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特表2022-552970自動車グレージング上の外部事象を評価する方法
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  • 特表-自動車グレージング上の外部事象を評価する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-21
(54)【発明の名称】自動車グレージング上の外部事象を評価する方法
(51)【国際特許分類】
   G01H 17/00 20060101AFI20221214BHJP
【FI】
G01H17/00 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022522312
(86)(22)【出願日】2020-10-09
(85)【翻訳文提出日】2022-04-13
(86)【国際出願番号】 EP2020078490
(87)【国際公開番号】W WO2021074041
(87)【国際公開日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】19204093.9
(32)【優先日】2019-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】510191919
【氏名又は名称】エージーシー グラス ユーロップ
【氏名又は名称原語表記】AGC GLASS EUROPE
【住所又は居所原語表記】Avenue Jean Monnet 4, 1348 Louvain-la-Neuve, Belgique
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】リウ, ティンティン
(72)【発明者】
【氏名】イセレンタント, アルノー
(72)【発明者】
【氏名】コリニョン, マクシム
(72)【発明者】
【氏名】レロン, ヘルマン
(72)【発明者】
【氏名】コリン, ニコラス
【テーマコード(参考)】
2G064
【Fターム(参考)】
2G064AA14
2G064AB01
2G064AB02
2G064AB13
2G064BA02
2G064BD02
2G064CC02
2G064CC41
2G064CC42
2G064CC43
2G064DD02
(57)【要約】
本発明は、自動車グレージング上に発生する外部事象の検出及び解析のための方法に関する。本発明によると、本方法は、前記自動車グレージング上の前記外部事象の発生から生じる少なくとも1つの電気信号の特徴情報を含む信号を受信すること;前記特徴情報を含む信号をコンピュータ実施分類モデルへ適用し、これにより、前記特徴情報に関係する1つ又は複数の量の各々に対して、予測が、前記外部事象を示すパラメータの値から作られること;及び前記予測から、前記パラメータの値に基づいて交換又は修理の決定を導くことを含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車グレージング上に発生する外部事象の検出及び解析のための方法であって、
-前記自動車グレージング上の前記外部事象の発生から生じる少なくとも1つの電気信号の特徴情報を含む信号を受信すること、
-前記特徴情報を含む信号をコンピュータ実施分類モデルへ適用し、これにより、前記特徴情報に関係する1つ又は複数の量の各々に対して、予測が、前記外部事象を示すパラメータの値から作られること、
-前記予測から、前記パラメータの値に基づいて交換又は修理の決定を導くこと、
を含む方法。
【請求項2】
前記外部事象は、自動車グレージングに対する衝撃又は別の機械応力である、請求項1に記載の検出及び解析のための方法。
【請求項3】
前記信号は、振動及び/又は音響センサから受信される、請求項1乃至2のいずれか一項に記載の検出及び解析のための方法。
【請求項4】
前記特徴情報は、前記電気信号自体、前記電気信号のデジタル版、又は前記電気信号の前記デジタル版の周波数領域表現である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の検出及び解析のための方法。
【請求項5】
前記1つ又は複数の量は、前記特徴情報から計算される、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の検出及び解析のための方法。
