(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-21
(54)【発明の名称】関節リウマチを予防及び/又は治療するためのニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)の使用、並びに対応する組成物
(51)【国際特許分類】
C07H 19/048 20060101AFI20221214BHJP
A61K 31/706 20060101ALI20221214BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20221214BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20221214BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20221214BHJP
A61K 38/13 20060101ALI20221214BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20221214BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
C07H19/048
A61K31/706
A61P19/02
A61K45/00
A61K31/519
A61K38/13
A61K9/20
A61K9/48
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022522323
(86)(22)【出願日】2020-10-15
(85)【翻訳文提出日】2022-05-30
(86)【国際出願番号】 EP2020079014
(87)【国際公開番号】W WO2021074284
(87)【国際公開日】2021-04-22
(32)【優先日】2019-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522089066
【氏名又は名称】ヌヴァミド エスアー
【氏名又は名称原語表記】NUVAMID SA
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベルモンド,ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】ギャルコン,ローラン
【テーマコード(参考)】
4C057
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C057AA18
4C057BB02
4C057CC03
4C057DD03
4C057LL05
4C057LL18
4C057LL21
4C076AA36
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC07
4C076CC09
4C076FF70
4C084AA19
4C084BA01
4C084DA11
4C084MA02
4C084MA35
4C084MA37
4C084MA52
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA96
4C084ZB07
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB09
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA52
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA96
4C086ZB07
(57)【要約】
本発明は、関節リウマチの予防及び/又は治療に使用するためのニコチンアミドモノヌクレオチド、その薬学的に許容される誘導体の1つ又はその薬学的に許容される塩の1つ、並びにそれを含む組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
関節リウマチの予防及び/又は治療に使用するためのニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)、その薬学的に許容される誘導体又は薬学的に許容される塩。
【請求項2】
前記ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)の薬学的に許容される誘導体が、ジヒドロニコチンアミドモノヌクレオチド(「NMN-H」)、式(I)の化合物:
【化1】
又はその薬学的に許容される立体異性体、塩、水和物、溶媒和物若しくは結晶であって、式中、
-Xは、O、CH
2、S、Se、CHF、CF
2、C=CH
2から選択され、
-R
1は、H、アジド、シアノ、(C
1~C
8)アルキル、(C
1~C
8)チオアルキル、(C
1~C
8)ヘテロアルキル、及びORから選択され、Rは、H及び(C
1~C
8)アルキルから選択され、
-R
2、R
3、R
4及びR
5は、互いに独立して、H、ハロゲン、アジド、シアノ、ヒドロキシル、(C
1~C
12)アルキル、(C
1~C
12)チオアルキル、(C
1~C
12)ヘテロアルキル、(C
1~C
12)ハロアルキル、及びORから選択され、Rは、H、(C
1~C
12)アルキル、C(O)(C
1~C
12)アルキル、C(O)NH(C
1~C
12)アルキル、C(O)O(C
1~C
12)アルキル、C(O)アリール、C(O)(C
1~C
12)アルキルアリール、C(O)NH(C
1~C
12)アルキルアリール、C(O)O(C
1~C
12)アルキルアリール、及びC(O)CHR
AANH
2から選択され、R
AAは、タンパク質原性アミノ酸から選択される側鎖であり、
-R
6は、H、アジド、シアノ、(C
1~C
8)アルキル、(C
1~C
8)チオアルキル、(C
1~C
8)ヘテロアルキル、ORから選択され、Rは、H及び(C
1~C
8)アルキルから選択され、
-R
7は、(O)R
9R
10及びP(S)R
9R
10から選択され、
-R
9及びR
10は、互いに独立して、OH、OR
11、NHR
13、NR
13R
14、(C
1~C
8)アルキル、(C
2~C
8)アルケニル、(C
2~C
8)アルキニル、(C
3~C
10)シクロアルキル、(C
5~C
12)アリール、(C
1~C
8)アルキルアリール、(C
1~C
8)アリールアルキル、(C
1~C
8)ヘテロアルキル、(C
1~C
8)ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、及びNHCHR
AR
A´C(O)R
12から選択され、
-R
11は、(C
1~C
10)アルキル、(C
3~C
10)シクロアルキル、(C
5~C
18)アリール、(C
1~C
10)アルキルアリール、置換(C
5~C
12)アリール、(C
1~C
10)ヘテロアルキル、(C
3~C
10)ヘテロシクロアルキル、(C
1~C
10ハロアルキル、ヘテロアリール、-(CH
2)
nC(O)(C
1~C
15)アルキル、-(CH
2)
nOC(O)(C
1~C
15)アルキル、-(CH
2)
nOC(O)O(C
1~C
15)アルキル、-(CH
2)
nSC(O)(C
1~C
15)アルキル、-(CH
2)
nC(O)O(C
1~C
15)アルキル及び-(CH
2)
nC(O)O(C
1~C
15)アルキルアリール基(ここで、nは1~8の整数である)、P(O)(OH)OP(O)(OH)
2.ハロゲン、ニトロ、シアノ、C
1~C
6アルコキシ、C
1~C
6ハロアルコキシ、-N(R
11a)
2、C
1~C
6アシルアミノ、-COR
11b、-OCOR
11b、NHSO
2(C
1~C
6アルキル)、-SO
2N(R
11a)
2SO
2から選択され、各R
11aは、独立してH、及び(C
1~C
6)アルキルから選択され、R
11bは、独立して、OH、C
1~C
6アルコキシ、NH
2、NH(C
1~C
6アルキル)、及びN(C
1~C
6アルキル)
2から選択され、
-R
12は、H、C
1~C
10アルキル、C
2~C
8アルケニル、C
2~C
8アルキニル、C
1~C
10ハロアルキル、C
3~C
10シクロアルキル、C
3~C
10ヘテロシクロアルキル、C
5~C
18アリール、C
1~C
4アルキルアリール、及びC
5~C
12ヘテロアリールから選択され、アリール基又はヘテロアリール基は、ハロゲン、トリフルオロメチル、C
1~C
6アルキル、C
1~C
6アルコキシ及びシアノから選択される1つ又は2つの基で場合により置換されており、
-R
A及びR
A´は、独立して、H、(C
1~C
10)アルキル、(C
2~C
10)アルケニル、(C
2~C
10)アルキニル、(C
3~C
10)シクロアルキル、(C
1~C
10)チオアルキル、(C
1~C
10)ヒドロキシルアルキル、(C
1~C
10)アルキルアリール、及び(C
5~C
12)アリール、(C
3~C
10)ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、-(CH
2)
3NHC(=NH)NH
2、(1H-インドール-3-イル)メチル、(1H-イミダゾール-4-イル)メチルから選択され、側鎖は、タンパク質原性又は非タンパク質原性アミノ酸から選択され、アリール基は、ヒドロキシル、(C
1~C
10)アルキル、(C
1~C
6)アルコキシ、ハロゲン、ニトロ及びシアノから選択される基で場合により置換されており、又は
-R
9及びR
10は、それらが結合しているリン原子と一緒になって、6員環を形成し、-R
9-R
10-は、-CH
2-CH
2-CHR-であり、Rは、(C
5~C
6)アリール基及び(C
5~C
6)ヘテロアリール基から選択され、アリール基又はヘテロアリール基は、ハロゲン、トリフルオロメチル、C
1~C
6アルキル、(C
1~C
6)アルコキシ、及びシアノで場合により置換されており、又は
R
9及びR
10は、それらが結合しているリン原子と一緒になって、6員環を形成し、-R
9-R
10-は、-O-CH
2-CH
2-CHR-O-であり、Rは、(C
5~C
6)アリール基及び(C
5~C
6)ヘテロアリール基から選択され、アリール基又はヘテロアリール基は、ハロゲン、トリフルオロメチル、(C
1~C
6)アルキル、(C
1~C
6)アルコキシ、及びシアノで場合により置換されており、
-R
8は、H、OR、NHR
13、NR
13R
14、NH-NHR
13、SH、CN、N
3、及びハロゲンから選択され、R
13及びR
14は、互いに独立して、H、(C
1~C
8)アルキル、(C
1~C
8)アルキルアリール、及び-CR
BR
C-C(O)-OR
Dから選択され、R
B及びR
Cは、独立して、水素原子、(C
1~C
6)アルキル、(C
1~C
6)アルコキシ、ベンジル、インドリル又はイミダゾリルであり、(C
1~C
6)アルキル及び(C
1~C
6)は、互いに独立して、1個又は複数のハロゲン、アミノ、アミド、グアニジル、ヒドロキシル、チオール又はカルボキシル基で場合により置換されていてもよく、ベンジル基は、1個又は複数のハロゲン又はヒドロキシル基によって置換されていてもよく、又はR
B及びR
Cは、それらが結合している炭素原子と一緒になって、1個又は複数のハロゲン、アミノ、アミド、グアニジル、ヒドロキシル、チオール及びカルボキシルで置換されていてもよいC
3~C
6シクロアルキル基を形成し、R
Dは、水素、(C
1~C
6)アルキル、(C
2~C
6)アルケニル、(C
2~C
6)アルキニル、又は(C
3~C
6)シクロアルキルであり、
-Yは、CH、CH
2、C(CH
3)
2、及びCCH
3から選択され、
-
【化2】
は、Yに応じて単結合又は二重結合であり、
-
【化3】
は、R
1の位置に応じてα又はβアノマーである、
化合物、又はその薬学的に許容される立体異性体、塩、水和物、溶媒和物若しくは結晶、又はそれらの組み合わせである、請求項1に記載の使用のためのNMN、その薬学的に許容される誘導体又は薬学的に許容される塩。
【請求項3】
0.01mg/kg/d~1000mg/kg/d、好ましくは1mg/kg/d~100mg/kg/d、より好ましくは5mg/kg/d~50mg/kg/d、更により好ましくは10mg/kg/d~20mg/kg/dの量での、請求項1又は2に記載の使用のためのニコチンアミドモノヌクレオチド。
【請求項4】
経口投与、眼内投与、舌下投与、静脈内投与、筋肉内投与、関節内投与、皮下投与、経皮投与、膣投与、硬膜外投与、膀胱内投与、直腸投与、又は吸入によって投与される、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用のためのニコチンアミドモノヌクレオチド。
【請求項5】
