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  • 特表-アミン共開始剤混合物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-19
(54)【発明の名称】アミン共開始剤混合物
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/50 20060101AFI20221212BHJP
   C07C 229/60 20060101ALI20221212BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20221212BHJP
   C09D 11/101 20140101ALI20221212BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20221212BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
C08F2/50
C07C229/60
C09D7/63
C09D11/101
C09D5/00 Z
C09D201/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523141
(86)(22)【出願日】2020-10-16
(85)【翻訳文提出日】2022-06-01
(86)【国際出願番号】 EP2020079157
(87)【国際公開番号】W WO2021074363
(87)【国際公開日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】1915023.4
(32)【優先日】2019-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522154788
【氏名又は名称】アルケマ・ユーケー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド・ジェプソン
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・プレンダーリース
(72)【発明者】
【氏名】ケリー・スクワイアズ
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・タウンズ
(72)【発明者】
【氏名】ペトル・セフナル
【テーマコード(参考)】
4H006
4J011
4J038
4J039
【Fターム(参考)】
4H006AA03
4H006AB49
4H006AB76
4H006BJ20
4H006BJ50
4H006BP10
4H006BT32
4H006BU46
4J011QA03
4J011QA13
4J011QA15
4J011QA23
4J011QA24
4J011QA33
4J011QA34
4J011QA37
4J011QA45
4J011QA46
4J011QB14
4J011QB16
4J011QB19
4J011QB20
4J011QB22
4J011QB24
4J011SA01
4J011SA22
4J011SA31
4J011SA32
4J011SA61
4J011SA62
4J011SA63
4J011SA64
4J011SA78
4J011SA83
4J011SA84
4J011TA08
4J011UA01
4J011VA05
4J011WA02
4J011WA05
4J038CG001
4J038DB191
4J038DD181
4J038DG191
4J038FA111
4J038JA25
4J038JB07
4J038KA04
4J038KA08
4J038KA09
4J038MA14
4J038PA17
4J039AC01
4J039AD09
4J039AE04
4J039AE05
4J039AE06
4J039AE07
4J039BC12
4J039BC33
4J039BE01
4J039BE02
4J039BE22
4J039BE26
4J039BE27
4J039EA05
(57)【要約】
本発明は、式(I)によるアミノベンゾエート誘導体と少なくとも1種の補助アミンとを含む共開始剤であって、UV硬化性樹脂中での該共開始剤の反応性及び溶解度が、共開始剤をUV照射硬化プロセスで使用することができるほど十分に高い、共開始剤に関する。式(I)[式中、R1及びR2は、独立して、メチル又はエチル基を表し、j、k、l、及びmは、独立して、0~20である]。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】
[式I中、
R1及びR2は、独立して、メチル基又はエチル基を表し、
j、k、l、及びmは、独立して、0~20の整数を表す]
による少なくとも1種のアミノベンゾエート化合物と少なくとも1種の補助アミンとを含む、UV硬化における使用のための共開始剤混合物。
【請求項2】
式Iによる化合物のパーセンテージが、共開始剤混合物の質量に対して、0.1~99.9質量%の範囲にある、請求項1に記載の共開始剤。
【請求項3】
式Iによる化合物のパーセンテージが、共開始剤混合物の質量に対して、5~95質量%の範囲にある、請求項2に記載の共開始剤。
【請求項4】
式Iによる化合物のパーセンテージが、共開始剤混合物の質量に対して、70~90質量%の範囲にある、請求項3に記載の共開始剤。
【請求項5】
R1及びR2がメチルである、請求項1から4のいずれか一項に記載の共開始剤。
【請求項6】
式IのN,N-ジアルキルアミノ基が、エステル基に対して4位にある、請求項1から5のいずれか一項に記載の共開始剤。
【請求項7】
式Iによる化合物が、すべて0に等しいa、b、c、及びdを有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の共開始剤。
【請求項8】
式Iによる化合物が、0に等しくないa、b、c、及びdのうちの少なくとも1つを有し、特に、a+b+c+dの合計が、1~30、4~25、又は6~20であり、より特定すると、a、b、c、及びdが、独立して、0~20、1~10、又は2~5の整数を表す、請求項1から7のいずれか一項に記載の共開始剤。
【請求項9】
式Iによる化合物が、式I-a
【化2】
[式中、n、o、p、及びqは、独立して、0~20の整数を表す]
による構造を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の共開始剤。
【請求項10】
式I-aによる化合物が、すべて0に等しいn、o、p、及びqを有する、請求項9に記載の共開始剤。
【請求項11】
式I-aによる化合物が、0に等しくないn、o、p、及びqのうちの少なくとも1つを有し、特に、n+o+p+qの合計が、1~30、4~25、又は6~20であり、より特定すると、n、o、p、及びqが、独立して、0~20、1~10、又は2~5の整数を表す、請求項9に記載の共開始剤。
【請求項12】
前記補助アミンが、式Iの化合物とは異なる構造の少なくとも1種のアミノベンゾエート誘導体を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の共開始剤。
【請求項13】
前記補助アミンが、式(A)
【化3】
[式中、R'及びR''は、独立して、アルキル、特にメチル又はエチル、より特定するとメチルである]
による、少なくとも1つ、特に少なくとも2つ、より特定すると少なくとも3つのN,N-ジアルキルアミノベンゾエート部分を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の共開始剤。
【請求項14】
式(A)のN,N-ジアルキルアミノベンゾエート部分が、エステル基に対してパラ位に-NR'R''基を有する、請求項13に記載の共開始剤。
【請求項15】
前記補助アミンが、式II
【化4】
[式中、r、s、及びtは、独立して、0~20の整数を表す]
による化合物を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の共開始剤。
【請求項16】
前記補助アミンが、式III
【化5】
[式中、u、v、及びwは、独立して、0~20の整数を表す]
による化合物を含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の共開始剤。
【請求項17】
前記補助アミンが、式IV
【化6】
[式中、x、y、z、及びz'は、独立して、0~20の整数を表す]
による化合物を含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の共開始剤。
【請求項18】
前記補助アミンが、式V
【化7】
[式中、a'、b'、及びc'は、独立して、0~20の整数を表す]
による化合物を含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の共開始剤。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか一項に記載の共開始剤と、1種又は複数のタイプI又はタイプII光開始剤とを含む、光開始剤ブレンド。
【請求項20】
請求項1から18のいずれか一項に記載の共開始剤と、1種又は複数のタイプI又はタイプII光開始剤と、1種又は複数の重合性モノマー、オリゴマー又はプレポリマーとを含む、照射硬化性組成物。
【請求項21】
UV硬化性コーティング又はインクである、請求項20に記載の照射硬化性組成物。
【請求項22】
着色剤を更に含む、請求項20又は21に記載の照射硬化性組成物。
【請求項23】
請求項20から22のいずれか一項に記載の照射硬化性組成物を硬化させることによって得られる、硬化材料。
【請求項24】
請求項20から22のいずれか一項に記載の照射硬化性組成物を硬化させることによって得られる、低移動性硬化材料。
【請求項25】
インク、ラッカー、又はワニスとしての、請求項20から22のいずれか一項に記載の照射硬化性組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2種のアミンを含むアミン共開始剤混合物、特に、第1の成分としてアミノベンゾエート化合物を含むアミン共開始剤に関する。これらの共開始剤は、コーティング及びインクに使用され得る。
【0002】
アクリレートエステルと他の同様の不飽和化合物とを含有する照射硬化性(radiation-curable)組成物は、紫外(UV)光への曝露によって重合することができる。迅速で効果的な硬化には、多くの場合、光子の照射時にラジカル種を形成し、不飽和基のフリーラジカル重合を開始して、材料を固める(硬化させる)、光開始剤が必要である。
【0003】
UV照射に曝露されると開裂して、不飽和化合物の重合を開始することができるラジカル種を生成する、タイプI光開始剤とは異なり、いわゆるタイプII光開始剤(ビラジカル種の分子内水素引き抜きを伴うノーリッシュタイプII反応と混同しないこと)は、UV照射に曝露されても断片化しない化合物であるため、追加の共開始剤が存在しない限り、典型的にはラジカル連鎖重合を開始しないであろう。UV照射への曝露時のタイプII光開始剤と適切な共開始剤との間の相互作用は、UV硬化性樹脂の重合を開始することができるラジカル種の生成をもたらす。
【0004】
