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特表2022-552689シール可能な二軸延伸ポリエステル系フィルムを製造する方法およびフィルム延伸装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-19
(54)【発明の名称】シール可能な二軸延伸ポリエステル系フィルムを製造する方法およびフィルム延伸装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/92 20190101AFI20221212BHJP
   B29C 55/14 20060101ALI20221212BHJP
   B29C 48/21 20190101ALI20221212BHJP
   B29C 48/154 20190101ALI20221212BHJP
   B29C 48/305 20190101ALI20221212BHJP
   B29C 48/88 20190101ALI20221212BHJP
   B29K 67/00 20060101ALN20221212BHJP
   B29L 9/00 20060101ALN20221212BHJP
【FI】
B29C48/92
B29C55/14
B29C48/21
B29C48/154
B29C48/305
B29C48/88
B29K67:00
B29L9:00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022522719
(86)(22)【出願日】2020-10-14
(85)【翻訳文提出日】2022-06-09
(86)【国際出願番号】 EP2020078939
(87)【国際公開番号】W WO2021074240
(87)【国際公開日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】102019215880.3
(32)【優先日】2019-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591021578
【氏名又は名称】リンダウェル、ドルニエ、ゲゼルシャフト、ミット、ベシュレンクテル、ハフツング
【氏名又は名称原語表記】LINDAUER DORNIER GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100141830
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 卓久
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス、ルッツ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル、ボルフ
(72)【発明者】
【氏名】シャオフェン、リン
(72)【発明者】
【氏名】ボルフガング、クリール
【テーマコード(参考)】
4F207
4F210
【Fターム(参考)】
4F207AA24
4F207AD05
4F207AD08
4F207AD29
4F207AG01
4F207AG03
4F207AH54
4F207AJ08
4F207AM23
4F207AP11
4F207AR06
4F207AR17
4F207KA01
4F207KA17
4F207KB13
4F207KB26
4F207KK64
4F207KK82
4F207KL84
4F207KM15
4F207KM16
4F207KW41
4F210AA24
4F210AG01
4F210AG03
4F210AH54
4F210AP11
4F210QA02
4F210QA03
4F210QC06
4F210QD08
4F210QD21
4F210QD25
4F210QD34
4F210QG01
4F210QG15
4F210QG18
4F210QL16
4F210QM15
(57)【要約】
シール可能な二軸延伸ポリエステル系フィルムを製造する方法ならびに該方法のためのフィルム延伸装置を説明する。フィルムは、第1の方向と、第1の方向に対して垂直に延びる第2の方向とに延伸されるもしくは延伸可能である。このためには、基層と中間層とを共押出しして互いに接合させ、次いで、ヒートシール可能なコーティング層2.3を溶融コーティングにより基材に塗布する。コーティング層は、接触箇所に対して、中間層の融点または軟化点を上回る温度で基材に作用し、このとき、基材の基層の温度は、その結晶化温度を下回っており、コーティング層2.3から中間層への熱供給は、その粘度を低下させて、コーティング層2.3に溶融付着するまで行われる。最後に、コーティング層2.3によりコーティングされた基材の加熱後に、基材を、時間調整された熱供給を経た相応の温度レベルからの横延伸が続く。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向と、該第1の方向に対して垂直に延びる第2の方向とに延伸されるシール可能な二軸延伸ポリエステル系モノマテリアルフィルム(2)を製造する方法であって、以下のステップ、すなわち、
a)少なくとも第1の層と第2の層とを有する基材を溶融押出しするステップであって、前記基材の第1の層は基層(2.1)であり、第2の層は結晶化不能な中間層(2.2)であり、前記基層と前記中間層とを共押出しする、溶融押出しするステップと、
b)その後、溶融コーティングにより、前記基材にヒートシール可能なコーティング層(2.3)を塗布するステップと、
c)前記コーティング層(2.3)から前記中間層(2.2)への第1の熱供給の継続時間を、温度調整されるローラ(8)への前記基材の密着長さと、前記コーティング層(2.3)と前記中間層(2.2)との間の付着強度に関する前記コーティング層(2.3)の物理的特性と、を変化させることにより制御することで、前記コーティング層(2.3)を、接触箇所に対して、前記コーティング層(2.3)により溶融される前記中間層(2.2)の融点または軟化点を上回る温度で前記中間層に作用させ、前記基材の前記基層(2.1)の温度がその結晶化温度を下回るように、前記中間層(2.2)を介して前記基層(2.1)に対して行われる熱供給に影響を及ぼすステップと、