少なくとも1つの他の治療薬と組み合わせた、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用のためのニコチンアミドモノヌクレオチド。
【請求項6】
前記少なくとも1つの治療薬が、鎮痛薬、NSAID、コルチゾン、コルチゾン誘導体、免疫抑制薬、免疫調節薬、Tリンパ球阻害剤、Bリンパ球阻害剤、合成抗マラリア薬、抗TNF、酵素ヤヌスキナーゼ阻害剤、抗インターロイキン、及びそれらの組み合わせである、請求項5に記載の使用のためのニコチンアミドモノヌクレオチド。
【請求項7】
前記少なくとも1つの治療薬が、メトトレキサート及びシクロスポリンから選択される免疫抑制薬、好ましくはメトトレキサートである、請求項6に記載の使用のためのニコチンアミドモノヌクレオチド。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の使用のための、ニコチンアミドモノヌクレオチド、その薬学的に許容される誘導体又は塩及び少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む組成物。
【請求項9】
少なくとも1つの更なる治療薬を更に含む、請求項8に記載の使用のための組成物。
【請求項10】
NSAID、コルチゾン、コルチゾン誘導体、免疫抑制薬、免疫調節薬、Tリンパ球阻害剤、Bリンパ球阻害剤、合成抗マラリア薬、抗TNF、酵素ヤヌスキナーゼ阻害剤、抗インターロイキン、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの更なる治療薬である、請求項9に記載の使用のための組成物。
【請求項11】
固定単位用量形態として提供される、請求項10に記載の使用のための組成物。
【請求項12】
経口又は注射によって投与されることを特徴とする、請求項8から11のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項13】
舌下錠又は胃抵抗性カプセルの形態で投与されることを特徴とする、請求項12に記載の使用のための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、関節リウマチを予防及び/又は治療するためのニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)、その薬学的に許容される誘導体又は薬学的に許容される塩、並びにそれを含む組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
関節は、特に、骨の2つの軟骨被覆端の集合体、並びにこの集合体を包む滑膜である。滑膜の役割は、潤滑剤である滑液を分泌することによって関節運動を促進することである。炎症性リウマチは、特に、滑膜の炎症からなる。次いで、過剰量の滑液が分泌され、滑膜が異常に肥厚する。次いで、関節の軟組織及び骨表面が損傷される。関節が異常に腫れて痛み、運動を妨げる。
【0003】
関節リウマチは、最も一般的には手、手首及び膝を冒す慢性炎症性リウマチであるが、他の関節にも及ぶことがある。関節炎は、患者の血液中のリウマチ因子の存在に関連することがあり、不可逆的な関節損傷をもたらし得る。
【0004】
関節炎治療は、一方では炎症性発疹を軽減するための対症療法を含み、他方では基礎疾患の治療を含む。
【0005】
対症療法は、主に、疼痛を軽減するための鎮痛薬、NSAID(非ステロイド性抗炎症薬)、並びに炎症を軽減するためのコルチゾン又はその誘導体を投与することを含む。しかし、これらの薬物の長期投与は、とりわけ、胃、肝臓及び腎臓に損傷を引き起こす。更に、それらの有効性は経時的に減少し、投与量の増加又は多くの場合より大きな副作用を引き起こすより攻撃的な薬物の使用を必要とする。更に、コルチゾン誘導体の慢性的な使用は、とりわけ、骨の脆弱性、精神神経学的影響、筋萎縮、及び免疫の減少を引き起こし、患者を感染症に対して脆弱にする。
【0006】
基礎疾患の治療は、最も一般的には、炎症性発疹を予防し、その数を減少させるために首尾よく使用されている抗癌剤であるメトトレキサートを投与することを含む。しかし、この薬物は、他のリスクの中でも、発熱、貧血、呼吸困難、催奇形性のリスク、及び骨髄毒性などの多くの副作用を有する。そのため、全ての患者によって十分に許容されるわけではない。他の薬物、例えば、ある種の抗マラリア薬及び炎症プロセスに関与するタンパク質であるTNF(腫瘍壊死因子)の阻害剤が、メトトレキサートの代わりに、又はメトトレキサートと組み合わせて使用される。しかし、これらの薬物のいずれも副作用がないものではない。特に、免疫系を弱めるリスク、並びに肝臓及び腎臓などの患者の重要な器官に対する実質的な毒性がある。
【0007】
更に、関節リウマチ(RA)は、関節を硬直させ、変形させる。許容することが困難な審美的側面に加えて、日常行為は患者にとってますます困難になる。したがって、患者は最終的に、日常生活を変更し、仕事を離れ、他者からの支援に依存する必要があり、とりわけ、医療制度にかなりのコストがかかる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、先行技術の欠点を軽減するRAの治療及び/又は予防のための新規な組成物を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これらの目的は、以下に記載する本発明によって達成される。
【0010】
本発明は、関節リウマチの予防及び/又は治療に使用するためのニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)、その薬学的に許容される誘導体又は薬学的に許容される塩に関する。
【0011】
有利には、NMNの薬学的に許容される誘導体は、ジヒドロニコチンアミドモノヌクレオチド(「NMN-H」)、式(I)の化合物:
【化1】
又はその薬学的に許容される立体異性体、塩、水和物、溶媒和物若しくは結晶であり、式中、
-Xは、O、CH
2、S、Se、CHF、CF
2、C=CH
2から選択され、
-R
1は、H、アジド、シアノ、(C
1~C
8)アルキル、(C
1~C
8)チオアルキル、(C
1~C
8)ヘテロアルキル、及びORから選択され、Rは、H及び(C
1~C
8)アルキルから選択され、
-R
2、R
3、R
4及びR
5は、互いに独立して、H、ハロゲン、アジド、シアノ、ヒドロキシル、(C
1~C
12)アルキル、(C
1~C
12)チオアルキル、(C
1~C
12)ヘテロアルキル、(C
1~C
12)ハロアルキル、及びORから選択され、Rは、H、(C
1~C
12)アルキル、C(O)(C
1~C
12)アルキル、C(O)NH(C
1~C
12)アルキル、C(O)O(C
1~C
12)アルキル、C(O)アリール、C(O)(C
1~C
12)アルキルアリール、C(O)NH(C
1~C
12)アルキルアリール、C(O)O(C
1~C
12)アルキルアリール、及びC(O)CHR
AANH
2から選択され、R
AAは、タンパク質原性アミノ酸から選択される側鎖であり、
-R
6は、H、アジド、シアノ、(C
1~C
8)アルキル、(C
1~C
8)チオアルキル、(C
1~C
8)ヘテロアルキル、ORから選択され、Rは、H及び(C
1~C
8)アルキルから選択され、
-R
7は、(O)R
9R
10及びP(S)R
9R
10から選択され、
-R
9及びR
10は、互いに独立して、OH、OR
11、NHR
13、NR
13R
14、(C
1~C
8)アルキル、(C
2~C
8)アルケニル、(C
2~C
8)アルキニル、(C
3~C
10)シクロアルキル、(C
5~C
12)アリール、(C
1~C
8)アルキルアリール、(C
1~C
8)アリールアルキル、(C
1~C
8)ヘテロアルキル、(C
1~C
8)ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、及びNHCHR
AR
A´C(O)R
12から選択され、
-R
11は、(C
1~C
10)アルキル、(C
3~C
10)シクロアルキル、(C
5~C
18)アリール、(C
1~C
10)アルキルアリール、置換(C
5~C
12)アリール、(C
1~C
10)ヘテロアルキル、(C
3~C
10)ヘテロシクロアルキル、(C
1~C
10ハロアルキル、ヘテロアリール、-(CH
2)
nC(O)(C
1~C
15)アルキル、-(CH
2)
nOC(O)(C
1~C
15)アルキル、-(CH
2)
nOC(O)O(C
1~C
15)アルキル、-(CH
2)
nSC(O)(C
1~C
15)アルキル、-(CH
2)
nC(O)O(C
1~C
15)アルキル及び-(CH
2)
nC(O)O(C
1~C
15)アルキルアリール基(ここで、nは1~8の整数である)、P(O)(OH)OP(O)(OH)
2.ハロゲン、ニトロ、シアノ、C
1~C
6アルコキシ、C
1~C
6ハロアルコキシ、-N(R
11a)
2、C
1~C
6アシルアミノ、-COR
11b、-OCOR
11b、NHSO
2(C
1~C
6アルキル)、-SO
2N(R
11a)
2SO
2から選択され、各R
11aは、独立してH、及び(C
1~C
6)アルキルから選択され、R
11bは、独立して、OH、C
1~C
6アルコキシ、NH
2、NH(C
1~C
6アルキル)、及びN(C
1~C
6アルキル)
2から選択され、
-R
12は、H、C
1~C
10アルキル、C
2~C
8アルケニル、C
2~C
8アルキニル、C
1~C
10ハロアルキル、C
3~C
10シクロアルキル、C
3~C
10ヘテロシクロアルキル、C
5~C
18アリール、C
1~C
4アルキルアリール、及びC
5~C
12ヘテロアリールから選択され、アリール基又はヘテロアリール基は、ハロゲン、トリフルオロメチル、C
1~C
6アルキル、C
1~C
6アルコキシ及びシアノから選択される1つ又は2つの基で場合により置換されており、
-R
A及びR
A´は、独立して、H、(C
1~C
10)アルキル、(C
2~C
10)アルケニル、(C
2~C
10)アルキニル、(C
3~C
10)シクロアルキル、(C
1~C
10)チオアルキル、(C
1~C
10)ヒドロキシルアルキル、(C
1~C
10)アルキルアリール、及び(C
5~C
12)アリール、(C
3~C
10)ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、-(CH
2)
3NHC(=NH)NH
2、(1H-インドール-3-イル)メチル、(1H-イミダゾール-4-イル)メチルから選択され、側鎖は、タンパク質原性又は非タンパク質原性アミノ酸から選択され、アリール基は、ヒドロキシル、(C
1~C
10)アルキル、(C
1~C
6)アルコキシ、ハロゲン、ニトロ及びシアノから選択される基で場合により置換されており、又は
-R
9及びR
10は、それらが結合しているリン原子と一緒になって、6員環を形成し、-R
9-R
10-は、-CH
2-CH
2-CHR-であり、Rは、(C
5~C
6)アリール基及び(C
5~C
6)ヘテロアリール基から選択され、アリール基又はヘテロアリール基は、ハロゲン、トリフルオロメチル、C
1~C
6アルキル、(C
1~C
6)アルコキシ、及びシアノで場合により置換されており、又は
R
9及びR
10は、それらが結合しているリン原子と一緒になって、6員環を形成し、-R
9-R
10-は、-O-CH
2-CH
2-CHR-O-であり、Rは、(C
5~C
6)アリール基及び(C
5~C
6)ヘテロアリール基から選択され、アリール基又はヘテロアリール基は、ハロゲン、トリフルオロメチル、(C
1~C
6)アルキル、(C
1~C
6)アルコキシ、及びシアノで場合により置換されており、
-R
8は、H、OR、NHR
13、NR
13R
14、NH-NHR
13、SH、CN、N
3、及びハロゲンから選択され、R
13及びR
14は、互いに独立して、H、(C
1~C
8)アルキル、(C
1~C
8)アルキルアリール、及び-CR
BR
C-C(O)-OR
Dから選択され、R
B及びR
Cは、独立して、水素原子、(C
1~C
6)アルキル、(C
1~C
6)アルコキシ、ベンジル、インドリル又はイミダゾリルであり、(C
1~C
6)アルキル及び(C
1~C
6)は、互いに独立して、1個又は複数のハロゲン、アミノ、アミド、グアニジル、ヒドロキシル、チオール又はカルボキシル基で場合により置換されていてもよく、ベンジル基は、1個又は複数のハロゲン又はヒドロキシル基によって置換されていてもよく、又はR
B及びR
Cは、それらが結合している炭素原子と一緒になって、1個又は複数のハロゲン、アミノ、アミド、グアニジル、ヒドロキシル、チオール及びカルボキシルで置換されていてもよいC
3~C
6シクロアルキル基を形成し、R
Dは、水素、(C
1~C
6)アルキル、(C
