(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-21
(54)【発明の名称】低タンパク質濃度のタンパク質損失を最小限に抑えるための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20221214BHJP
A61K 47/60 20170101ALI20221214BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20221214BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20221214BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20221214BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20221214BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20221214BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20221214BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20221214BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221214BHJP
A61J 1/10 20060101ALI20221214BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20221214BHJP
C07K 16/46 20060101ALN20221214BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20221214BHJP
【FI】
A61K39/395 Z
A61K47/60
A61K47/10
A61K47/02
A61K47/18
A61K47/26
A61K47/36
A61K47/12
A61K9/10
A61P35/00
A61J1/10 331A
A61J1/10 331B
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523597
(86)(22)【出願日】2020-10-23
(85)【翻訳文提出日】2022-06-15
(86)【国際出願番号】 US2020057065
(87)【国際公開番号】W WO2021081326
(87)【国際公開日】2021-04-29
(32)【優先日】2019-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500203709
【氏名又は名称】アムジェン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ジュー, チェン
(72)【発明者】
【氏名】グリーン, ダニエル ジェラード
(72)【発明者】
【氏名】ハオ, チー
(72)【発明者】
【氏名】カナプラム, シェカール
(72)【発明者】
【氏名】トゥルーハイト, マイケル ジョン
【テーマコード(参考)】
4C047
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C047AA11
4C047AA21
4C047BB11
4C047BB12
4C047BB22
4C047CC04
4C076AA16
4C076BB13
4C076CC27
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4C085AA13
4C085AA40
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4C085CC32
4C085DD51
4C085EE01
4C085EE05
4C085GG02
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
(57)【要約】
本発明は、低タンパク質濃度の(例えば、固体表面への吸着による)タンパク質損失を最小限に抑えるための組成物及び方法に関する。本明細書で開示される発明は、概して、タンパク質を含む組成物、特に低タンパク質濃度の治療用タンパク質を含む医薬組成物の分野に関する。本明細書で開示される発明はまた、組成物をそれを必要とする対象に投与する方法に関する。本明細書に開示される発明は、界面活性剤がその臨界ミセル濃度よりも低い濃度で使用される場合、界面活性剤は液体組成物中で低濃度のタンパク質を安定化し、固体表面への吸着によるタンパク質損失を効果的に防止できるという驚くべき発見に基づく。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約0.001μg/mL~約100μg/mLの濃度の二重特異性抗体コンストラクトと、界面活性剤の臨界ミセル濃度(CMC)の少なくとも約0.25倍の濃度の前記界面活性剤と、を含む水性組成物であって、前記二重特異性抗体コンストラクトが、標的細胞表面抗原に結合する第1の結合ドメイン、T細胞の表面上のヒトCD3に結合する第2の結合ドメイン、及び任意選択的にアミノからカルボキシルの順にヒンジ-CH2ドメイン-CH3ドメイン-リンカー-ヒンジ-CH2ドメイン-CH3ドメインを含む第3のドメインを含み、前記第2の結合ドメインが、配列番号201の配列を有するポリペプチドを含む、組成物。
【請求項2】
前記二重特異性抗体コンストラクトが、約0.001μg/mL~約50μg/mLの濃度で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記二重特異性抗体コンストラクトが、約0.01μg/mL~約50μg/mL、又は0.1μg/mL~約50μg/mL、又は0.1μg/mL~約10μg/mL、又は1μg/mL~約10μg/mLの濃度で存在する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記界面活性剤が、ポリソルベート、ポロキサマー、又はトリトンX-100である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記界面活性剤が、ポリソルベート80、ポリソルベート60、ポリソルベート40、ポリソルベート20、又はトリトンX-100である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記界面活性剤が、ポロキサマー188、又はポロキサマー407である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記界面活性剤が、前記界面活性剤のCMCの約0.25倍~約20倍、又はCMCの約0.25倍~約10倍の濃度で存在する、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が、塩、アミノ酸、糖類若しくは糖類誘導体、又はこれらの組み合わせを更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が、緩衝剤又は防腐剤を更に含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物のpHが、約3.5~約7.5である、請求項8又は9に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物のpHが、約4.2~約7.0である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記塩が、NaClである、請求項8~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記糖類又は糖類誘導体が、単糖類、二糖類、環状多糖類、又は糖アルコールである、請求項8~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記糖類が、スクロース、トレハロース、マンニトール、又はソルビトールである、請求項8~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記アミノ酸が、リジンである、請求項8~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記緩衝剤が、酢酸緩衝剤、グルタミン酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、コハク酸緩衝剤、酒石酸緩衝剤、フマル酸緩衝剤、マレイン酸緩衝剤、ヒスチジン緩衝剤、又はリン酸緩衝剤である、請求項9~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記二重特異性抗体コンストラクトの前記第1及び第2の結合ドメインの各々が、VH領域及びVL領域を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記二重特異性抗体コンストラクトが、単鎖抗体コンストラクトである、請求項1~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記二重特異性抗体コンストラクトが、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号24、配列番号25、配列番号47、配列番号48、配列番号66、配列番号67、配列番号76、配列番号78、配列番号87、配列番号88、配列番号108、配列番号109、配列番号110、配列番号165、配列番号166、配列番号167、配列番号176、配列番号178、及び配列番号192から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物が、医薬組成物である、請求項1~19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記組成物が、プラスチック容器に収容されている、請求項1~20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
前記容器が、ポリオレフィン、PVC、EVA、又はポリウレタンを含む材料から作製される、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記容器が、PVCを含む材料から作製され、ここで、前記PVCが、DEHP又はTOTMを実質的に含まない、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記容器が、IVバッグ又はIVチューブである、請求項21~23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
容器内に収容されている水性医薬組成物を含む医薬製剤であって、前記水性医薬組成物が:
a)0.001μg/mL~約100μg/mLの濃度の二重特異性抗体コンストラクトと、
b)界面活性剤のCMCの少なくとも約0.25倍の濃度の前記界面活性剤と、
を含み、前記界面活性剤が、少なくとも20のHLB値を有する、医薬製剤。
【請求項26】
前記水性医薬組成物が、約0.001μg/mL~約50μg/mLの濃度の前記二重特異性抗体コンストラクトを含む、請求項25に記載の医薬製剤。
【請求項27】
前記水性医薬組成物が、前記界面活性剤のCMCの約0.25倍~約20倍、又はCMCの約0.25倍~約10倍の濃度の前記界面活性剤を含む、請求項25又は26に記載の医薬製剤。
【請求項28】
前記水性医薬組成物が、塩、緩衝剤、アミノ酸、糖類若しくは糖類誘導体、又はこれらの組み合わせを更に含む、請求項25~27のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項29】
前記水性医薬組成物が、約4.2~約7.0のpHを有する、請求項25~28のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項30】
前記容器が、ポリオレフィン、PVC、EVA、又はポリウレタンを含む材料から作製される、請求項25~29のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項31】
前記二重特異性抗体コンストラクトが、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号24、配列番号25、配列番号47、配列番号48、配列番号66、配列番号67、配列番号76、配列番号78、配列番号87、配列番号88、配列番号108、配列番号109、配列番号110、配列番号165、配列番号166、配列番号167、配列番号176、配列番号178、及び配列番号192から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む、請求項25~30のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項32】
二重特異性抗体コンストラクトを患者に投与する方法であって:
a)容器中で水性医薬組成物を調製することであって、前記水性医薬組成物が、約0.001μg/mL~約100μg/mLの濃度の前記二重特異性抗体コンストラクトと、界面活性剤のCMCの少なくとも約0.25倍の濃度の前記界面活性剤と、を含むことと、
b)前記水性医薬組成物を前記患者に投与することと、を含み、
