(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-20
(54)【発明の名称】フルオロポリマー組成物及び製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 27/16 20060101AFI20221213BHJP
C08L 33/00 20060101ALI20221213BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20221213BHJP
C08K 3/01 20180101ALI20221213BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20221213BHJP
C08K 5/00 20060101ALI20221213BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20221213BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20221213BHJP
C08K 3/26 20060101ALI20221213BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20221213BHJP
C08L 27/18 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
C08L27/16
C08L33/00
C08L67/00
C08K3/01
C08L101/00
C08K5/00
C08K3/04
C08K3/34
C08K3/26
C08K3/22
C08L27/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523539
(86)(22)【出願日】2020-10-21
(85)【翻訳文提出日】2022-06-14
(86)【国際出願番号】 US2020056548
(87)【国際公開番号】W WO2021081016
(87)【国際公開日】2021-04-29
(32)【優先日】2019-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500307340
【氏名又は名称】アーケマ・インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】900 First Avenue,King of Prussia,Pennsylvania 19406 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】フロランス・メルマン
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・ティー・ゴールドバッハ
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー・ボネ
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BD141
4J002BD152
4J002BG063
4J002CF003
4J002DA016
4J002DA036
4J002DE136
4J002DE236
4J002DJ006
4J002DJ016
4J002DJ046
4J002DJ056
4J002FD202
4J002FD203
4J002FD206
4J002GB00
4J002GC00
4J002GF00
4J002GG02
4J002GQ01
(57)【要約】
PVDFコポリマー、0.005~5%の1つ又は複数の無機又はポリマーの核形成添加剤、及び0.01~20%の1つ又は複数の分散剤を含み、低減されたヘイズ値を有する組成物が開示される。ここで、少なくとも1つのコモノマーは、ヘキサフルオロプロペン、2,3,3,3-テトラフルオロプロピレン、3,3,3-トリフルオロプロペンから選択される。組成物を調製する方法も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
a.PVDFコポリマーであって、少なくとも1つのコモノマーが、ヘキサフルオロプロペン、2,3,3,3-テトラフルオロプロピレン、3,3,3-トリフルオロプロペンから選択され、VDFが、すべてのモノマーの60%超、好ましくはすべてのモノマーの70%超を構成する、PVDFコポリマー、及び
b.0.005~5%の1つ又は複数の無機又はポリマーの核形成添加剤、及び
c.アクリルポリマー及びポリエステルの群から選択される0.1~20%の1つ又は複数の分散剤
を含み、
230℃での圧縮成形によって作製された厚さ1mmの部品のASTM D1003に準拠した光学ヘイズが40%未満である、組成物。
【請求項2】
