(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-19
(54)【発明の名称】化学的および/または生物学的プロセスを実施するためにピペットを使用するシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
B01L 3/02 20060101AFI20221212BHJP
G01N 1/00 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
B01L3/02 B
G01N1/00 101K
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022516011
(86)(22)【出願日】2020-09-14
(85)【翻訳文提出日】2022-04-14
(86)【国際出願番号】 US2020050717
(87)【国際公開番号】W WO2021051077
(87)【国際公開日】2021-03-18
(32)【優先日】2019-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517311482
【氏名又は名称】アイレパートリー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ハン チーアン
(72)【発明者】
【氏名】リ ソン
(72)【発明者】
【氏名】バートランド ジェフ
【テーマコード(参考)】
2G052
4G057
【Fターム(参考)】
2G052AA28
2G052AB20
2G052AD06
2G052AD26
2G052CA03
2G052CA04
2G052CA18
2G052CA23
2G052GA11
4G057AB11
4G057AB37
4G057AB38
(57)【要約】
化学的および/または生物学的プロセスを実施するためのシステムは、先端部を備えたピペットを有し、先端部は、チャンバの密封材を貫通し、次いで、プロセスで使用される材料を格納しているチャンバの底面に接触するよう配置され得る。先端部は、先端部の外周に沿って位置する開口部を備えた、複数の流路を有する。開口部が外周に配置されることにより、チャンバ内の材料の大部分をピペットで抜き取ることができるように、先端部をチャンバの底面上に配置することが可能になる。加えて、先端部がチャンバの底面上に配置され、開口部が先端部の外周に沿って設けられることにより、ピペットが、チャンバ内に追加の材料を供給している時に、チャンバ内に存在する材料を撹拌することが可能になる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の部分;
該第一の部分に結合された第二の部分であって、該第二の部分を通る材料の流れを可能にするためのチャネルを有する、該第二の部分;および
該第二の部分に結合された第三の部分であって、該第三の部分が、該チャネルに流体連通している開口部と、該開口部から放射状に延びている複数の流路とを有する先端部分を含み、該複数の流路が、該チャネルとピペットの外部の領域との間の材料の流れを可能にするよう構成されている、該第三の部分
を含む、ピペット。
【請求項2】
前記複数の流路が、約90度の間隔を空けて配置された4本の流路を含む、請求項1記載のピペット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、その全内容が本明細書に組み入れられる、2019年9月12日に出願された「Systems and Methods Using Pipettes for Performing Chemical and/or Biological Processes」という名称の米国仮特許出願第62/899,489号に対する優先権を主張する。
【0002】
本開示の分野
本出願は、概して、化学的および/または生物学的プロセスを実施するためのシステムおよび方法に指向する。より具体的には、本出願は、試薬および他の材料を少なくとも1つの反応チャンバ内におよび少なくとも1つの反応チャンバ外に移動させるためにピペットを使用して、化学的および/または生物学的プロセスを実施するシステムおよび方法に指向する。
【背景技術】
【0003】
関連技術
化学的および/または生物学的プロセス(例えば、ダイマー回避マルチプレックスポリメラーゼ連鎖反応(dimer avoided multiplex polymerase chain reaction(dam-PCR))またはアンプリコンレスキューマルチプレックスポリメラーゼ連鎖反応(amplicon rescue multiplex polymerase chain reaction(arm-PCR)))を実施するためのシステムは、プロセスの間、ピペット(一体化した先端部または着脱可能な先端部のいずれかを有する)を用いて、試薬および他の材料を移動させることができる。多くの場合、プロセスで使用される試薬(または他の材料)は、アルミ箔で密封されたチャンバ内に保管されている。チャンバの箔シールに穴を開けて試薬を利用可能にするために、ピペットに、箔シールを貫通する尖った末端となるチゼル形(chiseled)の先端部を設けることができる。ピペットを箔シールに貫通させた後、プロセスの実施中に、ピペットを使用して試薬または他の材料をチャンバから吸い取り、該材料を反応チャンバに移動させることができる。
【0004】
