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▶ オブシュチェストボ・エス・オグラニチェノイ・オトベツトベノスティウ“オベディネナヤ・コンパニヤ・ルサール・インツェネルノ-テフノロギチェスキー・ツェントル”の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-20
(54)【発明の名称】連続鋳造用鋳型
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/06 20060101AFI20221213BHJP
   B22D 11/00 20060101ALI20221213BHJP
   B22D 11/055 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
B22D11/06 320
B22D11/00 E
B22D11/055 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520785
(86)(22)【出願日】2020-09-21
(85)【翻訳文提出日】2022-04-04
(86)【国際出願番号】 RU2020050235
(87)【国際公開番号】W WO2021071395
(87)【国際公開日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】2019132031
(32)【優先日】2019-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521365037
【氏名又は名称】オブシュチェストボ・エス・オグラニチェノイ・オトベツトベノスティウ“オベディネナヤ・コンパニヤ・ルサール・インツェネルノ-テフノロギチェスキー・ツェントル”
【氏名又は名称原語表記】OBSHCHESTVO S OGRANICHENNOY OTVETSTVENNOST’YU OBEDINENNAYA KOMPANIYA RUSAL INZHENERNO-TEKHNOLOGICHESKIY TSENTR
【住所又は居所原語表記】UL.POGRANICHNIKOV,D.37,STR.1,G.KRASNOYARSK,660111,RUSSIA
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100212705
【弁理士】
【氏名又は名称】矢頭 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】サルニコフ、アレクサンドル・ウラジーミロビチ
(72)【発明者】
【氏名】ビクトロブスキー、イバン・スタニスラボビッチ
(72)【発明者】
【氏名】ペレビン、アレクサンドル・ゲンナデビッチ
(72)【発明者】
【氏名】フロロフ、ビクトル・フェドロビッチ
(72)【発明者】
【氏名】アラビン、アレクサンドル・ニコラエビッチ
【テーマコード(参考)】
4E004
【Fターム(参考)】
4E004AC02
4E004DA01
4E004NC08
4E004SB04
(57)【要約】
本鋳型は、その外面上に開口溝を有する鋳造ホイールと、前記開口溝を覆うように鋳造ホイールの外面に隣接する連続ベルトと、少なくともホイールの外面、内面及び両側面の方向から、鋳造ホイール及び連続ベルトに制御された方法で冷却液が供給されることを可能にするように設計された冷却システムと、を含み、ここで、ホイールの内面の方向からの冷却液の流れと、ホイールの外面の方向からの冷却液の流れとの比が1.9~3.0であり、鋳造ホイールの側面からの冷却液の総流れと、鋳造ホイールの内面の方向からの冷却液の流れとの比が1.3~1.7である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 外面(15)に等脚台形の形状の断面を有する開口溝が作製されており、前記台形の大きい方の底辺(19)の長さと、前記台形の小さい方の底辺(20)の長さとの比が1.3~1.6の範囲にある、鋳造ホイール(6)と、
