(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-20
(54)【発明の名称】電気機械式ブレーキシステム
(51)【国際特許分類】
F16D 61/00 20060101AFI20221213BHJP
B60T 13/74 20060101ALI20221213BHJP
H02P 27/06 20060101ALI20221213BHJP
H02P 29/02 20160101ALI20221213BHJP
【FI】
F16D61/00
B60T13/74 G
H02P27/06
H02P29/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523437
(86)(22)【出願日】2020-10-20
(85)【翻訳文提出日】2022-06-08
(86)【国際出願番号】 EP2020079458
(87)【国際公開番号】W WO2021078716
(87)【国際公開日】2021-04-29
(31)【優先権主張番号】201911001134.4
(32)【優先日】2019-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522087992
【氏名又は名称】ハルデックス・ヴィーアイイー・(シャンハイ)・エレクトロメカニカル・ブレイク・システム・カンパニー・リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】522089387
【氏名又は名称】ハルデックス・ブレイク・プロダクツ・アクチエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ドン・シアンピン
【テーマコード(参考)】
3D048
3J058
5H501
5H505
【Fターム(参考)】
3D048BB57
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5H501AA20
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5H505HA08
5H505HA09
5H505HA16
5H505HB01
5H505MM03
(57)【要約】
本発明は、電気機械式ブレーキ技術に関し、特に電気機械式ブレーキシステムに関する。当該電気機械式ブレーキシステムは、1つのキャパシタをベースとする1つの電源と少なくとも1つの電気ブレーキ装置とから構成される。この電気ブレーキ装置は、ブレーキ力を生成するために1つの電力供給主回路を介して当該キャパシタをベースとする電源から電力を取得する1つのモータを有する。当該電気機械式ブレーキシステムは、当該電力供給主回路に並列に接続された1つのエネルギー回生回路をされに有する。このエネルギー回生回路は、1つの一方向導電素子及び/又は1つの電圧調整要素を有する。ブレーキ要求に対する応答として、当該ブレーキ力が低下されるか、又はブレーキが、少なくとも部分的に解除され、当該モータが、当該エネルギー回生回路を介して当該キャパシタをベースとする電源に回生されるエネルギーを生成する。本発明は、当該モータが回生制動する方向に回転する時に生成される逆起電力の蓄積を回避できる。その結果、回路の過電圧破損の潜在的な危険が回避され、当該電気機械式ブレーキシステムのエネルギー消費が減少する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械式ブレーキシステムであって、この電気機械式ブレーキシステム(1)は、キャパシタをベースとする1つの電源(11)と少なくとも1つの電気ブレーキ装置(12)とから構成され、この電気ブレーキ装置(12)は、ブレーキ力を生成するために1つの電力供給主回路(13)を介して前記キャパシタをベースとする電源(11)から電力を取得する1つのモータ(121)を有する当該電気機械式ブレーキシステムにおいて、
前記電気機械式ブレーキシステム(1)は、前記電力供給主回路(13)に並列に接続された1つのエネルギー回生回路(14)をさらに有し、このエネルギー回生回路(14)は、1つの一方向導電素子(D1)及び/又は1つの電圧調整要素(53,54)を有し、
ブレーキ要求に対する応答として、前記ブレーキ力が低下されるか、又はブレーキが、少なくとも部分的に解除され、前記モータ(121)が、前記エネルギー回生回路(14)を介して前記キャパシタをベースとする電源(11)に回生されるエネルギーを生成することを特徴とする電気機械式ブレーキシステム。
【請求項2】
前記エネルギー回生回路(14)が、前記電圧調整要素を有する場合に、この電圧調整要素は、1つの線形電圧レギュレータ(54)及び/又は1つのDC-DCコンバータ(53)から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電気機械式ブレーキシステム。
【請求項3】
前記エネルギー回生回路(14)が、前記電圧調整要素を有する場合に、前記電圧調整要素の動作電圧の閾値が、前記キャパシタをベースとする電源(11)の最大動作電圧よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の電気機械式ブレーキシステム。
【請求項4】
前記エネルギー回生回路(14)は、前記エネルギーによって生成される再充電電流を制限するために1つの抵抗(R10)を有することを特徴とする請求項1に記載の電気機械式ブレーキシステム。
【請求項5】
前記エネルギー回生回路(14)が、前記一方向導電素子(D1)を有する場合に、この一方向導電素子(D1)は、1つのダイオード、1つのサイリスタ、1つのトリオード又は1つのMOSトランジスタのうちの少なくとも1つの素子から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電気機械式ブレーキシステム。
【請求項6】
前記キャパシタをベースとする電源(11)の充電レベルが、前記モータ(121)から前記エネルギー回生回路(14)を介して前記キャパシタをベースとする電源(11)に回生される実際に回生可能なエネルギーに近付けられるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電気機械式ブレーキシステム。
【請求項7】
前記キャパシタをベースとする電源(11)の充電レベルが、前記モータ(121)から前記エネルギー回生回路(14)を介して前記キャパシタをベースとする電源(11)に回生される最大に回生可能なエネルギーに相当するプリセットマージンを確保するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電気機械式ブレーキシステム。
【請求項8】
前記電気ブレーキ装置(12)の機械式トランスミッション機構が、自動でないロック機構であることを特徴とする請求項1に記載の電気機械式ブレーキシステム。
【請求項9】
前記電気機械式ブレーキシステム(1)は、1つの保護スイッチアセンブリ(123)をさらに有し、
前記キャパシタをベースとする電源(11)は、前記保護スイッチアセンブリ(123)を介して前記モータ(121)に電気接続されていて、
前記保護スイッチアセンブリ(123)は、前記電力供給主回路(13)の順方向の導通を制御するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電気機械式ブレーキシステム。
【請求項10】
前記電気ブレーキ装置(12)は、1つの制御モジュール(122)をさらに有し、この制御モジュール(122)は、前記モータ(121)と前記保護スイッチアセンブリ(123)とに電気接続されていて、異常信号に対する応答として、前記モータ(121)と前記キャパシタをベースとする電源(11)との間の電気接続を遮断するために、前記保護スイッチアセンブリ(123)を制御することを特徴とする請求項9に記載の電気機械式ブレーキシステム。
【請求項11】
前記保護スイッチアセンブリ(123)は、1つのトリオード(T1)と少なくとも2つのMOSトランジスタ(Q7-Q8)とから構成されていて、
前記少なくとも2つのMOSトランジスタ(Q7-Q8)は、前記電力供給主回路(13)に直列に接続されていて、前記トリオード(T1)は、前記少なくとも2つのMOSトランジスタ(Q7-Q8)に電気接続されていて、
前記制御モジュール(122)は、前記異常信号に対する応答として、前記モータ(121)と前記キャパシタをベースとする電源(11)との間の電気接続を遮断するために、前記トリオード(T1)を制御することによって、複数の前記MOSトランジスタのうちの少なくとも2つのMOSトランジスタ(Q7-Q8)をオフにすることを特徴とする請求項10に記載の電気機械式ブレーキシステム。
