(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-21
(54)【発明の名称】脳腫瘍の治療のためのシクロデキストリンベースのγリノレン酸製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/202 20060101AFI20221214BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221214BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221214BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20221214BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20221214BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20221214BHJP
A61K 47/40 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
A61K31/202
A61P35/00
A61P43/00 105
A61K9/107
A61K9/14
A61K9/19
A61K47/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523103
(86)(22)【出願日】2020-10-09
(85)【翻訳文提出日】2022-05-31
(86)【国際出願番号】 IB2020059524
(87)【国際公開番号】W WO2021074760
(87)【国際公開日】2021-04-22
(32)【優先日】2019-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522154021
【氏名又は名称】セファコール インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピアソン、ダニエル エイ.
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA17
4C076AA31
4C076CC26
4C076CC27
4C076EE39
4C076GG06
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA05
4C206MA02
4C206MA05
4C206MA42
4C206MA61
4C206MA64
4C206NA10
4C206ZB21
4C206ZB26
(57)【要約】
本発明は、脳腫瘍の治療のためのシクロデキストリンベースのγリノレン酸製剤に関する。より具体的には、本発明は、γ-リノレン酸のための担体としてのシクロデキストリン類似体の使用及びそれらの薬理学的使用に関する。本発明は、脳のがん、特に多形性神経膠芽腫及び他の神経膠腫、そして軟髄膜腫瘍を含む脳への転移がんの治療のために、シクロデキストリン包接複合体として製剤化されたGLAを特色とする。本明細書において記載される包接複合体は、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPbCD)、β-シクロデキストリンスルホブチルエーテル(bCDSBE)、及び2,6-ジメチル-β-シクロデキストリン(DMbCD)を、GLAと複合体化し、後続して可溶化する能力を利用する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
γ-リノレン酸(GLA)のシクロデキストリン(CD)包接複合体であって、
前記GLAの濃度が1~20mg/mlの範囲であり;
前記CDの濃度が10~40%(w/v)の範囲であり;
前記シクロデキストリンが、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン;スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリンナトリウム塩;及び2,6-ジメチル-β-シクロデキストリンから選択され;
前記包接複合体が、ナノエマルジョンの形態である、前記包接複合体。
【請求項2】
前記CD:GLAのモル比が、約2:1~8:1の範囲である、請求項1に記載の包接複合体。
【請求項3】
前記CD:GLAのモル比が、約4:1である、請求項3に記載の包接複合体。
【請求項4】
前記ナノエマルジョン粒子サイズが、約50nm~300nmの範囲である、請求項1に記載の包接複合体。
【請求項5】
前記複合体が、凍結乾燥物の形態である、請求項1に記載の包接複合体。
【請求項6】
がんの治療のための医薬品の製造のための、請求項1に記載の包接複合体の使用。
【請求項7】
前記がんが、多形性神経膠芽腫である、請求項6に記載の医薬品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳腫瘍の治療のためのシクロデキストリンベースのγリノレン酸製剤に関する。より具体的には、本発明は、γ-リノレン酸のための担体としてのシクロデキストリン類似体の使用及びそれらの薬理学的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
