(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-19
(54)【発明の名称】電離線のいくつかのソースを有する放射線装置及びこの装置を実装する方法
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20060101AFI20221212BHJP
A61B 6/02 20060101ALI20221212BHJP
G01N 23/046 20180101ALI20221212BHJP
【FI】
A61B6/00 300Y
A61B6/00 300B
A61B6/02 353C
G01N23/046
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022522903
(86)(22)【出願日】2020-10-19
(85)【翻訳文提出日】2022-06-08
(86)【国際出願番号】 EP2020079345
(87)【国際公開番号】W WO2021074445
(87)【国際公開日】2021-04-22
(32)【優先日】2019-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511148123
【氏名又は名称】タレス
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベルナール ギヨーム
【テーマコード(参考)】
2G001
4C093
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001AA10
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA06
2G001DA09
2G001FA08
2G001HA14
2G001LA01
4C093AA11
4C093CA07
4C093CA32
4C093EA06
4C093EB12
4C093EB13
4C093EB24
4C093FC26
4C093FF06
4C093FF33
4C093FF42
(57)【要約】
本発明は、電離線生成器(12)及びこの生成器(12)によって放出された電離線を検出するように構成された検出器(14)を有する放射線装置に関し、生成器(12)及び検出器(14)は、相互の関係において反対側に位置しており、装置(10)は、生成器(12)からの電離線が通過する及び検出器(14)によって受け取られている有用な容積(60)の境界を画定しており、生成器(12)は、所定の方向(18)に沿って分散する、基本的にフラットな、及び扇形の尾の形態を有する電離線のビーム(20)をそれぞれが放出するいくつかのソース(16)を有し、ソース(16)は、平行運動を伴うことなしに有用な容積(60)のすべてを放射するように配設されている。また、本発明の主題は、本発明による装置(10)を実装する及びソース(16)のいくつかのものの放出を連続的にシーケンシングするステップを有する方法である。
【選択図】
図1a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電離線生成器(12、72)と、前記生成器(12、72)によって放出された電離線を検出するように構成された検出器(14)と、を有する放射線装置であって、前記生成器(12、72)及び前記検出器(14)は、相互の関係において反対側に位置しており、前記装置(10)は、前記生成器(12、72)からの前記電離線が通過する及び前記検出器(14)によって受け取られる有用な容積(60、80)の境界を画定する、装置において、
前記生成器(12、72)は、方向(18、74、76、78)に沿って分散する、前記検出器(14)に向かって基本的にフラットな、及び扇形の尾の形状を有する電離線のビーム(20)をそれぞれが放出する、いくつかのソース(16)を有し、
前記ソース(16)は、平行運動を伴うことなしに前記有用な容積(60、80)のすべてを照射するように配設され、
前記生成器(12)と前記検出器(14)の間における相対運動を伴うことなしに、前記有用な容積(60)の内側に位置するX線撮影対象の物体の2次元画像(92)を生成するように構成されたコンピュータ(90)を有し、前記コンピュータ(90)は、前記検出器(14)のバンド(14-1~14-7)に沿って前記検出器(14)から情報を収集するように構成されており、それぞれのバンド(14-1~14-7)は、前記ビーム(20)の1つのものの反対側において、及び、前記検出器(14)の前記異なるバンド(14-1~14-7)からの前記情報を並置することによって前記2次元画像(92)を確立するように、配設されている
ことを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記コンピュータ(90)は、関係する前記バンド(14-i)の外側で、前記検出器(14)によって計測された放射の関数として前記バンド(14-1~14-7)のそれぞれで散乱される前記放射の推定を生成するように、及び、関係する前記バンド(14-i)内で、前記検出器(14)によって実行された前記計測から前記散乱放射の前記推定を減算するように、構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記コンピュータ(90)は、関係する前記バンド(14-i)から離れるように運動する減少する散乱放射のモデルの関数として前記バンド(14-1~14-7)のそれぞれ内において散乱される前記放射の推定値を生成するように構成されていることを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
X線撮影対象の物体を支持する能力を有する支持部(62)と、前記支持部(62)の周りで前記生成器(12、72)及び前記検出器(14)によって形成された組立体を運動させることを可能にするアクチュエータ(68)と、を有し、及び、
前記コンピュータ(90)は、前記支持部(62)の周りで前記生成器(12、72)及び前記検出器(14)によって形成された前記組立体をそれぞれの2次元画像(92)の間に運動させることによって生成されたいくつかの2次元画像(92)から、前記有用な容積(60)内に位置するX線撮影対象の物体の3次元画像(94)を生成するように構成されている
