(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-22
(54)【発明の名称】代謝症候群の治療管理のためのクルクミノイド組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/12 20060101AFI20221215BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20221215BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20221215BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20221215BHJP
A61K 31/05 20060101ALI20221215BHJP
A61K 31/085 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
A61K31/12
A61P3/00
A61P3/10
A61P3/06
A61K31/05
A61K31/085
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022522603
(86)(22)【出願日】2020-10-15
(85)【翻訳文提出日】2022-06-08
(86)【国際出願番号】 US2020055796
(87)【国際公開番号】W WO2021076766
(87)【国際公開日】2021-04-22
(32)【優先日】2019-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】501394435
【氏名又は名称】サミ-サビンサ グループ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】マジード ムハンメド
(72)【発明者】
【氏名】ナガブシャナム カリヤナム
(72)【発明者】
【氏名】ムンドクル ラクシュミ
(72)【発明者】
【氏名】ラマヌジャム ラジェンドラン
【テーマコード(参考)】
4C206
【Fターム(参考)】
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA17
4C206CA20
4C206CA33
4C206CB14
4C206KA01
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA05
4C206NA14
4C206ZC19
4C206ZC21
4C206ZC33
4C206ZC35
(57)【要約】
本発明は、70質量/質量%~80質量/質量%のテトラヒドロクルクミノイド、10質量/質量%~20質量/質量%のヘキサヒドロクルクミノイド、および5質量/質量%~10質量/質量%のオクタヒドロクルクミノイドを含む組成物ならびにその治療用途を開示する。より具体的には、本発明は、70質量/質量%~80質量/質量%のテトラヒドロクルクミノイド、10質量/質量%~20質量/質量%のヘキサヒドロクルクミノイド、および5質量/質量%~10質量/質量%のオクタヒドロクルクミノイドを含む組成物の、哺乳動物の代謝症候群の治療管理における使用を開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物の代謝症候群の治療管理の方法であって、70質量/質量%~80質量/質量%のテトラヒドロクルクミノイド、10質量/質量%~20質量/質量%のヘキサヒドロクルクミノイド、および5質量/質量%~10質量/質量%のオクタヒドロクルクミノイドを含む、前記哺乳動物の体重に基づく有効投与量の組成物を、そのような治療管理を必要とする哺乳動物に投与する工程を含む方法。
【請求項2】
前記テトラヒドロクルクミノイドが、テトラヒドロクルクミン、テトラヒドロ-デメトキシクルクミン、およびテトラヒドロビス-デメトキシクルクミンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ヘキサヒドロクルクミノイドが、ヘキサヒドロクルクミン、ヘキサヒドロ-デメトキシクルクミン、およびヘキサヒドロビス-デメトキシクルクミンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記オクタヒドロクルクミノイドが、オクタヒドロクルクミン、オクタヒドロ-デメトキシクルクミン、およびオクタヒドロビス-デメトキシクルクミンをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
治療効果が、上昇した脂質レベルを正常化させること、上昇した肝臓酵素を正常化させること、上昇したグルコースレベルを低下させること、および脂肪形成を阻害することである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記代謝症候群が高脂肪フルクトース食により誘発される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記組成物の有効投与量が25~50mg/kg体重である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物が、安定剤、バイオアベイラビリティ向上剤および酸化防止剤、薬学的または栄養補助的または薬用化粧的に許容される賦形剤および向上剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記哺乳動物がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
哺乳動物の高脂血症の治療管理の方法であって、70質量/質量%~80質量/質量%のテトラヒドロクルクミノイド、10質量/質量%~20質量/質量%のヘキサヒドロクルクミノイド、および5質量/質量%~10質量/質量%のオクタヒドロクルクミノイドを含む、前記哺乳動物の体重に基づく有効投与量の組成物を、そのような治療管理を必要とする哺乳動物に投与して、前記哺乳動物のa)総コレステロール、b)LDL、およびc)トリグリセリドのレベルを低下させ、HDLのレベルを上昇させる効果をもたらす工程を含む方法。
【請求項11】
前記テトラヒドロクルクミノイドが、テトラヒドロクルクミン、テトラヒドロ-デメトキシクルクミン、およびテトラヒドロビス-デメトキシクルクミンを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ヘキサヒドロクルクミノイドが、ヘキサヒドロクルクミン、ヘキサヒドロ-デメトキシクルクミン、およびヘキサヒドロビス-デメトキシクルクミンを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
オクタヒドロクルクミノイドが、オクタヒドロクルクミン、オクタヒドロ-デメトキシクルクミン、およびオクタヒドロビス-デメトキシクルクミンをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
高脂血症が、高脂肪フルクトース食誘発性代謝症候群と関連する、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
