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特表2022-553151光学測定におけるエラーの原因の説明
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  • 特表-光学測定におけるエラーの原因の説明 図1
  • 特表-光学測定におけるエラーの原因の説明 図2A
  • 特表-光学測定におけるエラーの原因の説明 図2B
  • 特表-光学測定におけるエラーの原因の説明 図2C
  • 特表-光学測定におけるエラーの原因の説明 図3A
  • 特表-光学測定におけるエラーの原因の説明 図3B
  • 特表-光学測定におけるエラーの原因の説明 図3C
  • 特表-光学測定におけるエラーの原因の説明 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-22
(54)【発明の名称】光学測定におけるエラーの原因の説明
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/49 20060101AFI20221215BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20221215BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
G01N33/49 C
G01N21/64 E
G01N21/27 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521238
(86)(22)【出願日】2020-10-22
(85)【翻訳文提出日】2022-06-02
(86)【国際出願番号】 IB2020059924
(87)【国際公開番号】W WO2021079305
(87)【国際公開日】2021-04-29
(31)【優先権主張番号】62/924,229
(32)【優先日】2019-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVA
2.SMALLTALK
(71)【出願人】
【識別番号】522138250
【氏名又は名称】エス.ディー.サイト ダイアグノスティックス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ペッカー,シャロン
(72)【発明者】
【氏名】エシェル,ヨーハイ シュロモ
(72)【発明者】
【氏名】ザイティ,アミール
(72)【発明者】
【氏名】グラック,ダン
(72)【発明者】
【氏名】ヨラフ-ラファエル,ノーム
(72)【発明者】
【氏名】フーリー ヤフィン,アーノン
(72)【発明者】
【氏名】レヴィ シュライアー,サラ
(72)【発明者】
【氏名】ポラック,ジョセフ ジョエル
(72)【発明者】
【氏名】レヴナー,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ハルペリン,ヨナタン
(72)【発明者】
【氏名】レズミー,ナタリー
(72)【発明者】
【氏名】ワイス,イタマール
【テーマコード(参考)】
2G043
2G045
2G059
【Fターム(参考)】
2G043AA04
2G043CA04
2G043EA01
2G043FA01
2G043FA02
2G043FA06
2G043LA03
2G045AA04
2G045BA14
2G045BB24
2G045CA02
2G045CA07
2G045CA11
2G045CA24
2G045CA25
2G045DA51
2G045FA16
2G045FA19
2G045FB12
2G045GA02
2G045GA03
2G045JA01
2G059AA05
2G059BB04
2G059BB13
2G059CC16
2G059EE07
2G059EE11
2G059FF01
2G059FF03
2G059GG02
2G059GG03
2G059KK04
2G059MM05
(57)【要約】
【課題】 血液サンプル等の生物サンプルの特性を決定することである。
【解決手段】 血液サンプルをサンプルチャンバ(52)内に置き、血液サンプルが置かれたサンプルチャンバを顕微鏡ユニット(24)内に配置することによって、血液サンプルを分析のために準備することを含む装置及び方法が記載される。顕微鏡ユニットの顕微鏡を用いて、血液サンプルが置かれたサンプルチャンバ(52)の1つ以上の顕微鏡画像を取得する。1つ以上の画像に基づいて、1つ以上の顕微鏡画像の取得前にサンプルチャンバ内ですでに沈降していたサンプルチャンバ内の1つ以上の細胞型の量を決定する。少なくとも部分的にそれに応じてサンプルの特徴を決定する。他の適用例も記載される。
【選択図】 図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液サンプルを分析のために準備することであって、
前記血液サンプルをサンプルチャンバ内に置くこと、及び、
前記血液サンプルが置かれた前記サンプルチャンバを顕微鏡ユニット内に配置すること、によって、血液サンプルを分析のために準備することと、
前記顕微鏡ユニットの顕微鏡を用いて、前記血液サンプルが置かれた前記サンプルチャンバの1つ以上の顕微鏡画像を取得することと、
前記1つ以上の画像に基づいて、前記1つ以上の顕微鏡画像の取得前に前記サンプルチャンバ内ですでに沈降していた前記サンプルチャンバ内の1つ以上の細胞型の量を決定することと、
少なくとも部分的にそれに応じて前記サンプルの特徴を決定することと、
を含む方法。
【請求項2】
前記血液サンプルを分析のために準備することは、前記血液サンプルを1つ以上の染料で染色することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つ以上の顕微鏡画像の取得前に前記サンプルチャンバ内ですでに沈降していた前記サンプルチャンバ内の1つ以上の細胞型の量を決定することは、前記1つ以上の顕微鏡画像の取得前に前記サンプルチャンバ内の赤血球のうち閾値を超える量がすでに前記サンプルチャンバ内で沈降していたか否かを判定することを含み、
前記サンプルの前記特徴を決定することは、前記1つ以上の顕微鏡画像の取得前に前記サンプルチャンバ内の赤血球のうち前記閾値を超える量がすでに前記サンプルチャンバ内で沈降していたという判定に応じて、前記サンプルに少なくともいくつかの測定を実行するため前記サンプルの前記少なくとも一部を使用することを無効にすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記血液サンプルが置かれた前記サンプルチャンバを前記顕微鏡ユニット内に配置した後、前記サンプルチャンバ内の前記1つ以上の細胞型に細胞の単層を形成させることと、
前記細胞の単層の1つ以上の追加の顕微鏡画像のセットを取得することと、
前記1つ以上の追加の顕微鏡画像のセットを分析することによって前記サンプルに1つ以上の測定を実行することと、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記1つ以上の顕微鏡画像の取得前に前記サンプルチャンバ内ですでに沈降していた前記1つ以上の細胞型の前記量に基づいて、前記1つ以上の顕微鏡画像の取得前に前記血液サンプルがどのくらい長く前記サンプルチャンバ内に置かれていたかの指標を決定することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記サンプルに1つ以上の測定を実行することを更に含み、
前記1つ以上の顕微鏡画像の取得前に前記サンプルチャンバ内ですでに沈降していた前記サンプルチャンバ内の前記1つ以上の細胞型の前記量を決定することは、前記1つ以上の顕微鏡画像の取得前に前記サンプルチャンバ内の赤血球のうち閾値を超える量がすでに前記サンプルチャンバ内で沈降していたか否かを判定することを含み、
前記サンプルに1つ以上の測定を実行することは、前記1つ以上の顕微鏡画像の取得前に前記サンプルチャンバ内の赤血球のうち前記閾値を超える量がすでに前記サンプルチャンバ内で沈降していたという判定に応じて前記測定を較正することを含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記血液サンプルを分析のために準備することは、前記血液サンプルを1つ以上の染料で染色することを更に含み、前記測定を較正することは、前記1つ以上の顕微鏡画像の取得前に前記サンプルチャンバ内の赤血球のうち前記閾値を超える量がすでに前記サンプルチャンバ内で沈降していたことによって示される、前記血液サンプル内のエンティティが染色された量を説明するため測定を較正することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
サンプルチャンバ内に血液サンプルの一部を配置することと、
前記血液サンプル内の赤血球が前記サンプルチャンバ内で沈降している間に前記血液サンプル内の前記赤血球の顕微鏡画像を取得することと、
前記画像を分析することによって前記血液サンプルの沈降ダイナミクス特性を決定することと、
それに応じて出力を生成することと、
を含む方法。
【請求項9】
前記サンプルチャンバ内に前記血液サンプルの前記一部を配置することは、前記サンプルチャンバ内に血液サンプルの希釈されていない部分を配置することを含み、前記血液サンプル内の赤血球の顕微鏡画像を取得することは、前記希釈されていない血液サンプル内の赤血球の顕微鏡画像を取得することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記画像を分析することによって前記血液サンプルの前記沈降ダイナミクス特性を決定することは、前記血液サンプル内の前記赤血球の沈降に関して前記血液サンプルの前記沈降ダイナミクス特性をリアルタイムで決定することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記画像を分析することによって前記血液サンプルの前記沈降ダイナミクス特性を決定することは、前記血液サンプル内の前記赤血球がまだ沈降している間に前記血液サンプルの前記沈降ダイナミクス特性を決定することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記画像を分析することによって前記血液サンプルの前記沈降ダイナミクス特性を決定することは、前記画像を分析することによって前記血液サンプル内の赤血球の沈降率を決定することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
サンプルチャンバ内に血液サンプルの少なくとも一部を配置することと、
前記血液サンプルの前記一部の顕微鏡画像を取得することと、
前記顕微鏡画像内で、ウニ状赤血球、球状赤血球、及び円鋸歯状赤血球から成る群から選択された少なくとも1つのタイプのエンティティを識別することと、
前記選択されたタイプのエンティティの数を測定することと、
少なくとも部分的に前記数に基づいて、前記サンプルの前記一部の古さの指標を決定することと、
を含む方法。
【請求項14】
前記顕微鏡画像を分析することによって前記サンプルのパラメータを測定することを更に含み、前記サンプルの前記パラメータを測定することは、前記顕微鏡画像に測定を実行することと、前記サンプルの前記一部の前記古さの前記決定された指標に基づいて前記測定を較正することと、を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記血液サンプルの第2の部分に光学密度測定を実行することによって前記サンプルのパラメータを測定することを更に含み、前記サンプルの前記パラメータを測定することは、前記サンプルの前記一部の前記古さの前記決定された指標に基づいて前記光学密度測定を較正することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つのタイプのエンティティを識別することはウニ状赤血球を識別することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つのタイプのエンティティを識別することは球状赤血球を識別することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つのタイプのエンティティを識別することは円鋸歯状赤血球を識別することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
ベース面を含むキャビティであるサンプルチャンバ内に血液サンプルの少なくとも一部を配置することと、
前記キャリアの前記ベース面上で前記細胞懸濁液中の前記細胞を沈降させて、前記キャリアの前記ベース面上に細胞の単層を形成することと、
前記細胞の単層の少なくとも一部の少なくとも1つの顕微鏡画像を取得することと、
前記顕微鏡画像内で溶血赤血球を識別することと、
前記識別された溶血赤血球の数を測定することと、
前記識別された溶血赤血球の前記数に基づいて出力を生成することと、
を含む方法。
【請求項20】
前記識別された溶血赤血球の前記数に基づいて、前記識別された溶血赤血球の前記数よりも多い前記血液サンプル内の溶血赤血球の合計数を推定することを含み、前記出力を生成することは、ユーザに対して溶血赤血球の前記推定合計数の指標を生成することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記出力を生成することは、前記識別された溶血赤血球の前記数が閾値を超えていることに少なくとも部分的に基づいて、前記サンプルに少なくともいくつかの測定を実行するため前記サンプルの前記一部を使用することを無効にすることを含む、請求項19又は請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記サンプルに少なくともいくつかの測定を実行するため前記サンプルを使用することを無効にすることは、前記識別された溶血赤血球の前記数に基づいて、前記識別された溶血赤血球の前記数よりも多い前記サンプル内の溶血赤血球の合計数を推定することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記血液サンプルを染色することを更に含み、前記少なくとも部分的に溶血された赤血球を識別することは、前記染料で染色された赤血球を溶血されたと識別することによって前記溶血赤血球と非溶血赤血球とを区別することを含む、請求項19又は請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記血液サンプルを染色することは前記血液サンプルをヘキスト試薬で染色することを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記細胞の単層の少なくとも一部の少なくとも1つの顕微鏡画像を取得することは、前記細胞の単層の少なくとも一部の少なくとも1つの明視野顕微鏡画像を取得することを含み、前記染料で染色された赤血球を識別することは、前記明視野顕微鏡画像内で視認できる輪郭を有すると共に前記明視野顕微鏡画像の背景と同様の内部を有する赤血球を識別することを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記細胞の単層の少なくとも一部の少なくとも1つの顕微鏡画像を取得することは、前記細胞の単層の少なくとも一部の少なくとも1つの蛍光顕微鏡画像を取得することを含み、前記染料で染色された赤血球を識別することは、前記画像内で明るい円のように見える赤血球を識別することを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
それぞれが異なる高さを規定する複数の領域を有するサンプルチャンバ内に生物サンプルを配置することと、
各領域において前記サンプルチャンバを通る光透過を示すパラメータを測定することと、
コンピュータプロセッサを用いて、
前記各領域において測定された前記パラメータを相互に正規化することと、
少なくとも部分的にそれに応じて前記サンプルチャンバ内に泡が存在することを検出することと、
前記サンプルチャンバ内に泡が存在することの検出に応じて動作を実行することと、
を含む方法。
【請求項28】
それぞれが異なる高さを規定する複数の領域を有するサンプルチャンバ内に血液サンプルを配置することと、
