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特表2022-553067水産養殖のための、活性分子をロードしたデンプンナノ粒子の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-21
(54)【発明の名称】水産養殖のための、活性分子をロードしたデンプンナノ粒子の使用
(51)【国際特許分類】
   A23K 40/30 20160101AFI20221214BHJP
   A01K 61/20 20170101ALI20221214BHJP
   A23K 20/142 20160101ALI20221214BHJP
   A23K 20/163 20160101ALI20221214BHJP
   A23K 20/174 20160101ALI20221214BHJP
   A23K 20/179 20160101ALI20221214BHJP
   A23K 20/195 20160101ALI20221214BHJP
   A23K 20/184 20160101ALI20221214BHJP
   A23K 20/147 20160101ALI20221214BHJP
   A23K 20/158 20160101ALI20221214BHJP
   A23K 20/20 20160101ALI20221214BHJP
   A23K 10/30 20160101ALI20221214BHJP
【FI】
A23K40/30 Z
A01K61/20
A23K20/142
A23K20/163
A23K20/174
A23K20/179
A23K20/195
A23K20/184
A23K20/147
A23K20/158
A23K20/20
A23K10/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523819
(86)(22)【出願日】2020-10-20
(85)【翻訳文提出日】2022-05-31
(86)【国際出願番号】 EP2020079504
(87)【国際公開番号】W WO2021078743
(87)【国際公開日】2021-04-29
(31)【優先権主張番号】1911761
(32)【優先日】2019-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518057608
【氏名又は名称】ユニベルシテ・ドゥ・リール
(71)【出願人】
【識別番号】516123435
【氏名又は名称】サントラル・リール・アンスティチュ
(71)【出願人】
【識別番号】517253056
【氏名又は名称】ウニヴェルシテ・ポリテクニーク・オー-ド-フランス
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(71)【出願人】
【識別番号】522111655
【氏名又は名称】インクレア オー ド フランス
(71)【出願人】
【識別番号】516340364
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・デュ・リトラル・コート・ドパール
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ラバ・ブケルブ
(72)【発明者】
【氏名】サミ・スイシー
(72)【発明者】
【氏名】ステフカ・ル・フル
【テーマコード(参考)】
2B104
2B150
【Fターム(参考)】
2B104AA34
2B104AA35
2B150AA07
2B150AB20
2B150AE02
2B150AE22
2B150CE26
2B150CJ02
2B150DA32
2B150DA38
2B150DA44
2B150DA49
2B150DA65
2B150DC24
2B150DE12
2B150DE13
2B150DF05
2B150DG06
2B150DG07
2B150DG12
2B150DH17
2B150DH18
(57)【要約】
本発明は、動物プランクトン、特に、ワムシ、ブラインシュリンプ及びカイアシから選択される生きた餌を生育するための、対象とする少なくとも一つの活性分子をロードしたデンプンナノ粒子の使用に関する。特に、本発明は、当該動物プランクトンの大きさ及び/若しくは密度及び/若しくは産卵率、並びに/又はその卵の孵化率を増加させるための、当該ロードしたデンプンナノ粒子の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物プランクトンを生育するための、対象とする少なくとも一つの活性分子をロードしたデンプンナノ粒子の使用。
【請求項2】
前記動物プランクトンの大きさ及び/若しくは密度及び/若しくは産卵率、並びに/又は前記動物プランクトンの卵の孵化率を増加させるための、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記動物プランクトンが、ワムシ、ブラインシュリンプ及びカイアシから選択される生きた餌である、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記対象とする少なくとも一つの活性分子をロードしたデンプンナノ粒子が、10及び500 nmの間、20及び450 nmの間、40及び400 nmの間、好ましくは約40、80、100、200又は400 nm、並びにさらにより好ましくは、約80 nmの平均的な大きさを有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記対象とする少なくとも一つの活性分子の重量比が、デンプンナノ粒子の総重量に対して、0.01%及び10%の間、0.01%及び5%の間、好ましくは0.1%及び4%の間、並びにさらにより好ましくは、1及び3%の間である、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記対象とする少なくとも一つの活性分子が、ビタミン、カロテノイド、抗生物質、ホルモン、ミネラル、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、脂肪酸及びその誘導体から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記対象とする少なくとも一つの活性分子が、ビタミンB12、ビタミンC、ベタイン、セレン、テトラサイクリン、トリメトプリム、オキソリン酸、タウリン、メチオニン、グルタチオン、ヨウ素、エストロゲン及びエストラジオールから選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
動物プランクトン、好ましくはワムシ、ブラインシュリンプ及びカイアシから選択される生きた餌を生育するための組成物の使用であって、前記組成物が、請求項1から7のいずれか一項に定義された、対象とする少なくとも一つの活性分子をロードした少なくとも一つのデンプンナノ粒子、及び、任意に、栄養、特に微細藻類を含む、使用。
【請求項9】
前記組成物が、粉末又は溶液の形態である、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記組成物が、0.1及び300 mg/Lの間、1及び200 mg/Lの間、10及び150 mg/Lの間、10及び100 mg/Lの間、好ましくは10及び80 mg/Lの間、並びにさらにより好ましくは20及び60 mg/Lの間の量の、対象とする少なくとも一つの活性分子をロードしたデンプンナノ粒子を含む、請求項8又は9に記載の使用。
【請求項11】
前記組成物が、毎日適用される、請求項8から10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
ベタインをロードした少なくとも一つのデンプンナノ粒子、ビタミンCをロードした少なくとも一つのデンプンナノ粒子、及びビタミンB12をロードした少なくとも一つのデンプンナノ粒子を含む組成物。
【請求項13】
動物プランクトン、好ましくはワムシ、ブラインシュリンプ及びカイアシから選択される生きた餌を生育するための、請求項12に記載された組成物の使用。
【請求項14】
動物プランクトン、好ましくはワムシ、ブラインシュリンプ及びカイアシから選択される生きた餌の栄養価を強化するための方法であって、請求項4から7のいずれか一項に定義された、対象とする少なくとも一つの活性分子をロードした少なくとも一つのデンプンナノ粒子、又は請求項8から12のいずれか一項に定義された組成物の適用を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水産養殖で使用されることを意図した、動物プランクトンを生育するための、活性分子をロードしたデンプンナノ粒子の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
