(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-20
(54)【発明の名称】低いゾルゲル転移温度を有するポロキサマー組成物およびポロキサマー組成物のゾルゲル転移温度を低下させる方法。
(51)【国際特許分類】
A61K 47/10 20060101AFI20221213BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20221213BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20221213BHJP
A61K 45/08 20060101ALI20221213BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20221213BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20221213BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20221213BHJP
A61K 8/35 20060101ALI20221213BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20221213BHJP
A61K 8/27 20060101ALI20221213BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20221213BHJP
A61K 31/616 20060101ALI20221213BHJP
A61K 35/644 20150101ALI20221213BHJP
A61K 38/46 20060101ALI20221213BHJP
A61K 31/785 20060101ALI20221213BHJP
A61K 31/4174 20060101ALI20221213BHJP
A61K 31/137 20060101ALI20221213BHJP
A61K 31/167 20060101ALI20221213BHJP
A61K 31/555 20060101ALI20221213BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20221213BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20221213BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20221213BHJP
C07D 233/60 20060101ALN20221213BHJP
C07D 239/42 20060101ALN20221213BHJP
【FI】
A61K47/10
A61K47/14
A61K9/06
A61K45/08
A61K47/36
A61P17/00
A61P17/00 101
A61Q17/04
A61K8/35
A61P17/02
A61K8/27
A61P17/04
A61K31/616
A61K35/644
A61K38/46
A61K31/785
A61K31/4174
A61K31/137
A61K31/167
A61K31/555
A61K8/34
A61K8/37
A61K8/86
C07D233/60 103
C07D239/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022524580
(86)(22)【出願日】2020-10-21
(85)【翻訳文提出日】2022-05-17
(86)【国際出願番号】 US2020056619
(87)【国際公開番号】W WO2021086698
(87)【国際公開日】2021-05-06
(32)【優先日】2019-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522166149
【氏名又は名称】ロチャル テクノロジーズ,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サラモーネ,ジョーセフ,シー.
(72)【発明者】
【氏名】マクマホン,レベッカ,エリン
(72)【発明者】
【氏名】ポレオン,スプレナ エマニュエル,ザリア
(72)【発明者】
【氏名】サラモーネ,アン,ビール
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C084
4C086
4C087
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA06
4C076AA09
4C076BB31
4C076CC18
4C076CC19
4C076DD38
4C076DD38G
4C076DD46G
4C076EE23
4C076EE23A
4C076EE23G
4C076EE30
4C076EE49A
4C076FF17
4C076FF31
4C076FF35
4C076FF68
4C083AB211
4C083AB212
4C083AC111
4C083AC112
4C083AC211
4C083AC212
4C083AC421
4C083AC422
4C083AD051
4C083AD052
4C083CC02
4C083CC19
4C083DD31
4C083DD41
4C083EE11
4C083EE17
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA44
4C084DC22
4C084MA05
4C084MA28
4C084MA63
4C084NA05
4C084NA12
4C084ZA89
4C084ZA90
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC38
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4C086FA03
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4C086ZA89
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4C087NA12
4C087ZA89
4C087ZA90
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA07
4C206GA17
4C206GA31
4C206KA01
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4C206MA03
4C206MA05
4C206MA48
4C206MA83
4C206NA05
4C206NA12
4C206ZA89
4C206ZA90
(57)【要約】
疎水性ビシナルジオールの添加により水性ポロキサマー界面活性剤組成物のゾルゲル温度の低下が得られる。モノアルキルグリコール、モノアルキルグリセロール、またはモノアシルグリセロールなどの疎水性ビシナルジオールを少なくとも1つ少量添加することにより、ポリエチレンオキシド-b-ポリプロピレンオキシド-b-ポリエチレンオキシドからなる水溶性ポロキサマーブロック共重合体に係るゾルゲル温度の低下とゲル化効率が著しく改善される。ゾルゲル温度の低下によりゲル形成が促進され、このようなゲルは、表面、特に生体特性のある表面においてより長い滞留時間を示す。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.05重量%~5重量%の疎水性ビシナルジオール成分と、10重量%~65重量%のポロキサマー成分とを含有し、
前記疎水性ビシナルジオール成分が6炭素長から16炭素長までのモノアルキルグリコール、モノアルキルグリセロール、モノアシルグリセロール、またはこれらの組み合わせであって、
前記疎水性ビシナルジオール成分が水性ポロキサマー等価物のゾルゲル温度を少なくとも1℃低下させることを特徴とするポロキサマーゲル組成物。
【請求項2】
前記ポロキサマー成分が、ポロキサマー108、ポロキサマー124、ポロキサマー188、ポロキサマー127、ポロキサマー237、ポロキサマー238、ポロキサマー288、ポロキサマー335、ポロキサマー338、ポロキサマー407、またはこれらの組み合わせ、からなる群から選択されるポロキサマーを含有することを特徴とする請求項1に記載のポロキサマーゲル組成物。
【請求項3】
前記疎水性ビシナルジオール成分が、式1の構造を有する疎水性モノアルキルグリコールを含み、
【化1】
式中、R=C
6~C
16の分岐または非分岐のアルキル基またはアルキレン基である、
ことを特徴とする請求項1に記載のポロキサマーゲル組成物。
【請求項4】
前記疎水性モノアルキルグリコールが、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-ノナンジオール、1,2-デカンジオール、1,2-ウンデカンジオール、1,2-ドデカンジオール、1,2-トリデカンジオール、1,2-テトラデカンジオール、1,2-ペンタデカンジオール、1,2-ヘキサデカンジオール、およびこれらの組み合わせ、からなる群から選択されることを特徴とする請求項3に記載のポロキサマーゲル組成物。
【請求項5】
前記疎水性ビシナルジオール成分が、式2の構造を有する疎水性モノアルキルグリセロールを含み、
【化2】
式中、R=C
6~C
16の分岐または非分岐のアルキル基またはアルキレン基である、
ことを特徴とする請求項1に記載のポロキサマーゲル組成物。
【請求項6】
前記疎水性モノアルキルグリコールが、グリセロール1-ヘキシルエーテル、グリセロール1-ヘプチルエーテル、グリセロール1-オクチルエーテル、グリセロール1-(2-エチルヘキシル)エーテル[オクトキシグリセリン、2-エチルヘキシルグリセリン、3-(2-エチルヘキシルオキシ)プロパン-1,2-ジオール、およびセンシバ(登録商標)SCSC50としても知られる]、グリセロール1-ノニルエーテル、グリセロール1-デシルエーテル、グリセリル1-ウンデシルエーテル、グリセロール1-ドデシルエーテル、グリセロール1-トリデシルエーテル、グリセロール1-テトラデシルエーテル、グリセロール1-ペンタデシルエーテル、およびグリセロール1-ヘキサデシルエーテル、ならびにこれらの組み合わせ、からなる群から選択されることを特徴とする請求項5に記載のポロキサマーゲル組成物。
【請求項7】
前記疎水性ビシナルジオール成分が、式3の構造を有する疎水性モノアシルグリセロールを含み、
【化3】
式中、R=C
6~C
16の分岐または非分岐のアルキル基またはアルキレン基である、
ことを特徴とする請求項1に記載のポロキサマーゲル組成物。
【請求項8】
前記疎水性モノアシルグリセロールが、グリセロールモノヘキサノアート、グリセロールモノオクタノアート、グリセロールモノノナノアート、グリセロールモノデカノアート、グリセロールモノウンデカノアート、グリセロールモノドデカノアート、グリセロールモノトリデカノアート、グリセロールモノテトラデカノアート、グリセロールモノペンタデカノアート、グリセロールモノヘキサデカノアート、およびこれらの組み合わせ、からなる群から選択されることを特徴とする請求項7に記載のポロキサマーゲル組成物。
【請求項9】
前記組成物が水性であることを特徴とする請求項1に記載のポロキサマーゲル組成物。
【請求項10】
前記疎水性ビシナルジオール成分が前記水性ポロキサマー等価物のゾルゲル温度を少なくとも3℃低下させることを特徴とする請求項1に記載のポロキサマーゲル組成物。
【請求項11】
前記水性ポロキサマー等価物のゾルゲル温度が少なくとも26.5℃であることを特徴とする請求項10に記載のポロキサマーゲル組成物。
【請求項12】
前記水性ポロキサマーゲル組成物が、可溶化または懸濁している銀塩、銀ナノ粒子、亜鉛ナノ粒子、亜鉛塩、カルシウム塩、金塩、金ナノ粒子、マグネシウムナノ粒子塩、チタンナノ粒子塩、リン化合物、シロキシ化合物、ヨウ素化合物、バリウム塩、セリウム化合物、コバルト化合物、銅化合物、鉄化合物、マンガン化合物、ニッケル化合物、ストロンチウム化合物、またはこれらの組み合わせ、をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のポロキサマーゲル組成物。
【請求項13】
可溶化または懸濁している生物活性薬剤をさらに含み、前記生物活性薬剤が、抗生物質、抗微生物剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗菌剤、抗ニキビ剤、抗アレルギー薬、乾癬治療薬、鎮痛薬、麻酔薬、抗凝固薬、抗ヒスタミン剤、抗原虫剤、抗寄生虫薬、抗掻痒薬、抗関節炎薬、収斂剤、肛門薬、抗炎症薬、抗有糸分裂薬、制汗剤、キレート剤、体臭防止剤、精油、湿疹用剤、抗脂漏薬、癌治療薬、口内炎治療剤、単純疱疹治療剤、コルチコステロイド、サイトカイン、歯科用剤、色素除去剤、おむつかぶれ治療薬、内分泌性ホルモン、酵素、糖脂質、免疫応答調節剤、角質溶解薬、関節痛治療薬、発毛促進剤、熱ショックタンパク質、糖タンパク質、成長因子、成長ホルモン、止血剤、脂質、湿潤剤、経鼻活性成分、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、プロテイン、ペプチド、シラミ駆除剤、歯周病治療剤、核酸、プロテアーゼ阻害剤、光感作活性剤、多糖類、レチノイド類、抗酒さ剤、皮膚保護剤/皮膚バリア剤、皮膚治療剤、単糖類、疥癬虫殺虫剤、ステロイド、日焼け治療剤、日焼け止め、熱線/放射線熱傷治療薬、経皮活性成分、膣活性成分、血管収縮剤、血管拡張剤、ビタミン、イボ治療剤、イボ取り剤、創傷清拭剤、創傷治療剤、創傷治癒剤、創傷抗微生物剤、またはこれらの組み合わせ、であることを特徴とする請求項1に記載のポロキサマーゲル組成物。
