができる。例えば、羊水の濁度および白濁の程度(粒子サイズおよび不透明度の両方における胎脂のレベル)の評価は、適切なフィルタカートリッジを使用する指標となり得る。羊水サンプルを比較するための添付のチャートは、どのフィルタカートリッジを使用するかを示すことができる。上流空洞108および/または下流空洞109は、漏斗形状であり得る。図3~9は、上流および下流空洞108、109の両方が漏斗形状である例を示している。図11は、下流空洞109のみが漏斗形状である例を示している。漏斗形状を有することは、フィルタ101および装置100を通る所望の対称ベクトルに沿って羊水の流れを導くために有利であり得る。上流空洞108および/または下流空洞109は、フィルタ101と本質的に平行に、すなわち、流体入口103から流体出口104への羊水の流れの方向に対して垂直に配置されたチャンバ壁111a、111bを含み得る。図10は、上流および下流空洞108、109のチャンバ壁111a、111bが、フィルタ101と本質的に平行に配置された例を示している。これにより、十分なフィルタ面積を維持しながら、チャンバ102の内側の空間を最小化し、例えば、界面活性剤分子を妨害し得る空気を導入するリスクを最小限に抑え、感染のリスクを低減し、羊膜細胞における活性酸素種の有害な形成を減少させる。チャンバ102、および/または入口コネクタ105、および/または出口コネクタ106は、フタル酸エステル不含のPVC材料から形成することができる。これにより、羊膜細胞等の医薬品出発物質と接触するのに好適な装置を提供する。
【0039】
装置100は、チャンバ102の内壁113から延在するように配置された突起112を備え得る。図11および12は、そのような突起112の例を、それぞれ、断面側面図で、および断面A-Aを通して示している。突起112は、フィルタ101が、内壁113に向かって湾曲および折り曲がり始めた場合に、フィルタ101に支持を提供する。したがって、フィルタ101が内壁113から離れた突起112によって支持され得るため、そのような場合でもフィルタ101のメッシュまたは細孔を通る流れが依然として可能である。すなわち、突起112は、流量制限のリスクをさらに抑えることができ、効率的で堅牢な信頼性の高い濾過を提供する。
【0040】
図13は、粒子状物質および羊膜細胞を含む羊水を濾過する方法300のフローチャートである。方法300は、チャンバ102の流体入口103と羊水サンプル供給源201との間に密閉接続を形成すること301を含む。方法300は、チャンバ102の流体入口103から流体出口104への羊水の流れを提供することによって、チャンバ102で囲まれたフィルタ101に羊水を通過させること302を含む。これにより、粒子状物質がフィルタ101上に堆積され、羊膜細胞を含む羊水が出口104を通って流れる。したがって、方法300は、上記で装置100および図3~12に関連して記載したような有利な利点を提供する。方法300は、高品質の羊膜細胞サンプルを得るために、羊水の効果的かつ無菌的な濾過を提供する。
【0041】
一実施形態において、TAFから粒子状物質を除去して精製されたTAF細胞を得ることは、濾過、遠心分離等の当該技術分野で既知の任意の方法を適用することによって行うことができる。TAFは、20μm以上の細孔径を有するフィルタを通して濾過することができる。フィルタは、酢酸セルロース、硝酸セルロース(コロジオン)、ポリアミド(ナイロン)、ポリカーボネート、ポリプロピレン、およびポリテトラフルオロエチレン(テフロン)を含むがこれらに限定されない任意の合成材料から作製することができる。一実施形態において、粒子状物質の除去は、装置100を適用することによって行われる。
【0042】
接着選択
当業者に既知の様々な用語が、本明細書全体を通して使用されており、今後も使用される。例えば、細胞表面マーカーの文脈における「発現する、発現、および/または発現すること」という用語は、細胞の表面上の特定のマーカーの存在を示し、該表面マーカーが細胞によって生成されていることを意味する。表面マーカーの発現は、異なる細胞集団間で選択するために使用することができ、例えば、表面マーカーの発現を正に選択することは、別の細胞集団と比較して特定の表面マーカーをより強く発現する細胞集団の選択を意味する。逆に、細胞表面マーカーの発現を負に選択することは、別の細胞集団と比較して特定の表面マーカーをより弱く発現する細胞集団の選択を意味する。
【0043】
上記および本明細書の他の場所に説明されるように、TAFは様々な前駆細胞型を含む。特定の例において、特定の前駆細胞型は、接着選択を介して単離および増殖され得る。例えば、ビトロネクチン基質であるSynthemax(Merck、CORNING(登録商標)、Synthemax(登録商標)、II-SC SUBSTRATE、CLS3535-1EA)をコーティングとして使用して、幹細胞培養のためのより生体内に似た環境を作成することができ、それによってTAF由来の前駆細胞の成熟を制限し、可塑性を維持する。Synthemaxは、ヒト前駆細胞/幹細胞および他の成体幹細胞型の血清または無血清増殖のための、動物成分不含の、合成の、柔軟なビトロネクチンベースのペプチド基質である。当業者は、ビトロネクチンベースのペプチド基質が、ビトロネクチンの特定のペプチド配列等のビトロネクチンタンパク質の一部を含み得ることを理解するであろう。あるいは、無傷のビトロネクチンタンパク質が使用されてもよい。Synthemaxビトロネクチン基質は、当該技術分野で既知の細胞培養において一般的に使用される生物学的コーティングおよび/またはフィーダー細胞層に代わる、合成の、異種成分不含の代替品を提供する。簡単に説明すると、標準的な組織培養処理フラスコを、約0.2mLのSynthemax/cm(10μg/mL)でコーティングして2μg/cmの表面密度を得、37℃で約1時間、0.5時間、2時間、4時間、8時間、もしくは8時間超、または室温で約2時間、1時間、4時間、8時間、もしくは8時間超、任意選択的に除去および交換される余剰溶液とともにインキュベートすることができる。特定の例において、Synthemaxは、約1~5μg/cm、例えば2μg/cm、0.1~10μg/cm、0.5~4μg/cm、1~3μg/cm、または約1.5~2.5μg/cmの表面密度でコーティングされ得る。
