(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-20
(54)【発明の名称】ポリマー薬物送達コンジュゲートならびにそれを作製および使用する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 47/58 20170101AFI20221213BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20221213BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221213BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20221213BHJP
A61K 38/10 20060101ALI20221213BHJP
C07K 7/00 20060101ALI20221213BHJP
C07K 14/00 20060101ALI20221213BHJP
A61K 31/451 20060101ALN20221213BHJP
A61K 31/5375 20060101ALN20221213BHJP
A61K 31/37 20060101ALN20221213BHJP
A61K 31/357 20060101ALN20221213BHJP
A61K 31/453 20060101ALN20221213BHJP
A61K 31/44 20060101ALN20221213BHJP
A61K 31/137 20060101ALN20221213BHJP
A61K 31/704 20060101ALN20221213BHJP
C12N 15/11 20060101ALN20221213BHJP
【FI】
A61K47/58
A61K38/16
A61P35/00
A61K39/395 T
A61K38/10
C07K7/00 ZNA
C07K14/00
A61K31/451
A61K31/5375
A61K31/37
A61K31/357
A61K31/453
A61K31/44
A61K31/137
A61K31/704
C12N15/11 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022522891
(86)(22)【出願日】2020-10-16
(85)【翻訳文提出日】2022-06-14
(86)【国際出願番号】 US2020055940
(87)【国際公開番号】W WO2021076865
(87)【国際公開日】2021-04-22
(32)【優先日】2019-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504260058
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ オブ ユタ リサーチ ファウンデイション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ヤン, ジユアン
(72)【発明者】
【氏名】リー, リアン
(72)【発明者】
【氏名】ピーターソン, シー. マシュー
(72)【発明者】
【氏名】コペチェク, ジンドリッチ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4C206
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC41
4C076EE59
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA01
4C084BA09
4C084BA18
4C084BA19
4C084BA23
4C084BA42
4C084MA52
4C084MA55
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C085AA14
4C085AA21
4C085AA24
4C085BB11
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA17
4C086BC17
4C086BC21
4C086BC73
4C086EA10
4C086GA02
4C086GA07
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA13
4C086ZB26
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA11
4C206KA01
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA13
4C206ZB26
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA15
4H045BA16
4H045BA18
4H045BA72
4H045EA28
4H045FA33
4H045FA51
4H045FA52
4H045GA22
(57)【要約】
抗がん剤を被験体に有効に送達するための生分解性薬物送達コンジュゲートおよび抗がんコンジュゲートが本明細書に記載される。コンジュゲートは、2つのポリマーセグメントに共有結合により接続した単一の第1の切断可能なペプチドリンカーを含み、少なくとも1つのPD-L1阻害剤が、各ポリマーセグメントに共有結合している(本明細書において、「PD-L1阻害剤ポリマーコンジュゲート」と称される)。がんを処置または予防するために、抗がん剤と組み合わせたPD-L1阻害剤ポリマーコンジュゲートの使用も本明細書に記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一の第1の切断可能なペプチドリンカーによって互いに共有結合的に接続された2つのポリマーセグメントP
1およびP
2を含む薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容されるその塩もしくはエステルであって、少なくとも1つのPD-L1阻害剤が、各ポリマーセグメントに共有結合している、薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容されるその塩もしくはエステル。
【請求項2】
各ポリマーセグメントが、2つまたはそれより多いエチレン性不飽和モノマーの重合生成物を含む、請求項1に記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステル。
【請求項3】
各ポリマーセグメントが、式I:
【化22】
の第1のモノマーであって、式中、R
1は水素またはメチルであり;
XはOまたはNR
2であり、R
2は水素またはアルキル基であり;
nは1~10である、第1のモノマーと、
N-置換メタクリルアミド、N,N-二置換アクリルアミド、メタクリル酸もしくはアクリル酸の親水性エステル、N-ビニルピロリドン、N-アクリロイルモルホリン、スルホエチルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、またはこれらの任意の組合せを含む第2のモノマーとの間の重合生成物を含む、請求項1に記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステル。
【請求項4】
R
1がメチルであり、XがNHであり、nが1~5である、請求項3に記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステル。
【請求項5】
R
1がメチルであり、XがNHであり、nが3である、請求項3に記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステル。
【請求項6】
前記第2のモノマーが、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)、N-[3-(N’-ジカルボキシメチル)アミノプロピル]メタクリルアミド(DAMA)、N-メタクリロイルグリシルフェニルアラニルロイシルグリシン-アミノマロン酸(MA-GFLG-diCOOH)、N-(3-アミノプロピル)メタクリルアミド、N-(1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イル)メタクリルアミドまたはこれらの任意の組合せを含む、請求項3に記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステル。
【請求項7】
前記第2のモノマーが、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)である、請求項3に記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステル。
【請求項8】
各ポリマーセグメントが、
第1のモノマーであって、オレフィン基と前記第1のモノマーに結合したPD-L1阻害剤を有する、第1のモノマーおよび
N-置換メタクリルアミド、N,N-二置換アクリルアミド、メタクリル酸もしくはアクリル酸の親水性エステル、N-ビニルピロリドン、N-アクリロイルモルホリン、スルホエチルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、またはこれらの任意の組合せを含む第2のモノマーとの間の重合生成物を含む、請求項1に記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステル。
【請求項9】
前記第2のモノマーが、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)、N-[3-(N’-ジカルボキシメチル)アミノプロピル]メタクリルアミド(DAMA)、N-メタクリロイルグリシルフェニルアラニルロイシルグリシン-アミノマロン酸(MA-GFLG-diCOOH)、N-(3-アミノプロピル)メタクリルアミド、N-(1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イル)メタクリルアミドまたはこれらの任意の組合せを含む、請求項8に記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステル。
【請求項10】
前記第2のモノマーが、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)である、請求項8に記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステル。
【請求項11】
前記第1の切断可能なリンカーが、酵素、pHの変化、またはこれらの組合せによって切断される、請求項1に記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステル。
【請求項12】
前記第1の切断可能なペプチドリンカーが、酵素によって切断される、請求項1に記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステル。
【請求項13】
前記第1の切断可能なペプチドリンカーが、リソソーム酵素によって切断される、請求項1に記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステル。
【請求項14】
前記第1の切断可能なペプチドリンカーが、アミノ酸配列-Gly-Pro-Nle-(配列番号1);-Cit-Phe-(配列番号2);-Lys-Lys-(配列番号3);-Phe-Lys-(配列番号4);-Arg-Arg-(配列番号5);Val-Cit(配列番号6);Gly-Phe-Gly(配列番号7);Gly-Phe-Phe(配列番号8);Gly-Leu-Gly(配列番号9);Gly-Val-Ala(配列番号10);Gly-Phe-Ala-Gly-Leu-Phe(配列番号11);Gly-Leu-Ala-Ala-Val-Ala(配列番号12);Gly-Phe-Leu-Gly(配列番号13);Gly-Phe-Phe-Leu(配列番号14);Gly-Leu-Leu-Gly(配列番号15);Gly-Phe-Tyr-Ala(配列番号16);Gly-Phe-Gly-Phe(配列番号17);Ala-Gly-Val-Phe(配列番号18);Gly-Phe-Phe-Gly(配列番号19);Gly-Phe-Leu-Gly-Phe(配列番号20);Gly-Gly-Phe-Leu-Gly-Phe(配列番号21);およびGln-Ser-Phe-Arg-Phe-Lys(配列番号22)を有するペプチドである、請求項1に記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステル。
【請求項15】
前記第1の切断可能なリンカーが、式II:
-(AA
1)-K-(AA
2)- II
を有し、式中、AA
1およびAA
2は、最大6個のアミノ酸を含む同じかまたは異なるアミノ酸配列であり、Kは、リジン、オルニチン、またはジアミンである、請求項1に記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステル。
【請求項16】
前記PD-L1阻害剤が、ペプチド、D-ペプチド、非ペプチド小分子、または抗体である、請求項1に記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステル。
【請求項17】
前記PD-L1阻害剤が、アミノ酸配列-
DAsn-
DTyr-
DSer-
DLys-
DPro-
DThr-
DAsp-
DArg-
DGln-
DTyr-
DHis-
DPhe-、-
DLys-
DHis-
DAla-
DHis-
DHis-
DThr-
DHis-
DAsn-
DLeu-
DArg-
DLeu-
DPro-、-
DMet-
DArg-
DAsn-
DArg-
DGlu-
DArg-
DTyr-
DPro-
DLys-
DPro-
DTyr-
DTyr-、またはこれらの組合せを有するD-ペプチドである、請求項1に記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステル。
【請求項18】
前記PD-L1阻害剤が、
【化23】
【化24】
またはこれらの組合せを含む非ペプチド小分子である、請求項1に記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステル。
【請求項19】
前記PD-L1阻害剤が、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、またはこれらの組合せである、請求項1に記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステル。
【請求項20】
前記PD-L1阻害剤が、アミノ酸配列-Phe-His-Tyr-Gln-Arg-Asp-Thr-Pro-Lys-Ser-Tyr-Asn-(配列番号25)を有するペプチドである、請求項1に記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステル。
【請求項21】
各PD-L1阻害剤が同じ分子である、請求項1に記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステル。
【請求項22】
各PD-L1阻害剤が、架橋剤によって各ポリマーセグメントに共有結合している、請求項1に記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステル。
【請求項23】
各ポリマーセグメントが、式III:
【化25】
のユニットを1つまたは複数有し、式中、R
2は水素またはメチルであり;
nは1~10であり;
CLは架橋剤であり;
YはPD-L1阻害剤である、
請求項1に記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステル。
【請求項24】
各ポリマーセグメントが、式IV:
【化26】
のユニットを1つまたは複数有し、式中、R
2は水素またはメチルであり;
nは1~10であり;
YはPD-L1阻害剤である、
請求項1に記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステル。
【請求項25】
各ポリマーセグメントが、式III
【化27】
のユニットを1つまたは複数有し、式中、R
2は水素またはメチルであり;
nは、独立して、1~10であり;
YはPD-L1阻害剤である、
請求項1に記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステル。
【請求項26】
図2のMPPAとして特定される、請求項1に記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステル。
【請求項27】
約60kDa~約90kDaの平均M
nを有する、請求項1に記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステル。
【請求項28】
約70kDa~約100kDaの平均M
wを有する、請求項1に記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステル。
【請求項29】
約1.0~約2の平均M
w/M
nを有する、請求項1に記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステル。
【請求項30】
約10~約15の価数を有する、請求項1に記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステル。
【請求項31】
請求項1から31のいずれかに記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステルおよび薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項32】
被験体におけるがんを処置または予防するための方法であって、請求項1から31のいずれかに記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステルおよび抗がん剤を、前記被験体に投与することを含む、方法。
【請求項33】
前記がんが、膵臓がん、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、卵巣がん(ovary cancer)、上咽頭がん、乳がん、卵巣がん(ovarian cancer)、前立腺がん、結腸がん、胃腺癌、頭部がん、頸部がん、脳がん、口腔がん、咽頭がん、甲状腺がん、食道がん、胆嚢がん、肝臓がん、直腸がん、腎臓がん、子宮がん、膀胱がん、精巣がん、リンパ腫、骨髄腫、黒色腫、白血病、または非特定の固形腫瘍である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記被験体における腫瘍を低減する、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステルが、前記抗がん剤の投与前に、前記被験体に投与される、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステルが、前記抗がん剤の投与後に、前記被験体に投与される、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
前記薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステルが、前記抗がん剤の投与と同時に、前記被験体に投与される、請求項32に記載の方法。
【請求項38】
前記抗がん剤が、エピルビシン、パクリタキセル、ドキソルビシン、ゲムシタビン、シスプラチン、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、ベツリン酸、アムホテリシンB、ジアゼパム、ナイスタチン、プロポフォール、テストステロン、エストロゲン、プレドニゾロン、プレドニゾン、2,3-メルカプトプロパノール、プロゲステロン、ドセタキセル、メイタンシノイド、PD-1阻害剤、プロテインキナーゼ阻害剤、P-糖タンパク質阻害剤、オートファジー阻害剤、PARP阻害剤、アロマターゼ阻害剤、モノクローナル抗体、光増感剤、放射線増感剤、インターロイキン、抗アンドロゲン薬、またはこれらの任意の組合せを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項39】
前記抗がん剤が、単一の第1の切断可能なペプチドリンカーによって互いに共有結合的に接続された2つのポリマーセグメントP
1およびP
2を含む抗がんコンジュゲートまたは薬学的に許容されるその塩もしくはエステルを含み、抗がん薬が、第2の切断可能なペプチドリンカーによって各ポリマーセグメントに共有結合している、請求項32に記載の方法。
【請求項40】
各ポリマーセグメントが、2つまたはそれより多いエチレン性不飽和モノマーの重合生成物を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
各ポリマーセグメントが、式IV:
【化28】
の第1のモノマーであって、式中、R
2は水素またはメチルであり;
XはOまたはNR
3であり、R
3は水素またはアルキル基であり;
L
1は第2の切断可能なリンカーであり;
Zは抗がん剤である、第1のモノマーと、
N-置換メタクリルアミド、N,N-二置換アクリルアミド、メタクリル酸もしくはアクリル酸の親水性エステル、N-ビニルピロリドン、N-アクリロイルモルホリン、スルホエチルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、またはこれらの任意の組合せを含む第2のモノマーとの間の重合生成物を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記第2のモノマーが、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)、N-[3-(N’-ジカルボキシメチル)アミノプロピル]メタクリルアミド(DAMA)、N-メタクリロイルグリシルフェニルアラニルロイシルグリシン-アミノマロン酸(MA-GFLG-diCOOH)、N-(3-アミノプロピル)メタクリルアミド、N-(1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イル)メタクリルアミドまたはこれらの任意の組合せを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記第1の切断可能なペプチドリンカーおよび前記第2の切断可能なペプチドリンカーが、独立して、アミノ酸配列-Gly-Pro-Nle-(配列番号1);-Cit-Phe-(配列番号2);-Lys-Lys-(配列番号3);-Phe-Lys-(配列番号4);-Arg-Arg-(配列番号5);Val-Cit(配列番号6);Gly-Phe-Gly(配列番号7);Gly-Phe-Phe(配列番号8);Gly-Leu-Gly(配列番号9);Gly-Val-Ala(配列番号10);Gly-Phe-Ala;Gly-Leu-Phe(配列番号11);Gly-Leu-Ala;Ala-Val-Ala(配列番号12);Gly-Phe-Leu-Gly(配列番号13);Gly-Phe-Phe-Leu(配列番号14);Gly-Leu-Leu-Gly(配列番号15);Gly-Phe-Tyr-Ala(配列番号16);Gly-Phe-Gly-Phe(配列番号17);Ala-Gly-Val-Phe(配列番号18);Gly-Phe-Phe-Gly(配列番号19);Gly-Phe-Leu-Gly-Phe(配列番号20);Gly-Gly-Phe-Leu-Gly-Phe(配列番号21);およびGln-Ser-Phe-Arg-Phe-Lys(配列番号22)を有するペプチドである、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
前記第1の切断可能なペプチドリンカーが、式III:
-(AA
1)-K-(AA
2)- (III)
を有し、式中、AA
1およびAA
2は、最大6個のアミノ酸を含む同じかまたは異なるアミノ酸配列であり、Kは、リジン、オルニチン、またはジアミンである、請求項39に記載の方法。
【請求項45】
前記抗がん薬が、パクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビン、プラチネート、ドキソルビシン、ゲルダナマイシン、エピルビシン、または9-アミノカンプトテシンである、請求項39に記載の方法。
【請求項46】
各ポリマーセグメントに共有結合した各抗がん剤が同じ抗がん剤である、請求項39に記載の方法。
【請求項47】
