(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-20
(54)【発明の名称】ラマン分光法に基づいて生物学的生成物を同定するための構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/65 20060101AFI20221213BHJP
【FI】
G01N21/65
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523467
(86)(22)【出願日】2020-10-23
(85)【翻訳文提出日】2022-05-09
(86)【国際出願番号】 US2020056961
(87)【国際公開番号】W WO2021081263
(87)【国際公開日】2021-04-29
(32)【優先日】2020-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】500049716
【氏名又は名称】アムジエン・インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソト,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】メリエッジ,デイビッド
【テーマコード(参考)】
2G043
【Fターム(参考)】
2G043AA04
2G043BA16
2G043EA03
2G043FA06
2G043KA01
2G043KA09
2G043NA01
2G043NA02
(57)【要約】
ラマン分光法に基づいて生物学的生成物を同定するための構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置及び関連する生物学的分析法が記載される。プロセッサ及びスキャナを有する構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置のコンピューターメモリに、生物学的分類モデル構成がロードされる。生物学的分類モデル構成は、スキャナによってスキャンされた生物学的生成物試料を定義するラマンベーススペクトルのデータセットを受信するように構成された生物学的分類モデルを含む。スペクトル前処理アルゴリズムが実行され、ラマンベーススペクトルのデータセットのスペクトルの不一致を縮小する。生物学的分類モデルは、ラマンベーススペクトルのデータセットに基づいて、及び(1)Q残余誤差、又は(2)生物学的分類モデルのあてはめの要約値のうちの少なくとも1つを縮小するように選択された分類コンポーネントに更に基づいて、生物学的生成物タイプを同定する。生物学的分類モデル構成は、その他の構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置へと転送可能であり、及びこれにロード可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラマン分光法に基づいて生物学的生成物を同定するための構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置であって、
ハンドヘルド操作用に適合された第1のハウジング、
前記第1のハウジングによって保持される第1のスキャナ、
前記第1のスキャナに通信可能に連結された第1のプロセッサ、及び
前記第1のプロセッサに通信可能に連結された第1のコンピューターメモリを含み、
前記第1のコンピューターメモリは生物学的分類モデル構成をロードするように構成され、前記生物学的分類モデル構成は生物学的分類モデルを含み、前記生物学的分類モデルは前記第1のプロセッサ上で実行されるように構成され、前記第1のプロセッサは、(1)前記第1のスキャナによってスキャンされた第1の生物学的生成物試料を定義する第1のラマンベーススペクトルのデータセットを受信し、(2)前記生物学的分類モデルを用いて、前記第1のラマンベーススペクトルのデータセットに基づいて生物学的生成物タイプを同定するように構成され、
前記生物学的分類モデル構成は、スペクトル前処理アルゴリズムを更に含み、前記第1のプロセッサは、前記第1のラマンベーススペクトルのデータセットが前記第1のプロセッサによって受信された時に前記スペクトル前処理アルゴリズムを実行して、前記第1のラマンベーススペクトルのデータセットのスペクトルの不一致を縮小するように構成され、
前記生物学的分類モデルは、(1)前記生物学的分類モデルのQ残余誤差、又は(2)前記生物学的分類モデルのあてはめの要約値のうちの少なくとも1つを縮小するように選択された分類コンポーネントを含み、前記生物学的分類モデルは、前記分類コンポーネントに基づいて、前記第1の生物学的生成物試料の前記生物学的生成物タイプを同定するように構成される、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置。
【請求項2】
前記生物学的分類モデル構成は、第2の構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置へと電子的に転送可能であり、前記第2の構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置は、
ハンドヘルド操作用に適合された第2のハウジング、
前記第2のハウジングに連結された第2のスキャナ、
前記第2のスキャナに通信可能に連結された第2のプロセッサ、及び
前記第2のプロセッサに通信可能に連結された第2のコンピューターメモリを含み、
前記第2のコンピューターメモリは前記生物学的分類モデル構成をロードするように構成され、前記生物学的分類モデル構成は前記生物学的分類モデルを含み、前記生物学的分類モデルは前記第2のプロセッサ上で実行されるように構成され、前記第2のプロセッサは、(1)前記第2のスキャナによってスキャンされた第2の生物学的生成物試料を定義する第2のラマンベーススペクトルのデータセットを受信し、(2)前記生物学的分類モデルを用いて、前記第2のラマンベーススペクトルのデータセットに基づいて前記生物学的生成物タイプを同定するように構成され、
前記第2の生物学的生成物試料は、前記生物学的生成物タイプの新規試料である、請求項1に記載の構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置。
【請求項3】
前記スペクトルの不一致は、前記第1のラマンベーススペクトルのデータセットと1つ以上の対応するその他のハンドヘルド式生物学的分析装置の1つ以上のその他のラマンベーススペクトルのデータセットとの間の分析装置間のスペクトルの不一致であり、前記1つ以上のその他のラマンベーススペクトルのデータセットのそれぞれは、前記生物学的生成物タイプを表し、
前記スペクトル前処理アルゴリズムは、前記第1のラマンベーススペクトルのデータセットと前記1つ以上のその他のラマンベーススペクトルのデータセットとの間の前記分析装置間のスペクトルの不一致を縮小するように構成される、請求項1に記載の構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置。
【請求項4】
前記スペクトル前処理アルゴリズムは、
前記第1のラマンベーススペクトルのデータセットに導関数変換を適用して、修正ラマンベーススペクトルのデータセットを生成することと、
前記修正ラマンベーススペクトルのデータセットをラマンシフト軸全体にわたって整列させることと、
前記修正ラマンベーススペクトルのデータセットをラマン強度軸全体にわたって正規化することと、を含む、請求項3に記載の構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置。
【請求項5】
前記導関数変換は、前記ラマンシフト軸全体にわたる11~15ラマンシフト値の連続するグループのラマン重み付き平均を決定することと、前記ラマンシフト軸全体にわたるこれらのラマン重み付き平均の対応する導関数を決定することと、を含む、請求項4に記載の構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置。
【請求項6】
前記分類コンポーネントは、(1)前記生物学的分類モデルの前記Q残余誤差、及び(2)前記生物学的分類モデルの前記あてはめの要約値の両方を縮小するように選択される、請求項1に記載の構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置。
【請求項7】
前記生物学的分類モデルは、第2の分類コンポーネントを更に含み、前記生物学的分類モデルは、前記分類コンポーネント及び前記第2の分類コンポーネントに基づいて、前記第1の生物学的生成物試料の前記生物学的生成物タイプを同定するように構成される、請求項1に記載の構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置。
【請求項8】
前記生物学的分類モデルは、主要コンポーネント分析(PCA)モデルとして実装される、請求項1に記載の構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置。
【請求項9】
前記分類コンポーネントは、前記PCAモデルの第1の主要コンポーネントである、請求項8に記載の構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置。
【請求項10】
前記コンピューターメモリは新規の生物学的分類モデルをロードするように構成され、前記新規の生物学的分類モデルは更新された分類コンポーネントを含む、請求項1に記載の構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置。
【請求項11】
前記生物学的分類モデル構成は、拡張マークアップ言語(XML)フォーマットで実装される、請求項1に記載の構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置。
【請求項12】
前記生物学的生成物タイプは治療生成物のものである、請求項1に記載の構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置。
【請求項13】
前記生物学的生成物タイプは、前記生物学的生成物タイプを有する生物学的生成物の製造中に前記生物学的分類モデルによって同定される、請求項1に記載の構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置。
【請求項14】
生物学的分類モデルは、前記分類コンポーネントに基づいて、前記生物学的生成物タイプを有する前記第1の生物学的生成物試料を、異なる生物学的生成物タイプを有する異なる生物学的生成物試料と識別するように構成される、請求項1に記載の構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置。
【請求項15】
前記生物学的生成物タイプ及び前記異なる生物学的生成物タイプは、それぞれ同じ又は類似のラマンスペクトル範囲内に個別の局部的特徴を有する、請求項14に記載の構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置。
【請求項16】
前記生物学的分類モデルは、前記Q残余誤差又は前記あてはめの要約値が閾値を満たす時に、前記分類コンポーネントに基づいて、前記第1の生物学的生成物試料の前記生物学的生成物タイプを同定するように構成される、請求項1に記載の構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置。
【請求項17】
前記生物学的分類モデルは、前記閾値に基づいて合否決定を出力する、請求項16に記載の構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置。
【請求項18】
前記生物学的分類モデルは、前記構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置に対して遠隔である遠隔プロセッサによって生成される、請求項1に記載の構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置。
【請求項19】
ラマン分光法に基づいて生物学的生成物を同定するための生物学的分析法であって、
第1のプロセッサ及び第1のスキャナを有する第1の構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置の第1のコンピューターメモリに、生物学的分類モデルを含む生物学的分類モデル構成をロードすることと、
前記生物学的分類モデルによって、前記第1のスキャナによってスキャンされた第1の生物学的生成物試料を定義する第1のラマンベーススペクトルのデータセットを受信することと、
前記生物学的分類モデルのスペクトル前処理アルゴリズムを実行して、前記第1のラマンベーススペクトルのデータセットのスペクトルの不一致を縮小することと、
前記生物学的分類モデルを用いて、前記第1のラマンベーススペクトルのデータセットに基づいて生物学的生成物タイプを同定することと、を含み、
前記生物学的分類モデルは、(1)前記生物学的分類モデルのQ残余誤差、又は(2)前記生物学的分類モデルのあてはめの要約値のうちの少なくとも1つを縮小するように選択された分類コンポーネントを含み、前記生物学的分類モデルは、前記分類コンポーネントに基づいて、前記第1の生物学的生成物試料の前記生物学的生成物タイプを同定するように構成される、生物学的分析法。
【請求項20】
前記生物学的分類モデル構成は、第2の構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置へと電子的に転送可能であり、前記生物学的分析法は、
第2のプロセッサ及び第2のスキャナを有する第2の構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置の第2のコンピューターメモリに、前記生物学的分類モデルを含む前記生物学的分類モデル構成をロードすることと、
前記生物学的分類モデルによって、前記第2のスキャナによってスキャンされた第2の生物学的生成物試料を定義する第2のラマンベーススペクトルのデータセットを受信することと、
前記生物学的分類モデルの前記スペクトル前処理アルゴリズムを実行して、前記第2のラマンベーススペクトルのデータセットの第2のスペクトルの不一致を縮小することと、
前記生物学的分類モデルを用いて、前記第2のラマンベーススペクトルのデータセットに基づいて前記生物学的生成物タイプを同定することと、を更に含み、
前記第2の生物学的生成物試料は、前記生物学的生成物タイプの新規試料である、請求項19に記載の生物学的分析法。
【請求項21】
前記スペクトルの不一致は、前記第1のラマンベーススペクトルのデータセットと1つ以上の対応するその他のハンドヘルド式生物学的分析装置の1つ以上のその他のラマンベーススペクトルのデータセットとの間の分析装置間のスペクトルの不一致であり、前記1つ以上のその他のラマンベーススペクトルのデータセットのそれぞれは、前記生物学的生成物タイプを表し、
前記スペクトル前処理アルゴリズムは、前記第1のラマンベーススペクトルのデータセットと前記1つ以上のその他のラマンベーススペクトルのデータセットとの間の前記分析装置間のスペクトルの不一致を縮小するように構成される、請求項19に記載の生物学的分析法。
【請求項22】
前記スペクトル前処理アルゴリズムは、
前記第1のラマンベーススペクトルのデータセットに導関数変換を適用して、修正ラマンベーススペクトルのデータセットを生成することと、
前記修正ラマンベーススペクトルのデータセットをラマンシフト軸全体にわたって整列させることと、
前記修正ラマンベーススペクトルのデータセットをラマン強度軸全体にわたって正規化することと、を含む、請求項21に記載の生物学的分析法。
【請求項23】
前記導関数変換は、前記ラマンシフト軸全体にわたる11~15ラマンシフト値の連続するグループのラマン重み付き平均を決定することと、前記ラマンシフト軸全体にわたるこれらのラマン重み付き平均の対応する導関数を決定することと、を含む、請求項22に記載の生物学的分析法。
【請求項24】
前記分類コンポーネントは、(1)前記生物学的分類モデルの前記Q残余誤差、及び(2)前記生物学的分類モデルの前記あてはめの要約値の両方を縮小するように選択される、請求項19に記載の生物学的分析法。
【請求項25】
前記生物学的分類モデルは、第2の分類コンポーネントを更に含み、前記生物学的分類モデルは、前記分類コンポーネント及び前記第2の分類コンポーネントに基づいて、前記第1の生物学的生成物試料の前記生物学的生成物タイプを同定するように構成される、請求項19に記載の生物学的分析法。
【請求項26】
前記生物学的分類モデルは、主要コンポーネント分析(PCA)モデルとして実装される、請求項19に記載の生物学的分析法。
【請求項27】
前記分類コンポーネントは、前記PCAモデルの第1の主要コンポーネントである、請求項26に記載の生物学的分析法。
【請求項28】
前記第1のコンピューターメモリは新規の生物学的分類モデルをロードするように構成され、前記新規の生物学的分類モデルは更新された分類コンポーネントを含む、請求項19に記載の生物学的分析法。
【請求項29】
前記生物学的分類モデル構成は、拡張マークアップ言語(XML)フォーマットで実装される、請求項19に記載の生物学的分析法。
【請求項30】
前記生物学的生成物タイプは治療生成物のものである、請求項19に記載の生物学的分析法。
【請求項31】
前記生物学的生成物タイプは、前記生物学的生成物タイプを有する生物学的生成物の製造中に前記生物学的分類モデルによって同定される、請求項19に記載の生物学的分析法。
【請求項32】
前記生物学的分類モデルは、前記分類コンポーネントに基づいて、前記生物学的生成物タイプを有する前記第1の生物学的生成物試料を、異なる生物学的生成物タイプを有する異なる生物学的生成物試料と識別するように構成される、請求項19に記載の生物学的分析法。
【請求項33】
前記生物学的生成物タイプ及び前記異なる生物学的生成物タイプは、それぞれ同じ又は類似のラマンスペクトル範囲を有する、請求項32に記載の生物学的分析法。
【請求項34】
前記生物学的分類モデルは、前記Q残余誤差又は前記あてはめの要約値が閾値を満たす時に、前記分類コンポーネントに基づいて、前記第1の生物学的生成物試料の前記生物学的生成物タイプを同定するように構成される、請求項19に記載の生物学的分析法。
【請求項35】
前記生物学的分類モデルは、前記閾値に基づいて合否決定を出力する、請求項34に記載の生物学的分析法。
【請求項36】
前記生物学的分類モデルは、前記構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置に対して遠隔である遠隔プロセッサによって生成される、請求項19に記載の生物学的分析法。
【請求項37】
構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置の1つ以上のプロセッサによって実行されると、前記構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置の前記1つ以上のプロセッサに、
スキャナを有する前記構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置のコンピューターメモリに、生物学的分類モデル構成をロードすることであって、前記生物学的分類モデル構成は生物学的分類モデルを含む、ことと、
前記生物学的分類モデルによって、前記スキャナによってスキャンされた生物学的生成物試料を定義するラマンベーススペクトルのデータセットを受信することと、
前記生物学的分類モデルのスペクトル前処理アルゴリズムを実行して、前記ラマンベーススペクトルのデータセットのスペクトルの不一致を縮小することと、
前記生物学的分類モデルを用いて、前記ラマンベーススペクトルのデータセットに基づいて生物学的生成物タイプを同定することと、を行わせ、
前記生物学的分類モデルは、(1)前記生物学的分類モデルのQ残余誤差、又は(2)前記生物学的分類モデルのあてはめの要約値のうちの少なくとも1つを縮小するように選択された分類コンポーネントを含み、前記生物学的分類モデルは、前記分類コンポーネントに基づいて、前記生物学的生成物試料の前記生物学的生成物タイプを同定するように構成される、ラマン分光法に基づいて生物学的生成物を同定するための命令を記憶する有形の非一時的コンピューター可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国仮特許出願第62/925,893号(2019年10月25日出願)及び米国仮特許出願第63/043,976号(2020年6月25日出願)の利益を主張するものである。上記の仮特許出願の各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、広義には、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置に関し、より具体的には、ラマン分光法に基づいて生物学的生成物を同定又は分類するための構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置を使用するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
薬学的生成物及びバイオテクノロジー生成物の開発及び製造は、一般的に、こうした生成物の開発に用いられる原材料の測定又は同定を必要とする。生成物の同定試験の目的は、生成物の正体を保証することである。同定試験が必要な状況としては、臨床現場への生成物の配布、導入試験(import testing)、及びネットワーク所在地間の移送が挙げられる。更に、生物学的生成物の測定又は同定は、品質基準及び/又は法的要件を満たすために、開発又は製造プロセスの質、及びひいては最終生成物自体の質を保証するために重要となり得る。
【0004】
生物学的生成物の測定及び同定にラマン分光法を使用することは、比較的新しい発想である。一般的に、ラマン分光法は、原材料又は生成物の化学的又は生物学的構造を精査するために用いられ得る。ラマン分光法は、光と生成物又は材料との相互作用、例えば光と生成物又は材料の生物学的属性又は化学結合との相互作用を測定する、非破壊的な化学的又は生物学的分析技術である。ラマン分光法は、試料物質又は生成物の分子が高強度レーザー光源からの入射光を散乱させる光散乱技術を提供する。一般的には、散乱光の大半はレーザー源と同じ波長(色)であり、有用な情報を提供しない。これをレイリー散乱という。しかし、少量の光は、分析対象の材料又は生成物の化学構造又は分子構造によって生じる様々な波長(色)で散乱する。これをラマン散乱といい、分析対象の材料又は生成物のラマンベースのデータを生成するために分析又はスキャンされ得る。
【0005】
ラマン散乱の分析により、その化学構造及び/若しくは正体、汚染及び不純物、相及び多形性(polymorphy)、結晶性、固有応力/歪み、並びに/又は分子間相互作用などを含む材料又は生成物の特性に関する詳細な情報を得ることができる。こうした詳細情報は、材料のラマンスペクトル中に存在し得る。ラマンスペクトルは、視覚化されて、様々な光波長にわたる多くのピークを示すことができる。ラマンスペクトルは、ラマン散乱光の強度及び波長位置を示すことができる。各ピークは、分析対象の材料又は生成物に関連する特定の分子結合の振動に対応し得る。
【0006】
一般的には、ラマンスペクトルは、特定の材料、分子、又は生成物に関する異なる化学的又は生物学的「フィンガープリント」を提供し、特定の材料、分子、又は生成物の正体を検証し、及び/或いはこれをその他のものと識別するために用いられ得る。更に、材料をそのラマンスペクトルに基づいて同定するためにラマンスペクトルライブラリが用いられることが多い。すなわち、測定対象の所与の材料又は生成物のラマンスペクトルを有するマッチを見つけ、それにより所与の材料又は生成物を同定するために、何千ものスペクトルを含むラマンスペクトルライブラリを検索することができる。
【0007】
