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▶ ザ・カウンシル・オヴ・ザ・クイーンズランド・インスティテュート・オヴ・メディカル・リサーチの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-20
(54)【発明の名称】標的化EPHA3及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20221213BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20221213BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20221213BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20221213BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20221213BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20221213BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20221213BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20221213BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20221213BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20221213BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20221213BHJP
   C07K 16/42 20060101ALI20221213BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20221213BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20221213BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20221213BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221213BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20221213BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20221213BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20221213BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221213BHJP
   C07K 14/705 20060101ALN20221213BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/13
C12N15/12
C12N15/63
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N5/0783
C07K16/18
C07K19/00
C07K16/42
C12P21/08
A61K39/395 N
A61K48/00
A61P35/00
A61K35/17 Z
A61K45/00
A61P25/00
A61P43/00 105
C07K14/705
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022519779
(86)(22)【出願日】2020-10-09
(85)【翻訳文提出日】2022-05-30
(86)【国際出願番号】 AU2020051090
(87)【国際公開番号】W WO2021068040
(87)【国際公開日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】2019903802
(32)【優先日】2019-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504200892
【氏名又は名称】ザ・カウンシル・オヴ・ザ・クイーンズランド・インスティテュート・オヴ・メディカル・リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】カンナ, ラジヴ
(72)【発明者】
【氏名】マーティンズ, ホセ パウロ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG20
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AA94X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA13
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA011
4C084ZB211
4C084ZB261
4C084ZC412
4C085AA14
4C085AA16
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE03
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB37
4C087CA04
4C087CA12
4C087MA02
4C087NA14
4C087ZA01
4C087ZB21
4C087ZB26
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
少なくともEphA3を特異的に認識し得るか、又はEphA3に特異的に結合し得る、抗原結合分子及びキメラ抗原受容体(CAR)を開示する。医学的治療及び予防の方法も開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号13~72及び/若しくは表4~7に示されるアミノ酸配列又はそれに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有する少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む、任意選択で単離された、EphA3結合剤。
【請求項2】
(a)配列番号13~17のいずれか1つに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するCDR1と、配列番号18~22のいずれか1つに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するCDRと、配列番号23~27のいずれか1つに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するCDR3とを含む、重鎖免疫グロブリン可変領域(VH)ポリペプチド、及び/又は
(b)配列番号28~32のいずれか1つに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するCDR1と、配列番号33~37のいずれか1つに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するCDR2と、配列番号38~42のいずれか1つに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するCDR3とを含む、軽鎖免疫グロブリン可変領域(VL)ポリペプチド
を含む、請求項1に記載のEphA3結合剤。
【請求項3】
(a)VHポリペプチドが、配列番号153に示されるアミノ酸配列若しくはそれに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含む、及び/又は
(b)VLポリペプチドが、配列番号154に示されるアミノ酸配列若しくはそれに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含む、
請求項2に記載のEphA3結合剤。
【請求項4】
(a)配列番号43~47のいずれか1つに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するCDR1と、配列番号48~52のいずれか1つに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するCDR2と、配列番号53~57のいずれか1つに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するCDR3とを含む、VHポリペプチド、及び/又は
(b)配列番号58~62のいずれか1つに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するCDR1と、配列番号63~67のいずれか1つに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するCDR2と、配列番号68~72のいずれか1つに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するCDR3とを含む、VLポリペプチド
を含む、請求項1に記載のEphA3結合剤。
【請求項5】
(a)VHポリペプチドが、配列番号155に示されるアミノ酸配列若しくはそれに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含む、及び/又は
(b)VLポリペプチドが、配列番号156に示されるアミノ酸配列若しくはそれに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含む、
請求項4に記載のEphA3結合剤。
【請求項6】
EphA3結合剤が抗体又は抗体断片である、前記の請求項のいずれか一項に記載のEphA3結合剤。
【請求項7】
抗体又は抗体断片が、3C3-1若しくは2D4-1モノクローナル抗体、又はその断片である、請求項6に記載のEphA3結合剤。
【請求項8】
組換え、ヒト、若しくヒト化抗体、又は抗体断片である、請求項6又は請求項7に記載のEphA3結合剤。
【請求項9】
EphA3に結合可能な抗原結合分子であって、
(i)以下のCDR:
配列番号16のアミノ酸配列を有するHC-CDR1、
配列番号22のアミノ酸配列を有するHC-CDR2、
配列番号27のアミノ酸配列を有するHC-CDR3
を組み入れた重鎖可変(VH)領域、及び
(ii)以下のCDR:
配列番号32のアミノ酸配列を有するLC-CDR1、
配列番号37のアミノ酸配列を有するLC-CDR2、
配列番号42のアミノ酸配列を有するLC-CDR3
を組み入れた軽鎖可変(VL)領域
を含む、抗原結合分子。
【請求項10】
EphA3に結合可能な抗原結合分子であって、
(i)以下のCDR:
配列番号47のアミノ酸配列を有するHC-CDR1、
配列番号52のアミノ酸配列を有するHC-CDR2、
配列番号57のアミノ酸配列を有するHC-CDR3
を組み入れた重鎖可変(VH)領域、
(ii)以下のCDR:
配列番号62のアミノ酸配列を有するLC-CDR1、
配列番号67のアミノ酸配列を有するLC-CDR2、
配列番号72のアミノ酸配列を有するLC-CDR3
を組み入れた軽鎖可変(VL)領域
を含む、抗原結合分子。
【請求項11】
配列番号153のアミノ酸配列に対して少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、及び
配列番号154のアミノ酸配列に対して少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域
を含む、請求項9のいずれか一項に記載の抗原結合分子。
【請求項12】
配列番号155のアミノ酸配列に対して少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、及び
配列番号156のアミノ酸配列に対して少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域
を含む、請求項10のいずれか一項に記載の抗原結合分子。
【請求項13】
(i)請求項9~12のいずれか一項に記載の抗原結合分子、及び(ii)EphA3以外の抗原に結合可能な抗原結合分子を含む、抗原結合分子。
【請求項14】
請求項9~13のいずれか一項に記載の抗原結合分子を含むキメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項15】
配列番号1~12に示されるアミノ酸配列又はそれに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有する少なくとも1つのCDRを含む抗原結合ドメインと、膜貫通ドメインと、細胞内T細胞シグナル伝達ドメインとを含む、キメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項16】
抗原結合ドメインが、
(a)配列番号13~17のいずれか1つに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するCDR1と、配列番号18~22のいずれか1つに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するCDRと、配列番号23~27のいずれか1つに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するCDR3とを含む、重鎖免疫グロブリン可変領域(VH)ポリペプチド、及び/又は
(b)配列番号28~32のいずれか1つに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するCDR1と、配列番号33~37のいずれか1つに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するCDR2と、配列番号38~42のいずれか1つに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するCDR3とを含む、軽鎖免疫グロブリン可変領域(VL)ポリペプチド
を含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる、請求項15に記載のCAR。
【請求項17】
(a)VHポリペプチドが、配列番号153に示されるアミノ酸配列若しくはそれに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含む、及び/又は
(b)VLポリペプチドが、配列番号154に示されるアミノ酸配列若しくはそれに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含む、
請求項16に記載のCAR。
【請求項18】
抗原結合ドメインが、
(a)配列番号43~47のいずれか1つに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するCDR1と、配列番号48~52のいずれか1つに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するCDR2と、配列番号53~57のいずれか1つに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するCDR3とを含む、VHポリペプチド、及び/又は
(b)配列番号58~62のいずれか1つに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するCDR1と、配列番号63~67のいずれか1つに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するCDR2と、配列番号68~72のいずれか1つに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するCDR3とを含む、VLポリペプチド
を含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる、請求項15に記載のCAR。
【請求項19】
(a)VHポリペプチドが、配列番号155に示されるアミノ酸配列若しくはそれに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含む、及び/又は
(b)VLポリペプチドが、配列番号156に示されるアミノ酸配列若しくはそれに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含む、
請求項18に記載のCAR。
【請求項20】
抗原結合ドメインが、配列番号158に示されるアミノ酸配列又はそれに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するリンカーなどのリンカーを含む、請求項15~19のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項21】
リーダー配列をさらに含む、請求項14~20のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項22】
リーダー配列が、配列番号157に示されるアミノ酸配列若しくはそれに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる、請求項21に記載のCAR。
【請求項23】
膜貫通ドメインがCD8膜貫通ドメインを含む、請求項14~22のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項24】
CD8膜貫通ドメインが、配列番号159に示されるアミノ酸配列又はそれに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項23に記載のCAR。
【請求項25】
細胞内シグナル伝達ドメインが、CD3ゼータ細胞内シグナル伝達ドメインを含む、請求項14~24のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項26】
細胞内シグナル伝達ドメインが、配列番号162に示されるCD3ゼータアミノ酸配列又はそれに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項25に記載のCAR。
【請求項27】
配列番号161に示されるアミノ酸配列若しくはそれに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するCD28共刺激ドメイン、及び/又は配列番号160に示されるアミノ酸配列若しくはそれに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するCD137共刺激ドメインなどの、1つ以上の共刺激ドメインをさらに含む、請求項14~26のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項28】
対象におけるがんの治療又は予防に使用するための、請求項1~8のいずれか一項に記載のEphA3結合剤、又は請求項9~13のいずれか一項に記載の抗原結合分子、又は請求項14~27のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項29】
請求項1~8及び28のいずれか一項に記載のEphA3結合剤又は請求項15~27のいずれか一項に記載のCARをコードする、単離された核酸。
【請求項30】
請求項29に記載の単離された核酸を含む遺伝子構築物。
【請求項31】
請求項9~13のいずれか一項に記載の抗原結合分子又は請求項14に記載のCARをコードする、任意選択で単離された、1つ又は複数の核酸。
【請求項32】
請求項31に記載の1つ又は複数の核酸を含む、1つ又は複数の発現ベクター。
【請求項33】
請求項9~13のいずれか一項に記載の抗原結合分子、請求項14に記載のCAR、請求項31に記載の1つ若しくは複数の核酸、又は請求項32に記載の1つ若しくは複数の発現ベクターを含む、細胞。
【請求項34】
請求項29に記載の核酸及び/又は請求項30に記載の遺伝子構築物を含む、宿主細胞。
【請求項35】
宿主細胞がT細胞であるか、又はT細胞を含む、請求項34に記載の宿主細胞。
【請求項36】
単離されたEphA3結合剤又はCARを作製する方法であって、
(i)請求項34又は請求項35に記載の宿主細胞を培養するステップ、及び
(ii)ステップ(i)で培養した前記宿主細胞から前記EphA3結合剤又はCARを単離するステップ
を含む方法。
【請求項37】
請求項31に記載の1つ若しくは複数の核酸、又は請求項32に記載の1つ若しくは複数の発現ベクターを含む細胞を、核酸又は発現ベクターからの抗原結合分子又はCARの発現に適した条件下で培養することを含む方法。
【請求項38】
(i)請求項1~8及び28のいずれか一項に記載のEphA3結合剤、及び/又は
(ii)請求項15~27のいずれか一項に記載のCAR
に結合する、及び/又はそれに対して産生される、抗体又は抗体断片。
【請求項39】
請求項1~8及び28のいずれか一項に記載のEphA3結合剤、請求項15~27のいずれか一項に記載のCAR、請求項29に記載の単離された核酸、請求項30に記載の遺伝子構築物、及び/又は請求項34若しくは請求項35に記載の宿主細胞と、薬学的に許容できる担体、希釈剤又は賦形剤とを含む、組成物。
【請求項40】
請求項9~13のいずれか一項に記載の抗原結合分子、請求項14に記載のCAR、請求項31に記載の1つ若しくは複数の核酸、又は請求項32に記載の1つ若しくは複数の発現ベクター、又は請求項33に記載の細胞を含む、組成物。
【請求項41】
薬剤(例えば、チェックポイント阻害剤などの免疫療法剤)を追加的に含む、請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
対象におけるがんを治療又は予防する方法であって、請求項1~8及び28のいずれか一項に記載のEphA3結合剤、請求項15~27のいずれか一項に記載のCAR、請求項29に記載の単離された核酸、請求項30に記載の遺伝子構築物、請求項34又は請求項35に記載の宿主細胞、及び/又は請求項39に記載の組成物の治療有効量を対象に投与し、それによって対象におけるがんを治療又は予防するステップを含む方法。
【請求項43】
対象におけるがんの予防及び/又は治療のための医薬品の製造における、請求項1~8及び28のいずれか一項に記載のEphA3結合剤、請求項15~27のいずれか一項に記載のCAR、請求項29に記載の単離された核酸、請求項30に記載の遺伝子構築物、及び/又は請求項34若しくは請求項35に記載の宿主細胞の使用。
【請求項44】
がんが多形性神経膠芽細胞腫であるか又は多形性神経膠芽細胞腫を含む、請求項28に記載のEphA3結合剤又はCAR、請求項42に記載の方法、又は請求項43に記載の使用。
【請求項45】
EphA3又はEphA3を発現する細胞を検出する方法であって、請求項1~8及び28のいずれか一項に記載のEphA3結合剤又は15~28のいずれか一項に記載のCARとEphA3との複合体を形成させて、それによってEphA3又はEphA3を発現する細胞を検出するステップを含む方法。
【請求項46】
細胞ががん細胞であるか又はがん細胞を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
配列番号13~156及び/若しくは表2~5のいずれか1つに示されるアミノ酸配列又はそれに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる、単離されたタンパク質。
【請求項48】
配列番号1~12及び/若しくは表1のいずれか1つに示される核酸配列又はそれに対して少なくとも70%同一である核酸配列を含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる、単離された核酸。
【請求項49】
(a)CMV抗原への結合によって活性化されるT細胞受容体(TCR)と、(b)EphA3のエピトープに結合する抗原結合ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)とを発現する、ヒトT細胞。
【請求項51】
抗原結合ドメインが、重鎖可変(VH)領域と軽鎖可変(VL)領域とを含むscFvである、請求項49に記載のT細胞。
【請求項52】
(a)CMV抗原に対して特異的であるTCRを発現するT細胞受容体(TCR)と、(b)EphA3に結合する抗原結合分子とを含むT細胞。
【請求項53】
抗原結合分子が、重鎖可変(VH)領域と軽鎖可変(VL)領域とを含むscFvである、請求項52に記載のT細胞。
【請求項54】
抗原結合分子がCARである、請求項52又は請求項53に記載のT細胞。
【請求項55】
VH領域が配列番号153に示されるアミノ酸配列を有し、VL領域が配列番号154に示されるアミノ酸配列を有する、請求項51、53又は54のいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項56】
VH領域が配列番号155に示されるアミノ酸配列を有し、VL領域が配列番号156に示されるアミノ酸配列を有する、請求項51、53又は54のいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項57】
CARが、CD4、CD8又はCD28膜貫通ドメインから選択される膜貫通ドメインを含む、請求項49~56のいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項58】
CARが、4-1BB又はCD28共刺激ドメインから選択される共刺激ドメインを含む、請求項49~57のいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項59】
CMV抗原が、pp50、pp65、IE-I、gB及びgHのうちの1つ以上に由来するペプチドを含む、請求項49~58のいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項60】
CMV抗原が、配列番号181~211に示されるアミノ酸配列から選択されるペプチドを含む、請求項49~58のいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項61】
がんの治療に使用するための二重特異性T細胞集団を調製する方法であって、
(a)対象からPBMCを含む細胞の集団を入手し、前記細胞を処理して、CMV抗原に結合するTCRを発現するT細胞の部分集団を入手するステップ、
(b)前記細胞の部分集団を処理して、EphA3のエピトープに結合するCARをコードするベクターを導入し、それにより、CMV抗原に結合するTCRとEphA3のエピトープに結合するCARとを発現する二重特異性T細胞の集団を作り出すステップ、及び
(c)二重特異性T細胞の集団を増大するステップ
を含む方法。
【請求項62】
CARが、EphA3のエピトープに結合する抗原結合ドメイン、スペーサー、膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン、およびCD3ゼータシグナル伝達ドメインを含む、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
抗原結合ドメインが、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含むscFvである、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
重鎖可変(VH)領域が、配列番号153に示されるアミノ酸配列を有し、軽鎖可変(VL)領域が、配列番号154に示されるアミノ酸配列を有する、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
重鎖可変(VH)領域が、配列番号155に示されるアミノ酸配列を有し、軽鎖可変(VL)領域が、配列番号156に示されるアミノ酸配列を有する、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
膜貫通ドメインが、CD4、CD8又はCD28膜貫通ドメインである、請求項62~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
共刺激ドメインが、4-1BB又はCD28共刺激ドメインである、請求項62~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
ステップ(a)において細胞を処理することが、T細胞を、ペプチド特異的T細胞の増殖を誘導し得るHLAクラスI及びクラスII拘束性CMVペプチドエピトープを含む免疫原性ペプチドのプールに曝露させることを含む、請求項62~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
T細胞が、CMV抗原に対して特異的なTCRを発現し、対象への投与の前にT細胞抗原の存在下で増大される、請求項62~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
CMV抗原が、1つ以上のCMVペプチド、又はCMVワクチンを含む、請求項68に記載の方法。
【請求項71】
少なくとも1つのCMVペプチドが、pp50、p65、IE-I、gB及びgHから選択される、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
少なくとも1つのCMVペプチドが、配列番号181~211に示されるアミノ酸配列から選択される、請求項70又は請求項71に記載の方法。
【請求項73】
ペプチドプールが、CMV抗原pp50、pp65、IE-I、gB及びgHのそれぞれに由来する少なくとも1つのペプチドエピトープを含む、請求項68に記載の方法。
【請求項74】
配列番号181~211に示されるペプチドプールの中のCMVペプチドエピトープアミノ酸配列のうちの少なくとも1つ、又はそれらの組合せ、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
ペプチドプールが、配列番号181~211に示されるCMVペプチドエピトープアミノ酸配列のそれぞれを含む、請求項74に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子生物学の分野、より具体的には抗体技術に関する。より詳細には、本発明は、少なくともEphA3を特異的に認識し得るか又はEphA3に特異的に結合し得る、抗体又はキメラ抗原受容体(CAR)に関する。本発明はまた、医学的治療及び予防の方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
