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特表2022-553095膜によるガス分離のための高性能ラダーポリマー
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-21
(54)【発明の名称】膜によるガス分離のための高性能ラダーポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/02 20060101AFI20221214BHJP
   B01D 71/72 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
C08G61/02
B01D71/72
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523970
(86)(22)【出願日】2020-10-23
(85)【翻訳文提出日】2022-06-21
(86)【国際出願番号】 US2020057061
(87)【国際公開番号】W WO2021101659
(87)【国際公開日】2021-05-27
(31)【優先権主張番号】62/926,004
(32)【優先日】2019-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
(71)【出願人】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(71)【出願人】
【識別番号】596060697
【氏名又は名称】マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ライ, ホルデン ワン ホン
(72)【発明者】
【氏名】アン, ジュン ミュン
(72)【発明者】
【氏名】シア, ヤン
(72)【発明者】
【氏名】スミス, ザッカリー ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ベネデッティ, フランチェスコ エム.
【テーマコード(参考)】
4D006
4J032
【Fターム(参考)】
4D006GA41
4D006MA03
4D006MB03
4D006MB04
4D006MC09X
4D006NA50
4D006PA01
4D006PB18
4D006PB64
4D006PB68
4J032CA03
4J032CA34
4J032CA45
4J032CA52
4J032CB04
4J032CC03
4J032CD01
4J032CE03
4J032CE22
4J032CG08
(57)【要約】
本明細書では、縮合芳香族および非芳香族環を含むラダーポリマーが開示される。また、これらのラダーポリマーの製造、および例えばガス分離のための膜などの分離膜における、これらの使用が開示される。本開示の実施形態のラダーポリマーは、ガスまたは他の液体または溶解した材料の分離のための膜を含めた、いくつかの適用のための材料として有用である。したがって実施形態は、本開示の一実施形態の1つまたはそれよりも多くのラダーポリマーを含む、ガスまたは他の液体または溶解した材料の分離のための膜を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
【化37】
[式中、2つの隣接するは、
【化38】
における2つのアスタリスクへの結合であり、残りの2つのは、RおよびRであり、
Xは、アルキレン基、-[O]-、-[S]-、窒素含有基、および環式基から選択され、
およびYは、独立に、アルキル基から選択され、
、R、R、R、R、およびRは、独立に、ヒドリド基、アルキル基、アリール基、複素環式基、ハロゲン基、-O-部分を含む基、-O(CO)-部分を含む基、-O(CO)O-部分を含む基、-O(CO)N<部分)を含む基、-S-部分を含む基、-B<部分を含む基、-NO、-N<部分を含む基、-P<部分を含む基、-(PO)<部分を含む基、-CHO、-(CO)-部分を含む基、-(CO)O-部分を含む基、-(CO)N<部分を含む基、および-Si≡部分を含む基から選択され、
は、-[O]-、-[S]-、-[B(O)R]-、-[NR]-、-[P(O)R]-、-[(PO)(O)R]-、-[CO]-、-[CR]-、-[C(O)R(O)R]-、および-[Si(O)R(O)R]-から選択され、RおよびRは、独立に、ヒドリド基、アルキル基、アリール基、および複素環式基から選択される]
によってそれぞれ表される複数の部分を含む、ラダーポリマー。
【請求項2】
=Yであり、Xが-[CH]-であり、R=R=R=R=R=R=ヒドリド基である、請求項1に記載のラダーポリマー。
【請求項3】
【化39】
[式中、nは、1よりも大きい整数である]
によって表される、請求項2に記載のラダーポリマー。
【請求項4】
【化40】
[式中、
【化41】
芳香族基であり、
nは、1よりも大きい整数である]
によって表される、請求項2に記載のラダーポリマー。
【請求項5】
【化42】
[式中、nは、1よりも大きい整数である]
によって表される、請求項2に記載のラダーポリマー。
【請求項6】
【化43】
[式中、RおよびRは、独立に、ヒドリド基、アルキル基、アリール基、複素環式基、ハロゲン基、-O-部分を含む基、-O(CO)-部分を含む基、-O(CO)O-部分を含む基、-O(CO)N<部分)を含む基、-S-部分を含む基、-B<部分を含む基、-NO、-N<部分を含む基、-P<部分を含む基、-(PO)<部分を含む基、-CHO、-(CO)-部分を含む基、-(CO)O-部分を含む基、-(CO)N<部分を含む基、および-Si≡部分を含む基から選択され、
は、-[O]-、-[S]-、-[B(O)R]-、-[NR]-、-[P(O)R]-、-[(PO)(O)R]-、-[CO]-、-[CR]-、-[C(O)R(O)R]-、および-[Si(O)R(O)R]-から選択され、RおよびRは、独立に、ヒドリド基、アルキル基、アリール基、および複素環式基から選択される]
によってそれぞれ表される複数の部分を含む、ラダーポリマー。
【請求項7】
=R=ヒドリド基であり、Xが-[CH]-である、請求項6に記載のラダーポリマー。
【請求項8】
【化44】
[式中、nは、1よりも大きい整数である]
によって表される、請求項7に記載のラダーポリマー。
【請求項9】
【化45】
[式中、YおよびYは、独立に、アルキル基から選択され、
、R、R、およびRは、独立に、ヒドリド基、アルキル基、アリール基、複素環式基、ハロゲン基、-O-部分を含む基、-O(CO)-部分を含む基、-O(CO)O-部分を含む基、-O(CO)N<部分)を含む基、-S-部分を含む基、-B<部分を含む基、-NO、-N<部分を含む基、-P<部分を含む基、-(PO)<部分を含む基、-CHO、-(CO)-部分を含む基、-(CO)O-部分を含む基、-(CO)N<部分を含む基、および-Si≡部分を含む基から選択され、
およびXは、独立に、-[O]-、-[S]-、-[B(O)R]-、-[NR]-、-[P(O)R]-、-[(PO)(O)R]-、-[CO]-、-[CR]-、-[C(O)R(O)R]-、および-[Si(O)R(O)R]-から選択され、RおよびRは、独立に、ヒドリド基、アルキル基、アリール基、および複素環式基から選択される]
によってそれぞれ表される複数の部分を含む、ラダーポリマー。
【請求項10】
=R=R=R=ヒドリド基であり、X=X=-[CH]-であり、Y=Y=-CHである、請求項9に記載のラダーポリマー。
【請求項11】
【化46】
[式中、nは、1よりも大きい整数である]
によって表される、請求項10に記載のラダーポリマー。
【請求項12】
【化47】
[式中、Rは、独立に、ヒドリド基、アルキル基、アリール基、複素環式基、ハロゲン基、-O-部分を含む基、-O(CO)-部分を含む基、-O(CO)O-部分を含む基、-O(CO)N<部分)を含む基、-S-部分を含む基、-B<部分を含む基、-NO、-N<部分を含む基、-P<部分を含む基、-(PO)<部分を含む基、-CHO、-(CO)-部分を含む基、-(CO)O-部分を含む基、-(CO)N<部分を含む基、および-Si≡部分)を含む基から選択され、nは、1よりも大きい整数である]
によって表される、ラダーポリマー。
【請求項13】
以下の構造:
【化48】
を有する、請求項1に記載のラダーポリマー。
【請求項14】
以下の構造:
【化49】
を有する、請求項1に記載のラダーポリマー。
【請求項15】
以下の構造:
【化50】
を有する、請求項1に記載のラダーポリマー。
【請求項16】
請求項1~15のいずれかに記載のラダーポリマーを含む、ガス分離のための膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2019年10月25日出願の米国特許出願第62/926,004号の利益および優先権を主張するものであり、その内容は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究または開発に関する記述
本発明は、アメリカ陸軍研究所によって授与された契約W911NF-16-1-0018の下およびアメリカ国立科学財団によって授与された契約FELLOWSHIP-DGE-156518の下で、政府支援を受けてなされた。政府は、本発明においてある一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
背景
工業化学物質の分離は、世界のエネルギー消費量の約10%を占めており、エネルギー効率の良い改善された分離技術が今すぐに必要である。蒸留および吸収などの分離技術と比較して、膜による分離は、最大約10倍、より高いエネルギー効率であり得る。しかし、膜ベースの分離の広範な採用は、透過性/選択性のトレードオフおよび可塑化の2つの大きな課題によって制約を受けてきた。
【0004】