プロセスの過程においては、多くの異なる試薬または他の材料が反応チャンバへおよび反応チャンバから移動され得る。多くの場合、工程と工程の間に、繰り返しリンスを行い洗浄液を除去することによって反応チャンバを洗浄することが望ましい。これらの洗浄工程は時間がかかり、それによって、望ましくないことに、プロセスの時間を延ばす可能性があり、また、仮に残留試薬または残留材料が反応チャンバに残っていた場合、プロセスの結果に悪い影響を与える可能性がある。加えて、いくつかのプロセスでは、プロセス中のいくつかの時点で、磁気ビーズを使用して材料(例えば、核酸)を収集することがある。磁気ビーズは、洗浄後、プロセスの次の工程のために液体中に均一に再懸濁させなければならない。試薬および他の材料を反応チャンバ内におよび反応チャンバ外に移すための、磁気ビーズを反応チャンバ内で均一に再懸濁するための、ならびにプロセスの実施に必要な時間を短縮するための、より良い技法が、一般に所望されている。
【発明の概要】
【0005】
【図面の簡単な説明】
【0006】
本開示は、添付の図面を参照することによってより良く理解することができる。図面の各要素は、必ずしも互いに対して縮尺通りではなく、むしろ、本開示の原理を明確に例示することに重点が置かれている。さらに、類似の参照符号は、いくつかの図を通して対応する部分を指す。
【0007】
【
図1】PCR増幅を実施するためのシステムの一態様を示すブロック図である。
【
図2】プロセッサモジュールの一態様の側面図である。
【
図3】
図2のプロセッサモジュールの後面斜視図である。
【
図8】
図7の直線A-Aに沿った、
図6のピペットの断面図である。
【
図9】
図6のピペットの先端部のみを示す拡大斜視図である。
【
図10】
図6のピペットの先端部のみを示す拡大側面図である。
【
図11】
図6のピペットの先端部のみを示す拡大端面図である。
【
図12】チャンバ内に挿入されているピペットの一態様の部分断面図である。
【
図13】チャンバ内に挿入されているピペットの一態様の部分断面図である。
【
図14】チャンバ内に挿入されているピペットの一態様の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
詳細な説明
本開示の態様は、概して、化学的および/または生物学的プロセス(例えば、ダイマー回避マルチプレックスポリメラーゼ連鎖反応(dam-PCR)またはアンプリコンレスキューマルチプレックスポリメラーゼ連鎖反応(arm-PCR))を実施するためにピペットを使用するシステムおよび方法に関する。上述したように、多くの場合、チゼル形の先端部または平坦な先端部を有するピペットを用いて、試薬および他の材料を反応チャンバ内におよび反応チャンバ外に移動させる。そのようなチゼル形の先端部がチャンバまたはウェル内に挿入された時、先端部は、材料をチャンバからピペット内に受け入れるための穴がチャンバの底面からわずかに持ち上がるような様式で、チャンバまたはウェルの底面に接触する。前記のような平坦な先端部がチャンバまたはウェル内に挿入された時、先端部は、ピペットの平坦な先端部がチャンバの底面からわずかに持ち上がっていないと、材料をチャンバからピペット内に受け入れるための穴が塞がる可能性があるような様式で、チャンバまたはウェルの底面に接触する。平坦な先端部の、材料を受け入れるための穴が塞がることを防ぐために、ピペットの使用者は、チャンバからの材料が穴に入るのを可能にしたまま、ピペットの平坦な先端部をチャンバの底面のできるだけ近くに注意深く位置付けなければならない。使用者がピペットおよび平坦な先端部を用いてそのような正確な位置付けを行うことが必要とされるため、チャンバからの材料の抜き取りを実施するのに要する時間が増加する可能性があり、あるいは、使用者が平坦な先端部を位置付ける時に正確でない場合は、過剰な量の材料がチャンバ内に残される可能性がある。結果として、どちらの場合も、ピペットはチャンバから試薬(または他の材料)を全部引くことはできず、それにより、望ましくないことに、チャンバ内に残留量の材料を残すおそれがある。チャンバ内に残った試薬(または他の材料)により、プロセスの後続の工程を完了する前に追加のリンス手順が必要となるかもしれず、これはプロセスの費用および時間を増加させ得るため、プロセスの性能に影響を及ぼす可能性がある。加えて、チャンバ内に残留量の試薬が残ることにより、プロセスの後続の工程における反応が阻害され、それによりプロセスの効率が低下する可能性もある。
【0009】
本開示の態様において、ピペットは、カセット内に装着されるか、またはピペッタもしくはピペッティング装置の一部として使用することができ、かつ、チャンバの密封材を貫通した後チャンバの底面に接触するよう配置され得る先端部を有することができる。いくつかの態様において、先端部は、ピペットの本体の残りの部分と一体化することができるが、他の態様において、先端部は、ピペットの本体に取り外し可能に取り付けることができる別個の部分であり得る。チャンバは、化学的および/または生物学的プロセスに使用される材料(例えば、試薬またはビーズ)を保管または収容することができる。ピペットの先端部は、ピペットの末端に開口部を備えた複数の流路を有し得る。開口部は、先端部の外周に沿って位置し得る。開口部が、先端部の末端に先端部の外周に沿って配置されることにより、先端部をチャンバの底面上に配置した時に、ピペットで、チャンバ内の材料の大部分(全部ではないにしても)を、開口部を介して抜き取ることが可能になる。