原材料及び生成物を同定するためにラマン分光法を実装した分析装置が現存する。例えば、Thermo Fisher Scientific Inc.は、TruScan(商標)RM Handheld Raman Analyzerとして識別され得るラマンベースのハンドヘルド式分析装置を提供している。しかしながら、こうした既存のスキャナの使用は、医薬及びバイオテクノロジー材料又は生成物などの材料及び/又は生成物、特に類似するラマンスペクトルを有するもののスキャンにおける不一致のために問題となる場合がある。例えば、類似生成物のラマンスペクトル間の不一致のために、既存のラマンベースのハンドヘルド式分析装置は、例えば医薬又はバイオテクノロジー生成物に関してタイプIエラー(偽陽性)又はタイプIIエラー(偽陰性)を出力することにより、同定を誤る場合がある。不一致又はエラーの主な原因は、ソフトウェア、製造、経年数、コンポーネント、動作環境(例えば温度)のうちいずれかにおけるばらつきなどの差異、又はラマンベース分析装置のその他のこうした差異を含むラマンベース分析装置間の差異に由来する。
【0008】
既知のアプローチは、一般的には、ハンドヘルド式分析装置間の不一致又はばらつきによって生じるエラーに対処することに失敗する。例えば、既知の一アプローチにおいては、数個の分析装置からのデータを用いて、数個の分析装置にわたって使用するための静的数学方程式(static mathematical equation)を展開することができる。しかしながら、一般的に、このアプローチの問題は、機器の性能が経時的に変化する場合があることである。また、多くの場合、これらの機器の全てにアクセスするルーチンを有することは、非実用的又は不可能である。特に、静的数学方程式を構築するためのデータは、特に新しい分析装置の場合、製造者が新しい分析装置の新しい規格(specification)を事前に提供することができないため、一般的に入手することができない。これにより、特にこうした新規の分析装置は経時的に開発されるため、また、様々な分析装置のタイプが正確であるために、静的数学方程式の開発が一般的に多数の試料を必要とすることを考えると、静的数学方程式を開発及び保持することが妨げられる。更に、新規の分析装置のこうした新規の規格なしでは、新規の分析装置上で静的数学方程式を実行した場合に静的数学方程式が互換性となることができない。更に、例えば、特に様々な製造者間の分析装置の製造又は品質管理における差異によって、静的数学方程式のばらつきに対する許容差が過剰となり、それにより、それ自体生物学的生成物の正確な測定及び/又は同定に関するばらつきが過剰な静的数学方程式が生成される。
【0009】
第2の既知のアプローチにおいては、所与の分析装置からのデータが標準化され、所与の分析装置のグループに関して子-親機器マップが生成される。しかし、子-親機器マップの構築には一般的に親機器及び子機器の両方のデータが必要となり、特に新世代の分析装置を開発し、そのため子-親機器マップの多数の並べ替え及び種類が必要となって長期間にわたる場合は、典型的には実装及び保持が困難であり、及び/又は計算コストが高いため、このアプローチは制限される。更に、バイオ医薬産業に関しては、子機へのユーザのアクセスは制限されており、これによっても子-親機器マップアプローチは制限される。
【0010】
第3の既知のアプローチでも、所与の分析装置からのデータが標準化されるが、ここでは分析装置間のばらつきは無視されるか、或いは瑣事として扱われる。しかしながら、分析装置間のばらつきが、典型的には原材料及び/又は生物学的生成物の正確な同定及び測定に影響を及ぼし、そのため考慮に入れるべきであることを踏まえると、こうしたアプローチは望ましくない。
【0011】
上記の理由から、同様に構成された構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置間のばらつきを縮小し、互換性を増加させるように構成された、ラマン分光法に基づいて生物学的生成物を同定するための構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置及び関連する方法に対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本出願の開示は、生物学的生成物を同定するための、ハンドヘルド式分析装置を介したラマン分光法の使用を記載する。更に、本明細書の開示は、生物学的生成物を測定するためのラマンスペクトルの既知の使用法に概ね付随する制限を克服する、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置、システム、及び方法の使用を記載する。例えば、特定の生物学的生成物間ではラマンスペクトルが、一般的に汎用の統計アルゴリズムに依存する、ラマンスペクトルを用いる既知の方法では識別できないほど類似している場合がある。ラマンスペクトル測定は、機器間のばらつきが導入されて、例えば、様々な分析装置間でタイプI及びタイプIIのエラーを生じる場合に特に問題となる場合がある。本明細書に記載されるように、こうしたばらつきは、ソフトウェア、製造、経年数、コンポーネント、動作環境(例えば温度)の差異、又はラマンベース分析装置のその他の差異のうち任意の1つ以上によって生じ得る。分析装置間のばらつきは、薬学的又は生物学的生成物に関連するプロセスの製造又は開発において品質、ロバスト性、及び/又は伝達可能性に影響を及ぼす主要因であり得るため、この問題は、特に生物学的生成物の開発又は製造中に現れる。したがって、本明細書で開示される様々な実施形態では、例えば、(1)材料又は生成物の測定及び/又は同定が高感度及び/又は特異的であることを確実にし、(2)第1の分析装置のセット上で展開したときに、「ネットワーク」又は分析装置のグループ内の新規の分析装置などの追加の分析装置に互換性及び構成が伝達可能及び/又は実装可能であることを確実にするために、特定の前処理アルゴリズム及び/又は多変量データ分析を用いる構成を用いる、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置が説明される。
【0013】
したがって、本明細書の様々な実施形態では、ラマン分光法に基づいて生物学的生成物を同定するための構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置が開示される。構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置は、ハンドヘルド操作用に適合された第1のハウジングを含み得る。更に、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置は、第1のハウジングによって保持される第1のスキャナを含み得る。構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置は、第1のスキャナに通信可能に連結された第1のプロセッサを含み得る。構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置は、第1のプロセッサに通信可能に連結された第1のコンピューターメモリを更に含み得る。様々な実施形態では、第1のコンピューターメモリは、生物学的分類モデル構成をロードするように構成され得る。生物学的分類モデル構成は、生物学的分類モデルを含み得る。生物学的分類モデルは、第1のプロセッサ上で実行するように構成され得る。第1のプロセッサは、(1)第1のスキャナによってスキャンされた第1の生物学的生成物試料を定義する第1のラマンベーススペクトルのデータセットを受信し、(2)生物学的分類モデルを用いて、第1のラマンベーススペクトルのデータセットに基づいて生物学的生成物タイプを同定するように構成され得る。生物学的分類モデル構成は、スペクトル前処理アルゴリズムを含み得る。第1のプロセッサは、第1のラマンベーススペクトルのデータセットが第1のプロセッサによって受信された時にスペクトル前処理アルゴリズムを実行して、第1のラマンベーススペクトルのデータセットのスペクトルの不一致を縮小するように構成され得る。更に、生物学的分類モデルは、(1)生物学的分類モデルのQ残余誤差、又は(2)生物学的分類モデルのあてはめの要約値のうちの少なくとも1つを縮小するように選択された分類コンポーネントを含んで、生物学的分類モデルは、分類コンポーネントに基づいて、第1の生物学的生成物試料の生物学的生成物タイプを同定するように構成され得る。
【0014】
本明細書で開示される追加の実施形態では、ラマン分光法に基づいて生物学的生成物を同定するための生物学的分析法が開示される。生物学的分析法は、第1のプロセッサ及び第1のスキャナを有する第1の構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置の第1のコンピューターメモリに、生物学的分類モデル構成をロードすることを含み得る。生物学的分類モデル構成は、生物学的分類モデルを含み得る。更に、生物学的分析法は、生物学的分類モデルによって、第1のスキャナによってスキャンされた第1の生物学的生成物試料を定義する第1のラマンベーススペクトルのデータセットを受信することを含み得る。更に、生物学的分析法は、生物学的分類モデルのスペクトル前処理アルゴリズムを実行して、第1のラマンベーススペクトルのデータセットのスペクトルの不一致を縮小することを含み得る。なお更に、生物学的分析法は、生物学的分類モデルを用いて、第1のラマンベーススペクトルのデータセットに基づいて生物学的生成物タイプを同定することを含み得る。生物学的分類モデルは、(1)生物学的分類モデルのQ残余誤差、又は(2)生物学的分類モデルのあてはめの要約値のうちの少なくとも1つを縮小するように選択された分類コンポーネントを含んで、生物学的分類モデルは、分類コンポーネントに基づいて、第1の生物学的生成物試料の生物学的生成物タイプを同定するように構成され得る。
【0015】
本明細書で開示されるなお更なる追加の実施形態では、ラマン分光法に基づいて生物学的生成物を同定するための命令を記憶する有形の非一時的コンピューター可読媒体(例えばコンピューターメモリ)が説明される。この命令は、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置の1つ以上のプロセッサによって実行されると、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置の1つ以上のプロセッサに、スキャナを有する構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置のコンピューターメモリに生物学的分類モデル構成をロードさせる。生物学的分類モデル構成は、生物学的分類モデルを含み得る。生物学的分類モデルは、スキャナによってスキャンされた生物学的生成物試料を定義するラマンベーススペクトルのデータセットを受信することができる。更に、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置の1つ以上のプロセッサは、生物学的分類モデルのスペクトル前処理アルゴリズムを実行して、ラマンベーススペクトルのデータセットのスペクトルの不一致を縮小することができる。構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置の1つ以上のプロセッサは、生物学的分類モデルを用いて、ラマンベーススペクトルのデータセットに基づいて生物学的生成物タイプを同定することができる。様々な実施形態で説明するように、生物学的分類モデルは、(1)生物学的分類モデルのQ残余誤差、又は(2)生物学的分類モデルのあてはめの要約値のうちの少なくとも1つを縮小するように選択された分類コンポーネントを含み得る。生物学的分類モデルは、分類コンポーネントに基づいて、生物学的生成物試料の生物学的生成物タイプを同定するように構成され得る。
【0016】
本出願の利点としては、生物学的分類モデルの構築に用いるラマンベースデータセットをスキャンするために用いられる様々な分析装置を含む様々な分析装置にわたり、同じ薬学的又は生物学的生成物(例えば治療生成物/剤)に関して一貫した結果をもたらす生物学的分類モデル(例えば多変量分析モデル)の開発が挙げられる。本明細書に記載されるように、複数の分析装置、又はこうした分析装置によって生成されたラマンスペクトルの複数のデータセットは、生物学的分類モデルを構築するために用いられ得る。
【0017】
更に、本明細書に記載されるように、生物学的分類モデルは、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置の間で構成可能及び伝達可能であり、これは、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置間のばらつきを縮小するために、ラマンスペクトル前処理、分類コンポーネント選択(例えば、特異値分解(SVD)分析を介する)、及び識別的統計分析(discriminating statistical analysis)を含み得る。例えば、本明細書に記載される生物学的分類モデルの使用は、機器/分析装置間のばらつきを縮小し、開発のための子機器のデータを必要とせず、様々なソフトウェアを実装する、様々なソフトウェア又はソフトウェアのバージョンを有する、様々な製造、経年数、動作環境(例えば温度)、コンポーネント、又は他のこうした差異を有する様々な分析装置にわたって使用することができるため、既存の分析装置を改善する。
【0018】
様々な実施形態では、Q残差(Q-residual)を識別的統計値として用いて、どの生物学的分類モデルが分析装置間のばらつきに耐えられるかを決定することができる。これは、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置にロードするためにどの生物学的分類モデルを選択するかに関する指標を提供することができる。
【0019】
更に、生物学的分類モデルの出力の統計的タイプI及び/又はタイプIIエラーを最小化し、従って、生物学的分類モデルが実装/構成される構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置の出力を改善するために前処理技術(例えば本明細書に記載されるスペクトル前処理アルゴリズム)を適用することにより、生物学的分類モデルの精度が増加され得る。
【0020】
更に、いくつかの実施形態では、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置は、生物学的分類モデルの分類コンポーネントを決定するために多変量分析(例えば、主要コンポーネント分析(PCA))を使用することができる。これにより、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置は、類似する配合物を有する生物学的生成物/剤を識別することが可能となる。複数の規格を有する生成物(例えばデノスマブに関する生成物)に対応する、様々な、異なる及び/又は追加の分類コンポーネント(例えば、PCA生物学的分類モデルの第2の主要コンポーネント)を含む生物学的分類モデルが生成され得るため、これは柔軟なアプローチを提供する。
【0021】
上記に従い、及び本明細書の開示に従い、少なくとも本特許請求の範囲が、例えば、既存のハンドヘルド式生物学的分析装置に対する改善である、ラマン分光法に基づいて生物学的生成物を同定するための構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置を列挙するため、本開示はコンピューターの機能の改善又は他の技術に対する改善を含む。つまり、本明細書に記載されるように、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置はコンピューティング装置であり、またその生物学的分類モデル構成を介して、既存のハンドヘルド式生物学的分析装置と比較して分析装置間のばらつきの縮小を提供するため、本開示は、コンピューター自体又は「任意の他の技術又は技術分野」の機能の改善を説明する。これは、少なくとも、本明細書に記載される構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置は、薬学的及び/又は他のこうした生物学的生成物の製造及び開発における重要な特徴である、材料及び/又は生成物(例えば治療生成物)の測定、同定、及び/又は分類に関する精度を向上させるため、従来技術を改善する。
【0022】
更に、本明細書に記載される構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置は、分析装置のセット(すなわち「ネットワーク」)間における標準化を可能にし、それによってばらつきを縮小する、互換性のある構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置のメモリに伝達可能であり、任意選択的に(新規のデータで)更新可能であり、及びロード可能である、生物学的分類モデル構成を使用することによって更に改善される。これは、分析装置ネットワーク用の構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置の保守及び/又は展開時間を低減する。
【0023】
更に、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置は、生物学的分類モデルを含む生物学的分類モデル構成を使用することによって更に改善される。生物学的分類モデルは、本明細書に記載されるように、タイプIエラー(例えば、偽陽性)及び/又はタイプIIエラー(例えば、偽陰性)を排除又は縮小することによって、生物学的生成物の同定及び/又は分類の精度を改善する。
【0024】
更に、本開示は、ラマン分光法に基づいて生物学的生成物を同定するために(こうした生成物の開発又は製造中における生物学的生成物の同定を含む)、特定の機械、例えば構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置を用いて、又はこれを使用することによって、特定の特許請求要素を適用することを含む。
【0025】
更に、本開示は、特定の物品を異なる状態又は物体に変換又は縮小させること、例えば、ラマンスペクトルデータセットを、ラマン分光法に基づいて生物学的生成物を同定するために使用される異なる状態に変換又は縮小させることを含む。
【0026】
本開示は、当該技術分野で十分に理解されている定型的な従来の活動以外の特定の特徴を含むか、或いは本特許請求の範囲を特定の有益な用途に限定する非従来の工程を追加すること(例えば、それぞれラマン分光法に基づいて生物学的生成物を同定するために用いられ得る構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置のセット(すなわち、「ネットワーク」)間におけるばらつきを縮小するために用いられる生物学的分類モデル構成を提供することを含む)を含む。
【0027】
当業者には、例示として示され及び説明される下記の好ましい実施形態の説明から利点がより明らかとなるであろう。理解されるように、本実施形態は他の異なる実施形態も可能であり、これらの詳細は、様々な点で改変可能である。従って、図面及び説明は、例示的な性質であって限定的とはみなされないものとする。
【0028】
下記で説明する図面は、その中で開示されているシステム及び方法の様々な態様を描写する。各図面は本開示のシステム及び方法の特定の態様のある実施形態を描写していること、及び図面の各々はその可能な実施形態と一致することが意図されていることを理解すべきである。更に、可能なかぎり、下記の説明は、下記の図面に含まれる参照番号に言及しており、複数の図中に描写されている特徴は、一貫した参照番号で示されている。
【0029】
図中には本明細書で論じられている配置が示されているが、本実施形態は、示されている正確な配置及び手段に限定されないことが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本明細書に開示される様々な実施形態による、ラマン分光法に基づいて生物学的生成物を同定するための構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置の例を示す。
【
図2】本明細書に開示される様々な実施形態による、ラマン分光法に基づいて生物学的生成物を同定するための生物学的分析法の例示的フローチャートを示す。
【
図3A】本明細書に開示される様々な実施形態による、様々なハンドヘルド式生物学的分析装置によりスキャンされたラマンベーススペクトルのデータセットの例示的な視覚化を示す。
【
図3B】
図3Aのラマンベーススペクトルのデータセットから修正された、修正ラマンベーススペクトルのデータセットの例示的な視覚化を示す。
【
図3C】
図3Bの修正ラマンベーススペクトルのデータセットの正規化バージョンとしての、正規化ラマンベーススペクトルのデータセットの例示的な視覚化を示す。
【
図4A】生物学的分類モデルのQ残余誤差の例示的な視覚化を示す。
【
図4B】生物学的分類モデルのあてはめの要約値(例えば、ホテリングT^2値)の例示的な視覚化を示す。
【
図5】本明細書に開示される様々な実施形態による、生物学的生成物タイプのラマンスペクトルの例示的な視覚化を示す。
【
図6A】本明細書に開示される様々な実施形態による、生物学的分類モデル構成の疑似コードを含む例示的なコンピュータープログラムリストを示す。
【
図6B】本明細書に開示される様々な実施形態による、生物学的分類モデル構成の疑似コードを含む例示的なコンピュータープログラムリストを示す。
【
図6C】本明細書に開示される様々な実施形態による、生物学的分類モデル構成の疑似コードを含む例示的なコンピュータープログラムリストを示す。
【
図7】本明細書に記載される様々な実施形態による、縮小したQ残余誤差の例示的な視覚化を示す。
【
図8A】本明細書に記載される様々な実施形態による、それぞれ18個の異なる構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置に関して評価された、標的生成物の縮小したQ残余誤差の例示的な視覚化を示す。
【
図8B】本明細書に記載される様々な実施形態による、それぞれ18個の異なる構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置に関して評価された、標的生成物の縮小したQ残余誤差の例示的な視覚化を示す。
【
図8C】本明細書に記載される様々な実施形態による、それぞれ18個の異なる構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置に関して評価された、標的生成物の縮小したQ残余誤差の例示的な視覚化を示す。
【
図8D】本明細書に記載される様々な実施形態による、それぞれ18個の異なる構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置に関して評価された、標的生成物の縮小したQ残余誤差の例示的な視覚化を示す。
【
図8E】本明細書に記載される様々な実施形態による、18個の異なる構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置に関して評価された、標的生成物の縮小したあてはめの要約値の例示的な視覚化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図面は、例示のみを目的とする好ましい実施形態を示す。本明細書で例示されるシステム及び方法の代替的実施形態は、本明細書に記載される本発明の原理から逸脱することなしに採用され得る。
【0032】
図1は、本明細書に開示される様々な実施形態による、ラマン分光法に基づいて生物学的生成物140を同定するための構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102の例を示す。