ガス分離に最適な膜材料は、高透過性および高選択性の両方を有しているべきである。透過性は、膜の生産性の尺度である。透過性が高い膜は、材料が少なくて済み、したがってフットプリントをより抑えられる。選択性は、膜材料が、ガス混合物をどれ程有効に分離することができるかの尺度である。主にCHからのCOの分離を伴う天然ガス精製の状況では、高選択性を有する膜により、CH回収率がより高くなる。しかし、透過性と選択性の間には、トレードオフの関係が存在することが多く、したがって、高透過性を有する膜は、典型的に選択性が低く、その逆もまた同様である。このトレードオフの関係は、Robesonの上限によって特定される。Robesonの上限を超えることができるポリマー膜は、次世代材料としての大きな可能性を秘めているが、極めて希少である。
【0005】
上限を超えることができるポリマー材料を設計するための努力は、主に、固有の微細孔性ポリマー(PIM)と呼ばれるラダーモチーフを含有するポリマーの合成に焦点が合わされてきた。一部のPIMは、それらの並外れて高い透過性に起因して上限を超えていたが、それらの選択性は、長期間のエイジング後でも低いままである(CO/CH<約40)。
【0006】
可塑化は、膜による分離の、克服されるべき別の課題である。高圧供給ストリーム(>約10atm)は、工業的ガス分離のために使用されることが多い。これらの条件下では、高濃度のガス分子が膜に収着し、膜の軟化をもたらし、したがって、透過性が増大すると同時に選択性が低下する。
【0007】
こうした背景の下で、本明細書に記載される実施形態を開発する必要が生じた。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の概要
本開示のある特定の態様は、
【化1】
[式中、Xは、アルキレン基、-[O]-、-[S]-、窒素含有基、および環式基から選択され、YおよびYは、独立に、アルキル基から選択され、R、R、R、R、R、およびRは、独立に、ヒドリド基、アルキル基、アリール基、複素環式基、ハロゲン基、-O-部分を含む基、-O(CO)-部分を含む基、-O(CO)O-部分を含む基、-O(CO)N<部分)を含む基、-S-部分を含む基、-B<部分を含む基、-NO、-N<部分を含む基、-P<部分を含む基、-(PO)<部分を含む基、-CHO、-(CO)-部分を含む基、-(CO)O-部分を含む基、-(CO)N<部分を含む基、および-Si≡部分を含む基から選択され、Xは、-[O]-、-[S]-、-[B(O)R]-、-[NR]-、-[P(O)R]-、-[(PO)(O)R]-、-[CO]-、-[CR]-、-[C(O)R(O)R]-、および-[Si(O)R(O)R]-から選択され、RおよびRは、独立に、ヒドリド基、アルキル基、アリール基、および複素環式基から選択される]によってそれぞれ表される複数の部分を含む、ラダーポリマーを含む。一部の実施形態では、Y=Yであり、Xは-[CH]-であり、R=R=R=R=R=R=ヒドリド基である。一部の実施形態では、ラダーポリマーは、
【化2】
[式中、nは、1よりも大きい整数である]によって表される。一部の実施形態では、ラダーポリマーは、
【化3】
[式中、
【化4】
芳香族基であり、nは、1よりも大きい整数である]によって表される。一部の実施形態では、ラダーポリマーは、
【化5】
[式中、nは、1よりも大きい整数である]によって表される。
【0009】
追加の実施形態は、
【化6】
[式中、RおよびRは、独立に、ヒドリド基、アルキル基、アリール基、複素環式基、ハロゲン基、-O-部分を含む基、-O(CO)-部分を含む基、-O(CO)O-部分を含む基、-O(CO)N<部分)を含む基、-S-部分を含む基、-B<部分を含む基、-NO、-N<部分を含む基、-P<部分を含む基、-(PO)<部分を含む基、-CHO、-(CO)-部分を含む基、-(CO)O-部分を含む基、-(CO)N<部分を含む基、および-Si≡部分を含む基から選択され、Xは、-[O]-、-[S]-、-[B(O)R]-、-[NR]-、-[P(O)R]-、-[(PO)(O)R]-、-[CO]-、-[CR]-、-[C(O)R(O)R]-、および-[Si(O)R(O)R]-から選択され、RおよびRは、独立に、ヒドリド基、アルキル基、アリール基、および複素環式基から選択される]によってそれぞれ表される複数の部分を含む、ラダーポリマーを含む。一部の実施形態では、R=R=ヒドリド基であり、Xは-[CH]-である。一部の実施形態では、ラダーポリマーは、
【化7】
[式中、nは、1よりも大きい整数である]によって表される。一部の実施形態では、ラダーポリマーは、
【化8】
[式中、YおよびYは、独立に、アルキル基から選択され、R、R、R、およびRは、独立に、ヒドリド基、アルキル基、アリール基、複素環式基、ハロゲン基、-O-部分を含む基、-O(CO)-部分を含む基、-O(CO)O-部分を含む基、-O(CO)N<部分)を含む基、-S-部分を含む基、-B<部分を含む基、-NO、-N<部分を含む基、-P<部分を含む基、-(PO)<部分を含む基、-CHO、-(CO)-部分を含む基、-(CO)O-部分を含む基、-(CO)N<部分を含む基、および-Si≡部分を含む基から選択され、XおよびXは、独立に、-[O]-、-[S]-、-[B(O)R]-、-[NR]-、-[P(O)R]-、-[(PO)(O)R]-、-[CO]-、-[CR]-、-[C(O)R(O)R]-、および-[Si(O)R(O)R]-から選択され、RおよびRは、独立に、ヒドリド基、アルキル基、アリール基、および複素環式基から選択される]によって表される。一部の実施形態では、R=R=R=R=ヒドリド基であり、X=X=-[CH]-であり、Y=Y=-CHである。一部の実施形態では、ラダーポリマーは、
【化9】
[式中、nは、1よりも大きい整数である]によって表される。
【0010】
追加の実施形態は、これらの実施形態のいずれかのラダーポリマーを含む、ガス分離のための膜を含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、CANAL-Me-DMFの構造およびH-NMRを示す。
【0012】
図2図2は、CANAL-Me-S5Fの構造およびH-NMRを示す。
【0013】
図3図3は、CANAL-Me-S6Fの構造およびH-NMRを示す。
【0014】
図4図4(a)は、リボン様の2DポリマーCANAL-Me-iPr(上)および3DポリマーCANAL-Me-DMF(下)の模擬構造を示す。図4(b)は、3DのCANAL-フルオレンおよびジヒドロフェナントレンポリマーの合成を示す。図4(c)は、50μmのCANAL-Me-DMFフィルムの写真を示す。
【0015】
図5-1】図5(a)は、CANAL-Me-DMFおよびCANAL-Me-iPrの77KにおけるN収着等温線を示す。図5(b)は、NLDFTによる炭素のスリット状細孔の不均一表面モデルを使用する、N収着等温線から誘導された細孔径分布を示す。図5(c)は、CANAL-Me-DMF、CANAL-Me-S5F、CANAL-Me-S6F、CANAL-Me-DHP、およびCANAL-Me-iPrフィルムの広角X線散乱を示す。
図5-2】図5(a)は、CANAL-Me-DMFおよびCANAL-Me-iPrの77KにおけるN収着等温線を示す。図5(b)は、NLDFTによる炭素のスリット状細孔の不均一表面モデルを使用する、N収着等温線から誘導された細孔径分布を示す。図5(c)は、CANAL-Me-DMF、CANAL-Me-S5F、CANAL-Me-S6F、CANAL-Me-DHP、およびCANAL-Me-iPrフィルムの広角X線散乱を示す。
【0016】
図6-1】図6は、2015年のH/CH(a)、2008年のCO/CH(b)、2015年のH/N(c)、および2015年のO/N(d)上限に対する、CANAL-Me-DMF、CANAL-Me-S5F、CANAL-Me-S6F、およびCANAL-Me-DHPの純ガス透過特性を示す。最先端のPIMを、エイジング後のそれらの性能についてプロットする(エイジング期間は日で記述される)。CANALポリマーのフィルムの厚さおよび試験条件:50~60μm、T=35℃、p=1バール。
図6-2】図6は、2015年のH/CH(a)、2008年のCO/CH(b)、2015年のH/N(c)、および2015年のO/N(d)上限に対する、CANAL-Me-DMF、CANAL-Me-S5F、CANAL-Me-S6F、およびCANAL-Me-DHPの純ガス透過特性を示す。最先端のPIMを、エイジング後のそれらの性能についてプロットする(エイジング期間は日で記述される)。CANALポリマーのフィルムの厚さおよび試験条件:50~60μm、T=35℃、p=1バール。
【0017】
図7図7(a)は、CANAL-Me-DMF、CANAL-Me-S5F、CANAL-Me-S6F、CANAL-Me-DHP、および近年報告された一部のラダーPIMについての、H透過性の喪失を示し、図7(b)は、エイジング傾向からのCO透過性の喪失を示す。破線は、選択性の増加パーセンテージが、透過性の喪失パーセンテージに等しいことを示す。
【0018】
図8図8(a)は、35℃におけるCANAL-Me-DMFの混合ガス透過特性を示す(50μm、190日間エイジングした)。2008年の純ガス(Robeson, L. M., J. Membr. Sci. 2008, 320 (1), 390-400)および2018年の混合ガス(Wang, et al., Mater. Today Nano 2018, 3, 69-95)上限に対する、純ガス(p=1バール、黒丸)、可変組成のCO/CH混合ガス(全圧力=2バール、20~80%CO、白丸)、および可変圧力の50/50のCO/CH混合ガス透過の結果(全圧力=3~27バール、白菱形)。図8(b)は、可変圧力における50/50のCO/CH混合物下でのCO(丸)およびCH(菱形)の透過性を示す。
【0019】
図9図9は、2008年のCO/CH(a)および2015年のH/N(b)上限に対する、CANAL-Me-DMFおよびCANAL-Me-iPrの純ガス透過特性を示す。フィルムの厚さ=100μm。
【0020】
図10図10は、16日間のエイジング(白四角)および55日間のエイジング(黒丸)後のCANAL-Me-iPrおよびCANAL-Me-DMFにおけるガスについての拡散活性化エネルギーを示す。
【0021】