【0044】
他の実施形態において、接着選択は、例えば、コラーゲン、フィブロネクチンでコーティングされた表面を使用して行うことができる。あるいは、接着選択は、組織培養処理されたプラスチックを含むコーティングされていない表面を使用して行うことができる。
【0045】
TAF液から精製された細胞を、予熱した異種成分不含の細胞培養培地に穏やかに再懸濁することができ、次いで、細胞懸濁液をSynthemaxでコーティングされたフラスコに添加する。培地は、フラスコに添加した後の様々な時点で、例えば、約2時間~168時間、12時間~96時間、24時間~72時間、36時間~60時間、42時間~56時間、または48時間後に交換することができ、その後、約毎日、1日置き、3日置き、5日置き、1週間に1回、2週間に1回、または2週間に1回未満交換することができる。使用済み培地の繰り返し除去を通して、付着していない細胞を除去することができ、それにより、Synthemax処理表面への付着親和性によってMSCを選択する。細胞は、一定期間、例えば、約4日間、7日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、18日間、21日間、28日間、または21日より長く培養することができる。任意選択的に、いくつかの例において、細胞を低酸素条件下で培養することができ、低酸素プライミングにより、増殖中の細胞代謝を変化させ、酸化ストレスに対する耐性を高め、それによって、生着、虚血性微小環境での生存、および移植されたMSCの血管新生の可能性を改善し得る。培養後、形成されたP0コロニー(コロニー形成単位-CFU)を解離して、プールすることができるプールした後、残りの細胞は、主に非組織特異的MSCであり得る。特定の例において、プールされたP0細胞を、予熱した異種成分不含の細胞培養培地に穏やかに再懸濁し、継代のためにSynthemaxを含まない組織培養処理フラスコに再播種することができる。プールされた細胞は、約100~10000細胞/cm、500~8000細胞/cm、1000~5000細胞/cm、または約2000~4000細胞/cmの播種密度で播種され得る。培地は、約1日、2日、4日、または5日以上ごとに交換することができる。約2日、4日、7日、または8日以上等の一定期間後、細胞を解離して回収することができる。後述するように、さらに選択的なMSC単離を達成することができる。
【0046】
バイオマーカーの同定
TAF-MSCと脂肪組織または骨髄に由来する成体型MSCの遺伝子発現プロファイルをRNAseqによって比較すると、TAF-MSCは、成体型MSCに存在するいくつかの遺伝子をより多く発現し、他の遺伝子をより少なく発現する傾向がある。陽性および陰性の両方のTAF-MSC特異的新生児細胞表面マーカーの同定により、抗体およびアプタマー等のリガンドまたは他の選択技術を使用して、さらに分化した、前駆細胞としての重要性が低い細胞から新生児品質のMSCを選別することができる。
【0047】
組織関連細胞を他のMSCから識別する細胞表面マーカーは、組織特異性スコアアルゴリズムを利用したバイオインフォマティクスプロセスを介して解明することができる。MSC組織特異性スコアアルゴリズムの一例を図14に示す。組織特異性は、類似性スコアとしても知られる「組織転写類似性」と、遺伝子セットスコアとしても知られる「組織特異的遺伝子発現プログラム」の2つの要素の組み合わせとして測定でされ得る。特定の例において、類似性スコアは、各MSC組織の参照サンプル(例えば、胎児肺MSCサンプル)に対する平均スピアマン相関であり得る。例において、遺伝子セットスコアは、組織特異的遺伝子セットにおける遺伝子の平均発現であり得る。図14に示すように、特定の例において、Z変換を用いて類似性スコアおよび遺伝子セットスコアを正規化して、実数または複素数の配列である入力値を複素周波数領域表現に変換した後、それらを組み合わせ、各スコアに等しい重みを割り当て、Z変換を用いて合わせた値を変換すると、得られる出力はMSC組織特異性スコアである。MSC組織特異性スコアは、平均入力サンプルと比較して、所与の組織に事実上特異的なサンプルの標準偏差がいくつあるかを測定することにより、入力サンプル間の相対的な組織特異性を評価する。例えば、MSC組織特異性スコアは、平均的なクローンと比較して、クローンサンプルが肺表現型等の組織特異的な表現型をどの程度有するように見えるかを示し得る。そのようなアプローチにより、正規分布関数を使用して上位X%のパーセンタイルスコアを特定することが可能であり、これは事実上、関連する組織に最も組織特異的なクローンの上位X%である。
【0048】
一例において、所与の組織について、組織優先的クローンは、上位X%のパーセンタイルスコアに属する任意のクローンとして定義することができ、この場合、Xは、約1、5、10、15、および20等の約0.1~25の下限、および約35、40、45、50、55、60、65、または70等の約30~75の上限を有する範囲内の任意のパーセンテージである。TAF-MSC組織特異性の優先順位付けの結果の一例を図15に示しており、15%および5%の閾値が明らかである。組織特異的クローンに優先順位を付け、次いで候補表面マーカー遺伝子を同定することができる。各組織について、組織優先群と組織低優先群の2つの群を定義することができる。好適な分析プログラム、例えば、Bioconductor.orgのDEseq2を使用して、この決定を行うことができる。組織優先群は、スコアが上位15%パーセンタイルのクローンを含み得る。組織低優先群は、下位Y%のパーセンタイルにクローンを含み得、この場合、Yは、約30、35、40、45、50、55、60、または65等の約25~70の下限、および約80、85、90、95、または99等の75~99.9の上限を有する範囲内の任意のパーセンテージである。図16は、腎臓組織に関するそのような分析の一例を示している。次に、組織優先群と組織低優先群との間で差次的に発現される遺伝子を同定することができる。最後に、差次的発現の結果は、表面マーカー遺伝子情報で注釈を付けることができる。
