(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-20
(54)【発明の名称】湿式不織布、その作製方法および湿式不織布を含む水処理膜
(51)【国際特許分類】
D21H 15/02 20060101AFI20221213BHJP
B01D 71/34 20060101ALI20221213BHJP
B01D 71/42 20060101ALI20221213BHJP
B01D 71/56 20060101ALI20221213BHJP
B01D 71/16 20060101ALI20221213BHJP
B01D 71/26 20060101ALI20221213BHJP
B01D 71/30 20060101ALI20221213BHJP
B01D 71/66 20060101ALI20221213BHJP
B01D 69/10 20060101ALI20221213BHJP
B01D 69/12 20060101ALI20221213BHJP
B01D 71/48 20060101ALI20221213BHJP
B01D 39/16 20060101ALI20221213BHJP
D21H 27/30 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
D21H15/02
B01D71/34
B01D71/42
B01D71/56
B01D71/16
B01D71/26
B01D71/30
B01D71/66
B01D69/10
B01D69/12
B01D71/48
B01D39/16 A
D21H27/30 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022534474
(86)(22)【出願日】2019-12-30
(85)【翻訳文提出日】2022-06-07
(86)【国際出願番号】 CN2019130137
(87)【国際公開番号】W WO2021134312
(87)【国際公開日】2021-07-08
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518279484
【氏名又は名称】シェンチェン シニア テクノロジー マテリアル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェン、リ
(72)【発明者】
【氏名】ウー、シューチウ
【テーマコード(参考)】
4D006
4D019
4L055
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA06
4D006GA07
4D006MA03
4D006MA09
4D006MC18
4D006MC22
4D006MC27
4D006MC29
4D006MC39
4D006MC48
4D006MC54
4D006MC62
4D006NA46
4D019AA03
4D019BA13
4D019BB05
4D019DA03
4L055AF09
4L055AF15
4L055AF16
4L055AF17
4L055AF24
4L055AF27
4L055AF33
4L055AJ01
4L055BB03
4L055CB16
4L055EA04
4L055EA07
4L055EA08
4L055EA12
4L055EA15
4L055EA16
4L055FA11
4L055FA13
4L055FA30
4L055GA31
4L055GA39
(57)【要約】
湿式不織布、該湿式不織布を水処理膜の支持層とする使用、該湿式不織布を作製する方法、および該湿式不織布を含む水処理膜を提供する。前記湿式不織布は、平均孔径が20μm以下であり、最大孔径が40μm以下であり、最大孔径/平均孔径の比が1以上かつ12以下である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均孔径が20μm以下であり、最大孔径が40μm以下であり、最大孔径/平均孔径の比が1以上かつ12以下である
ことを特徴とする湿式不織布。
【請求項2】
最大孔径/平均孔径の比が1以上かつ8以下であり、好ましくは、1以上かつ6以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の湿式不織布。
【請求項3】
平均孔径は、15μm以下であり、好ましくは、10μm以下であり、より好ましくは、8μm以下である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の湿式不織布。
【請求項4】
最大孔径が35μm以下であり、好ましくは、30μm以下である
ことを特徴とする請求項1-3のいずれか1項に記載の湿式不織布。
【請求項5】
前記湿式不織布は、全体として単層構造であり、少なくとも2つの層が一体に結合して形成されたものである
ことを特徴とする請求項1-4のいずれか1項に記載の湿式不織布。
【請求項6】
前記少なくとも2つの層は、繊維の繊度の互いに異なった第1の層と第2の層とを含む
ことを特徴とする請求項5に記載の湿式不織布。
【請求項7】
前記少なくとも2つの層は、第1の層と第2の層とを含み、前記第1の層の繊維が繊度の異なった2種または複数種の繊維を含み、
前記第2の層が繊度の異なった2種または複数種の繊維を含む
ことを特徴とする請求項5または6に記載の湿式不織布。
【請求項8】
前記第1の層は、繊度が9.20μm以下の幹繊維と繊度が11.27μm以下の接着剤繊維により構成され、前記第2の層は、繊度が13.01μm以下の幹繊維と繊度が14.55μm以下の接着剤繊維により構成され、
好ましくは、第1の層の幹繊維の繊度が第2の層の幹繊維の繊度以下であり、第1の層の接着剤繊維の繊度が第2の層の接着剤繊維の繊度以下である
ことを特徴とする請求項5-7のいずれか1項に記載の湿式不織布。
【請求項9】
前記第1の層の幹繊維の繊度は、8.23μm以下であり、好ましくは、7.70μm以下であり、より好ましくは、6.51-7.70μmであること、
前記第2の層の幹繊維の繊度は、12.35μm以下であり、好ましくは、12.00μm以下であり、より好ましくは、6.51-12.00μmであること、
前記第1の層の接着剤繊維の繊度は、10.89μm以下であり、好ましくは、10.49μm以下であり、より好ましくは、9.65-10.49μmであること、及び/又は、
