(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-20
(54)【発明の名称】積層保護層が設けられたライダー検出デバイス
(51)【国際特許分類】
G01S 7/481 20060101AFI20221213BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20221213BHJP
G01J 1/02 20060101ALI20221213BHJP
C03C 27/12 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
G01S7/481 A
G02B5/22
G01J1/02 H
C03C27/12 D
C03C27/12 F
C03C27/12 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022519620
(86)(22)【出願日】2020-10-12
(85)【翻訳文提出日】2022-03-28
(86)【国際出願番号】 EP2020078638
(87)【国際公開番号】W WO2021069746
(87)【国際公開日】2021-04-15
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510191919
【氏名又は名称】エージーシー グラス ユーロップ
【氏名又は名称原語表記】AGC GLASS EUROPE
【住所又は居所原語表記】Avenue Jean Monnet 4, 1348 Louvain-la-Neuve, Belgique
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】ノヴォトニー, マレク
(72)【発明者】
【氏名】ホックス, フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】デシャン, ファビアン
(72)【発明者】
【氏名】サルトナエ, ヤニック
【テーマコード(参考)】
2G065
2H148
4G061
5J084
【Fターム(参考)】
2G065AA12
2G065AB02
2G065AB16
2G065AB22
2G065BA14
2G065BA37
2G065BB26
2G065CA08
2G065CA27
2G065CA29
2G065DA15
2H148CA01
2H148CA04
2H148CA14
2H148CA17
4G061AA02
4G061AA20
4G061AA26
4G061BA02
4G061BA12
4G061CB03
4G061CB19
4G061CD02
4G061CD18
5J084AA05
5J084AC02
5J084AC03
5J084AC04
5J084AD01
5J084BA03
5J084BA20
5J084BA48
5J084CA03
5J084EA02
(57)【要約】
本発明は、(b)750nm~1650nmの波長範囲の赤外線に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%の光検出及び測距(ライダー)動作波長における平均透過率を有するガラスカバー(12)が設けられているハウジング(11)に包囲された(a)ライダーデバイス(21)を含む検出デバイス(1)に関する。本発明によれば、ガラスカバー(12)は、少なくとも1つの熱可塑性中間層(31)を使用して積層された少なくとも1つのガラスシートを含む積層ガラスカバーであり、熱可塑性中間層は、750nm~1650nmの波長範囲の赤外線に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%のライダー動作波長における平均透過率を有し、かつ入射光の10%未満、好ましくは入射光の5%未満、より好ましくは入射光の2%未満、さらにより好ましくは入射光の0%に等しい可視範囲における光透過率を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(d)750nm~1650nmの波長範囲の赤外線に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%の光検出及び測距(ライダー)動作波長における平均透過率を有するガラスカバー(12)が設けられているハウジング(11)によって包囲された(c)ライダーデバイス(21)を含む検出デバイス(1)であって、