水産養殖は、水生生物、例えば魚、甲殻類、軟体動物及び水生植物の養殖に相当する。それは、制御された条件において、淡水又は鹹水において実行されることができる。水産養殖は、海産食品の必要性の増加による乱獲及び一定の珍重される水生生物の消滅への代替的な解決策を示す。2008年に、それは、淡水魚の世界消費の76.4%、軟体動物の64.1%、甲殻類の46.4%及び海水魚のたったの2.6%を供給した。水産養殖は、特に乱獲が原因で、種が消滅した川又は池へ再び生息させることへの解決策もまた示す。2016年には、水産養殖からの世界産出(FAOによれば)は、1.1億トンに到達し、従って、漁業からの世界算出を上回る。
【0003】
しかしながら、水産養殖に関連する数多くの欠点がある。局所的なレベルでは、例えば、伝統的な水産養殖(そこでは、魚が海岸線のケージ内又はタンク内で育てられる)は、一定の場合において野生の漁業よりも環境へのより多くの被害を引き起こす可能性がある。局所的な問題は、廃棄物処理及び使われた抗生物質の二次的効果にしばしば関連する。水産養殖は、ナイルパーチ又は養殖場から脱出する種の場合のように、動物相に被害を与える可能性のある侵入種の増殖の一因となる可能性もまたある。水産養殖から生じる及び魚により産生される廃棄物は、有機物であり、水中食物連鎖の全ての要素に必要な栄養から成るが、海底でのそれらの過度の供給は、底生生物に被害を与え又は除去しさえする可能性がある。それらは、水中に溶ける酸素レベルを減少させ、野生の動物相に影響を与える可能性もまたある。
【0004】
加えて、水産養殖は、水生種を繁殖させるための大量の栄養を必要とする。例えば、サーモンの養殖は、餌(すなわち、養殖される魚の食べ物)として使用される大量の野生の魚を要する。原則として、魚は、それらの体が必要とするオメガ3又は脂肪酸を産生することができない。魚は、微細藻類を消費すること(ニシン及びイワシの場合)、又は餌の魚を消費すること(サーモンの場合)のどちらか一方によって、それらを蓄積する。肉食の魚、例えばサーモンは、飼料魚に由来する、多量のタンパク質の栄養供給を必要とする。問題は、1kgの養殖されるサーモンを産生するのに数キログラムの飼料魚を使用することである。サーモンに対する需要が上昇し続けると同時に、飼料魚に対する必要性はより一層大きくなる。従って、世界の漁業の75%がその最大の持続可能な生産量を上回っている又は上回ろうとしている。
【0005】
持続可能でない方法で実行される水産養殖は、海岸の生態系に対する増加する脅威を示す。実際に、マングローブ林のほぼ20%が、部分的にエビの激しい養殖のために、1980年から破壊されている。フィリピンにおける269,000ヘクタール以上のマングローブがエビの養殖場に変換されている。これらの養殖場のほとんどは、毒の蓄積及び栄養の欠乏により、10年以内に放棄される。さらに、コストの解析は、これらの養殖場は経済的に実行可能でなかったと明らかにしている。
【0006】
サーモンの養殖場は、それらが設置される海岸線の生態系を汚染する。実際に、200,000トンのサーモンの養殖場は、60,000の住人の町と同じ程度の糞便の廃棄物を産生する。この廃棄物は、処置されることなく、海へ直接的排出される。サーモンの養殖場の近くのベントス(海底)では、重金属の蓄積(特に銅及び亜鉛)もまたある。魚の生息地、特に河口は、危機的な状況にあり、野生の魚は、世界的に減少している。魚、例えばサーモンの養殖は問題を解決しない。なぜならば、それらは他の魚に由来する製品、例えば魚粉及び魚油を消費する必要があるからである。
【0007】
水産養殖セクターの開発のいくつかの将来の解析は、水産養殖産生サイクルの全ての工程における革新の重要性を強調してきた。従って、現在のトレンドでは、水処理技術に基づく内陸の水産養殖場の創設が好まれる。我々は、しばしばRASシステム(Recirculating Aquaculture Systems(再循環水産培養システム))について話し、それにより、使用される水の品質及びその再利用の制御における革新的な解決策が提供される。水産培養における第二の主な障害は、全ての大きさの魚に餌をやることに関する。実際に、研究及びR&Dプログラムにおける現在のトレンドでは、食品マトリックスにおける魚粉及び魚油を最大限制限するために、新しい植物ベースの食料を試験することを目的としている。しかしながら、過去に適応された魚(サーモン、シーバス、タイ及びトロピカルハタ)は、肉食である。その結果、種の選択は、熟考を要する。全ての場合において、卵を孵化させた後の、種の養殖サイクル(因習的な又は新しい)の最初の段階が、主な障害であり、並びに技術的な開発及び革新への真の難題である。
【0008】
実際に、水産養殖は、世界において最も力強い成長の一つを示す食料増大システムである(一年当たり8.3%、FAOのSOFIAレポート 2010(SOFIA report of the FAO 2010))が、その開発は、数多くの魚の種のライフサイクルのスタートを制御することにおける困難のために、まだ制限されている。適切な食料の不足は、数多くの魚の種の幼生の産生において主な障害であり、生きた食料なしで人工的な餌で育てることができる魚の種は、まずほとんどない。今日、高品質の魚の幼生の産生は水産養殖にとって必要不可欠である一方で、水槽の交換及び保管の目的のために、幼生を育てることは、水産養殖の分野において重要性を増している。さらに、ブラインシュリンプ(自然な生息地においてシスト(cyst)の形式で捕獲される古典的な生きた餌)の供給における世界的な低減及び養殖される種の多様化、例えばとても小さい幼生の観賞魚、又はとても小さい開口部を持つ他の種、のために、幼生のための生きた食料の代替又は補足は、重要である。
【0009】
未熟な及び成熟した段階は、人工的な餌(顆粒)を使用して、水産養殖においてとても良い制御下に置かれているが、養殖している幼生は、ただ一つの種のみを扱う高性能の孵化場でさえ、いまだに問題がある。実際に、魚のライフサイクルでの高い死亡率は、幼生成長の間に観察される。伝統的に、ブラインシュリンプ及びワムシは、幼生段階における養殖される魚のために生きた食料(生きた餌)として供給される。しかしながら、これらの種は、魚の栄養の必要性の全てをカバーするわけではない;これらの種は従って、時として高価である、人工的な工業製品でしばしば強化される。さらに、ブラインシュリンプの自然なストックは、水産養殖からの現在常に増加している需要で苦しんではいけない。
【0010】
それが、水産養殖における現在の研究が、共通して使用される生きた餌、例えばブラインシュリンプ及びワムシの産生のための持続可能な、環境に優しい解決策に集中する理由である。しかしながら、これらの古典的な生きた餌の種、ブラインシュリンプ及びワムシは、栄養的な観点から劣っており、食べるために魚の幼生に与えられる前にカプセルに包まれた栄養に基づく強化をしばしば要する。これらの強化産物は、低い水溶性の、特にエマルション及び/又は粉末である。従って、生きた餌の強化産物の著しい喪失が、しばしば観察され、加えて、水質に素早く影響を与える。従って、生きた餌の他の種への拡張は、開発するべき更なる研究分野である。これは、例えば、カイアシに適用され、それは魚の幼生のための代替的な食料としての理想的な解決策を示す。カイアシは、魚の幼生の栄養的な必要性を満たし、それらの自然の環境におけるそれらの食料の大部分を構成する。
【0011】
これらの問題に直面して、生きた餌の場合における、ベクターとして又は対象とする活性分子の投与のためのナノ粒子に、特に興味を持っている科学者がいる。例えば、Jimenez-Fernandesら(Aquaculture 432 (2014) 426-433)は、セネガルソール(Senegalese sole)(Solea senegalensis)だけでなくワムシ(rotifers)(Brachionus plicatilis)にも直接投与された、ビタミンCをロードしたキトサンのナノ粒子を記載している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Jimenez-Fernandesら(Aquaculture、432、2014、426~433頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、環境的影響を最小限にする一方で、水産養殖において使用されることを意図して、充分な量及び質において動物プランクトンの大規模な産生をするための新しい手段を開発する真の必要性がいまだにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この文脈において、本発明者は、驚くべきことに、対象とする少なくとも一つの活性分子をロードした又は対象とする少なくとも一つの活性分子で機能的にされたデンプンナノ粒子が、ロードされていようと又はいなかろうと、ロードしていないデンプンナノ粒子及びキトサン又はアルギネートナノ粒子と比較して、動物プランクトンの、より特定すると、生きた餌、例えばワムシ、ブラインシュリンプ及びカイアシにおける、大きさ及び密度をより素早く増加させることを可能にしたことを、実証した。本発明者は、これらのロードされたデンプンナノ粒子の、前記の生きた餌、特にカイアシにおける、産卵率及び卵の孵化率への影響もまた実証した。