1~15%の1つ又は複数の分散剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記核形成添加剤は、粒子として存在し、50%を超える、好ましくは70%を超える、最も好ましくは90%を超える前記粒子が、5μm未満、好ましくは2μm未満、最も好ましくは1μm未満サイズを有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記核形成添加剤は、2μm未満、最も好ましくは1μm未満の平均粒子サイズを有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
前記核形成添加剤は、無機粒子、有機染料、ベンゼン誘導体、フッ素化ポリマー、架橋ポリマー粒子、及びそれらの組み合わせの群から選択される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項6】
無機粒子は、カーボンブラック、活性炭、シリカ、粘土、アルミノケイ酸塩、タルク、雲母、炭酸カルシウム、チタニア、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
有機染料は、フラバントロン、イダントロン、ペリエン、キノフタロン、フタロシアニン、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
フッ素化ポリマーは、ポリテトラフルオロエチレンのポリマー及びコポリマーから選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項9】
架橋ポリマー粒子は、架橋モノマーの存在下での懸濁又は乳化重合によって作製されたポリマーから選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項10】
前記分散剤は、1つ又は複数の可塑剤から選択される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項11】
前記可塑剤は、アクリル、スチレン、ポリエステル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記アクリルは、ポリ(メチルメタクリレート)のオリゴマー、ポリマー及びコポリマーから選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記ポリエステルは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びそれらのブレンドの群から選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の組成物を調製する方法であって、
d.ミキサー又は押出機で核形成添加剤を分散剤と混合する工程
e.(d)のブレンドを押出機でVDFベースのコポリマーと混合する工程
を含む方法。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか1項に記載の組成物を調製する方法であって、
f.VDFベースのコポリマーのラテックスを核形成添加剤及び/又は分散剤と混合する工程
g.ラテックスを乾燥させて固体材料にする工程
を含む方法。
【請求項16】
請求項1又は2に記載の組成物を含む物品であって、前記物品は、フィルム、シート、ロッド、多層部品、又は任意の他の形状及び外形であり得る、物品。
【請求項17】
前記物品が溶融加工された物品である、請求項16に記載の物品。
【請求項18】
ワイヤ及びケーブル、石油及びガス、家庭用電化製品、光電池、保護フィルム、包装、医療機器のための、請求項16に記載の物品の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機又はポリマーの核形成添加剤をフッ素化コポリマーに微細に分散させることを可能にする組成物及び方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
PVDFホモポリマーは、優れた物理的特性を可能にする高い結晶化度を有する。一部の用途では、VDFを他のフッ素化コモノマーと共重合させてPVDF共重合体を作成する。ヘキサフルオロプロペン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、3,3,3-トリフルオロプロペンなどのコモノマーは、PVDFの融点を下げ、結晶化の速度を下げる傾向がある。これは、光学ヘイズなど、一貫性のない物理的特性を持つ材料部品をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、無機又はポリマーの核形成添加剤を使用して、PVDFコポリマーの結晶化の速度を増加させる方法を提供する。いくつかの無機及びポリマーの核形成添加剤は、ポリオレフィン及びPVDFホモポリマーについて記載されている。カーボンブラックやPTFEポリマーなどの選択された核形成添加剤をPVDFコポリマーで効率的に使用できるため、コポリマーで作られた部品のヘイズが減少することがわかった。