(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-19
(54)【発明の名称】架橋性ポリマー組成物および被覆導体
(51)【国際特許分類】
C08L 23/08 20060101AFI20221212BHJP
C08L 51/00 20060101ALI20221212BHJP
C08K 5/13 20060101ALI20221212BHJP
C08K 5/18 20060101ALI20221212BHJP
C08K 5/42 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
C08L23/08
C08L51/00
C08K5/13
C08K5/18
C08K5/42
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022514657
(86)(22)【出願日】2019-09-06
(85)【翻訳文提出日】2022-03-04
(86)【国際出願番号】 CN2019104650
(87)【国際公開番号】W WO2021042356
(87)【国際公開日】2021-03-11
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147212
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ウェイイー
(72)【発明者】
【氏名】ファン、レンホア
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ホンユウ
(72)【発明者】
【氏名】スン、ヤーピン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ダチャオ
(72)【発明者】
【氏名】コーゲン、ジェフリー エム.
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB021
4J002BN061
4J002EJ028
4J002EN066
4J002EV237
4J002FD078
4J002FD156
4J002FD157
4J002GQ01
(57)【要約】
(A)シラン官能化エチレン系ポリマー、(B)ヒンダードフェノール酸化防止剤、および(C)芳香族アミン-芳香族スルホン酸塩を含有する組成物が提供される。導体を含む被覆導体、および導体上に該組成物を含有する被覆も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
(A)シラン官能化エチレン系ポリマーと、
(B)ヒンダードフェノール酸化防止剤と、
(C)芳香族アミン-芳香族スルホン酸塩と、を含む、組成物。
【請求項2】
前記芳香族アミン-芳香族スルホン酸塩が、構造(I)を有し、
【化1】
式中、Yは、1~3の整数であり、
R
1は、アリール基、置換アリール基、アルキル基、または置換アルキル基からなる群から選択され、
R
2は、アリール基および置換アリール基からなる群から選択され、
R
3は、アリール基、置換アリール基、アルキル基、置換アルキル基、または水素からなる群から選択され、
R
4は、アリール基および置換アリール基からなる群から選択され、
Xは、1~4の整数である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記芳香族アミン-芳香族スルホン酸塩が、1:1の硫黄と窒素とのモル比を有する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
シラン官能化ポリオレフィンが、シラングラフト化エチレン系ポリマーおよびエチレン/シランコポリマーからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
(A)30重量%~99重量%のシラン官能化エチレン系ポリマーと、
(B)0.03重量%~1重量%のヒンダードフェノール酸化防止剤と、
(C)0.05重量%~5重量%の芳香族アミン-芳香族スルホン酸塩と、を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、架橋性である、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が、90℃の水浴中で3時間硬化した後、100%未満の高温クリープを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が、周囲環境で168時間硬化した後、100%未満の高温クリープを有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が、塩の代わりに前記芳香族アミン-芳香族スルホン酸塩の芳香族スルホン酸を含有する同じ組成物と比較して、少なくとも50%のイソブチレン低減を呈する、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
被覆導体であって、
導体と、
前記導体上の被覆であって、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物を含む、被覆と、を含む、被覆導体。
【請求項11】
シラン官能化エチレン系ポリマーを湿気硬化させるためのプロセスであって、
(A)芳香族アミン-芳香族スルホン酸塩を提供することと、
(B)前記芳香族アミン-芳香族スルホン酸塩をヒンダードフェノール酸化防止剤と混合して、触媒組成物を形成することと、
(C)シラン官能化エチレン系ポリマーを前記触媒組成物と接触させて、架橋性組成物を形成することと、
(D)前記架橋性組成物を湿気硬化条件に曝露して、架橋組成物を形成することと、を含む、プロセス。
【請求項12】
前記(B)の混合および前記(C)の接触が、同時に起こる、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記(B)の混合が、
前記芳香族アミン-芳香族スルホン酸塩と、
前記ヒンダードフェノール酸化防止剤と、
キャリアポリオレフィンと、を含む、マスターバッチを形成することを含む、請求項11に記載のプロセス。
【請求項14】
(A)構造(I)を有する前記芳香族アミン-芳香族スルホン酸塩を提供することを含み、
【化2】
式中、Yは、1~3の整数であり、
R
1は、アリール基、置換アリール基、アルキル基、または置換アルキル基からなる群から選択され、
R
2は、アリール基および置換アリール基からなる群から選択され、
R
3は、アリール基、置換アリール基、アルキル基、置換アルキル基、または水素からなる群から選択され、
R
4は、アリール基および置換アリール基からなる群から選択され、
Xは、1~4の整数である、請求項11~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
(A)1:1の硫黄と窒素とのモル比を有する前記芳香族アミン-芳香族スルホン酸塩を提供することを含む、請求項11~14のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ケーブルは、頻繁に、ポリオレフィンおよびヒンダードフェノール酸化防止剤を含有する架橋性被覆で導体を被覆することによって形成される。湿気硬化反応を促すために、スルホン酸などの酸が被覆中に含まれている。しかしながら、スルホン酸は、ヒンダードフェノール酸化防止剤の分解を引き起こすことが知られている。毒性であるイソブチレンが発生するため、ヒンダードフェノール酸化防止剤の分解には問題がある。
【0002】
当技術分野では、湿気硬化反応を介した架橋性であり、ヒンダードフェノール酸化防止剤の分解を回避する、ポリオレフィンおよびヒンダードフェノール酸化防止剤を含有する被覆組成物の必要性が認識されている。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、組成物を提供する。組成物は、(A)シラン官能化エチレン系ポリマー、(B)ヒンダードフェノール酸化防止剤、および(C)芳香族アミン-芳香族スルホン酸塩を含有する。
【0004】
本開示はまた、シラン官能化エチレン系ポリマーを湿気硬化させるためのプロセスを提供する。プロセスは、(A)芳香族アミン-芳香族スルホン酸塩を提供することと、(B)芳香族アミン-芳香族スルホン酸塩をヒンダードフェノール酸化防止剤と混合して、触媒組成物を形成することと、(C)シラン官能化エチレン系ポリマーを触媒組成物と接触させて、架橋性組成物を形成することと、(D)架橋性組成物を湿気硬化条件に曝露して、架橋組成物を形成することと、を含む。
【0005】
定義
元素周期表へのいずれの参照も、CRC Press,Inc.によって1990~1991年に発行されたときのものである。この表の元素の族についての言及は、族に番号を付けるための新たな表記法によるものである。
【0006】
米国特許実務の目的では、任意の参照されている特許、特許出願、または出版物の内容は、特に定義の開示(特に本開示で提供されている任意の定義と矛盾しない範囲で)および当技術分野では一般的な知識に関して、参照によってそれらの全体が組み込まれる(あるいはその同等の米国版がそのように参照によって組み込まれる)。
【0007】
本明細書に開示される数値範囲は、下限値および上限値からのすべての値を含み、また上限値および下限値を含む。明示的な値を含有する範囲(例えば、1、または2、または3~5、または6、または7の範囲)の場合、2つの明示的な値の間の部分範囲が含まれる(例えば、上記の範囲1~7には、部分範囲1~2、2~6、5~7、3~7、5~6など)。
【0008】
別途の記載がない限り、文脈から暗黙的、または当技術分野で慣例でない限り、すべての部およびパーセントは重量に基づき、すべての試験方法は本開示の出願日現在のものである。
【0009】
「アルコキシ」(または「アルコキシ基」)とは、-OZ1ラジカルを指し、代表的なZ1には、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、シリル基、およびこれらの組み合わせが含まれる。好適なアルコキシラジカルの非限定的な例としては、メトキシ、エトキシ、ベンジルオキシ、およびt-ブトキシが挙げられる。
【0010】
「アルキル」および「アルキル基」とは、飽和直鎖状、環状、または分岐状炭化水素基を指す。「置換アルキル」は、アルキルの任意の炭素に結合した1つ以上の水素原子が、ハロゲン、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、ハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシ、アミノ、ホスフィド、アルコキシ、アミノ、チオ、ニトロ、およびそれらの組み合わせなどの別の基で置換されているアルキルを指す。
【0011】
「周囲環境」は、室温(23~25℃)および50%の相対湿度の条件を指す。
【0012】
「酸化防止剤」は、ポリマーの加工中に起こり得る酸化を最小限に抑えるために使用することができる化学的化合物の種類またはクラスを指す。
【0013】
「アリール」および「アリール基」は、芳香族炭化水素から1つの水素原子を欠失することによって芳香族炭化水素から誘導される有機ラジカルを指す。アリール基は、単環系および/または縮合環系であってもよく、これらの各環は、好適には、5~7個、好ましくは5個または6個の原子を含有する。2つ以上のアリール基が単結合を介して結合している構造も含まれる。具体的な例としては、限定されないが、フェニル、トリル、ナフチル、ビフェニル、アントリル、インデニル、フルオレニル、ベンゾフルオレニル、フェナントリル、トリフェニレニル、ピレニル、ペリレニル、クリセニル、ナフタセニル、フルオランテニルなどが挙げられる。「置換アリール」は、任意の炭素に結合した1つ以上の水素原子が、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、ハロゲン、アルキルハロ(例えば、CF3)、ヒドロキシ、アミノ、ホスフィド、アルコキシ、アミノ、チオ、ニトロ、ならびに、芳香環に縮合し、共有結合で連結するか、またはメチレンもしくはエチレン部分などの共通基に連結した飽和および不飽和両方の環式炭化水素などの、1つ以上の官能基で置換されているアリールを指す。共通の連結基は、ベンゾフェノン中のようなカルボニル、またはジフェニルエーテル中のようなに酸素、またはジフェニルアミン中のような窒素であってもよい。