図11図11aは、CANALポリマーのGPCトレースを示す。図11bは、CANAL-Me-iPrおよびCANAL-Me-DMFのTGAトレースを示す。図11cは、CANAL-Me-DMFおよびCANAL-Me-DHPの引張特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
詳細な説明
一部の実施形態では、ラダーポリマーは、以下の化学式:
【化10】
[式中、2つの隣接するは、
【化11】
における2つのアスタリスクへの結合であり、残りの2つのは、RおよびRである]によってそれぞれ表される複数の部分を含む。式(1)の化合物の例として、
【化12】
が挙げられる。
【0023】
式(1)において、Xは、架橋部分、例えばアルキレン基(置換および非置換の、ならびにハロゲン化および非ハロゲン化されたアルキレン基を含む)、例えば-[CH]-、-[C(CH]-、および-[C(CF]-、-[O]-、-[S]-、窒素含有基、例えば-[N-ブチルオキシカルボニル]-、-[N-アセテート]-、-[N(CH)]-、および-[NC(CH]-、環式基(置換および非置換の、ならびに芳香族および非芳香族である環式基を含む)、例えば
【化13】
、ならびに少なくとも1個の酸素原子、少なくとも1個の硫黄原子、少なくとも1個の窒素原子、または少なくとも1個の炭素原子を含む他の基から選択される。
【0024】
式(1)において、YおよびYは、同じでも異なっていてもよく、独立に、アルキル基(置換および非置換の、ならびにハロゲン化および非ハロゲン化されたアルキル基を含む)、例えば-CH、-CHCH、-CH(CH、および-C(CHなどの置換基から選択することができる。
【0025】
式(1)において、R、R、R、R、R、およびRは、同じでも異なっていてもよく、独立に、ヒドリド基、アルキル基(置換および非置換の、ならびにハロゲン化および非ハロゲン化されたアルキル基を含む)、アリール基(置換および非置換のアリール基を含む)、複素環式基(置換および非置換の複素環式基を含む)、ハロゲン基、-OR(または-O-部分を含む他の基)、-O(CO)R(または-O(CO)-部分を含む他の基)、-O(CO)OR(または-O(CO)O-部分を含む他の基)、-O(CO)NR(または-O(CO)N<部分を含む他の基)、-SR(または-S-部分を含む他の基)、-B(O)R(O)R(または-B<部分を含む他の基)、-NO、-NR(または-N<部分を含む他の基)、-P(O)R(O)R(または-P<部分を含む他の基)、-PO(O)R(O)R(または-(PO)<部分を含む他の基)、-CHO、-(CO)R(または-(CO)-部分を含む他の基)、-(CO)OR(または-(CO)O-部分を含む他の基)、-(CO)NR(または-(CO)N<部分を含む他の基)、および-Si(O)R(O)R(O)R(または-Si≡部分を含む他の基)などの置換基から選択することができ、Xは、架橋部分、例えば-[O]-、-[S]-、-[B(O)R]-、-[NR]-、-[P(O)R]-、-[(PO)(O)R]-、-[CO]-、-[CR]-、-[C(O)R(O)R]-、-[Si(O)R(O)R]-、および少なくとも1個の酸素原子、少なくとも1個の硫黄原子、少なくとも1個のホウ素原子、少なくとも1個の窒素原子、少なくとも1個のリン原子、または少なくとも1個の炭素原子を含む他の基から選択され、R、R、R、R、およびRは、同じでも異なっていてもよく、独立に、ヒドリド基、アルキル基(置換および非置換のアルキル基を含む)、アリール基(置換および非置換のアリール基を含む)、および複素環式基(置換および非置換の複素環式基を含む)などの置換基から選択することができる。
【0026】
一部の実施形態では、ポリマーの分子量(M)は、GPC MALLSによって決定される通り、約50~約250kDa、例えば約70~約170kDaである。
【0027】
式(1)によって与えられるラダーポリマーの例は、以下の化学式(またはその位置異性体)によって表される。
【化14】
前述の通り、式(2)の位置異性体には、1つまたはそれよりも多くのシクロブチルが、例えば、以下におけるによって表される隣接する炭素原子に位置的にシフトされている場合が含まれる。
【化15】
【0028】
式(2)において、Xは、式(1)について先に記載される通りの架橋部分から選択され、Y=Y=Yであり、これは式(1)について先に記載される通りの置換基から選択され、Xは-[CH]-であり、R=R=R=R=R=R=ヒドリド基であり、nは、1よりも大きい、例えば2もしくはそれよりも大きい、3もしくはそれよりも大きい、4もしくはそれよりも大きい、5もしくはそれよりも大きい、10もしくはそれよりも大きい、20もしくはそれよりも大きい、50もしくはそれよりも大きい、または100もしくはそれよりも大きい整数である。
【0029】
一部の実施形態では、式(2)のラダーポリマーは、ジハロ(例えば、ジブロモ)フルオレン誘導体を、触媒作用的アレーン-ノルボルネン(nobornene)環化反応を介して(例えば、パラジウム触媒の存在下で)、ノルボルナジエンと反応させてフルオレンジノルボルネンを形成し、続いて、Yで二置換されているジハロ(例えば、ジブロモ)ベンゼンと重合させてラダーポリマーを形成することによって、合成される。
【0030】
式(1)によって与えられるラダーポリマーの別の例は、以下の化学式(またはその位置異性体)によって表される。
【化16】
前述の通り、式(3)の位置異性体には、1つまたはそれよりも多くのシクロブチルが、例えば、隣接する炭素原子に位置的にシフトされている場合が含まれる。
【0031】
式(3)において、Xは、式(1)について先に記載される通りの架橋部分から選択され、Y=Y=Yであり、これは式(1)について先に記載される通りの置換基から選択され、Xは-[CH]-であり、R=R=R=R=R=R=ヒドリド基であり、nは、1よりも大きい、例えば2もしくはそれよりも大きい、3もしくはそれよりも大きい、4もしくはそれよりも大きい、5もしくはそれよりも大きい、10もしくはそれよりも大きい、20もしくはそれよりも大きい、50もしくはそれよりも大きい、または100もしくはそれよりも大きい整数であり、
【化17】
または他の芳香族基(置換および非置換の、ならびにハロゲン化および非ハロゲン化されたものを含む)である。
【0032】
一部の実施形態では、式(3)のラダーポリマーは、ジハロ(例えば、ジブロモ)フルオレン誘導体を、触媒作用的アレーン-ノルボルネン環化反応を介して(例えば、パラジウム触媒の存在下で)、ノルボルナジエンと反応させてフルオレンジノルボルネンを形成し、続いて、Yで二置換されているハロ(例えば、ブロモ),アミノベンゼンと反応させてフルオレンノルボルニルベンゾシクロブテンジアミンを形成し、続いて、二無水物と重合させてラダーポリマーを形成することによって、合成される。
【0033】
式(1)によって与えられるラダーポリマーのさらなる例は、以下の化学式(またはその位置異性体)によって表される。
【化18】
前述の通り、式(4)の位置異性体には、1つまたはそれよりも多くのシクロブチルが、例えば、隣接する炭素原子に位置的にシフトされている場合が含まれる。
【0034】
式(4)において、Xは、式(1)について先に記載される通りの架橋部分から選択され、Y=Y=Yであり、これは式(1)について先に記載される通りの置換基から選択され、Xは-[CH]-であり、R=R=R=R=R=R=ヒドリド基であり、nは、1よりも大きい、例えば2もしくはそれよりも大きい、3もしくはそれよりも大きい、4もしくはそれよりも大きい、5もしくはそれよりも大きい、10もしくはそれよりも大きい、20もしくはそれよりも大きい、50もしくはそれよりも大きい、または100もしくはそれよりも大きい整数である。
【0035】
一部の実施形態では、式(4)のラダーポリマーは、ジハロ(例えば、ジブロモ)フルオレン誘導体を、触媒作用的アレーン-ノルボルネン環化反応を介して(例えば、パラジウム触媒の存在下で)、ノルボルナジエンと反応させてフルオレンジノルボルネンを形成し、続いて、Yで二置換されているハロ(例えば、ブロモ),アミノベンゼンと反応させてフルオレンノルボルニルベンゾシクロブテンジアミンを形成し、続いて、ジメトキシメタンと重合させてラダーポリマーを形成することによって、合成される。
【0036】
追加の実施形態では、ラダーポリマーは、以下の化学式(またはその位置異性体)によってそれぞれ表される複数の部分を含む。
【化19】
【0037】
式(5)において、RおよびRは、同じでも異なっていてもよく、独立に、ヒドリド基、アルキル基(置換および非置換の、ならびにハロゲン化および非ハロゲン化されたアルキル基を含む)、アリール基(置換および非置換のアリール基を含む)、複素環式基(置換および非置換の複素環式基を含む)、ハロゲン基、-OR(または-O-部分を含む他の基)、-O(CO)R(または-O(CO)-部分を含む他の基)、-O(CO)OR(または-O(CO)O-部分を含む他の基)、-O(CO)NR(または-O(CO)N<部分を含む他の基)、-SR(または-S-部分を含む他の基)、-B(O)R(O)R(または-B<部分を含む他の基)、-NO、-NR(または-N<部分を含む他の基)、-P(O)R(O)R(または-P<部分を含む他の基)、-PO(O)R(O)R(または-(PO)<部分を含む他の基)、-CHO、-(CO)R(または-(CO)-部分を含む他の基)、-(CO)OR(または-(CO)O-部分を含む他の基)、-(CO)NR(または-(CO)N<部分を含む他の基)、および-Si(O)R(O)R(O)R(または-Si≡部分を含む他の基)などの置換基から選択することができ、Xは、架橋部分、例えば-[O]-、-[S]-、-[B(O)R]-、-[NR]-、-[P(O)R]-、-[(PO)(O)R]-、-[CO]-、-[CR]-、-[C(O)R(O)R]-、-[Si(O)R(O)R]-、および少なくとも1個の酸素原子、少なくとも1個の硫黄原子、少なくとも1個のホウ素原子、少なくとも1個の窒素原子、少なくとも1個のリン原子、または少なくとも1個の炭素原子を含む他の基から選択され、R、R、R、R、およびRは、同じでも異なっていてもよく、独立に、ヒドリド基、アルキル基(置換および非置換のアルキル基を含む)、アリール基(置換および非置換のアリール基を含む)、および複素環式基(置換および非置換の複素環式基を含む)などの置換基から選択することができる。
