(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-20
(54)【発明の名称】交流回路網内で漏れ電流インピーダンスの抵抗成分を決定するための方法およびデバイス
(51)【国際特許分類】
G01R 31/52 20200101AFI20221213BHJP
G01R 21/00 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
G01R31/52
G01R21/00 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022523131
(86)(22)【出願日】2020-10-15
(85)【翻訳文提出日】2022-06-10
(86)【国際出願番号】 EP2020079116
(87)【国際公開番号】W WO2021074333
(87)【国際公開日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】102019007224.3
(32)【優先日】2019-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522154663
【氏名又は名称】セイフティテスト ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュルツェ ジモン
(72)【発明者】
【氏名】シュルツェ ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】フェアゴフ ディミーター
【テーマコード(参考)】
2G014
【Fターム(参考)】
2G014AA17
2G014AB33
(57)【要約】
本発明は、通電状態の位相(L)、中性導線(N)、および保護導線(PE)を有する交流回路網への下流側分岐(2)の漏れ電流インピーダンス(Riso)の抵抗成分を決定するための方法に関する。方法は、差分電流センサを用いて、通電状態の位相(L)と中性導線(N)との間の差分電流ILNをスキャンによって測定するステップと、通電状態の位相(L)と中性導線(N)との間または通電状態の位相(L)と保護導線(PE)との間の電圧Uをスキャンによって測定するステップと、差分電流ILNと電圧Uとの間の位相シフトを補正するステップと、いくつかの個々の差分電流値ILN,iおよびいくつかの個々の電圧値Uiを決定するステップであって、差分電流値ILN,iが電圧値Uiに対して位相補正される、ステップと、いくつかの個々の差分電流値ILN,iおよびいくつかの個々の電圧値Uiから有効電力Pを決定するステップと、電圧値Uiを用いて有効電圧UEffを決定するステップと、有効電圧UEffおよび有効電力Pを使用して漏れ電流インピーダンス(Riso)の抵抗成分を決定するステップと、を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
位相(L)、中性導線(N)、および保護導線(PE)を有する交流回路網への下流側分岐(2)の漏れ電流インピーダンス(R
iso)の抵抗成分を決定するための方法であって、
差分電流センサ(5)を用いて前記位相(L)と前記中性導線(N)との間の差分電流I
LNをスキャンによって測定するステップと、
前記位相(L)と前記中性導線(N)との間または前記位相(L)と前記保護導線(PE)との間の電圧Uをスキャンによって測定するステップと、
前記差分電流I
LNと前記電圧Uとの間の位相シフトを補正するステップと、
いくつかの個々の差分電流値I
LN,iおよびいくつかの個々の電圧値U
iを決定するステップであって、前記差分電流値I
LN,iが前記電圧値U
iに対して位相補正されるステップと、
前記いくつかの個々の差分電流値I
LN,iおよび前記いくつかの個々の電圧値U
iから有効電力Pを決定するステップと、
前記電圧値U
iを用いて有効電圧U
Effを決定するステップと、
前記有効電圧U
Effおよび前記有効電力Pを用いて前記漏れ電流インピーダンス(R
iso)の前記抵抗成分を決定するステップと、
を備える方法。
【請求項2】
前記交流回路網がTN交流回路網(3)である、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記漏れ電流インピーダンス(R
iso)の前記抵抗成分を決定するためのデバイス(1)を調整するために、初めに、純粋に容量性の負荷、純粋に誘導性の負荷、または純粋に抵抗性の負荷を有する下流側分岐(2)を前記交流回路網に接続することによって、前記位相シフトを補正する値が決定され、次いで、前記下流側分岐(2)を用いて電圧Uおよび差分電流I
LNが決定される、
請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
個々の差分電流スキャン値は、差分電流I
LNをスキャンによって測定するときに測定され、個々の電圧スキャン値は、電圧Uをスキャンによって測定するときに測定され、前記差分電流I
LNと前記電圧Uとの間の前記位相シフトの補正を改善するために、前記差分電流スキャン値の内挿から時間差分電流曲線を得るとともに、前記電圧スキャン値の内挿から時間電圧曲線を得る、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記差分電流センサ(5)は、前記差分電流I
LNをスキャンによって測定するとき、補償導線(8)を含み、前記補償導線(8)を用いて前記差分電流センサ(5)の誤差が補償される、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記補償導線(8)を通って流れる電流が、前記位相(L)または前記中性導線(N)を通って流れる電流に比例する、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記差分電流センサ(5)の誤差が、前記位相(L)の測定された可変電流から、および/または前記中性導線(N)の測定された可変電流から、係数Kpを計算することによって補償され、測定された差分電流値I
LN,iごとに値Kp
*I
LN,iが差し引かれる、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記漏れ電流インピーダンス(R
iso)の前記抵抗成分が所定の値を下回る場合、前記交流回路網がスイッチオフされる、および/またはメッセージが上位システムに送られる、
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
位相(L)、中性導線(N)、および保護導線(PE)を有する交流回路網への下流側分岐(2)の漏れ電流インピーダンス(R
iso)の抵抗成分を、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の方法を用いて決定するためのデバイス(1)であって、
前記位相(L)と前記中性導線(N)との間または前記位相(L)と前記保護導線(PE)との間の電圧Uをスキャンによって測定するための電圧センサ(4)と、
前記位相(L)と前記中性導線(N)との間の差分電流I
LNをスキャンによって測定するための差分電流センサ(5)と、
評価ユニット(6)であって、前記差分電流I
LNと前記電圧Uとの間の位相シフトを補正し、いくつかの個々の差分電流値I
LN,iおよびいくつかの個々の電圧値U
iを決定し、ここで前記差分電流値I
LN,iは電圧値U
iに対して位相補正され、前記評価ユニット(6)は、前記いくつかの個々の差分電流値I
LN,iおよび前記いくつかの個々の電圧値U
iから有効電力Pを決定し、前記電圧値U
iを用いて有効電圧U
Effを決定し、前記有効電圧U
Effおよび前記有効電力Pを用いて前記漏れ電流インピーダンス(R
iso)の前記抵抗成分を決定するための評価ユニット(6)と、
を備えるデバイス(1)。
【請求項10】
前記差分電流センサ(5)が、コア(7)および補償導線(8)を含み、前記位相(L)、前記中性導線(N)、および前記補償導線(8)が前記コア(7)に通されている、
請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
請求項9または請求項10に記載の少なくとも1つのデバイス(1)を備える、
配電キャビネット。
【請求項12】
前記デバイス(1)が端子台として設計されている、
請求項11に記載の配電キャビネット。
【請求項13】
前記配電キャビネットが、少なくとも1つのさらなるデバイス(1)を含み、前記少なくとも1つのデバイス(1)の測定値が、前記少なくとも1つのさらなるデバイス(1)と交換される、
