(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-20
(54)【発明の名称】制御可能な管拡張システムのためのガイド部材及び制御可能な管拡張システム
(51)【国際特許分類】
A61M 25/06 20060101AFI20221213BHJP
【FI】
A61M25/06 550
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523244
(86)(22)【出願日】2020-10-16
(85)【翻訳文提出日】2022-06-13
(86)【国際出願番号】 EP2020079195
(87)【国際公開番号】W WO2021074371
(87)【国際公開日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】102019007222.7
(32)【優先日】2019-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521228776
【氏名又は名称】クセニオス アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100162824
【氏名又は名称】石崎 亮
(72)【発明者】
【氏名】フィリポン スヴェン
(72)【発明者】
【氏名】ラウ パトリック
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA15
4C267AA16
4C267BB05
4C267BB06
4C267BB12
4C267BB52
4C267BB62
4C267CC08
4C267EE01
4C267GG03
4C267GG05
4C267GG10
(57)【要約】
本発明は、患者の組織を拡張するための装置及び方法、特に制御可能な管拡張システム用のガイド部材及び対応する制御可能な管拡張システム、並びに対応する方法及び用途に関する。従って、制御可能な管拡張システム(10)のためのガイド部材(12)が提案され、このガイド部材は、制御可能な管拡張システム(10)の制御可能部材(14)に結合可能な細長い本体を備え、結合状態において制御可能な管拡張システム(10)の近位領域(16)から遠位領域(18)まで、制御可能な管拡張システム(10)の長手方向軸に沿って整列される。本体は、半径方向に拡張可能である。更に、本体は、制御可能部材(14)に解除可能に結合することができ、この制御可能部材は、ガイド部材(12)と共に管拡張システム(10)の半径方向の延長部を定める。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御可能な管拡張システム(10)のガイド部材(12)であって、
前記管拡張システム(10)の制御可能部材(14)に結合可能な細長い本体を備え、
前記本体が、結合状態において、前記管拡張システム(10)の近位領域(16)から遠位領域(18)まで、前記管拡張システム(10)の長手方向軸に沿って整列され、
前記本体が、半径方向に拡張可能であり、
前記本体が、前記制御可能部材(14)に解除可能に結合可能であり、前記制御可能部材(14)が前記ガイド部材(12)と一緒に前記管拡張システム(10)の半径方向の延長部を定める、
ことを特徴とする、ガイド部材(12)。
【請求項2】
前記本体が、前記結合状態において前記制御可能部材(14)によって外円周方向に囲まれるようになっている、請求項1に記載のガイド部材(12)。
【請求項3】
前記本体が、スリーブ又はシースとして設計されて、前記結合状態において前記制御可能部材(14)を完全に且つ流体密閉して封入するようになっている、請求項1に記載のガイド部材(12)。
【請求項4】
前記本体は、前記管拡張システム(10)が最小直径を含む第1の半径方向延長部と、第2の半径方向延長部との間で移動可能であり、前記本体は、各半径方向延長部において前記管拡張システム(10)の予め定められた直径を定める、請求項3に記載のガイド部材(12)。
【請求項5】
前記本体は、半径方向に連続的に拡張可能である、請求項3又は4に記載のガイド部材(12)。
【請求項6】
前記本体は、該本体の半径方向延長部を定める、外円周方向の可撓セクション(30)を備える、請求項3から5の何れか1項に記載のガイド部材(12)。
【請求項7】
前記本体は、弾性材料で形成されている、請求項6に記載のガイド部材(12)。
【請求項8】
前記本体は、断面が螺旋形状を有し、前記螺旋形状の展開の程度が、前記本体の半径方向延長部を定める、請求項3から7の何れか1項に記載のガイド部材(12)。
【請求項9】
前記本体の外面が、摩擦低減コーティングを含む、請求項3から8の何れか1項に記載のガイド部材(12)。
【請求項10】
前記本体の外面が、流体を排出するようになっており、好ましくは、溝、ラメラ及び/又はハニカム構造を含む、請求項3から9の何れか1項に記載のガイド部材(12)。
【請求項11】
前記本体の外面が、薬剤、好ましくは凝固抑制剤、血管収縮剤、又は血管拡張剤でコーティングされている、請求項3から10の何れか1項に記載のガイド部材(12)。
【請求項12】
前記本体の表面が、前記本体を前記制御可能部材(14)にボンディングするための接着剤コーティングを含む、請求項2から11の何れか1項に記載のガイド部材(12)。
【請求項13】
前記本体が、均質且つ連続的な外周を含む、請求項1から12の何れかに記載のガイド部材(12)。
【請求項14】
前記本体の外周は、断面が実質的に円形又は楕円形である、請求項1から13の何れかに記載のガイド部材(12)。
【請求項15】
前記本体が、前記遠位領域(18)に配置された先端(20)、好ましくは非外傷性及び/又は丸みを帯びた先端(20)を含む、請求項1から14の何れかに記載のガイド部材(12)。
【請求項16】
前記先端(20)が、前記本体の半径方向拡張時に変形可能であるように形成される、請求項15に記載のガイド部材(12)。
【請求項17】
前記本体が複数の材料層で形成され、内側材料層が、外側材料層よりも大きな剛性を有する、請求項1から16の何れかに記載のガイド部材(12)。
【請求項18】
前記内側材料層はポリウレタンを含み、前記外側材料層はシリコーンを含む、請求項17に記載のガイド部材(12)。
【請求項19】
前記本体が、前記制御可能部材(14)の対応する接続部分に前記本体を結合するための接続部分を含む、請求項1から18の何れかに記載のガイド部材(12)。
【請求項20】
前記接続部分が、1又は2以上の突起、膨出部、ラッチフック、凹部、溝、アンダーカット、及び/又はねじを含む、請求項19に記載のガイド部材(12)。
【請求項21】
前記接続部分が、制御可能部材(14)と圧入、嵌め合い、又はスナップ嵌合を提供するように構成される、請求項19又は20に記載のガイド部材(12)。
【請求項22】
前記ガイド部材(12)が、前記制御可能部材(14)との磁気結合を提供するために前記近位領域(16)に1又は2以上の磁気要素を備える、請求項19から21の何れかに記載のガイド部材(12)。
【請求項23】
前記本体が、カニューレを結合するために前記近位領域(16)及び/又は前記遠位領域(18)にて1又は2以上の可撓性膨出部を備える、請求項1から22の1項に記載のガイド部材(12)。