- 所定の前記開口溝を閉じるように、前記鋳造ホイール(6)のその外面(15)側に隣接する連続ベルト(4)と、
- 少なくとも前記ホイール(6)の前記外面(15)側、内面(17)側及び両側面(16)側に位置し、前記鋳造ホイール(6)及び前記連続ベルト(4)への冷却剤の調節可能な供給を可能とするように作製され、前記ホイールの前記内面(17)側の冷却剤流と、前記ホイール(6)の前記外面(15)側の冷却剤流との比が1.9~3.0であり、前記鋳造ホイール(6)の前記側面(16)側の総冷却剤流と、前記鋳造ホイール(6)の前記内面(15)側の冷却剤流との比が1.3~1.7である、冷却システムと、
を含む連続鋳造用鋳型(1)。
【請求項2】
前記冷却システムは、前記鋳造ホイール(6)の前記外面(15)、前記内面(17)及び前記側面(16)に沿って位置し、調節可能な冷却剤供給を可能とするように作製された少なくとも4つの円弧状の管状スプリンクラーを含み、即ち、
- 前記鋳造ホイール(6)及び前記連続ベルト(4)の前記外面(15)側に位置し、それらに冷却剤を供給するために使用される外部スプリンクラー(11)と、
- 前記鋳造ホイール(6)の前記内面(17)側に位置し、それに冷却剤を供給するために使用される内部スプリンクラー(12)と、
- 前記鋳造ホイールの右側面及び左側面(16)の側にそれぞれ位置し、それらに冷却剤を供給するための右側スプリンクラー(10)及び左側スプリンクラー(13)と、である、請求項1に記載の鋳型。
【請求項3】
前記管状スプリンクラー(10、11、12、13)は、内部横仕切りによって独立したゾーンに分割されており、その各々において、それらは、各ゾーンへの独立した冷却剤の調節された供給のために、前記冷却剤流の個々の制御を提供する、請求項2に記載の鋳型。
【請求項4】
冷却剤の制御された供給が、各スプリンクラー(10、11、12、13)の全長に沿って分布したノズル(7)を通じて行われる、請求項2に記載の鋳型。
【請求項5】
前記冷却剤流は、遮断弁及び対応する流れ制御ノズルユニット(7)を制御することによって調整される、請求項4に記載の鋳型。
【請求項6】
冷却剤が、個々の冷却剤流制御ユニットを有するフラットフレームノズルを通じて供給される、請求項4に記載の鋳型。
【請求項7】
水が冷却剤として使用される、請求項1に記載の鋳型。
【請求項8】
鉄、ケイ素、マグネシウム、ジルコニウム、スカンジウム、マンガン、チタン、銅、ニッケル及びクロムを含む群から選択される少なくとも1つの合金化元素を含有するアルミニウム合金の凝固のために使用され、鋳造インゴットの構造が、その中に分布した共晶由来の粒子を有するアルミニウムマトリックスである、請求項1に記載の鋳型。
【請求項9】
請求項1に記載の鋳型における連続鋳造インゴットを冷却するための方法であって、以下の比率に従ってその冷却剤流を調整するとき、少なくとも前記ホイール(6)の前記外面(15)側、前記内面(17)側及び前記両側面(16)側に位置する、前記鋳型(5)の前記鋳造ホイール(6)及び前記連続ベルト(4)への冷却剤の調節可能な供給を含む:
前記鋳造ホイール(6)の前記内面(17)側の流量と、前記ホイール(6)の前記外面(15)側の流量との比が、1.9~3.0の範囲にあり、
前記鋳造ホイールの前記側面(16)側の総冷却剤流と、前記鋳造ホイール(6)の前記内面(17)側の冷却剤流との比が、1.3~1.7の範囲にある、方法。
【請求項10】
冷却剤は、前記鋳造ホイール(6)の前記外面(15)、前記内面(17)及び前記側面(16)に沿って位置し、調節可能な冷却剤供給を可能とするように作製された少なくとも4つの円弧状の管状スプリンクラー(10、11、12、13)を通じて供給され、即ち、
- 前記鋳造ホイール(6)及び前記連続ベルト(4)の前記外面(15)側に位置し、それらに冷却剤を供給するために使用される外部スプリンクラー(11)と、
- 前記鋳造ホイールの前記内面(17)側に位置し、それに冷却剤を供給するために使用される内部スプリンクラー(12)と、
