(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-19
(54)【発明の名称】音響泳動により誘導される移動を通じて粒子を処理、洗浄、トランスフェクションするための装置
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20221212BHJP
C12M 1/42 20060101ALI20221212BHJP
G01N 15/00 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12M1/42
G01N15/00 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022522917
(86)(22)【出願日】2020-10-16
(85)【翻訳文提出日】2022-06-10
(86)【国際出願番号】 EP2020079222
(87)【国際公開番号】W WO2021074385
(87)【国際公開日】2021-04-22
(32)【優先日】2019-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2019-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】517387546
【氏名又は名称】アエニティス テクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ガチェリン,ジェレミー
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンセント,エマニュエル
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029BB11
4B029CC01
4B029DG06
(57)【要約】
本発明は、粒子懸濁液から標的粒子を分離及び/又は単離及び/又は洗浄するための装置であって、
少なくとも2つの入口(113、114)と、
少なくとも2つの出口(115、116)と、
長手方向軸(A1)を有し、流体が流れるチャンバ(111)を備え、前記チャンバ(111)はトランスデューサ(112)と関連付けられるように構成された、容器と、
チャンバ(111)内にバルク音波を生み出すように構成された、少なくとも1つのトランスデューサ(112)と、
チャンバ(111)内の流体の流量を測定するように構成された少なくとも1つの流量センサと、
を備え、
少なくとも2つの入口(113、114)は容器の一方の端に配置され、少なくとも2つの出口(115、116)は容器の長手方向軸(A1)に沿って他方の端に配置され、
少なくとも1つの第1の入口及び第2の入口はそれぞれ、容器の長手方向軸(A1)のいずれかの側に配置され、
少なくとも1つの第1の入口及び第2の出口はそれぞれ、容器の長手方向軸(A1)のいずれかの側に配置され、
第2の入口及び少なくとも1つの第1の出口はそれぞれ、容器の長手方向軸(A1)のいずれかの側に配置される、
装置に関する。
【選択図】
図2b
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子懸濁液から標的粒子を分離及び/又は単離及び/又は洗浄するための装置であって、
少なくとも1つの第1の入口は粒子懸濁液を受け入れるように構成され、第2の入口は緩衝液を受け入れるように構成された、少なくとも2つの入口(113、114)と、
少なくとも1つの第1の出口は標的粒子が枯渇した懸濁液を排出するように構成され、第2の出口は分離及び/又は単離及び/又は洗浄された標的粒子を排出するように構成された、少なくとも2つの出口(115、116)と、
長手方向軸(A1)を有し、流体が流れるチャンバ(111)を備え、前記チャンバ(111)はトランスデューサ(112)と関連付けられるように構成された、容器と、
前記少なくとも1つの第1の入口と前記少なくとも1つの第1の出口との間に配置され、前記チャンバ(111)内にバルク音波を生み出すように構成された、少なくとも1つのトランスデューサ(112)と、
前記チャンバ(111)内の流体の流量を測定するように構成された少なくとも1つの流量センサ(1271)と、
を備え、
前記少なくとも2つの入口(113、114)は前記容器の一方の端に配置され、前記少なくとも2つの出口(115、116)は前記容器の長手方向軸(A1)に沿って他方の端に配置され、
前記少なくとも1つの第1の入口及び前記第2の入口はそれぞれ、前記容器の長手方向軸(A1)のいずれかの側に配置され、
前記少なくとも1つの第1の入口及び前記第2の出口はそれぞれ、前記容器の長手方向軸(A1)のいずれかの側に配置され、
前記第2の入口及び前記少なくとも1つの第1の出口はそれぞれ、前記容器の長手方向軸(A1)のいずれかの側に配置される、
装置。
【請求項2】
前記バルク音波は、前記容器の長手方向軸(A1)に垂直な方向に放出される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記チャンバ(111)は、前記チャンバ(111)内を流れる流体の音響インピーダンスよりも優れた音響インピーダンスを有する材料で作製された内壁を備える、請求項1又は請求項2のいずれか一項に記載の装置。
【請求項4】
前記チャンバ(111)の壁と前記トランスデューサ(112)との一時的な結合を保証するための結合要素をさらに備える、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
少なくとも1つの圧力センサ(1272)をさらに備える、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
標的粒子の濃度を測定するように構成された少なくとも1つの濃度センサ(1273)をさらに備え、前記濃度センサ(1273)は、前記少なくとも1つの第1の入口及び/又は少なくとも1つの第1の出口及び/又は第2の入口及び/又は第2の出口に接続されている、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記装置は、第2の粒子懸濁液を受け入れるように構成された第3の入口(117)と、標的粒子が枯渇した懸濁液を排出するように構成された第3の出口(118)とを備え、前記第3の入口(117)及び第3の出口(118)は、長手方向軸(A1)に関して第1の入口及び第1の出口と対称である、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの第1の入口は、前記容器の長手方向軸(A1a)に垂直な長手方向軸(A2b)を有する、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つの第1の出口は、前記容器の長手方向軸(A1a)に垂直な長手方向軸(A2c)を有する、請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記圧力センサ(1272)、前記濃度センサ(1273)、及び/又は前記流量センサ(1271)からデータを回収するように構成された電子制御ユニットをさらに備える、請求項1~請求項9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記電子制御ユニットは、前記圧力センサ(1272)、前記濃度センサ(1273)、及び/又は前記流量センサ(1271)から回収されたデータに基づいて前記チャンバ(111)内の流体の流量を監視するように構成される、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
請求項1~請求項11のいずれか一項に記載の装置によって粒子懸濁液から標的粒子を分離及び/又は単離及び/又は洗浄するための方法であって、
前記少なくとも1つの第1の入口を介して前記チャンバ(111)内に粒子懸濁液を導入するステップと、
同時に、前記第2の入口を介して前記チャンバ(111)内に緩衝液を導入するステップと、
懸濁液から標的粒子を分離及び/又は単離及び/又は洗浄するために前記チャンバ内にバルク音波を生み出すべく前記少なくとも1つのトランスデューサ(112)を作動させるステップと、
前記少なくとも1つの第1の出口で前記チャンバ(111)から標的粒子が枯渇した懸濁液を排出するステップと、
前記第2の出口で前記バルク音波によって懸濁液から偏向された標的粒子を収集するステップと、
少なくとも1つのセンサ(1271、1272、1273)により、前記少なくとも1つの第1の入口及び/又は少なくとも1つの第1の出口で及び/又は第2の入口及び/又は第2の出口で少なくとも1つのパラメータを測定するステップと、
を含む方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つのパラメータは、標的粒子の圧力及び/又は濃度及び/又は流量であり、前記バルク音波の振幅及び周波数が前記パラメータの関数として変更される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの第1の出口から排出された懸濁液は、前記少なくとも1つの第1の入口で提供された懸濁液よりも少なくとも75%少ない標的粒子を含む、請求項12又は請求項13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
標的粒子を緩衝液又は他の流体に偏向させることによって、粒子懸濁液からの標的粒子と緩衝液又は別の流体に含まれる第2のタイプの粒子とを接触させるための請求項1~請求項11のいずれか一項に記載の装置の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャネル、特にマイクロチャネル内の音響力場によって懸濁液から粒子を分離及び/又は単離及び/又は洗浄するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
音響泳動は、音響力によって粒子を処理及び分取するために用いることができる。従来技術で公知の音響泳動法の従来技術では、音波の共振状態を生み出すことによって、チャネルの寸法(長さ、幅、又は厚さ)に沿った所与の位置に少なくとも1つの音圧ノードが生成される。
【0003】
WO2016/201385A2は、血球を含有する血液中の病原体を検査、検出、単離、監視、特性解析、又は分離するための装置及び方法を説明している。この装置は、溶媒入口、少なくとも1つのホスト流体入口、微粒子出口、少なくとも1つの残留物出口、及びリフレクタを有するフローチャンバを含む。この方法は、病原体を音響定在波で捕捉し、溶媒をフローチャンバ内に導入し、装置から病原体を取り出すことを含む。血球を含有する血液中の特殊な循環細胞を検査、検出、単離、監視、特性解析、又は分離するための装置及び方法も開示されている。この装置は、少なくとも1つの入口及び少なくとも1つの出口を有するフローチャンバと、顕微鏡対物レンズと、カバーガラスを含む。この方法は、トランスデューサを駆動して、フローチャンバ内に音響定在波を生み出し、血液中にマイクロバブルを発生させることを含む。
【0004】
