(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-20
(54)【発明の名称】セグメント化された湾曲可能セクションを備える医用装置
(51)【国際特許分類】
A61M 25/092 20060101AFI20221213BHJP
A61B 34/30 20160101ALI20221213BHJP
A61M 25/00 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
A61M25/092 500
A61B34/30
A61M25/00 624
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022524277
(86)(22)【出願日】2020-10-22
(85)【翻訳文提出日】2022-06-24
(86)【国際出願番号】 US2020056830
(87)【国際公開番号】W WO2021081184
(87)【国際公開日】2021-04-29
(32)【優先日】2019-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596130705
【氏名又は名称】キヤノン ユーエスエイ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CANON U.S.A.,INC
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】ニンニ ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】加藤 貴久
(72)【発明者】
【氏名】シーア ベネディクト
(72)【発明者】
【氏名】チャン ショウナ
(72)【発明者】
【氏名】キンケイド マシュー マイケル
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA32
4C267BB02
4C267BB07
4C267BB09
4C267BB13
4C267BB38
4C267BB52
4C267CC07
4C267GG34
(57)【要約】
中空コアを有し、患者の小さな空間を通して低侵襲で標的に到達する高度な操縦性を実現可能な多関節医療機器。医療機器が標的に到達すると、標的での内視鏡、カメラ及び湾曲可能医療機器を含む医療手技を容易にするために、中空チャンバを通して医用ツールを誘導することができる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲可能体であって、当該湾曲可能体の端から端まで延びる中空チャンバを有する湾曲可能体と、
遠位湾曲可能セクションと、
中間湾曲可能セクションと、
前記遠位湾曲可能セクションに設けられるとともに、空洞を形成するように互いに離隔された少なくとも2つのガイドリングと、
前記湾曲可能体の少なくとも2つのガイド穴であって、前記湾曲可能体の端から端まで延びるとともに、前記中空チャンバの周囲に平行に構成された、少なくとも2つのガイド穴と、
前記少なくとも2つのガイド穴のうちの少なくとも1つの中に摺動可能に配置されるとともに、前記湾曲可能体の遠位端に取り付けられる、少なくとも1つの駆動ワイヤと、
を備える医用装置であって、
前記中間湾曲可能セクションは、前記遠位湾曲可能セクションの剛性勾配とは異なる剛性勾配を有する、
装置。
【請求項2】
前記中間湾曲可能セクションは、少なくとも2つのセグメントから成り、各セグメントは異なる剛性勾配を有する、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記湾曲可能体の端から端まで延びる可撓性の壁を更に備える、
請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記少なくとも2つのガイドリングの内径は、前記壁の少なくとも一部に固定される、
請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記壁は、前記少なくとも2つのリングを封入するための弾性アウターライニングを更に有する、
請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの駆動ワイヤの近位端に取り付けられるアクチュエータ、
を更に備え、
前記アクチュエータは、前記駆動ワイヤを作動させるように構成される、
請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記中間湾曲可能セクションは合同である、
請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記中間湾曲可能セクションは、少なくとも2つの隣接するセグメントから成り、前記少なくとも2つのセグメントの各々は、異なる剛性勾配を有する、
請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記ガイド穴内に摺動可能に配置されるとともに前記湾曲可能体に取り付けられる中間駆動ワイヤ、
を更に備え、
前記第1の駆動ワイヤ及び前記中間駆動ワイヤの取付けの位置は、前記湾曲可能体の軸方向に沿って異なる、
請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記第1のガイド穴及び前記中間ガイド穴は、前記少なくとも2つのガイドリングの各々に構成される、
請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記駆動ワイヤ及び前記ガイド穴は、放射線不透過性材料から成る、
請求項1に記載の装置。
【請求項12】
湾曲可能体を備える医用装置であって、前記湾曲可能体は、当該湾曲可能体の端から端まで延びる中空チャンバを有し、
前記湾曲可能体は、
前記湾曲可能体の遠位端の第1の湾曲可能セクションと、
前記第1の湾曲可能セクションの近位にある中間湾曲可能セクションと、
前記湾曲可能体の第1のガイド穴であって、前記中空チャンバと平行である第1のガイド穴と、
前記第1のガイド穴内に摺動可能に配置されるとともに、前記第1の湾曲可能セクションの遠位端に取り付けられる、遠位駆動ワイヤと、
前記湾曲可能体の中間ガイド穴であって、前記中空チャンバと平行である中間ガイド穴と、
前記中間ガイド穴内に摺動可能に配置されるとともに、前記中間湾曲可能セクションの遠位端に取り付けられる、中間駆動ワイヤと、
を有し、
前記第1の湾曲可能セクションは、柔軟な構造を有し、
前記中間湾曲可能セクションの前記遠位端での剛性は、前記第1の湾曲可能セクションの剛性と実質的に同じであり、前記中間湾曲可能セクションの近位端での剛性よりも低い、
装置。
【請求項13】
前記湾曲可能体の端から端まで延びる可撓性の壁を更に備える、
請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記湾曲可能体は少なくとも2つのガイドリングから成り、前記少なくとも2つのガイドリングは、前記第1の湾曲可能セクションに設けられるとともに、当該少なくとも2つのガイドリングの間に空洞を形成するように互いに離隔される、
請求項12に記載の装置。
【請求項15】
前記第1のガイド穴及び前記中間ガイド穴は、前記少なくとも2つのガイドリングの各々に構成される、
請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記遠位駆動ワイヤの近位端に取り付けられたアクチュエータ、
を更に備え、
前記アクチュエータは、前記駆動ワイヤを作動させるように構成される、
請求項12に記載の装置。
【請求項17】
前記中間駆動ワイヤの近位端に取り付けられたアクチュエータ、
を更に備え、
前記アクチュエータは、前記駆動ワイヤを作動させるように構成される、
請求項12に記載の装置。
【請求項18】
前記駆動ワイヤ及び前記ガイド穴は、放射線不透過性材料から成る、
請求項12に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願への相互参照
本願は、2019年10月23日に米国特許商標庁に提出された米国仮特許出願第62/925101号から優先権を主張し、その開示は参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、概して、医療用途の装置及び方法に関する。より詳細には、本開示は、中空チャンバを有する多関節医療機器を対象とし、当該機器は、所望の標的に到達するように患者内で操縦することが可能であり、また、医用ツールが中空チャンバを通して誘導されることを可能にし、標的での医療手技を可能にする。医用ツールは、内視鏡、カメラ、湾曲可能医療機器、その他の医用器具を含み得る。
【背景技術】
【0003】
医療分野では、内視鏡手術器具や湾曲可能な医療機器等の湾曲可能な医用器具がよく知られており、受け入れられ続けている。湾曲可能な医用器具は、概して、一般にスリーブ又はシースと呼ばれる可撓体を含む。可撓体に沿って(典型的には、内側に)1つ以上のツールチャネルが延びており、可撓体の遠位端に位置する標的へのアクセスを可能にする。
【0004】
器具は、ねじり剛性及び長手方向の剛性を維持しながら、対象とする標的につながる1つ又は複数のカーブを伴う患者内での柔軟なアクセスを提供することを目的とするので、医師は、器具の近位端を操縦することにより、医用器具の遠位端に位置するツールを制御することができる。
【0005】
最近、器具の遠位端の操縦性を高めるために、遠位部分を制御するロボット化器具が出現した。そのようなロボット化器具では、ロボット工学により遠位部分で局所的にカーブを形成するために、様々な技術が開示されている。
【0006】
例として、米国特許出願公開第2018/0243900号は、湾曲セクションを有するマルチセクション多関節湾曲可能医療機器を提供しており、全てのセクションは、複数の別個のノード/ガイドリングから成る。従来の特許には、多数の別個のガイドリングで構成される完全に“スケルトン”のセクションか、又は、マルチガイド穴チュービングで作られている単片セクションのいずれかが含まれる。
【0007】
いずれの場合も、当該技術は、駆動腱が医用器具の遠位部を曲げている間に近位部の形状を保持するために、複数のコンジットを提供する。複数のコンジットは、コンジットの近位端を拘束又は拘束解除することによって二元的に、選択的に制御される。拘束されたコンジットを選択することにより、湾曲可能医療機器は、コンジットが展開された面積に基づいて湾曲可能医療機器の剛性を変えることによって、遠位セグメントを曲げる長さを変えることができる。
【0008】
しかしながら、既存の医用器具にはいくつかの欠点があり、それにより、その用途及び有効性が厳しく制限される。すなわち、崩壊することなく困難なエリアを通して器具を推進するために必要なカラム剛性は、特に器具の全径を最小化する場合は、とりわけ困難な問題であった。更に、単一構造の近位セクションを有する医用器具の使用する場合は、きついカーブを通して操作するための柔軟性に欠ける。セクションの長さも影響するので、単一構造の近位セクションの場合に湾曲セクションが短いと、所望の出力角度まで器具を曲げるために、実現可能な力よりもはるかに大きな力が必要となる。スケルトン構造の長さが短い場合は、最適な操縦性を提供することができるが、先行するパッシブセクションは、スケルトン構造が適切に曲がるとともに、曲がるときにかかる力に耐えることを可能にするような剛性を有する必要があり、これにより、蛇行進路を進むことが困難になる。
【0009】