【請求項14】
ゲル形成が維持されているという条件において、アロエベラ、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリクオタニウム-1、ポリクオタニウム6、ポリクオタニウム-10、グァー、ヒドロキシプロピルグァー、ヒドロキシプロピルメチルグァー、カチオン性グァー、カルボキシメチルグァー、マルトデキストリン、ヒドロキシメチルキトサン、ヒドロキシプロピルキトサン、カルボキシメチルキトサン、N-[(2-ヒドロキシ-3-トリメチルアンモニウム)プロピル]キトサンクロリド、水溶性キトサン、ヒアルロン酸およびその塩、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、デルマタン硫酸、アミロース、アミロペクチン、ペクチン、ローカストビーンガム、アルギン酸、デキストラン、カラギーナン、キサンタンガム、ジェランガム、スクレログルカン、シゾフィラン、アラビアガム、ガティガム、カラヤガム、トラガカントガム、ペクチン、でんぷんおよびその誘導体、タマリンドガム、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(メチルビニルエーテル)、ポリアクリルアミド、ポリ(N,N-ジメチルアクリルアミド)、ポリ(N-ビニルアセトアミド)、ポリ(N-ビニルホルムアミド)、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリラート)、ポリ(グリセリルメタクリラート)、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(ジメチルアミノエチルメタクリレート)、ポリ(ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)、ポリビニルアミン、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(N-ビニルカプロラクタム)、およびこれらの組み合わせ、からなる群から選択される水溶性ポリマーをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のポロキサマーゲル組成物。
【請求項15】
抗微生物剤をさらに含み、前記抗微生物剤が、クロルヘキシジン塩、アレキシジン塩、ポリヘキサメチレンビグアニド塩、ベンザルコニウム塩、ベンゼトニウム塩、セチルトリメチルアンモニウム塩、セチルピリジニウム塩、ジドデシルジメチルアンモニウム塩、N-ヘプチル-N-ドデシルピペリジニウムブロミド、N-ヘキシル-N-ドデシルピペリジニウムブロミド、グリセリルモノラウレート、ソルビン酸、またはこれらの組み合わせ、であることを特徴とする請求項1に記載のポロキサマーゲル組成物。
【請求項16】
ポロキサマーゲル組成物のゾルゲル温度を少なくとも3℃低下させる方法であって、0.1~1.8重量%の疎水性ビシナルジオール成分を水性ポロキサマーゲル組成物に添加するステップを含み、前記疎水性ビシナルジオール成分が、6炭素長から16炭素長までのモノアルキルグリコール、モノアルキルグリセロール、モノアシルグリセロール、またはこれらの組み合わせであることを特徴とする方法。
【請求項17】
前記疎水性ビシナルジオール成分が、疎水性のモノアルキルグリコール、モノアルキルグリセロール、およびモノアシルグリセロールを含み、これら疎水性置換基が脂肪族、直鎖もしくは分岐、および飽和もしくは不飽和であることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記疎水性ビシナルジオール成分が、式1の構造を有する疎水性モノアルキルグリコールを含み、
【化1】
式中、R=C
6~C
16の分岐または非分岐のアルキル基またはアルキレン基である、
ことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記疎水性ビシナルジオール成分が、式2の構造を有する疎水性モノアルキルグリセロールを含み、
【化2】
式中、R=C
6~C
16の分岐または非分岐のアルキル基またはアルキレン基である、
ことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記疎水性ビシナルジオール成分が、式3の構造を有する疎水性モノアシルグリセロールを含み、
【化3】
式中、R=C
6~C
16の分岐または非分岐のアルキル基又はアルキレン基である、
ことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記ポロキサマーゲル組成物が、少なくとも0.4%のEDTA、少なくとも0.4%のグァー、少なくとも2%のアボベンゾン、少なくとも2.5%のリドカイン、0.1%~1%のPHMB、少なくとも10%の酸化亜鉛、少なくとも1%のミコナゾール硝酸塩、少なくとも0.4%のテルビナフィン、少なくとも0.5%のアセチルサリチル酸、少なくとも5%のメディハニー、少なくとも0.5%のスルファジアジン銀、少なくとも0.5%のアミラーゼ、およびこれらの組み合わせ、からなる群から選択される活性成分をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概して、疎水性ビシナルジオールの添加による水性ポロキサマー界面活性剤組成物のゾルゲル温度の低下に関する疎水性ビシナルジオールには、モノアルキルグリコール、モノアルキルグリセロール、およびモノアシルグリセロールが含まれる。ゲル温度の低下により粘性の増加が促進され、このように高い粘性により表面、特に生体由来の表面において、より長い滞留時間が可能となる。
【背景技術】
【0002】
ポロキサマーは、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドからなり熱可逆性を有するトリブロック共重合体であって、ある特定の温度を超え、かつ水溶液系において一定割合の組成になると、液体様の性質からゲル状の性質へと変化する共重合体である。この現象はゾルゲル転移と呼ばれ、ゾルゲル転移温度Tsol-gelとして最も一般的に表現される。ゾルゲル転移は特定の賦形剤により変化させることもできる。ポロキサマーと他の賦形剤の濃度を変化させることにより、体温に近いゾルゲル転移点を有するヒドロゲルを得ることができる。この転移は、温度の低下、ポロキサマー濃度により、または賦形剤を変えることによって、可逆的である。
【0003】
ポロキサマーの構造は、通常、ポリ(エチレンオキシド-co-プロピレンオキシド-co-エチレンオキシド)または逆に、ポリ(プロピレンオキシド-co-エチレンオキシド-co-プロピレンオキシド)として配置される。ポロキサマーは通常、白色に見え、ろう状、流動性のある界面活性剤である。水溶性のポロキサマーは、低濃度(10-4重量%~10-5重量%)において、単分子ミセルが形成されるが、高濃度では疎水性の中心コアに親水性のポリエチレンオキシド鎖が外側に向いて含まれるように構成される多分子集合体となる。所定の温度において、臨界ミセル濃度を超える選択された溶媒での希釈組成でミセル化が起こる。臨界ゲル濃度を超えるより高い濃度では、ミセルが格子状に並ぶことがある。
【0004】
通常使用されるタイプのポロキサマーとしては、何れも水に溶けやすい、ポロキサマー188、(プルロニック(登録商標)F-68とも呼ばれる)、ポロキサマー237(プルロニック(登録商標)F-87とも呼ばれる)、ポロキサマー338(プルロニック(登録商標)F-108とも呼ばれる)およびポロキサマー407(プルロニック(登録商標)F-127とも呼ばれる)が挙げられるが、これらには限定されない。「F」の表示はフレーク状の製品であることを意味する。ポロキサマー407(プルロニック(登録商標)F-127)は良好な可溶化能、低毒性を有し、また生物医学の用途でこれまで使用されてきた。
【0005】
ポロキサマー407は22のHLB(親水性-親油性)値を有する。一般的に、10を超えるHLB値は水に対する親和性(親水性)があり、また10未満では油に対する親和性(親油性)を有する。ポロキサマー407からなる水性組成物は熱可逆性を示し、ゾルゲル温度を超えると液状の性質からゲル状の性質に変化するゾルゲル転移温度より上において上記組成物はより固体のように振舞う一方で、ゾルゲル転移温度より下では上記組成物はより液体のように(流動的に)振舞う。ポロキサマーのレオロジー的な流動作用は、ポリマーの濃度と温度に応じて、ニュートン的(液状)或いは非ニュートン的(ゲル状)なものとすることができる。ゾルゲル転移温度より下では、ポロキサマー組成物はニュートン的な性質を示す一方で、ゾルゲル転移点より上では非ニュートン的な性質を示す。
【0006】
温度以外にもゲル化はポロキサマーの組成の濃度にも依存する。ポロキサマーの濃度が臨界ミセル濃度よりも高くなるとゲル化が起こる。20~30重量%の濃度を持つポロキサマー組成物は4~5℃の低温では透明な液体を形成するが常温(~22-25℃)ではゲルを形成する。冷却によりゲルは液体に戻る場合がある。
【0007】
ポロキサマー濃度の高まりと共にゾルゲル転移温度は低下する。
【0008】
賦形剤がポロキサマーのゾルゲル転移温度に影響を与える可能性もある。例えば、塩酸、プロピレングリコール、エタノールはゾルゲル転移温度を上げるが、塩化ナトリウム、Na2HPO4およびアルギン酸ナトリウム、ならびにpHとイオン強度の上昇はゲルゾル転移温度を下げる。活性医薬品の徐放のために、ゲルシステムが主に局所生体材料に使用されてきた。このような医薬品の徐放によって治癒的な薬物濃度を長時間に渡って維持しやすくなり、また投与間隔を狭くしやすくなるため、患者コンプライアンスが高くなる。
【0009】
ポロキサマーには幅広い研究が存在し、これにより種々の特許出願がこれまでになされており、このようなものとしては、以下に限定されるわけではないが、米国特許第7,879,320号、米国特許第4,188,373号、米国特許第6,482,435号、欧州特許公開第1982696号、米国特許出願公開第2016/0144038号、米国特許出願公開第2009/0017120号、米国特許出願公開第2012/0277199号、米国特許出願公開第2015/0071864号、国際公開第2014/027006号、米国特許第8,829,053号、および欧州特許出願公開第2490722号が含まれる。
【発明の概要】
【0010】
種々の実施形態において、水性ポロキサマーゲル組成物のゾルゲル温度を最大で12℃まで低下させる方法が提供される。当該方法には水性ポロキサマーゲル組成物に0.1~1.8重量%の疎水性ビシナルジオールを添加することが含まれ、前記疎水性ビシナルジオールは、6炭素長から16炭素長までのモノアルキルグリコール、モノアルキルグリセロール、モノアシルグリセロール、またはこれらの組み合わせである。
【0011】
さらなる特徴および利点は、以下の詳細な説明に記載され、その説明から一部が当業者に容易に明らかになるか、または発明の詳細な説明とそれに続く特許請求の範囲に加えて添付の図面が含まれる本明細書に記載の実施形態を実施することによって認識される。
【0012】
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は、単なる例示であり、特許請求の範囲の性質および特徴を理解するための概要または枠組みを提供することを意図していることを理解されたい。添付される図面はさらなる理解を深めるために含まれており、本明細書に組み込まれまたその一部を構成している。図面は1つまたは複数の実施形態を示し、発明の詳細な説明とともに、様々な実施形態に係る原理および動作を説明するために用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、6炭素(C
6)鎖のモノアルキルグリコールおよびモノアルキルグリセロールを0重量%~1.8重量%で添加した後におけるポロキサマー407の平均ゾルゲル温度を表すグラフである。
【0014】
【
図2】
図2は、C
8モノアルキルグリコール、モノアルキルグリセロール、およびモノアシルグリセロールを0重量%~1.8重量%で添加した後におけるポロキサマー407の平均ゾルゲル温度を表すグラフである。
【0015】
【
図3】
図3は、C
12モノアルキルグリコール、モノアルキルグリセロール、およびモノアシルグリセロールを0重量%~1.8重量%で添加した後におけるポロキサマー407の平均ゾルゲル温度を表すグラフである。
【0016】
【
図4】
図4は、C
0ゾルゲル温度を用いたビシナルジオール(C
8~C
16)に対するゾルゲル温度変化に係る正規化データを表すグラフである。
【0017】
【
図5】
図5は、17重量%のポロキサマー407のセンチメートルで測定したフローを、C
8直鎖および非直鎖モノアルキルグリセロールを0.9重量%で添加した後のポロキサマー407と比較して表したグラフである。
【発明の詳細な説明】
【0018】
ここで好ましい実施形態について詳細に言及し、これら実施例は添付の図面に表されている。
【0019】
本開示は概して、疎水性ビシナルジオールの添加による水性ポロキサマー界面活性剤組成物(ポロキサマーゲル溶液、ポロキサマーゲル懸濁液、ポロキサマーゲル混合物、等)のゾルゲル温度の低下に関する。少なくとも1つの疎水性ビシナルジオールを少量添加することによって、ポリエチレンオキシドb-ポリプロピレンオキシド-b-ポリエチレンオキシドからなる水溶性ポロキサマーブロック共重合体のゾルゲル温度の低下とゲル化効率が、著しく改善されることが驚くべきことに発見された。ポロキサマーゲル組成物での使用のために有用な疎水性ビシナルジオールの例としては、モノアルキルグリコール、モノアルキルグリセロール、モノアシルグリセロール、およびこれらの組み合わせが含まれる。ゾルゲル温度の低下により(例えば、生体表面での)ゲル形成が促進され、このようなゲルによって、塗布された環境での表面におけるより長い滞留時間、特に生体特性のある表面におけるより長い滞留時間が可能となる。活性成分、例えば、化粧剤、生物剤、医薬品、創傷治癒剤、酵素剤または抗微生物剤などをこのような系に添加した場合、このような活性剤はしたがって、生体表面の近くに長い時間留まるであろう。
