IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バイリ-バイオ(チェンドゥ)ファーマスーティカル シーオー.,エルティーディー.の特許一覧

特表2022-552757カンプトテシン類医薬品及びその抗体複合体
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-20
(54)【発明の名称】カンプトテシン類医薬品及びその抗体複合体
(51)【国際特許分類】
   C07D 491/22 20060101AFI20221213BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221213BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20221213BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20221213BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
C07D491/22
A61P35/00
A61K31/4745
A61K47/68
A61P35/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021570456
(86)(22)【出願日】2020-09-15
(85)【翻訳文提出日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 CN2020115429
(87)【国際公開番号】W WO2022056696
(87)【国際公開日】2022-03-24
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522263714
【氏名又は名称】バイリ-バイオ(チェンドゥ)ファーマスーティカル シーオー.,エルティーディー.
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】ツー, イ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ワイリィ
(72)【発明者】
【氏名】チョウ,シー
(72)【発明者】
【氏名】チン,ウェンフェン
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ヨン
【テーマコード(参考)】
4C050
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C050AA01
4C050AA07
4C050BB04
4C050CC07
4C050DD02
4C050EE02
4C050FF02
4C050GG04
4C050HH01
4C076AA12
4C076AA95
4C076BB11
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF67
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB22
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA06
4C086NA07
4C086ZB26
4C086ZB27
(57)【要約】
本発明は、カンプトテシン類医薬品及びその抗体複合体を開示する。本発明者らは、ADC類医薬品に対する総合的な理解をもとに、一連の抗腫瘍カンプトテシンの活性誘導体を設計した。設計された抗腫瘍分子化合物は、実験において良好な抗腫瘍活性を示した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iで表されるカンプトテシン類化合物又はその薬学的に許容される塩。
【化1】
(式I中、R及びRはそれぞれ独立してC-Cアルキル基、置換アルキル基、-H、-CF、アリール基、置換アリール基及びヘテロアリール基からなる群から選ばれ、或いはR及びRはそれらに結合した炭素原子と共にシクロブタン、シクロペンタン又はシクロヘキサンを構成し、ただし、R及びRは同時に水素ではない。)
【請求項2】
は水素であり、RはC-Cアルキル基、-CF、アリール基、置換アリール基又はヘテロアリール基であり、或いはR及RはC-Cアルキル基、-CF、アリール基、ヘテロアリール基又は置換アリール基であり、或いはR及びRはそれらに結合した炭素原子と共にシクロブタン、シクロペンタン又はシクロヘキサンを構成し、
【化2】
構造式(a)中、Rは独立して-(CH)n-CH、-CF、アリール基、ヘテロアリール基又は置換アリール基であり、ただし、n=0、1又は2であり、
構造式(b)中、R及びRは独立して-(CH)n-CH、-CF、アリール基、ヘテロアリール基又は置換アリール基であり、ただし、n=0、1又は2であり、
構造式(c)中、R及びRはそれらに結合した炭素原子と共にシクロブタン、シクロペンタン又はシクロヘキサンを構成し、ただし、n=1、2又は3である、請求項1に記載のカンプトテシン類化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
は水素であり、Rは独立して-(CH)n-CH、-CF、アリール基、ヘテロアリール基又は置換アリール基であり、ただし、n=0、1又は2であり、
【化3】
に結合した炭素には、R体とS体の2種類の立体配座があり、
構造式(a-1)中、Rに結合した炭素はR体であり、
構造式(a-2)中、Rに結合した炭素はS体である、請求項2に記載のカンプトテシン類化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
アリール基上の置換基は、ハロゲン、ヒドロカルビル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アミノ基及びシアノ基からなる群から選ばれる、請求項1から3のいずれか1項に記載のカンプトテシン類化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
【化4】
からなる群から選ばれる、請求項1に記載のカンプトテシン類化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のカンプトテシン類化合物又はその薬学的に許容される塩を含む抗腫瘍薬であって、
肺がん、腎臓がん、尿道がん、結腸がん、直腸がん、前立腺がん、多形性膠芽腫、卵巣がん、膵臓がん、乳がん、黒色腫、肝臓がん、膀胱がん、胃がん、肺がん若しくは食道がんを含む固形腫瘍又は血液腫瘍を治療するための抗腫瘍薬。
【請求項7】
標的細胞に到達した後に薬物部分Dを放出することにより薬効を発揮するように構成される、式IIで表される抗体薬物複合体。
【化5】
式II中、Abは抗体、抗体断片又はタンパク質であり、
Lは、一端がAbに結合され、他端が薬物部分Dに結合される任意のリンカーであり、
Dは、請求項1から6のいずれか1項に記載のカンプトテシン類化合物又はその薬学的に許容される塩から選ばれ、Dのヒドロキシル基を介してLに結合され、
mは1-20の整数から選ばれる。)
【請求項8】
リンカーLは-O-、-N(R)n-、-CH-、-CH(R)n-、アミド結合、エステル結合、-S-、-(PEG)n-からなる群から選ばれ、ただし、nは1-3の整数から選ばれ、nは1-20の整数から選ばれる、請求項7に記載の抗体薬物複合体。