【0014】
「アルファ-オレフィン」、「α-オレフィン」、および同様の用語は、炭化水素分子または置換炭化水素分子(すなわち、例えば、ハロゲン、酸素、窒素など、水素および炭素以外の1つ以上の原子を含む炭化水素分子)を指し、炭化水素分子は、(i)唯一のエチレン系不飽和であって、この不飽和が、第1の炭素原子と第2の炭素原子との間に位置する、唯一のエチレン系不飽和と、(ii)少なくとも2個の炭素原子、または3~20個の炭素原子、または4~10個の炭素原子、または4~8個の炭素原子と、を含む。α-オレフィンの非限定的な例としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ドデセン、およびこれらのモノマーの2つ以上の混合物が挙げられる。
【0015】
「ブレンド」、「ポリマーブレンド」、および同様の用語は、2つ以上のポリマーの組成物を指す。そのようなブレンドは、混和性であっても、そうでなくてもよい。このようなブレンドは、相分離していても、していなくてもよい。そのようなブレンドは、透過電子分光法、光散乱、X線散乱、ならびにドメイン構成を測定および/または特定するために使用される任意の他の方法から決定されるような、1つ以上のドメイン構成を含んでも、含まなくてもよい。
【0016】
「ブロックコポリマー」または「セグメント化コポリマー」という用語は、線状に結合された2つ以上の化学的に固別の領域またはセグメント(「ブロック」と称される)を含むポリマー、すなわち、ペンダントまたはグラフトの様式ではなく、重合官能基に対して端と端で結合(共有結合)している化学的に区別された単位を含むポリマーを指す。一実施形態では、ブロックは、その中に組み込まれたコモノマーの量またはタイプ、密度、結晶化度の量、結晶化度のタイプ(例えば、ポリエチレン対ポリプロピレン)、そのような組成のポリマーに起因する結晶子サイズ、立体規則性のタイプまたは程度(アイソタクチックもしくはシンジオタクチック)、位置規則性または位置不規則性、長鎖分岐または超分岐を含む分岐の量、均一性、または任意の他の化学的もしくは物理的特性で異なる。
【0017】
「ケーブル」は、保護絶縁体、ジャケットまたはシース内の少なくとも1つの導体、例えば、ワイヤ、光ファイバなどである。ケーブルは、一般的な保護ジャケットまたはシース内でともに結合した2つ以上のワイヤまたは2つ以上の光ファイバであり得る。組み合わせケーブルは、電気ワイヤおよび光ファイバの両方を含み得る。ジャケットまたはシース内部の個々のワイヤまたはファイバは、むき出しであってもよく、覆われてもよく、または絶縁されてもよい。ケーブルは、低、中、および/または高電圧用途のために設計され得る。
【0018】
「組成物」という用語は、組成物を含む材料の混合物、ならびに組成物の材料から形成された反応生成物および分解生成物を指す。
【0019】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語およびそれらの派生語は、それらが具体的に開示されているか否かにかかわらず、任意の追加の構成要素、ステップ、または手順の存在を除外することを意図するものではない。いかなる疑念を避けるために、「含む」という語の使用を通じて請求項に記載されるすべての組成物は、反対の記述がない限り、重合されているかどうかに関わらず、任意の追加の添加剤、助剤、または化合物を含み得る。対照的に、「~から本質的になる」という用語は、任意の後続の詳述の範囲から、操作性に必要不可欠ではないものを除き、任意の他の構成成分、ステップ、または手順を除外する。「~からなる(consisting of)」という用語は、具体的に記述または列挙されていない任意の成分、ステップ、または手順を除外する。「または」という用語は、別途記載がない限り、列挙項目を個々に、および任意の組み合わせで指す。単数形の使用は、複数形の使用を含み、逆もまた同様である。
【0020】
「導体」は、任意の電圧(DC、AC、または過渡)において、熱、光および/または電気を伝導するための1つ以上のワイヤまたは1つ以上のファイバである。導体は、単線/ファイバまたはマルチワイヤ/ファイバであってもよく、かつ撚線形態または管状形態であってもよい。好適な伝導体の非限定的な例は、炭素、銀、金、銅、アルミニウムなどの様々な金属を含む。伝導体はまた、ガラスまたはプラスチックのいずれかから作られた光ファイバであってもよい。導体は、保護シース内に配置されてもされなくてもよい。導体は、単一のケーブルでも、一緒に束ねられた複数のケーブル(すなわち、ケーブルコアまたはコア)でもよい。
【0021】
「架橋性」および「硬化性」は、物品に成形される前または後のポリマーが、硬化も架橋もされておらず、実質的な架橋を誘発した処理に供されても、曝露されてもいないが、ポリマーが、このような処理(例えば、水への曝露)に供されるかまたは曝露されたときに実質的な架橋をもたらす添加剤または機能性を含むことを示す。
【0022】
「架橋された」および同様の用語は、ポリマー組成物は、物品に成形される前または後に、90重量パーセント以下のキシレンまたはデカリン抽出性(extractable)(すなわち、10重量パーセント以上のゲル含有量)を有することを示す。
【0023】
「硬化された」および同様の用語は、ポリマーが、物品に成形される前または後に、架橋を誘発する処理に供されたか、または曝露されたことを示す。
【0024】
「エチレン系ポリマー」は、(重合性モノマーの総量に基づいて)50重量パーセント超の重合エチレンモノマーを含有し、任意選択的に、少なくとも1つのコモノマーを含有し得るポリマーである。エチレン系ポリマーには、エチレンホモポリマー、およびエチレンコポリマー(エチレンおよび1つ以上のコモノマーに由来する単位を意味する)が含まれる。「エチレン系ポリマー」および「ポリエチレン」という用語は、交換可能に使用され得る。エチレン系ポリマー(ポリエチレン)の非限定的な例には、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、および直鎖状ポリエチレンが含まれる。直鎖状ポリエチレンの非限定的な例としては、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(ultra low density polyethylene)(ULDPE)、超低密度ポリエチレン(very low density polyethylene)(VLDPE)、多成分エチレン系コポリマー(EPE)、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマー(オレフィンブロックコポリマー(OBC)としても既知)、シングルサイト触媒の直鎖状低密度ポリエチレン(m-LLDPE)、実質的に直鎖状、または直鎖状のプラストマー/エラストマー、および高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられる。一般に、ポリエチレンは、チーグラーナッタ触媒などの不均一触媒系、第4族遷移金属およびメタロセンなどのリガンド構造を含む均一触媒系、非メタロセン金属中心、ヘテロアリール、ヘテロバレントアリールオキシエーテル、ホスフィンイミン、およびその他などを使用して、気相、流動床反応器、液相スラリープロセス反応器、または液相溶液プロセス反応器で生成することができる。不均一触媒および/または均一触媒の組み合わせもまた、単一反応器または二重反応器構成のいずれかにおいても使用され得る。一実施形態では、エチレン系ポリマーは、その中に重合された芳香族コモノマーを含有しない。
【0025】
「エチレンプラストマー/エラストマー」は、エチレンに由来する単位および少なくとも1つのC3-C10α-オレフィンコモノマーに由来する単位を含む均一な短鎖分岐分布を含有する、実質的に線状または線状のエチレン/α-オレフィンコポリマーである。エチレンプラストマー/エラストマーは、0.870g/cc~0.917g/ccの密度を有する。エチレンプラストマー類/エラストマー類の非限定的な例としては、AFFINITY(商標)プラストマーおよびエラストマー(Dow Chemical Companyから入手可能)、EXACT(商標)プラストマー(ExxonMobil Chemicalから入手可能)、Tafmer(商標)(Mitsuiから入手可能)、Nexlene(商標)(SK Chemicals Co.から入手可能)、ならびにLucene(商標)(LG Chem Ltd.から入手可能)が挙げられる。
【0026】
「高密度ポリエチレン」(もしくは「HDPE」)は、エチレンホモポリマー、または少なくとも1つのC4-C10α-オレフィンコモノマーおよび0.94g/cc超~0.98g/ccの密度を有するエチレン/α-オレフィンコポリマーである。HDPEは、単峰性コポリマーまたは多峰性コポリマーであり得る。「単峰性エチレンコポリマー」とは、分子量分布を示すゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)において1つの明確なピークを有するエチレン/C4-C10α-オレフィンコポリマーのことである。「多峰性エチレンコポリマー」とは、分子量分布を示すGPCにおいて少なくとも2つの明確なピークを有するエチレン/C4-C10α-オレフィンコポリマーのことである。多峰性としては、2つのピークを有するコポリマー(二峰性)、ならびに3つ以上のピークを有するコポリマーが挙げられる。HDPEの非限定的な例としては、各々がThe Dow Chemical Companyから入手可能なDOW(商標)高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂、ELITE(商標)強化ポリエチレン樹脂、およびCONTINUUM(商標)二峰生ポリエチレン樹脂、LyondellBasellから入手可能なLUPOLEN(商標)、ならびにBorealis、Ineos、およびExxonMobilからのHDPE製品が挙げられる。
【0027】
「ヒドロカルビル」および「炭化水素」という用語は、分岐または非分岐、飽和または不飽和、環式、多環式または非環式の種を含む水素および炭素の原子のみを含有する置換基を指す。非限定的な例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルカジエニル基、シクロアルケニル基、シクロアルカジエニル基、アリール基、およびアルキニル基が挙げられる。
【0028】
「加水分解性シラン基」は、水と反応するシラン基である。これらには、加水分解してシラノール基を生じさせることができ、次いで縮合してモノマーまたはポリマーを架橋することができる、モノマーまたはポリマー上のアルコキシシラン基が含まれる。
【0029】
「インターポリマー」は、少なくとも2つの異なるモノマーの重合によって調製されるポリマーである。この総称は、2つの異なるモノマーから調製されたポリマー、および3つ以上の異なるモノマーから調製されたポリマー、例えばターポリマー、テトラポリマーなどを指すために通常用いられるコポリマーを含む。
【0030】
「ジャケット」は、導体の最も外側の被覆である。導体が単一の被覆を含む場合、被覆は導体上でジャケットおよび絶縁体の両方として機能する場合がある。
【0031】
「線状低密度ポリエチレン」(または「LLDPE」)は、エチレンに由来する単位および少なくとも1つのC3-C10α-オレフィンコモノマーに由来する単位を含む、均一な短鎖分岐分布を含有する線状エチレン/α-オレフィンコポリマーである。LLDPEは、従来のLDPEとは対照的に、長鎖分岐があるとしてもわずかであることを特徴とする。LLDPEは、0.910g/cc~0.940g/ccの密度を有する。LLDPEの非限定的な例としては、各々がThe Dow Chemical Companyから入手可能なTUFLIN(商標)直鎖状低密度ポリエチレン樹脂およびDOWLEX(商標)ポリエチレン樹脂、ならびにMARLEX(商標)ポリエチレン(Chevron Phillipsから入手可能)が挙げられる。
【0032】