前記第2の層の接着剤繊維の繊度は、10.89μm以下であり、好ましくは、10.49μm以下であり、より好ましくは、9.65-10.49μmであること、
を特徴とする請求項8に記載の湿式不織布。
【請求項10】
前記第1の層の幹繊維の繊維長さは、1-7mmであり、好ましくは、3-6mmであること、
前記第2の層の幹繊維の繊維長さは、1-7mmであり、好ましくは、3-6mmであること、
前記第1の層の接着剤繊維の繊維長さは、1-7mmであり、好ましくは、3-6mmであること、及び/又は、
前記第2の層の接着剤繊維の繊維長さは、1-7mmであり、好ましくは、3-6mmであること、
を特徴とする請求項8または9に記載の湿式不織布。
【請求項11】
前記第1の層の接着剤繊維の質量分率が20-40%であり、幹繊維の質量分率が60-80%であること、及び/又は、
前記第2の層の接着剤繊維の質量分率が20-40%であり、幹繊維の質量分率が60-80%であること、
を特徴とする請求項8-10のいずれか1項に記載の湿式不織布。
【請求項12】
面密度が60-100g/m
2であること、密度が0.70-1.05g/cm
3であること、通気度が0.5-4.0cc/cm
2/secであること、横方向引張強度が35N/15mm超であること、及び/又は、縦方向引張強度/横方向引張強度の比が1.2-4であることを特徴とする請求項1-10のいずれか1項に記載の湿式不織布。
【請求項13】
前記湿式不織布は、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、ビスコース繊維、およびアクリル繊維の少なくとも1種により作製され、好ましくは、ポリエステル繊維により作製され、ポリエステル繊維が例えばポリエチレンテレフタレート繊維であり、ポリオレフィン繊維が例えばポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、塩化ビニル繊維またはES繊維である
ことを特徴とする請求項1-10のいずれか1項に記載の湿式不織布。
【請求項14】
前記幹繊維は、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、ビスコース繊維、およびアクリル繊維の少なくとも1種であり、好ましくは、ポリエステル繊維であり、ポリエステル繊維が例えばポリエチレンテレフタレート繊維であり、ポリオレフィン繊維が例えばポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、塩化ビニル繊維またはES繊維であること、及び/又は、
前記第1の層の接着剤繊維および第2の層の接着剤繊維のそれぞれは、未延伸ポリエステル接着剤繊維、ポリオレフィン繊維、芯鞘型接着剤繊維のうちの少なくとも1種であること、
好ましくは、前記未延伸ポリエステル接着剤繊維が未延伸ポリエチレンテレフタレート繊維であり、
好ましくは、前記芯鞘型接着剤繊維がCoPET/PET芯鞘構造繊維、PE/PET芯鞘構造繊維およびES繊維からなる群から選択される少なくとも1種である
ことを特徴とする請求項8-13のいずれか1項に記載の湿式不織布。
【請求項15】
請求項1-14のいずれか1項に記載の湿式不織布を水処理膜の支持層とする使用。
【請求項16】
前記第1の層の原材料により前記湿式不織布の第1表面が形成され、前記第1表面に水処理膜材料が塗布されている
ことを特徴とする請求項15に記載の使用。
【請求項17】
請求項1-14のいずれか1項に記載の湿式不織布を作製する方法であって、
抄紙ステップと熱圧ステップとを含む
ことを特徴とする方法。
【請求項18】
前記湿式不織布は請求項6-14のいずれか1項に記載の湿式不織布であり、
前記方法は、前記第1の層の原材料を抄紙して第1原紙を得るステップと、前記第2の層の原材料を抄紙して第2原紙を得るステップと、第1原紙と第2原紙に対して熱圧複合を行うステップとを含み、
好ましくは、鋼ロール/鋼ロール式熱圧装置を利用して前記熱圧または熱圧複合を行い、または鋼ロール/軟質ロール式熱圧装置を利用して前記熱圧または熱圧複合を行い、
好ましくは、前記抄紙の前に、コニカルリファイナーを利用して繊維分散を行うステップをさらに含む
ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
請求項1-14のいずれか1項に記載の湿式不織布と、
前記湿式不織布に塗布されている水処理膜材料と、を含み、
好ましくは、前記水処理膜材料は、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、アセチルセルロース、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリサルホンまたはそれらの組み合わせからなる群から選択され、好ましくはポリサルホンであり、例えばポリエーテルサルフォンである
ことを特徴とする水処理膜。
【請求項20】
前記水処理膜は、逆浸透膜、ナノろ過膜、限外ろ過膜および精密ろ過膜のうちの1種または複数種である
ことを特徴とする、請求項19に記載の水処理膜、または請求項15または16に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、不織布材料の技術分野に属し、より具体的に、水処理膜の支持層として利用される湿式不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
水処理膜の技術は、主に汚水の処理、給水の浄化、海水の淡水化および純水の製造等の分野において広く応用されており、材質によって、水処理膜が無機膜および有機膜に大別している。無機膜は、主にセラミック膜、ガラス膜および金属膜があり、そのろ過精度が比較的に低く、選択性が比較的に低い。有機膜は、分離目的に応じてセルロース樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂等の高分子材料を材料としたものであり、ろ過精度が高く、選択性が高く、水の資源化および工業における特殊分離等の分野において広く応用されている。
【0003】
しかし、有機水処理膜(以下、「水処理膜」と略称する)は、そのポリマー機能層の機械的強度が低く、単独に使用する場合に分離過程における高い液圧に耐えることができないため、不織布をその支持層とすることにより構造強度を提供することが一般的である。
