(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-22
(54)【発明の名称】難燃性エポキシ樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08J 5/04 20060101AFI20221215BHJP
C08K 5/5313 20060101ALI20221215BHJP
C08L 29/14 20060101ALI20221215BHJP
C08K 5/22 20060101ALI20221215BHJP
C08K 5/21 20060101ALI20221215BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
C08J5/04 CFC
C08K5/5313
C08L29/14
C08K5/22
C08K5/21
C08L63/00 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022516650
(86)(22)【出願日】2020-10-14
(85)【翻訳文提出日】2022-03-15
(86)【国際出願番号】 IB2020000850
(87)【国際公開番号】W WO2021074684
(87)【国際公開日】2021-04-22
(32)【優先日】2019-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】カトリーナ・ビジーニ
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン リーマン
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン・ヒューズ
(72)【発明者】
【氏名】アルフレッド・ピー・ハロ
(72)【発明者】
【氏名】釜江 俊也
【テーマコード(参考)】
4F072
4J002
【Fターム(参考)】
4F072AA07
4F072AA08
4F072AB10
4F072AD03
4F072AD27
4F072AD28
4F072AD31
4F072AE02
4F072AE07
4F072AF30
4F072AG03
4F072AL02
4F072AL04
4F072AL07
4F072AL11
4F072AL17
4J002BE062
4J002CD051
4J002CD061
4J002CD131
4J002ET007
4J002ET018
4J002EW136
4J002FD136
4J002FD147
4J002FD158
4J002GC00
4J002GF00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
本発明は、エポキシ官能価が2以上であり、測定された総熱放出値が23kJ/g以下であるエポキシ樹脂構造と、有機ホスフィン酸構造(反応した又は未反応の形態)とを含む難燃性エポキシ樹脂組成物、及びプリプレグ、及びエポキシ樹脂組成物を用いて調製した繊維強化複合材料に関する。より具体的には、特定の種類のエポキシ樹脂と、163℃で15分間硬化したときに十分な難燃性を提供する硬化剤との組み合わせを含むエポキシ樹脂組成物が提供される。エポキシ樹脂系はまた、様々な用途に十分な難燃性を提供する繊維強化複合材料を調製するのにも適している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分[A]、成分[B]、及び成分[C]を含む繊維強化複合材料用難燃性エポキシ樹脂組成物であって、
前記難燃性エポキシ樹脂組成物は、前記難燃性エポキシ樹脂組成物の総重量に基づいて少なくとも0.5重量%のリン含有量を有し、
前記成分[A]は、23kJ/g以下の総熱放出(THR)値を有する少なくとも1種の低THR多官能エポキシ樹脂から構成され、低THR多官能エポキシ樹脂の総量が、前記難燃性エポキシ樹脂組成物の総重量の少なくとも15PHR又は少なくとも10重量%であり、
前記成分[B]は、少なくとも1種の有機ホスフィン酸から構成され、かつ
前記成分[C]は、少なくとも1種の硬化剤から構成される、繊維強化複合材料用難燃性エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1種の有機ホスフィン酸は、式(I):
【化1】
(式中、R
1及びR
2は、独立して、1~10個の炭素原子を有するアルキル基又は6~10個の炭素原子を有するアリール基から選択される)
に対応する少なくとも1つの有機ホスフィン酸を含む、請求項1に記載の難燃性エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
23kJ/g以下の総熱放出(THR)値を有する低THR多官能エポキシ樹脂以外の少なくとも1種の多官能エポキシ樹脂をさらに含む、請求項1に記載の難燃性エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
前記低THR多官能エポキシ樹脂の総量が、前記難燃性エポキシ樹脂組成物の総重量の少なくとも20PHR又は少なくとも15重量%である、請求項1に記載の難燃性エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
15PHR~85PHRの前記少なくとも1種の低THRエポキシ樹脂を含む、請求項1に記載の難燃性エポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
前記低THRエポキシ樹脂が、少なくとも1種のグリシジルアミン型エポキシ樹脂から構成された、請求項1に記載の難燃性エポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
前記低THRエポキシ樹脂が、少なくとも1つのテトラグリシジルジアミノジフェニルメタンから構成された、請求項1に記載の難燃性エポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
前記低THRエポキシ樹脂が、グリシジルアミン型エポキシ樹脂である請求項1に記載の難燃性エポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
前記成分[B]の少なくとも一部が、低THR多官能エポキシ樹脂の少なくとも一部と予備反応している、請求項1に記載の難燃性エポキシ樹脂組成物。
【請求項10】
前記成分[B]が、低THR多官能エポキシ樹脂と予備反応していない、請求項1に記載の難燃性エポキシ樹脂組成物。
【請求項11】
少なくとも1種の促進剤をさらに含む、請求項1に記載の難燃性エポキシ樹脂組成物。
【請求項12】
前記少なくとも1種の促進剤が、少なくとも1種の芳香族ウレアを含む、請求項11に記載の難燃性エポキシ樹脂組成物。
【請求項13】
前記少なくとも1種の芳香族ウレアが、前記難燃性エポキシ樹脂組成物中に0.5~7PHRの範囲の総量で存在する、請求項12に記載の難燃性エポキシ樹脂組成物。
【請求項14】
前記少なくとも1種の硬化剤が、少なくとも1つのジシアンジアミドを含む、請求項1に記載の難燃性エポキシ樹脂組成物。
【請求項15】
前記少なくとも1つのジシアンジアミドが、前記難燃性エポキシ樹脂組成物中に3~7PHRの範囲の量で存在する、請求項14に記載の難燃性エポキシ樹脂系。
【請求項16】
少なくとも1種の熱可塑性樹脂をさらに含む、請求項1に記載の難燃性エポキシ樹脂組成物。
【請求項17】
前記少なくとも1種の熱可塑性樹脂が、少なくとも1種のポリビニルホルマールを含む、請求項16に記載の難燃性エポキシ樹脂組成物。
【請求項18】
前記少なくとも1種の熱可塑性樹脂が、少なくとも1種のポリエーテルスルホンを含む、請求項16に記載の難燃性エポキシ樹脂組成物。
【請求項19】
式(I)中のR
1及びR
2が、それぞれエチル基である、請求項2に記載の難燃性エポキシ樹脂組成物。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか1項に記載の難燃性エポキシ樹脂組成物を含浸させた強化繊維マトリックスを含むプリプレグ。
【請求項21】
請求項20に記載のプリプレグを硬化することによって得られた繊維強化複合材料。
【請求項22】
請求項1~19のいずれか一項に記載の難燃性エポキシ樹脂組成物からなる混合物を硬化することによって得られたエポキシ樹脂硬化物と、強化繊維とを含む繊維強化複合材料。
【請求項23】
請求項20に記載のプリプレグを120℃~200℃の温度で硬化させることを含む、繊維強化複合材料の製造方法。
【請求項24】
繊維強化複合材料用難燃性エポキシ樹脂組成物であって、成分[C]と、
(i)成分[A-1]
(ii)前記成分[A-1]及び成分[A]、
(iii)前記成分[A]及び成分[E]、
(iv)前記成分[A-1]及び前記成分[E]、又は
(v)前記成分[A-1]、前記成分[A]、及び前記成分[E]
から選択されるエポキシ成分とを含有し、
前記難燃性エポキシ樹脂組成物は、前記難燃性エポキシ樹脂組成物の総重量に基づいて少なくとも0.5重量%のリン含有量を有し、
前記成分[A]は、23kJ/g以下の総熱放出(THR)値を有する少なくとも1種の低THR多官能エポキシ樹脂を含み、成分[A]及び/又は成分[A-1]を含む低THR多官能エポキシ樹脂の総量が、前記難燃性エポキシ樹脂組成物の総重量の少なくとも15PHR又は少なくとも10重量%であり、
前記成分[A-1]は、少なくとも1種の有機ホスフィン酸の少なくとも1つの残基を含有する少なくとも1種の低THR多官能エポキシ樹脂から構成され、
前記成分[E]は、少なくとも1種の有機ホスフィン酸の少なくとも1つの残基を含有する少なくとも1種の前記低THR多官能エポキシ樹脂以外の少なくとも1種のエポキシ樹脂から構成され、かつ
前記成分[C]は、少なくとも1種の硬化剤から構成される、
繊維強化複合材料用難燃性エポキシ樹脂組成物。
【請求項25】
前記成分[A]、前記成分[A-1]、及び前記成分[E]以外のエポキシ樹脂をさらに含む、請求項24に記載の難燃性エポキシ樹脂組成物。
【請求項26】
有機ホスフィン酸の前記少なくとも1つの残基が、式(II):
【化2】
(式中、式(II)のR
1及びR
2は、独立して、1~10個の炭素原子を有するアルキル基又は6~10個の炭素原子を有するアリール基から選択される)
に対応する、請求項24に記載の難燃性エポキシ樹脂組成物。
【請求項27】
前記成分[E]が、式(III):
【化3】
(式中、式(III)のR
1及びR
2は、独立して、1~10個の炭素原子を有するアルキル基又は6~10個の炭素原子を有するアリール基から選択され、かつ式(III)のR
3は、少なくとも1つのエポキシ基が反応して置換基-O-P(=O)R
1R
2を導入した多官能エポキシ樹脂の残基であり、式(III)に対応する少なくとも1種のエポキシ樹脂は、少なくとも1つの未反応エポキシ基を有する)
に対応する前記少なくとも1種のエポキシ樹脂を含む、請求項24に記載の難燃性エポキシ樹脂組成物。
【請求項28】
23kJ/g以下の総熱放出(THR)値を有し、かつ少なくとも1種の有機ホスフィン酸の前記残基を含有するエポキシ樹脂以外の、低THR多官能エポキシ樹脂以外の、少なくとも1種の多官能エポキシ樹脂をさらに含む、請求項24に記載の難燃性エポキシ樹脂組成物。
【請求項29】
前記低THR多官能エポキシ樹脂の総量が、前記難燃性エポキシ樹脂組成物の総重量の少なくとも20PHR又は少なくとも15重量%である、請求項24に記載の難燃性エポキシ樹脂組成物。
【請求項30】
15PHR~85PHRの前記少なくとも1種の低THRエポキシ樹脂を含む、請求項24に記載の難燃性エポキシ樹脂組成物。
【請求項31】
前記低THRエポキシ樹脂が、少なくとも1種のグリシジルアミン型エポキシ樹脂から構成された、請求項24に記載の難燃性エポキシ樹脂組成物。
【請求項32】
前記低THRエポキシ樹脂が、少なくとも1つのテトラグリシジルジアミノジフェニルメタンから構成された、請求項24に記載の難燃性エポキシ樹脂組成物。
【請求項33】
前記低THRエポキシ樹脂が、グリシジルアミン型エポキシ樹脂である請求項24に記載の難燃性エポキシ樹脂組成物。
【請求項34】
少なくとも1種の促進剤をさらに含む、請求項24に記載の難燃性エポキシ樹脂。
【請求項35】
前記少なくとも1種の促進剤が、少なくとも1種の芳香族ウレアを含む、請求項34に記載の難燃性エポキシ樹脂。
【請求項36】
前記少なくとも1種の芳香族ウレアが、前記難燃性エポキシ樹脂組成物中に0.5~7PHRの範囲の総量で存在する、請求項35に記載の難燃性エポキシ樹脂。
【請求項37】
前記少なくとも1種の硬化剤が、少なくとも1つのジシアンジアミドを含む、請求項24に記載の難燃性エポキシ樹脂組成物。
【請求項38】
前記少なくとも1つのジシアンジアミドが、前記難燃性エポキシ樹脂組成物中に3~7PHRの範囲の量で存在する、請求項37に記載の難燃性エポキシ樹脂系。
【請求項39】
少なくとも1種の熱可塑性樹脂をさらに含む、請求項24に記載の難燃性エポキシ樹脂組成物。
