(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-19
(54)【発明の名称】ニアアイディスプレイ用マルチパススキャナ
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20221212BHJP
G02B 26/10 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B26/10 104Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022507591
(86)(22)【出願日】2020-09-24
(85)【翻訳文提出日】2022-03-31
(86)【国際出願番号】 US2020052449
(87)【国際公開番号】W WO2021076292
(87)【国際公開日】2021-04-22
(32)【優先日】2019-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515046968
【氏名又は名称】メタ プラットフォームズ テクノロジーズ, リミテッド ライアビリティ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】META PLATFORMS TECHNOLOGIES, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110002974
【氏名又は名称】弁理士法人World IP
(72)【発明者】
【氏名】ウィールライト, ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】カオ, ウェイチョアン
(72)【発明者】
【氏名】アミールソライマニ, ババク
(72)【発明者】
【氏名】ゲン, イン
【テーマコード(参考)】
2H045
2H199
【Fターム(参考)】
2H045AB01
2H045BA24
2H199CA04
2H199CA23
2H199CA25
2H199CA32
2H199CA42
2H199CA43
2H199CA53
2H199CA64
2H199CA65
2H199CA66
2H199CA67
2H199CA74
2H199CA83
2H199CA92
2H199CA94
2H199CA96
(57)【要約】
たとえばニアアイディスプレイ内で使用可能な、マルチパススキャナが開示されている。マルチパススキャナは、光ビームを、角度付けして走査し、角領域の画像を形成する。マルチパススキャナは、光源、傾斜可能なリフレクタ、および光源から放射された光を傾斜可能なリフレクタに結合し、反射された光を受光し、光を傾斜可能なリフレクタに結合して戻し、走査角度を2倍にする、マルチパスカプラを含む。マルチパスカプラは、次いで、傾斜可能なリフレクタから少なくとも2度反射された光を、スキャナの射出瞳に結合する。スキャナの射出瞳に配置された瞳複製導波路は、角領域の画像を展開する。傾斜可能なリフレクタからの光ビームの複数回の反射により、傾斜可能なリフレクタの角度付けした走査の範囲を拡大する必要なしに、角度付けした走査の範囲およびディスプレイの関連する視野を拡大することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ビームを走査するマルチパススキャナであって、前記マルチパススキャナが、
前記光ビームを供給する光源と、
傾斜可能なリフレクタであって、前記傾斜可能なリフレクタを可変の角度で傾斜させることにより、前記光源から供給される前記光ビームを反射する、傾斜可能なリフレクタと、
前記光源からの前記光ビームを受光して、前記光ビームを前記傾斜可能なリフレクタに結合し、前記傾斜可能なリフレクタからの最初の反射がなされた前記光ビームを、前記可変の角度の2倍の角度で受光して、前記光ビームを前記傾斜可能なリフレクタへ向きを変えて戻し、前記傾斜可能なリフレクタから2度目の反射がなされた前記光ビームを受光して、前記光ビームを前記マルチパススキャナの射出瞳に結合する、マルチパスカプラと
を備える、マルチパススキャナ。
【請求項2】
前記マルチパスカプラが、
第1の偏光状態を有する光を反射し、前記第1の偏光状態に直交する第2の偏光状態を有する光を透過する、反射偏光子と、
前記反射偏光子と前記傾斜可能なリフレクタとの間の光路に配置された第1の4分の1波長板(QWP)であって、前記第1のQWPを2度通過して伝搬すると、光の偏光状態を前記第1の偏光状態と前記第2の偏光状態との間で変換するよう構成される、第1の4分の1波長板(QWP)と
を備え、
動作中に、前記第2の偏光状態を有する前記光ビームが、順に、前記反射偏光子および前記第1のQWPを通って伝搬し、前記傾斜可能なリフレクタへの最初の衝突をなし、前記傾斜可能なリフレクタによって反射され、再び前記第1のQWPを通って伝搬し、これにより前記第1の偏光状態に変換され、前記反射偏光子によって反射され、前記第1のQWPを通って伝搬し、前記傾斜可能なリフレクタへの2度目の衝突をなし、前記傾斜可能なリフレクタによって反射され、前記第1のQWPを通って伝搬し、これにより前記第2の偏光状態に変換されて戻り、前記反射偏光子を通って前記射出瞳へ伝搬する、請求項1に記載のマルチパススキャナ。
【請求項3】
前記マルチパスカプラが、正の光パワーを有し、前記傾斜可能なリフレクタの近くに凸面を備える、第1のレンズ要素を備え、前記凸面が、前記反射偏光子を支持し、かつ
前記マルチパスカプラが、任意選択で、前記第1のレンズ要素と前記射出瞳との間に配置された第2のレンズ要素をさらに備え、動作中、前記光源から供給される前記光ビームが、順に、前記第2のレンズ要素を通り、前記第1のレンズ要素を通って伝搬し、前記傾斜可能なリフレクタに衝突し、前記反射偏光子によって反射され、前記傾斜可能なリフレクタへ衝突し、前記傾斜可能なリフレクタによって2度目の反射がなされ、前記第1のレンズ要素を通って伝搬し、前記第2のレンズ要素を通って伝搬し、前記マルチパススキャナの前記射出瞳に衝突するか、または
前記マルチパスカプラが、任意選択で、前記第1のレンズ要素と前記射出瞳との間に配置された第2のレンズ要素をさらに備え、前記第2のレンズ要素が、
第1および第2の同軸の光学面であって、前記第1の光学面が、前記第1のレンズ要素に向かい合っている、第1および第2の同軸の光学面、
前記光源から供給される前記光ビームを前記第2のレンズ要素に入力する、前記第1の光学面と前記第2の光学面との間の側面、ならびに
前記光ビームを、前記第2のレンズ要素の前記第1の光学面の方へ向けるために、前記第2のレンズ要素内の、前記第2のレンズ要素の前記側面を通して入力される前記光ビームの光路にある、埋め込まれたターンミラー
を備える、請求項2に記載のマルチパススキャナ。
【請求項4】
前記第1の偏光状態を有する光を反射し、前記第2の偏光状態を有する光を透過する、偏光ビームスプリッタ(PBS)、
前記PBSを出る前記光ビームを反射して前記PBSの方に戻す、前記PBSの隣接する表面に近い、第1および第2の湾曲したリフレクタであって、前記第1の湾曲したリフレクタおよび前記反射偏光子が、前記PBSの両側に配置されており、また前記第2の湾曲したリフレクタおよび前記傾斜可能なリフレクタが、前記PBSの両側に配置されている、第1および第2の湾曲したリフレクタ、
前記PBSと前記第1の湾曲したリフレクタとの間の光路に配置された第2のQWPであって、前記第2のQWPを2度通過して伝搬すると、光の偏光状態を前記第1の偏光状態と前記第2の偏光状態との間で変換するよう構成される、第2のQWP、ならびに
前記PBSと前記第2の湾曲したリフレクタとの間の光路に配置された第3のQWPであって、前記第2のQWPを2度通過して伝搬すると、光の偏光状態を前記第1の偏光状態と前記第2の偏光状態との間で変換するよう構成される、第3のQWP
をさらに備える、請求項2に記載のマルチパススキャナ。
【請求項5】
動作中に、前記光源から供給される前記光ビームが、順に、前記第1の湾曲したリフレクタ内の開口を通り、前記第2のQWPを通って伝搬し、前記第1の偏光状態にある間、前記PBSに衝突し、前記PBSによって反射されて前記傾斜可能なリフレクタに向かい、前記第1のQWPを通って伝搬し、前記傾斜可能なリフレクタによって最初の反射がなされ、再び前記第1のQWPを通って伝搬し、これにより前記第2の偏光状態に変換され、前記PBSおよび前記第3のQWPを通って伝搬し、前記第2の湾曲したリフレクタに衝突し、再び前記第3のQWPを通って伝搬し、これにより前記第1の偏光状態に変換され、前記PBSによって反射されて前記反射偏光子に向かう、請求項4に記載のマルチパススキャナ。
【請求項6】
動作中に、前記第1の偏光状態で前記PBSによって反射されて、前記反射偏光子に向かう前記光ビームが、前記PBSに向かって伝搬して戻り、前記PBSによって反射され、前記第2の湾曲したリフレクタに向かい、前記第3のQWPを通って伝搬し、前記第2の湾曲したリフレクタによって反射され、再び前記第3のQWPを通って伝搬し、これにより前記第2の偏光状態に変換され、前記PBSを通り、前記第1のQWPを通って伝搬し、前記傾斜可能なリフレクタによって2度目の反射がなされ、前記PBSに向かう、請求項5に記載のマルチパススキャナ。
【請求項7】
動作中に、前記傾斜可能なリフレクタによって2度目の反射がなされた前記光ビームが、再び前記第1のQWPを通って伝搬し、これにより前記第1の偏光状態に変換され、前記PBSによって前記第1の湾曲したリフレクタの方へ反射され、前記第2のQWPを通って伝搬し、前記第1の湾曲したリフレクタによって反射され、再び前記第2のQWPを通って伝搬し、これにより前記第2の偏光状態に変換され、前記PBSを通って伝搬し、前記反射偏光子を通って、前記射出瞳へ伝搬する、請求項6に記載のマルチパススキャナ。
【請求項8】
前記PBSと前記傾斜可能なリフレクタとの間の光路にある第1のレンズ要素、ならびに前記PBSと前記反射偏光子との間の光路にある第2のレンズ要素をさらに備える、請求項4に記載のマルチパススキャナ。
【請求項9】
前記マルチパスカプラが、前記光源から供給される光を前記傾斜可能なリフレクタに結合する第1のカプラ部分を備え、
前記マルチパスカプラが、任意選択で、前記傾斜可能なリフレクタからの光を反射して、前記傾斜可能なリフレクタに向かって戻す、リフレクタを備え、
前記マルチパスカプラが、任意選択で、前記傾斜可能なリフレクタによって最初の反射がなされた光を中継して、前記傾斜可能なリフレクタに戻す、瞳オートリレーを備える第2のカプラ部分を備え、前記マルチパスカプラが、任意選択で、前記傾斜可能なリフレクタによって2度目の反射がなされた光を、前記マルチパススキャナの前記射出瞳へ中継する、第3のカプラ部分をさらに備える、請求項1に記載のマルチパススキャナ。