【請求項12】
前記制御モジュール(122)は、1つの主制御部(1221)と1つのモータ駆動モジュール(1222)とを有し、前記モータ(121)は、少なくとも2つの相入力部を有し、
前記主制御部(1221)は、1つのパワースイッチに通信可能に接続されていて、
前記主制御部(1221)は、前記パワースイッチをオン又はオフするように構成されていて、
前記パワースイッチは、前記モータ駆動モジュール(1222)を有効にするために構成されていて、
前記モータ駆動モジュール(1222)は、正のトルクを出力するために前記モータ(121)を制御するように構成されていることを特徴とする請求項10に記載の電気機械式ブレーキシステム。
【請求項13】
前記モータ(121)は、3つの相入力部を有し、
前記ブレーキ要求に対する応答として、前記ブレーキ力が低下されるか、又はブレーキが、少なくとも部分的に解除されると、前記モータ(121)は、このモータ(121)を駆動させて正のトルクを出力するために前記3つの相入力部のうちの少なくとも1つの相入力部を介して前記電力供給主回路(13)から出力を取得し、前記エネルギー回生回路(14)は、前記3つの相入力部のうちの残りの相入力部を介して前記モータ(121)から電力を回生することを特徴とする請求項10に記載の電気機械式ブレーキシステム。
【請求項14】
前記モータ(121)は、DCモータから構成されていることを特徴とする請求項1~13のいずれか1項に記載の電気機械式ブレーキシステム。
【請求項15】
前記キャパシタをベースとする電源(11)は、ウルトラキャパシタから構成されていることを特徴とする請求項1~13のいずれか1項に記載の電気機械式ブレーキシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械式ブレーキ技術に関し、特に電気機械式ブレーキシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両は、人々の毎日の交通に欠かせなく、高い普及率を有する。車両の周辺の障害物を回避するため、運転中にブレーキ装置を使用して車両の移動速度を減少させ、又は車両の移動を停止させることが頻繁に必要である。
【0003】
ブレーキパッドを駆動してロータリーブレーキディスクを摩擦係合させるため、従来のブレーキ装置は、多くの場合に油圧又は空気圧を媒体による機械駆動として使用する。その結果、制動の目的が達成される。従来のブレーキシステムは、長い応答時間と、低い効率を引き起こす複雑なエネルギー伝達経路とを有する。
【0004】
車両のブレーキ性能を向上させ、ブレーキシステムの構成を簡略化するため、従来の技術は、電気機械式ブレーキ(EMB)システムをさらに提案する。
【0005】
既存の電気機械式ブレーキシステムでは、ブレーキ動作の初期エネルギー(raw energy)が、車両のバッテリから供給される。当該初期エネルギーは、電圧変換によってウルトラキャパシタモジュールに充電される。当該ウルトラキャパシタモジュールは、ブレーキ力を生成するために電気エネルギーをブレーキ用モータに直接に出力できる。
【0006】
既存の電気機械式ブレーキシステムは、ブレーキ力を生成するためのモータと、このモータによって駆動される機械式トランスミッション機構とを有し得る。ブレーキディスクにおいて、当該機械式トランスミッション機構は、キャリパーを有し得る。
【0007】
運転者が、ブレーキペダルを踏むか、又はABS、ESP、自動運転システム等によるような無人操作モード中にブレーキ命令を生成する時に、モータ制御装置が、当該ブレーキ命令を受信した後に順方向に回転させるためにモータを制御できる。その結果、ブレーキ力を生成するため、当該機械式トランスミッション機構が駆動され、ブレーキパッドが、ブレーキディスクに対して押圧される。
【0008】
その一方で、当該機械式トランスミッション機構は、当該ブレーキ力の伝達中に当該モータから出力されたエネルギーの一部を蓄積できる。
【0009】
主ブレーキ又はパーキングブレーキを緩めるか又は解除するための命令を受信したことに対する応答として、当該モータ制御装置は、当該印加されたブレーキ力を変更するために当該モータを制御できる。当該モータは、当該機械式トランスミッション機構の効果の下で回生制動する方向に回転できる。当該回生制動する方向のモータの回転速度は、ブレーキ動作が起動された時に生成されるブレーキ力の総量に比例する。すなわち、当該ブレーキ動作中に印加されるブレーキ力が大きい程、ブレーキペダルが解除される時に当該機械式トランスミッション機構が放つ反発力はより大きい。これに応じて、当該回生制動する方向のモータの回転速度は、より大きくできる。
【0010】
当該モータが回生制動する方向に回転する時に、逆起電力が生成され得る。当該逆起電力は、当該モータ制御装置にわたる電圧上昇を引き起こし得る。したがって、当該エネルギーの一部が解放されない場合は、当該電気機械式ブレーキシステムの回路に過電圧破損を非常に引き起こしやすい。
【0011】
さらに、車両の走行中の何回ものブレーキ動作の必要性に起因して、既存の電気機械式ブレーキシステムは、多大なエネルギー損失を必ず引き起こし得る。当該エネルギー損失は、当該車両のエネルギー損失を減らすためには不都合である。
【0012】
したがって、上記の欠点を排除するためには、電気機械式ブレーキ技術の分野において、回路の過電圧破損の潜在的な危険が回避され、電気機械式ブレーキシステムのエネルギー消費が減少するように、モータが回生制動する方向に回転する時に生成される逆起電力の蓄積を回避することが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、特に、
-モータが回生制動する方向に回転する時に生成される逆起電力の蓄積を回避すること、及び/又は
-回路の過電圧破損の潜在的な危険を回避すること、及び/又は
-電気機械式ブレーキシステムのエネルギー消費を減少すること、
に関して改良されている電気機械式ブレーキシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、当該本発明の課題は、独立請求項に記載の特徴によって解決される。本発明による追加の好適な実施の形態は、従属請求項に記載されている。
【0015】
1つ以上の観点の基本的な理解を提供するため、これらの観点の概要を以下に記載する。要約書は、意図されるこれらの全ての観点の広範囲に及ぶ概要ではなく、全ての観点における要部又は重要な要素を特定しようとするものではない。要約書の唯一の目的は、以下に記載されているより詳細な説明に対する前触れとして、簡略化された形式で1つ以上の観点の幾つかの思想を提供することである。
【0016】
上記の欠点を排除するため、本発明は、回路の過電圧破損の潜在的な危険が回避され、電気機械式ブレーキシステムのエネルギー消費が減少するように、モータが回生制動する方向に回転する時に生成される逆起電力の蓄積を回避する電気機械式ブレーキ(EMB)システムを提供する。
【0017】
本発明において提供される電気機械式ブレーキシステムは、キャパシタをベースとする1つの電源と少なくとも1つの電気ブレーキ装置とから構成され得る。この電気ブレーキ装置は、ブレーキ力を生成するために1つの電力供給主回路を介して当該キャパシタをベースとする電源から電力を取得する1つのモータを有し得る。当該電気機械式ブレーキシステムは、当該電力供給主回路に並列に接続された1つのエネルギー回生回路をさらに有し得る。このエネルギー回生回路は、1つの一方向導電素子及び/又は1つの電圧調整要素を有し得る。
【0018】
ブレーキ要求に対する応答として、当該ブレーキ力が低下されるか、又はブレーキが、少なくとも部分的に解除されると、当該モータが、当該エネルギー回生回路を介して当該キャパシタをベースとする電源に回生されるエネルギーを生成できる。
【0019】
本発明において提供される電気機械式ブレーキシステムによれば、オプションとして、当該エネルギー回生回路が、当該電圧調整要素を有する場合に、この電圧調整要素は、1つの線形電圧レギュレータ及び/又は1つのDC-DCコンバータから構成されている。
【0020】
本発明において提供される電気機械式ブレーキシステムによれば、オプションとして、当該エネルギー回生回路が、当該電圧調整要素を有する場合に、当該電圧調整要素の動作電圧の閾値が、当該キャパシタをベースとする電源の最大動作電圧よりも大きい。
【0021】
本発明において提供される電気機械式ブレーキシステムによれば、オプションとして、 当該エネルギー回生回路は、当該エネルギーによって生成される再充電電流を制限するために1つの抵抗を有し得る。
【0022】