適切なタイプII光開始剤としては、ベンゾフェノン等のジアリールケトン(例えば、SpeedCure BP-Lambson Limited社)又は2-イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン(例えば、SpeedCure 2-ITX-Lambson Limited社)が挙げられる。適切な共開始剤としては、チオール、又はより一般的には第三級アミンを挙げることができる。第三級アミンは、ラジカル種と大気の酸素との間の反応で形成される通常であれば不活性のペルオキシラジカルと反応して、重合反応を継続することができるより反応性の高い種を生成し、したがって、インク及びコーティングの表面における酸素の阻害効果を低減することができるため、UVインク及びUVコーティングの表面硬化に特に有用である(A.Green、「Industrial Photoinitiators:A Technical Guide」、Taylor and Francis Group 2010、70頁)。
【0005】
光開始剤と、共開始剤と、他の添加剤とを含有する照射硬化性組成物は、包装用途、特に食品包装において問題となる可能性がある(「Radiation Curing in Packaging」、Radtech Report、2006年3月/4月)。残留光開始剤、共開始剤、及び他の添加剤、並びにそれらの断片化生成物は、ポリマー骨格に化学的に結合していない場合、コーティング又はインクから移動することがある。これは、隣接する材料の汚染をもたらす可能性があり、食品の場合は異味及び臭いの問題をもたらすことがある。したがって、移動の可能性が低い光活性化合物が継続的に求められている。場合によっては、これらの分子又はそれらの断片化生成物のうちのいくつかの毒性に関する問題もある可能性があり、低毒性の添加剤の開発も重要である。
【0006】
拡散阻害光開始剤又は共開始剤は、硬化性組成物又はインクの硬化層において低い移動度を呈し、したがってその移動傾向を低減する、光活性分子である。文献(L.L.Katan、「Migration from Food Contact Materials」、Blackie Academic and Professional、第1版、ロンドン、1996年)に記載されているように、分子が移動する能力は、多くの場合、その分子量によって決定される。したがって、低移動性のUV硬化性インク又はコーティングの場合、500ダルトン超の分子量を有する光活性成分が好ましい。同様に、光活性成分の毒性は、該分子がそれらの低減された生物学的利用能を理由に比較的高い分子量である場合、低くなり易い。一般に、500ダルトン超の分子量を有する分子は、皮膚中に又は胃腸管を介して吸収されにくいため、好ましい(Voutchkova等、Chem.Rev.2010、110、5845~5882)。
【0007】
タイプII光開始剤のための共開始剤として用いられる最も反応性の高い第三級アミンには、アミノベンゾエート誘導体、例えば、4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート(例えば、SpeedCure EDB-Lambson Limited社)及び2-エチルヘキシル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート(例えば、SpeedCure EHA-Lambson Limited社)がある。そのようなアミノベンゾエート誘導体は、インクの水バランスが適用に重要であり、かつより親水性の第三級アミンが適していないであろう、リソグラフィーインク配合物において特に有用である。酸素阻害を低減するために比較的高い濃度のアミンを使用する場合、アミン共開始剤の一部が未反応のままであり、したがって、ポリマー骨格に化学的に結合していないままであり得るため、移動がより起こり易くなる。これらの化合物の毒物学的分類を理由に、移動は健康に害を及ぼす可能性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】A.Green、「Industrial Photoinitiators:A Technical Guide”、Taylor and Francis Group 2010、70頁
【非特許文献2】「Radiation Curing in Packaging」、Radtech Report、2006年3月/4月
【非特許文献3】L.L.Katan、「Migration from Food Contact Materials」、Blackie Academic and Professional、第1版、ロンドン、1996年
【非特許文献4】Voutchkova等、Chem.Rev.2010、110、5845~5882
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
多官能性アミン共開始剤を使用すると、共開始剤が硬化後にポリマー骨格に化学的に結合する可能性が高くなり、したがって、共開始剤分子が移動する可能性が低くなる。高い分子量を有する多官能性アミン共開始剤、特に、500ダルトン超の分子量を有するものの場合、未反応の共開始剤の移動も拡散阻害されるであろう。高分子量のなかでも、低移動性の適用ですでに利用可能な拡散阻害共開始剤は、オリゴマーアミノベンゾエート、例えば、Omnipol ASA(IGM Resins社)及びSpeedCure 7040(Lambson Limited社)であるが、これらの物質は、それらの低分子対応物よりも光活性が低くなり、多くの場合、溶解度の問題に悩まされる可能性がある。したがって、低移動性及び低毒性の特性を呈しながら、良好な溶解度を伴って高活性である、新しい高分子量の拡散阻害第三級アミン共開始剤を発見することが継続的に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様では、以下に示される式Iによるアミノベンゾエート誘導体を含むアミン誘導体を、請求項1に定義されているような1種又は複数の補助アミンとともに含む、高分子量の拡散阻害アミン共開始剤混合物が提供される。これらの混合物は、UV硬化を開始するためのタイプII光開始剤の存在下で高い共開始剤効率を呈し、また驚くべきことに、適切な範囲の濃度にわたるアクリレート樹脂の範囲で十分に可溶である。更に、アクリレート樹脂への共開始剤混合物の溶解度は、そのような混合物として存在しない場合の個々の多官能性アミン共開始剤の溶解度よりも高いことが多い。
【0011】
【化1】
【0012】
[式中、
R1及びR2は、独立して、メチル又はエチル基を表し、
j、k、l、及びmは、独立して、0~20の整数を表す]。
【0013】
本発明の実例が本明細書に記載されている。
【0014】
本発明は、紫外光で硬化可能な組成物における使用のためのアミン共開始剤混合物に関する。より詳細には、共開始剤混合物は、低移動性、低毒性、及び(特にアクリレート樹脂中での)高溶解性の特性が特に望ましい用途に適している。
【0015】
本発明は、低移動性コーティング及びインクに特に有用であり、かつ重合性樹脂系中で良好な溶解度を呈する、効果的な多官能性の拡散阻害共開始剤混合物を提供することを目指す。これは、式I
【0016】
【化2】
【0017】
[式中、
R1及びR2は、独立して、メチル又はエチル基を表し、
j、k、l、及びmは、独立して、0~20の整数を表す]
によるアミノベンゾエート化合物を1種又は複数の補助アミンとともに含む共開始剤混合物を提供することによって達成される。
【0018】
多くの場合、R1又はR2のうちの少なくとも1つはメチルとなり、場合によっては、メチル基が最大活性をもたらすことが見出されているため、R1及びR2の両方がメチルとなる。場合によっては、式IのN,N-ジアルキルアミノ基(-NR1R2)は、エステル基に対して4位(パラ)にあるが、これらは、2位(オルト)又は3位(メタ)にあってもよく、合成上の理由から、多くの場合、2位又は4位での配置が選択され、4位が最も一般的である。更に、N,N-ジアルキルアミノ基は、異なる環上の異なる位置にあり得て、例えば、N,N-ジアルキルアミノ基は、1、2、又は3個の環上の4位にあり得るが、多くの場合、N,N-ジアルキルアミノ基の配置は、4個の環すべてで4位となる。図示されているように、一般に、各環には単一のN,N-ジアルキルアミノ基のみが存在することになる。
【0019】
一実施形態では、式Iの化合物は、すべて0に等しいj、k、l、及びmを有し得る。
【0020】
別の実施形態では、式Iの化合物は、エトキシル化化合物であり得る。本明細書で使用される場合、「エトキシル化化合物」という用語は、1つ又は複数のオキシエチレン-[O-CH2-CH2]-単位を有する化合物を意味する。したがって、式Iの化合物は、0に等しくないj、k、l、及びmのうちの少なくとも1つを有し得る。特に、j+k+l+mの合計は、1~30、4~25、又は6~20であり得る。より特定すると、j、k、l、及びmは、独立して、0~20、1~10、又は2~5の整数を表す。
【0021】
特に好ましい例では、式Iによる共開始剤は、式I-a
【0022】
【化3】
【0023】
[式中、n、o、p、及びqは、独立して、0~20の整数を表す]
による構造を有する。
【0024】
一実施形態では、式I-aの化合物は、すべて0に等しいn、o、p、及びqを有し得る。
【0025】
別の実施形態では、式I-aの化合物は、エトキシル化化合物であり得る。したがって、式I-aの化合物は、0に等しくないn、o、p、及びqのうちの少なくとも1つを有し得る。特に、n+o+p+qの合計は、1~30、4~25、又は6~20であり得る。より特定すると、n、o、p、及びqは、独立して、0~20、1~10、又は2~5の整数を表し得る。
【0026】
本発明の共開始剤混合物は、補助アミンを含む。本明細書で使用される場合、「補助アミン」という用語は、式(I)の化合物に有益な効果を有し得る少なくとも1個のアミン基を含む化合物を意味する。例えば、補助アミンは、式(I)の化合物の溶解度及び/又は硬化効率を向上させることができる。
【0027】
好ましい例では、共開始剤混合物中の補助アミンは、アミノベンゾエート誘導体であり、多くの場合、これは、N,N-ジアルキルアミノベンゾエート誘導体等の第三級アミンとなる。一実施形態では、補助アミンは、少なくとも1個、特に少なくとも2個、より特定すると少なくとも3個のアミノベンゾエート部分を含む。特に、補助アミンは、2~6個のアミノベンゾエート部分を含み得る。特に、アミノベンゾエート部分のアミノ基は、第三級アミノ基であり得る。
【0028】
一実施形態では、補助アミンは、少なくとも1個、特に少なくとも2個、より特定すると少なくとも3個のN,N-ジアルキルアミノベンゾエート部分を含む。特に、補助アミンは、2~6個のN,N-ジアルキルアミノベンゾエート部分を含み得る。本明細書で使用される場合、「N,N-ジアルキルアミノベンゾエート部分」という用語は、式(A):
【0029】
【化4】
【0030】
[式中、R'及びR''は、独立して、アルキル、特にメチル又はエチル、より特定するとメチルである]
の基を意味する。
【0031】
特に、式(A)のN,N-ジアルキルアミノベンゾエート部分は、エステル基に対して4位(パラ)にN,N-ジアルキルアミノ基(-NR'R'')を有し得る。
【0032】
補助アミンは、N,N-ジアルキルアミノ基がエステル基に対して4位にある、1、2、3、4、5、又は6個のN,N-ジアルキルアミノベンゾエート部分を有し得る。補助アミンはまた、N,N-ジアルキルアミノ基がエステル基に対して2位(オルト)又は3位(メタ)にあるN,N-ジアルキルアミノベンゾエート部分を有し得る。より特定すると、補助アミンのアミノベンゾエート部分すべてが、4位にN,N-ジアルキルアミノ基を有する。