【0049】
特定の例において、組織特異的細胞表面マーカーを同定するために、平均的なクローンと比較して、優先的クローンの発現のZ倍を超える増加(Zは少なくとも約1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、5倍、8倍、10倍、12倍、15倍、またはさらにはそれ以上の発現の倍増)(log2FoldChange)、および約500を超える、例えば、約1000、1500、2000、2500、3000、5000、またはさらにそれ以上を超える等のTranscripts Per Kilobase Million(TPM)を有する表面マーカー遺伝子を選択して、上位の組織特異的マーカー候補、例えば、ほぼ上位5、10、20、30、40、50、60、70、100またはそれ以上の、例えば、後述の表3~6に示され、後にさらに詳細に記載されるもの等を得ることができる。好適なlog2FoldChangeおよびTPM値は、良好なマーカーの有無に応じて、組織型特異性に応じてさらに変化し得る。
【0050】
接着選択および継代後、表面マーカーを同定するための上記の組織特異性アルゴリズムを適用すると、TAF-MSC細胞は、下の表1に示すような様々な同定された表面マーカーを発現し得、これは非組織特異的TAF MSCを示唆する。当業者は、そのような表面マーカーが様々な表面密度で存在し得、他の細胞型と比較して上方制御または下方制御され得ることを理解するであろう。したがって、そのような表面マーカーは、特定の細胞型を同定および単離するために使用され得る。場合によっては、下の表1に列挙される表面マーカーは、他のMSC細胞型と比較して、特に骨髄または脂肪組織に由来する成体MSCと比較して、TAF MSCで平均して少なくとも8倍高度に発現する可能性がある。表1の作製に使用された閾値は以下のとおりである:Xは15%として選択され、Yは50%として選択され、Zは8倍として選択され、3000超のTPMが選択された。当業者は、表1および本明細書のすべての表に使用される番号付けは、同定されたマーカーの総数を示すためにのみ使用されるのであって、ある特定のマーカーが別のマーカーと比較してより強く発現することおよび/または好ましいことを示すものではないことを理解するであろう。
【表1-1】
【表1-2】
【0051】
当業者によって理解されるように、表1から特定のマーカーを、または表1から2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、もしくはそれ以上のマーカーの組み合わせを選択することにより、表1に列挙されるマーカーの好適な組み合わせを使用して成体MSCからTAF-MSCを分離することができる。特定の例において、TAF MSCは、成体MSCと比較して、前述のマーカー、例えば、TBC1D3Kおよび/またはAIF1Lおよび/またはCDHR1および/またはNKAIN4および/またはABCB1および/またはPLVAPの任意の組み合わせのより強い発現、例えば8倍以上のより強い発現の組み合わせを同定することによって、より特異的に同定することができる。マーカーの組み合わせを使用する場合、同定は、マーカーの各々の2倍以上、4倍以上、または6倍以上の発現等のより強い発現のより低い閾値で達成され得る。
【0052】
成体MSCと比較してTAF-MSCの表面でより強く発現し得る上記の表面マーカー(陽性マーカー)とは対照的に、特定の例において、表2の以下の表面マーカー(陰性マーカー)は、他の細胞型と比較してTAF-MSC上でより弱く発現し、例えば、成体MSCに対する前述のマーカーの任意の組み合わせの1/8倍以下の発現(任意選択的にTPM閾値>500)等であり得る:IL13RA2、CLU、TMEM119、CEMIP、およびLSP1。陰性マーカーの組み合わせを使用する場合、同定は、マーカーの各々の発現が1/2倍以下、1/4倍以下、または1/6倍以下等のより弱い発現のより低い閾値で達成され得る。
【0053】
2つ以上のこれらの陰性マーカーの組み合わせを使用して、TAF MSCをより特異的に単離することもできる。さらに、当業者はまた、上記の閾値のうちのいずれか等で、陰性マーカーおよび陽性マーカーの両方を含む組み合わせもまた、TAF MSCをより特異的に単離するのに有効であり得ることを認識するであろう。
【表2】
【0054】
マーカーベースの選択
羊水は、均質な液体中に不均質な細胞を含む。したがって、マーカーベースの選択が必要になる場合がある。マーカーベースの選択の一例は、蛍光活性化細胞選別(FACS)の使用によるものである。蛍光活性化細胞選別(FACS)は、TAF-MSCの細胞集団を精製するために使用することができ、たとえ標的細胞型が非常に低レベルの同定マーカー発現する場合、および/またはマーカー密度の違いに基づいて分離が必要な場合であっても、FACSは所望の細胞集団の非常に高い純度を可能にする。FACSは、サイズ、粒度、および蛍光に基づいて個々の細胞の精製を可能にする。当業者によって理解されるように、FACSを使用して、ある細胞表面マーカーを別の細胞集団よりも多く発現する特定の細胞集団を選択することができ、その逆も可能である。精製方法のいくつかの例において、パニング、補体枯渇および磁気ビーズ分離等のバルク精製方法を、FACSと組み合わせて、またはFACSの代替として使用することができる。