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特表2022-553144ポリオレフィンアクリルポリマーによるスチレン系ポリマーの耐衝撃性改質
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-22
(54)【発明の名称】ポリオレフィンアクリルポリマーによるスチレン系ポリマーの耐衝撃性改質
(51)【国際特許分類】
   C08L 25/08 20060101AFI20221215BHJP
   C08L 51/04 20060101ALI20221215BHJP
   C08L 25/12 20060101ALI20221215BHJP
   C08F 255/02 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
C08L25/08
C08L51/04
C08L25/12
C08F255/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520809
(86)(22)【出願日】2020-10-14
(85)【翻訳文提出日】2022-04-04
(86)【国際出願番号】 US2020055462
(87)【国際公開番号】W WO2021076541
(87)【国際公開日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】62/916,905
(32)【優先日】2019-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クルス、カルロス エー.
(72)【発明者】
【氏名】チェン、リャン
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン、スティーブン シー.
(72)【発明者】
【氏名】ルオ、プー
【テーマコード(参考)】
4J002
4J026
【Fターム(参考)】
4J002BC061
4J002BN032
4J002BN062
4J002BN072
4J002BN212
4J002GN00
4J002GQ00
4J026AA11
4J026AA12
4J026AA13
4J026AC01
4J026AC02
4J026AC04
4J026AC32
4J026BA27
4J026GA09
(57)【要約】
マトリックスポリマー樹脂と、耐衝撃性改質剤と、を含む、耐衝撃性改質樹脂が開示される。耐衝撃性改質剤は、架橋ポリオレフィンエラストマー粒子にグラフトされた1つ以上の(メタ)アクリルモノマーを有する、架橋ポリオレフィンエラストマーの粒子を含む。マトリックスポリマー樹脂は、スチレン系ポリマーである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐衝撃性改質剤と、マトリックスポリマー樹脂と、を含む、耐衝撃性改質樹脂であって、前記耐衝撃性改質剤が、架橋ポリオレフィンエラストマーの粒子を含み、1つ以上の(メタ)アクリルモノマーが、前記架橋ポリオレフィンエラストマー粒子にグラフトされており、前記マトリックスポリマー樹脂が、スチレン系ポリマーを含む、耐衝撃性改質樹脂。
【請求項2】
前記ポリオレフィンエラストマーが、第1のポリオレフィンエラストマーと、追加のポリオレフィンエラストマー、ランダムコポリマー、およびブロックコポリマーから選択される少なくとも1つの追加の成分と、を含む、先行請求項に記載の耐衝撃性改質樹脂。
【請求項3】
前記ポリオレフィンエラストマーが、エチレンホモポリマー、エチレン/α-オレフィンコポリマー、エチレン/α-オレフィンブロックコポリマー、プロピレンホモポリマー、プロピレン/α-オレフィンコポリマー、およびプロピレン/α-オレフィンブロックコポリマーからなる群から選択される、請求項1または2に記載の耐衝撃性改質樹脂。
【請求項4】
前記ポリオレフィンエラストマーが、エチレン-オクテンコポリマーおよびエチレン-ブテンコポリマーから選択される、先行請求項のいずれか一項に記載の耐衝撃性改質樹脂。
【請求項5】
前記1つ以上の(メタ)アクリルモノマーが、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、およびブチル(メタ)アクリレートから選択される、先行請求項のいずれか一項に記載の耐衝撃性改質樹脂。
【請求項6】
前記スチレン系コポリマーが、スチレン-アクリロニトリルコポリマーである、先行請求項のいずれか一項に記載の耐衝撃性改質樹脂。
【請求項7】
前記架橋ポリオレフィン樹脂の前記粒子が、200~1000nmの範囲の平均粒子サイズを有する、先行請求項のいずれか一項に記載の耐衝撃性改質樹脂。
【請求項8】
前記架橋ポリオレフィン樹脂の前記粒子が、300~800nmの範囲の平均粒子サイズを有する、請求項7に記載の耐衝撃性改質樹脂。
【請求項9】
前記耐衝撃性改質剤が、前記耐衝撃性改質剤および前記マトリックスポリマー樹脂の総重量に対して、20~50重量%の範囲の量で存在する、先行請求項のいずれか一項に記載の耐衝撃性改質樹脂。
【請求項10】
先行請求項のいずれか一項に記載の耐衝撃性改質樹脂を含む、物品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、スチレン系ポリマーの耐衝撃性改質である。
【背景技術】
【0002】