ことを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記検出器(14)は、直角の2つの軸(32、34)上に延在するフラットパネルによって形成されており、前記2つの軸の第1のもの(32)は、前記ソース(16)が分散する前記方向(18)に対して平行であり、前記2つの軸の第2のもの(34)は、前記ビーム(20)の1つが伝播するプレーンに属することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記ビーム(20)が伝播するプレーンは、相互に平行であることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
それぞれのソース(16)は、フィールド効果によって電子ビーム(30)を放出する冷陰極(24)を有することを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記ソース(16)の少なくともいくつかは、共通真空チャンバ(22)を有することを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記生成器(72)は、アライメントされたソース(16)のいくつかの連続体を有し、それぞれの連続体は、所定の方向(74、76、78)に沿ってアライメントされており、及び、それぞれは、電離線の基本的にフラットなビーム(20)を放出し、前記ビーム(20)のそれぞれの前記プレーンは、相互に平行であることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記ソースの連続体(16)のそれぞれの前記方向(74、76、78)は、相互に平行であることを特徴とする、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記ソース(16)のいくつかのものの前記放出を連続的にシーケンシングするステップを有することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の装置(10、70)を実装する、方法。
【請求項12】
前記ソース(16)は、その方向(18、74、76、78)に沿って順序付けられ、及び、均等に分散したソースをそれぞれが1つにグループ化されているサブセットに1つにグループ化されており、前記サブセットは相互にネストされ、並びに、
前記同一サブセットの前記ソースの同時放出を制御するステップと、前記異なるサブセットの前記放出を連続的にシーケンシングするステップと、を有する、
ことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ソース(16)及び前記検出器(14)を空間的及び時間的に同期化するステップを有する、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
それぞれのソース(16-i)の前記放出を前記検出器(14)の前記対応するバンド(14-i)の割当と同期化させるステップを有することを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記異なるソース(16)の前記放出と前記アクチュエータ(68)の前記運動を組み合わせるステップを有することを特徴とする請求項4に記載の装置を実装する、請求項11乃至14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記異なるソース(16)の前記放出の際に連続的に前記アクチュエータ(68)を運動させるステップを有することを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線装置及びこの装置を実装する方法に関する。本発明は、医療分野、非破壊検査を実施する産業、及び、危険な物体又は材料を検出するための安全確保において実装することができる。また、本発明は、放射線装置を実装する方法にも関する。本発明は、コンピュータ断層撮影において特定の用途を有する。また、本発明は、X線撮影対象の物体の周りにおける運動を伴うことなしに、従来の放射線の利用において実装することができる。
【背景技術】
【0002】
既知のように、スキャノグラフィとも呼称されるコンピュータ断層撮影は、ビームの反対側に配設されたバー検出器と関連する、「扇ビーム」と呼称される、扇形の尾の形態のコリメートされたビームを放出するX線管を具備したシステムを実装している。ビーム及び検出器は、患者を収容したテーブルの周りで回動する。それぞれの回動の際に、テーブルは、管の及び検出器の回転の軸に沿って前進する。コンピュータ処理により、患者の解剖学的構造の2Dカット又は3D容積の再構築を許容する。このシステムは、「CTスキャナ」と呼称されており、この場合に、「CT」は、「Computer Tomography」の頭文字である。
【0003】
更に最近では、フラット検出器と関連する「円錐ビーム」と呼称される円錐形のX線ビームを放出する管を有するその他のシステムも出現している。管及び検出器は、Cの文字の形態で、回動するアーム上に取り付けられている。これらのシステムは、「Cアーム」と呼称されており、或いは、「Cone Beam Computer Tomography」を意味する頭文字である、CBCTとも呼称されている。ビームの円錐形の形態は、CTスキャナの場合に実装されている平行運動を省くことを可能にしている。CBCTの場合にはデータの取得が格段に高速であり、その理由は、管及び検出器によって形成された組立体に、患者周囲における単一の回動のみが必要とされているからである。
【0004】
CTスキャナタイプのシステムでは、バー検出器と関連するビームのフラットな形態により、特に患者との間におけるX線のコンプトン散乱(Compton interaction)による散乱放射の影響の制限を可能にする。フラットな検出器と関連する円錐形ビームを実装するCBCTタイプのシステムでは、検出器上に配置された散乱線除去グリッドを使用することにより、散乱放射の影響を極小化することができる。但し、CBCTタイプのシステムは、特に軟組織の分析の場合には、特定の医療検査に十分な定義の取得は可能ではない。
【0005】