請求項11または請求項12に記載の配電キャビネット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流回路網内で漏れ電流インピーダンスの抵抗成分を決定するための方法およびデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
電気事故からの人的障害を防止するために、絶縁抵抗および障害電流に関して電気機器および設備の検査を行う必要がある。交流回路網および/またはそれに接続された需要家における、活動状態の導線(位相Lおよび中性導線N)と保護導線PEとの間の絶縁抵抗Risoの評価は、重要な品質および安全性の機能である。絶縁抵抗Risoの検査は、多くの規格に規定されている。絶縁抵抗Risoの限界値は、通常、1MOhmより高い。
【0003】
しかし、絶縁抵抗Risoは、回路網電圧がない状態でしか直接測定することができない。その結果、すべての極同士を分離するスイッチまたは接点の背後に配置された箇所の絶縁は、検出することができない。絶縁抵抗Risoを直接測定するのに代わる方法として、動作中に差分電流測定法が使用され、これは位相Lと中性導線Nとの間の差分電流を決定する。この差分電流は基本的に、交流回路網がスイッチオンされているときの活動状態の導線(位相Lおよび中性導線N)と保護導線PEとの間の漏れ電流に対応する。通常はEMCの理由から交流回路網および/または需要家に内蔵されるシステム関連の容量性フィルタ要素に起因して、最大の許容可能な差分電流の諸規格における限界値は、例えば3.5mAなど比較的高く、これは、230Vの回路網ではわずか66kOhmの交流インピーダンスに相当する。高い差分電流は、高いリスクにつながる。3.5mAでは、高いインピーダンスから遠い。このことから、需要家の汚損や経年劣化の指標である絶縁抵抗Risoは、1MOhmより上では検出することができない。これにより、純粋な差分電流の決定を介して絶縁抵抗Risoを決定する際の試験精度が制限される。
【0004】
特許文献1は、交流回路網内の絶縁および障害電流監視のための方法およびデバイスについて記載している。ここでは、少なくとも2つの回路網導線の間の差分電流が検出される。差分電流の交流成分が、第1の回路網変数として検出され、少なくとも2つの回路網導線の間または回路網導線と保護導線または中性導線との間の交流回路網電圧が、第2の回路網変数として検出される。差分電流の交流成分の振幅と、検出された2つの回路網変数の間の位相角Φの余弦との積が、抵抗障害電流の尺度となる。求められた積が一定の応答値を超える場合、負荷の切り離しが実施される。しかし、抵抗障害電流に関して特許文献1で提案される対策は、正弦電圧および電流にしか適用できない。
【0005】
特許文献2は同様に、交流回路網内で障害電流を判定するための方法およびデバイスを示す。
【0006】
特許文献3は、接地された、単相または多相の、動作可能でかつ動作中の交流回路網のオーム絶縁抵抗を求めるための方法について記載し、ここでは、特に差分電流が測定・評価される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許出願公開第19826410号明細書
【特許文献2】米国特許第6,922,643号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第10355086号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、絶縁および障害電流の監視が改善され得る方法を提供するという目的に基づく。また、絶縁および障害電流の監視が改善され得るデバイスを提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、独立請求項1の主題によって達成される。本発明による方法の有利な実施形態は、従属請求項の主題であり、以下の本発明の説明から明らかになる。本発明によるデバイスは、請求項9に記載される。
【0010】
したがって、位相、中性導線、および保護導線を有する交流回路網への下流側分岐の漏れ電流インピーダンスの抵抗成分を決定するための方法が記載される。方法は、
差分電流センサを用いて位相と中性導線との間の差分電流ILNをスキャンによって測定するステップと、
位相と中性導線との間または位相と保護導線との間の電圧Uをスキャンによって測定するステップと、
差分電流ILNと電圧Uとの間の位相シフトを補正するステップと、
いくつかの個々の差分電流値ILN,iおよびいくつかの個々の電圧値Uiを決定するステップであって、差分電流値ILN,iが電圧値Uiに対して位相補正されるステップと、
いくつかの個々の差分電流値ILN,iおよびいくつかの個々の電圧値Uiから有効電力Pを決定するステップと、
電圧値Uiを用いて有効電圧UEffを決定するステップと、
有効電圧UEffおよび有効電力Pを用いて漏れ電流インピーダンスの抵抗成分を決定するステップと、を備える。
【0011】
スキャンによって差分電流ILNおよび電圧Uを測定することは、漏れ電流の有効電力のデジタル検出にもつながる。それにより、漏れ電流インピーダンスの抵抗成分が、非正弦波の回路網電圧および非正弦波の電流についても決定され得る。
【0012】
差分電流ILNをスキャンによって測定する間、個々の差分電流スキャン値が、互いから所定の時間間隔で測定され、電圧Uをスキャンによって測定する間、個々の電圧スキャン値が、互いから所定の時間間隔で測定される。
【0013】
電圧Uは、位相と中性導線との間でスキャンによって測定され、すなわち、電圧ULNが測定される。代替として、電圧Uは、位相と保護導線との間でスキャンによって測定され、すなわち、電圧ULPEが測定される。
【0014】
位相シフトの補正は、好ましくはデジタル的に行われる。
【0015】
方法の一実施形態によると、交流回路網はTN交流回路網である。代替として、交流回路網は、TT交流回路網またはIT交流回路網でもあり得る。
【0016】
方法のさらなる実施形態によると、漏れ電流インピーダンスの抵抗成分を決定するためのデバイスを調整するために、初めに、純粋に容量性の負荷、純粋に誘導性の負荷、または純粋に抵抗性の負荷を有する下流側分岐を交流回路網に接続することによって、位相シフトを補正する値が決定される。次いで、電圧Uおよび差分電流ILNが、この下流側分岐を用いて決定される。利点として、そのような下流側分岐が純粋に容量性の負荷、純粋に誘導性の負荷、または純粋に抵抗性の負荷を有する状態で、位相シフトの値を決定することができ、その値が、測定対象の下流側分岐において補正のために後の測定で使用され得る。
【0017】
方法のさらなる実施形態によると、個々の差分電流スキャン値は、差分電流ILNをスキャンによって測定するときに測定される。
【0018】
個々の電圧スキャン値は、電圧Uをスキャンによって測定するときに測定される。さらに、差分電流ILNと電圧Uとの間の位相シフトの補正を改善するために、差分電流スキャン値の内挿から時間差分電流曲線を得るとともに、電圧スキャン値の内挿から時間電圧曲線を得る。利点として、位相シフトは、差分電流サンプルの内挿および電圧サンプルの内挿を用いて正確に決定することができる。
【0019】
方法のさらなる実施形態によると、差分電流ILNをスキャンによって測定するとき、差分電流センサは補償導線を含む。それにより、この補償導線を用いて差分電流センサの誤差が補償される。この目的のために、補償導線、位相、および中性導線は、補償導線のコアに通されている。補償導線は、位相および中性導線がコアに正確に対称的には通されていないことを補償するために使用することができる。補償導線は、したがって、コア、位相、および中性導線からなるユニットの非対称性を補償する。この目的のために、位相を流れる電流に比例し得る補償電流が、補償導線を通じて送られる。
【0020】
方法のさらなる実施形態によると、補償導線を通って流れる電流は、位相または中性導線を通って流れる電流に比例する。したがって、補償導線を通る電流の流れを生じさせる補償回路は、平易に構築され得る。そして、位相または中性導線を通って流れる電流には、一定不変の係数のみが与えられる。
【0021】
方法のさらなる実施形態によると、差分電流センサの誤差が、位相の測定された可変電流から、および/または中性導線の測定された可変電流から、係数Kpを計算し、測定された差分電流値ILN,iごとに値Kp*ILN,iを差し引くことにより、補償される。
【0022】
したがって、差分電流センサの誤差の補償がデジタル的に行われる。好ましくは、位相の測定された可変電流または中性導線の測定された可変電流のいずれか、および差分電流ILNが検出される。そして、差分電流ILNは、位相の電流(または中性導線の電流)を用いてデジタル的に補正される。位相の測定された可変電流(または中性導線の測定された可変電流)から、係数Kpが計算される。そして、各測定された差分電流値ILN,iごとに値Kp*ILN,iが差し引かれる。
【0023】
