(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-19
(54)【発明の名称】機械方向に配向された多層ポリエチレンフィルムおよびそれを含む物品
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20221212BHJP
B32B 7/027 20190101ALI20221212BHJP
B29C 55/06 20060101ALI20221212BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B32B7/027
B29C55/06
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022518740
(86)(22)【出願日】2020-10-14
(85)【翻訳文提出日】2022-03-23
(86)【国際出願番号】 US2020055477
(87)【国際公開番号】W WO2021076552
(87)【国際公開日】2021-04-22
(32)【優先日】2019-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ザラメア バスティロ、ルイス ジェラルド
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
4F210
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086BA04
3E086BA15
3E086BB21
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3E086DA08
4F100AK04A
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(57)【要約】
本開示は、機械方向配向ポリエチレン(MDO-PE)フィルム、MDO-PEフィルムを含む積層体、およびMDO-PEフィルムを形成する方法を提供する。MDO-PEフィルムは、第1のエチレン系ポリマーを含むコア層と、第2のエチレン系ポリマーを含むスキン層と、コア層とスキン層との間にあり、それらに接触しているサブスキン層とを含む。密度、ピーク融点、および重量分率結晶化度の各値は、コア層からサブスキン層へ、サブスキン層からスキン層へと増加する。MDO-PEフィルムは、スキン層に対するコア層の重量分率結晶化度の比、およびスキン層に対するコア層のピーク融点の比について所定の値をさらに含む。MDO-PEフィルムは、他の分野の中でも、食品包装に有用であり得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械方向配向ポリエチレンフィルムであって、
(a)ASTM D 792に従って測定された0.870g/cm
3~0.920g/cm
3の密度、82~126℃のピーク融点、および本明細書に提供される等式1に従って計算された15~30の重量分率結晶化度を有する第1のエチレン系ポリマーを含む、コア層と、
(b)ASTM D 792に従って測定された0.940g/cm
3~0.965g/cm
3の密度、130~135℃のピーク融点、および本明細書に提供され等式1に従って計算された30~80の重量分率結晶化度を有する第2のエチレン系ポリマーを含む、スキン層と、
(c)前記コア層と前記スキン層との間にあり、それらに接触しているサブスキン層であって、ASTM D 792に従って測定された0.920g/cm
3~0.950g/cm
3の密度、125~130℃のピーク融点、および本明細書に提供される等式1に従って計算された40~65の重量分率結晶化度を有する第3のエチレン系ポリマーを含む、サブスキン層と、を含み、
前記密度、ピーク融点、および重量分率結晶化度の各値が、前記コア層から前記サブスキン層へ、前記サブスキン層から前記スキン層へと増加し、前記スキン層に対する前記コア層の前記重量分率結晶化度の比が、0.25~0.91の値を有し、前記スキン層に対する前記コア層の前記ピーク融点の比が、各々ケルビン温度スケールで表され、0.870~0.990の値を有する、フィルム。
【請求項2】
前記スキン層に対する前記コア層の前記密度の比が、0.90~0.98の値を有するか、
前記スキン層に対する前記コア層の前記重量分率結晶化度の前記比が、0.5~0.8の値を有し、前記スキン層に対する前記コア層の前記ピーク融点の前記比が、各々ケルビン温度スケールで表され、0.892~0.973値を有する、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記コア層から前記サブスキン層へと、前記結晶化度の前記値が、5~80パーセント増加し、前記サブスキン層から前記スキン層へと、前記値が、18~32パーセント増加するか、
前記コア層から前記サブスキン層へと、前記ピーク融点の前記値が、1.5~50パーセント増加し、前記サブスキン層から前記スキン層へと、前記値が、5~7パーセント増加する、請求項1または2に記載のフィルム。
【請求項4】
前記コア層が、ASTM D 792に従って測定された0.870g/cm
3~0.890g/cm
3の密度を有し、前記スキン層が、ASTM D 792に従って測定された0.940g/cm
3~0.950g/cm
3の密度を有し、前記サブスキン層が、ASTM D 792に従って測定された0.930g/cm
3~0.940g/cm
3の密度を有するか、
前記コア層および前記スキン層が各々、前記機械方向配向ポリエチレンフィルムの厚さの5~15パーセントであり、前記サブスキン層が、前記機械方向配向ポリエチレンフィルムの厚さの70~90パーセントであり、前記コア層、前記サブスキン層、および前記スキン層が、前記機械方向配向ポリエチレンフィルムの厚さの100パーセントを提供する、請求項1~3のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項5】
前記機械方向配向ポリエチレンフィルムが、10~125マイクロメートル(μm)の厚さを有するか、
前記機械方向配向ポリエチレンフィルムが、ASTM D882に従って測定された場合、1000MPa以上の機械方向2%割線弾性率を呈する、請求項1~4のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項6】
前記機械方向配向ポリエチレンフィルムが、115℃~130℃の温度で、機械方向に、4.5:1~7.5:1の延伸比で配向されるか、
前記機械方向配向ポリエチレンフィルムが、ASTM D 1003に従って測定された際、10%以下のヘイズを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のフィルムを含む食品包装。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載の第1の機械方向配向ポリエチレンフィルムと、請求項1~6のいずれか一項に記載の第2の機械方向配向ポリエチレンフィルムとを含む積層体であって、前記第1および第2の機械方向配向ポリエチレンフィルムの前記スキン層(b)が外側層であり、前記第1および第2の機械方向配向ポリエチレンフィルムの前記コア層(c)が互いにシールされ、前記第1の機械方向配向ポリエチレンフィルムおよび前記第2の機械方向配向ポリエチレンフィルムが、単一のインフレーションフィルムから形成されている、積層体。
【請求項9】
機械方向配向ポリエチレンフィルムを形成する方法であって、
(a)ASTM D 792に従って測定された0.870g/cm
3~0.920g/cm
3の密度、82~126℃のピーク融点、および本明細書に提供される等式1に従って計算された15~30の重量分率結晶化度を有する第1のエチレン系ポリマーを含む、コア層と、
(b)ASTM D 792に従って測定された0.940g/cm
3~0.965g/cm
3の密度、130~135℃のピーク融点、および本明細書に提供される等式1に従って計算された30~80の重量分率結晶化度を有する第2のエチレン系ポリマーを含む、スキン層と、
(c)前記コア層と前記スキン層との間にあり、それらに接触しているサブスキン層であって、ASTM D 792に従って測定された0.920g/cm
3~0.950g/cm
3の密度、125~130℃のピーク融点、および本明細書に提供される等式1に従って計算された40~65の重量分率結晶化度を有する第3のエチレン系ポリマーを含む、サブスキン層と、を有し、前記密度、ピーク融点、および重量分率結晶化度の各値が、前記コア層から前記サブスキン層へ、前記サブスキン層から前記スキン層へと増加し、前記スキン層に対する前記コア層の前記重量分率結晶化度の比が、0.25~0.91の値を有し、前記スキン層に対する前記コア層の前記ピーク融点の比が、各々ケルビン温度スケールで表され、0.870~0.990の値を有する、フィルム、を押し出すことと、