哺乳動物の糖尿病および関連する高血糖症の治療管理の方法であって、70質量/質量%~80質量/質量%のテトラヒドロクルクミノイド、10質量/質量%~20質量/質量%のヘキサヒドロクルクミノイド、および5質量/質量%~10質量/質量%のオクタヒドロクルクミノイドを含む、前記哺乳動物の体重に基づく有効投与量の組成物を、そのような治療管理を必要とする哺乳動物に投与する工程を含む方法。
【請求項16】
前記テトラヒドロクルクミノイドが、テトラヒドロクルクミン、テトラヒドロ-デメトキシクルクミン、およびテトラヒドロビス-デメトキシクルクミンを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ヘキサヒドロクルクミノイドが、ヘキサヒドロクルクミン、ヘキサヒドロ-デメトキシクルクミン、およびヘキサヒドロビス-デメトキシクルクミンを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記オクタヒドロクルクミノイドが、オクタヒドロクルクミン、オクタヒドロ-デメトキシクルクミン、およびオクタヒドロビス-デメトキシクルクミンをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
糖尿病および高血糖症が、高脂肪フルクトース食誘発性代謝症候群と関連する、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
哺乳動物の肝機能不全の治療管理の方法であって、70質量/質量%~80質量/質量%のテトラヒドロクルクミノイド、10質量/質量%~20質量/質量%のヘキサヒドロクルクミノイド、および5質量/質量%~10質量/質量%のオクタヒドロクルクミノイドを含む、前記哺乳動物の体重に基づく有効投与量の組成物を、そのような治療管理を必要とする哺乳動物に投与して、肝臓酵素の上昇したレベルを低下させる工程を含む方法。
【請求項21】
前記テトラヒドロクルクミノイドが、テトラヒドロクルクミン、テトラヒドロ-デメトキシクルクミン、およびテトラヒドロビス-デメトキシクルクミンを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ヘキサヒドロクルクミノイドが、ヘキサヒドロクルクミン、ヘキサヒドロ-デメトキシクルクミン、およびヘキサヒドロビス-デメトキシクルクミンを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記オクタヒドロクルクミノイドが、オクタヒドロクルクミン、オクタヒドロ-デメトキシクルクミン、およびオクタヒドロビス-デメトキシクルクミンをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記肝機能不全が、高脂肪フルクトース食誘発性代謝症候群と関連する、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記肝臓酵素が、アラニントランスアミナーゼおよびアスパラギン酸トランスアミナーゼからなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
哺乳動物細胞中の脂肪形成を阻害する方法であって、哺乳動物の脂肪細胞を、70質量/質量%~80質量/質量%のテトラヒドロクルクミノイド、10質量/質量%~20質量/質量%のヘキサヒドロクルクミノイド、および5質量/質量%~10質量/質量%のオクタヒドロクルクミノイドを含む組成物と接触させて、脂肪形成の阻害をもたらす工程を含む方法。
【請求項27】
前記テトラヒドロクルクミノイドが、テトラヒドロクルクミン、テトラヒドロ-デメトキシクルクミン、およびテトラヒドロビス-デメトキシクルクミンを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記ヘキサヒドロクルクミノイドが、ヘキサヒドロクルクミン、ヘキサヒドロ-デメトキシクルクミン、およびヘキサヒドロビス-デメトキシクルクミンを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記オクタヒドロクルクミノイドが、オクタヒドロクルクミン、オクタヒドロ-デメトキシクルクミン、およびオクタヒドロビス-デメトキシクルクミンを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記哺乳動物の脂肪細胞がヒト脂肪細胞である、請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2019年10月15日に出願された米国仮特許出願第62915068号の優先権を主張するPCT出願であり、その主題を参照により本明細書に組み込む。
本発明は、クルクミノイド組成物およびその治療的応用に関する。より具体的には、本発明は、テトラヒドロクルクミノイド(THC)、ヘキサヒドロクルクミノイド(HHC)、およびオクタヒドロクルクミノイド(OHC)を含む組成物ならびに代謝症候群の症状の緩和におけるそれらの能力に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術の説明
代謝症候群は、人間の心疾患、糖尿病、および脳卒中のリスクを高める代謝疾患の一団または組合せである。代謝という用語は、体内で起こる生化学的プロセスを指す。アメリカ国立衛生研究所(NIH)によると、それは、全世界の重大な健康上の問題であり、成人人口の23%が心血管疾患、糖尿病、および脳卒中のリスク増大に曝されている。人が、いずれか1つの因子を単独で呈するよりもこれらの病態を共に呈する場合に、彼/彼女は、心血管の問題のリスクが増大するだろう(Metabolic Syndrome, National Heart, Lung and Blood institute, U.S. Dept of Health and Human Services, nhlbi.nih.gov/health-topics/metabolic-syndrome)。代謝症候群の発症に関与する危険因子のうち、肥満は主要な原因因子であると考えられている。肥満は、心血管疾患、高血圧、II型糖尿病、代謝症候群、および脳卒中から変形性関節症および癌にわたる慢性病態の発症の原因である。以下の従来技術の文書は、代謝症候群の発症の原因である異なる病理学的特徴を概説している:
i) Marjani A, A Review on Metabolic Syndrome, Journal of Endocrinology and Metabolism, 2012; 2(4-5):166-170.
ii) Schindler C, The metabolic syndrome as an endocrine disease: is there an effective pharmacotherapeutic strategy optimally targeting the pathogenesis? Ther Adv Cardiovasc Dis, 2007;1(1):7-26.
iii) Srikanthan et al., Systematic Review of Metabolic Syndrome Biomarkers: A Panel for Early Detection, Management, and Risk Stratification in the West Virginian Population, Int J Med Sci 2016; 13(1):25-38.