前記二重特異性抗体コンストラクトが、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号24、配列番号25、配列番号47、配列番号48、配列番号66、配列番号67、配列番号76、配列番号78、配列番号87、配列番号88、配列番号108、配列番号109、配列番号110、配列番号165、配列番号166、配列番号167、配列番号176、配列番号178、及び配列番号192から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む、方法。
【請求項33】
前記水性医薬組成物が、約0.001μg/mL~約50μg/mLの濃度の前記二重特異性抗体コンストラクトを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記水性医薬組成物が、前記界面活性剤のCMCの約0.25倍~約20倍、又はCMCの約0.25倍~約10倍の濃度の前記界面活性剤を含む、請求項32又は33に記載の方法。
【請求項35】
前記界面活性剤が、ポリソルベート80、ポリソルベート60、ポリソルベート40、ポリソルベート20、ポロキサマー188、ポロキサマー407、又はトリトンX-100である、請求項32~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記水性医薬組成物が、塩、緩衝剤、アミノ酸、糖類、及び防腐剤から選択される1つ以上を更に含む、請求項32~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記水性医薬組成物が、約4.2~約7.0のpHを有する、請求項32~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記容器が、ポリオレフィン、PVC、EVA、又はポリウレタンを含む材料から作製される、請求項32~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記界面活性剤が、ポリソルベート80、ポリソルベート60、ポリソルベート40、又はポリソルベート20であって、前記容器が、DEHP又はTOTMを実質的に含まないPVCを含む材料から作製される、請求項32~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記水性医薬組成物が、前記二重特異性抗体コンストラクトを含む第1の組成物を好適な水溶液で希釈することによって調製される、請求項32~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記第1の組成物が、前記二重特異性抗体コンストラクトを含む液体組成物である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記第1の組成物が、前記二重特異性抗体コンストラクトを含む凍結乾燥組成物から再構成された液体組成物である、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記好適な溶液が、前記界面活性剤のCMCの少なくとも約0.25倍の濃度の前記界面活性剤を含む、請求項41~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記水性医薬組成物が、前記好適な水溶液を前記容器中に添加し、続いて適切な量の前記第1の組成物を前記容器中に添加することによって調製される、請求項40~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記患者が、癌患者である、請求項32~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記投与が、IV投与である、請求項32~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記界面活性剤が、ポロキサマー188、又はポロキサマー407である、請求項25~31のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項48】
前記二重特異性抗体コンストラクトが、配列番号13、配列番号15、配列番号25、配列番号48、配列番号67、配列番号78、配列番号88、配列番号109、配列番号110、配列番号165、配列番号166、配列番号167、配列番号178、又は配列番号192のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む、請求項19に記載の組成物、請求項31に記載の医薬製剤、又は請求項32に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2019年10月25日に出願された米国仮特許出願第62/926,089号の利益を主張するものであり、これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
ASCIIテキストファイルに記録された配列表の提出
ASCIIテキストファイルに関する次の提出物の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる:コンピュータ可読形式(CRF)のシーケンスリスト(ファイル名:A-2429-WO-PCT_ST25、データ作成日:2020年10月23日 サイズ:451,608バイト)。
【0003】
本明細書で開示される発明は、概して、タンパク質を含む組成物、特に低タンパク質濃度の治療用タンパク質を含む医薬組成物の分野に関する。本明細書で開示される発明はまた、組成物をそれを必要とする対象に投与する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
治療用タンパク質は、患者を治療するための重要な種類の治療法である。タンパク質分子は界面活性であり、固体表面への潜在的な吸着を受ける。医薬組成物中の治療用タンパク質は、タンパク質が接触する固体表面(例えば、医薬組成物を収容している容器の表面)に吸着される可能性があり、これは、貯蔵及び使用中にタンパク質の損失をもたらす可能性がある。一般に、これらの組成物中の治療用タンパク質の濃度は高く(例えば、1mg/mL以上)、その結果、固体表面へのタンパク質の吸着は、患者への投与に利用できる薬物の不十分な量をもたらさない。しかしながら、組成物中のタンパク質の濃度が低い(例えば、患者に投与する前に組成物を希釈する場合など、0.1mg/mL未満である)場合、タンパク質損失のリスクがより顕著になる可能性があり、これは潜在的に患者への投与に利用できる薬物の不十分な量につながる可能性がある。
【0005】
界面活性剤は、一般に、治療用タンパク質を含む医薬組成物において、例えば、タンパク質凝集を防止し、タンパク質を安定化するために使用される。タンパク質が医薬組成物中に低濃度(例えば、0.1mg/mL以下)で存在する場合、界面活性剤を使用して表面吸着によるタンパク質の損失を効果的に防止できるかどうかは不明である。
【0006】
特に組成物が低タンパク質濃度のタンパク質を含む場合、固体表面への吸着によるタンパク質損失を最小限に抑えるタンパク質組成物及び方法が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
低タンパク質濃度のタンパク質を含む組成物、並びに組成物をそれを必要とする対象に投与する方法が、本明細書で開示される。本明細書で開示される組成物及び方法は、固体表面へのタンパク質吸着によるタンパク質損失を最小化又は排除し、患者への治療用タンパク質の正確な投与を確実にするという利点を有する。
【0008】
特定の実施形態では、タンパク質と、界面活性剤と、を含む水性組成物であって、タンパク質が、約0.001μg/mL~約100μg/mLの濃度で組成物中に存在し、界面活性剤が、界面活性剤の臨界ミセル濃度(CMC)の少なくとも約0.25倍の濃度で組成物中に存在する、水性組成物が、本明細書で開示される。
【0009】
特定の実施形態では、タンパク質は、標的細胞表面抗原に結合する第1の結合ドメイン、T細胞の表面上のヒトCD3に結合する第2の結合ドメイン、及び任意選択的にアミノからカルボキシルの順にヒンジ-CH2ドメイン-CH3ドメイン-リンカー-ヒンジ-CH2ドメイン-CH3ドメインを含む第3のドメインを含む二重特異性抗体コンストラクトである。特定の実施形態では、第2の結合ドメインは、配列番号201の配列を有するポリペプチドを含む。特定の実施形態では、二重特異性抗体コンストラクトは、約0.001μg/mL~約50μg/mL、又は約0.01μg/mL~約50μg/mL、又は0.1μg/mL~約50μg/mL、又は0.1μg/mL~約10μg/mL、又は1μg/mL~約10μg/mLの濃度で存在する。
【0010】
特定の実施形態では、界面活性剤は、ポリソルベート、ポロキサマー、又はトリトンX-100である。特定の実施形態では、界面活性剤は、ポリソルベート80、ポリソルベート60、ポリソルベート40、ポリソルベート20、又はトリトンX-100である。特定の実施形態では、界面活性剤は、ポロキサマー188、又はポロキサマー407である。特定の実施形態では、界面活性剤は、界面活性剤のCMCの約0.25倍~約20倍、又はCMCの約0.25倍~約10倍の濃度で存在する。
【0011】
特定の実施形態では、組成物は、塩、アミノ酸、糖類若しくは糖類誘導体、又はこれらの組み合わせを更に含む。特定の実施形態では、塩は、NaClである。特定の実施形態では、糖類又は糖類誘導体は、単糖類、二糖類、環状多糖類、又は糖アルコールである。特定の実施形態では、糖類は、スクロース、トレハロース、マンニトール、又はソルビトールである。特定の実施形態では、アミノ酸は、リジンである。
【0012】
特定の実施形態では、組成物のpHは、約3.5~約7.5である。特定の実施形態では、組成物のpHは、約4.2~約7.0である。
【0013】
特定の実施形態では、組成物は、緩衝剤又は防腐剤を更に含む。特定の実施形態では、緩衝剤は、酢酸緩衝剤、グルタミン酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、コハク酸緩衝剤、酒石酸緩衝剤、フマル酸緩衝剤、マレイン酸緩衝剤、ヒスチジン緩衝剤、又はリン酸緩衝剤である。
【0014】
特定の実施形態では、二重特異性抗体コンストラクトの第1及び第2の結合ドメインの各々は、VH領域及びVL領域を含む。特定の実施形態では、二重特異性抗体コンストラクトは、単鎖抗体コンストラクトである。特定の実施形態では、二重特異性抗体コンストラクトは、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号24、配列番号25、配列番号47、配列番号48、配列番号66、配列番号67、配列番号76、配列番号78、配列番号87、配列番号88、配列番号108、配列番号109、配列番号110、配列番号165、配列番号166、配列番号167、配列番号176、配列番号178、及び配列番号192から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。特定の実施形態では、二重特異性抗体コンストラクトは、配列番号13、配列番号15、配列番号25、配列番号48、配列番号67、配列番号78、配列番号88、配列番号109、配列番号110、配列番号165、配列番号166、配列番号167、配列番号178、又は配列番号192のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
【0015】
特定の実施形態では、組成物は、IVバッグ又はIVチューブなどのプラスチック容器に収容されている。特定の実施形態では、容器は、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、又はポリウレタンを含む材料から作製される。特定の実施形態では、容器は、PVCを含む材料から作製され、ここで、PVCは、ジ-2-エチルヘキシルフタレート(DEHP)又はトリ-2-エチルヘキシルトリメリテート(TOTM)を実質的に含まない。
【0016】
特定の実施形態では、容器内に収容されている水性医薬組成物を含む医薬製剤であって、水性医薬組成物が:約0.001μg/mL~約100μg/mLの濃度の二重特異性抗体コンストラクトと、界面活性剤のCMCの少なくとも約0.25倍の濃度の界面活性剤と、を含み、界面活性剤が、少なくとも20のHLB値を有する、医薬製剤が本明細書で開示される。特定の実施形態では、界面活性剤は、ポロキサマー188、又はポロキサマー407である。特定の実施形態では、水性医薬組成物は、約0.001μg/mL~約50μg/mLの濃度の二重特異性抗体コンストラクトを含む。特定の実施形態では、水性医薬組成物は、界面活性剤のCMCの約0.25倍~約20倍、又はCMCの約0.25倍~約10倍の濃度の界面活性剤を含む。
【0017】
特定の実施形態では、水性医薬組成物は、塩、緩衝剤、アミノ酸、糖類若しくは糖類誘導体、又はこれらの組み合わせを更に含む。特定の実施形態では、水性医薬組成物は、約4.2~約7.0のpHを有する。
【0018】
特定の実施形態では、容器は、ポリオレフィン、PVC、EVA、又はポリウレタン(例えば、ポリエステル及びポリエーテル)を含む材料から作製される。
【0019】
特定の実施形態では、二重特異性抗体コンストラクトは、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号24、配列番号25、配列番号47、配列番号48、配列番号66、配列番号67、配列番号76、配列番号78、配列番号87、配列番号88、配列番号108、配列番号109、配列番号110、配列番号165、配列番号166、配列番号167、配列番号176、配列番号178、及び配列番号192から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。特定の実施形態では、二重特異性抗体コンストラクトは、配列番号13、配列番号15、配列番号25、配列番号48、配列番号67、配列番号78、配列番号88、配列番号109、配列番号110、配列番号165、配列番号166、配列番号167、配列番号178、又は配列番号192のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