更には、CTスキャナ又はCBCTタイプの既知のシステムでは、X線管は、特に熱電子陰極の実装に起因して大きな寸法を有する。更には、X線管は、そのパワーに応じて、散逸した熱パワーの拡散を許容する固定陽極又は回動陽極を具備し得る。固定型の陽極管は、数キロワットのパワーを有し、及び、特に低パワーの医療、安全確保、及び産業用途に使用されている。回動型の陽極管は、100キロワットを超過する可能性があり、及び、主には、得られる画像のコントラストの改善を可能にする大きなX線束を必要とする撮像のために、医療分野で実装されている。一例として、産業用の管の直径は、450kVにおいて150mm、220kVにおいて100mm、及び、160kVにおいて80mm、のレベルである。示されている電圧は、陰極と陽極の間に印加されている電位差に対応する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、その欠点を回避しつつ、CTスキャナ及びCBCTという2つの既知の装置タイプの利点を組み合わせた放射線装置を生成することを目的とする。本発明による装置は、患者、或いは、更に一般的にはX線撮影対象の物体、の周りで一緒に回動する生成器及び検出器を有する。これは、X線撮影対象の物体の周りにおける単一の回動のみ、或いは、場合によっては1回の回動の一部分のみを必要としつつ、「扇ビーム」のビームを実装する。
【0007】
本発明の目的は、散乱放射の影響に対する低い感度を保持しつつ、CTスキャナタイプ装置のものよりも格段に軽量の機械構造を有する放射線装置を生成するというものである。本発明の特定の変形においては、場合によっては2次元画像及び3次元画像の両方で散乱放射の影響を補正することが可能であり、従って、得られる放射線画像の品質を明瞭に改善することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これを目的として、本発明の主題は、電離線生成器と、生成器によって放出された電離線を検出するように構成された検出器と、を有する放射線装置であり、生成器及び検出器は、相互の関係において反対側に位置しており、装置は、生成器からの電離線が通過する及び検出器によって受け取られる有用な容積の境界を画定しており、生成器は、所定の方向に沿って分散し、基本的にフラットであり、及び扇形の尾の形態を有する電離線のビームを検出器(14)に向かってそれぞれが放出する、いくつかのソースを有し、ソースは、平行運動を伴うことなしに有用な容積のすべてを照射するように配設されている。装置は、生成器と検出器の間の相対運動を伴うことなしに、有用な容積内に位置するX線撮影対象の物体の2次元画像を生成するように構成されたコンピュータを更に有し、コンピュータは、検出器のバンドに沿って検出器から情報を収集するように構成されており、それぞれのバンドは、ビームの1つのものの反対側において、及び、検出器の異なるバンドからの情報を並置することによって2次元画像を確立するように、配設されている。
【0009】
有利には、コンピュータは、関係するバンドの外側で、検出器によって計測された放射の関数としてバンドのそれぞれにおける散乱放射の推定を生成するように、及び関係するバンド内で、検出器によって実行された計測から散乱放射の推定を減算するように構成されている。
【0010】
有利には、コンピュータは、関係するバンド(14-i)から離れるように運動する減少する散乱放射のモデルの関数としてバンドのそれぞれにおける散乱放射の推定を生成するように構成されている。
【0011】
有利には、装置は、X線撮影対象の物体を支持する能力を有する支持部と、支持部の周りで生成器及び検出器によって形成された組立体を運動させることを可能にするアクチュエータと、を有する。この結果、それぞれの2次元画像の間に支持部の周りで生成器及び検出器によって形成された組立体を運動させることによって生成されたいくつかの2次元画像から、有用な容積内に位置するX線撮影対象の物体の3次元画像を生成するように、コンピュータを構成することができる。
【0012】
有利には、検出器は、直角の2つの軸上に延在するフラットパネルによって形成されており、この場合に、2つの軸の第1のものは、ソースが分散する方向に対して平行であり、2つの軸の第2のものは、ビームの1つが伝播するプレーンに属する。
【0013】
有利には、ビームが伝播するプレーンは、相互に平行である。
【0014】
有利には、それぞれのソースは、フィールド効果によって電子ビームを放出する冷陰極を有する。
【0015】
有利には、ソースの少なくともいくつかは、共通真空チャンバを有する。
【0016】
一変形として、生成器は、アライメントされたソースのいくつかの連続体を有することが可能であり、この場合に、それぞれの連続体は、所定の方向に沿ってアライメントされており、及び、それぞれが電離線の基本的にフラットなビームを放出し、この場合に、ビームのそれぞれのプレーンは、相互に平行である。
【0017】
ソースの連続体のそれぞれの方向は、相互に平行であってよい。
【0018】
また、本発明の主題は、ソースのいくつかの放出を連続的にシーケンシングするステップを有する本発明による装置を実装する方法である。
【0019】
ソースは、その方向に沿って順序付けられており、及び、有利には、均等に分散したソースをそれぞれが1つにグループ化されているサブセットに1つにグループ化されており、サブセットは相互にネストされており、方法は次に、同一のサブセットのソースの同時放出を制御するステップと、異なるサブセットの放出を連続的にシーケンシングするステップと、を有する。
【0020】
有利には、方法は、ソース及び検出器を空間的及び時間的に同期化するステップを有する。
【0021】
有利には、方法は、それぞれのソースの放出を検出器の対応するバンドの割当と同期化するステップを有する。
【0022】
有利には、方法は、それぞれのソースの放出を検出器の対応するバンドの割当と同期化するステップを有する。
【0023】
有利には、方法は、異なるソースの放出とアクチュエータの運動を組み合わせるステップを有する。
【0024】
有利には、方法は、異なるソースの放出の際にアクチュエータを連続的に運動させるステップを有する。
【0025】