前記フィルムを、機械方向に115℃~130℃の温度で、機械方向に4.5:1~7.5:1の延伸比で配向させて、前記機械方向配向ポリエチレンフィルムを形成することと、を含む、方法。
【請求項10】
前記フィルムを機械方向に配向させる前記温度が、前記コア層の前記ピーク融点の7℃以内である、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一軸配向多層ポリエチレンフィルム、特に機械方向に配向された多層フィルムに関する。そのようなフィルムは、フレキシブル包装などの物品に特に有用であり得る。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンフィルムは、頑丈な輸送用袋、立式パウチ、洗剤用パウチ、小袋などのフレキシブル包装に広く使用されている。用途に応じて、完全性および/または魅力の観点から、様々な特性が必要とされ得る。そのような特性としては、(1)高光沢、高透明性、および低ヘイズなどの優れた光学特性、(2)高引張強度、高穿刺性、剛性、および耐衝撃性などの十分な耐酷使性、ならびに/または(3)低シール開始温度、広いシールウィンドウ、高シール強度、高ホットタックなどの良好なシール特性を挙げることができる。
【0003】
従来のインフレーションまたはキャストポリエチレンフィルムは、フレキシブル包装において、スタンドアロン包装またはラミネーションフィルムのどちらにも広く使用されていた。フレキシブル包装用のポリエチレンフィルムを製造する際の重要な目標は、包装形態用のオールポリエチレンのリサイクル可能なフレキシブルフィルムの製造にある。しかしながら、持続可能性への市場傾向に伴い、フレキシブル包装は引き続きダウンゲージされている。包装用途で使用されるポリエチレンフィルムは、フィルムコンバーターなどによって、様々な方法を使用して、コンバーターのニーズおよび顧客のニーズに対して、より薄く、より丈夫に、より硬直に、およびより低コストのソリューションを求めてダウンゲージされてきた。しかしながら、多くの場合、ポリエチレンフィルムは、所望の物理的フィルム特性を得るために、1つのポリエチレン樹脂もしくは非ポリエチレン樹脂とブレンドされるか、または別の非ポリエチレンフィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンなど)と積層される必要がある。そのようなフレキシブルフィルム構造体は、リサイクルが困難または不可能である。
【0004】
二軸配向フィルム(例えば、二軸配向ポリプロピレンフィルムおよび二軸配向ポリエチレンフィルム)、およびキャストポリプロピレンフィルムは、場合によっては、ダウンゲージ中に良好な剛性および靭性を提供することが見出された。機械方向配向(MDO)フィルムは、フィルムに剛性および光学特性を提供するための別の手法である。しかしながら、機械方向に有意に配向された場合(例えば、6:1~10:1の延伸比)、そのようなフィルムは、一方向配向に起因して、機械方向における引裂強度が弱くなる可能性がある。フィルムは、機械方向に高い比で伸張されるため、フィルムは、機械方向におけるフィブリル化、および/または機械方向における引裂強度の有意な低下を呈する可能性があると予期される。したがって、望ましい機械的特性を提供しながら、有意なダウンゲージを提供する、新規な機械方向配向オールポリエチレンのリサイクル可能なフレキシブルフィルムを有することが望まれる。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、本開示に記載されるとおりに、望ましい機械的特性を提供しながら、有意なダウンゲージを提供する、新規な機械方向配向オールポリエチレンフレキシブルフィルムを提供する。機械方向配向ポリエチレンフィルムは、オールポリエチレンであるため、これは、より良好なリサイクル可能性を提供すると同時に、光学透明性、剛性、および靭性の所望の物理的フィルム特性を達成しながらダウンゲージされ得る(例えば、高い機械方向伸張比を受ける)フレキシブル包装を提供し得る。
【0006】
本開示は、(a)第1のエチレン系ポリマーを含むコア層と、(b)第2のエチレン系ポリマーを含むスキン層と、(c)コア層とスキン層との間にあり、それらに接触しているサブスキン層であって、第3のエチレン系ポリマーを含むサブスキン層と、を含む機械方向配向ポリエチレン(MDO-PE)フィルムを提供する。第1のエチレン系ポリマーを含むコア層は、ASTM D 792に従って測定された0.870g/cm3~0.920g/cm3の密度、82~126℃のピーク融点、および本明細書に提供される等式1に従って計算された15~30の重量分率結晶化度を有する。第2のエチレン系ポリマーを含むスキン層は、ASTM D 792に従って測定された0.940g/cm3~0.965g/cm3の密度、130~135℃のピーク融点、および本明細書に提供される等式1に従って計算された30~80の重量分率結晶化度を有する。第3のエチレン系ポリマーを含むサブスキン層は、ASTM D 792に従って測定された0.920g/cm3~0.950g/cm3の密度、125~130℃のピーク融点、および本明細書に提供される等式1に従って計算された40~65の重量分率結晶化度を有する。様々な実施形態について、密度、ピーク融点、および重量分率結晶化度の各値は、コア層からサブスキン層へ、サブスキン層からスキン層へと増加し、スキン層に対するコア層の重量分率結晶化度の比は、0.25~0.91の値を有し、スキン層に対するコア層のピーク融点の比は、各々ケルビン温度スケールで表され、0.870~0.990の値を有する。
【0007】
様々な態様について、第1のエチレン系ポリマー、第2のエチレン系ポリマー、および第3のエチレン系ポリマーの様々な物理的特性の比および関係は、本明細書に提供されるように、本開示のMDO-PEフィルムが本明細書で考察される望ましい機械的特性を有することを可能にする所定の値を有し得る。例えば、本開示は、0.90~0.98の値を有するスキン層に対するコア層の密度の比を提供する。本開示は、スキン層に対するコア層の重量分率結晶化度の比が、0.5~0.8の値を有し、スキン層に対するコア層のピーク融点の比が、各々ケルビン温度スケールで表され、0.892~0.973値を有する、MDO-PEフィルムをさらに提供する。様々な態様について、コア層からサブスキン層まで、結晶化度の値は、5~80パーセント増加し得、サブスキン層からスキン層まで、値は、18~32パーセント増加し得る。本開示の追加の態様では、コア層からサブスキン層まで、ピーク融点の値は、1.5~50パーセント増加し、サブスキン層からスキン層まで、値は、5~7パーセント増加する。本開示のより具体的な態様では、コア層は、ASTM D 792に従って測定された0.870g/cm3~0.890g/cm3の密度を有し、スキン層は、ASTM D 792に従って測定された0.940g/cm3~0.950g/cm3の密度を有し、サブスキン層は、ASTM D 792に従って測定された0.930g/cm3~0.940g/cm3の密度を有する。
【0008】
本開示のMDO-PEフィルムは、10~125マイクロメートル(μm)の厚さを有し得る。様々な態様について、コア層およびスキン層は各々、MDO-PEフィルムの厚さの5~15パーセントであり得、サブスキン層は、MDO-PEフィルムの厚さの70~90パーセントであり、コア層、サブスキン層、およびスキン層は、MDO-PEフィルムの厚さの100パーセントを提供する。物理的特性に関して、MDO-PEフィルムは、ASTM D882に従って測定された場合、1000MPa以上の機械方向2%割線弾性率を呈し得る。本開示のMDO-PEフィルムは、10%以下のヘイズを有し得、そこで、MDO-PEフィルムは、ASTM D 1003に従って測定された場合、好ましくは5~6%のヘイズを有する。
【0009】
本開示のMDO-PEフィルムは、115℃~130℃の温度で、機械方向に、4.5:1~7.5:1の延伸比で配向され得る。MDO-PEフィルムは、さらに積層体に形成され得、積層体は、本開示によるMDO-PEフィルムの第1、および本開示によるMDO-PEフィルムの第2を含み、第1および第2のMDO-PEフィルムのスキン層(b)は外側層で、第1および第2のMDO-PEフィルムのコア層(c)は互いにシールされ、第1のMDO-PEフィルムおよび第2のMDO-PEフィルムは、単一のインフレーションフィルムから形成されている。
【0010】