【0020】
人体に局所的に塗布された製剤に関連する問題の1つは、活性が短時間であることにあり、ターゲット部位における限られた滞留時間によって引き起こされることが多い。活性薬剤の体腔または体表面への送達における主な問題点はしたがって、活性薬剤の的の絞った送達を達成することで、医学的あるいは美容的な状態について非常に効果的な治療を得るために、活性薬剤を目的とする活性部位に十分な時間だけ留めることにある。
【0021】
いくつかの実施形態において、0.05~5重量%の疎水性ビシナルジオール成分と、10~65重量%のポロキサマー成分とを含むポロキサマーゲル組成物が開示されている。疎水性ビシナルジオール成分は6炭素長から16炭素長までのモノアルキルグリコール、モノアルキルグリセロール、モノアシルグリセロール、またはこれらの組み合わせであって、疎水性ビシナルジオール成分は、水性ポロキサマー等価物のゾルゲル温度を少なくとも1.0℃だけ下げる。
【0022】
いくつかの実施形態において、疎水性ビシナルジオール成分は、ポロキサマーゲル組成物のうち、少なくとも0.075重量%、または少なくとも0.1重量%、または少なくとも0.15重量%、または少なくとも2.0重量%を含有している。いくつかの実施形態において、疎水性ビシナルジオール成分は、ポロキサマーゲル組成物の5重量%未満、または4重量%未満、または3.5重量%未満、または3.0重量%未満、または2.5重量%未満、または2.0重量%未満、または1.8重量%未満である。
【0023】
いくつかの実施形態において、疎水性ビシナルジオール成分はポロキサマーゲル組成物の中に完全に可溶化している。いくつかの実施形態において、疎水性ビシナルジオール成分は、ポロキサマーゲル組成物の中に、非ポロキサマー界面活性剤が一切なく完全に可溶化している。
【0024】
いくつかの実施形態において、ポロキサマー成分は、ポロキサマー108、ポロキサマー124、ポロキサマー188、ポロキサマー127、ポロキサマー237、ポロキサマー238、ポロキサマー288、ポロキサマー335、ポロキサマー338、ポロキサマー407、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0025】
いくつかの実施形態において本組成物は水性である。
【0026】
いくつかの実施形態において、疎水性ビシナルジオール成分は、水性ポロキサマー等価物のゾルゲル温度を少なくとも1.0℃だけ下げる。いくつかの実施形態において、疎水性ビシナルジオール成分は、水性ポロキサマー等価物のゾルゲル温度を、少なくとも1.5℃、少なくとも2.0℃、少なくとも2.5℃、少なくとも3.0℃、少なくとも3.5℃、または少なくとも4.0℃、または少なくとも4.5℃、または少なくとも5.0℃だけ下げる。本明細書において「水性ポロキサマー等価物」とは、水と一定割合のポロキサマー成分のみからなり、これ以外の成分または含有物を含まない水性組成物のことを指す。
【0027】
いくつかの実施形態において、水性ポロキサマー等価物のゾルゲル温度は少なくとも26.5℃である。いくつかの実施形態において、水性ポロキサマー等価物のゾルゲル温度は少なくとも27.0℃、または少なくとも27.5℃、または少なくとも28.0℃、または少なくとも28.5℃、または少なくとも29℃である。
【0028】
本明細書に記載のポロキサマーゲル組成物に有用なビシナルジオールとしては、疎水性のモノアルキルグリコール、モノアルキルグリセロール、およびモノアシルグリセロールが含まれる。モノアルキルグリセロールはグリセロールアルキルエーテルとも呼ばれる一方で、モノアシルグリセロールはグリセロールアルキルエステルとも呼ばれる。モノアルキルグリコール、モノアルキルグリセロール、およびモノアシルグリセロールの置換基は、好ましくは脂肪族であって、直鎖または分岐、および飽和または不飽和とすることができ、また2つのヒドロキシ基を互いに隣接させることができる。
【0029】
本明細書に記載のポロキサマーゲル組成物に有用なモノアルキルグリコールは、以下の式1で表される構造を有することができ、
【化1】
【0030】
式中、R=C6~C16の分岐又は非分岐のアルキル基またはアルキレン基である。いくつかの実施形態において、R=C6~C14の分岐又は非分岐のアルキル基またはアルキレン基であって、またはR=C8~C12の分岐又は非分岐のアルキル基またはアルキレン基である。
【0031】
本明細書に記載のポロキサマーゲル組成物に有用なモノアルキルグリセロール(場合によってはグリセロールアルキルエーテルと呼ばれる)は以下の式2で表される構造を有することができ、
【化2】
式中、R=C
6~C
16の分岐又は非分岐のアルキル基又はアルキレン基である。いくつかの実施形態において、R=C
6~C
14の分岐又は非分岐のアルキル基又はアルキレン基であるか、またはR=C
8~C
12の分岐又は非分岐のアルキル基又はアルキレン基である。
【0032】
本明細書に記載のポロキサマーゲル組成物に有用なモノアシルグリセロールは、以下の式3で表される構造を有することができ、
【化3】
式中、R=C
6~C
16の分岐又は非分岐のアルキル基又はアルキレン基である。いくつかの実施形態において、R=C
6~C
14の分岐又は非分岐のアルキル基又はアルキレン基であるか、またはR=C
8~C
12の分岐又は非分岐のアルキル基又はアルキレン基である。
【0033】
ビシナルジオールの各々について、Rが分岐している場合、各化合物は、R,S成分のラセミ混合物として、R又はS配置の純エナンチオマーとして、又はエナンチオマーの濃縮されたR,S混合物として存在することができる。
【0034】
具体的なモノアルキルグリコールの例としては、以下に限定されるわけではないが、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ヘプタンジオール、1,2-オクタンジオール(カプリリルグリコール)、1,2-ノナンジオール、1,2-デカンジオール、1,2-ウンデカンジオール、1,2-ドデカンジオール、1,2-トリデカンジオール、1,2-テトラデカンジオール、1,2-ペンタデカンジオール、および1,2-ヘキサデカンジオールが挙げられる。
【0035】
具体的なモノアルキルグリセロールの例としては、以下に限定されるわけではないが、グリセロール1-ヘキシルエーテル、グリセロール1-ヘプチルエーテル、グリセロール1-オクチルエーテル、グリセロール1-(2-エチルヘキシル)エーテル(オクトキシグリセリン、2-エチルヘキシルグリセリン、3-(2-エチルヘキシルオキシ)プロパン-1,2-ジオール、およびセンシバ(登録商標)SC50としても知られる)、グリセロール1-ノニルエーテル、グリセロール1-デシルエーテル、グリセリル1-ウンデシルエーテル、グリセロール1-ドデシルエーテル、グリセロール1-トリデシルエーテル、グリセロール1-テトラデシルエーテル、グリセロール1-ペンタデシルエーテル、およびグリセロール1-ヘキサデシルエーテルが挙げられる。
【0036】
具体的なモノアシルグリセロールとしては、以下に限定されるわけではないが、グリセロールモノヘキサノアート(2,3-ジヒドロキシプロピルヘキサノアート)、グリセロールモノヘプタノアート(2,3-ジヒドロキシプロピルヘキサノアート)、グリセロールモノオクタノアート(2,3-ジヒドロキシプロピルオクタノアート、モノカプリリン)、グリセロールモノノナノアート、グリセロールモノデカノアート(グリセロール1-デカノアート)、グリセロールモノウンデカノアート(2,3-ジヒドロキシプロピルウンデカノアート)、グリセロールモノドデカノアート(モノラウリン、グリセロールモノラウレートおよびラウリシジン(登録商標)とも呼ばれる)、グリセロールモノトリデカノアート、グリセロールモノテトラデカノアート(モノミリスチン)、グリセロールモノペンタデカノアート、グリセロールモノヘキサデカノアート、グリセロールモノヘプタデカノアート、グリセロールモノペンタデカノアート、およびグリセロールモノヘキサデカノアートが挙げられる。
【0037】
いくつかの実施形態において、ビシナルジオールは、モノアルキルグリコールとモノアルキルグリセロールの組み合わせである。いくつかの実施形態において、ビシナルジオールは、モノアルキルグリコールとモノアシルグリセロールの組み合わせである。いくつかの実施形態において、ビシナルジオールは、モノアルキルグリセロールとモノアシルグリセロールの組み合わせである。いくつかの実施形態において、ビシナルジオールは、モノアルキルグリコール、モノアルキルグリセロール、およびモノアシルグリセロールである。
【0038】
長鎖ビシナルジオールが水に難溶性を有する場合があるのに対して、ポロキサマーは相容化剤(界面活性剤など)として機能するため、高濃度のポロキサマーを添加することによってビシナルジオールの、本明細書に記載の組成物への全体的な可溶性が促進される。
【0039】
本明細書において「ポロキサマー」とは、中央の疎水性のポリオキシプロピレン(ポリプロピレンオキシド)鎖が、親水性の2つのポリオキシエチレン(ポリエチレンオキシド)鎖によってα、ω位で連結されてなる非イオントリブロック共重合体のことをさす。ポリマーブロックの長さはカスタマイズすることができるため、僅かに異なった性質を有する様々なポロキサマーが存在する。一般的な用語のポロキサマーとして、これらのコポリマーは通常、文字P(ポロキサマーのP)に3つの数字が並んで命名される。最初の2桁を100倍するとポリオキシプロピレンコアのおおよその分子量が与えられ、また最後の桁を10倍するとポリオキシエチレン含有量のパーセンテージが与えられる(例えば、P407=4000g/molのポリオキシプロピレン分子量と70%のポリオキシエチレン含有量を有するポロキサマーである)。
プルロニックおよびシンペロニックの各商標については、これらのコポリマーのコードは常温での物質の状態を表す文字(L=液体、P=ペースト、F=フレーク(固体))で始まり、その後に2桁または3桁の数字が続く。数表示の最初の桁(3桁の数字のうち2桁)に300を掛けたものが疎水性物質のおおよその分子量を表し、最後の桁に10を掛けるとポリオキシエチレン含有量のパーセンテージが得られる(例えば、F-108は、3000g/molのポリオキシプロピレン分子量と80%のポリオキシエチレン含有量を表す)。
【0040】
いくつかの実施形態において、ポロキサマー界面活性剤または表面活性化剤は、ポロキサマー108、ポロキサマー127、ポロキサマー188、ポロキサマー237、ポロキサマー238、ポロキサマー288、ポロキサマー335、ポロキサマー338、ポロキサマー407またはこれらの組み合わせとすることができる。ある実施形態では、界面活性剤はポロキサマー338とすることができる。ある別の実施形態では、界面活性剤はポロキサマー407とすることができる。常温(~24℃)の水中では、ポロキサマー338(プルロニック(登録商標)F-108)は30重量%でゲル化する一方で、ポロキサマー407(プルロニック(登録商標)F-127)は20重量%でゲル化することが示された。
【0041】
本明細書に記載のあらゆる組成物は水性組成物とすることができる。本明細書で使用される場合、「水性」組成物は水ベースの組成物の範囲を指し、以下に限定されるものではないが、可溶化成分を有する水中の均一溶液、界面活性剤または親水性ポリマーによって安定化された水中の乳化組成物、および粘性またはゲル状された均質なまたは乳化した水中の組成物が挙げられる。
【0042】
オスモル濃度の維持が必要とされる場合、ポロキサマーゲル組成物に含有可能な好適な等張化調整剤の例としては、以下に限定されるわけではないが、塩化ナトリウムおよび塩化カリウム、グリセリン、プロピレングリコール、マンニトール、およびソルビトールが挙げられる。これらの薬剤は、通常、それぞれ、約0.01から2.5%(w/v)の範囲の量、好ましくは、約0.05から約1.5%(w/v)の範囲の量で使用される。好ましくは、等張化剤は、10から320mOsm/kg、より好ましくは、約200から約300mOsm/kg、最も好ましくは、約260から約290mOsm/Kgの最終的な浸透値を与えるような量で使用される。組成物の等張化を調整するためには、塩化ナトリウムが最も好ましい。
【0043】
ポロキサマーゲル組成物のpHは好ましくは4.5~7.0の間に調整される。pHを調整するために適した緩衝剤は、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸、リン酸二水素ナトリウム、一リン酸二ナトリウム、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、酒石酸塩、フタル酸塩、琥珀酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、マレイン酸塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、アミノアルコール緩衝液およびグッド緩衝液(ACES、PIPESおよびMOPOSOなど)と、それらの混合物とを含む場合がある。一以上の緩衝剤が、約0.01から2.0重量容量パーセントの範囲の量で、本開示に係る組成物に添加することができるが、より好ましくは、約0.05から0.5重量容量パーセントである。
【0044】
