IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東レ株式会社の特許一覧

特表2022-553124難燃剤組成物、プリプレグ及び繊維強化複合材料
<>
  • 特表-難燃剤組成物、プリプレグ及び繊維強化複合材料 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-22
(54)【発明の名称】難燃剤組成物、プリプレグ及び繊維強化複合材料
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/24 20060101AFI20221215BHJP
   C08G 59/18 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
C08J5/24 CFC
C08G59/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022516648
(86)(22)【出願日】2020-10-14
(85)【翻訳文提出日】2022-03-15
(86)【国際出願番号】 IB2020000851
(87)【国際公開番号】W WO2021074685
(87)【国際公開日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】62/923,177
(32)【優先日】2019-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/082,272
(32)【優先日】2020-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】カトリーナ・ビジーニ
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン リーマン
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン・ヒューズ
(72)【発明者】
【氏名】アルフレッド・ピー・ハロ
(72)【発明者】
【氏名】釜江 俊也
【テーマコード(参考)】
4F072
4J036
【Fターム(参考)】
4F072AB06
4F072AB09
4F072AB10
4F072AB15
4F072AB22
4F072AB28
4F072AD08
4F072AD23
4F072AE01
4F072AE07
4F072AF22
4F072AF31
4F072AG03
4F072AH06
4F072AH49
4F072AK05
4F072AL02
4F072AL04
4F072AL05
4F072AL16
4F072AL17
4J036AD08
4J036AH18
4J036AJ20
4J036DC25
4J036DC31
4J036FB01
4J036GA29
4J036JA11
(57)【要約】
本発明は、少なくとも2のエポキシ官能価を有する少なくとも1種のエポキシ樹脂と、室温で3W/m・K以上の熱伝導率を有する繊維で強化された少なくとも1種の有機ホスフィン酸又はその誘導体(例えば、有機ホスフィン酸変性エポキシ樹脂)とを含むエポキシ樹脂組成物に基づく難燃性繊維強化複合材料、並びにそのような難燃性繊維強化複合材料を製造するためのプリプレグに関する。より具体的には、163℃で15分間硬化したときに薄層積層体に十分な難燃性を提供する特定の種類のエポキシ樹脂、硬化剤、及び強化繊維の組み合わせを含む複合材料が提供される。これらの硬化複合材は、難燃性を必要とする様々な用途にも適している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
難燃性繊維強化複合材料の製造に有用な難燃剤組成物であって、i)成分[A]、成分[B]及び成分[C]から構成されたエポキシ樹脂組成物と、ii)成分[D]とを含み、
前記エポキシ樹脂組成物は、前記エポキシ樹脂組成物の総重量に基づいて少なくとも0.5重量%のリン含有量を有し、
前記成分[A]は、少なくとも1種のエポキシ樹脂から構成され、
前記成分[B]は、少なくとも1種の有機ホスフィン酸から構成され、
前記成分[C]は、少なくとも1種の硬化剤から構成され、かつ
前記成分[D]は、室温で3W/m・K以上の熱伝導率を有する少なくとも1種の強化繊維から構成された、難燃剤組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1種の有機ホスフィン酸が、式(I):
【化1】
(式中、R及びRは、独立して、1~10個の炭素原子を有するアルキル基及び6~10個の炭素原子を有するアリール基から選択される)
に対応する少なくとも1つの有機ホスフィン酸を含む、請求項1に記載の難燃剤組成物。
【請求項3】
前記成分[A]の少なくとも一部が、成分[B]の少なくとも一部と予備反応している請求項1に記載の難燃剤組成物。
【請求項4】
前記エポキシ樹脂組成物が、少なくとも1種の促進剤をさらに含む、請求項1に記載の難燃剤組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種の促進剤が、少なくとも1種の芳香族ウレアを含む、請求項4に記載の難燃剤組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1種の芳香族ウレアが、前記エポキシ樹脂組成物中に、0.5~7PHRの範囲の総量で存在する、請求項5に記載の難燃剤組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1種の硬化剤が、少なくとも1つのジシアンジアミドを含む、請求項1に記載の難燃剤組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1つのジシアンジアミドが、前記エポキシ樹脂組成物中に1~7PHRの範囲の総量で存在する、請求項7に記載の難燃剤組成物。
【請求項9】
前記成分[A]が、少なくとも1つのテトラグリシジルジアミノジフェニルメタンを含む、請求項1に記載の難燃剤組成物。
【請求項10】
前記エポキシ樹脂組成物が、少なくとも1種の熱可塑性樹脂をさらに含む、請求項1に記載の難燃剤組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1種の熱可塑性樹脂が、少なくとも1つのポリビニルホルマールを含む、請求項10に記載の難燃剤組成物。
【請求項12】
前記式(I)中のR及びRが、それぞれエチル基である請求項2に記載の難燃剤組成物。
【請求項13】
前記少なくとも1種の強化繊維が、少なくとも1種の炭素繊維を含む、請求項1に記載の難燃剤組成物。
【請求項14】
前記少なくとも1種の強化炭素繊維が、ピッチ系炭素繊維及びPAN系炭素繊維からなる群より選択される少なくとも1種の炭素繊維を含む、請求項13に記載の難燃剤組成物。
【請求項15】
プリプレグの形態であり、前記プリプレグは、前記強化繊維に前記エポキシ樹脂組成物を含浸させた層を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の難燃剤組成物。
【請求項16】
前記強化繊維の前記層が、一方向性又は織物である、請求項15に記載の難燃剤組成物。
【請求項17】
請求項15に記載のプリプレグを120℃~180℃の温度で硬化することによって得られた繊維強化複合材料。
【請求項18】
i)成分[C]及び成分[E]を含むエポキシ樹脂組成物と、ii)成分[D]とを含む難燃剤組成物であって、
前記エポキシ樹脂組成物は、前記エポキシ樹脂組成物の総重量に基づいて少なくとも0.5重量%のリン含有量を有し、
前記成分[C]は、少なくとも1種の硬化剤から構成され、
前記成分[D]は、室温で3W/m・K以上の熱伝導率を有する少なくとも1種の強化繊維から構成され、かつ
前記成分[E]は、少なくとも1種の有機ホスフィン酸の少なくとも1つの残基を含有する少なくとも1種のエポキシ樹脂から構成された、難燃剤組成物。
【請求項19】
前記少なくとも1種の有機ホスフィン酸の前記少なくとも1つの残基が、式(II):
【化2】
(式中、式(II)のR及びRは、独立して、1~10個の炭素原子を有するアルキル基又は6~10個の炭素原子を有するアリール基から選択される)
に対応する、請求項18に記載の難燃剤組成物。
【請求項20】
前記成分[E]が、式(III):
【化3】
(式中、式(III)のR及びRは、独立して、1~10個の炭素原子を有するアルキル基及び6~10個の炭素原子を有するアリール基から選択され、かつ式(III)のRは、少なくとも1つのエポキシ基が反応して置換基-O-P(=O)Rを導入した多官能エポキシ樹脂の残基であり、式(III)に対応する少なくとも1種のエポキシ樹脂は、少なくとも1つの未反応エポキシ基を有する)
に対応する前記少なくとも1種のエポキシ樹脂を含む、請求項19に記載の難燃剤組成物。
【請求項21】
前記エポキシ樹脂組成物が、さらに、少なくとも1種のエポキシ樹脂から構成された成分[A]を含む、請求項18に記載の難燃剤組成物。
【請求項22】
前記エポキシ樹脂組成物が、さらに、少なくとも1種の有機ホスフィン酸から構成された成分[B]を含む、請求項18に記載の難燃剤組成物。
【請求項23】
前記エポキシ樹脂組成物が、少なくとも1種の促進剤をさらに含む、請求項18に記載の難燃剤組成物。
【請求項24】
前記少なくとも1種の促進剤が、少なくとも1種の芳香族ウレアを含む、請求項23に記載の難燃剤組成物。
【請求項25】
前記少なくとも1種の芳香族ウレアが、0.5~7PHRの範囲の量で存在する、請求項24に記載の難燃剤組成物。
【請求項26】
前記少なくとも1種の硬化剤が、少なくとも1つのジシアンジアミドを含む、請求項18に記載の難燃剤組成物。
【請求項27】
前記少なくとも1つのジシアンジアミドが、1~7PHRの範囲の量で存在する、請求項26に記載の難燃剤組成物。
【請求項28】
式(III)におけるRが、少なくとも1つのテトラグリシジルジアミノジフェニルメタンの残基である、請求項20に記載の難燃剤組成物。
【請求項29】
前記エポキシ樹脂組成物が、少なくとも1種の熱可塑性樹脂をさらに含む、請求項18に記載の難燃剤組成物。
【請求項30】
前記少なくとも1種の熱可塑性樹脂が、少なくとも1つのポリビニルホルマールを含む、請求項29に記載の難燃剤組成物。
【請求項31】
式(II)中のR及びRが、それぞれエチル基である請求項19に記載の難燃剤組成物。
【請求項32】
前記少なくとも1種の強化繊維が、少なくとも1種の炭素繊維を含む、請求項18に記載の難燃剤組成物。
【請求項33】
前記少なくとも1種の強化繊維が、ピッチ系炭素繊維及びPAN系炭素繊維からなる群より選択される少なくとも1種の炭素繊維を含む、請求項18に記載の難燃剤組成物。
【請求項34】
プリプレグの形態であり、前記プリプレグは、前記強化繊維に前記エポキシ樹脂組成物を含浸させた層を含む、請求項18~33のいずれか一項に記載の難燃剤組成物。
【請求項35】
前記強化繊維の前記層が、一方向性又は織物である、請求項34に記載の難燃剤組成物。
【請求項36】