スチレン-アクリロニトリル(SAN)および他のスチレンベースのコポリマーは、硬度、低密度、高温耐性および薬品耐性、ならびに加工の容易さなどの非常に魅力的な特性を有する。SANコポリマーは、家庭用品、包装、電化製品、自動車用内部レンズ、産業用電池ケース、および医療部品などの商品に広く使用されている(Encyclopedia of Polymer Science and Technology,pp.174-203)。その固有の脆性のために、SANコポリマーは、多くの場合、その耐衝撃性を強化するためにゴムとブレンドされる。他のゴムの中でも、SANをグラフトされたポリブタジエンもしくはポリ(ブチルアクリレート)、エチレン-ビニルアセテート(EVA)コポリマー、塩素化ポリエチレンコポリマー(CPE)、ならびにSANをグラフトされたかもしくは好適なEVAとブレンドされたかのいずれかのエチレン-プロピレンジエンモノマー(EPDM)ポリマー、またはさらにはシリコーンベースのゴムが、SANの耐衝撃性を改質するために使用されている。
【0003】
耐衝撃性改質に使用されるゴムがブタジエンベースである場合、SANと、SANをグラフトされたブタジエンとの最終ブレンドはABSと称され、これはプラスチック産業において周知の材料であり、ラジエーターグリル、ヘッドライトハウジング、ミラーハウジングなどを含む自動車部品などの多くの用途に使用され、ABSの第2の主要な用途である電化製品においては、このプラスチックは、冷蔵庫のドアおよびライナーに使用される。依然として、ABSの重要な問題は、ゴム相にブタジエンを使用することに起因する耐候性の低さである。
【0004】
剛性シェルをグラフトされた、ポリ(ブチルアクリレート)ベースのゴムは、当該技術分野において周知である。特に、アクリロニトリル-スチレン-アクリレート材料(ASA)は、SANシェルをグラフトされ、かつSANマトリックス中に分散された、ブチルアクリレートゴムのコアからなる。あるいは、グラフトされた剛性シェルは、メチルメタクリレート、MMA、またはMMAと別のモノマーとのコポリマーから作製され得る。これらの材料では、耐候性は非常に高いが、達成される耐衝撃性のレベルは、ABSで観察されるレベルよりも低い。
【0005】
SANコポリマーを強化する別の代替案は、それらをSANと互換性にする好適なモノマーをグラフトされた、ポリオレフィンベースのエラストマーを使用することである。この方法論にはいくつかの例が存在し、例えば、SAN自体をグラフトされた、エチレン-プロピレン-ジエンモノマーゴムであるEPDM、またはメチルメタクリレート-アクリロニトリル(MAN)コポリマーをグラフトされた、エチレン-ブテンコポリマー(EB)などである(CN10/1684169(B))。これらの材料は、一般に、アクリロニトリル-エチレン-エラストマー-スチレン、またはAESとして既知であり、グラフトされていないEPDMまたは同様のエラストマーの分散および結合を容易にするためにSANと互換性のあるコポリマーを添加したものなど、様々なバージョンが存在する。このアプローチにはいくつかの不便があり、例えば、EPDM-SAN材料では溶媒中で行われるグラフト反応、またはEB-MANグラフトでは溶媒-水性懸濁液の組み合わせなどである。加工のばらつきは、グラフト化と相溶化の両方のアプローチに影響を与える可能性がある。
【0006】
ある特定のアクリル耐衝撃性改質剤(AIM)二峰性ブレンドは、35重量%の負荷で約150J/mを生成している。ASA Geloyd GRXTWE270Mは、40重量%の負荷を使用して145J/mを示す。他者は、EXL-2330が、25%のANを含むSANにおいて他のアクリルよりも良好な性能を示すことを観察している(A.C.Steenbrink,V.M.Litvinov and R.J.Gaymans,Polymer Vol.39 No.20,pp.4817-4825,1998)。
【0007】
KR2017/054642(A)は、高速均質化によって乳化され、かつSANをグラフトされた、エチレン-α-オレフィンコポリマーの使用を開示している。この改質剤は、高い光沢性および良好な着色性を提供し、かつABSと比較して良好な耐候性を提供しながら、SANの耐衝撃性を改質するのに有用である。
【0008】
しかしながら、耐衝撃性と耐候性の両方を提供する、スチレン系ポリマーのための耐衝撃性改質剤に対する必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0009】
耐衝撃性改質剤と、マトリックスポリマー樹脂と、を含む、耐衝撃性改質樹脂が、本明細書に開示される。耐衝撃性改質剤は、少なくとも1つの(メタ)アクリルモノマーが架橋ポリオレフィンエラストマー粒子にグラフトされた、架橋ポリオレフィンエラストマーの粒子を含む。マトリックスポリマー樹脂は、スチレン系ポリマーを含む。
【0010】
耐衝撃性改質樹脂を含む物品も開示される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書で使用される場合、以下の用語は、文脈が別途明確に示さない限り、指定された定義を有する。
【0012】
炭化水素は、水素および炭素の原子のみを含有する化合物である。炭素および水素以外の原子は、「ヘテロ」原子である。1つ以上のヘテロ原子を含有する化学基は、「ヘテロ」基である。
【0013】
本明細書において使用される場合、「ポリマー」は、より小さい化学的繰り返し単位の反応生成物で構成される、比較的大きな分子である。ポリマーは、直鎖状、分岐状、星型、ループ状、超分岐状、架橋状、またはそれらの組み合わせである構造を有し得、ポリマーは、単一タイプの繰り返し単位(「ホモポリマー」)を有し得るか、またはそれらは、2つ以上のタイプの繰り返し単位(「コポリマー」)を有し得る。コポリマーは、ランダムに、順番に、ブロックで、他の配置で、またはそれらの任意の混合もしくは組み合わせで配置された様々なタイプの繰り返し単位を有し得る。ポリマーは、1,000ダルトン以上の重量平均分子量を有する。十分に架橋され、あらゆる溶媒において不溶性となるポリマーは、無限の分子量を有すると見なされる。