本開示は、本開示のMDO-PEフィルムを形成する方法をさらに含む。様々な態様について、本方法は、すべて本明細書に記載される、(a)コア層と、(b)スキン層と、(c)コア層とスキン層との間にあり、それらに接触しているサブスキン層とを有するフィルムを押し出すことであって、密度、ピーク融点、および重量分率結晶化度の各値は、コア層からサブスキン層へ、サブスキン層からスキン層へと増加し、スキン層に対するコア層の重量分率結晶化度の比は、0.25~0.91の値を有し、スキン層に対するコア層のピーク融点の比は、各々ケルビン温度スケールで表され、0.870~0.990の値を有する、押し出すことと、フィルムを、機械方向に115℃~130℃の温度で、機械方向に4.5:1~7.5:1の延伸比で配向させて、MDO-PEフィルムを形成することと、を含む。様々な態様について、フィルムを、機械方向に配向させる温度は、コア層のピーク融点の7℃以内である。
【0011】
本開示の実施形態はまた、本明細書に開示されるMDO-PEフィルムから形成された物品(例えば、フレキシブル包装、パウチ、立式パウチなど)を提供する。例えば、本開示のMDO-PEフィルムは、食品包装を形成するのに使用され得、食品包装は、本明細書に記載されるMDO-PEフィルムを含む。
【0012】
これらおよび他の実施形態は、本明細書でより詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例の表2に示される本開示のMDO-PEフィルムの2%割線弾性率(MPa)を、伸張比の関数として提供する。
【
図2】実施例におけるEX2、EX3、およびCE AのMDO-PEフィルムの2%割線弾性率(MPa)試験の結果を示すチャートである。
【
図3】EX2、EX3、CE Aのフィルムを使用して測定されたデータを示すグラフであり、本開示のMDO-PEフィルムの引裂抵抗の改善を示している。
【
図4】EX2、EX3、CE Aのフィルムを使用して測定されたデータを示すグラフであり、本開示のMDO-PEフィルムの光沢およびヘイズの改善を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
特に指定しない限り、本明細書では、百分率は、重量百分率(重量%)であり、温度は、℃である。
【0015】
本明細書で使用される「組成物」という用語は、組成物を含む材料、ならびに組成物の材料から形成された反応物、および分解物を含む。
【0016】
「~を含む(comprising)」という用語、およびそれらの派生語は、同じものが本明細書に開示されているか否かにかかわらず、任意の追加の成分、ステップ、または手順の存在を除外することを意図するものではない。いかなる疑いも回避するために、「含むこと」という用語の使用を通じて本明細書において特許請求されるすべての組成物は、矛盾する記述がない限り、ポリマー性かまたは別様かにかかわらず、任意の追加の添加剤、補助剤、または化合物を含み得る。対照的に、「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、操作性に必須ではないものを除いて、あらゆる後続の記載の範疇から、任意の他の成分、ステップ、または手順を排除する。「からなる」という用語は、具体的に規定または列挙されていない任意の構成要素、工程、または手順を除外する。
【0017】
本明細書で使用される、「ポリマー」という用語は、同じかまたは異なる種類のモノマーを重合することによって調製されたポリマー化合物を指す。したがって、ポリマーという総称は、ホモポリマーという用語(微量の不純物がポリマー構造に組み込まれ得るという理解の下に、唯一のタイプのモノマーから調製されるポリマーを指すために用いられる)、および本明細書において以下に定義されるインターポリマーという用語を包含する。
【0018】
微量の不純物が、ポリマーに、かつ/またはポリマー内に組み込まれ得る。本明細書で使用される場合、「インターポリマー」という用語は、少なくとも2つの異なる種類のモノマーの重合によって調製されるポリマーを指す。したがって、インターポリマーという総称は、(2つの異なる種類のモノマーから調製されるポリマーを指すために用いられる)コポリマー、および2つ以上の異なる種類のモノマーから調製されるポリマーを含む。
【0019】
本明細書で使用する場合、「ポリマー」という用語は、同じ種類のものかまたは異なる種類のものかにかかわらず、モノマーを重合することによって調製されるポリマー化合物を指す。したがって、ポリマーという総称は、典型的には唯一の種類のモノマーから調製されるポリマーを指すために用いられる「ホモポリマー」という用語、および2種類以上の異なるモノマーから調製されるポリマーを指す「コポリマー」を包含する。
【0020】
「ポリエチレン」または「エチレン系ポリマー」とは、過半量(50モル超%)のエチレンモノマーから誘導された単位を含むポリマーを意味する。これには、ポリエチレンホモポリマー、エチレン/α-オレフィンインターポリマー、およびエチレン/α-オレフィンコポリマーが含まれる。当該技術分野において公知のポリエチレンの一般的な形態としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、極低密度ポリエチレン(VLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、強化ポリエチレン、ポリエチレンエラストマーおよびポリエチレンプラストマーが挙げられる。これらのポリエチレン材料は、当該技術分野において一般に公知であるが、以下の説明は、これらの異なるポリエチレン樹脂のうちのいくつかの差異を理解する上で役立ち得る。
【0021】
「LDPE」という用語はまた、「高圧エチレンポリマー」、または「高分岐ポリエチレン」とも称され得、ポリマーが、オートクレーブまたは管式反応器内で、過酸化物などのフリーラジカル開始剤を使用して、14,500psi(100MPa)超の圧力で、部分的または全体的にホモポリマー化またはコポリマー化されることを意味するように定義される(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,599,392号を参照されたい)。LDPE樹脂は、典型的には、0.916~0.935g/cm3の範囲内の密度を有する。
【0022】
「LLDPE」という用語としては、従来のチーグラー・ナッタ触媒系、ならびにビスメタロセン触媒(「m-LLDPE」と称されることもある)、拘束幾何触媒、および分子触媒が挙げられるが、これらに限定されないシングルサイト触媒を使用して作製される両方の樹脂が挙げられ、直鎖状、実質的に直鎖状、または不均質ポリエチレンコポリマーもしくはホモポリマーが挙げられる。LLDPEは、LDPEほど長くない鎖分岐を含有し、米国特許第5,272,236号、米国特許第5,278,272号、米国特許第5,582,923号、および米国特許第No.5,733,155号においてさらに定義される実質的に直鎖状のエチレンポリマー、米国特許第3,645,992号におけるものなどの均質に分岐した直鎖状エチレンポリマー組成物、米国特許第4,076,698号に開示されているプロセスによって調製されるものなどの均質に分岐したエチレンポリマー、および/またはこれらのブレンド(米国特許第3,914,342号または米国特許第5,854,045号において開示されているものなど)が挙げられる。LLDPEは、当業者に既知である任意の種類の反応器または反応器構成を使用して、ガス相、溶液相、もしくはスラリー重合、またはこれらの任意の組み合わせを介して作製され得るが、ガスおよびスラリー相反応器が最も好ましい。
【0023】
「MDPE」という用語は、0.926~0.935g/cm3の密度を有するポリエチレンを指す。「MDPE」は、典型的には、クロム触媒もしくはチーグラー・ナッタ触媒を使用して、またはビスメタロセン触媒、拘束幾何触媒、および分子触媒が挙げられるが、これらに限定されないシングルサイト触媒を使用して作製され、典型的には、2.5超の分子量分布(「MWD」)を有する。
【0024】
「HDPE」という用語は一般に、チーグラー・ナッタ触媒、クロム触媒、またはビス-メタロセン触媒および拘束幾何触媒を含むがこれらに限定されないシングルサイト触媒を用いて調製される、約0.935g/cm3を超える密度を有するポリエチレンを指す。
【0025】
「ULDPE」という用語は、一般に、チーグラー・ナッタ触媒、クロム触媒、またはビス-メタロセン触媒および拘束幾何触媒を含むがこれらに限定されないシングルサイト触媒を用いて調製される、0.870~0.912g/cm3の密度を有するポリエチレンを指す。
【0026】
「マルチモーダル」は、分子量分布を示すGPCクロマトグラム中に少なくとも2つの別個のピークを有することによって、特徴とすることができる樹脂組成物を意味する。マルチモーダルは、2つのピークを有する樹脂、ならびに3つ以上のピークを有する樹脂を含む。マルチモーダル樹脂は、一般に、6.0超のMWD(本明細書で定義されるとおり)を有する。これに関連して、マルチモーダル樹脂はまた、一般に、10超のI10/I2値を有する。対照的に、「ユニモーダル」という用語は、分子量分布を示すGPCクロマトグラムに1つのピークを有することを特徴とし得る樹脂組成物を指す。ユニモーダル樹脂は、一般に、6.0以下のMWD、および12以下のI10/I2値を有する。