図1の実施形態では、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102は、ハンドヘルド操作用に成形又は適合された第1のハウジング101を含む。更に、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102は、第1のハウジングによって保持される(例えば直接的又は間接的に連結又は接続されるなどした)第1のスキャナ106を含む。構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102は、第1のスキャナ106に通信可能に連結された第1のプロセッサ110も含む。構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102は、第1のプロセッサ110に通信可能に連結された第1のコンピューターメモリ108を更に含み得る。更に、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102は、ナビゲーションホイール105からの入力を受信するための入力/出力(I/O)コンポーネント109を含み得る。例えば、ユーザは、ナビゲーションホイール105を操作して、例えば生物学的生成物140をスキャンすることからスキャンされた生物学的生成物の特定の試料のデータ又は情報を選択又はスクロールすることができる。入力/出力(I/O)コンポーネント109はまた、表示画面104上における、本明細書に記載される測定、同定、分類、又はその他の情報の表示を制御することができる。表示画面104、ナビゲーションホイール105、第1のスキャナ106、第1のコンピューターメモリ108、I/Oコンポーネント109、及び/又は第1のプロセッサ110はそれぞれ、104~110を含む様々なコンポーネント間で電子信号(例えば、制御信号)又は情報を送信及び/又は受信するように構成された電子バス107を関して通信可能に連結される。いくつかの実施形態では、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102は、Thermo Fisher Scientific Incにより提供されるTruScan(商標)RM Handheld Raman Analyzerなどのラマンベースのハンドヘルド式分析装置であり得る。
【0033】
様々な実施形態では、第1のコンピューターメモリ108は生物学的分類モデル構成、例えば生物学的分類モデル構成103をロードするように構成される。生物学的分類モデル構成103は、本明細書で更に説明されるように、ラマン分光法に基づいて生物学的生成物を同定するための
図2の生物学的分析法を実装するために用いられ得る。
【0034】
図1の実施形態において、生物学的分類モデル構成103は、拡張マークアップ言語(XML)フォーマットのXMLファイルとして実装される。本明細書の様々な実施形態で説明するように、
図6A~6Cは、生物学的分類モデル構成(例えば、生物学的分類モデル構成103)の疑似コードを含む例示的なXMLフォーマットのコンピュータープログラムリストを示す。
図6A~6Cの実施形態のコンピュータープログラムリストでは、例えば、コードセクション1において、生物学的分類モデル構成103はXMLでフォーマットされており、ここで生物学的分類モデル(「<model>」)は、生物学的分類モデル構成103内で定義される。生物学的分類モデル構成103は、同様に構成された構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置(例えば、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置112、114、及び/又は116)上で、転送可能、インストール可能、及び/又は実装可能若しくは実行可能である。構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置112、114、及び116はそれぞれ、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102と同じコンポーネントを含むため、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102の開示は、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置112、114、及び116のそれぞれに対して均等に適用される。構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102、112、114、及び116はそれぞれ、同じ分析装置のグループ又はセット(すなわち、分析装置の「ネットワーク」又はグループを含む)の一部であり得る。いくつかの実施形態では、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102、112、114、及び/又は116はそれぞれ、同じ、類似の、及び/又は異なる特性又は特徴のミックス、例えば、同じ、類似の、及び/若しくは異なるソフトウェアのバージョン若しくはタイプ、製造、経年数、動作環境(例えば温度)、コンポーネント、又は他のこうしたラマンベース分析装置の類似性若しくは差異のミックスを有し得る。
【0035】
構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102、112、114、及び116間の、同じ、類似の、及び/又は異なる特性又は特徴のミックスと関係なく、生物学的分類モデル構成103、及びその関連する生物学的分類モデルは、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置(例えば、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102、112、114、及び116)のネットワークが、薬学的又は生物学的生成物(例えば治療生成物/剤)を測定又は同定する時に一貫した結果をもたらすことを可能にする。つまり、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置の所与の分析装置ネットワークの類似性又は差異にかかわらず、こうした構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置が本明細書に記載される生物学的分類モデル構成によって構成されると、こうした構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置は、所与の薬学的又は生物学的生成物を正確に同定又は測定することができる。
【0036】
様々な実施形態では、複数の分析装置を用いて、生物学的分類モデル構成103及びその関連する生物学的分類モデルを生成又は構築することができる。例えば、いくつかの実施形態では、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102、112、114、及び116、並びに/又はその他の分析装置(図示せず)のうち任意の1つ以上を用いて、生物学的分類モデルを生成又は構築することができる。
【0037】
生物学的分類モデル構成103及びその関連する生物学的分類モデルを生成するには、一般に、分析装置のグループ又はネットワークが、(例えば、生物学的生成物140の)試料をスキャンしてこれらの試料のラマンベーススペクトルのデータセットを作成することが必要である。例えば、生物学的生成物140を、例えば構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102、112、114、及び116のいずれかによってスキャンすることで、生物学的生成物140に関する詳細な情報を得ることができる。例えば、詳細な情報としては、(例えば、生物学的生成物140の)生物学的生成物試料を定義するラマンベーススペクトルのデータセットが挙げられ得る。生物学的生成物140の例としては、本明細書に記載されるデノスマブDP、パニツムマブDP、エタネルセプトDP、ペグフィルグラスチムDP、ロモソズマブDP、アダリムマブDS、及び/又はエレヌマブDPのうちのいずれか(ロモソズマブDP、アダリムマブDS、及び/又はエレヌマブDPなど)が挙げられ得る。しかし、本明細書では更なる生物学的生成物も検討され、生物学的生成物140は任意の特定の生物学的生成物又はその区分に限定されないことを理解されたい。
【0038】
いくつかの実施形態では、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102は、例えば生物学的生成物140の試料をスキャンするのに用いるための、機器又は分析装置に基づくスペクトル取得パラメータ(例えば、積分時間、レーザー出力など)を定義することができる。例えば、ユーザは、ナビゲーションホイール105を介して、試料のスキャンに使用するためのスペクトル取得パラメータを選択することができる。いくつかの実施形態では、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102は、スペクトル取得パラメータを指定する出力ファイル(例えば、「.acq」ファイル形式の出力ファイル)を生成することができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置(例えば、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102)は、出力ファイル(例えば、「.acq」ファイル)をロードして、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置を標的生成物のスキャンに使用するようにスペクトル取得パラメータで構成することができる。本明細書に記載されるように、生物学的分類モデル構成(例えば、生物学的分類モデル構成103)を生成するために、1つ以上の構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置(例えば、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102)によってラマンベーススペクトルのデータセットをスキャンすることができる。いくつかの実施形態では、生物学的生成物(例えば、生物学的生成物140)の試料(例えば複数のロット)を、スキャンの代表的な標的生成物として選択することができる。一般に、本明細書に記載される場合、「標的生成物」とは、生物学的分類モデル構成及びその関連するモデルを訓練又は構成するために用いられる生物学的生成物を表す。一般に、標的生成物は、その生物学的規格に基づいて選択される。標的生成物のスキャンに使用するためのスペクトル取得パラメータによってセットアップされたら、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置(例えば、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102)は、場合によっては複数回(例えば14回)、標的生成物の試料をスキャンすることができ(例えば、第1のスキャナ106で)、ここで各スキャンが、標的生成物のラマンベーススペクトルのデータセットを含む詳細な情報を生成する。
【0040】
同様の実施形態では、複数の構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置(構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102、112、114、及び/又は116)は、出力ファイル(例えば「.acq」ファイル)をロードして、各構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置を生物学的生成物試料のスキャンに使用するようにスペクトル取得パラメータでセットアップすることができる。セットアップされたら、各構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置(例えば、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102、112、114、及び/又は116のうちのいずれか)は、場合によっては複数回(例えば14回)、試料をスキャンする(例えば、第1のスキャナ106で)ように構成され、ここで各スキャンが、標的生成物のラマンベーススペクトルのデータセットを含む詳細な情報を生成する。異なる/複数のスキャナで所与の標的生成物をスキャンすることにより、これらのスキャナによって取得されたラマンベーススペクトルのデータセットは、ラマンベーススペクトルのデータセットが、スキャナ間のあらゆる差異(例えばソフトウェア、製造、経年数、動作環境(例えば温度)などによって生じる)を取得するという点においてロバストになる。このようにして、ラマンベーススペクトルのデータセットは、本明細書に記載される複数のスキャナ間のばらつきを縮小するための理想的な訓練データセットを提供する。例えば、複数のスキャナ(例えば、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102、112、114、及び/又は116のうちのいずれか)によってスキャンされたラマンベーススペクトルのデータセットのそれぞれは、例えば「.spc」ファイル形式を有するラマンスペクトルファイルとして出力及び/又は保存され得る。
【0041】
ラマンベーススペクトルのデータセットは、標的生成物と同じ又は類似の方法で課題生成物(challenge product)に関しても取得され得ることを理解されたい。本明細書で使用するとき、「課題生成物」とは、本明細書に記載されるように、生物学的分類モデル構成(例えば、生物学的分類モデル構成103)及びその関連する生物学的分類モデルをロードされるか又はこれを用いて構成されると、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置(例えば、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102)が同定、分類、又は測定するように構成される、生物学的生成物(例えば、生物学的生成物140から選択される)を表す。
【0042】
課題生成物のラマンベーススペクトルのデータセットは、標的生成物と同じか又は類似の方法で取得することができ、ここで課題生成物をその生物学的規格に基づいて選択することができ、また構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置(例えば、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102)は、出力ファイル(例えば「.acq」ファイル)をロードして、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置を課題生成物のスキャンに使用するようにスペクトル取得パラメータで構成することができる。セットアップされたら、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置(例えば、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102)は、場合によっては複数回(例えば3回)、課題生成物の試料を(例えば、第1のスキャナ106で)スキャンするように構成され、ここで各スキャンが、課題生成物のラマンベーススペクトルのデータセットを含む詳細な情報を生成する。例えば、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102によってスキャンされる、ラマンベーススペクトルのデータセットは、例えば「.spc」ファイル形式を有するラマンスペクトルファイルとして出力及び/又は保存され得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、生物学的分類モデル構成(例えば、生物学的分類モデル構成103)の生成は、
図1に示すコンピューター130のプロセッサなどの遠隔プロセッサによって実施され得る。例えば、本明細書に記載される生物学的生成物(例えば、生物学的生成物140から選択される)に関して生成されたラマンベーススペクトルのデータセットは、ラマンベーススペクトルのデータセットを分析するように構成された、コンピューター130上で実行されるモデリングソフトウェアによってインポート及び/又は分析され得る。こうしたモデリングソフトウェアの一例としては、Eigenvector Research,Incによって提供されるSOLO(スタンドアロン・ケモメトリックス・ソフトウェア(stand-alone chemo-metrics software))が挙げられる。しかし、本明細書に記載される機能を実施するように実装されたカスタム又は専売権付ソフトウェアを含むその他のモデリングソフトウェアも使用してよいことを理解されたい。モデリングソフトウェアは、ラマンベーススペクトルのデータセットに基づいて生物学的分類モデルを構築又は生成することができる。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載される標的生成物に関してスキャン又は取得されたラマンベーススペクトルのデータセットを用いて、生物学的分類モデルを構築又は生成してもよい。また更に、ラマンベーススペクトルのデータセット(例えば標的生成物又は課題生成物の)を、生物学的分類モデルのクロス確認のために用いてもよい。例えば、ラマンベーススペクトルのデータセットを用いて、生物学的分類モデルのタイプIエラー(例えば、偽陽性)及びIIエラー(例えば、偽陰性)を、ラマンベーススペクトルのデータセットクロス確認データセットに対して評価することができる。
【0044】
様々な実施形態では、生物学的分類モデル、及び/又はその関連する生物学的分類モデル構成(例えば、生物学的分類モデル構成103)は、本明細書に記載される生物学的生成物を同定、分類、及び/又は測定するために構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置(例えば、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102)によって使用されるアルゴリズム(例えば、スクリプト)及びパラメータを含んで生成され得る。アルゴリズム(例えば、スクリプト)及び/又はパラメータの例は、
図2、6A、及び6Bに関連して本明細書に記載される。例えば、生物学的分類モデル構成(例えば、生物学的分類モデル構成103)は、生物学的分類モデルの詳細を定義するパラメータを含み得る。例えば、こうしたパラメータは、生物学的分類モデルの分類コンポーネント、ローディングなどの数を断定することができる。例えば、一実施形態では、分類コンポーネントの数は、例えば、分類コンポーネントがPCAの1つ以上の主要コンポーネントを含む特異値分解(SVD)分析を介してモデリングソフトウェアによって決定され得る。モデリングソフトウェアは、生物学的分類モデルに含める分類コンポーネント(例えば主要コンポーネント)を決定するための統計的信頼度を設定するように構成され得る。例えば、
図6A~6Cのコンピュータープログラムリストの実施形態では、コードセクション1において、生物学的分類モデル構成は、生物学的分類モデル(例えば、定義された「<model>」)が、PCAタイプの生物学的分類モデルであることを示す。これは、生物学的分類モデルの分類コンポーネントが主要コンポーネントになることを示す。例えば、
図6A~6Cの実施形態では、コードセクション2は、主要コンポーネントの数が、例えば、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102の第1のプロセッサ110上で実行されるSVD分析(「Algorithm:SVD」)を介して決定される1つ(単一)の主要コンポーネント(「Num.PCs:1」)となることを示す。
【0045】
更なる例として、生物学的分類モデル構成(例えば、生物学的分類モデル構成103)は、例えば、
図3A~3Cに関連して説明される、スペクトル前処理アルゴリズムを定義又は実装するためのコンピューターコード又はスクリプトを含み得る。一般に、スペクトル前処理アルゴリズムを定義又は実装するためのコンピューターコード又はスクリプトは、プロセッサ(例えば、第1のプロセッサ110)上で実行されてもよく、ここで、プロセッサは、生物学的生成物(例えば、生物学的生成物140)のラマンベーススペクトルのデータセットを受信する。構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置は、続いて、本明細書に記載される生物学的生成物(例えば、課題生成物)を同定、測定、又は分類するために、スペクトル前処理アルゴリズムを定義又は実装するコンピューターコード又はスクリプトを実行して、生物学的分類モデルの分類コンポーネントに入力するためのデータを準備/前処理する。例えば、
図6A~6Cのコンピュータープログラムリストの実施形態では、コードセクション2において、生物学的分類モデル構成は、第1の導関数を決定することと、標準正規変量(standard normal variate、SNV)アルゴリズムを適用することと、平均センタリング関数を特定の生成物(例えば、標的生成物又は課題生成物)に関してスキャンされたラマンベーススペクトルのデータセットに更に適用することと、を含む、例示的スペクトル前処理アルゴリズムの実行順序(例えば、「Preprocessing:1st Derivative(order:2,window:21pt,incl only,tails:polyinterp),SNV,Mean Center」)を含む。この実行順序の例示的実施形態は、本明細書で
図3A~3C、及び
図6A~6Cのコードセクション4~6に関連して説明及び視覚化される。
【0046】
更なる例として、生物学的分類モデル構成(例えば、生物学的分類モデル構成103)は、生物学的分類モデルを生成するために使用されるラマンベーススペクトルのデータセットを含み得る。例えば、
図6A~6Cのコンピュータープログラムリストの実施形態では、コードセクション3において、生物学的分類モデル構成(例えば、生物学的分類モデル構成103)は、
図6A~6Cの生物学的分類モデルを生成するために使用される例示的なラマンベーススペクトルのデータセットを含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、生物学的分類モデル構成(例えば、生物学的分類モデル構成103)は、例えば、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102によって生物学的生成物が成功裏に同定又は測定されたか否かを決定するための統計的受け入れ規準としての閾値を定義することもできる。例えば、こうした閾値は、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102によって生物学的生成物が成功裏に同定又は測定されたか否かを決定するために、Q残差又はホテリングT2値(本明細書に記載される)の合格/不合格閾値を定義することができる。その他の実施形態では、例えば、本明細書に記載されるナビゲーションホイール105及び表示画面104を介してユーザが閾値を手動で構成及び/又は定義することによって、閾値は、生物学的分類モデル構成(例えば、生物学的分類モデル構成103)とは無関係に構成され得る。
【0048】
生成されたら、生物学的分類モデル、及びその関連する生物学的分類モデル構成(例えば、生物学的分類モデル構成103)は、本明細書に記載される構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置(例えば、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102、112、114、及び/又は116のうち任意の1つ以上)に送信するために(例えば、コンピューターネットワーク120を介して、又は本明細書に記載されるその他のやり方で)、及び/又は本明細書に記載される構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置(例えば、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102、112、114、及び/又は116のうち任意の1つ以上)のメモリにロードするために、ファイル(例えば、本明細書に記載されるXMLファイル)にエクスポートされ得る。いくつかの実施形態では、出力ファイル(例えば、本明細書に記載される「.acq」ファイル)はまた、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置(例えば、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102、112、114、及び/又は116のうち任意の1つ以上)に送信されてもよく(例えば、コンピューターネットワーク120を介して、又は本明細書に記載されるその他のやり方で)、及び/又は構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置(例えば、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102、112、114、及び/又は116のうち任意の1つ以上)のメモリにロードされてもよい。