【0014】
互いに反応してポリマーの繰り返し単位を形成することができる分子は、本明細書において「モノマー」として既知である。そのように形成された繰り返し単位は、本明細書においてモノマーの「重合単位」として既知である。
【0015】
オレフィンモノマーは、1つ以上の炭素-炭素二重結合を有し、かつ芳香環を有しない炭化水素であるモノマーである。
【0016】
50重量%超のオレフィンモノマーの重合単位を有するポリマーは、ポリオレフィンである。ビニル芳香族モノマーは、R1、R2、R3、およびR4のうちの1つ以上が、1つ以上の芳香族環を含有する、ビニルモノマーである。(メタ)アクリレートは、アクリレートまたはメタクリレートを意味する。(メタ)アクリルは、アクリルまたはメタクリレートを意味する。(メタ)アクリルモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、それらのアルキルエステル、それらの置換アルキルエステル、それらのアミド、それらのN-置換アミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、およびそれらの混合物から選択されるモノマーである。置換基は、例えば、ヒドロキシル基、アルキル基、芳香族基、非芳香族炭素-炭素二重結合を含有する基、もしくは他の基、またはそれらの組み合わせであり得る。(メタ)アクリルポリマーは、50重量%超の(メタ)アクリルモノマーの重合単位を有するポリマーである。
【0017】
アルファ-オレフィンは、3つ以上の炭素原子を有し、かつ末端炭素原子に位置する正確に1つの炭素-炭素二重結合を有する炭化水素である。すなわち、アルファ-オレフィンでは、炭素-炭素二重結合の2つの炭素原子のうちの少なくとも1つも、結合する2つの水素原子を有する。ジエンは、正確に2つの炭素-炭素二重結合を有する炭化水素である。ジエンは、共役していても共役していなくてもよい。
【0018】
開始剤および/または連鎖移動剤からのフラグメントとして、少数のヘテロ基がポリオレフィンに結合している場合でも、炭化水素モノマーのみから作製されているポリオレフィンは、炭化水素であると見なされる。炭化水素ポリオレフィンでは、ヘテロ原子対すべてのモノマーの重合単位のモル比は、0.001:1以下である。炭化水素ではないポリオレフィンは、非炭化水素ポリオレフィンである。
【0019】
本明細書で使用される場合、架橋剤は、2つ以上の炭素-炭素二重結合を有する化合物である。
【0020】
分散液は、連続した液体媒体全体に分布する粒子の集合体である。液体媒体が、液体媒体の重量に基づいて、50重量%以上の水である場合、連続液体媒体は、水性媒体である。分散液は、分散液を計量(WDISP)し、次いで、重量が安定するまで150℃の赤外線湿度天秤で分散液を乾燥させ、次いで、乾燥残留物の重量(WDRY)を決定し、次いで、固形分=100*WDRY/WDISPによって決定される「固形分」含有量を有する。
【0021】
開始剤は、開始条件に曝露されると、フリーラジカル重合を開始することができるラジカル部分を生成する化合物である。開始条件の本質は、開始剤によって異なる。いくつかの例では、熱開始剤は、十分に高い温度に加熱するとラジカル部分を生成し、光開始剤は、十分に短い波長および十分に高い強度の放射線に曝露されると、ラジカル部分を生成する。別の例として、酸化還元開始剤は、酸化/還元反応で一緒に反応して、ラジカル部分を生成する一対の分子であり、開始条件は、その対の両方のメンバーが存在し、互いに反応し得るときに取得される。
【0022】
エマルション重合は、モノマーエマルション液滴、水溶性開始剤、および任意選択的にシード粒子が水性媒体中に存在するプロセスである。エマルション重合中、モノマー分子は、モノマーエマルション液滴から、重合が行われる粒子へと移動し、この粒子は、重合中に形成される別個の粒子であり得るか、またはシード粒子、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0023】
ポリマーは、そのガラス遷移温度(Tg)によって特徴付けられ得、これは、変曲点法を使用して、10℃/分の走査速度で、示差走査熱量測定(DSC)によって測定される。
【0024】
粒子の集合体は、体積平均直径によって特徴付けられ得る。
【0025】
比率は、本明細書において、以下のように特徴付けられる。例えば、比率が5:1以上であると言われる場合、その比率は、5:1または6:1または100:1であり得るが、4:1にはなり得ない。この特徴を一般的に述べると、比率がX:1以上であると言われる場合、その比率は、Y:1であり、ここで、YはX以上である。同様に、例えば、比率が2:1以下であると言われる場合、その比率は、2:1または1:1または0.001:1であり得るが、3:1にはなり得ないことを意味する。この特徴を一般的に述べると、比率がZ:1以下であると言われる場合、その比率は、W:1であり、ここで、WはZ以下である。
【0026】
本発明の第1の態様は、耐衝撃性改質剤と、マトリックスポリマー樹脂と、を含む、耐衝撃性改質樹脂であって、耐衝撃性改質剤が、架橋ポリオレフィンエラストマーの粒子を含み、1つ以上の(メタ)アクリルモノマーが、架橋ポリオレフィンエラストマー粒子にグラフトされており、マトリックスポリマー樹脂が、スチレン系ポリマーを含む、耐衝撃性改質樹脂に関する。
【0027】
好ましくは、架橋ポリオレフィンエラストマー粒子は、コアを形成し、架橋ポリオレフィンエラストマー粒子にグラフトされた1つ以上の(メタ)アクリルモノマーは、コアの周囲に少なくとも部分的にシェルを形成する。
【0028】