本開示のピペットの先端部をチャンバの底面上に配置し、保持し、チャンバから材料を全部抜き取ることができるので、チャンバから材料の大部分を抜き取るために使用者がピペットの先端部をチャンバ内に厳密に配する必要がなくなる。使用者は、材料を受け入れるためのピペットの開口部(または穴)が塞がることを懸念することなく、ピペットの先端部をチャンバの底面上に配置し、保持し、材料を抜き取ることができる。加えて、先端部をチャンバの底面上に配置することによって、ピペットが、チャンバに追加の材料を供給している時に、チャンバ内に存在する材料を撹拌することができる。例えば、流路を通ってチャンバ内に入る試薬の流れは、既にチャンバ内にあるビーズを撹拌するよう動作することができ、その結果、ビーズは懸濁され、試薬中により良好に分散する。流路からの流れは、流路の大きさおよびその配置によって、ビーズをチャンバ内の以前の位置から撹拌し、供給された試薬中にビーズを懸濁するために、チャンバ内に乱流を発生させることができるようになる。
【0010】
図1は、生物試料から得られたDNAおよび/またはRNAのPCR増幅などの化学的および/または生物学的プロセスを実施するためのシステム10の一態様を表す。システム10は、化学的および/または生物学的プロセスの実施、例えば、以前に「Dimer Avoided Multiplex Polymerase Chain Reaction for Amplification of Multiple Targets」という名称の国際公開公報第2018/165593号(これは参照により本明細書に組み入れられる)に記載された技法であるdam-PCR、または、以前に「Amplicon Rescue Multiplex Polymerase Chain Reaction for Amplification of Multiple Targets」という名称の米国特許第7,999,092号(これも参照により本明細書に組み入れられる)に記載された技法であるarm-PCRの実施を可能にする。システム10は、制御要素15に結合されたプロセッサ12と任意選択の読み取り装置14とを含む。一態様において、制御要素15は、デスクトップコンピュータまたはラップトップコンピュータなどの計算装置を含むが、他の態様においては他のタイプの制御要素15が可能である。制御要素15は、プロセッサ12および読み取り装置14(使用する場合)の動作を制御するために、プロセッサ12および読み取り装置14と通信することができる。制御要素15は、さらに、試料の増幅されたDNAを示すデータを、読み取り装置14(使用する場合)から受け取り、増幅されたDNAと所定のデータとの比較を示す出力を生成することができ、この比較は、試料の診断において使用され得る。
【0011】
プロセッサ12は、生物試料を収容する自己完結型のカセット17を受け入れ、カセット17と係合し、カセット17内の試料に対してプロセスが実施されるようにカセット17を操作することができる。例示的なカセットは、参照により本明細書に組み入れられる、「Apparatus for Performing Amplicon Rescue Multiplex PCR」という名称の米国特許第8,383,068号に開示されている。一態様において、プロセッサ12は、プロセッサ12内のカセット17を検出し、カセット17についての様々な情報を決定するための、少なくとも1つの検出要素19を含む。検出要素19は情報を制御要素15へ送信し、制御要素15は受け取った情報に基づいてプロセッサ12を操作する。
【0012】
読み取り装置14(使用する場合)は、カセット17がプロセッサ12によって処理された後にカセット17を受け取り、カセット17上のマイクロアレイ(図示せず)の画像を取得することができる。マイクロアレイは、PCR増幅によって生成されたDNAの検出を示す。一態様において、マイクロアレイの画像にはデジタル画像が含まれるが、他の態様においては他のタイプの画像が可能である。読み取り装置14は、制御要素15が試験データを分析し、試験データと所定のデータとを比較することを可能にするために、制御要素15に前記画像を試験データとして送信することができる。システム10の動作に関する追加の情報は、参照により本明細書に組み入れられる、「Systems and Methods for Performing Amplicon Rescue Multiplex Polymerase Chain Reaction (PCR)」という名称の米国特許第10,345,320号に開示されている。
【0013】
図2は、
図1のプロセッサ12のプロセッサモジュール40の一態様を示す。これに関して、プロセッサ12は、1つまたは複数のプロセッサモジュール40を含み得る。一態様において、プロセッサ12は、ハウジング(図示せず)内に横並びに位置付けられた4つのプロセッサモジュール40を有し得るが、他の態様においては任意の数のプロセッサモジュール40が用いられてもよい。各プロセッサモジュール40は、プロセスに関連する技法がカセット17内の試料に対して実施されるように、1つのカセット17を受け入れ、それを処理することができる。プロセッサモジュール40は、カセット17がモジュール40内に配される時にカセット17を受け入れ格納するための、受け部42を含む。モジュール40はまた、カセット17が受け部42内に位置付けられた時に、カセット17の外面上に位置する識別子(図示せず)を検出するための、受け部42に隣接して位置する少なくとも1つの検出要素19も有する。検出要素19は識別子を検出し、制御要素15が、カセット17からの識別子を、プロセッサモジュール40についての対応する所定の設定値および/または命令に対応付けることを可能にするために、検出要素19は制御要素15に識別子を送信する。