2~C
6)アルケニル、(C
2~C
6)アルキニル、又は(C
3~C
6)シクロアルキルであり、
-Yは、CH、CH
2、C(CH
3)
2、及びCCH
3から選択され、
-
【化2】
は、Yに応じて単結合又は二重結合であり、
-
【化3】
は、R
1の位置に応じてα又はβアノマーである、
化合物、又はその薬学的に許容される立体異性体、塩、水和物、溶媒和物若しくは結晶、又はそれらの組み合わせである。
【0012】
第1の好ましい実施形態では、薬学的に許容される誘導体は、式(I)の化合物である。
【0013】
第1の実施形態の一変形例では、Xは酸素である。
【0014】
第1の実施形態の一変形例では、R1及びR6は、各々、互いに独立して、水素である。
【0015】
第1の実施形態の一変形例では、R2、R3、R4、及びR5は、各々、互いに独立して、水素又はOHである。
【0016】
第1の実施形態の一変形例では、YはCHである。
【0017】
第1の実施形態の一変形例では、YはCH2である。
【0018】
第1の実施形態の一変形例では、R7はP(O)(OH)2である。
【0019】
第1の実施形態の一変形例では、
Xは酸素であり、及び/又は
R1及びR6は各々独立して水素であり、及び/又は
R2、R3、R4及びR5は各々独立して水素であるか、又はR2、R3、R4及びR5は独立してOHであり、及び/又は
YはCH又はCH2であり、及び/又は
R7はP(O)R9R10であり、R9及びR10は、独立して、OH、OR11、NHR13、NR13R14、C1~C8アルキル、C2~C8アルケニル、C2~C8アルキニル、C3~C10シクロアルキル、C5~C12アリール、C1~C8アリールアルキル、C1~C8アルキルアリール、C1~C8ヘテロアルキル、C1~C8ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、及びNHCRARA´C(O)R12から選択される。
【0020】
第1の実施形態の特に好ましい変形例では、本発明の化合物は、以下の化合物から選択される。
【0021】
【0022】
好ましい実施形態では、薬学的に許容される誘導体はNMN-Hである。
【化4】
【0023】
有利には、NMN又はその薬学的に許容される誘導体若しくは塩は、0.01mg/kg/d~1000mg/kg/d、好ましくは1mg/kg/d~100mg/kg/d、より好ましくは5mg/kg/d~50mg/kg/d、更により好ましくは10mg/kg/d~20mg/kg/dの量で使用することができる。
【0024】
有利には、NMN又はその薬学的に許容される誘導体若しくは塩は、経口投与、眼内投与、舌下投与、静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与、関節内投与、皮下投与、経皮投与、膣投与、硬膜外投与、膀胱内投与、直腸投与、又は吸入によって投与することができる。
【0025】
好ましい実施形態では、NMN又はその薬学的に許容される誘導体若しくは塩は、経口又は注射によって投与することができる。
【0026】
好ましい実施形態では、NMN又はその薬学的に許容される誘導体若しくは塩は、好ましくは舌下錠又は胃耐性カプセルの形態で経口投与することができる。
【0027】
代替の好ましい実施形態では、NMN又はその薬学的に許容される誘導体若しくは塩は、注射、好ましくは関節内注射によって投与することができる。
【0028】
有利には、NMN又はその薬学的に許容される誘導体若しくは塩は、哺乳動物、好ましくはヒトにおけるRAの治療及び/又は予防に使用することができる。
【0029】
有利には、NMN又はその薬学的に許容される誘導体若しくは塩は、少なくとも1つの他の治療薬と組み合わせて使用することができる。
【0030】
有利には、少なくとも1つの治療薬は、鎮痛薬、NSAID、コルチゾン、コルチゾン誘導体、免疫抑制薬、免疫調節薬、Tリンパ球阻害剤、Bリンパ球阻害剤、合成抗マラリア薬、抗TNF、酵素ヤヌスキナーゼ阻害剤、抗インターロイキン、及びそれらの組み合わせであってもよい。
【0031】
有利には、鎮痛薬は、パラセタモール、アスピリン、コデイン、ジヒドロコデイン、トラマドール、モルヒネ、ブプレノルフィン、フェンタニル、ヒドロモルホン、ナルブフィン、オキシコドン、ペチジン、及びそれらの組み合わせから選択することができる。
【0032】
有利には、NSAIDは、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン、アルミノプロフェン、アセクロフェナク、メフェナム酸、ニフルミン酸、チアプロフェン酸、セレコキシブ、デクスケトプロフェン、ジクロフェナク、エトドラク、エトリコキシブ、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、インドメタシン、メロキシカム、ナブメトン、ピロキシカム、スリンダク、テノキシカム、及びそれらの組み合わせから選択することができる。
【0033】
有利には、コルチゾン誘導体は、ベタメタゾン、シプロフロキサシン、コルチバゾール、デキサメタゾン、フルドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、及びそれらの組み合わせから選択することができる。
【0034】
有利には、免疫抑制薬は、アザチオプリン、シクロホスファミド、クロラムブシル、シクロスポリン、メトトレキサート、及びそれらの組み合わせから選択することができる。
【0035】
好ましい実施形態では、免疫抑制薬は、メトトレキサート又はシクロスポリン、より好ましくはメトトレキサートであってもよい。
【0036】
有利には、免疫調節薬は、レフルノミド、スルファサラジン、及びそれらの組み合わせから選択することができる。
【0037】
有利には、合成抗マラリア薬は、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、及びそれらの組み合わせから選択することができる。
【0038】
有利には、抗TNF剤は、インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、セルトリズマブ、ゴリムマブ、及びそれらの組み合わせから選択することができる。
【0039】
有利には、酵素的ヤヌスキナーゼ阻害剤はトファシチニブであってもよい。
【0040】
有利には、抗インターロイキンは、抗インターロイキン1、抗インターロイキン6、抗インターロイキン12、抗インターロイキン17、抗インターロイキン23、及びそれらの組み合わせから選択することができる。
【0041】
有利には、抗インターロイキン1は、アナキンラであってもよい。
【0042】
有利には、抗インターロイキン6は、トシリズマブ又はサリルマブであってもよい。
【0043】
有利には、Bリンパ球阻害剤は、リツキシマブであってもよい。
【0044】
有利には、Tリンパ球阻害剤は、アバタセプトであってもよい。
【0045】
有利には、インターロイキン12阻害剤は、ウステキヌマブであってもよい。
【0046】
有利には、インターロイキン17阻害剤は、イキセキズマブ及びセスキヌマブから選択することができる。
【0047】
有利には、インターロイキン23阻害剤は、ウステキヌマブ及びグセルクマブから選択することができる。
【0048】
好ましくは、NMN又はその薬学的に許容される誘導体若しくは塩は、葉酸塩、S-アデノシル-L-メチオニン(SAM)、アスタキサンチン、ベルベリン、プテロスチルベン、レスベラトロール、メトホルミン、ボフロキサシン、及びそれらの組み合わせから選択される化合物と組み合わせて使用されない。
【0049】
本発明はまた、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)又はその薬学的に許容される誘導体若しくは塩と、RAの予防及び/又は治療に使用するための少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む組成物に関する。
【0050】
有利には、本発明による組成物は、錠剤、カプセル、サシェ、顆粒、軟カプセル、凍結乾燥物、懸濁液、ゲル、シロップ、溶液、油中水型エマルジョン、水中油型エマルジョン、油、クリーム、ミルク、スプレー、軟膏、アンプル、坐剤、点眼剤、腟座薬、膣カプセル、吸入用液体、乾燥粉末吸入器、加圧式定量吸入器の形態で提供することができる。
【0051】
有利には、本発明による組成物は医薬組成物であってもよい。
【0052】
有利には、本発明による組成物は栄養補助食品であってもよい。
【0053】
有利には、本発明による組成物は、経口投与、眼内投与、舌下投与、静脈内投与、筋肉内投与、関節内投与、皮下投与、経皮投与、膣投与、硬膜外投与、膀胱内投与、直腸投与、又は吸入によって投与することができる。
【0054】
有利には、本発明による組成物は、固定された単位用量形態で提供することができる。
【0055】
有利には、本発明による組成物は、経口又は注射によって投与することができる。
【0056】
好ましい実施形態では、NMN又はその薬学的に許容される誘導体若しくは塩を含む組成物は、好ましくは舌下錠又は胃耐性カプセルの形態で経口投与することができる。
【0057】
別の好ましい実施形態では、NMN又はその薬学的に許容される誘導体若しくは塩は、注射、好ましくは関節内注射によって投与することができる。
【0058】
好ましい実施形態では、本発明による組成物は、上記のRAの予防及び/又は治療に使用するための、上記で定義される少なくとも1つの更なる治療薬を更に含むことができる。
【0059】
好ましくは、本発明による組成物は、葉酸塩、s-アデノシル-Lメチオニン(SAM)、アスタキサンチン、ベルベリン、プテロスチルベン、レスベラトロール、メトホルミン、ボフロキサシン、及びそれらの組み合わせから選択される化合物を含まない。
【0060】
定義
本発明では、以下の用語は、以下の意味を有する。
【0061】
別段の指示がない限り、本発明において明示的に定義されていない置換基の命名法は、官能基の末端部分を命名し、続いて結合点の方向に隣接する官能基を命名することによって得られる。
【0062】
それ自体で又は別の置換基の一部としての「アルキル」は、nが1以上の数である式CnH2n+1を有するヒドロカルビル基を指す。一般に、本発明のアルキル基は、1~12個の炭素原子、好ましくは1~8個の炭素原子、より好ましくは1~6個の炭素原子、陀羅尼より好ましくは1~2個の炭素原子を含む。アルキル基は、直鎖又は分岐鎖であってもよく、本発明で示されるように置換されていてもよい。本発明の実施に適したアルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、及びt-ブチル、n-ペンチル及びイソペンチルなどのペンチル及びその異性体、n-ヘキシル及びイソヘキシルなどのヘキシル及びその異性体、ヘプチル及びその異性体(例えば、n-ヘプチル、イソ-ヘプチル)、オクチル及びその異性体(例えば、n-オクチル、イソオクチル)、ノニル及びその異性体(例えば、n-ノニル、イソノニル)、デシル及びその異性体(例えば、n-デシル、イソ-デシル)、ウンデシル及びその異性体、ドデシル及びその異性体から選択することができる。好ましくは、アルキル基は、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル及びn-デシルから選択することができる。飽和及び分岐アルキル基は、イソプロピル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、イソペンチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、2-メチルヘキシル、3-メチルヘキシル、4-メチルヘキシル、5-メチルヘキシル、2,3-ジメチルブチル、2,3-ジメチルペンチル、2,4-ジメチルペンチル、2,3-ジメチルヘキシル、2,4-ジメチルヘキシル、2,5-ジメチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、2,2-ジメチルヘキシル、3,3-ジメチルペンチル、3,3-ジメチルヘキシル、4,4-ジメチルヘキシル、2-エチルペンチル、3-エチルペンチル、2-エチルヘキシル、3-エチルヘキシル、4-エチルヘキシル、2-メチル-2-エチルペンチル、2-メチル-3-エチルペンチル、2-メチル-4-エチルペンチル、2-メチル-2-エチルヘキシル、2-メチル-3-エチルヘキシル、2-メチル-4-エチルヘキシル、2,2-ジエチルペンチル、3,3-ジエチルヘキシル、2,2-ジエチルヘキシル及び3,3-ジエチルヘキシルから選択することができる、これらに限定されない。