しかしながら、制御されなければ、チャンバを通る流量は細胞分離の品質に影響し、悪い結果につながる場合がある。例えば、あるカテゴリの標的細胞の濃度が測定される場合、そのような流量の制御がないことは有害な場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、より具体的には、従来技術の欠点なしに、使用及び実装が容易でありながら、懸濁液から標的粒子を分離及び/又は単離することを可能にし、流体の流れを最適化するためにチャンバ内を流れる流体の粒子の流量及び/又は濃度を決定する方法及び装置を提示することによって、従来技術の不利な点を改善することを意図している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、粒子懸濁液から標的粒子を分離及び/又は単離及び/又は洗浄するための装置であって、
少なくとも1つの第1の入口は、粒子懸濁液を受け入れるように構成され、第2の入口は、緩衝液を受け入れるように構成された、少なくとも2つの入口と、
少なくとも1つの第1の出口は、標的粒子が枯渇した懸濁液を排出するように構成され、第2の出口は、分離及び/又は単離及び/又は洗浄された標的粒子を排出するように構成された、少なくとも2つの出口と、
長手方向軸を有し、流体が流れるチャンバを備え、前記チャンバはトランスデューサと関連付けられるように構成された、容器と、
少なくとも1つの第1の入口と少なくとも1つの第1の出口との間に配置され、チャンバ内にバルク音波を生み出すように構成された、少なくとも1つのトランスデューサと、
チャンバ内の流体の流量を測定するように構成された少なくとも1つの流量センサと、
を備え、
少なくとも2つの入口は容器の一方の端に配置され、少なくとも2つの出口は容器の長手方向軸に沿って他方の端に配置され、
少なくとも1つの第1の入口及び第2の入口はそれぞれ、容器の長手方向軸のいずれかの側に配置され、
少なくとも1つの第1の入口及び第2の出口はそれぞれ、容器の長手方向軸のいずれかの側に配置され、
第2の入口及び少なくとも1つの第1の出口はそれぞれ、容器の長手方向軸のいずれかの側に配置される、
装置に関する。
【0007】
一実施形態では、少なくとも1つのトランスデューサは、定常バルク音波を放出するように構成される。一実施形態では、バルク音波は、容器の長手方向軸に垂直な方向に放出される。一実施形態では、チャンバは、前記チャンバ内を流れる流体の音響インピーダンスよりも優れた音響インピーダンスを有する材料で作製された内壁を備える。一実施形態では、装置は、チャンバの壁とトランスデューサとの一時的な結合を保証するための結合要素をさらに備える。一実施形態では、装置は、少なくとも1つの圧力センサをさらに備える。一実施形態では、装置は、標的粒子の濃度を測定するように構成された少なくとも1つの濃度センサをさらに備え、前記濃度センサは、少なくとも1つの第1の入口及び/又は少なくとも1つの第1の出口及び/又は第2の入口及び/又は第2の出口に接続されている。一実施形態では、装置は、第2の粒子懸濁液を受け入れるように構成された第3の入口と、標的粒子が枯渇した懸濁液を排出するように構成された第3の出口を備え、前記第3の入口及び第3の出口は、長手方向軸に関して第1の入口及び第1の出口と対称である。一実施形態では、少なくとも1つの第1の入口は、容器の長手方向軸に垂直な長手方向軸を有する。一実施形態では、少なくとも1つの第1の出口は、容器の長手方向軸に垂直な長手方向軸を有する。一実施形態では、装置は、圧力センサ、濃度センサ、及び/又は流量センサからデータを回収するように構成された電子制御ユニットをさらに備える。一実施形態では、電子制御ユニットは、圧力センサ、濃度センサ、及び/又は流量センサから回収されたデータに基づいてチャンバ内の流体の流量を監視するように構成される。
【0008】
本発明はまた、本発明に係る装置によって粒子懸濁液から標的粒子を分離及び/又は単離及び/又は洗浄するための方法であって、
少なくとも1つの第1の入口を介してチャンバ内に粒子懸濁液を導入するステップと、
同時に、第2の入口を介してチャンバ内に緩衝液を導入するステップと、
懸濁液から標的粒子を分離及び/又は単離及び/又は洗浄するためにチャンバ内にバルク音波を生み出すべく少なくとも1つのトランスデューサを作動させるステップと、
少なくとも1つの第1の出口でチャンバから標的粒子が枯渇した懸濁液を排出するステップと、
第2の出口でバルク音波によって懸濁液から偏向された標的粒子を収集するステップと、
少なくとも1つのパラメータを測定するように構成された少なくとも1つのセンサにより、少なくとも1つの第1の入口及び/又は少なくとも1つの第1の出口で及び/又は第2の入口及び/又は第2の出口で少なくとも1つのパラメータを測定するステップと、
を含む方法に関する。
【0009】
一実施形態では、少なくとも1つのパラメータは、標的粒子の圧力及び/又は濃度及び/又は流量であり、バルク音波の振幅及び周波数が前記パラメータの関数として変更される。一実施形態では、少なくとも1つの第1の出口から排出された懸濁液は、少なくとも1つの第1の入口で提供された懸濁液よりも少なくとも75%少ない標的粒子を含む。
【0010】
本発明はまた、標的粒子を緩衝液又は他の流体に偏向させることによって、粒子懸濁液からの標的粒子と緩衝液又は別の流体に含まれる第2のタイプの粒子とを接触させるための本発明に係る装置の使用に関する。
【0011】
定義
本発明において、以下の用語は、以下の意味を有する:
【0012】
「アクティブゾーン」:トランスデューサに面する装置の一部。
【0013】
「緩衝液」は、装置が作動したときに偏向された標的粒子を抽出する流体を指す。緩衝液は、例えば、偏向された標的粒子と反応又はトランスフェクションするように設計された、ウィルス、細菌、DNA、RNA、プラスミド、タンパク質などの粒子とみなされる化合物及び/又は生物学的ベクターの添加を通じて機能化され得る。緩衝液は、CPD、SSP+、RPMI培地、LB、HypoThermoSol(登録商標)UW溶液、HEPES、PBS、CMRL培地、又はDMEMであり得る。
【0014】
「CMRL」:Connaught Medical Research Laboratories。
【0015】
「CPD」:Citrate-Phosphate-Dextrose(クエン酸-リン酸-ブドウ糖)。
【0016】
「偏向粒子」は、音波の放出によって懸濁液から抽出された粒子を指す。
【0017】
「枯渇流体」は、そのような装置が作動したときにそこから粒子が濃縮流体に進むように偏向された流体を指す。
【0018】
「枯渇懸濁液」は、装置が作動したときにそこから粒子が濃縮流体に進むように偏向された懸濁液を指す。
【0019】
「装置の作動」は、トランスデューサによる音波の放出を指す。
【0020】
「使い捨て装置」は、1回の使用で廃棄されるように設計された装置を指す。
【0021】
「DMEM」:Dulbecco’s Modified Eagle Medium(ダルベッコ改変イーグル培地)。
【0022】
「DMSO」:Dimethyl sulfoxide(ジメチルスルホキシド)
【0023】
「濃縮緩衝液」は、装置の作動時に偏向された標的粒子が向かっていく緩衝液を指す。
【0024】
「濃縮流体」は、装置が作動したときに偏向された標的粒子がそれに向かって行く流体を指し、標的粒子が出て行った後には枯渇流体が残る。
【0025】
「流体」は、粒子を含有する場合又は含有しない場合がある液体又は気体(例えば液体の水)を指す。
【0026】
「HEPES」:4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸。
【0027】
「HypoThermoSol」:登録商標。
【0028】
「入口ゾーン」:流体が注入される装置の一部。
【0029】
「LB」:Lysogeny Broth。
【0030】
「メチルセルロース」は、セルロースに由来する化合物を指す。
【0031】
「非偏向粒子」は、音波の放出によって懸濁液から抽出されない粒子を指す。
【0032】
「非侵襲的センサ」は、測定されるシステムに感知できる様態で干渉しないセンサ(例えば、トランジットタイム流量計、エコーグラフ、分光光度計、ドップラーなど)を指す。
【0033】
「対向する壁」:アクティブエリア内で、主トランスデューサに平行な、主トランスデューサに最も遠い壁。
【0034】
「出口ゾーン」:流体が取り出される装置の一部。
【0035】
「粒子」は、流体に含まれる個別の溶解しない要素(例えば、細胞、細胞クラスター、砂、液滴、気泡)を指す。
【0036】
「粒子の洗浄」:粒子を第1の流体から第2の流体へ抽出する作用。
【0037】
「粒子懸濁液」は、粒子の少なくとも1つの集団を含む懸濁液を指し、1つの集団は、共通のサイズ、組成、又は特性によって定義される。「粒子懸濁液」及び「懸濁液」という用語は、本明細書では同じ意味で用いられる。
【0038】
「PBS」:Phosphate-Buffered Saline(リン酸緩衝生理食塩水)。
【0039】
「ポンプ」は、装置内に流れを発生させるように構成されたサブ装置を指す。
【0040】
「RPMI」:Roswell Park Memorial Institute(ロズウェルパーク記念研究所)。
【0041】
「センサ」は、システムで測定を行うように構成されたサブ装置(例えば、タービン流量計、マノメータ、内視鏡など)を指す。
【0042】
「SSP+」:Storage Solution for Platelets(血小板の保存液)。
【0043】
「滅菌装置」は、細菌(germs)又は微生物を含まない装置を指す。
【0044】
「懸濁液」は、粒子を含有し、そこから前記粒子が抽出され得る流体を指す。
【0045】
「システム」は、測定を行うことができる要素又は要素の群(例えば、流れる流体が入っているチューブ、食料品の入った袋、一群)を指す。
【0046】
「標的粒子」は、懸濁液中の関心ある粒子を指す。前記標的粒子は、洗浄、単離、及び/又は分離のために粒子懸濁液から別の流体(例えば緩衝液)に偏向されることが意図されている。
【0047】
「トランスデューサ」は、対応する作動信号を受信したときに定義された周波数及びパワーの音波を放出するように構成されたサブ装置を指す。
【0048】
「移送壁」:アクティブエリア内で、主トランスデューサに平行な、主トランスデューサに最も近い壁。
【0049】
「UW溶液」:University of Wisconsin cold storage solution(ウィスコンシン大学の冷保存液)。
【0050】
詳細な説明
以下の詳細な説明は、図面と併せて読むとよりよく理解されるであろう。説明の目的で、装置は好ましい実施形態で示されている。しかしながら、用途は、示される正確な構成、構造、特徴、実施形態、及び態様に限定されないことを理解されたい。図面は正確な縮尺率ではなく、特許請求の範囲を図示された実施形態に限定することを意図していない。したがって、添付の特許請求の範囲に記載の特徴の後に参照符号が続いている場合、そのような符号は、特許請求の範囲の了解度を高める目的でのみ含まれ、決して特許請求の範囲を限定するものではないことを理解されたい。
【0051】
本発明の特徴及び利点は、システムの実施形態の以下の説明から明らかとなり、この説明は、単なる例として添付図を参照して与えられている。
【0052】
本発明の目的は、粒子懸濁液から標的粒子を分離及び/又は単離及び/又は洗浄するための装置であって、
少なくとも1つの第1の入口は、粒子懸濁液を受け入れるように構成され、第2の入口は、緩衝液を受け入れるように構成された、少なくとも2つの入口と、
少なくとも1つの第1の出口は、標的粒子が枯渇した懸濁液を排出するように構成され、第2の出口は、分離及び/又は単離及び/又は洗浄された標的粒子を排出するように構成された、少なくとも2つの出口と、
