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特表2022-552976スチームワンド及びミルクの泡立て方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-21
(54)【発明の名称】スチームワンド及びミルクの泡立て方法
(51)【国際特許分類】
   A47J 31/44 20060101AFI20221214BHJP
   B05B 1/14 20060101ALI20221214BHJP
   B05B 1/34 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
A47J31/44 410
A47J31/44 420
B05B1/14 Z
B05B1/34 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022522324
(86)(22)【出願日】2020-10-15
(85)【翻訳文提出日】2022-06-07
(86)【国際出願番号】 IB2020059673
(87)【国際公開番号】W WO2021074829
(87)【国際公開日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】102019000018983
(32)【優先日】2019-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512102391
【氏名又は名称】ラ マルゾッコ エス アール エル
【氏名又は名称原語表記】LA MARZOCCO S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179903
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア ディオニシオ
(72)【発明者】
【氏名】シモーネ ピエリ
【テーマコード(参考)】
4B104
4F033
【Fターム(参考)】
4B104AA27
4B104BA38
4B104DA13
4F033BA02
4F033BA04
4F033DA02
4F033DA04
4F033DA05
4F033EA01
4F033KA03
4F033NA01
(57)【要約】
飲料の調製のために所要量のミルクを泡立てるためのスチームワンド用のディフューザが開示されている。ディフューザは、スチームタンクから及び/又はスチーム発生器からスチームを受けるスチームワンドに接続されるように構成されている。ディフューザは、縦軸と、それぞれ出口穴軸を有する複数のスチーム出口穴とを備えている。少なくとも一つの出口穴は、その軸がディフューザの縦軸に対して傾斜している。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料を調製する際に所要量のミルクを泡立てるためのスチームワンド(10)用のディフューザ(20)であって、前記ディフューザ(20)は、スチームタンクから及び/又はスチーム発生器からスチームを受け取るスチームワンド(10)に接続されるように構成されており、前記ディフューザ(20)は、縦軸(22)と、それぞれ出口孔軸(23)を有する複数のスチーム出口孔(21)とを備え、少なくとも1つの出口孔(21)が、前記ディフューザ(20)の縦軸(22)に対して傾斜した軸(23)を有し、前記ディフューザ(20)が、大径底部(244)を有する縦孔(24)を備え、前記スチーム出口孔(21)が前記大径底部(244)において前記縦孔(24)と連通する、ディフューザ(20)。
【請求項2】
請求項1に記載のディフューザ(20)であって、基部(201)を更に備え、前記スチーム排出孔(21)が前記基部(201)において開口している、ディフューザ(20)。
【請求項3】
請求項1記載のディフューザ(20)であって、基部(201)と、側壁(202)と、前記基部(201)及び前記側壁(202)を接続する曲面(203)とを更に備え、前記スチーム排出孔(21)が前記曲面(203)において開口する、ディフューザ(20)。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載のディフューザ(20)であって、前記複数の孔(21)の全ての軸(23)が前記ディフューザ(20)の前記縦軸(22)に対して傾斜している、ディフューザ(20)。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4記載のディフューザ(20)であって、前記排出孔(21)が同一断面を有する、ディフューザ(20)。
