(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-20
(54)【発明の名称】荷電物質を送達する脂質、その製剤、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 69/732 20060101AFI20221213BHJP
C07C 69/675 20060101ALI20221213BHJP
C07C 59/42 20060101ALI20221213BHJP
C07C 59/105 20060101ALI20221213BHJP
C07C 219/06 20060101ALI20221213BHJP
C07C 219/08 20060101ALI20221213BHJP
C07C 309/67 20060101ALI20221213BHJP
C07C 309/68 20060101ALI20221213BHJP
C07C 309/12 20060101ALI20221213BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20221213BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20221213BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20221213BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20221213BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20221213BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20221213BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20221213BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20221213BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20221213BHJP
A61K 31/711 20060101ALI20221213BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20221213BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20221213BHJP
C12N 15/88 20060101ALN20221213BHJP
C07K 2/00 20060101ALN20221213BHJP
【FI】
C07C69/732 Z CSP
C07C69/675
C07C59/42
C07C59/105
C07C219/06
C07C219/08
C07C309/67
C07C309/68
C07C309/12
A61K31/7088
A61K38/02
A61K47/14
A61K47/18
A61K47/20
A61K9/14
A61K9/127
A61K31/713
A61K31/7105
A61K31/711
A61K47/22
A61K47/24
C12N15/88 Z
C07K2/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022508990
(86)(22)【出願日】2020-08-11
(85)【翻訳文提出日】2022-04-06
(86)【国際出願番号】 CA2020051098
(87)【国際公開番号】W WO2021026647
(87)【国際公開日】2021-02-18
(32)【優先日】2019-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521438102
【氏名又は名称】インテグレイテッド ナノセラピューティクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】INTEGRATED NANOTHERAPEUTICS INC.
【住所又は居所原語表記】Suite 205, 4475 Wayburne Drive Burnaby, BC V5G 4X4 Canada
(71)【出願人】
【識別番号】300066874
【氏名又は名称】ザ・ユニバーシティ・オブ・ブリティッシュ・コロンビア
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ザイフマン, ジョシュア
(72)【発明者】
【氏名】チェン, サム
(72)【発明者】
【氏名】タム, ユエン イー
(72)【発明者】
【氏名】シフーリーニ, マルコ エー.
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4H006
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076AA29
4C076AA95
4C076CC50
4C076DD45
4C076DD46
4C076DD49
4C076DD55
4C076FF70
4C084AA13
4C084BA03
4C084MA05
4C084MA24
4C084MA43
4C084NA13
4C084ZC80
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA24
4C086MA43
4C086NA13
4C086ZC80
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB20
4H045AA10
4H045AA40
4H045BA55
4H045EA20
(57)【要約】
本明細書では、生理的pHで正味の電荷を有し、脂質部位に結合している脂質を開示する。脂質部分は、任意にシスまたはトランスC=Cを有する2つ以上の結合した炭化水素鎖を有する炭化水素構造からなり、前記鎖の少なくとも1つは、任意にリンカー領域を介して先頭基と結合している。炭化水素鎖は、リンカー領域に結合した鎖の内部炭素における分岐点で互いに結合しており、この分岐点は、電気陰性原子を有する官能基からなる。炭化水素鎖は、それぞれ1~40個の炭素原子を有し、炭化水素構造の全体が10~150個の炭素原子からなる。さらに有利な形として、炭化水素構造は、カーゴ分子の送達を強化するために、概してフレア状の形状をとることができる。さらに、この脂質を含む送達担体が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
(化1)
A-(V)
m-Z-L
(式中、Aは生理的pHで荷電する先頭基であり;
(V)
mは、任意の-(CR1R2)-であり、mは、1~10または2~6であり、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素、置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、または複素環、または独立して選択された置換されていてもよい単環、二環もしくは三環の炭素環または4~12個の環原子を有するヘテロ原子環であり;
Z-Lは、式II、IIaまたはIIbの構造を有し、
直鎖リンカー構造の式II:
(化2)
X1-L
b
(式中、X1は任意であり、X1は、エーテル基、エステル基およびカルバメート基から選択され、
L
bは、式IIIcの分枝状の脂質である)、
分岐状のリンカー構造の式IIa:
【化3】
(式中、Wは任意であり、
Wが存在する場合、X1結合、N-C(O)、N-C(O)O、またはN-OC(O)であり;
Wは、Dで置換されていてもよく、Dは、置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、または複素環であり;
(X)
nが存在する場合、それぞれ独立して選択された-(CR1R2)-であり;(X)
nのnは、0~10であり;Tは任意であり、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、またはヘテロサイクルであり、Tは置換されていてもよく、
Bは、G1およびG2を介してL1およびL2にそれぞれ結合した炭素原子であり;
G1およびG2は、独立してX1から選択され、G1およびG2のそれぞれ独立して(G)
uに結合していてもよく、Gは、独立して選択された-(CR1R2)-であり、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素、置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、または複素環であり、uは、0~16であり;
G3は任意であり、X1から選択され、(G)
uに結合していてもよく;
L1は、式IIIcの分枝状の炭化水素であり;
L2は、1~20個の炭素原子と0~2個のシスまたはトランス二重結合を有する炭化水素鎖であるか、または式IIIcの構造を有し;
L3が存在する場合は、水素、1~20個の炭素原子と0~2個のシスまたはトランス二重結合を有する直鎖または分岐炭化水素鎖、または式IIIcの構造を有する)、
環構造の式IIb:
【化4】
(式中、曲線は環を表し、EおよびKは環の構造を部分的に構成する原子を表し、その環は3~8個の環原子を有する置換または非置換の環であり;
L1、L2およびL3の少なくとも1つが、それぞれG1、G2およびG3を介して、任意の環内の単一の原子に結合しており、G1、G2およびG3のそれぞれが、独立して、(G)
uに結合していてもよく;
式IIbのL1および任意のL2および/またはL3は、式IIIcの構造を有する)、
式IIIc:
【化5】
(式中、L骨格は、L1’-L1’’-G
1-CH-[CH
2]
q-CH
3で表され、L骨格の炭素原子の総数は、10~30個であり;
L1’は、直鎖炭化水素鎖であり、5~20、6~20、7~20、8~20、5~12、5~10、5~9、6~12、6~10、6~9、7~12、7~10、または7~9個の炭素原子と0~3のシスまたはトランス二重結合を有しており;
L1’’は、炭素原子であり;
L1’’’は、G
1-CH-CH
2-CH
3で表され、式中、G
1は、0~4個の炭素原子の炭化水素鎖であり、1つのシスまたはトランス二重結合を有していてもよく;
nは、0~4であり;
pは、1~4であり;
n+pは、1~4であり;
qは、0~20であり;
各X1は、それぞれ独立して、エーテル、エステルおよびカルバメート基から選択され;
式中、各SおよびL1’’’’炭化水素側鎖は、独立して:
(a)0~5個のシスまたはトランスC=Cおよび1~30個の炭素原子を有し、その炭化水素鎖中の任意の炭素原子でそれぞれのX1の1つに結合している直鎖または分岐状の末端炭化水素鎖、または、
(b)式IIIcの分岐状の炭化水素構造であり、
式中、式IIIc中のL1’’’’およびS炭化水素鎖の総数は、1~10、1~9、1~8、1~7、1~6、1~5、1~4または1~3であり;
式中、脂質部分のL1’’’’およびS炭化水素鎖の各1つは、ヘテロ原子で置換されていてもよく、ただし、炭化水素鎖において2つ以下のヘテロ原子が置換されている))
の構造を有する分枝状の脂質部分Lを含む荷電脂質。
【請求項2】
Z-Lが、直鎖リンカー構造の式II:
(化6)
X1-L
b
式中、式IIIcのL1’は、5~9個の炭素原子を有し、0~2個のシスまたはトランス二重結合を有し;
式IIIcのG
1は、不存在であるか、CH
2またはCH
2CH=CHであり、当該二重結合がシスまたはトランスであり;
式IIIcのL1’’’’およびSは、0~5個のシスまたはトランスCH=CHおよび2~18個の炭素原子を有する炭化水素から独立して選択され;
式IIIcの足場骨格は、CH
2-L1’’-G1-CH-CH
2-CH
3(L1’’’は、8~30の炭素原子であり;および
qは、1~9である)
の構造を有する、請求項1記載の荷電脂質。
【請求項3】
式Iの(V)
mが(CH
2)
mであり、mが、1~20であり;
Z-Lが、分枝状リンカー構造の式IIa:
【化7】
(式中、Wは、エーテル、エステルまたはカルバメート基であり、Dは不存在であり、(X)
nは(CH
2)
nであり、nは1~10であり、
G1およびG2は存在し、それぞれの(G)
uに結合しており、ここで(G)
uはCH
2であり;
G3-L3は存在し、CH
3およびCH
2CH
3から選択される炭化水素であり、またはG3-L3はCH
2X1L3であり、L3は1~20個の炭素原子および0~2個のシスまたはトランス二重結合を有する直鎖状または分枝状炭化水素鎖であるか、式IIIcの構造を有している)
の構造を有する、請求項1記載の荷電脂質。
【請求項4】
Z-Lが、環構造の式IIb:
【化8】
(式中、曲線は環を表し、EとKは環の構造を部分的に構成する原子を表し、当該環は3から6個の環原子を有する置換または非置換の炭素環である)
の構造を有する、請求項1記載の荷電脂質。
【請求項5】
環が3または5個の炭素原子を有している、請求項4に記載の荷電脂質。
【請求項6】
少なくともL1およびL2が存在し、各G1およびG2基を介して環に結合し、当該各G1およびG2基が、G
uに結合していてもよく、uが0~10または0~6である、請求項4または5に記載の荷電脂質。
【請求項7】
Aが、以下の(i)~(iv)から一つ選択される:
(i)以下の群から選択されるイオン化可能なカチオン性部分:
【化9】
(ii)以下の群から選択される、恒久的に荷電した部分:
【化10】
(iii)以下の群から選択されるイオン化可能なアニオン性部分:
【化11】
(iv)以下の群から選択される双性イオン部分:
【化12】
、請求項1~6のいずれか一項に記載の荷電脂質。
【請求項8】
式Iの炭化水素構造Lが非円筒形である、請求項1~7のいずれか一項に記載の荷電脂質。
【請求項9】
脂質が水溶液中で他の脂質と組み合わせて脂質ナノ粒子を形成し得る、請求項1~8のいずれか一項に記載の荷電脂質。
【請求項10】
小胞を形成する他の脂質が、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸、セラミド、スフィンゴミエリンまたは親水性ポリマー-脂質複合体を含んでなる、請求項9に記載の荷電脂質。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の荷電脂質がその脂質二重層または単層中に組み込まれ、核酸、タンパク質またはペプチドであるカーゴ分子または化合物を含む、薬物送達ビークル製剤。
【請求項12】
核酸が、低分子干渉RNA、低分子活性化RNA、メッセンジャーRNA、マイクロRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、アプタマー、プラスミド、環状DNA、直鎖DNA、アンチゴミア、アンチmiRNAオリゴヌクレオチドまたはmiRNAミミックである、請求項11に記載の薬物送達ビークル製剤。
【請求項13】
カーゴ分子または化合物が、ペプチドである、請求項11に記載の薬物送達ビークル製剤。
【請求項14】
脂質ナノ粒子(LNP)である、請求項11~13のいずれか一項に記載の薬物送達ビークル製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、脂質、脂質の製剤、およびそれらの調製方法を提供する。本脂質およびその製剤は、荷電物質の送達に有用であり、核酸やペプチドを含むがこれらに限定されない。
【背景技術】
【0002】
核酸やペプチドなどの荷電物質の細胞内送達は、脂質ナノ粒子(LNP)のような送達システムに組み込むことで容易にする。例えば、イオン化可能な脂質は、LNP製造プロセス中に核酸を効率的にカプセル化するための主要な脂質成分である。さらに、イオン化可能なまたはカチオン性脂質は、標的細胞のエンドサイトーシスによって取り込まれた後のエンドソームからの核酸の制御された放出を容易にする。
【0003】