耐衝撃性改質剤は、好ましくは、国際公開第2019/133168号および米国特許第10,131,775号(これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているプロセスなどの、押出-エマルションプロセスを使用して、ポリオレフィンエラストマーを分散させることによって調製される。
【0029】
好ましくは、ポリオレフィンエラストマー粒子の分散液の体積平均粒子直径は、50nm~2500nmの範囲である。ポリオレフィンエラストマー粒子は、100nm以上、より好ましくは150nm以上、より好ましくは200nm以上、またはより好ましくは250nm以上であり得る。好ましくは、初期ポリオレフィン粒子の分散液の体積平均粒子直径は、2000nm以下、より好ましくは1500nm以下、より好ましくは1000nm以下、またはより好ましくは800nm以下である。
【0030】
高剪断機械的分散プロセスは、ポリオレフィンエラストマー粒子を、溶媒を使用せずに水相で形成することを可能にし得る。さらに、このプロセスは、ポリオレフィンエラストマー粒子のサイズを設定することを可能にする
【0031】
初期ポリオレフィンエラストマー粒子中の総ポリオレフィンの量は、分散液の総固形分重量に基づいて、50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上である。初期ポリオレフィン粒子中の総ポリオレフィンポリマーの量は、分散液の総固形分重量に基づいて、好ましくは98重量%以下、より好ましくは96重量%以下である。
【0032】
初期ポリオレフィンエラストマー粒子は、好ましくは、50℃以下、より好ましくは30℃以下、より好ましくは15℃以下、より好ましくは0℃以下、より好ましくは-15℃以下のTgを有する。
【0033】
ポリオレフィンエラストマーは、ポリオレフィンホモポリマーおよびコポリマーから選択され得る。ポリオレフィンエラストマーは、単一のポリオレフィンエラストマー、2つ以上のポリオレフィンエラストマーのブレンド、または1つ以上のポリオレフィンエラストマーと1つ以上の追加のポリマーとのブレンドを含み得る。
【0034】
ポリオレフィンの例としては、典型的にはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ-1-ブテン、ポリ-3-メチル-1-ブテン、ポリ-3-メチル-1-ペンテン、ポリ-4-メチル-1-ペンテン、エチレン-プロピレンコポリマー、エチレン-1-ブテンコポリマー、およびプロピレン-1-ブテンコポリマーによって表されるような、エチレン、プロピレン、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、および1-ドデセンなどの1つ以上のアルファ-オレフィンのホモポリマーおよびコポリマー;典型的にはエチレンブタジエンコポリマーおよびエチレン-エチリデンノルボルネンコポリマーによって表されるような、共役または非共役ジエンとのアルファ-オレフィンのコポリマー;ならびに典型的にはエチレン-プロピレン-ブタジエンコポリマー、エチレン-プロピレンジシクロペンタジエンコポリマー、エチレン-プロピレン-1,5-ヘキサジエンコポリマー、およびエチレンプロピレン-エチリデンノルボルネンコポリマーによって表されるような、共役または非共役ジエンとの2つ以上のアルファ-オレフィンのコポリマーなどのポリオレフィン;エチレン-ビニルアセテートコポリマー、エチレン-ビニルアルコールコポリマー、エチレン-ビニルクロリドコポリマー、エチレンアクリル酸またはエチレン-(メタ)アクリル酸コポリマー、およびエチレン-(メタ)アクリレートコポリマーなどのエチレン-ビニル化合物コポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。これらの樹脂は、単独で、または2つ以上の組み合わせで使用され得る。
【0035】
選択された実施形態では、ポリオレフィンは、例えば、エチレン-アルファオレフィンコポリマー、プロピレン-アルファオレフィンコポリマー、およびオレフィンブロックコポリマーからなる群から選択される、1つ以上のポリオレフィンを含み得る。特に、選択された実施形態では、ポリオレフィンは、1つ以上の非極性ポリオレフィンを含み得る。
【0036】
特定の実施形態では、ポリプロピレン、ポリエチレン、それらのコポリマー、およびそれらのブレンド、ならびにエチレン-プロピレン-ジエンターポリマーなどのポリオレフィンが使用され得る。いくつかの実施形態では、例示的なオレフィンポリマーとしては、米国特許第3,645,992号に記載されている均質ポリマー;米国特許第4,076,698号に記載されている高密度ポリエチレン(HDPE);不均質に分岐した直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE);不均質に分岐した直鎖状超低密度ポリエチレン(ULDPE);均質に分岐した直鎖状エチレン/アルファ-オレフィンコポリマー;例えば、米国特許第5,272,236号および同第5,278,272号(それらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているプロセスによって調製することができる、均質に分岐した、実質的に直鎖状のエチレン/アルファ-オレフィンポリマー;ならびに低密度ポリエチレン(LDPE)またはエチレン-ビニルアセテートポリマー(EVA)などの高圧フリーラジカル重合エチレンポリマーおよびコポリマーが挙げられる。
【0037】
