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特表2022-552838バッテリシステムにおけるバランシングシステムの校正
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-20
(54)【発明の名称】バッテリシステムにおけるバランシングシステムの校正
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/02 20160101AFI20221213BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20221213BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
H02J7/02 H
H01M10/48 P
H01M10/44 P
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521241
(86)(22)【出願日】2020-09-24
(85)【翻訳文提出日】2022-04-08
(86)【国際出願番号】 EP2020076769
(87)【国際公開番号】W WO2021069233
(87)【国際公開日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】102019127408.7
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】398037767
【氏名又は名称】バイエリシエ・モトーレンウエルケ・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】シュミット・ヤン・フィリップ
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA03
5G503BB02
5G503CA02
5G503CA12
5G503EA05
5G503FA06
5G503GA01
5G503HA01
5H030AA10
5H030AS08
5H030BB01
5H030BB23
5H030FF22
5H030FF41
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
(57)【要約】
【課題】より大きな手間なく実行可能な、高い精度でバランシング電荷を特定する校正方法を提供する。
【解決手段】リチウムイオンセルと、バッテリマネジメント装置とを含むバッテリシステムにおけるパッシブなバランシングシステムを校正する方法であって、セルユニットが、それぞれ負荷抵抗Rを有する放電回路を備えており、セルユニットが直列に接続されており、バッテリマネジメント装置が、各セルユニットの電圧Uを測定し、選択可能な時点において放電回路を操作するために構成されており、前記方法が、以下のステップ:
-電荷Qを取り出すために放電持続時間tの間セルユニットiの放電回路を操作し、t、Q及び時間的な電圧推移U(t)を検出するステップと;

としてRを特定するステップと
を含んでいる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のリチウムイオンセルと、バッテリマネジメント装置とを含むバッテリシステムにおけるパッシブなバランシングシステムを校正する方法であって、個別のセル又は並列に接続された複数のセルのグループから成るセルユニットが、それぞれ、校正パラメータを表す負荷抵抗Rを有する放電回路を備えており、セルユニットが一列に直列に接続されており、セルユニットiを、負荷抵抗Rを介してコントロールして放電させるために、バッテリマネジメント装置が、各セルユニットの電圧Uを測定し、選択可能な時点において放電回路を操作するために構成されており、前記方法が、以下のステップ:
-電荷Qを取り出すために放電持続時間tの間セルユニットiの放電回路を操作し、t、Q及び時間的な電圧推移U(t)を検出するステップと;

【数1】
としてRを特定するステップと
を含んでいることを特徴とする方法。
【請求項2】
1)一列の各セルユニットiの初期電圧Ui,0をバッテリマネジメント装置によって特定するステップと;
2)既知の電荷Q=∫Idtを各セルユニットへ供給するために、所定の時間tの間前記一列に既知の充電電流Iを印加するステップと;
3)tがU(t)=Ui,0という条件を満たすように、初期電圧Ui,0に再び到達するまで放電回路が操作されることで、事前に供給された電荷Q=Qを取り出すステップと;