【請求項40】
前記少なくとも1種の熱可塑性樹脂が、少なくとも1種のポリビニルホルマールを含む、請求項39に記載の難燃性エポキシ樹脂組成物。
【請求項41】
前記少なくとも1種の熱可塑性樹脂が、少なくとも1種のポリエーテルスルホンを含む、請求項39に記載の難燃性エポキシ樹脂組成物。
【請求項42】
式(II)中のR
1及びR
2が、それぞれエチル基である、請求項26に記載の難燃性エポキシ樹脂組成物。
【請求項43】
請求項24に記載の難燃性エポキシ樹脂組成物を含浸させた強化繊維マトリックスを含むプリプレグ。
【請求項44】
請求項43に記載のプリプレグを硬化してなる繊維強化複合材料。
【請求項45】
請求項24~42のいずれか一項に記載の難燃性エポキシ樹脂組成物から構成された混合物を硬化して得られるエポキシ樹脂硬化物と、強化繊維とを含む繊維強化複合材料。
【請求項46】
請求項43に記載のプリプレグを120℃~200℃の温度で硬化させることを含む、繊維強化複合材料の製造方法。
【請求項47】
成分[A]、成分[B]及び成分[C]を組み合わせて、繊維強化複合材料用難燃性エポキシ樹脂組成物の製造方法であって、
前記エポキシ樹脂組成物は、前記難燃性エポキシ樹脂組成物の総重量に基づいて少なくとも0.5重量%のリン含有量を有し、
前記成分[A]は、23kJ/g以下の総熱放出(THR)値を有する少なくとも1種の低THR多官能エポキシ樹脂から構成され、低THR多官能エポキシ樹脂の総量が、前記難燃性エポキシ樹脂組成物の総重量の少なくとも15PHR又は少なくとも10重量%であり、
前記成分[B]は、少なくとも1種の有機ホスフィン酸から構成され、かつ
前記成分[C]は、少なくとも1種の硬化剤から構成される、製造方法。
【請求項48】
前記少なくとも1種の有機ホスフィン酸と少なくとも1種の多官能エポキシ樹脂との少なくとも部分的な反応を達成するのに有効な時間及び温度で加熱することをさらに含む、請求項47に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年10月18日に出願された米国仮出願第62/923,223号及び2020年9月23日に出願された米国仮出願第63/082,281号の優先権を主張し、これらの各出願の開示は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、優れた難燃性を提供し、現代の急速硬化加熱システムでの使用に適切な熱硬化性エポキシ樹脂組成物、プリプレグ、及び繊維強化複合材料に関する。
【背景技術】
【0003】
強化繊維とマトリックス樹脂とを含む繊維強化プラスチック(FRP)材料(繊維強化複合材料と呼ばれることもある)は、他の従来の材料よりも軽量でありながら、剛性や強度などの優れた機械的特性を有するため、航空機、宇宙船、自動車、鉄道車両、船舶、スポーツ用品、コンピュータなどの様々な用途に利用されており、需要は時間と共に増加し続けている。工業用途では、原材料の製造コスト並びに機械的及び熱的性能を比較的低く抑えながら、難燃性を向上させることがますます一般的な要件になってきている。
【0004】
ハロゲン難燃剤は、従来、FRPが含まれる様々な材料に難燃性を与えるために使用されている。ハロゲン難燃剤としては、例えば、テトラ臭素化ビスフェノールAのような臭素や塩素等のハロゲンを有するハロゲン化エポキシ樹脂が挙げられる。しかしながら、ハロゲン難燃剤は、燃焼プロセス中にハロゲン化水素及び有機ハロゲン化物などの有毒ガスを放出する可能性があるため、強く回避される。その結果、マトリックス樹脂に赤リンやリン酸エステル化合物を添加する方法を含む、ハロゲン系難燃剤に代わる防炎化方法が主流となってきている。
【0005】
しかしながら、マトリックス樹脂に赤リンやリン酸エステル化合物を添加する方法では、1)機械的強度の低下、2)保存安定性が低い、3)赤リン又はリン酸エステル化合物が長期間にわたって環境に徐々に浸透する、かつ4)赤リン及びリン酸エステル化合物は加水分解しやすいため、絶縁性や耐水性が要求されるプリント基板、電子材料等では使用が困難である、等の問題を有する。
【0006】
樹脂のための追加の一般的なハロゲンフリーの防炎化方法は、金属水酸化物などの無機難燃剤の添加である。しかしながら、無機難燃剤の添加量を多くすると、硬化樹脂の機械的強度が低下するという問題が生じる。硬化樹脂の機械的強度の低下は、繊維強化複合材料の機械的強度の低下を引き起こす。繊維強化複合材料に求められる機械的強度を維持する程度の無機難燃剤の添加量では、十分な難燃性を得ることは困難である。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、強化材料と組み合わせて硬化させた際に、ハロゲン系難燃剤や赤リン、リン酸エステルを含まず、優れた難燃性を有する複合材料を製造することができ、金属水酸化物等の無機難燃剤の添加に頼らないエポキシ樹脂組成物を提供することを(とりわけ)目的とする。さらなる目的としては、強化繊維のマトリックスに上記の難燃性エポキシ樹脂組成物を含浸させたプリプレグ、及びそのプリプレグを用いて得られた繊維強化複合材料が挙げられるが、これらに限定されない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の種類のエポキシ樹脂に特定のリン含有化学物質を特定量配合することにより、エポキシ樹脂組成物に優れた難燃性が付与されることを見出した。得られた難燃性エポキシ樹脂組成物はまた、そのようなリン含有化学物質を含まない類似の樹脂組成物の機械的及び耐熱性特性を維持するが、但し、硬化材料の架橋密度を維持するために配合を調整する。すなわち、本発明は、以下の実施形態を含むが、これらに限定されない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)成分[A]、成分[B]及び成分[C]を含む繊維強化複合材料用難燃性エポキシ樹脂組成物であって、
難燃性エポキシ樹脂組成物は、難燃性エポキシ樹脂組成物の総重量に基づいて少なくとも0.5重量%のリン含有量を有し(又はそれから本質的になり、又はそれからなり)、
成分[A]は、23kJ/g以下の総熱放出(THR)値を有する少なくとも1種の低THR多官能エポキシ樹脂から構成され(又はから本質的になり、又はからなり)、低THR多官能エポキシ樹脂の総量が、難燃性エポキシ樹脂組成物の総重量の少なくとも15PHR又は少なくとも10重量%であり、
成分[B]は、少なくとも1種の有機ホスフィン酸から構成され(又はから本質的になり、又はからなり)、かつ
成分[C]は、少なくとも1種の硬化剤から構成される(又はから本質的になる、又はからなる)、繊維強化複合材料用難燃性エポキシ樹脂組成物。
【0010】
難燃剤組成物の一実施形態では、少なくとも1種の有機ホスフィン酸は、式(I):
【0011】
【0012】
(式中、R1及びR2は、独立して、1~10個の炭素原子を有するアルキル基及び6~10個の炭素原子を有するアリール基から選択される)
に対応する少なくとも1種の有機ホスフィン酸を含む。一実施形態では、式(I)のR1及びR2は、それぞれエチル基である。
【0013】
一実施形態では、成分[B]の少なくとも一部は、低THR多官能エポキシ樹脂の少なくとも一部と予備反応している。別の実施形態では、成分[B]は、低THR多官能エポキシ樹脂と予備反応しない。
【0014】
(2)繊維強化複合材料用難燃性エポキシ樹脂組成物であって、成分[C]と、
(i)成分[A-1]
(ii)成分[A-1]及び成分[A]、
(iii)成分[A]及び成分[E]、
(iv)成分[A-1]及び成分[E]、又は
(v)成分[A-1]、成分[A]、及び成分[E]
から選択されるエポキシ成分とを含有し、
難燃性エポキシ樹脂組成物は、難燃性エポキシ樹脂組成物の総重量に基づいて少なくとも0.5重量%のリン含有量を有し(又はそれから本質的になり、又はそれからなり)、
成分[A]は、23kJ/g以下の総熱放出(THR)値を有する少なくとも1種の低THR多官能エポキシ樹脂を含み、成分[A]及び/又は成分[A-1]を含む低THR多官能エポキシ樹脂の総量が、難燃性エポキシ樹脂組成物の総重量の少なくとも15PHR又は少なくとも10重量%であり、
成分[A-1]は、少なくとも1種の有機ホスフィン酸の少なくとも1つの残基を含有する少なくとも1種の低THR多官能エポキシ樹脂から構成され、
成分[E]は、少なくとも1種の有機ホスフィン酸の少なくとも1つの残基を含有する少なくとも1種の低THR多官能エポキシ樹脂以外の少なくとも1種のエポキシ樹脂から構成され、かつ
成分[C]は、少なくとも1種の硬化剤から構成される、
繊維強化複合材料用難燃性エポキシ樹脂組成物。
【0015】
したがって、本発明の特定の実施形態における(2)は、成分[A]、成分[A-1]及び成分[E]以外のエポキシ樹脂をさらに含む繊維強化複合材料用難燃性エポキシ樹脂組成物を含む。
【0016】
難燃剤組成物の一実施形態において、少なくとも1種の有機ホスフィン酸の少なくとも1つの残基は、式(II):
【0017】
【0018】
(式中、式(II)のR1及びR2は、独立して、1~10個の炭素原子を有するアルキル基及び6~10個の炭素原子を有するアリール基から選択される)
に対応する。
【0019】
実施形態(1)の難燃性エポキシ樹脂組成物は、23kJ/g以下の総熱放出(THR)値を有する低THR多官能エポキシ樹脂以外の少なくとも1種の多官能エポキシ樹脂をさらに含んでもよい。
【0020】
一実施形態では、成分[E]が、式(III):
【0021】
【0022】
(式中、式(III)のR1及びR2は、独立して、1~10個の炭素原子を有するアルキル基又は6~10個の炭素原子を有するアリール基から選択され、かつ式(III)のR3は、少なくとも1つのエポキシ基が反応して置換基-O-P(=O)R1R2を導入した多官能エポキシ樹脂の残基であり、式(III)に対応する少なくとも1種のエポキシ樹脂は、少なくとも1つの未反応エポキシ基を有する)
に対応する少なくとも1種のエポキシ樹脂を含む。一実施形態では、式(III)中のR3は、少なくとも1つのテトラグリシジルジアミノジフェニルメタンの残基である。
【0023】
実施形態(2)の難燃性エポキシ樹脂組成物は23kJ/g以下の総熱放出(THR)値を有し、かつ少なくとも1種の有機ホスフィン酸の残基を含有するエポキシ樹脂以外の、低THR多官能エポキシ樹脂以外の、少なくとも1種の多官能エポキシ樹脂をさらに含んでもよい。
【0024】
難燃剤組成物の別の態様では、本明細書中上記で開示されるように、全ての低THR多官能エポキシ樹脂は、難燃性エポキシ樹脂組成物の総重量の少なくとも15PHR又は少なくとも10重量%を含む。一実施形態では、難燃性エポキシ樹脂組成物は、15PHR~85PHRの少なくとも1種の低THRエポキシ樹脂を含んでもよい。
【0025】
難燃剤組成物の一態様では、本明細書中上記で開示されるように、低THRエポキシ樹脂は、少なくとも1種のグリシジルアミン型エポキシ樹脂から構成される。一実施形態では、低THRエポキシ樹脂は、少なくとも1つのテトラグリシジルジアミノジフェニルメタンから構成される。別の実施形態では、低THRエポキシ樹脂は、グリシジルアミン型エポキシ樹脂である。
【0026】
難燃剤組成物の別の態様では、本明細書中上記で開示されるように、エポキシ樹脂組成物は、少なくとも1種の促進剤をさらに含む。一実施形態では、少なくとも1種の促進剤は、少なくとも1種の芳香族ウレアを含む。少なくとも1種の芳香族ウレアは、0.5~7PHRの範囲の総量でエポキシ樹脂組成物中に存在してもよい。別の実施形態では、少なくとも1種の硬化剤は、少なくとも1つのジシアンジアミドを含む。少なくとも1つのジシアンジアミドは、3~7PHRの範囲の総量でエポキシ樹脂組成物中に存在してもよい。
【0027】
難燃剤組成物の別の態様では、本明細書中上記で開示されるように、エポキシ樹脂組成物は、少なくとも1種の熱可塑性樹脂をさらに含む。一実施形態では、少なくとも1種の熱可塑性樹脂は、少なくとも1つのポリビニルホルマールを含む。別の実施形態では、少なくとも1種の熱可塑性樹脂は、少なくとも1つのポリエーテルスルホンを含む。
【0028】
難燃剤組成物の1つの態様では、本明細書中上記で開示されるように、式(I)におけるR1及びR2は、それぞれエチル基である。
【0029】
一態様では、プリプレグは、実施形態(1)、実施形態(2)又は実施形態(1)と実施形態(2)の両方による難燃性エポキシ樹脂組成物を含浸させた強化繊維マトリックスを含む(例えば、難燃性エポキシ樹脂組成物は、実施形態(1)におけるような少なくとも1種の有機ホスフィン酸と、実施形態(2)におけるような少なくとも1種の有機ホスフィン酸の少なくとも1つの残基を含有する少なくとも1種のエポキシ樹脂との両方を含んでもよい)。一実施形態では、繊維強化複合材料は、プリプレグを硬化することによって得られる。別の実施形態では、繊維強化複合材料を製造する方法は、120℃~200℃の温度でプリプレグを硬化させることを含む。
【0030】