【請求項6】
前記請求項の何れか一項に記載のディフューザ(20)であって、前記出口孔の断面が、前記ディフューザの外面近傍で拡大されている、ディフューザ(20)。
【請求項7】
前記請求項の何れか一項に記載のディフューザ(20)であって、前記出口孔(21)の外側部分が、前記ディフューザ(20)の縦軸(22)に対して垂直な平面上に配置されている、ディフューザ(20)。
【請求項8】
前記請求項の何れか一項に記載のディフューザ(20)であって、
Rが前記スチーム排出孔(21)の中心における前記ディフューザ(20)の外周半径であり、
Bが前記ディフューザ(20)の軸(22)と、該軸(22)に対して垂直な面における前記排出孔(21)の軸(23)の投影との間の距離として計算されるアームであり、
B/Rが前記アームBと外周半径Rの比であり、
Aが前記ディフューザ(20)の縦軸(22)に対して直交する平面に対する前記排出孔(21)の軸(23)の傾斜角度である場合に、
前記B/R比が0.5以上、かつ角度Aが0°~75°である、ディフューザ(20)。
【請求項9】
請求項8に記載のディフューザ(20)であって、前記角度Aが25°~40°、好適には約30°である、ディフューザ(20)。
【請求項10】
前記請求項の何れか一項に記載のディフューザ(20)であって、前記スチーム排出孔(21)の個数が2、4、6、8などの偶数である、ディフューザ(20)。
【請求項11】
飲料を調製するために所要量のミルクを泡立てるためのスチームワンド(10)であって、スチームタンク及び/又はスチーム発生器に接続可能なチューブ(11)と、前記請求項の何れか一項に記載のディフューザ(20)と、を備えるスチームワンド(10)。
【請求項12】
飲料を調製する際に所要量のミルクを泡立てるためのマシン(M1、M2)であって、スチームタンク及び/又はスチーム発生器と、前記タンク及び/又はスチーム発生器に対して流体接続されたチューブ(11)を有するスチームワンド(10)とを備え、前記スチームワンド(10)が、請求項1~10の何れか一項に記載のディフューザ(20)を備える、マシン(M1、M2)。
【請求項13】
請求項11に記載のマシン(M1、M2)であって、エスプレッソコーヒーマシン(M1)又はミルク泡立て用の独立型マシン(M2)である、マシン(M1、M2)。
【請求項14】
飲料を調製する際に所要量のミルクを泡立てる方法であって、
スチームタンク及び/又はスチーム発生器からスチームを受け取るスチームワンド(10)を用意するステップを備え、前記スチームワンド(10)がスチームディフューザ(20)を備え、前記ディフューザ(20)が縦軸(22)及び複数のスチーム出口孔(21)を備え、前記ディフューザ(20)が大径底部(244)を有する縦孔(24)を備え、前記スチーム出口孔(21)が前記大径底部(244)において前記縦孔(24)に連通する場合に、
前記スチームを、前記ディフューザ(20)における前記縦軸(22)に対して傾斜した軸(23)により特定される方向に沿って少なくとも1つの出口孔(21)から放出させるステップを更に備える、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、コーヒー等をベースにした飲料を調製するためのマシンの分野に関する。より詳細には、本発明は、泡立てたミルク(通常、加熱もされる)を加えたコーヒー飲料(例えば、カプチーノ)の調製に関する。より具体的に、本発明は、スチームワンド及びスチームワンド用ノズル、並びにミルクの泡立て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、エスプレッソコーヒーマシンは、コーヒー粉末のパックとフィルターに沸点下の加圧水を強制的に通し、エスプレッソ又はエスプレッソコーヒーと呼ばれる濃厚なコーヒー飲料を生成してコーヒーを調製するものである。多くのエスプレッソコーヒーマシンは、所要量の水やミルク等を加熱及び/又は泡立てるためのスチーム発生手段を備えている。このようなスチーム生成手段は、典型的には、スチームボイラーなどのスチームタンク、スチーム回路、スチーム調整弁、及びスチーム放出ノズルで終端するスチームワンドで構成される。
【0003】