請求項35に記載のプリプレグを120℃~180℃の温度で硬化することによって得られた繊維強化複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年10月18日に出願された米国仮出願第62/923,177号及び2020年9月23日に出願された米国仮出願第63/082,272号の優先権を主張し、これらの各出願の開示は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、優れた難燃性を有し、現代の急速硬化加熱システムを用いた製造に適した熱硬化性エポキシ樹脂マトリックスを有する難燃剤組成物、プリプレグ及び繊維強化複合材料に関する。
【背景技術】
【0003】
強化繊維とマトリックス樹脂とを含む繊維強化複合(FRC)材料(繊維強化複合材料と呼ばれることもある)は、他の従来の材料よりも軽量でありながら、剛性や強度などの優れた機械的特性を有するため、航空機、宇宙船、自動車、鉄道車両、船舶、スポーツ用品、コンピュータなどの様々な用途に利用されており、需要は時間と共に増加し続けている。工業用途では、原材料の製造コスト並びに機械的及び熱的性能を比較的低く抑えながら、難燃性を向上させることがますます一般的な要件になってきている。
【0004】
ハロゲン難燃剤は、従来、FRCが含まれる様々な材料に難燃性を与えるために使用されている。ハロゲン難燃剤としては、例えば、テトラ臭素化ビスフェノールAのような臭素や塩素等のハロゲンを有するハロゲン化エポキシ樹脂が挙げられる。しかしながら、ハロゲン難燃剤は、燃焼プロセス中にハロゲン化水素及び有機ハロゲン化物などの有毒ガスを放出する可能性があるため、強く回避される。その結果、マトリックス樹脂に赤リンやリン酸エステル化合物を添加する方法を含む、ハロゲン系難燃剤に代わる防炎化方法が主流となってきている。
【0005】
しかしながら、マトリックス樹脂に赤リンやリン酸エステル化合物を添加する方法では、1)機械的強度の低下、2)保存安定性が低い、3)赤リン又はリン酸エステル化合物が長期間にわたって環境に徐々に浸透する、かつ4)赤リン及びリン酸エステル化合物は加水分解しやすいため、絶縁性や耐水性が要求されるプリント基板、電子材料等では使用が困難である、等の問題を有する。
【0006】
樹脂のための追加の一般的なハロゲンフリーの防炎化方法は、金属水酸化物などの無機難燃剤の添加である。しかしながら、無機難燃剤の添加量を多くすると、硬化樹脂の機械的強度が低下するという問題が生じる。硬化樹脂の機械的強度の低下は、繊維強化複合材料の機械的強度の低下を引き起こす。繊維強化複合材料に求められる機械的強度を維持する程度の添加量では、十分な難燃性を得ることは困難である。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、中でも、ハロゲン系難燃剤、赤リン、リン酸エステルを含まず、優れた難燃性を有し、金属水酸化物等の無機難燃剤の添加に頼らない複合材料を提供することを目的とするものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の種類のリン含有化学物質を特定の種類の強化繊維と組み合わせて使用することにより、繊維強化複合材料に優れた難燃性を付与することを見出した。リン含有化学物質を含むそのような繊維強化複合材料の調製に使用される難燃剤組成物はまた、そのようなリン含有化学物質を含まない類似のエポキシ樹脂系難燃剤組成物の機械的及び耐熱性特性を維持するが、但し、硬化エポキシ樹脂組成物の架橋密度を維持するように配合物を調整する。すなわち、本発明は、以下の実施形態を含む。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)難燃性繊維強化複合材料の製造に有用な難燃剤組成物であって、i)成分[A]、成分[B]及び成分[C]から構成されたエポキシ樹脂組成物と、ii)成分[D]とを含み(又はから本質的になり、又はからなり)、
エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂組成物の総重量に基づいて少なくとも0.5重量%のリン含有量を有し、
成分[A]は、少なくとも1種のエポキシ樹脂から構成され、
成分[B]は、少なくとも1種の有機ホスフィン酸から構成され、
成分[C]は、少なくとも1種の硬化剤から構成され、かつ
成分[D]は、室温で3W/m・K以上の熱伝導率を有する少なくとも1種の強化繊維から構成された、難燃剤組成物。
【0010】
難燃剤組成物の一実施形態では、少なくとも1種の有機ホスフィン酸は、式(I):
【0011】
【化1】
【0012】
(式中、R及びRは、独立して、1~10個の炭素原子を有するアルキル基及び6~10個の炭素原子を有するアリール基から選択される)
に対応する少なくとも1種の有機ホスフィン酸を含む。一実施形態では、式(I)のR及びRは、それぞれエチル基である。
【0013】
別の実施形態では、成分[A]の少なくとも一部は、成分[B]の少なくとも一部と予備反応している。
【0014】
(2)難燃性繊維強化複合材料の製造に有用な難燃剤組成物であって、i)成分[C]及び成分[E]を含むエポキシ樹脂組成物と、ii)成分[D]とを含み、
エポキシ樹脂組成物は、前記エポキシ樹脂組成物の総重量に基づいて少なくとも0.5重量%のリン含有量を有し、
成分[C]は、少なくとも1種の硬化剤から構成され、
成分[D]は、室温で3W/m・K以上の熱伝導率を有する少なくとも1種の強化繊維から構成され、かつ
成分[E]は、少なくとも1種の有機ホスフィン酸の少なくとも1つの残基を含有する少なくとも1種のエポキシ樹脂から構成される、難燃剤組成物。
【0015】
難燃剤組成物の一実施形態において、少なくとも1種の有機ホスフィン酸の少なくとも1つの残基は、式(II):
【0016】
【化2】
【0017】
(式中、式(II)のR及びRは、独立して、1~10個の炭素原子を有するアルキル基及び6~10個の炭素原子を有するアリール基から選択される)
に対応する。
【0018】
一実施形態では、成分[E]が、式(III):
【0019】
【化3】
【0020】
(式中、式(III)のR及びRは、独立して、1~10個の炭素原子を有するアルキル基又は6~10個の炭素原子を有するアリール基から選択され、かつ式(III)のRは、少なくとも1つのエポキシ基が反応して置換基-O-P(=O)Rを導入した多官能エポキシ樹脂の残基であり、式(III)に対応する少なくとも1種のエポキシ樹脂は、少なくとも1つの未反応エポキシ基を有する)
に対応する少なくとも1種のエポキシ樹脂を含む。一実施形態では、式(III)中のRは、少なくとも1つのテトラグリシジルジアミノジフェニルメタンの残基である。
【0021】
難燃剤組成物の一態様では、本明細書中上記で開示されるように、エポキシ樹脂組成物は、少なくとも1種の促進剤をさらに含む。一実施形態では、少なくとも1種の促進剤は、少なくとも1種の芳香族ウレアを含む。少なくとも1種の芳香族ウレアは、0.5~7PHRの範囲の総量でエポキシ樹脂組成物中に存在してもよい。別の実施形態では、少なくとも1種の硬化剤は、少なくとも1つのジシアンジアミドを含む。少なくとも1つのジシアンジアミドは、1~7PHRの範囲の総量でエポキシ樹脂組成物中に存在してもよい。
【0022】
難燃剤組成物の一態様では、エポキシ樹脂組成物の成分[A]は、少なくとも1つのテトラグリシジルジアミノジフェニルメタンを含む。
【0023】
難燃剤組成物の別の態様では、エポキシ樹脂組成物は、少なくとも1種の熱可塑性樹脂をさらに含む。一実施形態では、少なくとも1種の熱可塑性樹脂は、少なくとも1つのポリビニルホルマールを含む。
【0024】
一態様では、難燃剤組成物において、少なくとも1種の強化繊維は、少なくとも1種の炭素繊維を含む。少なくとも1種の炭素繊維は、ピッチ系炭素繊維及びPAN系炭素繊維からなる群より選択されてもよい。
【0025】
一態様では、少なくとも1種の強化繊維は、強化繊維と、実施形態(1)、実施形態(2)、又は実施形態(1)及び実施形態(2)の両方の難燃剤組成物との層であり、エポキシ樹脂組成物を含浸させた強化繊維の層を含むプリプレグの形態である。一実施形態では、強化繊維の層は、一方向性又は織物である。別の実施形態では、繊維強化複合材料は、少なくとも1つのプリプレグを120℃~180℃の温度で硬化することによって得られてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、例にさらに記載されているように、SFI56.1仕様に着想を得たニート樹脂可燃性試験の試験構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書で使用される場合、「エポキシ樹脂組成物」という句は、「エポキシ組成物」と交換可能に使用され、かつ「難燃性エポキシ樹脂組成物」という語句は、硬化時に、ニート樹脂試験片に適用するためのSFI56.1可燃性試験仕様から修正された可燃性試験によって決定されるような、10秒未満の低燃焼時間及び0.7インチ以下の低燃焼長さなどの可燃性特性を有する硬化樹脂を提供するエポキシ樹脂組成物を指す。本明細書で使用される場合、「難燃剤組成物」という語句は、硬化時に、ニート樹脂試験片に適用するためのSFI56.1可燃性試験仕様から修正された可燃性試験によって決定されるような、10秒未満の低燃焼時間及び0.7インチ以下の低燃焼長さなどの可燃性特性を有する硬化樹脂を提供する少なくとも1種の強化繊維及びエポキシ樹脂組成物を含む難燃性繊維強化複合材料を提供するための難燃性中間材料を指す。本明細書で使用される場合、「難燃性繊維強化複合材料」という語句は、硬化した熱硬化性樹脂のマトリックス(すなわち、熱硬化性樹脂のマトリックス)中の強化繊維の複合材である難燃性を有する材料を指す。したがって、「難燃性繊維強化複合材料の製造に有用な組成物」という語句は、硬化して難燃性繊維強化複合材料を提供することができる難燃剤組成物を指す。
【0028】
本明細書で使用される「およそ(approximately)」、「約(about)」及び「実質的に(substantially)」という用語は、依然として所望の機能を果たすか又は所望の結果を達成する、記載された量に近い量を表す。例えば、「およそ(approximately)」、「約(about)」、及び「実質的に(substantially)」という用語は、記載された量の10%未満、5%未満、1%未満、0.1%未満、及び0.01%未満の量を指すことができる。
【0029】
本明細書で使用される「室温」という用語は、当業者に知られているその通常の意味を有し、約15℃~43℃の範囲内の温度を含み得る。
【0030】
本開示によれば、難燃剤組成物は、(i)エポキシ樹脂組成物と、(ii)少なくとも1種の強化繊維とを含む。エポキシ樹脂組成物は、少なくとも1種のエポキシ樹脂を含む成分[A]と、少なくとも1種の有機ホスフィン酸を含む成分[B]と、少なくとも1種の硬化剤を含む成分[C]とを含む。一実施形態では、エポキシ樹脂組成物は、成分[E]を含み、成分[E]は、成分[A]と成分[B]との反応生成物である。一実施形態では、エポキシ樹脂組成物は、成分[B]の少なくとも一部と予備反応した成分[A]の少なくとも一部を含む。他の実施形態では、エポキシ樹脂組成物は、少なくとも1種の有機ホスフィン酸の少なくとも1つの残基を含有する少なくとも1種のエポキシ樹脂を含む成分[E]と、少なくとも1種の硬化剤を含む成分[C]とを含む。別の実施形態では、エポキシ樹脂組成物は、成分[A]、成分[C]及び成分[E]を含む。さらに別の実施形態では、エポキシ樹脂組成物は、成分[B]、成分[C]及び成分[E]を含む。本開示のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂組成物の総重量に基づいて少なくとも0.5重量%のリン含有量を有する。様々な実施形態では、本開示のエポキシ樹脂組成物は、そのようなリン含有化学物質を含まない類似のエポキシ樹脂系難燃剤組成物の機械的及び耐熱性特性を維持するが、但し、硬化エポキシ樹脂組成物の架橋密度を維持するために配合を調整する。