【0049】
生物学的分類モデルは、所与の構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置に対して遠隔である遠隔プロセッサによって生成され得る。例えば、
図1の実施形態では、コンピューター130は、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102に対して遠隔である遠隔プロセッサを含む。コンピューター130は、1つ以上の生物学的分類モデル構成及び/又は生物学的分類モデルを生成(例えば、本明細書に記載されるように)して、データベース132に記憶することができる。様々な実施形態では、コンピューター130は、コンピューターネットワーク120上で、生物学的分類モデル構成(例えば、生物学的分類モデル構成103、113、115、及び/又は117のいずれか)を、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置に(例えば、それぞれ構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102、112、114、及び/又は116に)転送することができる。いくつかの実施形態では、生物学的分類モデル構成103、113、115、及び/又は117のそれぞれは、同じファイル(例えば、同じXMLファイル)のコピーであり得る。コンピューターネットワーク120は、例えば伝送制御プロトコル(TCP)/インターネット・プロトコル(IP)などのコンピューターパケットプロトコルを実装する有線及び/又は無線(例えば802.11標準ネットワーク)を含み得る。その他の実施形態では、生物学的分類モデル構成(例えば、生物学的分類モデル構成103)は、ユニバーサルシリアルバス(USB)ケーブル(図示せず)、メモリドライブ(例えば、フラッシュ又はサムドライブ)(図示せず)、ディスク(図示せず)、又は本明細書に開示されるXMLファイルなどのデータファイルを転送可能なその他の転送若しくはメモリデバイスを介して転送され得る。なお更なる実施形態では、生物学的分類モデル構成103は、無線標準又はプロトコル、例えばBluetooth、WiFi、又はGSM、EDGE、CDMAなどのセルラー標準を介して転送され得る。
【0050】
生物学的分類モデル構成(例えば、生物学的分類モデル構成103)は、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置間を転送され得る。転送されると、生物学的分類モデル構成は、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置のメモリへとロードされて、ハンドヘルド式生物学的分析装置を、生物学的分類モデルを実装又は実行するその他の構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置に対するばらつきが縮小するように較正又は構成することができる。例えば、一実施形態では、生物学的分類モデル構成103は、生物学的分類モデルを含み得る。生物学的分類モデル構成103の生物学的分類モデルは、第1のプロセッサ110上で実行されるように構成され得る。例えば、第1のプロセッサ110は、(1)第1のスキャナによってスキャンされた(例えば、生物学的生成物140のスキャンの)第1の生物学的生成物試料を定義する第1のラマンベーススペクトルのデータセットを受信し、(2)生物学的分類モデルを用いて、第1のラマンベーススペクトルのデータセットに基づいて生物学的生成物タイプを同定するように構成され得る。例えば、いくつかの実施形態では、生物学的生成物タイプは、治療生成物タイプを有する治療生成物のものであり得る。
【0051】
生物学的分類モデル構成103の生物学的分類モデルは、例えば、コンピューターネットワーク120上を、生物学的分類モデル構成113を介して、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置112まで電子的に転送され得る。構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102のみに関して、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置112は、ハンドヘルド操作用に適合された第2のハウジング、第2のハウジングに連結された第2のスキャナ、第2のスキャナに通信可能に連結された第2のプロセッサ、及び第2のプロセッサに通信可能に連結された第2のコンピューターメモリを含み得る。構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置112の第2のコンピューターメモリは、生物学的分類モデル構成113をロードするように構成される。生物学的分類モデル構成113は、生物学的分類モデル構成103の生物学的分類モデルを含む。構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置112の第2のプロセッサ上で実装又は実行されると、第2のプロセッサは、(1)構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置112の第2のスキャナによってスキャンされた(例えば、生物学的生成物140のスキャンから取られた)第2の生物学的生成物試料を定義する第2のラマンベーススペクトルのデータセットを受信し、(2)生物学的分類モデルを用いて、第2のラマンベーススペクトルのデータセットに基づいて生物学的生成物タイプを同定するように構成される。こうした実施形態では、生物学的分類モデル構成ファイルによって転送された同じ生物学的分類モデルを使用することによって同じ生物学的生成物又は生成物タイプが同定され、ここで第2の生物学的生成物試料は、この生物学的生成物タイプ(例えば、第1の構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102によって分析したものと同じ生物学的生成物タイプ)の新規試料である。
【0052】
様々な実施形態では、新規の又は追加のラマンベーススペクトルのデータセットは、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置によってスキャンされ、生物学的分類モデルを更新するために用いられ得る。こうした実施形態では、更新された生物学的分類モデルは、本明細書に記載される構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置(例えば、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102)に転送され得る。
【0053】
いくつかの実施形態では、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置(例えば、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102)のコンピューターメモリ(例えば、第1のコンピューターメモリ108)は、新規の生物学的分類モデルをロードするように構成されてもよく、ここで新規の生物学的分類モデルは更新された分類コンポーネントを含み得る。新規の分類コンポーネントは、例えば、新規の生物学的分類モデル構成(例えば、生物学的分類モデル構成103)と共に受信された新規の生物学的分類モデルに関して生成されるか又は決定され得る。
【0054】
本明細書の様々な実施形態で説明するように、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置(例えば、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102)は、生物学的分類モデル構成、及びその関連する生物学的分類モデルをロードすることによって構成され得る。構成されると、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102は、本明細書に記載されるように、関心対象の生成物(例えば課題生成物及び/又は試料)を同定、分類、又は測定するために用いられ得る。
【0055】
図2は、本明細書に開示される様々な実施形態による、ラマン分光法に基づいて生物学的生成物(例えば、生物学的生成物140)を同定するための生物学的分析法200の例示的フローチャートを示す。生物学的分析法200は、ブロック204で、第1のプロセッサ(例えば、第1のプロセッサ110)及び第1のスキャナ(例えば、第1のスキャナ106)を有する第1の構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置の第1のコンピューターメモリ(例えば、第1のコンピューターメモリ108)に、生物学的分類モデル構成(例えば、生物学的分類モデル構成103)をロードすることで開始する(202)。
図2の実施形態では、生物学的分類モデル構成(例えば、生物学的分類モデル構成103)は、本明細書に記載される生物学的分類モデルを含む。更に、いくつかの実施形態では、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置(例えば、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102)は、例えばメモリ108に、生成物のスキャンに使用するための(例えば「.acq」ファイルの)スペクトル取得パラメータをロードすることができる。
【0056】
ブロック206では、生物学的分析法200は、(例えば、生物学的分類モデル構成103の)生物学的分類モデルによって、第1のスキャナ(例えば、第1のスキャナ106)によってスキャンされた第1の生物学的生成物試料(例えば、生物学的生成物140から選択される)を定義する第1のラマンベーススペクトルのデータセットを受信することを含む。
【0057】
ブロック208では、生物学的分析法200は、例えば、プロセッサ(例えば、第1のプロセッサ110)によって、生物学的分類モデルのスペクトル前処理アルゴリズムを実行して、第1のラマンベーススペクトルのデータセットのスペクトルの不一致を縮小することを含む。スペクトルの不一致とは、第1のラマンベーススペクトルのデータセットと1つ以上の対応するその他のハンドヘルド式生物学的分析装置の1つ以上のその他のラマンベーススペクトルのデータセットとの間の分析装置間のスペクトルの不一致を指す。例えば、スペクトルの不一致は、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102によってスキャンされたラマンベーススペクトルのデータセットと、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置112によってスキャンされたラマンベーススペクトルのデータセットとの間に存在し得る。各分析装置によってスキャンされた各ラマンベーススペクトルのデータセットが、同じ生物学的生成物タイプを表す場合であっても、スペクトルの不一致は存在し得る。こうしたスペクトルの不一致は、分析装置間のばらつき、及び/又は、バージョンが異なるソフトウェア、製造、経年数、動作環境(例えば温度)、コンポーネント、若しくは本明細書に記載されるラマンベース分析装置のその他の差異などの差異によって生じ得る。
【0058】
スペクトル前処理アルゴリズムは、第1のラマンベーススペクトルのデータセットと1つ以上のその他のラマンベーススペクトルのデータセットとの間の分析装置間のスペクトルの不一致を縮小するように構成される。例えば、様々な実施形態では、(例えば、第1のプロセッサ110上で)スペクトル前処理アルゴリズムを実装又は実行することで、生物学的生成物(例えば、生物学的生成物140)の同定に関連する統計上のタイプI(例えば、偽陽性)及び/又はタイプIIエラー(例えば、偽陰性)が最小限になる。様々な実施形態では、スペクトル前処理アルゴリズムは、複数の構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置(例えば、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102、112、114、及び/又は116のうちのいずれか)の間における分析装置間のスペクトルの不一致を縮小させ得る。
【0059】
図3A~3Cは、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置(例えば、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102)のスペクトル前処理アルゴリズムの例示的な実行順序を示す。スペクトル前処理アルゴリズムを実行することで(例えば、第1のプロセッサ110によって)、各分析装置(例えば、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102、112、114、及び/又は116)に固有の差異の影響が緩和又は軽減され、これらの分析装置のスキャンにより生成されるラマンベーススペクトルのデータセット間の不一致が縮小される。
図3Aは、本明細書に開示される様々な実施形態による、1つ以上のハンドヘルド式生物学的分析装置によってスキャンされた例示的なラマンベーススペクトルのデータセット(例えば、ラマンベーススペクトルのデータセット302a、302b、及び302cを含む)の視覚化302を示す。
図3Aのラマンベーススペクトルのデータセットは、本明細書に記載される生物学的分類モデル構成(例えば、生物学的分類モデル構成103)及びその関連する生物学的分類モデルを生成するために使用されるラマンベーススペクトルのデータセット(例えば、ラマンベーススペクトルのデータセット302a、302b、及び302cを含む)を含み得る。例えば、
図3Aのラマンベーススペクトルのデータセットは、
図6Aのコードセクション3で同定されるものであり得る。
【0060】
いくつかの実施形態では、
図3Aのラマンベーススペクトルのデータセット(例えば、ラマンベーススペクトルのデータセット302a、302b、及び302cを含む)のそれぞれは、異なる構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置(例えば、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102、112、114、及び/又は116のうちのいずれか)のスキャンを表し得る。しかしながら、その他の実施形態では、
図3Aのラマンベーススペクトルのデータセット(例えば、ラマンベーススペクトルのデータセット302a、302b、及び302cを含む)のそれぞれは、同じ構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置(例えば、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102)の複数のスキャンを表し得る。
【0061】
図3Aは、ラマン強度値(ラマン強度軸304上)及び光波長/周波数値(ラマンシフト軸306上)にわたって視覚化された、いくつかのラマンベーススペクトルのデータセット(例えば、ラマンベーススペクトルのデータセット302a、302b、及び302cを含む)を示す。ラマン強度軸304は、ラマンシフト軸306にわたる所与の波長における散乱光の強度を示す。ラマン強度軸304は、分析装置(例えば、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102)によってスキャンされると、生物学的生成物試料によって散乱された多くの光子を示すことができる(例えば、3のデータ/値が第1のスキャナ106によって測定/スキャンされた光子の強度の相対的な指標である)。ラマンシフト軸306は、散乱光の波数(例えば、逆波長)を示す。波数の単位(すなわち、1センチメートル(cm)あたりの波の数、cm
-1)は、入射光と散乱光との間の周波数又は波長の差異を示す。
図3Aの視覚化302では、シフト軸306は、600~1500cm
-1の範囲を含む。ラマン強度軸304は、1~5のラマン強度範囲を含む。
図3Aに示すように、ラマンベーススペクトルのデータセット(例えば、ラマンベーススペクトルのデータセット302a、302b、及び302cを含む)のそれぞれは、600~1500cm
-1の光スペクトル範囲にわたって測定されたラマン強度値を視覚化する。
【0062】
更に、様々な実施形態では、
図3Aのラマンベーススペクトルのデータセット(例えば、ラマンベーススペクトルのデータセット302a、302b、及び302cを含む)のそれぞれは、同じ生物学的生成物タイプを有する同じ生物学的生成物試料のスキャンを表し得る。こうした実施形態では、
図3Aに示すように、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置のうち任意の1つ以上が、同じ生物学的生成物タイプを有する同じ生物学的生成物試料をスキャンした可能性がある場合であっても、光波長/周波数値(ラマンシフト軸306上)にわたるラマンベーススペクトルのデータセット(例えば、ラマンベーススペクトルのデータセット302a、302b、及び302cを含む)のラマン強度値(ラマン強度軸304上)にばらつきは存在する。本明細書に記載されるとおり、ばらつきは、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置(例えば、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102、112、114、及び/又は116のうちのいずれか)の間のソフトウェア、製造、経年数、光学コンポーネント、動作環境(例えば温度)、又は差異によって生じていてもよい。
【0063】
図3Bは、
図3Aのラマンベーススペクトルのデータセットから修正された、修正ラマンベーススペクトルのデータセットの例示的な視覚化312を示す。例えば、
図3Bは、スペクトル前処理アルゴリズムの実行順序の第1段階を表し得る。
図3Bの視覚化312は、
図3Aに関して本明細書に記載される同じラマン強度軸304及びラマンシフト軸306を含む。
図3Bの実施形態では、プロセッサ(例えば、第1のプロセッサ110)は、
図3Aのラマンベーススペクトルのデータセット(例えば、ラマンベーススペクトルのデータセット302a、302b、及び302cを含む)に導関数変換を適用して、
図3Bに示される修正ラマンベーススペクトルのデータセット(例えば、ラマンベーススペクトルのデータセット312a、312b、及び312cを含む)を生成する。具体的には、
図3Bの実施形態では、11~15ポイントのデータ平滑化を含む第1の導関数が適用される(すなわち、11~15ラマンシフト値の連続するグループのラマン重み付き平均が決定され、続いてこのグループに第1の導関数変換が適用される)。換言すると、
図3Bに示される導関数変換は、プロセッサ(例えば、第1のプロセッサ110)によって、ラマンシフト軸306全体にわたる11~15ラマンシフト値の連続するグループのラマン重み付き平均(ラマン強度軸304の)を決定し、続いて、プロセッサ(例えば、第1のプロセッサ110)によって、ラマンシフト軸306全体にわたるこれらのラマン重み付き平均の対応する導関数を決定することを含む。導関数変換を適用することにより、例えば、レイリー散乱/拒絶光学素子(rejection optics)及び/又はその他の分散性要素に起因して、バックグラウンド湾曲の影響が緩和される。これは、ラマンベーススペクトルのデータセット(例えば、
図3Aに示されるようにラマンベーススペクトルのデータセット302a、302b、及び302cを含む)の不一致(例えば、縦及び/又は横方向の不一致)が排除又は縮小され、
図3Bに示されるようなばらつきの少ない修正ラマンベーススペクトルのデータセット(例えば、ラマンベーススペクトルのデータセット312a、312b、及び312cを含む)が生成される、
図3Aの視覚化302と
図3Bの視覚化312との比較によって図示される。
【0064】
図3Bによって視覚化された導関数変換の適用は、
図6A~6Cのコンピュータープログラムリストによって更に例示される。例えば、
図6A~6Cのコンピュータープログラムリストの実施形態では、コードセクション4において、生物学的分類モデル構成は、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102の第1のプロセッサ110によって実行可能なスクリプトを含み、これは、本明細書の
図3Bに関して説明されるように導関数変換アルゴリズムを適用する。
【0065】
図3Cは、
図3Bの修正ラマンベーススペクトルのデータセットの正規化バージョンとしての、正規化ラマンベーススペクトルのデータセットの例示的な視覚化322を示す。例えば、
図3Cは、スペクトル前処理アルゴリズムの実行順序の、1つ又は複数の次の段階を表し得る。
図3Cの視覚化322は、
図3A及び3Bに関して本明細書に記載される同じラマン強度軸304及びラマンシフト軸306を含む。例えば、一実施形態では、
図3Bに示される修正ラマンベーススペクトルのデータセット(例えば、ラマンベーススペクトルのデータセット312a、312b、及び312cを含む)は、プロセッサ(例えば、第1のプロセッサ110)によって、ラマンシフト軸306にわたって整列され、
図3Cに示される整列ラマンベーススペクトルのデータセット(例えば、ラマンベーススペクトルのデータセット322a、322b、及び322cを含む)を生成する。こうした整列は、本明細書に記載される分析装置間の不一致/差異によって生じるかすかなy軸の偏位(すなわち、ラマン強度軸304の)に対して補正を適用する。
図3Cによって視覚化された整列アルゴリズムの適用は、
図6A~6Cのコンピュータープログラムリストによって更に例示される。例えば、
図6A~6Cのコンピュータープログラムリストの実施形態では、コードセクション6において、生物学的分類モデル構成(例えば、生物学的分類モデル構成103)は、
図3Bに示される修正ラマンベーススペクトルのデータセット(例えば、ラマンベーススペクトルのデータセット312a、312b、及び312cを含む)の整列を調節する平均センタリングアルゴリズムを適用して、これらの修正ラマンベーススペクトルのデータセットのスペクトルの不一致(例えば、縦及び/又は横方向の不一致)を排除又は縮小する、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102の第1のプロセッサ110によって実行可能なスクリプトを含む。この調節により、
図3Cに示される整列ラマンベーススペクトルのデータセット(例えば、ラマンベーススペクトルのデータセット322a、322b、及び322cを含む)がもたらされる。
【0066】
更に又は或いは、別の実施形態では、
図3Bに示される修正ラマンベーススペクトルのデータセット(例えば、ラマンベーススペクトルのデータセット312a、312b、及び312cを含む)は、プロセッサ(例えば、第1のプロセッサ110)によって、ラマン強度軸304にわたって正規化され、
図3Cに示される整列ラマンベーススペクトルのデータセット(例えば、ラマンベーススペクトルのデータセット322a、322b、及び322cを含む)を生成する。こうした正規化は、本明細書に記載される分析装置間の不一致/差異によって生じる強度-軸のばらつき(すなわち、ラマン強度軸304にわたる強度値のばらつき)を補償するロバストな正規化アルゴリズムを適用する。
図3Cによって視覚化された正規化アルゴリズムの適用は、
図6A~6Cのコンピュータープログラムリストによって更に例示される。例えば、