【0038】
式(5)によって与えられるラダーポリマーの例は、以下の化学式(またはその位置異性体)によって表される。
【化20】
【0039】
式(6)において、R=R=ヒドリド基であり、Xは-[CH]-であり、nは、1よりも大きい、例えば2もしくはそれよりも大きい、3もしくはそれよりも大きい、4もしくはそれよりも大きい、5もしくはそれよりも大きい、10もしくはそれよりも大きい、20もしくはそれよりも大きい、50もしくはそれよりも大きい、または100もしくはそれよりも大きい整数である。
【0040】
一部の実施形態では、式(6)のラダーポリマーは、1,4ジハロ(例えば、ジブロモ)デュレンを、ノルボルナジエンと反応させてジノルボルネンを形成し、続いて、触媒作用的アレーン-ノルボルネン環化反応を介して(例えば、パラジウム触媒の存在下で)、ジハロ(例えば、ジブロモ)置換デュレンと重合させてラダーポリマーを形成することによって、合成される。
【0041】
さらなる実施形態では、ラダーポリマーは、以下の化学式(またはその位置異性体)によってそれぞれ表される複数の部分を含む。
【化21】
【0042】
式(7)において、YおよびYは、同じでも異なっていてもよく、独立に、アルキル基(置換および非置換の、ならびにハロゲン化および非ハロゲン化されたアルキル基を含む)、例えば-CH、-CHCH、-CH(CH、および-C(CHなどの置換基から選択することができる。
【0043】
式(7)において、R、R、R、R、R、RおよびRは、同じでも異なっていてもよく、独立に、ヒドリド基、アルキル基(置換および非置換の、ならびにハロゲン化および非ハロゲン化されたアルキル基を含む)、アリール基(置換および非置換のアリール基を含む)、複素環式基(置換および非置換の複素環式基を含む)、ハロゲン基、-OR(または-O-部分を含む他の基)、-O(CO)R(または-O(CO)-部分を含む他の基)、-O(CO)OR(または-O(CO)O-部分を含む他の基)、-O(CO)NR(または-O(CO)N<部分を含む他の基)、-SR(または-S-部分を含む他の基)、-B(O)R(O)R(または-B<部分を含む他の基)、-NO、-NR(または-N<部分を含む他の基)、-P(O)R(O)R(または-P<部分を含む他の基)、-PO(O)R(O)R(または-(PO)<部分を含む他の基)、-CHO、-(CO)R(または-(CO)-部分を含む他の基)、-(CO)OR(または-(CO)O-部分を含む他の基)、-(CO)NR(または-(CO)N<部分を含む他の基)、および-Si(O)R(O)R(O)R(または-Si≡部分を含む他の基)などの置換基から選択することができ、XおよびXは、同じでも異なっていてもよく、独立に、架橋部分、例えば-[O]-、-[S]-、-[B(O)R]-、-[NR]-、-[P(O)R]-、-[(PO)(O)R]-、-[CO]-、-[CR]-、-[C(O)R(O)R]-、-[Si(O)R(O)R]-、および少なくとも1個の酸素原子、少なくとも1個の硫黄原子、少なくとも1個のホウ素原子、少なくとも1個の窒素原子、少なくとも1個のリン原子、または少なくとも1個の炭素原子を含む他の基から選択することができ、R、R、R、R、およびRは、同じでも異なっていてもよく、独立に、ヒドリド基、アルキル基(置換および非置換のアルキル基を含む)、アリール基(置換および非置換のアリール基を含む)、および複素環式基(置換および非置換の複素環式基を含む)などの置換基から選択することができる。
【0044】
一部の実施形態では、式(7)の化合物は、
【化22】
である。
【0045】
式(7)によって与えられるラダーポリマーの例は、以下の化学式(またはその位置異性体)によって表される。
【化23】
【0046】
式(8)において、R=R=R=R=ヒドリド基であり、X=X=-[CH]-であり、Y=Y=-CHであり、nは、1よりも大きい、例えば2もしくはそれよりも大きい、3もしくはそれよりも大きい、4もしくはそれよりも大きい、5もしくはそれよりも大きい、10もしくはそれよりも大きい、20もしくはそれよりも大きい、50もしくはそれよりも大きい、または100もしくはそれよりも大きい整数である。一部の実施形態では、式(8)のラダーポリマーは、1,4ジハロ(例えば、ジブロモ)デュレンを、ノルボルナジエンと反応させてジノルボルネンを形成し、続いて、触媒作用的アレーン-ノルボルネン環化反応を介して(例えば、パラジウム触媒の存在下で)、ジハロ(例えば、ジブロモ)置換キシレンと重合させてラダーポリマーを形成することによって、合成される。
【0047】
さらなる実施形態では、ラダーポリマーは、以下の化学式(またはその位置異性体)によってそれぞれ表される複数の部分を含む。
【化24】
例えば、この式は、以下の化学式:
【化25】
[式中、Rは、式(1)についてのRと同じであり、nは、1よりも大きい、例えば2もしくはそれよりも大きい、3もしくはそれよりも大きい、4もしくはそれよりも大きい、5もしくはそれよりも大きい、10もしくはそれよりも大きい、20もしくはそれよりも大きい、50もしくはそれよりも大きい、または100もしくはそれよりも大きい整数である]によって表されるラダーポリマーを含む。
【0048】
本開示の実施形態のラダーポリマーは、ガスまたは他の液体または溶解した材料の分離のための膜を含めた、いくつかの適用のための材料として有用である。したがって実施形態は、本開示の一実施形態の1つまたはそれよりも多くのラダーポリマーを含む、ガスまたは他の液体または溶解した材料の分離のための膜を含む。一部の実施形態では、1つまたはそれよりも多くのラダーポリマーは、膜の形態である。一部の実施形態では、膜は、約20~約200μmの厚さ、例えば、約20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190または200μmの厚さである。
【実施例
【0049】
以下の実施例は、当業者のために説明を例示し提供するために、本開示の一部の実施形態の具体的な態様を記載する。実施例は、本開示の一部の実施形態の理解および実施において有用な具体的な方法論を単に提供するので、本開示を制限するものと解釈されるべきではない。
【0050】
特徴付け方法。Hおよび13C NMR実験を、Varian Mercury 400を使用してCDCl中で実施した。化学シフトを、残留プロトン化(protiated)溶媒を内部標準として使用して、ppmで報告する(CHCl H:7.26ppmおよび13C:77.00ppm)。データを、以下の通り、化学シフト、多重度(s=一重線、m=多重線、br=ブロードシグナル、および関連の組合せ)、および積分値で報告する。ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を、DAWNマルチアングルレーザー光散乱(MALLS)検出器およびOptilab T-rEX示差屈折率計(どちらもWyatt Technologyから)と直列に接続した2つのPolyPoreカラム(Agilent)で、THF中で行った。較正標準は使用せず、カラムからの100%質量溶離を想定することによって、注入ごとにdn/dc値を得た。電子イオン化(EI)質量分析を、Agilent(HP)7890/5975シングル四重極GC-MSシステムで実施した。熱重量分析(TGA)を、TA instruments TGA550で、25mL/分で流れる窒素下で実施した。試料を、30℃から600℃まで10℃/分で加熱した。ポリマーフィルム密度を、Mettler Toledo分析天秤密度キットを使用して決定した。炭化水素ラダーポリマーの疎水性性質により、それによって水の取込みが防止されるので、脱イオン水を浮揚性液体として使用した。FFVを、Bondiの原子団寄与法を使用して計算した。広角X線散乱(WAXS)実験を、Rigaku 002 CuマイクロフォーカスX線源と共にOsmicスタッガード(staggered)放物線多層光学系を含むシステムで、真空下で実施した。WAXS機器は、Dectris Pilatus 300K検出器を備える。
【0051】
材料。HPLCグレードのテトラヒドロフラン(THF)を、販売業者から購入し、窒素でスパージした後にグローブボックスに移し、重合反応のために使用した。他のすべての試薬を、販売業者から得、受け取ったまま使用した。2’,7’-ジブロモ-スピロ(シクロヘキサン-1,9’-フルオレン)、2’,7’-ジブロモ-スピロ(シクロペンタン-1,9’-フルオレン)、および2,7-ジブロモ-9,10-ジヒドロフェナントレンを、文献による手順に従って合成した。
【0052】
ジノルボルネンの合成のための一般手順。本発明者らが以前に報告した手順に従って合成した。火炎乾燥ガラス圧力管に、アリール二臭化物(1当量)、Pd(OAc)(0.04当量)、およびPPh(0.08当量)を添加した。管を窒素充填グローブボックスに移し、CsCO(2当量)、ノルボルナジエン(10当量)、および1,4-ジオキサン(1mL/mmolのアリール二臭化物)を添加した。次に、管をTeflonキャップで封止し、グローブボックスから取り出した。混合物を150℃で48時間撹拌した後、室温に冷却し、次にセライトを通過させて無機塩を除去し、それをCHCl(3×15mL)で洗浄した。濾過した溶液を濃縮し、シリカクロマトグラフィーによって精製して、ジノルボルネン(dinornornene)をsyn異性体およびanti異性体の混合物として得た。
合成および透過実験
【0053】
この実施例は、複数の工業的に関連するガスの対についてRobeson上限を上回って性能を発揮し、高CO圧力で可塑化耐性を有する、5員環を含有するノルボルニルベンゾシクロブテン(NBC)ラダーポリマーの合成および特徴付けを報告する。この材料は、酢酸セルロースなどの工業用膜の理想的な選択性の約2倍を超え、ほぼ3桁高い透過性を有する。この材料はまた、現在までに報告されているラダーポリマーの中でも、CO/CH、H/CH、H/N、およびH/COについて最も高い選択性を有する。