最後に、スケルトン構造とマルチガイド穴チュービングの両方を備えた近位セクションを実装する場合は、肺気道を進むのに必要な押力を伝達するのに十分な堅牢性がない。近位セクションのスケルトン部は、肺の特定の分岐を進むことができるが、スケルトン構造に続くマルチガイド穴チュービングは、その分岐を曲がり切れず、むしろ座屈を生じ、該分岐の他の開口内に逸脱し始める傾向がある。これが発生すると、ロボットシステムは、湾曲可能医療機器の遠位端に押力を伝達することができないので、逸脱により、肺の周辺領域の結節への湾曲可能医療機器の到達可能性が制限されてしまう。この問題を更に悪化させることに、湾曲可能医療機器の逸脱は、医用器具を使用不能にする永久的な損傷につながることが多い。
【0010】
この欠陥を是正するための試みには、より長い湾曲セクションを採用するものがあったが、このような試みには、曲がるときに大きな変位を必要とするという問題があり、患者にとって潜在的に有害である湾曲可能医療機器を制御することが困難になってしまう。
【0011】
遠位セクションと近位セクションの長さに差があると、進路追従が不正確になり、装置が患者内に前進している間の先端運動が大きくなる。このような先端変位により、ユーザは、本来の軌道と位置合わせし直すために、先端の調整を試みることになる。しかしながら、このような運動は、湾曲可能医療機器が患者内への前進経路をたどるのに必要ではないはずであるので、器具が前進するにつれて、中央セクションと近位セクションは、所望の経路に沿っていない方向に曲がることになる。このプロセスにより、先端は望まない方向に動き、脱線サイクルが続き、各ステップで拡張されることになる。湾曲出力が近位セクションの中間の出力と一致しないので、近位セクションの剛性により、医用器具の前進は不十分で一貫性のないものとなり、つまり、本来の角度に到達せず、患者に害を及ぼすおそれがある。
【発明の概要】
【0012】
よって、業界におけるそのような例示のニーズに対処するために、本開示の装置は、以下を備える医用装置を教示する:湾曲可能体であって、当該湾曲可能体の端から端まで延びる中空チャンバを有する湾曲可能体;第1の湾曲可能セクション;中間湾曲可能セクション;第1の湾曲可能セクションに設けられるとともに、空洞を形成するように互いに離隔された少なくとも2つのガイドリング;湾曲可能体の少なくとも2つのガイド穴であって、湾曲可能体の端から端まで中空チャンバに平行に延びる、少なくとも2つのガイド穴;及び、少なくとも2つのガイド穴のうちの少なくとも1つの中に摺動可能に配置されるとともに、湾曲可能体の遠位端に取り付けられる、少なくとも1つの駆動ワイヤ。中間湾曲可能セクションは、第1の湾曲可能セクションの剛性勾配とは異なる剛性勾配を有する。
【0013】
別の実施形態では、装置の中間湾曲可能セクションは、少なくとも2つのセグメントから成り、各セグメントは異なる剛性勾配を有する。
【0014】
更なる実施形態では、装置は、湾曲可能体の端から端まで延びる可撓性の壁を更に備える。少なくとも2つのガイドリングの内径が、壁の少なくとも一部に固定されることが、更に想定される。更に、壁は、少なくとも2つのリングを封入するための弾性アウターライニングを更に備えてよい。
【0015】
他の実施形態では、本装置は、少なくとも1つの駆動ワイヤの近位端に取り付けられるアクチュエータを更に備え、アクチュエータは、駆動ワイヤを作動させるように構成される。
【0016】
更に追加の実施形態では、中間湾曲可能セクションは合同である。更に、中間湾曲可能セクションは、少なくとも2つの隣接するセグメントから成ってよく、該少なくとも2つのセグメントは、それぞれ異なる剛性勾配を有する。
【0017】
更なる実施形態では、装置は、ガイド穴内に摺動可能に配置されるとともに湾曲可能体に取り付けられる中間駆動ワイヤを備え、第1の駆動ワイヤ及び中間駆動ワイヤの取付けの位置は、湾曲可能体の軸方向に沿って異なる。
【0018】
更に追加の実施形態では、少なくとも2つのガイド穴は、少なくとも2つのガイドリングの各々に構成される。
【0019】
駆動ワイヤとガイド穴のいずれか又は両方が放射線不透過性材料から成ることが、更に想定される。
【0020】
本革新は、以駆動ワイヤとともに曲がるように構成された遠位セクション及び近位セクションを有する湾曲可能体を備える医用装置を更に教示する。遠位セクションは、駆動ワイヤの位置を保持するように間隔をおいて配列された複数のガイドリングと、ガイドリングに取り付けられたインナーライナ及びアウターライナとを備えるスケルトン構造を有する。近位セクションは、スケルトン構造を有するとともに遠位セクションに接続する優先湾曲セグメント;スケルトン構造から成り、優先湾曲セグメントに接続する遷移スケルトンセグメント;及び、マルチルーメンチュービングを有し、遷移スケルトンセグメントに接続するパッシブセグメント、を有する。ガイドリング、インナーライナ及びアウターライナによって、中空チャンバが形成される。
【0021】
様々な実施形態では、遷移スケルトンセグメントは支持ワイヤを含み、支持ワイヤは、遷移スケルトンセグメントの遠位端で終端され、該遠位端において、曲げ剛性は、優先湾曲セグメント、遷移スケルトンセグメント、パッシブセグメントの順に大きくなる。
【0022】
他の実施形態では、優先湾曲セグメントは、支持ワイヤの第2のセットを更に含み、遷移スケルトンセグメントは、優先湾曲セグメントよりも多くの支持ワイヤを含む。
【0023】
更に別の実施形態では、パッシブセグメントは、パッシブセグメントの中央に配置された支持ワイヤの第3のセットを含む。
【0024】
本革新は、更に以下を教示する:湾曲可能体であって、当該湾曲可能体の端から端まで延びる中空チャンバを有する湾曲可能体;第1の湾曲可能セクション;中間湾曲可能セクション;第1の湾曲可能セクションに設けられるとともに、空洞を形成するように互いに離隔された少なくとも2つのガイドリング;湾曲可能体の少なくとも2つのガイド穴であって、湾曲可能体の端から端まで中空チャンバに平行に延びる、少なくとも2つのガイド穴;及び、少なくとも2つのガイド穴のうちの少なくとも1つの中に摺動可能に配置されるとともに、湾曲可能体の遠位端に取り付けられる、少なくとも1つの駆動ワイヤ。中間湾曲可能セクションは、第1の湾曲可能セクションの剛性勾配とは異なる剛性勾配を有する。
【0025】
本開示のこれら及び他の目的、特徴及び利点は、本開示の例示の実施形態の以下の詳細な説明を添付の図面及び提供された段落と併せて読むと、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明の更なる目的、特徴及び利点は、本発明の例示の実施形態を示す添付の図と併せて解釈すると、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0027】
【
図1】
図1は、対象の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、様々な補助コンポーネントを包含する例示の湾曲可能医療機器のブロック図である。
【
図2】
図2は、対象の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、例示の湾曲可能医療機器の切欠き斜視図を提供する。
【
図3】
図3は、対象の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、例示の湾曲可能医療機器の切欠き斜視図である。
【
図4】
図4a~
図4dは、対象の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、例示の湾曲可能医療機器の側面外形図(4a)及び前面切欠き図(4b~4d)を提供する。
【
図5】
図5は、対象の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、例示の湾曲可能医療機器の側面切欠き図を示す。
【
図6】
図6は、対象の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、
図5に見られる例示の湾曲可能医療機器の拡大側面切欠き図を提供する。
【
図7】
図7a~
図7eは、対象の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、例示の湾曲可能医療機器の側面外形図(7a)及び前面切欠き図(7b~7d)を提供する。
【
図8】
図8は、対象の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、例示の湾曲可能医療機器の側面切欠き図を示す。
【
図9】
図9a~
図9eは、対象の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、例示の湾曲可能医療機器の側面外形図(9a)及び前面切欠き図(9b~9d)を提供する。
【
図10】
図10a~
図10fは、対象の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、例示の湾曲可能医療機器の側面外形図(10a)及び前面切欠き図(10b~10f)を提供する。
【
図11】
図11は、対象の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、例示の湾曲可能医療機器の側面切欠き図を示す。
【0028】
図全体を通して、別段の記載がない限り、同じ参照番号及び文字は、例示される実施形態の同様の特徴、要素、コンポーネント又は部分を示すために用いられる。加えて、「’」という指定を含む参照数字(例えば101’や24’)は、同じ性質及び/又は種類の中間要素及び/又は参照を表す。更に、これから図を参照して本開示を詳細に説明するが、それは、例示の実施形態に関連してなされる。添付の段落によって定義される本開示の真の範囲及び主旨から逸脱することなく、説明される実施形態に対して変更及び修正を行うことができることが意図される。
【0029】
本明細書で用いられる場合、「実質的に」という用語は、意図された目的に悪影響を及ぼさない、記述子からの逸脱を許容することを意味する。例えば、測定値の限定に由来する逸脱、製造公差内の差異、又は5%未満の変動は、実質的に同じ範囲内にあると見なすことができる。指定された記述子は、絶対値(例えば、実質的に球形、実質的に垂直等)又は相対語(例えば、実質的に差のないビームウエストプロファイル、実質的に同じ等)であり得る。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本革新の分析により、中間剛性のセクションの追加によって逸脱の発生の顕著なシフトがもたらされ、故障(遷移が全くない場合)が約30%少なくなることが示された。本革新により、スケルトンセクションの曲げ剛性の限度によって制限されるのではなく、より大きな挿入力を付加して、湾曲可能医療機器の他の場所での摩擦を克服することが可能となり、よって、湾曲可能医療機器を患者の通路内へより深く更に前進させることができる。更に、本革新は、ユーザが湾曲可能医療機器に新たに発見された柔軟性を組み込んで、より速く、あまり問題を起こさずに肺の一部に到達することを可能にすることによって、ナビゲーション機能を向上させることができる。
【0031】
実施形態1について、チュービングセクションよりもスケルトンセクションを使用する利点(柔軟性及び曲げ半径)を維持しながら、大きな剛性ギャップを埋めることもできる。
【0032】
実施形態2について、その利点は、全てのスケルトンセクションの剛性の増加をもたらし、湾曲可能医療機器の全長にわたって座屈のリスクを低減しながら、スケルトンセクションとチュービングセクションの間の相対的な剛性差も低減する。
【0033】
第3の実施形態では、その利点により、複数の剛性遷移を形成できるようになり、それにより、セクション長さが短くなることから、剛性の低いチュービングセクション115をより小さな半径で曲げることが可能となる。
【0034】
本革新は、湾曲可能医療機器に関連付けられる一般システムを始めとして、例示図の説明を通して詳細に伝えられるであろう。
【0035】