4)
【数2】
としてRを特定するステップであって、t(U=Ui,0)がバランシング回路の操作持続時間を表し、該操作持続時間後、電圧が再び初期値Ui,0へ低下するステップと
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
各セルユニットの微分容量C=dQ/dUがバッテリマネジメント装置にメモリされており、ここでdQが電荷の変化を表し、当該方法が、以下のステップ:
1)時間的な電圧推移を得るために、放電中に電圧U(t)を同時に測定しつつ、各セルユニットiを抵抗Rを介してあらかじめ規定された時間tの間放電するために放電回路を操作するステップと;
2)C及びU(t)に基づき、あらかじめ規定された時間tの間に取り出される電荷Q
【数3】
として特定するステップと;
3)R
【数4】
として特定するステップと
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
複数のリチウムイオンセルと、バッテリマネジメント装置とを含む、パッシブなバランシングを有するバッテリシステムであって、個別のセル又は複数のセルの並列に接続されたグループから成るセルユニットが、それぞれ、負荷抵抗Rを有する放電回路を備えており、セルユニットが一列に直列に接続されており、セルユニットiを、負荷抵抗Rを介してコントロールして放電させるために、バッテリマネジメント装置が、各セルユニットの電圧Uを測定し、選択可能な時点において放電回路を操作するために構成されており、バッテリシステムが、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法を実行するために校正されていることを特徴とするバッテリシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリシステムにおけるバランシングシステムを校正する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バッテリシステム
電気的に動作するか、又はハイブリッド電気式に動作する車両用のバッテリシステムは、バッテリマネジメントシステム(BMS)によってコントロールされる、互いに並列又は直列に接続された複数の個別の二次セル(二次電池)、典型的にはリチウムイオンセル(リチウムイオン電池)を含んでいる。
【0003】
BMSは、とりわけ、セル電圧、充電状態(SoC、State of Charge)、健全度(SoH、State of Health)、電流、温度のような動作データを監視し、セルの充電あるいは放電を制御する機能を有している。BMSの他の役割は、バッテリシステムの熱的なマネジメント、セルの保護及びプロット(記録)された動作データに基づくセルの残り寿命の予測である。
【0004】
バッテリシステムでは、所望の電圧、例えば200~400Vを得るために、個々のセルを直列に接続することができる。これに代えて、容量を高めるために、複数のセルがグループで並列接続されることができ、このように得られるセルグループは、同様に直列に接続される。BMSの観点から、並列に接続されたセルグループは、電圧監視あるいはSoC監視について、及び後述するバランシングに関しても個別のセルのように動作する。したがって、以下では、個々のセル及び個々のセルの並列に接続されたグループをまとめて「セルユニット」という。
【0005】
バランシング
BMSの重要な機能は、いわゆるバランシング、すなわち個々のセルあるいはセルグループの充電状態の補整である。例えば不均等な温度分布又は製造バラツキにより高められた自己放電によって、個々のセルの充電状態(SoC)がセル複合体のその他のセルのSoCと相違することが起こり得る。
【0006】
このようなアンバランスは、セル電圧の離散によって顕著に現れ、寿命の短縮及びセルの大きな消耗につながってしまう。対応する事項は、外見上相応により大きな容量を有するいくつかのセルのように動作する個別セルの並列接続されたグループについても同様である。バランシング時には、バランスを回復するために、セルユニット(すなわち個々のセルあるいはセルグループ)の充電状態は互いに比較される。
【0007】
一般的に、アクティブなバランシング方法とパッシブなバランシング方法は区別される。アクティブなバランシング方法では、高いSOCを有するセルユニットから低いSOCを有するセルユニットへ電荷が伝送される。このことは、例えばコンデンサ、コイル及び/又は電圧変換器のような電荷を伝送する要素によって行われることが可能である。これに対して、パッシブなバランシング方法では、高いSOCを有するセルにおいて、充電状態が補整されるまで抵抗(シャント)を介して過剰な電荷が放散される。
