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特表2022-553135植込み型医療装置をプログラムする方法
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  • 特表-植込み型医療装置をプログラムする方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-22
(54)【発明の名称】植込み型医療装置をプログラムする方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/362 20060101AFI20221215BHJP
【FI】
A61N1/362
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022519602
(86)(22)【出願日】2020-10-22
(85)【翻訳文提出日】2022-05-24
(86)【国際出願番号】 EP2020079740
(87)【国際公開番号】W WO2021078850
(87)【国際公開日】2021-04-29
(31)【優先権主張番号】19205046.6
(32)【優先日】2019-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512158181
【氏名又は名称】バイオトロニック エスエー アンド カンパニー カーゲー
【氏名又は名称原語表記】BIOTRONIK SE & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Woermannkehre 1 12359 Berlin Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デール、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】エルショフ、セルゲイ
(72)【発明者】
【氏名】ラトケ、トルステン
(72)【発明者】
【氏名】ブッシュ、ウルリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】シュナイダー、ペーター
(72)【発明者】
【氏名】パウル、シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ベッカー、フランク
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053BB12
4C053CC01
4C053KK02
4C053KK05
4C053KK07
4C053KK10
(57)【要約】
本発明は、プログラミング装置2の支援で人間又は動物の心臓を刺激するための植込み型医療装置1をプログラムする方法に関する。方法は、a)プログラミング装置2へ第1の入力パラメータを提供するステップであって、第1の入力パラメータが、第1の刺激部が心臓7のヒス束6を刺激するために使用されるかどうかを示す、ステップと、b)第1の入力パラメータが、第1の刺激部が心臓7のヒス束6を刺激するために使用されることを示す場合、ヒス束ペーシングに対して特に適応された少なくとも1つの刺激パラメータ及び割り当てられた刺激パラメータ値を自動的に提案することによって、ヒス束ペーシング用の植込み型医療装置1を構成するためにプログラミング装置2のユーザを支えるステップと、c)少なくとも1つの刺激パラメータ値を設定することを可能にすることによって、植込み型医療装置1のプログラミングを可能にするステップとを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プログラミング装置(2)の支援で人間又は動物の心臓を刺激するための植込み型医療装置(1)をプログラムする方法であって、前記植込み型医療装置(1)は、第1のプロセッサと、第1のメモリ部と、人間又は動物の心臓(7)の心臓領域を刺激するように構成された第1の刺激部と、同じ心臓(7)の前記心臓領域で電気信号を検出するように構成された第1の検出部とを備え、前記方法は、
a)前記プログラミング装置(2)へ第1の入力パラメータを提供するステップであって、前記第1の入力パラメータが、前記第1の刺激部が前記心臓(7)のヒス束(6)を刺激するために使用されるかどうかを示す、ステップと、