長手方向軸を有し、流体が流れるチャンバを備え、前記チャンバはトランスデューサと関連付けられるように構成された、容器と、
少なくとも1つの第1の入口と少なくとも1つの第1の出口との間に配置され、チャンバ内にバルク音波を生み出すように構成された、少なくとも1つのトランスデューサと、
チャンバ内の流体の流量を測定するように構成された少なくとも1つの流量センサと、
を備え、
少なくとも2つの入口は容器の一方の端に配置され、少なくとも2つの出口は容器の長手方向軸に沿って他方の端に配置され、
少なくとも1つの第1の入口及び第2の入口はそれぞれ、容器の長手方向軸のいずれかの側に配置され、
少なくとも1つの第1の入口及び第2の出口はそれぞれ、容器の長手方向軸のいずれかの側に配置され、
第2の入口及び少なくとも1つの第1の出口はそれぞれ、容器の長手方向軸のいずれかの側に配置される、
装置に関する。
【0053】
緩衝液と粒子懸濁液は、層流にのってチャンバ内を流れ、トランスデューサによって放出された音波内も流れる。チャンバ内の標的粒子に音場を印加すると、前記標的粒子の移動が誘導され、前記音場のノードに前記標的粒子を集めることができる。本発明において、音圧ノードはチャンバの中央に生成され(トランスデューサが動作する選択された周波数に応じて)、音響放射力(ARF)がチャンバ内に発生する。ARFは、重力に相当する力の最高100倍の力で、標的粒子を圧力ノードに向けて押す。次いで、懸濁液中に懸濁された標的粒子が、音圧ノードに移動し、前記懸濁液から緩衝液に偏向される。言い換えれば、緩衝液及び粒子懸濁液の層が、第1及び第2の入口での注入によってチャンバ内に生成され、チャンバ内に音場が発生すると標的粒子が懸濁液層から緩衝液層に移動する。第1及び第2の入口の位置に応じて、懸濁液層はトランスデューサ(NT)に最も近く、緩衝液層はトランスデューサ(FT)から最も遠い場合がある、又は緩衝液層がトランスデューサ(NT)に最も近く、懸濁液層がトランスデューサ(FT)から最も遠い場合がある。粒子濃縮流体(すなわち、緩衝液中の偏向された標的粒子)は、第2の出口に向けて流れ、一方、標的粒子が枯渇した流体(すなわち、枯渇懸濁液)は、第1の出口に向けて流れる。
【0054】
本発明は、ある流体から別の流体への標的粒子の自発的な偏向に依存する。したがって、第2の出口で収集された標的粒子は、第1の入口での流体と同じ流体内にはない。これは、前記粒子のより良好な単離、分離、又は洗浄につながる。例えば、粒子の特定の集団に対する選択的な透過性をもつ流体を含む緩衝液層を、前記粒子の集団のみが収集されることを保証するために用いることができる。
【0055】
これは、特に前記標的粒子が細胞のように壊れやすい場合に、前記標的粒子を損傷する可能性がある機械的な力、濾過、又は遠心分離ステップなしに、流体内の標的粒子の単離、洗浄、又は分離を可能にするので特に有利である。
【0056】
洗浄は、あるタイプの標的粒子を粒子懸濁液から選択された流体に偏向させる、例えば、細胞を酵素懸濁液から非酵素流体に偏向させる作用を指す。
【0057】
単離は、粒子懸濁液からあるタイプの標的粒子を偏向させる作用を指す。例えば、細胞が選択され、チャンバ内の中央層に偏向され、濃縮される。
【0058】
分離は、少なくとも2つの異なる(標的及び非標的)粒子集団を含む粒子懸濁液から標的粒子を偏向させる作用、又は少なくとも2つの異なる出口への少なくとも2つの異なる方向に粒子懸濁液から少なくとも2つのタイプの標的粒子を偏向させる作用を指す。
【0059】
少なくとも2つの入口は容器の一方の端に配置され、少なくとも2つの出口は容器の長手方向軸に沿って他方の端に配置され、前記端は容器の反対側の両端である。
【0060】
少なくとも1つの第1の入口及び第2の入口はそれぞれ、容器の長手方向軸のいずれかの側に配置され、前記入口は長手方向軸に従って互いに対向して配置されることを意味する。
【0061】
トランスデューサは、音波を放出するように構成され、前記音波は、定義された振幅及び定義された周波数を有し、前記トランスデューサは、少なくとも1つの第1の入口と少なくとも1つの第1の出口との間に配置される。音波は、前述したように粒子懸濁液から標的粒子を分離及び/又は単離及び/又は洗浄することを可能にする。
【0062】
少なくとも1つのトランスデューサは、バルク音波(BAW)、すなわち、3次元で伝搬する体積音波、すなわち、トランスデューサとチャンバとの間で結合材料のバルクを通って伝搬する音波を発生させるように構成される。チャンバ内でのバルク音波の発生は、有利なことに、大量の粒子懸濁液の処理(すなわち、単離、分離、及び/又は洗浄)を可能にし、トランスデューサとチャンバ/容器との一時的な結合を効率的且つ容易に実施することを可能にする。
【0063】
少なくとも1つのトランスデューサは、表面弾性波(SAW)、定常表面弾性波(SSAW)、又は進行表面弾性波(TSAW)を発生させない。表面弾性波(SAW)は、トランスデューサとチャンバとの間を表面に沿って伝搬する音波を指す。定常表面弾性波(SSAW)は、時間で振動するがそのピークは空間を移動しないSAWを指す。進行表面弾性波(TSAW)は、そのピークが空間を移動するSAWを指す。SSAWの使用は、トランスデューサとチャンバとの一時的な結合の能力及び処理される体積を制限し、汚染に敏感な懸濁液の製造の候補にはあまりならない。進行波(例えばTSAW)の使用は、本発明の装置を効率的でないものにする。
【0064】
一実施形態によれば、トランスデューサは、チャンバ(又は容器)に一時的に結合される。一時的な結合は、取り外し可能に結合されることを意味する。この実施形態は、使い捨てでないトランスデューサと共に使い捨て容器の使用を可能にし、したがって、依然として生物学的物体の取り扱いでの主要なポイントである容器の無菌性を保証するので特に有利である。
【0065】
一実施形態によれば、トランスデューサは、長手方向の共振器であり、トランスデューサとチャンバとの一時的な結合を効率的且つ容易に実施することを可能にする。
【0066】
一実施形態によれば、トランスデューサは圧電トランスデューサである。トランスデューサは、チタン酸ジルコン酸鉛、ニオブ酸カリウム、又はタングステン酸ナトリウムなどのセラミック、石英、トルマリン、又はリン酸ガリウムなどの結晶、窒化ガリウム又は酸化亜鉛などのIII-V又はII-VI族半導体、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、又はポリイミドなどのポリマー、又はこれらの混合物で作製され得る。
【0067】
流量測定は、チャンバ内の流量の選択及び調整を可能にし、ポアズイユの法則に従うためにチャンバ内の流体の流れが可能な限りスムーズになるようにする。
【0068】
一実施形態では、流量センサは非接触の流量センサである、すなわち、前記センサはチャンバ内の流体と接触をもたない。これは、非接触の流量測定/監視が本明細書での装置及び流体の無菌性を保証するので特に有利である。
【0069】
一実施形態では、流量センサは、第2の出口に配置される。
【0070】
本明細書では、チャンバ内の流体の流量を測定するための少なくとも1つの手段、少なくとも1つの圧力測定手段、及び/又は標的粒子の濃度を測定するための少なくとも1つの手段は、センサであり、それぞれ、流量センサ、圧力センサ、及び濃度センサである。
【0071】
特定の構成では、装置は、トランスデューサによって作動されるように構成され、
粒子懸濁液を受け入れるように構成された油圧入口である、少なくとも1つの第1の入口と、
懸濁液を排出するための油圧出口である、少なくとも1つの第1の出口と、
長手方向軸A1を有し、流体が流れるチャンバを備える、容器と、
前記チャンバは、緩衝液流入口である第2の入口と、粒子を排出するための緩衝液流出口である第2の出口とを有し、前記緩衝液流出口は、緩衝液流入口とは反対側に配置され、
流体の流れを測定するための少なくとも1つの手段と、
を備え、
緩衝液流入口及び少なくとも1つの油圧入口は、容器の一方の側に配置され、偏向された標的粒子を排出するための緩衝液流出口及び少なくとも1つの油圧出口は、軸A1に沿って他方の側に配置される。
【0072】
一実施形態によれば、標的粒子は、生体細胞、分散媒に分散された細胞、単分散又は多分散細胞、血球、血小板、赤血球、ランゲルハンス島、白血球、癌細胞、幹細胞、前駆細胞、細菌、タンパク質、リポソーム、細胞小器官、細胞クラスター、ウィルス、小胞、微粒子、ナノ粒子、マイクロバブル、マイクロビーズ、微生物、寄生虫、藻類、砂、堆積物、粉塵、抗体、粉体、配偶子、寄生虫卵、プランクトン、組織、脂肪、花粉、胞子、金属粒子、又はこれらの混合物を含む群の中で選択される。
【0073】
一実施形態によれば、標的粒子は、1μm~500μmの範囲、好ましくは50μm~500μmの範囲、より好ましくは1μm~50μmの範囲、最も好ましくは1μm~20μmの範囲の平均サイズを有する。
【0074】
500μmより大きい粒子は、そのようなサイズは音響ストリーミング効果が現れる1MHz未満の音波の周波数を徹底的に減少させる必要があるため、本発明の装置で効率よく操作することができない。
【0075】
一実施形態によれば、粒子懸濁液は1つのタイプの標的粒子を含み、抽出された標的粒子が第1の出口でチャンバから排出され、枯渇懸濁液が第2の出口でチャンバから排出され、結果的に標的粒子が単離される。
【0076】
一実施形態によれば、粒子懸濁液は、少なくとも2つの異なるタイプの粒子を含み、第1のタイプの粒子が第1の出口でチャンバから排出され、第2のタイプの粒子である標的粒子が第2の出口でチャンバから排出され、結果的に粒子が分離される。この実施形態では、粒子のサイズ及びタイプの違いにより、チャンバの厚さに沿って生成された音圧ノードへのそれらの移動速度の違いに従って前記粒子を分離することが可能であり得る。この実施形態の特定の構成では、別個の波長をもつ音波を使用して流体から粒子の各グループを分離するために、2つのトランスデューサが使用される。
【0077】
緩衝液は、その音響及び流体の質と、偏向される標的粒子との適合性に応じて選択される。緩衝液は、例えば、乱流を低減するために溶質又はコロイド状の懸濁液を添加すること、又は水などの溶媒を添加して薄めることによって、チャンバの焦点面内に留まるように設計される。緩衝液はまた、懸濁液との化学的な微粒子タイプの制御されない交換を低減するように設計される。
【0078】
一実施形態によれば、緩衝液は、限定はされないが、CPD、SSP+、RPMI培地、LB、DMSO、メチルセルロース、HEPES、PBS、CMRL培地、DMEM、又はこれらの混合物であり得る。
【0079】
一実施形態によれば、緩衝液は、抽出されるべき標的粒子を不本意に変質させないように構成される。例えば、標的粒子を不本意に変質させないように、標的粒子にとって望ましくない化合物は避けられ、標的粒子にかかる浸透力が緩衝液中で低減され得る及び/又は標的粒子の適切なpH値範囲が保持される。
【0080】
代替的に、緩衝液は、抗生物質、抗ウィルス薬などの化合物、及び/又は、例えば偏向された標的粒子と反応又はトランスフェクションする、例えば細胞治療目的で宿主細胞をトランスフェクションするように設計されたウィルス、細菌、又はプラスミドなどの生物学的ベクターの添加を通じて機能化され得る。
【0081】
どちらの場合も、焦点面が音響ノード上にあるとき、緩衝液は、懸濁液の音響インピーダンス以上の音響インピーダンスを有する。焦点面が2つの音響ノードの間にあるとき、緩衝液は、懸濁液の音響インピーダンス以下の音響インピーダンスを有する。
