(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-22
(54)【発明の名称】顆粒球コロニー刺激因子受容体(G-CSFR)の改変された細胞外ドメイン及びそれに結合するサイトカイン
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20221215BHJP
C07K 14/715 20060101ALI20221215BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20221215BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20221215BHJP
C07K 14/53 20060101ALI20221215BHJP
C12N 15/27 20060101ALI20221215BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20221215BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20221215BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221215BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221215BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20221215BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20221215BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20221215BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20221215BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20221215BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20221215BHJP
A61K 38/19 20060101ALI20221215BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
C12N15/12
C07K14/715 ZNA
C12N15/63 Z
C12N5/10
C07K14/53
C12N15/27
C12N15/62 Z
C07K19/00
A61P43/00 121
A61P35/00
A61P29/00
A61P37/06
A61P31/00
A61P35/02
A61K35/17 Z
A61K45/00
A61K38/19
A61K38/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521278
(86)(22)【出願日】2020-10-08
(85)【翻訳文提出日】2022-05-16
(86)【国際出願番号】 CA2020051352
(87)【国際公開番号】W WO2021068074
(87)【国際公開日】2021-04-15
(32)【優先日】2019-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】510214045
【氏名又は名称】ザイムワークス,インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】522140183
【氏名又は名称】プロヴィンシャル ヘルス サービシーズ オーソリティ
(71)【出願人】
【識別番号】522140194
【氏名又は名称】ユーヴィック インダストリー パートナーシップス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】フォルケルス ゲザ
(72)【発明者】
【氏名】フラー ミーガン
(72)【発明者】
【氏名】ブーランジェ マーティン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ディクシト スルジト ビマラオ
(72)【発明者】
【氏名】ネルソン ブラッド
(72)【発明者】
【氏名】サンチェス マリオ
(72)【発明者】
【氏名】ラブレス ビアンカ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA93X
4B065AA93Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BB19
4B065BB25
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4B065BD12
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4B065CA44
4C084AA01
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4C084AA19
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4C084ZC751
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4C087ZB08
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4C087ZB27
4C087ZB31
4C087ZC75
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA10
4H045DA51
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA15
(57)【要約】
本明細書には、バリアントサイトカイン受容体及びサイトカインのペアを用いて細胞を選択的に活性化させるための方法及び組成物であって、該サイトカイン受容体が顆粒球コロニー刺激因子受容体(G-CSFR)の細胞外ドメイン(ECD)を含む、方法及び組成物が記載されている。特定の実施形態では、本明細書に記載の方法及び組成物は、養子細胞移植療法のための細胞の排他的活性化に有用である。したがって、本明細書に含まれるのは、その天然型受容体には結合しないサイトカインによって選択的に活性化されるバリアント受容体を発現する細胞を作製する方法である。また、本明細書では、G-CSFRの細胞外ドメインを含むバリアント受容体を発現する細胞を対象に投与することと、該バリアント受容体を活性化させるバリアントサイトカインを共投与することと、を含む、治療を必要とする対象を治療する方法も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顆粒球コロニー刺激因子受容体(G-CSFR)のバリアント細胞外ドメイン(ECD)を含む受容体であって、
前記G-CSFRのバリアントECDが、サイトII界面領域における少なくとも1つの変異、サイトIII界面領域における少なくとも1つの変異、またはそれらの組み合わせを含む、前記受容体。
【請求項2】
前記サイトII界面領域における前記少なくとも1つの変異が、配列番号2のアミノ酸2~308のアミノ酸位置141、167、168、171、172、173、174、197、199、200、202、及び288からなる群より選択されるG-CSFR ECDのアミノ酸位置に位置する、請求項1に記載の受容体。
【請求項3】
前記サイトII界面領域における前記少なくとも1つの変異が、R141E、R167D、K168D、K168E、L171E、L172E、Y173K、Q174E、D197K、D197R、M199D、D200K、D200R、V202D、R288D、及びR288EからなるG-CSFR ECD変異群から選択される、請求項2に記載の受容体。
【請求項4】
前記サイトIII界面領域における前記少なくとも1つの変異が、配列番号2のアミノ酸2~308のアミノ酸位置30、41、73、75、79、86、87、88、89、91、及び93からなる群より選択されるG-CSFR ECD変異群から選択される、前記請求項のいずれか一項に記載の受容体。
【請求項5】
前記サイトIII界面領域における前記少なくとも1つの変異が、S30D、R41E、Q73W、F75KF、S79D、L86D、Q87D、I88E、L89A、Q91D、Q91K、及びE93KからなるG-CSFR ECD変異群から選択される、請求項4に記載の受容体。
【請求項6】
前記G-CSFR ECDが表6のデザイン番号の変異の組み合わせを含み、前記変異が配列番号2のアミノ酸2~308のアミノ酸位置に対応する、前記請求項のいずれか一項に記載の受容体。
【請求項7】
前記G-CSFR ECDが、変異R41E、R141E、及びR167Dを含む、前記請求項のいずれか一項に記載の受容体。
【請求項8】
キメラ受容体である、前記請求項のいずれか一項に記載の受容体。
【請求項9】
細胞上で発現する、前記請求項のいずれか一項に記載の受容体。
【請求項10】
前記細胞が、免疫細胞であり、
任意選択でT細胞であり、
任意選択でNK細胞であり、
任意選択でNKT細胞であり、
任意選択でB細胞であり、
任意選択で形質細胞であり、
任意選択でマクロファージであり、
任意選択で樹状細胞であり、
任意選択で前記細胞が幹細胞であり、
任意選択で前記細胞が初代細胞であり、
任意選択で前記細胞がヒト細胞である、
請求項9に記載の受容体。
【請求項11】
バリアントG-CSFによる前記受容体の活性化が、前記受容体を発現する細胞の増殖、生存、及び増強した活性からなる群より選択される細胞応答を引き起こす、前記請求項のいずれか一項に記載の受容体。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の受容体をコードする、核酸。
【請求項13】
請求項12に記載の核酸を含む、発現ベクター。
【請求項14】
請求項1~11のいずれか一項に記載の受容体を発現するように操作された、細胞。
【請求項15】
T細胞またはNK細胞である、請求項14に記載の細胞。
【請求項16】
サイトII界面領域における少なくとも1つの変異、サイトIII界面領域における少なくとも1つの変異、またはそれらの組み合わせを含む、バリアント顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)。
【請求項17】
前記サイトII界面領域における前記少なくとも1つの変異が、配列番号1のアミノ酸位置12、16、19、20、104、108、109、112、115、116、118、119、122、及び123からなる群より選択されるアミノ酸位置に位置する、請求項16に記載のバリアントG-CSF。
【請求項18】
前記サイトII界面領域における前記少なくとも1つの変異が、S12E、S12K、S12R、K16D、L18F、E19K、Q20E、D104K、D104R、L108K、L108R、D109R、D112R、D112K、T115E、T115K、T116D、Q119E、Q119R、E122K、E122R、及びE123Rからなる変異群より選択される、請求項17に記載のバリアントG-CSF。
【請求項19】
前記サイトIII界面領域における前記少なくとも1つの変異が、配列番号1のアミノ酸位置38、39、40、41、46、47、48、49、及び147からなる群より選択される変異群から選択される、請求項16~18のいずれか一項に記載のバリアントG-CSF。
【請求項20】
前記サイトIII界面領域における前記少なくとも1つの変異が、T38R、Y39E、K40D、K40F、L41D、L41E、L41K、E46R、L47D、V48K、V48R、L49K、及びR147Eからなる変異群より選択される、請求項19に記載のバリアントG-CSF。
【請求項21】
前記バリアントG-CSFが表6のデザイン番号の変異の組み合わせを含み、前記変異が配列番号1のアミノ酸位置に対応する、請求項16~20のいずれか一項に記載のバリアントG-CSF。
【請求項22】
変異E46R、L108K、及びD112Rを含む、請求項21に記載のバリアントG-CSF。
【請求項23】
請求項1~11のいずれか一項に記載の受容体に選択的に結合する、請求項16~22のいずれか一項に記載のバリアントG-CSF。
【請求項24】
前記受容体が細胞上で発現する、請求項23に記載のバリアントG-CSF。
【請求項25】
前記細胞が免疫細胞である、請求項24に記載のバリアントG-CSF。
【請求項26】
前記免疫細胞が、T細胞であり、
任意選択でNK細胞であり、
任意選択でNKT細胞であり、
任意選択でB細胞であり、
任意選択で形質細胞であり、
任意選択でマクロファージであり、
任意選択で樹状細胞であり、
任意選択で前記細胞が幹細胞であり、
任意選択で前記細胞が初代細胞であり、
任意選択で前記細胞がヒト細胞である、
請求項25に記載のバリアントG-CSF。
【請求項27】
前記バリアントG-CSFの前記受容体への前記選択的結合が、前記T細胞またはNK細胞の増殖、生存、及び増強した活性からなる群より選択される細胞応答を引き起こす、請求項26に記載のバリアントG-CSF。
【請求項28】
請求項16~27のいずれか一項に記載のバリアントG-CSFをコードする、核酸。
【請求項29】
請求項28に記載の核酸を含む、発現ベクター。
【請求項30】
請求項16~27のいずれか一項に記載のバリアントG-CSFを発現するように操作された、細胞。
【請求項31】
免疫細胞である、請求項30に記載の細胞。
【請求項32】
(a)請求項1~11のいずれか一項に記載の受容体と、
(b)請求項16~27のいずれか一項に記載のバリアントG-CSFと
を含む、細胞表面上で発現する受容体を選択的に活性化させるためのシステムであって、
前記受容体が、サイトII界面領域、サイトIII界面領域、またはそれらの組み合わせにおいて少なくとも1つの変異を含み、前記バリアントG-CSFが、前記受容体の前記サイトII界面領域、前記受容体の前記サイトIII界面領域、またはそれらの組み合わせに結合するG-CSFのアミノ酸配列において少なくとも1つの変異を含み、
前記バリアントG-CSFが、野生型G-CSFR ECDよりも優先的に前記受容体に結合し、前記受容体が、野生型G-CSFよりも優先的に前記バリアントG-CSFに結合する、前記システム。
【請求項33】
前記受容体及び前記バリアントG-CSFが、表2のデザイン番号のサイトII界面の変異の組み合わせを含み、前記受容体の変異が配列番号2のアミノ酸2~308のアミノ酸位置に対応し、前記バリアントG-CSFの変異が配列番号1のアミノ酸位置に対応する、請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
前記受容体及び前記バリアントG-CSFが、表4のデザイン番号のサイトIII界面の変異の組み合わせを含み、前記受容体の変異が配列番号2のアミノ酸2~308のアミノ酸位置に対応し、前記バリアントG-CSFの変異が配列番号1のアミノ酸位置に対応する、請求項32に記載のシステム。
【請求項35】
前記受容体及び前記バリアントG-CSFが、表6のデザイン番号のサイトII界面及びサイトIII界面の変異の組み合わせを含み、前記受容体の変異が配列番号2のアミノ酸2~308のアミノ酸位置に対応し、前記バリアントG-CSFの変異が配列番号1のアミノ酸位置に対応する、請求項32に記載のシステム。
【請求項36】
前記変異の組み合わせがデザイン番号106の変異を含み、前記バリアントG-CSFが配列番号1のアミノ酸位置に対応するE46R及びD104K変異を含み、前記受容体が配列番号2のアミノ酸2~308のアミノ酸位置に対応するR41E及びK168D変異を含む、請求項35に記載のシステム。
【請求項37】
前記変異の組み合わせがデザイン番号117の変異を含み、前記バリアントG-CSFが配列番号1のアミノ酸位置に対応するE46R、E122R、及びE123R変異を含み、前記受容体が配列番号2のアミノ酸2~308のアミノ酸位置に対応するR41E及びR141E変異を含む、請求項35に記載のシステム。
【請求項38】
前記変異の組み合わせがデザイン番号130の変異を含み、前記バリアントG-CSFが配列番号1のアミノ酸位置に対応するE46R、L108K、及びD112R変異を含み、前記受容体が配列番号2のアミノ酸2~308のアミノ酸位置に対応するR41E及びR167D変異を含む、請求項35に記載のシステム。
【請求項39】
前記変異の組み合わせがデザイン番号134の変異を含み、前記バリアントG-CSFが配列番号1のアミノ酸位置に対応するE46R、L108K、D112R、E122R、及びE123R変異を含み、前記受容体が配列番号2のアミノ酸2~308のアミノ酸位置に対応するR41E、R141E、及びR167D変異を含む、請求項35に記載のシステム。
【請求項40】
前記変異の組み合わせがデザイン番号135の変異を含み、前記バリアントG-CSFが配列番号1のアミノ酸位置に対応するE46R、T115K、E122R、及びE123R変異を含み、前記受容体が配列番号2のアミノ酸2~308のアミノ酸位置に対応するR41E、R141E、L171E、及びQ174E変異を含む、請求項35に記載のシステム。
【請求項41】
前記変異の組み合わせがデザイン番号137の変異を含み、前記バリアントG-CSFが配列番号1のアミノ酸位置に対応するE46R、L108K、及びD112R変異を含み、前記受容体が配列番号2のアミノ酸2~308のアミノ酸位置に対応するR41E、R141E、及びR167D変異を含む、請求項35に記載のシステム。
【請求項42】
前記変異の組み合わせがデザイン番号300の変異を含み、前記バリアントG-CSFが配列番号1のアミノ酸位置に対応するK40D、L41D、L108K、及びD112R変異を含み、前記受容体が配列番号2のアミノ酸2~308のアミノ酸位置に対応するF75K、Q91K、及びR167D変異を含む、請求項35に記載のシステム。
【請求項43】
前記変異の組み合わせがデザイン番号301の変異を含み、前記バリアントG-CSFが配列番号1のアミノ酸位置に対応するT38R、E46R、L108K、及びD112R変異を含み、前記受容体が配列番号2のアミノ酸2~308のアミノ酸位置に対応するR41E、Q73E、及びR167D変異を含む、請求項35に記載のシステム。
【請求項44】
前記変異の組み合わせがデザイン番号302の変異を含み、前記バリアントG-CSFが配列番号1のアミノ酸位置に対応するE46R、L108K、及びD112R変異を含み、前記受容体が配列番号2のアミノ酸2~308のアミノ酸位置に対応するR41E、L86D、及びR167D変異を含む、請求項35に記載のシステム。
【請求項45】
前記変異の組み合わせがデザイン番号303の変異を含み、前記バリアントG-CSFが配列番号1のアミノ酸位置に対応するL108K、D112R、及びR147E変異を含み、前記受容体が配列番号2のアミノ酸2~308のアミノ酸位置に対応するE93K及びR167D変異を含む、請求項35に記載のシステム。
【請求項46】
前記変異の組み合わせがデザイン番号304の変異を含み、前記バリアントG-CSFが配列番号1のアミノ酸位置に対応するE46R、L108K、D112R、及びR147E変異を含み、前記受容体が配列番号2のアミノ酸2~308のアミノ酸位置に対応するR41E、E93K、及びR167D変異を含む、請求項35に記載のシステム。
【請求項47】
前記変異の組み合わせがデザイン番号305の変異を含み、前記バリアントG-CSFが配列番号1のアミノ酸位置に対応するE19K、E46R、L108K、及びD112R変異を含み、前記受容体が配列番号2のアミノ酸2~308のアミノ酸位置に対応するR41E、R167D、及びR288E変異を含む、請求項35に記載のシステム。
【請求項48】
前記変異の組み合わせがデザイン番号307の変異を含み、前記バリアントG-CSFが配列番号1のアミノ酸位置に対応するS12E、K16D、E19K、及びE46R変異を含み、前記受容体が配列番号2のアミノ酸2~308のアミノ酸位置に対応するR41E、D197K、D200K、及びR288E変異を含む、請求項35に記載のシステム。
【請求項49】
前記変異の組み合わせがデザイン番号308の変異を含み、前記バリアントG-CSFが配列番号1のアミノ酸位置に対応するE19R、E46R、D112K変異を含み、前記受容体が配列番号2のアミノ酸2~308のアミノ酸位置に対応するR41E、R167D、V202D、及びR288E変異を含む、請求項35に記載のシステム。
【請求項50】
前記変異の組み合わせがデザイン番号400の変異を含み、前記バリアントG-CSFが配列番号1のアミノ酸位置に対応するE19K、E46R、D109R、及びD112R変異を含み、前記受容体が配列番号2のアミノ酸2~308のアミノ酸位置に対応するR41E、R167D、M199D、及びR288D変異を含む、請求項35に記載のシステム。
【請求項51】
前記変異の組み合わせがデザイン番号401の変異を含み、前記バリアントG-CSFが配列番号1のアミノ酸位置に対応するE19K、E46R、L108K、及びD112R変異を含み、前記受容体が配列番号2のアミノ酸2~308のアミノ酸位置に対応するR41E、R167D、及びR288D変異を含む、請求項35に記載のシステム。
【請求項52】
前記変異の組み合わせがデザイン番号402の変異を含み、前記バリアントG-CSFが配列番号1のアミノ酸位置に対応するE19K、E46R、D112K、及びT115K変異を含み、前記受容体が配列番号2のアミノ酸2~308のアミノ酸位置に対応するR41E、R167E、Q174E、及びR288E変異を含む、請求項35に記載のシステム。
【請求項53】
前記変異の組み合わせがデザイン番号403の変異を含み、前記バリアントG-CSFが配列番号1のアミノ酸位置に対応するE19R、E46R、及びD112K変異を含み、前記受容体が配列番号2のアミノ酸2~308のアミノ酸位置に対応するR41E、R167D、及びR288E変異を含む、請求項35に記載のシステム。
【請求項54】
請求項1~11のいずれか一項に記載の受容体を、請求項16~27に記載のバリアントG-CSFと接触させることを含む、細胞の表面上で発現する受容体を選択的に活性化させる方法。
【請求項55】
前記受容体が、免疫細胞上、
任意選択でT細胞上、
任意選択でNK細胞上、
任意選択でNKT細胞上、
任意選択でB細胞上、
任意選択で形質細胞上、
任意選択でマクロファージ上、
任意選択で樹状細胞上
で発現し、
任意選択で前記細胞が幹細胞であり、
任意選択で前記細胞が初代細胞であり、
任意選択で前記細胞がヒト細胞である、
請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記免疫細胞の前記選択的活性化が、前記免疫細胞の増殖、生存、及び増強した活性からなる群より選択される細胞応答を引き起こす、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
請求項1~11のいずれか一項に記載の受容体を発現する免疫細胞を作製する方法であって、前記細胞に請求項12に記載の核酸または請求項13に記載の発現ベクターを導入することを含む、前記方法。
【請求項58】
治療を必要とする対象を治療する方法であって、請求項14に記載の細胞を前記対象に注入することを含む、前記方法。
【請求項59】
請求項16~27のいずれか一項に記載のバリアントG-CSFを前記対象に投与することをさらに含む、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
がんを治療するために使用される、請求項58または59に記載の方法。
【請求項61】
炎症状態を治療するために使用される、請求項58または59に記載の方法。
【請求項62】
移植片拒絶反応を治療するために使用される、請求項58または59に記載の方法。
【請求項63】
感染症を治療するために使用される、請求項58または59に記載の方法。
【請求項64】
前記方法が、少なくとも1つの追加の活性剤を投与することをさらに含み、任意選択で、前記追加の活性剤が追加のサイトカインである、請求項58または59に記載の方法。
【請求項65】
治療を必要とする対象を治療する方法であって、
(i)免疫細胞を含有する試料を単離することと、
(ii)請求項1~11に記載のバリアントサイトカイン受容体をコードする核酸配列を前記免疫細胞に形質導入またはトランスフェクトすることと、
(iii)(ii)の前記免疫細胞を前記対象に投与または注入することと、
(iv)前記免疫細胞を、前記バリアント受容体に結合する請求項16~27に記載のバリアントG-CSFと接触させることと
を含む、前記方法。
【請求項66】
前記細胞を前記対象に投与または注入する前に、前記対象が免疫除去治療を受けている、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記免疫細胞を含有する試料が、前記細胞を投与または注入される前記対象から単離される、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
前記細胞を前記対象に投与または注入する前に、前記免疫細胞をインビトロで前記サイトカインと接触させる、請求項65に記載の方法。
【請求項69】
前記免疫細胞を、キメラ受容体からのシグナル伝達を活性化させるのに十分な時間、前記キメラ受容体に結合する前記サイトカインと接触させる、請求項65に記載の方法。
【請求項70】
治療を必要とする対象を治療するためのキットであって、請求項1~11のいずれか一項に記載のバリアント受容体をコードする細胞と、使用説明書と、を含み、任意選択で、前記キットが、前記バリアント受容体に結合する請求項16~27に記載のバリアントG-CSFを含み、任意選択で、前記細胞が免疫細胞である、前記キット。
【請求項71】
細胞表面上で発現する受容体を選択的に活性化させるためのシステムを作製するためのキットであって、
(a)請求項12に記載の核酸または請求項13に記載の発現ベクターと、
(b)請求項16~27のいずれか一項に記載のバリアントG-CSF、請求項28に記載の核酸、または請求項29に記載の発現ベクターと、
(c)使用説明書と
を含む、前記キット。
【請求項72】
細胞上で発現するキメラ受容体を作製するためのキットであって、請求項1~11のいずれか一項に記載のバリアント受容体をコードする発現ベクターを含む細胞と、使用説明書と、を含み、任意選択で、前記細胞が細菌細胞であり、任意選択で、前記キットが前記バリアント受容体に結合するバリアントG-CSFを含む、前記キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年10月8日に出願された米国仮特許出願第62/912,318号の優先権を主張するものであり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願には、EFS-Webを介して提出され、その全体が参照により本明細書に援用される配列表が含まれる。2020年10月7日に作成された上記のASCIIコピーは、IKE-068WO_US_SL.txtという名称であり、85,109バイトのサイズである。
【0003】
発明の分野
本発明は、バリアントサイトカイン受容体及びサイトカインペアを用いた細胞の選択的活性化のための方法及び組成物であって、該サイトカイン受容体が、顆粒球コロニー刺激因子受容体(G-CSFR)のバリアント細胞外ドメイン(ECD)を含む、方法及び組成物について開示する。また、本明細書では、養子細胞移植によって対象を治療する方法であって、対象にバリアント受容体を発現する細胞を投与することと、バリアントサイトカインを投与して、バリアント受容体を発現する細胞にシグナルを送ることと、を含む、方法が開示される。本開示に含まれるのは、バリアントサイトカイン及び受容体を発現する細胞を作製するための核酸、発現ベクター、及びキットであり、該キットは、バリアント受容体に結合するためのサイトカインも提供する。
【背景技術】
【0004】
関連技術の説明
過去20年間で、養子細胞療法(ACT)によるがんの治療には大きな進歩がもたらされた。内在性腫瘍浸潤T細胞(TIL)を用いたACTは、現在、進行性メラノーマにおいて50%を超える客観的臨床奏効率が再現性よく得られる。B細胞系白血病を認識する(CD19指向性キメラ抗原受容体、CD19 CARを使用して)ように操作されたT細胞を用いたACTでは、最大90%の完全奏効率が得られ、大半の患者は持続的な奏効を達成する。これらの顕著な結果に刺激され、いくつかの企業はTIL及びCD19 CAR T細胞アプローチを商品化している。
【0005】
ACTのためのT細胞の生着、増殖、及び持続性は、臨床的な安全性及び有効性の重要な決定要因である。これは、ACT移植後のIL-2の全身投与と、移植前に体外でT細胞をIL-2で増殖させることによって対処されることが多い。意図した免疫刺激効果に加えて、全身的なIL-2治療は、血管漏出症候群などの重篤な毒性を引き起こす可能性があり、患者の安全のために厳重に制御する必要がある。これらのリスクを管理するために、患者は通常2~3週間入院し、予防措置としてICUを利用する必要がある。さらに、IL-2は、エフェクターT細胞と制御性(抑制性)T細胞(5)の両方の増殖を誘発するため、患者にIL-2を投与することは、アクセルとブレーキペダルを同時に踏むようなものである。CAR T細胞は、T細胞の増殖と持続性が安全なレベルを超える可能性があるいう逆の問題をもたらす。さらに、それは正常なB細胞(CD19を発現している)も例外なく根絶してしまうため、患者は一生、部分的に免疫不全のままとなる。理想的には、養子移入後の腫瘍反応性T細胞の数を正確に制御し、がんを根絶した後に移入細胞を除去できるようにする機能を含むことが望ましい。幹細胞治療などの他の細胞ベース療法も、注入された細胞の増殖、分化、及び持続性に対する制御を改善することで恩恵を得ることができるだろう。
【0006】
ヒトG-CSFは、がん患者の好中球減少症を治療するために使用される承認済みの治療薬(Neupogen(登録商標),Filgrastim)である。G-CSFは、4-ヘリックスバンドルであり(Hill,CP et al.Proc Natl Acad Sci U S A.1993 Jun 1;90(11):5167-71(非特許文献1))、G-CSFと、その受容体G-CSFRと複合体を形成した構造は十分に特徴付けられている(Tamada,T et al.Proc Natl Acad Sci U S A.2006 Feb 28;103(9):3135-40(非特許文献2))。G-CSF:G-CSFR複合体は、2:2ヘテロ二量体である。G-CSFは、G-CSFRとの結合界面を2つ有する。1つの界面は、サイトIIと呼ばれるものであり、G-CSFとG-CSFRのサイトカイン受容体相同(CRH)ドメインとの間のより大きな界面である。もう1つの界面は、サイトIIIと呼ばれるものであり、G-CSFとG-CSFRのN末端Ig様ドメインとの間のより小さな界面である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Hill,CP et al.Proc Natl Acad Sci U S A.1993 Jun 1;90(11):5167-71
【非特許文献2】Tamada,T et al.Proc Natl Acad Sci U S A.2006 Feb 28;103(9):3135-40
【発明の概要】
【0008】
特定の実施形態では、本明細書に開示されるのは、顆粒球コロニー刺激因子受容体(G-CSFR)のバリアント細胞外ドメイン(ECD)を含む受容体であって、G-CSFRのバリアントECDが、サイトII界面領域における少なくとも1つの変異、サイトIII界面領域における少なくとも1つの変異、またはそれらの組み合わせを含む、受容体である。特定の態様では、サイトII界面領域における少なくとも1つの変異は、配列番号2のアミノ酸位置141、167、168、171、172、173、174、197、199、200、202、及び288からなる群より選択されるG-CSFR ECDのアミノ酸位置に位置する。特定の態様では、サイトII界面領域における少なくとも1つの変異は、R141E、R167D、K168D、K168E、L171E、L172E、Y173K、Q174E、D197K、D197R、M199D、D200K、D200R、V202D、R288D、及びR288EからなるG-CSFR ECD変異群から選択される。特定の態様では、サイトIII界面領域における少なくとも1つの変異は、配列番号2のアミノ酸位置30、41、73、75、79、86、87、88、89、91、及び93からなる群より選択されるG-CSFR ECD変異群から選択される。特定の態様では、サイトIII界面領域における少なくとも1つの変異は、S30D、R41E、Q73W、F75KF、S79D、L86D、Q87D、I88E、L89A、Q91D、Q91K、及びE93KからなるG-CSFR ECD変異群から選択される。特定の態様では、G-CSFR ECDは、表6のデザイン番号の変異の組み合わせを含み、該変異は、配列番号2のアミノ酸位置に対応する。特定の態様では、G-CSFR ECDは、R41E、R141E、及びR167Dである変異を含む。
【0009】
特定の態様では、本明細書に開示される受容体はキメラ受容体である。特定の態様では、受容体は細胞上で発現する。特定の態様では、受容体は免疫細胞上で発現する。特定の態様では、免疫細胞は、任意選択でT細胞、任意選択でNK細胞、任意選択でNKT細胞、任意選択でB細胞、任意選択で形質細胞、任意選択でマクロファージ、任意選択で樹状細胞であり、任意選択で、該細胞は幹細胞であり、任意選択で、該細胞は初代細胞であり、任意選択で、該細胞はヒト細胞である。
【0010】
特定の態様では、変異G-CSFによる受容体の活性化は、受容体を発現する細胞の増殖、生存、及び増強した活性からなる群より選択される細胞応答を引き起こす。
【0011】
特定の実施形態では、本明細書に開示されるのは、本明細書に開示される受容体のいずれかをコードする核酸である。特定の態様では、本明細書に記載されるのは、核酸を含む発現ベクターである。特定の実施形態では、本明細書に記載されるのは、本明細書に開示される受容体を発現するように操作された細胞である。特定の態様では、細胞は免疫細胞である。特定の実施形態では、免疫細胞は、任意選択でT細胞、任意選択でNK細胞、任意選択でNKT細胞、任意選択でB細胞、任意選択で形質細胞、任意選択でマクロファージ、任意選択で樹状細胞であり、任意選択で、該細胞は幹細胞であり、任意選択で、該細胞は初代細胞であり、任意選択で、該細胞はヒト細胞である。特定の実施形態では、本明細書に開示されるのは、バリアント顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)であって、該バリアントG-CSFが、サイトII界面領域における少なくとも1つの変異、サイトIII界面領域における少なくとも1つの変異、またはそれらの組み合わせを含む、バリアントG-CSFである。特定の態様では、バリアントG-CSFのサイトII界面領域における少なくとも1つの変異は、配列番号1のアミノ酸位置12、16、19、20、104、108、109、112、115、116、118、119、122、及び123からなる群より選択されるアミノ酸位置に位置する。特定の態様では、バリアントG-CSFのサイトII界面領域における少なくとも1つの変異は、S12E、S12K、S12R、K16D、L18F、E19K、Q20E、D104K、D104R、L108K、L108R、D109R、D112R、D112K、T115E、T115K、T116D、Q119E、Q119R、E122K、E122R、及びE123Rからなる変異群より選択される。特定の態様では、バリアントG-CSFのサイトIII界面領域における少なくとも1つの変異は、配列番号1のアミノ酸位置38、39、40、41、46、47、48、49、及び147からなる群より選択される変異群から選択される。特定の態様では、バリアントG-CSFのサイトIII界面領域における少なくとも1つの変異は、T38R、Y39E、K40D、K40F、L41D、L41E、L41K、E46R、L47D、V48K、V48R、L49K、及びR147Eからなる変異群より選択される。特定の態様では、バリアントG-CSFは、表6のデザイン番号の変異の組み合わせを含み、該変異は、配列番号1のアミノ酸位置に対応する。特定の態様では、バリアントG-CSFは、E46R、L108K、及びD112Rである変異を含む。特定の態様では、バリアントG-CSFは、本明細書に開示される受容体に選択的に結合する。特定の態様では、受容体は細胞上で発現する。特定の態様では、細胞は免疫細胞である。特定の態様では、免疫細胞は、任意選択でT細胞、任意選択でNK細胞、任意選択でNKT細胞、任意選択でB細胞、任意選択で形質細胞、任意選択でマクロファージ、任意選択で樹状細胞であり、任意選択で、該細胞は幹細胞であり、任意選択で、該細胞は初代細胞であり、任意選択で、該細胞はヒト細胞である。特定の態様では、バリアントG-CSFの、受容体への選択的結合により、免疫細胞の増殖、生存、及び増強した活性からなる群より選択される細胞応答が引き起こされる。
【0012】
特定の実施形態では、本明細書に開示されるのは、バリアントG-CSFをコードする核酸である。特定の態様では、本明細書に開示されるのは、核酸を含む発現ベクターである。特定の実施形態では、本明細書に開示されるのは、バリアントG-CSFを発現するように操作された細胞である。特定の態様では、細胞は免疫細胞である。