簡単に説明すると、FACSによって目的の細胞を精製するために、最初に、所望の細胞集団上の特定の表面マーカーを認識する蛍光タグ付きモノクローナル抗体(mAbs)でそれらを染色する。染色されていない細胞の陰性選択も分離を可能にし得る。いくつかの例による細胞のGMP生産の場合、FACSは、MACSQuant(登録商標)Tyto(登録商標)等のクローズドシステムのソーティング技術を使用して実行することができる。サンプルは、使い捨ての完全密閉MACSQuant Tytoカートリッジ内で汚染のない状態に保つことができる。さらに、濾過された空気は、非常に低い圧力(<3PSI)でマイクロチャネルを通してマイクロチップに細胞を送り込むことができる。しかしながら、マイクロチャネルに入る前に、潜在的な細胞凝集体をフィルタシステムによって抑止することができ、スムーズな選別プロセスを保証する蛍光検出システムは、細胞の所定の蛍光パラメータに基づいて目的の細胞を検出することができる。標的細胞の蛍光および散乱光の特徴に基づいて、マイクロチャネル内に位置するソートバルブによってそれらの方向を変えることができる。精製方法の特定の例では、染色およびそれによる選別の成功は、同定マーカーの選択およびmAbの選択に大きく依存し得る。選別パラメータは、純度および収率の要件に応じて調節することができる。従来の液滴選別機とは異なり、MACSQuant Tytoによって選別された細胞は、高圧または帯電を経験しなくてもよく、また減圧されなくてもよい。したがって、そのような穏やかな選別アプローチは、細胞の高い生存率および機能性をもたらし得る。あるいは、他のマーカーベースの選択技術が当業者に既知であり得る。それらには、磁気活性化細胞選別、マイクロ流体ベースの選別、浮力活性化細胞選別、マスサイトメトリー等が含まれるが、これらに限定されない。
【0055】
組織特異的細胞および使用法
肺TAF細胞マーカー
上記で説明したように、TAF-MSCクローン、成体および新生児のMSC参照物質ならびに胎児線維芽細胞からのRNAseqデータと、公的に入手可能な発現データセットの分析を使用して、TAF-MSC細胞を同定および特性評価することができる。例えば、TAF-MSCの亜集団は、それらの発現データ(RNAseq)を新生児の参照サンプルとクラスター化することによって確立され得る。そのような亜集団は、肺MSC、尿路MSC(本開示では腎臓MSCとも記載される)、および皮膚MSCを含むが、これらに限定されない。発現データの各クラスターの高発現および低発現遺伝子の遺伝子リストにより、各クラスターの表面メーカー遺伝子の同定が可能となり得る。このようなデータ比較を使用して、TAF細胞の亜集団を、それらの遺伝子発現に基づいて成体MSC細胞と比較し(RNAseq)、各クラスターの新生児特異的表面マーカー遺伝子のリストを得た。肺TAF細胞に関連するいくつかの目的の表面マーカーが同定された。例えば、肺TAF細胞を同定および分離するために使用される好ましい表面マーカーの非排他的なリストを以下に提供する。さらに、TAFの異なるMSCサブタイプの数は限られているため、組織特異的MSCの選択は、最初に特性評価によって、その後、異なる組織特異的MSCの組み合わせた(多変量)表面マーカープロファイルを考慮して、材料を段階的に陰性選択/分類することによって行うことができる。当業者は、これらの表面マーカーのそのような任意の組み合わせが、TAF由来細胞および/またはTAF-MSC細胞の一般集団からの肺TAF細胞の同定および単離に使用され得ることを理解するであろう。いくつかの例において、以下の非排他的なリストの表面マーカーは、他のTAF由来細胞および/またはTAF-MSC細胞等の他の細胞型と比較して、肺TAF細胞の表面でより高度に発現し得る。
【0056】
上記で説明したように、バイオインフォマティクス技術を使用して組織特異的表面マーカーを同定することができ、したがって、表3で特定される表面マーカーは、平均的なTAF-MSCクローンと比較して、優先的クローンでの発現に少なくとも10倍の増加を有し得る(任意選択的にTPM閾値>2000)。
【表3】
【0057】
肺TAF MSCの表面でより強く発現し得る上記の表面マーカーとは対照的に、特定の例において、以下の表面マーカーは、他のTAF由来細胞および/またはTAF-MSC等の他の細胞型と比較して、肺TAF MSCでより弱く発現し得る:CD24、ITGB4、TNFSF10、GFRA1、CD74、FGFR4、HAVCR1、およびOSCAR。当業者によって理解されるように、前述のより弱く発現する表面マーカーのうちの1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上を使用して、他のTAF由来細胞および/またはTAF-MSC等の他の細胞型から肺TAF細胞を分離することができる。
【0058】
特定の例において、細胞表面マーカーCD248(エンドシアリン)を使用して、TAF MSCの集団から肺TAF MSCを選別することができる。肺TAF MSCの選別に使用できるさらなる表面マーカーは、DDR-1(ディスコイジンドメイン受容体チロシンキナーゼ1)およびLRRC38(ロイシンリッチリピート含有タンパク質38)を含み、これら3つすべてが分離に有用なマーカーとして抗体によって同定されている。いくつかの例において、エンドシアリン、DDR-1、および/またはLRRC38を単独で、または他のマーカーと組み合わせて使用して選別することができる。エンドシアリンをDDR-1またはLRRC38と組み合わせて選別することができるか、またはDDR-1およびLRRC38は、エンドシアリンなしで組み合わせることができる。
【0059】