【請求項9】
前記抗体薬物複合体の抗体部分は、がん又は自己免疫疾患の標的細胞に特異的に結合される、請求項7又は8に記載の抗体薬物複合体。
【請求項10】
請求項7から9のいずれか1項に記載の抗体薬物複合体を含む医薬組成物であって、
肺がん、腎臓がん、尿道がん、結腸がん、直腸がん、前立腺がん、多形性膠芽腫、卵巣がん、膵臓がん、乳がん、黒色腫、肝臓がん、膀胱がん、胃がん、食道がんを含む固形腫瘍又は血液腫瘍を治療するための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗腫瘍薬として使用されるカンプトテシン類医薬品及びその抗体薬物複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
抗体薬物複合体(ADC)は、新しい標的薬として一般的には抗体又は抗体類リガンド、低分子薬物、及びリガンドと薬物とを結合するリンカーの3つの部分からなる。抗体薬物複合体は、抗原に対する抗体の特異的識別を利用し、薬物分子を標的細胞の近くに送達し、薬物分子を効果的に放出することにより治療の目的を達成する。2011年8月、米国食品医薬品局(FDA)は、ホジキンリンパ腫及び再発性変性大細胞リンパ腫(ALCL)の治療のためにSeattle Genetics社によって開発されたホジキンリンパ腫及び再発性変性大細胞リンパ腫(ALCL)の治療のための新しいADC薬であるAdecteisTMの市販を承認した。この薬の安全性及び有効性は、臨床的に実証されている。
【0003】
カンプトテシン類医薬品(イリノテカン、エキサテカン、SN38など)は、抗腫瘍特性を有する低分子化合物としてDNAトポイソメラーゼIを阻害することによって抗腫瘍効果を示すことが知られている。多くのカンプトテシン類医薬品は、臨床的に幅広く使用されており、主な適応症は、骨がん、前立腺がん、乳がん、膵臓がんなどである。現在臨床で使用されているイリノテカンとは異なり、エキサテカンは酵素によって活性化される必要はない。また、イリノテカンの薬力学的本体であるSN-38、及び臨床で使用されているトポテカンに比べて、エキサテカンは、トポイソメラーゼIに対してより強力な阻害効果を示し、インビトロで様々ながん細胞に対してより強力な殺傷効果を示す。特に、P糖タンパク質の発現を通じてSN-38に対する耐性を示すがん細胞に対しても有効である。エキサテカンは、単独の化学療法薬として未だに成功に市販されておらず、その高い細胞活性により治療濃度域が狭いためであると推測されている。
【0004】
抗体薬物複合体(ADC)類医薬品の優位性は、水溶性を向上させ、標的性を改善し、抗体が抗原に特異的に結合し、薬物を標的細胞の周囲に送達し、標的細胞の近くに薬物を放出することにより腫瘍細胞を効果的に殺し、毒・副作用を低減させることである。カンプトテシン類医薬品はADC医薬品においてかなりの応用の見通しがある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、より優れた抗腫瘍カンプトテシン化合物を開発し、ADC薬物における抗腫瘍低分子化合物の安全性、有効性を向上させ、優れた治療効果を有する抗腫瘍薬を得ることである。
【0006】
本発明者らは、ADC類医薬品に対する総合的な理解をもとに、一連の抗腫瘍カンプトテシンの活性誘導体を設計し、実験により、抗腫瘍低分子化合物が細胞実験においてより高い抗腫瘍活性を示したことを証明した。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、より優れた抗腫瘍効果を有するカンプトテシン誘導体及びその抗体薬物複合体を提供することを目的とする。
【0008】
式Iで表されるカンプトテシン類化合物又はその薬学的に許容される塩。
【化1】
式I中、R及びRはそれぞれ独立してC-Cアルキル基、置換アルキル基、-H、-CF、アリール基、置換アリール基及びヘテロアリール基からなる群から選ばれ、或いはR及びRはそれらに結合した炭素原子と共にシクロブタン、シクロペンタン又はシクロヘキサンを構成し、ただし、R及びRは同時に水素ではない。
【0009】
好ましくは、Rは水素であり、RはC-Cアルキル基、-CF、アリール基、置換アリール基又はヘテロアリール基であり、或いはR及RはC-Cアルキル基、-CF、アリール基、ヘテロアリール基又は置換アリール基であり、或いはR及びRはそれらに結合した炭素原子と共にシクロブタン、シクロペンタン又はシクロヘキサンを構成し、
【化2】
構造式(a)中、Rは独立して-(CH)n-CH、-CF、アリール基、ヘテロアリール基又は置換アリール基であり、ただし、n=0、1又は2であり、
構造式(b)中、R及びRは独立して-(CH)n-CH、-CF、アリール基、ヘテロアリール基又は置換アリール基であり、ただし、n=0、1又は2であり、
構造式(c)中、R及びRはそれらに結合した炭素原子と共にシクロブタン、シクロペンタン又はシクロヘキサンを構成し、ただし、n=1、2又は3である。
【0010】
より好ましくは、Rは水素であり、Rは独立して-(CH)n-CH、-CF、アリール基、ヘテロアリール基又は置換アリール基であり、ただし、n=0、1又は2であり、
【化3】
に結合した炭素には、R体とS体の2種類の立体配座があり、
構造式(a-1)中、Rに結合した炭素はR体であり、
構造式(a-2)中、Rに結合した炭素はS体である。
【0011】
好ましくは、前記カンプトテシン化合物又はその薬学的に許容される塩は、
【化4】
からなる群から選ばれる。
【0012】
好ましくは、前記カンプトテシン化合物又はその薬学的に許容される塩は、抗腫瘍薬であり、肺がん、腎臓がん、尿道がん、結腸がん、直腸がん、前立腺がん、多形性膠芽腫、卵巣がん、膵臓がん、乳がん、黒色腫、肝臓がん、膀胱がん、胃がん、肺がん又は食道がんを含む固形腫瘍又は血液腫瘍の治療に適用される。
【0013】
本発明の別の態様では、標的細胞に到達した後に薬物部分Dを放出することにより薬効を発揮するように構成される、式IIで表される抗体薬物複合体が提供される。
【化5】
式II中、Abは抗体、抗体断片又はタンパク質であり、
Lは、一端がAbに結合され、他端が薬物部分Dに結合される任意のリンカーであり、
Dは、請求項1から6のいずれか1項に記載のカンプトテシン類化合物又はその薬学的に許容される塩から選ばれ、Dのヒドロキシル基を介してLに結合され、
mは1-20の整数から選ばれる。
【0014】
好ましくは、前記抗体薬物複合体のリンカーLは、-O-、-N(R)n-、-CH-、-CH(R)n-、アミド結合、エステル結合、-S-、-(PEG)n-からなる群から選ばれ、ただし、nは1-3の整数から選ばれ、nは1-20の整数から選ばれる。
【0015】
本発明の別の態様では、治療を必要とする患者を治療する方法が提供される。この方法は、前記患者に上述したいずれか1つの抗体薬物複合体を投与することを含む。前記患者は、腫瘍、自己免疫疾患又は感染性疾患に罹患している。前記抗体薬物複合体の抗体は、前記がん、自己免疫疾患の標的細胞に特異的に結合される。
【0016】
好ましくは、前記抗体薬物複合体又はその塩は、抗腫瘍薬又は抗がん薬であり、肺がん、腎臓がん、尿道がん、結腸がん、直腸がん、前立腺がん、多形性膠芽腫、卵巣がん、膵臓がん、乳がん、黒色腫、肝臓がん、膀胱がん、胃がん、食道がんを含む固形腫瘍及び血液腫瘍の治療に適用される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