1つの特定の実施形態では、ポリオレフィンは、実質的にアイソタクチックなプロピレン配列を有することを特徴とする、プロピレン/アルファ-オレフィンコポリマーである。「実質的にアイソタクチックなプロピレン配列」は、配列が、13C NMRによって測定される、約0.85超、代替的には、約0.90超、さらに代替的には、約0.92超、さらに代替的には、約0.93超のアイソタクチックなトライアド(mm)を有することを意味する。アイソタクチックなトライアドは、当該技術分野において周知であり、かつ、例えば、米国特許第5,504,172号および国際公開第00/01745号に記載されており、これは、13C NMRスペクトルによって決定されるコポリマー分子鎖中のトライアド単位に関するアイソタクチックな配列を指す。プロピレン/アルファ-オレフィンコポリマーは、プロピレン由来の単位、および1つ以上のアルファ-オレフィンコモノマー由来のポリマー単位を含む。プロピレン/アルファ-オレフィンコポリマーの製造に利用される例示的なコモノマーは、CおよびC~C10アルファ-オレフィン、例えば、C、C、C、およびCアルファ-オレフィンである。
【0038】
オレフィンコポリマーは、ASTM D-1238(190℃/2.16Kg)に従って測定される、1~1500g/10分の範囲のメルトフローレートを有し得る。1~1500g/10分のすべての個々の値および下位範囲が本明細書に含まれ、かつ本明細書に開示されており、例えば、メルトフローレートは、1g/10分、2g/10分、3g/10分、4g/10分、5g/10分、100g/10分、200g/10分、500g/10分、800g/10分、1000g/10分、1300g/10分、または1400g/10分の下限~1500g/10分、1250g/10分、1000g/10分、800g/10分、500g/10分、100g/10分、50g/10分、40g/10分、および30g/10分の上限であり得る。例えば、プロピレン/アルファ-オレフィンコポリマーは、1~1500g/10分、または1~500g/10分、または500~1500g/10分、または500~1250g/10分、または300~1300g/10分、または5~30g/10分の範囲のメルトフローレートを有し得る。
【0039】
オレフィンコポリマーは、3.5以下、代替的には3.0以下、またはさらに代替的には1.8~3.0の、数平均分子量(Mw/Mn)によって除算した重量平均分子量として定義される分子量分布(MWD)を有する。そのようなオレフィンコポリマーは、VERSIFY(商標)およびENGAGE(商標)の商品名でThe Dow Chemical Companyから、またはVISTAMAXX(商標)およびEXACT(商標)の商品名でExxonMobil Chemical Companyから市販されている。
【0040】
他の選択された実施形態では、オレフィンブロックコポリマー、例えば、国際公開第2005/090427号および米国特許出願公開第2006/0199930号(参照により、そのようなオレフィンブロックコポリマーを記載する範囲が本明細書に組み込まれる)に記載されているものなどのエチレンマルチ-ブロックコポリマーは、ポリオレフィンとして使用され得る。そのようなオレフィンブロックコポリマーは、エチレン/α-オレフィンインターポリマーであって、
(a)約1.7~約3.5のMw/Mn、少なくとも1つの融点Tm(単位は摂氏度)、および密度d(単位はグラム/立方センチメートル)を有し、Tmおよびdの数値が、以下の関係に対応するか、
Tm>-2002.9+4538.5(d)-2422.2(d)
(b)約1.7~約3.5のMw/Mnを有し、かつ融解熱ΔH(単位はJ/g)、および最高DSCピークと最高CRYSTAFピークとの間の温度差として定義されるデルタ量ΔT(単位は摂氏度)を特徴とし、ΔTおよびΔHの数値が、以下の関係を有し、
ΔHがゼロより大きく、かつ最大130J/gである場合、ΔT>-0.1299(ΔH)+62.81、
ΔHが130J/gより大きい場合、ΔT≧48℃
CRYSTAFピークが、累積ポリマーの少なくとも5パーセントを使用して決定されており、ポリマーの5パーセント未満が識別可能なCRYSTAFピークを有する場合、CRYSTAF温度が、30℃であるか、
(c)エチレン/α-オレフィンインターポリマーの圧縮成形フィルムで測定される、300パーセントの歪みおよび1サイクルでの弾性回復率Re(単位はパーセント)を特徴とし、かつ密度d(単位はグラム/立方センチメートル)を有し、エチレン/α-オレフィンインターポリマーが架橋相を実質的に含まない場合、Reおよびdの数値が、以下の関係を満たすか、
Re>1481-1629(d)
(d)TREFを使用して分画される場合、40℃~130℃で溶出する分子画分を有し、画分が、同じ温度間で溶出する同程度のランダムエチレンインターポリマー画分よりも少なくとも5パーセント高いモルコモノマー含有量を有することを特徴とし、該同程度のランダムエチレンインターポリマーが、エチレン/α-オレフィンインターポリマーと同じコモノマーを有し、かつエチレン/α-オレフィンインターポリマーの(ポリマー全体に基づいて)10パーセント以内のメルトインデックス、密度、およびモルコモノマー含有量を有するか、または
(e)25℃での貯蔵弾性率G´(25℃)、および100℃での貯蔵弾性率G´(100℃)を有し、G´(25℃)対G´(100℃)の比が、約1:1~約9:1の範囲である、エチレン/α-オレフィンインターポリマーであり得る。
【0041】
そのようなオレフィンブロックコポリマー、例えば、エチレン/α-オレフィンインターポリマーはまた、
(a)TREFを使用して分画される場合、40℃~130℃で溶出する分子画分であって、画分が、少なくとも0.5、かつ最大約1のブロックインデックス、および約1.3超の分子量分布Mw/Mnを有することを特徴とする、分子画分を有し得るか、または