【請求項24】
単回使用品又は使い捨て品として形成されている、請求項1から23の何れかに記載のガイド部材(12)。
【請求項25】
患者の解剖学的領域に挿入するための制御可能な管拡張システム(10)であって、
請求項1から24の何れかに記載のガイド部材(12)と、
制御可能部材(14)と、
を備え、
前記ガイド部材(12)及び前記制御可能部材(14)が、互いに解除可能に結合されている、
ことを特徴とする、制御可能な管拡張システム(10)。
【請求項26】
前記制御可能部材(14)は、前記管拡張システム(10)の長手方向軸に沿って、前記管拡張システム(10)の近位領域(16)から遠位領域(18)に延びる流体チャンバを備え、前記流体チャンバ内の流体の量が、前記流体チャンバの半径方向延長と前記管拡張システム(10)の半径方向延長とを定める、請求項25に記載の制御可能な管拡張システム(10)。
【請求項27】
前記流体の物理的状態は、せん断力によって可変である、請求項26に記載の制御可能な管拡張システム(10)。
【請求項28】
前記流体チャンバが、前記遠位領域(18)にて可動領域(28)を含み、前記可動領域は、好ましくは前記流体に対して作動されたせん断力に基づいて可動である、請求項26又は27に記載の制御可能な管拡張システム(10)。
【請求項29】
前記流体チャンバに前記流体を導入及び排出するためのポンプ装置(22)と、前記管拡張システムの前記遠位部分(18)において前記制御可能部材を制御するためのステアリング装置(24)とを備える、請求項26から28の何れか1項に記載の制御可能な管拡張システム(10)。
【請求項30】
前記管拡張システム(10)は、該管拡張システム(10)の遠位端の位置を決定するためのセンサ要素を前記遠位領域(18)に備える、請求項25から29の何れか1項に記載の制御可能な管拡張システム(10)。
【請求項31】
前記センサ要素が、前記ガイド部材(12)において導電性材料として、好ましくは一体型ワイヤ補強材として形成され、又は、前記センサ要素が、磁界センサ、超音波センサ、若しくは誘導性位置センサを含む、請求項30に記載の制御可能な管拡張システム(10)。
【請求項32】
前記センサ要素が、決定された位置が所定位置から逸脱した場合に警告信号を出力するための監視システムに結合可能である、請求項30又は31に記載の制御可能な管拡張システム(10)。
【請求項33】
前記管拡張システム(10)は、前記患者の生理学的パラメータを決定するための、好ましくは前記患者の血圧及び/又は血流を決定するための、少なくとも1つのセンサユニットを備える、請求項25から32の何れかに記載の制御可能な管拡張システム(10)。
【請求項34】
前記ガイド部材(12)が内側キャビティを定め、前記制御可能部材(14)が前記内側キャビティ内に配置されるか、又は、前記ガイド部材(12)が、前記管拡張システム(10)の内側コアを定めて、前記制御可能部材(14)によって円周方向に囲まれる、請求項25から33の何れか1項に記載の制御可能な管拡張システム(10)。
【請求項35】
前記制御可能部材(14)が、流体を保持するためのキャビティを形成する流体チャンバである、請求項25から34の何れか、特に請求項34に記載の制御可能な管拡張システム(10)。
【請求項36】
前記制御可能部材(14)が、剛性を有するが弾性変形可能な材料から、特にプラスチック材料、より詳細にはPVC、ポリウレタン、及びシリコーンからなる群より選択される材料から作られる、請求項25から35の何れか、特に請求項34又は35に記載の制御可能な管拡張システム(10)。
【請求項37】
前記ガイド部材(12)が、前記管拡張システム(10)の内側コアを定め、前記制御可能部材によって外円周方向に囲まれており、前記制御可能部材(14)が、流体を保持するためのキャビティを形成する流体チャンバであり、剛性を有するが弾性変形可能な材料、特にプラスチック材料、より詳細にはPVC、ポリウレタン、及びシリコーンからなる群より選択される材料から作られる、請求項25から36の何れかに記載の制御可能な管拡張システム(10)。
【請求項38】
前記制御可能な管拡張システム(10)が、バルーン状構造を含まない、請求項25から37の何れかに記載の制御可能な管拡張システム(10)。
【請求項39】
前記制御可能部材(14)が、カフ状又はスリーブ状構成を有する、請求項25から38の何れかに記載の制御可能な管拡張システム(10)。
【請求項40】
前記制御可能な管拡張システム(10)が、ガイドワイヤを含まない、請求項25から39の何れかに記載の制御可能な管拡張システム(10)。
【請求項41】
前記制御可能な管拡張システム(10)が、バルーン状構造及びガイドワイヤを含まず、流体チャンバを形成する前記制御可能部材(14)が、内壁及び外壁を有するカフ状又はスリーブ状構成を有し、前記外壁が前記キャビティを囲む、請求項37に記載の制御可能な管拡張システム(10)。
【請求項42】
カテーテルであって、該カテーテルの近位領域から該カテーテルの遠位領域まで延びる内部キャビティを有し、前記カテーテルの前記内部キャビティ内に配置される請求項25から41の何れか1項に記載の管拡張システムを備える、カテーテル。
【請求項43】
前記カテーテルがガイドワイヤを有さない、請求項42に記載の内部キャビティを有するカテーテル。
【請求項44】
患者の解剖学的領域を拡張する方法であって、
請求項25から41の何れかに記載の制御可能な管拡張システムを提供するステップと、
前記管拡張システムが最小半径方向延長部を含む状態で、前記管拡張システムを前記患者の解剖学的領域に導入するステップと、
前記流体チャンバ内の流体量を増加させて、前記管拡張システムの半径方向の延長部及び外周を増大させるステップと、
を含む、方法。
【請求項45】
前記管拡張システムが、請求項1から44の何れか1項、特に請求項30から32の1項による管拡張システムであり、前記解剖学的領域の拡張後に、カニューレが前記管拡張システム上に挿入され、前記挿入が、前記管拡張システムに結合されたナビゲーションシステムによって監視される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
カニューレの位置を監視する方法であって、請求項25から41の何れか1項に記載、特に請求項30から32の何れか1項に記載の管拡張システム上にカニューレが挿入され、前記管拡張システムの遠位端の位置が、前記管拡張システムに結合された監視システムにより監視される、方法。
【請求項47】
血管の領域を拡張するための請求項25から41の何れかに記載の管拡張システムの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御可能な管拡張システムのためのガイド部材、並びに患者の解剖学的領域に挿入するための管拡張システム及び対応する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用途において、患者の解剖学的領域における組織の延長又は拡張は、様々な診断及び/又は治療目的のために必要とされる場合がある。例えば、患者アクセスとして機能し得るカニューレは、患者に挿入されて、生理学的状態を監視し、流体を投与又は除去することができる。例えば、このようなカニューレは、所望の解剖学的領域へのアクセスを提供するために、患者の組織又は血管に挿入することができる。特定の心臓疾患及び関連する治療のために、カニューレは、例えば、大腿静脈又は頸静脈を介して右心房に挿入され、右心を軽減することができ、又はカニューレが中隔に挿入されて、左心房の経中隔カニュレーションを可能にするように提供することができる。
