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特表2022-553039遺伝子学的に改変された酵母細胞およびこれの使用の方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-21
(54)【発明の名称】遺伝子学的に改変された酵母細胞およびこれの使用の方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/19 20060101AFI20221214BHJP
   C12P 19/02 20060101ALI20221214BHJP
   C12P 19/12 20060101ALI20221214BHJP
   C12P 19/00 20060101ALI20221214BHJP
   C12G 1/022 20060101ALI20221214BHJP
   C12G 1/06 20190101ALI20221214BHJP
   C12G 3/022 20190101ALI20221214BHJP
   C12G 3/00 20190101ALI20221214BHJP
   C12C 5/02 20060101ALI20221214BHJP
   C12C 11/02 20060101ALI20221214BHJP
   C12P 11/00 20060101ALI20221214BHJP
   C12N 15/52 20060101ALN20221214BHJP
   C12P 13/12 20060101ALN20221214BHJP
【FI】
C12N1/19 ZNA
C12P19/02
C12P19/12
C12P19/00
C12G1/022
C12G1/06
C12G3/022 119
C12G3/00
C12C5/02
C12C11/02
C12P11/00
C12N15/52 Z
C12P13/12 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523282
(86)(22)【出願日】2020-10-16
(85)【翻訳文提出日】2022-06-20
(86)【国際出願番号】 US2020056022
(87)【国際公開番号】W WO2021076917
(87)【国際公開日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】63/086,363
(32)【優先日】2020-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/916,529
(32)【優先日】2019-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522156520
【氏名又は名称】バークリー ファーメンテーション サイエンス,インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Berkeley Fermentation Science Inc.
【住所又は居所原語表記】2451 Peralta Street, Oakland, CA 94607, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ループ,ジェレミー
(72)【発明者】
【氏名】デンビー,チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】リー,レイチェル
(72)【発明者】
【氏名】ハリス,ニコラス
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4B115
4B128
【Fターム(参考)】
4B064AF02
4B064AF03
4B064AF04
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA10
4B065AA79X
4B065AA79Y
4B065AA80X
4B065AA80Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065CA15
4B065CA16
4B065CA19
4B065CA20
4B065CA21
4B065CA42
4B115BA04
4B115BA09
4B128CP16
4B128CP38
(57)【要約】
本明細書に提供されるのは、突然変異ベータ-リアーゼをコードする遺伝子を組換え発現する、遺伝子学的に修飾された酵母細胞である。また提供されるのには、発酵産物を産生する方法およびエタノールを産生する方法もある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベータ-リアーゼ活性をもつ酵素をコードする異種遺伝子を含む、遺伝子学的に修飾された酵母細胞(修飾された細胞)。
【請求項2】
ベータ-リアーゼ活性をもつ酵素が、配列番号2で表されるとおりの配列と少なくとも90%の配列同一性をもつ配列を有する、請求項1に記載の修飾された細胞。
【請求項3】
ベータ-リアーゼ活性をもつ酵素が、配列番号1、6、7で表されるとおりの配列をいずれも含まない、請求項1または2に記載の修飾された細胞。
【請求項4】
ベータ-リアーゼ活性をもつ酵素が、配列番号2で表されるとおりの配列を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の修飾された細胞。
【請求項5】
ベータ-リアーゼ活性をもつ酵素が、配列番号4または5のいずれか1つで表されるとおりの配列と少なくとも90%の配列同一性をもつ配列を有する、請求項1に記載の修飾された細胞。
【請求項6】
ベータ-リアーゼ活性をもつ酵素が、配列番号4~7のいずれか1つで表されるとおりの配列を有する、請求項1または5に記載の修飾された細胞。
【請求項7】
ベータ-リアーゼ活性をもつ酵素が、配列番号1の位置H463に対応する位置にて置換変異を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の修飾された細胞。
【請求項8】
配列番号1の位置H463に対応する位置での置換変異が、フェニルアラニン、アルギニン、グルタミン酸、トレオニン、グリシン、イソロイシン、またはバリンである、請求項7に記載の修飾された細胞。
【請求項9】
酵母細胞が、属Saccharomycesから成る、請求項1~8のいずれか一項に記載の修飾された細胞。
【請求項10】
酵母細胞が、種Saccharomyces cerevisiae(S.cerevisiae)から成る、請求項9に記載の修飾された細胞。
【請求項11】
酵母細胞が、S.cerevisiae California Ale Yeast株WLP001またはRed Star Cote des Blancsである、請求項10に記載の修飾された細胞。
【請求項12】
酵母細胞は、種Saccharomyces pastorianus(S.pastorianus)から成る、請求項9に記載の修飾された細胞。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の修飾された細胞を、少なくとも1つの発酵性糖を含む培地と接触させることを含む、発酵産物を産生する方法であって、ここで接触させることが、少なくとも最初の発酵プロセスの最中に実施されることで、発酵産物が産生される、前記方法。
【請求項14】
少なくとも1つの発酵性糖が、少なくとも1つの糖源において提供される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
発酵性糖が、グルコース、フルクトース、スクロース、マルトース、および/またはマルトトリオースである、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1つの糖源が、少なくとも1つの前駆体を含む、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1つの前駆体が、システインに抱合された3-メルカプトヘキサン-1-オール(Cys 3-MH)、システインに抱合された4-メチル-4-メルカプトペンタン-2-オン(Cys 4MMP)、グルタチオンに抱合された3-メルカプトヘキサン-1-オール(Glut-3-MH)、および/またはグルタチオンに抱合された4-メチル-4-メルカプトペンタン2-オン(Glut 4MMP)を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
1以上の前駆体を培地へ加えることをさらに含み、ここで前駆体が、3-メルカプトヘキサン-1-オール(Cys 3-MH)、システインに抱合された4-メチル-4-メルカプトペンタン-2-オン(Cys 4MMP)、グルタチオンに抱合された3-メルカプトヘキサン-1-オール(Glut-3-MH)、および/またはグルタチオンに抱合された4-メチル-4-メルカプトペンタン2-オン(Glut 4MMP)を含む、請求項13~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記発酵産物が、異種遺伝子を発現しない同等の細胞またはベータ-リアーゼ活性を有する野生型酵素を発現する同等の細胞によって産生された発酵産物と比較して、増大したレベルの、少なくとも1つの揮発性チオールを含む、請求項9~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも1つの揮発性チオールが、3-メルカプトヘキサン-1-オール(3MH)、3-メルカプト酢酸ヘキシル(3MHA)、4-メチル-4-メルカプトペンタ-2-オン(4MMP)、またはそれらの組み合わせを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記発酵産物が、少なくとも200ng/Lの、3-メルカプトヘキサン-1-オール(3MH)、3-メルカプト酢酸ヘキシル(3MHA)、および/または4-メチル-4-メルカプトペンタ-2-オン(4MMP)を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記発酵産物が、異種遺伝子を発現しない同等の細胞またはベータ-リアーゼ活性を有する野生型酵素を発現する同等の細胞によって産生された発酵産物と比較して、低減したレベルの、少なくとも1つの望ましくない産物を含む、請求項13~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
少なくとも1つの望ましくない産物が、インドールである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記発酵産物が、発酵飲料である、請求項13~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
発酵飲料が、ビール、ワイン、スパークリングワイン(シャンパン)、日本酒、蜂蜜酒、昆布茶、または林檎酒である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
糖源が、麦芽汁、果汁、蜂蜜、米デンプン、またはそれらの組み合わせを含む、請求項13~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
果汁が、ブドウ果汁またはリンゴ果汁である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
糖源が、麦芽汁であり、ならびに
方法が、培地を産生することをさらに含み、ここで培地を産生することが、以下:
(a)複数の穀物を水と接触させること;ならびに
(b)水および穀物を煮沸するかまたは浸すことで、麦芽汁を産生すること
を含む、請求項13~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
少なくとも1つのホップ品種を麦芽汁へ加えることで、ホップが効いた麦芽汁を産生することをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
少なくとも1つのホップ品種を培地へ加えることをさらに含む、請求項13~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
少なくとも1つの追加の発酵プロセスをさらに含む、請求項13~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記発酵産物に炭酸ガスを入れることをさらに含む、請求項13~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
請求項13~32のいずれか一項に記載の方法によって産生された、発酵産物。
【請求項34】
発酵産物が、少なくとも200ng/Lの、3-メルカプトヘキサン-1-オール(3MH)、3-メルカプト酢酸ヘキシル(3MHA)、および/または4-メチル-4-メルカプトペンタ-2-オン(4MMP)を含む、請求項33に記載の発酵産物。
【請求項35】
発酵産物が、500μg/L未満のインドールを含む、請求項33または34に記載の発酵産物。
【請求項36】
請求項1~12のいずれか一項に記載の修飾された細胞を、少なくとも1つの発酵性糖を含む培地と接触させることを含む、エタノールを含む組成物を産生する方法であって、ここでかかる接触が、少なくとも最初の発酵プロセスの最中に実施されることで、エタノールを含む組成物が産生される、前記方法。
【請求項37】
少なくとも1つの発酵性糖が、少なくとも1つの糖源において提供される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
発酵性糖が、グルコース、フルクトース、スクロース、マルトース、および/またはマルトトリオースである、請求項36または37に記載の方法。
【請求項39】
少なくとも1つの糖源が、少なくとも1つの前駆体を含む、請求項36~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
少なくとも1つの前駆体が、システインに抱合された3-メルカプトヘキサン-1-オール(Cys 3-MH)、システインに抱合された4-メチル-4-メルカプトペンタン-2-オン(Cys 4MMP)、グルタチオンに抱合された3-メルカプトヘキサン-1-オール(Glut-3-MH)、および/またはグルタチオンに抱合された4-メチル-4-メルカプトペンタン2-オン(Glut 4MMP)を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
1以上の前駆体を培地へ加えることをさらに含み、ここで前駆体が、3-メルカプトヘキサン-1-オール(Cys 3-MH)、システインに抱合された4-メチル-4-メルカプトペンタン-2-オン(Cys 4MMP)、グルタチオンに抱合された3-メルカプトヘキサン-1-オール(Glut-3-MH)、および/またはグルタチオンに抱合された4-メチル-4-メルカプトペンタン2-オン(Glut 4MMP)を含む、請求項36~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記エタノールを含む組成物が、異種遺伝子を発現しない同等の細胞またはベータ-リアーゼ活性を有する野生型酵素を発現する同等の細胞によって産生されたエタノールを含む組成物と比較して、増大したレベルの、少なくとも1つの揮発性チオールをさらに含む、請求項36~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
少なくとも1つの揮発性チオールが、3-メルカプトヘキサン-1-オール(3MH)、3-メルカプト酢酸ヘキシル(3MHA)、4-メチル-4-メルカプトペンタ-2-オン(4MMP)、またはそれらの組み合わせを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記エタノールを含む組成物が、少なくとも200ng/Lの、3-メルカプトヘキサン-1-オール(3MH)、3-メルカプト酢酸ヘキシル(3MHA)、および/または4-メチル-4-メルカプトペンタ-2-オン(4MMP)をさらに含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記エタノールを含む組成物が、異種遺伝子を発現しない同等の細胞またはベータ-リアーゼ活性を有する野生型酵素を発現する同等の細胞によって産生されたエタノールを含む組成物と比較して、低減したレベルの、少なくとも1つの望ましくない産物をさらに含む、請求項36~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
少なくとも1つの望ましくない産物が、インドールである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記エタノールを含む組成物が、発酵飲料である、請求項36~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
発酵飲料が、ビール、ワイン、スパークリングワイン(シャンパン)、日本酒、蜂蜜酒、昆布茶、または林檎酒である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
糖源が、麦芽汁、果汁、蜂蜜、米デンプン、またはそれらの組み合わせを含む、請求項36~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
果汁が、ブドウ果汁またはリンゴ果汁である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
糖源が、麦芽汁であり、ならびに
方法が、培地を産生することをさらに含み、ここで培地を産生することが、以下:
(a)複数の穀物を水と接触させること;ならびに
(b)水および穀物を煮沸するかまたは浸すことで、麦芽汁を産生すること
を含む、請求項36~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
少なくとも1つのホップ品種を麦芽汁へ加えることで、ホップが効いた麦芽汁を産生することをさらに含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
少なくとも1つのホップ品種を培地へ加えることをさらに含む、請求項36~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
少なくとも1つの追加の発酵プロセスをさらに含む、請求項36~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
発酵産物に炭酸ガスを入れることをさらに含む、請求項36~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
請求項36~55のいずれか一項に記載の方法によって産生された、エタノールを含む組成物。
【請求項57】
組成物が、少なくとも200ng/Lの、3-メルカプトヘキサン-1-オール(3MH)、3-メルカプト酢酸ヘキシル(3MHA)、および/または4-メチル-4-メルカプトペンタ-2-オン(4MMP)をさらに含む、請求項56に記載の組成物。
【請求項58】
発酵産物が、500μg/L未満のインドールを含む、請求項56または57に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2019年10月17日出願の米国仮出願第62/916,529号および2020年10月1日出願の米国仮出願第63/086,363号の35 U.S.C.§119(e)の下で利益を主張するものであり、参照されたこれら出願の各々の内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府の支援
本発明は、全米科学財団によって授与された第1831242号の賞(Award)の下、政府の支援によりなされた。政府は本発明において一定の権利を有する
【背景技術】
【0003】
背景
この10年以内、熱帯産果実のフレーバー(tropical fruit flavors)は、合衆国内のみならず国際的にもまた、飲料市場において益々人気を博すようになっている。Cannon et al.J.Food Drug Anal.(2018)26:445-468;Watson,B.Early 2018 Beer Style Trends;Hahn et al.Washington Post(2016):washingtonpost.com/lifestyle/food/pineapple-and-mango-in-the-pint-glass-so-hot-right-now/2016/05/22/73f6c52a-1dd2-11e6-b6e0-c53b7ef63b45_story.htmlを見よ。ビール産業において、この傾向は、それら熱帯産果実の芳香のため珍重されるフレーバーホップ(flavoring hops)の利用の大幅な増加によって例示される。ワイン産業内では、熱帯産のフレーバーノート(flavor notes)が、Sauvignon BlancおよびChardonnayの種類(styles)の人気に拍車をかけ、長年にわたる取り組みがこれらワイン内に見出される熱帯産の芳香をさらに増加させようとしている。Tominaga,et al.Flavour and Fragrance Journal(1998)13,159-162;Swiegers,et al.Yeast(2007)24,561-574;Howell,et al.Appl.Environ.Microbiol.(2005)71,5420-5426;Santiago,et al.FEMS Yeast Res.(2015)15,fov034;Roland,A.,et al.Flavour and Fragrance Journal(2012)27,266-272;Jeffery,et al Australian Journal of Chemistry (2016)69,1323を見よ。多様なフレーバー分子を様々組み合わせることで大多数の果実フレーバーが産生されることが調査によって明らかにされている。Cannon et al.J.Food Drug Anal.(2018)26:445-468;Bartowsky et al.Biology of Microorganisms on Grapes,in Must and in Wine,pp:209-231;Holt et al.(FEMS Microbiol.Rev.2019)43:193-222を見よ。しかしながら、無数の研究はまた、Sauvignon Blancのワインおよびある品種のフレーバーホップの、熱帯産のフレーバーならびに芳香の大部分が、3つの特定の揮発性チオール分子の存在に起因するとも考えている。3-メルカプトヘキサン-1-オール(3MH)、3-メルカプト酢酸ヘキシル(3MHA)、および4-メチル-4-メルカプトペンタン-2-オン(4MMP)の、これらチオールはすべて、極めて低い濃度にて、ヒト嗅覚受容体に対し検出可能であり、夫々、グレープフルーツ/パッションフルーツ、グアバ/セイヨウスグリ、およびパッションフルーツ/クロフサスグリのフレーバーを付与する。Vanzo et al.Sci.Rep.(2017):7;Roland et al.Chem.Rev.(2012)111,7355-7376を見よ。
【発明の概要】
【0004】
概要
