(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-21
(54)【発明の名称】髄内固定釘及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/72 20060101AFI20221214BHJP
A61B 17/17 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
A61B17/72
A61B17/17
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022522971
(86)(22)【出願日】2020-10-22
(85)【翻訳文提出日】2022-04-15
(86)【国際出願番号】 US2020056799
(87)【国際公開番号】W WO2021081168
(87)【国際公開日】2021-04-29
(32)【優先日】2019-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509224376
【氏名又は名称】スケルタル ダイナミクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SKELETAL DYNAMICS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】オルベイ、ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】ガリンド、ラウル
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL21
4C160LL44
(57)【要約】
本開示は、随内釘であり、随内釘は、ある長さと、一定の直径と、外側骨接触面と、前(または遠位)端及び後(または近位)端と、を含む軸部を備え、前端は、次第に先細りになっているとともに、標準K-ワイヤの先端を受け入れるようになっているウェルまたはカップを含み、後端は、準備された骨に釘を挿入するための駆動ツールに取り付けられるようになっている駆動取付部を含み、後端は、必要に応じて、挿入ハンドルとしても機能することができるドリルガイドに釘を固定するために使用することができる雌ねじ部を含んでもよく、釘の軸部は、必要に応じて、釘が所望のように配置された場合に、単一皮質ロックねじ及び骨ねじをそれぞれ挿入するためのねじ付き及び/又はねじなしの交差穿孔を備えてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部であって、第1端及びその反対側の第2端と、ある長さと、ある直径と、外側骨接触面とを有する、軸部と、
前記第1端に隣接する先端であって、前記第1端から次第に先細りになってカップ内で終端する、先端と、
前記第2端に隣接する後端であって、駆動ツールに取り付けられるようになっている取付部で終端する、後端と、
を備え、
前記軸部、前記先端、及び前記後端は、骨の髄質に挿入されるようになっている、髄内釘。
【請求項2】
前記先端の前記カップが、K-ワイヤの先端を受け入れるようになっている、
請求項1に記載の髄内釘。
【請求項3】
前記先端の前記カップが、雌ねじ部をさらに含む、
請求項1に記載の髄内釘。
【請求項4】
前記先端の前記カップの前記雌ねじ部が、雄ねじが切られた取り外しツールと噛み合うようになっている、
請求項3に記載の髄内釘。
【請求項5】
前記後端が、雌ねじ部をさらに含む、
請求項1に記載の髄内釘。
【請求項6】
前記後端の前記雌ねじ部は、雄ねじが切られた挿入ハンドルと噛み合うようになっている、
請求項5に記載の髄内釘。
【請求項7】
前記軸部が、1以上の交差穿孔をさらに含む、
請求項1に記載の髄内釘。
【請求項8】
前記1以上の交差穿孔のうちの少なくとも1つは、少なくとも部分的にねじが切られている、
請求項7に記載の髄内釘。
【請求項9】
前記1以上の交差穿孔のうちの少なくとも1つは、ねじが切られていない、
請求項7に記載の髄内釘。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、骨癒合装置及びシステムに関し、特に、より容易に、より正確に、そしてより効率的に、骨固定釘を所望の位置に配置するために、キルシュナー線またはピン(「K-ワイヤ」)と連結するようになっている髄内骨固定釘に関する。
【背景技術】
【0002】