略語及び定義
特に明記しない限り、本明細書で使用される以下の用語及びフレーズは、以下の意味を有する。本明細書で商標名を使用する場合、文脈が別段の指示をしない限り、商標名には、当該製品の処方、ジェネリック薬物、及び薬物の活性成分が含まれる。
【0018】
用語「アルキレン基」とは、1-20個の炭素原子を有する二価直鎖状飽和炭化水素基を指し、1から10個の炭素原子の基を含む。アルキレン基の例には、メチレン基(-CH2-)、エチレン基(-CH2-CH2-), n-プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基及びn-ヘキシレン基が含まれるが、これらに限定されない。特に指定のない限り、用語「アリール基」とは、多価不飽和、一般的に芳香族の炭化水素基を指し、単環、縮合環又は共有結合した多環(多くとも3環)式基を含む。用語「ヘテロアリール基」とは、N、O又はSから選ばれるヘテロ原子を1から5個含むアリール基(又は環)を指し、ただし、N及びS原子が任意に酸化され、N原子が任意に四級化されてもよい。ヘテロアリール基は、ヘテロ原子を介して分子の他の部分に結合することができる。アリール基の例には、フェニル基、ナフチル基、及びジフェニル基が含まれるが基、これらに限定されない。ヘテロアリール基の例には、ピリジル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、ピリミンジニル(pyrimindinyl)基、トリアジニル基、キノリニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、シンノリン基、フタラジニイル(phthalaziniyl)基、ベンゾトリアジニル基、プリニル基、ベンズイミダゾリル基、ベンゾピラゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、ベンズイソゾリル基、イソベンゾフラニル基、イソインドリル基、インダジニル基、ベンゾトリアジニル基、チエノピリジル基、チエノピリミジニル基、ピリドピリミジニル基、イミダゾピリジン基、ベンゾチアゾリル(benzothiaxolyl)基、ベンゾフラン基、ベンゾチエニル基、インドリル基、キノリニル基、イソキノリニル基、イソチアゾリル基、ピラゾリル基、インダゾリル基、プテリジル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、チアジアゾリル基、ピロリル基、チアゾリル基、フリル基、及びチエニルなどが含まれるが、これらに限定されない。「置換」として記載される場合、上記芳香環及びヘテロ芳香環系の置換基は、以下の許容可能な置換基から選ばれる。
【0019】
特に指定のない限り、アルキル基の置換基は、-ハロゲン、-OR'、-NR'R''、-SR'、-SiR'R''R'''、-OC(O)R'、-C(O)R'、-COR'、-CONR'R''、-OC(O)NR'R''、-NR''C(O)R'、-NR'-C(O)NR''R'''、-NR''C(O)R'、-NH-C(NH)=NH、-NR'C(NH)=NH、-NH-C(NH)=NR'、-S(O)R'、-S(O)R'、-S(O)NR'R''、-NR'S(O)R''、-CN及び-NOからなる群から選ばれる置換基であってもよい。置換基の数は0から(2m'+1)であり、ただし、m'はこの基における炭素原子の総数である。R'、R''及びR'''は、それぞれ独立して水素、非置換のC1-8アルキル基、非置換のアリール基、1-3個のハロゲンで置換されたアリール基、非置換のC1-8アルキル基、C1-8アルコキシ基若しくはC1-8チオアルコキシ基、又は非置換のアリール基-C1-4アルキル基を示す。R'とR''は、同一の窒素原子に結合された場合、この窒素原子と共に3-、4-、5-、6-又は7-員環を形成することができる。例えば、-NR'R''は1-ピロリジニル基及び4-モルホリニル基を含む。
【0020】
本明細書に記載の化合物の「誘導体」とは、この化合物と類似する化学構造を有するが、少なくとも1つのこの化合物に存在しない化学基を含み、及び/又は少なくとも1つのこの化合物に存在する化学基が欠如した物質を指す。誘導体に対応する化合物は「母体」化合物と呼ばれる。通常、「誘導体」は、1つ又は複数の化学反応ステップによって母体化合物から産生することができる。
【0021】
L-リガンド
リガンドユニットは、標的部分に特異的に結合する標的化剤である。前記リガンドは、細胞成分に特異的に結合し、又は細胞成分に結合し、又は他の対象となる標的分子に結合することができる。標的部分又は標的は通常、細胞の表面にある。いくつかの態様において、リガンドユニットの作用は、薬ユニットをリガンドユニットと相互作用する特定の標的細胞集団に送達することである。リガンドには、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、及び糖などの非タンパク質が含まれるが、これらに限定されない。適切なリガンドユニットの例には、完全長(完全)抗体などの抗体、及びその抗原結合断片が含まれる。リガンドユニットが非抗体標的化試薬である実施形態において、リガンドユニットは、ペプチド、ポリペプチド、又は非タンパク質分子であってもよい。このような標的化試薬の例には、インターフェロン、リンホカイン、ホルモン、成長因子及びコロニー刺激因子、ビタミン、栄養素輸送分子、又は他の任意の細胞結合分子若しくは物質が含まれる。いくつかの実施形態において、リンカーは、リガンドの硫黄原子に共有結合される。いくつかの態様では、硫黄原子はシステイン残基の硫黄原子であり、抗体の鎖間ジスルフィド結合を形成する。別の態様では、硫黄原子は、リガンドユニットに導入されたシステイン残基の硫黄原子であり、抗体の鎖間ジスルフィド結合を形成する。別の態様では、硫黄原子は、リガンドユニットに(例えば、部位特異的変異誘導又は化学反応により)導入されたシステイン残基の硫黄原子である。別の態様では、リンカーに結合された硫黄原子は、抗体の鎖間ジスルフィド結合を形成するシステイン残基、又はリガンドユニットに(例えば、部位特異的変異誘導又は化学反応により)導入されたシステイン残基から選ばれる。いくつかの実施形態において、Kabat(Kabat EA et al.,(1991))"Sequences of proteins of Immunological Interest"(Sequences of proteins of Immunological Interest),fifth edition,NIH publication91-3242)ナンバリングシステムにおけるEUインデックスに従う。
【0022】
本明細書において、「抗体」又は「抗体ユニット」は、それが属する範囲内で抗体構造の任意の部分を含む。このユニットは、受容体、抗原又は標的化細胞集団が有する他の受容体ユニットに結合、反応的に関連、又は複合することができる。抗体は、いかなるタンパク質又はタンパク質類分子であってもよく、治療若しくは生物学的に修飾される細胞集団の一部に結合、複合又は反応することができる。
【0023】