当業者によって理解されるように、表3から特定のマーカーを、または表3から2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、もしくはそれ以上のマーカーの組み合わせおよび/またはCD248および/またはDDR-1および/またはLRR38を選択することにより、表3に列挙されるマーカーと、CD248、DDR-1、およびLRR38との好適な組み合わせを使用してTAF MSCから肺TAF MSCを分離することができる。特定の例において、肺TAF MSCは、TAF MSCと比較して、前述のマーカー、例えば、PCDH19および/またはDDR1および/またはMMEおよび/またはIFITM10および/またはBGNおよび/またはNOTCH3および/またはCD248および/またはDDR-1および/またはLRR38の任意の組み合わせのより強い発現、例えば10倍以上のより強い発現(任意選択的にTPM閾値>2000)の組み合わせを同定することによって、より特異的に同定することができる。マーカーの組み合わせを使用する場合、同定は、マーカーの各々の4倍以上、6倍以上、または8倍以上の発現等のより強い発現のより低い閾値で達成され得る。
【0060】
TAF MSCと比較して肺TAF MSCの表面でより強く発現し得る上記の表面マーカー(陽性マーカー)とは対照的に、特定の例において、以下の表面マーカー(陰性マーカー)は、他の細胞型と比較して肺TAF MSC上でより弱く発現し、例えば、TAF MSCに対する前述のマーカーの任意の組み合わせの1/8倍以下の発現(任意選択的にTPM>500)等であり得る:CD24、ITGB4、TNFSF10、GFRA1、CD74、FGFR4、HAVCR1、およびOSCAR。陰性マーカーの組み合わせを使用する場合、同定は、マーカーの各々の発現が1/2倍以下、1/4倍以下、または1/6倍以下等のより弱い発現のより低い閾値で達成され得る。
【0061】
2つ以上のこれらの陰性マーカーの組み合わせを使用して、肺TAF MSCをより特異的に分離することもできる。さらに、当業者はまた、上記の閾値のうちのいずれか等で、陰性マーカーおよび陽性マーカーの両方を含む組み合わせもまた、肺TAF MSCをより特異的に単離するのに有効であり得ることを認識するであろう。
【0062】
図17A~17Dは、CD248、DDR1、およびLRRC38を含むMSC杯細胞表面マーカーを発現する、新生児期に選別されたTAF MSC(「LBX-THX-001」と称される)を使用して行われる、治療のための肺TAF MSCの潜在的使用に関する原理証明試験の結果の一例を示す。この試験の目的は、雄ラットのブレオマイシン誘発肺線維症モデルにおけるLBX-THX-001細胞の影響を調査することであった。2つの細胞濃度(2M細胞/kgおよび5M細胞/kg)および細胞用の2種類のビヒクル(PBSおよびCryoStor CS-10)を試験した。
【0063】
ブレオマイシンへの曝露後のラット肺における線維症の発症は、文献で十分に裏付けられており、肺線維症の病理とともに異なる治療の効果を研究するために頻繁に使用されるモデルである。注入されるLBX-THX-001細胞の数は、可能なヒト治療に適切であるように選択された。したがって、細胞の数は、ラット(8~20M細胞/kg)およびヒト(0.5~2M細胞/kg)に関する以前の試験で使用された細胞数を反映するように選択された。
【0064】
34匹の雄SDラットへのブレオマイシン(1000U/ラット)の気管内注入を使用して、ラットに肺線維症を誘発した。最初の週の間、毎日ラットをモニターして体重を測定し、その後、試験が終了するまで週に2回体重を測定した。ブレオマイシンチャレンジ後4日目に、LBX-THX-001細胞を静脈内(iv)注射により投与した。注入量は194~535μL(最大許容注入量1mL/kg)であった。ブレオマイシンの気管内注入に対する反応は、注入後の最初の数日間に体重が減少し、その後回復したモデルに関する以前の経験に基づいて予想されたとおりであった。ブレオマイシン群と処置群との間で体重減少に有意差は認められなかった。
【0065】
図17A~Dに示すように、ブレオマイシンの点滴注入は肺の線維性変化を誘発した。組織病理学的評価は、影響を受けた実質の割合に関して、かつ修正されたアシュクロフトスケールを使用してスコアリングした後の両方で、ブレオマイシン群の病理学的変化を結論付けた。図17A~Dに示すように、ブレオマイシンの4日後にLBX-THX-001細胞(200万細胞/kg)で処置した群は、ブレオマイシン群と比較して有意に少ない肺の線維化を示した。これは、「影響を受けた実質の割合」の読み取り値を使用した組織病理学的評価(図17A~B)および線維症スコアリングのアシュクロフト修正スケール(図17A~D)の両方に見られた。終了時(28日後)のラットの肺には、ヒトMSCを検出することができなかった。
【0066】
腎臓TAF細胞マーカー
上記で同定された肺TAF MSC細胞マーカーと同様に、腎臓TAF細胞に関連するいくつかの目的の表面マーカーが同定された。例えば、腎臓TAF MSCを同定および分離するために使用される表面マーカーの非排他的なリストを以下の表4に示す。肺TAF MSCマーカーと同様に、表4で特定される表面マーカーは、平均的なTAF-MSCクローンと比較して、優先的腎臓TAFクローンでの発現が少なくとも12倍増加し得る(任意選択的にTPM閾値>2000)。さらに、TAFの異なるMSCサブタイプの数は限られているため、組織特異的MSCの選択は、最初に特性評価によって、その後、異なる組織特異的MSCの組み合わせた(多変量)表面マーカープロファイルを考慮して、材料を段階的に陰性選択/分類することによって行うことができる。当業者は、これらの表面マーカーのそのような任意の組み合わせが、TAF由来細胞および/またはTAF-MSC細胞の一般集団からの腎臓TAF細胞の同定および単離に使用され得ることを理解するであろう。いくつかの例において、以下の非排他的なリストの表面マーカーは、他のTAF由来細胞および/またはTAF-MSC細胞等の他の細胞型と比較して、腎臓TAF細胞の表面でより高度に発現し得る。
【表4】
【0067】
