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特表2022-552904非可逆添加剤を含む正極材、正極材を含む二次電池およびその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-20
(54)【発明の名称】非可逆添加剤を含む正極材、正極材を含む二次電池およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20221213BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20221213BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20221213BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20221213BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20221213BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20221213BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20221213BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20221213BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20221213BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/62 Z
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/36 E
H01M10/0566
H01M10/052
H01M4/139
H01M10/058
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022524679
(86)(22)【出願日】2021-08-24
(85)【翻訳文提出日】2022-04-26
(86)【国際出願番号】 KR2021011240
(87)【国際公開番号】W WO2022045712
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】10-2020-0106090
(32)【優先日】2020-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0110819
(32)【優先日】2021-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ソン・チョル・イム
(72)【発明者】
【氏名】ミンチョル・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン・クウォン
(72)【発明者】
【氏名】イルホン・キム
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ07
5H029AK01
5H029AK03
5H029AK18
5H029AL02
5H029AL07
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM07
5H029CJ08
5H029CJ15
5H029CJ16
5H029CJ22
5H029HJ01
5H029HJ04
5H029HJ17
5H029HJ18
5H050AA13
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA29
5H050CB02
5H050CB08
5H050DA02
5H050DA09
5H050EA12
5H050GA10
5H050GA16
5H050GA18
5H050GA22
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA17
5H050HA18
(57)【要約】
本発明の一実施例による二次電池は、正極材が正極集電体上に塗布されている正極を含む二次電池であって、前記正極材は、非可逆添加剤および正極活物質を含み、前記非可逆添加剤は、前記二次電池の作動範囲が3.0V以上~4.0V以下の範囲で、三方晶系(Trigonal)結晶構造を有するリチウムニッケル酸化物(LNO)を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極材が正極集電体上に塗布されている正極を含む二次電池であって、
前記正極材は、非可逆添加剤および正極活物質を含み、
前記非可逆添加剤は、前記二次電池の作動範囲が3.0V以上~4.0V以下の範囲で、三方晶系(Trigonal)結晶構造を有するリチウムニッケル酸化物(LNO)を含む、二次電池。
【請求項2】
前記二次電池の作動範囲が4.0V超過~4.25V以下の範囲で、前記三方晶系結晶構造を有するリチウムニッケル酸化物(LNO)は単斜晶系(monoclinic)結晶構造に変換される、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記非可逆添加剤において、前記三方晶系結晶構造を有するリチウムニッケル酸化物(LNO)の空間群がP3-m1に属し、前記単斜晶系結晶構造を有するリチウムニッケル酸化物(LNO)の空間群がC2/mに属する、請求項2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記三方晶系結晶構造を有する非可逆添加剤の結晶格子は、a=3.0954Å、c=5.0700Å、γ=120.00°である、請求項3に記載の二次電池。