【0082】
一実施形態によれば、少なくとも1つの第1の出口及び第2の出口はそれぞれ、チャンバの一方の端で容器の長手方向軸(A1)のいずれかの側に配置され、前記端は、入口が配置される端とは反対側にある。
【0083】
一実施形態によれば、少なくとも1つのトランスデューサは、定常バルク音波を放出するように構成される。
【0084】
一実施形態によれば、少なくとも1つのトランスデューサは、100kHz~10MHz、好ましくは500kHz~5MHzの範囲の周波数の音波を放出する。放出される音波の周波数は、懸濁液中で移動される標的粒子に応じて選択され、特に、前記周波数は、偏向される粒子サイズに基づいて選択される。例えば、粒子が小さいほど周波数は高くなる。ほとんどの実施形態では、周波数は1MHzよりも高く、音響ストリーミングの影響を有利に低減することができる。
【0085】
一実施形態では、音波の波長は、分離される標的粒子の平均サイズよりも大きく、好ましくはこの平均サイズの10倍以上である。
【0086】
一実施形態によれば、少なくとも1つのトランスデューサは、チャンバの下面の中央に位置する。代替的に、少なくとも1つのトランスデューサは、チャンバの上面に、又はチャンバの下面及び/又は上面に全体的に沿って位置し得る。
【0087】
一実施形態によれば、少なくとも1つのトランスデューサは、チャンバの外部にある。
【0088】
音響力は、放出された音波に関連し、チャンバ内に焦点面を生み出す。一実施形態によれば、焦点面は、軸A2aに垂直なチャンバ内の平面である。移動される標的粒子の性質に応じて、焦点面は、チャンバ内の音圧のノード上又は2つのノード間にあり得る。
【0089】
一実施形態によれば、バルク音波は、容器の長手方向軸に垂直な方向に放出される。この実施形態の特定の構成では、音波は、チャンバの長手方向軸との85°~95°、例えば89°~91°の範囲の入射角を有する。この実施形態のより特定の構成では、音波は、チャンバの長手方向軸との実質的に90°の入射角を有する。
【0090】
一実施形態では、トランスデューサは、チャンバの幅ではなく厚さにわたって音響力場を発生させる。この実施形態は、標的粒子の層の形成を可能にするので特に有利である。
【0091】
一実施形態によれば、装置は、複数のトランスデューサを備える、好ましくは、装置は、2、3、又は4つのトランスデューサを備える。この実施形態は、チャンバに沿ったより良好なパワー分布を可能にするので有利である。
【0092】
この実施形態の特定の構成では、トランスデューサは、チャンバの上面に沿って位置合わせされるか、又は長手方向軸A1に従ってチャンバのいずれかの側部に分散され得る。この実施形態の特定の構成では、前記トランスデューサによって放出される音波は、同一であるか又は異なる場合がある。トランスデューサは、好ましくは、容器の長手方向軸(A1)に沿って位置合わせされる。
【0093】
複数のトランスデューサの使用は、流体が高い速度で流れるとき、又は大きな標的粒子の層が生成されるときに有利である。第1のケースでは、流体の速度が増加するにつれてトランスデューサの下の飛行時間は減少する。このため、フォーカスを達成するのにより多くのトランスデューサを使用する必要があり得る。第2のケースでは、例えば流れがない場合、大きな標的粒子の層を形成するために複数のトランスデューサを使用することが可能である。
【0094】
複数のトランスデューサが使用されるとき、それらのうちの少なくとも1つは、チャンバの幅に沿って音波を発生させ得る。
【0095】
一実施形態によれば、音波によって発生する音響ノードは、チャンバの中央に、すなわち、前記チャンバの両方の長手方向の壁から等距離に配置される。長手方向の壁は、長手方向軸(A1)に沿って延びる壁を指す。いずれにしても、音響ノードはチャンバの壁にはない。これは、チャンバの内壁、特に前記細胞が付着できる内壁に近づくのを有利に防ぐ。
【0096】
一実施形態によれば、チャンバは、前記チャンバ内を流れる流体の音響インピーダンスよりも優れた音響インピーダンスを有する材料で作製された内壁を備える。
【0097】
この実施形態の特定の構成では、チャンバ又は前記チャンバの内壁は、有機ポリマー又は無機ポリマー、金属、例えばヒドロゲルなどのゲル、例えば溶融石英、パイレックスなどのガラス、例えばケイ素などの結晶、例えば炭化ケイ素などのセラミックス、樹脂、これらの誘導体、又はこれらの混合物の群の中から選択された材料で作製される。チャンバ又はその内壁の材料は、使用後の滅菌が容易でなければならない。
【0098】
有機ポリマーの例は、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)ポリウレタン、シリコーン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン、医療グレードのポリマー、又は使い捨てプラスチックを含むがこれらに限定されない。
【0099】
金属の例は、スチール又はステンレススチールを含むがこれらに限定されない。有利なことに、ステンレススチールは、チャンバ内の流体への音響エネルギーのより良好な伝達を可能にする。さらに、スチールの壁は、装置においてリフレクタの役割を果たすことができる。
【0100】
有利なことに、PMMAは、流体よりも2倍高い音響インピーダンスを有し、ステンレススチールは、流体よりも40倍高い音響インピーダンスを有する。さらに、PMMAは、有利なことに、すべての細胞と適合性があり、光学的に透明である、すなわち、チャンバの内部、したがってここでは流体を見ることができる。
【0101】
一実施形態によれば、装置は、チャンバの壁とトランスデューサとの一時的な結合を保証するための結合要素をさらに備える。したがって、トランスデューサは、例えばエポキシ樹脂を使用して容器に接着されない。結合要素は、トランスデューサと容器との間の音響エネルギーのはるかに効率的な伝達を可能にする。
【0102】
結合要素の例は、例えば、水、ヒドロゲル、植物油、鉱油、グリース、ポリマー、これらの誘導体、又はこれらの混合物などの液体又はゲルを含むがこれらに限定されない。結合要素は、可能な限り薄く、均一である、すなわち、前記結合要素内に又は接触面に気泡又はマイクロバブルがないべきである。
【0103】
本発明の装置は、チャンバ内で音波を反射するように構成されたリフレクタを備えていない。本発明の装置は、チャンバの外部の自由空気層を潜在的なリフレクタとして使用する。
【0104】
一実施形態によれば、装置は、少なくとも1つの圧力センサ、すなわち、圧力測定手段をさらに備える。
【0105】
一実施形態によれば、装置は、標的粒子の濃度を測定するように構成された少なくとも1つの濃度センサ(本明細書では標的粒子の濃度を測定するための手段とも呼ばれる)をさらに備え、前記濃度センサは、少なくとも1つの第1の入口及び/又は少なくとも1つの第1の出口及び/又は第2の入口及び/又は第2の出口に接続されている。
【0106】
一実施形態によれば、チャンバ内の流体の流量を測定するための少なくとも1つの手段は、前記チャンバ内の流体の流量を測定するように構成されたセンサである。この実施形態の特定の構成では、センサは、少なくとも1つの第1の入口に接続される。この実施形態では、粒子懸濁液の流量は、第1の入口でチャンバ内に注入された後でセンサによって測定される。
【0107】
一実施形態では、センサは、第1の入口及び/又は第2の入口及び/又は第2の出口に接続され得る。
【0108】
この実施形態の好ましい構成において、流量センサ、圧力センサ、及び/又は濃度センサは、第2の出口に配置される(又は接続される)。
【0109】
一実施形態によれば、装置は、例えば、流量センサ、流量センサ、圧力センサ、流体中の標的粒子の体積濃度を測定するためのセンサなどの複数のセンサを備える。
【0110】
一実施形態によれば、いくつかのタイプのセンサを、異なる入口及び出口で使用することができる。
【0111】
一実施形態によれば、各センサを、1つのポンプに接続することができる。
【0112】
一実施形態によれば、装置は複数の容器を備え、各容器は1つのセンサに接続され、前記センサは2つの連続する容器とポンプとの間にある。別の実施形態では、各容器は、いくつかのセンサに接続されてもよく、前記センサはいくつかのポンプに接続される。
【0113】
有利なことに、センサは、ドップラー、トランジットタイム流量計、又は分光光度計などの非侵襲的な測定手段である。代替的な実施形態では、センサは侵襲的な測定手段であり得る。
【0114】
一実施形態によれば、装置は、少なくとも1つの圧力測定手段をさらに備える。有利なことに、チャンバ内の流体の流れ、特に流量は、測定された圧力に応じて監視することができる。
【0115】
一実施形態によれば、装置は、標的粒子の濃度を測定するための少なくとも1つの手段をさらに備え、前記濃度を測定するための手段は、少なくとも1つの第1の入口及び/又は少なくとも1つの第1の出口及び/又は第2の入口及び/又は第2の出口に接続されている。有利なことに、この実施形態は、少なくとも1つの第1の入口及び/又は第2の入口でチャンバ内に導入された懸濁液及び/又は緩衝液と、少なくとも1つの第1の出口及び/又は第2の出口で前記チャンバから排出された懸濁液及び/又は緩衝液との中での標的粒子の濃度の比較を可能にする。
【0116】
一実施形態によれば、少なくとも1つの第1の入口は、容器の長手方向軸A1に垂直な長手方向軸を有する。この構成は、チャンバの製造をより容易にし、さらに、この構成では組み立てもより容易になる。さらに、装置の寸法を変更する必要なしに、流量に関する融通性も可能となる。
【0117】
一実施形態によれば、少なくとも1つの第1の出口は、容器の長手方向軸A1に垂直な長手方向軸を有する。この構成は、チャンバの製造をより容易にし、さらに、この構成では組み立てもより容易になる。
【0118】
前の2つの実施形態の組み合わせにおいて、少なくとも1つの第1の入口と少なくとも1つの第1の出口との両方は、容器の長手方向軸A1に垂直な長手方向軸を有する。
【0119】
代替的な実施形態では、第1の入口及び第1の出口は、チャンバの長手方向軸A1に対して任意の方向に傾けることができる。第1の入口と第1の出口は、互いに平行に配置することができる。別の実施形態では、第1の入口と第1の出口が平行ではないとき、それらはトランスデューサの垂直軸A2aに関して対称である。
【0120】
一実施形態によれば、第2の入口及び/又は第2の出口は、容器の長手方向軸A1に平行な長手方向軸を有する、すなわち、第2の入口及び/又は第2の出口は、容器の長手方向軸A1と同じ方向に延びる、すなわち、第2の入口及び/又は第2の出口は、容器の長手方向軸A1と位置合わせされる。
【0121】
代替的な構成では、第2の入口及び/又は第2の出口は、容器の長手方向軸A1に対して傾けられる。
【0122】
一実施形態によれば、装置は、第2の粒子懸濁液を受け入れるように構成された第3の入口と、標的粒子が枯渇した懸濁液を排出するように構成された第3の出口を備え、前記第3の入口及び第3の出口は、長手方向軸に関して第1の入口及び第1の出口と対称である。この実施形態では、第3の対称な入口及び出口は、前記標的粒子が前記チャンバに入って内壁と接触するのを防ぐために、より高い流量にして、標的粒子がチャンバの内壁に到達するのを回避することを可能にする。この構成はまた、共振のアクティブ化もより容易にする。
【0123】