- 前記鋳造ホイール(6)の右側面及び左側面(16)の側にそれぞれ位置し、それらに冷却剤を供給するために使用される右側スプリンクラー(10)及び左側スプリンクラー(13)と、である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記管状スプリンクラー(10、11、12、13)は、内部横仕切りによって独立したゾーンに分割されており、その各々において、それらは、各ゾーンへの独立した冷却剤の調節された供給のために、冷却剤流の個々の制御を提供する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
冷却剤が、各スプリンクラー(10、11、12、13)の全長に沿って分布したノズル(7)を通じて供給される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記冷却剤流の制御は、遮断弁及び前記ノズル(7)の対応する流れ制御ユニットを制御することによって行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
冷却剤が、個々の冷却剤流制御ユニットを有するフラットフレームノズルを通じて供給される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
水が前記冷却剤として使用される、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冶金学の分野、特に、金属の連続鋳造に関し、アルミニウム及びその合金を含む、金属の連続鋳造インゴットを製造するために使用され得る。
【背景技術】
【0002】
ホイールベルト型連続鋳造プラントで使用される冷却装置が知られている(IT1126618、1986年5月21日)。冷却装置は、冷却剤を噴霧するノズルのホルダーが設けられたリングを含む。リングは、鋳造中にインゴットの冷却を行うために鋳造ホイール上に取り付けられ、メンテナンス中に取り外され得る。この装置の欠点は、インゴットの不均一な冷却であり、これは、金属凝固中に、不純物の偏析、割れ、表面粗さ及び脆性につながる。加えて、既知の装置は、不十分な冷却速度を提供し、これは、生産能力の低下につながる。
【0003】
高速連続鋳造のための装置が知られている(US3,774,669、1973年11月27日)。既知の装置は、鋳造ホイールの外側に冷却剤を噴霧するノズルを含む鋳型であり、鋳造インゴットの2次冷却の過程を強化する。この装置の欠点は、インゴットの不均一な冷却であり、これは、主に鋳造インゴットの中心部において引け巣(shrinkage holes)の形態の欠陥の形成につながる。
【0004】
アルミニウムインゴット及び銅インゴットの製造を意図した別の既知の装置が、RU2623559、2017年6月27日において提案された鋳型である。この既知の鋳型は、回転鋳造機の鋳造ホイールの半径方向断面における台形の形状のカリバ(calibre)が二等辺三角形の形状に作製された中空部を含み、ここで、この三角形の頂点における角度と、三角形の辺と台形の辺とによって形成される角度とが互いに等しく、123°...130°になることを特徴とする。この装置の利点は、熱影響ゾーンの低減であり、これは、鋳型の表面の割れ及び破壊の可能性を低減させ、その耐用年数を増大させる。提案された鋳型設計の欠点のうち、既知の装置を使用して得られた鋳造インゴットの形状を調節する追加の作業を行う必要性を強調する必要がある。
【0005】
連続鋳造プラント用の冷却システムが知られている(US4,957,155、1990年9月18日)。既知のプラントでは、方向性凝固が、鋳造ホイールベルト上の断熱層の存在により実施され、一方、幾らかの冷却剤が、冷却を改善するために、下孔を通じて鋳造ホイールの溝に供給される。全ての外部スプリンクラーが全体として、上から下へのインゴットの方向付けされ且つ集中的な凝固を提供し、最大の熱伝達差を作り出す。プラントにおける既知の冷却システムの使用の結果、得られたインゴットは、最小限の鋳造欠陥数で形成される。この技術的解決策の欠点は、インゴットの凝固に必要な時間がより長いことにより、比較的低い生産能力での冷却システムの実装が困難であることである。