前記抗がんコンジュゲートまたは薬学的に許容されるその塩もしくはエステルが、式V:
P
1-Gly-Phe-Leu-Gly-Lys-Gly-Leu-Phe-Gly-P
2 V
に示されるように、単一の第1の切断可能なペプチドリンカーによって互いに共有結合的に接続された2つのポリマーセグメントP
1およびP
2を含み、
前記抗がん薬が、第2の切断可能なペプチドリンカーによって各ポリマーセグメントに共有結合しており、
各ポリマーセグメントが、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)と式VI:
【化29】
のモノマーであって、式中、Zは抗がん剤である、モノマーとの重合生成物を含む、
請求項39に記載の方法。
【請求項48】
前記抗がん薬が、パクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビン、プラチネート、ドキソルビシン、ゲルダナマイシン、エピルビシン、または9-アミノカンプトテシンである、請求項41に記載の方法。
【請求項49】
前記抗がん薬がエピルビシンである、請求項41に記載の方法。
【請求項50】
前記抗がんコンジュゲートまたは薬学的に許容されるその塩もしくはエステルがKT-1である、請求項39に記載の方法。
【請求項51】
前記抗がんコンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステルが、約60kDa~約90kDaの平均M
nを有する、請求項39に記載の方法。
【請求項52】
前記抗がんコンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステルが、約90kDa~約120kDaの平均M
wを有する、請求項39に記載の方法。
【請求項53】
前記抗がんコンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステルが、約1.0~約2の平均M
w/M
nを有する、請求項39に記載の方法。
【請求項54】
被験体におけるがんを処置するための方法であって、PD-L1阻害剤と、単一の第1の切断可能なペプチドリンカーによって互いに共有結合的に接続された2つのポリマーセグメントP
1およびP
2を含む抗がんコンジュゲートまたは薬学的に許容されるその塩もしくはエステルとを、前記被験体に投与することを含み、抗がん薬が、第2の切断可能なペプチドリンカーによって各ポリマーセグメントに共有結合している、方法。
【請求項55】
被験体におけるがんを予防するための方法であって、PD-L1阻害剤と、単一の第1の切断可能なペプチドリンカーによって互いに共有結合的に接続された2つのポリマーセグメントP
1およびP
2を含む抗がんコンジュゲートまたは薬学的に許容されるその塩もしくはエステルとを、前記被験体に投与することを含み、抗がん薬が、第2の切断可能なペプチドリンカーによって各ポリマーセグメントに共有結合している、方法。
【請求項56】
被験体における腫瘍を低減するための方法であって、PD-L1阻害剤と、単一の第1の切断可能なペプチドリンカーによって互いに共有結合的に接続された2つのポリマーセグメントP
1およびP
2を含む抗がんコンジュゲートまたは薬学的に許容されるその塩もしくはエステルとを、前記被験体に投与することを含み、抗がん薬が、第2の切断可能なペプチドリンカーによって各ポリマーセグメントに共有結合している、方法。
【請求項57】
前記PD-L1阻害剤が、ペプチド、D-ペプチド、非ペプチド小分子、または抗体である、請求項54から56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記PD-L1阻害剤が、アミノ酸配列-
DAsn-
DTyr-
DSer-
DLys-
DPro-
DThr-
DAsp-
DArg-
DGln-
DTyr-
DHis-
DPhe-、-
DLys-
DHis-
DAla-
DHis-
DHis-
DThr-
DHis-
DAsn-
DLeu-
DArg-
DLeu-
DPro-、-
DMet-
DArg-
DAsn-
DArg-
DGlu-
DArg-
DTyr-
DPro-
DLys-
DPro-
DTyr-
DTyr-、またはこれらの組合せを有するD-ペプチドである、請求項54から56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記PD-L1阻害剤が、
【化30】
【化31】
【化32】
またはこれらの組合せを含む非ペプチド小分子である、請求項54から56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記PD-L1阻害剤が、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、またはこれらの組合せである、請求項54から56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記PD-L1阻害剤が、アミノ酸配列-Phe-His-Tyr-Gln-Arg-Asp-Thr-Pro-Lys-Ser-Tyr-Asn-(配列番号25)を有するペプチドである、請求項54から56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記抗がんコンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステルが、前記PD-L1阻害剤の投与前に、前記被験体に投与される、請求項54から56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記抗がんコンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステルが、前記PD-L1阻害剤の投与後に、前記被験体に投与される、請求項54から56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記抗がんコンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステルが、前記PD-L1阻害剤の投与と同時に、前記被験体に投与される、請求項54から56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
各ポリマーセグメントが、2つまたはそれより多いエチレン性不飽和モノマーの重合生成物を含む、請求項54から56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
各ポリマーセグメントが、式IV:
【化33】
の第1のモノマーであって、式中、R
1は水素またはメチルであり;
XはOまたはNR
2であり、R
2は水素またはアルキル基であり;
L
1は第2の切断可能なリンカーであり;
Zは抗がん剤である、第1のモノマーと、
N-置換メタクリルアミド、N,N-二置換アクリルアミド、メタクリル酸もしくはアクリル酸の親水性エステル、N-ビニルピロリドン、N-アクリロイルモルホリン、スルホエチルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、またはこれらの任意の組合せを含む第2のモノマーとの間の重合生成物を含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記第2のモノマーが、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)、N-[3-(N’-ジカルボキシメチル)アミノプロピル]メタクリルアミド(DAMA)、N-メタクリロイルグリシルフェニルアラニルロイシルグリシン-アミノマロン酸(MA-GFLG-diCOOH)、N-(3-アミノプロピル)メタクリルアミド、N-(1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イル)メタクリルアミドまたはこれらの任意の組合せを含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記第1の切断可能なペプチドリンカーと前記第2の切断可能なペプチドリンカーとが、独立して、アミノ酸配列-Gly-Pro-Nle-(配列番号1);-Cit-Phe-(配列番号2);-Lys-Lys-(配列番号3);-Phe-Lys-(配列番号4);-Arg-Arg-(配列番号5);Val-Cit(配列番号6);Gly-Phe-Gly(配列番号7);Gly-Phe-Phe(配列番号8);Gly-Leu-Gly(配列番号9);Gly-Val-Ala(配列番号10);Gly-Phe-Ala;Gly-Leu-Phe(配列番号11);Gly-Leu-Ala;Ala-Val-Ala(配列番号12);Gly-Phe-Leu-Gly(配列番号13);Gly-Phe-Phe-Leu(配列番号14);Gly-Leu-Leu-Gly(配列番号15);Gly-Phe-Tyr-Ala(配列番号16);Gly-Phe-Gly-Phe(配列番号17);Ala-Gly-Val-Phe(配列番号18);Gly-Phe-Phe-Gly(配列番号19);Gly-Phe-Leu-Gly-Phe(配列番号20);Gly-Gly-Phe-Leu-Gly-Phe(配列番号21);およびGln-Ser-Phe-Arg-Phe-Lys(配列番号22)を有するペプチドである、請求項54から56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記第1の切断可能なペプチドリンカーが、式III:
-(AA
1)-K-(AA
2)- III
を有し、式中、AA
1およびAA
2は、最大6個のアミノ酸を含む同じかまたは異なるアミノ酸配列であり、Kは、リジン、オルニチン、またはジアミンである、請求項54から56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記抗がん薬が、パクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビン、プラチネート、ドキソルビシン、ゲルダナマイシン、エピルビシン、または9-アミノカンプトテシンである、請求項54から56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
各ポリマーセグメントに共有結合した各抗がん剤が同じ抗がん剤である、請求項54から56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記抗がんコンジュゲートまたは薬学的に許容されるその塩もしくはエステルが、式I:
P
1-Gly-Phe-Leu-Gly-Lys-Gly-Leu-Phe-Gly-P
2 V
に示されるように、単一の第1の切断可能なペプチドリンカーによって互いに共有結合的に接続された2つのポリマーセグメントP
1およびP
2を含み、
前記抗がん薬が、第2の切断可能なペプチドリンカーによって各ポリマーセグメントに共有結合しており、
各ポリマーセグメントが、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)と式VI:
【化34】
のモノマーであって、式中、Zは抗がん剤である、モノマーとの重合生成物を含む、
請求項54から56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記抗がん薬が、パクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビン、プラチネート、ドキソルビシン、ゲルダナマイシン、エピルビシン、または9-アミノカンプトテシンである、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記抗がん薬がエピルビシンである、請求項72に記載の方法。
【請求項75】
前記抗がんコンジュゲートまたは薬学的に許容されるその塩もしくはエステルが、KT-1である、請求項54から56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
前記抗がんコンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステルが、約60kDa~約90kDaの平均M
nを有する、請求項54から56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
前記抗がんコンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステルが、約90kDa~約120kDaの平均M
wを有する、請求項54から56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
前記抗がんコンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステルが、約1.0から約2の平均M
w/M
nを有する、請求項54から56のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年10月18日に出願された米国仮出願第62/916,821号に関する優先権を主張する。かかる出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
承認
本発明は、国立衛生研究所(National Institutes of Health)によって授与された助成金CA156933の下、政府の支援によりなされた。政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
配列表に対する相互参照
本明細書に記載の遺伝的構成要素は、配列識別子番号(配列番号)によって参照される。配列番号は、配列識別子<400>1、<400>2などに数値上対応する。コンピューター可読形式(CRF)で書かれた配列表は、参照によりその全体が組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
背景
エピルビシンは、乳がん、卵巣がん、胃がん、肺がん、およびリンパ腫を含む様々ながんを処置するために使用されるアントラサイクリン薬物である。エピルビシンは、トポイソメラーゼIIによるDNA切断を誘発するだけでなく、挿入剤としても作用する。エピルビシンは、類似薬物と比較して少ない副作用しか示さないが、注射の数時間後にはほとんど検出不能となる程度まで、腫瘍から迅速に排除されることが多い。毒性の低い他の抗がん剤は類似の限界を示す。
【0005】
T細胞は、様々ながんおよび他の疾患を認識し、身体がそれらと闘う手助けをすることができる。急速に変異する腫瘍細胞は、プログラム死リガンド1、すなわちPD-L1の発現を上方調節する。PD-L1は、受容体、すなわち活性化T細胞および免疫系の他の細胞に見られるプログラム細胞死タンパク質1(PD-1)に結合し、免疫系のさらなる活性化をもたらす細胞シグナルを遮断する。よって、PD-L1/PD-1相互作用を破壊することは、がん治療に関する有望な標的である。しかし、ある特定の腫瘍は、T細胞浸潤を欠き、よって免疫治療にほとんど応答しない。さらに、細胞内に内部移行したPD-L1は、細胞表面にリサイクルされることが多く、そこでT細胞活性化を抑制し続けることができる。
【0006】
ポリマー薬物送達コンジュゲートは、腎臓における糸球体濾過および他の手段による薬物の迅速なクリアランスなどの問題に対処するための益々一般的な戦略となっている。高分子量ポリマーコンジュゲートは、長期間循環し、血管透過性滞留性亢進(enhanced permeability and retention)(EPR)効果により腫瘍組織に効率的に蓄積する傾向がある。しかし、非分解性であるポリマー構成成分は、様々な器官に蓄積し、生体適合性を損なう可能性がある。
【0007】
腫瘍部位に蓄積し、有効な化学療法に十分な期間そこに存続する生分解性薬物送達および/または抗がんコンジュゲートを開発することが望まれる。この薬物送達および/または抗がんコンジュゲートが、がんを処置または予防するための方法の一部として被験体に投与され、かつそのコンジュゲートが、様々な組織または器官に長期間蓄積するのを防止するためにいくつかの生分解性エレメントを含有したならば、さらに望ましい。本方法は、理想的には、冷たい腫瘍(cold tumor)を免疫治療に感受性とし、さらに、PD-L1の凝集、細胞取込み、および標的化リソソーム分解をもたらし、よって、腫瘍再発に対する耐久性免疫をもたらすことになる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
概要
抗がん剤を被験体に効果的に送達するための生分解性薬物送達コンジュゲートおよび抗がんコンジュゲートが本明細書に記載される。コンジュゲートは、2つのポリマーセグメントに共有結合により接続した単一の第1の切断可能なペプチドリンカーを含み、少なくとも1つのPD-L1阻害剤が、各ポリマーセグメントに共有結合している(本明細書において、「PD-L1阻害剤ポリマーコンジュゲート」と称される)。がんを処置または予防するために、抗がん剤と組み合わせたPD-L1阻害剤ポリマーコンジュゲートの使用も本明細書に記載される。
【0009】
本発明に対する利点は、その一部は後に続く記載に示され、一部はその記載から自明となり、または以下に記載の態様の実践によって学習され得る。以下に記載の利点は、特に添付の特許請求の範囲において指摘される要素および組合せによって実現および達成されることになる。前述の一般的記載と以下の詳細な説明との両方が、例示的および説明的であるに過ぎず、限定的でないことが理解されるべきである。
【0010】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、以下に記載のいくつかの態様を例証する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、ポリマーによって増強される免疫原性化学療法とPD-L1分解との組合せの略図を示す。主鎖分解性HPMAコポリマーは、免疫原性薬物の腫瘍標的化を促進し、その直接的抗腫瘍活性を増強し、免疫原性細胞死(ICD)の誘導を促進して、抗腫瘍免疫を「ヒートアップさせる」。一方、コポリマーもまた、PD-L1の表面架橋を媒介し、そのリサイクリングをリソソーム分解に偏らせ、持続的抑制を示す。この二面的アプローチは、腫瘍において眠っているT細胞を動員および蘇生させ、T細胞応答を耐久的に促進する。
【0012】
【
図2】
図2は、コンジュゲートの合成および特徴付けを示す。(A)2つのジチオベンゾエート基に挟まれた2つの酵素分解性オリゴペプチド配列(GFLG)から構成される連鎖移動剤(CTA-GFLGKGLFG-CTA)の化学的構造。(B)第2世代の主鎖分解性HPMAコポリマー-エピルビシン(アントラサイクリン)コンジュゲート:KT-1の合成スキームおよび特徴付け。(C)PD-L1に対する多価HPMAコポリマー-ペプチドアンタゴニスト(MPPA)の合成スキームおよび特徴付け。
【0013】
【
図3】
図3は、KT-1に媒介される腫瘍蓄積およびICD誘導を示す。(A)静脈内注射の2、24、72、120、および196時間後に、Cy5(左)およびCy5標識KT-1(右)で処置した4T1腫瘍担持BALB/cマウス(n=3)のリアルタイム蛍光イメージング。蛍光強度を同じスケールに正規化した。黒丸は腫瘍を示す。(B)マウスを、注射の1、4、7日後に、遊離EPIまたはKT-1(10mg/kg EPI当量)のいずれかで処置した後のin vivoでのEPIの腫瘍細胞取込み。データは、1群あたり個々に解析されたn=5匹のマウスを表す。(C)in vitroでの4T1細胞表面におけるKT-1に増強されたCRT曝露の共焦点イメージング。青:細胞核;緑:EPI;赤:CRT。in vivoでの、(D)細胞表面におけるCRT上方調節、(E)腫瘍内HMGB
1放出、(F)DC成熟、(G)TDLNにおけるCD86+CD11
+CD11b+Ly6c+細胞の出現頻度および(H)4T1腫瘍担持マウスに対して食塩水、EPIおよびKT-1での2回用量の処置(7日目および14日目に)後の腫瘍におけるCD8+ T細胞の浸潤。データをボックスプロットとして表す(ひげ、5~95パーセンタイル)。2つの独立した実験からの代表的実験から、食塩水およびEPI処置に関してはn=4、およびKT-1処置に関してはn=6。スチューデントt検定による
*P<0.05。
【0014】
【
図4】
図4は、KT-1処置後の4T1細胞におけるカルレティキュリン誘導のin vitroフローサイトメトリー解析を示す。2×10
5個の4T1マウス乳がん細胞を24ウェルプレート中に播種した。24時間のインキュベーション後に、細胞培養培地を除去し、細胞を、薬物を含まないHPMAポリマー(pHPMA主鎖0.3mg/mL)、EPI(40μM)、または2P-EPI(40μM EPI当量)で24時間処置した。処置後に、細胞を脱離させ、冷PBSで洗浄し、カルレティキュリン(CRT)ポリクローナル抗体(1:100)と37℃で1時間さらにインキュベートした。次いで、細胞を1%BSA緩衝液で2回洗浄し、Alexa Fluor 647で標識したヤギ抗ウサギIgG(H+L)高度交差吸着済み二次抗体(1:200)で4℃で30分間染色した。その後、細胞を冷PBSで洗浄し、フローサイトメトリー解析のためにPBS中に再懸濁させた。実験は三連で行った。
【0015】
【
図5】
図5は、KT
-1が、CD8+ T細胞に依存した様式で、in vivoでの転帰を改善させることを示す。食塩水、EPIおよびKT
-1による処置後の経時的な(A)個々の腫瘍成長曲線および(B)動物生存率。CD8枯渇抗体とKT
-1とによる同時処置後の(C)個々の腫瘍成長曲線および(D)動物生存率。(A)に示したEPIとKT-1による化学療法後の腫瘍細胞内での(E)CD8+ CTLの腫瘍動員、(F)Foxp3+ Treg、(G)Tregに対するCD8+ CTLの比、および(H)PD-L1発現。α-PD-L1と組み合わせた食塩水、EPI、およびKT-1処置後の(I)個々の腫瘍成長曲線および(J)動物生存率。CR、完全腫瘍退縮。矢印は、処置レジメンを示す。2つの独立した実験からの代表的実験から、n=5~10。
*P<0.05、n.s、有意ではない、チューキーの多重比較検定を用いる一元ANOVA。
【0016】
【
図6】
図6は、(A)食塩水、EPI、またはKT-1による処置、(B)食塩水、またはKT-1とα-CD8抗体による処置、および(C)α-PD-L
1、EPI→α-PD-L1、またはKT-1→α-PD-L1による処置の後の経時的なin vivo処置レジメンおよび平均腫瘍成長曲線を示す。0日目に、8週齢の雌のBALB/cマウス(n=5~10)の胸部パッドに4T1細胞を接種し、矢印で示すように処置した。
【0017】
【
図7】
図7は、MPPAによる表面PD-L1の架橋によって、PD-L1をリソソーム分解させることを示す。(A)MPPA架橋によりPD-L1リサイクリングを阻害する略図。(B)37℃で3時間処置した後の、α-PD-L
1-Cy5またはCy3標識MPPA(P-(PPA)14-Cy3)とのリソソーム共局在。青:核;赤:Cy3/Cy5;緑:リソソーム。(C)E-64によるリソソーム加水分解阻害を用いた、またはそれを用いない場合の全細胞PD-L1発現。4T1細胞を、E-64システインプロテアーゼ阻害剤の非存在下(-)または存在下(+)で、α-PD-L1、PPA、またはMPPAで3時間処置した。その後、細胞を、PD-L1定量の前に、さらに24時間細胞培養培地中でさらにインキュベートした。(D)表面PD-L1の時間に依存する回復。4T1細胞表面を、飽和濃度のα-PD-L1、PPA、またはMPPAで、4℃で2時間予めコーティングし、未結合のものを除去した後、37℃でさらにインキュベートした。図示した時点(0、1、3、6時間)で、表面のアクセス可能なPD-L1受容体をフルオロフォアで標識した抗PD-L1抗体で染色し、フローサイトメトリーによって測定した。(E)in vivo腫瘍PD-L1発現、ならびに(F)(E)の矢印で示したKT-1とMPPAの併用処置後のCD3+CD8+ CTLおよびCD4+Foxp3+Tregの代表的なフローサイトメトリー解析プロット。2つの独立した実験からの代表的実験から、(C)および(D)ではn=3、(E)および(F)ではn=5。
【0018】
【
図8】
図8は、PD-L1へのPPAの特異性およびHPMAポリマーへのそのコンジュゲーションを示す。(A)免疫逃避からがん免疫治療までの、PPAに媒介されるPD-1/PD-L1相互作用。(B)4T1細胞におけるPD-L1に対するPPAの特異性。陰性対照:Cy5標識した抗CD20 mAbリツキシマブ(RTX)の4T1細胞との4℃で1時間のインキュベーション;陽性対照:Cy5標識した抗PD-L1抗体の4T1細胞との4℃で1時間のインキュベーション;PPA:0.2mMのPPAによる1時間の前処置と、Cy5標識した抗PD-L1抗体との4℃で1時間のコインキュベーション。PPAによる前処置は、抗PD-L1抗体の細胞表面結合を有意に阻害し、細胞表面におけるPD-L1受容体に対するその特異性が検証された。(C)異なるPPA価数を有するCy3標識したHPMAコポリマー-PPAコンジュゲートの合成スキームおよび特徴付け。