前記ガラスカバー(12)は、少なくとも1つの熱可塑性中間層(31)を使用して積層された少なくとも1つのガラスシートを含む積層ガラスカバーであり、前記熱可塑性中間層は、750nm~1650nmの波長範囲の赤外線に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%のライダー動作波長における平均透過率を有し、かつ入射光の10%未満、好ましくは入射光の5%未満、より好ましくは入射光の2%未満、さらにより好ましくは入射光の0%に等しい可視範囲における光透過率を有することを特徴とする、検出デバイス(1)。
【請求項2】
前記ガラスカバー(12)及び前記少なくとも1つの熱可塑性中間層(31)は、750nm~1050nm、より好ましくは750nm~950nmの波長範囲の赤外線に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%のライダー動作波長における平均透過率を有する、請求項1に記載の検出デバイス。
【請求項3】
前記少なくとも1つの熱可塑性中間層(31)は、入射光の5%未満、より好ましくは入射光の2%未満、さらにより好ましくは入射光の0%に等しい可視範囲における光透過率を有する、請求項1又は2に記載の検出デバイス。
【請求項4】
前記熱可塑性中間層は、入射光の0%に等しい光透過率を有する、請求項3に記載の検出デバイス。
【請求項5】
前記熱可塑性中間層は、赤外線透過インクを有するバルク染色中間層である、請求項1~4のいずれか一項に記載の検出デバイス。
【請求項6】
前記熱可塑性中間層は、黒色赤外線透過インクを有するバルク染色中間層である、請求項1~5のいずれか一項に記載の検出デバイス。
【請求項7】
前記カバー(12)は、750nm~1650nmの波長範囲の赤外線に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%のライダー動作波長における平均透過率を有し、かつ入射光の10%未満の可視範囲における光透過率を有する、赤外線に対して透過性の黒色中間層を使用して積層された2つのガラスシート(13、14)から作られている、請求項1~6のいずれか一項に記載の検出デバイス。
【請求項8】
前記ガラスカバー(12)は、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ガラスセラミック又は石英ガラスから作られている、請求項1~7のいずれか一項に記載の検出デバイス。
【請求項9】
前記熱可塑性中間層(31)は、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリエステル、共重合体、エチレン酢酸ビニル、シクロオレフィン重合体、シリコーン、又はポリオレフィンを含む重合体シートである、請求項1~8のいずれか一項に記載の検出デバイス。
【請求項10】
前記熱可塑性中間層は、赤外線透過インク又は染料を有する印刷中間層である、請求項1~9のいずれか一項に記載の検出デバイス。
【請求項11】
前記熱可塑性中間層は、黒色赤外線透過インクでバッチ染色又は印刷されたポリビニルブチラール中間層である、請求項1~10のいずれか一項に記載の検出デバイス。
【請求項12】
前記積層ガラスカバーは屈曲されている、請求項1~11のいずれか一項に記載の検出デバイス。
【請求項13】
前記ガラスカバー(12)は、フェンダー、バンパー、グリル、サイドミラーカバー、サイドドア、ピラー(A、B、C、D)、又はドア、車両のルーフ、トリム要素などの車両の外部要素の上/内に一体化されている、請求項1~12のいずれか一項に記載の検出デバイス。
【請求項14】
前記ガラスカバー(12)は、フロントガラス、リアウィンドウ、サイドウィンドウ、ヘッドライト又はテールライトカバーを含む自動車の透明構成要素の一部である、請求項1~13のいずれか一項に記載の検出デバイス。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の検出デバイスを含む自動車(40)、好ましくは自動運転車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車又は自動運転車を含む運転者を支援する自動車(ADAS=最新運転者支援システム)での使用に適している検出デバイスの技術分野である。特に、本発明は、サービス時間の増加及びより優れた美観を有する、ハウジング、及びハウジングに収容された固体状態ライダーデバイスで構成されたライダーシステムに関する。本発明は、ハウジングの積層ガラスカバーに関する。ライダーを、自動車の周りに、特に、トリム要素又は自動車用窓の後部に配置する必要がある場合、ライダーの可視部は、美的である必要があり、特に、ハウジングのガラスカバーは、赤外線(IR)に対する透過率の点で優れた効率を保証しながら、できるだけ目立たないようにすべきである。
【背景技術】