トランスフェクションまたは遺伝子送達活性は、カチオン性脂質などのイオン化可能な脂質の化学構造に依存することが提唱されている(Semple, S.C., et al., Rational design of cationic lipids for siRNA delivery. Nat Biotechnol, 2010,28(2):p.172-6)。特に、新油性部分は非円筒形をしていることが望ましい。一例として、イオン化可能な小さな先頭基と、先頭基から外側に広がる炭化水素部分を有する脂質である。
【0004】
現在、単純または便利な方法で調製可能な所望の形状のイオン化可能または荷電脂質の構造が求められている。そのような脂質を提供することができれば、標的細胞への核酸または他の荷電分子の送達に依存する治療方法の臨床開発を大きく前進させる可能性がある。
【0005】
本開示の組成物および方法は、前述の問題に対処すること、および/または当該技術分野でこれまでに記載されたものに対する有用な代替物を提供することを目的とする。
【発明の概要】
【0006】
本明細書では、荷電物質の送達を容易にする炭化水素構造を有するイオン化可能またはカチオン性脂質を提供する。荷電した物質は、核酸などの負に荷電した物質でも、正に荷電した物質でもよい。本明細書に記載の脂質は、モジュール方式で調製することができ、様々な非円筒形に調製された炭化水素構造を提供し、様々な負または正に荷電した物質の送達を容易にする。
【0007】
本明細書では、生理的pHで正味の電荷を有し、任意のリンカー領域を介して脂質部分に共有結合している先頭基を含む脂質を開示している。脂質部分は、任意にシスまたはトランスC=Cを有する2つ以上の連結された炭化水素鎖を有する炭化水素構造からなり、鎖の少なくとも1つは、任意にリンカー領域を介してイオン化可能な先頭基に共有結合している。炭化水素鎖は、任意のリンカー領域を介して先頭基に結合した鎖の内部炭素の分岐点で互いに結合しており、この分岐点は、電気陰性原子を有する本明細書でさらに説明されるX1官能基を含む。炭化水素鎖はそれぞれ1~40または1~30個の炭素原子を有し、炭化水素構造は全体で10~150個の炭素原子を有する。
【0008】
一つの実施形態によれば、以下を含むカチオン性またはアニオン性脂質を含む荷電脂質が提供される:生理的pHで正味電荷を有し、任意選択のリンカー領域を介して脂質部分に共有結合している先頭基。脂質部分は、任意にシスまたはトランスC=Cを有する2つ以上の連結された炭化水素鎖を有する炭化水素構造からなり、前記鎖の少なくとも1つは、リンカー領域を介してイオン化可能な先頭基に共有結合しており、炭化水素鎖は、リンカー領域に結合した炭化水素鎖の内部炭素における分岐点で互いに結合しており、この分岐点はX1官能基を含み、X1官能基は以下から選択される:-OC(O)-、-C(O)O-、-O-、-NR1-、-C(O)N(R1)-、N(R1)C(O)-、-OC(O)O-、-OC(O)N(R1)-、-N(R1)C(O)O-、-S-、-S-S-、-C(R1)=N-N-C(O)-、-C(O)-N-N=C(R1)、-ON=C(R1)-、または-C(R1)=NO-、ここで、炭化水素鎖はそれぞれ1~30個の炭素原子を有し、炭化水素構造は合計で10~150個の炭素原子を含み、R1は、水素、任意に置換されたアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、または複素環から独立して選択される。
【0009】
一つの実施形態では、2つ以上の連結した炭化水素鎖は、式IIIの構造を有する。
式III:
【化1】
式中、L1’、L1’’、L1’’’およびL1’’’’は、1つまたは複数のシスまたはトランスC=C結合を任意に含む、1~30個の原子を有する炭化水素鎖から独立して選択され、L1’は、リンカー領域に結合している炭化水素鎖である。
【0010】
さらなる実施形態では、炭化水素構造は、リンカー領域を介して先頭基に結合した疎水性鎖L2をさらに含み、L2は、1~30個の炭素原子を有し、任意にシスまたはトランスC=C結合を有する炭化水素鎖であるか、または、L2が式IIIaの構造を有する。
式IIIa:
【化2】
式中、L2’、L2’’、L2’’’およびL2’’’’は、1~30個の原子を有する炭化水素鎖から独立して選択され、任意に1つ以上のシスまたはトランスC=C結合を含み、L2’はリンカー領域に結合している。
【0011】
さらに別の実施形態では、炭化水素は、リンカー領域を介して先頭基に結合した炭化水素鎖L3をさらに含み、L3は、1~30個の炭素原子を有し、任意にシスまたはトランスC=C結合を有するか、または、式IIIaの構造を有する。
式IIIa:
【化3】
式中、L3’、L3’’、L3’’’およびL3’’’’は、1以上のシスまたはトランスC=C結合を任意で含む1~30個の原子を有する炭化水素鎖から独立して選択され、L3’は、リンカー領域に結合している。
【0012】
さらなる実施形態では、脂質は、X1リンカーを介してL1に結合した1~10個の側鎖Sをさらに含んでいてもよく、各側鎖は、1~30個の原子を有し、任意にシスまたはトランスC=C結合を有するか、または式IIIbの構造を有する。
式IIIb:
【化4】
式中、S1’、S1’’、S1’’’およびS1’’’’は、独立して、1~30個の原子を有する炭化水素鎖から選択され、任意に1つ以上のシスまたはトランスC=C結合を含み、S1’はL1の炭素に結合している。
【0013】
さらなる実施形態では、脂質は、X1リンカーを介してL2に結合した1~10個の側鎖Sをさらに含んでいてもよく、各側鎖は、1~30個の原子を有し、任意にシスまたはトランスC=C結合を有するか、または、式IIIbの構造を有する。
式IIIb:
【化5】
式中、S2’、S2’’、S2’’’およびS2’’’’は、1~30個の原子を有する炭化水素鎖から独立して選択され、任意に1つ以上のシスまたはトランスC=C結合を含み、S2’がL2の炭素に結合している。
【0014】
さらなる実施形態では、脂質は、X1リンカーを介してL3に結合した1~10個の側鎖Sをさらに含み、各側鎖は、1~30個の原子を有し、任意にシスまたはトランスC=C結合を有するか、または式IIIbの構造を有する。
式IIIb:
【化6】
式中、S3’、S3’’、S3’’’およびS3’’’’は、1~30個の原子を有する炭化水素鎖から独立して選択され、任意に1つ以上のシスまたはトランスC=C結合を含み、S3’がL3の炭素に結合している。
【0015】
代替の実施形態では、X1の1つ以上の部位は生分解性である。
【0016】
さらに別の実施形態では、少なくともリンカー領域を介して先頭基に結合した炭化水素鎖が、その内部炭素原子に結合したヒドロキシ基、アミノ基、および/またはアミド基から選択される1つ以上の反応性基を有する脂質に由来し、炭化水素構造中の少なくとも1つの他の炭化水素鎖がアシル脂質に由来する。炭化水素構造の足場炭素鎖として機能し、炭化水素構造の少なくとも1つの他の炭化水素鎖はアシル脂質に由来し、X1結合は足場炭素鎖上の反応性基とアシル鎖のカルボン酸との反応によって形成される。
【0017】
さらなる実施形態では、脂質はジヒドロキシ脂質である。
先頭基は、5.0~9.0の間のpKa、または5.5~8.0の間のpKaを脂質に付与してもよい。代替的な実施形態では、先頭基は、式Iの構造を有する。
【0018】
さらなる実施形態では、炭化水素構造に結合したリンカー領域は、式IIaまたはIIbの構造を有する。
さらなる実施形態では、炭化水素構造は、非円筒形である。
さらなる実施形態では、脂質は、水溶液中で他の脂質と組み合わせて、脂質ナノ粒子に形成することができる。
さらなる実施形態では、他の小胞を形成する脂質は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸、セラミド、スフィンゴミエリン、または親水性ポリマーと脂質の結合体を含む。
さらに、前記実施形態のいずれか1つに記載の脂質をその脂質二重層または単層に組み込んで、核酸またはペプチドを含むドラッグデリバリー担体製剤を提供する。
一つの実施形態では、核酸は、低分子干渉RNA、低分子活性化RNA、メッセンジャーRNA、マイクロRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、アプタマー、プラスミド、環状DNA、直鎖DNA、アンタゴミル、アンチmiRNAオリゴヌクレオチド、またはmiRNAミミックである。
【0019】
さらなる実施形態では、ドラッグデリバリー担体製剤は、脂質ナノ粒子(LNP)を含む。
さらに、そのような脂質を調製するための便利な方法が提供される。
このような実施形態は、目的の分子の送達に使用するための荷電脂質の炭化水素構造を調製する方法を含み、この方法は以下を含む:
(i)その内部炭素上に反応性基を有する炭化水素鎖を提供する工程であって、当該反応性基は、O、P、Nおよび/またはSから選択される原子を含む工程;および
(ii)炭化水素鎖を1つまたは複数の反応性基を介して1つ以上のアシル鎖に結合させて炭化水素構造を生成する工程であって、当該炭化水素構造は非円筒形である。
【0020】
一つの実施形態では、反応性基はアシル鎖のそれぞれの1つと結合してそれぞれのX1結合を形成する。
さらに、前記方法で製造された脂質を提供する。
【0021】
さらに、式Iの構造を有する分枝状の脂質部分Lを含む荷電脂質を提供する。
式I:
(化7)
A-(V)m-Z-L
式中、Aは生理的pHで荷電する先頭基であり;
(V)mは、任意の-(CR1R2)-であり、mは、1~10または2~6であり、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素、置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、または複素環、または独立して選択された置換されていてもよい単環、二環もしくは三環の炭素環または4~12個の環原子を有するヘテロ原子環であり;
Z-Lは、以下の式II、IIaまたはIIbの構造を有する。
直鎖リンカー構造の式II:
(化8)
X1-Lb
式中、X1は任意であり、X1は、エーテル基、エステル基およびカルバメート基から選択され、
Lbは、式IIIcの分枝状の脂質である。
【0022】
分岐状のリンカー構造の式IIa:
【化9】
Wは任意であり、
Wが存在する場合、X1結合、N-C(O)、N-C(O)O、またはN-OC(O)であり;
Wは、Dで置換されていてもよく、Dは、置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、または複素環であり;
(X)
nが存在する場合、それぞれ独立して選択された-(CR1R2)-であり;(X)
nのnは、0~10であり;Tは任意であり、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、またはヘテロサイクルであり、Tは置換されていてもよい。
Bは、G1およびG2を介してL1およびL2にそれぞれ結合した炭素原子であり;
G1およびG2は、独立してX1から選択され、G1およびG2のそれぞれ独立して(G)
uに結合していてもよく、Gは、独立して選択された-(CR1R2)-であり、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素、置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、または複素環であり、uは、0~16であり;
式中、G3は任意であり、X1から選択され、(G)
uに結合していてもよく;
L1は、式IIIcの分枝状の炭化水素であり;
L2は、1~20個の炭素原子と0~2個のシスまたはトランス二重結合を有する炭化水素鎖であるか、または式IIIcの構造を有し;
L3が存在する場合は、水素、1~20個の炭素原子と0~2個のシスまたはトランス二重結合を有する直鎖または分岐炭化水素鎖、または式IIIcの構造を有する。
【0023】
環構造の式IIb:
【化10】
式中、曲線は環を表し、EおよびKは環の構造を部分的に構成する原子を表し、その環は3~8個の環原子を有する置換または非置換の環であり;
L1、L2およびL3の少なくとも1つが、それぞれG1、G2およびG3を介して、任意の環内の単一の原子に結合しており、G1、G2およびG3のそれぞれが、独立して、(G)
uに結合していてもよく;
式中、式IIbのL1および任意のL2および/またはL3は、式IIIcの構造を有する。
【0024】
式IIIc:
【化11】
式中、L骨格は、L1’-L1’’-G
1-CH-[CH
2]
q-CH
3で表され、L骨格の炭素原子の総数は、10~30個であり;
L1’は、直鎖炭化水素鎖であり、5~20、6~20、7~20、8~20、5~12、5~10、5~9、6~12、6~10、6~9、7~12、7~10、または7~9個の炭素原子と0~3のシスまたはトランス二重結合を有しており;
L1’’は、炭素原子であり;
L1’’’は、G
1-CH-CH
2-CH
3で表され、式中、G
1は、0~4個の炭素原子の炭化水素鎖であり、1つのシスまたはトランス二重結合を有していてもよく;
nは、0~4であり;
pは、1~4であり;
n+pは、1~4であり;
qは、0~20であり;
各X1は、それぞれ独立して、エーテル、エステルおよびカルバメート基から選択され;
式中、各SおよびL1’’’’炭化水素側鎖は、独立して:
(a)0~5個のシスまたはトランスC=Cおよび1~30個の炭素原子を有し、その炭化水素鎖中の任意の炭素原子でそれぞれのX1の1つに結合している直鎖または分岐状の末端炭化水素鎖、または、
(b)式IIIcの分岐状の炭化水素構造であり、
式中、式IIIc中のL1’’’’およびS炭化水素鎖の総数は、1~10、1~9、1~8、1~7、1~6、1~5、1~4または1~3個であり;
式中、脂質部分のL1’’’’およびS炭化水素鎖の各1つは、ヘテロ原子で置換されていてもよい。ただし、炭化水素鎖において2つ以下のヘテロ原子が置換されている。
【0025】
別の実施形態では、式IのZ-Lは、式II(直鎖状リンカー構造)の構造を有する:
(化12)
X1-Lb
式中、式IIIcのL1’は、5~9個の炭素原子を有し、0~2個のシスまたはトランス二重結合を有し;
式中、式IIIcのG1は、不存在であるか、CH2またはCH2CH=CHであり、当該二重結合がシスまたはトランスであり;
式中、式IIIcのL1’’’’およびSは、0~5個のシスまたはトランスCH=CHおよび2~18個の炭素原子を有する炭化水素から独立して選択され;
式IIIcの足場骨格は、CH2-L1’’-G1-CH-CH2-CH3(L1’’’は、8~30の炭素原子であり;および
式中、qは、1~9である。
【0026】
別の実施形態では、式Iの(V)
mは、(CH
2)
mであり、mは、1~20であり;
Z-Lは、式IIaの構造(分枝状リンカー構造)を有する。
【化13】
式中、Wは、エーテル、エステルまたはカルバメート基(任意の方向)であり、Dは不存在であり、(X)
nは(CH
2)
nであり、nは1~10である。
G1およびG2は存在し、それぞれの(G)
uに結合しており、ここで(G)
uはCH
2であり;
G3-L3は存在し、CH
3およびCH
2CH
3から選択される炭化水素であり、またはG3-L3はCH
2X1L3であり、L3は1~20個の炭素原子および0~2個のシスまたはトランス二重結合を有する直鎖状または分枝状炭化水素鎖であるか、式IIIcの構造を有している。
【0027】
さらなる実施形態において、式IのZ-Lは、式IIbの構造を有する。
環構造の式IIb:
【化14】
式中、曲線は環を表し、EとKは環の構造を部分的に構成する原子を表し、この環は3から6個の環原子を有する置換または非置換の炭素環である。
一つの実施形態では、環は、3または5個の炭素原子を有している。さらなる実施形態において、少なくともL1およびL2が存在し、各G1およびG2基を介して環に結合し、式中、それぞれのG1およびG2基は、G
uに結合していてもよく、uは0~10または0~6である。
【0028】
式Iにおける先頭基Aは、以下の(i)~(iv)から一つ選択することができる。
(i)以下の群から選択されるイオン化可能なカチオン性部分
【化15】
(ii)以下の群から選択される、恒久的に荷電した部分
【化16】
(iii)以下の群から選択されるイオン化可能なアニオン性部分
【化17】
(iv)以下の群から選択される双性イオン部分
【化18】
【0029】
一つの実施形態において、式Iの炭化水素構造Lは、非円筒形である。