(b)ゼロより大きく、かつ最大約1.0である平均ブロックインデックス、および約1.3超の分子量分布Mw/Mnを有し得る。
【0042】
ある特定の実施形態では、ポリオレフィンは、例えば、コモノマーまたはグラフトされたモノマーのいずれかとして極性基を有する、1つ以上の極性ポリオレフィンを含み得る。例示的な極性ポリオレフィンとしては、エチレン-アクリル酸(EAA)およびエチレン-メタクリル酸コポリマー、例えば、The Dow Chemical Companyから市販されているPRIMACOR(商標)、E.I. DuPont de Nemoursから市販されているNUCREL(商標)、およびExxonMobil Chemical Companyから市販されているESCOR(商標)の商品名で入手可能であり、米国特許第4,599,392号、同第4,988,781号、および同第5,938,437号(これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているものなどが挙げられるが、これらに限定されない。他の例示的なベースポリマーとしては、エチレンエチルアクリレート(EEA)コポリマー、エチレンメチルメタクリレート(EMMA)、およびエチレンブチルアクリレート(EBA)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
一実施形態では、極性ポリオレフィンは、エチレン-アクリル酸(EAA)コポリマー、エチレン-メタクリル酸コポリマー、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され得、安定剤は、例えば、エチレン-アクリル酸(EAA)コポリマー、エチレン-メタクリル酸コポリマー、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される極性ポリオレフィンを含み得るが、ただし、ベースポリマーは、例えば、ASTM D-974に従って測定される場合、安定剤よりも低い酸価を有し得ることを条件とする。
【0044】
コポリマーであるポリオレフィンは、統計コポリマー、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、他の構造を有するコポリマー、またはそれらの混合物であり得る。統計コポリマーが好ましい。
【0045】
ポリオレフィンエラストマー粒子は、次いで、架橋される。好ましい架橋剤は、炭素-炭素二重結合を有するポリオレフィン(「ポリオレフィン架橋剤」)、および500以下の分子量を有し、かつ2つ以上の炭素-炭素二重結合有する化合物(「モノマー架橋剤」)から選択される。ポリオレフィン架橋剤の中でも、1つ以上のジエンの重合単位を含有するホモポリマーおよびコポリマーが好ましい。モノマー架橋剤の中でも、2つ以上の炭素-炭素二重結合、より好ましくは3つ以上の炭素-炭素二重結合を有するものが好ましい。好適なモノマー架橋剤としては、ブタンジオールジアクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジアリルマレエート、アリルメタクリレート、ジアリルフタレート、トリアリルフタレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリアリルイソシアヌレート、および1,3,5,7-テトラビニル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、それらのブレンド、およびそれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。
【0046】
架橋剤の量は、初期ポリオレフィン粒子の分散液の総固形分重量に基づいて、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上、より好ましくは1.5重量%以上である。架橋剤の量は、初期ポリオレフィン粒子の分散液の総固形分重量に基づいて、好ましくは20重量%以下、より好ましくは15重量%以下である。
【0047】
ポリオレフィンエラストマー粒子の分散液はまた、1つ以上の界面活性剤を含有し得る。好ましい界面活性剤は、8個以上の炭素原子の炭化水素基と、アニオン性基と、を有する、アニオン性界面活性剤である。炭化水素基は、直鎖状、分岐状、芳香族、またはそれらの組み合わせであり得、好ましくは、直鎖状炭化水素基である。アニオン性基は、pH7の水中で負の電荷を帯びる、化学基である。好ましいアニオン性基は、ホスフェート基、ホスホネート基、カルボキシレート基、スルフェート基、およびスルホネート基であり、より好ましくは、スルフェート基である。好ましいアニオン性界面活性剤はまた、基-(CH2CH2O)n-を含有する。基-(CH2CH2O)n-が存在する場合、これは、好ましくは、スルフェート基に結合している。指数nは、1以上、好ましくは2以上である。指数nは、好ましくは20以下、より好ましくは15以下、より好ましくは10以下、より好ましくは6以下、より好ましくは4以下、より好ましくは3以下である。
【0048】
ポリオレフィンエラストマー粒子の分散液中の界面活性剤の量は、分散液の総固形分重量に基づいて、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上、より好ましくは3重量%以上である。ポリオレフィンエラストマー粒子の分散液中の界面活性剤の量は、分散液の総固形分重量に基づいて、好ましくは10重量%以下、より好ましくは8重量%以下、より好ましくは6重量%以下、より好ましくは4重量%以下である。
【0049】