【0002】
自動車の運転者を支援するシステムは、自動車に益々搭載されている。これらのシステムは、ADAS(=最新運転者支援システム)と総称して呼ばれる。ADASは、自動車の隣接周囲で障害物を検出する、場合によっては識別することができる検出システムを含む。例えば、検出システムは、光学カメラ又は赤外線カメラ、レーダー、及びライダー(=光検出及び測距)を含む。ライダーは、光速で物体まで進みライダーに戻るのに要する時間を光パルスで計算することによって、ライダー自体とライダーの視野における物体との間の距離を測定する。ライダーは、光放出体(通常、レーザー光源)、及び光受信器を含む。ライダーの光放出体によって放出される光パルスが不揃いな形状の物体に衝突する時に、入射光信号は、散乱し、光の一部のみが、光受信器に戻る。米国特許出願公開第20150029487号明細書には、ライダー型デバイスが搭載された自動車が記載されている。
【0003】
機械的走査ライダーは、強力な視準レーザー光源を使用し、高度集束光学部品類を介して受信器に戻り信号を集結する第1世代のライダーを構成する。レーザー及び受信器組立体を回転させることによって、機械的走査ライダーは、機械的走査ライダーの周りの領域を走査し、最大360度の広い領域にわたってデータを収集することができる。しかし、機械的走査ライダーは一般的に、大きく、繊細で、非常に高価である。固体状態ライダーは、機械的走査ライダーの欠点を有しない第2世代のライダーである。
【0004】
機械的走査ライダーが機械的走査ライダーの周りの領域にわたって単一レーザー光源を走査する電気機械的構成を当てにするのに対して、固体状態ライダーは、可動部を含まない。固体状態ライダーは、光位相配列を使用し、光位相配列において、光放出体は、特定のパターン及び位相で爆発的な光子を送出して指向性放出を生成し、焦点及びサイズを調整することができる。光位相配列は、放出体毎に信号の相対位相を調整することによって、電磁ビームの方向を変更することができる放出体(例えば、レーザー)の列である。固体状態ライダーは、電子チップに構築され、従って、機械的走査ライダーよりも非常に安価で、振動に強い。単一レーザー光源を含む機械的走査ライダーと比較した固体状態ライダーの1つの欠点は、同じエネルギー消費に対して、光位相配列によって放出される光の強度を光放出体の数で分割することである。光の反射、吸収、及び散乱のような光学現象は、単一レーザー光源の場合よりも問題となることがある。
【0005】
固体状態ライダーは、自動車に益々実装されている。雨、霰、大きい温度変動、及び砂利を含む様々な物体からの衝撃にさらされる非常に攻撃的な環境である自動車の外部に、固体状態ライダーを装着することができる。このような環境からライダーを保護するために、ライダーによって使用される波長に対して透過性のガラスカバーを含むハウジングによってライダーデバイスを包囲する。ライダーは、可視光又は赤外光を使用することができる。しかし、自動車産業で使用されるライダーは一般的に、750nm~1650nmの近赤外スペクトルの光を放出する。本発明によるガラスカバーは、750nm~1650nm、好ましくは750nm~1050nm、より好ましくは750nm~950nmの波長範囲の赤外線に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%のライダー動作波長における平均透過率を有する少なくとも1つのガラスシートから作られている。ライダー検出デバイスでの使用に適しているガラスカバーの例は、米国特許出願公開第20150029487号明細書、欧州特許第20170185156号明細書、及び特許出願PCT/EP2018/070954号明細書に記載されている。
【0006】
このようなガラスは、当然、光源によって放出される光に対して高い透過率を維持する必要がある。
【0007】
更に、ガラスカバーは、ガラスカバーが全体設計と美的に調和することができるように全体設計の優れた特徴であってもよい。
【0008】
現在、検出デバイス、特にライダーにガラスカバーを設け、ガラスカバーの少なくとも1つの面に塗料又はエナメルを塗布し、必要な美観を達成することが知られている。中間層が2つのガラスシートの間に積層された積層ガラスカバーの場合、第1のガラスシートのP2とも一般的に呼ばれる内面、及び/又は第2のガラスシートのP3とも呼ばれる内面に、塗料又はエナメルを塗布する。
【0009】
しかし、塗料又はインク又はエナメルは、積層ガラスカバーの製造工程中に熱可塑性中間層に拡散し、ガラスカバーの美的でない外観を引き起こし、従って、検出デバイス用のカバーとして効率的に使用することができない。
【0010】