【0015】
本発明は、従って、動物プランクトンを生育するための、対象とする少なくとも一つの活性分子をロードしたデンプンナノ粒子の使用に関する。より特定すると、本発明は、動物プランクトンの大きさ及び/若しくは密度及び/若しくは産卵率、並びに/又は動物プランクトンの卵の孵化率を増加させるための、対象とする少なくとも一つの活性分子をロードしたデンプンナノ粒子の使用に関する。好ましくは、動物プランクトンは、ワムシ、ブラインシュリンプ及びカイアシから選択される生きた餌である。
【0016】
特定の実施形態において、対象とする少なくとも一つの活性分子をロードしたデンプンナノ粒子は、10及び500 nmの間、20及び450 nmの間、40及び400 nmの間、好ましくは約40、80、100、200又は400 nm、並びにさらにより好ましくは、約80 nmの平均的な大きさを有する。
【0017】
ある特定の実施形態において、前記対象とする少なくとも一つの活性分子の重量比は、デンプンナノ粒子の総重量に対して、0.01%及び10%の間、0.01%及び5%の間、好ましくは0.1%及び4%の間、並びにさらにより好ましくは、1及び3%の間である。
【0018】
ある特定の実施形態において、前記対象とする少なくとも一つの活性分子は、ビタミン、カロテノイド、抗生物質、ホルモン、ミネラル、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、脂肪酸及びその誘導体から選択される。好ましくは、対象とする活性分子は、ビタミンB12、ビタミンC、ベタイン、セレン、テトラサイクリン、トリメトプリム、オキソリン酸、タウリン、メチオニン、グルタチオン、ヨウ素、エストロゲン及びエストラジオールから選択される。
【0019】
本発明は、さらに、動物プランクトン、好ましくはワムシ、ブラインシュリンプ及びカイアシから選択される生きた餌を生育するための、本出願に記載された、対象とする少なくとも一つの活性分子をロードした少なくとも一つのデンプンナノ粒子、及び、任意に、栄養、特に微細藻類を含む組成物の使用に関する。特定の実施形態において、組成物は、粉末又は溶液の形態である。ある特定の実施形態において、組成物は、0.1及び300 mg/Lの間、1及び200 mg/Lの間、10及び150 mg/Lの間、10及び100 mg/Lの間、好ましくは10及び80 mg/Lの間、並びにさらにより好ましくは20及び60 mg/Lの間の量の、対象とする少なくとも一つの活性分子をロードしたデンプンナノ粒子を含む。ある実施形態において、前記組成物は、毎日適用される。
【0020】
本発明は、加えて、ベタインをロードした少なくとも一つのデンプンナノ粒子、ビタミンCをロードした少なくとも一つのデンプンナノ粒子、及びビタミンB12をロードした少なくとも一つのデンプンナノ粒子を含む組成物に関する。本発明は、さらに、動物プランクトン、好ましくはワムシ、ブラインシュリンプ及びカイアシから選択される生きた餌を生育するための前記組成物の使用に関する。
【0021】
本発明は、加えて、本出願において定義された、対象とする少なくとも一つの活性分子をロードした少なくとも一つのデンプンナノ粒子又は組成物の適用を含む、動物プランクトン、好ましくはワムシ、ブラインシュリンプ及びカイアシから選択される生きた餌の栄養価を強化するための方法にもまた関する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1Aは、食料のタイプに応じたブラインシュリンプの大きさの発達を示す。図1Bは、食料のタイプに応じたブラインシュリンプの大きさの発達を示す。図1Cは、食料のタイプに応じたブラインシュリンプの大きさの発達を示す。
図2図2Aは、食料のタイプに応じたワムシの密度の毎日のモニタリングを示す。図2Bは、食料のタイプに応じたワムシの密度の毎日のモニタリングを示す。図2Cは、食料のタイプに応じたワムシの密度の毎日のモニタリングを示す。
図3図3は、食料のタイプに応じたメスのカイアシによる産卵数の毎日のモニタリングを示す。
図4図4は、食料のタイプに応じたメスのカイアシによる産卵の、一ヶ月の、孵化率を示す。
図5図5は、食料のタイプに応じたカイアシの長さ及び幅の増加の毎日のモニタリングを示す。
図6図6は、D13でのメスのカイアシによる産卵の生存を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書で与えられる実施例に示されるように、本発明者は、対象とする少なくとも一つの活性分子をロードした又は対象とする少なくとも一つの活性分子で機能的にされたデンプンナノ粒子が、動物プランクトン、より特定すると生きた餌、例えばワムシ、ブラインシュリンプ及びカイアシの大きさ、密度、産卵率及び孵化率においてより急速な増加をさせることを実証した。これらのデンプンナノ粒子は、対象とする少なくとも一つの活性分子をロードし、従って、水産養殖における栄養のプロファイル及び動物プランクトンのパフォーマンスを改善させるための栄養のベクターとしての役割を果たすことができる。さらに、これらのロードしたデンプンナノ粒子は、鹹水(海水)において安定している。それらは、比較的少量で使用され、従って、環境的な影響及び菌耐性の発達を制限している。それらはまた、動物プランクトンに対して無毒である。それらは様々な種の動物プランクトン、例えばブラインシュリンプ、ワムシ及びカイアシに、それらの口の大きさに関係なく、適用することができる。なぜならば、これらのナノ粒子の直径は、容易に制御することができるからである。それらは、数多くの処置可能性を提供する。なぜならば、それらは、対象とする一以上の活性分子をロードする又は対象とする少なくとも一つの活性分子で機能的にされることができるからである。最後に、それらの製造コストは、比較的低い。なぜならばそれらがデンプンから得られ、それは商業的に容易に利用可能なバイオポリマーであり、単純な破砕による製造方法は、産業的規模に適しているからである。
【0024】
本発明は、従って、動物プランクトン、好ましくはワムシ、ブラインシュリンプ及びカイアシから選択される生きた餌を生育するための、対象とする少なくとも一つの活性分子をロードしたデンプンナノ粒子の使用に関する。本発明は、前記の生きた餌に対する、対象とする少なくとも一つの活性分子をロードした少なくとも一つのデンプンナノ粒子の適用を含む、動物プランクトン、好ましくはワムシ、ブラインシュリンプ及びカイアシから選択される生きた餌を生育するためのプロセス又は方法にもまた関する。
【0025】
本発明は、動物プランクトン、好ましくはワムシ、ブラインシュリンプ及びカイアシから選択される生きた餌の栄養価を強化するための対象とする少なくとも一つの活性分子をロードしたデンプンナノ粒子の使用にもまた関する。本発明は、本出願に記載された、対象とする少なくとも一つの活性分子をロードした少なくとも一つのデンプンナノ粒子、又は少なくとも一つのロードしたデンプンナノ粒子を含む組成物の適用を含む、動物プランクトン、好ましくはワムシ、ブラインシュリンプ及びカイアシから選択される生きた餌の栄養価を強化するためのプロセス又は方法にもまた関する。
【0026】
特定の実施形態において、本発明は、動物プランクトン、好ましくはワムシ、ブラインシュリンプ及びカイアシから選択される生きた餌の大きさ及び/若しくは密度及び/若しくは産卵率、並びに/又は動物プランクトンの卵の孵化率を増加させるための、対象とする少なくとも一つの活性分子をロードしたデンプンナノ粒子の使用に関する。本発明は、本出願に記載された、対象とする少なくとも一つの活性分子をロードした少なくとも一つのデンプンナノ粒子、又は少なくとも一つのロードしたデンプン粒子を含む組成物の適用を含む、動物プランクトン、好ましくはワムシ、ブラインシュリンプ及びカイアシから選択される生きた餌の大きさ及び/若しくは密度及び/若しくは産卵率を増加させる工程又は方法にもまた関する。
【0027】
[デンプンナノ粒子(NPs)]
【0028】
デンプンは、多糖であり、D-グルコース分子鎖から構成され、全ての生物の主なエネルギー源を示している。デンプンは、穀物(トウモロコシ、小麦)、マメ(エンドウ)、根菜、塊茎及び根茎(ジャガイモ、サツマイモ、キャッサバ)、並びに果物(バナナ)において存在する。その実験式は、[Cx(H2O)y)]nである。