【請求項6】
前記パラメータは、前記外部事象の位置である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の検出及び解析のための方法。
【請求項7】
前記パラメータは、前記外部事象の重大度の測度である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の検出及び解析のための方法。
【請求項8】
前記コンピュータ実施分類モデルは、ランダムフォレストアルゴリズム、サポートベクトルマシンアルゴリズム又はニューラルネットワークの中から選択される、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の検出及び解析のための方法。
【請求項9】
前記分類モデルをトレーニングするためにデータを収集する初期工程を含む、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の検出及び解析のための方法。
【請求項10】
データベース内に記憶されたデータを使用して前記分類モデルをトレーニングすることを含む、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の検出及び解析のための方法。
【請求項11】
プログラム可能デバイス上で実行可能なプログラムであって、実行されると請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法を行う指令を含むプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的には、車両のグレージング上の振動を検出するように適合化されたグレージングセンサの分野に関し、具体的には、外部事象のグレージングに対する影響に関する決定を導くための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
当該技術分野において、車両のグレージングに影響を与える外部事象(例えばグレージングに対する衝撃)の影響を推定し得るグレージングセンサが知られている。このような衝撃は、修理され得る又は欠陥を生じ得るグレージングの欠陥(例えばグレージングの交換を必要とするガラス破損)を生じ得る。
【0003】
車両におけるガラス破壊の問題は過小評価されるべきでない。ガラス破壊は増加する費用及び車両休止時間に至る。交換費用は所謂先進運転支援システム(Advanced Driving Assistance System)の普及によりカメラがフロントガラスに取り付けられることによって毎年5%ずつ増加していると推測される。予防保全が役立つが、その最大能力では今日未だ使用されていない。大多数のフロントガラス交換はガラス損傷を予防的に修理することにより回避され得る。フロントガラス修理による保守はフロントガラス交換より5~10倍安価であり且つ3~5倍速い。
【0004】
いずれの場合も、グレージングの保守を担当する者が衝撃の結果を認識し、そこからどの方策がとられるべきかを導き得ることが重要である。したがって、そのような者は、決定を下すために可能な限り正確且つ迅速に多くの情報を入手する必要がある。
【0005】
従来技術では、衝撃に関する情報を伝達することができるセンサを含むシステムが提示されている。このような情報により、衝撃後にグレージングを修理するために講じる措置を決定し又は交換を決定することができる。この情報は通常、自動化されたやり方で伝達される。
【0006】
自動車グレージングの振動を検出するためのグレージングセンサが配置されることが一般的である。これは例えばフロントガラスセンサであり得る。グレージングセンサは1つ又は複数の振動センサと通信モジュールとを含む。振動センサはガラスの振動を電気信号に変換し、そして通信モジュールは電気信号を特徴付ける情報を含む信号を送信することができる。特徴情報を含むそれぞれのこのような信号は次に、さらなる解析のために使用され得、そして決定を行うために役立つ予測を与え得る。
【0007】
しかし、グレージングに対する事象の影響に関する信頼できる決定を特徴情報から導くための技術の必要性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態の目的は、外部事象が自動車グレージングに及ぼす影響の指標を与える1つ又は複数のパラメータを検出及び解析する方法を提供し、損傷を修理する若しくはグレージングを交換する又は何もしないという決定に到る方法を提供することである。グレージングは好適にはフロントガラスである。