更に、熱可塑性中間層への塗料又はインク又はエナメルの拡散により、ガラスカバーのかすみが増大する。従って、センサーデバイスによって取り込まれる画像は、ぼやけることがあり、センサーデバイス、特にライダーの機能に大きなダメージを与えることがある。
【0011】
更に、塗料、インク又はエナメルを、熱可塑性中間層と接触してガラスシートの内面の表面に塗布する必要がある場合、塗料、インク又はエナメルは、剥離の危険性を伴ってガラスシートへの熱可塑性中間層の接着不良を引き起こすこともある完全な硬化を受ける必要がある。その結果、ガラスカバーの機械的及び時間的寿命に悪影響を与える。
【0012】
このような理由で、美的外観を有し、ライダーデバイス用のガラスカバーの要件に合致する積層カバーを提案する必要がある。
【0013】
多数の検出システムを必要とするADAS及び自動車の発展に伴って、美的でない外観を有し、ライダーシステムの効率を変えることがあるガラスカバーを有することは、容認できない。
【0014】
本発明は、この問題に対する解決策を提案し、現在のシステムに比べて低コストで、効率的で耐久性のある美的なライダーシステムを可能にする。これらの利点及び他の利点について、下記の節でより詳細に説明する。
【発明の概要】
【0015】
本発明は、添付の独立請求項で規定される。好ましい実施形態は、従属請求項で規定される。特に、本発明は、
(b)ハウジングに固定された積層ガラスカバーを設けたハウジングであって、ハウジングの積層ガラスカバーは、750nm~1650nmの波長範囲の赤外線に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%の光検出及び測距(ライダー)動作波長における平均透過率を有するハウジングによって包囲されている(a)ライダーデバイス
を含む検出デバイスに関する。
【0016】
本発明によれば、積層ガラスカバーは、少なくとも1つの熱可塑性中間層を使用して積層された少なくとも1つのガラスシートを含み、熱可塑性中間層は、750nm~1650nmの波長範囲の赤外線に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%のライダー動作波長における平均透過率を有し、かつ入射光の10%未満、好ましくは入射光の5%未満、より好ましくは入射光の2%未満、さらにより好ましくは入射光の0%に等しい可視範囲(380nm~780nm)における光透過率を有する。
【0017】
本発明によれば、光透過率は、LT D65 10°としてISO 9050規格に従って計算されるものとする。
【0018】
本発明によれば、積層ガラスカバーは、750nm~1650nm、好ましくは750nm~1050nm、より好ましくは750nm~950nmの波長範囲の赤外線に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%のライダー動作波長における平均透過率を有する。
【0019】
本発明によれば、熱可塑性中間層は、750nm~1650nm、好ましくは750nm~1050nm、より好ましくは750nm~950nmの波長範囲の赤外線に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%のライダー動作波長における平均透過率を有し、かつ入射光の10%未満、好ましくは入射光の5%未満、より好ましくは入射光の2%未満、さらにより好ましくは入射光の0%に等しい可視範囲(380nm~780nm)における光透過率を有する。
【0020】
本発明による熱可塑性中間層は、ライダーシステムの美観及び効率を維持し、更に向上させながら、石の破片による多くの衝撃への耐性を積層ガラスカバーに与える。
【0021】
本発明の実施形態によれば、熱可塑性中間層は、入射光の10%未満、好ましくは入射光の5%未満、より好ましくは入射光の2%未満、さらにより好ましくは入射光の0%に等しい可視範囲(380nm~780nm)における光透過率を有する黒色熱可塑性中間層である。
【0022】
本発明によれば、積層ガラスカバーを形成する少なくとも1つのガラスシートの表面に塗料、インク又はエナメルを使用する代わりに、上述のような熱可塑性中間層を使用することによって、湾曲ガラスシートを使用することができる。これに対して、塗料、インク又はエナメルをガラスシートの表面に塗布する場合は、塗料、インク又はエナメルを劣化させることなしにガラスシートを熱的に屈曲させることができない。
【0023】
本発明による熱可塑性中間層を使用することによって、積層ガラスカバーを形成するガラスシートを湾曲/屈曲させたり、かかるガラスシートの少なくとも1つの表面に塗膜(例えば、反射防止塗膜)を直接付着させたりすることに対するフレキシビリティーがより高くなる。