図6A~6Cのコンピュータープログラムリストの実施形態では、コードセクション5において、生物学的分類モデル構成は、
図3Bに示される修正ラマンベーススペクトルのデータセット(例えば、ラマンベーススペクトルのデータセット312a、312b、及び312cを含む)を正規化する正規化アルゴリズムを適用して、これらの修正ラマンベーススペクトルのデータセットのスペクトルの不一致(例えば、縦及び/又は横方向の不一致)を排除又は縮小する、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102の第1のプロセッサ110によって実行可能なスクリプトを含む。この正規化により、
図3Cに示される正規化ラマンベーススペクトルのデータセット(例えば、ラマンベーススペクトルのデータセット322a、322b、及び322cを含む)がもたらされる。具体的には、
図6A~6Cの実施形態では、例えば、第1のプロセッサ110によって、
図3Bに示される修正ラマンベーススペクトルのデータセット(例えば、ラマンベーススペクトルのデータセット312a、312b、及び312cを含む)に標準正規変量(SNV)アルゴリズムが適用され、
図3Cに示される整列ラマンベーススペクトルのデータセット(例えば、ラマンベーススペクトルのデータセット322a、322b、及び322cを含む)を生成する。
【0067】
整列及び/又は正規化アルゴリズム(例えば、
図3Cに関して記載される)を適用することで、
図3Bに示されるように、修正ラマンベーススペクトルのデータセット(例えば、ラマンベーススペクトルのデータセット312a、312b、及び312cを含む)のスペクトルの不一致が排除又は縮小される。これは、ラマンベーススペクトルのデータセット(例えば、
図3Bに示されるようにラマンベーススペクトルのデータセット312a、312b、及び312cを含む)のスペクトルの不一致(例えば、縦及び/又は横方向の不一致)が排除又は縮小され、
図3Cに示されるようなばらつきの少ない整列及び/又は正規化ラマンベーススペクトルのデータセット(例えば、ラマンベーススペクトルのデータセット322a、322b、及び322cを含む)が生成される、
図3Bの視覚化312と
図3Cの視覚化322との比較によって図示される。
【0068】
図2のブロック210では、生物学的分析法200は、生物学的分類モデルを用いて、第1のラマンベーススペクトルのデータセット(例えば、
図3A~3Cに関して視覚化及び説明されるラマンベーススペクトルのデータセット)に基づいて生物学的生成物タイプを同定又は分類することを含む。例えば、様々な実施形態では、例えば、
図3A~3C及び/又は6A~6Cに関して本明細書に記載されるように、スペクトル前処理アルゴリズムの実行順序が実行されると(例えば、第1のプロセッサ110によって)、前処理されたラマンベースのデータセット、例えば、
図3Cに示される整列及び/又は正規化ラマンベーススペクトルのデータセット(例えば、ラマンベーススペクトルのデータセット322a、322b、及び322cを含む)を、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置(例えば、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102)によって使用して、生物学的生成物(例えば、生物学的生成物140)を同定又は分類することができる。
【0069】
図5は、生物学的生成物タイプ(例えば、生物学的生成物タイプ511、512、及び513)のラマンスペクトルの例示的な視覚化500を示す。生物学的生成物タイプ(例えば、生物学的生成物タイプ511、512、及び513)のそれぞれは、本明細書に開示される様々な実施形態に従い、分類コンポーネントに基づき、生物学的分類モデル(例えば、生物学的分類モデル構成103の生物学的分類モデル)を用いて同定、分類、又は識別することができる。
図5の実施形態では、生物学的生成物タイプ511、512、及び513のそれぞれは、アダリムマブDS(生物学的生成物タイプ511)、エレヌマブDP(生物学的生成物タイプ512)、及びロモソズマブDP(生物学的生成物タイプ513)をそれぞれ含む、異なる生物学的生成物タイプである。
図5の視覚化500は、
図3A及び3Bに関して本明細書に記載されるものと同じ又は類似のラマン強度軸504及びラマンシフト軸506を含む。しかし、各生物学的生成物タイプ511、512、及び513は、それ自体の別個のラマンシフト軸を示し、ここで各ラマンシフト軸は0~約3のラマン強度値を示す。更に、ラマンシフト軸506は、約0~3000cm
-1の周波数/波長範囲を示す。
【0070】
図5に示すように、生物学的生成物タイプ511、512、及び513のそれぞれは、ラマンシフト軸506にわたって、すなわち、同じ又は類似のラマンスペクトル範囲(例えば
図5に示すような0~3000cm
-1の範囲)にわたって、類似のパターン又は「シグネチャー」を有する。この類似のパターン/シグネチャーは、一般的な分析装置が、生物学的生成物タイプであるアダリムマブDS(生物学的生成物タイプ511)、エレヌマブDP(生物学的生成物タイプ512)、及びロモソズマブDP(生物学的生成物タイプ513)を正確に同定、分類、又は測定するのを困難にする。一般的な分析装置(本明細書に記載される生物学的分類モデル構成103を実装しないか又は実行しない)は、一般的に、こうした生物学的生成物タイプを同定、測定、又は分類することを試みると、有意な数のタイプI(例えば、偽陽性)及びタイプIIエラー(例えば、偽陰性)を生成する。
【0071】
しかしながら、本明細書に記載される生物学的分類モデル構成(例えば、生物学的分類モデル構成103)をロードされてこれを実行する、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置(例えば、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102)は、生物学的生成物タイプであるアダリムマブDS(生物学的生成物タイプ511)、エレヌマブDP(生物学的生成物タイプ512)、及びロモソズマブDP(生物学的生成物タイプ513)を正確に同定、分類、測定、又は識別するために使用され得る。これは、例えば、生物学的生成物タイプであるアダリムマブDS(生物学的生成物タイプ511)、エレヌマブDP(生物学的生成物タイプ512)、及びロモソズマブDP(生物学的生成物タイプ513)のそれぞれが、ラマンスペクトルの異なる局部的特徴(例えば、局部的特徴511c、512c、及び513c)によって互いに異なるものとして同定、分類、及び/又は測定される、
図5に示される。
図5の実施形態では、例えば、生物学的生成物タイプであるアダリムマブDS(生物学的生成物タイプ511)、エレヌマブDP(生物学的生成物タイプ512)、及びロモソズマブDP(生物学的生成物タイプ513)のそれぞれの局部的特徴511c、512c、及び513cのそれぞれは、1000cm
-1~1100cm
-1の範囲にわたるラマンシフト軸506にわたって異なる。具体的には、1000cm
-1~1100cm
-1の範囲にわたって、それぞれ生物学的生成物タイプであるアダリムマブDS(生物学的生成物タイプ511)、エレヌマブDP(生物学的生成物タイプ512)、及びロモソズマブDP(生物学的生成物タイプ513)のそれぞれに特有の、局部的特徴511c、512c、及び513cのそれぞれは様々なラマン強度値を有する(様々な形状、ピーク、又はその他の異なる/様々な相対的強度を有する)。このため、異なる局部的特徴(例えば、局部的特徴511c、512c、及び513c)は、本明細書に記載される生物学的生成物を同定、分類、又は識別するために構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102によって使用され得る、生成物特有の情報源を提供する。
【0072】
更に又は或いは、
図5に関連して、同定又は分類が更に示され、ここでは、例えば生物学的生成物タイプであるアダリムマブDS(生物学的生成物タイプ511)、エレヌマブDP(生物学的生成物タイプ512)、及びロモソズマブDP(生物学的生成物タイプ513)のそれぞれは、それぞれのラマンシフト軸によって、すなわちラマンシフト軸506にわたって、互いに異なるものとして同定、分類、及び/又は測定される(これらの生物学的生成物が類似の及び/又は同じラマンスペクトルを有する場合であっても)。例えば、アダリムマブDS(生物学的生成物タイプ511)は、約1.9の第1のラマン強度値511a(約2900のラマンシフト値における)、及び約2.25の第2のラマン強度値511z(約140のラマンシフト値における)を有する。対照的に、エレヌマブDP(生物学的生成物タイプ512)は、約2.1の第1のラマン強度値512a(約2900のラマンシフト値における)、及び約2.5の第2のラマン強度値512z(約140のラマンシフト値における)を有する。更に対照的に、ロモソズマブDP(生物学的生成物タイプ513)は、約1.5の第1のラマン強度値513a(約2900のラマンシフト値における)、及び約2.05の第2のラマン強度値513z(約140のラマンシフト値における)を有する。
【0073】
したがって、
図5の視覚化500によって示されるように、本明細書に記載される生物学的分類モデル構成(例えば、生物学的分類モデル構成103)をロードされてこれを実行する構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置(例えば、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102)は、様々な分析装置間の(例えば、ラマン強度軸504の)ラマン強度値における相対的差異、及びラマン特徴の全体的形状(すなわち、ラマンシフト値の範囲(ラマンシフト軸506)にわたるラマン強度プロファイル)に対して高感度である。これは、少なくとも部分的には、本明細書に記載される生物学的分類モデル構成(例えば、生物学的分類モデル構成103)をロードされてこれを実行する、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置(例えば、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102)が、生物学的生成物タイプであるアダリムマブDS(生物学的生成物タイプ511)、エレヌマブDP(生物学的生成物タイプ512)、及びロモソズマブDP(生物学的生成物タイプ513)のそれぞれの、本明細書に記載されるスペクトル前処理アルゴリズムで前処理されたスキャンデータ(ラマンベーススペクトルのデータセット)を有するためである。更に、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置(例えば、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102)によって使用される生物学的分類モデルは、分類コンポーネントに基づいて第1の生物学的生成物試料の生物学的生成物タイプを同定するように更に構成され(すなわち、分類コンポーネントを有するモデルを実装するために)、これも不一致を縮小し、それによって、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102が第1の生物学的生成物試料の生物学的生成物タイプを同定する能力を改善する。
【0074】
様々な実施形態では、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置(例えば、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102)は、生物学的分類モデル構成(例えば、生物学的分類モデル構成103)からロードされた分類コンポーネントに基づいて、アダリムマブDS(生物学的生成物タイプ511)、エレヌマブDP(生物学的生成物タイプ512)、及びロモソズマブDP(生物学的生成物タイプ513)などの生物学的生成物(例えば、生物学的生成物140)の生物学的生成物タイプを同定、分類、及び/又は測定する。例えば、生物学的分類モデル構成103を介して構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102にロードされるものなどの生物学的分類モデルは、それぞれ
図4A及び4Bに関連して本明細書で更に説明される(1)生物学的分類モデルのQ残余誤差、又は(2)生物学的分類モデルのあてはめの要約値のうち少なくとも1つを縮小するように選択された分類コンポーネントを含み得る。
【0075】
本明細書で使用するとき、用語「分類コンポーネント」は、主要コンポーネント分析(PCA)に対して決定された主要コンポーネントを含み得る。その他の実施形態では、より一般的には、分類コンポーネントは、(回帰モデル又は機械学習モデルなどの)多変量モデルの係数又は変数であってもよい。分類コンポーネントに基づいて、生物学的分類モデルは、(例えば、生物学的生成物140から選択される)所与の生物学的生成物試料の生物学的生成物タイプを同定するように構成される。
【0076】
いくつかの実施形態では、生物学的分類モデルはPCAモデルとして実装され得る。PCAを実装することは、例えば、類似する配合物を有する治療生成物/剤などの生物学的生成物(例えば、生物学的生成物140)を識別するために(例えば、
図5に関して本明細書で説明されるように)、生物学的分類モデル構成103によって構成された構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102によって実装される多変量分析を使用することを表す。例えば、生物学的又は薬学的生成物は、一般的には高次元データを伴う。高次元データは、所与の試料(例えば、生物学的生成物140のスキャンの試料)上で測定された多くの遺伝子の発現などの複数の特徴を含み得る。PCAは、高次元データ(例えば、ラマンスペクトルのデータセット)の複雑度を単純化しつつも、同時に予測及び/又は同定(例えば、本明細書に記載される生物学的生成物の同定)目的に有用な傾向及びパターンを保持するために、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102によって使用される技術を提供する。例えば、PCAの適用は、データセット(例えば、ラマンベーススペクトルのデータセット)をより低次元に変換すること(例えば、第1のプロセッサ110によって)を含む。より低次元に変換されたデータセットは、元のデータセットのサマリー又は単純化を提供する。変換されたデータセットは、続いて、本明細書に記載される構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置(例えば、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102)によって操作された際の計算コストを低減する。更に、本明細書に記載されるエラー率も、PCAを実装することにより縮小され、それにより、特定の結果と関連付けるために各特徴を試験する際に、より高次元のデータに試験補正を適用する必要性が排除され得る。
【0077】
更に、PCAは、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102によって実装されると、データを主要コンポーネント(PC)と称されるより低次元に幾何学的に射影することにより、及び限定された数のPCを使用することによって、データ、及びひいてはPCの最良のサマリーを標的化することにより、データの複雑度を縮小する。第1のPCは、データと、PCに対するその射影との間の合計距離を最小化するように選択される。任意の第2の(後続の)PCが、全ての前のPCと相関しないという追加の要件を加えて同様に選択される。
【0078】
PCAは、教師なし学習法であり、これはクラスタリングに似ている。つまり、これは、異なる構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置(例えば、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102、112、114、及び/又は116)などの異なる供給源から試料が来たかどうかに関する従前の知識を参照することなしに傾向又はパターンを発見する。例えば、いくつかの実施形態では、生物学的分類モデルの分類コンポーネントは、PCAモデルの第1の主要コンポーネントであってもよい。こうした実施形態では、第1の主要コンポーネントは、特異値分解(SVD)分析に基づいて、第1のプロセッサ110によって決定され得る。構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102による第1の主要コンポーネントの使用は、その生物学的分類モデルによって補償される分析装置のばらつきの量を制限又は縮小する。いくつかの実施形態では、第1の主要コンポーネント(PC)は唯一の主要コンポーネントであり得る。その他の実施形態では、生物学的分類モデルは、第2の分類コンポーネントを含んでもよく、ここで生物学的分類モデルは、複数の分類コンポーネント(例えば、第1の分類コンポーネント及び第2の分類コンポーネント)に基づいて所与の生物学的生成物試料(例えば、生物学的生成物140)の生物学的生成物タイプを同定するように構成される。
【0079】
図6A~6Cのコンピュータープログラムリストの実施形態では、コードセクション7において、生物学的分類モデル構成(例えば、生物学的分類モデル構成103)は、その生物学的分類モデルに対して指定されたPCA予測のセットを定義する。コードセクション7はまた、あてはめの要約の統計値(例えば、ホテリングT
2値)及びQ残差/値に対する計算を定義するスクリプトも提供する。コードセクション7のスクリプトは、第1のプロセッサ110によって実行されて、例えば
図4A及び4Bに関して本明細書に記載されるように、Q残差/値及びホテリングT
2値に基づいて、生物学的生成物(例えば、生物学的生成物140)を同定又は分類することができる。
【0080】
図4Aは、生物学的分類モデルのQ残余誤差の例示的な視覚化400を示す。
図4Aは、Q残余誤差軸404及びホテリングT
2軸406を含む。一般的に、Q残余誤差及びホテリングT
2値は、モデル(例えば、生物学的分類モデル構成103の生物学的分類モデル)がどれほど良好に所与の生物学的生成物試料(例えば、生物学的生成物140のスキャンから取られた)を記述しているかを説明するために使用され得る要約統計量である。
図4Aは、多数のハンドヘルド式生物学的分析装置のQ残余誤差及びホテリングT
2値をプロットする。一般に、ゼロ(0)のQ残余誤差及びゼロ(0)のホテリングT
2値を有するハンドヘルド式生物学的分析装置は、エラーのない生成物のスキャンを表す。
【0081】
ハンドヘルド式生物学的分析装置は、生物学的分析装置グループ411n、412m1、412m2、及び413nのハンドヘルド式生物学的分析装置を含む。分析装置グループ411nは、第1の生物学的生成物タイプであるアダリムマブDSをスキャンした分析装置を表す。分析装置グループ412m1及び412m2はそれぞれ、第2の生物学的生成物タイプであるエレヌマブDPをスキャンした分析装置を表す。分析装置グループ413nは、第3の生物学的生成物タイプであるロモソズマブDPをスキャンした分析装置を表す。分析装置グループ412m1及び412m2は、本明細書に記載される生物学的分類モデル構成(例えば、生物学的分類モデル構成103)及びそれぞれの生物学的分類モデルで構成され及び強化された構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置(例えば、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102、112、114、及び/又は116のうちのいずれか)を含む。分析装置グループ411n及び413nは、生物学的分類モデル構成又は生物学的分類モデルで構成されていない典型的な生物学的分析装置を含む。
【0082】
分析装置グループ411n及び413nは、分析装置グループ412m1及び412m2と比較したときに、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置(例えば、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102、112、114、及び/又は116のうちのいずれか)のエラーの縮小(例えば、Q残余誤差軸404に沿った)を通して、例えば、分析装置グループ411n及び413nの分析装置の典型的な分析装置に勝る改善を示す対照グループとしての機能を果たす。具体的には、(例えば、Q残余誤差軸404の)Q残差は、各生成物試料の平方和として計算される不適合度統計値を提供する。Q残差は、所与のモデル(例えば、本明細書に記載される生物学的分類モデル)を通して射影した後に各試料中に残るばらつきの大きさを表す。より一般的には、
図4Aの実施形態によって示されるように、Q残余値(Q残余誤差軸404に沿った)は、識別的統計値としての機能を果たす。Q残差は、所与の生物学的分類モデルによって「残されたもの」、すなわち、説明されていないものの指標である。例えば、生物学的分類モデルがPCAモデルとして実装された一実施形態(例えば、スペクトルが第1の主要コンポーネントに射影されている)では、
図4Aの値は、スキャンされたデータ(例えば、生物学的分析装置グループ411n、412m1、412m2、及び/又は413nの)が第1の主要コンポーネントによって射影された後に残されたもの(残差)を示す。
【0083】
様々な実施形態では、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置(例えば、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102)は、Q残余誤差が閾値を満たす時に、分類コンポーネントに基づいて、(例えば、生物学的生成物140から取られた)生物学的生成物試料の生物学的生成物タイプを同定又は分類するように構成された(例えば、生物学的分類モデル構成103の)生物学的分類モデルを含む。いくつかの実施形態では、例えば、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102の第1のプロセッサ110によって実装又は実行される生物学的分類モデルは、閾値に基づいて合否決定を出力する。例えば、
図4Aの実施形態では、Q残余誤差軸404にわたる「1」の閾値は、合否決定要素(determinant)閾値405として選択される。こうした実施形態では、生物学的分類モデルを実装する構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置(例えば、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102)は、Q残余誤差軸404にわたる1の閾値の範囲内にある(すなわち、これ未満である)スキャンされたデータ(例えば、ラマンスペクトルデータセット)を用いて、これらの生物学的生成物を同定又は分類する(すなわち「合格させる」)。さもなければ、生物学的分類モデルを実装する生物学的分析装置(例えば、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102)は、これらの生物学的生成物を同定も分類もしない(すなわち、「不合格にする(fail)」。
【0084】
図4Aの実施形態では、分析装置グループ412m1及び412m2は、本明細書に記載される生物学的分類モデル構成(例えば、生物学的分類モデル構成103)及びそれぞれの生物学的分類モデルで構成され及び強化された構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置(例えば、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102、112、114、及び/又は116のうちのいずれか)を含む。分析装置グループ412m1及び412m2の構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置は、生物学的生成物(すなわち、エレヌマブDP)を正確に同定又は分類し(すなわち、「合格させ」)、ここで、関連するスキャンされたデータ(例えば、ラマンスペクトルのデータセット)は、本明細書に記載されるスペクトル前処理アルゴリズムで前処理されると、視覚化400によって示されるように、1の閾値の範囲内になる(すなわち、これ未満になる)。