通常、エスプレッソコーヒーマシンのオペレータ(「バーテンダ」とも呼ばれる)は、加熱又は発泡させるべき液体の入ったジャグ等の容器にスチームワンドを導入する。次に、スチーム回路を開き、ワンドの先端にあるノズルからスチームを排出する。スチームが排出されている間、バーテンダはジャグを動かし、及び/又は並進させ、及び/又は回転させて、適正な温度で、適正な泡立ちと固さのミルク等を取得する。
【0004】
取得された泡立ちホットミルクを使用すれば、通常、カプチーノ、「コーヒー・マキアート」(比較的少量の泡立ちホットミルクを加えたシングル又はダブルのエスプレッソコーヒーであって、コーヒーカップにより提供される)、あるいは既知の複数種のエスプレッソコーヒーのいずれかを準備することができる。泡立ちホットミルクは、ホットチョコレート等、必ずしもコーヒーをベースとしない他の飲料を準備するためにも使用される。
【発明の概要】
【0005】
本明細書及び特許請求の範囲において、「ミルク」という用語には、動物由来のミルク、植物性のミルク(すなわち、植物から抽出されたミルク)及び化学処理により得られたミルクからなる任意の液体食品が含まれる。動物由来のミルクには、例えば、牛のミルク、山羊のミルク、羊のミルクが含まれる。植物性ミルクには、いわゆるソイミルク、アーモンドミルク、ココナッツミルク及びライスミルクが含まれる。
【0006】
また、本明細書及び特許請求の範囲において、「エスプレッソコーヒーマシン」、「コーヒーマシン」又は「マシン」という用語は、エスプレッソコーヒー、カプチーノ等のホットドリンクを調整するためのマシンを指すものとする。典型的に、このようなマシンは、飲料を調製するために挽かれたコーヒーを使用するが、大麦などの他の穀物からの粉末を使用することもできる。
【0007】
スチーム発生手段を少なくとも部分的にエスプレッソコーヒーマシンに組み込むことができ、あるいは少なくとも部分的に、エスプレッソコーヒーマシンから分離したマシンに組み込むことができる。例えば、スチーム発生手段は、独立型のマシンに組み込むことができる。
【0008】
特に明記しない限り、「牛ミルクを泡立てる」又は「牛ミルクを発泡させる」という用語は、スチーム及び/又は熱風を用いて牛ミルクを加熱して、適切な一定濃度の牛ミルクを提供することにより、牛ミルクの体積を増加させてマイクロバブル構造を発生させることを含むものとする。換言すれば、ミルクの調製とは、ミルク中にスチームや空気の分散(泡)を与え、同時に混合物の温度を上昇させることを意味する。牛ミルクを適正に泡立てる操作は、一定の風味と粘度に達した飲料を得るための基本である。温度と液体中に分散している気体の割合は、適正な泡立てに不可欠のパラメータである。
【0009】
前述したように、スチームワンドはディフューザで終端し、ディフューザはスチームの流量を調節してスチームをデリバリーシステム外に導き、スチームを所望の方法で使用可能とする役割を担っている。
【0010】
出願人は、従来のディフューザを使用する場合には、いくつかの重大な問題があることに着目した。実際、オペレーターは、ミルク中に適切な渦を発生させるなければならない。そのためには、ジャグを移動させてジャグを特定の角度に従って動かす必要があり、また、ディフューザをジャグ内における正確な領域に配置する必要がある。
【0011】
これにより、ミルクの泡内に不要なバブルが生じる恐れがあり、泡の量や仕上がり(質感)をコントロールする能力が低下する。また、ジャグの内部に不均一部分が生成され、温度管理が難しくなる。経験的に、バーテンダはジャグの外壁に手を添えてミルクの温度を判断するからである。
【0012】
出願人は、スチームディフューザにおいて、孔(すなわち、異なる平面上の孔)の位置ずれは望ましくないと考えている。最適と考えられる動作の基礎原則に反するからである。最適な動作を行わせるためには、出願人によれば、単一の乱流渦を形成するようにジェットを協働させることが想定される。
【0013】
そのような意味合いにおいて、孔を異なる高さ位置に配置すれば、単一の渦を発生させる際の相互作用が小さくなる。
【0014】
また、出願人は、下向きジェットを有する伝統的なシステムでは、ジェットの数だけ独立した渦が発生することを確認している。
【0015】
また、出願人は、スチーム速度が強い接線方向成分を有し、ディフューザにおいて単一の軸方向渦を発生させるために、スチームジェットの水平成分を垂直成分よりもはるかに大きくする必要があることを理解した。すなわち、孔の配置角度はできるだけ小さくする必要がある。
【0016】
ただし、噴射口は過度に水平に向けず、ある程度の垂直方向成分を持たせる必要がある。ユーザーが誤ってスチームのジェットに曝されるリスクを低減するためである。
【0017】