この実施形態では、入口の位置に応じて、懸濁液層を中央に、緩衝液層を側方に配置することができ、又は緩衝液層を中央に、懸濁液層を側方に配置することができる。粒子濃縮流体(すなわち、緩衝液中の偏向された標的粒子)は、第2の出口に向けて流れ、一方、標的粒子が枯渇した流体(すなわち、枯渇懸濁液)は、第1及び第3の出口に向けて流れる。
【0124】
一実施形態によれば、第1の入口及び/又は第2の入口及び/又は第3の入口(第2の油圧入口とも呼ばれる)は、容器の長手方向軸A1に平行な長手方向軸を有する。
【0125】
一実施形態によれば、第1の入口及び第3の入口は、チャンバの長手方向軸A1aに関して対称である。第1の出口及び第3の出口は、チャンバの長手方向軸A1aに垂直である。第1の出口及び第3の出口の軸は、軸A2と平行であり、好ましくは、第1の出口と第3の出口は同じ軸A2cを有する。この実施形態の特定の構成では、第1の出口及び第2の出口は、チャンバの長手方向軸A1aに関して対称である。
【0126】
本明細書では、容器の長手方向軸A1は、チャンバの長手方向軸である。
【0127】
一実施形態では、第2の入口及び第2の出口は、チャンバの軸A1aと位置合わせされる。他の実施形態では、第2の入口と第2の出口は、この軸A1と平行である。第2の入口は、軸A1に従って第2の出口とは反対側に位置する。
【0128】
一実施形態では、入口及び出口は、チャンバと一体に作製される。
【0129】
一実施形態によれば、入口及び出口、特に第1の入口及び第1の出口は、前記チャンバの長手方向軸A1に従ってチャンバの反対側の両端部(又は両端)に位置する。代替的に、入口及び出口、特に第1の入口及び第1の出口は、トランスデューサの両方の側部で、チャンバに全体的に沿って位置し得る。
【0130】
一実施形態によれば、装置は、圧力センサ、濃度センサ、及び/又は流量センサからデータを回収するように構成された電子制御ユニットをさらに備える。この実施形態では、前記電子制御ユニットは、回収されたデータに従ってポンプ及びセンサを管理することを可能にする。
【0131】
一実施形態によれば、電子制御ユニットは、圧力センサ、濃度センサ、及び/又は流量センサから回収されたデータに基づいてチャンバ内の流体の流量を監視するように構成される。
【0132】
この実施形態の特定の構成によれば、電子制御ユニットは、流量センサからパラメータを回収し、一定の流量を有するように入口での緩衝液及び/又は懸濁液のポンピングの流量を調整する及び/又はチャンバ内の流れの乱れを低減する。この構成では、入口で測定された流量は、緩衝液と懸濁液で等しい又は異なる場合がある。例えば、流量センサが、一方の入口で他方の入口よりも高い流量を測定する場合、制御ユニットは、(例えばポンプ手段に信号を送信することによって)前記流量を両方の入口で同じになるように調整する。これは、入口での等しい流量を保証し、標的粒子の単離/洗浄/分離中の流量の変動も防ぐので有利である。
【0133】
この実施形態の特定の構成によれば、電子制御ユニットはフィードバックループを含む。
【0134】
この実施形態の特定の構成によれば、電子制御ユニットは、濃度センサからデータパラメータを回収し、前記濃度センサによって測定された濃度に関してトランスデューサの振幅及び/又は周波数を調整する。
【0135】
一実施形態によれば、センサと電子制御ユニットとの接続は、有線又は無線であり得る。
【0136】
一実施形態によれば、圧力及び/又は濃度及び/又は流量のパラメータは、少なくとも1つの測定手段によって測定され、少なくとも1つのトランスデューサによって放出される音波の振幅及び周波数が電子制御ユニットによって前記パラメータの関数として変更される。この実施形態では、制御ユニットは、少なくとも1つのセンサによって測定されたパラメータに応じて、流量、トランスデューサによって放出される音波の周波数及び/又はパワーを調整する。例えば、より高い流量は、音波のより高いパワー及び潜在的に異なる周波数を必要とするため、これは標的粒子の最適な偏向を保証する。
【0137】
一実施形態によれば、装置は使い捨てである。装置は、通常、汚染されている可能性がある流体と接触している。衛生上の理由で、装置は、1回の使用向けであり得る。
【0138】
一実施形態によれば、装置は、容器に接続された少なくとも1つのポンプ手段をさらに備える。ポンプ手段は、装置内の、すなわちチャンバ内の流体の流れを管理するように構成される。特に、ポンプ手段は、装置の各入口で及び/又はチャンバ内に制御された一定の流量を適用することができ、有利なことに、チャンバの無菌性を維持することを可能にする。この実施形態では、ポンプ手段は機械的ポンプであり、好ましくは、ポンプ手段は蠕動ポンプである。特定の構成では、各入口は、1つのポンプ手段に接続される。
【0139】
装置が複数の容器を備える場合、各容器は、少なくとも1つのポンプ手段に接続される。
【0140】
一実施形態によれば、装置は、圧力及び/又は濃度及び/又は流量のパラメータを測定するための少なくとも1つの非侵襲的な手段を備える。非侵襲的な手段の使用により、チャンバ内の流れの乱れを防ぐことができる。
【0141】
一実施形態によれば、チャンバは、長方形の形状、円筒形の形状、又は他の形状を有する。この実施形態の好ましい構成において、チャンバは、長さ(長手方向軸A1に沿った)、幅、及び厚さによって特徴付けられる直方体であり、この構成は、他のどの形状よりも、音波を外乱なしに平行六面体に適用するのが容易であるため特に有利である。チャンバは、本明細書では「チャネル」と呼ばれることもある。
【0142】
一実施形態によれば、チャンバは、マイクロ流体チャネルではなく、したがって、本発明の装置はマイクロ流体装置ではない。非マイクロ流体チャネルを使用すると、容器内の流量を大幅に容易に増加させることができるため、処理中に粒子が損傷しないようにせん断速度を十分に低く保ちながら、所与の体積の処理時間を短縮することができ、したがって、細胞療法治療を施すためにこの装置を使用することが可能となる。
【0143】
一実施形態によれば、チャンバは、1mm~50mm、好ましくは5mm~20mm、より好ましくは5mm~15mmの範囲の幅を有し、前記幅は、チャンバがシリンダである場合、直径である。
【0144】
一実施形態によれば、チャンバは、150μm~2mm、好ましくは300μm~780μmの範囲の厚さを有する。
【0145】
一実施形態によれば、チャンバは、5cm~20cm、好ましくは5cm~15cmの範囲の長さを有する。
【0146】
一実施形態では、チャンバの幅は、少なくとも音波が発生する長手方向軸に沿った位置で、分離される標的粒子の平均サイズの10倍以上である。
【0147】
一実施形態では、音波の波長はλであり、チャンバの厚さは、λ/4の倍数に実質的に等しい。
【0148】
一実施形態によれば、装置は、
緩衝液が充填され、第2の入口に流体接続されるように構成された、緩衝液入口容器と、
粒子懸濁液が充填され、少なくとも1つの第1の入口に流体接続されるように構成された、懸濁液入口容器と、
第2の出口に流体接続された、濃縮緩衝液出口容器と、
第1の出口に流体接続された、枯渇懸濁液出口容器と、
をさらに備える。
【0149】
この実施形態の特定の構成では、前記容器は使い捨てである。使い捨てであることは、良好な衛生状態、規制要件を保証し、時間を節約する。
【0150】
この実施形態の特定の構成では、前記容器は、バイオリアクタ、ボトル、バッグ、パウチ、バイアル、リザーバ、モジュール、又は流体が移送、貯蔵、又は収集されるボトルの中から選択される。
【0151】
この実施形態の特定の構成では、前記容器は、生物適合性、抗菌性、及び/又は低アレルギー性の材料を含む。生物適合性の材料は、生物流体との接触を可能にするので有利である。抗菌性及び/又は低アレルギー性の材料は、流体との接触時に望ましくない微生物の増殖及び/又はアレルギーを防止するので有利である。前記材料の例は、例えば有機ポリマー又は無機ポリマーなどのポリマー、例えばステンレススチールなどの金属、例えばヒドロゲルなどのゲル、例えば溶融石英、パイレックスなどのガラス、例えばケイ素などの結晶、例えば炭化ケイ素などのセラミック、又はこれらの混合物を含むがこれらに限定されない。ポリマーの例は、ポリウレタン、シリコーン、ポリエチレン、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン、又はこれらの混合物を含むがこれらに限定されない。
【0152】
一実施形態によれば、装置は、容器の温度を制御し、前記温度が閾値を下回り続けることを保証するように構成された熱伝達システムをさらに備える。この実施形態は、(熱を生成する)トランスデューサの作動中に容器が加熱されないこと、したがって、チャンバ内の流体が加熱されないことを保証するので特に有利である。これにより、過度の熱又は予期しない活性化に起因する劣化から容器内の粒子を保護する。
【0153】
この実施形態の特定の構成では、前記閾値は、35℃、好ましくは30℃、より好ましくは25℃である。
【0154】
この実施形態の特定の構成では、前記熱伝達システムは、例えば、ペルチェ冷却システム又は水冷システムなどの冷却システムである。
【0155】
本発明はまた、本発明に係る装置によって粒子懸濁液から標的粒子を分離及び/又は単離及び/又は洗浄するための方法であって、
少なくとも1つの第1の入口を介してチャンバ内に粒子懸濁液を導入するステップと、
同時に、第2の入口を介してチャンバ内に緩衝液を導入するステップと、
懸濁液から標的粒子を分離及び/又は単離及び/又は洗浄するためにチャンバ内にバルク音波を生み出すべく少なくとも1つのトランスデューサを作動させるステップと、
少なくとも1つの第1の出口でチャンバから標的粒子が枯渇した懸濁液を排出するステップと、
第2の出口でバルク音波によって懸濁液から偏向された標的粒子を収集するステップと、
少なくとも1つのパラメータを測定するための少なくとも1つの手段により少なくとも1つの第1の入口及び/又は少なくとも1つの第1の出口で及び/又は第2の入口及び/又は第2の出口で少なくとも1つのパラメータを測定するステップと、
を含む方法に関する。
【0156】
言い換えれば、特定の構成では、この方法は本発明に係る装置を使用し、この方法は、
少なくとも1つの油圧入口(第1の入口)に粒子懸濁液を提供するステップと、
緩衝液流入口(第2の入口)に容器のチャンバ内の緩衝液を提供するステップと、
少なくとも1つのトランスデューサを作動させるステップと、
前記トランスデューサは、枯渇懸濁液を得るべく標的粒子を分離及び/又は単離及び/又は洗浄するために音波を放出し、
少なくとも1つの油圧出口(第1の出口)によって枯渇懸濁液を排出するステップと、
容器の緩衝液流出口(第2の出口)によって偏向された標的粒子を排出するステップと、
少なくとも1つのパラメータを測定するための少なくとも1つの手段により少なくとも1つの油圧入口及び/又は出口で及び/又は緩衝液流入口及び/又は出口で少なくとも1つのパラメータを測定するステップと、
を含む。
【0157】
言い換えれば、別の特定の構成では、この方法は本発明に係る装置を使用し、この方法は、
少なくとも1つの油圧入口(第2の入口)に緩衝液の流れを提供するステップと、
粒子懸濁液入口(第1の入口)に容器のチャンバ内の粒子懸濁液を提供するステップと、
少なくとも1つのトランスデューサを作動させるステップと、
前記トランスデューサは、粒子枯渇懸濁液を得るべく標的粒子を分離及び/又は単離及び/又は洗浄するために音波を放出し、
懸濁液出口(第1の出口)によって粒子枯渇懸濁液を排出するステップと、