【0085】
したがって、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置(例えば、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102)の生物学的分類モデルは、生物学的分類モデルのQ残余誤差を縮小させるために選択される分類コンポーネントを含み得る。このようにして、生物学的分類モデルは、分類コンポーネントに基づいて、所与の生物学的生成物試料の生物学的生成物タイプを同定するように構成される。一般に、Q残差は、ロット間のばらつきが分析装置間の不一致の主な原因である場合に、単一規格法による生物学的生成物に対する使用に最も適している。したがって、
図4Aによって示されるように、分析装置間のばらつきに耐えられるモデル(例えば、本明細書に記載される生物学的分類モデル)を決定するために、Q残差を識別的統計値として用いることができる。
【0086】
図4Bは、生物学的分類モデルのあてはめの要約値(例えば、ホテリングT
2値)の例示的な視覚化450を示す。一般に、ホテリングT
2値は、モデル(例えば、生物学的分類モデル)内の各試料におけるばらつきの指標を表す。ホテリングT
2値は、各試料がモデルの「中点」(0の値)からどれほど離れているかを示す。換言すると、ホテリングT
2値は、モデル中点からの距離のインジケータである。中点からの距離は、多くの場合、分析装置間のばらつきに起因して発生し得る。ホテリングT
2値を使用することは、複数の規格を用いて生物学的生成物を同定する上で有利である。これらの場合では、活性成分、賦形剤などの様々な濃度が、ロット間のばらつきよりも大きなばらつきをラマンスペクトルに生じさせる(本明細書で、
図4Aを参照してQ残差に関して上述したとおり)。
【0087】
図4Bの実施形態では、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置(例えば、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102)は、あてはめの要約値(例えば、ホテリングT
2)が閾値を満たす時に、分類コンポーネントに基づいて、(例えば、生物学的生成物140から取られた)生物学的生成物試料の生物学的生成物タイプを同定又は分類するように構成された(例えば、生物学的分類モデル構成103の)生物学的分類モデルを含む。
図4Bは、
図4Aに関して本明細書に記載されるものと同じQ残余誤差軸404及びホテリングT
2軸406を含む。分析装置グループ452mは、第1の生物学的生成物タイプであるデノスマブDP(2つの規格を有する)をスキャンした分析装置を表す。分析装置グループ454mは、第2の生物学的生成物タイプであるデノスマブDS(1つの規格を有する)をスキャンした分析装置を表す。分析装置グループ462nは、第3の生物学的生成物タイプであるエンブレルDPをスキャンした分析装置を表す。
図4Bの実施形態では、ホテリングT
2軸406にわたる「1」の閾値は、合否決定要素閾値407として選択される。こうした実施形態では、生物学的分類モデルを実装する構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置(例えば、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102)は、ホテリングT
2軸406の1の閾値の範囲内にある(すなわち、これ未満である)スキャンされたデータ(例えば、ラマンスペクトルデータセット)を用いて、これらの生物学的生成物を同定又は分類する(すなわち「合格させる」)。さもなければ、生物学的分類モデルを実装する生物学的分析装置(例えば、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102)は、これらの生物学的生成物を同定も分類もしない(すなわち、「不合格にする(fail)」。
【0088】
図4Bの実施形態では、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置(例えば、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102)の生物学的分類モデルは、生物学的分類モデルのあてはめの要約値(例えば、ホテリングT
2値)を縮小させるために選択される分類コンポーネントを含み得る。このようにして、生物学的分類モデルは、分類コンポーネントに基づいて、所与の生物学的生成物試料の生物学的生成物タイプを同定するように構成される。例えば、分析装置グループ452m及び454mは、本明細書に記載される生物学的分類モデル構成(例えば、生物学的分類モデル構成103)及びそれぞれの生物学的分類モデルで構成され及び強化された構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置(例えば、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102、112、114、及び/又は116のうちのいずれか)を含む。分析装置グループ412m1及び412m2の構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置は、生物学的生成物(すなわち、デノスマブDP及びDS)を正確に同定又は分類し(すなわち、「合格させ」)、ここで、関連するスキャンされたデータ(例えば、ラマンスペクトルのデータセット)は、本明細書に記載されるスペクトル前処理アルゴリズムで前処理されると、視覚化450によって示されるように、1の閾値の範囲内になる(すなわち、これ未満になる)。対照的に、分析装置グループ462nは、本明細書に記載される生物学的分類モデル構成で構成されていない分析装置を表し得る。
【0089】
図4A及び4Bのそれぞれによって示されるように、(例えば、Q残余誤差軸404の)Q残余誤差、及び/又はホテリングT
2値のそれぞれは、生物学的生成物を同定又は分類するために、単独で又は一緒に用いられ得る。つまり、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102は、(1)生物学的分類モデルのQ残余誤差、及び/又は(2)生物学的分類モデルのあてはめの要約値のうちの一方又は両方を縮小させるために分類コンポーネントを選択又は実装するように構成され得る。
【0090】
本明細書に記載されるように、
図2、3A、3B、3C、4A、4B、及び5に関連して、生物学的分類モデルは、分類コンポーネントに基づいて、所与の生物学的生成物タイプを有する所与の生物学的生成物試料(例えば、アダリムマブDS(生物学的生成物タイプ511))を、同定、分類、測定、或いは異なる又は第2の生物学的生成物タイプを有する異なる又は第2の生物学的生成物試料(例えば、エレヌマブDP(生物学的生成物タイプ512))と識別するように構成され得る。例えば、
図4A、4B、及び5に関連して説明されるとおり、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102は、第1の生物学的生成物タイプ(例えば、アダリムマブDS(生物学的生成物タイプ511))と、異なる生物学的生成物タイプ(例えば、エレヌマブDP(生物学的生成物タイプ512))と、を識別することができる。例えば、本明細書に記載されるとおり、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102は、一旦生物学的分類モデル構成103を用いて構成されると、第1のスキャナ106によって受信されたラマンベーススペクトルのデータセット上でスペクトル前処理アルゴリズム(例えば、本明細書の
図3A~3Cに記載される)を実行することができる。一旦ラマンベーススペクトルのデータセットがスペクトル前処理アルゴリズムによって前処理されると、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102は、Q残差及び/又はホテリングT2値(例えば、
図4A及び4Bに関して本明細書に記載される)に基づいて、生物学的生成物を同定又は分類することができる。
【0091】
所与の生物学的生成物タイプ、例えば、本明細書に記載されるアダリムマブDS(生物学的生成物タイプ511)、エレヌマブDP(生物学的生成物タイプ512)、及び/又はロモソズマブDP(生物学的生成物タイプ513)のいずれかを有する生物学的生成物140などの生物学的生成物の開発又は製造中、生物学的分類モデル及び/又はスペクトル前処理アルゴリズムを実行する構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置102によって(例えば、第1のプロセッサ110によって)生物学的生成物タイプが同定され得る。しかしながら、これらの生物学的生成物タイプは例に過ぎず、本明細書の様々な実施形態に関して記載されるものと同じ又は類似する方法で、その他の生物学的生成物タイプ又は生物学的生成物を同定、分類、測定、又は識別することができることを理解されたい。
【0092】
本開示の態様
1.ラマン分光法に基づいて生物学的生成物を同定するための構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置であって、ハンドヘルド操作用に適合された第1のハウジング、第1のハウジングによって保持される第1のスキャナ、第1のスキャナに通信可能に連結された第1のプロセッサ、及び第1のプロセッサに通信可能に連結された第1のコンピューターメモリを含み、第1のコンピューターメモリは生物学的分類モデル構成をロードするように構成され、生物学的分類モデル構成は生物学的分類モデルを含み、生物学的分類モデルは第1のプロセッサ上で実行されるように構成され、第1のプロセッサは、(1)第1のスキャナによってスキャンされた第1の生物学的生成物試料を定義する第1のラマンベーススペクトルのデータセットを受信し、(2)生物学的分類モデルを用いて、第1のラマンベーススペクトルのデータセットに基づいて生物学的生成物タイプを同定するように構成され、生物学的分類モデル構成は、スペクトル前処理アルゴリズムを更に含み、第1のプロセッサは、第1のラマンベーススペクトルのデータセットが第1のプロセッサによって受信された時にスペクトル前処理アルゴリズムを実行して、第1のラマンベーススペクトルのデータセットのスペクトルの不一致を縮小するように構成され、生物学的分類モデルは、(1)生物学的分類モデルのQ残余誤差、又は(2)生物学的分類モデルのあてはめの要約値のうちの少なくとも1つを縮小するように選択された分類コンポーネントを含み、生物学的分類モデルは、分類コンポーネントに基づいて、第1の生物学的生成物試料の生物学的生成物タイプを同定するように構成される、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置。
【0093】
2.生物学的分類モデル構成は、第2の構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置へと電子的に転送可能であり、第2の構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置は、ハンドヘルド操作用に適合された第2のハウジング、第2のハウジングに連結された第2のスキャナ、第2のスキャナに通信可能に連結された第2のプロセッサ、及び第2のプロセッサに通信可能に連結された第2のコンピューターメモリを含み、第2のコンピューターメモリは生物学的分類モデル構成をロードするように構成され、生物学的分類モデル構成は生物学的分類モデルを含み、生物学的分類モデルは第2のプロセッサ上で実行されるように構成され、第2のプロセッサは、(1)第2のスキャナによってスキャンされた第2の生物学的生成物試料を定義する第2のラマンベーススペクトルのデータセットを受信し、(2)生物学的分類モデルを用いて、第2のラマンベーススペクトルのデータセットに基づいて生物学的生成物タイプを同定するように構成され、第2の生物学的生成物試料は、生物学的生成物タイプの新規試料である、態様1に記載の構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置。
【0094】
3.スペクトルの不一致は、第1のラマンベーススペクトルのデータセットと1つ以上の対応するその他のハンドヘルド式生物学的分析装置の1つ以上のその他のラマンベーススペクトルのデータセットとの間の分析装置間のスペクトルの不一致であり、1つ以上のその他のラマンベーススペクトルのデータセットのそれぞれは、生物学的生成物タイプを表し、スペクトル前処理アルゴリズムは、第1のラマンベーススペクトルのデータセットと1つ以上のその他のラマンベーススペクトルのデータセットとの間の分析装置間のスペクトルの不一致を縮小するように構成される、態様1又は2のいずれかに記載の構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置。
【0095】
4.スペクトル前処理アルゴリズムは、第1のラマンベーススペクトルのデータセットに導関数変換を適用して、修正ラマンベーススペクトルのデータセットを生成することと、修正ラマンベーススペクトルのデータセットをラマンシフト軸全体にわたって整列させることと、修正ラマンベーススペクトルのデータセットをラマン強度軸全体にわたって正規化することと、を含む、態様3に記載の構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置。
【0096】
5.導関数変換は、ラマンシフト軸全体にわたる11~15ラマンシフト値の連続するグループのラマン重み付き平均を決定することと、ラマンシフト軸全体にわたるこれらのラマン重み付き平均の対応する導関数を決定することと、を含む、態様4に記載の構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置。
【0097】
6.分類コンポーネントは、(1)生物学的分類モデルのQ残余誤差、及び(2)生物学的分類モデルのあてはめの要約値の両方を縮小するように選択される、態様1~5のいずれかに記載の構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置。
【0098】
7.生物学的分類モデルは、第2の分類コンポーネントを更に含み、生物学的分類モデルは、分類コンポーネント及び第2の分類コンポーネントに基づいて、第1の生物学的生成物試料の生物学的生成物タイプを同定するように構成される、態様1~6のいずれかに記載の構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置。
【0099】
8.生物学的分類モデルは、主要コンポーネント分析(PCA)モデルとして実装される態様1~7のいずれかに記載の構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置。
【0100】
9.分類コンポーネントは、PCAモデルの第1の主要コンポーネントである、態様8に記載の構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置。
【0101】
10.コンピューターメモリは新規の生物学的分類モデルをロードするように構成され、新規の生物学的分類モデルは更新された分類コンポーネントを含む、態様1~9のいずれかに記載の構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置。
【0102】
11.生物学的分類モデル構成は、拡張マークアップ言語(XML)フォーマットで実装される、態様1~10のいずれかに記載の構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置。
【0103】
12.生物学的生成物タイプは治療生成物のものである、態様1~11のいずれかに記載の構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置。
【0104】
13.生物学的生成物タイプは、生物学的生成物タイプを有する生物学的生成物の製造中に生物学的分類モデルによって同定される、態様1~12のいずれかに記載の構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置。
【0105】
14.生物学的分類モデルは、分類コンポーネントに基づいて、生物学的生成物タイプを有する第1の生物学的生成物試料を、異なる生物学的生成物タイプを有する異なる生物学的生成物試料と識別するように構成される、態様1~13のいずれかに記載の構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置。
【0106】
15.生物学的生成物タイプ及び異なる生物学的生成物タイプは、それぞれ同じ又は類似のラマンスペクトル範囲内に個別の局部的特徴を有する、態様14に記載の構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置。
【0107】
16.生物学的分類モデルは、Q残余誤差又はあてはめの要約値が閾値を満たす時に、分類コンポーネントに基づいて、第1の生物学的生成物試料の生物学的生成物タイプを同定するように構成される、態様1~15のいずれかに記載の構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置。
【0108】
17.生物学的分類モデルは、閾値に基づいて合否決定を出力する、態様16に記載の構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置。
【0109】
18.生物学的分類モデルは、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置に対して遠隔である遠隔プロセッサによって生成される、態様1~17のいずれかに記載の構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置。
【0110】
19.ラマン分光法に基づいて生物学的生成物を同定するための生物学的分析法であって、第1のプロセッサ及び第1のスキャナを有する第1の構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置の第1のコンピューターメモリに、生物学的分類モデルを含む生物学的分類モデル構成をロードすることと、生物学的分類モデルによって、第1のスキャナによってスキャンされた第1の生物学的生成物試料を定義する第1のラマンベーススペクトルのデータセットを受信することと、生物学的分類モデルのスペクトル前処理アルゴリズムを実行して、第1のラマンベーススペクトルのデータセットのスペクトルの不一致を縮小することと、生物学的分類モデルを用いて、第1のラマンベーススペクトルのデータセットに基づいて生物学的生成物タイプを同定することと、を含み、生物学的分類モデルは、(1)生物学的分類モデルのQ残余誤差、又は(2)生物学的分類モデルのあてはめの要約値のうちの少なくとも1つを縮小するように選択された分類コンポーネントを含み、生物学的分類モデルは、分類コンポーネントに基づいて、第1の生物学的生成物試料の生物学的生成物タイプを同定するように構成される、生物学的分析法。
【0111】
20.生物学的分類モデル構成は、第2の構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置へと電子的に転送可能であり、生物学的分析法は、第2のプロセッサ及び第2のスキャナを有する第2の構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置の第2のコンピューターメモリに、生物学的分類モデルを含む生物学的分類モデル構成をロードすることと、生物学的分類モデルによって、第2のスキャナによってスキャンされた第2の生物学的生成物試料を定義する第2のラマンベーススペクトルのデータセットを受信することと、生物学的分類モデルのスペクトル前処理アルゴリズムを実行して、第2のラマンベーススペクトルのデータセットの第2のスペクトルの不一致を縮小することと、生物学的分類モデルを用いて、第2のラマンベーススペクトルのデータセットに基づいて生物学的生成物タイプを同定することと、を更に含み、第2の生物学的生成物試料は、生物学的生成物タイプの新規試料である、態様19に記載の生物学的分析法。
【0112】
21.スペクトルの不一致は、第1のラマンベーススペクトルのデータセットと1つ以上の対応するその他のハンドヘルド式生物学的分析装置の1つ以上のその他のラマンベーススペクトルのデータセットとの間の分析装置間のスペクトルの不一致であり、1つ以上のその他のラマンベーススペクトルのデータセットのそれぞれは、生物学的生成物タイプを表し、スペクトル前処理アルゴリズムは、第1のラマンベーススペクトルのデータセットと1つ以上のその他のラマンベーススペクトルのデータセットとの間の分析装置間のスペクトルの不一致を縮小するように構成される、態様19又は20に記載の生物学的分析法。
【0113】
22.スペクトル前処理アルゴリズムは、第1のラマンベーススペクトルのデータセットに導関数変換を適用して、修正ラマンベーススペクトルのデータセットを生成することと、修正ラマンベーススペクトルのデータセットをラマンシフト軸全体にわたって整列させることと、修正ラマンベーススペクトルのデータセットをラマン強度軸全体にわたって正規化することと、を含む、態様21に記載の生物学的分析法。
【0114】
23.導関数変換は、ラマンシフト軸全体にわたる11~15ラマンシフト値の連続するグループのラマン重み付き平均を決定することと、ラマンシフト軸全体にわたるこれらのラマン重み付き平均の対応する導関数を決定することと、を含む、態様22に記載の生物学的分析法。
【0115】
24.分類コンポーネントは、(1)生物学的分類モデルのQ残余誤差、及び(2)生物学的分類モデルのあてはめの要約値の両方を縮小するように選択される、態様19~23のいずれか1つ以上に記載の生物学的分析法。
【0116】
25.生物学的分類モデルは、第2の分類コンポーネントを更に含み、生物学的分類モデルは、分類コンポーネント及び第2の分類コンポーネントに基づいて、第1の生物学的生成物試料の生物学的生成物タイプを同定するように構成される、態様19~24のいずれか1つ以上に記載の生物学的分析法。
【0117】
26.生物学的分類モデルは、主要コンポーネント分析(PCA)モデルとして実装される、態様19~25のいずれか1つ以上に記載の生物学的分析法。
【0118】
27.分類コンポーネントは、PCAモデルの第1の主要コンポーネントである、態様26に記載の生物学的分析法。
【0119】
28.第1及び/又は第2のコンピューターメモリは新規の生物学的分類モデルをロードするように構成され、新規の生物学的分類モデルは更新された分類コンポーネントを含む、態様19~27のいずれか1つ以上に記載の生物学的分析法。
【0120】
29.生物学的分類モデル構成は、拡張マークアップ言語(XML)フォーマットで実装される、態様19~28のいずれか1つ以上に記載の生物学的分析法。
【0121】
30.生物学的生成物タイプは治療生成物のものである、態様19~29のいずれか1つ以上に記載の生物学的分析法。
【0122】
31.生物学的生成物タイプは、生物学的生成物タイプを有する生物学的生成物の製造中に生物学的分類モデルによって同定される、態様19~30のいずれか1つ以上に記載の生物学的分析法。
【0123】
32.生物学的分類モデルは、分類コンポーネントに基づいて、生物学的生成物タイプを有する第1の生物学的生成物試料を、異なる生物学的生成物タイプを有する異なる生物学的生成物試料と識別するように構成される、態様19~31のいずれか1つ以上に記載の生物学的分析法。
【0124】
33.生物学的生成物タイプ及び異なる生物学的生成物タイプは、それぞれ同じ又は類似のラマンスペクトル範囲を有する、態様32に記載の生物学的分析法。
【0125】