b)前記第1の入力パラメータが、前記第1の刺激部が前記心臓(7)の前記ヒス束(6)を刺激するために使用されることを示す場合、ヒス束ペーシングに対して特に適応された少なくとも1つの刺激パラメータ及び割り当てられた刺激パラメータ値を自動的に提案することによって、ヒス束ペーシング用の前記植込み型医療装置(1)を構成するために前記プログラミング装置(2)のユーザを支えるステップと、
c)前記少なくとも1つの刺激パラメータ値を設定することを可能にすることによって、前記植込み型医療装置(1)のプログラミングを可能にするステップと
を備える、方法。
【請求項2】
ヒス束電極(4)の存在が自動的に検出され、積極的に検出された存在が前記第1の入力パラメータとして使用されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1セットの、ヒス束ペーシングに対して特に適応された刺激パラメータ及び割り当てられた刺激パラメータ値が自動的に提案されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ステップb)の前に少なくとも1つの第2の入力パラメータが提供され、前記少なくとも1つの刺激パラメータ及び前記割り当てられた刺激パラメータ値は、前記少なくとも1つの第2の入力パラメータに、さらに応じて提案され、前記少なくとも1つの第2の入力パラメータは、ヒス束電極(4)が接続された前記植込み型医療装置(1)のポート(3)に関する指示、前記植込み型医療装置(1)で治療される患者の心臓疾患に関する指示、前記植込み型医療装置(1)の種類に関する指示、前記植込み型医療装置(1)の型式に関する指示、前記植込み型医療装置(1)のポート(3)の数に関する指示、及び前記植込み型医療装置(1)のポート(3)へ接続されたリードが配置された心臓チャンバに関する指示からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記植込み型医療装置(1)で治療される前記患者の心臓疾患の種類に関する情報が、前記プログラミング装置(2)によりデータベースから検索されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記植込み型医療装置(1)で治療される前記患者の心臓疾患は、永続性心房細動又は粗動を伴う徐脈、発作性又は永続性高度房室ブロック、正常な洞調律を伴う心不全、心不全、永続性心房細動又は粗動を伴う心不全、病洞症候群、徐脈頻脈症候群、変時性不全を伴う病洞症候群、デュアル結節疾患及び永続性房室ブロック、デュアル結節疾患及び発作性房室ブロック、血管迷走神経性失神、症候性1度房室ブロック、まれな発作性心臓の一時停止からなる群から選択されることを特徴とする、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の入力パラメータは、自動的に決定され、ヒス束電極(4)が接続された前記植込み型医療装置(1)の前記ポートに関する指示、前記植込み型医療装置(1)の種類に関する指示、前記植込み型医療装置(1)の型式に関する指示、前記植込み型医療装置(1)のポート(3)の数に関する指示、及び前記植込み型医療装置(1)のポート(3)へ接続されたリードが配置された心臓チャンバに関する指示からなる群から選択されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの刺激パラメータへ割り当てられた前記刺激パラメータ値を変更することを可能にされたことを特徴とする、請求項1から7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
1セットの刺激パラメータ及び割り当てられた刺激パラメータ値を保存することを可能にされ、前記セットは、元の設定に対して変更された少なくとも1つの刺激パラメータ値を含むことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
同じセットの刺激パラメータの変更された刺激パラメータ値と他の刺激パラメータ値との間の不一致を識別することを目的とした自動チェックが行われることを特徴とする請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
警報が、識別された不一致の場合に、作成されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