さらなる実施形態では、脂質は、水溶液中で他の脂質と組み合わせて脂質ナノ粒子を形成することが可能である。一つの実施形態において、他の小胞形成脂質は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸、セラミド、スフィンゴミエリンまたは親水性ポリマー-脂質複合体を含む。
さらに、その脂質二重層または単層中に組み込まれ、核酸、タンパクまたはペプチドを含む、前記実施形態のいずれか1つに記載の脂質を含む薬物送達担体製剤を提供する。
【0030】
一つの実施形態では、核酸は、低分子干渉RNA、低分子活性化RNA、メッセンジャーRNA、マイクロRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、アプタマー、プラスミド、環状DNA、直鎖DNA、アンチゴミア、アンチmiRNAオリゴヌクレオチドまたはmiRNAミミックである。
一つの実施形態では、薬物送達担体は、荷電ペプチドを含んでいる。
さらなる実施形態では、薬物送達担体は、脂質ナノ粒子(LNP)である。
本明細書に記載の実施形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1A】
図1Aは、脂質部分L中の1つの炭化水素鎖に、任意にリンカー基を介して結合する単純な先頭基(H)を有していても良い、本開示によって包含されるアミノ脂質を表している。先頭基に結合する脂質鎖は、ヒドロキシ脂質に由来し、そのヒドロキシ脂質由来の1つまたは複数の追加の脂質鎖に結合している。これらの脂質鎖は、さらにアシル脂質に由来する1つまたは複数の炭化水素鎖に結合している。
【
図1B】
図1Bは、脂質部分L内の2つの炭化水素に、任意にリンカー基を介して結合する先頭基を有する、本開示に包含されるアミノ脂質を描写している。先頭基に結合する2つの炭化水素は、ヒドロキシ脂質に由来する。ヒドロキシ脂質に由来する2つの脂質鎖のそれぞれは、ヒドロキシ脂質に由来する別のそれぞれの脂質鎖に結合し、これらの脂質には、さらに、アシル脂質に由来する1つまたは複数の炭化水素鎖が結合している。
【
図2A】
図2Aは、培養したルシフェラーゼ発現22Rv1細胞で評価したアミノ脂質のin vitroでの活性を示す。細胞を本開示のイオン化可能脂質およびルシフェラーゼsiRNAを1.0(左のバー)、0.3(中央のバー)および0.1μg/mL(右のバー)の濃度で脂質ナノ粒子(LNP)で処理した。発光レベルは処理後に測定された。LNPに組み込まれたイオン化可能な脂質は、2-(ジメチルアミノ)エチル(±)-シン-9,10-ジリノレオキシステアリン酸(INT-A001)、3-(ジエチルアミノ)プロピル(±)-シン-9,10-ジリノレオキシステアリン酸(INT-A002)、3-(ジメチルアミノ)プロピル(±)-シン-9,10-ジリノレオキシステアリン酸(INT-A003)、2-(ジエチルアミノ)エチル(±)-シン-9,10-ジリノレオキシステアリン酸(INT-A004)、3-(ジメチルアミノ)プロピル(12R)-リノレオキシオリン酸(INT-A005)、3-(ジエチルアミノ)プロピル(シン-9,10,12R)-トリリノレオキシステアリン酸(INT-A006)、3-(ジエチルアミノ)プロピル(±)シン-9,10-ビス(2-ヘキシルデカノイルオキシ)ステアリン酸(INT-A007)等がある。
【
図2B】
図2Bは、培養した22Rv1細胞において、1μg/mL siRNA濃度でのin vitroでのアミノ脂質の活性を示している。発光レベルは処理後16~24時間に測定し、相対的な発光を最高(左)から最低(右)にランク付けしている。
【
図3】
図3は、マウスのFVIIモデルで評価したアミノ脂質のin vivoでの活性を示している。本開示のカチオン性脂質およびFVII siRNAを含む脂質ナノ粒子(LNP)製剤を、C57BI/6野生型マウスの尾静脈から注射し、注射後に血漿中のFVIIのレベルを測定した。マウスに0.03(左のバー)、0.1(中央のバー)および0.3mg/kg(右のバー)の用量でLNP-siRNAを注射した。LNPに組み込まれたカチオン性脂質は、INT-A001、INT-A002、INT-A003およびINT-A007であった。
【
図4A】
図4Aは、培養したHepG2肝細胞で評価した、in vitroでのイオン化可能な脂質の活性を示している。細胞を、本開示のイオン化可能脂質および0.125~1μg/mLの濃度のルシフェラーゼmRNAを含むLNP製剤で処理した。発光レベルは、処理後に測定された。左から右に、LNPに組み込まれたイオン化可能な脂質は、INT-A001(白色バー)、INT-A002(点線のバー)、INT-A003(黒色のバー)およびINT-A004(灰色のバー)であった。
【
図4B】
図4Bは、マウスの肝臓におけるin vivoでのmRNAの発現を示す。本開示のカチオン性脂質とルシフェラーゼmRNAを含む脂質ナノ粒子(LNP)製剤を、C57BI/6野生型マウスの尾静脈から1mg/kgのmRNA用量で注射し、注射後の肝臓の発光を測定した。左から右に、LNP-mRNAに組み込まれたカチオン性脂質はINT-A001、INT-A002、INT-A003、INT-A004であった。未処理のマウスには、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を注入した。
【発明を実施するための形態】
【0032】
荷電物質を送達するために使用される脂質の構造
本明細書に記載の脂質は、先頭基Aと、後述する炭化水素構造を有する脂質部位Lとを有する。先頭基Aは、生理的pHで荷電しており、いくつかの実施形態ではイオン化可能であるが、恒久的な荷電基も同様に本開示に含まれる。先頭基Hは、生理的pHにおいて他の荷電基を含むことができるが、生理的pHにおいて正味の全体的に正または負の電荷を有する。荷電脂質は、1価または多価であり得る。
脂質部分Lは、一般に、炭化水素構造内に追加の炭化水素鎖または基を共役させるための足場として機能する炭素鎖を有する炭化水素構造で構成される。別の有利な実施形態では、脂質部分Lは、官能基を有するヒドロキシまたは他の脂質に由来する炭化水素鎖から少なくとも部分的に構成され、炭化水素構造の足場成分として機能する。ヒドロキシ脂質は、アシル脂質に由来する1つまたは複数の炭化水素鎖に結合することができる。
【0033】
本明細書で使用される場合、「足場炭素鎖」は、本明細書に記載されるような官能基(例えば、「X1官能基」、「X1結合」または本明細書で使用される他の同様の規則)を介して脂質部分L内の別の炭化水素鎖と共有結合することによってそのような足場機能を与える炭素鎖をいう。一例において、X1官能基は、基中の原子として、または任意に基中の唯一の原子としてN、O、SまたはPなどの電気陰性原子を有する基を含み、足場炭素鎖を別の足場炭素鎖を含む1以上の炭化水素鎖に共有結合させることを提供するものである。適切なX1官能基の例はエステルであるが、エーテルおよびカルバメート基を含む他の基が当業者によって容易に想定され得る。
【0034】
足場炭素鎖は、本明細書に記載されるようなヒドロキシル基を有する前駆体脂質に由来してもよい。このような脂質は、一般にヒドロキシ脂質と呼ばれ、天然に存在するか、または実験室で合成することができる。エステル基を作るためには、例えば、炭化水素鎖のヒドロキシル基を、縮合反応により別の炭化水素鎖上のカルボン酸と反応させることができる。ただし、様々な異なる合成経路が想定されるため、本明細書では、炭化水素構造の調製方法は、特に限定されるものではない。
足場としてのヒドロキシ化脂質に由来する荷電脂質の構造例を
図1Aおよび
図1Bに示す。脂質部分(L)は、脂質部分(L)内の1、2または3個の炭化水素基を介して先頭基Aに連結されていてもよい。
【0035】
図1Aは、脂質部分L内の1つの炭化水素に、任意にリンカー基を介して結合する単純な先頭基(A)を有する、本開示によって包含される荷電脂質を表している。本実施形態における第1の脂質鎖は、ヒドロキシ-脂質に由来する。ヒドロキシ-脂質は、ヒドロキシ-脂質に由来する1つ以上の追加の脂質鎖に結合していてもよい。さらに、これらの脂質鎖は、アシル脂質に由来する1つまたは複数の炭化水素鎖に結合している。
【0036】
図1Bは、脂質部分L中の2つの炭化水素に、任意にリンカー基を介して結合する先頭基(A)を備えて調製される、本開示に含まれる荷電脂質を表している。この例では、先頭基に結合する2つの炭化水素は、ヒドロキシ脂質に由来する。次に、2つの脂質のそれぞれは、ヒドロキシ脂質に由来する別のそれぞれの脂質に結合し、これらの脂質には、アシル脂質に由来する1つまたは複数の炭化水素鎖がさらに結合している。
しかしながら、
図1は、単に選択された実施形態の例示であり、いかなる方法においても限定的に解釈されるべきではないことが理解されよう。例えば、足場炭素鎖は、代替的に、脂肪酸アミン、脂肪酸アミドおよび/または分枝脂肪酸エステルから合成され得る。
【0037】
本開示の一例では、脂質は、生理的pHで正味の正または負の電荷を有する先頭基を含み、リンカー領域(本明細書では「リンカー」とも呼ばれる)を介して脂質部分に共有結合し、脂質部分は、2以上の連結炭化水素鎖を有する炭化水素構造を含み、任意でシスまたはトランスC=C、その鎖の少なくとも1つは、リンカー領域を介してイオン化可能な先頭基に結合しており、炭化水素鎖は、リンカー領域に結合した鎖の内部炭素における分岐点で互いに結合しており、この分岐点は、X1官能基を含み、X1官能基は、-OC(O)-、-C(O)O-、-O-、-NR1-、-C(O)N(R1)-、N(R1)C(O)-、-OC(O)O-、-OC(O)N(R1)-、-N(R1)C(O)O-、-S-、-S-S-、-C(R1)=N-N-C(O)-、-C(O)-N-N=C(R1)、-ON=C(R1)-、または-C(R1)=NO-から選択され、炭化水素鎖はそれぞれ1~30個の炭素原子を有し、炭化水素構造は、合計で10~150個の炭素原子からなり、R1は、独立して、水素、置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、または複素環から選択される。
【0038】
さらなる実施形態では、荷電脂質の炭化水素構造は、非円筒形である形状を有する。多くのリン脂質は、グリセロール骨格に結合した炭化水素鎖(2つの脂肪酸鎖によって形成される)を有し、一般に円筒形である親油性成分を形成している。しかしながら、特定の実施形態では、本明細書に記載の炭化水素構造は、「フレア状」構造(「円錐台状」形状とも呼ばれる)、すなわち、炭化水素構造は、その長さに沿った任意の点において、先頭基の最大直径の少なくとも1.2倍、または少なくとも1.5倍、または少なくとも2倍である直径を有することを形成する。このような形状は、核酸やその他の荷電分子を細胞に導入しやすくなるという点で有利である。
【0039】
別の実施形態では、荷電脂質の炭化水素構造は、3つ以上の炭化水素鎖を有し、3つ以上の炭化水素鎖の各々は、前記X1結合を介してその内部炭素で別の鎖に結合している。別の実施形態では、脂質部分は、2~20または3~18の共役炭化水素鎖を有する炭化水素構造を有する。一つの実施形態における炭化水素構造は、フレア状の非円筒構造を形成する連結炭化水素鎖の格子またはマトリックスとして記述することができる。接続点は、各生分解性官能基であってもよく、または接続点の少なくとも1、2、3、4または5が、患者への投与後に生体内で測定して、生分解性であると言える。
【0040】
様々な先頭基が考えられるが、一例では、先頭基は、末端アミン基のようなイオン化可能なアミノ基から構成される。一つの実施形態では、先頭基は、リン酸基を含んでいない。別の実施形態では、アミンは、一級、二級、三級または四級アミンである。第四級アミンが先頭基で利用される場合、先頭基内の他のイオン化可能な基の有無に応じて、脂質はイオン化できない可能性がある。別の実施形態では、先頭基は非双性イオン性である。
【0041】
Lの炭化水素構造における炭化水素鎖を連結するX1結合の各々は、同一であっても異なっていてもよい。すなわち、各X1は、上記に挙げたX1結合基から独立して選択することができる。
一つの実施形態では、X1結合は、OC(O)-、-C(O)O-、および-O-から選択される。さらなる別の実施形態において、X1結合は、生分解性である任意の共有結合である。X1結合はまた、pH感受性であってもよく、これは、開裂が周囲の溶液のpHに依存することを意味する。
【0042】
さらなる実施形態では、炭化水素構造は、1つ以上のヒドロキシ脂質と1つ以上のアシル脂質から生成され、1つ以上のヒドロキシ脂質は、前記1つ以上のアシル脂質を共役させるための足場炭素鎖として機能する。
さらなる実施形態では、脂質は、5.0~9.0の間、または5.5~8.5の間、または5.0~8.0の間の見かけのpKaを有する。
さらにさらなる実施形態では、上記の荷電脂質(例えば、カチオン性またはイオン化可能な脂質)は、リポソームを含むがこれに限定されない脂質ナノ粒子に配合することができる。
【0043】
さらなる実施形態では、荷電脂質は、式Iの構造を有する。
式I:
(化19)
A-(V)m-Z-L
式中、Aは生理的pHで荷電する先頭基であり;
(V)mは、任意の-(CR1R2)-であり、mは、1~10または2~6であり、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素、置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、または複素環、または独立して選択された置換されていてもよい単環、二環または三環の炭素環または4~12個の環原子を有するヘテロ原子環であり;
Z-Lは、以下の式II、IIaまたはIIbの構造を有する。
【0044】
式IIは、直鎖状リンカー構造である。
(化20)
X1-Lb
式中、X1は任意であり、エーテル、エステルおよびカルバメート基から選択され;および
Lbは、以下の式IIIcの分岐状の脂質である。
【0045】
本開示の別の例では、荷電脂質は、アミノ脂質であり、以下の式Iaを有する。
式Ia:
【化21】
式中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立して、水素、置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、またはヘテロサイクルであり;
ここで、任意選択で、R1、R2およびR3のうちの1つは、不存在であり(孤立電子対)、または水素であり;
Vの各出現は、独立して選択された-(CR1R2)-であり、mは、1~10または2~6である。
式IのZ-Lまたは式Iaのアミノ脂質のZ-L1は、以下に表される式II、式IIaまたは式IIbで表すことができる。
【0046】
式II:
(化22)
X1-Lb
式中、X1は任意であり、一つの実施形態におけるX1は、エーテル、エステルおよびカルバメート基から選択され;および
Lbは、式III、IIIaまたはIIIcの分岐状脂質である。
【0047】
式IIa:
【化23】
式中、Wは任意であり、
Wは、存在する場合、-OC(O)-、-C(O)O-、-O-、-NR1-、-C(O)N(R1)-、N(R1)C(O)-、-NC(O)R1-、-OC(O)O-、-OC(O)N(R1)-、-N(R1)C(O)O-、-S-、-S-S-、C(R1)=N-N-C(O)-、C(O)-N-N=C(R1)、-ON=C(R1)またはC(R1)=NO-であり;
式中、Wは、置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、または複素環であるDで置換されていてもよく;
(X)
nの各出現は、独立して選択された-(CR1R2)-、または独立して選択された、4~12の環原子を有する置換されていてもよい単環、二環、または三環炭素環またはヘテロ原子環であり;(X)
nのnは、0~10であり;Tは、任意であって、置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、またはヘテロ環であり;
Bは、任意にG1を介して、L1に共有結合した炭素、酸素、窒素原子であり;任意にそれぞれのG2およびG3基を介して、独立して選択されたL2および/またはL3に任意に付加的に結合し;