【0019】
【
図9】
図9は、KT-1とMPPAとの組合せが、治癒した動物の長期抗腫瘍抗原特異的記憶をもたらすことを示す。(A)示した処置に関する処置スケジュール。4T1腫瘍担持BALB/cマウスにおける異なる処置後の経時的な(B)個々の腫瘍体積、(C)体重変化、および(D)生存率(n=5~10)。(E)(D)のナイーブ対照マウスまたはKT-1→MPPA処置CRマウスの皮下に4T1またはCT26細胞を再負荷した後の個々の腫瘍体積測定(n=5)。(F)4T1細胞またはCT26細胞に対する(D)のKT-1→MPPA処置CRマウス由来のPBMC中の腫瘍細胞反応性T細胞(IFN-γ+CD8+)のパーセンテージの代表的散布図(n=5)。(G)最初のKT-1→MPPA処置後の4T1細胞のi.v.注射による再負荷後のマウスの生存曲線(n=5)。(H)4T1細胞i.v.再負荷後の脾臓におけるCD44+CD62L-メモリーエフェクターCD8+ T細胞(n=5)。(I)KT-1とMPPA併用処置とによる腫瘍免疫状態での「熱の増大(turning up)」の略図。
【0020】
【
図10】
図10は、4T1細胞表面におけるP-(PPA)
x(x=0、1.4、4.3、14)の価数依存性結合親和性を示す。異なる価数を有するP-(PPA)
xの4T1細胞上のPD-L1に対する結合親和性を比較するために、P-(PPA)
x-Cy3(x=0、1.4、4.3、14)を4T1細胞と4℃で2時間インキュベートした。次いで、細胞を冷PBSで洗浄し、Cy3強度をフローサイトメトリーによって測定した。結果は、価数が増加するにつれて、P-(PPA)
xの表面結合親和性が増大したことを示した。実験は三連で行った。エラーバーは平均±s.e.mを示す。
【0021】
【
図11】
図11は、表面に結合したP-(PPA)
x-Cy3の内部移行(%)を示す。4T1細胞表面を飽和濃度のP-(PPA)
x-Cy3(x=0、1.4、4.3、14)で4℃で予めコーティングし、コンジュゲートを37℃で内部移行させた。次いで、受容体に結合したコンジュゲートと一緒に表面PD-L1をプロテイナーゼ-K消化(0.4mg/mL、20分、37℃)によって除去し、フローサイトメトリーを使用して内部移行したコンジュゲートを測定した。実験は三連で行った。エラーバーは平均±s.e.mを示す。
【0022】
【
図12】
図12は、食塩水、KT-1、KT-1→α-PD-L1、KT-1→PPA、およびKT-1→MPPAで処置したBALB/cマウスの4T1腫瘍におけるCD8+ CTL、Foxp3+ Treg、およびTregに対するCD8+ CTLの比の定量を示す。2つの独立した実験からの代表的実験から、n=5。チューキーの多重比較検定を用いる一元ANOVAから、
*P<0.05。エラーバーは平均±s.e.mを示し、ボックスプロットは、ひげ、5~95パーセンタイルを表す。
【0023】
【
図13】
図13は、4T1細胞またはCT26細胞に対するナイーブBALB/cマウス由来のPBMC中の腫瘍細胞反応性T細胞(IFN-γ+CD8+)のパーセンテージの代表的散布図を示す。2つの群(n=5)の間の差は、スチューデントt検定による有意性を全く示さなかった。
【0024】
【
図14】
図14は、4T1腫瘍を移植され、最初のKT-1→MPPA処置後に完全に治癒したBALB/cマウスに5×10
5個の4T1細胞をi.v.注射によって再負荷した後の肺転移を示す。対照群として、ナイーブBALB/cマウスは同じ数の4T1細胞を受けた。n=5、エラーバーは平均±s.e.mを示す。
【0025】
【
図15】
図15は、皮下CT26および転移性LLC-1腫瘍モデルにおけるKT-1とMPPAとの組合せの抗腫瘍効果および抗転移効果を示す。(A)示した処置後のCT26結腸腫瘍成長曲線(n=5)。0日目に、BALB/cマウスの皮下に2×10
6個のCT26細胞を接種した。7、14、および21日目に、腫瘍担持マウスをKT-1で処置した。15、および22日目に、マウスを、抗PD-L1療法、α-PD-L1抗体またはMPPAコンジュゲートで処置した。CD8枯渇抗体を、CD8+ T細胞除去に供したマウスに、KT-1と同時に与えた。矢印は、KT-1とMPPAとの組合せに関する処置レジメンを示す。(B)in vitroでのCT26細胞の表面におけるKT-1に増強されたCRT曝露の共焦点イメージ。青:細胞核;緑;EPI;赤:CRT。CT26腫瘍担持マウスに対する食塩水およびKT-1による2回用量の処置(7日目および14日目)後の、in vivoでの(C)細胞表面でのCRT上方調節、および(D)Tregに対するCD8+ CTLの比。(E)KT-1による2回用量の処置(7日目および14日目)と、その後のα-PD-L1またはMPPAによる1回用量(15日目)による処置後の、in vivoでのCT26腫瘍におけるPD-L1発現(17日目)。(F)時間に依存する表面PD-L1の回復。KT-1による2回用量の処置(7日目および14日目)後の腫瘍担持マウスからCT26腫瘍細胞を単離した。次いで、細胞表面を飽和濃度のα-PD-L1またはMPPAで4℃で2時間予めコーティングした。その後、細胞を洗浄し、新しい培養培地を用いて37℃でインキュベートした。選択した時点(0、1、3、6時間)で、表面のアクセス可能なPD-L1受容体を、フルオロフォアで標識した抗PD-L1抗体で染色し、フローサイトメトリーによって測定した。(G)(A)のナイーブ対照マウス(n=5)またはKT-1→MPPA処置CRマウス(n=3)の皮下にCT26細胞を再負荷した後の、個々の腫瘍体積測定。(H)ナイーブマウスの原発性CT26腫瘍および治癒したマウスの続発性CT26腫瘍におけるCD3+CD8+ CTL、CD3+CD4+ Foxp3+ Treg、PD-L1の発現を含む免疫状態。(I)示した処置後のマウスの生存率(n=5)。0日目に、C57BL/6マウスの静脈内に、2×10
5個のLLC-1 Lewis肺癌細胞を接種した。次いで、マウスを(A)に記載したように処置した。(J)LLC-1細胞に対する、25日目の(I)のマウス由来のPBMC中の腫瘍細胞反応性T細胞(IFN-γ+CD8+)のパーセンテージの倍数増加(fold increase)。(K)25日目の(I)のマウス由来の脾臓におけるCD44+CD62L-メモリーエフェクターCD8+ T細胞。(L)肺重量および肺葉切片のヘマトキシリン-エオシン組織学解析として示した、25日目の(I)のマウス由来の肺における腫瘍負荷。
*P<0.05、n.s、有意ではない、チューキーの多重比較検定を用いる一元ANOVA。エラーバーは平均±s.e.mを示す;ボックスプロットはひげ、5~95パーセンタイルを表す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
詳細な説明
本発明の化合物、組成物、物品、デバイス、および/または方法が開示および記載される前に、以下に記載した態様は、当然のことながら変化し得るため、特定の化合物、合成方法、または使用に限定されないことが理解されるべきである。本明細書において使用される専門用語は、特定の態様を説明することを目的とするに過ぎず、限定的であることを意図するものではないことも理解されるべきである。
【0027】
本明細書および以下の特許請求の範囲において、以下の意味を有することが定義されるいくつかの用語に対して言及される。
【0028】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈が別段に明確に示していなければ、複数の指示対象を含むことに留意されたい。よって、例えば、「抗がん剤」への言及は、2つまたはそれより多いそのような抗がん剤の混合物などを含む。
【0029】
「必要に応じた」または「必要に応じて」は、次に記載された事象または状況が起こり得るかまたは起こり得ないこと、およびこの記載が、事象または状況が起こる事例とそれが起こらない事例を含むことを意味する。例えば、語句「第2のモノマーを必要に応じて含む」は、第2のモノマーが存在しても存在しなくてもよいことを意味する。
【0030】
範囲は、本明細書において、「約」1つの特定値から、および/または「約」別の特定値までとして表現されてもよい。このような範囲が表現される場合、別の態様は、1つの特定値から、および/または他の特定値までを含む。同様に、値が、先行詞「約」の使用によって近似値として表現される場合、特定値が別の態様を形成することが理解されるであろう。範囲のそれぞれの終点が、他方の終点との関係においても、他方の終点から独立しても両方とも有意であることがさらに理解されるであろう。
【0031】
「混合する(admixing)」または「混合(admixture)」は、化学反応も物理的相互作用も存在しない、2つまたはそれより多い構成成分を合わせた組合せを指す。用語「混合する(admixing)」および「混合(admixture)」は、混合して組成物を生成する際の本明細書に記載の構成成分のいずれかの間の化学反応または物理的相互作用も含み得る。構成成分は、単独で、水中で、別の溶媒中で、または溶媒の組合せ中で混合されてもよい。
【0032】
本明細書および結論としての特許請求の範囲において使用される場合、化学種の残基は、その部分がその化学種から実際に得られるかどうかにかかわらず、特定の反応スキームにおいて得られた化学種の生成物またはその後の製剤もしくは化学生成物である部分を指す。例えば、少なくとも1つの-NH2基を含有するアミノ酸は、式H-Y-OH(式中、Yはアミノ酸分子の残りの部分(すなわち、残基、-HN-CHR-CO-)である)で表すことができる。
【0033】
用語「アルキル基」は、本明細書で使用される場合、1~24個の炭素原子の分岐または非分岐の飽和炭化水素基、例えばメチル、エチル、nプロピル、イソプロピル、nブチル、イソブチル、tブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコシル、テトラコシルなどである。「低級アルキル」基は、1~6個の炭素原子を含有するアルキル基である。
【0034】
用語「処置する」は、本明細書で使用される場合、対照(例えば、被験体への食塩水の投与)と比較した場合に、既存の状態の症状を維持または低減することとして定義される。例えば、本明細書に記載の組成物を使用してがんを処置することができる。
【0035】
用語「予防する」は、本明細書で使用される場合、対照(例えば、被験体への食塩水の投与)と比較した場合に、疾患または障害の1つまたは複数の症状の発生の可能性を排除または低減することとして定義される。例えば、本明細書に記載の組成物および方法を使用して、腫瘍細胞の再成長を予防するか、または腫瘍細胞の再成長速度を低減させることができる。他の態様では、本明細書に記載の組成物および方法は、がんの再発または腫瘍成長を低減または予防することができる。
【0036】
本明細書において定義される用語「被験体」は、がんの処置および/または予防を必要とする任意の生物である。一態様では、被験体は、ヒト、飼育動物(例えば、イヌ、ネコ、ウマ)、家畜(例えば、ウシ、ブタ)、および野生動物を含むがこれらに限定されない哺乳動物である。
【0037】
「多分散指数」は、本明細書で使用される場合、ポリマーの分子量分布の広さを評価する手段である。一態様では、多分散指数は、Mw/Mnと定義され、Mwは重量平均分子量(すなわち、分子量平均への寄与を決定する際に鎖の分子量を考慮に入れる値であり、より長い鎖はMwに比較的多く寄与する)であり、Mnは数平均分子量(すなわち、試料中のすべてのポリマー鎖の統計的平均分子量)である。
【0038】
本明細書で使用される場合、「熱い(hot)」腫瘍は、炎症の徴候を示す腫瘍である。一態様では、熱い腫瘍は細胞傷害性T細胞(CTL)によって浸潤されており、よって、免疫系はがんを認識する。一態様では、熱い腫瘍は免疫治療によく応答する。
【0039】
本明細書で使用される場合、「冷たい」腫瘍はT細胞によって浸潤されていない。さらなる態様では、冷たい腫瘍に関して、身体の免疫系は適切に作用しておらず、免疫治療薬は有効である可能性は低い。一態様では、冷たい腫瘍は、調節性T細胞(Treg)に囲まれている。別の態様では、本明細書に開示されるコンジュゲートおよび方法は、Tregに対するCTLの比を増加させ、冷たい腫瘍を免疫治療に対して応答性にすることができる。
【0040】
本出願を通して使用されるR1、R2、R3、K、CL、L1、X、Y、Z、AA1、AA2、P1、およびP2などの変数は、逆の内容が記述されていなければ以前に定義されたものと同じ変数である。
【0041】
本明細書を通して、文脈が別段に指示していなければ、単語「含む(comprise)」、または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」などの変形は、記述された要素、整数、ステップ、または要素、整数もしくはステップの群を含むことを意味するが、任意の他の要素、整数、ステップ、または要素、整数、もしくはステップの群を排除することを意味するものではないことが理解されるであろう。
【0042】
本明細書で使用される場合、複数の項目、構造的要素、組成的要素、および/または材料は、便宜上共通のリストに表されてもよい。しかし、これらのリストは、そのリストの各メンバーが、別々の固有のメンバーとして個々に特定されているかのように解釈されるべきである。よって、任意のこのようなリストのいずれの個々メンバーも、逆の内容が示されていなければ、共通の群に提示されていることのみに基づいて、同じリストのいずれかの他のメンバーの事実上の等価物として解釈されるべきでない。
【0043】
濃度、量、および他の数値データは、範囲形式で本明細書において表現または提示されてもよい。このような範囲形式は、単に便宜上および簡潔さのために使用されているので、範囲の限界として明示的に記載された数値だけでなく、各数値および下位範囲が明示的に記載されているかのように、この範囲内に包含されるすべての個々の数値または下位範囲を含むように柔軟に解釈されるべきであることが理解されるべきである。例として、「約1」~「約5」の数値範囲は、約1~約5の明示的に記載された値だけでなく、個々の値および示された範囲内の下位範囲も含むものと解釈されるべきである。よって、2、3、および4などの個々の数値、1~3、2~4、3~5、約1~約3、1~約3、約1~3などのような下位範囲、ならびに1、2、3、4、および5は、個々にこの数値範囲に含まれる。同じ原理を、最小値または最大値のような唯一の数値を記載する範囲に適用する。この範囲は、終点を含む(例えば、「約1~3」の範囲が記載される場合、この範囲は終点1および3ならびにその間の値の両方を含む)ものと解釈されるべきである。さらに、このような解釈は、記載されている文字の幅または範囲にかかわらず適用されるべきである。
【0044】
本開示の組成物および方法に使用することができるか、それと併せて使用することができるか、それの調製において使用することができるか、またはその生成物である材料および構成成分が開示される。これらの材料と他の材料が本明細書において開示され、これらの材料の組合せ、サブセット、相互作用、群などが開示される場合、これらの化合物のそれぞれの様々な個別的および集合的な組合せおよび順列への具体的な言及を明示的に開示することができないが、それぞれが本明細書で具体的に企図および記載されていると理解される。例えば、抗がん剤が開示および議論され、いくつかの異なる適合性の切断可能なペプチドリンカーが議論される場合、逆の内容が具体的に示されていなければ、可能である抗がん剤および切断可能なペプチドリンカーのありとあらゆる組合せおよび順列が具体的に企図される。例えば、分子A、B、およびCのクラスが、分子D、E、およびFのクラスと同様に開示される場合、組合せ分子の一例であるA-Dが開示され、次いで、それぞれが個別に記載されていないとしても、それぞれは個別的および集合的に企図される。よって、この例において、A、B、およびC;D、E、およびF;および例示的組合せA-Dの開示から、組合せA-E、A-F、B-D、B-E、B-F、C-D、C-E、およびC-Fのそれぞれが具体的に企図され、開示されているとみなされるべきである。同様に、これらの任意のサブセットまたは組合せも具体的に企図され、開示される。よって、例えば、A、B、およびC;D、E、およびF;および例示的組合せA-Dの開示から、A-E、B-F、およびC-Eのサブグループが、具体的に企図され、開示されているとみなされるべきである。この概念は、以下に限定されないが、本開示の組成物を作製および使用する方法におけるステップを含む本開示のすべての態様に適用される。よって、実施され得る種々の追加のステップが存在する場合、これらの追加のステップのそれぞれが、本開示の方法のいずれかの特定の実施形態または実施形態の組合せにより実施され得ること、およびこのような組合せのそれぞれが、具体的に企図され、開示されているとみなされるべきであることが理解される。
【0045】
本明細書および結論としての特許請求の範囲において、組成物または物品における特定の要素または構成成分の重量部への言及は、要素または構成成分と、重量部が表現される組成物または物品におけるいずれかの他の要素または構成成分との間の重量関係を示す。よって、2重量部の構成成分Xおよび5重量部の構成成分Yを含有する化合物において、XおよびYは、2:5の重量比で存在し、追加の構成成分が化合物中に含有されるかどうかに関係なく、このような比で存在する。
【0046】
構成成分の重量パーセントは、逆の内容が具体的に記述されていなければ、構成成分が含まれる製剤または組成物の総重量に対するものである。
【0047】
I.PD-L1阻害剤コンジュゲート
一態様では、単一の第1の切断可能なペプチドリンカーによって互いに共有結合により接続された2つのポリマーセグメントP1およびP2を有し、少なくとも1つのPD-L1阻害剤が各ポリマーセグメントに共有結合している、薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容されるその塩もしくはエステルが本明細書に開示される。PD-L1阻害剤コンジュゲート中に存在する各構成成分は、以下に詳細に記載される。
【0048】
ポリマーセグメント
PD-L1阻害剤コンジュゲートは2つのポリマーセグメントを含む。ポリマーセグメントは、それらが被験体にとって毒性でないように設計される。ある特定の態様では、ポリマーセグメントは生分解性である。他の態様では、ポリマーセグメントは親水性である。一態様では、各ポリマーセグメントは同じポリマーである。他の態様では、各ポリマーセグメントは互いに異なる。
【0049】
一態様では、本明細書に開示されている各ポリマーセグメント(すなわち、P1およびP2)は、2つまたはそれより多いエチレン性不飽和モノマーの重合生成物であるか、またはそれを含んでもよい。
【0050】
一態様では、一方または両方のポリマーセグメントは、式Iの第1のモノマー:
【化1】
(式中、R
1は水素またはメチルであり;XはOまたはNR
2であり、R
2は水素またはアルキル基であり;nは、1~10、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10であり、任意の値は範囲の下の終点と上の終点(例えば1~8、1~5など)であってもよい)と;
N-置換メタクリルアミド、N,N-二置換アクリルアミド、メタクリル酸もしくはアクリル酸の親水性エステル、N-ビニルピロリドン、N-アクリロイルモルホリン、スルホエチルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、またはこれらの任意の組合せを含む第2のモノマー
との間の重合生成物であるか、またはそれを含む。
【0051】
別の態様では、一方または両方のポリマーセグメントが、式Iのモノマー(式中、R1はメチルであり、XはNHであり、nは1~5である)との重合生成物であるか、またはそれを含む、薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容されるその塩もしくはエステルが本明細書に開示される。別の態様では、nは、1、2、3、4、もしくは5、または前述の値のいずれかの組合せ、または前述の値のいずれかを包含する範囲である。一態様では、nは3である。
【0052】
また別の態様では、第2のモノマーは、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)、N-[3-(N’-ジカルボキシメチル)アミノプロピル]メタクリルアミド(DAMA)、N-メタクリロイルグリシルフェニルアラニルロイシルグリシン-アミノマロン酸(MA-GFLG-diCOOH)、N-(3-アミノプロピル)メタクリルアミド、N-(1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イル)メタクリルアミドまたはこれらの任意の組合せから選択される。一態様では、第2のモノマーは、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)である。
【0053】
別の態様では、両方のポリマーセグメントは、式Iのモノマー(式中、R1はメチルであり、XはNHであり、nは3である)とN-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)との重合生成物であり、両方のポリマーセグメントは同じポリマーである。ポリマーセグメントを生成するための方法が以下に提供される。
【0054】
ペプチドリンカー
一態様では、第1の切断可能なペプチドリンカーは、酵素の使用、周囲媒体のpHの変化、またはこれらの組合せを含むがこれらに限定されない、当技術分野で公知の任意の手段によって切断することができる。一態様では、第1の切断可能なペプチドリンカーが酵素によって切断される場合、酵素は、例えば、カテプシン、カルボキシペプチダーゼ、アスパラギニルエンドペプチダーゼ、またはこれらの組合せなどのリソソーム酵素であってもよい。
【0055】
一態様では、コンジュゲート中に存在する第1の切断可能なリンカーは、1つまたは複数のアミノ酸残基から構成される。第1の切断可能なリンカーは、本明細書において、主鎖の切断可能なリンカーとも称され、リンカーはポリマー主鎖中に存在する。例えば、第1の切断可能なリンカーは、2~13個のアミノ酸残基を有するペプチドであってもよい。アミノ酸またはアミノ酸の配列を変更することによって、第1の切断可能なリンカーを、それが特定の条件下で切断されるように設計することが可能である。第1の切断可能なリンカーは、血流中でかなり安定であるが、酵素と接触すると分解することが望ましい。
【0056】
第1の切断可能なリンカーは、酵素によって切断され得る。一態様では、リンカーは、リソソーム酵素によって切断される。リソソーム酵素は、ペプチド結合を加水分解する能力を有するいくつかのプロテイナーゼ(例えば、カテプシンB、L、DまたはK)を含む。切断可能なリンカーのリソソーム加水分解の速度は、リンカー中に存在するアミノ酸残基の数と性質の両方に依存する。これは、立体的要因と構造的要因の両方を反映する。
【0057】
別の態様では、第1の切断可能なペプチドリンカーは、以下のアミノ酸配列のいずれかを有してもよい:-Gly-Pro-Nle-(配列番号1);-Cit-Phe-(配列番号2);-Lys-Lys-(配列番号3);-Phe-Lys-(配列番号4);-Arg-Arg-(配列番号5);Val-Cit(配列番号6);Gly-Phe-Gly(配列番号7);Gly-Phe-Phe(配列番号8);Gly-Leu-Gly(配列番号9);Gly-Val-Ala(配列番号10);Gly-Phe-Ala-Gly-Leu-Phe(配列番号11);Gly-Leu-Ala-Ala-Val-Ala(配列番号12);Gly-Phe-Leu-Gly(配列番号13);Gly-Phe-Phe-Leu(配列番号14);Gly-Leu-Leu-Gly(配列番号15);Gly-Phe-Tyr-Ala(配列番号16);Gly-Phe-Gly-Phe(配列番号17);Ala-Gly-Val-Phe(配列番号18);Gly-Phe-Phe-Gly(配列番号19);Gly-Phe-Leu-Gly-Phe(配列番号20);Gly-Gly-Phe-Leu-Gly-Phe(配列番号21);およびGln-Ser-Phe-Arg-Phe-Lys(配列番号22)、ここで、Nleはノルロイシンであり、Citはシトルリンであり、列挙された他のアミノ酸は、それらの標準的な三文字コードによって参照される。
【0058】
別の態様では、第1の切断可能なペプチドリンカーは、式II:
-(AA1)-K-(AA2)- II
(式中、AA1およびAA2は、最大6個のアミノ酸を含む同じかまたは異なるアミノ酸配列であり、Kは、リジン、オルニチン、またはジアミンである)を有する。