人間又は動物の心臓を刺激するための植込み型医療装置(1)とプログラミング装置(2)とを備える配列であって、前記植込み型医療装置(1)は、第1のプロセッサと、第1のメモリ部と、人間又は動物の心臓(7)の心臓領域を刺激するように構成された第1の刺激部と、同じ心臓(7)の前記心臓領域で電気信号を検出するように構成された第1の検出部とを備え、前記プログラミング装置(2)は、第2のプロセッサと第2のメモリ部とを備える配列において、
前記第2のメモリ部は、コンピュータ可読プログラムを備え、前記コンピュータ可読プログラムが、前記プロセッサ上で実行されるときに、前記第2のプロセッサに、
a)第1の入力パラメータを取得するステップであって、前記第1の入力パラメータが、前記第1の刺激部が前記心臓(7)のヒス束(6)を刺激するために使用されるかどうかを示す、ステップと、
b)前記第1の入力パラメータが、前記第1の刺激部が前記心臓(7)の前記ヒス束(6)を刺激するために使用されることを示す場合、ヒス束ペーシングに対して特に適応された少なくとも1つの刺激パラメータ及び割り当てられた刺激パラメータ値を自動的に提案することによって、ヒス束ペーシング用の前記植込み型医療装置(1)を構成するために前記プログラミング装置(2)のユーザを支えるステップと、
c)前記少なくとも1つの刺激パラメータ値を設定することを可能にすることによって、前記植込み型医療装置(1)のプログラミングを可能にするステップと
を行わせることを特徴とする、配列。
【請求項13】
前記プログラミング装置(2)は、グラフィカル・ユーザ・インタフェースを表示するための表示装置(8)を備えることを特徴とする、請求項12に記載の配列。
【請求項14】
コンピュータ可読コードを備えるコンピュータ・プログラム製品であって、前記コンピュータ可読コードが、プロセッサ上で実行されるときに、前記プロセッサに、
a)第1の入力パラメータを取得するステップであって、前記第1の入力パラメータが、植込み型医療装置(1)の第1の刺激部が心臓(7)のヒス束(6)を刺激するために使用されるかどうかを示す、ステップと、
b)前記第1の入力パラメータが、前記第1の刺激部が前記心臓(7)の前記ヒス束(6)を刺激するために使用されることを示す場合、ヒス束ペーシングに対して特に適応された少なくとも1つの刺激パラメータ及び割り当てられた刺激パラメータ値を自動的に提案することによって、ヒス束ペーシング用のプログラミング装置(2)の支援で前記植込み型医療装置(1)を構成するために前記プログラミング装置(2)のユーザを支えるステップと、
c)前記少なくとも1つの刺激パラメータ値を設定することを可能にすることによって、前記植込み型医療装置(1)のプログラミングを可能にするステップと
を行わせる、コンピュータ・プログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルによる人間又は動物の心臓を刺激するための植込み型医療装置をプログラムする方法、請求項12のプリアンブルによる植込み型医療装置とプログラミング装置とを備える配列、及び請求項13のプリアンブルによるコンピュータ・プログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
ペースメーカーなどの人間又は動物の心臓を刺激するための植込み型医療装置が、長い間知られていた。それらは様々な機能を実施することができる。治療された心臓を正常な状態に回復させるために適切なペースメーカーによって様々な刺激プログラムを実施することができる。ヒス束を刺激するためのペースメーカーも知られている。
【0003】
ヒス束は、心臓伝導系の一部である特定の心筋細胞の束である。ヒス束は、房室結節の遠位で心尖に向かって位置する。
【0004】
ヒス束ペーシングは、検出(感知)及び刺激電極が、治療される人間又は動物の心臓の心室に植え込まれるのではなく、むしろ心臓のヒス束又はその近くで植え込まれる。ヒス束電極をこのように使用することは、人間又は動物の心臓の特に生理学的刺激を可能にする。
【0005】