d)前記コーティング層(2.3)をコーティングされた前記基材の加熱後に、該基材に、時間調整された第2の熱供給を経て相応に高められた温度レベルから横延伸を行うステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記物理的特性の少なくとも1つは、前記コーティング層(2.3)の粘度である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記モノマテリアルフィルム(2)は、多層の、特にポリエステル系モノマテリアルを含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記中間層(2.2)は、前記基層(2.3)に比べて極めて薄く形成されている、請求項1または2記載の方法。
【請求項5】
前記コーティング層(2.3)は、該コーティング層(2.3)に面した前記中間層(2.2)の面を、接触領域において、その粘度が0.5~20000Pa・s、特に1~20000Pa・s、特に1~110000Pa・sの範囲内にある温度にもたらす、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記基材の各面にそれぞれ1つのコーティング層(2.3,2.4)を塗布する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記共押出し後に前記基材の厚さ測定を行い、引出し前に前記モノマテリアルフィルム(2)の厚さ測定を行う、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記コーティング層(2.3)の溶融コーティングを、縦延伸機(5)の前方で行う、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
第1の方向と、該第1の方向に対して垂直に配置された第2の方向とに延伸されるべきシール可能な二軸延伸ポリエステル系モノマテリアルフィルム(2)を製造するフィルム延伸装置(1)であって、以下の装置コンポーネント、すなわち、
a)基材として少なくとも1つの基層(2.1)と中間層(2.2)とを共押出しすると共に互いに接合する流延ローラユニット(3)と、
b)前記基層(2.1)と前記中間層(2.2)とから成る前記基材を第1のローラ系(4)により縦延伸することができる縦延伸機(5)と、
c)前記中間層(2.2)上での制御可能な接触長さに応じて前記中間層(2.2)と溶着する、シール可能な層であるコーティング層(2.3)を押し出すノズル装置(6)であって、
i)前記ノズル装置(6)は、前記基材を所定の密着長さでもって、温度調整されるローラ(8)の周りに案内する第2のローラ系(7)と協働し、
ii)前記温度調整されるローラ(8)は、供給ローラ(8.1)および引取りローラ(8.2)を含み、前記基材は、前記供給ローラ(8.1)から前記引取りローラ(8.2)に供給可能であり、
iii)前記コーティング層(2.3)は、前記引取りローラ(8.2)と、該引取りローラ(8.2)に接触する前記供給ローラ(8.1)との間で前記基材に供給可能であり、
iv)前記コーティング層(2.3)が設けられた前記基材の前記密着長さは制御可能に変更可能であり、前記モノマテリアルフィルム用の前記コーティング層の物理的特性は、前記中間層(2.2)と前記コーティング層(2.3)との間の付着力を調整するために、前記温度調整されるローラ(8)と、該ローラ(8)の周りへの密着長さとを介して制御可能である、
ノズル装置(6)と、
d)前記モノマテリアルフィルム(2)を第3のローラ系(10)を介して引き出して巻き取ることができる横延伸機(9)と、
を有する、フィルム延伸装置(1)。
【請求項10】
前記基層(2.1)と、前記中間層(2.2)と、前記コーティング層(2.3)と、を有する前記モノマテリアルフィルム(2)の前記密着長さは、旋回可能な押当てローラ(11)により延長可能または短縮可能である、請求項9記載のフィルム延伸装置(1)。
【請求項11】
前記ノズル装置(6)と前記第2のローラ系(7)とは互いに相対運動可能であり、これにより、押し出された前記コーティング層(2.3)は、まず前記引取りローラ(8.2)の表面に当たり、該引取りローラ(8.2)でもって、前記供給ローラ(8.1)に供給された前記基材に供給可能であり、これにより、前記コーティング層(2.3)から前記中間層(2.2)への熱伝達が温度調整されかつ制御される、請求項9または10記載のフィルム延伸装置(1)。
【請求項12】
前記基層(2.1)と前記中間層(2.2)との前記共押出し後および前記接合後の前記基材の厚さと、引出し前の前記モノマテリアルフィルム(2)の厚さとが、厚さ測定装置により測定可能である、請求項9から11までのいずれか1項記載のフィルム延伸装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール可能な二軸延伸ポリエステル系フィルムを製造する方法およびフィルム延伸装置に関する。
【0002】
プラスチックフィルムは、食品の包装や保存にも大幅に関係する広範な使用分野を有している。この場合、このために使用されるプラスチックフィルムの1つの重要な特性は、そのシール能力である。シール能力とは、製造プロセス中に熱を加えることにより簡単に包装を閉じるためのフィルムの能力と理解される。フィルムのシール能力は、包装および閉鎖に用いられるフィルムが、製造プロセス中に既に一方または両方の外面にシール可能なポリマーを有していることにより達成され得る。シール層は、主層または基層と共に共押出しされることが知られている。ポリプロピレン系のフィルム(BOPP)の場合、このことは、二軸延伸フィルムに関して広く普及している。
【0003】
しかしまたこれに対して代替的に、シール可能な層を後からフィルムにオフラインで塗布することも可能であり、知られている。このことは例えば押出しコーティングまたは溶融コーティングにより行われる。これはポリエチレンテレフタラート系、すなわちポリエステル系の二軸延伸フィルムの場合に当てはまることが多い。このような方法は、二軸延伸フィルムの製造ではインライン法として知られているが、広く普及しているわけではない。