方法のさらなる実施形態によると、漏れ電流インピーダンスの抵抗成分が所定の値を下回る場合、交流回路網がスイッチオフされる、および/またはメッセージが上位システムに送られる。漏れ電流インピーダンスの抵抗成分が低いほど、漏れ電流が高くなり得る。高い漏れ電流は危険であり得るため、漏れ電流インピーダンスの過度に低い抵抗成分は望まれない。したがって、漏れ電流インピーダンスの抵抗成分が低すぎる場合、交流回路網はスイッチオフされ得る。この文脈において、「スイッチオフされる」とは、交流回路網がスイッチオフされること、または交流回路網がすべての極において下流側分岐から完全に切断されることを意味し得る。
【0024】
上位システムは、例えばクラウドシステムまたは監視システムを意味するものと理解されるべきである。クラウドシステムは、インターネットを通じてアクセスすることが可能なシステムである。監視システムは、個々のパラメータの監視に適するローカルのシステムである。
【0025】
漏れ電流インピーダンスの抵抗成分の代替または追加として、さらなる回路網パラメータも監視され得る。検出されたさらなる回路網パラメータが超えられるまたは達されない場合、メッセージが上位システムに送られ得る、および/または交流回路網がスイッチオフされ得る。さらなる回路網パラメータは、例えば差分電流ILNであり得る。
【0026】
さらに、位相、中性導線、および保護導線を有する交流回路網への下流側分岐の漏れ電流インピーダンスの抵抗成分を決定するためのデバイスが提供される。デバイスは、以下の構成要素、すなわち、位相と中性導線との間または位相と保護導線との間の電圧Uをスキャンによって測定するための電圧センサと、位相と中性導線との間の差分電流ILNをスキャンによって測定するための差分電流センサと、評価ユニットであって、差分電流ILNと電圧Uとの間の位相シフトを補正し、いくつかの個々の差分電流値ILN,iおよびいくつかの個々の電圧値Uiを決定し、ここで差分電流値ILN,iは電圧値Uiに対して位相補正され、評価ユニットは、いくつかの個々の差分電流値ILN,iおよびいくつかの個々の電圧値Uiから有効電力Pを決定し、電圧値Uiを用いて有効電圧UEffを決定し、有効電圧UEffおよび有効電力Pを用いて漏れ電流インピーダンスの抵抗成分を決定するための評価ユニットと、を備える。
【0027】
利点として、記載される本デバイスは、記載された方法を行うことに適している。
【0028】
デバイスの一実施形態によると、差分電流センサは、コアおよび補償導線を含んでいる。ここで、位相、中性導線、および補償導線は、コアに通されている。コアに対する位相および中性導線の非対称的な配置に起因して、差分電流測定に対称性誤差が生じ得る。この対称性誤差は、補償導線を用いて補償され得る。よって、補償導線は、コア、位相、および中性導線からなるユニットの非対称性を補償する。この目的のために、位相を通って流れる電流に比例し得る補償電流が、補償導線を通じて送られる。
【0029】
代替として、差分電流センサの誤差は、デジタル的に補償されることもできる。この場合、補償導線は必要とされない。
【0030】
デバイスのさらなる実施形態によると、デバイスは、漏れ電流インピーダンスの抵抗成分を監視するために、評価ユニットに接続される監視システムを含む。監視システムは、ユーザが交流回路網をスイッチオフすべきかどうかの決定を行うことができるように、漏れ電流インピーダンスの抵抗成分を表示することができる。代替または追加として、監視システムは、漏れ電流インピーダンスの抵抗成分を電子的に検査し、交流回路網をスイッチオフすべきかどうかについて独立して決定を行うこともできる。
【0031】
加えて、デバイスは、代替または追加として、測定データを分析または処理のためにクラウドシステムに転送することができる。
【0032】
さらに、上記で説明されたような少なくとも1つのデバイスを備える配電キャビネットが提供される。1つまたは複数のデバイスは、非常に簡単に、配電キャビネットに設置、締結、またはプラグ接続することができる。
【0033】
少なくとも1つのデバイスは、回路網パラメータである差分電流ILN、電圧U、および絶縁抵抗、すなわち漏れ電流インピーダンスRisoの抵抗成分、を検出する。ここで、さらなる回路網パラメータが配電キャビネットによって検出され得る。そのような回路網パラメータは、例えば、需要家の有効電力および需要家の電流である。配電キャビネットは、エネルギー計量器も含み得る。加えて、高調波分析およびエネルギー分析による中性導線の電流測定は、アーク障害に関する情報を提供することができる。
【0034】
配電キャビネットの一実施形態によると、少なくとも1つのデバイスは端子台として設計される。ここで、端子台は平型端子台であり得る。いくつかの端子台が、取り付けレールに多数並べられ得る。この目的のために、配電キャビネットは、取り付けレールを含み得る。端子台は、とりわけ、取り外し可能な接続、または配電キャビネット内の配線、より線、および電線の接続のために使用され得る。
【0035】
配電キャビネットのさらなる実施形態によると、配電キャビネットは、少なくとも1つのさらなるデバイスを含む。その場合、少なくとも1つのデバイスの測定値が、少なくとも1つのさらなるデバイスと交換される。配電キャビネットは、利点として、デバイス間の測定値の交換を可能にするのに適する。利点として、そうすると、各デバイス内で同じ測定が再度行われなくてよい。
【0036】
提案される方法に関して説明される実施形態および特徴は、それに応じて、提案されるデバイスおよび提案される配電キャビネットに適用され、その逆も同様である。
【0037】
本発明のさらなる可能な実装形態は、明示的には言及されない上記または下記で説明される特徴の組み合わせも含む。また、個々の態様が、改良または追加として本発明のそれぞれの基本的形態に追加され得る。
【0038】
本発明は、図面を参照しながら以下でより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】TN交流回路網への下流側分岐の漏れ電流インピーダンスの抵抗成分を決定するためのデバイスの概略図である。
【
図2】TN交流回路網への下流側分岐の漏れ電流インピーダンスの抵抗成分を決定するための方法のフローチャートである。
【
図3】
図1に表される差分電流センサの概略図である。
【
図4】
図3に表される差分電流センサのブロック図である。
【
図5】
図3に表される差分電流センサの補償導線を制御するための回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
同一のまたは機能的に同一の要素には、図中で同じ参照符号が与えられている。さらに、図中の表現は必ずしも実際の縮尺でないことに留意すべきである。
【0041】
図1は、TN交流回路網3への下流側分岐2の漏れ電流インピーダンスR
isoの抵抗成分を決定するためのデバイス1の概略図を示す。TN交流回路網3は、位相L、中性導線N、および保護導線PEを有する。
【0042】
デバイス1は、電圧センサ4、差分電流センサ5、および評価ユニット6を備える。電圧センサ4は、位相Lと中性導線Nとの間の電圧ULNを測定する。代替として、電圧センサ4は、位相Lと保護導線PEとの間の電圧ULPEを測定することもできる。
【0043】
通電状態の導線である位相Lおよび中性導線Nは、差分電流センサ5に通されている。差分電流センサ5は、位相Lの電流と中性導線Nの電流とを合計する。漏れ電流が流れていない場合、和はゼロになる。漏れ電流が存在する場合、電流の一部は、中性導線Nを通って戻る方向へ流れない。そのため、位相Lと中性導線Nとの間の差分電流ILNが測定される。
【0044】
評価ユニット6は、差分電流ILNと電圧ULNとの間の位相シフトを補正するために使用され、いくつかの個々の差分電流値ILN,iおよびいくつかの個々の電圧値ULN,iを決定し、ここで差分電流値ILN,iは、電圧値ULN,iに対して位相補正され、評価ユニット6は、いくつかの個々の差分電流値ILN,iおよびいくつかの個々の電圧値ULN,iから有効電力Pを決定し、電圧値ULN,iを用いて有効電圧UEffを決定し、有効電圧UEffおよび有効電力Pを用いて漏れ電流インピーダンスRisoの抵抗成分を決定する。
【0045】
漏れ電流インピーダンスR
isoの抵抗成分が、限界値、例えば1MOhm、未満である場合、スイッチ(
図1には図示せず)を用いて、下流側分岐2をすべての極において(完全に)TN交流回路網3から切断することができる。
【0046】
下流側分岐2は、抵抗Risoを有する第1の分岐を含む。この第1の分岐は、結果として、純粋に抵抗性の漏れ電流を生じさせる。下流側分岐2は、静電容量C1を有する第2の分岐も含む。この第2の分岐は、結果として、純粋に容量性の漏れ電流を生じさせる。下流側分岐2は、インダクタンスL1、抵抗R1、静電容量C3および静電容量C2を有する第3の分岐も含む。この第3の分岐は、結果として漏れ電流を生じさせ、ここで抵抗R1は抵抗成分を生成する。