鎮痛効果のある組成物を提供するために、軟化剤/湿潤剤および保湿剤をポロキサマーゲル組成物に添加することができる。軟化剤/湿潤剤は、皮膚に水を捕える皮膚の上部で脂質層を形成することにより機能する。ワセリン、ラノリン、鉱油、ジメチコンおよびシロキシ化合物が、一般的な軟化剤である。他の軟化剤としては、イソプロピルパルミタート、イソプロピルミリスタート、イソプロピルイソステアラート、イソステアリルイソステアラート、ジイソプロピルセバカート、プロピレンジペラルゴナート、2-エチルヘキシルイソノノアート、2-エチルヘキシルステアラート、セチルラクタート、ラウリルラクタート、イソプロピルラノラート、2-エチルヘキシルサリチラート、セチルミリスタート、オレイルミリスタート、オレイルステアラート、オレイルオレアート、ヘキシルラウラートおよびイソヘキシルラウラート、ラノリン、オリーブ油、ココアバター、シアバター、オクチルドデカノール、ヘキシルデカン酸ジカプリリルエーテルおよびデシルオレアートが挙げられる。保湿剤としてはレシチンおよびポリエチレングリコールが挙げられる。保湿剤は、皮膚の外層に水を引き込むことにより機能する。
【0045】
本開示に係るポロキサマーゲル組成物中に、水溶性の増粘剤を含むことが望ましいことが多い。その粘滑効果と生体組織に対する可能な疎水性相互作用のために、表面、特に生体由来の表面における組成物の保持を補助することによって、水溶性のポリマーは、組成物の表面との相互作用を高めることができる。この挙動のために、かかる水溶性ポリマーは、表面における組成物の滞留時間を増加させることができる。
【0046】
本明細書において有用な水溶性ポリマーは、これらには限定されないが、アロエベラ、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリクオタニウム-1、ポリクオタニウム6、ポリクオタニウム-10、グァー、ヒドロキシプロピルグァー、ヒドロキシプロピルメチルグァー、カチオン性グァー、カルボキシメチルグァー、ヒドロキシメチルキトサン、ヒドロキシプロピルキトサン、カルボキシメチルキトサン、N-[(2-ヒドロキシ-3-トリメチルアンモニウム)プロピル]キトサンクロリド、水溶性キトサン、ヒアルロン酸およびその塩、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、デルマタン硫酸、アミロース、アミロペクチン、ペクチン、ローカストビーンガム、アルギン酸、デキストラン、カラギーナン、キサンタンガム、ジェランガム、スクレログルカン、シゾフィラン、アラビアガム、ガティガム、カラヤガム、トラガカントガム、ペクチン、でんぷんおよびその修飾物、タマリンドガム、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(メチルビニルエーテル)、ポリアクリルアミド、ポリ(N,N-ジメチルアクリルアミド)、ポリ(N-ビニルアセトアミド)、ポリ(N-ビニルホルムアミド)、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリラート)、ポリ(グリセリルメタクリラート)、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(N,N-ジメチルアミノエチルメタクリラート)、ポリ(N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)、ポリビニルアミン、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)およびポリ(N-ビニルカプロラクタム)であってこの2つは臨界共溶温度未満で水和、これらの類似物、ならびにこれらの組み合わせ、が挙げられる。このような水溶性ポリマーは、約0.01~約10.0重量パーセントの範囲の量で使用することができる。
【0047】
より好ましい親水性ポリマーとして、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルグァー、ヒドロキシメチルキトサン、ポリ(エチレンオキシド)、N-[(2-ヒドロキシ-3-トリメチルアンモニウム)プロピル]キトサンクロリドが含まれるが、ヒドロキシエチルセルロースとヒドロキシメチルプロピルセルロースが最も好ましい。
【0048】
キレート剤が、コラーゲンを分解することにより組織形成と治癒とを妨害する可能性のある酵素であるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)などに見出される金属イオンを封鎖する必要がある場合、または構造体表面のこのような金属イオン堆積物を除去するとき、キレート剤は一価もしくは多価の金属イオンを封鎖することのできるあらゆる化合物から選択され、一価もしくは多価の金属イオンは例えば好ましくは、カルシウム、マグネシウム、バリウム、セリウム、コバルト、銅、鉄、マンガン、ニッケル、ストロンチウム又は亜鉛が含まれ、また当該キレート剤は、生物組織に使用されたとき薬学的にもしくは獣医学的に許容されるものである。
【0049】
好適なキレート剤としては、以下に限定されるわけではないが、クエン酸、クエン酸塩、アミノカルボン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロ三酢酸、ニトリロトリプロピオン酸、ジエチレントリアミン五酢酸、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、1,6-ジアミノヘキサメチレン四酢酸、1,2-ジアミノシクロヘキサン四酢酸、O,O’-ビス(2-アミノエチル)エチレングリコール四酢酸、1,3-ジアミノプロパン四酢酸、N,N’-ビス(2-ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン-N,N’-二酢酸、エチレンジアミン-N,N’-二酢酸、エチレンジアミン-N,N’-ジプロピオン酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、エチレンジアミン-N,N’-ビス(メチレンホスホン酸)、イミノ二酢酸、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン、1,3-ジアミノ-2-ヒドロキシプロパン四酢酸、1,2-ジアミノプロパン四酢酸、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、N-(2-ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸、およびエジトロナートなどのビスホスホナート類、およびそれらの塩が含まれる。また好適なキレート剤は、例えば、米国特許第5,858,937号に開示されているヒドロキシアルキルホスホン酸、特に、モンサント社からデイクエスト2016・ジホスホン酸ナトリウム塩又はホスホン酸として商業的に入手可能なエチドロン酸四ナトリウムとも称される1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸の四ナトリウム塩を含むが、これらに限定されない。
【0050】
特に好ましいキレート剤はEDTAの混合塩であって、例えば二ナトリウム、三ナトリウム、四ナトリウム、二カリウム、三カリウム、四カリウム(tetrapotasssium)、リチウム、二リチウム、アンモニウム、二アンモニウム、三アンモニウム、四アンモニウム、カルシウムおよびカルシウム二ナトリウムなどのEDTAの混合塩であり、より好ましくは、EDTAの二ナトリウム、三ナトリウム又は四ナトリウム塩、最も好ましくはEDTA二ナトリウムおよびEDTA三ナトリウムである。キレート剤の濃度は、0.01重量%から1.0重量%まで、または0.025重量%~0.5重量%、または0.05重量%から0.15重量%の範囲とすることができる。
【0051】
均一な溶液に加えて、通常は水不溶性または溶解が難しい活性剤を可溶化するためにポロキサマー界面活性剤を使用することで、ポロキサマーゲル組成物をエマルション、ミニエマルション、マイクロエマルション又は逆エマルションとすることも可能である。可溶化される有機または無機活性薬剤としては、以下に限定されるわけではないが、抗生物質、銀塩および銀ナノ粒子、亜鉛および亜鉛塩類、マグネシウム塩類、リン化合物、ヨウ素化合物、抗菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス薬、抗原虫薬、抗微生物剤、鎮痛薬、プロテアーゼ阻害剤、抗アレルギー薬、抗炎症薬、血管収縮剤、血管拡張剤、抗凝固薬、ホルモン、ペプチド、核酸、単糖類、脂質、糖脂質、糖タンパク質、内分泌性ホルモン剤、成長ホルモン剤、成長因子、低分子量水溶性コラーゲン、コラーゲンペプチド、ゼラチン、熱ショックタンパク質、免疫応答調節剤、抗がん剤、サイトカイン、およびこれらの混合物、ならびに虚血性創傷への酸素の増加をもたらす有機溶媒が挙げられる。重要なことは、酸素の溶解度と運搬を増加させるシロキサンおよびフッ化炭素などの有機溶媒を添加することである。特に重要なことは、揮発性で、非燃焼性で、刺すような痛みを与えない、非感作の、ヘキサメチルジシロキサン(HMDS)のシロキサン溶媒を使用することである。エマルションは、有機溶媒とエマルション化溶液の間で相分離が起こる濃度までHMDSを複合組成物に徐々に添加することにより調製される。
【0052】
また精油を、芳香剤又は香料として、および/又は抗菌剤として、ポロキサマーゲル組成物に添加させることができるが、このようなものとしては、チモール、メントール、サンダルウッド、カンファー、アガトスマ、カルダモン、シナモン、ジャスミン、ラベンダー、フランキンセンス、ミルラ、ゼラニウム、ジュニパー、メントール、マツ、レモン、バラ、ユーカリ、クローブ、オレンジ、ミント、リナロール、スペアミント、ペパーミント、レモングラス、ベルガモット、シトロネラ、イトスギ、ナツメグ、トウヒ、ティーツリー、ウィンターグリーン(メチルサリチラート)、バニラ、大麻精油、およびそれらに類するものが含まれる。
【0053】
局所塗布において、ポロキサマーゲル組成物は、異なった形態で送達することができる。典型的な形態は、液体、クリーム、泡、ローション、ゲルおよびエアロゾルを含むが、これらに限定されない。これらの組成物は、綿棒、布、スポンジ、フォーム、傷包帯材料、および紙タオルおよびティッシュなどの不織布製品および紙製品で吸収させることもできる。
【0054】
本明細書で「疎水性」とは、水を弾き、水不溶性または比較的水不溶性であって、水に対する親和性がないことを指す。疎水性化合物が、両親媒性の性質を持つビシナルジオールなどの親水性の置換基と混合されると、混合物は界面活性剤の添加のあるなしに拘わらず、混合物は水中でエマルションを形成することができる。
【0055】
本明細書において、HLB(親水親油バランス)とは、界面活性剤の性質に関する親水性(水と親しい)と疎水性(水を疎む)との関係を表す経験的表現であって、HLB>10では水に対する親和性を有し、数値<10では油に対する親和性(親油性)を有する。
【0056】
本明細書において、「ヒドロゲル」とは、水性溶媒中に不溶な水膨張性の3次元ポリマーネットワークの事を指す。
【0057】
本明細書において、「温度感受性ポリマー」とは、温度変化に応答して少なくとも1つの物理特性、化学特性、または機械的な特性が変化するポリマーをさす。温度感受性材料から作製されるヒドロゲルは、容積ならびに、粘性および粘弾性などのレオロジー特性を変化させる温度により媒介される相転移を示す。
【0058】
本明細書において「常温」との用語は、18℃と27℃との間の範囲にあり、特に20℃と25℃との間とすることができる。
【0059】
本明細書において「体温」との用語は、通常は36.0℃と37.5℃との間にある範囲を含む人体の平均温度である。
【0060】
本明細書で「抗微生物剤」は微生物を殺生するか、あるいは微生物の増殖を抑制する。抗微生物剤は主に作用する微生物によってグループ化することができる。例えば、抗菌剤は細菌に対して作用し、抗真菌剤は真菌に対して作用し、抗ウイルス剤はウイルスに対して作用し、抗原虫剤は原虫に対して作用する。
【0061】
本明細書において「抗炎症剤」として、アスピリンの水溶性誘導体、ビタミンC、メチルサルフォニルメタン、ティーツリー油、非ステロイド系抗炎症薬が挙げられるがこれらには限定されない。
【0062】
本明細書において「消毒薬」は、外部から付けられた微生物の増殖を抑える。
【0063】
本明細書において「抗ウイルス薬」とは、ウイルスにより生じた感染症を治療する。抗ウイルス薬はターゲットとなる病原体を破壊しないがその増殖を抑制する。
【0064】
本明細書において「抗真菌剤」は、真菌を破壊するかまたは増殖を防止する。
【0065】
本明細書において「医薬品有効成分(active pharmaceutical ingredients; APIs)」とは、所望の生物学的効果を奏する治療的または予防的に有効な化合物のことをさす。
【0066】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のゲル形成組成物は、創面に対して抗微生物剤の持続的な送達および/または徐放を提供することができる。
【0067】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のゲル形成組成物は、傷の治癒を促進するために弱酸性のpHを提供することができる。
【0068】
本明細書において、低分子量水溶性コラーゲンはコラーゲンペプチドとも呼ばれ、しばしばコラーゲンの酵素加水分解から小さな生物活性ペプチドとなる。
【0069】
いくつかの実施形態において、生物活性薬剤は人細胞または動物細胞により生分解可能である。
【0070】
いくつかの実施形態では、生物活性薬剤は、ヒト細胞および動物細胞に対して生分解性であり、細胞毒性ではない。