【0009】
上記目的は、本発明による解決策により達成される。
【0010】
第1の態様では、本発明は自動車グレージング上で発生する外部事象の検出及び解析のための方法に関する。本方法は、
-自動車グレージング上の外部事象の発生から生じる少なくとも1つの電気信号の特徴情報を含む信号を受信すること、
-特徴情報を含む信号をコンピュータ実施分類モデルへ適用し、これにより、特徴情報に関係する1つ以上の量の各々に対して、予測が、外部事象を示すパラメータの値から作られること、
-前記予測から、前記パラメータの前記値に基づいて交換又は修理の決定を導くことを含む。
【0011】
提案された解決案は、外部事象が自動車グレージングに及ぼした影響を評価することを可能にする。事象の発生後に観測された電気信号を特徴付ける情報を含む信号が受信される。本発明の手法では、特徴情報を有する信号はコンピュータ実施分類モデル内へ送出される。特徴情報が既に1つ又は複数の量を含むか、又は1つ又は複数の量が特徴情報から判断されるかのいずれかである。複数の量の各々に対して、予測は事象を示す当該パラメータに関してなされる。それらの予測から、次に、自動車グレージングの交換又は修理の決定が導かれる。
【0012】
好適な実施形態では、外部事象は衝撃である。
【0013】
好適には、特徴情報は、電気信号自体、電気信号のデジタル版、又は電気信号のデジタル版の周波数領域表現である。
【0014】
一実施形態では、1つ又は複数の量が特徴情報から計算される。
【0015】
いくつかの実施形態では、パラメータはX及びY座標に従う位置及び/又は単純化された分類(すなわち外部事象のフロントガラス運転者区域と乗客区域との間の)である。
【0016】
他のいくつかの実施形態では、外部事象の重大度の測度(すなわち、無損傷、表面ピット、局所的カケ、亀裂)がパラメータである。
【0017】
好適な実施形態では、コンピュータ実施分類モデルはランダムフォレストアルゴリズム、サポートベクトルマシンアルゴリズム又はニューラルネットワークの中から選択される。
【0018】
別の実施形態では、本方法は前記分類モデルをトレーニングするためにデータを収集する初期工程を含む。
【0019】
一実施形態では、検出及び解析のための方法は、データベース内に記憶されたデータを使用して分類モデルをトレーニングすることを含む。
【0020】
別の態様では、本発明は、プログラム可能デバイス上で実行可能なプログラムであって、実行されると前述の方法を行う指令を含むプログラムに関する。
【0021】
本発明、及び従来技術を越えて実現される利点を要約する目的のため、本発明のいくつかの目的及び利点は本明細書において上に説明された。当然、必ずしもすべてのこのような目的又は利点が本発明の任意の特定実施形態に従って達成され得るわけではないということを理解すべきである。したがって、例えば、本発明は本明細書で教示又は暗示され得るような他の目的又は利点を必ずしも実現すること無しに、本明細書で教示された1つの利点又は一群の利点を実現又は最適化するやり方で具現化又は実行され得るということを当業者は認識することになる。
【0022】
本発明の上記及び他の態様は、以下に説明される実施形態から明らかになり、そしてそれらを参照して解明されることになる。
【0023】
本発明は添付図面を参照して一例としてさらに説明されることになるが、ここでは同様な参照符号は様々な図面における同様な要素を指す。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】グレージングセンサの可能な実装形態を示す。
【0025】
図2】グレージングセンサ、ゲートウェイ、及び別のコンピューティングデバイスを有するシステムを示す。
【0026】
図3】衝撃位置及び/又は衝撃重大度に関する決定を取得するための提案方法の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は特定実施形態に関して、そしていくつかの図面を参照して説明されることになるが、本発明はそれらに制限されるのではなく、特許請求の範囲だけにより制限される。