【0031】
一実施形態では、難燃剤組成物は、ハロゲン置換生成物、フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂及びハロゲン化エポキシ樹脂を完全に含まないか、又は実質的に含まない。他の実施形態では、難燃剤組成物は、ハロゲン置換生成物、フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂及びハロゲン化エポキシ樹脂のうちの1種以上を、複合材料の難燃性をさらに改善するのに適切な量で含んでもよい。
【0032】
成分[B]
難燃剤組成物の一実施形態では、成分[B]は、少なくとも1種の有機ホスフィン酸から構成されたか、又は少なくとも1種の有機ホスフィン酸から本質的になるか、又は少なくとも1種の有機ホスフィン酸からなる。本発明で利用される有機ホスフィン酸は、特に限定されない。有機ホスフィン酸は、少なくとも1つの>P(=O)OH官能基を含有する化合物であり、リン原子は、互いに同じであっても異なっていてもよい2つの有機基(例えば、アルキル及び/又はアリール基)によってさらに置換され、各有機基中の炭素原子はリン原子に直接結合している。有機ホスフィン酸は、一般式RPOHを有し、ホスフィン酸(PO)中のリンに直接結合した2個の水素原子は、有機基Rで置き換えられている。有機基Rは炭化水素基であってもよいが、特定の実施形態では、N、O、ハロゲンなどの炭素及び水素原子に加えて、1種以上の種類の原子を含んでもよい。例えば、有機基は、ヒドロキシル又はカルボン酸基で置換されていてもよい。しかし、好ましい実施形態では、有機ホスフィン酸は、ハロゲンフリーである。ジアルキルホスフィン酸、ジアリールホスフィン酸及びアルキルアリールホスフィン酸、並びにそれらの組み合わせは全て、本発明における使用に適している。
【0033】
特定の実施形態によれば、エポキシ樹脂組成物は、式(I):
【0034】
【化4】
【0035】
(式中、R及びRは、独立して、1~10個の炭素原子を有するアルキル基又は6~10個の炭素原子を有するアリール基から選択される)に対応する1種以上の有機ホスフィン酸から構成されるか、又は、それを用いて調製される。一実施形態では、R及びRは、互いに同一である。別の実施形態では、R及びRは、互いに異なる。アルキル基は、線状、分枝状、及び/又は脂環式であり得る。適切な1~10個の炭素原子を有するアルキル基には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、イソオクチル、シクロヘキシルが含まれるが、これらに限定されない。適切な6~10個の炭素原子を有するアリール基には、フェニル、トリル、ナフチルが含まれるが、これらに限定されない。
【0036】
適切な有機ホスフィン酸の例としては、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジプロピルホスフィン酸、エチルフェニルホスフィン酸、ジ(イソオクチル)ホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、メチルベンジルホスフィン酸、ナフチルメチルホスフィン酸、メチルフェニルホスフィン酸及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。本発明における使用には、ジエチルホスフィン酸が特に好ましい。
【0037】
難燃性エポキシ樹脂組成物は、総リン含有量がエポキシ樹脂組成物の総重量の少なくとも0.5重量%であるように、式(I)に示すような未反応形態又は式(II)及び式(III)に示すような反応形態の有機ホスフィン酸、又は未反応形態及び反応形態の混合物の量を含有してもよい。リンの量が少なくとも0.5重量%である場合、エポキシ樹脂組成物は、硬化されると、指定された厚さでほとんどの難燃性試験に合格するであろう。他の実施形態では、リン含有量は、硬化エポキシ樹脂組成物に、非常に薄い試験片であってもほとんどの試験仕様に合格するのに十分なレベルの難燃性を付与するために、1.5%を超え得る。典型的には、エポキシ樹脂組成物は、ほとんどの目的及び最終用途で満足のいく難燃性を達成するために、5重量%を超えてリンを含有する必要はない。また、架橋密度において適切な調整をすることなくリン含有量を増加させると、硬化エポキシ樹脂組成物の機械的性能が低下する場合がある。特定の実施形態では、難燃性エポキシ樹脂組成物中のリン含有量の全て又はほぼ全ては、本明細書に記載の1種以上の有機ホスフィン酸及び有機ホスフィン酸変性エポキシ樹脂に起因するが、有機ホスフィン酸及び/又は有機ホスフィン酸変性エポキシ樹脂に加えて他の種類のリン含有化合物も存在し得る。ある特定の実施形態によれば、難燃性エポキシ樹脂組成物のリン含有量の少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも99%又は100%は、有機ホスフィン酸及び/又は有機ホスフィン酸変性エポキシ樹脂によって提供される。
【0038】
成分[E]
本発明の特定の実施形態では、難燃性エポキシ樹脂組成物は、少なくとも1種の有機ホスフィン酸の少なくとも1つの残基(上述の有機ホスフィン酸のいずれかの残基を含む)を含有する少なくとも1種のエポキシ樹脂を含むか、又はそれから本質的になるか、又はそれからなる成分[E]を含有する。このような残基は、エポキシ樹脂と反応した有機ホスフィン酸に対応し、したがってエポキシ樹脂に組み込まれるようになる。このようなエポキシ樹脂は、さらに少なくとも1つのエポキシ基を含み、有機ホスフィン酸変性エポキシ樹脂、又は有機ホスフィン酸と多官能エポキシ樹脂との付加物とみなすことができる。本発明における成分[E]として有用なエポキシ樹脂は、有機ホスフィン酸を多官能エポキシ樹脂(すなわち、1分子当たり2つ以上のエポキシ基を含むエポキシ樹脂)と反応させることによって得ることができ、化学量論は、多官能エポキシ樹脂の1つ以上のエポキシ基が未反応のままであるように制御される。このような反応の過程で、有機ホスフィン酸の酸性基は、出発多官能エポキシ樹脂のエポキシ基を開環し得る。
【0039】
例えば、少なくとも1種の有機ホスフィン酸の少なくとも1つの残基は、式(II):
【0040】
【化5】
【0041】
(式中、式(II)のR及びRは、独立して、1~10個の炭素原子を有するアルキル基及び6~10個の炭素原子を有するアリール基から選択される)
に対応し得る。
【0042】
本発明の特定の実施形態では、成分[E]は、式(III):
【0043】
【化6】
【0044】
(式中、式(III)のR及びRは、独立して、1~10個の炭素原子を有するアルキル基又は6~10個の炭素原子を有するアリール基から選択され、かつ式(III)のRは、少なくとも1つのエポキシ基が反応して置換基-O-P(=O)Rを導入した多官能エポキシ樹脂の残基であり、式(III)に対応する少なくとも1種のエポキシ樹脂は、少なくとも1つの未反応エポキシ基を有する)
に対応する少なくとも1種のエポキシ樹脂を含み得る。
【0045】
したがって、本発明の特定の実施形態では、難燃性エポキシ樹脂組成物中に存在する多官能エポキシ樹脂構造のいずれか1つは、少なくとも1種の有機ホスフィン酸残基を含有し、多官能エポキシ樹脂の反応性部位(例えば、エポキシ基)の1つ以上は、式(II)の構造によって占められ、出発多官能エポキシ樹脂の少なくとも1つのエポキシ基は、未反応のままである(したがって、エポキシ樹脂組成物が硬化したときに反応することができる)。
【0046】
例示的かつ非限定的な例として、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルである多官能エポキシ樹脂を1当量のジエチルホスフィン酸と反応させて、本発明の成分[E]として又はその中に有用な有機ホスフィン酸変性エポキシ樹脂を得ることができる。
【0047】
(CHCHP(=O)OH+GE-Ar-C(CH-Ar-GE→(CHCHP(=O)OCHCH(OH)CH-Ar-C(CH-Ar-GE
(式中、Ar=アリーレン及びGE=グリシジルエーテルである。)ベンゼン環などの任意の適切なアリーレンを使用することができる。
【0048】
少なくとも1種の有機ホスフィン酸の少なくとも1つの残基を含有する少なくとも1種のエポキシ樹脂は、特定の実施形態では、1種以上の有機ホスフィン酸と1種以上の多官能エポキシ樹脂との間の初期反応を実施することにより、難燃性エポキシ樹脂組成物を配合する前に予め形成されてもよい。そのような予備反応は、例えば、これらの成分を配合して混合物を形成し、有機ホスフィン酸と多官能エポキシ樹脂との間で所望の反応の程度を達成するのに有効な温度及び時間で混合物を加熱することによって実施され得る。そのような加熱は、混合物を撹拌又は他の方法でかき回しながら行われてもよい。適切な反応温度は、例えば、50℃~150℃の温度を含み得る。適切な反応時間は、例えば、0.1~5時間の反応時間を含み得る。選択される化学量論に応じて、多官能エポキシ樹脂の一部は未反応のままでよく、得られて、かつ次いでエポキシ樹脂組成物に使用される反応生成物は、有機ホスフィン酸変性エポキシ樹脂と、有機ホスフィン酸残基を含有しない多官能エポキシ樹脂との混合物である。
【0049】
あるいは、有機ホスフィン酸及び多官能エポキシ樹脂は、難燃性エポキシ樹脂組成物が完全に又は部分的に配合された後(例えば、難燃性エポキシ樹脂組成物の硬化前又は硬化中のいずれか)に、難燃性エポキシ樹脂組成物の1種以上の追加の成分の存在下で反応を受けてもよい。
【0050】
上述の実施形態(少なくとも1種の有機ホスフィン酸の少なくとも1つの残基を含有する少なくとも1種のエポキシ樹脂がエポキシ樹脂組成物中に存在する)は、有機ホスフィン酸と特定のエポキシ樹脂との反応を異なる量で制御することによって、特定の種類の難燃性エポキシ樹脂組成物を製造することを可能にする。以下に開示されるように、エポキシ樹脂の種類を選択することにより、靭性、ガラス転移温度(Tg)及び弾性率について異なる配合物を調整することが可能になる。例えば、4の官能価を有する多官能エポキシ樹脂を用いて、有機ホスフィン酸を1:4、2:4、又は3:4の有機ホスフィン酸対エポキシ当量比で反応させることができる。
【0051】
本発明の特定の実施形態では、難燃性エポキシ樹脂組成物が、予備反応形態で存在するか、又は成分[A]と成分[B]との反応によって硬化中に形成される成分[E]を含み、有機ホスフィン酸変性エポキシ樹脂を調製するために使用される多官能エポキシ樹脂は、少なくとも3以上の官能価(すなわち、1分子当たり3つ以上のエポキシ基)を有する。多官能エポキシ樹脂が3以上の官能価を有する場合、それはエポキシ基の少なくとも2つが(有機ホスフィン酸との反応後に)互いに又は少なくとも1種の硬化剤と自己重合することを可能にし、良好な架橋密度を可能にする。本発明の他の実施形態では、多官能エポキシ樹脂は4以上の官能価を有し、これは架橋密度を増加させ、Tgなどの特性を改善する利点を提供することができる。本発明のさらに他の実施形態では、多官能エポキシ樹脂は、グリシジルアミンエポキシ樹脂である。本発明のさらに他の実施形態では、多官能エポキシ樹脂は、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンである。多官能エポキシ樹脂がテトラグリシジルジアミノジフェニルメタンであると、硬化時にエポキシ樹脂組成物に対して高いTgを維持することができる。