【0033】
補助アミンの構造は、式Iの化合物の構造とは異なるであろうが、1種より多くの、構造式Iの化合物が共開始剤中に存在していてもよい。更に、1種より多くの補助アミンが共開始剤中に存在していてもよく、特に、表1にある化合物に加えて、又はそれらの代わりに、以下に記載されている式II~IIIの1種又は複数の化合物が存在していてもよい。
【0034】
特に好ましい例では、式Iによる化合物は、式II
【0035】
【化5】
【0036】
[式中、r、s、及びtは、独立して、0~20の整数を表す]
による補助アミンとの混合物中に、また、その立体異性体を含む共開始剤中に存在する。
【0037】
一実施形態では、式IIの化合物は、すべて0に等しいr、s、及びtを有し得る。
【0038】
別の実施形態では、式IIの化合物は、エトキシル化化合物であり得る。したがって、式IIの化合物は、0に等しくないr、s、及びtのうちの少なくとも1つを有し得る。特に、r+s+tの合計は、1~30、4~25、又は6~20であり得る。より特定すると、r、s、及びtは、独立して、0~20、1~10、又は2~5の整数を表し得る。
【0039】
補助アミンは、先に定義したような式IIの化合物を含み得る。
【0040】
別の特に好ましい例では、式Iによる化合物は、式III
【0041】
【化6】
【0042】
[式中、u、v、及びwは、独立して、0~20の整数を表す]
による補助アミン共開始剤との混合物中に存在する。
【0043】
一実施形態では、式IIIの化合物は、すべて0に等しいu、v、及びwを有し得る。
【0044】
別の実施形態では、式IIIの化合物は、エトキシル化化合物であり得る。したがって、式IIIの化合物は、0に等しくないu、v、及びwのうちの少なくとも1つを有し得る。特に、u+v+wの合計は、1~30、4~25、又は6~20であり得る。より特定すると、u、v、及びwは、独立して、0~20、1~10、又は2~5の整数を表し得る。
【0045】
補助アミンは、先に定義したような式IIIの化合物を含み得る。
【0046】
補助アミンは、式IV
【0047】
【化7】
【0048】
[式中、x、y、z、及びz'は、独立して、0~20の整数を表す]
の化合物を含み得る。
【0049】
一実施形態では、式IVの化合物は、すべて0に等しいx、y、z、及びz'を有し得る。
【0050】
別の実施形態では、式IVの化合物は、エトキシル化化合物であり得る。したがって、式IVの化合物は、0に等しくないx、y、z、及びz'のうちの少なくとも1つを有し得る。特に、x+y+z+z'の合計は、1~30、4~25、又は6~20であり得る。より特定すると、x、y、z、及びz'は、独立して、0~20、1~10、又は2~5の整数を表し得る。
【0051】
補助アミンは、式V
【0052】
【化8】
【0053】
[式中、a'、b'、及びc'は、独立して、0~20の整数を表す]
の化合物を含み得る。
【0054】
一実施形態では、式Vの化合物は、すべて0に等しいa'、b'、及びc'を有し得る。
【0055】
別の実施形態では、式Vの化合物は、エトキシル化化合物であり得る。したがって、式Vの化合物は、0に等しくないa'、b'、及びc'のうちの少なくとも1つを有し得る。特に、a'+b'+c'の合計は、1~30、4~25、又は6~20であり得る。より特定すると、a'、b'、及びc'は、独立して、0~20、1~10、又は2~5の整数を表し得る。
【0056】
共開始剤は、式Iの化合物と1種又は複数の補助アミンとの混合物として存在する。該混合物中の式Iによる化合物のパーセンテージは、共開始剤混合物の質量に対して、0.1~99.9質量%の範囲、好ましくは5~95質量%の範囲、より好ましくは70~90質量%の範囲にあり得る。これらの範囲において、共開始剤(すなわち、式Iの化合物と補助アミンとの混合物)を、反応性と溶解度との間のバランスを提供するように配合することができる。この混合物の残分は、補助アミンで構成されることになる。
【0057】
共開始剤混合物は、共開始剤混合物の質量に対して、式Iの化合物を、0.1~99.9質量%、5~95質量%、10~90質量%、15~85質量%、20~80質量%、25~75質量%、30~70質量%、35~65質量%、40~60質量%、又は45~55質量%含み得る。共開始剤混合物中の補助アミンの量は、100%の質量の共開始剤混合物に対する補足を表し得る。特に、共開始剤混合物は、共開始剤混合物の質量に対して、補助アミンを、0.1~99.9質量%、5~95質量%、10~90質量%、15~85質量%、20~80質量%、25~75質量%、30~70質量%、35~65質量%、40~60質量%、又は45~55質量%含み得る。
【0058】
或いは、共開始剤混合物は、共開始剤混合物の質量に対して、式Iの化合物を、0.1~99.9質量%、5~95質量%、10~90質量%、20~90質量%、30~90質量%、40~90質量%、50~90質量%、60~90質量%、70~90質量%、又は80~90質量%含み得る。共開始剤混合物中の補助アミンの量は、100%の質量の共開始剤混合物に対する補足を表し得る。特に、共開始剤混合物は、共開始剤混合物の質量に対して、補助アミンを、0.1~99.9質量%、5~95質量%、10~90質量%、10~80質量%、10~70質量%、10~60質量%、10~50質量%、10~40質量%、10~30質量%、又は10~20質量%含み得る。
【0059】
或いは、共開始剤混合物は、共開始剤混合物の質量に対して、式Iの化合物を、0.1~99.9質量%、5~95質量%、10~90質量%、10~80質量%、10~70質量%、10~60質量%、10~50質量%、10~40質量%、10~30質量%、又は10~20質量%含み得る。共開始剤混合物中の補助アミンの量は、100%の質量の共開始剤混合物に対する補足を表し得る。特に、共開始剤混合物は、共開始剤混合物の質量に対して、補助アミンを、0.1~99.9質量%、5~95質量%、10~90質量%、20~90質量%、30~90質量%、40~90質量%、50~90質量%、60~90質量%、70~90質量%、又は80~90質量%含み得る。
【0060】
式Iの化合物は、好ましくは、分子の制御された移動を確実にするために、500ダルトン超、より好ましくは800ダルトン超(多くの場合、500~1500ダルトンの範囲、又は800~1200ダルトンの範囲)の分子量を有する。共開始剤における適合性を改善するために、補助アミンは、例えば同様の粘度の化合物を提供することによって、式Iの化合物と同様の分子量を有することが可能である。したがって、補助アミンはまた、500ダルトン超、より好ましくは800ダルトン超(多くの場合、500~1500ダルトンの範囲、又は800~1200ダルトンの範囲)の分子量を有し得る。
【0061】
式Iによる化合物とともに共開始剤混合物に含まれ得る補助アミンのいくつかの非限定的な例を表1に示す。
【0062】
【表1A】
【0063】
【表1B】
【0064】
【表1C】
【0065】
本発明の第2の態様では、式Iによる化合物を含む共開始剤混合物を1種又は複数のタイプI又はタイプII光開始剤と組み合わせて、光開始剤ブレンドを生成する。好ましくは、タイプI光開始剤は、光開始剤ブレンド中に存在する。タイプI光開始剤は、最小の交差反応によって、アミン共開始剤と安定した混合物をより形成し易い。更に、タイプI光開始剤とアミン共開始剤との混合物は、液体ブレンドを形成し得る。液体ブレンドは、多くの場合、固体混合物よりも都合良く処理される。光開始剤は、配合を容易にするために、必要に応じて固体又は液体の形態で存在し得る。
【0066】
タイプI又はタイプII光開始剤は、ベンゾイン、ベンゾインエーテル、アセトフェノン、α-ヒドロキシアセトフェノン、アミノアセトフェノン、ベンジル、ベンジルケタール、アントラキノン、ホスフィンオキシド、アシルホスフィンオキシド、α-ヒドロキシケトン、フェニルグリオキシレート、α-アミノケトン、ベンゾフェノン、チオキサントン、キサントン、アクリジン誘導体、フェナゼン誘導体、キノキサリン誘導体、トリアジン化合物、ギ酸ベンゾイル、芳香族オキシム、メタロセン、アシルシリル又はアシルゲルマニル化合物、カンファーキノン、それらのポリマー誘導体、及びそれらの混合物から選択され得る。
【0067】
一実施形態では、光開始剤ブレンドは、特に、ベンゾフェノン(例えば、SpeedCure BP-Lambson Limited社)又は4-ベンゾイル-4'-メチルジフェニルスルフィド(例えば、SpeedCure BMS-Lambson Limited社)等のジアリールケトン、2-イソプロピルチオキサントン(例えば、SpeedCure 2-ITX-Lambson Limited社)等のチオキサントン、及びそれらの組み合わせから選択される、タイプII光開始剤を含む。或いは、拡散阻害光開始剤、特に、SpeedCure 7010(Lambson Limited社)又はSpeedCure 7005(Lambson Limited社)等のポリマーベンゾフェノン又はチオキサントンが、特定の低移動性の適用に使用され得る。
【0068】
一実施形態では、光開始剤ブレンドは、特に、アセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパノン(例えば、SpeedCure 73-Lambson Limited社)等のα-ヒドロキシアセトフェノン、アミノアセトフェノン、ホスフィンオキシド、及びそれらの混合物から選択される、タイプI光開始剤を含む。SpeedCure 73は、有利には、本発明の共開始剤とともに液体配合物を形成し、取り扱い上の利益を提供し得る。
【0069】
本発明の第1の態様に定義されているような共開始剤混合物は、光開始剤ブレンド中に、光開始剤ブレンドの総質量の1~99質量%の範囲の総濃度で、より好ましくは10~90質量%の範囲の濃度で、最も好ましくは40~70質量%の範囲の濃度で存在し得る。これらの範囲は、反応性と粘度との間の適切なバランスを提供する。
【0070】
本発明の第3の態様では、本発明の第1の態様の共開始剤混合物と、1種又は複数の光開始剤と、1種又は複数の重合性モノマー、オリゴマー又はプレポリマーとを含む、照射硬化性組成物が提供される。典型的には、光開始剤は、上記のようなタイプI又はタイプII光開始剤となる。
【0071】
照射硬化性組成物は、好ましくは、本発明の第1の態様に定義されているような共開始剤混合物を、照射硬化性組成物の総質量の0.1~50質量%の範囲の濃度で、より好ましくは0.5~25質量%の範囲の濃度で、最も好ましくは1~10質量%の範囲の濃度で含む。光開始剤は、典型的には、照射硬化性組成物の総質量の1~5質量%の範囲で存在する。
【0072】
本発明によって定義されているような共開始剤混合物と組み合わせて照射硬化性組成物に使用され得る光開始剤の例としては、ベンゾフェノン(例えば、SpeedCure BP-Lambson Limited社)又は4-ベンゾイル-4'-メチルジフェニルスルフィド(例えば、SpeedCure BMS-Lambson Limited社)等のジアリールケトン、又は2-イソプロピルチオキサントン(例えば、SpeedCure 2-ITX-Lambson Limited社)等のチオキサントン、又はそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されることはない。或いは、SpeedCure 7010(Lambson Limited社)又はSpeedCure 7005(Lambson Limited社)等の拡散阻害光開始剤が、特定の低移動性の適用に使用され得る。