【0029】
デンプンは、その分岐の程度及びその重合度が異なる、二つのホモポリマー:
アミロース(短い枝で軽く分岐され、600から1000ユニットのD-グルコースから構成され、104から106ダルトンの分子量に達する)及びアミロペクチン(長い枝を持ち、10,000から100,000分子のD-グルコースから成り、106から108ダルトンの分子量に達する)
の混合物である。
【0030】
本発明で使用される、対象とする少なくとも一つの活性分子をロードした、デンプンナノ粒子(NPs)は、当業者により知られる任意の技術、そして特に「遊星破砕(planetary grinding)」技術により調製することができる。この技術は、対象とする活性分子をロードしたデンプンナノ粒子(NPs)を大量に調製できるという利点があり、従って、産業的規模での応用に非常に適している。さらに、この技術は、使用される破砕サイクル(grinding cycle)によって異なる大きさのデンプンナノ粒子(NPs)を調製することもまたできる。ロードしたデンプンナノ粒子(NPs)の大きさは、従って、ターゲットの生きた餌の種に適応させることができる。破砕サイクル(grinding cycle)の例は、本明細書の実施例1の表1に示されている。
【0031】
特定の実施形態において、対象とする少なくとも一つの活性分子をロードしたデンプンナノ粒子(NPs)は、10及び500 nmの間、20及び450 nmの間、40及び400 nmの間、好ましくは約40、80、100、200又は400 nm、並びにさらにより好ましくは、約80 nmの平均的な大きさを有する。
【0032】
本発明において、デンプンナノ粒子(NPs)は、対象とする少なくとも一つの活性分子をロードする。「ロードする(loaded)」は、デンプンナノ粒子(NPs)が対象とする少なくとも一つの活性分子を含むことを意味する。デンプンナノ粒子(NPs)は、対象とする少なくとも一つの活性分子で機能的にされる、とも理解される。「対象とする少なくとも一つの活性分子」は、デンプンナノ粒子(NPs)が必然的にロードすることを意味する。それらは、従って、好ましくは少なくとも1及び10の間、1及び5の間、及びさらにより好ましくは1及び3の間に含まれる、対象とする異なる活性分子の複数の組み合わせを含むことができる。好ましい実施形態において、デンプンナノ粒子(NPs)は、対象とする一つ、二つ又は三つの異なる活性分子をロードする。
【0033】
明らかに、一つの粒子当たりの対象とする少なくとも一つの活性分子の重量は、生きた餌に対して送達されるべき、与えられるべき又は投与されるべきである、対象とする少なくとも一つの活性分子の量に応じて調節されることができる。
【0034】
特定の実施形態において、デンプンナノ粒子(NP)は、対象とする少なくとも一つの活性分子をロードし、対象とする活性分子の重量比は、デンプンナノ粒子の総重量に対して、0.01%及び10%の間、0.01%及び5%の間、好ましくは0.1%及び4%の間、並びにさらにより好ましくは、1及び3%の間である。さらにより好ましい実施形態において、デンプンナノ粒子(NP)は、デンプンナノ粒子(NP)の総重量に対して、1重量%の対象とする少なくとも一つの活性分子をロードしている。あるさらにより好ましい実施形態において、デンプンナノ粒子(NP)は、デンプンナノ粒子(NP)の総重量に対して、3重量%の対象とする少なくとも一つの活性分子をロードしている。
【0035】
「対象とする活性分子」は、水産養殖において使用することのできる任意の生物学的な活性分子、さらに特定すると、動物プランクトン、特に生きた餌、例えばブラインシュリンプ、ワムシ及びカイアシに影響を与える任意の分子を意味する。「対象とする活性分子」として、我々は、例えば及び制限するわけではなく、ビタミン、カロテノイド、抗生物質、ホルモン、ミネラル、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、脂肪酸及びその誘導体を言及することができる。
【0036】
ビタミンは、生物の代謝に必要な有機物である。それらは、生物それ自身により十分な量で合成されることもできる。ビタミンの不十分な摂取又は欠如は、数多くの疾患の原因になる可能性がある。逆に言うと、ビタミンの過剰な摂取は、生物にとって有毒である可能性がある。ビタミンは、一般的に二つのグループに分けられる:水溶性ビタミン及び脂溶性ビタミンである。水溶性ビタミンの中で、我々は、ビタミンB1 (チアミン)、ビタミンB2 (リボフラビン)、ビタミンB3 (ニコチンアミド、ナイアシン)、ビタミンB5 (パントテン酸)、ビタミンB6 (ピリドキシン)、ビタミンB8 (ビオチン)、ビタミンB9 (葉酸)、ビタミンB12 (すなわちコバラミン)及びビタミンC (アスコルビン酸)に言及することができる。脂溶性ビタミンの中で、我々は、ビタミンA (レチノール)、ビタミンD (カルシフェロール)、ビタミンE (トコフェロール)、ビタミンK1 (フィロキノン)及びビタミンK2 (メナキノン)に言及することができる。
【0037】
抗生物質は、バクテリアの成長を損なう又は妨害する、天然の又は合成の物質である。特に、アミノグリコシド、β-ラクタム系抗生物質、サイクリン、グリコペプチド、マクロライド、ニトロフラン及びニトロイミダゾール、キノロン、フェニコール、ポチペプチド及びスルファミドを含む抗生物質のいくつかのクラスがある。制限するわけではなく、我々は、抗生物質の例として、ペニシリン、セファロスポリン、テトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、ゲンタマイシン、トリメトプリム、オキソリン酸、フルメキン、リファンピシン、クロラムフェニコール及びフロルフェニコールに言及することができる。
【0038】
ホルモンは、腺細胞により合成される生物学的に活性な化学物質である。ホルモンは、化学的形態でメッセージを伝達し、従って、生物におけるメッセンジャーの役割を果たす。ホルモン及び誘導体の例として、我々は、制限するわけではなく、エストロゲン及びエストラジオール並びに甲状腺ホルモン、例えばチロキシンを言及することができる。
【0039】
ミネラルの例は、制限するわけではなく、ヨウ素、セレン、リン、カルシウム、マグネシウム、鉄、銅、亜鉛、マンガン、ナトリウム及びカリウムである。本発明の文脈において、「ミネラル」という用語は、無機化合物、例えばヨウ化カリウム(KI)、ヨウ素酸カリウム(KIO3)、ヨウ化ナトリウム及び亜セレン酸ナトリウムもまた含む。
【0040】
アミノ酸又はアミノ酸誘導体の例は、制限するわけではなく、メチオニン、タウリン、ベタイン、アスパラギン酸、トレオニン、セリン、グルタミン酸、プロリン、システイン、グリシン、アラニン、バリン、リシン、ヒスチジン、ロイシン、チロシン、フェニルアラニン及びイソロイシンである。
【0041】
ペプチド又はペプチド誘導体の例は、制限するわけではなく、グルタチオン、epinicidin、cristine及びバシトラシンである。
【0042】
脂肪酸は、脂肪族鎖を有するカルボン酸である。それらは、代謝エネルギーの重要な源である。脂肪酸の例は、例えば、酪酸、吉草酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、αリノール酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸及びドコサヘキサエン酸である。
【0043】
本発明の特定の実施形態において、前記対象とする少なくとも一つの活性分子は、ビタミン、カロテノイド、抗生物質、ホルモン、ミネラル、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、脂肪酸及びその誘導体から選択される。本発明の好ましい実施形態において、前記対象とする少なくとも一つの活性分子は、ビタミンB12、ビタミンC、ベタイン、セレン、テトラサイクリン、トリメトプリム、オキソリン酸、タウリン、メチオニン、グルタチオン、ヨウ素、エストロゲン及びエストラジオールから選択される。
【0044】
[組成物]
【0045】
本発明は、動物プランクトン、好ましくはワムシ、ブラインシュリンプ及びカイアシから選択される生きた餌を生育するための、本出願で定義された、対象とする少なくとも一つの活性分子をロードした少なくとも一つのデンプンナノ粒子、及び、任意に、栄養、特に微細藻類を含む組成物の使用に関する。
【0046】
組成物は、従って、対象とする少なくとも一つの活性分子をロードした一つ以上のデンプンナノ粒子(NPs)を含むことができる。組成物が、対象とする少なくとも一つの活性分子をロードした少なくとも二つのデンプンナノ粒子(NPs)を複数含むとき、組成物は、ロードしたデンプンナノ粒子(NPs)のセットを含むと言うことができる。
【0047】