【0003】
しかしながら、このような治療法は、解剖学的曲線を介した極めて精密且つ非線形なカニューレ誘導を必要とし、これは標準的な手順では達成することができない。
【0004】
セルディンガー法は、通常、カニューレを挿入するために使用され、そのため、カニューレが例えば血管に挿入できるように最初にアクセスが拡張される。一般に、カニューレを挿入しようとする箇所の患者の組織において、切開及び/又は穿刺針による穿刺を行う。その後、セルディンガーワイヤが針を通って切開又は穿刺によって設けられた開口部に挿入され、例えば血管に挿入されて、そこで針が取り外される。この際、セルディンガーワイヤはガイドワイヤとして機能し、その上を所与の直径を有する拡張器が滑動することができる。直径を大きくして開口部の拡張を可能にするために、カニューレに必要な所望の開口部の拡張が達成されるまで、異なる直径及び形状の拡張器をセルディンガーワイヤ上で連続的に滑動させる。その後、カニューレ又はカテーテルを拡張器の上に押し込み、両者を一緒に血管に挿入することができる。その後、拡張器とセルディンガーワイヤの両方を取り外すことができる。
【0005】
「セルディンガー法」としても知られるこのような手法の欠点は、達成された拡張がそれぞれの拡張器の直径に制限されることである。拡張器は、所与の硬い直径を有するので、幾つかの導入プロセスが必要である。他方、直径の異なる拡張器の限定されたセットのみが利用可能であるので、達成される直径は十分に可変ではない。従って、様々な拡張器の挿入又は抜去を繰り返すことは、煩雑であるばかりでなく、血管構造を誤って損傷させる可能性もあり、これは、合併症を引き起こす可能性がある。更に、その個々の剛性構造に起因して、拡張器は、それぞれの血管又は解剖学的領域に定期的に満足に適合させることができず、これは、複雑な解剖学的領域又は幾何学的形状の場合に特に不利になる可能性がある。言い換えれば、この手順は、時間がかかるだけでなく医学的にも不利である可能性があり、従って、一般に該当の患者にとって負担となる。
【0006】
このような拡張器の更なる欠点は、患者の組織又は血液と直接接触させるように設計されており、そのため衛生基準に適合するように拡張器を無菌状態に清浄化しなければならず、従って、実用性のために通常は使い捨て物品として設計されることである。拡張器は、その内部に拡張器から分離することができない更なる構成要素を有する場合があり、そのため、使い捨て物品としての構成は、経済的観点のみならず環境保護的にも正当であるとは言いがたい。
【0007】
従って、拡張器の基本的な構成要素が複数回の使用に適しており、拡張を容易にし、特に個々の事例の必要性に応じて大きく変化するよう構成できるように、挿入又は開口部における組織の拡張を改善することが必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
既知の従来技術に基づき、本発明の目的は、管拡張システムによる組織の改良された拡張を可能にし、挿入されるカニューレを制御する、又は血管枝の周りでカニューレを案内又は操向することを可能にし、カニューレの位置を制御することができる方法を可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、独立請求項によって達成される。好ましい実施形態は、従属請求項、明細書及び図面から導き出すことが可能である。
【0010】
従って、管拡張システムの制御可能部材に結合可能な細長い本体を備えた制御可能な管拡張システムのためのガイド部材が提案される。結合状態において、細長い本体は、制御可能な管拡張システムの長手方向軸に沿って、制御可能な管拡張システムの近位領域から遠位領域まで整列される。細長い本体は、半径方向に拡張可能であり、制御可能部材に解除可能に結合可能であり、これにより制御可能部材とガイド部材が共に、制御可能な管拡張システムの半径方向の拡張を定める。
【0011】
ガイド部材は、制御可能部材のためのアダプタとして機能することができ、従って、管拡張システムの使用のために制御可能部材への確実な取り付けを提供するように結合することができる。制御可能部材は、管拡張システムを制御又はナビゲート又は操向する役割を果たすと同時に、患者の組織への挿入中に結合されたガイド部材をサポートする。言い換えれば、ガイド部材は、制御可能部材と共に、患者の組織内に挿入され得るユニットを形成することができる。制御可能部材は、好ましくは、少なくとも部分的に可撓性であり、これによって、ユニットは、管拡張システムとしての機能において、それぞれの解剖学的領域の形状に適合させることができる。
【0012】
公知の「セルディンガー技術」とは対照的に、本発明による挿入のために、別個のセルディンガーワイヤは必要ない。むしろ、ガイド部材と制御可能部材が共に機能ユニットとしての管拡張システムを形成するので、セルディンガーワイヤを介して異なる直径又は形状の拡張器を繰り返し挿入することを省略することができる。更に、結合状態における直径は、本体又はガイド部材と制御可能部材の両方によって定められ、特に、結合状態における本体と制御可能部材は、好ましくは断面において互いに隣接しているため、制御可能部材によって定められる。直径は、半径方向に拡張可能な本体によって、及び制御可能部材の変化に基づいて調整されるので、ガイド部材は、管拡張システムの小さな直径で結合状態に導入され、挿入状態で直径が可変に増加することができる。
【0013】
従って、本発明は、拡張器の挿入をサポートするために当該技術分野において典型的には必要とされ得る、更なる外科的要素又は剛性要素を回避することができる。従って、ガイド部材及び結合された制御可能部材もまた、セルディンガーワイヤのようなガイドワイヤから結合解除される。組織拡張が1回の操作で行うことができるので、管拡張システムの導入は、本発明の手法によって著しく単純化される。よって、患者の負担及びリスクもまたかなり低減される。
【0014】
制御可能部材との取り外し可能な結合に起因して、ガイド部材は更に、容易に分離することができ、すなわち材料のボンディング接続が存在しないので、制御可能部材は、ガイド部材とは独立して製造及び/又は清浄化することができる。
【0015】
一実施形態において、本体は、結合状態において制御可能部材によって外円周方向で囲まれるように適合することができる。言い換えれば、結合状態において、ガイド部材は、従って管拡張システムの内部に位置し、管拡張システムの機能的な「コア」を形成することができ、制御可能部材はコアを取り囲む。このような配置は、管拡張システムの内部構造を強化し、例えば、外部の制御可能部材が組織内に挿入されたときに内側に延長又は押圧されること、又は患者の組織が管拡張システムの内部に蓄積され、例えば、血管内又は中空器官に更に挿入することへの障壁を形成しないようにすることができる。
【0016】