【0014】
プロセッサモジュール40は、制御要素15からの設定値および/または他の制御命令に基づいてプロセッサモジュール40の動作を制御する、内蔵の制御要素を含み得る。これに関して、内蔵の制御要素は、ラッチモータ41(
図3を参照されたい)、カムバーモータ43、ポンプピンモータ44、送りねじモータ45、加熱器アセンブリ46、およびリフターアセンブリ47の動作を制御する。ラッチモータ41はラッチ(図示せず)の動作を制御し、カムバーモータ43は、カムバーシャフト50に結合し、カムバーシャフト50の回転を制御することができる。一態様において、カムバーモータ43は、モジュール40内の受け部42の後ろに位置付けられてもよい。カムバーの時計方向および反時計方向の回転を制御し、カセット17内でのピペット(図示せず)の鉛直方向上向きおよび/または下向きの動きを操作するために、カムバーシャフト50は、受け部42の後方開口部(図示せず)内へ水平に延び、カセット17のカムバー(図示せず)と係合する。ポンプピンモータ44は、プランジャ52に結合することができ、プランジャ52の横方向の動きを制御する。ポンプピンモータ44は、モジュール40内の受け部42の後ろに位置付けられてもよく、プランジャ52は、受け部42内の開口部(図示せず)を介して受け部42の中へ横方向に延びてもよい。プランジャ52は、カセット17のポンプピン(または「プッシュロッド」)(図示せず)と係合することができ、プランジャ52は、プランジャ52がポンプピンを押し縮めることにより流体がピペット内に吸い込まれるかまたはピペットから放出されるように、カセット17内のピペットポンプアセンブリ(図示せず)を動作させる。
【0015】
さらに、送りねじモータ45は、送りねじシャフト53に回転可能に結合することができ、送りねじシャフト53の時計方向および反時計方向の回転を制御する。一態様において、送りねじモータ45は、モジュール40内の受け部42の後ろに位置付けられてもよく、送りねじシャフト53は受け部42内へ水平に延びてもよい。送りねじシャフト53は、カセット17内でのピペットの横方向の動きを制御するために、カセット17の送りねじ(図示せず)と係合する。これに関して、送りねじシャフト53を時計方向に回転させると、送りねじが時計方向に回転し、その結果、ピペットがカセット17内で横方向の一方向に進むのに対し、送りねじシャフト53を反時計方向に回転させると、送りねじが反時計方向に回転し、その結果、ピペットがカセット17内で横方向の反対方向に進む。カセット17のカムバー、ポンプピン、および送りねじの制御によって、ピペットがカセット17内の試薬チャンバ(図示せず)もしくはサンプルチャンバ(図示せず)から流体を取り出すように、またはカセット17内の試薬チャンバまたは検出チャンバ(図示せず)に流体を注入するように、モジュール40がカセット17内のピペットを操作することが可能になる。
【0016】
加熱器アセンブリ46は複数の加熱器55を含む。一態様において、加熱器アセンブリ46は、モジュール40内の受け部42の直下に位置付けられてもよい。各加熱器55は、調整可能な基部56の上に位置付けられ、基部56は、鉛直方向に動いて加熱器55の鉛直位置を調整してもよい。加えて、各加熱器55は、カセット17の底部に位置するサンプルチャンバまたは検出チャンバを受け入れるための陥凹部(図示せず)を有する。加熱器アセンブリ46は、さらに、基部モータ57と、基部プレート58と、トラック59とを含む。基部プレート58は、調整可能な基部56のそれぞれと結合し、基部プレート58は、トラック59に沿った加熱器55の水平方向の動きを容易にするために、トラック59と摺動可能に係合する。一態様において、モータ57は、基部プレート58の(x方向に平行な)水平方向の動きを容易にするために、基部プレート58と回転可能に係合する。したがって、加熱器55の水平位置の調整が所望される場合、モータ57により、基部プレート58をトラック59に沿って水平に所望の距離だけ摺動させる。
【0017】
モジュール40は、さらに、加熱器アセンブリ46の下に位置付けられたリフターアセンブリ47を含む。リフターアセンブリ47は、少なくとも1つのカム60と少なくとも1つのセンサ61とを含む。一態様において、アセンブリ47は2つのカム60と2つのセンサ61とを含むが、他の態様においては他の数のカム60およびセンサ61が可能である。加熱器55をカセット17のサンプルチャンバまたは検出チャンバに接触するよう持ち上げるために、カム60が回転し、加熱器基部56に接触することができる。各カム60に対応するセンサ61は、カム60が定位置にあるかどうかを検出し、そのような検出をモジュール40の内蔵の制御要素に送信することができる。
【0018】