【0004】
二軸延伸ポリプロピレンフィルムの場合、流延ローラユニットにおける共押出しによりフィルムの片面または両面に相応するシール層を設けることが知られている。ポリエチレンテレフタラート系のフィルム(BOPET)の場合、押出し温度は270~290℃の範囲内に位置することが多い。つまりこの押出し温度は、押出し温度が典型的には220~250℃の範囲内にあるポリプロピレン系フィルムの場合よりも高い。BOPETの製造における高い押出し温度は、低いシール開始温度での適当なシール層の共押出しを困難にする。それというのも、これらのシール層には通常、低い押出し温度が望ましいからである。シール可能なコーティング層を基材にコーティングする場合に重要なのは、この層が引き続く処理中に離層しない、という点である。離層は、引き続く延伸を伴うインラインコーティングにおいて、2つの層の間の境界面が追加的に延伸中の力に晒されても、生じてはならない。
【0005】
延伸を含む後処理用に良好な付着力を有していることが望ましいシール層を基材に塗布しようとする場合、まさに基材との良好な付着が達成されるようにするために、このシール層を塗布する温度を比較的高く選択する必要がある。シール層の温度が高くなるほど付着は良好になり、基材にもたらされる熱もより高くなるため、基材が、その結晶化温度を上回る温度に加熱されるリスクが生じる。基材に対するコーティング層の付着を、個々の層の化学的特性ではなく、とりわけ物理的特性により達成しようとする場合には、製造プロセス全体もしくは製造区間全体にわたる個々の層の温度制御が極めて重要である。
【0006】
様々な化学的特性により、モノマテリアルで作業したい場合のように温度状態が重要になることなく、極めて良好な付着が達成され得る。モノマテリアルは、とりわけ生態学的な観点から重要である。それというのも、モノマテリアルとも呼ばれるフィルムの再処理は原則として可能であるのに対して、化学的特性が異なる複数のフィルムから成る複合フィルムは、のちのリサイクルにあまり適していないからである。
【0007】
インラインコーティングプロセスにおいて基材の結晶化温度の超過を容易に発生させないもしくは最小限にするためには、プロセスフローにおいて、とりわけ、基材をシール可能な層によりコーティングする箇所に、比較的大きな寸法の冷却ローラを設けることが必要とされている。
【0008】
これに対してオフラインコーティングプロセスでは、コーティングされたフィルムの冷却は、フィルムから熱を逃がすことに役立ち、これにより、コーティングプロセス後にフィルムを巻き取ることができる。
【0009】
欧州特許第1362075号明細書には、コーティングされたポリマーフィルムを製造する方法およびヒートシール可能なポリマーフィルムが記載されている。この従来技術には確かに、2つの層を共押出しして1つの基材を形成し、次いでヒートシール可能な層をコーティング層の意味で基材に溶融コーティングすることが記載されている。しかしながらこの従来技術はとりわけ、様々な化学的特性により、コーティング層と基材との間の良好な付着能力を得る、ということに向けられたものである。基材とコーティング層との間での特定の温度状態の保持は記載されていない。一貫して強調されているのは、フィルム、つまりコーティングされた基材を冷却する必要があり、冷却は、ヒートシール可能なコーティング層のコーティング時にも同様に行う必要がある、という点である。コーティング層および基層上に設けられた中間層の特性に関して、この従来技術は、基層の溶融温度よりも低い温度で中間層が軟化する、と説明している。基層の保護の意味での、コーティング層と中間層との間の温度管理は、この従来技術では言及されない。よってこの刊行物から、異なる熱さの個々の層の物理的特性に注目した、これらの層間の熱交換もしくはエネルギー利用についての示唆は一切看取され得ない。
【0010】
これに対して本発明の課題は、シール可能な層を備えたフィルムの製造を、接合しようとする個々のフィルム層間の熱移動の最適化によりエネルギー的に改善し、これにより、各個別層へのエネルギー供給を改善する点、さらに、コーティング層によりフィルム中にもたらされる熱をフィルムの加熱に積極的に利用し、視覚的特性が改善され且つエネルギー消費量がより少ない高品質のフィルムを提供する点、ならびに比較的小さな手間でフィルムをリサイクル可能にする点にある。
【0011】
この課題は、請求項1記載の特徴を有する方法ならびに請求項9記載の特徴を有するフィルム延伸装置により解決される。有利な更なる形態は、各従属請求項に含まれている。
【0012】
本発明によれば、第1の方向と、第1の方向に対して垂直に延びる第2の方向とに延伸されるシール可能な二軸延伸ポリエステル系フィルムを製造する方法は、接合しようとするフィルムの個々の層の温度を互いに調整し、個々の層を互いに接合する際に物理的特性を選択することで、良好な付着性が達成されるだけでなく、フィルムの外側に位置する層の高いシール能力も達成されるようにし、2層の基材でも、シール可能な層と基材との接合プロセス中に、基材の基層が結晶化温度に到達することにより損傷を被るほど加熱されることがないようにする、温度管理を含む。本発明では、基材用の第1の層と第2の層とを溶融押出しし、この場合、第1の層は基層であり、第2の層は中間層であり、基層と中間層とを共押出しし、これにより、押出し後に基層と中間層とを互いに接合して1つの基材を形成する。その後、加工技術的に、溶融コーティングにより、基材にヒートシールコーティング層の塗布を行う。この溶融コーティングでは、シール可能な層であるコーティング層をノズルから押し出し、コーティング層と良好に付着させようとする基材に供給する。本発明による方法は、ポリエステル系フィルムに向けられたものである。すなわち、異なる各層はポリエステルまたはコポリエステルであるため、一般に実地から周知の複数の異なるポリマー材料から成るフィルムとは異なり、最初から、モノポリエステルマテリアルとも呼ばれる、いわゆるモノマテリアルが、良好なリサイクル性を可能にする。本発明の枠内で、モノマテリアルまたはモノポリエステルマテリアルとは、主に、すなわち90%超がポリエステルおよびコポリエステルから成り、さらに、これらに適合しない別のポリマー群の材料を含まない材料を意味する。本発明では実質的に1つのポリマー群、つまりポリエステルのみが使用されることにより、リサイクル性が保証されている。