例として付与されている実施形態の詳細な説明を参照した際に、本発明について更に十分に理解されることになり、及び、その他の利点が明らかとなろう。この場合に、説明は、以下の添付図面によって示されている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1a】本発明による放射線装置の第1変形を正面図によって示す。
【
図1b】本発明による放射線装置の第1変形を側面図によって示す。
【
図2】本発明による放射線装置内に実装され得る電離線生成器の一例を表す。
【
図3】本発明による放射線装置内に実装され得るフラットパネル形態の検出器の一例を断面において表す。
【
図4】本発明による放射線装置の第2変形を正面図によって示す。
【
図6】放射線装置のその他のコンポーネントを示す。
【
図7】散乱放射の影響の低減を可能にする装置の構成を表す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
明瞭性を目的として、同一の要素は、様々な図において同一の参照符号を有することとする。
【0028】
図1a及び
図1bは、コンピュータ断層撮影検査に使用される放射線装置10の主要コンポーネントを概略的に示す。装置10は、医療検査で特定の用途を有する。当然のことながら、任意のその他の分野、特に非破壊検査を実施する産業及び危険な物体又は材料を検出するための安全確保において、装置10を実装することができる。
【0029】
装置10は、電離線生成器12と、生成器12によって放出された電離線を検出するように構成された検出器14と、を有する。X線撮影対象の物体は、支持部62上において生成器12と検出器14の間に配置されている。また、装置10は、図示されていないが、データを装置の操作者にとって使用可能な状態にするために検出器15からのデータの処理を可能にする、演算手段を有する。この処理は、特にX線撮影対象の物体の2D又は3D再構築を生成し得る。
【0030】
生成器12及び検出器14は、相互の関係において反対側に位置する。放射線装置の単純な一実施形態では、生成器12及び検出器14は、相互の関係において固定することができる。或いは、この代わりに、生成器12及び/又は検出器14は、相互の関係において運動可能である放射線装置を提供することもできる。以下においては、これらは、相互の関係において固定されているものと見なすこととする。
【0031】
生成器12は、方向18に沿って分散したいくつかの電離線ソース16を有する。それぞれのソース16は、基本的にフラットな及び扇形の尾の形態を有する電離線のビーム20を放出する。このタイプのビームは、文献で「扇ビーム」と呼称されている。単純な一構成において、方向18は、直線的であり、及び、ビーム20が伝播するプレーンは、基本的に相互に平行であり及び方向18に対して直角である。その他の構成も本発明に関連して可能である。方向18は、湾曲することも可能であり、及び、ビーム20のプレーンは、相互に平行でなくても又は方向18に対して直角でなくてもよい。
【0032】
ソース16は、有利には、例えば、本出願人の名義で出願された国際特許出願第2019/011980A1号パンフレットにて公開された特許出願に記述されているように、コンパクトである。それぞれのソースは、真空チャンバ内に、電子ビームを放出する陰極と、電子ビームによって照射されるターゲットを有し及び電離線のビームを放出する陽極と、を有する。陰極は、有利には、ターゲットに向かってフィールド効果によって電子ビームを放出する。また、このタイプのカソードは、熱電子陰極とも呼称される熱陰極とは異なって、冷陰極と呼称されている。
【0033】
コンパクトな冷陰極ソースを実装する利益は、方向18に沿ったその焦点の収束を許容するということである。
【0034】
図2は、ソース16のいくつかが共通真空チャンバ22を有する生成器12の一例を更に詳細に表す。特に、単一の真空チャンバ22内において、すべてのソース16又はその少なくともいくつかを生成することができる。いくつかのソース16に共通した真空チャンバの利益は、ビーム20の合焦ポイントの収束を許容するというものである。方向18に沿ったソース16の分散は、2つの隣接ソース16を分離する距離が一定である
図2に表されているように、均一であることが可能である。また、不均一な分布を選択することも可能である。或いは、この代わりに、本発明に関連して、当然のことながら、それぞれのソース16ごとに1つの真空チャンバを実装することも可能である。
【0035】
図2において、冷陰極24は、軸18に沿って分散する。ソース16は、異なるソース16に共通する陽極26を有することができる。陽極26は、存在する陰極24と同数のターゲット28を有する。それぞれの陰極24は、自身と関連するターゲット28に向かって電子ビーム30を放出する。電子ビーム30とターゲット28の間の相互作用が電離線のビーム20の生成を可能にする。その個々の陰極24の制御を利用して、異なるソース16を相互に独立的に制御することができる。
【0036】
また、本発明は、熱電子陰極ソースにより、実行することもできることを明瞭に理解されたい。
【0037】
検出器14は、ソース16によって放出された異なるビーム20を受け取るように構成されている。検出器14は、いくつかの個々のバー検出器を有することができる。それぞれの個々の検出器は、ビーム20の1つのものの反対側に配設されている。或いは、この代わりに、検出器14は、湾曲することが可能である又は直角の2つの軸32及び34上に延在するフラットなパネルの形態を有する表面検出器の形態で生成されている。軸32は、方向18に対して平行であり、及び、軸34は、ビーム20のプレーンの1つに属する。フラットパネルについては、例えば、TRIXELL社によって出願された欧州特許第1378113号明細書に記述されている。この特許は、標準基材のものよりも大きな寸法のフラットパネルを生成するためのいくつかの基材の突き合わせ結合に対処する。フラットパネルの形態で生成された、及びTRIXELL社によって又はその他の会社によって生成されたその他の検出器も、本発明に関連して実装することができる。
【0038】
フラットパネルの使用は、検出器14からのデータのキャプチャを単純化する。実際に、フラットパネルは、読取り回路及びマルチプレクサを装備することが可能であり、その出力は、シリアルリンク上で、検出器14からのデータのすべてを供給する。
【0039】