本発明において提供される電気機械式ブレーキシステムによれば、オプションとして、当該エネルギー回生回路が、当該一方向導電素子を有する場合に、この一方向導電素子は、1つのダイオード、1つのサイリスタ、1つのトリオード又は1つのMOSトランジスタのうちの少なくとも1つの素子から構成され得る。
【0023】
本発明において提供される電気機械式ブレーキシステムによれば、オプションとして、当該キャパシタをベースとする電源の充電レベルが、当該モータから当該エネルギー回生回路を介して当該キャパシタをベースとする電源に回生される実際に回生可能なエネルギーに近付けられるように構成されている。
【0024】
本発明において提供される電気機械式ブレーキシステムによれば、オプションとして、当該キャパシタをベースとする電源の充電レベルが、当該モータから当該エネルギー回生回路を介して当該キャパシタをベースとする電源に回生される最大に回生可能なエネルギーに相当するプリセットマージンを確保するように構成されている。
【0025】
本発明において提供される電気機械式ブレーキシステムによれば、好ましくは、当該電気ブレーキ装置の機械式トランスミッション機構が、自動でないロック機構であり得る。
【0026】
本発明において提供される電気機械式ブレーキシステムによれば、オプションとして、当該電気機械式ブレーキシステムは、1つの保護スイッチアセンブリをさらに有し得て、当該キャパシタをベースとする電源は、当該保護スイッチアセンブリを介して当該モータに電気接続され得て、当該保護スイッチアセンブリは、当該電力供給主回路の順方向の導通を制御するように構成され得る。
【0027】
本発明において提供される電気機械式ブレーキシステムによれば、好ましくは、当該電気ブレーキ装置は、1つの制御モジュールをさらに有し得て、この制御モジュールは、当該モータと当該保護スイッチアセンブリとに電気接続されていて、異常信号に対する応答として、当該モータと当該キャパシタをベースとする電源との間の電気接続を遮断するために、当該保護スイッチアセンブリを制御する。
【0028】
本発明において提供される電気機械式ブレーキシステムによれば、オプションとして、当該保護スイッチアセンブリは、1つのトリオードと少なくとも2つのMOSトランジスタとから構成され得て、当該少なくとも2つのMOSトランジスタは、当該電力供給主回路に直列に接続されていて、当該トリオードは、当該少なくとも2つのMOSトランジスタに電気接続され得て、当該制御モジュールは、当該異常信号に対する応答として、当該モータと当該キャパシタをベースとする電源との間の電気接続を遮断するために、当該トリオードを制御することによって、複数の当該MOSトランジスタのうちの少なくとも2つのMOSトランジスタをオフにし得る。
【0029】
本発明において提供される電気機械式ブレーキシステムによれば、オプションとして、当該制御モジュールは、1つの主制御部と1つのモータ駆動モジュールとを有し得て、当該モータは、少なくとも2つの相入力部を有し得て、当該主制御部は、1つのパワースイッチに通信可能に接続され得て、当該主制御部は、当該パワースイッチをオン又はオフするように構成され得て、当該パワースイッチは、当該モータ駆動モジュールを有効にするために構成され得て、当該モータ駆動モジュールは、正のトルクを出力するために当該モータを制御するように構成され得る。
【0030】
本発明において提供される電気機械式ブレーキシステムによれば、好ましくは、当該モータは、3つの相入力部を有し得て、当該ブレーキ要求に対する応答として、当該ブレーキ力が低下されるか、又はブレーキが、少なくとも部分的に解除されると、当該モータは、このモータを駆動させて正のトルクを出力するために当該3つの相入力部のうちの少なくとも1つの相入力部を介して当該電力供給主回路から出力を取得し得て、当該エネルギー回生回路は、当該3つの相入力部のうちの残りの相入力部を介して当該モータから電力を回生し得る。
【0031】
本発明において提供される電気機械式ブレーキシステムによれば、オプションとして、当該モータは、DCモータから構成され得る。
【0032】
本発明において提供される電気機械式ブレーキシステムによれば、オプションとして、当該キャパシタをベースとする電源は、ウルトラキャパシタから構成され得る。
【0033】
本発明の有益な構成は、特許請求の範囲、詳細な説明及び図面に記載されている。
【0034】
冒頭で述べた複数の特徴の利点及び複数の特徴の組み合わせの利点は、専ら例示として役立ち、これらの利点を得る必要のある本発明による複数の実施の形態を必要とすることなしに選択的に又は組み合わせて使用されてもよい。
【0035】
以下の記載は、当初の出願及び特許の-保護範囲でない-開示に該当する。さらなる特徴が、図面から読み取れ、特に図示された構成と相互の複数の構成要素の寸法とこれらの構成要素の相対配置とこれらの構成要素の動作接続とから読み取られ得る。本発明の複数の異なる実施の形態の複数の特徴の組み合わせ又は特許請求の範囲に記載の選択された符号に依存しない複数の異なる請求項に記載の複数の特徴の組み合わせも可能であり、当該組み合わせは、当該特徴によって動機づけされる。当該組み合わせは、独立した複数の図に示されているか又はこれらの図を説明するときに記載されている特徴にも関連する。これらの特徴は、複数の異なる請求項の複数の特徴と組み合わせてもよい。さらに、本発明のさらなる実施の形態が、特許付与された独立請求項に該当しない請求項で規定された特徴を有しないことが可能である。
【0036】
特許請求の範囲と明細書とに記載された複数の特徴の数は、副詞「少なくとも」を明記する必要なしに、この正確な数と当該記載された数よりも大きい数を網羅すると解せられ得る。例えば、1つの構成要素が言及されている場合、これは、正確に1つの構成要素が存在するか又は2つの構成要素が存在するか又は3つ以上の構成要素が存在すると解せられ得る。追加の特徴が、これらの特徴に追加されてもよく、又は、これらの特徴が、それぞれの製品の特徴にすぎなくてもよい。
【0037】
特許請求の範囲に記載の符号は、特許請求の範囲によって保護される事項の範囲を限定するものではない。これらの符号の唯一の機能は、特許請求の範囲をより容易に理解させることである。
【0038】
上記の本発明の特徴及び利点は、下記の図に関連する当該開示の実施の形態の詳細な説明を読んだ後により良好に理解される。図面では、構成要素の寸法は必ずしも正確でなく、類似に関連する特徴を有する構成要素は、同じ符号又は類似の符号を有する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明の実施の形態による電気機械式ブレーキシステムの回路図を示す。
【
図2】本発明の実施の形態による三相モータの概略図である。
【
図3】本発明の実施の形態による電気ブレーキ装置の概略図である。
【
図4A】本発明の実施の形態による三相モータによって電力を回収することを概略的に示す。
【
図4B】本発明の実施の形態による三相モータによって電力を回収することを概略的に示す。
【
図5】本発明の実施の形態によるエネルギー回生回路の概略図である。
【
図6】本発明の実施の形態によるエネルギー回生回路の概略図である。
【
図7A】本発明の実施の形態による保護スイッチアセンブリを概略的に示す。
【
図7B】本発明の実施の形態による保護スイッチアセンブリを概略的に示す。
【
図8】本発明の実施の形態による電気機械式ブレーキシステムの概略図である。
【
図9】本発明の実施の形態による電気機械式ブレーキシステムによって実行されるブレーキ動作のフローチャートである。
【
図10】本発明の別の実施の形態による電気機械式ブレーキシステムによって実行されるエネルギー回生のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下に、本発明の実施の形態を特定の実施の形態によって説明する。当業者は、本発明の開示から本発明の他の利点及び機能を容易に理解できる。本発明の記述は、実施の形態に関連して記述されているかもしれないが、これは、本発明の特徴が当該実施の形態に限定されることを意味しない。他方で、本発明の当該実施の形態内で可能である他の代替又は変更を網羅するように、本発明は、当該実施の形態に関連して記述されている。本発明を完全に理解するため、多くの特定の詳細が、以下の記述に含まれている。本発明は、これらの詳細なしでも実現され得る。さらに、本発明を不明確にすることを回避するため、幾つかの特定の詳細が省略されている。
【0041】
モータが、回生制動する方向に(in a reverse direction)回転する時に生成される逆起電力の蓄積を回避するため、本発明は、電気機械式ブレーキ(EMB)の実施の形態を提供する。その結果、回路の過電圧破損の潜在的な危険が回避され、当該電気機械式ブレーキのエネルギー消費が減少する。