【0013】
本発明による方法では、コーティング層は、中間層の融点または軟化点を上回る温度でもって中間層に作用し、理論的には接触線である接触箇所に対して、コーティング層は基材ひいては中間層に作用し、これにより基材の基層の温度がその結晶化温度を下回るように、中間層を形成する。この場合、中間層に対するコーティング層の熱供給は、基層がその結晶化温度の超過により損傷を被ることなしに、中間層の粘度を、コーティング層と溶着するまでに低下させる。溶着もしくは融着とは、本明細書では、2つの層における溶融による相互の付着もしくは溶融による相互の接合、を意味する。とりわけ、基材の基層の前記損傷が回避されると、コーティング層をコーティングされたフィルムの加熱後にフィルムにおいて実施されるべき横延伸が、時間調整された熱供給を経た相応する温度レベルから可能である。フィルムの各層の物理的な状態、すなわち中間層とコーティング層との間の粘度に合わせた製造方法に基づき、本発明により、各層に対する最適な温度供給、エネルギー供給またはエネルギー導出が保証される。機械内の温度推移は、概ね材料に依存せずに影響を及ぼされる。なぜならば、好適には複数の層を備えるフィルムは、ポリエステルやコポリエステル等のモノマテリアルとして構成されているからである。しかしまた、このような温度推移は別のフィルム材料によっても可能である。この場合、基材にもたらされる熱量は、特定の限界値を超過しないように調整される。好適には、リサイクル性の理由から多層のモノマテリアルが使用され、これにはポリエステル系プラスチックおよびコポリエステル系プラスチックから成る材料の使用が含まれる。公知の方法および公知のフィルムに対する1つの実質的な利点は、本発明による、ポリエステル系フィルムの使用により、フィルムをより薄く形成することができ、これにより、最終消費者による使用後の包装廃棄物量も減らすことができる、という点にある。ヒートシール可能なポリエステル系フィルムの1つの別の実質的な利点は、このフィルムがモノマテリアルとして、印刷機および加工機での良好な処理性に関するPETの長所と、包装を閉じる良好なシール能力という重要な特性とを兼ね備えている、という点にある。個々の成分が互いに適合するただ1つの基本材料を用いて作業するため、高価値の材料リサイクルの意味でのリサイクル性が与えられている。
【0014】
別の利点は、基層、中間層、及びコーティング層の間の熱移動状態の最適化の他に、完成フィルムの視覚的特性も改善される、という点にある。熱移動状態は、特にコーティング層と中間層との間において、中間層の下に位置する基層の結晶化温度を超過しないように最適化され、これにより、横断面において示されるフィルムの実質的な部分の視覚的特性も同様に改善されることになる。
【0015】
好適には、フィルムが、基層に比べて極めて薄い中間層を結晶化不能な層として有していたとしても、フィルムは熱処理により僅かにしか損傷されず、これにより、フィルムの視覚的特性にも無視し得る程度にしか影響を及ぼさない。結晶化不能な層とは、本明細書ではアモルファス層を意味する。
【0016】
さらに好適には、薄い中間層は、ほんの5~10μmの厚さを有している。
【0017】
コーティング層と中間層との間の良好な付着能力、すなわち良好な物理的接合を達成するために、コーティング層は、コーティング層に面した接触領域において、その粘度が0.5~20000Pa・s、特に1~20000Pa・s、特に1~10000Pa・sの範囲内にある温度でもって、かつ接触温度を管理する作用長さにわたって中間層に当て付けられる。前記粘度は、材料に依存するが良好な付着能力を保証するものであり、この場合、付着能力は、中間層に対するコーティング層の管理された作用長さにより制御される。
【0018】
本発明の更なる形態によれば、本発明による方法では、コーティング層から中間層に対して行われる熱供給の継続時間を、温度調整されるローラ、特に加熱ローラ/冷却ローラへの、コーティング層を設けようとする基材の巻掛け長さでもある密着長さを変更することにより制御する。つまり好適には、中間層に対するコーティング層の作用長さを、コーティング層ひいてはコーティング層の物理的特性、特に粘度に対する加熱ローラ/冷却ローラの制御される作用継続時間により制御もしくは管理して変化させる。これにより、純粋に物理的な状態により、コーティング層と中間層との間の付着強度を制御することができ、この場合には温度管理の枠内で常に、熱供給または熱導出の継続時間を制御することにより良好な付着を達成することができ、しかも中間層は結晶化不能な層であるため、中間層の薄い構成にもかかわらず、基層が結晶化温度を上回る範囲に達しない程度に、中間層を介して基層に生ぜしめられる熱入力を減少させて影響を及ぼすことが達成される。
【0019】
1つの別の実施例によれば、本発明による方法では、基材の各面にそれぞれ1つのコーティング層を塗布する、ということが想定されている。第1のコーティング層とは反対の側から基材に別のコーティング層を塗布する場合には、このために溶融コーティング法だけでなく、例えば彫刻ローラ等の公知の方法またはマイヤーバー法による別のコーティング層の塗布が適用され得る。この追加的なコーティング層の機能は、例えば印刷性の改善であり得る。さらにこの別の層により、例えば、その反対側に配置されたコーティング層と同じまたは類似の材料を使用すると、フィルムは両面側においてそれ自体でシール可能になる。
【0020】
1つの別の実施例では、本発明による方法のために、共押出し後に行われる基材の厚さ測定と、引出し前のフィルムの厚さ測定とを実施することができる。厚さ測定は、好適には追加的に、コーティング層の基材への溶融コーティング後にも行うことができる。
【0021】
好適には、コーティング層の溶融コーティングは、縦延伸機の前方で実施される。