エフリンA型受容体3(EphA3)は、結腸がん、乳がん、慢性骨髄性白血病(CML)及び多形性神経膠芽細胞腫(GBM)を含む、多岐にわたるヒト固形腫瘍及び白血病に由来する腫瘍細胞で過剰発現されるか、又は異常に発現されることが見出されている。GBMは、悪性度が非常に高い固形脳腫瘍の一つである。標準治療は、最大限の外科的切除、放射線療法、並びにテモゾロミドによる併用化学療法及びアジュバント化学療法からなる。しかし、最適な治療が行われた場合でも、最初に診断された後の生存期間の中央値は15カ月未満である(1)。チェックポイント遮断を使用する最近の進歩により、いくつかのヒトがんのアウトカムは改善したが、この治療アプローチ単独に対しては、GBMは抵抗性であると思われる(2)。それにもかかわらず、GBMのみならず、より広範にわたるがんに対する新たな治療法の開発が依然として必要である。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、ヒト又はヒト化組換え抗EphA3抗体を範囲に含む抗EphA3結合剤、及びそれを使用する方法を広く対象とする。本発明の特定の形態は、EphA3に特異的に結合し得る抗原結合ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)、及びそれを使用する方法をさらに提供する。
【0004】
広範な形態では、本発明は、本明細書に記載のEphA3モノクローナル抗体の1つ以上のCDRを含む、EphA3結合剤及びCARに関する。
【0005】
一態様では、本発明は、配列番号13~72及び/若しくは表4~7に示されるアミノ酸配列又はそれに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有する少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む、EphA3結合剤を提供する。
【0006】
一部の実施形態では、EphA3結合剤は、
(a)配列番号13~17のいずれか1つに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するCDR1と、配列番号18~22のいずれか1つに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するCDRと、配列番号23~27のいずれか1つに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するCDR3とを含む、重鎖免疫グロブリン可変領域(VH)ポリペプチド、及び/又は
(b)配列番号28~32のいずれか1つに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するCDR1と、配列番号33~37のいずれか1つに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するCDR2と、配列番号38~42のいずれか1つに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するCDR3とを含む、軽鎖免疫グロブリン可変領域(VL)ポリペプチド
を含む。
【0007】
そのような実施形態に関して、VHポリペプチドは、配列番号153に示されるアミノ酸配列若しくはそれに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を好適に含み、及び/又は、VLポリペプチドは、配列番号154に示されるアミノ酸配列若しくはそれに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を好適に含む。
【0008】
この実施形態の一部及び他の一部の実施形態では、EphA3結合剤は、
(a)配列番号43~47のいずれか1つに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するCDR1と、配列番号48~52のいずれか1つに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するCDR2と、配列番号53~57のいずれか1つに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するCDR3とを含む、VHポリペプチド、及び/又は
(b)配列番号58~62のいずれか1つに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するCDR1と、配列番号63~67のいずれか1つに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するCDR2と、配列番号68~72のいずれか1つに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するCDR3とを含む、VLポリペプチド
を含む。
【0009】
この点に関して、VHポリペプチドは、配列番号155に示されるアミノ酸配列若しくはそれに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含むことができ、及び/又はVLポリペプチドは、配列番号156に示されるアミノ酸配列若しくはそれに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含むことができる。
【0010】
好適には、EphA3結合剤は、抗体又は抗体断片である。一実施形態では、抗体又は抗体断片は、3C3-1若しくは2D4-1モノクローナル抗体、又はその断片である。ある特定の実施形態では、EphA3結合剤は、組換え、ヒト、若しくはヒト化抗体、又は抗体断片である。
【0011】
別の態様では、本発明は、配列番号13~72及び/若しくは表4~7に示されるアミノ酸配列又はそれに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有する少なくとも1つのCDRを含む抗原結合ドメインと、膜貫通ドメインと、細胞内シグナル伝達ドメインとを含む、キメラ抗原受容体(CAR)に存する。
【0012】
一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、
(a)配列番号13~17のいずれか1つに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するCDR1と、配列番号18~22のいずれか1つに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するCDRと、配列番号23~27のいずれか1つに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するCDR3とを含む、重鎖免疫グロブリン可変領域(VH)ポリペプチド、及び/又は
(b)配列番号28~32のいずれか1つに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するCDR1と、配列番号33~37のいずれか1つに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するCDR2と、配列番号38~42のいずれか1つに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するCDR3とを含む、軽鎖免疫グロブリン可変領域(VL)ポリペプチド
を含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる。
【0013】
そのような実施形態について、VHポリペプチドは、配列番号153に示されるアミノ酸配列若しくはそれに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含んでよく、及び/又はVLポリペプチドは、配列番号154に示されるアミノ酸配列若しくはそれに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含んでよい。
【0014】
一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、
(a)配列番号43~47のいずれか1つに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するCDR1と、配列番号48~52のいずれか1つに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するCDR2と、配列番号53~57のいずれか1つに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するCDR3とを含む、VHポリペプチド、及び/又は
(b)配列番号58~62のいずれか1つに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するCDR1と、配列番号63~67のいずれか1つに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するCDR2と、配列番号68~72のいずれか1つに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するCDR3とを含む、VLポリペプチド
を含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる。
【0015】
そのような実施形態について、VHポリペプチドは、配列番号155に示されるアミノ酸配列若しくはそれに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含んでよく、及び/又はVLポリペプチドは、配列番号156に示されるアミノ酸配列若しくはそれに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含んでよい。
【0016】
一部の実施形態では、抗原結合ドメインはリンカーを含む。1つの特定の実施形態では、リンカーは、配列番号158に示されるアミノ酸配列又はそれに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる。
【0017】
好適には、CARは、リーダー配列又はシグナルペプチド配列、例えば、配列番号157に示されるCD8のリーダー配列若しくはシグナルペプチド配列又はそれに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列をさらに含む。
【0018】
ある特定の実施形態では、膜貫通ドメインは、CD8膜貫通ドメイン、例えば、配列番号159に示されるアミノ酸配列又はそれに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含むCD8膜貫通ドメインを含む。
【0019】
好適には、細胞内T細胞シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータ細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
【0020】
特定の実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号162に示されるCD3アミノ酸配列又はそれに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0021】
好適には、CARは、1つ以上の共刺激ドメイン、例えば、配列番号161に示されるアミノ酸配列若しくはそれに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するCD28共刺激ドメイン、及び/又は配列番号160に示されるアミノ酸配列若しくはそれに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するCD137共刺激ドメインをさらに含む。
【0022】
一部の実施形態では、第1の態様のEphA3結合剤又は第2の態様のCARは、対象におけるがん、例えば、多形性神経膠芽細胞腫のような固形がんの治療又は予防に使用するためのものである。
【0023】
この点に関して、上記及び本明細書の他の箇所で説明される抗体及び抗原結合分子は、実質的な抗腫瘍活性を示し、特に減少させるのに有効である。一部の実施形態では、本発明の抗原結合分子は、がんを有する対象から腫瘍を実質的に除去する能力を有する。
【0024】
別の態様では、本発明は、上記及び本明細書の他の箇所で説明されるEphA3結合剤及び/又はCARをコードする、単離された核酸を提供する。
【0025】
なお別の態様では、本発明は、上記及び本明細書の他の箇所で説明される単離された核酸を含む遺伝子構築物に存する。
【0026】
さらに別の態様では、本発明は、上記及び本明細書の他の箇所で説明される核酸及び/又は遺伝子構築物を含む宿主細胞を提供する。
【0027】
好適には、宿主細胞はT細胞であるか又はT細胞を含む。
【0028】
別の態様では、本発明は、単離されたEphA3結合剤又はCARを作製する方法であって、(i)第5の態様の宿主細胞を培養するステップ、及び(ii)ステップ(i)で培養した前記宿主細胞から前記EphA3結合剤又はCARを単離するステップを含む方法に存する。
【0029】
なお別の態様では、本発明は、第6の態様の方法によって作製されるEphA3結合剤又はCARを提供する。
【0030】
なお別の態様では、本発明は、
(i)第1の態様のEphA3結合剤、及び/又は
(ii)第2の態様のCAR
に結合する、及び/又はそれに対して産生される、抗体又は抗体断片に存する。
【0031】
別の態様では、本発明は、第1若しくは第6の態様のEphA3結合剤、第2若しくは第6の態様のCAR、第3の態様の核酸、第4の態様の遺伝子構築物、及び/又は第5の態様の宿主細胞と、薬学的に許容できる担体、希釈剤又は賦形剤とを含む組成物を提供する。
【0032】
さらになお別の態様では、本発明は、対象におけるがんを治療又は予防する方法であって、第1若しくは第6の態様のEphA3結合剤、第2若しくは第6の態様のCAR、第3の態様の核酸、第4の態様の遺伝子構築物、第5の態様の宿主細胞、及び/又は第9の態様の組成物の治療有効量を対象に投与し、それによって対象におけるがんを治療又は予防するステップを含む方法に存する。
【0033】
別の態様では、本発明は、対象におけるがんの予防及び/又は治療のための医薬品の製造における、第1又は第6の態様のEphA3結合剤、第2又は第6の態様のCAR、第3の態様の核酸、第4の態様の遺伝子構築物、及び/又は第5の態様の宿主細胞の使用を提供する。
【0034】
第1、第2、第10及び第11の態様に関して、がんは好適には、多形性神経膠芽細胞腫であるか又は多形性神経膠芽細胞腫を含む。
【0035】
別の態様では、本発明は、EphA3又はEphA3を発現する細胞を検出する方法であって、第1の態様のEphA3結合剤又は第2の態様のCARとEphA3との複合体を形成させて、それによってEphA3又はEphA3を発現する細胞を検出するステップを含む方法に存する。
【0036】
好適には、本方法は、EphA3又はEphA3を発現する細胞を、EphA3結合剤又はCARと接触させる最初のステップを含む。
【0037】
ある特定の実施形態では、細胞は、がん細胞であるか、又はがん細胞を含む。
【0038】
なお別の態様では、本発明は、配列番号13~156及び/若しくは表4~7のいずれか1つに示されるアミノ酸配列又はそれに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる、単離されたタンパク質を提供する。
【0039】
本発明のさらになお別の態様は、(a)CMV抗原への結合によって活性化されるT細胞受容体(TCR)と、(b)EphA3上のエピトープに結合する抗原結合ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)とを発現するヒトT細胞を提供する。
【0040】
一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含むscFvである。
【0041】
類似の態様では、本発明は、(a)CMV抗原に対して特異的であるTCRを発現するT細胞受容体(TCR)と、(b)EphA3に結合する抗原結合分子とを含むT細胞を提供する。
【0042】
さらに別の態様では、本発明は、配列番号1~12及び/若しくは表3のいずれか1つに示される核酸配列又はそれに対して少なくとも70%同一である核酸配列を含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる、単離された核酸に存する。
【0043】
本明細書を通じて、文脈上別に必要とされない限り、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」という語は、記載された整数又は整数の群を含むことを意味するものの、他の整数又は整数の群を除外することを意味しないと理解される。
【0044】
アミノ酸配列の文脈における「から本質的になる」とは、言及されたアミノ酸配列が、そのN末端及び/又はC末端に、1個、2個、3個、4個又は5個のアミノ酸をさらに含むことを意味する。
【0045】
本明細書で使用する場合、不定冠詞「1つの(a)」及び「1つの(an)」は、本明細書において、単数又は複数の要素又は特徴を指すか又はそれを範囲に含めるために使用され、「1個の(one)」又は「単一の」要素又は特徴を意味又は定義すると解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】Expi293F細胞での発現のためのEphA3(P29320|21-541)pcDNA3.4のクローニング戦略。
図2】EphA3(P29320|21-541)のSDS-PAGE及びウエスタンブロット分析。レーンM:タンパク質マーカーTaKaRa(カタログ番号3452);レーンM:タンパク質マーカー(GenScript社、カタログ番号M00521);レーン1:還元条件;レーン2 非還元条件;レーンP:陽性対照としてのMultiple-tag(GenScript社、カタログ番号M0101);一次抗体:マウス抗His mAb(GenScript社、カタログ番号A00186)。
図3】サブクローニングのために選択した親抗体クローン(パネルA)。マウスに対して、組換えヒトEphA3タンパク質(PP29320|21-541)による免疫処置を行った。ハイブリドーマを作製し、EphA3を発現するLK63腫瘍細胞を用いたELISA、及びFACSによるEphA3特異性に基づいて、5つの親ハイブリドーマクローンをサブクローニング用に選択した(パネルB)。
図4-1】EphA3に対して作製したモノクローナル抗体は異なる結合効率を有する。サブクローン上清を、ELISA(パネルA)及びFACS(パネルB)によってEphA3結合効率に関してスクリーニングした。
図4-2】EphA3に対して作製したモノクローナル抗体は異なる結合効率を有する。サブクローン上清を、ELISA(パネルA)及びFACS(パネルB)によってEphA3結合効率に関してスクリーニングした。
図4-3】EphA3に対して作製したモノクローナル抗体は異なる結合効率を有する。サブクローン上清を、ELISA(パネルA)及びFACS(パネルB)によってEphA3結合効率に関してスクリーニングした。
図5】EphA3は神経膠腫細胞株上に発現される。培養したU87細胞株、D270細胞株及びU251細胞株上での、3C3-1抗EphA3を使用したフローサイトメトリー分析。
図6】3C3-1 scFv結合領域とCD28ζ又は4-1BBζシグナル伝達ドメインとを有する、(上)pD2109-FA301_Ires-RFP CAR構築物、及び(下)pD2109-FA302_Ires-RFP CAR構築物の略図。
図7】HEK293T細胞における、CAR T断片(546bp)をまたぐ配列のRT-PCR及びアガロースゲル電気泳動。順方向プライマー-CAGCGGCTACACCTTTACCA及び逆方向プライマー-CCGGAGAATCTATCCGGCACプライマー。
図8】構築物FA301及びFA302(RFPレポーター)及びpD2109(GFPレポーター)に対して作製されたEphA3-CARレンチウイルスによるJurkat細胞の形質導入。
図9】Jurkat細胞におけるEphA3-CARの表面発現。細胞に対して、(左)FA301レンチウイルス及び(右)FA302レンチウイルスによる形質導入を行い、プレートに結合したEphA3-hisタンパク質とともにインキュベートした。EphA3-CAR表面発現を決定するために、細胞をαEphA3一次Abの存在下又は非存在下で染色し、その後にαHisタグAbによって染色した。
図10】CARを発現するJurkat細胞は、EphA3によって活性化される。FA301及びFA302により形質導入を行ったJurkat細胞を、プレートに結合した漸増濃度のEphA3タンパク質とともにインキュベートした。細胞をFACsによってCD69発現に関して染色し、CARを発現するRFP陽性のレベルをRFP陰性細胞と比較した。
図11】CARを発現するJurkat細胞は、EphA3を発現する腫瘍細胞株によって活性化される。FA301により形質導入を行ったJurkat細胞を、Lk63細胞とともに1:10の比(Jurkat-CAR:Lk63)でインキュベートした。Jurkat細胞をFACsによってCD69発現に関して染色し、RFP陽性細胞でのレベルをRFP陰性細胞と比較した。
図12】CMVにより増大させたT細胞に対して、pD2109レンチウイルス及びFA301レンチウイルスによる形質導入を行った。3日後にFACSによって形質導入効率を決定した。
図13】EphA3 CAR T細胞の共刺激ドメインのインビトロ比較。(A)末梢血単核細胞をCD3/28ビーズを使用して刺激して(ポリクローナル性増大)、細胞に対してEphA3レンチウイルスFA305-BBζ又はFA306-28ζによる形質導入を行い、12日間培養した。非形質導入(NT)T細胞を対照として維持した。CAR発現を、抗マウスIgG(CAR)の表面発現及びFACSによる分析によって判定した。(B)EphA3 CAR T細胞のエフェクター機能の特性決定。CARにより形質導入を行ったT細胞を、LK63(EphA3+)標的細胞とともに一晩インキュベートして、細胞内TNFを使用して機能を調べた。
図14】CAR T細胞の作製。末梢血単核細胞を、CD3/28ビーズ(ポリクローナル性増大)又は複数のCMV抗原に由来する26種のHLAクラスI及びクラスII拘束性T細胞ペプチドエピトープのプールを使用して刺激した。これらの細胞に対してEphA3レンチウイルスにより形質導入を行い、14日間培養した。非形質導入(NT)T細胞を対照として維持した。CARの発現及びCMV特異性を、抗マウスIgG(CAR)及びHLA複合体-CMVに対するペプチド四量体(VTE及びELK)に関するFACS分析によって判定した。
図15】ポリクローナル性CMV特異的T細胞における、EphA3 CAR T細胞エフェクター機能及び細胞傷害性の比較。(A)CARにより形質導入を行ったT細胞を、LK63(EphA3+)標的細胞とともに一晩インキュベートし、細胞内IFN-γ、TNF、及びCD107aの細胞表面動員を使用して機能を調べた。
図16】EphA3 CAR T細胞のインビトロ細胞傷害性の特性決定。(A)EphA3-CARを発現するT細胞がEphA3+腫瘍を特異的に除去する能力を、U251(EphA3+)及びU87(EphA3-)神経膠腫細胞株のリアルタイム標的誘発性細胞溶解によって測定した。(B及びC)U251標的細胞株を使用する、1:1、5:1及び10:1のエフェクター・標的比でのポリクローナル性CMV特異的EphA3-CARのRTCA分析。
図17-1】EphA3 CAR T細胞は、GBMの異種移植モデルにおいて強力な抗GBM応答を媒介する。(A)実験設計の略図。NRGマウスに対して、ルシフェラーゼを発現する神経膠腫細胞株U251(EphA3+)又はU87(EphA3-)を、側腹に皮下移植した(異所性モデル)。腫瘍サイズを測定するか又はバイオルミネセンスによって決定した。腫瘍がおよそ25mmに達した時点で、マウスにEphA3-CAR、NT(非形質導入)T細胞又はCAR19(非特異的CAR T細胞)を静脈内投与した。第17日に採取した血液における(B)CD4+及びCD8+のパーセンテージ、並びに(C)Ki67発現、の代表的なFACSプロット分析。
図17-2】EphA3 CAR T細胞は、GBMの異種移植モデルにおいて強力な抗GBM応答を媒介する。(D)腫瘍退縮に対するCAR-T細胞療法の影響を判定するために、U251腫瘍量を毎週決定した。(E)U251及びU87担持マウスにおけるCAR EphA3治療の比較。(F)U251(左)及びU87(右)発光腫瘍異種移植マウスのインビボイメージング。(G)EphA3-CAR治療又は対照細胞(NT又はCAR19)の投与を受けたマウスに関するKaplan-Meier生存曲線。
【発明を実施するための形態】
【0047】
[配列の簡単な説明]
配列番号1 クローン3C3-1 重鎖CDR1ヌクレオチド配列
配列番号2 クローン3C3-1 重鎖CDR2ヌクレオチド配列
配列番号3 クローン3C3-1 重鎖CDR3ヌクレオチド配列
配列番号4 クローン3C3-1 軽鎖CDR1ヌクレオチド配列
配列番号5 クローン3C3-1 軽鎖CDR2ヌクレオチド配列
配列番号6 クローン3C3-1 軽鎖CDR3ヌクレオチド配列
配列番号7 クローン2D4-1 重鎖CDR1ヌクレオチド配列
配列番号8 クローン2D4-1 重鎖CDR2ヌクレオチド配列
配列番号9 クローン2D4-1 重鎖CDR3ヌクレオチド配列
配列番号10 クローン2D4-1 軽鎖CDR1ヌクレオチド配列
配列番号11 クローン2D4-1 軽鎖CDR2ヌクレオチド配列
配列番号12 クローン2D4-1 軽鎖CDR3ヌクレオチド配列
配列番号13 クローン3C3-1 重鎖CDR1アミノ酸配列(Chothia)
配列番号14 クローン3C3-1 重鎖CDR1アミノ酸配列(AbM)
配列番号15 クローン3C3-1 重鎖CDR1アミノ酸配列(Kabat)
配列番号16 クローン3C3-1 重鎖CDR1アミノ酸配列(Contact)
配列番号17 クローン3C3-1 重鎖CDR1アミノ酸配列(IMGT)
配列番号18 クローン3C3-1 重鎖CDR2アミノ酸配列(Chothia)
配列番号19 クローン3C3-1 重鎖CDR2アミノ酸配列(AbM)
配列番号20 クローン3C3-1 重鎖CDR2アミノ酸配列(Kabat)
配列番号21 クローン3C3-1 重鎖CDR2アミノ酸配列(Contact)
配列番号22 クローン3C3-1 重鎖CDR2アミノ酸配列(IMGT)
配列番号23 クローン3C3-1 重鎖CDR3アミノ酸配列(Chothia)
配列番号24 クローン3C3-1 重鎖CDR3アミノ酸配列(AbM)
配列番号25 クローン3C3-1 重鎖CDR3アミノ酸配列(Kabat)
配列番号26 クローン3C3-1 重鎖CDR3アミノ酸配列(Contact)
配列番号27 クローン3C3-1 重鎖CDR3アミノ酸配列(IMGT)
配列番号28 クローン3C3-1 軽鎖CDR1アミノ酸配列(Chothia)
配列番号29 クローン3C3-1 軽鎖CDR1アミノ酸配列(AbM)
配列番号30 クローン3C3-1 軽鎖CDR1アミノ酸配列(Kabat)
配列番号31 クローン3C3-1 軽鎖CDR1アミノ酸配列(Contact)
配列番号32 クローン3C3-1 軽鎖CDR1アミノ酸配列(IMGT)
配列番号33 クローン3C3-1 軽鎖CDR2アミノ酸配列(Chothia)
配列番号34 クローン3C3-1 軽鎖CDR2アミノ酸配列(AbM)
配列番号35 クローン3C3-1 軽鎖CDR2アミノ酸配列(Kabat)
配列番号36 クローン3C3-1 軽鎖CDR2アミノ酸配列(Contact)
配列番号37 クローン3C3-1 軽鎖CDR2アミノ酸配列(IMGT)
配列番号38 クローン3C3-1 軽鎖CDR3アミノ酸配列(Chothia)
配列番号39 クローン3C3-1 軽鎖CDR3アミノ酸配列(AbM)
配列番号40 クローン3C3-1 軽鎖CDR3アミノ酸配列(Kabat)
配列番号41 クローン3C3-1 軽鎖CDR3アミノ酸配列(Contact)
配列番号42 クローン3C3-1 軽鎖CDR3アミノ酸配列(IMGT)
配列番号43 クローン2D4-1 重鎖CDR1アミノ酸配列(Chothia)
配列番号44 クローン2D4-1 重鎖CDR1アミノ酸配列(AbM)
配列番号45 クローン2D4-1 重鎖CDR1アミノ酸配列(Kabat)
配列番号46 クローン2D4-1 重鎖CDR1アミノ酸配列(Contact)
配列番号47 クローン2D4-1 重鎖CDR1アミノ酸配列(IMGT)
配列番号48 クローン2D4-1 重鎖CDR2アミノ酸配列(Chothia)
配列番号49 クローン2D4-1 重鎖CDR2アミノ酸配列(AbM)
配列番号50 クローン2D4-1 重鎖CDR2アミノ酸配列(Kabat)
配列番号51 クローン2D4-1 重鎖CDR2アミノ酸配列(Contact)
配列番号52 クローン2D4-1 重鎖CDR2アミノ酸配列(IMGT)
配列番号53 クローン2D4-1 重鎖CDR3アミノ酸配列(Chothia)
配列番号54 クローン2D4-1 重鎖CDR3アミノ酸配列(AbM)
配列番号55 クローン2D4-1 重鎖CDR3アミノ酸配列(Kabat)
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配列番号149 クローン2D4-1 LFR4アミノ酸配列(AbM)
配列番号150 クローン2D4-1 LFR4アミノ酸配列(Kabat)
配列番号151 クローン2D4-1 LFR4アミノ酸配列(Contact)
配列番号152 クローン2D4-1 LFR4アミノ酸配列(IMGT)
配列番号153 クローン3C3-1 重鎖アミノ酸配列
配列番号154 クローン3C3-1 軽鎖アミノ酸配列
配列番号155 クローン2D4-1 重鎖アミノ酸配列
配列番号156 クローン2D4-1 軽鎖アミノ酸配列
配列番号157 CD8シグナルペプチド配列
配列番号158 スペーサー/リンカーアミノ酸配列
配列番号159 CD8ヒンジ及び膜貫通アミノ酸配列
配列番号160 4-1BB/CD137共刺激ドメイン
配列番号161 CD28共刺激ドメイン
配列番号162 CD3-ζ細胞内シグナル伝達ドメイン
配列番号163 IRES核酸配列
配列番号164 M_Cayenne RFPアミノ酸配列