髄内固定釘は、当技術分野において公知である。治癒していく間に骨を安定化させるために、折れた骨の髄領域内、または骨折の整復した破片の領域内に、ねじが切られていないロッドまたは釘を埋め込むことが知られている。このような装置を埋め込むための一般的な手順として、砕けたり折れたりした骨の一端に開口部を形成し、この開口部が、髄質内に延びて、砕けたり折れたりした骨を貫通するようにする。この最初の開口部は、通常、釘を挿入するためのガイドとして骨内に挿入される滑らかなスチールのピンであるK-ワイヤを使用して形成される。その後、砕けたり折れたりした骨を整復する。次に、K-ワイヤをガイドとして使用するカニューレ付きドリルを使用して、K-ワイヤを使用して作られた開口部を、釘の挿入に適した幅に広げる。その後、釘が骨内に挿入されるのと同時に、K-ワイヤが押し出される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
公知の髄内釘の欠点の1つは、いったんK-ワイヤが取り除かれると、釘が挿入される前に、破片、組織及び流体が骨に形成された開口部内に捕捉されることで、釘の挿入中にしばしば問題が生じることである。実際、破片、組織及び流体が開口部を完全に覆い隠したり覆い被さったりすることがあり、それらを除去することなく釘を挿入することは、不可能ではないにしても困難となる。
【0004】
さらに、骨内に捕捉された破片、組織または流体は、釘の機能を妨げ、骨の成長を阻害し、感染のリスクを生じ、釘が正しい位置に置かれたかどうかの正確な判断を妨げる可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、砕けたり折れたりした骨に釘を容易かつ効率的に挿入するためにK-ワイヤと協働するようになっている髄内骨固定釘を提供するとともに、骨に設けられた釘を収容するための開口部に、破片、組織、及び/又は、流体が捕捉される可能性を大幅に低減することである。本明細書に開示された釘は、手術において挿入されると同時に髄管からK-ワイヤを押し出す。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示された髄内釘は軸部を備え、軸部は、ある長さと、一定の直径と、外側骨接触面とを有する。釘は、さらに、前(または遠位)端及び後(または近位)端を含む。先端は、挿入を容易にするために次第に先細りになっており、非侵襲的な設計であり、標準K-ワイヤの先端を受け入れるようになっているウェル(well)またはカップを備える。先端のウェルまたはカップは、必要に応じて、取り外しツールと噛み合うようになっている雌ねじ部を備えてもよい。後端は、準備された骨に釘を挿入するための駆動ツールに取り付けられるようになっている駆動取付部を備える。後端は、必要に応じて、挿入ハンドルとしても機能することができるドリルガイドに釘を固定するために使用することができる雌ねじ部を含んでもよい。釘の軸部には、必要に応じて、釘が所望のように配置された場合に、圧縮ロックねじ及び貫通ねじをそれぞれ挿入するためのねじ付き及び/又はねじなしの交差穿孔が設けられていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】本発明の髄内釘の一実施形態の背面等角図である。
【
図1B】本発明の髄内釘の一実施形態の前面等角図である。
【
図2】本発明の髄内釘の追加の実施形態の等角図であり、オプションであるテーパ状の後端を有する。
【
図3A】本発明の随内釘のドリルガイド/挿入ハンドル兼用器具の実施形態の背面等角図である。
【
図3B】ドリルガイド/挿入ハンドルへの釘インプラント取付部の詳細図である。
【
図4】髄内釘をドリルガイド/挿入ハンドル兼用器具に取り付けるために使用されるロックねじを示す。
【
図5】本発明に係る髄内釘、ドリルガイド/挿入ハンドル兼用器具、及びロックねじの組立図を示す。
【
図6】本発明に係る髄内釘、ドリルガイド/挿入ハンドル兼用器具、及びロックねじの分解図を示す。
【
図7A】本発明の髄内釘に斜めにまたは交差方向に交差穿孔されたねじ穴に一致する骨穴の穿孔を補助するために使用されるガイドを示す。
【
図7B】本発明の髄内釘に斜めにまたは交差方向に交差穿孔されたねじ穴に一致する骨穴の穿孔を補助するために使用されるガイドを示す。
【
図8A】異なるタイプのねじを用いて中手骨及び指骨に埋め込まれた本発明の髄内釘の実施形態を示す。
【
図8B】異なるタイプのねじを用いて指骨に埋め込まれた本発明の髄内釘の実施形態を示す。
【