【0054】
5員環を含有する2種類のNBCラダーポリマー:フルオレン含有およびノルボルニルベンゾシクロペンテン含有のNBCラダーポリマーを報告する。フルオレンNBCラダーポリマーは、二段階で合成することができる。まず、ジブロモフルオレン誘導体を、触媒作用的アレーン-ノルボルネン環化反応(CANAL)を介して、ノルボルナジエンと反応させてフルオレンジノルボルネンを形成し、続いて、ジアルキルジブロモベンゼンと重合させてラダーポリマーを形成する(フルオレンNBCラダー、スキーム1)。フルオレンNBCジアミンも合成し、その後、ジメトキシメタンまたは二無水物と重合させて、それぞれTrogerのベースポリマー(フルオレンNBC TB、スキーム1)またはポリイミド(フルオレンNBC PI、スキーム1)を得ることができる。ノルボルニル(nobornyl)ベンゾシクロペンテン含有NBCポリマーの合成は、ジノルボルネンを得るための1,4-ジブロモデュレンのベンジルの活性化、続くCANAL重合を含む(スキーム2)。
【化26】
【化27】
【0055】
フルオレンNBCラダーポリマーの一例であるCANAL-Me-DMFを合成した。その化学構造およびH-核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、図1に示されている。
DMF。
【化28】
【0056】
反応を、5mmolの2,7-ジブロモ-9,9-ジメチルフルオレンを用いて実施した。シリカクロマトグラフィーによって、9/1のヘキサン/ジクロロメタン(DCM)の移動相を使用して精製して、DMFをオフホワイト色の固体として得た(1.1g、59%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.43 (s, 1H), 7.41 (s, 1H), 7.15 (s, 1H), 7.14 (s, 1H), 6.25 (s, 4H), 3.16 (s, 4H), 2.83 (m, 4H), 1.53-1.39 (m, 6H), 1.34-1.25 (m, 2H), 0.95-0.99 (m, 2H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 153.1, 153.0, 145.1, 145.0, 144.7, 144.6, 138.9, 138.8, 136.94, 136.92, 136.90, 136.88, 116.54, 116.48, 113.22, 113.21, 47.07, 47.05, 46.84, 46.76, 46.7, 41.96, 41.95, 41.9, 41.64, 41.60, 28.2, 28.0, 27.7.EI-MS m/z C2926 の計算値:374.2、実測値:374.2。
S5F。
【化29】
【0057】
反応を、1.5mmolの2’,7’-ジブロモ-スピロ(シクロペンタン-1,9’-フルオレン)を用いて実施した。シリカクロマトグラフィーによって、19/1のヘキサン/DCMの移動相を使用して精製して、S5Fをオフホワイト色の固体として得た(360mg、75%)。1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ 7.70-7.38 (m, 2H), 7.13-7.12 (m, 2H), 6.25 (s, 4H), 3.15-3.14 (m, 4 H), 2.83-2.81 (m, 4H), 2.13-2.02 (m, 8H), 1.31-1.29 (m, 2H), 0.99-0.96 (m, 2H); 13C NMR (150 MHz, CDCl3): δ 153.74, 153.70, 145.15, 145.04, 144.23, 144.17, 138.99, 138.95, 136.77, 136.75, 136.71, 136.69, 116.61, 116.56, 112.65, 112.64, 57.52, 57.49, 46.95, 46.92, 46.64, 41.82, 41.80, 41.75, 41.74, 41.46, 41.43, 40.69, 40.24, 39.82, 27.14, 27.09, 27.05.
S6F。
【化30】
【0058】
反応を、2.5mmolの2’,7’-ジブロモ-スピロ(シクロヘキサン-1,9’-フルオレン)を用いて実施した。シリカクロマトグラフィーによって、19/1のヘキサン/DCMの移動相を使用して精製して、S6Fをオフホワイト色の固体として得た(490mg、47%)。1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ 7.45-7.43 (m, 2H), 7.38-7.37 (m, 2H), 6.26 (s, 4H), 3.18-3.17 (m, 4 H), 2.84-2.82 (m, 4H), 7.96-1.88 (m, 4H), 1.79-1.68 (m, 6H), 1.32-1.28 (m, 2H), 0.99-0.96 (m, 2H); 13C NMR (150 MHz, CDCl3): δ 152.53, 152.50, 144.39, 144.37, 144.32, 139.19, 139.15, 136.77, 136.75, 136.74, 136.72, 118.19, 118.13, 112.91, 112.89, 49.94, 49.40, 47.00, 16.98, 46.65, 41.84, 41.83, 41.76, 41.74, 41.52, 41.49, 36.60, 36.17, 35.75, 25.70, 22.8., 22.77, 22.71.
DHP。
【化31】
【0059】
反応を、5.4mmolの2,7-ジブロモ-9,10-ジヒドロフェナントレンを用いて実施した。シリカクロマトグラフィーによって、19/1のヘキサン/DCMの移動相を使用して精製し、次にヘキサン中で再結晶させて、DHPをオフホワイト色の固体として得た(660mg、34%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.45-7.43 (m, 2H), 6.94-6.93 (m, 2H), 6.23 (s, 4H), 3.18-3.15 (m, 4 H), 2.81-2.80 (m, 8H), 1.54-1.32 (m, 2H), 1.32-1.26 (m, 2H) ; 13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ 144.82, 144.72, 136.82, 136.75, 136.69, 136.67, 134.75, 121.44, 121.39, 117.44, 47.32, 47.27, 41.70, 41.47, 41.44, 30.26.
【0060】
CANALポリマーの合成のための一般手順。火炎乾燥ガラス圧力管に、ジノルボルネン(0.5mmol)、p-ジブロモ-p-キシレン(132mg、0.5mmol)、Pd(OAc)(2.2mg、0.01mmol)、およびPPh(5.2mg、0.02mmol)を添加した。管を窒素充填グローブボックスに移し、CsCO(326mg、1mmol)、ブチル化ヒドロキシトルエン(1mg)、およびTHF(1mL)を添加した。次に、管をTeflonキャップで封止し、グローブボックスから取り出した。混合物を150℃で24時間撹拌した後、室温に冷却し、10mLのCHClを添加し、混合物を70℃で30分間撹拌した。次に混合物を遠心分離し、上清を、セライトを介して濾過し、濃縮し、酢酸エチル中に沈殿させた。固体を真空中で乾燥させ、CHClに溶解させ、次に、メタノール中で沈殿させて、ポリマーをオフホワイト色の固体として得た。
CANAL-Me-DMF
【化32】
【0061】
オフホワイト色の固体(200mg、76%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.29 (br, s, 2H), 7.01 (br, s, 2H), 3.24-3.13 (br, s, 8H), 2.34 (br, s, 4H), 2.02 (br, s, 6H), 1.39 (br, s, 6H), 0.71 (br, s, 4H). GPC MALLS Mn = 48 kDa, Mw = 99 kDa.
CANAL-Me-S5F
【化33】
【0062】
オフホワイト色の固体(230mg、100%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.26 (s, 2H), 7.00 (s, 2H), 3.23-3.12 (m, 8H), 2.34 (s, 4H), 2.02 (s, 14H), 0.72 (s, 4H). GPC MALLS Mn = 38 kDa, Mw = 100 kDa.
CANAL-Me-S6F
【化34】
【0063】
オフホワイト色の固体(170mg、70%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.32-7.22 (m, 4H), 3.25-3.13 (m, 8H), 2.33 (s, 4H), 2.02-1.64 (m, 16H), 0.72 (s, 4H). GPC MALLS Mn = 23 kDa, Mw = 67 kDa.
CANAL-Me-DHP
【化35】
【0064】
反応を、0.36mmolのモノマーを用いて実施して、CNAAL-Me-DHPをオフホワイト色の固体として得た(100mg、68%)。1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.30 (s, 2H), 6.81 (s, 2H), 3.26 (s, 4H), 3.12 (s, 4 H), 2.75 (s, 4H), 2.33 (s, 4H), 2.02 (s, 6H), 0.80-0.72 (m, 4H). GPC MALLS Mn = 75 kDa, Mw = 170 kDa.