【0027】
特定のポリマーは、「シングルサイト触媒」の存在下で調製されるか、または「シングルサイト触媒」として調製されることを特徴とする。高効率シングルサイト触媒(SSC)の3つの主要なファミリーが、ポリエチレンコポリマーの調製に商業的に使用されてきた。これらは、ビス-シクロペンタジエニルシングルサイトメタロセン触媒(Kaminsky触媒としても既知)、ハーフサンドイッチ、拘束幾何モノ-シクロペンタジエニルシングルサイト触媒(The Dow Chemical CompanyによるINSITE(商標)技術の商標で拘束幾何型触媒(CGC)として既知)、およびポストメタロセン(分子)触媒である。シングルサイト触媒の存在下で調製されるかまたはシングルサイト触媒として調製されることを特徴とするポリマーは、1つ以上のそのような触媒の存在下で調製されると理解すべきである。
【0028】
本明細書中で別様に示されない限り、以下の分析方法が、本発明の記載態様において使用される。
【0029】
「密度」は、ASTM D792に従って決定される。
【0030】
「メルトインデックス」:メルトインデックスI2(またはI2)およびメルトインデックスI10(またはI10)は、190℃において、それぞれ2.16kgおよび10kgの荷重で、ASTM D-1238に従ってそれぞれ測定される。それらの値は、g/10分で報告される。「メルトフローレート」は、ポリプロピレン系樹脂に使用され、ASTM D1238(230℃、2.16kg)に従って決定される。
【0031】
「ピーク融点」は、フィルムが10℃/分の速度で-40℃の温度に冷却する前に、230℃で3分間調整される、示差走査熱量計(DSC)によって決定される。フィルムが-40℃で3分間保持された後、フィルムは、10℃/分の速度で200℃に加熱される。
【0032】
「VICAT軟化点」は、ASTM D 1525に従って測定される。
【0033】
「重量分率結晶化度」は、等式1に従って計算される。
結晶化度(重量%)=ΔH/ΔHo×100%、(等式1)
融解熱(ΔH)は、完全なポリマー結晶の融解熱(ΔHo)で除され、次いで、100%が掛けられる。エチレンの結晶化度の場合、完全結晶の融解熱は、290J/gとみなされる。例えば、ポリエチレンの結晶化度が溶融すると、29J/gの融解熱を有すると測定されるエチレン-オクテンコポリマー、対応する結晶化度は、10重量%である。プロピレンの結晶化度の場合、完全結晶の融解熱は、165J/gとみなされる。例えば、プロピレンの結晶化度が溶融すると、20J/gの融解熱を有すると測定されるプロピレン-エチレンコポリマー、対応する結晶化度は、12.1重量%である。「融解熱」は、TA Instruments,Inc.(New Castle、Del.)のモデルQ1000DSCによって得られるDSCサーモグラムを使用して得られる。
【0034】
ポリマー試料は、190℃の初期温度(「初期温度」として指定)で薄膜にプレスされる。約5~8mgの試料が、計量され、DSCパン内に配置される。蓋を皿に圧着し、密閉雰囲気を確保する。DSCパンがDSCセル内に配置され、次いで、約100℃/分の速度で、試料の溶融温度より約60℃高い温度(To)まで加熱される。試料は、この温度で約3分間保持される。次いで、試料は、10℃/分の速度で、-40℃まで冷却され、その温度で3分間等温に保持される。次に、試料は、完全に溶融するまで、10℃/分の速度で加熱される。この実験から得られたエンタルピー曲線は、ピーク溶融温度、開始およびピーク結晶化温度、融解熱および結晶化熱、ならびに任意の他の対象のDSC分析について分析される。
【0035】
分子量分布または「MWD」という用語は、数平均分子量に対する重量平均分子量の比(MW/Mn)として定義される。MwおよびMnは、従来のゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)を使用する当技術分野において既知の方法に従って決定される。
【0036】
2%割線弾性率は、ASTM D882に従って測定される。
【0037】
エルメンドルフ引裂強度は、ASTM D1922に従って測定される。
【0038】
追加の特性および試験方法は、本明細書でさらに説明される。
【0039】
本開示は、本開示に記載されるとおり、望ましい機械的特性を提供しながら、有意なダウンゲージを提供する、新規な機械方向配向オールポリエチレンのフレキシブルフィルムを提供する。本明細書で考察されるように、本開示は、いくつかの態様において、より効果的に加工され得(例えば、機械方向に配向される)、望ましい機械的特性を提供し得る、複数のエチレン系ポリマー層を有する機械方向配向ポリエチレン(MDO-PE)フィルムを提供する。例えば、いくつかの態様では、本開示のMDO-PEフィルムは、機械方向への配向後に、改善された引裂強度を呈する。別の例として、いくつかの態様では、本開示のMDO-PEフィルムは、機械方向において望ましい引裂強度を維持しながら、高い2%割線弾性率値を示し得る。MDO-PEフィルムは、オールポリエチレンであるため、それはまた、光学透明性、剛性、および靭性の所望の物理的フィルム特性を達成しながら、ダウンゲージされ得る(例えば、高い機械方向伸張比を受ける)フレキシブル包装を提供しながら、より良好なリサイクル可能性も提供し得る。
【0040】
本明細書で考察されるように、本開示のMDO-PEフィルムは、(a)第1のエチレン系ポリマーを含むコア層と、(b)第2のエチレン系ポリマーを含むスキン層と、(c)コア層とスキン層との間にあり、それらに接触しているサブスキン層であって、第3のエチレン系ポリマーを含むサブスキン層と、を含む。コア層の第1のエチレン系ポリマー、スキン層の第2のエチレン系ポリマー、およびサブスキン層の第3のエチレン系ポリマーの各々は、密度値、ピーク融点値、および重量分率結晶化度値を有し、密度、ピーク融点、および重量分率結晶化度の各値は、コア層からサブスキン層へ、サブスキン層からスキン層へと増加する。したがって、スキン層の第2のエチレン系ポリマーの密度は、サブスキン層の第3のエチレン系ポリマーの密度より大きく、それは、次に、コア層の第1のエチレン系ポリマーの密度より大きい。
【0041】
重量分率結晶化度値およびピーク融点値に関して、本開示のMDO-PEフィルムは、0.25~0.91の値を有するスキン層に対するコア層の重量分率結晶化度の比、および0.870~0.990の値を有するスキン層に対するコア層のピーク融点の比を有する。本開示および特許請求の範囲を通して提供されるスキン層に対するコア層のピーク融点の比は、ケルビン温度スケールで表されるスキン層およびコア層の各々のピーク融点値を使用して計算される。スキン層に対するコア層の重量分率結晶化度の比である0.25~0.91、およびスキン層に対するコア層のピーク融点の比である0.870~0.990のすべての個々の値およびサブ範囲は、本明細書に含まれ、本明細書に開示され、例えば、スキン層に対するコア層の重量分率結晶化度の比は、0.25、0.30、0.35、または0.40の下限~0.75、0.80、0.85、または0.91の上限であり得、スキン層に対するコア層のピーク融点の比は、0.870、0.880、0.892、または0.906の下限~0.946、0.955、0.973、または0.990の上限であり得る。
【0042】
本開示のMDO-PEフィルム全体にわたる、本明細書で考察される密度、ピーク融点、および重量分率結晶化度の値のこれらの勾配は、いくつかの驚くべき結果を提供するのに役立つ。例えば、本開示のMDO-PEフィルムの機械方向配向の文脈において、コア層が、サブスキン(MDO-PEフィルムの次に低い密度)およびスキン層(MDO-PEフィルムの最も高い密度)に対して最も低い密度を有しているため、個々の層の各々が同じ密度を有するMDO-PEフィルムでは不可能である伸張比に到達する可能性が可能になる。コア層に対してサブスキン層およびスキン層の密度が徐々に高くなることによって、個々の層の各々が同じ密度を有するMDO-PEフィルムで可能である、より高い曲げ剛性も可能になる。最後に、重量分率結晶化度によってもたらされるスキン層のより高い耐熱性によって、本開示のMDO-PEフィルムを製造する際のより広い伸張温度および伸張比が可能になる。
【0043】