配列番号165 ヒトEphA3アミノ酸配列(前駆体)
配列番号166 ヒトEphA3成熟アミノ酸配列
配列番号167 ヒトEphA3細胞外ドメインアミノ酸配列
配列番号168 ヒトEphA3膜貫通ドメインアミノ酸配列
配列番号169 ヒトEphA3細胞質ドメインアミノ酸配列
配列番号170 ヒトEphA3 Ephリガンド結合ドメインアミノ酸配列
配列番号171 ヒトEphA3フィブロネクチンIII型ドメインアミノ酸配列
配列番号172 ヒトEphA3フィブロネクチンIII型ドメインアミノ酸配列
配列番号173 ヒトEphA3プロテインキナーゼドメインアミノ酸配列
配列番号174 ヒトEphA3ステライルαモチーフアミノ酸配列
【0048】
[発明の詳細な説明]
本発明は、少なくとも一部には、EphA3を対象とするモノクローナル抗体の作製、及びその後の、これらのモノクローナル抗体の結合ドメインに基づくキメラ抗原受容体(CAR)の作出に基づく。これらのモノクローナル抗体は、がん、例えば多形性神経膠芽細胞腫の治療及び/又は予防に特に好適である可能性がある。さらに、これらのCARを発現するT細胞は、がんを有する対象における養子免疫療法にも好適である可能性がある。
【0049】
本発明は、既知の抗EphA3抗体と比較して新規及び/又は改善された特性を有する新規EphA3結合分子に関する。一態様では、本発明は、配列番号13~72及び/若しくは表2~5のいずれか1つに示されるアミノ酸配列又はそれに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有する少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む新規EphA3結合分子を提供する。
【0050】
EphA3
エフリンA型受容体3(EphA3。例えば、EPH受容体A3、EPH様キナーゼ4、ヒト胚キナーゼ、チロシン-プロテインキナーゼTYRO4、及びチロシン-プロテインキナーゼ受容体ETK1とも呼ばれる)としては、完全長EphA3タンパク質、並びにその断片、バリアント及び誘導体を含む、すべての既知及び天然性のEphA3分子が挙げられる。EphA3としては、哺乳動物EphA3、例えば、UniProtKBアクセッション番号P29320(配列番号165に示される)によって特定されるヒトEphA3が挙げられるが、これには限定されない。ヒトでは、EphA3は、EPHA3遺伝子(ETK、ETK1、HEK、及びTYRO4としても知られる)によってコードされる。EphA3の機能は、例えば、Boydら、J Biol Chem、267(5):3262~3267に記載されており、これはその全体が参照によって本明細書に組み入れられる。EphA3は、近傍細胞表面に存在する膜結合エフリンファミリーリガンドに乱交雑性に結合して、隣接細胞への接触依存的な双方向性シグナル伝達を導く受容体型チロシンキナーゼとして機能する、約110kDaの1回通過I型膜貫通タンパク質である。
【0051】
配列番号165のN末端の20個のアミノ酸がシグナルペプチドを構成し、そのため成熟型のEphA3(すなわち、シグナルペプチドを除去するプロセシングの後)は、配列番号166に示されるアミノ酸を有する。配列番号165の位置21~541は細胞外ドメインを形成し(配列番号167)、位置542~565は膜貫通ドメインを形成し(配列番号168)、位置566~983は細胞質ドメインを形成する(配列番号169)。細胞外ドメインは、Ephリガンド結合ドメイン(配列番号170に示される、配列番号165の位置29~207)と、2つのフィブロネクチンIII型ドメイン(それぞれ配列番号171及び172に示される、配列番号165の位置325~435及び配列番号165の位置436~531)とを含む。細胞質ドメインは、プロテインキナーゼドメイン(配列番号173に示される、配列番号165の位置621~882)を含む。細胞質ドメインはまた、ステライルαモチーフ(SAM)(配列番号174に示される、配列番号165の位置911~975)も含む。
【0052】
EphA3成熟アミノ酸配列:
MDCQLSILLLLSCSVLDSFGELIPQPSNEVNLLDSKTIQGELGWISYPSHGWEEISGVDEHYTPIRTYQVCNVMDHSQNNWLRTNWVPRNSAQKIYVELKFTLRDCNSIPLVLGTCKETFNLYYMESDDDHGVKFREHQFTKIDTIAADESFTQMDLGDRILKLNTEIREVGPVNKKGFYLAFQDVGACVALVSVRVYFKKCPFTVKNLAMFPDTVPMDSQSLVEVRGSCVNNSKEEDPPRMYCSTEGEWLVPIGKCSCNAGYEERGFMCQACRPGFYKALDGNMKCAKCPPHSSTQEDGSMNCRCENNYFRADKDPPSMACTRPPSSPRNVISNINETSVILDWSWPLDTGGRKDVTFNIICKKCGWNIKQCEPCSPNVRFLPRQFGLTNTTVTVTDLLAHTNYTFEIDAVNGVSELSSPPRQFAAVSITTNQAAPSPVLTIKKDRTSRNSISLSWQEPEHPNGIILDYEVKYYEKQEQETSYTILRARGTNVTISSLKPDTIYVFQIRARTAAGYGTNSRKFEFETSPDSFSISGESSQVVMIAISAAVAIILLTVVIYVLIGRFCGYKSKHGADEKRLHFGNGHLKLPGLRTYVDPHTYEDPTQAVHEFAKELDATNISIDKVVGAGEFGEVCSGRLKLPSKKEISVAIKTLKVGYTEKQRRDFLGEASIMGQFDHPNIIRLEGVVTKSKPVMIVTEYMENGSLDSFLRKHDAQFTVIQLVGMLRGIASGMKYLSDMGYVHRDLAARNILINSNLVCKVSDFGLSRVLEDDPEAAYTTRGGKIPIRWTSPEAIAYRKFTSASDVWSYGIVLWEVMSYGERPYWEMSNQDVIKAVDEGYRLPPPMDCPAALYQLMLDCWQKDRNNRPKFEQIVSILDKLIRNPGSLKIITSAAARPSNLLLDQSNVDITTFRTTGDWLNGVWTAHCKEIFTGVEYSSCDTIAKISTDDMKKVGVTVVGPQKKIISSIKALETQSKNGPVPV
[配列番号165]
【0053】
本明細書において、「EphA3」は、任意の種に由来するEphA3を指し、EphA3のアイソフォーム、断片、バリアント(突然変異体を含む)、又は任意の種に由来する相同体を含む。
【0054】
本明細書で使用する場合、タンパク質の「断片」、「バリアント」、又は「相同体」は、任意選択で、参照タンパク質(例えば、参照アイソフォーム)のアミノ酸配列に対して、少なくとも60%、好ましくは70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%のうちの1つのアミノ酸配列同一性を有するとして特徴付けることができる。一部の実施形態では、参照タンパク質の断片、バリアント、アイソフォーム及び相同体は、参照タンパク質によって発揮される機能を発揮する能力によって特徴付けることができる。
【0055】
「断片」とは、タンパク質のアミノ酸配列の100%未満を構成する、参照タンパク質のセグメント、ドメイン、部分又は領域を一般に指す。「バリアント」とは、参照タンパク質のアミノ酸配列に比して、1つ以上のアミノ酸置換、挿入、欠失又は他の改変を含むが、参照タンパク質のアミノ酸配列に対してかなり高い程度の配列同一性(例えば、少なくとも60%)を保持するアミノ酸配を有するタンパク質を一般に指す。「アイソフォーム」とは、参照タンパク質の種と同じ種によって発現される参照タンパク質のバリアントを一般に指す。「相同体」とは、参照タンパク質の種と比較して異なる種によって産生される参照タンパク質のバリアントを一般に指す。相同体にはオルソログが含まれる。
【0056】
断片は、任意の長さ(アミノ酸の数による)であり得るが、任意選択で、参照タンパク質(すなわち、断片の由来であるタンパク質)の長さの少なくとも20%であることができ、参照タンパク質の長さの50%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%のうちの1つである最大の長さを有することができる。EphA3の断片は、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、200、250、300、350、400、450、550アミノ酸又は最長で約600アミノ酸のうちの1つである最小の長さを有することができ、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、200、250、300、350、400、450、550アミノ酸又は最長で約600アミノ酸のうちの1つである最大の長さを有することができる。
【0057】
一部の実施形態では、EphA3は、哺乳動物に由来するEphA3(例えば、霊長動物(アカゲザル、カニクイザル、非ヒト霊長動物、又はヒト)及び/又は齧歯動物(例えば、ラット又はマウス)のEphA3)である。EPhA3のアイソフォーム、断片、バリアント又は相同体は、任意選択で、所与の種、例えば、ヒトに由来する未成熟又は成熟EphA3アイソフォームのアミノ酸配列に対して、少なくとも70%、好ましくは80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%のアミノ酸配列同一性のうちの1つを有するとして特徴付けることができる。
【0058】
アイソフォーム、断片、バリアント、又は相同体は、任意選択で、例えば、機能的特性/活性に好適なアッセイによる分析によって決定した場合に参照EphA3の機能的特性/活性を有する、機能的なアイソフォーム、断片、バリアント、又は相同体であり得る。例えば、EphA3のアイソフォーム、断片、バリアント、又は相同体は、例えば、EphA5との会合を示すか、又はキナーゼ活性を保持し得る。
【0059】
一部の実施形態では、EphA3は、配列番号165又は166に対して少なくとも70%、好ましくは80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%のアミノ酸配列同一性のうちの1つを有するアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる。一部の実施形態では、EphA3の断片は、配列番号167、170、171、172のうちの1つ、又はそれらの組合せに対して、少なくとも70%、好ましくは80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%のアミノ酸配列同一性のうちの1つを有するアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる。
【0060】
EphA3は、プロテインチロシンキナーゼファミリーのエフリン受容体サブファミリーのメンバーであり、悪性黒色腫、神経膠芽細胞腫、肺がん及び乳がんを含む種々のヒトがんで、異常に発現されることが知られている。EphA3の発現増加は、腫瘍細胞増殖、血管新生、及び浸潤を促進するおそれがある。
【0061】
標的分子上の目的の領域
本発明の抗原結合分子は、特に目的となるEphA3の領域を標的化するように特別に設計した。予想される抗原性、機能及び安全性に関する分析の後に、標的化しようとするEphA3領域を2ステップアプローチで選択した。続いて、EphA3の標的領域に対して特異的な抗体を、特異的モノクローナル抗体を生じさせるための免疫原としての標的領域に対応するペプチド、及び天然状態のEphA3に結合可能な抗体を同定するための後続のスクリーニングを使用して調製した。このアプローチは抗体エピトープに対する制御をもたらす。
【0062】
本発明の抗原結合分子は、それらが結合するEphA3の領域を参照することによって定義することができる。本発明の抗原結合分子は、EphA3の目的の特定領域に結合することができる。一部の実施形態では、抗原結合分子は、アミノ酸の連続した配列(すなわち、アミノ酸の一次配列)からなるEphA3の直鎖状エピトープに結合することができる。一部の実施形態では、抗原結合分子は、アミノ酸配列のうちのアミノ酸の不連続配列からなるEphA3の立体構造エピトープに結合することができる。
【0063】
一部の実施形態では、抗原結合分子はEphA3に結合する。一部の実施形態では、抗原結合分子は、EphA3の細胞外領域(例えば、配列番号167に示される領域)に結合する。一部の実施形態では、抗原結合分子は、Ephリガンド結合ドメインのドメイン(例えば、配列番号170に示される領域)に結合する。一部の実施形態では、抗原結合分子は、フィブロネクチンIII型ドメインの一方又は両方に結合する(例えば、配列番号171及び172に示される領域)。
【0064】
抗体が結合するペプチド/ポリペプチドの領域は、X線結晶解析、抗体抗原複合体の任意の分析、ペプチドスキャニング、突然変異誘発マッピング、質量分析による水素-重水素交換分析、ファージディスプレイ、競合ELISA、及びタンパク質分解に基づく「保護」法を含む、当技術分野で周知の様々な方法を使用して、当業者によって決定され得る。そのような方法は、例えば、Gershoniら、BioDrugs、2007、21(3):145~156に記載されており、これはその全体が参照によって本明細書に組み入れられる。
【0065】
一部の実施形態では、抗原結合分子は、本明細書に記載の抗体クローン3C3-1又は2D4-1のうちの1つのVH配列及びVL配列を含む抗体が結合するEphA3の領域と同じEphA3の領域、又はそれに重なるEphA3の領域に結合することが可能である。
【0066】
本明細書で使用する場合、「単離された」とは、その天然状態から取り出されたか、又は他の方法で人為的操作を受けた材料、例えば、EphA3結合分子を意味する。単離された材料は、その天然状態でそれに通常付随する成分を実質的若しくは本質的に含まなくてもよく、又はその天然状態でそれに通常付随する成分とともに人工的な状態となるように操作されてもよい。単離された材料は、組換え形態、化学合成形態、強化された形態、精製又は部分的に精製された形態であり得る。
【0067】
本明細書で使用する場合、「タンパク質」とはアミノ酸ポリマーのことであり、ここでアミノ酸としてはD-アミノ酸、L-アミノ酸、天然及び/又は非天然アミノ酸が挙げられる。本明細書で典型的に使用する場合、「ペプチド」とは、50個以下の連続したアミノ酸を含むタンパク質のことである。本明細書で典型的に使用する場合、「ポリペプチド」とは、50個を上回る連続したアミノ酸を含むタンパク質のことである。「タンパク質」という用語は、糖タンパク質及びリポタンパク質などのタンパク質含有分子も範囲に含むが、それらに限定されないことも理解される必要がある。
【0068】
一部の実施形態では、本発明の抗原結合分子は、配列番号165、166、167、170、171、又は172のうちの1つのアミノ酸配列を含むか、又はそれからなるポリペプチドに結合することができる。
【0069】
抗原結合分子が所与のペプチド/ポリペプチドに結合する能力は、ELISA、免疫ブロット(例えば、ウエスタンブロット)、免疫沈降、表面プラズモン共鳴(SPR;例えば、Heartyら、Methods Mol. Biol. (2012) 907:411~442を参照)、又はバイオレイヤー干渉法(例えば、Ladら、(2015)J. Biomol. Screen 20(4):498~507を参照)による分析を含む、当業者に周知の方法によって分析し得る。
【0070】
抗原結合分子が、参照アミノ酸配列を含むペプチド又はポリペプチドに結合することが可能である実施形態では、ペプチド又はポリペプチドは、参照アミノ酸配列の一方又は両方の末端に、1つ以上のさらなるアミノ酸を含み得る。一部の実施形態では、ペプチド/ポリペプチドは、参照アミノ酸配列の一方又は両方の末端に、例えば、1~5個、1~10個、1~20個、1~30個、1~40個、1~50個、5~10個、5~20個、5~30個、5~40個、5~50個、10~20個、10~30個、10~40個、10~50個、20~30個、20~40個、又は20~50個のさらなるアミノ酸を含む。
【0071】
一部の実施形態では、EphA3のアミノ酸配列の文脈において、参照配列の一方又は両方の末端(すなわち、N末端及びC末端)に付与されるさらなるアミノ酸(複数可)は、参照配列の末端における位置に対応する。一例を挙げると、抗原結合分子が、配列番号3の配列、及び配列番号3のC末端にさらなる2つのアミノ酸を含むペプチド又はポリペプチドに結合することが可能である場合、さらなる2つのアミノ酸は両方とも、配列番号165の位置542及び543に対応するバリンであり得る。
【0072】
一部の実施形態では、抗原結合分子は、本明細書に記載の抗体クローン3C3-1又は2D4-1のうちの1つのVH配列及びVL配列を含む抗体が結合するペプチド/ポリペプチドに結合することが可能である。
【0073】
抗原結合分子
本発明は、EphA3に結合することが可能な抗原結合分子を提供する。
【0074】
「抗原結合分子」とは、標的抗原に結合することが可能な分子を指し、それらが該当する標的分子への結合を呈する限りにおいて、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単一特異性抗体及び多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、並びに抗体断片を範囲に含む。
【0075】
特定の実施形態では、本明細書に記載のEphA3結合分子は、抗体又は抗体断片である。本明細書で使用する場合、「抗体」は、免疫グロブリンタンパク質であるか、又はそれを含む。「免疫グロブリン」という用語には、免疫グロブリンアイソタイプIgA、IgD、IgM、IgG及びIgE、並びにその抗原結合断片を含む、哺乳動物免疫グロブリン遺伝子複合体の任意の抗原結合性タンパク質産物が含まれる。「免疫グロブリン」という用語には、天然性か又は人為的介入(例えば、組換えDNA技術による)によって作製されるかにかかわらず、組換え性、キメラ性若しくはヒト化されているか、又は他の様式で改変若しくはバリアントアミノ酸残基、配列及び/若しくはグリコシル化を含む、免疫グロブリンが含まれる。
【0076】
一般に、抗体及び抗体断片は、ポリクローナル性又はモノクローナル性であり得る。特定の実施形態では、抗体又は抗体断片は、図1に提示されるモノクローナル抗体のうちの1つ(又はその断片)、例えば、3C3-1若しくは2D4-1モノクローナル抗体、又はその断片である。
【0077】
本発明はまた、本明細書に記載のポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体の抗体断片、例えば、Fv、Fc、Fab又はF(ab’)断片も、その範囲に含む。あるいは、本発明のEphA3結合剤は、単鎖Fv(scFv)及び/又はscFab抗体を含み得る。そのようなscFvは、例えば、米国特許第5,091,513号、欧州特許第239,400号、又はWinter及びMilsteinによる論文、1991、Nature 349:293にそれぞれ記載される方法に従って調製することができ、これらは参照によって本明細書に組み入れられる。本発明はまた、複数のscFvを含む多価組換え抗体断片、いわゆるダイアボディ、トリアボディ及び/又はテトラボディ、並びに二量化活性化デミボディ(例えば、国際公開第2007/062466号)も含むことを想定している。一例を挙げると、そのような抗体は、Holligerら、1993 Proc Natl Acad Sci USA 90:6444~6448;又はKipriyanov、2009 Methods Mol Biol 562:177~93に記載された方法に従って調製することができ、これらはその全体が参照によって本明細書に組み入れられる。
【0078】
また、抗体又は抗体断片をコードする核酸を適切な宿主細胞において発現させることによって、抗体を組換え合成抗体又は抗体断片として産生させ得ることも理解されるであろう。組換え抗体の発現及び選択の手法の非限定的な例は、Coliganら、CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGYの第17章、及びZuberbuhlerら、2009、Protein Engineering、Design & Selection 22 169に提示されている。
【0079】
典型的には、抗体は、それぞれが相補性決定領域(CDR)1、2及び3アミノ酸配列を含む各々の軽鎖可変領域(V又はVL)及び重鎖可変領域(V又はVH)、並びに各々の軽鎖定常領域(C)及び重鎖定常領域(CH、CH、CH)を含む。したがって、抗体は、6つのCDR(重鎖可変領域に3つ、及び軽鎖可変領域に3つ)を一般に含む。この6つのCDRが相伴って、標的抗原に結合する抗体の部分である抗体のパラトープを規定する。
【0080】
本発明の抗原結合分子は、EphA3に結合することが可能なモノクローナル抗体(mAb)の配列を使用して、設計及び調製することができる。また、抗体の抗原結合領域、例えば単鎖可変断片(scFv)、Fab及びF(ab’)断片を使用/用意することもできる。「抗原結合領域」とは、所与の抗体が特異的である標的に結合することが可能な、抗体の任意の断片である。
【0081】
領域及びV領域は、各CDRの両側にフレームワーク領域(FR)を含み、これはCDRにとっての足場となる。N末端からC末端の順に、V領域は以下の構造を含む:N末端-[HC-FR1]-[HC-CDR1]-[HC-FR2]-[HC-CDR2]-[HC-FR3]-[HC-CDR3]-[HC-FR4]-C末端、及び、V領域は以下の構造を含む:N末端-[LC-FR1]-[LC-CDR1]-[LC-FR2]-[LC-CDR2]-[LC-FR3]-[LC-CDR3]-[LC-FR4]-C末端。
【0082】
CDRの同定及び番号付けは、Kabat(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、5th Ed. Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MD(1991))、Chothia (Chothiaら、J. Mol. Biol. 196:901~917(1987))、AbM及びContactを含む、任意の既知のCDR番号付け方式に従って行うことができる。
【0083】
一部の実施形態では、抗原結合分子は、EphA3に結合することが可能な抗原結合分子のCDRを含む。一部の実施形態では、抗原結合分子は、EphA3に結合することが可能な抗原結合分子のFRを含む。一部の実施形態では、抗原結合分子は、EphA3に結合することが可能な抗原結合分子のCDR及びFRを含む。すなわち、一部の実施形態では、抗原結合分子は、EphA3に結合することが可能な抗原結合分子のV領域及びV領域を含む。
【0084】
一部の実施形態では、抗原結合分子は、本明細書に詳細に記載されるEphA3結合抗体(すなわち、抗EphA3抗体クローン3C3-1又は2D4-1)のVH/VL領域であるか、又はそれに由来する、V領域及びV領域を含む。
【0085】
CDRアミノ酸配列の非限定的な例は、配列番号13~72及び/又は表2~5に示されている。CDRの同定及び番号付けは、abYsisバージョン3.4.1及びIMGT/V-QUESTを使用して行った。本発明による抗体は、1つ、2つ若しくは3つのVCDRアミノ酸配列(例えば、CDR1、CDR2及び/若しくはCDR3)並びに/又は1つ、2つ、若しくは3つのVCDRアミノ酸配列(例えば、CDR1、CDR2及び/若しくはCDR3)、例えば、配列番号13~72及び/又は表2~5に示されるものを含み得る。
【0086】
一部の実施形態では、EphA3結合剤は、
(a)配列番号13~17のいずれか1つに対して少なくとも70%同一なアミノ酸配列を有するCDR1と、配列番号18~22のいずれか1つに対して少なくとも70%同一なアミノ酸配列を有するCDR2と、配列番号23~27のいずれか1つに対して少なくとも70%同一なアミノ酸配列を有するCDR3とを含む、重鎖免疫グロブリン可変領域(VH)ポリペプチド、及び/又は
(b)配列番号28~32のいずれか1つに対して少なくとも70%同一なアミノ酸配列を有するCDR1と、配列番号33~37のいずれか1つに対して少なくとも70%同一なアミノ酸配列を有するCDR2と、配列番号38~42のいずれか1つに対して少なくとも70%同一なアミノ酸配列を有するCDR3とを含む、軽鎖免疫グロブリン可変領域(VL)ポリペプチド
を含む。
【0087】
そのような実施形態に関して、VHポリペプチドは、配列番号153に示されるアミノ酸配列若しくはそれに対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一なアミノ酸配列を好適に含み、及び/又は、VLポリペプチドは、配列番号154に示されるアミノ酸配列若しくはそれに対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一なアミノ酸配列を好適に含む。
【0088】
代替的な実施形態では、EphA3結合剤は
(a)配列番号43~47のいずれか1つに対して少なくとも70%同一なアミノ酸配列を有するCDR1と、配列番号48~52のいずれか1つに対して少なくとも70%同一なアミノ酸配列を有するCDR2と、配列番号53~57のいずれか1つに対して少なくとも70%同一なアミノ酸配列を有するCDR3とを含む、VHポリペプチド、及び/又は
(b)配列番号58~62のいずれか1つに対して少なくとも70%同一なアミノ酸配列を有するCDR1と、配列番号63~67のいずれか1つに対して少なくとも70%同一なアミノ酸配列を有するCDR2と、配列番号68~72のいずれか1つに対して少なくとも70%同一なアミノ酸配列を有するCDR3とを含む、VLポリペプチド
を含む。
【0089】
この点に関して、VHポリペプチドは、配列番号155に示されるアミノ酸配列又はそれに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含むことができ、及び/又は、VLポリペプチドは、配列番号156に示されるアミノ酸配列若しくはそれに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含むことができる。
【0090】
本明細書に詳細に記載される抗体のVH領域及びVL領域のCDR及びFRは、LeFrancら、Dev.Comp.Immunol.(2003)27:55~77に記載された、国際IMGT(ImMunoGeneTics)情報システム(LeFrancら、Nucleic Acids Res.、(2015) 43(Database issue):D413~22)に従って以下に定義される。一部の実施形態では、抗原結合分子は、以下の(1)又は(2)によるVH領域を含む:
(1)(3C3-1)以下のCDR:
配列番号16のアミノ酸配列を有するHC-CDR1、
配列番号22のアミノ酸配列を有するHC-CDR2、
配列番号27のアミノ酸配列を有するHC-CDR3、
又はHC-CDR2、HC-CDR2若しくはHC-CDR3のうちの1つ若しくは複数において1つ若しくは2つ若しくは3つのアミノ酸が別のアミノ酸で置換されている、そのバリアント
を組み入れたVH領域。
(2)(2D4-1)以下のCDR:
配列番号47のアミノ酸配列を有するHC-CDR1、
配列番号52のアミノ酸配列を有するHC-CDR2、
配列番号57のアミノ酸配列を有するHC-CDR3、
又はHC-CDR2、HC-CDR2若しくはHC-CDR3のうちの1つ若しくは複数において1つ若しくは2つ若しくは3つのアミノ酸が別のアミノ酸で置換されている、そのバリアント
を組み入れたVH領域。
【0091】
一部の実施形態では、抗原結合分子は、以下の(3)又は(4)によるVH領域を含む:
(3)(3C3-1)以下のFR:
配列番号97のアミノ酸配列を有するHC-FR1、
配列番号102のアミノ酸配列を有するHC-FR2、
配列番号107のアミノ酸配列を有するHC-FR3、
配列番号112のアミノ酸配列を有するHC-FR4、
又はHC-FR1、HC-FR2、HC-FR3若しくはHC-FR4のうちの1つ若しくは複数において1つ若しくは2つ若しくは3つのアミノ酸が別のアミノ酸で置換されている、そのバリアント
を組み入れたVH領域。
(4)(2D4-1)以下のFR:
配列番号137のアミノ酸配列を有するHC-FR1、
配列番号142のアミノ酸配列を有するHC-FR2、
配列番号147のアミノ酸配列を有するHC-FR3、
配列番号152のアミノ酸配列を有するHC-FR4、
又はHC-FR1、HC-FR2、HC-FR3若しくはHC-FR4のうちの1つ若しくは複数において1つ若しくは2つ若しくは3つのアミノ酸が別のアミノ酸で置換されている、そのバリアント
を組み入れたVH領域。
【0092】
一部の実施形態では、抗原結合分子は、上記の(1)及び(2)のうちの1つによるCDRと、上記の(3)又は(4)によるFRとを含むVH領域を含む。
【0093】
一部の実施形態では、抗原結合分子は、以下の(5)又は(6)のうちの1つによるVH領域を含む:
(5)(1)によるCDRと(3)によるFRとを含むVH領域。
(6)(2)によるCDRと(4)によるFRとを含むVH領域。
【0094】
一部の実施形態では、抗原結合分子は、以下の(7)又は(8)によるVL領域を含む:
(7)(3C3-1)以下のCDR:
配列番号32のアミノ酸配列を有するLC-CDR1、
配列番号37のアミノ酸配列を有するLC-CDR2、
配列番号42のアミノ酸配列を有するLC-CDR3、
又はLC-CDR2、LC-CDR2若しくはLC-CDR3のうちの1つ若しくは複数において1つ若しくは2つ若しくは3つのアミノ酸が別のアミノ酸で置換されている、そのバリアント
を組み入れたVL領域。
(8)(2D4-1)以下のCDR:
配列番号62のアミノ酸配列を有するLC-CDR1、
配列番号67のアミノ酸配列を有するLC-CDR2、
配列番号72のアミノ酸配列を有するLC-CDR3、
又はLC-CDR2、LC-CDR2若しくはLC-CDR3のうちの1つ若しくは複数において1つ若しくは2つ若しくは3つのアミノ酸が別のアミノ酸で置換されている、そのバリアント
を組み入れたVL領域。
【0095】
一部の実施形態では、抗原結合分子は、以下の(9)又は(10)によるVL領域を含む:
(9)(3C3-1)以下のFR:
配列番号97のアミノ酸配列を有するLC-FR1、
配列番号102のアミノ酸配列を有するLC-FR2、
配列番号107のアミノ酸配列を有するLC-FR3、
配列番号112のアミノ酸配列を有するLC-FR4、
又はLC-FR1、LC-FR2、LC-FR3若しくはLC-FR4のうちの1つ若しくは複数において1つ若しくは2つ若しくは3つのアミノ酸が別のアミノ酸で置換されている、そのバリアント
を組み入れたVL領域。
(10)(2D4-1)以下のFR:
配列番号137のアミノ酸配列を有するLC-FR1、
配列番号142のアミノ酸配列を有するLC-FR2、
配列番号147のアミノ酸配列を有するLC-FR3、
配列番号152のアミノ酸配列を有するLC-FR4、
又はLC-FR1、LC-FR2、LC-FR3若しくはLC-FR4のうちの1つ若しくは複数において1つ若しくは2つ若しくは3つのアミノ酸が別のアミノ酸で置換されている、そのバリアント
を組み入れたVL領域。
【0096】
一部の実施形態では、抗原結合分子は、上記の(1)及び(2)のうちの1つによるCDRと、上記の(3)又は(4)によるFRとを含むVL領域を含む。
【0097】
一部の実施形態では、抗原結合分子は、以下の(11)又は(12)のうちの1つによるVH領域を含む:
(11)(7)によるCDRと(9)によるFRとを含むVH領域。
(12)(8)によるCDRと(10)によるFRとを含むVH領域。
【0098】
抗体の抗原結合領域のVH領域及びVL領域は、相伴ってFv領域を構成する。一部の実施形態では、本発明による抗原結合分子は、EphA3に結合するFv領域を含むか、又はそれからなる。一部の実施形態では、FvのVH領域及びVL領域は、リンカー領域によって接合された単一のポリペプチド、すなわち単鎖Fv(scFv)として提供される。
【0099】
一部の実施形態では、本発明は、本発明の単離された抗体及びCARの断片を提供する。
【0100】
本発明の断片は、本明細書に記載される方法によって作製することができる。あるいは、断片を、プロテイナーゼ、例えばendoLys-C、endoArg-C、endoGlu-C及びV8-プロテアーゼを用いた抗体又はCARタンパク質の消化によって作製することもできる。消化された断片を、当技術分野で周知のクロマトグラフィー手法によって精製することができる。
【0101】
本発明の特定の実施形態は、本発明のEphA3抗原結合分子の免疫原性断片を提供する。「免疫原性」とは、ヒト、マウス又はウサギなどの動物への投与後に免疫応答を誘発し得ることを意味する。免疫応答には、Bリンパ球及び/若しくはTリンパ球、NK細胞、顆粒球、マクロファージ及び樹状細胞などの免疫細胞、並びに/又は抗体、サイトカイン及びケモカインなどの分子を含む、免疫系の先天性及び/又は適応性部門の産生、活性化又は刺激が含まれ得るが、これらには限定されない。
【0102】
抗体断片には、Fab及びFab’2断片、ダイアボディ、トリアボディ、二重特異性抗体及び単鎖抗体断片(例えば、scFv)が含まれるが、これらには限定されない。一部の実施形態では、抗体断片は、例えば配列番号13~72に示される、CDR1、CDR2及び/若しくはCDR3のアミノ酸配列、又は例えば配列番号153~156に示される、V及び/若しくはVアミノ酸配列の、少なくとも一部分を含み得る。好ましい抗体断片は、少なくとも1つの軽鎖可変領域CDRの全体、及び/又は少なくとも1つの重鎖可変領域CDRの全体を含む。
【0103】
一部の実施形態では、本明細書中に提供されるEphA3結合剤は、組換え、ヒト、若しくはヒト化抗体、又は抗体断片である。本明細書で広く使用する場合、「ヒト化」抗体には、非ヒト「外来」種から得られた改変抗体または抗体断片を含む、完全又は少なくとも部分的にヒト起源である抗体が含まれ得る。一部の実施形態では、抗体及び抗体断片を、「外来」抗体に対する有害な免疫応答を誘発することなく、同じ又は別の「外来」種において生じたか又はそれから派生した1つの種に投与可能であるように改変することができる。相補性決定領域(CDR)又は可変領域(すなわち、V及びVドメイン)を含むようなヒト抗体又は非ヒト抗体断片を、ヒト抗体の足場又は骨格に「グラフト」して、「ヒト化」抗体又は抗体断片を作製することができる。一部の実施形態では、ヒト又は非ヒトのCDR又はV及びVドメインに、ヒト抗体定常領域を組換えによってグラフトすることができる。
【0104】
一部の実施形態では、本発明の抗原結合分子は、免疫グロブリン重鎖定常配列の1つ以上の領域を含む。一部の実施形態では、免疫グロブリン重鎖定常配列は、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、IgA(例えば、lgA1、lgA2)、IgD、IgE、若しくはIgMの重鎖定常配列であるか、又はそれに由来する。
【0105】
一部の実施形態では、免疫グロブリン重鎖定常領域配列は、ヒト免疫グロブリンG1定常領域配列(IGHG1:UniProtアクセッション番号P01857、v1、配列番号175)である。配列番号175の位置1~98は、CH1領域を形成する(配列番号176)。配列番号175の位置99~110は、CH1領域とCH2領域との間のヒンジ領域を形成する(配列番号177)。配列番号175の位置111~223は、CH2領域を形成する(配列番号178)。配列番号175の位置222~330は、CH3領域を形成する(配列番号179)。
【0106】
免疫グロブリン重鎖定常領域ガンマ1
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK[配列番号175]
【0107】
一部の実施形態では、CH1領域は、配列番号176の配列、又は配列番号176のアミノ酸配列に対して少なくとも60%、好ましくは70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%のうちの1つのアミノ酸配列同一性を有する配列を含むか、又はそれからなる。
【0108】
一部の実施形態では、本発明の抗原結合分子は、免疫グロブリン軽鎖定常配列の1つ以上の領域を含む。一部の実施形態では、免疫グロブリン軽鎖定常領域配列は、ヒト免疫グロブリンラムダ定常領域配列(IGLA;CA)、例えば、IGLC1、IGLC2、IGLC3、IGLC6、又はIGLC7である。一部の実施形態では、CL領域は、配列番号180の配列、又は配列番号180のアミノ酸配列に対して少なくとも60%、好ましくは70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%のうちの1つのアミノ酸配列同一性を有する配列を含むか、又はそれからなる。
【0109】
免疫グロブリンラムダ定常領域
MRPGTGQGGLEAPGEPGPNLRQRWPLLLLGLAVVTHGLLRPTAASQSRALGPGAPGGSSRSSLRSRWGRFLLQRGSWTGPRCWPRGFQSKHNSVTHVFGSGTQLTVLSQPKATPSVTLFPPSSEELQANKATLVCLMNDFYPGILTVTWKADGTPITQGVEMTTPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWRSRRSYSCQVMHEGSTVEKTVAPAECS
[配列番号180]
【0110】
免疫グロブリンカッパ定常領域
RTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
[配列番号212]
【0111】
抗体の抗原結合領域のVL領域及び軽鎖定常(CL)領域、並びにVH領域及び重鎖定常領域1(CH1)は、相伴って、Fab領域を構成する。一部の実施形態では、抗原結合分子は、VH、CH1、VL及びCL(例えば、Cκ又はCλ)を含むFab領域を含む。一部の実施形態では、Fab領域は、VH及びCH1を含む(例えば、VH-CH1融合ポリペプチド)。一部の実施形態では、Fab領域は、VH及びCLを含むポリペプチド(例えば、VH-CL融合ポリペプチド)を含む。一部の実施形態では、Fab領域は、VH及びCLを含むポリペプチド(例えば、VH-CL融合ポリペプチド)、並びにVL及びCHを含むポリペプチド(例えば、CL-CH1融合ポリペプチド)を含み、すなわち、一部の実施形態では、Fab領域はCrossFab領域である。一部の実施形態では、Fab又はCrossFabのVH、CH1、VL、及びCL領域は、リンカー領域によって接合された単一のポリペプチドとして、すなわち、単鎖Fab(scFab)又は単鎖CrossFab(scCrossFab)として提供される。
【0112】
一部の実施形態では、本発明の抗原結合分子は、EphA3に結合するFab領域を含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる。
【0113】
一部の実施形態では、本明細書に記載の抗原結合分子は、EphA3に結合する全抗体を含むか、又はそれからなる。本明細書で使用する場合、「全抗体」とは、免疫グロブリン(Ig)の構造と実質的に同様である構造を有する抗体を指す。様々な種類の免疫グロブリン及びそれらの構造については、例えば、Schroeder及びCavacini、J Allergy Clin Immunol (2010) 125(202): S41~S52に記載されており、これはその全体が参照によって本明細書に組み入れられる。
【0114】
G型の免疫グロブリン(すなわち、IgG)は、2つの重鎖と2つの軽鎖とを含む、約150kDaの糖タンパク質である。N末端からC末端の順に、重鎖は、VHに続いて、3つの定常ドメインを含む重鎖定常領域(CH1、CH3、及びCH3)を含み、同様に軽鎖は、VLに続いてCLを含む。重鎖に応じて、免疫グロブリンは、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、IgA(例えば、IgA1、lgA2)、IgD、IgE、又はIgMとして分類することができる。軽鎖は、カッパ(κ)又はラムダ(λ)であり得る。
【0115】
一部の実施形態では、本明細書に記載の抗原結合分子は、EphA3に結合する、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、IgA(例えば、IgA1、IgA2)、IgD、IgE、又はIgMを含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる。
【0116】
好適には、EphA3結合剤は、EphA3タンパク質のエピトープに結合する。本明細書で一般的に使用する場合、「エピトープ」は、タンパク質のアミノ酸の連続的又は不連続的な配列を含む抗原性タンパク質断片であり、ここでエピトープは、免疫系の要素、例えば抗体又は他の抗原受容体によって認識又は結合される。
【0117】
本発明はまた、本明細書中に開示されるEphA3結合剤のバリアントも含む。一実施形態では、バリアントは、配列番号13~72のいずれか1つに対して少なくとも70%同一なアミノ酸配列を含むEphA3結合剤であり、これは本明細書においてCDR「バリアント」と称される。別の実施形態では、バリアントは、配列番号153~156のいずれか1つのVH及び/又はVLアミノ酸配列に対して少なくとも70%同一なアミノ酸配列を含む。
【0118】
好適には、EphA3結合剤は、EphA3タンパク質に結合することが可能な、CDRのうちの少なくとも1つ又は他のバリアント(複数可)を含む。
【0119】
特定の実施形態では、バリアントは、参照タンパク質(例えば、参照アイソフォーム)、例えば、配列番号13~156のうちいずれか1つに示されるもののアミノ酸配列に対して少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%のアミノ酸配列同一性を有する。本明細書中に開示されるタンパク質「バリアント」は、1つ以上のアミノ酸が欠失しているか、挿入されているか、又は異なるアミノ酸によって置換されているかであり得る。いくつかのアミノ酸を、ペプチドの生物活性を変化させずに置換又は欠失させ得ること(保存的置換)は、当技術分野において十分理解されている。一部の実施形態では、参照タンパク質の断片、バリアント、アイソフォーム及び相同体は、参照タンパク質によって発揮される機能を発揮する能力によって特徴付けることができる。
【0120】
保存的アミノ酸置換は当技術分野において公知であり、これには、ある特定の物理的及び/又は化学的特性を有する1つのアミノ酸が、同じ又は類似の化学的又は物理的特性を有する別のアミノ酸に交換されるアミノ酸置換が含まれる。例えば、保存的アミノ酸置換は、酸性/負に荷電した極性アミノ酸の別の酸性/負に荷電した極性アミノ酸(例えば、Asp又はGlu)による置換、非極性側鎖を有するアミノ酸の非極性側鎖を有する別のアミノ酸(例えば、Ala、Gly、Val、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Trp、Cys、Valなど)による置換、塩基性/正に荷電した極性アミノ酸の別の塩基性/正に荷電した極性アミノ酸(例えば、Lys、His、Argなど)による置換、極性側鎖を有する非荷電アミノ酸の極性側鎖を有する別の非荷電アミノ酸(例えば、Asn、Gin、Ser、Thr、Tyrなど)による置換、β分枝側鎖を有するアミノ酸のβ分枝側鎖を有する別のアミノ酸(例えば、Ile、Thr、及びVal)による置換、芳香族側鎖を有するアミノ酸の芳香族側鎖を有する別のアミノ酸(例えば、His、Phe、Trp、及びTyr)による置換などであり得る。
【0121】
各々のタンパク質及び核酸の間の配列関係を記載するために本明細書において一般的に使用される用語には、「比較ウィンドウ」、「配列同一性」、「配列同一性のパーセンテージ」及び「実質的な同一性」が含まれる。各々の核酸/タンパク質はそれぞれ、(1)核酸/タンパク質で共有される完全な核酸/タンパク質配列の1つ以上の部分のみ、及び(2)核酸/タンパク質の間で違いのある1つ以上の部分を含むという理由から、配列の比較は、典型的には、配列を「比較ウィンドウ」にわたって比較して、局所的な配列類似性領域を同定し、比較することによって行われる。「比較ウィンドウ」とは、参照配列と比較される、典型的には少なくとも6個、9個又は12個の連続した残基である概念上のセグメントを指す。比較ウィンドウは、各々の配列の最適なアラインメントのために、参照配列と比較して約20%以下の付加又は欠失(すなわち、ギャップ)を含み得る。比較ウィンドウのアラインメントを行うために最適な配列アラインメントは、アルゴリズム(参照によって本明細書に組み入れられる、IntelligeneticsによるGeneworksプログラム、Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0、Genetics Computer Group、575 Science Drive Madison、WI、USAにおけるGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA)のコンピュータによる実行によって、又は選択された様々な方法のいずれかによる検査及びいずれかにより生成される最良のアラインメント(すなわち、比較ウィンドウにわたって最も高い相同性パーセンテージをもたらすもの)によって、実施することができる。例えば、参照によって本明細書に組み入れられる、Altschulら、1997、Nucl. Acids Res.25:3389により開示されているような、BLASTファミリーのプログラムを参照することもできる。配列解析の詳細な考察は、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY、Ausubelら編(John Wiley & Sons Inc NY,1995~2015)のUnit 19.3に見出すことができる。
【0122】
「配列同一性」という用語は、標準的なアルゴリズムを使用する適切なアラインメントを考慮し、比較ウィンドウにわたって配列が同一である範囲を考慮して、正確なヌクレオチド一致又はアミノ酸一致の数を含むように、本明細書ではその最も広い意味で使用される。したがって、「配列同一性のパーセンテージ」は、2つの最適にアラインメントされた配列を比較ウィンドウにわたって比較し、同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、G、I)が両方の配列に存在する位置の数を決定して、一致する位置の数を得た上で、一致する位置の数を比較のウィンドウ内の位置の総数(すなわち、ウィンドウサイズ)で除算して、その結果を100倍することによって配列同一性のパーセンテージを得ることによって計算される。例えば、「配列同一性」は、DNASISコンピュータプログラム(Windows用バージョン2.5、Hitachi Software engineering Co.、Ltd.South San Francisco, California, USAから販売)によって計算される「一致パーセンテージ」を意味することが理解されるであろう。
【0123】
本明細書中に開示される抗体、抗体断片又はそのバリアントの誘導体も提供される。
【0124】
本明細書で使用する場合、「誘導体」抗体、抗体断片又はそのバリアントは、例えば、他の化学的部分とのコンジュゲーション又は複合体化によって、翻訳後修飾(例えば、リン酸化、ユビキチン化、グリコシル化)によって、化学修飾(例えば、架橋、アセチル化、ビオチン化、酸化又は還元など)によって、標識(例えば、フルオロフォア、酵素、放射性同位元素)とのコンジュゲーションによって、及び/又は当技術分野において理解されるであろう追加のアミノ酸配列を含めることによって、改変されている。
【0125】
この点に関して、タンパク質の化学修飾に関するより詳細な方法については、当業者は、CURRENT PROTOCOLS IN PROTEIN SCIENCE、Coliganら編(John Wiley & Sons NY 1995~2015)の第15章を参照されたい。
【0126】
追加のアミノ酸配列には、融合タンパク質を作り出す融合パートナーアミノ酸配列が含まれ得る。一例を挙げると、融合パートナーアミノ酸配列は、単離された融合タンパク質の検出及び/又は精製を助けることができる。非限定的な例には、金属結合(例えば、ポリヒスチジン)融合パートナー、マルトース結合タンパク質(MBP)、プロテインA、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、蛍光性タンパク質配列(例えば、GFP、RFP)、エピトープタグ、例えばmyc、FLAG及びヘマグルチニンタグが含まれる。
【0127】
本発明の単離されたタンパク質(例えば、EphA3抗体、抗体断片及びCAR)、バリアント、断片及び/又は誘導体は、化学合成、組換えDNA技術、及びペプチド断片を生成するためのタンパク質分解切断を含むがそれらに限定されない、当技術分野で公知の任意の手段によって作製することができる。
【0128】
化学合成は、固相合成及び液相合成を含む。そのような方法は当該技術分野で周知であるが、SYNTHETIC VACCINES、Nicholson編(Blackwell Scientific Publications)の第9章及びCURRENT PROTOCOLS IN PROTEIN SCIENCE、Coliganら編(John Wiley & Sons,Inc. NY USA 1995~2008)の第15章に提供された化学合成の例が参照される。この点に関して、国際公開第99/02550号及び国際公開第97/45444号も参照される。
【0129】
好ましい一実施形態では、本発明のEphA3抗体、抗体断片及び/又はCARタンパク質は、組換えタンパク質である。
【0130】
組換えタンパク質は、例えば、Sambrookら、MOLECULAR CLONING.A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Press、1989)、特にセクション16及びセクション17、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY、Ausubelら編(John Wiley & Sons,Inc.、NY USA 1995~2008)、特に第10章及び第16章、及びCURRENT PROTOCOLS IN PROTEIN SCIENCE、Coliganら編(John Wiley & Sons,Inc.、NY USA 1995~2008)、特に第1章、第5章及び第6章に記載されるような標準的なプロトコールを使用して、当業者によって好都合に調製することができる。
【0131】
キメラ抗原受容体(CAR)
本発明はまた、本発明の抗原結合分子又はポリペプチドを含むキメラ抗原受容体(CAR)も提供する。
【0132】
したがって、本発明の関連する態様は、配列番号13~72に示されるアミノ酸配列又はそれに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有する少なくとも1つのCDRを含む抗原結合ドメインと、膜貫通ドメインと、細胞内T細胞シグナル伝達ドメインとを含む、キメラ抗原受容体(CAR)を提供する。
【0133】
CARは、T細胞シグナル伝達ドメインと連結された抗体の抗原結合ドメイン(例えば、単鎖可変断片(scFv))を含有する、人工的に構築されたハイブリッドタンパク質又はポリペプチドである。CARの特徴としては、モノクローナル抗体の抗原結合特性を利用して、T細胞特異性及び反応性を選択した標的に対して非MHC拘束的な様式で再指向させるその能力が挙げられる。非MHC拘束的な抗原認識は、CARを発現するT細胞に、抗原プロセシングとは無関係に抗原を認識してそれ故に腫瘍回避の主要な機構を迂回する能力を与える。その上、T細胞で発現される場合、CARは有利なことに、内因性T細胞受容体(TCR)α鎖及びβ鎖と二量体化しない。CARの構造及び操作については、例えば、その全体が参照によって本明細書に組み入れられる、Dottiら、Immunol Rev(2014)257(1)に総説されている。CARは、細胞膜アンカー領域(膜貫通ドメインとしても知られる)及びシグナル伝達領域と連結された抗原結合領域を含む。任意選択のヒンジ領域は、抗原結合領域と細胞膜アンカー領域との分離をもたらすことが可能であり、可動性リンカーとして作用し得る。本発明のCARは、本発明によるポリペプチドを含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる抗原結合性領域を含む。
【0134】
細胞膜アンカー領域は、CARの抗原結合性領域とシグナル伝達領域との間に設けられ、抗原結合領域が細胞外腔にあり、シグナル伝達領域が細胞内にあるように、CARを発現する細胞の細胞膜へのCARのアンカリングをもたらす。一部の実施形態では、CARは、CD3-ζ、CD4、CD8、又はCD28のうちの1つの膜貫通領域アミノ酸配列を含むか、又はそれに由来する。好適には、膜貫通ドメインは、CD8α、CD8β、4-1BB/CD137、CD28、CD34、CD4、FcεRIγ、CD16、OX40/CD134、CD3-ζ、CD3ε、CD3γ、CD3δ、TCRα、CD32、CD64、VEGFR2、FAS、FGFR2B及びそれらの任意の組合せから選択される膜タンパク質に由来する。一部の特定の実施形態では、膜貫通ドメインは、CD8及び/又はCD28膜貫通ドメインに由来することができ、これは一般に優れた受容体安定性をもたらす。本明細書で使用する場合、参照アミノ酸配列に「由来する」領域は、参照配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を少なくとも有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、膜貫通ドメインは、配列番号159に示されるアミノ酸配列又はそれに対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0135】
本明細書に記載のキメラ受容体の膜貫通ドメイン(すなわち、細胞膜アンカー領域)は、当技術分野で公知の任意の形態であり得る。本明細書で使用する場合、「膜貫通ドメイン」は、細胞膜、好ましくは真核細胞膜中で熱力学的に安定である任意のタンパク質構造を指す。本明細書で使用されるキメラ受容体における使用に適合する膜貫通ドメインは、天然起源タンパク質から得ることができる。あるいは、膜貫通ドメインは、合成性の非天然起源タンパク質セグメント(例えば、細胞膜中で熱力学的に安定である疎水性タンパク質セグメント)であり得る。例えば、参照によって本明細書に組み入れられる、米国特許第7,052,906号及び国際出願PCT公開第2000/032776号を参照のこと)。この目的のために、膜貫通ドメインが疎水性αヘリックスを含んでもよい。
【0136】
任意の細胞内又は細胞質T細胞シグナル伝達ドメイン(例えば、CD3-ζ又はFcεR1γ)、例えば、CARを発現するT細胞のリン酸化及び活性化のための、免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)を含むものを、本明細書に記載のキメラ受容体を構築するために使用することができる。「ITAM」とは、本明細書で使用する場合、多くの免疫細胞で発現されるシグナル伝達分子の尾部に一般に存在する保存されたタンパク質モチーフである。抗原認識の後に、受容体がクラスター化し、シグナルが細胞に伝達される。最も一般的に使用されるT細胞シグナル伝達構成要素は、3つのITAMを含有するCD3-ζのものである。これにより、抗原が結合した後に、活性化シグナルがT細胞に伝達される。しかし、CD3-ζ細胞質シグナル伝達ドメインから完全にコンピテントな活性化シグナルはもたらされないことがあり、追加の共刺激シグナル伝達ドメイン、例えば、本明細書で以下に記載されるものを利用してもよいことは理解されるであろう。例えば、増殖/生存シグナルを伝達するために、キメラ性CD28及び/又は4-1BB/CD137をCD3-ζとともに使用することができ、又はこの3つすべてを一緒に使用することもできる。したがって、本発明のCARのエンドドメインは、CD28共刺激ドメイン(例えば、配列番号161)、4-1BB/CD137共刺激ドメイン(例えば、配列番号160)及びCD3-ζ細胞内シグナル伝達ドメイン(例えば、配列番号162)を含むことができる。
【0137】
また、CARのシグナル伝達領域は、標的タンパク質への結合時にCARを発現するT細胞の活性化を助長するように、共刺激分子のシグナル伝達領域に由来する共刺激配列を含んでもよい。宿主細胞(例えば、免疫細胞)における共刺激シグナル伝達ドメインの活性化は、細胞が、サイトカインの産生及び分泌、食作用特性、増殖、分化、生存、並びに/又は細胞傷害性を増加又は減少させるように誘導することができる。任意の共刺激分子の共刺激シグナル伝達ドメインが、本明細書に記載のキメラ受容体における使用に適し得る。共刺激シグナル伝達ドメインの種類(複数可)は、キメラ受容体が発現される免疫細胞の種類(例えば、T細胞、NK細胞、マクロファージ、好中球、又は好酸球)、及び所望の免疫エフェクター機能(例えば、ADCC効果)などの要因に基づいて選択される。換言すれば、「共刺激シグナル伝達ドメイン」という用語は、本明細書で使用する場合、細胞内でシグナル伝達を媒介してエフェクター機能などの免疫応答を誘導する、タンパク質の少なくとも一部分を指す。本明細書に記載のキメラ受容体の共刺激シグナル伝達ドメインは、シグナルを伝達して、T細胞、NK細胞、マクロファージ、好中球、又は好酸球などの免疫細胞によって媒介される応答を調節する、共刺激タンパク質由来の細胞質シグナル伝達ドメインであり得る。
【0138】
キメラ受容体における使用のための共刺激シグナル伝達ドメインの例は、共刺激タンパク質の細胞質シグナル伝達ドメインであってよく、これには、限定はされないが、B7/CD28ファミリーのメンバー(例えば、B7-1/CD80、B7-2/CD86、B7-H1/PD-L1、B7-H2、B7-H3、B7-H4、B7-H6、B7-H7、BTLA/CD272、CD28、CTLA-4、Gi24/VISTA/B7-H5、ICOS/CD278、PD-1、PD-L2/B7-DC、及びPDCD6)、TNFスーパーファミリーのメンバー(例えば、4-1BB/TNFSF9/CD137、4-1BBリガンド/TNFSF9、BAFF/BLyS/TNFSF13B、BAFF-R/TNFRSF13C、CD27/TNFRSF7、CD27リガンド/TNFSF7、CD30/TNFRSF8、CD30リガンド/TNFSF8、CD40/TNFRSF5、CD40/TNFSF5、CD40リガンド/TNFSF5、DR3/TNFRSF25、GITR/TNFRSF18、GITRリガンド/TNFSF18、HVEM/TNFRSF14、LIGHT/TNFSF14、Lymphotoxin-alpha/TNF-β、OX40/TNFRSF4、0X40リガンド/TNFSF4、RELT/TNFRSF19L、TACI/TNFRSF13B、TL1A/TNFSF15、TNF、及びTNF RII/TNFRSF1B)、SLAMファミリーのメンバー(例えば、2B4/CD244/SLAMF4、BLAME/SLAMF8、CD2、CD2F-10/SLAMF9、CD48/SLAMF2、CD58/LFA-3、CD84/SLAMF5、CD229/SLAMF3、CRACC/SLAMF7、NTB-A/SLAMF6、及びSLAM/CD150)、及び任意の他の共刺激分子、例えば、CD2、CD7、CD53、CD82/Kai-1、CD90/Thy1、CD96、CD160、CD200、CD300a/LMIR1、HLAクラスI、HLA-DR、Ikaros、インテグリンα4/CD49d、インテグリンα4β1、インテグリンα4β7/LPAM-1、LAG-3、TCL1A、TCL1B、CRTAM、DAP12、デクチン-1/CLEC7A、DPPIV/CD26、EphB6、TIM-1/KIM-1/HAVCR、TIM-4、TSLP、TSLP R、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、及びNKG2Cが含まれる。一部の実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、4-1BB、CD28、OX40、ICOS、CD27、GITR、HVEM、TIM1、LFA1(CD11a)若しくはCD2、又はこれらの任意のバリアントである。一部の実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、4-1BB(例えば、配列番号160)及び/又はCD28(例えば、配列番号161)に由来する。
【0139】
また、共刺激シグナル伝達ドメインが免疫細胞の免疫応答を調節することができるような、本明細書に記載の共刺激シグナル伝達ドメインのうちいずれかのバリアントも、本開示の範囲に含まれる。さらに、キメラ受容体が、複数の共刺激シグナル伝達ドメイン(例えば、2つ、3つ、4つ又はそれ以上)を含み得ることも想定している。一部の実施形態では、キメラ受容体は、2つ又はそれ以上の同一の共刺激シグナル伝達ドメイン、例えば、CD28の共刺激シグナル伝達ドメインの2つのコピーを含む。一部の実施形態では、キメラ受容体は、異なる共刺激タンパク質、例えば、本明細書に記載の共刺激タンパク質のうちの任意の2つ又はそれ以上に由来する、2つ又はそれ以上の共刺激シグナル伝達ドメインを含む。場合によっては、CARは、異なる細胞内シグナル伝達経路の共刺激をもたらすように操作される。例えば、CD28共刺激に関連するシグナル伝達は、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(P13K)経路を優先的に活性化し、一方、4-1BB媒介性シグナル伝達は、TNG受容体関連因子(TRAF)アダプタータンパク質を経由する。このため、CARのシグナル伝達領域は、複数の共刺激分子のシグナル伝達領域に由来する共刺激配列を含有することが時にある。一部の実施形態では、本発明のCARは、CD28、OX30、4-1BB、ICOS、及びCD27のうちの1つ以上の細胞内ドメインのアミノ酸配列を含むか、それからなるか、又はそれに由来するアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、1つ以上の共刺激配列を含む。