さらに、本明細書及び特許請求の範囲における第1、第2、等々の用語は、同様な要素同士を区別するために使用されるのであって、必ずしも順序(時間的、空間的、ランキング又は任意の他のやり方で)を説明するために使用されるのではない。そのように使用される用語は適切な状況下で交換可能であるということと、本明細書に記載の本発明の実施形態が本明細書において説明される又は示されるもの以外の他の順序で動作可能であるということとを理解すべきである。
【0028】
特許請求の範囲において使用される用語「含む」は、その後に列挙される手段に限定されるものと解釈されるべきでないということに留意すべきである。すなわち、用語「含む」は他の要素又は工程を排除しない。したがって、これらの用語は、明示される特徴、整数、工程、又は参照される構成要素の有無を規定するものと解釈されるべきであるが、1つ又は複数の他の特徴、整数、工程、若しくは構成要素、又はこれらのグループの存在又は追加を排除しない。したがって、表現「手段A及びBを含むデバイス」の範囲は構成要素A及びBだけからなるデバイスに限定されるべきでない。このことは、本発明に関してデバイスの唯一の関連する構成要素はA及びBであるということを意味する。
【0029】
本明細書全体にわたる「一実施形態」又は「実施形態」への参照は、当該実施形態に関連して説明される特定機能、構造、又は特徴が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体にわたる様々な場所における語句「一実施形態では」又は「実施形態では」の出現は、必ずしもすべてが同じ実施形態を参照するとは限らないが、同じ実施形態を参照し得る。さらに、特定機能、構造又は特徴は、1つ又は複数の実施形態において、本開示から当業者に明らかになるだろう任意の好適なやり方で組み合わせられ得る。
【0030】
同様に、本発明の例示的実施形態の説明では、本発明の様々な特徴は本開示を合理化するという目的及び様々な発明的な態様のうちの1つ又は複数の理解を支援するという目的のために、単一実施形態、図、又はその説明内で一緒にグループ化されることがあるということを理解すべきである。しかし、本開示の方法は、特許請求される発明が各請求項に明示的に記載されているものより多くの特徴を必要とするという意図を反映すると解釈されてはならない。むしろ、以下の特許請求の範囲が反映するように、発明的な態様は、単一の前述の開示された実施形態のすべての特徴よりも少ない特徴にある。したがって、詳細な説明に続く特許請求の範囲は、本明細書では詳細な説明へ明示的に組み込まれ、各請求項は本発明の別個の実施形態として自立している。
【0031】
さらに、本明細書に記載のいくつかの実施形態は、他の実施形態に含まれる他の特徴ではなくいくつかの特徴を含むが、様々な実施形態の特徴の組み合わせは、当業者により理解されるように、本発明の範囲に入り、そして様々な実施形態を形成するように意図されている。例えば、以下の特許請求の範囲では、特許請求される実施形態の任意のものが任意の組み合わせで使用され得る。
【0032】
本発明のいくつかの特徴又は態様を説明する際の特定の用語の使用は、当該用語が関連する本発明の特徴又は態様の任意の特定特徴を含むように当該用語が制限されるように本明細書において再定義されるということを意味するものと捉えられるべきでないということに注意すべきである。
【0033】
本明細書において提供される説明では多くの特定詳細が記載される。しかし、本発明の実施形態はこれらの特定詳細無しに実行され得るということが理解される。別の事例では、周知の方法、構造、及び技術は、本明細書の理解を不明瞭にしないために、詳細には示されなかった。
【0034】
本発明は、例えば自動車グレージングに対する衝撃のような外部事象を検出及び解析する方法であって、損傷を修理するか若しくはグレージングを交換するか又は何もしないかのいずれかの必要性に関する決定を行うためにその結果を活用する方法を提案する。
【0035】
グレージングセンサが自動車グレージングの表面に対して(通常はグレージングの境界に)取り付けられるセットアップであって、それぞれがガラスの振動を対応電気信号に変換する1つ又は複数の振動センサ(例えば圧電振動センサ)を含むセットアップが考慮される。グレージングセンサは振動センサからの電気信号をデジタル信号に変換するためのアナログ/デジタル変換器を含み得る。グレージングセンサは、取得された電気信号に対し処理を行うための処理ユニットを含み得る。別の選択肢は、電気信号に対して処理することは別のコンピューティングデバイス上で遠隔的に行われ得るということである。代替的に、この処理の一部はグレージングセンサにおいて局所的に行われても遠隔的に行われてもよい。