iv) Rochlani et al., Metabolic syndrome: pathophysiology, management, and modulation by natural compounds, Ther Adv Cardiovasc Dis 2017;11(8):215-225。
【0003】
食事および運動介入を含む生活様式の改変は、代謝症候群を管理するための推奨される治療モダリティである(Castro-Barquero et al., Dietary Strategies for Metabolic Syndrome: A Review, J Obes Ther 1:2; Al-Qawasmeh et al., Dietary and Lifestyle Risk Factors and Metabolic Syndrome: Literature Review, Curr Res Nutr Food Sci 2018;6(3))。しかし、BMI30以上の肥満の個人にとって、または高血圧もしくはII型糖尿病などの併存疾患が診断される場合のBMI27以上の者にとって介入が効果的でない場合、薬物療法が検討され得る。代謝症候群の治療に典型的に使用される薬物は、Marvasti et al., Pharmacological management of metabolic syndrome and its lipid complications; Daru. 2010; 18(3): 146-154により開示される。しかし、代謝リスク因子の全てを効果的に低下させることができる薬物は、望ましくない副作用を起こす傾向がある(Anti-Obesity Drugs: A Review about Their Effects and Safety, Jun Goo Kang1 and Cheol-Young Park, Diabetes Metab J. 2012 Feb; 36(1): 13-25; Drug therapy of the metabolic syndrome: minimizing the emerging crisis in polypharmacy, Grundy SM, Nat Rev Drug Discov. 2006 Apr;5(4):295-309)。代謝症候群の管理における自然で、安全で、効能があり、持続可能である治療の選択肢が必要とされる。
【0004】
天然化合物が、代謝症候群の管理のために現在評価されつつある(Rochlani et al., Metabolic syndrome: pathophysiology, management, and modulation by natural compounds, Ther Adv Cardiovasc Dis 2017;11(8):215-225)。クルクマ属から単離されるクルクミンは、代謝症候群の症状の減少に非常に有効であると報告されている。最近、クルクミノイドの代謝物が、クルクミンに類似のクルクミンより優れた効能のために、多くの注目を集めている(Majeed et al., Reductive Metabolites of Curcuminoids, Nutriscience Publishers LLC, 2019)。構造番号1により表されるテトラヒドロクルクミン、構造番号2により表されるヘキサヒドロクルクミン、および構造番号3により表されるオクタヒドロクルクミンなどのクルクミンの還元代謝物の薬理活性は未だ証明されておらず、工業的利用のために活用されていない。還元代謝物としては、テトラヒドロ-デメトキシクルクミン(構造番号4)、テトラヒドロビス-デメトキシクルクミン(構造番号5)、ヘキサヒドロ-デメトキシクルクミン(構造番号6)、ヘキサヒドロビス-デメトキシクルクミン(構造番号7)、オクタヒドロ-デメトキシクルクミン(構造番号8)、およびオクタヒドロビス-デメトキシクルクミン(構造番号9)もある。
【0005】
【化1】
構造番号1
構造番号2
構造番号3
構造番号4
構造番号5
構造番号6
構造番号7
構造番号8
構造番号9
【0006】
クルクミンのこれらの還元代謝物は、通常、還元酵素により生体内変換される(Mimuraら、米国特許第5266344号;Pan et al., Biotransformation of curcumin through reduction and glucuronidation in mice, Drug Metab Dispos, 1999, 27(1):486-494)。それらは、また、天然に同定され、異なる植物源から単離される(Majeed et al., Reductive Metabolites of Curcuminoids, Nutriscience Publishers LLC, 2019)。本発明は、クルクミノイドの代謝物、具体的にはテトラヒドロクルクミン、ヘキサヒドロクルクミン、およびオクタヒドロクルクミンを含む組成物ならびに代謝症候群の管理におけるその治療能力を開示する。
本発明の原理目的は、代謝症候群の管理に使用するための、テトラヒドロクルクミン、ヘキサヒドロクルクミン、およびオクタヒドロクルクミンを含む組成物を開示することである。
本発明の別の目的は、脂質異常症の治療管理における、テトラヒドロクルクミン、ヘキサヒドロクルクミン、およびオクタヒドロクルクミンを含む組成物の使用を開示することである。
【0007】
本発明の別の目的は、肝機能不全の治療管理における、テトラヒドロクルクミン、ヘキサヒドロクルクミン、およびオクタヒドロクルクミンを含む組成物の使用を開示することである。
本発明の別の目的は、糖尿病および関連する高血糖症の治療管理における、テトラヒドロクルクミン、ヘキサヒドロクルクミン、およびオクタヒドロクルクミンを含む組成物の使用を開示することである。
本発明の別の目的は、脂肪形成の阻害における、テトラヒドロクルクミン、ヘキサヒドロクルクミン、およびオクタヒドロクルクミンを含む組成物の使用を開示することである。
本発明は上述の目的を満たし、さらなる関連した利益を提供する。
【発明の概要】
【0008】
最も好ましい実施形態において、本発明は、哺乳動物の代謝症候群の治療管理の方法であって、70質量/質量%~80質量/質量%のテトラヒドロクルクミノイド、10質量/質量%~20質量/質量%のヘキサヒドロクルクミノイド、および5質量/質量%~10質量/質量%のオクタヒドロクルクミノイドを含む、前記哺乳動物の体重に基づく有効投与量の組成物を、そのような治療管理を必要とする哺乳動物に投与する工程を含む方法を開示する。