図1は、完全な医用システムを築くことを目的とした様々な補助コンポーネントを包含する例示の湾曲可能医療機器システム10のシステムブロック図である。湾曲可能医療機器システム10は、駆動ユニット12と、湾曲可能医療機器13と、位置決めカート14と、操作コンソール15と、ナビゲーションソフトウェア16とを備える。例示の湾曲可能医療機器システム10は、患者での使用を容易にするために、外部システムコンポーネント及び臨床ユーザとインタラクトすることができる。
【0036】
ナビゲーションソフトウェア16と駆動ユニット12は、バスを介して通信的に結合されて、相互にデータを送受信する。更に、ナビゲーションソフトウェア16は、湾曲可能医療機器システム10の補助コンポーネントであるCTスキャナ、X線透視装置及び画像サーバ(図示なし)に接続され、また、それらと通信することができる。画像サーバとしては、CT及び/又はMRIのスキャナやX線透視装置等の医用イメージングデバイスに接続されるDICOM(商標)サーバが挙げられるが、これに限定されない。ナビゲーションソフトウェア16は、画像ディスプレイに画像を表示するために、駆動ユニット12によって提供されるデータと、画像サーバに格納された画像及び/又はCTスキャナ及びX線透視装置からの画像によって提供されるデータとを処理する。
【0037】
CTスキャナからの画像は、術前にナビゲーションソフトウェア16に提供されてよい。ナビゲーションソフトウェアを用いて、臨床ユーザは、画像から解剖学的コンピュータモデルを作成する。この特定の実施形態では、生体構造は、関連気道を伴う肺のものである。CTスキャナの胸部画像から、臨床ユーザは、生検等の臨床処置のために肺気道をセグメント化することができる。肺気道マップを生成した後、ユーザは、生検対象の病変にアクセスするための計画を作成することもできる。計画には、湾曲可能医療機器13を挿入及び操作するための、対象の標的(この例では病変である)につながる気道が含まれる。
【0038】
駆動ユニット12は、アクチュエータ及び制御回路構成を有する。制御回路構成は、操作コンソール15と通信的に結合される。駆動ユニット12は、駆動ユニット12のアクチュエータが湾曲可能医療機器13を動作させるように、湾曲可能医療機器13に接続される。したがって、臨床ユーザは、駆動ユニット12を介して湾曲可能医療機器13を制御することができる。また、駆動ユニット12は、物理的に位置決めカート14に接続されてもよい。位置決めカート14は、位置決めアームを含み、標的/患者に対して意図された位置に駆動ユニット12及び湾曲可能医療機器13を位置付ける。臨床ユーザは、湾曲可能医療機器13を挿入、操作及び除去して、医療手技(ここでは患者の肺での生検)を実行することができる。
【0039】
湾曲可能医療機器13は、臨床ユーザの操作による計画に基づいて、患者内の標的へナビゲートすることができる。湾曲可能医療機器13は、各種ツール(例えば生検ツール)用のツールチャネル108を含む。湾曲可能医療機器13は、ツールを患者の病変へ誘導することができる。一例では、臨床ユーザは、生検ツールを用いて病変から生検サンプルを採取することができる。
【0040】
図2及び
図3に示されるように、湾曲可能医療機器13の遠位セクション101は、複数のガイドリング109を有する。ガイドリング109は、互いに離れて構成され、互いに接触しない。ガイドリング109は、円筒状の壁18によって適所に保持される。壁18は、インナーライニング111及びアウターライニング110を有し、湾曲可能体17の軸方向に沿って一定の位置にガイドリング109を留めながら、湾曲可能な支持を湾曲可能体7に提供する。インナーライニング111は内径40を形成し、アウターライニング110は外径42を形成し、内径40はツールチャネル108を定める。湾曲可能体17の縁は、湾曲可能体17が前進するときの患者の内部要素への害を更に軽減するために、非外傷性先端26によって丸みを帯びてよい。
【0041】
インナーライニング111及び/又はアウターライニング110には、隣接するガイドリング109が取り付けられ、隣接するガイドリング109の間には空洞113が形成されており、湾曲可能体17の長手方向に沿って分布している。湾曲可能体が曲げられると、空洞113により、インナーライニング111とアウターライニング110の両方において均等に分布したしわが生じる。したがって、空洞113により、ツールチャネル108を押し潰しかねない致命的なねじれが回避される。
【0042】
各ガイドリング109は少なくとも2つのガイド穴112を含み、少なくとも2つのガイド穴112は、駆動ワイヤ105~106を摺動可能に収容するために、湾曲可能体17の端から端までの部分と平行にガイドリング109の端から端まで延びる。更に、ガイドリング109内の各ガイド穴112は、アンカー21を受けるように構成され、アンカー21は、ガイドリング109内に埋め込まれるように、駆動ワイヤ105~106の端部でずらされる。
図2において、近位の駆動ワイヤ106は、中間湾曲可能セクション103の遠位端に構成されたアンカー21を示す。隣接するガイドリング109間の空間は、弾性のあるインナーライニング111及びアウターライニング110と相まって、湾曲可能体7がガイドリング109間のオープンスペースのおかげでねじることなく、より大きな範囲の曲げ運動を達成することを可能にする。
【0043】
ツールチャネル108は、湾曲可能体17の端から端まで延びるように構成される。湾曲可能体17の近位端は、臨床ユーザが医用ツールを挿入/除去するためのアクセスを提供する。例えば、臨床ユーザは、湾曲可能医療機器13の遠位端のツールチャネル108を通して、生検ツールを挿入及び回収することができる。
【0044】
図4の断面図に見られるように、湾曲可能体17は、湾曲可能体17に収容された遠位駆動ワイヤ105のセットと、中間駆動ワイヤ106のセットと、支持ワイヤ107のセットとを含む。駆動ワイヤ105、106のセットの各々は、それぞれ、遠位、中間、近位の湾曲可能セクション101、103、104に対応する。円筒状の壁18は、インナーライニング111及びアウターライニング110によって形成され、インナーライニング111及びアウターライニング110は、合同であり、医療機器13の遠位端で互いに組み合わさって、湾曲可能体17をカプセル化する。壁18は、湾曲可能体17の軸方向に沿って一定の位置にガイドリング109を留めながら、湾曲可能な支持を湾曲可能体17に提供する。インナーライニング111は、壁の内径40を形成するとともにツールチャネル108を定め、一方、アウターライニング110は、湾曲可能体17の外径42を形成する。
【0045】
湾曲可能体17は、駆動ワイヤ105~106を、湾曲可能体17の長手方向に沿って構成された対応するガイド穴112に収容する。ガイド穴112は、湾曲可能体17の軸方向に沿った駆動ワイヤ105~106の摺動可能な動作を可能にする。駆動ワイヤ105~106は、各湾曲可能セクション101、103、104の遠位端で終端される。遠位駆動ワイヤ105は、アンカー21によって遠位セクション101の遠位端で終端され、また、湾曲可能体17内で互いにおよそ120度離れて構成される。遠位駆動ワイヤ105は、ワイヤ105の近位端で駆動ユニット12に接続される。駆動ユニット12は、遠位駆動ワイヤ105を作動させることによって当該ワイヤを動かすための押す力又は引く力を誘発し、湾曲可能体17を曲げる。同様に、近位駆動ワイヤ106は、それぞれ、それらの対応する湾曲可能セクション103、104用に構成される。
【0046】
したがって、駆動ワイヤ105~106を押す又は引くことにより、近位、中間、遠位の湾曲可能セクション104、103、101は、それぞれ、3次元の全てにおいて湾曲可能医療機器13を個別に曲げることができる。
【0047】
図2には、湾曲可能体17の壁18内に設けられた支持ワイヤ107が更に示される。支持ワイヤ107は、追加の構造的支持を壁18に提供することができ、また、湾曲セクション101~104の遠位端24に固定することができる。一部の実施形態では、1つ以上の支持ワイヤ107は壁18内に緩く保持されてよく、これにより、湾曲可能体17の曲げの必要性に対応するように、支持ワイヤ107の動作と一定の除去が可能となる。支持ワイヤ107は、壁18に構成されたガイド穴112を通ることができ、ガイド穴112は、湾曲可能医療機器13の近位部を起点としてよい。特定の実施形態では、支持ワイヤ107は、壁81の調節可能な構造的支持として構成されてよい。支持の例示の調節としては、支持ワイヤ107の様々な引張強度、構成、弾力性を採用することが挙げられる。一実施形態では、複数の支持ワイヤ107は、湾曲可能医療機器13の遠位端24から湾曲可能医療機器13の近位部105まで延びてよく、よって、湾曲可能体17の全てのセクション101~104がねじれ防止の利益を得ることができる。
【0048】
図4aは、本革新の1つ以上の実施形態に係る例示の湾曲可能医療機器の側面図を提供し、
図4b~
図4dは、
図4aの機器の線C-C、D-D、E-Eでの前面断面図を示す。
【0049】
図4aの湾曲可能医療機器は、遠位セクション101及び近位セクション102から成り、また、生検ツールその他のツールを湾曲可能医療機器13を通して標的まで送達するためのツールチャネル108を有する。遠位駆動ワイヤ105は、遠位セクション101の遠位端で終端され、線C-Cでの
図4bの断面図に示されるように、機器13の外周の周りに等距離に配列される。同様に、近位駆動ワイヤ106は、近位セクション102の遠位端で終端され、
図4c(
図4aの線D-Dでの断面を詳細に示す)に示されるように、湾曲可能医療機器13の外周の周りに等距離に配列される。
【0050】
また、近位駆動ワイヤ106は、遠位セクション101の近位端を位置Aとして定める。それらのワイヤを適切に引いたり押したりすることによって、遠位セクション101と近位セクション102を3次元で曲げることができる。当該セクション101、102は、ロボットコントローラ(図示なし)を用いて独立して制御することができる。具体的には、近位セクション102は、更に、中間湾曲セクション103及び遠位セクション104から成る。
【0051】
図5に提供されるように、中間湾曲セクション103は、遠位セクション101と同じ機械構造(つまり、互いに離隔した複数のガイドリング109を包含するスケルトン構造)を有し、一方、遠位セクション104は、単純なマルチガイド合同チュービングを有する。
【0052】
図6は、遠位セクション101及び中間湾曲セクション103のスケルトン構造をより分かりやすく説明するために、
図5の領域Gの拡大図を示す。スケルトン構造は、複数のガイドリング109から成り、ガイドリング109の間には特定の間隔がある。ガイドリング109は、駆動ワイヤ105、106を摺動可能に保持するためのガイド穴112(
図4b~
図4d参照)を有し、インナーライナ110及びアウターライナ111に囲まれている。インナーライナ110がツールチャネル108を形成する一方、アウターライナ111は、生体構造への最適な挿入のための、また、湾曲可能医療機器13の内部構造を外部の異物から保護するための、滑らかな途切れのない表面を提供する。ガイドリング109、インナーライナ110及びアウターライナ111によって、それぞれのガイドリング109の間に中空チャンバ113が形成される。このような中空チャンバ113は、中空チャンバ113の中及び周囲へのインナーライナ110及びアウターライナ111の小さなしわ及び伸長を促進することによって、湾曲可能医療機器13がきつい湾曲で曲がることを可能にする。更に、中空チャンバ113は、マルチガイド合同チュービングセクション118と比較して低い曲げ剛性を実現する。したがって、近位セクション102では、このスケルトン構造を有する中間湾曲セクション103は、遠位セクション104よりも低い曲げ剛性を有する。この構成により、近位セクション102の中間湾曲セクション103に曲げを局所化することができる。近位駆動ワイヤ106が押されるか又は引っ張られると、中間湾曲セグメント103が主に曲がり、遠位セクション104はその姿勢を維持する。しかしながら、中間湾曲セグメント103と遠位セクション104の接合部(位置B)は、曲げ曲率の急な遷移にさらされ、座屈(又はねじれ)の影響を受ける傾向がある。この座屈が発生した場合、中間湾曲セグメント103が分岐で曲がって次の枝に到達しても、中間湾曲セグメント103に続く遠位セクション104は、分岐を曲がることができず、分岐の他の開口に逸脱してしまう。