電気信号の特徴情報を含む信号が導かれる。特徴情報は、電気信号自体であり得る、又は濾過及び/又はデジタル化され得る、及び/又は電気信号の処理された版であり得る。特徴情報は、関連信号状況だけが維持され、そして振動センサからの信号は余りに小さい(すなわち閾値レベル未満である)と無視されるように閾値レベルを導入することにより導かれ得る。例えば、特徴情報は、増幅された電気信号、デジタル化された電気信号の高速フーリエ変換(FFT)、デジタル化された時間領域電気信号の最小値及び/又は最大値であり得る。センサはさらに、電気信号の特徴情報を含む信号を送信することができる通信モジュールを含む。また、衝撃などの外部事象が発生すると任意選択的閾値が渡され得る。すべてのセンサの記録は外部事象後所定時間の間行われ得る。これらの信号は「トレース」と呼ばれる。上述のように、これらのトレースは局所的又は外部的に処理され得る。
【0036】
グレージングセンサの可能な実装形態が図1に示される。同図は、当該グレージングセンサ100内に存在しても又はしなくてもよい様々な追加ビルディングブロックを概略的に示す。振動センサ110の電気信号を増幅及び/又は濾過するためのフィルタ及び/又は増幅器160が存在し得る。電気信号又は濾過及び/又は増幅された電気信号はA/D変換器140によりデジタル信号に変換され得る。デジタルフィルタ170はA/D変換器のデジタル信号を濾過し得る。グレージングセンサは、処理された信号を通信モジュールにより送信する前にデジタル信号を処理するように適合化された処理モジュール150を含み得る。処理モジュール150は、例えばマイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイなどであり得る。このような前処理は例えば、送信する必要のあるデータが少なくて済み、必要な帯域が低減するので有利な場合がある。通信モジュール120は電気信号の特徴情報を含む信号を無線で送信するように適合化される。通信モジュール120は、例えばこの信号を処理モジュール150から受信することができる。
【0037】
フィルタ160は、例えば振動センサ110からの電気信号へ適用される高域通過フィルタであり得る。これは、望ましくない影響に関係する低周波雑音を削除することを可能にする。車両が車、バス又はトラックである場合、この雑音は、例えばエンジン雑音、車輪及び道路雑音、音楽などであり得る。
【0038】
任意選択ビルディングブロック160は電気信号を増幅するように適合化され得る。この増幅は、信号レベルを、例えば数十又は数百ミリボルトから典型的には0~5Vの標準アナログ/デジタル変換段と適合性があるレベルまで増加し得る。
【0039】
通信モジュールは、例えばLTEチップ、Bluetoothチップ(例えば無線技術としてBluetooth Low Energy(BLE)を使用する)、Simカードリーダ、アンテナなどのような他のデバイスと通信するための広範囲の可能な構成要素を含み得る。通信モジュールは、例えばセルラネットワークを使用することにより、グレージングセンサがサーバ/クラウドインフラストラクチャと直接通信することを可能にし得る。上述のように、通信モジュールはBLEなどの短距離通信技術を使用し得る。この場合、グレージングセンサはそのメッセージをサーバ/クラウドインフラストラクチャへ中継するために別のデバイスを必要とする。この追加デバイスは本明細書を通じてゲートウェイと呼ばれる。この追加デバイスは、一方ではグレージングセンサとの短距離通信(例えばBLEを介した)、そして他方ではサーバ/クラウドインフラストラクチャとの長距離通信(例えばセルラ通信を介した)を可能にする1つ又は複数の通信モジュールを特徴とする。ゲートウェイは車両により給電され得る。車の場合、このようなデバイスはシガーライタアダプタ上のオンボード診断(OBD:on-board diagnostics)ポート又はUSBポートへ接続され得る。ゲートウェイはまた、運転手のスマートフォン上のアプリケーションを介し実装され得る。
【0040】
既に述べたように、生の電気的センサ信号(又は部分的にだけ処理された電気信号)は通信モジュール及び可能性としてゲートウェイを使用することにより(例えばLTE、Bluetoothなどを用いて)、別のコンピューティングデバイス(例えば、クラウド内に常在し得るストレージ及び処理ユニット)へ送信される。図2は、グレージングセンサ100と、グレージングセンサ内の通信モジュールから受信された信号を中継するゲートウェイ210と、中継された信号を受信し、受信された信号を記憶し、処理するコンピューティングデバイス310とを含むシステムの図解を提供する。コンピューティングデバイス310はポータブルコンピュータ、又はインターネット上で利用可能なサーバ/クラウドインフラストラクチャ(データを解析するために十分な計算リソースを提供し、そしてデータのためのストレージスを提供する)であり得る。