別の実施形態では、本体は、スリーブ又はシースとして設計され、結合状態において制御可能部材を流体密封で完全に囲むように適合される。この場合、ガイド部材は、管拡張システムの外層を形成する。ガイド部材は、制御可能部材の外側に容易に結合され、又は滑動され、アダプタとして機能することができる。この代替の実施形態では、制御可能部材は、このように管拡張システムの機能的な「コア」を形成する。ガイド部材は、流体が管拡張システムの内部に入るのを防ぐので、制御可能部材は流体に対して密閉される。この構成により、管拡張システムの使用時に制御可能部材が汚染される可能性が回避されるので、制御可能部材は、無菌清浄化の必要なく、更なる用途に使用することができる。
【0017】
本体は、好ましくは、管拡張システムが最小直径を構成する第1の半径方向延長部と、第2の半径方向延長部との間で移動可能であり、本体は、各半径方向延長部において管拡張システムの予め定められた直径を定める。
【0018】
このようにして、本質的に均質な外形が形成される。直径又は容積は、各半径方向延長部に対して制御及び調整することができる。ガイド部材は、それに応じて、外側シースを形成することができ、結合された制御可能部材の変化は、外側シースの外周の変化を引き起こす。半径方向延長に関係なく、外側の表面にはしわがない。言い換えれば、ガイド部材は、好ましくは、実質的に凸の形状を有することができるように、各延長部において予荷重がかけられている。
【0019】
制御可能で予め定義された直径は、医療介入の要件及び/又は患者の解剖学的構造がマッピングできるように、管拡張システムの拡張を個々に調整することを可能にする。
【0020】
好ましくは、本体は、更に、半径方向に連続的に拡張可能である。これにより、ガイド部材の結合状態における管拡張システムは、例えば、患者の血管の直径に適合させることができる。組織又は血管は、異なる構成の拡張器を使用する必要なく、十分な拡張を達成するために連続的に拡張することができる。更に、直径は、挿入されるカニューレ又はカテーテルの内径に特に適合することができ、そのため、技術の状態とは対照的に-組織の不必要な拡張が誘起されず、すなわち、従来の拡張器の硬い所定の直径に起因して、拡張が患者にとって必要以上に大きく選択される必要がない。
【0021】
無段階又は連続的な拡張はまた、拡張中及び管拡張システムの直径を減少させる間の両方で、組織が封入又は挟まれるのを防止する。また、制御可能部材を調整することによって直径を連続的に可変できることに起因して、直径を再び容易に減少させることができ、カニューレの挿入後に管拡張システムを取り外す際に、カニューレの位置決めに影響を与えることなく取り外すことができる。
【0022】
ガイド部材の拡張をもたらすために、本体は、本体の半径方向の拡張を定める外円周方向の可撓性セクションを含むことができる。例えば、制御可能部材の変化によって可撓性セクションの伸張を引き起こし、これに応じてガイド部材が外周で拡張するように、外周の一部が伸張可能とすることができる。
【0023】
本体は、弾性材料で形成されることが好ましい。これにより、可撓セクションが実質的に本体全体にわたって延び、均一又は均質な拡張を達成することができる。また、これにより、可撓セクションに材料接合等の固定を行う必要がなくなり、ガイド部材の構造安定性を向上させることができる。
【0024】
ガイド部材の外表面にしわがあると、患者の血管に好ましくない影響を与える可能性があり、表面にしわ構造がある場合には、所定の直径を十分に具体的に定めることができない。本発明によれば、本体は、好ましくは、断面が螺旋形状を有することができ、これによって、螺旋形状の展開の程度が、本体の半径方向の延長を定める。従って、ガイド部材又は可撓セクションの蛇腹構造又は折り畳み設計が排除され、均一な拡張を達成できるが、この拡張は、ガイド部材の弾性特性によって定められるのではなく、連続的に回転又は展開する螺旋状可撓セクションによって定めることができる。
【0025】
組織への挿入を更に改善するために、ガイド部材は、本体の外面上に摩擦低減コーティングを含むことができる。例えば、ガイド部材がより容易に組織内に挿入されるように、表面張力がコーティングによって調整することができる。更に、このようなガイド部材が外側に配置される場合、本体の外表面は、流体を排出又は輸送するように適合することができ、本体は、好ましくは、溝、ラメラ及び/又はハニカム構造から構成される。これは、流体が蓄積することを防止すると同時に、これは、管拡張システムを挿入する際の圧力レベルを回避し、これによって挿入を容易にする。
【0026】
また、本体の外表面は、薬物又は薬剤、好ましくは抗凝固剤、血管収縮剤、又は血管拡張剤でコーティングすることができる。このように、ガイド部材は、組織又は血管の機械的拡張を引き起こすだけでなく、生理的状態に影響を与えることもできる。このように、管拡張システムの導入は、患者の薬理学的に誘導された生理的反応により、更に改善又は促進されることもあり、組織の損傷が可能な限り回避することができる。
【0027】
本体の表面は、本体を制御可能部材に結合又は取り付けるための接着性コーティングを更に含むことができる。例えば、内部に位置する制御可能部材との結合は、管拡張システムの挿入中であってもガイド部材が制御可能部材に隣接し、それ以上の機械的接続なしに相対移動が適宜防止されるように、ガイド部材の内面上の接着性コーティングによって補強することができる。ガイド部材が結合状態で制御可能部材によって取り囲まれる場合、外面もまた、このような接着性コーティングを備えてもよい。
【0028】
上述したように、組織の起こり得る障害を回避し、挿入を容易にし、直径を制御するために、ガイド部材の本体は、その半径方向延長部にかかわらず、いかなるしわも構成しないことが好ましい。従って、本体は、好ましくは、均質で連続的な外周を構成する。そのため、外周は、好ましくは、近位領域から遠位領域まで均一且つ連続的であり、これにより、ガイド部材の配向又は整列が、各半径方向について本質的に同じ効果を有するようになる。
【0029】
管拡張システムの挿入及び管拡張システムの回転及び傾斜を、例えば挿入中及び管拡張システムの制御又はナビゲーション中に更に容易にし、ガイド部材の形状を患者の血管構造にできるだけ密接に適合させるために、本体の外周は、好ましくは断面が実質的に円形又は楕円形の形状を有する。従って、ガイド部材は、本質的に円筒形の形状を有することができ、管体として設計することができる。この形状はまた、カニューレ又はカテーテルの内部形状に適合させることができ、このようなカニューレをガイド部材上に挿入することがより容易になる。
【0030】
制御可能部材に対するガイド部材の配置とは無関係に、本体は、好ましくは非外傷性及び/又は丸みを帯びた先端として形成される遠位先端を更に含むことができる。
【0031】
本体は、制御可能部材に沿って全体的に延びるので、管拡張システムのコアとしての実施形態においても、管拡張システムの外側スリーブ又はシースとしての代替の実施形態においても、本体は遠位領域にガイド面を含むことができる。先端によって、管拡張システムの組み立てられた状態又は結合された状態において、対応する組織の切開後に最初に組織内に挿入され、遠位領域を組織内に挿入するために、例えば円錐形、角錐形又は円錐形である構造が提供することができる。ガイド部材が外側スリーブ又はシースとして構成されている場合、先端はまた、流体が遠位領域を介して内側制御可能部材に到達しないように、流体密封で遠位領域を密閉する。