【0006】
請求項に記載の本発明に最も近い類似物が、連続鋳造プラントにおける冷却装置である(US3,800,852、1974年2月4日)。既知の冷却装置は、鋳造ホイールを冷却する内部スプリンクラーのノズル列と、ベルトを冷却する外部スプリンクラーのノズル列と、を含む。同時に、外部スプリンクラーのノズルのみに冷却剤流制御機能が設けられている。この装置の欠点は、インゴットにおける欠陥(割れ、表面粗さ)の形成をもたらす冷却剤流の非効率的な制御、並びに生産能力の低下をもたらす不十分な冷却速度である。
【発明の概要】
【0007】
請求項に記載の本発明の技術的課題は、高品質の連続鋳造インゴットを得るために、鋳造ホイールの内面、外面及び側面の均一且つ制御された冷却を確実にすることである。
【0008】
請求項に記載の本発明の技術的成果は、連続鋳造インゴットの製造可能性を増大し、その生産速度を増大し、凝固欠陥の形成を排除することによって、その品質を改善すること、即ち、割れ、ボイド等を本質的に含まない連続鋳造インゴットを得ることである。
【0009】
請求項に記載の本発明の技術的成果は、提案された連続鋳造用鋳型によって達成される。
【0010】
本発明によれば、連続鋳造用鋳型は、外面に等脚台形の形状の断面(即ち、台形断面)を有する開口溝が作製された鋳造ホイールと、所定の開口溝を閉じるように、鋳造ホイールにその外面によって隣接する連続ベルト(即ち、無限長ベルト)と、を含み、また、冷却システムも含む。
【0011】
鋳造ホイールの開口溝の台形断面の大きい方の底辺の長さと、台形断面の小さい方の底辺の長さとの比は、1.3~1.6の範囲にある。
【0012】
冷却システムは、少なくとも4つの側、即ち、ホイールの外面側、内面側及び両側面側で、鋳造ホイール及び連続ベルトへの冷却剤の調節可能な供給を可能とするように作製され(made with the possibility of)、ホイールの内面側の冷却剤流と、ホイールの外面側の冷却剤流との比が1.9~3.0であり、鋳造ホイールの側面側の総冷却剤流量と、鋳造ホイールの内面側の冷却剤流量との比が1.3~1.7である。
【0013】
このような冷却システムは、インゴットの周辺部がその中心部よりも速く冷えていく状態で、1次冷却、即ち、金属凝固中の連続鋳造インゴットの冷却と、連続鋳造インゴットの2次冷却、即ち、凝固した金属の冷却と、を提供することができる。インゴットの任意の中心部と任意の周辺部との間の冷却速度の差は、1.5倍を超えないことが実験的に確立された。
【0014】
冷却システムは、鋳造ホイールの外面、内面及び側面に沿って位置し、鋳造ホイール及びベルトの対応する表面への冷却剤の調節可能な供給を可能とするように作製された少なくとも4つの円弧状の管状スプリンクラーを含み得、即ち、
鋳造ホイール及び連続ベルトの外面側に位置し、それらに冷却剤を供給するための外部スプリンクラーと、
鋳造ホイールの内面側に位置し、それに冷却剤を供給するための内部スプリンクラーと、
鋳造ホイールの右側面及び左側面の側にそれぞれ位置し、それらに冷却剤を供給するために使用される右側スプリンクラー及び左側スプリンクラーと、である。
【0015】
冷却剤の制御された供給は、各スプリンクラーの全長に沿って分布したノズルを通じて行われ得る。
【0016】
冷却剤流の制御は、遮断弁及び対応する流れ制御ノズルを制御することによって行われ得る。
【0017】
管状スプリンクラーは、各ゾーンへの独立した冷却剤の調節可能な供給を確実にするために、内部横仕切りを利用して、独立したゾーンに分割され得る。
【0018】
上記の独立したゾーンの各々には、このゾーンへの調整された冷却剤供給を確実にする、冷却剤供給の個々の制御が設けられ得る。したがって、冷却制御システムは、独立したゾーンごとに個々に構成され得る。
【0019】
スプリンクラーから鋳造ホイール及びベルトへの冷却剤の供給は、個々の冷却剤流制御ユニットを有するフラットフレームノズル(flat-flame nozzles)を通じて行われ得る。
【0020】