容器の少なくとも1つの油圧出口(第2の出口)によって抽出された標的粒子を排出するステップと、
少なくとも1つの手段により少なくとも1つの油圧入口及び/又は出口で及び/又は粒子懸濁液入口及び/又は出口で少なくとも1つのパラメータを測定するステップと、
を含む。
【0158】
本発明の方法は、粒子懸濁液から標的粒子を分離/単離/洗浄するための簡便迅速な方法である。
【0159】
本発明の方法はまた、処理された粒子の選択的な音響集束によってフィルターレス濾過を行うことを可能にする。
【0160】
一実施形態によれば、少なくとも1つのパラメータは、標的粒子の圧力及び/又は濃度及び/又は流量であり、バルク音波の振幅及び周波数が前記パラメータの関数として変更される。
【0161】
一実施形態によれば、少なくとも1つの第1の出口から排出された懸濁液は、少なくとも1つの第1の入口で提供された懸濁液よりも少なくとも75%少ない標的粒子、好ましくは少なくとも80%少ない標的粒子、より好ましくは少なくとも90%少ない標的粒子を含む。
【0162】
この実施形態の特定の構成では、少なくとも1つの第1の出口から排出された懸濁液は、標的粒子を含む。代替的に、少なくとも1つの第1の出口から排出された懸濁液は、標的粒子を含まない。
【0163】
一実施形態によれば、粒子懸濁液及び/又は緩衝液は、0.1ml/分~100ml/分、好ましくは0.5ml/分~10ml/分の範囲の注入速度(すなわち、入口での流量)に従って入口に導入される。前記注入速度は、標的粒子又は関与する緩衝液のタイプに依存する。この実施形態の特定の構成では、緩衝液の注入速度と粒子懸濁液の注入速度は等しい。この実施形態の別の特定の構成では、緩衝液の注入速度と粒子懸濁液の注入速度は異なる。
【0164】
一実施形態によれば、粒子懸濁液及び/又は緩衝液は、粒子懸濁液と緩衝液を等音響(isoacoustic)、すなわち、同じ音響インピーダンスにするように構成された等音響化合物をさらに含む。等音響化合物を粒子懸濁液及び/又は緩衝液に、好ましくは緩衝液に加えることにより、チャンバに入る流体が互いに混ざることが防止される。実際、本発明の目的は、粒子のみをある流体から別の流体に偏向させる、すなわち移動させることであり、そうするために、それぞれの流体は混ざることができないべきである。
【0165】
一実施形態によれば、緩衝液は、例えば、SAG-マンニトール(SAGM)、PAS III M、クエン酸-リン酸-ブドウ糖溶液(CPD)、T-ゾルなどのクエン酸-酢酸-生理食塩水ベースの溶液、Intersol、又はSSP+などの、保存及び/又は抗凝固のための添加剤化合物をさらに含む。
【0166】
この実施形態の特定の構成では、等音響化合物は、ブドウ糖、デキストラン、グリセロール、イオジキサノール、アルブミンなどの生物適合性化合物、Hypothermosol又はUW solution(登録商標)などの冷蔵保存培地、Ficoll(登録商標)、Percoll(登録商標)、Diacoll(登録商標)などの密度勾配コロイド化合物、又はこれらの混合物の群の中から選択されるがこれらに限定されない。
【0167】
装置が第3の入口及び第3の出口を備える一実施形態によれば、この方法は、
少なくとも1つの第1及び第3の入口を介してチャンバ内に粒子懸濁液を導入するステップと、
同時に、第2の入口を介してチャンバ内に緩衝液を導入するステップと、
懸濁液から標的粒子を分離及び/又は単離及び/又は洗浄するためにチャンバ内にバルク音波を生み出すべく少なくとも1つのトランスデューサを作動させるステップと、
少なくとも1つの第1及び第3の出口でチャンバから標的粒子が枯渇した懸濁液を排出するステップと、
第2の出口でバルク音波によって懸濁液から偏向された標的粒子を収集するステップと、
少なくとも1つのパラメータを測定するための少なくとも1つの手段により少なくとも1つの第1の入口及び/又は少なくとも1つの第1の出口で及び/又は第2の入口及び/又は第2の出口で少なくとも1つのパラメータを測定するステップと、
を含む。
【0168】
この実施形態の特定の構成では、懸濁液は、前記懸濁液から標的粒子を引き出すためのチャンバの焦点面と位置合わせされていない様態で第1及び第3の入口に注入され、一方、緩衝液は、位置合わせされた様態で第2の入口に注入される。
【0169】
一実施形態によれば、偏向された標的粒子は、例えば緩衝液などの洗浄媒体、又は培養培地に収集される。この結果として生じる溶液は、本明細書では濃縮流体と呼ばれる。
【0170】
一実施形態によれば、この方法は、濃縮流体(すなわち、緩衝液中の偏向された標的粒子)を収集する及び/又は枯渇懸濁液を収集するステップをさらに含む。
【0171】
一実施形態によれば、方法は、対象への随意的な注入の前に濃縮流体を処理する補足的なステップをさらに含む。前記補足的な処理ステップは、濃縮流体への化合物の添加、脱病原化、濾過、遠心分離、加熱/冷処理、又はサンプリング/試験を含み得る。
【0172】
本発明はまた、粒子懸濁液から標的粒子を分離及び/又は単離及び/又は洗浄するための本発明の装置の使用に関する。
【0173】
本発明はまた、標的粒子である少なくとも1つの第1のタイプの粒子を少なくとも1つの第2のタイプの粒子と混合するための本発明の装置の使用に関する。少なくとも1つの第1のタイプの標的粒子を含む懸濁液が、第1の入口でチャンバに導入され、同時に、少なくとも1つの第2のタイプの粒子を含む緩衝液が、第2の入口でチャンバに導入される。チャンバ内で音波が発生すると、少なくとも1つの第1のタイプの標的粒子が懸濁液から緩衝液に抽出され、その結果、2つのタイプの粒子が混合されて第2の出口で収集され、一方、枯渇懸濁液が第1の出口で収集される。その目的は、標的粒子を前記緩衝液(又は他の流体)に偏向させることによって、粒子懸濁液からの標的粒子と緩衝液又は別の流体に含まれる第2のタイプの粒子とを接触させることである。
【0174】
一実施形態によれば、少なくとも1つの第1のタイプの標的粒子の例は、生体細胞、分散媒に分散された細胞、単分散又は多分散細胞、血球、血小板、ランゲルハンス島、赤血球、白血球、癌細胞、幹細胞、前駆細胞、細菌、タンパク質、リポソーム、細胞小器官、細胞クラスター、ウィルス、小胞、微粒子、ナノ粒子、マイクロバブル、マイクロビーズ、微生物、寄生虫、藻類、砂、堆積物、粉塵、抗体、粉体、配偶子、寄生虫卵、プランクトン、組織、脂肪、花粉、胞子、金属粒子、又はこれらの混合物を含むがこれらに限定されず、少なくとも1つの第2のタイプの粒子の例は、生体細胞、分散媒に分散された細胞、単分散又は多分散細胞、血球、血小板、赤血球、ランゲルハンス島、白血球、癌細胞、幹細胞、前駆細胞、細菌、タンパク質、リポソーム、細胞小器官、細胞クラスター、ウィルス、小胞、微粒子、ナノ粒子、マイクロバブル、マイクロビーズ、微生物、寄生虫、藻類、砂、堆積物、粉塵、抗体、粉体、配偶子、寄生虫卵、プランクトン、組織、脂肪、花粉、胞子、金属粒子、又はこれらの混合物を含むがこれらに限定されない。
【0175】
この実施形態の好ましい構成において、少なくとも1つの第1のタイプの標的粒子は、直径が1μmを超える任意の生物学的物体、好ましくは細胞、細胞断片、又は細胞凝集体であり、少なくとも1つの第2のタイプの粒子は、ウイルスベクター、プラスミド、機能化されたマイクロバブル、遺伝物質である。
【図面の簡単な説明】
【0176】
【
図1a】本発明の一実施形態に係る装置の概略図である。
【
図1b】3つのトランスデューサを備える、本発明の一実施形態に係る装置の概略図である。
【
図1c】1つのトランスデューサを備える、粒子懸濁液から標的粒子を単離するための装置の概略図である。
【
図1d】1つのトランスデューサを備える、粒子懸濁液から標的粒子を分離するための装置の概略図である。
【
図2a】本発明の一実施形態に係る装置の概略図である。
【
図2b】粒子懸濁液を受け入れるように構成された第1の入口及び第3の入口と、緩衝液を受け入れるように構成された第2の入口と、標的粒子枯渇懸濁液を排出するように構成された第1の出口及び第3の出口と、緩衝液中の偏向された標的粒子を排出するように構成された第2の出口とを備える、粒子懸濁液から標的粒子を単離するための装置の概略図である。
【
図2c】粒子懸濁液を受け入れるように構成された第1の入口及び第3の入口と、緩衝液を受け入れるように構成された第2の入口と、標的粒子枯渇懸濁液を排出するように構成された第1の出口及び第3の出口と、緩衝液中の偏向された標的粒子を排出するように構成された第2の出口とを備える、粒子懸濁液から標的粒子を分離するための装置の概略図である。
【
図3】ポンプ及びセンサを備える装置の全体的な概略図である。
【
図4】本発明の装置を使用して異なる波パワーで得られる単離効率を示す図である。
【
図5】本発明の装置を使用した血液分画、すなわち、RBC/PLT分離を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0177】
様々な実施形態が説明及び例示されているが、詳細な説明は、それに限定されると解釈されるべきではない。特許請求の範囲によって定義される本開示の真の精神及び範囲から逸脱することなく、当業者は実施形態に様々な修正を加えることができる。
【0178】
以下の実施形態は、単一の用途に限定されない。各実施形態のすべての特徴は、説明した他の実施形態で考慮に入れることができる。
【0179】
図1aには、本発明に係る装置の概略図が示されている。
【0180】
第1の実施形態において、この装置は、油圧入口である第1の入口113と、緩衝液流入口である第2の入口114と、油圧出口である第1の出口115と、緩衝液流出口である第2の出口116と、センサ1271と、トランスデューサ112とを有するチャンバ111を備える。
【0181】
この実施形態では、第1の油圧入口113及び第1の油圧出口115は、チャンバ111の長手方向軸A1に垂直である。第1の油圧入口113及び第1の油圧出口115は、チャンバ111の反対側の両端部に位置している。
【0182】
この実施形態では、センサ1271は、第1の油圧出口115に接続される。センサ1271は、入口から第1の油圧出口115に流れる流体の流量を測定するための手段である。この実施形態では、懸濁液の流量が、第1の油圧入口113でチャンバ111内に注入された後でセンサ1271によって測定される。
【0183】
代替例では、この装置は、油圧入口である第1の入口114と、緩衝液流入口である第2の入口113と、油圧出口である第1の出口116と、緩衝液流出口である第2の出口115と、センサ1271と、トランスデューサ112とを有するチャンバ111を備える。
【0184】
この代替例では、第1の油圧入口114及び第1の油圧出口116は、チャンバ111の長手方向軸A1に垂直である。第1の油圧入口114及び第1の油圧出口116は、チャンバ111の反対側の両端部に位置している。
【0185】
この代替例では、センサ1271は、第1の油圧出口116に接続される。センサ1271は、入口から第1の油圧出口116に流れる流体の流量を測定するための手段である。この実施形態では、懸濁液の流量が、第1の油圧入口114でチャンバ111内に注入された後でセンサ1271によって測定される。
【0186】
図1bに示されている別の実施形態では、この装置は、複数のトランスデューサ112をさらに備える。
【0187】