本発明の特定の実施形態において、組成物は、対象とする活性分子をロードしたデンプンナノ粒子のセットを含む。この実施形態において、デンプンナノ粒子(NPs)のセットは、対象とする同一の活性分子をロードする。この特定の実施形態における組成物の例は、例えば、ビタミンB12をロードするデンプンナノ粒子(NPs)のセットを含む組成物、ベタインをロードするデンプンナノ粒子(NPs)のセットを含む組成物、ビタミンCをロードするデンプンナノ粒子(NPs)のセットを含む組成物である。
【0048】
本発明のある特定の実施形態において、組成物は、デンプンナノ粒子のセットを含み、それぞれのデンプンナノ粒子は、対象とする少なくとも二つの活性分子をロードする。この実施形態において、デンプンナノ粒子のセットは、少なくとも二つの異なる活性分子をロードする。この特定の実施形態における組成物の例は、例えば、ビタミンB12及びベタインの両方をロードしたデンプンナノ粒子(NPs)のセットを含む組成物、ビタミンC及びベタインの両方をロードしたデンプンナノ粒子(NPs)のセットを含む組成物、並びにビタミンB12、ビタミンC及びベタインの全てをロードしたデンプンナノ粒子のセットを含む組成物である。
【0049】
ある特定の実施形態において、組成物は、前記ナノ粒子のいくつかのセットを含む。好ましくは、組成物は、2及び10、2及び9、2及び8、2及び7、2及び6、2及び5、2及び4の間、並びにさらにより好ましくは、2、3又は4の、ロードしたデンプンナノ粒子のセットを含む。この特定の実施形態における組成物の例は、例えば、ビタミンB12をロードしたデンプンナノ粒子(NPs)のセット及びベタインをロードしたデンプンナノ粒子(NPs)のセットを含む組成物;ビタミンCをロードしたデンプンナノ粒子(NPs)のセット及びベタインをロードしたデンプンナノ粒子(NPs)のセットを含む組成物;ビタミンB12をロードしたデンプンナノ粒子(NPs)のセット、ビタミンCをロードしたデンプンナノ粒子(NPs)のセット、及びベタインをロードしたデンプンナノ粒子(NPs)のセットを含む組成物;ビタミンB12及びビタミンCの両方をロードしたデンプンナノ粒子(NPs)のセット並びにベタインをロードしたデンプンナノ粒子(NPs)のセットを含む組成物;ベタイン及びビタミンCの両方をロードしたデンプンナノ粒子(NPs)のセット並びにビタミンB12をロードしたデンプンナノ粒子(NPs)のセットを含む組成物;並びにビタミンB12及びベタインの両方をロードしたデンプンナノ粒子(NPs)のセット並びにビタミンCをロードしたデンプンナノ粒子(NPs)のセットを含む組成物である。
【0050】
当然のことながら、前記組成物の例に使用される対象とする活性分子は、互いに交換でき、本出願で定義された任意の対象とする活性分子と交換することができる。
【0051】
本発明は、さらに、特に好ましい実施形態を含む、本出願で記載された、対象とする少なくとも二つの活性分子をロードしたデンプンナノ粒子のセットを含む組成物に関する。
【0052】
本発明は、さらに、特に好ましい実施形態を含む、本出願で記載された、対象とする少なくとも一つの活性分子をロードしたデンプンナノ粒子の少なくとも二つのセットを含む組成物に関する。
【0053】
本発明における好ましい組成物は、ベタインをロードした少なくとも一つのデンプンナノ粒子、ビタミンCをロードした少なくとも一つのデンプンナノ粒子、及びビタミンB12をロードした少なくとも一つのデンプンナノ粒子を含む。この好ましい組成物は、従って、ベタインをロードしたデンプンナノ粒子のセット、ビタミンCをロードしたデンプンナノ粒子のセット、及びビタミンB12をロードしたデンプンナノ粒子のセットを含む。
【0054】
特定の実施形態において、本出願で定義された組成物は、栄養、特に微細藻類をさらに含む。微細藻類の例は、T-イソクリシス(T-isochrisis)(T-iso)及びロドモナス(Rhodomonas)(Rhodo)である。
【0055】
ある特定の実施形態において、組成物は、粉末又は溶液の形態である。好ましくは、組成物は、溶液の形態である。
【0056】
ある特定の実施形態において、組成物は、0.1及び300 mg/Lの間、1及び200 mg/Lの間、10及び150 mg/Lの間、10及び100 mg/Lの間、好ましくは10及び80 mg/Lの間、並びにさらにより好ましくは20及び60 mg/Lの間の量の、対象とする少なくとも一つの活性分子をロードしたデンプンナノ粒子を含む。本発明の文脈において、対象とする少なくとも一つの活性分子をロードしたデンプンナノ粒子の量は、重さ/体積で表現される。より特定すると、それは、水におけるmg/Lで表現される。好ましくは、水は鹹水、例えば海水である。
【0057】
本発明におけるさらにより好ましい組成物は、ベタインを3%でロードした約30 mg/Lのデンプンナノ粒子(NPs)、ビタミンB12を3%でロードした約5 mg/Lのデンプンナノ粒子(NPs)、及びビタミンCを3%でロードした約5 mg/Lのデンプンナノ粒子(NPs)を含む。
【0058】
本発明における、もう一つのさらにより好ましい組成物は、ベタインを3%でロードした約200 mg/Lのデンプンナノ粒子(NPs)、ビタミンB12を3%でロードした約200 mg/Lのデンプンナノ粒子(NPs)、ビタミンCを3%でロードした約200 mg/Lのデンプンナノ粒子(NPs)、及びセレンを3%でロードした約200 mg/Lのデンプンナノ粒子(NPs)を含む。
【0059】
本発明における、もう一つのさらにより好ましい組成物は、ベタインを1%又は3%でロードした約30 mg/Lのデンプンナノ粒子(NPs)、ビタミンB12を1%又は3%でロードした約5 mg/Lのデンプンナノ粒子(NPs)、及びビタミンCを1%又は3%でロードした約5 mg/Lのデンプンナノ粒子(NPs)を含む。
【0060】
好まれる対象は、従って、動物プランクトン、好ましくはワムシ、ブラインシュリンプ及びカイアシから選択される生きた餌を生育するための、前記組成物に関する。
【0061】
[生きた餌]
【0062】
本発明において、本出願に記載された、対象とする少なくとも一つの活性分子をロードしたデンプンナノ粒子(NPs)及び組成物は、動物プランクトン、並びに特に、水産養殖において使用される生きた餌、例えばワムシ、ブラインシュリンプ及びカイアシを生育するために使用される。
【0063】
水産養殖において使用される生きた餌は、「動物プランクトン」とも呼ばれる。動物プランクトンは、プランクトンの動物部分をカバーし、制限された移動能力を持ち任意の水生環境(淡水、汽水及び海水)において水中で生きる生物を示す。動物プランクトンは、生物の大きさに従って分類される。我々は、ワムシ、カイアシの最初の幼生段階(ノープリウス)、原生生物、繊毛虫、及び浮遊性有孔虫を含むマイクロ動物プランクトン(<200μm)のクラスに特に言及することができる。我々は、カイアシの未熟な及び成熟した段階、フリーな甲殻類、任意の水生環境に住むカイアシ及び淡水環境において基本的に発生する枝角類(例えばミジンコ)を含む、メソ動物プランクトンのクラスに言及することもまたできる。動物プランクトンは、他の大きなサイズの生物のクラス(マクロおよびメガ動物プランクトン)、例えばある甲殻類(オキアミ及びアミ類)並びに軟体動物、刺胞動物(例えばクラゲ)、及び有櫛動物を含むゼラチン状の動物プランクトンもまた含む。最後に、水生動物の幼生段階の大部分は、水中でライフサイクル全体を送る全ての生物を含む終生プランクトンとは反対に、プランクトンの形態で発育し及びメロプランクトンの一部を形成する。
【0064】
ブラインシュリンプ(Artemia salina)は、塩湖又は塩沼(しばしばラテンアメリカ及びカリフォルニアにおいて)で生きる、甲殻類である。ブラインシュリンプ特異的な特徴は、それらが背泳ぎすることである。それらは、非常に高い塩分濃度(約300g/Lまで)の水で生きることができる。それらの成熟した大きさは、平均して8から10mmまでであるが、それらの環境によっては、15mmに到達する可能性もある。それらの体は、細長い形であり、20の体節に分けられ、20組の「脚」、つまり規則正しいリズムで振動する葉状の付属器官を含む。ブラインシュリンプの環境がそれらの発育に好ましくない時、メスは、シスト(cyst)と呼ばれる休眠卵(休眠(diapause))を産生することができる。これらのシスト(cyst)は、水へのアクセスなしで長期間保存されることができる。それらは、その後、水で戻して、ブラインシュリンプのノープリウスを産生することができる。ノープリウスは、25℃の気温で2週間後に成体年齢に到達する。ブラインシュリンプは、水槽用に及び水産養殖において魚を生育するときに最も使用される生きた餌である。
【0065】