【請求項10】
アイボックスにおいて角領域の画像を供給するニアアイディスプレイであって、前記ニアアイディスプレイが、
光ビームを供給する光源と、
傾斜可能なリフレクタであって、前記傾斜可能なリフレクタを可変の角度で傾斜させることにより、前記光源から供給される前記光ビームを反射する、傾斜可能なリフレクタと、
前記傾斜可能なリフレクタによって傾斜された前記光ビームを受光し、前記アイボックスにわたって、前記光ビームの複数の部分を供給することにより、前記光ビームを前記アイボックスにわたって展開する、瞳複製導波路と、
前記光源からの前記光ビームを受光して、前記光ビームを前記傾斜可能なリフレクタに結合し、前記傾斜可能なリフレクタからの最初の反射がなされた前記光ビームを、前記可変の角度の2倍の角度で受光して、前記光ビームを前記傾斜可能なリフレクタへ向きを変えて戻し、前記傾斜可能なリフレクタから2度目の反射がなされた前記光ビームを受光して、前記光ビームを前記瞳複製導波路に結合する、マルチパスカプラと
を備える、ニアアイディスプレイ。
【請求項11】
前記光源および前記マルチパスカプラが、前記瞳複製導波路の両側に配置されており、前記瞳複製導波路が、前記光源から供給される前記光ビームを、前記瞳複製導波路を通して伝搬し、前記マルチパスカプラに結合するための開口を、前記瞳複製導波路内に備える、請求項10に記載のニアアイディスプレイ。
【請求項12】
前記傾斜可能なリフレクタが、傾斜可能な微小電気機械システム(MEMS)のリフレクタを備える、請求項10に記載のニアアイディスプレイ。
【請求項13】
前記マルチパスカプラが、前記傾斜可能なリフレクタによる最初の反射がなされた光を中継して、前記傾斜可能なリフレクタに戻す、瞳オートリレーを備える、請求項10に記載のニアアイディスプレイ。
【請求項14】
アイボックスにおいて角領域の画像を供給するニアアイディスプレイであって、前記ニアアイディスプレイが、
第1の光ビームを供給する第1の光源と、
第2の光ビームを供給する第2の光源と、
前記第1および第2の光ビームを可変の角度で反射する、傾斜可能なリフレクタと、
前記傾斜可能なリフレクタによって傾斜された前記第1および第2の光ビームを受光し、前記アイボックスにわたって、前記第1および第2の光ビームの複数の部分を供給することにより、前記第1および第2の光ビームを前記アイボックスにわたって展開する、瞳複製導波路であって、前記瞳複製導波路が、第1の偏光状態の光をインカップリングするが、前記第1の偏光状態に直交する第2の偏光状態の光を透過する、偏光選択性インカプラを備える、瞳複製導波路と、
前記第1の光源からの前記第1の光ビームを受光し、前記第2の偏光状態である前記第1の光ビームを、前記傾斜可能なリフレクタに向けて反射し、前記偏光選択性インカプラを通す、第1の湾曲したリフレクタと、
前記第2の光源からの前記第2の光ビームを受光し、前記第2の偏光状態である前記第2の光ビームを、前記傾斜可能なリフレクタに向けて反射し、前記偏光選択性インカプラを通す、第2の湾曲したリフレクタと
を備え、
前記第1および第2の光ビームが、前記傾斜可能なリフレクタから反射されると、前記第1の偏光状態になり、これにより前記第1および第2の光ビームが、前記瞳複製導波路にインカップリングされる、ニアアイディスプレイ。
【請求項15】
前記第1および第2の光源が、前記瞳複製導波路の、前記第1および第2の湾曲したリフレクタとは反対側に配置されている、請求項14に記載のニアアイディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、装着型ヘッドセットに関し、詳細には、装着型視覚表示ヘッドセット用構成要素およびモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドマウントディスプレイ(HMD:head mounted display)、ヘルメットマウントディスプレイ、ニアアイディスプレイ(NED:near-eye display)などは、仮想現実(VR:virtual reality)コンテンツ、拡張現実(AR:augmented reality)コンテンツ、複合現実(MR:mixed reality)コンテンツなどの表示向けに、ますます使用されている。かかるディスプレイは、ほんの数例を挙げると、エンターテインメント、教育、訓練、および生物医学を含む様々な分野で、用途が見出されている。表示されるVR/AR/MRコンテンツは、体験を向上させ、仮想オブジェクトをユーザが観察する実際のオブジェクトに整合させるため、3次元(3D:three-dimensional)であり得る。目の位置および視線方向、ならびに/またはユーザの向きをリアルタイムで追跡することができ、また表示される映像を、ユーザの頭の向きおよび視線方向に応じて動的に調整することができ、シミュレーションされた環境または拡張された環境に没頭する、よりよい体験を可能にする。
【0003】
ヘッドマウントディスプレイには、小型のディスプレイデバイスが望まれる。HMDまたはNEDのディスプレイは通常、ユーザの頭に装着されるので、大きい、嵩張る、不均衡な、かつ/または重いディスプレイデバイスは扱いにくく、またユーザが装着するのに不快な場合がある。
【0004】
プロジェクタベースのディスプレイ、たとえば、走査型プロジェクタディスプレイは、ユーザの目が、中間画面または表示パネルなしに直接観察することができる、角領域における画像を提供する。瞳複製導波路が、角領域における画像を、ユーザの目まで運ぶために使用される。走査型プロジェクタディスプレイには、スクリーンまたは表示パネルがないため、ディスプレイのサイズおよび重量を減らすことができる。画像は、ディスプレイの視野(FOV:field of view)にわたって光ビームを走査することにより、取得され得る。
【発明の概要】
【0005】
走査型プロジェクタディスプレイは、典型的には、傾斜可能なリフレクタをベースとする、光学スキャナを必要とする。スキャナは、ディスプレイの視野(FOV)全体にわたって、光ビームを走査することができる必要がある。光ビームが走査されると、光ビームの明るさおよび/または色は、角領域の画像を供給するために、走査に合わせて変化することができる。光ビームは、2つの方向、たとえばX視野角およびY視野角にわたって走査され得る。フレームレートが十分に高い場合、目が、走査された光ビームを積分することにより、ユーザは、表示された映像を実質的にちらつきなく見ることができる。
【0006】
傾斜可能なリフレクタを備えた走査型ディスプレイを構築することの1つの課題は、傾斜可能なリフレクタの必要な角度走査範囲である。走査範囲が広い場合は、曲げ剛性および走査レート(周波数)を含む、他のパラメータを妥協する必要がある。薄くて可撓なヒンジは、所望のビームサイズおよび画質を実現するために必要な、より大きなリフレクタを支持することができない。この開示によれば、光ビームは、同じ傾斜可能なリフレクタに複数回衝突するよう作製され、これにより、リフレクタの最大傾斜角を増加させる必要なしに、走査範囲を拡大することができる。
【0007】
本発明は、請求項1に記載の光ビームを走査するマルチパススキャナ、および請求項10および14に記載の、アイボックスにおいて角領域の画像を供給するニアアイディスプレイに言及している。有益な実施形態は、従属請求項の特徴を含むことができる。
【0008】
本開示によれば、光ビームを走査するマルチパススキャナが提供されている。マルチパススキャナは、光ビームを供給する光源と、傾斜可能なリフレクタであって、傾斜可能なリフレクタを可変の角度で傾斜させることにより、光源から供給される光ビームを反射する、傾斜可能なリフレクタと、光源からの光ビームを受光して、光ビームを傾斜可能なリフレクタに結合し、傾斜可能なリフレクタからの最初の反射がなされた光ビームを、可変の角度の2倍の角度で受光して、光ビームを傾斜可能なリフレクタへ向きを変えて戻し、傾斜可能なリフレクタからの2度目の反射がなされた光ビームを受光して、光ビームをマルチパススキャナの射出瞳に結合する、マルチパスカプラとを含む。
【0009】
マルチパスカプラは、第1の偏光状態を有する光を反射し、第1の偏光状態に直交する第2の偏光状態を有する光を透過する反射偏光子と、反射偏光子と傾斜可能なリフレクタとの間の光路に配置された第1の4分の1波長板(QWP:quarter-wave waveplate)であって、第1のQWPを2度通過して伝搬すると、光の偏光状態を第1の偏光状態と第2の偏光状態との間で変換するよう構成される、第1の4分の1波長板(QWP)とを含むことができる。動作中に、第2の偏光状態を有する光ビームが、順に、反射偏光子および第1のQWPを通って伝搬し、傾斜可能なリフレクタへの最初の衝突をなし、傾斜可能なリフレクタによって反射され、再び第1のQWPを通って伝搬し、これにより第1の偏光状態に変換され、反射偏光子によって反射され、第1のQWPを通って伝搬し、傾斜可能なリフレクタへの2度目の衝突をなし、傾斜可能なリフレクタによって反射され、第1のQWPを通って伝搬し、これにより第2の偏光状態に変換されて戻り、反射偏光子を通って射出瞳へ伝搬する。
【0010】
マルチパスカプラは、正の光パワーを有し、傾斜可能なリフレクタの近くに凸面を備える、第1のレンズ要素を含むことができ、凸面は、反射偏光子を支持している。マルチパスカプラは、任意選択で、第1のレンズ要素と射出瞳との間に配置された、第2のレンズ要素も含むことができる。動作中、光源から供給される光ビームは、次いで、順に、第2のレンズ要素を通り、第1のレンズ要素を通って伝搬し、傾斜可能なリフレクタに衝突し、反射偏光子によって反射され、傾斜可能なリフレクタへ衝突し、傾斜可能なリフレクタによって2度目の反射がなされ、第1のレンズ要素を通って伝搬し、第2のレンズ要素を通って伝搬し、マルチパススキャナの射出瞳に衝突する。いくつかの実施形態では、第2のレンズ要素は、第1および第2の同軸の光学面であって、第1の光学面が第1のレンズ要素に向かい合っている、第1および第2の光学面、光源から供給される光ビームを第2のレンズ要素に入力する、第1の光学面と第2の光学面との間の側面、ならびに光ビームを、第2のレンズ要素の第1の光学面の方へ向けるために、第2のレンズ要素内の、第2のレンズ要素の側面を通して入力される光ビームの光路にある、埋め込まれたターンミラーを含むことができる。
【0011】