別の態様では、繊維強化複合材料は、本明細書中上記で開示されるように難燃性エポキシ樹脂組成物から構成された混合物を硬化させることによって得られるエポキシ樹脂硬化物と、強化繊維とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、例にさらに記載されているように、SFI56.1仕様に着想を得たニート樹脂可燃性試験の試験構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本明細書で使用される「およそ(approximately)」、「約(about)」及び「実質的に(substantially)」という用語は、依然として所望の機能を果たすか又は所望の結果を達成する、記載された量に近い量を表す。例えば、「およそ(approximately)」、「約(about)」、及び「実質的に(substantially)」という用語は、記載された量の10%未満、5%未満、1%未満、0.1%未満、及び0.01%未満の量を指すことができる。
【0033】
本明細書で使用される「室温」という用語は、当業者に知られているその通常の意味を有し、約15℃~43℃の範囲内の温度を含み得る。
【0034】
本開示によれば、繊維強化複合材料用難燃性エポキシ樹脂組成物は、成分[A]、成分[B]、及び成分[C]を含み、難燃性エポキシ樹脂組成物は、難燃性エポキシ樹脂組成物の総重量に基づいて、少なくとも0.5重量%のリン含有量を有するようにする。成分[A]は、23kJ/g以下の総熱放出(THR)値を有する少なくとも1種の低THR多官能エポキシ樹脂から構成され、低THR多官能エポキシ樹脂の総量は、難燃性エポキシ樹脂組成物の総重量の少なくとも15PHR又は少なくとも10重量%である。成分[B]は、少なくとも1種の有機ホスフィン酸から構成され、成分[C]は、少なくとも1種の硬化剤から構成される。一実施形態では、成分[B]の少なくとも一部は、成分[A]の低THR多官能エポキシ樹脂の少なくとも一部と予備反応している。別の実施形態では、成分[B]は、成分[A]の低THR多官能エポキシ樹脂と予備反応しない。
【0035】
難燃性エポキシ樹脂組成物の一態様では、組成物は、成分[C]及びエポキシ成分を含み、エポキシ成分は、成分[A]、成分[A-1]、及び成分[E]のうちの1種以上を含み、成分[E]は、成分[A]又は成分[A-1]のいずれかと共に存在しなければならず、エポキシ成分は、成分[A-1]及び成分[E]のうちの少なくとも1種を含まなければならない。成分[A-1]は、少なくとも1種の有機ホスフィン酸の少なくとも1つの残基を含有する少なくとも1種の低THR多官能エポキシ樹脂から構成される。成分[E]は、少なくとも1種の有機ホスフィン酸の少なくとも1つの残基を含有する、少なくとも1種の低THR多官能エポキシ樹脂以外の少なくとも1種のエポキシ樹脂から構成される。一実施形態では、難燃性エポキシ樹脂組成物は、成分[C]及び成分[A-1]を含む。別の実施形態では、難燃性エポキシ樹脂組成物は、成分[A-1]及び成分[A]を含む。さらに別の実施形態では、難燃性エポキシ樹脂組成物は、成分[A]及び成分[E]を含む。一実施形態では、難燃性エポキシ樹脂組成物は、成分[A-1]及び成分[E]を含む。さらに別の実施形態では、難燃性エポキシ樹脂組成物は、成分[A-1]、成分[A]、及び成分[E]を含む。また、難燃性エポキシ樹脂組成物は、成分[A]、成分[A-1]及び成分[E]以外のエポキシ樹脂をさらに含んでいてもよい。様々な実施形態では、本明細書中上記で開示されるように、難燃性エポキシ樹脂組成物は、難燃性エポキシ樹脂組成物の総重量に基づいて少なくとも0.5重量%のリン含有量を有する。いくつかの実施形態では、成分[A]及び/又は成分[A-1]を含む低THR多官能エポキシ樹脂の総量は、難燃性エポキシ樹脂組成物の総重量の少なくとも15PHR又は少なくとも10重量%である。
【0036】
様々な実施形態では、本開示の難燃性エポキシ樹脂組成物は、そのようなリン含有化学物質を含まない類似のエポキシ樹脂系難燃剤組成物の機械的及び耐熱性特性を維持するが、但し、硬化エポキシ樹脂組成物の架橋密度を維持するために配合を調整する。
【0037】
一実施形態では、難燃性エポキシ樹脂組成物は、ハロゲン置換生成物、フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂及びハロゲン化エポキシ樹脂を完全に含まないか、又は実質的に含まない。他の実施形態では、難燃剤組成物は、ハロゲン置換生成物、フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂及びハロゲン化エポキシ樹脂のうちの1種以上を、複合材料の難燃性を改善するのに適切な量で含んでもよい。
【0038】
成分[B]
難燃性エポキシ樹脂組成物の一実施形態では、成分[B]は、少なくとも1種の有機ホスフィン酸から構成されたか、又は少なくとも1種の有機ホスフィン酸から本質的になるか、又は少なくとも1種の有機ホスフィン酸からなる。本発明に用いられる有機ホスフィン酸は、特に限定されない。有機ホスフィン酸は、少なくとも1つの>P(=O)OH官能基を含有する化合物であり、リン原子は、互いに同じであっても異なっていてもよい2つの有機基(例えば、アルキル及び/又はアリール基)によってさらに置換され、各有機基中の炭素原子はリン原子に直接結合している。有機ホスフィン酸は、一般式R2PO2Hを有し、ホスフィン酸(PO2H3)中のリンに直接結合した2個の水素原子は、有機基Rで置き換えられている。有機基Rは炭化水素基であってもよいが、特定の実施形態では、N、O、ハロゲンなどの炭素及び水素原子に加えて、1種以上の種類の原子を含んでもよい。例えば、有機基は、ヒドロキシル又はカルボン酸基で置換されていてもよい。しかし、好ましい実施形態では、有機ホスフィン酸は、ハロゲンフリーである。ジアルキルホスフィン酸、ジアリールホスフィン酸及びアルキルアリールホスフィン酸、並びにそれらの組み合わせは全て、本発明における使用に適している。
【0039】
特定の実施形態によれば、難燃性エポキシ樹脂組成物は、式(I):
【0040】
【0041】
(式中、R1及びR2は、独立して、1~10個の炭素原子を有するアルキル基又は6~10個の炭素原子を有するアリール基から選択される)に対応する1種以上の有機ホスフィン酸から構成されるか、又は、それを用いて調製される。一実施形態では、R1及びR2は、互いに同一である。別の実施形態では、R1及びR2は、互いに異なる。アルキル基は、線状、分枝状、及び/又は脂環式であり得る。適切な1~10個の炭素原子を有するアルキル基には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、イソオクチル、シクロヘキシルが含まれるが、これらに限定されない。適切な6~10個の炭素原子を有するアリール基には、フェニル、トリル、ナフチルが含まれるが、これらに限定されない。
【0042】
適切な有機ホスフィン酸の例としては、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジプロピルホスフィン酸、エチルフェニルホスフィン酸、ジ(イソオクチル)ホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、メチルベンジルホスフィン酸、ナフチルメチルホスフィン酸、メチルフェニルホスフィン酸及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。本発明における使用には、ジエチルホスフィン酸が特に好ましい。
【0043】
難燃性エポキシ樹脂組成物は、総リン含有量が難燃性エポキシ樹脂組成物の総重量の少なくとも0.5重量%であるように、式(I)に示すような未反応形態又は式(II)及び式(III)に示すような反応形態の有機ホスフィン酸、又は未反応形態及び反応形態の混合物の量を含有してもよい。リンの量が少なくとも0.5重量%である場合、エポキシ樹脂組成物は、硬化されると、指定された厚さでほとんどの難燃性試験に合格するであろう。他の実施形態では、リン含有量は、硬化エポキシ樹脂組成物に、非常に薄い試験片であってもほとんどの試験仕様に合格するのに十分なレベルの難燃性を付与するために、1.5%を超え得る。典型的には、エポキシ樹脂組成物は、ほとんどの目的及び最終用途で満足のいく難燃性を達成するために、5重量%を超えてリンを含有する必要はない。また、架橋密度において適切な調整をすることなくリン含有量を増加させると、硬化エポキシ樹脂組成物の機械的性能が低下する場合がある。特定の実施形態では、難燃性エポキシ樹脂組成物中のリン含有量の全て又はほぼ全ては、本明細書に記載の1種以上の有機ホスフィン酸及び/又は有機ホスフィン酸変性エポキシ樹脂に起因するが、有機ホスフィン酸及び/又は有機ホスフィン酸変性エポキシ樹脂に加えて他の種類のリン含有化合物も存在し得る。ある特定の実施形態によれば、難燃性エポキシ樹脂組成物のリン含有量の少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも99%又は100%は、有機ホスフィン酸及び/又は有機ホスフィン酸変性エポキシ樹脂によって提供される。
【0044】
<エポキシ樹脂>:成分[A]及び他のエポキシ樹脂(成分[A]、成分[A-1]、及び成分[E]以外)
難燃性エポキシ樹脂組成物の一実施形態では、成分[A]は、23kJ/g以下の総熱放出(THR)値を有する少なくとも1種の低THR多官能エポキシ樹脂の成分[A]から構成されるか、又は成分[A]から本質的になるか、又は成分[A]からなり、低THR多官能エポキシ樹脂の総量は、難燃性エポキシ樹脂組成物の総重量の少なくとも15PHR又は少なくとも10重量%である。一実施形態では、難燃性エポキシ樹脂組成物は、成分[A]の23kJ/g以下の総熱放出(THR)値を有する低THR多官能エポキシ樹脂以外の少なくとも1種の多官能エポキシ樹脂をさらに含んでもよい。さらに別の実施形態では、難燃性エポキシ樹脂組成物は、成分[A]、成分[A-1]及び成分[E]以外のエポキシ樹脂を含んでもよい。
【0045】
一実施形態では、低THRエポキシ樹脂は、少なくとも1種のグリシジルアミン型エポキシ樹脂から構成される。本明細書で使用される場合、グリシジルアミン型エポキシ樹脂は、少なくとも1つのグリシジルアミノ基及び/又はジグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂である。適切なグリシジルアミン型エポキシ樹脂の例としては、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、キシレンジアミンのグリシジル化合物、トリグリシジルアミノフェノール(トリグリシジル-p-アミノフェノール、トリグリシジル-m-アミノフェノールなど)、テトラグリシジルジアミノジフェニルスルホン、テトラグリシジルジアミノジフェニルエーテル、テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサノン、ジグリシジルトルイジン、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルメトキシアニリン、ジグリシジルジメチルアニリン、ジグリシジルトリフルオロメチルアニリン、ジグリシジル-p-フェノキシアニリンなどが挙げられる。
【0046】
適切なエポキシ樹脂は、アミン(例えば、ジアミン、並びにテトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジルジアミノジフェニルエーテル、テトラグリシジルジアミノジフェニルスルホン、テトラグリシジルジアミノジフェニルアミド、トリグリシジル-p-アミノフェノール、トリグリシジル-m-アミノフェノール、トリグリシジルアミノクレゾール及びテトラグリシジルキシリレンジアミンなどの少なくとも1つのアミン基及び少なくとも1つの水酸基を含有する化合物、並びにハロゲン置換生成物、アルキノール置換生成物、それらの水素化生成物などを使用して調製されるエポキシ樹脂)、フェノール(例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールR型エポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、レゾルシノールエポキシ樹脂及びトリフェニルメタンエポキシ樹脂)、ナフタレンエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンエポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂、イソシアネート変性エポキシ樹脂、フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂、及び炭素-炭素二重結合を有する化合物(例えば、脂環式エポキシ樹脂)などの前駆体から調製され得る。なお、エポキシ樹脂は上記の例に限定されない。また、これらのエポキシ樹脂をハロゲン化により調製したハロゲン化エポキシ樹脂も使用できる。さらに、これらのエポキシ樹脂の2種以上の混合物、及びグリシジルアニリン、グリシジルトルイジン又は他のグリシジルアミン(特にグリシジル芳香族アミン)などの1つのエポキシ基を有する化合物又はモノエポキシ化合物を、難燃性エポキシ樹脂組成物の配合に使用することができる。しかしながら、難燃性エポキシ樹脂組成物を用いてプリプレグや繊維強化複合材料を調製する場合、通常、単官能エポキシ樹脂の量は、例えば、20以下、15以下、10以下、5PHR以下の単官能エポキシ樹脂に制限することが望ましい。