毎年、100,000人のうち約5~6の症例が原発性悪性脳腫瘍と診断され、そのうちの約80%は悪性神経膠腫(MG)である。多形性神経膠芽腫(GBM)は、MG症例の半分以上を占める。これらのがんは、高い罹患率及び死亡率を伴う。現行の集学的治療(実現可能であるならば最大限の外科的切除、その後の放射線療法及び/または化学療法の併用を含む)の取り組みにもかかわらず、生存期間中央値は短い(わずか約15か月)。新たに診断される神経膠腫患者のための治療の進歩にもかかわらず、本質的にすべての患者は疾患の再発を経験するだろう。再発性疾患の患者については、従来の化学療法は概して効果が無く、<20%の奏効率である。原発性神経膠腫からの拡散及び軟髄膜転移も高頻度で起こる。予無不良であり、ほとんど効果的な治療が無いので、脳腫瘍患者のために新しい治療法が、非常に必要とされる。
【0003】
複数の研究により、神経膠腫におけるγ-リノレン酸(GLA)の抗腫瘍活性が確立され[Naidu,et al.,Prostaglandins,Leukotrienes,and Essential Fatty Acids(1992):Vol.45(3),pages 181-184;Das,et al.,Cancer Letters(1995):Vol.94(2),pages 147-155;Reddy,et al.,Journal of Clinical Neuroscience(1998):Vol.5(1),pages 36-39;Bakshi,et al.,Nutrition(2003):Vol.19(4),pages 305-309;Das,Prostaglandins,Leukotrienes,and Essential Fatty Acids(2004):Vol.70(6),pages 539-552;及びDas,Medical Science Monitor(2007):Vol.13(7),pages RA119-RA131]、この材料は、インビトロ及びインビボの両方の神経膠腫細胞に対する細胞傷害性作用について大規模に研究された[Farago,et al.,Lipids in Health and Disease(2011):Vol.10,page 173;Miyake,et al.,Lipids in Health and Disease(2009):Vol.8,page 8;及びBenadiba,et al.,IUBMB Life(2009):Vol.61(3),pages 244-251]。これらの研究は、GLAが、動物腫瘍モデル及びヒトの両方において、正常な神経の細胞を傷つけること無く、且つ神経毒性が低いかまたは無い、神経膠腫細胞に対する選択的かつ特異的な殺腫瘍作用を有することを示している[Vartak,et al.,British Journal of Cancer(1998):Vol.77(10),pages 1612-1620;Leaver,et al.,Prostaglandins,Leukotrienes,and Essential Fatty Acids(2002):Vol.67(5),pages 283-292]。GLAは、がん細胞の侵入も阻害する[Bell,et al.,Journal of Neurosurgery(1999):Vol.91(6),pages 989-996]。
【0004】
GLAは単独で抗がん作用を有するだけでなく、他の公知の抗がん薬及び放射線の殺腫瘍作用を増強することも可能である[Vartak,et al.,Lipids(1997):Vol.32(3),pages 283-292;Antal,et al.,Lipids in Health and Disease(2014):Vol.13,page 142、及びAntal,et al.,BiochimicaetBiophysicaActa(2015):Vol.1851(9),pages 1271-1282]。GLAは、抗がん薬、ドキソルビシン、シスプラチン、及びビンクリスチンのHeLa細胞への細胞傷害性をインビトロで促進した[Sangeetha,et al.,Medical Science Research(1993):Vol.21,pages 457-459]。薬物取り込みの研究から、GLAががん細胞膜の中へ取り込まれて、がん細胞膜の流動性及び透過性を変更し、したがってHeLa細胞による抗がん薬取り込みを促進することが明らかにされた。これは、他の抗がん薬の細胞内濃度の増加を導き、それによって他の抗がん薬の抗がん作用を増加させる。一例において、GLAは、MCF-7乳癌細胞に対するビノレルビンの細胞増殖阻害活性を、用量依存的様式で促進した[Menendez,et al.,Breast Cancer Research and Treatment(2002):Vol.72,pages 203-219]。類似する様式で、GLAは、放射線誘導性の細胞殺傷へのラット星状細胞腫細胞の感度を増加させることも報告された[Vartak,et al.,Lipids(1997):Vol.32(3),pages 283-292]。これは、GLAへの事前暴露が、神経膠腫の患者において、腫瘍細胞を、放射線及び従来の抗がん薬の細胞傷害性作用により敏感にし得ることを示す。