【0073】
共開始剤とともに照射硬化性組成物に用いられ得る重合性モノマー、オリゴマー又はプレポリマーは、当技術分野で公知の任意の重合性化合物を含み得るが、好ましくは、単官能性又は多官能性アクリレート又はメタクリレート含有化合物である。というのも、これらの構造は、良好な反応性を提供するからである。例としては、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジ(トリメチロールプロパン)テトラアクリレート、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート又はビスフェノールAジメタクリレート、並びにそれらのエトキシル化又はプロポキシル化された変形形態が挙げられるであろうが、これらに限定されることはない。
【0074】
一実施形態では、本発明の照射硬化性組成物は、(メタ)アクリレート官能化化合物を含む。照射硬化性組成物は、(メタ)アクリレート官能化化合物の混合物を含み得る。(メタ)アクリレート官能化化合物は、分子1個あたり1個又は複数の(メタ)アクリレート官能基を有する有機化合物であると説明することができる。(メタ)アクリレート官能化化合物は、フリーラジカル反応又はアニオン反応に関与することができ、特に、紫外線又は電子ビーム照射によって開始される反応に関与することができる。そのような反応によって、(メタ)アクリレート官能化化合物が重合マトリックス又はポリマー鎖の一部になる重合又は硬化が生じ得る。本発明の様々な実施形態では、(メタ)アクリレート官能化化合物は、分子1個あたり1、2、3、4、5個以上の(メタ)アクリレート官能基を含有し得る。異なる数の(メタ)アクリレート基を含有する複数の(メタ)アクリレート官能化化合物の組み合わせが、本発明の照射硬化性組成物に利用され得る。
【0075】
したがって、本発明の照射硬化性組成物は、紫外線又は電子ビーム照射への曝露によって開始されるフリーラジカル及び/又はアニオン重合(硬化)を受けることができる、1種又は複数の(メタ)アクリレート官能性化合物を含有し得る。(メタ)アクリレート官能化化合物は、オリゴマー若しくはモノマー、又はオリゴマーとモノマーとの組み合わせであり得る。
【0076】
一実施形態では、照射硬化性組成物は、1種又は複数の(メタ)アクリレート官能化モノマー、1種又は複数の(メタ)アクリレート官能化オリゴマー、及びそれらの混合物を含み得る。
【0077】
本明細書で使用される場合、「(メタ)アクリレート官能化モノマー」という用語は、(メタ)アクリレート基、特にアクリレート基を含む、モノマーを意味する。「(メタ)アクリレート官能化オリゴマー」という用語は、(メタ)アクリレート基、特にアクリレート基を含む、オリゴマーを意味する。
【0078】
以下のいずれかのタイプの(メタ)アクリレート官能化化合物が、例えば、本発明の照射硬化性組成物に用いられ得る:脂肪族モノアルコールの(メタ)アクリレートエステル、アルコキシル化脂肪族モノアルコールの(メタ)アクリレートエステル、脂肪族ポリオールの(メタ)アクリレートエステル、アルコキシル化脂肪族ポリオールの(メタ)アクリレートエステル、芳香環含有アルコールの(メタ)アクリレートエステル、及びアルコキシル化芳香族環含有アルコールの(メタ)アクリレートエステル等のモノマー;並びにエポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、それらのアミン及びスルフィド修飾誘導体等のオリゴマー;並びにそれらの組み合わせ。
【0079】
一実施形態では、照射硬化性組成物は、(メタ)アクリレート官能化モノマーを含む。照射硬化性組成物は、(メタ)アクリレート官能化モノマーの混合物を含み得る。
【0080】
(メタ)アクリレート官能化モノマーは、600g/mol未満、特に100~550g/mol、より特定すると200~500g/molの分子量を有し得る。
【0081】
(メタ)アクリレート官能化モノマーは、1~6個の(メタ)アクリレート基、特に1~3個の(メタ)アクリレート基、より特定すると1~3個のアクリレート基を有し得る。
【0082】
(メタ)アクリレート官能化モノマーは、異なる官能基を有する(メタ)アクリレート官能化モノマーの混合物を含み得る。例えば、(メタ)アクリレート官能化モノマーは、分子1個あたり単一のアクリレート又はメタクリレート基を含有する(メタ)アクリレート官能化モノマー(本明細書では、「モノ(メタ)アクリレート官能化化合物」と称する)と、分子1個あたり2個以上、好ましくは2又は3個のアクリレート及び/又はメタクリレート基を含有する(メタ)アクリレート官能化モノマーとの混合物を含み得る。
【0083】
一実施形態では、(メタ)アクリレート官能化モノマーは、モノ(メタ)アクリレート官能化モノマーを含む。モノ(メタ)アクリレート官能化モノマーは、有利には、反応性希釈剤として機能し、本発明の組成物の粘度を低下させ得る。適切なモノ(メタ)アクリレート官能化モノマーの例としては、脂肪族アルコールのモノ(メタ)アクリレートエステル(ここで、脂肪族アルコールは、直鎖、分岐状又は脂環式であり得て、モノアルコール、ジアルコール又はポリアルコールであり得て、ただし、1個のヒドロキシル基のみが(メタ)アクリル酸でエステル化されている);芳香族アルコール(アルキル化フェノールを含むフェノール類等)のモノ(メタ)アクリレートエステル;アルキルアリールアルコール(ベンジルアルコール等)のモノ(メタ)アクリレートエステル;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール等のオリゴマー及びポリマーグリコールのモノ(メタ)アクリレートエステル;グリコール及びオリゴグリコールのモノアルキルエーテルのモノ(メタ)アクリレートエステル;アルコキシル化(例えば、エトキシル化及び/又はプロポキシル化)脂肪族アルコールのモノ(メタ)アクリレートエステル(ここで、脂肪族アルコールは、直鎖、分岐状又は脂環式であり得て、モノアルコール、ジアルコール又はポリアルコールであり得て、ただし、アルコキシル化脂肪族アルコールの1個のヒドロキシル基のみが(メタ)アクリル酸でエステル化されている);アルコキシル化(例えば、エトキシル化及び/又はプロポキシル化)芳香族アルコール(アルコキシル化フェノール等)のモノ(メタ)アクリレートエステル;カプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等が挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0084】
以下の化合物は、本発明の照射硬化性組成物における使用に適したモノ(メタ)アクリレート官能化モノマーの詳細な例である:メチル(メタ)アクリレート;エチル(メタ)アクリレート;n-プロピル(メタ)アクリレート;n-ブチル(メタ)アクリレート;イソブチル(メタ)アクリレート;n-ヘキシル(メタ)アクリレート;2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート;n-オクチル(メタ)アクリレート;イソオクチル(メタ)アクリレート;n-デシル(メタ)アクリレート;n-ドデシル(メタ)アクリレート;トリデシル(メタ)アクリレート;テトラデシル(メタ)アクリレート;ヘキサデシル(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート;2-及び3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;2-メトキシエチル(メタ)アクリレート;2-エトキシエチル(メタ)アクリレート;2-及び3-エトキシプロピル(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート;アルコキシル化テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート;2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート;イソデシル(メタ)アクリレート:2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート;ラウリル(メタ)アクリレート;アルコキシル化フェノール(メタ)アクリレート;アルコキシル化ノニルフェノール(メタ)アクリレート;環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート;トリシクロデカンメタノール(メタ)アクリレート;tert-ブチルシクロヘキサノール(メタ)アクリレート;トリメチルシクロヘキサノール(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールモノブチルエーテル(メタ)アクリレート;トリエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート;エトキシル化ラウリル(メタ)アクリレート;メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート;ヒドロキシルエチルブチルウレタン(メタ)アクリレート;3-(2-ヒドロキシアルキル)オキサゾリジノン(メタ)アクリレート;及びそれらの組み合わせ。
【0085】
一実施形態では、(メタ)アクリレート官能化モノマーは、分子1個あたり2個以上の(メタ)アクリレート基を含有する(メタ)アクリレート官能化モノマーを含み得る。分子1個あたり2個以上の(メタ)アクリレート基を含有する適切な(メタ)アクリレート官能化モノマーの例としては、多価アルコールのアクリレート及びメタクリレートエステル(分子1個あたり2個以上、例えば2~6個のヒドロキシル基を含有する有機化合物)が挙げられる。適切な多価アルコールの詳細な例としては、C2~20アルキレングリコール(C2~10アルキレン基を有するグリコールが好ましく、炭素鎖は分岐していてもよい;例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、テトラメチレングリコール(1,4-ブタンジオール)、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,12-ドデカンジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、ビスフェノール類、及び水素化ビスフェノール類、並びにそれらのアルコキシル化(例えば、エトキシル化及び/又はプロポキシル化)誘導体)、ジエチレングリコール、グリセリン、アルコキシル化グリセリン、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、アルコキシル化トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、アルコキシル化ジトリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、アルコキシル化ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、アルコキシル化ジペンタエリトリトール、シクロヘキサンジオール、アルコキシル化シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、アルコキシル化シクロヘキサンジメタノール、ノルボルネンジメタノール、アルコキシル化ノルボルネンジメタノール、ノルボルナンジメタノール、アルコキシル化ノルボルナンジメタノール、芳香環を含有するポリオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノールエチレンオキシド付加物、ビスフェノールエチレンオキシド付加物、水素化ビスフェノールエチレンオキシド付加物、ビスフェノールプロピレンオキシド付加物、水素化ビスフェノールプロピレンオキシド付加物、シクロヘキサン-1,4-ジ