【0047】
一実施形態では、難燃性エポキシ樹脂組成物は、ハロゲン置換生成物、フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂及びハロゲン化エポキシ樹脂を完全に含まないか、又は実質的に含まない。他の実施形態では、エポキシ樹脂は、は、ハロゲン置換生成物、フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂及びハロゲン化エポキシ樹脂のうちの1種以上を、材料の難燃性を改善するのに適した量で含んでもよい。
【0048】
市販品であるテトラグリシジルジアミノジフェニルメタン樹脂としては、例えば、「SUMI-EPOXY(登録商標)」ELM434(住友化学株式会社製)、YH434L(新日鐵化学株式会社製)、「jER(登録商標)」604(三菱ケミカル株式会社製)、「アラルダイト(登録商標)」MY720、MY721、MY9655及びMY9655T(Huntsman Advanced Materials製)が挙げられる。
【0049】
市販品であるテトラグリシジルジアミノジフェニルスルホンとしては、例えば、TG3DAS(小西化学工業社製株式会社)が挙げられる。
【0050】
市販品であるトリグリシジルアミノフェノール又はトリグリシジルアミノクレゾール樹脂としては、例えば、「SUMI-EPOXY(登録商標)」ELM100(住友化学株式会社製)、「アラルダイト(登録商標)」MY0500、MY0510、MY0600及びMY0610(Huntsman Advanced Materials製)、「jER(登録商標)」630(三菱ケミカル株式会社製)が挙げられる。
【0051】
市販品であるテトラグリシジルキシリレンジアミン及びその水素化物としては、例えば、TETRAD-X、TETRAD-C(三菱ガス化学株式会社製)が挙げられる。
【0052】
市販されているビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、例えば、「jER(登録商標)」825、「jER(登録商標)」828、「jER(登録商標)」834、「jER(登録商標)」1001、「jER(登録商標)」1002、「jER(登録商標)」1003、「jER(登録商標)」1003F、「jER(登録商標)」1004、「jER(登録商標)」1004AF、「jER(登録商標)」1005F、「jER(登録商標)」1006FS、「jER(登録商標)」1007、「jER(登録商標)」1009及び「jER(登録商標)」1010(三菱ケミカル株式会社製)が挙げられる。市販されている臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、例えば、「jER(登録商標)」505、「jER(登録商標)」5050、「jER(登録商標)」5051、「jER(登録商標)」5054及び「jER(登録商標)」5057(三菱ケミカル株式会社製)が挙げられる。市販品である水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、例えば、ST5080、ST4000D及びST4100D、ST5100(新日鐵化学株式会社製)が挙げられる。
【0053】
市販品であるビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、例えば、「jER(登録商標)」806、「jER(登録商標)」807、「jER(登録商標)」4002P、「jER(登録商標)」4004P、「jER(登録商標)」4007P、「jER(登録商標)」4009P及び「jER(登録商標)」4010P(三菱ケミカル株式会社製)、並びに「エポトート(登録商標)」YDF2001及び「エポトート(登録商標)」YDF2004(新日鐵化学株式会社製)が挙げられる。市販品であるテトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、例えば、YSLV-80XY(新日鐵化学株式会社製)が挙げられる。
【0054】
市販品であるビスフェノールS型エポキシ樹脂としては、例えば、「EPICLON(登録商標)」EXA-154(DIC株式会社製)が挙げられる。
【0055】
市販品であるフェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、「jER(登録商標)」152、「jER(登録商標)」154(三菱ケミカル株式会社製)、「アラルダイト(登録商標)」EPN1138(Huntsman Advanced Materials製)及び「EPICLON(登録商標)」N-740、N-770、N-775(DIC株式会社製)が挙げられる。
【0056】
市販品であるクレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、「EPICLON(登録商標)」N-660、N-665、N-670、N-673及びN-695(DIC株式会社製)、並びにEOCN-1020、EOCN-102S及びEOCN-104S(日本化薬株式会社製)が挙げられる。
【0057】
市販品であるレゾルシノール型エポキシ樹脂としては、例えば、「デナコール(登録商標)」EX-201(ナガセケムテックス株式会社製)が挙げられる。
【0058】
市販品であるナフタレンエポキシ樹脂としては、例えば、「EPICLON(登録商標)」HP-4032、HP-4032D、HP-4700、HP-4710、HP-4770、EXA-4701、EXA-4750、EXA-7240(DIC株式会社製)が挙げられる。
【0059】
市販品であるトリフェニルメタン型エポキシ樹脂としては、例えば、「jER(登録商標)」1032S50(三菱ケミカル株式会社製)、「Tactix(登録商標)」742(Huntsman Advanced Material製)及びEPPN-501H(日本化薬株式会社製)が挙げられる。
【0060】
市販品であるジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂としては、例えば、「EPICLON(登録商標)」HP-7200、HP-7200L、HP-7200H及びHP-7200HH(DIC株式会社製)、「Tactix(登録商標)」558(Huntsman Advanced Material製)、XD-1000-1L及びXD-1000-2L(日本化薬株式会社製)が挙げられる。
【0061】
市販品であるビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂としては、例えば、「jER(登録商標)」YX4000H、YX4000及びYL6616(三菱ケミカル株式会社製)、並びにNC-3000(日本化薬株式会社製)が挙げられる。
【0062】
市販品であるイソシアネート変性エポキシ樹脂としては、例えば、オキサゾリドン環を有するAER4152(旭化成エポキシ株式会社製)及びACR1348(株式会社ADEKA製)が挙げられる。
【0063】
市販品であるフルオレン骨格を有するエポキシ樹脂としては、例えば、OGSOL PG-100及びCG-200、EG-200(大阪ガスケミカル株式会社製)、並びにLME10169(Huntsman Advanced Material製)が挙げられる。
【0064】
市販品であるグリシジルアニリンとしては、例えば、GAN(日本化薬株式会社製)が挙げられる。
【0065】
グリシジルトルイジンの市販品としては、例えば、GOT(日本化薬株式会社製)が挙げられる。
【0066】
難燃性エポキシ樹脂組成物のエポキシ樹脂成分は、有機ホスフィン酸を含むか、又は有機ホスフィン酸によるトリグリシジルアミノフェノール、トリグリシジルアミノクレゾール、テトラグリシジルアミン、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾール-ノボラック型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂、イソシアネート変性エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、及びフルオレン骨格を有するエポキシ樹脂の変性に基づいてもよく、それぞれが、硬化エポキシ樹脂組成物に高い耐熱性をもたらすのに役立つ。
【0067】
エポキシ樹脂成分はまた、トリグリシジルアミノフェノール、トリグリシジルアミノクレゾール、テトラグリシジルアミン、ナフタレンエポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂、イソシアネート変性エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリフェニルメタンエポキシ樹脂及びフルオレン骨格を有するエポキシ樹脂を含有してもよく、又はこれらに基づいてもよく、これらの各々は、エポキシ樹脂組成物がひとたび硬化すると、高い耐熱性及び機械的特性の両方に寄与するのに役立ち得る。
【0068】
本発明の特定の実施形態では、難燃性エポキシ樹脂組成物が硬化するとき、硬化樹脂の燃焼時間は、ニート樹脂試験片に適用するためのSFI56.1可燃性試験仕様から修正された可燃性試験によって決定される場合、10秒未満、他の実施形態では5秒以下、さらに他の実施形態では3秒以下である。燃焼時間が10秒未満である場合、繊維強化複合材料の可燃性試験のパラメータとの良好な相関をより容易に見ることができる。(実施例のセクションでより詳細に説明される)。
【0069】
本発明の特定の実施形態では、難燃性エポキシ樹脂組成物が硬化されるとき、硬化樹脂の燃焼長さは、ニート樹脂試験片に適用するためのSFI56.1可燃性試験仕様から修正された可燃性試験によって決定される場合、0.7インチ以下、他の実施形態では0.5インチ以下、さらに他の実施形態では0.3インチ以下である。燃焼時間が10秒未満である場合、繊維強化複合材料の可燃性試験のパラメータとの良好な相関をより容易に見ることができる。(実施例のセクションでより詳細に説明される)。
【0070】
エポキシ樹脂成分はまた、トリグリシジルアミノフェノール、トリグリシジルアミノクレゾール及びテトラグリシジルアミンを含有してもよく、又はこれらに基づいてもよく、これらはそれぞれ、(硬化時に)高い耐熱性、機械的特性に寄与するのを助けることができ、エポキシ樹脂組成物及び強化繊維から構成される表面品質の繊維強化複合材料を提供する。
【0071】
一実施形態では、第1のビスフェノール型エポキシ樹脂は、エポキシ化ビスフェノールである材料であれば、難燃性エポキシ樹脂組成物に含まれていてもよく、特に限定されない。
【0072】
驚くべきことに、硬化エポキシ樹脂組成物の可燃性を試験する場合、THRが23kJ/g以下の少なくとも1種のエポキシ樹脂を含有するものは、この種類のエポキシ樹脂の量が少なくとも15PHR(すなわち、エポキシ樹脂組成物は、総エポキシ樹脂100重量部当たり、少なくとも15重量部の低THRエポキシ樹脂を含んでいた。)又は難燃性エポキシ樹脂組成物の総重量の少なくとも10%である場合、15PHR未満又は低THRエポキシ樹脂の合計で10重量%未満の低THRエポキシ樹脂を含有しない類似の組成物の可燃性耐性と比較して、優れた可燃性耐性を有することが見出された。特定の実施形態によれば、エポキシ樹脂組成物は、少なくとも15PHR及び少なくとも10重量%の低THRエポキシ樹脂(単一の低THRエポキシ樹脂又は組み合わせもしくは2種以上の低THRエポキシ樹脂のいずれか)を含有する。
【0073】
理論に束縛されるものではないが、エポキシ樹脂のより低い熱放出は、炎がエポキシ樹脂組成物から製造された部品を横切って伝播する能力を低下させ、有機ホスフィン酸又は有機ホスフィン酸変性エポキシ樹脂からのリンに、大気中の酸素と反応して架橋した炭化層及び水バリアの両方を生成して炎を消火する機会を与えると考えられる。これにより、試験片は、リン含有化合物に基づく従来の難燃性エポキシ樹脂組成物と比較して、より低い割合の総リン含有量で可燃性試験に合格することができる。難燃性エポキシ樹脂組成物中のリン含有量が低いほど、より良好な靭性、より高いTg及びより高い弾性率などの異なる特性のために配合をより自由に調整することができる。
【0074】
他の実施形態によれば、難燃性エポキシ樹脂組成物は、難燃性エポキシ樹脂組成物の総重量に基づいて、合計で少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、又は少なくとも30%の低THRエポキシ樹脂から構成されてもよい。
【0075】