【0059】
他の態様では、第1の切断可能なリンカーは、加水分解によって切断され得る基である。例えば、リンカーは、pHの変化によって(例えば、カルボキシアルキルマレイン酸リンカーまたはアスコルビン酸リンカー)、またはこれらの組合せによって切断され得る。
【0060】
PD-L1阻害剤
PD-L1(プログラム死-リガンド1)は、がんを含むがこれらに限定されない疾患状態の間に免疫系の獲得部分を抑制する役割を担うと推測されるヒトにおける膜貫通タンパク質である。PD-L1が阻害性チェックポイント分子PD-1に結合すると、最終結果は、リンパ節における抗原特異的T細胞の増殖の低減および調節性T細胞におけるアポトーシスの低減である。PD-L1の上方調節により、がんが免疫系を回避することが可能になる可能性があり、よってPD-L1の作用を抑制することは、がんを処置および/または予防するのに有用である。
【0061】
一態様では、PD-L1阻害剤は、ペプチド、D-ペプチド、非ペプチド小分子、抗体、またはこれらの組合せであり得る。一部の態様では、PD-L1阻害剤はPD-L1に結合し、そうでなければPD-1または細胞表面受容体と相互作用するPD-L1のアクセス部位を遮断することができる。
【0062】
一態様では、PD-L1阻害剤がD-ペプチドである場合、これは、以下の配列のうちの1つまたは複数を含んでもよい:-DAsn-DTyr-DSer-DLys-DPro-DThr-DAsp-DArg-DGln-DTyr-DHis-DPhe-;-DLys-DHis-DAla-DHis-DHis-DThr-DHis-DAsn-DLeu-DArg-DLeu-DPro-;-DMet-DArg-DAsn-DArg-DGlu-DArg-DTyr-DPro-DLys-DPro-DTyr-DTyr-、またはこれらの任意の組合せ。
【0063】
代替の態様では、PD-L1阻害剤は、非ペプチド小分子である場合、以下の構造:
【化2】
【化3】
のうちの1つもしくは複数、またはこれらの組合せ
によって表される化合物を含んでもよい。
【0064】
また別の態様では、PD-L1阻害剤が抗体である場合、これは、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、またはこれらの任意の組合せから選択されてもよい。
【0065】
さらに別の態様では、PD-L1阻害剤がペプチドである場合、これは、アミノ酸配列-Phe-His-Tyr-Gln-Arg-Asp-Thr-Pro-Lys-Ser-Tyr-Asn-(配列番号25)を有するかまたはこれを組み込んでもよい。また別の態様では、アミノ酸配列は追加のシステイン残基を組み込むことができ、よって、ジスルフィド結合を作製するためのチオール基を表す(すなわち、-Phe-His-Tyr-Gln-Arg-Asp-Thr-Pro-Lys-Ser-Tyr-Asn-Cys-(配列番号26))。
【0066】
一態様では、薬物送達コンジュゲート中の各PD-L1阻害剤は同じ分子である。代替の態様では、薬物送達コンジュゲート中の各PD-L1阻害剤は異なる分子であってもよい。
【0067】
架橋剤
ある特定の態様では、PD-L1阻害剤は、1つまたは複数の架橋剤によって薬物送達コンジュゲートのポリマーセグメントに共有結合している。
【0068】
一態様では、リンカーは、ヘテロ官能性架橋剤またはホモ官能性架橋剤を含む。この態様では、ヘテロ官能性架橋剤は、共有結合が可能な少なくとも2つの異なる官能基を有するリンカーを含み得る。例えば、ヘテロ官能性リンカーは、リンカーの一方の末端に位置するチオール基とリンカーの反対側の末端のカルボキシル基とを有し得る。この例では、リンカーは以下のように例示され得る:HS-リンカー-COOH。別の態様では、ホモ官能性架橋剤は、共有結合が可能な少なくとも2つの同一の官能基を有するリンカーを含む。例えば、ホモ官能性リンカーは2つのチオール基を有することができ、そのうちの一方はリンカーの一方の末端に位置し、他方はリンカーの反対側の末端に位置する。この例では、リンカーは以下のように例示され得る:HS-リンカー-SH。例えば、リンカーは、求核剤と反応することが可能な少なくとも1つの基を有する。この態様では、求核剤は、マイケル付加によってリンカーに共有結合してもよい。この例では、リンカーは、カルボニル基とのコンジュゲーションにおけるオレフィン基を有する。別の態様では、ペプチド配列とリンカーとは、カルボキシル基と反応する第一級アミンによって共有結合することができる。さらなる例では、リンカーは、チオール基と反応することができる官能基を有する。
【0069】
一部の態様では、リンカーは、スルホスクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(スルホ-SMCC)およびその誘導体、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル(スルホ-MBS)およびその誘導体、3-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)およびその誘導体、スルホスクシンイミジル6-(3’-[2-ピリジルジチオ]-プロピオンアミド)ヘキサノエート(スルホ-LC-SPDP)およびその誘導体、ポリエチレングリコール(PEG)およびその誘導体、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステルおよびその誘導体、N-スクシンイミジル(4-ヨードアセチル)アミノベンゾエート(SIAB)、マレイミドブチリルオキシ-スクシンイミドエステル(GMBS)およびその誘導体、N-(ε-マレイミドカプロイルオキシ)-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(EMCS)およびその誘導体、スクシンイミジル-6-((ヨードアセチル)アミノ)ヘキサノエート(SIAX)およびその誘導体、スクシンイミジル-4-(p-マレイミドフェニル)ブチレート(SMPB)およびその誘導体、スクシンイミジル-4-(((ヨードアセチル)アミノ)メチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SIAC)およびその誘導体、p-ニトロフェニルヨードアセテート(NPIA)およびその誘導体、またはこれらの任意の組合せを含む。
【0070】
一部の態様では、リンカーは、以下に限定されないが、ヘテロ官能性水溶性架橋剤を含み、ヘテロ官能性架橋剤は、スルホスクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(スルホ-SMCC)およびその誘導体、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル(スルホ-MBS)およびその誘導体、3-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)およびその誘導体、スルホスクシンイミジル6-(3’-[2-ピリジルジチオ]-プロピオンアミド)ヘキサノエート(スルホ-LC-SPDP)およびその誘導体、ポリエチレングリコール(PEG)およびその誘導体(アミンとチオール反応性末端官能基とを含有するヘテロ二官能性PEG誘導体を含むがこれらに限定されない)、アクリレート-PEG-NHS、アクリレート-ポリマー-NHS、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステルおよびその誘導体、N-スクシンイミジル(4-ヨードアセチル)アミノベンゾエート(スルホ-SIAB)を含むN-スクシンイミジル(4-ヨードアセチル)アミノベンゾエート(SIAB)およびその誘導体、マレイミドブチリルオキシ-スクシンイミドエステル(GMBS)およびその誘導体(N-マレイミドブチリルオキシ-スルホスクシンイミドエステル(スルホ-GMBS)を含むがこれらに限定されない)、N-(ε-マレイミドカプロイルオキシ)-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(EMCS)およびその誘導体(N-(ε-マレイミドカプロイルオキシ)スルホスクシンイミドエステル(スルホ-EMCS)を含むがこれらに限定されない)、スクシンイミジル-6-((ヨードアセチル)アミノ)ヘキサノエート(SIAX)およびその誘導体、スクシンイミジル-4-(p-マレイミドフェニル)ブチレート(SMPB)およびその誘導体、スクシンイミジル-4-(((ヨードアセチル)アミノ)メチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SIAC)およびその誘導体、p-ニトロフェニルヨードアセテート(NPIA)およびその誘導体、またはこれらの任意の組合せである。
【0071】
一態様では、PD-L1阻害剤コンジュゲートまたは薬学的に許容されるその塩もしくはエステルは、そのポリマーセグメント中に、式III:
【化4】
(式中、R
2は水素またはメチルであり;nは1~10であり;CLは架橋剤であり;YはPD-L1阻害剤である)のユニットを1つまたは複数含む。
【0072】
別の態様では、PD-L1阻害剤コンジュゲートまたは薬学的に許容されるその塩もしくはエステルは、そのポリマーセグメント中に、式IV:
【化5】
(式中、R
2は水素またはメチルであり;nは1~10であり;YはPD-L1阻害剤である)のユニットを1つまたは複数含む。さらに、この態様では、薬物送達コンジュゲートはMPPAであってもよい(
図2)。
【0073】
塩またはエステル
一態様では、本明細書に記載のPD-L1阻害剤コンジュゲートは、薬学的に許容される塩またはエステルであってもよい。PD-L1阻害剤コンジュゲートは、塩またはエステルに容易に変換することができる1つまたは複数の塩基性または酸性部位を含み得る。さらなる態様では、薬学的に許容される塩は、例えば、ナトリウム、リチウムなどのアルカリ金属塩;例えば、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属塩;例えば、銀、アルミニウム、アンモニウムもしくは置換アンモニウム塩などの別の金属もしくは多原子の塩;または例えば、アミノ酸塩(例えば、リジン塩、アルギニン塩など)などの有機塩であってもよい。代替の態様では、塩は、塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩、リン酸塩、二リン酸塩、塩化物、マレイン酸塩、クエン酸塩、メシル酸塩、硝酸塩、酒石酸塩、グルコン酸塩、または別の一般的塩であってもよい。さらなる態様では、塩は無水であってもよく、または例えば、アルコレートもしくは水和物などの薬学的に許容される溶媒和物の形態であってもよい。一部の態様では、結晶水和塩または結晶性無水塩が使用されてもよい。
【0074】
別の態様では、好適な薬学的に許容されるエステルとしては、以下に限定されないが、メチルエステルおよびエチルエステルを含む低級アルキルエステルが挙げられる。
【0075】
上記態様のいずれかにおいて、塩またはエステルは、pKa、親油性、吸湿性、流動性、賦形剤との適合性、化学的安定性、融点、溶解度、解離速度、風味、剤形および/または投与経路(すなわち、経口、非経口、局所など)などを含むがこれらに限定されない薬物送達コンジュゲートの特性を改善または調整するために、当業者によって選択され得る。
【0076】
特性
本明細書に記載のPD-L1阻害剤コンジュゲートの構造的特徴は、特定の構造的特性および化学的特性を付与するために必要に応じて改変され得る。例えば、コンジュゲートの分子量は改変されてもよい。一態様では、PD-L1阻害剤コンジュゲートまたは薬学的に許容されるその塩もしくはエステルは、約60kDa~約90kDa、または約70kDa~約80kDa、または約60kDa、約65kDa、約70kDa、約75kDa、約80kDa、約85kDa、もしくは約90kDa、または前述の値のいずれかの組合せ、または前述の値のいずれかを包含する範囲の平均Mnを有する。
【0077】
別の態様では、PD-L1阻害剤コンジュゲートまたは薬学的に許容されるその塩もしくはエステルは、約70kDa~約100kDa、または約85kDa~約95kDa、または約70kDa、約75kDa、約80kDa、約85kDa、約90kDa、約95kDa、もしくは約100kDa、または前述の値のいずれかの組合せ、または前記値のいずれかを包含する範囲の平均Mwを有する。
【0078】
さらに別の態様では、PD-L1阻害剤コンジュゲートまたは薬学的に許容されるその塩もしくはエステルは、約1.0~約2、または約1~約1.5、または約1、約1.25、約1.5、約1.75、もしくは約2、または前述の値のいずれかの組合せ、または前述の値のいずれかを包含する範囲の平均多分散指数(すなわち、Mw/Mn)を有する。
【0079】
PD-L1阻害剤コンジュゲート中に存在するPD-L1阻害剤モチーフの数も変化し得る。本明細書において言及される「多価」化合物は、PD-L1結合モチーフの複数のコピーを有するPD-L1阻害剤コンジュゲートである。よって、「価数」は、本明細書で使用される場合、送達コンジュゲート当たりのPD-L1結合モチーフの平均数を指す。一態様では、本明細書に開示されている薬物送達コンジュゲートおよび/またはそれらの塩もしくはエステルは、約10~約15、または約10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、もしくは約15、または前述の値のいずれかの組合せ、または前述の値のいずれかを包含する範囲の価数を有する。一態様では、価数は約12.6である。一部の態様では、価数は、PPA/ポリマーの価数であり、「PPA」は、PD-L1ペプチドアンタゴニストを指す。
【0080】
II.医薬組成物
一態様では、本明細書に記載のPD-L1阻害剤コンジュゲートおよび/またはそれらの薬学的に許容される塩もしくはエステルならびに薬学的に許容される担体を含有する医薬組成物が本明細書に開示される。
【0081】
本明細書に記載のPD-L1阻害剤コンジュゲートを、少なくとも1種の薬学的に許容される担体と組み合わせて、医薬組成物を生成することができる。医薬組成物は、当技術分野で公知の技法を使用して調製することができる。一態様では、医薬組成物は、立体複合体(stereocomplex)を薬学的に許容される担体と混合することによって調製される。
【0082】
薬学的に許容される担体は、当業者に公知である。これらのほとんどは、典型的には、ヒトおよび/または他の哺乳動物に投与するための標準的な担体であり、滅菌水、食塩水、および生理学的pHの緩衝溶液などの溶液を含む。
【0083】
薬学的送達を意図した分子は、医薬組成物に配合されてもよい。医薬組成物は、本明細書に記載の立体複合体に加えて、担体、増粘剤、希釈剤、緩衝液、防腐剤、界面活性剤などを含んでもよい。医薬組成物は、抗微生物剤、抗炎症剤、麻酔薬などの1種または複数の追加の有効成分を含んでもよい。
【0084】
医薬組成物は、局所的処置が望まれるか全身的処置が望まれるか、および処置される領域に応じて、いくつかの手法で投与することができる。投与は、非経口的、経口的、皮下、病変内、腹腔内、静脈内、または筋肉内にであってもよい。
【0085】
投与用の調製物は、無菌の水性または非水性溶液、懸濁物、およびエマルションを含む。非水性担体の例としては、食塩水および緩衝媒体を含む、アルコール/水溶液、エマルション、または懸濁物が挙げられる。非経口ビヒクルとしては、本開示の組成物および方法の付帯的使用に必要であれば、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸リンゲル、または固定油が挙げられる。静脈内ビヒクルとしては、本開示の組成物および方法の付帯的使用に必要であれば、流体および栄養分補充物質、電解質補充物質(例えば、リンゲルデキストロースに基づくものなど)などが挙げられる。例えば、抗微生物薬、抗酸化剤、キレート剤、不活性ガスなどの、防腐剤および他の添加剤も存在してよい。
【0086】
一態様では、本明細書に記載の薬物送達コンジュゲートおよび薬学的に許容される担体または賦形剤を含有する医薬組成物が本明細書において提供される。
【0087】
III.がんを処置または予防するための方法
一態様では、被験体におけるがんを処置または予防するための方法であって、PD-L1阻害剤コンジュゲートまたは薬学的に許容されるその塩もしくはエステルを被験体に投与することを含む、方法が本明細書に開示される。さらなる態様では、本方法は、1種または複数の追加の抗がん剤をPD-L1阻害剤コンジュゲートまたは薬学的に許容されるその塩もしくはエステルと組み合わせて、被験体に送達することも含む。別の態様では、本方法は、被験体における腫瘍のサイズを低減するのに有用である。
【0088】
本明細書で使用される場合、「抗がん剤」は、被験体の体内のがん細胞を死滅させるため、被験体におけるがんの成長を遅延させるため、被験体においてがんが広がらないようにするため、または外科的に除去された腫瘍の再発を予防するために使用される化合物である。抗がん剤は、以下に限定されないが、DNAをアルキル化すること(DNA複製酵素による螺旋化および認識を妨害することができる)、DNAの生成を妨害すること、がん細胞におけるタンパク質産生を妨害すること、がん細胞の分裂を妨げること、またはホルモンに依存するがんの成長を遅延させることによるものを含む種々の方法によって作用することができる。
【0089】
一態様では、PD-L1阻害剤コンジュゲートまたは薬学的に許容されるその塩もしくはエステルは、追加の抗がん剤の投与前、投与後、または投与と同時に、被験体に投与することができる。
【0090】
一態様では、抗がん剤は、PD-1阻害剤である。PD-1阻害剤は、PD-L1のプログラム細胞死タンパク質(PD-1)との会合を阻害する免疫チェックポイント阻害剤である。このタンパク質-リガンド相互作用は、ある特定のタイプのがんにおける免疫系の抑制に関与する。さらなる態様では、PD-1阻害剤は、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、ピジリズマブ、AMP-224、AMP-514、またはPDR001であってもよい。一態様では、進行性黒色腫、非小細胞肺がん、腎細胞癌、膀胱がん、ホジキンリンパ腫、および他のがんが、PD-1阻害剤によって処置され得る。
【0091】
一態様では、抗がん剤は、モノクローナル抗体である。モノクローナル抗体治療では、モノクローナル抗体は、標的細胞および/またはタンパク質に単一特異的に結合し、被験体の免疫系を刺激してこれらの細胞を攻撃する。一部の態様では、モノクローナル抗体治療は、放射線治療と併せて使用される。一態様では、本明細書に開示される組成物はモノクローナル抗体を含む。モノクローナル抗体は、マウスのもの(接尾辞が-omab)、キメラのもの(接尾辞が-ximab)、ヒト化されたもの(接尾辞が-zumab)、またはヒトのもの(接尾辞が-umab)であり得る。一態様では、モノクローナル抗体は、ラムシルマブ、3F8、8H9、アバゴボマブ(Abagovomab)、アビツズマブ(Abituzumab)、アダリムマブ(Adalimumab)、アフツズマブ(Afutuzumab)、アラシズマブペゴル(Alacizumab pegol)、アマツキシマブ(Amatuximab)、アナツモマブマフェナトックス(Anatumomab mafenatox)、アンデカリキシマブ(Andecaliximab)、アネツマブラブタンシン(Anetumab ravtansine)、アポリズマブ(Apolizumab)、アルシツモマブ(Arcitumomab)、アスクリンバクマブ(Ascrinvacumab)、アテゾリズマブ(Atezolizumab)、アベルマブ(Avelumab)、アジンツキシズマブベドチン(Azintuxizumab vedotin)、バビツキシマブ(Bavituximab)、BCD-100、ベランタマブマフォドチン(Belantamab mafodotin)、ベリムマブ(Belimumab)、ベマリツズマブ(Bemarituzumab)、ベシレソマブ(Besilesomab)、ベバシズマブ(Bevacizumab)、ビバツズマブメルタンシン(Bivatuzumab mertansine)、ブレンツキシマブベドチン(Brentuximab vedotin)、ブロンチクツズマブ(Brontictuzumab)、カビラリズマブ(Cabiralizumab)、カミダンルマブテシリン(Camidanlumab tesirine)、カムレリズマブ(Camrelizumab)、カンツズマブメルタンシン(Cantuzumab mertansine)、カンツズマブラブタンシン(Cantuzumab ravtansine)、カロツキシマブ(Carotuximab)、カツマキソマブ(Cantumaxomab)、cBR96-ドキソルビシンイムノコンジュゲート、セミプリマブ(Cemiplimab)、セルグツズマブアムナロイキン(Cergutuzumab amunaleukin)、セトレリマブ(Cetrelimab)、セツキシマブ(Cetuximab)、シビサタマブ(Cibisatamab)、シタツズマブボガトックス(citatuzumab bogatox)、シクスツムマブ(Cixutumumab)、クリバツズマブテトラキセタン(Clivatuzumab tetraxetan)、コドリツズマブ(Codrituzumab)、コフェツズマブペリドチン(Cofetuzumab pelidotin)、コルツキシマブラブタンシン(Coltuximab ravtansine)、コナツムマブ(Conatumumab)、クサツズマブ(Cusatuzumab)、ダセツズマブ(Dacetuzumab)、ダロツズマブ(Dalotuzumab)、ダラツムマブ(Daratumumab)、デムシズマブ(Demcizumab)、デニンツズマブマホドチン(Denintuzumab mafodotin)、デパツキシツマブマホドチン(Depatuxizumab mafodotin)、デルロツキシマブビオチン(Derlotuximab biotin)、デツモマブ(Detumomab)、ジヌツキシマブ(Dinutuximab)、ドロジツマブ(Drozitumab)、DS-8201、デュリゴツズマブ(Duligotuzumab)、デュルバルマブ(Durvalumab)、デュシギツマブ(Dusitgitumab)、デュボルツキシツマブ(Duvortuxizumab)、エクロメキシマブ(Ecromeximab)、エドレコロマブ(Edrecolomab)、エルゲムツマブ(Elgemtumab)、エロツズマブ(Elotuzumab)、エマクツズマブ(Emactuzumab)、エミベツズマブ(Emibetuzumab)、エナポトマブベドチン(Enapotomab vedotin)、エナバツズマブ(Enavatuzumab)、エンフォルツマブベドチン(Enfortumab vedotin)、エノブリツズマブ(Enoblituzumab)、エンシツキシマブ(Ensituximab)、エプラツズマブ(Epratuzumab)、エルツマキソマブ(Ertumaxomab)、エタラシズマブ(Etaracizumab)、ファリシマブ(Faricimab)、ファルレツズマブ(Farletuzumab)、FBTA05、フィクラツズマブ(Ficlatuzumab)、フィギツムマブ(Figitumumab)、フランボツマブ(Flanvotumab)、フロテツズマブ(Flotetuzumab)、フツキシマブ(Futuximab)、ガリキシマブ(Galiximab)、ガンコタマブ(Gancotamab)、ガニツマブ(Ganitumab)、ガチポツズマブ(Gatipotozumab)、ゲムツズマブオゾガマイシン(Gemtuzumab ozogamicin)、ギレンツキシマブ(Girentuximab)、グレムバツムマブベドチン(Glembatumumab vedotin)、IBI308、イブリツモマブチウキセタン(Ibritumomab tiuxetan)、イクルクマブ(Icrucumab)、イラダツズマブベドチン(Iladatuzumab vedotin)、IMAB362、イマルマブ(Imalumab)、イムガツズマブ(Imgatuzumab)、インダツキシマブラブタンシン(Indatuximab ravtansine)、インデュサツマブベドチン(Indusatumab vedotin)、イネビリズマブ(Inebilizumab)、インテツムマブ(Intetumumab)、イピリムマブ(Ipilimumab)、イラツムマブ(Iratumumab)、イサツキシマブ(Isatuximab)、イスチラツマブ(Istiratumab)、ラベツズマブ(Labetuzumab)、ラクノツズマブ(Lacnotuzumab)、ラディラツズマブベドチン(Ladiratuzumab vedotin)、レンジルマブ(Lenzilumab)、レキサツムマブ(Lexatumumab)、リファスツズマブベドチン(Lifastuzumab vedotin)、ロンカスツキシマブテシリン(Loncastuximab