各領域において前記サンプルチャンバを通る光透過を示すパラメータを測定することと、
コンピュータプロセッサを用いて、
前記選択された領域における前記パラメータの絶対値に基づいて、前記血液サンプル内のヘモグロビン濃度を計算することと、
前記各領域において測定された前記パラメータを相互に正規化することと、
前記正規化されたパラメータに基づいて、前記計算されたヘモグロビン濃度を認証することと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2019年10月22日に出願された「Accounting for errors in optical measurements」と題するPeckerに対する米国仮特許出願第US62/924,229号の優先権を主張する。
【0002】
本出願は、2019年10月22日に出願されたPeckerに対する米国仮特許出願第US62/924,229号の優先権を主張する、Peckerに対する「Accounting for errors in optical measurements」と題する同日付に出願されたPCT出願に関する。
【0003】
上記で引用した出願は援用により本願に含まれる。
【0004】
ここに開示される主題のいくつかの適用例は、一般に身体サンプルの分析に関し、具体的には、血液サンプルに実行される光学密度測定及び顕微鏡下の測定に関する。
【背景技術】
【0005】
いくつかの光学に基づく方法(例えば診断法及び/又は分析法)では、光学測定を実行することによって、血液サンプル等の生物サンプルの特性が決定される。例えば、顕微鏡画像内の成分をカウントすることにより、成分の密度(例えば単位体積当たりの成分の数)を決定することができる。同様に、サンプルに光吸収、透過率、蛍光、及び/又は発光の測定を行うことにより、成分の濃度及び/又は密度を測定することができる。典型的には、サンプルをサンプルキャリアに載せ、サンプルキャリアのチャンバ内に含まれているサンプルの部分に対して測定を実行する。サンプルキャリアのチャンバ内に含まれているサンプルの部分に実行される測定は、サンプルの特性を決定するため分析される。
【発明の概要】
【0006】
本発明のいくつかの適用例によれば、サンプルキャリア内に生物サンプル(例えば血液サンプル)が配置される。サンプルがサンプルキャリア内に置かれている間に、1つ以上の光学測定デバイスを用いてサンプルに光学測定を実行する。例えば光学測定デバイスは、顕微鏡(例えばデジタル顕微鏡)、分光光度計、光度計、分光計、カメラ、スペクトルカメラ、ハイパースペクトルカメラ、蛍光光度計、蛍光分光計、及び/又は光検出器(フォトダイオード、フォトレジスタ、及び/又はフォトトランジスタ等)を含み得る。いくつかの適用例では、光学測定デバイスは、専用の光源(発光ダイオード、白熱光源等)、及び/又は、集光及び/又は発光を操作するための光学要素(レンズ、散光器、フィルタ等)を含む。いくつかの適用例では、Greenfieldに対する米国特許出願公開第US2014/0347459号(援用により本願に含まれる)に記載されている顕微鏡システムと概ね同様の顕微鏡システムが用いられる。
【0007】
典型的には、コンピュータプロセッサが、光学測定デバイスによって実行された光学測定を受信し処理する。更に典型的には、コンピュータプロセッサは、1つ以上の光学測定デバイスによって実行された光学測定の取得を制御する。いくつかの適用例では、光学測定デバイスは光学測定ユニット内に収容されている。サンプルに光学測定を実行するため、光学測定ユニット内にサンプルキャリアを配置する。典型的に、光学測定ユニットは、サンプルの一部分の顕微鏡撮像を実行するように構成された顕微鏡システムを含む。いくつかの適用例では、顕微鏡システムは、サンプルの明視野撮像のために使用されるよう構成された明視野光源(例えば発光ダイオード)のセットと、サンプルの蛍光撮像のために使用されるよう構成された蛍光光源(例えば発光ダイオード)のセットと、サンプルを撮像するよう構成されたカメラ(CCDカメラ及び/又はCMOSカメラ等)と、を含む。典型的に、光学測定ユニットは、サンプルの第2の部分に光学密度測定(例えば光吸収測定)を実行するように構成された光学密度測定ユニットも含む。いくつかの適用例において、光学密度測定ユニットは、サンプルに光学密度測定を実行するために構成された光学密度測定光源(例えば発光ダイオード)及び光検出器のセットを含む。いくつかの適用例では、前述の光源セットの各々(すなわち、明視野光源セット、蛍光光源セット、及び光学密度測定光源セット)は、複数の光源(例えば複数の発光ダイオード)を含み、それらの光源の各々は、各波長で又は各波長帯で発光するように構成されている。
【0008】
本発明のいくつかの適用例によれば、様々なエラーが発生したか否かを判定するため、及び、任意選択的にエラーが発生した場合にエラー源を識別するため、様々な技法が(典型的にコンピュータプロセッサによって)実行される。このようなエラーは、サンプル全体の準備から発生し得る。例えば、サンプルは、測定の実行前に過度に長い間サンプルキャリア上に放置されたままであった可能性がある(この結果として、サンプルが劣化する、及び/又はサンプルの一方又は双方の部分と混合した染料がサンプル内のエンティティ(entity)によって過度に吸収される可能性がある)。あるいは、エラーはサンプルの特定部分の準備から発生し得る。代替的に又は追加的に、エラーは、サンプルキャリアのエラー(サンプルキャリア自体の材料が汚れている、及び/又はサンプルキャリア上にごみ(dirt)又はこぼれた血液がある等)、及び/又は、照明(例えば、明視野撮像のために使用される発光ダイオード及び/又はサンプルの蛍光撮像中に使用される発光ダイオード)等の顕微鏡システム自体のエラー、及び/又は、光路及び/又はモータ及びステージのコンポーネント又はコントローラに関連するエラー、及び/又は、デバイスが配置されている環境(相対湿度、温度、圧力、粒子濃度、又は他の何らかの環境因子等)から生じるエラーから発生し得る。更に、代替的に又は追加的に、サンプルには固有の問題が存在することがある(特定のエンティティの数が極めて少ないかもしくは極めて多いこと、又は、サンプル収集の実行後に過度に長い時間が経過したこと等)。これが意味するのは、コンピュータプロセッサが特定の測定を充分な精度で実行できないということ、及び/又はコンピュータプロセッサがこれをユーザに通知(flag)しなければならないということである。
【0009】
いくつかの適用例では、エラーを識別したことに応じて、コンピュータプロセッサは、エラーを示す及び/又はエラー源を示すメッセージを出力する。いくつかの適用例では、コンピュータプロセッサは、エラーを識別したことに応じて、血液サンプルに特定の測定を実行しない。いくつかの適用例では、エラーを識別したことに応じて、コンピュータプロセッサは、サンプルに測定を実行しない、及び/又はサンプルが無効であることをユーザに通知する、及び/又は新しい試験キットを用いてサンプル準備を繰り返すようユーザに命令する、及び/又は血液サンプルを再収集する。代替的に又は追加的に、エラーの原因を説明する(account for)ため、コンピュータプロセッサは、血液サンプルに実行される測定を較正することによって、血液サンプルの特定のパラメータを決定する。
【0010】
いくつかの適用例では、例えば上述のやり方のうち1つ以上で、以下のエラーのうち1つ以上の原因を説明する。
【0011】
以下のような顕微鏡デバイスにおけるエラー
-顕微鏡ステージを移動させるモータの脱調(step-loss)
-顕微鏡ステージの移動の遊び(backlash)の変化
-顕微鏡カメラと顕微鏡ステージとの間のタイミングの変化
-顕微鏡カメラと顕微鏡ステージとの間の位置合わせ(例えばこれらの要素間の相対的な回転に起因する)
-光学システムの問題(例えば、サンプルによって起こる、又は顕微鏡ステージ破片(例えば引っかいた破片)によって起こる、経時的な焦点品質の変化)
-顕微鏡システムにおけるレベリング変化
-z軸(すなわち光軸)に沿った予想焦点位置の変化
-要素間の通信の喪失
-カメラ線形応答の変化
【0012】
以下のような環境因子によって生じるエラー
-許容温度、湿度、高度等の範囲外のデバイス
-目標値外の特定コンポーネント
【0013】
以下のような因子によって生じる一般的なエラー
-スキャン時間
-デバイス起動時間
-利用可能な作業/記憶メモリ
【0014】
エラーを識別し、このようなエラーの原因を説明するための技法のいくつかの例を、以下で記載する。
【0015】
従って、本発明のいくつかの適用例によれば、
血液サンプルを分析のために準備することであって、
血液サンプルをサンプルチャンバ内に置くこと、及び、
血液サンプルが置かれたサンプルチャンバを顕微鏡ユニット内に配置することと、
によって、血液サンプルを分析のために準備すること、
顕微鏡ユニットの顕微鏡を用いて、血液サンプルが置かれたサンプルチャンバの1つ以上の顕微鏡画像を取得することと、
1つ以上の画像に基づいて、1つ以上の顕微鏡画像の取得前にサンプルチャンバ内ですでに沈降していたサンプルチャンバ内の1つ以上の細胞型の量を決定することと、
少なくとも部分的にそれに応じてサンプルの特徴を決定することと、
を含む方法が提供される。
【0016】
いくつかの適用例において、血液サンプルを分析のために準備することは、血液サンプルを1つ以上の染料で染色することを更に含む。
【0017】
いくつかの適用例において、
1つ以上の顕微鏡画像の取得前にサンプルチャンバ内ですでに沈降していたサンプルチャンバ内の1つ以上の細胞型の量を決定することは、1つ以上の顕微鏡画像の取得前にサンプルチャンバ内の赤血球のうち閾値を超える量がすでにサンプルチャンバ内で沈降していたか否かを判定することを含み、
サンプルの特徴を決定することは、1つ以上の顕微鏡画像の取得前にサンプルチャンバ内の赤血球のうち閾値を超える量がすでにサンプルチャンバ内で沈降していたという判定に応じて、サンプルに少なくともいくつかの測定を実行するためサンプルの少なくとも一部を使用することを無効にする(invalidate)ことを含む。
【0018】
いくつかの適用例において、方法は更に、
血液サンプルが置かれたサンプルチャンバを顕微鏡ユニット内に配置した後、サンプルチャンバ内の1つ以上の細胞型に細胞の単層を形成させることと、
細胞の単層の1つ以上の追加の顕微鏡画像のセットを取得することと、
1つ以上の追加の顕微鏡画像のセットを分析することによってサンプルに1つ以上の測定を実行することと、
を含む。
【0019】
いくつかの適用例において、方法は更に、1つ以上の顕微鏡画像の取得前にすでにサンプルチャンバ内で沈降していた1つ以上の細胞型の量に基づいて、1つ以上の顕微鏡画像の取得前に血液サンプルがどのくらい長くサンプルチャンバ内に置かれていたかの指標を決定することを含む。
【0020】
いくつかの適用例において、
方法は、サンプルに1つ以上の測定を実行することを更に含み、
1つ以上の顕微鏡画像の取得前にサンプルチャンバ内ですでに沈降していたサンプルチャンバ内の1つ以上の細胞型の量を決定することは、1つ以上の顕微鏡画像の取得前にサンプルチャンバ内の赤血球のうち閾値を超える量がすでにサンプルチャンバ内で沈降していたか否かを判定することを含み、
サンプルに1つ以上の測定を実行することは、1つ以上の顕微鏡画像の取得前にサンプルチャンバ内の赤血球のうち閾値を超える量がすでにサンプルチャンバ内で沈降していたという判定に応じて測定を較正することを含む。
【0021】
いくつかの適用例において、血液サンプルを分析のために準備することは、血液サンプルを1つ以上の染料で染色することを更に含み、測定を較正することは、1つ以上の顕微鏡画像の取得前にサンプルチャンバ内の赤血球のうち閾値を超える量がすでにサンプルチャンバ内で沈降していたことによって示される、血液サンプル内のエンティティが染色された量を説明するため測定を較正することを含む。
【0022】
更に、本発明のいくつかの適用例に従って、
サンプルチャンバ内に血液サンプルの一部を配置することと、
血液サンプル内の赤血球がサンプルチャンバ内で沈降している間に血液サンプル内の赤血球の顕微鏡画像を取得することと、
画像を分析することによって血液サンプルの沈降ダイナミクス特性を決定することと、
それに応じて出力を生成することと、
を含む方法が提供される。
【0023】
いくつかの適用例において、サンプルチャンバ内に血液サンプルの一部を配置することは、サンプルチャンバ内に血液サンプルの希釈されていない部分を配置することを含み、血液サンプル内の赤血球の顕微鏡画像を取得することは、希釈されていない血液サンプル内の赤血球の顕微鏡画像を取得することを含む。
【0024】
いくつかの適用例において、画像を分析することによって血液サンプルの沈降ダイナミクス特性を決定することは、血液サンプル内の赤血球の沈降に関して血液サンプルの沈降ダイナミクス特性をリアルタイムで決定することを含む。
【0025】
いくつかの適用例において、画像を分析することによって血液サンプルの沈降ダイナミクス特性を決定することは、血液サンプル内の赤血球がまだ沈降している間に血液サンプルの沈降ダイナミクス特性を決定することを含む。
【0026】
いくつかの適用例において、画像を分析することによって血液サンプルの沈降ダイナミクス特性を決定することは、画像を分析することによって血液サンプル内の赤血球の沈降率を決定することを含む。
【0027】
更に、本発明のいくつかの適用例によれば、
第1のサンプルチャンバ内に血液サンプルの第1の部分を配置することと、
第2のサンプルチャンバ内に血液サンプルの第2の部分を配置することと、
血液サンプルの第1の部分の顕微鏡画像を取得することと、
血液サンプルの第2の部分に光学密度測定を実行することと、
サンプル内の所与のエンティティの濃度が閾値を超えていることを検出することと、
血液サンプルの第1の部分の顕微鏡画像から決定されたパラメータと血液サンプルの第2の部分に実行された光学密度測定から決定されたパラメータとを比較することによって、所与のエンティティの濃度が閾値を超えている原因を決定することと、
を含む方法が提供される。
【0028】
いくつかの適用例において、所与のエンティティの濃度が閾値を超えている原因を決定することは、顕微鏡画像によって示されるエンティティの濃度が光学密度測定から決定されるエンティティの濃度と同様であるという判定によって、サンプル内の所与のエンティティの濃度が閾値を超えている原因が血液サンプル自体であると決定することを含む。
【0029】
いくつかの適用例において、所与のエンティティの濃度が閾値を超えている原因を決定することは、顕微鏡画像によって示されるエンティティの濃度が光学密度測定から決定されるエンティティの濃度とは異なるという判定によって、サンプル内の所与のエンティティの濃度が閾値を超えている原因が血液サンプルの部分のうち1つの部分の準備であると決定することを含む。
【0030】
更に、本発明のいくつかの適用例に従って、
サンプルチャンバ内に血液サンプルの少なくとも一部を配置することと、
血液サンプルのこの一部の顕微鏡画像を取得することと、
顕微鏡画像内で、ウニ状赤血球、球状赤血球、及び円鋸歯状赤血球から成る群から選択された少なくとも1つのタイプのエンティティを識別することと、
選択されたタイプのエンティティの数を測定することと、
それに応じて出力を生成することと、
を含む方法が提供される。
【0031】
いくつかの適用例において、少なくとも1つのタイプのエンティティを識別することはウニ状赤血球を識別することを含む。いくつかの適用例において、少なくとも1つのタイプのエンティティを識別することは球状赤血球を識別することを含む。いくつかの適用例において、少なくとも1つのタイプのエンティティを識別することは円鋸歯状赤血球を識別することを含む。
【0032】
いくつかの適用例において、出力を生成することは、選択されたタイプのエンティティの数が閾値を超えていることに少なくとも部分的に基づいて、血液サンプルに少なくともいくつかの測定を実行するため血液サンプルの少なくともこの一部を使用することを無効にすることを含む。いくつかの適用例において、出力を生成することは、ユーザに対してこの数の指標を生成することを含む。いくつかの適用例において、出力を生成することは、ユーザに対してサンプルのこの部分の古さの指標を生成することを含む。
【0033】
更に、本発明のいくつかの適用例に従って、