【0020】
本明細書ではまた、二重特異性抗体コンストラクトを患者に投与する方法であって:容器中で水性医薬組成物を調製することであって、水性医薬組成物が、約0.001μg/mL~約100μg/mLの濃度の二重特異性抗体コンストラクトと、界面活性剤のCMCの少なくとも約0.25倍の濃度の界面活性剤と、を含むことと、水性医薬組成物を患者に投与することと、を含み、二重特異性抗体コンストラクトが、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号24、配列番号25、配列番号47、配列番号48、配列番号66、配列番号67、配列番号76、配列番号78、配列番号87、配列番号88、配列番号108、配列番号109、配列番号110、配列番号165、配列番号166、配列番号167、配列番号176、配列番号178、及び配列番号192から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む、方法が開示される。特定の実施形態では、二重特異性抗体コンストラクトは、配列番号13、配列番号15、配列番号25、配列番号48、配列番号67、配列番号78、配列番号88、配列番号109、配列番号110、配列番号165、配列番号166、配列番号167、配列番号178、又は配列番号192のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。特定の実施形態では、水性医薬組成物は、約0.001μg/mL~約50μg/mLの濃度の二重特異性抗体コンストラクトを含む。
【0021】
特定の実施形態では、水性医薬組成物は、界面活性剤のCMCの約0.25倍~約20倍、又はCMCの約0.25倍~約10倍の濃度の界面活性剤を含む。特定の実施形態では、界面活性剤は、ポリソルベート80、ポリソルベート60、ポリソルベート40、ポリソルベート20、ポロキサマー188、ポロキサマー407、又はトリトンX-100である。
【0022】
特定の実施形態では、水性医薬組成物は、塩、緩衝剤、アミノ酸、糖類又は糖類誘導体、及び防腐剤から選択される1つ以上を更に含む。特定の実施形態では、水性医薬組成物は、約4.2~約7.0のpHを有する。
【0023】
特定の実施形態では、容器は、ポリオレフィン、PVC、EVA、ポリウレタンを含む材料から作製される。特定の実施形態では、界面活性剤は、ポリソルベート80、ポリソルベート60、ポリソルベート40、又はポリソルベート20であって、容器は、DEHP又はTOTMを実質的に含まないPVCを含む材料から作製される。
【0024】
特定の実施形態では、水性医薬組成物は、二重特異性抗体コンストラクトを含む第1の組成物を好適な水溶液で希釈することによって調製される。特定の実施形態では、第1の組成物は、二重特異性抗体コンストラクトを含む液体組成物である。特定の実施形態では、第1の組成物は、二重特異性抗体コンストラクトを含む凍結乾燥組成物から再構成された液体組成物である。特定の実施形態では、好適な溶液は、界面活性剤のCMCの少なくとも約0.25倍の濃度の界面活性剤を含む。特定の実施形態では、水性医薬組成物は、好適な水溶液を容器中に添加し、続いて適切な量の第1の組成物を容器中に添加することによって調製される。
【0025】
特定の実施形態では、患者は、癌患者である。特定の実施形態では、投与は、IV投与である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、固体表面に結合しているタンパク質を測定するためのアッセイの図解を示す。
【
図2】
図2は、界面活性剤の非存在下での固体表面に結合しているタンパク質を示す。
【
図3】
図3は、様々な界面活性剤の様々な添加が、タンパク質の固体表面への結合を防止することを示す。
【
図4】
図4は、タンパク質を添加する前に界面活性剤を固体表面に添加することが、タンパク質の表面への結合を効率的に防止することを示す。
【
図5】
図5は、DEHP含有PVCからのジ-2-エチルヘキシルフタレート(DEHP)の浸出に対する、同じ濃度での様々な界面活性剤の影響を示す。
【
図6】
図6は、DEHP含有PVCからのDEHPの浸出に対する、CMCの同じ倍率での様々な界面活性剤の影響を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書に開示される発明は、界面活性剤がその臨界ミセル濃度よりも低い濃度で使用される場合、界面活性剤は液体組成物中で低濃度のタンパク質を安定化し、固体表面への吸着によるタンパク質損失を効果的に防止できるという驚くべき発見に基づく。
【0028】
いくつかの実施形態では、タンパク質と、界面活性剤と、を含む水性組成物であって、タンパク質が、約0.001μg/mL~約100μg/mLの濃度で組成物中に存在し、界面活性剤が、界面活性剤の臨界ミセル濃度(CMC)の少なくとも約0.25倍の濃度で組成物中に存在する、水性組成物が、本明細書で開示される。
【0029】
組成物で使用され得る界面活性剤は、典型的には、医薬組成物で使用される任意の界面活性剤であり得る。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、非イオン性界面活性剤である。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80、又はポリソルベート85などのポリソルベートである。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、ポリソルベート20であり、他の実施形態では、界面活性剤は、ポリソルベート80である。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、ポロキサマー124 ポロキサマー188、ポロキサマー237、ポロキサマー338、及びポロキサマー407などのポロキサマーである。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、トリトンX-100である。様々な界面活性剤が市販されている(例えば、Tween(登録商標)20、Tween(登録商標)80、PluronicF68、及びPluronicF127など)。
【0030】
界面活性剤は、その界面活性剤の臨界ミセル濃度(CMC)の少なくとも約0.25倍(0.25x)の濃度で組成物中に存在し得る。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、界面活性剤のCMCの約0.25倍~約20倍の濃度で組成物中に存在する。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、界面活性剤のCMCの約0.25倍~約15倍、又は約0.25倍~約10倍、又は約0.25倍~約8倍、又は約0.25倍~約6倍、又は約0.25倍~約4倍、又は約0.25倍~約2倍、又は約0.25倍~約1倍の濃度で組成物中に存在する。
【0031】
いくつかの実施形態では、界面活性剤は、界面活性剤のCMCの約0.5倍~約20倍の濃度で組成物中に存在する。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、界面活性剤のCMCの約0.5倍~約15倍、又は約0.5倍~約10倍、又は約0.5倍~約8倍、又は約0.5倍~約6倍、又は約0.5倍~約4倍、又は約0.5倍~約2倍、又は約0.5倍~約1倍の濃度で組成物中に存在する。
【0032】
いくつかの実施形態では、界面活性剤は、界面活性剤のCMCの約0.25倍、約0.5倍、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約12倍、約14倍、約16倍、約18倍、又は約20倍の濃度で組成物中に存在する。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、界面活性剤のCMCの約1.25倍、約2.5倍、約3.5倍、約4.5倍、約5.5倍、約6.5倍、約7.5倍、約8.5倍、又は約9.5倍の濃度で組成物中に存在する。
【0033】
本明細書で使用する場合、用語「約」は、特定の値又は範囲を変更するために使用する場合、所与の値又は範囲において20パーセント以内、例えば記載された値又は範囲の10パーセント以内、5パーセント以内、4パーセント以内、3パーセント以内、2パーセント以内又は1パーセント以内を含む変動があり得ることを意味すると理解される。
【0034】
臨界ミセル濃度は、それを超えるとミセルが形成される界面活性剤の濃度を指し、それは界面活性剤の特性である。界面活性剤のCMC値は、蛍光光度法、表面張力、導電率測定、及び動的光散乱などの当該技術分野で周知の実験方法によって測定することができる。例えば、Norman Scholz,Thomas Behnke,Ute ReschGenger.Journal of Fluorescence 28:465-476(2018)及びOender Topel,Burcin Acar Cakir,Leyla Budama,Numan Hoda.Journal of molecular Liquids 177;40-43(2013)を参照されたい。界面活性剤のCMC値は、Attention(登録商標)Sigma700又は701などの装置を使用して自動的に測定することもできる。
【0035】
いくつかの実施形態では、界面活性剤の各々のCMC値は、以下の表1に列挙されている。
【0036】
【0037】
*表に列挙されているCMC値については、例えば、le Maire M,Champeil P,Moller JV.2000.Interaction of membrane proteins and lipids with solubilizing detergents.Biochim Biophys Acta 1508:86-111;Suksiriworapong J,Rungvimolsin T,A-gomol A,Junyaprasert VB,Chantasart D.Development and characterization of lyophilized diazepam-loaded polymeric micelles.2014.AAPS PharmSciTech.15(1):52-64;https://www.sigmaaldrich.com/content/dam/sigma-aldrich/docs/Sigma/Product_Information_Sheet/1/t8532pis.pdfを参照されたい。
【0038】
タンパク質は、約0.001μg/mL~約100μg/mLの濃度で組成物中に存在し得る。いくつかの実施形態では、タンパク質は、約0.001μg/mL~約90μg/mL、又は約0.001μg/mL~約80μg/mL、又は約0.001μg/mL~約70μg/mL、又は約0.001μg/mL~約60μg/mL、又は約0.001μg/mL~約50μg/mL、又は約0.001μg/mL~約40μg/mL、又は約0.001μg/mL~約30μg/mL、又は約0.001μg/mL~約20μg/mL、又は約0.001μg/mL~約10μg/mL、又は約0.001μg/mL~約5μg/mL、又は約0.001μg/mL~約1μg/mL、又は約0.001μg/mL~約0.01μg/mLの濃度で組成物中に存在する。
【0039】
いくつかの実施形態では、タンパク質は、約0.01μg/mL~約100μg/mL、又は約0.01μg/mL~約80μg/mL、又は約0.01μg/mL~約70μg/mL、又は約0.01μg/mL~約60μg/mL、又は約0.01μg/mL~約50μg/mL、又は約0.01μg/mL~約40μg/mL、又は約0.01μg/mL~約30μg/mL、又は約0.01μg/mL~約20μg/mL、又は約0.01μg/mL~約10μg/mL、又は約0.01μg/mL~約5μg/mL、又は約0.01μg/mL~約1μg/mL、又は約0.01μg/mL~約0.1μg/mL、又は約0.1μg/mL~約1μg/mL、又は約0.1μg/mL~約51μg/mLの濃度で組成物中に存在する。
【0040】
いくつかの実施形態では、タンパク質は、約0.001μg/mL、約0.005μg/mL、約0.01μg/mL、約0.05μg/mL、約0.1μg/mL、約1μg/mL、約4μg/mL、約8μg/mL、約10μg/mL、約15μg/mL、約20μg/mL、約25μg/mL、約30μg/mL、約35μg/mL、約40μg/mL、約45μg/mL、約50μg/mL、約55μg/mL、約60μg/mL、約65μg/mL、約70μg/mL、約75μg/mL、約80μg/mL、約85μg/mL、約90μg/mL、約95μg/mL、又は約100μg/mlの濃度で組成物中に存在する。
【0041】
本明細書に開示される組成物では、タンパク質の濃度又は濃度範囲のいずれかを、界面活性剤の濃度又は濃度範囲のいずれかと組み合わせることができる。
【0042】
任意のタンパク質は、組成物中のタンパク質であり得る。いくつかの実施形態では、組成物中のタンパク質は、抗原結合タンパク質又は融合タンパク質などの治療用タンパク質である。
【0043】