好ましくは、架橋ポリオレフィン粒子の体積平均粒子直径は、100nm以上、より好ましくは150nm以上、より好ましくは200nm以上、より好ましくは250nm以上である。好ましくは、架橋ポリオレフィン粒子の体積平均粒子直径は、2000nm以下、より好ましくは1000nm以下、より好ましくは750nm以下、より好ましくは500nm以下である。
【0050】
1つ以上の(メタ)アクリルモノマーは、架橋ポリオレフィンエラストマー粒子にグラフトされて、組成物ポリマー組成物を形成する。(メタ)アクリルモノマーは、エマルション重合によってポリオレフィンエラストマー粒子にグラフトされ得る。好ましくは、グラフトされた(メタ)アクリルモノマーは、架橋ポリオレフィンエラストマー粒子のコア上に少なくとも部分的にアクリルシェルを形成する。
【0051】
好ましくは、(メタ)アクリルモノマーは、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ヘキシルアクリレート、エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、シクロペンチルメタクリレート、トリフルオロエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ジシクロペンタジエニルメタクリレート、およびそれらの組み合わせなどのC~C18(メタ)アクリレートからなる群から選択される。より好ましくは、(メタ)アクリルモノマーは、メチル(メタ)アクリレートとブチル(メタ)アクリレートモノマーとの組み合わせ、さらにより好ましくは、メチルメタクリレートとブチルアクリレートモノマーとの組み合わせを含む。
【0052】
(メタ)アクリルモノマーは、官能化、非官能化、またはそれらの組み合わせであり得る。官能化(メタ)アクリルモノマーの例としては、アクリル酸、メタクリル酸、グリシジルメタクリレート、アリルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、およびアクリルアミドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
好ましくは、グラフトされた(メタ)アクリルモノマーのTgは、50℃超、より好ましくは、75℃超である。
【0054】
複合ポリマー組成物中のポリオレフィンエラストマー対(メタ)アクリルモノマーの重量比は、好ましくは、50:50~90:10、より好ましくは、60:40~85:15、さらにより好ましくは、70:30~80:20の範囲である。
【0055】
1つ以上の架橋剤および/またはグラフト連結剤は、任意選択的に、エマルション重合に添加され得る。例示的な架橋剤としては、例えば、ジビニルベンゼン;トリアリル(イソ)シアヌレート、およびトリメチルトリメリテートを含む、ビニル基含有モノマー;エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、およびグリセロールトリ(メタ)アクリレートを含む、(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート化合物、ならびにそれらの混合物および組み合わせが挙げられる。例示的なグラフト連結剤としては、例えば、アリルメタクリレート、ジアリルマレエート、およびアリルアクリルオキシプロピオネートが挙げられる。
【0056】
粒子は、噴霧乾燥または凍結乾燥されて、耐衝撃性改質剤を形成し得る。
【0057】
耐衝撃性改質剤は、マトリックスポリマー樹脂に添加されて、耐衝撃性改良樹脂を形成し得る。好ましくは、マトリックスポリマー樹脂は、スチレン系ポリマーである。さらにより好ましくは、スチレン系ポリマーは、スチレン-アクリロニトリルコポリマー(SAN)である。SANは、60~90重量%のスチレンの重合単位および10~40重量%のアクリロニトリルの重合単位、例えば、70~80重量%のスチレンの重合単位および20~30重量%を含有する。SANポリマーでは、スチレンおよびアクリロニトリルの重量パーセントの合計は、70%以上である。例えば、アルキル(メタ)アクリレートモノマーなどの他のモノマーの重合単位が存在し得る。
【0058】
好ましくは、耐衝撃性改質剤は、耐衝撃性改質剤およびマトリックスポリマー樹脂の総重量に対して、20~50重量%の範囲の量で耐衝撃性改質樹脂中に存在する。より好ましくは、耐衝撃性改質剤は、耐衝撃性改質剤およびマトリックスポリマー樹脂の総重量に対して、25~45重量%の範囲の量で耐衝撃性改質樹脂中に存在する。さらにより好ましくは、耐衝撃性改質剤は、耐衝撃性改質剤およびマトリックスポリマー樹脂の総重量に対して、30~40重量%の範囲の量で耐衝撃性改質樹脂中に存在する。
【0059】
耐衝撃性改質樹脂は、着色剤(例えば、顔料および/または染料)、UVおよび/または光安定剤、加工助剤、酸化防止剤、難燃剤および/または煙抑制剤、熱安定剤、ならびに潤滑剤から選択される、1つ以上の添加剤をさらに含み得る。これらの成分は、当該技術分野において既知であり、従来の慣行に従って使用され得る。
【0060】
耐衝撃性改質樹脂は、任意の方法によって形成され得る。好ましくは、マトリックスポリマーと耐衝撃性改質剤粒子との混合物は、加熱されて溶融状態となり、この混合物は、機械的剪断に供される。例えば、マトリックスポリマーの粉末は、マトリックスポリマーが溶融しないように十分に低い温度で、粉末形態の耐衝撃性改質剤粒子と混合され得、次いで、粉末と粉末との混合物は、押出機に供給され得、この押出機は、混合物を加熱して溶融物を形成し、その混合物に剪断を適用する。別の例として、マトリックスポリマーの粉末および粉末形態の耐衝撃性改質剤粒子は、別個に押出機に供給され得、次いで、この押出機は、熱および剪断を提供する。機械的剪断は、ポリマー粒子を樹脂ポリマーと緊密に混合し、その結果、粉末粒子が崩壊し、次いで、個々のポリマー粒子が、マトリックスポリマー中に分布されることが企図されている。