【0053】
(実施形態1)
図7aは、実施形態1で詳述する例に係る湾曲可能医療機器の側面図である。更に、
図7b~
図7eは、それぞれ、
図7aの線C-C、D-D、H-H、K-Kでの前面断面図を提供する。更に、
図8は、
図7b~
図7eに見られるL-L線での
図7aの不均一な側面断面図を提供する。
【0054】
ここで、近位セクション102は、中間湾曲セクション103と遠位セクション104の間に遷移スケルトンセグメント114を含む。遷移スケルトンセグメント114は、中間湾曲セクション103と同じスケルトン構造を含み、支持ワイヤ107も含む。支持ワイヤ107は、遷移スケルトンセグメント114の遠位端(
図7aの位置I)で終端され、湾曲可能医療機器13の残りの部分を通って近位端へ向かって延びる。支持ワイヤ107の近位端は、湾曲可能医療機器13において、具体的にはガイド穴112を通して、摺動可能である。
【0055】
支持ワイヤ107は、湾曲可能医療機器13が曲がるときの湾曲可能医療機器13のチャネルの長さ変化を調整しながら、追加の曲げ剛性を提供する。支持ワイヤ107は駆動ワイヤ105、106の間に構成することができるので、中央バックボーン構造を排除することによって、湾曲可能医療機器13の壁18を薄くすることができる。
【0056】
遷移スケルトンセグメント114は、中間湾曲セクション103と遠位セクション104の間(位置B)の剛性の変動を低減し、これは、近位セクション102における逸脱のリスクを大幅に軽減する。剛性の遷移が減少するにつれて、逸脱を誘発する‘弱点’が排除されるので、故障を招く‘弱点’の少ない、より可撓性の高い湾曲可能医療機器が得られる。
【0057】
(実施形態2)
図9aは、実施形態2に係る湾曲可能医療機器の側面図である。更に、
図9b~
図9eは、
図9aの湾曲可能医療機器のC-C、D-D、H-H、K-Kでの前面断面図を提供する。
【0058】
本実施形態の湾曲可能医療機器13は別の支持ワイヤ107’のセットを含み、これは、遠位セクション101の遠位端で終端され、湾曲可能医療機器13の残りの部分を通る。追加の支持ワイヤ107’のセットにより、剛性の順序を維持しながら、遠位セクション101及び中間湾曲セクション103の曲げ剛性を高めることができる。また、追加の支持ワイヤ107’のセットを用いて、スケルトン構造を有する領域(遠位セクション101及び中間湾曲セクション103である)での局所的な座屈を防止することもできる。このような追加の支持ワイヤ107’は、元の支持ワイヤ107と連動して、それらが横断する全てのセクションの剛性を高める。よって、スケルトン構造と合同チュービングセクション117との両方で、剛性が等しく増大することになる。しかしながら、これは、相対的な剛性の差が減少する一方で、全体の剛性の差が一定のままであることを意味する。
【0059】
(実施形態3)
図10a~
図10f及び
図11は、本革新の別の実施形態を表し、
図10aは、実施形態3の湾曲可能医療機器の側面図を提供する。
図10b~
図10fは、
図10aの機器の線C-C、D-D、H-H、N-N、P-Pでの前面断面図を提供する。
【0060】
本実施形態と実施形態2の違いは、追加の支持ワイヤ107’の開始位置であり、構造的強度の必要性に対応するように支持ワイヤ107’を動かす際の柔軟性を詳述している。
【0061】
図10b~
図10fに見られるように、追加の支持ワイヤ107’は、遠位セクション104の中間で終端され、遷移チュービングセグメント115及びパッシブチュービングセグメント116を形成する。追加の支持ワイヤ107’は、パッシブチュービングセグメント116に曲げ剛性を付加し、挿入力を遠位端へ伝達するための押し性能を高めることができる。
【0062】
(設計例)
湾曲可能医療機器の逸脱及び故障の原因となる要因に対処するために、2つの異なる設計の変形が実装された。
【0063】
第1の変形は、セクション(本明細書では近位の優先スケルトンセクションと近位のパッシブチュービングセクション)間に遷移部分を追加し、その剛性は当該2つのセクションの中間に収まる。この遷移部分の長さは可変であり、本明細書では、近位のスケルトンセクションとチュービングセクションの間の遷移が右肺上葉(“RUL”)に到達しないように選択された。
【0064】
1つの例示の実施形態又はプロトタイプでは、遷移点を湾曲可能医療機器の遠位端から90mm離すために、40mmを使用して組み込んでいる。これは、現在使用しているファントムに基づいて選択されたものであり、この場合、RULの最も深い位置は、RULの入口から90mm未満である。しかしながら、正確な長さは、より多くの患者データの解析を当てにする必要がある場合があり、或いは、複数の設計が作成されてよく、患者セグメンテーションに基づいて特定の設計/長さを選択するように臨床医に指示することができる。
【0065】
また、中間の変形は遷移セクションを追加するが、各々の駆動されるスケルトンセクションの長さをそれぞれ10mmまで短縮する。これにより、‘フォロー・ザ・リーダー’角度ベースのアルゴリズムを用いるFTL機能が向上するが、これは、各セクションが追従先のセクションと同じ形状を有することになるからである。改善されたFTL性能により、進行中の湾曲可能医療機器の引っ掛かりの発生が低減されるはずである。パッシブチュービングセクションとの遷移点が湾曲可能医療機器の先端から同様に90mm離れていることを確実にするために、この変形の遷移セクションは、第1の変形よりも長い。
【0066】
遷移セクションはスケルトン構造を有するが、残りの5つの使われていないガイド穴112に太めの支持ワイヤ107を追加することにより、剛性が増大する。被駆動スケルトンセクションには、既に6ミリインチ直径の支持ワイヤ107が3本ある。遷移セクションの追加の支持ワイヤ107’は、105.5ミリインチの直径を有する。この直径のワイヤは、現在の駆動ワイヤ105、106と同じ直径であるので、ガイド穴や湾曲可能医療機器の直径を変更することなく、我々の湾曲可能医療機器の設計に適合する。
【0067】
ただし、この追加の剛性が達成され得る代替の方法は複数存在する。より太い追加の支持ワイヤ107に加えて、ステンレス鋼等の別の材料を全体として使用することができる。
【0068】
現在の実装では、支持ワイヤ107の遠位部分アンカーが遷移セクションの遠位部分に固定されるとともに、近位部分がチュービングセクション内へ通り、端部が固定されていないので、湾曲可能医療機器13内での動きとともに自由に摺動することができる。このような支持ワイヤによってチュービングセクションの剛性も増大し、スケルトンセクションの剛性を高めることによって得られる利益がいくらか打ち消されることになるので、これは逆効果である。
【0069】
隣接するセクションに入る前に支持ワイヤが途切れると、問題が発生するおそれもある。湾曲可能医療機器が曲がるときに支持ワイヤは摺動するので、遷移セクションの近位部分の剛性が低下するような形状が存在するであろう。なぜなら、支持ワイヤは、近位端にギャップを残しながら遠位方向に摺動するからである。同時に、反対側の支持ワイヤは、隣接するセクションに滑り込むことになり、そのセクションの遠位端での剛性が高まる。これにより、一時的に大きな剛性差のポイントが生じるが、これは回避しようとしていることである。
【0070】
この問題を解決するひとつの方法は、これらの支持ワイヤを両端で固定することである。これにより、はるかに大きい剛性の追加が生じ、これは望ましい場合がある。この問題を解決する別の方法は、支持ワイヤを遷移セクションの近位部分で固定し、遠位側では固定しないようにすることである。基本的な遷移構造は近位湾曲セクションと同じ構造であるので、上記と同じ滑り現象が発生した場合、大きな剛性遷移は見られないであろう。よって、見られるであろうことは、完全に新しい剛性遷移ポイントを追加することではなく、遷移ポイントの向きの一時的な変化のみである。ただし、これらのセクションはスケルトン構造を有するので、駆動ワイヤの自由部分がガイドワイヤから滑り出るリスクがあり、湾曲可能医療機器が曲がると、ガイド穴に再び入らない場合があり、湾曲可能医療機器の他の構造に意図せず押し入って、該機器に損傷を与えるおそれがあると考えられる。これは、この問題が起こり得る全てのガイドリングの間に低剛性(又は必要に応じて高剛性の)ライナを通すことによって、軽減することができる。
【0071】
これらの支持ワイヤの近位端ポイントを遠位に動かす代わりに、支持ワイヤをハブまで通し、様々な方法で固定することもできる。ひとつの方法は、ばね、或いは特定の又は変化する量の力で動かせる他のタイプの表面に固定することである。或いは、「自由にスライド」/「抵抗のあるスライド」/「完全に固定」の間で切り替えることのできる方法で固定することができる。これがなされ得るひとつの方法は、抵抗を変化させるようにねじ込むことのできる止めねじを用いることである。同様に、この端は、固定/フリーを切り替えられるとともに抵抗を調整するための力フィードバックシステムを有するモータに固定することができる。
【0072】
ライナの概念を更に拡張するために、ライナ又はハイポチューブを、現在他の支持ワイヤ又は駆動ワイヤで占められているガイド穴に沿って配置し、空のガイド穴のみを使用するという制限を取り除くこともできる。
【0073】
湾曲可能医療機器のガイド穴の内側に材料を配置することに加えて、セクションに追加のインナーカバー/アウターカバーを適用して、剛性を高めることができる。このようなカバーの材料と厚さは、所望の剛性に達するように変えることができる。或いは、OD/IDの変更が望ましくない場合、スケルトン構造用の既存のインナーカバー/アウターカバーは、この遷移セクションにおいて異なる材料又は異なる厚さに置き換えることができる(ガイドリングは、最終直径が変化しないように、異なるID/ODで変更することもできる)。この追加又は補助の材料は、可変ピッチばね等、その長さに沿って剛性遷移をもつこともできる。
【0074】
剛性勾配を実現する別の方法は、ガイドリングの間隔を調節することである。これは、段階的に行うこともできるし、別個に行うこともできる。或いは、追加の材料をガイドリングの間に配置することができ、この材料の剛性は、材料の選択又は厚さに基づいて、セクションの長さに沿って段階的又は別個に変化してよい。
【0075】
スケルトン構造を用いる代わりに、チュービングセクションの変形を用いることができる。剛性の低い異なる材料を用いて、チュービングセクションの40Dセクションに溶接することができる。或いは、異なる材料を一緒に溶接する代わりに、追加のインナー材料/アウター材料/中間材料を追加して、複合材料を作製し、近位方向に沿って剛性を高めることができる。剛性を調節する別の方法は、湾曲可能医療機器の直径を徐々に、或いは別個に、大きくできるようにすることである。これを実現するひとつの方法は、バンプ押出しを用いることである。或いは、追加の支持ワイヤ(上記の様々な代替手段を伴う)を、チュービングセクションの長さに沿った様々なポイントに配置することができる。
【手続補正書】
【提出日】2022-08-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲可能体であって、当該湾曲可能体の端から端まで延びる中空チャンバを有する湾曲可能体
、
を備える医用装置であって、
前記湾曲可能体は、
遠位湾曲可能セクションと、
近位湾曲可能セクションと、
前記遠位湾曲可能セクションに設けられるとともに、空洞を形成するように互いに離隔された少なくとも2つのガイドリングと、