【0047】
しかし、この電流は、直接電流測定法では静電容量C2を介して切り離されるため、直接的な電流絶縁抵抗測定では検出されない。この例は、AC測定法は抵抗値を特定することができるが、それは直接電流測定法ではより低い絶縁抵抗値を生成しないことを示している。
【0048】
TN交流回路網3への下流側分岐2の漏れ電流インピーダンスRisoの抵抗成分を検出することにより、動作状態における下流側分岐2の絶縁を評価することが可能である。測定結果は、容量成分と直列に存在する抵抗成分によって不正確なものとなる。それらも測定されるが、絶縁抵抗を決定する際に考慮に入れられない。しかし、1MOhmである典型的な絶縁抵抗限界値の結果に大きく影響する静電容量(静電容量C2を参照)と直列の抵抗成分(抵抗R1を参照)はまれである。
【0049】
デバイス1は、評価ユニット6に接続される監視システム(
図1には図示せず)を含むことができる。漏れ電流インピーダンスR
isoの抵抗成分は、監視システムを用いて監視することができる。すなわち、監視システムを用いて、手動および/または機械による漏れ電流インピーダンスR
isoの抵抗成分の監視が可能である。
【0050】
さらに、配電キャビネットがいくつかのデバイス1を含むことができる。ここで、デバイス1は、特に端子台として設計され得る。また、個々のデバイスは、個々の測定値を別のデバイス1と交換するように設計され得、すなわち、あるデバイス1からの測定値が別のデバイス1に送信される。
【0051】
図2は、TN交流回路網3への下流側分岐2の漏れ電流インピーダンスR
isoの抵抗成分を決定するための方法のフローチャートを示す。
【0052】
最初のオプションのステップS1で、純粋に容量性の負荷を有する下流側分岐が、TN交流回路網3に接続される。次いで、電圧ULNが位相Lと中性導線Nの間で測定される。さらに、差分電流ILNが位相Lと中性導線Nの間で測定される。電圧ULNの位相曲線を差分電流ILNの位相曲線と比較することにより、差分電流ILNに対する電圧ULNの位相シフトの値を決定することができる。代替として、純粋に誘導性の負荷または純粋に抵抗性の負荷を有する下流側分岐が接続されることもできる。例えば2チャンネルオシロスコープを利用するなどの他の調整オプションも考えられる。
【0053】
第2のステップS2で、純粋に容量性の負荷を有する下流側分岐の代わりに、測定対象の下流側分岐2がTN交流回路網3に接続される。さらに、電圧ULNが位相Lと中性導線Nの間で測定される。加えて、位相Lと中性導線Nとの間の差分電流ILNが、差分電流センサ5を用いて測定される。ここで、電圧ULNと差分電流ILNは、両方ともスキャンによって測定される。そのため、デジタル化された電圧曲線およびデジタル化された差分電流曲線が得られる。
【0054】
差分電流I
LNは、例えば差分電流センサ5により、
図3~5に説明されるように測定され得る。
【0055】
第3のステップS3で、第2のステップで決定された差分電流ILNと、第2のステップで決定された電圧ULNとの間の位相シフトが補正される。これは、例えば、第2のステップで決定された差分電流ILNの位相を、第1のステップで決定された位相シフトの値で補正することによって行われる。この補正は好ましくはデジタル的に行われる。
【0056】
第4のステップS4で、いくつかの個々の差分電流値ILN,iおよびいくつかの個々の電圧値ULN,iが決定される。差分電流値ILN,iは、上記で説明されたように、電圧値ULN,iに対して既に位相補正されている。合計で、各場合にn個の値が決定される。
【0057】
第5のステップS5で、有効電力Pが決定される。原則として、有効電力は次の式を使用して計算される。
【0058】
【0059】
ここで、Tは、回路網サイクルの周期継続時間である。詳細には、少なくとも4分の1周期が積分時間として使用される。積分は好ましくは、1回の回路網サイクルまたは数回の回路網サイクルにわたって行われる。本事例の場合、有効電力Pは、いくつかの個々の残留電流値ILN,iおよびいくつかの個々の電圧値ULN,iから、次の式を使用して決定される。
【0060】
【0061】
第6のステップS6で、有効電圧UEffが、電圧値ULN,iを用いて、次の式を使用して決定される。
【0062】
【0063】
第7のステップS7で、漏れ電流インピーダンスRisoの抵抗成分が、有効電圧UEffおよび有効電力Pを用いて、次の式を使用して決定される。
【0064】
【0065】
ここで、漏れ電流インピーダンスRisoの抵抗成分は、基本的に下流側分岐2の絶縁抵抗に対応し、したがって下流側分岐2の絶縁の質の指標となる。
【0066】
さらなるステップにおいて、漏れ電流インピーダンスRisoの抵抗成分が所定の値を下回る場合、TN交流回路網3がスイッチオフされ得る。
【0067】
差分電流ILNと電圧ULNとの間の位相シフトの補正は、内挿によって個々の電圧スキャン値から電圧曲線を決定し、内挿によって個々の差分電流スキャン値から差分電流曲線を決定することにより、改善することができる。そのようにして決定される曲線の位相シフトは、より良好に決定され得る。
【0068】
図1に示されるTN交流回路網3は、位相Lを有する。代替として、TN交流回路網3は、2つまたは3つの位相Lを有することもできる。その場合、漏れ電流インピーダンスR
isoの抵抗成分は、位相Lごとに別個に決定され得る。
【0069】
図3は、
図1に表される差分電流センサ5の概略図を示す。差分電流センサ5は、コア7および補償導線8を含む。位相L、中性導線N、および補償導線8は、コア7に通されている。詳細には、位相L、中性導線N、および補償導線8は各々、コア7の周りに数回巻き付けられ得る。コア7は、貫通開口部9を有する、閉じた、特に円形の構造として設計され得る。差分電流I
LNは、測定巻線10を用いて検出することができる。
【0070】
差分電流センサ5の誤差は、補償導線8を用いて補償することができる。誤差は、コア7に対して位相Lおよび中性導線Nの対称性が不完全であることから生じる。この非対称性誤差は、補償導線8を通る電流を用いて補償することができる。
【0071】
さらに、差分電流センサ5は、電流計11および制御ユニット12を含むことができる。電流計11によって測定される電流強度は、特に0~20Aの範囲である。しかし、電流強度は20Aより高いこともあり得る。位相Lの電流信号は、電流計11によって測定される。電流計11は、制御ユニット12がさらに電流信号を処理できるように制御ユニット12に接続されている。制御ユニット12は、非対称性誤差を補償するために補償導線8を通る電流の流れを制御する。
【0072】
詳細には、補償導線8を通って流れる電流は、位相Lを通って流れる電流に比例し得る。
【0073】
代替として、非対称性誤差を補償するために、中性導線Nの電流が電流計11を用いて測定されることも可能である。
【0074】
さらに、非対称性誤差の補償は、代替として、下記でさらに説明されるようにデジタル的に行うこともできる。
【0075】
図4は、
図3に表される差分電流センサ5のブロック図を示す。電流計11を用いて測定された電流は、位相Lおよび中性導線Nと共に、制御ユニット12および補償導線8を介して差分電流センサ5に供給され得る。測定された差分電流I
LNは、増幅器回路13およびアナログ-デジタル変換器14を介して転送され得る。
【0076】
差分電流センサ5の非対称的な構造のために、回路を流れる電流に線形比例する誤差が発生する。線形誤差は、補償導線8を用いて、センサ回路内の電流計11の電流信号の適宜増幅されたフィードバックによってアナログ的に補償され得る。
【0077】
図5は、
図3に表される差分電流センサ5の補償導線8を制御するための回路図を示す。位相L、回路図、電流計11の回路
図15、制御ユニット12の回路
図16、電流計11の電流測定のためのシャント17、および補償導線8のための接続部18が表されている。増幅回路および分圧器を用いて、電流計11の電流信号は、補償のために適宜増幅される。接続部18は、補償導線8に接続されている。
【0078】
位相Lの代わりに、電流は、代替として中性導線Nにおいて測定することもでき、これは、位相Lおよび中性導線Nが需要家回路を形成するからである。
【0079】
代替として、差分電流センサ5の非線形誤差の補償は、デジタル的に実施することもできる。この目的のために、測定された位相Lの可変電流(または中性導線Nの電流)および差分電流ILNが検出される。差分電流ILNは、次いで位相Lの電流を用いてデジタル的に補正される。例えば、測定された位相Lの可変電流から、係数Kpが計算される。各測定された差分電流値ILN,iごとに値Kp*ILN,iが差し引かれる。
【符号の説明】
【0080】
1 デバイス
2 下流側分岐
3 TN交流回路網
4 電圧センサ