さらに、本発明は、コポリマー中の核形成添加剤の分散を容易にするための分散剤の使用を提供する。PVDFコポリマーはPVDFホモポリマーよりも疎水性が高いため、核形成添加剤の分散が課題となる。核形成添加剤の分散が不十分な場合、最終材料中の核形成添加剤自体のサイズが原因で、高い光学ヘイズをもたらす可能性がある。分散剤は、核形成添加剤が小さな粒子(コポリマーマトリックス中の離散ドメイン)として組成物中に存在することを可能にし、50%を超える、好ましくは70%を超える、最も好ましくは90%を超える粒子が、5μm未満、好ましくは2μm未満、最も好ましくは1μm未満サイズを有する。本発明はまた、組成物を使用して圧縮成形された1mmの部品でASTM D1003によって測定された場合に、30%未満、好ましくは20%未満の低光学ヘイズを有する組成物を製造する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の態様:
態様1:組成物であって、
a.PVDFコポリマーであって、少なくとも1つのコモノマーが、ヘキサフルオロプロペン、2,3,3,3-テトラフルオロプロピレン、3,3,3-トリフルオロプロペンから選択され、VDFが、すべてのモノマーの60%超、好ましくはすべてのモノマーの70%超を構成する、PVDFコポリマー、及び
b.0.005~5%の1つ又は複数の無機又はポリマーの核形成添加剤、及び
c.0.1~20%の1つ又は複数の分散剤
を含み、
230℃での圧縮成形によって作製された厚さ1mmの部品のASTM D1003に準拠した光学ヘイズが40%未満である、組成物。
【0005】
態様2:分散剤が1~15%で存在する、態様1に記載の組成物。
【0006】
態様3:前記核形成添加剤は、粒子として存在し、50%を超える、好ましくは70%を超える、最も好ましくは90%を超える前記粒子が、5μm未満、好ましくは2μm未満、最も好ましくは1μm未満サイズを有する、態様1又は2に記載の組成物。
【0007】
態様4:前記核形成添加剤は、2μm未満、最も好ましくは1μm未満の平均粒子サイズを有する、態様1又は2に記載の組成物。
【0008】
態様5:前記核形成添加剤は、無機粒子、有機染料、ベンゼン誘導体、フッ素化ポリマー、架橋ポリマー粒子、及びそれらの組み合わせの群から選択される、態様1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【0009】
態様6:無機粒子は、カーボンブラック、活性炭、シリカ、粘土、アルミノケイ酸塩、タルク、雲母、炭酸カルシウム、チタニア、及びそれらの組み合わせから選択される、態様5に記載の組成物。
【0010】
態様7:有機染料は、フラバントロン、イダントロン、ペリエン、キノフタロン、フタロシアニン、及びそれらの組み合わせから選択される、態様5に記載の組成物。
【0011】
態様8:フッ素化ポリマーは、ポリテトラフルオロエチレンのポリマー及びコポリマーから選択される、態様5に記載の組成物。
【0012】
態様9:架橋ポリマー粒子は、架橋モノマーの存在下での懸濁又は乳化重合によって作製されたポリマーから選択される、態様5に記載の組成物。
【0013】
態様10:前記分散剤は、1つ又は複数の可塑剤から選択される、態様1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【0014】
態様11:前記可塑剤は、アクリル、スチレン、ポリエステル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、態様10に記載の組成物。
【0015】
態様12:前記アクリルポリマーは、ポリ(メチルメタクリレート)のオリゴマー、ポリマー及びコポリマーから選択される、態様11に記載の組成物。
【0016】
態様13:前記ポリエステルは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びそれらのブレンドよりなる群から選択される、態様11に記載の組成物。
【0017】
態様14:態様1~13のいずれかの組成物を調製する方法であって、
d.ミキサー又は押出機で核形成添加剤を分散剤と混合する工程
e.(d)のブレンドを押出機でVDFベースのコポリマーと混合する工程
を含む方法。
【0018】
態様15:態様1~13のいずれかの組成物を調製する方法であって、
f.VDFベースのコポリマーのラテックスを核形成添加剤及び/又は分散剤と混合する工程
g.ラテックスを乾燥させて固体材料にする工程
を含む方法。
【0019】
態様16:態様1~13のいずれかの組成物を含む物品であって、前記物品は、フィルム、シート、ロッド、多層部品、又は任意の他の形状及び外形であり得る、物品。
【0020】
態様17:前記物品が溶融加工された物品である、態様16に記載の物品。
【0021】