図8C】異なるタイプのねじを用いて指骨に埋め込まれた本発明の髄内釘の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1A~
図1Bを参照すると、本発明の一実施形態に係る髄内釘(100)のいくつかの図が示されている。髄内釘(100)は長尺状の軸部(101)を備え、軸部(101)は、外側骨接触面(102)と、前(または遠位)端(103)と、後(または近位)端(104)とを有する。
【0009】
後端(104)は、雌ねじ部(105)と回転防止特徴部(106)とを備え、回転防止特徴部(106)は、ドリルガイド/挿入ハンドル兼用器具(200)(
図3A~3B参照)の対応する特徴部(204)と噛み合うようになっている。雌ねじ部は、ロックねじ(300)の対応するねじ付き先端(303)と噛み合うようになっている(
図4参照)。
【0010】
先端(103)は、骨への挿入時にK-ワイヤの先端を受け入れるようになっているウェルまたはカップ(107)を含む。また、先端は、必要に応じて、いったん挿入されると、髄内釘(100)を骨から押し出すのではなく引っぱるために利用され得る取り外しツール(図示せず)と噛み合うようになっている雌ねじ部(109)を含んでもよい。ロックねじ(300)(
図4参照)は、必要に応じて、取り外しツールとして機能してもよい。また、先端(103)は、必要に応じて、骨への釘の挿入を容易にするために、テーパ状の先端(108)を含んでもよい(
図1A、
図1B参照)。
【0011】
また、長尺状の軸部(101)は、ロックねじ(図示せず)を挿入するためのねじ付きまたはねじなしの交差穿孔(110,111)を含んでもよい。
図2に示される髄内釘(150)の別の実施形態では、後端(151)は、必要に応じて、さらなる強度を提供するために、また、より直径の小さい髄内釘の場合にドリルガイド/挿入ハンドル兼用器具(200)(
図3B参照)の噛み合い特徴部(204)との適切な噛み合いを確実に行うために、拡径部(152)を含んでもよい。
【0012】
次に
図3Aを参照すると、本発明の一実施形態に係るドリルガイド/挿入ハンドル兼用器具(200)(combination drill guide/insertion handle)の図がいくつか示されている。ドリルガイド/挿入ハンドル兼用器具(200)は、垂直ハンドル部(201)と水平ドリルガイド部(202)とを備えた略L字形である。垂直ハンドル部(201)とドリルガイド部(202)とは、一体構造になっていてもよいし、ドリルガイド/挿入ハンドル兼用器具を形成するために一緒に組み立てられる2以上の構成要素を含んでもよい。垂直ハンドル部(202)の底部には、水平マンドレル(203)があり、このマンドレルは、必要に応じて、その先端(204)に向かって部分的に、又は完全に、テーパ状になっていてもよい。マンドレル(203)の先端(204)は、髄内釘(100)の回転防止特徴部(106)と噛み合うようになっている(
図1A参照)。
【0013】
ドリルガイド/挿入ハンドル兼用器具(200)は、さらに、垂直ハンドル(201)の後部から延びて、マンドレル(203)を通るとともにマンドレル(203)の先端(204)を通る、オリフィス(205)を備える。オリフィス(205)は、髄内釘(100)をドリルガイド/挿入ハンドル兼用器具(200)に固定するために、ロックねじ(300)(
図4参照)を受け入れるようになっている。
【0014】
また、ドリルガイド/挿入ハンドル兼用器具(200)は、1以上のドリルスロット(206)を含む。髄内釘(100)がロックねじ(300)でマンドレルの先端(204)に取り付けられると、ドリルガイド/挿入ハンドルの1以上のドリルスロットが、髄内釘の1以上の対応する圧縮ロックねじ孔(110、
図1A)と位置合わせされる。したがって、ドリルスロットは、ねじ付き垂直孔(110)(
図1A、
図1B、及び
図8を参照)と噛み合う圧縮ロックねじのための開口部を骨に正確にあけるために使用される。ドリルガイド/挿入ハンドル兼用器具(200)に取り付けることができる追加のドリルガイド(410)を使用して、同様に、貫通ねじ孔(111)と位置合わせして、髄内釘に斜めにまたは交差方向に配向された貫通ねじ用の開口部を正確に骨にあけることができる。このようなガイドの例を
図7A及び
図7Bに示し、最終結果を
図8A、
図8B及び
図8Cに示す。
【0015】