サンプルチャンバ内に血液サンプルの少なくとも一部を配置することと、
血液サンプルのこの一部の顕微鏡画像を取得することと、
顕微鏡画像内で、ウニ状赤血球、球状赤血球、及び円鋸歯状赤血球から成る群から選択された少なくとも1つのタイプのエンティティを識別することと、
選択されたタイプのエンティティの数を測定することと、
少なくとも部分的にこの数に基づいて、サンプルのこの一部の古さの指標を決定することと、
を含む方法が提供される。
【0034】
いくつかの適用例において、方法は、顕微鏡画像を分析することによってサンプルのパラメータを測定することを更に含み、サンプルのパラメータを測定することは、顕微鏡画像に測定を実行することと、サンプルのこの一部の古さの決定された指標に基づいて測定を較正することと、を含む。
【0035】
いくつかの適用例において、方法は、血液サンプルの第2の部分に光学密度測定を実行することによってサンプルのパラメータを測定することを更に含み、サンプルのパラメータを測定することは、サンプルのこの一部の古さの決定された指標に基づいて光学密度測定を較正することを含む。
【0036】
いくつかの適用例において、少なくとも1つのタイプのエンティティを識別することはウニ状赤血球を識別することを含む。いくつかの適用例において、少なくとも1つのタイプのエンティティを識別することは球状赤血球を識別することを含む。いくつかの適用例において、少なくとも1つのタイプのエンティティを識別することは円鋸歯状赤血球を識別することを含む。
【0037】
更に、本発明のいくつかの適用例に従って、
ベース面を含むキャビティであるサンプルチャンバ内に血液サンプルの少なくとも一部を配置することと、
キャリアのベース面上で細胞懸濁液中の細胞を沈降させて、キャリアのベース面上に細胞の単層を形成することと、
細胞の単層の少なくとも一部の少なくとも1つの顕微鏡画像を取得することと、
顕微鏡画像内で溶血赤血球を識別することと、
識別された溶血赤血球の数を測定することと、
識別された溶血赤血球の数に基づいて出力を生成することと、
を含む方法が提供される。
【0038】
いくつかの適用例において、方法は更に、識別された溶血赤血球の数に基づいて、識別された溶血赤血球の数よりも多い血液サンプル内の溶血赤血球の合計数を推定することを含み、出力を生成することは、ユーザに対して溶血赤血球の推定合計数の指標を生成することを含む。
【0039】
いくつかの適用例において、出力を生成することは、識別された溶血赤血球の数が閾値を超えていることに少なくとも部分的に基づいて、サンプルに少なくともいくつかの測定を実行するためサンプルのこの一部を使用することを無効にすることを含む。
【0040】
いくつかの適用例において、サンプルに少なくともいくつかの測定を実行するためサンプルを使用することを無効にすることは、識別された溶血赤血球の数に基づいて、識別された溶血赤血球の数よりも多いサンプル内の溶血赤血球の合計数を推定することを含む。
【0041】
いくつかの適用例において、方法は更に血液サンプルを染色することを含み、少なくとも部分的に溶血された赤血球を識別することは、染料で染色された赤血球を溶血されたと識別することによって溶血赤血球と非溶血赤血球とを区別することを含む。
【0042】
いくつかの適用例において、血液サンプルを染色することは血液サンプルをヘキスト試薬で染色することを含む。
【0043】
いくつかの適用例において、細胞の単層の少なくとも一部の少なくとも1つの顕微鏡画像を取得することは、細胞の単層の少なくとも一部の少なくとも1つの明視野顕微鏡画像を取得することを含み、染料で染色された赤血球を識別することは、明視野顕微鏡画像内で視認できる輪郭を有すると共に明視野顕微鏡画像の背景と同様の内部を有する赤血球を識別することを含む。
【0044】
いくつかの適用例において、細胞の単層の少なくとも一部の少なくとも1つの顕微鏡画像を取得することは、細胞の単層の少なくとも一部の少なくとも1つの蛍光顕微鏡画像を取得することを含み、染料で染色された赤血球を識別することは、画像内で明るい円のように見える赤血球を識別することを含む。
【0045】
更に、本発明のいくつかの適用例に従って、
それぞれが異なる高さを規定する複数の領域を有するサンプルチャンバ内に生物サンプルを配置することと、
各領域においてサンプルチャンバを通る光透過を示すパラメータを測定することと、
コンピュータプロセッサを用いて、
各領域において測定されたパラメータを相互に正規化することと、
少なくとも部分的にそれに応じてサンプルチャンバ内に泡が存在することを検出することと、
サンプルチャンバ内に泡が存在することの検出に応じて動作(action)を実行することと、
を含む方法が提供される。
【0046】
更に、本発明のいくつかの適用例に従って、
それぞれが異なる高さを規定する複数の領域を有するサンプルチャンバ内に血液サンプルを配置することと、
各領域においてサンプルチャンバを通る光透過を示すパラメータを測定することと、
コンピュータプロセッサを用いて、
選択された領域におけるパラメータの絶対値に基づいて、サンプル内のヘモグロビン濃度を計算することと、
各領域において測定されたパラメータを相互に正規化することと、
正規化されたパラメータに基づいて、計算されたヘモグロビン濃度を認証することと、
を含む方法が提供される。
【0047】
更に、本発明のいくつかの適用例に従って、
サンプルチャンバ内に血液サンプルの少なくとも一部を配置することと、
血液サンプルのこの一部の顕微鏡画像を取得することと、
顕微鏡画像内で、血液サンプル内の所与のエンティティの候補を識別することと、
候補に更に分析を実行することによって、候補のうち少なくともいくつかを所与のエンティティとして認証することと、
所与のエンティティの候補の数と所与のエンティティの認証された候補の数とを比較することと、
候補の数と認証された候補の数との関係に少なくとも部分的に基づいて、サンプルに少なくともいくつかの測定を実行するためサンプルの少なくとも一部を使用することを無効にすることと、
を含む方法が提供される。
【0048】
いくつかの適用例において、
顕微鏡画像内で血液サンプル内の所与のエンティティの候補を識別することは、顕微鏡画像内で血液サンプル内の血小板候補を識別することを含み、
候補に更に分析を実行することによって候補のうち少なくともいくつかを所与のエンティティとして認証することは、候補に更に分析を実行することによって血小板候補のうち少なくともいくつかを血小板として認証することを含み、
サンプルに少なくともいくつかの測定を実行するためサンプルの少なくとも一部を使用することを無効にすることは、血小板候補の数と認証された血小板候補の数との関係に少なくとも部分的に基づいて、サンプルに少なくともいくつかの測定を実行するためサンプルの少なくとも一部を使用することを無効にすることを含む。
【0049】
いくつかの適用例において、
顕微鏡画像内で血液サンプル内の所与のエンティティの候補を識別することは、顕微鏡画像内で血液サンプル内の白血球候補を識別することを含み、
候補に更に分析を実行することによって候補のうち少なくともいくつかを所与のエンティティとして認証することは、候補に更に分析を実行することによって白血球候補のうち少なくともいくつかを白血球として認証することを含み、
サンプルに少なくともいくつかの測定を実行するためサンプルの少なくとも一部を使用することを無効にすることは、白血球候補の数と認証された白血球候補の数との関係に少なくとも部分的に基づいて、サンプルに少なくともいくつかの測定を実行するためサンプルの少なくとも一部を使用することを無効にすることを含む。
【0050】
いくつかの適用例において、サンプルに少なくともいくつかの測定を実行するためサンプルの少なくとも一部を使用することを無効にすることは、認証された候補の数と最大閾値を上回っている候補の数との比に基づいて、サンプルに少なくともいくつかの測定を実行するためサンプルの少なくとも一部を使用することを無効にすることを含む。
【0051】
いくつかの適用例において、サンプルに少なくともいくつかの測定を実行するためサンプルの少なくとも一部を使用することを無効にすることは、認証された候補の数と最小閾値未満の候補の数との比に基づいて、サンプルに少なくともいくつかの測定を実行するためサンプルの少なくとも一部を使用することを無効にすることを含む。
【0052】
更に、本発明のいくつかの適用例に従って、
サンプルチャンバ内に血液サンプルの少なくとも一部を配置することと、
血液サンプルのこの一部の顕微鏡画像を取得することと、
顕微鏡画像内で、血液サンプル内の白血球候補を識別することと、
白血球候補に更に分析を実行することによって、白血球候補のうち少なくともいくつかを所与のタイプの白血球として認証することと、
白血球候補の数と所与のタイプの白血球として認証された白血球候補の数とを比較することと、
白血球候補の数と所与のタイプの白血球として認証された白血球候補の数との関係に少なくとも部分的に基づいて、サンプルに少なくともいくつかの測定を実行するためサンプルの少なくとも一部を使用することを無効にすることと、
を含む方法が提供される。
【0053】
更に、本発明のいくつかの適用例に従って、
血液サンプルを1つ以上の蛍光染料によって染色することと、
血液サンプルの1つ以上の顕微鏡画像を取得することと、
不規則な形状を有する染色された物体を識別することによって、サンプル内の汚染物体(contaminating bodies)を識別することと、
サンプルに顕微鏡分析を実行することによって、サンプル内に配置された1つ以上のエンティティのカウントを実行することと、
識別された汚染物体から所与の距離内に配置されたサンプルの領域をカウントに含むことを無効にすることと、
を含む方法が提供される。
【0054】
いくつかの適用例において、血液サンプルを1つ以上の染料で染色することは、血液サンプルをアクリジンオレンジ及びヘキスト試薬によって染色することを含み、デブリを識別することは、不規則な形状を有すると共にアクリジンオレンジ及びヘキスト試薬の双方で染色された染色物体を識別することを含む。
【0055】
更に、本発明のいくつかの適用例に従って、
サンプルチャンバ内に血液サンプルの少なくとも一部を配置することと、
サンプルに光学測定を実行することと、
光学測定に基づいて、サンプルチャンバ内に1つ以上の気泡が存在すると判定することと、
サンプルチャンバ内に1つ以上の気泡が存在するという判定に少なくとも部分的に基づいて出力を生成することと、
を含む方法が提供される。
【0056】
いくつかの適用例において、方法は更に、光学測定に基づいてサンプルの1つ以上のパラメータを決定することと、サンプルチャンバ内に1つ以上の気泡が存在するという判定に基づいて、サンプルの1つ以上のパラメータを決定するため光学測定の少なくとも一部を使用することを無効にすることと、を含む。
【0057】
いくつかの適用例において、出力を生成することは、サンプルチャンバ内に1つ以上の気泡が存在するという判定に基づいて、サンプルに少なくともいくつかの測定を実行するため血液サンプルのこの一部を使用することを無効にすることを含む。
【0058】
いくつかの適用例において、サンプルチャンバ内に1つ以上の気泡が存在すると判定することは、サンプルチャンバに沿った所与の方向に沿ったサンプルの光吸収プロファイルを分析することを含む。
【0059】
いくつかの適用例において、サンプルに光学測定を実行することは、ヘモグロビンが光を吸収しない波長で1つ以上の光吸収測定を実行することを含み、サンプルチャンバ内に1つ以上の気泡が存在すると判定することは、ヘモグロビンが光を吸収しない波長での1つ以上の光吸収測定を分析することを含む。
【0060】
更に、本発明のいくつかの適用例に従って、
ベース面を含むキャビティであるサンプルチャンバ内に血液サンプルの少なくとも一部を配置することと、
キャリアのベース面上で細胞懸濁液中の細胞を沈降させて、キャリアのベース面上に細胞の単層を形成することと、
細胞の単層の少なくとも一部の少なくとも1つの顕微鏡画像を取得することと、
顕微鏡画像内でサンプルが存在しない領域を識別することと、
少なくとも識別された領域を、サンプルのこの一部の顕微鏡分析に使用することを無効にすることと、
を含む方法が提供される。
【0061】
いくつかの適用例において、サンプルが存在しない領域を識別することは、サンプルチャンバのベース面上の濡れた領域と乾いた領域との界面を識別することを含む。
【0062】
いくつかの適用例において、サンプルが存在しない領域を識別することは、サンプルが存在しない領域と、サンプルが存在すると共にサンプルが低い細胞密度を有する1つ以上の領域とを区別することを含む。
【0063】
更に、本発明のいくつかの適用例に従って、
ベース面及び上部カバーを含むキャビティであるサンプルチャンバ内に血液サンプルの少なくとも一部を配置することと、
キャリアのベース面上で細胞懸濁液中の細胞を沈降させて、キャリアのベース面上に細胞の単層を形成することと、
細胞の単層の少なくとも一部が単層焦点面内に配置されて、顕微鏡の焦点が単層焦点面に合っている間に、細胞の単層のこの一部の少なくとも1つの顕微鏡画像を取得することと、
単層焦点面とは異なる焦点面でエンティティを視認できる領域を識別することによって、上部カバー又はベース面の下側にごみがあることを識別することと、
少なくとも識別された領域を、サンプルのこの一部の顕微鏡分析に使用することを無効にすることと、
を含む方法が提供される。
【0064】
更に、本発明のいくつかの適用例に従って、
ベース面及び上部カバーを含むキャビティであるサンプルチャンバ内に血液サンプルの少なくとも一部を配置することと、
キャリアのベース面上で細胞懸濁液中の細胞を沈降させて、キャリアのベース面上に細胞の単層を形成することと、
細胞の単層の少なくとも一部が単層焦点面内に配置されて、顕微鏡の焦点が単層焦点面に合っている間に、細胞の単層のこの一部の少なくとも1つの顕微鏡画像を取得することと、
顕微鏡画像の背景強度によって上部カバー又はベース面の下側にごみが存在することが示される領域を識別することにより、
少なくとも識別された領域を、サンプルのこの一部の顕微鏡分析に使用することを無効にすることと、
を含む方法が提供される。
【0065】
更に、本発明のいくつかの適用例に従って、
血液サンプルの少なくとも一部を蛍光染料によって染色することと、
所与のスペクトル帯の光を発する光源を用いてサンプルの一部を照明することにより、顕微鏡ユニットを用いて血液サンプルの一部の複数の蛍光顕微鏡画像を取得することによって、血液サンプル内の染色された細胞を識別することと、
染色された細胞以外に、光源による照明のもとで取得される顕微鏡画像内で視認できる1つ以上の蛍光領域を識別することと、
識別された蛍光領域に基づいて光源の特徴を決定することと、
を含む方法が提供される。
【0066】
いくつかの適用例において、識別された蛍光領域に基づいて光源の特徴を決定することは、蛍光光源による照明の空間分布が以前の測定後に変化したか否かを判定することを含む。
【0067】
いくつかの適用例において、識別された蛍光領域に基づいて光源の特徴を決定することは、蛍光光源による照明の空間的均一性が以前の測定後に変化したか否かを判定することを含む。
【0068】
いくつかの適用例において、識別された蛍光領域に基づいて光源の特徴を決定することは、蛍光光源による照明の空間的位置が以前の測定後に変化したか否かを判定することを含む。
【0069】
いくつかの適用例において、識別された蛍光領域に基づいて光源の特徴を決定することは、蛍光光源による照明のビネット効果が以前の測定後に変化したか否かを判定することを含む。
【0070】
いくつかの適用例において、識別された蛍光領域に基づいて光源の特徴を決定することは、蛍光光源による照明のスペクトル分布が以前の測定後に変化したか否かを判定することを含む。
【0071】
いくつかの適用例において、識別された蛍光領域に基づいて光源の特徴を決定することは、蛍光光源による照明の強度が以前の測定後に変化したか否かを判定することを含む。
【0072】
いくつかの適用例において、方法は更に、染色された細胞に測定を実行し、光源の決定された特徴に基づいて測定を正規化することによって、血液サンプルのパラメータを決定することを含む。
【0073】
いくつかの適用例において、方法は更に、光源の決定された特徴に基づいて、血液サンプルに少なくともいくつかの測定を実行することを無効にすることを含む。