前記少なくとも2つのガイドリングの各々に設けられた少なくとも2つのガイド穴
と、
前記少なくとも2つのガイド穴のうちの少なくとも1つの中に摺動可能に配置されるとともに、前記湾曲可能体の遠位端に取り付けられる、少なくとも1つの駆動ワイヤと、
を
有し、
前記
近位湾曲可能セクション
の少なくとも一部は、前記遠位湾曲可能セクションの剛性勾配とは異なる剛性勾配を有する、
装置。
【請求項2】
前記
近位湾曲可能セクションは、少なくとも2つのセグメントから成り、各セグメントは異なる剛性勾配を有する、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記湾曲可能体の端から端まで延びる可撓性の壁を更に備える、
請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記少なくとも2つのガイドリングの内径は、前記壁の少なくとも一部に固定される、
請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記壁は、前記少なくとも2つのリングを封入するための弾性アウターライニングを更に有する、
請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの駆動ワイヤの近位端に取り付けられるアクチュエータ、
を更に備え、
前記アクチュエータは、前記駆動ワイヤを作動させるように構成される、
請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記
近位湾曲可能セクションは合同である、
請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記
近位湾曲可能セクションは、少なくとも2つの隣接するセグメントから成り、前記少なくとも2つのセグメントの各々は、異なる剛性勾配を有する、
請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記ガイド穴内に摺動可能に配置されるとともに前記湾曲可能体に取り付けられる
近位駆動ワイヤ、
を更に備え、
前記
少なくとも1つの駆動ワイヤ及び前記
近位駆動ワイヤの取付けの位置は、前記湾曲可能体の軸方向に沿って異なる、
請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記
少なくとも2つのガイド穴は、前記少なくとも2つのガイドリングの各々に構成される、
請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記駆動ワイヤ及び前記ガイド穴は、放射線不透過性材料から成る、
請求項1に記載の装置。
【請求項12】
湾曲可能体を備える医用装置であって、
前記湾曲可能体は、当該湾曲可能体の端から端まで延びる中空チャンバを有し、
前記湾曲可能体は、
前記湾曲可能体の遠位
側の第1の湾曲可能セクションと、
前記第1の湾曲可能セクションの近位にある
近位湾曲可能セクションと、
前記湾曲可能体の第1のガイド穴であって、前記中空チャンバと平行である第1のガイド穴と、
前記第1のガイド穴内に摺動可能に配置されるとともに、前記第1の湾曲可能セクションの遠位端に取り付けられる、遠位駆動ワイヤと、
前記湾曲可能体の
近位ガイド穴であって、前記中空チャンバと平行である
近位ガイド穴と、
前記
近位ガイド穴内に摺動可能に配置されるとともに、前記
近位湾曲可能セクションの遠位端に取り付けられる、
近位駆動ワイヤと、
を有し、
前記第1の湾曲可能セクションは、柔軟な構造を有し、
前記
近位湾曲可能セクションの前記遠位端での剛性は、前記第1の湾曲可能セクションの剛性と実質的に同じであり、前記
近位湾曲可能セクションの近位端での剛性よりも低い、
装置。
【請求項13】
前記湾曲可能体の端から端まで延びる可撓性の壁を更に備える、
請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記湾曲可能体は少なくとも2つのガイドリング
を有し、前記少なくとも2つのガイドリングは、前記第1の湾曲可能セクションに設けられるとともに、当該少なくとも2つのガイドリングの間に空洞を形成するように互いに離隔される、
請求項12に記載の装置。
【請求項15】
前記第1のガイド穴及び前記
近位ガイド穴は、前記少なくとも2つのガイドリングの各々に構成される、
請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記遠位駆動ワイヤの近位端に取り付けられたアクチュエータ、
を更に備え、
前記アクチュエータは、前記
遠位駆動ワイヤを作動させるように構成される、
請求項12に記載の装置。
【請求項17】
前記
近位駆動ワイヤの近位端に取り付けられたアクチュエータ、
を更に備え、
前記アクチュエータは、前記
近位駆動ワイヤを作動させるように構成される、
請求項12に記載の装置。
【請求項18】
前記
駆動ワイヤ及び前記ガイド穴は、放射線不透過性材料から成る、
請求項12に記載の装置。
【請求項19】
第1の湾曲可能セクションと、
第2の湾曲可能セクションであって、前記第1の湾曲可能セクション及び前記第2の湾曲可能セクションの作動ユニットに対して前記第1の湾曲可能セクションよりも近位にある、第2の湾曲可能セクションと、
を備える連続体ロボットであって、
前記第1の湾曲可能セクションは、
少なくとも1つの第1のワイヤが通る少なくとも2つの第1のガイドリング、
を有し、前記第1のワイヤは、前記第1の湾曲可能セクションの先端に固定され、
前記第2の湾曲可能セクションは、
前記少なくとも1つの第1のワイヤ及び少なくとも1つの第2のワイヤが通る少なくとも2つの第2のガイドリングを含む第1のセグメントと、
途切れのない管状形を有する第2のセグメントと、
を有し、前記第2のワイヤは、前記第2の湾曲可能セクションの先端に固定され、前記少なくとも1つの第1のワイヤ及び前記少なくとも1つの第2のワイヤは、前記第2のセグメントの端から端まで通り、
前記第2の湾曲可能セクションの前記第2のセグメントは剛性勾配を有し、前記第2のセグメントの遠位部分の剛性は、前記第2のセグメントの近位部分の剛性よりも高い、
連続体ロボット。
【請求項20】
前記少なくとも2つの第1のガイドリングは間隔をおいて配列され、前記少なくとも2つの第2のガイドリングは間隔をおいて配列される、
請求項19に記載の連続体ロボット。
【請求項21】
前記少なくとも2つの第1のガイドリング及び前記少なくとも2つの第2のガイドリングは、インナーライニングに取り付けられる、
請求項20に記載の連続体ロボット。
【請求項22】
前記第1のワイヤは、前記第1の湾曲可能セクションを曲げるための駆動ワイヤであり、前記第2のワイヤは、前記第2の湾曲可能セクションを曲げるための駆動ワイヤである、
請求項19に記載の連続体ロボット。
【請求項23】
前記第1の湾曲可能セクション及び前記第2の湾曲可能セクションを通る支持ワイヤ、
を更に備える、請求項22に記載の連続体ロボット。
【請求項24】
前記剛性は曲げ剛性である、
請求項19に記載の連続体ロボット。
【請求項25】
前記第2のセグメントの剛性を近位方向に沿って高めるために、前記第2のセグメントに対して追加の材料が溶接又は付加される、
請求項19に記載の連続体ロボット。
【請求項26】
前記第1の湾曲可能セクション又は前記第2の湾曲可能セクションの直径は、前記第1の湾曲可能セクション又は前記第2の湾曲可能セクションが前記剛性勾配を有するように、徐々に又は離散的に変化する、
請求項19に記載の連続体ロボット。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願への相互参照
本願は、2019年10月23日に米国特許商標庁に提出された米国仮特許出願第62/925101号から優先権を主張し、その開示は参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、概して、医療用途の装置及び方法に関する。より詳細には、本開示は、中空チャンバを有する多関節医療機器を対象とし、当該機器は、所望の標的に到達するように患者内で操縦することが可能であり、また、医用ツールが中空チャンバを通して誘導されることを可能にし、標的での医療手技を可能にする。医用ツールは、内視鏡、カメラ、湾曲可能医療機器、その他の医用器具を含み得る。
【背景技術】
【0003】
医療分野では、内視鏡手術器具や湾曲可能な医療機器等の湾曲可能な医用器具がよく知られており、受け入れられ続けている。湾曲可能な医用器具は、概して、一般にスリーブ又はシースと呼ばれる可撓体を含む。可撓体に沿って(典型的には、内側に)1つ以上のツールチャネルが延びており、可撓体の遠位端に位置する標的へのアクセスを可能にする。
【0004】
器具は、ねじり剛性及び長手方向の剛性を維持しながら、対象とする標的につながる1つ又は複数のカーブを伴う患者内での柔軟なアクセスを提供することを目的とするので、医師は、器具の近位端を操縦することにより、医用器具の遠位端に位置するツールを制御することができる。
【0005】
最近、器具の遠位端の操縦性を高めるために、遠位部分を制御するロボット化器具が出現した。そのようなロボット化器具では、ロボット工学により遠位部分で局所的にカーブを形成するために、様々な技術が開示されている。
【0006】
例として、米国特許出願公開第2018/0243900号は、湾曲可能セクションを有するマルチセクション多関節湾曲可能医療機器を提供しており、全てのセクションは、複数の別個のノード/ガイドリングから成る。従来の特許には、多数の別個のガイドリングで構成される完全に“スケルトン”のセクションか、又は、マルチガイド穴チュービングで作られている単片セクションのいずれかが含まれる。
【0007】
いずれの場合も、当該技術は、駆動腱が医用器具の遠位部を曲げている間に近位部の形状を保持するために、複数のコンジットを提供する。複数のコンジットは、コンジットの近位端を拘束又は拘束解除することによって二元的に、選択的に制御される。拘束されたコンジットを選択することにより、湾曲可能医療機器は、コンジットが展開された面積に基づいて湾曲可能医療機器の剛性を変えることによって、遠位セグメントを曲げる長さを変えることができる。
【0008】
しかしながら、既存の医用器具にはいくつかの欠点があり、それにより、その用途及び有効性が厳しく制限される。すなわち、崩壊することなく困難なエリアを通して器具を推進するために必要なカラム剛性は、特に器具の全径を最小化する場合は、とりわけ困難な問題であった。更に、単一構造の近位セクションを有する医用器具の使用する場合は、きついカーブを通して操作するための柔軟性に欠ける。セクションの長さも影響するので、単一構造の近位セクションの場合に湾曲可能セクションが短いと、所望の出力角度まで器具を曲げるために、実現可能な力よりもはるかに大きな力が必要となる。スケルトン構造の長さが短い場合は、最適な操縦性を提供することができるが、先行するパッシブセクションは、スケルトン構造が適切に曲がるとともに、曲がるときにかかる力に耐えることを可能にするような剛性を有する必要があり、これにより、蛇行進路を進むことが困難になる。
【0009】
最後に、スケルトン構造とマルチガイド穴チュービングの両方を備えた近位セクションを実装する場合は、肺気道を進むのに必要な押力を伝達するのに十分な堅牢性がない。近位セクションのスケルトン部は、肺の特定の分岐を進むことができるが、スケルトン構造に続くマルチガイド穴チュービングは、その分岐を曲がり切れず、むしろ座屈を生じ、該分岐の他の開口内に逸脱し始める傾向がある。これが発生すると、ロボットシステムは、湾曲可能医療機器の遠位端に押力を伝達することができないので、逸脱により、肺の周辺領域の結節への湾曲可能医療機器の到達可能性が制限されてしまう。この問題を更に悪化させることに、湾曲可能医療機器の逸脱は、医用器具を使用不能にする永久的な損傷につながることが多い。