【0022】
本発明の第2の態様では、第1の方向と、第1の方向に対して実質的に垂直に配置された第2の方向とに延伸されるべきシール可能な二軸延伸ポリエステル系フィルムを製造するフィルム延伸装置が提供される。本発明によるフィルム延伸装置は、基材と基層とを共押出し可能かつ互いに接合可能な流延ローラユニットを有している。さらにフィルム延伸装置は、基層と中間層とから成る基材をローラ系により縦延伸可能な縦延伸機を有している。縦延伸のために、基層と中間層とは、基材の両方の部分の剥離が生じないように、互いに接合されている必要がある。
【0023】
縦延伸機の後に、本発明によるフィルム延伸装置には、シール可能な層であるコーティング層の押出しに用いられるノズル装置が設けられている。このコーティング層は、中間層上での所定の接触長さに応じて中間層と溶着し、この溶着は、好適には永続的な溶着である。
【0024】
ノズル装置は第2のローラ系を有しており、基材は、所定の密着長さもしくは巻掛け長さでもって、第2のローラ系の温度調整されるローラの周りに案内される。前記所定の巻掛け長さは可変であり、コーティング層から中間層への最適な熱移動に調整され、調節され得る。これにより、温度調整されるローラの寸法設定を、従来技術において可能であるよりも小さくすることができる。温度調整されるローラは、引取りローラおよび供給ローラを含み、この場合、基材は供給ローラから引取りローラに供給可能である。基材は、引取りローラと、引取りローラに接触する供給ローラとの間に供給可能であり、この領域内でコーティング層に合わせられ、この場合、コーティング層が設けられた基材の巻掛け長さを制御可能に変化させることができ、これにより、引取りローラと供給ローラとの間の基材にコーティング層を供給する温度に相応して、中間層内への熱入力の量が定められ、最終的に、コーティング層の所望の温度は、その巻掛け長さによっても調節される。
【0025】
本発明によるフィルム延伸装置には、横延伸機と、引き続く第3のローラ系とが属しており、この場合、フィルムは第3のローラ系により横延伸機から引出し可能であり、その後、巻取り可能である。
【0026】
好適には、基層と、中間層と、コーティング層と、を有するフィルムの、各ローラへの巻掛け長さは、旋回可能な押当てローラにより延長可能または短縮可能である。これにより、基層に配置された中間層ひいては中間層の粘度ひいてはコーティング層と中間層との間の相応する付着および接合に対する、コーティング層の温度による作用継続時間を調節可能に変化させることができる。
【0027】
好適には、本発明によるフィルム延伸装置において、ノズル装置と第2のローラ系とは互いに相対運動可能であり、これにより、押し出されたコーティング層は、まず引取りローラの表面に当たり、温度調整及びコーティング層から中間層への熱移動の制御に相応して、引取りローラにより、供給ローラに供給された基材に接合される。これにより、中間層に対するコーティング層の最適な付着のための物理的特性、および基層中への不要な熱入力によるこの基層の損傷の回避を実現することができる。
【0028】
1つの別の実施例では、フィルム延伸装置は、基層と中間層との共押出し後の基材の厚さを測定する少なくとも1つの厚さ測定装置を備えている。さらに好適には、接合後および引出し前に厚さ測定装置が設けられており、これにより、フィルムの接合後および引出し前にも、フィルムの厚さを安定して測定することができる。
【0029】
次に、以下の図面による実施例に基づき、本発明による方法および本発明によるフィルム延伸装置の構成の更なる利点および詳細を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明によるフィルム延伸装置の原則的な構成を示す簡略図である。
図2a】押出しノズルから供給されるシール可能なコーティング層を、より大きな巻掛け長さで溶融コーティングする第2のローラ系を示す図である。
図2b】押出しノズルから供給されるシール可能なコーティング層を、より小さな巻掛け長さで溶融コーティングする第2のローラ系を示す図である。
図3a】より大きな巻掛け長さと、押し出されたコーティング層の、引取りローラに対する衝突領域とを備えた、図2a)に示した第2のローラ系を示す図である。
図3b】押し出されたコーティング層の、引取りローラに対する衝突領域を備えた、図2b)に示した第2のローラ系を示す図である。
図4a】基層と中間層とから共押出しされた基材を示す図である。
図4b】シール可能なコーティング層を備えた、図4a)に示した基材を示す図である。
図4c】下面に追加的なコーティング層を備えた、図4b)に示したシール可能なコーティング層を備えた基材を示す図である。
【0031】
図1a)には、技術的な各方法ステップを表す本発明によるフィルム延伸装置の原則的な構成の簡略図が示されている。シール可能な二軸延伸ポリエステル系フィルム2を製造するフィルム延伸装置1は、流延ローラユニット3を有しており、流延ローラユニット3は、押出しノズル3.1と、流延ローラ3.2と、を有している。流延ローラユニット3により、フィルム2の基材の2つの層、つまり基層2.1と中間層2.2(図4a)参照)とが共押出しされると同時に互いに接合される。共押出しでは、基層2.1および中間層2.2の各プラスチックが溶融され、これにより、これらのプラスチックは溶融状態において互いに接合され得る。この場合、押出しノズル3.1は、基層2.1のポリマーと中間層2.2のポリマーとがまずノズル内に集められ、ノズルスリットに供給されかつ押し出され、次いで流延ローラ3.2上で冷却されるように形成されている。この場合に重要なのは、ポリエステル系基層(PET)2.1が比較的急速に冷却される点である。それというのも、この基層2.1の温度は、損傷が生じる臨界的な温度範囲を通過するからである。臨界的な温度範囲とは、結晶化温度を超過する温度範囲を意味する。このような流延ローラユニット3において、基層2.1のある程度の損傷は完全には回避され得ない。損傷を最小限に抑えることができるように、本発明に基づき想定される二軸延伸PETフィルムのために押し出された溶融物は、大きな手間をかけて、大きな寸法の冷却ローラにより冷却される。この場合、基層2.1の臨界的な領域を可能な限り迅速に通過して損傷を最小限に抑えることができるように、2m以上の直径が一般的である。基層2.1と結晶化不能な中間層2.2とは、両方とも溶融状態で集められて押し出されているため、流延ローラ3.2から離れた後に互いに接合された状態になる。基材は、基層2.1と、これに接合された中間層2.2と、から成る2層の基材として形成されており、流延ローラユニット3から到来して、縦延伸機5として形成された第1のローラ系4に供給される。つまり、製造しようとする二軸延伸フィルムは、まずフィルム延伸装置によるフィルムの搬送方向に相当する第1の方向で縦延伸される。この縦延伸には、基材の2つの層が互いに固く接合されて、離層の傾向を一切示さない、ということが必要とされている。