【0008】
バランシング時にセルごとに変換される(すなわち取り出され、アクティブなバランシングにおいて場合によっては供給される)電荷と、バッテリシステムの個々のセルにわたる電荷の分布とは、自己放電の度合いについての推測を提供し、このことは、同様に健全度(State of Health、SoH)及び場合によっては内部短絡の発生のおそれについての指示(指摘)を可能とする。したがって、バランシング電荷を正確に特定する方法が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
基本的には、セル電圧、バランシング回路の操作の継続時間及びバランシング回路自体の特性に基づきバランシング電荷を特定することが可能である。したがって、パッシブなバランシングの場合には、負荷抵抗(シャント)の抵抗値Rと、バランシング中に測定される電圧推移U(t)とに基づき、バランシング電流がI(t)=U(t)/Rとして演算されることができ、バランシングシステムの操作の継続時間についての積分により、流れる電荷が得られる。
【0010】
しかし、このとき、電圧推移及び時間が良好な精度で既知であるものの電荷特定は負荷抵抗の許容誤差に依存するという難点がある。コスト上の理由から、多くの用途にとって、高精度の負荷抵抗の使用又は正確な負荷抵抗値の個々の検測は考慮に値しない。
【0011】
そのため、負荷抵抗の正確な抵抗値が既知でないパッシブなバランシングを有する事前構成されたバッテリシステムにおいてより大きな手間なく実行可能な、高い精度でバランシング電荷を特定する校正方法が必要である。好ましくは、方法は、実験室の品質での特別な設備を必要とすることなく、実地使用においても、又は動作中において実行されることができるようにすべきである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、複数のリチウムイオンセル及びバッテリマネジメント装置(BMU)を含むバッテリシステムにおけるパッシブなバランシングシステムを校正する方法に関するものである。
【0013】
本発明により用いられるバッテリシステムでは、個々のセル又は並列に接続された複数のセルのグループから成るセルユニットは、それぞれ一列(列状)に直列に接続されている。各セルユニット(すなわち個別セルあるいは並列に接続されたセルから成るブロック)は、負荷抵抗Rを有する放電回路を備えており、Rの値は校正パラメータを表す。加えて、BMUは、各セルユニットの電圧Uを測定し、負荷抵抗Rを介して制御してセルユニットiを放電させるために、セルユニットiを選択可能な時点において放電回路を操作するように構成されている。
【0014】
本発明による方法は、以下のステップ:
-放電持続時間tの間セルユニットiの放電回路を操作するステップと;
-放電持続時間t中に取り出される電荷Q及び時間的な電圧推移U(t)を検出するステップと;
-R
【0015】
【数1】
【0016】
として特定するステップと
を含む。
【0017】
代替として、特に既知の電荷の供給、これにつづくバランシングシステムを介した電荷の放散及びセルの上述の微分容量C=dQ/dUによる電圧に基づく演算は、Qを特定するために考慮に値する。
【0018】
本発明による校正方法により、負荷抵抗Riについての正確な値を検出することができ、これにより、バランシング時に流れる電荷量の正確な特定が検出され、当該電荷量は、同様に(例えば初期の内部の短絡についての)診断のために考慮に入れられることが可能である。同様に、校正方法は、工場を訪れる必要なく、バッテリシステムの寿命全体にわたって何度も応用されることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】それぞれ放電回路及び電圧測定装置を備えたセルユニットの一列の構造を概略的に示す図である。
図2】既知の電荷の供給及びこれにつづく放散によるQの特定時の構造を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明による方法が用いられるバッテリシステムの構造と、本発明による方法自体の実施形態とを詳細に説明する。
【0021】
バッテリシステム及びバランシング