本発明において、抗体薬物複合体を構成する抗体は、その固有の野生状態の抗原結合能力を有することが好ましい。したがって、本発明の抗体は、抗原に特異的に結合することが好ましい。係る抗原には、例えば、腫瘍関連抗原(TAA)、細胞表面受容体タンパク質及び他の細胞表面分子、細胞生存調節因子、細胞増殖調節因子、組織の成長と分化に関連する分子(例えば、機能性を有することが既知又は予測される分子)、リンホカイン、サイトカイン、細胞周期調節に関与する分子、血管新生に関与する分子、血管新生関連分子(例えば、機能性を有することが既知又は予測される分子)が含まれる。腫瘍関連因子は、クラスター分化因子(例えば、CDタンパク質)であってもよい。
【0024】
本発明に記載の抗体薬物複合体に使用される抗体は、細胞表面受容体及び腫瘍関連抗原に対する抗体を含むが、これに限定されない。このような腫瘍関連抗原は、当該技術分野で知られているものであり、当該技術分野に既知の抗体製造方法及び情報に従って製造することができる。がんの診断と治療に使用可能な効果的な細胞レベルの目標物を開発するために、研究者は、膜貫通型又は他の腫瘍関連ペプチドを探している。これらの目標物は、1種又は複数種のがん細胞表面で特異的に発現できる一方、1種又は複数種の非がん細胞表面でほとんど発現されないか又は完全に発現されない。通常、このような腫瘍関連ポリペプチドは、非がん細胞表面よりも、がん細胞表面において過剰発現される。このような腫瘍関連因子は、抗体を用いたがん治療の特異的標的化特性を大幅に向上できることが確認されている。
【0025】
腫瘍関連抗原は、以下に示される腫瘍関連抗原(1)-(36)を含むが、これらに限定されない。便宜上、当該技術分野でよく知られている抗原関連情報は、名前、他の名前、遺伝子バンクのアクセッション番号を使用する。腫瘍関連抗原に対応する核酸及びタンパク質配列は、Genbankなどの公開データベースを参照できる。抗体が標的とする腫瘍関連抗原は、全てのアミノ酸配列変異体及び相同体を含み、参考文献に確認された配列と少なくとも70%、80%、85%、90%若しくは95%の同一性を有し、又は引用文献に記載の腫瘍関連抗原の配列と完全に一致する生物学的特性及び特徴有する。
【0026】
用語「抑制」又は「の抑制」とは、検出可能な量を減少させるか、完全に阻止することを指す。
【0027】
用語「がん」とは、無秩序な細胞増殖を特徴とする生理学的状態又は疾患を指す。「腫瘍」は、がん細胞を含む。
【0028】
用語「自己免疫疾患」とは、個体自身の組織又はタンパク質に由来する疾患又は障害を指す。
【0029】
本明細書に記載の「薬学的に許容される塩」とは、化合物(例えば、薬物、薬物-リンカー又はリガンド-リンカー-薬物複合体)の薬学的に許容される有機又は無機塩を指す。この化合物は、少なくとも1つのアミノ基又はカルボキシル基を含んでもよく、これによって、対応する酸又は塩基と付加塩を形成することができる。例示的な塩には、硫酸塩、トリフルオロ酢酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、サリチル酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、スルフィン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、カリウム塩、ナトリウム塩等が含まれるが、これらに限定されない。また、薬学的に許容される塩の構造には、複数の荷電原子を有する。複数の荷電原子が薬学的に許容される塩の一部である例には、複数の対イオンが含まれる。例えば、薬学的に許容される塩は、1つ又は複数の荷電原子及び/又は1つ又は複数の対イオンを有する。
【0030】
本明細書において、細胞内の薬物放出メカニズムに応じて、「リンカー」又は「抗体薬物複合体のリンカー」は、非切断可能リンカーと切断可能リンカーの2種類に分けることができる。
【0031】
非切断可能リンカーを含む抗体薬物複合体では、その薬物放出メカニズムは、複合体が抗原に結合して細胞に取り込まれた後、抗体がリソソームで酵素的に消化され、低分子薬物、リンカー、及び抗体アミノ酸残基からなる活性分子を放出することである。これによる薬物分子の構造の変化は、その細胞毒性を低減させないが、活性分子(アミノ酸残基)が荷電であるため、薬物は隣接する細胞に入ることができない。そのため、このような活性薬物は、隣接する標的抗原を発現しない腫瘍細胞(抗原陰性細胞)を殺すことができない(傍観者効果;bystander effect)(Ducry et al.,2010,Bioconjugate Chem.21:5-13)。
【0032】
切断可能リンカーは、目標細胞内において切断されて活性薬物(低分子薬物本身)を放出することができる。切断可能リンカーは、化学的不安定リンカーと酵素的不安定リンカーの2種類に分けることができる。
【0033】
化学的不安定リンカーは、血漿及び細胞質の特性の違いによって選択的に切断され得る。このような特性は、pH値、グルタチオン濃度などを含む。
【0034】
pHに敏感なリンカーは、酸切断リンカーと呼ばれる。このようなリンカーは、血液の中性環境(pH7.3-7.5)下で相対的に安定するが、弱酸性のエンドソーム(pH5.0-6.5)及びリソソーム(pH4.5-5.0)内では加水分解される。第1世代の抗体薬物複合体はこのようなリンカー(例えば、ヒドラゾン、カーボネート、アセタール、及びケタール)を使用することが多い。酸切断リンカーの血漿安定性が十分ではないため、このようなリンカーを含む抗体薬物複合体は、通常半減期(2-3日)が比較的短い。このような比較的短い半衰期により、次世代抗体薬物複合体におけるpH敏感リンカーの応用がある程度制限されている。
【0035】
グルタチオンに敏感なリンカーは、ジスルフィド結合リンカーとも呼ばれる。薬物の放出は、基于細胞における高濃度のグルタチオン(ミリモルレベル)と血液における低濃度のグルタチオン(マイクロモルレベル)との濃度差によるものである。これは、腫瘍細胞において特に顕著である。腫瘍細胞では、低酸素含有量により還元酵素の活性が向上し、ひいてはグルタチオンの濃度が高くなる。ジスルフィド結合は熱力学的に安定するため、プラズマにおいて安定性が高い。
【0036】
酵素的不安定リンカー(例えば、ペプチドリンカー)は、薬物放出をよりよく制御することができる。ペプチドリンカーは、リソソーム内のプロテアーゼ、例えば、カテプシン(Cathepsin B)又はプラスミン(いくつかの腫瘍組織においてこのような酵素の含有量が増加する)によって効果的に切断され得る。このようなペプチドリンカーは、血漿循環において非常に安定すると考えられている。これは、細胞外の不適切なpH値と血清プロテアーゼ阻害剤により、プロテアーゼが通常は不活性になるためである。高い血漿安定性、良好な細胞内切断選択性及び有効性の観点から、酵素的不安定リンカーは、抗体薬物複合体の切断可能リンカーとして幅広く使用されている。典型的な酵素的不安定リンカーはVal-Cit(vc)、Phe-Lysなどを含む。
【0037】
自殺リンカーは、一般に、切断可能リンカーと活性薬物との間に嵌合されているか、又は切断可能リンカー自体の一部である。自殺リンカーの作用メカニズムは、切断可能リンカーが適宜な条件下で切断された後、自殺リンカーが自発的に構造を再配置してそれと結合された活性薬物を放出することである。一般的な自殺リンカーは、p-アミノベンジルアルコール類(PAB)及びβ-グルクロニド類(β-Glucuronide)等などを含む。
【0038】