【0071】
いくつかの実施形態において、ポロキサマーゲル組成物は一以上の生物活性薬剤を含む。いくつかの実施形態において、生物活性薬剤の何れか1つは、0.001重量%から25重量%まで、または0.01重量%から20重量%まで、または0.1重量%から10重量%まで、または1重量%から5重量%まで、またはこれらの始点と終点のあらゆる組み合わせ、の範囲の量だけ独立して存在することができる。
【0072】
生物活性薬の例の限定的でないリストとしては、以下に限定されないが、抗生物質、抗微生物剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗菌剤、抗原虫剤、抗掻痒剤、抗ニキビ剤、抗関節炎薬、抗酒さ剤、乾癬治療薬、鎮痛薬、麻酔薬、収斂剤、肛門薬、抗ヒスタミン剤、抗炎症薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、湿潤剤、抗有糸分裂薬、抗がん活性物質、疥癬虫殺虫剤、シラミ駆除剤、制汗剤、体臭防止剤、湿疹用剤、抗乾癬薬、抗脂漏薬、生理活性なタンパク質およびペプチド、低分子量水溶性コラーゲン、コラーゲンペプチド、ゼラチン、熱線/放射線熱傷治療薬、癌治療薬、イボ取り剤、色素除去剤、おむつかぶれ治療薬、角質溶解薬、酵素、関節痛治療薬、発毛促進剤、ビタミン類、止血剤、口内炎治療剤、単純疱疹治療剤、歯科用/歯周病治療剤、光感作活性剤、皮膚保護剤/皮膚バリア剤、皮膚治療剤、ホルモンやコルチコステロイドを含むステロイド類、日焼け治療剤、日焼け止め、経皮活性成分、経鼻活性成分、膣活性成分、イボ治療剤、創傷清拭剤、創傷治療剤、創傷治癒剤、創傷抗微生物剤、およびレチノイド類(レチノール、レチノイン酸、およびレチノイン酸誘導体を含む)、が挙げられる。
【0073】
いくつかの実施形態において、コラーゲンペプチドとしても知られる低分子量水溶性コラーゲンが、創傷治癒を助けるために生分解性のゲルまたは粉末として添加される。いくつかの実施形態において、低分子量水溶性コラーゲンの割合は、ポロキサマーゲル組成物の60重量%未満、または50重量%未満、または40重量%未満となる。いくつかの実施形態において、低分子量水溶性コラーゲンの割合は、ポロキサマーゲル組成物の少なくとも2重量%、または少なくとも5重量%、または少なくとも7重量%となる。
【0074】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポロキサマーゲル組成物において有用な局所抗生物質剤としては、以下に限定されるわけではないが、ネオマイシン、カナマイシン、ストレプトマイシン、エリスロマイシン、クリンダマイシン、リファンピン、リファマイシン、ペニシリンG、ペニシリンV、アンピシリン、アモキシリン、バシトラシン、ポリミキシン、テトラサイクリン、クロロテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、ドキシサイクリン、セファレキシン、セファロチン、クロラムフェニコール、ゲンタマイシン、ネオマイシン、カナマイシン、ストレプトマイシンエリスロマイシン、クリンダマイシン、リファマイシン、バシトラシン、ポリミキシン、クロロテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、ドキシサイクリン、セファレキシン、およびセファロチンが挙げられる。
【0075】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポロキサマーゲル組成物において有用な、浮遊性バクテリアおよびバイオフィルムのための局所抗微生物剤としては、以下に限定されるわけではないが、アレキシジンおよびクロルヘキシジンならびにこれらの塩などのビスビグアニド、ポリヘキサメチレンビグアニドおよびその塩などの高分子ビグアニド、ならびに他のカチオン性ポリマー、例えば、ポリクオタニウム1、ポリクオタニウム6、ポリクオタニウム10、カチオン性グアー、キトサンの水溶性誘導体、ポリジアリルジメチルアンモニウム塩、ポリ(N,N-ジメチルアミノエチルメタクリラート)、ポリ(N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)、ポリビニルアミン、ならびにこれらの組み合わせ、が挙げられる。銅、亜鉛、スズ、銀およびこれらの塩などの抗微生物金属を分散成分またはミセル化成分として製剤中に組み込むこともできる。
【0076】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポロキサマーゲル組成物において有用な局所抗真菌剤としては、以下に限定されるわけではないが、クロトリマゾール、ミコナゾール、ケトコナゾール、イトラコナゾール、フルコナゾール、メトロニダゾール、アステミゾール、オメプラゾール、エコナゾール、オキシコナゾール、スルコナゾール、ケトコナゾール、テルビナフィン、トルナフテート、ウンデシレン酸、ナフチフィン、ブテナフィン、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0077】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポロキサマーゲル組成物に有用な局所抗ウイルス剤としては、以下に限定されるわけではないが、アシクロビル、ホスカルネットナトリウム、リバビリン、ビダラビン、ガンシクロビルナトリウム、ジドブジン、フェノール、アマンタジン塩酸塩、インターフェロンα-n3、およびポドフィロトキシンが挙げられる。
【0078】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポロキサマーゲル組成物に有用な局所熱傷治療薬として、以下に限定されるわけではないが、スルファジアジン銀、硝酸セリウム/スルファジアジン銀、酢酸マフェニド、0.5%硝酸銀溶液、創傷清拭剤、クロルヘキシジン、ポビドンヨード、ムピロシン、ハイドロコロイドドレッシング、ヒドロゲルドレッシング、ゲンタマイシン、バシトラシン、ノルフロキサシン、およびビスマストリブロモフェノラート石油混合物、が挙げられる。
【0079】
バイオフィルム付着のための基質利用性および栄養素利用性と汚染に対する脆弱性により、傷はバイオフィルム群集の形成にとって理想的な環境である。慢性的な創傷感染は、宿主免疫システムにより除去されない持続的な感染と、全身性および局所的な局所抗微生物剤への耐性という、他の生物膜疾患との2つの重要な共通の特性を有する。
【0080】
バイオフィルム中に見出される一般的なバクテリアとしては、グラム陽性バクテリアである大便連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、ミクロコッカス属およびβ溶血性連鎖球菌(S.ピオゲネス、S.アガラクチア)、ならびに、グラム陰性バクテリアである大腸菌、肺炎桿菌、ミラビリス変形菌、緑膿菌、アシネトバクター・バウマニおよびステノトロフォモナス・マルトフィリア、プロテウス属、シトロバクター属、およびエンテロバクター属が挙げられる。加えて、通性嫌気性菌および絶対嫌気細菌の両方の細菌属が創傷バイオフィルムに発見されており、このようなものとしては、アネエロコッカス属、フィネゴルディア属、パルビモナス属、ペプトニフィラス属、ペプトストレプトコッカス属ブドウ球菌属、バクテロイデス属、アナエロコッカス属、ペプトニフィラス属、ポルフィロモナス属、フソバクテリウム属、プレボテラ属、およびフィネゴルディア属、が挙げられる。
【0081】
創傷に真菌が見つかることもある。このような真菌としてはとりわけ、カンジダ属およびクラドスポリウム属に加えて、アスペルギルス属、ペニシリウム属、アルテルナリア属、プレオスポラ属、フザリウム属、トリコスポロン・アサヒ、ロドトルラ属、およびトリコフィトン属が挙げられる。
【0082】
創傷環境が創傷中に細菌と真菌に跨る複数種のバイオフィルム形成を促進する場合がある。
【0083】
本明細書に記載の開示内容に係る実施形態はまた、抗微生物剤および/または医薬品有効成分(API)を含む水溶性媒体中のゲル化ポロキサマー組成物を含む組成物を微生物バイオフィルムに接触させることによって、患者または無生物の表面における微生物バイオフィルムを治療するために適応することもできる。
【0084】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポロキサマーゲル組成物に有用な局所抗原虫薬として、以下に限定されるわけではないが、クロロキン、ピリメタミン、メフロキン、ヒドロキシクロロキン、メトロニダゾール、エフロルニチン、フラゾリドン、メラルソプロール、ニフルセミゾン、ニタゾキサニド、オルニダゾール、パロモマイシン硫酸、ペンタミジン、キナピラミン、およびチニダゾールが挙げられる。
【0085】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポロキサマーゲル組成物に有用な局所抗炎症剤として、以下に限定されるわけではないが、水溶性誘導体のアスピリン、ビタミンC、メチルサルフォニルメタン、アセチルサリチル酸、セレコキシブ、ジクロフェナク、ジフルニサル、エトドラク、イブプロフェン、インドメタシンケトプロフェン、ケトロラク、ナブメトン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピロキシカム、サルサレート、スリンダク、トルメティン、インドメタシンメクロフェナミン酸ナトリウム、フェノプロフェンカルシウム、メフェナム酸、ナブメトン、ケトロラックトロメタミン、月見草オイル、ホホバオイル、メサラジン、サリチルサリチル酸、トリサリチル酸コリンマグネシウム、フルニソリド、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、ヒドロコルチゾン、コルチゾン、デキサメタゾン、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、亜鉛およびプレドニゾン、が挙げられる。
【0086】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポロキサマーゲル組成物に有用な放射線熱傷局所治療薬として、以下に限定されるわけではないが、コルチコステロイド、局所抗生物質、アロエベラ、およびカレンデュラ軟膏が挙げられる。
【0087】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポロキサマーゲル組成物に有用な痛み緩和用の局所麻酔薬として、以下に限定されるわけではないが、アセトアミノフェン、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、ジクロフェナク、オピオイド、COX-2阻害薬、カンナビジオールおよびNSAID、が挙げられる。
【0088】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポロキサマーゲル組成物に有用な局所関節炎/関節痛薬として、以下に限定されるわけではないが、カンナビジオール、非ステロイド系抗炎症薬、副腎皮質ホルモン、TNF阻害薬、疾患修飾性抗リウマチ薬、アセトアミノフェン、コデイン、カプサイシン、サリチル酸メチル、メトトレキサート、スルファサラジン、および鎮痛薬が挙げられる。
【0089】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポロキサマーゲル組成物に有用な関節痛薬として、以下に限定されるわけではないが、アセトアミノフェン、コデイン、副腎皮質ホルモン、カプサイシン、サリチル酸メチル、NSAIDS、メトトレキサートおよびスルファサラジンが挙げられる。
【0090】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポロキサマーゲル組成物に有用な、単純ヘルペスウイルス1(HSV-1)により通常は引き起こされる単純疱疹(これはまた口辺単純疱疹とも呼ばれる)のための局所治療剤として、以下に限定されるわけではないが、アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビル、ペンシクロビル、ドコサノール、アロエベラ、アスピリン、イブプロフェン、アセトアミノフェン、リドカイン、ベンゾカイン、ジブカイン、メントール、樟脳、ベンジルアルコール、アラントイン、ワセリン、ココアバター、グリセリン、亜鉛化合物、抗微生物剤、ティーツリーオイル、ヒドロコルチゾン、ベンゾカイン、フェノールカンフル、ジメチコン、リドカインおよびアラントインが挙げられる。
【0091】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポロキサマーゲル組成物に有用な局所口内炎(口腔内潰瘍)治療剤として、以下に限定されるわけではないが、ベンゾカイン、リドカイン、過酸化水素、過酸化カルバミド、フルオシノニド、クロルヘキシジン、ドキシサイクリン、テトラサイクリン、ミノサイクリン、ヘミコハク酸ヒドロコルチゾン、ユーカリ、メントール、ベクロメタゾン、デキサメタゾン、副腎皮質ホルモン、ベンジダミン、ジクロフェナクおよび抗真菌薬が挙げられる。
【0092】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポロキサマーゲル組成物に有用な歯周病治療剤として、以下に限定されるわけではないが、クロルヘキシジン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、アモキシリン、メトロニダゾール、テトラサイクリン、および過酸化水素、が挙げられる。