別の好ましい実施形態において、本発明は、哺乳動物の代謝症候群の治療管理における、70質量/質量%~80質量/質量%のテトラヒドロクルクミノイド、10質量/質量%~20質量/質量%のヘキサヒドロクルクミノイド、および5質量/質量%~10質量/質量%のオクタヒドロクルクミノイドを含む組成物の使用を開示する。
別の最も好ましい実施形態において、本発明は、哺乳動物の高脂血症の治療管理の方法であって、70質量/質量%~80質量/質量%のテトラヒドロクルクミノイド、10質量/質量%~20質量/質量%のヘキサヒドロクルクミノイド、および5質量/質量%~10質量/質量%のオクタヒドロクルクミノイドを含む、前記哺乳動物の体重に基づく有効投与量の組成物を、そのような治療管理を必要とする哺乳動物に投与して、前記哺乳動物のa)総コレステロール、b)LDL、およびc)トリグリセリド(中性脂肪、triglycerides)のレベルを低下させ、HDLのレベルを上昇させる効果をもたらす工程を含む方法を開示する。
さらに別の好ましい実施形態において、本発明は、哺乳動物の糖尿病および関連する高血糖症の治療管理の方法であって、70質量/質量%~80質量/質量%のテトラヒドロクルクミノイド、10質量/質量%~20質量/質量%のヘキサヒドロクルクミノイド、および5質量/質量%~10質量/質量%のオクタヒドロクルクミノイドを含む、前記哺乳動物の体重に基づく有効投与量の組成物を、そのような治療管理を必要とする哺乳動物に投与する工程を含む方法を開示する。
【0009】
別の実施形態において、本発明は、哺乳動物の肝機能不全の治療管理の方法であって、70質量/質量%~80質量/質量%のテトラヒドロクルクミノイド、10質量/質量%~20質量/質量%のヘキサヒドロクルクミノイド、および5質量/質量%~10質量/質量%のオクタヒドロクルクミノイドを含む、前記哺乳動物の体重に基づく有効投与量の組成物を、そのような治療管理を必要とする哺乳動物に投与して、肝臓酵素の上昇したレベルを低下させる工程を含む方法を開示する。
別の好ましい実施形態において、本発明は、哺乳動物細胞中の脂肪形成を阻害する方法であって、哺乳動物の脂肪細胞を、70質量/質量%~80質量/質量%のテトラヒドロクルクミノイド、10質量/質量%~20質量/質量%のヘキサヒドロクルクミノイド、および5質量/質量%~10質量/質量%のオクタヒドロクルクミノイドを含む組成物と接触させて、脂肪形成の阻害をもたらす工程を含む方法を開示する。
本発明の他の特徴および利点は、本発明の原理を例として説明する以下のより詳細な説明から明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】テトラヒドロクルクミノイド ヘキサヒドロクルクミノイド、およびオクタヒドロクルクミノイドを含む組成物を投与された試験動物における血清インスリンの低下を示すグラフ表示である。
**、P<0.01
【
図2】テトラヒドロクルクミノイド ヘキサヒドロクルクミノイド、およびオクタヒドロクルクミノイドを含む組成物を投与された試験動物のグルコースレベルの低下を示すグラフ表示である。
**、P<0.01
【
図3】テトラヒドロクルクミノイド ヘキサヒドロクルクミノイド、およびオクタヒドロクルクミノイドを含む組成物を投与された試験動物の体重の減少を示すグラフ表示である。
**、P<0.01
【
図4】テトラヒドロクルクミノイド ヘキサヒドロクルクミノイド、およびオクタヒドロクルクミノイドを含む組成物と共にインキュベートされた3T3細胞中の脂質蓄積の減少を示すグラフ表示である。
【
図5】テトラヒドロクルクミノイド ヘキサヒドロクルクミノイド、およびオクタヒドロクルクミノイドを含む組成物による脂肪形成の阻害を示す、マウス3T3細胞のオイルレッドO(ORO)染色である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
最も好ましい実施形態において、本発明は、哺乳動物の代謝症候群の治療管理の方法であって、70質量/質量%~80質量/質量%のテトラヒドロクルクミノイド、10質量/質量%~20質量/質量%のヘキサヒドロクルクミノイド、および5質量/質量%~10質量/質量%のオクタヒドロクルクミノイドを含む、前記哺乳動物の体重に基づく有効投与量の組成物を、そのような治療管理を必要とする哺乳動物に投与する工程を含む方法を開示する。関連する態様において、テトラヒドロクルクミノイドは、テトラヒドロクルクミン、テトラヒドロ-デメトキシクルクミン、およびテトラヒドロビス-デメトキシクルクミンを含む。別の関連する態様において、ヘキサヒドロクルクミノイドは、ヘキサヒドロクルクミン、ヘキサヒドロ-デメトキシクルクミン、およびヘキサヒドロビス-デメトキシクルクミンをさらに含む。さらに別の好ましい実施形態において、オクタヒドロクルクミノイドは、オクタヒドロクルクミン、オクタヒドロ-デメトキシクルクミン、およびオクタヒドロビス-デメトキシクルクミンをさらに含む。さらに別の関連する態様において、代謝症候群を管理することの治療効果は、上昇した脂質レベルを正常化させること、上昇した肝臓酵素を正常化させること、上昇したグルコースレベルを低下させること、および脂肪形成を阻害することによりもたらされる。関連する実施形態において、代謝症候群は高脂肪フルクトース食により誘発される。別の関連する実施形態において、組成物の有効投与量は25~50mg/kg体重である。さらなる関連する態様において、組成物は、安定剤、バイオアベイラビリティ向上剤および酸化防止剤、薬学的または栄養補助的または薬用化粧的に許容される賦形剤および向上剤をさらに含む。好ましい実施形態において、哺乳動物はヒトである。
【0012】
別の好ましい実施形態において、本発明は、哺乳動物の代謝症候群の治療管理における、70質量/質量%~80質量/質量%のテトラヒドロクルクミノイド、10質量/質量%~20質量/質量%のヘキサヒドロクルクミノイド、および5質量/質量%~10質量/質量%のオクタヒドロクルクミノイドを含む組成物の使用を開示する。関連する態様において、テトラヒドロクルクミノイドは、テトラヒドロクルクミン、テトラヒドロ-デメトキシクルクミン、およびテトラヒドロビス-デメトキシクルクミンを含む。別の関連する態様において、ヘキサヒドロクルクミノイドは、ヘキサヒドロクルクミン、ヘキサヒドロ-デメトキシクルクミン、およびヘキサヒドロビス-デメトキシクルクミンをさらに含む。さらに別の好ましい実施形態において、オクタヒドロクルクミノイドは、オクタヒドロクルクミン、オクタヒドロ-デメトキシクルクミン、およびオクタヒドロビス-デメトキシクルクミンをさらに含む。さらに別の関連する態様において、代謝症候群を管理することの治療効果は、上昇した脂質レベルを正常化させること、上昇した肝臓酵素を正常化させること、上昇したグルコースレベルを低下させること、および脂肪形成を阻害することによりもたらされる。関連する実施形態において、代謝症候群は、高脂肪フルクトース食により誘発される。別の関連する実施形態において、組成物の有効投与量は25~50mg/kg体重である。さらなる関連する態様において、組成物は、安定剤、バイオアベイラビリティ向上剤および酸化防止剤、薬学的または栄養補助的または薬用化粧的に許容される賦形剤および向上剤をさらに含む。好ましい実施形態において、哺乳動物はヒトである。