【0010】
この欠陥を是正するための試みには、より長い湾曲可能セクションを採用するものがあったが、このような試みには、曲がるときに大きな変位を必要とするという問題があり、患者にとって潜在的に有害である湾曲可能医療機器を制御することが困難になってしまう。
【0011】
遠位セクションと近位セクションの長さに差があると、進路追従が不正確になり、装置が患者内に前進している間の先端運動が大きくなる。このような先端変位により、ユーザは、本来の軌道と位置合わせし直すために、先端の調整を試みることになる。しかしながら、このような運動は、湾曲可能医療機器が患者内への前進経路をたどるのに必要ではないはずであるので、器具が前進するにつれて、中央セクションと近位セクションは、所望の経路に沿っていない方向に曲がることになる。このプロセスにより、先端は望まない方向に動き、脱線サイクルが続き、各ステップで拡張されることになる。湾曲出力が近位セクションの中間の出力と一致しないので、近位セクションの剛性により、医用器具の前進は不十分で一貫性のないものとなり、つまり、本来の角度に到達せず、患者に害を及ぼすおそれがある。
【発明の概要】
【0012】
よって、業界におけるそのような例示のニーズに対処するために、本開示の装置は、以下を備える医用装置を教示する:湾曲可能体であって、当該湾曲可能体の端から端まで延びる中空チャンバを有する湾曲可能体;第1の湾曲可能セクション;中間湾曲可能セクション;第1の湾曲可能セクションに設けられるとともに、空洞を形成するように互いに離隔された少なくとも2つのガイドリング;湾曲可能体の少なくとも2つのガイド穴であって、湾曲可能体の端から端まで中空チャンバに平行に延びる、少なくとも2つのガイド穴;及び、少なくとも2つのガイド穴のうちの少なくとも1つの中に摺動可能に配置されるとともに、湾曲可能体の遠位端に取り付けられる、少なくとも1つの駆動ワイヤ。中間湾曲可能セクションは、第1の湾曲可能セクションの剛性勾配とは異なる剛性勾配を有する。
【0013】
別の実施形態では、装置の中間湾曲可能セクションは、少なくとも2つのセグメントから成り、各セグメントは異なる剛性勾配を有する。
【0014】
更なる実施形態では、装置は、湾曲可能体の端から端まで延びる可撓性の壁を更に備える。少なくとも2つのガイドリングの内径が、壁の少なくとも一部に固定されることが、更に想定される。更に、壁は、少なくとも2つのリングを封入するための弾性アウターライニングを更に備えてよい。
【0015】
他の実施形態では、本装置は、少なくとも1つの駆動ワイヤの近位端に取り付けられるアクチュエータを更に備え、アクチュエータは、駆動ワイヤを作動させるように構成される。
【0016】
更に追加の実施形態では、中間湾曲可能セクションは合同である。更に、中間湾曲可能セクションは、少なくとも2つの隣接するセグメントから成ってよく、該少なくとも2つのセグメントは、それぞれ異なる剛性勾配を有する。
【0017】
更なる実施形態では、装置は、ガイド穴内に摺動可能に配置されるとともに湾曲可能体に取り付けられる中間駆動ワイヤを備え、第1の駆動ワイヤ及び中間駆動ワイヤの取付けの位置は、湾曲可能体の軸方向に沿って異なる。
【0018】
更に追加の実施形態では、少なくとも2つのガイド穴は、少なくとも2つのガイドリングの各々に構成される。
【0019】
駆動ワイヤとガイド穴のいずれか又は両方が放射線不透過性材料から成ることが、更に想定される。
【0020】
本革新は、以駆動ワイヤとともに曲がるように構成された遠位セクション及び近位セクションを有する湾曲可能体を備える医用装置を更に教示する。遠位セクションは、駆動ワイヤの位置を保持するように間隔をおいて配列された複数のガイドリングと、ガイドリングに取り付けられたインナーライニング及びアウターライニングとを備えるスケルトン構造を有する。近位セクションは、スケルトン構造を有するとともに遠位セクションに接続する優先湾曲可能セグメント;スケルトン構造から成り、優先湾曲可能セグメントに接続する遷移スケルトンセグメント;及び、マルチルーメンチュービングを有し、遷移スケルトンセグメントに接続するパッシブセグメント、を有する。ガイドリング、インナーライニング及びアウターライニングによって、中空チャンバが形成される。
【0021】
様々な実施形態では、遷移スケルトンセグメントは支持ワイヤを含み、支持ワイヤは、遷移スケルトンセグメントの遠位端で終端され、該遠位端において、曲げ剛性は、優先湾曲可能セグメント、遷移スケルトンセグメント、パッシブセグメントの順に大きくなる。
【0022】
他の実施形態では、優先湾曲可能セグメントは、支持ワイヤの第2のセットを更に含み、遷移スケルトンセグメントは、優先湾曲可能セグメントよりも多くの支持ワイヤを含む。
【0023】
更に別の実施形態では、パッシブセグメントは、パッシブセグメントの中央に配置された支持ワイヤの第3のセットを含む。
【0024】
本革新は、更に以下を教示する:湾曲可能体であって、当該湾曲可能体の端から端まで延びる中空チャンバを有する湾曲可能体;第1の湾曲可能セクション;中間湾曲可能セクション;第1の湾曲可能セクションに設けられるとともに、空洞を形成するように互いに離隔された少なくとも2つのガイドリング;湾曲可能体の少なくとも2つのガイド穴であって、湾曲可能体の端から端まで中空チャンバに平行に延びる、少なくとも2つのガイド穴;及び、少なくとも2つのガイド穴のうちの少なくとも1つの中に摺動可能に配置されるとともに、湾曲可能体の遠位端に取り付けられる、少なくとも1つの駆動ワイヤ。中間湾曲可能セクションは、第1の湾曲可能セクションの剛性勾配とは異なる剛性勾配を有する。
【0025】
本開示のこれら及び他の目的、特徴及び利点は、本開示の例示の実施形態の以下の詳細な説明を添付の図面及び提供された段落と併せて読むと、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明の更なる目的、特徴及び利点は、本発明の例示の実施形態を示す添付の図と併せて解釈すると、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0027】
【
図1】
図1は、対象の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、様々な補助コンポーネントを包含する例示の湾曲可能医療機器のブロック図である。
【
図2】
図2は、対象の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、例示の湾曲可能医療機器の切欠き斜視図を提供する。
【
図3】
図3は、対象の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、例示の湾曲可能医療機器の切欠き斜視図である。
【
図4】
図4a~
図4dは、対象の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、例示の湾曲可能医療機器の側面外形図(4a)及び前面切欠き図(4b~4d)を提供する。
【
図5】
図5は、対象の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、例示の湾曲可能医療機器の側面切欠き図を示す。
【
図6】
図6は、対象の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、
図5に見られる例示の湾曲可能医療機器の拡大側面切欠き図を提供する。
【
図7】
図7a~
図7eは、対象の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、例示の湾曲可能医療機器の側面外形図(7a)及び前面切欠き図(7b~
7e)を提供する。
【
図8】
図8は、対象の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、例示の湾曲可能医療機器の側面切欠き図を示す。
【
図9-1】
図9a~図
9cは、対象の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、例示の湾曲可能医療機器の側面外形図(9a)及び前面切欠き図(9b~
9c)を提供する。
【
図9-2】
図9d~図9eは、対象の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、例示の湾曲可能医療機器の前面切欠き図を提供する。
【
図10-1】
図10a~図
10cは、対象の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、例示の湾曲可能医療機器の側面外形図(10a)及び前面切欠き図(10b~
10c)を提供する。
【
図10-2】
図10d~図10fは、対象の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、例示の湾曲可能医療機器の前面切欠き図を提供する。
【
図11】
図11は、対象の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、例示の湾曲可能医療機器の側面切欠き図を示す。
【0028】
図全体を通して、別段の記載がない限り、同じ参照番号及び文字は、例示される実施形態の同様の特徴、要素、コンポーネント又は部分を示すために用いられる。加えて、「’」という指定を含む参照数字(例えば101’や24’)は、同じ性質及び/又は種類の中間要素及び/又は参照を表す。更に、これから図を参照して本開示を詳細に説明するが、それは、例示の実施形態に関連してなされる。添付の段落によって定義される本開示の真の範囲及び主旨から逸脱することなく、説明される実施形態に対して変更及び修正を行うことができることが意図される。
【0029】
本明細書で用いられる場合、「実質的に」という用語は、意図された目的に悪影響を及ぼさない、記述子からの逸脱を許容することを意味する。例えば、測定値の限定に由来する逸脱、製造公差内の差異、又は5%未満の変動は、実質的に同じ範囲内にあると見なすことができる。指定された記述子は、絶対値(例えば、実質的に球形、実質的に垂直等)又は相対語(例えば、実質的に差のないビームウエストプロファイル、実質的に同じ等)であり得る。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本革新の分析により、中間剛性のセクションの追加によって逸脱の発生の顕著なシフトがもたらされ、故障(遷移が全くない場合)が約30%少なくなることが示された。本革新により、スケルトンセクションの曲げ剛性の限度によって制限されるのではなく、より大きな挿入力を付加して、湾曲可能医療機器の他の場所での摩擦を克服することが可能となり、よって、湾曲可能医療機器を患者の通路内へより深く更に前進させることができる。更に、本革新は、ユーザが湾曲可能医療機器に新たに発見された柔軟性を組み込んで、より速く、あまり問題を起こさずに肺の一部に到達することを可能にすることによって、ナビゲーション機能を向上させることができる。
【0031】
実施形態1について、チュービングセクションよりもスケルトンセクションを使用する利点(柔軟性及び曲げ半径)を維持しながら、大きな剛性ギャップを埋めることもできる。
【0032】
実施形態2について、その利点は、全てのスケルトンセクションの剛性の増加をもたらし、湾曲可能医療機器の全長にわたって座屈のリスクを低減しながら、スケルトンセクションとチュービングセクションの間の相対的な剛性差も低減する。
【0033】
第3の実施形態では、その利点により、複数の剛性遷移を形成できるようになり、それにより、セクション長さが短くなることから、剛性の低いチュービングセクション115をより小さな半径で曲げることが可能となる。
【0034】
本革新は、湾曲可能医療機器に関連付けられる一般システムを始めとして、例示図の説明を通して詳細に伝えられるであろう。
【0035】