【0065】
ポリマーフィルムの形成。典型的なポリマーキャスティングのために、100mgのポリマーを6gのクロロホルムに溶解させ(約2wt%溶液)、溶液を、Norton(登録商標)フッ素化エチレンプロピレンライナー(WELCH Fluorocarbon,Inc.)を入れたフラットな5cmのペトリ皿に移した。ペトリ皿を、蒸発を緩徐するために時計皿でカバーした。溶媒は1~2日で蒸発して、フラットなフィルムが形成された。
【0066】
純ガスの透過実験および分析。実験を、別段記述されない限り、一定体積の可変圧力装置で、35℃および1バールの上流圧力で実施した。透過実験の前に、ポリマーフィルムを、120℃において真空下で24時間加熱するか、または120℃において真空下で24時間加熱し、次に液体メタノールに24時間浸した。次に、フィルムを、真鍮支持体上でエポキシを用いてマスクし、透過装置内で35℃において高真空下で(<0.02トール)8時間、さらに脱気した。可変温度の純ガス透過実験を、25、35、45、および55℃で実施した。
【0067】
ガスの透過性、Pを、以下の等式を使用して決定した。
【数1】
式中、Vは、下流体積であり、lは、ポリマーフィルムの厚さであり、pは、上流圧力であり、
【数2】
は、考慮される時間間隔で計算された平均下流圧力であり、Aは、膜の曝露面積であり、
【数3】
および
【数4】
はそれぞれ、定常状態の透過におけるおよびシステムが封止される場合の、下流圧力の変化である。透過性が最も低いガスであるNについても、
【数5】
は、
【数6】
よりも2桁低いことが見出された。
【0068】
ガスの対A/Bの理想的な選択透過性(α)は、以下の通り定義される。
α=P/P (S2)
式中、PおよびPは、それぞれガスAおよびBの透過係数である。ガスの対A/Bの理想的な拡散率および溶解度の選択性は、それぞれ等式5および6によって定義される。
α=P/P (S3)
【数7】
【0069】
CANAL-Me-DMFフィルムをクロロホルム溶液からキャスティングした後、それらを、約120℃に約24時間加熱するか(図9)、または液体メタノール中で約24時間処理し、次に空気乾燥した(赤丸、図6)。エイジング後、CANAL-Me-DMFフィルムは、H、COおよびOについて高透過性、ならびにH/CH、H/N、O/N、H/COおよびCO/CHについて並外れた高選択透過性を示した(表1)。高透過性および高選択透過性の組合せにより、CANAL-Me-DMFは、H/COおよびCO/CHについては2008年のRobeson上限を十分に上回り、H/CH、H/NおよびO/Nについては2015年の上限を上回る(図6)。
【0070】
これらのCANALポリマーはすべて、それらの窒素収着等温線を使用して計算される通り、高いBET表面積を示した。興味深いことに、3D CANALポリマー、例えばCANAL-Me-DMFと、代表的な2D CANALポリマーであるCANAL-Me-iPrとの比較により、両方のポリマーが同じ770m-1のBET表面積を有していたが、CANAL-Me-DMFは一貫して、低圧でより高いN収着能をもたらし(p/p=10-6~10-2)(図5aの挿入図)、それによって、非局所密度汎関数理論(NLDFT)による炭素のスリット状細孔の不均一表面モデルを使用して誘導される通り、全超細孔(ultra-micropore)体積がより大きくなったことが示された(図5b)。これらのポリマーの広角X線散乱は、ボイドとポリマー鎖の間のコントラストに起因してPIMについて典型的に観察されるブロードピークを示した。CANAL-Me-DMFについてのピークは、CANAL-Me-iPrのピークに対してより高いq領域にシフトしたが、これはCANAL-Me-iPrの7.7Åに対して、より小さい6.4Åの平均セグメント間距離に対応している(図5c)。
【0071】
CANAL-フルオレンおよびCANAL-DHPポリマーのフィルムは、機械的に頑強であり、曲げおよびねじれを反復した後に損傷を示さなかった(図4c)。それとは対照的に、2D CANALポリマーのフィルムは、それらのより高いMWにもかかわらず、著しくより脆い。CANAL-Me-DMFおよびCANAL-Me-DHPは、それぞれ、0.72GPaおよび3.1GPaのヤング率、ならびに6%および11%の破断点伸びを示した(図11c)。3D CANALポリマーは、検出可能なガラス転移なしに少なくとも350℃まで熱的に安定である(図11b)。すべてのポリマーの50~60μmの厚さのフィルムは、それらのクロロホルム溶液からキャスティングすることによって、容易に調製することができる。フィルムを、PIMのための一般条件(真空中で120℃において24時間加熱し、次にメタノールに浸し、次に空気乾燥する)を使用して予め処理して、任意の残留キャスティング溶媒を除去し、任意の履歴を消去した後、本発明者らは、Ar、H、CH、N、O、およびCOの順序でガスを使用して、純ガス透過実験を実施した(T=35℃、p=1バール)。CANAL-Me-DMFのフレッシュなフィルムは、高い透過性を示したが、ごく中程度の選択性を示した(表1)。驚くべきことに、エイジングの際に、CANAL-Me-DMFの分離性能が劇的に改善された。物理的エイジングは、一般にPIMについて観察され、ポリマー鎖がより緻密に充填された状態になるにつれて微細孔性を低減するプロセスである。PIMのエイジングは、典型的に透過性を著しく低下し、選択性を中程度に増大し、性能を、上限に平行にまたはその左に移動させる。注目すべきことに、CANAL-Me-DMFのエイジングにより、その性能が、H/CH、H/N、O/NおよびCO/CHなどのいくつかの工業的に重要なガスの対について、最先端の上限を超えて明らかに移動した(図6、表1)。
【0072】
/CH分離のために一般に使用される膜ポリマーであるポリスルホン(PSF)と比較して、CANAL-Me-DMFは、透過性が2桁高く、選択性が3倍高い。CO/CH分離については、CANAL-Me-DMFは、広く使用されている市販の膜である酢酸セルロース(CA)と比較して、2倍の選択性および100倍の透過性をもたらす。>2000バーラー(barrer)のH透過性およびほぼ200に達するH/CH選択性により、エイジングしたCANAL-Me-DMFのH/CH分離性能も、典型的に<50のH/CH選択性を有する任意の他のPIMをはるかに上回る(図6a)。2015年のH/CH上限を上回る性能を有する、ベンゾトリプチセンおよびベンゾジオキサン単位からなるPIMであるPIM-BTripと比較して、CANAL-Me-DMFは、H/CHについて選択性がほぼ4倍高い(表1、図6a)。エイジングしたCANAL-Me-DMFも、約50の並外れたCO/CH選択性および約600バーラーの高いCO透過性を示した。エイジングしたCANAL-Me-DMFのCO/CH選択性は、最先端のPIM-BTripのCO/CH選択性よりも約50%高い(図6a)。最も重要なことには、CANAL-Me-DMFは、天然ガス精製適用について推奨される40の最小限のCO/CH選択性を満たすと同時に、数百バーラーの高透過性を維持する。
【0073】
興味深いことに、環式置換基を有するCANAL-フルオレンポリマーであるCANAL-Me-S5FおよびCANAL-Me-S6F、ならびにCANAL-Me-DHPはすべて、エイジングの際にCANAL-Me-DMFに類似の超高性能を示した(図6~7)。CANAL-フルオレンポリマーと比較して、CANAL-Me-DHPは、より選択性になり、CO/CHおよびH/CH選択性がそれぞれ68および621に達すると同時に、158日後にそれぞれ94および860バーラーの高いCOおよびH透過性を依然として維持していた(表1)。エイジング後の透過性の喪失に対する選択性の増加のプロッティングにより、様々なPIMの間のエイジングプロファイルの直接的な可視化がもたらされる(図7)。3D CANALポリマーは、好ましいエイジング傾向が、近年報告された他のPIMよりも傑出していた。3D CANALポリマーについての透過性の中程度の喪失は、近年の他のPIMについて観察された範囲であるが、3D CANALポリマーについての選択性の増加は、はるかに大きい。例えば、CANAL-Me-DMFについてのH/CH選択性は、エイジングの際、スピロビフルオレンおよびジベンゾジオキサン単位からなるSBF-PIM-1についての<3倍の増大と比較して、>20倍増大したが(図7a)、それらのH透過性の喪失は類似していた。CO/CHについて、CANAL-フルオレンポリマーの選択性は、エイジングの際、最先端の他のPIMについての<2倍の増大と比較して4~5倍増大した(図7b)。3D CANALポリマーの非極性炭化水素構造、したがって極性ガス-ポリマー相互作用の非存在を考慮すると、ポリマーの超高選択性は、それらの並外れたサイズふるい分け能に起因している場合がある。
【表1】
【化36】
【0074】
CANAL-Me-DMFの並外れたガス分離性能を、CO/CH混合ガス透過実験によってさらに実証する。まず、2バールの全圧力における20~80%COを用いて、CANAL-Me-DMFのCO/CH混合ガス透過特性を評価した(図8a、白丸)。すべての3種の組成物について、選択性は、純ガス実験によって決定された44の理想的な選択性と比較して、49のままであった。より高い混合ガス選択性は、競合的収着効果に起因する可能性が高く、<2バールのCO部分圧で著しい可塑化がないことを示唆している。CO部分圧の増大に伴うCO透過性の低下は、デュアルモード収着モデルによって説明することができ、このモデルにより、ガラス状ポリマーにおけるガスの溶解度が、圧力が増大すると共に低下すると予測される。次に、本発明者らは、可変圧力における50/50のCO/CH中で、CANAL-Me-DMFの混合ガス透過特性を評価した。CO部分圧が、1バールから14バールに増大するにつれて、まず、COおよびCHの両方の透過性が低下し、次に、どちらも>8バールのCO部分圧で増大した(図8b)。初期の透過性の低下は、デュアルモード効果および競合的収着効果の組合せに起因し、それらはどちらも、COおよびCHの溶解度を低下する。しかし圧力を増大し続けると、両方のガスの拡散率を増大する可塑化が、デュアルモード効果および競合的収着効果の両方を上回って、COおよびCH透過性の増大、ならびに混合ガス選択性の低下をもたらす。可塑化にもかかわらず、CO/CH混合ガス選択性は、14バールのCO部分圧でも>35のままであり、CANAL-Me-DMFの混合ガス性能を、2018年の混合ガス上限をはるかに上回らせ、さらには2008年の純ガス上限を上回らせる。CO/CH分離についてのCANAL-Me-DMFの前例のない性能により、CANAL-Me-DMFは、天然ガスのスイートニングにとって特に魅力的となる。