メタノールプロピレンオキシド付加物、糖アルコール、並びにアルコキシル化糖アルコールが挙げられる。そのような多価アルコールは、((メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸無水物、(メタ)アクリロイルクロリド等で)完全に又は部分的にエステル化され得て、ただし、これらは、分子1個あたり少なくとも2個の(メタ)アクリレート官能基を含有する。本明細書で使用される場合、「アルコキシル化」という用語は、1個又は複数のオキシアルキレン部分(例えば、オキシエチレン及び/又はオキシプロピレン部分)を含有する化合物を指す。オキシアルキレン部分は、一般構造-R-O-に対応し、式中、Rは、-CH2CH2-又は-CH2CH(CH3)-等の二価脂肪族部分である。例えば、アルコキシル化化合物は、分子1個あたり1~30個のオキシアルキレン部分を含有し得る。
【0086】
分子1個あたり2個以上の(メタ)アクリレート基を含有する例示的な(メタ)アクリレート官能化モノマーとしては、エトキシル化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート;トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート;テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート;1,4-ブタンジオールジアクリレート;1,4-ブタンジオールジメタクリレート;ジエチレングリコールジアクリレート;ジエチレングリコールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート;1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート;ネオペンチルグリコールジアクリレート;ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコール(600)ジメタクリレート(ここで、600は、ポリエチレングリコール部分のおおよその数平均分子量を指す);ポリエチレングリコール(200)ジアクリレート;1,12-ドデカンジオールジメタクリレート;テトラエチレングリコールジアクリレート;トリエチレングリコールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリブタジエンジアクリレート;メチルペンタンジオールジアクリレート;ポリエチレングリコール(400)ジアクリレート;エトキシル化2ビスフェノールAジメタクリレート;エトキシル化3ビスフェノールAジメタクリレート;エトキシル化3ビスフェノールAジアクリレート;シクロヘキサンジメタノールジメタクリレート;シクロヘキサンジメタノールジアクリレート;エトキシル化10ビスフェノールAジメタクリレート(ここで、「エトキシル化」に続く数字は、分子1個あたりのオキシアルキレン部分の平均数である);ジプロピレングリコールジアクリレート;エトキシル化4ビスフェノールAジメタクリレート;エトキシル化6ビスフェノールAジメタクリレート;エトキシル化8ビスフェノールAジメタクリレート;アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート;アルコキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート;ドデカンジアクリレート;エトキシル化4ビスフェノールAジアクリレート;エトキシル化10ビスフェノールAジアクリレート;ポリエチレングリコール(400)ジメタクリレート;ポリプロピレングリコール(400)ジメタクリレート;金属ジアクリレート;修飾された金属ジアクリレート;金属ジメタクリレート;ポリエチレングリコール(1000)ジメタクリレート;メタクリレート化ポリブタジエン;プロポキシル化2ネオペンチルグリコールジアクリレート;エトキシル化30ビスフェノールAジメタクリレート;エトキシル化30ビスフェノールAジアクリレート;アルコキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート;ポリエチレングリコールジメタクリレート;1,3-ブチレングリコールジアクリレート;エトキシル化2ビスフェノールAジメタクリレート;ジプロピレングリコールジアクリレート;エトキシル化4ビスフェノールAジアクリレート;ポリエチレングリコール(600)ジアクリレート;ポリエチレングリコール(1000)ジメタクリレート;トリシクロデカンジメタノールジアクリレート;プロポキシル化2ネオペンチルグリコールジアクリレート等のプロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート;アルコキシル化脂肪族アルコールのジアクリレート;トリメチロールプロパントリメタクリレート;トリメチロールプロパントリアクリレート;トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート;エトキシル化20トリメチロールプロパントリアクリレート;ペンタエリトリトールトリアクリレート;エトキシル化3トリメチロールプロパントリアクリレート;プロポキシル化3トリメチロールプロパントリアクリレート;エトキシル化6トリメチロールプロパントリアクリレート;プロポキシル化6トリメチロールプロパントリアクリレート;エトキシル化9トリメチロールプロパントリアクリレート;アルコキシル化三官能性アクリレートエステル;三官能性メタクリレートエステル;三官能性アクリレートエステル;プロポキシル化3グリセリルトリアクリレート;プロポキシル化5.5グリセリルトリアクリレート;エトキシル化15トリメチロールプロパントリアクリレート;三官能性リン酸エステル;三官能性アクリル酸エステル;ペンタエリトリトールテトラアクリレート;ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート;エトキシル化4ペンタエリトリトールテトラアクリレート;ペンタエリトリトールポリオキシエチレンテトラアクリレート;ジペンタエリトリトールペンタアクリレート;及びペンタアクリレートエステルを挙
げることができる。
【0087】
本発明の照射硬化性組成物は、照射硬化性組成物の総質量に対して、10~80質量%、特に15~75質量%、より特定すると20~70質量%の(メタ)アクリレート官能化モノマーを含み得る。
【0088】
一実施形態では、照射硬化性組成物は、(メタ)アクリレート官能化オリゴマーを含む。照射硬化性組成物は、(メタ)アクリレート官能化オリゴマーの混合物を含み得る。
【0089】
(メタ)アクリレート官能化オリゴマーは、他の属性のなかでも、本発明の照射硬化性組成物を使用して調製された硬化ポリマーの柔軟性、強度、及び/又は弾性率を向上させるために選択され得る。
【0090】
(メタ)アクリレート官能化オリゴマーは、1~18個の(メタ)アクリレート基、特に2~6個の(メタ)アクリレート基、より特定すると2~6個のアクリレート基を有し得る。
【0091】
(メタ)アクリレート官能化オリゴマーは、600g/mol以上、特に800~15,000g/mol、より特定すると1,000~5,000g/molの数平均分子量を有し得る。
【0092】
特に、(メタ)アクリレート官能化オリゴマーは、(メタ)アクリレート官能化ウレタンオリゴマー(「ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー」、「ポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー」、又は「カルバメート(メタ)アクリレートオリゴマー」と称することもある)、(メタ)アクリレート官能化エポキシオリゴマー(「エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー」と称することもある)、(メタ)アクリレート官能化ポリエーテルオリゴマー(「ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー」と称することもある)、(メタ)アクリレート官能化ポリジエンオリゴマー(「ポリジエン(メタ)アクリレートオリゴマー」と称することもある)、(メタ)アクリレート官能化ポリカーボネートオリゴマー(「ポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマー」と称することもある)、及び(メタ)アクリレート官能化ポリエステルオリゴマー(「ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー」と称することもある)、並びにそれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0093】
好ましくは、(メタ)アクリレート官能化オリゴマーは、(メタ)アクリレート官能化ウレタンオリゴマー、より好ましくはアクリレート官能化ウレタンオリゴマーを含む。有利には、(メタ)アクリレート官能化オリゴマーは、2個の(メタ)アクリレート基を有する(メタ)アクリレート官能化ウレタンオリゴマー、より好ましくは、2個のアクリレート基を有するアクリレート官能化ウレタンオリゴマーを含む。
【0094】
例示的なポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、アクリル酸若しくはメタクリル酸又はそれらの混合物若しくは合成等価物とヒドロキシル基末端ポリエステルポリオールとの反応生成物が挙げられる。反応プロセスは、特にポリエステルポリオールが二官能性である場合に、ポリエステルポリオールのすべて又は本質的にすべてのヒドロキシル基が(メタ)アクリレート化されるように実施され得る。ポリエステルポリオールは、ポリヒドロキシル官能性成分(特に、ジオール)とポリカルボン酸官能性化合物(特に、ジカルボン酸及び無水物)との重縮合反応によって作製することができる。ポリヒドロキシル官能性及びポリカルボン酸官能性成分は、それぞれ、直鎖状、分岐状、脂環式、又は芳香族の構造を有し得て、個別に又は混合物として使用され得る。
【0095】
適切なエポキシ(メタ)アクリレートの例としては、アクリル酸若しくはメタクリル酸又はそれらの混合物とエポキシ樹脂(ポリグリシジルエーテル又はエステル)との反応生成物が挙げられる。エポキシ樹脂は、特に、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3',4'-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-1,4-ジオキサン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンオキシド、4-ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシル-3',4'-エポキシ-6'-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキシド、エチレングリコールのジ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール及びグリセロール等の脂肪族多価アルコールに1つ又は複数のアルキレンオキシドを付加することによって得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル、これらの化合物にアルキレンオキシドを付加することによって得られるフェノール、クレゾール、ブチルフェノール又はポリエーテルアルコールのモノグリシ