【0004】
水処理膜の高い通液量および高いろ過性能を保証するため、その機能層に対して孔径およびその分布が高く要求され、このため、支持層である不織布に対しても孔径サイズおよび均一な孔径分布を適切にコントロールしなければならない。
【0005】
ポリエステル不織布は、単層接着のプロセスで作製することが一般的であるが、2層接着または多層接着のプロセスに対して、単層接着の場合、大きな貫通孔が生じやすく、特に、繊維の不均一分散の部分において発生しやすい。不織布に貫通孔が形成されると、水処理膜の塗布層にピンホールが生じ、膜の高いろ過性能が保証できなくなる。これは、水処理膜、特に逆浸透膜にとって致命的な欠陥になる。
【発明の概要】
【0006】
本開示に係る湿式不織布は、平均孔径が20μm以下であり、最大孔径が40μm以下であり、最大孔径/平均孔径の比が1以上かつ12以下である。
【0007】
いくつかの実施形態において、前記湿式不織布は、最大孔径/平均孔径の比が1以上かつ8以下であり、好ましくは、1以上かつ6以下である。
【0008】
いくつかの実施形態において、前記湿式不織布は、平均孔径が15μm以下であり、好ましくは、10μm以下であり、より好ましくは、8μm以下である。
【0009】
いくつかの実施形態において、前記湿式不織布は、最大孔径が35μm以下であり、好ましくは、30μm以下である。
【0010】
いくつかの実施形態において、前記湿式不織布は、全体として単層構造であり、少なくとも2つの層が一体に結合して形成されたものである。
【0011】
いくつかの実施形態において、前記少なくとも2つの層は、繊維の繊度の互いに異なった第1の層と第2の層とを含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、前記少なくとも2つの層は、第1の層と第2の層とを含み、前記第1の層の繊維が繊度の異なった2種または複数種の繊維を含み、
【0013】
前記第2の層が繊度の異なった2種または複数種の繊維を含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、前記第1の層は、繊度が9.20μm以下の幹繊維と繊度が11.27μm以下の接着剤繊維により構成され、前記第2の層は、繊度が13.01μm以下の幹繊維と繊度が14.55μm以下の接着剤繊維により構成される。
【0015】
いくつかの実施形態において、第1の層の幹繊維の繊度が第2の層の幹繊維の繊度以下であり、第1の層の接着剤繊維の繊度が第2の層の接着剤繊維の繊度以下である。
【0016】
いくつかの実施形態において、前記第1の層の幹繊維の繊度は、8.23μm以下であり、例えば7.70μm以下であり、例えば6.51-7.70μmである。
【0017】
いくつかの実施形態において、前記第2の層の幹繊維の繊度は、12.35μm以下であり、例えば12.00μm以下であり、例えば6.51-12.00μmである。
【0018】
いくつかの実施形態において、前記第1の層の接着剤繊維の繊度は、10.89μm以下であり、例えば10.49μm以下であり、例えば9.65-10.49μmである。
【0019】
いくつかの実施形態において、前記第2の層の接着剤繊維の繊度は、10.89μm以下であり、例えば10.49μm以下であり、例えば9.65-10.49μmである。
【0020】
いくつかの実施形態において、前記第1の層の幹繊維の繊維長さは、1-7mmであり、例えば3-6mmである。
【0021】
いくつかの実施形態において、前記第2の層の幹繊維の繊維長さは、1-7mmであり、好ましくは、3-6mmである。
【0022】
いくつかの実施形態において、前記第1の層の接着剤繊維の繊維長さは、1-7mmであり、好ましくは、3-6mmである。
【0023】
いくつかの実施形態において、前記第2の層の接着剤繊維の繊維長さは、1-7mmであり、好ましくは、3-6mmである。
【0024】
いくつかの実施形態において、前記第1の層の接着剤繊維の質量分率が20-40%であり、幹繊維の質量分率が60-80%である。
【0025】
いくつかの実施形態において、前記第2の層の接着剤繊維の質量分率が20-40%であり、幹繊維の質量分率が60-80%である。
【0026】
いくつかの実施形態において、前記湿式不織布は、面密度が60-100g/m2であり、密度が0.70-1.05g/cm3であり、通気度が0.5-4.0cc/cm2/secであり、横方向引張強度が35N/15mm超であり、及び/又は、縦方向引張強度/横方向引張強度の比が1.2-4である。
【0027】
いくつかの実施形態において、前記湿式不織布は、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、ビスコース繊維、およびアクリル繊維の少なくとも1種により作製され、好ましくは、ポリエステル繊維により作製され、ポリエステル繊維が例えばポリエチレンテレフタレート繊維であり、ポリオレフィン繊維例えばポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、塩化ビニル繊維またはES繊維である。
【0028】
いくつかの実施形態において、前記幹繊維は、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、ビスコース繊維、およびアクリル繊維の少なくとも1種であり、好ましくは、ポリエステル繊維であり、ポリエステル繊維が例えばポリエチレンテレフタレート繊維であり、ポリオレフィン繊維が例えばポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、塩化ビニル繊維またはES繊維である。
【0029】
いくつかの実施形態において、前記第1の層の接着剤繊維および第2の層の接着剤繊維のそれぞれは、未延伸ポリエステル接着剤繊維、ポリオレフィン繊維、芯鞘型接着剤繊維のうちの少なくとも1種である。
【0030】
いくつかの実施形態において、前記未延伸ポリエステル接着剤繊維が未延伸ポリエチレンテレフタレートである。
【0031】
本明細書における未延伸ポリエステル接着剤繊維は、延伸されていないポリエステル繊維を指しており、延伸されていないため、融点が比較的に低く、接着剤繊維として適する。例えば、典型的な未延伸ポリエステル接着剤繊維として、未延伸ポリエチレンテレフタレート繊維がある。
