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特表2022-552695レーザービームによってリチウム箔又はリチウム被覆金属箔を加工するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-19
(54)【発明の名称】レーザービームによってリチウム箔又はリチウム被覆金属箔を加工するための方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/38 20140101AFI20221212BHJP
   B23K 26/042 20140101ALI20221212BHJP
   H01M 4/1395 20100101ALN20221212BHJP
【FI】
B23K26/38 A
B23K26/042
H01M4/1395
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022522901
(86)(22)【出願日】2020-10-16
(85)【翻訳文提出日】2022-04-15
(86)【国際出願番号】 EP2020079276
(87)【国際公開番号】W WO2021074424
(87)【国際公開日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】102019216070.0
(32)【優先日】2019-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506065105
【氏名又は名称】トルンプフ レーザー- ウント ジュステームテヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】TRUMPF Laser- und Systemtechnik GmbH
【住所又は居所原語表記】Johann-Maus-Strasse 2, D-71254 Ditzingen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】オリバー ボックスロッカー
【テーマコード(参考)】
4E168
5H050
【Fターム(参考)】
4E168AD07
4E168CA06
4E168CB19
4E168CB23
4E168DA02
4E168DA03
4E168DA04
4E168DA32
4E168JA03
4E168JA04
4E168JA28
5H050AA19
5H050BA15
5H050CB12
(57)【要約】
レーザービーム(2)により、リチウムを含む箔(1)を加工するための本発明による方法において、レーザービーム(2)は、200nm~1μmの波長を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザービーム(2)により、リチウムを含む箔(1;1’)を加工するための方法であって、前記レーザービーム(2)は、200nm~1μmの波長を有する、方法。
【請求項2】
前記箔(1;1’)は、リチウム箔又はリチウム(3)で被覆された金属箔(4)、特に銅若しくはアルミニウム箔である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記レーザービーム(2)の前記波長は、500nm~550nm、特に約515nmの緑の範囲にある、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記レーザービーム(2)の前記波長は、440nm~460nm、特に約450nmの青の範囲又は400nm~410nm、特に約405nmの紫の範囲にある、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記レーザービーム(2)の前記波長は、250nm~370nm、特に約257nm、約355nm又は約342nmの紫外範囲にある、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記箔(1;1’)は、前記レーザービーム(2)によって切断される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記箔(1;1’)は、前記レーザービーム(2)によって溶接される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
穴(7)又はくぼみは、前記レーザービーム(2)によって前記箔(1;1’)内に開けられる、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