以下のアルキル基であるメチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル及びt-ブチルが好ましい。Cx~Cyアルキルは、x~y個の炭素原子を含むアルキル基を指す。
【0063】
接尾辞「エン」(「アルキレン」)がアルキル基と共に使用される場合、これは、本明細書で定義されるアルキル基が他の基への結合点として2つの単結合を有することを意味する。「アルキレン」という用語は、メチレン、エチレン、メチルメチレン、プロピレン、エチルエチレン、及び1,2-ジメチルエチレンを含む。
【0064】
本明細書で使用される場合、「アルケニル」という用語は、直鎖又は分岐であってもよく、1個又は複数の炭素-炭素二重結合を含む不飽和ヒドロカルビル基を指す。適切なアルケニル基は、2~12個の炭素原子、好ましくは2~8個の炭素原子、更により好ましくは2~6個の炭素原子を含む。アルケニル基の例としては、エテニル、2-プロペニル、2-ブテニル、3-ブテニル、2-ペンテニル及びその異性体、2-ヘキセニル及びその異性体、2,4-ペンタジエニル、並びに同様の基が挙げられる。
【0065】
本明細書で使用される場合、「アルキニル」という用語は、不飽和が1個又は複数の炭素-炭素三重結合の存在から生じる一価不飽和ヒドロカルビル基のクラスを指す。一般に、好ましくは、アルキニル基は、アルケニル基について上記と同じ数の炭素原子を有する。アルキニル基の例としては、エチニル、2-プロピニル、2-ブチニル、3-ブチニル、2-ペンチニル及びその異性体、2-ヘキシニル及びその異性体などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
「アルコキシ」は、酸素原子によって別の部分に結合している上記で定義されるアルキル基を指す。アルコキシ基の例としては、とりわけ、メトキシ、イソプロポキシ、エトキシ及びtert-ブトキシ基が挙げられる。アルコキシ基は、1個又は複数の置換基によって置換されていてもよい。本発明の化合物に含まれるアルコキシ基は、可溶化基で置換されていてもよい。
【0067】
本明細書で使用される場合、「アリール」は、一般に5個~18個、好ましくは5個~12個、より好ましくは6個~10個の原子を含み、その環の少なくとも1つが芳香族である、単環(例えばフェニル)又は互いに縮合した(例えばナフチル)若しくは共有結合したいくつかの芳香族環を有する多価不飽和芳香族ヒドロカルビル基を指す。芳香族環は、それと縮合した1個又は2個の追加の環(シクロアルキル、ヘテロシクリル、又はヘテロアリール)を含んでもよい。「アリール」はまた、本明細書に記載の炭素環系の部分水素化誘導体を含むことを意図している。アリールの例としては、フェニル、ビフェニリル、ビフェニレニル、5-又は6-テトラリニル、ナフタレン-1-又は2-イル、4-、5-、6又は7-インデニル、1-、2-、3-、4-又は5-アセナフチレニル、3-、4-又は5-アセナフテニル、1-又は2-ペンタレニル、4-又は5-インダニル、5-、6-、7-又は8-テトラヒドロナフチル、1,2,3,4-テトラヒドロナフチル、1,4-ジヒドロナフチル、1-、2-、3-、4-又は5-ピレニルが挙げられる。
【0068】
アリール基中の少なくとも1個の炭素原子がヘテロ原子によって置き換えられる場合、得られた環は、本明細書では「ヘテロアリール」環と呼ばれる。
【0069】
「アルキルアリール」は、アルキル基で置換されたアリール基を指す。
【0070】
「アミノ酸」は、アルファ-アミノカルボン酸、すなわちカルボン酸官能基及びカルボン酸基のアルファ位にアミノ官能基を含む分子、例えばタンパク質原性アミノ酸又は非タンパク質原性アミノ酸を指す。
【0071】
「タンパク質原性アミノ酸」とは、生体内のリボソームによるメッセンジャーRNA(mRNA)の翻訳においてタンパク質に組み込まれるアミノ酸、すなわちアラニン(ALA)、アルギニン(ARG)、アスパラギン(ASN)、アスパラギン酸(ASP)、システイン(CYS)、グルタミン酸(Glutamate)(グルタミン酸(glutamic acid))(GLU)、グルタミン(GLN)、グリシン(GLY)、ヒスチジン(HIS)、イソロイシン(ILE)、ロイシン(LEU)、リジン(LYS)、メチオニン(MET)、フェニルアラニン(PHE)、プロリン(PRO)、ピロリジン(PYL)、セレノシステイン(SEL)、セリン(SER)、スレオニン(THR)、トリプトファン(TRP)、チロシン(TYR)又はバリン(VAL)を指す。
【0072】
本明細書で使用される場合、「非タンパク質原性アミノ酸」は、生物の遺伝暗号に天然にコードされていないか又は見出されないアミノ酸を指す。非タンパク質原性アミノ酸の例としては、オルニチン、シトルリン、アルギニノコハク酸、ホモセリン、ホモシステイン、システイン-スルフィン酸、2-アミノムコン酸、δ-アミノレブリン酸、β-アラニン、シスタチオニン、γ-アミノ酪酸、DOPA、5-ヒドロキシトリプトファン、D-セリン、イボテン酸、α-アミノ酪酸、2-アミノイソブチレート、D-ロイシン、D-バリン、D-アラニン、又はD-グルタミン酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
本明細書で使用される場合、「シクロアルキル」という用語は、環状アルキル基、すなわち1又は2個の環状構造を有する飽和又は不飽和一価ヒドロカルビル基である。「シクロアルキル」という用語は、単環式又は二環式ヒドロカルビル基を含む。シクロアルキル基は、環内に3個以上の炭素原子を含んでもよく、一般に、本発明によれば、3~10個、より好ましくは3~8個、更もより好ましくは3~6個の炭素原子を含んでもよい。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルが挙げられるが、これらに限定されず、シクロプロピルが特に好ましい。
【0074】
「薬学的に許容される賦形剤」は、有効成分が製剤化及び/又は投与され、動物、好ましくはヒトに投与された場合に望ましくないアレルギー又は他の反応を生じない、溶媒又は希釈剤として使用される不活性ビヒクル又は支持体を指す。これには、全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤、吸収遅延剤、及び他の同様の成分が含まれる。ヒトへの投与のために、調製物は、FDA又はEMAなどの規制機関によって課される無菌性、一般的な安全性、及び純度の基準を満たさなければならない。本発明の意味の範囲内で、「薬学的に許容される賦形剤」は、全ての薬学的に許容される賦形剤、並びに全ての薬学的に許容される支持体、希釈剤、及び/又はアジュバントを含む。
【0075】
「ハロゲン」又は「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨードを意味する。好ましいハロ基はフルオロ及びクロロである。
【0076】
「ハロアルキル」は、単独で又は組み合わせて、1個又は複数の水素原子が上記で定義されるハロゲンで置き換えられている、上記の意味の範囲内のアルキルラジカルを指す。そのようなハロアルキル基の例としては、クロロメチル、1-ブロモエチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、1,1,1-トリフルオロエチル、及び同様の基が挙げられる。Cx~Cy-ハロアルキル及びCx~Cy-アルキルは、x~y個の炭素原子を含むアルキル基を指す。好ましいハロアルキル基は、ジフルオロメチル及びトリフルオロメチルである。
【0077】
「ヘテロアルキル」は、1個又は複数の炭素原子が、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子から選択されるヘテロ原子によって置き換えられている、上記で定義されるアルキル基を指す。ヘテロアルキル基では、ヘテロ原子は、アルキル鎖に沿って炭素原子のみに結合しており、すなわち、各ヘテロ原子は、少なくとも1個の炭素原子によって他の全てのヘテロ原子から分離されている。しかし、窒素原子及び硫黄原子は酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子は四級化されていてもよい。ヘテロアルキルは、炭素原子のみによって別の基又は分子に結合しており、すなわち、結合原子は、ヘテロアルキル基内に含まれるヘテロ原子から選択されない。
【0078】
本明細書で使用される場合、「ヘテロアリール」という用語は、単独で又は別の基の一部として、5~12個の炭素原子を有する芳香族環、又は融合若しくは共有結合した、一般に5若しくは6個の原子を含む1若しくは2個の環を含み、その少なくとも1個が芳香族であり、これらの環の1個又は複数において1個又は複数の炭素原子が酸素、窒素、及び/又は硫黄原子で置き換えられており、窒素及び硫黄ヘテロ原子は酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子は四級化されていてもよい環式系を指すが、これらに限定されない。これらの環は、アリール、シクロアルキル、ヘテロアリール又はヘテロシクリル環と縮合していてもよい。そのようなヘテロアリール基の例としては、フラニル、チオフェニル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、テトラゾリル、オキサトリアゾリル、チアトリアゾリル、ピリジニル、ピリミジル、ピラジニル、ピリダジニル、オキサジニル、ジオキシニル、チアジニル、トリアジニル、イミダゾ[2,1-b][1,3]チアゾリル、チエノ[3,2-b]フラニル、チエノ[3,2-b]チオフェニル、チエノ[2,3-d][1,3]チアゾリル、チエノ[2,3-d]イミダゾリル、テトラゾロ[1,5-a]ピリジニル、インドリル、インドリジニル、イソインドリル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、イソベンゾチオフェニル、インダゾリル、ベンズイミダゾリル、1,3-ベンゾオキサゾリル、1,2-ベンゾイソオキサゾリル、2,1-ベンゾイソオキサゾリル、1,3-ベンゾチアゾリル、1,2-ベンゾイソチアゾリル、2,1-ベンゾイソチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、1,2,3-ベンゾオキサジアゾリル、2,1,3-ベンゾオキサジアゾリル、1,2,3-ベンゾチアジアゾリル、2,1,3-ベンゾチアジアゾリル、チエノピリジニル、プリニル、イミダゾ[1,2-a]ピリジニル、6-オキソ-ピリダジン-1(6H)-イル、2-オキソピリジン-1(2H)-イル、6-オキソ-ピリダジン-1(6H)-イル、2-オキソピリジン1(2H)-イル、1,3-ベンゾジオキソリル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、キナゾリニル、キノキサリニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
シクロアルキル基中の少なくとも1個の炭素原子がヘテロ原子で置き換えられている場合、得られた環は、本明細書では「ヘテロシクロアルキル」又は「ヘテロシクリル」と呼ばれる。
【0080】
本明細書で使用される場合、「ヘテロシクリル」、「ヘテロシクロアルキル」、又は「ヘテロシクロ」という用語は、単独で又は別の基の一部として、炭素原子を含む少なくとも1個の環に少なくとも1個のヘテロ原子を有する、完全に飽和又は部分的に不飽和の非芳香族環式基(例えば、3~7員の単環式、7~11員の二環式、又は合計3~10個の環原子を含有する)を指す。ヘテロ原子を含有する複素環基の各環は、窒素、酸素及び/又は硫黄原子から選択される1、2、3又は4個のヘテロ原子を有していてもよく、窒素及び硫黄ヘテロ原子は酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子は四級化されていてもよい。複素環基の炭素原子は、オキソ(例えば、ピペリドン、ピロリジノン)で置換されていてもよい。複素環式基は、原子価が許す場合、環又は環式系の任意のヘテロ原子又は炭素原子に結合していてもよい。多環式複素環の環は、1個又複数のスピロ原子によって、縮合、架橋、及び/又は結合されていてもよい。複素環基の非限定的な例としては、オキセタニル、ピペリジニル、アゼチジニル、2-イミダゾリニル、ピラゾリジニル、イミダゾリジニル、イソオキサゾリニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、ピペリジニル、3H-インドリル、インドリニル、イソインドリニル、2-オキソピペラジニル、ピペラジニル、ホモピペラジニル、2-ピラゾリニル、3-ピラゾリニル、テトラヒドロ-2H-ピラニル、2H-ピラニル、4H-ピラニル、3,4-ジヒドロ-2H-ピラニル、3-ジオキソラニル、1,4-ジオキサニル、2,5-オキソイミダゾリジニル、2-オキソピペリジニル、2-オキソピロロジニル、インドリニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリン-1-イル、テトラヒドロイソキノリン-2-イル、テトラヒドロイソキノリン-3-イル、テトラヒドロイソキノリン-4-イル[sic]、チオモルホリン-4-イル、チオモルホリン-4-イルスルフ[sic]オキシド、チオモルホリン-4-イルスルホン、1,3-ジオキソラニル、1,4-オキサチアニル、1H-ピロリジニル、テトラヒドロ-1,1-ジオキソチオフェニル、N-ホルミルピペラジニル、及びモルホリン-4-イルが挙げられる。