図1cに示されている別の実施形態では、懸濁液から標的粒子を単離するための装置が示されている。この装置は、油圧入口である第1の入口113と、緩衝液流入口である第2の入口114と、油圧出口である第1の出口115と、緩衝液流出口である第2の出口116と、トランスデューサ112とを有するチャンバ111を備える。この装置は、入口ゾーン、アクティブゾーン、及び出口ゾーンの3つのゾーンに分割される。
図1cでは、チャンバ111が区切り119で表されており、前記区切りは、前記層(懸濁液及び緩衝液)を示すための単なる例示であり、物理的又は機械的な区切りとして理解されるべきではない。
【0188】
入口ゾーンは、第1の入口113及び第2の入口114を含み、アクティブゾーンは、トランスデューサ112を受け入れるように設計され、出口ゾーンは、第1の出口115及び第2の出口116を含む。アクティブゾーンは、材料、層の厚さ、及びチャンバの寸法の選択を通じて、音響効率を制御された様態で最適化するように設計される。アクティブゾーンはいくつかの部分に分割され、移送壁、流体チャンバ、及び対向する壁を含む。移送壁は、チャンバ111の下面に対応し、流体チャンバは、流体が1つの入口からチャンバ111を通って1つの出口に流れる領域に対応し、対向する壁は、チャンバ111の上面に対応する。対向する壁は、長手方向軸A1に従って移送壁と対向する側に配置される。この実施形態では、移送壁と対向する壁は同じ寸法を有し得るが、別の実施形態では、寸法は異なり得る。
【0189】
粒子懸濁液が第1の入口113に注入され、前記粒子懸濁液は1つのタイプの標的粒子120を含んでいる。懸濁液は、懸濁液から標的粒子120を引き出すためのチャンバ111の焦点面と位置合わせされていない様態で第1の入口113に注入される。同時に(すなわち、同じ時点で)、緩衝液が、第1のタイプの標的粒子120を取り込むために位置合わせされた様態で第2の入口114に注入される。
【0190】
緩衝液と懸濁液は、チャンバ111を通って流れる、したがって、トランスデューサ112によって放出される音波を通って流れる。アクティブゾーンでの移動中に、標的粒子120が懸濁液から緩衝液に偏向され、結果的に、枯渇懸濁液と粒子濃縮流体が生じる。粒子濃縮流体120は第2の出口116に向けて流れ、一方、枯渇懸濁液は第1の出口115に向けて流れる。この実施形態は、結果的に懸濁液から標的粒子を単離する。
【0191】
代替例では、この装置は、油圧入口である第1の入口114と、緩衝液流入口である第2の入口113と、油圧出口である第1の出口116と、緩衝液流出口である第2の出口115と、トランスデューサ112とを有するチャンバ111を備える。粒子懸濁液が第1の入口114に注入され、前記粒子懸濁液は、1つのタイプの標的粒子120を含んでいる。懸濁液は、チャンバ111の焦点面と位置合わせされていない様態で第1の入口114に注入され、同時に、緩衝液が、位置合わせされた様態で第2の入口113に注入される。
【0192】
この代替例では、緩衝液と懸濁液は、チャンバ111を通って流れる、したがって、トランスデューサ112によって放出される音波を通って流れる。アクティブゾーンでの移動中に、標的粒子120が懸濁液から緩衝液に偏向され、結果的に、枯渇懸濁液と粒子濃縮流体が生じる。粒子濃縮流体120は第2の出口115に向けて流れ、一方、枯渇懸濁液は第1の出口116に向けて流れる。この実施形態は、結果的に懸濁液から標的粒子を単離する。
【0193】
図1dに示されている別の実施形態では、懸濁液から標的粒子を分離するための装置が示されている。この装置は、油圧入口である第1の入口113と、緩衝液流入口である第2の入口114と、油圧出口である第1の出口115と、緩衝液流出口である第2の出口116と、トランスデューサ112とを有するチャンバ111を備える。
図1dでは、チャンバ111は区切り119で設計されており、前記区切りは単なる例示であり(懸濁液層及び緩衝液層を示すため)、物理的又は機械的な区切りとして理解されるべきではない。
【0194】
懸濁液が第1の入口113に注入され、懸濁液は2つのタイプの粒子120及び121を含有する。同時に、緩衝液が第2の入口114に注入される。緩衝液と懸濁液は、チャンバ111を通って流れる、したがって、トランスデューサ112によって放出される音波を通って流れる。アクティブゾーンでの移動中に、粒子(120、121)が分離される。第1のタイプの標的粒子120は、音波によって偏向されているため第2の出口116に向けて流れ、一方、第2のタイプの粒子121(偏向されていない)は第1の出口115を通ってチャンバ111を出る。この実施形態では、異なる粒子が懸濁液中で分離される。
【0195】
図2aに示されている別の実施形態では、懸濁液から標的粒子を分離及び/又は単離及び/又は洗浄するための装置が示されている。この装置は、1つの第1の入口113(第1の油圧入口とも呼ばれる)と、第3の入口117(第2の油圧入口とも呼ばれる)と、第2の入口114(緩衝液流入口とも呼ばれる)と、第1の出口115(第1の油圧出口とも呼ばれる)と、第3の出口118(第2の油圧出口とも呼ばれる)と、第2の出口116(緩衝液流出口とも呼ばれる)と、トランスデューサ112とを有するチャンバ111を備える。
図2aでは、チャンバ111は区切り119で設計されており、前記区切りは単なる例示であり、物理的又は機械的な区切りとして理解されるべきではない。第1の入口113と第3の入口117は同じ軸A2bを有する。第1及び第3の入口(113、117)と第1及び第3の出口(115、118)は、チャンバ111の反対側の両端部に位置している。第2の入口114及び第2の出口116は、チャンバ111の軸A1aと位置合わせされる。トランスデューサ112は、チャンバの111の下面の中央に位置する。
【0196】
この装置は3つのゾーンに分割され(区切り119によって区切られ)、側方層は懸濁液であり、中央層は緩衝液である。入口ゾーンは入口(113、114、117)を含み、アクティブゾーンはトランスデューサ112を受け入れるように設計され、出口ゾーンは出口(115、116、118)を含む。アクティブゾーンは、材料及び/又は層の厚さ及び/又はチャンバの幅の選択を通じて、音響効率を制御された様態で最適化するように設計される。アクティブゾーンはいくつかの部分に分割され、移送壁、流体チャンバ、及び対向する壁を含む。移送壁は、チャンバ111の下面に対応し、流体チャンバは、流体がチャンバ111を通って流れる領域に対応し、対向する壁は、移送壁とは対向する、チャンバ111の上面に対応する。
【0197】
図2bに示されている別の実施形態では、懸濁液から標的粒子を単離するための装置が示されている。この装置は、1つの第1の入口113(第1の油圧入口とも呼ばれる)と、第3の入口117(第2の油圧入口とも呼ばれる)と、第2の入口114(緩衝液流入口とも呼ばれる)と、第1の出口115(第1の油圧出口とも呼ばれる)と、第3の出口118(第2の油圧出口とも呼ばれる)と、第2の出口116(緩衝液流出口とも呼ばれる)と、トランスデューサ112とを有するチャンバ111を備える。チャンバ111は区切り119で設計されており、前記区切りは単なる例示であり、物理的又は機械的な区切りとして理解されるべきではない。
【0198】
第1のタイプの粒子120を含む懸濁液が、懸濁液から標的粒子120を引き出すためのチャンバ111の焦点面と位置合わせされていない様態で第1及び第3の入口(113、117)に注入される。同時に、緩衝液が、位置合わせされた様態で第2の入口114に注入される。緩衝液の注入速度と懸濁液の注入速度は等しい。
【0199】
緩衝液及び懸濁液は、チャンバ111内を流れ、トランスデューサ112によって放出される音波を通って流れる。アクティブゾーンでの移動中に、標的粒子120が懸濁液から緩衝液の流れに偏向され、結果的に、枯渇懸濁液及び粒子濃縮流体(緩衝液中の標的粒子を含む)が生じる。粒子濃縮流体120は第2の出口116へ流れ、一方、枯渇懸濁液は第1及び第3の出口(115、118)へ流れる。この実施形態は、結果的に懸濁液から標的粒子を単離する。
【0200】
代替的な実施形態では、アクティブゾーンを通って流れた後で、粒子濃縮流体120は第1及び第3の出口(115、118)へ流れ、一方、枯渇懸濁液は第2の出口116へ流れる。
【0201】
図2cに示されている別の実施形態では、懸濁液から標的粒子を分離するための装置が示されている。この装置は、1つの第1の入口113(第1の油圧入口とも呼ばれる)と、第3の入口117(第2の油圧入口とも呼ばれる)と、第2の入口114(緩衝液流入口とも呼ばれる)と、第1の出口115(第1の油圧出口とも呼ばれる)と、第3の出口118(第2の油圧出口とも呼ばれる)と、第2の出口116(緩衝液流出口とも呼ばれる)と、トランスデューサ112とを有するチャンバ111を備える。チャンバ111は区切り119で設計されており、前記区切りは単なる例示であり、物理的又は機械的な区切りとして理解されるべきではない。
【0202】
2つのタイプの粒子(120、121)を含む懸濁液が、第1及び第3の入口(113、117)に注入される。同時に、緩衝液が、第2の入口114に注入される。緩衝液と懸濁液は、チャンバ111を通って流れる、したがって、トランスデューサ112によって放出される音波を通って流れる。アクティブゾーンでの移動中に、2つのタイプの粒子(120、121)が分離され、各タイプの偏向された標的粒子が出口へ流れる。第1のタイプの標的粒子120は、音波によって生じた偏向に起因して第2の出口116に向けて流れ、一方、偏向されていない第2のタイプの粒子121は、第1の出口115及び第3の出口118を通って出ていく。この実施形態では、異なる粒子が懸濁液から及び互いから分離される。
【0203】
図3に示されている別の実施形態では、ポンプ及びセンサを有する装置が示されている。前のすべての実施形態は、
図3の概略図に統合することができる。この装置は、チャンバ111、トランスデューサ112、いくつかのポンプ126、いくつかのセンサ(1271、1272、1273)、緩衝液入口容器122、懸濁液入口容器123、濃縮緩衝液出口容器124、及び枯渇懸濁液出口容器125を備える。緩衝液入口容器122には緩衝液が充填されており、一方、懸濁液入口容器123には粒子懸濁液が充填されている。緩衝液入口容器122及び懸濁液入口容器123は、いくつかのセンサ1271に接続される。各センサ1271は、1つのポンプ126に接続することができる。この実施形態では、各容器(122、123)は、1つのセンサ1271に接続され、前記センサ1271は容器(122、123)とポンプ126との間にある。緩衝液入口容器122及びセンサ1271に接続されたポンプ126はまた、チャンバ111の第2の入口114(
図1a又は
図2aに示される)に接続される。懸濁液入口容器123及びセンサ1271に接続されたポンプ126はまた、チャンバ111の第1及び/又は第3の入口(
図1a又は
図2aに示される)のうちの1つに接続される。
【0204】
チャンバ111の第1及び/又は第3の出口(115、118)(
図1a又は
図2aに示される)は、1つのポンプ126及び1つのセンサ1273を介して枯渇懸濁液出口容器125に接続される。この実施形態では、チャンバ111の第2の出口116(
図1a又は
図2aに示される)は、濃縮緩衝液出口容器124及び1つのみのセンサ1272に接続される。
【0205】
出口容器(124、125)は、使用前に空にすることができ、又は内部に粒子枯渇流体及び/又は粒子濃縮緩衝液を保存するためにCPD、SSP+、RPMI培地、LB、DMSO、メチルセルロース、HEPES、PBS、CMRL培地、DMEM、これらの混合物、又は他の流体などの液体を入れることができる。