【0024】
従って、本発明のおかげで、積層ガラスカバーは、平坦であることができるか、又は湾曲されることができる。
【0025】
湾曲積層ガラスカバーは、平坦なライダーカバーの場合と比べて、光反射に悪影響を与えることなしにライダーの効率を向上させることができる。実際に、湾曲積層ガラスカバーを使用すると、ライダーの走査角が大きくなる。更に、湾曲ガラスカバーを使用する利点の1つは、ライダー及び/又は車両(自動車、トラック、航空機など)の製造業者に対する設計の点でより高いフレキシビリティーを与えることである。
【0026】
好ましい実施形態において、積層ガラスカバーは、関心のある波長における透過率を更に高めるために、反射防止層又は塗膜を含んでもよい。反射防止塗膜は、例えば、低屈折率を有する多孔質シリカに基づく層であってもよく、又は、幾つかの層(スタック)、特に、低屈折率を有する層と高屈折率を有する層を交互に配置させ、低屈折率を有する層で終わる誘電材料の層のスタックで構成されてもよい。例えば、反射防止塗膜は、例えばイオン注入技術によって付着された屈折率勾配層に基づく層であってもよい。テクスチャーのある表面を使用してもよい。反射を回避するために、エッチング又はコーティング技法を使用してもよい。好ましくは、処理面の反射率は、関心のある波長範囲内で少なくとも1%から減少する。
【0027】
他に規定がない限り、用語「赤外線」を使用する場合、赤外線は、750nm~1650nmの波長の放射線を意味する。
【0028】
一実施形態において、積層ガラスカバーは、本発明による熱可塑性中間層を介して一緒に積層された第1のガラスシート及び第2のガラスシートを含む。
【0029】
別の実施形態において、積層ガラスカバーは、第1のガラスシート、本発明による熱可塑性中間層、及び第1のガラスシートと組み合わせて使用されるのに適しており、ライダーの効率に関する要件に合致する透明シートを含んでもよい。透明シートは、例えば、ポリカーボネートシートや、周知のキズ防止塗膜で被覆されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムであってもよい。少なくとも1つのガラスシート及び本発明による熱可塑性中間層と組み合わせて任意の適切な材料を使用することができることが理解される。
【0030】
本発明の実施形態によれば、積層ガラスカバーは、少なくとも1つのソーダ石灰ガラスシートを含む。
【0031】
本発明の実施形態によれば、積層ガラスカバーは、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ガラスセラミック又は石英ガラス、又は本発明によるライダー用のガラスカバーとして使用されるのに適している任意の適切なタイプのガラスから作られている。
【0032】
本発明の一実施形態によれば、熱可塑性中間層は、入射光の0%に等しい光透過率を有する。
【0033】
本発明の別の実施形態によれば、熱可塑性中間層は、赤外線非吸収インクとも呼ばれる赤外線(IR)透過インクを有するバルク染色中間層である。
【0034】
好ましい実施形態によれば、本発明による熱可塑性中間層は、750nm~1650nmの波長範囲の赤外線に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%のライダー動作波長における平均透過率を有し、かつ入射光の2%未満、好ましくは入射光の0%に等しい可視範囲における光透過率を有する黒色中間層である。本発明の実施形態によれば、熱可塑性中間層は、750nm~1650nmの波長範囲の赤外線に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%のライダー動作波長における平均透過率を有し、かつ入射光の10%未満、好ましくは入射光の5%未満、より好ましくは入射光の2%未満、さらにより好ましくは入射光の0%に等しい可視範囲(380nm~780nm)における光透過率を有する赤外線透過インクで染色されている。
【0035】
赤外線透過インクは、IR(赤外線)がインクを通過することができるが、可視光、及び任意選択的に、紫外線(太陽光など)を遮断する特性を有する。熱可塑性中間層上の印刷インク層の形成状態を変化させることによって、指定波長に応じて透過率を調整することができる。
【0036】