【請求項5】
前記正極材において、前記非可逆添加剤の含有量は、前記正極材総重量に対して0.1重量%~10重量%である、請求項4に記載の二次電池。
【請求項6】
前記正極活物質は、下記化学式2で表される酸化物を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の二次電池:
Li(NiCoMn)O (2)
(前記式中、0<a<1、0<b<1、0<c<1、a+b+c=1である。)
【請求項7】
前記二次電池は、
前記正極;
負極活物質を含む負極材が負極集電体上に塗布されている負極;および
前記正極と負極との間に介される分離膜;
を含む電極組立体が電池ケースに電解液と共に内蔵された構造である、請求項6に記載の二次電池。
【請求項8】
正極材が正極集電体上に塗布されている正極を含む二次電池を製造する方法であって、
前記正極材、導電材、およびバインダーを混合した正極組成物を前記正極集電体上に塗布して正極を製造する段階;
前記正極が含まれている前記二次電池を製造する段階;および
前記二次電池を0.01以上~0.05以下のCレート(C-rate)で活性化する段階を含み、
前記正極材は、非可逆添加剤および正極活物質を含む二次電池製造方法。
【請求項9】
前記活性化段階の後に、前記二次電池を0.05以上~0.15以下のCレート(C-rate)で少なくとも2回の充放電を行う段階をさらに含む、請求項8に記載の二次電池製造方法。
【請求項10】
前記活性化段階の前に、前記非可逆添加剤は、斜方晶系(Orthorhombic)結晶構造を有するリチウムニッケル酸化物(LNO)を含み、
前記活性化段階の後に、前記非可逆添加剤に含まれている前記リチウムニッケル酸化物は、前記二次電池の作動範囲が3.0V以上~4.0V以下の範囲で三方晶系(Trigoanl)結晶構造を有する、請求項8または9に記載の二次電池製造方法。
【請求項11】
前記二次電池の作動範囲が4.0V超過~4.25V以下の範囲で、前記リチウムニッケル酸化物(LNO)は単斜晶系(monoclinic)結晶構造を有する、請求項10に記載の二次電池製造方法。
【請求項12】
前記非可逆添加剤において、前記斜方晶系結晶構造を有するリチウムニッケル酸化物(LNO)の空間群がImmmに属し、前記三方晶系結晶構造を有するリチウムニッケル酸化物(LNO)の空間群がP3-m1に属し、前記単斜晶系結晶構造を有するリチウムニッケル酸化物(LNO)の空間群がC2/mに属する、請求項11に記載の二次電池製造方法。
【請求項13】
前記非可逆添加剤において、前記斜方晶系結晶構造を有するリチウムニッケル酸化物の結晶格子は、a=3.743Å、b=2.779Å、c=9.026Åであり、前記三方晶系結晶構造を有するリチウムニッケル酸化物の結晶格子は、a=3.0954Å、c=5.0700Å、γ=120.00°である、請求項12に記載の二次電池製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願(ら)との相互引用
本出願は、2020年8月24日付韓国特許出願第10-2020-0106090号および2021年8月23日付韓国特許出願第10-2021-0110819号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として組み含まれる。
【0002】
本発明は、非可逆添加剤を含む正極材、正極材を含む二次電池およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
化石燃料の使用の急激な増加により代替エネレギー、クリーンエネルギーの使用に対する要求が増加しており、その一環として最も活発に研究されている分野が電気化学を利用した発電、蓄電分野である。
【0004】
現在、このような電気化学的エネルギーを利用する電気化学素子の代表的な例として二次電池が挙げられ、日増しにその使用領域が拡大している傾向にある。
【0005】
最近は携帯用コンピュータ、携帯電話、カメラなどの携帯用機器に対する技術開発と需要が増加することに伴い、エネルギー源として二次電池の需要が急激に増加している。かかる二次電池のうち、高いエネルギー密度を示し、サイクル寿命が長く、自己放電率が低いリチウム二次電池に対して多くの研究が行われてきており、また商用化されて広く使用されている。
【0006】
また、環境問題に対する関心が高まることに伴い、大気汚染の主要原因の一つであるガソリン車両、ディーゼル車両など化石燃料を使用する車両を代替できる電気自動車、ハイブリッド電気自動車などに対する研究が多く進行されている。このような電気自動車、ハイブリッド電気自動車などの動力源としては、主にニッケル水素金属二次電池が使用されているが、高いエネルギー密度のリチウム二次電池を使用する研究が活発に進行されており、一部は商用化段階にある。
【0007】
このようなリチウム二次電池の負極活物質としては、炭素材料が主に使用されており、リチウム二次電池の正極活物質としては、リチウム遷移金属複合酸化物が利用されている。この中でも、作用電圧が高く、容量特性に優れたLiCoOなどのリチウムコバルト複合金属酸化物以外に、LiNiO、LiMnO、LiMnまたはLiFePOなどの多様なリチウム遷移金属酸化物が開発されている。