ドリルガイド/挿入ハンドル兼用器具(200)は、単一の構成要素として製造されてもよいし、ドリルガイド部を挿入ハンドルから分離するためにモジュール式であってもよい。装置が2つの別個の部品として製造される場合、ドリルガイド及び挿入ハンドルは、オプションの頂部連結ねじ(207)を含む種々の手段を介して互いにロック及びロック解除され得る。
【0016】
次に
図4を参照すると、
図5及び
図6に示すように、髄内釘(100)をドリルガイド/挿入ハンドル兼用器具(200)でロックするロックねじ(300)が示されている。
連結ねじ(300)は、ノブ(302)から連結ねじの先端(303)まで延びる長尺状の軸部(301)を備える。ノブ(302)は、必要に応じて、指での回転を容易にするためにローレット加工されていてもよい。あるいは、ノブ(302)の代わりに、連結ねじを駆動ツール(図示せず)によってさらに締め付けることができる。ロックねじの先端(303)は、髄内釘(100)の後端(104)の雌ねじ部(105)と噛み合うようになっている雄ねじ部を備え、この雄ねじ部は、必要に応じて、髄内釘(100)の前端(103)の雌ねじ部(109)とも嵌合するようになっている。
【0017】
次に
図5及び
図6を参照すると、さらに、髄内釘(100)、ドリルガイド/挿入ハンドル兼用器具(200)及び連結ねじ(300)がどのように噛み合うように設計されているかを示す、完全な髄内釘システム組立体(1)の組立図及び分解図が示されている。前述のように、頂部連結ねじ(207)はオプションであり、ドリルガイド/挿入ハンドル兼用器具(200)が一体構造である実施形態では不要である。
【0018】
図8A、
図8B、
図8Cは、異なるタイプのねじを使用して中手骨及び指骨に埋め込まれた本発明の髄内釘の実施形態の例を示す。
使用方法
開示された髄内釘の挿入のための例示的な手順は、一般に、以下の工程から構成される(ここで参照される寸法は、直径4.0mmの釘のためのものであり、異なるサイズの釘に対する制限と考えるべきではない)。
【0019】
(1)長さ20.32センチ(8インチ)、1.6mmのK-ワイヤを骨の髄内管を通じて挿入し、骨折の遠位断片及び近位断片を整列させながら治療する。これにより、釘が骨管内の中央に配置される。K-ワイヤの両端は、骨及び軟部組織の長さを超えて延びている必要がある。
【0020】
(2)K-ワイヤを所定の位置に維持した状態で、まず始めは、カニューレ付き突き錐で1.6mmのK-ワイヤ上をリーミングし、骨の底部の皮質骨を通過する。そして、2.7mmのカニューレ付きリーマーで、近位から遠位まで埋め込む釘の遠位端の予定位置までリーミングする。
【0021】
(3)2.7mmのカニューレ付リーマーでリーミングした後、2.7mmのリーマーと同じ位置まで、次の3.3mmのリーマーでリーミングを続ける。リーマーのサイズが3.3mmで十分な場合は、3.0mmの釘を選択する。しかし、もし3.3mmのリーマーが骨の髄管に十分でない場合には、続いて3.5mmの釘または4.0mmの釘のいずれのために、それぞれ3.8mm及び4.3mmのカニューレ付きリーマーでリーミングする。
【0022】
(4)釘の近位端にあるねじ山と噛み合うロックねじを使用して、釘をドリルガイド/挿入ハンドル兼用器具に取り付ける。
(5)釘の遠位端にあるウェルまたはカップを、骨の髄管内に挿入されたままのK-ワイヤの先端と■み合わせる。釘が挿入されると、釘が骨の中に配置されると同時に1.6mmのK-ワイヤを押し出す。
【0023】
(6)釘が骨内の最終的な位置まで挿入されたら、1.4mmのK-ワイヤを使用して釘の圧縮ロックねじ孔を通じて骨に垂直孔を開ける。この際、ドリルガイド/挿入ハンドル兼用器具に刻印されたドリルガイド位置(図示略)(釘の長手方向における近位と遠位)を使用する。1.4mmのK-ワイヤは、皮質近くから延びて骨を貫通し、釘の軸部にあいた複数の垂直孔のうちの1つを通って、骨の遠い方の皮質まで延びるようにしておく。
【0024】
(7)適切なサイズの圧縮ロックねじを穿孔された交差孔に挿入し、ねじを締めて釘を所定の位置にロックする。
(8)必要に応じて、他のマークされた穿孔ガイドアダプタ位置(図示せず)を使用して、45°及び90°に配向された交差孔を穿孔して、追加のねじを挿入するようにしてもよい。
【0025】
上記では、特定の骨の形状、釘の直径、及びねじのタイプに関して説明したが、これらの説明は、本発明の思想から逸脱することなく、また説明された実施形態と均等な範囲内で様々な修正がなされ得るものであり、説明した実施系阿智に限定することを意図するものではない。
【国際調査報告】