本開示の側面は、ベータ-リアーゼ活性をもつ酵素をコードする異種遺伝子を含む、遺伝子学的に修飾された酵母細胞(修飾された細胞)を提供する。いくつかの態様において、ベータ-リアーゼ活性をもつ酵素は、配列番号2で表されるとおりの配列と少なくとも90%の配列同一性をもつ配列を有する。いくつかの態様において、ベータ-リアーゼ活性をもつ酵素は、配列番号1、6、7で表されるとおりの配列をいずれも含まない。いくつかの態様において、ベータ-リアーゼ活性をもつ酵素は、配列番号2で表されるとおりの配列を有する。いくつかの態様において、ベータ-リアーゼ活性をもつ酵素は、配列番号3~7のいずれか1つで表されるとおりの配列と少なくとも90%の配列同一性をもつ配列を有する。いくつかの態様において、ベータ-リアーゼ活性をもつ酵素は、配列番号3~5のいずれか1つで表されるとおりの配列を有する。
【0005】
いくつかの態様において、ベータ-リアーゼ活性をもつ酵素は、配列番号1の位置H463に対応する位置にて置換変異を含む。いくつかの態様において、配列番号1の位置H463に対応する位置での置換変異は、フェニルアラニン、アルギニン、グルタミン酸、トレオニン、グリシン、イソロイシン、またはバリンである。
【0006】
いくつかの態様において、酵母細胞は、属Saccharomycesから成る。いくつかの態様において、酵母細胞は、種Saccharomyces cerevisiae(S.cerevisiae)から成る。いくつかの態様において、酵母細胞は、S.cerevisiae California Ale Yeast株WLP001である。いくつかの態様において、酵母細胞は、種Saccharomyces pastorianus(S.pastorianus)から成る。
【0007】
本開示の側面は、本明細書に記載の修飾された細胞のいずれかを、少なくとも1つの発酵性糖を含む培地と接触させることを含む、発酵産物を産生する方法を提供するが、ここで接触させることは、少なくとも最初の発酵プロセスの最中に実施されることで、発酵産物が産生される。いくつかの態様において、少なくとも1つの発酵性糖は、少なくとも1つの糖源において提供される。いくつかの態様において、発酵性糖は、グルコース、フルクトース、スクロース、マルトース、および/またはマルトトリオースである。いくつかの態様において、少なくとも1つの糖源は、植物由来の前駆体または化学的に合成された前駆体などの、少なくとも1つの前駆体を含む。いくつかの態様において、少なくとも1つの前駆体は、システインに抱合された3-メルカプトヘキサン-1-オール(Cys 3-MH)、システインに抱合された4-メチル-4-メルカプトペンタン-2-オン(Cys 4MMP)、グルタチオンに抱合された3-メルカプトヘキサン-1-オール(Glut-3-MH)、および/またはグルタチオンに抱合された4-メチル-4-メルカプトペンタン2-オン(Glut 4MMP)を含む。いくつかの態様において、方法は、1以上の前駆体を培地へ加えることをさらに含み、ここで前駆体は、3-メルカプトヘキサン-1-オール(Cys 3-MH)、システインに抱合された4-メチル-4-メルカプトペンタン-2-オン(Cys 4MMP)、グルタチオンに抱合された3-メルカプトヘキサン-1-オール(Glut-3-MH)、および/またはグルタチオンに抱合された4-メチル-4-メルカプトペンタン2-オン(Glut 4MMP)を含む。
【0008】
いくつかの態様において、前記発酵産物は、異種遺伝子を発現しない同等の細胞またはベータ-リアーゼ活性を有する野生型酵素を発現する同等の細胞によって産生された発酵産物と比較して、増大したレベルの、少なくとも1つの揮発性チオールを含む。いくつかの態様において、少なくとも1つの揮発性チオールは、3-メルカプトヘキサン-1-オール(3MH)、3-メルカプト酢酸ヘキシル(3MHA)、4-メチル-4-メルカプトペンタ-2-オン(4MMP)、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの態様において、前記発酵産物は、少なくとも200ng/Lの、3-メルカプトヘキサン-1-オール(3MH)、3-メルカプト酢酸ヘキシル(3MHA)、および/または4-メチル-4-メルカプトペンタ-2-オン(4MMP)を含む。
【0009】
いくつかの態様において、前記発酵産物は、異種遺伝子を発現しない同等の細胞またはベータ-リアーゼ活性を有する野生型酵素を発現する同等の細胞によって産生された発酵産物と比較して、低減したレベルの、少なくとも1つの望ましくない産物を含む。
【0010】
いくつかの態様において、少なくとも1つの望ましくない産物は、インドールである。いくつかの態様において、前記発酵産物は、発酵飲料である。いくつかの態様において、発酵飲料は、ビール、ワイン、スパークリングワイン(シャンパン)、日本酒(sake)、蜂蜜酒(mead)、昆布茶(kombucha)、または林檎酒(cider)である。いくつかの態様において、糖源は、麦芽汁、果汁(fruit juice)、蜂蜜(honey)、米デンプン、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの態様において、果汁は、ブドウ果汁(grape juice)またはリンゴ果汁(apple juice)である。
【0011】
いくつかの態様において、糖源は麦芽汁であり、および方法は培地を産生することをさらに含み、ここで培地を産生することは、複数の穀物を水と接触させること;ならびに水および穀物を煮沸するかまたは浸すことで、麦芽汁を産生することを含む。いくつかの態様において、方法は、少なくとも1つのホップ品種を麦芽汁へ加えることで、ホップが効いた(hopped)麦芽汁を産生することをさらに含む。いくつかの態様において、方法は、少なくとも1つのホップ品種を培地へ加えることをさらに含む。いくつかの態様において、方法は、少なくとも1つの追加の発酵プロセスをさらに含む。いくつかの態様において、発酵産物に炭酸ガスを入れること(carbonating)をさらに含む。
【0012】
本開示の側面は、本明細書に記載の方法のいずれかによって産生された発酵産物を提供する。いくつかの態様において、発酵産物は、少なくとも200ng/Lの、3-メルカプトヘキサン-1-オール(3MH)、3-メルカプト酢酸ヘキシル(3MHA)、および/または4-メチル-4-メルカプトペンタ-2-オン(4MMP)を含む。いくつかの態様において、発酵産物は、500μg/L未満のインドールを含む。
【0013】
本開示の側面は、本明細書に記載の修飾された細胞のいずれかを、少なくとも1つの発酵性糖を含む培地と接触させることを含む、エタノールを含む組成物を産生する方法を提供するが、ここでかかる接触は、少なくとも最初の発酵プロセスの最中に実施されることで、エタノールを含む組成物が産生される。いくつかの態様において、少なくとも1つの発酵性糖は、少なくとも1つの糖源において提供される。いくつかの態様において、発酵性糖は、グルコース、フルクトース、スクロース、マルトース、および/またはマルトトリオースである。いくつかの態様において、少なくとも1つの糖源は、少なくとも1つの前駆体を含む。いくつかの態様において、少なくとも1つの前駆体は、システインに抱合された3-メルカプトヘキサン-1-オール(Cys 3-MH)、システインに抱合された4-メチル-4-メルカプトペンタン-2-オン(Cys 4MMP)、グルタチオンに抱合された3-メルカプトヘキサン-1-オール(Glut-3-MH)、および/またはグルタチオンに抱合された4-メチル-4-メルカプトペンタン2-オン(Glut 4MMP)を含む。いくつかの態様において、方法は、1以上の前駆体を培地へ加えることをさらに含み、ここで前駆体は、3-メルカプトヘキサン-1-オール(Cys 3-MH)、システインに抱合された4-メチル-4-メルカプトペンタン-2-オン(Cys 4MMP)、グルタチオンに抱合された3-メルカプトヘキサン-1-オール(Glut-3-MH)、および/またはグルタチオンに抱合された4-メチル-4-メルカプトペンタン2-オン(Glut 4MMP)を含む。
【0014】
いくつかの態様において、前記エタノールを含む組成物は、異種遺伝子を発現しない同等の細胞またはベータ-リアーゼ活性を有する野生型酵素を発現する同等の細胞によって産生されたエタノールを含む組成物と比較して、増大したレベルの、少なくとも1つの揮発性チオールをさらに含む。いくつかの態様において、少なくとも1つの揮発性チオールは、3-メルカプトヘキサン-1-オール(3MH)、3-メルカプト酢酸ヘキシル(3MHA)、4-メチル-4-メルカプトペンタ-2-オン(4MMP)、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの態様において、前記エタノールを含む組成物は、少なくとも200ng/Lの、3-メルカプトヘキサン-1-オール(3MH)、3-メルカプト酢酸ヘキシル(3MHA)、および/または4-メチル-4-メルカプトペンタ-2-オン(4MMP)をさらに含む。
【0015】
いくつかの態様において、前記エタノールを含む組成物は、異種遺伝子を発現しない同等の細胞またはベータ-リアーゼ活性を有する野生型酵素を発現する同等の細胞によって産生されたエタノールを含む組成物と比較して、低減したレベルの、少なくとも1つの望ましくない産物をさらに含む。いくつかの態様において、少なくとも1つの望ましくない産物は、インドールである。
【0016】
いくつかの態様において、前記エタノールを含む組成物は、発酵飲料である。いくつかの態様において、発酵飲料は、ビール、ワイン、スパークリングワイン(シャンパン)、日本酒、蜂蜜酒、昆布茶、または林檎酒である。いくつかの態様において、糖源は、麦芽汁、果汁、蜂蜜、米デンプン、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの態様において、果汁は、ブドウ果汁またはリンゴ果汁である。
【0017】
いくつかの態様において、ここで糖源は麦芽汁であり、および方法は培地を産生することをさらに含み、ここで培地を産生することは、複数の穀物を水と接触させること;ならびに水および穀物を煮沸するかまたは浸すことで、麦芽汁を産生することを含む。いくつかの態様において、方法は、少なくとも1つのホップ品種を麦芽汁へ加えることで、ホップが効いた麦芽汁を産生することをさらに含む。いくつかの態様において、方法は、少なくとも1つのホップ品種を培地へ加えることをさらに含む。いくつかの態様において、方法は、少なくとも1つの追加の発酵プロセスをさらに含む。いくつかの態様において、方法は、発酵産物に炭酸ガスを入れることをさらに含む。
【0018】
本開示の側面は、本明細書に記載の方法のいずれかによって産生された、エタノールを含む組成物を提供する。いくつかの態様において、組成物は、少なくとも200ng/Lの、3-メルカプトヘキサン-1-オール(3MH)、3-メルカプト酢酸ヘキシル(3MHA)、および/または4-メチル-4-メルカプトペンタ-2-オン(4MMP)をさらに含む。いくつかの態様において、発酵産物は、500μg/L未満のインドールを含む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図面の簡単な記載
さらなる本開示の側面は、添付の図面と併せて考慮したとき、下に記載のその様々な側面および態様の詳細な記載を見直せば、容易に解されるであろう。
【0020】
図1A図1A~1Hは、本明細書に記載のとおりの、発酵産物を作製する方法またはエタノールを作製する方法の例示のプロセス図表を示す。図1Aは、少なくとも最初の発酵プロセスの最中に、本開示の修飾された細胞を培地と接触させることで、発酵産物を産生する方法を示す。
図1B図1Bは、図1Aの方法の態様を示すが、ここで培地は、複数の穀物を水と接触させ、水を煮沸して麦芽汁を産生させ、これを冷却して培地にすることによって産生される。
図1C図1Cは、図1Aの方法の態様を示すが、ここでホップの少なくとも1つの品種が培地へ加えられる。
図1D図1Dは、図1Aの方法の態様を示すが、ここで少なくとも1つの追加の発酵プロセスが生じる。
図1E図1Eは、図1Aの方法の態様を示すが、ここで発酵産物は、炭酸ガスが入れられる。
図1F図1Fは、少なくとも最初の発酵プロセスの最中に、本開示の修飾された細胞を培地と接触させることで、エタノールを含む組成物を産生することを伴う、エタノールを作製する方法を示す。
図1G図1Gは、図1Aの方法の態様を示すが、少なくとも1つの揮発性チオール前駆体(例として、Cys-MH、Glu-3MH)が、培地へ加えられる。
図1H図1Hは、少なくとも最初の発酵プロセスの最中に、精製された本開示の酵素を培地と接触させることで、発酵産物を産生する方法を示す。
【0021】
図2図2は、野生型酵母株および改変酵母株によって醸造されたビールにおける3メルカプトヘキサノール(3MH)ならびにインドールの濃度を示す。左軸は3MH濃度を示し、右軸はインドール濃度を報告する。左から右へ示される株:野生型 California Ale Yeast(WLP001);IRC7(Y27)を過剰発現するWLP001;STR3(Y33)を過剰発現するWLP001;TnaA(Y182)を過剰発現するWLP001;およびTnaA-H463F(Y502)を過剰発現するWLP001。
【0022】
図3図3Aおよび3Bは、指し示された酵母株を使用して産生された発酵産物におけるメルカプトヘキサノール(3MH)およびインドールの濃度を示す。図3Aは、野生型酵母株と、TnaAまたはTnaA H463F突然変異体を発現する改変酵母株とによって醸造されたビールにおける、3-メルカプトヘキサン-1-オール(3MH)およびインドールの濃度を示す。左軸は3MH濃度(ng/L)を示し、右軸はインドール濃度(μg/L)を報告する。左から右へ示される株:野生型California Ale Yeast(WLP001);野生型TnaAを過剰発現するWLP001(Y319;Trpase WT);およびTnaA H463F突然変異体を過剰発現するWLP001(Y502;Trpase H463F)。図3Bは、野生型酵母株と、TnaAまたはTnaA H463F突然変異体を発現する改変酵母株とで発酵されたワインにおける、3-メルカプトヘキサン-1-オール(3MH)およびインドールの濃度を示す。左軸は3MH濃度(ng/L)を示し、右軸はインドール濃度(μg/L)を報告する。左から右へ示される株:野生型Red Star Cote des Blanc酵母株;野生型TnaA(Y919;Trpase WT)を過剰発現するRed Star;およびTnaA H463F突然変異体を過剰発現するRed Star(Y484;Trpase H463F)。
【0023】
図4図4Aおよび4Bは、加えられたグルタチオン抱合3-メルカプトヘキサン-1-オール(Glut-3MH)の存在または不在下において、指し示された酵母株を使用して産生された発酵産物における、揮発性チオールおよびインドールの濃度を示す。図4Aは、野生型酵母株と、TnaAまたはTnaA H463F突然変異体を発現する改変酵母株とによって醸造されたビールにおける、3-メルカプトヘキサン-1-オール(3MH(ng/L))の濃度を示す。図4Bは、野生型酵母株と、TnaAまたはTnaA H463F突然変異体を発現する改変酵母株とによって醸造されたビールにおける、インドール(μg/L)の濃度を示す。左から右へ示される株:野生型California Ale Yeast(WLP001);野生型TnaAを過剰発現するWLP001(Y319;Trpase WT);およびTnaA H463F突然変異体を過剰発現するWLP001(Y502;Trpase H463F)。各株について、右カラムは、発酵プロセスの始まりにて加えられたGlut-3MHを含有する発酵物において産生されたインドールを示す;左カラムは、発酵プロセスへ加えられるGlut-3MHの不在下で産生された3MHを示す。
【0024】
図5図5は、指し示されたアミノ酸突然変異を含有するTnaAを発現する酵母株を使用して醸造されたビールにおける、3-メルカプトヘキサン-1-オール(3MH)およびインドールの濃度を示す。左軸は3MH濃度(ng/L)を示し、右軸はインドール濃度(μg/L)を報告する。左から右へ示される株:野生型California Ale Yeast(WLP001);野生型TnaAを過剰発現するWLP001(Trpase WT);TnaA H463F突然変異体を過剰発現するWLP001(Trpase H463F);野生型TnaA H463R突然変異体を過剰発現するWLP001(Trpase H463R);TnaA H463E突然変異体を過剰発現するWLP001(Trpase H463E);野生型TnaA H463T突然変異体を過剰発現するWLP001(Trpase H463T);野生型TnaA H463G突然変異体を過剰発現するWLP001(Trpase H463G);野生型TnaA H463I突然変異体を過剰発現するWLP001(Trpase H463I);および野生型TnaA H463V突然変異体を過剰発現するWLP001(Trpase H463V)。
【0025】
図6図6は、Citrobacter amalonaticusからのトリプトファナーゼTnaAおよび他の種からの相同の酵素を発現する酵母株を使用して醸造されたビールにおける、3-メルカプトヘキサン-1-オール(3MH)およびインドールの濃度を示す。左軸は3MH濃度(ng/L)を示し、右軸はインドール濃度(μg/L)を報告する。左から右へ示される株:野生型California Ale Yeast(WLP001);C.amalonaticusからの野生型(WT)TnaAを過剰発現するWLP001(Y319;Trpase WT);C.amalonaticusからのTnaA Trpase H463F突然変異体を過剰発現するWLP001(Y502;Trpase H463F);Trichoderma asperellumからのTnaA/Trpaseホモログを過剰発現するWLP001(Y644;T.aspホモログ);Aspergillus saccharolyticusからのTnaA/Trpaseホモログを過剰発現するWLP001(Y645;A.sacホモログ);およびZooshikella ganghwensisからのTnaA/Trpaseホモログを過剰発現するWLP001(Y646;Z.gangホモログ)。
【発明を実施するための形態】
【0026】
詳細な記載
この10年以内、熱帯産果実のフレーバーは、飲料市場において益々人気を博すようになっている。例えば、ビール産業およびワイン産業には、マンゴー、パパイヤ、およびパイナップルなどのフレーバーノートをもつ飲料への需要があり、それも近年劇的に増加している。発酵飲料において熱帯産のノートを付与する3つのフレーバー分子は、揮発性チオールである、3-メルカプトヘキサン-1-オール(3MH)、3-メルカプト酢酸ヘキシル(3MHA)、および4-メチル-4-メルカプトペンタン-2-オン(4MMP)である。これらのチオールは、発酵プロセスの最中、無臭の前駆体(例として、植物由来の前駆体)を変換してフレーバー活性のある(flavor active)揮発性チオールにする、酵母に発現された酵素によって産生される。幾つかの試みが、高レベルのこれらチオールを放出する酵母株を同定するために、ならびに増大したチオール産生のための酵母株を改変するためになされたが、しかしながら、揮発性物質産生の増大が状況に依存して中程度であるか(moderate,context dependent)、またはインドールなどの望ましくない産物(例として、オフフレーバー(off-flavors))の同時放出によって損なわれるところ、これらの試みはわずかな成功にとどまっている。本開示は、かかるチオールを増加し、かつ望ましくない産物の産生を低減するよう修飾された、遺伝子学的に修飾された酵母細胞を提供する。
【0027】
本明細書に提供されるのは、ベータ-リアーゼ活性を有する酵素を発現するよう改変された、遺伝子学的に修飾された酵母細胞である。いくつかの態様において、ベータ-リアーゼ活性を有する酵素は、所望される揮発性チオールの産生を増大し、かつ望ましくないインドールの産生を低減するよう修飾されている。本明細書に提供されるのにはまた、発酵プロセスの最中に、遺伝子学的に修飾された酵母細胞を、少なくとも1つの発酵性糖を含む糖源を含む培地と接触させることを伴う、発酵飲料を産生する方法もある。本明細書に提供されるのにはまた、発酵プロセスの最中に、遺伝子学的に修飾された酵母細胞を、少なくとも1つの発酵性糖を含む糖源を含む培地と接触させることを伴う、エタノールを産生する方法もある。
【0028】
ベータ-リアーゼ(β-リアーゼ)
本明細書に記載の遺伝子学的に修飾された細胞は、ベータ-リアーゼ活性をもつ酵素をコードする異種遺伝子を含有する。用語「異種遺伝子」は、本明細書に使用されるとき、遺伝的指令を含有する核酸(例として、DNA)の配列に対応する遺伝性単位(hereditary unit)を指し、これが、前記遺伝子を天然にはコードしない宿主生物(例として、遺伝子学的に修飾された細胞)中へ導入されて同生物によって発現される。
【0029】
ベータ-リアーゼ酵素はチオールの産生に関与し、チオールは、アルコールおよびフェニルに関するが、チオール基またはスルファニル基(「-SH」)を含有する。チオールは、様々な芳香または匂いのいずれも有することがあり、一般に、嫌な(negative)匂いを有するチオールと良い(positive)匂いを有するチオールとに分類される。ある硫黄含有化合物(腐った卵のような匂いを提供するものなど)は、酵母発酵によるH2Sの形成の結果である。調理された野菜、タマネギ、およびキャベツなどの、他の2次的な還元臭はまた、チオ酢酸エステルおよびメルカプタンなどの硫黄含有化合物からも産生されるが、これらは発酵産物中の低すぎる酸化還元電位に起因すると思われる(Brajkovich et al.,2005)。
【0030】
産物へプラスに(positively)寄与する硫黄含有化合物は、独特の芳香プロファイルを有する傾向にある「揮発性チオール」と称される。例えば、周知の芳香を担う揮発性チオールは、以下:グレープフルーツ、パッションフルーツ、セイヨウスグリ、およびグアバの芳香を伝える、3-メルカプトヘキサン-1-オール(3MH)(C6H14OS、また3-メルカプト-1-ヘキサノール、3-メルカプトヘキサノール、3-スルファニルヘキサン-1-オール、3-チオヘキサノール、1-ヘキサノール、3-メルカプト-とも称される);パッションフルーツ、グレープフルーツ、黄楊、セイヨウスグリ、およびグアバの芳香を伝える、3-メルカプトヘキシルアセタート(3MHA)(C8H16O2S、また3-スルファニル酢酸ヘキシルとも称される);ならびに黄楊、パッションフルーツ、エニシダ、およびクロフサスグリの芳香を伝える、4-メチル-4-メルカプトペンタン-2-オン(4MMP)(C6H12OS、また4-メルカプト-4-メチル-2-ペンタノンとも称される)を包含する。
【0031】