【0074】
いくつかの適用例において、染色された細胞以外に、光源による照明のもとで取得される顕微鏡画像内で視認できる1つ以上の蛍光領域を識別することは、血液サンプル内の細胞間領域を識別することを含む。
【0075】
いくつかの適用例において、染色された細胞以外に、光源による照明のもとで取得される顕微鏡画像内で視認できる1つ以上の蛍光領域を識別することは、顕微鏡ユニットの1つ以上の蛍光領域を識別することを含む。
【0076】
いくつかの適用例において、血液サンプルの一部の複数の蛍光顕微鏡画像を取得することは、血液サンプルがサンプルキャリア内に収容されている間に血液サンプルの一部の複数の蛍光顕微鏡画像を取得することを含み、染色された細胞以外に、光源による照明のもとで取得される顕微鏡画像内で視認できる1つ以上の蛍光領域を識別することは、サンプルキャリアの1つ以上の蛍光領域を識別することを含む。
【0077】
いくつかの適用例において、サンプルキャリアは、蛍光発光する感圧接着剤を介して相互に結合されたガラス層及びプラスチック層を含み、染色された細胞以外に、光源による照明のもとで取得される顕微鏡画像内で視認できる1つ以上の蛍光領域を識別することは、感圧接着剤を識別することを含む。
【0078】
更に、本発明のいくつかの適用例に従って、
血液サンプルの少なくとも一部を蛍光染料によって染色することと、
所与のスペクトル帯の光を発する光源を用いてサンプルの一部を照明することにより、血液サンプルの一部の複数の蛍光顕微鏡画像を取得することによって、血液サンプル内の染色された細胞を識別することと、
染色された細胞以外に、光源による照明のもとで取得される顕微鏡画像内で視認できる1つ以上の蛍光領域を識別することと、
識別された蛍光領域に基づいて染色された細胞の蛍光を正規化することと、
を含む方法が提供される。
【0079】
いくつかの適用例において、染色された細胞以外に、光源による照明のもとで取得される顕微鏡画像内で視認できる1つ以上の蛍光領域を識別することは、血液サンプル内の細胞間領域を識別することを含む。
【0080】
いくつかの適用例において、染色された細胞以外に、光源による照明のもとで取得される顕微鏡画像内で視認できる1つ以上の蛍光領域を識別することは、顕微鏡ユニットの1つ以上の蛍光領域を識別することを含む。
【0081】
いくつかの適用例において、血液サンプルの一部の複数の蛍光顕微鏡画像を取得することは、血液サンプルがサンプルキャリア内に収容されている間に血液サンプルの一部の複数の蛍光顕微鏡画像を取得することを含み、染色された細胞以外に、光源による照明のもとで取得される顕微鏡画像内で視認できる1つ以上の蛍光領域を識別することは、サンプルキャリアの1つ以上の蛍光領域を識別することを含む。
【0082】
いくつかの適用例において、サンプルキャリアは、蛍光発光する感圧接着剤を介して相互に結合されたガラス層及びプラスチック層を含み、染色された細胞以外に、光源による照明のもとで取得される顕微鏡画像内で視認できる1つ以上の蛍光領域を識別することは、感圧接着剤を識別することを含む。
【0083】
更に、本発明のいくつかの適用例に従って、
血液サンプルの少なくとも一部を明視野光源からの光で照明することにより、血液サンプルのこの一部の複数の明視野顕微鏡画像を取得することによって、血液サンプル内のエンティティを識別することと、
血液サンプルが存在しない状態で明視野光源が発する光の明視野領域を分析することと、
光の明視野領域を分析することに基づいて明視野光源の特徴を決定することと、
を含む方法が提供される。
【0084】
いくつかの適用例において、識別された明視野領域に基づいて光源の特徴を決定することは、明視野光源による照明の空間分布が以前の測定後に変化したか否かを判定することを含む。
【0085】
いくつかの適用例において、光源の特徴を決定することは、明視野光源による照明の空間的均一性が以前の測定後に変化したか否かを判定することを含む。
【0086】
いくつかの適用例において、光源の特徴を決定することは、明視野光源による照明の空間的位置が以前の測定後に変化したか否かを判定することを含む。
【0087】
いくつかの適用例において、光源の特徴を決定することは、明視野光源による照明のビネット効果が以前の測定後に変化したか否かを判定することを含む。
【0088】
いくつかの適用例において、光源の特徴を決定することは、明視野光源による照明のスペクトル分布が以前の測定後に変化したか否かを判定することを含む。
【0089】
いくつかの適用例において、光源の特徴を決定することは、明視野光源による照明の強度が以前の測定後に変化したか否かを判定することを含む。
【0090】
いくつかの適用例において、血液サンプルが存在しない状態で明視野光源が発する光の明視野領域を分析することは、血液サンプルが存在しない状態で明視野光源が発する光の明視野領域を固定時間間隔で定期的に分析することを含む。
【0091】
いくつかの適用例において、血液サンプルが存在しない状態で明視野光源が発する光の明視野領域を分析することは、明視野光源を用いて所与の数の血液サンプルを撮像した後に明視野光源が発する光の明視野領域を分析することを含む。
【0092】
いくつかの適用例において、方法は、血液サンプル内のエンティティに測定を実行し、明視野光源の決定された特徴に基づいて測定を正規化することによって、血液サンプルのパラメータを決定することを更に含む。
【0093】
いくつかの適用例において、方法は、明視野光源の決定された特徴に基づいて、血液サンプルに少なくともいくつかの測定を実行することを無効にすることを更に含む。
【0094】
本発明のいくつかの適用例に従って、
各血液サンプルの一部を少なくとも1つのタイプの蛍光染料によって染色することと、
顕微鏡ユニットを用いて、各スペクトル帯の光を発する複数の光源を用いてサンプルの一部を照明することにより、各血液サンプルの一部の蛍光顕微鏡画像を取得することと、
顕微鏡画像の少なくともいくつかにエラーが存在することを検出することと、
エラーの源を分類することであって、
エラーが所与の時点から発生したことの検出に応答して、蛍光染料をエラーの源として識別することと、
エラーが経時的に徐々に増大したことの検出に応答して、顕微鏡ユニット内のごみをエラーの源として識別することと、
エラーが光源のうち所与の1つによる照明のもとで取得された画像にのみ存在することの検出に応答して、光源のうちこの所与の1つをエラーの源として識別することと、
によってエラーの源を分類することと、
を含む方法が提供される。
【0095】
本発明は、実施形態の以下の詳細な説明を図面と共に検討することから、いっそう充分に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0096】
図1】本発明のいくつかの適用例に従った生物サンプル分析システムのコンポーネントを示すブロック図である。
図2A】本発明のいくつかの適用例に従って顕微鏡下の測定と光学密度測定の双方を実行するために用いられるサンプルキャリアの各ビューの概略図である。
図2B】本発明のいくつかの適用例に従って顕微鏡下の測定と光学密度測定の双方を実行するために用いられるサンプルキャリアの各ビューの概略図である。
図2C】本発明のいくつかの適用例に従って顕微鏡下の測定と光学密度測定の双方を実行するために用いられるサンプルキャリアの各ビューの概略図である。
図3A】本発明のいくつかの適用例に従って取得された溶血赤血球を含む血液サンプルの顕微鏡画像である。
図3B】本発明のいくつかの適用例に従って取得された溶血赤血球を含む血液サンプルの顕微鏡画像である。
図3C】本発明のいくつかの適用例に従って取得された溶血赤血球を含む血液サンプルの顕微鏡画像である。
図4】本発明のいくつかの適用例に従ってサンプルチャンバの長さに沿って記録された正規化光透過強度のプロファイルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0097】
これより、本発明のいくつかの適用例に従った生物サンプル分析システム20のコンポーネントを示すブロック図である図1を参照する。典型的には、サンプルキャリア22内に生物サンプル(例えば血液サンプル)が配置される。サンプルがサンプルキャリアに置かれている間に、1つ以上の光学測定デバイス24を用いてサンプルに光学測定を実行する。例えば光学測定デバイスは、顕微鏡(例えばデジタル顕微鏡)、分光光度計、光度計、分光計、カメラ、スペクトルカメラ、ハイパースペクトルカメラ、蛍光光度計、蛍光分光計、及び/又は光検出器(フォトダイオード、フォトレジスタ、及び/又はフォトトランジスタ等)を含み得る。いくつかの適用例では、光学測定デバイスは、専用の光源(発光ダイオード、白熱光源等)、及び/又は、集光及び/又は発光を操作するための光学要素(レンズ、散光器、フィルタ等)を含む。いくつかの適用例では、Greenfieldに対する米国特許出願公開第US2014/0347459号(援用により本願に含まれる)に記載されている顕微鏡システムと概ね同様の顕微鏡システムが用いられる。
【0098】
典型的には、コンピュータプロセッサ28が、光学測定デバイスによって実行された光学測定を受信し処理する。更に典型的には、コンピュータプロセッサは、1つ以上の光学測定デバイスによって実行された光学測定の取得を制御する。コンピュータプロセッサはメモリ30と通信する。ユーザ(例えば検査技師、又はサンプルが採取された個人)は、ユーザインタフェース32を介してコンピュータプロセッサに命令を送信する。いくつかの適用例では、ユーザインタフェースは、キーボード、マウス、ジョイスティック、タッチスクリーンデバイス(スマートフォン又はタブレットコンピュータ等)、タッチパッド、トラックボール、音声コマンドインタフェース、及び/又は当技術分野において既知である他のタイプのユーザインタフェースを含む。典型的に、コンピュータプロセッサは出力デバイス34を介して出力を生成する。更に典型的には、出力デバイスはモニタ等のディスプレイを含み、出力はディスプレイに表示される出力を含む。いくつかの適用例では、プロセッサは、例えばスピーカ、ヘッドフォン、スマートフォン、又はタブレットコンピュータ等、異なるタイプの視覚、テキスト、グラフィック、触覚、聴覚、及び/又はビデオ出力デバイス上で出力を生成する。いくつかの適用例では、ユーザインタフェース32は入力インタフェース及び出力インタフェースの双方として機能する、すなわち入出力インタフェースとして機能する。いくつかの適用例では、プロセッサは、ディスク又は携帯型USBドライブ等のコンピュータ可読媒体(例えば非一時的コンピュータ可読媒体)上で出力を生成する、及び/又はプリンタで出力を生成する。
【0099】
いくつかの適用例では、光学測定デバイス24(及び/又はコンピュータプロセッサ28及びメモリ30)は光学測定ユニット31内に収容されている。サンプルに光学測定を実行するため、光学測定ユニット内にサンプルキャリア22を配置する。典型的に、光学測定ユニットは、サンプルの一部分の顕微鏡撮像を実行するように構成された顕微鏡システムを含む。いくつかの適用例では、顕微鏡システムは、サンプルの明視野撮像のために使用されるよう構成された明視野光源(例えば発光ダイオード)のセットと、サンプルの蛍光撮像のために使用されるよう構成された蛍光光源(例えば発光ダイオード)のセットと、サンプルを撮像するよう構成されたカメラ(CCDカメラ又はCMOSカメラ等)と、を含む。典型的に、光学測定ユニットは、サンプルの第2の部分に光学密度測定(例えば光吸収測定)を実行するように構成された光学密度測定ユニットも含む。いくつかの適用例では、光学密度測定ユニットは、サンプルに光学密度測定を実行するために構成された光学密度測定光源(例えば発光ダイオード)及び光検出器のセットを含む。いくつかの適用例では、前述の光源セットの各々(すなわち、明視野光源セット、蛍光光源セット、及び光学密度測定光源セット)は、複数の光源(例えば複数の発光ダイオード)を含み、それらの光源の各々は、各波長で又は各波長帯で発光するように構成されている。
【0100】
これより、本発明のいくつかの適用例に従ったサンプルキャリア22の各ビューの概略図である図2A及び図2Bを参照する。図2Aはサンプルキャリアの上面図であり(説明の目的のため、図2Aではサンプルキャリアの上部カバーは不透明なものとして図示されている)、図2Bは下面図である(図2Aに示されているビューに対してサンプルキャリアは短い縁部を中心に回転している)。典型的に、サンプルキャリアは、サンプルに顕微鏡分析を実行するため用いられる1つ以上のチャンバの第1のセット52と、サンプルに光学密度測定を実行するため用いられる1つ以上のチャンバの第2のセット54と、を含む。典型的に、サンプルキャリアのチャンバは、サンプル入口孔38を介して血液等の身体サンプルが充填される。いくつかの適用例では、チャンバは1つ以上の出口孔40を画定する。出口孔は、チャンバ内に存在する空気をチャンバから解放することによって、チャンバへの身体サンプルの充填を容易にするよう構成されている。典型的には、図示されているように、出口孔は(サンプルキャリアのサンプルチャンバに関して)入口孔の長手方向反対側に配置されている。いくつかの適用例では、出口孔はこれによって、入口孔のより近くに配置された場合に比べて、より効率的な空気逃し機構を提供する。
【0101】
本発明のいくつかの適用例に従ったサンプルキャリア22の分解組立図を示す図2Cを参照する。いくつかの適用例では、サンプルキャリアは少なくとも3つのコンポーネントを含む。すなわち、成形コンポーネント42、ガラスシート44、及び、ガラスシートを成形コンポーネントの下側に付着するよう構成された接着層46である。成形コンポーネントは典型的に、所望の幾何学的形状を有するチャンバを提供するために(例えば射出成形によって)成形されるポリマー(例えばプラスチック)で作製される。例えば、図示されているように、成形コンポーネントは典型的に、入口孔38と、出口孔40と、各チャンバの中央部を取り囲む溝48と、を画定するように成形される。溝は典型的に、空気を出口孔へ流すことによって、及び/又は身体サンプルをチャンバの中央部の周りに流すことによって、チャンバへの身体サンプルの充填を容易にする。
【0102】
いくつかの適用例では、図2Aから図2Cに示されているようなサンプルキャリアは、血液サンプルの全血球計算を実行する場合に使用される。いくつかの適用例では、チャンバの第1のセット52(サンプルに顕微鏡分析を実行するため用いられる)内に血液サンプルの第1の部分を配置し、チャンバの第2のセット54(サンプルに光学密度測定を実行するため用いられる)内に血液サンプルの第2の部分を配置する。いくつかの適用例では、図示されているように、チャンバの第1のセット52は複数のチャンバを含み、チャンバの第2のセット54は1つだけのチャンバを含む。しかしながら、本発明の範囲は、チャンバの第1のセット内もしくはチャンバの第2のセット内のどちらかに任意の数のチャンバ(例えば単一のチャンバもしくは複数のチャンバ)を含むか、又はこれらの任意の組み合わせを含む。例えば、希釈剤は、pH緩衝液、染料、蛍光染料、抗体、球状化剤(sphering agent)、溶解剤(lysing agent)等を含み得る。典型的に、チャンバの第2のセット54内に配置される血液サンプルの第2の部分は、天然の希釈されていない血液サンプルである。代替的に又は追加的に、血液サンプルの第2の部分は、例えば希釈(例えば制御された方法での希釈)、成分もしくは試薬の追加、又は分別のうち1つ以上を含む何らかの変更が行われたサンプルであってもよい。
【0103】
いくつかの適用例では、サンプルを顕微鏡で撮像する前に、1つ以上の染色物質を用いて血液サンプルの第1の部分(チャンバの第1のセット52内に配置される)を染色する。例えば染色物質は、他の細胞成分の染色よりもDNAを優先的に染色するよう構成され得る。あるいは染色物質は、他の細胞成分の染色よりも全ての細胞核酸を優先的に染色するよう構成され得る。例えばサンプルは、アクリジンオレンジ試薬、ヘキスト試薬、及び/又は、血液サンプル内のDNA及び/又はRNAを優先的に染色するよう構成された他の任意の染色物質によって染色され得る。任意選択的に、染色物質は全ての細胞核酸を染色するように構成されるが、例えばアクリジンオレンジについて既知であるように、一定の照明及びフィルタ条件のもとではDNA及びRNAのそれぞれの染色がいっそう顕著に視認できる。細胞の検出を可能とする撮像条件(例えば明視野)及び/又は染色された部分の可視化を可能とする撮像条件(例えば適切な蛍光照明)を用いて、サンプルの画像を取得することができる。典型的に、サンプルの第1の部分はアクリジンオレンジ及びヘキスト試薬によって染色される。例えば、血液サンプルの第1の(希釈された)部分は、Pollakに対する米国特許出願公開第US2015/0316477号(援用により本願に含まれる)に記載されているような技法を用いて準備すればよい。米国特許出願公開第US2015/0316477号は、分析のために血液サンプルを準備する方法を記載し、この方法は、サンプルの顕微鏡画像内の成分の識別及び/又はカウントを容易にする希釈ステップを含む。