一実施形態によれば、赤外線透過インクは、顔料ベースの赤外線透過インク又は染料ベースの赤外線透過インクである。顔料ベースのインクは典型的に、インク中に懸濁している顔料粉末の固形粒子を含む。これに対して、染料ベースのインクは典型的に、インク中に溶解している染料を含む。赤外線透過インクの結合剤又は樹脂は、任意のタイプの重合体(例えば、エポキシ、アクリレート、ポリエステル、ポリウレタン、又はこれらの任意の混合物)であってもよい。赤外線透過インクの結合剤又は樹脂は、当業者に既知の任意のタイプのものであってもよい。適切な結合剤の幾つかの限定的な例は、重合体(例えば、エポキシ重合体、アクリル重合体、ビニル重合体、ポリウレタン、ポリエステル、又はこれらの任意の混合物)である。結合剤は、例えば、植物油、又はUV(紫外線)又はEB(電子ビーム)硬化性成分に基づいていてもよい。このようなインクは、例えば、Teikoku、Proell、Toray、Nazdar、又はEpolinなどの会社から市販されている。
【0037】
好ましくは、赤外線透過インクは、黒色インクである。赤外線透過インクの表面は、美的理由のため、中間濃黒色を示す。
【0038】
本発明によれば、熱可塑性中間層は、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリウレタン(PU)、ポリカーボネート(PC)、ポリエステル、共重合体、エチレン酢酸ビニル(EVA)、シクロオレフィン重合体(COP)、シリコーン、ポリオレフィン(PE、PPなど)、又はこれらの混合物を含む重合体シートであることができる。
【0039】
本発明の好ましい実施形態によれば、積層ガラスカバーは、上述のような熱可塑性中間層と一緒に積層された2つのガラスシートから作られている。
【0040】
好ましくは、ライダーデバイスを、自動車に装着する。例えば、ライダーを、フェンダー、バンパー、グリル、サイドミラーカバー、バックミラーカバー、ボンネット、サイドドア、ピラー(A、B、C、D)、又はドア又はルーフの上/内に一体化することができる。
【0041】
別の例において、欧州特許第3487825号明細書に記載のように、検出デバイスをトリム要素の後部に配置してもよい。
【0042】
別の例において、ガラスカバーは、フロントガラス、リアウィンドウ、サイドウィンドウ、ヘッドライト又はテールライトカバーを含む自動車の透明構成要素の一部であることができる。本発明による積層ガラスカバーを含むライダーがフロントガラス又はより一般的にウィンドウの一部である場合、ライダーを視野の外側のゾーンに配置するものとする。入射光の10%を超える可視範囲における光透過率を必要とするゾーンに、ライダーを配置すべきではない。
【0043】
更に、本発明は、固体状態ライダーを包囲するハウジングに固定された積層ガラスカバーの使用に関する。
【0044】
更に、本発明は、ライダーを含むハウジングに固定される積層ガラスカバーを製造する方法であって、
(a)750nm~1650nm、好ましくは750nm~1050nm、より好ましくは750nm~950nmの波長範囲の赤外線に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%のライダー動作波長における平均透過率を有する少なくとも1つのガラスシートを設けるステップと、
(b)750nm~1650nm、好ましくは750nm~1050nm、より好ましくは750nm~950nmの波長範囲の赤外線に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%のライダー動作波長における平均透過率を有し、かつ入射光の10%未満、好ましくは入射光の5%未満、より好ましくは入射光の2%未満、さらにより好ましくは入射光の0%に等しい可視範囲(380nm~780nm)における光透過率を有する熱可塑性中間層を使用して少なくとも1つのガラスシートを積層するステップと
を含む方法に関する。
【0045】
本発明の一実施形態によれば、ライダーを含むハウジングに固定される積層ガラスカバーを製造する方法は、
(a)750nm~1650nm、好ましくは750nm~1050nm、より好ましくは750nm~950nmの波長範囲の赤外線に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%のライダー動作波長における平均透過率を有する少なくとも1つのガラスシートを設けるステップと、
(b)750nm~1650nm、好ましくは750nm~1050nm、より好ましくは750nm~950nmの波長範囲の赤外線に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%のライダー動作波長における平均透過率を有し、かつ入射光の10%未満、好ましくは入射光の5%未満、より好ましくは入射光の2%未満、さらにより好ましくは入射光の0%に等しい可視範囲(380nm~780nm)における光透過率を有する熱可塑性中間層を少なくとも1つのガラスシートに配置するステップと、