【0140】
任意選択のヒンジ領域は、抗原結合ドメインと膜貫通ドメインとの分離をもたらすことができ、可動性リンカーとして作用することができる。ヒンジ領域は、IgG1に由来し得る。一部の実施形態では、本発明のCARは、IgG1のヒンジ領域のアミノ酸配列を含むか、それからなるか、又はそれに由来するアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる。
【0141】
本発明のCARは、例えば、当技術分野において公知である、第1世代、第2世代、第3世代又は第4世代(すなわち、普遍的サイトカイン媒介性死滅のために再指向化されたT細胞(TRUCK)に関連する)CARであると考え得ることが想定される。第1世代CARは、典型的には、抗体由来scFvを、ヒンジ及び膜貫通ドメインを経由して、T細胞受容体のCD3-ゼータ(ζ又はz)細胞内シグナル伝達ドメインに接合させる。第2世代CARは、共刺激シグナルを供給するための追加のドメイン(例えば、CD28、4-1BB、又はICOS)を組み入れる。第3世代CARは、典型的には、TCR CD3-ζ鎖と融合した2つの共刺激ドメインを含有する。第3世代共刺激ドメインは、例えば、CD3-ζ、CD27、CD28、4-1BB、ICOS、DAP-10又は0X40の組合せを含み得る。したがって、本発明のCARは、単鎖可変断片(scFv)に通常由来するエクトドメインと、ヒンジと、膜貫通ドメインと、CD3-ζ及び/又は共刺激分子に由来する1つ(第1世代)、2つ(第2世代)、又は3つ(第3世代)のシグナル伝達ドメインを有するエンドドメインとを含有し得る。
【0142】
一部の実施形態では、CARは、第4世代CARとしても知られる、サイトカイン活性のために再指向化されたT細胞(例えば、TRUCK)に関連する。TRUCKは、CAR T細胞のエフェクター活性を誘発するため、加えて、標的化組織(例えば、EphA3を発現する腫瘍組織)に蓄積するトランスジェニックサイトカイン(例えば、IL-12)を産生及び放出させるための媒体として使用される、CAR再指向化T細胞である。トランスジェニックサイトカインは、CARが標的に結合すると恒常的に生成又は放出される。TRUCK細胞は、種々の治療用サイトカインを標的部位に配することができる。これは標的化部位に治療濃度を生じさせ、これらの同じサイトカインの全身毒性を回避することができる。
【0143】
本発明のCARは、好適には、EphA3に対する抗原特異性を有する。「抗原特異性を有する」及び「抗原特異的応答を誘発する」という語句は、本明細書で使用する場合、抗原に対するCARの結合が免疫応答を誘発するように、CARが抗原に特異的に結合して抗原を免疫学的に認識することができることを意味する。特定の理論にも機構にも拘束されないが、EphA3に対する抗原特異的応答を誘発することによって、本明細書に記載のCARは、以下のいずれかのうちの1つ以上を提供すると考えられる:EphA3を発現するがん細胞の標的化及び破壊、がん細胞の減少又は排除、腫瘍部位(複数可)への免疫細胞の浸潤の助長、並びに抗がん反応の強化/拡張。
【0144】
本発明の一実施形態は、本明細書に記載のモノクローナル抗体のうちの1つの抗原結合ドメインを含むCAR、例えば図1に提示されたものを提供する。特定の実施形態では、CARは、EphA3に特異的に結合する3C3又は2D4モノクローナル抗体の抗原結合ドメインを含む。この点に関して、本発明の好ましい実施形態は、3C3又は2D4の抗原結合ドメインの単鎖可変断片(scFv)を含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる抗原結合ドメインを含むCARを提供する。
【0145】
抗原結合ドメインは、軽鎖可変領域及び/又は重鎖可変領域を含み得る。本発明の一実施形態では、重鎖可変領域は、CDR1領域、CDR2領域、及びCDR3領域を含む。この点に関して、抗原結合ドメインは、配列番号13~17のいずれか1つ又はそれに対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1領域、配列番号18~22のいずれか1つ又はそれに対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2領域、及び配列番号23~27のいずれか1つ又はそれに対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3領域のうちの1つ以上を含み得る。代替的な一実施形態では、抗原結合ドメインは、配列番号43~47のいずれか1つ又はそれに対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1領域、配列番号48~52のいずれか1つ又はそれに対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2領域、及び配列番号53~57のいずれか1つ又はそれに対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3領域のうちの1つ以上を含む。好ましくは、重鎖は、配列番号13~27若しくは配列番号43~57又はそれに対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一であるアミノ酸配列から選択される、CDR1領域、CDR2領域、及びCDR3領域のすべてを含む。
【0146】
本発明の一実施形態では、軽鎖可変領域は、軽鎖CDR1領域、軽鎖CDR2領域、及び軽鎖CDR3領域を含む。この点に関して、抗原結合ドメインは、配列番号28~32のいずれか1つ又はそれに対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1領域、配列番号33~37のいずれか1つ又はそれに対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2領域、及び配列番号38~42のいずれか1つ又はそれに対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3領域のうちの1つ以上を含む。代替的な一実施形態では、抗原結合ドメインは、配列番号58~62のいずれか1つ又はそれに対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1領域、配列番号63~67のいずれか1つ又はそれに対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2領域、及び配列番号68~72のいずれか1つ又はそれに対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3領域のうちの1つ以上を含む。好ましくは、軽鎖は、配列番号28~42若しくは配列番号58~72又はそれに対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一であるアミノ酸配列から選択される、CDR1領域、CDR2領域、及びCDR3領域のすべてを含む。
【0147】
抗原結合ドメインの重鎖可変領域は、配列番号153若しくは155又はそれに対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含むか、それからなるか、又はそれから本質的になることができる。抗原結合ドメインの軽鎖可変領域は、配列番号154若しくは156又はそれに対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含むか、それからなるか、又はそれから本質的になることができる。したがって、本発明の一実施形態では、抗原結合ドメインは、配列番号153若しくはそれに対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号154若しくはそれに対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。代替的な一実施形態では、抗原結合ドメインは、配列番号155若しくはそれに対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号156若しくはそれに対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。好ましくは、抗原結合ドメインは、配列番号153と154の両方若しくは配列番号155と156の両方又はそれらに対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0148】
本発明の一実施形態では、軽鎖可変領域及び重鎖可変領域は、スペーサー又はリンカー配列によって接合され得る。リンカーは、任意の好適なアミノ酸配列を含み得る。本発明の一実施形態では、リンカーは、配列番号158に示されるアミノ酸配列又はそれに対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含むか、それからなるか、又はそれから本質的になることができる。
【0149】
さらに、CARは、抗原結合ドメインを膜貫通ドメインと連結して、及び抗原結合ドメインをそのエンドドメインから空間的に隔てる、さらなるスペーサー又はリンカー配列を含むことができる。可動性スペーサー又はヒンジ領域は、EphA3結合を可能にするために、抗原結合ドメインを様々な向きに配向させることを可能にする。一例を挙げると、IgG、IgA、IgM、IgE、又はIgD抗体などの抗体のヒンジドメインもまた、本明細書に記載のキメラ受容体における使用に適合性がある。一部の実施形態では、ヒンジドメインは、抗体の定常ドメインCH1とCH2とを接続するヒンジドメインである。したがって、さらなるスペーサー配列は、例えば、IgG1 Fc領域、IgG1ヒンジ、若しくはCD8ストーク若しくはヒンジ、又はそれらの組合せを含み得る。
【0150】
抗原結合ドメインは、リーダー配列又はシグナルペプチド配列をさらに含み得ることを想定している。リーダー配列は、新たに合成されたタンパク質のN末端に存在する(例えば、重鎖可変領域に隣接して位置する)ペプチド配列(例えば、約5、約10、約15、約20、約25又は約30アミノ酸長)であることができ、これはタンパク質を分泌経路に導く。リーダー配列は、当技術分野において公知である任意の好適なリーダー配列、例えば、CD8、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)受容体、CD28、マウスカッパ鎖及びCD16に由来するものを含むことができる。一実施形態では、リーダー配列は、CD8リーダー配列である。この点に関して、抗原結合ドメインは、配列番号157又はそれに対して少なくとも70%75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含むか、それからなるか、又はそれから本質的になるリーダー配列を含み得る。本発明の一実施形態では、リーダー配列は細胞の表面でのCARの発現を助長するものの、発現されたCARにおけるリーダー配列の存在は、CARが機能するためには必要ではない。したがって、細胞表面にCARが発現されれば、リーダー配列はCARから切断されてもよい。そのため、本発明の一実施形態では、CARはリーダー配列を欠く。
【0151】
CARの抗原結合ドメインは、通常、スペーサー及び/又はヒンジ領域並びに膜貫通ドメインを介して、細胞内又は細胞質T細胞シグナル伝達ドメインを含むか又はそれが会合するエンドドメインと融合している。CARが標的抗原に結合した場合、これは標的抗原が発現されるT細胞への活性化シグナルの伝達をもたらす。エンドドメインは、シグナル伝達に関与するCARの部分であり、このようにして、1つ若しくは複数の共刺激ドメイン及び/又は1つ若しくは複数の細胞内T細胞シグナル伝達ドメインを含み得る。
【0152】
本発明の範囲には、本明細書に記載のCARの機能的部分が含まれる。CARを参照して使用される「機能的部分」という用語は、本発明のCARの任意の部分又は断片を指し、その部分又は断片は、それが一部分であるCAR(親CAR)の生物活性を保持している。機能的部分は、親CARと類似する程度、同じ程度又はより高い程度で、標的細胞を認識するか、又は疾患を検出、治療若しくは予防する能力を保持しているCARの部分を範囲に含む。親CARを基準にすると、機能的部分は、例えば、親CARの約10%、25%、30%、50%、68%、80%、90%、95%、又はそれ以上を含み得る。
【0153】
機能的部分は、追加のアミノ酸を、その部分のアミノ末端若しくはカルボキシ末端、又は両方の末端に含むことができ、この追加のアミノ酸は親CARのアミノ酸配列には見出されない。望ましくは、追加のアミノ酸は、機能的部分の生物学的機能、例えば、標的細胞を認識するか、がんを検出するか、がんを治療又は予防するといったことを妨げない。さらに望ましくは、追加のアミノ酸は、親CARの生物活性と比較して、生物活性を強化する。
【0154】
本発明の範囲には、本明細書に記載のCARの機能的バリアントが含まれる。「機能的バリアント」という用語は、本明細書で使用する場合、親CARに対して実質的又は著しい配列同一性又は類似性を有するCAR、ポリペプチド、又はタンパク質を指し、この機能的バリアントは、バリアントとなった元のCARの生物活性を保持している。機能的バリアントは、例えば、親CARと類似する程度、同じ程度又はより高い程度で、標的細胞を認識する能力を保持している、本明細書に記載のCAR(親CAR)のバリアントを範囲に含む。親CARを基準にすると、機能的部分は、例えば、アミノ酸配列に関して、親CARに対して少なくとも約30%、約50%、約75%、約80%、約90%、約98%、約99%又はそれ以上同一であり得る。
【0155】
機能的バリアントは、例えば、少なくとも1つの保存的アミノ酸置換を有する、親CARのアミノ酸配列を含み得る。代替的又は追加的に、機能的バリアントは、少なくとも1つの非保存的なアミノ酸置換を有する、親CARのアミノ酸配列を含み得る。この場合に、非保存的なアミノ酸置換は、機能的バリアントの生物活性を妨げないか又は阻害しないことが好ましい。非保存的なアミノ酸置換は、機能的バリアントの生物活性が親CARと比べて増加するように、機能的バリアントの生物活性を強化し得る。
【0156】
本発明の実施形態のCAR(機能的部分及び機能的バリアントを含む)は、任意の長さであることができ、すなわち、CAR(又はその機能的部分若しくは機能的バリアント)が、その生物活性(例えば、抗原に特異的に結合する能力、哺乳動物において疾患細胞を検出する能力、又は哺乳動物において疾患を治療若しくは予防する能力など)を保持するという条件で、任意の数のアミノ酸を含み得る。例えば、CARは、約50~約5000アミノ酸長、例えば、50、70、75、100、125、150、175、200、300、400、500、600、700、800、900、1000又はそれ以上のアミノ酸長であり得る。
【0157】
また、本発明によるCARを含む細胞も提供される。本発明によるCARは、CARを発現する免疫細胞、例えば、CAR T細胞又はCAR NK細胞を生成させるために使用することができる。免疫細胞へのCARの操作は、インビトロでの培養中に行うことができる。
【0158】
本発明のCARの抗原結合領域は、任意の好適な形式、例えば、scFv、scFabなどで提供することができる。
【0159】
核酸及びベクター
本発明は、本発明による抗原結合分子、ポリペプチド又はCARをコードする、1つ又は核酸又は核酸を提供する。
【0160】
一部の実施形態では、核酸は、例えば、他の核酸、又は天然起源の生物材料から、精製又は単離される。一部の実施形態では、核酸(複数可)は、DNA及び/又はRNAを含むか又はそれからなる。
【0161】
それ故に、別の態様では、本発明は、本明細書中に開示される単離されたタンパク質(例えば、抗体及びCARタンパク質。その断片、バリアント及び誘導体を含む)をコードするか、又はそれをコードする核酸配列に対して相補的である、単離された核酸を想定している。
【0162】
本発明の単離されたタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、本明細書中に提供される完全な核酸配列(例えば、配列番号1~12を参照)のうちの1つ以上から直ちに推定することができるが、それらには限定されない。
【0163】
本態様は、前記単離された核酸の断片、バリアント及び誘導体、例えば、本明細書に以前に記載されたものも含む。
【0164】
「核酸」という用語は、本明細書で使用する場合、一本鎖又は二本鎖のDNA及びRNAを表す。DNAには、ゲノムDNA及びcDNAが含まれる。RNAには、mRNA、RNA、RNAi、siRNA、cRNA及び自己触媒RNAが含まれる。また、核酸が、DNA-RNAハイブリッドであってもよい。核酸は、A、G、C、T又はU塩基を含むヌクレオチドを典型的には含むヌクレオチド配列を含む。しかし、ヌクレオチド配列は、イノシン、メチルシトシン、メチルイノシン、メチルアデノシン及び/又はチオウリジンなどの、ただしこれらに限定されない他の塩基を含んでもよい。
【0165】
したがって、特定の実施形態では、単離された核酸はcDNAである。
【0166】
「ポリヌクレオチド」は、80個又はそれ以上の連続したヌクレオチドを有する核酸であり、一方、「オリゴヌクレオチド」は、80個未満の連続したヌクレオチドを有する。
【0167】
「プローブ」は、好適には、例えば、ノーザンブロット法又はサザンブロット法において相補的配列を検出する目的で標識された、一本鎖又は二本鎖のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドであり得る。
【0168】
「プライマー」は、通常、好ましくは15~50個の連続したヌクレオチドを有する一本鎖オリゴヌクレオチドであり、これは、相補的な核酸「テンプレート」にアニーリングして、DNAポリメラーゼ、例えば、Taqポリメラーゼ、RNA依存性DNAポリメラーゼ又はシーケナーゼ(Sequenase)(商標)の作用によって、テンプレート依存的な様式で伸長されることが可能である。
【0169】
一実施形態では、核酸バリアントは、本発明の単離されたタンパク質のバリアントをコードする。
【0170】
別の実施形態では、核酸バリアントは、本発明の単離された核酸との間で、少なくとも40%、45%、50%、55%、60%又は65%、66%、67%、68%、69%、好ましくは少なくとも70%、71%、72%、73%、74%又は75%、より好ましくは少なくとも80%、81%、82%、83%、84%又は85%、及びさらにより好ましくは少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%のヌクレオチド配列同一性を有する。
【0171】
特定の一実施形態では、本態様の単離された核酸は、(a)(i)配列番号13~156及び表1によるものといった、本明細書に記載の抗体及び/又は単離されたCARタンパク質のセグメント、ドメイン、部分又は領域(そのバリアント又は誘導体を含む)をコードする、核酸、並びに(b)任意選択で1つ以上の追加の核酸配列からなる。この点に関して、追加の核酸配列は、単離された核酸配列の5’末端及び/又は3’末端にあることができる異種核酸配列であることができるが、ただしそれには限定されない。
【0172】
本発明はまた、コドン配列の冗長性を利用することなどによって改変された核酸も想定している。より詳細な例では、特定の生物又は細胞種における核酸の発現を最適化するためにコドン使用法を改変することができる。
【0173】
本発明は、本発明の核酸における修飾プリン(例えば、イノシン、メチルイノシン及びメチルアデノシン)及び修飾ピリミジン(例えば、チオウリジン及びメチルシトシン)の使用を、さらに提供する。
【0174】
本発明の単離された核酸を、標準的なプロトコール、例えば、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY(Ausubelら編、John Wiley & Sons NY、1995~2008)の第2章及び第3章に記載されたものを使用して好都合に調製し得ることは、当業者には理解されるであろう。
【0175】
さらに別の実施形態では、相補的核酸は、高ストリンジェンシー条件下で本発明の核酸とハイブリダイズする。
【0176】
「ハイブリダイズ及びハイブリダイゼーション」は、本明細書において、DNA-DNA、RNA-RNA又はDNA-RNAハイブリッドを生成する、少なくとも部分的に相補的なヌクレオチド配列の対形成を表すために使用される。相補的ヌクレオチド配列を含むハイブリッド配列は、塩基対形成を通じて生じる。
【0177】
「ストリンジェンシー」とは、本明細書で使用する場合、ハイブリダイゼーション中の温度、イオン強度条件、並びにある特定の有機溶媒及び/又は界面活性剤の有無を指す。ストリンジェンシーが高いほど、ハイブリダイズするヌクレオチド配列間に要求される相補性のレベルが高くなる。
【0178】
「ストリンジェントな条件」とは、相補的塩基を高い頻度で有する核酸のみがハイブリダイズする条件を指す。
【0179】
ストリンジェントな条件は当技術分野で周知であり、参照によって本明細書に組み入れられる、Ausubelら、前掲書の第2.9章及び第2.10章に記載されているような条件である。当業者はまた、ハイブリダイゼーションの特異性を最適化するために様々な要因を操作し得ることを認識するであろう。最終洗浄のストリンジェンシーを最適化することは、高度なハイブリダイゼーションを保証するのに役立ち得る。
【0180】
相補的ヌクレオチド配列は、ヌクレオチドがマトリックス(好ましくはニトロセルロースなどの合成膜)上に固定化されるステップ、ハイブリダイゼーションのステップ、並びに典型的には標識プローブ又は他の相補的核酸を使用する検出のステップを含む、ブロット手法によって同定し得る。サザンブロット法は相補的なDNA配列を同定するために使用され、ノーザンブロット法は相補的なRNA配列を同定するために使用される。ドットブロット法及びスロットブロット法は、相補的なDNA/DNA、DNA/RNA又はRNA/RNAポリヌクレオチド配列を同定するために使用されることができる。そのような技術は当業者に周知であり、Ausubelら、前掲書の2.9.1~2.9.20頁に記載されている。そのような方法によれば、サザンブロット法は、DNA分子をゲル電気泳動によってサイズに従って分離し、サイズ分離されたDNAを合成膜に移行させて、膜結合DNAを相補的ヌクレオチド配列にハイブリダイズさせることを含む。cDNA又はゲノムDNAライブラリー中の相補的核酸を同定する場合には、代替的なブロット法のステップ、例えば、プラーク又はコロニーハイブリダイゼーションのプロセスが使用される。この手順の他の典型的な例は、Sambrookら、MOLECULAR CLONING.A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Press、1989)の第8章から第12章に記載されている。
【0181】
固定化された核酸にハイブリダイズした標識核酸を検出するための方法は、当業者に周知である。そのような方法には、オートラジオグラフィー、化学発光、蛍光及び比色検出が含まれる。
【0182】
核酸はまた、核酸配列増幅手法を使用して、単離し、検出し、及び/又は組換えDNA技術に供することができる。
【0183】
熱的及び等温的方法の両方をカバーする適切な核酸増幅手法は、当業者に周知であり、これには、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、鎖置換増幅(SDA)、ローリングサークル複製(RCR)、核酸配列ベース増幅(NASBA)、Q-bレプリカーゼ増幅、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)及びヘリカーゼ依存増幅が含まれるが、これらには限定されない。
【0184】
本明細書で使用する場合、「増幅産物」は、核酸増幅によって生成される核酸産物を指す。
【0185】
核酸増幅手法には、当技術分野で周知のような、qPCR、リアルタイムPCR及び競合PCRなどの特定の定量的及び半定量な手法が含まれ得る。
【0186】
一部の実施形態では、核酸は、核酸の送達及び発現を助長する遺伝子構築物中に存在し得る。一部の実施形態では、本発明は、本発明による1つ又は複数の核酸を含む1つ又は複数のベクターを提供する。
【0187】
したがって、なお別の態様では、本発明は、(i)本明細書に記載の単離された核酸、又は(ii)それに対して相補的なヌクレオチド配列を含む単離された核酸を含む遺伝子構築物を提供する。一実施形態では、単離された核酸は、ベクター(例えば、発現ベクター)中の1つ以上の調節配列に作動可能に連結又は接続されている。
【0188】
好適には、遺伝子構築物は、当技術分野でよく理解されているように、プラスミド、バクテリオファージ、コスミド、酵母又は細菌人工染色体の形態にあるか、又はその遺伝子構成要素を含む。遺伝子構築物は、細菌又は他の宿主細胞における単離された核酸の維持及び増殖、組換えDNA技術による操作、並びに/又は本発明の核酸若しくはコードされるタンパク質の発現に適していてもよい。
【0189】
宿主細胞発現の目的のために、遺伝子構築物は発現構築物であり得る。好適には、発現構築物は、発現ベクター中の1つ以上の追加の配列に作動可能に連結された本発明の核酸を含む。「ベクター」は、本明細書で使用する場合、外因性核酸を細胞内に移入するための媒体として使用される核酸分子である。ベクターは、細胞内で核酸を発現させるためのベクターであってもよい。「発現ベクター」は、自己複製する染色体外ベクター、例えばプラスミド、又は宿主ゲノム中に組み込まれるベクターのいずれであってもよい。この点に関して、ベクターは、細胞がEphA3特異的CAR又はEphA3結合剤を発現するように、本発明の核酸を宿主細胞、例えばT細胞に導入することができる。この目的のために、ベクターは、理想的には、T細胞において高レベルの発現を持続することができるべきである。
【0190】
そのようなベクターは、発現させようとする配列をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結したプロモーター配列を含み得る。ベクターはまた、終止コドン及び発現エンハンサーを含んでもよい。
【0191】
「作動可能に連結された」とは、前記追加のヌクレオチド配列(複数可)(例えば、調節核酸配列)が、好ましくは転写を開始、調節又は他の方法で制御するために、本発明の核酸に対して配置されていることを意味する。典型的には、選択された核酸配列及び調節核酸配列(例えば、プロモーター及び/又はエンハンサー)は、核酸配列の発現が調節配列の影響下又は制御下に置かれる(それによって発現カセットを形成する)ように、共有結合性に連結されている。
【0192】
調節核酸配列は、発現のために使用される宿主細胞に一般に適切であると考えられる。多数の種類の適切な発現ベクター及び好適な調節配列が、様々な宿主細胞について当技術分野で知られている。
【0193】
典型的には、前記1つ以上の調節ヌクレオチド配列には、プロモーター配列、リーダー又はシグナル配列、リボソーム結合部位、転写開始及び終結配列、翻訳開始及び終結配列、並びにエンハンサー又はアクチベーター配列が含まれ得るが、それらには限定されない。
【0194】
当技術分野で知られているような構成的又は誘導的プロモーターが本発明によって想定される。
【0195】
好適なベクターには、プラスミド、バイナリーベクター、DNAベクター、mRNAベクター、ウイルスベクター、トランスポゾンベースのベクター、及び人工染色体が含まれる。
【0196】
特定の実施形態では、発現ベクターは、1つ以上のウイルス送達システム、例えば、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、ヘルペスウイルスベクター、レトロウイルスベクター(例えば、ガンマレトロウイルスベクター、例えば、マウス白血病ウイルス(MLV)由来ベクター)、レンチウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、及びバキュロウイルスベクターであるか、又はそれを含む。
【0197】
一部の実施形態では、ベクターは、真核生物ベクター、例えば、真核生物細胞におけるベクターからのタンパク質の発現に必要なエレメントを含むベクターであってよい。一部の実施形態では、ベクターは、例えば、タンパク質発現を推進させるためのサイトメガロウイルス(CMV)又はSV40プロモーターを含む、哺乳動物ベクターであってもよい。
【0198】
さらなる一態様では、本発明は、本明細書に記載の核酸分子又は遺伝子構築物によって形質転換された宿主細胞を提供する。
【0199】
発現に好適である宿主細胞は、原核又は真核であり得る。例えば、好適な宿主細胞には、哺乳動物細胞(例えば、HeLa、HEK293T、Jurkat細胞)、酵母細胞(例えば、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae))、バキュロウイルス発現系を伴うか又は伴わずに利用される昆虫細胞(例えば、Sf9、イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni))、植物細胞(例えば、コナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtii)、フェオダクチラム・トリコルムツム(Phaeodactylum tricornutum))又は細菌細胞、例えば大腸菌(E. coli)が含まれるが、これらには限定されない。宿主細胞(原核生物であるか又は真核生物であるかを問わない)への遺伝子構築物の導入は、当技術分野で周知であり、例えば、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY、Ausubelら編(John Wiley & Sons, Inc. 1995~2009)に、特に第9章及び第16章に記載されている。
【0200】
CAR発現細胞