【0104】
典型的に、顕微鏡で撮像を行う前に、例えばPollakに対する米国特許第US9,329,129号(援用により本願に含まれる)に記載されているような技法を用いて血液の第1の部分(チャンバの第1のセット52に配置される)を沈降させ、例えば細胞の単層を形成する。いくつかの適用例では、血液サンプルの第1の部分の顕微鏡分析は細胞の単層に対して実行される。典型的に、血液サンプルの第1の部分は明視野撮像のもとで、すなわち1つ以上の光源(例えば1つ以上の発光ダイオードであり、典型的にそれぞれのスペクトル帯で発光する)からの照明のもとで撮像される。いっそう典型的には、血液サンプルの第1の部分は更に蛍光撮像のもとで撮像される。典型的に、蛍光撮像を行うには、既知の励起波長(すなわち、これらの波長の光で励起された場合に、染色された物体(すなわち1又は複数の染料を吸収した物体)が蛍光光を発することが既知である波長)の光をサンプルの方へ誘導することによって、サンプル内の染色された物体を励起し、蛍光光を検出する。典型的に、蛍光撮像では、別個の光源セット(例えば1つ以上の発光ダイオード)を用いて既知の励起波長でサンプルを照明する。
【0105】
なお、本出願の文脈において、単層という用語は、沈降して例えば顕微鏡の単一の焦点フィールド内に配置される細胞の層を表すために用いられる。単層内には多少の細胞の重複が存在することがあり、例えば特定エリア内に細胞の2つ以上の重複層が存在し得る。例えば、単層内で赤血球が相互に重複する、及び/又は単層内で血小板が赤血球と重複するか又は赤血球の上にあることがある。
【0106】
Pollackに対する米国特許出願公開第US2019/0302099号(援用により本願に含まれる)を参照して記載されているように、いくつかの適用例では、セット52(顕微鏡下の測定のために用いられる)に属するチャンバは相互に異なる高さを有する。これの目的は、各チャンバの顕微鏡画像を用いた異なる測定量の測定を容易にすること、及び/又は各サンプルタイプの顕微鏡分析のために異なるチャンバを使用することである。例えば、血液サンプル及び/又はサンプルによって形成された単層が比較的低い密度の赤血球を有する場合、高さが大きいサンプルキャリアのチャンバ(すなわち、比較的高さが小さい異なるチャンバに比べて高さが大きいサンプルキャリアのチャンバ)内で測定を実行することで、充分な密度の細胞が存在するように、及び/又はサンプルによって形成された単層内に充分な密度の細胞が存在するようにして、統計的に信頼性の高いデータを提供することができる。このような測定は例えば、赤血球の密度測定、他の細胞属性(異常な赤血球の数、細胞内小体(intracellular body)(例えば病原体、ハウエルジョリー小体)等を含む赤血球の数)の測定、及び/又はヘモグロビン濃度の測定を含み得る。逆に、血液サンプル及び/又はサンプルによって形成された単層が比較的高い密度の赤血球を有する場合、比較的小さい高さのサンプルキャリアのチャンバでそのような測定を実行することで、例えば、充分な希薄度(sparsity)の細胞が存在するように、及び/又はサンプルによって形成された細胞の単層内に充分な希薄度の細胞が存在するようにして、顕微鏡画像内で細胞を識別することができる。いくつかの適用例では、セット52に属するチャンバ間の高さの差異が正確に分かっていなくても、そのような方法が実行される。
【0107】
いくつかの適用例では、測定される測定量に基づいて、光学測定を実行するサンプルキャリア内のチャンバを選択する。例えば、高さの大きいサンプルキャリアのチャンバを用いて、白血球のカウント(例えば、浅い領域内で数が少ないことから発生し得る統計誤差を減らすため)、白血球の分化、及び/又はまれな形態の白血球の検出を実行することができる。逆に、平均赤血球ヘモグロビン(MCH:mean corpuscular hemoglobin)、平均赤血球容積(MCV:mean corpuscular volume)、赤血球分布幅(RDW:red blood cell distribution width)、赤血球形態学的特徴、及び/又は赤血球異常を決定するために、比較的小さい高さのサンプルチャンバのチャンバから顕微鏡画像を取得することができる。これは、そのようなチャンバでは細胞が領域のエリア内に比較的まばらに分布しているから、及び/又は細胞が比較的まばらに分布している単層を形成するからである。同様に、血小板のカウント、血小板の分類、及び/又は血小板の他のいずれかの属性(容積等)の抽出を行うために、比較的小さい高さのサンプルチャンバのチャンバから顕微鏡画像を取得することができる。これは、そのようなチャンバ内では顕微鏡画像において及び/又は単層において血小板と(完全に又は部分的に)重複する赤血球が少ないからである。
【0108】
上述の例によれば、サンプル(血液サンプル等)内のある測定量を測定するため光学測定を実行するには高さの小さいサンプルキャリアのチャンバ使用することが好ましいが、そのようなサンプル内の他の測定量を測定するため光学測定を実行するには高さの大きいサンプルキャリアのチャンバ使用することが好ましい。従って、いくつかの適用例では、サンプルキャリアのセット52に属する第1のチャンバ内に配置されたサンプルの部分に(例えばこの部分の顕微鏡画像を取得することで)第1の光学測定を実行することによってサンプル内の第1の測定量が測定され、サンプルキャリアのセット52の第2のチャンバ内に配置されたサンプルの部分に(例えばこの部分の顕微鏡画像を取得することで)第2の光学測定を実行することによって同じサンプルの第2の測定量が測定される。いくつかの適用例では、例えば、援用により本願に含まれるZaitに対する米国特許出願公開第US2019/0145963号に記載されているような技法を用いて、第1及び第2の測定量は相互に対して正規化される。
【0109】
典型的に、サンプルに光学密度測定を実行するため、光学測定を実行したサンプルの部分の光路長、容積、及び/又は厚さをできる限り精密に知ることが望ましい。典型的に、光学密度測定は、サンプルの第2の部分(典型的に、希釈されていない形態でチャンバの第2のセット54内に配置される)に対して実行される。例えば、サンプルに対して光吸収、透過率、蛍光、及び/又は発光の測定を実行することにより、成分の濃度及び/又は密度を測定することができる。
【0110】
再び図2Aを参照すると、いくつかの適用例では、セット54に属するチャンバ(光学密度測定に用いられる)は典型的に、少なくとも第1の領域56(典型的に深い)及び第2の領域58(典型的に浅い)を画定する。第1の領域と第2の領域とで、チャンバの高さは既定されるように異なっている。これは例えば、援用により本願に含まれるPollackに対する国際公開第WO17/195205号に記載されている。サンプルチャンバの第1の領域56及び第2の領域58の高さは、ガラスシートが画定する下面及び成形コンポーネントが画定する上面によって画定される。第2の領域の上面は第1の領域の上面に対して段差がある。第1及び第2の領域の上面間の段差は、これらの領域間に既定の高度差Δhを与えるので、これらの領域の絶対高さが(例えば製造プロセスの公差のため)充分な精度で分かっていない場合であっても、本明細書に記載され、Pollackに対する米国特許出願公開第US2019/0302099号(援用により本願に含まれる)に記載されているような技法を用いて、サンプルのパラメータを決定するには充分な精度で高度差Δhが分かる。いくつかの適用例では、チャンバの高さは第1の領域56から第2の領域58へと変動し、第2の領域58から第3の領域59へと再び変動するので、サンプルチャンバに沿って、第1の領域56は最大高さ領域を画定し、第2の領域58は中間高さ領域を画定し、第3の領域59は最小高さ領域を画定する。いくつかの適用例では、チャンバの長さに沿って更に別の高さ変動が存在する、及び/又はチャンバの長さに沿って高さが漸進的に変動する。
【0111】
上述した通り、サンプルキャリアにサンプルが配置されている間に、1つ以上の光学測定デバイス24を用いてサンプルに光学測定を実行する。典型的に、サンプルはガラス層を介して光学測定デバイスによって調べられる。ガラスは、少なくとも光学測定デバイスが典型的に使用する波長に対して透明である。典型的に、光学測定を実行する間、サンプルキャリアは、光学測定デバイスを収容している光学測定ユニット31内に挿入される。典型的には、ガラス層の上方に成形層が配置されるように、かつ、サンプルキャリアのガラス層の下方に光学測定ユニットが配置され、光学測定ユニットがガラス層を介してサンプルに光学測定を実行できるように、光学測定ユニットはサンプルキャリアを収容する。サンプルキャリアは、ガラスシートを成形コンポーネントに付着させることによって形成される。例えばガラスシート及び成形コンポーネントは、(例えば熱接合、溶媒を用いた接合、超音波溶接、レーザ溶接、熱かしめ(heat staking)、接着剤、機械的クランプ、及び/又は追加の基板を用いて)製造又は組み立て中に相互に接合することができる。いくつかの適用例では、ガラス層及び成形コンポーネントは、接着層46を用いて製造又は組み立て中に相互に接合される。いくつかの適用例では、製造プロセスの公差のため、サンプルチャンバの絶対高さは分かっていない。上述のように、第1及び第2の領域の上面間の段差は、これらの領域間に既定の高度差Δhを与えるので、これらの領域の絶対高さが(例えば製造プロセスの公差のため)充分な精度で分かっていない場合であっても、サンプルのパラメータを決定するには充分な精度で高度差Δhが分かる。第1及び第2の領域間の段差の代わりに又はそれに加えて、例えば、本明細書に記載され、Pollackに対する米国特許出願公開第US2019/0302099号(援用により本願に含まれる)に記載されているような技法を用いて、代替的に又は追加的に、チャンバの長さに沿った高さ変動(例えば段差による高さ変動又は漸進的な高さ変動)を用いてもよい。
【0112】
いくつかの適用例では、サンプルキャリア22の一部は少なくとも特定の条件下で蛍光発光するように構成されている。例えばサンプルキャリアの一部は、光学測定デバイス24が発する光(例えば顕微鏡システムが発する明視野光又は蛍光)を当てた場合に蛍光発光するよう構成することができる。あるいは、サンプルキャリアの一部は、光学測定デバイス24が収容されている光学測定ユニット31内に配置された場合に蛍光発光するよう構成することができる。上述のように、いくつかの適用例ではサンプルキャリア22は接着層46を含む。いくつかの適用例では、接着層又はその一部は上述のように蛍光発光するよう構成されている(例えば、接着層内の接着材料が蛍光発光するように構成されている、接着層が蛍光発光するよう構成された追加材料を含有する、及び/又は接着層がそのような材料でコーティングされている)。いくつかの適用例では、接着層は感圧接着剤であり、その少なくとも一部は蛍光発光するように構成されている。例えば、感圧接着剤はアクリル系感圧接着剤であり、その少なくとも一部は蛍光発光するように構成されている。
【0113】
本発明のいくつかの適用例によれば、様々なエラーが発生したか否かを判定するため、及び、任意選択的にエラーが発生した場合にエラー源を識別するため、様々な技法が(典型的にコンピュータプロセッサによって)実行される。このようなエラーは、サンプル全体の準備から発生し得る。例えば、サンプルは、測定の実行前に過度に長い間サンプルキャリア上に放置されたままであった可能性がある(この結果として、サンプルが劣化する、及び/又はサンプルの一方又は双方の部分と混合した染料がサンプル内のエンティティによって過度に吸収される可能性がある)。あるいは、エラーはサンプルの部分のうち特定の部分の準備から発生し得る。例えば、第1の部分(典型的には希釈され、顕微鏡で分析されるチャンバの第1のセット52内に配置される)の準備においてエラーが発生した可能性がある。これは例えば、サンプルの第1の部分の希釈におけるエラー、チャンバの第1のセット52内への気泡の混入、又はサンプルのこの部分の汚染である。代替的に又は追加的に、第2の部分(典型的には希釈されず、光学密度測定によって分析されるチャンバの第2のセット54内に配置される)の準備においてエラーが発生した可能性がある。これは例えば、この部分の汚染、又はチャンバの第2のセット54内への気泡の混入である。
【0114】
代替的に又は追加的に、エラーは、サンプルキャリアのエラー(サンプルキャリア自体(例えば基板)の材料が汚れている、及び/又はサンプルキャリア上にごみ又はこぼれた血液がある等)、及び/又は、照明(例えば、明視野撮像に用いられる発光ダイオード及び/又はサンプルの蛍光撮像中に用いられる発光ダイオード)等の顕微鏡システム自体のエラー、及び/又は、光路及び/又はモータ及びステージのコンポーネント又はコントローラに関連するエラー、及び/又は、デバイスが配置されている環境(相対湿度、温度、圧力、粒子濃度、又は他の何らかの環境因子等)から生じるエラーから発生し得る。更に、代替的に又は追加的に、サンプルには固有の問題が存在することがある(特定のエンティティの数が極めて少ないかもしくは極めて多いこと、又は、サンプル収集の実行後に過度に長い時間が経過したこと等)。これが意味するのは、コンピュータプロセッサが特定の測定を充分な精度で実行できないということ、及び/又はコンピュータプロセッサがこれをユーザに通知しなければならないということである。
【0115】
いくつかの適用例では、エラーを識別したことに応じて、コンピュータプロセッサは、エラーを示す及び/又はエラー源を示すメッセージを出力する。いくつかの適用例では、コンピュータプロセッサは、エラーを識別したことに応じて、血液サンプルに特定の測定を実行しない。いくつかの適用例では、エラーを識別したことに応じて、コンピュータプロセッサは、サンプルに測定を実行しない、及び/又はサンプルが無効であることをユーザに通知する、及び/又は新しい試験キットを用いてサンプル準備を繰り返すようユーザに命令する、及び/又は血液サンプルを再収集する。代替的に又は追加的に、エラーの原因を説明するため、コンピュータプロセッサは、血液サンプルに実行される測定を較正することによって、血液サンプルの特定のパラメータを決定する。
【0116】
いくつかの適用例では、例えば上述のやり方のうち1つ以上で、以下のエラーのうち1つ以上の原因を説明する。
【0117】
以下のような顕微鏡デバイスにおけるエラー
-顕微鏡ステージを移動させるモータの脱調
-(例えば以下で詳述するような)顕微鏡ステージの移動の遊びの変化
-(例えば以下で詳述するような)顕微鏡カメラと顕微鏡ステージとの間のタイミングの変化
-顕微鏡カメラと顕微鏡ステージとの間の位置合わせ(例えばこれらの要素間の相対的な回転に起因する)
-光学システムの問題(例えば以下で詳述するような、サンプルによって起こる、又は顕微鏡ステージ破片(例えば引っかいた破片)によって起こる、経時的な焦点品質の変化)
-顕微鏡システムにおけるレベリング変化
-z軸(すなわち光軸)に沿った予想焦点位置の変化
-要素間の通信の喪失
-カメラ線形応答の変化
【0118】
以下のような環境因子によって生じるエラー
-許容温度、湿度、高度等の範囲外のデバイス
-目標値外の特定コンポーネント
【0119】
以下のような因子によって生じる一般的なエラー
-スキャン時間
-デバイス起動時間
-利用可能な作業/記憶メモリ
【0120】
エラーを識別し、このようなエラーの原因を説明するための技法のいくつかの例を、以下で記載する。
【0121】
上述のように、典型的に、血液サンプルの第1の部分は、サンプルチャンバの第1のセット52内に配置されている間に顕微鏡で分析される。典型的に、顕微鏡で撮像を行う前に、例えばPollakに対する米国特許第US9,329,129号(援用により本願に含まれる)に記載されているような技法を用いて、血液の第1の部分(チャンバの第1のセット52に配置される)を沈降させ、例えば細胞の単層を形成する。