図3は、フラットパネルの形態における検出器14の一例を断面において表す。検出器14は、電離線の検出を許容しており、その方向が、ビーム20の異なるプレーンに属する矢印36によって示されている。検出器14は、センサ38と、例えば、可視バンド内の、センサ38が感度を有する放射に電離線を変換するシンチレータ40と、シンチレータ40の上流の電離線が通過する剛性入力ウィンドウ42と、を有する。電離線に対して直接的な感度を有するセンサを実装することにより、シンチレータを省略することが可能である。シンチレータ40は、センサ38と入力ウィンドウ42の間に配設されている。センサ38は、基材44と、基材44上に配設された光感知要素46と、を有する。シンチレータ40は、支持部48と、支持部48上に配設されたシンチレーティング基材50と、を有する。或いは、この代わりに、支持部48を省略することも可能であり、及び、センサ38上に直接的にシンチレーティング基材50を堆積することも可能である。密封封止結合部52が入力ウィンドウ42を基材44に固定する。封止結合部52は、シンチレータ40をセンサ38に固定するために使用することができる。光感知要素46は、行及び列として編成されている。行は、軸32に沿って延在しており、及び、列は、軸34に沿って延在しており、逆もまた真である。
【0040】
図1bにおいては、電離線の異なるビーム20は、互いから所定の距離において相互に平行な状態で表されており、それぞれは、方向18に直角であるプレーン内に存在する。実際に、X線撮影対象の物体が電離線によって完全に横断されるように、ビーム20は、連続的であり、場合によっては、わずかにオーバーラップする。更に具体的には、装置10は、
図1aにおいて識別されている有用な容積60の境界を画定しており、この内部では、物体をX線撮影することが可能であり、即ち、検出器14によって受け取られる電離線が物体を通過することができる。ビーム20は、連続的なものとなるように、場合によっては、有用な容積60内でオーバーラップするように、
図1bにおいて垂直方向に表されているその正中面の周りに広がることができる。その方向18に沿って、ソース16は、X線生成器及びその有用な容積をスキャニングための関連する検出器によって形成された組立体との関係においてX線撮影対象の物体の平行運動を必要とするCTスキャナタイプの放射線装置とは対照的に、平行運動を伴うことなしに有用な容積60のすべてを照射するように配設されている。
【0041】
装置10は、X線撮影対象の物体を支持する能力を有する支持部62を有する。医療分野においては、支持部62は例えば、患者が横たわり得るテーブルである。コンピュータ断層撮影検査を実行するために、生成器12及び検出器14によって形成された組立体は、支持部62の周りで回転する。生成器12及び検出器14は、例えば、生成器12及び検出器14の回転の軸66上にセンタリングされた円形アークの形態を有するアーム64によってリンクすることができる。回転の軸66は、ビーム20の異なるプレーンに対して直角である。回転を実行するために、装置は、回転運動68によって表されたアクチュエータを有する。回転の際に、ビーム20は、軸66を中心として回動する。その結果、その内部においてすべての回転フェーズについてビーム20が照射を生成し及び検出器14に到達する、有用な容積60は、軸66の周りで円筒形の形態を有する。一例として、ここでは直線的である方向18に沿って規則的に分散された10個程度のソース16を有する生成器12を利用して、軸66に沿って10cmの有用な容積60を得ることが可能である。1センチメートルごとに分散した10個のソース16を有する生成器12は、共通真空チャンバ22を伴って
図2に表されているように生成することができる。実際に、本発明は、有利には、有利な最小サイズの有用な容積を得るために、少なくとも10個のソース16を有する生成器12に実装されている。
【0042】
共通真空チャンバ22の生成を理由として、共通真空チャンバ22は、例えば、10個のソース16などのソース16の最大数を超過し得ないものであってもよい。10個超のソースを有する装置の生成が望ましい場合には、いくつかの真空チャンバを有する生成器12を生成することが可能であり、そのソース16は、方向18において相互にアライメントされた状態で配設されている。また、相互に平行な状態で維持しつつ、異なる真空チャンバの方向18をわずかにオフセットすることも可能である。
【0043】
アクチュエータは、軸66を中心としてアーム64を駆動する回転モーターであってよい。或いは、この代わりに、アクチュエータは、平行運動及び回転運動の組合せから生成された相対的に複雑な運動を生成することもできる。この運動は、有用な容積の形態又は位置を変更することを可能にし得る。コンピュータ断層撮影において良好な再構築を保証するには、Tuy状態を観察するために、電離放射によってX線撮影対象の物体がすべての方向において横断されることが重要である。アクチュエータの複雑な運動は、
図1a及び
図1bにおいて表されているように、円形断面を有していない容積内で、この状態を観察することを可能にし得る。この結果、X線撮影対象の物体の形態に相対的に良好に適合することが可能になる。運動は、有利には、
図1bのプレーン内、即ち、ビーム20のプレーンに対して直角であるプレーン内において、閉じ込められている。コンピュータ断層撮影検査を実行するために、本発明による装置によれば、アクチュエータによって生成された運動は、CTスキャナタイプの装置におけると同様にビーム20のプレーンに対して直角の平行運動を含むことは不要である。但し、ビーム20のプレーンに対して直角の平行運動は、軸66に沿った有用な容積60の長さを増大させるために有用であり得る。
【0044】
図4は、有用な容積の拡大を許容する本発明による放射線装置70の第2の変形を示す。この場合にも、検出器14、支持部62、アーム64、及びアクチュエータ68が存在する。装置70は、ソース16のいくつかの連続体の存在によって生成器12とは異なっている生成器72を有する。実際に、生成器12は、方向18に沿ってアライメントされたソース16の単一の連続体のみを有する。生成器72の異なる連続体が、それぞれ、所定の方向に沿ってアライメントされている。表されている例において、生成器72は、それぞれ、方向74、76、及び78にアライメントされたソースの3つの連続体を有する。当然のことながら、その他の数の連続体についてこの変形を実装することが可能である。上述のように、生成器72の異なるソース16は、それぞれ、電離線の基本的にフラットなビーム20を放出しており、この場合に、ビーム20のそれぞれのプレーンは、例えば、相互に平行である。