【0008】
一方、初期充放電時、Liイオンの消費によって、固体電解質界面(SEI:Solid Electrolyte interphase)層の生成および正負極の非可逆が発生する。これによって、エネルギー密度が減少するようになり、設計できる理論量を十分に使用することができないという問題がある。
【0009】
このような問題を解決するために、正極材に非可逆添加剤を添加してリチウムイオンを補充することができる。しかし、既存に通常使用される非可逆添加剤であるLiNiOは、斜方晶系(Orthorhombic)結晶構造を有し、Immmの空間群に属している。しかし、前記物質は、二次電池の初期充電以降、作動電圧範囲で3段階の構造変化をしながら、不純物やガス発生などを招くという問題がある。
【0010】
具体的に、前記物質は、3.0~3.5Vの範囲では斜方晶系(orthorhombic)結晶構造を維持するが、Liの脱離により、3.5~4.0Vでは三方晶系(trigonal)、3.5~4.25Vでは単斜晶系(monoclinic)で3回の結晶構造変化を経るようになる。特に、斜方晶系の結晶構造を有する非可逆添加剤(LiNiO)は三方晶系に結晶構造が変化する時、予測し難い副産物と、過量のガス発生が起こる。さらに、結晶構造の変化を経るため、構造的安定性が低下するという問題もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、二次電池の作動電圧範囲で不純物やガス発生を最小化し、構造的安定性も高い非可逆添加剤を提供することを目的とする。
【0012】
本発明はまた、前記非可逆添加剤を含む二次電池用正極材、そしてこれを含んで優れた電気化学的特性を示す二次電池およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施例による二次電池は、正極材が正極集電体上に塗布されている正極を含む二次電池であって、前記正極材は、非可逆添加剤および正極活物質を含み、前記非可逆添加剤は、前記二次電池の作動範囲が3.0V以上~4.0V以下の範囲で、三方晶系(Trigonal)結晶構造を有するリチウムニッケル酸化物(LNO)を含む。
【0014】
前記二次電池の作動範囲が4.0V超過~4.25V以下の範囲で、前記三方晶系結晶構造を有するリチウムニッケル酸化物(LNO)は単斜晶系(monoclinic)結晶構造に変換され得る。
【0015】
前記非可逆添加剤において、前記三方晶系結晶構造を有するリチウムニッケル酸化物(LNO)の空間群がP3-m1に属し、前記単斜晶系結晶構造を有するリチウムニッケル酸化物(LNO)の空間群がC2/mに属することができる。
【0016】
前記三方晶系結晶構造を有する非可逆添加剤の結晶格子は、a=3.0954Å、c=5.0700Å、γ=120.00°であり得る。
【0017】
前記正極材において、前記非可逆添加剤の含有量は、前記正極材総重量に対して0.1重量%~10重量%であり得る。
【0018】
前記正極活物質は、下記化学式2で表される酸化物を含むことができる。
【0019】
Li(NiCoMn)O (2)
前記式中、0<a<1、0<b<1、0<c<1、a+b+c=1である。
【0020】
前記二次電池は、前記正極;負極活物質を含む負極材が負極集電体上に塗布されている負極;および前記正極と負極との間に介される分離膜を含む電極組立体が電池ケースに電解液と共に内蔵された構造であり得る。
【0021】
本発明の他の一実施例による二次電池製造方法は、正極材が正極集電体上に塗布されている正極を含む二次電池を製造する方法であって、前記正極材、導電材、およびバインダーを混合した正極組成物を前記正極集電体上に塗布して正極を製造する段階;前記正極が含まれている前記二次電池を製造する段階;および前記二次電池を0.01以上~0.05以下のCレート(C-rate)で活性化する段階を含み、前記正極材は、非可逆添加剤および正極活物質を含む。
【0022】
本発明の他の一実施例による二次電池製造方法では、前記活性化段階の後に、前記二次電池を0.05以上~0.15以下のCレート(C-rate)で少なくとも2回の充放電を行う段階をさらに含む。
【0023】
前記活性化段階の前に、前記非可逆添加剤は、斜方晶系(Orthorhombic)結晶構造を有するリチウムニッケル酸化物(LNO)を含み、前記活性化段階の後に、前記非可逆添加剤に含まれている前記リチウムニッケル酸化物は、前記二次電池の作動範囲が3.0V以上~4.0V以下の範囲で三方晶系(Trigoanl)結晶構造を有することができる。
【0024】
前記二次電池の作動範囲が4.0V超過~4.25V以下の範囲で、前記リチウムニッケル酸化物(LNO)は単斜晶系(monoclinic)結晶構造を有することができる。
【0025】
前記非可逆添加剤において、前記斜方晶系結晶構造を有するリチウムニッケル酸化物(LNO)の空間群がImmmに属し、前記三方晶系結晶構造を有するリチウムニッケル酸化物(LNO)の空間群がP3-m1に属し、前記単斜晶系結晶構造を有するリチウムニッケル酸化物(LNO)の空間群がC2/mに属することができる。
【0026】
前記非可逆添加剤において、前記斜方晶系結晶構造を有するリチウムニッケル酸化物の結晶格子は、a=3.743Å、b=2.779Å、c=9.026Åであり、前記三方晶系結晶構造を有するリチウムニッケル酸化物の結晶格子は、a=3.0954Å、c=5.0700Å、γ=120.00°であり得る。
【発明の効果】
【0027】