【0075】
同じエイジング傾向および大幅に増強された性能は、以前に報告されている2D CANALポリマーからは観察されなかったが、そのことは、エイジングおよび分離性能に対するラダー鎖立体構造の特筆すべき効果を示唆している。CANAL-Me-iPrは、選択性の増加をほとんどまたは全く示さなかったが、エイジングの際に透過性が低下した(表2、図9)。例えば、CANAL-Me-iPrのH/CH選択性は、55日後にわずか25%増大した一方、そのH透過性は35%低下した。それとは対照的に、CANAL-Me-DMFは、同じエイジング期間後に、H/CH選択性の650%の増大、およびH透過性のわずか約17%の低下を示した。3D CANALポリマーと2D CANALポリマーの間のエイジングプロファイルが劇的に異なっていたことで、本発明者らはすぐに、CANAL-Me-DMFについて改善された選択性の起源を調査した。本発明者らは、拡散(D)係数および溶解度(S)係数を、溶解-拡散モデル(P=DS)に基づいて決定した。CANAL-Me-DMFがエイジングするにつれて、溶解度係数は相対的に一定のままであったが、NおよびCHなどのより大きいガスの拡散係数は、COおよびOなどのより小さいガスの拡散係数よりもかなり急速に低下した。例えば、55日間のエイジングの後、CHの拡散係数は約90%低下し、一方Oの拡散係数は約63%低下した(表3)。エイジングにわたって一定の溶解度係数は、ポリマーの全自由体積が一定のままであったことを示唆している。しかし、より大きいガスについての、拡散係数の経時的な大きい低下は、自由体積要素の間のつながり、または輸送の「ボトルネック(bottleneck)」が、エイジングが生じると狭まっていることを示唆している。特に、結果は、これらの「ボトルネック」が、小さいガス(3.46Åの動力学径を有するOよりも小さい)の輸送に大きく影響を及ぼすことなく、大きいガス(3.64Åの動力学径を有するNよりも大きい)の輸送を減速するように崩壊しており、エイジングの結果として、サイズ選択性が増強されることを実証している。それとは対照的に、CANAL-Me-iPrについては、すべてのガスについての透過性は、相対的にほぼ同程度に低下し、選択性の変化は小さかった(表2)。
【表2】
【表3】
【0076】
可変温度の純ガス透過実験を実施した。拡散活性化エネルギーを、CANAL-Me-DMFおよびCANAL-Me-iPrの両方について、エイジング後にアレニウスの式を使用して計算し、ガス動力学径の二乗の関数としてプロットする(図10)。CANAL-Me-DMFは、試験したすべての4種のガスCO、O、N、およびCHについて、より高い拡散活性化エネルギーを示した。両方の種類のCANALポリマーは、ガスとの特異的な極性相互作用を有さない炭化水素なので、より高い活性化エネルギーは、CANAL-Me-iPrよりもCANAL-Me-DMFにおける拡散「ボトルネック」がより狭いことを示唆している。図10における最良適合線の勾配は、エネルギー選択性であり、CANAL-Me-DMFおよびCANAL-Me-iPrについて、それぞれ6.0および2.7kJ mol-1-2である。さらに、フレッシュなCANAL-Me-DMFとエイジングしたCANAL-Me-DMFとの比較により、エイジングした膜について勾配が増大したことが明らかになった(図10)。エイジングしたCANAL-Me-DMFについてのサイズ依存性拡散バリアのより大きい勾配は、その劇的に増強された選択性の原因となっている。
【0077】
CANAL-Me-DMFについての追加のデータを、以下に提供する。
【表4】
【0078】
並外れて高いCO/CHにより、ある場合には>約40%のCO含量を有するバイオガス処理のために、CANAL-Me-DMFを使用することが実現可能になる。バイオガスのための膜技術の適用は、工業用膜の選択性が低く、一般に十分に高い純度を有するメタンストリームをもたらすことができないため、現在極めてまれである。さらに、H/CHおよびH/Nの分離は、水素生成のために重要であり、O/Nの分離は、窒素生成のために重要である。
【0079】
CANAL-Me-DMFが、可塑化に対して感受性があるかどうかを決定するために、約17atmまでの上流CO圧力を用いて、純ガス透過実験を実施する。可塑化の明らかな徴候は、上流圧力の増大と共に透過性が増大するときである。図8に示される通り、約8バールまで、CO透過性の著しい増大は観察されず、CANAL-Me-DMFの高い可塑化耐性が実証された。同等の純ガス輸送特性を有するラダーポリマーでは、より低い上流圧力で可塑化することが観察され、その結果、混合ガス透過実験では選択性がかなり低かった。これらの結果は、CANAL-Me-DMFの選択性が、混合ガスストリームに曝露された場合でも高いままであることを示している。
【0080】
フルオレンNBCラダーポリマーの別の例であるCANAL-Me-S5Fを合成した。その化学構造およびH-NMRスペクトルは、図2に示されている。
【0081】
フルオレンNBCラダーポリマーのさらなる例であるCANAL-Me-S5Fを合成した。その化学構造およびH-NMRスペクトルは、図3に示されている。
定義
【0082】
本明細書で使用される場合、単数を表す「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」という用語は、状況によって別段明示されない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、1つの物体への言及は、状況によって別段明示されない限り、複数の物体を含むことができる。
【0083】
本明細書で使用される場合、「実質的に」、「実質的な」、「およそ」および「約」という用語は、わずかな変動を記載し説明するために使用される。用語は、事象または状況と共に使用される場合、事象または状況が正確に起こる実例、および事象または状況がかなり近似して起こる実例を指すことができる。用語は、数値と共に使用される場合、その数値の±10%未満またはそれに等しい、例えば、±5%未満もしくはそれに等しい、±4%未満もしくはそれに等しい、±3%未満もしくはそれに等しい、±2%未満もしくはそれに等しい、±1%未満もしくはそれに等しい、±0.5%未満もしくはそれに等しい、±0.1%未満もしくはそれに等しい、または±0.05%未満もしくはそれに等しい範囲の変動を指すことができる。
【0084】
加えて、量、比、および他の数値は、本明細書では時として範囲形式で提示される。このような範囲形式は、便宜かつ簡潔さのために使用され、範囲の限界値として明確に特定される数値を含むが、各数値および部分範囲が明確に特定されているかのように、その範囲内に包含されるすべての個々の数値または部分範囲も含むと柔軟に理解されるべきであることを理解されたい。例えば、約1~約200の範囲の比は、約1および約200の明確に列挙される限界値を含むが、個々の比、例えば約2、約3および約4、ならびに部分範囲、例えば約10~約50、約20~約100なども含むと理解されるべきである。
【0085】
一般に、「置換されている」は、基に含有されている水素原子への1つまたはそれよりも多くの結合が、非水素原子または非炭素原子への結合によって置き換えられている有機基(例えば、アルキル基)を指す。置換されている基には、炭素または水素原子への1つまたはそれよりも多くの結合が、ヘテロ原子への二重または三重結合を含めた1つまたはそれよりも多くの結合によって置き換えられている基も含まれる。本開示は、例えば、「置換アルキル」が必要に応じて1つまたはそれよりも多くのアルケンおよび/またはアルキンを含有する実施形態を含むと理解される。置換されている基は、別段特定されない限り、1つまたはそれよりも多くの置換基で置換されている。一部の実施形態では、置換されている基は、1、2、3、4、5、または6個の置換基で置換されている。置換基の例として、ハロゲン(すなわち、F、Cl、Br、およびI);ヒドロキシル;アルコキシ、アルケノキシ、アルキノキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ、ヘテロシクリルオキシ、およびヘテロシクリルアルコキシ基;アリール基;ヘテロアリール基;シクロアルキル基;ヘテロシクリル基;カルボニル(オキソ);カルボキシル;エステル;ウレタン;オキシム;ヒドロキシルアミン;アルコキシアミン;アラルコキシアミン;チオール;スルフィド;スルホキシド;スルホン;スルホニル;スルホンアミド;アミン;N-オキシド;ヒドラジン;ヒドラジド;ヒドラゾン;アジド;アミド;尿素;アミジン;グアニジン;エナミン;イミド;イソシアネート;イソチオシアネート;シアネート;チオシアネート;イミン;ニトロ基;ニトリル(すなわち、CN)などが挙げられる。
【0086】
置換されている環基、例えば置換シクロアルキル、アリール、複素環およびヘテロアリール基には、水素原子への結合が、炭素原子への結合で置き換えられている環および縮合環系も含まれる。したがって、置換シクロアルキル、アリール、複素環およびヘテロアリール基は、以下に定義される通り、置換または非置換アルキル、アルケニル、およびアルキニル基でも置換され得る。
【0087】
アルキル基には、1~約20個の炭素原子、典型的に1~12個の炭素、または一部の実施形態では、1~8個、1~6個もしくは1~4個の炭素原子を有する、直鎖および分岐アルキル基が含まれる。直鎖アルキル基の例として、1~8個の炭素原子を有する基、例えばメチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、およびn-オクチル基が挙げられる。分岐アルキル基の例として、それらに限定されるものではないが、イソプロピル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ネオペンチル、およびイソペンチル基が挙げられる。代表的な置換アルキル基は、本明細書に列挙されているものなどの置換基で、1回またはそれよりも多く置換され得る。前述の通り、本開示は、例えば「置換アルキル」が、必要に応じて1つまたはそれよりも多くのアルケンおよび/またはアルキンを含有する実施形態を含むと理解される。
【0088】