他の実施形態によれば、難燃性エポキシ樹脂組成物は、合計で少なくとも20PHR、少なくとも25PHR、少なくとも30PHR、又は少なくとも35PHRの低THRエポキシ樹脂から構成されてもよい。難燃性エポキシ樹脂組成物中に存在する全てのエポキシ樹脂は、低THRエポキシ(すなわち、低THRエポキシ樹脂の量は、100PHRであってもよい)であってもよい。他の実施形態では、1種以上の高THRエポキシ樹脂(すなわち、本明細書で「高THRエポキシ樹脂」と呼ばれる、23kJ/gを超える総熱放出(THR)値を有するエポキシ樹脂)が、低THRエポキシ樹脂と組み合わせて存在してもよい。例えば、難燃性エポキシ樹脂組成物は、15PHR~85PHRの少なくとも1種の低THRエポキシ樹脂から構成されてもよく、エポキシ樹脂の残りは、1種以上の高THRエポキシ樹脂(すなわち、難燃性エポキシ樹脂組成物は、15PHR~85PHRの高THRエポキシ樹脂を含んでもよい)である。
【0076】
本発明において、23kJ/g以下の総熱放出(THR)を有するエポキシ樹脂は、特に限定されず、上記のTHRの特徴が満たされるならば、多官能エポキシ樹脂のいずれか1種であることができる。23kJ/g以下の総熱放出(THR)を有するエポキシ樹脂は、23kJ/g以下のTHRを有し、少なくとも2の官能価(1分子当たりのエポキシ基の数)を有する限り、上記エポキシ樹脂のいずれか1種から選択することができる。このようなエポキシ樹脂を、本明細書では「低THRエポキシ樹脂」と呼ぶ。THRは、個々のエポキシ樹脂を、1:1のEEW(Epoxy Equivalent Weight:エポキシ当量)対AEW(Amine Equivalent Weight:アミン当量)比で混合されたジアミノジフェニルスルホンと組み合わせて硬化させることによって決定される。次いで、この硬化した試験片を100mm×100mm×3mmのサイズに機械加工し、熱放出率(ISO5660-1によるHRR)について50kW/m2に設定された外部熱流束でコーン熱量計を介して試験する。THRは、HRRデータを経時的に積分することによって計算される。
【0077】
23kJ/g以下のTHRを有するエポキシ樹脂の例としては、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジル-p-アミノフェノール、及び少なくとも2の官能価を有するモノ又はビスナフタレンエポキシ樹脂が挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
他の実施形態によれば、THRは、好ましくは22kJ/g以下、より好ましくは21.4kJ/g以下である。また、THRの下限は好ましくは15kJ/g以上であり、より好ましくは17kJ/g以上であり、特に好ましくは19kJ/g以上であり、より特に好ましくは19.3kJ/g以上である。
【0079】
他の実施形態によれば、難燃性エポキシ樹脂組成物は、40℃における粘度が1.0×102~1.0×105ポアズであることが好ましい。40℃における粘度を1.0×102ポアズ以上とすることにより、適度な凝集性を有するプリプレグを得ることができ、40℃における粘度を1.0×105ポアズ以下とすることにより、プリプレグを積層するときに適度なドレープ性とタック性を付与することができる。40℃における粘度は、1.0×103~5.0×104ポアズの範囲内であることがより好ましく、5.0×103~2.0×104ポアズの範囲内であることが特に好ましく、7.0×103~1.0×104ポアズの範囲内であることがより特に好ましい。
【0080】
他の実施形態によれば、難燃性エポキシ樹脂組成物の最低粘度は、好ましくは0.1~200ポアズ、より好ましくは0.5~100ポアズ、特に好ましくは1~50ポアズである。最低粘度が低すぎると、マトリックス樹脂の流動性が高くなりすぎ、プリプレグ硬化時にプリプレグ外に樹脂が流出することがある。また、得られる繊維強化複合材料において、所望の樹脂分率を達成できず、プリプレグ中のマトリックス樹脂の流動性が不十分となり、プリプレグの圧密プロセスが通常より早く終了し、得られる繊維強化複合材料にボイドが多く発生する可能性がある。最低粘度が高すぎると、プリプレグ中のマトリックス樹脂の流動性が低下し、プリプレグの圧密プロセスが通常より早く終了し、得られる繊維強化複合材料にボイドが多く発生する可能性がある。
【0081】
ここで、粘度40℃及び最低粘度は、以下の方法により求められる。すなわち、直径40mmのパラレルプレート型レオメーター(ARES、TA Instruments社製)を用い、ギャップ0.6mmで測定する。10rad/sでねじり変位を加える。樹脂の最低粘度が決定されるまで、温度を40℃~180℃まで2℃/分で上昇させる。
【0082】
有機ホスフィン酸とエポキシ樹脂との付加物
ここで、成分[A-1]とは、有機ホスフィン酸と低THR多官能エポキシ樹脂との付加物を指す。特に、成分[A-1]は、上述の有機ホスフィン酸のいずれかの残基を含む少なくとも1種の有機ホスフィン酸の少なくとも1つの残基を含有する低THR多官能エポキシ樹脂を指す。本明細書で使用される場合、成分[E]は、少なくとも1種の低THR多官能エポキシ樹脂以外の有機ホスフィン酸とエポキシ樹脂との付加物を指す。特に、成分[E]は、少なくとも1種の有機ホスフィン酸の少なくとも1つの残基(上述の有機ホスフィン酸のいずれかの残基を含む)を含有する、少なくとも1種の低THR多官能エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂を指す。
【0083】
本発明の特定の実施形態では、難燃性エポキシ樹脂組成物は、成分[E]が成分[A]又は成分[A-1]のいずれかと共に存在しなければならないように、成分[C]及び成分[A-1]又は成分[E]のうちの1種以上を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる成分[E]を含有する。
【0084】
このような残基は、エポキシ樹脂と反応した有機ホスフィン酸に対応し、したがってエポキシ樹脂に組み込まれるようになる。このようなエポキシ樹脂は、さらに少なくとも1つのエポキシ基を含み、有機ホスフィン酸変性エポキシ樹脂、又は有機ホスフィン酸と多官能エポキシ樹脂との付加物とみなすことができる。本発明の成分[E]又は成分[A-1]として有用なエポキシ樹脂は、有機ホスフィン酸を、それぞれ低THR多官能エポキシ樹脂以外の多官能エポキシ樹脂と反応させることによって得ることができ、化学量論は、多官能エポキシ樹脂の1つ以上のエポキシ基が未反応のままであるように制御される。このような反応の過程で、有機ホスフィン酸の酸性基は、出発多官能エポキシ樹脂のエポキシ基を開環し得る。
【0085】
例えば、少なくとも1種の有機ホスフィン酸の少なくとも1つの残基は、式(II):
【0086】
【0087】
(式中、式(II)のR1及びR2は、独立して、1~10個の炭素原子を有するアルキル基及び6~10個の炭素原子を有するアリール基から選択される)
に対応し得る。
【0088】
本発明の特定の実施形態では、成分[E]又は成分[A-1]は、式(III):
【0089】
【0090】
(式中、式(III)のR1及びR2は、独立して、1~10個の炭素原子を有するアルキル基又は6~10個の炭素原子を有するアリール基から選択され、かつ式(III)のR3は、少なくとも1つのエポキシ基が反応して置換基-O-P(=O)R1R2を導入した多官能エポキシ樹脂の残基であり、式(III)に対応する少なくとも1種のエポキシ樹脂は、少なくとも1つの未反応エポキシ基を有する)
に対応する少なくとも1種のエポキシ樹脂を含み得る。
【0091】
したがって、本発明の特定の実施形態では、難燃性エポキシ樹脂組成物中に存在する多官能エポキシ樹脂構造のいずれか1つは、少なくとも1種の有機ホスフィン酸残基を含有し、多官能エポキシ樹脂の反応性部位(例えば、エポキシ基が最初に存在した部位)の1つ以上は、式(II)の構造によって占められ、出発多官能エポキシ樹脂の少なくとも1つのエポキシ基は、未反応のままであり、したがって、難燃性エポキシ樹脂組成物が硬化されるときに自由に反応する。
【0092】
例示的かつ非限定的な例として、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルである多官能エポキシ樹脂を1当量のジエチルホスフィン酸と反応させて、本発明の成分[E]として(又はその中に)有用な有機ホスフィン酸変性エポキシ樹脂を得ることができる。
【0093】
(CH3CH2)2P(=O)OH+GE-Ar-C(CH3)2-Ar-GE→(CH3CH2)2P(=O)OCH2CH(OH)CH2-Ar-C(CH3)2-Ar-GE
(式中、Ar=アリーレン及びGE=グリシジルエーテルである。)
ベンゼン環などの任意の適切なアリーレンを使用することができる。
【0094】
同様に、低THR多官能エポキシ樹脂を1当量のジエチルホスフィン酸と反応させて、本発明の成分[A-1]として有用な(又はその中の)有機ホスフィン酸変性低THR多官能エポキシ樹脂を得ることができる。
【0095】
少なくとも1種の有機ホスフィン酸の少なくとも1つの残基を含有する少なくとも1種のエポキシ樹脂は、特定の実施形態では、1種以上の有機ホスフィン酸と1種以上の多官能エポキシ樹脂との間の初期反応を実施することにより、難燃性エポキシ樹脂組成物を配合する前に予め形成されてもよい。そのような予備反応は、例えば、これらの成分を配合して混合物を形成し、有機ホスフィン酸と多官能エポキシ樹脂との間で所望の反応の程度を達成するのに有効な温度及び時間で混合物を加熱することによって実施され得る。そのような加熱は、混合物を撹拌又は他の方法でかき回しながら行われてもよい。適切な反応温度は、例えば、50℃~150℃の温度を含み得る。適切な反応時間は、例えば、0.1~5時間の反応時間を含み得る。選択される化学量論に応じて、多官能エポキシ樹脂の一部は未反応のままでよく、得られて、かつ次いで難燃性エポキシ樹脂組成物に使用される反応生成物は、有機ホスフィン酸変性エポキシ樹脂と、有機ホスフィン酸残基を含有しない多官能エポキシ樹脂との混合物である。
【0096】
あるいは、有機ホスフィン酸及び多官能エポキシ樹脂は、難燃性エポキシ樹脂組成物が部分的又は完全に配合された後(例えば、難燃性エポキシ樹脂組成物の硬化前又は硬化中のいずれか)に、難燃性エポキシ樹脂組成物の1種以上の追加の成分の存在下で反応を受けてもよい。
【0097】
上述の実施形態(少なくとも1種の有機ホスフィン酸の少なくとも1つの残基を含有する少なくとも1種のエポキシ樹脂が難燃性エポキシ樹脂組成物中に存在する)は、有機ホスフィン酸と特定のエポキシ樹脂との反応を異なる量で制御することによって、特定の種類の難燃性エポキシ樹脂組成物を製造することを可能にする。エポキシ樹脂の種類を選択することにより、靭性、ガラス転移温度(Tg)及び弾性率について異なる配合物を調整することが可能になる。例えば、4の官能価を有する多官能エポキシ樹脂を用いて、有機ホスフィン酸を1:4、2:4、及び3:4の有機ホスフィン酸対エポキシ当量比で反応させることができる。
【0098】
本発明の特定の実施形態では、難燃性エポキシ樹脂組成物が成分[A-1]又は成分[E]を含む場合、多官能エポキシ樹脂は、少なくとも3以上の官能価(すなわち、1分子当たり3つ以上のエポキシ基)を有する。多官能エポキシ樹脂が3以上の官能価を有する場合、それはエポキシ基の少なくとも2つが(有機ホスフィン酸との反応後に)互いに又は少なくとも1種の硬化剤と自己重合することを可能にし、良好な架橋密度を可能にする。本発明の他の実施形態では、多官能エポキシ樹脂は4以上の官能価を有し、これは架橋密度を増加させ、Tgなどの特性を改善する利点を提供することができる。本発明のさらに他の実施形態では、多官能エポキシ樹脂は、グリシジルアミンエポキシ樹脂である。本発明のさらに他の実施形態では、多官能エポキシ樹脂は、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンである。多官能エポキシ樹脂がテトラグリシジルジアミノジフェニルメタンであると、硬化時にエポキシ樹脂組成物に対して高いTgを維持することができる。
【0099】
いくつかの実施形態では、難燃性エポキシ樹脂組成物が硬化される場合、硬化樹脂のガラス転移温度は、G’オンセット法(例で、さらに詳細に記載される)によって決定される場合、少なくとも100℃、他の実施形態では少なくとも110℃、さらに他の実施形態では少なくとも125℃、さらにさらなる実施形態では少なくとも140℃である。難燃性エポキシ樹脂が100℃を超えるTgを有する場合、硬化した繊維強化複合材料部分は、より高い温度での変形に耐えることができ、その用途を広げるためにより高い使用温度を有することができる。
【0100】
いくつかの実施形態では、難燃性エポキシ樹脂組成物を硬化させて、曲げ弾性率を有する硬化樹脂を提供する場合、25℃での硬化マトリックスの曲げ弾性率は、少なくとも3.0GPa、他の実施形態では少なくとも3.4GPa、さらに他の実施形態では少なくとも3.8GPaである。難燃性樹脂が25℃で3.0GPaを超える弾性率を有する場合、繊維強化複合材料部分は高い圧縮強度を有し、より多くの構造的用途のために材料をさらに広げることができる。