【0032】
縦延伸機5の後には第2のローラ系7が設けられており、第2のローラ系7ではノズル装置6により、シール可能なコーティング層2.3が押し出され、基層2.1と中間層2.2とから成る基材の中間層2.2にコーティングもしくは塗布される。この溶融コーティングに際して基層2.1は、流延ローラユニット3による共押出しの場合とは異なり、その結晶化温度を超過する臨界的な温度範囲を通過することはない。溶融したコーティング層2.3のエネルギーにより、中間層2.2が溶融もしくは軟化し、これによりコーティング後にコーティング層2.3と基材の中間層2.2との間に安定した良好な付着接合が達成され、その結果、シール可能なフィルムは少なくともこれら3つの層を含むことになる。コーティング層2.3の温度、粘度、および、供給ローラ8.1により運ばれてコーティング層2.3が設けられるべき基材の引取りローラ8.2上に存在するもしくは生じる巻掛け長さ、に応じて、中間層2.2の溶融の度合いを、積極的に冷却が必要とされることなしに、溶融押出しされたコーティング層2.3により材料に依存して制御することができる。
【0033】
溶融押出しされたコーティング層2.3が、その温度に関してより低温の中間層2.2に衝突することにより、一方では中間層2.2の上面が溶融され、他方では中間層2.2はコーティング層2.3を冷却もする。これにより、フィルム延伸装置1のこの位置では、流延ローラユニット3において必要とされているような、構成に手間のかかる大型の冷却ローラを省くことができる。溶融押出しされた、より高温のコーティング層2.3と、基材を形成するように基層2.1に接合された、より低温の中間層2.2との間の制御された熱移動状態に基づき、コーティング層2.3と中間層2.2との間に調整可能で安定した付着接合が生じると同時に、中間層2.2は、基層2.1が結晶化範囲内に位置する温度に加熱されることを抑制する。つまり、ここで説明するインラインコーティングの場合には、コーティング層の溶融物によりフィルム中にもたらされる熱エネルギーがフィルム内で保たれることが望ましく、これにより、引き続く横延伸のためのフィルムの加熱を容易にすることができるもしくはより効率的にすることができる。なぜならば、加熱がより高いエネルギーレベルから行われるからである。インラインコーティング実施後の望ましい温度範囲は、好適には90℃~125℃である。これは、横延伸時に有利な温度である。インラインコーティング実施後のフィルムがこの90℃~125℃の範囲に近いほど、もしくはこの範囲内にあると、横延伸の加熱ゾーンにもたらす必要のあるエネルギーは少なくなる。このことは、本発明による装置と、本発明により一方では中間層2.2への熱入力を制御しかつ他方では同時に中間層2.2によるコーティング層2.3の冷却を制御することと、により達成される。結晶化可能なポリマーの場合、臨界的な温度範囲としての結晶化範囲は、ガラス転移温度(PETの場合は約70℃)と融点(PETの場合は約256℃)との間に位置する。PETの結晶化範囲は、約120℃~225℃の温度範囲内に位置する。
【0034】
図1aに基づき説明する実施例では、巻掛け長さ19(図2a)、図2b)、図3a)および図3b)参照)が、引取りローラ8.2のローラ表面のほぼ半分にわたり延びていることが示されている。溶融押出しされたコーティング層2.3は、ノズル装置6から供給ローラ8.1と引取りローラ8.2との間の接触領域内へ案内される。両ローラ8.1,8.2は、温度調整されるローラ8として形成されている。
【0035】
第2のローラ系7の出口において横延伸機9の領域の手前、すなわち、基材へのコーティング層2.3の押出しコーティングと横延伸機9との間には、厚さ測定装置12が設けられている。追加的に、縦延伸機5と押出しコーティングとの間でさらに厚さを測定することも可能である。コーティング層2.3により基材を溶融コーティングするためのノズル装置6および流延ローラユニット3の押出しノズル3.1は、フレキシブルで調整可能なノズルリップが、所望の層厚さの調整を可能にするように形成されている。通常、公知の装置では、厚さは、横延伸機9の後で、シール可能なコーティング層2.3を備えたフィルムが巻き取られる前に、別の厚さ測定ステーション(図示せず)により測定される。このために用いられる方法には、例えば放射性源、エックス線または赤外線による測定が含まれる。流延ローラユニット3と縦延伸機5との間でも同様に厚さを測定するということも知られている。とりわけ、2つのノズル3.1および6のフレキシブルで調整可能なノズルリップを使用する際に、押出しコーティングと横延伸機9との間に厚さ測定装置を設けることで、この組合せにより、基材の均一な厚さおよびコーティング層2.3の均一な厚さが、横延伸機9の後でもなお存在することが可能である。この場合、横延伸による層厚さの減少が考慮され、厚さ測定装置12により測定される層厚さの測定結果に基づき、フィルム厚さの所望の値が、もしくは完成フィルムにおけるコーティング層2.3の厚さでさえも、調整もしくは調節され得る。横延伸機9の後には第3のローラ系10が設けられており、第3のローラ系10は巻取り機20に関連して、横延伸後に最終固定されたフィルムの引出しを保証する。
【0036】