ヒス束ペーシング(HBP:His bundle pacing)用の従来の植込み型心臓装置をプログラムすることは、技術的に複雑で、時間がかかり、通常はHBPの熟練者によって手動でなされる。患者にとってHBPは利点があるにもかかわらず、この事実は現在、HBPのより広い採用を制限している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ヒス束ペーシング用の植込み型医療装置のプログラミングを容易にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1に記載の請求の要素を有するプログラミング装置で植込み型医療装置をプログラムする方法で達成される。植込み型医療装置は、人間又は動物の心臓を刺激する役割を果たし、第1のプロセッサと、第1のメモリ部と、第1の刺激部と、第1の検出部とを備える。第1の刺激部は、人間又は動物の心臓の心臓領域を刺激するように構成される。第1の検出部は、同一心臓の心臓領域で電気信号を検出する役割を果たす。この方法は、以下で説明するステップを備える。
【0008】
まず、第1の入力パラメータがプログラミング装置へ提供される。この文脈において、第1の入力パラメータは、第1の刺激部が心臓のヒス束を刺激するために使用されるかどうかを示す。
【0009】
第1の入力パラメータが、第1の刺激部が心臓のヒス束を刺激するために使用されることを示す場合、プログラミング装置のユーザ(例えば、医師)は、ヒス束ペーシング用の植込み型医療装置を構成する際に支えられる。この目的のために、プログラミング装置は、ヒス束ペーシングに対して特に適応された少なくとも1つの刺激パラメータ及び割り当てられた刺激パラメータ値を自動的に提示する。したがって、ユーザが自分自身の動きに対して特定の刺激パラメータ及び割り当てられた刺激パラメータ値を入力する必要がなくなり、むしろプログラミング装置の提案に頼ることが可能である。
【0010】
続いて、プログラミング装置のユーザは、少なくとも1つの刺激パラメータ値を設定することができるので、ヒス束ペーシング用の植込み型医療装置をプログラムすることができる。このアプローチは、ユーザにより、ハードウェアがヒス束ペーシングに対して適応されていない植込み型医療装置もヒス束ペーシングに確実に使用されることができるように、従来の植込み型医療装置をヒス束ペーシングに対して適応させることを特に容易にする。適切な刺激パラメータ及び割り当てられた刺激パラメータ値を選択する際にこの自動支援により、ヒス束ペーシングの熟練者がヒス束ペーシング用の植込み型医療装置のプログラミングを担当する必要がない。むしろ、現在の特許請求の方法は、はるかに広範なユーザの群が、ヒス束ペーシング用の植込み型医療装置を確実にプログラムすることを可能にする。
【0011】
本願の枠内では、刺激パラメータという用語は、心臓の実際の刺激に影響を与えるように設定されたパラメータの意味で理解される。このように、本願の枠内での刺激パラメータは、VVI(R)、AAI(R)、DDD(R)、DDI(R)、DVI(R)のような値、脈幅、脈拍数又は脈振幅のような印加刺激パルスの特定のパラメータ、感知閾値又は利得のような感知パラメータ、房室遅延、心室間遅延、心房ヒス遅延、ヒス心室遅延又は第1のペースのチャンバのようなタイミング・パラメータ、及び/又はオン/オフ有効若しくは無効サブ・プログラムのような刺激パラメータ値を含むペーシングのモードであり得る。刺激パラメータは、心拍数に依存して設定されることができる。
【0012】
実施例では、第1の入力パラメータは、プログラミング装置のユーザによって、例えば、プログラミング装置上の(仮想)ボタンであって、ヒス束ペーシングのために刺激部を使用する意図を確認するボタンを押すことによって、手動で設定される。別の実施例では、ヒス束電極が刺激部へ接続されたかどうかが自動的に検出される。ヒス束電極は、刺激部へ接続され、刺激される心臓のヒス束又はその近くに植え込まれる電極である。このようなヒス束電極は、ヒス束の刺激を可能にする。ヒス束電極のこのような接続が確認された場合、これは第1の入力パラメータとしてとられる。次いで、ユーザは、ヒス束電極の存在を手動で確認する必要がない。ヒス束電極のこのような自動検出は、本方法の全体的な信頼性を高める。
【0013】
実施例では、単一の刺激パラメータ及びその値だけではなく、むしろ、1セットの、ヒス束ペーシングに対して特に適応された刺激パラメータ及び割り当てられた刺激パラメータ値が、プログラミング装置によって自動的に提案される。次いで、ユーザは、ヒス束ペーシングに対して特に適切である複数の刺激パラメータ及び割り当てられた値を含む完全な刺激プログラムを通して容易に導かれる。このようなセットの刺激パラメータ及び割り当てられた値は、療法設定として表記されることもできる。ユーザへ予め特定された療法設定を提案することにより、ヒス束ペーシング用の植込み型医療装置のプログラミングが特に容易になる。