以下、具体的な実施例により本発明をさらに説明する。これらの実施例は本発明を説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲を制限するものではない。以下の実施例で具体的な条件が明確に示されない試験方法は、一般的な条件又は製造業者に推奨される条件を採用する。特に指定のない限り、すべての百分率、割合、比率又は部数は重量によるものである。
【0039】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての専門用語及び科学的用語は、当業者によく知られているものと同じ意味を有する。さらに、本明細書に記載の内容と類似又は同等の任意の方法及び材料は、いずれも本発明の方法に適用することができる。本明細書に記載の好ましい実施方法及び材料は例示的なものに過ぎない。
【0040】
実施例1:化合物2の合成
【化6】
化合物1(エキサテカンメシル酸塩、購入)(40mg,75.3mmol,1.0eq)及びL-乳酸(10mg,113.0mmol,1.5eq)を5mL乾燥DMFに溶解し、さらにPyBop(58.8mg,113.0mmol,1.5eq)及びDIEA(15.7uL,113.0mmol,1.5eq)を加えた。室温で3時間撹拌した後、TLCにて反応終了を確認した後、水を加えて反応をクエンチングし、ジクロロメタンで抽出し(10mL×3)、有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濾液を減圧濃縮し、残留物をカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物2(30.9mg,81.1%)を得た。LC-MS:[M+H]+:508.2。1H NMR(400Mz,CDCl3/CD3OD):0.91-0.94(3H,m),1.32-1.39(3H,m),1.71-1.83(2H,m),2.31(3H,s),2.78-3.02(2H,m),3.16-3.26(2H,m),4.27-4.35(1H,m),4.81-4.92(1H,m),5.15-5.24(2H,m),5.49-5.76(2H,m),7.52(1H,d,J=12.0Hz),7.58(1H,s),7.75(1H,d,J=12.0Hz)。
【0041】
実施例2:化合物4の合成
【化7】
500mL一ツ口フラスコに化合物である3N-フルオレニルメトキシカルボニル-グリシル-グリシン(10g,28.2mmol,1.0eq)、四酢酸鉛(17.5g,55.3mmol,1.4eq)、200mL乾燥テトラヒドロフラン及び67mLトルエンを加え、均一に撹拌し、窒素雰囲気下で85℃に加熱し、2.5h反応させた。TLCにて原料反応終了を確認した後、室温に冷却し、濾過し、濾液を減圧濃縮し、残留物をカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物4(8.7g,83.7%)を得た。
【0042】
実施例3:化合物5の合成
【化8】
25mL一ツ口フラスコに化合物3(500mg,1.4mmol,1.0eq)、p-トルエンスルホン酸一水和物(26mg,0.1mmol,0.1eq)及び10mLのTHFを加え、均一に撹拌した後、0℃に冷却した後、L-乳酸ベンジル(1.2g,7.0mmol,5eq)をゆっくりと加え、その後、室温に昇温して反応させた。TLCにて反応終了を確認した後、飽和NaHCO溶液を加え、酢酸エチルで抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濃縮し、残留物を逆相カラムにて精製し、化合物5(400mg,60.3%)を得た。1H NMR(400Mz,CDCl3):1.39(3H,d,J=6.8Hz),3.78(2H,t,J=4.0Hz),4.17-4.27(2H,m),4.42(2H,d,J=4.0Hz),4.72-4.85(2H,m),5.11-5.58(2H,m),5.43(1H,s),7.06(1H,t,J=8.0Hz),7.25-7.33(6H,m),7.38(2H,t,J=8.0Hz),7.57(2H,d,J=8.0Hz),7.75(2H,d,J=8.0Hz)。
【0043】
実施例4:化合物6の合成
【化9】
25mL一ツ口フラスコに化合物5(400mg,0.8mmol,1.0eq)及び10mLのDMFを加え、均一に撹拌した後、0℃に冷却し、DBU(137mg,0.9mmol,1.1eq)をゆっくりと加えた後、室温に昇温して反応させた。TLCにて反応終了を確認した後、濃縮し、化合物6の粗製品(550mg)を得た。精製せずにそのまま次の反応に供した。
【0044】
実施例5:化合物7の合成
【化10】
25mL一ツ口フラスコにZ-Gly-Gly-Phe-OH(372mg,0.9mmol,1.1eq)、PyBOP(852mg,1.6mmol,2.0eq)及び3mLのDMFを加え、室温で5分間撹拌した後、化合物6の粗製品(550mg)を加え、室温で反応させ、HPLCにて反応終了を確認した後、水を加え、酢酸エチルで抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濃縮し、残留物を逆相カラムにて精製し、化合物7(326mg,59.2%)を得た。
【0045】
実施例6:化合物8の合成
【化11】
25ml一ツ口フラスコに化合物7(50mg,1.0eq,0.08mmol)、5%Pd/C(50mg)、3mlのDMFを加え、室温で水素化反応させた。HPLCにて反応終了を確認した後、水を加えて濾過し、濾液を濃縮し、化合物8の粗製品(52mg)を得た。精製せずにそのまま次の反応に供した。
【0046】
実施例7:化合物9の合成
【化12】
25mL一ツ口フラスコに化合物8(52mg)、SMCC(23mg,0.07mmol,1.0eq)、DIEA(22.2mg,0.24mmol,2.5eq)及び3mLのDMFを加え、室温で反応させ、HPLCにて反応終了を確認した後、分取HPLCにて精製し、凍結乾燥し、化合物9(9.0mg,18.1%)を得た。MS:[M-H]655.1。
【0047】
実施例8:化合物11の合成
【化13】
25mL一ツ口フラスコに化合物9(9.0mg,0.014mmol,1.0eq)、エキサテカンメシル酸塩(6.6mg,0.014mmol,1.0eq)、PyBOP(14.3mg,0.028mmol,2.0eq)、DIEA(6.2mg,0.048mmol,3.5eq)及び0.5mLDMFを加え、室温で反応させ、HPLCにて反応終了を確認した後、分取HPLCにて精製し、凍結乾燥し、化合物11(7.0mg,48.3%)を得た。TOF:[M+Na]+1096.42。
【0048】
実施例9:化合物12、13の合成
【化14】