【0032】
いくつかの実施形態において、前記芯鞘型接着剤繊維がCoPET/PET芯鞘構造繊維、PE/PET芯鞘構造繊維およびES繊維からなる群から選択される少なくとも1種である。
【0033】
本開示は、上記の湿式不織布を水処理膜の支持層とする使用をさらに提供する。
【0034】
いくつかの実施形態において、前記第1の層の原材料により前記湿式不織布の第1表面が形成され、前記第1表面に水処理膜材料が塗布されている。
【0035】
本開示に係る、本開示に係る湿式不織布を作製する方法は、熱圧ステップを含む。
【0036】
いくつかの実施形態において、前記湿式不織布は、本明細書におけるいくつかの実施形態による湿式不織布であり、前記方法は、前記第1の層の原材料を抄紙して第1原紙を得るステップと、前記第2の層の原材料を抄紙して第2原紙を得るステップと、第1原紙と第2原紙に対して熱圧複合を行うステップとを含む。
【0037】
いくつかの実施形態において、鋼ロール/鋼ロール式熱圧装置を利用して前記熱圧または熱圧複合を行い、または鋼ロール/軟質ロール式熱圧装置を利用して前記熱圧または熱圧複合を行う。
【0038】
いくつかの実施形態において、上記の方法は、前記抄紙の前に、コニカルリファイナーを利用して繊維分散を行うステップをさらに含む。
【0039】
本開示に係る水処理膜は、
【0040】
上記の湿式不織布と、
【0041】
前記湿式不織布に塗布されている水処理膜材料と、を含む。
【0042】
いくつかの実施形態において、前記水処理膜材料は、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、アセチルセルロース、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリサルホンまたはそれらの組み合わせからなる群から選択され、好ましくはポリサルホンであり、例えばポリエーテルサルフォンである。
【0043】
いくつかの実施形態において、前記水処理膜は、逆浸透膜、ナノろ過膜、限外ろ過膜および精密ろ過膜のうちの1種または複数種である。
【0044】
本開示の実施形態の技術案をより明瞭に説明するため、以下、実施形態に使用する図面を簡単に説明する。図面は、本開示のいくつかの実施形態を示すものにすぎないため、範囲に対する限定とみなすべきではない。当業者は、発明能力を用いなくても、これらの図面をもとに他の関係図面を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】本開示の実施例1による不織布サンプルの実物写真(A4サイズ)である。
【
図2】本開示の実施例1による不織布サンプルの電子顕微鏡写真である。
【
図3】本開示の実施例1による実施例サンプル1の実物写真である。
【
図4】本開示の実施例1による実施例サンプル1の塗布層表面の電子顕微鏡写真である。
【
図5】本開示の実施例1による実施例サンプル1の横断面の電子顕微鏡写真である。
【
図6】本開示の実施例1による実施例サンプル1の横断面の電子顕微鏡拡大写真である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本開示の実施形態の目的、技術案および利点をより明瞭にするため、以下、本開示の実施形態における技術案を明瞭、完全に説明する。実施形態において、具体的な条件を明記しないことについて、従来の条件またはメーカーの勧めの条件下で行う。使用する試剤または器械の、製造メーカーが明記されていないものについて、市販の従来品を使用することが可能である。
【0047】
特に断りがない限り、本開示に使用する科学的用語や技術的用語は、当業者が通常認識している意味を有する。以下、例示的な方法や材料を説明するが、本明細書に説明するものと類似または同等の方法や材料も本開示の実践またはテストに利用してもよい。
【0048】
本開示に係る湿式不織布は、平均孔径が20μm以下であり、最大孔径が40μm以下であり、最大孔径/平均孔径の比が1以上かつ12以下である。
【0049】
いくつかの実施形態において、前記湿式不織布は、最大孔径/平均孔径の比が1以上かつ8以下であり、好ましくは、1以上かつ6以下である。
【0050】
いくつかの実施形態において、前記湿式不織布は、平均孔径が15μm以下であり、好ましくは、10μm以下であり、より好ましくは、8μm以下である。
【0051】
いくつかの実施形態において、前記湿式不織布は、最大孔径が35μm以下であり、好ましくは、30μm以下である。
【0052】
水処理膜を作製するプロセスにおいて、平均孔径が20μmよりも大きく、最大孔径が40μmよりも大きくなると、製膜溶液が上層から下層まで浸透しやすく、塗布層に貫通孔が生じ、そして、製膜溶液がガイドロールの表面に付着し、異物汚染になってしまう。逆に、孔径が小さすぎになると、塗布液の不織布の表面における浸透の度合いが不足で、塗布層の支持層に対する結合力が足りなくなってしまう。また、最大孔径/平均孔径の比が12よりも大きくなると、不織布がもつ空気の、相分離過程において水と交換する速度が不均一で、塗布層の固化成膜の均一性が影響される。このため、本開示のいくつかの実施形態において、最大孔径/平均孔径の比を1以上かつ12以下の範囲内に収めることにより、不織布の均一の孔径分布を保証する。比較的に小さい最大孔径/平均孔径の比を得るため、いくつかの実施形態において、コニカルリファイナーを利用して繊維の分散を行う。
【0053】
いくつかの実施形態において、前記湿式不織布は、全体として単層構造であり、少なくとも2つの層が一体に結合して形成されたものである。
【0054】
本明細書において、「全体として単層構造であり」とは、不織布が、分離の複数の層を有するものではなく、一体の不織布であり、全体として単層構造である不織布が互いに結合(例えば溶接)される2つまたは複数の層により構成される。このため、本開示において、不織布は、分離不可のように互いに結合した2つまたは複数の層を含む。
【0055】
いくつかの実施形態において、前記少なくとも2つの層は、繊維の繊度の互いに異なった第1の層と第2の層とを含む。第1の層と第2の層が互いに結合されまたは一体に接着される。いくつかの実施形態において、第1の層と第2の層が一体に溶接される。いくつかの実施形態において、第1の層と第2の層が熱接着により一体に結合または接着される。
