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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-22
(54)【発明の名称】静脈内カテーテル留置装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/06 20060101AFI20221215BHJP
【FI】
A61M25/06 500
A61M25/06 580
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022517972
(86)(22)【出願日】2019-09-20
(85)【翻訳文提出日】2022-03-28
(86)【国際出願番号】 US2019052225
(87)【国際公開番号】W WO2021054980
(87)【国際公開日】2021-03-25
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500295612
【氏名又は名称】バード・ペリフェラル・バスキュラー・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100116322
【弁理士】
【氏名又は名称】桑垣 衛
(72)【発明者】
【氏名】ニールソン、チャド ケイ.
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA04
4C267AA22
4C267AA32
4C267BB02
4C267BB11
4C267BB37
4C267BB40
4C267CC08
4C267EE03
4C267HH08
(57)【要約】
IVカテーテル留置装置および方法である。IVカテーテル留置装置は、カートリッジおよびカートリッジを覆い固定的に配置されたケースを含んでよい。カートリッジは、リリースボタンを有するバレルと、バレルから延在するばね式の針と、針を覆いスライド可能に配置されたカテーテルハブを含むIVカテーテルとを含んでよい。ケースは、IVカテーテルを針を覆いスライドさせるよう構成される展開ボタンを含んでよい。また、展開ボタンは、展開ボタンがリリースボタンにスライドした際にリリースボタンを押下するよう構成されてよい。展開ボタンがリリースボタンにスライドすると、ニードルハブとバレルの遠位端部分との間で圧縮されたばねが解放されてよい。続いて、針の全体がバレルのニードルキャビティに打ち出される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静脈内(IV)カテーテル留置装置であって、
バレルであって、リリースボタンを該バレルの側面上に有するバレルと、前記バレルの遠位端部分から延在するばね式の針と、前記針を覆いスライド可能に配置されたカテーテルハブを含むIVカテーテルと、を含むカートリッジおよび、
前記カートリッジを覆い固定的に配置されたケースであって、該ケースの側面上の展開ボタンを含む、ケースを備え、前記展開ボタンは、前記IVカテーテルを前記針を覆いスライドさせるように構成されるとともに、前記展開ボタンが前記リリースボタンにスライドした際に、ニードルハブと前記バレルの前記遠位端部分との間で圧縮されたばねが解放されることで前記針の全体が前記バレルのニードルキャビティに打ち出されるよう前記リリースボタンを押下するよう構成される、IVカテーテル留置装置。
【請求項2】
前記展開ボタンは、前記ケースと前記カートリッジとの間に配置された長手方向延長部であって、前記カテーテルハブの一部に当接する遠位端を有し、前記IVカテーテルを前記針を覆いスライドするよう構成された、長手方向延長部を含む、請求項1に記載のIVカテーテル留置装置。
【請求項3】
前記展開ボタンは、前記展開ボタンが前記リリースボタンにスライドした際に前記リリースボタンを押下するよう構成される径方向延長部を含む、請求項1または2に記載のIVカテーテル留置装置。
【請求項4】
前記ケースは不透明であり、それにより、前記ケースの遠位端に近位の前記針の長さを患者から隠す、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のIVカテーテル留置装置。