【0052】
いくつかの実施形態では、難燃性エポキシ樹脂組成物が硬化される場合、硬化樹脂のガラス転移温度は、G’オンセット法(例で、さらに詳細に記載される)によって決定される場合、少なくとも100℃、他の実施形態では少なくとも110℃、さらに他の実施形態では少なくとも125℃、さらにさらなる実施形態では少なくとも140℃である。難燃性エポキシ樹脂が100℃を超えるTgを有する場合、硬化した繊維強化複合材料部分は、より高い温度での変形に耐えることができ、その用途を広げるためにより高い使用温度を有することができる。
【0053】
いくつかの実施形態では、難燃性エポキシ樹脂組成物を硬化させて、曲げ弾性率を有する硬化樹脂を提供する場合、25℃での硬化マトリックスの曲げ弾性率は、少なくとも3.0GPa、他の実施形態では少なくとも3.4GPa、さらに他の実施形態では少なくとも3.8GPaである。難燃性樹脂が25℃で3.0GPaを超える弾性率を有する場合、繊維強化複合材料部分は高い圧縮強度を有し、より多くの構造的用途のために材料をさらに広げることができる。
【0054】
本発明において、エポキシ樹脂の種類は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されない。エポキシ樹脂として、二官能性以上の官能エポキシ樹脂及びそれらの混合物を使用することができる。エポキシ樹脂組成物は、1種以上の多官能エポキシ樹脂(すなわち、1分子中に2つ以上の反応性エポキシ基を含有するエポキシ樹脂)に加えて、少なくともある程度の量の単官能エポキシ樹脂を含有することも可能である。
【0055】
エポキシ樹脂組成物が成分[E]、すなわち、少なくとも1種の有機ホスフィン酸の少なくとも1つの残基を含有する少なくとも1種のエポキシ樹脂(有機ホスフィン酸変性エポキシ樹脂)を含む実施形態では、このような有機ホスフィン酸変性エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂組成物中に存在する唯一のエポキシ樹脂であり得る。しかしながら、エポキシ樹脂組成物は、有機ホスフィン酸変性エポキシ樹脂ではない1種以上の追加のエポキシ樹脂(すなわち、有機ホスフィン酸残基を含まないエポキシ樹脂)を含むこともできる。
【0056】
成分[A]
適切なエポキシ樹脂は、アミン(例えば、ジアミン、並びにテトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジルジアミノジフェニルエーテル、テトラグリシジルジアミノジフェニルスルホン、テトラグリシジルジアミノジフェニルアミド、トリグリシジル-p-アミノフェノール、トリグリシジル-m-アミノフェノール、トリグリシジルアミノクレゾール及びテトラグリシジルキシリレンジアミンなどの少なくとも1つのアミン基及び少なくとも1つの水酸基を含有する化合物、並びにハロゲン置換生成物、アルキノール置換生成物、それらの水素化生成物などを使用して調製されるエポキシ樹脂)、フェノール(例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールR型エポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、レゾルシノールエポキシ樹脂及びトリフェニルメタンエポキシ樹脂)、ナフタレンエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンエポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂、イソシアネート変性エポキシ樹脂、フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂、及び炭素-炭素二重結合を有する化合物(例えば、脂環式エポキシ樹脂)などの前駆体から調製され得る。なお、エポキシ樹脂は上記の例に限定されない。また、これらのエポキシ樹脂をハロゲン化により調製したハロゲン化エポキシ樹脂も使用できる。さらに、これらのエポキシ樹脂の2種以上の混合物、及びグリシジルアニリン、グリシジルトルイジン又は他のグリシジルアミン(特にグリシジル芳香族アミン)などの1つのエポキシ基を有する化合物又はモノエポキシ化合物を、エポキシ樹脂組成物の配合に使用することができる。しかしながら、エポキシ樹脂組成物を用いてプリプレグや繊維強化複合材料を調製する場合、通常、単官能エポキシ樹脂の量は、例えば、20PHR以下、15PHR以下、10PHR以下、5PHR以下に制限することが望ましい。
【0057】
一実施形態では、難燃性エポキシ樹脂組成物は、ハロゲン置換生成物、フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂及びハロゲン化エポキシ樹脂を完全に含まないか、又は実質的に含まない。他の実施形態では、エポキシ樹脂は、は、ハロゲン置換生成物、フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂及びハロゲン化エポキシ樹脂のうちの1種以上を、材料の難燃性を改善するのに適した量で含んでもよい。
【0058】
市販品であるテトラグリシジルジアミノジフェニルメタン樹脂としては、例えば、「SUMI-EPOXY(登録商標)」ELM434(住友化学株式会社製)、YH434L(新日鐵化学株式会社製)、「jER(登録商標)」604(三菱ケミカル株式会社製)、「アラルダイト(登録商標)」MY720、MY721、MY9655及びMY9655T(Huntsman Advanced Materials製)が挙げられる。
【0059】
市販品であるテトラグリシジルジアミノジフェニルスルホンとしては、例えば、TG3DAS(小西化学工業社製株式会社)が挙げられる。
【0060】
市販品であるトリグリシジルアミノフェノール又はトリグリシジルアミノクレゾール樹脂としては、例えば、「SUMI-EPOXY(登録商標)」ELM100(住友化学株式会社製)、「アラルダイト(登録商標)」MY0500、MY0510、MY0600及びMY0610(Huntsman Advanced Materials製)、「jER(登録商標)」630(三菱ケミカル株式会社製)が挙げられる。
【0061】
市販品であるテトラグリシジルキシリレンジアミン及びその水素化物としては、例えば、TETRAD-X、TETRAD-C(三菱ガス化学株式会社製)が挙げられる。
【0062】
市販されているビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、例えば、「jER(登録商標)」825、「jER(登録商標)」828、「jER(登録商標)」834、「jER(登録商標)」1001、「jER(登録商標)」1002、「jER(登録商標)」1003、「jER(登録商標)」1003F、「jER(登録商標)」1004、「jER(登録商標)」1004AF、「jER(登録商標)」1005F、「jER(登録商標)」1006FS、「jER(登録商標)」1007、「jER(登録商標)」1009及び「jER(登録商標)」1010(三菱ケミカル株式会社製)が挙げられる。市販されている臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、例えば、「jER(登録商標)」505、「jER(登録商標)」5050、「jER(登録商標)」5051、「jER(登録商標)」5054及び「jER(登録商標)」5057(三菱ケミカル株式会社製)が挙げられる。市販品である水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、例えば、ST5080、ST4000D及びST4100D、ST5100(新日鐵化学株式会社製)が挙げられる。
【0063】
市販品であるビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、例えば、「jER(登録商標)」806、「jER(登録商標)」807、「jER(登録商標)」4002P、「jER(登録商標)」4004P、「jER(登録商標)」4007P、「jER(登録商標)」4009P及び「jER(登録商標)」4010P(三菱ケミカル株式会社製)、並びに「エポトート(登録商標)」YDF2001及び「エポトート(登録商標)」YDF2004(新日鐵化学株式会社製)が挙げられる。市販品であるテトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、例えば、YSLV-80XY(新日鐵化学株式会社製)が挙げられる。
【0064】
市販品であるビスフェノールS型エポキシ樹脂としては、例えば、「EPICLON(登録商標)」EXA-154(DIC株式会社製)が挙げられる。
【0065】
市販品であるフェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、「jER(登録商標)」152、「jER(登録商標)」154(三菱ケミカル株式会社製)、「アラルダイト(登録商標)」EPN1138(Huntsman Advanced Materials製)及び「EPICLON(登録商標)」N-740、N-770、N-775(DIC株式会社製)が挙げられる。
【0066】
市販品であるクレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、「EPICLON(登録商標)」N-660、N-665、N-670、N-673及びN-695(DIC株式会社製)、並びにEOCN-1020、EOCN-102S及びEOCN-104S(日本化薬株式会社製)が挙げられる。
【0067】
市販品であるレゾルシノール型エポキシ樹脂としては、例えば、「デナコール(登録商標)」EX-201(ナガセケムテックス株式会社製)が挙げられる。
【0068】
市販品であるナフタレンエポキシ樹脂としては、例えば、「EPICLON(登録商標)」HP-4032、HP-4032D、HP-4700、HP-4710、HP-4770、EXA-4701、EXA-4750、EXA-7240(DIC株式会社製)が挙げられる。
【0069】
市販品であるトリフェニルメタン型エポキシ樹脂としては、例えば、「jER(登録商標)」1032S50(三菱ケミカル株式会社製)、「Tactix(登録商標)」742(Huntsman Advanced Material製)及びEPPN-501H(日本化薬株式会社製)が挙げられる。
【0070】
市販品であるジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂としては、例えば、「EPICLON(登録商標)」HP-7200、HP-7200L、HP-7200H及びHP-7200HH(DIC株式会社製)、「Tactix(登録商標)」558(Huntsman Advanced Material製)、XD-1000-1L及びXD-1000-2L(日本化薬株式会社製)が挙げられる。