【0041】
ゲートウェイ210はグレージングセンサ100内の通信モジュール120からの信号(例えばデータ)をコンピューティングデバイス310へ中継するように適応化される。したがって、ゲートウェイデバイス210は、Bluetooth通信リンクなどの無線通信リンクを介しデータを通信モジュール210から受信し得る。ゲートウェイ210は通常、インターネットにアクセスする(通常はモバイル通信モジュールを介し)。ゲートウェイ210はデータを長距離通信技術上で又はGSMネットワーク、EDGEネットワーク、3Gネットワーク又はLTEネットワークなどのセルラ通信ネットワーク上でコンピューティングデバイス310へ送信し得る。
【0042】
本発明の方法を適用するために必要な通信インフラストラクチャを説明したので、これらの方法において採用されるアルゴリズム手法について詳細に説明する。開示された技術は、外部事象が自動車グレージングに及ぼした影響を判断するために、電気信号から取得される特徴情報を活用する。この外部事象は、例えばグレージングに対する物体の衝撃、又は装着されたグレージングワイパの摩擦、又は本発明による使用可能電気信号を生成する任意の他の外部事象であり得る。以下に詳述するように、電気信号のこの特徴情報から始めると、例えば破損/非破損(又は損傷)状況を区別すること又は衝撃が発生した位置を知ることが可能かもしれない。この解析に基づき、グレージングの修理又は交換(又は修理又は交換しないこと)の決定がなされ得る。
【0043】
本発明の手法では、意思決定過程に関連する情報はデータセット内に記憶されている。データセットはサーバ/クラウドインフラストラクチャ内に記憶され得る。代替的に、データセットはグレージングセンサ又はポータブルコンピューティングデバイス内に記憶され得る。本発明の方法の一実施形態では、データセットに属するデータは任意選択的初期工程において収集されたかもしれない。いくつかの実施形態では、データセットは既に前もって利用可能にされる。次に、データ収集フェーズはもっと早い時期に行われた。以降データベースとも呼ばれるデータセットは、車両グレージングに対する当該外部事象の影響(例えば車両のフロントガラスに対する衝撃の影響)に関するデータを含む。データは生のセンサデータ(例えば、例えば衝撃により引き起こされる振動に応答して測定された(感知された)電圧信号)であり得る。上に記載のように、データをデータベース内に記憶することに先立ってデータに対し行われる処理があったかもしれない。この処理は、いくつかのケースではグレージングセンサ内で行われ得るが、他のケースでは、この処理は外部ポータブルコンピューティングデバイス又はサーバ/クラウドインフラストラクチャにおいて行われ得る。データを収集するために、衝撃が車両のフロントガラス上の様々な位置において生成されるたびに複数の測定が行われ得る。衝撃の振幅(力)は測定にわたって異なり得る。データ収集はいくつかの実施形態では専用ソフトウェアプログラムに基づく自動的なやり方で行われ得る。グレージングセンサ100は好適にはフロントガラスの縁の近くにあり、そして2つの振動センサを含む。衝撃位置検出のために、少なくとも2つの振動センサが必要である。3つ以上のセンサを有することは位置判断において高精度を取得するために有利である。グレージングセンサの位置決めが、フロントガラスの表面を2つの部分(運転手の前のグレージングの第1の部分及びグレージングの残り部分により形成される別の副領域など)へ分割するために行われ得る。本発明によると、グレージングセンサはさらに、X及びY座標及び/又は単純化された分類(すなわちフロントガラス運転者区域と乗客区域との間の)に従って衝撃を測位し得る。次に、当該位置に対する衝撃に起因する感知された振動を示す測定された信号が、恐らく特徴情報(アルゴリズムにおいて使用される1つ又は複数の量を既に含む又はコンピューティングデバイスにおいて前記1つ又は複数の量を計算することを許容する)を取得するためにいくつかの処理を受けた後、データベースへ追加される。
【0044】