図1は、完全な医用システムを築くことを目的とした様々な補助コンポーネントを包含する例示の湾曲可能医療機器システム10のシステムブロック図である。湾曲可能医療機器システム10は、駆動ユニット12と、湾曲可能医療機器13と、位置決めカート14と、操作コンソール15と、ナビゲーションソフトウェア16とを備える。例示の湾曲可能医療機器システム10は、患者での使用を容易にするために、外部システムコンポーネント及び臨床ユーザとインタラクトすることができる。
【0036】
ナビゲーションソフトウェア16と駆動ユニット12は、バスを介して通信的に結合されて、相互にデータを送受信する。更に、ナビゲーションソフトウェア16は、湾曲可能医療機器システム10の補助コンポーネントであるCTスキャナ、X線透視装置及び画像サーバ(図示なし)に接続され、また、それらと通信することができる。画像サーバとしては、CT及び/又はMRIのスキャナやX線透視装置等の医用イメージングデバイスに接続されるDICOM(商標)サーバが挙げられるが、これに限定されない。ナビゲーションソフトウェア16は、画像ディスプレイに画像を表示するために、駆動ユニット12によって提供されるデータと、画像サーバに格納された画像及び/又はCTスキャナ及びX線透視装置からの画像によって提供されるデータとを処理する。
【0037】
CTスキャナからの画像は、術前にナビゲーションソフトウェア16に提供されてよい。ナビゲーションソフトウェアを用いて、臨床ユーザは、画像から解剖学的コンピュータモデルを作成する。この特定の実施形態では、生体構造は、関連気道を伴う肺のものである。CTスキャナの胸部画像から、臨床ユーザは、生検等の臨床処置のために肺気道をセグメント化することができる。肺気道マップを生成した後、ユーザは、生検対象の病変にアクセスするための計画を作成することもできる。計画には、湾曲可能医療機器13を挿入及び操作するための、対象の標的(この例では病変である)につながる気道が含まれる。
【0038】
駆動ユニット12は、アクチュエータ及び制御回路構成を有する。制御回路構成は、操作コンソール15と通信的に結合される。駆動ユニット12は、駆動ユニット12のアクチュエータが湾曲可能医療機器13を動作させるように、湾曲可能医療機器13に接続される。したがって、臨床ユーザは、駆動ユニット12を介して湾曲可能医療機器13を制御することができる。また、駆動ユニット12は、物理的に位置決めカート14に接続されてもよい。位置決めカート14は、位置決めアームを含み、標的/患者に対して意図された位置に駆動ユニット12及び湾曲可能医療機器13を位置付ける。臨床ユーザは、湾曲可能医療機器13を挿入、操作及び除去して、医療手技(ここでは患者の肺での生検)を実行することができる。
【0039】
湾曲可能医療機器13は、臨床ユーザの操作による計画に基づいて、患者内の標的へナビゲートすることができる。湾曲可能医療機器13は、各種ツール(例えば生検ツール)用のツールチャネル108を含む。湾曲可能医療機器13は、ツールを患者の病変へ誘導することができる。一例では、臨床ユーザは、生検ツールを用いて病変から生検サンプルを採取することができる。
【0040】
図2及び
図3に示されるように、湾曲可能医療機器13の遠位セクション101は、複数のガイドリング109を有する。ガイドリング109は、互いに離れて構成され、互いに接触しない。ガイドリング109は、円筒状の壁18によって適所に保持される。壁18は、インナーライニング111及びアウターライニング110を有し、湾曲可能体17の軸方向に沿って一定の位置にガイドリング109を留めながら、湾曲可能な支持を湾曲可能体
17に提供する。インナーライニング111は内径40を形成し、アウターライニング110は外径42を形成し、内径40はツールチャネル108を定める。湾曲可能体17の縁は、湾曲可能体17が前進するときの患者の内部要素への害を更に軽減するために、非外傷性先端26によって丸みを帯びてよい。
【0041】
インナーライニング111及び/又はアウターライニング110には、隣接するガイドリング109が取り付けられ、隣接するガイドリング109の間には空洞113が形成されており、湾曲可能体17の長手方向に沿って分布している。湾曲可能体が曲げられると、空洞113により、インナーライニング111とアウターライニング110の両方において均等に分布したしわが生じる。したがって、空洞113により、ツールチャネル108を押し潰しかねない致命的なねじれが回避される。
【0042】
各ガイドリング109は少なくとも2つのガイド穴112を含み、少なくとも2つのガイド穴112は、駆動ワイヤ105~106を摺動可能に収容するために、湾曲可能体17の端から端までの部分と平行にガイドリング109の端から端まで延びる。更に、ガイドリング109内の各ガイド穴112は、アンカー21を受けるように構成され、アンカー21は、ガイドリング109内に埋め込まれるように、駆動ワイヤ105~106の端部でずらされる。
図2において、近位の駆動ワイヤ106は、中間湾曲可能セクション103の遠位端に構成されたアンカー21を示す。隣接するガイドリング109間の空間は、弾性のあるインナーライニング111及びアウターライニング110と相まって、湾曲可能体
17がガイドリング109間のオープンスペースのおかげでねじることなく、より大きな範囲の曲げ運動を達成することを可能にする。
【0043】
ツールチャネル108は、湾曲可能体17の端から端まで延びるように構成される。湾曲可能体17の近位端は、臨床ユーザが医用ツールを挿入/除去するためのアクセスを提供する。例えば、臨床ユーザは、湾曲可能医療機器13の遠位端のツールチャネル108を通して、生検ツールを挿入及び回収することができる。
【0044】
図4の断面図に見られるように、湾曲可能体17は、湾曲可能体17に収容された遠位駆動ワイヤ105のセットと、中間駆動ワイヤ106のセットと、支持ワイヤ107のセットとを含む。駆動ワイヤ105、106のセットの各々は、それぞれ、遠位、中間、近位の湾曲可能セクション101、103、104に対応する。円筒状の壁18は、インナーライニング111及びアウターライニング110によって形成され、インナーライニング111及びアウターライニング110は、合同であり、医療機器13の遠位端で互いに組み合わさって、湾曲可能体17をカプセル化する。壁18は、湾曲可能体17の軸方向に沿って一定の位置にガイドリング109を留めながら、湾曲可能な支持を湾曲可能体17に提供する。インナーライニング111は、壁の内径40を形成するとともにツールチャネル108を定め、一方、アウターライニング110は、湾曲可能体17の外径42を形成する。
【0045】
湾曲可能体17は、駆動ワイヤ105~106を、湾曲可能体17の長手方向に沿って構成された対応するガイド穴112に収容する。ガイド穴112は、湾曲可能体17の軸方向に沿った駆動ワイヤ105~106の摺動可能な動作を可能にする。駆動ワイヤ105~106は、各湾曲可能セクション101、103、104の遠位端で終端される。遠位駆動ワイヤ105は、アンカー21によって遠位セクション101の遠位端で終端され、また、湾曲可能体17内で互いにおよそ120度離れて構成される。遠位駆動ワイヤ105は、ワイヤ105の近位端で駆動ユニット12に接続される。駆動ユニット12は、遠位駆動ワイヤ105を作動させることによって当該ワイヤを動かすための押す力又は引く力を誘発し、湾曲可能体17を曲げる。同様に、近位駆動ワイヤ106は、それぞれ、それらの対応する湾曲可能セクション103、104用に構成される。
【0046】
したがって、駆動ワイヤ105~106を押す又は引くことにより、近位、中間、遠位の湾曲可能セクション104、103、101は、それぞれ、3次元の全てにおいて湾曲可能医療機器13を個別に曲げることができる。
【0047】
図2には、湾曲可能体17の壁18内に設けられた支持ワイヤ107が更に示される。支持ワイヤ107は、追加の構造的支持を壁18に提供することができ、また、湾曲
可能セクション101~104の遠位端24に固定することができる。一部の実施形態では、1つ以上の支持ワイヤ107は壁18内に緩く保持されてよく、これにより、湾曲可能体17の曲げの必要性に対応するように、支持ワイヤ107の動作と一定の除去が可能となる。支持ワイヤ107は、壁18に構成されたガイド穴112を通ることができ、ガイド穴112は、湾曲可能医療機器13の近位部を起点としてよい。特定の実施形態では、支持ワイヤ107は、壁81の調節可能な構造的支持として構成されてよい。支持の例示の調節としては、支持ワイヤ107の様々な引張強度、構成、弾力性を採用することが挙げられる。一実施形態では、複数の支持ワイヤ107は、湾曲可能医療機器13の遠位端24から湾曲可能医療機器13の近位部105まで延びてよく、よって、湾曲可能体17の全てのセクション101~104がねじれ防止の利益を得ることができる。
【0048】
図4aは、本革新の1つ以上の実施形態に係る例示の湾曲可能医療機器の側面図を提供し、
図4b~
図4dは、
図4aの機器の線C-C、D-D、E-Eでの前面断面図を示す。
【0049】
図4aの湾曲可能医療機器は、遠位セクション101及び近位セクション102から成り、また、生検ツールその他のツールを湾曲可能医療機器13を通して標的まで送達するためのツールチャネル108を有する。遠位駆動ワイヤ105は、遠位セクション101の遠位端で終端され、線C-Cでの
図4bの断面図に示されるように、機器13の外周の周りに等距離に配列される。同様に、近位駆動ワイヤ106は、近位セクション102の遠位端で終端され、
図4c(
図4aの線D-Dでの断面を詳細に示す)に示されるように、湾曲可能医療機器13の外周の周りに等距離に配列される。
【0050】
また、近位駆動ワイヤ106は、遠位セクション101の近位端を位置Aとして定める。それらのワイヤを適切に引いたり押したりすることによって、遠位セクション101と近位セクション102を3次元で曲げることができる。当該セクション101、102は、ロボットコントローラ(図示なし)を用いて独立して制御することができる。具体的には、近位セクション102は、更に、中間湾曲可能セクション103及び近位湾曲可能セクション104から成る。
【0051】
図5に提供されるように、中間湾曲
可能セクション103は、遠位セクション101と同じ機械構造(つまり、互いに離隔した複数のガイドリング109を包含するスケルトン構造)を有し、一方、
近位湾曲可能セクション104は、単純なマルチガイド合同チュービングを有する。
【0052】
図6は、遠位セクション101及び中間湾曲
可能セクション103のスケルトン構造をより分かりやすく説明するために、
図5の領域Gの拡大図を示す。スケルトン構造は、複数のガイドリング109から成り、ガイドリング109の間には特定の間隔がある。ガイドリング109は、駆動ワイヤ105、106を摺動可能に保持するためのガイド穴112(
図4b~
図4d参照)を有し、インナー
ライニング110及びアウター
ライニング111に囲まれている。インナー
ライニング110がツールチャネル108を形成する一方、アウター
ライニング111は、生体構造への最適な挿入のための、また、湾曲可能医療機器13の内部構造を外部の異物から保護するための、滑らかな途切れのない表面を提供する。ガイドリング109、インナー
ライニング110及びアウター
ライニング111によって、それぞれのガイドリング109の間に中空チャンバ113が形成される。このような中空チャンバ113は、中空チャンバ113の中及び周囲へのインナー
ライニング110及びアウター
ライニング111の小さなしわ及び伸長を促進することによって、湾曲可能医療機器13がきつい湾曲で曲がることを可能にする。更に、中空チャンバ113は、マルチガイド合同チュービングセクション118と比較して低い曲げ剛性を実現する。したがって、近位セクション102では、このスケルトン構造を有する中間湾曲
可能セクション103は、