G1、G2およびG3は、-OC(O)-、-C(O)O-、-O-、-NR1-、-C(O)N(R1)-、N(R1)C(O)-、-OC(O)O-、-OC(O)N(R1)-、-N(R1)C(O)O-、-S-、-S-S-、C(R1)=N-N-C(O)-、C(O)-N-N=C(R1)、-ON=C(R1)、またはC(R1)=NO-から独立して選択され、G1、G2およびG3の各々が独立して任意に先行し、(G)
uに結合しており、Gは独立して選択された-(CR1R2)-であり、uは0~10である;
【0048】
式IIb:
【化24】
式中、Wは任意であり;
Wが存在する場合、-OC(O)-、-C(O)O-、-O-、-NR1-、-C(O)N(R1)-、N(R1)C(O)-、-NC(O)R1-、-OC(O)O-、-OC(O)N(R1)-、-N(R1)C(O)O-、-S-、-S-S-、C(R1)=N-N-C(O)-、C(O)-N-N=C(R1)、-ON=C(R1)、またはC(R1)=NO-であり;
ここで、Wは、置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、またはヘテロ環であるDで置換されていてもよく;
ここで、曲線は環を表し、EおよびKは、環の構造を部分的に形成する任意の原子を表し、この環は4~12個の環原子を有する置換もしくは非置換の単環、二環、もしくは三環の炭素環または単環、二環、もしくは三環のヘテロ原子環であり;
式Iaおよび式Ib中のL2およびL3は、任意に水素原子または1~40個の炭素原子を有し、任意に1つ以上のシスまたはトランスC=C二重結合を有する炭化水素鎖であるか、式IIIa(後述)の構造を有するものであり;
ここで、L1、L2およびL3のうちの2つは、任意に、曲線で表される環内の単一の原子に結合しており;
上記式のL、Lb、L1および任意にL2および/またはL3は、すぐ下に記載される式IIIの構造を有する脂質部分である。あるいは、脂質部分は、後述の式IIIaまたは式IIIcを含む構造を含む。
【0049】
式III:
【化25】
式中、L1’、L1’’、L1’’’およびL1’’’’は、1つ以上のシスまたはトランスC=Cを任意に含む、1~30個の原子を有する炭化水素鎖から独立して選択され;
X1は、-OC(O)-、-C(O)O-、-O-、-NR1-、-C(O)N(R1)-、N(R1)C(O)-、-OC(O)O-、-OC(O)N(R1)-、-N(R1)C(O)O-、-S-、-S-S-、C(R1)=N-N-C(O)-、C(O)-N-N=C(R1)、-ON=C(R1)、またはC(R1)=NO-であり;
式IIIは、任意に、それぞれが独立して、1~30個の原子を有する炭化水素鎖から選択され、任意に1以上のシスもしくはトランスC=Cまたはステロールを含み、少なくとも1つのSであるX1結合を介してL1’、L1’’、L1’’’および/またはL’’’’の炭素原子に結合している1~10の側鎖Sから構成される。
【0050】
荷電脂質(例えば、イオン化可能な脂質)は、エナンチオマーの混合物であってもよいし、単一の光学異性体を含んでもよい。上述のように、X1基は生分解性であることができ、被験者への投与後に切断され得る。限定されるものではないが、エステル結合は、患者への投与後にエステラーゼによって加水分解され、それによって脂質から炭化水素鎖を遊離させることが可能である。酵素によって、またはpH変化によって加水分解されることが可能な他の基も、同様に本開示に含まれる。しかしながら、X1基は、同様に非生分解性基であり得ることが理解されよう。
【0051】
一つの実施形態では、脂質は、生体適合性アルコールに可溶であり、それによって、送達担体への組み込みおよび核酸、例えば、低分子干渉RNA、低分子活性化RNA、メッセンジャーRNA、マイクロRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、アプタマー、プラスミド、環状DNA、直鎖DNA、アンチゴミル、アンチmiRNAオリゴヌクレオチド、miRNAミミックまたは遺伝子編集物質などの共封入が容易となる。
【0052】
先頭基(A)
脂質は、1つ以上の炭化水素鎖に共有結合した先頭基(本明細書では「A」と表記する)を有するものとして便宜上表されることが多い。任意で、先頭基Aは、リンカー領域によって炭化水素鎖に結合される。適切な先頭基およびリンカー領域は、以下の記載のとおりである。
一つの実施形態では、先頭基は、イオン化可能、恒久荷電、または双性イオンである部位から選択される。先頭基は、pH7.4(生理的pH)を含む特定のpH値または範囲において、正または負の電荷を脂質に与えてもよい。これらの各カテゴリーに分類される置換基の例は、以下の通りである。
【0053】
(i)イオン化可能なカチオン性部分:
【化26】
(ii)恒久的に荷電した部分:
【化27】
(iii)イオン化可能なアニオン性部分:
【化28】
または、
(iv)双極イオン性部分:
【化29】
【0054】
通常、脂質の先頭基Aは比較的小さく、生理的pHで荷電する。非限定的な一つの実施形態では、かかる先頭基は、末端イオン化可能なアミン基からなるが、リン酸基や硫酸基などの基も本明細書では含まれる。別の実施形態では、先頭基は、イオン化可能な脂質に5~8の間の見かけのpKa、またはイオン化可能な脂質に5.5~7.5のpKaを付与する末端イオン化可能なアミン基を有する。アミノ基のpKaは、先頭基内の隣接する原子の影響を受ける可能性があることが理解されよう。硫酸塩またはリン酸塩を含む先頭基は、脂質に全体的に負の電荷を付与することがある。
【0055】
アミン基は、一級、二級、三級アミン基のいずれであってもよい。先頭基は、例えば、同一または異なる2個または3個のアミノ基をさらに含んでいてもよい。
【0056】
一つの実施形態では、先頭基のアミン部分は、以下の式を有する。
【化30】
式中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立して、水素、置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルキルアルキルまたは複素環;ここで、R1、R2およびR3の1つは不存在(孤立電子対)、または水素である。
【0057】
先頭基が正に荷電しているこれらの実施形態では、この基が負の電荷を付与し、したがって電荷中性の脂質をもたらす可能性があるため、この基はリン酸基を有さない。しかしながら、脂質の全体的な電荷が生理的pHにおいて正である場合には、そのような基が先頭基に含まれていてもよい。
【0058】
任意で、先頭基は、患者への脂質またはその製剤の投与後の血中滞留性を改善するポリマーを含む親水性ポリマーに共役される。このような親水性ポリマーの非限定的な例としては、ポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。
当業者には理解されるように、先頭基が荷電している場合、脂質は塩として存在し得る。薬学的に許容される塩が、本開示の範囲内に含まれる。
【0059】
任意のリンカー領域
イオン化可能なアミン基に加えて、脂質は、1、2または3つの脂質鎖(そのうちの少なくとも1つは足場炭素鎖である)に共有結合できる1または複数の電気陰性原子を有する領域を含んでいてもよい。脂質中のそのような領域は、リンカー領域、または単に「リンカー」と呼ぶことができ、炭化水素鎖が先頭基に直接連結されてもよいため、任意である。
リンカーの化学構造は、先頭基に結合する脂質鎖の数にもよるが、その構造内にエステル、エーテル、グリセリドリンカー、グリセリドリンカーの誘導体、または炭素原子もしくはヘテロ原子からなる多員環を含む環状リンカーを含むことができる。
【0060】
先頭基に結合するリンカー領域は、以下の式を有することができる。
【化31】
式中、(V)
m-Zは、一端が先頭基Aに、他端が炭化水素領域であるL1に結合したリンカー領域を表す。
式中の部分Z-L1が一緒になって、上記の式II、式IIaまたは式IIbで表すことができる。
【0061】
任意で、リンカー領域は、ポリエチレングリコール(PEG)などの血中滞留性を向上させるポリマーを含む親水性ポリマーに結合する。
【0062】
当業者には理解されるように、ヘッドリンカー基の様々な異なる組み合わせが本開示によって包含される。リンカー領域は、そこに結合している炭化水素鎖の数によって特徴付けられることがある。あるいは、リンカーは、直鎖状、分枝状、または環状として記載されてもよい。 各カテゴリーの例は、以下に提供される。
【0063】
単一の炭化水素鎖を付着させるリンカー領域を有する先頭基の一例を以下に示すが、これらに限定されない。
【化32】
【0064】
2つの炭化水素鎖を結合するリンカー領域を有する先頭基の一例を以下に提供するが、これらに限定されない。
【化33】
【0065】
3つの炭化水素鎖を付着させるリンカー領域を有する先頭基の一例を以下に提供するが、これらに限定されない。
【化34】
【0066】
また、リンカー領域は、直鎖状、分岐状、環状と記載することもできる。直鎖状、分岐状、および環状のリンカー領域の例は、それぞれ、上記に記載された式II、IIa、およびIIbに記載されている。
【0067】
脂質部分L
脂質部分Lは、直接またはリンカー領域を介して先頭基に結合した炭化水素構造内に1、2または3つの炭化水素鎖を含むことができる。1つの炭化水素鎖のみが先頭基またはリンカー領域に結合しているそれらの実施形態において、追加の炭化水素側鎖Sは、L1の内部炭素に結合していてもよい。
したがって、少なくとも、1つの実施形態において、先頭基は、式IIIの構造を有する脂質部分であるL1と、またはリンカーを介して結合している。
【0068】
式III:
【化35】
式中、L1’、L1’’、L1’’’およびL1’’’’は、1~30個の原子、または1~20個の原子を有する炭化水素鎖から独立して選ばれ、任意に1以上のシスまたはトランスC=Cを含み;および
X1は、-OC(O)-、-C(O)O-、-O-、-NR1-、-C(O)N(R1)-、-N(R1)C(O)-、-OC(O)O-、-OC(O)N(R1)-、-N(R1)C(O)O-、-S-、-S-S-、C(R1)=N-N-C(O)-、-C(O)-N-N=C(R1)、-ON=C(R1)、または-C(R1)=NO-である。
任意で、先頭基は、リンカーを介して、脂質部分であるL2、またはさらなるL3脂質部分をそこに結合していてもよい。任意のL2およびL3脂質部分は、それぞれ独立して、1~30個の原子または1~20個の原子を有する炭化水素鎖、1つ以上のシスまたはトランスC=Cを含んでいてもよく、またはステロールから選択することができる。L2および/またはL3は、下記式IIIaの脂質であってもよい。
【0069】
式IIIa:
【化36】
式中、Ln’はリンカーに共有結合している。
式IIIaの命名法によれば、LがL2であるときnは2であり、LがL3であるときnは3である。例えば、L2炭化水素の場合、式IIIaは、以下の命名法を採用する。
【0070】
【化37】
式IIIまたはIIIaは、任意に、(S)
nとして表される1~20個の側鎖Sを含み、nは0~20であり、それぞれ独立して、1~30個の原子もしくは1~20個の原子を有する炭化水素鎖、任意に1以上のシスもしくはトランスC=C、またはステロールから選ばれ、(S)
nがL1、L2および/またはL3の炭素原子にX1結合を介して結合しているか、かかる結合を介して炭化水素構造内の別の側鎖Sに結合している。一つの実施形態において、X1結合は、エステル結合のような生分解性である。しかしながら、生分解性であるもの以外の他の結合を本発明の実施において使用することができる。
【0071】
例えば、L1は、X1結合を介してL1’、L1’’’またはL1’’’’のいずれか1つに結合した側鎖S1’を有していてもよい。追加の側鎖S1’’、S1’’’またはS1’’’’は、L1または任意のS1側鎖の炭素に結合していてもよい。さらなる例において、L2が上記式IIIaの構造を有する場合、L2は、L2’、L2’’’またはL2’’’’のいずれか1つに結合した側鎖S2’を有していてもよい。追加の側鎖S2’’、S2’’’およびS2’’’’は、L2の炭素または任意のS2側鎖に結合していてもよい。同様に、L3が存在し、上記の式IIIaを有する場合、L3’、L3’’’またはL3’’’’のいずれか1つに結合した側鎖S3’を有していてもよい。追加の側鎖S3’’、S3’’’およびS3’’’’は、L3または任意のS3側鎖の炭素に結合していてもよい。
【0072】
本開示によって包含される構造を有する脂質の例は、表1(下記)に描かれている。表1に示される構造A~Fは、追加のS炭化水素鎖への足場付着点を提供するX1分岐点を有する単一の炭化水素に付着したリンカーを有する先頭基を含む。表1に示される構造G~Jは、2つの炭化水素、L1およびL2を結合するリンカーを有する先頭基を含む。構造K~Mとして描かれた脂質は、L1、L2およびL3の3つの炭化水素への結合点を持つリンカーを有する。
【0073】
以下の注釈付き構造Aは、L1のX1結合および疎水性領域を描写するために本明細書の式IIIで使用される規則を例示している。X1の存在は、構造中の他のX1から独立して選択されることが理解されよう。説明したように、X1基は、電気陰性原子を有する任意の適切な官能基を含む。
示された例は、L1の炭素に結合した側鎖Sを有する上記式IIIによる単一のL1脂質炭化水素鎖(L1’、L1’’、およびL1’’’)を有するアミノ脂質である。
【0074】
構造A(INT-A001):
【化38】
上記の構造A(INT-A001)に見られるように、L1’、L1’’およびL1’’’は一緒になって、ジヒドロキシ脂質に由来する直鎖炭化水素骨格(本明細書では「足場炭素鎖」と呼ぶ)を形成している。この炭化水素鎖L1’-L1’’-L1’’’は、X1結合を介してL1’-L1’’-L1’’’のL1’’炭素に結合し、第2のS「側鎖」炭化水素鎖が第2のX1結合を介してL1’’’’に結合する。この構造では、X1結合は両方ともエステル基である。しかしながら、上述のように、X1官能基は、O、N、Pおよび/またはS原子を含む様々な官能基から独立して選択することができる。
【0075】
1、2または3つの炭化水素鎖に結合する先頭基内のリンカー領域を有する脂質の例を、以下の表1に示す。示された各脂質について、式IIIのL1の置換基L1’/L’’/L’’’/L’’’’が提供され、さらにL2およびL3炭化水素鎖が提供されていてもよい。また、式IIaまたはIIbによって定義される先頭基およびリンカー領域の構造も提供される。それぞれの場合において、X1基は、炭化水素鎖を互いに連結して、相互連結した炭化水素格子構造を形成するエステルである。以下の構造から分かるように、Lの相互接続された炭化水素構造は、一般的にフレア状または円錐台状の形状を形成する。
【0076】
表1:フレア状炭化水素構造を形成する1、2または3つの炭化水素鎖L1、L2およびL3に結合したリンカー領域を有する選択的アミノ脂質
【表1】
【0077】
脂質部分を説明するための代わりとなる構造は、式IIIcである:
式IIIc:
【化39】
式中、L骨格は、L1’-L1’’-G1-CH-[CH
2]
q-CH
3で表され、L骨格の総炭素原子数は10~30であり;
L1’は、直鎖炭化水素鎖であり、2~20、3~20、4~20、5~20、6~20、7~20、8~20、5~12、5~10、5~9、6~12、6~10、6~9、7~12、7~10、または7~9個の炭素原子と0~3個のシスまたはトランス二重結合を有するものであり;
L1’’は、炭素原子であり;
L1’’’は、G1-CH-CH
2-CH
3で表され;
G1は、0~4個の炭素原子の炭化水素鎖であり、1つのシスまたはトランス二重結合を有していてもよく;
nは0~4であり;
pは1~4であり;
n+pは、1~6または1~4であり;
qは、0~20または0~10または1~5であり;
各X1は、上記の任意の適切なX1基であるか、または独立して、エーテル、エステルおよびカルバメート基から選択され;
各SおよびL1’’’’炭化水素側鎖は、独立して:
(c)0~5個のシスまたはトランスC=Cおよび1~30個または2~18個の炭素原子を有し、その炭化水素鎖中の任意の炭素原子でそれぞれのX1の1つに結合する直鎖または分岐した終止炭化水素鎖;または
(d)式IIIcの分岐構造であり、
式中、式IIIcにおけるL1’’’’およびS炭化水素鎖の合計数は、1~10、1~9、1~8、1~7、1~6、1~5、1~4または1~3個であり、