化合物1(エキサテカンメシル酸塩)(40mg,75.3mmol,1.0eq)及びトリフルオロ乳酸(16.3mg,113.0mmol,1.5eq)を5mL乾燥DMFに溶解し、さらにPyBop(58.8mg,113.0mmol,1.5eq)及びDIEA(15.7uL,113.0mmol,1.5eq)を加えた。室温で3時間撹拌した後、TLCにて反応終了を確認した後、水を加えて反応をクエンチングし、ジクロロメタンで抽出し(10mL×3)、有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濾液を減圧濃縮し、残留物をカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物12(13.5mg,32%)を得た。LC-MS:[M+H]+:562.2。1H NMR(400Mz,CDCl3/CD3OD):0.91-0.95(3H,m),1.78-1.84(2H,m),2.34(3H,s),3.04-3.14(2H,m),3.27-3.32(2H,m),4.42-4.47(1H,m),5.08-5.20(3H,m),5.41-5.58(2H,m),7.23-7.25(1H,m),7.52-7.55(1H,m);化合物13(15.5mg,36.7%)。LC-MS:[M+H]+:562.2。1H NMR(400Mz,CDCl3/CD3OD):0.90-1.00(3H,m),1.74-1.89(2H,m),2.34(3H,s),3.01-3.09(2H,m),3.32-3.38(2H,m),4.65-4.71(1H,m),4.89-4.96(1H,m),5.17-5.30(2H,m),5.55-5.65(2H,m),7.53-7.61(2H,m)。
【0049】
実施例10:化合物14の合成
【化15】
トリフルオロ乳酸(3.5g,24.3mmol,1.0eq)及びKCO(5.0 g,36.5mmol,1.5eq)を35mL乾燥DMFに溶解し、氷浴下で臭化ベンジル(5.0g,29.2mmol,1.2eq)を滴下し、窒素雰囲気下で加えた後、室温に昇温して5時間反応させ、TLCにて反応終了を確認した後、水を加えて反応をクエンチングし、ジクロロメタンで抽出し(100mL×3)、有機相を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濾液を減圧濃縮し、残留物をカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物14(3.14g,55%)を得た。1H NMR(400Mz,DMSO):4.91-4.94(1H,m),5.25(2H,s),7.17-7.19(1H,d),7.39(5H,s)。
【0050】
実施例11:化合物15の合成
【化16】
50mL一ツ口フラスコに化合物4(1.45g,3.9mmol,1.0eq)、化合物14(1.84g,7.8mmol,2.0eq),Zn(OAc)(1.44g,7.86mmol,2.0eq)及び25mLのTolを加え、窒素雰囲気下で均一に撹拌した後、100℃に昇温して5.5時間反応させた。TLCにて明らかな製品のスポットを確認した後、濾過し、濾液を濃縮し、黄色油状物(4.0g)を得た。粗製品をカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物15(0.99g,46%)を得た。1H NMR(400Mz,CDCl3):3.68-3.83(2H,m),4.20-4.23(1H,m),4.49(2H,d,J=8.0Hz),4.73-4.78(1H,m),4.89-5.00(2H,m),5.19(1H,s),5.25(2H,s),7.11(1H,s,),7.29-7.35(7H,m),7.43(2H,t,J=8.0Hz),7.59(2H,d,J=8.0Hz),7.79(2H,d,J=8.0Hz)。
【0051】
実施例12:化合物16の合成
【化17】
25mL一ツ口フラスコに化合物15(990mg,1.8mmol,1.0eq)及び10mLのDMFを加え、均一に撹拌した後、0℃に冷却し、さらにDBU(335mg,2.2mmol,1.2eq)をゆっくりと加え、窒素雰囲気下で加えた後、引き続き0℃で30分間反応させた。TLCにて原料の反応終了を確認した後、反応液をそのまま次の反応に供した。
【0052】
実施例13:化合物17の合成
【化18】
50mL一ツ口フラスコにZ-Gly-Gly-Phe-OH(909mg,2.2mmol,1.2eq)、PyBOP(1.4g,2.7mmol,1.5eq)及び10mLのDMFを加え、氷浴下でDIEAを滴下し、窒素雰囲気下で引き続き10分間反応させ、氷浴下でこの反応液に化合物16の反応液をゆっくりと加え、滴下した後、室温に昇温して1.5時間反応させ、HPLCにて反応終了を確認した後、分取HPLCにて精製し、凍結乾燥し、化合物17(0.91g,71%)を得た。
【0053】
実施例14:化合物18の合成
【化19】
25mL一ツ口フラスコに化合物17(85mg,1.0eq,0.12mmol)、5%Pd/C(85mg)、6mLDMFを加え、室温で1時間水素化反応させた。HPLCにて原料反応終了を確認した後、反応液を濾過し、濾液をそのまま次の反応に供した。
【0054】
実施例15:化合物19の合成
【化20】
化合物18の反応液を25mL一ツ口フラスコに濾過し、氷浴下でSMCC(80mg,0.24mmol,2.0eq)、DIEA(62mg,0.48mmol,4.0eq)をこの順に加え、窒素雰囲気下で加えた後、室温に昇温して1時間反応させ、HPLCにて反応終了を確認した後、分取HPLCにて精製し、凍結乾燥し、化合物19(66mg,78%)を得た。MS:[M-H]709.2。
【0055】
実施例16:化合物20、21の合成
【化21】
化合物19(10mg,14umol,1.0eq)、化合物1(9mg,21umol,1.5eq)及びPyBop(14.6mg,28mmol,2.0eq)を乾燥DMF(0.5mL)に溶解し、氷浴下でDIEA(5uL,28umol,2.0eq)を加え、窒素雰囲気下で加えた後、室温に昇温して1時間反応させ、HPLCにて原料化合物19の反応が終了したことを確認した後、反応液を分取HPLCにて精製し、化合物20(2.77mg,17.5%)(LC-MS:[M+H]+:1128.0)及び化合物21(3.92mg,24.8%)(LC-MS:[M+H]+:1128.0)をそれぞれ得た。
【0056】
実施例17:化合物22の合成
【化22】
化合物18の反応液(0.15mmol,1.0eq)を25mL一ツ口フラスコに濾過し、氷浴下でMC(93mg,0.3mmol,2.0eq),DIEA(78mg,0.6mmol,4.0eq)をこの順に加え、窒素雰囲気下で加えた後、室温に昇温して1時間反応させ、HPLCにて反応終了を確認した後、分取HPLCにて精製し、凍結乾燥し、化合物22(90mg,86%)を得た。MS:[M-H]683.2。
【0057】
実施例18:化合物23、24の合成
【化23】
化合物22(15mg,21.9umol,1.0eq)、化合物1(14.3mg,32.8umol,1.5eq)及びPyBop(22.8mg,43.8mmol,2.0eq)を乾燥DMF(0.8mL)に溶解し、氷浴下でDIEA(7.3uL,43.8umol,2.0eq)を加え、窒素雰囲気下で加えた後、室温に昇温して1時間反応させ、HPLCにて原料化合物22の反応が終了したことを確認した後、反応液をそのまま分取HPLCにて精製し、化合物23(6.01mg,25%)(LC-MS:[M+H]+:1102.0)及び化合物24(5.57mg,23.2%)(LC-MS:[M+H]+:1102.0)を得た。
【0058】
実施例19:化合物25の合成
【化24】