【0061】
耐衝撃性改質樹脂は、ラジエーターグリル、ヘッドライトハウジング、ミラーハウジングなどを含む自動車部品、ならびに冷蔵庫のドアおよびライナーを含む電化製品部品などの物品を形成するために使用され得る。
【実施例
【0062】
ポリオレフィンエラストマーコア(PODまたはPODシード)を、以下の表1に列挙するように界面活性剤および他の安定剤を含む水相中に押出した、エラストマー(Engage(商標)8842、The Dow Chemical Company)から調製した。
【表1】
【0063】
ポリオレフィンアクリル改質剤(POA)を、最初にエラストマーコア粒子を架橋することによって生成した。その目的のために、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)を使用した。重量比98/2のメチルメタクリレート/ブチルアクリレートから作製された剛性シェルを、エラストマーコア粒子上にグラフトした。以下の表2に詳述するように、コア対シェルの比率は、コアが75~80重量パーセント、およびシェルが25~20重量パーセントであった。
【表2】
【0064】
性能を、170℃での5分間の粉砕、および180℃での4分間の成形により、2ロール型粉砕機においてSANと改質剤とのブレンドを調製することによって評価した。SANは、78/22のスチレン-アクリロニトリルコポリマーであった。
【0065】
表3は、改質剤の30重量パーセントの負荷で得られた最初の結果を示す。すべての改質剤は、室温でSAN(PN-128100、78/22のスチレン-アクリロニトリルコポリマー)の耐衝撃強度を強化したが(ASTM 256によるノッチ付きアイゾット衝撃)、本発明による両方のPOAコア//シェルは、はるかに優れた性能を示した。比較例C1は、改質剤を含まないSANである。比較例C2およびC3は、すべてのアクリル耐衝撃性改質剤を含有する。実施例E1およびE2は、上記の表2に記載の耐衝撃性改質剤POA-11cおよびPOA-13を含有する。
【表3】
【0066】
以下の表4は、ブタジエンベースのABSタイプの改質剤であるGalata Chemicals製のBlendex 338を、2つの異なるタイプのPOA、ならびにMBS、およびSANの他のアクリル(78/22のスチレン-アクリロニトリル、Chimei製のAS128)と比較した、追跡実験を示す。比較例C4は、改質剤として、Blendex 338を使用した。比較例C5は、改質剤として、PARALOID EXL-2668を使用した。実施例E3は、改質剤として、80/20の比率のMMA/BAシェルを有するENGAGE(商標)8842コアを使用した。実施例E4は、改質剤として、上記の表2からのPOA-28Bを使用した。比較例C6は、改質剤として、Kaneka製のKane Ace(商標)FM-40を使用した。比較例C7は、改質剤として、The Dow Chemical Company製のPARALOID(商標)KM-355Pを使用した。実施例E5は、2つの異なる改質剤のブレンド、すなわち、50/50の重量比のPARALOID(商標)KM-355PおよびPOA-28Bを使用した。使用した負荷は、35重量%であり、これは、ABSまたはASA材料でより典型的である。以前の実験において、溶融塊を2ロール型粉砕機から取り出してプレス用金型に入れたときに、ブレンドのいくらか早い硬化が観察されたため、温度処理および成形条件は、この場合では10℃高くなり、それぞれ、185℃および195℃であった。
【0067】
再び、POAコア//シェルは、試験された他のどの改質剤よりも高い耐衝撃性をもたらした。対照的に、同様に異なるα-オレフィンに基づくPOA-28Bは、おそらくより大きな粒子サイズに起因して、同等に高い耐衝撃性性能をもたらさなかった。さらに、その改質剤と、より小さな粒子サイズのアクリルコア//シェル(KM-355P)との二峰性ブレンド(重量で1対1のブレンド比を使用)は、SANが示すことが既知であるような相乗効果をもたらさなかった。
【表4】
【0068】
以下の表5は、従来使用されているSAN耐衝撃性改質剤(比較例C8~C11)と、本発明による実施例である実施例E6との比較を示す。比較例C8は、業界標準の耐衝撃性改質剤であるMitsubishi Chemical製のMRC SX006を使用し、これは、シリコーン-ブチルアクリレート-スチレン-アクリロニトリルの組成物である。比較例C9は、改質剤として、The Dow Chemical Company製の2.5% DC52を含むKLM-6930-1を使用した。比較例C10は、改質剤として、Kaneka製のKane Ace(商標)FM-40を使用した。比較例C11は、改質剤として、The Dow Chemical Company製のPARALOID(商標)KM-357Pを使用した。実施例E6は、80/5/10/1.5/1.5/2の比率のEngage 8137/licocene 4351/Retain 3000/ナトリウム-オレエート/Empicol ESB/TAICで形成されたコアを、98/2のMMA/BAシェルとともに、コア:シェル比80:20、および粒子サイズ250nmで有する、本発明による耐衝撃性改質剤である。使用した負荷は、SANの耐衝撃性改質剤の40重量%であった。性能を、170℃での5分間の粉砕、および180℃での4分間の成形により、2ロール型粉砕機においてSANと改質剤とのブレンドを調製することによって評価した。SANは、78/22のスチレン-アクリロニトリルコポリマーであった。
【表5】

【国際調査報告】