本明細書で使用する場合、「抗原結合タンパク質」という用語は、1つ以上の標的抗原に特異的に結合するタンパク質を指す。抗原結合タンパク質としては、抗体(例えば、モノクローナル抗体)が挙げられるがこれに限定されない。抗原結合タンパク質は、典型的には、抗原に特異的に結合する抗原結合断片を含み、且つ任意選択的に、抗原結合断片が、抗原結合タンパク質の抗原への結合を促進するコンフォメーションをとることを可能にする骨格又はフレームワーク部分を含むタンパク質である。「抗原結合断片」とは、完全長の重鎖及び/又は軽鎖に存在するアミノ酸の少なくとも一部を欠くが、それでもなお抗原に特異的に結合することができる、抗体の一部を指す。抗原結合断片としては、一本鎖可変断片(scFv)、ナノボディー(例えば、ラクダ重鎖抗体のVHドメイン;VHH断片、Cortez-Retamozo et al.,Cancer Research、Vol.64:2853-57,2004を参照)、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fv断片、Fd断片、及び相補性決定領域(CDR)断片が挙げられるが、これらに限定されず、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、又はラクダなどの任意の哺乳動物供給源に由来し得る。抗原結合断片は、標的抗原との結合についてインタクトな抗体と競合する場合があり、断片は、インタクトな抗体の改変(例えば、酵素的又は化学的切断)によって作製され得るか、又は当該技術分野で公知の組換えDNA技術若しくはペプチド合成を使用して新たに合成され得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、タンパク質は、二重特異性の抗原結合タンパク質である。本明細書で使用する場合、用語「二重特異性」は、2つの異なる抗原又は標的又はエピトープに特異的に結合することができる抗原結合タンパク質を指す。本明細書で使用する場合、「エピトープ」は、抗体又はその断片などの抗原結合タンパク質によって特異的に結合され得る任意の決定基を指す。いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合タンパク質は、ある抗原又は標的に特異的に結合する第1のドメインと、別の抗原又は標的に特異的に結合する第2のドメインと、を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合タンパク質の第1のドメインは、標的細胞表面抗原に特異的に結合し、二重特異性抗原結合タンパク質の第2の結合ドメインは、ヒトCD3、T細胞上のT細胞受容体複合体のサブユニットに特異的に結合する。いくつかの好ましい実施形態では、二重特異性抗原結合タンパク質は、例えば、国際公開第2008119567号パンフレット、及び国際公開第2017134140号パンフレットで記載されているとおりの二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE(登録商標))抗体コンストラクトである。
【0045】
本明細書で使用する場合、用語「抗体コンストラクト」は、その構造及び/又は機能が、抗体、例えば全長又は完全免疫グロブリン分子の構造及び/若しくは機能に基づき、且つ/又は抗体若しくはその断片の可変重鎖(VH)及び/又は可変軽鎖(VL)ドメインから抽出される分子を指す。したがって、抗体コンストラクトは、その特異的な標的又は抗原に結合することができる。抗体コンストラクトとしては、抗体の修飾断片、例えばscFv、ジ-scFv又はバイ(s)-scFv、scFv-Fc、scFv-ジッパー、scFab、Fab2、Fab3、ダイアボディー、1本鎖ダイアボディー、タンデムダイアボディー(Tandab’s)、タンデムジ-scFv、タンデムトリ-scFv、「マルチボディー」、例えばトリアボディー又はテトラボディー及び単一ドメイン抗体、例えばナノボディー又は、他のV領域若しくはドメインに非依存的に抗原若しくはエピトープに特異的に結合するVHH、VH若しくはVLであり得る1つのみの可変ドメインを含む単一可変ドメイン抗体も挙げられる。
【0046】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体コンストラクトは、第1の結合ドメインと、第2の結合ドメインと、を含み、第1の結合ドメインは第1の細胞表面抗原に特異的に結合し、第2の結合ドメインはヒトCD3に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体コンストラクトの第1及び第2のドメインは、「二重特異性1本鎖抗体コンストラクト」、より好ましくは二重特異性「1本鎖Fv」(scFv)である。scFvでは、抗体のVL及びVHは、例えば、合成リンカーによって、VL及びVH領域が対になって一価分子を形成する単一のタンパク質鎖として結合される;例えばHuston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci USA 85:5879-5883を参照されたい)。リンカーは、約10個~約25個のアミノ酸、好ましくは約15個~20個のアミノ酸の短いペプチドであり得る。リンカーは通常、柔軟性のためにグリシン、並びに溶解性のためにセリン又はスレオニンに富み、VHのN末端をVLのC末端に連結するか又はその逆のいずれかであり得る。このscFvは、定常領域の除去及びリンカーの導入にもかかわらず、元の免疫グロブリンの特異性を保持する。VH及びVL領域は、VH-VL又はVL-VHの順に配置される。VH領域がリンカー配列のN末端に配置され、且つVL領域がリンカー配列のC末端に配置されることが好ましい。特定の実施形態では、二重特異性抗体コンストラクトの第1及び第2のドメインは、これらの形式のいずれかの(scFv)2、scFv-単一ドメインmAb、ダイアボディー又はオリゴマーから選択される形式である。
【0047】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体コンストラクトは、第3のドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、第3のドメインは、1本鎖Fc(scFc)ドメインである。いくつかの実施形態では、scFcドメインは、scFc半減期延長(HLE)ドメインである。いくつかの好ましい実施形態では、二重特異性抗体コンストラクトの第3のドメインは、アミノからカルボキシルの順に:ヒンジ-CH2-CH3-リンカー-ヒンジ-CH2-CH3があるHLEドメインである。
【0048】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体コンストラクトの第1の結合ドメインは、第1の細胞表面抗原に結合する。いくつかの実施形態では、第1の細胞表面抗原は、CD70である。CD70(CD27L又はTNFSF7としても知られる)は、正常な発現が活性化T及びB細胞、成熟樹状細胞及び胸腺髄質上皮細胞のサブセットに制限されるII型膜内在性タンパク質である。
【0049】
いくつかの実施形態では、第1の細胞表面抗原は腫瘍抗原である。本明細書中で使用する場合、「腫瘍抗原」という用語は、腫瘍細胞上に提示されるそれらの抗原を指すものと理解される。これらの抗原は、細胞外部分とともに細胞表面上に提示され得、多くの場合、分子の膜貫通部分及び細胞質部分を併せ持つ。これらの抗原は、場合により腫瘍細胞によってのみ提示され得、正常細胞によって提示され得ない。腫瘍抗原は、腫瘍細胞上に限って発現され得るか、又は正常細胞と比較して腫瘍特異的突然変異を示し得る。この場合、それらは、腫瘍特異抗原と呼ばれる。より一般的な抗原は、腫瘍細胞及び正常細胞によって提示される抗原であり、それらは、腫瘍関連抗原と呼ばれる。これらの腫瘍関連抗原は、正常細胞と比較して過剰発現され得るか、又は正常組織と比較して、腫瘍組織のよりコンパクトさに欠ける構造ゆえに、腫瘍細胞において抗体結合のために接近可能である。いくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、CD19、CD33、上皮増殖因子受容体変異体iii(EGFRvIII)、メソテリン(MSLN)、カドヘリン19(CDH19)、FMS様チロシンキナーゼ3(FLT3)、デルタ様リガンド3(DLL3)、胎盤カドヘリン(CDH3)、B細胞成熟抗原(BCMA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、ヒトムチン17(MUC17)、及びクローディン-18アイソフォーム2(CLDN18.2)から選択される腫瘍抗原に結合する。いくつかの実施形態では、腫瘍抗原はヒト腫瘍抗原である。
【0050】
いくつかの好ましい実施形態では、二重特異性抗体コンストラクトは、第1のドメイン、第2のドメイン、及び任意選択的に第3のドメインを含み、第1のドメインはCD70に結合し、第2のドメインはヒトCD3に結合し、第3のドメイン(存在する場合)は、アミノからカルボキシルの順に:ヒンジ-CH2-CH3-リンカー-ヒンジ-CH2-CH3があるHLEドメインである。他の好ましい実施形態では、二重特異性抗体コンストラクトは、第1のドメイン、第2のドメイン、及び任意選択的に第3のドメインを含み、第1のドメインは、CD19、CD33、EGFRvIII、MSLN、CDH19、FLT3、DLL3、CDH3、BCMA、PSMA、MUC17、及びC:DN18.2から選択される腫瘍抗原に結合し、第2のドメインは、ヒトCD3に結合し、第3のドメイン(存在する場合)は、アミノからカルボキシルの順に:ヒンジ-CH2-CH3-リンカー-ヒンジ-CH2-CH3があるHLEドメインである。好ましい実施形態では、第1及び第2のドメインは、ペプチドリンカーを介して共に連結されており、且つペプチドリンカーを介して第3のドメイン(存在する場合)に連結されている。好ましいペプチドリンカーは、本明細書中上記に記載され、アミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Ser、即ちGly4Ser又はそのポリマー、即ち(Gly4Ser)x[式中、xは、1以上の整数(例えば2、3、4、5、6又は7)である]を特徴とする。好ましい実施形態のいくつかでは、第2の結合ドメインは、配列番号201のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、CD33に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、配列番号1~15のいずれか1つのアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、EGFRvIIIに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、配列番号16~26のいずれか1つのアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。
【0053】
いくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、MSLNに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、配列番号27~38及び165のいずれか1つのアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、CDH19に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、配列番号39~56のいずれか1つのアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、DLL3に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、配列番号68~78のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、CD19に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、配列番号79~88のいずれか1つのアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、FLT3に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、配列番号57~67のいずれか1つのアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、CDH3に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、配列番号89~99のいずれか1つのアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、BCMAに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、配列番号100~110のいずれか1つのアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、PSMAに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、配列番号111~155、166及び167のいずれか1つのアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、CD70に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、配列番号156~164のいずれか1つのアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体コンストラクトの第2の結合ドメインは、T細胞の表面上のヒトCD3のイプシロンに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体コンストラクトの第2のドメインは、ヒトCD3ε鎖の細胞外エピトープに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、ヒトCD3に特異的に結合する二重特異性抗体コンストラクトの第2のドメインは、配列番号193の配列のアミノ酸配列を有するCDR-L1と、配列番号194のアミノ酸配列を有するCDR-L2と、配列番号195の配列のアミノ酸配列を有するCDR-L3と、を含むVL領域と、配列番号196の配列のアミノ酸配列を有するCDR-H1と、配列番号197の配列のアミノ酸配列を有するCDR-H2と、配列番号198の配列のアミノ酸配列を有するCDR-H3と、を含むVH領域と、を含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体コンストラクトの第2のドメインは、配列番号199のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号200のアミノ酸配列を有するVLを含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体コンストラクトの第2のドメインは、配列番号201のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。