態様18:ワイヤ及びケーブル、石油及びガス、家庭用電化製品、光電池、保護フィルム、包装、医療機器のための、態様17に記載の物品の使用。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】比較例1で作製された部品の光学画像(ニコンME600光学顕微鏡)。
【
図2】実施例1で作製された部品の光学画像(ニコンME600光学顕微鏡)。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本出願で引用される参考文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0024】
本明細書で使用されるパーセンテージは、特に明記しない限り、重量パーセントであり、分子量は、特に明記しない限り、重量平均分子量である。
【0025】
「コポリマー」は、2つ以上の異なるモノマー単位を有するポリマーを意味するために使用される。「ポリマー」は、ホモポリマーとコポリマーの両方を意味するために使用される。例えば、本明細書で使用される場合、「PVDF」及び「ポリフッ化ビニリデン」は、特に明記しない限り、ホモポリマー及びコポリマーの両方を黙示するために使用される。ポリマーは、直鎖、分岐、星型、櫛型、ブロック、架橋、又はその他の構造であり得る。ポリマーは、均質、不均質であり得、コモノマー単位の勾配分布を有し得る。本明細書で使用される場合、特に明記されない限り、パーセントは重量パーセントを意味するものとする。分子量は、ガス浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量である。分子量の定量化に使用されるGPCの代替手段は、メルトフローレート(MFR)である。高分子量(MW)の方が低いMFR又は230℃、100秒-1で測定された溶融粘度(MV)を有し、MWの高い樹脂はMVが高くなる。「押出成形」グレードの製品は、PVDFポリマーの場合、ほとんどの場合、232℃、100秒-1で12~40kpoiseのMVを有する。「射出成形」グレードのMVは、1~11kpoiseを有する。
【0026】
ポリマー粉末の粒子サイズは、Malvern Masturizer2000粒子サイズ分析器を使用して測定することができる。データは、体積平均粒子サイズ(直径)として報告される。
【0027】
粉末/ラテックス平均離散粒子サイズは、NICOMP(商標)380サブミクロン粒子サイザーを使用して測定される。データは、体積平均粒子サイズ(直径)として報告される。離散とは、粒子が凝集していないことを意味する。
【0028】
PVDFコポリマー
PVDFコポリマーという用語は、1つ又は複数の他のフッ素化コモノマーを含むフッ化ビニリデンVDFのコポリマーを意味する。本発明のPVDFコポリマーは、ポリマー中のすべてのモノマーユニットの総重量の50%を超えるフッ化ビニリデンユニットを含み、より好ましくはユニットの総重量の60%を超えて含み、そして最も好ましくはユニットの総重量の70%を超えて含む。フッ素化コモノマーは、少なくとも0.5重量%、好ましくは少なくとも1重量%、より好ましくは少なくとも4重量%のPVDFコポリマーを含む。フッ素化コモノマーは、0.5%~30重量%、好ましくは1%~20重量%である。
【0029】
フッ素化コモノマーは、重合するために開くことができ、このビニル基に直接結合して、少なくとも1つのフッ素原子、少なくとも1つのフルオロアルキル基、又はPVDFコポリマーにすでに存在するVDFを除く少なくとも1つのフルオロアルコキシ基を含むビニル基を含む化合物から選択される。フッ素化コモノマーの例には、以下が含まれるが、これらに限定されない:フッ化ビニル;トリフルオロエチレン(VF3);クロロトリフルオロエチレン(CTFE);1,2-ジフルオロエチレン;テトラフルオロエチレン(TFE);ヘキサフルオロプロピレン(HFP);2,3,3,3-テトラフルオロプロピレン;1,3,3,3-テトラフルオロプロピレン;3,3,3-トリフルオロプロピレン;パーフルオロ(メチルビニル)エーテル(PMVE)、パーフルオロ(エチルビニル)エーテル(PEVE)及びパーフルオロ(プロピルビニル)エーテル(PPVE)などのパーフルオロ(アルキルビニル)エーテル;パーフルオロ(1,3-ジオキソール);パーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)(PDD)。好ましいPVDFコポリマーには、VDFとHFPのコポリマーのコポリマー、VDFと2,3,3,3-テトラフルオロプロピレンのコポリマー、VDFと3,3,3-トリフルオロプロピレンのコポリマー、VDF、HFP、及びTFE(THV)のターポリマーが含まれる。
【0030】
PVDFコポリマーは、VDFとHFPとのコポリマーであり得る。一実施形態では、少なくとも1重量%~30重量%、好ましくは最大25重量%、より好ましくは最大15重量%のヘキサフルオロプロペン(HFP)ユニット、及び、少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも85重量%以上のVDFユニットがPVDFコポリマーに存在する。