図3に示されるように、カムバーモータ43は、ベルト66を介して滑車65に結合することができる。滑車65は、カムバーシャフト50の外面の周りに位置付けられ、カムバーシャフト50の外面に結合する。カムバーモータ43は内蔵の制御要素に結合することができ、内蔵の制御要素は、制御要素15からの所定の設定値に基づいてカムバーモータ43の動作を制御することができる。カムバーモータ43が回転すると、ベルト66はモータの回転方向に回転し、それによって滑車65に係合し、カムバーシャフト50を同方向に回転させる。カムバーシャフト50の回転によりカセットのカムバーが回転し、それによってカセット17内のピペットの鉛直位置が調整される。一態様において、カムバーシャフトセンサ67が、カムバーシャフト50および滑車65の後ろに位置付けられてもよく、カムバーシャフトセンサ67は、カムバーシャフト50がセンサ67を通って延びる時に、シャフト50を検出することができる。カセット17の挿入を検出し、カセット17を処理のために受け部42内に維持するため、センサ67は、カムバーシャフト50が検出された時に、内蔵の制御要素に信号を送信する。
【0019】
ポンプピンモータ44はプランジャ52に結合し、プランジャ52の水平位置を制御する。ポンプピンモータ44は内蔵の制御要素に結合し、内蔵の制御要素は、カセット17内でのプロセスの実施のためにプランジャ52を操作するため、ポンプピンモータ44の動作を制御する。送りねじモータ45は滑車(
図3には図示せず)に結合することができ、この滑車は、送りねじシャフト53の外面の周りに結合する。一態様において、送りねじモータ45はベルト68を介して滑車に結合する。送りねじモータ45が回転すると、ベルト68が同方向に回転して滑車に係合し、その結果、滑車および送りねじシャフト53が同方向に枢動する。送りねじシャフト53の回転によりカセット17の送りねじが回転し、それによってカセット17内のピペットの水平位置が調整され、プロセスが容易になる。モジュール40は、さらに、送りねじシャフト53および滑車の後ろに位置付けられた送りねじシャフトセンサ69を含む。シャフト53がカセット17に適切に係合したことを保証するために、センサ69は、シャフト53を検出し、内蔵の制御要素にシャフトの位置を報告することができる。
【0020】
図4および5はカセット17の例示的態様を示す。カセット17はピペット220を有し、ピペット220は、カムバー216の回転によってピペット220の鉛直方向上向きおよび/または下向きの対応する動きが生じるように、回転可能なカムバー216に動作可能に結合することができる。ピペットホルダ228はカセットピペット220の上下移動を支持し、誘導することができる。ピペットホルダ228はカセット17によって支持され、カセット17内に摺動可能に位置付けられてもよい。送りねじ224は、カセット17内に位置付けられてもよく、ピペットホルダ228に動作可能に接続されてもよく、そのため、送りねじ224の回転がピペットホルダ228の対応する横方向の動きを生み出し、それによって、増幅/検出プロセスの各段階において、ピペット220をカセットの基部204内の適当な流体ウェルの上方に位置付けることが可能になる。
【0021】
カセット17の基部204は、少なくとも1つのサンプルチャンバ242と、試薬(図示せず)を収容するための少なくとも1つの試薬チャンバ249とを含む。各試薬チャンバ249は、同一の、類似の、または異なった、大きさ、形状、および深さのものであってもよく、カセット17の基部204内の様々な位置に配列されていてもよい。カセット17内でプロセスが進行する時に、カセットピペット220が、抽出および2工程2プライマーセットによる増幅に必要な試薬を収集できるように、所望の試薬(図示せず)が適当な試薬チャンバ249内に配置される。試薬チャンバ249は、事前に装填され、好ましくは輸送前に密封されてもよく、密封材は、輸送中および保管中に所定の位置にとどまっている材料であるが、カセットピペット220を用いた内容物の取り出しが可能になるよう試薬チャンバ249を利用可能にする(または、開ける)ために、カセットピペット220の下向きの動きの力によって簡単に穴を開けることができる材料である。単独でまたは集合体として、試薬チャンバ249を密封するのに適当であるそのような1つの材料は、アルミ箔の薄いシート(図示せず)である。一態様において、基部204内の試薬チャンバ249は、標的特異的プライマーおよび共通の標的非特異的プライマーをそれぞれ収容する2つの試薬チャンバ249であり得る。プライマーは、第一および第二の増幅反応に使用することができ、第一の増幅は標的特異的であり、サンプル内に見出され得る様々な標的のDNAおよび/またはRNAを表すアンプリコンを提供し、第二の増幅は、共通プライマーによって誘導(prime)され、第一の増幅のアンプリコンの半定量的な非特異的増幅を可能にする。この2工程プロセスにおいて、標的特異的プライマーによって誘導される第一の増幅は特異性を提供し、一方、共通プライマーによって誘導される第二の増幅は感度を高める。
【0022】
また、カセット17の基部204内に、2工程dam-PCRプロトコル中に増幅されたであろうDNAを検出するためのマイクロアレイ244を収容する検出チャンバ248を設けることもできる。マイクロアレイは当技術分野において公知であり、標的特異的なマイクロアレイを調製するための方法は当業者によく知られている。
【0023】
カセット17の上部の注入口214は、使用者が、カセット17の外側の環境からピペット(図示せず)をサンプルチャンバ242内に挿入することを可能にする。透明なプラスチック製の窓(図示せず)をカセット17に形成して、使用者が、分析するサンプル(図示せず)を配置するために使用者のピペットの先端部(図示せず)をカセット17内に挿入している時に該先端部を目視できるようにしてもよい。一態様において、透明な覗き窓は、カセット17の最高最低温度に耐えるよう構築される。あるいは、カセット17の筐体全体を透明または半透明なプラスチックで形成して、使用者がカセット17の内部機構を視認できるようにしてもよい。