5 差分電流センサ
6 評価ユニット
7 コア
8 補償導線
9 貫通開口部
10 測定巻線
11 電流計
12 制御ユニット
13 増幅器回路
14 アナログ-デジタル変換器
15 回路図
16 回路図
17 シャント
18 接続部
L 位相
N 中性導線
PE 保護導線
Riso 漏れ電流インピーダンスの抵抗成分
【手続補正書】
【提出日】2021-05-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流回路網内で漏れ電流インピーダンスの抵抗成分を決定するための方法およびデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
電気事故からの人的障害を防止するために、絶縁抵抗および障害電流に関して電気機器および設備の検査を行う必要がある。交流回路網および/またはそれに接続された需要家における、活動状態の導線(位相Lおよび中性導線N)と保護導線PEとの間の絶縁抵抗Risoの評価は、重要な品質および安全性の機能である。絶縁抵抗Risoの検査は、多くの規格に規定されている。絶縁抵抗Risoの限界値は、通常、1MOhmより高い。
【0003】
しかし、絶縁抵抗Risoは、回路網電圧がない状態でしか直接測定することができない。その結果、すべての極同士を分離するスイッチまたは接点の背後に配置された箇所の絶縁は、検出することができない。絶縁抵抗Risoを直接測定するのに代わる方法として、動作中に差分電流測定法が使用され、これは位相Lと中性導線Nとの間の差分電流を決定する。この差分電流は基本的に、交流回路網がスイッチオンされているときの活動状態の導線(位相Lおよび中性導線N)と保護導線PEとの間の漏れ電流に対応する。通常はEMCの理由から交流回路網および/または需要家に内蔵されるシステム関連の容量性フィルタ要素に起因して、最大の許容可能な差分電流の諸規格における限界値は、例えば3.5mAなど比較的高く、これは、230Vの回路網ではわずか66kOhmの交流インピーダンスに相当する。高い差分電流は、高いリスクにつながる。3.5mAでは、高いインピーダンスから遠い。このことから、需要家の汚損や経年劣化の指標である絶縁抵抗Risoは、1MOhmより上では検出することができない。これにより、純粋な差分電流の決定を介して絶縁抵抗Risoを決定する際の試験精度が制限される。
【0004】
特許文献1は、交流回路網内の絶縁および障害電流監視のための方法およびデバイスについて記載している。ここでは、少なくとも2つの回路網導線の間の差分電流が検出される。差分電流の交流成分が、第1の回路網変数として検出され、少なくとも2つの回路網導線の間または回路網導線と保護導線または中性導線との間の交流回路網電圧が、第2の回路網変数として検出される。差分電流の交流成分の振幅と、検出された2つの回路網変数の間の位相角Φの余弦との積が、抵抗障害電流の尺度となる。求められた積が一定の応答値を超える場合、負荷の切り離しが実施される。しかし、抵抗障害電流に関して特許文献1で提案される対策は、正弦電圧および電流にしか適用できない。
【0005】
特許文献2は同様に、交流回路網内で障害電流を判定するための方法およびデバイスを示す。
【0006】
特許文献3は、接地された、単相または多相の、動作可能でかつ動作中の交流回路網のオーム絶縁抵抗を求めるための方法について記載し、ここでは、特に差分電流が測定・評価される。
【0007】
特許文献4は、漏れ電流インピーダンスの抵抗成分を決定するためのデバイスおよび方法を開示している。この目的のために、位相と中性導線との間の電圧、差分電流、有効電力、および有効電圧が決定される。電圧と差分電流との間の位相補正については論じられていない。
【0008】
特許文献5は、障害電流安全デバイスの保護機能を保証するための電気監視デバイスおよび方法について記載している。監視デバイスは、障害電流安全デバイスと直列に接続されている。差分電流は、監視デバイス内の変流器回路を測定することによって検出され、監視デバイス内の評価ユニットによって評価される。機能的に危険を招く残留電流が認識される場合、評価ユニットは、スイッチオフ信号を生成する。
【0009】
特許文献6は、漏れ電流インピーダンスの抵抗成分を決定するためのデバイスおよび方法を開示している。ここでは、電圧および差分電流が測定される。その電圧および差分電流に対してフーリエ解析が行われる。電圧と差分電流との間の位相、有効電力、および最終的に漏れ電流インピーダンスの抵抗成分が、第三高調波を使用して計算される。
【0010】
特許文献7は、電気回路用の障害電流回路遮断器について記載している。第1の差分電流限界値が超えられると、電気回路はトリッピングユニットによって中断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】独国特許出願公開第19826410号明細書
【特許文献2】米国特許第6,922,643号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第10355086号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第3136115号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第2571128号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2003/0112015号明細書
【特許文献7】独国特許出願公開第102015218911号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、絶縁および障害電流の監視が改善され得る方法を提供するという目的に基づく。また、絶縁および障害電流の監視が改善され得るデバイスを提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、独立請求項1の主題によって達成される。本発明による方法の有利な実施形態は、従属請求項の主題であり、以下の本発明の説明から明らかになる。本発明によるデバイスは、請求項9に記載される。
【0014】
したがって、位相、中性導線、および保護導線を有する交流回路網への下流側分岐の漏れ電流インピーダンスの抵抗成分を決定するための方法が記載される。方法は、
差分電流センサを用いて位相と中性導線との間の差分電流ILNをスキャンによって測定するステップと、
位相と中性導線との間または位相と保護導線との間の電圧Uをスキャンによって測定するステップと、
差分電流ILNと電圧Uとの間の位相シフトを補正するステップと、
いくつかの個々の差分電流値ILN,iおよびいくつかの個々の電圧値Uiを決定するステップであって、差分電流値ILN,iが電圧値Uiに対して位相補正されるステップと、
いくつかの個々の差分電流値ILN,iおよびいくつかの個々の電圧値Uiから有効電力Pを決定するステップと、
電圧値Uiを用いて有効電圧UEffを決定するステップと、
有効電圧UEffおよび有効電力Pを用いて漏れ電流インピーダンスの抵抗成分を決定するステップと、を備える。
【0015】
スキャンによって差分電流ILNおよび電圧Uを測定することは、漏れ電流の有効電力のデジタル検出にもつながる。それにより、漏れ電流インピーダンスの抵抗成分が、非正弦波の回路網電圧および非正弦波の電流についても決定され得る。
【0016】
差分電流ILNをスキャンによって測定する間、個々の差分電流スキャン値が、互いから所定の時間間隔で測定され、電圧Uをスキャンによって測定する間、個々の電圧スキャン値が、互いから所定の時間間隔で測定される。
【0017】
電圧Uは、位相と中性導線との間でスキャンによって測定され、すなわち、電圧ULNが測定される。代替として、電圧Uは、位相と保護導線との間でスキャンによって測定され、すなわち、電圧ULPEが測定される。
【0018】
位相シフトの補正は、好ましくはデジタル的に行われる。
【0019】
方法の一実施形態によると、交流回路網はTN交流回路網である。代替として、交流回路網は、TT交流回路網またはIT交流回路網でもあり得る。
【0020】
方法のさらなる実施形態によると、漏れ電流インピーダンスの抵抗成分を決定するためのデバイスを調整するために、初めに、純粋に容量性の負荷、純粋に誘導性の負荷、または純粋に抵抗性の負荷を有する下流側分岐を交流回路網に接続することによって、位相シフトを補正する値が決定される。次いで、電圧Uおよび差分電流ILNが、この下流側分岐を用いて決定される。利点として、そのような下流側分岐が純粋に容量性の負荷、純粋に誘導性の負荷、または純粋に抵抗性の負荷を有する状態で、位相シフトの値を決定することができ、その値が、測定対象の下流側分岐において補正のために後の測定で使用され得る。
【0021】