出願人は、これら2つのニーズの妥協点として、最適角度を約30°と特定した。この角度の場合、トリガーされた渦は十分に強力であり、バリスタ―がスチームのジェットに曝されるリスクが低減される。しかしながら、使用可能な角度範囲は20°~45°であり、他の実施形態によれば25°~45°、更に他の実施形態によれば25°~40°である。
【0018】
本発明によれば、ジャグの傾斜や分散に依存することなく、スチームの運動エネルギを利用してミルクに渦を誘発すれば、前述した問題点を解決することが可能である。これにより、ミルクの泡立て作業がより単純になり、再現性を高めることができる。さらに、強制対流方式では熱量が大きくなるため、混合液の温度をより適切に制御することができる。
【0019】
本発明は、第1の態様において、飲料を調製する際に所要量のミルクを泡立てるためのスチームワンド用のディフューザを提供する。そのディフューザは、スチームタンクから及び/又はスチーム発生器からスチームを受け取るスチームワンドに接続されるように構成されている。ディフューザは、縦軸と、それぞれ出口孔軸を有する複数のスチーム出口孔とを備える。少なくとも1つの出口孔は、ディフューザの縦軸に対して傾斜した軸を有する。ディフューザは、大径底部を有する縦孔を備える。スチーム出口孔は、大径底部において縦孔と連通する。
【0020】
一実施形態において、複数の孔の全ての軸は、ディフューザの縦軸に対して傾斜している。
【0021】
典型的に、ディフューザは、大径を有する底部を有し、かつ、一端が閉鎖した縦孔を備え、スチーム排出孔は大径底部において縦孔と連通する。この場合、孔は、大径の円周上に配置することができる。したがって、中心に対してアームは、既知の解決策よりも大きくなる。
【0022】
一端閉鎖型の縦孔を拡大する理由は、排出孔の間隔を増大するためである。すなわち、孔の中心距離を増大するのに有利な条件である。その効果は、流れの旋回性を高めることである。
【0023】
一実施形態において、ディフューザは基部を更に備え、スチーム排出孔は基部において開口している。
【0024】
一実施形態において、ディフューザは、基部と、側壁と、基部及び側壁を接続する曲面とを更に備え、スチーム排出孔は、曲面上に開口している。
【0025】
一実施形態において、排出孔は、同一断面形状を有する。
【0026】
一実施形態において、排出孔の断面は、ディフューザの外面近傍で拡大している。
【0027】
一実施形態において、排出孔の外側部は、ディフューザの縦軸に対して垂直な平面上に配置される。換言すれば、全ての孔の出口は、単一の平面上において単一の高さで存在する。
【0028】
一実施形態において、B/R比は0.5以上、角度Aは0°~75°であり、ここに、
Rはスチーム排出孔の中心におけるディフューザの外周半径であり、
Bはディフューザの軸と、該軸に対して垂直な面における排出孔の軸の投影との間の距離として計算されるアームであり、
B/R比はアームと外周半径の比であり、
Aはディフューザの縦軸に対して直交する平面に対する排出孔の軸の傾斜角度である。
【0029】
有利には、B/R比は0.5~0.80、又は0.55~0.75、又は0.60~0.70、例えば0.67である。
【0030】
一実施形態において、角度Aは20°~45°である。他の実施形態において、角度Aは25°~45°である。更に他の実施形態において、角度Aは25°~40°であり、例えば約30°である、
【0031】
一実施形態において、スチーム排出孔の個数は、2、4、6又は8等の偶数である。他の実施形態において、スチーム排出孔の個数は、3、5、7、…等の奇数である。
【0032】
本発明は、第2の態様において、飲料を調製するための量のミルクを泡立てるためのスチームワンドを提供する。この上記ワンドは、スチームタンク及び/又はスチーム発生器に接続可能なチューブと、前述した形式のディフューザとを備えている
【0033】
本発明は、第3の態様において、飲料を調製する際に所要量のミルクを泡立てるためのマシンを提供する。このマシンは、スチームタンク及び/又はスチーム発生器と、該タンク及び/又はスチーム発生器に対して流体接続されたチューブを有するスチームワンドとを備える。スチームワンドは、上述した形式のディフューザを備える。
【0034】
本発明は、第4の態様において、上述した形式のスチームワンドを備えるエスプレッソコーヒーメーカー又は独立型シングルショットマシンを提供する。
【0035】