【0031】
本発明で使用するためのPVDFコポリマーは、高分子量を有する。本明細書で使用される高分子量とは、ASTM法D-3835に従って、450°F、100秒-1で測定された1.0kpoiseを超える、好ましくは5kpoiseを超える溶融粘度を有することを意味する。
【0032】
本発明で使用されるPVDFコポリマーは、一般に、水性フリーラジカル乳化重合を使用して、当技術分野で知られている手段によって調製される。ただし、懸濁液、溶液、超臨界CO2重合プロセスも使用できる。一般的な乳化重合プロセスでは、反応器に脱イオン水、重合中に反応物の塊を乳化することができる水溶性界面活性剤、及び任意のパラフィンワックス防汚剤を充填する。混合物を攪拌し、脱酸素化する。次に、所定量の連鎖移動剤、CTAを反応器に導入し、反応器温度を所望のレベルに上昇させ、フッ化ビニリデン、及び1つ又は複数のコモノマーを反応器に供給する。フッ化ビニリデン及びコモノマーの初期充填が導入され、反応器内の圧力が所望のレベルに達したら、開始剤エマルジョン又は溶液が導入されて、重合反応が開始される。反応の温度は、使用される開始剤の特性に応じて変化する可能性があり、当業者はその方法を知っている。典型的には、温度は約30℃~150℃、好ましくは約60℃~120℃である。反応器内で所望の量のポリマーに達すると、モノマーの供給は停止されるが、開始剤の供給は、残留モノマーを消費するために任意選択で続ける。残留ガス(未反応のモノマーを含む)が排出され、ラテックスが反応器から回収される。
【0033】
重合に使用される界面活性剤は、過フッ素化、部分フッ素化、及び非フッ素化界面活性剤を含む、PVDF乳化重合に有用であることが当技術分野で知られている任意の界面活性剤であり得る。好ましくは、本発明のPVDFコポリマーエマルジョンは、フッ素化界面活性剤を含まず、重合のどの部分にもフッ素化界面活性剤が使用されていない。PVDF重合に有用な非フッ素化界面活性剤は、本質的にイオン性及び非イオン性の両方であり得、以下を含むが、これらに限定されない:3-アリルオキシ-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸塩、ポリビニルホスホン酸、ポリアクリル酸、ポリビニルスルホン酸、及びそれらの塩、ポリエチレングリコール及び/又はポリプロピレングリコール及びそれらのブロックコポリマー、アルキルホスホネート及びシロキサンベースの界面活性剤。一実施形態では、乳化重合は界面活性剤を含まない。
【0034】
PVDF共重合は、一般に、10~60重量%、好ましくは10~50%の固形分レベルを有し、500nm未満、好ましくは400nm未満、より好ましくは300nm未満のラテックス体積平均粒子サイズを有するラテックスをもたらす。離散体積平均粒子サイズは、一般に少なくとも20nm、好ましくは少なくとも50nmである。
【0035】
エチレングリコールなどの1つ又は複数の他の水混和性溶媒の少量(好ましくは10重量%未満、好ましくは5重量%未満)をPVDFラテックスに混合して、凍結融解安定性を改善することができる。
【0036】
PVDFコポリマーラテックスは、ラテックスとして本発明の方法で使用され得るか、又はそれは、限定されないが、噴霧乾燥、凍結乾燥、凝固、及びドラム乾燥のような当技術分野で知られている手段によって最初に粉末に乾燥され得る。乾燥されたPVDFコポリマー粉末は、0.5~200μm、好ましくは1~100μm、より好ましくは2~50μm、そして最も好ましくは3~20μmの体積平均粒子サイズを有する。
【0037】
一実施形態では、VDF及びHFPのコポリマーが使用される。特に有用なコポリマーには、Arkema Inc.のKYNAR(商標)樹脂、特にKYNAR2500、KYNAR2750、KYNAR2800、KYNAR2850が含まれるが、これらに限定されない。
【0038】
PVDF/HFPコポリマーは、PVDFホモポリマーよりも融点が低く、結晶化度が低く、結晶化速度が遅い。後者は、光学ヘイズがコポリマーからプラスチック部品を製造するために使用される溶融プロセス及び冷却プロセスに非常に依存するようになるため、光学ヘイズが低い材料を製造する際に特に問題となる。
【0039】
ヘイズ値は、分散剤及び核形成剤を含む組成物を、分散剤及び核形成剤を含まない同じ組成物と比較して、10%超、好ましくは20%超、さらにより好ましくは40%超減少させることができる。
【0040】
例えば、22重量%までのHFPを含むVDFとHFPのコポリマーは、40%を超える高いヘイズを有する1mmの部品に圧縮成形又は射出成形又は押し出しすることができる。一般に、圧縮成形で一般的な冷却速度が遅いと、ヘイズの高い部品が生成される。本発明の組成物は、40%以下の低いヘイズを有する1mmの部品に加工することができる。