(c)750nm~1650nm、好ましくは750nm~1050nm、より好ましくは750nm~950nmの波長範囲の赤外線に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%のライダー動作波長における平均透過率を有する第2のガラスシートを配置するステップであって、積層ガラスカバーを形成する2つのガラスシートの間に熱可塑性中間層を挟むステップと
を含む。
【0046】
750nm~1650nm、好ましくは750nm~1050nm、より好ましくは750nm~950nmの波長範囲の赤外線に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%のライダー動作波長における平均透過率を有し、かつ入射光の10%未満、好ましくは入射光の5%未満、より好ましくは入射光の2%未満、さらにより好ましくは入射光の0%に等しい可視範囲(380nm~780nm)における光透過率を有する熱可塑性中間層は、
-ライダーを含むハウジングに固定されるガラスカバーを強化し、安全基準及び規則に従い、
-ハウジングに含まれるライダーをより良く保護し、
-ライダーの優れた効率を保証しながら、ライダーを少なくとも部分的に隠すことによって、優れた美観を与える
ことができる。
【0047】
更に、本発明は、好ましくは自動運転車である、上述のような検出デバイスを含む自動車に関する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
本発明の性質をより十分に理解するために、添付図面と併せて下記の詳細な説明を参照する。
【
図2】本発明による検出デバイスを設置することができる様々な位置を有する自動車を示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1に例示のように、本発明は、第1のガラスシート(13)、熱可塑性中間層(31)及び第2のガラスシート(14)から作られたガラスカバー(12)が設けられたハウジング(11)によって包囲されている固体状態ライダーデバイス(21)を含むライダーデバイスに関する。本発明によれば、第1のガラスシート(13)及び第2のガラスシート(14)は、750nm~1650nm、好ましくは750nm~1050nm、より好ましくは750nm~950nmの波長範囲の赤外線に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%のライダー動作波長における平均透過率を有する。熱可塑性中間層は、750nm~1650nm、好ましくは750nm~1050nm、より好ましくは750nm~950nmの波長範囲の赤外線に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%のライダー動作波長における平均透過率を有し、かつ入射光の10%未満、好ましくは入射光の5%未満、より好ましくは入射光の2%未満、さらにより好ましくは入射光の0%に等しい可視範囲(380nm~780nm)における光透過率を有する。このような熱可塑性中間層は、入射光の10%未満、好ましくは入射光の5%未満、より好ましくは入射光の2%未満の可視範囲(380nm~780nm)における光透過率を有する黒色赤外線透過インク(例えば、Teikoku、又はTorayによって提供)又は任意の既知の赤外線透過インクを有する、バルクに染色されたPVB中間層である。外部攻撃(例えば、ごみ、及び砂利又は霰からの衝撃)からライダーを保護するために、ライダーをハウジングによって包囲される必要がある。本発明は、ライダーの効率を保証し、優れた美観を与えながら、ライダーシステムの耐用寿命を延ばす解決策を提案する。ガラスカバーは、より耐久性があり、赤外線に対して透過性でありながら光透過性の低い熱可塑性中間層の使用により、所要の光学的特性を有するライダーを包囲するハウジングに固定されるさらに効率的なガラスカバーを提供することができる。
【0050】
上述のように、固体状態ライダーは、光放出体を移動させることなく様々な方向に向くように電子的に操縦可能な光波のビームを生成する光放出体(レーザー)の位相配列を含む。望ましくない方向に放射線を抑制するように相殺しながら、個々の放出体からの光波が一緒に加わって望ましい方向に放射線を増加するような位相関係で、各光放出体を設定する。位相配列において、放出体間の位相シフトを制御することによって、光波のビームを様々な方向に操縦することができる。
【0051】
固体状態ライダーを外部攻撃から保護するために、放出放射線、及び障害物に対して反発された戻り放射線の通過を可能にするガラスカバーを含むハウジングによって固体状態ライダーを包囲する。