【請求項5】
前記IVカテーテル留置装置は、前記IVカテーテルを前進させること、および前記針を後退させることに関して片手操作用に構成される、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のIVカテーテル留置装置。
【請求項6】
静脈内(「IV」)カテーテル留置装置であって、
カートリッジであって、
バレルであって、ニードルキャビティ、前記IVカテーテル留置装置の少なくとも初期状態において前記ニードルキャビティの遠位端部分に対して圧縮されたばね、および該バレルの側面上のリリースボタンを有し、該リリースボタンは、前記ばねが圧縮されている場合に前記ばねを解放するよう構成されるバレルと、
前記バレルから延びる針であって、前記針は、前記IVカテーテル留置装置の少なくとも前記初期状態において、前記ばねを前記ニードルキャビティの前記遠位端部分に対して圧縮する、前記ニードルキャビティ内に係留され配置されたニードルハブを含む針と、
前記針を覆いスライド可能に配置されたカテーテルハブを含むIVカテーテルと、を含むカートリッジおよび、
前記カートリッジを覆い固定的に配置されたケースであって、前記ケースの側面上の展開ボタンを含む、ケースを備え、前記展開ボタンは、前記IVカテーテルを前記針を覆いスライドさせるように構成されるとともに、前記展開ボタンが前記リリースボタンにスライドした際に、前記ばねが解放されることで前記針の全体が前記ニードルキャビティに打ち出されて前記IVカテーテル留置装置の展開状態になるよう前記リリースボタンを押下するよう構成される、IVカテーテル留置装置。
【請求項7】
前記展開ボタンは、前記ケースと前記カートリッジとの間に配置された長手方向延長部であって、前記IVカテーテル留置装置の少なくとも前記初期状態において前記カテーテルハブの一部に当接する遠位端を有し、前記IVカテーテルを前記針を覆いスライドするよう構成された、長手方向延長部を含む、請求項6に記載のIVカテーテル留置装置。
【請求項8】
前記長手方向延長部の長さは、前記IVカテーテルを静脈内に配置するために前記IVカテーテルが前記静脈内で前進する必要がある距離の少なくとも約半分に等しい、請求項7に記載のIVカテーテル留置装置。
【請求項9】
前記展開ボタンは、前記展開ボタンが前記リリースボタンにスライドした際に前記リリースボタンを押下するよう構成される径方向延長部を含む、請求項6乃至8のいずれか一項に記載のIVカテーテル留置装置。
【請求項10】
前記ニードルハブは、前記ニードルハブの中間部分と前記ニードルハブの近位端部分との間に段差を含み、前記ニードルハブの前記中間部分の周囲の前記ばねは、前記IVカテーテル留置装置の少なくとも前記初期状態において、前記段差と前記ニードルキャビティの前記遠位端部分との間で圧縮される、請求項6乃至9のいずれか一項に記載のIVカテーテル留置装置。
【請求項11】
前記ニードルハブは前記ニードルハブの遠位端部分にキャッチを含み、前記リリースボタンは、前記IVカテーテル留置装置の少なくとも前記初期状態において前記キャッチに配置される径方向延長部を含む、請求項6乃至10のいずれか一項に記載のIVカテーテル留置装置。
【請求項12】
前記ニードルハブは、前記針で静脈アクセスを確立する際の血液の逆流用に構成されるニードルハブキャビティを含む、請求項6乃至11のいずれか一項に記載のIVカテーテル留置装置。
【請求項13】
前記ケースは不透明であり、それにより、前記IVカテーテル留置装置の少なくとも前記初期状態において、前記ケースの遠位端に近位の前記針の長さを患者から隠す、請求項6乃至12のいずれか一項に記載のIVカテーテル留置装置。
【請求項14】