いずれの具体的な理論にも拘束されることは望まないが、芳香族前駆体の形成は、芳香族化合物を放出するアルコール発酵の最中、不飽和脂肪酸の酵素的酸化、代謝プロセシング、アルデヒドへのシステイニル化(cysteinylated)抱合またはグルタチオン化抱合、およびベータ-リアーゼ切断というステップを伴うと思われる。このプロセスは、発酵性生物によって、培地(例として、麦芽汁、果醪等々)中の糖源の無臭の前駆体分子(例として、植物由来の前駆体)を変換して活性チオールにするものであって、「生物学的転換(biotransformation)」と称される。例として、Swiegers et al.Yeast(2007)24:561-574;Santiago et al.FEMS Yeast Res.(2015)15;Holt et al.Appl.Environ.Microbiol.(2011)77:3626-3632;Thibon et al.FEMS Yeast Res.(2008)8:1076-1086;Kishimoto et al.J.Am.Soc.Brewing Chemists(2008)66:192-196を見よ。3MHおよび4MMPは夫々、発酵の最中、システイン抱合前駆体分子Cys-3MHおよびCys-4MMPの生物学的転換によって産生される。例として、Roland et al.Flavour and Fragrance Journal(2016)69:1323を見よ。生物学的転換は、ベータ-リアーゼ活性をもつ酵素を発現する生物によって触媒されるが、前記活性は、システイン抱合体を切断することで揮発性チオールを放出する。例として、Santiago et al.FEMS Yeast Res.(2015)15;Roncoroni et al.Food Microbiol.(2011)926-935;Roland et al.Chem. Rev.(2011)111:7355-7376を見よ。3MHは、続いて、アシル-トランスフェラーゼ酵素を発現する酵母によってアセチル化されて3MHAが産生され得る。例として、Roland et al.Chem.Rev.(2011)111:7355-7376を見よ。
【0032】
発酵の最中、Cys3-MHおよびCys-4MMPは、培地から酵母細胞中へ輸送されて、ベータ-リアーゼ活性を有する酵素によって切断され得る。代替的に、麦芽汁とブドウ果汁またはブドウ果醪とを醸造することもまた、グルタチオン抱合体であるGlut-3MHおよびGlut-4MMPを含有し得る。例として、Roland et al.Chem.Rev.(2011)111:7355-7376;Kishimoto et al.J.Am.Soc.Brewing Chemists(2008)66:192-196を見よ。グルタチオン抱合体は、酵母細胞中へ輸送され、トランスペプチダーゼ酵素によって切断されて、Cys-3MHおよびCys-4MMPが産生され得、次いでベータ-リアーゼ活性をもつ酵素のための基質になる。例として、Howell et al.Appl.Environ.Microbiol(2005)71:5420-5426;Santiago et al.FEMS Yeast Res.(2015)15を見よ。次いで3MHおよび4MMPは、ベータ-リアーゼ活性を有する酵素によるシステイン抱合体の切断によって生成される。幾つかの研究は、この反応は非常に非効率的であること、およびワイン醸造業者の一般的に使用される酵母の株はブドウ果醪発酵の最中、利用可能なシステイン抱合前駆体のうち0.2%~2.0%しかフレーバー活性のあるチオールに変換しないことを指し示した6,7,21。この非効率性は、発酵飲料における有益な揮発性チオール(例として、3MH、3MHA、4MMP)の産生を限定する著しい生化学的ボトルネックを表す。
【0033】
揮発性チオールの産生における非効率性に加えて、ベータ-リアーゼの発現はまた、インドールなどの望ましくない分子の増大した産生ももたらすことがある。インドールは、式C8H7Nをもつ芳香族複素環式有機化合物から形成され、5員ピロール環へ縮合された6員ベンゼン環からなる二環式構造を有する。インドールは環境中、幅広く分布しており、天然にはヒト糞便に存在し、強烈な排泄物臭を有する。結果的に、飲食を意図した発酵性産物の産生の最中にインドールを産生することは、望ましくない。
【0034】
様々な酵素がベータ-リアーゼ活性を呈し、例えば、ベータ-リアーゼおよびトリプトファナーゼ(TnaA)である。いくつかの態様において、ベータ-リアーゼ活性をもつ酵素をコードする異種遺伝子は、野生型ベータ-リアーゼ遺伝子(例として、生物から単離された遺伝子)である。いくつかの態様において、ベータ-リアーゼ活性をもつ酵素をコードする異種遺伝子は、突然変異ベータ-リアーゼ遺伝子であって、ベータ-リアーゼ遺伝子の核酸配列中、および/またはベータ-リアーゼ活性を有する酵素のアミノ酸配列中、1以上の突然変異(例として、置換、欠失、挿入)を含有する。当業者によって理解されるとおり、核酸配列における突然変異は、野生型酵素または参照酵素と比べて、翻訳されたポリペプチドのアミノ酸配列を変化させてもよく(例として、置換変異)、または翻訳されたポリペプチドのアミノ酸配列を変化させなくてもよい(例として、サイレント突然変異)。
【0035】
いくつかの態様において、ベータ-リアーゼ活性をもつ酵素をコードする異種遺伝子は、切断型(truncation)であるが、これは野生型酵素または参照酵素と比べて、好ましくは酵素のN末端またはC末端にて、1以上のアミノ酸が欠損している。
【0036】
いくつかの態様において、ベータ-リアーゼはまた、シスタチオニンベータ-リアーゼ(E.C.4.4.1.13)とも称されてよい。いくつかの態様において、ベータ-リアーゼ遺伝子は、真菌からのものである。いくつかの態様において、ベータ-リアーゼ遺伝子は、内在性の酵母ベータ-リアーゼなど、Saccharomyces種からのものである。内在性の酵母ベータ-リアーゼの例は、限定せずに、遺伝子IRC7によってコードされるIrc7p(またYFR055Wとも称される)および遺伝子STR3によってコードされるStr3pを包含する。いくつかの態様において、ベータ-リアーゼは、S.cerevisiae酵母株VL3からのIRC7またはSTR3である。
【0037】
いくつかの態様において、ベータ-リアーゼ遺伝子は、細菌または真菌からのものである。いくつかの態様において、ベータ-リアーゼ遺伝子は、Escherichia coli(E.coli)からのものである。いくつかの態様において、ベータ-リアーゼ遺伝子は、Citrobacter種からのものである。いくつかの態様において、ベータ-リアーゼ遺伝子は、Citrobacter amalonaticusからのものである。
【0038】
例示のベータ-リアーゼは、Citrobacter amalonaticusからのTnaAであって、配列番号1として表されるアミノ酸配列によって提供される。コンセンサスモチーフ「MSAKKD」(配列番号8)はボールド体で示され、触媒残基、位置270番でのリシン(K270と称される)はボールド体および下線で示される。保存されたモチーフ「IDLLTDSGT」(配列番号9)はボールド体のイタリック体で示される。
【0039】
C.amalonaticusからの野生型TnaAのアミノ酸配列
【化1】
(配列番号1)
【0040】
いくつかの態様において、ベータ-リアーゼは、C.amalonaticusからのTnaA(配列番号1)のホモログである。ホモログまたは関連酵素は、本明細書に記載の方法などの当該技術分野において知られている方法を使用して同定されてもよい。いくつかの態様において、ベータ-リアーゼ遺伝子は、Zooshikella種からのものである。いくつかの態様において、ベータ-リアーゼ遺伝子は、Zooshikella ganghwensisからのものである。Z.ganghwensisからの野生型TnaAホモログのアミノ酸配列は、受託番号WP_094789495.1によって提供され、C.amalonaticusからのTnaA(配列番号1)と全長で82%の配列同一性を有する。
【0041】
いくつかの態様において、ベータ-リアーゼ遺伝子は、Aspergillus種からのものである。いくつかの態様において、ベータ-リアーゼ遺伝子は、Aspergillus saccharolyticus(例として、A.saccharolyticus株JOP 1030-1)からのものである。A.saccharolyticusからの野生型TnaAホモログのアミノ酸配列は、受託番号XP_025427068.1によって提供され、C.amalonaticusからのTnaA(配列番号1)と全長で44%の配列同一性を有する。
【0042】
いくつかの態様において、ベータ-リアーゼ遺伝子は、Aspergillus種からのものである。いくつかの態様において、ベータ-リアーゼ遺伝子は、Trichoderma asperellum(例として、T.asperellum株CBS 433.97)からのものである。
【0043】
T.asperellumからの野生型TnaAホモログのアミノ酸配列は、受託番号XP_024760083.1によって提供され、C.amalonaticusからのTnaA(配列番号1)と全長で38%の配列同一性を有する。T.asperellumからのベータ-リアーゼのアミノ酸配列(配列番号3)は、TnaA(配列番号1)のH463に対応する位置にてチロシン(Y)を含有する。
【0044】
MLPDCHLPETWRAKMVERIPSSTKDQRQEWICKADYNLFKLRSNEVRFDLGTDGGSGGMSDNQWSALMRGDSAATRSPSSYRLQEKVKELFGFTYTIPVHRGRAAKHALVQALLNEESIVPGNAFFDTTRANIESQKAIAIDCAIEGAFDIYYQHPFKGNVNLPELEKILQGSGSNVPMIMVSITCDKTGGQPVSMHNLREVKRLAKMFNVPVILDSARFAENAWFIQKNESEYSSQSIPDIVQEMYHHADGMVMSGKTDGLVNAGGFFATNNKDLFDRVGKYANLFCGLAGRDMEALTVGLGEVTQQEYLDDRIRQIHRFGMRLMAANVPIQQPIGGHAIVIDASLFLPLVPREEYVAKTLAVELYVEAGIRGAGMETVIGGGNPITGINRNRSNAKDFLYLAIPRQAYTNDQLSFVANALIQIFERRFTITRGLYVVHEDAILRYLTIQLKKADGKSIA(配列番号3)
【0045】
ベータ-リアーゼのアミノ酸は、修飾されて(例として、置換されて)、ベータ-リアーゼバリアントを産生してもよい。例えば、本明細書に記載のとおり、配列番号1のヒスチジン463(H463)と称される、位置463でのアミノ酸を突然変異させたら、所望される活性を有するベータ-リアーゼ酵素が産生された。いくつかの態様において、配列番号1の位置463(H463)でのヒスチジンに対応するアミノ酸は、ヒスチジン残基ではないアミノ酸(例として、いずれか他のアミノ酸)で置換されている。いくつかの態様において、配列番号1の位置463(H463)でのヒスチジンに対応するアミノ酸は、アラニン(A)、アルギニン(R)、リシン(K)、アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、セリン(S)、トレオニン(T)、アスパラギン(N)、グルタミン(G)、システイン(C)、グリシン(G)、プロリン(P)、バリン(V)、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、またはトリプトファン(W)から選択されるアミノ酸で置換されている。
【0046】
いくつかの態様において、配列番号1の位置463(H463)でのヒスチジンに対応するアミノ酸は、疎水性アミノ酸(例として、アラニン(A)、バリン(V)、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W))で置換されている。いくつかの態様において、配列番号1の位置463(H463)でのヒスチジンに対応するアミノ酸は、フェニルアラニン(F)、アルギニン(R)、グルタミン酸(E)、トレオニン(T)、グリシン(G)、イソロイシン(I)、またはバリン(V)で置換されている。いくつかの態様において、配列番号1の位置463(H463)でのヒスチジンに対応するアミノ酸は、フェニルアラニン(F)残基(H463F)で置換されており、配列番号2によって提供される。いくつかの態様において、配列番号1の位置463(H463)でのヒスチジンに対応するアミノ酸は、アルギニン(R)残基(H463R)で置換されている。いくつかの態様において、配列番号1の位置463(H463)でのヒスチジンに対応するアミノ酸は、グルタミン酸(E)残基(H463E)で置換されている。いくつかの態様において、配列番号1の位置463(H463)でのヒスチジンに対応するアミノ酸は、トレオニン(T)残基(H463T)で置換されている。いくつかの態様において、配列番号1の位置463(H463)でのヒスチジンに対応するアミノ酸は、グリシン(G)残基(H463G)で置換されている。いくつかの態様において、配列番号1の位置463(H463)でのヒスチジンに対応するアミノ酸は、イソロイシン(I)残基(H463I)で置換されている。いくつかの態様において、配列番号1の位置463(H463)でのヒスチジンに対応するアミノ酸は、バリン(V)残基(H463V)で置換されている。
【0047】
いくつかの態様において、配列番号1の位置463(H463)でのヒスチジンに対応するアミノ酸は、フェニルアラニン(F)残基(H463F)で置換されており、配列番号4によって提供される。いくつかの態様において、配列番号1の位置463(H463)でのヒスチジンに対応するアミノ酸は、フェニルアラニン(F)残基(H463F)で置換されており、配列番号5によって提供される。
【0048】
C.amalonaticusからのTnaAのアミノ酸配列-H463F置換変異(Y502)
MDNFKHLPEPFRIRVIEPVKRTTREHRNNAIIKSGMNPFLLDSEDVFIDLLTDSGTGAVTQNMQAAMLRGDEAYSGSRSYYALSEAVKNIFGYQYTIPTHQGRGAEQIYIPVLIKKREQEKGLDRSKMAVFSNYFFDTTQGHSQINGCAVRNVYIKEAFDTGVRYDFKGNFDLDGLERGIQEVGPNNVPYIVATITSNSAGGQPVSLANLKAMYNIAKKYDIPVVMDSARFAENAYFIQKREAEYRDWSIEEITRETYKYADMLAMSAKKDAMVPMGGLLCIKDDTYFDVYTECRTLCVVQEGFPTYGGLEGGAMERLAVGLVDGMNQDWLAYRIAQVQYLVDGLEAIGVTCQQAGGHAAFVDAGKLLPHIPAEQFPAQALACELYKVAGIRAVEIGSFLLGRDPKTGKQLPCPAELLRLTIPRATYTQSHMDFIIEAFEHVKENSMNIKGLTFTYEPKVLRFFTAKLKEV
(配列番号2)
【0049】
Z.ganghwensisからのTnaAホモログのアミノ酸配列は受託番号WP_094789495.1によって提供される-H463F置換変異
MNNFKHLPEPFRIRVVEPVKRTTLAYREKAILNAGMNPFLLDSKDVFIDLLTDSGTGAITQEMQAAMFIGDEAYSGSRSYYALADAVKDIFGYEYTIPTHQGRGAEQIYIPVLIKKREKEKGLDRTKMVALSNYFFDTTQGHTQLNACVAKNVFTKEAFDTSISADFKGNFDLELLEHAILEAGPQNVPYIVSTITCNSAGGQPVSIANLKAVYEIAQRYEIPVIMDSARFAENAYFIQQREPEYQDWSIEAITFESYKYADALAMSAKKDAMVQMGGLLCFKDKSMLDVYNECRTLCVVQEGFPTYGGLEGGAMERLAVGLYDGMRQDWLAYRINQVQYLVNGLESIGIVCQQAGGHAAFVDAGKLLPHIPADQFPAHALACELYKVAGIRAVEIGSLLLGRDPTTGKQHPCPAELLRLTIPRATYTQTHMDFIIEAFEKVKENASHVKGLTFTYEPEVLRFFTARLKEVEN(配列番号4)
【0050】
A.saccharolyticusからのTnaAホモログのアミノ酸配列は受託番号XP_025427068.1によって提供される-H463F置換変異
MPNTATPETWRVKTVEHIRPSTRDQRQQWIEEAGFNLFTLPSDRVFIDLLTDSGTGAMSDRQWAAIMSGDESYAGSTSFHALHEVVQDLFGLEYLLPVHQGRAAENALFSVLVHEDQLVPANSHFDTTRAHIEFRKAAAVDCLSSGAYDVTDTNPFKGNMNLDMLRDILQESHARVPFILLTITCNTTGGQPVSLANIAAVKALADRYHKPLVVDAARFAENAWFIQQREPGYRDTSLRDITRQMLGMADAMVMSAKKDGLVNIGGFLATRHREWFDQATEYVILFEGFRTYGGLAGRDLAALAVGLEEVISADYLASRIGQVQRFGQRLIDAGVPIQQPVGGHAVLVDASRFLPEVPREEYVAQTLAVELYLEAGVRGVEIGTLLNGRDPESGEERFAETEWLRLAIPRRVYSNDHLEYVAQALIDLYHRRSEIRAGVRIVEEKPVLRFFTVRLERKTE(配列番号5)
【0051】
Z.ganghwensisからのTnaAホモログのアミノ酸配列は受託番号WP_094789495.1によって提供される-野生型配列
MNNFKHLPEPFRIRVVEPVKRTTLAYREKAILNAGMNPFLLDSKDVFIDLLTDSGTGAITQEMQAAMFIGDEAYSGSRSYYALADAVKDIFGYEYTIPTHQGRGAEQIYIPVLIKKREKEKGLDRTKMVALSNYFFDTTQGHTQLNACVAKNVFTKEAFDTSISADFKGNFDLELLEHAILEAGPQNVPYIVSTITCNSAGGQPVSIANLKAVYEIAQRYEIPVIMDSARFAENAYFIQQREPEYQDWSIEAITFESYKYADALAMSAKKDAMVQMGGLLCFKDKSMLDVYNECRTLCVVQEGFPTYGGLEGGAMERLAVGLYDGMRQDWLAYRINQVQYLVNGLESIGIVCQQAGGHAAFVDAGKLLPHIPADQFPAHALACELYKVAGIRAVEIGSLLLGRDPTTGKQHPCPAELLRLTIPRATYTQTHMDFIIEAFEKVKENASHVKGLTFTYEPEVLRHFTARLKEVEN(配列番号6)
【0052】
A.saccharolyticusからのTnaAホモログのアミノ酸配列は受託番号XP_025427068.1によって提供される-野生型配列
MPNTATPETWRVKTVEHIRPSTRDQRQQWIEEAGFNLFTLPSDRVFIDLLTDSGTGAMSDRQWAAIMSGDESYAGSTSFHALHEVVQDLFGLEYLLPVHQGRAAENALFSVLVHEDQLVPANSHFDTTRAHIEFRKAAAVDCLSSGAYDVTDTNPFKGNMNLDMLRDILQESHARVPFILLTITCNTTGGQPVSLANIAAVKALADRYHKPLVVDAARFAENAWFIQQREPGYRDTSLRDITRQMLGMADAMVMSAKKDGLVNIGGFLATRHREWFDQATEYVILFEGFRTYGGLAGRDLAALAVGLEEVISADYLASRIGQVQRFGQRLIDAGVPIQQPVGGHAVLVDASRFLPEVPREEYVAQTLAVELYLEAGVRGVEIGTLLNGRDPESGEERFAETEWLRLAIPRRVYSNDHLEYVAQALIDLYHRRSEIRAGVRIVEEKPVLRHFTVRLERKTE(配列番号7)
【0053】
いくつかの態様において、酵素は、配列番号1~7のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、配列番号1の位置463(H463)でのヒスチジンに対応するアミノ酸は、ヒスチジン残基ではないアミノ酸(例として、いずれか他のアミノ酸)で置換されている。いくつかの態様において、酵素は、配列番号1~7のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、配列番号1の位置463(H463)でのヒスチジンに対応するアミノ酸は、アラニン(A)、アルギニン(R)、リシン(K)、アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、セリン(S)、トレオニン(T)、アスパラギン(N)、グルタミン(G)、システイン(C)、グリシン(G)、プロリン(P)、バリン(V)、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、またはトリプトファン(W)から選択されるアミノ酸で置換されている。
【0054】
いくつかの態様において、酵素は、配列番号1~7のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、配列番号1の位置463(H463)でのヒスチジンに対応するアミノ酸は、疎水性アミノ酸(例として、アラニン(A)、バリン(V)、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W))で置換されている。いくつかの態様において、配列番号1の位置463(H463)でのヒスチジンに対応するアミノ酸は、フェニルアラニン(F)、アルギニン(R)、グルタミン酸(E)、トレオニン(T)、グリシン(G)、イソロイシン(I)、またはバリン(V)で置換されている。
【0055】
いくつかの態様において、異種遺伝子は、ベータ-リアーゼ活性をもつ酵素を発現する細胞が、異種遺伝子を発現しない細胞と比較して、増大したレベルの揮発性チオールを産生することが可能であるように、ベータ-リアーゼ活性をもつ酵素をコードする。いくつかの態様において、異種遺伝子は、ベータ-リアーゼ活性をもつ酵素を発現する細胞が、野生型ベータ-リアーゼ活性をもつ酵素を発現する細胞と比較して、増大したレベルの揮発性チオールを産生することが可能であるように、ベータ-リアーゼ活性をもつ酵素をコードする。いくつかの態様において、増大したレベルの揮発性チオールを産生することが可能である、ベータ-リアーゼ活性をもつ酵素は、配列番号1の位置463(H463)でのヒスチジンに対応する位置にてアミノ酸の置換を含有する。いくつかの態様において、増大したレベルの揮発性チオールを産生することが可能である、ベータ-リアーゼ活性をもつ酵素は、配列番号2~5のいずれか1つによって提供される配列を有する。
【0056】
いくつかの態様において、突然変異ベータ-リアーゼは、増大した力価/レベルの揮発性チオールを産生する。いくつかの態様において、突然変異ベータ-リアーゼは、増大した力価/レベルの3MHを産生する。いくつかの態様において、突然変異ベータ-リアーゼは、増大した力価/レベルの3MHAを産生する。いくつかの態様において、突然変異ベータ-リアーゼは、増大した力価/レベルの4MMPを産生する。いくつかの態様において、突然変異ベータ-リアーゼは、増大した力価/レベルの1以上の揮発性チオール、例として、3MH、3MHA、および/または4MMPを産生する。
【0057】
いくつかの態様において、異種遺伝子は、ベータ-リアーゼ活性と減少したトリプトファナーゼ活性とをもつ酵素をコードする。いくつかの態様において、異種遺伝子は、ベータ-リアーゼ活性をもつ酵素が、野生型ベータ-リアーゼ活性をもちまた減少したトリプトファナーゼ活性も有する酵素と比較して、増大した濃度の揮発性チオールを産生するように、ベータ-リアーゼ活性をもつ酵素をコードする。
【0058】