【0042】
図1は、本発明の実施の形態による電気機械式ブレーキ(1)の回路図である(
図1参照)。
【0043】
図1に示されているように、この実施の形態によって提供される電気機械式ブレーキ(1)は、キャパシタをベースとする電源11と少なくとも1つの電気ブレーキ装置12とを有してもよい。
【0044】
キャパシタをベースとする電源11は、主に、電気機械式ブレーキシステムに対してブレーキ力を生成するブレーキ用モータ121を駆動するために要求されるエネルギーを供給するように構成されている。キャパシタをベースとする電源11は、限定しないものの、直列及び/又は並列にある複数のキャパシタユニットから構成されるウルトラキャパシタ群から成る。当該ウルトラキャパシタ群は、電力をモータに直接に供給し、エネルギーを回生するように構成されてもよい。この回路構成は、短期間の大容量の伝送を保証できる。
【0045】
当該実施の形態による電気機械式ブレーキ(1)では、直列に接続された複数のキャパシタユニットC1-Cnから成るウルトラキャパシタ群が、電気機械式ブレーキシステム(1)のキャパシタをベースとする電源11として選択されてもよい。
【0046】
電気機械式ブレーキシステム(1)は、自動車の蓄電池、パワーバッテリ又は発電機からエネルギーを得てもよく、電圧変換のような当業者に周知の従来の方法によってキャパシタをベースとする電源11を充電してもよい。ブレーキ要求に対する応答としてブレーキ力を生成するため、キャパシタをベースとする電源11は、電気エネルギーをブレーキ用モータ121に直接に出力してもよい。
【0047】
直接に接続された複数のキャパシタユニットC1-Cnから成るウルトラキャパシタ群11と、自動車のバッテリからエネルギー得るための解決策とは、本発明の概念を公衆により明確に示し、実行可能な解決策を提供するが、本発明の範囲を限定しようとしないことを主に目的とする本発明で提供される特定の実施の形態にすぎないことを、当該当業者は理解できる。
【0048】
他の実施の形態では、当該当業者は、キャパシタをベースとする電源11の他の構成又は形式を採用してもよく、ブレーキ用モータ121を駆動するために要求されるエネルギーを得るため他の手段を採用してもよい。
【0049】
図1に示されたように、この実施の形態によって提供された電気機械式ブレーキ(1)は、1つ以上の電気ブレーキ装置12を有してもよい。自動車の速度を減少させるため、複数の電気ブレーキ装置12が、当該自動車の複数のホイールの端部に配置されてもよい。
【0050】
電気ブレーキ装置12は、電気ブレーキ装置12は、ブレーキ用モータ121、制御モジュール112及びパワースイッチアセンブリ123から構成され得る。ブレーキ用モータ121は、限定されないものの、三相モータを有し、電気ブレーキ装置12の電力供給主回路(13)を介してキャパシタをベースとする電源11から電力を得てもよい。その結果、ブレーキ用モータ121は、自動車の速度を減少するために要求されるブレーキ力を生成するために順方向に回転される。
【0051】
例としては、制御モジュール122が、ブレーキ要求を処理しモータ制御信号を出力するための主制御部1221と、モータ駆動モジュール1223と、電流サンプリング回路1224とを有する。制御モジュール122の当該モータ制御部及び駆動回路は、現存するモータ技術の実行可能な構成によって置換され得ることを、当該当業者は理解できる。
【0052】
図2は、本発明の実施の形態による三相モータの概略図である(
図2参照)。
【0053】
図2に示されているように、1つの実施の形態では、上記のブレーキ用モータ121は、3つの相入力部U,V及びWを有する三相モータでもよい。三相モータ121は、6つのMOSトランジスタQH1-QH3,QL1-QL3から成る三相フルブリッジ駆動回路1223によって駆動されてもよい。
【0054】
制御命令に対する応答として、三相フルブリッジ駆動回路1223は、ブレーキ力を生成するためにMOSトランジスタQH1-QH3,QL1-QL3をオン及びオフすることによって三相モータ121を順方向に回転させるように駆動できる。MOSトランジスタQH1-QH3,QL1-QL3のオン及びオフは、受信された制御命令と三相モータ121の回転子の位置とにしたがって決定されてもよい。明確に言えば、当該制御命令に対する応答として、三相フルブリッジ駆動回路1223のW相の高圧側のトランジスタQH1とU相の低圧側のトランジスタQL3とが最初にターンオンされ、W相の低圧側のトランジスタGL1とU相の高圧側のトランジスタGH3とがターンオフされてもよい。このとき、三相ブレーキ用モータ121は、W相を経て電力を取得できる。
【0055】
その後に、三相フルブリッジ駆動回路1223のV相の高圧側のトランジスタQH2とW相の低圧側のトランジスタQL1とが最初にターンオンされ、V相の低圧側のトランジスタQL2とW相の高圧側のトランジスタGH1とがターンオフされてもよい。このとき、このとき、三相ブレーキ用モータ121は、V相を経て電力を取得できる。
【0056】
その後に、三相フルブリッジ駆動回路1223のU相の高圧側のトランジスタQH3とV相の低圧側のトランジスタQL2とが最初にターンオンされ、U相の低圧側のトランジスタQL3とV相の高圧側のトランジスタQH2とがターンオフされてもよい。このとき、三相ブレーキ用モータ121は、U相を経て電力を取得できる。
【0057】
同様に、三相ブレーキ用モータ121は、電気ブレーキ装置12の電力供給主回路(13)を介してキャパシタをベースとする電源11から電力を、複数の相入力部のうちの少なくとも1つの相入力部によって交互に取得してもよい。その結果、三相ブレーキ用モータ121は順方向に回転し、車両の速度を減少するために要求されるブレーキ力が生成される。
【0058】
当業者は、上記の三相モータ121が本発明による1つの実施の形態であることを理解できる。別の実施の形態では、電気ブレーキ装置12の電力供給主回路(13)を介してキャパシタをベースとする電源11から電力を取得するため、場合によっては、2つの相入力部だけを有するモータが使用されてもよい。その結果、当該モータは順方向に回転し、車両の速度を減少するために要求されるブレーキ力が生成される。したがって、当該モータは、2相フルブリッジ駆動回路によって駆動されてもよく、又は2相ハーフブリッジ駆動回路によって駆動されてもよい。
【0059】
ブレーキ用モータ121の駆動回路の構成を簡略化し、より良好な速度性能を取得するため、直流モータが、ブレーキ力を生成するブレーキ用モータ121として選択されてもよい。当該直流モータは、適切な電圧を出力するキャパシタをベースとする電源11によって電力供給されてもよく、又はDC-DCコンバータモジュールを介してキャパシタをベースとする電源11によって電力供給されてもよい。
【0060】
図1に示されているように、電気ブレーキ装置12の電力供給主回路(13)は、キャパシタをベースとする電源11の電圧出力端子と電気モータ121の電圧入力端子とにそれぞれ接続されてもよい。電力供給主回路(13)は、キャパシタをベースとする電源11によって出力される電力をブレーキ用モータ121に供給するように主に構成されている。
【0061】
電力供給主回路(13)は、この電力供給主回路(13)をオン又はオフに切り替えるためのパワースイッチアセンブリ123にさらに接続されてもよい。パワースイッチアセンブリ123は、1つ以上のパワースイッチから構成され得て、電気ブレーキ装置12の制御モジュール122によって制御され得る。
【0062】
運転者が、ブレーキペダルを踏むか、又はABS、ESP、自動運転システム等によるような無人操作モード中にブレーキ命令を生成する時に、ブレーキ要求を示す命令を受信したことに対する応答として、ブレーキ用モータ121に電力を供給するために電力供給主回路(13)をターンオンするように、制御モジュール122が、パワースイッチアセンブリ123を制御してもよい。
【0063】
この実施の形態において設けられた三相ブレーキ用モータ121は、3つの相入力部のうちの少なくとも1つの相入力部を交互に介して電力供給主回路(13)から電力を取得できる。同時に、エネルギー回生回路(14)が、当該3つの相入力部のうちの残りの相入力部を介して当該モータから電力を回生できる。このとき、回生制動されるべき(to be reversed)ブレーキ用モータ121を駆動するための力が減衰されている。その結果、当該ブレーキ力を解除する工程は、穏やかであり且つ安定していて、当該ブレーキ力が解除される時に、キャリパー及び機械式トランスミッション機構の衝突が回避される。
【0064】