「低密度ポリエチレン」(または「LDPE」)は、エチレンホモポリマー、または、0.915g/cc~0.940g/ccの密度を有し、幅広いMWDを有する長鎖分岐を含有する少なくとも1つのC3-C10α-オレフィンコモノマーを含むエチレン/α-オレフィンコポリマーからなる。LDPEは、典型的には、高圧フリーラジカル重合(フリーラジカル開始剤を用いる管状反応器またはオートクレーブ)によって生成される。LDPEの非限定的な例としては、MarFlex(商標)(Chevron Phillips)、LUPOLEN(商標)(LyondellBasell)、ならびにBorealis、Ineos、ExxonMobilなどからのLDPE製品が挙げられる。
【0033】
「中密度ポリエチレン」(または「MDPE」)は、エチレンホモポリマー、または0.926g/cc~0.940g/ccの密度を有する少なくとも1つのC3-C10α-オレフィンコモノマーを含むエチレン/α-オレフィンコポリマーである。
【0034】
「多成分エチレン系コポリマー」(または「EPE」)は、エチレンに由来する単位、および特許文献USP6,111,023、USP5,677,383、およびUSP6,984,695などに記載の、少なくとも1つのC3-C10α-オレフィンコモノマーに由来する単位を含む。EPE樹脂は、0.905g/cc~0.962g/ccの密度を有する。EPE樹脂の非限定的な例としては、各々がThe Dow Chemical Companyから入手可能なELITE(商標)強化ポリエチレンおよびELITE AT(商標)先端技術樹脂、Nova Chemicalsから入手可能なSURPASS(商標)ポリエチレン(PE)樹脂、およびSK Chemicals Co.から入手可能なSMART(商標)が挙げられる。
【0035】
本明細書で使用される場合、「オレフィン系ポリマー」は、(重合性モノマーの総量に基づいて)50モルパーセントを超える重合オレフィンモノマーを含有し、かつ任意選択的に、少なくとも1つのコモノマーを含有し得るポリマーである。オレフィン系ポリマーの非限定的な例としては、エチレン系ポリマーおよびプロピレン系ポリマーが挙げられる。
【0036】
「ポリマー」は、重合形態で、ポリマーを成す複数のならびに/または反復する「単位」もしくは「構造単位」を提供する、同一の種類または異なる種類であるかを問わないモノマーの重合によって調製される化合物である。したがって、ポリマーという総称は、ホモポリマーという用語を包含し、通常、1つのタイプのモノマーのみから調製されたポリマーを指すのに用いられ、コポリマーという用語は、通常、少なくとも2つのタイプのモノマーから調製されたポリマーを指すために用いられる。それはまた、例えばランダム、ブロックなどのすべての形態のコポリマーを包含する。「エチレン/α-オレフィンポリマー」および「プロピレン/α-オレフィンポリマー」という用語は、それぞれ、エチレンまたはプロピレン、および1つ以上の追加の重合性α-オレフィンモノマーを重合することから調製された上述のコポリマーを示す。ポリマーは、多くの場合、特定されたモノマーまたはモノマーの種類に「基づいて」、特定されたモノマー含有量を「含有している」など、1つ以上の特定されたモノマー「から作成される」ものとして言及されるが、この文脈では、「モノマー」という用語は、特定されたモノマーの重合残留物を指し、非重合種には言及していないと理解されることに留意されたい。一般に、本明細書におけるポリマーは、対応するモノマーの重合形態である「単位」に基づくものと称される。
【0037】
「プロピレン系ポリマー」は、(重合性モノマーの総量に基づいて)50モルパーセントを超える重合したプロピレンモノマーを含有するポリマーであり、任意選択的に少なくとも1つのコモノマーを含有してもよい。プロピレン系ポリマーには、プロピレンホモポリマー、およびプロピレンコポリマー(プロピレンおよび1つ以上のコモノマーに由来する単位を意味する)が含まれる。「プロピレン系ポリマー」および「ポリプロピレン」という用語は、交換可能に使用され得る。プロピレン系ポリマー(ポリプロピレン)の非限定的な例は、少なくとも1つのC2またはC4-C10α-オレフィンコモノマーを有するプロピレン/α-オレフィンコポリマーである。
【0038】
「シース」は総称であり、ケーブルに関連して使用される場合、絶縁被覆または層、保護外被などを含む。
【0039】
「シングルサイト触媒の線状低密度ポリエチレン」(または「m-LLDPE」)は、エチレンに由来する単位および少なくとも1つのC3-C10α-オレフィンコモノマーに由来する単位を含む、均一な短鎖分岐分布を含有する、線状エチレン/α-オレフィンコポリマーである。m-LLDPEは、0.913g/cc~0.940g/ccの密度を有する。m-LLDPEの非限定的な例としては、EXCEED(商標)メタロセンPE(ExxonMobil Chemicalから入手可能)、LUFLEXEN(商標)m-LLDPE(LyondellBasellから入手可能)、およびELTEX(商標)PF m-LLDPE(Ineos Olefins&Polymersから入手可能)が挙げられる。
【0040】
「超低密度ポリエチレン(または「ULDPE」)」、および「極低密度ポリエチレン(または「VLDPE」)」は各々、エチレンに由来する単位および少なくとも1つのC3-C10α-オレフィンコモノマーに由来する単位を含む不均一な短鎖分岐分布を含有する、線状エチレン/α-オレフィンコポリマーである。ULDPEおよびVLDPEは各々、0.885g/cc~0.915g/ccの密度を有する。ULDPEおよびVLDPEの非限定的な例としては、各々がThe Dow Chemical Companyから入手可能なATTANE(商標)ULDPE樹脂およびFLEXOMER(商標)VLDPE樹脂が挙げられる。
【0041】
「ワイヤ」は、単一撚線の伝導性金属、例えば、銅もしくはアルミニウム、または単一撚線の光ファイバである。
【0042】
試験方法
密度を、ASTM D792、方法Bに従って測定する。結果を、1立方センチメートル当たりのグラム(g)(g/ccまたはg/cm3)で記録する。
【0043】
ゲル含有量は、ASTM 2765に従って、180℃で5時間煮沸デカリンで抽出することにより測定される。結果は、組成物の総重量に基づいて、パーセント(%)で記録される。ゲルのパーセントは、通常、架橋レベルの増加とともに増加する。
【0044】
高温クリープは、IEC-60811-2-1に従って測定する。200℃での熱変形は、0.2MPaの負荷下でパーセンテージ(%)として測定する。水浴の高温クリープは、試料を90℃の水浴中で1時間、3時間、および6時間硬化した後に測定する。周囲環境の高温クリープは、試料を室温(23~25℃)および50%の相対湿度で69時間、90時間、100時間、168時間、および230時間硬化した後に測定する。
【0045】
メルトインデックス(MI)(I2としても知られる)は、ASTM D1238、条件190℃/2.16キログラム(kg)重量に従って測定し、10分当たりに溶出されるグラム(g/10分)で報告する。
【0046】
イソブチレン測定
試料は、2つの方法に従ってイソブチレン測定用に調製する。
【0047】
試料調製方法1。1グラムの触媒マスターバッチペレットは、ペレット化から10分以内にHSGCバイアルの中に密封する。バイアルを密封し、室温(23~25℃)で2週間貯蔵する。次いで、イソブチレンの発生。
【0048】
試料調製方法2。触媒マスターバッチペレットは、ペレット化から10分以内にポリエチレン袋の中に入れる。袋を密封し、室温(23~25℃)で2週間貯蔵する。次いで、1グラムの試料を袋から取り出し、HSGCバイアルの中に入れ、次いで、これを密封し、イソブチレンの発生について測定する。
【0049】
測定。触媒マスターバッチから発生したイソブチレンは、(i)下記の表Aの条件に従ってヘッドスペースガスクロマトグラフィー(HSGC)、または(ii)下記の表Bの条件に従ってガスクロマトグラフィー(GC)によって測定する。いずれの場合も、1.8分の保持時間でのピーク面積を記録する。
【表1】
【表2】
【発明を実施するための形態】
【0050】
本開示は、組成物を提供する。組成物は、(A)シラン官能化エチレン系ポリマー、(B)ヒンダードフェノール酸化防止剤、および(C)芳香族アミン-芳香族スルホン酸塩を含有する。
【0051】
一実施形態では、(C)芳香族アミン-芳香族スルホン酸塩は、以下の構造(I)を有し、
【化1】
式中、Yは、1~2、または3の整数であり、R
1は、アリール基、置換アリール基、アルキル基、または置換アルキル基から選択され、R
2は、アリール基および置換アリール基から選択され、R
3は、アリール基、置換アリール基、アルキル基、置換アルキル基、または水素から選択され、R
4は、アリール基および置換アリール基から選択され、Xは、1~2、または3、または4の整数である。
【0052】
A.シラン官能化エチレン系ポリマー
組成物は、シラン官能化エチレン系ポリマーを含む。「シラン官能化エチレン系ポリマー」は、シラン、およびポリマーの総重量に基づいて、50重量%以上、または過半量の重合エチレンを含有するポリマーである。好適なシラン官能化ポリオレフィンの非限定的な例としては、エチレン/シランコポリマー、シラングラフト化ポリオレフィン(Si-g-PE)、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0053】
「エチレン/シランコポリマー」は、エチレンと加水分解性シランモノマー(ビニルアルコキシシランモノマーなど)との共重合によって形成される。一実施形態では、エチレン/シランコポリマーは、エチレン、加水分解性シランモノマー、および、任意選択的に、不飽和エステルの共重合によって調製される。エチレン/シランコポリマーの調製は、例えば、USP3,225,018およびUSP4,574,133に記載されており、各々が参照により本明細書に組み込まれる。
【0054】
「シラングラフト化ポリエチレン」(または「Si-g-PE」)は、加水分解性シランモノマー(ビニルアルコキシシランモノマーなど)をベースポリエチレンの主鎖にグラフト化することによって形成される。一実施形態では、グラフト化は、ペルオキシドなどのフリーラジカル発生剤の存在下で行われる。加水分解性シランモノマーは、(i)被覆導体(SIOPLAS(商標)プロセスとしても知られる)などの最終物品を作製するために使用される組成物にSi-g-PEを組み込むか、もしくは配合する前に、または(ii)最終物品を形成する組成物の押出(溶融ブレンドおよび押出中にSi-g-PEがインサイチュで形成される、MONOSIL(商標)プロセスとしても知られる)と同時に、ベースポリエチレンの主鎖にグラフト化することができる。一実施形態では、Si-g-PEは、Si-g-PEが芳香族アミン-芳香族スルホン酸塩、ヒンダードフェノール酸化防止剤、および他の任意の構成成分と配合される前に形成される。別の実施形態では、Si-g-PEは、ポリエチレン、加水分解性シランモノマー、および過酸化物開始剤を、芳香族アミン-芳香族スルホン酸塩、ヒンダードフェノール酸化防止剤、および他の任意の構成成分とともに配合することによって、インサイチュで形成される。
【0055】
Si-g-PEのベースポリエチレンは、本明細書に開示される任意のエチレン系ポリマーであり得る。好適なエチレン系ポリマーの非限定的な例としては、エチレンホモポリマー、ならびに不飽和エステルおよび/またはα-オレフィンなどの1つ以上の重合性コモノマーを含有するエチレン系インターポリマーが挙げられる。一実施形態では、エチレン系ポリマーは、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0056】
エチレン/シランコポリマーまたはSi-g-PEを作製するために使用される加水分解性シランモノマーは、エチレンと効果的に共重合してエチレン/シランコポリマーを形成するか、またはエチレン系ポリマーにグラフト化してSi-g-PEを形成するであろう、シラン含有モノマーである。例示的な加水分解性シランモノマーは、以下の構造(A)を有するものであり、
【化2】