【0081】
本明細書で使用される場合、「前駆体」はまた、そのインビボでの生体内変換プロジェクトが活性薬物であるエステルなどの式(I)の化合物の薬学的に許容される誘導体を指す。前駆体は、バイオアベイラビリティの増加を特徴とし、インビボで活性化合物に容易に代謝される。本発明の目的に適した前駆体としては、カルボン酸エステル、特に、ジオキソレンのアルキルエステル、アリールエステル、アシルオキシアルキルエステル及びカルボン酸エステル、アルコルビン酸エステルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
「薬学的に許容される」とは、動物、より好ましくはヒトにおける使用のために、規制機関によって承認されたか、又は承認に適格であること、又は承認された薬局方に登録されていることを意味する。これは、生物学的又は他の用語で望ましくないものではない物質であってもよく、すなわち、物質は、それが含有される組成物の成分の1つと望ましくない生物学的効果又は有害な相互作用を引き起こすことなく個体に投与することができる。好ましくは、「薬学的に許容される」塩又は賦形剤は、欧州薬局方(「Ph.Eur.」)及び米国薬局方(「USP」)によって認可されている任意の塩又は賦形剤を指す。
【0083】
「有効成分」は、被験体への投与が、疾患又は状態の1種又は複数の症状の進行、悪化、又は増悪を遅延又は停止させ、疾患又は状態の症状を緩和し、若しくは疾患又は状態を治癒する分子又は物質を指す。これらの実施形態の1つでは、治療成分は、小分子、天然又は合成である。別の実施形態では、治療成分は、生物学的分子、例えば、オリゴヌクレオチド、siRNA、miRNA、DNA断片、アプタマー、抗体などである。「薬学的に許容される塩」には、これらの塩の酸及び塩基付加塩が含まれる。適切な酸付加塩は、非毒性塩を形成する酸から形成される。これらとしては、例えば、酢酸塩、アジピン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、炭酸水素塩/炭酸塩、硫酸水素塩/硫酸塩、ホウ酸塩、カンシル酸塩、クエン酸塩、サイクラミン酸塩、エジシル酸塩、エシル酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプチン酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ヒベンズ酸塩、塩酸塩/塩化物、臭化水素酸塩/臭化物、ヨウ化水素酸塩/ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ナフチル酸塩、2-ナフシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロト酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、リン酸塩/リン酸水素塩/リン酸二水素塩、ピログルタミン酸、トリフルオロ酢酸塩、及びキシナホ酸塩が挙げられる。適切な塩基性塩は、非毒性塩を形成する塩基から形成される。例としては、アルミニウム、アルギニン、ベンザチン、カルシウム、コリン、ジエチルアミン、ジオラミン、グリシン、リジン、マグネシウム、メグルミン、オラミン、カリウム、ナトリウム、トロメタミン、2-(ジエチルアミノ)エタノール、エタノールアミン、モルホリン、4-(2-ヒドロキシエチル)モルホリン及び亜鉛塩が挙げられる。酸及び塩基の半塩、例えば、半硫酸塩及び化学的カルシウム塩も形成することができる。好ましい薬学的に許容される塩は、塩酸塩/塩化物、臭化物/臭化水素塩、硫酸水素塩/硫酸塩、硝酸塩、クエン酸塩、及び酢酸塩である。
【0084】
薬学的に許容される塩は、以下の方法である、
i.化合物を所望の酸と反応させること、
ii.化合物を所望の塩基と反応させること、
iii.化合物の適切な前駆体の酸又は塩基に不安定な保護基を除去することによって、又は所望の酸を使用して適切な環状前駆体、例えばラクトン又はラクタムの環を開くこと、若しくは
iv.適切な酸と反応させることによって、又は適切なイオン交換カラムによって、化合物の塩を別の塩に変換することの1つ又は複数によって調製することができる。
【0085】
これらの反応は全て、一般に溶液中で行われる。塩は、溶液から沈殿し、濾過によって回収されてもよく、又は溶媒を蒸発させることによって回収されてもよい。塩のイオン化度は、完全にイオン化されたものからほぼイオン化されていないものまで様々であってもよい。
【0086】
「溶媒和物」は、本発明の化合物と1つ又は複数の薬学的に許容される溶媒分子、例えばエタノールとを含む分子複合体を説明するために本明細書で使用される。
【0087】
「置換基」又は「置換された」という用語は、化合物又は基上の水素ラジカルが、保護されていない形態で、又は保護基によって保護されている場合に、反応条件において実質的に安定である任意の所望の基によって置き換えられることを意味する。好ましい置換基の例としては、ハロゲン(クロロ、ヨード、ブロモ、又はフルオロ);アルキル;アルケニル;上記のアルキニル;ヒドロキシ;アルコキシ;ニトロ;チオール;チオエーテル;イミン;シアノ;アミド;ホスホナト;ホスフィン;カルボキシル;チオカルボニル;スルホニル;スルホンアミド;ケトン;アルデヒド;エステル;酸素(-O);ハロアルキル(例えばトリフルオロメチル);単環式若しくは多環式、縮合若しくは非縮合(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル又はシクロヘキシル)であってもよいシクロアルキル、又は単環式若しくは多環式、縮合若しくは非縮合(例えば、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル又はチアジニル)、単環式若しくは多環式、縮合若しくは非縮合、アリール若しくはヘテロアリール(例えば、アリール、ヘテロアリール、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル又はチアジニル)、単環式若しくは多環式、縮合若しくは非縮合(例えば、アリール、ヘテロアリール、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル又はチアジニル)、フェニル、ナフチル、ピロリル、インドリル、フラニル、チオフェニル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、ピリジル、キノリニル、イソキノリニル、アクリジニル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチオフェニル、又はベンゾフラニルであってもよいヘテロシクロアルキル;アミノ(第一級、第二級、又は第三級);CO2CH3;CONH2;OCH2CONH2;NH2;SO2NH2;OCHF2;CF3;OCF3;又は構造又は縮合環架橋、例えば-OCH2O-によって置換されていてもよいこれらの基が挙げられるが、これらに限定されない。これらの置換基はまた、これらの基から選択される置換基で置換されていてもよい。特定の表現において、「置換基」という用語又は「置換された」という形容詞は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、ハロアルキル、-C(O)NR11R12、-NR13C(O)R14、ハロ、-OR13、シアノ、ニトロ、ウンハロアルコキシ、-C(O)R13、-NR11R12、-SR13、-C(O)OR13、-OC(O)R13、-NR13C(O)NR11R12、-OC(O)NR11R12、-NR13C(O)OR14、-S(O)rR13、NR13S(O)rR14、-OS(O)rR14、S(O)rNR11R12、-O、-S、及び-N-R13からなる群から選択される置換基を指し、rは1又は2であり;R11及びR12は、各出現において、独立して、H、場合により置換されたアルキル、場合により置換されたアルケニル、場合により置換されたアルキニル、場合により置換されたシクロアルキル、場合により置換されたシクロアルケニル、場合により置換されたヘテロシクロアルキル、場合により置換されたアリール、場合により置換されたヘテロアリール、場合により置換されたアリールアルキル、又は場合により置換されたヘテロアリールアルキルであり;又はR11及びR12は、それらが結合している窒素と一緒になって、場合により置換されたヘテロシクロアルキル又は場合により置換されたヘテロアリールであり;R13及びR14は、各出現において、独立して、H、場合により置換されたアルキル、場合により置換されたアルケニル、場合により置換されたアルキニル、場合により置換されたシクロアルキル、場合により置換されたシクロアルケニル、場合により置換されたヘテロシクロアルキル、場合により置換されたアリール、場合により置換されたヘテロアリール、場合により置換されたアリールアルキル、又は場合により置換されたヘテロアリールアルキルである。特定の変形例では、「置換基」という用語又は「置換された」という形容詞は可溶化基を指す。
【0088】
「投与」という用語又はその任意の変形(例えば、「投与する」)は、単独で又は薬学的に許容される組成物中で、状態、症状又は疾患の治療又は予防を必要とする患者に有効成分を提供することを意味する。
【0089】
本明細書で使用される「治療する」、「ケアする」、及び「治療」は、状態又は疾患及び/又は関連する症状を軽減、減弱、又は排除することを含むことを意図している。
【0090】
「予防する」及び「予防」は、本明細書で使用される場合、状態又は疾患及び/又はその関連する症状の出現を遅延又は予防すること、患者が状態又は疾患に罹患することを予防すること、若しくは患者が状態又は疾患に罹患するリスクを低減することを可能にする方法を指す。
【0091】
非対称炭素結合は、本明細書では、実線の三角形
【化5】
点線の三角形
【化6】
又はジグザグ線
【化7】
を使用して表すことができる。
【0092】
発明の詳細な説明
本発明は、関節リウマチ(RA)の予防及び/又は治療に使用するためのニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)又はその薬学的に許容される誘導体若しくは塩、並びにそれを含む組成物に関する。
【0093】
ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)は、全ての生細胞に存在する補酵素である。NADは、その酸化型NAD+又は還元型NADHのいずれかで細胞内に存在する。NADの役割は、代謝酸化還元反応に関与する電子の輸送体としてである。NADはまた、翻訳後タンパク質修飾におけるADPのリボシル化などの多くの細胞プロセスに関与する。
【0094】
NADは、トリプトファン又はアスパラギン酸などのアミノ酸から細胞によってデノボで合成することができる。しかし、NADの主な合成経路はサルベージの合成経路であり、それによって細胞、主に細胞核が化合物をリサイクルして前駆体からNADを再形成するので、この合成は限界的なものである。NAD前駆体としては、ナイアシン、ニコチンアミドリボシド、ニコチンアミドモノヌクレオチド及びニコチンアミドが挙げられる。
【0095】
NMNは、サルベージによるNAD合成を可能にする化合物の1つであり、以下の式を有する。
【化8】
【0096】
実際、本発明者らは、NMN又はその薬学的に許容される塩及び/又は誘導体、並びに本発明による組成物の使用が、同じ副作用を有することなく、この疾患を治療するために現在使用されている薬物に匹敵する、RAによって引き起こされる関節腫脹に対する効果を可能にすることを示している。より正確には、本発明者らは、NMNが関節腫脹を有意に減少させることによってRAに特徴的な炎症性発疹を治療することができ、従来の治療と同等の有効性で治療したことを見出した。更に、NMNの長期投与は、これらの発疹の予防又は少なくともそれらの間の間隔の増加を可能にする。実際、各発疹の間に長期的に投与された場合、NMN及びそれを含む組成物は、炎症を軽減し、したがってRA発疹を予防するか、又はRA発疹の間の間隔を少なくとも増加させることができる。