本発明は、第5の態様において、飲料を調製する際に所要量のミルクを泡立てる方法を提供する。この方法は、 スチームタンク及び/又はスチーム発生器からスチームを受け取るスチームワンド(10)を用意するステップを備える。スチームワンドは、スチームディフューザを備える。ディフューザは、縦軸及び複数のスチーム出口孔を備える。ディフューザは、大径底部を有する縦孔を備える。スチーム出口孔は、大径底部において縦孔に連通する。本発明に係る方法は、スチームを、ディフューザにおける縦軸に対して傾斜した軸により特定される方向に沿って少なくとも1つの出口孔から放出させるステップを更に備える。
【図面の簡単な説明】
【0036】
以下、添付図面に示す非限定的で例示的な実施形態について本発明を更に詳述する。
図1図1は、スチームワンドを搭載したエスプレッソコーヒーマシンの説明図である。
図2図2は、スチームタンク又はスチーム発生器からスチームを受けるチューブを持つ独立型ミルクアセンブリーマシンの説明図である。
図3図3は、本発明によるディフューザを備えたスチームワンドの説明図である。
図4図4は、本発明の第1実施形態に係るスチームワンドディフューザの側面図である。
図4A図4Aは、図4のスチームワンドディフューザの断面図である。
図5図5は、本発明の第2実施形態に係るスチームワンドディフューザの側面図である。
図5A図5Aは、図5のスチームワンドディフューザの断面図である。
図6図6は、本発明の第3実施形態に係るスチームワンドディフューザの斜視図である。
図7図7は、図6のディフューザの底面図である。
図8図8は、図6のディフューザの側面図である。
図8A図8Aは、図8のディフューザの平面A-Aに沿う縦断面図である。
図8B図8Bは、図8のディフューザの平面B-Bに沿う縦断面図である。
図9図9は、温度試験に使用するジャグの側面図である。
図9A図9Aは、温度試験に使用するジャグの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明は、ジャグの傾斜や分散に依存することなく、スチームの運動エネルギを利用してミルクに渦を生じさせるものである。これにより、泡立て操作がより簡単となり、再現性が高まる。更に、強制対流による熱入力が大きいため、混合液の温度管理も容易となる。
【0038】
図1は、本発明の一実施形態に係るスチームワンド10を備えるエスプレッソコーヒーマシンM1を示す。言うまでもなく、図1のマシンM1は純粋に例示的なものであり、本発明のスチームワンド10は、任意のエスプレッソコーヒーマシンに組み込むことができる。
【0039】
図2は、スチームを放出するための独立型マシンM2を示す。マシンM2は、スチームタンク又はスチーム発生手段を含む構成とすることができる。あるいは、マシンM2は、スチームタンク又は外部のスチーム発生装置に接続するためのパイプを含む構成とすることができる。スチームは、ジャグ30内における所要量のミルクを泡立てるために使用される。マシンM2は、本発明の実施形態によるスチームワンド10を備えている。言うまでもなく、図2のマシンM2は純粋に例示的なものであり、本発明のスチームワンド10は他の任意のマシンに組み込むことができる。
【0040】
図3は、本発明に係るディフューザ20を備えるスチームワンド10を示している。
スチームワンド10は、2つのカーブを形成するように曲げられたチューブ11を備える。チューブ11は、その上端にボールジョイントを備え、下端にディフューザ20を備える。典型的に、スチームはスチームワンド10に沿って上端から下端に向かけて移動してディフューザ20から排出される。
【0041】
スチームワンド10は、その先端部分において、ディフューザ20の近傍で縦軸12を有する。
【0042】
ディフューザ20近傍において、スチームワンド10の縦軸12はディフューザ20の縦軸22と一致する。
【0043】
ディフューザ20は、少なくとも1つのスチーム排出孔21を有しているが、複数のスチーム排出孔21を有する構成とするのが好適である。各排出孔21は、排出孔の軸として参照される軸23を有している。
【0044】
本発明において、少なくとも1つのスチーム排出孔21の軸23は、ディフューザ20の縦軸22に対して傾斜している。複数の孔21が設けられている場合、好適には、全ての孔21の軸線23が、ディフューザ20の縦軸線22に対して傾斜している。
【0045】
本明細書において、ディフューザ20の軸22と排出孔21の軸23とが共通平面上にない場合、すなわち共面的でない場合に傾斜していることを意図している。換言すれば、ディフューザ20の軸22と排出孔21の軸23は、一致しておらず、平行分離でも平行一致でもない。