【0014】
実施例では、少なくとも1つの第2の入力パラメータが、植込み型医療装置を構成するためにプログラミング装置のユーザを支えるステップの前に提供される。このような場合、少なくとも1つの刺激パラメータ及び割り当てられた刺激パラメータ値は、第1の入力パラメータに依存して提案されるだけではなく、少なくとも1つの第2の入力パラメータへさらに依存して提案される。このように、少なくとも1つの第2の入力パラメータによって、プログラミング装置が、上記少なくとも1つの刺激パラメータ及び割り当てられた値、又は植込み型医療装置によって治療される患者の具体的な(医療的)必要性に対して特に適応された完全なセットの刺激パラメータ及び割り当てられた値を提案することを可能にする。
【0015】
第1の入力パラメータに関して上述したように、第2の入力パラメータは、プログラミング装置のユーザによって手動で設定され得るか、又はヒス束電極が刺激部へ接続されているかどうかが自動的に検出される。さらに、外部データベースから第2の入力パラメータを受けることも可能であり得る。
【0016】
実施例では、少なくとも1つの第2の入力パラメータは、ヒス束電極が接続された植込み型医療装置のポートに関する指示である。植込み型医療装置は、それに応じた電極又はリードを接続するために、右心房(RA)及び/又は右心室(RV)及び/又は左心室(LV)及び/又はヒス束(HIS)ポートを有してもよい。ヒス束ペーシングに対して特に適応されていない従来の植込み型医療装置は、典型的には、ヒス束ポートも、ヒス束ポートとされた非特定ポートも備えていない。実施例では、ヒス束電極は、植込み型医療装置のRVポートへ接続される。この又は別の実施例では、右心房電極(存在する場合)がRAポートへ接続される。この又は別の実施例では、右心室電極(存在する場合)がLVポートへ接続される(ヒス束電極はすでにRVポートへ接続されているため)。さらに、左心室電極が右心室電極の代わりに使用される場合、左心室電極はLVポートへ接続される。さらに、第2の入力パラメータは、接続されたヒス束電極の種類(製造元、型式及び/又は電極の長さ)でもあり得る。
【0017】
前段落で説明された実施例に対して代替的又は付加的に、少なくとも1つの第2の入力パラメータは、植込み型医療装置で治療される患者の心臓疾患に関する指示である。
【0018】
代替的又は付加的に、少なくとも1つの第2の入力パラメータは、植込み型医療装置の種類に関する指示である。いくつかの実例を挙げると、植込み型医療装置は、植込み型パルス発生器(IPG)、植込み型除細動器(ICD)、又は心臓再同期療法(CRT)用の装置であり得る。
【0019】
代替的又は付加的に、少なくとも1つの第2の入力パラメータは、植込み型医療装置の型式に関する指示である。異なる型式のいくつかの実例を挙げると、植込み型医療装置は、(単一の心臓チャンバを刺激するのに適切な)シングルチャンバ装置、(2つの心臓チャンバを刺激するのに適切な)デュアルチャンバ装置、又は(3つの心臓チャンバを刺激するのに適切な)トリプルチャンバ装置であり得る。代替的又は付加的に、少なくとも1つの第2の入力パラメータは、植込み型医療装置のポートの数に関する指示である。適切なポートの数は、1~4の数(即ち、1、2、3、又は4)である。シングルチャンバ装置は典型的には1つのポートを有する一方で、デュアルチャンバ装置は典型的には2つのポートを有し、トリプルチャンバ装置は典型的には3つのポートを備える。
【0020】
代替的又は付加的に、少なくとも1つの第2の入力パラメータは、植込み型医療装置のポートへ接続されたリード又は電極がそれぞれ配置される又は植え込まれる心臓チャンバに関する指示である。実例を挙げると、この指示は、LVリードが心臓の冠状静脈洞(CS)に配置されていること、又はLVリードが心臓の右心室(RV)に配置されていることを示してもよい。
【0021】
第1の入力パラメータに加えて使用される第2の入力パラメータが多いほど、プログラミング装置のユーザに対する少なくとも1つの刺激パラメータ及びその値の提案がより具体的になされる。これにより、第1及び第2の入力パラメータに基づいて刺激パラメータ及び割り当てられた値の提案を微調整することが可能である。
【0022】