本発明による方法が用いられるバッテリシステムは、複数のリチウムイオンセル(リチウムイオン電池)及びバッテリマネジメント装置(BMS)を含んでおり、個別セル(個別電池)又は並列に接続されたセル(電池)のグループから成るセルユニット(電池ユニット)は、それぞれバランシング回路を備えている。バッテリマネジメント装置は、あらかじめ規定された時点で充電補整を行うために、すなわちバランシングを実行するために用いられる。このために、少なくとも1つの他のセルあるいはセルグループ(電池グループ)よりも大きなセル電圧(電池電圧)のセルあるいはセルグループにおいては、セル電圧が一様となるまで、当該セルあるいはセルグループから電荷が取り出される。
【0022】
バランシングは、典型的には非動作段階中に、例えば充電後、及びバッテリシステムが負荷を受けていない時点で実行される。バッテリシステムが電動車両に組み入れられている場合には、バランシングは、走行動作中以外の任意の時点で、好ましくは蓄電装置の充電直後に実行されることが可能である。ハイブリッド電動車両又はプラグインハイブリッド電動車両では、内燃エンジンによる走行動作も考慮に入れられる。本発明によれば、バランシング時に各セルに対して変換される電荷がBMSによって検出されることが可能である限り、バランシングの時点及び正確な方法は特に限定されていない。
【0023】
パッシブなバランシングにおいては、電荷は、高められたセル電圧(ひいては高められたSOC)を有するセルから取り出され、負荷抵抗(シャント)において放散される。直列に接続されたN個のセルの場合についてのこのようなパッシブなバランシング回路の簡略化された概略的な図示が図1に示されている。各セルiについて、セル電圧UがBMSによって監視される。加えて、各セルはシャント電流回路を備えており、当該シャント電流回路は、BMSによってコントロールされる少なくとも1つのスイッチS(例えばMOSFET)と、実際の並列抵抗(シャント)Rとを含んでいる。
【0024】
機器による負荷を低く抑えるために、バランシング電流回路における電流Iを直接測定する可能性は設定されていない。その代わり、バランシング電流は、抵抗値Rと、バランシング中に測定される電圧推移U(t)とに基づき、I(t)=U(t)/Rとして演算される。時間にわたる積分により、流れた電荷が得られる。
【0025】
負荷抵抗の特定
本発明による校正方法は、バランシング電流及び流れた電荷を正確に検出することができるように、抵抗値Rの正確な特定に用いられる。バランシング時に負荷抵抗を介して流れる電流は、一般的にI=U/Rとなり、Uは、セルユニットの充電状態(SOCi)の関数であり、したがって、時間的に一定である必要はなく、既に流れた電荷Qに依存する。したがって、電荷は、
=∫Idt=1/R*∫Udt
として演算される。
【0026】
上述のように、バッテリマネジメント装置は、例えばセルユニットの充電状態(SOC)を監視することができるように、高い精度でUを測定して場合によっては時間的にプロット(記録)することができるようになっている。
【0027】
本発明は、放電回路の操作の持続時間(放電持続時間)t、流れた電荷Q及び電圧推移U(t)が特定されることで上記式に基づいて較正パラメータRを算出するという着想を基礎とするものである。そして、Rは、
=1/Q*∫Udt
として演算され得る。これに必要な測定及び演算は、いずれにしても電圧監視及び放電回路の制御のために構成されているバッテリマネジメント装置によって行われる。
【0028】
流れた電荷Qを特定するために、例えば、既知の電荷の供給と、これにつづく放電回路を介した電荷の取り出しとが考慮されるか、又は微分容量及び放電中の電圧推移に基づく電荷の演算が考慮される。
【0029】
既知の電荷の供給によるQの特定
の特定の第1の可能性は、既知の電荷Qの供給にあり、このことにより、セルユニットの充電状態の上昇によって電圧Uの上昇がもたらされる。その後、放電回路は、上昇された電圧が再び初期値へ低下するまで動作される。そして、セルユニットの充電状態(SOC)も、再び電荷の供給前と同一であり、すなわち、供給される電荷Qに対応する放電時に流れる電荷Qである。概略的な構造が図2に示されている。
【0030】
本発明による方法の当該実施形態は、以下のステップを含んでいる:
(1)一列の各セルユニットiの初期電圧Ui,0をバッテリマネジメント装置によって特定するステップ;
(2)既知の電荷Q=∫Idtを各セルユニットへ供給するために、所定の時間tの間前記一列に既知の充電電流Iを印加するステップ;
(3)放電持続時間tがU(t)=Ui,0という条件を満たすように、初期電圧Ui,0に再び到達するまで放電回路が操作されることで、事前に供給された電荷Q=Qを取り出すステップ;