【0071】
市販品であるビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂としては、例えば、「jER(登録商標)」YX4000H、YX4000及びYL6616(三菱ケミカル株式会社製)、並びにNC-3000(日本化薬株式会社製)が挙げられる。
【0072】
市販品であるイソシアネート変性エポキシ樹脂としては、例えば、オキサゾリドン環を有するAER4152(旭化成エポキシ株式会社製)及びACR1348(株式会社ADEKA製)が挙げられる。
【0073】
市販品であるフルオレン骨格を有するエポキシ樹脂としては、例えば、OGSOL PG-100及びCG-200、EG-200(大阪ガスケミカル株式会社製)、並びにLME10169(Huntsman Advanced Material製)が挙げられる。
【0074】
市販品であるグリシジルアニリンとしては、例えば、GAN(日本化薬株式会社製)が挙げられる。
【0075】
グリシジルトルイジンの市販品としては、例えば、GOT(日本化薬株式会社製)が挙げられる。
【0076】
エポキシ樹脂は、高い耐熱性を有する硬化エポキシ樹脂組成物が望まれる場合、トリグリシジルアミノフェノール、トリグリシジルアミノクレゾール、テトラグリシジルアミン、フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾール-ノボラックエポキシ樹脂、レゾルシノールエポキシ樹脂、ナフタレンエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンエポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂、イソシアネート変性エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリフェニルメタンエポキシ樹脂及びフルオレン骨格を有するエポキシ樹脂から選択されてもよい。
【0077】
エポキシ樹脂は、高い耐熱性及び機械的特性を有する硬化エポキシ樹脂組成物が望まれる場合、トリグリシジルアミノフェノール、トリグリシジルアミノクレゾール、テトラグリシジルアミン、ナフタレンエポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂、イソシアネート変性エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリフェニルメタンエポキシ樹脂及びフルオレン骨格を有するエポキシ樹脂から選択されてもよい。
【0078】
本発明の特定の実施形態では、難燃性エポキシ樹脂組成物が硬化するとき、硬化樹脂の燃焼時間は、ニート樹脂試験片に適用するためのSFI56.1可燃性試験仕様から修正された可燃性試験によって決定される場合、10秒未満、他の実施形態では5秒以下、さらに他の実施形態では3秒以下である。燃焼時間が10秒未満である場合、繊維強化複合材料の可燃性試験のパラメータとの良好な相関をより容易に見ることができる。(実施例のセクションでより詳細に説明される)。
【0079】
本発明の特定の実施形態では、難燃性エポキシ樹脂組成物が硬化されるとき、硬化樹脂の燃焼長さは、ニート樹脂試験片に適用するためのSFI56.1可燃性試験仕様から修正された可燃性試験によって決定される場合、0.7インチ以下、他の実施形態では0.5インチ以下、さらに他の実施形態では0.3インチ以下である。燃焼時間が10秒未満である場合、繊維強化複合材料の可燃性試験のパラメータとの良好な相関をより容易に見ることができる。(実施例のセクションでより詳細に説明される)。
【0080】
エポキシ樹脂は、高い耐熱性及び機械的特性を有し、硬化エポキシ樹脂組成物及び強化繊維から構成される高い表面品質の繊維強化複合材料を提供する硬化エポキシ樹脂組成物を得ることが望まれる場合、トリグリシジルアミノフェノール、トリグリシジルアミノクレゾール及びテトラグリシジルアミンから選択されてもよい。
【0081】
本発明の一実施形態では、第1のビスフェノールエポキシ樹脂は、エポキシ化ビスフェノールである材料であれば、エポキシ樹脂組成物に含まれていてもよく、特に限定されない。
【0082】
他の実施形態によれば、難燃性エポキシ樹脂組成物は、40℃における粘度が1.0×10~1.0×10ポアズであることが好ましい。40℃における粘度を1.0×10ポアズ以上とすることにより、適度な凝集性を有するプリプレグを得ることができ、40℃における粘度を1.0×10ポアズ以下とすることにより、プリプレグを積層する時に適度なドレープ性とタック性を付与することができる。40℃における粘度は、1.0×10~5.0×10ポアズの範囲内であることがより好ましく、5.0×10~2.0×10ポアズの範囲内であることが特に好ましい。
【0083】
他の実施形態によれば、難燃性エポキシ樹脂組成物の最低粘度は、好ましくは0.1~200ポアズ、より好ましくは0.5~100ポアズ、特に好ましくは1~50ポアズである。最低粘度が低すぎると、マトリックス樹脂の流動性が高くなりすぎ、プリプレグ硬化時にプリプレグ外に樹脂が流出することがある。また、得られる繊維強化複合材料において、所望の樹脂分率を達成できず、プリプレグ中のマトリックス樹脂の流動性が不十分となり、プリプレグの圧密プロセスが通常より早く終了し、得られる繊維強化複合材料にボイドが多く発生する可能性がある。最低粘度が高すぎると、プリプレグ中のマトリックス樹脂の流動性が低下し、プリプレグの圧密プロセスが通常より早く終了し、得られる繊維強化複合材料にボイドが多く発生する可能性がある。
【0084】
ここで、粘度40℃及び最低粘度は、以下の方法により求められる。すなわち、直径40mmのパラレルプレート型レオメーター(ARES、TA Instruments社製)を用い、ギャップ0.6mmで測定する。10rad/sでねじり変位を加える。温度を40℃~180℃まで2℃/分で上昇させる。
【0085】
成分[C]
本発明の特定の実施形態では、ジシアンジアミドが硬化剤として使用される。ジシアンジアミドを硬化剤として用いると、未硬化のエポキシ樹脂組成物の保存安定性が高く、硬化後のエポキシ樹脂組成物の耐熱性が高い。
【0086】
ジシアンジアミドの量は、100PHR当たり3~7PHRの範囲(すなわち、エポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂の総量の100重量部に対して、ジシアンジアミドが3~7重量部)であってもよい。ジシアンジアミドが少なくとも3PHRであると、硬化エポキシ樹脂組成物が高い耐熱性を有する場合がある。ジシアンジアミドが7PHR以下であると、硬化エポキシ樹脂組成物が高い伸度を有する場合がある。
【0087】
市販品ジシアンジアミドとしては、例えば、DICY-7、DICY-15(三菱ケミカル株式会社製)及び「Dyhard(登録商標)」100S(AlzChem Trostberg製)が挙げられる。
【0088】
本発明の他の実施形態では、本発明の効果を損なわない限り、ジシアンジアミド以外の硬化剤を添加してもよい(ジシアンジアミドの代わりに、又はジシアンジアミドと組み合わせてのいずれか)。適切な硬化剤の例としては、限定されないが、ポリアミド、アミドアミン(例えば、アミノベンズアミド、アミノベンズアニリド及びアミノベンゼンスルホンアミドなどの芳香族アミドアミン)、芳香族ジアミン(例えば、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン[DDS])、アミノベンゾエート(例えば、トリメチレングリコールジ-p-アミノベンゾエート及びネオペンチルグリコールジ-p-アミノ-ベンゾエート)、脂肪族アミン(例えば、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン)、脂環式アミン(例えば、イソホロンジアミン)、イミダゾール誘導体、グアニジン、例えばテトラメチルグアニジン、カルボン酸無水物(例えば、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物)、カルボン酸ヒドラジド(例えば、アジピン酸ヒドラジド)、フェノールノボラック樹脂及びクレゾールノボラック樹脂、カルボン酸アミド、ポリフェノール化合物、ポリスルフィド及びメルカプタン、並びにルイス酸及びルイス塩基(例えば、三フッ化ホウ素エチルアミン、トリス-(ジエチルアミノメチル)フェノール)が挙げられる。さらに、そのような硬化剤は、ジシアンジアミドとの組み合わせを含めて、組み合わせて使用されてもよい。
【0089】
促進剤
本発明の特定の実施形態では、少なくとも1種の芳香族ウレアが、エポキシ樹脂と硬化剤との反応及び/又はエポキシ樹脂の自己重合のための促進剤として使用される。促進剤として少なくとも1種の芳香族ウレアを用いると、エポキシ樹脂組成物の保存安定性が高く、硬化エポキシ樹脂組成物の耐熱性が高い。
【0090】
少なくとも1種の芳香族ウレアの量は、0.5~7PHR(すなわち、エポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂の総量の100重量部に対して、芳香族ウレアが0.5~7重量部)の範囲であってもよい。少なくとも1種の芳香族ウレアの量が少なくとも0.5PHRである場合、硬化エポキシ樹脂組成物が高い耐熱性を有し得る。芳香族ウレアの量が7PHR以下であれば、エポキシ樹脂組成物が高い保存安定性を有する。
【0091】
適切な芳香族ウレアの例としては、N,N-ジメチル-N’-(3,4-ジクロロフェニル)ウレア、トルエンビス(ジメチルウレア)、4,4’-メチレンビス(フェニルジメチルウレア)、及び3-フェニル-1,1-ジメチルウレア並びにそれらの組み合わせが挙げられる。芳香族ウレアの市販品としては、例えば、DCMU99(保土谷化学工業株式会社製)、「Omicure(登録商標)」U-24、U-24M、U-52、U-52M、94(Huntsman Advanced Material製)が挙げられる。これらの中でも、急速硬化性を促進するために、複数のウレア基を有する芳香族ウレアを使用してもよい。
【0092】
本発明の他の実施形態では、本発明の効果を損なわない限り、芳香族ウレア以外の任意の促進剤を添加してもよい(芳香族ウレアの代わりに、又は芳香族ウレアと組み合わせてのいずれか)。適切な促進剤の例には、スルホン酸化合物、三フッ化ホウ素ピペリジン、p-t-ブチルカテコール、スルホン酸化合物(例えば、p-トルエンスルホン酸エチル又はp-トルエンスルホン酸メチル)、三級アミン及びその塩、イミダゾール及びその塩、リン硬化促進剤、金属カルボン酸並びにルイス酸及びブレンステッド酸並びにその塩が含まれるが、これらに限定されない。
【0093】
市販品であるイミダゾール化合物又はその誘導体としては、例えば、「キュアゾール(登録商標)」2MZ、2PZ、2E4MZ(四国化成工業株式会社製)が挙げられる。ルイス酸触媒としては、三フッ化ホウ素ピペリジン錯体、三フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体、三フッ化ホウ素トリエタノールアミン錯体、三塩化ホウ素オクチルアミン錯体、p-トルエンスルホン酸メチル、p-トルエンスルホン酸エチル、p-トルエンスルホン酸イソプロピルなどの三ハロゲン化ホウ素と塩基との錯体が挙げられる。