34.生物学的分類モデルは、Q残余誤差又はあてはめの要約値が閾値を満たす時に、分類コンポーネントに基づいて、第1の生物学的生成物試料の生物学的生成物タイプを同定するように構成される、態様19~33のいずれか1つ以上に記載の生物学的分析法。
【0126】
35.生物学的分類モデルは、閾値に基づいて合否決定を出力する、態様34に記載の生物学的分析法。
【0127】
36.生物学的分類モデルは、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置に対して遠隔である遠隔プロセッサによって生成される、態様19~35のいずれか1つ以上に記載の生物学的分析法。
【0128】
37.構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置の1つ以上のプロセッサによって実行されると、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置の1つ以上のプロセッサに、スキャナを有する構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置のコンピューターメモリに、生物学的分類モデル構成をロードすることであって、生物学的分類モデル構成は生物学的分類モデルを含む、ことと、生物学的分類モデルによって、スキャナによってスキャンされた生物学的生成物試料を定義するラマンベーススペクトルのデータセットを受信することと、生物学的分類モデルのスペクトル前処理アルゴリズムを実行して、ラマンベーススペクトルのデータセットのスペクトルの不一致を縮小することと、生物学的分類モデルを用いて、ラマンベーススペクトルのデータセットに基づいて生物学的生成物タイプを同定することと、を行わせ、生物学的分類モデルは、(1)生物学的分類モデルのQ残余誤差、又は(2)生物学的分類モデルのあてはめの要約値のうちの少なくとも1つを縮小するように選択された分類コンポーネントを含み、生物学的分類モデルは、分類コンポーネントに基づいて、生物学的生成物試料の生物学的生成物タイプを同定するように構成される、ラマン分光法に基づいて生物学的生成物を同定するための命令を記憶する有形の非一時的コンピューター可読媒体。
【0129】
本開示の上記の態様は例に過ぎず、本開示の範囲を限定するものではない。
【0130】
追加の実施例
下記の追加の実施例は、本明細書に記載される様々な実施形態に従う追加的な支援を提供する。具体的には、下記の追加的な実施例は、溶液中の生物治療タンパク質生成物を迅速に正体(ID)検証するためのラマン分光法を実証する。本実施例は、生成物差別化のための基準として治療薬及び賦形剤の両方に関連するラマン特徴の固有の組み合わせを実証する。本明細書に記載される生成物ID法(例えば、生物学的分析法)は、複数のラマン分析装置(例えば、本明細書に記載される構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置)上で標的生成物のラマンスペクトルを取得することを含む。このスペクトルを、続いて、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置の生成物ID決定のための基準として機能する生成物特異的モデル(例えば、生物学的分類モデル)を定義するための主要コンポーネント分析(PCA)、及び本明細書に記載されるラマン分光法に基づいて生物学的生成物を同定するための生物学的分析法を用いた次元縮小に供してもよい。生成物特異的モデル(例えば、生物学的分類モデル)を、生成物試験に対する有効性が確認された個別の機器(例えば、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置)に転送してよい。これらは、品質管理、供給時品質保証、及び製造を含む様々な目的に使用することができる。こうした分析装置及び方法は、様々な製造者からの様々なラマン装置(例えば、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置)にわたって使用することができる。このようにして、追加の実施例は、本明細書に記載されるラマンID分析装置及び方法(例えば構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置及び関連する方法)が、バイオ医薬産業における溶液ベースのタンパク質生成物に関する様々な用途及び試験を提供することを更に実証する。
【0131】
追加の実施例-材料
28種を超える個々の生成物規格に対応する原薬及び製剤を、本明細書に記載される構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置及び関連する方法の開発及び試験中に分析した。表1は、後期段階及び市販生成物の規格のセットを表す14種の生成物規格に対する有効薬剤成分(API)濃度及び分子クラスを示す。ラマンスペクトル取得のための試料細胞として機能する生成物溶液を4mLのガラスバイアルに移した。表1は、ID法(例えば、生物学的分析法)の標的、又は本明細書に記載される特異性課題のいずれかとしての、評価された生成物の一般的性質を提供する。表1を分かりやすくするため、各生成物は文字コードで標識されている。同じ文字(character letter)を有するが番号が異なる生成物(例えば、A1及びA2)は、タンパク質濃度及び/又は配合が異なり得る同じ活性成分を有する生成物を表す。列挙された材料は、製剤の製造に用いることができる。いくつかの製剤は、例えば本明細書で言及される商標名によって同定され得ることが理解されよう。
【0132】
【0133】
追加の実施例-ラマン機器類(例えば、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置)及び測定
追加の実施例に関して、本明細書に記載される構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置を使用してラマンスペクトルを測定した。例えば、特定の実施形態では、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置は、Thermo Fisher Scientific Incにより提供されるTruScan(商標)RM Handheld Raman Analyzerなどのラマンベースのハンドヘルド式分析装置であり得る。こうした実施形態では、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置は、TruTools(商標)計量化学用ソフトウェアパッケージを実装し得る。しかし追加の及び/又は異なるソフトウェアパッケージを用いる他のブランド又はタイプのラマン分析装置を本明細書の開示に従って使用してもよいことを理解されたい。いくつかの実施形態では、試料積分のために、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置は、焦点調節光学素子(例えば、0.33NA、作動距離18mm、スポット>0.2mm)を結合した785nmの回折格子安定化レーザー源(最大出力250mW)で構成され得る。追加の実施例のために、ガラスバイアルに収容された生成物溶液を、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置のバイアルアダプタを用いて焦点調節光学素子の前面に固定した。例えば、レーザー出力=250mW、積分時間=1000ms、スペクトル共付加(co-addition)数=70の同一のスペクトル取得設定を用いて全てのスペクトルを収集した(しかし、その他の設定が用いられてもよい)。追加の実施例のために、3つの異なる構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置(以下、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置1~3と称する)、並びに/又は本明細書に記載されるラマン分光法に基づいて生物学的生成物を同定するための生物学的分析法の構成及び/若しくは開発に専用の機器を使用して、生成物のスペクトルを所定の期間にわたり収集した。本明細書に記載される構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置、及び関連する生物学的分析法を、設定、構成、又は初期化するために、同じ又は異なる設定を使用する、追加の、或いはより少数の分析装置を使用してもよいことを理解されたい。
【0134】
追加の実施例-多変量ラマンID生物学的分析法の開発
例えば、主要コンポーネント分析(PCA)に基づくラマンスペクトルモデル(例えば、生物学的分類モデル)を、本明細書に記載されるように生成、開発、又はロードすることができる。例えば、いくつかの実施形態では、Model Exporterアドオンを装備するSOLOソフトウェア(Solo+Model_Exporterバージョン8.2.1;Eigenvector Research,Inc.)を使用して、ラマンスペクトルモデル(例えば、生物学的分類モデル)を生成、開発、又はロードすることができる。しかし、その他のソフトウェアを使用して、ラマンスペクトルモデル(例えば、生物学的分類モデル)を生成、開発、又はロードしてもよいことを理解されたい。モデル構築に使用されるスペクトルは、一般に、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置(例えば、3つの構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置)を用いて、2つ以上の別個の材料のロット上の複製スキャンとして収集され得る。スペクトルは、一般に、機器のドリフトを含める目的で複数の日数をかけて取得される。いくつかの実施形態では、モデル(例えば、生物学的分類モデル)に組み込む前に、>1800cm-1における検出器ノイズ、及び<400 cm-1でレイリー線を除去する光学素子から生じるバックグラウンドのばらつきを除外するように、スペクトル範囲を縮小してもよい。スペクトルは、各モデルに関して、本明細書に記載されるように、更に前処理及び平均中心化(mean-centered)されてもよい。モデルは、表1に示す標的及び課題生成物のラマンスペクトルを参照することにより、ランダムサブセット手順を用いたクロス確認によって更に精錬されてもよい。
【0135】
生物学的分類モデル構成(例えば、PCAモデル構成)は、ラマンスペクトル取得パラメータと共に、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置内に構成若しくはロードされてもよく、及び/又は本明細書に記載されるラマン分光法に基づいて生物学的生成物を同定するための生物学的分析法を用いてもよい。各方法の受け入れ(例えば、合否)基準も指定されてよい。本明細書に記載されるように、合否基準は、生物学的分類モデル(例えば、PCAモデル)によってどれほど良好にラマンスペクトルが記述されているかを概ね説明する2つの要約統計量である、縮小されたホテリングT
2(T
r
2)及びQ残差(Q
r)の閾値に基づき得る。下記の式(1)~(4)は、生物学的分類モデル(例えば、PCAモデル)による確実な同定又は決定(例えば、合否基準)のための例示的なユーザ選択式の決定論理の選択肢を提供する。
【数1】
【0136】
上記の例示的な方程式では、元の値を対応する信頼区間で割り、それにより上界の値を1の値に設定することによって、ホテリングT2及びQ残差値は正規化される(すなわち、それぞれ縮小されたTr
2及びQr)。
【0137】
追加の実施例-構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置及び転送試験方法
追加の実施例に関連して、
図8A~8Eに関して本明細書に記載される5つの生成物特異的モデル(例えば、生物学的分類モデル)に関して本明細書に記載される構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置及び関連する方法の性能の実証を、本明細書に記載される構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置及び関連する方法の開発に用いられていない、すなわち、過去に本明細書に記載される生物学的分類モデル構成で構成されていない、又はこれをロードされていない、分析装置の小規模な一団(例えば、15個の構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置)を用いて実施した。生成物ID法(例えば、ラマン分光法に基づいて生物学的生成物を同定するための生物学的分析法)を、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置1~3上で準備し、単一の生成物規格に対する4回の試験(例えば、Q1、Q2、A1、及びA2)、及び同じタンパク質生成物の3つの類似する規格の同定に適した1回の試験(例えば、B1、B2、及びB3)を実施した。各試験は、それぞれ経年数及び性能が異なる15個の追加の機器(分析装置4~18)上で取得した標的生成物スペクトルを用いることを含んだ。モデル特異性は、最も近い特異性課題生成物及び配合物緩衝液(すなわち、タンパク質なし)を評価することによっても測定された。試料のラマンスペクトルを、モデル構築に使用されたものと同一の収集パラメータ(すなわち、レーザー出力、取得時間、共付加(co-addition)数)を用いて取得した。ラマンスペクトルは、様々な日にわたる複製として取得し、1生成物試料あたり約250スペクトルを得た。試験中に取得されたスペクトルを、5つのPCAモデルのそれぞれに対して評価し(例えば、Eigenvector Solo及びModel_Exporterソフトウェア中で)、偽陽性(すなわち、標的としての課題生成物の誤同定)及び偽陰性(すなわち、モデルによる標的生成物の不正確な拒絶)の結果の可能性を査定した。
【0138】
追加の実施例の試験中に、例えば、
図8A~8Eに関して説明される5つのモデル及び関連する試験のいずれにおいても偽陽性結果の例は一件も存在しなかった。一般的に、課題生成物のQ
r又はT
r
2値は、分析装置4~18のものが、モデルの開発に用いられた機器のものよりも大きかった。この観測の延長として、生物学的分類モデル(例えば、PCAモデル)が、所与の課題生成物を一貫して拒絶する能力は、方法の開発中に得られたラマンスペクトルのみに基づいて、高い信頼度で推定され得る。
図7は、本明細書に記載される様々な実施形態による、縮小したQ残余誤差704の例示的な視覚化700を示す。具体的には、
図7は、表1の生成物A2に関する生物学的分類モデル(例えば、PCAモデル)に対して評価される、課題生成物試料として処理される表1の生成物A1に関する縮小したQ残余誤差値700の例示的なプロットを提供する。線形指数706は、データセット中のラマンスペクトル指数に対して提供され、必ずしも試料に関連するわけではない。
【0139】
図7の個々の点は、対応するラマンスペクトルが、モデルの開発(702)に用いられる分析装置上で取得されたものか、或いは完全に試験(703)のためだけに用いられたのかどうかに基づいて差異化される。分析装置8のQ
r値(すなわち、約250~270の線形指数値)は、既知の機器性能の問題に起因して異常に高かったが、これについては本明細書の下記で論じる。それにもかかわらず、分析装置8上でなされた測定値を除外したとしても、分析装置4~18のQ
r値は、シャピロ・ウイルクの帰無仮説の拒絶(p=0.0013)に基づいて正常に分布しなかった。このデータセットの場合、分析装置4~18に関する3.02の中央Q
r値は、開発機器の2.53の中央Q
rよりも著しく大きかった(マン・ホイットニーU検定 p値<0.0001)。偽陽性は観察されなかった。しかしながら、1540の合計測定値にわたって正同定であるべきであった33の偽陰性予測が存在し、これはわずか約2%の偽陰性と等しく、総分析回数のわずか一部である。
【0140】
図8A~8Eは、その対応する生物学的分類モデル(例えば、PCAモデル)に対して評価された標的生成物のそれぞれに関する要約統計量Q
r又はT
r
2をプロットすることによる、様々な分析装置802(すなわち、構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置1~3及び分析装置4~18)の分析を示す。明確さのため、
図8A~8Eの確認結果は、分析装置の番号に従って整理されている。
図8A~8Dは、本明細書で説明される様々な実施形態による、18個の異なる構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置(構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置1~3及び分析装置4~18)に関して評価した、(例えば、表1の)標的生成物の縮小したQ残余誤差の例示的な視覚化800、810、820、及び830をそれぞれ示す。具体的には、
図8A~8Dの視覚化は、分析装置1~18上で評価された各方法の標的生成物の縮小したQ残差の広がりを示す散乱プロットとして表される。
図8Aは、表1の標的生成物A1の縮小したQ残差の広がりを示す。
図8Bは、表1の標的生成物A2の縮小したQ残差の広がりを示す。
図8Cは、表1の標的生成物Q1の縮小したQ残差の広がりを示す。
図8Dは、表1の標的生成物Q2の縮小したQ残差の広がりを示す。
図8A~8Dのそれぞれにおいて、各グラフの水平破線(すなわち、それぞれ805、815、825、及び835)は、合否基準又は閾値を表し、そのため1を超える値は不合格の結果(すなわち、偽陰性)をもたらす。各線形指数(例えば、それぞれ806、816、826、及び836)は、データセット中のラマンスペクトル指数に対して提供され、必ずしも試料に関連するわけではない。
【0141】
図8Eは、本明細書で説明される様々な実施形態による、18個の異なる構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置802(構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置1~3及び分析装置4~18)に関して評価した、標的生成物(例えば、B1、B2、及び/又はB3)の縮小したあてはめの要約値(例えば、ホテリングT
2)の例示的な視覚化840を示す。水平破線845は、合否基準又は閾値を表し、そのため1を超える値は不合格の結果(すなわち、偽陰性)をもたらす。線形指数846は、データセット中のラマンスペクトル指数に対して提供され、必ずしも試料に関連するわけではない。
【0142】
図8A~8Eのそれぞれに関して、分析装置10~16、及び18上で偽陰性の決定は存在しない。実際に、ほとんどの場合で要約統計量は<0.6であり、これは、これらの機器のいずれにおいても偽陰性の可能性は極めて低いことを示唆する。残る3個の分析装置(8、9、17)に対して切り分けされた33個の誤結果が存在し、これらのそれぞれが、同定可能なハードウェアベースの及び/又は機器特有の性能問題を有していた。初期に試験製作された機器である分析装置8は、最も多い回数の偽陰性をもたらした。方法A1に関しては、20/20のスペクトルが不合格Q
r値(例えば、1を超える値)を生じさせた。しかしながら、他の4つの方法では合計で3つの偽陰性しか存在せず、これは、方法A1に関する異なる性能は、この生成物に関する、その低いタンパク質濃度(10mg/mL)及び弱い賦形剤バンド(band)に起因する弱いラマン散乱シグナルに関係している可能性が高いことを示唆する。それにもかかわらず、分析装置8の残差の検査は、約1300cm
-1を中心とした広範な特徴を明らかにした(データは示さず)。初期に試験製作された機器である分析装置8は、観察可能なラマンバンドをもたらす本生産分析装置(1~7及び9~18)とは異なる光学コンポーネントを有しており、これが高い不合格率を生じされるものと考えられた。残りの分析装置(9及び17)に関しては、著しい機器性能の問題も注目された。分析装置9の原波数較正は、製造者の規格から約3cm
-1外れていることが既知であった。分析装置17に関しては、更なる調査でこれまでに知られていないレーザー出力/安定性の問題が同定された。これらの既知の問題にも関わらず、両方の分析装置上で
図8A~8Eの5つ全てのモデルに関する真の陽性率は85%を超え、生物学的分類モデル(例えば、PCA)は、機器機能の低下さえある程度まで許容できるという証拠を提供した。機器の使用適性(fit-for-use)を確実にするように設計された手順の仕組み(procedural mechanism)(例えば、据え付け時適格性確認及び稼働性能適格性確認、定期的な予防保全)は、バイオ医薬品の適正医薬品製造基準(Good Manufacturing Practice、GMP)試験に既に記載されている。しかしながら、試験前に分析装置17のレーザー出力の問題が知られていなかったという事実は、分光計及び多変量モデルの長期的性能を保証するための機器性能測定基準の厳格な評価の価値を強調する。しかしながら、上記で実証したとおり、ラマン分光法に基づいて生物学的生成物を同定するための本明細書に記載される構成可能なハンドヘルド式生物学的分析装置、及び関連する生物学的分析法は、本明細書に記載されるとおりロバスト及びフォールトトレラントであり、機器のハードウェアベースの及び/又は機器特有の性能問題にも関わらず依然として動作可能及び使用可能である。
【0143】
追加的な説明
本明細書の上記の記述は、薬剤送達デバイスに関連する様々なデバイス、アセンブリ、コンポーネント、サブシステム、及び使用法を説明している。デバイス、アセンブリ、コンポーネント、サブシステム、方法、又は薬剤送達デバイスは、下記で同定される薬物、並びにそれらのジェネリック及びバイオシミラー同等物を含むがこれらに限定されない薬物を更に含み得るか、或いはこれらと共に使用され得る。本明細書で使用する場合、薬物という用語は、他の類似の用語と交換可能に使用することができ、伝統的及び非伝統的な医薬品、栄養補助食品、サプリメント、生物学的製剤、生物学的活性剤及び組成物、大分子、バイオシミラー、生物学的同等物、治療用抗体、ポリペプチド、タンパク質、小分子、及びジェネリック医薬品を含む、任意の種類の薬剤又は治療用材料を指すために使用され得る。非治療的な注入可能材料もまた包含される。薬物は、液体形態、凍結乾燥形態、又は凍結乾燥形態から再構成されたものであってもよい。下記の例示的な薬剤のリストは、網羅的又は限定的であると考えられるべきではない。
【0144】
薬物はリザーバに収容される。いくつかの場合では、リザーバは、治療のために薬物が充填されるか又は予充填されるかのいずれかである一次容器である。一次容器は、バイアル、カートリッジ、又は予充填シリンジであり得る。
【0145】
いくつかの実施形態では、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)などのコロニー刺激因子が、薬剤送達デバイスのリザーバに充填されてもよく、或いはそれらと共にデバイスが使用されてもよい。このようなG-CSF剤としては、Neulasta(登録商標)(ペグフィルグラスチム、PEG化フィルガストリム、PEG化G-CSF、PEG化hu-Met-G-CSF)及びNeupogen(登録商標)(フィルグラスチム、G-CSF、hu-MetG-CSF)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0146】