【0056】
いくつかの実施形態において、前記少なくとも2つの層は、第1の層と第2の層とを含み、前記第1の層の繊維が繊度の異なる2種または複数種の繊維を含み、前記第2の層の繊維が、繊度の異なった2種または複数種の繊維を含む。
【0057】
本開示に係る不織布は、少なくとも2層の、繊維の繊度の異なった原料の原紙に対して熱間圧延複合を行って形成した単層構造のものであり、2層複合の構造を採用すれば、1つの層に貫通孔が生じたとき、もう1つの層でそれをカバーすることができるため、不織布に2つの層を貫通する貫通孔が生じるのを防止することができる。2層の原紙に対して熱間圧延複合を行うとき、温度範囲が220-230°Cであり、熱プレスロールのコンビネーションとして、金属ロール/金属ロールのコンビネーション、または金属ロール/軟質ロールのコンビネーションを採用でき、金属ロール/金属ロールのコンビネーションの場合、熱接着効果および物性を容易に制御でき、金属ロール/軟質ロールのコンビネーションの場合、厚さの同一性を容易に制御できる。また、2層構造は、例えば2層傾斜網製紙機または傾斜網-円網複合製紙機を利用して湿式抄紙法で直接作製してもよく、その後に熱圧で融着させる。
【0058】
いくつかの実施形態において、前記第1の層は、繊度が9.20μm以下の幹繊維と繊度が11.27μm以下の接着剤繊維により構成され、前記第2の層は、繊度が13.01μm以下の幹繊維と繊度が14.55μm以下の接着剤繊維により構成される。
【0059】
いくつかの実施形態において、第1の層は、上層とも呼ばれ、その表面に水処理膜材料、即ち製膜溶液を塗布する面である。
【0060】
いくつかの実施形態において、第2の層は、下層とも呼ばれる。
【0061】
上層の幹繊維の繊度が9.20μmよりも大きく、接着剤繊維の繊度が11.27μmよりも大きくなると、大きい穴が生じる可能性が高くなり、平均孔径および最大孔径の小径化にも寄与できなく、製膜溶液が貫通孔を通って上層から下層まで浸透しやすいので、塗布層にピンホールが生じる等の欠陥が発生する可能性が高くなる。下層の幹繊維の繊度が13.01μmよりも大きく、接着剤繊維の繊度が14.55μmよりも大きくなると、大きい穴が生じる可能性が高くなり、平均孔径および最大孔径の小径化に寄与できない。
【0062】
いくつかの実施形態において、第1の層の幹繊維の繊度が第2の層の幹繊維の繊度以下であり、第1の層の接着剤繊維の繊度が第2の層の接着剤繊維の繊度以下である。
【0063】
本開示は、上層および下層に対してそれぞれ繊度の異なった繊維を使用し、上層の繊維の繊度が下層の繊維の繊度以下である案を用いることにより、下層のもつ空気が相分離過程において素早く排出されるため、空気が下層に残留されて、塗布層に進入して気泡を形成し、小さい気泡が集まって大きな気泡になり、塗布層に大きなピンホールが形成されてしまうことを防ぐことができる。
【0064】
いくつかの実施形態において、前記第1の層の幹繊維の繊度は、8.23μm以下であり、または7.70μm以下であり、または6.51-7.70μmである。
【0065】
いくつかの実施形態において、前記第1の層の接着剤繊維の繊度は、10.89μm以下であり、好ましくは、10.49μm以下であり、より好ましくは、9.65-10.49μmである。
【0066】
いくつかの実施形態において、前記第2の層の幹繊維の繊度は、12.35μm以下であり、好ましくは、12.00μm以下であり、より好ましくは、6.51-12.00μmである。
【0067】
いくつかの実施形態において、前記第2の層の接着剤繊維の繊度は、10.89μm以下であり、好ましくは、10.49μm以下であり、より好ましくは、9.65-10.49μmである。
【0068】
下層の幹繊維の繊度が13.01μmよりも大きく、接着剤繊維の繊度が14.55μmよりも大きくなると、大きい穴が生じる可能性が高くなり、平均孔径および最大孔径の小径化に寄与できない。
【0069】
いくつかの実施形態において、前記第1の層の幹繊維の繊維長さは、1-7mmであり、好ましくは、3-6mmである。
【0070】
いくつかの実施形態において、前記第2の層の幹繊維の繊維長さは、1-7mmであり、好ましくは、3-6mmである。
【0071】
いくつかの実施形態において、前記第1の層の接着剤繊維の繊維長さは、1-7mmであり、好ましくは、3-6mmである。
【0072】
いくつかの実施形態において、前記第2の層の接着剤繊維の繊維長さは、1-7mmであり、好ましくは、3-6mmである。
【0073】
いくつかの実施形態において、前記第1の層の接着剤繊維の質量分率が20-40%であり、幹繊維の質量分率が60-80%である。
【0074】
いくつかの実施形態において、前記第2の層の接着剤繊維の質量分率が20-40%であり、幹繊維の質量分率が60-80%である。
【0075】
いくつかの実施形態において、前記湿式不織布は、面密度が60-100g/m2である。
【0076】
本開示に係る不織布は、その面密度が60-100g/m2である。面密度が60g/m2よりも低くなると、水処理膜として十分の引張強度、特に横方向の強度を保つことが困難であり、水処理膜が高い液圧に耐えることができなくなり、破裂するおそれもある。また、面密度が低すぎになると、塗布液が不織布の上表面から下表面まで浸透するおそれもある。逆に、面密度が100g/m2よりも高くなると、同密度の場合、厚すぎになり、所定仕様のろ過膜アッセンブリーを組み立てるとき、十分のろ過面積まで組み立てることができない。
【0077】
いくつかの実施形態において、前記湿式不織布は、密度が0.70-1.05g/cm3である。
【0078】
本開示に係る不織布は、その密度が0.70-1.05g/cm3である。密度が0.70g/cm3よりも低くなると、塗布液の不織布表面での浸透が多すぎになり、そして、上表面から下表面まで浸透しやすくなってしまう。密度が1.05g/cm3よりも高くなると、塗布液の不織布表面での浸透が十分ではなく、塗布層の支持層に対する結合力の不十分になりやすい。
【0079】
いくつかの実施形態において、前記湿式不織布は、通気度が0.5-4.0cc/cm2/secである。
【0080】