当業者によって理解されるように、表4から特定のマーカーを、または表4から2、3、4、5つ、6つ、もしくはそれ以上のマーカーの組み合わせを選択することにより、表4に列挙されるマーカーの好適な組み合わせを使用してTAF-MSCから腎臓TAF細胞を分離することができる。特定の例において、腎臓TAF MSCは、TAF MSCと比較して、前述のマーカー、例えばHAVCR1および/またはCD24および/またはCLDN6および/またはABCB1および/またはSHISA9および/またはCRB3の任意の組み合わせのより強い発現、例えば12倍以上のより強い発現(任意選択的にTPM閾値>2000)の組み合わせを同定することによって、より特異的に同定することができる。マーカーの組み合わせを使用する場合、同定は、マーカーの各々の4倍以上、6倍以上、または8倍以上の発現等、より強い発現のより低い閾値で達成され得る。
【0068】
腎臓TAF MSCの表面でより強く発現し得る上記の表面マーカー(陽性マーカー)とは対照的に、特定の例において、以下の表面マーカー(陰性マーカー)は、他の細胞型と比較して腎臓TAF細胞でより弱く発現し、例えば、他のTAF由来細胞および/またはTAF-MSC細胞に対する前述のマーカーの任意の組み合わせの1/8倍以下の発現(任意選択的にTPM閾値>500)等であり得る:GREM1、PDGFRB、BGN、FAP、CXCL12、CCKAR、CD248。陰性マーカーの組み合わせを使用する場合、同定は、マーカーの各々の発現が1/2倍以下、1/4倍以下、または1/6倍以下等のより弱い発現のより低い閾値で達成され得る。
【0069】
2つ以上のこれらの陰性マーカーの組み合わせを使用して、腎臓TAF MSCをより特異的に分離することもできる。さらに、当業者はまた、上記の閾値のうちのいずれか等で、陰性マーカーおよび陽性マーカーの両方を含む組み合わせもまた、腎臓TAF MSCをより特異的に単離するのに有効であり得ることを認識するであろう。
【0070】
皮膚TAF細胞マーカー
上記で同定された肺および腎臓のTAF MSCマーカーと同様に、皮膚TAF細胞に関連するいくつかの目的の表面マーカーが同定された。例えば、皮膚TAF細胞を同定および分離するために使用される表面マーカーの非排他的なリストを以下の表5に示す。表5で特定される皮膚TAF MSCマーカーは、平均的なTAF-MSCクローンと比較して、優先的クローンでの発現が少なくとも12倍増加し得る(任意選択的にTPM閾値>2000)。さらに、TAFの異なるMSCサブタイプの数は限られているため、組織特異的MSCの選択は、最初に特性評価によって、その後、異なる組織特異的MSCの組み合わせた(多変量)表面マーカープロファイルを考慮して、材料を段階的に陰性選択/分類することによって行うことができる。当業者は、これらの表面マーカーのそのような任意の組み合わせが、TAF由来細胞および/またはTAF-MSC細胞の一般集団からの皮膚TAF細胞の同定および単離に使用され得ることを理解するであろう。いくつかの例において、以下の非排他的なリストの表面マーカーは、他のTAF由来細胞および/またはTAF-MSC細胞等の他の細胞型と比較して、皮膚TAF細胞の表面でより高度に発現し得る。
【表5】
【0071】
当業者によって理解されるように、表5から特定のマーカーを、または表5から2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、もしくはそれ以上のマーカーの組み合わせを選択することにより、表5に列挙されるマーカーの好適な組み合わせを使用してTAF-MSCから皮膚TAF-MSCを分離することができる。特定の例において、皮膚TAF MSCは、TAF-MSCと比較して、前述のマーカー、例えば、TNFSF18および/またはPCDH19および/またはNCAM2および/またはTNFSF4および/またはCD248および/またはDDR2の任意の組み合わせのより強い発現、例えば12倍以上のより強い発現(任意選択的にTPM>2000)の組み合わせを同定することによって、より特異的に同定することができる。マーカーの組み合わせを使用する場合、同定は、マーカーの各々の4倍以上、6倍以上、または8倍以上の発現等、より強い発現のより低い閾値で達成され得る。
【0072】
皮膚TAF細胞の表面でより強く発現し得る上記の表面マーカー(陽性マーカー)とは対照的に、特定の例において、以下の表面マーカー(陰性マーカー)は、他の細胞型と比較して皮膚TAF細胞上でより弱く発現し、例えば、他のTAF由来細胞および/またはTAF-MSC細胞に対する前述のマーカーの任意の組み合わせの1/8倍以下の発現(任意選択的にTPM閾値>500)等であり得る:CD24、TNFSF10、ITGB4、ABCB1。陰性マーカーの組み合わせを使用する場合、同定は、マーカーの各々の発現が1/2倍以下、1/4倍以下、または1/6倍以下等のより弱い発現のより低い閾値で達成され得る。
【0073】
2つ以上のこれらの陰性マーカーの組み合わせを使用して、皮膚TAF MSCをより特異的に分離することもできる。さらに、当業者はまた、上記の閾値のうちのいずれか等で、陰性マーカーおよび陽性マーカーの両方を含む組み合わせもまた、皮膚TAF MSCをより特異的に単離するのに有効であり得ることを認識するであろう。
【0074】
神経TAF細胞マーカー
上記で同定された肺、腎臓、および皮膚のTAF MSCマーカーと同様に、神経TAF細胞に関連するいくつかの目的の表面マーカーが同定された。例えば、神経TAF細胞を同定および分離するために使用される表面マーカーの非排他的なリストを以下に示す。表6で特定される神経TAF MSC表面マーカーは、平均的なTAF-MSCクローンと比較して、優先的クローンでの発現が少なくとも3倍増加し得る(任意選択的にTPM閾値>500)。さらに、TAFの異なるMSCサブタイプの数は限られているため、組織特異的MSCの選択は、最初に特性評価によって、その後、異なる組織特異的MSCの組み合わせた(多変量)表面マーカープロファイルを考慮して、材料を段階的に陰性選択/分類することによって行うことができる。当業者は、これらの表面マーカーのそのような任意の組み合わせが、TAF由来細胞および/またはTAF-MSC細胞の一般集団からの神経TAF細胞の同定および単離に使用され得ることを理解するであろう。いくつかの例において、以下の非排他的なリストの表面マーカーは、他のTAF由来細胞および/またはTAF-MSC細胞等の他の細胞型と比較して、神経TAF細胞の表面でより高度に発現し得る。