本発明の特定の態様は、ブラインシュリンプを生育するための、対象とする少なくとも一つの活性分子をロードしたデンプンナノ粒子、又は少なくとも一つの前記デンプンナノ粒子を含む組成物の使用に関する。本発明の好まれる態様は、ブラインシュリンプの大きさ及び/若しくは密度及び/若しくは産卵率、並びに/又は前記ブラインシュリンプの卵の孵化率を増大させるための、対象とする少なくとも一つの活性分子をロードしたデンプンナノ粒子、又は少なくとも一つの前記デンプンナノ粒子を含む組成物の使用に関する。本発明のさらにより好まれる態様は、ブラインシュリンプの大きさを増大させるための、対象とする少なくとも一つの活性分子をロードしたデンプンナノ粒子又は少なくとも一つの前記デンプンナノ粒子を含む組成物の使用に関する。
【0066】
ワムシは、マイクロ動物プランクトン(小さなサイズの動物プランクトン)のかなりの部分を示す後生動物プランクトンである。それらは、淡水環境(淡水)から超鹹水環境(塩湖など)に及ぶ多様なバイオトープに生息する。しかしながら、環境によって、それらは等しく表されるわけではない:それらは、淡水及び塩水において非常に共通しているが、それらは海においてはより少ない。シオミズツボワムシ(Brachionus plicatilis)という種は、その生殖が基本的に単為生殖である、Monogononitida目に属する広塩性ワムシである。有性生殖の段階は、外部刺激(温度、塩分など)及び/又は内部刺激(加齢など)により引き起こされる可能性がある。Brachionus、及び一般にMonogononitidaのオスは、矮性であり、体の体積のほとんどを占める大きな精巣を有する。天然の生息地において、これらのワムシは、有性生殖から生じた休眠卵(休眠段階(dispause stage))の形態で不運な期間を過ごす:これは休止状態である。条件がこれらの動物の生活と一度適合すると、卵は孵化し、メスのワムシは環境にコロニーを作るために単為生殖で生殖するだろう。養殖において、物理化学のパラメーターは制御され、単為生殖を促進するために調節される。これは、ある後生動物により使用される生殖のモードである。メスは、2n染色体の卵を産生し、それはオスの配偶子の受精なしで成長するだろう。単為生殖はクローニングに等しい。一及び同一のメスに由来する個体は、全てメスであり、お互いに及びそれらの母親と同一である。水産養殖において(特に孵化場において)及び水族館において(水族館において生きた餌を扱っているセクション)、ワムシは、成長の第一段階の間、魚の幼生を生育するために一般に使用される。
【0067】
本発明の特定の態様は、ワムシを生育するための、対象とする少なくとも一つの活性分子をロードしたデンプンナノ粒子又は少なくとも一つの前記デンプンナノ粒子を含む組成物の使用に関する。本発明の好まれる態様は、ワムシの大きさ及び/若しくは密度及び/若しくは産卵率、並びに/又は前記ワムシの卵の孵化率を増大させるための、対象とする少なくとも一つの活性分子をロードしたデンプンナノ粒子、又は少なくとも一つの前記デンプンナノ粒子を含む組成物の使用に関する。本発明のさらにより好まれる態様は、ワムシの密度を増大させるための、対象とする少なくとも一つの活性分子をロードしたデンプンナノ粒子又は少なくとも一つの前記デンプンナノ粒子を含む組成物の使用に関する。
【0068】
カイアシという用語は、二つのギリシャのルーツ:kope(オールを意味する)及びpodos(足を意味する)に由来する。20,000種以上のカイアシがおり、それらの大半は海にいる。これらの小さな甲殻類は、動物プランクトンの主要な要素の一つ(60%)を示し、それらは水生環境の食物網において鍵となる役割を果たす。それらは、一次及び二次の消費者であり、数多くの無脊椎動物及び魚の幼生のための食料としての役割もまた果たす。それらのライフサイクルは、種によって非常にバラエティに富んでいる;それらは、プランクトン様、エピ底生性及び底生性であり、又はその他は寄生生物のように、宿主に付着して生きることができる。食事もまた種によって決まる:草食性、雑食性及び肉食性である。生殖は、交配による。なぜならば、配偶子が環境中へ放出されないからである。生殖は、日ごとに行うが、それは外部の要因、例えば温度、食料の量、塩分濃度又は光周期により影響を受ける。交配中、オスは精包をメスの後体に正確に置く。これは、卵を受精させるためにメスによって保たれ、それらを卵嚢においてインキュベートし、それらを環境中へ直接放出する。生殖能力は高く、例えばAcartia tonsaという種では、一日当たりおよそ20及び40の間の卵に相当する。環境的条件が不利になるとき、休眠卵を観察することができる。これらは、孵化のためのより有利な期間のために待機するのだろう。ライフサイクルは、複雑である。なぜならば、それは生殖成熟段階に達する前の、数多くの脱皮及び変態から構成されるからである。しかしながら、それらの複雑さにも関わらず、これらの生物は、適応のための相当な能力を有する。
【0069】
本発明の特定の態様は、カイアシを生育するための、対象とする少なくとも一つの活性分子をロードしたデンプンナノ粒子、又は少なくとも一つの前記デンプンナノ粒子を含む組成物の使用に関する。本発明の好まれる態様は、カイアシの大きさ及び/若しくは産卵率、並びに/又は前記カイアシの卵の孵化率を増大させるための、対象とする少なくとも一つの活性分子をロードしたデンプンナノ粒子、又は少なくとも一つの前記デンプンナノ粒子を含む組成物の使用に関する。
【0070】
好ましくは、本出願で記載された、対象とする少なくとも一つの活性分子をロードしたデンプンナノ粒子又は前記ナノ粒子(NPs)を含む組成物は、動物プランクトン、好ましくはワムシ、ブラインシュリンプ及びカイアシから選択される生きた餌に対して毎日(一日に一回)適用される。
【0071】
本発明は、従って、動物プランクトン、好ましくはワムシ、ブラインシュリンプ及びカイアシから選択される生きた餌を生育するための、対象とする少なくとも一つの活性分子をロードした少なくとも一つのデンプンナノ粒子又はそれらを含む組成物の毎日の使用にもまた関する。
【0072】
本発明は、さらに、0.1及び300 mg/L/日の間、1及び200 mg/L/日の間、10及び150 mg/L/日の間、10及び100 mg/L/日の間、好ましくは10及び80 mg/L/日の間、並びにさらにより好ましくは20及び60 mg/L/日の間の用量の、本出願に記載されたデンプンナノ粒子を含む組成物の使用に関する。
【0073】
本発明は、さらに、生きた餌に対する、対象とする少なくとも一つの活性分子をロードした少なくとも一つのデンプンナノ粒子又はそれらを含む組成物の毎日の適用を含む、動物プランクトン、好ましくはワムシ、ブラインシュリンプ及びカイアシから選択される前記の生きた餌を生育するためのプロセス又は方法に関する。
【0074】
本発明は、さらに、0.1及び300 mg/L/日の間、1及び200 mg/L/日の間、10及び150 mg/L/日の間、10及び100 mg/L/日の間、好ましくは10及び80 mg/L/日の間、並びにさらにより好ましくは20及び60 mg/L/日の間の用量の、本出願に記載されたデンプンナノ粒子を含む組成物の適用を含む、動物プランクトン、好ましくはワムシ、ブラインシュリンプ及びカイアシから選択される生きた餌を育てるための、プロセス又は方法に関する。
【0075】
本発明は、単に説明のために与えられ及び制限することのない、以下の実施例に照らしてより良く理解されるだろう。
【実施例
【0076】
[実施例1:調製及び特徴付けの方法]
[1.デンプンナノ粒子(デンプンNPs)]
2gのデンプンが50mLの破砕ボウル(grinding bowl)で重さを量られた。望ましいナノ粒子(NPs)の大きさによって、直径10mm又は20mmの酸化ジルコニウムビーズがボウルへ添加された。ボウルは、その後、ナノ粒子(NPs)の大きさに従って定義されたサイクルで、PM100粉砕機に設置された(表1を参照)。最後のサイクルの終わりの20分前に、1%の濃度で(2gのナノ粒子(NPs)に対して、この場合は20mg)、事前にバランスを使用してEppendorfにおいて重さを量られた、対象とする分子が、破砕ボウル(grinding bowl)に導入された(400nmのナノ粒子(NPs)を除いて、対象とする分子は、デンプンに直接導入される)。
【0077】
サイクルが一度終わると、ボウルはフードの下に置かれ、ボウルに含まれるナノ粒子(NPs)は、閉じたチューブに移された。チューブは、その後、対象とする分子が分解するのを防ぐために、暗所で4℃の冷蔵庫に保存された。
【0078】
【表1】
【0079】
[2.組成物]
ナノ粒子(NPs)の溶液は、フードの下のバランスを使用して、チューブ内のナノ粒子(NPs)の正確な量を量ることで調製された(重さを量られる量は、投与される種又は濃度に応じて変化する)。海水は、その後、チューブへと添加された。この不均一な溶液は、それが均一になるまで、ボルテックスにおいて及び超音波で数分間処置された。最後に、溶液は、生きた餌を含む培養ビーカーへと注がれ、又は4℃で数日間(実験の時間)保存された。