式中、R’は、水素原子またはメチル基であり、xおよびyは、0または1であるが、但し、xが1であるとき、yが1であることを条件とし、nは、1~12を含んだ整数であるか、あるいはnは1~4の整数であり、各R”は独立して、1~12個の炭素原子を有するアルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、ブトキシ)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ)、アラルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ)、1~12個の炭素原子を有する脂肪族アシルオキシ基(例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、プロパノイルオキシ)、アミノもしくは置換アミノ基(アルキルアミノ、アリールアミノ)、または1~6個を含んだ炭素原子を有する低級アルキル基などの加水分解性有機基であるが、但し、3つのR”基のうちの1つ以下がアルキルであることを条件とする。
【0057】
好適な加水分解性シランモノマーの非限定的な例としては、ビニル、アリル、イソプロペニル、ブテニル、シクロヘキセニル、またはガンマ-(メタ)アクリルオキシアリル基などのエチレン性不飽和ヒドロカルビル基、および例えば、ヒドロカルビルオキシ、ヒドロカルボニルオキシ、またはヒドロカルビルアミノ基などの加水分解性基を有する、シランが挙げられる。加水分解性基の例としては、メトキシ、エトキシ、ホルミルオキシ、アセトキシ、プロプリオニルオキシ、およびアルキルまたはアリールアミノ基が挙げられる。
【0058】
一実施形態では、加水分解性シランモノマーは、ビニルトリメトキシシラン(VTMS)、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ガンマ-(メタ)アクリルオキシ、プロピルトリメトキシシラン、およびこれらのシランの混合物などの不飽和アルコキシシランである。
【0059】
エチレン/シランコポリマーを作製するために使用される好適な不飽和エステルの非限定的な例としては、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、またはビニルカルボキシレートが挙げられる。好適なアルキル基の非限定的な例としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、t-ブチルなどが挙げられる。一実施形態では、アルキル基は、1個、または2~4個、または8個の炭素原子を有する。好適なアルキルアクリレートの非限定的な例としては、エチルアクリレート、メチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、および2-エチルヘキシルアクリレートが挙げられる。好適なアルキルメタクリレートの非限定的な例としては、メチルメタクリレートおよびn-ブチルメタクリレートが挙げられる。一実施形態では、カルボキシレート基は、2~5個、または6個、または8個の炭素原子を有する。好適なビニルカルボキシレートの非限定的な例としては、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、およびビニルブタノアートが挙げられる。
【0060】
一実施形態では、シラン官能化エチレン系ポリマーは、シラン官能化エチレン系ポリマーの総重量に基づいて、0.1重量%、または0.5重量%、または1.0重量%、または1.5重量%~2.0重量%、または2.5重量%、または3.0重量%、または4.0重量%、または5.0重量%のシランを含有する。
【0061】
一実施形態では、シラン官能化エチレン系ポリマーは、シラン官能化エチレン系ポリマーの総重量に基づいて、(i)50重量%、もしくは60重量%、もしくは70重量%、もしくは80重量%、もしくは90重量%、もしくは95重量%~97重量%、もしくは98重量%、もしくは99重量%、もしくは100重量%未満のエチレン、および(ii)逆量のシラン、または0重量%超、もしくは1重量%、もしくは2重量%、もしくは3重量%、~5重量%、もしくは10重量%、もしくは20重量%、もしくは30重量%、もしくは40重量%、もしくは50重量%のシランを含有するか、それらから本質的になるか、またはそれらからなる。
【0062】
一実施形態では、シラン官能化エチレン系ポリマーは、0.850g/cc、または0.910g/cc、または0.920g/cc~0.922g/cc、0.925g/cc、または0.930g/cc、または0.950g/cc、または0.965g/ccの密度を有する。別の実施形態では、シラン官能化エチレン系ポリマーは、0.850g/cc~0.965g/cc、または0.900g/cc~0.950g/cc、または0.920g/cc~0.925g/ccの密度を有する。
【0063】
一実施形態では、シラン官能化エチレン系ポリマーは、0.1g/10分、または0.5g/10分、または1.0g/10分、または1.5g/10分~2g/10分、または5g/10分、または10g/10分、または15g/10分、または20g/10分、または30g/10分、または40g/10分、または50g/10分のメルトインデックス(MI)を有する。別の実施形態では、官能化エチレン系ポリマーは、0.1g/10分~50g/10分、または0.5g/10分~10g/10分、または0.5g/10分~5g/10分のメルトインデックス(MI)を有する。
【0064】
一実施形態では、シラン官能化エチレン系ポリマーは、エチレン/シランコポリマーである。エチレン/シランコポリマーは、エチレンおよび加水分解性シランモノマーを唯一のモノマー単位として含有する。別の実施形態では、エチレン/シランコポリマーは、任意選択的に、C3、またはC4~C6、またはC8、またはC10、またはC12、またはC16、またはC18、またはC20のα-オレフィン、不飽和エステル、およびこれらの組み合わせを含む。一実施形態では、エチレン/シランコポリマーは、エチレン/不飽和エステル/シラン反応器コポリマーである。好適なエチレン/シランコポリマーの非限定的な例としては、各々がThe Dow Chemical Companyから入手可能なSI-LINK(商標)DFDA-5451 NTおよびSI-LINK(商標)AC DFDB-5451 NTが挙げられる。
【0065】
エチレン/シラン反応器コポリマーは、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含むことができる。
【0066】
一実施形態では、シラン官能化エチレン系ポリマーは、Si-g-PEである。
【0067】
Si-g-PEのベースエチレン系ポリマーは、ベースエチレン系ポリマーの総重量に基づいて、50重量%、または55重量%、または60重量%、または65重量%、または70重量%、または80重量%、または90重量%、または95重量%~97重量%、または98重量%、または99重量%、または100重量%のエチレンを含む。
【0068】
一実施形態では、Si-g-PEのベースエチレン系ポリマーは、エチレン/α-オレフィンコポリマーである。α-オレフィンは、3、または4~6、または8、または12、または20個の炭素原子を含有する。適切なα-オレフィンの非限定的な例としては、プロピレン、ブテン、ヘキセン、およびオクテンが挙げられる。一実施形態では、エチレン系コポリマーは、エチレン/オクテンコポリマーである。エチレン系コポリマーがエチレン/α-オレフィンコポリマーである場合、Si-g-PEは、シラングラフト化エチレン/α-オレフィンコポリマーである。Si-g-PEのためのベースエチレン系ポリマーとして有用な好適なエチレン/α-オレフィンコポリマーの非限定的な例としては、Dow Chemical Companyから入手可能なENGAGE(商標)およびINFUSE(商標)樹脂が挙げられる。
【0069】
シラン官能化エチレン系ポリマーのブレンドも使用することができ、シラン官能化エチレン系ポリマーは、ポリオレフィンが(i)互いに混和性または相溶性になる程度まで、および(ii)シラン官能化エチレン系ポリマーが、(シラン官能化エチレン系ポリマーを含む、ポリオレフィンの組み合わされた重量に基づいて)ブレンドの30重量%、または40重量%、または50重量%、または55重量%、または60重量%、または70重量%、または80重量%、または90重量%、または95重量%、または99重量%~100重量%未満を構成する程度まで、1つ以上の他のポリオレフィンで希釈することができる。
【0070】
シラン官能化エチレン系ポリマーは、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含むことができる。
【0071】
B.ヒンダードフェノール酸化防止剤
組成物は、ヒンダードフェノール酸化防止剤を含有する。
【0072】
「ヒンダードフェノール酸化防止剤」は、ラジカル捕捉剤として作用する主要な酸化防止剤である。ヒンダードフェノール酸化防止剤は、フェノール基を含有する。好適なヒンダードフェノール酸化防止剤の非限定的な例としては、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-ベンゼン、ペンタエリスリチルテトラキス-3(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、n-オクタデシル-3(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、4,4’-メチレンビス(2,6-tert-ブチル-フェノール)、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-o-クレゾール)、2,6-ジ-tertブチルフェノール、6-(4-ヒドロキシフェノキシ)-2,4-ビス(n-オクチル-チオ)-l,3,5トリアジン、ジ-n-オクチルチオ)エチル3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ベンゾエート、およびソルビトールヘキサ[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-フェニル)-プロピオネート]、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。そのようなヒンダードフェノール酸化防止剤は、BASFから市販されており、IRGANOX(商標)565、1010、1076、および1726を含む。
【0073】
一実施形態では、ヒンダードフェノール酸化防止剤は、BASFからIRGANOX(商標)1010として市販されているペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)である。
【0074】
ヒンダードフェノール酸化防止剤は、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含むことができる。
【0075】
C.芳香族アミン-芳香族スルホン酸塩
組成物は、芳香族アミン-芳香族スルホン酸塩を含有する。
【0076】
「芳香族アミン-芳香族スルホン酸塩」または「AS-ASAS」は、芳香族アミンおよび芳香族スルホン酸から形成された塩化合物である。AS-ASASは、モノアミン、ジアミン、またはトリアミンであり得る。AS-ASASは、線状アミンおよび/または分岐アミンから形成された塩化合物を除く。さらに、AS-ASASは、線状スルホン酸および/または分岐スルホン酸から形成された塩化合物を除く。
【0077】
「芳香族アミン」は、以下の構造(II)を有する化合物であり、
【化3】
式中、R
5は、アリール基、置換アリール基、アルキル基、または置換アルキル基から選択され、R
6は、アリール基および置換アリール基から選択され、R
7は、アリール基、置換アリール基、アルキル基、置換アルキル基、または水素から選択され、Xは、1~2、または3、または4の整数である。
【0078】
一実施形態では、構造(II)において、R5は、C6-C40アリール基、置換C6-C40アリール基、C1-C40アルキル基、または置換C1-C40アルキル基から選択され、R6は、C6-C40アリール基、および置換C6-C40アリール基から選択され、R7は、C6-C40アリール基、置換C6-C40アリール基、C1-C40アルキル基、置換C1-C40アルキル基、または水素から選択され、Xは、1~2、または3、または4の整数である。