いくつかの態様において、ベータ-リアーゼ活性をもつ酵素は、配列番号1~7のいずれか1つで表されるとおりの配列と、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、または99.9%の配列同一性をもつアミノ酸配列を有する。いくつかの態様において、ベータ-リアーゼ活性をもつ酵素は、配列番号1~7のいずれか1つで表されるとおりの配列と、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、または99.9%の配列同一性をもつアミノ酸配列を有し、配列番号1の位置463(H463)でのヒスチジンに対応するアミノ酸は、ヒスチジン残基ではないアミノ酸(例として、いずれか他のアミノ酸)で置換されている。いくつかの態様において、ベータ-リアーゼ活性をもつ酵素は、配列番号1~7のいずれか1つで表されるとおりの配列と、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、または99.9%の配列同一性をもつアミノ酸配列を有し、配列番号1の位置463(H463)でのヒスチジンに対応するアミノ酸はアラニン(A)、アルギニン(R)、リシン(K)、アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、セリン(S)、トレオニン(T)、アスパラギン(N)、グルタミン(G)、システイン(C)、グリシン(G)、プロリン(P)、バリン(V)、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、またはトリプトファン(W)から選択されるアミノ酸で置換されている。
【0059】
用語「パーセント同一性」、「配列同一性」、「%同一性」、「%配列同一性」、および「%同一の」は、本明細書中互換的に使用されてもよいが、2つの配列(例として、核酸またはアミノ酸)同士間の類似性の定量的な測定値(measurement)を指す。パーセント同一性は、Karlin and Altschul,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-77,1993にあるように改変された、Karlin and Altschul,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264-68,1990のアルゴリズムを使用して決定され得る。かかるアルゴリズムは、Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403-10,1990のNBLASTおよびXBLASTのプログラム(version 2.0)中へ組み込まれている。BLASTタンパク質サーチは、XBLASTプログラム、score=50、word length=3で実施されることで、関心のあるタンパク質分子と相同のアミノ酸配列が得られ得る。ギャップが2つの配列同士間に存在する場合、Gapped BLASTが、Altschul et al.,Nucleic Acids Res.25(17):3389-3402,1997に記載されるとおりに利用され得る。BLASTおよびGapped BLASTのプログラムを利用するとき、夫々のプログラム(例として、XBLASTおよびNBLAST)の初期設定パラメータが使用され得る。
【0060】
パーセント同一性またはその範囲(例として、少なくとも、より多い、等々)が規定されているとき、別様に特定されない限り、エンドポイントも包含されるものとし、範囲(例として、少なくとも70%の同一性)は、引用された範囲内のすべての範囲(例として、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも95.5%、少なくとも96%、少なくとも96.5%、少なくとも97%、少なくとも97.5%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、または少なくとも99.9%の同一性)およびそれらすべての増分(increments)(例として、パーセントの10分の1(すなわち、0.1%)、パーセントの100分の1(すなわち、0.01%)等々)を包含するものとする。
【0061】
いくつかの態様において、ベータ-リアーゼ活性をもつ酵素は、アミノ酸配列番号2で表されるとおりの配列を含む。いくつかの態様において、ベータ-リアーゼ活性をもつ酵素は、アミノ酸配列番号2で表されるとおりの配列からなる。いくつかの態様において、ベータ-リアーゼ活性をもつ酵素は、アミノ酸配列番号3で表されるとおりの配列を含む。いくつかの態様において、ベータ-リアーゼ活性をもつ酵素は、アミノ酸配列番号で表されるとおりの配列3からなる。いくつかの態様において、ベータ-リアーゼ活性をもつ酵素は、アミノ酸配列番号4で表されるとおりの配列を含む。いくつかの態様において、ベータ-リアーゼ活性をもつ酵素は、アミノ酸配列番号4で表されるとおりの配列からなる。いくつかの態様において、ベータ-リアーゼ活性をもつ酵素は、アミノ酸配列番号5で表されるとおりの配列を含む。いくつかの態様において、ベータ-リアーゼ活性をもつ酵素は、アミノ酸配列番号5で表されるとおりの配列からなる。
【0062】
いくつかの態様において、ベータ-リアーゼ活性をもつ酵素をコードする遺伝子は、配列番号2~5のいずれか1つで表されるとおりの配列と、少なくとも80%(例として、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも95.5%、少なくとも96%、少なくとも96.5%、少なくとも97%、少なくとも97.5%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、または少なくとも99.9%)の配列同一性をもつアミノ酸配列を含む酵素をコードする核酸配列を含む。いくつかの態様において、ベータ-リアーゼ活性をもつ酵素をコードする遺伝子は、アミノ酸配列番号2で表されるとおりの配列を含む酵素をコードする核酸配列を含む。いくつかの態様において、ベータ-リアーゼ活性をもつ酵素をコードする遺伝子は、配列番号2~5のいずれか1つで表されるとおりのアミノ酸配列からなる酵素をコードする核酸配列を含む。
【0063】
ベータ-リアーゼ活性を有するか、またはベータ-リアーゼ活性を有することが予測される追加の酵素の同定は、例えば、配列番号1~7のいずれか1つによって提供されるベータ-リアーゼなどのベータ-リアーゼの1以上のドメインとの類似性または相同性に基づき、実施されてもよい。いくつかの態様において、本明細書に記載の修飾された細胞および方法における使用のための酵素は、ベータ-リアーゼ活性に関連する触媒ドメインなどの、触媒ドメインなどの活性ドメインとの類似性または相同性に基づき、同定されてもよい。いくつかの態様において、本明細書に記載の修飾された細胞および方法における使用のための酵素は、酵素の大部分または酵素の完全長にわたる分析に基づき、参照ベータ-リアーゼ(例として、配列番号1などの野生型ベータ-リアーゼ)と相対的に高いレベルの配列同一性を有していてもよいが、触媒ドメインの領域においては、参照ベータ-リアーゼと相対的に低いレベルの配列同一性を有する。いくつかの態様において、本明細書に記載の修飾された細胞および方法における使用のための酵素は、参照ベータ-リアーゼ(例として、配列番号1)と比べ、酵素の触媒ドメインの領域において少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも95.5%、少なくとも96%、少なくとも96.5%、少なくとも97%、少なくとも97.5%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、または少なくとも99.9%の配列同一性を有する。
【0064】
いくつかの態様において、本明細書に記載の修飾された細胞および方法における使用のための酵素は、酵素の大部分または酵素の完全長にわたる分析に基づき、参照ベータ-リアーゼ(例として、配列番号1、3、6または7)と比べ、
酵素の触媒ドメインの領域において相対的に高いレベルの配列同一性を、および参照ベータ-リアーゼに対し相対的に低いレベルの配列同一性を有する。いくつかの態様において、本明細書に記載の修飾された細胞および方法における使用のための酵素は、酵素の大部分または酵素の完全長にわたる分析に基づき、参照ベータ-リアーゼ(例として、配列番号1、3、6または7)と比べて、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも95.5%、少なくとも96%、少なくとも96.5%、少なくとも97%、少なくとも97.5%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、または少なくとも99.9%の配列同一性を有する。
【0065】
いくつかの態様において、アミノ酸置換(単数または複数)は、活性部位にあってもよい。本明細書に使用されるとき、用語「活性部位」は、基質が相互作用する酵素の領域を指す。活性部位を含むアミノ酸および活性部位を取り囲むアミノ酸は、アミノ酸各々の官能基も含め、サイズ、形状、および/または基質の活性部位への近づきやすさに寄与することもある。いくつかの態様において、ベータ-リアーゼバリアントは、選択されたアミノ酸の、異なる官能基を有するアミノ酸との置換である、1以上の修飾を含有する。
【0066】
この情報はまた、ベータ-リアーゼ活性を有するかまたはこれを有することが予測される他の酵素において、位置、例として、対応する位置を同定するためにも使用され得る。当業者には明白なとおり、あるベータ-リアーゼ酵素において同定された位置でのアミノ酸置換はまた、別のベータ-リアーゼ酵素の対応するアミノ酸の位置においてもなされ得る。かかる場合において、ベータ-リアーゼ酵素の1つは、参照酵素として使用されてもよい。例えば、本明細書に記載のとおり、Citrobacter amalonaticusからのTnaAの位置H463でのアミノ酸置換は、揮発性チオールの産生を増大させ、かつインドールの産生を低減させることが示されている。同様のアミノ酸置換は、TnaAを参照(例として、配列番号1)として使用し、他のベータ-リアーゼ活性を有する酵素の対応する位置にてなされ得る。例えば、アミノ酸置換は、TnaAを参照(例として、配列番号1)として使用し、本明細書に記載のとおりのZ.ganghwensisまたはA.saccharolyticusからのベータ-リアーゼの対応する位置にてなされ得る。いくつかの態様において、C.amalonaticusからのTnaA(配列番号1)の位置H463に対応する位置での、別の酵素(例として、T.asperellumからのベータ-リアーゼ)におけるアミノ酸は、ヒスチジンでない。例として、配列番号3を見よ。
【0067】
これもまた当業者にとって明白なとおり、ベータ-リアーゼ中の選択された残基のアミノ酸位置番号は、別のベータ-リアーゼ酵素(例として、参照酵素)中の異なるアミノ酸の位置番号を有していてもよい。一般に、当該技術分野において知られている方法を使用し、例えば、2以上の酵素のアミノ酸配列をアラインさせること(aligning)によって、他のベータ-リアーゼ酵素中の対応する位置を同定してもよい。アミノ酸(またはヌクレオチド)配列をアラインさせるためのソフトウェアプログラムおよびアルゴリズムは、当該技術分野において知られており、容易に利用可能である(例として、Clustal Omega(Sievers et al.2011))。
【0068】
本明細書に記載のベータ-リアーゼバリアントは、例えば、その所望される生理学的活性とは関連しないポリペプチドの特色を特異的に変更する、1以上の追加の修飾をさらに含有していてもよい。代替的にまたは加えて、本明細書に記載のベータ-リアーゼバリアントは、細胞中の酵素の発現を調整する1以上の追加の突然変異を含有していてもよい。
【0069】
ベータ-リアーゼをコードする核酸の突然変異は、好ましくは、コード配列のアミノ酸リーディングフレームを保存しており、好ましくは、ハイブリダイズしてヘアピンまたはループなどの2次構造(酵素の発現に有害であり得る)を形成しそうな領域を核酸中に創出しない。
【0070】
突然変異は、ポリペプチドをコードする核酸中、アミノ酸置換を選択することによって、または選択される部位のランダム変異誘発によってなされ得る。本明細書に記載のとおり、突然変異が、所望される特性をもつバリアントポリペプチドを提供するか決定するため、バリアントポリペプチドは発現されて1以上の活性について試験され得る。さらなる突然変異が、バリアントに対して(または非バリアントポリペプチドに対して)なされ得るが、前記さらなる突然変異は、ポリペプチドのアミノ酸配列に関してはサイレントであるが、具体的な宿主における翻訳にとって好ましいコドンを提供する(コドン最適化と称される)。核酸(例として、S.cerevisiaeにおける核酸)の翻訳にとって好ましいコドンは、当業者に周知である。さらに他の突然変異も、遺伝子クローンまたはcDNAクローンの非コード配列になされて、ポリペプチドの発現が増強され得る。ベータ-リアーゼバリアントの活性は、ベータ-リアーゼバリアントをコードする遺伝子を発現ベクター中へクローニングすること、ベクターを適切な宿主細胞中へ導入すること、ベータ-リアーゼバリアントを発現すること、および本明細書に開示のとおりのベータ-リアーゼの機能的能力(functional capability)について試験することによって、試験され得る。
【0071】
本明細書に記載のベータ-リアーゼバリアントは、参照ベータ-リアーゼに対応する1以上の位置のアミノ酸置換を含有する。いくつかの態様において、ベータ-リアーゼバリアントは、参照ベータ-リアーゼに対応する1、2、3、4、5またはより多くの位置にてアミノ酸置換を含有する。いくつかの態様において、ベータ-リアーゼは、天然には存在しないベータ-リアーゼであり、例として、遺伝子学的に修飾されている。いくつかの態様において、ベータ-リアーゼは、配列番号1によって提供されるアミノ酸配列を有さない。いくつかの態様において、ベータ-リアーゼは、配列番号3によって提供されるアミノ酸配列を有さない。いくつかの態様において、ベータ-リアーゼは、配列番号6によって提供されるアミノ酸配列を有さない。いくつかの態様において、ベータ-リアーゼは、配列番号7によって提供されるアミノ酸配列を有さない。
【0072】
いくつかの態様において、ベータ-リアーゼバリアントはまた、ベータ-リアーゼ酵素の活性および/または構造に実質的に影響を及ぼさない1以上のアミノ酸置換も含有していてもよい。当業者はまた、保存アミノ酸置換が、ベータ-リアーゼバリアントになされることで、上記ポリペプチドの機能的に等価なバリアントを提供してもよいこと、すなわち、バリアントがそのポリペプチドの機能的能力を保持していることも、認識しているであろう。本明細書に使用されるとき、「保存アミノ酸置換」は、アミノ酸置換がなされるタンパク質の相対的な電荷またはサイズといった特徴を変更しないアミノ酸置換を指す。バリアントは、当業者に知られているポリペプチド配列を変更するための方法に従って調製され得、前記方法は、たとえば、かかる方法を集めた参考文献、例として、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,J.Sambrook,et al.,eds.,Fourth Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York,2012、またはCurrent Protocols in Molecular Biology,F.M.Ausubel,et al.,eds.,John Wiley & Sons,Inc.,New Yorkに見出される。ポリペプチドの例示の機能的に等価なバリアントは、本明細書に開示のタンパク質のアミノ酸配列における保存アミノ酸置換を包含する。アミノ酸の保存的置換は、以下の群:(a)M、I、L、V;(b)F、Y、W;(c)K、R、H;(d)A、G;(e)S、T;(f)Q、N;および(g)E、D内にあるアミノ酸の中からなされる置換を包含する。
【0073】
当業者が分かっているとおり、ベータ-リアーゼを有する酵素をコードする相同の遺伝子は、他の種から得られたものであり得、相同性サーチによって、例えば、国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)インターネットサイト(ncbi.nlm.nih.gov)にて利用可能なタンパク質BLASTサーチを通して、同定され得る。酵素のアミノ酸配列を1以上の参照酵素とともにアラインすることによって、および/または同様のもしくは相同の酵素の2次構造または3次構造を1以上の参照ベータ-リアーゼと比較することによって、同様のまたは相同の酵素において、対応するアミノ酸残基を決定し得、かつ同様のまたは相同の酵素において、突然変異のためのアミノ酸残基を決定し得る。
【0074】
本開示に関連する遺伝子は、所定の遺伝子を含有するDNAのいずれの供給源からのDNAからも(例として、PCR増幅によって)得られ得る。いくつかの態様において、本発明に関連する遺伝子は、合成されたもの、例として、化学合成によってin vitroで産生されたものである。本明細書に記載の酵素をコードする遺伝子を得るいずれの手段も、本明細書に記載の修飾された細胞および方法に適合する。
【0075】
本明細書に提供される本開示は、ベータ-リアーゼ活性を有する酵素、上記の酵素の機能的修飾およびバリアントをコードする遺伝子の組換え発現、ならびにこれに関する使用を伴う。本発明に関連する核酸のホモログおよびアレルは、従来の技法によって同定され得る。本発明によって網羅されるものにはまた、ストリンジェントな条件下で本明細書に記載の核酸とハイブリダイズする核酸もある。用語「ストリンジェントな条件」は、本明細書に使用されるとき、当該技術分野において熟知されているパラメータを指す。核酸ハイブリダイゼーションのパラメータは、かかる方法を集めた参考文献、例として、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,J.Sambrook,et al.,eds.,Fourth Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York,2012、またはCurrent Protocols in Molecular Biology,F.M.Ausubel,et al.,eds.,John Wiley & Sons,Inc.,New Yorkに見出されることもある。
【0076】
他の条件、試薬など諸々使用され得るが、これらは同様のストリンジェンシー度をもたらす。当業者は、かかる条件を熟知しており、よってここではそれらを与えない。しかしながら、当業者が、本発明の核酸のホモログおよびアレルの明確な同定を可能にするやり方で(例として、より低いストリンジェンシー条件を使用することによって)、それら条件を操ることができるであろうことも理解されている。当業者はまた、かかる分子の発現について細胞およびライブラリをスクリーニングし、次いでこれを定型的に単離し、続いて該当する核酸分子の単離および配列決定をするための方法論も熟知している。
【0077】
本発明はまた、縮重した核酸も包含し、これはネイティブな材料に存在するコドンに代わるコドンを包含する。例えば、セリン残基は、コドンTCA、AGT、TCC、TCG、TCT、およびAGCによってコードされる。6コドンの各々は、セリン残基をコードするという目的上は等価である。よって、セリンをコードするヌクレオチドトリプレットのいずれも、in vitroまたはin vivoでセリン残基を伸長しているポリペプチド中へ組み込むタンパク質合成装置に向けるために採用されてもよいことは、当業者に明らかであろう。同様に、他のアミノ酸残基をコードするヌクレオチド配列トリプレットは、これらに限定されないが、以下:CCA、CCC、CCG、およびCCT(プロリンコドン);CGA、CGC、CGG、CGT、AGA、およびAGG(アルギニンコドン);ACA、ACC、ACG、およびACT(トレオニンコドン);AACおよびAAT(アスパラギンコドン);ならびにATA、ATC、およびATT(イソロイシンコドン)を包含する。他のアミノ酸残基も、複数のヌクレオチド配列によって同様にコードされていてもよい。よって、本発明は、遺伝暗号の縮重に起因したコドン配列の点で生物学的に単離された核酸とは異なる縮重した核酸を内包する。本発明はまた、宿主細胞の最適なコドン利用に合うコドン最適化も内包する。
【0078】
本発明はまた、1以上のヌクレオチドの付加、置換、および欠失を包含する修飾された核酸分子も提供する。好ましい態様において、これらの修飾された核酸分子、および/またはこれらがコードするポリペプチドは、修飾されていない核酸分子および/またはポリペプチドの少なくとも1つの活性あるいは機能(酵素活性など)を保持する。ある態様において、修飾された核酸分子は、修飾されたポリペプチド、好ましくは、本明細書のどこかに記載されたとおりの保存アミノ酸置換を有するポリペプチドをコードする。修飾された核酸分子および修飾されていない核酸分子が、当業者に知られているストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるように、修飾された核酸分子は、修飾されていない核酸分子と構造的に関係があり、好ましい態様において、修飾されていない核酸分子と充分に構造的に関係がある。
【0079】
例えば、単一のアミノ酸変化を有するポリペプチドをコードする修飾された核酸分子が、調製され得る。これら核酸分子の各々は、本明細書に記載のとおりの遺伝暗号の縮重に対応するヌクレオチド変化を除外して、1、2または3つのヌクレオチド置換を有し得る。同じく、2つのアミノ酸変化を有するポリペプチドをコードする修飾された核酸分子(例として、2~6ヌクレオチド変化を有する)も、調製され得る。これらのような無数の修飾された核酸分子(例えば、2つおよび3つの、2つおよび4つの、2つおよび5つの、2つおよび6つなどのアミノ酸をコードするコドンにおけるヌクレオチドの置換を包含する)は、当業者によって容易に想定されるであろう。上記の例において、2つのアミノ酸の各組み合わせは、一連の修飾された核酸分子、ならびにアミノ酸置換をコードするすべてのヌクレオチド置換において包含される。追加の置換(すなわち、3以上)、付加、あるいは欠失(例として、停止コドンまたはスプライス部位(単数もしくは複数)の導入による)を有するポリペプチドをコードする追加の核酸分子もまた、調製され得、かつ当業者によって容易に想定されるとおり本発明によって内包される。上記の核酸またはポリペプチドのいずれも、本明細書に開示の核酸および/またはポリペプチドとの構造上の関係または活性の保持のための定型的な実験法について試験され得る。
【0080】
いくつかの態様において、本発明に関連する遺伝子の1以上は、組換え発現ベクターにおいて発現される。本明細書に使用されるとき、「ベクター」は、所望される配列(単数もしくは複数)が、異なる生成環境同士間の輸送のためかまたは宿主細胞における発現のために制限およびライゲーションによって挿入されてもよい数多の核酸のいずれであってもよい。ベクターは典型的には、DNAから構成されているが、RNAベクターもまた利用可能である。ベクターは、これらに限定されないが、以下:プラスミド、フォスミド、ファージミド、ウイルスゲノム、および人工染色体を包含する。
【0081】
クローニングベクターは、自律的に複製することができるか、または宿主細胞のゲノム中にインテグレートされるベクターである。プラスミドのケースにおいて、所望される配列の複製は、プラスミドが宿主細胞(宿主細菌など)内のコピー数の点で増加することから多数回、または宿主が有糸分裂によって再生する前に宿主につきたった1回、生じることもある。ファージのケースにおいて、複製は、溶菌相の最中は活発に、または溶原相の最中は受動的に生じることもある。
【0082】
発現ベクターは、所望されるDNA配列が制限およびライゲーションによって、調節配列へ動作可能に(operably)結び合わされるように挿入されてもよく、かつRNA転写産物として発現されてもよいベクターである。ベクターは、ベクターで形質転換もしくはトランスフェクトされているかまたはされていない細胞の同定における使用に好適な1以上のマーカー配列をさらに含有していてもよい。マーカーは、例えば、抗生物質もしくは他の化合物への耐性または感度のいずれかを増大あるいは減少させるタンパク質をコードする遺伝子、その活性が当該技術分野において知られている標準的なアッセイによって検出可能な酵素をコードする遺伝子(例として、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、もしくはアルカリホスファターゼ)、および形質転換もしくはトランスフェクトされた細胞、宿主、コロニー、またはプラークの表現型に目に見えて影響を及ぼす遺伝子(例として、緑色蛍光タンパク質)を包含する。好ましいベクターは、DNAセグメントに存在する構造遺伝子産物(これらは前記DNAセグメントへ動作可能に結び合わされている)の自律複製および発現が可能なベクターである。