【0080】
[実施例2:ブラインシュリンプの実験結果]
実験の目的は、このセクターにおいて多く使用される種であるブラインシュリンプのノープリウスの大きさの増大をモニターすることにより、水産培養及び水族館における機能的にされたデンプンナノ粒子のポジティブな影響を確認することであった。
【0081】
この実験は、以下の条件:
温度:25℃、塩分濃度:25g/L、pH:7.9~8.3、ろ過されオートクレーブにより滅菌された水、パスツールピペットによる通気、照明:8時間から21時間、アンモニア含量<1mg/L、溶解した酸素>4mg/L
で実施された。
【0082】
[1.プロトコール:]
12個の1Lビーカーの操作のための、プロトコールは以下の通りである:
・0日目:孵化:0.5gのブラインシュリンプのシスト(cyst)は、48時間、25℃の温度で激しいバブリングと共に、1Lの海水に配置された。
・2日目:分離:ブラインシュリンプのノープリウスは、光線の補助で回復し、適度なバブリングで、食料のタイプによっていくつかの1Lビーカーに分けられた。4つの処置が、食料のタイプ当たり3反復の工程で行われ、一つのビーカー当たり約300のブラインシュリンプを含む全部で12個の1Lビーカーを作製した。
・4日目:生育:4日目から始まり、均一的な溶液の形態の50mgのデンプンナノ粒子(NPs)及び10mLのT-イソクリシス(T-iso)藻が、毎日海水1Lのビーカーに加えられた。
・5、7、9、11日目:大きさの測定:25のブラインシュリンプが、それぞれのビーカーから取り出され、アルコールに固定された。固定は、以下のように実施された:照明又は光線によって、ブラインシュリンプはビーカーの表面に付着され、それらをパスツールピペットで捕まえるのをより簡単にした。その後、それらはペトリ皿に置かれ、エタノールが添加された(総体積の5から10%のレベルで)。最後に、一度ブラインシュリンプが完全に固定されると、それらの大きさは、接眼レンズのカメラ及びTop View softwareで、11日間2日毎に測定された。
【0083】
上記の工程1から11のために、1Lの水当たり50mgのナノ粒子(NPs)が、毎日ブラインシュリンプを生育するために使用された。デンプンナノ粒子は、80nmの平均サイズを有し、アルギネートの平均サイズは約250nm及びキトサンの平均サイズは約250nmである。
【0084】
[2.結果:]
工程1:
図1、例1における表の結果は、ビタミンB12を0.1%でロードしたデンプンナノ粒子で生育させたブラインシュリンプについて、それらの大きさが、T-イソクリシス(T-iso)藻で、又は対象とする活性分子をロードしていないデンプンナノ粒子で生育させたブラインシュリンプと比較して、より素早く増大することを示す。
【0085】
工程2:
図1、例2における表の結果は、ベタインを1%でロードしたデンプンナノ粒子(NPs)及びロードしていないデンプンナノ粒子(NPs)で生育させたブラインシュリンプについて、それらの大きさは、T-イソクリシス(T-iso)藻で、又はビタミンB12を1%でロードしたデンプンナノ粒子(NPs)及びベタインを1%でロードしたデンプンナノ粒子(NPs)の混合物で生育させたブラインシュリンプと比較して、より著しく増大することを示す。
【0086】
工程3:
図1、例3における表の結果は、ビタミンCを1%でロードしたデンプンナノ粒子(NPs)、ビタミンB12を1%で及びベタインを1%でそれら両方をロードしたデンプンナノ粒子(NPs)、並びにロードしていないデンプンナノ粒子で生育させたブラインシュリンプについて、それらの大きさは、T-イソクリシス(T-iso)藻で生育させたブラインシュリンプと比較して、より著しく増大することを示す。
【0087】
工程4:
図1、例4における表の結果は、ビタミンCを1%で及びベタインを1%でそれら両方をロードしたデンプンナノ粒子で生育させたブラインシュリンプについて、それらの大きさは、T-イソクリシス(T-iso)藻で、デンプンナノ粒子(NPs)単独で、又はビタミンCを1%で及びビタミンB12を1%でそれら両方をロードしたデンプンナノ粒子で生育されたブラインシュリンプと比較して、より著しく増大することを示す。
【0088】
工程5:
図1、例5における表の結果は、セレンを1%でロードしたデンプンナノ粒子(NPs)及びデンプン単独のナノ粒子で生育させたブラインシュリンプについて、それらの大きさは、T-イソクリシス(T-iso)藻で、又はグルタチオンを1%でロードしたナノ粒子で生育させたブラインシュリンプと比較して、より著しく増大することを示す。
【0089】
工程6:
図1、例6における表の結果は、ビタミンCを1%で及びセレンを1%でそれら両方をロードしたデンプンナノ粒子(NPs)で生育させたブラインシュリンプについて、それらの大きさは、T-イソクリシス(T-iso)藻で、又はデンプンナノ粒子で生育させたブラインシュリンプと比較して、より著しく増大することを示す。さらに、デンプン単独のナノ粒子(NPs)で生育させたブラインシュリンプについて、それらの大きさは、アルギネートナノ粒子(NPs)で生育させたブラインシュリンプと比較してより著しく増大することを示す。
【0090】
工程7:
図1、例7における表の結果は、ビタミンCを1%で及びセレンを1%でそれら両方をロードしたデンプンナノ粒子(NPs)並びにヨウ化カリウムを1%でロードしたデンプンナノ粒子(NPs)について、それらの大きさは、T-イソクリシス(T-iso)藻で、又はデンプンナノ粒子(NPs)単独(新鮮な又は保存された)で生育させたブラインシュリンプと比較して、より著しく増大することを示す。さらに、新鮮なデンプンナノ粒子(NPs)及び4℃で一ヶ月保存されたデンプンナノ粒子(NPs)の間で差は観察されなかった。デンプンナノ粒子(NPs)は、従って、ブラインシュリンプの成長に影響を与えることなく保存されることができる。
【0091】
工程8:
図1、例8における表の結果は、セレンを1%で及びベタインを1%でそれら両方をロードしたデンプンナノ粒子(NPs)で生育させたブラインシュリンプの大きさについて、より良い結果を示す。
【0092】
工程9:
図1、例9における表の結果は、DL-メチオニンをロードしたデンプンナノ粒子(NPs)又はデンプン単独のナノ粒子(NPs)で生育させたブラインシュリンプの大きさについて、より良い結果を示す。
【0093】
工程10:
図1、例10における表の結果は、ホルモン又は抗生物質をロードしたデンプンナノ粒子(NPs)で育てたブラインシュリンプの大きさについて、より良い効果を示していない。
【0094】
工程11:
図1、例11における表の結果は、デンプン単独のナノ粒子(NPs)又は対象とする活性分子でロードしたデンプンナノ粒子(NPs)で育てたブラインシュリンプの大きさについて、キトサン単独のナノ粒子(NPs)で、又はビタミンCを1%でロードしたキトサンナノ粒子(NPs)で生育させたブラインシュリンプと比較して、より良い結果を示す。さらに、キトサンナノ粒子(NPs)は、ブラインシュリンプの死亡率を増大させ、これらのキトサンナノ粒子(NPs)を含むビーカーにおいて、海水に濁りをもたらすことが観察された。
【0095】
[実施例3:ワムシについての実験結果]
実験の目的は、異なるナノ粒子の添加による、シオミズツボワムシ(Brachionus plicatilis)という種に属するワムシの個体群の発達を比較することである。
【0096】
本研究は、以下の条件:
温度:23~25℃、塩分濃度:25g/L、pH:7.9~8.3、ろ過され次亜塩素酸ナトリウムにより滅菌された水、パスツールピペットによる通気、照明:16h/8h、アンモニア含量<1mg/L、溶解した酸素>4mg/L
で実施された。
【0097】
[1.ワムシの親培養の調製]
ワムシは、30Lのシリンダーのタンクにおいて培養された。タンクは、低密度(1ml当たり10~30の個体)で接種され、満腹になるまで、T-イソクリシス(T-isochrisis)及びロドモナス(Rhodomonas sp)で毎日生育させた。タンク内の水は、一週間に一度完全に新しくされた。
【0098】
[2.対象とする一つの分子を含むナノ粒子(NPs)についての試験]
プロトコール:
ワムシの培養の24個の1Lのビーカーがセットされた。これらの24個のビーカーは、4個ずつから成る、6つのグループ(T-イソクリシス(T-iso)藻(コントロール)、デンプン単独、ビタミンB12、ベタイン、ビタミンC及びセレン)に分けられた。1%の対象とする分子で機能的にされた100mgのナノ粒子が、それぞれの日に導入された。
結果:
図2、例12における表の結果は、最も良い密度は、ベタインを1%でロードしたデンプンナノ粒子(NPs)で育てたワムシで得られることを示す。次にくるのは、ビタミンB12を1%でロードしたデンプンナノ粒子(NPs)、ビタミンCを1%でロードしたデンプンナノ粒子(NPs)及びセレンを1%でロードしたデンプンナノ粒子(NPs)である。
【0099】
[3.対象とする二つの分子を含むナノ粒子(NPs)についての試験]
プロトコール:
ワムシの培養の24個の1Lのビーカーがセットされた。これらの24個のビーカーは、3個ずつから成る、8つのグループ(T-イソクリシス(T-iso)藻(コントロール)、デンプン単独、ビタミンC及びビタミンB12、セレン及びビタミンC、ビタミンB12及びベタイン、セレン及びビタミンB12、ビタミンC及びベタイン、セレン及びベタイン)に分けられた。1%の対象とする2つの分子で機能的にされた100mgのナノ粒子が、それぞれの日に導入された。
結果:
図2、例13における表で示される結果は、最も良い密度は、ベタインを1%で及びビタミンCを1%でそれら両方をロードしたデンプンナノ粒子(NPs)で生育させたワムシで得られることを示す。最も良い結果は、少なくともベタインを1%でロードしたデンプンナノ粒子(NPs)で得られることもまた観察される。
【0100】
[4.対象とする二つの分子を含むナノ粒子(NPs)についての試験]
プロトコール:
使用されるプロトコールは、上記のプロトコールと同一である。
結果:
図2、例14における表の結果は、最も良い密度は、ベタイン及びビタミンCを3%でロードした300mg/Lの濃度のデンプンナノ粒子(NPs)で毎日生育させたワムシで得られる。
【0101】
[5.対象とする分子無しのナノ粒子(NPs)についての試験]
プロトコール:
使用されるプロトコールは、対象とする分子無しで、上記のプロトコールと同一である。
結果:
図2、例15における表の結果は、最も良い密度は、一日当たり200mg/Lの濃度のデンプンナノ粒子(NPs)で生育させたワムシで得られることを示す。より高い用量(300及び500mg/L/日)は、ワムシの成長に対してネガティブな影響を有する。微細藻類無しの処置は、ネガティブな結果を与えることにもまた注目する。デンプンナノ粒子(NPs)単独では、従って、ワムシの栄養の必要性を満たさない。
【0102】
[6.最も良い組み合わせのためのナノ粒子(NPs)についての試験]
プロトコール:
使用されるプロトコールは、上記のプロトコールと同一である。
結果:
図2、例16における表の結果は、最も良い密度は、ベタインを3%で;ビタミンB12を3%で、ビタミンCを3%で及びセレンを3%で、ロードした、200mg/L/日のデンプンナノ粒子(NPs)で生育させたワムシで得られることを示す。
【0103】
[7.水産養殖との繋がりにおける、対象とする他の分子を有するナノ粒子(NPs)についての試験]
プロトコール:
使用されるプロトコールは、上記のプロトコールと同一である。
結果:
図2、例17における表の結果は、最も良い密度は、テトラサイクリンをロードしたデンプンナノ粒子(NPs)で生育させたワムシで得られることを示す。
図2、例18における表の結果は、最も良い密度は、DL-メチオニンを1%でロードしたデンプンナノ粒子(NPs)で生育させたワムシで得られることを示す。
【0104】
[8.比較試験]
プロトコール:
使用されるプロトコールは、上記のプロトコールと同一である。
結果
図2、例19における表の結果は、キトサンナノ粒子(NPs)に対して全く影響がないことを示し、それは、さらに水質を変える。デンプンナノ粒子(NPs)は、従って、より良い性能を示し、ワムシの培養において適用することができる。
【0105】
[実施例4:カイアシについての実験結果]
実験の目的は、異なるナノ粒子の添加による、Acartia tonsaという種に属するカイアシの卵の産生を比較することであった。
【0106】
卵は、毎日収集され、ナノ粒子(NPs)有り及び無しの産卵率を比較するために数えられた。このために、卵は、1800mLのビーカーに置かれ、激しいバブリングで均質にされた。その後、3回、5mLが取り出され数えられた。卵は、その後、暗所で無酸素の環境において3℃で保存された。これらの卵は、その後、相対的な孵化率を決定するために、再利用された。これらの孵化率を決定するために、既知の数の卵が、ロドモナス(Rhodomonas)及びT-イソクリシス(T-isochrisis)で生育される80mLのビーカーにおいて、3反復でインキュベートされた。18℃、48時間のインキュベーションの後、孵化しなかった卵は、孵化率を見出すために数えられた。
【0107】
本研究は、以下の条件:
塩分濃度:33g/L、pH:7.8~8.3、ろ過された水、照明:16h/8h、アンモニア含量<1mg/L、溶解した酸素>4mg/L
で実施された。
【0108】
[1.カイアシの産卵率におけるナノ粒子(NPs)の影響]
工程1:
この実験において、25mg/Lの用量のナノ粒子(NPs)が毎日加えられた。この用量は、3%のベタインで機能的にされた8.3mgのデンプンナノ粒子(NPs)、3%のビタミンCで機能的にされた8.3mgのデンプンナノ粒子(NPs)、及びまた3%のビタミンB12で機能的にされた8.3mgのデンプンナノ粒子(NPs)から成る。
図3、例20における表の結果は、機能的にされたナノ粒子(NPs)によって、一匹のメス当たり、毎日の産卵数が、平均で20%増加したことを示す。
【0109】
工程2:
この実験において、ベタインを3%で含む30mgのナノ粒子、ビタミンB12を3%で含む5mgのナノ粒子、及びビタミンCを3%で含む5mgのナノ粒子を含む、40mg/Lのナノ粒子(NPs)の組成物が毎日添加された。
図3、例21における表の結果は、機能的にされたナノ粒子(NPs)によって、一匹のメス当たり、毎日の産卵数が、平均で44%増加したことを示す。
【0110】
工程3:
この実験において、ベタインを1%で含む30mgのナノ粒子、ビタミンB12を1%で含む5mgのナノ粒子、及びビタミンCを1%で含む5mgのナノ粒子を含む、40mg/Lのナノ粒子(NPs)の組成物が、D0からD5まで毎日添加された。その後、ベタインを3%で含む30mgのナノ粒子、ビタミンB12を3%で含む5mgのナノ粒子、及びビタミンCを3%で含む5mgのナノ粒子を含む、40mgのナノ粒子(NPs)の組成物がD6に一日当たりで添加された。
図3、例22における表の結果は、1%で機能的にされたナノ粒子によって、一匹のメス当たり、毎日の産卵数が、平均で10%増加し、3%で機能化されたナノ粒子によって、54%増加したことを示す。
【0111】
工程4:
この実験において、ベタインを3%で含む60mg/Lのナノ粒子、ビタミンB12を3%で含む10mg/Lのナノ粒子、及びビタミンCを3%で含む10mg/Lのナノ粒子を含む、80mg/Lのナノ粒子(NPs)の組成物が毎日添加された。
図3、例23における表の結果は、高い用量(80mg/L/d)のナノ粒子(NPs)が、D4から、産卵率に影響を与えることを示す。
【0112】
[2.カイアシの孵化率におけるナノ粒子(NPs)の影響]
一ヶ月の保存の後、三つの異なるコレクションからのAcartiaの卵は、3反復でインキュベートされた。30mgのベタインを3%で、5mgのビタミンB12を3%で、及び5mgのビタミンCを3%で含む、40gm/L/dのナノ粒子(NPs)の組成物は、親培養の間、事前に添加された。
【0113】
図4、例24、25及び26における表の結果は、機能的にされたナノ粒子(NPs)が、カイアシの卵の孵化率を約6%増大させることを示す。さらに、より良い質の卵が観察された。
【0114】
[3.カイアシの生存及び成長における影響]
二つの40Lカラムが、モニターされた。同一の数の卵は、これらの中で静置してインキュベートした。一つのカラムは、一日当たり、3%の対象とする分子で機能的にされた10mg/Lのナノ粒子(NPs)(ベタインを持つ8mgのナノ粒子、ビタミンCを持つ1mgのナノ粒子、及びビタミンB12を持つ1mgのナノ粒子)の添加を受けた。その後、4つのサンプルが、カイアシの幅及び長さを測定するために、3日目、7日目、10日目、及び13日目の日に取り出された。一つの処置当たり、20個の個体が測定された。
【0115】
図5、例27及び28における表の結果は、D10から始まる、機能的にされたナノ粒子(NPs)で生育させたカイアシの幅及び長さのわずかな増加を示す。
【0116】
個体群の最後の計数の後、図6、例29における表に示されるように、D13での生存は、コントロールのカイアシでは22%(D13での成体の数/ノープリウスの数)であるのに対し、機能的にされたナノ粒子(NPs)で処置されたカイアシでは38%であることが観察された。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】