【0046】
孔21をその軸23に対応する方向を持ち、スチーム出口に向かうベクトルと考えるすると、これらのベクトルをディフューザの軸22に対して直交する平面に投影したときに、ディフューザの軸に対して非ゼロの角度モーメントが発生することになる。
【0047】
このシステムにより、乱流が発生し、その結果として力のモーメントがゼロにならないため、スチームの中に渦が発生する。この渦によって温度も均一になり、スチーム口が過度に高温になり(再循環や停滞が原因)、泡立てるべきミルクの容器(ジャグ)の縁が過度に低温になる事態を回避することができる。
【0048】
図4~8、8A、8Bにおいて、参照符号は以下のように定義される。
R:スチーム排出孔21の中心におけるディフューザの外周半径
B:ディフューザの軸22と、ディフューザの軸に対して垂直な面上における排出孔21の軸23の投影との間の距離として算出されるアーム(図4A
B/R:アームBと半径Rの比
A:ディフューザの縦軸22に対して直交する平面に対する排出孔21の軸23の傾斜角度
【0049】
本発明において、ディフューザ20は、単一の孔21を備えることができ、複数の孔21を備えることもできる。好適には、前記複数の孔21の個数は偶数であり、例えば、2個、4個、6個、8個又はそれ以上である。あるいは、孔21の個数は、3個、5個、7個、9個又はそれ以上の奇数である。
【0050】
好適には、スチーム通路孔の中心は、ディフューザ20の軸22に対して直交する同一平面上に配置される。
【0051】
スチーム排出孔21は、任意の直径を有する。典型的に、孔21の直径は約0.9mm~約1.6mmである。好適には、孔21の直径は、約1.0mm~約1.6mmである。一実施形態において、孔21の直径は、約0.9mm~約1.3mmである。一実施形態において、孔21の直径は、約1.0mm~約1.2mm、例えば1.2mmである。
【0052】
好適には、排出孔21は円形の断面を有する。あるいは、排出孔21は非円形の断面、例えば、楕円形又は長円形の断面を有する。
【0053】
好適には、孔21は全て同一の断面を有し、例えば、全て円形状又は楕円形状である。
【0054】
孔21は一定の断面を有する。例えば、孔21は全長に亘って円形状又は楕円形状である。
【0055】
本発明によれば、図4及び図5に示すように測定される傾斜角Aは、20°~45°である。一実施形態において、傾斜角度Aは、25°~45°である。他の実施形態において、傾斜角度Aは、約25°~約40°である。更に他の実施形態において、傾斜角Aは、約25°~約35°、例えば約30°である。
【0056】
本発明において、B/R比は0.5以上である。一実施形態において、B/R比は、0.50~0.80である。一実施形態において、B/R比は、0.55~0.75である。一実施形態において、B/R比は、約0.60~0.70、例えば0.67とすることができる。
【0057】
一実施形態において、ディフューザ20は、フラスコの底部と同様の形状を有し、底部は上部に比べて大径とされている。ディフューザ20の底部201は、曲面203を介して側壁202に接続されている。側壁202は、好適には、スチームワンド10に対してディフューザ20をねじによる締結、及び/又は締結解除するための2つの平坦面204を備える。
【0058】
内部には、ディフューザ20は縦孔24を備え、縦孔24の字句は縦軸22と一致している。孔24は、ガスケット又はOリング(図示せず)用の受座241を備えることができる。孔24は、スチームワンド10にネジ結合するためのネジ部242を備えることができる。孔24は、実質的に一定の第1直径を有する非ネジ部243を備えることができる。孔24は、非ネジ部243の第1直径よりも大きい第2直径を有する底部244を備えることができる。非ネジ部243及び底部244は、図4に示すように、直径が増加する部分において接合することができる。
【0059】
通路孔21は、縦孔24とディフューザの外部とを連通する貫通孔である。好適には、貫通孔21は大径部において底部244と連通する。
【0060】
一変形例において、通路孔21は底部244の側面で開口している。他の変形例において、通路孔21は孔24の底面で開口している。
【0061】
縦孔24が底部で拡大させることは、スチームを逃がすのに有利であり、特に流れの渦巻きを増大させる。更に、通路孔24を相互により間隔をあけて配置すること、すなわち、ディフューザと同径のより大きな円周上に軸を配置することが可能になる。
【0062】