【0024】
一態様において、カセットの上部に位置する注入口キャップ212は、1回限りの操作キャップであってもよく、これは、サンプル挿入後に一度キャップを密封すると、再びキャップを開けることはできず、それによってシールの完全性が維持され、システムが密閉状態で保たれるということである。別の態様において、サンプル(図示せず)をカセット17内に導入したら、スライド式ドア210を摺動させて所定の位置に固定することができるような、スライド式ドア210を利用してもよい。注入口キャップ212は注入口214を密封する。一態様において、注入口214を通して20μlのピペットをサンプルチャンバ242内に挿入できるようにするため、注入口214は0.3インチの最小内径を有する。他の態様において、注入口214は、より大きなまたはより小さな径を有してもよい。
【0025】
カセットピペット220の鉛直方向の上下移動は、カムバー216によって提供され、カムバー216は、カムバー216に移動不能に結合された機械的インターフェース218によって、プロセッサモジュール40に接続され、それにより、プロセッサモジュール40がカセットピペット220の動きを制御することが可能になる。一態様において、機械的インターフェース218はノブであるが、他の態様においては他の機械的インターフェースが使用されてもよい。
【0026】
カセットピペット220は、ピペットホルダ228によって支持され、ピペットホルダ228によって所定の位置に保持されてもよい。ピペットホルダ228は、カセット17の長さに沿って摺動可能に受け入れられてもよい。ピペットホルダ228は、第一および第二のガイドレール(図示せず)によってカセット17の同一側面に沿って保持されてもよく、第一および第二のガイドレールは、カセット17の面に成形され得る。このようなガイドレールは、互いに上下に平行に位置付けられ、かつ、カセット17の端部と端部の間に水平に位置付けられてもよい。ピペットホルダ228は、送りねじ224に動作可能に接続されてもよい。送りねじ224は、送りねじ224とピペットホルダ228との間の雌雄のねじ山の対合により、ピペットホルダ228内にねじ込み式に受け入れられてもよい。機械的インターフェース240が、送りねじ224に移動不能に接続され、時計方向および反時計方向の両方向の回転を可能にする。機械的インターフェース240の回転により送りねじ224が回転し、ピペットホルダ228が送りねじ224のねじ山に従って進み、横方向に送りねじ224に沿ってカセット17の長さに沿って動く。送りねじ224の回転方向を逆転すると、それに対応してピペットホルダ228の動きが逆転する。送りねじ224の回転数および回転方向を制御することによって、ピペットを、基部204内に位置する試薬チャンバ249またはサンプルチャンバ242のいずれか1つの上方に正確に位置付けることができる。一態様において、機械的インターフェース240はノブであるが、他の態様においては他のタイプの機械的インターフェースが使用されてもよい。
図4および5のカセット17は例示であり、他の態様においては他のタイプのカセットが使用されてもよいことが理解される。
【0027】
図6および7は、一態様においてカセット17内のピペット220として使用され得るピペット300の一態様を示す。しかしながら、他の態様において、ピペット300は他のカセット内で使用されてもよく、またはピペット300はカセットの外側で独立型の装置として使用されてもよい。ピペット330は、容器間で液体および/または固体状態のビーズを移すために使用されてもよい。ピペット300は、第一の部分310と、第二の部分320と、第三の部分330とを含み得る。一態様において、第三の部分330は、
図6に示されるように、ピペット300の一体化した部分であり得る。しかしながら、他の態様において、第三の部分330は、ピペット300に取り外し可能に取り付けることができる、別個の先端部として構成され得る。
【0028】
第一の部分310は、装着インターフェース312と、ポンプインターフェース314と、リザーバ316とを含み得る。一態様において、装着インターフェース312は、ピペット300をピペットホルダ(例えば、ピペットホルダ228)に装着するために、ピペットホルダ228の対応するスロット(図示せず)内に摺動させスロットと係合させることができる、T字形のブラケットを含み得る。ピペット300をピペットホルダ228に装着すると、送りねじ224および/またはカムバー216によるピペットホルダ228の動きを通して、ピペット300をカセット17内で鉛直におよび/または水平に動かすことができる。ポンプインターフェース314は、ポンプインターフェース314に結合された管(図示せず)によって、ピペットポンプアセンブリに接続され得る。次いで、(1)流体もしくは他の材料、例えばビーズがピペット300内に吸い込まれるよう、ピペット300内を真空に引くように、または(2)流体もしくは他の材料、例えばビーズがピペット300から放出されるよう、ピペット300内に圧力を提供するように、ピペットポンプアセンブリを動作させることができる。ピペット300内のリザーバ316は、液体または他のもの(例えば、ビーズ)を貯蔵するために使用され得る。一態様において、リザーバ316は、arm-PCRまたはdam-PCRで使用される液体または他のもの(例えば、ビーズ)を貯蔵するために使用され得る。例えば、リザーバ316は、試薬チャンバ249からピペット300内に吸い込まれた試薬を貯蔵するために使用することができ、この試薬は、次いで、ピペット300によってサンプルチャンバ242に移され、続いてサンプルチャンバ242内で分散される。