5mL一ツ口フラスコにマンデル酸(42mg,0.09mmol,1.1eq)、エキサテカン(35mg,0.08mmol,1.0eq)、PyBOP(84mg,0.16mmol,2.0eq)、DIEA(36.4mg,0.28mmol,3.5eq)及び1mLDMFを加え、室温で反応させ、HPLCにて反応終了を確認した後、分取HPLCにて精製し、凍結乾燥し、化合物25(15.0mg,32.6%)を得た。1H NMR(CDCl,400Mz)δ7.70(d,1H,J=8.0Hz),7.64(s,1H),5.64-5.75(m,2H),5.48-5.38(m,1H),5.29-5.21(m,1H),5.19-5.11(m,1H),3.37-3.11(m,2H),2.55-2.38(m,4H),2.32-2.15(m,2H),2.08-1.99(m,1H),1.94-1.85(m,4H),1.33-1.24(m,4H),1.05(t,3H,J=7.2Hz);LC-MS:[M+H]548.4。
【0059】
実施例20:化合物26の合成
【化25】
5mL一ツ口フラスコにD-乳酸(11.2mg,0.08mmol,1.1eq)、エキサテカン(30.0mg,0.07mmol,1.0eq)、PyBOP(119.5mg,0.14mmol,2.0eq)、DIEA(31.2mg,0.25mmol,3.5eq)及び1mLのDMFを加え、室温で反応させ、HPLCにて反応終了を確認した後、分取HPLCにて精製し、凍結乾燥し、化合物26(7.2mg,20.6%)を得た。1H NMR(CDCl,400Mz)δ7.75(d,1H,J=10.4Hz),7.70(s,1H),5.75-5.63(m,2H),5.46-5.38(m,1H),5.30-5.16(m,2H),4.50-4.40(m,1H),3.34-3.13(m,2H),2.50-2.36(m,3H),2.34-2.21(m,1H),2.05-2.02(s,1H),1.96-1.84(m,2H),1.35-1.23(m,3H),1.06(t,3H,J=4.0Hz);LC-MS:[M+H]508.3。
【0060】
実施例21:化合物27の合成
【化26】
5mL一ツ口フラスコに2-メチル乳酸(10.5mg,0.10mmol,1.1eq)、エキサテカン(40mg,0.09mmol,1.0eq)、PyBOP(95.6mg,0.18mmol,2.0eq)、DIEA(41.4mg,0.32mmol,3.5eq)及び1mLのDMFを加え、室温で反応させ、HPLCにて反応終了を確認した後、分取HPLCにて精製し、凍結乾燥し、化合物27(10.0mg,20.8%)を得た。1H NMR(CDCl,400Mz)δ7.68(d,1H,J=24Hz),7.63(s,1H),5.77-5.59(m,2H),5.48-5.39(m,1H),5.30-5.22(m,1H),5.19-5.11(m,1H),3.33-3.10(m,2H),2.24(s,3H),1.71-1.63(m,2H),1.58-1.52(m,2H),1.40-1.20(m,6H),1.05(t,3H,J=7.2Hz);LC-MS:[M+H]522.2。
【0061】
実施例22:化合物28の合成
【化27】
5mL一ツ口フラスコにR)-(-)-マンデル酸(15.2mg,0.10mmol,1.1eq)、エキサテカン(40mg,0.09mmol,1.0eq)、PyBOP(95.6mg,0.18mmol,2.0eq)、DIEA(41.4mg,0.32mmol,3.5eq)及び1mLのDMFを加え、室温で反応させ、HPLCにて反応終了を確認した後、分取HPLCにて精製し、凍結乾燥し、化合物28(12.2mg,23.3%)を得た。1H NMR(CDCl,400Mz)δ7.76(d,1H,J=8.0Hz),7.69(s,1H),7.53-7.35(m,5H),5.77-5.70(m,1H),5.65-5.55(m,1H),5.34-5.20(m,4H),3.32-3.31(m,2H),2.47-2.40(m,3H),2.30-2.27(m,1H),2.05-2.02(s,1H),1.93-1.89(m,3H),1.07(t,3H,J=8.0Hz);LC-MS:[M+H]570.2。
【0062】
実施例23:化合物29の合成
【化28】
5mL一ツ口フラスコに3,5-ジフルオロマンデル酸(23.7mg,0.13mmol,1.1eq)、エキサテカン(50mg,0.11mmol,1.0eq)、PyBOP(119.5mg,0.23mmol,2.0eq)、DIEA(37.1mg,0.29mmol,2.5eq)及び1mLのDMFを加え、室温で反応させ、HPLCにて反応終了を確認した後、分取HPLCにて精製し、凍結乾燥し、化合物29(13.5mg,19.4%)を得た。1H NMR(DMSO,400Mz)δ8.76(d,1H,J=8.4Hz),7.81(d,1H,J=10.8Hz),7.31(s,1H),7.27-7.07(m,4H),5.54-5.47(m,1H),5.43(s,2H),5.20-5.03(m,4H),3.20-3.09(m,2H),2.43-2.38(m,3H),2.17-2.09(m,1H),1.96-1.79(m,3H),0.88(t,3H,J=7.2Hz);LC-MS:[M+H]606.2。
【0063】
実施例24:化合物30の合成
【化29】
5mL一ツ口フラスコに3,5-ジフルオロマンデル酸(22.5mg,0.13mmol,1.1eq)、エキサテカン(50mg,0.11mmol,1.0eq)、PyBOP(119.5mg,0.23mmol,2.0eq)、DIEA(37.1mg,0.29mmol,2.5eq)及び1mLのDMFを加え、室温で反応させ、HPLCにて反応終了を確認した後、分取HPLCにて精製し、凍結乾燥し、化合物30(8.2mg,11.7%)を得た。1H NMR(DMSO,400Mz)δ8.60(d,1H,J=8.4Hz),7.79(d,1H,J=11.2Hz),7.31(s,1H),7.02-6.90(m,2H),6.90-6.72(m,1H),6.05-5.93(m,2H),5.52-5.40(m,2H),5.19-5.09(m,1H),5.09-4.92(m,2H),2.98-2.85(m,2H),2.22-2.14(m,3H),1.94-1.83(m,1H),1.75-1.59(m,1H),1.53-1.45(m,2H),0.66(t,3H,J=7.2Hz);LC-MS:[M+H]614.2。
【0064】
実施例25:化合物31の合成
【化30】
5mL一ツ口フラスコにS-2-ヒドロキシ酪酸(16.3mg,0.16mmol,1.1eq)、エキサテカン(68.0mg,0.16mmol,1.0eq)、HATU(59.4mg,0.16mmol,1.0eq)、DIEA(50.5mg,0.39mmol,2.5eq)及び1mLのDMFを加え、室温で反応させ、HPLCにて反応終了を確認した後、分取HPLCにて精製し、凍結乾燥し、化合物31(16.3mg,20.1%)を得た。1H NMR(DMSO,400Mz)δ8.36(d,1H,J=8.8Hz),7.79(d,1H,J=11.2Hz),7.31(s,1H),6.53(s,1H),5.60-5.52(m,1H),5.46-5.40(m,3H),5.24-5.17(m,2H),3.23-3.09(m,2H),2.45-2.38(m,3H),2.28-2.08(m,2H),1.94-1.80(m,2H),1.79-1.66(m,1H),1.66-1.55(m,1H),1.05-0.84(m,6H);LC-MS:[M+H]522.3。
【0065】
実施例26:カンプトテシン薬の細胞活性試験
以下の実験によりカンプトテシン薬の細胞毒性活性を測定した。