【0083】
本明細書に使用されるとき、コード配列および調節配列は、それらがコード配列の発現または転写を調節配列の影響下または制御下に置くような形で共有結合的に連結されているとき、「動作可能に」結び合わされていると言える。コード配列が翻訳されて機能的タンパク質になることが所望される場合、2つのDNA配列は、5'調節配列中のプロモーターの誘導が、コード配列の転写をもたらす場合であって、かつ2つのDNA配列間の繋がりの性質が、(1)フレームシフト突然変異の導入をもたらさないか、(2)プロモーター領域の、コード配列の転写に向ける能力に干渉しないか、または(3)対応するRNA転写産物の、タンパク質に翻訳する能力に干渉しない場合に、動作可能に結び合わされていると言える。よって、プロモーター領域は、プロモーター領域がそのDNA配列の転写に作用することが可能であった場合、その結果得られる転写産物が翻訳されて所望されるタンパク質またはポリペプチドになり得るように、コード配列へ動作可能に結び合わされているであろう。
【0084】
クレームされる発明の酵素のいずれかをコードする核酸分子が細胞において発現されるとき、様々な転写制御配列(例として、プロモーター/エンハンサー配列)は、その発現へ向けるために使用され得る。プロモーターは、遺伝子の発現の正常な調節を提供する、ネイティブなプロモーター、すなわち、遺伝子の、それが内在するという文脈におけるプロモーターであり得る。いくつかの態様において、プロモーターは、構成的であり得る、すなわち、プロモーターは、その関連遺伝子(例として、ベータ-リアーゼ活性を有する酵素)の継続的な転写を可能にさせるよう調節されていない。分子の存在または不在によって制御されるプロモーターなどの、条件付きの様々なプロモーターもまた、使用され得る。
【0085】
遺伝子発現にとって必要とされる調節配列の正確な性質は、種間または細胞型間で変動してもよいが、一般に必要次第、転写および翻訳夫々の開始に関与する5'非転写配列および5'非翻訳配列、たとえば、TATAボックス、キャッピング配列、CAAT配列等を包含するものである。とりわけ、かかる5'非転写調節配列は、動作可能に結び合わされている遺伝子の転写制御のためのプロモーター配列を包含するプロモーター領域を包含するであろう。調節配列はまた、所望されるとおりのエンハンサー配列または上流のアクチベーター配列も包含することがある。本発明のベクターは、任意に、5'リーダー配列またはシグナル配列を包含していてもよい。適切なベクターの選択および設計は、当業者の能力および裁量の範囲内にある。
【0086】
発現にとってすべての必要な要素を含有する発現ベクターは、市販されており、当業者に知られている。例として、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Fourth Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,2012を見よ。細胞は、細胞中への異種DNA(RNA)の導入によって、遺伝子学的に改変されている。その異種DNA(RNA)は、転写要素の動作可能な制御下に置かれることで、宿主細胞における異種DNAの発現が可能になる。例えば、発酵飲料(ビールなど)を産生する方法における、ベータ-リアーゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子の、遺伝子学的に修飾された酵母細胞における異種発現は、S.cerevisiae株WLP001を使用する例において実証されている。当業者が解するとおり、本明細書に記載の酵素のいずれも、ワイン、蜂蜜酒、日本酒、林檎酒等々を産生するために使用される酵母株を包含する他の酵母細胞においてもまた発現され得る。
【0087】
クレームされる発明の酵素をコードする核酸分子は、当該技術分野において標準的な方法および技法を使用して細胞(単数または複数)中へ導入され得る。例えば、核酸分子は、化学的な形質転換および電気穿孔法、形質導入、微粒子銃等々を包含する形質転換などの標準的なプロトコルによって導入され得る。クレームされる発明の酵素をコードする核酸分子を発現することはまた、核酸分子をゲノム中へインテグレートすることによっても達成されることがある。
【0088】
異種遺伝子の組み込みは、新しい核酸の、酵母細胞のゲノム中への組み込み、または新しい核酸のエピソーム要素としての一過的なもしくは安定した維持のいずれかによって、達成され得る。真核細胞において、永続的な、遺伝する遺伝子変化は、一般に、細胞のゲノム中へのDNAの導入によって達成される。
【0089】
異種遺伝子はまた、コードされた遺伝子産物(例として、ベータ-リアーゼ活性を有する酵素)の発現に要される様々な転写要素も包含することがある。例えば、いくつかの態様において、異種遺伝子は、プロモーターを包含していてもよい。いくつかの態様において、プロモーターは、異種遺伝子の遺伝子へ動作可能に結び合わされていてもよい。いくつかの態様において、細胞は、誘導性プロモーターである。いくつかの態様において、プロモーターは、発酵プロセスの具体的なステージの最中に活性がある。いくつかの態様において、プロモーターは、構成的プロモーターである。酵母細胞における使用のための構成的プロモーターの例は、当該技術分野において知られており、当業者に明白である。いくつかの態様において、プロモーターは、酵母プロモーター、例として、異種遺伝子が発現される酵母細胞からのネイティブなプロモーターである。いくつかの例において、プロモーターは、PKG1プロモーター(pPGK1)またはHHF2プロモーター(pHHF2)である。
【0090】
遺伝子学的に修飾された酵母細胞
本開示の側面は、遺伝子学的に修飾された酵母細胞(修飾された細胞)と、発酵産物(例として、発酵飲料)を産生する方法およびエタノールを産生する方法における、かかる修飾された細胞の使用とに関する。本明細書に記載の遺伝子学的に修飾された酵母細胞は、ベータ-リアーゼ活性をもつ酵素をコードする異種遺伝子で遺伝子学的に修飾されている。
【0091】
用語「遺伝子学的に修飾された細胞」、「遺伝子学的に修飾された酵母細胞」、および「修飾された細胞」は、本明細書中互換的に使用されてもよいが、真核細胞(例として、異種遺伝子の導入によって修飾された状態にある酵母細胞か、または同導入によって間もなく修飾され得る酵母細胞)を指す。これらの用語(例として、修飾された細胞)は、異種遺伝子の導入によって遺伝子学的に修飾された元の細胞の子孫を包含する。単細胞の子孫が、突然変異(すなわち、修飾された細胞の核酸の天然の、偶然の、または意図的な変更)に起因して、元の親と、形態学の点で、またはゲノムのもしくは総核酸の相補体(genomic or total nucleic acid complement)の点で、必ずしも完全に同一でなくてもよいことは、当業者によって理解されるものである。
【0092】
本明細書に記載の方法における使用のための酵母細胞は、好ましくは、糖源(例として、発酵性糖)を発酵させて、エタノール(エチルアルコール)および二酸化炭素を産生することが可能である。いくつかの態様において、酵母細胞は、属Saccharomycesから成る。Saccharomyces属は大体500の別個の種を包含し、これらの多くは食糧産生において使用されている。一例となる種はSaccharomyces cerevisiae(S.cerevisiae)であって、これは一般的に「醸造者の酵母」または「パン職人の酵母」と称され、他の製品の中でもワイン、パン、ビールの産生に使用されている。Saccharomyces属の他のメンバーは、限定せずに、S.cerevisiaeと近縁である野生の酵母Saccharomyces paradoxus;Saccharomyces bayanus、Saccharomyces pastorianus、Saccharomyces carlsbergensis、Saccharomyces uvarum、Saccharomyces cerevisiae var boulardii、Saccharomyces eubayanusを包含する。いくつかの態様において、酵母は、Saccharomyces cerevisiae(S.cerevisiae)である。
【0093】
Saccharomyces種は、1倍体(すなわち、単一の染色体一式を有する)、2倍体(すなわち、対をなす染色体一式を有する)、または倍数体(すなわち、2より多くの相同の染色体一式を持つもしくは含有する)であってもよい。使用されるSaccharomyces種(例えば、ビール醸造用)は、典型的には、2つの群:上面発酵するエール株(例として、S.cerevisiae)と、下面発酵するラガー株(例として、S.pastorianus、S.carlsbergensis、S.uvarum)とに分類される。これらの特徴付けは、蓋がない四角い発酵槽におけるそれらの分離特徴、ならびにしばしば、好ましい発酵温度および達成されるアルコール濃度などの他の特徴を反映する。
【0094】
ビール醸造およびワイン産生は伝統的にS.cerevisiae株の使用に重点を置いていたが、他の酵母属も発酵飲料の産生において高く評価されている(appreciated)。いくつかの態様において、酵母細胞は、非Saccharomyces属に属する。例として、Crauwels et al.Brewing Science(2015)68:110-121;Esteves et al.Microorganisms(2019)7(11):478を見よ。いくつかの態様において、酵母細胞は、属Kloeckera、Candida、Starmerella、Hanseniaspora、Kluyveromyces/Lachance、Metschnikowia、Saccharomycodes、Zygosaccharomyce、Dekkera(またBrettanomycesとも称される)、Wickerhamomyces、またはTorulasporaから成る。非Saccharomyces酵母の例は、限定せずに、Hanseniaspora uvarum、Hanseniaspora guillermondii、Hanseniaspora vinae、Metschnikowia pulcherrima、Kluyveromyces/Lachancea thermotolerans、Starmerella bacillaris(これまでにCandida stellata/Candida zemplininaと称されていた)、Saccharomycodes ludwigii、Zygosaccharomyces rouxii、Dekkera bruxellensis、Dekkera anomala、Brettanomyces custersianus、Brettanomyces naardenensis、Brettanomyces nanus、Wickerhamomyces anomalus、およびTorulaspora delbrueckiiを包含する。
【0095】
いくつかの態様において、本明細書に記載の方法は、1より多くの遺伝子学的に修飾された酵母の使用を伴う。例えば、いくつかの態様において、方法は、属Saccharomycesに属する1より多くの遺伝子学的に修飾された酵母の使用を伴っていてもよい。いくつかの態様において、方法は、非Saccharomyces属に属する1より多くの遺伝子学的に修飾された酵母の使用を伴っていてもよい。いくつかの態様において、方法は、属Saccharomycesに属する1より多くの遺伝子学的に修飾された酵母と、非Saccharomyces属に属する1つの遺伝子学的に修飾された酵母との使用を伴っていてもよい。代わりにまたは加えて、本明細書に記載の方法のいずれも、1以上の遺伝子学的に修飾された酵母と、1以上の遺伝子学的に修飾されていない(野生型)酵母との使用を伴っていてもよい。
【0096】
いくつかの態様において、酵母は、ハイブリッド株である。当業者には明白なとおり、酵母の「ハイブリッド株」という用語は、例えば、1以上の所望される特徴を獲得するため、2つの異なる酵母株の交配の結果として生じた酵母株を指す。例えば、ハイブリッド株は、同じ属または同じ種に属する2つの異なる酵母株の交配の結果として生じたものであってもよい。いくつかの態様において、ハイブリッド株は、Saccharomyces cerevisiae株とSaccharomyces eubayanus株との交配の結果として生じたものである。例として、Krogerus et al.Microbial Cell Factories(2017)16:66を見よ。
【0097】
いくつかの態様において、酵母株は、天然の供給源から単離され続いて増殖させられた酵母株などの、野生の酵母株である。代わりに、いくつかの態様において、酵母株は、環境に適応した(domesticated)酵母株である。環境に適応した酵母株は、所望される特徴を有するためヒトによる選択および品種改良(breeding)に供されている。
【0098】
いくつかの態様において、遺伝子学的に修飾された酵母細胞は、菌株と共生のマトリックスにおいて使用されてもよく、昆布茶、ケフィア、およびジンジャービールなどの発酵飲料の産生に使用されてもよい。例えば、Saccharomyces fragilisは、ケフィア培養物の不可欠な要素(part of)であって、ホエイ中に含有されるラクトース上で成長させられる。
【0099】
酵母細胞を遺伝子学的に修飾する方法は、当該技術分野において知られている。いくつかの態様において、酵母細胞が2倍体であり、本明細書に記載のとおりのベータ-リアーゼ活性をもつ酵素をコードする異種遺伝子の1コピーが、酵母ゲノム中へ導入される。いくつかの態様において、酵母細胞が2倍体であり、本明細書に記載のとおりのベータ-リアーゼ活性をもつ酵素をコードする異種遺伝子の1コピーが、酵母ゲノムの両コピー中へ導入される。いくつかの態様において、異種遺伝子のコピーは、同一である。いくつかの態様において、異種遺伝子のコピーは同一ではないが、前記遺伝子は、同一のベータ-リアーゼ活性を有する酵素をコードする。いくつかの態様において、異種遺伝子のコピーは同一ではなく、遺伝子は、ベータ-リアーゼ活性を有する異なる酵素(例として、突然変異体、バリアント、それらのフラグメント)をコードする。
【0100】
いくつかの態様において、酵母細胞は、4倍体である。4倍体の酵母細胞は、4つの完全な染色体一式(すなわち、4コピーの完全な染色体一式)を維持する細胞である。いくつかの態様において、酵母細胞が4倍体であり、本明細書に記載のとおりのベータ-リアーゼ活性をもつ酵素をコードする異種遺伝子のコピーが、ゲノムの少なくとも1つのコピー中へ導入される。いくつかの態様において、酵母細胞が4倍体であり、本明細書に記載のとおりのベータ-リアーゼ活性をもつ酵素をコードする異種遺伝子のコピーが、ゲノムの1より多くのコピー中へ導入される。いくつかの態様において、酵母細胞が4倍体であり、本明細書に記載のとおりのベータ-リアーゼ活性をもつ酵素をコードする異種遺伝子のコピーが、ゲノムの4コピーすべてに導入される。いくつかの態様において、異種遺伝子のコピーは、同一である。いくつかの態様において、異種遺伝子のコピーは同一ではないが、前記遺伝子は、同一のベータ-リアーゼ活性を有する酵素をコードする。いくつかの態様において、異種遺伝子のコピーは同一ではなく、遺伝子は、ベータ-リアーゼ活性を有する異なる酵素(例として、突然変異体、バリアント、それらのフラグメント)をコードする。
【0101】
本明細書に記載の方法で使用されてもよい酵母細胞の株は、当業者に知られているであろう。そして前記株は、所望される発酵飲料を醸造するために使用される酵母株、ならびに市販の酵母株を包含する。一般的なビール株の例は、限定せずに、American ale株、Belgian ale株、British ale株、Belgian lambic/sour ale株、Barleywine/Imperial Stout株、India Pale Ale株、Brown Ale株、Kolsch and Altbier株、Stout and Porter株、Wheat beer株を包含する。
【0102】
本明細書に記載の遺伝子学的に修飾された細胞および方法での使用のための酵母株の非限定例は、Wyeast American Ale 1056、Wyeast American Ale II 1272、Wyeast Denny's Favorite 50 1450、Wyeast Northwest Ale 1332、Wyeast Ringwood Ale 1187、Siebel Inst. American Ale BRY 96、White Labs American Ale Yeast Blend WLP060、White Labs California Ale V WLP051、White Labs California Ale WLP001、White Labs Old Sonoma Ale WLP076、White Labs Pacific Ale WLP041、White Labs East Coast Ale WLP008、White Labs East Midlands Ale WLP039、White Labs San Diego Super Yeast WLP090、White Labs San Francisco Lager WLP810、White Labs Neutral Grain WLP078、Lallemand American West Coast Ale BRY-97、Lallemand CBC-1(Cask and Bottle Conditioning)、Brewferm Top、Coopers Pure Brewers' Yeast、Fermentis US-05、Real Brewers Yeast Lucky #7、Muntons Premium Gold、Muntons Standard Yeast、East Coast Yeast Northeast Ale ECY29、East Coast Yeast Old Newark Ale ECY10、East Coast Yeast Old Newark Beer ECY12、Fermentis Safale US-05、Fermentis Safbrew T-58、Real Brewers Yeast The One、Mangrove Jack US West Coast Yeast、Mangrove Jack Workhorse Beer Yeast、Lallemand Abbaye Belgian Ale、White Labs Abbey IV WLP540、White Labs American Farmhouse Blend WLP670、White Labs Antwerp Ale WLP515、East Coast Yeast Belgian Abbaye ECY09、White Labs Belgian Ale WLP550、Mangrove Jack Belgian Ale Yeast、Wyeast Belgian Dark Ale 3822-PC、Wyeast Belgian Saison 3724、White Labs Belgian Saison I WLP565、White Labs Belgian Saison II WLP566、White Labs Belgian Saison III WLP585、Wyeast Belgian Schelde Ale 3655-PC、Wyeast Belgian Stout 1581-PC、White Labs Belgian Style Ale Yeast Blend WLP575、White Labs Belgian Style Saison Ale Blend WLP568、East Coast Yeast Belgian White ECY11、Lallemand Belle Saison、Wyeast Biere de Garde 3725-PC、White Labs Brettanomyces Bruxellensis Trois Vrai WLP648、Brewferm Top、Wyeast Canadian/Belgian Ale 3864-PC、Lallemand CBC-1(Cask and Bottle Conditioning)、Wyeast Farmhouse Ale 3726-PC、East Coast Yeast Farmhouse Brett ECY03、Wyeast Flanders Golden Ale 3739-PC、White Labs Flemish Ale Blend WLP665、White Labs French Ale WLP072、Wyeast French Saison 3711、Wyeast Leuven Pale Ale 3538-PC、Fermentis Safbrew T-58、East Coast Yeast Saison Brasserie Blend ECY08、East Coast Yeast Saison Single-Strain ECY14、Real Brewers Yeast The Monk、Siebel Inst. Trappist Ale BRY 204、East Coast Yeast Trappist Ale ECY13、White Labs Trappist Ale WLP500、Wyeast Trappist Blend 3789-PC、Wyeast British Ale 1098、Wyeast British Ale II 1335、Wyeast British Cask Ale 1026-PC、Wyeast English Special Bitter 1768-PC、Wyeast Irish Ale 1084、Wyeast London Ale 1028、Wyeast London Ale III 1318、Wyeast London ESB Ale 1968、Wyeast Ringwood Ale 1187、Wyeast Thames Valley Ale 1275、Wyeast Thames Valley Ale II 1882-PC、Wyeast West Yorkshire Ale 1469、Wyeast Whitbread Ale 1099、Mangrove Jack British Ale Yeast、Mangrove Jack Burton Union Yeast、Mangrove Jack Workhorse Beer Yeast、East Coast Yeast British Mild Ale ECY18、East Coast Yeast Northeast Ale ECY29、East Coast Yeast Burton Union ECY17、East Coast Yeast Old Newark Ale ECY10、White Labs Bedford British Ale WLP006、White Labs British Ale WLP005、White Labs Burton Ale WLP023、White Labs East Midlands Ale WLP039、White Labs English Ale Blend WLP085、White Labs English Ale WLP002、White Labs Essex Ale