方法のさらなる実施形態によると、個々の差分電流スキャン値は、差分電流ILNをスキャンによって測定するときに測定される。
【0022】
個々の電圧スキャン値は、電圧Uをスキャンによって測定するときに測定される。さらに、差分電流ILNと電圧Uとの間の位相シフトの補正を改善するために、差分電流スキャン値の内挿から時間差分電流曲線を得るとともに、電圧スキャン値の内挿から時間電圧曲線を得る。利点として、位相シフトは、差分電流サンプルの内挿および電圧サンプルの内挿を用いて正確に決定することができる。
【0023】
方法のさらなる実施形態によると、差分電流ILNをスキャンによって測定するとき、差分電流センサは補償導線を含む。それにより、この補償導線を用いて差分電流センサの誤差が補償される。この目的のために、補償導線、位相、および中性導線は、補償導線のコアに通されている。補償導線は、位相および中性導線がコアに正確に対称的には通されていないことを補償するために使用することができる。補償導線は、したがって、コア、位相、および中性導線からなるユニットの非対称性を補償する。この目的のために、位相を流れる電流に比例し得る補償電流が、補償導線を通じて送られる。
【0024】
方法のさらなる実施形態によると、補償導線を通って流れる電流は、位相または中性導線を通って流れる電流に比例する。したがって、補償導線を通る電流の流れを生じさせる補償回路は、平易に構築され得る。そして、位相または中性導線を通って流れる電流には、一定不変の係数のみが与えられる。
【0025】
方法のさらなる実施形態によると、差分電流センサの誤差が、位相の測定された可変電流から、および/または中性導線の測定された可変電流から、係数Kpを計算し、測定された差分電流値ILN,iごとに値Kp*ILN,iを差し引くことにより、補償される。
【0026】
したがって、差分電流センサの誤差の補償がデジタル的に行われる。好ましくは、位相の測定された可変電流または中性導線の測定された可変電流のいずれか、および差分電流ILNが検出される。そして、差分電流ILNは、位相の電流(または中性導線の電流)を用いてデジタル的に補正される。位相の測定された可変電流(または中性導線の測定された可変電流)から、係数Kpが計算される。そして、各測定された差分電流値ILN,iごとに値Kp*ILN,iが差し引かれる。
【0027】
方法のさらなる実施形態によると、漏れ電流インピーダンスの抵抗成分が所定の値を下回る場合、交流回路網がスイッチオフされる、および/またはメッセージが上位システムに送られる。漏れ電流インピーダンスの抵抗成分が低いほど、漏れ電流が高くなり得る。高い漏れ電流は危険であり得るため、漏れ電流インピーダンスの過度に低い抵抗成分は望まれない。したがって、漏れ電流インピーダンスの抵抗成分が低すぎる場合、交流回路網はスイッチオフされ得る。この文脈において、「スイッチオフされる」とは、交流回路網がスイッチオフされること、または交流回路網がすべての極において下流側分岐から完全に切断されることを意味し得る。
【0028】
上位システムは、例えばクラウドシステムまたは監視システムを意味するものと理解されるべきである。クラウドシステムは、インターネットを通じてアクセスすることが可能なシステムである。監視システムは、個々のパラメータの監視に適するローカルのシステムである。
【0029】
漏れ電流インピーダンスの抵抗成分の代替または追加として、さらなる回路網パラメータも監視され得る。検出されたさらなる回路網パラメータが超えられるまたは達されない場合、メッセージが上位システムに送られ得る、および/または交流回路網がスイッチオフされ得る。さらなる回路網パラメータは、例えば差分電流ILNであり得る。
【0030】
さらに、位相、中性導線、および保護導線を有する交流回路網への下流側分岐の漏れ電流インピーダンスの抵抗成分を決定するために適合されたデバイスが提供される。デバイスは、以下の構成要素、すなわち、位相と中性導線との間または位相と保護導線との間の電圧Uをスキャンによって測定するために適合された電圧センサと、位相と中性導線との間の差分電流ILNをスキャンによって測定するために適合された差分電流センサと、評価ユニットであって、差分電流ILNと電圧Uとの間の位相シフトを補正するために適合され、いくつかの個々の差分電流値ILN,iおよびいくつかの個々の電圧値Uiを決定するために適合され、ここで差分電流値ILN,iは電圧値Uiに対して位相補正され、評価ユニットは、いくつかの個々の差分電流値ILN,iおよびいくつかの個々の電圧値Uiから有効電力Pを決定するために適合され、電圧値Uiを用いて有効電圧UEffを決定するために適合され、ならびに有効電圧UEffおよび有効電力Pを用いて漏れ電流インピーダンスの抵抗成分を決定するために適合された評価ユニットと、を備える。
【0031】
利点として、記載される本デバイスは、記載された方法を行うことに適している。
【0032】
デバイスの一実施形態によると、差分電流センサは、コアおよび補償導線を含んでいる。ここで、位相、中性導線、および補償導線は、コアに通されている。コアに対する位相および中性導線の非対称的な配置に起因して、差分電流測定に対称性誤差が生じ得る。この対称性誤差は、補償導線を用いて補償され得る。よって、補償導線は、コア、位相、および中性導線からなるユニットの非対称性を補償する。この目的のために、位相を通って流れる電流に比例し得る補償電流が、補償導線を通じて送られる。
【0033】
代替として、差分電流センサの誤差は、デジタル的に補償されることもできる。この場合、補償導線は必要とされない。
【0034】
デバイスのさらなる実施形態によると、デバイスは、漏れ電流インピーダンスの抵抗成分を監視するために、評価ユニットに接続される監視システムを含む。監視システムは、ユーザが交流回路網をスイッチオフすべきかどうかの決定を行うことができるように、漏れ電流インピーダンスの抵抗成分を表示することができる。代替または追加として、監視システムは、漏れ電流インピーダンスの抵抗成分を電子的に検査し、交流回路網をスイッチオフすべきかどうかについて独立して決定を行うこともできる。
【0035】
加えて、デバイスは、代替または追加として、測定データを分析または処理のためにクラウドシステムに転送することができる。
【0036】
さらに、上記で説明されたような少なくとも1つのデバイスを備える配電キャビネットが提供される。1つまたは複数のデバイスは、非常に簡単に、配電キャビネットに設置、締結、またはプラグ接続することができる。
【0037】
少なくとも1つのデバイスは、回路網パラメータである差分電流ILN、電圧U、および絶縁抵抗、すなわち漏れ電流インピーダンスRisoの抵抗成分、を検出する。ここで、さらなる回路網パラメータが配電キャビネットによって検出され得る。そのような回路網パラメータは、例えば、需要家の有効電力および需要家の電流である。配電キャビネットは、エネルギー計量器も含み得る。加えて、高調波分析およびエネルギー分析による中性導線の電流測定は、アーク障害に関する情報を提供することができる。
【0038】
配電キャビネットの一実施形態によると、少なくとも1つのデバイスは端子台として設計される。ここで、端子台は平型端子台であり得る。いくつかの端子台が、取り付けレールに多数並べられ得る。この目的のために、配電キャビネットは、取り付けレールを含み得る。端子台は、とりわけ、取り外し可能な接続、または配電キャビネット内の配線、より線、および電線の接続のために使用され得る。
【0039】
配電キャビネットのさらなる実施形態によると、配電キャビネットは、少なくとも1つのさらなるデバイスを含む。その場合、少なくとも1つのデバイスの測定値が、少なくとも1つのさらなるデバイスと交換される。配電キャビネットは、利点として、デバイス間の測定値の交換を可能にするのに適する。利点として、そうすると、各デバイス内で同じ測定が再度行われなくてよい。
【0040】
提案される方法に関して説明される実施形態および特徴は、それに応じて、提案されるデバイスおよび提案される配電キャビネットに適用され、その逆も同様である。
【0041】
本発明のさらなる可能な実装形態は、明示的には言及されない上記または下記で説明される特徴の組み合わせも含む。また、個々の態様が、改良または追加として本発明のそれぞれの基本的形態に追加され得る。
【0042】
本発明は、図面を参照しながら以下でより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】TN交流回路網への下流側分岐の漏れ電流インピーダンスの抵抗成分を決定するためのデバイスの概略図である。
【
図2】TN交流回路網への下流側分岐の漏れ電流インピーダンスの抵抗成分を決定するための方法のフローチャートである。
【
図3】
図1に表される差分電流センサの概略図である。
【
図4】
図3に表される差分電流センサのブロック図である。
【
図5】