本発明による非可逆添加剤を含む正極材、正極材を含む二次電池およびその製造方法は、前記非可逆添加剤が前記二次電池の作動範囲が3.0V以上~4.0V以下の範囲で三方晶系の結晶構造を有することによって、二次電池の作動電圧範囲で発生し得る過量のLiイオンの脱離による不純物や、ガス発生の問題を顕著に減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施例による非可逆添加剤であるリチウムニッケル酸化物(LNO)の結晶構造を示す図面である。
図2】実験例1による比較例の充電プロファイルを示すグラフである。
図3】実験例1による比較例のXRD測定結果を示すグラフである。
図4】実験例1による実施例の充放電プロファイルを示すグラフである。
図5】実験例1による実施例のXRD測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように本発明の実施例について詳細に説明する。しかし、本発明は、多様な異なる形態に実現することができ、ここで説明する実施例に限定されない。
【0030】
以下、本発明の一実施例による非可逆添加剤を含む正極材、正極材を含む二次電池およびその製造方法について説明する。
【0031】
従来は非可逆添加剤として、リチウム原料物質、およびニッケル原料物質を混合した後に熱処理することによって、酸化物であるリチウムニッケル酸化物(LNO、LiNiO)を製造した。
【0032】
このように一般的な原料物質の混合および熱処理を処理した時、前記酸化物は最も安定した形態である斜方晶系(orthorhombic)結晶構造を有する物質で製造され、そのため、従来は非可逆添加剤として、前記斜方晶系結晶構造を有する酸化物が添加された。
【0033】
図1は本発明の一実施例による非可逆添加剤であるリチウムニッケル酸化物(LNO)の結晶構造を示す図面である。図1(a)はリチウムニッケル酸化物(LNO)の斜方晶系(orthorhombic)構造を示したものであり、図1(b)はリチウムニッケル酸化物(LNO)の三方晶系(trigonal)構造を示したものである。
【0034】
より具体的に、図1を参照すれば、非可逆添加剤として使用されるリチウムニッケル酸化物(LNO)の場合、一般に初期充電以降、可用電圧範囲で3段階の構造変化が進行される。この時、リチウムニッケル酸化物(LNO)は3.0V~3.5Vの範囲では斜方晶系結晶構造を有し、3.5V~4.0Vの範囲では三方晶系(trigonal)結晶構造を有し、3.5V~4.25Vの範囲では単斜晶系(monoclinic)結晶構造を有する。
【0035】
ここで、リチウムニッケル酸化物(LNO、LiNiO)に含まれているリチウムイオンが2個である場合、リチウムニッケル酸化物(LNO、LiNiO)は図1(a)のように斜方晶系(orthorhombic)構造を有することができ、相対的に高い構造的安定性を有する。しかし、3.5V以上の範囲でリチウムニッケル酸化物(LNO、LiNiO)に含まれているリチウムイオンは脱離され得る。そのために、リチウムニッケル酸化物(LNO、LiNiO)に含まれているリチウムイオンが1個になる場合に図1(b)のように三方晶系(trigonal)結晶構造に変わり得る。また、4.0V超過の範囲でリチウムイオンの脱離が深化して、リチウムイオンが1より少なくなる場合に単斜晶系(monoclinic)結晶構造を有するようになる。ここで、リチウムニッケル酸化物(LNO、LiNiO)は結晶構造により化学式に含まれているリチウムイオンの個数が変わるが、説明の便宜上、結晶構造に関係なくリチウムニッケル酸化物(LNO)と表現することとする。
【0036】
ただし、このような可用電圧範囲内でリチウムニッケル酸化物(LNO)は各段階の構造変化が進行されることによって、副反応の進行またはガス/不純物の発生を伴うという問題がある。より具体的に、リチウムイオンが脱離された三方晶系(trigonal)結晶構造および単斜晶系(monoclinic)結晶構造は不完全な化学式を有するため、構造的安定性が低下するようになる。また、リチウムニッケル酸化物(LNO)でリチウムイオンが脱離されることによって、ボンド結合ができない元素が電解液と副反応が進行されたり、ガスまたは不純物が生成されることがある。特に、リチウムニッケル酸化物(LNO)は、相対的に安定した斜方晶系(orthorhombic)構造から相対的に不安定な三方晶系(trigonal)結晶構造に変わる経路で、活性化エネルギーが非常に大きいと予想され、この時に発生される副反応の進行またはガス/不純物も相対的に多いであろう。
【0037】
そのために、従来のリチウムニッケル酸化物(LNO)は、初期結晶構造が斜方晶系(orthorhombic)構造に該当して、可用電圧範囲内で副反応の進行またはガス/不純物の発生を伴う問題が依然として存在する。
【0038】
これとは異なり、本発明のリチウムニッケル酸化物(LNO)は、可用電圧範囲内で初期結晶構造が三方晶系(trigonal)結晶構造に該当して、斜方晶系(orthorhombic)構造から三方晶系(trigonal)結晶構造に変化される段階が省略され得る。また、斜方晶系(orthorhombic)構造から三方晶系(trigonal)結晶構造に変化される段階で発生される副反応の進行またはガス/不純物も低減させることができるという利点がある。
【0039】