Yeast WLP022、White Labs Irish Ale WLP004、White Labs London Ale WLP013、White Labs Manchester Ale WLP038、White Labs Old Sonoma Ale WLP076、White Labs San Diego Super Yeast WLP090、White Labs Whitbread Ale WLP017、White Labs North Yorkshire Ale WLP037、Coopers Pure Brewers' Yeast、Siebel Inst. English Ale BRY 264、Muntons Premium Gold、Muntons Standard Yeast、Lallemand Nottingham、Fermentis Safale S-04、Fermentis Safbrew T-58、Lallemand Windsor(British Ale)、Real Brewers Yeast Ye Olde English、Brewferm Top、White Labs American Whiskey WLP065、White Labs Dry English Ale WLP007、White Labs Edinburgh Ale WLP028、Fermentis Safbrew S-33、Wyeast Scottish Ale 1728、East Coast Yeast Scottish Heavy ECY07、White Labs Super High Gravity WLP099、White Labs Whitbread Ale WLP017、Wyeast Belgian Lambic Blend 3278、Wyeast Belgian Schelde Ale 3655-PC、Wyeast Berliner-Weisse Blend 3191-PC、Wyeast Brettanomyces Bruxellensis 5112、Wyeast Brettanomyces Lambicus 5526、Wyeast Lactobacillus 5335、Wyeast Pediococcus Cerevisiae 5733、Wyeast Roeselare Ale Blend 3763、Wyeast Trappist Blend 3789-Pc、White Labs Belgian Sour Mix Wlp655、White Labs Berliner Weisse Blend Wlp630、White Labs Saccharomyces “Bruxellensis”Trois Wlp644、White Labs Brettanomyces Bruxellensis Wlp650、White Labs Brettanomyces Claussenii Wlp645、White Labs Brettanomyces Lambicus Wlp653、White Labs Flemish Ale Blend Wlp665、East Coast Yeast Berliner Blend Ecy06、East Coast Yeast Brett Anomala Ecy04、East Coast Yeast Brett Bruxelensis Ecy05、East Coast Yeast Brett Custersianus Ecy19、East Coast Yeast Brett Nanus Ecy16、Strain #2、East Coast Yeast BugCounty ECY20、East Coast Yeast BugFarm ECY01、East Coast Yeast Farmhouse Brett ECY03、East Coast Yeast Flemish Ale ECY02、East Coast Yeast Oud Brune ECY23、Wyeast American Ale 1056、Siebel Inst. American Ale BRY 96、White Labs American Ale Yeast Blend WLP060、White Labs Bourbon Yeast WLP070、White Labs California Ale V WLP051、White Labs California Ale WLP001、White Labs Dry English ale WLP007、White Labs East Coast Ale WLP008、White Labs Neutral Grain WLP078、White Labs Super High Gravity WLP099、White Labs Tennessee WLP050、Fermentis US-05、Real Brewers Yeast Lucky #7、Fermentis Safbrew S-33、East Coast Yeast Scottish Heavy ECY07、Lallemand Windsor(British Ale)、Wyeast American Ale 1056、Wyeast American Ale II 1272、Wyeast British Ale 1098、Wyeast British Ale II 1335、Wyeast Denny's Favorite 50 1450、Wyeast London Ale 1028、Wyeast London Ale III 1318、Wyeast London ESB Ale 1968、Wyeast Northwest Ale 1332、Wyeast Ringwood Ale 1187、Siebel Inst. American Ale BRY 96、White Labs American Ale Yeast Blend WLP060、White Labs Bedford British Ale WLP006、White Labs British Ale WLP005、White Labs Burton Ale WLP023、White Labs California Ale V WLP051、White Labs California Ale WLP001、White Labs East Coast Ale WLP008、White Labs English Ale WLP002、White Labs London Ale WLP013、White Labs Essex Ale Yeast WLP022、White Labs Pacific Ale WLP041、White Labs San Diego Super Yeast WLP090、White Labs Whitbread Ale WLP017、Brewferm Top、Mangrove Jack Burton Union Yeast、Mangrove Jack US West Coast Yeast、Mangrove Jack Workhorse Beer Yeast、Coopers Pure Brewers' Yeast、Fermentis US-05、Fermentis Safale S-04、Fermentis Safbrew T-58、Real Brewers Yeast Lucky #7、Real Brewers Yeast The One、Muntons Premium Gold、Muntons Standard Yeast、East Coast Yeast Northeast Ale ECY29、Lallemand Nottingham、Lallemand Windsor(British Ale)、Wyeast American Ale 1056、Wyeast American Ale II 1272、Wyeast British Ale 1098、Wyeast British Ale II 1335、Wyeast Thames Valley Ale 1275、Wyeast Thames Valley Ale II 1882-PC、Wyeast West Yorkshire Ale 1469、Wyeast Whitbread Ale 1099、Wyeast British Cask Ale 1026-PC、Wyeast English Special Bitter 1768-PC、Wyeast London Ale 1028、Wyeast London Ale III 1318、Wyeast London ESB Ale 1968、Wyeast Northwest Ale 1332、Wyeast Ringwood Ale 1187、White Labs American Ale Yeast Blend WLP060、White Labs British Ale WLP005、White Labs Bedford British Ale WLP006、White Labs British Ale WLP005、White Labs Burton Ale WLP023、White Labs California Ale V WLP051、White Labs California Ale WLP001、White Labs East Coast Ale WLP008、White Labs English Ale WLP002、White Labs Essex Ale Yeast WLP022、White Labs French Ale WLP072、White Labs London Ale WLP013、White Labs Pacific Ale WLP041、White Labs Whitbread Ale WLP017、Brewferm Top、East Coast Yeast British Mild Ale ECY18、Coopers Pure Brewers' Yeast、Muntons Premium Gold、Muntons Standard Yeast、Mangrove Jack Newcastle Dark Ale Yeast、Lallemand CBC-1(Cask and Bottle Conditioning)、Lallemand Nottingham、Lallemand Windsor(British Ale)、Fermentis Safale S-04、Fermentis US-05、Siebel Inst. American Ale BRY 96、Wyeast American Wheat 1010、Wyeast German Ale 1007、Wyeast Koelsch 2565、Wyeast Kolsch II 2575-PC、White Labs Belgian Lager WLP815、White Labs Dusseldorf Alt WLP036、White Labs European Ale WLP011、White Labs German Ale/Koelsch WLP029、East Coast Yeast Koelschbier ECY21、Mangrove Jack Workhorse Beer Yeast、Siebel Inst. Alt Ale BRY 144、Wyeast American Ale 1056、Wyeast American Ale II 1272、Wyeast British Ale 1098、Wyeast British Ale II 1335、Wyeast Denny's Favorite 50 1450、Wyeast English Special Bitter 1768-PC、Wyeast Irish Ale 1084、Wyeast London Ale 1028、Wyeast London Ale III 1318、Wyeast London ESB Ale 1968、Wyeast Northwest Ale 1332、Wyeast Ringwood Ale 1187、Wyeast Thames Valley Ale 1275、Wyeast Thames Valley Ale II 1882-PC、Wyeast West Yorkshire Ale 1469、Wyeast Whitbread Ale 1099、White Labs American Ale Yeast Blend WLP060、White Labs Bedford British Ale WLP006、White Labs British Ale WLP005、White Labs Burton Ale WLP023、White Labs California Ale V WLP051、White Labs California Ale WLP001、White Labs East Coast Ale WLP008、White Labs East Midlands Ale WLP039、White Labs English Ale WLP002、White Labs Essex Ale Yeast WLP022、White Labs Irish Ale WLP004、White Labs London Ale WLP013、White Labs Old Sonoma Ale WLP076、White Labs Pacific Ale WLP041、White Labs Whitbread Ale WLP017、Coopers Pure Brewers' Yeast、Fermentis US-05、Muntons Premium Gold、Muntons Standard Yeast、Fermentis Safale S-04、Lallemand Nottingham、Lallemand Windsor(British Ale)、Siebel Inst. American Ale BRY 96、White Labs American Hefeweizen Ale 320、White Labs Bavarian Weizen Ale 351、White Labs Belgian Wit Ale 400、White Labs Belgian Wit Ale II 410、White Labs Hefeweizen Ale 300、White Labs Hefeweizen IV Ale 380、Wyeast American Wheat 1010、Wyeast Bavarian Wheat 3638、Wyeast Bavarian Wheat Blend 3056、Wyeast Belgian Ardennes 3522、Wyeast Belgian Wheat 3942、Wyeast Belgian Witbier 3944、Wyeast Canadian/Belgian Ale 3864-PC、Wyeast Forbidden Fruit Yeast 3463、Wyeast German Wheat 3333、Wyeast Weihenstephan Weizen 3068、Siebel Institute Bavarian Weizen BRY 235、Fermentis Safbrew WB-06、Mangrove Jack Bavarian Wheat、Lallemand Munich(German Wheat Beer)、Brewferm Blanche、Brewferm Lager、East Coast Yeast Belg
ian White ECY11を包含する。いくつかの態様において、酵母は、S.cerevisiae株WLP001である。
【0103】
いくつかの態様において、本明細書に記載の遺伝子学的に修飾された細胞および方法での使用のための酵母株は、ワイン酵母株である。本明細書に記載の遺伝子学的に修飾された細胞および方法での使用のための酵母株の例は、限定せずに、Red Star Montrachet、Red Star Cote des Blancs、Red Star Premier Cuvee、Red Star Pasteur Red、Red Star Pasteur Champagne、Fermentis BCS-103、およびFermentis VR44を包含する。
【0104】
方法
本開示の側面は、本明細書に記載の遺伝子学的に修飾された酵母細胞のいずれかを使用して、発酵産物を産生する方法に関する。また提供されるのには、本明細書に記載の遺伝子学的に修飾された酵母細胞のいずれかを使用して、エタノールを産生する方法もある。
【0105】
発酵のプロセスは、炭水化物を変換してアルコールおよび二酸化炭素にする微生物を使用する天然のプロセスを活用する。これは、酵素的作用を通して有機基質における化学的変化を産生する代謝プロセスである。食糧産生という文脈において、発酵は広く、微生物の活性が所望の変化を食品または飲料へもたらす、いずれのプロセスも指す。発酵の条件および発酵の実行は本明細書中、「発酵プロセス」として言及される。
【0106】
いくつかの側面において、本開示は、最初の発酵プロセスの最中に、本明細書に記載の修飾された細胞のいずれかを、少なくとも1つの発酵性糖を含む培地と接触させることで、発酵産物を産生することを伴う、発酵飲料などの発酵産物を産生する方法に関する(図1A~1G)。「培地」は、本明細書に使用されるとき、発酵に資する液体を指し、発酵プロセスを阻害も防止もしない液体を意味する。いくつかの態様において、培地は、水である。いくつかの態様において、発酵産物を産生する方法は、最初の発酵プロセスの最中に、精製された酵素(例として、本明細書に記載のベータ-リアーゼ酵素のいずれか)を、少なくとも1つの発酵性糖を含む培地と接触させることで、発酵産物を産生することを伴う(図1H)。
【0107】
また本明細書にも使用されるとおり、用語「発酵性糖」は、本明細書に記載の細胞のいずれかなどの微生物によって変換されてアルコールおよび二酸化炭素になり得る炭水化物を指す。いくつかの態様において、発酵性糖は、組換え酵素などの酵素または前記酵素を発現する細胞によって変換されて、アルコールおよび二酸化炭素になる。発酵性糖の例は、限定せずに、グルコース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、およびマルトトリオースを包含する。
【0108】
いくつかの態様において、発酵性糖は、糖源において提供される。クレームされる方法における使用のための糖源は、例えば、発酵産物および発酵性糖のタイプに依存することもある。糖源の例は、限定せずに、麦芽汁、穀物(grains)/穀草類(cereals)、果汁(例として、ブドウ果汁、リンゴ果汁/林檎酒)、蜂蜜、甘蔗糖、米、および麹(koji)を包含する。
【0109】
当業者には明白なとおり、いくつかの場合において、発酵に対し発酵性糖を利用可能にさせるために糖源を処理することは、必要となることもある。発酵飲料の一例としてビールの産生を使用すると、穀物(穀草類、大麦)は、水中で煮られるかまたは浸され、これによって穀物が水和されて麦芽酵素が活性化され、デンプンが発酵性糖へ変換されるが、これを「糖化(mashing)」と称する。本明細書に使用されるとき、用語「麦芽汁」は、糖化プロセスにおいて産生され、発酵性糖を含有する液体を指す。次いで麦芽汁は、発酵性生物(例として、本明細書に記載の細胞のいずれか)へ曝露され、これによって発酵性生物の酵素が麦芽汁中の糖をアルコールおよび二酸化炭素へ変換することが可能になる。いくつかの態様において、麦芽汁は、組換え酵素(例として、本明細書に記載の酵素のいずれか)と接触させられるが、前記酵素は任意に、酵素を産生する生物から精製または単離されてもよく、酵素が麦芽汁中の糖をアルコールおよび二酸化炭素へ変換することが可能になる。
【0110】
いくつかの態様において、穀物は、麦芽化されているか(malted)、非麦芽化されているか(unmalted)、または麦芽化穀物と非麦芽化穀物との組み合わせを含む。本明細書に記載の方法における使用のための穀物の例は、限定せずに、大麦、燕麦、トウモロコシ、米、ライ麦、モロコシ、小麦、カラスムギ、およびハトムギを包含する。
【0111】
日本酒を産生する例において、糖源は米であり、米は、麹菌(Aspergillus oryzae)とインキュベートされて米デンプンが発酵性糖へ変換され、麹が産生される。麹は次いで、発酵性生物(例として、本明細書に記載の細胞のいずれか)へ曝露され、これによって発酵性生物の酵素が麹中の糖をアルコールおよび二酸化炭素へ変換することが可能になる。いくつかの態様において、麹は、組換え酵素(例として、本明細書に記載の酵素のいずれか)と接触させられるが、前記酵素は任意に、酵素を産生する生物から精製または単離されてもよく、酵素が麹中の糖をアルコールおよび二酸化炭素へ変換することが可能になる。
【0112】
ワインを産生する例において、ブドウは収穫され、すりつぶされて(mashed)(例として、圧搾されて(crushed))、果皮(skins)、果肉(solids)、果汁(juice)、および種子(seeds)を含有する組成物になる。その結果得られた組成物は「果醪」と称される。ブドウ果汁は、果醪から分離されて発酵させられてもよく、または果醪(すなわち、果皮、種子、果肉)全体が発酵させられてもよい。ブドウ果汁または果醪は次いで、発酵性生物(例として、本明細書に記載の細胞のいずれか)へ曝露され、これによって発酵性生物の酵素がブドウ果汁または果醪中の糖をアルコールおよび二酸化炭素へ変換することが可能になる。いくつかの態様において、ブドウ果汁または果醪は、組換え酵素(例として、本明細書に記載の酵素のいずれか)と接触させられるが、前記酵素は任意に、酵素を産生する生物から精製または単離されてもよく、酵素がブドウ果汁または果醪中の糖をアルコールおよび二酸化炭素へ変換することが可能になる。
【0113】
いくつかの態様において、本明細書に記載の方法は、糖源を、例えば水中で、加熱するかまたは浸すことを伴ってもよい、培地を産生することを伴う。いくつかの態様において、水は、少なくともセ氏50度(50℃)の温度を有し、ある期間の糖源とインキュベートされる。いくつかの態様において、水は、少なくとも75℃の温度を有し、ある期間の糖源とインキュベートされる。いくつかの態様において、水は、少なくとも100℃の温度を有し、ある期間の糖源とインキュベートされる。好ましくは、培地は、本明細書に記載の細胞のいずれかの添加に先立ち、冷却される。
【0114】
いくつかの態様において、本明細書に記載の方法は、少なくとも1つの前駆体(例として、植物由来のまたは化学的に合成された)を培地へ、または最初の発酵プロセスの最中に加えることをさらに含む(図1G)。前駆体の例は、限定せずに、3-メルカプトヘキサン-1-オール(Cys 3-MH)、システインに抱合された4-メチル-4-メルカプトペンタン-2-オン(Cys 4MMP)、グルタチオンに抱合された3-メルカプトヘキサン-1-オール(Glut-3-MH)、および/またはグルタチオンに抱合された4-メチル-4-メルカプトペンタン2-オン(Glut 4MMP)を包含する。いくつかの態様において、前駆体は、植物由来の前駆体である。いくつかの態様において、前駆体は、化学的に合成された前駆体である。前駆体を産生するおよび/または得る方法は、当該技術分野において、例えば、Grant-Preece et al.J.Agric.Food Chem.(2010)58(3):1383-1389;Fedrizzi et al.J.Agric.Food Chem.(2009)57(3):991-995;Pardon et al.J.Agric.Food Chem.(2008)56(10):3758-3763;Howell et al.FEMS Microbiol.Lett.(2004)240(2):125-9において知られている。
【0115】