本開示はまた、本開示によるCARを含むか又は発現する細胞も提供する。また、本開示によるCARをコードする核酸を含むか又は発現する細胞も提供される。T細胞へのCARの操作は、養子T細胞療法のためのT細胞の増大中に起こるような、形質導入及び発現のためのインビトロでの培養中に行われてもよい。CARを発現させるために免疫細胞を操作するための方法は当業者に公知であり、例えば、Wang and Riviere、Mol Ther Oncolytics, (2016) 3:16015に記載されており、これはその全体が参照によって本明細書に組み入れられる。「少なくとも1つの細胞」は、複数の細胞、例えば、そのような細胞の集団を範囲に含むことが理解されよう。
【0201】
本開示によるCARを含むか又は発現する細胞は、真核細胞、例えば、哺乳動物細胞であってもよい。哺乳動物は、ヒト、又は非ヒト哺乳動物(例えば、ウサギ、モルモット、ラット、マウス、又は他の齧歯動物(齧歯目(Rodentia)の任意の動物を含む)、ネコ、イヌ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、飼い牛(ウシ、例えば、乳牛、又はウシ目(Bos)の任意の動物)、ウマ(ウマ目(Equidae)の任意の動物を含む)、ロバ、及び非ヒト霊長動物)であり得る。
【0202】
一部の実施形態では、細胞は、ヒト対象からのものであるか、又はヒト対象から入手されたものであり得る。CAR発現細胞を対象の治療に使用しようとする場合、細胞は、CAR発現細胞によって治療しようとする対象からのものであってもよく(すなわち、細胞は自己性であってもよい)、又は細胞は異なる対象から入手してもよい(すなわち、細胞は同種性であってもよい)。
【0203】
特定の実施形態では、細胞は免疫細胞であるか又は免疫細胞を含む。細胞は、造血系由来の細胞、例えば、好中球、好酸球、好塩基球、樹状細胞、リンパ球、又は単球であってもよい。リンパ球は、例えば、T細胞、B細胞、NK細胞、NKT細胞、若しくは自然リンパ系細胞(ILC)、又はそれらの前駆体であってもよい。細胞は、例えば、CD3ポリペプチド(例えば、CD3γ、CD3ε、CD3ζ、又はCD3δ)、TCRポリペプチド(TCRα又はTCRβ)、CD27、CD28、CD4、又はCD8を発現してもよい。
【0204】
好適には、免疫細胞は、CD4+ヘルパーT細胞及び/又はCD8+細胞傷害性T細胞(例えば、細胞傷害性Tリンパ球(CTL))を含むT細胞であるか又はそれを含む。この点に関して、本態様のT細胞は、CD4+ヘルパーT細胞/CD8+細胞傷害性T細胞の混合集団であってもよい。
【0205】
CAR T細胞の使用には、それが全身投与可能であり、原発性腫瘍及び転移性腫瘍の両方に自動誘導されるという利点がある(Manzoら、Human Mol Genetics (2015) R67~73を参照)。
【0206】
一部の実施形態では、細胞は、抗原特異的T細胞である。この種の実施形態では、「抗原特異的」T細胞は、T細胞が特異的である抗原に応答してT細胞の特定の機能的特性を示す細胞、又は前記抗原を発現する細胞である。一部の実施形態では、特性は、エフェクターT細胞、例えば、細胞傷害性T細胞に関連する機能的特性である。
【0207】
一部の実施形態では、抗原特異的T細胞は、以下の特性の1つ以上を示し得る:例えばT細胞が特異的である抗原を含む/発現する細胞に対する細胞傷害性、増殖、IFN-γ発現、CD107a発現、IL-2発現、TNF発現、パーフォリン発現、グランザイム発現、グラニュライシン発現、及び/又はFASリガンド(FASL)発現、例えばT細胞が特異的である抗原又はその抗原を含む/発現する細胞に応答してのもの。抗原特異的T細胞は、適切なMHC分子によって提示された場合にそのT細胞が特異的である抗原のペプチドを認識することができるTCRを含む。抗原特異的T細胞は、CD4+ T細胞及び/又はCD8+ T細胞であってもよい。
【0208】
一部の実施形態では、T細胞が特異的である抗原は、ウイルス、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、アデノウイルス、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)、インフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、リンパ球絨毛膜炎ウイルス(LCMV)、又は単純ヘルペスウイルス(HSV)の、ペプチド又はポリペプチドであってもよい。
【0209】
有利には、本発明の単離されたCARは、患者の既存の免疫レパートリーに関係なく、EphA3に対する特異性を有する大量のT細胞(細胞10個~1010個/患者を上回る)を生成させることができる、迅速で信頼性があるアプローチである、CAR遺伝子導入に利用することができる。例えば、レトロウイルス又はレンチウイルス形質導入では、活性化前のT細胞を用いて48時間しか培養する必要がない場合がある。さらに、大量の自己T細胞を、白血球アフェレーシス又は対象由来の血液試料からの末梢血単核細胞(PBMC)の単離によって入手することができる。このようにして、注入用の10~10個の形質転換又はトランスフェクトされたT細胞を数日で操作することが可能である。
【0210】
したがって、本発明の宿主細胞(例えば、T細胞)は、養子移入によって、EphA3に関連する疾患、障害又は状態、例えばがんの治療に使用することができる。この目的のために、T細胞は、典型的には、遺伝子組換え細胞の養子移入に用いるために、ドナー対象を含む対象から採取した生体試料から単離される。
【0211】
好ましくは、本発明のCAR(例えば、図4-1~4-3に示されるようなCAR)によって形質導入又は形質転換されたT細胞は、ナイーブ細胞、セントラルメモリー細胞及びエフェクターメモリー細胞の混合物を含有する。
【0212】
代替的な実施形態では、宿主細胞は、幹細胞、例えば、造血幹細胞(HSC)であるか、又はそれに由来するものである。したがって、この目的のために、宿主細胞は、分化すると本発明のCARを発現するT細胞を生成する、遺伝子改変幹細胞であってもよい。
【0213】
一部の実施形態では、宿主細胞、例えばT細胞は、サイトカイン、ケモカイン及び/又はその受容体を発現するように遺伝子操作される。
【0214】
この目的のために、CAR T細胞は、腫瘍細胞傷害性及び特異性を強化し、腫瘍免疫抑制を逃れ、宿主拒絶反応を回避し、及びその治療半減期を延長する、いくつかの方法で設計することができる。例えば、TRUCK(普遍的サイトカイン死滅のために再指向化されたT細胞(T-cells Redirected for Universal Cytokine Killing))T細胞は、CARを保有しながら、腫瘍死滅を促進するIL-12などのサイトカインも発現及び放出するように設計されている。これらの細胞は、腫瘍環境に局在化した後にCARの活性化によって分子ペイロードを放出するように設計されているため、これらのCART-細胞は「アーマードCAR」(armoured CAR)と呼ばれることもある。例示的なサイトカインには、IL-2、IL-3.IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-18、M-CSF、GM-CSF、IFN-α、IFN-γ、TNF、TRAIL、FLT3リガンド、リンホタクチン、及びTGF-βが含まれる。
【0215】
「自動推進式」又は「ホーミング」CART-細胞は、そのCARに加えて、ケモカイン受容体を発現するように操作されている。ある種のケモカインは腫瘍においてアップレギュレートされるため、ケモカイン受容体を組み入れることにより、腫瘍への移動及び養子T細胞による浸潤を助け、それによってCAR T細胞の特異性及び機能性の両方を強化することができる。普遍的CAR T細胞もCARを保有するものの、内因性TCR(T細胞受容体)及びMHC(主要組織適合性複合体)タンパク質を発現しないように設計されている。この2つのタンパク質を養子縁組T細胞療法のシグナル伝達レパートリーから取り除くことで、それぞれ移植片対宿主病及び拒絶反応を予防することができる。さらに、アーマードCART細胞は、腫瘍免疫抑制及び腫瘍誘発性のCAR T細胞機能低下を回避する能力を持つことから、この名前が付けられた。これらの特定のCAR T細胞はCARを保有し、チェックポイント阻害剤を発現しないように設計することもできる。あるいは、これらのCAR T細胞を、チェックポイントのシグナル伝達を阻止するモノクローナル抗体(mAb)と共投与することもできる。抗PDL1抗体の投与は、CAR TIL(腫瘍浸潤リンパ球)の死滅能力を有意に回復させた。PD1-PDL1及びCTLA-4-CD80/CD86シグナル伝達経路が研究されているが、LAG-3、Tim-3、IDO-1、2B4、及びKIRを含む、他の免疫チェックポイントシグナル伝達分子を標的とするアーマードCAR-Tを設計することも可能である。TILの他の細胞内阻害物質には、ホスファターゼ(SHP1)、ユビキチンリガーゼ(すなわち、cbl-b)、及びキナーゼ(すなわち、ジアシルグリセロールキナーゼ)が含まれる。また、CAR T細胞を、腫瘍が分泌するサイトカインの影響から保護するか、又はその影響に対して抵抗性にするタンパク質又は受容体を発現するように操作することもできる。例えば、二重陰性型のTGF-β受容体による形質導入を受けたCTL(細胞傷害性Tリンパ球)は、リンパ腫が分泌するTGF-βによる免疫抑制に対して抵抗性である。これらの形質導入細胞は、対応する対照と比較して、インビボで顕著に増加した抗腫瘍活性を示した。
【0216】
なお別の態様では、本発明は、本明細書に記載の単離されたタンパク質(例えば、単離されたEphA3結合剤又はCAR)を生産する方法であって、(i)本明細書に以前に記載された事前に形質転換された宿主細胞を培養するステップ、及び(ii)ステップ(i)において培養した前記宿主細胞から前記タンパク質を単離するステップ、を含む方法を提供する。
【0217】
組換えタンパク質は、例えば、Sambrookら、MOLECULAR CLONING、A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Press, 1989)、特にセクション16及び17、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY、Ausubelら編(John Wiley & Sons, Inc. 1995~2009)、特に第10章及び第16章、並びにCURRENT PROTOCOLS IN PROTEIN SCIENCE、Coliganら編(John Wiley & Sons, Inc. 1995~2009)、特に第1章、第5章及び第6章に記載された標準的なプロトコールを使用して、当業者が好都合に調製することができる。
【0218】
関連する一態様では、本発明は、単離されたEphA3結合剤又は前述の局面の方法によって製造されるCARを提供する。
【0219】
さらなる一態様では、本発明は、
(i)前述の第1の態様のEphA3結合剤、及び/又は
(ii)前述の第2の態様のCAR
(その断片、バリアント及び誘導体を含む)
に結合する、及び/又はそれに対して産生される、抗体又は抗体断片に存する。
【0220】
好適には、前記抗体又は抗体断片は、前記単離されたEphA3結合剤又はCARに特異的に結合する。好ましくは、前記抗体又は抗体断片は、本明細書に記載のCDR、Vドメイン及び/又はVドメインの完全又は部分的なアミノ酸配列(例えば、配列番号13~156)に特異的又は選択的に結合するか、又はそれを認識する。この点に関して、本態様の抗体又は抗体断片は、試料中のその特定のCDR、Vドメイン又はVドメインを有するCARを発現するT細胞を検出又は単離する方法における使用に好適であり得る。この目的のために、本発明の抗体及び抗体断片は、本明細書に記載の単離されたEphA3結合剤及びCARのアフィニティークロマトグラフィー精製に特に好適であり得る。例えば、Coliganら、前掲書の第9.5章に記載されているアフィニティークロマトグラフィー手順を参照することができる。
【0221】
抗体は、ポリクローナル又はモノクローナル、ネイティブ又は組換えであり得る。抗体の生産、精製及び使用に適用可能である周知のプロトコールは、例えば、Coliganら、前掲書の第2章、及びHarlow, E. & Lane, D. Antibodies. A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988に記載されており、これらは両方とも参照によって本明細書に組み入れられる。
【0222】
一般に、本発明の抗体は、本発明の単離されたタンパク質、断片、バリアント、又は誘導体に結合するか、又はそれとコンジュゲートする。例えば、抗体は、ポリクローナル抗体であってもよい。そのような抗体は、例えば、本発明の単離タンパク質、断片、バリアント又は誘導体を、マウス又はウサギが含まれ得る生産種に注射して、ポリクローナル抗血清を得ることによって調製することができる。ポリクローナル抗体を生産する方法は、当業者に周知である。使用し得る例示的なプロトコールは、例えば、Coliganら、前掲書及びHarlow&Lane、1988、前掲書に記載されている。
【0223】
モノクローナル抗体は、例えば、参照によって本明細書に組み入れられる、Koehler & Milstein, 1975, Nature 256, 495による論文に記載されている標準的な方法を使用して、又は、例えば、Coliganら、前掲書に記載されているその最近の変法により、本発明の単離されたタンパク質、断片、バリアント又は誘導体の1つ以上を接種された生産種に由来する脾臓若しくは他の抗体産生細胞を不死化することによって生産することができる。
【0224】
CMV特異的T細胞
ある特定の態様では、MVエピトープ(例えば、表1にリスト化されているCMVエピトープ)を含むペプチドを認識するTCR(例えば、αβTCR又はγδTCR)を発現するCMV特異的T細胞(例えば、CD4 T細胞及び/又はCD8 T細胞)が、本明細書中に提供される。したがって、一部の好ましい実施形態では、本発明のT細胞は、表1にリスト化されているCMVエピトープを含むペプチドを認識するT細胞である。
【0225】
【表1】

【0226】
この種の一部の好ましい実施形態では、T細胞は、上記及び/又は本明細書の他の箇所に記載されるような、EphA3に結合する抗原結合分子をさらに含む。一部の実施形態では、本明細書中に提供されるT細胞は、上記及び本明細書の他の場所で記載されるようなCARを発現するように操作することができる。一例を挙げると、CMV特異的T細胞は、EphA3結合性CARをさらに含む。
【0227】
一部の態様では、本明細書に記載のCMVエピトープの1つ以上を認識するT細胞(例えば、CTL)の生成、活性化、及び/又は増殖誘導の方法が、本明細書中に提供される。一部の実施形態では、CTLを含む試料(例えば、PBMC試料)を単離し、本明細書に開示される免疫原性ペプチドのプールに曝露させて、刺激されたCTLを採取する。好ましくは、免疫原性ペプチドのプールは、表1に示されるCMVペプチドエピトープアミノ酸配列のそれぞれから本質的になる。ある特定の実施形態では、曝露された試料を少なくとも14日間インキュベートする。一部のそのような実施形態では、曝露された試料を、第0日にIL-21とともにインキュベートする。好ましくは、曝露された試料を、第2日にIL-2とともにインキュベートする。より好ましい実施形態では、曝露された試料のインキュベーションは、3日ごとのIL-2の添加を含む。
【0228】
一部の実施形態では、PBMC試料は、健常ドナーに由来する。ある特定の実施形態では、PBMCは、免疫不全のドナーに由来する。一部のそのような実施形態では、ドナーは、免疫抑制療法を受けている。一部の実施形態では、ドナーは、実質臓器移植のレシピエントである。さらなる実施形態では、ドナーは、抗ウイルス療法を受けている。
【0229】
一部の実施形態では、CTLを含む試料(例えば、PBMC試料)を、クラスI MHC複合体上に本明細書に記載のCMVエピトープを含むペプチドを提示するAPCと培地でインキュベートする。この種の好適なAPCの調製は、例えば、国際出願PCT公開第2019/220209号に記載されており、これはその全体が参照によって本明細書に組み入れられる。APCは、T細胞が入手された対象に対して自己性であってもよい。一部の実施形態では、T細胞を含有する試料を、本明細書中に提供されるAPCとともに2回以上インキュベートする。一部の実施形態では、T細胞を、少なくとも1つのサイトカイン、例えば、IL-2、IL-4、IL-7、IL-15、及び/又はIL-21の存在下でAPCとともにインキュベートする。APCを使用してT細胞の増殖を誘導するための例示的な方法は、例えば、米国特許出願公開第2015/0017723号に記載されており、これは参照によって本明細書に組み入れられる。
【0230】
CMVペプチド特異的T細胞によるバイオマーカーの発現を、フローサイトメトリーなどの任意の適切な方法によって評価することもできる。一部の実施形態では、CMVペプチド特異的T細胞を、CMV特異的ペプチドによって刺激して、フローサイトメトリーによって選別する。好ましくは、CMVペプチド特異的T細胞は、参照によって本明細書に組み入れられる、国際出願PCT公開第2019/220209号に記載のプロトコールに従って、刺激及び/又は表面染色を受ける。一部の実施形態では、CMVペプチド特異的T細胞は、CD107aに特異的な1つ以上の抗体とともにインキュベートされ、その後、フローサイトメトリーによって選別される。一部の実施形態では、CMVペプチド特異的T細胞は、細胞内サイトカインに結合する1つ以上の抗体、例えば、IFN-γ、IL-2、及び/又はTNFに特異的な抗体とともにインキュベートされる。一部の実施形態では、CMVペプチド特異的T細胞は、細胞内サイトカインに対する抗体とともにインキュベートされ、続いてフローサイトメトリーによって選別される。
【0231】
一部の実施形態では、本方法は、ドナー対象からT細胞を含む試料を入手する(例えば、ドナー対象からPBMC試料を入手する)ことをさらに含む。一部の実施形態では、自己T細胞(例えば、CD4+ T細胞又はCD8+ T細胞)を、試料から単離する。一部の実施形態では、試料は大部分が又は完全に同種T細胞で構成される。
【0232】
一部の実施形態では、試料中のT細胞(例えば、CTL)の少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%が、CD107aを発現する。
【0233】
一部の実施形態では、試料中のT細胞(例えば、CTL)の少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%が、IFN-γを発現する。
【0234】
一部の実施形態では、試料中のT細胞(例えば、CTL)の少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%が、TNFを発現する。
【0235】
一部の実施形態では、試料中のT細胞(例えば、CTL)の少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%が、IL-2を発現する。
【0236】
一部の実施形態では、試料中のT細胞(例えば、CTL)の少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、又は90%が、CD107a及びIFN-γを発現する。
【0237】
一部の実施形態では、試料中のT細胞(例えば、CTL)の少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、又は90%が、CD107a及びTNFを発現する。
【0238】
一部の実施形態では、試料中のT細胞(例えば、CTL)の少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、又は90%が、CD107a及びIL-2を発現する。
【0239】
一部の実施形態では、試料中のT細胞(例えば、CTL)の少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、又は90%が、IFN-γ及びTNFを発現する。
【0240】
一部の実施形態では、試料中のT細胞(例えば、CTL)の少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、又は90%が、IFN-γ及びIL-2を発現する。
【0241】
一部の実施形態では、試料中のT細胞(例えば、CTL)の少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、又は90%が、TNF及びIL-2を発現する。
【0242】
一部の実施形態では、試料中のT細胞(例えば、CTL)の少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、又は90%が、IFN-γ、TNF、及びIL-2を発現する。
【0243】
一部の実施形態では、試料中のT細胞(例えば、CTL)の少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、又は90%が、CD107a、TNF、及びIL-2を発現する。
【0244】
一部の実施形態では、試料中のT細胞(例えば、CTL)の少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、又は90%が、CD107a、IFN-γ、及びIL-2を発現する。
【0245】
一部の実施形態では、試料中のT細胞(例えば、CTL)の少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、又は90%が、CD107a、IFN-γ、及びTNFを発現する。
【0246】
一部の実施形態では、試料中のT細胞(例えば、CTL)の少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、又は90%が、CD107a、IFN-γ、TNF、及びIL-2を発現する。
【0247】
本明細書中に開示される方法の一部の実施形態では、T細胞(例えば、CTL)は、複数のCMV抗原に由来する複数のペプチドエピトープに対する反応性を示す。この点に関して、T細胞(例えば、CTL)の1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、又は90%は、複数のCMVエピトープに対して反応性である。ある特定の実施形態では、T細胞(例えば、CTL)は、表1に示されるCMVペプチドエピトープアミノ酸配列のうちのいずれか1つ、又はそれらの組合せに対して反応性である。一部の実施形態では、T細胞(例えば、CTL)は、pp50、pp65、IE-I、gB、gHのうちのいずれか1つ、又はそれらの組合せに対して反応性である。
【0248】
T細胞バイオマーカーの発現及び/又はCMV反応性は、本明細書中に開示される方法のいずれかによる、例えば、免疫原性CMVペプチドエピトープのプールへの曝露による、T細胞(例えば、CTL)増殖の前又は後のいずれかに測定及び/又は分析することができる。
【0249】
一部の実施形態では、CMV反応性及びバイオマーカー発現は、T細胞(例えば、CTL)の刺激の前に定量化される。代替的又は追加的に、CMV反応性及びバイオマーカー発現は、T細胞(例えば、CTL)の刺激の後に定量化してもよい。一部の実施形態では、CMV反応性は、CD107aを発現する試料中のT細胞のパーセンテージを定量化することによって測定される。一部の実施形態では、CMV反応性は、IFN-γを発現する試料中のT細胞のパーセンテージを定量化することによって測定される。一部の実施形態では、CMV反応性は、TNFを発現する試料中のT細胞のパーセンテージを定量化することによって測定される。一部の実施形態では、CMV反応性は、IL-2を発現する試料中のT細胞のパーセンテージを定量化することによって測定される。一部の実施形態では、CMV反応性は、複数のバイオマーカー(例えば、CD107a、IFN-γ、TNF、及びIL-2のうちの2つ又はそれ以上、好ましくは4つすべて)を発現するT細胞のパーセンテージとして測定される。一部の実施形態では、CMV反応性は、CD107a、IFN-γ、TNF、及びIL-2を発現する試料中のT細胞のパーセンテージを定量化することによって算出される。T細胞は、CMV反応性のパーセンテージの定量化の前又は後のいずれかに、試料(例えば、PBMC試料又はT細胞を含有する試料)から単離されてもよい。したがって、一部の実施形態では、CMV反応性は、大部分がT細胞で構成される試料中の所望の特性(複数可)を有するT細胞のパーセンテージである。
【0250】
一部の実施形態では、CMV反応性は、CD107aを発現する試料中のCD8+リンパ球のパーセンテージを定量化することによって測定される。一部の実施形態では、CMV反応性は、IFN-γを発現する試料中のCD8+リンパ球のパーセンテージを定量化することによって測定される。一部の実施形態では、CMV反応性は、TNFを発現する試料中のCD8+リンパ球のパーセンテージを定量化することによって測定される。一部の実施形態では、CMV反応性は、IL-2を発現する試料中のCD8+リンパ球のパーセンテージを定量化することによって測定される。一部の実施形態では、CMV反応性は、複数のバイオマーカー(例えば、CD107a、IFN-γ、TNF、及びIL-2のうちの2つ又はそれ以上、好ましくは4つすべて)を発現するCD8+リンパ球のパーセンテージとして測定される。CD8+リンパ球は、CMV反応性パーセンテージの定量化の前又は後のいずれかに、試料(例えば、PBMC試料又はCD8+リンパ球の試料)から単離されてもよい。したがって、一部の実施形態では、CMV反応性は、大部分がCD8+リンパ球で構成される試料中の所望の特性(複数可)を有するCD8+リンパ球のパーセンテージである。
【0251】
一部の実施形態では、CMV反応性は、CD107aを発現する試料中のCD3+リンパ球のパーセンテージを定量化することによって測定される。一部の実施形態では、CMV反応性は、IFN-γを発現する試料中のCD3+リンパ球のパーセンテージを定量化することによって測定される。一部の実施形態では、CMV反応性は、TNFを発現する試料中のCD3+リンパ球のパーセンテージを定量化することによって測定される。一部の実施形態では、CMV反応性は、IL-2を発現する試料中のCD3+リンパ球のパーセンテージを定量化することによって測定される。一部の実施形態では、CMV反応性は、複数のバイオマーカー(例えば、CD107a、IFN-γ、TNF、及びIL-2のうちの2つ又はそれ以上、好ましくは4つすべて)を発現するCD3+リンパ球のパーセンテージとして測定される。CD3+リンパ球は、CMV反応性パーセンテージの定量化の前又は後のいずれかに、試料(例えば、PBMC試料又はCD3+リンパ球の試料)から単離されてもよい。したがって、一部の実施形態では、CMV反応性は、大部分がCD3+リンパ球で構成される試料中の所望の特性(複数可)を有するCD3+リンパ球のパーセンテージである。
【0252】
本発明の最も好ましい実施形態のいくつかでは、T細胞はその表面にEphA3抗原結合分子を提示する。例えば、T細胞は、その表面にEphA3結合CARを提示してもよい。
【0253】
T細胞は、対象にとって自己性であってもよく、又は自己性でなくてもよい。一部の実施形態では、T細胞は、対象に投与される前に、細胞バンクに保存される。一部の好ましい実施形態では、T細胞は、対象に対して同種である。
【0254】
医薬組成物
さらになお別の態様では、本発明は、本明細書に記載のEphA3結合剤、本明細書に記載のCAR、本明細書に記載の単離された核酸、本明細書に記載の遺伝子構築物、及び/又は本明細書に記載の宿主細胞と、薬学的に許容できる担体、希釈剤又は賦形剤とを含む組成物を提供する。
【0255】
一部の態様では、EphA3 CARを発現若しくは提示するCMV特異的CTLを含む組成物(例えば、医薬組成物)、又は医薬担体とともに製剤化されたその調製、及びそのような医薬組成物を投与する方法が、本明細書中に提供される。
【0256】
「薬学的に許容できる担体、希釈剤又は賦形剤」とは、全身投与において安全に使用し得る固体又は液体の充填剤、希釈剤又は封入物質を意味する。
【0257】
一部の実施形態では、組成物は、アジュバントをさらに含んでいてもよい。本明細書で使用される場合、「アジュバント」という用語は、インビトロ又はインビボで組成物に対する免疫学的応答を調節又は強化する免疫学的又は薬学的薬剤を広く指す。例えば、アジュバントは、時間経過とともに抗原の存在を増加させ、抗原提示細胞抗原の吸収を助け、マクロファージ及びリンパ球を活性化し、サイトカインの産生を支持し得る可能性がある。免疫応答を変化させることによって、アジュバントは、免疫相互作用性薬剤又は調製物の用量を減らすことを可能にして、投薬の有効性又は安全性を高める可能性がある。例えば、アジュバントは、T細胞の枯渇を防ぎ、特定の免疫相互作用性薬剤又は調製物の有効性又は安全性を高める可能性がある。アジュバントの例としては、免疫調節タンパク質、アジュバント65、α-GalCer、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、リン酸カルシウム、β-グルカンペプチド、CpG DNA、GPI-0100、リピドA及びその修飾体(例えば、一リン酸化リピドA)、リポ多糖、リポバント(Lipovant)、モンタニド(Montanide)、N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン、Pam3CSK4、Quil-A、及びトレハロースジミコレートが挙げられるが、これらには限定されない。
【0258】
これらの製剤又は組成物を調製する方法は、本明細書に記載の薬剤を、担体及び任意選択で1つ以上の付属成分と会合させるステップを含む。一般に、製剤は、本明細書に記載の薬剤を液体担体、又は細かく分割した固体担体、又はその両方と均一にかつ密接に会合させ、続いて必要に応じて産物を成形することによって調製される。
【0259】
非経口投与に適する本発明の医薬組成物は、本明細書に記載の1つ以上の薬剤を、糖、アルコール、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、意図するレシピエントの血液と製剤を等張にする溶質、又は懸濁剤若しくは増粘剤を含有し得る、1つ以上の薬学的に許容できる無菌の等張性水性又は非水性溶液、分散液、懸濁液若しくは乳濁液、又は使用直前に滅菌注射液又は分散液に再構成することができる滅菌粉末との組合せで含む。
【0260】