【0013】
特定の実施形態では、本明細書に開示されるのは、細胞表面上で発現する受容体を選択的に活性化させるシステムであって、該システムが受容体及びバリアントG-CSFを含み、該受容体がサイトII界面領域、サイトIII界面領域、またはそれらの組み合わせにおいて少なくとも1つの変異を含み、該バリアントG-CSFが受容体のサイトII界面領域、受容体のサイトIII界面領域、またはそれらの組み合わせを結合するG-CSFのアミノ酸配列において少なくとも1つの変異を含み;該バリアントG-CSFが野生型G-CSFR ECDよりも優先的に受容体に結合し、該受容体が野生型G-CSFよりも優先的にバリアントG-CSFに結合する、システムである。特定の態様では、受容体及びバリアントG-CSFは、表2のデザイン番号のサイトII界面の変異の組み合わせを含み、該受容体の変異が配列番号2のアミノ酸位置に対応し、該バリアントG-CSFの変異が配列番号1のアミノ酸位置に対応する。特定の態様では、受容体及びバリアントG-CSFは、表4のデザイン番号のサイトIII界面の変異の組み合わせを含み、該受容体の変異が配列番号2のアミノ酸位置に対応し、該バリアントG-CSFの変異が配列番号1のアミノ酸位置に対応する。特定の態様では、受容体及びバリアントG-CSFは、表6のデザイン番号のサイトII界面及びサイトIII界面の変異の組み合わせを含み、該受容体の変異が配列番号2のアミノ酸位置に対応し、該バリアントG-CSFの変異が配列番号1のアミノ酸位置に対応する。特定の態様では、変異の組み合わせはデザイン番号106の変異を含み、該バリアントG-CSFは、配列番号1のアミノ酸位置に対応するE46R及びD104K変異を含み、該受容体は、配列番号2のアミノ酸位置に対応するR41E及びK168D変異を含む。特定の態様では、変異の組み合わせはデザイン番号117の変異を含み、該バリアントG-CSFは、配列番号1のアミノ酸位置に対応するE46R、E122R、及びE123R変異を含み、該受容体は、配列番号2のアミノ酸位置に対応するR41E及びR141E変異を含む。特定の態様では、変異の組み合わせはデザイン番号130の変異を含み、該バリアントG-CSFは、配列番号1のアミノ酸位置に対応するE46R、L108K、及びD112R変異を含み、該受容体は、配列番号2のアミノ酸位置に対応するR41E及びR167D変異を含む。特定の態様では、変異の組み合わせはデザイン番号134の変異を含み、該バリアントG-CSFは、配列番号1のアミノ酸位置に対応するE46R、L108K、D112R、E122R、及びE123R変異を含み、該受容体は配列番号2のアミノ酸位置に対応するR41E、R141E、及びR167D変異を含む。特定の態様では、変異の組み合わせはデザイン番号135の変異を含み、該バリアントG-CSFは、配列番号1のアミノ酸位置に対応するE46R、T115K、E122R、及びE123R変異を含み、該受容体は、配列番号2のアミノ酸位置に対応するR41E、R141E、L171E、及びQ174E変異を含む。特定の態様では、変異の組み合わせはデザイン番号137の変異を含み、該バリアントG-CSFは、配列番号1のアミノ酸位置に対応するE46R、L108K、及びD112R変異を含み、該受容体は、配列番号2のアミノ酸位置に対応するR41E、R141E、及びR167D変異を含む。特定の態様では、変異の組み合わせはデザイン番号300の変異を含み、該バリアントG-CSFは、配列番号1のアミノ酸位置に対応するK40D、L41D、L108K、及びD112R変異を含み、該受容体は、配列番号2のアミノ酸位置に対応するF75K、Q91K、及びR167D変異を含む。特定の態様では、変異の組み合わせは、デザイン番号301の変異を含み、該バリアントG-CSFは、配列番号1のアミノ酸位置に対応するT38R、E46R、L108K、及びD112R変異を含み、該受容体は、配列番号2のアミノ酸位置に対応するR41E、Q73E、及びR167D変異を含む。特定の態様では、変異の組み合わせはデザイン番号302の変異を含み、該バリアントG-CSFは、配列番号1のアミノ酸位置に対応するE46R、L108K、及びD112R変異を含み、該受容体は、配列番号2のアミノ酸位置に対応するR41E、L86D、及びR167D変異を含む。特定の態様では、変異の組み合わせはデザイン番号303の変異を含み、該バリアントG-CSFは、配列番号1のアミノ酸位置に対応するL108K、D112R、及びR147E変異を含み、該受容体は、配列番号2のアミノ酸位置に対応するE93K及びR167D変異を含む。特定の態様では、変異の組み合わせはデザイン番号304の変異を含み、該バリアントG-CSFは、配列番号1のアミノ酸位置に対応するE46R、L108K、D112R、及びR147E変異を含み、該受容体は、配列番号2のアミノ酸位置に対応するR41E、E93K、及びR167D変異を含む。特定の態様では、変異の組み合わせはデザイン番号305の変異を含み、該バリアントG-CSFは、配列番号1のアミノ酸位置に対応するE19K、E46R、L108K、及びD112R変異を含み、該受容体は、配列番号2のアミノ酸位置に対応するR41E、R167D、及びR288E変異を含む。特定の態様では、変異の組み合わせはデザイン番号307の変異を含み、該バリアントG-CSFは、配列番号1のアミノ酸位置に対応するS12E、K16D、E19K、及びE46R変異を含み、該受容体は、配列番号2のアミノ酸位置に対応するR41E、D197K、D200K、及びR288E変異を含む。特定の態様では、変異の組み合わせはデザイン番号308の変異を含み、該バリアントG-CSFは、配列番号1のアミノ酸位置に対応するE19R、E46R、D112K変異を含み、該受容体は、配列番号2のアミノ酸位置に対応するR41E、R167D、V202D及びR288E変異を含む。特定の態様では、変異の組み合わせはデザイン番号400の変異を含み、該バリアントG-CSFは、配列番号1のアミノ酸位置に対応するE19K、E46R、D109R、及びD112R変異を含み、該受容体は、配列番号2のアミノ酸位置に対応するR41E、R167D、M199D、及びR288D変異を含む。特定の態様では、変異の組み合わせはデザイン番号401の変異を含み、該バリアントG-CSFは、配列番号1のアミノ酸位置に対応するE19K、E46R、L108K、及びD112R変異を含み、該受容体は、配列番号2のアミノ酸位置に対応するR41E、R167D、及びR288D変異を含む。特定の態様では、変異の組み合わせはデザイン番号402の変異を含み、該バリアントG-CSFは、配列番号1のアミノ酸位置に対応するE19K、E46R、D112K、及びT115K変異を含み、該受容体は、配列番号2のアミノ酸位置に対応するR41E、R167E、Q174E、及びR288E変異を含む。特定の態様では、変異の組み合わせはデザイン番号403の変異を含み、該バリアントG-CSFは、配列番号1のアミノ酸位置に対応するE19R、E46R、及びD112K変異を含み、該受容体は、配列番号2のアミノ酸位置に対応するR41E、R167D、及びR288E変異を含む。
【0014】
特定の実施形態では、本明細書に開示されるのは、細胞の表面上で発現する受容体を選択的に活性化させる方法であって、該受容体をバリアントG-CSFと接触させることを含む、方法である。特定の態様では、受容体は細胞上で発現する。特定の態様では、受容体は免疫細胞上で発現する。特定の態様では、受容体はT細胞またはNK細胞上で発現する。特定の態様では、免疫細胞の選択的活性化により、免疫細胞の増殖、生存、及び増強した活性からなる群より選択される細胞応答が引き起こされる。
【0015】
特定の実施形態では、本明細書に開示されるのは、本明細書に開示される受容体を発現する細胞を作製する方法であって、本明細書に開示される核酸または発現ベクターを細胞に導入することを含む、方法である。
【0016】
特定の実施形態では、本明細書に開示されるのは、治療を必要とする対象を治療する方法であって、対象に本明細書に開示される細胞(例えば、免疫細胞)を注入することを含む、方法である。特定の態様では、本方法は、対象にバリアントG-CSFを投与することをさらに含む。
【0017】
特定の実施形態では、本明細書に開示されるのは、細胞表面上で発現する受容体を選択的に活性化させるシステムを作製するためのキットであって、該キットが、本明細書に開示される核酸または発現ベクターと、本明細書に開示されるバリアントG-CSFと、使用説明書と、を含む、キットである。
【0018】
特定の実施形態では、本明細書に記載されるのは、キメラ受容体であって、該キメラ受容体が、(a)第2のドメインに作動可能に連結したG-CSFR(顆粒球コロニー刺激因子受容体)の細胞外ドメイン(ECD)を含み;該第2のドメインが、(b)IL-2R(インターロイキン-2受容体)、IL-7R(インターロイキン-7受容体)、IL-12R(インターロイキン-12受容体)、及びIL-21R(インターロイキン-21受容体)からなる群より選択されるマルチサブユニットサイトカイン受容体の細胞内ドメイン(ICD)の少なくとも一部を含み、任意選択で、該IL-2RがIL-2Rβ及びIL-2Rγcからなる群より選択され、任意選択で、該第2のドメインがIL-2Rβ、IL-7Rα、IL-12Rβ2、またはIL-21RのC末端領域の少なくとも一部を含み;該サイトカイン受容体のICDの少なくとも一部が、サイトカイン受容体の細胞内ドメインの少なくとも1つのシグナル伝達分子結合部位を含み、任意選択で、該少なくとも1つのシグナル伝達分子結合部位が、G-CSFRのSTAT3結合部位;gp130のSTAT3結合部位;gp130のSHP-2結合部位;IL-2RβのSHC結合部位;IL-2RβのSTAT5結合部位;IL-2RβのSTAT3結合部位;IL-2RβのSTAT1結合部位;IL-7RαのSTAT5結合部位;IL-7Rαのホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)結合部位;IL-12Rβ2のSTAT4結合部位;IL-12Rβ2のSTAT5結合部位;IL-12Rβ2のSTAT3結合部位;IL-21RのSTAT5結合部位;IL-21RのSTAT3結合部位;及びIL-21RのSTAT1結合部位からなる群より選択され;任意選択で、該ICDが、G-CSFR及びgp130からなる群より選択されるタンパク質のBox1領域及びBox2領域を含み;任意選択で、該キメラ受容体が、G-CSFR、gp130(糖タンパク質130)、及びIL-2Rβからなる群より選択されるタンパク質の膜貫通ドメインの少なくとも一部を含む第3のドメインを含み、任意選択で、該膜貫通ドメインが、野生型膜貫通ドメインである、キメラ受容体である。
【0019】
特定の態様では、本明細書に記載されるのは、第2のドメインに作動可能に連結したG-CSFRのECDを含むキメラ受容体であって、該第2のドメインが、
(i)
(a)gp130の膜貫通ドメインと、
(b)gp130のBox1及びBox2領域と、
(c)IL-2RβのC末端領域、または、
(ii)
(a)G-CSFRの膜貫通ドメインと、
(b)G-CSFRのBox1及びBox2領域と、
(c)IL-2RβのC末端領域、または、
(iii)
(a)G-CSFRの膜貫通ドメインと、
(b)G-CSFRのBox1及びBox2領域と、
(c)IL-12Rβ2のC末端領域、または、
(iv)
(a)G-CSFRの膜貫通ドメインと、
(b)G-CSFRのBox1及びBox2領域と、
(c)IL-21RのC末端領域、または、
(v)
(a)IL-2Rβ+γcの膜貫通ドメインと、
(b)IL-2Rβ+γcのBox1及びBox2領域と、
(c)IL-2Rβ+γcのC末端領域、または、
(vi)
(a)G-CSFRの膜貫通ドメインと、
(b)G-CSFRのBox1及びBox2領域と、
(c)IL-7RαのC末端領域
を含む、キメラ受容体である。
【0020】
特定の実施形態では、活性化キメラ受容体はホモ二量体を形成し、任意選択で、該キメラ受容体の活性化により、キメラ受容体を発現する細胞の増殖、生存、及び増強した活性からなる群より選択される細胞応答が引き起こされ、任意選択で、該キメラ受容体はG-CSFとの接触により活性化され、任意選択で、該G-CSFは野生型G-CSFであり、任意選択で、該G-CSFRの細胞外ドメインは野生型細胞外ドメインである。特定の実施形態では、活性化キメラ受容体はホモ二量体を形成し、任意選択で、該キメラ受容体の活性化により、キメラ受容体を発現する細胞の増殖、生存、及び増強した活性からなる群より選択される細胞応答が引き起こされ、任意選択で、該キメラ受容体はG-CSFとの接触により活性化され、任意選択で、該G-CSFは野生型G-CSFであり、任意選択で、該G-CSFRの細胞外ドメインは野生型細胞外ドメインである。
【0021】
特定の実施形態では、キメラ受容体は、細胞、任意選択で免疫細胞、任意選択でT細胞、任意選択でNK細胞、任意選択でNKT細胞、任意選択でB細胞、任意選択で形質細胞、任意選択でマクロファージ、任意選択で樹状細胞において発現され、任意選択で、該細胞は幹細胞であり、任意選択で、該細胞は初代細胞であり、任意選択で、該細胞はヒト細胞である。
【0022】
特定の実施形態では、ICDは、(a)配列番号16、19、21、29、31、33、35、37、もしくは39のアミノ酸配列を有するIL-2RβのICDの少なくとも一部;または(b)配列番号41のアミノ酸配列を有するIL-7RαのICDの少なくとも一部;または(c)配列番号25もしくは27のアミノ酸配列を有するIL-21RのICDの少なくとも一部;または(d)配列番号23、32、もしくは26のアミノ酸配列を有するIL-12Rβ2のICDの少なくとも一部;または(e)配列番号20、22、24、26、28、30、34、40、もしくは42のアミノ酸配列を有するG-CSFRのICDの少なくとも一部;または(f)配列番号18もしくは38のアミノ酸配列を有するgp130のICDの少なくとも一部;または(g)配列番号43のアミノ酸配列を有するIL-7RのICDの少なくとも一部;または(h)配列番号17のアミノ酸配列を有するIL-2RGのICDの少なくとも一部、を含む。
【0023】
特定の実施形態では、膜貫通ドメインは、(a)配列番号8、または(b)配列番号9、または(c)配列番号10、または(d)配列番号11に記載の配列を含む。
【0024】
特定の態様では、本明細書に記載されるのは、キメラ受容体をコードする核酸を含む細胞であって、該キメラ受容体が、(a)第2のドメインに作動可能に連結したG-CSFR(顆粒球コロニー刺激因子受容体)の細胞外ドメイン(ECD)を含み;該第2のドメインが、(b)IL-2R(インターロイキン-2受容体)、IL-7R(インターロイキン-7受容体)、IL-12R(インターロイキン-12受容体)、及びIL-21R(インターロイキン-21受容体)からなる群より選択されるマルチサブユニットサイトカイン受容体の細胞内ドメイン(ICD)の少なくとも一部を含み、任意選択で、該IL-2RがIL-2Rβ及びIL-2Rγcからなる群より選択され、任意選択で、該第2のドメインがIL-2Rβ、IL-7Rα、IL-12Rβ2、またはIL-21RのC末端領域の少なくとも一部を含み;該サイトカイン受容体のICDの少なくとも一部が、サイトカイン受容体の細胞内ドメインの少なくとも1つのシグナル伝達分子結合部位を含み、任意選択で、該ICDが、G-CSFRのSTAT3結合部位;gp130のSTAT3結合部位;gp130のSHP-2結合部位;IL-2RβのSHC結合部位;IL-2RβのSTAT5結合部位;IL-2RβのSTAT3結合部位;IL-2RβのSTAT1結合部位;IL-7RαのSTAT5結合部位;IL-7Rαのホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)結合部位;IL-12Rβ2のSTAT4結合部位;IL-12Rβ2のSTAT5結合部位;IL-12Rβ2のSTAT3結合部位;IL-21RのSTAT5結合部位;IL-21RのSTAT3結合部位;及びIL-21RのSTAT1結合部位からなる群より選択される少なくとも1つのシグナル伝達分子結合部位を含み;任意選択で、該ICDが、G-CSFR及びgp130からなる群より選択されるタンパク質のBox1領域及びBox2領域を含み;任意選択で、該キメラ受容体が、G-CSFR、gp130(糖タンパク質130)、及びIL-2Rβからなる群より選択されるタンパク質の膜貫通ドメインの少なくとも一部を含む第3のドメインを含み、任意選択で、該膜貫通ドメインが、野生型膜貫通ドメインである。特定の実施形態では、G-CSFRのECDは、配列番号5または6に記載の核酸配列によってコードされる。特定の実施形態では、核酸は、
(a)配列番号16、19、21、29、31、33、35、37、もしくは39のアミノ配列を有するIL-2RβのICDの少なくとも一部をコードする配列、または
(b)配列番号41のアミノ酸配列を有するIL-7RαのICDの少なくとも一部をコードする配列、または
(c)配列番号25もしくは27のアミノ酸配列を有するIL-21RのICDの少なくとも一部をコードする配列、または
(d)配列番号23、32、もしくは26のアミノ酸配列を有するIL-12Rβ2のICDの少なくとも一部をコードする配列、または
(e)配列番号20、22、24、26、28、30、34、40、もしくは42のアミノ酸配列を有するG-CSFRのICDの少なくとも一部をコードする配列、または
(f)配列番号18もしくは38のアミノ酸配列を有するgp130のICDの少なくとも一部をコードする配列、または
(g)配列番号43のアミノ酸配列を有するIL-7RαのICDの少なくとも一部をコードする配列、または
(h)配列番号17のアミノ酸配列を有するIL-2RγcのICDの少なくとも一部をコードする配列、を含む。
【0025】
特定の実施形態では、本開示は、本明細書に記載のキメラ受容体をコードする核酸を含む発現ベクターについて記載する。特定の実施形態では、ベクターは、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、及びプラスミドからなる群より選択される。
【0026】
特定の態様では、本明細書に記載されるのは、キメラ受容体をコードする核酸であって、該キメラ受容体が、第2のドメインに作動可能に連結されたG-CSFRのECDを含み、該第2のドメインが、
(i)
(a)gp130の膜貫通ドメインと、
(b)gp130のBox1及びBox2領域と、
(c)IL-2RβのC末端領域、または、
(ii)
(a)G-CSFRの膜貫通ドメインと、
(b)G-CSFRのBox1及びBox2領域と、
(c)IL-2RβのC末端領域、または、
(iii)
(a)G-CSFRの膜貫通ドメインと、
(b)G-CSFRのBox1及びBox2領域と、
(c)IL-12Rβ2のC末端領域、または、
(iv)
(a)G-CSFRの膜貫通ドメインと、
(b)G-CSFRのBox1及びBox2領域と、
(c)IL-21RのC末端領域、または、
(v)
(a)IL-2Rβ+γcの膜貫通ドメインと、
(b)IL-2Rβ+γcのBox1及びBox2領域と、
(c)IL-2Rβ+γcのC末端領域、または、
(vi)
(a)G-CSFRの膜貫通ドメインと、
(b)G-CSFRのBox1及びBox2領域と、
(c)IL-7RαのC末端領域
を含む、キメラ受容体をコードする核酸である。特定の実施形態では、G-CSFRのECDは、配列番号5または6に記載の核酸配列によってコードされる。特定の実施形態では、核酸は、
(a)配列番号16、19、21、29、31、33、35、37、もしくは39のアミノ配列を有するIL-2RβのICDの少なくとも一部をコードする配列、または
(b)配列番号41のアミノ酸配列を有するIL-7RαのICDの少なくとも一部をコードする配列、または
(c)配列番号25もしくは27のアミノ酸配列を有するIL-21RのICDの少なくとも一部をコードする配列、または
(d)配列番号23、32、もしくは26のアミノ酸配列を有するIL-12Rβ2のICDの少なくとも一部をコードする配列、または
(e)配列番号20、22、24、26、28、30、34、40、もしくは42のアミノ酸配列を有するG-CSFRのICDの少なくとも一部をコードする配列、または
(f)配列番号18もしくは38のアミノ酸配列を有するgp130のICDの少なくとも一部をコードする配列、または
(g)配列番号43のアミノ酸配列を有するIL-7RαのICDの少なくとも一部をコードする配列、または
(h)配列番号17のアミノ酸配列を有するIL-2RγcのICDの少なくとも一部をコードする配列、を含む。
【0027】
特定の態様では、本明細書に記載されるのは、本明細書に記載の核酸を含む発現ベクターである。特定の実施形態では、ベクターは、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、及びプラスミドからなる群より選択される。
【0028】
特定の態様では、本明細書に記載されるのは、キメラ受容体をコードする核酸を含む細胞であって、該キメラ受容体が、(a)第2のドメインに作動可能に連結したG-CSFR(顆粒球コロニー刺激因子受容体)の細胞外ドメイン(ECD)を含み;該第2のドメインが、(b)IL-2R(インターロイキン-2受容体)、IL-7R(インターロイキン-7受容体)、IL-12R(インターロイキン-12受容体)、及びIL-21R(インターロイキン-21受容体)からなる群より選択されるマルチサブユニットサイトカイン受容体の細胞内ドメイン(ICD)の少なくとも一部を含み、任意選択で、該IL-2RがIL-2Rβ及びIL-2Rγcからなる群より選択され、任意選択で、該第2のドメインがIL-2Rβ、IL-7Rα、IL-12Rβ2、またはIL-21RのC末端領域の少なくとも一部を含み;該サイトカイン受容体のICDの少なくとも一部が、サイトカイン受容体の細胞内ドメインの少なくとも1つのシグナル伝達分子結合部位を含み、任意選択で、該ICDが、G-CSFRのSTAT3結合部位;gp130のSTAT3結合部位;gp130のSHP-2結合部位;IL-2RβのSHC結合部位;IL-2RβのSTAT5結合部位;IL-2RβのSTAT3結合部位;IL-2RβのSTAT1結合部位;IL-7RαのSTAT5結合部位;IL-7Rαのホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)結合部位;IL-12Rβ2のSTAT4結合部位;IL-12Rβ2のSTAT5結合部位;IL-12Rβ2のSTAT3結合部位;IL-21RのSTAT5結合部位;IL-21RのSTAT3結合部位;及びIL-21RのSTAT1結合部位からなる群より選択される少なくとも1つのシグナル伝達分子結合部位を含み;任意選択で、該ICDが、G-CSFR及びgp130からなる群より選択されるタンパク質のBox1領域及びBox2領域を含み;任意選択で、該キメラ受容体が、G-CSFR、gp130(糖タンパク質130)、及びIL-2Rβからなる群より選択されるタンパク質の膜貫通ドメインの少なくとも一部を含む第3のドメインを含み、任意選択で、該膜貫通ドメインが、野生型膜貫通ドメインであり;任意選択で、
【0029】
該細胞が、免疫細胞、任意選択でT細胞、任意選択でNK細胞、任意選択でNKT細胞、任意選択でB細胞、任意選択で形質細胞、任意選択でマクロファージ、任意選択で樹状細胞であり、任意選択で、該細胞が幹細胞であり、任意選択で、該細胞が初代細胞であり、任意選択で、該細胞がヒト細胞である、キメラ受容体をコードする核酸を含む細胞である。
【0030】
特定の態様では、本明細書に記載されるのは、キメラ受容体をコードする核酸を含む細胞であって、該キメラ受容体が、第2のドメインに作動可能に連結されたG-CSFRのECDを含み、該第2のドメインが、
(i)
(a)gp130の膜貫通ドメインと、
(b)gp130のBox1及びBox2領域と、
(c)IL-2RβのC末端領域、または、
(ii)
(a)G-CSFRの膜貫通ドメインと、
(b)G-CSFRのBox1及びBox2領域と、
(c)IL-2RβのC末端領域、または、
(iii)
(a)G-CSFRの膜貫通ドメインと、
(b)G-CSFRのBox1及びBox2領域と、
(c)IL-12Rβ2のC末端領域、または、
(iv)
(a)G-CSFRの膜貫通ドメインと、
(b)G-CSFRのBox1及びBox2領域と、
(c)IL-21RのC末端領域、または、
(v)
(a)IL-2Rβ+γcの膜貫通ドメインと、
(b)IL-2Rβ+γcのBox1及びBox2領域と、
(c)IL-2Rβ+γcのC末端領域、または、
(vi)
(a)G-CSFRの膜貫通ドメインと、
(b)G-CSFRのBox1及びBox2領域と、
(c)IL-7RαのC末端領域
を含み;任意選択で、該細胞が、免疫細胞、任意選択でT細胞、任意選択でNK細胞、任意選択でNKT細胞、任意選択でB細胞、任意選択で形質細胞、任意選択でマクロファージ、任意選択で樹状細胞であり、任意選択で、該細胞が幹細胞であり、任意選択で、該細胞が初代細胞であり、任意選択で、該細胞がヒト細胞である、キメラ受容体をコードする核酸を含む細胞である。
【0031】
特定の実施形態では、G-CSFRのECDは、配列番号5または6に記載の配列を有する細胞に含まれる核酸によってコードされる。特定の実施形態では、核酸は、
(a)配列番号16、19、21、29、31、33、35、37、もしくは39のアミノ配列を有するIL-2RβのICDの少なくとも一部をコードする配列、または
(b)配列番号41のアミノ酸配列を有するIL-7RαのICDの少なくとも一部をコードする配列、または
(c)配列番号25もしくは27のアミノ酸配列を有するIL-21RのICDの少なくとも一部をコードする配列、または
(d)配列番号23、32、もしくは26のアミノ酸配列を有するIL-12Rβ2のICDの少なくとも一部をコードする配列、または
(e)配列番号20、22、24、26、28、30、34、40、もしくは42のアミノ酸配列を有するG-CSFRのICDの少なくとも一部をコードする配列、または
(f)配列番号18もしくは38のアミノ酸配列を有するgp130のICDの少なくとも一部をコードする配列、または
(g)配列番号43のアミノ酸配列を有するIL-7RのICDの少なくとも一部をコードする配列、または
(h)配列番号17のアミノ酸配列を有するIL-2RγcのICDの少なくとも一部をコードする配列、を含む細胞によって構成される。
【0032】
特定の態様では、本明細書に記載されるのは、本明細書に記載の発現ベクターを含む細胞であり、任意選択で、該細胞は免疫細胞、任意選択で、T細胞またはNK細胞である。特定の態様では、本明細書に記載されるのは、請求項1に記載のキメラ受容体を含む細胞であり、任意選択で、該細胞は免疫細胞、任意選択でT細胞、任意選択でNK細胞、任意選択でNKT細胞、任意選択でB細胞、任意選択で形質細胞、任意選択でマクロファージ、任意選択で樹状細胞であり、任意選択で、該細胞は幹細胞であり、任意選択で、該細胞は初代細胞であり、任意選択で、該細胞はヒト細胞である。
【0033】
特定の態様では、本明細書に記載されるのは、本明細書に記載のキメラ受容体を含む細胞であり、任意選択で、該細胞は免疫細胞、任意選択でT細胞、任意選択でNK細胞、任意選択でNKT細胞、任意選択でB細胞、任意選択で形質細胞、任意選択でマクロファージ、任意選択で樹状細胞であり、任意選択で、該細胞は幹細胞であり、任意選択で、該細胞は初代細胞であり、任意選択で、該細胞はヒト細胞である。
【0034】
特定の態様では、本明細書に記載されるのは、細胞の表面上に発現したキメラ受容体を選択的に活性化させる方法であって、キメラ受容体を選択的に活性化させるG-CSFとキメラ受容体を接触させることを含み;該キメラ受容体が、(a)第2のドメインに作動可能に連結したG-CSFR(顆粒球コロニー刺激因子受容体)の細胞外ドメイン(ECD)を含み;該第2のドメインが、(b)IL-2R(インターロイキン-2受容体)、IL-7R(インターロイキン-7受容体)、IL-12R(インターロイキン-12受容体)、及びIL-21R(インターロイキン-21受容体)からなる群より選択されるマルチサブユニットサイトカイン受容体の細胞内ドメイン(ICD)の少なくとも一部を含み、任意選択で、該IL-2RがIL-2Rβ及びIL-2Rγcからなる群より選択され、任意選択で、該第2のドメインがIL-2Rβ、IL-7Rα、IL-12Rβ2、またはIL-21RのC末端領域の少なくとも一部を含み;該サイトカイン受容体のICDの少なくとも一部が、サイトカイン受容体の細胞内ドメインの少なくとも1つのシグナル伝達分子結合部位を含み、任意選択で、該少なくとも1つのシグナル伝達分子結合部位が、G-CSFRのSTAT3結合部位;gp130のSTAT3結合部位;gp130のSHP-2結合部位;IL-2RβのSHC結合部位;IL-2RβのSTAT5結合部位;IL-2RβのSTAT3結合部位;IL-2RβのSTAT1結合部位;IL-7RαのSTAT5結合部位;IL-7Rαのホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)結合部位;IL-12Rβ2のSTAT4結合部位;IL-12Rβ2のSTAT5結合部位;IL-12Rβ2のSTAT3結合部位;IL-21RのSTAT5結合部位;IL-21RのSTAT3結合部位;及びIL-21RのSTAT1結合部位からなる群より選択され;任意選択で、該ICDが、G-CSFR及びgp130からなる群より選択されるタンパク質のBox1領域及びBox2領域を含み;任意選択で、該キメラ受容体が、G-CSFR、gp130(糖タンパク質130)、及びIL-2Rβからなる群より選択されるタンパク質の膜貫通ドメインの少なくとも一部を含む第3のドメインを含み、任意選択で、該膜貫通ドメインが、野生型膜貫通ドメインである、キメラ受容体を選択的に活性化させる方法である。
【0035】
特定の態様では、本明細書に記載されるのは、細胞の表面上に発現したキメラ受容体を選択的に活性化させる方法であって、キメラ受容体を該キメラ受容体を選択的に活性化させるG-CSFと接触させることを含み;該キメラ受容体が、第2のドメインに作動可能に連結されたG-CSFRのECDを含み;該第2のドメインが、
(i)
(a)gp130の膜貫通ドメインと、
(b)gp130のBox1及びBox2領域と、
(c)IL-2RβのC末端領域、または、
(ii)
(a)G-CSFRの膜貫通ドメインと、
(b)G-CSFRのBox1及びBox2領域と、
(c)IL-2RβのC末端領域、または、
(iii)
(a)G-CSFRの膜貫通ドメインと、
(b)G-CSFRのBox1及びBox2領域と、
(c)IL-12Rβ2のC末端領域、または、
(iv)
(a)G-CSFRの膜貫通ドメインと、
(b)G-CSFRのBox1及びBox2領域と、
(c)IL-21RのC末端領域、または、
(v)
(a)IL-2Rβ+γcの膜貫通ドメインと、
(b)IL-2Rβ+γcのBox1及びBox2領域と、
(c)IL-2Rβ+γcのC末端領域、または、
(vi)
(a)G-CSFRの膜貫通ドメインと、
(b)G-CSFRのBox1及びBox2領域と、
(c)IL-7RαのC末端領域
を含む、キメラ受容体を選択的に活性化させる方法である。
【0036】
本明細書に記載の方法の特定の実施形態では、活性化キメラ受容体はホモ二量体を形成し、任意選択で、該キメラ受容体の活性化により、該キメラ受容体を発現する細胞の増殖、生存、及び増強した活性からなる群より選択される細胞応答が引き起こされ;任意選択で、該キメラ受容体はG-CSFとの接触により活性化され、任意選択で、該G-CSFは野生型G-CSFであり、任意選択で、該G-CSFRの細胞外ドメインは野生型細胞外ドメインであり;該キメラ受容体は、細胞、任意選択で免疫細胞、任意選択でT細胞、任意選択でNK細胞、任意選択でNKT細胞、任意選択でB細胞、任意選択で形質細胞、任意選択でマクロファージ、任意選択で樹状細胞において発現され、任意選択で、該細胞は幹細胞であり、任意選択で、該細胞は初代細胞であり、任意選択で、該細胞はヒト細胞である。
【0037】
本明細書に記載の方法の特定の実施形態では、キメラ受容体は、
(a)配列番号16、19、21、29、31、33、35、37、もしくは39のアミノ配列を有するIL-2RβのICDの少なくとも一部、または
(b)配列番号41のアミノ酸配列を有するIL-7RαのICDの少なくとも一部、または
(c)配列番号25もしくは27のアミノ酸配列を有するIL-21RのICDの少なくとも一部、または
(d)配列番号23、32、もしくは26のアミノ酸配列を有するIL-12Rβ2のICDの少なくとも一部、または
(e)配列番号20、22、24、26、28、30、34、40、もしくは42のアミノ酸配列を有するG-CSFRのICDの少なくとも一部、または
(f)配列番号18もしくは38のアミノ酸配列を有するgp130のICDの少なくとも一部、または
(g)配列番号43のアミノ酸配列を有するIL-7RαのICDの少なくとも一部、または
(h)配列番号17のアミノ酸配列を有するIL-2RγcのICDの少なくとも一部を含み;膜貫通ドメインは、(a)配列番号8、または(b)配列番号9、または(c)配列番号10、または(d)配列番号11に記載の配列を含む。
【0038】
特定の態様では、本明細書に記載されるのは、細胞においてキメラ受容体を産生する方法であって、請求項13~16もしくは19~22のいずれか一項に記載の核酸、または請求項17、18、23、もしくは24のいずれか一項に記載の発現ベクターを細胞に導入することを含み;任意選択で、該方法が遺伝子編集を含み;任意選択で、該細胞が、免疫細胞、任意選択でT細胞、任意選択でNK細胞、任意選択でNKT細胞、任意選択でB細胞、任意選択で形質細胞、任意選択でマクロファージ、任意選択で樹状細胞であり、任意選択で、該細胞は初代細胞であり、任意選択で、該細胞はヒト細胞である、細胞においてキメラ受容体を産生する方法である。
【0039】
特定の実施形態では、本明細書に記載されるのは、治療を必要とする対象を治療する方法であって、該対象にキメラ受容体を発現する細胞を注入することと、該キメラ受容体に結合するサイトカインを投与することと、を含み;該キメラ受容体が、(a)第2のドメインに作動可能に連結したG-CSFR(顆粒球コロニー刺激因子受容体)の細胞外ドメイン(ECD)を含み;該第2のドメインが、(b)IL-2R(インターロイキン-2受容体)、IL-7R(インターロイキン-7受容体)、IL-12R(インターロイキン-12受容体)、及びIL-21R(インターロイキン-21受容体)からなる群より選択されるマルチサブユニットサイトカイン受容体の細胞内ドメイン(ICD)の少なくとも一部を含み、任意選択で、該IL-2RがIL-2Rβ及びIL-2Rγcからなる群より選択され、任意選択で、該第2のドメインがIL-2Rβ、IL-7Rα、IL-12Rβ2、またはIL-21RのC末端領域の少なくとも一部を含み;該サイトカイン受容体のICDの少なくとも一部が、サイトカイン受容体の細胞内ドメインの少なくとも1つのシグナル伝達分子結合部位を含み、任意選択で、該ICDが、G-CSFRのSTAT3結合部位;gp130のSTAT3結合部位;gp130のSHP-2結合部位;IL-2RβのSHC結合部位;IL-2RβのSTAT5結合部位;IL-2RβのSTAT3結合部位;IL-2RβのSTAT1結合部位;IL-7RαのSTAT5結合部位;IL-7Rαのホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)結合部位;IL-12Rβ2のSTAT4結合部位;IL-12Rβ2のSTAT5結合部位;IL-12Rβ2のSTAT3結合部位;IL-21RのSTAT5結合部位;IL-21RのSTAT3結合部位;及びIL-21RのSTAT1結合部位からなる群より選択される少なくとも1つのシグナル伝達分子結合部位を含み;任意選択で、該ICDが、G-CSFR及びgp130からなる群より選択されるタンパク質のBox1領域及びBox2領域を含み;任意選択で、該キメラ受容体が、G-CSFR、gp130(糖タンパク質130)、及びIL-2Rβからなる群より選択されるタンパク質の膜貫通ドメインの少なくとも一部を含む第3のドメインを含み、任意選択で、該膜貫通ドメインが、野生型膜貫通ドメインである、治療を必要とする対象を治療する方法である。
【0040】
特定の態様では、本明細書に記載されるのは、治療を必要とする対象を治療する方法であって、該対象にキメラ受容体を発現する細胞を注入することと、該キメラ受容体に結合するサイトカインを投与することと、を含み;該キメラ受容体が、第2のドメインに作動可能に連結されたG-CSFRのECDを含み;該第2のドメインが、
(i)
(a)gp130の膜貫通ドメインと、
(b)gp130のBox1及びBox2領域と
(c)IL-2RβのC末端領域、または、
(ii)
(a)G-CSFRの膜貫通ドメインと、
(b)G-CSFRのBox1及びBox2領域と、
(c)IL-2RβのC末端領域、または、
(iii)
(a)G-CSFRの膜貫通ドメインと、
(b)G-CSFRのBox1及びBox2領域と、
(c)IL-12Rβ2のC末端領域、または、
(iv)
(a)G-CSFRの膜貫通ドメインと、
(b)G-CSFRのBox1及びBox2領域と、
(c)IL-21RのC末端領域、または、
(v)
(a)IL-2Rβ+γcの膜貫通ドメインと、
(b)IL-2Rβ+γcのBox1及びBox2領域と、
(c)IL-2Rβ+γcのC末端領域、または、
(vi)
(a)G-CSFRの膜貫通ドメインと、
(b)G-CSFRのBox1及びBox2領域と、