他の実施形態では、薬剤送達デバイスは、液体又は凍結乾燥形態であり得る赤血球産生刺激剤(ESA)を含有してもよく、又はこれと共に使用されてもよい。ESAは、赤血球産生を刺激する任意の分子である。いくつかの実施形態では、ESAは、赤血球産生刺激タンパク質である。本明細書で使用するとき、「赤血球産生刺激タンパク質」とは、例えば受容体と結合してその二量体化を引き起こすことによって、エリスロポエチン受容体を直接又は間接的に活性化させる任意のタンパク質を意味する。赤血球産生刺激タンパク質としては、エリスロポエチン受容体に結合し、これを活性化させるエリスロポエチン及びその変異体、類似体、若しくは誘導体、エリスロポエチン受容体に結合してその受容体を活性化させる抗体、又はエリスロポエチン受容体に結合してこれを活性化させるペプチドが挙げられる。赤血球産生刺激タンパク質としては、Epogen(登録商標)(エポエチンアルファ)、Aranesp(登録商標)(ダルベポエチンアルファ)、Dynepo(登録商標)(エポエチンデルタ)、Mircera(登録商標)(メトキシポリエチレングリコール-エポエチンベータ)、Hematide(登録商標)、MRK-2578、INS-22、Retacrit(登録商標)(エポエチンゼータ)、Neorecormon(登録商標)(エポエチンベータ)、Silapo(登録商標)(エポエチンゼータ)、Binocrit(登録商標)(エポエチンアルファ)、エポエチンアルファHexal、Abseamed(登録商標)(エポエチンアルファ)、Ratioepo(登録商標)(エポエチンシータ)、Eporatio(登録商標)(エポエチンシータ)、Biopoin(登録商標)(エポエチンシータ)、エポエチンアルファ、エポエチンベータ、エポエチンイオタ、エポエチンオメガ、エポエチンデルタ、エポエチンゼータ、エポエチンシータ、及びエポエチンデルタ、PEG化エリスロポエチン、カルバミル化エリスロポエチン、並びにそれらの分子又は変異体若しくは類似体が挙げられるがそれらに限定されない。
【0147】
特定の例示的なタンパク質の中には、その融合物、断片、類似体、変異体、又は誘導体を含む、以下に記載する特定のタンパク質が存在する:完全ヒト化及びヒトOPGL特異抗体、特に完全ヒト化モノクローナル抗体を含む、OPGL特異抗体、ペプチボディ、及び関連タンパク質など(RANKL特異抗体、ペプチボディなどとも称される);ミオスタチン特異的ペプチボディを含む、ミオスタチン結合タンパク質、ペプチボディ、関連タンパク質など;IL-4受容体特異抗体、ペプチボディ、関連タンパク質など、特に、IL-4及び/又はIL-13の受容体への結合によって媒介される活性を抑制するもの;インターロイキン1-受容体1(「IL1-R1」)特異抗体、ペプチボディ、関連タンパク質など;Ang2特異抗体、ペプチボディ、関連タンパク質など;NGF特異抗体、ペプチボディ、関連タンパク質など;CD22特異抗体、ペプチボディ、関連タンパク質など、特に、ヒト-マウスモノクローナルhLL2κ鎖に結合したヒト-マウスモノクローナルhLL2γ鎖二硫化物の二量体、例えば、エプラツズマブ(CAS登録番号501423-23-0)のヒトCD22特異完全ヒト化抗体などの、ヒトCD22特異IgG抗体を特に含むがそれに限定されない、ヒト化及び完全ヒトモノクローナル抗体を含むがそれに限定されない、ヒト化及び完全ヒト抗体などであるがそれに限定されない、ヒトCD22特異抗体;抗IGF-1R抗体を含むがそれに限定されない、IGF-1受容体特異抗体、ペプチボディ、及び関連タンパク質など;活性化T細胞上でB7RP-1とその自然受容体であるICOSとの相互作用を阻害するものを含むがそれに限定されない、B7RP-1の最初の免疫グロブリン様ドメインのエピトープと結合する完全ヒトIgG2モノクローナル抗体を含むがそれに限定されない、B7RP特異完全ヒトモノクローナルIgG2抗体を含むがそれに限定されない、B-7関連タンパク質1特異抗体、ペプチボディ、関連タンパク質など(「B7RP-1」、B7H2、ICOSL、B7h、及びCD275とも称される);例えば146B7などの、HuMax IL-15抗体及び関連タンパク質を含むがそれらに限定されない、特にヒト化モノクローナル抗体などの、IL-15特異抗体、ペプチボディ、関連タンパク質など;ヒトIFN-γ特異抗体を含むがそれに限定されない、及び完全ヒト抗IFN-γ抗体を含むがそれに限定されない、IFN-γ特異抗体、ペプチボディ、関連タンパク質など;TALL-1特異抗体、ペプチボディ、関連タンパク質など、並びに他のTALL特異性結合タンパク質;副甲状腺ホルモン(「PTH」)特異抗体、ペプチボディ、関連タンパク質など;トロンボポエチン受容体(「TPO-R」)特異抗体、ペプチボディ、関連タンパク質など;HGF/SFを標的化するものを含む、肝細胞増殖因子(「HGF」)特異抗体、ペプチボディ、関連タンパク質など;肝細胞増殖因子/散乱(HGF/SF)特異抗体を中和する完全ヒトモノクローナル抗体などのcMet軸(HGF/SF:c-Met);TRAIL-R2特異抗体、ペプチボディ、関連タンパク質など;アクチビンA特異抗体、ペプチボディ、タンパク質など;TGF-β特異抗体、ペプチボディ、関連タンパク質など;アミロイドβタンパク質特異抗体、ペプチボディ、関連タンパク質など;c-Kit及び/又は他の幹細胞因子受容体と結合するタンパク質を含むがそれらに限定されない、c-Kit特異抗体、ペプチボディ、関連タンパク質など;OX40L及び/又はOX40受容体の他のリガンドと結合するタンパク質を含むがそれに限定されない、OX40L特異抗体、ペプチボディ、関連タンパク質など;Activase(登録商標)(アルテプラーゼ、tPA)、Aimovig(登録商標)(エレヌマブ)、Aranesp(登録商標)(ダルベポエチンアルファ)、Epogen(登録商標)(エポエチンアルファ、又はエリスロポエチン)、GLP-1、Avonex(登録商標)(インターフェロンβ-1a)、Bexxar(登録商標)(トシツモマブ、抗CD22モノクローナル抗体)、Betaseron(登録商標)(インターフェロン-β)、Campath(登録商標)(アレムツズマブ、抗CD52モノクローナル抗体)、Dynepo(登録商標)(エポエチンデルタ)、Velcade(登録商標)(ボルテゾミブ)、MLN0002(抗α4β7 mAb)、MLN1202(抗CCR2ケモカイン受容体mAb)、Enbrel(登録商標)(エタネルセプト、TNF受容体/Fc融合タンパク質、TNF遮断薬)、Eprex(登録商標)(エポエチンアルファ)、Erbitux(登録商標)(セツキシマブ、抗EGFR/HER1/c-ErbB-1)、Evenity(登録商標)(ロモソズマブ)、Genotropin(登録商標)(ソマトロピン、ヒト成長ホルモン)、Herceptin(登録商標)(トラスツズマブ、抗HER2/neu(erbB2)受容体mAb)、Humatrope(登録商標)(ソマトロピン、ヒト成長ホルモン)、Humira(登録商標)(アダリムマブ)、Vectibix(登録商標)(パニツムマブ)、Xgeva(登録商標)(デノスマブ)、Prolia(登録商標)(デノスマブ)、Enbrel(登録商標)(エタネルセプト、TNF-受容体/Fc融合タンパク質、TNF遮断薬)、Nplate(登録商標)(ロミプロスチム)、リロツムマブ、ガニツマブ、コナツムマブ、ブロダルマブ、溶液中のインスリン、Infergen(登録商標)(インターフェロンアルファコン-1)、Natrecor(登録商標)(ネシリチド、遺伝子組換え型ヒトB型ナトリウム利尿ペプチド(hBNP)、Kineret(登録商標)(アナキンラ)、Leukine(登録商標)(サルガモスチム、rhuGM-CSF)、LymphoCide(登録商標)(エプラツズマブ、抗CD22 mAb)、Benlysta(商標)(リンフォスタットB、ベリムマブ、抗BlyS mAb)、Metalyse(登録商標)(テネクテプラーゼ、t-PA類似体)、Mircera(登録商標)(メトキシポリエチレングリコール-エポエチンβ)、Mylotarg(登録商標)(ゲムツズマブオゾガマイシン)、Raptiva(登録商標)(エファリズマブ)、Cimzia(登録商標)(セルトリズマブペゴル、CDP870)、Soliris(商標)(エクリズマブ)、パキセリズマブ(抗C5補体)、Numax(登録商標)(MEDI-524)、Lucentis(登録商標)(ラニビズマブ)、Panorex(登録商標)(17-1A、エドレコロマブ)、Trabio(登録商標)(レルデリムマブ)、TheraCim hR3(ニモツズマブ)、Omnitarg(ペルツズマブ、2C4)、Osidem(登録商標)(IDM-1)、OvaRex(登録商標)(B43.13)、Nuvion(登録商標)(ビジリズマブ)、カンツズマブメルタンシン(huC242-DM1)、NeoRecormon(登録商標)(エポエチンベータ)、Neumega(登録商標)(オプレルベキン、ヒトインターロイキン-11)、Orthoclone OKT3(登録商標)(ムロモナブ-CD3、抗CD3モノクローナル抗体)、Procrit(登録商標)(エポエチンアルファ)、Remicade(登録商標)(インフリキシマブ、抗TNFαモノクローナル抗体)、Reopro(登録商標)(アブシキシマブ、抗GP lIb/Ilia受容体モノクローナル抗体)、Actemra(登録商標)(抗IL6受容体mAb)、Avastin(登録商標)(ベバシズマブ)、HuMax-CD4(ザノリムマブ)、Rituxan(登録商標)(リツキシマブ、抗CD20 mAb)、Tarceva(登録商標)(エルロチニブ)、Roferon-A(登録商標)(インターフェロンα-2a)、Simulect(登録商標)(バシリキシマブ)、Prexige(登録商標)(ルミラコキシブ)、Synagis(登録商標)(パリビズマブ)、146B7-CHO(抗IL15抗体、米国特許第7,153,507号明細書を参照)、Tysabri(登録商標)(ナタリズマブ、抗α4インテグリンmAb)、Valortim(登録商標)(MDX-1303、抗炭疽菌防御抗原mAb)、ABthrax(商標)、Xolair(登録商標)(オマリズマブ)、ETI211(抗MRSA mAb)、IL-1 trap(ヒトIgG1のFc部分及び両IL-1受容体成分(I型受容体及び受容体補助タンパク質)の細胞外ドメイン)、VEGF trap(IgG1 Fcと融合したVEGFR1のIgドメイン)、Zenapax(登録商標)(ダクリズマブ)、Zenapax(登録商標)(ダクリズマブ、抗IL-2Rα mAb)、Zevalin(登録商標)(イブリツモマブチウキセタン)、Zetia(登録商標)(エゼチミブ)、Orencia(登録商標)(アタシセプト、TACI-Ig)、抗CD80モノクローナル抗体(ガリキシマブ)、抗CD23 mAb(ルミリキシマブ)、BR2-Fc(huBR3/huFc融合タンパク質、可溶性BAFF拮抗薬)、CNTO148(ゴリムマブ、抗TNFα mAb)、HGS-ETR1(マパツムマブ、ヒト抗TRAIL受容体-1 mAb)、HuMax-CD20(オクレリズマブ、抗CD20ヒトmAb)、HuMax-EGFR(ザルツムマブ)、M200(ボロシキシマブ、抗α5β1インテグリンmAb)、MDX-010(イピリムマブ、抗CTLA-4 mAb、及びVEGFR-1(IMC-18F1)、抗BR3 mAb、抗C.ディフィシル(C.difficile)毒素A並びに毒素B C mAbs MDX-066(CDA-1)及びMDX-1388)、抗CD22 dsFv-PE38抱合体(CAT-3888及びCAT-8015)、抗CD25 mAb(HuMax-TAC)、抗CD3 mAb(NI-0401)、アデカツムマブ、抗CD30 mAb(MDX-060)、MDX-1333(抗IFNAR)、抗CD38 mAb(HuMax CD38)、抗CD40L mAb、抗Cripto mAb、抗CTGF特発性肺線維症第1期フィブロゲン(FG-3019)、抗CTLA4 mAb、抗エオタキシン1 mAb(CAT-213)、抗FGF8 mAb、抗ガングリオシドGD2 mAb、抗ガングリオシドGM2 mAb、抗GDF-8ヒトmAb(MYO-029)、抗GM-CSF受容体mAb(CAM-3001)、抗HepC mAb(HuMax HepC)、抗IFNα mAb(MEDI-545、MDX-1103)、抗IGF1R mAb、抗IGF-1R mAb(HuMax-Inflam)、抗IL12 mAb(ABT-874)、抗IL12/IL23 mAb(CNTO1275)、抗IL13 mAb(CAT-354)、抗IL2Ra mAb(HuMax-TAC)、抗IL5受容体mAb、抗インテグリン受容体mAb(MDX-018、CNTO95)、抗IP10潰瘍性大腸炎mAb(MDX-1100)、BMS-66513、抗マンノース受容体/hCGβ mAb(MDX-1307)、抗メソテリンdsFv-PE38抱合体(CAT-5001)、抗PD1mAb(MDX-1106(ONO-4538))、抗PDGFRα抗体(IMC-3G3)、抗TGFβ mAb(GC-1008)、抗TRAIL受容体-2ヒトmAb(HGS-ETR2)、抗TWEAK mAb、抗VEGFR/Flt-1 mAb、並びに抗ZP3 mAb(HuMax-ZP3)。
【0148】
いくつかの実施形態では、薬剤送達デバイスは、ロモソズマブ、ブロソズマブ、又はBPS 804(Novartis)などであるがそれらに限定されないスクレロスチン抗体、また他の実施形態では、ヒトプロタンパク転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)に結合するモノクローナル抗体(IgG)を含有してもよく、又はこれらと共に使用されてもよい。こうしたPCSK9特異抗体としては、Repatha(登録商標)(エボロクマブ)及びPraluent(登録商標)(アリロクマブ)が挙げられるが、これらに限定されない。他の実施形態では、薬剤送達デバイスは、リロツムマブ、ビキサロマー、トレバナニブ、ガニツマブ、コナツムマブ、モテサニブ二リン酸塩、ブロダルマブ、ビズピプラント、又はパニツムマブを含有してもよく、又はこれと共に使用されてもよい。いくつかの実施形態では、薬剤送達デバイスのリザーバに、OncoVEXGALV/CD;OrienX010;G207、1716;NV1020;NV12023;NV1034;及びNV1042を含むがそれらに限定されない、黒色腫又は他の癌の治療用のIMLYGIC(登録商標)(タリモジンラヘルパレプベク)又は別の腫瘍溶解性HSVが充填されてもよく、或いはこれらと共にデバイスが使用されてもよい。いくつかの実施形態では、薬剤送達デバイスは、TIMP-3などであるがそれらに限定されないメタロプロテイナーゼの内在性組織阻害剤(TIMP)を含有してもよく、又はこれと共に使用されてもよい。エレヌマブ、及びCGRP受容体及び他の頭痛標的を標的とする二重特異性抗体分子などであるがそれらに限定されないヒトカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体の拮抗的抗体もまた、本開示の薬剤送達デバイスを用いて送達されてもよい。加えて、BLINCYTO(登録商標)(ブリナツモマブ)などであるがそれに限定されない二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE(登録商標))抗体が、本開示の薬剤送達デバイス中で、又はそれと共に使用されてもよい。いくつかの実施形態では、薬剤送達デバイスは、アペリン又はその類似体などであるがそれらに限定されないAPJ大分子アゴニストを含有してもよく、又はこれと共に使用されてもよい。いくつかの実施形態では、治療的有効量の抗胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)又はTSLP受容体抗体が、本開示の薬剤送達デバイス中で、又はこれと共に使用される。
【0149】
薬剤送達デバイス、アセンブリ、コンポーネント、サブシステム、及び方法を、例示的実施形態の観点から説明してきたが、これらに限定されるものではない。この発明を実施するための形態は、例示にすぎないと解釈されたく、本開示の考え得る全ての実施形態を説明するものではない。現行の技術又は本特許の出願日後に開発された技術のいずれかを使用して、様々な代替的実施形態を実施することができるが、このような実施形態はなお、本明細書に開示される本発明を定義する特許請求の範囲内に含まれる。
【0150】
当業者であれば、本明細書に開示される発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく上記の実施形態に対して多種多様な修正、変更、及び組み合わせを施すことができ、そうした修正、変更、及び組み合わせは本発明の概念の範囲内にあると解釈されることを理解するであろう。
【0151】
他の検討事項
本明細書の開示は、多数の異なる実施形態の詳細な説明を示しているが、理解すべき点として、説明の法的範囲は本特許の末尾に示される、請求項の文言及びその均等物によって定義される。この発明を実施するための形態は例示にすぎないと解釈されたく、考え得る全ての実施形態を説明することは非現実的であるため、考え得る全ての実施形態を説明するものではない。現行の技術又は本特許の出願日後に開発された技術のいずれかを使用して、様々な代替的実施形態を実施できるが、このような実施形態もなお特許請求項の範囲内に含まれる。
【0152】
以下の追加の考察は、上述の説明にも当てはまる。本明細書全体を通じて、複数の事例が、1つの事例として説明された構成要素、動作、又は構造を実装することもできる。1つ以上の方法の個々の動作が別の動作として図示され、説明されているが、個々の動作のうちの1つ又は複数を同時に実行することもでき、動作を図示された順序で行わなければならないとは要求されていない。例示的な構成の中で別々の構成要素として提示されている構造と機能は、組み合わせの構造又は構成要素としても実装できる。同様に、1つの構成要素として提示された構造と機能は、別の構成要素としても実装できる。これら及びその他の変更、改良、追加、及び改善も、本明細書の主旨の範囲に含まれる。
【0153】
更に、特定の実施形態は、本明細書中に、論理回路、又は複数のルーチン、サブルーチン、アプリケーション、若しくは命令を含むものとして説明されている。これらは、ソフトウェア(例えば、機械可読媒体上又は伝送信号中で具現化されたコード)又はハードウェアのいずれかを構成することができる。ハードウェア中で、ルーチンなどは特定の動作を実行できる有形ユニットであり、特定の方法で構成又は配置され得る。例示的な実施形態において、1つ以上のコンピューターシステム(例えば、スタンドアロン、クライアント、又はサーバコンピューターシステム)、又はコンピューターシステムの1つ以上のハードウェアモジュール(例えば、プロセッサ又はプロセッサ群)は、ソフトウェア(例えばアプリケーション又はアプリケーション部分)によって、本明細書に記載される特定の動作を実施するように動作するハードウェアモジュールとして構成され得る。
【0154】
様々な実施形態では、ハードウェアモジュールは、機械的又は電子的に実装され得る。例えば、ハードウェアモジュールは、(例えば、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)又は特定用途向け集積回路(ASIC)などの専用プロセッサとして)特定の動作を実施するように恒久的に構成された、専用の回路又は論理回路を含み得る。ハードウェアモジュールはまた、(例えば、汎用プロセッサ又はその他のプログラマブルプロセッサに包含されるものとして)ソフトウェアによって特定の動作を実施するように一時的に構成されたプログラマブル論理又は回路も含み得る。ハードウェアモジュールを、機械的に、専用及び恒久的に構成された回路に、又は一時的に構成された回路(例えば、ソフトウェアによって構成される)に実装することの判断は、費用及び時間を考慮することによって判断され得ることが理解されよう。
【0155】
したがって、用語「ハードウェアモジュール」は、本明細書に記載される特定の様式で動作するか、或いは特定の動作を実施するために、物理的に構築されたものであろうと、(例えば、配線接続されて)恒久的に構成されたものであろうと、又は(例えば、プログラムされて)一時的に構成されたものであろうと、有体物を包含するように理解されるべきである。ハードウェアモジュールが一時的に構成されている(例えば、プログラムされて)実施形態を検討すると、各ハードウェアモジュールは、時間内のいずれのインスタンスにおいても構成される必要はなく、インスタンス化される必要もない。例えば、ハードウェアモジュールが、ソフトウェアを用いて構成された汎用プロセッサを含む場合、汎用プロセッサは、異なる時点でそれぞれ異なるハードウェアモジュールとして構成され得る。したがって、ソフトウェアは、例えば、あるインスタンス時に特定のハードウェアモジュールを構成し、異なるインスタンス時に異なるハードウェアモジュールを構成するようにプロセッサを構成してよい。
【0156】
本明細書で使用するとき、用語「結合する」は、直接の結合又は接続を必要としないため、2つの品目は、電子バス、電気配線、機械的コンポーネント、又はその他のこうした間接的接続などの1つ以上の中間コンポーネント又はその他の要素を介して互いに「結合され」てもよい。
【0157】
ハードウェアモジュールは、その他のハードウェアモジュールに情報を提供し、その他のハードウェアモジュールから情報を受信することができる。したがって、記載されるハードウェアモジュールは、通信可能に連結されていると見なされ得る。複数のこうしたハードウェアモジュールが同時に存在する場合、通信は、ハードウェアモジュールを接続する(例えば、適切な回路及びバスを介した)信号伝送によって達成され得る。複数のハードウェアモジュールが異なる時点で構成又はインスタンス化される実施形態では、こうしたハードウェアモジュール間の通信は、例えば、複数のハードウェアモジュールがアクセスするメモリ構造中の情報の記憶及び読み出しを介して達成され得る。例えば、1つのハードウェアモジュールは、動作を実施して、それが通信可能に連結されたメモリデバイス中にその動作の出力を記憶することができる。更なるハードウェアモジュールは、続いて、その後の時点で、メモリデバイスにアクセスして、記憶された出力を読み出して処理することができる。ハードウェアモジュールはまた、入力又は出力デバイスと通信を開始することができ、リソース(例えば、情報の一群)上で動作することができる。
【0158】
本明細書に記載される例示的な方法の様々な動作は、少なくとも部分的に、関係する動作を実施するように一時的に構成された(例えば、ソフトウェアにより)、又は恒久的に構成された1つ以上のプロセッサにより実行され得る。一時的に構成されているか又は恒久的に構成されているかに関わらず、こうしたプロセッサは、1つ以上の動作又は機能を実施するように動作するプロセッサ実装モジュールを構成することができる。本明細書で言及されるモジュールとは、いくつかの例示的実施形態では、プロセッサ実装モジュールを含み得る。
【0159】
同様に、本明細書に記載される方法又はルーチンは、少なくとも部分的にプロセッサにより実装され得る。例えば、方法の動作のうちの少なくともいくつかは、1つ以上のプロセッサ又はプロセッサ実装ハードウェアモジュールにより実施され得る。動作の特定部分の実施は、1つの機械内にあるものだけでなく、複数の機械にわたって展開されている1つ以上のプロセッサに分散させることができる。いくつかの例示的な実施形態において、1つまたは複数のプロセッサを、1か所に配置することができるが、他の実施形態では、プロセッサを複数の場所に分散させることができる。
【0160】
動作の特定部分の実施は、1つの機械内にあるものだけでなく、複数の機械にわたって展開されている1つ以上のプロセッサに分散させることができる。いくつかの例示的な実施形態において、1つ以上のプロセッサ又はプロセッサ実装モジュールは、1つの地理的場所(例えば、家庭環境、オフィス環境、又はサーバファーム内)に配置され得る。その他の実施形態では、1つ以上のプロセッサ又はプロセッサ実装モジュールは、複数の地理的場所に分散させることができる。
【0161】
この発明を実施するための形態は、例示にすぎないと解釈されたく、考え得る全ての実施形態を説明することは不可能ではないとしても非実用的であるため、考え得る全ての実施形態を説明するものではない。当業者であれば、現行の技術又は本出願の出願日後に開発された技術のいずれかを使用して、様々な代替的実施形態を実施することができる。
【0162】
当業者であれば、上述の実施形態に関連して、本発明の範囲から逸脱することなく様々な改良、変更、及び組み合わせを行うことが可能であり、かかる改良、変更、及び組み合わせも、本発明の概念の範囲内に含まれると見なされることが理解されよう。
【0163】
本特許出願の末尾の特許請求の範囲は、伝統的なミーンズプラスファンクションの文言が明記されていないかぎり、例えば「~のための手段(means for)」又は「~のための工程(step for)」などの文言が特許請求の範囲に明記されていないかぎり、米国特許法第112条(f)に基づいて解釈されることは意図されていない。本明細書に記載されるシステム及び方法は、コンピューターの機能性の向上を目的としており、従来のコンピューターの機能を向上させるためのものである。
【国際調査報告】