図1b)に示す第2のローラ系7は、図1a)に示したローラ系7に対して変更されている。追加的に、図1b)に示す変更された第2のローラ系7には、追加的なコーティング層2.4のための塗布装置14が設けられており、塗布装置14は、フィルムの下面、つまり中間層2.2にコーティング層2.3が塗布されているフィルムの上面とは反対の側にコーティング層を塗布する。追加的なコーティング層2.4のためのこの塗布装置14は、例えば上面においても下面においてもヒートシール可能であることが望ましいヒートシール可能なフィルムが必要とされる場合に設けられてよい。
【0037】
第2のローラ系7に基づく装置により、中間層2.2とヒートシール可能なコーティング層2.3との間を良好に付着させるためにこの中間層の良好な軟化が達成され得るまで、シール可能なコーティング層2.3は調整可能かつ制御可能に中間層2.2上で放置される、ということが達成され得る。つまり、コーティング層2.3と中間層2.2との間の温度状態は、ヒートシール可能なコーティング層2.3が最終的に中間層2.2により冷却されるように調整されるもしくは影響を及ぼされるもしくは利用され、これにより、装置のこの箇所での冷却さえ省略することができる。
【0038】
コーティング層2.3と中間層2.2との物理的特性に基づく接合は、コーティング層2.3による基材のコーティング中に基層2.1がその結晶化温度に達するまたは超過することは一切ない、ということを保証する。つまり、コーティング層2.3が中間層2.2を加熱し、これにより、これら2つの層間に良好な付着を生じさせる。ただし、基層2.1が結晶化温度の、またはこれを超える高さの温度に到達しない限り、基層2.1の加熱は抑制される。これにより、横延伸機9での横延伸用に必要とされる次の加熱が、より高いものの、結晶化温度未満の温度レベルから実施されることになる。
【0039】
つまり本発明による方法もしくは本発明によるフィルム延伸装置は、基層2.1がその結晶化温度を超えて加熱されない程度にだけ基層2.1中に熱がもたらされるまでしか、コーティング層2.3により中間層2.2が加熱されないと共に、これによりコーティング層2.3が中間層2.2により冷却されることにより、一方ではコーティング層2.3と中間層2.2との間の良好な接合を達成することができかつ他方では基層2.1の損傷を抑制することができるようにするために、ポリエステル系層の物理的特性、例えばこれらの粘度等が、中間層2.2とコーティング層2.3との間で利用される、ということを目的としたものである。
【0040】
したがって、この温度・熱移動状態の正確な制御により、基層2.1の温度を比較的正確に、結晶化温度の直下の温度に上げることが可能であり、これにより、引き続く加熱時に、上述した、より高い温度レベルからフィルムを加熱することができ、その結果、全体的にエネルギー節約が可能である。個々の層間の物理的な状態の利用は、概ね材料に依存しないことを意味する。なぜならば、個々の層材料はポリエステル系を基礎として選択されており、良好にリサイクルすることが可能であるからである。
【0041】
図2a)および図2b)には、図1a)に示した実施例に基づく溶融コーティング状態が拡大図で示されている。図2a)には、ノズル装置6から溶融押出しされたコーティング層2.3が、温度調整されるローラ8、すなわち供給ローラ8.1と引取りローラ8.2との間の接触点に供給される様子が示されている。場合により、供給ローラ8.1の上流側に配置されたローラは旋回可能に配置されている。この旋回運動は、双方向矢印により示されている。基材は、第2のローラ系7の2つのローラと供給ローラ8.1とを介して、溶融押出しの経路内の、コーティング層2.3が供給される箇所に案内され、この場合、引取りローラ8.2の周りの密着長さもしくは巻掛け長さ19は、180°弱である。双方向矢印17によりその動きを示す旋回可能な押当てローラ11により、コーティング層2.3によりコーティングされた基材の、引取りローラ8.2の周りへの巻掛け長さの端部が固定される。図2a)に例示した巻掛け長さ19は、引取りローラ8.2において約160°を有している。
【0042】
これに対して図2b)に示す第2のローラ系7の、その他の点では同様に示された構成における巻掛け長さ19は、90°を下回ってさえいる。図2a)および図2b)には、双方向矢印15および16が書き込まれている。双方向矢印15および16は、ノズル装置6と、図示しない支持体に取り付けられた第2のローラ系7とが互いに相対的に双方向矢印15および16の方向に可動であるということが原則として可能である、ということを表すものである。
【0043】
この状態は、図3a)および図3b)に示されている。図3a)および図3b)の両方において、ノズル装置6は、フィルム延伸装置を通るフィルムの通過方向において、引取りローラ8.2の表面に対して相対的に後方にずらされている、すなわち、供給ローラ8.1と引取りローラ8.2との間の接触箇所から離れる方向にずらされている。これにより、温度調整される引取りローラ8.2上でのコーティング層2.3の滞留時間にわたり、コーティング層2.3の温度ひいてはその粘度をも追加的に調整することができ、これにより、コーティング層2.3に引取りローラ8.2が作用する継続時間のこの変更によっても、巻掛け長さ19と共に、特にコーティング層2.3および中間2.2の粘度を変更もしくは調整もしくは調節することができる。図2b)と同様に図3b)でも、押当てローラ11は引取りローラ8.2の進入側に向かって旋回させられており、これにより、引取りローラ8.2の周りのコーティング層2.3の巻掛け長さ19は相応に減少している。この点において基本機能および基本構成は、図2a)および図2b)もしくは図1に示したものに相当する。
【0044】
ローラ系7を介して、ノズル装置6とローラ系7の支持体との間の相対運動もしくは支持体に対するローラ系7の相対運動に関連して、コーティング層2.3の冷却または予熱を時間及び温度に関して調整することができる。別個の予冷却として、共押出し層の相応の予冷却が可能である。
【0045】
図4には、図4a)に基層2.1と中間層2.2とから成る基材が横断面図で示されており、この場合、中間層2.2は基層2.1と共に、流延ローラユニット3における共押出し過程により形成されたものである。
【0046】