(c)IL-7RαのC末端領域
を含む、治療を必要とする対象を治療する方法である。
【0041】
本方法の特定の実施形態では、活性化キメラ受容体はホモ二量体を形成し、任意選択で、該キメラ受容体の活性化により、該キメラ受容体を発現する細胞の増殖、生存、及び増強した活性からなる群より選択される細胞応答が引き起こされ;任意選択で、該キメラ受容体はG-CSFとの接触により活性化され;任意選択で、該G-CSFは野生型G-CSFであり;任意選択で、該G-CSFRの細胞外ドメインは野生型細胞外ドメインであり;該キメラ受容体は、細胞において発現され;任意選択で、該細胞は、免疫細胞、任意選択でT細胞、任意選択でNK細胞、任意選択でNKT細胞、任意選択でB細胞、任意選択で形質細胞、任意選択でマクロファージ、任意選択で樹状細胞であり、任意選択で、該細胞は幹細胞であり、任意選択で、該細胞は初代細胞であり、任意選択で、該細胞はヒト細胞である。特定の実施形態では、キメラ受容体は、任意選択で、
(a)配列番号16、19、21、29、31、33、35、37、もしくは39のアミノ配列を有するIL-2RβのICDの少なくとも一部、または
(b)配列番号41のアミノ酸配列を有するIL-7RαのICDの少なくとも一部、または
(c)配列番号25もしくは27のアミノ酸配列を有するIL-21RのICDの少なくとも一部、または
(d)配列番号23、32、もしくは26のアミノ酸配列を有するIL-12Rβ2のICDの少なくとも一部、または
(e)配列番号20、22、24、26、28、30、34、40、もしくは42のアミノ酸配列を有するG-CSFRのICDの少なくとも一部、または
(f)配列番号18もしくは38のアミノ酸配列を有するgp130のICDの少なくとも一部、または
(g)配列番号43のアミノ酸配列を有するIL-7RαのICDの少なくとも一部、または
(h)配列番号17のアミノ酸配列を有するIL-2RγcのICDの少なくとも一部を含み;膜貫通ドメインは、(a)配列番号8、または(b)配列番号9、または(c)配列番号10、または(d)配列番号11に記載の配列を含む。
【0042】
特定の実施形態では、本明細書に記載の方法は、がんを治療するために使用される。特定の実施形態では、本方法は、自己免疫疾患を治療するために使用される。特定の実施形態では、本方法は、炎症状態を治療するために使用される。特定の実施形態では、本方法は、移植片拒絶反応を予防及び治療するために使用される。特定の実施形態では、本方法は、感染症を治療するために使用される。特定の実施形態では、本方法は、少なくとも1つの追加の活性剤を投与することをさらに含み、任意選択で、追加の活性剤は追加のサイトカインである。
【0043】
特定の実施形態では、本明細書に記載の方法は、i)免疫細胞を含有する試料を単離することと、(ii)キメラサイトカイン受容体をコードする核酸配列を免疫細胞に形質導入またはトランスフェクトすることと、(iii)(ii)の免疫細胞を対象に投与または注入することと、(iv)免疫細胞をキメラ受容体に結合するサイトカインと接触させることと、を含む。特定の実施形態では、対象は、細胞を対象に投与または注入する前に、免疫除去治療を受けている。特定の実施形態では、免疫細胞を含有する試料は、細胞を投与または注入される対象から単離される。特定の実施形態では、免疫細胞は、該細胞が対象に投与または注入される前に、インビトロでサイトカインと接触させられる。特定の実施形態では、免疫細胞は、キメラ受容体に結合するサイトカインと、該キメラ受容体からのシグナル伝達を活性化させるのに十分な時間、接触させられる、
【0044】
本明細書に記載されているのは、治療を必要とする対象を治療するためのキットであって、本明細書に記載のキメラ受容体をコードし、任意選択で免疫細胞である、細胞と、使用説明書と、を含み、任意選択で、該キットが、該キメラ受容体に結合するサイトカインを含む、キットである。本明細書に記載されているのは、細胞上で発現するキメラ受容体を作製するためのキットであって、本明細書に記載のキメラ受容体をコードする発現ベクターと、使用説明書と、を含み、任意選択で、該キットが、該キメラ受容体に結合するサイトカインを含む、キットである。
【0045】
本明細書に記載されているのは、細胞上で発現するキメラ受容体を作製するためのキットであって、本明細書に記載のキメラ受容体をコードする発現ベクターを含み、任意選択で細菌細胞である、細胞と、使用説明書と、を含み、任意選択で、該キットが、該キメラ受容体に結合するサイトカインを含む、キットである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
本発明のこれら及び他の特徴、態様、及び利点は、以下の説明、及び添付の図面に関してよりよく理解されるであろう。
【0047】
【
図1】2:2のG-CSF:G-CSFRヘテロ二量体複合体のサイトII及びIII界面の構造を示す図である。
【0048】
【
図2】G-CSF:G-CSFR界面デザインに使用される戦略を概説する図である。
【0049】
【
図3】サイトII界面相互作用のエネルギー成分を示すグラフである。
【0050】
【
図4】サイトII界面の構造と、G-CSFR(CRH)のArg167(左)及びArg141(右)とサイトII界面のG-CSF残基との相互作用を示す図である。
【0051】
【
図5】サイトIIにおける野生型G-CSFを示す図(左)及びサイトIIデザイン#35の三重のZymeCAD(商標)平均場パックの同じ領域の重ね合わせ(右)である。
【0052】
【
図6】G-CSFデザイン#:6、7、8、9、15、17、30、34、35、及び36(上パネル)と、共発現及び精製サイトIIデザイン複合体#:6、7、8、9、15、17、30、34、35、及び36(下パネル)(第1レーンWT G-CSF対照、第2レーンWT G-CSF:G-CSFR(CRH)対照)のG-CSFプルダウンアッセイの結果を示すSDS-PAGEの画像である。
【0053】
【
図7】WT-G-CSFRと共発現させたG-CSFデザイン#:6、7、8、9、15、17、30、34、35、及び36のG-CSFプルダウンアッセイ(上パネル)と、G-CSFRデザイン#:6、7、8、9、15、17、30、34、35、及び36と共発現させたWT G-CSFのG-CSFプルダウンアッセイ(下パネル、第1レーンWT:WT G-CSF:G-CSFRプルダウン対照)の結果を示すSDS-PAGEの画像である。
【0054】
【
図8】サイトIII界面相互作用のエネルギー成分を示すグラフである。
【0055】
【
図9】サイトIII界面の構造と、G-CSFR(Ig)のR41(左)及びE93(右)とサイトIII界面のG-CSF残基との相互作用を示す図である。
【0056】
【
図10】デザイン#401及び402のG-CSFプルダウンアッセイの結果(上パネル)と、共発現し精製したサイトII/IIIデザイン複合体#401及び402(WT G-CSFRと、デザイン#401及び402 G-CSFRと共発現させたWT G-CSFのプルダウン)のG-CSFプルダウンアッセイの結果(下パネル)を示し、第1レーンがWT G-CSF対照、第2レーンがWT G-CSF:G-CSFR(Ig-CRH)対照である、SDS-PAGEの画像である。
【0057】
【
図11】TEV切断後のWT(SX75)G-CSFと、デザイン130(SX75)、303(SX200)、及び401(SX200)G-CSF
E変異体のサイズ排除クロマトグラフィープロファイルを示すグラフである。
【0058】
【
図12】TEV切断後のWT(SX75)と、精製デザイン401(SX200)及び402(SX200)G-CSFR(Ig-CRH)
E変異体のサイズ排除クロマトグラフィープロファイルを示すグラフである。
【0059】
【
図13】WT、デザイン#130、#401、#402 G-CSFの、それらの同族またはミスペアリングG-CSFR(Ig-CRH)への結合についての結合SPRセンサーグラムを示すグラフである。各G-CSF対G-CSFRペアは、各パネルの下に表記される。デザイン#401及び#402の同族ペアについてのKDを導出するために使用される代表的な定常状態での適合は、それぞれのセンサーグラムの下に示される。
【0060】
【
図14】左上パネル:WT G-CSF、デザイン#130及び#134 G-CSF
EのDSCサーモグラム;右上パネル:WT G-CSFR(Ig-CRH)、デザイン#130及び#134 G-CSFR(Ig-CRH)
EのDSCサーモグラム;左下パネル:デザイン#401及び#402 G-CSF
EのDSCサーモグラム;右下パネル:デザイン#300、#303、#304及び#307 G-CSF
EのDSCサーモグラムを示すグラフである。
【0061】
【
図15】A)G-CSFR
WT-ICD
IL-2Rb(ホモ二量体)またはB)G-CSFR
WT-ICD
IL-2Rb+G-CSFR
WT-ICD
gc(ヘテロ二量体)を発現する増殖32D-IL-2RβIL2Rb細胞を示すブロモ-デオキシウリジン(BrdU)アッセイの結果を示すグラフである。細胞は、サイトカインなし、IL-2(300IU/ml)、またはG-CSF
WT(Aでは100ng/ml、Bでは30ng/ml)で刺激された。
【0062】
【
図16】A)G-CSFR
137-ICD
gp130-IL-2Rb(ホモ二量体)またはB)G-CSFR
137-ICD
IL-2Rb+G-CSFR
137-ICD
gc(ヘテロ二量体)を発現する32D-IL-2Rβ細胞の増殖を示すBrdUアッセイの結果を示すグラフである。細胞は、サイトカインなし、IL-2(300IUIUIU/ml)、G-CSF
WT(30ngngng/ml)、またはG-CSFR
137(30ng/ml)で刺激された。
【0063】
【
図17】A)G-CSFR
WT-ICD
gp130-IL-2Rb(ホモ二量体)またはB)G-CSFR
WT-ICD
IL-2Rb+G-CSFR
WT-ICD
gc(ヘテロ二量体)を発現する32D-IL-2Rβ細胞の増殖を示すBrdUアッセイの結果を示すグラフである。細胞は、サイトカインなし、IL-2(300IU/ml)、G-CSF
WT(30ng/ml)、またはG-CSFR
137(30ng/ml)で刺激された。
【0064】
【
図18】G-CSFR
WT-ICD
gp130-IL-2Rb(ホモ二量体)、G-CSFR
137-ICD
gp130-IL-2Rb(ホモ二量体)、G-CSFR
WT-ICD
IL-2Rb+G-CSFR
WT-ICD
gc(ヘテロ二量体)、またはG-CSFR
137-ICD
IL-2Rb+G-CSFR
137-ICD
gc(ヘテロ二量体)を発現する32D-IL-2Rβ細胞のシグナル伝達を示すウエスタンブロットである。細胞は、サイトカインなし、IL-2(300IU/ml)、G-CSF
WT(30ng/ml)、またはG-CSFR
137(30ng/ml)で刺激された。
【0065】
【
図19】サイトカインなし、IL-2、またはWT、130、304、または307サイトカインでの刺激に応答して、示されたキメラ受容体を発現する初代マウスT細胞(または非形質導入細胞)の細胞周期の進行を評価するBrdU取り込みアッセイの結果を示すグラフである。A及びBは、反復実験を表す。
【0066】
【
図20】天然型IL-2Rβ、IL-2Rγc、及びG-CSFRサブユニットと、G2R-1受容体サブユニットデザインの概略図である。
【0067】
【
図21】示されたG-CSFRキメラ受容体サブユニットを発現し、WT G-CSF、IL-2、またはサイトカインなしで刺激された32D-IL-2Rβ細胞(ヒトIL-2Rβサブユニットを安定して発現する32D細胞株)の増殖(細胞数の倍数変化)を示すグラフを表す。G/γcは、そのN末端にMycエピトープをタグ付けされ(Myc/G/γc)、G/IL-2Rβは、そのN末端にFlagエピトープをタグ付けされ(Flag/G/IL-2Rβ);これらのエピトープタグは、フローサイトメトリーによる検出を補助し、受容体の機能には影響を与えない。さらに、B~Dの下パネルは、各培養条件下でG-CSFR ECDを発現する細胞の割合(%G-CSFR+)を示す。四角は、IL-2で刺激された細胞を表す。三角は、G-CSFで刺激された細胞を表す。円は、サイトカインで刺激されていない細胞を表す。
【0068】
【
図22】Flagタグ付きG/IL-2Rβサブユニットのみ、Mycタグ付きG/γcサブユニットのみ、または全長G-CSFRを発現するヒトT細胞の増殖(細胞数の倍数変化)を示すグラフを表す。A~D)PBMC由来T細胞;E~H)腫瘍関連リンパ球(TAL)。四角は、IL-2で刺激された細胞を表す。三角は、G-CSFで刺激された細胞を表す。円は、サイトカインで刺激されていない細胞を表す。
【0069】
【
図23】天然型受容体及びキメラ受容体の概略図であり、JAK、STAT、Shc、SHP-2、及びPI3K結合サイトを示す。影付きのスキームには、
図1の受容体が含まれる。
【0070】
【
図24】キメラ受容体の概略図であり、Jak、STAT、Shc、SHP-2、及びPI3K結合サイトを示す。影付きのスキームには、
図1及び4の受容体が含まれる。
【0071】
【
図25】G2R-2 cDNAインサートを含有するレンチウイルスプラスミドの図である。
【0072】
【
図26】G2R-2で形質導入された細胞のフローサイトメトリーによって評価されたG-CSFR ECD発現を示すグラフを表す。A)32D-IL-2Rβ細胞株;B)PBMC由来ヒトT細胞及びヒト腫瘍関連リンパ球(TAL)。
【0073】
【
図27】非形質導入細胞と比較したG2R-2を発現する細胞の増殖(細胞数の倍数変化)を示すグラフを表す。A)ヒトPBMC由来T細胞;B、C)2つの独立した実験からのヒト腫瘍関連リンパ球(TAL)。四角は、IL-2で刺激された細胞を表す。三角は、G-CSFで刺激された細胞を表す。円は、サイトカインで刺激されていない細胞を表す。
【0074】
【
図28】非形質導入細胞と比較したG2R-2を発現するCD4またはCD8選択ヒト腫瘍関連リンパ球の増殖(細胞数の倍数変化)を示すグラフを表す。A)非形質導入CD4選択細胞;B)非形質導入CD8選択細胞;C)G2R-2で形質導入されたCD4選択細胞;D)G2R-2で形質導入されたCD8選択細胞。灰色の点線は、IL-2で刺激された細胞を表す。黒の実線は、G-CSFで刺激された細胞を表す。灰色の破線は、サイトカインで刺激されていない細胞を表す。
【0075】
【
図29】G2R-2を発現するCD4+またはCD8+腫瘍関連リンパ球の増殖(細胞数の倍数変化)を示すグラフを表す。示されているように、細胞を最初にG-CSFまたはIL-2において増殖した。次に、細胞を、IL-2、G-CSF、または培地のみでプレーティングした。灰色の実線は、IL-2で刺激された細胞を表す。灰色の実線は、IL-2で刺激された細胞を表す。黒の実線は、G-CSFで刺激された細胞を表す。薄い灰色の破線は、IL-2で増殖し、培地のみで刺激された細胞を表す。濃い灰色の破線は、G-CSFで増殖し、培地のみで刺激された細胞を表す。
【0076】
【
図30】G-CSFまたはIL-2で増殖させた後の、G2R-2キメラ受容体構築物を発現するCD4またはCD8選択腫瘍関連リンパ球(TAL)と非形質導入細胞の免疫表現型(フローサイトメトリーによる)を示すグラフを表す。A)CD4+、CD8+、またはCD3-CD56+細胞表面の表現型を示す生細胞の割合(%)。B)CD45RA及びCCR7発現に基づいた、示された細胞表面の表現型を示す生細胞の割合(%)。
【0077】
【
図31】G2R-2を発現する初代ヒトT細胞と非形質導入細胞の増殖を評価するためのBrdU取り込みアッセイの結果を示すグラフを表す。T細胞は、アッセイの前に、示されているように、IL-2またはG-CSFでの培養によって選択された。A)腫瘍関連リンパ球;B)PBMC由来T細胞。
【0078】
【
図32】G2R-2または一本鎖G/IL-2Rβ(G2R-1の構成要素)を発現する初代マウスT細胞とモック形質導入細胞の増殖を評価するためのBrdU取り込みアッセイの結果を示すグラフを表す。A)示されたサイトカインでの培養後、G-CSFR ECDを発現する細胞の割合(%)(フローサイトメトリーによる)で反映される形質導入効率;B)示されたサイトカインに応答したすべての生細胞におけるBrdU取り込みの割合(%);C)G-CSFR ECDを発現する細胞(G-CSFR+細胞)によるBrdU取り込みの割合(%)。すべての細胞を、アッセイ前にIL-2で3日間増殖させた。四角は、IL-2で刺激された細胞を表す。三角は、G-CSFで刺激された細胞を表す。円は、サイトカインで刺激されていない細胞を表す。
【0079】
【
図33】G2R-2を発現するヒト初代T細胞と非形質導入細胞における、示されたサイトカインシグナル伝達イベントを検出するためのウエスタンブロットを表す。β-アクチン、総Akt、及びヒストンH3は、タンパク質ローディング対照として機能する。A、B)腫瘍関連リンパ球(TAL);C)PBMC由来T細胞。
【0080】
【
図34】G2R-2または一本鎖G/IL-2Rβ(G2R-1由来)を発現する初代マウスT細胞とモック形質導入細胞における示されたサイトカインシグナル伝達イベントを検出するためのウエスタンブロットを表す。矢印は、特異的なphospho-Jak2バンドを示し、他のより大きなバンドは、初代抗phospho-Jak2抗体とphospho-Jak1の交差反応性の結果であると推定される。β-アクチン及びヒストンH3はタンパク質ローディング対照として機能する。
【0081】
【
図35】サイトカインなし、IL-2(300IU/mL)、またはWT G-CSF(30ng/mL)、または130 G-CSF(30ng/mL)での刺激に応答して、示されたキメラ受容体を発現する32D-IL-2Rβ細胞(または非形質導入細胞)の細胞周期の進行を評価するBrdU取り込みアッセイの結果を示すグラフである。
【0082】
【
図36】サイトカインなし、IL-2、またはWT、130、304、または307サイトカインでの刺激に応答して、示されたキメラ受容体を発現する初代マウスT細胞(または非形質導入細胞)の細胞周期の進行を評価するBrdU取り込みアッセイの結果を示すグラフである。A及びBは、反復実験を表す。
【0083】
【
図37】サイトカインなし、IL-2、WT G-CSF、または130 G-CSFでの刺激に応答して、示されたキメラ受容体サブユニットを発現する32D-IL-2Rβ細胞(または非形質導入細胞)における示されたサイトカインシグナル伝達イベントを検出するためのウエスタンブロットを表す。β-アクチン及びヒストンH3は、タンパク質ローディング対照として機能する。
【0084】
【
図38】A)サイトカインなし、IL-2、WT G-CSF、130 G-CSF、または304 G-CSFでの刺激に応答して、示されたキメラ受容体サブユニットを発現する初代マウスT細胞における示されたサイトカインシグナル伝達イベントを検出するためのウエスタンブロットを表す。β-アクチン及びヒストンH3は、タンパク質ローディング対照として機能する。B)ヒトG-CSF受容体の細胞外ドメインに特異的な抗体を用いたフローサイトメトリーによって評価された、パネルAで使用された細胞の形質導入効率を表す。
【0085】
【
図39】示されたキメラ受容体構築物で形質導入された初代ヒト腫瘍関連リンパ球(TAL)におけるフローサイトメトリーによるG-CSFR ECD発現を示すプロットを表す。生きているCD3+、CD56-細胞を、CD8またはCD4でゲートし、G-CSFR ECD発現を各集団について示す。
【0086】
【
図40】G2R-3を発現する初代ヒト腫瘍関連リンパ球(TAL)と非形質導入細胞の拡大増殖、増殖、及びシグナル伝達を示すグラフ及び画像を表す。A)細胞にG2R-3をコードするレンチウイルスを形質導入し、洗浄した後、IL-2(300IU/ml)、野生型G-CSF(100ng/ml)、またはサイトカインなしで再プレーティングした、T細胞増殖アッセイの結果を示すグラフ。生細胞は3~4日ごとに計数した。四角は、IL-2で刺激された細胞を表す。三角は、G-CSFで刺激された細胞を表す。円は、サイトカインで刺激されていない細胞を表す。B)細胞内シグナル伝達イベントを評価するためのウエスタンブロット。細胞を増殖アッセイから回収し、IL-2(300IU/ml)または野生型G-CSF(100ng/ml)で刺激した。矢印は、125kDaでの特異的なphospho-Jak2バンドを示し;より大きなバンドは、初代抗phospho-Jak2抗体とphospho-Jak1の交差反応性の結果であると推定される。β-アクチン及びヒストンH3はタンパク質ローディング対照として機能する。C)T細胞増殖を評価するためのBrdU取り込みアッセイの結果を示すグラフ。細胞を増殖アッセイから回収し、洗浄した後、IL-2(300IU/ml)、野生型G-CSF(100ng/ml)、またはサイトカインなしにおいて再プレーティングした。
【0087】
【
図41】WT ECDを有するG2R-3を発現する初代ヒトPBMC由来T細胞と非形質導入細胞の増殖倍率とG-CSFR ECD発現を示すグラフを表す。A)細胞にG2R-3をコードするレンチウイルスを形質導入した、T細胞増殖アッセイの結果を示すグラフ。1日目に、WT G-CSF(100ng/ml)またはサイトカインなし(培地のみ)を培養液に添加した。その後、21日目まで、細胞に、WT G-CSFを含有するか、またはサイトカインを含まない培地を補充した。増殖の21日目に、細胞を洗浄し、WT G-CSF(100ng/mL)、IL-7(20ng/mL)、及びIL-15(20ng/mL)、またはサイトカインなしで再プレーティングした。生細胞は2~4日ごとに計数した。四角は、G-CSFで刺激された細胞を表す。三角は、G-CSFで刺激され、21日目にIL-7及びIL-15で再プレーティングされた細胞を表す。円は、サイトカインで刺激されていない細胞を表す。ひし形は、G-CSFで刺激され、21日目に培地のみで再プレーティングされた細胞を表す。B)増殖の21日目または42日目に、フローサイトメトリーによって測定されたG-CSFR ECDの発現を示すグラフ。
【0088】
【
図42】G2R-3を発現する初代ヒトPBMC由来T細胞と非形質導入細胞の細胞内シグナル伝達及び免疫表現型を示すグラフを表す。A)細胞内シグナル伝達イベントを評価するためのウエスタンブロット。細胞を増殖アッセイから回収し、IL-2(300IU/ml)または野生型G-CSF(100ng/ml)で刺激した。β-アクチンはタンパク質ローディング対照として機能する。B、C)増殖の42日目に、G2R-3を発現する細胞と非形質導入細胞の、フローサイトメトリーによって評価された免疫表現型を示す代表的なフローサイトメトリープロット及びグラフ。
【0089】
【
図43】304または307 ECDを有するG2R-3を発現する初代ヒトPBMC由来T細胞と非形質導入細胞の増殖倍率を示すグラフを表す。A)細胞にG2R-3 304 ECDをコードするレンチウイルスを形質導入した、T細胞増殖アッセイの結果を示すグラフ。B)細胞にG2R-3 307 ECDをコードするレンチウイルスを形質導入した、T細胞増殖アッセイの結果を示すグラフ。C)非形質導入細胞を用いたT細胞増殖アッセイの結果を示すグラフ。2日目に、示されたように、IL-2(300IU/mL)、304 G-CSF(100ng/ml)、307 G-CSF(100ng/mL)、またはサイトカインなし(培地のみ)を培養液に添加し、その後2日ごとに補充した。生細胞は3~4日ごとに計数した。ひし形は、304 G-CSFで刺激された細胞を表す。四角は、307 G-CSFで刺激された細胞を表す。三角は、IL-2で刺激された細胞を表す。逆三角形は、サイトカインで刺激されていない細胞を表す。
【0090】
【
図44】304または307 ECDを有するG2R-3を発現する初代ヒトPBMC由来T細胞と非形質導入細胞の増殖を評価するためのBrdU取り込みアッセイの結果を示すグラフを表す。細胞に、G2R-3 304 ECDまたは307 ECDをコードするレンチウイルスを形質導入し、304または307 G-CSF(100ng/mL)において増殖させた。非形質導入細胞は、IL-2(300IU/mL)において増殖させた。増殖の12日目に、細胞を洗浄し、IL-2(300IU/ml)、130 G-CSF(100ng/ml)、304 G-CSF(100ng/ml)、307 G-CSF(100ng/ml)、またはサイトカインなしで再プレーティングした。
【0091】
【
図45】示されたキメラ受容体構築物で形質導入された初代マウスT細胞におけるフローサイトメトリーによるG-CSFR ECD発現を示すグラフを表す。
【0092】
【
図46】G21R-1またはG21R-2を発現する初代PBMC由来ヒトT細胞におけるSTAT3のG-CSF誘導性リン酸化(フローサイトメトリーにより検出)を示す。細胞は、G-CSFR陽性(上パネル)またはG-CSFR陰性(下パネル)の集団に細分化された(すなわち、ゲートされた)。
【0093】
【
図47】G21R-1またはG12R-1を発現する初代マウスT細胞におけるG-CSF誘導性生化学的シグナル伝達イベントを示すグラフ及び画像を表す。A)G21R-1で形質導入され、サイトカインなし、IL-21、またはG-CSFで刺激されたCD4+またはCD8+細胞におけるSTAT3のリン酸化を示すグラフ(フローサイトメトリーにより検出)。B)サイトカインなし(黒丸)、IL-21(四角)、またはWT G-CSF(灰色丸)で刺激した後、phospho-STAT3に対して陽性に染色された細胞の割合(%)を示すグラフ。生細胞は、CD8またはCD4でゲートされ、各集団についてphospho-STAT3陽性細胞の割合(%)が示されている。C)G21R-1またはG12R-1を発現し、IL-21、IL-12、またはWT G-CSFで刺激された細胞における、示されたサイトカインシグナル伝達イベントを評価するためのウエスタンブロット。β-アクチン及びヒストンH3は、タンパク質ローディング対照として機能する。
【0094】
【
図48A】G2R-2、G2R-3、G7R-1、G21/7R-1、及びG27/2R-1を発現する初代マウスT細胞またはモック形質導入T細胞の増殖を示すグラフを表す。A、B)T細胞増殖を評価するためのBrdU取り込みアッセイの結果を示すグラフ。細胞を回収し、洗浄した後、IL-2(300IU/ml)、野生型G-CSF(100ng/ml)、またはサイトカインなしにおいて再プレーティングした。パネルA及びBは、反復実験を表す。
【
図48B】G2R-2、G2R-3、G7R-1、G21/7R-1、及びG27/2R-1を発現する初代マウスT細胞またはモック形質導入T細胞の増殖を示すグラフを表す。A、B)T細胞増殖を評価するためのBrdU取り込みアッセイの結果を示すグラフ。細胞を回収し、洗浄した後、IL-2(300IU/ml)、野生型G-CSF(100ng/ml)、またはサイトカインなしにおいて再プレーティングした。パネルA及びBは、反復実験を表す。
【
図48C】G2R-2、G2R-3、G7R-1、G21/7R-1、及びG27/2R-1を発現する初代マウスT細胞またはモック形質導入T細胞におけるG-CSFR ECD発現を示すグラフを表す。C)示されたキメラ受容体構築物で形質導入された初代マウスT細胞におけるフローサイトメトリーによるG-CSFR ECD発現を示すグラフ。
【
図48D】G2R-2、G2R-3、G7R-1、G21/7R-1、及びG27/2R-1を発現する初代マウスT細胞またはモック形質導入T細胞におけるWT G-CSF誘導性細胞内シグナル伝達イベントを示す画像を表す。D)G2R-2、G2R-3、G7R-1、G21/7R-1及びG27/2R-1を発現する細胞、またはモック形質導入T細胞における示されたサイトカインシグナル伝達イベントを評価するためのウエスタンブロット。細胞をIL-2(300IU/mL)、IL-7(10ng/mL)、IL-21(10ng/mL)、IL-27(50ng/mL)、またはG-CSF(100ng/mL)で刺激した。β-アクチン及びヒストンH3はタンパク質ローディング対照として機能する。
【0095】
【
図49】G21/2R-1、G12/2R-1、及び21/12/2R-1、またはモック形質導入T細胞を発現する初代マウスT細胞における増殖、G-CSFR ECD発現、及びG-CSF誘導性生化学的シグナル伝達イベントを示すグラフ及び画像を表す。A、B)T細胞増殖を評価するためのBrdU取り込みアッセイの結果を示すグラフ。細胞を回収し、洗浄した後、IL-2(300IU/ml)、野生型G-CSF(100ng/ml)、またはサイトカインなしにおいて再プレーティングした。パネルA及びBは、反復実験を表す。C)示されたキメラ受容体構築物で形質導入された初代マウスT細胞におけるフローサイトメトリーによるG-CSFR ECD発現を示すグラフ。D)G21/2R-1、G12/2R-1、及び21/12/2R-1を発現する細胞、またはモック形質導入T細胞における示されたサイトカインシグナル伝達イベントを評価するためのウエスタンブロット。細胞をIL-2(300IU/mL)、IL-21(10ng/mL)、IL-12(10ng/mL)、またはG-CSF(100ng/mL)で刺激した。β-アクチン及びヒストンH3はタンパク質ローディング対照として機能する。
【0096】
【
図50】134 ECDを有するG12/2R-1を発現する初代ヒトPBMC由来T細胞と非形質導入細胞の増殖倍率とG-CSFR ECD発現を示すグラフを表す。A)細胞にG12/2R-1_134-ECDをコードするレンチウイルスを形質導入し、IL-2(300IU/ml)、130 G-CSF(100ng/ml)、または培地で増殖した、T細胞増殖アッセイの結果を示すグラフ。生細胞は4~5日ごとに計数した。四角は、サイトカインで刺激されていない細胞を表す。三角は、130 G-CSFで刺激された細胞を表す。ひし形は、IL-2で刺激された細胞を表す。B)パネルAのように細胞が形質導入されたT細胞増殖アッセイの結果を示すグラフ。増殖の19日目に、細胞を洗浄し、IL-2、130 G-CSF、または培地のみで再プレーティングした。生細胞は4~5日ごとに計数した。四角は、サイトカインで刺激されていない細胞を表す。薄い灰色のひし形は、130 G-CSFで刺激された細胞を表す。濃い灰色のひし形は、IL-2で刺激された細胞を表す。薄い灰色の逆三角形は、最初にIL-2で刺激され、その後19日目に、培地のみで再プレーティングした細胞を表す。濃い灰色の三角形は、最初に130 G-CSFで刺激され、その後19日目に、培地のみで再プレーティングした細胞を表す。C)増殖の4日目または16日目に、フローサイトメトリーによって測定されたG-CSFR ECDの発現を示すグラフ。
【0097】
【
図51】134 ECDを有するG12/2R-1を発現する初代ヒトPBMC由来T細胞と非形質導入細胞の増殖及び免疫表現型を示すグラフを表す。A)T細胞増殖を評価するためのBrdU取り込みアッセイの結果を示すグラフ。細胞を回収し、洗浄した後、IL-2(300IU/ml)、IL-2+IL-12(それぞれ、300IU/mlと10ng/mL)、130G-CSF(300ng/ml)、または培地のみで再プレーティングした。B、C)増殖の16日目に、134 ECDを有するG12/2R-1を発現する細胞と非形質導入細胞の、フローサイトメトリーによって評価された免疫表現型を示す代表的なフローサイトメトリープロット及びグラフ。
【0098】
【
図52】304 ECDを有するG12/2R-1を発現する初代ヒトPBMC由来T細胞と非形質導入細胞の拡大増殖倍率及び増殖倍率を示すグラフを表す。A)細胞にG12/2R-1_134-ECDをコードするレンチウイルスを形質導入し、IL-2(300IU/mL)、130 G-CSF(100ng/ml)、304 G-CSF(100ng/ml)、または培地のみで増殖した、T細胞増殖アッセイの結果を示すグラフ。非形質導入細胞は、IL-2、130 G-CSF、304 G-CSF、または培地のみで培養した。生細胞は3~4日ごとに計数した。逆三角形は、サイトカインで刺激されていない細胞を表す。三角は、IL-2で刺激された細胞を表す。丸は、130 G-CSFで刺激された細胞を表す。ひし形は、304 G-CSFで刺激された細胞を表す。B)12日目に細胞を増殖アッセイから回収し、洗浄した後、IL-2(300IU/ml)、130 G-CSF(300ng/ml)、304 G-CSF(100ng/ml)、307 G-CSF(100ng/ml)、または培地のみで再プレーティングした。
【0099】
【
図53】304 ECDを有するG2R-3、304ECDを有するG12/2R-1、または非形質導入T細胞を発現する初代PBMC由来T細胞において示されたサイトカインシグナル伝達イベントを検出するためのウエスタンブロットを表す。細胞を増殖アッセイから回収し、示されているように、304 G-CSF(100ng/mL)、IL-2(300IU/mL)、IL-2及びIL-12(10ng/mL)、または培地のみで刺激した。黒い矢印と右側の小さな出っ張ったパネルは、タンパク質ラダーの115kDa及び140kDaでの分子量マーカーを示す。β-アクチン及びヒストンH3はタンパク質ローディング対照として機能する。
【発明を実施するための形態】
【0100】
発明の詳細な説明
手短に言えば、以下でより詳細に説明するように、本明細書に記載されるのは、バリアントサイトカイン受容体及びサイトカインペアを用いた細胞の選択的活性化のための方法及び組成物であって、該サイトカイン受容体が、顆粒球コロニー刺激因子受容体(G-CSFR)のバリアント細胞外ドメイン(ECD)を含む、方法及び組成物である。特定の実施形態では、本明細書に記載の方法及び組成物は、養子細胞移植療法のための細胞の排他的活性化に有用である。したがって、本明細書に含まれるのは、その天然型受容体に結合しないサイトカインによって選択的に活性化されるバリアント受容体を発現する細胞を作製するための方法である。また、本明細書に開示されるのは、治療を必要とする対象を治療する方法であって、G-CSFRのバリアントECDを含む受容体を発現する細胞を対象に投与することと、G-CSFRのバリアントECDに結合するG-CSFのバリアントを共投与することと、を含む方法である。特定の態様では、本明細書に記載の組成物及び方法は、養子細胞移植法のための細胞の選択的活性化に対するアンメットニーズに対処し、養子細胞移植の前の対象の免疫除去の必要性またはIL-2などの広範囲作用性刺激サイトカインを投与する必要性を減少または排除し得る。
【0101】
定義
請求項及び明細書で使用される用語は、特に明記しない限り、以下に記載するように定義する。
【0102】
「治療」という用語は、疾患状態、例えば、がんの疾患状態の治療における任意の治療的に有益な結果を意味し、その予防、重症度もしくは進行の軽減、寛解、または治癒を含む。
【0103】
「インビボ」という用語は、生体内で発生するプロセスを指す。
【0104】
本明細書で使用される「哺乳動物」という用語は、ヒト及び非ヒトの両方を含み、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ネズミ、ウシ、ウマ、及びブタを含むがこれらに限定されない。
【0105】
「十分な量」という用語は、所望の効果を生み出すのに十分な量、例えば、細胞上で発現している受容体を選択的に活性化させるのに十分な量、を意味する。
【0106】
「治療的有効量」という用語は、疾患の症状を改善するのに有効な量である。予防は治療とみなすことができるため、治療的有効量は「予防的有効量」であることができる。
【0107】
「作動可能に連結された」という用語は、それぞれ、別の核酸またはアミノ酸配列と機能的関係に置かれる核酸またはアミノ酸配列を指す。一般に、「作動可能に連結された」とは、連結している核酸配列またはアミノ酸配列が連続的であること、及び分泌リーダーの場合、連続的であり、リーディング相にあることを意味する。
【0108】
本明細書で使用される場合、「細胞外ドメイン」(ECD)という用語は、細胞の表面上で発現するときの受容体(例えば、G-CSFR)の原形質膜の外部にあるドメインを指す。特定の実施形態では、G-CSFRのECDは、配列番号2または配列番号7の少なくとも一部を含む。
【0109】
本明細書で使用される場合、「細胞内ドメイン」(ICD)という用語は、受容体が細胞表面上で発現するときの受容体の細胞内に位置するドメインを指す。
【0110】
本明細書で使用される場合、「膜貫通ドメイン」(TMDまたはTM)という用語は、受容体が細胞表面上で発現するときの細胞表面受容体の原形質膜内に位置するドメインまたは領域を指す。
【0111】
「サイトカイン」という用語は、サイトカイン受容体に結合し、細胞上で発現するサイトカイン受容体に結合して活性化させると細胞シグナル伝達を誘発できる小タンパク質(約5~20kDa)を指す。サイトカインの例には、インターロイキン、リンホカイン、コロニー刺激因子、及びケモカインが含まれるが、これらに限定されない。
【0112】
「サイトカイン受容体」という用語は、1型及び2型サイトカイン受容体を含むサイトカインに結合する受容体を指す。サイトカイン受容体としては、G-CSFR、IL-2R(インターロイキン-2受容体)、IL-7R(インターロイキン-7受容体)、IL-12R(インターロイキン-12受容体)、及びIL-21R(インターロイキン-21受容体)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0113】
本明細書で使用される「キメラ受容体」という用語は、1つ以上の異なる膜貫通タンパク質または受容体の配列に由来する少なくとも1つのドメイン(例えば、ECD、ICD、TMD、またはC末端領域)の少なくとも一部を有するように操作された膜貫通受容体を指す。