【0101】
本発明において、エポキシ樹脂の種類は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されない。エポキシ樹脂として、二官能性以上の官能エポキシ樹脂及びそれらの混合物を使用することができる。難燃性エポキシ樹脂組成物は、1種以上の多官能エポキシ樹脂(すなわち、1分子中に2つ以上の反応性エポキシ基を含有するエポキシ樹脂)に加えて、少なくともある程度の量の単官能エポキシ樹脂を含有することも可能である。
【0102】
エポキシ樹脂組成物が成分[A-1]、すなわち、少なくとも1種の有機ホスフィン酸の少なくとも1つの残基を含有する少なくとも1種の低THR多官能エポキシ樹脂(有機ホスフィン酸変性エポキシ樹脂)を含む実施形態では、そのような有機ホスフィン酸変性低THRエポキシ樹脂は、エポキシ樹脂組成物中に存在する唯一のエポキシ樹脂であり得る。しかしながら、エポキシ樹脂組成物は、成分[A]又は成分[A]、成分[A-1]、及び成分[E]以外のエポキシなどの有機ホスフィン酸変性エポキシ樹脂(すなわち、有機ホスフィン酸残基を含まないエポキシ樹脂)ではない1種以上の追加のエポキシ樹脂を含むこともできる。
【0103】
エポキシ樹脂組成物が成分[E]、すなわち、少なくとも1種の有機ホスフィン酸の少なくとも1つの残基を含有する少なくとも1種のエポキシ樹脂(有機ホスフィン酸変性エポキシ樹脂)を含む実施形態では、このような有機ホスフィン酸変性エポキシ樹脂は、成分[A]及び/又は成分[A-1]と共に存在しなければならない。さらに、エポキシ樹脂組成物は、有機ホスフィン酸変性エポキシ樹脂ではない1種以上の追加のエポキシ樹脂(すなわち、有機ホスフィン酸残基を含まないエポキシ樹脂)を含むこともできる。
【0104】
成分[C]:硬化剤
本発明の特定の実施形態では、ジシアンジアミドが硬化剤として使用される。ジシアンジアミドを硬化剤として用いると、未硬化のエポキシ樹脂組成物の保存安定性が高く、硬化後のエポキシ樹脂組成物の耐熱性が高い。
【0105】
ジシアンジアミドの量は、総エポキシ樹脂100PHR当たり3~7PHRの範囲であってもよい(ここで、「PHR」は樹脂100部当たりの部であり、ジシアンジアミドが、エポキシ樹脂の総量100重量部当たり3重量部~7重量部の量で難燃性エポキシ樹脂組成物中に存在することを意味する)。ジシアンジアミドが少なくとも3PHRであると、硬化エポキシ樹脂組成物が高い耐熱性を有する場合がある。ジシアンジアミドが7PHR以下であると、硬化エポキシ樹脂組成物が高い伸度を有する場合がある。
【0106】
市販品であるジシアンジアミドとしては、例えば、DICY-7、DICY-15(三菱ケミカル株式会社製)及び「Dyhard(登録商標)」100S(AlzChem Trostberg製)が挙げられる。
【0107】
本発明の他の実施形態では、本発明の効果を損なわない限り、ジシアンジアミド以外の硬化剤を含むか又は添加してもよい。適切な硬化剤の例としては、限定されないが、ポリアミド、アミドアミン(例えば、アミノベンズアミド、アミノベンズアニリド及びアミノベンゼンスルホンアミドなどの芳香族アミドアミン)、芳香族ジアミン(例えば、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン[DDS])、アミノベンゾエート(例えば、トリメチレングリコールジ-p-アミノベンゾエート及びネオペンチルグリコールジ-p-アミノ-ベンゾエート)、脂肪族アミン(例えば、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン)、脂環式アミン(例えば、イソホロンジアミン)、イミダゾール誘導体、グアニジン、例えばテトラメチルグアニジン、カルボン酸無水物(例えば、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物)、カルボン酸ヒドラジド(例えば、アジピン酸ヒドラジド)、フェノールノボラック樹脂及びクレゾールノボラック樹脂、カルボン酸アミド、ポリフェノール化合物、ポリスルフィド及びメルカプタン、並びにルイス酸及びルイス塩基(例えば、三フッ化ホウ素エチルアミン、トリス-(ジエチルアミノメチル)フェノール)が挙げられる。また、これらの硬化剤から選択された少なくとも1種の硬化剤を用いてもよく、そのような硬化剤のうちの2種以上組み合わせてもよく、ジシアンジアミドと共にそのような硬化剤のうちの1種以上組み合わせてもよい。
【0108】
促進剤
本発明の特定の実施形態では、少なくとも1種の芳香族ウレアが、エポキシ樹脂と硬化剤との反応及び/又はエポキシ樹脂の自己重合のための促進剤として使用される。いくつかの実施形態では、芳香族ウレアの組み合わせが使用され得る。促進剤として少なくとも1種の芳香族ウレアを用いると、エポキシ樹脂組成物の保存安定性が高く、硬化エポキシ樹脂組成物の耐熱性が高い。
【0109】
少なくとも1種の芳香族ウレアの量は、総エポキシ樹脂100PHR当たり0.5~7PHRの範囲内(すなわち、エポキシ樹脂の総量100重量部当たり0.5重量部の芳香族ウレアから、エポキシ樹脂の総量100重量部当たり7重量部の芳香族ウレア)であってもよい。少なくとも1種の芳香族ウレアの量が少なくとも0.5PHRである場合、硬化エポキシ樹脂組成物が高い耐熱性を有し得る。芳香族ウレアの量が7PHR以下であれば、エポキシ樹脂組成物が高い保存安定性を有する。
【0110】
適切な芳香族ウレアの例としては、N,N-ジメチル-N’-(3,4-ジクロロフェニル)ウレア、トルエンビス(ジメチルウレア)、4,4’-メチレンビス(フェニルジメチルウレア)、及び3-フェニル-1,1-ジメチルウレア並びにそれらの組み合わせが挙げられる。市販品である芳香族ウレアとしては、例えば、DCMU99(保土谷化学工業株式会社製)、「Omicure(登録商標)」U-24、U-24M、U-52、U-52M、94(Huntsman Advanced Material製)が挙げられる。これらの中でも、急速硬化性を促進するために、複数のウレア基を有する芳香族ウレアを使用してもよい。
【0111】
本発明の他の実施形態では、本発明の効果を損なわない限り、芳香族ウレア以外、又は芳香族ウレアに加えて任意の促進剤を添加してもよい。そのような促進剤の例には、スルホン酸化合物、三フッ化ホウ素ピペリジン、p-t-ブチルカテコール、スルホン酸化合物(例えば、p-トルエンスルホン酸エチル又はp-トルエンスルホン酸メチル)、三級アミン及びその塩、イミダゾール及びその塩、リン硬化促進剤、金属カルボン酸並びにルイス酸及びブレンステッド酸並びにその塩が含まれるが、これらに限定されない。
【0112】
市販されているイミダゾール化合物又はその誘導体としては、例えば、「キュアゾール(登録商標)」2MZ、2PZ、2E4MZ(四国化成工業株式会社製)が挙げられる。ルイス酸触媒としては、三フッ化ホウ素ピペリジン錯体、三フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体、三フッ化ホウ素トリエタノールアミン錯体、三塩化ホウ素オクチルアミン錯体、p-トルエンスルホン酸メチル、p-トルエンスルホン酸エチル、p-トルエンスルホン酸イソプロピルなどの三ハロゲン化ホウ素と塩基との錯体が挙げられる。
【0113】
熱可塑性樹脂
本発明の特定の実施形態では、本発明の効果を損なわない限り、任意の熱可塑性樹脂(すなわち、本質的に熱可塑性であるポリマー又は樹脂)を難燃性エポキシ樹脂組成物に含めてもよい。適切な熱可塑性樹脂の例としては、エポキシ樹脂に可溶性である熱可塑性樹脂、及びエポキシ樹脂に不溶性であり、かつ粒子(すなわち、熱可塑性粒子)の形態であり得る熱可塑性樹脂が挙げられる。ゴム粒子(架橋ゴム粒子を含む)などの他の種類の有機粒子も、難燃性エポキシ樹脂組成物に含めることができる。
【0114】
エポキシ樹脂に可溶性である熱可塑性樹脂としては、エポキシ樹脂組成物と強化繊維との接着性を向上させる効果が期待される水素結合性官能基を有する熱可塑性樹脂を用いることができる。エポキシ樹脂に可溶性である水素結合性官能基を有する熱可塑性樹脂としては、例えば、アルコール性水酸基を有する熱可塑性樹脂、アミド結合を有する熱可塑性樹脂、スルホニル基を有する熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0115】
水酸基を有する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール、フェノキシ樹脂が挙げられる。アミド結合を有する熱可塑性樹脂の例としては、ポリアミド、ポリイミド及びポリビニルピロリドンが挙げられる。スルホニル基を有する熱可塑性樹脂の例は、ポリスルホンである。ポリアミド、ポリイミド及びポリスルホンは、主鎖にエーテル結合及び/又はカルボニル基などの官能基を有していてもよい。例えば、熱可塑性樹脂は、ポリエーテルスルホンであってもよい。ポリアミドは、アミド基の窒素原子上に置換基を有していてもよい。
【0116】
エポキシ樹脂に可溶性であり、水素結合性官能基を有する市販の熱可塑性樹脂の例としては、ポリビニルアセタール樹脂である「Denkabutyral(登録商標)」及び「Denkaformal(登録商標)」(電気化学工業株式会社製)並びに「Vinylec(登録商標)」(JNC株式会社製);フェノキシ樹脂である「UCAR(登録商標)」PKHP(Union Carbide Corporation製);ポリアミド樹脂である「Macromelt(登録商標)」(Henkel-Hakusui Corporation製)及び「Amilan(登録商標)」CM4000(東レ株式会社製);ポリイミドである「Ultem(登録商標)」(General Electric Co.,Ltd.製)、「Matrimid(登録商標)」5218(Ciba Inc.製);ポリスルホンである「SUMIKAEXCEL(登録商標)」(住友化学株式会社製)及び「UDEL(登録商標)」(Solvay Advanced Polymers Kabushiki Kaisha製);並びにポリビニルピロリドンである「Luviskol(登録商標)」(BASFジャパン株式会社製)が挙げられる。
【0117】
その他の添加剤
本発明の特定の実施形態による難燃性エポキシ樹脂組成物は、1種以上のアクリル樹脂を含んでもよい。アクリル樹脂は、エポキシ樹脂との不相容性が高いため、粘弾性の制御に好適に用いることができる。このようなアクリル樹脂の市販品としては、例えば、「ダイアナール(登録商標)」BRシリーズ(三菱レイヨン株式会社製)、「Matsumoto Microsphere(登録商標)」M、M100、M500(松本油脂製薬株式会社製)、「Nanostrength(登録商標)」E40F、M22N、M52N(アルケマ株式会社製)が挙げられる。
【0118】
また、ゴム粒子が難燃性エポキシ樹脂組成物に含まれていてもよい。ゴム粒子としては、取り扱い性の観点から、架橋ゴム粒子と、架橋ゴム粒子の表面に異なるポリマーをグラフト重合により製造されたコアシェルゴム粒子とを用いてもよい。
【0119】
市販されている架橋ゴム粒子としては、例えば、カルボキシル変性ブタジエン-アクリロニトリル共重合体の架橋物からなるFX501P(日本合成ゴム株式会社製)、アクリル系ゴム微粒子からなるCX-MNシリーズ(株式会社日本触媒製)、及びYR-500シリーズ(新日鐵化学株式会社製)が挙げられる。
【0120】
市販されているコアシェルゴム粒子としては、例えば、ブタジエン-メタクリル酸アルキルスチレン共重合体からなる「パラロイド(登録商標)」EXL-2655(株式会社クレハ製)、アクリル酸エステル-メタクリル酸エステル共重合体からなる「スタフィロイド(登録商標)」AC-3355、TR-2122(武田薬品工業株式会社製)、アクリル酸ブチル-メタクリル酸メチル共重合体からなる「PARALOID(登録商標)」EXL-2611、EXL-3387(Rohm&Haas製)、及び「カネエース(登録商標)」MXシリーズ(株式会社カネカ製)が挙げられる。
【0121】
熱可塑性樹脂粒子としては、例えば、ポリアミド粒子、ポリイミド粒子を用いることができる。ポリアミド粒子は、硬化エポキシ樹脂組成物に付与される靭性に優れるため、硬化エポキシ樹脂組成物の耐衝撃性を大きく高めるのに最も好ましい。ポリアミドの中でも、ナイロン12、ナイロン11、ナイロン6、ナイロン6/12共重合体、及び特開平1-104624号公報の例1に開示されているようなエポキシ化合物でセミIPN(相互貫入ポリマー網目)を有するように変性されたナイロン(セミIPNナイロン)は、エポキシ樹脂と組み合わせて、特に良好な接着強度を付与する。適切な市販のポリアミド粒子の例としては、SP-500(東レ株式会社製)及び「Orgasol(登録商標)アルケマ株式会社製)、「Grilamid(登録商標)」TR-55(EMS-Grivory社製)、及び「Trogamid(登録商標)」CX(Evonik Industries AG製)が挙げられる。