いくつかの態様において、本明細書に記載の方法は、発酵プロセスの最中に、少なくとも1つの(例として、1、2、3、4、5、またはそれより多くの)ホップ品種を、例えば培地へ、麦芽汁へ加えることをさらに含む。ホップは、ホップ植物(Humulus lupulus)の花であり、様々なフレーバーおよび芳香を発酵産物に付与するようにしばしば発酵において使用される。ホップは、フローラルの、フルーティな、および/または柑橘類のフレーバーならびに芳香に加えて、苦味のあるフレーバー剤を付与するものと見なされ、本来の目的に基づき特徴付けられてもよい。例えば、苦味をもたらすホップは、ホップ花におけるアルファ酸の存在に起因して、あるレベルの苦味を発酵産物に付与するが、その一方で芳香性のホップは、より低レベルのアルファ酸を有し、発酵産物への所望の芳香およびフレーバーに寄与する。
【0116】
ホップの1以上の品種が培地および/または麦芽汁へ加えられるかどうか、ならびにホップが加えられるのがどのステージにて行われるかは、ホップの本来の目的などの様々な因子に基づいてもよい。例えば、苦味を発酵産物に付与することを意図したホップは、典型的には、麦芽汁の調製の最中に、例えば、麦芽汁を煮る最中に、加えられる。いくつかの態様において、苦味を発酵産物に付与することを意図したホップは、麦芽汁へ加えられて、ある期間、例えば、約15~60分間、麦芽汁とともに煮られる。対照的に、所望される芳香を発酵産物に付与することを意図したホップは、典型的には、苦味のために使用されたホップより後に加えられる。いくつかの態様において、所望される芳香を発酵産物に付与することを意図したホップは、煮沸の終了時、または麦芽汁が煮られた後に加えられる(すなわち、「ドライホッピング」)。いくつかの態様において、ホップの1以上の品種は、方法の最中、複数回(例として、少なくとも2度、少なくとも3回、またはそれより多く)にて加えられてもよい。
【0117】
いくつかの態様において、ホップは、ウェットな(wet)ホップまたは乾燥したホップのいずれかの形態で加えられて、任意に、麦芽汁と煮沸されてもよい。いくつかの態様において、ホップは、乾燥したホップペレットの形態である。いくつかの態様において、ホップの少なくとも1つの品種は、培地へ加えられる。いくつかの態様において、ホップは、ウェットである(すなわち、乾燥していない)。いくつかの態様において、ホップは乾燥しており、任意に、使用に先立ちさらに処理されてもよい。いくつかの態様において、ホップは、発酵プロセスに先立ち麦芽汁へ加えられる。いくつかの態様において、ホップは、麦芽汁中で煮沸される。いくつかの態様において、ホップは、麦芽汁とともに煮沸され、次いで麦芽汁とともに冷却される。
【0118】
ホップの多くの品種は、当該技術分野において知られており、本明細書に記載の方法において使用されてもよい。ホップ品種の例は、限定せずに、Ahtanum、Amarillo、Apollo、Cascade、Centennial、Chinook、Citra、Cluster、Columbus、Crystal/Chrystal、Eroica、Galena、Glacier、Greenburg、Horizon、Liberty、Millennium、Mosaic、Mount Hood、Mount Rainier、Newport、Nugget、Palisade、Santiam、Simcoe、Sterling、Summit、Tomahawk、Ultra、Vanguard、Warrior、Willamette、Zeus、Admiral、Brewer's Gold、Bullion、Challenger、First Gold、Fuggles、Goldings、Herald、Northdown、Northern Brewer、Phoenix、Pilot、Pioneer、Progress、Target、Whitbread Golding Variety(WGV)、Hallertau、Hersbrucker、Saaz、Tettnang、Spalt、Feux-Coeur Francais、Galaxy、Green Bullet、Motueka、Nelson Sauvin、Pacific Gem、Pacific Jade、Pacifica、Pride of Ringwood、Riwaka、Southern Cross、Lublin、Magnum、Perle、Polnischer Lublin、Saphir、Satus、Select、Strisselspalt、Styrian Goldings、Tardif de Bourgogne、Tradition、Bravo、Calypso、Chelan、Comet、El Dorado、San Juan Ruby Red、Satus、Sonnet Golding、Super Galena、Tillicum、Bramling Cross、Pilgrim、Hallertauer Herkules、Hallertauer Magnum、Hallertauer Taurus、Merkur、Opal、Smaragd、Halleratau Aroma、Kohatu、Rakau、Stella、Sticklebract、Summer Saaz、Super Alpha、Super Pride、Topaz、Wai-iti、Bor、Junga、Marynka、Premiant、Sladek、Styrian Atlas、Styrian Aurora、Styrian Bobek、Styrian Celeia、Sybilla Sorachi Ace、Hallertauer Mittelfrueh、Hallertauer Tradition、Tettnanger、Tahoma、Triple Pearl、Yahima Gold、and Michigan Copperを包含する。
【0119】
いくつかの態様において、少なくとも1つの発酵性糖を含む少なくとも1つの糖源の発酵プロセスは、約1日間~約30日間実行されてもよい。いくつかの態様において、発酵プロセスは、約1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間、16日間、17日間、18日間、19日間、20日間、21日間、22日間、23日間、24日間、25日間、26日間、27日間、28日間、29日間、30日間、またはこれより長い間実施される。いくつかの態様において、1以上の発酵性糖の発酵プロセスは、約4℃~約30℃の温度にて実施されてもよい。いくつかの態様において、1以上の発酵性糖の発酵プロセスは、約8℃~約14℃または約18℃~約24℃の温度にて実行されてもよい。いくつかの態様において、1以上の発酵性糖の発酵プロセスは、約4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃、10℃、11℃、12℃、13℃、14℃、15℃、16℃、17℃、18℃、19℃、20℃、21℃、22℃、23℃、24℃、25℃、26℃、27℃、28℃、29℃、または30℃の温度にて実施されてもよい。
【0120】
本明細書に記載の方法は、例えば、図1Dに示されるとおり、少なくとも1つの追加の発酵プロセスを伴っていてもよい。かかる追加の発酵方法は、2次発酵プロセスと称されてもよい(また「熟成(aging)」または「成熟(maturing)」とも称される)。当業者によって理解されるとおり、2次発酵は、典型的には、発酵飲料を、発酵飲料がある期間インキュベートされる第2の入れ物(例として、ガラスカーボイ、樽)へ移すことを伴う。いくつかの態様において、2次発酵は、10分間と12カ月間との間の期間実施される。いくつかの態様において、2次発酵は、10分間、20分間、40分間、40分間、50分間、60分間(1時間)、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、24時間、1日、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、3カ月間、4カ月間、5カ月間、6カ月間、7カ月間、8カ月間、9カ月間、10カ月間、11カ月間、12カ月間、またはこれより長く実施される。いくつかの態様において、1以上の発酵性糖の、追加のまたは2次の発酵プロセスは、約4℃~約30℃の温度にて実施されてもよい。いくつかの態様において、1以上の発酵性糖の、追加のまたは2次の発酵プロセスは、約8℃~約14℃または約18℃~約24℃の温度にて実行されてもよい。いくつかの態様において、1以上の発酵性糖の、追加のまたは2次の発酵プロセスは、約4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃、10℃、11℃、12℃、13℃、14℃、15℃、16℃、17℃、18℃、19℃、20℃、21℃、22℃、23℃、24℃、25℃、26℃、27℃、28℃、29℃、または30℃の温度にて実施されてもよい。
【0121】
当業者には明白なとおり、追加のまたは2次発酵プロセスのための期間および温度の選択は、ビールのタイプ、所望されるビールの特徴、および方法に使用される酵母株などの因子に依存するであろう。
【0122】
いくつかの態様において、1以上の追加のフレーバー構成要素は、発酵プロセスに先立ち、または発酵プロセス後に、培地へ加えられてもよい。例は、ホップ油、ホップ芳香族化合物、ホップ抽出物、ホップの苦味、および異性体化ホップ抽出物を包含する。
【0123】
発酵に続き、様々な純化(refinement)、濾過、および熟成のプロセスが存在していてもよく、その後に液体が瓶に詰められる(例として、配布、保管、または飲食のための容器中に留めて密封される)。本明細書に記載の方法のいずれかは、発酵産物を蒸留すること、低温殺菌すること、および/または炭酸ガスを入れることをさらに伴っていてもよい。いくつかの態様において、方法は、発酵産物に炭酸ガスを入れることを伴う(例えば、図1Eに示されるとおり)。発酵飲料に炭酸ガスを入れる方法は、当該技術分野において知られており、例えば、ガス(例として、二酸化炭素、窒素)での強制炭酸化、さらなる発酵および二酸化炭素の産生を促進するためにさらなる糖源を発酵飲料へ加えることによる自然炭酸化(例として、瓶の状態調節(conditioning))を包含する。
【0124】
発酵産物
本開示の側面は、本明細書に開示の方法のいずれかによって産生された発酵産物に関する。いくつかの態様において、発酵産物は、発酵飲料である。発酵飲料の例は、限定せずに、ビール、ワイン、日本酒、蜂蜜酒、林檎酒、カヴァ、スパークリングワイン(シャンパン)、昆布茶、ジンジャービール、ウォーターケフィア(water kefir)を包含する。いくつかの態様において、飲料は、ビールである。いくつかの態様において、飲料は、ワインである。いくつかの態様において、飲料は、日本酒である。いくつかの態様において、飲料は、蜂蜜酒である。いくつかの態様において、飲料は、林檎酒である。
【0125】
いくつかの態様において、発酵産物は、発酵食品である。発酵食品の例は、限定せずに、カルチャード(cultured)ヨーグルト、テンペ、みそ、キムチ、ザウアークラウト、発酵ソーセージ、パン、しょうゆを包含する。
【0126】
本発明の側面に従って、増加した力価の揮発性チオールは、酵母細胞および本明細書に記載の方法における前記細胞の使用において、本発明に関連する遺伝子の組換え発現を通して産生される。本明細書に使用されるとき、「増加した力価」または「高い力価」は、リットル当たりのナノグラム(ng L-1)スケールでの力価を指す。所定の産物に対して産生された力価は、発酵のための培地および条件の選択を包含する、複数の因子による影響が及ぼされるであろう。
【0127】
いくつかの態様において、揮発性チオール(例として、3MH、3MHA、および/または4MMP)の力価は、少なくとも100ng L-1である。例えば、力価は、少なくとも100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、1000、1050、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、3000、または3000ng L-1より大きいものであり得る。
【0128】
いくつかの態様において、揮発性チオールの力価は、少なくとも1μg L-1であり、例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、1000、1050、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、3000μg L-1である。
【0129】
いくつかの態様において、揮発性チオールの力価は、少なくとも1mg L-1であり、例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、1000、1050、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、3000mg L-1以上である。
【0130】
いくつかの態様において、揮発性チオールの力価は、発酵プロセスへ加えられる前駆体の量によって限定される。
【0131】
本開示の側面は、産物の発酵の最中の、インドールなどの望ましくない産物(例として、副産物、オフフレーバー)の産生を低減することに関する。いくつかの態様において、本明細書に記載のベータ-リアーゼの発現は、野生型ベータ-リアーゼを使用する望ましくない産物(例として、インドール)の産生と比べて、望ましくない産物の産生を、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%以上まで低減する。
【0132】
揮発性チオールおよび/またはインドールの力価/レベルを測定する方法は、当業者に明白であろう。いくつかの態様において、揮発性チオールおよび/またはインドールの力価/レベルは、ガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)を使用して測定される。いくつかの態様において、揮発性チオールおよび/またはインドールの力価/レベルは、例えば、ヒト味見係(taste-testers)を包含する、官能パネルを使用して査定される。
【0133】
いくつかの態様において、発酵飲料は、アルコールを0.1%と30%との間の体積まで(また「ABV」、「abv」、もしくは「alc/vol」とも称される)含有する。いくつかの態様において、発酵飲料は、アルコールを、約0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.07%、0.8%、0.9%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2 %、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%の、またはこれより多い体積まで含有する。いくつかの態様において、発酵飲料は、非アルコール性である(例として、アルコールを0.5%未満の体積まで有する)。
【0134】
キット
本開示の側面はまた、例えば、発酵産物またはエタノールを産生するための、遺伝子学的に修飾された酵母細胞の使用のためのキットも提供する。いくつかの態様において、キットは、ベータ-リアーゼ活性をもつ酵素をコードする異種遺伝子を含有する、修飾された細胞を含有する。
【0135】
いくつかの態様において、キットは、発酵飲料の産生のためのものである。いくつかの態様において、キットは、ビールの産生のためのものである。いくつかの態様において、キットは、ワインの産生のためのものである。いくつかの態様において、キットは、日本酒の産生のためのものである。いくつかの態様において、キットは、蜂蜜酒の産生のためのものである。いくつかの態様において、キットは、林檎酒の産生のためのものである。
【0136】
キットはまた、本明細書に記載の方法のいずれかにおける使用のための、または本明細書に記載のとおりの細胞のいずれかの使用のための、他の構成要素も含んでいることがある。例えば、いくつかの態様において、キットは、穀物、水、麦芽汁、果醪、酵母、ホップ、果汁、または他の糖源(単数もしくは複数)を含有していてもよい。いくつかの態様において、キットは、1以上の発酵性糖を含有していてもよい。いくつかの態様において、キットは、1以上の追加の剤、成分、または構成要素を含有していてもよい。
【0137】
本明細書に記載の方法を実施するための指示はまた、本明細書に記載のキットにも包含されていることがある。
【0138】
キットは、本明細書に記載の修飾された細胞のいずれかを含有する単回使用(single use)組成物を指し示すために整理されていてもよい。例えば、単回使用組成物(例として、使用されることになっている量)は、小包化(packeted)(すなわち、小包に含有された)粉末、バイアル、アンプル、培養管、錠剤、カプレット、カプセル、または液体を含有する小袋(sachets)などの、パッケージ化(packaged)組成物(例として、修飾された細胞)であり得る。
【0139】
組成物(例として、修飾された細胞)は、乾燥形態、凍結乾燥形態、凍結形態、または液体形態で提供されていてもよい。いくつかの態様において、修飾された細胞は、寒天培地上のコロニーとして提供されている。いくつかの態様において、修飾された細胞は、培地中へ直接投入されてもよい種培養の形態で提供される。試薬または構成要素が乾燥形態として提供されたとき、一般に、培地などの溶媒の添加によって再構成される。溶媒は、別のパッケージ化手段において提供されてもよく、当業者によって選択されてもよい。
【0140】
組成物(例として、修飾された細胞)を分配する(dispensing)ための、数多のパッケージまたはキットは、当業者に知られている。ある態様において、パッケージは、ラベル付きのブリスターパッケージ、ダイヤルディスペンサ(dial dispenser)パッケージ、管、小包、ドラム缶、または瓶である。
【0141】
本明細書に記載のキットのいずれも、カーボイまたは樽などの、本明細書に記載の方法を実施するための1以上の器をさらに含んでいてもよい。
【0142】
一般技法
本開示の主題を実践するには、別様に指し示されない限り、分子生物学(組換え技法を包含する)、微生物学、細胞生物学、生化学、および免疫学という、当該技術分野の技能の範囲内にある従来の技法が採用されるであろう。かかる技法は、限定されないが、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,second edition(Sambrook,et al.,1989)Cold Spring Harbor Press;Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait,ed.,1984);Methods in Molecular Biology,Humana Press;Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis,ed.,1998)Academic Press;Animal Cell Culture(R.I.Freshney,ed.,1987);Introduction to Cell and Tissue Culture (J.P.Mather and P.E.Roberts,1998)Plenum Press;Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle,J.B.Griffiths,and D.G.Newell,eds.,1993-8)J.Wiley and Sons;Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.);Handbook of Experimental Immunology(D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.Miller and M.P.Calos,eds.,1987);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel,et al.,eds.,1987);PCR:The Polymerase Chain Reaction,(Mullis,et al.,eds.,1994);Current Protocols in Immunology(J.E.Coligan et al.,eds.,1991);Short Protocols in Molecular Biology(Wiley and Sons,1999)などの文献において完全に説明されている。
【0143】
等価物および範囲
本開示は、本明細書にはっきりと記載される具体的な態様のいずれかまたはすべてに限定されないが、もちろんそれ自体変動することもあることは理解されるべきである。本明細書に使用される専門用語は、具体的な態様のみを記載することを目的としており、限定されることは意図していないこともまた、理解されるべきである。
【0144】
別様に定義されない限り、本明細書に使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。また、本明細書に記載のものと同様のまたは等価ないずれの方法および材料も、本開示の実践または試験において使用され得るが、好ましい方法および材料がここに記載されている。
【0145】
本開示に引用されるすべての刊行物および特許は、それら刊行物が引用された方法および/または材料に関係する方法および/または材料を開示かつ記載するために引用される。すべてのかかる刊行物および特許は、あたかも個々の刊行物または特許の各々が参照により組み込まれるよう具体的かつ個々に指し示されるかのように、参照により本明細書に組み込まれる。参照によるかかる組み込みは、引用された刊行物および特許に記載の方法および/または材料にはっきりと限定され、引用された刊行物および特許からの、いかなる辞書学的定義にまで及ぶことはない(すなわち、本開示においてもはっきりとは繰り返されていない、引用された刊行物および特許のいかなる辞書学的定義は、そのように扱われるべきではなく、添付のクレームに現れるいずれの用語も定義するものとして読まれるべきではない)。組み込まれた参考文献のいずれかと本開示との間に矛盾が生じた場合、本開示が統制するものとする。加えて、先行技術の範囲内にある本開示のいずれの具体的な態様も、クレームのいずれか1以上から明示的に排除されてもよい。かかる態様は、当業者に知られていると見なされるところ、それらは、排除が明細書中に明示的に表されていない場合であっても、排除されてもよい。先行技術の存在に関するか否かにかかわらず、いずれの理由からも、本開示の任意の具体的な態様は、いずれのクレームからも排除され得る。
【0146】
任意の刊行物の引用は、出願日に先立ちそれを開示するためであって、本開示が先の開示のおかげでかかる刊行物に先行する資格がないという自白として解釈されるべきではない。さらに、提供された刊行物の日付は、独立して確認される必要があり得る実際の刊行物の日付とは異なることもある。
【0147】
本開示を読めば当業者には明らかであろうが、本明細書に記載および図示された個々の態様の各々は、本開示の精神または範囲から逸脱せずに他の数種の態様の任意の特色から容易に分離またはこれと組み合わされてもよい、個別の構成要素および特色を有する。列挙された任意の方法は、列挙された事象の順序で、または論理的に実行可能な任意の他の順序で、実行され得る。
【0148】
クレームにおける「a」、「an」、および「the」などの冠詞は、それとは反対に指し示されない限り、または別様に文脈から明白でない限り、1または1より多いことを意味してもよい。本明細書中、代名詞が性別で使用される場合(例として、男性形の語、女性形の語、中性形の語、その他、等々…)はいつでも、文脈が明確に指し示さないかまたは別様に要さない限り、代名詞は、暗示される性別を問わず、中性の性として解釈されるものとする(すなわち、すべての性を等しく指すものと解釈される)。本明細書に使用される場合はいつでも、文脈が明確に指し示さないかまたは別様に要さない限り、単数形で使用される語は複数形を包含し、複数形で使用される語は単数形を包含する。群の1以上のメンバー間に「or」を包含するクレームまたは記載は、それとは反対に指し示されない限り、または別様に文脈から明白でない限り、群メンバーの1つ、1より多くの、またはすべてが、所定の産物もしくはプロセスに存在するか、これに採用されるか、または別様に関係がある場合に満たされると見なされる。本開示は、群の厳密に1つのメンバーが、所定の産物もしくはプロセスに存在するか、これに採用されるか、または別様に関係がある態様を包含する。本開示は、群メンバーの1つより多いかまたはすべてが、所定の産物もしくはプロセスに存在するか、これに採用されるか、または別様に関係がある態様を包含する。