【0114】
本明細書で使用される「サイトII界面」、「サイトII領域」、「サイトII界面領域」、または「サイトII」は、G-CSFとG-CSFRとのG-CSF:G-CSFR 2:2ヘテロ二量体結合界面のうち大きい方を意味し、G-CSFとG-CSFRのサイトカイン受容体ホモログ(CRH)ドメインと間の界面に位置する。
【0115】
本明細書で使用される「サイトIII界面」、「サイトIII領域」、「サイトIII界面領域」、または「サイトIII」は、G-CSFとG-CSFRとのG-CSF:G-CSFR 2:2ヘテロ二量体結合界面のうち小さい方を意味し、G-CSFとG-CSFRのN末端Ig様ドメインと間の界面に位置する。
【0116】
本明細書で使用される「少なくとも一部」または「一部」という用語は、特定の態様では、本明細書に記載の配列番号の連続する核酸塩基またはアミノ酸の長さの75%超、80%超、90%超、95%超、99%超を指す。特定の態様では、本明細書に記載されるドメインまたは結合部位(例えば、ECD、ICD、膜貫通、C末端領域、またはシグナル伝達分子結合部位)の少なくとも一部は、本明細書に記載の配列番号に対して75%超、80%超、90%超、95%超、99%超、同一であり得る。
【0117】
「野生型」という用語は、ポリペプチドの天然アミノ酸配列または本明細書に記載のポリペプチドをコードする遺伝子の天然型核酸配列を指す。タンパク質または遺伝子の野生型配列は、そのタンパク質または遺伝子の種のポリペプチドまたは遺伝子の最も一般的な配列である。
【0118】
「バリアントサイトカイン-受容体ペア」、「バリアントサイトカイン及び受容体ペア」、「バリアントサイトカイン及び受容体デザイン(複数可)」、「バリアントサイトカイン-受容体スイッチ」、または「直交サイトカイン-受容体ペア」という用語は、(a)天然型サイトカインまたは同族受容体に結合せず、(b)対応する操作された(バリアント)リガンドまたは受容体に特異的に結合するようにアミノ酸を変化させることによって改変された遺伝子操作されたタンパク質のペアを指す。
【0119】
本明細書で使用される「バリアント受容体」または「直交受容体」という用語は、バリアントサイトカイン-受容体ペアの遺伝子操作された受容体を指し、キメラ受容体を含む。
【0120】
本明細書で使用される「バリアントECD」という用語は、バリアントサイトカイン-受容体ペアの受容体(例えば、G-CSFR)の遺伝子操作された細胞外ドメインを指す。
【0121】
本明細書で使用される「バリアントサイトカイン」、「バリアントG-CSF」、または「直交サイトカイン」という用語は、バリアントサイトカイン-受容体ペアの遺伝子操作されたサイトカインを指す。
【0122】
本明細書で使用される場合、「結合しない」または「結合できない」は、検出可能な結合がない、またはわずかな結合、すなわち、天然のリガンドのものよりもはるかに低い結合親和性を有することを指す。
【0123】
本明細書で使用される「選択的に活性化させる」または「選択的活性化」という用語は、サイトカイン及びバリアント受容体について言及する場合、サイトカインがバリアント受容体に優先的に結合し、サイトカインがバリアント受容体に結合することにより該受容体が活性化することを指す。特定の態様では、サイトカインは、サイトカインに特異的に結合するように共進化したキメラ受容体を選択的に活性化させる。特定の態様では、サイトカインは、野生型サイトカインであり、細胞上で発現するキメラ受容体を選択的に活性化させるが、サイトカインに対する天然型野生型受容体は細胞内で発現しない。
【0124】
本明細書で使用される「増強した活性」という用語は、バリアントサイトカインによる刺激時に細胞上で発現しているバリアント受容体の活性の増加を指し、該活性は、天然型サイトカインによる刺激時に天然型受容体について観察される活性である。
【0125】
「免疫細胞」という用語は、生物の免疫系(自然免疫応答及び適応免疫応答を含む)をサポートする機能を有することが知られている任意の細胞を指し、リンパ球(例えば、B細胞、形質細胞、及びT細胞)、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、マクロファージ、単球、樹状細胞、好中球、及び顆粒球が含まれるが、これらに限定されるものではない。免疫細胞には、幹細胞、未成熟免疫細胞、及び分化細胞が含まれる。免疫細胞には、生体内で稀であろうと豊富であろうと、あらゆる細胞の亜集団も含まれる。特定の実施形態では、免疫細胞は、免疫細胞タイプ及び亜集団の既知のマーカー(例えば、細胞表面マーカー)を保有することによって、そのように識別される。
【0126】
「T細胞」という用語は、CD3及び/またはT細胞抗原受容体の発現を特徴とし得る哺乳動物免疫エフェクター細胞を指し、これらの細胞は、直交サイトカイン受容体を発現するように操作され得る。いくつかの実施形態では、T細胞は、ナイーブCD8+T細胞、細胞傷害性CD8+T細胞、ナイーブCD4+T細胞、ヘルパーT細胞、例えば、TH2、TH9、TH11、TH22、TFH;制御性T細胞、例えば、TR1、天然TReg、誘導性TReg;メモリーT細胞、例えば、セントラルメモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、NKT細胞、及びγδT細胞から選択される。
【0127】
「G-CSFR」という用語は、顆粒球コロニー刺激因子受容体を指す。G-CSFRは、GCSFR、G-CSF受容体、コロニー刺激因子3受容体、CSF3R、CD114抗原、またはSCN7とも呼ばれ得る。ヒトG-CSFRは、Ensembl識別番号:ENSG00000119535を有する遺伝子によってコードされる。ヒトG-CSFRは、GeneBank受入番号NM_156039.3に対応するcDNA配列によってコードされる。
【0128】
「G-CSF」という用語は、顆粒球コロニー刺激因子を指す。G-CSFは、コロニー刺激因子3及びCSF3とも呼ばれ得る。ヒトG-CSFは、Ensembl識別番号:ENSG00000108342を有する遺伝子によってコードされる。ヒトG-CSFは、GeneBank受入番号KP271008.1に対応するcDNA配列によってコードされる。
【0129】
「JAK」は、ヤヌスキナーゼとも呼ばれ得る。JAKは、Jak-STAT経路を介してサイトカイン媒介シグナルを伝達する細胞内非受容体型チロシンキナーゼのファミリーであり、JAK1、JAK2、JAK3、及びTYK2が含まれる。ヒトJAK1は、Ensembl識別番号:ENSG00000162434を有する遺伝子によってコードされる。ヒトJAK1は、GeneBank受入番号NM_002227に対応するcDNA配列によってコードされる。ヒトJAK2は、Ensembl識別番号:ENSG00000096968を有する遺伝子によってコードされる。ヒトJAK2は、GeneBank受入番号NM_001322194に対応するcDNA配列によってコードされる。ヒトJAK3は、Ensembl識別番号:ENSG00000105639を有する遺伝子によってコードされる。ヒトJAK3は、GeneBank受入番号NM_000215に対応するcDNA配列によってコードされる。ヒトトTYK2は、Ensembl識別番号:ENSG00000105397を有する遺伝子によってコードされる。ヒトTYK2は、GeneBank受入番号NM_001385197に対応するcDNA配列によってコードされる。
【0130】
STATは、シグナル伝達物質及び転写活性化因子とも呼ばれ得る。STATは、STAT1、STAT2、STAT3、STAT4、STAT5A、STAT5B、及びSTAT6の7つのSTATタンパク質のファミリーである。ヒトSTAT1は、Ensembl識別番号:ENSG00000115415を有する遺伝子によってコードされる。ヒトSTAT1は、GeneBank受入番号:NM_007315に対応するcDNA配列によってコードされる。ヒトSTAT2は、Ensembl識別番号:ENSG00000170581を有する遺伝子によってコードされる。ヒトSTAT2は、GeneBank受入番号NM_005419に対応するcDNA配列によってコードされる。ヒトSTAT3は、Ensembl識別番号:ENSG00000168610を有する遺伝子によってコードされる。ヒトSTAT3は、GeneBank受入番号:NM_139276に対応するcDNA配列によってコードされる。ヒトSTAT4は、Ensembl識別番号:ENSG00000138378を有する遺伝子によってコードされる。ヒトSTAT4は、GeneBank受入番号:NM_003151に対応するcDNA配列によってコードされる。ヒトSTAT5Aは、Ensembl識別番号:ENSG00000126561を有する遺伝子によってコードされる。ヒトSTAT5Aは、GeneBank受入番号:NM_003152に対応するcDNA配列によってコードされる。ヒトSTAT5Bは、Ensembl識別番号:ENSG00000173757を有する遺伝子によってコードされる。ヒトSTAT5Bは、GeneBank受入番号:NM_012448に対応するcDNA配列によってコードされる。ヒトSTAT6は、Ensembl識別番号:ENSG00000166888を有する遺伝子によってコードされる。ヒトSTAT6は、GeneBank受入番号:NM_003153に対応するcDNA配列によってコードされる。
【0131】
SHCは、Srcホモロジー2ドメイン含有形質転換タンパク質とも呼ばれ得る。Shcは、3つのアイソフォームのファミリーであり、p66Shc、p52Shc、及びp46Shc、SHC1、SHC2、及びSHC3を含む。ヒトSHC1は、Ensembl識別番号:ENSG00000160691を有する遺伝子によってコードされる。ヒトSHC1は、GeneBank受入番号:NM_183001に対応するcDNA配列によってコードされる。ヒトSHC2は、Ensembl識別番号:ENSG00000129946を有する遺伝子によってコードされる。ヒトSHC2は、GeneBank受入番号:NM_012435に対応するcDNA配列によってコードされる。ヒトSHC3は、Ensembl識別番号:ENSG00000148082を有する遺伝子によってコードされる。ヒトSHC3は、GeneBank受入番号:NM_016848に対応するcDNA配列によってコードされる。
【0132】
SHP-2は、非受容体型プロテインチロシンホスファターゼ11(PTPN11)及びプロテインチロシンホスファターゼ1D(PTP-1D)とも呼ばれ得る。ヒトSHP-2は、Ensembl識別番号:ENSG00000179295を有する遺伝子によってコードされる。ヒトSHP-2は、GeneBank受入番号:NM_001330437に対応するcDNA配列によってコードされる。
【0133】
PI3Kは、ホスファチジルイノシトール-4,5-ビスホスフェート3-キナーゼとも呼ばれ得る。PI3Kの触媒サブユニットは、PIK3CAと呼ばれ得る。ヒトPIK3CAは、Ensembl識別番号:ENSG00000121879を有する遺伝子によってコードされる。ヒトPIK3CAは、GeneBank受入番号:NM_006218に対応するcDNA配列によってコードされる。
【0134】
本出願で使用する略語は以下のものが挙げられる:ECD(細胞外ドメイン)、ICD(細胞内ドメイン)、G-CSFR(顆粒球コロニー刺激因子受容体)、G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)、IL-2R(インターロイキン2受容体)、IL-12R(インターロイキン12受容体)、IL-21R(インターロイキン21受容体)、及びIL-7R(インターロイキン7受容体)。IL-2Rγは、本明細書では、IL-2RG、IL-2Rgc、γc、またはIL-2Rγcとも呼ばれ得る。選択されたキメラサイトカイン受容体デザインの場合:「G-CSFRwt-ICDIL-2Rb」は、本明細書では「G/IL-2Rb」とも呼ばれる;「G-CSFRwt-ICDgc」は、本明細書では「G/gc」とも呼ばれる;「G-CSFR137-ICDgp130-IL-2Rb」は、本明細書では「137ECDを有するG2R-2」とも呼ばれる;「G-CSFR137-ICDIL-2Rb+GCSFR137-ICDgc」は、本明細書では「137ECDを有するG2R-1」とも呼ばれる。IL-2Rγ(すなわち、IL-2RG、IL-2Rgc、γc、またはIL-2Rγc)。
【0135】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が別途明確に指示しない限り、複数の指示対象を含むことに留意しなければならない。
【0136】
値の範囲が提供される場合、文脈が別途明確に指示しない限り、下限値の単位の10分の1までの、その範囲の上限値から下限値の間の各介在値も具体的に開示されることを理解する。いずれかの記載値、または記載範囲内の介在値からいずれかの他の記載値またはその記載範囲内の介在値の間のそれぞれのより小さな範囲を本発明内に含む。これらのより小さい範囲の上限値及び下限値は、この範囲内に独立して含まれてもよいし、含まれなくてもよく、またこれらのより小さい範囲内に、これら限界値のいずれか一方を含む、いかなる限界値も含まない、またはこれらの限界値の両方を含む各範囲は、この記載範囲内のいずれかの具体的に除外された制限に従い、本発明内に含まれる。記載範囲が一方または両方の限界値を含む場合、それらの含まれる限定値のいずれかまたは両方を除外する範囲もまた、本発明に含まれる。
【0137】
バリアントサイトカイン及び受容体デザイン
本明細書に記載されるのは、バリアント受容体を選択的に活性化させるためのバリアントサイトカイン及び受容体ペアである。本開示のバリアント受容体は、G-CSFRの細胞外ドメインを含み;バリアントサイトカインは、バリアント受容体に結合して活性化させるG-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)を含む。特定の実施形態では、バリアント受容体は、G-CSFRのECDと、G-CSFRとは異なる受容体のICDの少なくとも一部と、を含むキメラ受容体である。
【0138】
バリアントG-CSF及びバリアントG-CSFR ECDペア
特定の態様では、本明細書に記載のバリアントG-CSF及び受容体デザインは、少なくとも1つのサイトII界面領域変異、少なくとも1つのサイトIII界面領域変異、及びそれらの組み合わせを含む。特定の態様では、本明細書に記載のバリアントG-CSF及び受容体デザインは、表2、4、または6に記載の少なくとも1つのサイトIIまたはサイトIII界面領域変異を含む。
【0139】
特定の態様では、サイトII界面領域のバリアント受容体上の少なくとも1つの変異は、G-CSFR細胞外ドメイン(配列番号2)のアミノ酸位置141、167、168、171、172、173、174、197、199、200、202、及び288からなる群より選択されるG-CSFR細胞外ドメインのアミノ酸位置に位置する。
【0140】
特定の態様では、バリアントG-CSFサイトII界面領域上の少なくとも1つの変異は、G-CSF(配列番号1)のアミノ酸位置12、16、19、20、104、108、109、112、115、116、118、119、122、及び123からなる群より選択されるG-CSFのアミノ酸位置に位置する。
【0141】
特定の態様では、バリアント受容体サイトII界面領域上の少なくとも1つの変異は、R141E、R167D、K168D、K168E、L171E、L172E、Y173K、Q174E、D197K、D197R、M199D、D200K、D200R、V202D、R288D、及びR288EからなるG-CSFR細胞外ドメイン変異群から選択される。
【0142】
特定の態様では、バリアントG-CSFサイトII界面領域上の少なくとも1つの変異は、K16D、R、S12E、S12K、S12R、K16D、L18F、E19K、E19R、Q20E、D104K、D104R、L108K、L108R、D109R、D112R、D112K、T115E、T115K、T116D、Q119E、Q119R、E122K、E122R、及びE123RからなるG-CSF変異群から選択される。
【0143】
特定の態様では、バリアントサイトIII界面領域上の少なくとも1つの変異は、配列番号2のアミノ酸位置30、41、73、75、79、86、87、88、89、91、及び93からなる群より選択されるG-CSFR細胞外ドメイン変異群から選択される。
【0144】
特定の態様では、サイトIII界面領域上の少なくとも1つの変異は、配列番号1のアミノ酸位置38、39、40、41、46、47、48、49、及び147からなる群より選択されるG-CSF変異群から選択される。
【0145】
特定の態様では、サイトIII界面領域上の少なくとも1つの変異が、S30D、R41E、Q73W、F75K、S79D、L86D、Q87D、I88E、L89A、Q91D、Q91K、及びE93KからなるG-CSFR細胞外ドメイン変異群から選択される。
【0146】
特定の態様では、バリアントG-CSFサイトIII界面領域上の少なくとも1つの変異は、T38R、Y39E、K40D、K40F、L41D、L41E、L41K、E46R、L47D、V48K、V48R、L49K、及びR147EからなるG-CSF変異群から選択される。
【0147】
本明細書に記載のバリアントサイトカイン及び受容体ペアは、サイトII領域のみ、サイトIII領域のみ、またはサイトII及びサイトIII領域の両方において変異を含み得る。
【0148】
本明細書に記載のバリアントサイトカイン及び受容体ペアは、任意の数の本明細書に記載のサイトII及び/またはサイトIII変異を有することができる。特定の態様では、バリアントG-CSF及び受容体は、表6に記載の変異を有する。特定の態様では、バリアント受容体及び/またはバリアントG-CSFは、本明細書に記載の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上の変異を有し得る。
【0149】
特定の態様では、本明細書に記載のバリアント受容体は、本明細書に記載の配列番号のG-CSFR ECDに対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%のアミノ酸同一性を共有するG-CSFR ECDドメインを含む。特定の態様では、キメラ受容体は、配列番号2、3、6、または8のアミノ酸配列を有するG-CSFRのECDを含む。
【0150】
特定の態様では、本明細書に記載のバリアントG-CSFは、配列番号1のG-CSFR ECDに対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%のアミノ酸同一性を共有するアミノ酸配列を含む。
【0151】
特定の態様では、G-CSFRのECDは、R41E、R141E、及びR167Dからなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。
【0152】
バリアントサイトカイン及び/または受容体は、直接のみならず、異種ポリペプチドとの融合ポリペプチドとしても組換えにより産生され得、この異種ポリペプチドは、例えば、成熟タンパク質またはポリペプチドのN末端に特異的切断部位を有するシグナル配列または他のポリペプチドである。一般に、シグナル配列は、ベクターの構成要素であっても、ベクターに挿入されるコード配列の一部であってもよい。選択された異種シグナル配列は、好ましくは、宿主細胞によって認識及びプロセシングされる(すなわち、シグナルペプチダーゼによって切断される)ものである。哺乳動物細胞の発現においては、天然型シグナル配列を用いてもよいし、他の哺乳動物のシグナル配列、例えば、同一または近縁種の分泌ポリペプチドからのシグナル配列、及びウイルス分泌リーダーが好適となり得る。特定の実施形態では、シグナル配列は、G-CSFRまたはGM-CSFRのシグナル配列である。特定の実施形態では、シグナル配列は、配列番号11または配列番号12である。
【0153】
特定の態様では、バリアント受容体及び/またはバリアントG-CSFは、安定性を高めるために、天然または合成のいずれかで改変される(例えば、糖基、PEG)。例えば、特定の実施形態では、バリアントサイトカインは、IgG、アルブミン、または他の分子のFcドメインに融合され、例えば、当技術分野で知られているようにPEG化、グリコシル化などによって、半減期を延長させる。Fc融合はまた、インビボで代替的なFc受容体媒介特性を促進することができる。「Fc領域」は、IgGをパパインで消化することによって生成されるIgG C末端ドメインに相同な天然に存在するまたは合成ポリペプチドであり得る。IgG Fcは、約50kDaの分子量を有する。バリアントサイトカインは、Fc領域全体を含んでもよく、またはその一部であるキメラポリペプチドの循環半減期を延長する能力を保持する、より小さい部分を含んでもよい。さらに、完全長または断片化されたFc領域は、野生型分子のバリアントとすることができる。
【0154】
バリアントサイトカインがバリアント受容体に結合すると、バリアント受容体は、天然型の細胞内構成要素を通じて伝達されるシグナル伝達を活性化して、その天然型の応答を模倣する生物学的活性を提供するが、それはバリアント受容体を発現するように操作された細胞に対して特異的である。特定の態様では、バリアント受容体及びG-CSFペアは、それらの天然型野生型G-CSFまたは天然型野生型G-CSFRと結合しない。したがって、特定の実施形態では、バリアント受容体は、バリアントサイトカインの天然型対応物を含む、内因性対応サイトカインに結合しない一方で、該バリアントサイトカインは、バリアント受容体の天然型対応物を含むいかなる内因性受容体に結合しない。特定の実施形態では、バリアントサイトカインは、天然型サイトカインの、天然型サイトカイン受容体への結合と比較して、著しく低下した親和性で天然型受容体に結合する。特定の実施形態では、天然型受容体に対するバリアントサイトカインの親和性は、天然型サイトカイン受容体に対する天然型サイトカインの親和性の10倍未満、100倍未満、1,000倍未満、または10,000倍未満である。特定の実施形態では、バリアントサイトカインは、1X10-4Mより大きい、1X10-5Mより大きい、1X10-6Mより大きい;1X10-7Mより大きい、1X10-8Mより大きい、または1X10-9Mより大きいKDで天然型受容体に結合する。特定の実施形態では、バリアントサイトカイン受容体は、天然型サイトカインに対する天然型サイトカイン受容体の結合と比較して著しく低下した親和性で天然型サイトカインに結合する。特定の実施形態では、バリアントサイトカイン受容体は、天然型サイトカインを、天然型サイトカイン受容体に対する天然型サイトカインの10倍未満、100倍未満、1,000倍未満、または10,000倍未満で結合する。特定の実施形態では、バリアントサイトカイン受容体は、1X10-4Mより大きい、1X10-5Mより大きい、1X10-6Mより大きい、または1X10-7Mより大きい、1X10-8Mより大きい、または1X10-9Mより大きいKDで天然型サイトカインに結合する。いくつかの実施形態では、バリアント受容体に対するバリアントサイトカインの親和性は、天然型受容体に対する天然型サイトカインの親和性に匹敵し、例えば、天然型サイトカイン受容体ペアの親和性の少なくとも約1%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約100%である親和性を有し、それより高くてもよく、例えば、天然型受容体に対する天然型サイトカインの親和性の2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、またはそれ以上であり得る。親和性は、当業者によく知られている任意の数のアッセイによって決定することができる。例えば、親和性は、様々な濃度の非標識リガンドの存在下で、単一濃度の標識リガンドを用いて受容体の結合を測定する競合結合実験により決定することができる。典型的には、非標識リガンドの濃度は、少なくとも6桁にわたって変化する。競合結合実験により、IC50を決定することができる。本明細書で使用される場合、「IC50」は、受容体と標識リガンドとの間の会合の50%阻害に必要とされる非標識リガンドの濃度を指す。IC50は、リガンド-受容体結合親和性の指標である。低IC50は高親和性を表す一方、高IC50は低親和性を表す。
【0155】
細胞の表面上で発現するバリアントサイトカイン受容体へのバリアントサイトカインの結合は、バリアントサイトカイン受容体の機能に(天然型サイトカイン受容体活性と比較して)影響してもしなくてもよく;天然型の活性は、すべての場合において必要でも望まれるものでもない。特定の実施形態では、バリアントサイトカインのバリアントサイトカイン受容体への結合は、天然型サイトカインシグナル伝達の1つ以上の特徴を誘発することになる。特定の実施形態では、細胞の表面上で発現するバリアントサイトカイン受容体へのバリアントサイトカインの結合は、増殖、生存、及び増強した活性からなる群より選択される細胞応答を引き起こす。
【0156】
(表1)ヒトWT G-CSF及びヒトWT G-CSFRIg-CRHドメインの配列
【0157】
(表2)G-CSF
E及びG-CSFR
Eの変異を有するサイトIIデザイン
【0158】
【0159】
(表6)サイトII及びIIIデザインの組み合わせから得られるデザインの例
【0160】
キメラ受容体
特定の態様では、本明細書に記載されるバリアント受容体は、キメラ受容体である。キメラ受容体は、本明細書に記載のバリアントG-CSFR ECDドメインのいずれかを含むことができる。特定の態様では、キメラ受容体は、異なるサイトカイン受容体の細胞内ドメイン(ICD)の少なくとも一部をさらに含む。異なるサイトカイン受容体の細胞内ドメインは、gp130(糖タンパク質130)、IL-2RβまたはIL-2Rb(インターロイキン-2受容体β)、IL-2RγまたはγcまたはIL-2RG(インターロイキン-2受容体γ)、IL-7Rα(インターロイキン-7受容体α)、IL-12Rβ2(インターロイキン-12受容体β2)、及びIL-21R(インターロイキン-21受容体)からなる群より選択することができる。特定の態様では、細胞内ドメインの少なくとも一部は、本明細書に記載のサイトカイン受容体ICDのアミノ酸配列に対して、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%のアミノ酸同一性を共有するアミノ酸配列を含む。特定の態様では、サイトカイン受容体ICDの少なくとも一部は、配列番号4、7、または9に対して、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を共有する。
【0161】
特定の実施形態では、本明細書に記載されるのは、第2のドメインに作動可能に連結されるG-CSFR(顆粒球コロニー刺激因子受容体)の細胞外ドメイン(ECD)を含むキメラサイトカイン受容体であり;該第2のドメインは、マルチサブユニットサイトカイン受容体、例えば、IL-2Rの細胞内ドメイン(ICD)の少なくとも一部を含む。特定の態様では、キメラサイトカイン受容体は、表15A及び表15BのICDの一部を含む。特定の態様では、キメラサイトカイン受容体は、表15A及び表15Bから選択される膜貫通ドメインを含む。特定の態様では、キメラサイトカイン受容体ICDは、表15A、表15B、及び表16のBox1及びBox2領域を含む。特定の態様では、キメラサイトカイン受容体は、表15A、表15B、及び表16の少なくとも1つのシグナル伝達分子結合部位を含む。
【0162】
特定の態様では、本明細書に記載のキメラ受容体は、表17~20のそれぞれに開示される配列のN末端からC末端の順序のアミノ酸配列を含む。特定の態様では、本明細書に記載のキメラ受容体は、表17~20のそれぞれに開示される配列の5’から3’の順序の核酸配列を含む。特定の態様では、キメラサイトカイン受容体は、表17~20のそれぞれに開示されるアミノ酸配列のN末端からC末端の順序のアミノ酸配列に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%のアミノ酸同一性を共有する。特定の態様では、キメラサイトカイン受容体は、表17~20のそれぞれに開示される核酸配列の5’~3’順序の核酸配列に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の核酸同一性を共有する。
【0163】
特定の態様では、本明細書に記載のキメラ受容体は、本明細書に記載のICD配列番号に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%のアミノ酸または核酸配列同一性を共有するサイトカイン受容体のICDの少なくとも一部を含む。特定の態様では、キメラ受容体は、配列番号26、29、31、39、41、43、45、47、または49のアミノ酸配列を有するIL-2RβのICDの少なくとも一部を含む。特定の態様では、キメラ受容体は、配列番号54、57、59、67、69、71、73、75、または77の核酸配列を有するIL-2Rβ、すなわちIL-2RbのICDの少なくとも一部を含む。特定の態様では、キメラ受容体は、配列番号51のアミノ酸配列または配列番号79の核酸配列を有するIL-7RαのICDの少なくとも一部を含む。特定の態様では、キメラ受容体は、配列番号53のアミノ酸配列または配列番号81の核酸配列を有するIL-7RのICDの少なくとも一部を含む。特定の態様では、キメラ受容体は、配列番号45または55のアミノ酸配列を有するIL-21RのICDの少なくとも一部を含む。特定の態様では、キメラ受容体は、配列番号35または37の核酸配列を有するIL-21RのICDの少なくとも一部を含む。特定の態様では、キメラ受容体は、配列番号33、42、または46のアミノ酸配列を有するIL-12Rβ2のICDの少なくとも一部を含む。特定の態様では、キメラ受容体は、配列番号61、70、または74の核酸配列を有するIL-12Rβ2のICDの少なくとも一部を含む。特定の態様では、キメラ受容体は、配列番号30、32、34、36、38、40、44、50、または52のアミノ酸配列を有するG-CSFRのICDの少なくとも一部を含む。特定の態様では、キメラ受容体は、配列番号58、60、62、64、66、68、72、78、または80の核酸配列を有するG-CSFRのICDの少なくとも一部を含む。特定の態様では、キメラ受容体は、配列番号28または48のアミノ酸配列を有するgp130のICDの少なくとも一部を含む。特定の態様では、キメラ受容体は、配列番号56または76の核酸配列を有するgp130のICDの少なくとも一部を含む。特定の態様では、キメラ受容体は、配列番号27のアミノ酸配列を有するIL-2Rγ(すなわち、IL-2RG、IL-2Rgc、γc、またはIL-2Rγc)のICDの少なくとも一部を含む。特定の態様では、キメラ受容体は、配列番号55の核酸配列を有するIL-2Rγ(すなわち、IL-2RG、IL-2Rgc、γc、またはIL-2Rγc)のICDの少なくとも一部を含む。
【0164】
特定の態様では、本明細書に記載のICDの少なくとも一部は、少なくとも1つのシグナル伝達分子結合部位を含む。特定の態様では、少なくとも1つのシグナル伝達分子結合部位は、G-CSFRのSTAT3結合部位;gp130のSTAT3結合部位;gp130のSHP-2結合部位;IL-2RβのShc結合部位;IL-2RβのSTAT5結合部位;IL-2RβのSTAT3結合部位;IL-2RβのSTAT1結合部位;IL-7RαのSTAT5結合部位;IL-7Rαのホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)結合部位;IL-12Rβ2のSTAT5結合部位;IL-12Rβ2のSTAT4結合部位;IL-12Rβ2のSTAT3結合部位;IL-21RのSTAT5結合部位;IL-21RのSTAT3結合部位;及びIL-21RのSTAT1結合部位である。特定の態様では、少なくとも1つのシグナル伝達分子結合部位は、表16に記載のアミノ酸をさらに含む配列を含む。
【0165】
特定の態様では、本明細書に記載のICDの少なくとも一部は、gp130またはG-CSFRのBox1及びBox領域を含む。特定の態様では、Box1領域は、表2に記載のアミノ酸の配列を含む。特定の態様では、Box1領域は、表16に記載のBox1配列に対して50%を超える同一性のアミノ酸配列を含む。
【0166】
特定の態様では、異なるサイトカイン受容体の細胞内ドメインは、野生型細胞内ドメインである。
【0167】
特定の態様では、本明細書に記載のキメラバリアント受容体は、異なるサイトカイン受容体の膜貫通ドメイン(TMD)の少なくとも一部をさらに含む。異なるサイトカイン受容体のTMDは、gp130(糖タンパク質130)、IL-2Rβ(インターロイキン-2受容体β)、IL-2Rγまたはγc(IL-2受容体γ)、IL-7Rα(インターロイキン-7受容体α)、IL-12Rβ2(インターロイキン-12受容体β2)、及びIL-21R(インターロイキン-21受容体)からなる群より選択することができる。特定の態様では、TMDの少なくとも一部は、本明細書に記載のサイトカイン受容体TMDのアミノ酸配列に対して、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%のアミノ酸同一性を共有するアミノ酸配列を含む。特定の態様では、サイトカイン受容体TMDの少なくとも一部は、配列番号4、5、7、または9に対して、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を共有する。
【0168】
特定の態様では、本明細書に記載のキメラ受容体は、
図20、23、及び24のキメラ受容体デザインに示すように、N末端からC末端の順で配置されたG-CSFR ECDドメイン、膜貫通ドメイン(TMD)、及びICDの少なくとも一部を含む。
【0169】
特定の態様では、キメラ受容体は、配列番号3のG-CSFR ECD、配列番号4のgp130 TMD及びICDの一部、ならびに配列番号5のIL-2Rβ ICDの一部を含む。特定の態様では、キメラ受容体は、配列番号6のG-CSFR ECD、及び配列番号7のIL-2Rβ ICDの一部を含む。特定の態様では、キメラ受容体は、配列番号8のG-CSFR ECD、及び配列番号9のIL-2Rγ ICDの一部を含む。
【0170】
細胞の表面上で発現するキメラサイトカイン受容体へのバリアントまたは野生型サイトカインの結合は、バリアントサイトカイン受容体の機能に(天然型サイトカイン受容体活性と比較して)影響してもしなくてもよく;天然型の活性は、すべての場合において必要でも望まれるものでもない。特定の実施形態では、バリアントサイトカインのキメラサイトカイン受容体への結合は、天然型サイトカインシグナル伝達の1つ以上の特徴を誘発することになる。特定の実施形態では、細胞の表面上で発現するキメラサイトカイン受容体へのバリアントサイトカインの結合は、増殖、生存、及び増強した活性からなる群より選択される細胞応答を引き起こす。
【0171】
バリアントサイトカイン及び受容体をコードする核酸
本開示に含まれるのは、本明細書に記載の受容体及びバリアントG-CSFのいずれか1つをコードする核酸である。
【0172】
バリアント受容体またはバリアントG-CSFは、組み換えにより直接生成されるだけでなく、異種ポリペプチド、例えば、シグナル配列、または成熟タンパク質もしくはポリペプチドのN末端に特定の切断部位を有する他のポリペプチドとの融合ポリペプチドとしても生成されてもよい。一般に、シグナル配列は、ベクターの構成要素であっても、ベクターに挿入されるコード配列の一部であってもよい。選択された異種シグナル配列は、好ましくは、宿主細胞によって認識及びプロセシングされる(すなわち、シグナルペプチダーゼによって切断される)ものである。哺乳動物細胞の発現では、天然シグナル配列が使用されても、他の哺乳動物のシグナル配列、例えば、同じ種または関連種の分泌ポリペプチド由来のシグナル配列、及びウイルス分泌リーダーが適していてもよい。特定の態様では、シグナル配列は、配列番号2、3、6、または8のN末端領域にシグナル配列を含むアミノ酸配列であり得る。特定の態様では、シグナル配列は、MARLGNCSLTWAALIILLLPGSLE(配列番号11)のアミノ酸配列であり得る。
【0173】
バリアントサイトカインまたは受容体をコードする発現ベクター
本明細書に記載のバリアント受容体またはバリアントG-CSFの1つ以上をコードする1つ以上の核酸配列(複数可)を含む、発現ベクター及び発現ベクターのキットもまた本明細書に記載される。
【0174】
特定の実施形態では、バリアント受容体またはバリアントG-CSFをコードする核酸は、発現のため複製可能なベクターに挿入される。このようなベクターは、本明細書に記載のバリアント受容体またはサイトカインを発現するように、核酸配列(複数可)を宿主細胞に導入するために使用され得る。多くのそのようなベクターが利用可能である。ベクターの構成要素は、一般に、複製起点、1つ以上のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列のうちの1つ以上を含むが、これらに限定されない。ベクターは、ウイルスベクター、プラスミドベクター、組み込みベクターなどを含む。ベクターは、例えば、プラスミドまたはウイルスベクター、例えばレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、またはトランスポゾンベースのベクターまたは合成mRNAであり得る。ベクターは、細胞(例えば、T細胞、NK細胞、または他の細胞)にトランスフェクトまたは形質導入することができ得る。