いくつかの実施形態では、マルチパススキャナは、第1の偏光状態を有する光を反射し、第2の偏光状態を有する光を透過する、偏光ビームスプリッタ(PBS:polarization beamsplitter)を含むことができる。第1および第2の湾曲したリフレクタは、PBSを出る光ビームを反射してPBSの方に戻すために、PBSの隣接する表面の近くに配置することができ、第1の湾曲したリフレクタおよび反射偏光子が、PBSの両側に配置されており、また第2の湾曲したリフレクタおよび傾斜可能なリフレクタが、PBSの両側に配置されている。第2のQWPは、PBSと第1の湾曲したリフレクタとの間の光路に配置され、第2のQWPを2度通過して伝搬すると、光の偏光状態を第1の偏光状態と第2の偏光状態との間で変換するよう構成され得る。第3のQWPは、PBSと第2の湾曲したリフレクタとの間の光路に配置され、第2のQWPを2度通過して伝搬すると、光の偏光状態を第1の偏光状態と第2の偏光状態との間で変換するよう構成され得る。動作中に、光源から供給される光ビームは、順に、第1の湾曲したリフレクタ内の開口を通り、第2のQWPを通って伝搬することができ、第1の偏光状態にある間、PBSに衝突し、PBSによって反射されて傾斜可能なリフレクタに向かい、第1のQWPを通って伝搬し、傾斜可能なリフレクタによって最初の反射がなされ、再び第1のQWPを通って伝搬し、これにより第2の偏光状態に変換され、PBSおよび第3のQWPを通って伝搬し、第2の湾曲したリフレクタに衝突し、再び第3のQWPを通って伝搬し、これにより第1の偏光状態に変換され、PBSによって反射されて反射偏光子に向かう。第1の偏光状態でPBSによって反射されて、反射偏光子に向かう光ビームは、任意選択で、PBSに向かって伝搬して戻り、PBSによって反射され、第2の湾曲したリフレクタに向かい、第3のQWPを通って伝搬し、第2の湾曲したリフレクタによって反射され、再び第3のQWPを通って伝搬し、これにより第2の偏光状態に変換され、PBSを通り、第1のQWPを通って伝搬し、傾斜可能なリフレクタによって2度目の反射がなされ、PBSに向かうことができる。傾斜可能なリフレクタによって2度目の反射がなされた光ビームは、任意選択で、再び第1のQWPを通って伝搬し、これにより第1の偏光状態に変換され、PBSによって第1の湾曲したリフレクタの方へ反射され、第2のQWPを通って伝搬し、第1の湾曲したリフレクタによって反射され、再び第2のQWPを通って伝搬し、これにより第2の偏光状態に変換され、PBSを通って伝搬し、反射偏光子を通って、射出瞳の方へ伝搬することができる。
【0012】
いくつかの実施形態では、マルチパススキャナは、PBSと傾斜可能なリフレクタとの間の光路にある第1のレンズ要素、ならびにPBSと反射偏光子との間の光路にある第2のレンズ要素をさらに含むことができる。マルチパスカプラが、光源から供給される光を傾斜可能なリフレクタに結合する第1のカプラ部分を備える実施形態では、マルチパスカプラは、傾斜可能なリフレクタからの光を反射して、傾斜可能なリフレクタに向かって戻す、リフレクタを含むことができる。マルチパスカプラは、傾斜可能なリフレクタによって最初の反射がなされた光を中継して、傾斜可能なリフレクタに戻す、瞳オートリレーを備える第2のカプラ部分をさらに含むことができ、またマルチパスカプラは、任意選択で、傾斜可能なリフレクタによって2度目の反射がなされた光を、マルチパススキャナの射出瞳へ中継する、第3のカプラ部分を備えることができる。
【0013】
本開示によれば、アイボックスにおいて角領域の画像を供給するニアアイディスプレイが提供される。ニアアイディスプレイは、光ビームを供給する光源と、傾斜可能なリフレクタであって、傾斜可能なリフレクタを可変の角度で傾斜させることにより、光源から供給される光ビームを反射する、傾斜可能なリフレクタと、傾斜可能なリフレクタによって傾斜された光ビームを受光し、アイボックスにわたって、光ビームの複数の部分を供給することにより、光ビームをアイボックスにわたって展開する、瞳複製導波路と、光源からの光ビームを受光して、光ビームを傾斜可能なリフレクタに結合し、傾斜可能なリフレクタからの最初の反射がなされた光ビームを、可変の角度の2倍の角度で受光して、光ビームを傾斜可能なリフレクタへ向きを変えて戻し、傾斜可能なリフレクタから2度目の反射がなされた光ビームを受光して、光ビームを瞳複製導波路に結合する、マルチパスカプラとを含む。
【0014】
光源およびマルチパスカプラが、瞳複製導波路の両側に配置されている実施形態では、瞳複製導波路は、光源から供給される光ビームを、瞳複製導波路を通して伝搬し、マルチパスカプラに結合するための開口を、瞳複製導波路内に含むことができる。傾斜可能なリフレクタは、傾斜可能な微小電気機械システム(MEMS:microelectromechanical system)のリフレクタを含むことができる。マルチパスカプラは、傾斜可能なリフレクタによる最初の反射がなされた光を中継して、傾斜可能なリフレクタに戻す、瞳オートリレーを含むことができる。
【0015】
本開示によれば、アイボックスにおいて角領域の画像を供給するニアアイディスプレイがさらに提供される。ニアアイディスプレイは、第1の光ビームを供給する第1の光源と、第2の光ビームを供給する第2の光源と、第1および第2の光ビームを可変の角度で反射する、傾斜可能なリフレクタと、傾斜可能なリフレクタによって傾斜された第1および第2の光ビームを受光し、アイボックスにわたって、第1および第2の光ビームの複数の部分を供給することにより、第1および第2の光ビームをアイボックスにわたって展開する、瞳複製導波路とを含む。瞳複製導波路は、第1の偏光状態の光をインカップリングするが、第1の偏光状態に直交する第2の偏光状態の光を透過する、偏光選択性インカプラを含む。ニアアイディスプレイは、傾斜可能なリフレクタによって傾斜された光ビームを受光し、アイボックスにわたって、光ビームの複数の部分を供給することにより、光ビームをアイボックスにわたって展開する、瞳複製導波路と、光源からの光ビームを受光して、光ビームを傾斜可能なリフレクタに結合し、傾斜可能なリフレクタからの最初の反射がなされた光ビームを、可変の角度の2倍の角度で受光して、光ビームを傾斜可能なリフレクタへ向きを変えて戻し、傾斜可能なリフレクタから2度目の反射がなされた光ビームを受光して、光ビームを瞳複製導波路に結合する、マルチパスカプラとをさらに含む。第1および第2の光源は、瞳複製導波路の、第1および第2の湾曲したリフレクタとは反対側に配置され得る。
【0016】
第1および第2の光源が、瞳複製導波路の、第1および第2の湾曲したリフレクタと同じ側に配置されている実施形態では、ニアアイディスプレイは、第1の光源と第1の湾曲したリフレクタとの間の光路にある第1の折曲げミラー、ならびに第2の光源と第2の湾曲したリフレクタとの間の光路にある第2の折曲げミラーをさらに含むことができる。
【0017】
本発明はさらに、アイボックスにおいて角領域の画像を供給するニアアイディスプレイに言及し、ニアアイディスプレイは、
- 第1の光ビームを供給する第1の光源と、
- 第2の光ビームを供給する第2の光源と、
- 第1および第2の光ビームを可変の角度で反射する、傾斜可能なリフレクタと、
- 傾斜可能なリフレクタによって傾斜された第1および第2の光ビームを受光し、アイボックスにわたって、第1および第2の光ビームの複数の部分を供給することにより、第1および第2の光ビームをアイボックスにわたって展開する、瞳複製導波路であって、瞳複製導波路が、第1の偏光状態の光をインカップリングするが、第1の偏光状態に直交する第2の偏光状態の光を透過する、偏光選択性インカプラを備える、瞳複製導波路と、
- 第1の光源からの第1の光ビームを受光し、第2の偏光状態である第1の光ビームを、傾斜可能なリフレクタに向けて反射し、偏光選択性インカプラを通す、第1の湾曲したリフレクタと、
- 第2の光源からの第2の光ビームを受光し、第2の偏光状態である第2の光ビームを、傾斜可能なリフレクタに向けて反射し、偏光選択性インカプラを通す、第2の湾曲したリフレクタと
を備える。
第1および第2の光ビームは、傾斜可能なリフレクタから反射されると、第1の偏光状態になり、これにより第1および第2の光ビームが、瞳複製導波路にインカップリングされる。
【0018】
一実施形態では、第1および第2の光源が、瞳複製導波路の、第1および第2の湾曲したリフレクタとは反対側に配置され得る。
【0019】
ここで、以下の図面と共に、例示的な実施形態を説明することにする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】この開示のマルチパススキャナスキャナを含む、ニアアイディスプレイの概略構成図である。
【
図2】同じ傾斜可能なリフレクタからの光ビームを確実に2度反射させるために、偏光ダイバーシティを使用する、偏光ベースのマルチパスカプラの概略図である。
【
図3】光ビームを伝搬するための、入力カプラ内の小さな開口を含む、瞳複製導波路の入力カプラの3次元の図である。
【
図4A】傾斜可能なリフレクタが傾斜していない場合の、
図2の偏光構成を有するマルチパススキャナと、
図3の入力カプラとを含む、ニアアイディスプレイの光線トレース断面図である。
【
図4B】傾斜可能なリフレクタが傾斜している場合の、
図2の偏光構成を有するマルチパススキャナと、
図3の入力カプラとを含む、ニアアイディスプレイの光線トレース断面図である。
【
図5A】傾斜可能なリフレクタが傾斜していない場合の、
図2の偏光構成を有するマルチパススキャナを含み、また小さな埋め込まれたミラーを含む、ニアアイディスプレイの光線トレース断面図である。
【
図5B】傾斜可能なリフレクタが傾斜している場合の、
図2の偏光構成を有するマルチパススキャナを含み、また小さな埋め込まれたミラーを含む、ニアアイディスプレイの光線トレース断面図である。
【
図6A】偏光ビームスプリッタ(PBS)をベースとするマルチパススキャナを含むニアアイディスプレイの、光源から傾斜可能なリフレクタ、反射偏光子までの、光の伝搬を示す、光線トレース断面図である。
【
図6B】偏光ビームスプリッタ(PBS)をベースとするマルチパススキャナを含むニアアイディスプレイの、光源から傾斜可能なリフレクタ、反射偏光子を経由して、反射偏光子から傾斜可能なリフレクタに戻る、光の伝搬を示す、光線トレース断面図である。
【
図6C】偏光ビームスプリッタ(PBS)をベースとするマルチパススキャナを含むニアアイディスプレイの、光源から傾斜可能なリフレクタ、反射偏光子を経由して、反射偏光子から傾斜可能なリフレクタに戻り、傾斜可能なリフレクタから反射偏光子を通って瞳複製導波路に戻る、光の伝搬を示す、光線トレース断面図である。
【
図6D】偏光ビームスプリッタ(PBS)をベースとするマルチパススキャナを含むニアアイディスプレイの、光源から傾斜可能なリフレクタ、反射偏光子を経由して、反射偏光子から傾斜可能なリフレクタに戻り、傾斜可能なリフレクタから反射偏光子を通って瞳複製導波路に戻る、折り曲げられた光路全体を示す、光の伝搬を示す、光線トレース断面図である。
【
図6E】システムを通る主光線の伝搬を示す、
図6Aから