ここで、脂質部分におけるL1’’’’およびS炭化水素鎖のそれぞれは、ヘテロ原子で置換されていてもよく、ただし、炭化水素鎖に置換されているヘテロ原子は4、3または2個以下である。
【0078】
X1エステル基は、以下に例示するように、カルボニル基の位置に対してどのような向きであってもよい。
【化40】
一つの実施形態では、式IIIcの炭素原子の総数は、150、125、100、90、80、70、60または50個を超えない。
別の実施形態では、式IIIcの構造は、先頭基またはリンカー領域に隣接する領域から炭化水素構造上の遠位炭素原子まで決定されるように、非円錐形またはフレア状である。前述のように、このような構造は、脂質が送達担体中に配合される場合、カーゴ分子の送達を容易にする。
【0079】
足場炭素鎖
一つの実施形態では、足場機能を提供するL1、L2および/またはL3脂質部分の骨格炭化水素鎖は、側鎖Sに連結するための官能基を有する脂肪酸に由来する。これは、O、N、Pおよび/またはSから選ばれる原子を有する基で置換された脂肪酸を含む。このような基により、側鎖と足場を構成するL1、L2および/またはL3の骨格炭素の結合を容易にする。
【0080】
例えば、L1、L2および/またはL3は、炭素鎖上の任意の位置に結合したヒドロキシ基を有する脂肪酸であるヒドロキシ脂肪酸(HFA)から由来してもよい。HFAは、β-ヒドロキシ脂肪、ω-ヒドロキシ脂肪酸、もしくは任意の(ω-1)-ヒドロキシ脂肪酸、または炭素骨格の内部炭素に反応性官能基を有する他の任意のHFAであってもよいが、これらに限定されない。HFAは飽和でも不飽和でもよい。2つ以上のヒドロキシ官能基が炭素鎖上にも存在することができる。
【0081】
あるいは、L1、L2および/またはL3は、ヒドロキシル脂肪酸の脂肪酸エステル(FAHFA)として当該技術分野で知られているHFAの分岐脂肪酸エステルに由来する。これらの脂肪酸エステルは、脂肪酸とHFAとの間の分岐エステル結合を含んでなる。例えば、9-[(9Z)-オクタデセノイルオキシ]オクタデカン酸は、オレイン酸のカルボキシ基と9-ヒドロキシオクタデカン酸のヒドロキシ基との縮合によって得られる脂肪酸エステルである。
【0082】
代替的な実施形態では、L1、L2および/またはL3は、脂肪酸アミドに由来し、これは、アミン成分としてエタノールアミンから構成されてもよい。さらに、L1、L2および/またはL3は、脂肪酸アミンに由来してもよい。
【0083】
式IIIの足場炭素鎖は、上記以外の他の脂肪酸に由来してもよい。加えて、脂肪酸は、順番に、それらの対応するトリグリセリドに由来され得ることが理解される。
式III、IIIaおよびIIIbにおいて、L1’、L1’’およびL1’’’は一緒になって直鎖状炭化水素骨格(本明細書では「足場炭素鎖」という)を形成している。上記式IIIcによれば、足場炭素鎖は、L1’-L1’’-G1-CH-[CH2]q-CH3で示され、足場中の炭素原子の総数が10~30個である。
【0084】
製剤
カチオン性またはイオン化可能な脂質は、低分子干渉RNA、低分子活性化RNA、メッセンジャーRNA、マイクロRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、アプタマー、プラスミド、環状DNA、直鎖DNA、アンタゴマー、アンチmiRNAオリゴヌクレオチドおよびmiRNAミミック、および/または遺伝子編集材料などの核酸を容易にカプセル化することができる。代替的または追加的に、負に荷電しているタンパク質およびアミノ酸を送達担体に組み込むことができる。
【0085】
本明細書に記載される荷電脂質は、核酸以外の他の荷電分子を送達するために使用されてもよい。これには、生物活性剤およびプロドラッグの両方を含む、多種多様な正または負に荷電したペプチド、タンパク質、多糖類または炭水化物が含まれ、以下に記載のものが例示される。
【0086】
本明細書に記載されたカチオン性またはイオン化可能な脂質は、核酸または他の負または正に荷電したカーゴ分子と共にフリー体で投与することができ、またはこれらの成分を送達担体に組み込むことができる。医薬製剤を調製するために、様々な送達システムを使用することができる。荷電脂質および関連する荷電分子がフリー体である場合、薬学的に許容される塩または賦形剤を医薬製剤に含有させることができる。
【0087】
本開示の脂質は、本明細書において「脂質ナノ粒子」または「LNP」と呼ばれる、脂質または他の疎水性成分を含むリポソームまたはポリマーベースシステムなどのナノ粒子への組み込みに特に適合する。
例えば、いくつかの実施形態において、所定の脂質ナノ粒子への装填効率は、60%~100%、70%~100%、または最も有利には80%~100%である。
【0088】
一つの実施形態では、脂質は、ベシクル形成脂質および任意にステロールを含む脂質製剤成分と混合することによって、リポソームなどの脂質ナノ粒子に担持される。その結果、イオン化可能またはカチオン性脂質を組み込んだ脂質ナノ粒子は、押出成形、エタノール注入およびインライン混合を含むがこれらに限定されない、よく報告されており、当業者に周知の多種多様な製剤方法論を使用して調製することができる。そのような方法は、次のような論文に記載されている。Maclachlan, I. and P. Cullis, “Diffusible-PEG-lipid Stabilized Plasmid Lipid Particles”, Adv. Genet., 2005. 53PA:157-188、Jeffs, L.B., et al., “A Scalable, Extrusion-free Method for Efficient Liposomal Encapsulation of Plasmid DNA”, Pharm Res, 2005, 22(3):362-72、およびLeung, A.K., et al., “Lipid Nanoparticles Containing siRNA Synthesized by Microfluidic Mixing Exhibit an Electron-Dense Nanostructured Core”, The Journal of Physical Chemistry. C, Nanomaterials and Interfaces, 2012, 116(34): 18440-18450、これらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0089】
荷電脂質以外に脂質ナノ粒子に含まれ得る脂質成分としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸、セラミド等のベシクル形成脂質が挙げられる。また、相転移温度を広げるために、LNPにコレステロールを含有させてもよい。また、LNPは、例えば、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン-PEGなどの親水性ポリマーと共役した脂質を含んでもよい。親水性ポリマーなどの表面安定化官能基は、投与後のナノ粒子のクリアランスを減少させるために望ましい場合がある。LNP製剤は、エンドサイトーシスを介した送達担体と標的細胞との融合を促進する融合性脂質も含んでもよい。
【0090】
好適なLNPとしては、公知の方法による押出しによって調製されたリポソーム、または多層状小胞(MLV)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。リポソームの内部空間は、薬物などの内包された薬剤を含んでいてもよく、二層または二重層は、その中に分割されたそのような薬剤を含んでいてもよい。
好適なLNP送達システムの別の例は、SNALPという安定な核酸-脂質粒子である。 SNALPは、カチオン性脂質、非カチオン性脂質、および任意の親水性ポリマー-脂質コンジュゲート、例えばPEG化脂質および膜融合脂質を伴う核酸を含んでよい。
【0091】
脂質ナノ粒子は、親油性コアから構成されてもよい。例えば、送達担体は、界面活性剤によって安定化された脂質コアからなるナノ粒子であることもできる。ベシクル形成脂質は、安定化剤として利用され得る。別の実施形態における脂質ナノ粒子は、安定化脂質によって囲まれたポリマーナノ粒子コアからなるポリマー-脂質ハイブリッド系である。
ナノ粒子は、代替的に脂質を含まないポリマーから調製することもできる。このようなナノ粒子は、ポリマーシェルに囲まれた薬剤の濃縮コアからなるか、またはポリマーマトリックス中に分散された固体または液体を有していてもよい。
【0092】
本明細書に記載された脂質は、油滴またはオイルコアを含む薬物送達担体であるエマルションに組み込むこともできる。エマルションは、脂質で安定化することができる。例えば、エマルションは、脂質の単層または二層などの乳化成分によって安定化された油で満たされたコアから構成されることができる。
本明細書で提供される脂質は、ミセルに配合することも可能である。ミセルは、両親媒性脂質またはポリマー成分からなる自己組織化粒子であり、疎水性コアに存在する薬剤の送達のために利用される。
【0093】
荷電脂質を配合することができる当業者に既知の薬物送達担体のさらなる部類は、カーボンナノチューブである。
前述の送達担体の調製およびそこに荷電脂質を組み込むための様々な方法が知られており、当業者によって容易に実施することができる。
【0094】
本開示によって包含されるある種の脂質は、キャリアを含まない系の一部を形成してもよい。そのような実施形態では、負に荷電した分子に関連する脂質は、粒子に自己集合し得る。例としては、DNAとカチオン性脂質との間の会合であるリポプレックスの形成が挙げられる。そのような製剤は、任意に、薬学的に許容される塩および/または賦形剤を含み得る。
カチオン性またはイオン化可能な脂質を組み込んだ送達担体は、プロドラッグを含む抗癌剤または他の治療剤など、担体に組み込まれた活性剤を含むこともできる。
送達担体は、任意に、アポリポタンパク質などのリポタンパク質を含んでもよい。
【0095】
核酸、遺伝物質、タンパク質、ペプチド、その他の荷電粒子の送達
上述したように、本明細書に開示される荷電脂質は、正味の負または正の電荷を有する分子(本明細書では「カーゴ」または「カーゴ分子」とも呼ばれる)の送達担体への組み込みと、その後のin vitroまたはin vivoにおける標的細胞への送達を容易にする。
【0096】
一つの実施形態では、分子は、核酸などの遺伝物質である。核酸は、限定されないが、低分子干渉RNA(siRNA)、小核RNA(snRNA)、マイクロRNA(miRNA)などのRNA、またはプラスミドDNAもしくは直鎖DNAなどのDNAを含む。核酸の長さは様々であり、5~50,000ヌクレオチドの長さの核酸を含むことができる。核酸は、一本鎖DNAもしくはRNA、二本鎖DNAもしくはRNA、またはそれらのハイブリッドなど、任意の形態であり得る。一本鎖核酸には、アンチセンスオリゴヌクレオチドが含まれる。
特に有利な一つの実施形態では、カーゴはsiRNAである。siRNAは、内因性細胞機構に取り込まれてmRNAの分解をもたらし、それによって転写を阻止する。RNAは容易に分解されるので、送達担体に取り込まれると、そのような分解を低減または防止することができ、それによって標的部位への送達を容易にすることができる。
【0097】
また、遺伝子編集システムを荷電脂質からなる送達担体に組み込むことも可能である。これには、Cas9-CRISPR、TALENおよびジンクフィンガーヌクレアーゼ遺伝子編集系が含まれる。Cas9-CRISPRの場合、ガイドRNA(gRNA)を、Cas9タンパク質をコードするプラスミドまたはmRNAと共に、本明細書に記載のカチオン性脂質を含む送達担体に組み込んでもよい。任意で、リボ核タンパク質複合体が、本明細書に記載されるカチオン性脂質を含む送達担体に組み込まれてもよい。同様に、本開示は、ジンクフィンガーヌクレアーゼまたはTALENシステムのDNA結合および切断ドメインをコードする遺伝物質が、イオン化可能またはカチオン性脂質と共に送達担体に組み入れられる実施形態を含む。
【0098】
荷電した脂質は、全体的に荷電したタンパク質やペプチドを送達媒体に取り込むことも容易にすることができる。 これには、直鎖状または非直鎖状ペプチドの両方が含まれる。ペプチドの例としては、細菌/抗生物質ペプチド、真菌ペプチド、無脊椎動物ペプチド、両生類/皮膚ペプチド、毒ペプチド、癌/抗癌剤ペプチド、ワクチンペプチド、免疫/抗炎症ペプチド、脳内ペプチド、内分泌ペプチド、摂食ペプチド、消化管ペプチド、心血管ペプチド、腎臓ペプチド、呼吸ペプチド、アヘンペプチド、神経栄養ペプチド、血液脳ペプチドがある。ペプチドの具体的な例は、上記で提供されている。
【0099】
本明細書に記載の荷電脂質と関連し得るペプチドの特定の例は、インターフェロンおよび他のマクロファージ活性化因子である。これには、リンホカイン、ムラミルジペプチド(MDP)、γ-インターフェロン、α-インターフェロン、β-インターフェロン、および関連の抗ウイルス剤および殺腫瘍剤;オピオイドペプチドおよび神経ペプチド、これにはエンカファリン、エンドルフィンおよびダイノルフィン、および他の鎮痛剤;例えば降圧剤を含むレニン阻害剤;例えばCCK、セルレチド、エレドイシンのようなコレシストキニン(CCKアナログ)、および関連する心血管標的薬およびCNS標的薬;オキシトシンなどのロイコトリエンおよびプロスタグランジン、ならびに抗炎症、オキシトシドおよび堕胎化合物;エリスロポエチンおよびその誘導体ならびに関連する造血剤;リュープロリド、ブセレリンおよびナファレリンなどのLHRHアナログならびに関連する下垂体受容体のダウンレギュレーター;副甲状腺ホルモンおよび他の成長ホルモンアナログ;Dnase、カタラーゼおよびα-Iアンチトリプシンなどの酵素;シクロスポリンなどの免疫抑制剤;GM-CSFおよび他の免疫調節剤;およびインスリンが含まれる。
【0100】
投与
特定の実施形態では、遊離または薬物送達担体中に製剤化された、核酸または他の荷電分子に関連する荷電脂質は、患者の状態を治療、予防および/または改善するために投与される。特に、核酸または他の荷電物質と一緒に遊離形態または送達担体中に処方された荷電脂質は、予防、改善または治療の利益を提供し得る。荷電した脂質を含む医薬組成物は、任意の適切な用量で投与される。一つの実施形態では、薬物送達担体中に遊離または製剤化されている脂質は、親側、すなわち、動脈内、静脈内、皮下または筋肉内投与される。他の実施形態では、本明細書に記載される送達担体において遊離形態または製剤化された脂質は、局所的に投与されてもよい。さらに別の実施形態では、本明細書に記載の遊離形態の脂質または送達担体中に製剤化された脂質は、経口投与されてもよい。さらにさらなる実施形態では、遊離形態の脂質または送達担体中に製剤化された脂質は、エアロゾルまたは粉末分散による肺投与用である。
【0101】
本明細書に記載される組成物は、本明細書で使用されるようにヒトまたは非ヒト対象を含む「患者」を含む任意の対象に投与することができる。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の脂質は、患者から得られた幹細胞および培養細胞を含む細胞のin vitroトランスフェクションに使用される。一つの実施形態では、トランスフェクションされた細胞は幹細胞であり、それらを採取元の患者に投与されて戻される。
【0102】
以下の実施例は、説明のためにのみ示され、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0103】
材料および方法
実施例1に記載の有機合成反応について、特に明記しない限り、THF(窒素下でNa/ベンゾフェノンから新たに蒸留)、およびEt3N、DMFおよびCH2Cl2(窒素下でCaH2から新たに蒸留した)を除き、すべての試薬および溶媒は市販のものを購入し、さらに精製せずに使用した。USPグレードのヒマシ油を地元の薬局(Life Brand)で購入し、そのままの状態で使用した。NMR化学シフトはδスケールで百万分率(ppm)で表され、結合定数Jはヘルツ(Hz)で表される。スペクトルは残留溶媒のシグナルを基準としている。多重度は、「s」(シングレット)、「d」(ダブレット)、「t」(トリプレット)、「q」(カルテット)、「quint」(クインテット)、「sept」(セプテット)、「m」(マルチプレット)と表し、さらに「app」(アパレント)と「br」(ブロード)としている。