前記IVカテーテル留置装置は、前記IVカテーテルを前進させること、および前記針を後退させることに関して片手操作用に構成される、請求項6乃至13のいずれか一項に記載のIVカテーテル留置装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、静脈内カテーテル留置装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のような既存の静脈内(IV)カテーテル留置装置は、静脈アクセスに使用される従来の針よりも長い針を有する。針が長い理由は、既存のIVカテーテル留置装置のIVカテーテルがその針を覆って配置されているためであり、静脈アクセスが達成された際にIVカテーテルは留置のために十分に長い必要があるためでもある。しかしながら、既存のIVカテーテル留置装置を用いた典型的なIVカテーテル留置手順においては、静脈アクセスを達成する前に、針の約半分の長さ未満等、針の一部のみを患者に挿入する必要がある。ところが、既存のIVカテーテル留置装置の針の長さは、患者、特に針に恐怖を覚える患者を怖がらせる可能性がある。
【0003】
既存のIVカテーテル留置装置はまた、PowerFlow(商標)埋込型アフェレシスIVポート等の埋め込まれたポートと共に使用される。そのような埋め込まれたポートに対して、既存のIVカテーテル留置装置を使用してIVカテーテルを留置するための典型的な手順においては、埋め込まれたポートを介して静脈アクセスを達成する前に、上記の場合より多く針の部分を患者に挿入する必要がある。これは、針が皮下組織を貫通してから、埋め込まれたポートのアクセスファンネルに挿入される必要があるためである。加えて、IVカテーテルは、埋め込まれたポートのアクセスファンネルにさらに前進される必要がある。患者によっては、IVカテーテルの長さは、埋め込まれたポートにIVカテーテルを留置するには不十分となり得る。この理由で、既存のIVカテーテル留置装置よりも長いIVカテーテルを有するIVカテーテル留置装置が必要である。しかしながら、そのようなIVカテーテル留置装置は、既存のIVカテーテル留置装置よりもさらに長い針を必要とするので、患者をさらに怖がらせかねない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5685855号明細書
【発明の概要】
【0005】
本明細書には、上記の課題に対処するIVカテーテル留置装置および方法が開示される。
本明細書に記載されるIVカテーテル留置装置は、いくつかの実施態様では、カートリッジおよびカートリッジを覆い固定的に配置されたケースを含む。カートリッジは、バレルであって、リリースボタンを該バレルの側面上に有するバレルと、バレルの遠位端部分から延在するばね式の針と、針を覆いスライド可能に配置されたカテーテルハブを含むIVカテーテルと、を含む。ケースは、ケースの側面上に展開ボタンを含む。展開ボタンは、IVカテーテルを針を覆いスライドさせるよう構成される。また、展開ボタンは、展開ボタンがリリースボタンにスライドした際にリリースボタンを押下するよう構成される。展開ボタンがリリースボタンにスライドすると、ニードルハブとバレルの遠位端部分との間で圧縮されたばねが解放される。続いて、針の全体がバレルのニードルキャビティに打ち出される。
【0006】
いくつかの実施態様では、展開ボタンは、ケースとカートリッジとの間に配置された長手方向延長部であって、カテーテルハブの一部に当接する遠位端を有する、長手方向延長部を含む。長手方向延長部は、IVカテーテルを針を覆いスライドさせるよう構成される。
【0007】
いくつかの実施形態では、展開ボタンは径方向延長部を含む。径方向延長部は、展開ボタンがリリースボタンにスライドした際にリリースボタンを押下するよう構成される。
いくつかの実施形態では、ケースは不透明である。不透明であるケースは、ケースの遠位端に近位の針の長さを患者から隠す。
【0008】
いくつかの実施形態では、IVカテーテル留置装置は、IVカテーテルを前進させること、および針を後退させることに関して片手操作用に構成される。
本明細書に開示されるIVカテーテル留置装置はまた、いくつかの実施態様では、カートリッジおよびカートリッジを覆い固定的に配置されたケースを含む。カートリッジは、バレル、バレルから延在する針、および針を覆いスライド可能に配置されたカテーテルハブを含むIVカテーテルを含む。バレルは、ニードルキャビティ、IVカテーテル留置装置の少なくとも初期状態においてニードルキャビティの遠位端部分に対して圧縮されたばね、およびバレルの側面上のリリースボタンを有し、リリースボタンは、ばねが圧縮されている場合にばねを解放するよう構成される。針は、バレルのニードルキャビティ内に係留され配置されるニードルハブを含む。