【0052】
ガラスカバー(12)
放出放射線が障害物に衝突し、放射線の一部が検出デバイスに後方反射されるまで、放出放射線は、ハウジング(11)のガラスカバー(12)を横断する必要があり、放出放射線は、光学センサーに達する前に、再度ガラスカバー(12)を横断する必要がある。入射ビーム、及び障害物から反射される戻りビームによって横断されるべきガラスカバー(12)は、自動車(40)に装着されたライダーでよく使用される赤外光に対して高い透過率を有する必要がある。
【0053】
ガラスカバー(12)が一方で、好ましくは750nm~1650nmの赤外領域内に一般的に含まれる、ライダーによって放出される波長に対して高い透過率を有することは、ライダー検出デバイス(1)の優れた機能にとって重要である。雨、霜、及び霰及び砂利からの衝撃を含む外部攻撃にガラスカバー(12)をさらす車両の使用中にこれらの値を維持することは、ライダー検出デバイスの耐用寿命にとって重要である。
【0054】
赤外線の吸収を減らすために、ガラスシートは、できるだけ薄くすべきである。ガラスシートは、2mm以下、好ましくは1mm以下の厚さを有することが好ましい。好ましくは、ガラスシートは、ガラスシートの頑丈性を保持しながら、脆弱性を有する。
【0055】
ガラスシートは、ソーダ石灰ガラスシートであることができる。ソーダ石灰ガラスの組成の例は、下記の成分を含む。
SiO2 55~85%
Al2O3 0~30%
B2O3 0~20%
Na2O 0~25%
CaO 0~20%
MgO 0~15%
K2O 0~20%
BaO 0~20%
Cr2O3 0.0001~0.06%
Co 0~1%
全鉄(Fe2O3として表される) 0.002~1%。
【0056】
このようなガラスシートは、自動車におけるライダー検出デバイスによって使用される赤外線に対して極めて高い透過率を有する。ガラスカバー(12)は、ガラスから作られることもできる。好ましくは、ガラスカバー(12)は、ガラスから作られ、ガラスシートに対して上述のように規定される範囲内の組成を有する。
【0057】
本発明の一実施形態によれば、ガラスカバーは、任意の既知の技法(例えば、浸漬被覆、吹き付け、又はスパッタリング)によって、ガラスカバー(12)の外面に塗布された被覆層であることができる。塗膜は、塗膜が付着されたガラスカバーに悪影響を与えない熱処理によって、又は塗膜を機械的にこすることによって、(雨のために)水以外の溶媒で除去できる必要がある。
【0058】
ガラスカバー(12)は、三次元(3D)形状を有することができる。
【0059】
雨及び霜は、ガラスカバー(12)の組立体の光学的特性を一時的に低下させることがあるので、ガラスカバー(12)は、ガラスカバー(12)を覆う場合、大気にさらされる外面が疎水性であることができる。低い表面エネルギーを有する重合体シート又は塗膜の選択によって、又は疎水性層をガラスカバーに塗布することによって、疎水性を得ることができる。表面に置かれた水滴が90度を超える静止水接触角を形成する場合、表面は、疎水性であると考えられる。
【0060】
本発明による熱可塑性中間層の光学的特性は、ガラスカバーを通る光ビームの透過に基づくライダー検出デバイスの優れた機能を妨げない。しかし、積層ガラスカバー(12)の主な目的は、ライダーの光学センサーの保護である。これは、後述の機械的特性で達成可能である。
【0061】
本発明による検出デバイスは、自動車、船、航空機などでの使用に特に適している。好ましくは、本発明による検出デバイスを、自動車、より好ましくは、自動運転車に装着する。自動車は、自動車、バン、貨物自動車、バイク、バス、路面電車、列車などを含む。
【0062】
図2は、典型的な自動車を示し、囲み符号(1)による検出デバイスの位置特定の例も示す。フェンダー、バンパー、グリル、サイドミラーカバー、ボンネット、ブーツ、サイドドア、ピラー(A、B、C、D)、又はバックドアを含む車体要素(41)の上/内に、検出デバイスを装着することができる。フロントガラス、リアウィンドウ、サイドウィンドウ、ヘッドライト又はテールライトカバーなどを含む透明車体要素(42)の後部に、検出デバイスを装着することもできる。本発明による積層ガラスカバーを含むライダーがフロントガラス又はより一般的にウィンドウの一部である場合、ライダーを視野の外側のゾーンに配置することが理解される。入射光の10%を超える可視範囲における光透過率を必要とするゾーンに、ライダーを配置すべきではない。
【符号の説明】
【0063】
1 検出デバイス
11 ハウジング
12 ガラスカバー
21 固体状態ライダー
31 熱可塑性層
40 自動車
41 不透明車体要素
42 透明車体要素
【国際調査報告】