【0104】
脂質ナノ粒子(LNP)は、ステロール、コレステロール同様、中性脂質である1,2-ジステアロイル-sn-グリセロール-3-ホスホコリン(DSPC)および1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000](PEG-DMPE)を用いて調製した。DSPCおよびPEG-DMPEはAvanti Polar Lipids(アラバスター、AL)から購入し、コレステロールはSigma(セントルイス, MO)から入手した。
【0105】
LNPの特性は、粒子径と多分散性(PdI)の測定することにより評価した。粒子径と多分散性は、Malvern Zetasizer Nano ZS(モルバーン、UK)を用いた動的光散乱によって測定した。LNPはPBSで適切な濃度に希釈した。数-重量のサイズおよび分布データが決定に使用され、PdI>0.15の製剤はそれ以上の研究に使用されなかった。
脂質濃度は、和光化学USA(リッチモンド、VA)のコレステロールE酵素アッセイキットを使用して総コレステロールを測定することにより決定した。
【0106】
RNAまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドのカプセル化効率は、それぞれQuant-iT Ribogreen RNAまたはOligreen ssDNA Assays (Life Technologies、バーリントン、ON)を用いて測定した。簡単に説明すると、LNPを1%Triton X-100(Sigma-Aldrich、セントルイス、MO)の存在下または非存在下で37℃、10分間インキュベートし、続いてリボグリーン試薬またはオリグリーン試薬を添加した。蛍光強度(Ex/Em:480/520nm)を測定し、Triton X-100で処理したサンプルは全核酸を、未処理のサンプルはカプセル化されていない核酸を表す。
タンパク質/ペプチドの定量は、BCA Protein Assay(Pierce) またはCBQCA Protein Quantitation Kit(Invitrogen)を用いて、製造者の説明書に従って実施した。
【0107】
LNPシステムの見かけの酸解離定数(pKa)は、文献に記載された手順に従って決定した(Jayaraman, M., et al., Maximizing the potency of siRNA lipid nanoparticles for hepatic gene silencing in vivo. Angewandte Chemie, 2012. 51(34): p.8529-33)。簡潔には、2-(p-トルイジノ)-6-ナフタレンスルホン酸(TNS、Sigma-Aldrich、セントルイス、MO)およびLNPをpH2.5~11の範囲の緩衝液(10mM HEPES、10mM MESおよび10mM酢酸アンモニウム)中で希釈した。TNSまたは全脂質の最終濃度は6μMであった。次に、サンプルを混合し、蛍光強度をPerkin Elmer LS55を使用して測定した(Ex/Em:321/445nm)。シグモイドベストフィット分析を適用し、蛍光強度が半値となるpHをpKaとして測定した。
【0108】
【0109】
一般手順A - ヒドロキシ脂肪酸のエステル化
コンデンサーの付いた丸底フラスコに水酸化脂肪酸(1.00等量)をMeOH(0.4~0.5M)に懸濁させた。濃硫酸(0.05等量)を上記混合物に加え、得られたものを還流で加熱し、5~15分で均質となった。16時間後、残留MeOHをロータリーエバポレーターで除去し、残留物を酢酸エチル(EtOAc)と飽和水性NaHCO3との間で分配した。 水層をEtOAcで2回抽出し、合わせた有機層を水で1回、生理食塩水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥し、重力濾過し、ロータリーエバポレーター上で濃縮して白色粉末を得、これをさらに精製することなく使用した。
【0110】
一般手順B - ヒドロキシ脂肪酸エステルのアシル化反応
N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC;ヒドロキシル当たり1.00等量 +追加の0.10等量)を、アルゴン下、丸底フラスコ中の目的のカルボン酸(ヒドロキシル当たり1.00等量+追加の0.10等量)の氷冷CH2Cl2(0.3M)溶液に添加した。その後、氷浴を除去し、得られた混合物を15分間攪拌した。反応混合物を再び氷浴で冷却し、固体ヒドロキシ脂肪酸(1.00等量)をそこに添加し、続いて4-ジメチルアミノピリジン(DMAP;ヒドロキシル当たり1.00等量+追加の0.50等量)を添加した。反応混合物を16時間かけて室温まで温め、ヘキサンで希釈し、10分間撹拌し、その後セライト(登録商標)のパッドで濾過した。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮して粗混合物を得、そこから所望のアシル化物質をフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製した。
【0111】
一般手順C - ペラシル化脂肪酸メチルエステルのケン化反応
アルゴン雰囲気下、丸底フラスコ中のアシル化脂肪酸メチルエステル(1.10等量)の室温t-BuOH(0.3M)溶液に水性NaOH(2.0M、1.00等量)を添加し、アシル化脂肪酸メチルエステルを合成した。16時間撹拌後、反応混合物に塩酸水溶液(2.0M)を加えてpH≦2に酸性化し、ヘキサンで3回抽出した。合わせた有機抽出物を生理食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、ロータリーエバポレーターで濃縮して、粗製物を無色オイルとして得た。この粗製物をフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製し、所望の脂肪酸を得た。
【0112】
一般的手順D - ペラシル化脂肪酸のアミノアルコールによるエステル化
アルゴン雰囲気下、丸底フラスコ中の脂肪酸(1.00等量)の氷冷CH2Cl2(0.2 M)溶液に、DCC(1.10等量)を添加した。氷浴を除去し、得られたものを15分間攪拌した。反応混合物を氷浴で再び冷却し、純粋なアミノアルコール(1.20~2.00等量)を加え、続いてDMAP(1.20等量)を加え、反応混合物を16時間かけて室温に温めた。 濾液をロータリーエバポレーターで濃縮して粗オイルを得、これをフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製して、所望のペラシル化アミノ脂質を得た。
【0113】
【化42】
(12R)-リノレオキシレイン酸メチル
一般的手順Bに従って、CH
2Cl
2(5mL)中のリシノレイン酸メチル(500mg、 1.60mmol)、リノール酸(538mg、1.92mmol、1.20等量)、DCC(396mg、1.20mmol、2.20等量)およびDMAP(293mg、2.40mmol、1.50等量)により、無色透明油として表記化合物を得た(875mg、収率93%)。
1H(300MHz,CDCl
3):5.55-5.28(m,6H),4.90(quint,J=6.2Hz,1H),3.69(s,3H),2.79(t,J=5.8Hz,2H),2.40-2.21(m,6H),2.16-1.93(m,6H),1.72-1.46(m,8H),1.46-1.18(m,32H),1.00-0.80(m,6H).
【0114】
【化43】
(±)-シン-9,10-ジリノレオキシステアリン酸メチル
一般的手順Bに従い、CH
2Cl
2(10mL)中のジヒドロキシステアリン酸(1.32g,4.00mmol)、リノール酸(2.47g、8.80mmol、2.20等量)、DCC(1.82g、8.80mmol、2.20等量)およびDMAP(1.22g、10.0mmol、2.50等量)から無色透明オイルとして表題化合物を得た(2.64g、収率77%)。
1H(300MHz,CDCl
3):5.47-5.28(m,8H),5.04-4.94(m,2H),3.68(s,3H),2.79(t,J=5.8Hz,4H),2.35-2.25(m,6H),2.11-2.00(m,8H),1.69-1.47(m,10H),1.44-1.16(m,48H),0.97-0.84(m,9H).
【0115】
【化44】
(±)-シン-9,10-ビス(2-ヘキシルデカノイルオキシ)ステアリン酸メチル
一般的手順Bに従い、CH
2Cl
2(18mL)中でジヒドロキシステアリン酸(2.31g、7.00mmol)、(±)-2-ヘキシルデカン酸(3.77g、14.7mmol、2.10等量)、DCC(3.03g、14.7mmol、2.10等量)およびDMAP(2.14g、17.5mmol、2.50等量)により、無色透明なオイルとして表題化合物(4.20g、収率74%)を得た。
1H(300MHz,CDCl
3):5.06-4.96(m,2H),3.68(s,3H),2.31(t,J=7.6Hz,2H),1.69-1.50(m,10H),1.50-1.16(m,64H),0.94-0.84(m,15H).
【0116】
【化45】
(シン-9,10,12R)-トリリノレオキシステアリン酸メチル
一般的手順Bに従い、CH
2Cl
2(10mL)中でトリヒドロキシステアリン酸(1.04g、3.00mmol)、リノール酸(2.61g、9.30mmol、3.10等量)、DCC(1.92g、9.30mmol、3.10等量)、DMAP(1.28g、10.5mmol、3.50等量)から無色透明オイルとして表題化合物を得た(2.33g、収率68%)。
1H(300MHz,CDCl
3):5.49-5.26(m,12H),5.14-4.84(m,3H),3.68(s,3H),2.79(brt,J=6.0Hz,6H),2.37-2.21(m,8H),2.14-1.99(m,12H),1.92-1.47(m,16H),1.47-1.16(m,56H),0.96-0.84(m,12H).
【0117】
【化46】
(12R)-リノレンオキシレイン酸
一般的手順Cに従い、アシルメチルエステル(5.97g、10.4mmol、1.10等量)、水性NaOH(2.0M、4.70mL、1.00等量)およびt-BuOH(26mL)を用いてフラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO
2、95:5:0→90:10:0→85:12:3ヘキサン/酢酸エチル/メタノール)後、表題化合物(4.48g、収率85%)を無色透明のオイルとして得た。
1H(300MHz,CDCl
3):5.55-5.28(m,6H),4.90(quint,J=6.2Hz,1H),2.79(t,J=6.0Hz,2H),2.43-2.21(m,6H),2.14-1.96(m,6H),1.73-1.47(m,6H),1.46-1.18(m,30H),0.99-0.81(m,6H).
【0118】
【化47】
(±)-syn-9,10-ジリノレオキシステアリン酸(INT-A008)
一般手順Cに従い、ジアシルメチルエステル(1.88g、2.20mmol、1.10等量)、水性NaOH(2.0M、1.00mL)およびt-BuOH(7mL)から、フラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO
2、95:5:0→90:10:0→85:12:3ヘキサン/酢酸エチル/メタノール)後、無色透明オイルとしてINT-A008(1.50g、収率89%)を得た。
1H(300MHz,CDCl
3):5.47-5.28(m,8H),5.04-4.94(m,2H),2.79(brt,J=6.0Hz,4H),2.36(t,J=7.0Hz,2H),2.30(t,J=7.5Hz,4H),2.12-1.98(m,8H),1.72-1.46(m,10H),1.44-1.16(m,48H),0.97-0.84(m,9H).
【0119】
【化48】
(シン-9,10,12R)-トリリノオキシステアリン酸
一般手順Cに従い、トリアシルメチルエステル(2.41g、2.12mmol、1.05等量)、水性NaOH(2.0M、1.01mL)およびt-BuOH(7mL)から、フラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO
2、90:10:0→80:17:3ヘキサン/酢酸エチル/メタノール)後、無色透明なオイルとしてトリアシル化脂肪酸(1.37g、収率60%)を得た。
1H(300MHz,CDCl
3):5.47-5.26(m,12H),5.14-4.84(m,3H),2.79(brt,J=6.0Hz,6H),2.41-2.20(m,8H),2.14-1.99(m,12H),1.92-1.47(m,16H),1.47-1.16(m,56H),0.96-0.84(m,12H).
【0120】
【化49】
(±)-シン-9,10-ビス(2-ヘキシルデカノイルオキシ)ステアリン酸(INT-A009)
一般手順Cに従い、ジアシルメチルエステル(4.20g、5.21mmol、1.05等量)、水性NaOH(2.0M、2.48mL)およびt-BuOH(7mL)から、フラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO
2、95:5:0→90:10:0→85:12:3ヘキサン/酢酸エチル/メタノール)後、無色透明なオイルとしてINT-A009(3.12g、収率79%)を得た。
1H(300MHz,CDCl
3):5.09-4.93(m,2H),2.41-2.23(m,4H),1.71-1.51(m,10H),1.51-1.15(m,64H),0.95-0.82(m,15H).
【0121】
【化50】
3-(ジメチルアミノ)プロピル(12R)-リノールオキシレイン酸(INT-A005)
一般手順Dに従い、カルボン酸(561mg、1.00mmol)、アミノアルコール(0.18mL、1.20mmol、1.20等量)、DCC(227mg、1.10mmol、1.10等量)、DMAP(147mg、1.20mmol、1.20等量)をCH
2Cl
2(3.5mL)に溶解し、フラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO
2、88:10:2→68:30:2ヘキサン/酢酸エチル/トリエチルアミン)により、INT-A005(639mg、収率95%)を無色透明なオイルとして得た。
1H(300MHz,CDCl
3):5.54-5.23(m,6H),4.89(quint,J=6.0Hz,1H),4.12(t,J=6.0Hz,2H),2.78(brt,J=6.0Hz,2H),2.58-2.45(m,6H),2.29(brq,J=6.0Hz,6H),2.12-1.96(m,6H),1.83-1.72(m,2H),1.69-1.47(m,6H),1.44-1.18(m,30H),1.02(t,J=7.1Hz,6H),0.94-0.84(m,6H).
【0122】
【化51】
2-(ジメチルアミノ)エチル(±)-シン-9,10-ジリノールオキシステアリン酸(INT-A001)
一般的手順Dに従い、カルボン酸(336mg、0.40mmol)、アミノアルコール(0.12mL、1.20mmol、3.00等量)、DCC(91mg、0.44mmol、1.10等量)、DMAP(59mg、0.48mmol、1.20等量)をCH
2Cl
2(2mL)に溶解し、フラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO
2、88:20:2→68:30:2→48:50:2ヘキサン/酢酸エチル/トリエチルアミン)により、INT-A001(255mg、収率70%)を無色透明なオイルとして得た。
1H(300MHz,CDCl
3):5.47-5.27(m,8H),5.04-4.94(m,2H),4.18(t,J=5.9Hz,2H),2.79(brt,J=5.90Hz,4H),2.57(t,J=5.8Hz,2H),2.39-2.24(m,9H),2.30(s,3H),2.13-1.99(m,8H),1.70-1.46(m,10H),1.44-1.16(m,48H),0.97-0.84(m,9H).