実施例では、少なくとも1つの第2の入力パラメータは、植込み型医療装置で治療される患者の心臓疾患の種類に関する情報を含み、ここで、この情報は、臨床情報システムなどのデータベースからプログラミング装置によって検索される。植込み型医療装置で治療される患者の健康状態に関する情報(又は、より具体的には、植込み型医療装置で治療される患者の心臓疾患に関する情報)のこのような自動送信では、入力エラーは、プログラミング装置によって不適切な刺激パラメータを提案するリスクが大幅に低減されるように最小限に抑えられることができる。現在記載及び特許請求された方法の特に高い信頼性は、ヒス束電極の存在の自動検出及び植込み型医療装置で治療される患者の心臓疾患の種類の自動検索が行われる場合、達成させることができる。この組み合わせられた実施例は、プログラミング装置と人との相互作用を、可能なエラー原因が排除されるように減少させる。
【0023】
実施例では、植込み型医療装置で治療される患者の心臓疾患は、永続性心房細動又は粗動を伴う徐脈、発作性又は永続性高度房室ブロック、心不全、正常な洞調律を伴う心不全、永続性心房細動又は粗動を伴う心不全、病洞症候群、徐脈頻脈症候群、変時性不全を伴う病洞症候群、デュアル結節疾患及び永続性房室ブロック、デュアル結節疾患及び発作性房室ブロック、血管迷走神経性失神、症候性1度房室ブロック、まれな発作性心臓の一時停止からなる群から選択される。まれな発作性心臓一時停止は、与えられた期間における全ての予想される心臓収縮に対する10%未満、特に8%未満、特に5%未満、特に3%未満、特に1%未満(ただし常に必ず0%よりも大きい)の発作性心臓一時停止を示す。
【0024】
植込み型医療装置の型式がシングルチャンバ装置であると特定された場合、選択される可能性のある患者の心臓疾患は、実施例では、永続性心房細動又は粗動を伴う徐脈、及びまれな発作性心臓一時停止に限定される。
【0025】
植込み型医療装置の型式がデュアルチャンバ装置であると特定された場合、選択される可能性のある患者の心臓疾患は、実施例では、病洞症候群、徐脈頻脈症候群、変時性不全を伴う病洞症候群、永続性心房細動又は粗動を伴う徐脈、発作性又は永続性高度房室ブロック、デュアル結節疾患及び永続性房室ブロック、デュアル結節疾患及び発作性房室ブロック、血管迷走神経性失神、及び症候性1度房室ブロックに限定される。
【0026】
植込み型医療装置の型式がトリプルチャンバ装置であると特定された場合、選択される可能性のある患者の心臓疾患は、実施例では、心不全、正常洞調律を伴う心不全、及び永続性心房細動又は粗動を伴う心不全に限定される。
【0027】
実施例では、第2の入力パラメータは自動的に決定される。この実施例は、第2の入力パラメータが、ヒス束電極が接続された植込み型医療装置のポートに関する指示、植込み型医療装置の種類に関する指示、植込み型医療装置の型式に関する指示、前記植込み型医療装置のポートの数に関する指示、及び植込み型医療装置のポートへ接続されたリードが配置されている心臓チャンバに関する指示からなる群から選択される場合に特に適切である。これらのパラメータの全ては、植込み型医療装置によって電子的(特にデジタル)な方式で提供された情報を読み出すことによってプログラミング装置によって特に容易に自動検出されることができる。
【0028】
実施例では、プログラミング装置は、少なくとも1つの提案された刺激パラメータへ割り当てられた刺激パラメータ値の変更を可能にする。次いで、プログラミング装置のユーザは、所望の場合、ユーザの知識に従って、提案された刺激パラメータ値を調節することができる。これにより、後続のヒス束ペーシングをさらに細かく調整することが可能となり、この方法はヒス束ペーシングの分野の熟練者をさらにひきつけるものとなる。
【0029】
実施例では、プログラミング装置は、1セットの刺激パラメータ及び割り当てられた刺激パラメータ値を保存することを可能にし、ここで、このセットは、元の設定に対して変更された少なくとも1つの刺激パラメータ値を含む。したがって、プログラミング装置のユーザが、提案された刺激パラメータ値を変更した場合、プログラミング装置が後の段階でこのセットの刺激パラメータ及び割り当てられた値を復元できるように、変更された刺激パラメータ値を含む完全なセットの刺激パラメータ及び割り当てられた値を保存することが可能であるため、同じ(補正された)刺激パラメータセットを使用することによって別の植込み型医療装置のプログラミングを容易にする。
【0030】
実施例では、プログラミング装置は、同じ刺激パラメータセットの変更された刺激パラメータ値と他の刺激パラメータ値との間の潜在的な不一致を識別するために自動チェックを行う。このような自動チェックは、不適切なバランスの療法設定のリスクを低減し、ヒス束刺激パラメータを使用して、その後に適用されるヒス束ペーシングの全体的な品質を向上させるのに役立つ。