図6Dのニアアイディスプレイの光線トレース断面図である。
【
図7】反射された光ビームの向きを変えて傾斜可能なリフレクタに戻す反射偏光子を含む、マルチパススキャナの実施形態の概略構成図である。
【
図8】反射された光ビームの向きを変えて傾斜可能なリフレクタに戻す瞳オートリレーを含む、マルチパススキャナの実施形態の概略構成図である。
【
図9A】光ビームを傾斜可能なリフレクタに向けて反射し、瞳複製導波路を通す、一対の湾曲したリフレクタを含む、ニアアイディスプレイの光線トレース断面図である。
【
図9B】光ビームを傾斜可能なリフレクタに向けて反射し、瞳複製導波路を通す、一対の湾曲したリフレクタを含む、ニアアイディスプレイの3Dワイヤフレーム図である。
【
図10A】光ビームを傾斜可能なリフレクタに向けて反射し、瞳複製導波路を通す、4つの湾曲したリフレクタを含む、ニアアイディスプレイの光線トレース3D立体図である。
【
図10B】光ビームを傾斜可能なリフレクタに向けて反射し、瞳複製導波路を通す、4つの湾曲したリフレクタを含む、ニアアイディスプレイの3Dワイヤフレーム図である。
【
図11A】光源が、瞳複製導波路の、湾曲したリフレクタと同じ側に配置されており、傾斜可能なリフレクタが傾斜していない場合の、光ビームを傾斜可能なリフレクタに向けて反射し、瞳複製導波路を通す、一対の湾曲したリフレクタを含むニアアイディスプレイの光線トレース断面図である。
【
図11B】光源が、瞳複製導波路の、湾曲したリフレクタと同じ側に配置されており、傾斜可能なリフレクタが傾斜している場合の、光ビームを傾斜可能なリフレクタに向けて反射し、瞳複製導波路を通す、一対の湾曲したリフレクタを含むニアアイディスプレイの光線トレース断面図である。
【
図12A】本明細書で開示されているニアアイディスプレイで使用可能な、マルチエミッタ光源の正面図である。
【
図12B】本明細書で開示されているニアアイディスプレイで使用可能な、マルチエミッタ光源の正面図である。
【
図12C】本明細書で開示されているニアアイディスプレイで使用可能な、マルチエミッタ光源の正面図である。
【
図13A】ビーム傾斜度の関数である、走査型プロジェクタディスプレイの視野(FOV:field of view)のアスペクト比のグラフである。
【
図14A】本開示のヘッドマウントディスプレイヘッドセットの等角図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本教示は、様々な実施形態および例と併せて説明されるが、本教示が、かかる実施形態に限定されることを意図するものではない。それどころか、本教示は、当業者によって理解されるように、様々な代替形態および同等物を包含する。この開示の原理、態様、および実施形態、ならびにこの開示の特定の例を列挙する本明細書のすべての記載は、この開示の構造的同等物と機能的同等物との両方を包含することを意図している。さらに、かかる均等物は、現在知られている同等物と、将来開発される同等物、すなわち、構造にかかわらず同じ機能を実行する、開発される任意の要素との両方を含むことを意図している。
【0022】
本明細書で使用される「第1の」、「第2の」などの用語は、順序付けを示唆することを意図するものではなく、むしろ、特に明記されていない限り、ある要素を別の要素から区別することを意図している。同様に、方法のステップの順序付けは、特に明記されていない限り、方法のステップを実行する順序付けを示唆するものではない。
図1から
図3、
図4Aおよび
図4B、
図5Aおよび
図5B、
図6Aから
図6E、
図7、
図8、
図9Aおよび
図9B、
図10Aおよび
図10B、ならびに
図11Aおよび
図11Bにおいて、同様の参照番号は、同様の要素を示す。
【0023】
図1を参照すると、ニアアイディスプレイ100は、瞳複製導波路136に光学的に結合されたマルチパススキャナ130を含む。マルチパススキャナ130は、ディスプレイのFOVにわたって可変の明るさおよび/または色の光ビーム102を走査することにより、瞳複製導波路136へ、角領域の画像を供給するために使用され得る。光ビーム102は、光源104から放射される。
【0024】
マルチパススキャナ130は、光源102から供給される光ビーム102を反射する、傾斜可能なリフレクタ106を含む。光ビーム102は、傾斜可能なリフレクタ106を可変の角度で傾斜させることにより、走査または操縦される。傾斜可能なリフレクタ106は、傾斜可能なリフレクタ106の電極に制御信号を印加することにより制御可能な角度で傾斜可能な、微小電気機械(MEMS)リフレクタを含むことができる。MEMSリフレクタは、たとえば、ミラーおよび/または格子を含むことができる。マルチパススキャナ130は、光源102から光ビーム102を受光し、光ビーム102を傾斜可能なリフレクタ106に結合するよう構成された、マルチパスカプラ140をさらに含む。マルチパスカプラ140は、光ビーム102を傾斜可能なリフレクタ106に向け、傾斜可能なリフレクタ106から、傾斜可能なリフレクタ106の傾斜角の2倍の角度で最初の反射がなされた(事象311)光ビーム102を受光し、2度目の反射のために、光ビーム102の向きを変えて傾斜可能なリフレクタ106に戻す。光ビーム102を傾斜可能なリフレクタ106に結合して戻すマルチパスカプラ140の部分141は、たとえば、ミラーまたは瞳オートリレーを含むことができる。両方の例を、以下でさらに考察することにする。
【0025】
マルチパスカプラ140は、光ビーム102の向きを変えて傾斜可能なリフレクタ106に戻し、傾斜可能なリフレクタから、可変の角度の4倍に増加した角度で2度目の反射がなされた(事象132)光ビーム102を受光し、光ビームを、マルチパススキャナ130の射出瞳134に結合する。光ビーム102の角度の増加は、傾斜可能なリフレクタ106からの複数回の反射によるものである。瞳複製導波路136は、射出瞳134の近くに配置することができ、傾斜可能なリフレクタ106の可変の傾斜角の4倍の角度で光ビームを受光する。いくつかの実施形態では、マルチパスカプラ140は、光源104と射出瞳102との間で、1よりも大きいかまたは小さい光学倍率を有する。この場合、射出瞳134での光ビーム102の角度は、傾斜可能なリフレクタ106の傾斜角の4倍とは異なることがあり、典型的には、傾斜可能なリフレクタ106の傾斜角よりも大きい。
【0026】
いくつかの実施形態では、マルチパスカプラ140は、光ビーム102を確実に、傾斜可能なミラー106から2度反射させる、偏光ダイバーシティ構成に基づくことができる。
図2を参照すると、マルチパスカプラ240は、第1の偏光状態を有する光を反射し、第1の偏光状態に直交する第2の偏光状態を有する光を透過する、反射偏光子208を含む。第1および第2の偏光状態は、たとえば、直交する直線偏光状態、または逆の掌性の円偏光状態であり得る。
【0027】
4分の1波長板(QWP)211は、反射偏光子208と傾斜可能なリフレクタ106との間の光路に配置され、QWP211を2度通過して伝搬すると、光の偏光状態を第1の偏光状態と第2の偏光状態との間で変換するよう構成される。動作中、第2の偏光状態PS2を有する光ビーム102は、順に、瞳複製導波路136を通り、反射偏光子208およびQWP211を通って伝搬し、傾斜可能なリフレクタ106に衝突し、傾斜可能なリフレクタによって最初の反射がなされ(事象231)、再びQWP211を通って伝搬し、これにより第1の偏光状態PS1に変換され、反射偏光子208によって反射され、QWP211を通って伝搬し、傾斜可能なリフレクタへの2度目の衝突をなし、傾斜可能なリフレクタによって2度目の反射がなされ(事象232)、QWP211を通って伝搬し、これにより第2の偏光状態PS2に変換されて戻り、この結果、反射偏光子208を通って瞳複製導波路136に向かって伝搬し、光ビーム102は瞳複製導波路136にインカップリングして伝搬する。
【0028】
光ビーム102は、例示のためだけに、
図2で縦に離されて示されていることを理解されたい。実際のデバイスでは、光ビーム102は、反射の法則に従って、傾斜可能なリフレクタ106への垂直の入射角で、同じ経路に沿って伝搬し、傾斜可能なリフレクタ106へのゼロでない入射角で、同じ経路からずれ得る。インカプラ、たとえば
図3に示されている格子インカプラ342を使用して、光ビーム102を瞳複製導波路136にインカップリングすることができる。光ビーム102が、最初の入射で瞳複製導波路136にインカップリングされないことを確実にするために、格子インカプラ342は、開口343を含むことができる。光ビーム102は、開口343に集束され、実質的に損失なしに、格子インカプラ342を通って伝搬することができる。
【0029】
ここで、
図2の偏光ベースのマルチパスカプラ240の実施態様を考察することにする。
図4Aおよび
図4Bを参照すると、ニアアイディスプレイ400は、瞳複製導波路136に結合されたマルチパススキャナ430を含む。マルチパススキャナ430は、光源404、傾斜可能なリフレクタ406、およびマルチパスカプラ440を含む。光源404は、瞳複製導波路136の、傾斜可能なリフレクタ406およびマルチパスカプラ440とは反対側に配置されている。マルチパスカプラ440は、正の光パワー(すなわち、集束力)を有する第1のレンズ要素414を含む。第1のレンズ要素414は、傾斜可能なリフレクタ406の近くに凸面を含み、また凸面と同軸の、凹形の反対側の面を含むことができる。凸面は、第1のレンズ要素414の凸面と同じ形状であり得る、反射偏光子408を支持している。QWP411は、反射偏光子408と傾斜可能なリフレクタ406との間に配置されている。QWP411は、傾斜可能なリフレクタ406の、図示されていない筐体の窓によって支持されてもよく、さらには傾斜可能なリフレクタ406自体によって支持されてもよく、または反射偏光子408に積層されてもよい。
【0030】
マルチパスカプラ440は、第1のレンズ要素414と、瞳複製導波路136の近くに位置する射出瞳との間に配置された、第2のレンズ要素416をさらに含むことができる。動作中、光源404は、瞳複製導波路136(
図3)の入力カプラ342内の開口343に収束する、光ビーム402を供給する。光ビーム402(
図4Aおよび
図4B)は、開口343を通って伝搬し、マルチパスカプラ440に結合される。次いで、光ビーム402は、順に、第2のレンズ要素416を通り、第1のレンズ要素414を通って伝搬し、傾斜可能なリフレクタ406に衝突し、傾斜可能なリフレクタ406によって反射され、反射偏光子408によって反射され、傾斜可能なリフレクタ406に衝突し、傾斜可能なリフレクタ406によって2度目の反射がなされ、第1のレンズ要素414を通って伝搬し、第2のレンズ要素416を通って伝搬し、瞳複製導波路136に位置するマルチパススキャナ430の射出瞳に衝突する。第1のレンズ要素414および第2のレンズ要素416の表面は、瞳複製導波路136での光ビーム402の必要なコリメーションを実現するよう最適化され得る。上記の光路は、