【0013】
別の最も好ましい実施形態において、本発明は、哺乳動物の高脂血症の治療管理の方法であって、70質量/質量%~80質量/質量%のテトラヒドロクルクミノイド、10質量/質量%~20質量/質量%のヘキサヒドロクルクミノイド、および5質量/質量%~10質量/質量%のオクタヒドロクルクミノイドを含む、前記哺乳動物の体重に基づく有効投与量の組成物を、そのような治療管理を必要とする哺乳動物に投与して、前記哺乳動物のa)総コレステロール、b)LDL、およびc)トリグリセリドのレベルを低下させ、HDLのレベルを上昇させる効果をもたらす工程を含む方法に関する。関連する態様において、テトラヒドロクルクミノイドは、テトラヒドロクルクミン、テトラヒドロ-デメトキシクルクミン、およびテトラヒドロビス-デメトキシクルクミンを含む。別の関連する態様において、ヘキサヒドロクルクミノイドは、ヘキサヒドロクルクミン、ヘキサヒドロ-デメトキシクルクミン、およびヘキサヒドロビス-デメトキシクルクミンをさらに含む。さらに別の好ましい実施形態において、オクタヒドロクルクミノイドは、オクタヒドロクルクミン、オクタヒドロ-デメトキシクルクミン、およびオクタヒドロビス-デメトキシクルクミンをさらに含む。関連する実施形態において、高脂血症は、高脂肪フルクトース食誘発性代謝症候群と関連する。別の関連する実施形態において、組成物の有効投与量は25~50mg/kg体重である。さらなる関連する態様において、組成物は、安定剤、バイオアベイラビリティ向上剤および酸化防止剤、薬学的または栄養補助的または薬用化粧的に許容される賦形剤および向上剤をさらに含む。好ましい実施形態において、哺乳動物はヒトである。
【0014】
好ましい実施形態において、本発明は、哺乳動物の糖尿病および関連する高血糖症の治療管理の方法であって、70質量/質量%~80質量/質量%のテトラヒドロクルクミノイド、10質量/質量%~20質量/質量%のヘキサヒドロクルクミノイド、および5質量/質量%~10質量/質量%のオクタヒドロクルクミノイドを含む、前記哺乳動物の体重に基づく有効投与量の組成物を、そのような治療管理を必要とする哺乳動物に投与する工程を含む方法を開示する。関連する態様において、テトラヒドロクルクミノイドは、テトラヒドロクルクミン、テトラヒドロ-デメトキシクルクミン、およびテトラヒドロビス-デメトキシクルクミンを含む。別の関連する態様において、ヘキサヒドロクルクミノイドは、ヘキサヒドロクルクミン、ヘキサヒドロ-デメトキシクルクミン、およびヘキサヒドロビス-デメトキシクルクミンをさらに含む。さらに別の好ましい実施形態において、オクタヒドロクルクミノイドは、オクタヒドロクルクミン、オクタヒドロ-デメトキシクルクミン、およびオクタヒドロビス-デメトキシクルクミンをさらに含む。関連する実施形態において、糖尿病および高血糖症は、高脂肪フルクトース食誘発性代謝症候群と関連する。別の関連する態様において、糖尿病を管理することの治療効果は、グルコースおよびインスリンの上昇したレベルを低下させることによりもたらされる。別の関連する実施形態において、組成物の有効投与量は25~50mg/kg体重である。さらなる関連する態様において、組成物は、安定剤、バイオアベイラビリティ向上剤および酸化防止剤、薬学的または栄養補助的または薬用化粧的に許容される賦形剤および向上剤をさらに含む。好ましい実施形態において、哺乳動物はヒトである。
【0015】
別の実施形態において、本発明は、哺乳動物の肝機能不全の治療管理の方法であって、70質量/質量%~80質量/質量%のテトラヒドロクルクミノイド、10質量/質量%~20質量/質量%のヘキサヒドロクルクミノイド、および5質量/質量%~10質量/質量%のオクタヒドロクルクミノイドを含む、前記哺乳動物の体重に基づく有効投与量の組成物を、そのような治療管理を必要とする哺乳動物に投与して、肝臓酵素の上昇したレベルを低下させる工程を含む方法を開示する。関連する態様において、テトラヒドロクルクミノイドは、テトラヒドロクルクミン、テトラヒドロ-デメトキシクルクミン、およびテトラヒドロビス-デメトキシクルクミンを含む。別の関連する態様において、ヘキサヒドロクルクミノイドは、ヘキサヒドロクルクミン、ヘキサヒドロ-デメトキシクルクミン、およびヘキサヒドロビス-デメトキシクルクミンをさらに含む。さらに別の好ましい実施形態において、オクタヒドロクルクミノイドは、オクタヒドロクルクミン、オクタヒドロ-デメトキシクルクミン、およびオクタヒドロビス-デメトキシクルクミンをさらに含む。関連する実施形態において、肝機能不全は、高脂肪フルクトース食誘発性代謝症候群と関連する。別の関連する態様において、肝臓酵素は、アラニントランスアミナーゼおよびアスパラギン酸トランスアミナーゼからなる群から選択される。別の関連する実施形態において、組成物の有効投与量は25~50mg/kg体重である。さらなる関連する態様において、組成物は、安定剤、バイオアベイラビリティ向上剤および酸化防止剤、薬学的または栄養補助的または薬用化粧的に許容される賦形剤および向上剤をさらに含む。好ましい実施形態において、哺乳動物はヒトである。
【0016】
別の好ましい実施形態において、本発明は、哺乳動物細胞中の脂肪形成を阻害する方法であって、哺乳動物の脂肪細胞を、70質量/質量%~80質量/質量%のテトラヒドロクルクミノイド、10質量/質量%~20質量/質量%のヘキサヒドロクルクミノイド、および5質量/質量%~10質量/質量%のオクタヒドロクルクミノイドを含む組成物と接触させて、脂肪形成の阻害をもたらす工程を含む方法を開示する。関連する態様において、テトラヒドロクルクミノイドは、テトラヒドロクルクミン、テトラヒドロ-デメトキシクルクミン、およびテトラヒドロビス-デメトキシクルクミンを含む。別の関連する態様において、ヘキサヒドロクルクミノイドは、ヘキサヒドロクルクミン、ヘキサヒドロ-デメトキシクルクミン、およびヘキサヒドロビス-デメトキシクルクミンをさらに含む。さらに別の好ましい実施形態において、オクタヒドロクルクミノイドは、オクタヒドロクルクミン、オクタヒドロ-デメトキシクルクミン、およびオクタヒドロビス-デメトキシクルクミンをさらに含む。さらなる関連する態様において、組成物は、安定剤、バイオアベイラビリティ向上剤および酸化防止剤、薬学的または栄養補助的または薬用化粧的に許容される賦形剤および向上剤をさらに含む。好ましい実施形態において、哺乳動物はヒトである。