tesirine)、ロサツキシズマブベドチン(Losatuxizumab vedotin)、リロトマブサテトラキセタン(Lilotomab satetraxetan)、リンツズマブ(Lintuzumab)、リリルマブ(Lirilumab)、ロルボツズマブメルタンシン(Lorvotuzumab mertansine)、ルカツムマブ(Lucatumumab)、ルミリキシマブ(Lumiliximab)、ルムレツズマブ(Lumretuzumab)、MABp1、マパツムマブ(Mapatumumab)、マルジェツキシマブ(Margetuximab)、マツズマブ(Matuzuma)、ミラツズマブ(Milatuzumab)、ミルベツキシマブソラブタンシン(Mirvetuximab soravtansine)、ミツモマブ(Mitumomab)、モドツキシマブ(Modotuximab)、モガムリズマブ(Mogamulizumab)、モナリズマブ(Monalizumab)、モスネツズマブ(Mosunetuzumab)、モキセツモマブパスドトックス(Moxetumomab pasudotox)、ナコロマブタフェナトックス(Nacolomab tafenatox)、ナプツモマブエスタフェナトクス(Naptumomab estafenatox)、ナルナツマブ(Narnatumab)、ナビシキシズマブ(Navicixizumab)、ナキシタマブ(Naxitamab)、ネシツムマブ(Necitumumab)、ネスバクマブ(Nesvacumab)、ニモツズマブ(Nimotuzumab)、ニボルマブ(Nivolumab)、ノフェツモマブメルペンタン(Nofetumomab merpentan)、オビヌツズマブ(Obinutuzumab)、オカラツズマブ(Ocaratuzumab)、オファツムマブ(Ofatumumab)、オララツマブ(Olaratumab)、オレクルマブ(Oleclumab)、オナルツズマブ(Onartuzumab)、オンツキシズマブ(Ontuxizumab)、オポルツズマブモナトクス(Oportuzumab monatox)、オレゴボマブ(Oregovomab)、オトレルツズマブ(Otlertuzumab)、パムレブルマブ(Pamrevlumab)、パニツムマブ(Panitumumab)、パンコマブ(Pankomab)、パルサツズマブ(Parsatuzumab)、パソツキシズマブ(Pasotuxizumab)、パトリツマブ(Patritumab)、PDR001、ペムブロリズマブ(Pembrolizumab)、ペムツモマブ(Pemtumomab)、ペルツズマブ(Pertuzumab)、ピジリズマブ(Pidilizumab)、ピナツズマブベドチン(Pinatuzumab vedotin)、ポラツズマブベドチン(Polatuzumab vedotin)、プリツムマブ(Pritumumab)、ラコツモマブ(Racotumomab)、ラドレツマブ(Radretumab)、ラムシルマブ(Ramucirumab)、リロツムマブ(Rilotumumab)、リツキシマブ(Rituxiamab)、ロバツムマブ(Robatumumab)、ロスマンツズマブ(Rosmantuzumab)、ロバルピツズマブテシリン(Rovalpituzumab tesirine)、サシツズマブゴビテカン(Sacituzumab govitecan)、サマリズマブ(Samalizumab)、サムロタマブベドチン(Samrotamab vedotin)、セリバンツマブ(Seribantumab)、シブロツズマブ(Sibrotuzumab)、SGN-CD19A、シルツキシマブ(Siltuximab)、シルトラツマブベドチン(Sirtratumab vedotin)、ソフィツズマブベドチン(Sofituzumab vedotin)、ソリトマブ(Solitomab)、スパルタリズマブ(Spartalizumab)、タバルマブ(Tabalumab)、タカツズマブテトラキセタン(Tacatuzumab tetraxetan)、タピツムマブパプトクス(Tapitumumab paptox)、タレクスツマブ(Tarextumab)、タボリマブ(Tavolimab)、テリソツズマブベドチン(Telisotuzumab vedotin)、テナツモマブ(Tenatumomab)、テポチジマブ(Tepotidimab)、テツロマブ(Tetulomab)、TGN1412、チガツズマブ(Tigatuzumab)、チミグツズマブ(Timigutuzumab)、チラゴツマブ(Tiragotumab)、チスレリズマブ(Tislezlizumab)、チソツマブベドチン(Tisotumab vedotin)、TNX-650、トムズツキシマブ(Tomuzutuximab)、トベツマブ(Tovetumab)、トラスツズマブ(Trastuzumab)、トラスツズマブエムタンシン(Trastuzumab emtansine
)、TRBS07、トレメリムマブ(Tremelimumab)、ツコツズマブセルモロイキン(Tucotuzumab celmoleukin)、ウブリツキシマブ(Ublituximab)、ウロクプルマブ(Ulocuplumab)、ウレルマブ(URelumab)、ウトミルマブ(Utomilumab)、バダスツキシマブタリリン(Vadastuximab talirine)、バンドルツズマブベドチン(Vandortuzumab vedotin)、バンチクツマブ(Vantictumab)、バヌシズマブ(Vanucizumab)、バリサクマブ(Varisacumab)、バルリルマブ(Varlilumab)、ベルツズマブ(Veltuzumab)、ベセンクマブ(Vesencumab)、ボロシキシマブ(Volociximab)、ボンレロリズマブ(Vonlerolizumab)、ボルセツズマブマフォドチン(Vorsetuzumab mafodotin)、ボツムマブ(Votumumab)、XMAB-5574、ザルツムマブ(Zalutumumab)、ザツキシマブ(Zatuximab)、ゼノクツズマブ(Zenocutuzumab)、ゾルベツキシマブ(Zolbetuximab)、またはトシツモマブである。別の態様では、モノクローナル抗体を使用して、進行性悪性疾患および非ホジキンリンパ腫などのリンパ腫ならびに神経芽腫、肉腫、転移性脳がん、卵巣がん、前立腺がん、トリプルネガティブ乳がんを含む乳がん、リンパ腫、非小細胞肺癌、胃がん、胃食道接合部腺癌、血液がん、黒色腫、扁平上皮癌、ホジキンリンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、膵臓がん、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、肝細胞癌、結腸直腸がん、血管肉腫、頭頚部がん、卵巣がん、固形腫瘍、多発性骨髄腫、神経膠芽腫、精巣がん、B細胞悪性疾患、尿路上皮がん(urotnelial cancer)、慢性リンパ球性白血病、副腎皮質癌、急性骨髄性白血病、腎明細胞癌、慢性骨髄単球性白血病、若年性骨髄単球性白血病、小細胞肺癌、ヘアリー細胞白血病、腎細胞癌、上咽頭がん、神経膠腫、慢性リンパ性白血病、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、および他のがんを処置することができる。
【0092】
一態様では、抗がん剤は、光増感剤である。光増感剤を光と分子酸素とを併せて使用して、細胞死を誘引する。一態様では、本明細書に開示される組成物は光増感剤を含む。理論に拘束されることを望むものではないが、まず、光増感剤は、その光増感剤が処置される組織において臨界濃度に達するまで、光の非存在下で投与される。その後、光増感剤は、付近の健康な組織への損傷を最小限にしながら、光増感剤を活性化するのに十分なレベルの光に曝露することによって活性化される。さらなる態様では、頭頚部、肺、膀胱、および皮膚(カポジ肉腫および皮膚の非黒色腫皮膚がんを含む)の悪性がん、転移性乳がん、消化管のがん、ならびに膀胱がんは、光増感剤に特に感受性であり得る。一態様では、光増感剤は、ポルフィリン、塩素、または色素であってもよい。別の態様では、光増感剤は、5-アミノレブリン酸(Levulan)、シリコンフタロシアニンPc 4、ナフタロシアニン、メタロ-ナフタロシアニン、スズ(IV)プルプリン、銅オクタエチルベンゾクロリン、亜鉛(II)プルプリン、m-テトラヒドロキシフェニルクロリン、モノ-L-アスパルチルクロリンe6、Allumera、Photofrin、Visudyne(Verteporfin)、Foscan、Metvix、Hexvix、Cysview、Laserphyrin、Antrin、Photochlor、Photosens、Photrex、Purlytin、Lutex、Lumacan、Cevira、Visonac、BF-200 ALA、Amphinez、アザジピロメテン、亜鉛フタロシアニン、または別の光増感剤である。
【0093】
一態様では、抗がん剤は、プロテインキナーゼ阻害剤である。プロテインキナーゼ阻害剤は、1種または複数のプロテインキナーゼの作用を遮断する。プロテインキナーゼは、ある特定のタイプのがんにおいて過剰発現される場合がある。一部の態様では、本明細書に開示される組成物は、1種または複数のプロテインキナーゼ阻害剤を含む。さらなる態様では、プロテインキナーゼ阻害剤は、アファチニブ(afatanib)、アキシチニブ、ボスチニブ、セツキシマブ、コビメチニブ、クリゾチニブ、カボザニチニブ、ダサチニブ、エヌトレクチニブ、エルロチニブ、フォスタマチニブ、ゲフィチニブ、イブルチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、レンバチニブ、ムブリチニブ、ニロチニブ、パゾパニブ、ペガプタニブ、ルキソリチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、SU6656、バンデタニブ、ベムラフェニブ、または別のプロテインキナーゼ阻害剤であってもよい。一部の態様では、プロテインキナーゼ阻害剤は、非小細胞肺がん、腎細胞癌、慢性骨髄性白血病(chronic myolegenous leukemia)、進行性黒色腫、転移性甲状腺髄様がん、神経芽腫(neruoblastoma)、結腸直腸がん、乳がん、甲状腺がん、腎がん、骨髄線維症、腎細胞癌、または消化管間質腫瘍に対して特に有用である。
【0094】
一態様では、抗がん剤は、p-糖タンパク質阻害剤であってもよい。p-糖タンパク質は、無差別な薬物排出ポンプであり、腫瘍部位において薬物のバイオアベイラビリティーを低下させ得る。理論に拘束されることを望むものではないが、p-糖タンパク質阻害剤は、抗がん剤の細胞内蓄積を増強することができる。一態様では、このことは、p-糖タンパク質輸送体に結合し、抗がん剤の膜貫通輸送を阻害することによって遂行され得る。膜貫通輸送体の阻害によって、抗がん剤の細胞内濃度の増加がもたらされる場合があり、最終的にその細胞傷害を増強し得る。さらなる態様では、p-糖タンパク質阻害剤は、ベラパミル、シクロスポリン、タモキシフェン、カルモジュリンアンタゴニスト、デクスベラパミル、デクスニグルジピン、バルスポダール(valspodar)(PSC 833)、ビリコダル(biricodar)(VX-710)、タリキダル(tariquidar)(XR9576)、ゾスキダル(zosuquidar)(LY335979)、ラニキダル(laniquidar)(R101933)、エラクリダル(elacridar)(GF120918)、チムコダル(timcodar)(VX-853)、タキシフォリン、ナリンゲニン、ジオスミン、ケルセチン、ジルチアゼム、ベプリジル、ニカルジピン、ニフェジピン、フェロジピン、イスラジピン、トリフルオペラジン、クロペンチキソール、トリフルオプロマジン、フルペンチキソール、エモパミル、ガロパミル、Ro11-2933、アミオダロン、クラリスロマイシン、コルヒチン、エリスロマイシン、ランソプラゾール、オメプラゾール、別のプロトンポンプインヒビター、パロキセチン、セルトラリン、キニジン、またはこれらの任意の組合せである。一態様では、p-糖タンパク質阻害剤は、薬物耐性がんを処置するのに特に有効であり、併用療法の一部として含まれる。
【0095】
一態様では、抗がん剤は、オートファジー阻害剤である。オートファジーは、本明細書で使用される場合、リソソームに依存する細胞内分解のメカニズムである。オートファジーは、いくつかのプロテインキナーゼを含む複数のタンパク質に関与する。オートファジー阻害剤は、オートファジーの早期段階(すなわち、コアオートファジー機構の初期ステップに関与する経路)を標的とすることができるか、または後期段階(すなわち、リソソームの機能)を標的とすることができる。一態様では、本明細書に開示される組成物は、1種または複数のオートファジー阻害剤を含む。さらなる態様では、オートファジー阻害剤は、3-メチルアデニン、ウォルトマニン、LY294002、PT210、GSK-2126548、spautin-1、SAR405、化合物31、VPS34-IN1、PIK-III、化合物6、MRT68921、SBI-0206965、ペプスタチンA、E64d、バフィロマイシンA1、クロミプラミン、ルカントン、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、Lys05、ARN5187、化合物30、または別のオートファジー阻害剤であり得る。さらなる態様では、オートファジー阻害剤は、非小細胞肺がん、慢性骨髄性白血病、転移性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、転移性結腸直腸がん、乳がん、脳転移、再発した難治性多発性骨髄腫、神経膠芽腫多形、および他のがんを処置するのに有用であり得る。
【0096】
一態様では、抗がん剤は、放射線増感剤である。放射線増感剤は、腫瘍細胞を放射線治療に対してより感受性にする。一態様では、本明細書に開示される組成物は、1種または複数の放射線増感剤を含む。一態様では、放射線増感剤は、フルオロピリミジン、ゲムシタビン、シスプラチンなどのプラチナアナログ、NBTXR3、Nimoral、トランスクロセチン酸ナトリウム(trans sodium crocetinate)、NVX-108、ミソニダゾール、メトロニダゾール、チラパザミン、または別の放射線増感剤である。理論に拘束されることを望むものではないが、放射線増感剤は、腫瘍細胞、特に放射線治療によって引き起こされたDNA損傷を有するものにおける細胞周期チェックポイントの調節を妨害する。いくつかの放射線増感剤は、DNA鎖を架橋させ、放射線治療によって引き起こされるDNA損傷を悪化させ得る。一態様では、放射線増感剤は、四肢および胴体の壁の軟組織肉腫、肝細胞癌、前立腺がん、口腔の扁平上皮がん、頭頚部の扁平上皮癌、および神経膠芽腫に対して特に有用であり得る。
【0097】
一態様では、抗がん剤は、PARP阻害剤である。PARP阻害剤は、酵素であるポリADPリボースポリメラーゼに対して作用する。一態様では、本明細書に開示される組成物は、1種または複数のPARP阻害剤を含む。理論に拘束されることを望むものではないが、PARP阻害剤は、PARP活性を遮断し、DNA損傷の修復を妨げ、また、PARPタンパク質をDNA損傷部位に局在化させることもでき、これがDNA複製を遮断し、よって細胞傷害性である。一態様では、PARP阻害剤は、再発プラチナ感受性卵巣がん、BRCA1、BRCA2、またはPALB2変異を有する腫瘍、PTEN欠損腫瘍(例えば、ある特定の前立腺がん)、低酸素で急成長する腫瘍、卵巣上皮がん、卵管がん、原発性腹膜がん、扁平上皮細胞肺がん、血液悪性疾患、進行性または再発性の固形腫瘍、非小細胞肺がん、トリプルネガティブ乳がん、結腸直腸がん、転移性乳がんおよび卵巣がん、ならびに転移性黒色腫に対して有効である。一態様では、PARP阻害剤は、MK-4827(ニラパリブとしても公知)、ルカパリブ、イニパリブ、タラゾパリブ、オラパリブ、ベリパリブ、CEP 9722、E7016、BGB2-290、3-アミノベンズアミド、または別のPARP阻害剤である。
【0098】
一態様では、抗がん剤は、インターロイキンである。インターロイキンは、典型的には白血球によって発現されるサイトカイン、またはシグナル分子である。一部の態様では、外部で合成されたインターロイキンは、がん処置として使用することができる。一態様では、本明細書に開示される組成物は、1種または複数のインターロイキンを含む。さらなる態様では、インターロイキンは、PROLEUKIN(登録商標)(IL-2およびアルデスロイキンとしても公知)または別のインターロイキンであってもよい。理論に拘束されることを望むものではないが、インターロイキンは、キラーT細胞および他の免疫細胞の増殖を助長する助けとなり、それによって、被験体の免疫系の機能を増強することができる(それが腫瘍細胞の出現に関係するため)。別の態様では、インターロイキンは、腎臓がんおよび黒色腫に対して有効であり得る。
【0099】
一態様では、抗がん剤は、mTOR阻害剤である。mTOR阻害剤は、ラパマイシンの機構的標的を阻害する薬物である。mTORは、セリン/トレオニン特異的プロテインキナーゼであり、代謝、成長、および細胞増殖の調節にとって重要である。一態様では、本明細書に開示される組成物は、1種または複数のmTOR阻害剤を含む。さらなる態様では、mTOR阻害剤は、ラパマイシン、シロリムス、テムシロリムス、エベロリムス、リダフォロリムス、デフォロリムス、ダクトリシブ、サパニセルチブ、AZD8055、AZD2014、または別のmTOR阻害剤であってもよい。理論に拘束されることを望むものではないが、mTOR阻害剤は、T細胞の増殖、そして腫瘍血管新生に関連するプロセスを含む、様々なサイトカインによって誘導される増殖性の応答に対して作用する。一態様では、ある特定のmTOR阻害剤は、特定の遺伝子決定基または変異を有する腫瘍に対して主に有効であり得る。mTOR阻害剤は、腎細胞癌、上衣下巨細胞星状細胞腫、膵臓起源の進行性神経内分泌腫瘍、進行性乳がんに対して特に有用であり得る。別の態様では、mTOR阻害剤は、疾患の安定化に対する単剤治療として、または多くのがん型に対する併用療法の一部として使用することができる。
【0100】
一態様では、抗がん剤は、アロマターゼ阻害剤である。アロマターゼ阻害剤は、特に閉経後の女性、高リスクの女性、およびホルモン感受性腫瘍を有する女性における乳がんおよび卵巣がんの処置および予防において有用である。一態様では、本明細書に開示される組成物は、1種または複数のアロマターゼ阻害剤を含む。理論に拘束されることを望むものではないが、アロマターゼ阻害剤は、アンドロステンジオンおよびテストステロンを含む様々な前駆体の変換を遮断する。一態様では、アロマターゼ阻害剤は、アロマターゼ酵素との永続的な結合を形成することによって作用することができる、不可逆的ステロイド阻害剤である。別の態様では、アロマターゼ阻害剤は、アロマターゼ酵素に対する基質と可逆的に競合する、非ステロイド阻害剤である。また別の態様では、アロマターゼ阻害剤の具体的作用機序は知られていない場合もある。一態様では、アロマターゼ阻害剤は、アミノグルテチミド、テストラクトン、アナストロゾール、レトロゾール、エキセメスタン、ボロゾール、フォルメスタン、ファドロゾール、1,4,6-アンドロスタトリエン-3,17-ジオン、4-アンドロステン,3,6,17-トリオン、または別のアロマターゼ阻害剤であってもよい。
【0101】
一態様では、抗がん剤は、抗アンドロゲン薬である。抗アンドロゲン薬、すなわちアンドロゲン合成阻害剤は、アンドロゲンホルモンの生合成を妨げる。一態様では、本明細書に開示される組成物は、1種または複数の抗アンドロゲン薬を含む。理論に拘束されることを望むものではないが、抗アンドロゲン薬は、以下に限定されないが、コレステロールのステロイドホルモン前駆体への変換を阻害すること、またはプレグナンステロイドのアンドロゲンへの変換を阻害することを含むアンドロゲン合成経路における種々の異なるステップで作用することができる。一態様では、抗アンドロゲン薬は、アミノグルテチミド(アロマターゼ阻害剤としても作用する)、ケトコナゾール、酢酸アビラテロン、セビテロネル、または別の抗アンドロゲン薬であってもよい。
【0102】
これらの態様のいずれかにおいて、追加の抗がん剤は、エピルビシン、パクリタキセル、ドキソルビシン、ゲムシタビン、シスプラチン、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、ベツリン酸、アムホテリシンB、ジアゼパム、ナイスタチン、プロポフォール、テストステロン、エストロゲン、プレドニゾロン、プレドニゾン、2,3-メルカプトプロパノール、プロゲステロン、ドセタキセル、メイタンシノイド、PD-1阻害剤、プロテインキナーゼ阻害剤、P-糖タンパク質阻害剤、オートファジー阻害剤、PARP阻害剤、アロマターゼ阻害剤、モノクローナル抗体、光増感剤、放射線増感剤、インターロイキン、抗アンドロゲン薬、またはこれらの任意の組合せであってもよい。
【0103】
一態様では、被験体におけるがんを処置するための方法であって、以下に記載されているPD-L1阻害剤と、抗がんコンジュゲートまたは薬学的に許容されるその塩もしくはエステルとを、被験体に投与することを含む、方法が本明細書に開示される。この態様では、PD-L1阻害剤は遊離分子であり、本明細書に記載されているPD-L1阻害剤コンジュゲートではない。さらなる態様では、PD-L1阻害剤は、ペプチド、D-ペプチド、非ペプチド小分子、または抗体であってもよい。一態様では、抗がんコンジュゲートまたは薬学的に許容されるその塩もしくはエステルは、PD-L1阻害剤の投与前、またはPD-L1阻害剤の投与後、またはPD-L1阻害剤と同時に投与される。
【0104】
一態様では、PD-L1阻害剤がD-ペプチドである場合、これは以下の配列のうちの1つまたは複数を含んでもよい:-DAsn-DTyr-DSer-DLys-DPro-DThr-DAsp-DArg-DGln-DTyr-DHis-DPhe-;-DLys-DHis-DAla-DHis-DHis-DThr-DHis-DAsn-DLeu-DArg-DLeu-DPro-;-DMet-DArg-DAsn-DArg-DGlu-DArg-DTyr-DPro-DLys-DPro-DTyr-DTyr-、またはこれらの任意の組合せ。
【0105】
代替の態様では、PD-L1阻害剤が非ペプチド小分子である場合、これは、以下の構造:
【化6】
【化7】
のうちの1つもしくは複数、またはこれらの組合せによって表される化合物を含んでもよい。
【0106】
また別の態様では、PD-L1阻害剤が抗体である場合、それは、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、またはそれらの組合せから選択されてもよい。
【0107】
さらに別の態様では、PD-L1阻害剤がペプチドである場合、それは、アミノ酸配列-Phe-His-Tyr-Gln-Arg-Asp-Thr-Pro-Lys-Ser-Tyr-Asn-(配列番号25)を有するか、またはこれを組み込んでもよい。また別の態様では、アミノ酸配列は、追加のシステイン残基を組み込むことができ、よって、ジスルフィド結合を作り出すためのチオール基を提示する(すなわち、-Phe-His-Tyr-Gln-Arg-Asp-Thr-Pro-Lys-Ser-Tyr-Asn-Cys-(配列番号26))。
【0108】
抗がんコンジュゲート
一部の態様では、抗がん剤は、抗がんコンジュゲートまたは薬学的に許容されるその塩もしくはエステルであるか、またはこれを含み、抗がんコンジュゲートは、単一の第1の切断可能なペプチドリンカーによって互いに共有結合的に接続された2つのポリマーセグメントP1およびP2を含み、抗がん薬は、第2の切断可能なペプチドリンカーによって各ポリマーセグメントに共有結合されている。
【0109】
一態様では、抗がんコンジュゲートの各ポリマーセグメントは、2つまたはそれより多いエチレン性不飽和モノマーの重合生成物であるか、またはそれを含む。抗がんコンジュゲートのポリマーセグメントは、PD-L1阻害剤コンジュゲートにおけるものと同じであっても異なっていてもよい。
【0110】
一態様では、抗がんコンジュゲートのポリマーセグメントは、式IVの第1のモノマー:
【化8】
(式中、R
2は水素またはメチルであり;XはOまたはNR
3であり、R
3は水素またはアルキル基であり;L
1は第2の切断可能なリンカーであり;Zは抗がん剤である)と;
N-置換メタクリルアミド、N,N-二置換アクリルアミド、メタクリル酸もしくはアクリル酸の親水性エステル、N-ビニルピロリドン、N-アクリロイルモルホリン、スルホエチルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、またはこれらの任意の組合せを含む第2のモノマーとの間の重合生成物を含む。
【0111】