【0123】
【化52】
3-(ジエチルアミノ)プロピル(±)-シン-9,10-ジリノールオキシステアリン酸(INT-A002)
一般手順Dに従い、カルボン酸(336mg、0.40mmol)、アミノアルコール(0.12mL、0.80mmol、2.00等量)、DCC(91mg、0.44mmol、1.10等量)、DMAP(59mg、0.48mmol、1.20等量)をCH
2Cl
2(2mL)に溶解し、フラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO
2、78:20:2→68:30:2ヘキサン/酢酸エチル/トリエチルアミン)により、INT-A002(272mg、収率71%)を無色透明なオイルとして得た。
1H(300MHz,CDCl
3):5.47-5.27(m,8H),5.04-4.94(m,2H),4.12(t,J=6.5Hz,2H),2.79(brt,J=5.9Hz,4H),2.59-2.46(m,6H),2.30(t,J=7.5Hz,6H),2.12-1.99(m,8H),1.78(quint,J=6.9Hz,2H),1.70-1.46(m,10H),1.44-1.16(m,48H),1.03(t,J=7.1Hz,6H),0.97-0.84(m,9H).
【0124】
【化53】
3-(ジメチルアミノ)プロピル(±)-シン-9,10-ジリノールオキシステアリン酸(INT-A003)
一般手順Dに従い、カルボン酸(421mg、0.50mmol)、アミノアルコール(88μL、0.75mmol、1.50等量)、DCC(113mg、0.55mmol、1.10等量)およびDMAP(73mg、0.60mmol、1.20等量)をCH
2Cl
2(3mL)に溶解し、フラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO
2、78:20:2→68:30:2ヘキサン/酢酸エチル/トリエチルアミン)により、INT-A003(323mg、収率70%)を無色透明なオイルとして得た。
1H(300MHz,CDCl
3):5.47-5.27(m,8H),5.04-4.94(m,2H),4.13(t,J=6.60Hz,2H),2.79(brt,J=5.90Hz,4H),2.39-2.25(m,8H),2.24(s,3H),2.13-1.99(m,8H),1.81(quint,J=6.8Hz,2H),1.70-1.46(m,10H),1.44-1.16(m,48H),0.97-0.84(m,9H).
【0125】
【化54】
2-(ジエチルアミノ)エチル(±)-シン-9,10-ジリノールオキシステアリン酸(INT-A004)
一般手順Dに従い、カルボン酸(421mg、0.50mmol)、アミノアルコール(80μL、0.60mmol、1.20等量)、DCC(113mg、0.55mmol、1.10等量)およびDMAP(73mg、0.60mmol、1.20等量)をCH
2Cl
2(3mL)に溶解し、フラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO
2、78:20:2→68:30:2ヘキサン/酢酸エチル/トリエチルアミン)により、INT-A004(406mg、収率86%)を無色透明のオイルとして得た。
1H(300MHz,CDCl
3):5.47-5.27(m,8H),5.05-4.93(m,2H),4.15(t,J=6.3Hz,2H),2.78(brt,J=5.9Hz,4H),2.70(t,J=6.1Hz,2H),2.59(q,J=7.2Hz,4H),2.36-2.23(m,6H),2.12-1.99(m,8H),1.69-1.45(m,10H),1.44-1.16(m,48H),1.05(t,J=7.1Hz,6H),0.97-0.84(m,9H).
【0126】
【化55】
3-(ジエチルアミノ)プロピル(±)-シン-9,10-ビス(2-ヘキシルデカノイルオキシ)ステアリン酸(INT-A007)
一般手順Dに従い、カルボン酸(595mg、0.75mmol)、アミノアルコール(0.13mL、0.90mmol、1.20等量)、DCC(170mg、0.82mmol、1.10等量)、DMAP(110mg、0.90mmol、1.20等量)をCH
2Cl
2(4mL)に溶解し、フラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO
2、85:15:0→80:15:5→75:20:5ヘキサン/酢酸エチル/メタノール)により、INT-A007(577mg、収率85%)を無色透明のオイルとして得た。
1H(300MHz,CDCl
3):5.06-4.96(m,2H),4.12(t,J=6.5Hz,2H),2.60-2.46(m,6H),2.37-2.23(m,5H),1.79(quint,J=7.2Hz,2H),1.70-1.50(m,10H),1.50-1.16(m,64H),1.04(t,J=7.1Hz,6H)0.94-0.84(m,15H).
【0127】
【化56】
3-(ジエチルアミノ)プロピル(シン-9,10,12R)-トリリノールオキシステアリン酸(INT-A006)
一般手順Dに従い、カルボン酸(560mg、0.50mmol)、アミノアルコール(89μL、0.0.60mmol、1.20等量)、DCC(113mg、0.55mmol、1.10等量)、DMAP(73mg、0.60mmol、1.20等量)をCH
2Cl
2(3mL)に溶解し、フラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO
2、85:15:0→80:15:5→75:20:5ヘキサン/酢酸エチル/メタノール)により、INT-A006(417mg、収率68%)を無色透明なオイルとして得た。
1H(300MHz,CDCl
3):5.49-5.26(m,12H),5.12-4.84(m,3H),4.12(t,J=6.5Hz,2H),2.59-2.45(m,6H),2.36-2.21(m,8H),2.14-1.99(m,12H),1.92-1.47(m,18H),1.47-1.16(m,56H),1.03(t,J=7.1Hz,6H),0.96-0.84(m,12H).
【0128】
【化57】
イソブチル(10Z)-ノナデセンスルホン酸
M. Xie, T. S. Widlanski, Tetrahedron Lett. 1996,37,4443の手順に従い、n-BuLi溶液(ヘキサン中1.15Mの6.52mL、7.50mmol、1.5等量)を、アルゴン下、丸底フラスコ中のメタンスルホン酸イソブチル(1.22g、8.00mmol、1.60等量)の-78℃の9:1THF/DMPU(15mL)溶液に加え、得られた溶液を30分間攪拌させた。-78℃下でヨウ化オレイル(1.89g、5.00mmol、1.00等量)のTHF(2mL)溶液を上記溶液に加え、反応混合物を16時間加温した。反応混合物を10%クエン酸水溶液でクエンチし、Et
2O(2×10mL)で抽出し、合わせた有機物を水(1×10mL)、生理食塩水(1×10mL)で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥し、ロータリーエバポレーター上で濃縮した。粗残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(98:2→95:5ヘキサン/EtOAc)で精製し、アルキル化スルホン酸(1.19g、収率46%)を無色透明の油として得た。
1H(300MHz,CDCl
3):5.46-5.27(m,2H),4.00(d,J=6.6Hz,2H),3.14-3.05(m,2H),2.11-1.94(m,5H),1.94-1.80(m,2H),1.51-1.18(m,26H),1.00(t,J=6.8Hz,6H),0.90(brt,J=6.6Hz,3H).
【0129】
【化58】
イソブチル(±)-シン-10,11-ジヒドロオキシノナデカンスルホン酸
OsO
4溶液(4%水溶液0.11mL、0.02mmol、0.01等量)を、アルゴン雰囲気下、丸底フラスコ中のイソブチル(10Z)-ノナデセンスルホン酸(709mg、1.76mmol)およびNMO(50%水溶液0.54mL、2.64mmol、1.50等量)の室温の4:1=Me
2CO/H
2O(5.5mL)溶液に添加した。16時間撹拌した後、飽和水性NaHSO
3を加え、反応混合物を1時間撹拌させ、その時点でEtOAc(3×10mL)で抽出し、合わせた有機物を水(1×10mL)、生理食塩水(1×10mL)で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥し、ロータリーエバポレーターで濃縮して、ジオール(768mg、定量的収率)を白色固体として得て、それをさらに精製せず使用した。
1H(300MHz,CDCl
3):4.00(d,J=6.6Hz,2H),3.67-3.65(m,2H),3.14-3.05(m,2H),2.05(sept,J=6.7Hz,1H),1.95-1.78(m,4H),1.58-1.19(m,28H),1.00(t,J=6.8Hz,6H),0.90(brt,J=6.6Hz,3H).
【0130】
【化59】
イソブチル(±)-シン-10,11-ビス(2-ヘキシルデカノイルオキシ)ノナデカンスルホン酸
アルゴン雰囲気下、丸底フラスコ中の氷冷CH
2Cl
2(4.5mL)溶液に固体DCC(388mg、1.88mmol、2.10等量)を加え、(±)-2-ヘキシルデカン酸(482mg、1.88mmol、2.10等量)を加えた。その後、氷浴を除去し、得られた混合物を15分間攪拌した。反応混合物を再び氷浴で冷却し、固体ジヒドロキシスルホン酸(391mg、0.90mmol、1.00等量)をそこに加え、続いてDMAP(273mg、2.23mmol、2.50等量)を加えた。反応混合物を16時間かけて室温まで加温し、Et
2Oで希釈し、10分間撹拌し、続いてセライト(登録商標)のパッドで濾過した。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮し、フラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO
2、95:5→90:10ヘキサン/EtOAc)で精製して、ジアシル化スルホン酸(574mg、収率70%)を無色透明の油として得た。
1H(300MHz,CDCl
3):5.08-4.93(m,2H),4.00(d,J=6.6Hz,2H),3.67-3.65(m,2H),3.14-3.05(m,2H),2.38-2.24(m,2H),2.05(sept,J=6.7Hz,1H),1.95-1.80(m,2H),1.70-1.15(m,74H),1.00(t,J=6.8Hz,6H),0.96-0.83(m,15H).
【0131】
【化60】
ナトリウム(±)-シン-10,11-ビス(2-ヘキシルデカノイルオキシ)ノナデカンスルホン酸(INT-A012)
テフロン(登録商標)スクリューキャップ付き密閉ガラス管中のジアシル化イソブチルスルホン酸(250mg、0.27mmol)の室温のMe
2CO(0.9mL)溶液に、アルゴン下でNaI(82mg、0.55mmol、2.00等量)を添加した。その後、反応混合物を還流で24時間加熱し、この時点でMe
2CO(3mL)で希釈し、氷上で2~3時間冷却し、白色沈殿物を集め、氷冷Me
2COで洗浄してINT-A012を白色粉末として得た(200mg、収率84%)。
1H(300MHz,CDCl
3):5.10-4.93(m,2H),2.90(appbrs,2H),2.46-2.22(m,4H),1.70-1.15(m,76H),0.96-0.83(m,15H).
【0132】
実施例2:核酸を含む脂質ナノ粒子(LNP)製剤
実施例1に記載したように合成した脂質、INT-A001、INT-A002、INT-A003、INT-A004、INT-A005、INT-A006、INT-A007を核酸とともに脂質ナノ粒子に配合した。実施例のカーゴとしてのLNPに組み込むための核酸は、血液凝固に関与するタンパク質である第VII因子に対するsiRNAであった。第VII因子のレベルは、血漿中で発色アッセイによって容易に測定できるため、この因子のsiRNAによるダウンレギュレーションを決定するための便利なモデルとなっている。
カチオン性脂質と第VII因子に対するsiRNAを組み込んだナノ粒子の見かけのpKa、粒子径、多分散性(PDI)、カプセル化効率などの物理化学パラメータを測定し、以下に報告した。以下の結果から、LNPは核酸のカプセル化および送達に適していることが示された。
【0133】
LNPを調製するために、イオン化可能な脂質、DSPC、コレステロール、PEG-DMPEをエタノールに溶解させた。siRNAは10~50mMの酢酸、コハク酸またはクエン酸からなるpH4.0~6.2の緩衝液に溶解させた。場合により、10~50mMの4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-エタンスルホン酸(HEPES)または2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)緩衝液を使用した。LNPは、エタノール中の脂質成分(DSPC/chol/PEG-DMPEのモル比50/10/38.5/1.5)と水性緩衝液中の核酸を体積流量比1:3(エタノール対水、複合流量>12mL/min)で室温で急速に混合することにより調製された。通常、siRNA/脂質の比率は0.056wt/μmolを目標とした。次に、生成物をpH7.4の1×リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に対して24時間透析し、残留エタノールを除去し、pHを上昇させた。PBSは4時間後にリフレッシュした。
【0134】
下記表2に示すように、INT-A001、INT-A002、INT-A003、INT-A004、INT-A005、INT-A006およびINT-A007のイオン化可能脂質は、薬剤送達システムにとって望ましい物理化学特性である高いカプセル化効率と低い多分散性で第VII因子siRNAの組み込みを容易にした。6から7の間の見かけのpKa値を持つ特定のイオン化可能な脂質が、遺伝子サイレンシングを媒介する活性を持つことが以前に報告されていることから、これらのイオン化可能な脂質の見かけのpKa値も測定された(Semple, S.C., et al., Rational design of cationic lipids for siRNA delivery. Nat Biotechnol,2010,28(2):p.172-6 and Jayaraman, M., et al., Maximizing the potency of siRNA lipid nanoparticles for hepatic gene silencing in vivo. Angewandte Chemie,2012,51(34):p.8529-33)。
INT-A001、INT-A002、INT-A003、INT-A004、INT-A005、INT-A006およびINT-007はpKa値が6~7の適正範囲にあることを確認した(表2)。
【0135】
表2:イオン化可能な脂質とsiRNAを含むLNPの物理化学的パラメータ
【表2】
これらのデータは、LNPに核酸を封入するための新規なイオン化可能な脂質の適合性を示している。
【0136】
実施例3:培養した22Rv1細胞におけるLNP活性の測定
ルシフェラーゼ発現ヒト前立腺細胞(22Rv1)を用いて、イオン化可能な脂質のin vitroでの活性を評価した。ホタルルシフェラーゼに対するsiRNAを含むLNPを、実施例2に記載したように調製した。細胞を0.1~1μg/mLのsiRNAを含むLNPで16~24時間処理し、Glo-Lysis緩衝液(Promega)で溶解させた。等量のSteady-Glo試薬(Promega)を各サンプルに加え、発光レベルをSynergy LXプレートリーダー(BioTek)を用いて決定した。
図2Aは、種々の処理における発光レベルを示している。一般に、ホタル・ルシフェラーゼ遺伝子のサイレンシングにおいて、用量依存的な効果が観察された。
図2Bは、イオン化可能な脂質A001~A007を含む製剤の相対的な活性を示す。この結果は、本開示のイオン化可能な脂質が、in vitroでsiRNAを効果的に送達し、遺伝子サイレンシングを誘導できることを示す。A007は、遺伝子サイレンシングのこのin vitroモデルにおいて、1μg/mLで最も高い活性であった。
【0137】
実施例4:マウス第VII因子モデルにおけるLNP活性の測定
次に、マウスFVIIモデルを用いて、イオン化可能な脂質の生体内における活性を評価した。その結果、本開示のイオン化可能な脂質は、in vivoで効果的に核酸を送達できることが示された。