電力供給主回路(13)を介してキャパシタをベースとする電源11から電力を取得したことに対する応答として、車両の速度を減少するために機械式変速機を駆動するため、ブレーキ用モータ121は、当該車両の速度を減少するためにブレーキ力を直接に生成してもよく、又は電気ブレーキ装置の当該機械式トランスミッション機構を駆動するための駆動力を生成してもよい。
【0065】
特に、当該実施の形態において設けられた電気機械式ブレーキシステムでは、キャリパーが、ホイールに連結されたブレーキディスクを圧着するための機械式トランスミッション機構の端部に結合されてもよい。その結果、ブレーキの目的が達成される。
【0066】
ブレーキ要求を示す命令を受信したことに対する応答として、キャリパーをホイールのブレーキディスクに対して押圧するように機械式トランスミッション機構を駆動するため、電気ブレーキ装置12の制御モジュール122が、ブレーキ用モータ121を順方向に回転させるように制御してもよい。
【0067】
図3は、本発明の実施の形態による電気ブレーキ装置の概略図である(
図3参照)。
【0068】
図3に示されているように、電気ブレーキ装置12のブレーキ用モータ121及び制御モジュール122を有する電気アクチュエータ31が、ブレーキトルクを出力するように構成されている。ディスクブレーキを例示すると、電気アクチュエータ31は、シャフト32を介して機械式トランスミッション機構33にトルクを出力し、減速後にブレーキキャリパーを駆動させ、トルクを増大させ、回転運動を線形運動に変換し、最終的に、ブレーキパッド34に印加された押圧力によってこのブレーキパッド34をブレーキディスク(図示せず)に圧着してもよい。その結果、ブレーキ力が生成される。機械式トランスミッション機構33は、減速及びトルクの増大用の遊星歯車機構や回転を線形運動に変換するためのねじ山、主ねじ又はローラランプのような、当業者に既知のあらゆる機構を使用してもよい。自動ロック式でないトランスミッション機構(non-self-locking transmission mechanism)が使用される場合、トルクが、ブレーキ用モータ121からブレーキパッド34に伝達され、ブレーキパッド34からブレーキ用モータ121に自由に伝達されてもよい。電気ブレーキシステム内に組み込まれることに加えて、制御モジュール122は、独立した制御装置又はキャパシタをベースとする電源と一緒に組み込まれた制御装置として、シャーシのような車両のその他の位置に配置されてもよい。
【0069】
キャリパーが、ホイールのブレーキディスクを押圧すると、機械式トランスミッション機構と当該キャリパーとが、モータから当該ブレーキディスクへのブレーキ力の伝達中に機械エネルギーの一部を蓄積する。運転者が、主ブレーキを解除するか若しくは緩めるためにブレーキペダルを解除するか、又はパーキングブレーキを解除するためにパーキングスイッチを操作すると、制御モジュール122が、当該ブレーキを解除することに対する応答としてブレーキ用モータ121に電力を供給することを停止できる。その結果、当該ブレーキキャリパーが解除される。当該ブレーキがかかると、ブレーキ用モータ121が、当該機械式トランスミッション機構によって回生制動するように回転され得て、当該ブレーキ用モータ121の回転の速度が、ブレーキをかける時に生成されるブレーキ力に比例し得る。すなわち、ブレーキをかけている間に印加されるブレーキ力が大きい程、当該ブレーキキャリパーが解除される時に当該機械式トランスミッション機構によって回生制動するように伝達される当該力はより大きく、これに応じて、当該モータが、より速く回生制動する。ブレーキ用モータ121が回生制動すると、エネルギーが、制御モジュール122による電圧上昇を引き起こし得る逆起電力として生成され得ることを、当業者は分かっている。当該エネルギーは、制御モジュール122に対する過電圧破損を引き起こし得る。
【0070】
制御モジュール122を当該過電圧破損から保護し、ブレーキ用モータ121が回生制動する時に生成されるエネルギーを回生するため、この実施の形態で提供される電気機械式ブレーキシステム(1)は、エネルギー回生回路(14)をさらに有してもよい。エネルギー回生回路(14)は、電力供給主回路(13)に対して並列に接続され得て、ブレーキ用モータ121と一緒に車両のホイールの側面に配置され得る。エネルギー回生回路(14)は、一方向導電素子D1を有し得る。
【0071】
一方向導電素子D1は、ダイオード、サイリスタ、トリオード又はMOSトランジスタに限定されないものの、主として、キャパシタをベースとする電源11が、エネルギー回生回路(14)を介してブレーキ用モータ121に電力を供給しないように構成されている。ブレーキ用モータ121が、逆起電力を生成するために回生制動されると、一方向導電素子D1は、ブレーキ用モータ121が回生制動される時に生成されるエネルギーを回生するためのエネルギー回生回路(14)を介してキャパシタをベースとする電源11を充電するために当該逆起電力を許容できる。その結果、制御モジュール122の過電圧破損が回避される。
【0072】
図4Aは、本発明の実施の形態による三相モータによって電力を回収することを概略的に示す(
図4A参照)。
【0073】
図4Aでは、ブレーキを解除するための命令に対する応答として、三相フルブリッジ駆動回路1223が、全てのMOSトランジスタGH1-GH3,GL1-GL3をターンオフすることによって電力をブレーキ用モータ121に供給することを停止できる。ブレーキ用モータ121は、逆起電力を生成するために機械式トランスミッション機構によって回生制動するように回転され得る。当該逆起電力は、キャパシタをベースとする電源11によって供給されるモータ入力電圧V1よりも高い。このとき、当該逆起電力として生成されたエネルギーが、それぞれのMOSトランジスタQH1-QH3,QL1-QL3の、エネルギー回生用のボディーダイオードを介してエネルギー回生回路(14)に入力できる。
【0074】
ブレーキを完全に解除するために電力をブレーキ用モータ121に供給することを停止する解決策が、本発明による1つの実施の形態であることを、当業者は分かっている。また、別の実施の形態では、運転者が、主ブレーキをゆっくりと解除するためにブレーキペダルを解除するか、又は駐車ブレーキを解除するためにパーキングスイッチを操作する時に、三相フルブリッジ駆動回路1223が、2つの相入力部によって電力をブレーキ用モータ121に供給できる。その結果、ブレーキをゆっくりと解除するための小さい正のトルクが出力されるように、ブレーキ用モータ121が駆動される。同時に、三相フルブリッジ駆動回路1223は、残りの1つの相を介して三相ブレーキ用モータ121から電力を回生できる。
【0075】
図4Bは、本発明の実施の形態による三相モータによって電力を回収することを概略的に示す(
図4B参照)。
【0076】
図4Bに示されているように、ブレーキを解除するための命令に対する応答として、三相フルブリッジ駆動回路1223が、U相の高圧側のトランジスタQH3とV相の低圧側のトランジスタQL2とを最初にターンオンし、U相の低圧側のトランジスタGL3とV相の高圧側のトランジスタGH2とをターンオフする。その結果、当該ブレーキをゆっくりと解除するための小さい正のトルクが出力されるように、電力が、ブレーキ用モータ121を駆動するためにU相を介して三相ブレーキ用モータ121に供給される。当該正のトルクの方向は、上記の順方向の回転と一致する。電気ブレーキ装置12の機械式トランスミッション機構が、当該正のトルクの下でブレーキ力を生成するためのブレーキディスクを押圧するためにブレーキパッドを押圧できる。
【0077】
同時に、電力供給に関わっていないW相のトランジスタGH1及びQL1は、全てオフ状態にある。機械式トランスミッション機構の稼働の下でブレーキ用モータ121によって生成される、キャパシタをベースとする電源11によって供給されるモータ入力電圧V1よりも高い逆起電力に対する応答として、電力が、W相の高圧側のトランジスタGH1のボディーダイオードを介して三相ブレーキ用モータ121から回生され得る。
【0078】
同様に、三相ブレーキ用モータ121は、3つの相入力部のうちの2つの相入力部によって交互に、電気ブレーキ装置12の電力供給主回路(13)を介してキャパシタをベースとする電源11から電力を取得できる。当該2回の電力の取得の間に、この実施の形態において提供されるエネルギー回生回路(14)は、電力供給に関わっていないブレーキ用モータ121の3つの相入力部のうちの1つの相入力部を交互に介して三相ブレーキ用モータ121から電力を回生できる。キャパシタをベースとする電源11を充電して、ブレーキ中に消費されるエネルギーを補償するため、ブレーキ用モータ121によって生成されるエネルギーが、エネルギー回生回路(14)を介してキャパシタをベースとする電源11に回生され得る。
【0079】