本発明の一実施例によれば、非可逆添加剤として使用されるリチウムニッケル酸化物(LNO)は、初期結晶構造を三方晶系結晶構造で有することができ、二次電池の作動電圧範囲内で電圧に応じて、三方晶系と単斜晶系結晶構造を可逆的に維持することができる。そのために、本実施例による非可逆添加剤は、一般的な構造変化の段階数より少ない数の段階に変化されて、各段階の構造変化が進行されることによって副反応の進行またはガス/不純物の発生を伴うことを最小化させることができるという利点がある。
【0040】
本発明の一実施例による二次電池は、正極材が正極集電体上に塗布されている正極を含む二次電池であって、前記正極材は、非可逆添加剤および正極活物質を含む。
【0041】
以下、前記非可逆添加剤を中心に説明する。
【0042】
本発明の一実施例による非可逆添加剤は、三方晶系(Trigonal)結晶構造を有するリチウムニッケル酸化物(LNO)を含む。より具体的に、前記非可逆添加剤は、前記二次電池の作動範囲が3.0V以上~4.0V以下の範囲で、三方晶系結晶構造を有するリチウムニッケル酸化物を含むことができる。
【0043】
特に、従来のリチウムニッケル酸化物(LNO)が3.0V~3.5Vの範囲で斜方晶系結晶構造を有することとは異なり、前記非可逆添加剤に含まれるリチウムニッケル酸化物(LNO)は、3.0V~3.5Vの範囲でも三方晶系結晶構造を有することができる。
【0044】
換言すれば、本実施例による非可逆添加剤は、3.0V以上~4.0V以下の範囲で、斜方晶系結晶構造のリチウムニッケル酸化物(LNO)を含まなくてもよい。より具体的に、本実施例による非可逆添加剤は、3.0V以上~3.5V以下の範囲で、斜方晶系結晶構造のリチウムニッケル酸化物(LNO)を含まなくてもよい。
【0045】
そのために、本実施例による非可逆添加剤は、3.0V以上~4.0V以下の範囲で斜方晶系結晶構造のリチウムニッケル酸化物(LNO)を含まないため、斜方晶系結晶構造から三方晶系結晶構造に変換されるリチウムニッケル酸化物(LNO)による副反応の進行またはガス/不純物の発生を効果的に低減させることができるという利点がある。
【0046】
前記三方晶系結晶構造を有するリチウムニッケル酸化物(LNO)は、空間群がP3-m1に属することができる。この時、前記三方晶系結晶構造を有するリチウムニッケル酸化物(LNO)は、a=3.0954Å、c=5.0700Å、γ=120.00°である結晶格子を有することができる。
【0047】
また、本発明の一実施例による非可逆添加剤に含まれている三方晶系結晶構造を有するリチウムニッケル酸化物は、斜方晶系結晶構造を有するリチウムニッケル酸化物(LNO)が0.01Cレート(C-rate)~0.05Cレート(C-rate)で活性化されて、結晶構造が斜方晶系から三方晶系に変換されたリチウムニッケル酸化物であり得る。
【0048】
ここで、斜方晶系結晶構造を有するリチウムニッケル酸化物(LNO)は、空間群がImmmに属することができる。この時、前記斜方晶系結晶構造を有するリチウムニッケル酸化物は、a=3.743Å、b=2.779Å、c=9.026Åである結晶格子を有することができる。
【0049】
より具体的に、前記斜方晶系結晶構造を有するリチウムニッケル酸化物(LNO)は、0.01Cレート(C-rate)~0.05Cレート(C-rate)で活性化され得る。より好ましくは、前記斜方晶系結晶構造を有するリチウムニッケル酸化物(LNO)は、0.015Cレート(C-rate)~0.035Cレート(C-rate)で活性化され得る。一例として、前記斜方晶系結晶構造を有するリチウムニッケル酸化物(LNO)は、0.02Cレート(C-rate)~0.03Cレート(C-rate)で活性化され得る。ここで、活性化は、予め定められたCレート(C-rate)で充放電が行われることを意味し得る。また、活性化は、予め定められたCレート(C-rate)で充電または放電が行われることを意味し得る。
【0050】
前記斜方晶系結晶構造を有するリチウムニッケル酸化物(LNO)が前述した範囲を外れて過度に高いCレート(C-rate)で活性化される場合、前記斜方晶系結晶構造を有するリチウムニッケル酸化物(LNO)は三方晶系結晶構造に変換されないことがある。そのために、従来のリチウムニッケル酸化物(LNO)のように3段階の構造変化が進行されることによって、副反応の進行またはガス/不純物の発生を伴うことがある。これと共に、Cレート(C-rate)が過度に高い場合、過反応によりガスが過度に多く発生することがある。これとは逆に、斜方晶系結晶構造を有するリチウムニッケル酸化物(LNO)が前述した範囲を外れて過度に低いCレート(C-rate)で活性化される場合、生産性が低下することがある。
【0051】
また、前記非可逆添加剤は、三方晶系結晶構造を有するリチウムニッケル酸化物を含むものの、前記三方晶系結晶構造を有するリチウムニッケル酸化物は、前記二次電池の作動範囲が4.0V超過~4.25V以下である範囲で単斜晶系(monoclinic)結晶構造に変換され得る。また、前記非可逆添加剤に含まれるリチウムニッケル酸化物は、二次電池の作動範囲内で三方晶系結晶構造または単斜晶系結晶構造を有するものの、前記二次電池の作動範囲により可逆的に変換され得る。また、前記非可逆添加剤に含まれるリチウムニッケル酸化物は、単斜晶系結晶構造を有する時、C2/mの空間群に属することができる。
【0052】
そのために、前記非可逆添加剤に含まれているリチウムニッケル酸化物は、作動電圧範囲内での初期結晶構造が三方晶系結晶構造であることから、作動電圧範囲内での結晶構造変化段階を一つ省略することができるため、過量のLiイオンの脱離による不純物やガス発生のような付随的に発生する問題を最小化することができる。