【0175】
発現ベクターは、通常、選択可能なマーカーとも呼ばれる選択遺伝子を含有する。選択可能なマーカー遺伝子は、選択的培養培地で増殖する形質転換された宿主細胞の生存または増殖に必要なタンパク質をコードする。選択遺伝子を含有するベクターで形質転換されなかった宿主細胞は、培養培地で生存しない。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生物質もしくは他の毒素、例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセート、もしくはテトラサイクリンに対する耐性を付与するか、(b)栄養要求性欠損を補うか、または(c)複合培地から入手不可能な重要な栄養素を供給する、タンパク質をコードする。
【0176】
特定の態様では、発現ベクターは、宿主生物により認識され、バリアントタンパク質コード配列に作動可能に連結されるプロモーターを含有する。プロモーターは、それらが作動可能に連結される特定の核酸配列の転写及び翻訳を制御する構造遺伝子の開始コドンの上流(5’)に位置する非翻訳配列(一般に約100~1000bp以内)である。そのようなプロモーターは、典型的には、2つのクラス、誘導プロモーター及び構成プロモーターに分けられる。誘導プロモーターは、培養条件の何らかの変化、例えば、栄養素の有無または温度の変化に応じてそれらの制御下で、DNAから、増加したレベルの転写を開始するプロモーターである。様々な潜在的な宿主細胞により認識される多数のプロモーターが周知である。
【0177】
哺乳動物宿主細胞におけるベクターからの転写は、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス2)、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス(例えば、マウス幹細胞ウイルス)、B型肝炎ウイルス、最も好ましくは、シミアンウイルス40(SV40)などのウイルスのゲノムから、異種哺乳動物プロモーター、例えば、アクチンプロモーター、PGK(ホスホグリセリン酸キナーゼ)、または免疫グロブリンプロモーターから、熱ショックプロモーターから得られるプロモーターにより制御され得る。ただし、そのようなプロモーターが宿主細胞系と適合することを条件とする。SV40ウイルスの初期及び後期プロモーターは、SV40ウイルスの複製起点も含有するSV40制限フラグメントとして都合よく得られる。
【0178】
高等真核生物による転写は、多くの場合、エンハンサー配列をベクターに挿入することにより増加する。エンハンサーはDNAのシス作用エレメントであり、通常約10~300bpであり、プロモーターに作用してその転写を促進する。エンハンサーは、相対的に配向及び位置に依存せず、転写ユニットの5’側及び3’側、イントロン内、ならびにコード配列それ自体内のうちに見出される。哺乳動物遺伝子(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、フェトプロテイン、及びインスリン)由来の多くのエンハンサー配列が知られている。しかしながら、典型的には、真核細胞ウイルス由来のエンハンサーが使用される。例としては、複製起点の後期側のSV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー、及びアデノウイルスエンハンサーが挙げられる。エンハンサーは、コード配列の5’または3’位で発現ベクターにスプライシングされてもよいが、好ましくは、プロモーター由来の5’部位に位置する。
【0179】
真核生物宿主細胞に使用される発現ベクターは、転写の終結及びmRNAの安定化に必要な配列も含有する。そのような配列は、一般に、真核生物またはウイルスのDNAまたはcDNAの、5’側、場合により3’側の非翻訳領域から得ることができる。上記の構成要素の1つ以上を含有する好適なベクターの構築は、標準的な技術を用いる。
【0180】
特定の態様では、本明細書に開示されるのは、本明細書に開示されるキメラ受容体をコードするレンチウイルスベクターである。特定の態様では、レンチウイルスベクターは、HIV-1 5’LT及び3’LTRを含む。特定の態様では、レンチウイルスベクターは、EF1aプロモーターを含む。特定の態様では、レンチウイルスベクターは、SV40ポリターミネーター配列を含む。特定の態様では、ベクターは psPAX2、Addgene(登録商標)12260、pCMV-VSV-G、またはAddgene(登録商標)8454である。
【0181】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の配列に対して高い配列同一性、例えば、95、96、97、98、99%以上の配列同一性を有する核酸及びポリペプチド配列も記載される。パーセント配列「同一性」という用語は、2つ以上の核酸またはポリペプチド配列の文脈において、以下に記載する配列比較アルゴリズム(例えば、BLASTP及びBLASTNまたは当業者が利用できる他のアルゴリズム)の1つを使用して、または目視検査により測定された、最大対応性について比較及びアラインメントされるときに、同一である特定の割合のヌクレオチドまたはアミノ酸残基を有する、2つ以上の配列または部分配列を指す。用途に応じて、パーセント「同一性」は、比較される配列の領域上にわたり、例えば、機能ドメイン上にわたり、あるいは、比較される2つの配列の全長上にわたり存在することができる。
【0182】
配列比較のため、典型的には、1つの配列が基準配列の役割を果たし、これと試験配列が比較される。配列比較アルゴリズムが用いられる場合、試験及び基準配列がコンピュータに入力され、必要であれば、部分配列座標が指定され、配列アルゴリズムプログラムパラメータが指定される。配列比較アルゴリズムは次いで、指定されたプログラムパラメータに基づいて、基準配列に対する試験配列(複数可)のパーセント配列同一性を算出する。
【0183】
比較のための配列の最適なアラインメントは、例えば、Smith&Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所的相同性アルゴリムにより、Needleman&Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)の相同性アラインメントアルゴリズムにより、Pearson&Lipman,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA85:2444(1988)の類似性探求方法により、これらのアルゴリズムのコンピュータ化実装により(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,Wis.におけるGAP,BESTFIT,FASTA,及びTFASTA)、または目視検査(一般的には、Ausubel et al.、以下を参照)により実施され得る。
【0184】
パーセント配列同一性及び配列類似性を決定するのに適したアルゴリズムの1つの例は、BLASTアルゴリズムであり、Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403-410(1990)に記載される。BLAST分析を実行するためのソフトウェアは、アメリカ国立生物工学情報センター(www.ncbi.nlm.nih.gov/)を介して公的に利用可能である。
【0185】
バリアント受容体及びバリアントサイトカインを発現する細胞
本明細書には、バリアント受容体を発現する細胞も記載されている。操作された免疫細胞を含む宿主細胞に、バリアントサイトカインまたは受容体発現のための上記の発現ベクターをトランスフェクトまたは形質導入することができる。
【0186】
特定の実施形態では、本開示は、本明細書に記載のバリアント受容体またはバリアントサイトカインのうちの1つ以上を含む細胞を提供する。細胞は、本明細書に記載のバリアント受容体またはバリアントサイトカインをコードする核酸またはベクターを含み得る。本開示はまた、バリアント受容体を発現する細胞を作製する方法を提供する。特定の態様では、細胞は、本明細書に記載の核酸または発現ベクターを細胞に導入することによって作製される。核酸または発現ベクターは、トランスフェクション、ウイルスベクターの形質導入、転移または遺伝子編集を含むがこれらに限定されない任意のプロセスによって細胞に導入することができる。当技術分野で知られている任意の遺伝子編集技術を使用することができ、クラスター化等間隔短鎖回分リピート(CRISPR-Cas)システム、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、転写活性化因子様エフェクターベースヌクレアーゼ、及びメガヌクレアーゼからなる技術を含むがこれに限定されない。
【0187】
宿主細胞は、体内の任意の細胞であり得る。特定の実施形態では、細胞は免疫細胞である。いくつかの実施形態では、細胞はT細胞であり、ナイーブCD8+T細胞、細胞傷害性CD8+T細胞、ナイーブCD4+T細胞、ヘルパーT細胞、例えば、TH1、TH2、TH9、TH11、TH22、TFH;制御性T細胞、例えば、TR1、天然TReg、誘導性TReg;メモリーT細胞、例えば、セントラルメモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、NKT細胞、γδT細胞などを含むが、これらに限定されない。特定の実施形態では、細胞はB細胞であり、ナイーブB細胞、胚中心B細胞、メモリーB細胞、細胞傷害性B細胞、サイトカイン産生B細胞、制御性B細胞(Breg)、中心芽細胞、中心細胞、抗体分泌細胞、形質細胞などを含むが、これらに限定されない。特定の実施形態では、細胞は自然リンパ系細胞であり、NK細胞などを含むが、これらに限定されない。特定の実施形態では、細胞は骨髄系細胞であり、マクロファージ、樹状細胞、骨髄由来抑制細胞などを含むが、これらに限定されない。
【0188】
特定の実施形態では、細胞は幹細胞であり、造血幹細胞、間葉系幹細胞、神経幹細胞などを含むが、これらに限定されない。
【0189】
いくつかの実施形態では、細胞は、対象に移植される前に、エクスビボ手順で遺伝的に改変される。細胞は、治療のために単位用量で提供され得、意図されたレシピエントに関して同種他家由来、自己由来などであることができる。
【0190】
T細胞またはTリンパ球は、細胞媒介性免疫において中心的な役割を果たすリンパ球の一種である。それらは、細胞表面上のT細胞受容体(TCR)の存在によって、B細胞及びナチュラルキラー細胞(NK細胞)のような他のリンパ球と区別されることができる。以下にまとめるように、T細胞には様々な種類がある。
【0191】
ヘルパーTヘルパー細胞(Th細胞)は、形質細胞及びメモリーB細胞へのB細胞の成熟、ならびに細胞傷害性T細胞及びマクロファージの活性化を含む、免疫学的プロセスにおいて他の白血球を補助している。Th細胞は、その表面にCD4を発現する。Th細胞は、抗原提示細胞(APC)の表面上にあるMHCクラスII分子によってペプチド抗原を提示されると、活性化状態になる。これらの細胞は、Th1、Th2、Th3、Th17、Th9、またはTfhを含むいくつかのサブタイプ(これらは、異なるタイプの免疫応答を促進するために異なるサイトカインを分泌する)のうちの1つへと分化し得る。
【0192】
細胞傷害性T細胞(TC細胞またはCTL)は、ウイルス感染細胞及び腫瘍細胞を破壊し、移植拒絶反応にも関与する。ほとんどのCTLは、その表面にCD8を発現する。これらの細胞は、MHCクラスI(すべての有核細胞の表面に存在する)に会合される抗原への結合により標的を認識する。
【0193】
メモリーT細胞は抗原特異的T細胞のサブセットであり、感染が回復した後であっても長期的に存続する。メモリーT細胞は、その同種抗原へ再暴露されると、ただちに多数のエフェクターT細胞へと拡張し、免疫系に、過去の感染に対する「メモリー」を提供する。メモリーT細胞は、セントラルメモリーT細胞(TCM細胞)と2種類のエフェクターメモリーT細胞(TEM細胞及びTEMRA細胞)の、3つのサブタイプを含む。メモリー細胞は、CD4+またはCD8+のいずれかであり得る。典型的に、メモリーT細胞は、細胞表面タンパク質CD45ROを発現する。
【0194】
制御性T細胞(Treg細胞)は、以前はサプレッサーT細胞として知られており、免疫寛容の維持に不可欠である。それらの主な役割は、T細胞媒介性免疫を免疫応答の終わりに向けてシャットダウンし、胸腺における負の選択のプロセスを逃れた自己反応性T細胞を抑制することである。CD4+Treg細胞には、内在性Treg細胞と適応性Treg細胞の2つの主要分類が記載されている。
【0195】
内在性Treg細胞(CD4+CD25+FoxP3+Treg細胞としても公知である)は胸腺で生じ、TSLPによって活性化された骨髄性(CD11c+)及び形質細胞様(CD123+)樹状細胞の両方と発達中のT細胞との間の相互反応に関連している。Treg細胞は、FoxP3と呼ばれる細胞内分子の存在により他のT細胞と区別することができる。
【0196】
適応性Treg細胞(Tr1細胞またはTh3細胞としても公知である)は、正常な免疫応答中に発生し得る。細胞は、ナチュラルキラー細胞(またはNK細胞)であり得る。NK細胞は、自然免疫系の一部を形成する。NK細胞は、MHC非依存的にウイルス感染細胞からの自然免疫シグナルに対して、迅速な応答を提供する。
【0197】
特定の態様では、本明細書に記載のバリアント受容体またはバリアントサイトカインを発現する細胞は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)または腫瘍関連リンパ球(TAL)である。特定の態様では、TILまたはTALは、CD4+T細胞、CD8+T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、及びそれらの組み合わせを含む。
【0198】
特定の実施形態では、本明細書に記載されるT細胞は、免疫療法で使用するための人工T細胞受容体を産生するように遺伝子操作されたキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)である。特定の態様では、CAR-T細胞は、患者自身の血液中のT細胞に由来する(すなわち、自己由来)。特定の態様では、CAR-Tは、別の健康なドナーのT細胞に由来する(すなわち、同種他家由来)。
【0199】
特定の実施形態では、本明細書に記載のT細胞は、免疫療法で使用するための特定のT細胞受容体を産生するように遺伝子操作された操作されたT細胞受容体(eTCR-T細胞)である。特定の態様では、eTCR-T細胞は、患者自身の血液中のT細胞に由来する(すなわち、自己由来)。特定の態様では、eTCR-T細胞は、ドナーのT細胞に由来する(すなわち、同種他家由来)。
【0200】
NK細胞(自然リンパ球の群に属する)は、大顆粒リンパ球(LGL)として定義され、Bリンパ球及びTリンパ球を生成する共通のリンパ性前駆細胞から分化した第3の種類の細胞を構成する。NK細胞は、骨髄、リンパ節、脾臓、扁桃腺、及び胸腺で分化及び成熟し、次いでそこから循環系に入ることが知られている。
【0201】
特定の態様では、本明細書に記載されるキメラサイトカイン受容体を発現する細胞は、B細胞である。B細胞には、ナイーブB細胞、胚中心B細胞、メモリーB細胞、細胞傷害性B細胞、サイトカイン産生B細胞、制御性B細胞(Breg)、中心芽細胞、中心細胞、抗体分泌細胞、形質細胞が含まれるが、これらに限定されない。
【0202】
特定の態様では、本明細書に記載のキメラサイトカイン受容体を発現する細胞は、マクロファージ、樹状細胞、骨髄由来サプレッサー細胞などを含むがこれらに限定されない骨髄細胞である。
【0203】
本明細書に記載のバリアント受容体またはバリアントサイトカインを発現する細胞は、任意の細胞型であり得る。特定の態様では、本明細書に記載されるバリアント受容体またはバリアントサイトカインを発現する細胞は、造血系の細胞である。本発明による免疫細胞(例えば、T細胞またはNK細胞)は、患者自身の末梢血(ファーストパーティー)からか、ドナー末梢血からの造血幹細胞移植の設定(セカンドパーティー)においてか、または非血縁者のドナー由来の末梢血(サードパーティー)から、エクスビボで作製され得る。あるいは、本明細書に記載の免疫細胞は、誘導性前駆細胞または胚性前駆細胞の、免疫細胞へのエクスビボでの分化に由来し得る。あるいは、エフェクター機能を保持し、治療薬として作用することができる、不死化免疫細胞株を使用することができる(例えば、溶解機能を保持するT細胞またはNK細胞株、抗体産生機能を保持する形質細胞株、または食作用及び抗原提示機能を保持する樹状細胞株もしくはマクロファージなど)。これらすべての実施形態では、バリアント受容体発現細胞は、ウイルスベクターによる形質導入またはDNAもしくはRNAによるトランスフェクションを含む、多くの手段のうちの1つによって、各バリアント受容体(複数可)をコードするDNAまたはRNAを導入することによって生成される。
【0204】
本明細書に記載の細胞は、バリアント受容体及び/またはバリアントサイトカインを発現するようにエクスビボで操作された対象に由来する免疫細胞であり得る。免疫細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)試料または腫瘍試料由来であり得る。免疫細胞は、本発明の第1の態様によるバリアント受容体またはバリアントサイトカインを提供する分子をコードする核酸で形質導入される前に、例えば抗CD3モノクローナル抗体及び/またはIL-2での処理によって、活性化及び/または拡大増殖し得る。本発明の免疫細胞は、(i)対象または上記の他の供給源から細胞を含む試料を単離することと、(ii)バリアント受容体またはバリアントサイトカインをコードする1つ以上の核酸配列(複数可)を用いて免疫細胞の形質導入またはトランスフェクションすることと、によって作製され得る。
【0205】
細胞は、プロモーターの誘導、形質転換体の選択、または所望の配列をコードする遺伝子の増幅のために必要に応じて改変される従来の栄養培地において培養することができる。哺乳動物の宿主細胞は、さまざまな培地で培養することができる。Ham’s F10(Sigma)、最小必須培地((MEM),Sigma)、RPMI 1640(Sigma)、及びダルベッコ修飾イーグル培地((DMEM),Sigma)などの市販の培地は、宿主細胞の培養に好適である。これらの培地のいずれにも、必要に応じて、ホルモン及び/または他の増殖因子(インスリン、トランスフェリン、または上皮増殖因子など)、塩(塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、及びリン酸塩など)、緩衝液(HEPESなど)、ヌクレオシド(アデノシン及びチミジンなど)、抗生物質、微量要素、及びグルコースまたは同等のエネルギー源が補充され得る。任意の他の必要な補充物もまた、当業者には既知であろう適切な濃度で含まれ得る。温度、pHなどの培養条件は、発現のために選択された宿主細胞にこれまでに使用されているものであり、当業者には明らかであろう。
【0206】
次に、免疫細胞は、精製、例えば、抗原結合ポリペプチドの抗原結合ドメインの発現に基づいて選択することができる。特定の実施形態では、細胞は、選択可能なマーカー(例えば、タンパク質、蛍光マーカー、またはエピトープタグ)の発現によって、または細胞の選択、単離、及び/または精製のための当技術分野で知られている任意の方法によって選択される。
【0207】
キット
本開示は、本明細書に記載のバリアント受容体またはバリアントG-CSFのいずれかの少なくとも1つを発現する細胞を作製するためのキットも記載する。特定の実施形態では、キットは、少なくとも1つのバリアント受容体をコードする少なくとも1つの発現ベクターと、使用説明書とを含む。特定の態様では、キットは、医薬製剤中の少なくとも1つのバリアントサイトカイン、または本明細書に記載のバリアント受容体の少なくとも1つと結合するバリアントG-CSFをコードする発現ベクターをさらに含む。特定の実施形態では、キットは、本明細書に記載されるバリアント受容体をコードする発現ベクターを含む細胞を含む。
【0208】
特定の実施形態では、キットは、キメラ抗原受容体(CAR)/T細胞受容体(TCR)など、(CAR)/操作されたT細胞受容体(eTCR)など(例えば、操作された非天然型TCR受容体)をコードする発現ベクターを含む細胞を含む。特定の実施形態では、キットは、キメラ抗原受容体(CAR)/操作されたT細胞受容体(eTCR)などをコードする発現ベクターを含む。特定の実施形態では、キットは、本明細書に記載のバリアント受容体及びキメラ抗原受容体(CAR)/操作されたT細胞受容体(eTCR)などをコードする発現ベクターを含む。
【0209】
特定の態様では、本明細書に記載のキットは、バリアントサイトカインをさらに含む。特定の実施形態では、キットは、少なくとも1つの追加のバリアントサイトカインをさらに含む。特定の態様では、キットは、医薬製剤中の少なくとも1つのバリアントサイトカインをさらに含む。特定の実施形態では、成分は、任意の便利な包装で液体または固体の形態で、投与形態で提供される。
【0210】
本明細書に記載されるように提供される細胞または作製される細胞の増殖、選択、及び調製のために、追加の試薬が提供され得る。例えば、キットは、細胞培養のための成分、成長因子、分化剤、トランスフェクションまたは形質導入のための試薬などを含むことができる。
【0211】
特定の実施形態では、上記の成分に加えて、キットは使用説明書も含むことができる。説明書は、任意の便利な形態で提供することができる。例えば、説明書は、印刷された情報として、キットのパッケージ、パッケージの挿入物などに提供されてもよい。説明書は、情報が記録されたコンピュータ可読媒体として提供することもできる。さらに、説明書は、情報にアクセスするために使用できるウェブサイトのアドレスで提供されてもよい。
【0212】
バリアント受容体の選択的活性化の方法
本開示は、細胞の表面上で発現するバリアント受容体を選択的に活性化させるための方法であって、本明細書に記載のバリアント受容体を、キメラ受容体を選択的に活性化させるサイトカインと接触させることを含む、方法を提供する。特定の態様では、キメラ受容体を選択的に活性化させるサイトカインは、バリアントG-CSFである。G-CSFは、天然型(野生型)サイトカイン受容体と比較して、バリアント受容体へのG-CSFの優先的結合及び活性化をもたらす1つ以上の変異を含む、野生型G-CSFまたはG-CSFであることができる。
【0213】
特定の態様では、バリアント受容体へのサイトカインの結合によるバリアント受容体の選択的活性化は、ホモ二量体化、ヘテロ二量体化、またはそれらの組み合わせをもたらす。
【0214】
特定の態様では、バリアント受容体の活性化は、下流のシグナル伝達分子の活性化をもたらす。特定の態様では、バリアント受容体は、天然型の細胞内シグナル伝達分子を通じて伝達されるシグナル伝達分子または経路を活性化して、その天然型の応答を模倣する生物学的活性を提供するが、それはバリアント受容体を発現するように操作された細胞に対して特異的である。特定の態様では、下流のシグナル伝達分子の活性化は、細胞周期の進行、増殖、生存、及び/または増強された活性を刺激する細胞シグナル伝達経路の活性化を含む。特定の態様では、活性化されるシグナル伝達経路または分子は、これらに限定されないが、Jak1、Jak2、Jak3、STAT1、STAT2、STAT3、STAT4、STAT5A、STAT5B、STAT6、Shc、ERK1/2、及びAktである。特定の態様では、バリアント受容体の活性化は、受容体に結合するサイトカインの投与後の細胞増殖の増加をもたらす。特定の態様では、増殖の程度は、細胞がIL-2で刺激されたときに観察される増殖の0.1~10倍である。
【0215】
養子細胞移植の方法
本発明は、本明細書に記載のバリアント受容体及び/またはバリアントサイトカインを発現する細胞(例えば、以下に記載の医薬組成物)を対象に投与するステップを含む、疾患を治療及び/または予防するための方法を提供する。
【0216】
疾患を治療するための方法は、本明細書に記載の細胞、例えば、T細胞、NK細胞、またはバリアント受容体を発現する他の任意の免疫細胞または非免疫細胞の治療的使用に関する。細胞は、疾患に関連する少なくとも1つの症状を軽減、低減、または改善するため、及び/または疾患の進行を減速、低減、または阻止するために、既存の疾患または状態を有する対象に投与することができる。疾患を予防するための方法は、本開示の細胞の予防的使用に関連する。そのような細胞は、疾患の原因を予防もしくは損なわせるため、または疾患に関連する少なくとも1つの症状の発生を低減もしくは予防するために、まだ疾患に罹患していない及び/または疾患の症状を示していない対象に投与され得る。対象は、疾患の素因を持っているか、または発症するリスクがあると考えられ得る。
【0217】
いくつかの実施形態では、主題の組成物、方法、及びキットを使用して、免疫応答を増強する。いくつかの実施形態では、免疫応答は、サイトカインの全身投与(例えば、筋肉内、腹腔内、静脈内など)による、標的細胞、例えば、がん細胞、感染細胞、自己免疫疾患に関わる免疫細胞などの枯渇または調節が望ましい状態に対して行われる。
【0218】
本方法は、(i)免疫細胞を含有する試料を単離するステップと、(ii)そのような細胞を、例えばバリアント受容体を発現する核酸配列またはベクターで形質転換またはトランスフェクトするステップと、(iii)(ii)の細胞を対象に投与(すなわち、注入)するステップと、(iv)注入された細胞を刺激するバリアントサイトカインを投与するステップと、を含み得る。特定の態様では、対象は、細胞を対象に投与する前に、免疫除去治療を受けたことがある。特定の態様では、対象は、細胞を対象に投与する前に、免疫除去治療を受けたことがない。特定の態様では、対象は、細胞を対象に投与する前に、本明細書に記載のバリアント受容体を使用しなければ必要となるであろう重症度、用量、及び/または期間が低減された免疫枯渇治療を受けたことがある。
【0219】
免疫細胞を含有する試料は、例えば上記のように、対象または他の供給源から単離することができる。免疫細胞は、対象自身の末梢血(ファーストパーティー)からか、ドナー末梢血からの造血幹細胞移植の設定(セカンドパーティー)においてか、または非血縁者のドナー由来の末梢血(サードパーティー)から、単離することができる。免疫細胞はまた、幹細胞または他の形態の前駆細胞から誘導分化させるなど、インビトロ方法で誘導することも可能である。
【0220】
いくつかの実施形態では、免疫細胞は、インビボでバリアントサイトカインと接触する、すなわち、免疫細胞をレシピエントに移し、有効量のバリアントサイトカインをレシピエントに投与して、その本来の場所、例えばリンパ節などで免疫細胞と接触させる。いくつかの実施形態では、接触はインビトロで行われる。細胞がインビトロでバリアントサイトカインと接触する場合、サイトカインは、受容体からのシグナル伝達を活性化させるのに十分な用量及び期間、細胞に添加され、これは、天然の細胞内機構の特徴、例えば、アクセサリータンパク質、共受容体などを利用することができる。活性化された細胞は、抗原特異性の決定、サイトカインプロファイリング、及びインビボでの送達に関連する実験目的を含むがこれらに限定されない、任意の目的に使用することができる。
【0221】
特定の態様では、治療的有効な数の細胞が対象に投与される。特定の態様では、対象は、複数の別々の機会にバリアント受容体を発現する細胞を投与または注入される。特定の実施形態では、少なくとも1x106細胞/kg、少なくとも1x107細胞/kg、少なくとも1x108細胞/kg、少なくとも1x109細胞/kg、少なくとも1x1010細胞/kg、またはそれ以上が投与され、これは、採取中に得られる細胞、例えば、トランスフェクトされたT細胞の数によって制限されることがある。トランスフェクトされた細胞は、任意の生理学的に許容される培地で、通常は血管内で対象に注入することができるが、細胞が増殖に適した部位を見つけ得る、他の任意の都合のよい部位に導入されてもよい。
【0222】
特定の態様では、治療的有効量のバリアントサイトカインが対象に投与される。特定の態様では、対象は、複数の別々の機会にバリアントサイトカインを投与される。特定の態様では、投与されるバリアントサイトカインの量は、治療的に望ましい結果を達成する(例えば、対象の疾患の症状を軽減する)のに十分な量である。特定の態様では、投与されるバリアントサイトカインの量は、本明細書に記載のバリアントサイトカイン受容体を発現する細胞の細胞周期の進行、増殖、生存、及び/または機能的活性を刺激するのに十分な量である。特定の態様では、バリアントサイトカインは、治療的に望ましい結果を達成するのに必要とされる用量及び/または期間で投与される。特定の態様では、バリアントサイトカインは、本明細書に記載のバリアントサイトカイン受容体を発現する細胞の細胞周期の進行、増殖、生存、及び/または機能的活性を刺激するのに十分な用量及び/または期間で投与される。投与量及び頻度は、薬剤、投与方法、サイトカインの性質などによって異なる場合がある。そのようなガイドラインは個々の状況に合わせて調整されることが当業者によって理解されるであろう。投与量はまた、局所投与(例えば、鼻腔内投与、吸入など)について、全身投与(例えば、筋肉内、腹腔内、血管内など)について、変えることができる。
【0223】
養子細胞移植の適応症
本開示は、疾患の治療及び/または予防に使用するための、本明細書に記載のバリアント受容体を発現する細胞を提供する。本発明はまた、疾患の治療及び/または予防のための薬剤の製造における、本明細書に記載のバリアント受容体を発現する細胞の使用に関する。
【0224】
本発明の方法によって治療及び/または予防される疾患は、胆管癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、卵巣癌、結腸癌、子宮内膜癌、血液悪性腫瘍、腎臓癌(腎細胞)、白血病、リンパ腫、肺癌、メラノーマ、非ホジキンリンパ腫、膵臓癌、前立腺癌、肉腫、及び甲状腺癌などの癌性疾患であり得るが、これらに限定されない。
【0225】
治療及び/または予防される疾患は、自己免疫疾患であってもよい。自己免疫疾患は、自己タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、及び/または他の自己分子を異常に標的とするT及びBリンパ球により、体内の器官、組織、または細胞型(例えば、膵臓、脳、甲状腺、または消化管)の損傷及びまたは機能不全を引き起こして、疾患の臨床症状を引き起こすことが特徴である。自己免疫疾患には、特定の組織に影響を与える疾患と、複数の組織に影響を与えることができる疾患があり、これは、応答が特定の組織に限定された抗原に向けられるか、または体内に広く分布する抗原に向けられるかによって、部分的に左右され得る。自己免疫疾患には、1型糖尿病、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、自己免疫性甲状腺疾患、及びバセドウ病が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0226】
治療及び/または予防すべき疾患は、心臓線維症などの炎症性疾患であってもよい。一般に、炎症性状態または障害は、典型的には、免疫系が身体の自身の細胞または組織を攻撃し、異常な炎症を引き起こす可能性があり、慢性的な痛み、発赤、腫脹、硬直、及び正常な組織の損傷をもたらす可能性がある。炎症性疾患は、炎症を特徴とする、または炎症によって引き起こされるものであり、セリアック病、血管炎、ループス、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、過敏性腸疾患、動脈硬化、関節炎、筋炎、強皮症、痛風、シェーグレン症候群、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、及び乾癬が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0227】
特定の実施形態では、本方法は、感染症を治療するために使用される。
【0228】
特定の実施形態では、治療されるべき状態は、移植片拒絶反応を予防及び治療することである。特定の実施形態では、治療及び/または予防されるべき状態は、同種移植片拒絶である。特定の態様では、同種移植片拒絶は、急性同種移植片拒絶である。
【0229】
治療及び/または予防されるべき疾患は、罹患した個体への細胞、組織、器官、または他の解剖学的構造の移植を含み得る。細胞、組織、臓器、または他の解剖学的構造は、同じ個体(自家または「自家」移植)または異なる個体(同種他家または「同種」移植)に由来する可能性がある。細胞、組織、臓器、または他の解剖学的構造は、細胞クローニング、細胞分化誘導、または合成生体材料による作製を含む、インビトロ方法を用いて作製することも可能である。
【0230】
本発明は、本明細書に記載のバリアントサイトカイン及び/または細胞(例えば、上記の医薬組成物中の)を対象に投与する1つ以上のステップを含む、疾患を治療及び/または予防するための方法を提供する。
【0231】
疾患を治療及び/または予防するための方法は、本開示の細胞の治療的使用に関する。本明細書では、細胞は、疾患に関連する少なくとも1つの症状を軽減、低減、または改善するため、及び/または疾患の進行を減速、低減、または阻止するために、既存の疾患または状態を有する対象に投与することができる。疾患を予防するための方法は、本開示の細胞の予防的使用に関連する。そのような細胞は、疾患の原因を予防もしくは損なわせるため、または疾患に関連する少なくとも1つの症状の発生を低減もしくは予防するために、まだ疾患に罹患していない及び/または疾患の症状を示していない対象に投与され得る。対象は、疾患の素因を持っているか、または発症するリスクがあると考えられ得る。本方法は、(i)免疫細胞を含有する試料を単離するステップと、(ii)そのような細胞を、本発明によって提供される核酸配列またはベクターで形質転換またはトランスフェクトするステップと、(iii)(ii)の細胞を対象に投与するステップと、(iv)注入された細胞を刺激するバリアントサイトカインを投与するステップと、を含み得る。免疫細胞を含有する試料は、例えば上記のように、対象または他の供給源から単離することができる。免疫細胞は、対象自身の末梢血(ファーストパーティー)からか、ドナー末梢血からの造血幹細胞移植の設定(セカンドパーティー)においてか、または非血縁者のドナー由来の末梢血(サードパーティー)から、単離することができる。
【0232】
治療は、他の活性剤、例えば、抗生物質、抗がん剤、抗ウイルス剤、及び他の免疫調節剤(例えば、プログラム細胞死タンパク質-1[PD-1]経路に対する抗体またはCTLA-4に対する抗体)と組み合わせてもよいが、これらに限定されるものではない。また、追加のサイトカインが含まれてもよい(例えば、インターフェロンγ、腫瘍壊死因子α、インターロイキン12など)。
【0233】
バリアントサイトカイン受容体を発現する幹細胞を使用する方法
本発明は、本明細書に記載のバリアント受容体及び/またはバリアントサイトカインを発現する幹細胞を投与するステップを含む、状態または疾患を治療及び/または予防するための方法を提供する。特定の実施形態では、本明細書に記載のバリアントサイトカイン受容体及び/またはバリアントサイトカインを発現する幹細胞は、再生医療、細胞/組織/臓器移植、組織再建、または組織修復に使用される。
【0234】
本発明の医薬組成物
本開示はまた、本明細書に記載のバリアント受容体及び/または本明細書に記載のサイトカインを発現する複数の細胞を含有する医薬組成物に関する。本開示はまた、本明細書に記載のバリアントサイトカインを含有する医薬組成物に関する。本発明の細胞は、医薬組成物に製剤化することができる。これらの組成物は、本明細書に記載のバリアント受容体を発現する1つ以上の細胞に加えて、薬学的に許容される賦形剤、担体、緩衝剤、安定剤、または当業者に周知の他の材料を含むことができる。そのような材料は無毒性でなければならず、活性成分の有効性を妨げてはならない。医薬組成物は、任意選択で、1つ以上のさらなる薬学的に活性なポリペプチド及び/または化合物を含んでもよい。そのような製剤は、例えば、静脈内注入に適した形態であり得る。
【0235】
個体に投与されるべき本開示による、本明細書に記載のバリアント受容体及びバリアントサイトカインを発現する細胞の場合、投与は、個体に利益を示すのに十分な「治療的有効量」であることが好ましい。個体に利益を示すのに十分な場合、「予防的に有効な量」もまた投与することができる。投与されるサイトカインの実際の量または細胞数、ならびに投与の速度及び時間経過は、治療される疾患の性質及び重篤度に依存する。治療法、例えば投与量の決定などは、一般開業医及び他の医師の責任の範囲内であり、通常、治療すべき障害、個々の患者の状態、送達部位、投与方法、及び開業医に知られている他の要因を考慮する。上記の技術及びプロトコルの例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,16th edition,Osol,A.(ed),1980に見出すことができる。
【0236】
医薬組成物は、治療すべき状態に応じて、単独で、または他の治療と組み合わせて、同時投与または逐次投与することができる。
【実施例】
【0237】