図2を参照して上記のように構成された、反射偏光子408およびQWP411の位置および向きによって画定される。
【0031】
ここで
図5Aおよび
図5Bに目を向けると、ニアアイディスプレイ500は、瞳複製導波路536に結合されたマルチパススキャナ530を含む。マルチパススキャナ530は、光源504、傾斜可能なリフレクタ506、およびマルチパスカプラ540を含む。光源504は、瞳複製導波路536の、傾斜可能なリフレクタ506およびマルチパスカプラ540と同じ側に配置されている。マルチパスカプラ540は、正の光パワーを有する第1のレンズ要素514を含む。第1のレンズ要素514は、傾斜可能なリフレクタ506の近くに凸面を含み、また凸面と同軸の、凹形の反対側の面を含むことができる。凸面は、第1のレンズ要素514の凸面と同じ形状であり得る、反射偏光子508を支持している。QWP511は、反射偏光子508と傾斜可能なリフレクタ506との間に配置されている。QWP511は、傾斜可能なリフレクタ506の、図示されていない筐体の窓によって支持されてもよく、さらには傾斜可能なリフレクタ506自体によって支持されてもよく、または反射偏光子408に積層されてもよい。
【0032】
マルチパスカプラ540は、第1の同軸の光学面521および第2の同軸の光学面522を有する、第2のレンズ要素516をさらに含むことができ、第1の光学面521は、第1のレンズ要素514に向かい合っている。側面520は、光源504から供給される光ビーム502を第2のレンズ要素516に入力するために、第1の光学面521と第2の光学面522との間に配置され得る。埋め込まれたターンミラー518は、光ビーム502を第2のレンズ要素516の第1の光学面521の方へ、さらに第1のレンズ要素514を通過する方へ向けるために、第2のレンズ要素516の側面520を通して入力された光ビーム502の、第2のレンズ要素516内の光路に配置され得る。
【0033】
光ビーム502は、側面520を通って伝搬し、埋め込まれたターンミラー518によって反射される。次いで、光ビーム402は、順に、第2のレンズ要素516の第1の表面521を通り、第1のレンズ要素514を通って伝搬し、傾斜可能なリフレクタ506に衝突し、傾斜可能なリフレクタ506によって反射され、反射偏光子508によって反射され、傾斜可能なリフレクタ506に衝突し、傾斜可能なリフレクタ506によって再度反射され、第1のレンズ要素514を通って伝搬し、第2のレンズ要素516を通って伝搬し、瞳複製導波路536に位置するマルチパススキャナ530の射出瞳に衝突する。第1のレンズ要素514および第2のレンズ要素516の表面は、瞳複製導波路536での光ビーム502の必要なコリメーションを実現するよう最適化され得る。上記の光路は、
図2を参照した上記のものと同様の構成で配置された、反射偏光子508およびQWP511の位置および向きによって画定される。
【0034】
図6Aから
図6Eを参照すると、ニアアイディスプレイ600は、瞳複製導波路636に結合されたマルチパススキャナ630を含む。マルチパススキャナ630は、光源604、傾斜可能なリフレクタ606、たとえば窓607を有するパッケージ化されたMEMSの傾斜可能なリフレクタ、およびマルチパスカプラ640を含む。
図4Aおよび
図4Bのマルチパスカプラ440ならびに
図5Aおよび
図5Bのマルチパスカプラ540と同様に、
図6Aから
図6Rのマルチパスカプラ640は、第1の偏光状態を有する光を反射し、第1の偏光状態に直交する第2の偏光状態を有する光を透過する反射偏光子608、ならびに反射偏光子608と傾斜可能なリフレクタ606との間の光路に配置された第1のQWP611を含むという点で、
図2の偏光ベースの2度反射の構成を採用している。
【0035】
マルチパスカプラ540は、第1の偏光状態を有する光を反射し、第2の偏光状態を有する光を透過する偏光ビームスプリッタ(PBS)658と、PBS658を出る光ビームを反射してPBS658の方に戻す、PBS658の隣接する表面に近い、第1の湾曲したリフレクタ661および第2の湾曲したリフレクタ662とをさらに含む。第1の湾曲したリフレクタ661および反射偏光子608は、PBS658の両側、すなわち、
図6Aから
図6EのPBS658の下および上に配置することができ、第2の湾曲したリフレクタ662および傾斜可能なリフレクタ606は、PBS658の他方の両側、すなわちPBS658の右および左に配置することができる。第1の湾曲したリフレクタ661および第2の湾曲したリフレクタ662はそれぞれ、湾曲したリフレクタの遠位の(すなわち、PBS658から最も遠い)凸面に反射コーティングを備えた、凹レンズを含むことができる。反射コーティングは、リフレクタの光軸の方向に間隔をあけて配置された、いくつかのコーティングを含むことができる。こうしたコーティングのいくつかは、表示されるべき画像の特定のカラーチャネルの光を選択的に反射する、ダイクロイックであり得る。かかる構成を使用して、システムの色収差を補償することができる。
【0036】
マルチパスカプラ540は、PBS658と第1の湾曲したリフレクタ661との間の光路に配置され、第2のQWP612を2度通過して伝搬すると、光の偏光状態が第1の偏光状態と第2の偏光状態との間で変換されるよう構成される、第2のQWP612、ならびにPBS658と第2の湾曲したリフレクタ662との間の光路に配置され、第3のQWP613を2度通過して伝搬すると、光の偏光状態が第1の偏光状態と第2の偏光状態との間で変換されるよう構成される、第3のQWP613をさらに含む。マルチパスカプラ540は、PBS658と傾斜可能なリフレクタ606との間の光路にある第1のレンズ要素671、ならびにPBS658と反射偏光子608との間の光路にある第2のレンズ要素672とをさらに含むことができる。マルチパスカプラ540を通る光の伝搬は、PBS658の7度の通過を含み、
図6A、
図6B、および
図6Cに順次描かれているいくつかのステップで、以下に考察することにする。
【0037】
光源604から放射される光ビーム602の、PBS658を通る最初の3度の通過が、
図6Aに示されている。本明細書では、
図6Bから
図6Eにおいて、第1の偏光状態は、
図6Aから
図6Eに垂直に配向された直線偏光状態であり、第2の偏光状態は、
図6Aから
図6Eの平面内に配向された直線偏光状態である。光源604(
図6A)にから放射された光ビーム602は、円偏光されている。光ビーム602は、第1の湾曲したリフレクタ661内の開口643を通って伝搬するよう集束される。光ビーム602は、次いで、第2のQWP612を通って伝搬し、第1の偏光状態にある間、PBS658に衝突し、PBS658によって反射されて傾斜可能なリフレクタ606に向かい、第1のQWP611を通って伝搬し、傾斜可能なリフレクタ606によって最初の反射がなされ、再び第1のQWP611を通って伝搬し、これにより第2の偏光状態に変換され、PBS658および第3のQWP613を通って伝搬し、第2の湾曲したリフレクタ662に衝突し、再び第3のQWP613を通って伝搬し、これにより第1の偏光状態に変換して戻され、したがって、PBS658によって反射されて反射偏光子608に向かう。
【0038】
光ビーム602の、PBS658を通る次の2度の通過が、
図6Bに示されている。光ビーム602は、第1の偏光状態でPBS658によって反射され、反射偏光子608に向かい、図示のように、PBS658に向かって伝搬して戻り、PBS658によって反射され、第2の湾曲したリフレクタ662に向かい、第3のQWP613を通って伝搬し、第2の湾曲したリフレクタ662によって反射され、再び第3のQWP613を通って伝搬し、これにより第2の偏光状態に変換され、PBS658を通り、第1のQWP611を通って伝搬し、傾斜可能なリフレクタ606によって2度目の反射がなされ、PBS658に向かう。
【0039】
光ビーム602の、PBS658を通る最後の2度の通過が、
図6Cに示されている。傾斜可能なリフレクタ606によって2度目の反射がなされた光ビーム602は、再び第1のQWP611を通って伝搬し、これにより第1の偏光状態に変換され、PBS658によって第1の湾曲したリフレクタ661の方へ反射され、第2のQWP612を通って伝搬し、第1の湾曲したリフレクタ661によって反射され、再び第2のQWP612を通って伝搬し、これにより第2の偏光状態に変換され、PBS658を通って伝搬し、反射偏光子608を通って、瞳複製導波路636の近くに位置する射出瞳へ伝搬する。
【0040】
ニアアイディスプレイ600内での光ビーム602の全光路が、
図6Dに示されている。
図6Eは、光ビーム602の主光線699の全光路を示している。要約すると、主光線699は、1つの立方体の幅の光路を7度通過する。立方体を通る最初の3度の通過が
図6Aに描かれ、次の2度の通過が
図6Bに描かれ、最後の2度の通過が
図6Cに描かれている。さらに、傾斜可能なリフレクタ606の瞳は、最初に反射偏光子602に中継され、次いで傾斜可能なリフレクタ606自体に中継されて戻り(反射角を2倍にする)、次いで反射偏光子608に中継されて戻り、今度は瞳複製導波路636の方に透過する。
【0041】
図4Aおよび
図4Bのマルチパスカプラ440、
図5Aおよび
図5Bの540、および
図6Aから
図6Eの640は、同様の機能を実行し、第1に、光源から放射された光ビームを傾斜可能なリフレクタに結合し、第2に、傾斜可能なリフレクタによって反射された光ビームを傾斜可能なリフレクタに戻して結合し、第3に、傾斜可能なリフレクタから複数回反射された光ビームを、射出瞳または瞳複製導波路に結合する。したがって、上記のマルチパスカプラは、それぞれが、光源から供給された光を傾斜可能なリフレクタに結合することを担当する第1のカプラ部分、傾斜可能なリフレクタによって反射された光を傾斜可能なリフレクタに戻して結合する第2のカプラ部分、および傾斜可能なリフレクタから複数回反射された光を射出瞳に結合する第3の結合部分を有するものと、説明することができる。マルチパスカプラの相異なる部分が、同じ光学素子を共有する場合がある。これは、以下で考察する
図7および
図8に示されている。
【0042】
最初に
図7を参照して、さらに
図4A、
図4B、
図5A、および
図5Bを参照すると、マルチパスカプラ740(
図7)は、
図4Aおよび
図4Bのマルチパスカプラ440および
図5Aおよび
図5Bのマルチパスカプラ540を表している。マルチパスカプラ740の第1の部分781(