図4は、軸66に対して直角のプレーン内の断面に表されている。有用なゾーン80の断面は、ここでは、円板である。方向74、76、及び78は、互いに平行であることが可能であり、及び、回転の軸66に対して平行であることが可能である。このケースでは、有用な容積80は、軸66を中心として円筒状に延在する。また、例えば、相互に平行であるが軸66に対して平行ではない、或いは、場合によっては、相互に平行ではない、などのような、方向74、76、及び78のその他の配設も可能である。これらの代替肢は、必要に応じて有用なゾーン80の形態の適合を可能にする。
【0045】
上述の2つの変形装置10及び70において、すべてのソース16の同時放出は、それぞれのソース16からの光子を検出器14の出力において弁別する際に困難をもたらし得る。この弁別は、特に散乱放射の影響を制限するために有用である。これらの影響は、検出器14上に散乱線除去グリッドを配置することにより、制限することができる。散乱線除去グリッドの存在と組み合わせられ得る一代替肢は、ソース16のいくつかのものの放出を連続的にシーケンシングするステップを有する。このシーケンシングの目的は、個々の散乱放射が1つに加算され得るいくつかのソース16の同時放出を回避するというものである。換言すれば、一度にソース16の1つによってのみ放出することが可能であり、或いは、さもなければ、散乱放射によって生成されるハローの減衰の勾配に従って相互に十分遠くに離隔したソース16の同時放出を許容することが可能である。有用な容積60又は80のすべてを照射することが望ましい際には、すべてのソース16は、少なくとも一度だけ、放出しなければならない。また、例えば、X線撮影対象の物体が装置の最大有用容積よりも小さい際には、軸66に沿った有用な容積の長さを低減することもできる。この有用な容積の低減は、X線撮影対象の物体の反対側に位置する部分であるソース16の一部分を選択することにより、実行される。
【0046】
図5a~
図5cは、この同時放出のシーケンシングを示しており、この場合に、方向18に沿った2つのソース16の間の分離は、それぞれの放出の瞬間に保持されている。ソース16は、いくつかのサブセットで1つにグループ化されており、この場合に、サブセットのそれぞれが、均等に分散したソースを1つにグループ化する。サブセットは、相互に内部においてネストされており、及び、方法は、同一のサブセットのソース16の同時放出を制御するステップと、異なるサブセットの放出を連続的にシーケンシングするステップと、を有する。
【0047】
更に詳しくは、生成器12は、方向18において順序付けられたN個のソース16を有する。ソース16のランクは、iとして表記されており、従って、この場合に、iは、1~Nにおいて変化する。2つの連続的なソース16i及びi+1を分離する方向18に沿った距離は、N個のソース16について一定である。ソースは、最大でP個のサブセットに分割されており、この場合に、これらのサブセットのそれぞれは、ランクj.(N/P+1)+iのソースを有し、jは、1つのサブセットについて0~N/P-1において変化し、及び、iは、それぞれのサブセットにごとに1~Pにおいて変化しており、ここで、i及びjは、自然整数である。サブセットは、順番に放出される。NがPによって割り切れることは、必須ではない。NがPによって割り切れない場合には、ランクを付与する式において、N/Pの整数部分が取得され、及び、次いで、ソース16の間に同一のピッチを保持することにより、整数部分(N/P).Pを上回るランクのソースがサブセットとして分割されている。
【0048】
図5a~
図5cにおいて、ソース16のランクが規定されている。
図5aでは、サイクルの第1の瞬間に、ランク1、6、11、及び16のソースが放出する。
図5bに表されている次の瞬間には、ランク2、7、12、及び17のソースが放出する。
図5cに表されているサイクルの最後の瞬間には、ランク5、10、15、及び20のソースが放出する。この例では、異なるサブセットの放出サイクルは、それぞれのサブセットの第1のソースのランクの順番で放出をシーケンシングする。また、例えば、まずは、第1ソースが奇数ランクを有するサブセットがまず放出するようにし、これに、第1ソースが偶数ランクを有するサブセットが後続する、などのように、サブセットがその他の順序において放出ようにすることも可能である。この結果、検出器14によって実行される読取りにおける残留磁気の制限が可能になる。
【0049】
また、その放出が個別であるのか、一度に1つのソースであるのか、或いは、集合的であるのか、即ちサブセット当たりであるかを問わず、異なるソースによって実行される連続的放出を装置70によって実装することが可能であり、また、この場合には、相互に過剰に近接したソースが同時に放出するようにしないことが有利である。サブセットによる放出のケースでは、そのそれぞれが、同一の方向又は異なる方向に属するソースを有し得る。
【0050】
連続的放出を補完することにより、検出器をそれらに同期化させることが有利である。更に詳しくは、上述のように、検出器14は、行及び列の行列で編成された光感知要素を有する。行及び列という表記は、純粋に慣習的なものであり、従って、以下においては行という用語が使用されるが、行又は列のいずれに適用されてもよい。検出器は、行列読取りフェーズによって後続される取得フェーズをシーケンシングする。読取りは、行ごとに実行することができる。読取り行の向きがビーム20のプレーンの向きと一致するような方式で検出器14を方向付けすることにより、ビーム20のプレーンに最も近接した1つ又は複数の行、並びに、更に詳しくは、同時に放出する1つ又は複数のビーム20によって照明された行、の読取りのみを実行することができる。従って、行列を読み取る際には、基本的に散乱放射を形成するX線撮影対象の物体によって偏向された電離線を無視することができる。更に一般的には、ソース16及び検出器14は、空間的及び時間的に同期化されている。
【0051】