【0094】
添加剤-熱可塑性樹脂
熱可塑性樹脂
本発明の特定の実施形態では、本発明の効果を損なわない限り、任意の熱可塑性樹脂をエポキシ樹脂組成物に含めてもよい。適切な熱可塑性樹脂の例としては、エポキシ樹脂に可溶性である熱可塑性樹脂、及びエポキシ樹脂に不溶性であり、かつ粒子(すなわち、熱可塑性粒子)の形態であり得る熱可塑性樹脂が挙げられる。ゴム粒子(架橋ゴム粒子を含む)などの他の種類の有機粒子も、エポキシ樹脂組成物に含めることができる。
【0095】
エポキシ樹脂に可溶性である熱可塑性樹脂としては、硬化エポキシ樹脂組成物と強化繊維との接着性を向上させる効果が期待される水素結合性官能基を有する熱可塑性樹脂を用いることができる。エポキシ樹脂に可溶性である水素結合性官能基を有する熱可塑性樹脂としては、例えば、アルコール性水酸基を有する熱可塑性樹脂、アミド結合を有する熱可塑性樹脂、スルホニル基を有する熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0096】
水酸基を有する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール、フェノキシ樹脂が挙げられる。アミド結合を有する熱可塑性樹脂の例としては、ポリアミド、ポリイミド及びポリビニルピロリドンが挙げられる。スルホニル基を有する熱可塑性樹脂の例は、ポリスルホンである。ポリアミド、ポリイミド及びポリスルホンは、主鎖にエーテル結合及びカルボニル基などの官能基を有していてもよい。例えば、熱可塑性樹脂は、ポリエーテルスルホンであってもよい。ポリアミドは、アミド基の窒素原子上に置換基を有していてもよい。
【0097】
エポキシ樹脂に可溶性であり、水素結合性官能基を有する市販の熱可塑性樹脂の例としては、ポリビニルアセタール樹脂である「Denkabutyral(登録商標)」及び「Denkaformal(登録商標)」(電気化学工業株式会社製)並びに「Vinylec(登録商標)」(JNC株式会社製);フェノキシ樹脂である「UCAR(登録商標)」PKHP(Union Carbide Corporation製);ポリアミド樹脂である「Macromelt(登録商標)」(Henkel-Hakusui Corporation製)及び「Amilan(登録商標)」CM4000(東レ株式会社製);ポリイミドである「Ultem(登録商標)」(SABIC Innovative Plastics製)、「Matrimid(登録商標)」5218(Ciba Inc.製);ポリスルホンである「SUMIKAEXCEL(登録商標)」(住友化学株式会社製)及び「UDEL(登録商標)」(Solvay Advanced Polymers Kabushiki Kaisha製);並びにポリビニルピロリドンである「Luviskol(登録商標)」(BASFジャパン株式会社製)が挙げられる。
【0098】
本発明の特定の実施形態において有用なエポキシ樹脂組成物は、1種以上のアクリル樹脂を含み得る。アクリル樹脂は、エポキシ樹脂との不相容性が高いため、粘弾性の制御に好適に用いることができる。アクリル樹脂の市販品としては、例えば、「ダイアナール(登録商標)」BRシリーズ(三菱レイヨン株式会社製)、「Matsumoto Microsphere(登録商標)」M、M100、M500(松本油脂製薬株式会社製)、「Nanostrength(登録商標)」E40F、M22N、M52N(アルケマ株式会社製)が挙げられる。
【0099】
ゴム粒子を加えてもよい。ゴム粒子としては、取り扱い性の観点から、架橋ゴム粒子と、架橋ゴム粒子の表面に異なるポリマーをグラフト重合により製造されたコアシェルゴム粒子とを用いてもよい。
【0100】
市販品である架橋ゴム粒子としては、例えば、カルボキシル変性ブタジエン-アクリロニトリル共重合体の架橋物からなるFX501P(日本合成ゴム株式会社製)、アクリル系ゴム微粒子からなるCX-MNシリーズ(株式会社日本触媒製)、及びYR-500シリーズ(新日鐵化学株式会社製)が挙げられる。
【0101】
市販品であるコアシェルゴム粒子としては、例えば、ブタジエン-メタクリル酸アルキルスチレン共重合体からなる「パラロイド(登録商標)」EXL-2655(株式会社クレハ製)、アクリル酸エステル-メタクリル酸エステル共重合体からなる「スタフィロイド(登録商標)」AC-3355、TR-2122(武田薬品工業株式会社製)、アクリル酸ブチル-メタクリル酸メチル共重合体からなる「PARALOID(登録商標)」EXL-2611、EXL-3387(Rohm&Haas製)、及び「カネエース(登録商標)」MXシリーズ(株式会社カネカ製)が挙げられる。
【0102】
熱可塑性樹脂粒子としては、例えば、ポリアミド粒子、ポリイミド粒子を用いることができる。ポリアミド粒子は、靭性に優れるため、硬化エポキシ樹脂組成物の耐衝撃性を大きく高めるのに最も好ましい。ポリアミドの中でも、ナイロン12、ナイロン11、ナイロン6、ナイロン6/12共重合体、及び特開平1-104624号公報の例1に開示されているようなエポキシ化合物でセミIPN(相互貫入ポリマー網目)を有するように変性されたナイロン(セミIPNナイロン)は、エポキシ樹脂と組み合わせて、特に良好な接着強度を付与する。適切な市販のポリアミド粒子の例としては、SP-500(東レ株式会社製)及び「Orgasol(アルケマ株式会社製)、「Grilamid(登録商標)」TR-55(EMS-Grivory社製)、及び「Trogamid(登録商標)」CX(Evonik Industries AG製)が挙げられる。
【0103】
無機粒子
本発明の特定の実施形態では、本発明の効果を損なわない限り、任意の種類の無機粒子を添加することができる。適切な無機粒子の例としては、金属酸化物粒子、金属粒子及び鉱物粒子が挙げられる。また、1種類以上のこれらの無機粒子を組み合わせることもできる。無機粒子は、硬化エポキシ樹脂組成物の一部の機能を向上させたり、硬化エポキシ樹脂組成物に一部の機能を付与したりするために用いられてもよい。そのような機能の例には、表面硬度、耐ブロッキング特性、耐熱性、バリア特性、導電性、帯電防止特性、電磁波吸収、UVシールド、靭性、耐衝撃性、及び低線熱膨張係数が含まれる。
【0104】
適切な金属酸化物の例には、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウム、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、スズドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ及びフッ素ドープ酸化スズが含まれる。
【0105】
適切な金属の例としては、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、亜鉛及びステンレス鋼が挙げられる。適切な鉱物の例としては、モンモリロナイト、タルク、マイカ、ベーマイト、カオリン、スメクタイト、ゾノトライト、バーミキュライト及びセリサイトが挙げられる。
【0106】
他の適切な無機材料の例としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ガラスビーズ、ガラスフレーク及びガラスバルーンが挙げられる。
【0107】
任意の適切なサイズの無機粒子、例えば1nm~10μmの範囲であるサイズを使用することができる。さらに、無機粒子は、任意の適切な形状、例えば、球形、針、プレート、バルーン又は中空を有し得る。無機粒子は、単に粉末として使用されてもよく、ゾル又はコロイドのような溶媒中の分散液に使用されてもよい。
【0108】
また、無機粒子の表面を1種以上のカップリング剤で処理し、エポキシ樹脂との分散性や界面親和性を向上させてもよい。
【0109】
本発明の様々な実施形態では、エポキシ樹脂組成物は、上記材料に加えて、又は上記材料に代えて、本発明の効果を損なわない限り、他の材料を含んでいてもよい。エポキシ樹脂組成物に含まれ得る他の材料の例としては、離型剤、表面処理剤、難燃剤(有機ホスフィン酸又は有機ホスフィン酸変性エポキシ樹脂に加えて)、抗菌剤、レベリング剤、消泡剤、チキソ剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、カップリング剤、金属アルコキシドが挙げられる。
【0110】
エポキシ樹脂組成物の成分は、ニーダー、プラネタリー混合機、3本ロールミル、2軸押出機などで混合することができる。エポキシ樹脂(複数可)並びに硬化剤(複数可)及び促進剤(複数可)を除く任意の熱可塑性樹脂は、選択された装置に添加される。次いで、混合物を、エポキシ樹脂を均一に溶解するように撹拌しながら、130~180℃の範囲の温度まで加熱する。その後、混合物を撹拌しながら100℃以下の温度に冷却し、続いて硬化剤及び任意の促進剤を添加し、混練してそれらの成分を分散させる。この方法は、保存安定性に優れたエポキシ樹脂組成物を提供するために用いることができる。
【0111】
成分[D]
本発明において、3W/m・K以上の熱伝導率を有する繊維は、特に限定されず、室温で3W/m・K以上の熱伝導率を有するものであれば、どのような種類の強化繊維であってもよい。本発明の特定の実施形態では、繊維の熱伝導率は、室温で5W/m・K以上であり、他の実施形態は7W/m・K以上であり、さらに他の実施形態は9W/m・K以上である。繊維の熱伝導率は、供給業者によって提供される繊維の熱伝導率等級から決定される。
【0112】
供給業者のデータが入手できない場合、強化繊維の熱伝導率は、以下のように測定された熱拡散率、密度及び比熱容量から計算することができる。強化繊維の熱拡散率は、シート状のサンプルホルダーにしっかりと引っ張られた繊維束を用いて、AC法熱拡散率測定システムLaserPIT(ADVANCE RIKO,Inc.製)により求められる。強化繊維の密度は、乾式自動密度計(例えば、Micromeritics Company製のAccuPyc 1330-03)と電子分析天秤(例えば、株式会社島津製作所製のAEL-200)を用いたガス交換法により測定し、強化繊維の比熱容量は、示差走査熱量計(例えば、TA Instruments製のDiscovery DSC 2500)を用いたDSC法により測定する。
【0113】
驚くべきことに、複合材の可燃性を試験したとき、室温(25℃)で3W/m・K以上の熱伝導率を有する繊維で強化されたものは、より絶縁性のある繊維を含む類似の複合材と比較した場合、優れた可燃性耐性を有することが見出された。
【0114】
理論に拘束されるものではないが、繊維の熱伝導率が高いほど、難燃性エポキシ樹脂組成物と組み合わせて硬化させた際に、多量の難燃性リン含有成分(例えば、有機ホスフィン酸又は有機ホスフィン酸変性エポキシ樹脂)が同時に大気と反応するため、燃焼時間が短くなり、燃焼長さが短くなると考えられる。これは、試験片の体積に比例して試験片が大気に曝される表面積がより大きい、より薄い試験片厚さで特に明らかである。
【0115】