【0053】
以下、前記正極材を中心に説明する。
【0054】
前記正極材に含まれる正極活物質は、例えば、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiMn、Li(NiCoMn)O(0<a<1、0<b<1、0<c<1、a+b+c=1)、LiNi1-dCo、LiCo1-dMn、LiNi1-dMn(0≦d<1)、Li(NiCoMn)O(0<a<2、0<b<2、0<c<2、a+b+c=2)、LiMn2-eNi、LiMn2-eCo(0<e<2)、LiCoPO、またはLiFePOなどが挙げられ、これらのうちのいずれか一つまたは二つ以上の混合物を用いることができる。
【0055】
このうち、詳しくは、前記正極活物質は、下記化学式2で表される酸化物を含むことができる。
【0056】
Li(NiCoMn)O (2)
前記式中、0<a<1、0<b<1、0<c<1、a+b+c=1である。
【0057】
前記化学式2の酸化物は、二次電池の作動電圧範囲でLiイオンが脱離、挿入されながら、結晶構造が六方晶系(hexagonal)から単斜晶系に簡単に変化するため、作動範囲で本発明の一実施例による非可逆添加剤のような構造を有することができるところ、本実施例による非可逆添加剤の使用により効果的であり得る。
【0058】
より詳しくは、前記化学式2で表される酸化物を正極活物質全体重量を基準として80重量%以上含むことができる。
【0059】
前記非可逆添加剤の含有量は、前記正極材総重量に対して0.1重量%~10重量%であり得る。より好ましくは、前記非可逆添加剤の含有量は、正極材総重量に対して1重量%~8重量%であり得る。一例として、前記非可逆添加剤の含有量は、正極材総重量に対して2重量%~5%重量であり得る。
【0060】
前記非可逆添加剤の含有量が前述した範囲を外れてより少なく含まれる場合、非可逆添加剤の追加による正極効率補償効果を得ることができない。前記非可逆添加剤の含有量が前述した範囲を外れてより多く含まれる場合、不純物や、ガス発生などによる電極体積膨張、寿命退化などの問題を招くことがある。
【0061】
前記正極材はまた、正極活物質および非可逆添加剤以外に、導電材、バインダー、および充填剤などをさらに含むことができる。
【0062】
前記導電材は、電極に導電性を付与するために使用されるものであり、構成される電池において、化学変化を引き起こさず、電子伝導性を有するものであれば特別な制限なく使用可能である。
【0063】
前記バインダーは、正極活物質粒子間の付着および正極活物質と集電体との接着力を向上させる役割を果たす。具体的な例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、またはこれらの多様な共重合体などが挙げられ、これらのうちの1種単独または2種以上の混合物を用いることができる。
【0064】
前記正極集電体は、電池に化学的変化を誘発せず、導電性を有するものであれば特に制限されるのではなく、例えばステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素またはアルミニウムやステンレススチール表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどを用いることができる。
【0065】
一方、前記二次電池は、前記正極;負極活物質を含む負極材が負極集電体上に塗布されている負極;および前記正極と負極との間に介される分離膜を含む電極組立体が電池ケースに電解液と共に内蔵された構造であり得る。詳しくは、前記二次電池は、リチウム二次電池であり得る。
【0066】
前記負極もまた、負極活物質を含む負極材が負極集電体上に塗布される形態で製造され得、前記負極材はまた負極活物質と共に、前記で説明したような導電材およびバインダーをさらに含むことができる。
【0067】
前記負極集電体は、電池に化学的変化を誘発せず、高い導電性を有するものであれば特に制限されるのではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などを用いることができる。
【0068】
前記分離膜は、負極と正極を分離し、リチウムイオンの移動通路を提供するものであり、通常リチウム二次電池でセパレータとして使用されるものであれば特別な制限なく使用可能であり、特に電解質のイオン移動に対して低抵抗でありながら、電解液含湿能力に優れたものが好ましい。
【0069】
前記のように本発明によるリチウム二次電池は、携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラなどの携帯用機器、およびハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle、HEV)などの電気自動車分野などにデバイス電源として用いることができる。
【0070】
本発明の他の一実施例による二次電池製造方法は、正極材が正極集電体上に塗布されている正極を含む二次電池を製造する方法であって、前記正極材、導電材、およびバインダーを混合した正極組成物を前記正極集電体上に塗布して正極を製造する段階、および前記正極が含まれている前記二次電池を製造する段階を含み、前記正極材は、非可逆添加剤および正極活物質を含む。
【0071】
まず、前記非可逆添加剤に含まれるリチウムニッケル酸化物(LNO)は、リチウム原料物質と、ニッケル原料物質をチタン原料物質と共に1:1のモル比で混合して熱処理することによって製造される。
【0072】