本開示に係る不織布は、その通気度の値が0.5-4.0cc/cm2/secである。通気度の値が0.5cc/cm2/secよりも小さくなると、水処理膜のろ過過程においてより大きな液圧を加圧する必要があり、ろ過効率が非常に低下してしまう。通気度が4.0cc/cm2/secよりも高くなると、塗布層の孔径が大きすぎになり、ろ過効率が低下し、優れるろ過性能を得ることが困難である。
【0081】
いくつかの実施形態において、前記湿式不織布は、横方向引張強度が35N/15mm超である。
【0082】
いくつかの実施形態において、前記湿式不織布は、縦方向引張強度/横方向引張強度の比が1.2-4である。
【0083】
本開示に係る不織布は、その横方向引張強度が35N/15mm超であり、縦方向引張強度/横方向引張強度の比が1.2-4である。横方向の引張強度が35N/15mm未満になると、強度が小さすぎで、生産ラインにおいて塗布を行うことが困難になり、引き裂きが発生することもある。縦方向引張強度/横方向引張強度の比が4よりも大きくなると、縦方向のシワが生じることがあり、これは熱圧延の過程における横方向の熱収縮に関わると考えられる。低い面密度および低い密度の条件下で、横方向の引張強度が、本開示において規定した下限である35N/15mmに近く、改善方法としてこの条件下で芯鞘型接着繊維と単一の接着剤繊維とを混合して使用することが効果的であり、強度の増加に寄与できる。
【0084】
このように、本開示は、不織布の孔径サイズおよび孔径の分布をコントロールすることにより、水処理膜材料塗布層に欠陥が発生する確率、特に塗布層におけるピンホールの生じる確率を低減させる。上層および下層に対してそれぞれ繊度の異なった繊維を使用し、上層の繊維の繊度が下層の繊維の繊度以下であるようにすることにより、塗布層の相分離過程での水、空気および製膜溶液における溶剤の素早い交換を実現して、塗布層における孔欠陥の発生を抑える。
【0085】
いくつかの実施形態において、前記湿式不織布は、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、ビスコース繊維、およびアクリル繊維の少なくとも1種により作製され、ポリエステル繊維が例えばポリエチレンテレフタレート繊維であり、ポリオレフィン繊維が例えばポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、塩化ビニル繊維またはES(Ethylene―Propylene Side by Side)繊維である。
【0086】
いくつかの実施形態において、前記湿式不織布は、ポリエステル繊維により作製される。
【0087】
いくつかの実施形態において、前記幹繊維は、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、ビスコース繊維、およびアクリル繊維の少なくとも1種であり、ポリエステル繊維が例えばポリエチレンテレフタレート繊維であり、ポリオレフィン繊維が例えばポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、塩化ビニル繊維またはES繊維である。
【0088】
いくつかの実施形態において、前記幹繊維は、ポリエステル繊維である。
【0089】
いくつかの実施形態において、前記接着剤繊維は、未延伸ポリエステル接着剤繊維、ポリオレフィン繊維、芯鞘型接着剤繊維の任意の1種またはそれらの組み合わせである。前記未延伸ポリエステル接着剤繊維は、未延伸ポリエチレンテレフタレート繊維であることが好ましい。前記芯鞘型接着剤繊維は、CoPET/PET芯鞘構造繊維、PE/PET芯鞘構造繊維、ES繊維等である。
【0090】
本開示は、本開示に係る湿式不織布を水処理膜の支持層とする使用をさらに提供する。
【0091】
いくつかの実施形態において、前記第1の層の原材料により前記湿式不織布の第1表面が形成され、前記第1表面に水処理膜材料が塗布されている。
【0092】
本開示は、抄紙ステップと熱圧ステップとを含む、本開示に係る湿式不織布を作製する方法をさらに提供する。
【0093】
いくつかの実施形態において、前記方法は、前記第1の層の原材料を抄紙して第1原紙を得るステップと、前記第2の層の原材料を抄紙して第2原紙を得るステップと、第1原紙と第2原紙に対して熱圧複合を行うステップとを含む。
【0094】
いくつかの実施形態において、鋼ロール/鋼ロール式熱圧装置を利用して前記熱圧または熱圧複合を行い、または
【0095】
鋼ロール/軟質ロール式熱圧装置を利用して前記熱圧または熱圧複合を行う。
【0096】
本開示は、本開示に係る湿式不織布と、前記湿式不織布に塗布されている水処理膜材料とを含む水処理膜をさらに提供する。
【0097】
いくつかの実施形態において、前記水処理膜材料は、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、アセチルセルロース、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリサルホンまたはそれらの組み合わせからなる群から選択され、好ましくはポリサルホンであり、例えばポリエーテルサルフォンである。
【0098】
いくつかの実施形態において、前記水処理膜は、逆浸透膜、ナノろ過膜、限外ろ過膜および精密ろ過膜のうちの1種または複数種である。
【0099】
実施例1
【0100】
本実施例による水処理膜の支持層とされる湿法ポリエステル不織布は、具体的な繊維配合が表1に示されている。
【0101】
【0102】
コニカルリファイナーを利用してポリエステル繊維を分散させ、そして、傾斜網製紙機を利用してそれぞれ面密度が37.7g/m2の上層原紙および面密度が37.9g/m2の下層原紙を抄紙し、そして、2層の原紙に対して熱圧複合を行い、熱圧装置として鋼ロール/鋼ロールのコンビネーションのものを利用し、面密度が75.6g/m2のポリエステル不織布を得た。
【0103】
そして、得られたポリエステル不織布をA4サイズに裁断してサンプルとし、その上層の外面にポリサルホン層を塗布し、塗布液が重量で7.5%のポリサルホン/92.5%のN-メチルピロリドンにより配合され、塗布後に水に入れて相分離を行い、10min後に取り出して室温条件下で乾燥させ、実施例サンプル1を得た。
【0104】
実施例2
【0105】
熱圧装置として鋼ロール/軟質ロールのコンビネーションのものを利用し、実施例1と同様な方法で実施例サンプル2を得た。
【0106】
実施例3
【0107】