【0097】
更に、体内に天然に存在する分子であるNMNの使用は、多くの利点を有する。特に、NMNは、患者の許容性の問題を引き起こさない。実際、NMN及び本発明による組成物の使用は、いかなるアレルギー反応も誘発しない。更に、NMN及び本発明による組成物の使用は、従来の治療で頻繁に遭遇する副作用を引き起こさない。
【0098】
特に、NMNは、モルヒネ又はアヘン誘導体を含有する鎮痛剤とは異なり、いかなる身体的又は心理的依存も引き起こさない。更に、NMNは、コルチゾン又はその誘導体の長期投与で観察されたように、骨の脆弱性又は感染に対する脆弱性を引き起こさない。したがって、RAを予防及び/又は治療するためのNMN及び本発明による組成物の使用は、患者にとって安全である。
【0099】
NMN及び本発明による組成物は、小児及び成人の両方に使用され得る。実際、NMNは小児に良好に許容される。本発明の文脈において、患者は、その年齢が18歳未満であれば小児とみなされ、18歳から成人とみなされる。このように、本発明はまた、小児におけるRAを治療するためにも興味深い。
【0100】
特に好ましい実施形態では、NMNは双性イオンの形態である。「双性イオン」は、一般に分子の隣接していない原子上に位置する反対の電荷を有する化学分子種である。
【0101】
NMN又はその薬学的に許容される誘導体若しくは塩、並びにそれを含む本発明による組成物の使用は、主に、炎症、特に関節腫脹を軽減することによって、RA発疹中の炎症を治療することを可能にする。したがって、長期的には、関節変形を回避すること、又は少なくとも関節変形を軽減若しくは遅延させることが可能である。したがって、患者の関節は保存される。
【0102】
関節の膨張、特に腫脹を減少させること、並びに炎症性発疹を予防することによって、炎症に関連する疼痛を軽減し、関節硬化を軽減することも可能である。したがって、炎症の症状に対抗するために使用される薬物、すなわち鎮痛薬、NSAID、コルチゾン、及び/又はコルチゾン及びその誘導体の投与を回避するか、又は少なくとも投与頻度及び投与量を減少させることが可能である。これはまた、メトトレキサートなどの慢性炎症性リウマチを治療するために従来使用されている、基礎疾患に対する治療の投与を回避すること、又は少なくともその投与量を減少させることを可能にする。
【0103】
したがって、従来の治療法の必要性を減らすことによって、又はそれらに取って代わることによって、本発明は、従来のRA治療の使用を回避するか、又は少なくとも低減することを可能にし、したがって、これらの処治療に関連する副作用の出現を回避するか、又は少なくとも低減することを可能にする。
【0104】
したがって、治療的側面に加えて、本発明は、患者が日常的な作業を行うことをより容易にし、場合によっては専門的な活動を終了する必要性を回避することによって、患者の生活の質を維持することを可能にする。したがって、本発明は、患者の生活の質を維持するか、又は少なくとも患者の生活の質の過度の低下を回避するのに役立つ。
【0105】
使用
【0106】
本発明によれば、NMN又はその薬学的に許容される誘導体若しくは塩、並びにそれを含む組成物が、RAを予防及び/又は治療するために使用される。より正確には、それらは、RAの発疹を治療するために急性的に、又は炎症を軽減し、発疹間の間隔を増加させるために慢性的に使用することができる。換言すれば、NMN又はその薬学的に許容される誘導体若しくは塩、並びにそれらを含む組成物は、関節の炎症、特に腫脹を軽減するために予防的又は治療的に使用することができる。
【0107】
NMN又はその薬学的に許容される誘導体若しくは塩、及び本発明による組成物は、治療有効量で投与することができる。本発明の文脈において、治療有効量の組成物は、所望の治療効果を得るのに十分な量で組成物が患者に投与されることを意味する。
【0108】
NMN又はその薬学的に許容される前駆体、誘導体若しくは塩は、0.01mg/kg/d~1000mg/kg/d、好ましくは1mg/kg/d~100mg/kg/d、より好ましくは5mg/kg/d~50mg/kg/d、更により好ましくは10mg/kg/d~20mg/kg/dの量で使用される。当業者は、患者の年齢及び体重に基づいて投与されるNMNの用量を適合させることができる。
【0109】
適切な投与量レベルは、約0.01~250mg/kg/d、約0.05~100mg/kg/d、又は約0.1~50mg/kg/dであってもよい。この範囲内で、用量は0.05~0.5、0.5~5、又は5~50mg/kg/dであってもよい。経口投与のために、組成物は、好ましくは、治療される患者の用量の症状に基づく調整のために、1.0~1000mgのNMN又はその薬学的に許容される前駆体、誘導体若しくは塩、特に1.0、5.0、10.0、15.0、20.0、25.0、50.0、75.0、100.0、150.0、200.0、250.0、300.0、400.0、500.0、600.0、750.0、800.0、900.0、及び1000.0mgの有効成分を含有する錠剤の形態で提供される。例えば、投与量は、100mg/d~5000mg/d、好ましくは500mg/d~1000mg/dであってもよい。化合物は、1日1~4回、好ましくは1日1回、2回又は3回、好ましくは1日3回の投与のレジメンに従って投与することができる。治療の期間は、治療する医師に応じ、治療する医師によって決定される。治療は、1日~1年以上、好ましくは1週間~3ヶ月、より好ましくは2週間~6週間の範囲であってもよい。しかし、特定の投与量レベル及び頻度、並びに所与の患者の持続時間は様々である可能性があり、様々な要因、特に使用される特定の化合物の活性、化合物の代謝安定性及び作用持続時間、年齢、体重、全身状態、性別、食事、投与様式及び投与時間、排泄率、薬物の組み合わせ、並びに治療される個体に依存することが理解される。
【0110】
NMN又はその薬学的に許容される前駆体、誘導体若しくは塩は、10mg/kgの1日用量で、最小50mg/d及び最大1000mg/dで投与することができる。
【0111】
NMN及び本発明による組成物は、1日1回又は複数回投与することができる。特に、NMN及び本発明による組成物は、1日1~12回、好ましくは1日2~10回、より好ましくは1日3~5回投与することができる。
【0112】
投与様式及びガレノス製剤
【0113】
NMN又はその薬学的に許容される誘導体若しくは塩、又はそれを含む組成物は、経口投与、眼内投与、舌下投与、静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与、関節内投与、皮下投与、経皮投与、膣投与、硬膜外投与、膀胱内投与、直腸投与、又は吸入によって投与することができる。
【0114】
意図される投与様式に応じて、本発明による組成物は、錠剤、カプセル、サシェ、顆粒、軟カプセル、凍結乾燥物、懸濁液、ゲル、シロップ、溶液、油中水型エマルジョン、水中油型エマルジョン、油、クリーム、ミルク、スプレー、軟膏、アンプル、坐剤、点眼剤、腟座薬、膣カプセル、吸入用液体、乾燥粉末吸入器、加圧式定量吸入器の形態で提供することができる。
【0115】
好ましい実施形態では、NMN及び本発明による組成物は、注射によって、特に皮下、静脈内、又は関節内、好ましくは関節内に投与される。
【0116】
同様に好ましい別の実施形態では、NMN及び本発明による組成物は、経口投与される。
【0117】
本発明による経口形態はまた、即時放出形態であってもよく、そのようなガレノス製剤は、NMNの迅速な吸収及び作用開始の遅延の減少を可能にする。即時放出のためのガレノス製剤としては、とりわけ、分散性、口腔分散性及び発泡性錠剤、並びに経口凍結乾燥物が挙げられる。
【0118】
分散性錠剤は、均一な分散を確実にするために投与前に液体中に分散することができるコーティングされていない錠剤又はフィルムコーティングされた錠剤である。分散性錠剤は、通常、水又は少量の母乳に入れると3分以内に崩壊する。
【0119】
発泡性錠剤は、二酸化炭素(CO2)を放出しながら水又は別の液体中で急速に断片化及び溶解するように設計された錠剤である。この放出は、発泡及び錠剤の断片化を引き起こす。
【0120】
口腔分散性錠剤は、舌の上に置かれる分散性錠剤である。次いで、有効成分は胃腸粘膜に吸収される。
【0121】
「舌下錠」は、有効成分が舌下粘膜、特に舌静脈及び動脈によって吸収されるように舌の下に置かれる経口凍結乾燥物を指す。
【0122】
本発明による経口形態はまた、遅延放出形態であってもよい。NMNは腸に溶解及び吸収され、したがって、酸性pHでの胃の刺激又は脆弱な有効成分の分解を制限する。これらは、ほとんどが胃抵抗性の形態であり、すなわち、錠剤又は顆粒は、酸性媒体に不溶性であるが、アルカリ性媒体中の水に対して透過性であるポリマーフィルム、又は腸リパーゼによって分解される脂質フィルムにコーティングされる。
【0123】
「胃抵抗性」とは、胃内で溶解しないガレノス製剤を指す。このようなガレノス製剤は、遅延放出用であり、すなわち腸に溶解するために、胃の酸性pH(pH<2)に耐性のコーティング又はコーティング組成物を有する。ガレノス製剤が胃内耐性であるかどうかは、欧州薬局方によって確立された試験に基づいて決定される。簡単に言うと、カプセルの胃抵抗性は、崩壊装置内で37℃の0.1M塩酸の崩壊媒体中で測定される。この環境は、胃の物理化学的状態を模倣する。カプセルをこの環境で1時間インキュベートする。カプセルは、内容物の損失をもたらす可能性がある崩壊又は亀裂の兆候を示してはならない。次いで、カプセルをpH6.8のリン酸緩衝溶液中、37℃で1時間インキュベートし、この溶液は、欧州薬局方の推奨に従って腸環境の状態を模倣する。カプセルは1時間未満で完全に崩壊しなければならない。
【0124】
本発明による経口形態はまた、持続放出形態及び逐次放出形態であってもよい。逐次(正確な時間間隔での放出)及び持続放出形態(枯渇するまでの有効成分の連続的な放出)は、患者の体内で有効な血漿濃度をより長い時間維持するために、有効成分の放出を経時的に広げる。そのようなガレノス製剤は、より長期間にわたる緩和を可能にし、薬物の用量間の間隔を増加させることを可能にする。
【0125】
より好ましい実施形態では、NMN及び本発明による組成物は、胃耐性カプセル又は舌下錠の形態で経口投与される。
【0126】
投与様式及びガレノス製剤は、患者及び治療される解剖学的部位に応じて当業者によって決定される。Remington´s Pharmaceutical Sciencesの最新版を参照されたい。
【0127】
治療的組み合わせ
【0128】
NMN、その薬学的に許容される誘導体又は塩、及びそれらを含む組成物はまた、少なくとも1つの他の治療薬、特にRA発疹を治療するために急性的に使用される治療薬、すなわち対症療法、又はRAの基礎疾患プロセスの治療のために使用される治療薬と組み合わせて使用することができる。
【0129】
基礎疾患プロセスの治療は、クリーゼ間の間隔を予防及び増加させるために、慢性的に毎日行われる治療である。
【0130】
本発明に従って組み合わせることができる治療薬としては、鎮痛薬、NSAID、コルチゾン、コルチゾン誘導体、免疫抑制薬、免疫調節薬、Tリンパ球阻害剤、Bリンパ球阻害剤、合成抗マラリア薬、抗TNF剤、酵素ヤヌスキナーゼ阻害剤、抗インターロイキン剤、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0131】
より具体的には、鎮痛薬、NSAID、並びにコルチゾン及びその誘導体を使用して、炎症性発疹の対症療法として炎症性リウマチ性障害の発疹を治療及び軽減することができる。
【0132】
鎮痛薬は、パラセタモール、アスピリン、コデイン、ジヒドロコデイン、トラマドール、モルヒネ、ブプレノルフィン、フェンタニル、ヒドロモルホン、ナルブフィン、オキシコドン、ペチジン、及びそれらの組み合わせから選択することができる。
【0133】
NSAIDは、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン、アルミノプロフェン、アセクロフェナク、メフェナム酸、ニフルミン酸、チアプロフェン酸、セレコキシブ、デクスケトプロフェン、ジクロフェナク、エトドラク、エトリコキシブ、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、インドメタシン、メロキシカム、ナブメトン、ピロキシカム、スリンダク、テノキシカム、及びそれらの組み合わせから選択することができる。
【0134】
コルチゾン誘導体は、ベタメタゾン、シプロフロキサシン、コルチバゾール、デキサメタゾン、フルドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、及びそれらの組み合わせから選択することができる。
【0135】