【0079】
好適な芳香族アミンの非限定的な例としては、4,4’-ビス(アルファ、アルファ-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N1-(4-メチルペンタン-2-イル)-N4-フェニルベンゼン-1,4-ジアミン、N、N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、ジ([1,1’-ビフェニル]-4-イル)アミン、(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン)、9,9-ジメチル-9,10-ジヒドロアクリジン、N-フェニル-2-ナフチルアミン、N1、N4-ジ(ナフタレン-2-イル)ベンゼン-1,4-ジアミン、N、N’-ビス-(1,4-ジメチルペンチル)-P-フェニレンジアミン、N、N’-ジ-sec-ブチル-1,4-フェニレンジアミン、N-イソプロピル-N’-フェニル-1,4-フェニレンジアミン、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0080】
「芳香族スルホン酸」は、以下の構造(III)を有する化合物であり、
【化4】
式中、R
8は、アリール基および置換アリール基から選択される。
【0081】
好適な芳香族スルホン酸の非限定的な例としては、ナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA)、4-メチルベンゼンスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、4-ドデシルベンゼンスルホン酸、P-トルエンスルホン酸、2,4,6-トリメチルベンゼンスルホン酸、2,4,6-トリクロロベンゼンスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ナフタレン-1-スルホン酸、4-メチルベンゼンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、置換ナフタレン-1-スルホン酸、置換ナフタレン-2-スルホン酸、4-(tert-ブチル)ベンゼンスルホン酸、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0082】
AS-ASASは、以下の構造(I)を有し、
【化5】
式中、Yは、1~2、または3の整数であり、R
1は、アリール基、置換アリール基、アルキル基、または置換アルキル基から選択され、R
2は、アリール基、および置換アリール基から選択され、R
3は、アリール基、置換アリール基、アルキル基、置換アルキル基、または水素から選択され、R
4は、アリール基および置換アリール基から選択され、Xは、1~2、または3、または4の整数である。
【0083】
一実施形態では、構造(I)において:Yは、1~2であり、Xは、1~2、または1~3、または1~4であり、R1は、C6-C40、もしくはC6-C20、もしくはC6-C15、もしくはC6のアリール基;置換されたC6-C40、もしくはC6-C20、もしくはC6-C15、もしくはC6のアリール基;C1-C40、もしくはC1-C20、もしくはC1-C10、もしくはC4-C8のアルキル基;または置換されたC1-C20、もしくはC1-C10、もしくはC4-C8のアルキル基から選択され、R2は、C6-C40、またはC6-C20、またはC6-C15、またはC6のアリール基、および置換されたC6-C40、またはC6-C20、またはC6-C15、またはC6のアリール基から選択され、R3は、C6-C40、もしくはC6-C20、もしくはC6-C15、もしくはC6のアリール基;置換されたC6-C40、もしくはC6-C20、もしくはC6-C15、もしくはC6のアリール基;C1-C40、もしくはC1-C20、もしくはC1-C10、もしくはC4-C8のアルキル基;置換されたC1-C40、もしくはC1-C20、もしくはC1-C10、もしくはC4-C8アルキル基;または水素から選択され、R4は、C6-C40、またはC6-C20、またはC6-C15、またはC6アリール基、および置換されたC6-C40、またはC6-C20、またはC6-C15、またはC6アリール基から選択される。
【0084】
一実施形態では、AS-ASASは、0.8:1、または1:1~1.3:1の硫黄と窒素とのモル比を有する。別の実施形態では、AS-ASASは、1:1の硫黄と窒素とのモル比を有する。
【0085】
好適なAS-ASASの非限定的な例を下記の表Cに示し、構造(IV)~(XI)、およびそれらの組み合わせを含む。
【表3】
【0086】
一実施形態では、AS-ASASは、構造(IV)、構造(V)、構造(VI)、構造(VII)、構造(VIII)、および構造(XI)から選択される。
【0087】
一実施形態では、AS-ASASは、構造(IV)、構造(V)、構造(VI)、および構造(VII)から選択される。
【0088】
一実施形態では、AS-ASASは、構造(IX)および構造(X)から選択される。
【0089】
一実施形態では、AS-ASASは、構造(IV)および構造(IX)から選択される。
【0090】
一実施形態では、AS-ASASは、構造(VI)、構造(VIII)、構造(X)、および構造(XI)から選択される。
【0091】
AS-ASASは、ポリマーではない。言い換えれば、AS-ASASは、芳香族アミンの二量体、三量体、および四量体を含まないか、または実質的に含まない。
【0092】
一実施形態では、AS-ASASは、有機溶媒またはワックス中で、室温(23~25℃)で1時間、または2時間~3時間、または4時間、または5時間、または6時間、芳香族アミンを芳香族スルホン酸と混合することによって合成される。好適な有機溶媒の非限定的な例としては、ジクロロメタン、トルエン、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0093】
芳香族アミン-芳香族スルホン酸塩(AA-ASAS)は、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含み得る。
【0094】
D.任意選択的な添加剤
一実施形態では、組成物は、(A)シラン官能化エチレン系ポリマー、(B)ヒンダードフェノール酸化防止剤、(C)芳香族アミン-芳香族スルホン酸塩、および(D)1つ以上の任意の添加剤を含む。
【0095】
好適な任意の添加剤の非限定的な例としては、酸化防止剤((B)ヒンダードフェノール酸化防止剤以外の)、着色剤、腐食抑制剤、潤滑剤、ワックス、シラノール縮合触媒、紫外線(UV)吸収剤または安定剤、ブロッキング防止剤、カップリング剤、相溶化剤、可塑剤、充填剤、加工助剤、湿気捕捉剤、スコーチ遅延剤、金属不活性化剤、シロキサン、架橋助剤、伸展油、およびポリオレフィン((A)シラン官能化エチレン系ポリマー以外の)、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0096】
一実施形態では、組成物は、(B)ヒンダードフェノール酸化防止剤とは異なる酸化防止剤を含む。好適な酸化防止剤の非限定的な例は、BASFから入手可能なIRGAFOS(商標)168などのホスファイト酸化防止剤である。一実施形態では、組成物は、組成物の総重量に基づいて、0重量%、または0.01重量%~0.5重量%、または1.0重量%、または2.0重量%、または3.0重量%の酸化防止剤を含有する。
【0097】
一実施形態では、組成物は、ワックスを含む。ワックスは、組成物の溶融粘度を低減するために使用され得る。好適なワックスの非限定的な例としては、エチレン系ポリマーワックス、プロピレン系ポリマーワックス、パラフィンワックス、微結晶ワックス、副生成ポリエチレンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、酸化フィッシャー・トロプシュワックス、官能化ワックス、例えばヒドロキシステアラミドワックスおよび脂肪酸アミドワックス、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0098】
一実施形態では、組成物は、ルイス酸およびブレンステッド酸ならびに塩基などのシラノール縮合触媒を含む。「シラノール縮合触媒」は、シラノール官能化ポリオレフィンの架橋を促進する。ルイス酸は、ルイス塩基からの電子対を受け入れることができる化学種である。ルイス塩基は、電子対をルイス酸に供与することができる化学種である。好適なルイス酸の非限定的な例としては、ジブチルスズジラウレート(DBTDL)などのカルボン酸スズ、およびナフテン酸鉛、カプリル酸亜鉛、ならびにナフテン酸コバルトなどの様々な他の有機金属化合物が挙げられる。好適なルイス塩基の非限定的な例としては、一級、二級、および三級アミンが挙げられる。これらの触媒は、典型的には湿気硬化用途に使用される。一実施形態では、組成物は、組成物の総重量に基づいて、0重量%、または0.001重量%~0.1重量%、または1.0重量%のシラノール縮合触媒を含む。MONOSIL(商標)プロセス中、シラノール縮合触媒は、これがシランのポリオレフィン主鎖へのグラフト化反応中に存在して、インサイチュでSi-g-PEを形成するように、典型的には、反応押出機に添加される。このように、シラン官能化エチレン系ポリマーは、押出機を出る前にいくらかのカップリング(光架橋)を経験し得、それが押出機を出た後、典型的には水分(例えば、サウナ浴もしくは冷却浴)および/または保管、輸送、もしくは使用される環境に存在する湿気に曝露されると、架橋が完了する。
【0099】
一実施形態では、組成物は、紫外線(UV)吸収剤または安定剤を含む。好適なUV安定剤の非限定的な例としては、1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミン、N,N-1,2-エタンジイルビスN-3-4,6-ビスブチル(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノプロピル-N,N-ジブチル-N,N-ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)-1,5,8,12-テトラキス[4,6-ビス(n-ブチル-n-1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルアミノ)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-1,5,8,12-テトラアザドデカン(SABO S.p.A.of Levate,Italyから、SABO(商標)STAB UV-119として市販されている)などの、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)である。一実施形態では、組成物は、組成物の総重量に基づいて、0重量%、もしくは0.001重量%~0.01重量%、もしくは1.0重量%、もしくは3.0重量%のUV吸収剤または安定剤を含有する。
【0100】
一実施形態では、組成物は、金属不活性化剤を含む。金属不活性化剤は、金属表面および微量の金属鉱物の触媒作用を抑制する。金属不活性化剤は、微量の金属および金属表面を、例えば、封鎖によって、不活性な形態に変換する。好適な金属不活性化剤の非限定的な例としては、1,2-ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナモイル)ヒドラジン、2,2’-オキサミンドビス[エチル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、およびオキサリルビス(ベンジリデンヒドラジド)(OABH)が挙げられる。一実施形態では、組成物は、組成物の総重量に基づいて、0重量%、または0重量%超、または0.01重量%~0.05重量%、または1重量%、または10重量%の金属不活性化剤を含有する。
【0101】