【0122】
添加剤-無機粒子
本発明の特定の実施形態では、本発明の効果を損なわない限り、任意の種類の無機粒子を添加することができる。適切な無機粒子の例としては、金属酸化物粒子、金属粒子及び鉱物粒子が挙げられる。また、2種類以上のこれらの無機粒子を組み合わせることもできる。無機粒子は、硬化エポキシ樹脂組成物の一部の機能を向上させたり、硬化エポキシ樹脂組成物に一部の機能を付与したりするために用いられてもよい。そのような機能の例には、表面硬度、耐ブロッキング特性、耐熱性、バリア特性、導電性、帯電防止特性、電磁波吸収、UVシールド、靭性、耐衝撃性、及び/又は低線熱膨張係数が含まれる。
【0123】
適切な金属酸化物の例には、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウム、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、スズドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ及びフッ素ドープ酸化スズが含まれる。
【0124】
適切な金属の例としては、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、亜鉛及びステンレス鋼が挙げられる。適切な鉱物の例としては、モンモリロナイト、タルク、マイカ、ベーマイト、カオリン、スメクタイト、ゾノトライト、バーミキュライト及びセリサイトが挙げられる。
【0125】
他の適切な無機材料の例としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ガラスビーズ、ガラスフレーク及びガラスバルーンが挙げられる。
【0126】
任意の適切なサイズの無機粒子、例えば1nm~10μmの範囲のサイズの無機粒子を使用することができる。さらに、無機粒子は、任意の適切な形状、例えば、球形、針、プレート、バルーン又は中空を有し得る。無機粒子は、単に粉末として使用されてもよく、ゾル又はコロイドのような溶媒中の分散液に使用されてもよい。
【0127】
また、無機粒子の表面を1種以上のカップリング剤で処理し、エポキシ樹脂との分散性や界面親和性を向上させてもよい。
【0128】
本発明の特定の実施形態では、エポキシ樹脂組成物は、上記材料に加えて、又は上記材料に代えて、本発明の効果を損なわない限り、任意の他の材料を含んでいてもよい。エポキシ樹脂組成物に含まれ得る他の材料の例としては、離型剤、表面処理剤、難燃剤(有機ホスフィン酸又は有機ホスフィン酸変性エポキシ樹脂に加えて)、抗菌剤、レベリング剤、消泡剤、チキソ剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、カップリング剤、金属アルコキシドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0129】
エポキシ樹脂組成物の成分は、ニーダー、プラネタリー混合機、3本ロールミル、2軸押出機などで混合することができる。エポキシ樹脂及び任意の熱可塑性樹脂(硬化剤及び促進剤を除く)は、選択された装置に添加される。次いで、混合物を、エポキシ樹脂を均一に溶解するように撹拌しながら、130~180℃の範囲の温度まで加熱する。その後、混合物を撹拌しながら100℃以下の温度に冷却し、続いて硬化剤及び任意の促進剤を添加し、混練してそれらの成分を分散させる。この方法は、保存安定性に優れたエポキシ樹脂組成物を提供するために用いることができる。
【0130】
強化繊維
本発明の効果を損なわない限り、使用可能な強化繊維の種類に特に制限や制約はない。例えば、Sガラス、S-1ガラス、S-2ガラス、S-3ガラス、E-ガラス、L-ガラス繊維等のガラス繊維、炭素繊維、黒鉛繊維、アラミド繊維等の有機繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維等の金属繊維、炭化ケイ素繊維、炭化タングステン繊維、及び天然/バイオ繊維が挙げられる。特に、炭素繊維の使用は、非常に高い強度及び剛性を有し、軽量でもある硬化FRC材料を提供することができる。適切な炭素繊維の例は、約200~280GPaの標準弾性率(トレカ(登録商標)T300、T300J、T400H、T600S、T700S、T700G)、約280~340GPaの中間弾性率(トレカ(登録商標)T800H、T800S、T1000G、T1100G、M30S、M30G)、又は340GPaを超える高弾性率(トレカ(登録商標)M40、M35J、M40J、M46J、M50J、M55J、M60J)を有する東レ株式会社製のものである。
【0131】
本発明の繊維強化複合材料を調製するために用いられる強化繊維の層の形態及び配置は、特に限定されない。ある方向の長繊維、ランダムな配向の短繊維、シングルトウ、ナロートウ、織物、マット、編物、及び組物などの当技術分野で公知の強化繊維の形態及び空間配置のいずれも使用することができる。本明細書で使用される「長繊維」という用語は、10mm以上にわたって実質的に連続した単繊維又は単繊維を含む繊維束を指す。本明細書で使用される「短繊維」という用語は、10mm未満の長さに切断された繊維を含む繊維束を指す。特に、高比強度、高比弾性率が望まれる最終用途では、強化繊維束が一方向に配列した形態が最適である。取り扱いの容易さの観点から、布状(織物状)の形態も本発明に適している。
【0132】
本発明のFRC材料は、プリプレグ積層成形法、樹脂トランスファー成形法、樹脂フィルムインフュージョン法、ハンドレイアップ法、ウェットレイアップ法、シート成形コンパウンド法、フィラメントワインディング法及びプルトルージョン法などの方法を用いて製造することができるが、この点に関して特定の制限又は制約は適用されない。
【0133】
樹脂トランスファー成形法は、強化繊維基材に液状の熱硬化性樹脂組成物を直接含浸させ、硬化させる方法である。この方法は、プリプレグなどの中間製品を含まないため、成形コスト削減の可能性が高く、宇宙船、航空機、鉄道車両、自動車、船舶などの構造材料の製造に有利に使用される。
【0134】
プリプレグ積層成形法とは、強化繊維基材に熱硬化性樹脂組成物を含浸させたプリプレグを成形及び/又は積層し、成形及び/又は積層したプリプレグに熱及び圧力を加えて樹脂を硬化させ、FRC材料を得る方法である。
【0135】
フィラメントワインディング法とは、1~数十本の強化繊維ロービングを共に一方向に引き揃え、回転するメタルコア(マンドレル)に所定の角度で張力をかけながら巻き付けながら熱硬化性樹脂組成物を含浸させる方法である。ロービングのラップが所定の厚さに達した後、ロービングは硬化され、次いで、メタルコアが除去される。
【0136】
プルトルージョン法とは、液状の熱硬化性樹脂組成物を充填した含浸槽に連続的に強化繊維を通し、熱硬化性樹脂組成物を含浸させた後、含浸させた強化繊維を、引張機を用いて連続的に延伸することにより、スクイズ型、加熱型を経て成形する方法である。この方法は、FRC材料を連続的に成形する利点を提供するので、釣り竿、ロッド、パイプ、シート、アンテナ、建築構造物などのFRC材料の製造に使用される。中でも、得られるFRC材料に優れた剛性や強度を付与するために、プリプレグ積層成形法を用いてよい。
【0137】
プリプレグは、エポキシ樹脂組成物と、強化繊維とを含んでよい。そのようなプリプレグは、本発明のエポキシ樹脂組成物を強化繊維基材に含浸させることにより得ることができる。含浸方法としては、湿式法及びホットメルト法(乾式法)が挙げられる。
【0138】
湿式法とは、まず、メチルエチルケトンやメタノールなどの溶媒に溶解することにより作製したエポキシ樹脂組成物の溶液に強化繊維を浸漬し、取り出した後、オーブンなどを用いて溶媒を蒸発により除去し、強化繊維に含浸させる方法である。ホットメルト法は、予め加熱して流動化させたエポキシ樹脂組成物を強化繊維に直接含浸させてもよいし、樹脂フィルムとして用いるエポキシ樹脂組成物を離型紙等に塗工した後、平板状に構成された強化繊維の片面又は両面にフィルムを置いて、熱及び圧力を加えて樹脂を強化繊維に含浸させてもよい。ホットメルト法は、実質的に残留溶媒を含まないプリプレグを与えることができる。
【0139】
プリプレグは、40~700g/m2の間の炭素繊維目付を有し得る。炭素繊維目付が40g/m2未満であると、繊維含有量が不足し、FRC材料の強度が低下することがある。炭素繊維目付が700g/m2を超えると、プリプレグのドレープ適性が損なわれることがある。プリプレグはまた、20~70重量%の間の樹脂含有量を有し得る。樹脂含有量が20重量%未満であると、含浸が不十分となり、ボイドが多くなることがある。樹脂含有量が70重量%を超えると、FRCの機械的特性が低下するおそれがある。
【0140】
プリプレグ積層成形法、プレス成形法、オートクレーブ成形法、バギング成形法、ラッピングテープ法、内圧成形法などで、適宜の熱と圧力を用いればよい。
【0141】
オートクレーブ成形法とは、所定形状のツールプレート上にプリプレグを積層した後、バギングフィルムで覆い、積層体から空気を抜きながら熱と圧力を加えて硬化させる方法である。これは、繊維配向の精密な制御を可能にすると共に、最小限のボイド量に起因して、優れた機械的特徴を有する高品質の成形材料を提供することができる。成形プロセス中に加えられる圧力は、0.3~1.0MPaであってよく、一方、成形温度は、90~300℃の範囲(本発明の一実施形態では、180℃~220℃の範囲、例えば、200℃~220℃)であってよい。
【0142】
ラッピングテープ法は、プリプレグをマンドレル又は他の何らかの芯棒に巻き付けて管状FRC材料を形成する方法である。この方法は、ゴルフシャフト、釣り竿及び他の棒状製品を製造するために使用することができる。より具体的には、この方法は、マンドレルの周りにプリプレグを巻き付けることと、プリプレグを固定し、プリプレグに圧力を加える目的で、張力下でプリプレグの上に熱可塑性樹脂フィルムで作られたラッピングテープを巻き付けることとを含む。オーブン内で加熱して樹脂を硬化させた後、芯棒を除去して管状体を得る。ラッピングテープを包むために使用される張力は、20~100Nであってよい。硬化温度は、90~300℃の範囲(本発明の一実施形態では、180℃~220℃の範囲、例えば、200℃~220℃)であってよい。
【0143】
内圧成形法は、熱可塑性樹脂チューブ又は何らかのその他の内圧付与機にプリプレグを巻き付けたプリフォームを金型内にセットし、高圧ガスを内圧付与機に導入して圧力を付与し、同時に金型を加熱してプリプレグを成形する方法である。この方法は、ゴルフシャフト、バット、及びテニス又はバドミントンのラケットなどの複雑な形状を有する物体を形成するときに使用することができる。成形プロセス中に加えられる圧力は、0.1~2.0MPaであってよい。成形温度は、室温~300℃の間、又は120~180℃の範囲(本発明の一実施形態では、180℃~220℃の範囲、例えば、200℃~220℃)であってよい。
【0144】
本発明のエポキシ樹脂組成物から得られる硬化エポキシ樹脂組成物及び強化繊維を含有するFRC材料は、一般産業用途並びに航空及び宇宙用途において有利に使用される。FRC材料はまた、スポーツ用途(例えば、ゴルフシャフト、釣り竿、テニス又はバドミントンのラケット、ホッケースティック及びスキーポール)及び車両用構造材料(例えば、自動車、自転車、船舶及び鉄道車両、駆動軸、板バネ、風車ブレード、圧力容器、フライホイール、製紙ローラー、屋根材、ケーブル、及び修理/補強材料)などの他の用途に使用されてもよい。
【0145】
本発明の特定の実施形態では、難燃性繊維強化複合材料の燃焼時間は、SFI56.1可燃性試験規格によって決定される場合、3秒未満、他の実施形態では2秒以下、さらに他の実施形態では1秒以下である。燃焼時間が3秒未満である場合、より多くのプライが繊維強化複合材に添加されると、サンプルは多数の可燃性試験規格に合格することができる。
【0146】
本発明の特定の実施形態では、難燃性エポキシ樹脂組成物が硬化されるとき、難燃性繊維強化複合材料の燃焼長さは、SFI56.1可燃性試験規格によって決定される場合、2.0インチ以下、他の実施形態では1.8インチ以下、さらに他の実施形態では1.6インチ以下である。燃焼長さが2.0インチ以下である場合、より多くのプライを繊維強化複合材に追加すると、サンプルは多数の可燃性試験規格に合格することができる。
【0147】
本明細書では、明確かつ簡潔な明細書を書くことを可能にする方法で実施形態を説明してきたが、本発明から逸脱することなく実施形態を様々に組み合わせたり分離したりできることを意図しており、理解されるであろう。例えば、本明細書に記載の全ての好ましい特徴は、本明細書に記載の本発明の全ての態様に適用可能であることが理解されよう。
【0148】