データベース内に記憶されるデータは、生データ(振動センサの出力として取得された測定データ)、及び/又は生データ(例えば測定された信号の周波数領域表現(例えば高速フーリエ変換))から導かれるデータ、最小、最大、平均及び標準偏差電力のような1つ又は複数の統計的特徴であり得る。これは、以下に説明される実施形態においてさらに詳述される。
【0045】
次に、取得されたデータベースは外部事象の所与のパラメータ(例えば衝撃の位置及び/又は衝撃の重大度)のコンピュータ実施分類モデルをトレーニングするために使用される。これは、当該技術分野で知られる分類に好適な任意の機械学習アルゴリズムに基づき得る。一例はランダムフォレストアルゴリズムである。他の例はサポートベクトルマシン又はニューラルネットワークであり得る。しかし、これらは単に一例であるということと、原理的に任意の2進分類アルゴリズムが本発明の方法における使用のための候補であり得るということとに注意すべきである。
【0046】
ランダムフォレストは、トレーニング時に多数の決定ツリーを構築し、そして個々のツリーのクラス(分類)又は平均予測(回帰)のモードであるクラスを出力することにより動作する分類、回帰及び他のタスクのためのアンサンブル学習法である。
【0047】
代替的に、サポートベクトルマシン又はニューラルネットワークが適用され得る。サポートベクトルマシン(SVM)は、分類及び回帰分析に使用される関連学習アルゴリズム(解析を行う)を有する教師有り学習モデルである。ニューラルネットワークは、人工知能問題を解決するための人工ニューロン又はノードからなるネットワークである。このような人工的ネットワークは、当該技術分野においてよく知られており、そして予測モデリング、適応制御、及びデータセットを介しトレーニングされ得る用途に使用され得る。複雑且つ一見無関係な一組の情報から結論を導き得る、経験から生じる自己学習がネットワーク内で発生し得る。パターン及びシーケンス認識を含む分類はニューラルネットワークの重要な応用分野である。
【0048】
外部事象がグレージングに対する衝撃であるいくつかの実施形態が次に詳述される。最初に、衝撃の位置が、決定されるべきパラメータとして考慮される。自動車グレージングの表面は、例えば2つの副領域へ分割される。2つの振動センサ(例えば圧電センサ)を含むグレージングセンサ100は運転手を邪魔しないようにグレージングの境界近くに置かれる。1つの振動センサは第1の副領域内に位置し、他の振動センサは他の副領域内に存在する。例えば、第1の副領域は運転手の前のグレージングの一部に対応する。次に、他の副領域はグレージングの残り部分により形成される。運転手の前のグレージングの一部を別個の副領域にすることが有利である(ここでの衝撃は他の副領域内の衝撃より緊急に注意を必要とし得る)。これはまた、好適には2つの副領域間の境界がフロントガラスの中央ではなく、むしろより運転手側の方向に存在する理由である。1つの目的は、1つの副領域内の運転手の危急エリアをカバーすることである。グレージングセンサ100はフロントガラス(又はより一般的にはグレージング)のいくつかの副領域をカバーするために、そしてより多くのデータを収集するために3つ以上の振動センサを含み得るということが理解される。
【0049】
図3は、最も可能性の高い衝撃位置及び/又は衝撃の重大度(無損傷、表面ピット、局所的カケ、亀裂)を判断することに向けられた方法のいくつかの実施形態における別の工程を示す。衝撃位置に関して、少なくとも2つの量が、グレージングセンサ100により生成される電気信号から導かれる。明らかに、他の好ましい実施形態では、3つ以上の量が任意の組み合わせで判断され得る。ボルトで表現される量は例えば以下のものであり得る:
-信号の時間領域表現
-信号の相互相関により計算される時間遅延
-信号の周波数領域表現(例えばFFTによる)
-少なくとも1つの信号から導かれる信号電力
-電力スペクトル密度
-その他。
【0050】
一実施形態では、本方法は自動車グレージングに対する衝撃の位置に関する予測を有するように適用される。複数の量の各々に対して、衝撃が発生した位置に関する予測(すなわち衝撃のX及びY座標及び/又は衝撃が発生したグレージングの副領域を示す出力ラベル)が分類モデル(機械学習モデルとも呼ばれる)を介し取得される。これらの予測から、個人は、フロントガラスを交換又は修理するための決定に既に達し得る。しかし、なされるべき決定の品質をさらに改善するために、様々な予測が位置パラメータのより自信のある予測を生じるために分類モデル(例えばランダムフォレスト)へ有利に再び入力される。代替的に、別の分類モデルが適用され得る。