通常、冷却剤として水が使用されるが、この目的に適した他の液体、例えば、アルミニウム-リチウム合金等の特殊合金のために使用されるエチレングリコールを使用することも可能である。
【0021】
別の態様によれば、本発明は、提案された鋳型を使用して連続鋳造インゴットを冷却するための方法に関し、これは、以下の比に従って冷却剤流を制御しながら、少なくとも4つの側、即ち、ホイールの外面側、内面側及び両側面側での、鋳型鋳造ホイール及び連続ベルトへの冷却剤の供給を含む:
鋳造ホイールの内面上の流量と、このホイールの外面上の流量との比は、1.9~3.0の範囲にあり、
鋳造ホイールの側面側の総冷却剤流量と、鋳造ホイールの内面側の冷却剤流量との比は、1.3~1.7の範囲にある。
【0022】
冷却剤供給は、鋳造ホイールの外面、内面及び側面に沿って位置し、調節可能な冷却剤供給を可能とするように作製された少なくとも4つの円弧状の管状スプリンクラーを通じて行われ得、即ち、
鋳造ホイール及び連続ベルトの外面側に位置し、それらに冷却剤を供給するための外部スプリンクラーと、
鋳造ホイールの内面側に位置し、それに冷却剤を供給するための内部スプリンクラーと、
鋳造ホイールの右側面及び左側面の側にそれぞれ位置し、それらに冷却剤を供給するために使用される右側スプリンクラー及び左側スプリンクラーと、である。
【0023】
冷却剤は、各スプリンクラーの全長に沿って分布したノズルを通じて供給され得る。
【0024】
冷却剤流の制御は、遮断弁及び対応する流れ制御ノズルを制御することによって行われ得る。
【0025】
管状スプリンクラーは、各ゾーンへの独立した冷却剤の調節可能な供給を確実にするために、内部横仕切りを利用して、独立したゾーンに分割され得る。
【0026】
上記の独立したゾーンの各々には、このゾーンへの調整された冷却剤供給を確実にする、冷却剤供給の個々の制御が設けられ得る。したがって、冷却制御システムは、独立したゾーンごとに個々に構成され得る。
【0027】
スプリンクラーから鋳造ホイール及びベルトへの冷却剤の供給は、個々の冷却剤流制御ユニットを有するフラットフレームノズルを通じて行われ得る。
【0028】
本発明の実施形態のうちの1つによれば、装置及び方法は、鉄、ケイ素、マグネシウム、ジルコニウム、スカンジウム、マンガン、チタン、銅、ニッケル及びクロムの群から選択される少なくとも1つの合金化元素を含有するアルミニウム系合金からの連続鋳造インゴットの製造を意図したものであり、一方、鋳造インゴットの構造は、その中に分布した共晶由来の粒子を有するアルミニウムマトリックスである。
【0029】
連続鋳造インゴットの製造可能性を増大させ、それらの品質を改善し、並びに(インゴット生産速度を増大させることによって)鋳型の生産能力を増大させるといった、技術的成果の達成を確実にする、請求項に記載の鋳型のパラメータの正当性を以下に提示する。
【0030】
鋳造ホイールの開口溝の台形断面の大きい方の底辺の長さと、台形断面の小さい方の底辺の長さとの比は、1.3~1.6の範囲にあるべきである。
【0031】
断面の大きい方の底辺の所定の長さと、断面の小さい方の底辺の所定の長さとの比が1.6を超える場合には、結果として得られる連続鋳造インゴットは、インゴットを製品に更に加工するという観点から好ましい正方形とは大きく異なる形状を有することになるので、インゴットを較正するための追加の作業が必要となり、これは、インゴットの製造可能性に悪影響を及ぼすことになる。
【0032】
断面の大きい方の底辺の所定の長さと、断面の小さい方の底辺の所定の長さとの比が1.3未満である場合には、低線収縮を伴う合金を鋳造するとき、鋳造ホイールの開口溝からインゴットを取り出すことの困難さにより、冷間割れが生じ得、その結果、インゴットの品質が低下し得る。
【0033】
内部スプリンクラー(即ち、鋳造ホイールの開口溝の断面の小さい方の底辺の側)からの冷却剤流と、外部スプリンクラー(断面の大きい方の底辺の側)からの冷却剤流との比は、1.9~3.0の範囲にあるべきである。
【0034】