図4b)には、第2のローラ系7(図2および図3参照)の範囲に示したコーティング層2.3による、図4a)に示した基材のコーティングが示されている。
【0047】
最後に図4c)には、1つの別の実施例に基づき、図4b)に示したヒートシール可能なコーティング層2.3が設けられたフィルムが、ヒートシール可能な層とは反対の側に追加的なコーティング層2.4を備えていることが示されている。このような追加的なコーティング層2.4は、特定の用途のためにフィルムがヒートシール可能なコーティング層を両面に有していることが望ましい場合に使用される。このことを実現するためには、第2のローラ系7の端部に、このような追加的なコーティング層のための塗布装置14(図1b参照)を配置することが必要とされる。
【符号の説明】
【0048】
1 フィルム延伸装置
2 フィルム
2.1 基層
2.2 中間層
2.3 コーティング層
2.4 追加的なコーティング層
3 流延ローラユニット
3.1 押出しノズル
3.2 流延ローラ
4 第1のローラ系
5 縦延伸機
6 ノズル装置
7 第2のローラ系
8 温度調整されるローラ
8.1 供給ローラ
8.2 引取りローラ
9 横延伸機
10 第3のローラ系
11 押当てローラ
12 厚さ測定装置
14 追加的なコーティング層用の塗布装置
15 ノズルの側方へのずれ運動
16 第2のローラ系の側方へのずれ運動
17 押当てローラの旋回運動
19 引取りローラへのコーティングされた基材の密着長さ/巻掛け長さ
20 巻取り機
図1a)】
図1b)】
図2a)】
図2b)】
図3a)】
図3b)】
図4a)】
図4b)】
図4c)】
【手続補正書】
【提出日】2022-06-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
欧州特許第1362075号明細書には、コーティングされたポリマーフィルムを製造する方法およびヒートシール可能なポリマーフィルムが記載されている。この従来技術には確かに、2つの層を共押出しして1つの基材を形成し、次いでヒートシール可能な層をコーティング層の意味で基材に溶融コーティングすることが記載されている。しかしながらこの従来技術はとりわけ、様々な化学的特性により、コーティング層と基材との間の良好な付着能力を得る、ということに向けられたものである。基材とコーティング層との間での特定の温度状態の保持は記載されていない。一貫して強調されているのは、フィルム、つまりコーティングされた基材を冷却する必要があり、冷却は、ヒートシール可能なコーティング層のコーティング時にも同様に行う必要がある、という点である。コーティング層および基層上に設けられた中間層の特性に関して、この従来技術は、基層の溶融温度よりも低い温度で中間層が軟化する、と説明している。基層の保護の意味での、コーティング層と中間層との間の温度管理は、この従来技術では言及されない。よってこの刊行物から、異なる熱さの個々の層の物理的特性に注目した、これらの層間の熱交換もしくはエネルギー利用についての示唆は一切看取され得ない。
米国特許出願公開第2013/323446号明細書から公知の積層体は、紙、ポリエチレンおよびポリエチレンテレフタラートを含む少なくとも3つの層を有しており、この場合、ポリエチレンテレフタラートは、相互間に接着剤層等が介在することなしに、ポリエチレン表面に直接にコーティングされている。ポリエチレンテレフタラート層は、ヒートシール可能である。さらに、紙製基材の少なくとも一方の面にポリエチレンがコーティングされている積層体を製造する方法が記載されており、この方法は、紙製基材上に積層されたポリエチレンの面に対するポリエチレンテレフタラートの押出しラミネートを含む。さらに、既に延伸されたポリエチレンテレフタラート層を用いることが知られている。
米国特許出願公開第2014/065431号明細書には、シール可能または剥離可能なフィルムとして適当であり、特に食品容器の閉鎖に適した多層フィルムが開示されている。この多層フィルムは、ポリマー基材層と、シール層または剥離・シール層と、を含んでいる。この多層複合フィルムは、少なくとも2つの主層、すなわち機械的強度のためのポリマー基材層と、押出しコーティングにより塗布されたヒートシール可能な層とから成る。
欧州特許出願公開第3248777号明細書は、基層として透明で剥離可能なポリエステルフィルムを有する二軸延伸ポリエステルフィルムと、その上にオフラインコーティングされたヒートシール可能で剥離可能なカバー層とに関する。
英国特許出願公開第2024715号明細書に開示された、2つの同一のポリオレフィン材料層から1つのフィルムを製造する方法では、以下の作業ステップ、すなわち:ベースフィルムを所定の条件下で押し出し、冷却しかつ縦延伸するステップ、所定の条件下で同一のポリオレフィン材料から成る比較的薄いコーティングをベースフィルム上に押し出し、次いで複合フィルムを横延伸するステップが実施される。
欧州特許出願公開第0026006号明細書から、主層が極めて良好な抗張力特性を有するポリエステル材料から成る積層材料が知られている。さらに、前記主層上には、商品名PETGで商品化されるような変成ポリエステル材料から成るシール層が積層されており、シール層は、積層された材料が共に延伸させられても、そのシール特性を保つ。
欧州特許出願公開第0226923号明細書には、表面処理され、少なくとも一軸延伸された熱可塑性フィルムを製造する方法が記載されている。少なくとも1回の延伸ステップの前に、スリット付きドクタ系により表面処理が行われ、後続の延伸は、表面接触なしで行われる。
国際公開第02/059186号に開示された、ヒートシール可能なポリマーフィルム、特にヒートシール可能で引出し可能なポリマーフィルムを製造する方法には、以下のステップ、すなわち、ポリマー材料から成る基材層を溶融押出しするステップと、基材層を第1の方向に延伸するステップと、直交する第2の方向に基材層を任意に延伸するステップと、延伸したフィルムを任意に熱固定するステップと、ヒートシール可能な層を、溶融ポリマー材料の溶融コーティングにより基材の表面上に直接形成し、コーティングした基材を冷却するステップと、が含まれる。
【国際調査報告】