本実施例による水処理膜の支持層とされる湿法ポリエステル不織布は、具体的な繊維配合が表2に示されている。
【0108】
【0109】
不織布の作製の流れが上記の実施例1と同様で、熱圧装置として鋼ロール/鋼ロールのコンビネーションのものを利用し、面密度が74.5g/m2のポリエステル不織布を得た。
【0110】
そして、得られたポリエステル不織布をA4サイズに裁断してサンプルとし、その上層の外面にポリサルホン層を塗布し、塗布液が重量で7.5%のポリサルホン/92.5%のN-メチルピロリドンにより配合され、塗布後に水に入れて相分離を行い、10min後に取り出して室温条件下で乾燥させ、実施例サンプル3を得た。
【0111】
比較例1
【0112】
具体的な繊維配合は表3に示されている。
【0113】
【0114】
コニカルリファイナーを利用してポリエステル繊維を分散させ、そして、傾斜網製紙機を利用してそれぞれ面密度が37.5g/m2の上層原紙および面密度が37.9g/m2の下層原紙を抄紙し、そして、2層の原紙に対して熱圧複合を行い、熱圧装置として鋼ロール/鋼ロールのコンビネーションのものを利用し、面密度が75.6g/m2のポリエステル不織布を得た。そして、得られたポリエステル不織布をA4サイズに裁断してサンプルとし、その上層の外面にポリサルホン層を塗布し、塗布液が重量で7.5%のポリサルホン/92.5%のN-メチルピロリドンにより配合され、塗布後に水に入れて相分離を行い、10min後に取り出して室温条件下で乾燥させ、比較例サンプル1を得た。
【0115】
性能テスト
【0116】
本明細書の実施例において、水処理膜の支持層とされる湿法ポリエステル不織布の関係技術の指標が下記の基準に準ずる。ポリエステル不織布の「面密度」は、GB/T451.2-2002に規定する方法により測定し、ポリエステル不織布の「密度」は、ポリエステル不織布の「面密度」をポリエステル不織布の「厚さ」で割って得、ポリエステル不織布の「厚さ」は、GB/T451.3-2002に規定する方法により測定し、ポリエステル不織布の「通気度」は、GB/T24218.15-2018に規定する方法により測定し、ポリエステル不織布の「孔径」は、GB/T32361-2015に規定する方法により測定し、ポリエステル不織布の「引張強度」は、GB/T12914-2008に規定する方法により測定した。
【0117】
実施例1-3サンプルおよび比較例サンプルの性能をそれぞれテストし、テストの結果が表4に示されている。
【0118】
表4から分かるように、本開示の実施例1-3のサンプルは、性能が優れ、特にピンホール数および塗布液の裏面までの浸透の2項目で優れた性能が見られ、つまり、ピンホールがなく、塗布液が裏面まで浸透することがなかった。これに対して、比較例サンプルの平均孔径が16.1μmであり、最大孔径が134μmであり、最大孔径/平均孔径の比が8.3であり、それにより作製した水処理膜の塗布層に100個超のピンホールを有し、そして、塗布液の裏面までの浸透量が0.2m2/m2よりも多かった。このため、本開示の実施例により作製して得た水処理膜は、性能が比較例による水処理膜より顕著に優れている。
【0119】
【0120】
上記は、本開示の好ましい実施形態にすぎなく、本開示を限定するものではなく、当業者にとって、本開示に各種の変更や変化を有してもよい。本開示の精神および主旨内であれば、行われるすべての変更、均等置換、改良等も、本開示の保護範囲に属する。
【0121】
産業上の利用可能性
【0122】
本開示は、ポリエステル不織布の孔径サイズおよび孔径分布をコントロールすることにより、水処理膜材料塗布層に欠陥が発生する確率、特に塗布層におけるピンホールの生じる確率を低減させる。上層および下層に対してそれぞれ繊度の異なった繊維を使用し、上層の繊維の繊度が下層の繊維の繊度以下であるようにすることにより、塗布層の相分離過程での水、空気および製膜溶液における溶剤の素早い交換を実現して、塗布層における孔欠陥の発生を抑える。
【手続補正書】
【提出日】2022-06-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均孔径が
10μm以下であり、最大孔径が40μm以下であり、最大孔径/平均孔径の比が1以上かつ12以下であ
り、
全体として単層構造であり、少なくとも2つの層が一体に結合して形成されたものであり、前記少なくとも2つの層は、第1の層と第2の層とを含み、
前記第1の層は、繊度が9.20μm以下の幹繊維と繊度が11.27μm以下の接着剤繊維により構成され、前記第2の層は、繊度が13.01μm以下の幹繊維と繊度が14.55μm以下の接着剤繊維により構成され、
第1の層の幹繊維の繊度が第2の層の幹繊維の繊度以下であり、第1の層の接着剤繊維の繊度が第2の層の接着剤繊維の繊度以下である
ことを特徴とする湿式不織布。
【請求項2】
最大孔径/平均孔径の比が1以上かつ8以下で
ある
ことを特徴とする請求項1に記載の湿式不織布。
【請求項3】
平均孔径は
、8μm以下である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の湿式不織布。
【請求項4】
最大孔径が35μm以下で
ある
ことを特徴とする請求項1
または2に記載の湿式不織布。
【請求項5】
最大孔径が30μm以下である
ことを特徴とする請求項1
または2に記載の湿式不織布。
【請求項6】
前記第1の層と前記第2の層とは、繊維の繊度が互いに異なる
ことを特徴とする請求項
1または2に記載の湿式不織布。
【請求項7】
前記第1の層の繊維が繊度の異なった2種または複数種の繊維を含み、
前記第2の層が繊度の異なった2種または複数種の繊維を含む
ことを特徴とする請求項
1または
2に記載の湿式不織布。
【請求項8】
最大孔径/平均孔径の比が1以上かつ6以下である
ことを特徴とする請求項
1または2に記載の湿式不織布。
【請求項9】
前記第1の層の幹繊維の繊度は、8.23μm以下で
あること、
前記第2の層の幹繊維の繊度は、12.35μm以下で
あること、
前記第1の層の接着剤繊維の繊度は、10.89μm以下で
あること、及び/又は、
前記第2の層の接着剤繊維の繊度は、10.89μm以下で
あること、
を特徴とする請求項8に記載の湿式不織布。
【請求項10】
前記第1の層の幹繊維の繊度は、7.70μm以下であること、
前記第2の層の幹繊維の繊度は、12.00μm以下であること、