一実施形態では、組成物は、充填剤を含む。好適な充填剤の非限定的な例としては、酸化亜鉛、ホウ酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、硫化亜鉛、カーボンブラック、有機粘土、およびこれらの組み合わせが挙げられる。充填剤は、難燃特性を有していても、または有していなくてもよい。一実施形態では、充填剤は、そうでなければ充填剤がシラン硬化反応を妨害しなければならない可能性がある傾向を防止または遅延させる材料(ステアリン酸など)で被覆される。一実施形態では、組成物は、組成物の総重量に基づいて、0重量%、または0.01重量%~1.0重量%、または3.0重量%、または5.0重量%の充填剤を含有する。
【0102】
一実施形態では、組成物は加工助剤を含む。好適な加工助剤の非限定的な例としては、油、有機酸(ステアリン酸など)、および有機酸の金属塩(ステアリン酸亜鉛など)が挙げられる。一実施形態では、組成物は、組成物の総重量に基づいて、0重量%、または0.01重量%~1.0重量%、または3.0重量%の加工助剤を含有する。
【0103】
一実施形態では、組成物は、湿気捕捉剤を含む。湿気捕捉剤は、組成物中の不必要な水を除去または不活性化して、保管中または押出条件での組成物中の不必要な(早期)架橋および他の水性開始反応(water-initiated reaction)を防止する。湿気捕捉剤の非限定的な例としては、オルトエステル、アセタール、ケタール、またはアルコキシシランなどのシランから選択される有機化合物が挙げられる。一実施形態では、湿気捕捉剤は、アルコキシシラン(例えば、ヘキサデシルトリメトキシシラン)である。アルコキシシラン湿気捕捉剤は、ポリオレフィンにグラフト化されていないか、または共重合されていない。湿気捕捉剤は、組成物の総重量に基づいて、0重量%、または0重量%超、または0.01重量%~0.2重量%、または1.0重量%の量で存在する。
【0104】
一実施形態では、組成物は、シロキサンを含む。好適なシロキサンの非限定的な例は、ジメチルビニルシリル末端ポリジメチルシロキサンなどのポリジメチルシロキサン(PDMS)である。一実施形態では、組成物は、組成物の総重量に基づいて、0.2重量%、または0.5重量%~1.0重量%、または5.0重量%のシロキサンを含有する。
【0105】
一実施形態では、組成物は、架橋助剤を含む。「架橋助剤」は、組成物の架橋効率を改善する物質である。好適な架橋助剤の非限定的な例は、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)である。一実施形態では、組成物は、組成物の総重量に基づいて、0重量%、または0重量%超、または0.1重量%~0.5重量%、または1.0重量%の架橋助剤を含有する。
【0106】
一実施形態では、組成物は、(A)シラン官能化エチレン系ポリマーとは異なるポリオレフィンを含む。好適なポリオレフィンの非限定的な例としては、エチレン系ポリマー、プロピレン系ポリマー、およびそれらの組み合わせが挙げられる。好適なエチレン系ポリマーの非限定的な例としては、LDPE、エチレン/エチルアクリレート(EEA)コポリマー、およびそれらの組み合わせが挙げられる。一実施形態では、ポリオレフィンは、官能化されていない。一実施形態では、組成物は、組成物の総重量に基づいて、0重量%、または1重量%、または3重量%~5重量%、または10重量%、または15重量%、または20重量%、または50重量%、または70重量%のポリオレフィンを含有する。別の実施形態では、組成物は、組成物の総重量に基づいて、1重量%~70重量%、または1重量%~10重量%、または1重量%~5重量%のポリオレフィン(LDPEおよび/またはEEAコポリマーなど)を含有する。一実施形態では、ポリオレフィンは、(B)ヒンダードフェノール酸化防止剤および/または(C)AS-ASASと組み合わされて、触媒マスターバッチを形成するキャリアポリオレフィンであり、次いで、触媒マスターバッチは、(A)シラン官能化エチレン系ポリマーと組み合わされて、組成物を形成する。
【0107】
一実施形態では、組成物は、組成物の総重量に基づいて、0重量%、または0重量%超、または0.001重量%~0.01重量%、または0.1重量%、または0.5重量%、または1.0重量%、または2.0重量%、または5.0重量%、または10.0重量%、または15.0重量%、または20.0重量%の添加剤を含有する。
【0108】
添加剤は、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含むことができる。
【0109】
E.組成物
組成物は、(A)シラン官能化エチレン系ポリマー、(B)ヒンダードフェノール酸化防止剤、(C)芳香族アミン-芳香族スルホン酸塩(AS-ASAS)、および任意選択的に、(D)添加剤を含有する。一実施形態では、AS-ASASは、構造(I)を有する。
【0110】
一実施形態では、組成物は、架橋性組成物である。さらなる実施形態では、組成物は、湿気硬化性組成物である。言い換えれば、組成物は、湿気(例えば、サウナ浴または冷却浴)および/またはそれが貯蔵、輸送、または使用される環境に存在する湿り気に曝露されると架橋することができる。湿気硬化条件としては、水の存在(例えば、浴または環境に存在する湿り気として)、および20℃、または23℃~25℃~30℃の温度が挙げられる。
【0111】
一実施形態では、組成物は、架橋組成物である。架橋組成物は、架橋性組成物を架橋することによって形成される。一実施形態では、架橋性ポリマー組成物の架橋は、押出機内で始まる。別の実施形態では、架橋は、架橋性組成物が、導体上などに押し出されるまで遅延される。架橋性組成物の架橋は、湿潤環境への曝露(例えば、周囲条件、またはサウナもしくは水浴中での硬化)を通して開始および/または加速される。一実施形態では、架橋性組成物の架橋は、湿気への曝露を通して開始および/または加速される。架橋組成物は、シラン官能化エチレン系ポリマー鎖間の結合を含む。
【0112】
一実施形態では、組成物は、(A)シラン官能化エチレン系ポリマー、(B)ヒンダードフェノール酸化防止剤、(C)AS-ASAS、および任意選択的に、(D)添加剤を含有するか、それらから本質的になるか、またはそれらからなる。
【0113】
一実施形態では、組成物は、組成物の総重量に基づいて、30重量%、または40重量%、または50重量%、または60重量%、または70重量%、または80重量%、または90重量%~95重量%、または97重量%、または98重量%、または99重量%のシラン官能化エチレン系ポリマーを含有する。
【0114】
一実施形態では、組成物は、組成物の総重量に基づいて、0.03重量%、または0.05重量%、または0.09重量%~0.10重量%、または0.2重量%、または0.5重量%、または1.0重量%のヒンダードフェノール酸化防止剤を含有する。
【0115】
一実施形態では、組成物は、組成物の総重量に基づいて、0.05重量%、または0.08重量%、または0.10重量%、または0.11重量%~0.16重量%、または0.20重量%、または0.50重量%、または1.0重量%、または2.0重量%、または3.0重量%、または4.0重量%、または5.0重量%のAS-ASASを含有する。
【0116】
一実施形態では、組成物は、組成物の総重量に基づいて、(A)30重量%~99重量%、または50重量%~99重量%、または80重量%~99重量%、または90重量%~99重量%、または90重量%~95重量%の官能化エチレン系ポリマー(エチレン/シランコポリマーなど)、(B)0.03重量%~1.0重量%、または0.03重量%~0.5重量%、または0.05重量%~0.2重量%、または0.09重量%~0.10重量%のヒンダードフェノール酸化防止剤、(C)0.05重量%~5.0重量%、または0.05重量%~1.0重量%、または0.05重量%~0.50重量%、または0.10重量%~0.20重量%、または0.11重量%~0.16重量%のAS-ASAS(構造(I)を有するAS-ASASなど)、および(D)0重量%~20重量%、または0重量%超~20重量%、または0重量%超~10重量%の添加剤を含有するか、それらから本質的になるか、またはそれらからなる。さらなる実施形態では、組成物は、架橋性組成物である。
【0117】
一実施形態では、組成物は、90℃の水浴中で1時間硬化した後、160%未満、もしくは130%未満、もしくは110%未満、もしくは100%未満、もしくは50%未満、または0%、もしくは40%~50%、もしくは100%、もしくは110%、もしくは120%、もしくは160%の高温クリープを有する。一実施形態では、組成物は、90℃の水浴中で3時間硬化した後、150%未満、もしくは130%未満、もしくは110%未満、もしくは100%未満、もしくは80%未満、もしくは70%未満、もしくは40%未満、または0%、もしくは20%、もしくは30%~40%、もしくは70%、もしくは80%、もしくは100%、もしくは110%、もしくは130%、もしくは150%の高温クリープを有する。一実施形態では、組成物は、90℃の水浴中で6時間硬化した後、150%未満、もしくは100%未満、もしくは80%未満、または0%、もしくは20%未満、もしくは50%、もしくは70%~75%、もしくは80%、もしくは100%、もしくは150%の高温クリープを有する。
【0118】
一実施形態では、組成物は、周囲環境で69時間硬化した後、100%未満、もしくは70%未満、または0%、もしくは20%、もしくは50%~70%、もしくは100%の高温クリープを有する。一実施形態では、組成物は、周囲環境で90時間硬化した後、110%未満、もしくは100%未満、もしくは80%未満、または0%、もしくは20%、もしくは50%~70%、もしくは105%、もしくは110%の高温クリープを有する。一実施形態では、組成物は、周囲環境で100時間硬化した後、140%未満、または0%、もしくは20%、もしくは50%、もしくは70%~130%、もしくは150%の高温クリープを有する。一実施形態では、組成物は、周囲環境で168時間硬化した後、140%未満、もしくは100%未満、もしくは90%未満、もしくは60%未満、または0%、もしくは20%、もしくは50%~60%、もしくは95%、もしくは100%、もしくは130%、もしくは140%の高温クリープを有する。一実施形態では、組成物は、周囲環境で230時間硬化した後、100%未満、もしくは80%未満、もしくは60%未満、もしくは55%未満、または0%、もしくは20%~55%、もしくは60%、もしくは80%、もしくは100%の高温クリープを有する。
【0119】
一実施形態では、組成物は、90℃の水浴中で、(i)1時間硬化した後、160%未満、もしくは130%未満、もしくは110%未満、もしくは100%未満、もしくは50%未満、および/または(ii)3時間硬化した後、150%未満、もしくは130%未満、もしくは110%未満、もしくは100%未満、もしくは80%未満、もしくは70%未満、もしくは40%未満、および/または(iii)6時間硬化した後、150%未満、もしくは100%未満、もしくは80%未満の高温クリープを有する。一実施形態では、組成物は、周囲環境で、(i)69時間硬化した後、100%未満、もしくは70%未満、および/または(ii)90時間硬化した後、110%未満、もしくは100%未満、もしくは80%未満、および/または(iii)100時間硬化した後、140%未満、および/または(iv)168時間硬化した後、140%未満、もしくは100%未満、もしくは90%未満、もしくは60%未満、および/または(v)230時間硬化した後、100%未満、もしくは80%未満、もしくは60%未満、もしくは55%未満の高温クリープを有する。低い高温クリープは、組成物が架橋(すなわち硬化)していることを示すため、ワイヤおよびケーブルの用途に有利である。
【0120】