材料は、前記レーザービーム(2)によって前記箔(1;1’)の表面から融蝕される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記箔(1;1’)の前記表面は、前記レーザービーム(2)によって構造化される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記レーザービーム(2)は、前記箔(1;1’)の前記表面に0°~約45°、好ましくは0°~30°の入射角で当たる、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザービームにより、リチウムを含む箔を加工するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体電池の製造のために、プレーンのリチウム又はリチウム被覆銅若しくはアルミニウム箔は、電極箔として、特にアノードとして使用される。この場合、箔は、1000~1100nmの範囲、特に1030nmの近赤外波長を有するレーザービームによって加工、例えば寸法通りに切断、溶接、穴開け、融蝕又は表面構造化される。このレーザー加工は、大面積熱影響域及び箔の加工域又はその付近での溶融体と粒子との接着付着のために悪影響をもたらす。熱影響域は、周囲空気からの水との反応のために水酸化リチウムの発生の増加をもたらし得る。溶融体と粒子との付着により、箔が破壊され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、冒頭に述べたタイプの方法の場合において、説明された不利な点を減らすか又は完全に回避するという目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、本発明に従い、200nm~1μmの波長を有するレーザービームによって達成される。この波長範囲において、s偏光及びp偏光の両方のリチウムの吸光度は、以前に主として使用された1030nmの近赤外波長の吸光度の約3~10倍である。本発明によるより高い吸収により、同じレーザー出力及び強度を用いて一層高い製造供給を達成することができる。これにより、熱影響域が低減され、それによってより少ない水酸化リチウムが生じる。さらに、より高い吸収のため、切断縁で溶融体と粒子との付着事例が少なくなり、それにより損耗が減少する。
【0005】
プレーンのリチウム箔又はリチウムで被覆された金属箔、特に銅若しくはアルミニウム箔が箔として使用されることが好ましい。固体電池の製造において、このような箔は、電極として、特にアノードとして使用されることが好ましい。
【0006】
本発明の第1の好ましい変形形態において、レーザービームの波長は、500nm~550nm、特に約515nmの緑の範囲にある。この波長範囲において、垂直な光入射下での吸収は、近赤外レーザー光(1030nm)と比較して最大で約2.8倍大きい。緑の波長は、例えば、ディスクレーザーにより、いかなる問題もなく生成され得る。
【0007】
本発明の第2の好ましい変形形態において、レーザービームの波長は、440nm~460nm、特に約450nmの青の範囲又は400nm~410nm、特に約405nmの紫の範囲にある。これらの波長範囲において、垂直な光入射下での吸収は、近赤外レーザー光(1030nm)と比較して最大で約4.7倍大きい。青及び紫の波長は、例えば、ダイオードレーザーにより、いかなる問題もなく生成され得る。
【0008】
本発明の第3の好ましい変形形態において、レーザービームの波長は、250nm~370nm、特に約257nm、約355nm又は約342nmの紫外範囲にある。この波長範囲において、垂直な光入射下での吸収は、近赤外レーザー光(1030nm)と比較して最大で約10.6倍大きい。紫外波長は、例えば、ディスクレーザーにより、いかなる問題もなく生成され得る。
【0009】
本発明によれば、リチウムを含む箔は、レーザービームによって切断されるか、溶接されるか、くぼまされるか若しくは穴開けされるか、融蝕されるか又は表面構造化され得る。
【0010】
特に好ましくは、レーザービームは、箔の表面に0°~約45°、好ましくは0°~30°の入射角で当たる。
【0011】
本発明の主題の更なる利点及び有利な改良形態は、説明、特許請求の範囲及び図面から明白である。同様に、上述した特徴及びなお更に提示される特徴は、いずれの場合にも、個別に又は任意の所望の組み合わせで併用することができる。図示及び説明する実施形態は、網羅的な列挙として理解されるべきではなく、むしろ本発明を概説するための例示的な特徴のものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】レーザービームによるプレーンのリチウム箔(図1a)及びリチウム被覆箔(図1b)の加工を概略的に示す。
図2】近赤外、緑、青及び紫外範囲の波長について、入射角に基づいてリチウム金属の吸光度を示す。
図3図3a~図3eは、リチウムを含む箔の加工の様々な適用例を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明による方法は、レーザービーム2により、リチウムを含む箔1を加工するために役立ち、すなわち、箔1は、少なくとも部分的にリチウムからなる。図1aに示されるように、箔1は、例えば、プレーンのリチウム箔であり得るか、又は図1bに示されるように、リチウム3で被覆された金属箔4、例えばリチウム3で被覆されたアルミニウム若しくは銅箔であり得る。好ましくは、箔1、1’は、10μm~400μm、有利には約20μmの厚さを有する。箔1、1’の加工は、特に固体電池の電極、特にアノードとして箔1、1’を使用する目的で行われる。
【0014】
このような箔1、1’のレーザー加工は、1000~1100nmの波長、特に1030nmの波長を有する近赤外範囲のレーザー放射によってこれまで行われた。しかしながら、このレーザー加工は、大面積熱影響域及び加工域又はその付近での溶融体と粒子との接着付着のために悪影響をもたらす。熱影響域は、周囲空気からの水との反応のために水酸化リチウムの発生の増加をもたらし得、溶融体と粒子との付着により、箔1、1’が破壊され得る。
【0015】