前記熱処理は、空気雰囲気下、600℃~800℃で10時間~24時間行われる。湿式の場合、乾燥過程をさらに含むことができる。より好ましくは、前記熱処理は、窒素(N)雰囲気下で行われ得る。より好ましくは、前記熱処理は、650℃~750℃で16時間~20時間行われ得る。一例として、前記熱処理は、680℃で18時間行われ得る。前記熱処理は、前述した温度および時間範囲内で行われてこそ、リチウム原料物質とニッケル原料物質、さらにはチタン原料物質との反応が十分に起こることができ、未反応物質を最小化させることができる。
【0073】
前記リチウム原料物質は、リチウム含有酸化物、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、ハライド、水酸化物またはオキシ水酸化物などを用いることができ、具体的にLiO、LiCO、LiNO、LiNO、LiOH、LiOH・HO、LiH、LiF、LiCl、LiBr、LiI、CHCOOLi、LiO、LiSO、CHCOOLi、またはLiなどが挙げられる。これらのうちのいずれか一つまたは二つ以上の混合物を用いることができる。
【0074】
前記ニッケル原料物質は、ニッケル含有酸化物、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、ハライド、水酸化物またはオキシ水酸化物などを用いることができ、具体的にNiO、Ni(NO、Ni(NO、NiSO、Ni(OH)などが挙げられる。これらのうちのいずれか一つまたは二つ以上の混合物を用いることができる。
【0075】
また、本実施例による二次電池製造方法は、前記二次電池製造段階の後に、前記二次電池を0.01以上~0.05以下のCレート(C-rate)で活性化する段階を含む。より具体的に、前記二次電池は、0.015Cレート(C-rate)~0.035Cレート(C-rate)で活性化され得る。一例として、前記二次電池は、0.02Cレート(C-rate)~0.03Cレート(C-rate)で活性化され得る。ここで、活性化は、予め定められたCレート(C-rate)で充放電が行われることを意味し得る。また、活性化は、予め定められたCレート(C-rate)で充電または放電が行われることを意味し得る。
【0076】
また、本実施例による二次電池製造方法は、前記活性化段階の後に、前記二次電池を0.05以上~0.15以下のCレート(C-rate)で少なくとも2回の充放電を行う段階をさらに含むことができる。より具体的に、前記二次電池は、0.07Cレート(C-rate)~0.13Cレート(C-rate)で充放電が行われ得る。一例として、前記二次電池は、0.09Cレート(C-rate)~0.11Cレート(C-rate)で充放電が行われ得る。
【0077】
前記活性化段階および前記充放電段階が前述した範囲を外れて過度に高いCレート(C-rate)で活性化または充放電される場合、前記二次電池に含まれている斜方晶系結晶構造を有するリチウムニッケル酸化物(LNO)が三方晶系結晶構造に変換されないことがあり、過度に低いCレート(C-rate)で活性化または充放電される場合、生産性が低下することがある。
【0078】
これによって、本実施例による二次電池製造方法は、前記二次電池製造段階の後に、前記活性化段階および/または前記充放電段階が行われ得るため、前記二次電池に含まれている前記非可逆添加剤は、前記二次電池の作動範囲(3.0V以上~4.25V以下)内で三方晶系結晶構造または単斜晶系結晶構造のうちのいずれか一つに可逆的に変換されるリチウムニッケル酸化物を含むことができる。
【0079】
より具体的に、本実施例による二次電池製造方法は、前記活性化段階および/または前記充放電段階の前に、前記非可逆添加剤は、斜方晶系(Orthorhombic)結晶構造を有するリチウムニッケル酸化物(LNO)を含む。前記活性化段階および/または前記充放電段階の後に、前記非可逆添加剤に含まれている前記リチウムニッケル酸化物は、前記二次電池の作動範囲が3.0V以上~4.0V以下の範囲で三方晶系(Trigoanl)結晶構造を有することができる。また、前記二次電池の作動範囲が4.0V超過~4.25V以下の範囲で、前記リチウムニッケル酸化物(LNO)は単斜晶系(monoclinic)結晶構造を有することができる。
【0080】
換言すれば、本実施例による二次電池製造方法は、前記活性化段階および/または前記充放電段階の後に、前記二次電池の作動範囲(3.0V以上~4.25V以下)内で斜方晶系結晶構造を有するリチウムニッケル酸化物を含まなくてもよい。
【0081】
つまり、本実施例により製造された二次電池製造方法において、前記活性化段階および/または前記充放電段階の後に、前記非可逆添加剤に含まれているリチウムニッケル酸化物は、結晶構造変化段階のうち、斜方晶系結晶構造から三方晶系結晶構造に変換される段階が作動電圧範囲内で省略されていることがあり、過量のLiイオンの脱離による不純物やガス発生のような付随的に発生する問題を最小化することができる。
【0082】
以下、前述した本発明の実施例と、これと対比される比較例を具体的に実験した内容について説明する。
【0083】
LiO 22.9g、NiO 30gを(モル比1:1)混合した後、N雰囲気下で摂氏685度で18時間熱処理した後、結果の反応物を冷却してリチウムニッケル酸化物(LNO)を得た。得られたリチウムニッケル酸化物(LNO)を非可逆添加剤とし、下記のような方法で正極およびリチウム二次電池を製造した。
【0084】