ニードルハブは、IVカテーテル留置装置の少なくとも初期状態において、ばねをニードルキャビティの遠位端部分に対して圧縮する。ケースは、ケースの側面上に展開ボタンを含む。展開ボタンは、IVカテーテルを針を覆いスライドさせるよう構成される。また、展開ボタンは、展開ボタンがリリースボタンにスライドした際にリリースボタンを押下するよう構成される。展開ボタンがリリースボタンにスライドすると、ニードルハブとバレルの遠位端部分との間で圧縮されたばねが解放される。続いて、IVカテーテル留置装置が展開状態になるよう、針の全体がバレルのニードルキャビティに打ち出される。
【0009】
いくつかの実施態様では、展開ボタンは、ケースとカートリッジとの間に配置された長手方向延長部であって、IVカテーテル留置装置の少なくとも初期状態においてカテーテルハブの一部に当接する遠位端を有する、長手方向延長部を含む。長手方向延長部は、IVカテーテルを針を覆いスライドさせるよう構成される。
【0010】
いくつかの実施形態では、長手方向延長部の長さは、IVカテーテルを静脈内に配置するためにIVカテーテルが静脈内で前進する必要がある距離の少なくとも約半分に等しい。
【0011】
いくつかの実施形態では、展開ボタンは径方向延長部を含む。径方向延長部は、展開ボタンがリリースボタンにスライドした際にリリースボタンを押下するよう構成される。
いくつかの実施形態では、ニードルハブは、ニードルハブの中間部分とニードルハブの近位端部分との間に段差を含む。ばねは、IVカテーテル留置装置の少なくとも初期状態において、段差とニードルキャビティの遠位端部分との間で圧縮されニードルハブの中間部分の周囲に配置される。
【0012】
いくつかの実施形態では、ニードルハブはキャッチをニードルハブの遠位端部分に含む。リリースボタンは、IVカテーテル留置装置の少なくとも初期状態においてキャッチに配置される径方向延長部を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、ニードルハブは、針で静脈アクセスを確立する際の血液の逆流用に構成されるニードルハブキャビティを含む。
いくつかの実施形態では、ケースは不透明である。不透明であるケースは、IVカテーテル留置装置の少なくとも初期状態において、ケースの遠位端に近位の針の長さを患者から隠す。
【0014】
いくつかの実施形態では、IVカテーテル留置装置は、IVカテーテルを前進させること、および針を後退させることに関して片手操作用に構成される。
本明細書に開示されるIVカテーテル留置装置の方法は、いくつかの実施態様では、IVカテーテル留置装置を取得する取得工程を含む。IVカテーテル装置は、カートリッジおよびカートリッジを覆い固定的に配置されたケースを含む。カートリッジは、リリースボタンをバレルの側面上に有するバレルと、バレルの遠位端部分から延在するばね式の針と、針を覆いスライド可能に配置されたカテーテルハブを含むIVカテーテルと、を含む。ケースは、ケースの側面上に展開ボタンを含む。方法はまた、針で患者の静脈に穿刺する穿刺工程を含む。方法はまた、展開ボタンを介して、IVカテーテルを針を覆い静脈内にスライドさせるスライド工程を含む。方法はまた、展開ボタンがリリースボタンにスライドした際にリリースボタンを押下するボタン押下工程を含む。針のニードルハブによってニードルキャビティの遠位端部分に対して圧縮されたばねがボタン押下工程によって解放されることで、針の全体がバレルのニードルキャビティに打ち出される。
【0015】
いくつかの実施形態では、スライド工程は、ケースとカートリッジとの間に配置された展開ボタンの長手方向延長部を介してIVカテーテルをスライドさせる工程を含む。長手方向延長部の遠位端は、スライド工程のためにカテーテルハブの部分に当接している。
【0016】
いくつかの実施形態では、スライド工程は、IVカテーテルを静脈内に留置するためにIVカテーテルが静脈内で前進する必要がある距離の少なくとも約半分の距離までIVカテーテルを前進させる。
【0017】
いくつかの実施形態では、ボタン押下工程は、展開ボタンの径方向延長部を介してリリースボタンを押下する工程を含む。