ジルエーテル、高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化ダイズ油、エポキシブチルステアリン酸、エポキシオクチルステアリン酸、エポキシ化アマニ油、エポキシ化ポリブタジエン等から選択され得る。
【0096】
適切なポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、アクリル酸若しくはメタクリル酸又はそれらの合成等価物若しくは混合物と、ポリエーテルポリオールであるポリエーテロール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリテトラメチレングリコール等)との縮合反応生成物が挙げられるが、これらに限定されることはない。適切なポリエーテロールは、エーテル結合及び末端ヒドロキシル基を含有する直鎖状又は分岐状物質であり得る。ポリエーテロールは、テトラヒドロフラン又はアルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド)等の環状エーテルとスターター分子(startermolecule)との開環重合によって調製することができる。適切なスターター分子としては、水、ポリヒドロキシル官能性材料、ポリエステルポリオール、及びアミンが挙げられる。
【0097】
本発明の照射硬化性組成物における使用に適したポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(「ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー」と称することもある)としては、脂肪族、脂環式及び/又は芳香族ポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオールと、(メタ)アクリレート末端基でキャップされた、脂肪族、脂環式及び/又は芳香族ポリエステルジイソシアネート及びポリエーテルジイソシアネートとに基づくウレタンが挙げられる。適切なポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、脂肪族ポリエステルベースのウレタンジ及びテトラアクリレートオリゴマー、脂肪族ポリエーテルベースのウレタンジ及びテトラアクリレートオリゴマー、並びに脂肪族ポリエステル/ポリエーテルベースのウレタンジ及びテトラアクリレートオリゴマーが挙げられる。
【0098】
ポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、脂肪族、脂環式及び/又は芳香族ポリイソシアネート(例えば、ジイソシアネート、トリイソシアネート)を、OH基末端ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリオルガノシロキサンポリオール(例えば、ポリジメチルシロキサンポリオール)若しくはポリジエンポリオール(例えば、ポリブタジエンポリオール)、又はそれらの組み合わせと反応させて、イソシアネート官能化オリゴマーを形成し、次いで、これらのイソシアネート官能化オリゴマーを、ヒドロキシエチルアクリレート又はヒドロキシエチルメタクリレート等のヒドロキシル官能化(メタ)アクリレートと反応させて、末端(メタ)アクリレート基を提供することによって調製することができる。例えば、ポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、分子1個あたり2、3、4個以上の(メタ)アクリレート官能基を含有し得る。当技術分野で公知のように、ポリウレタン(メタ)アクリレートを調製するために、他の付加順序も実践することができる。例えば、ヒドロキシル官能化(メタ)アクリレートを最初にポリイソシアネートと反応させ、イソシアネート官能化(メタ)アクリレートを得て、次いで、このイソシアネート官能化(メタ)アクリレートを、OH基末端ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリジメチルシロキサンポリオール、ポリブタジエンポリオール、又はそれらの組み合わせと反応させることができる。更なる別の実施形態では、ポリイソシアネートを、最初に、前述のタイプのいずれかのポリオールを含むポリオールと反応させて、イソシアネート官能化ポリオールを得て、その後、このイソシアネート官能化ポリオールをヒドロキシル官能化(メタ)アクリレートと反応させて、ポリウレタン(メタ)アクリレートを得ることができる。或いは、すべての成分を組み合わせて、同時に反応させることができる。
【0099】
適切なアクリル(メタ)アクリレートオリゴマー(当技術分野では、「アクリルオリゴマー」と称することもある)としては、1個以上の(メタ)アクリレート基(オリゴマーの末端にあっても、又はアクリル骨格にぶら下がっていてもよい)で官能化されたオリゴマーアクリル骨格を有する物質であると説明され得るオリゴマーが挙げられる。アクリル骨格は、アクリルモノマーの繰り返し単位から構成される、ホモポリマー、ランダムコポリマー、又はブロックコポリマーであり得る。アクリルモノマーは、C1~C6アルキル(メタ)アクリレート等の任意のモノマー(メタ)アクリレート、並びにヒドロキシル、カルボン酸及び/又はエポキシ基を有する(メタ)アクリレート等の官能化(メタ)アクリレートであり得る。アクリル(メタ)アクリレートオリゴマーは、モノマーであって、その少なくとも一部が、ヒドロキシル、カルボン酸及び/又はエポキシ基で官能化されたモノマー(例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート)をオリゴマー化して、官能化されたオリゴマー中間体を得て、次いで、この官能化されたオリゴマー中間体を1種又は複数の(メタ)アクリレート含有反応物と反応させて、所望の(メタ)アクリレート官能基を導入すること等の当技術分野で公知の任意の手順を使用して調製することができる。
【0100】
上記のタイプのいずれのオリゴマーも、当技術分野で公知の手順に従って、アミン又は硫化物(例えば、チオール)で修飾され得る。そのようなアミン及び硫化物で修飾されたオリゴマーは、例えば、塩基性オリゴマー中に存在する(メタ)アクリレート官能基の比較的小さな部分(例えば、2~15%)をアミン(例えば、第二級アミン)又は硫化物(例えば、チオール)と反応させることによって調製することができ、修飾する化合物は、マイケル付加反応において(メタ)アクリレートの炭素-炭素二重結合に付加する。
【0101】
本発明の照射硬化性組成物は、照射硬化性組成物の総質量に対して、10~80質量%、特に15~75質量%、より特定すると20~70質量%の(メタ)アクリレート官能化オリゴマーを含み得る。
【0102】
本発明による共開始剤混合物は、ワニス、ラッカー、又は印刷インクを含む任意の照射硬化性組成物に使用することができる。該組成物は、分散剤、分散相乗剤、阻害剤、界面活性剤、又は着色剤、すなわち顔料若しくは染料等の他の添加剤を更に含有し得る。
【0103】
式Iによる化合物を含む共開始剤は、適切な酸塩化物と、ジ(トリメチロールプロパン)を含む2種以上のアルコール又はポリオールとの間で単純に縮合反応させることによって調製することができ、それによって、同じ反応容器内で、生成物であるエステルの混合物が提供される(スキーム1)。次いで、該混合物は、酸塩基抽出を使用して単離及び精製することができる。
【0104】
【化9】
【0105】
[式中、R1及びR2は、独立して、メチル又はエチル基を表し、n及びmは整数を表す]。
多くの場合、n及びmは、独立して、1~8の範囲、多くの場合、2、3及び4を含む2~4の範囲の整数となる。
【0106】
1種のポリオール(詳細には、ジ(トリメチロールプロパン))のみを使用しても、使用されるポリオール及び酸塩化物の化学量論に応じて、完全及び部分的に置換された生成物の混合物を得ることができ、それによって、同様に、生成物の混合物が生じる(スキーム2)。
【0107】
【化10】
【0108】
[式中、R1及びR2は、独立して、メチル又はエチル基を表す]。
【0109】
対応するエトキシル化化合物は、エトキシル化ポリオール(詳細には、エトキシル化ジ(トリメチロールプロパン))を使用して同様の手法で得ることができる。
【0110】
式Iによる化合物を含む共開始剤を作製するための適切な酸塩化物の例としては、4-(ジメチルアミノ)ベンゾイルクロリド、4-(ジエチルアミノ)ベンゾイルクロリド、及び4-[エチル(メチル)アミノ]ベンゾイルクロリド、又はそれらの塩酸塩が挙げられる。
【0111】
式Iによる化合物を含む共開始剤を作製するための適切なポリオールの例としては、ジ(トリメチロールプロパン)、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、トリペンタエリトリトール、ソルビトール、マンニトール、グルコース、スクロース、ネオペンチルグリコール、それらの任意のエトキシル化又はプロポキシル化された変形形態、並びに、したがって任意の立体異性体形態が挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0112】
或いは、式Iによる化合物を含む共開始剤は、式Iの化合物及び補助アミンの合成を別々に合成すること、例えば、アルコールを適切な酸塩化物と反応させることによって調製することができ、次いで、式Iの化合物及び補助アミンは、例えば、これらの化合物を適切な溶媒に溶解させ、次いで溶媒を除去して、混合物を提供することによって、所望の割合で組み合わせることができる。
【0113】
N,N-ジメチルアミノベンゾエートエステルは、N,N-ジメチルアミノ安息香酸から上記の方法を使用して調製することができ、このN,N-ジメチルアミノ安息香酸自体は、ホルムアルデヒド、適切な還元剤(例えば、水素)、及び適切な触媒の存在下でのニトロ安息香酸の還元的アルキル化を介して調製することができる。酸塩化物は、カルボン酸を塩化チオニル等の適切な塩素化試薬と反応させることによって調製することができる(スキーム3)。
【0114】
これらの生成物のN,N-ジエチルアミノ変形形態を調製するために、アセトアルデヒド、還元剤、及び触媒の存在下でのニトロ安息香酸の還元的アルキル化を介して、必要なN,N-ジエチルアミノ安息香酸中間体を調製することができる。混合されたメチル及びエチル置換誘導体は、ホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドの両方を順番に使用する段階的なアルキル化を介して調製することができる。
【0115】
【化11】
【0116】
[式中、RはH又はメチル基を表す]。
【0117】