【0064】
いくつかの実施形態では、タンパク質は、CD70xCD3二重特異性抗体コンストラクトであり、これは、CD70に特異的に結合する第1のドメイン及びCD3に特異的に結合する第2のドメインを含む。一実施形態では、第1のドメインは、CD70に特異的に結合し、配列番号156~161で示されるようなCDRを含み、第2のドメインは、CD3に特異的に結合し、配列番号193~198で示されるようなCDRを有する。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体コンストラクトは、HLEドメイン(第3のドメイン)を更に含む。一実施形態では、二重特異性抗体コンストラクトは、VH及びVLを含み、VHは、配列番号162のアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなるポリペプチドを含み、VLは、配列番号163のアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなるポリペプチドを含む。一実施形態では、CD70xCD3二重特異性抗体コンストラクトは、配列番号164のアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなるポリペプチドを含む。
【0065】
いくつかの実施形態では、タンパク質は、BCMAxCD3二重特異性抗体コンストラクトであり、これは、BCMAに特異的に結合する第1のドメイン及びCD3に特異的に結合する第2のドメインを含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、HLEドメイン(第3のドメイン)を更に含む。一実施形態では、第1のドメインは、BCMAに特異的に結合し、配列番号100~105で示されるようなCDRを有し、第2のドメインは、CD3に特異的に結合し、配列番号193~198で示されるようなCDRを有する。一実施形態では、BCMAxCD3二重特異性抗体コンストラクトは、VH及びVLを含み、VHは、配列番号106のアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなるポリペプチドを含み、VLは、配列番号107のアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなるポリペプチドを含む。一実施形態では、BCMAxCD3二重特異性抗体コンストラクトは、配列番号108のアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなるポリペプチドを含む。一実施形態では、BCMAxCD3二重特異性抗体コンストラクトは、配列番号109のアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなるポリペプチドを含む。別の実施形態では、BCMAxCD3二重特異性抗体コンストラクトは、配列番号110のアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなるポリペプチドを含む。
【0066】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体はCD33xCD3二重特異性抗体コンストラクトであり、これは、CD33に特異的に結合する第1のドメイン及びCD3に特異的に結合する第2のドメインを含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体コンストラクトは、HLEドメイン(第3のドメイン)を更に含む。一実施形態では、第1のドメインは、CD33に特異的に結合し、配列番号3~5及び8~10で示されるようなCDRを有し、第2のドメインは、CD3に特異的に結合し、配列番号193~198で示されるようなCDRを有する。一実施形態では、CD33xCD3二重特異性抗体コンストラクトは、VH及びVLを含み、VHは、配列番号1若しくは2のアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなるポリペプチドを含み、VLは、配列番号6若しくは7のアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなるポリペプチドを含む。別の実施形態では、CD33xCD3二重特異性抗体コンストラクトは、配列番号11若しくは12のいずれか1つのアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなるポリペプチドを含む。別の実施形態では、BCMAxCD3二重特異性抗体コンストラクトは、配列番号13若しくは15のアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなるポリペプチドを含む。
【0067】
いくつかの実施形態では、タンパク質は、EGFRvIIIxCD3二重特異性抗体コンストラクトであり、これは、EGFRvIIIに特異的に結合する第1のドメイン及びCD3に特異的に結合する第2のドメインを含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、HLEドメイン(第3のドメイン)を更に含む。一実施形態では、第1のドメインは、EGFRvIIIに特異的に結合し、配列番号16~21で示されるようなCDRを有し、第2のドメインは、CD3に特異的に結合し、配列番号193~198で示されるようなCDRを有する。一実施形態では、EGFRvIIIxCD3二重特異性抗体コンストラクトは、VH及びVLを含み、VHは、配列番号22のアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなるポリペプチドを含み、VLは、配列番号23のアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなるポリペプチドを含む。一実施形態では、EGFRvIIIxCD3二重特異性抗体コンストラクトは、配列番号24若しくは25のアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなるポリペプチドを含む。一実施形態では、EGFRvIIIxCD3二重特異性抗体コンストラクトは、配列番号24若しくは26のアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなるポリペプチドを含む。
【0068】
いくつかの実施形態では、タンパク質は、MSLNxCD3二重特異性抗体コンストラクトであり、これは、MSLNに特異的に結合する第1のドメイン及びCD3に特異的に結合する第2のドメインを含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体コンストラクトは、HLEドメイン(第3のドメイン)を更に含む。一実施形態では、第1のドメインは、MSLNに特異的に結合し、配列番号27~32で示されるようなCDRを有し、第2のドメインは、CD3に特異的に結合し、配列番号193~198で示されるようなCDRを有する。一実施形態では、MSLNxCD3二重特異性抗体コンストラクトは、VH及びVLを含み、VHは、配列番号33のアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなるポリペプチドを含み、VLは、配列番号34のアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなるポリペプチドを含む。一実施形態では、MSLNxCD3二重特異性抗体コンストラクトは、配列番号35~38のいずれか1つのアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなるポリペプチドを含む。一実施形態では、MSLNxCD3二重特異性抗体コンストラクトは、配列番号165のアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなるポリペプチドを含む。
【0069】
いくつかの実施形態では、タンパク質は、CDH19xCD3二重特異性抗体コンストラクトであり、これは、CDH19に特異的に結合する第1のドメイン及びCD3に特異的に結合する第2のドメインを含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、HLEドメイン(第3のドメイン)を更に含む。一実施形態では、第1のドメインは、CDH19に特異的に結合し、配列番号39~44で示されるようなCDRを有し、第2のドメインは、CD3に特異的に結合し、配列番号193~198で示されるようなCDRを有する。一実施形態では、CDH19xCD3二重特異性抗体コンストラクトは、VH及びVLを含み、VHは、配列番号45若しくは52のアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなるポリペプチドを含み、VLは、配列番号46若しくは52のアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなるポリペプチドを含む。一実施形態では、CDH19xCD3二重特異性抗体コンストラクトは、配列番号47、48~50、及び53~56のいずれか1つのアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなるポリペプチドを含む。一実施形態では、CDH19xCD3二重特異性抗体コンストラクトは、配列番号48のアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなるポリペプチドを含む。
【0070】
いくつかの実施形態では、タンパク質は、DLL3xCD3二重特異性抗体であり、これは、DLL3に特異的に結合する第1のドメイン及びCD3に特異的に結合する第2のドメインを含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、HLEドメイン(第3のドメイン)を更に含む。一実施形態では、第1のドメインは、DLL3に特異的に結合し、配列番号68~73で示されるようなCDRを有し、第2のドメインは、CD3に特異的に結合し、配列番号193~198で示されるようなCDRを有する。一実施形態では、DLL3xCD3二重特異性抗体コンストラクトは、VH及びVLを含み、VHは、配列番号74のアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなるポリペプチドを含み、VLは、配列番号75のアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなるポリペプチドを含む。一実施形態では、DLL3xCD3二重特異性抗体コンストラクトは、配列番号76~78のアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなるポリペプチドを含む。一実施形態では、DLL3xCD3二重特異性抗体コンストラクトは、配列番号78のアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなるポリペプチドを含む。
【0071】
いくつかの実施形態では、タンパク質は、FLT3xCD3二重特異性抗体コンストラクトであり、これは、FLT3に特異的に結合する第1のドメイン及びCD3に特異的に結合する第2のドメインを含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、HLEドメイン(第3のドメイン)を更に含む。一実施形態では、第1のドメインは、FLT3に特異的に結合し、配列番号57~62で示されるようなCDRを有し、第2のドメインは、CD3に特異的に結合し、配列番号193~198で示されるようなCDRを有する。一実施形態では、FLT3xCD3二重特異性抗体コンストラクトは、VH及びVLを含み、VHは、配列番号63のアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなるポリペプチドを含み、VLは、配列番号64のアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなるポリペプチドを含む。一実施形態では、FTL3xCD3二重特異性抗体コンストラクトは、配列番号65~67のいずれかのアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなるポリペプチドを含む。一実施形態では、FTL3xCD3二重特異性抗体コンストラクトは、配列番号67のアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなるポリペプチドを含む。