【0093】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポロキサマーゲル組成物に有用であって、痒み、発赤、水膨れ、発疹により特徴付けられる皮膚の炎症を治療するための局所湿疹用剤としては、以下に限定されるわけではないが、コルチコスステロイドクリーム、タクロリムス、ピメクロリムス、クリサボロールおよび湿潤剤が挙げられる。
【0094】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポロキサマーゲル組成物に有用であって、疥癬ダニを殺傷するための局所疥癬虫殺虫剤として、以下に限定されるわけではないが、ペルメトリン、クロタミトン、硫黄軟膏、リンデン、安息香酸ベンジル、および角質溶解クリームが挙げられる。
【0095】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポロキサマーゲル組成物に有用であって、アタマジラミ治療用の局所シラミ駆除剤としては、以下に限定されるわけではないが、リンデン、マラチオン、カルバリル、除虫菊、ペルメトリン、フェノトリン、およびアレスリン、プロテアーゼ、およびジメチコンが挙げられる。
【0096】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポロキサマーゲル組成物に有用であって、脂漏性皮膚炎(フケ)に有効な局所抗脂漏薬として、以下に限定されるわけではないが、硫化セレン、ジンクピリチオン、副腎皮質ホルモン、イミダゾール抗真菌薬、サリチル酸、スルファセタミドナトリウム、ティーツリーオイル、ユーカリオイル、ケトコナゾール、硫黄およびコールタールが挙げられる。
【0097】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポロキサマーゲル組成物に有用な局所イボ取り剤として、以下に限定されるわけではないが、サリチル酸、カンタリジン、トレチノイン、およびグリコール酸が挙げられる。
【0098】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポロキサマーゲル組成物に有用であって、メラニン形成(細胞がメラニンを生成する色素形成経路)を阻害する局所色素除去剤として、以下に限定されるわけではないが、ヒドロキノン、4-ヒドロキシアニソール、フルオシノロン、トレチノイン、アダパレン、ハイドロキノンのモノベンジルエーテル、アゼライン酸、コウジ酸、ナイアシンアミド、およびセリンプロテアーゼ阻害剤が挙げられる。
【0099】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポロキサマーゲル組成物に有用な局所抗掻痒薬として、以下に限定されるわけではないが、抗ヒスタミン薬(ジフェンヒドラミン、ヒドロキシジン)、酵素、副腎皮質ホルモン、ドキセピン、麻酔薬、例えば、リドカイン、プリロカイン、プラモキシン、カプサイシン、ポリドカノール、メントール、N-パルミトイルエタノアミン、局所カルシニューリン阻害剤、および局所ビタミンD調節剤、が挙げられる。
【0100】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポロキサマーゲル組成物に有用なおむつかぶれ(おむつ刺激性皮膚炎)用局所治療薬として、以下に限定されるわけではないが、バリアクリーム、ワセリン、マイルド局所コルチゾン、亜鉛クリーム、局所抗生物質、キンセンカ抽出物および抗真菌薬が挙げられる。
【0101】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポロキサマーゲル組成物に有用な皮膚治療における酵素として、以下に限定されるわけではないが、ブロメライン、パパイン、フィシン、アミラーゼ、アクチニジン、コラゲナーゼ、ホスホリパーゼ、およびリパーゼが挙げられる。
【0102】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポロキサマーゲル組成物に有用な局所抗酒さ剤として、以下に限定されるわけではないが、ブリモニジン、アゼライン酸、メトロニダゾール、およびスルファセトアミドが挙げられる。
【0103】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポロキサマーゲル組成物に有用な乾癬治療薬、特に尋常性乾癬用治療薬として、以下に限定されるわけではないが、局所副腎皮質ホルモン、局所レチノイド、アントラリン、ビタミンD3、サリチル酸、および湿潤剤が挙げられる。
【0104】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポロキサマーゲル組成物に有用な局所肛門薬、特に痔疾用の局所肛門薬として、以下に限定されるわけではないが、ヒドロコルチゾン、マンサク、アロエベラ、およびリドカインが挙げられる。
【0105】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポロキサマーゲル組成物に有用である、上皮細胞の軟化および剥離促進用の角質溶解薬として、以下に限定されるわけではないが、サリチル酸、尿素、乳酸、アラントイン、グリコール酸、レゾルシノール、過酸化ベンゾイル、およびトリクロロ酢酸が挙げられる。
【0106】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポロキサマーゲル組成物に有用であって、
タンパク質を凝固させ皮膚を縮め収縮させる乾燥剤である局所収斂剤として、以下に限定されるわけではないが、三酢酸アルミニウム、硫酸アルミニウムに加えて酢酸カルシウム、ミョウバン、カラミン、アカシア、セージ、セイヨウノコギリソウ、マンサク、ヤマモモの実、蒸留酢、冷水、消毒用アルコール、グリセリン、硝酸銀、過マンガン酸カリウム、酸化亜鉛、硝酸銀亜鉛、ベンゾインのチンキ剤、ならびにタンニン酸および没食子酸が挙げられる。
【0107】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポロキサマーゲル組成物に有用であって、皮膚を保護し、湿潤させ、潤滑させるために使用される局所湿潤剤としては、以下に限定されるわけではないが、
(i)コレステロール、脂肪酸、脂肪アルコール、スクアレン、および疑似セラミドを含む、皮膚軟化剤、
(ii)グリセロール、プロピレングリコール、パンテノール、ソルビトール、尿酸、アルファヒドロキシ酸およびヒアルロン酸を含む、保湿剤、
(iii)ワセリン、蜜ろう、鉱油、シリコーン、シクロメチコン、ラノリン、および酸化亜鉛を含む、オクルーシブ、および
(iv)コラーゲン、ゼラチン、エラスチン、およびケラチンを含むプロテイン若返り剤、
が挙げられる。
【0108】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポロキサマーゲル組成物に有用なステロイドホルモンのクラスである局所副腎皮質ホルモンとしては、以下に限定されるわけではないが、コルチゾール、コルチコステロン、アルドステロン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、トリアムシノロン、アムシノニド、ブデソニド、デソニド、フルオシノロン、アセトニド、フルオシノニド、ハルシノニド、トリアムシノロンアセトニド、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、デキサメタゾン、フルオコルトロン、ハロメタゾン、およびモメタゾン、アルクロメタゾンジプロピオナート、ベタメタゾンジプロピオナート、ベタメタゾンバレラート、クロベタゾールプロピオナート、クロベタゾンブチラート、フルプレドニデンアセタート、モメタゾンフロアート、フルチカゾン、シクレソニド、コルチゾンアセタート、ヒドロコルチゾンアセポナート、ヒドロコルチゾンアセタート、ヒドロコルチゾンブテプラート、ヒドロコルチゾンブチラート、ヒドロコルチゾンバレラート、プレドニカルバート、およびチキソコルトールピバラートが挙げられる。
【0109】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポロキサマーゲル組成物に有用な局所抗ニキビ剤として、以下に限定されるわけではないが、過酸化ベンゾイル、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、硫黄、ティーツリーオイル、トレチノイン、エリスロマイシン、クリンダマイシン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、アゼライン酸、イソトレチノイン、トレチノイン、アダパレン、タザロテン、およびマヌカ精油が挙げられる。
【0110】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポロキサマーゲル組成物に有用であって、皮膚に直接塗布する抗がん剤としての局所治療化学療法薬として、以下に限定されるわけではないが、5-フルオロウラシル、ジクロフェナク、インゲノールメブテート、およびイミキモドが挙げられる。
【0111】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポロキサマーゲル組成物に有用であって、発汗を止めるか或いは著しく低減させるための局所制汗剤として、以下に限定されるわけではないが、アルミニウムクロロハイドレート、アルミニウムジルコニウムテトラクロロハイドレックスグリシン、およびアルミニウムジルコニウムトリクロロハイドレックスグリシンが挙げられる。
【0112】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポロキサマーゲル組成物に有用であって、悪臭を除去するように設計された局所体臭防止剤として、以下に限定されるわけではないが、香水、精油、ステアリン酸ナトリウム、ステアリルアルコール、カリウムミョウバン、およびアンモニウムミョウバンが挙げられる。
【0113】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポロキサマーゲル組成物に有用な発毛促進剤として、以下に限定されるわけではないが、ミノキシジル、フィナステライド、ビオチン、およびジヒドロテストステロンが挙げられる。
【0114】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポロキサマーゲル組成物に有用な皮膚治療用ビタミンとして、以下に限定されるわけではないが、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンD、ビタミンK、ビタミンB1、ビタミンB3、ビタミンB5、ビタミンB6、ビオチン、コリン、葉酸、およびビタミンE類似体(6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-カルボン酸)が挙げられる。
【0115】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポロキサマーゲル組成物に有用な局所抗酸化物質として、以下に限定されるわけではないが、セレニウム、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンK、コエンザイムQ10、クルクミン、レスベラトロル、レチノール、エピガロカテキン3-ガラート、ポリフェノール、フラボノイド、グルタチオン、ベータカロテン、ルテイン、リコペン、ゼアキサンチン、レスベラトロール、亜鉛、マンガン、システイン、クルクミン、アスタキサンチン、アルファリポ酸、カルノシン、グルタチオン、ポリフェノール、クェルセチン、大豆イソフラボン、スーパーオキシドディスムターゼ、アリウム種、カタラーゼ、エラグ酸、およびメラトニンが挙げられる。
【0116】
いくつかの実施形態において、日焼け止め剤は化学的または物理的な日焼け止め剤とすることができる。本明細書に記載のポロキサマーゲル組成物に有用な物理的な日焼け止め剤として、以下に限定されるわけではないが、広範なUVA(320-400ナノメートル)およびUVB(290~320ナノメートル)スペクトルで保護が得られ皮膚に優しい酸化亜鉛および二酸化チタンが挙げられる。しかしながら、化学的な日焼け止め剤を可溶化または懸濁させ、透明な或いは半透明な皮膚コーティングとなる日焼け止め製剤に添加することができる。いくつかの実施形態において、化学的な日焼け止め成分として、以下に限られるわけではないが、アボベンゾン(ブチルメトキシジベンゾイルメタン;4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン)、ホモサレート(サリチル酸ホモメンチル;2-ヒドロキシ安息香酸3,3,5-トリメチルシクロヘキシル)、オクチサレート(サリチル酸オクチル;サリチル酸2-エチルヘキシル;2-エチルヘキシル2-ヒドロキシベンゾアート)、オクトクリレン(2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3-ジフェニル-2-アクリラート;2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3-ジフェニル-2-プロペノアート)、オキシベンゾン(ベンゾフェノン;(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)フェニルメタノン;2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン)、オクチノキサート(メトキシケイ皮酸エチルヘキシル;オクチルメトキシシンナマート)、およびこれらの組み合わせが挙げられる。アボベンゾンはUVAを吸収し、ホモサレートはUVBを吸収し、オクチサレートはUVBを吸収し、オクトクリレンはUVBを吸収し、オキシベンゾンはUVAおよびUVBを吸収し、またオクチノキサートはUVBを吸収する。アボベンゾンおよびオクチノキサートの光分解を遅らせるために、ポリシリコーン-15(ポリジメチルシロキサン系オリゴマーUV吸収剤)、ウンデシルクリレンジメチコン、ジエチルヘキシル-2,6-ナフタラート、エチルヘキシルメトキシクリレン等の光安定剤を添加することができる。