【0041】
本発明の一変形形態では、PVDFコポリマーは、無水マレイン酸グラフト化などの官能性PVDFコポリマーである。官能性は、ポリマーと本発明の添加剤との適合性を改善する。
【0042】
核形成添加剤
核形成添加剤は、無機又はポリマー材料から選択される。
【0043】
1つ又は複数の核形成添加剤が存在し得る。本発明における核形成添加剤の総量は、全組成に基づいて、少なくとも0.005重量%であり、15重量%以下である。
【0044】
任意の1つの核形成添加剤の量は、全組成に基づいて、0.005~10重量%、好ましくは0.05~5重量%、より好ましくは0.09~3.5重量%であり得る。
【0045】
核形成添加剤の例には、無機粒子、有機染料、ベンゼン誘導体、過フッ素化ポリマー、架橋ポリマー粒子が含まれるが、これらに限定されない。
【0046】
無機核添加剤の例には、カーボンブラック、活性炭、シリカ、粘土、アルミノケイ酸塩、タルク、雲母、炭酸カルシウム、チタニアが含まれるが、これらに限定されない。有機染料核形成添加剤の例には、フラバントロン、イダントロン、ペリエン、キノフタロン、フタロシアニンが含まれるが、これらに限定されない。フッ素化ポリマーの例には、ポリテトラフルオロエチレンのポリマー及びコポリマーが含まれるが、これらに限定されない。フッ素化ポリマー核形成添加剤の一例は、過フッ素化ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。架橋ポリマー粒子核形成添加剤の例には、架橋モノマーの存在下での懸濁又は乳化重合によって作製されたポリマーが含まれるが、これらに限定されない。
【0047】
分散剤
本発明で使用される分散剤の量は、全組成に基づいて、0.1~20%、好ましくは1~15%、より好ましくは2~10%の1つ又は複数の分散剤である。
【0048】
分散剤は、1つ又は複数の可塑剤であり得る。分散剤の例には、アクリル、スチレン、及びポリエステルが含まれる。アクリルには、ポリ(メチルメタクリレート)のオリゴマー、ポリマー、及びコポリマーが含まれるが、これらに限定されない。ポリエステルには、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールが含まれるが、これらに限定されない。アクリル及びポリエステルが好ましい。
【0049】
混合プロセス
PVDFコポリマー、分散剤及び核形成添加剤は、水性媒体中で混合され、続いて粒子状材料に乾燥され得るか、又はそれらは固体材料として混合され得る。分散剤は、PVDFコポリマー及び核形成添加剤と1つのステップで混合するか、最初に核形成添加剤と混合し、次にPVDFコポリマーと混合するか、又は、最初にPVDFコポリマーと混合し、次に核形成添加剤と混合することができる。静的ミキサー、ブラベンダー、押出機を含む、当技術分野で知られている任意の混合装置を利用することができる。
【0050】
一実施形態では、PVDFコポリマー、核形成添加剤及び分散剤の緊密なブレンドは、水性媒体中で混合された成分を同時噴霧乾燥することによって調製することができる。有効量のPVDFコポリマーラテックスを核形成添加剤(ラテックス、溶液、又は固体形態)及び分散剤(ラテックス、溶液、又は固体形態)と混合し、それらを同時スプレーして、ナノスケールで十分に混合された乾燥粉末を実現することができる。次に、この同時噴霧乾燥された複合体は、圧縮成形、射出成形、押出し、共押出しなどの当技術分野で知られている任意の溶融プロセスによって所望の形状に加工することができる。小さな粒子サイズ(通常20~400nm)のPVDFラテックスを使用して本発明のブレンドを作成すると、非常に緊密なブレンドが得られ、材料中の核形成添加剤の優れた分散が可能になり、光学ヘイズをさらに低減することに資する。
【0051】
使用
化学的不活性、生物学的純度、及び優れた機械的と熱機械的特性を含むPVDFコポリマーの有利な特性により、さらに一貫した低ヘイズが組み合わされると、本発明の組成物は多くの用途で使用できる。
【0052】
本発明の組成物は、溶融加工されて物品を製造する。本発明の物品は、溶融加工された物品である。
【0053】
本発明の組成物で作製されたいくつかの物品には、フィルム、シート、ロッド、多層部品が含まれるが、これらに限定されない。用途には、ワイヤ及びケーブル、石油及びガス、家庭用電化製品、光電池、保護フィルム、包装、医療機器が含まれ得る。
【実施例】
【0054】
比較例1