或いは、多官能性ニトロベンゾエートエステルの混合物は、硫酸又はp-トルエンスルホン酸等の酸触媒の存在下で、ニトロ安息香酸を、ジ(トリメチロールプロパン)を含む1種又は複数のポリオールでエステル化することによって調製することができる(スキーム4)。適切な還元剤及び触媒の存在下でホルムアルデヒド又はアセトアルデヒドを使用してニトロベンゾエートエステルのこの混合物を還元的アルキル化すると、同様に、式Iによる化合物を含むジアルキルアミノベンゾエートエステルの混合物を得ることができる(スキーム5)。
【0118】
【化12】
【0119】
[式中、n及びmは整数を表す]。
多くの場合、n及びmは、独立して、1~8の範囲、多くの場合、2、3及び4を含む2~4の範囲の整数となる。
【0120】
【化13】
【0121】
[式中、RはH又はメチル基を表し、n及びmは整数を表す]。
多くの場合、n及びmは、独立して、1~8の範囲、多くの場合、2、3及び4を含む2~4の範囲の整数となる。
【0122】
ジアルキルアミノベンゾエート誘導体は、適切な塩基の存在下でのジアルキルアミン(ジメチルアミン又はジエチルアミン等)とフルオロベンゾエート誘導体との間の求核芳香族置換反応を介して調製することもできる(スキーム6)。クロロベンゾエート又はブロモベンゾエートエステル等の他のハロゲン置換芳香族エステル、又はヨウ化物若しくはトリフレート等の他の脱離基を含有する化合物も、より強制的な条件下で、又は遷移金属塩等のクロスカップリング触媒を用いる場合に使用され得る。
【0123】
【化14】
【0124】
[式中、R1及びR2は、独立して、メチル又はエチル基を表し、R4は任意の置換基を表す]。
【0125】
驚くべきことに、式Iによる化合物を含むこれらの方法を使用して調製された共開始剤混合物は、アクリレート樹脂に十分に可溶であり、UV硬化プロセスにおいて幅広い適用性があると見出されているが、個々の成分は、単独で有用であるほど十分に可溶ではない可能性がある。更に、混合物は、本発明の好ましい例における成分の高い分子量にもかかわらず、高い反応性を示す。
【0126】
特に明記しない限り、記載されている整数はそれぞれ、当業者によって理解されるように、他の任意の整数と組み合わせて使用され得る。更に、本発明のすべての態様は、好ましくは、その態様に関連して説明されている特徴を「含む」が、これらは、特に、特許請求の範囲に概説されているそれらの特徴から「なり得る」又は「本質的になり得る」と想定される。更に、すべての用語は、本明細書に特に定義されていない限り、当技術分野で一般に理解されているそれらの意味を与えることが意図されている。
【0127】
更に、本発明を論じる際に、特段の記載がない限り、パラメータの許容範囲の上限又は下限の代替的な値の開示は、代替の小さい方と大きい方との間にある該パラメータの各中間値自体も、パラメータの可能な値として開示されていると解釈されるべきである。
【0128】
更に、特に明記しない限り、本出願に見られるすべての数値は、「約」という用語によって修飾されていると理解されるべきである。
【0129】
本発明をより容易に理解することができるように、以下の図及び詳細な例を参照して本発明を更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0130】
図1】60℃、10日間、平均3回の実行(標準偏差を含む)での、アセトニトリルへのアミン共開始剤(アミンSpeedCure EDB及びSpeedCure 7040、並びに混合物AM1)の移動を示すグラフである。
図2】60℃、10日間、平均3回の実行(標準偏差を含む)での、脱イオン水中で50%v/vのエタノールへのアミン共開始剤(アミンSpeedCure EDB及びSpeedCure 7040、並びに混合物AM1)の移動を示すグラフである。
図3】60℃、10日間、平均3回の実行(標準偏差を含む)での、脱イオン水中で3%w/vの酢酸へのアミン共開始剤(アミンSpeedCure EDB及びSpeedCure 7040、並びに混合物AM1)の移動を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0131】
以下の実施例は、本発明の好ましい実例を調製する方法に関し、その後に、材料について行った関連する試験の結果が記載されている。
【実施例
【0132】
材料
実施例で使用されている材料はすべて、特に明記しない限り、Sigma-Aldrich Company Ltd.社及びTokyo Chemical Industry Ltd.社等の標準的な商業的供給源から容易に入手可能である。エトキシル化ビスフェノールAジメタクリレート(EO/フェノール10)及びトリプロピレングリコールジアクリレートは、Sartomer社から入手可能である。Ebercryl 40は、Allnex社から入手可能である。
【0133】
(実施例1)
アミン共開始剤成分の合成
4-(ジメチルアミノ)ベンゾイルクロリド塩酸塩の合成
【0134】
【化15】
【0135】
N,N-ジメチルホルムアミド(7.0mL、91.0mmol)を室温でトルエン(1.5L)中の4-ジメチルアミノ安息香酸(300g、1.82mol)の撹拌懸濁液に添加し、混合物を65℃に加熱した。塩化チオニル(158mL、2.18mol)をこの温度で約1.5時間かけて添加し、反応混合物を60~65℃で更に5時間にわたって加熱した。この間に出発材料が溶解し、二相性の橙色の溶液が生成された。HPLCによる分析は、反応のこの段階が完了したことを示していた。減圧下で濃縮すると、塩酸塩と遊離アミンとの混合物としての酸塩化物が生成され、これを次のステップですぐに使用した。
【0136】
アミンAC1の合成(式I-aの化合物)
【0137】
【化16】
【0138】
トリエチルアミン(508mL、3.64mol)を室温で30分かけてトルエン(2.5L)中の4-(ジメチルアミノ)ベンゾイルクロリド塩酸塩(1.82mol)の撹拌懸濁液に添加した。ジ(トリメチロールプロパン)(118g、0.473mol)を一度に添加し、混合物を16時間にわたって85℃に加熱した。混合物を室温に冷却し、水(1L)を添加した。層を分離し、有機層を、水(2×500mL)、飽和重炭酸ナトリウム溶液(500mL)、及びブライン(500mL)で洗浄した。有機相を乾燥させ(MgSO4)、濃縮し、減圧下で完全に乾燥させると、淡いクリーム色の固形物(368g、96%)としての粗生成物が生成された。沸騰している酢酸エチル(150mL)から固形物の一部(30g)を再結晶することによって、無色の固形物としての純粋な生成物が生成され、これをジクロロメタン(100mL)に再溶解させ、減圧下で濃縮し、真空下で完全に乾燥させると、純粋な生成物AC1が生成された。1H NMR (400 MHz, CDCl3); 7.87 (d, J = 9.0 Hz, 8H), 6.59 (d, J = 9.0 Hz, 8H), 4.32 (d, J = 1.5 Hz, 8H), 3.51 (s, 4H), 3.01 (s, 24H), 1.62 (q, J = 7.5 Hz, 4H), 0.91 (t, J = 7.5 Hz, 6H)。
【0139】
アミンAC2の合成(式IIの化合物)
【0140】
【化17】
【0141】
トリエチルアミン(42.4mL、303mmol)を室温で10分かけてトルエン(125mL)中の4-(ジメチルアミノ)ベンゾイルクロリド塩酸塩(151mmol)の撹拌懸濁液に添加した。ジ(トリメチロールプロパン)(12.6g、50.5mmol)を一度に添加し、混合物を16時間にわたって85℃に加熱した。混合物を室温に冷却し、水(50mL)を添加した。層を分離し、有機層を、水(2×50mL)、飽和重炭酸ナトリウム溶液(50mL)、及びブライン(50mL)で洗浄した。有機相を乾燥させ(MgSO4)、減圧下で濃縮すると、粗生成物が生成された。カラムクロマトグラフィー(50:1のジクロロメタン-メタノールでの溶出)による精製によって、無色の固形物(4.7g、13%)としての純粋な生成物AC2が得られた。1H NMR (400 MHz, CDCl3); 7.98-7.66 (m, 6H), 6.73-6.49 (m, 6H), 4.45-4.15 (m, 6H), 3.62-3.28 (m, 6H), 3.02 (s, 18H), 1.62 (q, J = 7.5.Hz, 2H), 1.46 (q, J = 7.5 Hz, 2H), 0.96 (t, J = 7.5 Hz, 3H), 0.86 (t, J = 7.5 Hz, 3H)。
【0142】
アミンAC3の合成(式IIIの化合物)
【0143】
【化18】
【0144】
トリエチルアミン(17.0mL、121mmol)を室温で5分かけてトルエン(50mL)中の4-(ジメチルアミノ)ベンゾイルクロリド塩酸塩(60.6mmol)の撹拌懸濁液に添加した。トリメチロールプロパン(2.85g、21.3mmol)を一度に添加し、混合物を16時間にわたって90℃に加熱した。混合物を室温に冷却し、水(50mL)を添加した。層を分離し、有機層を、水(2×50mL)、飽和重炭酸ナトリウム溶液(50mL)、及びブライン(50mL)で洗浄した。有機相を乾燥させ(MgSO4)、減圧下で濃縮すると、粗生成物が生成された。6:1の酢酸エチル-トルエン(70mL)からの再結晶によって、淡いクリーム色の固形物(6.2g、51%)としての純粋な生成物が生成され、これをジクロロメタン(50mL)に再溶解させ、減圧下で濃縮し、真空下で完全に乾燥させると、純粋な生成物AC3が生成された。1H NMR (400 MHz, CDCl3):7.87 (d, J = 9.0 Hz, 6H), 6.60 (d, J = 9.0 Hz, 6H), 4.41 (s, 6H), 3.01 (s, 18H), 1.72 (q, J = 7.5 Hz, 2H), 0.99 (t, J = 7.5 Hz, 3H)。
【0145】
アミンAC4の合成(式IVの化合物)
【0146】
【化19】
【0147】
トリエチルアミン(17.0mL、121mmol)を室温で5分かけてトルエン(50mL)中の4-(ジメチルアミノ)ベンゾイルクロリド塩酸塩(60.6mmol)の撹拌懸濁液に添加した。ペンタエリトリトール(2.15g、15.8mmol)を一度に添加し、混合物を16時間にわたって90℃に加熱し、その間に固形物が沈殿した。混合物を室温に冷却し、tert-ブチルメチルエーテル(70mL)を添加した。固形物を、濾過によって収集し、水(100mL)、メタノール(100mL)、及びtert-ブチルメチルエーテル(50mL)で洗浄すると、粗生成物が生成された。沸騰しているアセトニトリルからの再結晶によって、クリーム色の固形物(7.1g、62%)としての純粋な生成物が得られ、これをジクロロメタン(50mL)に再溶解させ、減圧下で濃縮し、真空下で完全に乾燥させると、純粋な生成物AC4が生成された。1H NMR (400 MHz, CDCl3); 7.88 (d, J = 9.0 Hz, 8H), 6.58 (d, J = 9.0 Hz, 8H), 4.62 (s, 8H), 3.00 (s, 24H)。
【0148】
アミンAC5の合成(式Vの化合物)
【0149】
【化20】
【0150】
トリエチルアミン(8.5mL、60.6mmol)を室温で5分かけてトルエン(25mL)中の4-(ジメチルアミノ)ベンゾイルクロリド塩酸塩(30.3mmol)の撹拌懸濁液に添加した。グリセロール(0.85g、9.23mmol)を一度に添加し、混合物を16時間にわたって90℃に加熱した。混合物を室温に冷却し、飽和重炭酸ナトリウム溶液(50mL)を添加した。層を分離し、有機層を、飽和重炭酸ナトリウム溶液(50mL)、水(50mL)、及びブライン(50mL)で洗浄した。有機相を乾燥させ(MgSO4)、減圧下で濃縮すると、粗生成物が生成された。沸騰しているアセトニトリルからの再結晶によって、淡いクリーム色の固形物としての純粋な生成物(1.28g、26%)が得られ、これをジクロロメタン(30mL)に再溶解させ、減圧下で濃縮し、真空下で完全に乾燥させると、純粋な生成物AC5が生成された。1H NMR (400 MHz, CDCl3); 7.95-7.90 (m, 6H), 6.63-6.61 (m, 6H), 5.74 (p, J = 5.0 Hz, 1H), 4.62 (qd, J = 12.0及び5.0 Hz, 4H), 3.02 (s, 18H)。