前記第1の層の接着剤繊維の繊度は、10.49μm以下であること、及び/又は、
前記第2の層の接着剤繊維の繊度は、10.49μm以下であること、
を特徴とする請求項8に記載の湿式不織布。
【請求項11】
前記第1の層の幹繊維の繊度は、6.51-7.70μmであること、
前記第2の層の幹繊維の繊度は、6.51-12.00μmであること、
前記第1の層の接着剤繊維の繊度は、9.65-10.49μmであること、及び/又は、
前記第2の層の接着剤繊維の繊度は、9.65-10.49μmであること、
を特徴とする請求項8に記載の湿式不織布。
【請求項12】
前記第1の層の幹繊維の繊維長さは、1-7mmで
あること、
前記第2の層の幹繊維の繊維長さは、1-7mmで
あること、
前記第1の層の接着剤繊維の繊維長さは、1-7mmで
あること、及び/又は、
前記第2の層の接着剤繊維の繊維長さは、1-7mmで
あること、
を特徴とする請求項
8に記載の湿式不織布。
【請求項13】
前記第1の層の幹繊維の繊維長さは、3-6mmであること、
前記第2の層の幹繊維の繊維長さは、3-6mmであること、
前記第1の層の接着剤繊維の繊維長さは、3-6mmであること、及び/又は、
前記第2の層の接着剤繊維の繊維長さは、3-6mmであること、
を特徴とする請求項8に記載の湿式不織布。
【請求項14】
前記第1の層の接着剤繊維の質量分率が20-40%であり、幹繊維の質量分率が60-80%であること、及び/又は、
前記第2の層の接着剤繊維の質量分率が20-40%であり、幹繊維の質量分率が60-80%であること、
を特徴とする請求項
8に記載の湿式不織布。
【請求項15】
面密度が60-100g/m
2であること、密度が0.70-1.05g/cm
3であること、通気度が0.5-4.0cc/cm
2/secであること、横方向引張強度が35N/15mm超であること、及び/又は、縦方向引張強度/横方向引張強度の比が1.2-4であることを特徴とする請求項1
または2に記載の湿式不織布。
【請求項16】
前記湿式不織布は、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、ビスコース繊維、およびアクリル繊維の少なくとも1種により作製さ
れる
ことを特徴とする請求項1
または2に記載の湿式不織布。
【請求項17】
前記ポリエステル繊維がポリエチレンテレフタレート繊維である
ことを特徴とする請求項16に記載の湿式不織布。
【請求項18】
前記ポリオレフィン繊維がポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、塩化ビニル繊維またはES繊維である
ことを特徴とする請求項16に記載の湿式不織布。
【請求項19】
前記幹繊維は、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、ビスコース繊維、およびアクリル繊維の少なくとも1種で
あること、及び/又は、
前記第1の層の接着剤繊維および第2の層の接着剤繊維のそれぞれは、未延伸ポリエステル接着剤繊維、ポリオレフィン繊維、芯鞘型接着剤繊維のうちの少なくとも1種であること
、
を特徴とする請求項
8に記載の湿式不織布。
【請求項20】
前記ポリエステル繊維がポリエチレンテレフタレート繊維である
ことを特徴とする請求項19に記載の湿式不織布。
【請求項21】
前記ポリオレフィン繊維がポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、塩化ビニル繊維またはES繊維である
ことを特徴とする請求項19に記載の湿式不織布。
【請求項22】
前記未延伸ポリエステル接着剤繊維が未延伸ポリエチレンテレフタレート繊維である
ことを特徴とする請求項19に記載の湿式不織布。
【請求項23】
前記芯鞘型接着剤繊維がCoPET/PET芯鞘構造繊維、PE/PET芯鞘構造繊維およびES繊維からなる群から選択される少なくとも1種である
ことを特徴とする請求項19に記載の湿式不織布。
【請求項24】
請求項1-
23のいずれか1項に記載の湿式不織布を水処理膜の支持層とする使用。
【請求項25】
前記第1の層の原材料により前記湿式不織布の第1表面が形成され、前記第1表面に水処理膜材料が塗布されている
ことを特徴とする請求項
24に記載の使用。
【請求項26】
請求項1-
23のいずれか1項に記載の湿式不織布を作製する方法であって、
抄紙ステップと熱圧ステップとを含む
ことを特徴とする方法。
【請求項27】
前記湿式不織布は請求項6-
23のいずれか1項に記載の湿式不織布であり、
前記方法は、前記第1の層の原材料を抄紙して第1原紙を得るステップと、前記第2の層の原材料を抄紙して第2原紙を得るステップと、第1原紙と第2原紙に対して熱圧複合を行うステップとを
含む
ことを特徴とする請求項
26に記載の方法。
【請求項28】
鋼ロール/鋼ロール式熱圧装置を利用して前記熱圧または熱圧複合を行い、または鋼ロール/軟質ロール式熱圧装置を利用して前記熱圧または熱圧複合を行う
ことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記抄紙の前に、コニカルリファイナーを利用して繊維分散を行うステップをさらに含む
ことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項30】
請求項1-
23のいずれか1項に記載の湿式不織布と、
前記湿式不織布に塗布されている水処理膜材料と、を含
む
ことを特徴とする水処理膜。
【請求項31】
前記水処理膜材料は、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、アセチルセルロース、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリサルホンまたはそれらの組み合わせからなる群から選択される
ことを特徴とする請求項30に記載の水処理膜。
【請求項32】
前記ポリサルホンがポリエーテルサルフォンである
ことを特徴とする請求項30に記載の水処理膜。
【請求項33】
前記水処理膜は、逆浸透膜、ナノろ過膜、限外ろ過膜および精密ろ過膜のうちの1種または複数種である
ことを特徴とする、請求項
30-32のいずれか1項に記載の水処理膜、または請求項
24または
25に記載の使用。
【国際調査報告】