室温で3W/m・K以上の熱伝導率を有する繊維としては、例えば、炭素繊維、黒鉛繊維、炭化ケイ素繊維などの金属繊維、炭化タングステン繊維、天然/バイオ繊維が挙げられるが、これらに限定されるものではない。特に、炭素繊維の使用は、非常に高い強度及び剛性を有し、軽量でもある硬化FRC材料を提供することができる。適切な炭素繊維の例は、約200~280GPaの標準弾性率(トレカ(登録商標)T300、T300J、T400H、T600S、T700S、T700G)、約280~340GPaの中間弾性率(トレカ(登録商標)T800H、T800S、T1000G、T1100G、M30S、M30G)、又は340GPaを超える高弾性率(トレカ(登録商標)M40、M35J、M40J、M46J、M50J、M55J、M60J)を有する東レ株式会社製のものである。
【0116】
PAN系及びピッチ系炭素繊維は、本発明での使用に特に適している。PAN系炭素繊維は、ポリアクリロニトリル繊維前駆体から調製された炭素繊維であり、ピッチ系炭素繊維は、ピッチから調製された炭素繊維である。両方の種類の炭素繊維は、当技術分野で周知である。
【0117】
本発明の繊維強化複合材料を調製するために用いられる強化繊維の層の形態及び配置は、特に限定されない。ある方向の長繊維、ランダムな配向の短繊維、シングルトウ、ナロートウ、織物、マット、編物、及び組物などの当技術分野で公知の強化繊維の形態及び空間配置のいずれも使用することができる。本明細書で使用される「長繊維」という用語は、10mm以上にわたって実質的に連続した単繊維又は単繊維を含む繊維束を指す。本明細書で使用される「短繊維」という用語は、10mm未満の長さに切断された繊維を含む繊維束を指す。特に、高比強度、高比弾性率が望まれる最終用途では、強化繊維束が一方向に配列した形態が最適である。取り扱いの容易さの観点から、布状(織物状)の形態も本発明に適している。
【0118】
本発明のFRC材料は、プリプレグ積層成形法、樹脂トランスファー成形法、樹脂フィルムインフュージョン法、ハンドレイアップ法、ウェットレイアップ法、シート成形コンパウンド法、フィラメントワインディング法及びプルトルージョン法などの方法を用いて製造することができるが、この点に関して特定の制限又は制約は適用されない。
【0119】
樹脂トランスファー成形法は、強化繊維基材に液状の熱硬化性樹脂組成物を直接含浸させ、硬化させる方法である。この方法は、プリプレグなどの中間製品を含まないため、成形コスト削減の可能性が高く、宇宙船、航空機、鉄道車両、自動車、船舶などの構造材料の製造に有利に使用される。
【0120】
プリプレグ積層成形法とは、強化繊維基材に熱硬化性樹脂組成物を含浸させたプリプレグを成形及び/又は積層し、成形及び/又は積層したプリプレグに熱及び圧力を加えて樹脂を硬化させ、FRC材料を得る方法である。
【0121】
フィラメントワインディング法とは、1~数十本の強化繊維ロービングを共に一方向に引き揃え、回転するメタルコア(マンドレル)に所定の角度で張力をかけながら巻き付けながら熱硬化性樹脂組成物を含浸させる方法である。ロービングのラップが所定の厚さに達した後、ロービングは硬化され、次いで、メタルコアが除去される。
【0122】
プルトルージョン法とは、液状の熱硬化性樹脂組成物を充填した含浸槽に連続的に強化繊維を通し、熱硬化性樹脂組成物を含浸させた後、含浸させた強化繊維を、引張機を用いて連続的に延伸することにより、スクイズ型、加熱型を経て成形する方法である。この方法は、FRC材料を連続的に成形する利点を提供するので、釣り竿、ロッド、パイプ、シート、アンテナ、建築構造物などのFRC材料の製造に使用される。中でも、得られるFRC材料に優れた剛性や強度を付与するために、プリプレグ積層成形法を用いてよい。
【0123】
プリプレグは、エポキシ樹脂組成物と、強化繊維とを含んでよい。そのようなプリプレグは、本発明に従ってエポキシ樹脂組成物を強化繊維基材に含浸させることにより得ることができる。含浸方法としては、湿式法及びホットメルト法(乾式法)が挙げられる。
【0124】
湿式法とは、まず、メチルエチルケトンやメタノールなどの溶媒に溶解することにより作製したエポキシ樹脂組成物の溶液に強化繊維を浸漬し、取り出した後、オーブンなどを用いて溶媒を蒸発により除去し、強化繊維に含浸させる方法である。ホットメルト法は、予め加熱して流動化させたエポキシ樹脂組成物を強化繊維に直接含浸させてもよいし、樹脂フィルムとして用いるエポキシ樹脂組成物を離型紙等に塗工した後、平板状に構成された強化繊維の片面又は両面にフィルムを置いて、熱及び圧力を加えて樹脂を強化繊維に含浸させてもよい。ホットメルト法は、実質的に残留溶媒を含まないプリプレグを与えることができる。
【0125】
プリプレグは、40~700g/mの間の炭素繊維目付を有し得る。炭素繊維目付が40g/m未満であると、繊維含有量が不足し、FRC材料の強度が低下することがある。炭素繊維目付が700g/mを超えると、プリプレグのドレープ適性が損なわれることがある。プリプレグはまた、20~70重量%の間の樹脂含有量を有し得る。樹脂含有量が20重量%未満であると、含浸が不十分となり、ボイドが多くなることがある。樹脂含有量が70重量%を超えると、FRCの機械的特性が低下するおそれがある。
【0126】
プリプレグ積層成形法、プレス成形法、オートクレーブ成形法、バギング成形法、ラッピングテープ法、内圧成形法などで、適宜の熱と圧力を用いればよい。
【0127】
オートクレーブ成形法とは、所定形状のツールプレート上にプリプレグを積層した後、バギングフィルムで覆い、積層体から空気を抜きながら熱と圧力を加えて硬化させる方法である。これは、繊維配向の精密な制御を可能にすると共に、最小限のボイド量に起因して、優れた機械的特徴を有する高品質の成形材料を提供することができる。成形プロセス中に加えられる圧力は、0.3~1.0MPaであってよく、一方、成形温度は、90~300℃の範囲(本発明の一実施形態では、180℃~220℃の範囲、例えば、200℃~220℃)であってよい。
【0128】
ラッピングテープ法は、プリプレグをマンドレル又は他の何らかの芯棒に巻き付けて管状FRC材料を形成する方法である。この方法は、ゴルフシャフト、釣り竿及び他の棒状製品を製造するために使用することができる。より具体的には、この方法は、マンドレルの周りにプリプレグを巻き付けることと、プリプレグを固定し、プリプレグに圧力を加える目的で、張力下でプリプレグの上に熱可塑性樹脂フィルムで作られたラッピングテープを巻き付けることとを含む。オーブン内で加熱して樹脂を硬化させた後、芯棒を除去して管状体を得る。ラッピングテープを包むために使用される張力は、20~100Nであってよい。硬化温度は、90~300℃の範囲(本発明の一実施形態では、180℃~220℃の範囲、例えば、200℃~220℃)であってよい。
【0129】
内圧成形法は、熱可塑性樹脂チューブ又は何らかのその他の内圧付与機にプリプレグを巻き付けたプリフォームを金型内にセットし、高圧ガスを内圧付与機に導入して圧力を付与し、同時に金型を加熱してプリプレグを成形する方法である。この方法は、ゴルフシャフト、バット、及びテニス又はバドミントンのラケットなどの複雑な形状を有する物体を形成するときに使用することができる。成形プロセス中に加えられる圧力は、0.1~2.0MPaであってよい。成形温度は、室温~300℃の間、又は120~180℃の範囲(本発明の一実施形態では、180℃~220℃の範囲、例えば、200℃~220℃)であってよい。
【0130】
特定のエポキシ樹脂組成物及び強化繊維を含有する本発明の組成物から調製されるFRC材料は、一般的な工業用途並びに航空及び宇宙用途において有利に使用される。FRC材料はまた、スポーツ用途(例えば、ゴルフシャフト、釣り竿、テニス又はバドミントンのラケット、ホッケースティック及びスキーポール)及び車両用構造材料(例えば、自動車、自転車、船舶及び鉄道車両)、駆動軸、板バネ、風車ブレード、圧力容器、フライホイール、製紙ローラー、屋根材、ケーブル、及び修理/補強材料などの他の用途に使用されてもよい。
【0131】
本明細書では、明確かつ簡潔な明細書を書くことを可能にする方法で実施形態を説明してきたが、本発明から逸脱することなく実施形態を様々に組み合わせたり分離したりできることを意図しており、理解されるであろう。例えば、本明細書に記載の全ての好ましい特徴は、本明細書に記載の本発明の全ての態様に適用可能であることが理解されよう。
【0132】
いくつかの実施形態では、本明細書の本発明は、組成物又はプロセスの基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさない任意の要素又はプロセスステップを除外すると解釈することができる。さらに、いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書で指定されていない任意の要素又はプロセスステップを除外すると解釈することができる。
【0133】
本発明は、特定の実施形態を参照して本明細書に例示及び説明されているが、本発明は、示された詳細に限定されることを意図するものではない。むしろ、特許請求の範囲の均等物の範囲及び範囲内で、本発明から逸脱することなく、詳細に様々な修正を行うことができる。
【0134】
本発明の特定の実施形態では、難燃性繊維強化複合材料の燃焼時間は、SFI56.1可燃性試験規格によって決定される場合、3秒未満、他の実施形態では2秒以下、さらに他の実施形態では1秒以下である。燃焼時間が3秒未満である場合、より多くのプライが繊維強化複合材に添加されると、サンプルは多数の可燃性試験規格に合格することができる(実施例のセクションでより詳細に説明する)。
【0135】
本発明の特定の実施形態では、難燃性エポキシ樹脂組成物が硬化されるとき、難燃性繊維強化複合材料の燃焼長さは、SFI56.1可燃性試験規格によって決定される場合、2.0インチ以下、他の実施形態では1.8インチ以下、さらに他の実施形態では1.6インチ以下である。燃焼長さが2.0インチ以下である場合、より多くのプライを繊維強化複合材に追加すると、サンプルは多数の可燃性試験規格に合格することができる(実施例のセクションでより詳細に説明する)。
【実施例
【0136】
以下、例により本実施形態をより詳細に説明する。各種特性の測定は、以下に記載された方法で行った。これらの特性は、特記しない限り、温度23℃、相対湿度50%の環境条件下で測定した。次いで、ホットメルトプリプレグ法を使用して、例の樹脂からプリプレグを作製した。実施例及び比較例で用いた成分は、以下の通りである。
【0137】
成分[A]:<エポキシ樹脂>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂、185~192g/eqのEEWを有するEpon(商標)828(Hexion,Inc.製)。
【0138】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂、520~590g/eqのEEWを有するEpon(商標)3002(Hexion,Inc.製)。
【0139】
テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、117-134g/eqのEEWを有する「アラルダイト(登録商標)」MY9655T(Huntsman Advanced Material製)。
【0140】
DOPO(ジヒドロ-9-オキサ-10-フォスファ-フェナントレン-10-オキサイド)変性多官能エポキシ樹脂EXA-9726(大日本インキ化学工業株式会社製)。
【0141】
成分[B]
ジエチルホスフィン酸
ジフェニルホスフィン酸