【表6】
【0075】
当業者によって理解されるように、表6から特定のマーカーを、または表6から2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、もしくはそれ以上のマーカーの組み合わせを選択することにより、表6に列挙されるマーカーの好適な組み合わせを使用してTAF-MSCから神経TAF-MSCを分離することができる。特定の例において、神経TAF MSCは、TAF-MSCと比較して、前述のマーカー、例えば、HAVCR1および/またはACKR3および/またはOSCARおよび/またはC3および/またはSIRPB1および/またはSLC6A6の任意の組み合わせのより強い発現、例えば3倍以上のより強い発現(任意選択的にTPM閾値>500)の組み合わせを同定することによって、より特異的に同定することができる。マーカーの組み合わせを使用する場合、同定は、マーカーの各々の2倍以上等のより強い発現のより低い閾値、または6倍以上、8倍以上、もしくは12倍以上の発現等のより高い閾値で達成され得る。さらに、当業者はまた、上記の閾値のうちのいずれか等で、陰性マーカーおよび陽性マーカーの両方を含む組み合わせもまた、神経TAF MSCをより特異的に分離するのに有効であり得ることを認識するであろう。
【0076】
本明細書に開示されるすべての特徴(任意の添付の別紙、特許請求の範囲、要約および図面を含む)、および/またはそのように開示される任意の方法またはプロセスのすべてのステップは、任意の組み合わせで組み合わせることができるが、但し、そのような機能および/またはステップの少なくともいくつかが相互に排他的である組み合わせを除くものとする。本開示は、いずれかの前述の例の詳細に限定されない。本開示は、本明細書(付随する特許請求の範囲、要約および図面を含む)に開示される特徴のうち、任意の新規の1つもしくは任意の新規の組み合わせまで、またはそのように開示される任意の方法もしくはプロセスのステップのうち、任意の新規の1つもしくは任意の新規の組み合わせまで及ぶ。
【0077】
当業者は、いくつかの例において、図示または開示されるプロセスで行われる実際のステップが、図に示されるものとは異なる場合があることを理解するであろう。例に応じて、上記のステップの一部を削除してもよく、他では追加してもよい。例えば、開示されたプロセスで取られる実際のステップまたはステップの順序は、図に示されているものとは異なる場合がある。例に応じて、上記のステップの一部を削除してもよく、他では追加してもよい。さらに、上記で開示された特定の実施例の特徴および属性は、異なる方法で組み合わせて追加の実施例を形成することができ、それらはすべて、本開示の範囲内に含まれる。
【0078】
「できる(can)」、「できる(could)」、「してもよい(might)」、または「してもよい(may)」等の条件付きの文言は、別途明記されない限り、または使用される文脈内で別様に理解されない限り、一般に、特定の例は特定の機能、要素、またはステップを含むが、他の例はそれらを含まないことを伝えることを意図する。したがって、そのような条件付きの文言は、一般に、機能、要素、またはステップが1つ以上の例にいずれにしても必要であること、あるいは、1つ以上の例が、これらの機能、要素、もしくはステップが任意の特定の例に含まれるか、または実行されるかどうかを、ユーザ入力またはプロンプトの有無にかかわらず、決定するためのロジックを必然的に含むことを暗示することを意図するものではない。「含む(comprising」」、「含む(including)」、「有する(having)」等の用語は同義語であり、制限のない様式で包括的に使用され、追加の要素、機能、行為、操作等を除外しない。また、「または」という用語は、その包括的な意味で(排他的な意味ではなく)使用されるため、例えば、要素のリストを接続するために使用される場合、「または」という用語は、リスト内の要素のうち、1つ、いくつか、またはすべてを意味する。同様に、2つ以上の項目のリストに関連して「および/または」という用語は、以下の語の解釈のすべてを包含する:リスト内の項目のいずれか1つ、リスト内のすべての項目、およびリスト内の項目の任意の組み合わせ。さらに、本明細書で使用される「各」という用語は、その通常の意味を有することに加えて、「各」という用語が適用される要素のセットの任意のサブセットを意味することができる。さらに、「ここに」、「上記の」、「以下の」という語、および同様の意味の語は、本明細書で使用される場合、本明細書のいずれか特定の部分ではなく、全体としての本明細書を指す。
【0079】
「X、Y、およびZのうちの少なくとも1つ」という句等の接続的な文言は、別途明記されない限り、項目、用語等がX、Y、またはZのいずれかであり得ることを伝えるために一般的に使用されるような文脈で理解される。したがって、そのような接続の文言は、一般に、特定の例がXの少なくとも1つ、Yの少なくとも1つ、およびZの少なくとも1つの存在を必要とすることを暗示することを意図するものではない。
【0080】
本明細書で使用される「ほぼ」、「約」、「一般に」、および「実質的に」という用語等の、本明細書で使用される程度の文言は、記載される値、量、または特性に近く、依然として所望の機能を実行するまたは所望の結果を達成する値、量、または特性を表す。例えば、「ほぼ」、「約」、「一般に」、および「実質的に」という用語は、記載される量の10%未満、5%未満、1%未満、0.1%未満、および0.01%未満内の量を指してもよい。別の例として、特定の例において、「略平行な」および「実質的に平行な」という用語は、正確な平行から15度、10度、5度、3度、1度、または0.1度以下だけ逸脱した値、量、または特性を指す。