考察されるように、本開示は、第1のエチレン系ポリマーを含むコア層と、第2のエチレン系ポリマーを含むスキン層と、コア層とスキン層との間にあり、それらに接触しているサブスキン層であって、第3のエチレン系ポリマーを含むサブスキン層とを有するMDO-PEフィルムを提供する。第1のエチレン系ポリマーを含むコア層は、ASTM D 792に従って測定された0.870g/cm3~0.920g/cm3の密度、82~126℃のピーク融点、および本明細書に提供される等式1に従って計算された15~30の重量分率結晶化度を有する。第2のエチレン系ポリマーを含むスキン層は、ASTM D 792に従って測定された0.940g/cm3~0.965g/cm3の密度、130~135℃のピーク融点、および本明細書に提供される等式1に従って計算された30~80の重量分率結晶化度を有する。第3のエチレン系ポリマーを含むサブスキン層は、ASTM D 792に従って測定された0.920g/cm3~0.950g/cm3の密度、125~130℃のピーク融点、および本明細書に提供される等式1に従って計算された40~65の重量分率結晶化度を有する。様々な実施形態について、密度、ピーク融点、および重量分率結晶化度の各値は、コア層からサブスキン層へ、サブスキン層からスキン層へと増加し、スキン層に対するコア層の重量分率結晶化度の比は、0.25~0.91の値を有し、スキン層に対するコア層のピーク融点の比は、各々ケルビン温度スケールで表され、0.870~0.990の値を有する。
【0044】
本開示のより具体的な態様では、コア層は、ASTM D 792に従って測定された0.870g/cm3~0.890g/cm3の密度を有し、スキン層は、ASTM D 792に従って測定された0.940g/cm3~0.950g/cm3の密度を有し、サブスキン層は、ASTM D 792に従って測定された0.930g/cm3~0.940g/cm3の密度を有する。より好ましくは、コア層は、ASTM D 792に従って測定された0.875g/cm3~0.885g/cm3の密度を有し、スキン層は、ASTM D 792に従って測定された0.945g/cm3~0.950g/cm3の密度を有し、サブスキン層は、ASTM D 792に従って測定された0.935g/cm3~0.940g/cm3の密度を有する。様々な態様について、第1のエチレン系ポリマー、第2のエチレン系ポリマー、および第3のエチレン系ポリマーの様々な物理的特性の比および関係は、本明細書に提供されるように、本開示のMDO-PEフィルムが本明細書で考察される望ましい機械的特性を有することを可能にする所定の値を有し得る。例えば、本開示は、0.90~0.98の値を有するスキン層に対するコア層の密度の比を提供する。
【0045】
本開示は、スキン層に対するコア層の重量分率結晶化度の比が、0.5~0.8の値を有し、スキン層に対するコア層のピーク融点の比が、各々ケルビン温度スケールで表され、0.892~0.973値を有する、MDO-PEフィルムをさらに提供する。好ましくは、スキン層に対するコア層の重量分率結晶化度の比は、0.6~0.7の値を有し、スキン層に対するコア層のピーク融点の比は、各々ケルビン温度スケールで表され、0.906~0.946値を有する。様々な態様について、コア層からサブスキン層まで、結晶化度の値は、5~80パーセント増加し得、サブスキン層からスキン層まで、値は、18~32パーセント増加し得る。好ましくは、コア層からサブスキン層まで、結晶化度の値は、20~60パーセント増加し得、サブスキン層からスキン層まで、値は、25~30パーセント増加し得る。本開示の追加の態様では、コア層からサブスキン層まで、ピーク融点の値は、1.5~50パーセント増加し、サブスキン層からスキン層まで、値は、5~7パーセント増加する。好ましくは、コア層からサブスキン層まで、ピーク融点の値は、20~40パーセント増加し、サブスキン層からスキン層まで、値は、6~7パーセント増加する。
【0046】
いくつかの実施形態では、本開示のMDO-PEフィルムは、10~125マイクロメートル(μm)の厚さを有し得る。好ましくは、本開示のMDO-PEフィルムは、20~60μmの厚さを有し得る。別の好ましい実施形態では、本開示のMDO-PEフィルムは、15~25μmの厚さを有し得る。本開示のMDO-PEフィルムの厚さはまた、所望により、125μm超であり得る。本開示のMDO-PEフィルムは、3つの層を含み得る。追加の実施形態では、本開示のMDO-PEフィルムは、5層または6層、さらに最大9層を含み得る。様々な態様では、コア層およびスキン層は各々、MDO-PEフィルムの厚さの5~15パーセントであり得、サブスキン層は、MDO-PEフィルムの厚さの70~90パーセントであり、コア層、サブスキン層、およびスキン層は、MDO-PEフィルムの厚さの100パーセントを提供する。
【0047】
物理的特性に関して、MDO-PEフィルムは、ASTM D882に従って測定された場合、1000MPa以上の機械方向2%割線弾性率を呈し得る。いくつかの実施形態では、2%割線弾性率は、ASTM D882に従って測定された場合、1,500MPa以上であり得る。本開示のMDO-PEフィルムは、いくつかの実施形態では、実質的に平坦であり得る。本開示のMDO-PEフィルムは、10%以下のヘイズを有し得、そこで、MDO-PEフィルムは、ASTM D 1003に従って測定された場合、好ましくは5~6%のヘイズを有する。
【0048】
コア層
MDO-PEフィルムのコア層が、第1のエチレン系ポリマーを含むことを記載する際に、「第1の」という用語は、本開示のMDO-PEフィルムを形成する際に使用される他のエチレン系ポリマーの文脈内でエチレン系ポリマーを特定するために使用される。様々な実施形態について、MDO-PEフィルムの「コア」層は、少なくとも、本開示のMDO-PEフィルムのサブスキン層と直接接触している。サブスキン層と直接接触することに加えて、MDO-PEフィルムの「コア」層はまた、本明細書で考察されるように、本開示のMDO-PEフィルムの積層体が形成される場合、それ自体と直接接触し得る。
【0049】
いくつかの実施形態では、第1のエチレン系ポリマーは、ASTM D 792に従って測定された0.870g/cm3~0.920g/cm3の密度、82~126℃のピーク融点、および本明細書に提供される等式1に従って計算された15~30の重量分率結晶化度を有する。いくつかの実施形態では、第1のエチレン系ポリマーは、ビスメタロセン触媒、拘束幾何触媒、およびポストメタロセン(分子)触媒が挙げられるが、これらに限定されないシングルサイト触媒による超低密度ポリエチレンである。あるいは、第1のエチレン系ポリマーは、従来のチーグラー・ナッタ触媒系、ならびにビスメタロセン触媒、拘束幾何触媒、およびポストメタロセン(分子)触媒が挙げられるが、これらに限定されないシングルサイト触媒を用いて形成された、低密度ポリエチレンまたは直鎖状低密度ポリエチレンであり、直鎖状、実質的に直鎖状、または不均質ポリエチレンコポリマーもしくはホモポリマーが挙げられる。いくつかの実施形態では、シングルサイト触媒に加えて、第1のエチレン系ポリマーは、当技術分野において既知であるような、チーグラー・ナッタ触媒および/またはクロム触媒を用いて調製され得る。第1のエチレン系ポリマーの例としては、例えば、ELITE(商標)5400GSを含む、ELITE(商標)の名称でDow Chemical Companyから市販されているものが挙げられる。
【0050】
0.870g/cm3~0.920g/cm3のすべての個々の値およびサブ範囲は、本明細書に含まれ、本明細書に開示され、例えば、第1のエチレン系ポリマーの密度は、0.870、0.875、0.880、または0.885g/cm3の下限~0.890、0.90、0.910、0.915、または0.920g/cm3の上限であり得る。いくつかの実施形態では、第1の組成物は、好ましくは、0.870~0.890g/cm3、より好ましくは、0.875g/cm3~0.885g/cm3の密度を有する。密度値は、ASTM D 792に従って測定される。
【0051】
82~126℃のピーク融点のすべての個々の値およびサブ範囲は、本明細書に含まれ、本明細書に開示され、例えば、第1のエチレン系ポリマーのピーク融点は、82、85、90、95、または100℃の下限~105、110、115、120、または126℃の上限であり得る。いくつかの実施形態では、第1の組成物は、好ましくは、90~120℃、より好ましくは、95~110℃のピーク融点を有する。ピーク融点値は、本明細書に記載されているように測定される。
【0052】
本明細書に提供される等式1に従って計算された15~30の重量分率結晶化度のすべての個々の値およびサブ範囲は、本明細書に含まれ、例えば、第1のエチレン系ポリマーの重量分率結晶化度は、15、17、19、または21の下限~23、25、27、または30の上限であり得る。いくつかの実施形態では、第1の組成物は、好ましくは、17~27、より好ましくは、19~25の重量分率結晶化度を有する。重量分率結晶化度は、本明細書に提供される等式1に従って計算される。
【0053】
MDO-PEフィルムのコア層は、様々な実施形態では、インフレーションフィルムであり得、MDO-PEフィルムのコア層は、(a)コア層、(c)サブスキン層、(b)スキン層の(A/C/B)構造化インフレーションフィルムが、Aをコア層、Cをサブスキン層、Bをスキン層とするB/C/A/A/C/B構造化フィルムとなるように、それ自体が折り畳まれるようにした内側表面層である。