いくつかの実施形態では、ボタン押下工程は、ニードルハブの遠位端部分のキャッチからリリースボタンの径方向延長部を引き抜く工程を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、方法はさらに、ケースの遠位端に近位の針の長さを患者から隠す工程を含む。ケースは、針の長さを隠すために不透明である。
いくつかの実施形態では、方法はさらに、少なくともIVカテーテルを前進させること、および針を後退させることに関して、片手でIVカテーテル留置装置を操作する工程を含む。
【0019】
本明細書で提供される概念のこれらおよび他の特徴は、そのような概念の特定の実施形態をより詳細に説明する添付の図面および以下の説明を考慮することで、当業者により明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】いくつかの実施形態によるIVカテーテル留置装置を示す図。
図2】いくつかの実施形態によるIVカテーテル留置装置の断面を示す図。
図3A】いくつかの実施形態によるIVカテーテル留置装置の初期状態における、IVカテーテル留置装置の断面を示す図。
図3B】いくつかの実施形態によるIVカテーテル留置装置の展開状態の直前の、IVカテーテル留置装置の断面を示す図。
図4A】いくつかの実施形態によるIVカテーテル留置装置が初期状態にある間の、ヒンジ付き口を備えたケースを有するIVカテーテル留置装置を示す図。
図4B】いくつかの実施形態によるIVカテーテル留置装置の展開状態における、図4AのIVカテーテル留置装置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
いくつかの特定の実施形態をより詳細に開示する前に、本明細書に開示される特定の実施形態は、本明細書に提示される概念の範囲を限定しないことを理解されたい。本明細書に開示される特定の実施形態は、その特定の実施形態から容易に切り離すことができ、本明細書に開示される複数の他の実施形態のうちの任意の実施形態の特徴と任意選択で組み合わせまたは置換することができる特徴を有する場合があることも理解されたい。
【0022】
本明細書で使用する用語に関しては、各用語はいくつかの特定の実施形態を説明するためのものであり、本明細書に提示される概念の範囲を限定しないということも理解されたい。序数(たとえば、第1の、第2の、第3の等)は、概して、複数の特徴または工程の群の中で互いに異なる特徴または工程を区別または識別するために使用され、順番の限定または数的な限定を加えるものではない。たとえば、「第1」、「第2」、および「第3」の特徴または工程は、必ずしもこの順序で現れる必要はなく、またそのような特徴または工程を含む特定の実施形態は、必ずしも3つの特徴または工程に限定される必要はない。「左」、「右」、「前」、「後」等の表記は、便宜的に使用されており、たとえば、いかなる特定の固定的な位置、向き、または方向も意味するものではない。むしろ、こうした表記は、たとえば相対的な位置、向き、または方向を示すために使用される。文脈からそうでないことが明らかに示されていなければ、「a」、「an」、および「the」の単数形は、複数形を含む。
【0023】
「近位」に関しては、たとえば本明細書に開示されるカテーテルの「近位部分」または「近位端部分」は、カテーテルのうち、カテーテルを患者に使用するときに臨床医の近くにあるものである部分を含む。同様に、たとえばカテーテルの「近位長」は、カテーテルを患者に使用するときに臨床医の近くにあるものであるカテーテルの長さを含む。たとえばカテーテルの「近位端部」は、カテーテルを患者に使用するときに臨床医の近くにあるものである、カテーテルの端部を含む。カテーテルの近位部分、近位端部分、または近位長は、カテーテルの近位端部を含んでもよいが、カテーテルの近位部分、近位端部分、または近位長は、カテーテルの近位端部を含む必要はない。つまり、そうでないことが文脈で提案されていなければ、カテーテルの近位部分、近位端部分、または近位長は、カテーテルの終端部分または終端長ではない。
【0024】