カンプトテシン薬をA431、Fadu、Bxpc-3(EGFR陽性発現細胞)及びU87-MG、SW620(陰性対照細胞)が発現したヒト腫瘍細胞を含む培地にそれぞれ入れ、細胞を72時間培養した後、細胞生存率を測定した。細胞を用いたインビトロ実験は、細胞生存率、細胞毒性及び本発明のカンプトテシン薬に誘導されるプログラム細胞死の測定に使用される。
【0066】
細胞増殖試験によりカンプトテシン薬のインビトロ薬効を測定した。CellTiter 96(登録商標)AqueousOne Solution Cell Proliferation Assayは市販品(Promega Corp.,Madison,WI)である。CellTiter 96(登録商標)AQueous One Solution Cell Proliferation Assay(a)は、比色法により細胞増殖及び細胞毒性実験における生細胞数を測定するための検出試薬である。この試薬は、新しいテトラゾール化合物[3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-5-(3-カルボキシメトキシフェニル)-2-(4-スルホフェニル)-2H-テトラゾリウム,分子内塩;MTS]及び電子カップリング剤(phenazine ethosulfate;PES)を含む。PESは強化された化学安定性を有するため、MTSと混合して安定した溶液を形成することができる。このような便利な「単一溶液」モードは、第一世代のCellTiter 96(登録商標)AQueous Assayをもとに改良したものであり、CellTiter 96(登録商標)AQueous Assayに使用される電子カップリング剤PMSはMTS溶液と別々に提供される。MTS(Owen's reagent)は、細胞によって生物還元されて有色のホルマザン生成物になり、培地に直接溶解することができる(図1)。このような変換は、代謝が活発な細胞におけるデヒドロゲナーゼによって産生されたNADPH又はNADHの作用下で完成する可能性が高い。検出時に、少量のCellTiter 96(登録商標)AQueous One Solution Reagentをそのまま培養プレートウェルの培地に加え、1-4時間インキュベートし、そしてマイクロプレートリーダーにて490nmでの吸光度値を読み取ればよい。
【0067】
【化31】
【0068】
490nmで検出されたホルマザン生成物の量は、培養中の生細胞数に正比例する。MTSのホルマザン生成物が組織培地に溶解できるため、CellTiter 96(登録商標)AQueous One Solution AssayはMTT又はINT法に比べて操作ステップがより少ない。
【0069】
本発明では、A431、Fadu、Bxpc-3(EGFR陽性発現細胞)及びU87-MG、SW620(陰性対照細胞)をインビトロ薬効検出の研究系として使用する。適宜な細胞密度で96ウェルプレートに接種し、24時間後にカンプトテシン薬を投与した。24時間後に、検出培地でカンプトテシン薬を希釈し(1μM開始、5倍希釈、9つの濃度、10列目に検出培地を添加してブランク対照とする)、希釈したカンプトテシン薬を対応する細胞ウェルに加え、マイクロウェルプレート発振器(型番:MX100-4A)を用いて振盪速度550rpm/minで3分間振盪し、振盪終了後、COインキュベータに置いて3日間インキュベートした。3日後に各ウェルに20μlのMTS(Promega,G3581)を加えて2時間反応させ、マイクロプレートリーダー(Molecular Device,型番:SpectraMAX190)にて490nMで読み取った。ミトコンドリア内のデヒドロゲナーゼの活性を検出することにより、細胞増殖に対するカンプトテシン薬の抑制作用を評価した。
【0070】
【表1】
【0071】
SN38は、典型的な高活性カンプトテシン薬であり、IMMU-132 ADCにおいて臨床的に証明されている。本発明者らは、細胞活性実験により、本発明に記載のカンプトテシン誘導体が代表的な腫瘍細胞Fadu、BXPC-3、A431、U87-MG、SW620のいずれにおいてもSN38と相当又はそれ以上の細胞活性を示すことを実証した。
【0072】
実施例27:ADCを調製するための一般的なカップリング法
限外ろ過遠心分離管により予備精製後のモノマー比率が95%を超えた抗体分子Cを濃度10mg/mlでリン酸緩衝液に交換した。抗体分子のモル数の20倍の量でTCEPを加え、室温で4時間反応させて抗体鎖間のジスルフィド結合を切断した。抗体分子のモル数の20倍の量でpayloadを加え、室温で2時間反応させた。反応終了後、カットオフ分子量30KDaの限外ろ過遠心分離管によりPBSに交換し、カップリングされていないpayloadを除去した。液交換後のADCサンプルを0.22μm滅菌フィルターにより濾過して保存した。本実施例27に記載の一般的なカップリング法によりカップリング用化合物11、20、21、23、24を抗体分子Cとカップリングした。
【0073】
【表2】
【0074】
実施例28:ADC抗腫瘍細胞活性試験
カンプトテシン薬の細胞活性試験の方法と同様に、本発明ではA431、Fadu、Bxpc-3(抗原陽性発現細胞)、SW620(抗原陰性対照細胞)をインビトロ薬効検出の研究系として使用する。適宜な細胞密度で96ウェルプレートに接種し、24時間後にADC薬を投与した。24時間後に、検出培地でADC薬を希釈し(1μM開始、5倍希釈、9つの濃度、10列目に検出培地を添加してブランク対照とする)、希釈したADC薬を対応する細胞ウェルに加え、マイクロウェルプレート発振器(型番:MX100-4A)を用いて振盪速度550rpm/minで3分間振盪し、振盪終了後、COインキュベータに置いて3日間インキュベートした。3日後に各ウェルに20μlのMTS(Promega,G3581)を加えて2時間反応させ、マイクロプレートリーダー(Molecular Device,型番:SpectraMAX190)にて490nMで読み取った。ミトコンドリア内のデヒドロゲナーゼの活性を検出することにより、細胞増殖に対するADC薬の抑制作用を評価した。
【0075】
【表3】
【0076】
以上のADC細胞活性試験から明らかなように、本発明に記載のカンプトテシン薬は、リンカーLにより抗体にカップリングされた後、多くの抗原陽性腫瘍細胞株において良好な抗腫瘍活性を示し、大きな臨床的価値を有する。
【0077】
実施例29:ADCのインビボ薬効試
本発明では、A431担癌マウスモデルを構築してADCのインビボ薬効を評価した。具体的には、3×10個のA431細胞を4~6週齢のBALB/cヌードマウスの右側に皮下注射し、マウス腫瘍の平均サイズが140~150mmに増殖したときに、5匹/群でランダムに群分け、0,7,14,21日目にそれぞれブランク対照(緩衝液ブランク)、抗体薬物複合体C-11を10mg/kgの用量で静脈投与した。腫瘍体積の測定データは測定時の腫瘍平均体積±SEで示される。ADC薬のインビボでの初期毒性を観察するために、マウス体重の変化状況を記録した。
【0078】
【表4】
【表5】
【0079】
以上のADCのマウスインビボ薬効試験により、本発明に記載のカンプトテシン薬は、リンカーLにより抗体にカップリングされた後、担癌マウスにおいて明確な抗腫瘍活性を示し、平均腫瘍体積がブランク対照よりも顕著に小さいことが実証された。マウス体重は、投与期間中に顕著に変化せず、群内において死亡したマウスがなかった。よって、本発明に記載のカンプトテシン薬は良好な安全性を有する。
【国際調査報告】