第VII因子(FVII)に対するsiRNAを含む実施例2に記載のように調製したLNPを、注入量が10mL/kg体重に維なるようにPBSで希釈し、6~8週齢雌C57Bl/6マウス(チャールズリバーラボラトリーズ、ウイルミントン、MA)に尾静脈から静脈内投与(siRNA濃度を基準とした)した。投与後24時間目に動物を安楽死させ、心臓内サンプリングにより血液を採取した。血液サンプルを4℃で一晩凝固させ、血清を分離した後、12,000 rpmで15分間遠心分離を行った。血清FVIIレベルは、製造者のプロトコルに従って、Biophen VII発色アッセイ(Aniara、Mason、OH)を使用して決定した。
【0138】
図3は、INT-A001、INT-A002、INT-A003、INT-A005、またはINT-A007製剤を注射したマウスの残存FVIIレベルを示している。これらのイオン化可能な脂質は、遺伝子サイレンシングを媒介する活性を有することが決定された。INT-A002は、試験した製剤化脂質の中で最も活性が高かった。INT-002のED50は0.1mg/kg以下と推定された(ED50は50%の遺伝子抑制を達成するための有効量である)。
【0139】
実施例5:mRNAをLNPに含有させた脂質ナノ粒子の製剤化
INT-A001、INT-A002、INT-A003およびINT-A004を含む製剤のin vitroおよびin vivoにおけるmRNA送達能力を評価した。その結果、これらのイオン化可能な脂質は、mRNAを効果的に送達できることが示された。
ホタルルシフェラーゼmRNAを含有するLNPを実施例2に記載したように調製した。以下の表3に示すように、INT-A001、INT-A002、INT-A003、およびINT-A004イオン化可能脂質は、薬物送達システムに望ましい物理化学的特性の両方である高いカプセル化効率および低い多分散性でルシフェラーゼmRNAの組み込みを容易にする。
【0140】
表3:イオン化可能な脂質とmRNAを含むLNPの物理化学パラメータ
【表3】
【0141】
イオン化可能な脂質のin vitroでの活性を、培養したHepG2細胞で評価した。ホタルルシフェラーゼmRNAを含むLNPを、実施例2に記載したように調製した。LNPを10%FBSを含むDMEM培地で0.125~1μg/mLに希釈し、HepG2細胞とともに16~24時間インキュベートした。その後、細胞をGlo-Lysis緩衝液(Promega)で溶解させた。各サンプルに等量のSteady-Glo試薬(Promega)を加え、Synergy LXプレートリーダー(BioTek)を用いて発光レベルを決定した。
図4Aは、様々な処理における発光レベルを示している。INT-A003製剤は、mRNAを送達し、in vitroでその発現を誘導する上で最も活性であった。
【0142】
in vivo活性を評価するために、ホタルルシフェラーゼmRNAを含むLNPを、実施例2に記載したように調製した。LNPをPBSで希釈し、6~8週齢の雌のC57Bl/6マウス(Charles River Laboratories、ウィルミントン、MA)に尾静脈から1mg/kgで静脈内投与した。投与後4時間で、動物を安楽死させ、肝臓を採取した。約100mgの肝臓を0.5mLのGlo Lysis緩衝液(Promega)中でホモジナイズした。ホモジネートをさらに溶解バッファーで1:4に希釈し、そして希釈したホモジネートの50μLを50μL Steady-Glo試薬(Promega)に添加した。発光のレベルは、Synergy LXプレートリーダー(BioTek)を使用して決定した。
図4Bは、in vivoでのmRNAの送達が成功した結果としての発光の相対的レベルを示している。INT-A002製剤は、mRNAを送達し、in vivoでmRNA発現を誘導することにおいて最も高い活性であった。
【0143】
実施例6:アンチセンスオリゴヌクレオチドを含む脂質ナノ粒子のLNPへの製剤化
アンチセンスオリゴヌクレオチドを含む実施例2に記載されたようにLNPを調製した。以下の表4に示すように、INT-A001、INT-A002、INT-A003、INT-A004、INT-A005、INT-A006およびINT-A007のイオン化可能脂質は、薬物送達システムにとって望ましい物理化学特性である、高いカプセル化効率および低い多分散性の両方でのアンチセンスオリゴヌクレオチドの組み込みを促進させた。
【0144】
表4:イオン化可能な脂質とアンチセンスオリゴヌクレオチドを含むLNPの物理化学的パラメータ
【表4】
【0145】
実施例7:ヒアルロン酸(HA)を含む脂質ナノ粒子のLNPへの製剤化
アニオン性のカーゴの例として、ヒアルロン酸を使用した。LNPは、分子量8~15kDaのHAを含む実施例2に記載されたように調製された。下記の表5に示すように、INT-A002、INT-A003、INT-A005、INT-A006およびINT-A007のイオン化可能な脂質はHAの組み込みを容易にした。
【0146】
表5:イオン化可能な脂質とHAを含むLNPの物理化学的パラメータ
【表5】
【0147】
実施例8:酸性ペプチドを含む脂質ナノ粒子のLNPへの製剤化
核酸と同様に、正味の負電荷を持つタンパク質やペプチドも、カチオン性のイオン化可能な脂質を用いてLNPに取り込ませることができる。分子量4.2kDa、予測正味電荷-3の酸性ペプチドを含む実施例2に記載した方法でLNPを調製した。以下の表6に示すように、INT-A001、INT-A002、INT-A003、INT-A004、INT-A005、INT-A006、およびINT-A007のイオン化可能脂質はこの酸性ペプチドの組み込みを容易にした。
【0148】
表6:イオン化可能な脂質と4.2kDaの酸性ペプチドを含むLNPの物理化学的パラメータ
【表6】
【0149】
実施例9:酸性低分子ペプチドを含む脂質ナノ粒子のLNPへの製剤化
分子量2.0kDa、予測正味電荷-3の酸性ペプチドを含む実施例2に記載されたようにLNPを調製した。以下の表7に示すように、INT-A003、INT-A004、INT-A006およびINT-A007のイオン化可能な脂質は、この酸性ペプチドの取り込みを容易にした。
【0150】
表7:イオン化可能な脂質と2.0kDaの酸性ペプチドを含むLNPの物理化学的パラメータ
【表7】
【0151】
実施例10:カチオン性のカーゴを含む脂質ナノ粒子のLNPへの製剤化
カチオン性カーゴの例として塩基性ペプチドを用いた。分子量2.0kDaおよび予測される正味電荷が+4の塩基性ペプチドを含む実施例2に記載されるようなLNPを調製した。以下の表8に示すように、INT-A008およびINT-A009のイオン化可能な脂質は、この塩基性ペプチドの組み込みを促進した。
【0152】
表8:イオン化可能な脂質と2.0kDa塩基性ペプチドを含むLNPの物理化学的パラメータ
【表8】
【0153】
ここに添付された特許請求の範囲は、上記の特定の実施形態によって制限されるべきではなく、そのような特許請求の範囲が権利を有するすべての可能な実施形態および等価物を含むように解釈されるものとする。
【手続補正書】
【提出日】2022-04-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
(化1)
A-(V)
m-Z-L
(式中、Aはイオン化可能、恒久荷電、または双性イオンである先頭基であり;
(V)
mは、任意の-(CR1R2)
m-であり、mは、1~10または2~6であり、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素、置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、または複素環であり;
Z-Lは、式II、IIaまたはIIbの構造を有し、
Lは、炭化水素構造の式IIIc:
【化2】
(式中、Lの炭素鎖足場は、L1’-L1’’-G
1-CH-[CH
2]
q-CH
3で表され、L炭素骨格の炭素原子の総数は、10~30個であり;
L1’は、ヘテロ原子を含まない直鎖炭化水素鎖であり、5~12個の炭素原子および0~3個のシスまたはトランス二重結合を有しており;
L1’’は、炭素原子であり;
各X1は、それぞれ独立して、エーテル、エステルおよびカルバメート基から選択され;
L1’’’は、足場炭素鎖Lの炭素部分骨格であり、G
1-CH-[CH
2]
q-CH
3で表され、式中、G
1は、0~4個の炭素原子の炭化水素鎖であり、1つのシスまたはトランス二重結合を有していてもよく;
nは、0~4であり;
pは、1~4であり;
n+pは、1~4であり;
qは、0~20であり;
式中、各SおよびL1’’’’は、炭化水素側鎖であり、それぞれ独立して:
(a)0~5個のシスまたはトランスC=Cおよび2~30個の炭素原子を有し、その炭化水素鎖中の任意の炭素原子で各X1の1つに結合している直鎖または分岐状の末端炭化水素鎖;または、
(b)式IIIcの分岐状の炭化水素構造であり、
式中、脂質部分のL1’’’’およびS炭化水素鎖の各1つは、ヘテロ原子で置換されていてもよく、ただし、炭化水素鎖において2つ以下のヘテロ原子が置換されている)
の部分構造として表され、
直鎖リンカー構造である式II:
(化3)
X1-L
b
(式中、X1は任意であり、X1は、エーテル基、エステル基およびカルバメート基から選択され、
L
bは、式IIIcの分枝状の脂質である)、
分岐状のリンカー構造である式IIa:
【化4】
(式中、Wは任意であり、
Wが存在する場合、Wは、X1結合、N-C(O)、N-C(O)O、またはN-OC(O)であり;
Wは、Dで置換されていてもよく、Dは、置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、または複素環であり;
(X)
nが存在する場合、(X)
nは、それぞれ独立して選択された-(CR1R2)
n-であり;(X)
nのnは、0~10であり;Tは任意であり、Tは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、またはヘテロサイクルであり、Tは置換されていてもよく、
Bは、G1およびG2を介してL1およびL2にそれぞれ結合した炭素原子であり;
G1およびG2は、独立してX1から選択され;
各G1およびG2は、それぞれ独立して、B-(G)
u-G1またはB-(G)
u-G2として介在する(G)
u基を介してBに結合していてもよく;
(G)
uは、独立して選択された-(CR1R2)
u-であり、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素、置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、または複素環であり、uは、0~16であり;
G3は任意であり、G3はX1から選択され、B-(G)
u-G3として介在する(G)
u基を介してBに結合していてもよく;
L1は、式IIIcの分枝状の炭化水素であり;
L2は、1~20個の炭素原子および0~2個のシスまたはトランス二重結合を有する炭化水素鎖であるか、または式IIIcの構造を有し;
L3が存在する場合、L3は、水素、1~20個の炭素原子および0~2個のシスまたはトランス二重結合を有する直鎖または分岐の炭化水素鎖、または式IIIcの構造を有する)、
環構造の式IIb:
【化5】
(式中、曲線は環を表し、EおよびKは環の構造を部分的に構成する原子を表し、その環は3~8個の環原子を有する置換または非置換の環であり;
L1、L2およびL3の少なくとも1つが、それぞれG1、G2およびG3を介して、任意の環内の単一の原子に結合しており、G1、G2およびG3は、それぞれ独立して、G1-(G)
u-L1、G2-(G)
u-L2またはG3-(G)
u-L3として、介在する(G)
uを介してL1、L2およびL3のそれぞれ一つに任意に結合しており、
式IIbのL1および任意のL2および/またはL3は、式IIIcの構造を有する)、
A部分は以下の(i)~(iv)から一つ選択される:
(i)以下の群から選択されるイオン化可能なカチオン性部分:
【化6】
(ii)以下の群から選択される、恒久的に荷電した部分:
【化7】
(iii)以下の群から選択されるイオン化可能なアニオン性部分:
【化8】
(iv)以下の群から選択される双性イオン部分:
【化9】
)の構造を有する分枝状の脂質部分Lを含む荷電脂質。
【請求項2】
Z-Lが、直鎖リンカー構造の式II:
(化10)
X1-L
b
(式中、式IIIcのL1’は、5~9個の炭素原子を有し、0~2個のシスまたはトランス二重結合を有し;
式IIIcのG
1は、不存在であるか、CH
2またはCH
2CH=CHであり、当該二重結合がシスまたはトランスであり;
式IIIcのL1’’’’が存在する場合、L1’’’’およびSは、0~5個のシスまたはトランスCH=CHおよび2~18個の炭素原子を有する炭化水素から独立して選択され;および
qは、1~9である)
の構造を有する、請求項1記載の荷電脂質。
【請求項3】
式Iの(V)
mが(CH
2)
mであり、mが、1~20であり;
Z-Lが、分枝状リンカー構造の式IIa:
【化11】
(式中、Wは、エーテル、エステルまたはカルバメート基であり、Dは不存在であり、(X)
nは(CH
2)
nであり、nは1~10であり、
G1およびG2は存在し、各G1およびG2は、それぞれ独立して、B-(G)
u-L1またはB-(G)
u-L2として、(G)
uを介してBに結合しており、(G)
uは(CH
2)
uであり;
G3-L3は存在し、G3-L3は、CH
3およびCH
2CH
3から選択される炭化水素であり、またはG3-L3はCH
2X1L3であり、L3は1~20個の炭素原子および0~2個のシスまたはトランス二重結合を有する直鎖状または分枝状炭化水素鎖であるか、式IIIcの構造を有する)
を有する、請求項1記載の荷電脂質。
【請求項4】
Z-Lが、環構造の式IIb:
【化12】
(式中、曲線は環を表し、EとKは環の構造を部分的に構成する原子を表し、当該環は3~6個の環原子を有する置換または非置換の炭素環である)
を有する、請求項1記載の荷電脂質。
【請求項5】
環が3または5個の炭素原子を有している、請求項4に記載の荷電脂質。
【請求項6】
少なくともL1およびL2が存在し、L1およびL2は、それぞれG1およびG2基を介して環に結合し、当該各G1およびG2基が、介在する(G)
uを介して環の原子に任意に結合していてもよく、(G)
uが(CH
2)
uであり、uが0~10または0~6である、請求項4または5に記載の荷電脂質。
【請求項7】
脂質が水溶液中で他の脂質と組み合わせて脂質ナノ粒子を形成し得る、請求項1~6のいずれか一項に記載の荷電脂質。
【請求項8】
他の脂質が、小胞を形成し、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸、セラミド、スフィンゴミエリンまたは親水性ポリマー-脂質複合体を含む、請求項7に記載の荷電脂質。
【請求項9】
(V)
mのR1またはR2が、それぞれ独立して、単環、二環または三環の炭素環で置換されていても良いシクロアルキルである、請求項1~8のいずれか一項に記載の荷電脂質。
【請求項10】
(V)
mのR1またはR2が、それぞれ独立して、4~12個の環原子を有するヘテロ原子環から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の荷電脂質。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の荷電脂質が、その脂質二重層または単層中に組み込まれ、核酸、タンパク質またはペプチドであるカーゴ分子または化合物を含む、薬物送達ビークル製剤。
【請求項12】
核酸が、低分子干渉RNA、低分子活性化RNA、メッセンジャーRNA、マイクロRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、アプタマー、プラスミド、環状DNA、直鎖DNA、アンチゴミア、アンチmiRNAオリゴヌクレオチドまたはmiRNAミミックである、請求項11に記載の薬物送達ビークル製剤。
【請求項13】
カーゴ分子または化合物が、ペプチドである、請求項11に記載の薬物送達ビークル製剤。
【請求項14】
脂質ナノ粒子(LNP)を含有する、請求項11~13のいずれか一項に記載の薬物送達ビークル製剤。
【請求項15】
脂質ナノ粒子の多分散性が、0.15未満である、請求項14に記載の薬物送達ビークル製剤。
【請求項16】
脂質ナノ粒子のカプセル化効率が、70%~100%である、請求項14または15に記載の薬物送達ビークル製剤。
【請求項17】
脂質ナノ粒子のカプセル化効率が、80%~100%である、請求項16に記載の薬物送達ビークル製剤。
【国際調査報告】