【0005】
治療剤としてのGLAの使用に関する1つの問題は、GLAが高度に親油性であること及び容易に製剤化されないことである。水中で可溶性でない活性剤の投与は、作用の所望される場所へ有効量の活性成分を導くために適切なビヒクルの使用を要求するという問題を提起する。水中油滴型エマルジョンは、水中で可溶性でない活性成分の送達のために一般的に使用される。しかしながら、活性成分を送達するのに従来使用されているエマルジョンは、複数の重大な制限及び短所に悩まされる。エマルジョンは速度論的に安定的な構造であり、複数のメカニズムを介して不安定化を受け、最終的にエマルジョンの完全な相分離をもたらす。経時的に物理的に変化するエマルジョンの傾向は、貯蔵及び取り扱いについての問題を提示する。さらに、この物理的な分解は、身体に投与された場合に調製物が、最適以下の状態である可能性を増加させる。製剤化されたGLAが、経時的に安定的であり、治療を必要とする患者へ容易に投与されるようなGLAの安定的な製剤が必要とされる。
【0006】
シクロデキストリン(CD)は世界中で多数の薬剤製品において使用される医薬賦形剤である。CDは、複数のα(1/4)結合D-グルコピラノース単位からなるオリゴ糖のサブグループを形成する。ドーナツ型のCD分子上でのヒドロキシル基の配置により、当該CD分子は親水性ドメイン及び疎水性ドメイン(極性の外部及び非極性の内部)を獲得する。それらの中心腔は、非極性の分子または分子部分のカプセル化を可能にし、これは、超分子分析化学、食品化学、及び医薬化学において活用されている特性である。最も一般的な天然のCDであり、医薬製品において使用されているものは、それぞれ6、7、及び8のD-グルコピラノース単位からなる、αCD、βCD、及びγCDだけである。水溶液中で、CDは、親油性の低可溶性薬物の水溶性包接複合体を形成することが可能である。概して、様々なシクロデキストリンによる脂肪酸の複合体形成は公知であるが、本発明の包接複合体の形成に使用されるシクロデキストリン類似体とのγ-リノレン酸の複合体形成は、今までに記載されていない。
【発明の概要】
【0007】
したがって、本発明は、脳のがん、特に多形性神経膠芽腫及び他の神経膠腫、そして軟髄膜腫瘍を含む脳への転移がんの治療のために、シクロデキストリン包接複合体として製剤化されたGLAを特色とする。本明細書において記載される包接複合体は、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPbCD)、β-シクロデキストリンスルホブチルエーテル(bCDSBE)、及び2,6-ジメチル-β-シクロデキストリン(DMbCD)を、GLAと複合体化し、後続して可溶化する能力を利用する。
【0008】
一態様において、本発明は、γ-リノレン酸(GLA)のシクロデキストリン(CD)包接複合体を特色とし、GLAの濃度は1~20mg/mlの範囲であり、CDの濃度は10~40%(w/v)の範囲である。
【0009】
一実施形態において、シクロデキストリンは、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPbCD);スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン、ナトリウム塩(bCDSBE);及び2,6-ジメチル-β-シクロデキストリン(DMbCD)から選択される。
【0010】
別の実施形態において、CD/GLAのモル比は、約2:1~8:1の範囲である。
【0011】
さらなる実施形態において、CD/GLAのモル比は、約4:1である。
【0012】
一実施形態において、包接複合体は、ナノエマルジョンである。ナノエマルジョンは、粒子が10~1,000ナノメーターの直径の範囲のコロイド状微粒子系である。さらなる実施形態において、ナノエマルジョン粒子サイズは、約50nm~300nmの範囲である。
【0013】
別の実施形態において、CD/GLA複合体は、凍結乾燥物である。
【0014】
別の態様において、本発明は、がんの治療のための医薬品の製造に有用なGLA/CD包接複合体を特色とする。
【0015】
一実施形態において、がんは、多形性神経膠芽腫である。
【0016】
別の実施形態において、医薬品のシクロデキストリンは、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン;スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン、ナトリウム塩;及び2,6-ジメチル-β-シクロデキストリンから選択される。
【0017】
さらに別の実施形態において、医薬品は、モル比が約2:1~8:1のCD/GLAの範囲である、CD/GLA包接複合体を含む。さらなる実施形態において、CD/GLAのモル比は、約4:1である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】20%のHPbCD中の10mg/mLのGLAの溶液の透過電子顕微鏡(TEM)写真を示す。