「遠位」に関しては、たとえば本明細書に開示されるカテーテルの「遠位部分」または「遠位端部分」は、カテーテルのうち、カテーテルを患者に使用するときに患者の近くまたは中にあるものである部分を含む。同様に、たとえばカテーテルの「遠位長」は、カテーテルを患者に使用するときに患者の近くまたは中にあるものであるカテーテルの長さを含む。たとえばカテーテルの「遠位端部」は、カテーテルを患者に使用するときに患者の近くまたは中にあるものである、カテーテルの端部を含む。カテーテルの遠位部分、遠位端部分、または遠位長は、カテーテルの遠位端部を含んでもよいが、カテーテルの遠位部分、遠位端部分、または遠位長は、カテーテルの遠位端部を含む必要はない。つまり、そうでないことが文脈で提案されていなければ、カテーテルの遠位部分、遠位端部分、または遠位長は、カテーテルの終端部分または終端長ではない。
【0025】
別段の定めがない限り、本明細書に用いるあらゆる技術的用語および科学的用語は、当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を持つ。
上記のように、既存のIVカテーテル留置装置の針の長さは、患者、特に針に恐怖を覚える患者を怖がらせる可能性がある。しかしながら、IVカテーテル留置装置は、既存のIVカテーテル留置装置よりもさらに長い針を必要とするので、患者をさらに怖がらせかねない。本明細書には、上記の課題に対処するIVカテーテル留置装置および方法が開示される。
【0026】
いくつかの実施形態では、たとえば、IVカテーテル留置装置は、カートリッジおよびカートリッジを覆い固定的に配置されたケースを含む。カートリッジは、リリースボタンを有するバレルと、バレルから延在するばね式の針と、針を覆いスライド可能に配置されたカテーテルハブを含むIVカテーテルとを含む。ケースは、ケースの側面上に展開ボタンを含む。展開ボタンは、IVカテーテルを針を覆いスライドさせるよう構成される。また、展開ボタンは、展開ボタンがリリースボタンにスライドした際にリリースボタンを押下するよう構成される。展開ボタンがリリースボタンにスライドすると、ニードルハブとバレルの遠位端部分との間で圧縮されたばねが解放される。続いて、針の全体がバレルのニードルキャビティに打ち出される。
【0027】
IVカテーテル留置装置のケースの遠位端に近位の針の長さを隠すことによって、ケースが針の実際の長さを患者からどのように隠すか等のIVカテーテル留置装置および方法のさらなる詳細は、以下に記載される。
【0028】
IVカテーテル留置装置
図1および図2は、いくつかの実施形態によるIVカテーテル留置装置100の異なる図を示す。図3Aおよび図3Bはそれぞれ、いくつかの実施形態による、初期状態におけるIVカテーテル留置装置100および展開状態の直前のIVカテーテル留置装置100の断面図を示す。図4Aおよび図4Bはそれぞれ、いくつかの実施形態による、ヒンジ付き口405を備えたケース404を有するIVカテーテル留置装置400の初期状態および展開状態を示す。
【0029】
図示されるように、IVカテーテル留置装置100は、カートリッジ102およびカートリッジ102を覆うケース104を含む。ケース104は、以下により詳細に記載されるように、ケース104の展開ボタンがカートリッジ102のIVカテーテルを遠位方向にスライドさせることができるように、カートリッジ102を覆い固定的に配置されるよう構成される。
【0030】
カートリッジ102は、バレル206と、バレル206から延在する針208と、針208を覆いスライド可能に配置されたカテーテルハブ212を含むIVカテーテル210とを含む。IVカテーテル留置装置100の少なくとも初期状態では、針208で患者の静脈に穿刺するよう、針208の先端はIVカテーテル210の先端を越えて延在する。上記のように、針208およびIVカテーテル210の両方は、PowerFlow(商標)埋込型アフェレシスIVポート等の埋め込まれたポートにおけるIVカテーテル留置用に、必要に応じて既存のIVカテーテル留置装置のものより長くてもよい。
【0031】
バレル206は、ニードルキャビティ313、IVカテーテル留置装置100の少なくとも初期状態においてニードルキャビティ313の遠位端部分に対して圧縮されたばね314、およびバレル206の側面上のリリースボタン316を含み、リリースボタン316は、IVカテーテル留置装置100の初期状態のようにばね314が圧縮されている場合にばね314を解放するよう構成される。バレル206は、ケース104の側面上における展開ボタンの径方向に延在する経路を提供するよう構成される、溝または通路をバレル206の側面中に含む。ケース104の特徴は以下に記載される。