【0072】
いくつかの実施形態では、タンパク質は、CDH3xCD3二重特異性抗体コンストラクトであり、これは、CDH3に特異的に結合する第1のドメイン及びCD3に特異的に結合する第2のドメインを含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体コンストラクトは、HLEドメイン(第3のドメイン)を更に含む。一実施形態では、第1のドメインは、CDH3に特異的に結合し、配列番号89~94で示されるようなCDRを有し、第2のドメインは、CD3に特異的に結合し、配列番号193~198で示されるようなCDRを有する。一実施形態では、CDH3xCD3二重特異性抗体コンストラクトは、VH及びVLを含み、VHは、配列番号95のアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなるポリペプチドを含み、VLは、配列番号96のアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなるポリペプチドを含む。一実施形態では、CDH3xCD3二重特異性抗体コンストラクトは、配列番号97~99のいずれかのアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなるポリペプチドを含む。一実施形態では、CDH3xCD3二重特異性抗体コンストラクトは、配列番号99のアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなるポリペプチドを含む。
【0073】
いくつかの実施形態では、タンパク質は、PSMAxCD3二重特異性抗体コンストラクトであり、これは、PSMAに特異的に結合する第1のドメイン及びCD3に特異的に結合する第2のドメインを含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体コンストラクトは、HLEドメイン(第3のドメイン)を更に含む。一実施形態では、第1のドメインは、PSMAに特異的に結合し、配列番号111~116のいずれかで示されるようなCDRを有し、第2のドメインは、CD3に特異的に結合し、配列番号193~198で示されるようなCDRを有する。一実施形態では、第1のドメインは、PSMAに結合し、配列番号126~131及び141~146のいずれかで示されるようなCDRを有し、第2のドメインは、CD3に結合し、配列番号193~198で示されるようなCDRを有する。一実施形態では、PSMAxCD3二重特異性抗体は、VH及びVLを含み、VHは、配列番号117、132、若しくは147のアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなるポリペプチドを含み、VLは、配列番号118、133、若しくは148のアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなるポリペプチドを含む。一実施形態では、PSMAxCD3二重特異性抗体コンストラクトは、配列番号119~125、134~140、及び149~155のいずれか1つのアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなるポリペプチドを含む。一実施形態では、PSMAxCD3二重特異性抗体コンストラクトは、配列番号121、122、124、125、136、137、139、140、151、152、154、及び155のいずれかのアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなるポリペプチドを含む。一実施形態では、PSMAxCD3二重特異性抗体コンストラクトは、配列番号166若しくは167のアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなるポリペプチドを含む。
【0074】
いくつかの実施形態では、タンパク質は、Cldn18.2xCD3二重特異性抗体コンストラクトであり、これは、Cldn18.2に特異的に結合する第1のドメイン及びCD3に特異的に結合する第2のドメインを含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、HLEドメイン(第3のドメイン)を更に含む。一実施形態では、第1のドメインは、Cldn18.2に特異的に結合し、配列番号168~173で示されるようなCDRを有し、第2のドメインは、CD3に特異的に結合し、配列番号193~198で示されるようなCDRを有する。一実施形態では、Cldn18.2xCD3二重特異性抗体コンストラクトは、VH及びVLを含み、VHは、配列番号174のアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなるポリペプチドを含み、VLは、配列番号175のアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなるポリペプチドを含む。一実施形態では、Cldn18.2xCD3二重特異性抗体コンストラクトは、配列番号176若しくは178のアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなるポリペプチドを含む。一実施形態では、Cldn18.2xCD3二重特異性抗体コンストラクトは、配列番号178のアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなるポリペプチドを含む。
【0075】
いくつかの実施形態では、タンパク質は、MUC17xCD3二重特異性抗体コンストラクトであり、これは、MUC17に特異的に結合する第1のドメイン及びCD3に特異的に結合する第2のドメインを含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、HLEドメイン(第3のドメイン)を更に含む。一実施形態では、第1のドメインは、MUC17に特異的に結合し、配列番号184~189で示されるようなCDRを有し、第2のドメインは、CD3に特異的に結合し、配列番号193~198で示されるようなCDRを有する。一実施形態では、MUC17xCD3二重特異性抗体コンストラクトは、VH及びVLを含み、VHは、配列番号190のアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなるポリペプチドを含み、VLは、配列番号191のアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなるポリペプチドを含む。一実施形態では、MUC17xCD3二重特異性抗体コンストラクトは、配列番号192のアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなるポリペプチドを含む。
【0076】
特定の実施形態では、二重特異性抗体コンストラクトは、配列番号13、配列番号15、配列番号25、配列番号48、配列番号67、配列番号78、配列番号88、配列番号109、配列番号110、配列番号165、配列番号166、配列番号167、配列番号178、若しくは配列番号192のアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなるポリペプチドを含む。
【0077】
本明細書中で開示される二重特異性抗体は、当該技術分野で公知の方法により調製され得る。例えば、二重特異性抗体は、国際公開第2008/119657号パンフレット及び国際公開第2017/134140号パンフレットで開示される方法により調製され得る。
【0078】
組成物で使用され得る更なる賦形剤
いくつかの実施形態では、組成物は、医薬組成物に好適な1つ以上の賦形剤を更に含む。いくつかの実施形態では、組成物は、塩、緩衝剤、糖類若しくは糖類誘導体、アミノ酸、若しくは防腐剤、又は前述のものの2つ以上の組み合わせを更に含む。いくつかの実施形態では、組成物は、塩、糖類又は糖類誘導体、アミノ酸、及び任意選択的に防腐剤を更に含む。いくつかの実施形態では、組成物は、塩、緩衝剤、糖類又は糖類誘導体、及びアミノ酸を更に含む。いくつかの実施形態では、組成物は、塩、緩衝剤、糖類又は糖類誘導体、アミノ酸、及び防腐剤を更に含む。
【0079】
組成物で使用され得る例示的な塩としては、医薬組成物での使用に好適な塩(例えば、NaCl)が挙げられる。組成物で使用され得る例示的な緩衝剤としては、酢酸緩衝剤、グルタミン酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、コハク酸緩衝剤、酒石酸緩衝剤、フマル酸緩衝剤、マレイン酸緩衝剤、ヒスチジン緩衝剤、及びリン酸緩衝剤が挙げられる。例示的な糖類又は糖類誘導体としては、単糖類、二糖類、環状多糖類、及び糖アルコール、例えば糖(例えば、スクロース及びトレハロース)及び糖アルコール(例えば、マンニトール及びソルビトール)などが挙げられる。例示的なアミノ酸としては、リジン、ヒスチジン、アルギニン、グリシン、メチオニン、及びアラニンが挙げられる。例示的な防腐剤としては、ベンゾエート(例えば、ベンジルアルコール及び安息香酸ナトリウム)及びソルビン酸塩(例えば、ソルビン酸カリウム)が挙げられる。
【0080】
組成物のpHは、約3.5~7.5の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、組成物は、約4.0~約7.0のpHを有する。いくつかの実施形態では、組成物は、約4.2~約7.0、又は約5.0~約7.0、又は約5.5~約7.0、又は約6.0~約7.0、又は約6.5~約7.0、又は約4.2~約6.5、又は約4.2~約6.0、又は約4.2~約5.5、又は約4.2~約5.0、又は約5.0~約6.0、又は約5.0~約6.5、又は約5.0~約6.0、又は約5.0~約5.5、又は約5.5~約6.0、又は約5.5~約6.5、又は約5.5~約6.0、又は約6.0~約6.5のpHを有する。いくつかの実施形態では、組成物のpHは、約3.5、約4.0、約4.5、約5.0、約5.5、約6.0、約6.5、約7.0、又は約7.5である。
【0081】
組成物のpHは、上記で列挙された1つ以上の緩衝剤を使用することによって達成され得る。いくつかの実施形態では、組成物は、酢酸緩衝剤、グルタミン酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、コハク酸緩衝剤、酒石酸緩衝剤、フマル酸緩衝剤、マレイン酸緩衝剤、ヒスチジン緩衝剤、又はリン酸緩衝剤から選択される緩衝剤を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、上記の緩衝剤のリストから選択される2つの緩衝剤の組み合わせ、例えば、グルタミン酸緩衝剤及びクエン酸緩衝剤を含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、組成物は、更なる緩衝剤を実質的に含まない。本明細書で使用する場合、語句「更なる緩衝剤を実質的に含まない」は、組成物が、組成物のpHを調整及び/又は維持する目的でそこに添加される緩衝剤を含まない。例えば、生理食塩水(0.9%NaCl溶液)は更なる緩衝剤を含まず、pHは約5.5を有する。生理食塩水のpHは、水に溶解した大気中のCO2によって部分的に達成及び維持されると考えられている。例えば、Reddi,B.AJ Int.J.Med.Sci.10:747-750(2013)を参照されたい。そのような組成物は、組成物の緩衝能力に寄与しない残留緩衝剤を含み得る。
【0083】
いくつかの実施形態では、組成物は、上記で開示される濃度のいずれかのタンパク質と、上記で開示される濃度のいずれかの界面活性剤と、を含み、塩(例えば、NaCl)、糖(例えば、スクロース)、アミノ酸(例えば、リジン)、及び任意選択的に防腐剤(例えば、ベンジルアルコール)を更に含む。いくつかの実施形態では、組成物は、上記で開示される濃度のいずれかのタンパク質と、上記で開示される濃度のいずれかの界面活性剤と、を含み、塩(例えば、NaCl)、糖(例えば、スクロース)、アミノ酸(例えば、リジン)、緩衝剤(例えば、グルタミン酸緩衝剤及び/又はクエン酸緩衝剤)、及び任意選択的に防腐剤(例えば、ベンジルアルコール)を更に含む。組成物のpHは、上記で開示されるpH値のいずれかであり得る。いくつかの実施形態では、組成物のpHは、約5.5である。
【0084】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される組成物は、医薬組成物である。本明細書で使用する場合、「医薬組成物」という用語は、それを必要とする患者(例えばヒト)への注射及び/又は投与に好適なタンパク質(例えば、二重特異性抗体コンストラクト)を含む処方物を指すものと理解される。より詳しくは、医薬組成物は実質的に無菌であり、レシピエントに対して過度な毒性又は感染性を有する如何なる物質も含有しない。
【0085】
組成物のための容器
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される組成物は、プラスチック容器に収容されている。本明細書で使用され得る容器としては、無毒且つ物理的一体性を維持する材料で作製された容器など、医薬品の使用に好適なものが挙げられる。いくつかの実施形態では、容器は、静脈内(IV)投与用コンポーネントである。本明細書で使用する場合、「IV投与用コンポーネント」は、IV投与中に組成物と接触し得るシステムの容器又は一部を指すと理解される。いくつかの実施形態では、容器は、IVバッグ又はIVチューブである。
【0086】
容器の製造に使用され得る材料としては、ガラス及びプラスチックなどの医薬品容器の製造に典型的に使用される材料が挙げられる。
【0087】