さらに別の関連する実施形態において、バイオアベイラビリティ向上剤は、ピペリン、クェルセチン、ニンニク抽出物、ショウガ抽出物、およびナリンギンからなる群から選択されるがこれらに限定されない。
【0017】
別の関連する態様において、1種または複数の酸化防止剤および抗炎症剤は、ビタミンA、D、E、K、C、Bコンプレックス、ロスマリン酸、αリポ酸、エラグ酸、グリチルリチン酸、没食子酸エピガロカテキン、植物ポリフェノール、グラブリジン、モリンガ油、オレアノール酸、オレウロペイン、カルノシン酸、ウロカニン酸、フィトエン、リポイド酸、リポアミド、フェリチン、デスフェラール、ビリルビン(billirubin)、ビリベルジン(billiverdin)、メラニン、ユビキノン、ユビキノール、パルミチン酸アスコルビル、リン酸アスコルビルMg、酢酸アスコルビル、トコフェロールおよびビタミンE酢酸エステルなどの誘導体、尿酸、α-グルコシルルチン、カタラーゼ(calalase)およびスーパーオキシドジスムターゼ、グルタチオン、セレン化合物、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ピロ亜硫酸ナトリウム(SMB)、没食子酸プロピル(PG)、ならびにアミノ酸システインからなる群から選択されるがこれらに限定されない。
最も好ましい実施形態を述べる具体的な実例は以下に含まれる。
【実施例】
【0018】
(実施例1)
組成物
クルクミンの還元代謝物、すなわちテトラヒドロクルクミノイド、ヘキサヒドロクルクミノイド、およびオクタヒドロクルクミノイドは、通常、還元酵素により、および水素化により生体内変換される(Mimuraら、米国特許第5266344号;Pan et al., Biotransformation of curcumin through reduction and glucuronidation in mice, Drug Metab Dispos, 1999, 27(1):486-494)。それらは、また、天然に同定され、異なる植物源から単離される(Majeed et al., Reductive Metabolites of Curcuminoids, Nutriscience Publishers LLC, 2019)。テトラヒドロクルクミン(tetrahydocurcumin)は、そのアナログであるテトラヒドロデメトキシクルクミン、テトラヒドロビスデメトキシクルクミンと共に、ジンギベル属およびクルクマ属から単離されてきた(Peng et al., Chemical constituents of Zingiber officinale (Zingeberaceae). Yunnan Zhiwu Yanjiu, 2007; 29(1):125-128)。テトラヒドロデメトキシクルクミンおよびテトラヒドロビスデメトキシクルクミンは、タイのゼドアリー(クルクマ・ゼドアリア(Curcuma zedoaria))の根茎に存在すると報告された(Matsuda et al., Anti-allergic principles from Thai zedoary: structural requirements of curcuminoids for inhibition of degranulation and effect on the release of TNF-alpha and IL-4 in RBL-2H3 cells. Bioorg med hem, 2004; 12(22):5891-5898)。テトラヒドロクルクミンは、THCからの生体内変換によっても得られる(Shimoda et al., Formation of tetrahydrocurcumin by reduction of curcumin with cultured plant cells of Marchantia polymmrpha, Nat Prod Commun, 2012, 7(4):529-530)。
【0019】
ヘキサヒドロクルクミノイドも、クルクマ、ジンギベル、およびアルピナの根および地下茎に存在する天然の植物代謝物である。ヘキサヒドロクルクミノイドは、新鮮なショウガの地下茎から単離されてきた(Peng et al., Cytotoxic, cytoprotective and antioxidant effects of isolated phenolic compounds from fresh ginger, Fitoterapia, 2012, 83(3):568-585)。ヘキサヒドロクルクミノイドは、2つのエナンチオマー型(SおよびR)のいずれかで、およびラセミ混合物としても存在すると報告されている(Majeed et al., Reductive Metabolites of Curcuminoids, Nutriscience Publishers LLC, 2019)。
【0020】
同様に、オクタヒドロクルクミノイドも、C.キサントリーザ(C.xanthorrhiza)の地下茎から単離される(Uehara et al., Diarylheptanoids from the rhizomes of Curcuma xanthorrhiza and Alpinia officinarum, Chem Pharm Bull, 1987, 35(8):3298-3304)。オクタヒドロクルクミンは、テトラヒドロクルクミンからの水素化、インビボおよび微生物生体内変換によっても調製される(Majeed et al., Reductive Metabolites of Curcuminoids, Nutriscience Publishers LLC, 2019)。
本発明において特許請求される組成物を、以下の水素化プロセスを使用して製剤した。
クルクミノイドを、溶媒アセトン中で、水素圧の下で、パラジウム/炭素の存在下、室温で、出発物質の非存在消失まで還元する。生成物を、テトラヒドロクルクミン、テトラヒドロデメトキシクルクミン、およびテトラヒドロビスデメトキシクルクミンを含む灰白色粉末として単離する。さらに、テトラヒドロクルクミノイドを、溶媒エタノール中で、特定の温度および水素圧の下で、パラジウム/炭素の存在下、出発物質の非存在消失まで選択的にヘキサヒドロクルクミノイドに還元する。生成物を、ヘキサヒドロクルクミノイドおよび5%未満のオクタヒドロクルクミノイドを含む灰白色粉末として単離する。オクタヒドロクルクミノイドの調製には、テトラヒドロクルクミノイドを、溶媒エタノール中で、高温および水素圧の下で、パラジウム/炭素の存在下、出発物質の完全な転化まで、オクタヒドロクルクミノイドに還元する。生成物を、痕跡量のヘキサヒドロクルクミノイドを有する基本的にオクタヒドロクルクミノイドとしての灰白色粉末として単離する。