コンピュータ断層撮影においては、X線撮影対象の物体の2D又は3D再構築を生成するために、生成器12又は72及び検出器14を回転させる必要がある。平行ビームを放出するいくつかのソース16の存在は、再構築に必要とされる異なるカットを得るために、単一の回動のみ又は1回の回動の一部分のみの実行を可能にする。これを目的として、異なるソース16の放出とアクチュエータ68の回転が組み合わせられている。異なる組合せモードが可能である。例えば、増分方式で回動するアクチュエータ68を有することが可能であり、及び、すべてのソース16がそれぞれの回転増分の間に連続的に放出するようにすることが可能である。また、相対的に小さな増分を実行することが可能であり、及び、それぞれの増分の間に1つのソース16又はソース16のサブセットの放出を実行することも可能である。また、連続的に回動するアクチュエータ68を有することが可能であり、及び、その回転の際に、必要な数の放出サイクルを実行することも可能である。実際に、連続的な回転の際には、放出の際に、アクチュエータ68が仮想的に静止状態にあるものと見なすことができる。検出器14及び生成器12又は72を支持するアーム64の連続的な運動は、運動可能な要素の機械的慣性の影響の制限を可能にする。実際に、アクチュエータの増分運動のケースにおいて、アクチュエータのそれぞれの停止及びそれぞれの開始は、アーム64の位置決めの精度を劣化させるジャーク(jerk)を生成する。アクチュエータ68の連続的運動は、これらのジャークの制限を可能にする。好ましくは、アクチュエータ68の連続的な運動は、均一に、即ち、一定の速度で実行されており、この結果、すべてのジャークが完全に除去されている。同時に、アクチュエータ68の連続的な運動を保持しつつ、ソース16のそれぞれの放出の際にその運動を減速させることが可能であり、及び、2回の放出の間にこれを加速することが可能である。
【0052】
又、アクチュエータを有していない本発明による装置を実装することも可能である。換言すれば、生成器12又は72及び検出器14は、支持部62との関係において固定された状態に留まっている。この装置は、例えば、肺のX線撮影を実行する医療の分野などでは、コンプトン散乱によって強力な散乱を生成し得る物体をX線撮影するために有用である。このタイプの放射線撮影は、一般に、円錐X線ビームを放出する生成器を利用して実行されている。生成器は、フラット検出器と関連付けられており、この場合には、散乱放射を散乱線除去グリッドのみによる有用な情報から弁別することが可能であり、この散乱線除去グリッドは、その有効性が中程度であり、及び、電離線の相対的に大きな線量を患者に対して課すグリッドである。本発明を実装することにより、異なるソースによって連続的に放出することが可能である。検出器14及び生成器12又は72を時間的及び空間的に同期化することにより、散乱放射の検出を回避することができる。実際に、装置のすべてのソースによる完全な放出サイクルは、瞬間的であると見なすのに十分なほどに高速であることが可能であり、及び、従って、X線撮影対象の物体の実質的に瞬間的な画像を取得することができる。
【0053】
図6は、この場合にも、画像の生成を許容する手段を示すために放射線装置10を表す。装置は、有用な容積60内に位置するX線撮影対象の物体の2次元画像92を生成するよう構成されたコンピュータ90を有する。ここでは、16-1~16-7として識別されているそれぞれのソースは、検出器14に向かってビーム20を放出する。上述のように、異なるソース16-1~16-7の放出は、有利には、順番に実行されている。それぞれのビーム20は、それぞれのビーム20の反対側に配設された検出器14のピクセルのバンドを形成する検出器14の領域により、受け取られている。バンドは、反対側のソース16-1~16-7を参照して14-1~14-7として識別されている。
【0054】
コンピュータ90は、それぞれのバンド14-1~14-7から情報を収集するように構成されている。2次元画像92を確立するべく、コンピュータ90は、検出器14の異なるバンド14-1~14-7からの情報を並置するように構成されている。2次元画像90を生成するために、アクチュエータ68は、無効な状態に留まっている。生成器12及び検出器14によって形成された組立体は、支持部62との関係において不動状態にある。画像の撮像は、2次元で従来の放射線装置によって実行されているものか、又は回転を伴うことなしにCBCTタイプの装置によって実行されているものに類似する。本発明による装置10の実装における主要な利点は、散乱放射の影響を低減するというものである。実際に、それぞれのバンド14-1~14-7は、対応するソース16-1~16-7からのビーム20のプレーン内に含まれている放射のみを検出しており、及び、このプレーンの外側の散乱放射を無視する。更に詳しくは、バンド14-1は、対応するソース16-iから直接的な放射を受け取るように定義されている。バンド14-iは、対応するソース16-iからの直接的な放射によって完全に照明されている。直接的な放射は、散乱放射を伴わない放射であるものと理解されたい。装置の設計により、バンドのそれぞれは、対応するソースからのビーム20とアライメントされている。この結果、それぞれのバンドのピクセルは、基本的に、対応するソースからの直接的な放射を受け取っている。その同一のソースからの及びビームのプレーン内に伝播した散乱放射の非常に小さな部分のみが、そのバンドのピクセルに到達することになる。散乱放射の大部分は、ビームのプレーンの外側で伝播しており、及び、従って、関係するバンドのピクセルに到達してはいない。以下に理解されるように、この散乱放射の大きな部分は、関係するバンドの外側に位置する検出器のその他のピクセルによって検出することができる。バンドは、有利には、考慮されている及びビームのプレーンから離れるように伝播するビームからの散乱放射の検出を最大値に制限するように、検出器におけるビームの幅未満の幅を有する。以上において理解されるように、ビームは、わずかにオーバーラップし得る。この状況においては、例えば、
図5a~