【0051】
いくつかの実施形態ではこれらの量がグレージングセンサ内で計算され得るということが繰り返される。この場合、通信モジュールは、計算された(1つ又は複数の)量を含む特徴情報を含む信号を送信する。他の実施形態では、通信モジュールにより送信される信号は電気信号自体であり得、そして1つ又は複数の量は、外部的に(例えばサーバ/クラウドインフラストラクチャにおいて、又は外部の、例えばその入力において通信モジュールから信号を受信し、そして所望量を取得するために必要とされるコンピュータ的タスクを次に行うポータブルコンピューティングデバイスにおいて)計算される。さらに他の実施形態では、処理の一部はグレージングセンサにおいて、そして一部は外部コンピューティングデバイスにおいて行われ得る。また、分類モデルを実行し、そしてアルゴリズム全体を行うために、以下の同じ選択肢が利用可能である:グレージングセンサ自体において(例えばスタンドアロン実装形態で)、サーバ/クラウドインフラストラクチャにおいて、又は外部の、例えばポータブルコンピューティングデバイスにおいて行われ得る。
【0052】
次に、パラメータが外部事象の重大度である実施形態が提示される。再び、外部事象はグレージングに対する衝撃であると考えられる。この場合、データセットはまた、様々なタイプのグレージングのデータを含み得る。測定毎に、衝撃が破損に至ったか否かがまたデータベース内に維持され得る。
【0053】
図3はまた、衝撃の重大度を評価することに向けられる方法に適用可能である。量(すなわち時間領域表現及び/又は周波数領域表現(例えばFFTによる)及び/又は電力スペクトル密度(PSD)及び/又は関連量(すなわち複数の信号間の相互相関のような))は少なくとも1つの電気信号から導かれる。次に、これらの量は分類モデルへ送出される。次に、分類モデルの結果は、それぞれの量に基づきグレージングの損傷が有るか否かを示す値である。予測された値はさらに、損傷タイプ(すなわち電気信号を生成するフロントガラス上の表面ピット、ヘルツカケ(hertz chip)、中央カケ、亀裂又は任意の損傷)としての情報を取得するために使用され得る。次に、この情報は、グレージングが修理され得るか又は交換を必要とするかを決定するために使用される。予測の品質を改善するために、いくつかの予測値は有利には、衝撃重大度に関する改善された結論を生じるために分類モデルへ入力される。この情報から、グレージングを修理又は交換する必要性があるかどうかが次に決定され得る。
【0054】
解決策の別の実施形態では、自動車グレージングに対する衝撃の位置及び重大度に関する予測は、グレージングを修理する必要性又は交換する必要性があるかに関する改善された決定に至る改善された情報として組み合わせられる。
【0055】
本発明は図面及びこれまでの記載において示され、そして詳細に説明されたが、このような例示及び説明は、例示的又は一例であり、したがって限定的でないと考えるべきである。これまでの説明は本発明のいくつかの実施形態を詳述した。しかしながら、前述がいかに詳細に本文中に示されていても、本発明は多くの方法で実施され得ることが理解されよう。本発明は開示された実施形態に限定されない。
【0056】
開示された実施形態に対する他の変形形態は、特許請求された発明を実行する際に図面、本開示及び添付の特許請求の範囲の研究から当業者により理解され、そして行われ得る。特許請求の範囲において、用語「含む」は他の要素又は工程を排除せず、不定冠詞「1つの(a)」又は「1つの(an)」は複数の要素を排除しない。単一の処理装置又は他のユニットは、特許請求の範囲に記載されたいくつかの項目の機能を果たすことができる。いくつかの方策が相互に異なる従属請求項において唱えられるという単純な事実は、これらの方策の組み合わせが有利に使用され得ないということを示すものではない。コンピュータプログラムは、他のハードウェアの一部と共に又は一部として供給される光ストレージ媒体又は固体媒体などの好適な媒体上に記憶/分散され得るが、コンピュータプログラムはまた、他の形式で(例えばインターネット又は他の有線又は無線通信システムを介し)分散され得る。特許請求の範囲におけるいかなる参照符号も特許請求の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
【国際調査報告】