シクロアルキル基は、環式アルキル基、例えばそれらに限定されるものではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチル基である。一部の実施形態では、シクロアルキル基は、3~8個の環員を有し、一方、他の実施形態では、環炭素原子の数は、3~5個、3~6個、または3~7個の範囲である。シクロアルキル基にはさらに、以下に記載される通り、単環式、二環式および多環式環系、例えば架橋シクロアルキル基など、ならびに縮合環、例えばそれに限定されるものではないがデカリニルなどが含まれる。一部の実施形態では、多環式シクロアルキル基は、3つの環を有する。置換シクロアルキル基は、先に定義される通り、非水素および非炭素基で1回またはそれよりも多く置換され得る。しかし、置換シクロアルキル基には、先に定義される通り、直鎖または分岐鎖アルキル基で置換されている環も含まれる。代表的な置換シクロアルキル基は、一置換または1回よりも多く置換された、例えばそれらに限定されるものではないが、2,2-、2,3-、2,4- 2,5-または2,6-二置換シクロヘキシル基であり得、それらは先に列挙されているものなどの置換基で置換され得る。一部の実施形態では、シクロアルキル基は、1つまたはそれよりも多くのアルケン結合を有するが、芳香族ではない。
【0089】
アリール基は、ヘテロ原子を含有していない環式芳香族炭化水素である。アリール基には、単環式、二環式および多環式環系が含まれる。したがって、アリール基には、それらに限定されるものではないが、フェニル、アズレニル、ヘプタレニル、ビフェニレニル、インダセニル、フルオレニル、フェナントレニル、トリフェニレニル、ピレニル、ナフタセニル、クリセニル、ビフェニル、アントラセニル、インデニル、インダニル、ペンタレニル、およびナフチル基が含まれる。一部の実施形態では、アリール基は、基の環部分に6~14個の炭素を、他では6~12個またはさらには6~10個の炭素原子を含有する。「アリール基」という句は、縮合環、例えば縮合芳香族-脂肪族環系を含有する基(例えば、インダニル、テトラヒドロナフチルなど)を含むが、環員の1つに結合しているアルキルまたはハロ基などの他の基を有するアリール基を含まない。むしろ、トリルなどの基は、置換アリール基と呼ばれる。代表的な置換アリール基は、一置換または1回よりも多く置換され得る。例えば、一置換アリール基には、それらに限定されるものではないが、2-、3-、4-、5-、または6-において置換されているフェニルまたはナフチル基が含まれ、それらは先に列挙されているものなどの置換基で置換され得る。
【0090】
複素環基には、3個またはそれよりも多い環員を含有し、その1つまたはそれよりも多くが、それらに限定されるものではないがN、O、SまたはBなどのヘテロ原子である、芳香族(ヘテロアリールとも呼ばれる)および非芳香族環化合物が含まれる。一部の実施形態では、複素環基は、3~20個の環員を含み、一方、他のこのような基は、3~6個、3~10個、3~12個、または3~15個の環員を有する。複素環基は、不飽和、部分的飽和および飽和環系、例えば、イミダゾリル、イミダゾリニルおよびイミダゾリジニル基などを包含する。「複素環基」という句は、縮合芳香族および非芳香族基を含むもの、例えば、ベンゾトリアゾリル、2,3-ジヒドロベンゾ[1,4]ジオキシニル、およびベンゾ[1,3]ジオキソリルなどを含めた縮合環種を含む。句はまた、ヘテロ原子を含有する架橋多環式環系、例えばそれに限定されるものではないがキヌクリジルを含む。しかし、句は、環員の1つに結合しているアルキル、オキソまたはハロ基などの他の基を有する複素環基を含まない。むしろこれらは、「置換複素環基」と呼ばれる。複素環基には、それらに限定されるものではないが、アジリジニル、アゼチジニル、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、チアゾリジニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロフラニル、ジオキソリル、フラニル、チオフェニル、ピロリル、ピロリニル、イミダゾリル、イミダゾリニル、ピラゾリル、ピラゾリニル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、チアゾリニル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、ピペリジル、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、オキサチアン、ジオキシル、ジチアニル、ピラニル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル、ジヒドロピリジル、ジヒドロジチイニル、ジヒドロジチオニル、ホモピペラジニル、キヌクリジル、インドリル、インドリニル、イソインドリル,アザインドリル(ピロロピリジル)、インダゾリル、インドリジニル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾオキサジニル、ベンゾジチイニル、ベンゾオキサチイニル、ベンゾチアジニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾ[1,3]ジオキソリル、ピラゾロピリジル、イミダゾピリジル(アザベンゾイミダゾリル)、トリアゾロピリジル、イソオキサゾロピリジル、プリニル、キサンチニル、アデニニル、グアニニル、キノリニル、イソキノリニル、キノリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、プテリジニル、チアナフタレニル、ジヒドロベンゾチアジニル、ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロインドリル、ジヒドロベンゾジオキシニル、テトラヒドロインドリル、テトラヒドロインダゾリル、テトラヒドロベンゾイミダゾリル、テトラヒドロベンゾトリアゾリル、テトラヒドロピロロピリジル、テトラヒドロピラゾロピリジル、テトラヒドロイミダゾピリジル、テトラヒドロトリアゾロピリジル、およびテトラヒドロキノリニル基が含まれる。代表的な置換複素環基は、一置換または1回よりも多く置換された、例えばそれらに限定されるものではないが、先に列挙されているものなどの様々な置換基で2-、3-、4-、5-もしくは6-において置換されているか、または二置換されているピリジルまたはモルホリニル基であり得る。
【0091】
ヘテロアリール基は、5個またはそれよりも多い環員を含有し、その1つまたはそれよりも多くが、それらに限定されるものではないがN、O、SまたはBなどのヘテロ原子である、芳香族環化合物である。ヘテロアリール基には、それらに限定されるものではないが、ピロリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、フラニル、ベンゾフラニル、インドリル、アザインドリル(ピロロピリジル)、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、イミダゾピリジル(アザベンゾイミダゾリル)、ピラゾロピリジル、トリアゾロピリジル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、イミダゾピリジル、イソオキサゾロピリジル、チアナフタレニル、プリニル、キサンチニル、アデニニル、グアニニル、キノリニル、イソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、キノキサリニル、およびキナゾリニル基などの基が含まれる。「ヘテロアリール基」という句は、縮合環化合物、例えばインドリルおよび2,3-ジヒドロインドリルを含むが、句は、環員の1つに結合している他の基、例えばアルキル基を有するヘテロアリール基を含まない。むしろ、このような置換を有するヘテロアリール基は、「置換ヘテロアリール基」と呼ばれる。代表的な置換ヘテロアリール基は、先に列挙されているものなどの様々な置換基で、1回またはそれよりも多く置換され得る。
【0092】
当業者は、本発明の化合物が、互変異性、立体配座異性、幾何異性および/または光学異性の現象を示し得ることを認識されよう。本明細書および特許請求の範囲内における式の図面は、可能な互変異性、立体配座異性、光学異性または幾何異性形態の1つだけを表すことができるので、本発明は、本明細書に記載される実用性の1つまたはそれよりも多くを有する化合物の任意の互変異性、立体配座異性、光学異性および/または幾何異性形態、ならびにこれらの様々な異なる形態の混合物を包含することを理解されたい。
【0093】
当業者によって容易に理解される通り、多種多様な官能基および他の構造が、互変異性を示し得、本明細書に記載される化合物のすべての互変異性体が、本発明の範囲内にある。
【0094】
化合物の立体異性体は、「光学異性体」としても公知であり、具体的な立体化学が明確に示されない限り、構造のすべてのキラル、ジアステレオマー、およびラセミ形態を含む。したがって、本発明において使用される化合物には、描写から明らかになる通り、任意のまたはすべての不斉原子において富化されたまたは分解された光学異性体が含まれる。ラセミ混合物およびジアステレオマー混合物の両方、ならびに個々の光学異性体は、それらのエナンチオマーまたはジアステレオマーパートナーを実質的に伴わないように単離または合成することができ、これらはすべて本発明の範囲内にある。
【0095】
本開示を、その具体的な実施形態を参照することにより記載してきたが、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の真の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な変更が行われ得ること、および均等物が置換され得ることを、当業者は理解されたい。さらに、特定の状況、材料、物質組成、方法、1つまたはそれよりも多くの操作を、本開示の目的、趣旨および範囲に適合させるために、多くの修正が行われ得る。このようなすべての修正は、本明細書に添付の特許請求の範囲内にあることが意図される。特に、ある特定の方法が、特定の順序で実施される特定の操作に言及して記載されている場合があるが、これらの操作は、本開示の教示から逸脱することなく、組み合わせ、細分し、または並べ替えて、等価な方法を形成し得ることを理解されよう。したがって、本明細書で具体的に示されない限り、操作の順序およびグループ化は、本開示の制限ではない。
図1
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図6-1】
図6-2】
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】