【0054】
様々な実施形態について、第1のエチレン系ポリマーは、第1のエチレン系ポリマーのための本明細書で提供される2つ以上のエチレン系ポリマーのブレンドであり得る。例えば、第1のエチレン系ポリマーは、上記のようなシングルサイト触媒を使用して調製されたエチレン系ポリマーと、チーグラー・ナッタ触媒を使用して調製されたエチレン系ポリマーとのブレンドから調製され得る。例えば、0.870g/cm3~0.912g/cm3の密度を有するULDPEを調製するために、チーグラー・ナッタ触媒が使用され得、0.916~0.935g/cm3の密度を有するLDPEを調製するために、シングルサイト触媒が使用され得、ASTM D 792に従って測定された0.870g/cm3~0.920g/cm3の密度、82~126℃のピーク融点、および本明細書に提供される等式1に従って計算された15~30の重量分率結晶化度を有する第1のエチレン系ポリマーを提供するために、エチレン系ポリマーのブレンドが部分的に提供される。例えば、第1のエチレン系ポリマーは、チーグラー・ナッタ触媒で調製された50重量%超のULDPE、およびシングルサイト触媒で調製された50重量%未満のLDPE、好ましくはチーグラー・ナッタ触媒で調製された60重量%超のULDPE、およびシングルサイト触媒で調製された40重量%未満のLDPE、またはチーグラー・ナッタ触媒で調製された65重量%超のULDPE、およびシングルサイト触媒で調製された35重量%未満のLDPEを含み得る。ASTM D 792に従って測定された0.870g/cm3~0.920g/cm3の密度、82~126℃のピーク融点、および本明細書に提供される等式1に従って計算された15~30の重量分率結晶化度を有する第1のエチレン系ポリマーを提供するために、本明細書で提供されるエチレン系ポリマーのうちの2つ以上の他のブレンドも提供され得る。
【0055】
スキン層
MDO-PEフィルムのスキン層が、第2のエチレン系ポリマーを含むことを記載する際に、「第2の」という用語は、本開示のMDO-PEフィルムを形成する際に使用される他のエチレン系ポリマーの文脈内でエチレン系ポリマーを特定するために使用される。様々な実施形態について、MDO-PEフィルムの「スキン」層は、本開示のMDO-PEフィルムのサブスキン層と直接接触しており、スキン層の主要な表面は、本明細書で提供されるサブスキン層以外の任意の他のポリエチレンおよび/またはポリオレフィンと接触しないMDO-PEフィルムの外部または外側層を形成する。
【0056】
第2のエチレン系ポリマーを含むスキン層は、ASTM D 792に従って測定された0.940g/cm3~0.965g/cm3の密度、130~135℃のピーク融点、および本明細書に提供される等式1に従って計算された30~80の重量分率結晶化度を有する。いくつかの実施形態では、第2のエチレン系ポリマーは、従来のチーグラー・ナッタ触媒系、ならびにビスメタロセン触媒、拘束幾何触媒、およびポストメタロセン(分子)触媒が挙げられるが、これらに限定されないシングルサイト触媒を使用して作製され得、直鎖状、実質的に直鎖状、または不均質ポリエチレンコポリマーもしくはホモポリマーが挙げられる。例えば、第2のエチレン系ポリマーは、HDPE、MDPE、LDPE、またはこれらの組み合わせのうちの1つ以上から作製され得、ここで、引用されたポリエチレンは、本明細書で提供されるように形成される。第2のエチレン系ポリマーの例としては、例えば、ELITE(商標)5960Gを含む、ELITE(商標)の名称でDow Chemical Companyから市販されているものが挙げられる。
【0057】
0.940g/cm3~0.965g/cm3のすべての個々の値およびサブ範囲は、本明細書に含まれ、本明細書に開示され、例えば、第2のエチレン系ポリマーの密度は、0.940、0.942、0.945、または0.947g/cm3の下限~0.950、0.955、0.960、または0.965g/cm3の上限であり得る。いくつかの実施形態では、第2の組成物は、好ましくは、0.940~0.950g/cm3、より好ましくは、0.945g/cm3~0.950g/cm3の密度を有する。密度値は、ASTM D 792に従って測定される。
【0058】
130~135℃のピーク融点のすべての個々の値およびサブ範囲は、本明細書に含まれ、本明細書に開示され、例えば、第2のエチレン系ポリマーのピーク融点は、130、131、または132℃の下限~133、134、または135℃の上限であり得る。いくつかの実施形態では、第2の組成物は、好ましくは、131~134℃、より好ましくは、132~133℃のピーク融点を有する。ピーク融点値は、本明細書に記載されているように測定される。
【0059】
本明細書に提供される等式1に従って計算された30~80の重量分率結晶化度のすべての個々の値およびサブ範囲は、本明細書に含まれ、例えば、第2のエチレン系ポリマーの重量分率結晶化度は、30、35、40、または45の下限~65、70、75、または80の上限であり得る。いくつかの実施形態では、第2の組成物は、好ましくは、35~75、より好ましくは、40~70の重量分率結晶化度を有する。重量分率結晶化度は、本明細書で提供される等式1に従って計算される。
【0060】
様々な実施形態について、第2のエチレン系ポリマーは、第2のエチレン系ポリマーのための本明細書で提供される2つ以上のエチレン系ポリマーのブレンドであり得る。例えば、第2のエチレン系ポリマーは、上記のようなシングルサイト触媒を使用して調製されたエチレン系ポリマーと、チーグラー・ナッタ触媒を使用して調製されたエチレン系ポリマーとのブレンドから調製され得る。例えば、約0.935g/cm3超の密度を有するHDPEを調製するために、チーグラー・ナッタ触媒が使用され得、0.916~0.935g/cm3の密度を有するLDPEを調製するために、シングルサイト触媒が使用され得、ASTM D 792に従って測定された0.940g/cm3~0.965g/cm3の密度、130~135℃のピーク融点、および本明細書に提供される等式1に従って計算された30~80の重量分率結晶化度を有する第2のエチレン系ポリマーを提供するために、エチレン系ポリマーのブレンドが部分的に提供される。例えば、第2のエチレン系ポリマーは、チーグラー・ナッタ触媒で調製された50重量%超のHDPE、およびシングルサイト触媒で調製された50重量%未満のLDPE、好ましくはチーグラー・ナッタ触媒で調製された60重量%超のHDPE、およびシングルサイト触媒で調製された40重量%未満のLDPE、またはチーグラー・ナッタ触媒で調製された65重量%超のHDPE、およびシングルサイト触媒で調製された35重量%未満のLDPEを含み得る。ASTM D 792に従って測定された0.940g/cm3~0.965g/cm3の密度、130~135℃のピーク融点、および本明細書に提供される等式1に従って計算された30~80の重量分率結晶化度を有する第2のエチレン系ポリマーを提供するために、本明細書で提供されるエチレン系ポリマーのうちの2つ以上の他のブレンドも提供され得る。
【0061】
サブスキン層
本開示のMDO-PEフィルムは各々、少なくともサブスキン層を含む。MDO-PEフィルムのサブスキン層が、第3のエチレン系ポリマーを含むことを記載する際に、「第3の」という用語は、本開示のMDO-PEフィルムを形成する際に使用される他のエチレン系ポリマーの文脈内でエチレン系ポリマーを特定するために使用される。「サブスキン」層という用語は、サブスキン層がコア層とスキン層との間にあり、それらに接触していることを示すために使用される。様々な実施形態について、2つ以上のサブスキン層が、本開示のMDO-PEフィルムを形成する際に使用され得る。例えば、本開示のMDO-PEフィルムは、単一のサブスキン層または2つ以上のサブスキン層を含み得る。いくつかの実施形態では、2つ以上のサブスキン層が存在する場合、サブスキン層の各々は、同じエチレン系ポリマー組成物を有し得る。他の実施形態では、2つ以上のサブスキン層が存在する場合、サブスキン層の各々が異なるエチレン系ポリマー組成物を有し得るか、または一部のサブスキン層のみが同じエチレン系ポリマー組成物を有し得る。
【0062】
第3のエチレン系ポリマーを含むサブスキン層は、ASTM D 792に従って測定された0.920g/cm3~0.950g/cm3の密度、125~130℃のピーク融点、および本明細書に提供される等式1に従って計算された40~65の重量分率結晶化度を有する。いくつかの実施形態では、第3のエチレン系ポリマーは、従来のチーグラー・ナッタ触媒系、ならびにビスメタロセン触媒、拘束幾何触媒、およびポストメタロセン(分子)触媒が挙げられるが、これらに限定されないシングルサイト触媒を使用して作製され得、直鎖状、実質的に直鎖状、または不均質ポリエチレンコポリマーもしくはホモポリマーが挙げられる。例えば、第3のエチレン系ポリマーは、HDPE、MDPE、LLDPE、LDPE、またはこれらの組み合わせのうちの1つ以上から作製され得、ここで、引用されたポリエチレンは、本明細書で提供されるように形成される。第3のエチレン系ポリマーの例としては、例えば、ELITE(商標)5940STを含むELITE(商標)、INNATE(商標)ST70を含むINNATE(商標)の名称でDow Chemical Companyから市販されているものが挙げられる。