【0122】
いくつかの適用例では、コンピュータプロセッサは、サンプルキャリアが顕微鏡ユニット内に配置された後にサンプルの1つ以上の顕微鏡画像を取得し、この1つ以上の画像を分析することによって、サンプルキャリアが顕微鏡ユニット内に配置される前にサンプルチャンバ内の1つ以上の細胞型(例えば赤血球)がすでにサンプルチャンバ内で沈降していたか否かを判定するように構成されている。
【0123】
典型的に、顕微鏡画像を取得する前に赤血球の全てがすでに沈降していたと判定された場合、これは、サンプルキャリアを顕微鏡ユニット内に配置する前に過度に長い時間にわたって血液サンプルがサンプルチャンバ内に放置されたことを示す。なお、典型的には顕微鏡画像の分析は沈降した細胞の単層に対して行われるが、それでもやはり、一部の赤血球がまだ沈降中である時にサンプルキャリアを顕微鏡ユニット内に配置することが望ましい。これは、顕微鏡ユニット内に配置される前に過度に長い時間にわたってサンプルがサンプルキャリア内に放置されなかったことを示すからである。逆に、赤血球の全て(又は赤血球の充分に大きな割合)がすでに沈降していた場合、サンプルは劣化している可能性がある、及び/又は染料がサンプル内のエンティティによって過度に吸収されている可能性がある。このため、細胞がまだ沈降中である程度は、どのくらい最近にサンプルが被験者から採取されたか、及び/又はどのくらい最近にサンプルがサンプルキャリアもしくはサンプルチャンバに配置されたか(すなわちサンプルの鮮度)を示す尺度として使用され得る。従って、いくつかの適用例では、1つ以上の顕微鏡画像の取得前に、サンプルチャンバ内の赤血球のうち閾値を超える量がすでにサンプルチャンバ内で沈降しているという判定に応じて、サンプル(又はその一部)は、サンプルに少なくともいくつかの測定を実行するため使用することを無効にされる。
【0124】
いくつかの適用例では、1つ以上の顕微鏡画像の取得前にサンプルチャンバ内の1つ以上の細胞型がすでにサンプルチャンバ内で沈降していたか否かの判定に少なくとも部分的に基づいて、血液サンプルの古さの指標を決定する。いくつかの適用例では、1つ以上の顕微鏡画像の取得前にサンプルチャンバ内でまだ沈降していなかったサンプルチャンバ内の1つ以上の細胞型の量(又は割合)に少なくとも部分的に基づいて、血液サンプルの古さの指標を決定する。
【0125】
いくつかの適用例では、サンプルの第2の部分(典型的に、希釈されていない形態でチャンバの第2のセット54内に配置される)に対して、上の段落で記載したものと概ね同様の分析を実行する(どのくらい最近にサンプルが被験者から採取されたか、及び/又はどのくらい最近にサンプルがサンプルキャリアもしくはサンプルチャンバに配置されたかを決定するため)。
【0126】
なお、典型的に、コンピュータプロセッサが、(例えば上述した分析技法を用いて)どのくらい最近にサンプルが被験者から採取されたか、及び/又はどのくらい最近にサンプルがサンプルキャリアもしくはサンプルチャンバに配置されたかの指標を決定した後、血液サンプルの第1の部分を更に撮像する(この撮像は血液サンプルの顕微鏡分析を行う目的で実行する)前に、同じキャリアを顕微鏡ユニット内の所定位置に数分間(例えば2~10分間、例えば約5分間)放置する。これは、血液サンプルの第1の部分が沈降して単層になる時間を確保するためである。
【0127】
いくつかの適用例では、1つ以上の顕微鏡画像の取得前にサンプルチャンバ内の赤血球のうち閾値を超える量がすでにサンプルチャンバ内で沈降していたという判定に応じて、サンプルに実行される測定を較正する。例えば、そのような測定を較正して、1つ以上の顕微鏡画像の取得前にサンプルチャンバ内の赤血球のうち閾値を超える量がすでにサンプルチャンバ内で沈降していたことによって示される、血液サンプル内のエンティティが染色された量を説明することができる。いくつかの適用例では、1つ以上の顕微鏡画像の取得前にサンプルチャンバ内でまだ沈降していなかったサンプルチャンバ内の1つ以上の細胞型の量(又は割合)に基づいて、サンプルに実行される測定を較正する。
【0128】
いくつかの適用例では、血液サンプル内の赤血球がサンプルチャンバ内で沈降している間に血液サンプル内の赤血球の顕微鏡画像を取得し、これらの画像を分析することによってコンピュータプロセッサは血液サンプルの沈降ダイナミクス特性(例えば赤血球沈降速度)を決定する。典型的に、血液サンプルの沈降ダイナミクス特性(例えば赤血球沈降速度)は、赤血球の沈降に関してリアルタイムで(すなわち赤血球が沈降している間に)コンピュータプロセッサにより決定される。これは、血液サンプルの沈降ダイナミクス特性(例えば赤血球沈降速度)を決定するための他の技法では赤血球の沈降に要する合計時間が測定されるのとは対照的である。なお、そのような測定が血液サンプルの希釈部分で実行される場合、赤血球の沈降時間に対するタンパク質の効果が弱くなる。従って、いくつかの適用例では、そのような測定は血液サンプルの希釈されていない部分で実行される。
【0129】
いくつかの適用例では、どのくらい最近にサンプルが被験者から採取されたか及び/又はどのくらい最近にサンプルがサンプルキャリアに配置されたかの指標を決定するため、及び/又は沈降ダイナミクス特性を決定するための上述した分析は、赤血球もしくは血小板の平均細胞容積、平均赤血球ヘモグロビン濃度、又は他のそのようなサンプル指標尺度のようなサンプルごとの情報を用いて補正される。代替的に又は追加的に、どのくらい最近にサンプルが被験者から採取されたか及び/又はどのくらい最近にサンプルがサンプルキャリアに配置されたかの指標を決定するため、及び/又は沈降ダイナミクス特性を決定するための上述した分析は、単一細胞レベルの情報を用いて(すなわち、個々の細胞に関するデータを抽出し、これらのデータに基づいて、決定された沈降ダイナミクス特性を補正することによって)補正される。
【0130】
いくつかの適用例では、血液サンプル内の所与のエンティティの濃度が閾値を超えているという判定に応答して、コンピュータプロセッサは、血液サンプルの第1の部分の顕微鏡画像から決定されたパラメータと、血液サンプルの第2の部分に実行された光学密度測定から決定されたパラメータとを比較することにより、所与のエンティティの濃度が閾値を超えている原因を明らかにする。例えば、サンプルの第1の部分(典型的に希釈されてチャンバの第1のセット52内に配置される)が極めて多数の赤血球又は極めて少数の赤血球を有すると検出されたことに応答して、コンピュータプロセッサは、これが、血液サンプルがもともと極めて多数の赤血球又は極めて少数の赤血球を有するということなのか、又はサンプルのこの部分の準備(例えば第1の部分の希釈)におけるエラーによって生じたのかを判定するため、この比較を実行することができる。コンピュータプロセッサは典型的に、顕微鏡画像によって示されたエンティティの濃度が光学密度測定から決定されたエンティティの濃度と同様であると判定することによって、サンプル内の所与のエンティティの濃度が閾値を超えている原因は血液サンプル自体であると判定する。更に典型的には、コンピュータプロセッサは、顕微鏡画像によって示されたエンティティの濃度が光学密度測定から決定されたエンティティの濃度とは異なると判定することによって、サンプル内の所与のエンティティの濃度が閾値を超えている原因は血液サンプルの部分の準備であると判定する。
【0131】
いくつかの適用例では、濃度以外のサンプルのパラメータ(例えば平均細胞容積、平均赤血球ヘモグロビン等)を用いて、上の段落で記載したものと同様の分析を実行する。いくつかの適用例では、サンプルの各部分で測定されたパラメータ間に差があると識別されたことに応答して、サンプルの各部分が(例えば2人の異なる患者からの)2つの異なるサンプルの部分である可能性が高いと判定される。
【0132】
いくつかの適用例では、サンプルの各部分から決定されたパラメータを用いて相互に補正を行う。例えば、サンプル部分の各々で測定されたあるパラメータの値が相互に異なっているが、サンプル部分の各々で測定された値の双方についてエラー範囲内にあるそのパラメータの第3の値(又は値の範囲)が存在する場合、この第3の値(又は値の範囲)は正しい可能性があると判定され得る。
【0133】
いくつかの適用例では、サンプルの1つ以上のパラメータが正常範囲外にあることに応答して、コンピュータプロセッサは、これらのパラメータをサンプルの他のパラメータと比較する。パラメータの全てが正常範囲外にある(又は、1つ以上のパラメータのエラーと相関して誤っている)ことに応答して、コンピュータプロセッサは、その原因が、これらのパラメータの全てに影響を及ぼす計算エラーであると判定することができる。
【0134】
いくつかの適用例では、コンピュータプロセッサは、サンプルの第1の部分の顕微鏡画像内でウニ状赤血球、球状赤血球、及び/又は円鋸歯状赤血球を識別するように構成されている。典型的に、そのようなエンティティの存在は、サンプルのこの部分が古さ及び/又はサンプル保存状態に起因して劣化したことの指標である。いくつかのそのような適用例では、コンピュータプロセッサは、そのようなエンティティの数を測定し、選択したタイプのエンティティの数が閾値を超えていることに少なくとも部分的に基づいて、血液サンプルに少なくともいくつかの測定を実行するため血液サンプルの少なくともこの部分を使用することを無効にする。いくつかの適用例では、コンピュータプロセッサは、その数の指標及び/又は関連する臨床状態の指標をユーザに対して生成する。代替的に又は追加的に、コンピュータプロセッサは、少なくとも部分的にその数に基づいてサンプルのこの部分の古さの指標を決定する。いくつかの適用例では、サンプルのパラメータを決定するために、顕微鏡画像に測定を実行し、サンプルのこの部分の古さの決定された指標に基づいて及び/又は前述のエンティティの数に基づいて測定を較正する。いくつかの適用例では、血液サンプルの第2の部分(典型的にサンプルチャンバの第2のセット54内に配置されている)に光学密度測定を実行し、サンプルのこの部分の古さの決定された指標に基づいて及び/又は前述のエンティティの数に基づいて光学密度測定を較正することによって、サンプルのパラメータを決定する。(いくつかの適用例では、1つ以上の他の因子、例えば赤血球形態、赤血球容積、血小板の数、サンプル内のデブリのレベル、及び/又は散乱に影響する可能性のある物体もしくは属性の存在もしくは量に基づいて、光学密度測定を較正する。)
【0135】
いくつかの適用例では、コンピュータプロセッサは、ウニ状赤血球、球状赤血球、及び/又は円鋸歯状赤血球の容積を推定する。いくつかのそのような適用例では、そのような赤血球の容積を、サンプル内の平均赤血球容積の全体的な測定量に組み込む。
【0136】
これより、本発明のいくつかの適用例に従ってそれぞれ紫及び緑LED照明のもとで取得された明視野顕微鏡画像である図3A及び図3Bを参照する。上述したように、典型的には、血液サンプルの第1の部分の顕微鏡画像を取得し、第1の部分内の細胞の単層を分析する。典型的に、サンプルのこの部分を撮像する前、サンプル内の赤血球に球状化(spherification)技法は使用されない。本出願の発明者らは、本明細書に記載されている技法を用いてサンプルのこの部分を顕微鏡で撮像した場合、顕微鏡画像内でいくつかの溶血赤血球が視認できることを発見した。典型的に、ヘキスト試薬(又は、細胞膜に対する親和性を有する任意の蛍光性もしくは非蛍光性の染料)によってサンプルを染色した後、明視野撮像のもとで細胞の輪郭を視認できるが、細胞の残り部分は画像の背景と同様に見える。図3A及び図3Bでこの効果を観察できる。赤血球60を視認することができ、溶血赤血球62の輪郭を視認することができるが、これらの細胞の内部は背景と同様に見え、輪郭は「空の(empty)細胞のように見える。「空の」細胞は典型的に、赤血球と概ね同様の形状と大きさを有する。
【0137】
また、本発明のいくつかの適用例に従って取得された蛍光顕微鏡画像である図3Cも参照する。この画像は、血液サンプルをヘキスト試薬で染色し、約360nmを中心とするUV照明を用いて励起した後に記録した。ぼんやりして暗い円に見える赤血球60とは異なり、溶血赤血球62は、赤血球と概ね同様の形状と大きさを有する明るい円に見えることが観察できる。溶血赤血球は、ヘキスト試薬が溶血赤血球の膜上に残っている残部と結合することによって染色されると仮定される。これにより、溶血赤血球は明視野画像では「空の」細胞のように見え、及び/又は蛍光画像では明るい円のように見える。更に、赤血球が蛍光画像で暗い円のように見える理由は、サンプル全体に自由ヘキスト試薬の背景放出があるが、この放出は赤血球内のヘモグロビンによって弱められるので赤血球が背景よりも暗く見えるからであると仮定される。
【0138】
従って、本発明のいくつかの適用例によれば、非球状化血液サンプル内で溶血赤血球が識別される。典型的に、ヘキスト試薬(又は、細胞膜に対する親和性を有する任意の蛍光性もしくは非蛍光性の染料)等の染料でサンプルを染色する。染色したサンプルの明視野画像内で、輪郭は視認できるが内部は概ね背景と同様に見える細胞(輪郭が「空の」細胞に見える)を識別することによって、溶血赤血球を識別する。代替的に又は追加的に、染色されたサンプルの蛍光画像内で溶血赤血球を識別する。典型的に、溶血赤血球は画像内の赤血球と概ね同様の形状と大きさを有する。
【0139】
いくつかの適用例では、視認できる溶血赤血球は、サンプルのこの部分内に存在する溶血赤血球の合計数のごく一部しか占めていない。これは、典型的に溶血赤血球の一部が視認できないからである。いくつかの適用例では、コンピュータプロセッサは、視認できる溶血赤血球を識別し、サンプルのこの部分内で識別された溶血赤血球の数を測定する。典型的に、識別された溶血赤血球の数に基づいて、コンピュータプロセッサは、識別された溶血赤血球の数よりも多いサンプルのこの部分内の溶血赤血球の合計数を推定する。代替的に又は追加的に、識別された溶血赤血球の数に基づいて、コンピュータプロセッサは、サンプル内の溶血赤血球と非溶血赤血球との比を推定する。典型的に、この比は、識別された溶血赤血球の数よりも多いサンプルのこの部分内の溶血赤血球の合計数を推定することによって計算される。いくつかの適用例では、コンピュータプロセッサは、血液サンプル内の溶血赤血球の推定合計数、又は溶血赤血球と非溶血赤血球との比の指標を、ユーザに出力する。代替的に又は追加的に、コンピュータプロセッサは、識別された溶血赤血球の数が閾値を超えていることに少なくとも部分的に基づいて、又は前述の比が閾値を上回っていることに基づいて、サンプルに少なくともいくつかの測定を実行するためサンプルを使用することを無効にする。いくつかの適用例では、サンプルの無効化は、識別された溶血赤血球の数よりも多いサンプルのこの部分内の溶血赤血球の合計数の推定に基づいている。
【0140】
いくつかの適用例では、血液サンプル内の所与のエンティティ(血小板、赤血球、白血球等)を識別するため、コンピュータプロセッサは最初に、血液サンプルの第1の部分の顕微鏡画像を分析することによって、血液サンプル内の所与のエンティティの候補を識別する。この後コンピュータプロセッサは、これらの候補に更に分析を実行することによって、候補のうち少なくともいくつかを所与のエンティティとして認証する。
【0141】
いくつかの適用例では、コンピュータプロセッサは、所与のエンティティの候補の数と所与のエンティティのうち認証された候補の数とを比較し、候補の数と認証された候補の数との関係に少なくとも部分的に基づいて、サンプルに少なくともいくつかの測定を実行するためサンプルの少なくともこの部分を使用することを無効にする。例えば、認証された候補の数と候補の数との比が最大閾値を上回っている場合、これは認証された候補が多すぎることを示し、エラーを示すので、コンピュータプロセッサは、サンプルに少なくともいくつかの測定を実行するためサンプルの少なくともこの部分を使用することを無効にすることができる。代替的に又は追加的に、認証された候補の数と候補の数との比が最小閾値未満である場合、これは認証された候補が少なすぎることを示し、エラーを示すので、コンピュータプロセッサは、サンプルに少なくともいくつかの測定を実行するためサンプルの少なくともこの部分を使用することを無効にすることができる。いくつかの適用例では、認証された血小板の数と血小板候補の数との比が最小閾値未満である場合、これは血小板として認証された血小板候補が少なすぎることを示し、エラーを示すので、コンピュータプロセッサは、血小板のカウントを実行するためサンプルの少なくともこの部分を使用することを無効にする。例えば、このエラーは、デブリ(又は他の汚染物体)が間違って血小板として又は血小板候補として識別されたことにより発生し得る。なお、エラー源は、サンプルのこの部分の準備、サンプルキャリア、顕微鏡ユニットの部分、及び/又は血液自体に存在し得る。いくつかの適用例では、赤血球、白血球、及び/又はサンプル内の他のエンティティ(例えば異常白血球、循環腫瘍細胞、赤血球、網状赤血球、ハウエルジョリー小体等)に対して、同様の技法を実行する。