図3に表される差分電流センサの補償導線を制御するための回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
同一のまたは機能的に同一の要素には、図中で同じ参照符号が与えられている。さらに、図中の表現は必ずしも実際の縮尺でないことに留意すべきである。
【0045】
図1は、TN交流回路網3への下流側分岐2の漏れ電流インピーダンスR
isoの抵抗成分を決定するためのデバイス1の概略図を示す。TN交流回路網3は、位相L、中性導線N、および保護導線PEを有する。
【0046】
デバイス1は、電圧センサ4、差分電流センサ5、および評価ユニット6を備える。電圧センサ4は、位相Lと中性導線Nとの間の電圧ULNを測定する。代替として、電圧センサ4は、位相Lと保護導線PEとの間の電圧ULPEを測定することもできる。
【0047】
通電状態の導線である位相Lおよび中性導線Nは、差分電流センサ5に通されている。差分電流センサ5は、位相Lの電流と中性導線Nの電流とを合計する。漏れ電流が流れていない場合、和はゼロになる。漏れ電流が存在する場合、電流の一部は、中性導線Nを通って戻る方向へ流れない。そのため、位相Lと中性導線Nとの間の差分電流ILNが測定される。
【0048】
評価ユニット6は、差分電流ILNと電圧ULNとの間の位相シフトを補正するために使用され、いくつかの個々の差分電流値ILN,iおよびいくつかの個々の電圧値ULN,iを決定し、ここで差分電流値ILN,iは、電圧値ULN,iに対して位相補正され、評価ユニット6は、いくつかの個々の差分電流値ILN,iおよびいくつかの個々の電圧値ULN,iから有効電力Pを決定し、電圧値ULN,iを用いて有効電圧UEffを決定し、有効電圧UEffおよび有効電力Pを用いて漏れ電流インピーダンスRisoの抵抗成分を決定する。
【0049】
漏れ電流インピーダンスR
isoの抵抗成分が、限界値、例えば1MOhm、未満である場合、スイッチ(
図1には図示せず)を用いて、下流側分岐2をすべての極において(完全に)TN交流回路網3から切断することができる。
【0050】
下流側分岐2は、抵抗Risoを有する第1の分岐を含む。この第1の分岐は、結果として、純粋に抵抗性の漏れ電流を生じさせる。下流側分岐2は、静電容量C1を有する第2の分岐も含む。この第2の分岐は、結果として、純粋に容量性の漏れ電流を生じさせる。下流側分岐2は、インダクタンスL1、抵抗R1、静電容量C3および静電容量C2を有する第3の分岐も含む。この第3の分岐は、結果として漏れ電流を生じさせ、ここで抵抗R1は抵抗成分を生成する。
【0051】
しかし、この電流は、直接電流測定法では静電容量C2を介して切り離されるため、直接的な電流絶縁抵抗測定では検出されない。この例は、AC測定法は抵抗値を特定することができるが、それは直接電流測定法ではより低い絶縁抵抗値を生成しないことを示している。
【0052】
TN交流回路網3への下流側分岐2の漏れ電流インピーダンスRisoの抵抗成分を検出することにより、動作状態における下流側分岐2の絶縁を評価することが可能である。測定結果は、容量成分と直列に存在する抵抗成分によって不正確なものとなる。それらも測定されるが、絶縁抵抗を決定する際に考慮に入れられない。しかし、1MOhmである典型的な絶縁抵抗限界値の結果に大きく影響する静電容量(静電容量C2を参照)と直列の抵抗成分(抵抗R1を参照)はまれである。
【0053】
デバイス1は、評価ユニット6に接続される監視システム(
図1には図示せず)を含むことができる。漏れ電流インピーダンスR
isoの抵抗成分は、監視システムを用いて監視することができる。すなわち、監視システムを用いて、手動および/または機械による漏れ電流インピーダンスR
isoの抵抗成分の監視が可能である。
【0054】
さらに、配電キャビネットがいくつかのデバイス1を含むことができる。ここで、デバイス1は、特に端子台として設計され得る。また、個々のデバイスは、個々の測定値を別のデバイス1と交換するように設計され得、すなわち、あるデバイス1からの測定値が別のデバイス1に送信される。
【0055】
図2は、TN交流回路網3への下流側分岐2の漏れ電流インピーダンスR
isoの抵抗成分を決定するための方法のフローチャートを示す。
【0056】
最初のオプションのステップS1で、純粋に容量性の負荷を有する下流側分岐が、TN交流回路網3に接続される。次いで、電圧ULNが位相Lと中性導線Nの間で測定される。さらに、差分電流ILNが位相Lと中性導線Nの間で測定される。電圧ULNの位相曲線を差分電流ILNの位相曲線と比較することにより、差分電流ILNに対する電圧ULNの位相シフトの値を決定することができる。代替として、純粋に誘導性の負荷または純粋に抵抗性の負荷を有する下流側分岐が接続されることもできる。例えば2チャンネルオシロスコープを利用するなどの他の調整オプションも考えられる。
【0057】
第2のステップS2で、純粋に容量性の負荷を有する下流側分岐の代わりに、測定対象の下流側分岐2がTN交流回路網3に接続される。さらに、電圧ULNが位相Lと中性導線Nの間で測定される。加えて、位相Lと中性導線Nとの間の差分電流ILNが、差分電流センサ5を用いて測定される。ここで、電圧ULNと差分電流ILNは、両方ともスキャンによって測定される。そのため、デジタル化された電圧曲線およびデジタル化された差分電流曲線が得られる。
【0058】
差分電流I
LNは、例えば差分電流センサ5により、
図3~5に説明されるように測定され得る。
【0059】
第3のステップS3で、第2のステップで決定された差分電流ILNと、第2のステップで決定された電圧ULNとの間の位相シフトが補正される。これは、例えば、第2のステップで決定された差分電流ILNの位相を、第1のステップで決定された位相シフトの値で補正することによって行われる。この補正は好ましくはデジタル的に行われる。
【0060】
第4のステップS4で、いくつかの個々の差分電流値ILN,iおよびいくつかの個々の電圧値ULN,iが決定される。差分電流値ILN,iは、上記で説明されたように、電圧値ULN,iに対して既に位相補正されている。合計で、各場合にn個の値が決定される。
【0061】
第5のステップS5で、有効電力Pが決定される。原則として、有効電力は次の式を使用して計算される。
【0062】
【0063】
ここで、Tは、回路網サイクルの周期継続時間である。詳細には、少なくとも4分の1周期が積分時間として使用される。積分は好ましくは、1回の回路網サイクルまたは数回の回路網サイクルにわたって行われる。本事例の場合、有効電力Pは、いくつかの個々の残留電流値ILN,iおよびいくつかの個々の電圧値ULN,iから、次の式を使用して決定される。
【0064】
【0065】
第6のステップS6で、有効電圧UEffが、電圧値ULN,iを用いて、次の式を使用して決定される。
【0066】
【0067】
第7のステップS7で、漏れ電流インピーダンスRisoの抵抗成分が、有効電圧UEffおよび有効電力Pを用いて、次の式を使用して決定される。
【0068】
【0069】
ここで、漏れ電流インピーダンスRisoの抵抗成分は、基本的に下流側分岐2の絶縁抵抗に対応し、したがって下流側分岐2の絶縁の質の指標となる。
【0070】
さらなるステップにおいて、漏れ電流インピーダンスRisoの抵抗成分が所定の値を下回る場合、TN交流回路網3がスイッチオフされ得る。
【0071】
差分電流ILNと電圧ULNとの間の位相シフトの補正は、内挿によって個々の電圧スキャン値から電圧曲線を決定し、内挿によって個々の差分電流スキャン値から差分電流曲線を決定することにより、改善することができる。そのようにして決定される曲線の位相シフトは、より良好に決定され得る。
【0072】
図1に示されるTN交流回路網3は、位相Lを有する。代替として、TN交流回路網3は、2つまたは3つの位相Lを有することもできる。その場合、漏れ電流インピーダンスR
isoの抵抗成分は、位相Lごとに別個に決定され得る。
【0073】
図3は、
図1に表される差分電流センサ5の概略図を示す。差分電流センサ5は、コア7および補償導線8を含む。位相L、中性導線N、および補償導線8は、コア7に通されている。詳細には、位相L、中性導線N、および補償導線8は各々、コア7の周りに数回巻き付けられ得る。コア7は、貫通開口部9を有する、閉じた、特に円形の構造として設計され得る。差分電流I
LNは、測定巻線10を用いて検出することができる。
【0074】
差分電流センサ5の誤差は、補償導線8を用いて補償することができる。誤差は、コア7に対して位相Lおよび中性導線Nの対称性が不完全であることから生じる。この非対称性誤差は、補償導線8を通る電流を用いて補償することができる。
【0075】