特定の投与経路に応じて、当技術分野で周知の様々な担体を使用することができる。これらの担体は、糖、デンプン、セルロース及びその誘導体、モルト、ゼラチン、タルク、硫酸カルシウム、植物油(オリーブ油など)、合成油、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、アルギン酸、リン酸緩衝液、乳化剤、等張食塩水、並びに塩酸塩、臭化物及び硫酸塩を含む鉱酸塩などの塩類、酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩などの有機酸、並びにパイロジェンフリー水を含む群から選択することができる。本発明の医薬組成物中に採用され得る好適な水性及び非水性担体のさらなる例としては、水、エタノール、及びそれらの適切な混合物、並びにオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルが挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用によって、分散液の場合には必要な粒子径の維持によって、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。
【0261】
選択される投与経路にかかわらず、好適な水和形態で使用し得る本発明の薬剤、及び/又は本発明の医薬組成物は、当業者に公知である従来の方法によって医薬的に許容できる剤形として製剤化される。
【0262】
薬学的に許容できる担体、希釈剤及び賦形剤を記載している有用な文献は、Remington’s Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing Co. N.J. USA, 1991)であり、これは参照によって本明細書に組み入れられる。
【0263】
治療用途
本開示の態様は、対象におけるがんの治療における、本明細書に記載の抗原結合剤、及び/又は細胞の使用に特に関する。
【0264】
したがって、本開示は、対象におけるがんを治療又は予防する方法であって、本明細書に記載のEphA3結合剤、又は本明細書に記載のEphA3に対して特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を含む少なくとも1つのT細胞、若しくは本明細書に記載の組成物の治療有効量を対象に投与して、それによって対象におけるがんを治療又は予防するステップを含む方法を提供する。
【0265】
本明細書で一般的に使用する場合、「がん」、「腫瘍」、「悪性」及び「悪性腫瘍」という用語は、発がん、腫瘍マーカーの発現、腫瘍抑制因子の発現若しくは活性の喪失及び/又は異常性若しくは異常な細胞表面マーカーの発現と関連する1つ以上の遺伝子変異又は他の遺伝子変化を含む異常性又は異常な分子表現型をしばしば伴う、異常性又は異常な細胞増殖、分化及び/又は遊走によって特徴付けられる、疾患若しくは状態、又はその疾患に関連する細胞若しくは組織を指す。
【0266】
がんには、限定されないが、肉腫、がん腫、リンパ腫、白血病、芽球腫などのすべての主要ながん形態を含む、http://www.cancer.gov/cancertopics/alphalistのNCI Cancer Indexに記載されているような、任意の侵襲性又は潜在的に侵襲性であるがん、腫瘍又は他の悪性腫瘍が含まれ得る。これらには、乳がん、肺腺がんを含む肺がん、卵巣がん、子宮頸がん、子宮体がん及び前立腺がんを含む生殖器系のがん、脳及び神経系のがん、頭頸部がん、結腸がん、結腸直腸がん及び胃がんを含む胃腸系のがん、肝臓がん、腎臓がん、黒色腫及び皮膚がんなどの皮膚がん、リンパ系がん及び骨髄単球系がんを含む血球系がん、膵臓がん及び下垂体がんなどの内分泌系がん、骨がん及び軟組織がんを含む筋骨格系がんが含まれ得るが、これらに限定はされない。特定の実施形態では、がんは、多形性膠芽腫などの固形がんである。好適には、がんは、EphA3を発現する、例えば、過剰発現する。
【0267】
がんを治療する方法は、予防処置的、予防的又は治療的であることができ、哺乳動物、特にヒトにおけるがんの治療に好適である。本明細書で使用する場合、「治療すること」、「治療する」又は「治療」は、がん及び/又はその症状が少なくとも発生し始めた後に、がんの症状を少なくとも改善する、治療的介入、一連の手順又はプロトコールを指す。がんの治療又は緩和は、がんの進行を防ぐため、例えば、状態の悪化を防ぐため、又はより重篤な疾患状態の発生の速度を遅らせるために有効であり得る。本明細書で使用する場合、「予防すること」、「予防する」又は「予防」は、がん又はその症状の発生若しくは進行を予防するため、抑制するため又は遅らせるために、がん及び/又はがんの症状の発生前に開始される治療的介入、一連の手順又はプロトコールを指す。
【0268】
一部の実施形態では、T細胞の1回の用量あたり約1×10~約1×10個のT細胞が対象に投与される。一部の実施形態では、T細胞の1回の用量あたり約1×10~約1×10個のT細胞が対象に投与される。一部の実施形態では、1×10個、1×10個、1.5×10個、又は2×10個のT細胞(例えば、CTL)が対象に投与される。複数の用量が対象に投与されてもよい。一部の実施形態では、T細胞(例えば、自己CTL)の初回用量が投与され、T細胞(例えば、自己CTL)の1回以上の追加用量が、例えば、治療の経過に沿って用量を増加させながら投与される。一部の実施形態では、2回以上、3回以上、4回以上、5回以上、6回以上、7回以上、8回以上、9回以上、又は10回以上の用量が投与される。対象は、初回用量と同じ又は異なる追加の投与量を投与されてもよい。例えば、低い用量が投与された後に、より高い用量が投与されてもよい。用量は、毎日、週2回、毎週、隔週、1カ月に1回、2カ月毎に1回、3カ月毎に1回、又は6カ月毎に1回投与されてもよい。一部の実施形態では、対象は、T細胞(例えば、同種CTL)投与の結果として、いかなる有害作用も経験しない。
【0269】
「治療有効量」という用語は、特定の薬剤、例えば、EphA3結合剤又はCARの、その薬剤で治療される対象において所望の効果を達成するのに十分な量を記載する。例えば、これは、がんの転移及び再発を含む、がん又はがんに関連する疾患、障害又は状態を軽減、緩和及び/又は予防するために必要な、本明細書に記載の1つ以上のEphA3結合剤及び/又はCARを含む組成物の量であることが可能である。一部の実施形態では、「治療有効量」は、がんの症状を軽減又は除去するのに十分な量である。他の実施形態では、「治療有効量」は、所望の生物学的効果を達成するのに十分な量、例えば、がんの成長、再発及び/又は転移を減少又は防止するのに有効な量である。
【0270】
理想的には、薬剤の治療有効量は、対象において大きな細胞傷害作用を引き起こすことなく所望の結果を誘導するために十分な量である。がんを減少、緩和及び/又は予防するために有用な薬剤の有効量は、治療される対象、任意の関連する疾患、障害及び/又は状態(例えば、任意の関連する転移の数及び位置)の種類及び重症度、並びに治療用組成物の投与の様式に依存すると考えられる。
【0271】
本態様の方法は、上記に挙げたものに加えて1つ以上のさらなるがん治療も含み得ることが理解されるであろう。そのようながん治療には、薬物療法、化学療法、抗体、核酸及び他の生体分子療法、放射線療法、手術、栄養療法、リラクゼーション又は瞑想療法及び他の自然療法又はホリスティック療法が含まれ得るが、これらには限定されない。一般に、薬物、生体分子(例えば、抗体、阻害性核酸、例えばsiRNA)又は化学療法剤は、本明細書において「抗がん治療剤」又は「抗がん剤」と呼ばれる。
【0272】
一部の実施形態では、対象に、抗がん化合物も投与される。例示的な抗がん化合物としては、アレムツズマブ(キャンパス(Campath)(登録商標))、アリトレチノイン(パンレチン(Panretin)(登録商標))、アナストロゾール(アリミデックス(Arimidex)(登録商標))、ベバシズマブ(アバスチン(Avastin)(登録商標))、ベキサロテン(タルグレチン(Targretin)(登録商標))、ボルテゾミブ(ベルケイド(Velcade)(登録商標))、ボスチニブ(ボシュリフ(Bosulif)(登録商標))、ブレンツキシマブベドチン(アドセトリス(Adcetris)(登録商標))、カボザンチニブ(コメトリク(Cometriq)(商標))、カルフィルゾミブ(カイプロリス(Kyprolis)(商標))、セツキシマブ(アービタックス(Erbitux)(登録商標))、クリゾチニブ(Xalkori(登録商標))、ダサチニブ(スプリセル(Sprycel)(登録商標))、デニロイキンジフチトクス(オンタック(Ontak)(登録商標))、エルロチニブ塩酸塩(タルセバ(Tarceva)(登録商標))、エベロニムス(アフミトール(Afmitor)(登録商標))、エキセメスタン(アロマシン(Aromasin)(登録商標))、フルベストラント(ファスロデックス(Faslodex)(登録商標))、ゲフィチニブ(イレッサ(Iressa)(登録商標))、イブリツモマブチウキセタン(ゼバリン(Zevalin)(登録商標))、イマチニブメシル酸塩(グリベック(Gleevec)(登録商標))、イピリムマブ(ヤーボイ(Yervoy)(商標))、ラパチニブジシトラート(タイケルブ(Tykerb)(登録商標))、レトロゾール(フェマーラ(Femara)(登録商標))、ニロチニブ(タシグナ(Tasigna)(登録商標))、オファツムマブ(アーゼラ(Arzerra)(登録商標))、パニツムマブ(ヴェクティビックス(Vectibix)(登録商標))、パゾパニブ塩酸塩(ヴォトリエント(Votrient)(登録商標))、ペルツズマブ(ペイジェタ(Peijeta)(商標))、プララトレキサート(フォロチン(Folotyn)(登録商標))、レゴラフェニブ(スチバーガ(Stivarga)(登録商標))、リツキシマブ(リツキサン(Rituxan)(登録商標))、ロミデプシン(イストダックス(Istodax)(登録商標))、ソラフェニブトシル酸塩(ネクサバール(Nexavar)(登録商標))、スニチニブリンゴ酸塩(スーテント(Sutent)(登録商標))、タモキシフェン、テムシロリムス(トーリセル(Torisel)(登録商標))、トレミフェン(フェアストン(Fareston)(登録商標))、トシツモマブ及び131I-トシツモマブ(ベキサール(Bexxar)(登録商標))、トラスツズマブ(ハーセプチン(Herceptin)(登録商標))、トレチノイン(ベサノイド(Vesanoid)(登録商標))、バンデタニブ(カプレルサ(Caprelsa)(登録商標))、ベムラフェニブ(ゼルボラフ(Zelboraf)(登録商標))、ボリノスタット(ゾリンザ(Zolinza)(登録商標))、及びZiv-アフリベルセプト(ザルトラップ(Zaltrap)(登録商標))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0273】
一部の実施形態では、対象に、化学療法剤も投与される。そのような化学療法剤の例としては、アルキル化剤、例えばチオテパ及びシクロホスファミドなど、アルキルスルホネート、例えばブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファンなど、アジリジン、例えばベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ、及びウレドーパなど、アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド及びトリメチロールメラミンを含むエチレンイミン及びメチルメラミン、アセトゲニン(特にブラタシン及びブラタシノン)、カンプトテシン(合成類似体トポテカンを含む)、ブリオスタチン、カリスタチン、CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン及びバイゼレシン合成類似体を含む)、クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8)、ドラスタチン、デュオカルマイシン(合成類似体KW-2189及びCB1-TM1を含む)、エリュテロビン、パンクラチスタチン、サルコジクチイン、スポンジスタチン、ナイトロジェンマスタード、例えばクロラムブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベンビシン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなど、ニトロソウレア、例えばカルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン及びラニムスチンなど、抗生物質、例えばエンジイン系抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特にカリケアマイシンガンマ(1,1)及びカリケアマイシンオメガ(1,1))など、ジネマイシンAを含むジネマイシン、ビスホスホネート、例えばクロドロネートなど、エスペラミシン、並びにネオカルチノスタチン発色団及び関連する色素タンパク質エンジイン系抗生物質発色団、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、例えばマイトマイシンC、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン、代謝拮抗剤、例えばメトトレキサート及び5-フルオロウラシル(5-FU)など、葉酸類似体、例えばデノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなど、プリン類似体、例えばフルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなど、ピリミジン類似体、例えばアンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジンなど、アンドロゲン、例えばカルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなど、抗副腎剤、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなど、葉酸補充剤、例えばフォリン酸など、アセグラトン、アルドホスファミドグリコシド、アミノレブリン酸、エニルウラシル、アムサクリン、ベストラブシル、ビサントレン、エダトラキサート、デフォファミン、デメコルシン、ジアジクオン、エルフォミチン、エリプチニウム酢酸塩、エポチロン、エトグルシド、硝酸ガリウム、ヒドロキシ尿素、レンチナン、ロニダミニン、マイタンシノイド、例えばマイタンシン及びアンサマイトシンなど、ミトグアゾン、ミトキサントロン、モピダンモール、ニトラミン、ペントスタチン、フェナメット、ピラルビシン、ロソキサントロン、ポドフィリン酸、2-エチルヒドラジド、プロカルバジン、PSK多糖複合体、ラゾキサン、リゾキシン、シゾフラン、スピロゲルマニウム、テヌアゾン酸、トリアジコン、2,2’,2”-トリクロロトリエチルアミン、トリコテシン(特にT-2毒素、ベラキュリンA、ロリジンA及びアングイジン)、ウレタン、ビンデシン、ダカルバジン、マンノムスチン、ミトブロニトール、ミトラクトール、ピポブロマン、ガシトシン、アラビノシド(「Ara-C」)、シクロホスファミド、チオテパ、タキソイド、例えばパクリタキセル及びドセタキセル、クロラムブシル、ゲムシタビン、6-チオグアニン、メルカプトプリン、メトトレキサート、白金配位錯体、例えばシスプラチン、オキサリプラチン及びカルボプラチンなど、ビンブラスチン、白金、エトポシド(VP-16)、イホスファミド、ミトキサントロン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ノバントロン、テニポシド、エダトレキサート、ダウノマイシン、アミノプテリン、ゼローダ、イバンドロン酸、イリノテカン(例えば、CPT-11)、トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000、ジフルオロメチルオルニチン(DMFO)、レチノイド、例えばレチノイン酸など、カペシタビン、並びに上記のいずれかの薬学的に許容できる塩、酸又は誘導体が挙げられるが、これらには限定されない。
【0274】
一部の実施形態では、対象に、免疫療法剤も投与される。免疫療法は、対象の免疫系を利用して状態を治療又は予防する治療、例えば、がんワクチン、サイトカイン、標的特異的抗体の使用、T細胞療法、及び樹状細胞療法を指す。
【0275】
一部の実施形態では、対象に、免疫調節タンパク質も投与される。免疫調節タンパク質の例としては、Bリンパ球化学誘引物質(「BLC」)、C-Cモチーフケモカイン11(「エオタキシン-1」)、好酸球走化性タンパク質2(「エオタキシン-2」)、顆粒球コロニー刺激因子(「G-CSF」)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM-CSF」)、1-309、細胞間接着分子1(「ICAM-1」)、インターフェロンγ(「IFN-γ」)、インターロイキン-1α(「IL-1α」)、インターロイキン-1β(「IL-1β」)、インターロイキン1受容体遮断薬(「IL-1ra」)、インターロイキン-2(「IL-2」)、インターロイキン-4(「IL-4」)、インターロイキン-5(「IL-5」)、インターロイキン-6(「IL-6」)、インターロイキン-6可溶性受容体(「IL-6 sR」)、インターロイキン-7(「IL-7」)、インターロイキン-8(「IL-8」)、インターロイキン-10(「IL-10」)、インターロイキン-11(「IL-11」)、インターロイキン-12のサブユニットベータ(「IL-12 p40」又は「IL-12 p70」)、インターロイキン-13(「IL-13」)、インターロイキン-15(「IL-15」)、インターロイキン-16(「IL-16」)、インターロイキン-17(「IL-17」)、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド2(「MCP-1」)、マクロファージコロニー刺激因子(「M-CSF」)、γインターフェロンによって誘導されるモノカイン(「MIG」)、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド2(「MIP-1α」)、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド4(「MIP-1β」)、マクロファージ炎症性タンパク質-1-デルタ(「MIP-1δ」)、血小板由来増殖因子サブユニットB(「PDGF-BB」)、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド5、「ランテス(RANTES)」(Regulated on Activation, Normal T-cell Expressed and Secreted)、TEMPメタロペプチダーゼ阻害剤1(「TIMP-1」)、TIMPメタロペプチダーゼ阻害剤2(「TIMP-2」)、腫瘍壊死因子(「TNF」)、腫瘍壊死因子リンパ毒素-ベータ(「TNF-β」)、可溶性TNF受容体1型(「sTNFRI」)、sTNFRIIAR、脳由来神経栄養因子(「BDNF」)、塩基性線維芽細胞増殖因子(「bFGF」)、骨形成タンパク質4(「BMP-4」)、骨形成タンパク質5(「BMP-5」)、骨形成タンパク質7(「BMP-7」)、神経成長因子(「b-NGF」)、上皮増殖因子(「EGF」)、上皮増殖因子受容体(「EGFR」)、内分泌腺由来血管内皮増殖因子(「EG-VEGF」)、線維芽細胞増殖因子4(「FGF-4」)、角化細胞増殖因子(「FGF-7」)、増殖分化因子15(「GDF-15」)、グリア細胞由来神経栄養因子(「GDNF」)、成長ホルモン、ヘパリン結合EGF様増殖因子(「HB-EGF」)、肝細胞増殖因子(「HGF」)、インスリン様増殖因子結合タンパク質1(「IGFBP-1」)、インスリン様増殖因子結合タンパク質2(「IGFBP-2」)、インスリン様増殖因子結合タンパク質3(「IGFBP-3」)、インスリン様増殖因子結合タンパク質4(「IGFBP-4」)、インスリン様増殖因子結合タンパク質6(「IGFBP-6」)、インスリン様増殖因子1(「IGF-1」)、インスリン、マクロファージコロニー刺激因子(「M-CSFR」)、神経成長因子受容体(「NGFR」)、ニューロトロフィン3(「NT-3」)、ニューロトロフィン4(「NT-4」)、破骨細胞形成抑制因子(「オステオプロテジェリン」)、血小板由来増殖因子受容体(「PDGF-AA」)、ホスファチジルイノシトール-糖鎖生合成(「PIGF」)、Skp、カリン、F-box含有複合体(「SCF」)、幹細胞因子受容体(「SCFR」)、トランスフォーミング増殖因子アルファ(「TGFα」)、トランスフォーミング増殖因子ベータ-1(「TGFβ1」)、トランスフォーミング増殖因子ベータ-3(「TGFβ3」)、血管内皮増殖因子(「VEGF」)、血管内皮増殖因子受容体2(「VEGFR2」)、血管内皮増殖因子受容体3(「VEGFR3」)、VEGF-D 6Ckine、チロシン-プロテインキナーゼ受容体FIFO(「Axl」)、ベータセルリン(「BTC」)、粘膜関連上皮性ケモカイン(「CCL28」)、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド27(「CTACK」)、ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド16(「CXCL16」)、C-X-Cモチーフケモカイン5(「ENA-78」)、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド26(「エオタキシン3」)、顆粒球化学伝達タンパク質2(「GCP-2」)、GRO、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド14(「HCC-1」)、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド16(「HCC-4」)、インターロイキン9(「IL-9」)、インターロイキン17F(「IL-17F」)、インターロイキン18結合タンパク質(「IL-18 BPa」)、インターロイキン28A(「IL-28A」)、インターロイキン29(「IL-29」)、インターロイキン31(「IL-31」)、C-X-Cモチーフケモカイン10(「IP-10」)、ケモカイン受容体CXCR3(「I-TAC」)、白血病抑制因子(「LIF」)、Light、ケモカイン(Cモチーフ)リガンド(「リンホタクチン」)、単球走化性タンパク質2(「MCP-2」)、単球走化性タンパク質3(「MCP-3」)、単球走化性タンパク質4(「MCP-4」)、マクロファージ由来ケモカイン(「MDC」)、マクロファージ遊走阻止因子(「MIF」)、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド20(「MIP-3α」)。C-Cモチーフケモカイン19(「MIP-3β」)、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド23(「MPIF-1」)、マクロファージ刺激タンパク質アルファ鎖(「MSPα」)、核小体アセンブリータンパク質1様4(「NAP-2」)、分泌型リン酸化タンパク質1(「オステオポンチン」)、肺・活性化制御サイトカイン(「PARC」)、血小板因子4(「PF4」)、ストローマ細胞由来因子-1アルファ(「SDF-1α」)、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド17(「TRC」)、胸腺発現ケモカイン(「TECK」)、胸腺間質性リンパポエチン(「TSLP 4-1BB」)、CD166抗原(「ALCAM」)、クラスター分化80(「B7-1」)、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー17(「BCMA」)、表面抗原分類14(「CD14」)、表面抗原分類30(「CD30」)、表面抗原分類40(「CD40リガンド」)、がん胎児抗原関連細胞接着分子1(胆汁糖タンパク質)(「CEACAM-1」)、Death受容体6(「DR6」)、デオキシチミジンキナーゼ(「Dtk」)、1型膜糖タンパク質(「エンドグリン」)、受容体チロシンプロテインキナーゼerbB-3(「ErbB3」)、内皮-白血球接着分子1(「E-セレクチン」)、アポトーシス抗原1(「Fas」)、Fms様チロシンキナーゼ3(「Flt-3L」)、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー1(「GITR」)、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー14(「HVEM」)、細胞間接着分子3(ICAM-3)、IL-1 R4、IL-1 Rl、IL-10Rβ、IL-17R、IL-2Rγ、IL-21R、リソソーム膜タンパク質2(「LIMPII」)、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(「リポカリン-2」)、CD62L(L-セレクチン」)、リンパ管内皮(「LYVE-1」)、MHCクラスIポリペプチド関連配列A(「MICA」)、MHCクラスIポリペプチド関連配列B(「MICB」)、NRGI-βI、ベータ型血小板由来増殖因子受容体(「PDGF Rβ」)、血小板内皮細胞接着分子(「PECAM-1」)、RAGE、A型肝炎ウイルス細胞受容体1(「TIM-1」)、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバーIOC(「TRAIL R3」)、トラピンタンパク質トランスグルタミナーゼ結合ドメイン(「トラピン-2」)、ウロキナーゼ受容体(「uPAR」)、血管細胞接着タンパク質1(「VCAM-1」)、XEDAR、アクチビンA、アグーチ関連タンパク質(「AgRP」)、リボヌクレアーゼ5(「アンジオゲニン」)、アンジオポエチン1、アンジオスタチン、カテプシンS、CD40、潜在性ファミリータンパク質IB(「Cripto-1」)、DAN、Dickkopf関連タンパク質1(「DKK-1」)、E-カドヘリン、上皮細胞接着分子(「EpCAM」)、Fasリガンド(FasL又はCD95L)、Fcg RIIB/C、フォリスタチン、ガレクチン-7、細胞間接着分子2(「ICAM-2」)、IL-13 RI、IL-13R2、IL-17B、IL-2 Ra、IL-2 Rb、IL-23、LAP、神経細胞接着分子(「NrCAM」)、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター-1(「PAI-1」)、血小板由来成長因子受容体(「PDGF-AB」)、レジスチン、間質細胞由来因子1(「SDF-1β」)、sgpl30、分泌型frizzled関連タンパク質2(「ShhN」)、シアル酸結合免疫グロブリン型レクチン(「Siglec-5」)、ST2、トランスフォーミング増殖因子ベータ2(「TGFβ2」)、Tie-2、トロンボポエチン(「TPO」)、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー10D(「TRAIL R4」)、骨髄細胞上に発現される誘発受容体1(「TREM-1」)、血管内皮増殖因子C(「VEGF-C」)、VEGFR1、アディポネクチン、アジプシン(「AND」)、α-フェトプロテイン(「AFP」)、アンジオポエチン様4(「ANGPTL4」)、ベータ-2-ミクログロブリン(「B2M」)、基底細胞接着分子(「BCAM」)、糖鎖抗原125(「CA125」)、がん抗原15-3(「CA15-3」)、がん胎児性抗原(「CEA」)、cAMP受容体タンパク質(「CRP」)、ヒト上皮成長因子受容体2(「ErbB2」)、フォリスタチン、卵胞刺激ホルモン(「FSH」)、ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド1(「GROα」)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(「βHCG」)、インスリン様成長因子1受容体(「IGF-1 sR」)、IL-1 sRII、IL-3、IL-18 Rβ、IL-21、レプチン、マトリックスメタロプロテイナーゼ-1(「MMP-1」)、マトリックスメタロプロテイナーゼ-2(「MMP-2」)、マトリックスメタロプロテイナーゼ-3(「MMP-3」)、マトリックスメタロプロテイナーゼ-8(「MMP-8」)、マトリックスメタロプロテイナーゼ-9(「MMP-9」)、マトリックスメタロプロテイナーゼ-10(「MMP-10」)、マトリックスメタロプロテイナーゼ-13(「MMP-13」)、神経細胞接着分子(「NCAM-I」)、エンタクチン(「ニドジェン-1」)、ニューロン特異的エノラーゼ(「NSE」)、オンコスタチンM(「OSM」)、プロカルシトニン、プロラクチン、前立腺特異抗原(「PSA」)、シアル酸結合Ig様レクチン9(「Siglec-9」)、ADAM17エンドペプチダーゼ(「TACE」)、チログロブリン、メタロプロテイナーゼインヒビター4(「TIMP-4」)、TSH2B4、ディスインテグリン及びメタロプロテイナーゼドメイン含有タンパク質9(「ADAM-9」)、アンジオポエチン2、腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー13/酸性ロイシンリッチ核ホスホタンパク質32ファミリーメンバーB(「APRIL」)、骨形成タンパク質2(「BMP-2」)、骨形成タンパク質9(「BMP-9」)、補体成分5a(「C5a」)、カテプシンL、CD200、CD97、ケマリン、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6B(「DcR3」)、