いくつかの実施形態では、容器は、プラスチック容器である。いくつかの実施形態では、容器は、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン(PP)及びポリエチレン(PE))、ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、又はポリウレタン(例えば、ポリエステル及びポリエーテル)を含む材料から作製される。いくつかの実施形態では、容器は、PVCを含む材料から作製される。いくつかの実施形態では、PVCは、ジ-2-エチルヘキシルフタレート(DEHP)又はトリ-2-エチルヘキシルトリメリテート(TOTM)を実質的に含まない。本明細書で使用する場合、用語「~を実質的に含まない」は、DEHP又はTOTMが使用及び/又は検出されないPVCを指すと理解される。DEHP及びTOTMは可塑剤であり、PVCを柔らかくするために使用できるため、様々な形状に作ることができる。いくつかの実施形態では、容器は、PVCを含まない材料から作製される。いくつかの実施形態では、容器は、ポリオレフィン、EVA、又はポリウレタン(例えば、ポリエステル及びポリエーテル)を含む材料から作製される。いくつかの実施形態では、容器は、PP及び/又はPEを含む材料から作製される。
【0088】
特定の条件下では、特定の種類のPVCプラスチックに含まれるDEHP又はTOTMは、特定の界面活性剤(例えば、ポリソルベート、実施例3を参照されたい)の特定の濃度の存在下で、プラスチックから浸出する可能性がある。任意の特定の理論に制限されることを望むものではないが、親油性の界面活性剤が多いほど、界面活性剤の存在下でDEHP又はTOTMが浸出しやすくなると考えられている。界面活性剤の親水性親油性比(HLB)は、それが親水性又は親油性である程度の尺度であり、当該技術分野で公知の方法によって計算することができる。例えば、Griffin,William C.Calculation of HLB Values of Non-Ionic Surfactants,Journal of the Society of Cosmetic Chemists,5(4):249-56(1954)を参照されたい。HLB値は、界面活性剤の特性を予測するために使用することができ、例えば、HLB>10は、界面活性剤がより水溶性(脂質不溶性)であることを示し、HLB<10は、界面活性剤がより脂溶性(水不溶性)であることを示す。本明細書に開示される組成物で使用することができる例示的な界面活性剤のHLB値としては、17(ポリソルベート20)、15(ポリソルベート80)(https://pharmlabs.unc.edu/labs/emulsions/hlb.htm)、及び29(ポロキサマー188)(http://www.rumapel.com.ar/cosmetica_miscelaneos/ficha_tecnica/Pluracare%20L-%20F%20Grades.pdf)が挙げられる。容器がDEHP又はTOTMを含むPVCプラスチックから作製される実施形態では、組成物中の界面活性剤は、好ましくは少なくとも20のHLB値(例えば、ポロキサマー、実施例3を参照)、より好ましくは20~30のHLB値を有する。
【0089】
上記の材料から作製されたIVコンポーネント(例えば、IV投与に使用されるIVバッグ及びチューブ)などの容器は市販されている。例えば、様々な好適な容器は、Baxter Healthcare Corporation及びB.Braun MedicalIncなどの製造者から入手することができる。
【0090】
医薬製剤
また、本明細書では、上記で開示される水性組成物を含む医薬製剤が開示される。本明細書で使用する場合、「医薬製剤」は、患者(例えば、ヒト)に投与する前に、好適な医薬容器に本明細書に開示される水性組成物を含む製剤を指すと理解される。いくつかの実施形態では、容器に水性医薬組成物を含む医薬製剤であって、水性医薬組成物が:a)約0.001μg/mL~約100μg/mLの濃度のタンパク質と、b)界面活性剤のCMCの少なくとも約0.25倍の濃度の界面活性剤と、を含み、タンパク質がブリナツモマブではない、医薬製剤が本明細書で開示される。
【0091】
いくつかの実施形態では、組成物中に含まれる界面活性剤は、ポリソルベートである。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80、及びポリソルベート85から選択されるポリソルベートである。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、ポリソルベート20、又はポリソルベート80である。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、ポロキサマーである。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、ポロキサマー188、又はポロキサマー407である。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、トリトンX-100である。
【0092】
いくつかの実施形態では、容器に水性医薬組成物を含む医薬製剤であって、水性医薬組成物が:a)約0.001μg/mL~約100μg/mLの濃度の二重特異性抗体コンストラクトと、b)界面活性剤のCMCの少なくとも約0.25倍の濃度の界面活性剤と、を含み、界面活性剤がポロキサマーではない、医薬製剤が本明細書で開示される。いくつかの実施形態では、ポロキサマーは、ポロキサマー188、又はポロキサマー407である。
【0093】
いくつかの実施形態では、界面活性剤は、界面活性剤のCMCの約0.25倍~約20倍の濃度で組成物中に存在する。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、界面活性剤のCMCの約0.25倍~約10倍の濃度で組成物中に存在する。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、上記で開示される濃度範囲のいずれかの範囲内の濃度で組成物中に存在する。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、上記で開示される濃度のいずれかの濃度で組成物中に存在する。界面活性剤のCMC値は、上記で開示される方法により決定することができる。いくつかの実施形態では、特定の一般的に使用される界面活性剤のCMC値を、表1に列記する。
【0094】
いくつかの実施形態では、水性医薬組成物は、約0.001μg/mL~約50μg/mLの濃度のタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、上記で開示される範囲のいずれかの範囲内の濃度のタンパク質(例えば、二重特異性抗体コンストラクト)を含む。いくつかの実施形態では、タンパク質(例えば、二重特異性抗体コンストラクト)は、上記で開示される濃度のいずれかで組成物中に存在する。上記で開示されるタンパク質の濃度又は濃度範囲のいずれかを、上記で開示される界面活性剤の濃度又は濃度範囲のいずれかと組み合わせることができる。
【0095】
上記に開示されるとおり、タンパク質は、抗原結合タンパク質又は融合タンパク質などの治療用タンパク質であり得る。いくつかの実施形態では、タンパク質は、二重特異性抗原結合タンパク質である。いくつかの実施形態では、タンパク質は、上記で開示される二重特異性抗体コンストラクトである。いくつかの実施形態では、タンパク質は、CD70xCD3二重特異性抗体コンストラクトである。いくつかの実施形態では、タンパク質は、BCMAxCD3二重特異性抗体コンストラクトである。いくつかの実施形態では、タンパク質は、CD33xCD3二重特異性抗体コンストラクトである。いくつかの実施形態では、タンパク質は、EGFRvIIIxCD3二重特異性抗体コンストラクトである。いくつかの実施形態では、タンパク質は、MSLNxCD3二重特異性抗体コンストラクトである。いくつかの実施形態では、タンパク質は、CDH19xCD3二重特異性抗体コンストラクトである。いくつかの実施形態では、タンパク質は、DLL3xCD3二重特異性抗体コンストラクトである。いくつかの実施形態では、タンパク質は、FLT3xCD3二重特異性抗体コンストラクトである。いくつかの実施形態では、タンパク質は、CDH3xCD3二重特異性抗体コンストラクトである。いくつかの実施形態では、タンパク質は、PSMAxCD3二重特異性抗体コンストラクトである。いくつかの実施形態では、タンパク質は、Cldn18.2xCD3二重特異性抗体コンストラクトである。いくつかの実施形態では、タンパク質は、MUC17xCD3二重特異性抗体コンストラクトである。これらの二重特異性抗体コンストラクトの各々は、上記で開示されている。特定の実施形態では、タンパク質は、配列番号13、配列番号15、配列番号25、配列番号48、配列番号67、配列番号78、配列番号88、配列番号109、配列番号110、配列番号165、配列番号166、配列番号167、配列番号178、若しくは配列番号192のアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなる。
【0096】
組成物のpHは、上記で開示されるpH範囲のいずれかの範囲内であり得る。いくつかの実施形態では、組成物のpHは、上記で開示される任意のpHであり得る。
【0097】
いくつかの実施形態では、水性医薬組成物は、医薬組成物での使用に好適な1つ以上の賦形剤を更に含む。いくつかの実施形態では、水性医薬組成物は、塩、緩衝剤、アミノ酸、糖類若しくは糖類誘導体、防腐剤、又はこれらの組み合わせを更に含む。いくつかの実施形態では、水性医薬組成物は、塩、アミノ酸、糖類若しくは糖類誘導体、防腐剤、又はこれらの組み合わせを更に含む。組成物で使用され得る例示的な塩、緩衝剤、アミノ酸、糖類又はその誘導体、及び防腐剤は、上記で開示されている。
【0098】
いくつかの実施形態では、容器は、プラスチック容器である。いくつかの実施形態では、容器は、ポリオレフィン(例えば、PP及びPE)、PVC、EVA、又はポリウレタン(例えば、ポリエステル及びポリエーテル)を含む材料から作製される。いくつかの実施形態では、容器は、PVCを含む材料から作製される。いくつかの実施形態では、PVCは、DEHP又はTOTMを実質的に含まない。いくつかの実施形態では、容器は、PVCを含まない材料から作製される。
【0099】
いくつかの実施形態では、組成物中に含まれる界面活性剤は、ポロキサマーであり、容器は、ポリオレフィン、PVC、EVA、又はポリウレタン(例えば、ポリエステル及びポリエーテル)を含む材料から作製することができる。いくつかの実施形態では、組成物中に含まれる界面活性剤は、ポリソルベート又はトリトンX-100であり、容器は、ポリオレフィン、DEHP若しくはTOTMを実質的に含まないPVC、EVA、又はポリウレタン(例えば、ポリエステル及びポリエーテル)を含む材料から作製することができる。
【0100】
いくつかの実施形態では、容器は、静脈内(IV)投与用コンポーネントである。いくつかの実施形態では、容器は、IVバッグ又はIVチューブである。
【0101】
いくつかの実施形態では、医薬製剤は、容器に水性医薬組成物を含み、水性医薬組成物が、二重特異性抗体コンストラクト(例えば、本明細書で開示される二重特異性抗体コンストラクトのいずれか)と、界面活性剤(例えば、本明細書で開示される界面活性剤のいずれか)と、を含み、塩(例えば、NaCl)、アミノ酸(例えば、リジン)、糖類又は糖類誘導体(例えば、スクロース又はマンニトール)、任意選択的に防腐剤(例えば、ベンジルアルコール)を更に含み、容器が、ポリオレフィン、PVC、EVA、又はポリウレタン(例えば、ポリエステル及びポリエーテル)を含む材料から作製される。いくつかの実施形態では、医薬製剤は、容器に水性医薬組成物を含み、水性医薬組成物が、二重特異性抗体コンストラクト(例えば、本明細書で開示される二重特異性抗体コンストラクトのいずれか)と、界面活性剤(例えば、本明細書で開示される界面活性剤のいずれか)と、を含み、塩(例えば、NaCl)、緩衝剤(例えば、グルタミン酸緩衝剤及び/又はクエン酸緩衝剤)、アミノ酸(例えば、リジン)、糖類又は糖類誘導体(例えば、スクロース又はマンニトール)、任意選択的に防腐剤(例えば、ベンジルアルコール)を更に含み、容器が、ポリオレフィン、PVC、EVA、又はポリウレタン(例えば、ポリエステル及びポリエーテル)を含む材料から作製される。二重特異性抗体コンストラクトの濃度は、タンパク質について上記に開示された濃度のいずれかであり得る。界面活性剤の濃度は、上記で開示される濃度のいずれかであり得る。組成物のpHは、約3.5~約7.0の範囲である。いくつかの実施形態では、組成物のpHは、約5.5である。いくつかの実施形態では、容器は、IVバッグである。
【0102】
組成物を投与する方法
また、本明細書で開示される組成物を患者に投与する方法が本明細書で開示される。いくつかの実施形態では、タンパク質を患者に投与する方法であって、方法が、a)容器中で水性医薬組成物を調製することであって、水性医薬組成物が、約0.001μg/mL~約100μg/mLの濃度のタンパク質(例えば、本明細書で開示される二重特異性抗体コンストラクト)と、界面活性剤のCMCの少なくとも約0.25倍の濃度の界面活性剤と、を含むことと、b)水性医薬組成物を患者に投与することと、を含み、タンパク質がブリナツモマブではない、方法が本明細書で開示される。
【0103】
いくつかの実施形態では、水性医薬組成物は、タンパク質(例えば、二重特異性抗体コンストラクト)を含む第1の組成物を好適な水溶液で希釈することによって調製される。いくつかの実施形態では、水性医薬組成物は、好適な溶液を容器中に添加し、続いて適切な量の第1の組成物を容器中に添加し、それによりタンパク質を含む第1の組成物を希釈することによって調製される。