さらに、差分電流センサ5は、電流計11および制御ユニット12を含むことができる。電流計11によって測定される電流強度は、特に0~20Aの範囲である。しかし、電流強度は20Aより高いこともあり得る。位相Lの電流信号は、電流計11によって測定される。電流計11は、制御ユニット12がさらに電流信号を処理できるように制御ユニット12に接続されている。制御ユニット12は、非対称性誤差を補償するために補償導線8を通る電流の流れを制御する。
【0076】
詳細には、補償導線8を通って流れる電流は、位相Lを通って流れる電流に比例し得る。
【0077】
代替として、非対称性誤差を補償するために、中性導線Nの電流が電流計11を用いて測定されることも可能である。
【0078】
さらに、非対称性誤差の補償は、代替として、下記でさらに説明されるようにデジタル的に行うこともできる。
【0079】
図4は、
図3に表される差分電流センサ5のブロック図を示す。電流計11を用いて測定された電流は、位相Lおよび中性導線Nと共に、制御ユニット12および補償導線8を介して差分電流センサ5に供給され得る。測定された差分電流I
LNは、増幅器回路13およびアナログ-デジタル変換器14を介して転送され得る。
【0080】
差分電流センサ5の非対称的な構造のために、回路を流れる電流に線形比例する誤差が発生する。線形誤差は、補償導線8を用いて、センサ回路内の電流計11の電流信号の適宜増幅されたフィードバックによってアナログ的に補償され得る。
【0081】
図5は、
図3に表される差分電流センサ5の補償導線8を制御するための回路図を示す。位相L、回路図、電流計11の回路
図15、制御ユニット12の回路
図16、電流計11の電流測定のためのシャント17、および補償導線8のための接続部18が表されている。増幅回路および分圧器を用いて、電流計11の電流信号は、補償のために適宜増幅される。接続部18は、補償導線8に接続されている。
【0082】
位相Lの代わりに、電流は、代替として中性導線Nにおいて測定することもでき、これは、位相Lおよび中性導線Nが需要家回路を形成するからである。
【0083】
代替として、差分電流センサ5の非線形誤差の補償は、デジタル的に実施することもできる。この目的のために、測定された位相Lの可変電流(または中性導線Nの電流)および差分電流ILNが検出される。差分電流ILNは、次いで位相Lの電流を用いてデジタル的に補正される。例えば、測定された位相Lの可変電流から、係数Kpが計算される。各測定された差分電流値ILN,iごとに値Kp*ILN,iが差し引かれる。
【符号の説明】
【0084】
1 デバイス
2 下流側分岐
3 TN交流回路網
4 電圧センサ
5 差分電流センサ
6 評価ユニット
7 コア
8 補償導線
9 貫通開口部
10 測定巻線
11 電流計
12 制御ユニット
13 増幅器回路
14 アナログ-デジタル変換器
15 回路図
16 回路図
17 シャント
18 接続部
L 位相
N 中性導線
PE 保護導線
Riso 漏れ電流インピーダンスの抵抗成分
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
位相(L)、中性導線(N)、および保護導線(PE)を有する交流回路網への下流側分岐(2)の漏れ電流インピーダンス(R
iso)の抵抗成分を決定するための方法であって、
差分電流センサ(5)を用いて前記位相(L)と前記中性導線(N)との間の差分電流I
LNをスキャンによって測定するステップと、
前記位相(L)と前記中性導線(N)との間または前記位相(L)と前記保護導線(PE)との間の電圧Uをスキャンによって測定するステップと、
前記差分電流I
LNと前記電圧Uとの間の位相シフトを補正するステップと、
いくつかの個々の差分電流値I
LN,iおよびいくつかの個々の電圧値U
iを決定するステップであって、前記差分電流値I
LN,iが前記電圧値U
iに対して位相補正されるステップと、
前記いくつかの個々の差分電流値I
LN,iおよび前記いくつかの個々の電圧値U
iから有効電力Pを決定するステップと、
前記電圧値U
iを用いて有効電圧U
Effを決定するステップと、
前記有効電圧U
Effおよび前記有効電力Pを用いて前記漏れ電流インピーダンス(R
iso)の前記抵抗成分を決定するステップと、
を備える方法。
【請求項2】
前記交流回路網がTN交流回路網(3)である、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記漏れ電流インピーダンス(R
iso)の前記抵抗成分を決定するためのデバイス(1)を調整するために、初めに、純粋に容量性の負荷、純粋に誘導性の負荷、または純粋に抵抗性の負荷を有する下流側分岐(2)を前記交流回路網に接続することによって、前記位相シフトを補正する値が決定され、次いで、前記下流側分岐(2)を用いて電圧Uおよび差分電流I
LNが決定される、
請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
個々の差分電流スキャン値は、差分電流I
LNをスキャンによって測定するときに測定され、個々の電圧スキャン値は、電圧Uをスキャンによって測定するときに測定され、前記差分電流I
LNと前記電圧Uとの間の前記位相シフトの補正を改善するために、前記差分電流スキャン値の内挿から時間差分電流曲線を得るとともに、前記電圧スキャン値の内挿から時間電圧曲線を得る、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記差分電流センサ(5)は、前記差分電流I
LNをスキャンによって測定するとき、補償導線(8)を含み、前記補償導線(8)を用いて前記差分電流センサ(5)の誤差が補償される、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記補償導線(8)を通って流れる電流が、前記位相(L)または前記中性導線(N)を通って流れる電流に比例する、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記差分電流センサ(5)の誤差が、前記位相(L)の測定された可変電流から、および/または前記中性導線(N)の測定された可変電流から、係数Kpを計算することによって補償され、測定された差分電流値I
LN,iごとに値Kp
*I
LN,iが差し引かれる、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記漏れ電流インピーダンス(R
iso)の前記抵抗成分が所定の値を下回る場合、前記交流回路網がスイッチオフされる、および/またはメッセージが上位システムに送られる、
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
位相(L)、中性導線(N)、および保護導線(PE)を有する交流回路網への下流側分岐(2)の漏れ電流インピーダンス(R
iso)の抵抗成分を、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の方法を用いて決定するために適合されたデバイス(1)であって、
前記位相(L)と前記中性導線(N)との間または前記位相(L)と前記保護導線(PE)との間の電圧Uをスキャンによって測定するために適合された電圧センサ(4)と、
前記位相(L)と前記中性導線(N)との間の差分電流I
LNをスキャンによって測定するために適合された差分電流センサ(5)と、
評価ユニット(6)であって、前記差分電流I
LNと前記電圧Uとの間の位相シフトを補正するために適合され、いくつかの個々の差分電流値I
LN,iおよびいくつかの個々の電圧値U
iを決定するために適合され、ここで前記差分電流値I
LN,iは電圧値U
iに対して位相補正され、前記評価ユニット(6)は、前記いくつかの個々の差分電流値I
LN,iおよび前記いくつかの個々の電圧値U
iから有効電力Pを決定するために適合され、前記電圧値U
iを用いて有効電圧U
Effを決定するために適合され、ならびに前記有効電圧U
Effおよび前記有効電力Pを用いて前記漏れ電流インピーダンス(R
iso)の前記抵抗成分を決定するために適合された評価ユニット(6)と、
を備えるデバイス(1)。
【請求項10】
前記差分電流センサ(5)が、コア(7)および補償導線(8)を含み、前記位相(L)、前記中性導線(N)、および前記補償導線(8)が前記コア(7)に通されている、
請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
請求項9または請求項10に記載の少なくとも1つのデバイス(1)を備える、
配電キャビネット。
【請求項12】
前記デバイス(1)が端子台として設計されている、
請求項11に記載の配電キャビネット。
【請求項13】
前記配電キャビネットが、少なくとも1つのさらなるデバイス(1)を含み、前記少なくとも1つのデバイス(1)の測定値が、前記少なくとも1つのさらなるデバイス(1)と交換される、
請求項11または請求項12に記載の配電キャビネット。
【国際調査報告】