【0031】
実施例では、警報が、識別された不一致の場合に、刺激パラメータの潜在的に不適切な設定をユーザに知らせ且つ刺激パラメータ値を再度補正するようにユーザを促すために、作成される。
【0032】
実施例では、プログラム相談ページ作成者(PCPC:program consult page creator)が、プログラミング装置の表示装置を介してヒス束ペーシングのプログラミングを支えるための1つ又は複数のアルゴリズムを含むソフトウェア・モジュールを描いて提供される。PCPCは、ユーザとソフトウェア・モジュールとの間の1つ又は複数の相互作用を可能にする。
【0033】
実施例では、PCPCは、予め特定されたプログラム相談ページの表又は一覧をユーザへ提供し、ここで、ユーザは、最終的に、これらのページのうちの1つを選択することができる。
【0034】
態様において、本発明は、植込み型医療装置とプログラミング装置とを備える配列に関する。
【0035】
植込み型医療装置は、人間又は動物の心臓を刺激する役割を果たし、第1のプロセッサと、第1のメモリ部と、第1の刺激部と、第1の検出部とを備える。第1の刺激部は、人間又は動物の心臓の心臓領域を刺激するように構成されている。第1の検出部は、同じ心臓の心臓領域で電気信号を検出する役割を果たす。
【0036】
第2のメモリ部は、第2のプロセッサ上で実行されるときに、第2のプロセッサに以下に説明するステップを行わせるコンピュータ可読プログラムを備える。
【0037】
まず、第1の入力パラメータがプログラミング装置へ提供される。この文脈において、第1の入力パラメータは、第1の刺激部が心臓のヒス束を刺激するために使用されるかどうかを示す。
【0038】
第1の入力パラメータが、第1の刺激部が心臓のヒス束を刺激するために使用されることを示す場合、プログラミング装置のユーザ(例えば、医師)は、ヒス束ペーシング用の植込み型医療装置を構成する際に支えられる。この目的のために、プログラミング装置は、ヒス束ペーシングに対して特に適応された少なくとも1つの刺激パラメータ及び割り当てられた刺激パラメータ値を自動的に提示する。
【0039】
続いて、プログラミング装置のユーザは、少なくとも1つの刺激パラメータ値を設定するので、ヒス束ペーシング用の植込み型医療装置をプログラムすることができる。
【0040】
実施例では、プログラミング装置は、グラフィカル・ユーザ・インタフェースを表示するための表示装置を備える。このような表示装置は、プログラミング装置のユーザとの相互作用を容易にし、提案された刺激パラメータ及び割り当てられた値をユーザへ提供することを特に容易にする。
【0041】
実施例では、植込み型医療装置は、第1のデータ通信部を備え、プログラミング装置は、第2のデータ通信部を備える。次いで、植込み型医療装置とプログラミング装置との間のデータ送信は、第1のデータ通信部及び第2のデータ通信部の支援で行われることができる。
【0042】
実施例では、第1及び第2のデータ通信部は、無線方式でプログラミング装置へデータを転送する役割を果たす。全ての標準的なデータ送信プロトコル又は仕様は、このような無線データ通信に適している。標準的なデータ送信プロトコル又は仕様の実例は、医療装置無線通信サービス(MICS:Medical Device Radiocommunications Service)、ブルートゥース・ロー・エナジー(BLE:Bluetooth Low Energy)プロトコル、及びジグビー仕様である。
【0043】
態様では、本発明は、プロセッサ上で実行されるときにプロセッサに以下に説明されるステップを行わせるコンピュータ可読コードを含むコンピュータ・プログラム製品に関する。
【0044】
まず、第1の入力パラメータがプログラミング装置へ提供される。この文脈において、第1の入力パラメータは、植込み型医療装置の第1の刺激部が心臓のヒス束を刺激するために使用されるかどうかを示す。
【0045】
第1の入力パラメータが、第1の刺激部が心臓のヒス束を刺激するために使用されることを示す場合、プログラミング装置のユーザ(例えば、医師)は、ヒス束ペーシング用の植込み型医療装置を構成する際に支えられる。この目的のために、プログラミング装置は、ヒス束ペーシングに対して特に適応された少なくとも1つの刺激パラメータ及び割り当てられた刺激パラメータ値を自動的に提案する。