以下は、本発明を実行するための特定の実施形態の実施例である。これらの実施例は、例示を目的として提供されているにすぎず、決して本発明の範囲を限定することを意図するものではない。使用される数値(例えば、量、温度など)に対する正確さを確保する努力がなされているが、当然いくつかの実験によるエラー及び偏差が許容されるはずである。
【0238】
本発明の実施は、別途指示のない限り、当業者の範囲内で、タンパク質化学、生化学、組み換えDNA手法、細胞培養、養子細胞移植、及び薬理学の従来の方法を用いるであろう。そのような手法は、文献で完全に説明される。例えば、T.E.Creighton,Proteins:Structures and Molecular Properties(W.H.Freeman and Company,1993);A.L.Lehninger,Biochemistry(Worth Publishers,Inc.,current addition);Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2nd Edition,1989);Methods In Enzymology(S.Colowick and N.Kaplan eds.,Academic Press,Inc.);Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition(Easton,Pennsylvania:Mack Publishing Company,1990);Carey and Sundberg Advanced Organic Chemistry 3rd Ed. (Plenum Press)Vols A and B(1992)を参照のこと。
【0239】
実施例1:G-CSF:G-CSFR(CRH)の排他的サイトII界面の合理的デザイン
野生型(WT)G-CSF
WT:G-CSFR
WT複合体は、2:2ヘテロ二量体である。G-CSFは、G-CSFRの細胞外ドメイン(ECD)との2つの結合界面を有する。G-CSFとG-CSFRの細胞外サイトカイン受容体相同(CRH)ドメインとの間のより大きな界面は、サイトIIと呼ばれる。G-CSFとG-CSFRのN末端Ig様(Ig)細胞外ドメインとの間のより小さな界面は、サイトIIIと呼ばれる(
図1を参照)。
【0240】
共進化した、操作された(E)G-CSF
E:G-CSFR
Eサイトカイン:受容体ペアを設計するために、WT G-CSFと、G-CSFRのIg-CRH細胞外ドメインとの2:2複合体(Protein data Bank ID 2D9Q,Tamada et al.PNAS 2006)を、サイトII及びサイトIII界面を包含する、それぞれG-CSF:G-CSFR(CRH)及びG-CSF:G-CSFR(Ig)からなる、2つの異なる部分複合体に分離した(
図1を参照)。配列については表1を参照のこと。
【0241】
方法
共進化した排他的なG-CSF
E:G-CSFR
E変異ペア(デザイン)を作成するために、コンピュテーショナルデザインワークフローを採用した(
図2を参照)。まず、サイトIIでの排他的デザインを作成した。
【0242】
G-CSF
WT:G-CSFR(CRH)
WTのサイトII界面相互作用のインシリコ構造解析は、サイトIIでの引力AMBERエネルギー合計109.64kcal/molを占める、ほとんどの分子相互作用が荷電残基によって行われることを示した(
図3を参照)。詳細な検査により、ほとんどが静電相互作用と水素結合相互作用、例えば、G-CSFR(CRH)のR167とG-CSFのD112/D109間であることが明らかとなり、これはサイトIIでの引力AMBERエネルギー合計の28%を占める。別の重要な静電相互作用は、G-CSFR(CRH)のR141とG-CSFのE122/E123間に存在し(
図4を参照)、これはサイトIIの引力AMBERエネルギー合計の21.4%を占める(
図3を参照)。同様に、サイトカインのE19と受容体CRHドメインのR288の間の塩橋は17.3%を占め、アルギニンは、受容体CRHドメインのD200への静電及び水素結合相互作用によってさらに安定化される。
【0243】
サイトIIでの各デザインは、G-CSFEとG-CSFR(CRH)Eの変異ペアからなる。まず、サイトIIでのポジティブデザインを、例えば、結合パートナー側の塩基性残基を酸性残基に、またはその逆に変異させることによる電荷の反転を通じて作成しながら、必要に応じて追加の変異によりパッキング及び疎水性相互作用を維持した。変異ペアG-CSFE:G-CSFR(CRH)Eは、ZymeCAD(商標)の平均場パッキングワークフローでパッキングした。パッキングしたサイトIIのデザインのインシリコモデルを、構造の完全性について目視で検査し、ZymeCAD(商標)メトリックにより評価した。具体的には、G-CSFE変異体が、対応するG-CSFR(CRH)E変異体に対して、ZymeCAD(商標)のインシリコでのdAMBER結合親和性を10kcal/mol未満有するように設計することを目指した(ペアの相互作用)。このメトリックは、Lennard Jones親和性及び静電親和性の合計であるAMBER親和性を、WT:WTのサイトカイン-受容体ペアのAMBER親和性と比較したものである。dAMBER_foldingが80kcal/mol超のデザインは除外された。dAMBER_foldingメトリックは、変異時の、Lennard Jones結合フォールディングと静電フォールディングの合計の変化をスコアリングする。また、dDDRWアポスタビリティ(apostability)において400kcal/molよりも高いスコアを得たデザインも除外した。このメトリックは、タンパク質がそのアポ型から変異した際の、知識ベースの潜在的安定性における変化を表す。
【0244】
次に、各デザインのG-CSFE変異体を、ZymeCAD(商標)により、WT G-CSFRとの複合体(及びその逆のG-CSFREとG-CSFWT)にパッキングし、以下の2つの複合体G-CSFWT:G-CSFR(CRH)EとG-CSFE:G-CSFR(CRH)WTを形成する際のミスペアリング条件下で、各ポジティブデザインのメトリックを評価した。ZymeCAD(商標)を用いて、ミスペアリングした配向について、インシリコでのddAMBERメトリックを計算した(ddAMBER_affinity_Awt_Bmutは、ペアリングした操作された複合体のAMBER親和性から、ミスペアリングした複合体G-CSFWT:G-CSFR(CRH)EのAMBER親和性を差し引いたものであり、ddAMBER_affinity_Amut_Bwtは、ペアリングした操作された複合体のAMBER親和性から、ミスペアリングした複合体G-CSFE:G-CSFR(CRH)WTのAMBER親和性を差し引いたものである。ミスペアリングしたddAMBER親和性メトリックを最小化するデザインは、野生型サイトカインまたは受容体結合への結合よりも、そのペアリングした結合パートナーに対して選択的であると考えられた。
【0245】
すべてのサイトIIデザインをクラスター化し、G-CSFE:G-CSFR(CRH)E、G-CSFWT:G-CSFR(CRH)E、G-CSFE:G-CSFR(CRH)WTのパッキングメトリックを検討して、ペアリングの強度(ポジティブデザイン)ならびにWT G-CSF及びG-CSFR(CRH)とのミスペアリングに対する選択性(ネガティブデザイン)を評価し、デザインのランク付けをした。
【0246】
結果
表2に記載のデザインは、インシリコでG-CSF
E:G-CSFR(CRH)
Eのペアリングに有利であるZymeCAD(商標)におけるパッキングメトリックを有し(表3を参照)、塩橋、水素結合の存在と、激しい衝突の不在など、目視検査上、インシリコにおいて満足のいく相互作用を示した(
図5を参照)。また、これらのデザインは、WT G-CSFまたはG-CSFR(CRH)とのミスペアリングに対して高い選択性を示した(表3を参照)。
【0247】
したがって、表2に示す同じバリアントG-CSF及び受容体デザインのサイトII変異は、それぞれ野生型G-CSFR及びG-CSFよりも優先的な結合を示すと予測される。
【0248】
(表3)ZymeCAD(商標)を用いたトリプリケートインシリコ平均場パッキングからのkcal/molで示したAMBERメトリックを有するサイトIIデザイン
【0249】
実施例2:サイトIIデザインのインビトロスクリーニング
選択されたサイトIIデザインは、バキュロウイルスベースの昆虫細胞システムにおいて共発現させたときにサイトII複合体を形成する能力について、G-CSFE:G-CSFR(CRH)Eの形式でプルダウン実験でスクリーニングした。また、G-CSFE変異体の各デザインとG-CSFR(CRH)WTを共発現させることにより、その逆でG-CSFR(CRH)E変異体の各デザインをGCSFWTと共発現させることにより、デザインがWT受容体またはサイトカインとミスペアリング複合体を形成できるかどうかを評価した。G-CSFEのみの発現は、サイトカイン変異体の単一感染によって確認した。
【0250】
方法
簡単に言えば、サイトII G-CSFデザインと対応するペアのG-CSFR(CRH)変異体は、昆虫細胞トランスフェクションベクターに別々にクローニングした。G-CSF WT(残基1-173、表1)及び変異体を、N末端分泌シグナル及び配列
を有するC末端TEV切断可能Twin Strepタグがインフレームに存在する改変pAcGP67bトランスファーベクター(Pharmingen)にクローニングした。受容体細胞外ドメインの中では、サイトIIデザイン変異体を有するCRHドメイン(残基98-308、表1)のみが、N末端分泌シグナル及び配列
のTEV切断可能ヘキサヒスチジン(配列番号89)タグがインフレームに存在する改変pAcGP67bトランスファーベクターにクローニングされた。すべてのコンストラクトを合成し、昆虫細胞の発現のためにコドンを最適化した(Genscript)。トランスファーベクターDNAは、Midi-prep(ThermoScientific,cat.K0481)により調製し、エンドトキシンを含まず、A
260/280吸光度比が1.8~2.0であった。組換えウイルス生成は、製造元(Expression Systems,California)の説明に従って付着法を用いて、組換え、線状化バキュロウイルスDNAとベクターDNAを、Spodoptera frugiperda 9(Sf9)細胞に、共トランスフェクションすることにより達成された。トランスフェクションの約1時間前に、0.46×10
6細胞ml
-1で、健康な対数期Sf9細胞2mLを6ウェル組織培養プレート(Greiner,cat.657-160)のウェルごとに播種した。トランスフェクション混合物は以下のように調製した:100μlのトランスフェクション培地(Expression Systems,California,cat.95-020-100)を2本の滅菌1.5mlMicrofugeチューブA及びBのそれぞれに入れた。チューブAには、0.4μgの組換えBestBac 2.0Δ v-cath/chiA線状化DNA(Expression Systems,California,cat.91-002)及び2μgのベクターDNAを加えた。チューブBには、1.2μlの5XのExpress
2TRトランスフェクション試薬(Expres2ION,cat.S2-55A-001)を添加した。溶液A及び溶液Bを約24℃で5分間インキュベートした後、それらを合わせて、30分間インキュベートした。インキュベーション後、800μlのトランスフェクション培地を各トランスフェクション反応物に加え、容量を1mlまで増加させた。古いESF921培地をウェルから取り除き、細胞の単層を乱さないように滴下して1mLのトランスフェクション混合液で置換した。プレート(複数可)を前後左右に穏やかに揺り動かして、トランスフェクション混合物を均一に分散させ、27℃で4時間インキュベートした。4時間後、トランスフェクション混合物を共トランスフェクションプレート(複数可)から取り出し、ゲンタマイシンを10μg/ml(cat.15750-060)で含有する2mLの新鮮なESF921昆虫細胞培養培地(Expression Systems,California、cat.96-001-01)を滴下して加えた。蒸発を防ぐため、プレートをサランラップで包み、滅菌プラスチックボックスに入れ、27℃で4~5日間インキュベートした。トランスフェクション後4日目または5日目に、P1上清を収集し、5000rpmで5分間遠心分離して清澄化し、新しい滅菌チューブに移し、光から保護して4℃で保存した。
【0251】
上記のようにして生成した組換えP1ストックをさらに増幅して、タンパク質発現研究のための高力価、低継代のP2ストックを得た。次のワークフローでは、共トランスフェクションから採取したウイルスのP1シードストックを接種原として使用して、50~100mLのウイルスを生成した。1.5x106細胞ml-1での対数期Sf9細胞50mLを、250mLの振盪フラスコ(FisherScientific,cat.PBV 250)に播種し、0.5mLのP1ウイルスストックを加えた。細胞を27℃で、135rpmで振盪しながらインキュベートし、感染について観察した。感染後5~7日目にP2ウイルス上清を回収し、4000rpmで10分間遠心分離することにより清澄化した。力価の低下を最小限に抑えるため、10%の熱不活化FBS(VWR,cat.97068-085)を加え、P2ウイルスを4℃で暗所に保管した。
【0252】
P2ウイルスストックを、小規模でのタンパク質発現について試験した。P2ウイルスを使用して、G-CSFE変異体と対応するG-CSFRE変異体を12ウェルプレート中のTrichoplusia ni(Tni)細胞に共感染させた。G-CSFWT及びGCSFR(CRH)WTのP2ストックを用いて、各デザインの変異体、そしてG-CSFE変異体のみについて別々の共感染を実施した。各反応について、2x106細胞ml-1での健康な対数期Tni2mLに、20μlのP2ウイルスを接種した。プレートは27℃で約70時間、135rpmで振盪しながらインキュベートした。上清を5000rpmで3分間遠心分離により清澄化し、分泌タンパク質を、G-CSFE変異体及びG-CSFWT上のTwin-Strep Tag(TST)を介して、streptactin-XTスーパーフロー(IBA Lifesciences,cat.2-4010-010)によりバッチモードでプルダウンした。簡単に言えば、各1.8mLの反応上清に、0.2mLの10XのHEPES緩衝生理食塩水(HBS:20mMのHEPES pH8、150mMのNaCl)を1Xの20μlのベッドボリューム(b.v)の精製ビーズを加え、反応物を24℃で転倒式に混合しながら30分間インキュベーションした。さらに20μlのb.v.の精製ビーズを加え、続いて、再度30分間インキュベートした。ビーズを2200rpmで3分間遠心分離してペレット化し、上清を除去して1XのHBS緩衝液で洗浄した。タンパク質を30μlのBXT溶出緩衝液(100mMのTris-CL pH8、150mMのNaCl、1mMのEDTA、50mMのビオチン(IBA Lifesciences,cat.2-1042-025))で溶出し、SDS-PAGEサンプル緩衝液で煮沸して、12%のBolt Bis-Tris plus、12ウェルゲル(Thermo Fisher Scientific,cat.NW00122BOX)上で、200Vで30分間、還元条件下で解析した。
【0253】
結果
サイトIIデザイン#6、7、8、9、15、17、30、34、35、36は、G-CSF
E単独での発現を示し、G-CSF
E上のTwin Strepタグを介してプルダウンされた十分に安定なペアリングしたG-CSF
E:G-CSFR
E複合体を形成した(
図6を参照)。例えば、操作された複合体のプルダウン後のサイトIIデザイン#6は、SDS-PAGEで、そのG-CSF
E変異体の約22kDaのバンドと、対応する共発現したG-CSFR(CRH)
E変異体の約33kDaのバンドを示した(
図6を参照)。
【0254】
サイトIIデザイン#8、9、15、及び34は、共発現アッセイにおいて、WT G-CSF及びWT G-CSFRとのミスペアリングに対して選択的であり(
図7を参照)、その理由は、それらがWT G-CSFによってプルダウンされなかったことと(
図7の下パネル参照)、WT受容体がG-CSF
E変異体によってプルダウンされなかった(
図7の上パネル参照)ためである。サイトII G-CSFR
Eデザイン30及び35は、WT G-CSFによってプルダウンされなかったので、共発現アッセイにおいてWT G-CSFとのミスペアリングに対して選択的であったが(
図7の下パネル参照)、相互G-CSF
Eデザインは、WT G-CSFRがプルダウンされたため(
図7の上パネル参照)、共発現アッセイにおいてWT G-CSFRとのミスペアリングに対して選択的ではなかった。サイトIIデザイン6、7、17、及び36は、WT G-CSFRをプルダウンし、WT G-CSFによってプルダウンされたため、共発現アッセイにおいてWT G-CSFまたはWT G-CSFRとのミスペアリングに対して選択的ではなかった(
図7を参照)。
【0255】
残基R288に変異を有するサイトII受容体変異体は、Igドメインを有さないG-CSFR(CRH)受容体鎖の形式では発現しなかった。R288を含むデザインを、Igドメイン上のサイトIIIデザインと組み合わせて、SPRによってペアリングした複合体形成について評価した(実施例6を参照)。したがって、WT G-CSF及びWT G-CSFRとのミスペアリングに対しても選択的である、十分に安定な、ペアリングしたG-CSFE:G-CSFRE複合体を形成した、いくつかのサイトIIデザインが同定された。
【0256】
したがって、表2に示す同じバリアントG-CSF及び受容体デザインのさまざまなサイトII変異は、それぞれ野生型G-CSFR及びG-CSFに対する優先的な結合を示す。
【0257】
実施例3:G-CSF:G-CSFR(Ig)の排他的サイトIII界面の合理的デザイン
G-CSFに結合するサイトIII受容体Igドメインの結合活性効果は、2:2ヘテロ二量体化学量論のG-CSF:G-CSFR(Ig-CRH)複合体の形成に寄与する(
図1を参照)。WTサイトIII界面を有するサイトIIにのみ存在する選択的デザインは、完全に排他的な2:2 G-CSF
E:G-CSFR(Ig-CRH)
E複合体を作成するには不十分であるように思われる。WTサイトカインまたは受容体へのミスペアリング結合よりも選択的であるペアリングした共進化デザインの結合を優先するために、実施例1で述べたインシリコデザインワークフローをサイトIII界面に適用し、選択的サイトIIIデザインを作成した(
図2を参照)。
【0258】
方法
まず、サイトIII界面相互作用の構造解析を実施した。サイトIII界面は、55.64kcal/molのAMBERエネルギーをG-CSF:G-CSFR複合体にもたらし、692.6Å
2の界面領域のサイトIIと比較して、571.5Å
2の全体的に小さい界面領域を有する。サイトIII界面の詳細な検査により、サイトII界面と比較して、静電相互作用及び水素結合相互作用が少ないことが明らかである(
図8を参照)。サイトIIIでの重要な相互作用は、例えば、G-CSFのE46と受容体IgドメインのR41間、さらにG-CSFのR147と受容体IgドメインのE93間の塩橋である(
図9を参照)。両方の相互作用は、サイトIIIの引力AMBERエネルギー合計に対して、それぞれ15.9%と15.4%を占める。さらなる相互作用は、例えば、受容体IgドメインのQ87を介して作られ、G-CSFサイトIIIのバックボーンへの側鎖アミドとの水素結合相互作用を形成し、E46及びL49など、サイトカインの周囲の側鎖とのLennard Jones相互作用を有する。この相互作用は、サイトIIIの引力AMBERエネルギー合計の12.3%を占める。
【0259】
次に、G-CSFE変異体が、その共進化したG-CSFR(Ig)E変異体(ペアの相互作用)に対して、インシリコで好ましいAMBER結合親和性を有するサイトIIIでのポジティブデザインを作成した。これは、例えば、Lennard Jones及び水素結合相互作用を維持しながら、電荷の反転または形状相補性の変更により実施した。変異体ペアG-CSFE:G-CSFR(Ig)Eは、ZymeCAD(商標)の平均場パッキングワークフローでパッキングした。パッキングしたサイトIIIのデザインのインシリコモデルを、構造の完全性について目視で検査し、実施例1に記載のZymeCAD(商標)メトリックにより評価した。次に、各デザインのG-CSFE変異体を、ZymeCAD(商標)により、WT G-CSFR(Ig)(及びその逆のG-CSFR(Ig)EとG-CSFWT)とパッキングし、WTサイトカイン及び受容体とのミスペアリングの条件下で、メトリックを評価した。サイトIIについて実施例1で前述したように、ZymeCAD(商標)を使用したサイトIIIデザインについて、ddAMBER親和性メトリック(G-CSFWT:G-CSFR(Ig)E、G-CSFE:G-CSFR(Ig)WT)を計算した(表5を参照)。
【0260】
サイトIIIデザインをクラスター化し、3つすべてのインシリコ複合体G-CSFE:G-CSFR(Ig)E、G-CSFWT:G-CSFR(Ig)E、G-CSFE:G-CSFR(Ig)WTのパッキングメトリックを目視検査と合わせて検討し、デザインのランク付けのためにペアリングの強度及びWTとのミスペアリングに対する選択性を評価した。
【0261】
結果
表4に記載のデザインは、G-CSFE:G-CSFR(Ig)Eのペアリングに有利であるZymeCAD(商標)におけるインシリコパッキングメトリックを有し、WT G-CSFまたはG-CSFR(Ig)とのミスペアリングに対して高い選択性を持っている。したがって、表4に示す同じバリアントG-CSF及び受容体デザインのさまざまなサイトIII変異は、それぞれ野生型G-CSFR及びG-CSFよりも優先的な結合を示すと予測される。
【0262】
(表5)ZymeCAD(商標)におけるトリプリケートインシリコ平均場パッキングからのkcal/molで示したAMBERメトリックでのサイトIIIデザイン
【0263】
実施例4:バリアント、共進化したサイトカイン受容体スイッチを作成するためのサイトII及びIIIの組み合わせ
2:2のヘテロ二量体の操作した複合体を介した結合及びシグナル伝達を可能にし、野生型サイトカインまたは受容体との交差反応性が低いか、または完全に消失した完全選択性デザインペアG-CSFE:G-CSF(Ig-CRH)Eを開発するために、実施例1及び3の選択したサイトII及びIIIデザインを組み合わせ(表6を参照)、インビトロで試験した。
【0264】
表6のデザインを組み合わせたのと同様に、実施例1のサイトIIデザイン(表2)と実施例3のサイトIIIデザイン(表4)の任意の他の組み合わせにより、バリアントシグナル伝達を可能にする完全選択的G-CSFE:G-CSFR(Ig-CRH)Eデザインの組み合わせを得ることができた。組み合わせデザイン401及び402を、実施例2に記載の共発現アッセイにおいて、操作したG:CSFE:G-CSFR(Ig-CRH)E複合体を形成する能力、及びWTサイトカインまたは受容体を結合する能力について試験した。
【0265】
方法
サイトカインTSTタグを介したプルダウンを伴う共発現アッセイは、上記の実施例2で説明したように実施したが、受容体コンストラクトがG-CSFR(Ig-CRH)と呼ばれるIg及びCRHドメイン(残基2-308、表1)を含むという点で異なる。
【0266】
結果
組合せデザイン401及び402は、本デザインサイトカインが、それらの共進化した、操作された受容体をプルダウンするがWT受容体はプルダウンせず、その逆にWT G-CSFが、操作された受容体をプルダウンしなかったという点で、共発現アッセイにおいて完全に選択的であった(
図10を参照)。
【0267】
これらの結果は、バリアントG-CSF、ならびに選択したサイトII及びサイトIII変異体を組み合わせたバリアントG-CSFR ECDデザインを含む受容体が、それぞれ操作されたサイトカイン受容体ペアに特異的に結合することができ、野生型受容体またはサイトカインに結合しないことを示す。
【0268】
実施例5:G-CSF及びG-CSFR野生型及び変異体の作製
野生型及び操作されたサイトカイン及び受容体バリアントを作製し、それらの生物物理学的特性を比較するために、組換えタンパク質を発現させ、昆虫細胞から精製した。
【0269】
方法
G-CSF
E及びG-CSF
WTを、上記のようにクローン化した。組換えタンパク質の分取スケール生成は、2~4Lの健常な対数期Tni細胞において以下のように行った。2×10
6細胞ml
-1での800mLのTniに、2ml細胞当たり20μlのサイトカインバリアントP2ウイルスを接種し、135rpmで振盪しながら27℃で70時間インキュベートした。インキュベーション後、5500rpmで15分間遠心分離することにより細胞をペレット化し、上清を2回、まず1μmのA/E型ガラス繊維フィルター(PALL,cat.61631)、続いて0.45μmのPVDFメンブレンフィルター(Sigma Aldrich,cat.HVLP04700)を通じてろ過した。プロテアーゼ阻害剤カクテルIII(Sigma Aldrich,cat.539134)を加え、上清緩衝液をHBS(20mMのHEPES pH8、150mMのNaCl)に交換し、タンジェンシャルフローで300mLに濃縮した。タンパク質を、3x3mLのb.v Streptactin-XT superflowによりバッチモードで精製し、4℃で2x1時間、1x一晩、撹拌しながらインキュベートした。溶出前に樹脂を10CVのHBS緩衝液で洗浄した。タンパク質を4x5mLのBXT溶出緩衝液で溶出した。溶出液をnanodrop A280及び還元型SDS-PAGEにより分析し、約2mLに濃縮し、TEV:タンパク質比1:80で18℃で一晩、TEVと転倒式に混合してインキュベートすることによりTST精製タグを切断した。切断されたタンパク質は、20mMのBisTris pH6.5、150mMのNaClで平衡化したSX75 16/600またはSX200 16/600サイズ排除カラム(GE Healthcare,cat.28-9893-33または28-9893-35)にロードする前に、SDS-PAGEによって確認した(
図11を参照)。タンパク質含有フラクションを還元型SDS-PAGEにより分析し、プールして、nanodrop A280測定により濃度を測定した。
【0270】
受容体バリアントのタンパク質精製のために、野生型及びG-CSFR(Ig-CRH)
E変異体を上記のようにクローニングし、精製のための受容体コンストラクトはCRHドメイン(Uniprot ID Q99062の残基3-308、表1)に加えてIgドメインを含んだ。ウイルスストックを調製し、上記のように2~4Lのスケールで感染に使用した。清澄化した上清を、Ni-NTA結合緩衝液(20mMのHEPES pH8、1MのNaCl、30mMのイミダゾール)に緩衝液交換し、上記のように300mMに濃縮した。タンパク質を、3x3mLのb.v Ni-NTA superflowによりバッチ結合モードで精製し、4℃で2x1時間、1x一晩、撹拌しながらインキュベートした。溶出前に樹脂を10CVの結合緩衝液で洗浄した。タンパク質を4x5mLのNi-NTA溶出緩衝液(20mMのHEPES pH8、1MのNaCl、250mMのイミダゾール)で溶出した。溶出液を分析し、20mMのBis-Tris pH6.5、150mMのNaClに緩衝液交換し、濃縮し、上記のように一晩切断した。切断されたタンパク質は、続いて、20mMのBisTris pH6.5、150mMのNaClで平衡化したSX75 16/600またはSX200 16/600サイズ排除カラム(GE Healthcare)にロードした(
図12を参照)。タンパク質含有フラクションを還元型SDS-PAGEにより分析し、プールして、nanodrop A280測定により濃度を測定した。
【0271】
結果
野生型、G-CSF
E、及びG-CSFR
E変異体は、還元型SDS-PAGEにより判断すると、SEC後の純度は90%を超えていた(
図11及び12を参照)。デザイン401及び402のG-CSF
Eの1Lの培養物当たりのSEC後の収量は、それぞれ2.7mg及び1.6mgであった。デザイン401及び402のG-CSFR
Eの1Lの生産当たりのSEC後の収量は、それぞれ1.7mg及び1.5mgであった。WT G-CSFは、1Lの培養物当たり2.1mgのSEC後の収量で精製され、WT G-CSFRは、1Lの培養物当たり3.1mgのSEC後の収量で精製された。
【0272】
これらの結果により、バリアントG-CSF及び受容体を精製するために使用される方法が、インビトロでの生物物理学的特性の分析に使用される精製タンパク質を得るのに効率的であったことが確認される。
【0273】
実施例6:SPRによるペアリングされた及びミスペアリングされた結合パートナーに対するデザインの親和性の決定
共進化した受容体変異体に対するデザインサイトカインの親和性を決定するために、G-CSFRWTに対するG-CSFEの親和性を測定した。また、G-CSFEとG-CSFRWTの親和性、及びG-CSFWTとG-CSFREの親和性を、SPRによりデザインのサブセット(ミスペアリングした)について測定した。
【0274】
方法
SPR結合アッセイは、Biacore T200装置(GE Healthcare,Mississauga,ON,Canada)で、PBS-T(PBS+0.05%(v/v)Tween 20)ランニング緩衝液を用いて、25℃の温度で実施された。CM5 Series Sセンサチップ、Biacoreアミンカップリングキット(NHS,EDC,及び1Mのエタノールアミン)、及び10mMの酢酸ナトリウム緩衝液は、すべてGE Healthcareから購入した.0.05% Tween20を含むPBSランニング緩衝液(PBS-T)はTeknova Inc.(Hollister,CA)から購入した。デザインは、3つの異なる固定化配向において評価した。
【0275】
G-CSFEのG-CSFREへの結合親和性を決定するために、G-CSFRE変異体を、製造元(GE LifeSciences)が説明するように標準的なアミンカップリングにより捕捉した。簡単に説明すると、EDC/NHS活性化直後に、10mMのNaOAc,pH5.0中のG-CSFREの5μg/mL溶液を、約700~900RUの受容体密度に達するまで5μL/分の流速で注入した。残りの活性基は、1Mのエタノールアミン塩酸塩-NaOH pH8.5を10μL/分で420秒間注入してクエンチした。シングルサイクルキネティクスを用い、6つの濃度の200nMから始まる対応するG-CSFE変異体の2倍希釈系列とブランクの緩衝液対照を、25μL/分で300秒間、順次注入し、1800秒の解離相を伴い、緩衝液ブランク基準で一連のセンサーグラムを得た。同じ試料滴定は、バリアントが捕捉されていない基準セルでも実行した。10mMのグリシン/HCl、pH2.0の1パルス(30μL/分で30秒間)によって、次の注入サイクルに備えるためにチップを再生した。
【0276】
G-CSFWTのG-CSFREへの結合親和性を評価するために、G-CSFEを、上記のように約700~900RUの密度でチップ上に捕捉した。シングルサイクルキネティクスを用い、6つの濃度の200nMから始まる各G-CSFRWTの2倍希釈系列とブランクの緩衝液対照を、25μL/分で300秒間、順次注入し、1800秒の総解離時間を伴い、緩衝液ブランク基準で一連のセンサーグラムを得た。同じ試料滴定は、上述のようにバリアントが捕捉されず、チップが再生された基準セルでも実行した。
【0277】
G-CSFEのG-CSFRWTへの結合親和性を評価するために、実施例5に記載されるように精製された組換えG-CSFRWTを、この実施例に記載されるように捕捉した。シングルサイクルキネティクスを用い、6つの濃度の200nMから始まる各G-CSFEの2倍希釈系列とブランクの緩衝液対照を上述のように順次注入した。同じ試料滴定は、バリアントが捕捉されていない基準セルでも実行した。G-CSFRWT表面は、上述のように再生した。
【0278】
対照として、WTG-CSFのWT G-CSFR(Ig-CRH)への結合を各実験で評価し、各独立した測定内のKD変化倍率を算出するために使用した。
【0279】
Biacore(商標) T200評価ソフトウェアv3.0を使用して、2回または3回の繰り返し注入からのダブルリファレンスしたセンサーグラムを分析し、1:1ラングミュア結合モデルに適合させた。
【0280】
結果
曲線の会合及び解離相を適合させることによって速度論的導出親和性定数(KD)を得た。WT G-CSFR(Ig-CRH)に対するWT G-CSFのKDは、1.8~2.5E-9の範囲であった。速度論的パラメータを適合させることができなかった場合、定常状態の親和性定数を導出することを試みた。これらの場合、KD変化倍率は、WT G-CSF:WT G-CSFR(Ig-CRH)ペアの定常状態から導出されたKDから算出され、表7に示される。
【0281】
デザイン9、130、134、137、307、401、及び402は、WT:WT KDと2倍以内の違いで、共進化した結合パートナーに対する親和性を示した(表7及び
図13を参照)。
【0282】
デザイン9、30、及び34のG-CSFR(Ig-CRH)
E変異体は、WT G-CSFR(Ig-CRH)と比較してWT G-CSFに対して700倍を超える弱い親和性を示した。デザイン#35のG-CSFR(Ig-CRH)
Eは、WTサイトカインとのミスペアリングに対して選択性が低く、WT G-CSFに対する親和性はWT:WT親和性と比較して約19分の1に減少した。デザイン130、134、401、402、300、3003、304、及び307のG-CSFR(Ig-CRH)
E変異体は、WT G-CSFとのミスペアリングに対して最も選択的であり、滴定された濃度でWT G-CSFに対して顕著な結合を示さなかった(表8、
図13を参照)。
【0283】
デザイン124、130、401、402、300、303、304、及び307のG-CSF
E変異体は、滴定された濃度でWT G-CSFR(Ig-CRH)に対して顕著な結合を示さなかった。デザイン9、30、及び34のG-CSF
E変異体は、WT:WT KDと比較して、WT G-CSFR(Ig-CRH)に対して少なくとも約20倍弱いK
Dを示した。デザイン#134のG-CSF
Eは、WT G-CSFR(Ig-CRH)に対して約500倍弱い親和性を示した(表9、
図13を参照)。デザイン35及び117のG-CSF
E変異体は、WT:WT KDと同様にWT G-CSFR(Ig-CRH)に対する結合を示す。
【0284】
これらの結果は、選択されたバリアントG-CSFデザインが野生型G-CSFR ECDに結合しないか、または野生型G-CSFR ECDに対して親和性が大幅に低下して結合する(少なくとも約20倍弱いKD)ことを示す。
【0285】
(表7)SPRによって測定されたWT:WT結合親和性と比較した対応するG-CSFR(Ig-CRH)
E変異体に対するG-CSF
E変異体の結合親和性(KD)の変化
ssは、定常状態から導出された親和性定数を示す。
【0286】
(表8)SPRによって測定されたWT:WT結合親和異性と比較したデザインG-CSFR(Ig-CRH)
Eに対するWT G-CSFの結合親和性の変化
ssは、定常状態から導出された親和性定数を示す。
【0287】
(表9)SPRによって測定されたWT:WT結合親和異性と比較した野生型G-CSFR(Ig-CRH)に対するG-CSF
Eの結合親和性の変化
【0288】
実施例7:デザインG-CSF
E
変異体の熱安定性の測定
WTサイトカイン及び受容体と比較したG-CSFE及びG-CSFRE変異体の熱安定性を測定するために、示差走査熱量測定(DSC)を実施した。
【0289】
方法
バリアントの熱安定性は、示差走査熱量測定(DSC)により以下のように評価した:濃度1~2mg/mLの精製試料950mLを、Nano DSC(TA instruments,New Castle,DE)を用いたDSC分析に使用した。各分析の開始時に、ベースラインの安定化のために緩衝液ブランクの注入を行った。各試料を、60psiの窒素圧力下、60℃/時の速度で25~95℃で走査した。得られたサーモグラムを参照し、NanoAnalyzeソフトウェアを用いて解析し、熱安定性の指標となる融解温度(Tm)を測定した。
【0290】
結果
操作されたバリアントの熱安定性は、同じ条件及び実験設定下で測定された、操作された分子と同等の野生型分子との間の最も顕著な遷移(最高のエンタルピー)の差として報告される。測定されたWT GCSFのTmは、独立した実験間で52.2~55.4℃の間で変動し、WT G-CSFRのTmは50.5℃を示した。デザイン#15及び34を除いて試験したG-CSF
E変異体は、WT G-CSFのTmとは5℃未満異なるTmを示した(表10及び
図14を参照)。試験したすべての受容体変異体は、WT受容体と同じ熱安定性を示した(表10及び
図14を参照)。
【0291】
これらの結果は、バリアントG-CSF、及びバリアントG-CSFR ECDデザインを有する受容体が、野生型G-CSF及びG-CSFRと同様の熱安定性を有することと、サイトII及び/またはサイトIII変異が、G-CSFまたはG-CSFR ECDのいずれの熱安定性も損なわないことを示したものである。
【0292】
(表10)DSCによって測定された野生型と比較したデザインサイトカイン及び受容体変異体の融解温度(Tm)の変化
*150mM NaCl、20mM BisTris pH6.5で測定