【0151】
(実施例2)
共開始剤混合物の調製
アミン混合物AM1の調製
それぞれAC1及びAC2の82:18混合物:
【0152】
【化21】
【0153】
トリエチルアミン(508mL、3.64mol)を室温で30分かけてトルエン(2.5L)中の4-(ジメチルアミノ)ベンゾイルクロリド塩酸塩(1.82mol)の撹拌懸濁液に添加した。ジ(トリメチロールプロパン)(118g、0.473mol)を一度に添加し、混合物を16時間にわたって85℃に加熱した。混合物を室温に冷却し、水(1L)を添加した。層を分離し、有機層を、水(2×500mL)、飽和重炭酸ナトリウム溶液(500mL)、及びブライン(500mL)で洗浄した。有機相を乾燥させ(MgSO4)、濃縮し、減圧下で完全に乾燥させると、およそ82:18の比(HPLC面積%による)の2種の生成物AC1及びAC2(368g、収率96%)を含有する淡いクリーム色の固形物としての生成物が得られた。
【0154】
アミン混合物AM2の調製
それぞれ50:50w/wのAC1及びAC2の混合物:純粋な固体アミンAC1及びAC2を、50:50w/wの混合物を生成するような割合で組み合わせて、固体混合物をジクロロメタンに溶解させて、均質な溶液を生成した。溶媒を真空でロータリーエバポレーターにおいて除去し、得られた固形物を真空下で完全に乾燥させると、混合物AM2が生成された。
【0155】
アミン混合物AM3の調製
それぞれ25:75w/wのAC1及びAC2の混合物:純粋な固体アミンAC1及びAC2を、25:75w/wの混合物を生成するような割合で組み合わせて、固体混合物をジクロロメタンに溶解させて、均質な溶液を生成した。溶媒を真空でロータリーエバポレーターにおいて除去し、得られた固形物を真空下で完全に乾燥させると、混合物AM3が生成された。
【0156】
アミン混合物AM4の調製
それぞれ85:15w/wのAC1及びAC3の混合物:純粋な固体アミンAC1及びAC3を、85:15w/wの混合物を生成するような割合で組み合わせて、固体混合物をジクロロメタンに溶解させて、均質な溶液を生成した。溶媒を真空でロータリーエバポレーターにおいて除去し、得られた固形物を真空下で完全に乾燥させると、混合物AM4が生成された。
【0157】
アミン混合物AM5の調製
それぞれ85:15w/wのAC1及びAC4の混合物:純粋な固体アミンAC1及びAC4を、85:15w/wの混合物を生成するような割合で組み合わせて、固体混合物をジクロロメタンに溶解させて、均質な溶液を生成した。溶媒を真空でロータリーエバポレーターにおいて除去し、得られた固形物を真空下で完全に乾燥させると、混合物AM5が生成された。
【0158】
アミン混合物AM6の調製
それぞれ85:15w/wのAC1及びAC5の混合物:純粋な固体アミンAC1及びAC5を、85:15w/wの混合物を生成するような割合で組み合わせて、固体混合物をジクロロメタンに溶解させて、均質な溶液を生成した。溶媒を真空でロータリーエバポレーターにおいて除去し、得られた固形物を真空下で完全に乾燥させると、混合物AM6が生成された。
【0159】
(実施例3)
溶解度実験
この実施例は、単一成分系アミン共開始剤組成物と比較して改善された共開始剤混合物の溶解度を示し、式Iの化合物及び補助アミンの両方を含む組成物を提供するという利益を示す。比較のために、混合物AM1~AM6が代表的な例である、本発明によって提供されるアミン混合物の溶解度を、アミンAC1~AC5のみを含む単一成分系配合物と一緒に試験した。
【0160】
アミン相乗剤の混合物を、上記の方法のうちの1つを使用して調製した。
【0161】
固体アミンAC1~AC5、又はアミンの混合物AM1~AM6を、1%w/wずつ、撹拌された以下のアクリレート樹脂サンプル5.0gに分けて添加し、すべての固体材料が完全に溶解するまで、サンプルを15~20℃で撹拌した:HDDA(1,6-ヘキサンジオールジアクリレート)、TMPTA(トリメチロールプロパントリアクリレート)、TPGDA(トリプロピレングリコールジアクリレート)。以下に示される濃度(表2a~2k)では、特に明記しない限り、すべての固形物が、15~20℃で少なくとも7日間にわたって溶液中に留まった。この時間内に固形物が溶液から結晶化し始めた場合、混合物を約40℃に温めて固形物を再溶解させ、追加の樹脂の添加によって濃度を所定の値に調整し、それから、固形物は、15~20℃で少なくとも7日間にわたって、調整した濃度で溶解したままであった。10%w/w超の溶解度は、いずれの場合も試験しなかった。質量%は、混合物の総質量に基づく。
【0162】
【表2】
【0163】
【表3】
【0164】
【表4】
【0165】
固体材料は、最初は2%w/wで溶解していたが、24時間以内に3種の樹脂すべてから結晶化した。
【0166】
【表5】
【0167】
固体材料は、1%w/wでは溶解しないであろう。
【0168】
【表6】
【0169】
固体材料は、1%w/wでは溶解しないであろう。
【0170】
【表7】
【0171】
【表8】
【0172】
【表9】
【0173】
【表10】
【0174】
【表11】
【0175】
【表12】
【0176】
驚くべきことに、アミン混合物AM1~AM6は、ほとんどの純粋なアミン共開始剤AC1~AC5よりも良好なアクリレート樹脂への溶解度を呈し、AC2のみと同等である。
【0177】
(実施例4)
硬化実験
以下の実施例は、式Iの化合物と補助アミンとを含有する共開始剤の高い硬化速度を示す。比較のために、市販のアミン共開始剤SpeedCure EDB(Lambson Limited社)及び拡散阻害ポリマーアミンSpeedCure 7040(Lambson Limited社)についても試験した。更に、純粋なアミンAC1~AC5を、混合物AM1~AM6が代表的な例である、本発明によって提供される混合物と一緒に試験した。
【0178】
アミン共開始剤又は共開始剤混合物(0.20g)を、すべての固体材料が溶解するまで15~20℃で撹拌しながら、1%w/wのSpeedCure 2-ITX(Lambson Limited社)と4%w/wのSpeedCure BP(Lambson Limited社)とを70:30のエトキシル化ビスフェノールAジメタクリレート(EO/フェノール10):トリメチロールプロパントリアクリレート中に含有する樹脂混合物(4.0g)に添加した。固体アミンが溶解しない場合、これらの配合物は試験しなかった。
【0179】
配合物は、16m/minのベルト速度を有するDymax社の硬化装置を使用して、Hgランプ下で、6及び24μmの膜厚で硬化させた。「タックフリー」(TF)コーティング(軽く触れたときにコーティングの表面がべたつかなくなったときに決定される)又は「サムツイスト」試験(TT)によって決定される(すなわち、親指をひねり動作でコーティングにしっかりと押し付けたときに目に見えるマークが生じなくなるまで)完全硬化をもたらすために必要なランプ下でのパス数を表3に示す。
【0180】
【表13】
【0181】
明らかに、すべてのアミン混合物AM1~AM6が、これらの条件下で急速なUV硬化を促進するための効果的なアミン共開始剤である。これらの混合物は、SpeedCure EDBと同等の反応性を示し、拡散阻害ポリマーアミン共開始剤SpeedCure 7040よりもはるかに反応性が高い。驚くべきことに、混合物AM1~AM6中に存在するアミンの比較的高い分子量は、より小さな分子であるSpeedCure EDBと比較して、共開始剤としてのそれらの性能に悪影響を与えない。アミンAC3~AC5は、試験すべきアクリレート樹脂配合物には十分に溶解しなかったが、アミン混合物AM1~AM6は、この濃度で完全に溶解した。
【0182】
(実施例5)
移動実験
以下の実施例は、本発明によって定義されるようなアミン共開始剤の混合物を低移動性共開始剤系として使用する可能性を示す。
【0183】
90%w/wのEbecryl 40(Allnex社)と、4%w/wのSpeedCure BP(Lambson Limited社)と、1%w/wのSpeedCure 2-ITX(Lambson Limited社)と、5%w/wのSpeedCure EDB、SpeedCure 7040(Lambson Limited社)又はアミン共開始剤混合物AM1とを含有する配合物を、Hgランプ下で、24μmの膜の紙帯上で、完全に硬化するまで硬化させた(「サムツイスト」試験で測定、実施例3を参照)。硬化した紙帯をそれぞれ約100cm2のサイズにカットし、各紙片に付着した硬化樹脂の質量を記録した。硬化した紙帯をそれぞれ密閉圧力容器内の15mLの溶媒に沈め、オーブン内で10日間にわたって60℃で保持した。使用した溶媒は、アセトニトリル、水中で50%v/vのエタノール、又は水中で3%w/vの酢酸のいずれかであった。続いて、すべての容器を20~25℃に冷却し、紙帯を模擬溶媒から除去した。各溶媒のサンプルを濾過してHPLCに注入し、溶媒に溶解したすべての成分を適切なHPLC法を使用して溶出した。ピーク面積を前もって作成した検量線と比較することによって、注入された溶媒量中に存在するアミン共開始剤の質量を計算することができ、したがって、各サンプルの15mLの模擬溶媒中に溶解しているアミンの総量も計算することができた。SpeedCure 7040及び混合物AM1は複数の成分を含有しているため、これらの混合物中のすべての成分のピーク面積を合計した。硬化膜から模擬溶媒に移動したアミンの総量は、表4~6及び図1図3に、各硬化帯に存在するアミンの総量のパーセンテージとして表す(帯における硬化樹脂の総量の5%であると考えられる)。すべての実験を3回実施し、各アミンの結果の平均を取った。SpeedCure 2-ITX及びSpeedCure BPも、すべての場合に、(他の微量不純物と一緒に)硬化膜から周囲の溶媒に移動することが見られたが、これらは定量化しなかった。
【0184】
【表14】
【0185】
【表15】
【0186】
【表16】
【0187】
すべての場合において、高分子量アミン共開始剤AM1の混合物は、本発明の好ましい例であり、比較的低い分子量の共開始剤SpeedCure EDBよりもはるかに少ない程度で硬化膜から周囲の溶媒に移動した。食品模擬溶媒である水性エタノール及び水性酢酸(それぞれアルコール性食品及び酸性食品をシミュレートしている)の場合、混合物AM1の移動は、SpeedCure EDBよりもはるかに少なく、混合物AM1の成分のいずれかの検出可能な量は、酢酸水溶液系において検出されなかった。エタノール/水溶媒系では、混合物AM1は、ポリマーでないにもかかわらず、高い平均分子量を有するポリマーアミン共開始剤SpeedCure 7040と非常に類似した移動特性を有していた。したがって、本発明は、アクリレート樹脂への良好な溶解度を有するのみならず、先の実施例で実証されたように、著しくより速いUV硬化速度を促進しながら、市販のポリマーアミン共開始剤と同様の移動特性も有する、新規の共開始剤系を提供する。
図1
図2
図3
【国際調査報告】