一実施形態では、AS-ASAS、ヒンダードフェノール酸化防止剤、およびキャリアポリオレフィンを組み合わせて、マスターバッチを形成する。次いで、マスターバッチをシラン官能化エチレン系ポリマーと組み合わせて、組成物を形成する。一実施形態では、マスターバッチ(「触媒マスターバッチ」とも称される)は、マスターバッチの総重量に基づいて、(i)0.05重量%、または0.10重量%、または0.50重量%、または1.0重量%、または2.0重量%、または2.3重量%~3.2重量%、または4.0重量%、または5.0重量%、または10重量%のAS-ASAS、(ii)0.03重量%、または0.05重量%、または0.10重量%、または0.50重量%、または1.0重量%、または1.50重量%、または1.90重量%~2.0重量%、または3.0重量%、または4.0重量%のヒンダードフェノール酸化防止剤、および(iii)86重量%、または90重量%、または94重量%~96重量%、または99重量%、または99.92重量%のキャリアポリオレフィン(EEAコポリマーおよび/またはLDPEなど)を含有するか、それらから本質的になるか、またはそれらからなる。さらなる実施形態では、キャリアポリオレフィンは、ブレンドの総重量に基づいて、1:1の重量比でのEEAコポリマーとLDPEとのブレンドである。
【0121】
一実施形態では、組成物、またはマスターバッチは、塩の代わりに芳香族アミン-芳香族スルホン酸塩の芳香族スルホン酸を含有する同じ組成物、またはマスターバッチと比較して、少なくとも50%のイソブチレン低減を呈する。一実施形態では、組成物、またはマスターバッチは、塩の代わりに芳香族アミン-芳香族スルホン酸塩の芳香族スルホン酸を含有する同じ組成物、またはマスターバッチと比較して、試料調製方法1を用いてHSGCによって測定した場合、少なくとも50%のイソブチレン低減を呈する。別の実施形態では、組成物、またはマスターバッチは、塩の代わりに芳香族アミン-芳香族スルホン酸塩の芳香族スルホン酸を含有する同じ組成物、またはマスターバッチと比較して、試料調製方法2を用いてHSGCによって測定した場合、少なくとも50%のイソブチレン低減を呈する。
【0122】
一実施形態では、組成物、またはマスターバッチは、試料調製方法1を用いたHSGCによって測定した場合、1グラム当たり6,000,000未満(g-1)、もしくは5,000,000g-1未満、もしくは4,000,000g-1未満、または0g-1~6,000,000g-1、もしくは1,000g-1~6,000,000g-1、もしくは500,000g-1~6,000,000g-1、もしくは500,000g-1~5,000,000g-1のイソブチレン発生ピーク面積を呈する。
【0123】
一実施形態では、組成物、またはマスターバッチは、試料調製方法1を用いたHSGCによって測定した場合、硫黄1モル当たり1.4×1011未満(モル-1)、もしくは1.2×1011モル-1未満、もしくは1.0×1011モル-1未満、もしくは5.0×1010モル-1未満、または0モル-1~1.4x1011モル-1、もしくは1.0×107モル-1~1.4×1011モル-1、もしくは1.0×1010モル-1~1.4×1011モル-1のイソブチレン発生ピーク面積を呈する。
【0124】
一実施形態では、組成物、またはマスターバッチは、試料調製方法2を用いたHSGCによって測定した場合、1グラム当たり1,000,000未満(g-1)、もしくは100,000g-1未満、もしくは80,000g-1未満、もしくは75,000g-1未満、または0g-1~1,000,000g-1、もしくは100g-1~100,000g-1、もしくは100g-1~80,000g-1、もしくは100g-1~75,000g-1のイソブチレン発生ピーク面積を呈する。
【0125】
一実施形態では、組成物、またはマスターバッチは、試料調製方法2を用いたHSGCによって測定した場合、硫黄1モル当たり1.8×109未満(モル-1)、もしくは1.7×109モル-1未満、もしくは1.6×109モル-1未満、もしくは1.5×109モル-1未満、または0モル-1~1.8x109モル-1、もしくは1.0×106モル-1~1.80×109モル-1、もしくは1.0×106モル-1~1.70×109モル-1のイソブチレン発生ピーク面積を呈する。
【0126】
イソブチレンは毒性であるため、イソブチレン発生が少ない(例えば、試料調製方法1を用いたHSGCによって測定した場合、6,000,000g-1未満のピーク面積および/または1.4×1011モル-1未満のピーク面積)と有利である。したがって、イソブチレン発生の低減は、組成物およびマスターバッチを取り扱う際の安全性の改善、ならびに製造コストの削減につながる。その上、イソブチレンは、ヒンダードフェノール系酸化防止剤の分解の結果として、本発明の組成物およびマスターバッチ中で発生する。したがって、イソブチレン発生の低減は、ヒンダードフェノール系酸化防止剤の分解が有利に低減されるか、または回避されていることを示す。
【0127】
一実施形態では、本組成物は、
(i)組成物の総重量に基づいて、1重量%~5重量%、または10重量%、または20重量%、または40重量%、または50重量%の触媒マスターバッチ、ならびにマスターバッチの総重量に基づいて、(a)0.05重量%、または0.10重量%、または0.50重量%、または1.0重量%、または2.0重量%、または2.3重量%~3.2重量%、または4.0重量%、または5.0重量%、または10重量%のAS-ASAS(構造(I)および1:1の硫黄と窒素とのモル比を有するAS-ASASなど)、(b)0.03重量%、または0.05重量%、または0.10重量%、または0.50重量%、または1.0重量%、または1.50重量%、または1.90重量%~2.0重量%、または3.0重量%、または4.0重量%のヒンダードフェノール酸化防止剤、および(c)86重量%、または90重量%、または94重量%~96重量%、もしくは99重量%、もしくは99.92重量%のキャリアポリオレフィン(EEAコポリマーおよび/またはLDPEなど)を含有するか、それらから本質的になるか、またはそれらからなる触媒マスターバッチ;
(ii)50重量%、または60重量%、または80重量%、または90重量%、または95重量%~99重量%のシラン官能化エチレン系ポリマー(例えば、エチレン/シランコポリマー)を含有するか、それらから本質的になるか、またはそれらからなり、
触媒マスターバッチは、以下の特性:(a)塩の代わりに芳香族アミン-芳香族スルホン酸塩の芳香族スルホン酸を含有する同じマスターバッチと比較して、試料調製方法1を用いてHSGCによって測定した場合、少なくとも50%のイソブチレン低減、および/または(b)塩の代わりに芳香族アミン-芳香族スルホン酸塩の芳香族スルホン酸を含有する同じマスターバッチと比較して、試料調製方法2を用いてHSGCによって測定した場合、少なくとも50%のイソブチレン低減、および/または(c)試料調製方法1を用いてHSGCによって測定した場合、0g-1~6,000,000g-1、もしくは1,000g-1~6,000,000g-1、もしくは500,000g-1~6,000,000g-1、もしくは500,000g-1~5,000,000g-1のイソブチレン発生ピーク面積、および/または(d)試料調製方法1を用いてHSGCによって測定した場合、0モル-1~1.4×1011モル-1、もしくは1.0×107モル-1~1.4×1011モル-1、もしくは1.0×1010モル-1~1.4×1011モル-1のイソブチレン発生ピーク面積、および/または(e)試料調製方法2を用いてHSGCによって測定した場合、0g-1~1,000,000g-1、もしくは100g-1~100,000g-1、もしくは100g-1~80,000g-1、もしくは100g-1~75,000g-1のイソブチレン発生ピーク面積、および/または(f)試料調製方法2を用いてHSGCによって測定した場合、0モル-1~1.8×109モル-1、もしくは1.0×106モル-1~1.80×109モル-1、もしくは1.0×106モル-1~1.70×109モル-1のイソブチレン発生ピーク面積のうちの1つ、いくつか、またはすべてを有し、
組成物は、以下の特性:(A)90℃の水浴中で、(A1)1時間硬化した後、160%未満、もしくは130%未満、もしくは110%未満、もしくは100%未満、もしくは50%未満、および/または(A2)3時間硬化した後、150%未満、もしくは130%未満、もしくは110%未満、もしくは100%未満、もしくは80%未満、もしくは70%未満、もしくは40%未満、および/または(A3)6時間硬化した後、150%未満、もしくは100%未満、もしくは80%未満の高温クリープ、ならびに/または(B)周囲環境で、(B1)69時間硬化した後、100%未満、もしくは70%未満、および/または(B2)90時間硬化した後、110%未満、もしくは100%未満、もしくは80%未満、および/または(B3)100時間硬化した後、140%未満、および/または(B4)168時間硬化した後、140%未満、もしくは100%未満、もしくは90%未満、もしくは60%未満、および/または(B5)230時間硬化した後、100%未満、もしくは80%未満、もしくは60%未満、もしくは55%未満の高温クリープのうちの1つ、いくつか、またはすべてを有する。
【0128】
上述の組成物の各々における構成成分の合計が、100重量パーセント(重量%)をもたらすことが理解される。
【0129】
一実施形態では、組成物は、シラン官能化プロピレン系ポリマーおよびマレイン酸官能化プロピレン系ポリマーなどのプロピレン系ポリマーを含まないか、または実質的に含まない。
【0130】
一実施形態では、組成物は、スルホネートエステルおよび/またはスルホン酸のエステルを含まないか、または実質的に含まない。
【0131】
一実施形態では、組成物は、エポキシ樹脂を含まないか、または実質的に含まない。
【0132】
組成物は、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含み得る。
【0133】
F.被覆導体
本開示は、被覆導体を提供する。被覆導体は、導体と、導体上の被覆であって、(A)シラン官能化エチレン系ポリマー、(B)ヒンダードフェノール酸化防止剤、(C)AS-ASAS、および任意選択的に、(D)添加剤を含有する組成物を含む、被覆と、を含む。
【0134】
組成物は、本明細書に開示される任意の組成物であり得る。
【0135】
一実施形態では、組成物は、架橋組成物である。
【0136】
一実施形態では、被覆は、導体用の絶縁シースである。別の実施形態では、被覆は、導体用のジャケットである。
【0137】
被覆導体を製造するためのプロセスは、組成物を少なくともシラン官能化エチレン系ポリマーの溶融温度まで加熱し、次いでポリマー溶融ブレンドを導体上に押し出すことを含む。「上に」という用語は、ポリマー溶融ブレンドと導体との間の直接接触または間接接触を含む。ポリマー溶融ブレンドは、押出可能な状態にある。押し出し中および/または押し出し後に、架橋が起こって、架橋組成物を形成する。
【0138】
被覆は、導体上にある。被覆は、絶縁層などの1つ以上の内層であり得る。被覆は、導体を全体的にまたは部分的に覆うか、またはそうでなければ囲むかもしくは包むことができる。被覆は、導体を囲む唯一の構成要素であり得る。被覆が導体を囲む唯一の構成要素である場合、被覆はジャケットおよび/または絶縁体として機能し得る。一実施形態では、被覆は、被覆された導体の最外層である。代替的に、被覆は、金属導体を包む1層の多層ジャケットまたはシースであり得る。一実施形態では、被覆は、導体と直接接触する。別の実施形態では、被覆は、導体を囲む絶縁層と直接接触する。
【0139】
一実施形態では、被覆は、導体と直接接触する。本明細書で使用される「直接接触する」という用語は、被覆が導体に直接隣接して配置され、被覆が導体に接触し、介在層、介在被覆、および/または介在構造が被覆と導体との間に存在しない被覆構成である。
【0140】
一実施形態では、被覆は、導体と間接接触する。本明細書で使用される場合、「間接接触する」という用語は、介在層、介在被覆、または介在構造が被覆と導体との間に存在する被覆構成である。好適な介在層、介在被覆、および介在構造の非限定的な例としては、絶縁層、防湿層、緩衝管、およびこれらの組み合わせが挙げられる。好適な絶縁層の非限定的な例としては、発泡絶縁層、熱可塑性絶縁層、架橋絶縁層、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0141】
一実施形態では、組成物は、カーボンブラックを含有し、被覆は、導体上の半導電性層である。
【0142】