当該解決策によって車両にブレーキをかけ、2つの相入力部によって電力供給主回路(13)から電力を取得する一方で、残りの1つの相入力部によってブレーキ用モータ121から電力を回生することによって、運転者が主ブレーキをかける間にブレーキペダルを解除する速度に応じて、モータ121の減速度が減少され得る。その結果、ブレーキが速く解除されようと又は遅くされようと、いずれにしてもエネルギーが回生され得る。
【0080】
従来の技術における車両の走行用モータによって実行される車両の運動エネルギーを回生する回生ブレーキとは違って、
図1に示されたエネルギー回生回路(14)を有する電気機械式ブレーキシステム(1)は、当該ブレーキシステムの機械式トランスミッション機構に蓄積されたエネルギーを回生するための電気機械式ブレーキの原理に基づく。ブレーキ用モータ121が、逆起電力を生成するために回生制動する時に、エネルギー回生回路(14)上の過電流を回避するため、エネルギー回生回路(14)は、電流制限抵抗R10をさらに有してもよい。ブレーキ用モータ121が回生制動される時に生成されるエネルギーによって引き起こされる回生電流を制限するように、電流制限抵抗R10は構成され得る。
【0081】
電流制限抵抗R10の特定値は、エネルギー回生回路(14)上のそれぞれの回路ユニットによって決定され得る。不十分な抵抗を有する電流制限抵抗R10は、エネルギー回生回路(14)上のワイヤ又は一方向導電素子D1に対する過電流破損を引き起こし得る。反対に、過剰な抵抗を有する電流制限抵抗R10は、不十分な再充電電流を引き起こし得る。したがって、ブレーキ用モータ121が回生制動される時に生成されるエネルギーが適切な時間内に回生され得ない。その結果、制御モジュール122の過電圧破損が引き起こされる。また、過度な抵抗を有する電流制限抵抗R10は、より大きいエネルギー損失を引き起こし得る。その結果、エネルギー回生回路(14)のエネルギー回生効率が減少し、大量の熱が発生して、車両の放熱システム上の負荷が増大する。
【0082】
一方向導電素子D1を有するエネルギー回生回路(14)は、本発明の1つの実施の形態であることを、当業者は分かっている。本発明の別の実施の形態では、エネルギー回生回路(14)は、電圧調整要素でもよい。当該電圧調整要素は、限定しないもののDC-DCコンバータ53から構成される。
【0083】
図5は、本発明の実施の形態によるエネルギー回生回路(14)の概略図である(
図5参照)。
図5に示されているように、車両バッテリが、車両ブレーキ用の初期エネルギーを供給するための再充電部51として使用され得る。当該初期エネルギーは、DC-DC充電モジュール52によって電圧に変換された後にウルトラキャパシタ11を充電できる。ブレーキ力を生成するため、ウルトラキャパシタモジュール11は、制御モジュール122を介してブレーキ用モータ121に電気エネルギーを出力できる。
【0084】
ブレーキを解除するための命令に対する応答として、制御モジュール122は、ブレーキ用モータ121に給電することを停止できる。逆起電力を生成するため、ブレーキ用モータ121は、機械式トランスミッション機構によって回生制動するように回転され得る。当該逆起電力は、ウルトラキャパシタモジュール11によって供給されるモータ入力電圧V1(例えば、48V)よりも高い。エネルギー回生回路(14)のDC-DCコンバータ53の動作電圧の閾値は、ウルトラキャパシタモジュール11の最大動作電圧V1よりも大きくてもよい。モータ入力電圧V1よりも高い逆起電力に対する応答として、DC-DCコンバータ53は、ブレーキ用モータ121によって生成されたエネルギーを充電のためにウルトラキャパシタモジュール11に回生してもよく、又は車両の他の装置に電力を供給するために当該エネルギーを当該他の装置に転送してもよい。その結果、ブレーキ用モータ121が回生制動される時に生成されたエネルギーが回生され、制御モジュール122の過電圧破損が回避される。
【0085】
オプションとして、1つの実施の形態では、ウルトラキャパシタモジュール11の充電レベル、すなわちウルトラキャパシタモジュール11に充電されたエネルギー量が、エネルギー回生回路(14)を介して回生される実際に回生可能なエネルギーに近付けられる。特に、可能な回生エネルギーを概算した後に、再充電部51は、ウルトラキャパシタモジュール11を定格電圧(例えば、48V)まで充電しないで、回生エネルギー用に電圧マージンを維持してもよい。モータ入力電圧V1よりも高い逆起電力に対する応答として、DC-DCコンバータ53は、ブレーキ用モータ121によって生成されたエネルギーを回生用に回生してもよい。その結果、当該維持されている電圧マージンが、再充電部51のエネルギーを蓄積するために充電される。当該回生エネルギーは、電気ブレーキ装置12の全体に入力されるエネルギーに、対応する回生率を乗算することによって概算され得る。回生用に取得可能なエネルギーが存在しないならば、再充電部51は、ウルトラキャパシタモジュール11の電圧を48Vの定格電圧まで直接に充電できる。
【0086】
オプションとして、別の実施の形態では、エネルギー回生回路(14)を介して回生される最大に回生可能なエネルギーに相当するプリセットマージンを確保するように、ウルトラキャパシタモジュール11の充電レベルが設定される。ブレーキをかけることを示す制御命令に対する応答として、ウルトラキャパシタモジュール11は、ブレーキをかけるために電気ブレーキ装置12に電力を供給できる。このとき、エネルギーが、電気ブレーキ装置12に蓄積される。再充電部51は、ウルトラキャパシタモジュール11を充電する時にプリセットマージンを常に維持できる。当該プリセットマージンは、ブレーキ用モータ121からエネルギー回生回路(14)を介してウルトラキャパシタモジュール11に回生され得る最大に回生可能なエネルギーに相当し得る。特に、当該プリセットの実施の形態では、ウルトラキャパシタモジュール11の定格電圧は、48Vでもよく、電気ブレーキ装置12に入力される最大エネルギーが、回生中にウルトラキャパシタモジュール11を46Vから48Vまで充電できる。エネルギーが、電気ブレーキ装置12に蓄積されると、再充電部51によるウルトラキャパシタモジュール11の充電は、エネルギーを回生するためのマージンを維持するために46Vで常に停止され得る。
【0087】
本発明の別の実施の形態では、エネルギー回生回路(14)は、一方向導電素子D1と電圧調整要素とから構成され得る。当該電圧調整要素は、線形電圧レギュレータ54又はDC-DCコンバータ53でもよい。
【0088】
図6は、本発明の実施の形態によるエネルギー回生回路の概略図である(
図6参照)。
【0089】
図6に示されているように、一方向導電素子D1は、限定されないもののダイオード、サイリスタ、トリオード又はMOSトランジスタのうちの少なくとも1つの素子から構成される。キャパシタをベースとする電源11が、エネルギー回生回路(14)を介してブレーキ用モータ121に電力を供給することを阻止するように、一方向導電素子D1は主として構成されている。また、ブレーキ用モータ121が回生制動される時に生成されるエネルギーを回生するため、エネルギー回生回路(14)を介してキャパシタをベースとする電源11を充電するための逆起電力を許容するように、一方向導電素子D1は構成されている。その結果、制御モジュール122の過電圧破損が回避される。
【0090】
線形電圧レギュレータ54を電圧調整要素として例示する場合、線形電圧レギュレータ54は、電圧モードの電圧レギュレータ又は電流モードの電圧レギュレータでもよい。線形電圧レギュレータ54の動作電圧の閾値は、キャパシタをベースとする電源11の最大動作電圧V1(例えば、48V)よりも大きくてもよい。モータ入力電圧V1よりも高い逆起電力に対する応答として、線形電圧レギュレータ54は、ブレーキ用モータ121からの電圧をウルトラキャパシタモジュール11又は他の装置に適合できる。その結果、ブレーキ用モータ121が回生制動される時に生成されるエネルギーは有益に取得され、制御モジュール122に対する過電流破損が回避される。
【0091】
ブレーキ用モータ121が、逆起電力を生成するために回生制動する時に、エネルギー回生回路(14)上の電流が過剰になることを回避するため、エネルギー回生回路(14)は、ブレーキ用モータ121が回生制動する時に生成されるエネルギーによって引き起こされる回生電流を制限するための電流制限抵抗をさらに有してもよい。
【0092】
上記のように、ブレーキ用モータ121が回生制動する時に生成される逆起電力によって引き起こされる過電流破損を、制御モジュール122が受けることをさらに進歩させて回避するため、当該実施の形態によって提供された電気機械式ブレーキシステム(1)のパワースイッチアセンブリ123が、保護スイッチ機能を実装できる。