近位湾曲可能セクション104よりも低い曲げ剛性を有する。この構成により、近位セクション102の中間湾曲
可能セクション103に曲げを局所化することができる。近位駆動ワイヤ106が押されるか又は引っ張られると、中間湾曲
可能セクション103が主に曲がり、
近位湾曲可能セクション104はその姿勢を維持する。しかしながら、中間湾曲
可能セクション103と
近位湾曲可能セクション104の接合部(位置B)は、曲げ曲率の急な遷移にさらされ、座屈(又はねじれ)の影響を受ける傾向がある。この座屈が発生した場合、中間湾曲
可能セクション103が分岐で曲がって次の枝に到達しても、中間湾曲
可能セクション103に続く
近位湾曲可能セクション104は、分岐を曲がることができず、分岐の他の開口に逸脱してしまう。
【0053】
(実施形態1)
図7aは、実施形態1で詳述する例に係る湾曲可能医療機器の側面図である。更に、
図7b~
図7eは、それぞれ、
図7aの線C-C、D-D、H-H、K-Kでの前面断面図を提供する。更に、
図8は、
図7b~
図7eに見られるL-L線での
図7aの不均一な側面断面図を提供する。
【0054】
ここで、近位セクション102は、中間湾曲
可能セクション103と
近位湾曲可能セクション104の間に遷移スケルトンセグメント114を含む。遷移スケルトンセグメント114は、中間湾曲
可能セクション103と同じスケルトン構造を含み、支持ワイヤ107も含む。支持ワイヤ107は、遷移スケルトンセグメント114の遠位端(
図7aの位置I)で終端され、湾曲可能医療機器13の残りの部分を通って近位端へ向かって延びる。支持ワイヤ107の近位端は、湾曲可能医療機器13において、具体的にはガイド穴112を通して、摺動可能である。
【0055】
支持ワイヤ107は、湾曲可能医療機器13が曲がるときの湾曲可能医療機器13のチャネルの長さ変化を調整しながら、追加の曲げ剛性を提供する。支持ワイヤ107は駆動ワイヤ105、106の間に構成することができるので、中央バックボーン構造を排除することによって、湾曲可能医療機器13の壁18を薄くすることができる。
【0056】
遷移スケルトンセグメント114は、中間湾曲可能セクション103と近位湾曲可能セクション104の間(位置B)の剛性の変動を低減し、これは、近位セクション102における逸脱のリスクを大幅に軽減する。剛性の遷移が減少するにつれて、逸脱を誘発する‘弱点’が排除されるので、故障を招く‘弱点’の少ない、より可撓性の高い湾曲可能医療機器が得られる。
【0057】
(実施形態2)
図9aは、実施形態2に係る湾曲可能医療機器の側面図である。更に、
図9b~
図9eは、
図9aの湾曲可能医療機器のC-C、D-D、H-H、K-Kでの前面断面図を提供する。
【0058】
本実施形態の湾曲可能医療機器13は別の支持ワイヤ107’のセットを含み、これは、遠位セクション101の遠位端で終端され、湾曲可能医療機器13の残りの部分を通る。追加の支持ワイヤ107’のセットにより、剛性の順序を維持しながら、遠位セクション101及び中間湾曲可能セクション103の曲げ剛性を高めることができる。また、追加の支持ワイヤ107’のセットを用いて、スケルトン構造を有する領域(遠位セクション101及び中間湾曲可能セクション103である)での局所的な座屈を防止することもできる。このような追加の支持ワイヤ107’は、元の支持ワイヤ107と連動して、それらが横断する全てのセクションの剛性を高める。よって、スケルトン構造と合同チュービングセクション117との両方で、剛性が等しく増大することになる。しかしながら、これは、相対的な剛性の差が減少する一方で、全体の剛性の差が一定のままであることを意味する。
【0059】
(実施形態3)
図10a~
図10f及び
図11は、本革新の別の実施形態を表し、
図10aは、実施形態3の湾曲可能医療機器の側面図を提供する。
図10b~
図10fは、
図10aの機器の線C-C、D-D、H-H、N-N、P-Pでの前面断面図を提供する。
【0060】
本実施形態と実施形態2の違いは、追加の支持ワイヤ107’の開始位置であり、構造的強度の必要性に対応するように支持ワイヤ107’を動かす際の柔軟性を詳述している。
【0061】
図10b~
図10fに見られるように、追加の支持ワイヤ107’は、
近位湾曲可能セクション104の中間で終端され、遷移チュービングセグメント115及びパッシブチュービングセグメント116を形成する。追加の支持ワイヤ107’は、パッシブチュービングセグメント116に曲げ剛性を付加し、挿入力を遠位端へ伝達するための押し性能を高めることができる。
【0062】
(設計例)
湾曲可能医療機器の逸脱及び故障の原因となる要因に対処するために、2つの異なる設計の変形が実装された。
【0063】
第1の変形は、セクション(本明細書では近位の優先スケルトンセクションと近位のパッシブチュービングセクション)間に遷移部分を追加し、その剛性は当該2つのセクションの中間に収まる。この遷移部分の長さは可変であり、本明細書では、近位のスケルトンセクションとチュービングセクションの間の遷移が右肺上葉(“RUL”)に到達しないように選択された。
【0064】
1つの例示の実施形態又はプロトタイプでは、遷移点を湾曲可能医療機器の遠位端から90mm離すために、40mmを使用して組み込んでいる。これは、現在使用しているファントムに基づいて選択されたものであり、この場合、RULの最も深い位置は、RULの入口から90mm未満である。しかしながら、正確な長さは、より多くの患者データの解析を当てにする必要がある場合があり、或いは、複数の設計が作成されてよく、患者セグメンテーションに基づいて特定の設計/長さを選択するように臨床医に指示することができる。
【0065】
また、中間の変形は遷移セクションを追加するが、各々の駆動されるスケルトンセクションの長さをそれぞれ10mmまで短縮する。これにより、‘フォロー・ザ・リーダー’角度ベースのアルゴリズムを用いるFTL機能が向上するが、これは、各セクションが追従先のセクションと同じ形状を有することになるからである。改善されたFTL性能により、進行中の湾曲可能医療機器の引っ掛かりの発生が低減されるはずである。パッシブチュービングセクションとの遷移点が湾曲可能医療機器の先端から同様に90mm離れていることを確実にするために、この変形の遷移セクションは、第1の変形よりも長い。
【0066】
遷移セクションはスケルトン構造を有するが、残りの5つの使われていないガイド穴112に太めの支持ワイヤ107を追加することにより、剛性が増大する。被駆動スケルトンセクションには、既に6ミリインチ直径の支持ワイヤ107が3本ある。遷移セクションの追加の支持ワイヤ107’は、105.5ミリインチの直径を有する。この直径のワイヤは、現在の駆動ワイヤ105、106と同じ直径であるので、ガイド穴や湾曲可能医療機器の直径を変更することなく、我々の湾曲可能医療機器の設計に適合する。
【0067】
ただし、この追加の剛性が達成され得る代替の方法は複数存在する。より太い追加の支持ワイヤ107に加えて、ステンレス鋼等の別の材料を全体として使用することができる。
【0068】
現在の実装では、支持ワイヤ107の遠位部分アンカーが遷移セクションの遠位部分に固定されるとともに、近位部分がチュービングセクション内へ通り、端部が固定されていないので、湾曲可能医療機器13内での動きとともに自由に摺動することができる。このような支持ワイヤによってチュービングセクションの剛性も増大し、スケルトンセクションの剛性を高めることによって得られる利益がいくらか打ち消されることになるので、これは逆効果である。
【0069】
隣接するセクションに入る前に支持ワイヤが途切れると、問題が発生するおそれもある。湾曲可能医療機器が曲がるときに支持ワイヤは摺動するので、遷移セクションの近位部分の剛性が低下するような形状が存在するであろう。なぜなら、支持ワイヤは、近位端にギャップを残しながら遠位方向に摺動するからである。同時に、反対側の支持ワイヤは、隣接するセクションに滑り込むことになり、そのセクションの遠位端での剛性が高まる。これにより、一時的に大きな剛性差のポイントが生じるが、これは回避しようとしていることである。
【0070】
この問題を解決するひとつの方法は、これらの支持ワイヤを両端で固定することである。これにより、はるかに大きい剛性の追加が生じ、これは望ましい場合がある。この問題を解決する別の方法は、支持ワイヤを遷移セクションの近位部分で固定し、遠位側では固定しないようにすることである。基本的な遷移構造は近位湾曲可能セクションと同じ構造であるので、上記と同じ滑り現象が発生した場合、大きな剛性遷移は見られないであろう。よって、見られるであろうことは、完全に新しい剛性遷移ポイントを追加することではなく、遷移ポイントの向きの一時的な変化のみである。ただし、これらのセクションはスケルトン構造を有するので、駆動ワイヤの自由部分がガイドワイヤから滑り出るリスクがあり、湾曲可能医療機器が曲がると、ガイド穴に再び入らない場合があり、湾曲可能医療機器の他の構造に意図せず押し入って、該機器に損傷を与えるおそれがあると考えられる。これは、この問題が起こり得る全てのガイドリングの間に低剛性(又は必要に応じて高剛性の)ライニングを通すことによって、軽減することができる。
【0071】
これらの支持ワイヤの近位端ポイントを遠位に動かす代わりに、支持ワイヤをハブまで通し、様々な方法で固定することもできる。ひとつの方法は、ばね、或いは特定の又は変化する量の力で動かせる他のタイプの表面に固定することである。或いは、「自由にスライド」/「抵抗のあるスライド」/「完全に固定」の間で切り替えることのできる方法で固定することができる。これがなされ得るひとつの方法は、抵抗を変化させるようにねじ込むことのできる止めねじを用いることである。同様に、この端は、固定/フリーを切り替えられるとともに抵抗を調整するための力フィードバックシステムを有するモータに固定することができる。
【0072】
ライナの概念を更に拡張するために、ライニング又はハイポチューブを、現在他の支持ワイヤ又は駆動ワイヤで占められているガイド穴に沿って配置し、空のガイド穴のみを使用するという制限を取り除くこともできる。
【0073】
湾曲可能医療機器のガイド穴の内側に材料を配置することに加えて、セクションに追加のインナーカバー/アウターカバーを適用して、剛性を高めることができる。このようなカバーの材料と厚さは、所望の剛性に達するように変えることができる。或いは、OD/IDの変更が望ましくない場合、スケルトン構造用の既存のインナーカバー/アウターカバーは、この遷移セクションにおいて異なる材料又は異なる厚さに置き換えることができる(ガイドリングは、最終直径が変化しないように、異なるID/ODで変更することもできる)。この追加又は補助の材料は、可変ピッチばね等、その長さに沿って剛性遷移をもつこともできる。
【0074】
剛性勾配を実現する別の方法は、ガイドリングの間隔を調節することである。これは、段階的に行うこともできるし、別個に行うこともできる。或いは、追加の材料をガイドリングの間に配置することができ、この材料の剛性は、材料の選択又は厚さに基づいて、セクションの長さに沿って段階的又は別個に変化してよい。
【0075】
スケルトン構造を用いる代わりに、チュービングセクションの変形を用いることができる。剛性の低い異なる材料を用いて、チュービングセクションの40Dセクションに溶接することができる。或いは、異なる材料を一緒に溶接する代わりに、追加のインナー材料/アウター材料/中間材料を追加して、複合材料を作製し、近位方向に沿って剛性を高めることができる。剛性を調節する別の方法は、湾曲可能医療機器の直径を徐々に、或いは別個に、大きくできるようにすることである。これを実現するひとつの方法は、バンプ押出しを用いることである。或いは、追加の支持ワイヤ(上記の様々な代替手段を伴う)を、チュービングセクションの長さに沿った様々なポイントに配置することができる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】