【0104】
いくつかの実施形態では、第1の組成物は、タンパク質を含む液体組成物である。いくつかの実施形態では、第1の組成物は、タンパク質を含む凍結乾燥組成物から再構成された液体組成物である。いくつかの実施形態では、第1の組成物は、滅菌水を使用して、タンパク質を含む凍結乾燥組成物から再構成された液体組成物である。
【0105】
いくつかの実施形態では、第1の組成物を希釈するために使用される好適な水溶液は、界面活性剤のCMCの少なくとも約0.25倍の濃度の界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、第1の組成物を希釈するために使用される好適な水溶液は、界面活性剤のCMCの約0.25倍~約20倍、又は約0.25倍~約10倍の濃度の界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、第1の組成物を希釈するために使用される好適な水溶液は、界面活性剤のCMCの0.25倍、約0.5倍、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約15倍、又は約20倍の濃度の界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、第1の組成物を希釈するために使用される好適な水溶液は、NaClを更に含む。いくつかの実施形態では、第1の組成物を希釈するために使用される好適な水溶液は、約3.5~約7.0、又は約4.0~約6.5のpHを有する。いくつかの実施形態では、第1の組成物を希釈するために使用される好適な水溶液は、約5.5のpHを有する。いくつかの実施形態では、方法は、調製ステップの前に、第1の組成物を希釈するために使用される好適な水溶液で容器をすすぐことを更に含む。
【0106】
いくつかの実施形態では、水性医薬組成物中の界面活性剤は、ポリソルベートである。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80、及びポリソルベート85から選択されるポリソルベートである。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、ポリソルベート20、又はポリソルベート80である。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、ポロキサマーである。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、ポロキサマー188、又はポロキサマー407である。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、トリトンX-100である。
【0107】
いくつかの実施形態では、水性医薬組成物中の界面活性剤は、界面活性剤のCMCの約0.25倍~約20倍の濃度で組成物中に存在する。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、界面活性剤のCMCの約0.25倍~約10倍の濃度で水性医薬組成物中に存在する。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、上記で開示される濃度範囲のいずれかの範囲内の濃度で水性医薬組成物中に存在する。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、上記で開示される濃度のいずれかの濃度で水性医薬組成物中に存在する。界面活性剤のCMC値は、上記で開示される方法により決定することができる。いくつかの実施形態では、特定の一般的に使用される界面活性剤のCMC値を、表1に列記する。
【0108】
いくつかの実施形態では、水性医薬組成物は、約0.001μg/mL~約50μg/mLの濃度のタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、水性医薬組成物は、上記で開示される範囲のいずれかの範囲内の濃度のタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、タンパク質は、上記で開示される濃度のいずれかで組成物中に存在する。
【0109】
上記に開示されるとおり、タンパク質は、抗原結合タンパク質、mAb又は融合タンパク質などの治療用タンパク質であり得る。いくつかの実施形態では、タンパク質は、二重特異性抗原結合タンパク質である。いくつかの実施形態では、タンパク質は、上記で開示される二重特異性抗体コンストラクトである。いくつかの実施形態では、タンパク質は、CD70xCD3二重特異性抗体コンストラクトである。いくつかの実施形態では、タンパク質は、BCMAxCD3二重特異性抗体コンストラクトである。いくつかの実施形態では、タンパク質は、CD33xCD3二重特異性抗体コンストラクトである。いくつかの実施形態では、タンパク質は、EGFRvIIIxCD3二重特異性抗体コンストラクトである。いくつかの実施形態では、タンパク質は、MSLNxCD3二重特異性抗体コンストラクトである。いくつかの実施形態では、タンパク質は、CDH19xCD3二重特異性抗体コンストラクトである。いくつかの実施形態では、タンパク質は、DLL3xCD3二重特異性抗体コンストラクトである。いくつかの実施形態では、タンパク質は、FLT3xCD3二重特異性抗体コンストラクトである。いくつかの実施形態では、タンパク質は、CDH3xCD3二重特異性抗体コンストラクトである。いくつかの実施形態では、タンパク質は、PSMAxCD3二重特異性抗体コンストラクトである。いくつかの実施形態では、タンパク質は、Cldn18.2xCD3二重特異性抗体コンストラクトである。いくつかの実施形態では、タンパク質は、MUC17xCD3二重特異性抗体コンストラクトである。これらの二重特異性抗体コンストラクトの各々は、上記で開示されている。特定の実施形態では、タンパク質は、配列番号13、配列番号15、配列番号25、配列番号48、配列番号67、配列番号78、配列番号88、配列番号109、配列番号110、配列番号165、配列番号166、配列番号167、配列番号178、若しくは配列番号192のアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなる。
【0110】
組成物のpHは、上記で開示されるpH範囲のいずれかの範囲内であり得る。いくつかの実施形態では、組成物のpHは、上記で開示される任意のpHであり得る。
【0111】
いくつかの実施形態では、水性医薬組成物は、医薬組成物での使用に好適な1つ以上の賦形剤を更に含む。いくつかの実施形態では、水性医薬組成物は、塩、緩衝剤、アミノ酸、糖類若しくは糖類誘導体、任意選択的には防腐剤、又は前述のものの2つ以上の組み合わせを更に含む。いくつかの実施形態では、水性医薬組成物は、塩、アミノ酸、糖類若しくは糖類誘導体、任意選択的には防腐剤、又は前述のものの2つ以上の組み合わせを更に含む。組成物で使用され得る例示的な塩、緩衝剤、アミノ酸、糖類又はその誘導体、及び防腐剤は、上記で開示されている。
【0112】
いくつかの実施形態では、容器は、プラスチック容器又はコンポーネントである。いくつかの実施形態では、容器は、ポリオレフィン(例えば、PP及びPE)、PVC、EVA、又はポリウレタン(例えば、ポリエステル及びポリエーテル)を含む材料から作製される。いくつかの実施形態では、容器は、PVCを含む材料から作製される。いくつかの実施形態では、PVCは、DEHP又はTOTMを実質的に含まない。いくつかの実施形態では、容器は、PVCを含まない材料から作製される。いくつかの実施形態では、容器は、IVバッグ又はIVチューブである。
【0113】
いくつかの実施形態では、水性医薬組成物は、IV投与により患者に投与される。いくつかの実施形態では、患者は、癌患者である。いくつかの実施形態では、患者はヒトである。
【0114】
タンパク質の固体表面への結合に接近するための方法
また、本明細書では、タンパク質の固体表面への結合に接近するための方法が開示される。いくつかの実施形態では、タンパク質の固体表面への結合に接近する方法であって:a)タンパク質を含む水溶液を固体表面とインキュベートすることであって、タンパク質がフルオロフォアで標識されていることと、b)固体表面から水溶液を除去し、表面をすすぐことと、c)共焦点顕微鏡を使用して固体表面を画像化することと、を含む方法が本明細書で開示される。
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
【0140】
【0141】
【0142】
【0143】
【0144】
【0145】
【0146】
【0147】
【0148】
【0149】
【0150】
【0151】
【0152】
【0153】
【0154】
【0155】
【0156】
【0157】
【0158】
【0159】
本発明は、以下の実施例を参照することにより、より詳細に理解されるであろう。しかし、実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0160】
実施例1.タンパク質の固体表面への結合を測定する方法
二重特異性抗体コンストラクトは、内部から供給された。これらをフルオロフォアで標識し、標識手順の後に精製した。
【0161】
各測定チャンバは、プラスチックカバースリップを備えている。タンパク質の固体表面への結合を測定するために、底部にプラスチックカバースリップを備えた測定チャンバを、最初にフルオロフォアタンパク質(例えば、フルオロフォア標識抗体コンストラクト)を含む溶液とともにインキュベートした。次いで、サンプル溶液を吸引し、カバースリップからすすぎ、後で共焦点顕微鏡で画像化するために緩衝液で満たした。共焦点顕微鏡で測定した蛍光強度は、二重特異性抗体コンストラクトがカバースリップに結合していることを示している。
図1は、実験装置の配置図を示す。
【0162】
図2は、界面活性剤の非存在下で、固体表面(カバースリップなど)に別々に結合する2つのフルオロフォア標識抗体コンストラクトの滴定を示す。結合したフルオロフォア標識抗体コンストラクトの蛍光強度は、表面の共焦点xyスキャンによって測定した。
【0163】
実施例2.タンパク質の表面への結合を防ぐ界面活性剤による固体表面の処理
いくつかの界面活性剤をそれぞれのCMCの異なる倍率で使用して、二重特異性抗体コンストラクトが固体表面に結合するのを防ぐ際の各界面活性剤の有効性を決定した。この研究では、界面活性剤を含む溶液を最初に表面とインキュベートし、次にフルオロフォア標識抗体コンストラクトを添加してインキュベートした。その後、溶液を吸引し、表面をすすぎ、共焦点顕微鏡で画像化するための緩衝液で満たした。結果を
図3に示す。図において、最初のグループの棒は、界面活性剤なしで表面に結合する二重特異性抗体である。これらはベンチマークとして機能し、以下の全てのデータグループがそれらと比較された。2番目から最後のグループまでは、異なるCMCの異なる倍率の異なる界面活性剤で前処理された表面に結合したタンパク質の相対的なパーセンテージである。挿入は、グラフの下部領域の拡大である。PS80、PS20、P188、P407、及びトリトンX-100を調査した。
【0164】
界面活性剤及び抗体を表面に添加する順序を試験した。二重特異性抗体1及び2については、2つの順序が試験された:最初のものでは、表面に抗体を添加する前に、界面活性剤含有溶液を表面に添加し;もう一方ではその逆であった。結果を
図4に示した(左が抗体1、右が抗体2である)。双方の図について、最初のグループの棒は、界面活性剤なしで表面に結合する二重特異性抗体である。これらはベンチマークとして機能し、以下の全てのデータグループがそれらと比較された。2番目から最後のグループまでは、そのCMCの異なる倍率のPS80で前処理された表面に結合した抗体の相対的なパーセンテージである。界面活性剤は、タンパク質が表面に結合するのを効果的に防いだ。
【0165】
実施例3.プラスチックIVコンポーネントで使用される特定の界面活性剤と可塑剤の非互換性
生理食塩水希釈剤を事前に充填したBaxter Viaflex PVC-DEHP IVバッグを研究に使用した。界面活性剤は、ポリソルベート80(PS80)、ポリソルベート20(PS20)、ポロキサマー188(P188)、ポロキサマー407(P407)、及びトリトンX-100を、研究で使用した。異なる量の異なる界面活性剤をバッグとともに25℃で24時間又は48時間インキュベートした。次いで、バッグをサンプリングし、逆相超高圧液体クロマトグラフィー(RP-UHPLC)で分析し、UV検出器で検出した。移動相A及びBは、DI水中の0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)及びアセトニトリル中の0.1%TFAである。勾配を、以下の表3に列挙する。流速は、0.6mL/分である。定量化のために、DEHPの標準曲線を同じ条件下で作成した。
【0166】
【0167】
PS80、PS20、及びP188は、PVC-DEHP IVバッグ内の生理食塩水中0.3wt%で、25℃の24時間及び48時間で比較した。結果を
図5に示す。PS80及びPS20は、PVC-DEHP IVバッグからのDEHPの大幅な浸出を引き起こしたが、P188は浸出を引き起こさなかった(
図5)。生理食塩水単独を対照として使用した。
【0168】
PS80、PS20、P188、P407、及びトリトンX-100を、PVC-DEHP IVバッグ内の生理食塩水中で25℃で24時間インキュベートすることにより、それぞれのCMCの異なる倍率で比較した。浸出したDEHPの量は、
図6でCMCの倍率の関数としてプロットした。明らかに、ポリソルベートは一定量のDEHPを抽出するが、ポロキサマーは抽出しない。また、浸出したDEHPの量は、使用される界面活性剤の量と相関関係がある。
【配列表】
【国際調査報告】