【0032】
先端は、本体の半径方向の拡張に伴って変形し得るように構成されていることが好ましい。半径方向の範囲を調整する制御可能部材に変更が加えられて拡張が生じた場合、先端の変形は、材料応力が生じないことを保証し、拡張が好ましくは遠位領域に向かって均一に延びることを保証することができる。これにより、構造的安定性が向上するだけでなく、本体の外周の不規則性により、カニューレが管拡張システム上に導かれない、又は十分に導かれないことを防止することができる。
【0033】
また、本体は、複数の材料層、例えば2又は3以上の材料層で形成されていてもよく、内側の材料層は、外側の材料層よりも大きな剛性を有している。従って、ガイド部材の十分な強度又は剛性が提供される。また、より柔らかい外側層は、挿入中に組織が偶発的に損傷することを防止することができる。内側材料層は、好ましくはポリマー、特にポリウレタンを含むことができ、外側材料層は、好ましくはシリコーン又はシリコーン様材料を含むことができる。
【0034】
ガイド部材を制御可能部材に結合するために、本体は、好ましくは、本体を制御可能部材の対応する接続部に結合するための接続部を含む。本体と制御可能部材の表面は好ましくは互いに隣接しているので、ガイド部材の延長部全体にわたって対応する接触面が既に存在する。例えば、遠位領域及び/又は近位領域における接続部は、そのため、十分な接続を提供するか、又は軸方向、半径方向及び/又は回転方向における相対移動を制限し、又は防止することさえできる。このようにして、例えば、ガイド部材は、制御可能部材上に案内され又は押圧することができ、要素が完全に挿入されたときに、接続が自動的に達成される。
【0035】
接続のために、接続部は、例えば、1又は2以上の突起又は突出部、膨出部、ラッチフック、凹部、溝、アンダーカット、及び/又はスレッドを含むことができる。例えば、連結状態において、制御可能部材の対応する領域の凹部によって受けられ、少なくとも軸方向及び回転方向への相対移動を阻止する1又は2以上の突起が設けられてもよい。例えば、遠位領域のアンダーカットは、装置を所与の位置にロックするために使用することができ、又は、軸方向の動きが阻止され、ガイド部材及び結合された制御可能部材がハンドルによってバイアスされるように、結合状態でロックフックを有する管拡張システムのハンドルによって係合される溝がガイド部材に提供することができる。あるいは、異なる直径に対応するために、1又は2以上のバーブ又はもみの木コネクタを使用することができる。
【0036】
好ましくは、接続部は、制御可能部材との圧入、嵌め合い、又はスナップ嵌合を達成するように適合される。これにより、十分な接続が提供され、同時に、正しい接続を示す結合中の触覚フィードバックが提供される。しかしながら、使用後にガイド部材を制御可能部材から分離することができるように、予め定められた方向に移動することによって、又は適切な工具を使用することによって、接続を依然として解除することができる。
【0037】
代替的に、又は追加的に、近位領域のガイド部材が、制御可能部材との磁気結合を確立するための1又は2以上の磁気要素を備えることが提供することができる。例えば、ガイド部材及び制御可能部材は、それぞれの磁気素子を備えてもよく、磁気素子は、異なるように分極されている。従って、正しい接続の後に触覚フィードバックが提供され、なお且つ、接続が容易に解除することができる。これにより、特に特別な成形を必要としないので、複雑な技術設計を必要とせずに接続部を設けることができ、製作も大幅に簡略化され、ガイド部材の構造的安定性が更に向上する。
【0038】
カニューレをガイド部材に一時的に取り付けるため、及び/又はカニューレが完全に挿入されたことを確認するために、本体は、カニューレを結合するための近位領域及び/又は遠位領域に1又は複数の可撓性膨出部を含むこともできる。例えば、回転方向の全周にわたってガイド部材の遠位領域分に突起又は突出部を設け、カニューレが挿入されたときに軸方向に制限されるように半径方向外側に延在させてもよい。これにより、カニューレが所望の位置を越えて案内されることがなくなり、すなわち、カニューレが正しく挿入され、位置決めすることができる。
【0039】
上述したように、ガイド部材は、アダプタとして使用することができ、外側のシースとして、又は管拡張システムのコアとして機能することができる。ガイド部材は、好ましくは、単回使用品又は使い捨てとして構成される。これは、ガイド部材がスリーブ又はシースとして構成される場合、結合される制御可能部材が流体密封で密封され、従ってガイド部材のみが患者の血液などの流体と接触し得るという特別な利点を有する。様々な構成要素を含むことができる制御可能部材は、更なる用途に使用することができるが、衛生基準を満たすことができるように、ガイド部材は使い捨て品として廃棄され、システムの更なる用途のために新しい(未使用の)ガイド部材と交換することができる。
【0040】
上記目的は、患者の解剖学的領域への挿入のための制御可能な管拡張システムによって更に達成される。この管拡張システムは、上記のようなガイド部材と、制御可能部材とを備え、ガイド部材と制御可能部材とは、互いに解除可能に結合される。
【0041】
好ましくは、制御可能部材は、管拡張システムの長手方向軸に沿って管拡張システムの近位領域から遠位領域まで延びる流体チャンバを備え、流体チャンバ内の流体の量は、流体チャンバの半径方向範囲と管拡張システムの半径方向延長とを定める。
【0042】
流体チャンバは、流体チャンバとガイド部材の本体とが互いに隣接するように、ガイド部材の形状に適合させることが好ましい。ガイド部材は、流体チャンバによって囲まれてもよいし、流体チャンバを囲んでもよく、ガイド部材は、アダプタとして制御可能部材に結合される。
【0043】
管拡張システムの可変半径方向延長は、管拡張システムが最初に患者の組織に挿入され、組織が拡張し得るように流体の量を調節することによって管拡張システムの直径がその後増大されることを可能にする。従って、管拡張システムは、ガイドワイヤ又は「セルディンガー法」の使用を省略することができるように、独立したユニットとして機能することができる。流体チャンバは、特定の体積範囲内の流体で流体チャンバが満たされるように、特定の流体量に適合することができる。
【0044】
従って、管拡張システムの直径は、追加の拡張器を必要とせずに、流体チャンバ内の流体量を調整又は増加させることによって、医療用途に必要な直径に増加させることができる。
【0045】
しかしながら、ガイド部材は拡張中に変形しないので、半径方向の拡張が変化しても、外周は基本的に均質である。また、管拡張システムは、使用中にも座屈が予想されないように、形状が十分に安定している。
【0046】
特に、管拡張システムの制御可能部材は、剛性であるが弾性変形可能な生体適合性材料から作られる。典型的には、耐引裂性材料、特にプラスチック材料、例えばポリウレタン、PVC又はシリコーンの群から選択されるものが使用される。制御可能部材は、好ましくは、流体を保持するために構成された流体チャンバを形成する。従って、制御可能部材は、例えば、カフ状又はスリーブ状の構造として構成することができ、これは、コーティング又はジャケットのようにガイド部材を囲み、内壁及び外壁を有し、その間にチャンバ状の構成を確立するためのキャビティが配置される。従って、制御可能部材は、典型的には、シースの一種のような単純なシェル又は包囲構造を形成せず、好ましくは、特に流体を保持するためのキャビティによって形成されている内壁及び外壁を有する流体チャンバとして特徴付けられる。制御可能部材は、好ましくは、内壁及び外壁のそれぞれの壁厚が、0.3~5mmの範囲であり、より好ましくは0.5mm~3mm又は0.5~2mmである。