【0063】
0.920g/cm3~0.950g/cm3のすべての個々の値およびサブ範囲は、本明細書に含まれ、本明細書に開示され、例えば、第3のエチレン系ポリマーの密度は、0.920、0.925、0.930、または0.935g/cm3の下限~0.935、0.940、0.945、または0.950g/cm3の上限であり得る。いくつかの実施形態では、第3の組成物は、好ましくは、0.930~0.940g/cm3、より好ましくは、0.935g/cm3~0.940g/cm3の密度を有する。密度値は、ASTM D 792に従って測定される。
【0064】
125~130℃のピーク融点のすべての個々の値およびサブ範囲は、本明細書に含まれ、本明細書に開示され、例えば、第3のエチレン系ポリマーのピーク融点は、125、126、または127℃の下限~128、129、または130℃の上限であり得る。いくつかの実施形態では、第2の組成物は、好ましくは、126~129℃、より好ましくは、127~128℃のピーク融点を有する。ピーク融点値は、本明細書に記載されているように測定される。
【0065】
本明細書に提供される等式1に従って計算された30~80の重量分率結晶化度のすべての個々の値およびサブ範囲は、本明細書に含まれ、例えば、第2のエチレン系ポリマーの重量分率結晶化度は、30、35、40、または45の下限~65、70、75、または80の上限であり得る。いくつかの実施形態では、第2の組成物は、好ましくは、35~75、より好ましくは、40~70の重量分率結晶化度を有する。重量分率結晶化度は、本明細書に提供される等式1に従って計算される。
【0066】
様々な実施形態について、第3のエチレン系ポリマーは、第3のエチレン系ポリマーのための本明細書で提供される2つ以上のエチレン系ポリマーのブレンドであり得る。例えば、第3のエチレン系ポリマーは、上記のようなシングルサイト触媒を使用して調製されたエチレン系ポリマーと、チーグラー・ナッタ触媒を使用して調製されたエチレン系ポリマーとのブレンドから調製され得る。例えば、約0.935g/cm3超の密度を有するHDPEを調製するために、チーグラー・ナッタ触媒が使用され得、0.916~0.935g/cm3の密度を有するLDPEを調製するために、シングルサイト触媒が使用され得、ASTM D 792に従って測定された0.920g/cm3~0.950g/cm3の密度、125~130℃のピーク融点、および本明細書に提供される等式1に従って計算された40~65の重量分率結晶化度を有する第3のエチレン系ポリマーを提供するために、エチレン系ポリマーのブレンドが部分的に提供される。例えば、第3のエチレン系ポリマーは、チーグラー・ナッタ触媒で調製された50重量%超のHDPE、およびシングルサイト触媒で調製された50重量%未満のLDPE、好ましくはチーグラー・ナッタ触媒で調製された60重量%超のHDPE、およびシングルサイト触媒で調製された40重量%未満のLDPE、またはチーグラー・ナッタ触媒で調製された65重量%超のHDPE、およびシングルサイト触媒で調製された35重量%未満のLDPEを含み得る。ASTM D 792に従って測定された0.920g/cm3~0.950g/cm3の密度、125~130℃のピーク融点、および本明細書に提供される等式1に従って計算された40~65の重量分率結晶化度を有する第3のエチレン系ポリマーを提供するために、本明細書で提供されるエチレン系ポリマーのうちの2つ以上の他のブレンドも提供され得る。
【0067】
MDO-フィルム
様々なMDO-PEフィルムが、本開示の教示に従って形成され得る。本明細書に記載されるように、ポリエチレン系ポリマーの特定の組み合わせは、特定の望ましい特性を有するフィルムを提供する。MDO-PEフィルムは、本開示のMDO-PEフィルムを提供するために、機械方向にのみ配向される場合、特に望ましい特性を有する。MDO-PEフィルムは、当技術分野において既知である任意の方法に従って形成され得る。本明細書に記載されるエチレン系ポリマーの組み合わせは、インフレーションフィルムプロセスを使用したMDO-PEフィルムの形成に特に好適である。インフレーションフィルムプロセスが使用される場合、インフレーションMDO-PEフィルムは、従来通り形成され得る(例えば、巻き取り前にスリットして開く)か、インフレーションMDO-PEフィルムは、折り畳まれ得て、その結果内側層(本明細書で記載されるようになコア層)が、それ自体に積層して、2倍の厚さである多層フィルムを形成し得る。言い換えれば、インフレーションMDO-PEフィルムプロセスは、(b)/(c)/(a)多層フィルムを形成するように構成され得、(a)はコア層に対応し、(b)はスキン層に対応し、(c)は(b)と(a)との間で接触しているサブスキン層に対応し、各々、本明細書に提供される。典型的なプロセスでは、多層フィルムは、(b)/(c)/(a)構造を有する。しかしながら、MDO-PEフィルムがそれ自体で折り畳まれる場合、多層MDO-PEフィルムは、積層構造を有するであろう(例えば、(b)/(c)/(a)/(a)/(c)/(b)構造を有する)。例えば、MDO-PEフィルムは、積層体に形成され得、積層体は、本開示によるMDO-PEフィルムの第1、および本開示によるMDO-PEフィルムの第2を含み、第1および第2のMDO-PEフィルムのスキン層(b)は外側層で、第1および第2のMDO-PEフィルムのコア層(c)は互いにシールされ、第1のMDO-PEフィルムおよび第2のMDO-PEフィルムは、単一のインフレーションフィルムから形成されている。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される2つ以上のMDO-PEフィルムは、積層体を形成するために互いにシールされる。他の実施形態では、積層体は、単一インフレーションMDO-PEフィルムから形成され得る。そのような実施形態では、インフレーションMDO-PEフィルムの内側面は、それ自体で折り畳まれシールして、厚さが、積層体を形成する前のインフレーションMDO-PEフィルムの厚さの約2倍である積層体を形成し得る。シナリオに関係なく、MDO-PEフィルムは、本開示のMDO-PEフィルムを提供するために、機械方向に配向される。より厚いフィルムが望まれる場合などの特定の状況では、折り畳み方法が望ましい場合がある。いくつかの実施形態では、折り畳み方法はまた、カールすることなく、機械方向に配向された対称フィルムの製造を容易にするので有益であり得る。
【0068】
いくつかの実施形態では、折り畳み方法はまた、より厚いMDO-PEフィルムに折り畳む前に、より薄いMDO-PEフィルムの何らかの冷却が起こるため、より速い冷却を可能にし得る。折り畳み方法の別の利点は、バリア層(例えば、酸素バリア層または水蒸気バリア層)がインフレーションMDO-PEフィルム内に含められ得、次いで、インフレーションMDO-PEフィルムが折り畳まれる場合、二重になるため、強化されたバリア特性を提供し得ることである(例えば、インフレーションフィルム中の単一のバリア層は、折り畳み時に2つのバリア層になる)。MDO-PEフィルムの層の数は、例えば、フィルムの所望の特性、フィルムの最終使用用途、各層で使用される所望のポリマー、フィルムの所望の厚さ、MDO-PEフィルムがインフレーションMDO-PEフィルムを折り畳むことによって形成されるかどうかなどを含む多数の要因に依存し得る。
【0069】
本開示の機械方向配向フィルムは、少なくとも3つの層を含む。折り畳み有無にかかわらず作製された典型的なMDO-PEフィルムは、最大9層を有し得るが、多層インフレーションMDO-PEフィルムを折り畳むことによって、より多くの層がもたらされ得る(例えば、9層のインフレーションフィルムが折り畳まれて、18層を形成する)。いくつかの実施形態では、本開示のMDO-PE積層体は、20~250μm、20~100μm、40~100μm、または20~50μmの厚さを有し得る。
【0070】
一態様では、本開示は、本開示のMDO-PEフィルムを形成する方法を含み、本方法は、すべて本明細書に記載される、(a)コア層と、(b)スキン層と、(c)コア層とスキン層との間にあり、それらに接触しているサブスキン層とを有するフィルムを押し出すことであって、密度、ピーク融点、および重量分率結晶化度の各値は、コア層からサブスキン層へ、サブスキン層からスキン層へと増加し、スキン層に対するコア層の重量分率結晶化度の比は、0.25~0.91の値を有し、スキン層に対するコア層のピーク融点の比は、各々ケルビン温度スケールで表され、0.870~0.990の値を有する、押し出すことと、フィルムを、機械方向に115℃~130℃の温度で、機械方向に4.5:1~7.5:1の延伸比で配向させて、MDO-PEフィルムを形成することと、を含む。MDO-PEフィルムは、テンターフレームプロセスなどの、当業者に既知の技術を使用することによってのみ、機械方向に配向され得る。