NMN、その薬学的に許容される誘導体又は塩、並びにそれらを含む組成物はまた、免疫抑制薬、免疫調節薬、Tリンパ球阻害剤、Bリンパ球阻害剤、合成抗マラリア薬、抗TNF剤、酵素ヤヌスキナーゼ阻害剤、抗インターロイキン剤、又はそれらの組み合わせなどのRAの基礎疾患プロセスの治療と組み合わせて投与することができる。NMN又はその誘導体もしくは塩、並びにそれらを含む組成物と組み合わせた基礎疾患プロセスの治療の使用は、発疹を治療するための鎮痛薬、NSAID、コルチゾン及び/又はコルチゾン誘導体の投与にも適合する。
【0136】
免疫抑制薬は、アザチオプリン、シクロホスファミド、クロラムブシル、シクロスポリン、メトトレキサート、及びそれらの組み合わせから選択することができる。好ましくは、免疫抑制薬は、メトトレキサート又はシクロスポリン、より好ましくはメトトレキサートであってもよい。
【0137】
免疫調節薬は、レフルノミド、スルファサラジン、及びそれらの組み合わせから選択することができる。
【0138】
有利には、Bリンパ球阻害剤は、リツキシマブであってもよい。特に、リツキシマブはCD20 Bリンパ球に結合する。
【0139】
有利には、Tリンパ球阻害剤は、アバタセプトであってもよい。特に、アバタセプトは、CD80及びCD86を発現するTリンパ球に結合する。
【0140】
合成抗マラリア薬は、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、及びそれらの組み合わせから選択することができる。
【0141】
抗TNF剤は、インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、セルトリズマブ、ゴリムマブ、及びそれらの組み合わせから選択することができる。
【0142】
酵素的ヤヌスキナーゼ阻害剤はトファシチニブであってもよい。
【0143】
抗インターロイキン剤は、抗インターロイキン1、抗インターロイキン6、抗インターロイキン12、インターロイキン17阻害剤、インターロイキン23阻害剤、及びそれらの組み合わせから選択することができる。抗インターロイキン1は、アナキンラであってもよい。抗インターロイキン6は、トシリズマブであってもよい。
【0144】
インターロイキン12阻害剤は、ウステキヌマブであってもよい。インターロイキン17阻害剤は、イキセキズマブ及びセスキヌマブから選択することができる。インターロイキン23阻害剤は、ウステキヌマブ及びグセルクマブから選択することができる。
【0145】
好ましくは、NMN又はその薬学的に許容される誘導体若しくは塩は、葉酸塩、S-アデノシル-Lメチオニン(SAM)、アスタキサンチン、ベルベリン、プテロスチルベン、レスベラトロール、メトホルミン、ボフロキサシン、及びそれらの組み合わせから選択される化合物と組み合わせて使用されない。
【0146】
組成物
【0147】
本発明による組成物は、RAを予防及び/又は治療するために、ニコチンアミドモノヌクレオチド又はその薬学的に許容される誘導体若しくは塩、及び少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含むことができる。
【0148】
本発明の文脈において、「賦形剤」は、組成物中のNMN以外の治療効果を有さない任意の物質を指す。賦形剤は、NMN又は任意の他の更なる治療薬と化学的に相互作用しない。
【0149】
賦形剤は、増量剤、潤滑剤、香味料、着色剤、乳化剤、圧縮剤、ゲル化剤、可塑剤、界面活性剤、又はそれらの組み合わせから選択することができる。
【0150】
本発明による組成物は、ラクトース、デキストロース、サッカロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、トラガカントゴム、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、セルロース、水(滅菌)、メチルセルロース、ヒドロキシ安息香酸メチル及びプロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、食用油、植物油及び鉱油又はそれらの適切な混合物などの、これらの製剤にそれ自体で適した支持体、賦形剤及び希釈剤を用いて製剤化することができる。製剤は、潤滑剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、分散剤、崩壊剤、増量剤、保存剤、甘味料、香味料、流動調整剤、放出剤などの医薬製剤に一般的に使用される他の物質を含有してもよい。組成物はまた、それらが含有する有効成分の急速放出、持続放出、又は遅延放出のために製剤化することができる。当業者は、選択されたガレノス製剤に基づいてどの賦形剤を選択するかを知っているであろう。
【0151】
本発明による組成物は、好ましくは単位剤形であり、例えば箱、ブリスターパック、バイアル、ボトル、サシェ、アンプル、又は単回用量若しくは複数回用量に適した任意の他の支持体若しくは容器(適切にラベル付けすることができる)に、必要に応じて、製品に関する情報及び/又は使用説明書を含む1つ又は複数の注意書きと共に、適切に包装されてもよい。
【0152】
本発明による組成物は医薬組成物であってもよい。この場合、賦形剤は、上記で定義されるような薬学的に許容される賦形剤である。
【0153】
本発明による組成物はまた、栄養補助食品であってもよい。
【0154】
好ましい実施形態では、本発明による組成物は、上記のRAの予防及び/又は治療に使用するための、上記で定義される少なくとも1つの更なる治療薬を更に含むことができる。
【0155】
本発明による組成物が少なくとも1つの更なる治療薬を含む場合、組成物は固定単位用量形態で提供することができる。「固定単位用量形態」は、単一剤形に製剤化された少なくとも2つの有効成分を含む組成物を指す。
【0156】
好ましくは、本発明による組成物は、葉酸塩、S-アデノシル-Lメチオニン(SAM)、アスタキサンチン、ベルベリン、プテロスチルベン、レスベラトロール、メトホルミン、ボフロキサシン、及びそれらの組み合わせから選択される化合物を含まない。
NMN誘導体
【0157】
本発明によれば、NMN誘導体は、ジヒドロニコチンアミドモノヌクレオチド(「NMN-H」)、式(I)の化合物:
【化9】
又はその薬学的に許容される立体異性体、塩、水和物、溶媒和物模式は結晶であり、式中、
-Xは、O、CH
2、S、Se、CHF、CF
2、C=CH
2から選択され、
-R
1は、H、アジド、シアノ、C
1~C8アルキル、C
1~C8チオアルキル、C
1~C8ヘテロアルキル、及びORから選択され、Rは、H及びC
1~C8アルキルから選択され、
-R
2、R
3、R
4及びR
5は、互いに独立して、H、ハロゲン、アジド、シアノ、ヒドロキシル、C
1~C12アルキル、C
1~C12チオアルキル、C
1~C12ヘテロアルキル、C
1~C12ハロアルキル、及びORから選択され、Rは、H、C
1~C
12アルキル、C(O)(C
1~C
12)アルキル、C(O)NH(C
1~C
12)アルキル、C(O)O(C
1~C
12)アルキル、C(O)アリール、C(O)(C
1~C
12)アルキルアリール、C(O)NH(C
1~C
12)アルキルアリール、C(O)O(C
1~C
12)アルキルアリール、及びC(O)CHR
AANH
2から選択され、R
AAは、タンパク質原性アミノ酸から選択される側鎖であり、
-R
6は、H、アジド、シアノ、C
1~C8アルキル、C
1~C8チオアルキル、C
1~C8ヘテロアルキル、ORから選択され、Rは、H及びC
1~C8アルキルから選択され、
-R
7は、(O)R
9R
10及びP(S)R
9R
10から選択され、式中
-R
9及びR
10は、互いに独立して、OH、OR
11、NHR
13、NR
13R
14、(C
1~C
8)アルキル、(C
2~C
8)アルケニル、(C
2~C
8)アルキニル、(C
3~C
10)シクロアルキル、(C
5~C
12)アリール、(C
1~C
8)アルキルアリール、(C
1~C
8)アリールアルキル、(C
1~C
8)ヘテロアルキル、(C
1~C
8)ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、及びNHCHR
AR
A´C(O)R
12から選択され、
-R
11は、独立して、C
1~C10アルキル、C
3~C10シクロアルキル、C
5~C18アリール、C
1~C10アルキルアリール、置換C
5~C12アリール、C
1~C10ヘテロアルキル、C
3~C10ヘテロシクロアルキル、C
1~C
10ハロアルキル、ヘテロアリール、-(CH
2)
nC(O)(C
1~C
15)アルキル、-(CH
2)
nOC(O)(C
1~C
15)アルキル、-(CH
2)
nOC(O)O(C
1~C
15)アルキル、-(CH
2)
nSC(O)(C
1~C
15)アルキル、-(CH
2)
nC(O)O(C
1~C
15)アルキル及び-(CH
2)
nC(O)O(C
1~C
15)アルキルアリール基(ここで、nは1~8の整数である)、P(O)(OH)OP(O)(OH)
2.ハロゲン、ニトロ、シアノ、C
1~C
6アルコキシ、C
1~C
6ハロアルコキシ、-N(R
11a)
2、C
1~C
6アシルアミノ、-COR
11b、-OCOR
11b、NHSO
2(C
1~C
6アルキル)、-SO
2N(R
11a)
2SO
2から選択され、各R
11aは、独立してH、及びC
1~C
6アルキルから選択され、R
11bは、独立して、OH、C
1~C
6アルコキシ、NH
2、NH(C
1~C
6アルキル)、及びN(C
1~C
6アルキル)
2から選択され、
-R
12は、H、C
1~C
10アルキル、C
2~C
8アルケニル、C
2~C
8アルキニル、C
1~C
10ハロアルキル、C
3~C
10シクロアルキル、C
3~C
10ヘテロシクロアルキル、C
5~C
18アリール、C
1~C
4アルキルアリール、及びC
5~C
12ヘテロアリールから選択され、アリール基又はヘテロアリール基は、ハロゲン、トリフルオロメチル、C
1~C
6アルキル、C
1~C
6アルコキシ及びシアノから選択される1つ又は2つの基で場合により置換されており、
-R
A及びR
A´は、独立して、H、C
1~C10アルキル、C
2~C10アルケニル、C
2~C
10アルキニル、C
3~C
10シクロアルキル、C
1~C10チオアルキル、C
1~C10ヒドロキシルアルキル、C
1~C10アルキルアリール、及びC
5~C12アリール、C
3~C10ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、-(CH
2)
3NHC(=NH)NH
2、(1H-インドール-3-イル)メチル、(1H-イミダゾール-4-イル)メチルから選択され、側鎖は、タンパク質原性又は非タンパク質原性アミノ酸から選択され、アリール基は、ヒドロキシル、C
1~C10アルキル、C
1~C6アルコキシ、ハロゲン、ニトロ及びシアノから選択される基で場合により置換されており、又は
-R
9及びR
10は、それらが結合しているリン原子と一緒になって、6員環を形成し、-R
9-R
10-は、-CH
2-CH
2-CHR-であり、Rは、(C
5~C
6)アリール基及び(C
5~C
6)ヘテロアリール基から選択され、アリール基又はヘテロアリール基は、ハロゲン、トリフルオロメチル、C
1~C
6アルキル、C
1~C
6アルコキシ、及びシアノで場合により置換されており、又は
R
9及びR
10は、それらが結合しているリン原子と一緒になって、6員環を形成し、-R
9-R
10-は、-O-CH
2-CH
2-CHR-O-であり、Rは、(C
5~C
6)アリール基及び(C
5~C
6)ヘテロアリール基から選択され、アリール基又はヘテロアリール基は、ハロゲン、トリフルオロメチル、(C
1~C
6)アルキル、(C
1~C
6)アルコキシ、及びシアノで場合により置換されており、
-R
8は、H、OR、NHR
13、NR
13R
14、NH-NHR
13、SH、CN、N
3、及びハロゲンから選択され、R
13及びR
14は、互いに独立して、H、(C
1~C
8)アルキル、(C
1~C
8)アルキルアリール、及び-CR
BR
C-C(O)-OR
Dから選択され、R
B及びR
Cは、独立して、水素原子、(C
1~C
6)アルキル、(C
1~C
6)アルコキシ、ベンジル、インドリル又はイミダゾリルであり、(C
1~C
6)アルキル及び(C
1~C
6)は、互いに独立して、1個又は複数のハロゲン、アミノ、アミド、グアニジル、ヒドロキシル、チオール又はカルボキシル基で場合により置換されていてもよく、ベンジル基は、1個又は複数のハロゲン又はヒドロキシル基によって置換されていてもよく、又はR
B及びR
Cは、それらが結合している炭素原子と一緒になって、1個又は複数のハロゲン、アミノ、アミド、グアニジル、ヒドロキシル、チオール及びカルボキシルで置換されていてもよいC