VDF/HFP(15重量%HFP)のコポリマーを、230℃の二軸スクリュー押出機において、20nmの離散粒子サイズ(ブレンドの0.05重量%)を有する核形成添加剤カーボンブラックと組み合わせて、ペレットを製造する。ペレットは、5MTの圧力下で230℃で1mmの厚さの板に圧縮成形され、10分かけて室温まで冷却される。純粋なVDF/HFPコポリマーのコントロールの1mm板も、同じ条件で圧縮成形される。ASTM D1003は、サンプル板のヘイズを測定するために使用される。純粋なコポリマーのヘイズは72%であり、コポリマーとカーボンブラックのブレンドのヘイズは65%である。カーボンブラックの添加によるヘイズの減少は、それが核形成添加剤として機能し、光をあまり回折しない小さなアルファ結晶を生成していることを示している。ただし、ヘイズの減少は、1μmを超える凝集体として最終材料に存在する、20nmのカーボンブラック粒子の分散が不十分なために制限される。実際、光学顕微鏡では、70%を超えるカーボンブラック粒子が2μm以上の凝集体の形で存在していることが示されている(
図1)。
【0055】
実施例1
Arkema製のアクリルポリマー、プレキシグラスV825-100は、最初に、高せん断ミキサーにおいて、20nmの離散粒子サイズを有する0.5重量%のカーボンブラックと混合される(乾式ブレンド)。次に、得られた材料を、230℃の二軸スクリュー押出機でVDF/HFP(15重量%HFP)(乾燥)のコポリマーに、10重量%でブレンドしてペレットを製造する。最終的な材料は、VDF/HFPポリマー9.95重量%の分散剤V825-100と、0.05重量%の核形成添加剤カーボンブラックが含まれる。ペレットは、5MTの圧力下で230℃で1mmの厚さの板に圧縮成形され、10分かけて室温まで冷却される。ASTM D1003は、サンプル板のヘイズを測定するために使用される。ヘイズは35%である。ヘイズは、比較例1で得られたものよりもはるかに低く、分散剤の効果を示している。実際、光学顕微鏡では、サイズが2μm未満のカーボンブラック粒子が示され、2μmを超える凝集体の形で存在するカーボンブラックの30%未満である(
図2)。
【0056】
実施例2
Dow製のアクリルコポリマー、Paraloid B-44は、最初に、高せん断ミキサーにおいて、20nmの離散粒子サイズを有する0.5重量%のカーボンブラックと混合される(乾式ブレンド)。次に、得られた材料を、230℃の二軸スクリュー押出機でVDF/HFP(15重量%HFP)(乾燥)のコポリマーに、10重量%でブレンドしてペレットを製造する。最終的なブレンド材料には、VDF/HFPポリマー、9.95重量%の分散剤B-44、及び0.05重量%の核形成添加剤カーボンブラックが含まれる。ペレットは、5MTの圧力下で230℃で1mmの厚さの板に圧縮成形され、10分かけて室温まで冷却される。ASTM D1003は、サンプル板のヘイズを測定するために使用される。ヘイズは38%である。ヘイズは、比較例1で得られたものよりもはるかに低く、分散剤の効果を示している。実際、光学顕微鏡では、サイズが1μm未満のカーボンブラック粒子が示され、1μmを超える凝集体の形で存在するカーボンブラックの20%未満である。
【0057】
比較例3
ブレンドは、VDF/HFP(15重量%HFP)と、200nmの離散粒子サイズ(ブレンドの0.05重量%)を有する核形成添加剤PTFEとのコポリマーから作製される(湿式水性ブレンド)。両方の材料はラテックスの形で使用される。それらを遠心プラネタリーミキサーで混合してラテックスブレンドを生成し、次にオーブンで80℃で12時間乾燥させる。得られた粉末は、5MTの圧力下で230℃で1mmの厚さの板に圧縮成形され、10分かけて室温まで冷却される。純粋なVDF/HFPコポリマーのコントロールの1mm板も、同じ条件で圧縮成形される。ASTM D1003は、サンプル板のヘイズを測定するために使用される。純粋なコポリマーのヘイズは72%であり、コポリマーとPTFEのブレンドのヘイズは61%である。PTFEの添加によるヘイズの減少は、それが核形成添加剤として機能し、光をあまり回折しない小さなアルファ結晶を生成していることを示している。ただし、ヘイズの減少には限界があり、それは、カーボンブラックで観察されたように、1μmを超える粒子に凝集する可能性が高い200nmのPTFE粒子の分散が不十分なためであると推測する。
【0058】
実施例3
ブレンドは、VDF/HFP(15重量%HFP)、核形成添加剤PTFE、200nmの離散粒子サイズ(ブレンドの0.05重量%)、及びArkema製のPlexiglas V825-100のアクリルポリマー(ブレンドの9.95%)のコポリマーから作製される。VDF/HFPコポリマーとPTFEのラテックスは、最初に遠心プラネタリーミキサーで混合されてラテックスブレンドが生成され、次に80℃のオーブンで12時間乾燥される。次に、得られた乾燥粉末を、230℃の二軸スクリュー押出機でアクリルポリマーとブレンド(乾燥)して、ペレットを製造する。ペレットは、5MTの圧力下で230℃で1mmの厚さの板に圧縮成形され、10分かけて室温まで冷却される。ASTM D1003は、サンプル板のヘイズを測定するために使用される。ヘイズは36%である。ヘイズは比較例3で得られたものよりもはるかに低く、分散剤の効果を示している。分散剤は、200nmの離散PTFE粒子の凝集体を破壊するのに役立つと推測する。
【国際調査報告】