図5cを使用して示されているように、直接隣接するソースの放出を時間的に交互に変化させることが有利である。また、依然としてこの状況においても、検出器のバンドは、オーバーラップし得る。対応するソースの放出との間におけるバンドの読取りの同期化は、それぞれ、順番に、すべてのバンドを読み取ることを可能にする。オーバーラップしたバンドの実装は、それぞれのバンドの幅の拡幅と、従って、相対的に大きな信号振幅の受取りと、を可能にする。バンドは、それぞれのソースからの光子のストリームの読取りに対して時間的に割り当てられた検出器のゾーンを形成する。時間的な割当は、ソースの放出と同期化されている。異なるソースによる放出を制御する際には、関連するソースに由来するもの以外の直接的な放射を受け取ることができるバンドは、回避することを要する。
【0055】
画像の品質を更に改善することが可能である。実際に、検出器14のそれぞれのバンドは、ビーム20のプレーン内において交互に変化する放射を受け取っており、及び、散乱放射に起因した部分を低減するために、バンド14-1~14-7のそれぞれにおいて検出器14によって実施された計測を補正することが有利である。バンド14-1~14-7のそれぞれにおいて、考慮されているバンドの外側で実行された計測から、この部分を推定することが可能である。実際に、考慮されているバンドの反対側のビーム20の放出の際には、このバンドのみが、X線撮影対象の物体を通過したビーム20からの有用な信号を受け取っている。このバンドの外側では、及び、同時に起動されたビーム20とは反対側のその他のビームの外側では、X線撮影対象の物体を通過した際に散乱した放射のみが検出器に到達する。考慮されているバンドの外側で検出器によって実行された計測を利用して、バンドそれ自体に存在する散乱放射を推定することが可能である。次いで、計測された放射からの散乱放射の推定の減算により、バンド内で実行された計測の補正が可能である。
【0056】
図7は、ビーム20によって照明され及び14-iと参照されているバンド内に存在する散乱放射を推定するいくつかの方式を示す。第1の方式では、散乱放射は、バンド14-iの最も大きな長さに対して直角の軸100上で一定であるものと見なすことが可能である。バンド14-iの外側に位置する検出器14のピクセル又はピクセルのグループ100-1が選択されている。バンド14-iの内側における散乱放射のレベルは、X線撮影対象の物体の照射の際にピクセル100-1を利用して計測された散乱放射のレベルに等しいものと見なされている。すべてのピクセルが軸100に沿ってバンド14-i内に位置する場合には、ピクセル100-1によって計測された値が、実施された計測から減算されている。
【0057】
また、バンド14-iの外側に両方が位置する、2つのピクセル又はピクセルの2つのグループ100-1及び100-2を選択することも可能である。ピクセル100-1及び100-2は、バンド14-iの両側部に及びこれから等距離に配設されている。ビーム20の放出の際には、ピクセル100-1及び100-2は、その他のビーム20によって照明されてはいないことを明瞭に理解されたい。この結果、バンド14-1の内側で散乱される放射の推定値は、ピクセル100-1及び100-2のそれぞれにおける計測の平均に等しい。これらの計測は、バンド14-iの最大の長さに対して直角である、すべての軸について実行されている。すべての計測ピクセルは、バンド14-iの最大の長さに対して平行な軸102-1及び102-2上に配設されている。散乱放射の空間的な変動は、一般に低速であることから、その個々の軸102-1及び102-2に沿って、一側部においては100-1タイプの、及び、他側部においては100-2タイプの、ポイントのすべてについて実行された計測をスムージングすることが可能である。
【0058】
バンド14-i内に存在する散乱放射のレベルの推定は、バンド14-iから離れるように運動する減少する散乱放射のモデルを利用して改善することできる。減少は、軸100に沿ったバンド14-iまでの距離の関数である。この減少のモデルは、X線撮影が望ましい実際の物体に近接した特性を有する試料物体において実施された計測により、経験的に定義することができる。モデルを確立するために必要とされる計測が実行されたら、例えば、多項又は三角関数を使用してこれらを近似することが可能である。保持されたモデルから、バンドの外側で実施された計測をモデルに入力することにより、バンド14-iの内側で散乱される放射のレベルを推定することが可能であり、この場合に、計測は、X線撮影対象の物体の照射の際に実行される。X線撮影が実施されている際には、ピクセル100-1及び100-2によって実施される計測は、軸100に沿ったバンド14-iの内側で散乱される放射のレベルを推定するために、保持されているモデルに導入されている。上述のように、考慮されているバンドのピクセルのすべてについて補正を実施するために、バンド14-iの外側における計測が、軸102-1及び102-2上において実行されている。このようなモデルの使用は、考慮されているバンドのピクセルのそれぞれの補正を個別化することにより、散乱放射の補正の改善を可能にする。
【0059】
散乱放射の影響の制限を可能にする計測の補正は、単一ソース16のみを有する放射線システムに実装することができる。換言すれば、このタイプの補正をCTスキャナ内に実装することが有利である。
【0060】
これに加えて、コンピュータ90は、有用な容積60の内側に位置するX線撮影対象の物体の3次元画像94を生成するように構成することもできる。3次元画像を生成するために、ビーム20のそれぞれによって形成されたプレーン内で物体のカットを構築することが可能である。これらのカットは、支持部62を中心として生成器12及び検出器14を回転させることにより、検出器から受け取られた情報から構築されている。3次元画像は、異なるカットから取得されている。このタイプの再構築を実行するために、CTスキャナタイプの装置に通常実装されているアルゴリズムを実装することが可能である。この結果、本発明による装置10の実装における主要な利点は、回転を要する重量の低減である。
【0061】
或いは、この代わりに、上述のようにいくつかの2次元画像から3次元画像94を構築することも可能である。それぞれの2次元画像の間に、生成器12及び検出器14は、アクチュエータ68を利用して支持部62を中心として回転するようになっている。3次元画像の構築は、CBCTタイプの装置に通常実装されているアルゴリズムを実装することにより、実行することができる。本発明による装置10の実装における主要な利点は、ここでは、それぞれの2次元画像内の散乱放射の影響の低減であり、この結果、3次元画像94の品質が改善されている。
【国際調査報告】