【0142】
いくつかの適用例では、コンピュータプロセッサは、血液サンプル中の白血球候補を識別するように構成され、次いで、白血球候補に更に分析を実行することによって、白血球候補のうち少なくともいくつかを所与のタイプの白血球(例えば、好中球、リンパ球、好酸球、単球、芽細胞、未熟細胞、異型リンパ球、及び/又は好塩基球)として認証するように構成されている。いくつかの適用例では、コンピュータプロセッサは、白血球候補の数と所与のタイプの白血球として認証された白血球候補の数とを比較し、白血球候補の数と所与のタイプの白血球として認証された白血球候補の数との関係に少なくとも部分的に基づいて、サンプルに少なくともいくつかの測定を実行するためサンプルの少なくともこの部分を使用することを無効にする。例えば、所与のタイプの白血球として認証された白血球候補の数と白血球候補の数との比が最大閾値を上回っている場合、これは認証された候補が多すぎることを示し、エラーを示すので、コンピュータプロセッサは、サンプルに少なくともいくつかの測定を実行するためサンプルの少なくともこの部分を使用することを無効にすることができる。代替的に又は追加的に、所与のタイプの白血球として認証された白血球候補の数と白血球候補の数との比が最小閾値未満である場合、これは認証された候補が少なすぎることを示し、エラーを示すので、コンピュータプロセッサは、サンプルに少なくともいくつかの測定を実行するためサンプルの少なくともこの部分を使用することを無効にすることができる。なお、エラー源は、サンプルのこの部分の準備、サンプルキャリア、顕微鏡ユニットの部分、及び/又は血液自体に存在し得る。
【0143】
いくつかの適用例では、コンピュータプロセッサは、不規則な形状(例えば繊維状、非円形、及び/又は細長い形状)を有する染色された物体を識別することによって、サンプル内のデブリ(又は他の汚染物体)を識別するように構成されている。上述したように、典型的にコンピュータプロセッサは、サンプルに顕微鏡分析を実行することによってサンプル内に配置された1つ以上のエンティティのカウントを実行する。いくつかの適用例では、コンピュータプロセッサは、識別されたデブリ(又は他の汚染物体)から所与の距離内に配置されたサンプルの領域をカウントに含むことを無効にする。典型的に、デブリは染料によって染色され、更に典型的には、デブリはアクリジンオレンジ及びヘキスト試薬の双方によって染色される。いくつかの適用例では、コンピュータプロセッサは、不規則な形状を有する及び/又は染料によって(例えばアクリジンオレンジ及びヘキスト試薬の双方によって)染色された物体を識別することにより、デブリ(又は他の汚染物体)を識別する。
【0144】
これより、本発明のいくつかの適用例に従って、サンプルチャンバの第2のセット54に属するサンプルチャンバの長さに沿って測定された光透過強度の正規化対数プロファイルを示すグラフである図4を参照する。上述したように、典型的にコンピュータプロセッサは、サンプルチャンバの第2のセット54内に配置されたサンプルの第2の部分に光学測定(例えば光学密度測定)を実行するよう構成されている。いくつかの適用例では、ヘモグロビンが光を吸収するスペクトル帯の光(例えばLEDからの光)をチャンバに透過させ、透過光の強度を光検出器によって検出する。ランベルトベールの法則に従って、吸収された光の量はサンプルの第2の部分内のヘモグロビン濃度を示すと解釈される。
【0145】
いくつかの適用例では、コンピュータプロセッサは、光学測定に基づいて、第2のセットのサンプルチャンバのうち1つに1つ以上の気泡が存在すると判定する。例えば、サンプルチャンバ内の複数の領域が異なる高さを有することに起因して、チャンバの長さに沿った透過強度の正規化対数プロファイル(ヘモグロビン吸収プロファイルに関連する)は、所与の形状を有することが予想される。すなわち、光透過強度対数が実質的に一定である領域が複数存在し、これらの領域間には差がある(チャンバの段差に起因する)。これは図4において実線の曲線70で示されている。曲線70は、いくつかの異なるサンプルでサンプルチャンバの長さに沿って記録された透過強度の正規化対数を組み合わせたものである。図示されているように、サンプルチャンバの最小高さ領域56に沿って、透過強度対数は実質的に一定である。(実際には、上述したようにサンプルキャリアの製造上の公差に起因して、この領域の長さに沿ってわずかな傾斜がある。)次いで、サンプルチャンバに沿った距離が中間高さ領域58(ここでヘモグロビン吸収は増大し、従って光透過は低減する)に移行する際、透過強度対数は低下し、この後、サンプルチャンバに沿った距離が最大高さ領域59(ここでヘモグロビン吸収は更に増大し、従って光透過は更に低減する)に移行する際、更に低下する。なお、透過を正規化するやり方は、最大高さ領域の所与の部分内で光透過強度対数値の平均を取り、これに1の値を割り当て、最小高さ領域の所与の部分内で光透過強度対数値の平均を取り、これに第2の値を割り当て、次いでこれら2つの値に対して他の値を正規化した。(場合によっては、最小高さ領域の所与の部分内の光透過強度対数値にオイラー数の値(すなわち2.718)割り当てるが、図4に示されている例ではこれは当てはまらない。)サンプルチャンバを充填する任意のサンプルの正規化プロファイルは、サンプルの絶対ヘモグロビン吸収に関係なく同様のプロファイルを有することが予想される。その理由は、プロファイルの形状が、サンプルチャンバの異なる領域に沿った相対吸収に依存するからである。
【0146】
図4の点線の曲線(thin curve)72は、所与のサンプルでサンプルチャンバの長さに沿って記録された透過強度の正規化対数を示す。最小高さ領域内では、曲線の比較的平坦な部分(曲線70よりも下方)があり、次いでピーク(曲線70よりも上方)があることが観察できる。更に、中間高さ領域に沿って、曲線72は曲線70よりも下方にある。典型的に、このようなプロファイルは、最小高さ領域内に泡(例えば気泡及び/又は異なる物質の存在)が存在することを示す。泡の位置で光透過が増大するので、この位置で曲線72のピークが生じる。(例えば最小高さ領域の他の部分内の)他の位置、及び中間高さ領域全体においては、最小高さ領域内の泡の存在によって、透過強度正規化対数値は泡を含まないサンプルに比べて低下する。同様に、サンプルチャンバの他の領域内に(又は領域全体に沿って)泡が存在する場合、これにより、異なる透過強度正規化対数プロファイルが生じる。例えば、最小高さ領域全体に沿って泡が存在する場合、これにより、中間高さ領域内の透過強度正規化対数は泡を含まないサンプルに比べて低下する。いくつかの適用例では、チャンバの高さはこれとは異なる差を有するが、必要な変更を加えて概ね同様の技法を実行する。
【0147】
従って、本発明のいくつかの適用例によれば、サンプルチャンバの長さに沿った光透過を示すパラメータの絶対値を測定することに加えて、サンプルチャンバに沿った光透過を示すパラメータの正規化値(例えば光透過強度の正規化対数)が決定される。パラメータの正規化値に基づいて、コンピュータプロセッサは、サンプルチャンバ内に泡(例えば気泡又は異なる物質の存在)がある可能性が高いことを判定する。いくつかの適用例では、サンプルチャンバ内に泡が存在する可能性が高いことの判定に応じて、コンピュータプロセッサは出力を発生する。例えばコンピュータプロセッサは、エラーメッセージ(例えば、サンプルチャンバに再充填しなければならないことを示すメッセージ)を発生する、サンプルを無効にする、及び/又はサンプルに実行される測定の一部を無効にすることができる。
【0148】
いくつかの適用例では、コンピュータプロセッサは光吸収測定を実行するが、これを行うため、泡が存在しないチャンバの領域のみを使用する。従っていくつかの適用例では、サンプルチャンバ内の少なくともいくつかの領域の光透過を示すパラメータの絶対値に基づいて、コンピュータプロセッサはサンプル内のヘモグロビン濃度を計算する。更に、コンピュータプロセッサは、サンプルチャンバ内の各領域で測定されたパラメータを相互に対して正規化する。正規化パラメータに少なくとも部分的に応じて、コンピュータプロセッサは、サンプル内のヘモグロビン濃度を計算するためにどの領域を使用するかを決定する。あるいは、コンピュータプロセッサは、サンプル内のヘモグロビン濃度を計算するためサンプルを使用することを無効にする、及び/又はエラーメッセージ(例えば、サンプルチャンバに再充填しなければならないことを示すメッセージ)を発生することができる。
【0149】
チャンバの幅に沿って、サンプルは実質的に一定の吸収プロファイルを有することが予想される。いくつかの適用例では、コンピュータプロセッサは、予想外に低い吸収レベル(上述したプロファイルと一致しない)を、気泡の存在を示すものとして解釈するよう構成されている。いくつかの適用例では、気泡が存在するか否かを判定するため、ヘモグロビンが光を吸収しない波長で(例えば緑光を用いて)1つ以上の光吸収測定を実行する。代替的に又は追加的に、カメラ(例えば顕微鏡のCCDカメラ又はCMOSカメラ)を用いて血液サンプルの第2の部分を撮像し、コンピュータプロセッサは、1又は複数の画像に基づいて気泡が存在するか否かを判定する。
【0150】
典型的には、光学測定に基づいて、コンピュータプロセッサによりサンプルの1つ以上のパラメータを決定する。いくつかの適用例では、チャンバ内に1つ以上の気泡が存在するという判定に基づいて、サンプルの1つ以上のパラメータを決定するため光学測定の少なくとも一部を使用することを無効にする。いくつかの適用例では、コンピュータプロセッサは、サンプルチャンバ内に1つ以上の気泡が存在するという判定に基づいて、サンプルの少なくともいくつかの測定を実行するため血液サンプルのこの部分の使用を無効にすることを示す出力を発生する。
【0151】
いくつかの適用例では、サンプルチャンバの第1のセット52に配置される血液サンプルの第1の部分に対して概ね同様の技法を実行する。例えば、コンピュータプロセッサは、サンプルチャンバの顕微鏡画像内でサンプルが存在しない領域を識別し、少なくともこの識別した領域をサンプルのこの部分の顕微鏡分析に使用することを無効にするように構成され得る。いくつかの適用例では、コンピュータプロセッサは、サンプルチャンバのベース面上の濡れた領域と乾いた領域との界面を識別することによって、このような領域を識別するように構成されている。典型的に、このような領域の識別において、コンピュータプロセッサは、サンプルが存在しない領域と、サンプルが存在すると共にサンプルが低い細胞密度を有する領域とを区別するように構成されている。
【0152】
いくつかの適用例では、コンピュータプロセッサは、サンプルキャリアの外面上のごみ(例えばこぼれた血液)の存在を識別するよう構成されている。上述したように、典型的には、サンプルキャリアのベース面上に沈降した細胞の単層の少なくとも1つの顕微鏡画像を取得する。典型的には、細胞の単層が単層焦点面内に配置されて、顕微鏡の焦点が単層焦点面に合っている間に画像を取得する。いくつかの適用例では、コンピュータプロセッサは、単層焦点面とは異なる焦点面でエンティティを視認できる領域を識別することによって、ごみがサンプルキャリアの上部カバー又はベース面の下側にあることを識別する。代替的に又は追加的に、コンピュータプロセッサは、(単層焦点面で取得された)顕微鏡画像の背景強度によって上部カバー又はベース面の下側にごみが存在することが示される領域を識別する。いくつかの適用例では、これに応じてコンピュータプロセッサは、少なくともこの識別した領域をサンプルのこの部分の顕微鏡分析に使用することを無効にする。
【0153】
上述したように、典型的に、血液サンプルの第1の部分は明視野撮像のもとで、すなわち1つ以上の明視野光源(例えば、典型的に各スペクトル帯で発光する1つ以上の明視野発光ダイオード)からの照明のもとで撮像される。いっそう典型的には、血液サンプルの第1の部分は更に蛍光撮像のもとで撮像される。典型的に、蛍光撮像を行うには、既知の励起波長(すなわち、これらの波長の光で励起された場合に染色された物体が蛍光発光することが既知である波長)の光をサンプルの方へ誘導することによって、サンプル内の染色された物体を励起する。典型的に、蛍光撮像では、1つ以上の発光ダイオードを含む別個のセットを用いて既知の励起波長でサンプルを照明する。
【0154】
いくつかの適用例では、コンピュータプロセッサは、明視野光源が発する光を分析し、明視野光源の特徴を決定する。例えばコンピュータプロセッサは、明視野光源による照明の空間分布が以前の測定後に変化したか否か(例えば、以前の測定後に照明の空間的均一性が変化したか又は空間的位置が変化したか否か)、明視野光源による照明のビネット効果が以前の測定後に変化したか否か、明視野光源による照明のスペクトル分布が以前の測定後に変化したか否か、及び/又は、明視野光源による照明の強度が以前の測定後に変化したか否かを、定期的に判定することができる。上述したように、典型的にコンピュータプロセッサは、血液サンプルの顕微鏡画像内で識別されるエンティティに測定を実行することにより、血液サンプルのパラメータを決定する。いくつかの適用例では、明視野光源の決定された特徴に基づいて、このような測定を正規化する。いくつかの適用例では、明視野光源の決定された特徴に基づいて、少なくともいくつかの測定を血液サンプルに実行することを無効にする。
【0155】
いくつかの適用例では、明視野光源の特徴を決定するため、コンピュータプロセッサは、サンプルキャリアが存在しない場合に明視野光源が発する光を分析する。代替的に又は追加的に、コンピュータプロセッサは、明視野光源が発し、血液サンプル内の細胞間領域を通過する光を分析する。
【0156】
いくつかの適用例では、コンピュータプロセッサは、蛍光光源が発する光を分析し、蛍光光源の特徴を決定する。例えばコンピュータプロセッサは、蛍光光源による照明の空間分布が以前の測定後に変化したか否か(例えば、以前の測定後に照明の空間的均一性が変化したか又は空間的位置が変化したか否か)、蛍光光源による照明のビネット効果が以前の測定後に変化したか否か、蛍光光源による照明のスペクトル分布が以前の測定後に変化したか否か、及び/又は、蛍光光源による照明の強度が以前の測定後に変化したか否かを、定期的に判定することができる。上述したように、典型的にコンピュータプロセッサは、血液サンプルの顕微鏡画像内で識別されるエンティティに測定を実行することにより、血液サンプルのパラメータを決定する。いくつかの適用例では、蛍光光源の決定された特徴に基づいて、このような測定を正規化する。いくつかの適用例では、蛍光光源の決定された特徴に基づいて、少なくともいくつかの測定を血液サンプルに実行することを無効にする。
【0157】
いくつかの適用例では、蛍光光源の特徴を決定するため、コンピュータプロセッサは、染色された細胞以外に、蛍光光源による照明のもとで取得される顕微鏡画像内で視認できる1つ以上の蛍光領域を識別し、識別された蛍光領域に基づいて蛍光光源の特徴を決定する。例えば、そのような蛍光領域は、血液サンプル内の細胞間領域、顕微鏡ユニットの1つ以上の蛍光領域、及び/又はサンプルキャリアの1つ以上の蛍光領域(例えば、上述したサンプルキャリアの感圧接着剤)を含み得る。いくつかの適用例では、サンプルキャリアは顕微鏡ユニット内のステージ上に置かれ、このステージは上述した測定を実行するための蛍光領域を含む。代替的に又は追加的に、サンプルキャリアは、上述した測定を実行するための蛍光領域(例えば蛍光パッチ)を含む。
【0158】