【0021】
テトラヒドロクルクミノイド、ヘキサヒドロクルクミノイド、およびオクタヒドロクルクミノイドを以下の比率でブレンドする:
【表1】
組成物は、Sami Labs LimitedからC3 Reduct(登録商標)Specialとしても市販されている。
【0022】
(実施例2)
テトラヒドロクルクミノイド、ヘキサヒドロクルクミノイド、およびオクタヒドロクルクミノイドを含む組成物の治療能力
テトラヒドロクルクミノイド、ヘキサヒドロクルクミノイド、およびオクタヒドロクルクミノイドを含む組成物のORACおよびROS&DPPH捕捉能力を、クルクミノイド、テトラヒドロクルクミノイド、ヘキサヒドロクルクミノイド、およびオクタヒドロクルクミノイド自体と比べて評価することにより、組成物の治療能力を試験した。
酸素ラジカル吸収能アッセイ(ORAC):
異なる濃度の標準(トロロックス)(T5~T1)または試験試料(S3~S1)、APPH(2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン二塩酸塩)およびフルオレセイン二ナトリウム染料を、96ウェルダークプレートに加えた。蛍光読取り値を、1分ごとに35分間、485/520nmで記録した(Fluostar Optima Microplate Reader)(f1・・・・・・f35)。曲線下面積(AUC)を
AUC=(1+f1/f0+f2/f0+・・・・・・+f35/f0)
として計算した。
【0023】
正味AUCを、ブランクのAUCを試料のAUCから引くことにより得た。最終ORAC値を、試料のリットルあたりまたはグラムあたりのトロロックス当量のマイクロモル(μmol TE/gまたはμmol TE/L)で表した。
DPPH(2,2-ジフェニル-1-ピクリル-ヒドラジル-水和物)フリーラジカルアッセイ
試験試料をDMSOに溶解させ、アッセイ用に50%メタノールで希釈した。異なる濃度のプテロスチルベンを96ウェルプレート中でDPPHのメタノール溶液と混合した。プレートを暗所で15分間インキュベートし、マイクロプレートリーダー(TECAN Ltd、Mannedorf、Switzerland)を使用して吸光度を540nmで測定した。ブランク(DMSO、メタノール)および標準(トロロックスのDMSO溶液)を同時に記録した。
【0024】
フリーラジカル捕捉活性を下記の通り計算した
捕捉活性%=(B-C)-(S-C)/(B-C)×100
式中、Bは基準溶液の吸光度であり、Cは基準溶液ブランク(メタノールのみ)の吸光度であり、Sは試験溶液の吸光度であり、Cは試験溶液ブランクの吸光度である。試料を、可変的な濃度によりスクリーニングして、阻害濃度(IC50、DPPH吸光度を50%減少させる濃度)を確立した。結果を表2としてまとめる:
【0025】
【表2】
結果は、テトラヒドロクルクミノイド、ヘキサヒドロクルクミノイド、およびオクタヒドロクルクミノイドを含む組成物が、クルクミノイドおよび組成物の個別の活性成分と比べてより良好なORACおよびDPPH捕捉を示したことを明らかにし、組成物のより高い治療効能を示した。さらなる治療活性を組成物に関して評価した。
【0026】
(実施例3)
代謝症候群疾患のインビボ試験
動物実験のために守られるプロトコルは、インド政府の指針に従ったインドの動物実験の管理と監督を目的とした委員会(CPCSEA)の通りに施設の動物倫理委員会により承認され、アメリカ国立衛生研究所により発行された実験動物の管理と使用に関する指針(NIH Publication, 8th Edition, 2011)に従っている。全部で40匹のC57/BL6マウス(6~8週齢)を、それぞれ8匹のマウスの5群にランダムに分けた(平均体重20~22g)。動物を、標準的な実験室条件(温度23.5℃、湿度=58~64%)で、12時間明および12時間暗のサイクルで飼育した。
通常食(10Kcal)を与えた動物を対照とした。代謝症候群を、(10%フルクトースおよび50%脂肪食を含む60Kcal)を含む高脂肪フルクトース食(HFFD)により12週間誘発させた。異なる投与量の試験試料を、HFFDと共にマウスの群に経口投与した。実験期間の最後に、動物を人道的に犠死させ、器官、組織、および血液をさらなる分析のために収集した。体重および器官重量を全動物で記録した。
【0027】
方法
脂質プロファイル
血液TCコレステロールレベルを、以下の反応を使用して、TCの酵素的測定の原理によるトリンダーCHOD/POD終点法により測定した:コレステロールエステラーゼの存在下で、コレステロールエステルをコレステロールおよび脂肪酸に転化する。コレステロールを、コレステロールオキシダーゼの存在下で酸化すると、過酸化水素が生じる。過酸化水素は、ペルオキシダーゼの存在下でフェノールおよび4-アミノアンチピリン(4-aminoantipyrin)と反応して、キノンおよび水分子を与え、赤色を生み出す。光学濃度をブランクに対して500nmで読み取る。
TGLを、GPO/POD法により測定した。TGLをリパーゼにより加水分解して、グリセロールおよび遊離脂肪酸にした。グリセロールを、グリセロールキナーゼの存在下で、ATPによりリン酸化して、グリセロール-3-リン酸とし、それを酵素グリセロール-3-リン酸オキシダーゼにより酸化すると、過酸化水素が生じる。そのように形成された過酸化水素は、4-アミノアンチピリンおよび4-クロロフェノールと、酵素ペルオキシダーゼの存在下で反応し、赤色のキノンイミンが生じる。発生した色の強度はTGL濃度に比例する。
HDLおよびLDLパラメーターを、Direct Reagent Kit(Beacon)により測定した。
【0028】
肝臓パラメーター:アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、クレアチニンホスファターゼの酵素レベルを、標準的な速度論的方法により測定した。酵素の触媒活性を、特定の測定手順を使用して、触媒された化学反応の転化速度の決定により測定した。それは、国際単位(IU)での、単位時間あたり転化した物質の量として表される。触媒濃度は、ある体積の試料中に含まれる触媒活性であり、U/Lで表される。
血中グルコースレベルは、グルコースオキシダーゼ/ペルオキシダーゼ(GOD/POD法)により評価した。グルコースオキシダーゼ(GOD)は、グルコースのグルコン酸への酸化を触媒する。形成された過酸化水素(H2O2)は、ペルオキシダーゼ(POD)の存在下で、発色性酸素受容体、フェノール-アミノフェナゾンにより検出される。形成された色の強度は、試料中のグルコース濃度に比例する。