【0093】
図1に示されているように、保護スイッチアセンブリ123は、電力供給主回路(13)に直列に接続された2つのPチャネルMOSトランジスタQ7-Q8と1つのトランジスタT1とから構成され得る。トランジスタT1は、制御モジュール122の主制御部1221とPチャネルMOSトランジスタQ7-Q8のゲートとにそれぞれ接続され得る。
【0094】
ブレーキ用モータ121に電力を供給するため、キャパシタをベースとする電源11は、保護スイッチアセンブリ123を介してブレーキ用モータ121に電気接続され得る。さらに、電力供給主回路(13)が順方向に通電されているか否かを制御するように構成された保護スイッチアセンブリ123は、上記のパワースイッチアセンブリの基本機能を有し得る。
【0095】
パワースイッチアセンブリの機能を有する保護スイッチアセンブリ123は、本発明の要旨を公衆に明確に示し、且つ実際の実装を提供するものの、本発明の保護範囲を限定しないように主に構成された当該実施の形態によって提供される特定の解決手段にすぎないことを、当業者は分かっている。また、他の実施の形態では、同じ機能を達成するため、当業者は、独立したパワースイッチアセンブリと、独立した保護スイッチアセンブリとを提供できる。
【0096】
ブレーキ用モータ121によってブレーキアクチュエータに提供されたブレーキトルクを正確に制御するため、この実施の形態で提供された電気機械式ブレーキシステム(1)は、保護スイッチアセンブリ123をオン・オフするように制御するために制御モジュール122をさらに有してもよい。制御モジュール122は、主制御部1221、モータ駆動モジュール1222及び駆動ブリッジ回路1223を有し得る。
【0097】
主制御部1221は、保護スイッチアセンブリ123の、パワースイッチT1をオン又はオフするように構成されたパワースイッチT1に電気接続され得る。その結果、保護スイッチアセンブリ、すなわちパワースイッチアセンブリ123がオン又はオフされる。
【0098】
主制御部1221によって出力された制御信号を受信し、駆動ブリッジ回路1223内のそれぞれのMOSトランジスタのオン及びオフを制御するように、当該制御信号を駆動信号に変換するため、モータ駆動モジュール1222は、主制御部1221と駆動ブリッジ回路1223との間に直列に接続され得る。その結果、電力が、ブレーキ用モータ121に交互に供給されるように、ブレーキ用モータ121の3つの相入力部U,V,Wが制御される。
【0099】
保護スイッチアセンブリ、すなわちパワースイッチアセンブリ123は、モータ駆動モジュール1222を有効にするために電力供給主回路(13)の導通を制御するように構成されてもよい。モータ駆動モジュール1222は、正のトルクを出力する正の回転を実行するためにブレーキ用モータ121を制御するように構成されてもよい。
【0100】
さらに、ブレーキ用モータ121の回生制動する回転によって生成される逆起電力のような異常信号に対する応答として、制御モジュール122は、モータ121とキャパシタをベースとする電源11との間の電気接続を遮断するために保護スイッチアセンブリ123をさらに進歩させて制御してもよい。
【0101】
図7A-7Bは、本発明の実施の形態による保護スイッチアセンブリのポートを概略的に示す(
図7A-7B参照)。
【0102】
図7A-7Bに示されているように、保護スイッチアセンブリ123のPチャネルMOSトランジスタQ7-Q8の導通状態では、ソースとゲートとの間の電圧差は、12Vのような特定の電圧よりも大きい。
【0103】
図7Aに示されているように、トランジスタQ7のソースQ7_Sが、グランドGNDに対して正である場合に、すなわちキャパシタをベースとする電源11が、正の電圧を出力する場合に、制御モジュール122の主制御部1221が、トランジスタT1の導通を制御するために正常に動作できる。このとき、トランジスタQ7のソースQ7_Sは、トランジスタQ7及びQ8のゲートQ7_G/Q8_Gに対して正であり、トランジスタQ7をオンにする。トランジスタQ7のドレインQ7_Dの電圧は、Q7_Sの入力電圧に等しく、Q7_Dの電圧に等しいトランジスタQ8のドレインQ8_Dの電圧をハイにセットする。電流が、トランジスタQ8のボディーダイオードに通電し、トランジスタQ8のソースQ8_Sの電圧をハイにセットする。このとき、Q8_Sの電圧は、Q7及びQ8のゲートQ7_G/Q8_Gよりも高く、トランジスタQ8をオンにする。したがって、電流が、入力端子Q7_Sからブレーキ用モータ121に通電できる。
【0104】
図7Bに示されているように、入力端子Q7_Sが、グランドGNDに対して負である場合に、制御モジュール122の主制御部1221が、動作し得ず、トランジスタT1をオフにする。Q7_Sは、Q7_G/Q8_Gに対して負であり、トランジスタQ7をオフにする。したがって、電流が通電し得ない。その結果、回生制動接続が阻止される。
【0105】
さらに、上記の反回生制動接続機能に加えて、トランジスタQ7及びQ8によって結合された保護スイッチアセンブリ123は、ハイサイドスイッチをさらに構成できる。当該システムに、過電流、過電圧、短絡等のような異常がある場合に、当該ハイサイドスイッチは、主制御部1221によってトランジスタT1をオフにできる。その結果、ブレーキ用モータ121とキャパシタをベースとする電源11との間の電気接続を遮断して当該回路を保護するため、トランジスタQ7及びQ8がオフにされる。
【0106】
本発明の思想をより明確に開示して、本発明の技術的な解決手段を理解することを公衆に容易にするため、ブレーキをかけ、エネルギーを回生し、電気機械式ブレーキシステムを使用する実施の形態も、ここで説明する。当該電気機械式ブレーキシステムは、乗用自動車又は大型トラックに使用され得る。
【0107】
図8は、本発明の実施の形態による、複数の電気ブレーキ装置12を有する電気機械式ブレーキシステム(1)を概略的に示す(
図8参照)。
【0108】
図8に示されているように、電気機械式ブレーキシステム(1)内の複数の電気ブレーキ装置12が、車両の複数のホイールの端部に配置され得る。その結果、より均一なブレーキ力が提供される。一般に、電気機械式ブレーキシステム(1)は、前車軸と後車軸とにそれぞれ対応する2つの制御装置110を有し得る。それぞれの制御装置110は、制御部112と、ブレーキエネルギーを供給するためのキャパシタをベースとする電源11とを有し得る。この場合、キャパシタをベースとする電源11は、上記の実施の形態に記載された任意の構成を使用できる。
【0109】
図9は、本発明の実施の形態による電気機械式ブレーキシステムによって実行されるブレーキ動作のフローチャートである(
図9参照)。
【0110】
図9に示されているように、運転者が、ブレーキペダルを踏むと、ブレーキ要求を示す命令を受信したことに対する応答として、制御モジュール122の主制御部1221が、パワースイッチT1をオンにするために制御信号を出力できる。
【0111】
このとき、トランジスタQ7のソースQ7_Sが、
図7のトランジスタQ7及びQ8のゲートQ7_G/Q8_Gに対して正である。トランジスタQ7のドレインQ7_Dの電圧は、Q7_Sの入力電圧に等しく、Q7_Dの電圧に等しいトランジスタQ8のドレインQ8_Dの電圧をハイにセットする。電流が、トランジスタQ8のボディーダイオードに通電し、トランジスタQ8のソースQ8_Sの電圧をハイにセットする。このとき、Q8_Sの電圧は、トランジスタQ7及びQ8のゲートQ7_G/Q8_Gよりも高く、トランジスタQ8をオンにする。保護スイッチアセンブリ123が、端子V1の電圧をハイにセットするためにオンにされる。電力が、ブレーキ用モータ121に供給されるように、電流が、入力端子Q7_Sからブレーキ用モータ121に通電できる。
【0112】
その一方で、制御モジュール122の主制御部1221は、モータ駆動モジュール1222を有効にするために制御信号をさらに出力できる。
【0113】
主制御部1221によって出力される制御信号を受信したことに対する応答として、モータ駆動モジュール1222は、駆動ブリッジ回路1223内のそれぞれのMOSトランジスタのオン及びオフを制御するために当該制御信号を駆動信号に変換できる。その結果、電力が、ブレーキ用モータ121に交互に供給されるように、ブレーキ用モータ121の3つの相入力部U,V,Wが制御される。
【0114】
ブレーキ用モータ121は、3つの相入力部U,V,Wの駆動制御の下で順方向に回転され得る。その結果、電気アクチュエータ31が操作され、機械式トランスミッション機構が駆動されるように、対応する正のトルクが出力される。当該機械式トランスミッション機構は、正のトルクの駆動の下で、ブレーキキャリパーがホイールのブレーキディスクを挟圧させ得る。その結果、ブレーキ力が生成される。