いくつかの適用例では、コンピュータプロセッサは、サンプルキャリアが存在しない場合の顕微鏡画像を取得し、このような画像内で直接又は傷を識別することにより、顕微鏡ユニットの部分(CCDカメラ、CMOSカメラ、レンズ、及び/又はサンプルキャリアを保持するためのステージ等)にごみ又は傷があるか否かを検出するように構成されている。いくつかの適用例では、顕微鏡ユニット、顕微鏡ユニットの部分がごみ又は傷を有するか否かを判定するため、このような画像を定期的に(例えば固定時間間隔で)取得する。いくつかの適用例では、このようなごみ及び/又は傷の検出に応答して、これをユーザに通知する。代替的に又は追加的に、ごみ及び/又は傷が存在する位置に対応する画像内の領域は、サンプルの画像分析の少なくとも一部に含めない。更に、代替的に又は追加的に、ごみ及び/又は傷を説明するため、ごみ及び/又は傷が存在する位置に対応する画像内の領域に実行される測定を較正する。
【0159】
いくつかの適用例では、コンピュータプロセッサは、上述した技法と概ね同様の技法を用いて、サンプルキャリアの部分にごみ又は傷があるか否かを検出するよう構成されている。例えば、サンプルが存在していない状態でサンプルキャリアを撮像することができる。いくつかの適用例では、コンピュータプロセッサは、例えばサンプルが存在していない状態のサンプルキャリアを撮像することにより、サンプルキャリアの部分が不規則に蛍光発光するか否かを検出するよう構成されている。
【0160】
いくつかの適用例では、蛍光顕微鏡画像の少なくとも一部にエラーが存在することの検出に応答して、コンピュータプロセッサは、以下のようにエラー源を分類する。エラーが所与の時点から発生したことの検出に応答して、コンピュータプロセッサは染料をエラー源として識別する。これは、新しい染料を使用した結果としてエラーが発生したことを示すからである。エラーが経時的に徐々に増大したことの検出に応答して、コンピュータプロセッサは顕微鏡ユニット内のごみをエラー源として識別する。このようなごみは典型的に、時間と共に徐々に進行する劣化を引き起こすからである。エラーが、光源(例えば発光ダイオード)のうち所与の1つによる照明のもとで取得された画像にのみ存在することの検出に応答して、コンピュータプロセッサは、光源のうちこの所与の1つをエラー源として識別する。
【0161】
いくつかの適用例では、光学測定ユニットは、典型的にサンプルキャリアが配置される顕微鏡ステージを含む顕微鏡を含む。典型的に、コンピュータプロセッサは、機械的要素の移動を駆動するため使用される1つ以上のモータを用いて、顕微鏡ステージを移動するように駆動する。一部の例では、機械的要素の移動に関してある程度の遊びが存在する。例えば、移動の方向が開始又は反転される場合、コンピュータによって実施される命令がモータに送出される時と機械的要素の移動が実施される時との間には遅延が存在し得る。いくつかの適用例では、コンピュータプロセッサは、(例えば、所与の固定の遅延が存在すると仮定することによって、又は、定期的に遅延を測定し、最も最近測定した遅延を説明することによって)移動を実行する際にこの効果を説明する。いくつかの適用例では、遊びの量は、顕微鏡システムを用いて数値化され、機械的要素及び/又は1もしくは複数のモータの状態を示すと解釈される。例えば、遊びの量を数値化するには、顕微鏡システムにおいて識別可能な移動を生成するにはモータステップがいくつ必要であるかを観察する、及び/又は、2つの異なる移動方向で同じ測定を繰り返し、これら2つの異なる方向の移動に関連する画像もしくはこれらの画像から抽出された距離(metric)の相関をとればよい。いくつかの適用例では、上述した測定に基づいて、機械的要素及び/又は1もしくは複数のモータの状態を決定する。いくつかの適用例では、機械的要素及び/又は1もしくは複数のモータの決定された状態に応じて出力を発生する。例えば、サンプルの少なくともいくつかの画像(及び/又はサンプルに関するデータ)の分析を拒否すること、顕微鏡及び/又は光学測定ユニットの他の部分を使用できないようにロックすること、及び/又は警報を発生することができる(例えば、アフターサービス(servicing)が必要であることを示す警報、及び/又は事前サービス(preemptive servicing)が望ましいことを示す警報を発生する)。
【0162】
いくつかの適用例では、ステージの移動中に顕微鏡画像(及び/又は他の信号)を取得する。いくつかのそのような適用例では、所与の時点で報告されたか又は内挿されたステージ位置と、その位置におけるカメラ又はセンサによる実際の取得タイミングとの間に、タイミングの不一致が存在し得る。これによって、所与の画像が(又はデータが)取得されたと仮定される位置にエラーが生じる可能性があり、その後、この位置を他の目的に使用した場合(例えば、この画像(又はデータ)及びそれに対応する位置を顕微鏡の焦点を合わせるための入力として用いた場合)、更にエラーが生じる恐れがある。いくつかの適用例では、例えば以下のように同じターゲットを2回測定することによって、そのようなタイミングの不一致を測定する。ターゲットの第1の画像(又はターゲットに関連するデータセット)を、機械的な軸に沿った静的取得を用いて取得し、ターゲットの第2の画像(又はターゲットに関連するデータセット)を、ステージの移動中の取得によって取得する。これらの画像間、又は画像から抽出された距離間の差(及び/又は2つのデータセット間の差)を検出し、このような差が検出された場合、コンピュータプロセッサはこれを、タイミングの不一致が存在することを判定するため及び/又はタイミングの不一致を補正するための入力として用いる。いくつかの適用例では、このような測定を定期的に実行し、光学測定システムの部分(画像取得部、機械的要素、及び/又はモータを含む顕微鏡システムの部分等)の状態を決定するための入力として用いる。いくつかの適用例では、タイミングの不一致及び/又は以前の測定との差が存在すると検出されたことに応じて、出力を発生する。例えば、サンプルの少なくともいくつかの画像(及び/又はサンプルに関するデータ)の分析を拒否すること、顕微鏡及び/又は光学測定ユニットの他の部分を使用できないようにロックすること、及び/又は警報を発生することができる(例えば、アフターサービスが必要であることを示す警報、及び/又は事前サービスが望ましいことを示す警報を発生する)。
【0163】
いくつかの適用例では、光学測定ユニット自体に設置される(又は光学測定ユニット内に日常的に入力される)ターゲットを撮像することによって、光学測定ユニット(例えば光学測定システムの顕微鏡及び/又は光学測定ユニットの光吸収測定部)の状態を推定する。例えば、傷のついたガラス表面、印刷されたガラス表面、1つ以上の蛍光もしくは非蛍光ビーズ、ピンホール、又は他の任意の分解能ターゲットを用いることができる。いくつかの適用例では、そのようなターゲットの画像(及び/又はそのようなターゲットに関するデータ)を取得し分析することにより、コンピュータプロセッサは、収差、分解能、コントラスト、散乱、及び減衰のような光学測定ユニットの光学属性を導出する。いくつかの適用例では、コンピュータプロセッサはそのような分析を定期的に実行し、決定された属性を所定値と比較する。いくつかの適用例では、決定された属性のうち1つ以上と所定値との間に差があると検出されたことに応じて、出力を発生する。例えば、サンプルの少なくともいくつかの画像(及び/又はサンプルに関するデータ)の分析を拒否すること、顕微鏡及び/又は光学測定ユニットの他の部分を使用できないようにロックすること、及び/又は警報を発生することができる(例えば、アフターサービスが必要であることを示す警報、及び/又は事前サービスが望ましいことを示す警報を発生する)。いくつかの適用例では、決定された属性に基づいて、コンピュータプロセッサは、抽出された画像特徴、測定値(非撮像測定の場合)、及び/又はサンプルの測定量を補正する。例えば、ターゲットの見かけ上のコントラストの変化によって吸収測定を補正することができる。
【0164】
いくつかの適用例では、本明細書で記載されているサンプルは、血液又はその成分を含むサンプル(例えば希釈されたかもしくは希釈されていない全血サンプル、主に赤血球を含むサンプル、又は主に赤血球を含む希釈サンプル)であり、例えば血小板、白血球、異常白血球、循環腫瘍細胞、赤血球、網状赤血球、ハウエルジョリー小体等、血液の成分に関するパラメータが決定される。
【0165】
一般に、本発明のいくつかの適用例を血液サンプルに関連付けて説明したが、本発明の範囲は本明細書に記載されている装置及び方法を様々なサンプルに適用することを含むことに留意するべきである。いくつかの適用例では、サンプルは、血液、唾液、精液、汗、痰、膣液、排泄物、母乳、気管支肺胞洗浄液、胃洗浄液、涙液、及び/又は鼻汁等の生物サンプルである。生物サンプルは任意の生き物から採取することができ、典型的に温血動物からのものである。いくつかの適用例では、生物サンプルは哺乳動物からの、例えば人体からのサンプルである。いくつかの適用例では、サンプルは、限定ではないがイヌ、ネコ、ウシ、及びヒツジを含む、飼われている動物、動物園の動物、及び家畜から採取される。代替的に又は追加的に、生物サンプルは、シカ又はネズミを含む病原媒介者として機能する動物から採取される。
【0166】
いくつかの適用例では、上記で記載したものと同様の技法を非身体サンプル(non-bodily sample)に適用する。いくつかの適用例では、サンプルは、水(例えば地下水)サンプル、表面スワブ、土壌サンプル、大気サンプル、又はそれらの任意の組み合わせ等の環境サンプルである。いくつかの実施形態では、サンプルは、肉サンプル、乳製品サンプル、水サンプル、洗液サンプル、飲料サンプル、及び/又はそれらの任意の組み合わせ等の食品サンプルである。
【0167】
本明細書に記載されている本発明の適用例は、コンピュータ又はコンピュータプロセッサ28のような任意の命令実行システムによって又はこれらと関連付けて用いるためのプログラムコードを提供するコンピュータ使用可能媒体又はコンピュータ可読媒体(例えば非一時的コンピュータ可読媒体)からアクセス可能なコンピュータプログラム製品の形態をとることができる。この記載の目的のため、コンピュータ使用可能媒体又はコンピュータ可読媒体は、命令実行システム、装置、又はデバイスによって又はこれらと関連付けて用いるためのプログラムを含有、記憶、通信、伝搬、又は転送できる任意の装置とすることができる。この媒体は、電子、磁気、光学、電磁、赤外線、もしくは半導体のシステム(もしくは装置もしくはデバイス)、又は伝搬媒体とすることができる。典型的に、コンピュータ使用可能媒体又はコンピュータ可読媒体は、非一時的なコンピュータ使用又はコンピュータ可読媒体である。
【0168】
コンピュータ可読媒体の例には、半導体又は固体メモリ、磁気テープ、着脱可能コンピュータディスケット、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、剛性磁気ディスク、及び光ディスクが含まれる。光ディスクの現在の例には、コンパクトディスクリードオンリメモリ(CD-ROM)、コンパクトディスクリード/ライト(CD-R/W)、及びDVDが含まれる。
【0169】
プログラムコードの記憶及び/又は実行に適したデータ処理システムは、システムバスを介してメモリ要素(例えばメモリ30)に直接又は間接的に結合された少なくとも1つのプロセッサ(例えばコンピュータプロセッサ28)を含む。メモリ要素は、プログラムコードの実際の実行中に用いられるローカルメモリと、大容量記憶装置と、実行中に大容量記憶装置からコードを検索しなければならない回数を減らすために少なくともいくつかのプログラムコードの一時記憶装置を提供するキャッシュメモリと、を含み得る。システムは、プログラム記憶デバイス上の本発明の命令を読み取り、これらの命令に従って本発明の実施形態の方法を実行することができる。
【0170】
プロセッサにネットワークアダプタを結合して、プライベートネットワーク又はパブリックネットワークを介してプロセッサを他のプロセッサ又は遠隔のプリンタもしくは記憶デバイスに結合することを可能とする。現在利用可能なタイプのネットワークアダプタのほんの数例として、モデム、ケーブルモデム、及びイーサネットカードが挙げられる。
【0171】
本発明の動作を実行するためのコンピュータプログラムコードは、Java、Smalltalk、C++等のオブジェクト指向プログラミング言語、及びCプログラミング言語又は同様のプログラミング言語等の従来の手続きプログラミング言語を含む、1つ以上のプログラミング言語の任意の組み合わせで書くことができる。
【0172】
本明細書に記載されているアルゴリズムがコンピュータプログラム命令によって実施され得ることは理解されよう。これらのコンピュータプログラム命令は、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、又は他のプログラマブルデータ処理装置のプロセッサに提供されてマシンを生成し、これによって、コンピュータのプロセッサ(例えばコンピュータプロセッサ28)又は他のプログラマブルデータ処理装置によって実行される命令が、本出願に記載されているアルゴリズムに規定された機能/作用を実施するための手段を生成することができる。また、これらのコンピュータプログラム命令はコンピュータ可読媒体(例えば非一時的コンピュータ可読媒体)に記憶することができ、コンピュータ又は他のプログラマブルデータ処理装置に特定の方法で機能するように指示することで、コンピュータ可読媒体に記憶された命令が、フローチャートのブロック及びアルゴリズムに規定された機能/行為を実施する命令手段を含む製造品(article of manufacture)を生成するようになっている。また、コンピュータプログラム命令を、コンピュータ又は他のプログラマブルデータ処理装置にロードして、そのコンピュータ又は他のプログラマブル装置上で一連の動作ステップを実行させてコンピュータ実施プロセスを生成することができ、これによって、コンピュータ又は他のプログラマブル装置上で実行する命令が、本出願で記載されているアルゴリズムに規定された機能/行為を実施するためのプロセスを提供するようになっている。
【0173】
コンピュータプロセッサ28は典型的に、専用コンピュータを生成するようにコンピュータプログラム命令を用いてプログラムされたハードウェアデバイスである。例えば、本明細書に記載されているアルゴリズムを実行するようにプログラムされた場合、コンピュータプロセッサ28は典型的に、専用のサンプル分析コンピュータプロセッサとして機能する。典型的に、コンピュータプロセッサ28によって実行される本明細書に記載された動作は、実際の物理的物品であるメモリ30の物理的状態を変化させて、使用されるメモリの技術に応じて異なる磁気極性や電荷等を有するようにする。
【0174】
本明細書に記載されている装置及び方法は、以下の特許出願(全てが援用により本願に含まれる)のうちいずれか1つに記載されている装置及び方法と関連付けて用いることができる。
Bacheletに対する米国特許出願公開第US2012/0169863号
Greenfieldに対する米国特許出願公開第US2014/0347459号
Pollakに対する米国特許出願公開第US2015/0037806号
Pollakに対する米国特許出願公開第US2015/0316477号
Pollakに対する米国特許出願公開第US2016/0208306号
Yorav Raphaelに対する米国特許出願公開第US2016/0246046号
Bacheletに対する米国特許出願公開第US2016/0279633号
Eshelに対する米国特許出願公開第US2018/0246313号
Yorav Raphaelに対する国際公開第WO16/030897号
Eshelに対する国際公開第WO17/046799号
Eshelに対する国際公開第WO17/168411号
Pollackに対する国際公開第WO17/195205号
Zaitに対する米国特許出願公開第US2019/0145963号
Yorav-Raphaelに対する国際公開第US19/097387号
【0175】
本発明が具体的に図示し上述したものに限定されないことは、当業者によって認められよう。本発明の範囲は、前述の記載を読んだ当業者に想起される、上述した様々な特徴の組み合わせ及びサブコンビネーション(subcombination)の双方、並びに、従来技術に存在しないそれらの変形及び変更を含む。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4
【国際調査報告】