【0029】
血清インスリンレベル:150Lの試薬およびリン酸緩衝食塩水に加えて0.05%Tween-20を加えることにより、血清または血漿試料を調製した。試料を、1:100希釈剤でさらに希釈した。試料、インスリン対照溶液、および標準物質も調製し、標準物質および試料を二連で収容するための充分なマイクロプレートウェルも準備した。正確に350Lの洗浄溶液を各ウェルに加え、洗浄溶液を廃棄し、吸収紙に対して数回しっかりと叩いて、過剰な液体を除いた。混合物を、300~1000gで激しく振とうしながら、2時間室温でインキュベートした。プレートを振とう器上におよそ5秒間配置して、確実に混合した。上清の吸光度を30分以内に450nmで測定して、インスリンの値をng/mLで表した(Clark and Hales, 1994)。6時間絶食後のインスリン負荷試験(ITT)、血液試料を試験動物から収集した。次いで、動物に、生理食塩水*に懸濁させた1.2U/kg体重のインスリンを腹腔内注射した。血液試料を、グルコースの評価のために、インスリン注射後30および60分で収集した。Gandhi et al., Gallic acid attenuates high-fat diet fed-streptozotocin-induced insulin resistance via partial agonism of PPARγ in experimental type 2 diabetic rats and enhances glucose uptake through translocation and activation of GLUT4 in PI3K/p-Akt signaling pathway European Journal of Pharmacol, 2014, 745: 201-216 および Matthews et al. Homeostasis model assessment: insulin resistance and β-cell function from fasting plasma glucose and insulin concentrations in man. Diabetologia 1985;28: 412-41)により言及される通り、インスリン注射の前にグルコース負荷(2g/Kg体重)を与えて低血糖を予防した。
【0030】
インビトロ脂肪形成阻害アッセイ:3T3-L1マウス胚線維芽細胞(アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC、Rockville、MD、USA))を、10%仔ウシ血清および40μg/mLゲンタマイシンを有するDMEM中で、37℃で、5%CO2の加湿された雰囲気中で培養した。細胞を、48ウェルプレート内に3×104の密度で播種し、インキュベートすると、単層を形成した。DMEM培地に、種々の濃度の試料と共に、または無しに、10%ウシ胎児血清、0.25μMデキサメタゾン、0.5mMメチルイソブチルキサンチン、およびインスリン(1μg/mL)を補うことにより、細胞を、100%コンフルエンシーに達した2日後に分化するように誘発した。48時間の分化後に、細胞を6日目に収集するまで一日おきに、培地を、10%ウシ胎児血清、インスリン(1μg/mL)、および試料を含むDMEMと替えた。
脂肪細胞中の脂質含有量を、オイルレッドO(ORO)染色(ORO)によるそれらの染色により測定した。簡潔にいうと、細胞を10%ホルマリンにより30分間固定化し、ORO使用溶液[0.3%]により60分間室温で染色し、倒立位相差顕微鏡(オリンパス株式会社、東京、日本)により可視化した。OROにより染色された脂質を、イソプロパノール中4%トリトンX-100を使用して細胞から抽出し、520nmの波長で定量化した。
【0031】
結果
脂質プロファイル
結果を表3にまとめる。
【表3】
【0032】
高脂肪フルクトース食は、総コレステロール、トリグリセリド、およびLDLのレベルを上昇させた。組成物は、総コレステロール、トリグリセリド、およびLDLのレベルを、用量依存的に低下させた。同様に、組成物は、試験動物のHDLの低下したレベルを上昇させ、組成物が、代謝症候群における高脂血症を管理するのに非常に有効であったことを示す。
肝臓パラメーターおよびグルコースレベル
グルコースおよび肝臓酵素のレベルを、高脂肪フルクトース食の投与により上昇させた。テトラヒドロクルクミノイド、ヘキサヒドロクルクミノイド、およびオクタヒドロクルクミノイドを含む組成物は、代謝症候群において変更された上昇した肝臓酵素を正常化させ、肝機能不全を防いだ(表4)。同様に、組成物は、血清中の上昇したグルコースおよびインスリンレベルも低下させ、抗糖尿病剤として使用するための組成物の能力を示している(表4、
図1)。
【0033】
インスリン負荷試験は、動物がグルコースに耐える能力がHFDマウス(より高い血中グルコース濃度を示す)で低下したことを示唆した。このアッセイにおいて、インスリン投与後に血中グルコース濃度が下がる程度は、全身インスリン作用の効率を表す。HFD摂食マウスは、ITTの間の全時点で、対照動物と比べて血中グルコースレベルの低下不良を示し、そのため、インスリン抵抗性を示唆している。組成物をHFDと共に補うと血中グルコースの低下を示し、インスリン抵抗性を組成物により減少させることが可能であることを示唆した(
図2)。
体重減少
中程度の体重減少が、組成物を補った動物で観察された。11.8%、16.1%、および14.4%の減少が、25、50、および100mg/kgで見られた(
図3)。
【0034】
脂肪形成の阻害
テトラヒドロクルクミノイド、ヘキサヒドロクルクミノイド、およびオクタヒドロクルクミノイドを含む組成物を、その脂肪形成の阻害の能力に関して試験した。結果は、組成物が3T3前駆脂肪細胞中の脂肪形成を減少させるのに有効であったことを示し(
図4および
図5)、抗肥満剤として使用するための組成物の能力を示す。
全体として、テトラヒドロクルクミノイド、ヘキサヒドロクルクミノイド、およびオクタヒドロクルクミノイドを含む組成物は、血中の脂質レベル、グルコースおよびインスリンレベルを正常化させ、上昇した肝臓酵素を低下させ、脂肪形成を阻害することにより代謝症候群を管理するのに有効であった。組成物は、食事により誘発された代謝症候群を管理するための栄養補助食品として使用するのに非常に好適である。
本発明は、好ましい実施形態を参照して説明されてきたが、本発明がそれに限定されないことが、当業者により明らかに理解されるべきである。むしろ、本発明の範囲は、添付される特許請求の範囲と併せてのみ解釈されるものとする。
【国際調査報告】