【0029】
第二の部分320は、第一の部分310を第三の部分330に接続する、細長い円錐形状を有し得る。ピペット300に剛性を提供するために、第二の部分320は1つまたは複数のフィン322を含み得る。一態様において、
図6および7に示されるように、フィン322は、第二の部分320の内面および外面の両方に位置し得るが、他の態様においては内面のみまたは外面のみに位置してもよい。第二の部分320は、リザーバ316と第三の部分330との間の液体の流れのための中心チャネル324を含み得る。中心チャネル324は、リザーバ316においてはより大きな第一の径を備え、第三の部分330においてはより小さな第二の径を備える、概ね円形の断面を有し得る。他の態様において、中心チャネル324は、楕円形、正方形、三角形、または矩形などの異なる断面形状を有し得る。中心チャネル324は、1つまたは複数のテーパ区域を有し得、ここでは、中心チャネルの径が、第一の径から第二の径まで一定の割合または他の様式で減少している。
【0030】
図8は、ピペット300の一態様の断面図を示す。
図8に示されるように、中心チャネル324は3つの区域を有し得るが、他の態様においては他の数の区域が可能である。中心チャネル324の第一の区域325は、径が概ね一定である円筒形状を有し得るが、いくつかの態様においては、中心チャネル324をリザーバ316に接続させるよう、より大きな径を有する段差部分328を含んでもよい。第一の区域325は第二の区域326に移行することができる。第二の区域326は、テーパを備えた円錐形状を有し得、テーパによって、中心チャネル324が第一の部分310から離れるにつれて中心チャネル324の径が減少する。一態様において、第二の区域326のテーパは約12度~約18度であり得る。第二の区域326は第三の区域327に移行することができる。第三の区域327は、テーパを備えた円錐形状を有し得、テーパによって、中心チャネル324の径が、チャネル324の長手方向軸に沿って第一の部分310から離れるにつれて減少する。一態様において、第三の区域327のテーパは約2度~約4度であり得る。
【0031】
図9~11は、ピペット300の第三の部分330を示す。第三の部分330は、液体をピペット300とチャンバまたはウェルとの間で移動させるための先端部分332を含み得る。先端部分332は、中心チャネル324と流体連通している中心開口部334を含み得る。一態様において、先端部分332の中心開口部334は、概ね円筒形状を有し得るが、他の態様においては他の形状が可能である。別の態様において、中心開口部334は、中心チャネル324と一体化され得る。複数の流路336が中心開口部334から放射状に延びており、この複数の流路336は、中心開口部334(および中心チャネル324)とピペット300の外側の領域(またはピペット300の外部)との間の材料の流れを提供する。一態様において、流路336は、概ね正方形の断面を有し得るが、他の態様においては異なる断面形状(例えば、矩形または円形)を有してもよい。流路336は、ピペット300とチャンバまたはウェルとの間の液体および/または他の材料(例えば、ビーズ)の移動を可能にするような大きさであり得る。一態様において、流路は、約0.005インチ~約0.01インチの幅および約0.005インチ~約0.01インチの高さを有し得るが、他の態様においては他の寸法が可能である。
【0032】
図9~11の態様に示されるように、中心開口部334から延びる流路336は4本であり得る。しかしながら、他の態様において、中心開口部334から延びる流路336は、4本超または4本未満であり得る。一態様において、流路336は、中心開口部334の周りに、等間隔を空けて配置されるかまたは均等に位置付けられ得る。例えば、
図9~11において、流路は、流路336の対が実質的に整列するように、約90度の間隔を空けて位置付けられ得る。しかしながら、他の態様において、流路336は、中心開口部334の周りに、不均等な間隔を空けて配置されてもよい。例えば、流路336は、一方の隣接する流路336からは約60度離れ、もう一方の隣接する流路336からは約120度離れるよう、位置付けられてもよい。
【0033】
また、先端部分332は、流路336を分離し流路336に側壁を提供するための、対応するウェッジ部分338も含み得る。各ウェッジ部分338は、ピペット300をチャンバまたはウェル内に挿入した時に、チャンバまたはウェルの底面と接触することができる末端面333を有し得る。一態様において、ウェッジ部分338の末端面333は、末端面333をチャンバまたはウェルの底面と接触するよう動かした時にチャンバまたはウェルの底面と実質的にシールを形成する形状を有し得る。一例として、ウェッジ部分338の輪郭は、ウェッジ部分338と底面とが、各ウェッジ部分338の周囲または少なくとも1つの縁部に沿ってぴったりと接触するように、チャンバまたはウェルの底面の輪郭と対応していてもよい。一態様において、末端面333は、チャンバまたはウェルの、実質的に平面である底面と接合するように、実質的に平面であり得る。しかしながら、他の態様において、末端面333は、チャンバまたはウェルの対応する底面と接合するように異なる形状(例えば、円弧状)を有し得る。