【0115】
このとき、車両の速度が、ブレーキ力によって遅くされ得て、当該機械式トランスミッション機構と当該ブレーキキャリパーとが、ブレーキ力をモータからブレーキディスクに伝達中にエネルギーの一部を蓄積できる。
【0116】
図10は、本発明の別の実施の形態による電気機械式ブレーキシステムによって実行されるエネルギー回生のフローチャートである(
図10参照)。
【0117】
図10に示されているように、運転者が、ブレーキペダルを解除すると、ブレーキ要求を解除するか又は減らすことに対する応答として、制御モジュール122の主制御部1221が、ブレーキ力を維持するために必要なトルクよりも低いトルクを要求するために制御信号をモータ駆動モジュール1222に出力できる。その結果、モータが回生制動するように、当該機械式トランスミッション機構と当該キャリパーとに蓄積された機械エネルギーが、当該モータを回転させる。これにより、生成された逆起電力が、エネルギー回生回路(14)を介してウルトラキャパシタモジュール11を再充電できる。したがって、エネルギーの再生利用が達成される。
【0118】
或る緊急の状況では、制御モジュール122の主制御部1221が、ブレーキ用モータ121に電力を供給することを直接に停止できる。その一方で、三相フルブリッジ駆動回路の3つの相入力部U,V,Wが、ブレーキ用モータ121の駆動を停止してもよい。ブレーキ用モータ121は、正のトルクを当該機械式トランスミッション機構に出力することを停止できる。当該機械式トランスミッション機構は、ブレーキ用モータ121によって供給される付勢力を失くすことによってブレーキキャリパーを解除できる。
【0119】
このとき、ブレーキ用モータ121は、当該機械式トランスミッション機構の効果の下で回生制動するように回転され得る。この場合、ブレーキ用モータ121の回転速度が、ブレーキが印加される時に生成されるブレーキ力に比例し得る。すなわち、ブレーキをかけている間に印加されるブレーキ力が大きい程、ブレーキが解除される時の反発力がより大きく、これに応じて当該モータは、より速く回生制動する。
【0120】
ブレーキ用モータ121が回生制動される時に、エネルギーが、制御モジュール122にわたって電圧上昇を引き起こし得る逆起電力として生成され得る。
【0121】
このとき、制御モジュール122の主制御部1221が、モータ駆動モジュール1222を有効にするために制御信号を出力できる。
【0122】
主制御部1221によって出力される当該制御信号を受信したことに対する応答として、モータ駆動モジュール1222は、駆動ブリッジ回路1223内のそれぞれのMOSトランジスタのオン及びオフを制御するために当該制御信号を駆動信号に変換できる。その結果、電力が、電力の供給に関与しない三相ブレーキ用モータ121の3つの相入力部のうちの1つの相入力部を交互に介してこの三相ブレーキ用モータ121から回生されるように、3つの相入力部U,V,Wが制御される。
【0123】
ブレーキ用モータ121が回生制動される時に逆起電力として生成されるエネルギーは、エネルギー回生回路(14)を介してキャパシタをベースとする電源11に回生され得る。
【0124】
特に、エネルギー回生回路(14)は、一方向導電素子D1から構成され得る。この一方向導電素子D1は、ダイオード、サイリスタ、トリオード又はMOSトランジスタのうちの少なくとも1つの素子に限定されないものの、主として、キャパシタをベースとする電源11が、ブレーキ用モータ121に電力を供給しないように構成されている。ブレーキ用モータ121が、逆起電力を生成するために回生制動される場合、ブレーキ用モータ121が回生制動される時に生成されるエネルギーを回生するために、当該逆起電力によってキャパシタをベースとする電源11を充電するように、一方向導電素子D1は、さらに構成され得る。
【0125】
ブレーキ用モータ121が逆起電力を生成するために回生制動する時に、エネルギー回生回路(14)上での過電流を阻止するため、当該電流回生回路は、電流制限抵抗R10をさらに有してもよい。ブレーキ用モータ121が回生制動する時に生成されるエネルギーによって引き起こされる回生電流の流れを制限するように、電流制限抵抗R10は構成され得る。
【0126】
電流制限抵抗R10の特定の値が、エネルギー回生回路(14)上のそれぞれの回路ユニットの電流容量によって決定され得ることを、当業者は分かっている。不十分な抵抗を有する電流制限抵抗R10が、エネルギー回生回路(14)上のワイヤ又は一方向導電素子D1に対する過電流破損を引き起こし得る。反対に、過剰な抵抗を有する電流制限抵抗R10は、不十分な再充電の流れを引き起こし得る。このため、ブレーキ用モータ121が回生制動する時に生成されるエネルギーが、適切な期間内に回生され得ない。その結果、制御モジュール122の過電圧破損が引き起こされる。
【0127】
さらに、過剰な抵抗を有する電流制限抵抗R10は、さらなるエネルギー損失をさらに引き起こし得る。その結果、エネルギー回生回路(14)のエネルギー回生率が低下し、車両の放熱システムに対する負荷を増大させる大量の熱が発生する。
【0128】
ブレーキ用モータ121が回生制動する時に生成される過渡的な逆起電力によって引き起こされる過電圧破損から制御モジュール122を保護するため、当該実施の形態によって提供される電気機械式ブレーキシステム(1)のパワースイッチアセンブリ123は、保護スイッチ機能をさらに実装してもよい。
【0129】
図1に示されているように、保護スイッチアセンブリ123は、電力供給主回路(13)に直列に接続された2つのPチャネルMOSトランジスタQ7-Q8と1つのトランジスタT1とを有し得る。トランジスタT1は、制御モジュール122の主制御部1221とPチャネルMOSトランジスタQ7-Q8のゲートとにそれぞれ接続され得る。
【0130】
ブレーキ用モータ121に電力を供給するため、キャパシタをベースとする電源11は、保護スイッチアセンブリ123を介してこのブレーキ用モータ121に電気接続され得る。電力供給主回路(13)が順方向に通電されているか否かを制御するように構成された保護スイッチアセンブリ123は、上記のパワースイッチアセンブリの基本機能も有し得る。
【0131】
図7Bに示されているように、入力端子Q7_Sが、グランドGNDに対して負である場合に、制御モジュール122の主制御部1221が、動作し得ず、トランジスタT1をオフにする。Q7_Sは、Q7_G/Q8_Gに対して負であり、トランジスタQ7をオフにする。したがって、電流が通電し得ない。その結果、回生制動接続が阻止される。
【0132】
パワースイッチアセンブリの機能を有する保護スイッチアセンブリ123は、本発明の要旨を公衆に明確に示し、且つ実際の実装を提供するものの、本発明の保護範囲を限定しないように主に構成された当該実施の形態によって提供される特定の解決手段にすぎないことを、当業者は分かっている。また、他の実施の形態では、同じ機能を達成するため、当業者は、独立したパワースイッチアセンブリと、独立した保護スイッチアセンブリとを提供できる。
【0133】
上記の事項は、任意の当業者が当該事項のものを製造又は使用することを可能にするように記載されている。当該事項に対する様々な変更が、当業者にとって自明であり、ここで規定された一般的な原理は、当該事項の思想又は範囲から外れることなしに他のバリエーションに適用され得る。したがって、当該事項は、上記の事例及び構成に限定しようとするものではなく、上記の原理及び新規の特徴の最も広い範囲に適合する。
【符号の説明】
【0134】
1 電気機械式ブレーキシステム
11 キャパシタをベースとする電源
C1-Cn キャパシタ部
110 制御装置
112 制御部
12 電気ブレーキ装置
121 ブレーキ用モータ
122 制御モジュール
1221 主制御部
1222 モータ駆動モジュール
1223 駆動ブリッジ回路
1224 電流サンプリング回路
123 パワースイッチアセンブリ
13 電力供給主回路
14 エネルギー回生回路
D1 一方向導電素子
R10 電流制限抵抗
T1 トランジスタ
Q7-Q8 PMOSトランジスタ
V1 モータ入力電圧
GND グランド
QH1-QH3 MOSトランジスタ
QL1-QL3 MOSトランジスタ
31 電気アクチュエータ
32 シャフト
33 機械式トランスミッション機構
34 ブレーキパッド
51 再充電部
52 DC-DC充電モジュール
53 DC-DCコンバータ
54 線形電圧レギュレータ
Q7_S Q7のソース
Q8_S Q8のソース
Q7_D/Q8_D Q7及びQ8のドレイン
Q7_G/Q8_G Q7及びQ8のゲート
G_TH T1のベース
【国際調査報告】