3~C
6シクロアルキル基を形成し、R
Dは、水素、(C
1~C
6)アルキル、(C
2~C
6)アルケニル、(C
2~C
6)アルキニル、又は(C
3~C
6)シクロアルキルであり、
-Yは、CH、CH
2、C(CH
3)
2、及びCCH
3から選択され、
-
【化10】
は、Yに応じて単結合又は二重結合であり、
-
【化11】
は、R
1の位置に応じてα又はβアノマーである、
化合物、又はその薬学的に許容される立体異性体、塩、水和物、溶媒和物若しくは結晶、又はそれらの組み合わせである。
【0158】
第1の好ましい実施形態では、薬学的に許容される誘導体は、式(I)の化合物である。
【0159】
第1の実施形態の一変形例では、Xは酸素である。
【0160】
第1の実施形態の一変形例では、R1及びR6は、各々、互いに独立して、水素である。
【0161】
第1の実施形態の一変形例では、R2、R3、R4、及びR5は、各々、互いに独立して、水素又はOHである。
【0162】
第1の実施形態の一変形例では、YはCHである。
【0163】
第1の実施形態の一変形例では、YはCH2である。
【0164】
第1の実施形態の一変形例では、R7はP(O)(OH)2である。
【0165】
第1の実施形態の変形例では、本発明の化合物は、以下の化合物から選択される。
【0166】
【0167】
NMN誘導体は、ジヒドロニコチンアミドモノヌクレオチド(「NMN-H」)であってもよい。
【0168】
式(I)の化合物を調製する方法
式(I)の誘導体は、当業者に公知の任意の方法によって調製することができる。
【0169】
式(I)の誘導体は、国際公開第WO2017/024255号又は米国特許第10,611,790号に記載の方法に従って調製することができる。
【0170】
特に、式(I)の誘導体は、以下に記載される方法に従って調製することができる。
【0171】
特に、本明細書に開示される式(I)の化合物は、基質A~Eから以下に記載されるように調製することができる。これらの反応スキームは決して限定的ではなく、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく変形が可能であることが当業者によって理解されるであろう。
【0172】
一実施形態では、本発明は、上記の式(I)の化合物を調製する方法に関する。
【0173】
第1のステップでは、方法は、塩化ホスホリル及びリン酸トリアルキルの存在下で式(A)の化合物をモノホスホリル化して、式(B)のホスホロジクロリド酸エステルを得ることを含み、
【化12】
式中、X、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
8、Y、
【化13】
、及び
【化14】
は式(I)の化合物について上記で定義される通りである。
【0174】
第2のステップでは、式(B)のホスホロジクロリド酸塩を加水分解して、式(C)のリン酸塩を得て、
【化15】
式中、X、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
8、Y、
【化16】
、及び
【化17】
は式(I)の化合物について上記で定義される通りである。
【0175】
一実施形態では、式(A)の化合物は、当業者に公知の様々な方法を用いて合成される。
【0176】
一実施形態では、式(A)の化合物は、式(D)のペントースを式(E)の窒素誘導体と反応させることによって合成され、式中、R、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、Yは、式Iの化合物について上記の通りであり、その結果、式(A-1)の化合物が得られ、次いで、これは、選択的に脱保護されて、式(A)の化合物を与え、
【化18】
式中、X、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
8、Y、
【化19】
、及び
【化20】
は式(I)の化合物について上記で定義される通りである。
【0177】
一実施形態では、Rは、当業者に公知の適切な保護基である。一実施形態では、保護基は、トリアリールメチル及び/又はシリルから選択される。トリアリールメチルの非限定的な例としては、トリチル、モノメトキシトリチル、4,4´-ジメトキシトリチル及び4,4´,4´´-トリメトキシトリチル基が挙げられる。シリル基の非限定的な例としては、トリメチルシリル、tert-ブチルジメチルシリル、トリイソプロピルシリル、tert-ブチルジフェニルシリル、トリ-iso-プロピルシリルオキシメチル及び[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル基が挙げられる。
【0178】
一実施形態では、ペントースに結合した任意のヒドロキシル基は、当業者に公知の適切な保護基によって保護される。
【0179】
保護基の選択及び交換は、当業者の一般知識の範囲内である。保護基はまた、当業者に公知の方法、例えば酸(例えば、鉱酸又は有機酸)、塩基又はフッ化物源を用いて除去することができる。
【0180】
好ましい実施形態では、式(E)の窒素含有誘導体を、ルイス酸の存在下での反応によって式(D)のペントースにカップリングして、式(A-1)の化合物を得る。ルイス酸の非限定的な例としては、TMSOTf、BF3.OEt2、TiCl4、及びFeCl3が挙げられる。
【0181】
一実施形態では、本発明の方法は、当業者に公知の様々な方法によって式(A)の化合物を還元し、式(A´)の化合物を得るステップを更に含み、式中、[sic]はCH2であり、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
8、Y、
【化21】
、及び
【化22】
は式(I)の化合物について上記で定義される通りである。
【0182】
第1のステップでは、式Eのニコチンアミドを、ルイス酸の存在下での反応によって式Dのリボース四酢酸にカップリングして、式A-1の化合物を得る。
【化23】
【0183】
第2のステップでは、式A-1の化合物をアンモニアで処理して、式I-Aを得る。
【化24】
【0184】
第3のステップでは、塩化ホスホリル及びリン酸トリアルキルの存在下での式I-Aの化合物の一リン酸化により、式I-A´のホスホロジクロリド酸を得る。
【化25】
【0185】
第4のステップでは、式Bのホスホロジクロリド酸を加水分解して、式I-Cの化合物を得る。
【化26】
【0186】
一実施形態では、式I-Aの化合物を還元するステップが行われ、下記の式の式I-Eの化合物を得る。
【化27】
【0187】
次いで、式I-Eの化合物を、第4のステップについて記載されるようにモノホスホリル化し、加水分解して、式I-Gの化合物を得る。
【0188】
一実施形態では、式(I)の化合物は、以下の表の化合物から選択される。
【0189】
【0190】
好ましい実施形態では、本発明の化合物は、上記の表の化合物又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物である。
【図面の簡単な説明】
【0191】
【
図1】治療の関数としてのマウスの平均体重の推移のグラフである。
【
図2】治療の関数としての平均臨床スコアの推移のグラフである。
【
図3】治療の関数としてのマウスの平均足厚の推移のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0192】
【0193】
【0194】
【実施例】
【0195】
以下において、実施例は、本発明を例示するためにのみ提供され、決してその範囲を限定するものではない。
【0196】
本発明によるNMNの使用の有効性を、RAモデルにおいてマウスで評価した。簡単に記載すると、実験の0日目に体重が18g~20gの8週齢の雌C57BL6/Jマウスを、各々10匹のマウスからなる4つの群、(i)マウスをビヒクル、すなわち、0.9%NaCl溶液(10mL/kg)で治療した対照群、「ビヒクル」と表示、(ii)K/BxN血清(10mL/kg)で治療したマウスの群、「KBxN」と表示、(iii)K/BxN血清+デキサメタゾン(1mg/kg)で治療したマウスの群、「KBxN+デキサメタゾン」と表示、及び(iv)K/BxN血清+NMN(185mg/kg)で治療したマウスの群、「KBxN+NMN」と表示に分けた。
【0197】
K/BxN血清は、RAのモデルとして使用される遺伝子改変マウスから得られる血清である。この血清の投与は、RAを模倣するためにマウスにおいて慢性関節炎症を誘発した。デキサメタゾンは、コルチゾン誘導体であり、RA発疹に対抗するために従来使用されている治療である。本明細書では、NMNは双性イオン形態で使用した。KBxN血清及びNMNを腹腔内投与した。デキサメタゾンを皮下投与した。
【0198】
マウスを上記の条件下で9日間治療した。治療の6日目にマウスの足の写真を撮影した。治療の6日目及び10日目にマウスから血液試料を採取した。組織学的分析のために治療の10日目、すなわち治療終了の翌日に組織試料を採取した。マウスの臨床スコア及び体重を毎日測定した。臨床スコアは、マウスの前足及び後足の各々の厚さを測定し、下記の表1に従って関連スコアを加算することによって決定した。
【0199】
【0200】
結果の統計分析は、ダネットの多重比較検定と組み合わせた二元配置分散分析を使用して行った。値の有意性を表2に示す。
【0201】
【0202】
図1から分かるように、対照群のマウスは、実験の期間にわたって体重が減少しなかった。一方、K/BxN血清の投与は、3つの治療群において有意な体重減少を誘導し、動物の一部において治療に関連する苦痛を示した。デキサメタゾンの投与は、KBxNのみで治療した群、並びにKBxN+NMN群と比較して、更なる有意な体重減少を誘導した。これらの観察は予想され、実験モデルを検証する。一方、NMNは、KBxN群と比較して有意な体重減少を引き起こさなかった。したがって、NMNは十分に許容され、より具体的には、NMNはデキサメタゾンよりも良好に許容された。
【0203】
図2は、様々なマウス群間の臨床スコアの推移を示す。この図に見られるように、対照群のマウスの平均臨床スコアはゼロであり、したがって、ビヒクルはいかなる関節炎症も引き起こさない。デキサメタゾンによるマウスの治療は、臨床スコアを対照群の値に近い値にする。一方、KBxNで治療したマウスの臨床スコアは6日目まで上昇し、そこでプラトーに達し、マウスの苦痛及び実質的な炎症を示した。NMNによる治療は、5日目から臨床スコアの有意な低下を引き起こした。臨床スコアの低下は、治療の8日目から顕著になった。したがって、NMNの投与は、このRAモデルにおいて関節炎症を有意に減少させる。
【0204】
図3に示すように、KBxNの投与は、関節炎モデルと一致して、マウスにおいて足の腫脹を誘導する。デキサメタゾンによる治療は、マウスの足関節炎症を有意に減少させる。同様に、NMN治療は、5日目から足関節炎症を有意に減少させ、NMNがK/BxN血清によって誘導される関節炎症を減少させることを示した。
【0205】
これらの観察は、K/BxNで治療したマウスの足が、対照群のマウスと比較して非常に腫脹していること、実質的な関節炎症の徴候を示す、6日目に撮影された
図4に示されるマウスの足の写真によって検証された。一方、デキサメタゾン及びNMNによる治療は、足の腫脹、したがって関節炎症を実質的に減少させる。より正確には、
図4に示すように、デキサメタゾンで治療したマウスの足は、ビヒクルで治療したマウスの足よりもはるかに細く、これは、マウスの一部の実質的な体重減少の徴候である。デキサメタゾンは、有効であるが、その副作用のためにマウスに苦痛を引き起こす。一方、NMNで治療したマウスの足は、ビヒクルで治療したマウスの足と同様の体積である。したがって、NMNは、K/BxN血清注射によって誘導された炎症を治療するのに有効であり、デキサメタゾンによる従来の治療よりもマウスによってはるかに良好に許容される。
【0206】
したがって、NMNの投与は、RAの治療のために従来投与されているコルチゾン誘導体であるデキサメタゾンの副作用を誘導することなく、RAモデルで観察される炎症を有意に減少させる。
【0207】
したがって、NMN又はその薬学的に許容される誘導体若しくは塩、並びにそれらを含む組成物は、RAを治療するために首尾よくかつ安全に使用することができる。したがって、本発明は、RAの従来の治療に対する治療的代替物を提供するか、又はその頻度及び投薬量を減少させるために、従来の治療に対する治療的補助を少なくとも提案する。NMN並びにその薬学的に許容される誘導体及び塩、並びにそれを含む組成物の安全性のために、本発明は、従来の治療によって引き起こされる副作用を誘導することなくRAの治療及び/又は予防を可能にする。
【国際調査報告】