【0206】
この実施形態では、懸濁液入口容器123に入っている懸濁液が、第1のポンプ126によりチャンバ111内に注入される。同時に、緩衝液入口容器122に入っている緩衝液が、第2のポンプ126によりチャンバ111内に注入される。トランスデューサ112は、懸濁液と緩衝液がチャンバ111内を流れるときに、特定の振幅及び特定の周波数の音波を放出する。トランスデューサ112によって発生した音波に起因する標的粒子の偏向後に、結果として生じる粒子濃縮流体がチャンバ111から濃縮緩衝液出口容器124に流れる。センサ1272がチャンバ111の第2の出口116に接続される。枯渇懸濁液が、チャンバ111から枯渇懸濁液出口容器125に流れる。センサ1273も、第3のポンプ126でチャンバ111の第1及び/又は第3の出口のうちの1つに接続される。
【0207】
この実施形態では、センサ1271は流量センサであり、懸濁液及び緩衝液の流量が、チャンバ111内に注入する前にセンサ1271によって測定される。センサ1272は、濃縮緩衝液出口容器124に入る濃縮流体の濃度を測定する。センサ1273は、チャンバ111の第1及び第3の出口での流量を測定する。
【0208】
実施例
本発明は、以下の実施例によってさらに例示される。
【0209】
実施例1a:標的粒子の単離
装置及び方法
単離装置は、圧電トランスデューサに接続された音響発生器及び増幅器と、トランスデューサを25℃未満に保つための熱伝達システムを備える。装置内に流れ(約1.5ml/分)を発生させるために蠕動ポンプを使用する。
【0210】
単離装置はまた、容器と、
チャンバと、
中央の入口である第2の入口(緩衝液入口)と、
長手方向軸(A1)に関して容器の反対側の両側部に配置された第1の入口(第1の懸濁液入口)及び第3の入口(第2の懸濁液入口)と、
長手方向軸(A1)に関して容器の反対側の両側部に配置された第1の出口(第1の枯渇懸濁液出口)及び第3の出口(第2の枯渇懸濁液出口)と、
中央の出口である第2の出口(濃縮流体出口)と、
を備える。
【0211】
入口は容器の一方の端に配置され、出口は容器の長手方向軸(A1)に沿って他方の端に配置される。第1の入口及び第3の出口はそれぞれ、容器の長手方向軸(A1)のいずれかの側に配置される。
【0212】
装置のチャンバは、PMMAで設計され、チューブはシリコン製である。装置は、オイルを使用してセットアップに結合される。
【0213】
処理される粒子懸濁液は、(ヘマトクリット値が14%に下がるまで)等張液で希釈されたヒトの血液である。緩衝液は、デキストラン40(5%)を添加した等張緩衝液で構成される。懸濁液は装置に1.2ml/分で注入され、緩衝液は1.1ml/分で注入される。濃縮流体出口は1.1ml/分で駆動され、枯渇出口は1.2ml/分で駆動される。チャンバ内で流れが確立されると、1MHzの音波が放出され、チャンバ内に伝達される。血液学分析装置を通じた分析のために出口でサンプリングし、濃縮流体及び枯渇懸濁液中の血球の濃度を求める。
【0214】
結果
音波の効果が生じると、赤血球(RBC)が一方の流体から他方の流体に移行し、結果的に元の懸濁液からRBCが単離される。
【0215】
図4は、異なる波パワーで得られる単離効率を示している。15Wで90%の単離効率に達する。
【0216】
実施例1b:標的粒子の単離
実施例1bは、実施例1aと同じ装置で分離された異なるタイプの標的粒子で再現される。
結果を表1に示す。
【表1】
【0217】
実施例2a:標的粒子の分離
装置及び方法
分離装置は、実施例1aで使用した単離装置と同一である。
【0218】
処理される粒子懸濁液は、(ヘマトクリット値が17%に下がるまで)等張液で希釈されたヒトの血液である。緩衝液は、デキストラン40(11%)を添加した等張緩衝液で構成される。
【0219】
懸濁液は装置に1.2ml/分で注入され、緩衝液は1.1ml/分で注入される。濃縮出口は1.1ml/分で駆動され、枯渇出口は1.2ml/分で駆動される。チャンバ内で流れが確立されると、1MHzの音波が放出され、チャンバ内に伝達される。血液学分析装置を通じた分析のために出口でサンプリングし、濃縮流体及び枯渇懸濁液中の血球の濃度を求める。
【0220】
【0221】
音波の効果が生じると、赤血球(RBC)の45%が一方の流体(懸濁液)から他方の流体(緩衝液)に移行し、血小板(PLT)の17%のみが偏向される。この方法は、血液分画、特にRBC/PLT分離を可能にする。
【0222】
実施例2b:標的粒子の分離
実施例2aは、実施例2aと同じ装置で分離された異なるタイプの粒子(粒子I及び粒子II)で再現される。
【0223】
結果を表2に示す。粒子I又は「標的粒子」はP-Iと表記され、粒子IIはP-IIと表記される。第1の入口及び第1の出口での粒子の濃度([P-X])は、懸濁液中の粒子の濃度を指す。第2の入口及び第2の出口での粒子の濃度([P-X])は、緩衝液中の粒子の濃度を指す。
【表2】
【符号の説明】
【0224】
111:チャンバ
112:トランスデューサ
113:入口
114:入口
115:出口
116:出口
117:第3の入口
118:第3の出口
119:流体分離線としての区切り(例示のみを意図している)
120:第1のタイプの粒子
121:第2のタイプの粒子
122:緩衝液入口容器
123:懸濁液入口容器
124:濃縮緩衝液出口容器
125:枯渇懸濁液出口容器
126:ポンプ
1271:センサ
1272:センサ
1273:センサ
【手続補正書】
【提出日】2022-06-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子懸濁液から標的粒子を分離及び/又は単離及び/又は洗浄するための装置であって、
少なくとも1つの第1の入口は粒子懸濁液を受け入れるように構成され、第2の入口は緩衝液を受け入れるように構成された、少なくとも2つの入口(113、114)と、
少なくとも1つの第1の出口は標的粒子が枯渇した懸濁液を排出するように構成され、第2の出口は分離及び/又は単離及び/又は洗浄された標的粒子を排出するように構成された、少なくとも2つの出口(115、116)と、
長手方向軸(A1)を有し、流体が流れるチャンバ(111)を備え、前記チャンバ(111)はトランスデューサ(112)と関連付けられるように構成された、容器と、
前記少なくとも1つの第1の入口と前記少なくとも1つの第1の出口との間に配置され、前記チャンバ(111)内にバルク音波を生み出すように構成された、少なくとも1つのトランスデューサ(112)と、
前記チャンバ(111)内の流体の流量を測定するように構成された少なくとも1つの流量センサ(1271)と、
を備え、
前記少なくとも2つの入口(113、114)は前記容器の一方の端に配置され、前記少なくとも2つの出口(115、116)は前記容器の長手方向軸(A1)に沿って他方の端に配置され、
前記少なくとも1つの第1の入口及び前記第2の入口はそれぞれ、前記容器の長手方向軸(A1)のいずれかの側に配置され、
前記少なくとも1つの第1の入口及び前記第2の出口はそれぞれ、前記容器の長手方向軸(A1)のいずれかの側に配置され、
前記第2の入口及び前記少なくとも1つの第1の出口はそれぞれ、前記容器の長手方向軸(A1)のいずれかの側に配置さ
れ、
前記チャンバ(111)は、前記チャンバ(111)内を流れる流体の音響インピーダンスよりも優れた音響インピーダンスを有する材料で作製された内壁を備え、
前記装置は、前記チャンバ(111)の壁と前記トランスデューサ(112)との一時的な結合を保証するための結合要素をさらに備える、
装置。
【請求項2】
前記バルク音波は、前記容器の長手方向軸(A1)に垂直な方向に放出される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
少なくとも1つの圧力センサ(1272)をさらに備える、請求項
1に記載の装置。
【請求項4】
標的粒子の濃度を測定するように構成された少なくとも1つの濃度センサ(1273)をさらに備え、前記濃度センサ(1273)は、前記少なくとも1つの第1の入口及び/又は少なくとも1つの第1の出口及び/又は第2の入口及び/又は第2の出口に接続されている、請求項
1に記載の装置。
【請求項5】
前記装置は、第2の粒子懸濁液を受け入れるように構成された第3の入口(117)と、標的粒子が枯渇した懸濁液を排出するように構成された第3の出口(118)とを備え、前記第3の入口(117)及び第3の出口(118)は、長手方向軸(A1)に関して第1の入口及び第1の出口と対称である、請求項
1に記載の装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの第1の入口は、前記容器の長手方向軸(A1a)に垂直な長手方向軸(A2b)を有する、請求項
1に記載の装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの第1の出口は、前記容器の長手方向軸(A1a)に垂直な長手方向軸(A2c)を有する、請求項
1に記載の装置。
【請求項8】
前記圧力センサ(1272)、前記濃度センサ(1273)、及び/又は前記流量センサ(1271)からデータを回収するように構成された電子制御ユニットをさらに備える、請求項
1に記載の装置。
【請求項9】
前記電子制御ユニットは、前記圧力センサ(1272)、前記濃度センサ(1273)、及び/又は前記流量センサ(1271)から回収されたデータに基づいて前記チャンバ(111)内の流体の流量を監視するように構成される、請求項
8に記載の装置。
【請求項10】
請求項1~請求項
9のいずれか一項に記載の装置によって粒子懸濁液から標的粒子を分離及び/又は単離及び/又は洗浄するための方法であって、
前記少なくとも1つの第1の入口を介して前記チャンバ(111)内に粒子懸濁液を導入するステップと、
同時に、前記第2の入口を介して前記チャンバ(111)内に緩衝液を導入するステップと、
懸濁液から標的粒子を分離及び/又は単離及び/又は洗浄するために前記チャンバ内にバルク音波を生み出すべく前記少なくとも1つのトランスデューサ(112)を作動させるステップと、
前記少なくとも1つの第1の出口で前記チャンバ(111)から標的粒子が枯渇した懸濁液を排出するステップと、
前記第2の出口で前記バルク音波によって懸濁液から偏向された標的粒子を収集するステップと、
少なくとも1つのセンサ(1271、1272、1273)により、前記少なくとも1つの第1の入口及び/又は少なくとも1つの第1の出口で及び/又は第2の入口及び/又は第2の出口で少なくとも1つのパラメータを測定するステップと、
を含む方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つのパラメータは、標的粒子の圧力及び/又は濃度及び/又は流量であり、前記バルク音波の振幅及び周波数が前記パラメータの関数として変更される、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの第1の出口から排出された懸濁液は、前記少なくとも1つの第1の入口で提供された懸濁液よりも少なくとも75%少ない標的粒子を含む、請求項
10に記載の方法。
【請求項13】
標的粒子を緩衝液又は他の流体に偏向させることによって、粒子懸濁液からの標的粒子と緩衝液又は別の流体に含まれる第2のタイプの粒子とを接触させるための請求項1~請求項
9のいずれか一項に記載の装置の使用。
【国際調査報告】