【0034】
ウェッジ部分338とチャンバまたはウェルの面との間の領域を実質的に密封することは、流路336を通過する材料の流れの漏洩を防ぐことに役立つということに留意されたい。そのような漏洩を防ぐことは、流路336内でより高い圧力を維持することに役立ち、それにより、より高い流量または吸引力を維持することに役立つ。したがって、流路336を通してチャンバまたはウェル内に材料を放出する時に、より良好な撹拌が生じるような、より高い流量を実現することができる。チャンバまたはウェルからピペット内に材料を引き込む時には、材料を引き込むためのより大きな力を実現することができる。
【0035】
一態様において、流路336は、中心チャネル324内の液体の流れに実質的に垂直な液体の流れを提供することができる。しかしながら、他の態様において、流路336内の液体の流れは、中心チャネル324内の液体の流れに対して90度より大きな角度または90度より小さな角度であり得る。別の態様において、すべての流体流が、先端部分332の周囲に沿った円筒外壁内の流路開口部335を通るように、各ウェッジ部分338の末端面333が、中心開口部334および/または流路336を密閉または密封する一体化した表面を形成するように延びていてもよい。さらなる態様において、流路336と中心チャネル324との間の液体の流れを改善するために、中心開口部334内に円錐形の分配器を配してもよい。
【0036】
図12~14は、ピペット300とチャンバまたはウェル400との種々の相互作用を示す。一態様において、チャンバまたはウェル400は、カセット17の基部204内に位置するチャンバまたはウェルに対応してもよいが、他の態様において、チャンバまたはウェル400は、独立型のチャンバもしくはウェルであるか、または別の装置内に組み込まれていてもよい。
図12は、チャンバまたはウェル400の密封材(例えば、金属箔)402を貫通しているまたは穴を開けている、ピペット300の第三の部分330の先端部分332を示す。例えば、チャンバまたはウェル400は、dam-PCRまたはarm-PCRを含むがこれに限定されないプロセスの工程のうちの1つの工程で使用される試薬を保管している試薬チャンバであってもよい。先端部分332は、密封材402を貫通した後、
図13に示されるようにチャンバまたはウェル400の底面に接触するよう動かしてもよく、その結果、ウェッジ部分338の末端面333のすべてまたはほとんどが、チャンバまたはウェル400の底面に接触する。
【0037】
図13に示されるように先端部分332がチャンバ400の底面に接触したら、ピペット300を使用して液体(または他の材料)をチャンバ400から抜き取ることができる。液体(または他の材料)は、
図13に矢印で示されているように、流路336を通って中心チャネル324へと流れることができる。先端部分332をチャンバ400の底面に接触するよう位置付けることにより、ピペット300が、チャンバ400内に保管されている液体(または他の材料)の実質的に全部を抜き取ることが可能になる。
【0038】
図14は、
図13に示された構成に類似した、チャンバ400の底面に接触している先端部分332を示す。しかしながら、ピペット300は、
図13に示されるように液体(または他の材料)を抜き取っているのではなく、代わりに、液体(または他の材料)をチャンバ400内に供給(または放出)している。液体(または他の材料)は、
図14に矢印で示されているように、中心チャネル324および流路336を通ってチャンバ400内へと流れることができる。先端部分332をチャンバ400の底面に接触するよう位置付けること、ならびに流路336の大きさおよびその配置により、流路336からの液体の流れがチャンバ400内で乱流を発生させることが可能になる。チャンバ400における乱流の発生により、チャンバ内にあるあらゆるビーズ404を撹拌することができ、その結果、ビーズ400を、チャンバ400内の液体中に懸濁させることができる。例えば、特定のプロセス中のある工程の終了後、複数のビーズ404がチャンバ400の底面上にある場合がある。ピペット300をチャンバ400内に位置付けた後、
図14に示されるように、流路336を通る液体の流れによってビーズ404を動かし撹拌することができ、その結果、ビーズ404を、チャンバ400内に供給された液体中に懸濁させることができる。
【0039】
ピペット300は、概してカセット17および/またはシステム10に関して説明されているが、ピペット300は任意のカセットまたはシステムと共に使用できることが理解されるべきである。加えて、ピペット300は、カセット内に組み込む必要はなく、プロセスの工程を手作業で実施するために、人が独立型の装置の一部として使用してもよい。
【0040】
確認された態様は一例として提供されたにすぎないことが理解されるべきである。本態様の設計、動作条件、および構成において、本出願の範囲から逸脱することなく、他の置換、修正、変更、および省略を行うことができる。したがって、本出願は、特定の態様には限定されず、種々の、しかし依然として本出願の範囲内にある修正態様まで拡張される。また、本明細書において用いられた表現および用語は、説明のためのものにすぎず、限定するものとして見なされるべきではないことも理解されるべきである。
【国際調査報告】