【0149】
さらにまた、本開示は、列挙されたクレームの1以上からの1以上の限定、要素、節、および記述用語が別のクレーム中へ導入される、すべてのバリエーション、組み合わせ、および順列を網羅する。例えば、別のクレームに従属する任意のクレームは、同じ基礎クレームに従属するいずれか他のクレームに見出される1以上の限定を包含するように修飾され得る。要素が列挙として提示される場合(例として、マーカッシュ群の形式で)、要素の各下位群もまた開示されており、任意の要素(単数または複数)が群から除去され得る。一般に、本開示または本開示の側面が具体的な要素および/または特色を含むものとして言及される場合、本開示のある態様または本開示の側面は、かかる要素および/または特色からなるか、あるいは本質的にそれらからなると理解されるはずである。簡素化を目的として、それらの態様は、本明細書中そのようには具体的に表されていない。また用語「を含む(comprising)」および「を含有する(containing)」はオープンであることを意図し、追加の要素またはステップの包含を可能にさせることにも留意。範囲が与えられている場合、エンドポイントは、別様に特定されない限り、かかる範囲に包含される。さらにまた、別様に指し示されない限り、または文脈および当業者の理解から明白でない限り、範囲として表現される値は、別様に文脈が明確に指示しない限り、本開示の種々の態様における規定された範囲内の任意の特定の値または部分範囲が、範囲の下限の単位の10分の1までであることを前提とし得る。
【0150】
当業者は、本明細書に記載の特定の態様との多くの等価物を認識、またはわずかな定型的な実験法を使用してこれを突き止めることができるであろう。本明細書に記載の本態様の範囲は、上の記載に限定されることを意図していないが、むしろ添付のクレームで表されるとおりである。当業者は、この記載に対する様々な変化および修飾が、本開示の精神または範囲から逸脱せずに、以下のクレームに定義されるとおりになされてもよいことを解するであろう。
【0151】

例1
導入
3MH、3MHA、および4MMPといった揮発性チオール分子は、ある食品および飲料に見出される熱帯産果実のフレーバーの主要原因である。ワイン産業内では、ブドウ果醪の発酵の最中のSaccharomycesワイン酵母によるこれら揮発性チオールの生合成を増強する研究努力がかなりなされてきた。これらの努力は主に、それらシステイン抱合体前駆体から3MHおよび4MMPを産生するベータ-リアーゼ触媒酵素反応の効率を増大させることに重点を置いている。幾つかのグループは、内在性の酵母ベータ-リアーゼIRC7およびSTR3の過剰発現が、ブドウ果醪または合成ブドウ媒体(synthetic grape mediza)のいずれかの発酵の最中に、揮発性チオールの産生を増強し得ることを示している7,10。酵母細胞におけるEscherichia coli(E.coli)トリプトファナーゼ/ベータ-リアーゼ、TnaAの発現が、ブドウ果汁とsauvignon blanc果汁との両モデルの発酵の最中に、揮発性チオール産生を大いに増強することもまた、示されている5,30
【0152】
WLP001 H463F突然変異はインドール産生を阻害しつつ3MH濃度を増大する
Saccharomyces醸造者の酵母におけるIRC7、STR3、またはTnaAの過剰発現が、ビール発酵の最中に揮発性チオール放出を増強するかを調べた。これら遺伝子の各々を、California Ale Yeast、WLP001のADE2遺伝子座中へ順にインテグレートした。強い構成的プロモーターPGK1を、異種遺伝子の発現を推進するために使用した。
【0153】
ビールを、IRC7-、STR3-、またはTnaA-を過剰発現する酵母株、ならびに非改変WLP001対照(野生型)を使用して醸造した。発酵に続く官能分析によって、STR3を過剰発現する酵母細胞またはIRC7過剰発現株で発酵されたビールが、野生型対照株に匹敵する臭いプロファイルを有したことが指し示された。対照的に、TnaAを過剰発現する酵母細胞によって発酵されたビールは、熱帯産/グアバおよび排泄物/おむつ(すなわち、異臭)として特徴付けられる、独特な強い臭いを有した。
【0154】
揮発性チオールおよび他のフレーバー分子各々の発酵の最中に産生されたこれらの濃度を定量的に測定するため、ガスクロマトグラフィー/質量分析(GC/MS)分析をこれらビールに対して実施した。分析によって、野生型株によって醸造されたビールにおける揮発性チオール3MH、3MHA、および4MMPの濃度が極めて低かったこと、注目すべきことにはリットル当たり5ナノグラム(ng/L)というアッセイの検出限界を下回ったことが明らかにされた。STR3またはIRC7の過剰発現は、揮発性チオール産生に対して無視できるほどの影響しか与えなかった。また、これらの株によって醸造されたビールにおけるこれらのチオールのレベルも検出限界を下回った(図3、Y27およびY33)。対照的に、TnaA(Y182)を過剰発現する酵母株を使用して醸造されたビールは、229ng/Lの3MHを含有しており、野生型株を使用して醸造されたビールと比較して45倍超の増加であった(図3)。
【0155】
TnaA発現はまた、他の未同定チオール分子の増大した産生(示されていない)、ならびに強い排泄物臭を伝えることが知られているオフフレーバー分子であるインドールの実質的な産生(302μg/L)へも繋がった(図3)。これらのデータから、醸造用酵母におけるTnaA発現は、ビールにおいて熱帯産果実のフレーバーを伝える3MHおよび他の揮発性チオールの濃度を増大させるが、しかしながら、オフフレーバーの、望ましくない産物であるインドールの産生も増大させると結論付けられた。
【0156】
先の研究は、TnaAがトリプトファンの切断によってインドールの産生を触媒することを見出した30。いずれの具体的な理論にも拘束されることは望まないが、TnaAを過剰発現する酵母細胞によって発酵されたビールにおける、インドールの増大した産生が、TnaAによるトリプトファンの切断に起因すると仮定した。次いでTnaAを、アミノ酸H463を突然変異させることでTnaA-H463Fバリアントを生成することによって、熱帯産果実のフレーバーがある揮発性チオールの前駆体であるシステイン抱合体基質との相対的に高い活性を維持しつつ、基質としてのトリプトファンとの活性を低減するよう改変した。
【0157】
基質トリプトファン、およびシステイン抱合体であるS-エチル-L-システインとの、数種のTnaA突然変異体の活性は、報告されている25。文献からのデータは、H463F突然変異の導入が、S-エチル-L-システインとの活性を2倍までしか減少させなかったのに対し、トリプトファンとのTnaA活性を>2000倍減少させたことを示した。
【0158】
TnaA-H463F突然変異をWLP001株中へインテグレートし、上に記載のとおりの麦芽汁発酵でビールを産生するのに使用した。完成した(finished)ビールは、強いグアバ/パパイヤの芳香を有することが見出され、野生型TnaAを発現する酵母を使用して醸造されたビールとは対照的に、いずれの排泄物臭も含有しなかった。GC/MS分析によって、TnaA-H463Fを発現する酵母で発酵されたビールにおけるインドールの濃度は無視できるほどであったことが明らかにされた(図3、Y502)。驚くべきことに、H463F置換はこれまでに、TnaA酵素のシステイン抱合体との活性を低減することが報告されていたが、3MHの濃度は、野生型TnaAを発現する酵母細胞を使用して産生されたビールと比較すると、TnaA-H463Fを発現する酵母細胞を使用して産生されたビールにおいては~25%増大した。TnaA-H463F突然変異体で醸造されたビールにおける3MH濃度は285ng/Lであり、Y182および野生型酵母株で醸造されたビールと比較すると夫々1.25倍および56倍の増加であった。
【0159】
これらのデータによって、ビール醸造用酵母株におけるTnaA-H463Fの発現は、ビールにおける3MHの着実な産生を推進し、また望ましくないインドールの産生も低減することが指し示される。加えて、TnaAにおけるH463F突然変異はまた、野生型TnaAを発現する酵母細胞を使用して産生された3MHのレベルと比べて、ビールにおける3MHの産生を増加させることも予想外に見出された。
【0160】
方法
醸造用酵母株の構築
ここで使用された、TnaAをコードする配列は、Citrobacter amalonaticusに由来し、Saccharomyces酵母における発現のためにコドンを最適化した。このコード配列は、TWIST Bioscience(San Francisco、CA)によって合成されたものであり、これを、Saccharomyces cerevisiaeに由来するPGK1プロモーター配列とENO1ターミネーター配列とに挟まれるようにプラスミド中へクローニングした。このプラスミドはまた、Saccharomyces cerevisiae ADE2をコードする配列および調節性領域も含有しており、加えて、相同組換えによる醸造用酵母中へのゲノムの挿入を可能にさせる、ADE2遺伝子座と相同の配列をコードしていた。このプラスミドを鋳型として使用し、TnaA-H463F遺伝子をPCR変異誘発によって作製した。本研究において使用されたSTR3およびIRC7をコードする配列は、ワイン酵母株VL3からPCR増幅し、インテグレーション用プラスミド中へ類似してクローニングした。
【0161】
酵母中への形質転換に先立ち、プラスミドを制限酵素で消化して、ADE2と、ADE2相同性領域の脇に関心のある遺伝子とを含有する線状DNAフラグメントを生産した。線状DNAで、ADE2コード配列の欠失を担持する醸造用酵母株WLP001を形質転換し、TnaA-H463F遺伝子をコードする核酸の相同組換えをもたらした。
【0162】
形質転換から3日間後、白色コロニーを、TnaA-ADE2核酸によるアデニン生合成経路の救済(rescue)に基づき選択し、ADE2遺伝子座でのADE2/TnaA-H463F DNAの挿入について、診断(diagnostic)PCRによってスクリーニングした。
【0163】
ビール醸造
株をYPD培地上に画線し、25℃にて3日間成長させた。単一のコロニーを使用して、ガラス培養管中の初期5ミリリットル(mL)麦芽抽出物(ME,Sigma-Aldrich,St.Louis,MO,USA)培養物に植菌し、これを毎分回転数(rpm)200にて振盪させながら25℃にて1日成長させた。その結果得られた培養物を使用して、2Lガラスエルレンマイヤーフラスコ中の1リットル(L)ME培養物に植菌し、次いでこれを200rpmにて振盪させながら25℃にて2日間成長させた。次いで、その結果得られた培養物を使用して、円錐発酵槽中の20Lビール麦芽汁に植菌し、20℃にて10日間成長させた。
【0164】
ビール発酵のため、28.6キログラム(kg)の二条(2-Row)麦芽を製粉して2.3kg燕麦と組み合わせ、39グラム(g)の醸造用塩で処置された100Lの水へ加えた。糖化を67℃にて60分(min)間実施した。麦芽汁を10min間再循環させ、麦汁濾過(lautering)によって分離した。麦汁ろ過(Sparging)を37min間行い、醸造酒用やかん中の最終的な煮沸前の体積が146Lになった。麦芽汁を、137Lの終体積および12.6プラート(Plato)の比重に達するまで煮沸した。58グラムのWarriorホップペレットをやかんへ加え、1時間(h)煮沸した。成分を、別様に述べた場合を除き、Brewers Supply Group(Shakopee,MN,USA)から調達した。麦芽汁をホットトリューブ(hot trub)から分離した後、これを6つの20L円錐発酵槽(SS Brewtech,Temecula,CA,USA)へ移した。ビールを、最終比重に達するまで20℃にて発酵させ、ビシナルジケトン(VDK)除去のためもう24h間この状態にさせ、次いで0℃の冷却条件下に置く(cold conditioned at 0℃)ことで完成したビールが生産され、続いてこれを、揮発性チオールおよびインドールについてガスクロマトグラフィー質量分析によって分析した。
【0165】
GC/MS分析
3メルカプトヘキサノールおよびインドールを、ポジティブモードで操作する電子イオン化供給源を備えたAgilent 6890シリーズGCおよび5973N質量選択検出器(Agilent Technologies,Santa Clara,CA,USA)を使用し、ガスクロマトグラフィー/質量分析(GC/MS)分析によって定量化した。すべての実験について、ヘリウム(He)を担体ガスとして使用し、HP-5msカラム(Agilent、長さ30m、内径(i.d.)0.25mm、フィルム厚0.25μm)上へ1.0mL/minの定速にて流した。オーブン温度を50℃にて3min間その状態にして、275℃の温度まで10℃/minの勾配が続き、1min間この状態にし、325℃の終温度まで50℃/minの勾配が続き、5min間この状態にした。すべての試薬および標準物質は、Sigma-Aldrich,St.Louis,MO,USAから取得した。
【0166】
試料採取およびイオン監視を各アナライトについて最適化した:3メルカプトヘキサノールを定量化するため、200mLの完成したビールを分析に使用した。1g EDTAジナトリウム塩および2g NaClを加え、試料を分液漏斗において23mLペンタンで2回抽出した。有機相を合わせ、次いで20mL NaHCO3(体積に対し0.3%重量(w/v)、pH6)で洗浄した。チオールを脱プロトン化し、6mL冷(4℃)1N NaOH中へ逆抽出することによって有機相から抽出した。次いで水相を20mLヘッドスペースバイアルへ移した。残余ペンタンを、試料上N2ガスを7min間絶え間なく流すことによって除去した。100マイクロリットル(μL)の2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンジル臭化物(EtOH中0.4%v/v)を加え、バイアルをねじ蓋で密封し、室温にて20min間誘導体化した。次いで0.5g酒石酸を加え、試料のpHを~4.5まで減少させた。2g NaClを、バイアルを再密封する前に加えた。誘導体化されたチオールを70℃にて1時間、PDMS/DVB固相マイクロ抽出ファイバー上へ吸着させた。次いでアナライトを、スプリットレス注射を使用し10min間250℃にてカラム上へ脱着させた。誘導体化されたチオールを、m/zイオン133および181を選択的に監視することによって検出した。3メルカプトヘキサノールのピーク面積を、MassHunterソフトウェア(Agilent Technologies,Santa Clara,CA,USA)を使用して定量化した。絶対試料濃度を、真正標準物質から構成される標準曲線から生成された線状モデルを使用し、かつ定量的(quant)イオンとして181を使用して算出した。
【0167】
インドールを定量化するため、1mLのビールを試料採取し、0.5mL酢酸エチルで10秒(sec)間ボルテックスすることによって抽出し、これに続き10min間15,000×重力にて遠心分離した。有機相を1.5mL管へ移し、Na2SO4を過剰に加えることで残余水を除去した。次いで試料を短時間ボルテックスし、5min間15,000×重力にて遠心分離した。次いで酢酸エチルをGCバイアルへ移し、その結果得られた1μLの抽出物を、スプリットレス注射を使用してカラム上へ注入した。インドールを、m/zイオン63、90、および117を選択的に監視することによって検出した。インドールのピーク面積を、Agilent MassHunter定性的ソフトウェアを使用して定量化した。絶対試料濃度を、真正標準物質から構成される標準曲線から生成された線状モデルを使用し、かつ定量的(quant)イオンとして117を使用して算出した。
【0168】
図2に示されるとおり、野生型TnaAを過剰発現するWLP001(Y182)とTnaA-H463F突然変異体を過剰発現するWLP001(Y502)とを使用して醸造されたビールは、野生型California Ale Yeast(WLP001)、IRC7を過剰発現するWLP001(Y27)、およびSTR3を過剰発現するWLP001(Y33)を使用して醸造されたビールと比べて、増大した濃度の3MHを含有することが見出された。しかしながら、野生型TnaAを過剰発現するWLP001(Y182)を使用して醸造されたビールはまた、増大した濃度のインドールを含有することも見出されたのに対し、TnaA-H463F突然変異体を過剰発現するWLP001(Y502)を使用して醸造されたビールは、低レベルのインドールを含有していた。
【0169】
例2
ワイン発酵株の生成
TnaAをコードする配列は、例1に記載のとおり、Citrobacter amalonaticusに由来し、Saccharomyces酵母における発現のためにコドン最適化し、ワイン発酵酵母株Red Star Cote des Blancs中へ形質転換するために使用した。
【0170】
発酵産物の産生
本明細書に記載の遺伝子学的に修飾された酵母株を、ビールおよびワインの発酵において評価した。手短に言えば、例1に記載のビール醸造株California Ale Yeast WLP001と、野生型TnaA(Y919)およびTnaA H463F(Y484)を発現するワイン発酵株Red Star Cote de Blancsとを培養し、初期培養物に植菌するために使用した。その結果得られた培養物を、より大きな培養物に植菌するために使用し、次いでこれを数日間成長させた。次いで、その結果得られた培養物を使用し、発酵槽中、ビール発酵のケースにおいては20L麦芽汁に植菌し、またはワイン発酵についてはブドウ果醪もしくはブドウ果汁に植菌し、所望される最終比重に達するまで数日間成長させた。例1に記載のとおり、ビールおよびワインを続いて、揮発性チオールおよびインドールについてガスクロマトグラフィー質量分析よって分析した。
【0171】
図3Aおよび3Bに示されるとおり、TnaA H463F突然変異体を発現する株は、増大した3MH濃度を有する発酵産物をもたらしたが、野生型親株(WLP001およびRed Starの夫々)に匹敵するインドール濃度も保持した。
【0172】
例3
前駆体の発酵プロセスへの添加
本明細書に記載の酵母株を、前駆体の発酵プロセスへの(図1Gに示されるとおり、少なくとも1つの前駆体の、培地への、または最初の発酵プロセスの最中での)添加を伴うプロセスを使用した発酵産物の産生について、さらに分析した。
【0173】
酵母株を例1に記載のとおりに培養した。発酵プロセスの初期にて、グルタチオンに抱合された3-メルカプトヘキサン-1-オール(Glut-3-MH)を麦芽汁へ加えた。酵母株を、Glut-3-MHの存在下または不在下で麦芽汁に植菌した。ビールを、最終比重に達するまで20℃にて発酵させ、ビシナルジケトン(VDK)除去のためもう24h間この状態にさせ、次いで0℃の冷却条件下に置くことで完成したビールが生産され、続いてこれを、揮発性チオールおよびインドールについてガスクロマトグラフィー質量分析によって分析した。
【0174】
図4Aおよび4Bに示されるとおり、3MHの濃度は、発酵プロセスへの追加のGlut-3-MHの存在下もしくは不在下で野生型TnaAまたはTnaA H463F突然変異体を発現する株を使用したビール発酵の発酵産物において増大していた。インドール濃度もまた、野生型TnaAを発現する株を使用したビール発酵の発酵産物において増大していたが、しかしながら、TnaA H463F突然変異体を発現する株を使用したビール発酵におけるインドール濃度は、発酵プロセスへの追加のGlut-3-MHの存在下または不在下で、野生型親株(WLP001)に匹敵していた。発酵プロセスへの前駆体Glut-3MHの添加は、Glut-3MHの添加がない対照発酵と比較して、増大した3MHの産生をもたらした。
【0175】
例4
TnaA置換変異体の評価
例1に記載のとおり、TnaA H463F突然変異体を発現する酵母株を使用して醸造されたビールは、野生型TnaAを発現する酵母株を使用して醸造されたビールと比較して、増大したレベルの3MHおよび低レベルのインドールを含有することが見出された。TnaAの位置463でのヒスチジン残基の追加のアミノ酸置換もまた評価した。手短に言えば、位置463でのヒスチジン残基の、アルギニン(H463R)、グルタミン酸(H463E)、トレオニン(H463T)、グリシン(H463G)、イソロイシン(H463I)、またはバリン(H463V)への置換を含有する突然変異TnaA遺伝子を、PCR変異誘発によって作製し、HHF2プロモーター制御下での発現プラスミド中へクローニングし、酵母株中へ形質転換した。表1を見よ。
【0176】
表1:酵母株
【表1】
【0177】
酵母株を麦芽汁に植菌し、最終比重に達するまで20℃にて発酵させ、ビシナルジケトン(VDK)除去のためもう24h間この状態にさせ、次いで0℃の冷却条件下に置くことで完成したビールが生産され、続いてこれを、揮発性チオールおよびインドールについてガスクロマトグラフィー質量分析によって分析した。
【0178】
図5に示されるとおり、3MHの濃度は、野生型TnaAまたはTnaA H463突然変異体を発現する株を使用したビール発酵の発酵産物において増大していた。インドール濃度もまた、野生型TnaAを発現する株を使用したビール発酵の発酵産物において増大していたが、しかしながら、TnaA H463突然変異体を発現する株を使用したビール発酵におけるインドール濃度は、野生型親株(WLP001)に匹敵していた。
【0179】
TnaAホモログの評価
C.amalonaticusからのTnaAのホモログを同定し、PGK1プロモーター制御下でのインテグレーションプラスミド中へクローニングし、酵母株中へ形質転換した。表1を見よ。
【0180】
酵母株を麦芽汁に植菌し、最終比重に達するまで20℃にて発酵させ、ビシナルジケトン(VDK)除去のためもう24h間この状態にさせ、次いで0℃の冷却条件下に置くことで完成したビールが生産され、続いてこれを、揮発性チオールおよびインドールについてガスクロマトグラフィー質量分析によって分析した。
【0181】
図6に示されるとおり、3MHの濃度は、野生型TnaAを発現する株、TnaA H463F突然変異体を発現する株、またはT.asperellum、A.saccharolyticus、およびZ.ganghwensisからのTnaAホモログ(夫々、C.amalonaticusからのTnaAと38%、44%、および82%の配列同一性を有する)を発現する株を使用して醸造されたビールにおいて増大していた。インドール濃度もまた、野生型TnaAを発現する株を使用して醸造されたビールにおいて増大していたが、しかしながら、TnaA H463F突然変異体を発現する株、またはA.saccharolyticusおよびZ.ganghwensisからのTnaAホモログを発現する株を使用したビール発酵におけるインドール濃度は、野生型親株(WLP001)に匹敵していた。
【0182】
参考文献
【表2-1】
【0183】
【表2-2】
【0184】
【表2-3】
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
2022553039000001.app
【国際調査報告】