【
図2】GLA/HPbCD包接複合体によるU87細胞生存率の阻害を示す。
【
図3】GLA/bCDSBE包接複合体によるU87細胞生存率の阻害を示す。
【
図4】GLA/DMbCD包接複合体によるU87細胞生存率の阻害を示す。
【
図5】本発明のGLA/CD製剤を使用する同所性腫瘍モデルにおける、腫瘍vs対照の写真を示す。
【
図6】本発明のGLA/CD製剤を使用する同所性腫瘍モデルにおける、腫瘍vs対照の顕微鏡写真を示す。
【
図7】本発明のGLA/CD製剤を使用する同所性腫瘍モデルにおける、腫瘍vs対照の顕微鏡写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
γ-リノレン酸を、22%のGLAを含有するボラージ油へと加工されたBorago officinalisの種子から得た。この商業的に入手可能な材料を、ガスクロマトグラフィー-炎イオン化検出(GC-FID)によって分析して、もたらされたGLA純度が98%以上であるように、当業者に公知の方法によって精製した。本発明の方法において使用される製剤は、このレベルの純度のGLAを使用する。
【0020】
GLAを、蒸留水または緩衝溶液のいずれか中でシクロデキストリン複合体として製剤化した。様々なシクロデキストリンは、本明細書において提供される実施例におけるGLA製剤について示されるように有用である。かかるシクロデキストリンとしては、2,6-ジメチル-β-シクロデキストリン(DMBCD)、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPbCD)、またはβ-シクロデキストリンスルホブチルエーテルナトリウム塩(bCDSBE)が挙げられる。一実施例において、20マイクロリットルの20%のHPbCD溶液中の10mg/mLのGLAを、炭素コーティング銅グリッドへ添加した。グリッドを室温で風乾し、次いで透過電子顕微鏡(Technai G2、Philips、オランダ)下で観察した。もたらされた写真は、200±85nmの平均サイズの良好に分散した小滴を示す。
図1を参照されたい。
【0021】
一旦一緒に混合して透明溶液を形成したならば、水溶性付加物は凍結乾燥され得る。凍結乾燥物の再構成は、凍結乾燥前の製剤と同じ特性を備えた透明溶液を与える。
【0022】
以下の非限定的実施例を、本発明をさらに例示するために提供する。
【0023】
実施例1。GLA/CD包接複合体の製剤化
(i)40%のシクロデキストリン溶液の調製
(a)2,6-ジメチル-β-シクロデキストリン(DMBCD)、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPbCD)、またはβ-シクロデキストリンスルホブチルエーテルナトリウム塩(bCDSBE)から選択される、4.00gのシクロデキストリンを、コニカル遠心チューブの中へ秤量した。0.01Mのリン酸緩衝食塩水(PBS、pH=7.4で5mL)を添加した。混合物を、溶液が透明になるまで、ボルテックスで撹拌した及び/または超音波で処理した。
(b)追加のPBSを添加して、各々のチューブ中の体積を10.0mLまでにし、溶液をよく混合した。
(c)溶液を滅菌条件下で0.22μmのフィルターを介して濾過し、<4℃で保存した。
【0024】
(ii)H2O中でのγ-リノレン酸(GLA)懸濁物の調製
(a)100mgのGLAを、15mLの遠心チューブの中へ配置した。
(b)4.9mLの滅菌水をGLAへ添加し、チューブを3時間高速でボルテックスで撹拌して、均一の懸濁物を生じさせた。
(c)一旦懸濁物の撹拌が完了したならば、GLA懸濁物を、2.0mLのエッペンドルフチューブの中へ直ちに分配し、ステップ(iii)において示されるような様々なシクロデキストリン類似体と混合した。
【0025】
(iii)GLA試験サンプルの希釈及び撹拌
GLA/シクロデキストリン希釈物を、表1中で示されるように、適切な量の40%のCD溶液、20mg/mLのGLA懸濁物、PBS、及び/または水を、滅菌条件下で2mLエッペンドルフチューブへ添加することによって調製した。透明な外観が観察されるまで(通常約15秒)、混合物を使用前にボルテックスで撹拌した。
表1。GLA/シクロデキストリンの希釈
【表1】
【0026】
実施例2.U87細胞生存率アッセイ
(i)20%のシクロデキストリン希釈物中での10mgのGLA/mLの調製
表1からのシクロデキストリン溶液の各々を、表2中で示されるように、10%のウシ胎仔血清(FBS)及び1%のペニシリン/ストレプトマイシンを含有するEagleの最小必須培地(EMEM)により、96ウェルプレート中で希釈した。
表2。U87細胞アッセイのためのGLA/CD溶液の希釈
【表2】
【0027】
(ii)U87細胞アッセイにおける試験
100μLの培地中のU87細胞を、96ウェルプレートのウェル中で個別に24時間インキュベーションして、接着を確実にした。次いで試験品またはシクロデキストリン対照希釈物の各々からの100μLのアリコートを、適切な試験ウェルへ添加し、プレートを5%のCO2インキュベーター中で37℃で72時間インキュベーションした。
【0028】