また別の態様では、第2のモノマーは、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)、N-[3-(N’-ジカルボキシメチル)アミノプロピル]メタクリルアミド(DAMA)、N-メタクリロイルグリシルフェニルアラニルロイシルグリシン-アミノマロン酸(MA-GFLG-diCOOH)、N-(3-アミノプロピル)メタクリルアミド、N-(1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イル)メタクリルアミドまたはこれらの任意の組合せであってもよい。
【0112】
この態様では、抗がん剤は、第2のリンカーL1によって不飽和モノマーに連結している。第2の切断可能なリンカーは、本明細書において、側鎖リンカーとも称され、このリンカーは、ポリマー主鎖の一部ではないが主鎖に対するペンダントである。第2の切断可能なリンカーは、コンジュゲートのポリマー主鎖において、第1の切断可能なリンカーのものと同じペプチドであっても異なるペプチドであってもよい。抗がんコンジュゲートの第1の切断可能なペプチドリンカーは、PD-L1阻害剤コンジュゲートにおける第1の切断可能なペプチドリンカーと同じであっても異なっていてもよい。
【0113】
これらの態様のいずれかにおいて、第1の切断可能なペプチドリンカーおよび第2の切断可能なペプチドリンカーは、以下から独立して選択され得る:-Gly-Pro-Nle-(配列番号1);-Cit-Phe-(配列番号2);-Lys-Lys-(配列番号3);-Phe-Lys-(配列番号4);-Arg-Arg-(配列番号5);Val-Cit(配列番号6);Gly-Phe-Gly(配列番号7);Gly-Phe-Phe(配列番号8);Gly-Leu-Gly(配列番号9);Gly-Val-Ala(配列番号10);Gly-Phe-Ala-Gly-Leu-Phe(配列番号11);Gly-Leu-Ala-Ala-Val-Ala(配列番号12);Gly-Phe-Leu-Gly(配列番号13);Gly-Phe-Phe-Leu(配列番号14);Gly-Leu-Leu-Gly(配列番号15);Gly-Phe-Tyr-Ala(配列番号16);Gly-Phe-Gly-Phe(配列番号17);Ala-Gly-Val-Phe(配列番号18);Gly-Phe-Phe-Gly(配列番号19);Gly-Phe-Leu-Gly-Phe(配列番号20);Gly-Gly-Phe-Leu-Gly-Phe(配列番号21);およびGln-Ser-Phe-Arg-Phe-Lys(配列番号22)、ここで、Nleはノルロイシンであり、Citはシトルリンであり、他のアミノ酸は、それらの標準的な三文字コードによって表される。一部の態様では、第1の切断可能なペプチドリンカーは、式III:
-(AA1)-K-(AA2)- (III)
(式中、AA1およびAA2は、最大6個のアミノ酸を含む同じかまたは異なるアミノ酸配列であり、Kは、リジン、オルニチン、またはジアミンである)を有する。
【0114】
ある特定の態様では、抗がんコンジュゲートは、コンジュゲートの細胞への特異性を改善するために、それに共有結合した1つまたは複数の標的化基を有する。例えば、標的化基は、水溶性ポリマーセグメント、第1の切断可能なリンカー、またはこれらの組合せに共有結合されていてもよい。標的化基は、スペーサーを用いないアミドまたはエステル結合のいずれかによって、ポリマー主鎖に直接的に連結されていてもよく、アミノ酸またはペプチドスペーサーを介して連結されていてもよい。標的化基は、標的細胞上の特異的受容体によってアクセス可能であるべきであり、これは、大部分は、ポリマー薬物分子の幾何学の関数である。
【0115】
一態様では、標的化基は、メタクリルアミド、メタクリル酸またはN-メタクリロイル化(N-methacryloylated)アミノ酸もしくはペプチドに結合されている。例えば、上記式IVを参照して、Zは、抗がん剤の代わりに標的化基であってもよく、抗がん剤を含有する式IVを有する他のモノマーと重合されてもよい。
【0116】
標的化基として、細胞表面抗原または受容体に相補的な構造を使用することができる。一態様では、標的化基は、抗体、抗体断片、糖類、またはエピトープ結合ペプチド、またはアプタマーである。例えば、標的化基は、アミド結合によって結合した単糖、二糖、オリゴ糖またはメタクリロイル化糖のユニット、抗体、例えばIgG(ラット免疫グロブリン)もしくは抗体断片、またはトランスフェリンもしくはメラノサイト刺激ホルモン(MSH)などのタンパク質、またはペプチドであってもよい。別の態様では、標的化基は、ガラクトサミン、フコシルアミン、ラクトース;葉酸誘導体;ホルモン、例えばMSH、セクレチン;オピエート;モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体である。一態様では、標的化基は、CD47(卵巣癌細胞の大多数において発現される)に対して特異的なOV-TL16抗体または前立腺特異的膜抗原(PMSA)に対する抗体由来のFab’である。
【0117】
一部の態様では、本明細書に開示される抗がんコンジュゲートにおいて、抗がん薬は、パクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビン、プラチネート(platinate)、ドキソルビシン、ゲルダナマイシン、エピルビシン、または9-アミノカンプトテシンであってもよい。一態様では、抗がん薬はエピルビシンである。一態様では、各ポリマーセグメントに結合した各抗がん剤は、同じであっても異なっていてもよい。
【0118】
一態様では、抗がんコンジュゲートまたは薬学的に許容されるその塩もしくはエステルは、式V:
P
1-Gly-Phe-Leu-Gly-Lys-Gly-Leu-Phe-Gly-P
2 V
で示されるように、単一の第1の切断可能なペプチドリンカーによって互いに共有結合によって接続された2つのポリマーセグメントP
1およびP
2を含み、
ここで、抗がん薬は、第2の切断可能なペプチドリンカーによって各ポリマーセグメントに共有結合しており、各ポリマーセグメントは、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)と式VIのモノマー:
【化9】
の重合生成物を含む。
【0119】
さらなる態様では、2つのポリマーセグメント間の式Vのセグメントは、配列番号24を有する。別の態様では、式VIのL
1部分は配列番号23を有する。別の態様では、式VIのZは、パクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビン、プラチネート、ドキソルビシン、ゲルダナマイシン、エピルビシン、または9-アミノカンプトテシンである。一態様では、抗がんコンジュゲートは、KT-1である(
図2)。
【0120】
一態様では、抗がんコンジュゲートまたは薬学的に許容されるその塩もしくはエステルは、約60kDa~約90kDa、または約70kDa~約80kDa、または約60kDa、約65kDa、約70kDa、約75kDa、約80kDa、約85kDa、もしくは約90kDa、または前述の値のいずれかの組合せ、または前述の値のいずれかを包含する範囲の平均Mnを有する。
【0121】
別の態様では、抗がんコンジュゲートまたは薬学的に許容されるその塩もしくはエステルは、約90kDa~約120kDa、または約85~約95kDa、または約100~約110kDa、または約90kDa、約95kDa、約100kDa、約105kDa、約110kDa、約115kDa、もしくは約120kDa、または前述の値のいずれかの組合せ、または前述の値のいずれかを包含する範囲の平均Mwを有する。
【0122】
また別の態様では、抗がんコンジュゲートまたは薬学的に許容されるその塩もしくはエステルは、約1.0~約2、または約1~約1.5、または約1、約1.25、約1.5、約1.75、もしくは約2、または前述の値のいずれかの組合せ、または前述の値のいずれかを包含する範囲の平均多分散指数(Mw/Mn)を有する。
【0123】
本開示の方法を使用してがんを処置および/または予防すること
別の態様では、がんは、膵臓がん、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、卵巣がん(ovary cancer)、上咽頭がん、乳がん、卵巣がん(ovarian cancer)、前立腺がん、結腸がん、胃腺癌、頭部がん、頸部がん、脳がん、口腔がん、咽頭がん、甲状腺がん、食道がん、胆嚢がん、肝臓がん、直腸がん、腎臓がん、子宮がん、膀胱がん、精巣がん、リンパ腫、骨髄腫、黒色腫、白血病、または不特定の固形腫瘍である。
【0124】
一態様では、本明細書に開示されるPD-L1阻害剤コンジュゲートおよび使用される場合、抗がんコンジュゲートは、遊離薬物と比較して延長された体循環半減期を有する。一態様では、本明細書に開示されるコンジュゲートの体循環半減期は、約24~約48時間であってもよく、あるいは約24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、もしくは約48時間、または前述の値のいずれかの組合せ、または前述の値のいずれかを包含する範囲であってもよい。一態様では、本明細書に開示されるコンジュゲートの体循環半減期は、約33.2時間である。別の態様では、本明細書に開示される抗がんおよび/または薬物-送達コンジュゲートは、腫瘍部位に蓄積し得る。一態様では、コンジュゲートは、注射の約20~約28時間後、または注射の約20、21、22、23、24、25、26、27、もしくは約28時間後、または前述の値のいずれかの組合せ、または前述の値のいずれかを包含する範囲に濃度がピークに達する。一態様では、コンジュゲートは、注射の約24時間後に腫瘍部位の濃度がピークに達する。別の態様では、抗がんおよび/または薬物-送達コンジュゲートは、約150~約250時間、または約150、175、200、225、もしくは約250時間、または前述の値のいずれかの組合せ、または前述の値のいずれかを包含する範囲の期間、腫瘍部位で持続する。一態様では、コンジュゲートは、注射後約196時間、腫瘍部位で持続する。
【0125】
別の態様では、本明細書に開示されるPD-L1阻害剤コンジュゲートおよび使用される場合、抗がんコンジュゲートは、免疫原性細胞死(ICD)において有効であり得る。理論に拘束されることを望むものではないが、免疫原性により瀕死の腫瘍細胞の表面に曝露されたカルレティキュリン(CRT)が樹状細胞(CD)にシグナルを送り、抗原提示細胞(APC)によりファゴサイトーシスを促進する一方で、放出された高移動度群ボックス1(HMBG1)は、T細胞に対する抗原提示を刺激する。一態様では、本明細書に開示される抗がんおよびPD-L1阻害剤コンジュゲートは、CRTの有意な上方調節を誘発することができる。さらなる態様では、本明細書に開示されるPD-L1阻害剤コンジュゲートは、遊離薬物単独よりも多くのT細胞を動員することができる。またさらなる態様では、本明細書に開示されるPD-L1阻害剤コンジュゲートは、以下に限定されないが、腫瘍へのT細胞浸潤に有利に働くことを含む様々な手段によって、T細胞に依存する方式で腫瘍進行を阻害することができる。一部の態様では、PD-L1は、本明細書に開示される抗がんコンジュゲートで処置された腫瘍中で濃縮され、PD-L1阻害剤と抗がんコンジュゲートを使用する併用療法は、いずれかの化合物単独での処置よりもより有効である。さらなる態様では、抗がん剤を腫瘍に効率的に送達することによって、例えば、本明細書に開示される抗がんコンジュゲートを使用することによって、そうでなければPD-L1阻害剤に対して非応答性である腫瘍細胞が、PD-L1遮断に対して感受性となり得る。
【0126】
一部の態様では、がんの有効な処置は、細胞表面のPD-L1に結合することだけでなく、細胞内のPD-L1を排除することにも関与する。さらなる態様では、
図8Aに示される配列(すなわち、配列番号25)を有するPD-L
1阻害剤ペプチド(PD-L
1ペプチドアンタゴニスト、PPAと略される)は、以下に記載の方法によって合成される薬物送達コンジュゲートにカップリングされ得る。一態様では、薬物送達コンジュゲートは、異なる価数で合成され得る。一態様では、価数は、約1~約15であってもよく、または約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、もしくは約15、または前述の値のいずれかの組合せ、または前述の値のいずれかを包含する範囲であってもよい。一態様では、価数は約12.6である。別の態様では、価数は、反応物の濃度を変更することによって所望の数または範囲に調整することができ、異なる価数を有するコンジュゲートは、異なる適用または異なる腫瘍タイプに好まれる場合がある。
【0127】
上記態様のいずれかにおいて、本明細書に開示されるコンジュゲートによる処置の結果として、PD-L1架橋によって駆動される特異的結合および内部移行の増強に際し、PD-L1は、標的化分解のためにリソソームによって取り込まれ、よって、PD-L1の細胞表面へのリサイクリングを妨げることができる(
図1)。
【0128】
一態様では、本明細書に開示されるコンジュゲートによる腫瘍の逐次的処置は、単剤または非コンジュゲート剤による腫瘍の処置よりもより有効であり得る。一態様では、例えば、KT-1などの抗がんコンジュゲートで処置された腫瘍は、PD-L1遮断治療に対してより感受性となる。さらに、この態様では、KT-1による処置後に、続いて例えば、PPAまたはMPPAなどのPD-L1阻害剤コンジュゲートにより腫瘍を処置することにより、細胞傷害性T細胞(CTL)の腫瘍浸潤が劇的に増加し、調節性T細胞(Treg)に対するCTLのより高い比がもたらされ得る。一部の態様では、KT-1とMPPAとの併用治療によって、腫瘍の最大100%が低減または根絶され得る。別の態様では、本明細書に開示される抗がんおよびPD-L1阻害剤コンジュゲートによる治療は、既存のがんの転移を予防することができる。また別の態様では、本明細書に開示される抗がんおよびPD-L1阻害剤コンジュゲートによる治療は、腫瘍再発に対する耐久性免疫を確立することができる。
【0129】
本明細書に記載のコンジュゲートは、水溶性かつ生分解性である。コンジュゲートは、循環中に安定であり、長期滞留時間を有し、より良い標的化特性を有する。さらに、これらは、リンカーの切断(例えば、酵素的、加水分解的など)後に身体から排除され得る。本明細書に記載されているコンジュゲートの合成は多用途であり、循環時間および分解の速度/部位などのテーラーメイド特性を有する多種多様なポリマー構造の調製を可能にする。さらに、コンジュゲートは以下のさらなる利点を有する:(1)不安定な薬物を劣化から保護すること;(2)コンジュゲート薬物の非特異的毒性の低下;(3)標的化による標的化された部位における薬物の能動的蓄積の増加および/またはEPR効果による腫瘍部位における薬物の受動的蓄積の増加;ならびに(4)異なる(補完的な)特性を有する2つまたはそれより多い薬物を同じ標的部位に送達し、協同および/または相乗効果によって薬物の有効性を増強する能力。これらは、本明細書に記載のコンジュゲートが、抗がん剤および/または他の薬物の被験体への送達において有効である理由のほんの一部である。
【0130】
IV.薬物-送達コンジュゲートおよび抗がんコンジュゲートを合成するための方法
一態様では、本明細書に記載されているPD-L1阻害剤コンジュゲートを合成するための方法が本明細書に開示される。さらなる態様では、狭い多分散性を有するコンジュゲートは、
図2Cに示されるワンステップ可逆的付加-開裂連鎖移動(RAFT)重合を使用して合成することができる。一態様では、例えば、HPMAおよびAPMAなどの好適なモノマーなどは、連鎖移動剤で終了する好適な切断可能なペプチドリンカーを含む水性酸性溶液中で、高温で開始剤により還流され得る。一態様では、ペプチドGFLGKGLFG(すなわち、配列番号24)は、リンカーであり得る。一態様では、高温は、約50~約90℃であるか、あるいは約50、55、60、65、70、75、80、85、もしくは約90℃、または前述の値のいずれかの組合せ、または前述の値のいずれかを包含する範囲である。一態様では、高温は約70℃である。さらなる態様では、酸性水溶液中での還流後に、第2の開始剤を混合物に添加することができ、高温で、例えばメタノールなどの溶媒中で還流を継続させることができる。一態様では、高温は、約35~約75℃であるか、あるいは約35、40、45、50、55、60、65、70、もしくは約75℃、または前述の値のいずれかの組合せ、または前述の値のいずれかを包含する範囲である。一態様では、高温は約55℃である。
【0131】
上記態様のいずれかにおいて、ポリマー出発材料および連鎖移動剤によって終了するリンカーの還流後に、リンカーによって接続した少なくとも2つのポリマーセグメントを含有する種が形成され、ポリマーユニットの少なくとも一部は遊離アミノ基(
図2Cの種2P-NH
2を参照されたい)を有する。一態様では、2P-NH
2は、例えばマレイミド残基を含有する前駆体などの切断可能なリンカー前駆体を含むDMF中で、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)または別の好適な塩基により、室温で還流される。さらなる態様では、この反応が完了した際に、2P-NH
2中のアミノ基が、マレイミド残基で終了する切断可能なリンカーに変換されている(
図2Cの種2P-malを参照されたい)。次いで、2P-malをチオール終端ペプチドまたは他のチオール含有PD-L1阻害剤または他のチオールで改変された抗がん剤と反応させ、それによって、PD-L1阻害剤または抗がん剤を、例えばMPPAなどの分子を形成する2P-malに連結することができる。
【0132】
別の態様では、異なる切断可能なリンカーの戦略を用いて、例えばKT-1および関連する抗がんコンジュゲートなどの化合物を合成することができる(
図2B)。一態様では、短いペプチドリンカーをペンダントアミノ糖部分に接続させることによって改変されたエピルビシン(
図2Bの種MA-GFLG-EPIを参照されたい)は、HPMAの存在下で、例えば、連鎖移動剤で終了する好適な切断可能なペプチドリンカーを含むメタノールなどの溶媒中で、高温で、開始剤と反応させることができる。一態様では、ペプチドGFLGKGLFG(すなわち、配列番号24)はリンカーであり得る。一態様では、高温は、約25~約55℃であるか、あるいは約25、30、35、40、45、50、もしくは約55℃、または前述の値のいずれかの組合せ、または前述の値のいずれかを包含する範囲である。一態様では、高温は約40℃である。さらなる態様では、酸性水溶液中での還流後に、第2の開始剤を混合物に添加することができ、高温で、例えばメタノールなどの溶媒中で還流を継続させることができる。一態様では、高温は、約35~約75℃であるか、あるいは約35、40、45、50、55、60、65、70、もしくは約75℃、または前述の値のいずれかの組合せ、または前述の値のいずれかを包含する範囲である。一態様では、高温は約55℃である。
【0133】
別の態様では、例えばHPMAおよびそのモノマーに共有結合したPD-L1阻害剤を有するモノマーなどの好適なモノマーを、連鎖移動剤で終了する好適な切断可能なペプチドリンカーを含む水性酸性溶液中で、高温で、開始剤と還流させ、薬物送達コンジュゲートを生成することができる。このアプローチを使用する非限定的な手順を実施例において提供する。
【0134】
上記態様のいずれかにおいて、連鎖移動剤に挟まれたペプチドは、
図2Aに示される種であってもよく、または関連する種であってもよい。
【0135】
態様
第1の態様では、単一の第1の切断可能なペプチドリンカーによって互いに共有結合的に接続された2つのポリマーセグメントP1およびP2を含む薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容されるその塩もしくはエステルであって、少なくとも1つのPD-L1阻害剤が、各ポリマーセグメントに共有結合している、薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容されるその塩もしくはエステルが本明細書に開示される。
【0136】
第2の態様では、各ポリマーセグメントが、2つまたはそれより多いエチレン性不飽和モノマーの重合生成物を含む、第1の態様に記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステルが本明細書に開示される。
【0137】
第3の態様では、各ポリマーセグメントが、オレフィン基および第1のモノマーに結合したPD-L1阻害剤を有する第1のモノマーと、N-置換メタクリルアミド、N,N-二置換アクリルアミド、メタクリル酸もしくはアクリル酸の親水性エステル、N-ビニルピロリドン、N-アクリロイルモルホリン、スルホエチルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、またはこれらの任意の組合せを含む第2のモノマーとの間の重合生成物を含む、第1または第2の態様に記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステルが、本明細書に開示される。
【0138】
第4の態様では、R1がメチルであり、XがNHであり、nが1~5である、第3の態様に記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステルが本明細書に開示される。
【0139】
第5の態様では、R1がメチルであり、XがNHであり、nが3である、第3の態様に記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステルが本明細書に開示される。
【0140】
第6の態様では、第2のモノマーが、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)、N-[3-(N’-ジカルボキシメチル)アミノプロピル]メタクリルアミド(DAMA)、N-メタクリロイルグリシルフェニルアラニルロイシルグリシン-アミノマロン酸(MA-GFLG-diCOOH)、N-(3-アミノプロピル)メタクリルアミド、N-(1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イル)メタクリルアミドまたはこれらの任意の組合せを含む、第3から第5の態様のいずれか1つに記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステルが本明細書に開示される。
【0141】
第7の態様では、第2のモノマーが、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)である、第3から第5の態様のいずれか1つに記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステルが本明細書に開示される。
【0142】
第8の態様では、第1の切断可能なリンカーが、酵素、pHの変化、またはこれらの組合せによって切断される、第1から第7の態様のいずれか1つに記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステルが本明細書に開示される。
【0143】
第9の態様では、第1の切断可能なペプチドリンカーが酵素によって切断される、第1から第7の態様のいずれか1つに記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステルが本明細書に開示される。
【0144】
第10の態様では、第1の切断可能なペプチドリンカーが、リソソーム酵素によって切断される、第1から第7の態様のいずれか1つに記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステルが本明細書に開示される。
【0145】
第11の態様では、第1の切断可能なペプチドリンカーが、アミノ酸配列-Gly-Pro-Nle-(配列番号1);-Cit-Phe-(配列番号2);-Lys-Lys-(配列番号3);-Phe-Lys-(配列番号4);-Arg-Arg-(配列番号5);Val-Cit(配列番号6);Gly-Phe-Gly(配列番号7);Gly-Phe-Phe(配列番号8);Gly-Leu-Gly(配列番号9);Gly-Val-Ala(配列番号10);Gly-Phe-Ala-Gly-Leu-Phe(配列番号11);Gly-Leu-Ala-Ala-Val-Ala(配列番号12);Gly-Phe-Leu-Gly(配列番号13);Gly-Phe-Phe-Leu(配列番号14);Gly-Leu-Leu-Gly(配列番号15);Gly-Phe-Tyr-Ala(配列番号16);Gly-Phe-Gly-Phe(配列番号17);Ala-Gly-Val-Phe(配列番号18);Gly-Phe-Phe-Gly(配列番号19);Gly-Phe-Leu-Gly-Phe(配列番号20);Gly-Gly-Phe-Leu-Gly-Phe(配列番号21);およびGln-Ser-Phe-Arg-Phe-Lys(配列番号22)を有するペプチドである、第1から第9の態様のいずれか1つに記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステルが本明細書に開示される。