いくつかの実施形態では、本明細書の本発明は、組成物又はプロセスの基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさない任意の要素又はプロセスステップを除外すると解釈することができる。さらに、いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書で指定されていない任意の要素又はプロセスステップを除外すると解釈することができる。
【0149】
本発明は、特定の実施形態を参照して本明細書に例示及び説明されているが、本発明は、示された詳細に限定されることを意図するものではない。むしろ、特許請求の範囲の均等物の範囲及び範囲内で、本発明から逸脱することなく、詳細に様々な修正を行うことができる。
【実施例】
【0150】
次に、本発明の実施形態を例によってより詳細に説明する。各種特性の測定は、以下に記載された方法で行った。これらの特性は、特記しない限り、温度23℃、相対湿度50%の環境条件下で測定した。次いで、ホットメルトプリプレグ法を使用して、例の樹脂からプリプレグを作製した。実施例及び比較例で用いた成分は、以下の通りである。
【0151】
成分[A]<低THRエポキシ樹脂>
テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、117-134g/eqのEEWを有する「アラルダイト(登録商標)」MY9655T(Huntsman Advanced Material製)。
【0152】
トリグリシジルp-アミノフェノール、95~107g/eqのEEWを有する「アラルダイト(登録商標)」MY0510(Huntsman Advanced Material製)。
【0153】
フェノールノボラックエポキシ樹脂、175~182g/eqのEEWを有し、官能価:3.6である「アラルダイト(登録商標)」EPN1138(Huntsman Advanced Materials製)。
【0154】
成分[A-1]
ジエチルホスフィン酸と「アラルダイト(登録商標)」MY9655Tの、それぞれ1:4の当量比での反応生成物。
【0155】
ジエチルホスフィン酸と「アラルダイト(登録商標)」MY0510の、それぞれ1:3の当量比での反応生成物。
【0156】
ジエチルホスフィン酸と「アラルダイト(登録商標)」EPN1138との、それぞれ当量比1:3.6での反応生成物。
【0157】
成分[E]
ジエチルホスフィン酸とEPON(商標)828との、それぞれ1:2の当量比での反応生成物。
【0158】
DOPO(ジヒドロ-9-オキサ-10-フォスファ-フェナントレン-10-オキサイド)変性多官能エポキシ樹脂EXA9726(大日本インキ化学工業株式会社製)。
【0159】
成分[A]、成分[A-1]及び成分[E]以外の他のエポキシ樹脂
ビスフェノールA型エポキシ樹脂、185~192g/eqのEEWを有するEpon(商標)828(Hexion,Inc.製)。
【0160】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂、520~590g/eqのEEWを有するEpon(商標)3002(Hexion,Inc.製)。
【0161】
成分[B]
ジエチルホスフィン酸
ジフェニルホスフィン酸
成分[C]:<硬化剤>
ジシアンジアミド、12g/eqのAEWを有する「Dyhard(登録商標)」100S(AlzChem Trostberg GmbH製)。
【0162】
4,4-ジアミノジフェニルスルホン、「Aradur(登録商標)」9664-1(Huntsman Advanced Material製)
<促進剤>
2,4’-トルエンビス(ジメチルウレア)、「Omicure(登録商標)」U-24M(Huntsman Advanced Material製)。
【0163】
<熱可塑性樹脂>
ポリビニルホルマール、「Vinylec(登録商標)」K(JNC株式会社製)。
【0164】
方法
各例のエポキシ樹脂組成物、プリプレグ及びFRC材料を調製及び特性評価するために、以下の方法を使用した。
【0165】
(1)樹脂混合
硬化剤及び促進剤以外の全成分を混合機に所定量溶解させて混合物を作製した後、硬化剤を所定量の促進剤と共に混合し、エポキシ樹脂組成物を得た。
【0166】
(2)付加物形成
ジエチルホスフィン酸と多官能エポキシ樹脂(EPON(商標)828、「アラルダイト(登録商標)」MY510、「アラルダイト(登録商標)」MY9655T)との反応生成物は、エポキシ樹脂とジエチルホスフィン酸とを所定の比率で温度100℃で1時間絶えず撹拌することによって作製した。
【0167】
(3)硬化プロファイル
得られた硬化エポキシ樹脂組成物を、以下の方法で成形した。混合後、厚さ2mmの「テフロン(登録商標)」製スペーサーを用いて、厚さ2mmに設定したモールドに、(1)で調製したエポキシ樹脂組成物を注入した。その後、室温から163℃まで1.7℃/分の速度で加熱した後、163℃で15分間保持し、厚さ2mmの硬化エポキシ樹脂組成物プレートを得た。
【0168】
(4)樹脂の可燃性(燃焼時間、燃焼長さ、ドリップ)
実施例及び比較例に詳述されている試験片は、ニート樹脂試験片に適用するためのSFI56.1可燃性試験仕様から修正された可燃性試験に従って難燃性について試験された。SFI56.1仕様は、特にCFRP試験用であり、例の試験片は、試験時に繊維を含まず、試験は修正する必要がある。
【0169】
樹脂可燃性試験は、真空下で脱泡したエポキシ樹脂組成物を高せん断混合した後、2mmの「テフロン(登録商標)(登録商標)」製スペーサーを用いて2枚のプレートの間にエポキシ樹脂組成物を流し込み、規定の温度で設定時間硬化させることを伴う。本明細書に提示される例では、エポキシ樹脂組成物を163℃の温度で15分間硬化させ、10℃/分の速度で上記温度まで上昇させた。次いで、硬化樹脂プレートを離型し、2インチ×3インチの試験片に機械加工した。
図1に示すように、樹脂プレートを可燃性試験チャンバ内に置いた。炎は少なくとも1550°Fであり、可視炎は、バーナベースから測定した場合に約22mmの高さであり、炎のかすかな外側の青色円錐は、バーナベースから約38mmの高さであった。樹脂プレート試験片の3インチ側は、バーナベースの上方約19mmの中心にあった。炎を樹脂試験片の下に移動させ、15秒間定位置に保持し、その時点で炎を除去し、炎が消火するのに要した時間を測定した。さらに、フレーミングするエポキシ樹脂材料の全てのドリップを記録し、それらのドリップが発火したままである時間を記録した。ドリップの目撃は、可燃性試験の自動的な失敗と考えられた。試験片の燃焼長さも記録した。これらの3つの値、燃焼時間、燃焼長さ、及びドリップは、硬化樹脂試験片の可燃性を特徴付けるために使用される。より低い燃焼時間及びより低い燃焼長さは、難燃性材料にとって好ましい品質である。
【0170】
(5)THR
総熱放出(THR)は、1種類のエポキシ樹脂(例えば、一緒にではなく、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(TGDDM)のみ、又はビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBA)のみ)と、1:1のEEW(エポキシ当量)対AEW(アミン当量)比で混合したジアミノジフェニルスルホンとの組み合わせを硬化させることによって測定した。次いで、この硬化した試験片を100mm×100mm×3mmのサンプルに機械加工し、熱放出率(ISO5660-1によるHRR)について50kW/m2に設定した外部熱流束でコーン熱量計を介して試験した。THRは、HRRデータを経時的に積分することによって計算した。
【0171】
(6)ガラス転移温度(DMAねじりによるTg)
エポキシ樹脂組成物を以下の方法で硬化成形した。真空下で変形させて高せん断混合させた後、(1)で調製したエポキシ樹脂組成物を、厚さ2mmの「テフロン(登録商標)」製スペーサーを用いて、厚さ2mmに設定したモールドに注入した。その後、エポキシ樹脂組成物を設定温度で設定時間硬化させた。本明細書に提示される例では、樹脂を163℃の温度で15分間硬化させ、10℃/分の速度で上記温度まで上昇させた。
【0172】
次いで、動的粘弾性測定装置(TA Instruments製ARES)を用いて、SACMA SRM 18R-94に準拠して、50℃~250℃まで5℃/分の速度で昇温し、1.0Hzねじりモードで、試験片をTg測定に供した。
【0173】
Tgは、温度貯蔵弾性率曲線(G’曲線ともいう)において、ガラス領域の接線と、ガラス領域からゴム領域への転移領域の接線との交点を求め、その交点の温度をガラス転移温度(G’Tgともいう)とみなした。
【0174】
但し、硬化樹脂組成物の硬化物が1つ以上の損失弾性(粘性)率(G’’)ピークを有する場合は、以下の方法でTgを求めた。各ピークの高さは、ピーク高さ(MPa)をピークに先行する対応する谷によって差し引くことによって計算した。これらのピークのいずれか1つの高さが15MPaを超える場合、G’曲線上の対応する転移を使用してTgを計算した。
【0175】
(7)樹脂曲げ弾性率
曲げ特性は以下の手順で測定した。上記(6)のガラス転移温度(Tg)下でのプロセスに従って得られた硬化エポキシ樹脂組成物から、10mm×50mmの試験片を切り出した。その後、試験片を、インストロン万能試験機(インストロン社製)を用いて、ASTM D7264に準拠した3点曲げ試験において処理された。試験片を室温で試験して、硬化エポキシ樹脂組成物のRTD(Room Temperature Dry)曲げ特性を得た。
【0176】
以下の測定方法を用いて、各実施例及び比較例の硬化エポキシ樹脂組成物の特性評価を行った。
【0177】
(i)ガラス転移温度(Tg)
(ii)曲げ弾性率
(iii)樹脂の可燃性(燃焼長さ、燃焼時間、ドリップ)
(8)未硬化樹脂の粘度
未硬化樹脂試験片を、40℃に予熱した0.6mmのギャップを有する直径40mmの平行平板レオメーター(ARES、TA Instruments製)に入れた。10rad/sでねじり変位を加えた。樹脂の最低粘度が決定されるまで、温度を2℃/分で上昇させた。
【0178】
実施例1~16及び比較例1~6
各実施例に用いた成分の様々な量を表1~4に記載する。表1、2、3、及び4に示されるエポキシ樹脂組成物は、以下の方法に従って製造された。硬化剤及び硬化促進剤以外の全成分を混合機に所定量溶解させて混合物を作製した後、硬化剤を所定量の促進剤と共に混合し、エポキシ樹脂組成物を得た。
【0179】
作製したエポキシ樹脂組成物を、各種試験説明に記載の方法で硬化した。各試験の結果を表1、2、3及び4に記載する。
【0180】
本発明の実施形態である表1、表2及び表3の実施例1~16は、良好な可燃性結果を提供した。
【0181】
実施例1~5及び比較例1
実施例1~5及び比較例1では、実施例1~5と比較例1との組成間の重要な違いは、比較例1は重量で0.5%以上のリンが不足していることである。比較例1は長い燃焼時間、長さ及びドリップを示すが、実施例は短い燃焼時間、長さを有し、かつドリップはない。
【0182】
実施例6及び比較例2
実施例6及び比較例2において、重要な違いは、比較例2は、十分な量のリン含有量が不足していることである。比較例2は、長い燃焼時間、長さ及びドリップを示すが、実施例6は、短い燃焼時間、長さを有し、かつドリップはない。
【0183】
実施例7及び比較例3
実施例7及び比較例3では、比較例3は、実施例7のような有機ホスフィン酸変性二官能エポキシ樹脂ではなく、DOPO(ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド)変性二官能エポキシ樹脂(すなわち、有機亜ホスホン酸変性エポキシ樹脂)であるEXA-9726を使用した。実施例7は、1.8秒の短い燃焼時間を維持するが、比較例3の燃焼時間は13.5秒で著しく長い。
【0184】
実施例8及び比較例4
実施例8及び比較例4において、重要な違いは、2つの系のリン含有量である。比較例4は、有機ホスフィン酸化合物を含まず、実施例8が示す良好な難燃性を達成しなかった。
【0185】
実施例1、8~9及び比較例5~6
実施例1、8、9及び比較例5及び6では、差は、低THRエポキシ樹脂(すなわち、23kJ/g以下のTHRを有するエポキシ樹脂)であるエポキシ樹脂組成物の割合である。実施例では、全ての混合物は、少なくとも10重量%(23kJ/g以下)の低THRエポキシ樹脂及び少なくとも15PHRの低THRエポキシ樹脂を含有する。低THRエポキシ樹脂の使用量がこの閾値を下回ると、比較例5では燃焼時間の増加が観察され、それぞれ4、3.3、及び9.3秒という実施例の燃焼時間よりも長い11.2秒である。また、比較例6は、リン含有量が0重量%である他の実施例でのみ見られるドリッピング現象を示した。
【0186】
実施例8及び15
実施例8及び15において、重要な違いは、低THRエポキシ樹脂の種類である。低THRエポキシ樹脂としてグリシジルアミン型エポキシ樹脂を用いた場合、低THRエポキシ樹脂としてグリシジルアミン型エポキシ樹脂を用いない場合と比較して、燃焼時間の減少が見られる。
【0187】
【0188】
【0189】
【0190】
【国際調査報告】