【0032】
針208は、ニードルハブ218を含み、その少なくとも一部は、バレル206のニードルキャビティ313内に係留され配置されている。ニードルハブ218は、IVカテーテル留置装置100の少なくとも初期状態において、ばね314をニードルキャビティ313の遠位端部分に対して圧縮するよう構成される。具体的には、ニードルハブ218は、ニードルハブ218の中間部分とニードルハブ218の近位端部分との間に段差320を含み、ニードルハブ218の中間部分は、ニードルハブ218の近位端部分よりも小さい直径を有する。ばね314は、IVカテーテル留置装置100の少なくとも初期状態において、段差320とニードルキャビティ313の遠位端部分との間で圧縮されニードルハブ218の中間部分の周囲に配置される。
【0033】
ニードルハブ218は、IVカテーテル留置装置100の少なくとも初期状態においてリリースボタン316の一部を受けるよう構成されるキャッチ322を、ニードルハブ218の遠位端部分に含む。具体的には、リリースボタン316は、IVカテーテル留置装置100の少なくとも初期状態においてキャッチ322に配置される径方向延長部324を含む。
【0034】
ニードルハブ218は、針208で患者の静脈に穿刺し静脈アクセスを確立する際の血液の逆流用に構成されるニードルハブキャビティ326を、ニードルハブ218の近位端部分に含む。
【0035】
ケース104は、ケース104の側面の長手方向スロット229に配置された展開ボタン228を含む。展開ボタン228は少なくとも2つの機能を有する。展開ボタン228は、長手方向スロット229に沿ってスライドすることで、展開ボタン228の第1の機能としてIVカテーテル210を針208を覆いスライドさせるよう構成される。展開ボタン228はまた、展開ボタン228の第2の機能として展開ボタン228がリリースボタン316にスライドした際にリリースボタン316を押下するよう構成される。
【0036】
IVカテーテル210を針208を覆いスライドさせることに関して、展開ボタン228は、ケース104とカートリッジ102との間に配置された長手方向延長部230であって、IVカテーテル留置装置100の少なくとも初期状態においてカテーテルハブ212の一部(たとえば、タブ)に当接する遠位端を有する長手方向延長部230を含む。展開ボタン228は、長手方向延長部230を介して、IVカテーテル210を針208を覆いスライドさせるよう構成される。長手方向延長部230の長さ、つまりケース104の側面の長手方向スロット229の長さは、IVカテーテル210を静脈内に留置するためにIVカテーテル210が静脈内で前進する必要がある距離の少なくとも約半分から全距離に等しい。
【0037】
展開ボタン228がリリースボタン316にスライドした際にリリースボタン316を押下することに関して、展開ボタン228は、径方向延長部232を含む。径方向延長部232は、展開ボタン228がリリースボタン316にスライドした際にリリースボタン316を押下するよう構成される(リリースボタン316を押下する径方向延長部232を示す図3Bを参照)。ニードルハブ218とバレル206の遠位端部分との間で圧縮されたばね314は、展開ボタン228がリリースボタン316にスライドした際に、ニードルハブ218のキャッチ322から離れるようにリリースボタン316の径方向延長部324を回動させることによって解放される。続いて、IVカテーテル留置装置100が展開状態になるよう、針208の全体がバレル206のニードルキャビティ313に打ち出される。
【0038】