【0046】
続いて、プログラミング装置のユーザは、少なくとも1つの刺激パラメータ値を設定するので、ヒス束ペーシング用の植込み型医療装置をプログラムすることができる。
【0047】
記載された方法の全ての実施例は、任意の所望の方法で組み合わせることができ、個々に、又はあらゆる任意の組み合わせのどちらかで、配列へ、及びコンピュータ・プログラム製品へ転送することができる。さらに、配列に関して記載された全ての実施例は、任意の所望の方法で組み合わせることができ、個々に、又はあらゆる任意の組み合わせのどちらかで、記載された方法へ又は記載されたコンピュータ・プログラム製品へ転送させることができる。最後に、コンピュータ・プログラム製品に関して記載された全ての実施例は、任意の所望の方法で組み合わせることができ、個々に、又はあらゆる任意の組み合わせのどちらかで、記載された配列へ又は記載された方法へ転送することができる。
【0048】
本発明の態様のさらなる詳細は、例示的な実施例及び添付の図を参照して以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】ペースメーカー及びプログラミング装置の配列を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図1は、ペースメーカー1及びプログラミング装置2の配列を示す。ペースメーカー1は、ヒス束電極4が挿入されるポート3を備える。ヒス束電極4は、人間の心臓7のヒス束6に植え込まれたその遠位端に電極5を備える。
【0051】
プログラミング装置2は、プログラミング装置2のユーザとの相互作用を可能にするための表示装置8を備える。プログラミング装置2及びペースメーカー1は、無線通信9によって互いに操作可能に結合されている。この無線通信9により、プログラミング装置2の支援でペースメーカー1をプログラムすることが可能である。このようなプログラミングを実施するために、プログラミング装置2は、まず、ヒス束電極がペースメーカー1へ接続されているかどうかの入力を要求する。本実施例では、ヒス束電極4は、それに応じた質問が「はい」と回答されるように、ペースメーカー1へ接続される。これは、対応するプロンプトを確認することによって手動でなされることができる。或いは、それぞれの情報は、プログラミング装置2によって植込み型ペースメーカー1から自動的に得られる。
【0052】
ペースメーカー1の種類などのさらなる入力パラメータ、ペースメーカー1によって心臓7が刺激される患者の健康状態及びヒス束電極4が差し込まれるポート3に応じて、プログラミング装置2は、人間の心臓7のヒス束6を刺激するための適切な療法設定を提案する。この療法設定の個々のパラメータは、所望の場合、ユーザによって調節されることができる。その後、任意に調節された療法設定の選択は、ペースメーカー1が送信された療法設定を使用することによって操作を開始又は操作を継続するように、確認され且つペースメーカー1へ転送される。
【0053】
以下では、ヒス束電極4がペースメーカー1のポート3へ接続されていることを示すと、プログラミング装置2のユーザへ提案されることができるいくつかの例示的な予め構成されたプログラム(所謂プログラム相談プログラム)を以下に列挙する。
【0054】
患者の状態及びインプラントの種類に応じて、電極の配置のための構成がユーザへ提案される。以下の表は、SR(シングルチャンバ装置)、DR(デュアルチャンバ装置)、及びHF(トリプルチャンバ装置)の異なる装置の種類、心房細動(AF)、房室(AV)、左心室(LV)、右心室(RV)、冠状静脈洞(CS)に対するヒス束ペーシングの適切なプログラミングを支えるための予め構成されたプログラムのいくつかの実例を列挙する。
【0055】
【表1】
【0056】
予め構成されたプログラムは、例えば、ヒス束が正常な洞調律の患者に対して刺激され、従来のトリプルチャンバ装置及び装置のRVポートへ接続されたヒス束ペーシング・リードが装備され、LVリードは冠状静脈洞に配置される場合、刺激パルスに対する異なるパルス幅(例えば、ヒス束が刺激された場合、1ミリ秒のパルス幅)、異なる検出又は感知閾値、及び/又は増幅利得、レート依存性心房ヒス(AH)遅延(例えば、1分当たり60拍のレートで70ミリ秒のペース後のAH1遅延)及び/又はヒス心室(HV)遅延(例えば、30ミリ秒のペース後のHV遅延)を提案し得る。
図1
【国際調査報告】