通路孔21は、底部201又は、好適には曲面203において外側に開口している。後者の場合、通路孔21は、スチームの分配に有利な楕円形又は細長い形状を有する開口部を形成する。後縁部は、フレア状としてもよい。
【0063】
通路孔21の配置、数及び傾斜は、ジャグ内におけるミルクの最適な泡立てにつながる回転又はねじ込み効果を生じさせる上で最適なスチームの流れを生成する。アームBはディフューザの直径に比べて比較的大きく、これにより、既知のディフューザよりも大きなモーメントを発生させるものである。
【0064】
本発明において、スチームを通すための孔21の長さを短縮すれば、加工精度を向上させ、スチームを外部に向けて逃がす性能を向上させることができる。
【0065】
一実施形態において、各孔の出口の前にカウンターボア(断面増加部)が設けられている。これには主に2つの利点がある。
【0066】
第1の利点は、流体力学的なモチーフに基づくものである。実際、更なる断面変化により集中的な圧力損失が発生し、スチームのレイノルズ数が増加する。その結果、層流から乱流へと早期に移行することができる。マクロ的には、巻き込まれる空気量が増加し、乱流に基づく混合が促進され、ミルクの泡立ちが良好となる。
【0067】
第2の利点は、技術的な理由に基づくものである:すなわち、絞り孔の頭部にカウンターボアが設けられているため、孔自体の形状を単純化することができる。
【0068】
実施例1図4
通路孔21の数:4
通路孔21の直径:1.2mm
角度A:30°
アーム/半径(B/R比):0.8

実施例2図5
通路孔21の数:8
通路孔21の直径:1mm
角度A:30°
アーム/半径(B/R比):0.82

実施例3図6-8、図8A図8B
通路孔21の数:4
通路孔21の直径:1.2mm
角度A:30°
アーム/半径(B/R比):0.67
【0069】
出願人は、既知のディフューザを備えるスチームワンド10と、実施例1及び実施例2のディフューザ20とについて、いくつかの試験を実施した。
【0070】
本発明によるディフューザを用いて行われた試験の間、ミルクジャグは実質的に静止状態に保たれており、既知形式のディフューザを備える既知のスチームワンドでミルクを泡立てるために通常行われるように回転させるものではない。
【0071】
出願人は、ミルクが適切に泡立てられているか否か確認するため、表面の質感、形成された泡の量や持続性、温度等を評価した。
【0072】
試験委おいて、気泡の量による表面の質感を目視で比較評価した。
【0073】
ジャグの内容物をメスシリンダに注出して、泡の量と持続性を評価した。3枚の写真を撮影した。
1枚目は注出直後、2枚目は90秒後、3枚目は300秒後である。
【0074】
これらの写真から、液状部と乳化部の分離時間やその比率を特定することができる。分離時間が長いほど、泡立ちの品質が高い。また、化部が液体部より多いほど、泡立ちの品質が高い。
【0075】
最後に、温度試験を実施した。温度試験では、温度分布に生じ得る違いを評価するため、2つの熱電対31をジャグ30の外面に45°で配置した(図9及び図9Aを参照)。2つの熱電対の差が小さいほど、泡立ちが良好であることを示している。
【0076】
試験には Strada AV型のエスプレッソマシンを使用した。蒸気圧は1.3barに固定した。容量600mLのスチール製ジャグを使用した。各試験においては、300gの全ミルクを使用した。泡の持続性試験には、目盛り付きガラスシリンダ、スケール及びビデオカメラを使用した。
【0077】
泡の持続性試験の実施手順は、次のとおりである。
1) 冷蔵庫の温度(約4℃)で、ジャグに300gの牛ミルクを投入
2) 水差しの中央にディフューザを配置。
3) スチームを供給
4) 20秒後に上記供給を中断
5) 泡立てたミルクを上側から撮影
6) 内容物をメスシリンダに注入
7) 1秒後、90秒後、300秒後に撮影
8) 温度変化を常時監視
【0078】
試験結果は、次の表1に示すとおりである。
【表1】
【0079】
表1から、実施例1及び2のディフューザの場合には、既知のディフューザと対比して、より良好な質感、より良好な泡の持続性、より多量の泡、より小さな温度差が達成されていることが認められる。
図1
図2
図3
図4
図4A
図5
図5A
図6
図7
図8
図8A
図8B
図9
図9A
【手続補正書】