ケース104は、図示されるような形状を有するか、またはケース104の中間部分からケース104の遠位端部分までのテーパ部を含んでよい。テーパされた場合、ケース104はケース404のヒンジ付き口405等の機構を含んでよい。ヒンジ付き口405は、IVカテーテル210を前進させる際に開き、カテーテルハブ212を通過させるよう構成される。ヒンジ付き口405のヒンジは、患者に干渉しないように、ヒンジ付き口405をケース404の側面に開くよう構成される。ケースの形状に関係なく、ケース104は好ましくは不透明であってよい。不透明であるケース104は、IVカテーテル留置装置100の少なくとも初期状態において、ケース104の遠位端に近位の針208の長さを隠すことによって、針208の実際の長さを患者から隠す。ケース104によって隠された針の長さは、針208の長さの約半分でよい。これにより、針208の長さで患者を怖がらせることなく、針208の長さを増すことが可能になる。
【0039】
IVカテーテル留置装置100は、リリースボタン316から近位方向にずれた展開ボタン228で構成されることが好ましい。展開ボタン228は、IVカテーテル210の前進および針208の後退を含む上記2つの機能を有するので、ずれによって、少なくともIVカテーテル210の前進および針208の後退の際に、IVカテーテル留置装置100の片手での操作が可能になる。具体的には、ずれによって、展開ボタン228をIVカテーテル留置装置100の便利な中間位置に配置し、より小さなサイズの手を持つ臨床医でさえ、IVカテーテル留置装置100の片手での操作が可能になる。
【0040】
方法
IVカテーテル留置装置100の方法は、IVカテーテル留置装置100を取得する取得工程を含む。上記のように、IVカテーテル装置100は、カートリッジ102と、カートリッジ102を覆い固定的に配置されたケース104とを含む。カートリッジ102は、バレル206の側面上にリリースボタン316を有するバレル206と、バレル206の遠位端部分から延在するばね式の針208と、針208を覆いスライド可能に配置されたカテーテルハブ212を含むIVカテーテル210とを含む。ケース104は、ケース104の側面上に展開ボタン228を含む。方法はまた、針208で患者の静脈に穿刺する穿刺工程を含む。方法はまた、展開ボタン228を介して、IVカテーテル210を針208を覆いスライドさせることで、IVカテーテル210を静脈内で前進させるスライド工程を含む。方法はまた、展開ボタン228がリリースボタン316にスライドした際にリリースボタン316を押下するボタン押下工程を含む。針208のニードルハブ218によってニードルキャビティ313の遠位端部分に対して圧縮されたばね314がボタン押下工程によって解放されることで、針208の全体がバレル206のニードルキャビティ313に打ち出される。
【0041】
スライド工程に関して、スライド工程は、ケース104とカートリッジ102との間に配置された展開ボタン228の長手方向延長部230を介してIVカテーテル210をスライドさせる工程を含む。長手方向延長部230の遠位端は、スライド工程のためにカテーテルハブ212の部分に当接している。スライド工程は、IVカテーテル210を静脈内に留置するためにIVカテーテル210が静脈内で前進する必要がある距離の少なくとも約半分から全距離までIVカテーテル210を前進させる。
【0042】
ボタン押下工程に関して、ボタン押下工程は、展開ボタン228の径方向延長部232を介してリリースボタン316を押下する工程を含む。ボタン押下工程は、ニードルハブ218の遠位端部分のキャッチ322からリリースボタン316の径方向延長部324を引き抜く工程を含む。
【0043】
方法はさらに、ケース104の遠位端に近位の針208の長さを患者から隠す工程を含む。上記のように、ケース104は、針208の長さを隠すために不透明である。
方法はさらに、少なくともIVカテーテル210を前進させること、および針208を後退させることに関して、片手でIVカテーテル留置装置100を操作する工程を含む。
【0044】
いくつかの特定の実施形態が本明細書に開示されており、特定の実施形態がある程度詳細に開示されているが、本明細書で提供される概念の範囲を特定の実施形態が制限することを意図しない。追加的な適応および/または変更は、当業者に理解され得る。より広い態様では、これらの適応および/または変更もまた包含される。したがって、本明細書で提供される概念の範囲から逸脱することなく、本明細書で開示される特定の実施形態から逸脱することができる。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
【国際調査報告】