【0293】
実施例8:UPLC-SECによるG-CSF
E
変異体の単分散性の測定
WT G-CSFと比較したG-CSFE変異体の単分散性を測定するために、UPLC-SECによって変異体を分析した。
【0294】
方法
SEC精製したタンパク質試料に対して、Acquity BEH125 SECカラム(4.6x150mm,ステンレススチール,1.7μm粒子)(Waters LTD,Mississauga,ON)を30℃に設定し、PDA検出器を備えたAgilent Technologies 1260 infinity IIシステムに取り付けてUPLC-SECを実施した。分析時間は、150mMのNaCl、20mMのHEPES pH8.0または150mMのNaCl、20mMのBisTris pH6.5のランニング緩衝液を用いて、流速0.4mL/分で7分間のランタイムで構成された。溶出は、210~500nmの範囲でUV吸光度によりモニターし、クロマトグラムは280nmで抽出した。ピーク積分は、OpenLAB(商標)CDS ChemStation(商標)ソフトウェアを使用して実施した。
【0295】
結果
WT G-CSF及びデザイン34、35、及び130のG-CSFE変異体は、100%単分散性であった(表11を参照)。変異体8、9、15、117、135は、65.3~79.5%のより低い単分散性を示した。デザイン#134サイトカインは、pH8.0で57.3%の単分散性を示したが、pH6.5では86.6%の単分散性に改善した。移動相のより低いpHでの単分散性の改善は、pIのシフト(例えば、WT G-CSFでの算出されたpI5.41からデザイン#134のG-CSFEでの算出されたpI8.35へ)に起因する可能性がある。
【0296】
これらの結果から、バリアントG-CSFデザインのいくつかは野生型G-CSFと同じ100%単分散性を持つことが示され、サイトII及び/またはサイトIII変異体のサブセットがG-CSFの単分散性を損なわないことが示唆される一方で、他のバリアントG-CSFデザインでは単分散性が低くなり、低いpHで増加したことが示された。
【0297】
(表11)UPLC-SECによって測定されたG-CSF
Eデザインの変異体の単分散性
*150mMのNaCl、BisTris pH6.5における
【0298】
実施例9:細胞内IL-2受容体シグナル伝達ドメインを有するキメラG-CSF受容体の構築
デザインG-CSFEサイトカイン変異体がデザインG-CSFR(Ig-CRH)E受容体変異体を介してシグナル伝達し、免疫細胞増殖を引き起こすことができるかどうかを調べるために、gp130膜貫通(TM)ドメイン及び細胞内シグナル伝達ドメイン(ICD)、ならびにIL-2Rβ細胞内シグナル伝達ドメインに融合したG-CSFR ECDを使用して、一本鎖キメラG-CSF受容体(G-CSFRWT-ICDgp130-IL-2Rβ)を構築した。また、ヘテロ二量体受容体として共発現するように設計された2つのサブユニットからなるキメラG-CSFRを利用した:1)G-CSFRWT-ICDIL-2RβサブユニットはIL-2RβTM及びICDに融合したG-CSFR ECDからなり、2)G-CSFRWT-ICDγcサブユニットは共通γ鎖(γc,IL-2Rγ2Rγ)TM及びICDに融合したG-CSFR ECDからなる。
【0299】
方法
一本鎖キメラ受容体構築物は、G-CSFRシグナルペプチド及びECD、次いでgp130 TM及び部分ICD、ならびにIL-2Rβ部分ICDを含むように設計した(表12)。ヘテロ二量体キメラ受容体構築物は、以下を含むように設計した:1)G-CSFRシグナルペプチド及びECD、次いでIL-2RβTM及びICD(表13);ならびに2)G-CSFRシグナルペプチド及びECD、次いでγc TM及びICD(表14)。キメラ受容体構築物をレンチウイルストランスファープラスミドにクローニングし、構築物配列をサンガーシークエンシングにより確認した。トランスファープラスミド及びレンチウイルスパッケージングプラスミド(psPAX2、pVSVG)を、以下のようにレンチウイルスパッケージング細胞株HEK293T/17細胞(ATCC)に共トランスフェクションさせた:細胞を、10%ウシ胎児血清及びペニシリン/ストレプトマイシンを含有するDMEM中で一晩プレーティングし、トランスフェクションの2~4時間前に培地交換した。プラスミドDNA及び水をポリプロピレンチューブ内で混合し、CaCl2(0.25M)を滴下して加えた。2~5分間インキュベートした後、2xのHEPES緩衝生理食塩水(0.28MのNaCl、1.5mMのNa2HPO4、0.1MのHEPES)と1:1で混合することにより、DNAを沈殿させた。沈殿したDNA混合物を細胞上に添加し、37℃、5%のCO2で一晩インキュベートした。翌日、HEK293T/17培地を交換し、細胞をさらに24時間インキュベートした。翌朝、プレートから細胞上清を回収し、軽く遠心分離して破片を除去し、0.45μmフィルターで濾過した。上清をBeckman Optima L-XP超遠心機のSW-32Tiローターを用いて25,000rpmで90分間回転させた。上清を除去し、ペレットを適当量のOpti-MEM培地に再懸濁させた。ウイルスの連続希釈液をBAF3細胞(10%ウシ胎児血清、ペニシリン、ストレプトマイシン、及び100IU/mlのhIL-2を含有する増殖用RPMI)に添加することにより、ウイルス力価を測定した。形質導入の48~72時間後、細胞を抗ヒトG-CSFR APCコンジュゲート抗体(1:50希釈)及びeBioscience(商標)Fixable Viability Dye eFluor(商標)450(1:1000希釈)とともに4℃で15分間インキュベートして洗浄し、Cytek AuroraまたはBD FACS Caliburフローサイトメーターで分析した。この方法により測定した推定力価を用いて、32D-IL-2Rβ細胞株(10%ウシ胎児血清、ペニシリン、ストレプトマイシン、及び300IU/mlのhIL-2を含有するRPMIにおいて増殖)に、MOI0.5でキメラ受容体構築物をコードするレンチウイルス上清を形質導入した。形質導入は、適切な量のウイルス上清を細胞に添加し、24時間インキュベートし、細胞培地を交換することにより行った。形質導入から3~4日後、上記のようにフローサイトメトリーによりヒトG-CSFRの発現を確認した。BrdUアッセイを行う前に、細胞をG-CSFWT中で約14~28日間増殖させた。
【0300】
上記のようにG-CSFWT中で増殖した32D-IL-2Rβ細胞をPBSで3回洗浄し、関連するアッセイサイトカイン(サイトカインなし、hIL-2(300IU/ml)、G-CSFWT(30ng/ml)またはG-CSFE(30ng/ml)を含有する新鮮な培地で48時間再プレーティングした。BrdUアッセイ手順は、BD Pharmingen(商標)APC BrdUフローキット(557892)の取扱説明書に従って行い、さらに以下を追加した:細胞をBrdU及びeBioscience(商標)Fixable Viability Dye eFluor(商標)450(1:5000)と30分間共インキュベートした。Cytek Aurora機器を使用して、分析フローサイトメトリーを実行した。
【0301】
結果
BrdUアッセイでは、一本鎖キメラ受容体構築物G-CSFR
WT-ICD
gp130-IL-2Rβまたはヘテロ二量体受容体構築物G-CSFR
WT-ICD
IL-2Rβ+G-CSFR
WT-ICD
γcでトランスフェクトした細胞は、G-CSF
WT(30ng/ml)に反応してhIL-2(300IU/ml)と比較して同等または優れた増殖が示された。細胞は、サイトカインの非存在下では増殖しなかった(
図15を参照)。
【0302】
これらの結果は、G-CSFによる刺激により、一本鎖及びヘテロ二量体キメラ受容体構築物が、細胞増殖を誘発するように活性化され得ることを示す。
【0303】
実施例10:BrdUにより調査したデザイン137のG-CSFR
E
-ICD
IL-2
で形質導入され、野生型またはデザインG-CSF
137
で処理された32D-IL-2Rβ細胞の増殖
SPRまたは共発現アッセイによって判断されるように十分に選択的であったサイトII/IIIの組み合わせデザインを、32D-IL-2Rβ細胞の増殖を誘発する能力についてインビトロで試験した。
【0304】
方法
デザイン137の点変異を、表12~14に記載の構築物に導入した。G-CSFR137-ICDgp130-IL-2Rβ(ホモ二量体)またはG-CSFR137-ICDIL-2Rβ+G-CSFR137-ICDγc(ヘテロ二量体)構築物のクローニング及び発現は、上記と同じ手順に従った。BrdUアッセイを行う前に、細胞をG-CSF137中で約14~28日間増殖させた。
【0305】
G-CSF137中で増殖した32D-IL-2Rβ細胞を、上記のBrdUアッセイ手順を用いて、G-CSF137(30ng/ml)、G-CSFWT(30ng/ml)、hIL-2(300IU/ml)、またはサイトカインなしでの増殖に関してアッセイした。
【0306】
結果
BrdUアッセイでは、一本鎖キメラ受容体構築物G-CSFR
137-ICD
gp130-IL-2Rβまたはヘテロ二量体受容体構築物G-CSFR
137-ICD
IL-2Rβ+G-CSFR
137-ICD
γcで形質導入された細胞は、G-CSF
137(30ng/ml)においてhIL-2(300IU/ml)と比較して同等または優れた増殖が示された。細胞はサイトカインの非存在下では増殖せず、G-CSF
WT(30ng/ml)において劣った増殖を示した(
図16を参照)。
【0307】
これらの結果は、バリアントG-CSFが操作された受容体を特異的に活性化させることを示し;逆に、操作された受容体はバリアントG-CSFによって活性化されるが、野生型G-CSFよりも顕著に活性化されないことを示している。したがって、バリアントG-CSFは、バリアントG-CSFR ECDによってキメラ受容体を特異的に活性化して、キメラ受容体を発現する細胞の増殖を特異的に誘発することができる。
【0308】
実施例11:BrdUにより調査した、野生型G-CSFR-ICD
IL-2
で形質導入され、野生型またはデザインG-CSF
E
で処理された32D-IL-2Rβ細胞の増殖
続いて、32D-IL-2R2Rβ細胞においてペアリングしたシグナル伝達を回復することができたサイトII/IIIの組み合わせデザインを、一本鎖キメラ受容体構築物G-CSFRWT-ICDgp130-IL-2Rβまたはヘテロ二量体受容体構築物G-CSFRWT-ICDIL-2Rβ+G-CSFRWT-ICDγcで形質導入された32D-IL-2R2Rβ細胞の増殖を誘発する能力について試験した。
【0309】
方法
G-CSFRWT-ICDgp130-IL-2Rβ(ホモ二量体)またはG-CSFRWT-ICDIL-2Rβ+G-CSFRWT-ICDγc(ヘテロ二量体)構築物のクローニング及び発現は、上記と同じ手順に従った。BrdUアッセイを行う前に、細胞をG-CSFWT中で約14~28日間増殖させた。
【0310】
G-CSFWT中で増殖した32D-IL-2Rβ細胞を、上記のBrdUアッセイ手順を用いて、G-CSF137(30ng/ml)、G-CSFWT(30ng/ml)、hIL-2(300IU/ml)、またはサイトカインなしでの増殖に関してアッセイした。
【0311】
結果
BrdUアッセイでは、一本鎖キメラ受容体構築物G-CSFR
WT-ICD
gp130-IL-2Rβまたはヘテロ二量体受容体構築物G-CSFR
WT-ICD
IL-2Rβ及びG-CSFR
WT-ICD
γcで形質導入された細胞は、G-CSF
137(30ng/ml)においてG-CSF
WT(30ng/ml)と比較して劣った増殖が示された。細胞は、サイトカインの非存在下では増殖しなかった(
図17を参照)。
【0312】
これらの結果は、バリアントG-CSFが野生型G-CSFRに効率的に結合せず、バリアントG-CSFが操作された受容体を特異的に活性化させるが、野生型G-CSFRは活性化せず、細胞増殖を誘発することを示している。
【0313】
実施例12:ウエスタンブロットにより分析したWTまたはデザイン137のG-CSFR
E
-ICD
IL-2
で形質導入され、野生型またはデザインG-CSF
137
で処理された32D-IL-2Rβ細胞のシグナル伝達
32D-IL-2Rβ細胞の操作されたサイトカイン受容体複合体を介して増殖シグナル伝達を回復することができ、G-CSFWTまたはWT-GCSFR-ICD-IL2の結合を介して有意にシグナル伝達しなかったサイトII/IIIの組み合わせデザインを、G-CSFWTまたはG-CSF137に応答して下流のシグナル伝達分子を活性化させる能力についてウエスタンブロットによって評価した。
【0314】
方法
G-CSFRWT-ICDgp130-IL-2Rβ(ホモ二量体)またはG-CSFRWT-ICDIL-2Rβ+G-CSFRWT-ICDγc(ヘテロ二量体)構築物のクローニング及び発現は、上記と同じ手順に従った。ウエスタンブロットアッセイを実施する前に、細胞をG-CSF137またはG-CSFWTで約14~28日間増殖させた。非形質導入細胞はIL-2において維持した。
【0315】
ウエスタンブロットを行うために、細胞をPBSで3回洗浄し、サイトカインを含まない培地で16~20時間静置した。細胞を、サイトカインなし、IL-2(300IU/ml)、G-CSF137(30ng/ml)、またはG-CSFWT(30ng/ml)で、37℃で20分間刺激した。10mMのHEPES、pH777.9、1mMのMgCl2、0.05mMのEGTA、0.5mMのEDTA、pH8.0、1mMのDTT、1xのPierceプロテアーゼ及びホスファターゼ阻害剤ミニタブレット(A32961)を含有する洗浄緩衝液で細胞を1回洗浄した。0.2%のIgepal CA630(Sigma)を加えた上記洗浄緩衝液中、氷上で、10分間細胞を溶解し、13,000rpm、4℃で10分間遠心分離後、上清(細胞質画分)を回収した。ペレットを、0.42MのNaCl及び20%のグリセロールを加えた上記洗浄緩衝液中で溶解及び再懸濁させた。細胞を氷上で30分間、頻繁にボルテックスしながら溶解し、13,000rpm、4℃で20分間遠心分離した後、核画分(上清)を回収した。細胞質画分と核画分を10分間還元し(70℃)、NuPAGE(商標)4~12%のBis-Trisタンパク質ゲルで泳動した。ゲルをニトロセルロース膜に転写し(Trans-Blot(登録商標)SDセミドライ転写セルにて20Vで60分)、乾燥し、TBS中のOdyssey(登録商標)ブロッキング緩衝液(927-50000)で1時間ブロッキングした。ブロットを、0.1%のTween20を含有するTBS中のOdyssey(登録商標)ブロッキング緩衝液中、4℃で一次抗体(1:1,000)を用いて一晩インキュベートした。使用した一次抗体はCell Signaling Technologiesから入手した:Phospho-Shc(Tyr239/240)抗体#2434、Phospho-Akt(Ser473)(D9E)XP(登録商標)ウサギmAb#4060、Phospho-S6リボソームタンパク質(Ser235/236)抗体#2211、Phospho-p44/42 MAPK(Erk1/2)(Thr202/Tyr204)抗体#9101、β-アクチン(13E5)ウサギmAb#4970、Phospho-Stat3(Tyr705)(D3A7)XP(登録商標)ウサギmAb#9145、Phospho-Stat5(Tyr694)(C11C5)ウサギmAb#9359、及びヒストンH3(96C10)マウスmAb#3638。ブロットを0.1%のTween20を含有するTBSで3回洗浄し、0.1%のTween20を含有するTBS緩衝液中で二次抗体(1:10,000)とともに室温で30~60分間インキュベートした。二次抗体は、Cell Signaling Technologiesから入手した:抗マウスIgG(H+L) (DyLight(商標)800 4XのPEGコンジュゲート)#5257及び抗ウサギIgG(H+L)(DyLight(商標)800 4X PEGコンジュゲート)#5151。ブロットを洗浄し、LI-COR Odysseyイメージャーで露光した。
【0316】
結果
非形質転換32D-IL-2Rβ細胞において、IL-2のみでの刺激に応答した活性化IL-2R関連シグナル伝達分子を検出した。G-CSFRWT-ICDgp130-IL-2RβまたはG-CSFRWT-ICDIL-2Rβ+G-CSFRWT-ICDγcのいずれかを発現する32D-IL-2Rβ細胞において、IL-2またはG-CSFWTに応答した活性化シグナル伝達分子の同様のパターンが観察された。G-CSFRWT-ICDgp130-IL-2Rβを発現するまたはG-CSFRWT-ICDIL-2Rβ+G-CSFRWT-ICDγcを発現する32D-IL-2Rβ細胞のG-CSF137刺激に応答したIL-2R関連シグナル伝達分子の活性化は観察されなかった。G-CSFR137-ICDgp130-IL-2RβまたはG-CSFR137-ICDIL-2Rβ+G-CSFR137-ICDγcを発現する32D-IL-2Rβ細胞において、IL-2またはG-CSF137に応答した活性化シグナル伝達分子の同様のパターンが観察された。G-CSFR137-ICDgp130-IL-2Rβを発現するまたはG-CSFR137-ICDIL-2Rβ+G-CSFR137-ICDγcを発現する32D-IL-2Rβ細胞のG-CSFWT刺激に応答したIL-2R2R2R関連シグナル伝達分子の活性化は観察されなかった。
【0317】
これらの結果は、バリアントG-CSFが、バリアントG-CSFR ECDを発現するキメラ受容体を活性化して、キメラ受容体を発現する細胞における天然型サイトカインシグナル伝達の特徴を誘発することができることを実証している。
【0318】
実施例13~30の方法
初代細胞及び細胞株:レンチウイルスパッケージング細胞株HEK293T/17(ATCC)は、10%ウシ胎児血清及びペニシリン/ストレプトマイシンを含有するDMEM中で培養した。BAF3-IL-2Rβ細胞を、BAF3細胞株へのヒトIL-2Rβサブユニットの安定的トランスフェクションによって事前に生成し、10%ウシ胎児血清、ペニシリン、ストレプトマイシン、及び100IU/mlのヒトIL-2(hIL-2)(PROLEUKIN(登録商標),Novartis Pharmaceuticals Canada)を含有するRPMI-1640において増殖させた。32D-IL-2Rβ細胞株を、32D細胞株へのヒトIL-2Rβサブユニットの安定的トランスフェクションによって事前に生成し、10%ウシ胎児血清、ペニシリン、ストレプトマイシン、及び300IU/mlのhIL-2、または示された他のサイトカインを含有するRPMI-1640において増殖させた。ヒトPBMC由来T細胞(Hemacare)を、3%ヒトAB血清(Sigma-Aldrich,H4522)、及び300IU/mlのhIL-2、または示された他のサイトカインを含有するTexMACS(商標)培地(Milenyi Biotec,130-097-196)において増殖させた。ヒト腫瘍関連リンパ球(TAL)を、T細胞培地(以下の50:50混合物)において、初代腹水試料を14日間培養することにより生成した:1)10%ウシ胎児血清、50uMβ-メルカプトエタノール、10mMのHEPES、2mMのL-グルタミン、ペニシリン、ストレプトマイシン含有RPMI-1640;及び2)最終濃度3000IU/mlのhIL-2を含有するAIM V(商標)培地(ThermoFisher,12055083)。この高用量のIL-2増殖の後、TALを300IU/mlのhIL-2または示された他のサイトカインを含有するT細胞培地において培養した。レトロウイルスパッケージング細胞株Platinum-E(Cell Biolabs,RV-101)を、10%FBS、ペニシリン/ストレプトマイシン、プロマイシン(1mcg/ml)、及びブラストサイジン(10mcg/ml)を含有するDMEMにおいて培養した。
【0319】
レンチウイルスの生成及び32D-IL-2Rβ細胞の形質導入:キメラ受容体構築物をレンチウイルストランスファープラスミドにクローニングし、得られた配列をサンガーシークエンシングにより確認した。トランスファープラスミド及びレンチウイルスパッケージングプラスミドは、リン酸カルシウムトランスフェクション法を用いて、以下のようにHEK293T/17細胞に共トランスフェクトした:細胞は一晩プレーティングし、トランスフェクションの2~4時間前に培地交換した。プラスミドDNA及び水をポリプロピレンチューブ内で混合し、CaCl2(0.25M)を滴下して加えた。2~5分間インキュベートした後、2xのHEPES緩衝生理食塩水(0.28MのNaCl、1.5mMのNa2HPO4、0.1MのHEPES)と1:1で混合することにより、DNAを沈殿させた。沈殿したDNA混合物を細胞上に添加し、37℃、5%のCO2で一晩インキュベートした。翌日、HEK293T/17培地を交換し、細胞をさらに24時間インキュベートした。翌朝、プレートから細胞上清を回収し、軽く遠心分離して破片を除去し、上清を0.45ミクロンフィルターで濾過した。上清をBeckman Optima L-XP超遠心機のSW-32Tiローターを用いて25,000rpmで90分間回転させた。上清を除去し、ペレットを適当量のOpti-MEM培地に再懸濁させた。ウイルスの連続希釈液をBAF3-IL-2Rβ細胞に添加することにより、ウイルス力価を決定した。形質導入の48~72時間後に、細胞を抗ヒトG-CSFR APCコンジュゲート抗体(1:50;Miltenyi Biotec、130-097-308)及びFixable Viability Dye eFluor(商標)450(1:1000、eBioscience(商標)、65-0863-14)とともに4℃で15分間インキュベートして洗浄し、Cytek AuroraまたはBD FACS Caliburフローサイトメーターで分析した。この方法により測定した推定力価を用いて、32D-IL-2Rβ細胞株に、感染多重度(MOI)0.5でキメラ受容体構築物をコードするレンチウイルス上清を形質導入した。形質導入は、適切な量のウイルス上清を細胞に加え、24時間インキュベートした後、培地を交換することによって行った。形質導入の3~4日後に、ヒトG-CSFRの発現を、上記のようにフローサイトメトリーにより測定した。
【0320】
ヒト初代T細胞のレンチウイルス形質導入:PBMC由来T細胞及びTALの形質導入のために、細胞を解凍し、Human T Cell TransAct(商標)(Miltenyi Biotec,130-111-160)の存在下で、製造元のガイドラインに従って、プレーティングした。活性化の24時間後、レンチウイルス上清をMOI0.125~0.5で添加した。活性化の48時間後、細胞を新鮮な培地に分割し、残留ウイルス及び活性化試薬を除去した。形質導入の2~4日後に、上記のようにフローサイトメトリーにより形質導入効率を測定した。CD4+及びCD8+画分の形質導入効率を別々に測定した実験では、ヒトG-CSFRに対する抗体、CD4(1:50,Alexa Fluor(登録商標)700 conjugate,BioLegend,300526)、CD8(1:50,PerCPコンジュゲート、BioLegend,301030)、CD3(1:50,Brilliant Violet 510(商標)コンジュゲート、BioLegend,300448)及びCD56(1:50,Brilliant Violet 711(商標)コンジュゲート,BioLegend、318336)を、Fixable Viability Dye eFluor(商標)450(1:1000)とともに、利用した。
【0321】
ヒトT細胞及び32D-IL-2Rβ増殖アッセイ:上記で生成した、示されたキメラ受容体構築物を発現するヒト初代T細胞または32-IL-2Rβ細胞を、PBS中で3回洗浄し、新鮮な培地で再プレーティングするか、示されたように、その培地を徐々に交換した。完全培地を交換し、野生型ヒトG-CSF(自家生成またはNEUPOGEN(登録商標),Amgen Canada)、変異体G-CSF(自家生成)、hIL-2、またはサイトカインなしのいずれかを含有するようにした。3~5日ごとに、トリパンブルー排除により細胞生存率及び密度を測定し、開始時細胞数に対する増殖倍率を算出した。G-CSFRの発現は、上記のようにフローサイトメトリーにより評価した。
【0322】
CD4+及びCD8+ヒトTAL増殖アッセイ:: TALのCD4+及びCD8+画分の増殖を調べるために、エクスビボ腹水試料を解凍し、CD4+及びCD8+画分を、それぞれ、Human CD4+T細胞単離キット(Miltenyi Biotec、130-096-533)及びHuman CD8+T細胞単離キット(Miltenyi Biotec、130-096-495)を用いて富化させた。サイトカイン含有培地での増殖後、細胞の免疫表現型を、ヒトG-CSFRに対する抗体、CD4(1:50、Alexa Fluor(登録商標)700コンジュゲート、BioLegend、300526)、CD8(1:50、PerCPコンジュゲート、BioLegend、301030、CD3(1:50,Brilliant Violet 510(商標)コンジュゲート、BioLegend,300448)、及びCD56(1:50、Brilliant Violet 711(商標)コンジュゲート、BioLegend、318336)を利用して、Fixable Viability Dye eFluor(商標)450(1:1000)とともに、フローサイトメトリーにより評価した。
【0323】
初代ヒトT細胞免疫表現型解析アッセイ:サイトカイン含有培地での増殖後、T細胞の免疫表現型を、ヒトG-CSFRに対する抗体、CD4(1:100,Alexa Fluor(登録商標)700コンジュゲート、BioLegend,300526またはPEコンジュゲート、eBioscience(商標)、12-0048-42、またはBrilliant Violet 570(商標)コンジュゲート、Biolegend、317445)、CD8(1:100、PerCPコンジュゲート、BioLegend、301030)、CD3(1:100、Brilliant Violet 510(商標)またはBrilliant Violet 750(商標)コンジュゲート、BioLegend、300448または344845)、CD56(1:100、Brilliant Violet 711(商標)コンジュゲート、BioLegend、318336)、CCR7(1:50、APC/Fire(商標)750コンジュゲート、Biolegend、353246)、CD62L(1:33、PE/Dazzle(商標)594コンジュゲート、Biolegend、304842)、CD45RA(1:33、FITCコンジュゲート、Biolegend、304148)、CD45RO(1:25、PerCP-eFluor(登録商標)710コンジュゲート、eBioscience(商標)、46-0457-42)、CD95(1:33、PE-シアニン7コンジュゲート、eBioscience(商標)、25-0959-42)を利用して、Fixable Viability Dye eFluor(商標)450または5106(1:1000)とともに、フローサイトメトリーにより評価した。
【0324】
レトロウイルス形質導入: pMIGトランスファープラスミド(プラスミド#9044、Addgene)は、制限エンドヌクレアーゼクローニングにより変更され、IRES-GFP(BglIIからPacIサイト)を除去し、カスタムマルチクローニングサイトをコードするアニーリングプライマーを導入した。キメラ受容体構築物をカスタマイズしたトランスファープラスミドにクローニングし、得られた配列をサンガーシークエンシングにより確認した。トランスファープラスミドを、上記のように、リン酸カルシウムトランスフェクション法を用いてPlatinum-E細胞にトランスフェクションした。トランスフェクションの24時間後、培地を5mlの新鮮な完全培地に交換した。トランスフェクションの48時間後、細胞上清をプレートから回収し、0.45ミクロンフィルターで濾過した。臭化ヘキサジメトリン(1.6mcg/ml、Sigma-Aldrich)及びマウスIL-2(2ng/ml、Peprotech)を上清に添加した。この精製されたレトロウイルス上清を使用して、以下に記載するようにマウスリンパ球に形質導入した。
【0325】
レトロウイルス上清を回収する48時間前に、24ウェル付着プレートを、PBS中で希釈した非コンジュゲート抗マウスCD3(5mcg/ml、BD Biosciences、553058)及び抗マウスCD28(1mcg/ml、BD Biosciences、553294)抗体でコートし、4℃で保存した。レトロウイルス上清を回収する24時間前に、C57Bl/6Jマウス(自家生成)を、ビクトリア大学動物実験委員会が管理する承認済みの動物実験計画書の下で安楽死させた。脾臓を採取し、マウスT細胞を以下のように単離した:脾臓を手作業で取り除き、100ミクロンフィルターで濾過した。赤血球は、ACK溶解緩衝液(Gibco、A1049201)中で室温で5分間インキュベートすることにより溶解し、その後、血清含有培地で1回洗浄した。CD8a陽性細胞またはPan-T細胞を、特異的ビーズベース分離キット(それぞれMiltenyi Biotec、130-104-075または130-095-130)を使用して単離した。細胞を、マウスT細胞増殖培地(10%FBS、ペニシリン/ストレプトマイシン、0.05mMβ-メルカプトエタノール、及び2ng/mlのマウスIL-2(Peprotech、212-12)を含有するRPMI-1640)中の抗CD3-抗体及び抗CD28-抗体または300IU/mLのヒトIL-2(Proleukin)でコートしたプレートに加えて、37℃、5%CO2で24時間インキュベートした。形質導入当日、培地の約半分を上記で生成したレトロウイルス上清と交換した。このレトロウイルス上清を用いて、30℃で90分間、1000gで細胞をスピンフェクトした。プレートをインキュベーターに0~4時間戻し、その後、培地の約半分を新鮮なT細胞増殖培地と交換した。上記のように、レトロウイルス形質導入を24時間後に繰り返し、合計2回の形質導入を行った。最後の形質導入から24時間後に、T細胞を6ウェルプレートに分割し、抗体刺激から除去した。
【0326】
形質導入の48~72時間後、上記のように、ヒトG-CSFR、CD4(Alexa Fluor 532コンジュゲート、eBioscience(商標)、58-0042-82)、CD8a(PerCP-eFluor 710コンジュゲート、eBioscience(商標)、46-0081-82)、及びFixable Viability Dye eFluor(商標)450(1:1000希釈)を検出するフローサイトメトリーにより形質導入効率を評価した。
【0327】
BrdU取り込みアッセイ:上記のように生成したヒト初代T細胞、32D-IL-2Rβ細胞、またはマウス初代T細胞をPBSで3回洗浄し、関連するアッセイサイトカイン:サイトカインなし、hIL-2(300IU/ml)、野生型または操作されたG-CSF(個々の実験で示された濃度)を含有する新鮮な培地で48時間再プレーティングした。BrdUアッセイ手順は、BD Pharmingen(商標)APC BrdUフローキット(BD Biosciences、557892)の取扱説明書に従って行い、さらに以下を追加した:細胞をBrdU及びFixable Viability Dye eFluor(商標)450(1:5000)と30分間~4時間、37℃で共インキュベートした。Cytek Aurora機器を使用して、フローサイトメトリーを実行した。キメラ受容体を発現するマウスT細胞の増殖を特異的に評価するために、ヒトG-CSFR(1:20希釈)、CD4(1:50希釈)、及びCD8(1:50希釈)の追加染色を、固定化前に、氷上で15分間実施した。
【0328】
ウエスタンブロット:上記のように生成したヒト初代T細胞、32D-IL-2Rβ細胞、またはマウス初代T細胞をPBS中で3回洗浄し、サイトカインを含まない培地で16~20時間静置した。細胞を、サイトカインなし、IL-2(300IU/ml)、野生型G-CSF(個々の実験で示された濃度)、またはG-CSF137(30ng/ml)によって、37℃で20分間刺激した。10mMのHEPES、pH7.9、1mMのMgCl2、0.05mMのEGTA、0.5mMのEDTA、pH8.0、1mMのDTT、及び1xのPierceプロテアーゼ及びホスファターゼ阻害剤ミニタブレット(A32961)を含有する緩衝液で細胞を1回洗浄した。細胞を上記の洗浄緩衝液に溶解し、0.2%のNP-40(Sigma)を氷上で10分間加えた。溶解物を4℃で13000rpmで10分間遠心分離し、上清(細胞質画分)を収集した。ペレット(核タンパク質を含む)を、0.42MのNaCl及び20%のグリセロールを加えた上記洗浄緩衝液中で再懸濁させた。核を氷上で頻繁にボルテックスしながら30分間インキュベートし、13,000rpm、4℃で20分間遠心分離した後、上清(核画分)を回収した。細胞質画分と核画分を10分間還元し(70℃)、NuPAGE(商標)4~12%のBis-Trisタンパク質ゲルで泳動した。ゲルをニトロセルロース膜に転写し(Trans-Blot(登録商標)SDセミドライ転写セルにて20Vで60分)、乾燥し、TBS中のOdyssey(登録商標)ブロッキング緩衝液(927-50000)で1時間ブロッキングした。ブロットを、0.1%のTween20を含有するTBS中のOdyssey(登録商標)ブロッキング緩衝液中、4℃で一次抗体(1:1,000)を用いて一晩インキュベートした。使用した一次抗体はCell Signaling Technologiesから入手した:Phospho-Jak1(Tyr1034/1035)(D7N4Z)ウサギmAb#74129、Phospho-Jak2(Tyr1007/1008)#3771、Phospho-Jak3(Tyr980/981)(D44E3)ウサギmAb#5031、Phospho-p70 S6キナーゼ(Thr421/Ser424)抗体#9204、Phospho-Shc(Tyr239/240)抗体#2434、Phospho-Akt(Ser473)(D9E)XP(登録商標)ウサギmAb#4060、Phospho-S6リボソームタンパク質(Ser235/236)抗体#2211、Phospho-p44/42 MAPK(Erk1/2)(Thr202/Tyr204)抗体#9101、β-アクチン(13E5)ウサギmAb#4970、Phospho-STAT1(Tyr701)(58D6)ウサギmAb#9167、Phospho-STAT3(Tyr705)(D3A7)XP(登録商標)ウサギmAb#9145、Phospho-STAT4(Tyr693)抗体#5267、Phospho-STAT5(Tyr694)(C11C5)ウサギmAb#9359、及びヒストンH3(96C10)マウスmAb#3638。ブロットを0.1%のTween20を含有するTBSで3回洗浄し、0.1%のTween20を含有するTBS緩衝液中で二次抗体(1:10,000)とともに室温で30~60分間インキュベートした。Cell Signaling Technologiesから入手した二次抗体は、抗マウスIgG(H+L) (DyLight(商標)800 4XのPEGコンジュゲート)#5257及び抗ウサギIgG(H+L)(DyLight(商標)800 4X PEGコンジュゲート)#5151であった。ブロットを洗浄し、LI-COR Odysseyイメージャーで露光した。
【0329】
リン酸化タンパク質を検出するフローサイトメトリー:上記のように生成したヒト初代T細胞、32D-IL-2Rβ細胞、またはマウス初代T細胞をPBS中で3回洗浄し、サイトカインを含まない培地で16~20時間静置した。細胞を、示されたようにFixable Viability Dye eFluor(商標)450(1:1000)、及び抗G-CSFR(1:20)、抗CD4(1:50)、及び抗CD8a(1:50)の存在下、37℃で20分間、サイトカインなし、IL-2(300IU/ml)、または野生型G-CSF(100ng/ml)で刺激した。細胞をペレット化し、BD Phosflow(商標)固定緩衝液I(BD Biosciences、557870)を用いて室温で15分間固定化した。細胞を洗浄後、BD Phosflow(商標)Perm緩衝液III(BD Biosciences、558050)を用いて氷上で15分間透過処理した。細胞を2回洗浄し、BD Phosflow(商標)PEマウス抗Stat3(pY705)(BD Biosciences、612569)またはPEマウスIgG2a、κアイソトープコントロール(BD Biosciences、558595)20μlを含有する緩衝液に再懸濁した。細胞を洗浄し、Cytek Aurora機器を使用して、フローサイトメトリーを実行した。
【0330】
実施例13:G2R-1、G-CSFR/IL-2RΒサブユニットのみ、MYCタグ付きG-CSFR/γ-Cサブユニットのみ、または全長G-CSFRを発現するヒトT細胞の増殖。
PBMC由来T細胞または腫瘍関連リンパ球(TAL)に、
図1に示すキメラ受容体構築物をコードするレンチウイルスで形質導入し、細胞を洗浄した後、示されたサイトカインで再プレーティングした。細胞を3~4日ごとに計数した。G/γcは、そのN末端にMycエピトープをタグ付けされ(Myc/G/γc)、G/IL-2Rβは、そのN末端にFlagエピトープをタグ付けされ(Flag/G/IL-2Rβ);これらのエピトープタグは、フローサイトメトリーによる検出を補助し、受容体の機能には影響を与えない。予想通り、すべてのT細胞培養物は陽性対照サイトカインであるIL-2(300IU/ml)に反応して増殖を示した。G-CSF(100ng/ml)で刺激した後、PMBC由来のT細胞及びG2R-1キメラサイトカイン受容体を発現するTALについてのみ、増殖が観察された(