U87細胞をGLA/CD溶液または対照CD溶液の存在下においてインキュベーションした後に、PromegaからのCellTiter-Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assayを使用して、細胞生存率を査定した。簡潔には、CellTiter-Gloアッセイは、存在するATP(培養培地中に存在する代謝的に活性のある細胞の数に比例する)の定量化に基づいて、培養における生存細胞の数を決定する均一法である。アッセイは、耐熱性ルシフェラーゼ(安定的な発光シグナルを生成する)の特性に依存する。アッセイを以下の通り遂行した。
(1)プレートをインキュベーターから取り出し、室温で約30分間平衡化した;
(2)細胞培地を、細胞を乱さないように注意深く除去し、100μLのウシ胎仔血清不含有培地により置き換えた;
(3)CellTiter-Glo(登録商標)試薬(100μL)を各々のウェルへ添加した;
(4)ウェルの内容物を旋回振盪機上で2分間混合して、細胞溶解を誘導した;
(5)プレートを室温で10分間インキュベーションした;
(6)発光を、Perkin Elmer EnVision multilabel readerを使用して記録した。
【0029】
(iii)細胞生存率のGLA/CD溶液の効果
図2中で示されるように、TFが試験品(GLA/20%のHPbCD)であり、VCがビヒクル対照(20%のHPbCD単独)である場合に、GLA/HPbCDのIC
50=117μg/mL(420μM)であった。
図3中で示されるように、TFが試験品(GLA/20%のbCDSBE)であり、VCがビヒクル対照(20%のbCDSBE単独)である場合に、GLA/bCDSBEのIC
50=117μg/mL(420μM)であった。そして
図4中で示されるように、TFが試験品(GLA/20%のDMbCD)であり、VCがビヒクル対照(20%のDMbCD単独)である場合に、GLA/DMbCDのIC
50=60μg/mL(216μM)であった。
【0030】
実施例3.人工脳脊髄液中でのGLA/HPbCD包接複合体の調製
人工脳脊髄液(aCSF)及びaCSF中のHPbCDエマルジョンを、以下の通りに調製する。
【0031】
(i)aCSF中及び20%のHPbCD/aCSF中での20mg/mLのGLAの調製
a)2×溶液Aのために、以下の量を、250mLの滅菌H2O中で溶解した。NaCl(8.66g);KCl(0.224g);CaCl2・2H2O(0.206g);及びMgCl2・6H2O(0.163g)。
b)2×溶液Bのために、以下の量を、250mLの滅菌H2O中で溶解した。Na2HPO4・7H2O(0.214g);及びNaH2PO4・H2O(0.027g)。
c)2×aCSFのために、溶液A及びBを等体積で組み合わせた。
【0032】
(ii)2×aCSF中での40%のHPbCDの調製
a)2.00gのヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPbCD)を、滅菌済みの目盛のある15mLのコニカル遠心チューブ中で秤量し、2.0mLの2×aCSFを添加し、HPbCDが完全に湿るまで、懸濁物をボルテックスで撹拌した。
b)追加の2×aCSF(約1.85mL)を、5.0mLの目盛線までHPbCD溶液へ小分けで添加し、HPbCDのすべてが溶液になるまで、各々の添加後にボルテックスで撹拌した/超音波で処理した。
c)溶液を、ラミナーフローフード中で0.22μmのフィルターを介して濾過した。
【0033】
実施例4.同所性腫瘍モデルにおけるGLA/HPbCD製剤の有効性
C6神経膠腫細胞を、10%のウシ胎仔血清及び抗生物質(ペニシリン50U/ml、ストレプトマイシン50μg/ml)を含有するDMEM細胞培養液中で増殖させた。対数増殖期の細胞を使用し、5%のCO2/95%の空気の加湿雰囲気において75cm2フラスコ中で37℃で増殖させた。
【0034】
皮下注射を後肢の上方の背中の側面で行い、この場合、100μLの3×106のC6神経膠腫細胞を含有するDulbeccoリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)を、Wistarのラットで脇腹腫瘍を発生させるために注射した。動物を14日間収容し、その間に、腫瘍サイズ、動物の体重を周期的に測定した。腫瘍発生後に、動物を、1群(n=3)あたり3匹の動物で2つの群へと無作為に割り当てた。100μLの10mg/mlのGLA/HPbCD/aCSF製剤の腫瘍内投与を、1つの群へ隔日で14日間投与し、他の群へのビヒクル対照と共に行った。動物の体重、食料/水分摂取量、及び腫瘍体積を、周期的に書き留めた。実験の終了時に、ラットを安楽死させ、腫瘍を組織病理学的分析のために切除した。GLA/HPbCD/aCSF製剤の有効性を、腫瘍体積の低減及び腫瘍退縮の組織学的証拠によって査定した。
【0035】
図5中で示されるように、有意な腫瘍退縮(75±3.2%)が指摘された。TF021試験製剤の腫瘍の詳細な組織学的検査から、腫瘍退縮の領域に泡状のマクロファージ及びリンパ球が浸潤したことが示され、そのようなものは、ビヒクル対照VC021において観察されなかった(
図6)。
【国際調査報告】