【0047】
制御可能部材自体又は管拡張システムは、特にバルーン状の構造を有しない。
【0048】
管拡張システムは、特にガイドワイヤを有さない。
【0049】
好ましい実施形態では、特に前述の特徴を有する制御可能部材は、円周方向でガイド部材を取り囲んでいる。別の実施形態により、ガイド部材は、内部に配置され、特に上記の特性を有する制御可能部材を取り囲む。
【0050】
制御可能部材とガイド部材との間に、特に層状又は層状包囲体又はスリーブ状構成の中間部材が、本発明による管拡張システムによって提供することができる。それは、滑動層の機能を有していてもよい。これによって、制御可能部材のガイド部材に対する滑動挙動又はその逆が改善することができる。滑動層は、低摩擦材料によって形成することができ、又は、好ましくは両表面がこのような材料でコーティングすることができ、典型的には、滑動性に優れ耐摩耗性のプラスチック材料、特にシリコーン-ポリエステル(PES)又はフッ素ポリマー、例えばPTFEによってコーティングすることができる。代替的又は付加的に、特に、例えばシリコーン(例えばポリシロキサン又は変性ポリシロキサン)に基づく、又はグリセリンに基づくゲル状潤滑剤を有するコーティングが提供することができる。滑動層を形成する中間部材の片面又は両面に、例えば親水性潤滑剤を用いたコーティングを設けてもよい。
【0051】
流体チャンバを満たすために一般的に異なる流体又は液体、例えば生体適合性生理食塩水が使用されてもよいが、流体チャンバは好ましくは希釈性の流体を含む。従って、流体の物理的状態は、せん断力によって変化させることができる。
【0052】
これにより、管拡張システムを組織切開部に挿入する際には剛性構造体として使用し、患者の血管内での誘導又はナビゲーションの際には、流体に作用するせん断力に応じて柔軟構造体として使用することができる。また、ある形状、ある状態がいわば凍結していることがあるが、これはせん断力を適宜調整することで元に戻すことができる。従って、流体の物理的状態は完全に可逆的である。
【0053】
更に、遠位領域における流体チャンバが、好ましくは流体に対するせん断力の作用によって可動である可動領域を含んでいることを提供することができる。例えば、解剖学的構造によって定義された前屈が凍結されてもよいし、可動領域において形状が手動で定義することができ、この形状は、対応するせん断力を加えることによって維持されてもよいが、せん断力が調整されると、管拡張システムがその元の状態又は解剖学に対応する形状に戻るように再び解放されることもできる。従って、可動領域は、特定の解剖学的形状への適応と、患者における管拡張システムの、特により複雑な解剖学的構造へのナビゲーション又は誘導の改善された制御又は容易化を可能にする。
【0054】
例えば、流体チャンバは、例えば、管拡張システムの対応する半径方向の拡張を達成するために、予め定義された容積が流体チャンバに充填されるように、可撓性リザーバを使用して充填することができる。しかしながら、管拡張システムは、好ましくは、流体チャンバに流体を導入及び排出するためのポンプ装置と、管拡張システムの遠位部分において制御可能部材を制御するためのステアリング装置とを含む。これにより、管拡張システムのより汎用的な用途が提供され、また、解剖学的構造に対する直径の適合性を向上させることができる。
【0055】
管拡張システムが正しく挿入され、遠位領域が所与の位置に配置されることを確実にするために、管拡張システムは、管拡張システムの遠位端の位置を決定するために、遠位領域にセンサ要素を含むこともできる。センサ要素は、例えば、ガイド部材に、例えば、先端の領域にも一体化することができる。これにより、例えば、管拡張システムが右心房の領域に位置しているかどうかを監視することが可能となり、その後、カニューレが管拡張システムの上に挿入されて、右心部を緩和することができるようになる。このような監視は、挿入又は制御又はナビゲーションを支援するために、管拡張システムの導入中にも行われ、それゆえ、対応する医療用途を更に容易にすることが理解されよう。
【0056】
センサ要素は、好ましくは、磁界センサ、超音波センサ、又は誘導位置センサから構成される。例えば、磁界センサは、ガイド部材の遠位領域に設けられてもよく、絶対位置は、CT又はMRTを用いた基準画像によって決定することができる。
【0057】
代替的に、又は追加的に、センサ要素は、ガイド部材における導電性材料として構成することができる。例えば、ガイド部材は、導電性材料として一体化され、ガイド部材の長手方向に螺旋状に配置され、そこで電気的に絶縁された一体式ワイヤ補強体であってもよい。ワイヤは、例えば、管拡張システムの近位領域で電気的接続を形成し、ここで電位がケーブルで受け取られ、容量測定のために測定装置に送ることができる。容量測定は、管拡張システム又はガイド部材の延長のための指標として機能するので、例えば血管内の管拡張システムの位置は、ソフトウェアによって又はオプションとして参照画像における視覚化によって適宜決定することができる。更に、磁界を印加することによって位置を決定することが可能な誘導型位置センサも使用することができる。
【0058】
従って、センサ要素は、好ましくは、予め定められた位置からの逸脱の場合に警告信号を出力するための監視システムと結合することができる。
【0059】
管拡張システムの領域で患者に関連情報を提供する、更なるセンサもまた、管拡張システムに設けられるか又は統合することができる。管拡張システムは、好ましくは、患者の生理学的パラメータを決定するための、特に患者の血圧及び/又は血流を決定するための、少なくとも1つのセンサユニットを含む。これにより、管拡張システムの操作担当者は、例えば血管を拡張又は拡張させるときに、適切な測定値によって関連する解剖学的部位で直接病態生理学的状態に関する情報を得ることができ、例えば、治療又は計画された医療介入をその場でできるだけ早期に患者の必要に適合させることができる。更なるセンサ技術、例えばpHセンサ又はO2分圧センサが提供することができる。
【0060】
好ましくは、管拡張システムは、それに応じて、患者の血管の領域を拡張する際に使用するように構成される。
【0061】
上述したように、ガイド部材は、アダプタとして構成することができ、それに応じて、制御可能部材を囲んでもよい。これにより、制御可能部材が流体的に密閉され、制御可能部材が更なる用途に使用され得るように、制御可能部材の潜在的な汚染を防止することができる。流体チャンバに加えて他の構成要素を含むことができる制御可能部材は、このように汚染から保護され、そこで、ガイド部材は、使用後に使い捨て品の形態でアダプタとして廃棄され得るが、装置は引き続き使用することができる。制御可能部材は、好ましくは、耐久性のある材料、例えば、金属で作られ、再使用の前に容易に蒸気滅菌することができる。従って、ガイド部材は、好ましくは、内部キャビティを定め、制御可能部材は、内部キャビティ内に配置される。あるいは、ガイド部材が管拡張システムの内側コアを定め、制御可能部材によって円周方向に取り囲まれるようにすることができる。