スプリンクラーの冷却剤流を調節するときに、指定された比が1.9未満又は3.0超である場合には、結晶化サンプ(crystallisation sump)は、台形の大きい方の底辺及び小さい方の底辺にそれぞれ近づくようにシフトされることになり、これは、インゴットにおける不均一な冷却及び割れの形成、即ち、インゴットの品質劣化につながることになる。
【0035】
鋳型鋳造ホイールの冷却面の異なる部分に鋳造インゴットの高品質の内部構造を形成するためには、異なる冷却強度が必要とされ、これは、合金と鋳型の生産能力とに依存する。
【0036】
これらの条件を確実にするために、鋳造ホイールの外面、内面、及び側面に沿って位置し、独立したゾーンへの冷却剤の調節可能な供給を確実にするために、内部横仕切りによって分離された円弧状の管状スプリンクラーを通じて、冷却剤が鋳造ホイール及びベルトに供給され得る。
【0037】
上記の独立したゾーンの各々には、このゾーンへの調整された冷却剤供給を確実にする、冷却剤供給の個々の制御が設けられ得る。したがって、冷却制御システムは、独立したゾーンごとに個々に構成され得る。
【0038】
冷却剤は、個々の冷却剤流制御ユニットを有するフラットフレームノズルを通じて供給され得る。
【0039】
冷却剤流のより精密な個々の調節のために、ニードル弁を有する制御ユニットが各ノズルの上流に設置され得る。
【0040】
本発明の本質は、図画資料によって説明される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1図1は、鋳造ラインの一部としての鋳型の全体図を示し、ここで、1-連続鋳造インゴット;2-鋳型ホイールへの金属供給システム;3-連続ベルトの張力ホイール;4-連続ベルト;5-鋳型;6-鋳造ホイール;7-冷却システムノズル;8-冷却剤フィルタ;9-連続ベルトの押圧ローラである。
図2図2は、A視を含み、鋳型の冷却剤分配パターン(冷却システム)を示し、ここで、4-連続ベルト;6-鋳造ホイール;10-右側スプリンクラー;11-外部スプリンクラー:12-内部スプリンクラー;13-左側スプリンクラー;14-スプリンクラーノズル;15-ホイールの外面;16-ホイールの側面;17-ホイールの内面であり、A視は、第2の側面16を示す。
図3図3は、鋳型の断面を示し、ここで、4-連続ベルト;6-鋳造ホイール;10-右側スプリンクラー;11-外部スプリンクラー;12-内部スプリンクラー;13-左側スプリンクラー;18-鋳造ホイール取付けリング;19-台形断面の大きい方の底辺、20-台形断面の小さい方の底辺である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下は、本発明の特定の実施形態の例である。
【0043】
実施例1
Procastソフトウェアパッケージを使用した、等脚台形の形状の連続鋳造インゴットを形成する鋳造ホイールの開口溝の断面の幾何学的寸法の選択の正当性。
【0044】
この実施例の目的は、連続鋳造インゴットにおける金属の均一な凝固を確実にする鋳造ホイールの開口溝の台形(即ち、台形の形状の)断面の底辺の長さの比を選択することである。
【0045】
少なくとも2t/時間の鋳造の高生産能力での凝固均一性の基準として、以下のパラメータを使用した:
- 主に台形の大きい方の底辺の角における内部引張応力のベクトルの有無、
- 凝固する溶融物のサンプの深さ、その値は、中心収縮ポロシティの有無を制御する、
- 凝固間隔内に著しい熱勾配が存在しないこと。
【0046】
引張応力の多方向ベクトルの存在下では、凝固中のインゴットの破壊(又は割れの発生)の確率が高い。
【0047】
深いサンプの場合、中心線収縮ポロシティ(centreline shrinkage porosity)の形成は、実際の冷却過程中の熱勾配の変化に起因する可能性が高い。計算は、1000~3600mmの範囲にある断面に対して有効である。
【0048】
少なくとも1つでも最大の結果を有するパラメータが存在する場合、使用できないインゴットを得るリスクが高い。定性的なモデリング結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