【0117】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポロキサマーゲル組成物に有用な局所日焼け剤として、以下に限定されるわけではないが、軟化クリーム、局所アロエベラ、およびOTC鎮痛薬が挙げられる。
【0118】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポロキサマーゲル組成物に有用な局所創傷治癒剤として、以下に限定されるわけではないが、ヒアルロン酸、抗微生物ドレッシング、成長因子、幹細胞、コラーゲン、酸素、栄養分であってプロテイン、炭水化物、アルギニン、グルタミン、多価不飽和脂肪酸、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、マグネシウム、銅、亜鉛および鉄などを含む栄養分、生分解性足場材料、ヘパラン硫酸、金ナノ粒子、バイオフィルムの破壊および除去、一酸化窒素、ポリマーバイオマテリアル、ポリヘキサメチレンビグアナイド、クロルヘキシジン塩、銀および銀塩が挙げられる。
【0119】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポロキサマーゲル組成物に有用であって、上皮細胞増殖制御のための局所レチノイドとしては、以下に限定されるわけではないが、レチノール、レチノイン酸、アリトレチノイン、イソトレチノイン、アシトレチン、アダパレン、ベキサロテン、タザロテン、およびレチノイン酸誘導体が挙げられる。
【0120】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポロキサマーゲル組成物に有用な膣活性剤として、以下に限定されるわけではないが、クロトリマゾール、ミコナゾール硝酸塩、ノノキシノール-9、デカリニウム塩化物、イミキモド、およびヒドロコルチゾンが挙げられる。
【実施例】
【0121】
以下の実施例から種々の実施形態がさらに明確になるであろう。
【0122】
全ての製剤は、モノアルキルグリコール、モノアルキルグリセロール、およびモノアシルグリセロールを含む増粘剤とポリキサマーを使用して、表1に列挙した製造業者から入手したまま調整された。界面活性剤は熱応答性があり粘性を高めて特定の濃度と温度で非流動性のゲルを形成するため、そのゾルゲル温度は、本開示に係る0.1重量%、0.3重量%、0.6重量%、0.9重量%、1.2重量%、1.5重量%、および1.8重量%の濃度におけるC6、C8、C12、およびC16のビシナルジオールを比較する上でのポジティブコントロールとして使用した。ポロキサマー407の濃度を17重量%に選択し、平均ゾルゲル温度は29.7℃であった。ポロキサマー188の濃度を46重量%に選択し、平均ゾルゲル温度は29℃であった。
【0123】
【0124】
【0125】
検証したビシナルジオールはそれぞれ複数の化学名を有する。したがって、様々な疎水性ビシナルジオールの表示を簡単にするため、これらは記号C6、C8、C12、およびC16で表されており、C8diol、C8ether、およびC8esterはそれぞれ8炭素のモノアルキルグリコール、モノアルキルグリセロール、およびモノアシルグリセロールを表しており、またC12diol、C12ether、およびC12esterはそれぞれ、12炭素のモノアルキルグリコール、モノアルキルグリセロール、およびモノアシルグリセロールを表している。C6およびC16のビシナルジオールには同じ用語が使用される。検証したポロキサマーは、プルロニック(登録商標)F-127とも称されるポロキサマー407と、コリフォール(登録商標)P188およびプルロニック(登録商標)F-68とも称されるポロキサマー188である。
ゾルゲル転移の測定:
【0126】
ゾルゲル転移温度はテストチューブインバーティング法(test tube inverting method)により1ステップあたり1℃の温度上昇で決定した。水性ポロキサマー溶液(0.5g)を内径11mmの4mLバイアルで調製した。各バイアルを各ステップで15分間水槽に浸した。バイアルを逆さにし、30秒のうちに流動性が認められない場合にゲルとみなすことで、ゾルゲル転移温度を観察した。転移温度は±1℃の精度で決定した。
【0127】
サンプルを調製してゾルゲル温度を分析した。データは、モノアルキルグリコール、モノアルキルグリセロール、およびモノアシルグリセロールの添加が、特定のポロキサマーと他のポロキサマーの両方のゾルゲル温度に影響を与える可能性があることを示している。表3は、オクチルグリセロールが、この場合において、使用した濃度において46%ポロキサマー188の全体的なゾルゲル温度を約5℃だけ低下させることを示しており、またその一方で17%ポロキサマー407のゾルゲル温度が最大で10℃だけ低下することを示している。これはC8etherモノアルキルグリセロールが、HLB値に基づいてより疎水性の大きなポロキサマー(例えばポロキサマー407、HLB22)とより親水性の大きなポロキサマー(例えばポロキサマー188、HLB29)の両方のゾルゲル温度を低下させることができることを表している。
【0128】
【0129】
表1の材料リストを用いてサンプルを調製した。
【0130】
6炭素鎖および8炭素鎖(C6およびC8):C6diol、C6ether、C8diol、C8ether、またはC8esterに係る上記重量パーセントにおける10mLの各サンプルを水を希釈剤として用いて調製した。算出した量の水を量りビーカーに入れた。ビーカーを氷浴(約13℃~15℃)に入れ、所望となる重量%の界面活性剤ポロキサマー407またはポロキサマー188を添加して完全に溶解するまで攪拌した。C6またはC8のモノアルキルグリコール、モノアルキルグリセロール、またはモノアシルグリセロールをビーカーに入れ、ゆっくりと攪拌した。ビーカーを氷浴から取り出し、攪拌プレートの上に置いて、各ビシナルジオールが完全に溶解するまで常温/常圧で連続的に攪拌した。その後、組成物を常温でゲルが形成される可能性のあるディスポーザブル試験管の中に入れた。
【0131】
12炭素鎖および16炭素鎖(C12およびC16):C12diol、C12ether、C12ester、C16diol、C16ether、またはC16esterに係る上記重量パーセントにおける10mLの各サンプルを水を希釈剤として使用して調製した。算出した量の水を量りビーカーに入れた後、所望となる重量%のC12またはC16のモノアルキルグリコール、グリセロールモノアルキルエーテルまたはモノアシルグリセロールを、量った17%の界面活性剤の1/3と共に、ビーカーの中に入れ、完全に溶媒化させるために50℃~70℃で攪拌した。温度をオフにし、ビーカーを氷浴の中に入れて、17%の界面活性剤の残る2/3を添加して完全に溶解するまで攪拌した。その後、組成物を常温でゲルが形成される可能性のあるディスポーザブル試験管の中に入れた。
【0132】
図1はC
6ビシナルジオールを用いて記載した通りに作成した組成物のゾルゲル温度の結果を表しており、これはまた6炭素のモノアルキルグリコールまたはモノアルキルグリセロールの増加量に対するポロキサマー407のゾルゲル温度の間接的な関係を表している。
【0133】
ヘキサンジオールとヘキシルグリセロールの添加から、それぞれ1.5℃と2.7℃の全体的な温度降下が観察された。したがって、6炭素ビシナルジオールがポロキサマー407のゾルゲル温度を低下させる機能が表されている。
【0134】
表2はC8のモノアルキルグリコール、モノアルキルグリセロール、およびモノアシルグリセロールの量を増加させながらポロキサマー407を使用したゾルゲル温度の結果を示している。17重量%ポロキサマー407サンプルのポジティブコントロールはグラフの最高点で表されており、これは(3つの読みからの)平均ゾルゲル温度が29.7℃であることを表している。0.1%のオクタンジオール、オクチルグリセロール、およびオクタノイルグリセロールを添加した後、最初に約5~6℃の急激なゾルゲル温度の降下が、試験された各C8ビシナルジオールについて観察された。一般的に、最初の5~6℃の降下後、C8のモノアルキルグリコール、モノアルキルグリセロール、またはモノアシルグリセロールの重量%の上昇と共に、ゾルゲル温度は徐々に低下し続ける。
【0135】
図3はポロキサマー407を、C
12のモノアルキルグリコール、モノアルキルグリセロール、およびモノアシルグリセロールの量を増加させて添加して使用したゾルゲル温度の結果を示している。表1および表2と同様にして、ポロキサマー407のみ(ビシナルジオールを添加せず)のポジティブコントロールがグラフの最高点で表されており、これは平均ゾルゲル温度が29.7℃であることを示している。C
8ビシナルジオールのときと同様にして、0.1%のドデカンジオール、ドデシル-1-グリセロール、およびドデカノイル-1-グリセロールの添加後、試験した各C
12ビシナルジオールに対して、約5~7℃のゾルゲル温度の急降下が認められた。一般的に、最初の5~7℃の降下後、C
12のモノアルキルグリコール、モノアルキルグリセロール、またはモノアシルグリセロールの重量%の上昇と共に、ゾルゲル温度は徐々に低下し続ける。
【0136】
したがって、ポロキサマー407の平均ゾルゲル温度は、わずか0.1重量%のビシナルジオールを用いれば最大で7℃低下させることができ、また最大で明らかに10~12℃の降下があることが認められた。
【0137】
図4は8炭素~16炭素のビシナルジオールに対する正規化データを示す。データは各配合におけるポロキサマー407のゾルゲル温度を使用して正規化された。したがって、最初の1つの(1)の読みはポジティブコントロール(ビシナルジオールを添加しないポロキサマーC
0)に対応する。ポロキサマー407のゾルゲル温度は、0.1重量%のC
8ビシナルジオールおよびC
12ビシナルジオールを添加すると最初に約5℃低下する。さらに、C
8およびC
12が1.8重量%だけ存在する場合にはポロキサマー407のゾルゲル温度は全体的に約10℃低下する。C
16ビシナルジオールのゾルゲル温度の初期降下は約2℃であったのに対して、1.8重量%での全体的な降下は約3℃であり、これはC
6ビシナルジオールを用いたときと同様の効果であって、8炭素や12炭素の方がゾルゲル温度を低下させる上では6炭素や16炭素よりも有効的であることを表している。しかしながら、C
6またはC
16の添加でもまだゾルゲル温度の低下をもたらすことができる。したがって、(C
6~C
16)のビシナルジオールは、全てポロキサマー407などのポロキサマーのゾルゲル温度を低下させる上で有効であって、C
8とC
12が最も効果的である。
ドリップフロー法を用いたゾルゲル判定
【0138】
ゾルゲルが形成されたか否かの判断は、0.24gのポロキサマーゲル組成物を約90°の角度で傾けたガラス面に分注することにより行った。黒のマーカーペンを用いてガラス面を0.5cmの線で目盛り付けすることで、ポロキサマーゲル組成物が常温(23.5℃)でガラス面を流れ落ちる距離を判定した。分注されたポロキサマーゲル組成物は最も高い位置(0cmの線のちょうど上)において円形状の水滴として付着させた。読み取りは0分、1分、2分、3分、4分、5分、6分、7分、8分、9分、10分、20分、30分および60分に行った。60分での0cmの読みはポロキサマーゲル組成物が流動化していないことを表すため、組成物はゾルゲル温度を超えておりゲルであるとみなした。0分での6cmの読み(即時の流動化)は組成物が容易に流れることを表すため、ゾルゲル温度未満であり液体であるとみなした。
【0139】
直鎖(オクチルグリセロール)または分岐(エチルヘキシルグリセロール)のグリセロールの何れかを用いてサンプルを調製しゾルゲル温度を分析した。データは、直鎖または分岐の何れかのビシナルジオールの添加は、ポロキサマーゲル組成物のゾルゲル温度に影響を与えることができることを示している。
図5は、オクチルグリセロールまたはエチルヘキシルグリセロールの何れかを17%ポロキサマー407に添加することにより非流動ゲルが得られるのに対して、17%ポロキサマー407そのものは、目盛り付けされたガラス面の最大範囲である6cmを流れることを表している。この結果は直後(ゼロ分)から60分までの間にあるすべての時点で同じであった。言い換えると、17%ポロキサマー407は直ちにガラス面の最大長(6cm)を流動し、ビシナルジオールを含有するポロキサマーゲル組成物は、評価した何れの時点においても流動化しないゲルであった。
サンプル調製
【0140】
表1の材料リストを用いてサンプルを調製した。
【0141】
各サンプルは水を希釈剤として用いて調製した。算出した量の水を量りビーカーに入れた。このビーカーを氷浴(約13℃~15℃)に入れ、17重量%の界面活性剤ポロキサマー407を添加して完全に溶解するまで攪拌した。0.9重量%のC8モノアルキルグリセロール(オクチルグリセロールまたはエチルヘキシルグリセロールの何れか)をビーカーの中に入れて、ゆっくりと攪拌した。ビーカーを氷浴から取り出し、攪拌プレートの上に置いて、各ビシナルジオールが完全に溶解するまでRTP(常温/常圧)で連続的に攪拌した。
【0142】
図5はドリップフロー法を用いたゾルゲル判定結果を示す。常温では17%ポロキサマー407そのものは液体である一方で、直鎖または非直鎖のうち何れかのビシナルジオールをポロキサマーに添加するとゲルが得られる。したがってこのさらなる測定方法(ドリップフロー)はまた、分岐ビシナルジオールを含むビシナルジオールがポロキサマーのゾルゲル温度を低下させる効果を表している。