図7)は、光源704から供給される光を、傾斜角αだけ傾斜して
図7に示されている、傾斜可能なリフレクタ706に結合する。第1の部分781は、たとえば、瞳複製導波路136内の開口343、ならびに第1のレンズ要素414および第2のレンズ要素416(
図4Aおよび
図4B)、または埋め込まれた方向転換ミラー518、ならびに第1のレンズ要素514および第2のレンズ要素516(
図5Aおよび
図5B)を含むことができる。第2の部分782(
図7)は、傾斜角αの2倍で傾斜可能なリフレクタ706によって反射された光を、傾斜可能なリフレクタ706へ戻して結合する。光は、傾斜可能なリフレクタ706からの光を反射して、傾斜可能なリフレクタ706に向かって戻す、リフレクタによって結合される。たとえば、反射偏光子408(
図4Aおよび
図4B)は、光ビーム402を反射して傾斜可能なリフレクタ406に向かって戻し、
図5Aおよび
図5Bの反射偏光子508(
図5Aおよび
図5B)は、光ビーム502を反射して傾斜可能なリフレクタ506に向かって戻す。マルチパスカプラ740の第3の部分783(
図7)は、傾斜角αの4倍で、2度目の反射がなされた光を、瞳複製導波路736の近くに位置する射出瞳に結合する。第3の部分783はまた、第1のレンズ要素414および第2のレンズ要素416(
図4Aおよび
図4B)、ならびに第1のレンズ要素514および第2のレンズ要素516(
図5Aおよび
図5B)を含むことができる。
【0043】
ここで
図8を参照して、さらに
図6Aから
図6Eを参照すると、マルチパスカプラ840(
図8)は、
図6Aから
図6Eのマルチパスカプラ640を表している。マルチパスカプラ840の第1の部分881(
図8)は、光源804から供給される光を、傾斜角αだけ傾斜して
図8に示されている、傾斜可能なリフレクタ806に結合する。第1の部分881は、たとえば、第1の湾曲したリフレクタ661内の開口643、PBS658、および第1のレンズ要素671(
図6A)を含むことができる。第2の部分882(
図8)は、傾斜角αの2倍で、傾斜可能なミラーによって反射された光802*を、傾斜可能なミラー706の同じ位置へ戻して結合する。光は、マルチパスカプラ840内で、傾斜可能なリフレクタ806によって最初の反射がなされた光802*を中継して、傾斜可能なリフレクタ806の同じ位置に戻す、瞳オートリレーによって結合される。瞳オートリレーは、
図6Aおよび
図6Bのマルチパスカプラ640では、第1のレンズ要素671、PBS658、第2の湾曲したリフレクタ662、および第2のレンズ要素672によって表され、光ビーム602を、傾斜可能なリフレクタ606の同じ位置に戻す。マルチパスカプラ840の第3の部分883(
図8)は、傾斜角αの4倍で、2度目の反射がなされた光を、射出瞳に結合する。第3の部分883はまた、第1のレンズ要素671、PBS658、第1の湾曲したリフレクタ661、および第2のレンズ要素672(
図6C)を含むことができる。第3の部分883も瞳リレーであり、したがって、第3の部分883は、傾斜角αの4倍の光を、傾斜角ゼロで同じ位置に戻す。瞳リレーおよび/または瞳オートリレーを使用することにより、傾斜可能なミラー606、806のサイズ、および瞳複製導波路636、836の格子インカプラのサイズを低減することが可能となるので、有益である。
【0044】
図9Aを参照すると、ニアアイディスプレイ900は、第1の光ビーム901を供給する第1の光源903、および第2の光ビーム902を供給する第2の光源904を含む。傾斜可能なリフレクタ906は、第1の光ビーム901および第2の光ビーム902を、可変の角度で反射するよう構成される。瞳複製導波路936は、傾斜可能なリフレクタ906によって傾斜された第1の光ビーム901および第2の光ビーム902を受光し、アイボックス990にわたって、第1の光ビーム901および第2の光ビーム902の複数の部分を供給することにより、第1の光ビーム901および第2の光ビーム902をアイボックス990にわたって展開するよう構成され、これによりニアアイディスプレイ900のユーザは、ニアアイディスプレイ900が供給する角領域における画像を、快適に見ることができる。瞳複製導波路936は、第1の偏光状態の光を瞳複製導波路936にインカップリングするが、第1の偏光状態に直交する第2の偏光状態の光を透過する、偏光選択性インカプラ942を含む。
【0045】
ニアアイディスプレイ900は、第1の光源903からの第1の光ビーム901を受光し、第2の偏光状態である第1の光ビーム901を、傾斜可能なリフレクタ906に向けて反射し、偏光選択性インカプラ942を通すよう構成される、第1の湾曲したリフレクタ961をさらに含む。第1の光源903で生成された第1の光ビーム901は、第2の偏光状態にあるので、第1の光ビーム901は、実質的に、瞳複製導波路936に結合することなく、インカプラ942を通って伝搬する。
【0046】
同様に、第2の湾曲したリフレクタは、第2の光源904からの第2の光ビーム902を受光し、第2の偏光状態である第2の光ビーム902を、傾斜可能なリフレクタ906に向けて反射し、実質的に瞳複製導波路936へ結合することなく、偏光選択性インカプラ942を通すよう構成され得る。第1の光源903および第2の光源904は、瞳複製導波路の、第1の湾曲したリフレクタ961および第2の湾曲したリフレクタ962とは反対側に配置されている。第1の湾曲したリフレクタ961および第2の湾曲したリフレクタ962は、
図6Aから
図6Eの湾曲したリフレクタ661および662と同様に構築され得る。
【0047】
第1および第2の光ビームは、傾斜可能なリフレクタから反射されると、第1の偏光状態に変換される。変換は、傾斜可能なリフレクタ906と瞳複製導波路936との間の光路に配置された、専用の偏光変換素子のおかげで容易であり得る。いくつかの実施形態では、変換は、偏光変換素子がなくても行われ得る。たとえば、第1の偏光状態と第2の偏光状態とが、逆の掌性の円偏光状態である実施形態では、第2の偏光状態から第1の偏光状態への変換は、傾斜可能なリフレクタ906、またはさらに言えば任意のリフレクタからの反射時に生じる。というのは、反射時に、光電場のX成分とY成分との間の位相関係は維持されるが、伝搬方向が逆になり、これにより円偏光の掌性が逆の掌性に変わるからである。このため、第1の光ビーム901および第2の光ビーム902は、インカプラ942によって瞳複製導波路936にインカップリングされる。
【0048】
第1の光源903および第2の光源904によってそれぞれ生成された第1の光ビーム901および第2の光ビーム902は、ニアアイディスプレイ900の視野(FOV)の様々な部分にわたって走査され、これによりFOV全体に展開する。FOVの一部が重なり合い、これにより、空間分解能、全体的な明るさなどを向上させるために使用され得る、冗長なエリアを設けることができる。
【0049】
図10Aおよび
図10Bを参照すると、ニアアイディスプレイ1000は、
図9のニアアイディスプレイ900と同様であり、同様の要素、たとえば瞳複製導波路1036、傾斜可能なミラー1006などを含む。
図10Aおよび
図10Bのニアアイディスプレイ1000は、傾斜可能なリフレクタ1061、16062、1063、および1064によってそれぞれ反射され、傾斜可能なリフレクタの対応するFOV部分にわたって傾斜可能なリフレクタ1006によって走査される、2つではなく4つの光ビーム1001、1002、1051、および1052を供給する、2つではなく4つの光源1003、1004、1053、1054を含む。
【0050】
図11Aおよび
図11Bに目を向けると、ニアアイディスプレイ1100は、
図9のニアアイディスプレイ900と同様であり、同様の要素、すなわち、光源1103および1104、偏光選択性入力カプラ1142を有する瞳複製導波路1136、湾曲したリフレクタ1161および1162、ならびに光源1103および1104からそれぞれ放射され、湾曲したリフレクタ1161および1162によってそれぞれコリメートされた光ビーム1101および1102を、可変の角度で反射する、傾斜可能なリフレクタ1106を含む。
図11Aおよび
図11Bのニアアイディスプレイ1100は、光源1103および1104と湾曲したリフレクタ1161および1162との間の光路にそれぞれ配置された、折曲げミラー1191および1192をさらに含む。折曲げミラー1191および1102により、光源1103および1104を、瞳複製導波路の、湾曲したリフレクタ1161および1162と同じ側に配置し、これにより、光ビーム1101および1102が瞳複製導波路1136を通過する回数を、減らすことができる。光源1103および1104は、それぞれ、個別のエミッタのグループ(それぞれ、供給源グループ1および供給源グループ2)を含むことができ、さらに言えば、
図1の光源104、
図4Aおよび
図4Bの404、
図5Aおよび
図5Bの504、
図6Aから
図6Eの604、
図7の704、
図8の804、
図9Aおよび
図9Bの903および904、ならびに
図10Aの1003、1004、1053、および1054もまた、それぞれ複数のエミッタを含むことができる。カラーチャネルごとに、いくつかのエミッタが設けられ得る。
【0051】
図12A、
図12B、および
図12Cを参照すると、4つの赤色エミッタ1200Rが赤(R)カラーチャネル(暗い影付きの円)用に設けられ得、4つの緑色エミッタ1200Gが緑(G)カラーチャネル(中程度の影付きの円)用に設けられ得、4つの青色エミッタ1200Bが青(B)カラーチャネル(明るい影付きの円)用に設けられ得る。エミッタ1200R、1200G、および1200Bはそれぞれ、共通の半導体基板を共有するリッジエミッタであり得る。エミッタ1200R、1200G、および1200Bは、ほんの数例を挙げると、直線パターン(
図12A)、ジグザグパターン(
図12B)、またはハニカムパターン(
図12C)に配置され得る。
【0052】
同じ傾斜可能なリフレクタを照射する複数のエミッタを有することにより、エミッタによって生成された光ビームの走査が、グループとして一体に実行され得る。光源が複数の個別のエミッタを含む場合、照射する光ビームは、互いにわずかな角度で共伝搬する複数のサブビームを含む。サブビームの最大角度をなす円錐は、いくつかの実施形態では、5度未満、2度未満、または1度未満であり得る。複数のエミッタ、場合によっては複数の光源は、一部の光源が故障した場合の冗長性をもたらす、画像の解像度を上げる、全体的な画像の明るさを上げる、などのために使用され得る。複数の光源がそれぞれ、それぞれの光源自体のコリメータを装備され得る。
【0053】
図1のニアアイディスプレイ100、
図4Aおよび
図4Bの400、
図5Aおよび
図5Bの500、
図6Aから
図6Eの600、