脂肪酸結合タンパク質2(「FABP2」)、線維芽細胞活性化タンパク質アルファ(「FAP」)、線維芽細胞増殖因子19(「FGF-19」)、ガレクチン-3、肝細胞増殖因子受容体(「HGFR」)、IFN-α/βR2、インスリン様増殖因子2(「IGF-2」)、インスリン様増殖因子2受容体(「IGF-2R」)、インターロイキン-1受容体6(「IL-1R6」)、インターロイキン24(「IL-24」)、インターロイキン33(「IL-33」)、カリクレイン14、アスパラギンエンドペプチダーゼ(「レグマイン」)、酸化低密度リポタンパク質受容体1(「LOX-1」)、マンノース結合レクチン(「MBL」)、ネプリライシン(「NEP」)、Notchホモログ1、転座関連(Drosophila)(「Notch-1」)、腎芽細胞腫過剰発現(「NOV」)、オステオアクチビン、プログラム細胞死タンパク質1(「PD-1」)、N-アセチルムラモイル-L-アラニンアミダーゼ(「PGRP-5」)、セルピンA4、分泌型frizzled関連タンパク質3(「sFRP-3」)、トロンボモジュリン、Toll様受容体2(「TLR2」)、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー10A(「TRAIL RI」)、トランスフェリン(「TRF」)、WIF-lACE-2、アルブミン、AMICA、アンジオポエチン4、B細胞活性化因子(「BAFF」)、糖鎖抗原19-9(「CA19-9」)、CD163、クラステリン、CRTAM、ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド14(「CXCL14」)、シスタチンC、デコリン(「DCN」)、Dickkopf関連タンパク質3(「Dkk-3」)、デルタ様タンパク質1(「DLL1」)、フェツインA、ヘパリン結合成長因子1(「aFGF」)、葉酸受容体アルファ(「FOLR1」)、フューリン、GPCR関連ソーティングタンパク質1(「GASP-1」)、GPCR関連ソーティングタンパク質2(「GASP-2」)、顆粒球コロニー刺激因子受容体(「GCSFR」)、セリンプロテアーゼヘプシン(「HAI-2」)、インターロイキン-17B受容体(「IL-17B R」)、インターロイキン27(「IL-27」)、リンパ球活性化遺伝子3(「LAG-3」)、アポリポタンパク質A-V(「LDL R」)、ペプシノーゲンI、レチノール結合タンパク質4(「RBP4」)、SOST、ヘパラン硫酸プロテオグリカン(「シンデカン-1」)、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー13B(「TACI」)、組織因子経路阻害剤(「TFPI」)、TSP-I、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー10b(「TRAIL R2」)、TRANCE、トロポニンI、ウロキナーゼプラスミノーゲンアクチベーター(「uPA」)、カドヘリン5、2型又はCD144としても知られるVE-カドヘリン(血管内皮)(「VE-カドヘリン」)、WNTl誘導性シグナル伝達経路タンパク質1(「WISP-1」)、及び核因子κBの受容体活性化因子(「RANK」)などがあるが、これらには限定されない。
【0276】
一部の実施形態では、対象に、免疫チェックポイント阻害剤も投与される。免疫チェックポイント阻害は、がん細胞が免疫応答を阻止又はダウンレギュレートするために産生することができるチェックポイントを阻害することを広く指す。免疫チェックポイントタンパク質の例には、CTLA4、PD-1、PD-L1、PD-L2、A2AR、B7-H3、B7-H4、BTLA、KIR、LAG3、TIM-3又はVISTAが含まれるが、これらには限定されない。免疫チェックポイント阻害剤は、免疫チェックポイントタンパク質に結合して阻害する抗体又はその抗原結合断片であり得る。免疫チェックポイント阻害剤の例としては、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ピジリズマブ、AMP-224、AMP-514、STI-A1110、TSR-042、RG-7446、BMS-936559、MEDI-4736、MSB-0020718C、AUR-012及びSTI-A1010が挙げられるが、これらに限定されない。
【0277】
一部の実施形態では、本明細書中に提供される組成物(例えば、本明細書中に提供されるワクチン組成物)は、がん及び/又はCMV感染症を予防するために予防的に投与される。一部の実施形態では、ワクチンは、腫瘍細胞の増大を阻害するために投与される。ワクチンは、患者におけるがん細胞又はCMV感染細胞の検出の前又は後に投与され得る。腫瘍細胞の増大の阻害は、腫瘍細胞の増殖の予防、停止、緩徐化、又は腫瘍細胞の死滅を指すと理解される。一部の実施形態では、本明細書に記載のペプチド、核酸、抗体又はAPCを含むワクチンの投与後に、炎症誘発性応答が誘導される。炎症誘発性免疫応答は、炎症誘発性サイトカイン及び/又はケモカイン、例えば、IFN-γ及び/又はIL-2の産生を含む。炎症誘発性サイトカイン及びケモカインは、当該技術分野において周知である。
【0278】
併用療法は、後続治療の投与を行う際に、投与された第1の薬剤の治療効果が完全には消失しないように、活性化合物を順次、同時及び別々に、並びに/又は共投与することを含む。一部の実施形態では、第2の薬剤は、第1の薬剤とともに製剤化されてもよく、別々の医薬組成物として製剤化されてもよい。
【0279】
「投与すること」又は「投与」とは、特定の選択された経路による、動物対象への、本明細書中に開示される単離されたEphA3結合剤、CAR、コードする核酸、遺伝子構築物、細胞又は組成物の導入を意味する。
【0280】
EphA3結合剤、CAR若しくはそのバリアント、又はコードする核酸、遺伝子構築物、若しくは細胞、又はそれらを含む組成物の投与は、静脈内、筋肉内、腹腔内、頭蓋内、経皮、経口、鼻腔内、肛門及び眼内を含む、任意の既知の非経口、局所又は経腸経路によるものであり得るが、これらに限定されない。
【0281】
剤形としては、錠剤、分散液、懸濁液、注射剤、溶液、シロップ、トローチ、カプセル、座剤、エアゾール、経皮パッチなどが挙げられる。これらの剤形は、この目的のために特別に設計された制御放出デバイス、又はこの様式で追加的に作用するように改変された他の形態のインプラントの注射又は移植も含み得る。治療剤の制御放出は、例えば、アクリル樹脂、ワックス、高級脂肪族アルコール、ポリ乳酸及びポリグリコール酸、並びにヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの特定のセルロース誘導体を含む疎水性ポリマーでこれを被覆することによって生じさせることができる。加えて、制御放出は、他のポリマーマトリックス、リポソーム及び/又はミクロスフィアを使用することによっても生じさせることができる。
【0282】
経口又は非経口投与に適した本発明の組成物は、それぞれが予め定められた量の本発明の1つ以上の治療剤を含有するカプセル、サシェ若しくは錠剤などの個別のユニットとして、粉末若しくは顆粒として、又は水性液体、非水性液体、水中油型エマルジョン若しくは油中水型エマルジョン中の溶液又は懸濁物として提示することができる。そのような組成物は、薬学のいずれの方法によっても調製することができるが、すべての方法は、1つ以上の必要な成分を構成する担体に、上記のような1つ以上の薬剤を会合させるステップを含む。一般に、組成物は、本発明の薬剤を液体担体又は細かく分割された固体担体又はその両方と均一かつ密接に混和し、その後、必要に応じて、産物を所望の提示物に成形することによって調製される。
【0283】
別の関連する態様では、本発明は、対象におけるがんの予防及び/又は治療のための医薬品の製造における、本明細書に記載のEphA3結合剤、本明細書に記載のCAR、本明細書に記載の単離された核酸、本明細書に記載の遺伝子構築物及び/又は本明細書に記載の宿主細胞の使用に存する。
【0284】
一実施形態では、がんは、多形性神経膠芽細胞腫であるか又はそれを含む。
【0285】
標識及びコンジュゲート
さらに別の態様では、本発明は、EphA3又はEphA3を発現する細胞を検出する方法であって、本明細書における前記のEphA3結合分子又はCARとEphA3との複合体を形成させて、それによってEphA3又はEphA3を発現する細胞を検出するステップを含む方法を提供する。
【0286】
一実施形態では、本方法は、EphA3又はEphA3を発現する細胞を、本明細書の上記又は他の場所に記載されたEphA3抗原結合分子又はCARと接触させる最初のステップを含む。
【0287】
したがって、一部の実施形態では、本発明の抗原結合分子は、検出可能な部位をさらに含む。
【0288】
ある特定の実施形態では、細胞は、がん細胞であるか、又はがん細胞を含む。
【0289】
したがって、本明細書中に開示されるEphA3結合剤又はCARを、がんの医学的診断を補助するために使用し得ることが理解されるであろう。好適には、本方法は、生体試料中に存在する、又は生体試料から入手したがん細胞によって発現される場合などに、EphA3を検出することを含む。ある特定の実施形態では、生体試料は、ヒトから入手した1つ以上の液体、細胞、組織、臓器又は器官試料を含む病理学的試料であり得る。非限定的な例としては、血液、血漿、唾液、血清、リンパ球、尿、糞便、羊水、頸部試料、脳脊髄液、組織生検、骨髄及び皮膚などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0290】
一部の実施形態では、抗原結合分子は、検出可能部分を含む。例えば、EphA3抗原結合分子及び/又はCARは、蛍光標識、リン光標識、発光標識、免疫検出可能標識(例えば、エピトープタグ)、放射性標識、化学標識、核酸標識又は酵素標識を含む。抗原結合分子は、検出可能部分によって共有結合性または非共有結合性に標識され得る。
【0291】
蛍光標識としては、例えば、フルオレセイン、ローダミン、アロフィコシアニン、エオシン、及びNDB、緑色蛍光タンパク質(GFP)、希土類のキレート剤(ユーロピウム(Eu)、テルビウム(Tb)、及びサマリウム(Sm)など)、テトラメチルローダミン、テキサスレッド、4-メチルウンベリフェロン、7-アミノ-4-メチルクマリン、Cy3、及びCy5が挙げられる。
【0292】
放射性標識としては、ヨウ素123、ヨウ素125、ヨウ素126、ヨウ素131、ヨウ素133、臭素77、テクネチウム99m、インジウム111、インジウム113m、ガリウム67、ガリウム68、ルテニウム95、ルテニウム103、ルテニウム105、水銀207、水銀203、レニウム99m、レニウム101、レニウム105、スカンジウム47、テルリウム121m、テルリウム122m、テルリウム125、ツリウム165、ツリウム167、ツリウム16、銅67、フッ素18、イットリウム90、パラジウム100、ビスマス217、及びアンチモン211などの放射性同位体が挙げられる。
【0293】
発光標識としては、放射性発光標識、化学発光標識(例えば、アクリジニウムエステル、ルミノール、イソルミノール)、及び生物発光標識が挙げられる。免疫検出可能標識としては、ハプテン、ペプチド/ポリペプチド、抗体、受容体、及びビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、又はジゴキシゲニンなどのリガンドが挙げられる。核酸標識としては、アプタマーが挙げられる。酵素標識としては、例えば、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、及びルシフェラーゼが挙げられる。
【0294】
一部の実施形態では、本発明の抗原結合分子は、化学的部分とコンジュゲートされる。化学的部分は、治療効果をもたらすための部分であり得る。抗体-薬物コンジュゲートについては、例えば、Parslowら、Biomedicines. 2016 Sep;4(3):14に総説されている。一部の実施形態では、化学的部分は、薬物部分(例えば、細胞傷害剤)であり得る。一部の実施形態では、薬物部分は、化学療法剤であり得る。
【0295】
標識は、ビオチン、アビジン、ジゴキシゲニン、酵素(例えば、アルカリホスファターゼ又は西洋ワサビペルオキシダーゼ)、フルオロフォア(例えば、FITC、テキサスレッド、クマリン)、放射性同位元素(例えば、125I、131I、67Ga、111In)及び/又は直接可視標識(例えば、金粒子)を含む群から選択し得るが、これらには限定されない。
【0296】
好適には、EphA3の検出は、EphA3結合剤又はCARと、EphA3又はEphA3を発現する細胞との検出可能な複合体を形成させるステップを含む。そのようにして形成された複合体を、イムノブロット法、免疫組織化学、免疫細胞化学、免疫沈降、ELISA、フローサイトメトリー、磁気ビーズ分離、表面プラズモン共鳴などのバイオセンサーに基づく検出システム及びPETイメージングなどのイメージングを含むが、それらには限定されない、当技術分野で公知の任意の技術、アッセイ又は手段によって検出することができる。
【0297】
検出を容易にするために、EphA3結合剤又はCARを、本明細書における前記のように直接標識してもよく、又は標識された二次抗体を使用することもできる。標識は、本明細書における前記の通りであり得る。
【0298】
一部の実施形態では、本明細書中に開示される抗体又は抗体断片を、1つ以上の検出試薬、例えば、これらに限定されないが、酵素、酵素基質(例えば、ルミノール、AMPPD、NBT)、二次抗体及び/又は磁気ビーズなどとともに含む検出キットが提供され得る。
【0299】
別の態様では、本発明は、配列番号13~156及び/若しくは表4~7のいずれか1つに記載のアミノ酸配列又はそれに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる、単離されたタンパク質を提供する。
【0300】
最後の一態様では、本発明は、配列番号1~12及び/若しくは表3のいずれか1つに記載の核酸配列又はそれに対して少なくとも70%同一である核酸配列を含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる、単離された核酸を提供する。
【0301】
前述の態様に関して、「対象」という用語は、ヒト、パフォーマンス用動物(ウマ、ラクダ、グレーハウンドなど)、家畜(ウシ、ヒツジ、ウマなど)及び愛玩動物(ネコ及びイヌなど)を含む哺乳動物を含むが、ただしそれらに限定されない。一部の実施形態では、対象はヒトである。
【0302】
好ましい実施形態を詳細に説明し、実用的な効果を得るために、以下の非限定的な実施例を参照する。
【実施例
【0303】
実施例1
理論的根拠
キメラ抗原受容体(CAR)を発現する遺伝子改変T細胞による養子免疫療法は、血液がんの治療においてかなりの成功を示している。これらの飛躍的進展にもかかわらず、固形腫瘍の治療におけるCAR T細胞の成功は限定的である。
【0304】
CARは、任意の抗体、又は受容体リガンドの腫瘍標的化特異性を利用して、T細胞の細胞溶解能力を再指向化させる。治療上の価値は、腫瘍活性を得る一方でオフターゲット活性を低くするために、標的となる特定のがんバイオマーカー、又はマーカーの組合せに対する結合領域に、目的に合った操作を行えることにある。GBM、及びいくつかの他のがんにおいて、EphA3は治療標的として同定されている。EphA3はがんで過剰発現され、腫瘍の成長、侵襲性、及び転移と関連がある6~9。EphA3は、腫瘍細胞を低分化状態に維持する上で極めて重要であるように思われ、がん性幹細胞(CSC)の自己再生を促進する。このため、EphA3の標的化阻害は、固形がんを治療するための有望な治療アプローチであり、CSCを標的化することにより、不均一ながん、転移性がん、又は治療に対して抵抗性であると判断されるがんに対しても効果がある可能性がある。
【0305】
EphA3を標的とする治療用抗体は、現在、再発性の神経膠芽細胞腫患者における臨床的評価が進行中であり、十分な忍容性があるほか、特定のがんコホートにおいて有望な臨床活性が実証されている(10)。しかし、阻害剤の薬理学的レベルを、特に脳において(11)達成及び維持するという困難さを考慮した上で、本実施例では、従来の戦略を上回って、脳における標的化された抗腫瘍反応をもたらす可能性がある、CAR T細胞を使用するアプローチを検討した。
【0306】
設計
EphA3モノクローナル抗体
ヒトEphA3の細胞外ドメイン配列(P29320、21~541aa)を設計し、最適化して、合成した上で、pcDNA3.4ベクターにサブクローニングした。Expi293細胞での発現のために、トランスフェクション等級プラスミドのmaxi調製を行った。クローニング戦略を図1に示す。
【0307】
Expi293F細胞を、無血清Expi293(商標)発現培地を入れた三角フラスコ内で、8% CO、37℃にてオービタルシェイカー上で増殖させた。トランスフェクションの日に、DNAとトランスフェクション試薬を最適な比で混合し、続いてフラスコに添加した。細胞培養上清を第6日に採取し、精製のためにアフィニティー精製カラムにローディングした。適切な緩衝液による洗浄及び溶出の後に、溶出画分をプールして、緩衝液を最終的な製剤化緩衝液に交換した。精製されたタンパク質を、分子量及び純度の測定のためにSDS-PAGE及びウエスタンブロット法によって分析した(図2)。BSAを標準物質として用いるBCA(商標)アッセイによって濃度を決定したところ、純度およそ95%の1.77mg/mLのタンパク質が得られ、複数回の凍結-解凍を避けるために複数のアリコートにした上で-80℃で保存した。
【0308】
3匹のBALB/cマウス及び3匹のC57マウスに対して、以下の表に示す免疫処置スケジュールに従って、組換えヒトEphA3タンパク質による免疫処置を行った。
【0309】
【表2】
【0310】
各群のマウスについて、細胞融合及びクローンのプレーティングを電気融合によって行った。各融合による融合細胞のすべてを96ウェルプレートにプレーティングし、馴化培地を、EphA3タンパク質を用いるELISAによってスクリーニングした。陽性上清は無関係なhisタグ付加タンパク質に関しては陰性であることがELISAによって確かめられた。EphA3特異性に基づいて、5つの親ハイブリドーマクローンをサブクローニング用に選択した。10種のモノクローナルサブクローン上清を、ELISAにおいて組換えEphA3とのEphA3結合効率に関して、又はフローサイトメトリーにより、EphA3を発現する白血病細胞株LK63とのEphA3結合効率に関してスクリーニングした(図3及び図4-1~4-3)。ハイブリドーマ3C3-1及び2D4-1をシークエンシングのために選択し、結合効率がより低いクローン(6C9-1など)は除外した。
【0311】
シークエンシングのために、3C3-1及び2D4-1ハイブリドーマ細胞から、TRIzol(登録商標)試薬を使用して全RNAを単離した。続いて、PrimeScript(商標)1st Strand cDNA合成キットを使用し、アイソタイプ特異的アンチセンスプライマー又は汎用プライマーのいずれかを使用して、全RNAをcDNAに逆転写させた。重鎖及び軽鎖の抗体断片をcDNA末端迅速増幅法(RACE)によって増幅させた。増幅された抗体断片を標準的なクローニングベクター中に別々にクローニングした。コロニーPCRを行って、正しいサイズのインサート及び表3にリスト化したコンセンサス配列を有するクローンをスクリーニングした。
【0312】
【表3】
【0313】
3C3-1及び2D4-1の相補性決定領域(CDR)を表4~7にリスト化している。
【0314】
本発明者らは、様々なEphA3特異的高親和性相補性決定領域(CDR)を作製した。これらのユニーク配列はEphA3特異的結合ドメインを形成し、CAR T細胞技術を使用して標的EphA3に対する単鎖可変断片(scFv)を作製するために、又はEphA3が標的である他の用途のために使用することができる。
【0315】
【表4】
【0316】
【表5】
【0317】
【表6】
【0318】
【表7】
【0319】
結果
神経膠腫細胞株上のEphA3
クローン3C3-1を使用して、神経膠腫細胞株をEphA3発現に関してスクリーニングした(図5)。U87細胞は陰性であったが、D270細胞はある割合でEphA3陽性腫瘍細胞及び陰性腫瘍細胞を示した。U251細胞は大部分がEphA3陽性である。これらの腫瘍細胞株は、不均一な腫瘍(D270)に対する免疫治療アプローチを試験するために、また、EphA3発現が亢進している特に高悪性度のGBM(U251)を評価するためにも有益であると考えられる。
【0320】
EphA3-CAR T細胞
単鎖可変断片(scFv)は、可動性ペプチドリンカーによって一つに接合された重鎖可変領域(V)及び軽鎖可変領域(V)からなる。クローン3C3-1及び2D4-1のscFv配列を比較したところ、アラインメントの同一性は48%未満であり、このことはこれらが別個の配列であることを意味する。これらのscFv配列を使用して、本発明者らの第2世代CAR構築物を作り出すためのレンチウイルス発現プラスミドを作製した。手短に述べると、本発明者らは、抗EphA3 scFvの個々のコード配列を、ヒンジ、CD8膜貫通領域、及びCD3-ζを有するヒト4-1BB又はCD28の細胞質領域と連結した(図6)。これらの配列をpD2109(レンチウイルス骨格プラスミド‐ATUM)にサブクローニングして、レンチウイルス発現プラスミドを作製した。HEK293Tヒト胚性腎臓細胞へのトランスフェクションを介してレンチウイルス粒子を産生させた。リポフェクタミン2000を使用して、細胞に発現プラスミド(FA301又はFA302)及びpMDL、pREV及びpVSV-Gプラスミドをトランスフェクトした。pD2109を対照として使用した。293T細胞におけるCAR配列の発現が、RT-PCRによって確かめられた(図7)。トランスフェクションの48時間後及び72時間後に、ウイルス上清を採取した。
【0321】
【表8】

【0322】
Jurkat細胞株におけるEphA3-CAR発現
Jurkat細胞は不死化ヒトT細胞株の一つであり、レンチウイルス含有上清の力価を決定するためにこれを使用した。CAR構築物はIres_RFPと縦列しているため、表面でのRFPの発現を、形質導入のレポーターとして使用した。このため、Jurkat細胞に形質導入を行ってRFP発現を定量することによって、形質導入効率を決定した。形質導入効率は32~58%(1×10個の細胞において)の範囲であり、その結果、力価の範囲は3.2~5.8×10IU/mLの範囲となった。対照pD2109_GFPレンチウイルスの力価は8×10IU/mLであった(図8)。
【0323】
CAR配列及びRFP配列は両方とも、表面膜発現のためのCD8リーダー配列が頭部にある。それでもなお、CARの表面発現及び標的との結合を確かめるために、細胞をEphA3-Hisタンパク質とともにインキュベートして、αHisタグAbによって染色した。FACSの結果から、EphA3-CARが表面に発現され、RFP高発現を伴う細胞において主としてEphA3に結合することが示されている(図9)。CD69はT細胞における初期活性化マーカーであり、増殖及びシグナル伝達に関与する。本発明者らは、CD69をJurkat-CAR細胞のEphA3特異的活性化のマーカーとして使用した。RFP陰性Jurkat細胞におけるCD69発現は高レベルであるにもかかわらず、結果からは、膜に結合したEphAとの相互作用によって(図10)、又はLk63細胞(EphA3陽性腫瘍細胞株)とのインキュベーションによって(図11)、CAR構築物を発現する細胞(RFP陽性細胞)では中程度の活性化が起こることが示されている。CD69発現のわずかな増加のみが観察されたが、Jurkat-CARにおける活性化マーカーの発現はCAR機能の有望な指標である。このため、これらの細胞で起こった活性化が低レベルであったのは、形質導入のために使用した感染多重度(MOI)が低く、その結果として、細胞あたりの組込みの数が少なかったこと(場合によっては1個のみ)が理由であると推測している。本発明者らは、形質導入のMOIを高める目的でレンチウイルスを濃縮することによって、このことについて今後対処する予定である。
【0324】
EphA3-CARを作製するためのPBMC由来のT細胞
静脈切開から24時間以内の密度勾配遠心分離によって、末梢血からPBMCを収集した。PBMC画分を取り出し、洗浄した上で算定した。T細胞TransAct(商標)によるCD3及びCD28刺激を介した活性化及び増大によって、ポリクローナルT細胞を作製した。以前に記載されたプロトコールを使用して、CMV特異的T細胞をPBMCから増大させた10、11。手短に述べると、PBMCの3分の1を、複数のCMV抗原に由来する26種のT細胞ペプチドエピトープの特製プールとともに1時間インキュベートし、洗浄した上で残りのPBMCと混合し、続いてフラスコに細胞2~5×10個/cmの密度で播種した。
【0325】
刺激後の第2日に、pD2109(GFPレポーター)及びFA301(RFPレポーター)レンチウイルスを使用して、細胞に対して形質導入を行った。細胞を、2~3日毎に添加した組換えIL-2を含有する培地中で培養した。形質導入後の第3日のFACSにより、この両方のレンチウイルスの形質導入効率が低いことが明らかになった(図12)。
【0326】
結論
本発明者らは、EphA3特異的モノクローナル抗体を首尾良く作製し、それをCARレンチウイルス構築物におけるscFvとして使用した。Jurkat-EphA3-CARはキメラタンパク質を表面に発現し、EphA3の認識に応じて、初期活性化マーカーをアップレギュレートする。本発明者らは、Jurkat細胞及びCMV特異的T細胞の両方にEph-A3-CARによる形質導入が可能であることをさらに実証する。
【0327】
実施例2
ウイルス力価及びT細胞形質導入効率を改善することを目的として、インサートのサイズを減らすために、構築物からIRES及びRFPレポーター配列を除去した。これらのより小型の構築物FA3-05-BBζ及びFA3-06-28ζを使用して、4℃、10,500rpmでの4時間の超遠心分離ステップ(SW 32 Ti遠心機)を含めて、前述の通りにレンチウイルスを作製した。ポリクローナルT細胞を前述の通りに培養し、第2日に形質導入を行った。CARを発現するT細胞を、抗マウスIgG AF546による表面染色によって検出し、細胞をフローサイトメトリーによって分析した。CAR形質導入効率は第12日の時点でも低いままであった。細胞をCAR+発現に関して選別し、最長で第20日まで培養した(図13のA)。
【0328】
本発明者らは次に、これらのFA3-CARのインビトロ機能を判定した。形質導入されたT細胞を、EphA3+腫瘍細胞株の一つであるLK63によって一晩かけて刺激した。標準的な細胞内染色プロトコールを使用して、本発明者らは、EphA3-CAR T細胞が、4-1BB(FA305)又はCD28(FA306)共刺激のいずれの場合にも、T細胞活性化性及び免疫調節性の分子であるTNFの同等な標的誘発性サイトカイン分泌を起こすことを立証した(図13のB)。
【0329】
Biosettia社による特製のpLV-Ef1a発現プラスミド骨格を使用して、FA3-06-28ζ構築物のサイズをさらに縮小した。以後の検討は、このプラスミドを用いて作製したレンチウイルスによる形質導入を行ったT細胞を使用して行い、これをCAR EpHA3 T細胞と称するものとする。
【0330】
CAR EpHA3レンチウイルスを使用して、ポリクローナルT細胞(抗CD3/28刺激T細胞)及びCMV特異的T細胞に形質導入を行った。CAR発現を前述の通りに決定し、CMV-CAR特異性を、HLA複合体‐CMVに対するペプチド四量体を使用するFACS分析によって決定した(図14)。EphA3-CARのインビトロ機能を前述の通りに決定した。形質導入されたT細胞を、LK63細胞によって一晩かけて刺激した。標準的な細胞内染色プロトコールを使用して、本発明者らは、EphA3-CAR T細胞がTNFの標的誘発性サイトカイン分泌を起こすことを立証した。刺激後に、CMV-pepmixから作製したCAR T細胞は、TNF、IFNγ及びCD107aを含む複数のエフェクター分子を発現し、このことはこれらの細胞がより大きな死滅能力を有する可能性を示唆する(図15)。EphA3-CARの特異性及び死滅能力の両方を判定するために、本発明者らは、xCELLigenceを使用するリアルタイム細胞傷害アッセイ(RTCA)を行った。このアッセイは、標的細胞の死滅を100時間の期間にわたって測定する。内因性EphA3発現を有する神経膠腫細胞株U251を、陽性標的として、陰性対照としてのEphA3陰性神経膠腫細胞U87とともに使用した。Dayらによる以前の研究により、標的としてのこれらの細胞の使用を検証する同所性GBMモデルにおいて、U251 EphA3+グリア細胞株が抗EphA3(クローンIIIA4)抗体に反応することが示されている16。RTCAアッセイにおいて、標的細胞とEphA3-CAR T細胞とのインキュベーションは、処置100時間以内に80%の細胞溶解を誘導し、EphA3陰性神経膠腫細胞の死滅は全く観察されなかった(図16のA)。標的細胞のEphA3 CAR性死滅が、RTCAにより、1:1、5:1及び10:1のエフェクター・標的比で観察された(図16のB)。EphA3-CMV CAR T細胞の死滅能力をEphA3 CARと比較するために、本発明者らは、1:1、5:1及び10:1のT細胞:標的U251比を使用するRTCAを行い、特に10:1で標的細胞の効率的な死滅を観察し、それはEphA3-CMV CAR T細胞でより明白であった(図16のC)。
【0331】
実施例3
EPHA3-CAR T細胞はインビボで強力な抗腫瘍効果を示す
CAR EphA3 T細胞がグリア細胞株に対して有意なインビトロ細胞傷害性を有することを示した後に、本発明者らは次に、インビボでのそれらの治療能力を評価した。
【0332】
免疫不全NOD.Rag1KO.IL2RγcKO(NRG)マウスに対して、ルシフェラーゼを発現する神経膠腫細胞株U251(EphA3+)又はU87(EphA3-)を、側腹に皮下移植した(異所性モデル)(図17-1のA)。腫瘍サイズを測定するか又はバイオルミネセンスによって決定した。第10日の時点で腫瘍がおよそ25mmに達したため、マウスに対して、EphA3-CAR T細胞、NT(非形質導入)T細胞、又はCAR19(非特異的CAR T細胞)T細胞による、細胞の2回の静脈内注射のうちの初回の注射を行った。血流中hCD45が第17日に検出され、これは大部分がCD4 CAR T細胞であった(図17-1のB)。その上、EphA3-CAR T細胞の投与を受けたU251担持マウスにおいてKi67の発現増大が観察され、このことから、この治療群におけるこれらのCAR T細胞の標的誘発性増殖が示唆された(図17-1のC)。
【0333】
注目されることとして、CAR EphA3 T細胞による治療は、U251(EphA3+)腫瘍を移植されたマウスにおいて完全な応答を誘導し、第30日までに完全に腫瘍が消失した(図17-2のD及びF)。非形質導入(NT)T細胞又は非特異的T細胞(CAR19 T細胞)の投与を受けたマウス、及びU87(EphA3)担持マウスは、腫瘍成長を抑制することができなかった(図17-2のD~G)。
【0334】
結論
これらのデータは、これらのCAR T細胞がEphA3を標的とし、強力な抗腫瘍活性を媒介することを実証する。EphA3 CAR T細胞による治療は、異所性異種移植GBM腫瘍モデルにおいて腫瘍退縮を生じさせる。これらのデータは、GBMなどのがんに対する新たな治療としてのEphA3 CAR T細胞の使用を裏付けるものである。
【0335】
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【0336】
本出願は、2019年10月9日に出願されたオーストラリア特許出願第2019903802号による優先権を主張し、その内容及び要素はすべての目的のために参照によって本明細書に組み入れられる。
図1
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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図12
図13
図14
図15
図16
図17-1】
図17-2】
【配列表】
2022552786000001.app
【国際調査報告】