【0062】
本発明による制御可能な管拡張システム(10)は、好ましくは、ガイドワイヤを必要としない。
【0063】
更に、カテーテルの近位領域からカテーテルの遠位領域まで延びる内部キャビティを有するカテーテルが提案され、このカテーテルは、上記に記載の本発明による管拡張システムを備え、カテーテルの内部キャビティの中に配置される。従って、カテーテル又は代替的にまたカニューレは、システムとして提供することができ、ここで、カテーテルは、好ましくは、管拡張システムの挿入後に、管拡張システム上に挿入又は押し付けられることができるように構成されている。
【0064】
特に、本発明によるカテーテルは、ガイドワイヤを有さない。
【0065】
上記目的は、更に、患者の解剖学的領域を拡張する方法によって達成される。この方法は、少なくとも以下のステップ:
上述したような管拡張システムを提供するステップと、
管拡張システムが最小半径方向延長を含む状態で、管拡張システムを患者の解剖学的領域に導入するステップと、
流体チャンバ内の流体の量を増加させて、管拡張システムの半径方向の範囲及び外周を増加させるステップと、
を含む。
【0066】
従って、その可変半径方向伸長により、管拡張システムは、組織又は血管に可能な限り最小の直径で容易に挿入され、その後、組織が拡張されるように流体の量を調節することによって管拡張システムの直径を増加させることができる。従って、ガイドワイヤの挿入及び異なる直径を有する追加の拡張器の連続的な挿入は完全に省かれ、これによって、方法の実行が著しく容易で、迅速になり、患者にとってより低いリスクで行うことができる。
【0067】
管拡張システムはまた、解剖学的領域が拡張した後、カニューレが管拡張システム上に挿入又は案内され、その挿入が管拡張システムに結合されたナビゲーションシステムによって監視されるように構成されていることが好ましい。例えば、管拡張システムの遠位領域は、カニューレの遠位領域に結合するように構成することができ、カニューレの位置決めを確認できるように、この領域にセンサ要素を備えてもよい。また、カニューレと結合した管拡張システムの位置の決定が、カニューレの挿入後にのみ可能であるように、カニューレの遠位領域にセンサ要素を備えるようにすることができる。これにより、ガイド部材及び管拡張システムをよりコンパクトにすることができる。
【0068】
従って、カニューレの位置決めを監視する方法が提案され、この方法は、上記のような管拡張システム上にカニューレが挿入され、管拡張システムの遠位端の位置が、管拡張システムに結合された監視システムによって監視されることを特徴としている。従って、カニューレの位置が監視することができる。また、上述したように、ガイド部材は、管拡張システムの「コア」を形成し、制御可能部材によって取り囲まれるように構成することができる。このような実施形態では、管拡張システムは、外周のカニューレとして直接構成することもでき、これによって、管拡張システムの挿入中にカニューレの位置の監視を更に簡素化することができる。
【0069】
本発明による好ましい更なる実施形態は、以下の図の説明において、より詳細に説明され、示される。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【
図1】一実施形態における、本発明によるガイド部材を有する管拡張システムの概略図である。
【
図2】第2の半径方向延長部を有する
図1に示される管拡張システムの概略図である。
【
図3A】異なる半径方向延長部における結合制御可能部材を有するガイド部材の長手方向断面における概略的詳細図である。
【
図3B】異なる半径方向延長部における結合制御可能部材を有するガイド部材の長手方向断面における概略的詳細図である。
【
図4A】結合された制御可能部材を有するガイド部材の断面における可撓性セクションの異なる構成を概略的に示す図である。
【
図4B】結合された制御可能部材を有するガイド部材の断面における可撓性セクションの異なる構成を概略的に示す図である。
【
図5A】異なる半径方向延長部における先端領域の概略的な詳細図である。
【
図5B】異なる半径方向延長部における先端領域の概略的な詳細図である。
【
図6】更なる実施形態による、本発明によるガイド部材を備えた管拡張システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0071】
以下では、好ましい実施形態について、添付図面を参照しながらより詳細に説明する。図において、対応する要素、類似の要素、又は同じ要素は同一の参照数字で示され、その繰り返しの説明は、冗長性を避けるために、省略される場合がある。
【0072】
図1は、制御可能な管拡張システム10を概略的に示しており、ガイド部材12と制御可能部材14とが互いに結合されている。本実施形態では、ガイド部材12は、内部に配置された制御可能部材14を囲むように、スリーブ又はアダプタとして構成される。ガイド部材12は、近位領域16から遠位領域18まで管拡張システム10の長手方向軸に沿って延びる細長い本体として実質的に形成され、ガイド部材12の内面が制御可能部材14の外面に隣接し、近位領域16から遠位領域18まで、ガイド部材12によって流体的に密閉されるようにする。
【0073】
更に、ガイド部材12の遠位領域18に先端が設けられ、この先端は、ガイド部材12と一体に形成することができる。その結果、遠位領域18を介して内部や制御可能部材14の内部に液体が侵入することはない。従って、ガイド部材12は、制御可能部材14のためのアダプタとして使用され、例えば、制御可能部材14が汚染から保護され、再使用され得る一方で、使い捨て品として適合することができる。
【0074】
ガイド部材12の本体もまた、
図1において管拡張システム10が最小の直径を有する第1の半径方向延長部で示されている。しかしながら、半径方向の延長部は、本質的に流体チャンバとして形成される制御可能部材14によって変化させることができる。例えば、流体チャンバ内の流体の量は、管拡張システム10の半径方向の延長部を決定することができ、これによって、流体の量は、例えばマイクロポンプとしてハンドル26に統合されているポンプ装置22によって調整することができる。流体量が変化すると、流体チャンバの容積も変化するので、ガイド部材12は外側に押し出される。ガイド部材12の本体は、任意に弾性材料で作られており、柔軟な外壁によって適宜変形させることができるので、管拡張システム10の半径方向の延長部は適宜適合される。
【0075】
ガイド部材12と制御可能部材14は、各半径方向延長部において結合され、これは、任意選択の接続部(図示せず)及び/又は隣接する表面の接着剤コーティングによって更に補強することができる。また、拡張又は半径方向の延長は、ガイド部材12の外面にしわや変形を生じないので、本体は、均質で連続的な外周を有し続ける。
【0076】
管拡張システム10はまた、遠位領域18又は先端20における制御可能部材14の動きを制御するように構成されたステアリング装置24を含む。管拡張システム10は、ガイド部材12及び制御可能部材14と同様に、遠位領域18において可動領域28を有し、これは点線で模式的に示される。それゆえ、ステアリング装置24は、ポンプ装置22及びハンドル26と同様に、管拡張システム10の外部構造に属する。