図9Aおよび
図9Bの900、
図10Aおよび
図10Bの1000、ならびに
図11Aおよび
図11Bの1100は、光ビームの傾斜可能なリフレクタへの、小さい傾斜度での結合を可能にする。本明細書において、「小さい傾斜度」という用語は、基準の、たとえば中心またはゼロ度の傾斜角のときの、傾斜可能なリフレクタにおける小さい入射角、すなわち、法線入射を意味する。傾斜度が小さいことの1つの利点が、
図13Aから
図13Cに示されている。最初に
図13Aを参照すると、傾斜可能なリフレクタを使用するプロジェクタのFOVのアスペクト比が、傾斜度、すなわち、傾斜可能なリフレクタが基準位置または中心位置にあるときの入射角の関数としてプロットされている。アスペクト比は、以下の4つの場合についてプロットされている。軸上75度×50度でのFOV、軸上60度×40度でのFOV、軸上45度×30度でのFOV、および軸上30度×20度でのFOV。アスペクト比は、傾斜度ゼロ、すなわち法線入射での1.5から、傾斜角度40度での約1.1まで低くなる。
【0054】
図13Bは、傾斜度ゼロでの走査角度エリア1300B、および関連する内接長方形のFOV1302Bを示している。傾斜角ゼロのFOV1302Bの立体角は、角度エリア1300Bの大部分をカバーしている。
図13Cは、比較すると、傾斜度40度での走査角度エリア1300C、および関連する内接長方形FOV1302Cを示している。FOV1302Cの立体角は、角度エリア1300Cのより小さい割合しか占めておらず、傾斜度ゼロのFOV1302Bのほぼ2分の1であり、アスペクト比が異なる。したがって、小さい傾斜度での結合により、傾斜可能なリフレクタの走査範囲の利用率が高まり、傾斜可能なリフレクタの同じ走査範囲で、より広い視野が可能になる。
図1および
図2の傾斜可能なリフレクタ106、
図4Aおよび
図4Bの406、
図5Aおよび
図5Bの506、
図6Aから
図6Eの606、
図7の706、
図8の806、
図9Aおよび
図9Bの906、
図10Aおよび
図10Bの1006、ならびに
図11Aおよび
図11Bの1106は、MEMSの傾斜可能なリフレクタの実施形態であり得ることに留意されたい。
【0055】
本開示の実施形態は、人工現実システムを含むか、または人工現実システムと組み合わせて実施され得る。人工現実システムは、視覚情報、音声、触覚(体性感覚)情報、加速度、バランスなどの感覚を通して得られる外界に関する感覚情報を、ユーザに提示する前に何らかのやり方で調整する。人工現実は、非限定的な例として、仮想現実(VR)、拡張現実(AR)、複合現実(MR)、ハイブリッド現実、またはこれらの何らかの組合せおよび/もしくは派生物を含むことができる。人工現実コンテンツは、完全に生成されたコンテンツ、または取り込まれた(たとえば、実世界の)コンテンツと組み合わされて生成されたコンテンツを含むことができる。人工現実コンテンツは、ビデオ、音声、体性もしくは触覚フィードバック、またはこれらの何らかの組合せを含むことができる。このコンテンツはいずれも、単一のチャネル、または観察者に対して3次元効果を作り出すステレオビデオなど、複数のチャネルで提示され得る。さらに、いくつかの実施形態では、人工現実はまた、アプリケーション、製品、アクセサリ、サービス、またはこれらの何らかの組合せに付随する場合もあり、これらはたとえば、人工現実内でコンテンツを作成するために使用されるか、かつ/またはさもなければ、人工現実内で使用される(たとえば、活動を行う)。人工現実コンテンツを提供する人工現実システムは、ホストコンピュータシステムに接続されたHMD、独立型HMD、眼鏡の形状要素を有するニアアイディスプレイ、携帯デバイスもしくはコンピュータ処理システム、または1人もしくは複数人の観察者に人工現実コンテンツを提供することができる他の任意のハードウェアプラットフォームなどの、装着型ディスプレイを含む、様々なプラットフォーム上に実装され得る。
【0056】
図14Aを参照すると、HMD1400は、AR/VR環境により深く没頭させるようにユーザの顔を取り囲む、AR/VR装着型ディスプレイシステムの例である。HMD1400は、たとえば、
図1の100、
図4Aおよび
図4Bの400、
図5Aおよび
図5Bの500、
図6Aから
図6Eの600、
図9Aおよび
図9Bの900、
図10Aおよび
図10Bの1000、ならびに
図11Aおよび
図11Bの1100の一実施形態である。HMD1400の機能は、物理的な実世界の環境での光景を、コンピュータで生成された映像を使って補強するか、かつ/または完全に仮想の3D映像を生成することである。HMD1400は、前部本体1402およびバンド1404を含むことができる。前部本体1402は、信頼性が高く快適なやり方でユーザの目の前に配置されるよう構成され、バンド1404は、前部本体1402をユーザの頭に固定するよう引き伸ばされ得る。ディスプレイシステム1480は、AR/VR映像をユーザに提示するために、前部本体1402に配置され得る。前部本体1402の側面1406は、不透明または透明であり得る。
【0057】
いくつかの実施形態では、前部本体1402は、HMD1400の加速度を追跡するためのロケータ1408および慣性測定ユニット(IMU:inertial measurement unit)1410、ならびにHMD1400の位置を追跡するための位置センサ1412を含む。IMU1410は、1つまたは複数の位置センサ1412から受信した測定信号に基づいて、HMD1400の位置を示すデータを生成する電子デバイスであり、HMD1400の動きに応答して、1つまたは複数の測定信号を生成する。位置センサ1412の例は、1つまたは複数の加速度計、1つまたは複数のジャイロスコープ、1つまたは複数の磁力計、動きを検出する別の好適な種類のセンサ、IMU1410の誤差補正に使用される種類のセンサ、またはこれらの何らかの組合せを含む。位置センサ1412は、IMU1410の外部、IMU1410の内部、またはこれらの何らかの組合せに配置され得る。
【0058】
ロケータ1408は、仮想現実システムがHMD1400全体の位置および向きを追跡できるように、仮想現実システムの外部撮像デバイスによってトレースされる。IMU1410および位置センサ1412によって生成された情報は、HMD1400の位置および向きの追跡精度を高めるために、ロケータ1408を追跡することによって得られた位置および向きと比較され得る。正確な位置および向きは、ユーザが3D空間内で移動および回転するときに、ユーザに適切な仮想風景を提示するために重要である。
【0059】
HMD1400は、HMD1400の一部または全部を取り巻く局所エリアの深度情報を表すデータを取り込む、深度カメラ組立体(DCA:depth camera assembly)1411をさらに含むことができる。DCA1411は、このために、レーザレーダ(LIDAR:laser radar)または同様のデバイスを含むことができる。深度情報は、3D空間におけるHMD1400の位置および向きをよりよい精度で判断するために、IMU1410からの情報と比較され得る。
【0060】
HMD1400は、リアルタイムでユーザの目の向きおよび位置を判断する、目線追跡システム1414をさらに含むことができる。取得した目の位置および向きによって、HMD1400がユーザの視線方向を判断し、これに応じて、ディスプレイシステム1480で生成される画像を調整することもできる。一実施形態では、輻輳、すなわち、ユーザの視線の収斂角度が判断される。判断された視線方向および輻輳角は、画角および目の位置に応じて視覚上のアーティファクトをリアルタイムで補償するためにも使用され得る。さらに、判断された輻輳角および視線角度は、ユーザとの相互作用、オブジェクトの強調表示、オブジェクトの最前面への移動、追加のオブジェクトまたはポインタ作成などに使用され得る。たとえば、前部本体1402内に構築された1組の小さなスピーカを含む、音声システムも設けられ得る。
【0061】
図14Bを参照すると、AR/VRシステム1450は、
図14AのHMD1400、様々なAR/Vアプリケーション、設定および較正手順、3Dビデオなどを記憶する外部コンソール1490、ならびにコンソール1490を動作させるか、かつ/またはAR/VR環境と相互作用するための入力/出力(I/O:input/output)インタフェース1415を含む。HMD1400は、物理ケーブルでコンソール1490に「繋留」されるか、またはブルートゥース(登録商標)、Wi-Fiなどの無線通信リンクを介してコンソール1490に接続され得る。複数のHMD1400が存在してもよく、それぞれが関連するI/Oインタフェース1415を有し、各HMD1400およびI/Oインタフェース1415は、コンソール1490と通信する。代替構成では、相異なる、かつ/または追加の構成要素が、AR/VRシステム1450に含まれてもよい。さらに、
図14Aおよび
図14Bに示されている1つまたは複数の構成要素と併せて説明されている機能は、いくつかの実施形態において、
図14Aおよび
図14Bと併せて説明されているものとは別のやり方で、構成要素間で分散されてもよい。たとえば、HMD1400が、コンソール1415の機能の一部またはすべてを備えてもよく、逆も可能である。HMD1400には、かかる機能を実現させることができる、処理モジュールが設けられ得る。
【0062】
図14Aを参照して上記で説明されたように、HMD1400は、目の位置および向きを追跡する、視線角度および収斂角度を判断する、などのための目線追跡システム1414(
図14B)、3D空間におけるHMD1400の位置および向きを判断するためのIMU1410、外部環境を取り込むためのDCA1411、HMD1400の位置を単独で判断するための位置センサ1412、およびAR/VRコンテンツをユーザに表示するためのディスプレイシステム1480を含むことができる。ディスプレイシステム1480は、電子ディスプレイ1425(
図14B)、たとえば、限定されるものではないが、液晶ディスプレイ(LCD:liquid crystal display)、有機発光ディスプレイ(OLED:organic light emitting display)、無機発光ディスプレイ(ILED:inorganic light emitting display)、アクティブマトリックス式有機発光ダイオード(AMOLED:active-matrix organic light-emitting diode)ディスプレイ、透明有機発光ダイオード(TOLED:transparent organic light emitting diode)ディスプレイ、プロジェクタ、またはこれらの組合せを含む。ディスプレイシステム1480は、光学ブロック1430をさらに含み、光学ブロック1430の機能は、電子ディスプレイ1425によって生成された画像をユーザの目に伝えることである。光学ブロックは、たとえば屈折レンズ、フレネルレンズ、回折レンズ、能動または受動パンチャラトナム-ベリー位相(PBP:Pancharatnam-Berry phase)レンズ、液体レンズ、液晶レンズなどの様々なレンズ、瞳複製導波路、格子構造、コーティングなどを含むことができる。ディスプレイシステム1480は、光学ブロック1430の一部であり得る、可変焦点モジュール1435をさらに含むことができる。可変焦点モジュール1435の機能は、光学ブロック1430の焦点を調整し、たとえば、輻輳と調節との競合を補償すること、特定のユーザの視力障害を補正すること、光学ブロック1430の収差をオフセットすることなどである。