表1から分かるように、台形の大きい方の底辺の長さと、小さい方の底辺の長さとの比が1.1に等しい場合、凝固中の深い中央サンプの形成の確率が高く、これは、最大収縮ポロシティの出現につながり得る。台形の大きい方の底辺の長さと、台形の小さい方の底辺の長さとの比が約1である場合、鋳型からのインゴットの取り出しが困難になる。
【0051】
台形の大きい方の底辺の長さと、台形の小さい方の底辺の長さとの比が1.3~1.6の範囲にある場合、深いサンプの形成が排除され、臨界引張応力は存在しない。
【0052】
台形の大きい方の底辺の長さと、台形の小さい方の底辺の長さとの比が2を上回る場合、深いサンプの形成は排除されるが、台形の大きい方の底辺の角において引張応力の多方向ベクトルが存在し、これは、変形中のインゴットの破壊に寄与することになる。同時に、台形の大きい方の底辺の角において熱勾配が存在し、これは、偏析ゾーンの形成に寄与し、結果としてインゴットの化学組成の不均一性に寄与することになることに留意されたい。
【0053】
得られた結果に基づいて、図3に示されるように、大きい方の底辺19と小さい方の底辺20とを有する台形断面を有する開口溝を備えた鋳型5が作製された(図1)。鋳型5は、鋳造ホイール6と、連続ベルト4と、冷却システムと、を含む。連続ベルト4は、締め付けホイール3を介して巻き付けられる。ベルト押圧ローラ9が、ベルト4をホイール6に押圧する。鋳造ホイール6は、取付けリング18を使用して設置される。
【0054】
製造された鋳型は、2~5t/時間の能力を有するアルミニウム及びその合金で作製された線材の製造用の鋳造圧延機の一部として設置された。連続鋳造インゴットを圧延機のスタンドで圧延して、出口において9.5;12;22mmの直径を有するアルミニウム線材を得た。
【0055】
鋳型5の動作中、液体金属は、金属供給システム2を通じて鋳型5の鋳造ホイール6の開口溝に供給され、次いで、金属凝固の結果として、連続鋳造インゴット1が溝の壁と連続ベルト4との間に形成され、これは、冷却システムのノズル7を通じて鋳造ホイール6及び連続ベルト4の外面15、内面17、側面16に供給される冷却剤によって、全凝固過程中に冷却される。
【0056】
鋳型5の冷却システムは、鋳造ホイール6の外面15、内面17及び両側面16に沿って位置し、調節可能な冷却剤供給を可能とするように作製された4つの円弧状の管状スプリンクラーを含み(A視を伴う図2)、即ち、
鋳造ホイール6及び連続ベルト4の外面15側に位置し、それらに冷却剤を供給するために使用される外部スプリンクラー11と、
鋳造ホイール6の内面17側に位置し、それに冷却剤を供給するために使用される内部スプリンクラー12と、
鋳造ホイール6の右側面及び左側面16の側にそれぞれ位置し、それらに冷却剤を供給するために使用される右側スプリンクラー10及び左側スプリンクラー13と、である。
【0057】
ノズル7は、内部仕切りによって3つの独立したゾーンに分割された内部スプリンクラー12(図2)上と、同じく3つの独立した内部ゾーンで構成される外部スプリンクラー11上と、並びに各々が2つの独立したゾーンで構成される2つの側部スプリンクラー10、13上と、に位置する。上記の独立したゾーンの各々には、このゾーンへの水の供給を制御するために使用される個々の給水制御が設けられている。冷却制御システムは、独立したゾーンごとに個々に構成されている。
【0058】
ノズルのタイプの選択は、ノズルがある特定の形状の冷却剤の噴射を形成するので、スプリンクラー及びホイールの選択された設計(ホイールサイズ、スプリンクラーとホイールの間の距離等)によって決定される。各特定のケースにおいて、噴射の必要な形状が決定され、それに応じてノズルのタイプが選択される。このケースでは、フラットフレームノズルを設置した。
【0059】
水流のより正確な個々の調節のために、ニードル弁を有する制御ユニットが、各ノズルの上流に設置される。
【0060】
ベルトの迅速な取付け/取り外しのために、右側スプリンクラー及び内側スプリンクラーは、回転スタンド(図示せず)を使用して、20°側方に移動され得る。
【0061】