【0077】
ステアリング装置24及び可動領域28は、管拡張システム10の先端20が可変的に整列及び配向され得るように、管拡張システム10の遠位領域18を回転又は操舵させることを可能にする。例えば、約15~25mmの最小曲げ半径が提供することができ、これを40~60mm又は約100mmまで増加させてもよく、それに応じて管拡張システム10は約180°まで曲げることができ、管拡張システム10がより大きな及び/又はより複雑な解剖学的構造に適合され得るようにすることができる。従って、管拡張システム10の最小直径も12Fr以下を含むことができ、直径の上限は例えば約32Frであり、個々の管拡張システム10が約12Fr以下と約32Frとの間で連続的に拡張できるようにする。更に、管拡張システム10の異なる長さを選択することができ、例えば約100~700mmの間、好ましくは約140~約650mmの間とすることができる。
【0078】
管拡張システム10の第2の半径方向の延長部が
図2に示されており、制御可能部材14の流体チャンバ内の流体の量がそれに応じて増加されている。ガイド部材12と制御可能部材14は互いに隣接しているので、制御可能部材14とガイド部材12の半径方向延長の変更時にも直径が対応して定義され、予め決定されていることも明らかである。
【0079】
また、ここでは、流体チャンバの容積が大きくなると、管拡張システム10の拡張だけでなく、弾性材料に起因して、ガイド部材12の拡張も生じることが分かる。これにより、外壁は、第1の半径方向延長部と比較して、より薄くなることも分かる。しかしながら、ガイド部材12の外表面は、拡張中にしわが避けられるように、その均質且つ連続的な構成を維持する。
【0080】
異なる半径方向延伸とガイド部材12への影響は、
図3A及び
図3Bに概略詳細図で示されている。
【0081】
従って、
図3Aに示すように、制御可能部材14内又は流体チャンバ内の流体の量は、管拡張システムの第1の半径方向の延長部及び直径を引き起こすことができ、例えば管拡張システムのポンプ手段による流体の量の増加は、
図3Bに示すように、管拡張システムの予め定められた直径で第2の半径方向の延長部を達成するように流体チャンバの容量に対応する変更を引き起こす。ガイド部材12の厚さは、比例して僅かに変化するだけである。
【0082】
管拡張システムに使用され得る流体は、基本的に任意の液体であってよいが、好ましくは、塩溶液のような生体適合性のある液体である。しかしながら、カッソン流体やビンガム流体などの希釈性のある流体が特に好ましい。これにより、管拡張システムの剛性がせん断力の影響を受け、流体が液体状態と固体に近い状態との間で変化することが可能となる。このようにして、管拡張システムの形態を、例えば可動領域の変形により能動的に、又は解剖学的構造により受動的に定め、この形態で可逆的に固定又は凍結することができる。従って、例えば、管拡張システムの最初の挿入時に剛性であり、必要に応じて適合された形状は、組織部分への挿入を容易にし、その後、柔軟な管拡張システムは、血管の案内及び航行において有利である場合がある。
【0083】
ガイド部材は、
図4A及び
図4Bに、結合された制御可能部材14を有するガイド部材12の断面を示すように、弾性構成の代替又は追加として、柔軟部30を有することもできる。
【0084】
これらの図から、断面におけるガイド部材12の本体の外周は、例えば組織や血管の拡張のために一般に好ましい、本質的に円形又は楕円形の形状を有することが分かる。
【0085】
図4Aに示すように、可撓性セクション30は、本体の円周方向の一部に設けられていてもよく、また、管拡張システムの長手方向軸に沿って適宜延在していてもよい。例えば、セクション30は、伸縮可能なエラストマーなどの弾性材料から形成され、流体の量の変化に応じて変形し、これによって、ガイド部材12の周長が増加し、管拡張システムの所与の直径が達成することができる。ただし、ガイド部材の残りの部分又は本体は、使用する材料によっては、拡張しないか、又は僅かに拡張するだけで、管拡張システムの元の形状を維持するように変形させることができる。
【0086】
可撓セクション30の代替構成が
図4Bに示されており、本体は断面が螺旋状に形成されており、螺旋状の展開の程度が本体の半径方向の延長部を定める。従って、制御可能部材14内又は流体チャンバ内の流体の量の変化は、ガイド部材12を半径方向に拡張させ、それに応じてガイド部材がロールアウト又はアンフォールドするようにすることができる。また、材料が弾性体であるため、流体量が減少するとガイド部材12も収縮し、それに応じて拡張が可逆的に行われるようにすることができる。
【0087】
図1に関して
図2に既に示したように、先端20の形状も、
図5A及び
図5Bに先端領域の概略詳細図で示したように、管拡張システムの異なる直径に適合させることができる。
【0088】
先端20は、本体の径方向への拡張によって変形し得るように形成されている。また、弾性材料で形成することができる。半径方向の延長部により、先端も半径方向に拡張され、それに伴い先端20の長さが短くなる。
【0089】
図では、制御可能部材14の流体チャンバが先端20に突出していないことを示しているが、これは、流体量の変化が先端20に直接作用するように、先端20及び制御可能部材14を適宜成形して任意に設けることができ、先端20も小さく及び/又は可変に寸法設定することができる。更に、先端20は丸みを帯びていてもよく、好ましくは非外傷性の先端20として形成される。
【0090】
管拡張システム10の代替の実施形態が、本発明によるガイド部材12と、結合された制御可能部材14とを備えて、
図6に概略的に示されている。
【0091】
ここでの管拡張システム10の特徴は、
図1に示された特徴と本質的に同一である。しかしながら、この実施形態では、ガイド部材12は、管拡張システム10のコアとして設計され、制御可能部材14によって取り囲まれている。従って、流体チャンバは外円周方向に配置されている。流体量が増加すると、流体チャンバの半径方向の延長部もそれを増加させる。ガイド部材12の半径方向の延長部は、変化しないか、僅かにしか変化しない。
【0092】
この構成では、ガイド部材12はアダプタとしても使用でき、これによって、ガイド部材12は管拡張システム10に構造的安定性を与え、流体量が変化したときに制御可能部材14が管拡張システムの内部へ突出することを防止することができる。
【0093】
更に、このような構成は、制御可能部材14を有するカニューレが統合された移動コントローラ及び流体チャンバを含み、ガイド部材12が管拡張システム10と共に使用するために、又はカニューレの内部キャビティに挿入されるように、カニューレに統合することができる。
【0094】
適用可能な場合、例示的な実施形態に描かれた全ての個々の特徴は、本発明の範囲を離れることなく、組み合わせ及び/又は交換することができる。
【符号の説明】
【0095】
10 管拡張システム
12 ガイド部材
14 制御可能部材
16 近位領域
18 遠位領域
20 先端
22 ポンプ装置
24 ステアリング装置
26 ハンドル
28 可動領域
30 可撓セクション
【国際調査報告】