図2は、近赤外、緑、青及び紫外範囲の波長について、298°Kのリチウム金属の温度における入射角に基づくリチウム金属の吸収曲線(フレネル)を示す。吸光度αは、- それぞれ近赤外、緑、青及び紫外波長について - 入射光のs偏光及びp偏光成分について入射角φに対してプロットされ、s偏光成分は、入射面に垂直に直線偏光され、及びp偏光成分は、入射面に平行に直線偏光される。
【0016】
吸収曲線10、11は、1030nmの波長を有する、現在使用される近赤外レーザー光のs偏光及びp偏光成分の吸光度を示す。垂直な光入射(φ=0°)下で達成される吸光度は、約0.03であり、箔の加工において加工のために必要とされるエネルギーを箔1、1’に導入するために低い供給速度(「供給」)を可能にするにすぎない。
【0017】
吸収曲線12、13は、515nmの波長を有する緑色レーザー光のs偏光及びp偏光成分の吸光度を示す。垂直な光入射(φ=0°)下では、緑色レーザー光の吸光度は、約0.09であり、従って近赤外レーザー光(吸収曲線10、11)と比較して約2.8倍であることが分かり得る。
【0018】
吸収曲線14、15は、450nmの波長を有する青色レーザー光のs偏光及びp偏光成分の吸光度を示す。垂直な光入射(φ=0°)下では、青又は紫色レーザー光の吸光度は、約0.15であり、従って近赤外レーザー光(吸収曲線10、11)と比較して約4.7倍であることが分かり得る。
【0019】
最後に、吸収曲線16、17は、342nmの波長を有する紫外線レーザー光のs偏光及びp偏光成分の吸光度を示す。垂直な光入射(φ=0°)下では、紫外線レーザー光の吸光度は、約0.33であり、従って近赤外レーザー光と比較して約10.6倍であることが分かり得る。
【0020】
以前のように近赤外範囲のレーザービームによる代わりに、本発明に従い、箔1、1’のレーザー加工は、500nm~550nm、特に約515nmの緑の範囲、440nm~460nm、特に約450nmの青の範囲、400nm~410nm、特に約405nmの紫の範囲又は250nm~370nm、特に約257nm、約355nm若しくは約342nmの紫外範囲のレーザービーム2によって行われる。これらの波長範囲の全てについて、吸光度は、近赤外レーザー光と比較して約2.8~10.6倍増加し、それにより同じレーザー出力及び強度で一層高い製造供給が達成される。これにより、熱影響域が低減され、それによってより少ない水酸化リチウムが生じる。さらに、より高い吸収のため、切断縁で溶融体と粒子との付着事例が少なくなり、それにより損耗が減少する。
【0021】
cwレーザービーム又はパルスレーザービームをレーザービーム2として使用することができる。試験が示したように、使用されるレーザー出力は、この場合、100W~4000W、特に約1000Wであるべきであり、箔1、1’上のレーザービーム2のスポット直径は、50μm~600μm、特に約85μmであるべきである。パルスレーザービーム2の場合、パルス持続時間は、0.2ms~50msであり得る。加工の過程において、レーザービーム2が箔1、1’の上で移動され、それによって達成され得る供給が50~5000mm/sの範囲であり得る。スキャナー光学ユニットを加工のために使用することができ、カメラに基づくセンサーシステムを位置決めのために使用することができる。
【0022】
図3a~3eは、緑、青、紫及び紫外波長を有するレーザービーム2による、リチウムを含む箔1、1’の加工の様々な適用例を示す。
【0023】
図3aにおいて、固体電池の製造に適した定寸の箔ブランクを製造するために、箔1、1’は、緑、青、紫又は紫外レーザービーム2によって切断される。これは、切片5を製造するためにレーザービーム2が箔1、1’の上で供給速度又は切断速度vで供給方向Aに移動されることを必要とする。緑、青、紫又は紫外レーザービーム2の高い吸収は、従来の近赤外レーザービーム(1030nm)を使用する場合よりも多い材料が気化される効果を有し、溶融体の接着付着が低減される。
【0024】
図3bにおいて、緑、青、紫又は紫外レーザービームによって金属集電体6が箔1、1’上に電気導電的に溶接される。溶接継目は、6aによって示される。固体電池において箔1、1’がアノードを形成する場合について、集電体6は、電流を外部に出すために役立つ。集電体6は、一般的に、固体電池のアノードと異なる金属からなる。
【0025】
図3cは、緑、青、紫又は紫外レーザービーム2によって箔1、1’内に開けられた穴又はくぼみ7を示す。箔1、1’内のこのような穴7は、固体電池の製造において箔1、1’のいくつかの層を互いに機械的に接続するために役立ち得る。
【0026】
図3dに示される箔1、1’の場合、表面の1つ以上の層8は、緑、青、紫又は紫外レーザービーム2によって融蝕されている。箔1’、すなわちリチウム3で被覆された金属箔4の場合、例えばリチウム被覆全体をこのように明確に所望の領域において融蝕(除去)することができる。
【0027】
図3eは、構造化表面9を有する箔1、1’を示し、この表面構造は、緑、青、紫又は紫外レーザービーム2で箔の表面を照射することによって製造されている。
【符号の説明】
【0028】
1 箔
1’ 箔
2 レーザービーム
3 リチウム
4 金属箔
5 切片
6 金属集電体
6a 溶接継目
7 穴
8 層
9 構造化表面
10 吸収曲線
11 吸収曲線
12 吸収曲線
13 吸収曲線
14 吸収曲線
15 吸収曲線
16 吸収曲線
17 吸収曲線
図1a
図1b
図2
図3a
図3b
図3c
図3d
図3e
【国際調査報告】