【0081】
本開示に記載される実施形態に対する様々な修正は、当業者には容易に明らかであり得、本明細書で定義される一般原理は、本開示の趣旨または範囲から逸脱することなく他の実施形態に適用され得る。したがって、本開示は、本明細書に示される実施形態に限定されることを意図するものではなく、本明細書に開示される原理および特徴と一致する最も広い範囲を与えられるべきである。本開示の特定の例は、以下に列挙されるか、または将来提示される請求項の組に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
図17C
図17D
【手続補正書】
【提出日】2022-06-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
満期羊水(term amniotic fluid)から満期羊水細胞(TAF細胞)を得るための方法であって、
満期羊水(TAF)を提供することと、
前記TAFから粒子状物質を除去して精製されたTAF細胞を得ることと、
前記精製されたTAF細胞の接着選択を行ってTAF接着細胞を得ることと、
前記TAF接着細胞を継代して、前記TAF細胞を含む細胞の集団を得ることと、
少なくともCD248である表面マーカーを発現する細胞として前記集団から前記TAF細胞を選択することと、を含む、方法。
【請求項2】
TAF細胞を選択することが、PCDH19、DDR1、MME、IFITM10、BGN、NOTCH3、SULF1、TNFSF18、BDKRB1、FLT1、PDGFRA、TNFSF4、UNC5B、FAP、CASP1、DDR2、PCDH18、LRRC38、およびCRLF1からなる群から選択される少なくとも1つのマーカーを発現する細胞として前記集団から前記TAF細胞を選択することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
選択ステップが、DDR1およびLRRC38の群から選択される表面マーカーをさらに発現するTAF細胞を選択することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
選択ステップが、DDR1およびLRRC38をさらに発現するTAF細胞を選択することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記TAF細胞を選択することが、CD24、ITGB4、TNFSF10、GFRA1、CD74、FGFR4、HAVCR1、およびOSCARからなる群から選択されるマーカーを発現する細胞を除外することを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
粒子状物質を除去することが、前記TAFを濾過することおよび遠心分離することを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記精製されたTAF細胞の接着選択を行うことが、前記精製されたTAF細胞をビトロネクチンベースの基質でコーティングされた表面に接着させることを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記選択ステップが、蛍光活性化細胞選別(FACS)を使用して行われる、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記選択ステップが、前記マーカーまたは表面マーカーのうちのいずれかに対する抗体を用いて行われる、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記選択ステップが、請求項2に記載の表面マーカーから少なくとも2つのマーカー、少なくとも3つのマーカー、または少なくとも4つのマーカーを発現するTAF細胞を選択することを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記選択ステップが複数の選別ステップを含み、各選別ステップが、それぞれのTAF細胞によって発現されるかまたは発現されないマーカーのセットに応じて、TAF細胞を第1の出力群または第2の出力群に割り当てることを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記選択ステップが、
少なくともCD248である表面マーカーを発現するTAF細胞を第1の出力群に割り当てるための第1の選別ステップと、
第2のマーカーのセットを発現する前記第1の出力群から第2の出力群にTAF細胞を割り当てるための第2の選別ステップと、を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる単離された満期羊水(TAF)細胞であって、前記細胞が少なくともCD248である表面マーカーを発現する、単離された満期羊水(TAF)細胞。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる単離された満期羊水(TAF)細胞であって、前記細胞が、少なくともCD248である表面マーカーを発現し、PCDH19、DDR1、MME、IFITM10、BGN、NOTCH3、SULF1、TNFSF18、BDKRB1、FLT1、PDGFRA、TNFSF4、UNC5B、FAP、CASP1、DDR2、PCDH18、およびCRLF1からなる群から選択される少なくとも1つの表面マーカーをさらに発現する、単離された満期羊水(TAF)細胞。
【請求項15】
満期羊水(TAF)細胞の単離された集団であって、前記細胞が少なくともCD248である表面マーカーを発現する、単離された集団。
【国際調査報告】