詳しくは、非可逆添加剤としてリチウムニッケル酸化物(LNO)を、正極活物質としてLiNi0.4Mn0.3Co0.3、カーボンブラック導電材およびPVdFバインダーを、重量比で4.6:87.9:3.5:4の比率でN-メチルピロリドン溶媒内で混合して正極スラリーを製造し、これをアルミニウム集電体に塗布した後、乾燥圧延して正極を製造した。
【0085】
また、負極活物質としてSiOが10重量%混合された人造黒鉛であるメソ炭素微小球(MCMB:mesocarbon microbead)、カーボンブラック導電材およびPVdFバインダーをN-メチルピロリドン溶媒中で重量比で90:5:5の比率で混合して負極形成用組成物を製造し、これを銅集電体に塗布して負極を製造した。
【0086】
前記のように製造された正極と負極との間に多孔性ポリエチレンの分離膜を介して電極組立体を製造し、前記電極組立体をケース内部に位置させた後、ケース内部に電解液を注入してリチウム二次電池を製造した。この時、電解液はエチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/エチルメチルカーボネート(EC/DMC/EMCの混合体積比=3/4/3)からなる有機溶媒に1.15M濃度のリチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF)を溶解して製造した。
【0087】
<比較例>
製造された二次電池を0.1Cレート(C-rate)で3回充放電を行った。
【0088】
<実施例>
製造された二次電池を0.025Cレート(C-rate)で活性化した後、0.1Cレート(C-rate)で2回充放電を行った。
【0089】
<実験例-XRD分析>
前記比較例および前記実施例で充放電が行われた二次電池をex-situ XRDで分析を行い、その結果を図1図4に示した。
【0090】
XRD分析は、Bruker XRD D4設備で測定し、Cuソースターゲット(source target)を使用し、0.02ステップ(step)で10度から80度まで実験した。
【0091】
図2および図3を参照すれば、比較例の二次電池は、30%のSOC、60%のSOC、90%のSOCで充電を行った時、LNO(101)およびLNO(002)ピークが全て検出されることを確認することができる。特に、30%のSOCで充電される場合、可用電圧範囲が3.0V~3.5Vの範囲に該当して、LNO(101)およびLNO(002)ピークが全て検出されることを確認することができる。また、60%のSOCおよび90%のSOCでそれぞれ充電される場合にも、可用電圧範囲が3.0V~4.0Vの範囲、3.0V~4.25Vに該当して、LNO(101)およびLNO(002)ピークが全て検出されることを確認することができる。
【0092】
これによって、比較例のように0.1Cレート(C-rate)で充放電が行われる場合には、非可逆添加剤であるリチウムニッケル酸化物(LNO)のうちの少なくとも一部の構造が変換されず、斜方晶系(Orthorhombic)構造を有することを確認することができる。また、このような可用電圧範囲内でリチウムニッケル酸化物(LNO)のうちの少なくとも一部は斜方晶系(Orthorhombic)結晶構造を有して、斜方晶系結晶構造のリチウムニッケル酸化物(LNO)が三方晶系結晶構造または単斜晶系結晶構造に変化が進行され得る。このような構造変化過程で、比較例の二次電池は副反応の進行またはガス/不純物の発生を伴うと予測される。
【0093】
図4および図5を参照すれば、実施例の二次電池に対して0.025Cレート(C-rate)で活性化した後、0.1Cレート(C-rate)で2回充放電過程の電圧変化によるXRD分析を行い、2回の充放電過程を通じてLNO(101)およびLNO(002)ピークがなくなることを確認することができる。
【0094】
特に、1回の充放電過程ではLNO(101)およびLNO(002)ピークが全て検出されることを確認することができる。しかし、2回の充放電過程ではLNO(101)およびLNO(002)ピークが全て検出されないことを確認することができる。
【0095】
これによって、比較例とは異なり、実施例は2回の充放電過程以前に0.025Cレート(C-rate)で活性化して、非可逆添加剤であるリチウムニッケル酸化物(LNO)の結晶構造が三方晶系結晶構造に変化したことを確認することができる。これは実施例が相対的に遅いCレートでリチウムニッケル酸化物(LNO)を活性化して、既存の充放電過程に比べてリチウムニッケル酸化物(LNO)が三方晶系結晶構造に変化される3.5V~4.0Vの電圧範囲内に相対的に長時間活性化されて、リチウムニッケル酸化物(LNO)が三方晶系結晶構造に変化することができる。
【0096】
これによって、実施例による非可逆添加剤は、可用電圧範囲内で三方晶系結晶構造を有するリチウムニッケル酸化物を含み、前記非可逆添加剤に含まれているリチウムニッケル酸化物は、一般的な構造変化の段階数より少ない数の段階に変化されて、各段階の構造変化が進行されることによって副反応の進行またはガス/不純物の発生を伴うことを最小化させることができる。
【0097】
以上で本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるのではなく、特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の多様な変形および改良形態も本発明の権利範囲に属する。
図1(a)】
図1(b)】
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】