図22)。レンチウイルスの形質導入効率は、T細胞の100%未満が、示されたキメラサイトカイン受容体を発現するように100%未満であったことに留意されたい。これは、IL-2と比較してG2R-1によって媒介される増殖率が低いことの原因であると考えられる。同様に、増殖の増加は、G-CSFRキメラ受容体サブユニットG2R-1及びG2R-2を発現し、G-CSFで刺激された32D-IL-2Rβ細胞(ヒトIL-2Rβサブユニットを安定して発現する)において観察された(
図21)。T細胞とは対照的に、G/IL-2Rβキメラ受容体サブユニットのみを発現する32D-IL-2Rβ細胞は、G-CSFに反応して増殖した(
図2);G-CSF誘導性増殖は、G/γcキメラ受容体サブユニットのみを発現する32D-IL-2Rβ細胞では見られなかった(
図2)。
【0331】
これらの結果から、G-CSFはG2R-1キメラ受容体を発現するPMBC由来のT細胞及びTAL、ならびにG/IL-2Rβ、G2R-1、及びG2R-2キメラ受容体を発現する32D-IL-2Rβ細胞の増殖及び生存を刺激することができることが示された。
【0332】
実施例14:G-CSFR ECDは、G/IL-2RΒ、G2R-1、及びG2R-2で形質導入された細胞の表面に発現する。
G2R-2キメラサイトカイン受容体をコードするレンチウイルスベクター(
図23及び25に概略的に示す)を形質導入した後の32D-IL-2Rβ細胞株、PBMC由来のヒトT細胞及びヒト腫瘍関連リンパ球に対してフローサイトメトリーを行い、細胞が細胞表面にG-CSFR ECDを発現するかどうかを測定した。G-CSFR陽性細胞は、すべての形質導入された細胞タイプにおいて検出された(
図26)。別の実験では、G/IL-2Rβ、G2R-1、及びG2R-2キメラ受容体を発現する32D-IL-2Rβ細胞は、フローサイトメトリーによりG-CSFR ECDに対して陽性であった(
図21B~Dの下段)。
【0333】
これらの結果は、G/IL-2Rβ、G2R-1、及びG2R-2キメラ受容体が細胞表面上に発現していることを示すものである。
【0334】
実施例15:非形質導入細胞と比較したG2R-2を発現する細胞の増殖
ヒトPBMC由来のT細胞及びヒト腫瘍関連リンパ球に、G2R-2受容体構築物(
図4及び
図6)をレンチウイルスを形質導入し、洗浄し、示されたサイトカインで再プレーティングした。いくつかの実験では、T細胞もTransActで刺激することにより定期的に再活性化させた。生細胞は3~4日ごとに計数した。PMBC由来のT細胞(
図27A)及び腫瘍関連リンパ球(
図27B、Cの2つの独立した実験)の増殖は、G2R-2キメラ受容体を発現する細胞においてG-CSF(100ng/ml)で刺激した後に観察されたが、非形質導入細胞では観察されなかった。
【0335】
これらの結果は、G-CSF誘導性のG2R-2キメラ受容体の活性化が、免疫細胞の増殖及び生存を誘発するのに十分であることを示す。
【0336】
実施例16:非形質導入細胞と比較した、G2R-2を発現するCD4またはCD8選択ヒト腫瘍関連リンパ球の増殖及び免疫表現型
CD4選択及びCD8選択ヒトT細胞に、G2R-2をコードするレンチウイルスベクター(
図25)を形質導入するか、または示された場所では形質導入しないままにした。細胞を洗浄し、示されたサイトカインで再プレーティングして3~4日ごとに計数した。G2R-2を発現するCD4またはCD8選択TALの増殖は、G-CSF(100ng/ml)またはIL-2(300IU/ml)での刺激後に観察されたが、添加したサイトカインがない場合(培地のみ)では観察されなかった(
図28及び
図29)。
図28では、各線は5つの患者試料のうちの1つからの結果を表す。
【0337】
フローサイトメトリーによる免疫表現型解析は、G-CSFまたはIL-2で培養したT細胞が、これらの培養条件下で、CD4+またはCD8+の特徴を保持し(
図30A)、NK細胞表現型(CD3-CD56+)を欠き(
図30A)、CD45RA-CCR7-Tエフェクターメモリー(T
EM)表現型を示した(
図30B)ことを示した。
【0338】
G-CSFで刺激するとG2R-2を発現するT細胞の細胞周期の進行が促進することを確認するために、BrdUアッセイを行った(
図31)。T細胞は、アッセイの前に、示されているように、IL-2またはG-CSFでの培養によって選択された。腫瘍関連リンパ球(
図31A)及びPBMC由来T細胞(
図31B)の両方を評価した。
【0339】
これらの結果は、G-CSFがキメラサイトカイン受容体G2R-2の活性化により、初代ヒトTALの細胞周期の進行と長期的増殖を選択的に活性化できることを示す。また、これらの結果は、ホモ二量体形成によるG2R-2キメラ受容体の活性化が、TALにおけるサイトカイン様シグナル伝達及び増殖を活性化させるのに十分であることを示す。さらに、G2R-2を発現するTALは、G-CSFの離脱により、IL-2の離脱に対する反応と同様に細胞死を起こすというサイトカイン依存性を維持している。G-CSFで培養したTALは、IL-2で培養したTALと同様の免疫表現型を維持する。
【0340】
実施例17:G-CSFに応答したG2R-2を発現する初代マウスT細胞の増殖。
G-CSFによる刺激時の、G2R-2または一本鎖G/IL-2Rβ(G2R-1の構成要素)を発現する初代マウスT細胞とモック形質導入細胞の増殖を評価するために、BrdU取り込みアッセイを実施した。すべての細胞を、アッセイ前にIL-2で3日間増殖させた。G2R-2またはG/IL-2Rβの細胞表面発現は、フローサイトメトリーにより確認した(
図32A)。示されたように、次に細胞をIL-2(300IU/ml)、野生型G-CSF(100ng/ml)、またはサイトカインなしでプレーティングした。G-CSFによる刺激後の細胞周期進行の促進は、非形質導入細胞または一本鎖G/IL-2Rβを発現する細胞よりもG2R-2を発現する細胞において観察された(
図32B、C)。パネルB及びCは、それぞれ、すべての生細胞またはG-CSFR+細胞についての結果を示す。
【0341】
これらの結果は、G-CSF誘導性ホモ二量化に応答して、G2R-2キメラ受容体が一本鎖G/IL-2Rβ受容体よりも効率的であり、マウスT細胞においてサイトカイン様シグナル伝達及び増殖を活性化させることを示す。
【0342】
実施例18:G-CSFまたはIL-2に応答したG2R-2を発現するヒト初代T細胞におけるサイトカイン関連細胞内シグナル伝達イベントの活性化
キメラサイトカイン受容体が、実際にIL-2と同様のサイトカインシグナル伝達を活性化させることができることを確認するために、サイトカイン受容体がさまざまなシグナル伝達分子を活性化させる能力を評価した。G2R-2を発現する腫瘍関連リンパ球及びPBMC由来T細胞は、あらかじめG-CSFにおいて、非形質導入細胞は、あらかじめIL-2において増殖させた。細胞を洗浄し、次にIL-2(300IU/ml)、野生型G-CSF(100ng/ml)、またはサイトカインなしで刺激し、示されたシグナル伝達分子に対する抗体を用いて細胞溶解物にウエスタンブロットを行った(
図33)。パネルA及びBはTALの結果を示し、パネルCはPBMC由来T細胞の結果を示す。G2R-2を発現するT細胞は、G-CSFにより刺激すると、非形質導入細胞または形質導入細胞のIL-2刺激後に見られるのと同程度に(G-CSFがJak2リン酸化を誘発したのに対し、IL-2はJak3リン酸化を誘発したという予想される例外を除いて)、IL-2関連シグナル伝達分子を活性化した。
【0343】
これらの結果は、G2R-2キメラ受容体が、G-CSFにより刺激すると、IL-2受容体様サイトカイン受容体シグナル伝達を活性化させることができることを確認するものである。
【0344】
実施例19: G2R-2を発現するマウス初代T細胞において、G-CSFに応答してサイトカインシグナル伝達が活性化される。
キメラサイトカイン受容体G2R-2または一本鎖G/IL-2Rβ(G2R-1由来)が、サイトカインシグナル伝達を活性化させることができるかどうかを評価するために、これらのサイトカイン受容体のさまざまなシグナル伝達分子を活性化させる能力を、G2R-2またはG/IL-2Rβを発現するマウス初代T細胞とモック形質導入細胞の細胞溶解物のウエスタンブロットによって評価した。すべての細胞を、アッセイ前にIL-2で3日間増殖させた。その後、細胞を洗浄し、IL-2(300IU/ml)、野生型G-CSF(100ng/ml)、またはサイトカインなしで刺激した。G2R-2を発現するT細胞は、G-CSFにより刺激すると、非形質導入細胞または形質導入細胞のIL-2刺激後に見られるのと同程度に(G-CSFがJak2リン酸化を誘発したのに対し、IL-2はJak3リン酸化を誘発したという予想される例外を除いて)、IL-2関連シグナル伝達分子を活性化した(
図34)。対照的に、G/IL-2Rβは、G-CSFへの曝露時にサイトカインシグナル伝達を活性化しなかった。
【0345】
これらの結果により、G2R-2キメラ受容体がG-CSF刺激によるホモ二量体化によってIL-2受容体様サイトカイン受容体シグナル伝達を活性化させることができるのに対し、一本鎖G/IL-2RβのみはG-CSFに応答したホモ二量体化によってサイトカインシグナル伝達を活性化させることができないことが、初代マウスT細胞において確認された。
【0346】
実施例20:キメラ受容体の発現は、直交G-CSFによる刺激後、32D-IL-2RΒ細胞及び初代マウスT細胞の増殖をもたらす。
キメラサイトカイン受容体を発現する細胞が直交G-CSFに応答して選択的に活性化され得るかどうかを判定するために、32D-IL-2Rβ細胞または初代マウスT細胞に、野生型G-CSFR ECDを含むキメラ受容体G2R-1及びG2R-2(G2R-1 WT ECD、G2R-2 WT ECD)と、アミノ酸置換R41E、R141E、及びR167Dを有するG-CSFR ECDを含むキメラ受容体G2R-1及びG2R-2(G2R-1 134 ECD、G2R-2 134 ECD)を形質導入した。細胞を、IL-2、野生型G-CSF、またはG2R-1 134 ECD、及びG2R-2 134 ECDに結合できるが野生型G-CSFRへの結合が著しく低下した直交G-CSF(130 G-CSF)のいずれかで刺激した。BrdU取り込みアッセイを行い、サイトカイン刺激による細胞周期の進行の促進能力を評価した(
図3)。G2R-2 134 ECDを発現する32D-IL-2Rβ細胞は、130 G-CSF(アミノ酸置換E46R、L108K、及びD112Rを保有;30ng/ml)で刺激すると細胞周期の進行を示したが、野生型G-CSF(30ng/ml)で刺激すると細胞周期の進行は起こらなかった。操作されたサイトカイン:受容体ECDペアの直交性は、「クリスクロス」増殖アッセイで初代マウスT細胞を刺激することによってさらに示され、このアッセイでは、WT、130、134、304、または307 ECDを有するG2R-3(
図23)を発現する細胞がWT、130、304または307サイトカイン(100ng/ml)で刺激された(
図36)。130 ECDは、アミノ酸置換:R41E及びR167Dを有する。304 ECDは、アミノ酸置換:R41E、E93K、及びR167Dを有し、304サイトカインは、アミノ酸置換:E46R、L108K、D112R、及びR147Eを有する。307 ECDは、アミノ酸置換:R41E、D197K、D200K、及びR288Eを有し、307サイトカインは、アミノ酸置換:S12E、K16D、E19K、及びE46Rを有する。
図36のパネルA及びBは、反復実験を表す。
【0347】
これらの結果は、直交キメラサイトカイン受容体を発現する細胞が、直交G-CSF CSFで刺激すると選択的な活性化及び細胞周期の進行が可能であることを示す。
【0348】
実施例21:細胞内シグナル伝達は、32D-IL2RΒ細胞、及び直交キメラサイトカイン受容体を発現する初代ヒトT細胞で活性化され、直交G-CSFにより刺激される。
キメラサイトカイン受容体を発現する細胞が直交G-CSFに応答して細胞内サイトカインシグナル伝達イベントを選択的に活性化し得るかどうかを判定するために、32D-IL-2Rβ細胞に、野生型G-CSFR ECDを含むキメラ受容体G2R-1及びG2R-2(G2R-1 WT ECD及びG2R-2 WT ECD)と、アミノ酸置換R41E、R141E、及びR167Dを有するG-CSFR ECDを含むキメラ受容体G2R-1及びG2R-2(G2R-1 134 ECD、G2R-2 134 ECD)を形質導入した。細胞を、IL-2(300IU/ml)、野生型G-CSF(30ng/ml)、またはG2R-1 134 ECD、G2R-2 134 ECDに結合できるが野生型G-CSFRへの結合が著しく低下した直交G-CSF(130 G-CSF-E46R_L108K_D112R;30ng/ml)のいずれかで刺激した。サイトカインへの曝露時にサイトカインシグナル伝達を活性化させる細胞の能力を評価するために、細胞溶解物に対してウエスタンブロットを実施した(
図37)。G2R-2 134 ECDを発現する細胞は、野生型G-CSFではなく130G-CSFで刺激時のサイトカインシグナル伝達の証拠を示した。さらに、G2R-2 WT ECDを発現する細胞は、130G-CSFで刺激するとサイトカインシグナル伝達を活性化させることができなかった。
【0349】
操作されたサイトカイン:受容体ペアの直交性は、初代マウスT細胞をウエスタンブロット分析にかけることによってさらに示され、この分析では、WT、134、または304 ECD(R41E_E93K_R167D)を有するG2R-3を発現する細胞がWT、130、または304 G-CSF(E46R_L108K_D112R_R147E;100ng/ml)で刺激され、示されたシグナル伝達イベントを測定した(
図38A)。IL-2(300IU/ml)及びIL-12(10ng/ml)は、対照サイトカインとして機能した。G2R-3 WT ECDを発現する細胞は、IL-2、IL-12、またはWT G-CSFによる刺激時のサイトカインシグナル伝達の証拠を示した。G2R-3 134 ECDを発現する細胞は、IL-2、IL-12、または130 G-CSFによる刺激時のサイトカインシグナル伝達の証拠を示した。G2R-3 304 ECDを発現する細胞は、IL-2、IL-12、または304 G-CSFによる刺激時のサイトカインシグナル伝達の証拠を示した。
【0350】
G2R-3の3つのECDバリアントの細胞表面発現は、フローサイトメトリーによって確認した(
図38B)。
【0351】
これらの結果は、直交キメラサイトカイン受容体を発現する細胞が、直交G-CSFで刺激すると細胞内サイトカインシグナル伝達イベントを選択的に活性化できることを示す。
【0352】
実施例22:G2R-3の発現は、初代ヒトT細胞において、増殖、細胞周期の進行、ならびにサイトカイン関連細胞内シグナル伝達及び免疫表現型をもたらす
G2R-3キメラ受容体が初代ヒトT細胞においてG-CSFで刺激するとサイトカインシグナル伝達関連イベントを促進できるかどうかを判定するために、TALにG2R-3をコードするレンチウイルスベクターを用いて形質導入した。T細胞増殖アッセイを実施して、IL-2(300IU/ml)、野生型G-CSF(100ng/ml)、またはサイトカインなしでの刺激時における細胞の増殖を試験した。生細胞は3~4日ごとに計数した。非形質導入対応物とは対照的に、G2R-3を発現する初代TALは、G-CSFに応答して培養液中で増殖させた(
図40A)。G-CSFによる刺激時にサイトカインシグナル伝達イベントが活性化されたかどうかを判定するために、細胞溶解物にウエスタンブロットを行い、細胞内シグナル伝達を評価した。細胞を増殖アッセイから回収し、洗浄した後、IL-2(300IU/ml)または野生型G-CSF(100ng/ml)で刺激した。G2R-3を発現する初代TALは、G-CSFがJak2リン酸化を誘発したのに対し、IL-2がJak3リン酸化を誘発したという予想される例外を除いて、G-CSFに応答してIL-2関連シグナル伝達イベントを実証した(
図40B)。
【0353】
G-CSFによる刺激時の細胞周期の進行を評価するために、BrdU取り込みアッセイを実施した。細胞を増殖アッセイから回収し、洗浄した後、IL-2(300IU/ml)、野生型G-CSF(100ng/ml)、またはサイトカインなしにおいて再プレーティングした。G2R-3を発現する初代TALは、G-CSFに応答して細胞周期の進行を示した(
図40C)。
【0354】
G2R-3を発現する細胞のG-CSF誘導性増殖は、初代PBMC由来のヒトT細胞を使用しても実証された(
図41)。G2R-3 WT ECDを発現する細胞は、WT G-CSFに応答して増殖したが、培地のみでは増殖しなかった(
図41A)。細胞が外因性サイトカインに継続的に依存していることを実証するために、培養の21日目に、G-CSF増殖条件の細胞を洗浄し、WT G-CSF(100ng/mL)、IL-7(20ng/mL)+IL-15(20ng/mL)、または培地のみで再プレーティングした。G-CSFまたはIL-7+IL-15の存在下で再プレーティングされた細胞のみが、時間経過とともに生存力を維持した。
【0355】
フローサイトメトリーによって評価されるG-CSFR ECDの発現は、CD4+及びCD8+T細胞の両方において、増殖の21~42日目の間、安定したままであった(
図41B)。
【0356】
ウエスタンブロットにより、G2R-3を発現する初代PBMC由来T細胞は、G-CSFに応答してIL-2関連シグナル伝達イベントを示した(
図42A)。WT G-CSFまたはIL-7+IL-15において42日間増殖した初代PBMC由来T細胞に対して、フローサイトメトリーに基づく免疫表現型解析を実施した。G2R-3 WT ECDを発現し、G-CSF中で培養した細胞は、IL-7+IL-15中で培養した非形質導入細胞と同様の表現型を保持し、幹細胞様メモリーT細胞表現型(T
SCM)を示すCD62L+、CD45RO+表現型を主に示した(
図42B、C)。同様に、セントラルメモリー(T
CM)、エフェクターモリー(T
EM)、及び終末分化(T
TE)T細胞の画分も類似していた。
【0357】
これらの結果は、G2R-3キメラサイトカイン受容体が、サイトカインシグナル伝達イベントを活性化し、初代細胞における細胞周期の進行及び増殖を促進することができることを確認している。G2R-3を発現し、G-CSF中で長期的に増殖したT細胞の免疫表現型は、IL-7+IL-15中で増殖した非形質導入細胞と類似している。
【0358】
実施例23:直交G-CSFは、直交ECDを有するG2R-3を発現する初代ヒトT細胞における増殖及び拡大増殖を誘発する
304(R41E_E93K_R167D)または307(R41E_D197K_D200K_R288E) ECDを有するキメラサイトカイン受容体G2R-3が直交リガンド130、304、または307 G-CSFによる刺激に応答して増殖及び拡大増殖を誘発できるかどうかを評価した。初代PBMC由来ヒトT細胞にGR-3 304 ECDまたはG2R-3 307(R41E_D197K_D200K_R288E)ECDをコードするレンチウイルスベクターを用いて形質導入した。IL-2(300IU/ml)、304 G-CSF(100ng/ml)、307 G-CSF(100ng/ml)、またはサイトカインなしで培養したときの細胞の増殖倍率を評価するためにT細胞増殖アッセイを実施した。生細胞は3~4日ごとに計数した。G2R-3 304 ECDを発現するT細胞を、IL-2または304 G-CSFに応答して培養液中で増殖させた(
図43A)。G2R-3 307 ECDを発現するT細胞を、IL-2または307 G-CSFに応答して培養液中で増殖させた(
図43B)。非形質導入T細胞のみを、IL-2に応答して増殖させた(
図43C)。
【0359】
BrdU取り込みアッセイを、130、304、及び307 G-CSFによる刺激時の細胞周期の進行を評価するために、クリスクロスデザインで実施した。細胞を増殖アッセイから回収し、洗浄した後、IL-2(300IU/ml)、130G-CSF(100ng/ml)、304G-CSF(100ng/ml)、307G-CSF(100ng/ml)、またはサイトカインなしで再プレーティングした。G2R-3 304 ECDを発現する初代ヒトT細胞は、130または304 G-CSFに応答した細胞周期の進行を示したが、307 G-CSFには応答しなかった(
図44)。G2R-3 307 ECDを発現するT細胞は、307 G-CSFに応答した細胞周期の進行を示したが、130または304 G-CSFには応答しなかった。すべてのT細胞は、IL-2に応答して細胞周期の進行を示した。
【0360】
この結果は、キメラ受容体G2R-3 304 ECD及びG2R-3 307 ECDが、それぞれ直交304または307 G-CSFで刺激すると、初代ヒトCD4+及びCD8+T細胞の選択的な細胞周期の進行及び増殖を誘発することができることを示す。さらに、130 G-CSFは、G2R-3 304 ECDを発現する細胞の増殖を刺激することができるが、G2R-3 307 ECDを発現する細胞の増殖は刺激しない。
【0361】
実施例24:G-CSFR ECDは、G21R-1、G21R-2、G12R-1及びG2R-3キメラ受容体構築物で形質導入された初代ヒト腫瘍関連リンパ球(TAL)の表面に発現される。
キメラサイトカイン受容体構築物が初代ヒト腫瘍関連リンパ球(TAL)の表面上で発現できるかどうかを評価するために、TALにG21R-1、G21R-2、G12R-1、及びG2R-3キメラ受容体をコードするレンチウイルスベクターを用いて形質導入し、細胞をフローサイトメトリーによって細胞表面上のG-CSFR ECD発現について試験した(
図39)。4つのキメラサイトカイン受容体デザインすべてについて、G-CSFR ECD陽性細胞が検出された。
【0362】
これらの結果は、G21R-1、G21R-2、G12R-1、及びG2R-3キメラ受容体が初代細胞の表面上で発現できることを示す。これらの結果は、G-CSFR ECDキメラ受容体のデザインが初代細胞の表面上で発現していることも示す。
【0363】
実施例25:G-CSFR ECDは、G12R-1及びG21R-1キメラ受容体構築物で形質導入された初代マウスT細胞の表面に発現される
G12R-1及びG21R-1キメラ受容体が初代T細胞の表面上で発現することができるかどうかを判定するために、初代マウスT細胞にG12R-1及びG21R-1キメラ受容体をコードするレトロウイルスベクターを用いて形質導入し、フローサイトメトリーにより分析した(
図45)。
【0364】
この結果は、G-CSFR ECDが、G12R-1及びG21R-1をコードするレトロウイルスベクターで形質導入された初代マウスCD4+及びCD8+T細胞の表面上に発現していることを示す。
【0365】
実施例26:G-CSFは、G21R-1またはG21R-2を発現する初代PBMC由来ヒトT細胞においてサイトカインシグナル伝達イベントを誘発する
G21R-1及びG21R-2構築物が初代細胞においてサイトカインシグナル伝達イベントを誘発することができるかどうかを判定するために、初代PBMC由来ヒトT細胞に、G21R-1またはG21R-2キメラサイトカイン受容体をコードするレンチウイルスベクターを用いて形質導入した。細胞をphospho-STAT3(p-STAT3)特異的抗体で細胞内染色し、フローサイトメトリーにより評価し、STAT3活性化の尺度であるSTAT3リン酸化の程度を測定した(
図46)。G-CSF(100ng/ml)で刺激すると、G21R-1またはG21R-2のいずれかで形質導入したG-CSFR陽性細胞のサブセットにおいて、リン酸化STAT3を発現する細胞数が増加した。対照的に、G-CSFR陰性(すなわち非発現)細胞は、G-CSFで刺激してもリン酸化STAT3の増加を示さなかったが、IL-21で刺激すると増加した。
【0366】
これらの結果は、G21R-1及びG21R-2キメラ受容体が、初代ヒトT細胞においてG-CSFを刺激すると、IL-21関連サイトカインシグナル伝達イベントを活性化できることを示す。
【0367】
実施例27:G-CSFは、G21R-1またはG-12R-1を発現する初代マウスT細胞において細胞内シグナル伝達イベントを誘発する
キメラサイトカイン受容体G21R-1がサイトカインシグナル伝達イベントを活性化できるかどうかを判定するために、初代マウスT細胞にG21R-1をコードするレトロウイルスベクターを用いて形質導入し、フローサイトメトリーにより評価して、G-CSFによる刺激時にリン酸化STAT3を検出した。生細胞をCD8またはCD4でゲーティングし、サイトカインなし、IL-21(1ng/ml)、またはG-CSF(100ng/ml)での刺激後、phospho-STAT3陽性染色細胞の割合をCD8及びCD4細胞集団について測定した。G-CSFで刺激すると、G21R-1を発現する細胞(非形質導入細胞ではない)は、リン酸化STAT3の量の増加を示した(
図47A及び47B)。G-CSFで刺激するとG21R-1またはG12R-1を発現する細胞の細胞内サイトカインシグナル伝達を評価するためにウエスタンブロットを実施した。予想通り、G21R-1を発現し、G-CSFで刺激された細胞は、STAT3のリン酸化の増加を示し、phospho-STAT4及びphospho-STAT5においてわずかに増加した(
図47C)。また予想通り、G12R-1を発現する細胞では、G-CSFに応答して、STAT4の強いリン酸化が見られた。G-CSFは、モック形質導入細胞においてシグナル伝達イベントを誘発しなかった。(G12R-1群では、陽性対照(hIL-12 10ng/ml)がシグナル伝達イベントを誘発しなかったと思われることに留意されたい;これは、マウスIL-12RへのヒトIL-12の結合が不十分なためである可能性がある。)
【0368】
結果は、G21R-1及びG12R-1が、G-CSFでの刺激時に初代マウスT細胞においてサイトカインシグナル伝達イベントを誘発できることを示す。
【0369】
実施例28:G-CSFは、G2R-2、G2R-3、G7R-1、G21/7R-1、G27/2R-1、G21/2R-1、G12/2R-1、またはG21/12/2R-1を発現する初代マウスT細胞において増殖及び細胞内シグナル伝達イベントを誘発する
キメラサイトカイン受容体によって媒介されるサイトカインシグナル伝達イベント及び細胞増殖を評価するために、初代マウスT細胞にG2R-2、G2R-3、G7R-1、G21/7R-1、G27/2R-1、G21/2R-1、G12/2R-1、またはG21/12/2R-1をコードするレトロウイルスベクターを用いて形質導入した。G-CSFによる刺激時の細胞周期の進行を評価するために、BrdU取り込みアッセイを実施した。細胞を回収し、洗浄した後、IL-2(300IU/ml)、野生型G-CSF(100ng/ml)、またはサイトカインなしにおいて再プレーティングした。G-CSF誘導性細胞周期の進行は、G2R-2、G2R-3、G7R-1、G21/7R-1、もしくはG27/2R-1(
図48A、48B)、またはG21/2R-1、G12/2R-1、もしくはG21/12/2R-1を発現する初代マウスT細胞において見られた(
図49A、49B)。G-CSFR ECDの発現は、フローサイトメトリーによっても検出可能であった(
図48C、49C)。
【0370】
ウエスタンブロットにより、示されたキメラサイトカイン受容体を発現する細胞において、G-CSF(100ng/ml)に応答して複数のサイトカインシグナル伝達イベントが観察されたが、モック形質導入細胞においては観察されなかった(
図48D、49D)。一般に、観察されたサイトカインシグナル伝達イベントは、さまざまなICDデザインに組み込まれたシグナル伝達ドメインに基づいて予想通りであった(
図23及び
図24)。一例として、G7R-1キメラ受容体は、STAT5のリン酸化を誘発し(
図48D)、これは、IL-7Rα(
図23)からSTAT5結合部位が組み込まれたことに起因すると予想される。第2の例として、G21/2R-1キメラ受容体は、STAT3のリン酸化を誘発し(
図49D)、これは、G-CSFR(
図24)からSTAT3結合部位が組み込まれたことに起因すると予想される。第3の例として、G12/2R-1キメラ受容体は、STAT4のリン酸化を誘発し、これはIL-12Rβ2(
図24)からSTAT4結合部位が組み込まれたことに起因すると予想される。他のキメラサイトカイン受容体は、細胞内シグナル伝達イベントの他の明確に異なるパターンを示した。
【0371】
結果は、G2R-2、G2R-3、G7R-1、G21/7R-1、G27/2R-1、G21/2R-1、G12/2R-1、及びG21/12/2R-1が、G-CSFで刺激すると、初代マウスT細胞におけるサイトカインシグナル伝達イベント及び増殖を誘発することができることを示す。さらに、キメラ受容体のICDに異なるシグナル伝達ドメインを組み込むことにより、細胞内シグナル伝達イベントの異なるパターンを生成することができる。
【0372】
実施例29:直交G-CSFは、直交ECDを有するG12/2R-1を発現する初代ヒトT細胞において、拡大増殖、増殖、サイトカイン関連細胞内シグナル伝達、及び免疫表現型を誘発する
134 ECDを有するキメラサイトカイン受容体G12/2R-1が、直交リガンド130 G-CSFでの刺激に応答して増殖及び拡大増殖を誘発できるかどうかを判定するために、初代PBMC由来ヒトT細胞にG12/2R-1 134 ECDをコードするレンチウイルスベクターを用いて形質導入した。IL-2(300IU/ml)、130 G-CSF(100ng/ml)、またはサイトカインなしで培養したときの細胞の増殖倍率を評価するためにT細胞増殖アッセイを実施した。生細胞は4~5日ごとに計数した。G12/2R-1 134 ECDを発現する初代ヒトT細胞は、IL-2または130 G-CSFに応答して培養液中で増殖したが(
図50A)、培地のみでは限定的な一過性の増殖を示した。
【0373】
この実験の19日目に、130 G-CSFまたはIL-2で増殖させたT細胞を3回洗浄し、IL-2、130 G-CSF、または培地のみで再プレーティングした。培地のみでは、T細胞は生存能力の低下及び数の減少を示した(
図50B)。対照的に、IL-2またはG-CSF 130で再プレーティングされたT細胞は、継続的な生存能力及び安定した数を示した。
【0374】
G-CSF受容体に対する抗体を用いたフローサイトメトリーによって検出されたG12/2R-1 134 ECDの発現は、130 G-CSFによる刺激によって増殖したCD4+及びCD8+T細胞の両方において4日目から16日目まで増加した(
図50C)。130 G-CSFによる刺激時の細胞周期の進行を評価するために、BrdU取り込みアッセイを実施した。
【0375】
BrdUアッセイによって細胞周期の進行を評価するために、細胞を増殖アッセイから回収し、洗浄した後、IL-2(300IU/ml)、IL-2、及びIL-12(10ng/ml)、130G-CSF(300ng/ml)またはサイトカインなしで再プレーティングした。G12/2R-1 134 ECDを発現する初代ヒトT細胞は、130 G-CSF、IL-2、またはIL-2+IL-12に応答して細胞周期の進行を示したが、非形質導入細胞は、IL-2またはIL-2+IL-12に対してのみ応答した(
図51A)。
【0376】
16日間の培養期間の後、CD62L及びCD45ROに対する抗体を用いてフローサイトメトリーにより免疫表現型解析を行い、130 G-CSFにおいて増殖したG12/2R-1 134 ECDを発現するT細胞とIL-2において増殖した非形質導入細胞とを比較した。2つのT細胞集団は、幹細胞様メモリー(T
SCM)、セントラルメモリー(T
CM)、エフェクターメモリー(T
EM)、及び終末分化(T
TE)表現型の類似した割合を示した(
図51B、C)。
【0377】
同様の実験を、304 ECD(134 ECDではなく)を有するキメラサイトカイン受容体G12/2R-1を用いて行った。初代PBMC由来ヒトT細胞に、G12/2R-1 304 ECDをコードするレンチウイルスベクターを用いて形質導入した。IL-2(300IU/ml)、130 G-CSF(100ng/ml)、304 G-CSF(100ng/ml)、または培地のみで培養したときの細胞の増殖倍率を評価するためにT細胞増殖アッセイを実施した。生細胞は4~5日ごとに計数した。304 ECDを有するG12/2R-1を発現するT細胞は、IL-2、130 G-CSF、または304 G-CSFの存在下で増殖し得るが、培地のみでは増殖せず、非形質導入細胞はIL-2のみに応答して増殖することができた(
図52A)。
【0378】
BrdUアッセイにより細胞周期の進行を評価するために、130 G-CSFまたは304 G-CSFのいずれかで事前に増殖させたG12/2R-1 304 ECDを発現するT細胞を、増殖アッセイから回収し、洗浄した後、IL-2(300IU/ml)、130G-CSF(100ng/ml)、304 G-CSF(100ng/ml)、307 G-CSF(100ng/ml)、または培地のみで再プレーティングした。G12/2R-1 304 ECDを発現するT細胞は、130または304 G-CSFに応答して細胞周期の進行を示したが、307 G-CSFまたは培地のみでは応答しなかった(
図52B)。
【0379】
この結果は、G12/2R-1 134 ECDが、直交130 G-CSFで刺激すると、初代ヒトCD4+及びCD8+T細胞の細胞周期の進行及び増殖を誘発できることを示す。G12/2R-1 134 ECDを発現し、130 G-CSFで増殖させた細胞のT細胞メモリー表現型は、IL-2で増殖させた非形質導入細胞と同様である。さらに、G12/2R-1 304 ECDは、130または304 G-CSFで刺激するとT細胞の選択的な細胞周期の進行及びを誘発できるが、307 G-CSFに応答して誘発されることはない。
【0380】
実施例30:直交G-CSFは、直交ECDを有するG2R-3またはG12/2R-1を発現する初代ヒトT細胞において、明確に異なる細胞内シグナル伝達イベントを誘発する
細胞内シグナル伝達イベントを評価するために、初代PBMC由来ヒトT細胞に、G2R-3 304 ECDまたはG12/2R-1 304 ECDをコードするレンチウイルスベクターを用いて形質導入した。304 G-CSF(100ng/mL)、IL-2(300IU/mL)、IL-2、及びIL-12(10ng/mL)、または培地のみで刺激時の、G2R-3 304 ECDもしくはG12/2R-1 304 ECDを発現する細胞、または非導入細胞における細胞内サイトカインシグナル伝達を評価するためにウエスタンブロットを実施した。形質導入されたT細胞と非形質導入T細胞の両方において、STAT5の強いリン酸化が、IL-2+IL-12、またはIL-2のみでの刺激のいずれかに応答して検出された(
図53)。STAT4の強いリン酸化は、IL-2+IL-12の両方による刺激に応答して検出されたが、STAT4の弱いリン酸化のみが、IL-2のみでの刺激に応答して検出された。G2R-3 304 ECDを発現する細胞では、STAT4の弱いリン酸化及びSTAT5の強いリン酸化が304 G-CSFでの刺激に応答して検出され、IL-2のみに応答して見られるパターンに類似していた。G12/2R-1 304 ECDを発現する細胞では、STAT4及びSTAT5の強いリン酸化が304 G-CSFの刺激に応答して検出され、IL-2+IL-12に対する応答に見られるパターンに類似していた。非形質導入T細胞は、304 G-CSFに対する応答を示さなかった。
【0381】
この結果は、304 ECDを有するG12/2R-1が、304 G-CSFでの刺激に応答して、STAT4及びSTAT5の強いリン酸化を含む、サイトカインシグナル伝達イベントを誘発することができることを示す。シグナル伝達イベントの異なるパターンは、304 G-CSFによる刺激後のG2R-3 304 ECDを発現する細胞において見られ、STAT5の強いリン酸化を含むがSTAT4の強いリン酸化は含まない。
【0382】
本発明は、好ましい実施形態及びさまざまな代替実施形態を参照して特に示され、説明されてきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態及び詳細におけるさまざまな変更が本明細書になされ得ることは、関連する技術分野の当業者には理解されよう。
【0383】
本明細書の本文中で引用したすべての参考文献、発行済特許、及び特許出願は、その全体があらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0384】
(表12)G-CSFR
WT-ICD
gp130-IL-2Rβの配列
【0385】
(表13)G-CSFR
WT-ICD
IL-2Rβの配列
【0386】
【0387】
【0388】
【0389】
【0390】
(表17)シグナルペプチド。シグナルペプチドは次のいずれか1つで構成される:
【0391】
(表18)野生型G-CSFR細胞外ドメイン(ECD):G-CSFR ECDは、次のいずれか1つで構成される:
【0392】
(表19)膜貫通ドメイン(TM)。TMは、次のいずれか1つで構成される:
【0393】
(表20)細胞内ドメイン(ICD)。ICDは、次のいずれか1つで構成される:
【配列表】
【国際調査報告】