成分[E]:<有機ホスフィン酸と多官能エポキシ樹脂との付加物>
ジエチルホスフィン酸と「アラルダイト(登録商標)」MY9655Tの、それぞれ1:4の当量比での反応生成物。
【0142】
成分[C]:<硬化剤>
ジシアンジアミド、12g/eqのAEWを有する「Dyhard(登録商標)」100S(AlzChem Trostberg GmbH製)。
【0143】
4,4-ジアミノジフェニルスルホン、「Aradur(登録商標)」9664-1(Huntsman Advanced Material製)
<促進剤>
2,4’-トルエンビス(ジメチルウレア)、「Omicure(登録商標)」U-24M(Huntsman Advanced Material製)。
【0144】
<熱可塑性樹脂>
ポリビニルホルマール「Vinylec(登録商標)」K(JNC株式会社製)。
【0145】
成分[D]:<強化繊維>
炭素繊維織物T300-3k平織物スタイル#4163(東レ株式会社製繊維、Textile Products,Inc.製織物)。
【0146】
炭素繊維「トレカ(登録商標)」T300B-3k-40B繊維(引張強度:3.5GPa、引張弾性率:230GPa、伸度:1.5%、東レ株式会社製)。
【0147】
炭素繊維織物T700S-12k平織物CK6244C(東レ株式会社製繊維、Textile Products,Inc.製織物)。
【0148】
炭素繊維「トレカ(登録商標)」T700SC-12k-50C繊維(引張強度:4.9GPa、引張弾性率:230GPa、伸度:2.1%、東レ株式会社製)。
【0149】
炭素繊維「トレカ(登録商標)」T800SC-24k-10E繊維(引張強度:5.9GPa、引張弾性率:294GPa、伸度:2.0%、東レ株式会社製)。
【0150】
炭素繊維「トレカ(登録商標)」T1100GC-24k-71E繊維(引張強度:7.0GPa、引張弾性率:324GPa、伸度:2.0%、東レ株式会社製)。
【0151】
炭素繊維「トレカ(登録商標)」M40JB-12k-50B繊維(引張強度:4.4GPa、引張弾性率:377GPa、伸度:1.2%、東レ株式会社製)。
【0152】
ガラス繊維S-2ガラス(AGY製)。
【0153】
アラミド繊維「Kevlar(登録商標)」K-29糸(DuPont de Nemours,Inc.製)。
【0154】
(1)樹脂混合
硬化剤及び促進剤以外の全成分を混合機に所定量溶解させて混合物を作製した後、硬化剤を促進剤の量と共に混合し、エポキシ樹脂組成物を得た。表1は、種々の例示的な樹脂組成物の組成、硬化条件及び得られた硬化樹脂の特性をまとめたものである。
【0155】
(2)付加物形成
ジエチルホスフィン酸と「アラルダイト(登録商標)」MY9655T)との反応生成物は、エポキシ樹脂とジエチルホスフィン酸とを所定の比率で温度100℃で1時間、絶えず撹拌することによって作製した。
【0156】
(3)樹脂の可燃性(燃焼時間、燃焼長さ)
実施例及び比較例に詳述されている試験片は、ニート樹脂試験片に適用するためのSFI56.1可燃性試験仕様から修正された可燃性試験に従って難燃性について試験された。SFI56.1仕様は、特にCFRP試験用である。例の試験片は試験時に繊維なしであるため、試験を修正する必要があった。
【0157】
樹脂の可燃性試験は、真空下で脱泡した混合樹脂を高せん断混合し、2mmの「テフロン(登録商標)」製スペーサーを用いて2枚のプレートの間に樹脂を流し込み、規定の温度で設定時間硬化させることを伴う。本明細書に提示される例では、エポキシ樹脂組成物を163℃の温度で15分間硬化させ、10℃/分の速度で上記温度まで上昇させた。次いで、硬化樹脂プレートを離型し、2インチ×3インチの試験片に機械加工した。図1に示すように、樹脂プレートを可燃性試験チャンバ内に置いた。炎は少なくとも1550°Fであり、可視炎は、バーナベースから測定した場合に約22mmの高さであり、炎のかすかな外側の青色円錐は、バーナベースから約38mmの高さであった。樹脂プレート試験片の3インチ側は、バーナベースの上方約19mmの中心にあった。炎を樹脂試験片の下に移動させ、15秒間定位置に保持し、その時点で炎を除去し、炎が消火するのに要した時間を測定した。さらに、フレーミングするエポキシ樹脂材料の全てのドリップを記録し、それらのドリップが発火したままである時間を記録した。ドリップの目撃は、可燃性試験の自動的な失敗と考えられた。試験片の燃焼長さも記録した。燃焼時間および燃焼長さの値は、樹脂試験片の可燃性を特徴付けるために使用される。より低い燃焼時間及びより低い燃焼長さは、難燃性材料にとって好ましい品質である。
【0158】
(4)樹脂ガラス転移温度(DMAねじりによるTg)
硬化エポキシ樹脂組成物を以下の方法で成形した。真空下で脱泡し、高せん断混合した後、(1)で調製したエポキシ樹脂組成物を、厚さ2mmの「テフロン(登録商標)」製スペーサーを用いて、厚さ2mmに設定したモールドに注入した。その後、エポキシ樹脂組成物を設定温度で設定時間硬化させた。本明細書に提示される例では、樹脂を163℃の温度で15分間硬化させ、10℃/分の速度で上記温度まで上昇させた。
【0159】
次いで、動的粘弾性測定装置(TA Instruments製ARES)を用いて、SACMA SRM 18R-94に準拠して、50℃~250℃まで5℃/分の速度で昇温し、1.0Hzねじりモードで、試験片をTg測定に供した。
【0160】
Tgは、温度貯蔵弾性率曲線(G’Tgともいう)において、ガラス領域の接線と、ガラス領域からゴム領域への転移領域の接線との交点を求め、その交点の温度をガラス転移温度(G’Tgともいう)とみなした。
【0161】
ただし、硬化樹脂組成物が1つ以上の粘性率(G’’)ピークを有する場合は、以下の方法でTgを求めた。各ピークの高さは、ピーク高さ(MPa)をピークに先行する対応する谷によって差し引くことによって計算した。これらのピークのいずれか1つの高さが15MPaを超える場合、G’曲線上の対応する転移を使用してTgを計算した。
【0162】
(5)樹脂曲げ弾性率
曲げ特性は以下の手順で測定した。上記(4)に記載したように、ガラス転移温度(Tg)下でのプロセスに従って得られた硬化エポキシ樹脂組成物から、10mm×50mmの試験片を切り出した。その後、試験片をインストロン万能試験機(インストロン社製)を用いて、ASTM D7264に準拠した3点曲げ試験において処理される。試験片を室温で試験して、硬化エポキシ樹脂組成物のRTD(Room Temperature Dry)曲げ特性を得る。
【0163】
(6)複合材可燃性試験(燃焼長さ、燃焼時間)
複合材可燃性試験のために、指定された繊維種類に、指定された繊維目付(FAW)及び樹脂含有量(RC)で指定された樹脂種類を予備含浸させた。試験片の単層を12インチ×12インチのサイズに切り出し、オートクレーブ中163℃で15分間硬化させた。単層硬化パネルを3インチ×12インチの試験片に機械加工し、0°の繊維方向を12インチの長さの辺に平行にした。次いで、これらの単層試験片をSFI56.1可燃性試験規格に従って試験し、燃焼長さ及び燃焼時間を各試験片について記録した。
【0164】
(7)繊維の熱伝導率
表2、3及び4に列挙された繊維の熱伝導率は、繊維の供給業者によって提供された報告値からきている。
【0165】
(8)繊維強化複合材料の製造
特定の強化繊維に特定のエポキシ樹脂組成物を含浸させたプリプレグを調製した。方法(1)で得られたエポキシ樹脂組成物を、ナイフコーターを用いて離型紙上に塗布し、2枚の樹脂フィルムを作製した。次に、上記で作製した2枚の樹脂フィルムを特定の繊維構成の両側にシート状に重ね、ローラー及び/又は真空バッグを用いてエポキシ樹脂組成物を含浸させ、特定の炭素繊維目付及び樹脂含有量を有するプリプレグを作製した。
【0166】
(9)繊維目付
樹脂目付(RAW)は、プリプレグ化の前にフィルム状の樹脂を採取し、100×100mmの正方形サンプルを切り出し、正方形上の樹脂をかき取り、樹脂の重量を測定することによって決定した。目付は、この重量の2倍を正方形サンプルの面積で割ったものである。繊維目付(FAW)は、100×100mmの正方形サンプルを切り出し、プリプレグを秤量し、この値からRAWを減算することによって、プリプレグ化後に同様の方法で測定した。
【0167】
(10)樹脂含有量
樹脂含有量(RC)は、プリプレグ中の樹脂の重量%である。
【0168】
【数1】
【0169】
以下の測定方法を用いて、各実施例及び比較例の硬化エポキシ樹脂組成物の特性評価を行った。
【0170】
(3)樹脂の可燃性(燃焼長さ、燃焼時間、ドリップ)
(4)樹脂のガラス転移温度(Tg)
(5)樹脂曲げ弾性率
以下の測定方法を使用して、各実施例及び比較例の繊維強化複合材料組成物の特性評価を行った。
【0171】
(6)複合材可燃性試験
(7)繊維の熱伝導率
(9)繊維目付(FAW)
(10)樹脂含有量
実施例1~11及び比較例1~4
各例のエポキシ樹脂組成物の様々な量を表1に要約し、各例示の繊維強化複合材料の様々な量を表2、3、及び4に記載する。表1に示されるエポキシ樹脂組成物は、以下の方法に従って製造された。硬化剤及び促進剤以外の全成分を混合機に所定量溶解させて混合物を作製した後、硬化剤を所定量の促進剤と共に混合し、エポキシ樹脂組成物を得た。
【0172】
作製したエポキシ樹脂組成物を、各種試験説明に記載の方法で硬化した。各試験の結果を表1に記載する。次いで、エポキシ樹脂組成物を、所定のFAW及び樹脂含有量でプリプレグ積層プロセスを介して記載の繊維と組み合わせた。複合材試験の結果を表2、3及び4に記載する。
【0173】
本発明の実施形態である表2及び表3の実施例1から11は、良好な可燃性結果を提供した。
【0174】
実施例1、3及び比較例1
比較例1は、例の樹脂6(有機ホスフィン酸含有化合物を含まない)を利用したものであり、実施例1及び3は、それぞれ例の樹脂1及び2(有機ホスフィン酸変性エポキシ樹脂を含む)を利用したものである。比較例1は、22秒の燃焼時間及び12インチ(フル)の燃焼長さを有し、実施例1及び3は、それぞれ0秒の燃焼時間並びに1.5インチ及び1.9インチの燃焼長さを有する。
【0175】
実施例2及び比較例2~3
実施例2及び比較例2~3は、異なる熱伝導率値を有する異なる強化繊維を利用する。3つの例は、いずれも燃焼時間が0秒(炎が試験片から除去される前に試験片が自己消火することを意味する)であるが、それらの燃焼長さは様々である。最も熱伝導性の繊維である実施例2のT300は、最も短い燃焼長さ(1.7インチ)をもたらしたが、より絶縁性のある繊維である比較例2のS-2ガラス及び比較例3のK-29は、より長い燃焼長さ(それぞれ2.3インチ及び2.7インチ)をもたらし、最も高い燃焼長さは、最も絶縁性のある繊維に対応する。
【0176】
実施例1、4及び比較例4
実施例1、4及び比較例4では、比較例4は、実施例1及び実施例4のような有機ホスフィン酸変性二官能エポキシ樹脂ではなく、DOPO(ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド)変性二官能エポキシ樹脂(すなわち、有機リン酸変性エポキシ樹脂)であるEXA-9726を使用した。実施例7は、0秒の燃焼時間を維持するが、比較例4の燃焼時間は4秒でより長い。
【0177】
【表1】
【0178】
【表2】
【0179】
【表3】
【0180】
【表4】
図1
【国際調査報告】