【0143】
重要なことは、ゾルゲル温度の低下により、同量のポリキサマーであっても体温よりもさらに低い温度でゲル特性が生じる点にある。これにより生体表面でより長い滞留時間を有する組成物の創出が得られ、長時間に及ぶ治療の必要性に応じて、ゲル化したポロキサマー内の生物活性薬剤を生体表面に効果的に送達できるようになっている。
【0144】
表2は17重量%ポロキサマー407におけるC12ジオール(C12ester)の溶液中に溶解または懸濁することのできる幾つかの活性薬剤を列挙している。これらの活性薬剤として以下が挙げられる:
医薬品:アセチルサリチル酸
創傷治癒剤:マヌカハニー
酵素剤:アミラーゼ
抗微生物剤:PHMB、ミコナゾール硝酸塩、テルビナフィン
痒み止め剤:リドカイン
抗やけど剤:スルファジアジン銀
キレート剤:EDTA(エチレンジアミン四酢酸)
親水性ポリマー:グァー
UV吸収材:アボベンゾン、酸化亜鉛
【0145】
様々な重量パーセントの活性薬剤を17%ポロキサマー407+0.9%ドデカンジオールゲルに添加した場合に観察を行った。24時間後の結果を以下の表4に報告する。
【0146】
【0147】
これらの製剤の各々は、表4に記載の通り少なくとも24時間の安定性を示している。注目すべきことは、懸濁液であっても少なくとも24時間は安定していた。
具体的な実施態様
【0148】
第1の具体的な実施態様ではポロキサマーゲル組成物が説明される。ポロキサマーゲル組成物は0.05重量%~5重量%の疎水性ビシナルジオール成分と、10重量%~65重量%のポロキサマー成分とを含有し、前記疎水性ビシナルジオール成分が6炭素長から16炭素長までのモノアルキルグリコール、モノアルキルグリセロール、モノアシルグリセロール、またはこれらの組み合わせであって、前記疎水性ビシナルジオール成分が水性ポロキサマー等価物のゾルゲル温度を少なくとも1℃低下させることを特徴とする。
【0149】
第2の具体的な実施態様は、第1の具体的な実施態様を含み、前記ポロキサマー成分が、ポロキサマー108、ポロキサマー124、ポロキサマー188、ポロキサマー127、ポロキサマー237、ポロキサマー238、ポロキサマー288、ポロキサマー335、ポロキサマー338、ポロキサマー407、またはこれらの組み合わせ、からなる群から選択されるポロキサマーを含有することを特徴とする。
【0150】
第3の具体的な実施態様は、第1~第2の具体的な実施態様のうち何れかを含み、前記疎水性ビシナルジオール成分が、式1の構造を有する疎水性モノアルキルグリコールを含み、
【化1】
式中、R=C
6~C
16の分岐または非分岐のアルキル基またはアルキレン基であることを特徴とする。
【0151】
第4の具体的な実施態様は、第3の具体的な実施態様を含み、前記疎水性モノアルキルグリコールが、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-ノナンジオール、1,2-デカンジオール、1,2-ウンデカンジオール、1,2-ドデカンジオール、1,2-トリデカンジオール、1,2-テトラデカンジオール、1,2-ペンタデカンジオール、1,2-ヘキサデカンジオール、およびこれらの組み合わせ、からなる群から選択されることを特徴とする。
【0152】
第5の具体的な実施態様は、第1~第4の具体的な実施態様のうち何れかを含み、前記疎水性ビシナルジオール成分が、式2の構造を有する疎水性モノアルキルグリセロールを含み、
【化2】
式中、R=C
6~C
16の分岐または非分岐のアルキル基またはアルキレン基であることを特徴とする。
【0153】
第6の具体的な実施態様は、第5の具体的な実施態様を含み、前記疎水性モノアルキルグリコールが、グリセロール1-ヘキシルエーテル、グリセロール1-ヘプチルエーテル、グリセロール1-オクチルエーテル、グリセロール1-(2-エチルヘキシル)エーテル[オクトキシグリセリン、2-エチルヘキシルグリセリン、3-(2-エチルヘキシルオキシ)プロパン-1,2-ジオール、およびセンシバ(登録商標)SCSC50としても知られる]、グリセロール1-ノニルエーテル、グリセロール1-デシルエーテル、グリセリル1-ウンデシルエーテル、グリセロール1-ドデシルエーテル、グリセロール1-トリデシルエーテル、グリセロール1-テトラデシルエーテル、グリセロール1-ペンタデシルエーテル、およびグリセロール1-ヘキサデシルエーテル、ならびにこれらの組み合わせ、からなる群から選択されることを特徴とする。
【0154】
第7の具体的な実施態様は、第1~第6の具体的な実施態様のうち何れかを含み、
前記疎水性ビシナルジオール成分が、式3の構造を有する疎水性モノアシルグリセロールを含み、
【化3】
式中、R=C
6~C
16の分岐または非分岐のアルキル基またはアルキレン基であることを特徴とする。
【0155】
第8の具体的な実施態様は、第7の具体的な実施態様を含み、前記疎水性モノアシルグリセロールが、グリセロールモノヘキサノアート、グリセロールモノオクタノアート、グリセロールモノノナノアート、グリセロールモノデカノアート、グリセロールモノウンデカノアート、グリセロールモノドデカノアート、グリセロールモノトリデカノアート、グリセロールモノテトラデカノアート、グリセロールモノペンタデカノアート、グリセロールモノヘキサデカノアート、およびこれらの組み合わせ、からなる群から選択されることを特徴とする。
【0156】
第9の具体的な実施態様は、第1~第4の具体的な実施態様のうち何れかを含み、前記組成物が水性であることを特徴とする。
【0157】
第10の具体的な実施態様は、第1~第9の具体的な実施態様のうち何れかを含み、前記疎水性ビシナルジオール成分が前記水性ポロキサマー等価物のゾルゲル温度を少なくとも3℃低下させることを特徴とする。
【0158】
第11の具体的な実施態様は、第10の具体的な実施態様を含み、前記水性ポロキサマー等価物のゾルゲル温度が少なくとも26.5℃であることを特徴とする。
【0159】
第12の具体的な実施態様は、第1~第11の具体的な実施態様のうち何れかを含み、前記水性ポロキサマーゲル組成物が、可溶化または懸濁している銀塩、銀ナノ粒子、亜鉛ナノ粒子、亜鉛塩、カルシウム塩、金塩、金ナノ粒子、マグネシウムナノ粒子塩、チタンナノ粒子塩、リン化合物、シロキシ化合物、ヨウ素化合物、バリウム塩、セリウム化合物、コバルト化合物、銅化合物、鉄化合物、マンガン化合物、ニッケル化合物、ストロンチウム化合物、またはこれらの組み合わせ、をさらに含むことを特徴とする。
【0160】
第13の具体的な実施態様は、第1~第12の具体的な実施態様のうち何れかを含み、可溶化または懸濁している生物活性薬剤をさらに含み、前記生物活性薬剤が、抗生物質、抗微生物剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗菌剤、抗ニキビ剤、抗アレルギー薬、乾癬治療薬、鎮痛薬、麻酔薬、抗凝固薬、抗ヒスタミン剤、抗原虫剤、抗寄生虫薬、抗掻痒薬、抗関節炎薬、収斂剤、肛門薬、抗炎症薬、抗有糸分裂薬、制汗剤、キレート剤、体臭防止剤、精油、湿疹用剤、抗脂漏薬、癌治療薬、口内炎治療剤、単純疱疹治療剤、コルチコステロイド、サイトカイン、歯科用剤、色素除去剤、おむつかぶれ治療薬、内分泌性ホルモン、酵素、糖脂質、免疫応答調節剤、角質溶解薬、関節痛治療薬、発毛促進剤、熱ショックタンパク質、糖タンパク質、成長因子、成長ホルモン、止血剤、脂質、湿潤剤、経鼻活性成分、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、プロテイン、ペプチド、シラミ駆除剤、歯周病治療剤、核酸、プロテアーゼ阻害剤、光感作活性剤、多糖類、レチノイド類、抗酒さ剤、皮膚保護剤/皮膚バリア剤、皮膚治療剤、単糖類、疥癬虫殺虫剤、ステロイド、日焼け治療剤、日焼け止め、熱線/放射線熱傷治療薬、経皮活性成分、膣活性成分、血管収縮剤、血管拡張剤、ビタミン、イボ治療剤、イボ取り剤、創傷清拭剤、創傷治療剤、創傷治癒剤、創傷抗微生物剤、またはこれらの組み合わせ、であることを特徴とする。
【0161】
第14の具体的な実施態様は、第1~第13の具体的な実施態様のうち何れかを含み、ゲル形成が維持されているという条件において、アロエベラ、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリクオタニウム-1、ポリクオタニウム6、ポリクオタニウム-10、グァー、ヒドロキシプロピルグァー、ヒドロキシプロピルメチルグァー、カチオン性グァー、カルボキシメチルグァー、マルトデキストリン、ヒドロキシメチルキトサン、ヒドロキシプロピルキトサン、カルボキシメチルキトサン、N-[(2-ヒドロキシ-3-トリメチルアンモニウム)プロピル]キトサンクロリド、水溶性キトサン、ヒアルロン酸およびその塩、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、デルマタン硫酸、アミロース、アミロペクチン、ペクチン、ローカストビーンガム、アルギン酸、デキストラン、カラギーナン、キサンタンガム、ジェランガム、スクレログルカン、シゾフィラン、アラビアガム、ガティガム、カラヤガム、トラガカントガム、ペクチン、でんぷんおよびその誘導体、タマリンドガム、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(メチルビニルエーテル)、ポリアクリルアミド、ポリ(N,N-ジメチルアクリルアミド)、ポリ(N-ビニルアセトアミド)、ポリ(N-ビニルホルムアミド)、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリラート)、ポリ(グリセリルメタクリラート)、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(ジメチルアミノエチルメタクリレート)、ポリ(ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)、ポリビニルアミン、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(N-ビニルカプロラクタム)、およびこれらの組み合わせ、からなる群から選択される水溶性ポリマーをさらに含むことを特徴とする。
【0162】
第15の具体的な実施態様は、第1~第14の具体的な実施態様のうち何れかを含み、抗微生物剤をさらに含み、前記抗微生物剤が、クロルヘキシジン塩、アレキシジン塩、ポリヘキサメチレンビグアニド塩、ベンザルコニウム塩、ベンゼトニウム塩、セチルトリメチルアンモニウム塩、セチルピリジニウム塩、ジドデシルジメチルアンモニウム塩、N-ヘプチル-N-ドデシルピペリジニウムブロミド、N-ヘキシル-N-ドデシルピペリジニウムブロミド、グリセリルモノラウレート、ソルビン酸、またはこれらの組み合わせ、であることを特徴とする。
【0163】
第16の具体的な実施態様は、ポロキサマーゲル組成物のゾルゲル温度を少なくとも3℃低下させる方法に関し、0.1~1.8重量%の疎水性ビシナルジオール成分を水性ポロキサマーゲル組成物に添加するステップを含み、前記疎水性ビシナルジオール成分が、6炭素長から16炭素長までのモノアルキルグリコール、モノアルキルグリセロール、モノアシルグリセロール、またはこれらの組み合わせであることを特徴とする。
【0164】
第17の具体的な実施態様は、第16の実施態様を含み、
前記疎水性ビシナルジオール成分が、疎水性のモノアルキルグリコール、モノアルキルグリセロール、およびモノアシルグリセロールを含み、これら疎水性置換基が脂肪族、直鎖もしくは分岐、および飽和もしくは不飽和であることを特徴とする。
【0165】
第18の具体的な実施態様は、第16~第17の具体的な実施態様のうち何れかを含み、
前記疎水性ビシナルジオール成分が、式1の構造を有する疎水性モノアルキルグリコールを含み、
【化1】
式中、R=C
6~C
16の分岐または非分岐のアルキル基またはアルキレン基であることを特徴とする。
【0166】
第19の具体的な実施態様は、第16~第18の具体的な実施態様のうち何れかを含み、
前記疎水性ビシナルジオール成分が、式2の構造を有する疎水性モノアルキルグリセロールを含み、
【化2】
式中、R=C
6~C
16の分岐または非分岐のアルキル基またはアルキレン基であることを特徴とする。
【0167】
第20の具体的な実施態様は、第16~第19の具体的な実施態様のうち何れかを含み、
前記疎水性ビシナルジオール成分が、式3の構造を有する疎水性モノアシルグリセロールを含み、
【化3】
式中、R=C
6~C
16の分岐または非分岐のアルキル基又はアルキレン基であることを特徴とする。
【0168】
第21の具体的な実施態様は、第16~第20の具体的な実施態様のうち何れかを含み、
前記ポロキサマーゲル組成物が、少なくとも0.4%のEDTA、少なくとも0.4%のグァー、少なくとも2%のアボベンゾン、少なくとも2.5%のリドカイン、0.1%~1%のPHMB、少なくとも10%の酸化亜鉛、少なくとも1%のミコナゾール硝酸塩、少なくとも0.4%のテルビナフィン、少なくとも0.5%のアセチルサリチル酸、少なくとも5%のメディハニー、少なくとも0.5%のスルファジアジン銀、少なくとも0.5%のアミラーゼ、およびこれらの組み合わせ、からなる群から選択される活性成分をさらに含むことを特徴とする。
【0169】
上記明細書には数多くの具体例が含まれているが、これらは本開示の範囲に関する限定として解釈されるべきではなく、むしろその好ましい実施態様の例として解釈されるべきである。数多くの変形例が可能である。したがって、本開示の範囲は説明した実施態様ではなく、添付した請求の範囲とその法的均等物により判断されるべきである。
【国際調査報告】