被覆は、架橋されている。一実施形態では、架橋性組成物の架橋は、押出機内で始まるが、ごくわずかな程度である。別の実施形態では、架橋は、架橋性組成物が、導体上に押し出されるまで遅延される。架橋性ポリマー組成物の架橋は、湿潤環境への曝露(例えば、周囲条件、またはサウナもしくは水浴中での硬化)を通して開始および/または加速され得る。一実施形態では、架橋性組成物の架橋は、湿気への曝露を通して開始および/または加速される。
【0143】
一実施形態では、被覆導体は、光ファイバケーブル、通信ケーブル(電話ケーブル、ローカルエリアネットワーク(LAN)ケーブル、またはスモールフォームファクタプラガブル(SFP)ケーブルなど)、電源ケーブル、家庭用電化製品用の配線、携帯電話および/またはコンピュータ用の充電器ワイヤ、コンピュータデータコード、電源コード、機器内配線材料、屋内配線材料、家庭用電化製品付属コード、ならびにそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0144】
被覆された導体は、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含み得る。
【0145】
G.プロセス
本開示は、シラン官能化エチレン系ポリマーを湿気硬化させるためのプロセスを提供する。本プロセスは、(A)芳香族アミン-芳香族スルホン酸塩(AS-ASAS)を提供することと、(B)芳香族アミン-芳香族スルホン酸塩をヒンダードフェノール酸化防止剤と混合して、触媒組成物を形成することと、(C)シラン官能化エチレン系ポリマーを触媒組成物と接触させて、架橋性組成物を形成することと、(D)架橋性組成物を湿気硬化条件に曝露して、架橋組成物を形成することと、を含む。
【0146】
湿気硬化条件としては、水の存在(例えば、浴または環境に存在する湿り気として)、および20℃、または23℃~25℃~30℃の温度が挙げられる。
【0147】
一実施形態では、(B)AS-ASASをヒンダードフェノール酸化防止剤と混合して、触媒組成物を形成すること、および(C)シラン官能化エチレン系ポリマーを触媒組成物と接触させて、架橋性組成物を形成することが、同時に起こる。言い換えれば、AS-ASAS、ヒンダードフェノール酸化防止剤、およびシラン官能化エチレン系ポリマーを同時にブレンドして、架橋性組成物を形成する。
【0148】
一実施形態では、(B)AS-ASASをヒンダードフェノール酸化防止剤と混合して、触媒組成物を形成することは、(i)1:1の硫黄と窒素とのモル比を有するAS-ASAS(構造(I)を有するAS-ASASなど)、(ii)ヒンダードフェノール酸化防止剤、および(iii)キャリアポリオレフィンを含有するか、それらから本質的になるか、またはそれらからなるマスターバッチを形成することを含む。マスターバッチおよびキャリアポリオレフィンは、本明細書に開示される任意のそれぞれのマスターバッチ(触媒マスターバッチとも称される)およびキャリアポリオレフィンであり得る。一実施形態では、キャリアポリオレフィンは、EEAコポリマーとLDPEとのブレンドである。
【0149】
一実施形態では、本プロセスは、室温(23~25℃)で1時間、または2時間~3時間、または4時間、または5時間、または6時間、有機溶媒またはワックス中で芳香族アミンを芳香族スルホン酸と混合することによってAS-ASASを合成することを含む。好適な有機溶媒の非限定的な例としては、ジクロロメタン、トルエン、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0150】
本プロセスは、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含み得る。
【0151】
限定するものではなく例として、これから、本開示のいくつかの実施形態を、以下の実施例において詳述する。
【実施例】
【0152】
実施例で使用される材料を、以下の表1に提供する。
【表4】
【0153】
A.触媒塩の合成
表2の触媒塩は、100mLのジクロロメタンを含有する反応フラスコ中で、10ミリモルのアミンを10ミリモルの酸と組み合わせることによって合成する。複数のアミノ基を含有するアミンについては、反応混合物内の酸の量を変化させて、スルホン酸とアミノ基との間の所望の化学量論比を達成する。
【0154】
反応混合物を室温(23~25℃)で2時間撹拌する。次いで、0.1MPaの減圧下でロータリーエバポレータを使用して、溶液を35℃で15分間蒸発させ、触媒塩固体生成物を得て、室温(23~25℃)で6時間真空乾燥する。
【0155】
アミン、酸、および得られた触媒塩を表2に提供する。表2に示すように、実施例の塩1~4、実施例の塩7、実施例の塩9、実施例の塩11、および実施例の塩15は各々、AA-ASASである。
【0156】
B.触媒塩マスターバッチの調製およびペレット化
DXM-205(EEAコポリマー)およびDXM-446(LDPE)は、120℃の温度および15毎分回転数(rpm)の回転速度に設定したBrabenderミキサーに、等しい量(すなわち、1:1の重量比)で供給する。次いで、表2の触媒塩のうちの1つおよびIRGANOX(商標)1010(ヒンダードフェノール酸化防止剤)をミキサーに供給し、マスターバッチ組成物を120℃の温度および50rpmの回転速度で3分間混合する。
【0157】
混合後、触媒塩マスターバッチを120℃に設定したBrabender単軸押出機に供給し、ペレット化する。
【0158】
各触媒塩マスターバッチは、それぞれの触媒塩マスターバッチに基づいて、4.4ミリモル/100gのスルホン酸基を含有する。各触媒塩マスターバッチの組成を下記の表3に提供する。
【0159】
表3の触媒塩マスターバッチは、試験方法のセクションで上述した試料調製方法1または試料調製方法2の後、HSGCによって、またはGCによってイソブチレンについて測定する。結果を下記の表4Aおよび4Bに提供する。表中の「NM」は、値が測定されなかったことを示す。
【0160】
表4Bに示すように、触媒マスターバッチMB21(DBSAを含有する)は、GCおよび試料調製方法2で測定した場合、触媒マスターバッチMB19(ナフタレンスルホン酸を含有する)の2倍の量のイソブチレンを発生させる。これは、DBSAがナフタレンスルホン酸よりも速い速度でヒンダードフェノール酸化防止剤を分解する傾向があることを示唆している。しかしながら、表4Aに示すように、触媒マスターバッチMB2(実施例の塩2、DBSAおよびNAUGARD(商標)445を使用して形成されたAA-ASASを含有する)は、驚くべきことに、触媒マスターバッチMB19(ナフタレンスルホン酸を含有する)と比較して、はるかに低いイソブチレンを発生させる。いずれの特定の理論に束縛されることを望むものではないが、対応するスルホン酸の代わりに芳香族アミン-芳香族スルホン酸塩を使用することにより、少なくとも50%のイソブチレン低減を達成することができると考えられている。
【表5-1】
【表5-2】
【表6】
【表7】
【表8】
【0161】
C.組成物の調製
SI-LINK(商標)DFDA-5451 NT(エチレン/シランコポリマー)ペレットと触媒塩マスターバッチ(表3)ペレットとを乾燥ブレンドして、乾燥ブレンドの総重量に基づいて、95重量%のSI-LINK(商標)DFDA-5451 NTと5重量%の触媒塩マスターバッチとの乾燥ブレンドを形成する。乾燥ブレンドを160℃に設定したBrabenderの単軸押出機に供給し、組成物が溶融形態になるまで混合する。次いで、組成物を1mmの厚さを有するテープに押し出す。
【0162】
試料ごとに少なくとも1本のテープを、90℃の温度に設定した水浴に入れる。試料を水浴中に1時間、3時間、および6時間静置した後、高温クリープについて試験する。架橋性である試料組成物を水浴中で硬化する。
【0163】
試料ごとに少なくとも1本のテープを周囲環境(23~25℃の室温、50%の相対湿度)の作業台上に置く。試料を周囲環境に69時間、90時間、100時間、168時間、および230時間静置した後、高温クリープについて試験する。架橋性である試料組成物を周囲環境で硬化する。
【0164】
各試料の組成、および結果を下記の表5に提供する。
【0165】
表5に示すように、CS6、CS8、CS13、およびCS14は各々、(A)エチレン/シランコポリマー(SI-LINK(商標)DFDA-5451 NT)、(B)ヒンダードフェノール酸化防止剤(IRGANOX(商標)1010)、および(C)芳香族アミン-線状スルホン酸塩(CSの塩6、CSの塩8、CSの塩13、およびCSの塩14)を含有する。CS6、CS8、CS13、およびCS14は各々、芳香族アミン-芳香族スルホン酸塩を欠いている。CS6、CS8、CS13、およびCS14は各々、すべての時間の長さでの高温クリープ試験中に破損した-組成物が硬化していないことを示す。結果として、CS6、CS8、CS13、およびCS14は、湿気架橋性組成物ではない。
【表9-1】
【表9-2】
【0166】
CS16およびCS17は各々、(A)エチレン/シランコポリマー(SI-LINK(商標)DFDA-5451 NT)、(B)ヒンダードフェノール酸化防止剤(IRGANOX(商標)1010)、および(C)線状アミン-芳香族スルホン酸塩(CSの塩16およびCSの塩17)を含有する。CS16およびCS17は各々、芳香族アミン-芳香族スルホン酸塩を欠いている。CS16およびCS17は各々、すべての時間の長さでの高温クリープ試験中に破損した-組成物が硬化していないことを示す。結果として、CS16およびCS17は、湿気架橋性組成物ではない。
【0167】
CS18は、(A)エチレン/シランコポリマー(SI-LINK(商標)DFDA-5451 NT)、(B)ヒンダードフェノール酸化防止剤(IRGANOX(商標)1010)、および(C)ポリマー芳香族アミン-芳香族スルホン酸塩(CSの塩18)を含有する。CS18は、非ポリマー芳香族アミン-芳香族スルホン酸塩を欠いている。CS18は、すべての時間の長さでの高温クリープ試験中に破損した-組成物が硬化していないことを示す。結果として、CS18は、湿気架橋性組成物ではない。
【0168】
CS19は、(A)エチレン/シランコポリマー(SI-LINK(商標)DFDA-5451 NT)、(B)ヒンダードフェノール酸化防止剤(IRGANOX(商標)1010)、および(C)芳香族スルホン酸(NACURE(商標)B201)を含有する。CS19は、芳香族アミン-芳香族スルホン酸塩を欠いている。表4Aおよび4Bに示すように、CS19(MB19)中に含有されている触媒マスターバッチは、HSGCおよび試料調製方法1で測定した、1グラム当たり6,000,000超(1グラム当たり8,190,000)のイソブチレン発生ピーク面積を呈する。結果として、CS19の生成および取り扱いは危険である。
【0169】
CS10、CS12、およびCS14は各々、(A)エチレン/シランコポリマー(SI-LINK(商標)DFDA-5451 NT)、(B)ヒンダードフェノール酸化防止剤(IRGANOX(商標)1010)、および(C)1.3:1超(2:1)の硫黄と窒素とのモル比を有する芳香族アミン-芳香族スルホン酸塩(CSの塩10、CSの塩12、およびCSの塩14)を含有する。CS10、CS12、およびCS14は各々、すべての時間の長さでの高温クリープ試験中に破損した-組成物が硬化していないことを示す。結果として、CS10、CS12、およびCS14は、湿気架橋性組成物ではない。
【0170】
対照的に、(A)エチレン/シランコポリマー(SI-LINK(商標)DFDA-5451 NT)、(B)ヒンダードフェノール酸化防止剤(IRGANOX(商標)1010)、および(C)1:1超の硫黄と窒素とのモル比を有する芳香族アミン-芳香族スルホン酸塩を含有する組成物(実施例1~実施例4、実施例7、実施例9、実施例11、および実施例15)は、驚くべきことに、好適な高温クリープ(例えば、168時間の周囲環境で取得した後の130%以下の高温クリープ)を呈し(組成物が架橋性であることを示す)、また一方で、安全なレベルのイソブチレン発生(例えば、HSGCおよび試料調製方法1で測定した1グラム当たり6,000,000未満のイソブチレン発生ピーク面積を呈する。
本開示は、本明細書に含まれる実施形態および例示に限定されず、実施形態の部分、および異なる実施形態の要素の組み合わせを含むこれらの実施形態の変更された形態を、以下の特許請求の範囲の範疇に該当するものとして含むことが、特に意図されている。
【国際調査報告】