(4)R
【0031】
【数2】
【0032】
として特定するステップであって、t(U=Ui,0)が放電持続時間を表し、当該放電持続時間後、電圧が再び初期値Ui,0へ低下するステップ。
【0033】
まず、ステップ(1)において、セルユニットの初期SOCについての度合いを表す電圧Ui,0が測定され、初期SOCは、後続のステップ(3)の終了時には最終SOCと同一である必要がある。
【0034】
つづいて、ステップ(2)では、一列全体が、所定の時間の間所定の充電電流で充電される。当該ステップは、従来の充電器によって行われることができるが、バッテリシステムは完全に充電されず、充電電流の時間積分によって演算される既知の電荷Qのみが供給される点でのみ通常の充電とは異なっている。
【0035】
充電方法は特に限定されていない。例えば、一定の電流又は一定の電圧での充電を行うことが可能である。電荷を演算することができるためには、充電電流Iの時間的な推移の測定のみが必要である。充電過程をコントロールするために、バッテリシステム又は充電装置は、いずれにしても、電荷の特定に用いられ得る電流測定装置を備えている。図2に図示された実施形態では、電流測定装置は、バッテリシステムに統合されている(「S-Box」)。場合によっては、電荷を高い精度で検出することができるように、高精度の電流測定装置を充電電流回路に設けることが可能である。
【0036】
ステップ(2)は、個々のセルユニットへの物理的なアクセスを要せず、通常の充電装置を用いて実地使用における統合されたバッテリシステムによって実行されることが可能である。追加的な設備として、せいぜい高精度の電流測定装置が必要となり得る。
【0037】
上記一列が直列接続されたセルユニットのみで構成されているため、各セルを通って流れる電流、ひいては良好な近似において供給される電荷も各セルユニットについて同一であるとともに、Q=∫Idtとして演算されることが可能である。
【0038】
充電の終了後、場合によっては、わずかに異なるセル電圧により、セル間での緩慢な電荷交換がなされることがあり、その結果、時間の経過に伴って電荷が離れていくことがある。しかし、当該作用は、本発明による方法においては、特にステップ(3)がステップ(2)に直接つづけて実行されれば、緩慢な時間の尺度(タイムスケール)により無視できる。
【0039】
供給される電荷QによるSOCの上昇によって、ステップ(2)の後に、セルユニットにおけるセル電圧がUi,0よりも高められている。ステップ(3)では、Ui,0ひいては元々のSOCが再び達成されるまで、放電回路の操作によってセルユニットが放電される。したがって、このとき放散される電荷Qは、ステップ(2)において供給される電荷と同一である。
【0040】
そして、放電中の電圧推移をプロット(記録)し、時間について積分することで、ステップ(4)において、負荷抵抗Rの値が、
【0041】
【数3】
【0042】
として演算され、実行される。特別な実験室設備は不要であり、バッテリシステム自体における外部で行われるべき措置も不要である。
【0043】
既知の微分容量に基づくQの特定
これに代えて、Qを微分容量C=dQ/dUに基づいて特定することも可能であり、当該微分容量は、バッテリマネジメント装置にメモリされているか、又はSOCの検出にいずれにしても必要な、メモリされた電荷/電圧相関データQ(U)に基づいて、電圧での微分によって演算されることが可能である。微分容量Cを用いた本発明による方法の当該実施形態は、以下のステップを含んでいる:
(1)時間的な電圧推移を得るために、放電中に電圧U(t)を同時に測定しつつ、セルユニットiを抵抗Rを介してあらかじめ規定された時間tの間放電するために放電回路を操作するステップ;
(2)C及びU(t)に基づき、あらかじめ規定された時間tの間に取り出される電荷Q
【0044】
【数4】
【0045】
として特定するステップ;
(3)R
【0046】
【数5】
【0047】
として特定するステップ。
【0048】
ステップ(1)では、セルが同様にコントロールされて放電され、放電時の電圧推移が測定される。しかし、第1の態様とは異なり、取り出される電荷は、既知ではなく、ステップ(2)において既知の微分容量C及び測定された電圧推移U(t)に基づき演算される必要がある。微分容量Cは、それ自体バッテリマネジメントシステムにメモリされているか、又は既知の無負荷特性曲線に基づき動作中に演算される。
【0049】
最後に、ステップ(3)では、第1の実施形態と同様の態様でRの特定が行われる。
図1
図2
【国際調査報告】