冷却剤として水を使用する鋳型5の冷却システムのパラメータを表2に示す。
【0062】
【表2】
【0063】
自浄式フィルタ8(例えば、水フィルタ)が冷却剤(例えば、水)供給システム(図1)に設けられ得る。
【0064】
水流制御は、手動モード及び自動モードで行われる。冷却水の温度は、鋳型5の前後で制御される。
【0065】
実施例2
欠陥のないインゴットを得ることを確実にする条件の決定
【0066】
冷却システムの様々な設定の影響を示す一連の研究が行われ、凝固中に欠陥のない連続鋳造インゴットの製造を確実にする、システムの冷却剤流制御のパラメータが見出された。
【0067】
溶融を、例として6101型の合金(番号1)及び工業用アルミニウム(番号2)を使用して行った。その化学組成を表3に示す。
【0068】
【表3】
【0069】
インゴットの品質評価基準として以下のパラメータを使用した:
- 2t/時間以上のライン生産能力で引け巣がないこと。
【0070】
冷却剤(水)制御パラメータを表4に示す。
【0071】
【表4】
【0072】
表4に与えられた結果の分析から、鋳造ホイールの開口溝の台形断面の小さい方の底辺及び大きい方の底辺から供給される冷却剤の量の比が1.9未満である場合、欠陥のない鋳造インゴットの1.5t/時間より大きい(more than)生産能力を達成することは不可能であるということになる。
【0073】
鋳造ホイールの開口溝の台形断面の小さい方の底辺及び大きい方の底辺から供給される冷却剤の量の比(外部スプリンクラーからの冷却剤流に対する内部スプリンクラーからの冷却剤流)が1.9~3.0の範囲にあれば、引け巣の形態の欠陥の形成を完全に排除し、2トン/時間より大きいインゴットのライン生産能力(プロトタイプでのものより大きい)を確実にすることが可能であり、これは、連続鋳造インゴットのテンプレートの内部構造の金属組織学的研究によって確認された。
【0074】
最も好ましいのは、鋳造ホイールの開口溝の台形断面の小さい方の底辺の側及び大きい方の底辺の側に供給される冷却剤の流量(量)の比(外部スプリンクラーからの冷却剤流に対する内部スプリンクラーからの冷却剤流)が1.9~2.4の範囲にあることであり、これは、鋳造ラインの最大生産能力を確保する。
【0075】
テンプレートの分析は、提案された台形断面の開口溝を有する鋳造ホイールを含む鋳型を、鋳型冷却システムの指定された調節設定、即ち、各スプリンクラーの水流比を用いて使用する場合、台形(鋳造ホイール断面)の大きい方の底辺の角における偏析の数が最小限になりながらも、引け巣、結晶化由来の割れの形態の結晶化由来の欠陥を排除することが可能であり、これは、連続鋳造インゴットのテンプレートの内部構造の金属組織学的研究の結果によって確認され、インゴット品質の観点からも許容可能である。
【0076】
合金6101(表3の組成番号1)から作製された鋳造インゴットの微細構造の分析は、インゴットの典型的な構造が、アルミニウム中のケイ素及びマグネシウムのアルミニウム溶液並びに共晶鉄含有相の縞(veins)によって表されることを示した。工業用アルミニウム(表3の組成番号2)から作製された鋳造インゴットの構造の分析は、構造が共晶鉄含有相の縞を有するアルミニウム溶液によって表されることを示した。同時に、断面全体における6101合金及び工業用アルミニウム(表3)の凝固間隔内の計算された冷却速度は、少なくとも10K/sであった。提案された鋳型を使用するときに実施される高い冷却速度により、鉄、ケイ素、マグネシウム、ジルコニウム、スカンジウム、マンガン、チタン、銅、ニッケル及びクロムを含有する既知の工業用合金の構造は、主にアルミニウム溶液及び対応する合金化元素によって形成される共晶相によって表されることになる。
【0077】
特許請求される鋳型の使用は、高品質の(実質的に欠陥のない)連続鋳造インゴットを得ることを可能にし、これは、より低い生産コストで製品へと更に加工され得、即ち、請求項に記載の鋳型は、インゴットの製造可能性を増大することを可能にする。同時に、鋳造ラインの2t/時間より大きい高い生産能力が確保される。
図1
図2
図3
【国際調査報告】