【0146】
第12の態様では、第1のリンカーが、式II
-(AA1)-K-(AA2)- II
(式中、AA1およびAA2は、最大6個のアミノ酸を含む同じかまたは異なるアミノ酸配列であり、Kは、リジン、オルニチン、またはジアミンである)を有する、第1から第11の態様のいずれか1つに記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステルが本明細書に開示される。
【0147】
第13の態様では、PD-L1阻害剤が、ペプチド、D-ペプチド、非ペプチド小分子、または抗体である、第1から第12の態様のいずれか1つに記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステルが本明細書に開示される。
【0148】
第14の態様では、PD-L1阻害剤が、アミノ酸配列-DAsn-DTyr-DSer-DLys-DPro-DThr-DAsp-DArg-DGln-DTyr-DHis-DPhe-、-DLys-DHis-DAla-DHis-DHis-DThr-DHis-DAsn-DLeu-DArg-DLeu-DPro-、-DMet-DArg-DAsn-DArg-DGlu-DArg-DTyr-DPro-DLys-DPro-DTyr-DTyr-、またはこれらの組合せを有するD-ペプチドである、第1から第12の態様のいずれか1つに記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステルが本明細書に開示される。
【0149】
第15の態様では、PD-L1阻害剤が、
【化10】
【化11】
【化12】
またはこれらの組合せを含む非ペプチド小分子である、第1から第12の態様のいずれか1つに記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステルが本明細書に開示される。
【0150】
第16の態様では、PD-L1阻害剤が、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、またはこれらの組合せである、第1から第12の態様のいずれか1つに記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステルが本明細書に開示される。
【0151】
第17の態様では、PD-L1阻害剤が、アミノ酸配列-Phe-His-Tyr-Gln-Arg-Asp-Thr-Pro-Lys-Ser-Tyr-Asn-(配列番号25)を有するペプチドである、第1から第12の態様のいずれか1つに記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステルが本明細書に開示される。
【0152】
第18の態様では、各PD-L1阻害剤が同じ分子である、第1から第17の態様のいずれか1つに記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステルが本明細書に開示される。
【0153】
第19の態様では、各PD-L1阻害剤が、架橋剤によって各ポリマーセグメントに共有結合している、第1から第18の態様のいずれか1つに記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステルが本明細書に開示される。
【0154】
第20の態様では、各ポリマーセグメントが、式IIIaまたはIIIb
【化13】
(式中、R
2は水素またはメチルであり;各nは1~10であり;CLは架橋剤であり;YはPD-L1阻害剤である)のユニットを1つまたは複数有する、第1から第19の態様のいずれか1つに記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステルが本明細書に開示される。
【0155】
第21の態様では、各ポリマーセグメントが、式IV
【化14】
(式中、R
2は水素またはメチルであり;nは1~10であり;YはPD-L1阻害剤である)のユニットを1つまたは複数有する、第1から第20の態様のいずれか1つに記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステルが本明細書に開示される。
【0156】
第22の態様では、
図2のMPPAとして特定される、第1から第21の態様のいずれか1つに記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステルが本明細書に開示される。
【0157】
第23の態様では、約60kDa~約90kDaの平均Mnを有する、第1から第23の態様のいずれか1つに記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステルが本明細書に開示される。
【0158】
第24の態様では、約70kDa~約100kDaの平均Mwを有する、第1から第23の態様のいずれか1つに記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステルが本明細書に開示される。
【0159】
第25の態様では、約1.0~約2の平均Mw/Mnを有する、第1から第23の態様のいずれか1つに記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステルが本明細書に開示される。
【0160】
第26の態様では、約10~約15の価数を有する、第1から第23の態様のいずれか1つに記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステルが本明細書に開示される。
【0161】
第27の態様では、第1から第26の態様のいずれかに記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステルおよび薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が本明細書に開示される。
【0162】
第28の態様では、被験体におけるがんを処置するための方法であって、第1から第26の態様のいずれかに記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステルおよび抗がん剤を被験体に投与することを含む、方法が本明細書に開示される。
【0163】
第29の態様では、被験体におけるがんを予防するための方法であって、第1から第26の態様のいずれかに記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステルおよび抗がん剤を被験体に投与することを含む、方法が本明細書に開示される。
【0164】
第30の態様では、がんが、膵臓がん、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、卵巣がん(ovary cancer)、上咽頭がん、乳がん、卵巣がん(ovarian cancer)、前立腺がん、結腸がん、胃腺癌、頭部がん、頸部がん、脳がん、口腔がん、咽頭がん、甲状腺がん、食道がん、胆嚢がん、肝臓がん、直腸がん、腎臓がん、子宮がん、膀胱がん、精巣がん、リンパ腫、骨髄腫、黒色腫、白血病、または非特定の固形腫瘍である、第28または第29の態様に記載の方法が本明細書に開示される。
【0165】
第31の態様では、被験体における腫瘍を低減するための方法であって、第1から第26の態様のいずれかに記載の薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステルおよび抗がん剤を被験体に投与することを含む、方法が本明細書に開示される。
【0166】
第32の態様では、薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステルが、抗がん剤の投与前に、被験体に投与される、第28から第31の態様のいずれかに記載の方法が本明細書に開示される。
【0167】
第33の態様では、薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステルが、抗がん剤の投与後に、被験体に投与される、第28から第31の態様のいずれかに記載の方法が本明細書に開示される。
【0168】
第34の態様では、薬物送達コンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステルが、抗がん剤の投与と同時に、被験体に投与される、第28から第31の態様のいずれかに記載の方法が本明細書に開示される。
【0169】
第35の態様では、抗がん剤が、エピルビシン、パクリタキセル、ドキソルビシン、ゲムシタビン、シスプラチン、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、ベツリン酸、アムホテリシンB、ジアゼパム、ナイスタチン、プロポフォール、テストステロン、エストロゲン、プレドニゾロン、プレドニゾン、2,3-メルカプトプロパノール、プロゲステロン、ドセタキセル、メイタンシノイド、PD-1阻害剤、プロテインキナーゼ阻害剤、P-糖タンパク質阻害剤、オートファジー阻害剤、PARP阻害剤、アロマターゼ阻害剤、モノクローナル抗体、光増感剤、放射線増感剤、インターロイキン、抗アンドロゲン薬、またはこれらの任意の組合せを含む、第28から第34の態様のいずれかに記載の方法が本明細書に開示される。
【0170】
第36の態様では、抗がん剤が、単一の第1の切断可能なペプチドリンカーによって互いに共有結合的に接続された2つのポリマーセグメントP1およびP2を含む抗がんコンジュゲートまたは薬学的に許容されるその塩もしくはエステルを含み、抗がん薬が、第2の切断可能なペプチドリンカーによって各ポリマーセグメントに共有結合している、第28から第34の態様のいずれかに記載の方法が本明細書に開示される。
【0171】
第37の態様では、各ポリマーセグメントが、2つまたはそれより多いエチレン性不飽和モノマーの重合生成物を含む、第36の態様に記載の方法が本明細書に開示される。
【0172】
第38の態様では、各ポリマーセグメントが、式IVの第1のモノマー
【化15】
(式中、R
2は水素またはメチルであり;XはOまたはNR
3であり、R
3は水素またはアルキル基であり;L
1は第2の切断可能なリンカーであり;Zは抗がん剤である)と、N-置換メタクリルアミド、N,N-二置換アクリルアミド、メタクリル酸もしくはアクリル酸の親水性エステル、N-ビニルピロリドン、N-アクリロイルモルホリン、スルホエチルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、またはこれらの任意の組合せを含む第2のモノマーとの間の重合生成物を含む、第36の態様に記載の方法が本明細書に開示される。
【0173】
第39の態様では、第2のモノマーが、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)、N-[3-(N’-ジカルボキシメチル)アミノプロピル]メタクリルアミド(DAMA)、N-メタクリロイルグリシルフェニルアラニルロイシルグリシン-アミノマロン酸(MA-GFLG-diCOOH)、N-(3-アミノプロピル)メタクリルアミド、N-(1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イル)メタクリルアミドまたはこれらの任意の組合せを含む、第38の態様に記載の方法が本明細書に開示される。
【0174】
第40の態様では、第1の切断可能なペプチドリンカーおよび第2の切断可能なペプチドリンカーが、独立して、アミノ酸配列-Gly-Pro-Nle-(配列番号1);-Cit-Phe-(配列番号2);-Lys-Lys-(配列番号3);-Phe-Lys-(配列番号4);-Arg-Arg-(配列番号5);Val-Cit(配列番号6);Gly-Phe-Gly(配列番号7);Gly-Phe-Phe(配列番号8);Gly-Leu-Gly(配列番号9);Gly-Val-Ala(配列番号10);Gly-Phe-Ala;Gly-Leu-Phe(配列番号11);Gly-Leu-Ala;Ala-Val-Ala(配列番号12);Gly-Phe-Leu-Gly(配列番号13);Gly-Phe-Phe-Leu(配列番号14);Gly-Leu-Leu-Gly(配列番号15);Gly-Phe-Tyr-Ala(配列番号16);Gly-Phe-Gly-Phe(配列番号17);Ala-Gly-Val-Phe(配列番号18);Gly-Phe-Phe-Gly(配列番号19);Gly-Phe-Leu-Gly-Phe(配列番号20);Gly-Gly-Phe-Leu-Gly-Phe(配列番号21);およびGln-Ser-Phe-Arg-Phe-Lys(配列番号22)を有するペプチドである、第36から第39の態様のいずれかに記載の方法が本明細書に開示される。
【0175】
第41の態様では、第1の切断可能なペプチドリンカーが、式III
-(AA1)-K-(AA2)- (III)
(式中、AA1およびAA2は、最大6個のアミノ酸を含む同じかまたは異なるアミノ酸配列であり、Kは、リジン、オルニチン、またはジアミンである)を有する、第36から第39の態様のいずれかに記載の方法が本明細書に開示される。
【0176】
第42の態様では、抗がん薬が、パクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビン、プラチネート、ドキソルビシン、ゲルダナマイシン、エピルビシン、または9-アミノカンプトテシンである、第36から第41の態様のいずれかに記載の方法が本明細書に開示される。
【0177】
第43の態様では、各ポリマーセグメントに共有結合した各抗がん剤が同じ抗がん剤である、第36から第42の態様のいずれかに記載の方法が本明細書に開示される。
【0178】
第44の態様では、抗がんコンジュゲートまたは薬学的に許容されるその塩もしくはエステルが、式V:
P
1-Gly-Phe-Leu-Gly-Lys-Gly-Leu-Phe-Gly-P
2 V
に示されるように、単一の第1の切断可能なペプチドリンカーによって互いに共有結合的に接続された2つのポリマーセグメントP
1およびP
2を含み、
抗がん薬が、第2の切断可能なペプチドリンカーによって各ポリマーセグメントに共有結合しており、各ポリマーセグメントが、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)と式VI(式中、Zは抗がん剤である)のモノマー:
【化16】
との重合生成物を含む、第36から第43の態様のいずれかに記載の方法が本明細書に開示される。
【0179】
第45の態様では、抗がん薬が、パクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビン、プラチネート、ドキソルビシン、ゲルダナマイシン、エピルビシン、または9-アミノカンプトテシンである、第44の態様に記載の方法が本明細書に開示される。
【0180】
第46の態様では、抗がん薬がエピルビシンである、第44の態様に記載の方法が本明細書に開示される。
【0181】
第47の態様では、抗がんコンジュゲートまたは薬学的に許容されるその塩もしくはエステルが、KT-1である、第36から第46の態様のいずれかに記載の方法が本明細書に開示される。
【0182】
第48の態様では、抗がんコンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステルが、約60kDa~約90kDaの平均Mnを有する、第36から第47の態様のいずれかに記載の方法が本明細書に開示される。
【0183】
第49の態様では、抗がんコンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステルが、約90kDa~約120kDaの平均Mwを有する、第36から第47の態様のいずれかに記載の方法が本明細書に開示される。
【0184】
第50の態様では、抗がんコンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステルが、約1.0~約2の平均Mw/Mnを有する、第36から第47の態様のいずれかに記載の方法が本明細書に開示される。
【0185】
第51の態様では、被験体におけるがんを処置するための方法であって、PD-1阻害剤と、単一の第1の切断可能なペプチドリンカーによって互いに共有結合的に接続された2つのポリマーセグメントP1およびP2を含む抗がんコンジュゲートまたは薬学的に許容されるその塩もしくはエステルとを、被験体に投与することを含み、抗がん薬が、第2の切断可能なペプチドリンカーによって各ポリマーセグメントに共有結合している、方法が本明細書に開示される。
【0186】
第52の態様では、被験体におけるがんを予防するための方法であって、PD-L1阻害剤と、単一の第1の切断可能なペプチドリンカーによって互いに共有結合的に接続された2つのポリマーセグメントP1およびP2を含む抗がんコンジュゲートまたは薬学的に許容されるその塩もしくはエステルとを、被験体に投与することを含み、抗がん薬が、第2の切断可能なペプチドリンカーによって各ポリマーセグメントに共有結合している、方法が本明細書に開示される。
【0187】
第53の態様では、被験体における腫瘍を低減するための方法であって、PD-L1阻害剤と、単一の第1の切断可能なペプチドリンカーによって互いに共有結合的に接続された2つのポリマーセグメントP1およびP2を含む抗がんコンジュゲートまたは薬学的に許容されるその塩もしくはエステルとを、被験体に投与することを含み、抗がん薬が、第2の切断可能なペプチドリンカーによって各ポリマーセグメントに共有結合している、方法が本明細書に開示される。
【0188】
第54の態様では、PD-L1阻害剤が、ペプチド、D-ペプチド、非ペプチド小分子、または抗体である、第51から第53の態様のいずれかに記載の方法が本明細書に開示される。
【0189】
第55の態様では、PD-L1阻害剤が、アミノ酸配列-DAsn-DTyr-DSer-DLys-DPro-DThr-DAsp-DArg-DGln-DTyr-DHis-DPhe-、-DLys-DHis-DAla-DHis-DHis-DThr-DHis-DAsn-DLeu-DArg-DLeu-DPro-、-DMet-DArg-DAsn-DArg-DGlu-DArg-DTyr-DPro-DLys-DPro-DTyr-DTyr-、またはこれらの組合せを有するD-ペプチドである、第51から第53の態様のいずれかに記載の方法が本明細書に開示される。
【0190】
第56の態様では、PD-L1阻害剤が、
【化17】
【化18】
またはこれらの組合せを含む非ペプチド小分子である、第51から第53の態様のいずれかに記載の方法が本明細書に開示される。
【0191】
第57の態様では、PD-L1阻害剤が、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、またはこれらの組合せである、第51から第53の態様のいずれかに記載の方法が本明細書に開示される。
【0192】
第58の態様では、PD-L1阻害剤が、アミノ酸配列-Phe-His-Tyr-Gln-Arg-Asp-Thr-Pro-Lys-Ser-Tyr-Asn-(配列番号25)を有するペプチドである、第51から第53の態様のいずれかに記載の方法が本明細書に開示される。
【0193】
第59の態様では、抗がんコンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステルが、PD-L1阻害剤の投与前に、被験体に投与される、第51から第53の態様のいずれかに記載の方法が本明細書に開示される。
【0194】
第60の態様では、抗がんコンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステルが、PD-L1阻害剤の投与後に、被験体に投与される、第51から第53の態様のいずれかに記載の方法が本明細書に開示される。
【0195】
第61の態様では、抗がんコンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステルが、PD-L1阻害剤の投与と同時に、被験体に投与される、第51から第53の態様のいずれかに記載の方法が本明細書に開示される。
【0196】
第62の態様では、各ポリマーセグメントが、2つまたはそれより多いエチレン性不飽和モノマーの重合生成物を含む、第51から第61の態様のいずれかに記載の方法が本明細書に開示される。
【0197】
第63の態様では、各ポリマーセグメントが、式IVの第1のモノマー
【化19】
(式中、R
1は水素またはメチルであり;XはOまたはNR
2であり、R
2は水素またはアルキル基であり;L
1は第2の切断可能なリンカーであり;Zは抗がん剤である)と、N-置換メタクリルアミド、N,N-二置換アクリルアミド、メタクリル酸もしくはアクリル酸の親水性エステル、N-ビニルピロリドン、N-アクリロイルモルホリン、スルホエチルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、またはこれらの任意の組合せを含む第2のモノマーとの間の重合生成物を含む、第62の態様に記載の方法が本明細書に開示される。
【0198】
第64の態様では、第2のモノマーが、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)、N-[3-(N’-ジカルボキシメチル)アミノプロピル]メタクリルアミド(DAMA)、N-メタクリロイルグリシルフェニルアラニルロイシルグリシン-アミノマロン酸(MA-GFLG-diCOOH)、N-(3-アミノプロピル)メタクリルアミド、N-(1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イル)メタクリルアミドまたはこれらの任意の組合せを含む、第63の態様に記載の方法が本明細書に開示される。
【0199】
第65の態様では、第1の切断可能なペプチドリンカーおよび第2の切断可能なペプチドリンカーが、独立して、アミノ酸配列-Gly-Pro-Nle-(配列番号1);-Cit-Phe-(配列番号2);-Lys-Lys-(配列番号3);-Phe-Lys-(配列番号4);-Arg-Arg-(配列番号5);Val-Cit(配列番号6);Gly-Phe-Gly(配列番号7);Gly-Phe-Phe(配列番号8);Gly-Leu-Gly(配列番号9);Gly-Val-Ala(配列番号10);Gly-Phe-Ala;Gly-Leu-Phe(配列番号11);Gly-Leu-Ala;Ala-Val-Ala(配列番号12);Gly-Phe-Leu-Gly(配列番号13);Gly-Phe-Phe-Leu(配列番号14);Gly-Leu-Leu-Gly(配列番号15);Gly-Phe-Tyr-Ala(配列番号16);Gly-Phe-Gly-Phe(配列番号17);Ala-Gly-Val-Phe(配列番号18);Gly-Phe-Phe-Gly(配列番号19);Gly-Phe-Leu-Gly-Phe(配列番号20);Gly-Gly-Phe-Leu-Gly-Phe(配列番号21);およびGln-Ser-Phe-Arg-Phe-Lys(配列番号22)を有するペプチドである、第51から第64の態様のいずれかに記載の方法が本明細書に開示される。
【0200】
第66の態様では、第1の切断可能なペプチドリンカーが、式III
-(AA1)-K-(AA2)- III
(式中、AA1およびAA2は、最大6個のアミノ酸を含む同じかまたは異なるアミノ酸配列であり、Kは、リジン、オルニチン、またはジアミンである)を有する、第51から第64の態様のいずれかに記載の方法が本明細書に開示される。
【0201】
第67の態様では、抗がん薬が、パクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビン、プラチネート、ドキソルビシン、ゲルダナマイシン、エピルビシン、または9-アミノカンプトテシンである、第51から第66の態様のいずれかに記載の方法が本明細書に開示される。
【0202】
第68の態様では、各ポリマーセグメントに共有結合した各抗がん剤が同じ抗がん剤である、第51から第66の態様のいずれかに記載の方法が本明細書に開示される。
【0203】
第69の態様では、抗がんコンジュゲートまたは薬学的に許容されるその塩もしくはエステルが、式Iに示される単一の第1の切断可能なペプチドリンカー、
P
1-Gly-Phe-Leu-Gly-Lys-Gly-Leu-Phe-Gly-P
2 V
によって互いに共有結合的に接続された2つのポリマーセグメントP
1およびP
2を含み、
抗がん薬が、第2の切断可能なペプチドリンカーによって各ポリマーセグメントに共有結合しており、各ポリマーセグメントが、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)と式VI(式中、Zは抗がん剤である)のモノマー:
【化20】
との重合生成物を含む、第51から第66の態様のいずれか1つに記載の方法。
【0204】
第70の態様では、抗がん薬が、パクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビン、プラチネート、ドキソルビシン、ゲルダナマイシン、エピルビシン、または9-アミノカンプトテシンである、第69の態様に記載の方法が本明細書に開示される。
【0205】
第71の態様では、抗がん薬がエピルビシンである、第69の態様に記載の方法が本明細書に開示される。
【0206】
第72の態様では、抗がんコンジュゲートまたは薬学的に許容されるその塩もしくはエステルが、KT-1である、第51から第66の態様のいずれかに記載の方法が本明細書に開示される。
【0207】
第73の態様では、抗がんコンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステルが、約60kDa~約90kDaの平均Mnを有する、第51から第72の態様のいずれかに記載の方法が本明細書に開示される。
【0208】
第74の態様では、抗がんコンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステルが、約90kDa~約120kDaの平均Mwを有する、第51から第72の態様のいずれかに記載の方法が本明細書に開示される。
【0209】
第75の態様では、抗がんコンジュゲートまたは薬学的に許容される塩もしくはエステルが、約1.0~約2の平均Mw/Mnを有する、第51から第72の態様のいずれかに記載の方法が本明細書に開示される。
【実施例】
【0210】
以下の実施例は、本明細書において記載および特許請求される化合物、組成物、および方法が、どのように作り出され、評価されるかの完全な開示および説明を、当業者に提供するために示され、ならびに単に例示的であることが意図され、本発明者らが自らの発明とみなすものの範囲を限定することを意図しない。数(例えば、量、温度など)に関して正確性を確保するための努力がなされているが、いくらかの誤差および逸脱は考慮されるべきである。別段に示されていなければ、部は重量部であり、温度は℃におけるものであるかまたは周囲温度であり、圧力は大気圧であるかまたはそれに近い。反応条件、例えば、構成成分の濃度、所望の溶媒、溶媒混合物、温度、圧力、ならびに他の反応範囲および条件の多数の変動および組合せを使用して、記載されたプロセスから得られる生成物の純度および収量を最適化することができる。このようなプロセスおよび条件を最適化するために、合理的かつ日常的な実験のみが必要とされるであろう。
【0211】
(実施例1:MPPAの合成および特徴付け)
PD-L1ペプチドアンタゴニストであるPPAの複数のコピーをグラフトさせた主鎖-分解性HPMAコポリマーである、MPPAを、
図2に示されるチオール-エン反応によって調製した。簡単に述べると、Fmoc/tBu戦略およびPS3ペプチド合成機での固相合成方法を使用して、PPA(NYSKPTDRQYHF)を合成した。配列にN末端システイン残基を付加して、次のバイオコンジュゲーションのためのチオール残基でタグ付けしたペプチド(PPA-Cys)を得た。ペプチド構造をMALDI-TOF質量分析によって検証し(PPA-Cys;計算値1659.7Da、実測値1659.7Da)、ペプチドの純度を分析的RP-HPLCを用いて検証した。ペンダントアミノ基(2P-NH
2)を含有するHPMAコポリマー前駆体を、二官能連鎖移動剤CTA-GFLGKGLFGCTAを使用して、HPMAのN-(3-アミノプロピル)メタクリルアミド(APMA)とのRAFT共重合によって調製した。ジチオベンゾエートポリマーの末端基を、55℃でメタノール中の過剰量のV-65を使用して、ラジカル誘導された末端修飾によって除去した。アセトン中への沈殿および濾過の後に、白い粉末を得て、その後、水に対する透析(MWCO 6,000~8,000)を16時間かけて行い、凍結乾燥させた。次いで、マレイミド官能化ポリマー前駆体(2P-mal)を、ジメチルホルムアミド中、第三級アミン(DIPEA)の存在下で、室温で2時間の、2P-NH
2の、ヘテロ二官能性試薬であるスクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)との反応([NH
2]:[SMCC]:[DIPEA]=1:1.5:3のモル比)によって得た。前駆体のマレイミド含量は、改変エルマンアッセイによって測定した場合、鎖当たり22分子のマレイミド基であった。PPAコンジュゲーションは、PPA-Cysを、PPA-Cysのマレイミドに対するモル比1:1で、2P-malに結合させることによって達成し、多価ポリマー-ペプチドアンタゴニストであるMPPAを生成した。反応は、10mMのPBS(pH6.5)中で実施し、室温で3時間撹拌し続けた。終了時に、未反応のPPA-Cysを、限外濾過(30,000Daのカットオフ)によって除去し、DI水で4回洗浄し、凍結乾燥させた。コンジュゲートの平均分子量および多分散性は、移動相として30%のアセトニトリルを含有する酢酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)を含むSuperose 6 HR10/30カラムを使用して、UV検出器(GE Healthcare)、miniDAWN TREOSおよびOptilabrEX(屈折率、RI)検出器(Wyatt Technology)を備えたAKTA FPLCシステムで、SECによって決定した。MPPA中のPPAの含量を、ビシンコニン酸(BCA)タンパク質アッセイ(Pierce)を使用して決定した。
【0212】
(実施例2:KT-1は薬物送達を増強し、免疫原性細胞死を誘発する)
狭い多分散性を有する分解性ジブロックHPMAコポリマー-EPIコンジュゲートであるKT-1を、ワンステップ可逆的付加-開裂連鎖移動(RAFT)重合によって合成し、
図2BおよびYang et al., J. Controlled Release, 218 (2015) 36-44において提供された技法において特徴付けた。KT-1は、腫瘍中で長期間保持される。
図3Aに示されるように、EPIと類似する分子量および疎水性を有するモデル蛍光トレーサーである、シアニン5(Cy5)は、腫瘍から迅速に排除され、注射の2時間後にはほとんど検出されなかった。対照的に、KT-1-Cy5は、腫瘍部位に大いに蓄積し、24時間でピークに達し、少なくとも196時間持続した。結果として、KT-1は、in vivoにおける腫瘍細胞のEPI取込みを大幅に増強した(
図3B)。
【0213】
KT-1の腫瘍標的化送達が示されたため、カルレティキュリン(CRT)発現と高移動度群ボックス1(HMGB1)放出が関与するICDの誘導へのKT-1の影響を調査した。免疫原性により瀕死の腫瘍細胞の表面に曝露されたCRTは、樹状細胞(DC)に「イートミー(eat me)」シグナルを送り、抗原提示細胞(APC)によるファゴサイトーシスを促進する一方で、放出されたHMGB1は、「危険」シグナルとして機能し、T細胞への最適な抗原提示を刺激する。KT-1は、in vitroで、表面CRTの有意な上方調節を誘発し(
図3C)、これは、EPIの細胞内送達によっては誘導されたが、ポリマー主鎖によっては誘導されなかった(
図4)。
図3D~Eでは、非免疫原性4T1腫瘍を担持するBALB/cマウスに、食塩水、EPIまたはKT-1による2回の静脈内用量(腫瘍移植後7日目および14日目に)の処置(1回目のEPI等価用量は10mg/kg、その後の2回目の用量は5mg/kg)を与えた。15日目の解析によって、KT
-1処置が、遊離EPIと比較した場合、4T1細胞におけるCRT発現(
図3D)とHMGB1の腫瘍内放出(
図3E)を増強したことが明らかとなり、このことは、in vivoでのKT-1のより多くの腫瘍蓄積に対応する。
【0214】
腫瘍内の変化に加えて、15日目に腫瘍流入領域リンパ節(TDLN)を解析すると、KT-1は、CD11b+Ly6c+細胞の分化をCD11c+CD86+炎症性DC様表現型へと歪め(
図3F)、その結果、腫瘍細胞抗原を捕捉および提示するのに特に効率的なAPCのサブセットであるCD11c+CD11b+Ly6c+CD86+の有意により高い出現頻度をもたらした(
図3G)。このことは、腫瘍においてICDに関連するシグナルを効率的に誘発した結果であり得る。比較すると、EPIはより多くのLy6c+CD11b+細胞を誘引したが、CD11c+CD11b+Ly6c+ DCのサブセットを生成することはできなかった。その代わりに、EPIは、腫瘍抗原提示があまり効率的ではない顆粒球(CD11b+Ly6c-)の集団を増加させた。結果として、KT
-1は、遊離EPIよりも大いにより高い出現頻度のCD8+ T細胞を腫瘍床へと動員した(
図3H)。
【0215】
(実施例3:KT-1は、CD8+ T細胞依存性腫瘍阻害および腫瘍PD-L
1発現における適応性増加を誘発する)
BALB/cマウスに、4T1細胞を接種し、食塩水、EPIおよびKT-1(1回目のEPI等価用量は10mg/kg、その後の2回の用量は5mg/kg)による3回の週に1回の処置を与えた。
図5A~Bおよび6に示されるように、食塩水処置したマウスのすべてが、爆発的な腫瘍成長を経験し、急速に死亡した。この用量のEPIは、腫瘍の制御と生存の延長に限定的な効果を有した。注意すべきことは、KT-1処置は、腫瘍成長を有意に抑制し、動物の生存率を改善したことであった。
【0216】
腫瘍制御が、直接的な薬物作用にのみ依存するのか、またはCD8+細胞傷害性Tリンパ球(CTL)も必要とするのかどうかを明らかにするために、4T1腫瘍を担持するマウスを、KT-1処置の間CD8枯渇抗体を使用してCD8+ T細胞除去に供した。結果は、CD8+ T細胞の同時枯渇は、KT-1に媒介される腫瘍退縮を顕著に弱め(
図5Cおよび6B)、マウスの生存を損なった(
図5D)ことを示し、KT-1が、CD8+ T細胞に依存する様式によって腫瘍進行を阻害することを示唆した。
【0217】
想定した通り、上記処置のエンドポイントにおいて、KT-1処置は、CD8+ CTLの腫瘍中への浸潤を促進した(
図5E)。しかし、有効な抗腫瘍免疫応答を妨げるTregは、すべての処置群の中で変化がなかった(
図5F)。KT-1は、全体的なTregに対するCD8+ CTLの比を促進するが(
図5G)、依然として、マウスにおける腫瘍を完全に根絶することができなかった(
図5A)。化学療法後の他の報告と相関して、EPIで処置した腫瘍とKT-1で処置した腫瘍の両方でPD-L
1発現が適応的に富化したが(
図5H)、これは、CD8+ T細胞の浸潤に続く負のフィードバック機構によるものであろう。腫瘍微小環境において影響を受けないTregの存在を伴う腫瘍のPD-L1の増加は、残りのがん細胞によって用いられる複数の免疫抑制機構を化学療法に対して反映し、PD-L1遮断とのさらなる組合せの必要性を強調し得る。
【0218】
PD-L1遮断と組み合わせたKT-1の治療可能性を評価するために、BALB/cマウスを
図5Iに示されるように処置した。マウスは、α-PD-L1単剤療法には応答しなかったが、これは主に、4T1腫瘍におけるPD-L1発現とT細胞関与の欠如によるものであった。α-PD-L1と組み合わせた遊離EPI(EPI→α-PD-L1)は、ほんのわずかだけ腫瘍成長を遅らせた。全く対照的に、KT-1→α-PD-L1治療は、顕著な腫瘍退縮をもたらし、マウスの80%において確立した腫瘍を排除し、劇的な100%の動物生存を達成した(
図5Jおよび6C)。これらの結果は、EPIを腫瘍に効率的に送達することによって、KT-1が、非応答性の腫瘍を、免疫原性かつPD-L1遮断に対して感受性にすることができたことを示唆する。
【0219】
(実施例4:MPPAは、PD-L1をリソソーム分解に標的化する)
表面PD-L1が、α-PD-L
1結合の後に迅速にリサイクルされ、回復され得ることを示す新たに出現した証拠を考慮すると、細胞表面のPD-L1に結合するだけでなく、細胞内でそれを排除することも不可避である。PD-L1をリサイクリング経路からリソソーム分解へと向けなおすために、分子スイッチとして受容体架橋の作用に関与した、PD-L1に対する多価ポリマー-ペプチドアナロジスト(analogist)(
図7A)。
【0220】
図8Aに示されるアミノ酸配列を有するPD-L1ペプチドアンタゴニスト(PPA)は、高親和性でPD-L1に結合することが報告され、
図8Bでさらに確認された。多量体PD-L1架橋を達成するために、PPAをHPMAコポリマーにグラフトさせ、多価ポリマー-PPAコンジュゲートを生成した。合成スキームとコンジュゲートの特徴付けの概説を
図8Cに提示する。反応構成成分の比率を変更することによって、次の評価のために異なる価数を有するコンジュゲートのパネルを調製した。Cy3標識した主鎖を有する3つのコンジュゲートを調製した:P-(PPA)
14-Cy3、P-(PPA)
4.3-Cy3、P-(PPA)
1.3-Cy3(添え字は価数を示す)。さらに、受容体枯渇研究のための未標識MPPAを、分解性主鎖を用いて調製した。12.6の価数を有するMPPAの特徴付けを
図2Cに提示する。
【0221】
図10は、価数が増加するに従い、P-(PPA)
xの表面結合親和性が増加したことを示す。受容体の架橋がエンドサイトーシスを誘発することを示した研究と一致して、多価のP-(PPA)
14-Cy3およびP-(PPA)
4.3-Cy3は、価数の低いP-(PPA)
1.3-Cy3とポリマー前駆体P-Cy3と比較した場合、加速された内部移行率を有した(
図11)。特異的結合とPD-L1架橋によって駆動された内部移行の増強に関して、本発明者らは、リソソーム内への実質的なMPPAの内部移行も実証したが(
図7B)、一方、α-PD-L1とのリソソームでの共局在は、部分的かつ限定的であった。
図7Cでは、MPPAは、細胞結合の24時間後に、α-PD-L1よりも高い程度までPD-L1を枯渇させたが、一方、リソソームにおける酵素分解を部分的に妨げる不可逆的かつ高度に選択的なシステインプロテアーゼ阻害剤であるE-64の存在は、MPPAに誘発されるPD-L
1枯渇を緩和させた。MPPAによるPD-L1のリソソーム分解の増強の裏付けとして、本発明者らは、
図7Dにおけるリサイクリングアッセイを使用して、MPPA処置が、α-PD-L1およびPPAと比較した場合、表面PD-L
1の回復を顕著に遅延させ、損なわせることを見出し、このことは、MPPA架橋の後に内部移行したPD-L1の量の増加が、細胞表面にリサイクリングされず、代わりに、分解のためにリソソームへとルート変更されたことを示した。まとめると、これらの知見は、標準的な抗PD-L1抗体によって与えられる一過的な遮断よりもむしろ、PD-L1の排除の延長をもたらす有効な治療戦略として、ポリマーに促進される表面PD-L1の架橋を確立した。
【0222】
in vivoでのPD-L
1枯渇を検証するために、4T1腫瘍担持マウスを、15日目にα-PD-L1、PPA、またはMPPAで処置し、その後、7日目と14日目に2用量のKT-1処置を与えた(
図7E)。腫瘍のPD-L1発現と腫瘍浸潤リンパ球とについて、PD-L1遮断の2日後に研究した。以前の知見と一致して、腫瘍PD-L1は、KT-1化学療法に応答して適応的に濃縮される。逐次的なPD-L1遮断治療である、α-PD-L1およびPPAは、PD-L1発現を下方調節した。PD-L1発現のさらなる低減はMPPAによって達成され、MPPAは、受容体架橋によってPD-L1の排除を延長させた(
図7E)。さらに、KT-1は、CTL浸潤を優位に増加させたが、追加のα-PD-L1、PPA、またはMPPAは、CTLの腫瘍浸潤をさらには増強させなかった。対照的に、Tregの存在は、KT-1による処置後に影響を受けないままであったが、腫瘍中のTreg集団を作製または維持することが知られているPD-L1のα-PD-L1およびPPAに媒介される遮断は、Tregを枯渇させた(
図7F)。さらに、同時に起こるCD8+ T細胞の増加とTregの最大の低下とともに、KT-1とMPPAとの組合せは、他の処置よりも劇的に高いTregに対するCTLの比をもたらした(
図12)。
【0223】
(実施例5:KT-1とMPPAの組合せは、治癒動物の長期抗腫瘍抗原-特異的記憶をもたらす)
in vivoでの治療効果を検証するために、4T1腫瘍を担持する同系のBALB/cマウスを、
図9Aに示されるように処置した。PPAは、食塩水と比較した場合、ほとんど腫瘍成長を遅らせなかった。MPPAは、おそらく、受動的腫瘍標的化およびPD-L1架橋のポリマーに媒介される効果によって、PPAよりもわずかに優れた治療有効性を示した。しかし、免疫抑制腫瘍微小環境は、エンドポイント時に腫瘍進行を制御することができなかった。対照的に、併用療法であるKT-1→PPAおよびKT-1→MPPAは、腫瘍の著しい退縮をもたらした。とりわけ、KT-1→MPPAは、すべての群の中で、最も高い抗腫瘍効率を発揮し、腫瘍の100%を完全に根絶した(
図9Bおよび13)。さらに、いずれの群も体重の有意な減少を経験せず、最小限の毒性を示唆した(
図9C)。
【0224】
免疫記憶の確立が存在するかどうかを試験するために、KT-1→MPPA治療から、4T1腫瘍の完全な腫瘍退縮(CR)および100%の生存(
図9D)を経験したマウスに、4T1細胞または無関係のマウスの結腸がん細胞CT26のいずれかを皮下に再負荷した。
図9Eに示されるように、CRマウスは、4T1に抵抗性であったが、CT26に対しては抵抗性ではなく、一方、4T1腫瘍とCT26腫瘍の両方が、ナイーブマウスにおいて急速に成長した。さらに、CRマウスから単離した末梢血単核細胞(PBMC)の生きた4T1細胞との同時培養は、CT26細胞との同時培養と比較した場合、腫瘍細胞反応性T細胞(IFN-γ+CD8+)の出現頻度を有意に拡大させ(
図9F)、一方、ナイーブマウス由来のPBMCは、この4T1特異的応答を生じることができなかった(
図14)。
【0225】
並行して、最初のKT-1→MPPA処置後に治癒したCRマウスに、併用療法のエンドポイントである50日目に、尾静脈から4T1細胞を投与することによって再負荷した。実証されたように(
図9Gおよび15)、すべての再負荷マウスは、さらに60日間の終わりまで生存し、肺転移がなかった。対照的に、ナイーブ被験体群由来のマウスの80%は、40日目の前に死亡し、かなりの肺転移腫瘍結節を有した。一方、KT-1→MPPAは、無処置対照よりも、脾臓中のCD44+CD62L-メモリーエフェクターCD8+ T細胞のより高い出現頻度をもたらし(
図9H)、これにより、腫瘍再発に対する持続的免疫の確立が明らかとなった。
【0226】
(実施例6:結腸がんモデルにおけるKT-1および併用療法)
BALB/cマウスと同系のマウス結腸癌モデルのCT26腫瘍細胞では、α-PD-L1またはMPPAによる単剤療法が、腫瘍成長を阻害するのにわずかな効果を発揮しただけであった。KT-1処置の間、腫瘍進行は有効に制限されたが、残りの腫瘍はKT-1化学療法を中断した後、発達し続けた。対照的に、α-PD-L1またはMPPAと組み合わせたKT-1は、処置の終了後でも、腫瘍成長の持続的抑制をもたらした。さらに、KT-1→MPPAは、抗腫瘍効率をさらに改善し、KT-1→α-PD-L1(20%の完全腫瘍退縮)よりも優れており、動物の60%で確立した腫瘍を完全に退縮させた(
図15A)。さらに、CD8枯渇抗体との同時投与は、KT-1→MPPAの有効性を大いに損ない(
図15A)、併用療法の効果におけるCD8+ T細胞応答の重要な関与を実証した。これは、概してKT-1のモジュレーションに起因するものであり、これは、予測された通り、ICDの特徴のうちの1つである、表面CRTのかなりの曝露を誘導し(
図15B、C)、結果として、免疫抑制Tregに対するCD8+ CTLの比の実質的増加を刺激し(
図15D)、よって、抗腫瘍免疫を改善した。しかし、KT-1処置から生存した残りの腫瘍細胞は、表面PD-L1発現を適応的に増加させることによって、CD8+ T細胞応答の誘発を中和させた(
図15E)。とりわけ、このようなジレンマは、α-PD-L1またはMPPAによる逐次的処置によって克服されるであろう。さらに、KT-1治療の後、MPPAは、α-PD-L1よりもより顕著なPD-L1発現の低下をもたらし(
図15E)、これは、MPPAが、受容体架橋の結果として、α-PD-L1(
図15F)よりも、表面PD-L1回復の抑制に対して持続的効果を発揮したためである。
【0227】
KT-1→MPPA治療による原発性CT26腫瘍が治癒したマウスに、同じタイプのがん細胞を再負荷した。治癒したマウスにおける続発性腫瘍の成長は、ナイーブマウスにおける原発性腫瘍と比較した場合、有意に阻害され(
図15G)、長期抗腫瘍免疫記憶を示した。腫瘍再発に対するこのような保護もまた、浸潤したCD8+ T細胞の大いに増加した集団および免疫抑制Tregのわずかに減少した集団を有する続発性腫瘍における再形成された免疫微小環境をもたらした(
図15H)。興味深いことに、治癒したマウスの続発性腫瘍は、2.5倍多いPD-L1発現の上方調節をもたらし(
図15F)、これは、完全腫瘍退縮の失敗の理由の1つであろうが、特に腫瘍がCD8+ T細胞によって実質的に浸潤された場合に、抗PD-L1免疫治療に対する感受性が増加したことも意味するであろう。
【0228】
(実施例7:非小細胞肺がんモデルにおけるKT-1および併用療法)
LCC-1癌肺転移腫瘍モデルでは、C57BL/6マウスは、α-PD-L1(メジアン生存 24日)またはMPPA(メジアン生存 28日)の免疫治療に応答しなかったが、その免疫原性が「冷たい」腫瘍状態のために、食塩水で処置した対照(メジアン生存 22日)と類似する動物の生存を有した。KT-1単独(メジアン生存 36日)はマウスの生存を延長させたが、限定された程度までであった。KT-1→α-PD-L1(メジアン生存 54日)は動物の生存をさらに延長させたが、最善の治療転帰は、KT-1→MPPAによって達成され、マウスメジアン生存における74日までの有意な改善を有した(
図15I)。同様に、CD8枯渇は、KT-1→MPPAによってなされた改善を無効にし(
図15I)、KT-1→MPPAの効果がCD8+ T細胞に依存することを実証した。実際に、KT-1、KT-1→α-PD-L1、またはKT-1→MPPAによる処置を受けたマウスは、PBMCのCT26腫瘍細胞に対する反応性IFN-γ+CD8+ T細胞(
図15J)および脾臓においてサイトカイン様IFN-γを産生することによって、即時保護を誘発することができるCD8+CD62L-CD44+エフェクターメモリーT細胞(
図15K)を有意に拡大させた。一方、食塩水、α-PD-L1、またはMPPAによる処置はいずれも、基礎レベルを超えてIFN-γ+CD8+またはCD8+CD62L-CD44+ T細胞の数を増加させなかった。これらの結果によって、ICDを誘導するコンジュゲートKT-1は、広い抗腫瘍免疫応答および抗腫瘍免疫記憶の誘発に主な効果を有することが確認された。さらに、MPPAと組み合わせたKT-1は、他のいずれの処置よりも、腫瘍負荷を低減する、およびLLC-1細胞の肺転移を抑制するのにより効率的であり(
図15L)、MPPAに媒介されるPD-L1架橋によって、KT-1によって誘導される促進された抗腫瘍免疫が補完されたことを意味した。
【0229】
(実施例8:MPPA合成の代替ルート)
ペプチドPD-L1アンタゴニストの重合性誘導体をHPMAと共重合させ、多価ポリマーペプチドアンタゴニストを生成することができる。例えば、ペプチドアンタゴニストTPP-1(SGQYASYHCWCWRDPGRSGGSK)をN-メタクリロイルグリシルグリシン(MA-GG)で延長させて、N-メタクリロイルGG-SGQYASYHCWCWRDPGRSGGSK(MA-GG-TPP-1)を生成することができる。Fmoc/tBu戦略と固相合成方法とを使用して、MA-GG-TPP-1を合成した。重合性ペプチド構造をMALDI-TOF質量分析(MA-GG-TPP-1:計算値2669.13Da、実測値2670.13Da)によって検証し、純度を分析的RP-HPLCで検証した。MA-GG-TPP-1の構造を以下に提供する。
【化21】
【0230】
実施例1において提供した技法を使用して、MA-GG-TPP-1をHPMAおよびCTA-GFLGKGLFGCTAと重合させて、MPPAを生成することができる。
【0231】
この出願全体を通して、様々な刊行物が参照される。これらの刊行物の開示はそれらの全体が、これにより参照により本出願に組み込まれ、本明細書に記載の化合物、組成物、および方法をより十分に説明する。
【0232】
本明細書に記載の化合物、組成物、および方法に対して様々な修正および変更がなされ得る。本明細書に記載の化合物、組成物、および方法の他の態様は、本明細書を考慮して、ならびに本明細書に開示される化合物、組成物、および方法の実践から明らかとなるであろう。本明細書および実施例は例示とみなされることが意図される。
【配列表】
【国際調査報告】