【提出日】2022-06-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料を調製する際に所要量のミルクを泡立てるための蒸気ワンド(10)用のディフューザ(20)であって、前記ディフューザ(20)は、蒸気タンクから及び/又は蒸気発生器から蒸気を受け取る蒸気ワンド(10)に接続されるように構成されており、前記ディフューザ(20)は、縦軸(22)と、それぞれ出口孔軸(23)を有する複数の蒸気出口孔(21)とを備え、少なくとも1つの出口孔(21)が、ディフューザ(20)の前記縦軸(22)に対して傾斜した軸(23)を有し、前記ディフューザ(20)が、大径底部(244)を有する長手方向孔(24)を備え、前記蒸気出口孔(21)が前記大径底部(244)において前記縦孔(24)と連通する、ディフューザ(20)。
【請求項2】
請求項1に記載のディフューザ(20)であって、基部(201)を更に備え、前記蒸気排出孔(21)が前記基部(201)において開口している、ディフューザ(20)。
【請求項3】
請求項1に記載のディフューザ(20)であって、基部(201)と、側壁(202)と、前記基部(201)及び前記側壁(202)を接続する曲面(203)とを更に備え、前記蒸気排出孔(21)が前記曲面(203)において開口する、ディフューザ(20)。
【請求項4】
請求項1に記載のディフューザ(20)であって、前記複数の孔(21)の全ての軸(23)が前記ディフューザ(20)の前記縦軸(22)に対して傾斜している、ディフューザ(20)。
【請求項5】
請求項1に記載のディフューザ(20)であって、前記排出孔(21)が同一断面を有する、ディフューザ(20)。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項に記載のディフューザ(20)であって、前記出口孔の断面が、前記ディフューザの外面近傍で拡大されている、ディフューザ(20)。
【請求項7】
請求項1~5の何れか一項に記載のディフューザ(20)であって、前記出口孔(21)の外側部分が、前記ディフューザ(20)の縦軸(22)に対して垂直な平面上に配置されている、ディフューザ(20)。
【請求項8】
請求項1に記載のディフューザ(20)であって、
Rが前記蒸気排出孔(21)の中心における前記ディフューザ(20)の外周半径であり、
Bが前記ディフューザ(20)の軸(22)と、該軸(22)に対して垂直な面における前記排出孔(21)の軸(23)の投影との間の距離として計算されるアームであり、
B/Rが前記アームBと外周半径Rの比であり、
Aが前記ディフューザ(20)の縦軸(22)に対して直交する平面に対する前記排出孔(21)の軸(23)の傾斜角度である場合に、
前記B/R比が0.5以上、かつ角度Aが0°~75°である、ディフューザ(20)。
【請求項9】
請求項8に記載のディフューザ(20)であって、前記角度Aが25°~40°、好適には約30°である、ディフューザ(20)。
【請求項10】
請求項1~5の何れか一項に記載のディフューザ(20)であって、前記蒸気排出孔(21)の個数が2、4、6、8などの偶数である、ディフューザ(20)。
【請求項11】
飲料を調製するために所要量のミルクを泡立てるための蒸気ワンド(10)であって、蒸気タンク及び/又は蒸気発生器に接続可能なチューブ(11)と、前記請求項のいずれか一項に記載のディフューザ(20)と、を備える蒸気ワンド(10)。
【請求項12】
飲料を調製する際に所要量のミルクを泡立てるためのマシン(M1、M2)であって、蒸気タンク及び/又は蒸気発生器と、前記タンク及び/又は前記蒸気発生器に対して流体接続されたチューブ(11)を有する蒸気ワンド(10)とを備え、前記蒸気ワンド(10)が、請求項1~10のいずれか一項に記載のディフューザ(20)を備える、マシン(M1、M2)。
【請求項13】
請求項11に記載のマシン(M1、M2)であって、エスプレッソコーヒーマシン(M1)又はミルク泡立て用の独立型マシン(M2)である、マシン(M1、M2)。
【請求項14】
飲料を調製する際に所要量のミルクを泡立てる方法であって、
蒸気タンク及び/又は蒸気発生器から蒸気を受け取る蒸気ワンド(10)を用意するステップを備え、前記蒸気ワンド(10)が蒸気ディフューザ(20)を備え、前記ディフューザ(20)が、縦軸(22)及び複数の蒸気出口孔(21)を備え、前記ディフューザ(20)が大径底部(244)を有する縦孔(24)を備え、前記蒸気出口孔(21)が前記大径底部(244)において前記縦孔(24)に連通する場合に、
前記蒸気を、前記ディフューザ(20)における前記縦軸(22)に対して傾斜した軸(23)により特定される方向に沿って少なくとも1つの出口孔(21)から放出させるステップを更に備える、方法。
【国際調査報告】