【0063】
I/Oインタフェース1415は、ユーザがアクション要求を送信し、コンソール1490から応答を受信することを可能にするデバイスである。アクション要求は、特定のアクションを実行するための要求である。アクション要求は、たとえば、画像またはビデオデータの取込みを開始または終了するための命令、またはアプリケーション内で特定のアクションを実行するための命令であり得る。I/Oインタフェース1415は、キーボード、マウス、ゲームコントローラ、またはアクション要求を受信し、アクション要求をコンソール1490に伝達する、他の任意の好適なデバイスなどの、1つまたは複数の入力デバイスを含むことができる。I/Oインタフェース1415によって受信されたアクション要求は、コンソール1490に伝達され、コンソール1490は、アクション要求に対応するアクションを実行する。いくつかの実施形態では、I/Oインタフェース1415は、I/Oインタフェース1415の初期位置に対するI/Oインタフェース1415の推定位置を示す、較正データを取り込むIMUを含む。いくつかの実施形態では、I/Oインタフェース1415は、コンソール1490から受信した指示に従って、ユーザに触覚フィードバックを与えることができる。触覚フィードバックは、たとえば、アクション要求が受信されたときに与えられるか、またはコンソール1490が、命令をI/Oインタフェース1415に伝達し、コンソール1490がアクションを実行するときに、I/Oインタフェース1415に触覚フィードバックを生成させることができる。
【0064】
コンソール1490は、HMD1400に、IMU1410、DCA1411、目線追跡システム1414、およびI/Oインタフェース1415のうちの1つまたは複数から受信した情報に従って処理する、コンテンツを供給する。
図14Bに示されている例では、コンソール1490は、アプリケーション記憶部1455、追跡モジュール1460、および処理モジュール1465を含む。コンソール1490のいくつかの実施形態は、
図14Bに関連して説明されたものとは相異なるモジュールまたは構成要素を有してもよい。同様に、以下でさらに説明される機能は、
図14Aおよび
図14Bに関連して説明されるものとは別のやり方で、コンソール1490の構成要素間に分散されてもよい。
【0065】
アプリケーション記憶部1455は、コンソール1490によって実行される、1つまたは複数のアプリケーションを記憶することができる。アプリケーションは、プロセッサによって実行されると、ユーザに提示するコンテンツを生成する1群の命令である。アプリケーションによって生成されたコンテンツは、HMD1400またはI/Oインタフェース1415の動きを通して、ユーザから受信された入力に応答することができる。アプリケーションの例は、ゲームアプリケーション、プレゼンテーションおよび会議アプリケーション、ビデオ再生アプリケーション、または他の好適なアプリケーションを含む。
【0066】
追跡モジュール1460は、1つまたは複数の較正パラメータを使用してAR/VRシステム1450を較正することができ、1つまたは複数の較正パラメータを調整して、HMD1400またはI/Oインタフェース1415の位置判断における誤差を低減することができる。追跡モジュール1460によって実行される較正はまた、HMD1400内のIMU1410、および/またはもしあれば、I/Oインタフェース1415に含まれるIMUから受信した情報も考慮に入れる。さらに、HMD1400の追跡が失われた場合、追跡モジュール1460は、AR/VRシステム1450の一部または全部を再較正することができる。
【0067】
追跡モジュール1460は、HMD1400もしくはI/Oインタフェース1415の動き、IMU1410、またはこれらの何らかの組合せを追跡することができる。追跡モジュール1460は、たとえば、HMD1400からの情報に基づいて、局所エリアのマッピングにおけるHMD1400の基準点の位置を判断することができる。追跡モジュール1460はまた、IMU1410からのHMD1400の位置を示すデータを使用して、またはI/Oインタフェース1415に含まれるIMUからの、I/Oインタフェース1415の位置を示すデータを使用して、それぞれ、HMD1400の基準点またはI/Oインタフェース1415の基準点の位置を判断することができる。さらに、いくつかの実施形態では、追跡モジュール1460は、HMD1400の今後の場所を予測するために、IMU1410からの位置またはHMD1400を示すデータの一部ばかりでなく、DCA1411からの局所エリアの描写も使用することができる。追跡モジュール1460は、HMD1400またはI/Oインタフェース1415の推定または予測される今後の位置を、処理モジュール1465に供給する。
【0068】
処理モジュール1465は、HMD1400から受信した情報に基づいて、HMD1400の一部または全部を取り巻くエリア(「局所エリア」)の3Dマッピングを生成することができる。いくつかの実施形態では、処理モジュール1465は、DCA1411から受信した、深度の計算に使用される技法に関連する情報に基づいて、局所エリアの3Dマッピングのための深度情報を決定する。様々な実施形態において、処理モジュール1465は、深度情報を使用して、局所エリアのモデルを更新し、更新されたモデルに部分的に基づいてコンテンツを生成することができる。
【0069】
処理モジュール1465は、AR/VRシステム1450内でアプリケーションを実行し、追跡モジュール1460から、HMD1400の位置情報、加速度情報、速度情報、予測される今後の位置、またはこれらの何らかの組合せを受信する。処理モジュール1465は、受信した情報に基づいて、HMD1400に供給する、ユーザに提示するためのコンテンツを決定する。たとえば、受信した情報が、ユーザが左を向いたことを示している場合、処理モジュール1465は、仮想環境における、または追加コンテンツを使って局所エリアを拡張する環境における、ユーザの動きを反映するHMD1400用コンテンツを生成する。さらに、処理モジュール1465は、I/Oインタフェース1415から受信したアクション要求に応答して、コンソール1490上で実行しているアプリケーション内でアクションを実行し、アクションが実行されたことをユーザにフィードバックする。与えられるフィードバックは、HMD1400による視覚的または聴覚的フィードバック、またはI/Oインタフェース1415による触覚フィードバックであり得る。
【0070】
いくつかの実施形態では、処理モジュール1465は、目線追跡システム1414から受信した目線追跡情報(たとえば、ユーザの目の向き)に基づいて、HMD1400に供給される、電子ディスプレイ1425上でユーザに提示するコンテンツの解像度を決定する。処理モジュール1465は、電子ディスプレイ1425上で、ユーザの視線の中心窩の区域において最大画素解像度を有するコンテンツを、HMD1400に供給することができる。処理モジュール1465は、電子ディスプレイ1425の他の区域に、より低い画素解像度を与え、これにより、AR/VRシステム1450の電力消費を低減し、ユーザの視覚上の体験を損なうことなく、コンソール1490のコンピュータ処理リソースを節約することができる。いくつかの実施形態では、処理モジュール1465はさらに、目線追跡情報を使用し、オブジェクトが電子ディスプレイ1425上のどこに表示されるかを調整して、輻輳-調節の競合を回避し、かつ/または光学歪みおよび収差をオフセットすることができる。
【0071】
本明細書で開示されている態様に関連して説明された様々な例示的な論理回路、論理ブロック、モジュール、および回路を実装するために使用されるハードウェアは、汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP:digital signal processor)、特定用途向け集積回路(ASIC:application specific integrated circuit)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:field programmable gate array)もしくは他のプログラム可能な論理デバイス、ディスクリートのゲートもしくはトランジスタ論理回路、ディスクリートのハードウェア構成要素、または本明細書で説明された機能を実行するよう設計された、これらの任意の組合せを使って実装されるか、または実行され得る。汎用プロセッサは、マイクロプロセッサであってもよいが、代わりに、プロセッサは、任意の従来のプロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、またはステートマシンであってもよい。プロセッサはまた、コンピュータ処理デバイスの組合せ、たとえば、DSPとマイクロプロセッサとの組合せ、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと組み合わされた1つまたは複数のマイクロプロセッサ、または他の任意のかかる構成で実装されてもよい。別法として、いくつかのステップまたは方法は、所与の機能に固有の回路によって実行されてもよい。
【0072】
本開示は、本明細書で説明された特定の実施形態によって範囲が限定されるべきではない。実際、本明細書で説明されたものに加えて、他の様々な実施形態および修正形態が、前述の説明および添付図面から、当業者には明らかであろう。したがって、かかる他の実施形態および修正形態は、本開示の範囲に包含されることを意図している。さらに本開示は、本明細書で、特定の目的のために、特定の環境における特定の実施形態の文脈で説明されているが、当業者は、本開示の有用性がこれに限定されるものではなく、また本開示が、いくつもの目的のために、いくつもの環境で有益に実施され得ることを認識されよう。したがって、下記に示される特許請求の範囲は、本明細書で説明されている本開示の最大限の広がりおよび精神を考慮して解釈されるべきである。
【国際調査報告】