【0071】
好ましくは、本開示のMDO-PEフィルムは、115℃~130℃の温度で、機械方向に、5.5:1~7:1の延伸比で配向され得る。好ましくは、フィルムを、機械方向に配向させる温度は、コア層のピーク融点の7℃以内である。MDO-PEフィルムを機械方向に配向させるための115℃~130℃の温度は、高い相対的スキン層密度および関連する溶融温度のため可能である。
【0072】
MDO-PEフィルムは、さらに積層体に形成され得、本明細書で考察されるように、積層体は、本開示によるMDO-PEフィルムの第1、ならびに本開示によるMDO-PEフィルムの第2を含み、第1および第2のMDO-PEフィルムのスキン層(b)は外側層で、第1および第2のMDO-PEフィルムのコア層(c)は互いにシールされ、第1のMDO-PEフィルムおよび第2のMDO-PEフィルムは、単一のインフレーションフィルムから形成されている。
【0073】
物品
本開示の実施形態はまた、本明細書に記載されるMDO-PEフィルムのいずれかから形成される物品も提供する。そのような物品の例としては、フレキシブル包装、パウチ、立式パウチ、および既成包装またはパウチが挙げられる。そのような物品は、本明細書の教示を考慮して当業者に既知の技術を使用して形成され得る。
【0074】
例えば、本開示のいくつかの実施形態によれば、非常に良好な光学特性、剛性、およびシール性を有する薄いゲージ(例えば、25~35ミクロン)の単一フィルムは、形成/充填/シール加工装置で作製されたパウチにおいて有用であり得る。そのようなパウチは、約250グラム~1キログラムを保持する粉末および粒子パウチに有用であり得る。本開示のフィルムの機械方向への配向は、従来のインフレーションフィルムよりも有益である剛性、靭性、および光学特性の組み合わせを提供すると考えられる。
【0075】
本開示のいくつかの実施形態によれば、高い剛性および透明性を有するMDO-PEフィルムは、互いに積層されて、完全にポリエチレンから形成された積層体を提供し得る。別の例として、本開示のいくつかの実施形態によれば、高い剛性および透明性を有する一軸配向フィルムは、剛性のHDPEに富むインフレーションフィルムに積層され得、積層体は、完全にポリエチレンから形成された立式パウチを形成するために使用され得る。
【0076】
別の例として、いくつかの実施形態では、高剛性、高光学特性、および良好な引裂強度を有するMDO-PEフィルムは、食品包装を形成するのに使用され得、食品包装は、本明細書に記載されるMDO-PEフィルムを含む。ここで、本開示のいくつかの実施形態を、以下の実施例において詳細に記載する。
【実施例】
【0077】
インフレーション多層フィルム構造体を、機械方向に配向させるために、以下のように調製する。表1は、実施例(EX)および比較例(CE)フィルムの層に使用されるポリエチレン成分を提供する。
【表1】
【0078】
5層45センチメートル(cm)のヘッド、および以下の直径60cm/70cm/105cm/70cm/60mを有する5台の押出機を装備するVAREX IIインフレーションフィルム押出ライン(Windmoeller&Hoelscher Corporation)を使用して、本EXおよびCEのインフレーション多層フィルム構造体を調製する。205℃のLLDPEの典型的溶融温度、ならびに2.5のブローアップ比、および400kg/時の操作出力、さらに30~40メートル/分の線速度が使用された。
【0079】
MDOプロセス
機械方向配向(MDO)ユニット(Windmoeller&Hoelscher MDO-M)を、予熱1/予熱2/伸張/アニーリング/冷却ローラーをそれぞれ、70℃/105℃/115℃/105℃/70℃の温度プロファイル、1:4.5~1:7.5の伸張比で操作する。
【0080】
実施例1(EX1)
表2は、EX1のフィルム構造を示す。EX1は、表2に示される層を有する(b)/(c)/(a)/(c)/(b)フィルム構造を有する。
【表2】
【0081】
表2に記載される層を使用して、VAREX IIインフレーションフィルム押出ラインで、122ミクロン(μm)のフィルム厚さで、EX1の共押出(b)/(c)/(a)/(c)/(b)フィルム構造を製造する。使用されたブローアップ比は、2.5:1である。使用された層分布を表2に示す。EX1のフィルムは、約122ミクロンの初期厚さを有する。EX1のフィルムを、115°Cで、5:1、5.5:1、6:1、6.5:1、および7:1の延伸比で伸張させて、表3に示されるフィルムを得る。
【表3】
【0082】
フィルムは、実質的に平坦であり、かなり剛性があり、18ミクロンのフィルムは、より低いヘイズとより高い光沢を有する。機械方向(MD)と横方向(CD)の両方において、実施例1のフィルムの配向性能を評価するために測定が行われる。
図1は、伸張比の関数として、表2のフィルムの2%割線弾性率(MPa)を提供する。
【0083】
実施例2(EX2)
表4は、EX2のフィルム構造を示す。EX2は、表4に示される層を有するブロック化(b)/(c)/(a)/(a)/((c)/(b)フィルム構造を有する。
【表4】
【0084】
表4に記載される層を使用して、VAREX IIインフレーションフィルム押出ラインで、25ミクロン(μm)のフィルム厚さで、EX2の共押出(b)/(c)/(a)/(a)/(c)/(b)フィルム構造を製造する。使用されたブローアップ比は、2.5:1である。使用された層分布を表4に示す。EX2のフィルムは、約120ミクロンの初期厚さを有する。EX2のフィルムを、115℃で、5.5:1の延伸比で伸張させる。Ex2のフィルムは、実質的に平坦であり、かなり剛性があり、25ミクロンのフィルムは、より低いヘイズおよびより高い光沢を有する。機械方向(MD)と横方向(CD)の両方において、EX2のフィルムの配向性能を評価するために測定が行われる。
図2は、MDとCDの両方のEX2のフィルムの2%割線弾性率(MPa)を提供する。
【0085】
実施例3(EX3)
表5は、EX3のフィルム構造を示す。EX3は、表5に示される層を有するブロック化(b)/(c)/(a)/(a)/((c)/(b)フィルム構造を有する。
【表5】
【0086】
表5に記載される層を使用して、VAREX IIインフレーションフィルム押出ラインで、25ミクロン(μm)のフィルム厚さで、EX3の共押出(b)/(c)/(a)/(a)/(c)/(b)フィルム構造を製造する。使用されたブローアップ比は、2.5:1である。使用された層分布を表5に示す。EX3のフィルムは、約120ミクロンの初期厚さを有する。EX3のフィルムを、115℃で、5.5:1の延伸比で伸張させる。Ex3のフィルムは、実質的に平坦であり、かなり剛性があり、25ミクロンのフィルムは、より低いヘイズおよびより高い光沢を有する。機械方向(MD)と横方向(CD)の両方において、EX3のフィルムの配向性能を評価するために測定が行われる。
図2は、MDとCDの両方のEX3のフィルムの2%割線弾性率(MPa)を提供する。
【0087】
比較例A(CE A)
表6は、CE Aのフィルム構造を示す。CE Aは、表6に示される層を有するブロック化(b)/(c)/(a)/(a)/((c)/(b)フィルム構造を有する。
【表6】
【0088】
表6に記載される層を使用して、VAREX IIインフレーションフィルム押出ラインで、120ミクロン(μm)のフィルム厚さで、CE Aの共押出(b)/(c)/(a)/(a)/(c)/(b)フィルム構造を製造する。使用されたブローアップ比は、2.5:1である。使用された層分布を表6に示す。CE Aのフィルムは、約120ミクロンの初期厚さを有する。CE Aのフィルムを、115℃で、5.5:1の延伸比で伸張させる。CE Aのフィルムは、実質的に平坦であり、かなり剛性があり、25ミクロンのフィルムは、5.7%のヘイズおよび92%の光沢を有する。機械方向(MD)と横方向(CD)の両方において、CE Aのフィルムの配向性能を評価するために測定が行われる。
図2は、MDとCDの両方のCE Aのフィルムの2%割線弾性率(MPa)を提供する。
【0089】
図3および
図4は、EX2、EX3、およびCE Aのフィルムを使用して測定されたデータを提供し、それは、引裂抵抗(MDにおいて増加、CDにおいて減少)ならびに光沢およびヘイズの改善を示している。同様に、
図3および4に示されるように、EX2、EX3、およびCE Aについて光沢およびヘイズの改善が観察される。破断点伸びならびに引張強度などの他の機械的特性は、本質的に同じままであるか、ごくわずかな低下を呈する。
【国際調査報告】