IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ タイム,インコーポレーテッドの特許一覧

特表2022-553175がんの処置における使用のためのα-メチル-DL-チロシンのアルキルエステル
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-22
(54)【発明の名称】がんの処置における使用のためのα-メチル-DL-チロシンのアルキルエステル
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/223 20060101AFI20221215BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221215BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20221215BHJP
   A61K 31/37 20060101ALI20221215BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221215BHJP
   A61K 38/12 20060101ALI20221215BHJP
   A61K 31/4166 20060101ALI20221215BHJP
   A61K 31/19 20060101ALI20221215BHJP
   A61K 31/55 20060101ALI20221215BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20221215BHJP
   A61K 31/436 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
A61K31/223
A61P35/00
A61P35/02
A61K31/37
A61P43/00 121
A61K38/12
A61K31/4166
A61K31/19
A61K31/55
A61K31/198
A61K31/436
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022522609
(86)(22)【出願日】2020-10-15
(85)【翻訳文提出日】2022-05-25
(86)【国際出願番号】 US2020055727
(87)【国際公開番号】W WO2021076723
(87)【国際公開日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】62/915,177
(32)【優先日】2019-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514182366
【氏名又は名称】タイム,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196243
【弁理士】
【氏名又は名称】運 敬太
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン,スティーブン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084BA28
4C084MA02
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB271
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA19
4C086BC32
4C086BC38
4C086CB22
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA63
4C086MA65
4C086MA66
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA03
4C206FA53
4C206MA37
4C206MA83
4C206MA85
4C206MA86
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZB26
4C206ZB27
4C206ZC75
(57)【要約】
α-メチル-DL-チロシンのアルキルエステル(またはその塩)、例えば、α-メチル-DL-チロシンメチルエステル塩酸塩を含む医薬組成物およびキットが提供される。同様に、有効量のα-メチル-DL-チロシンのアルキルエステル(またはその塩)、例えば、α-メチル-DL-チロシンメチルエステル塩酸塩を、それを必要とする対象に投与するステップを含む、対象におけるがんを処置する方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
α-メチル-DL-チロシンの少なくとも1種のアルキルエステル、または薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物を、それを必要とする患者に投与するステップを含む、患者におけるがんを処置する方法。
【請求項2】
前記アルキルエステルが、α-メチル-DL-チロシンメチルエステルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記患者が、α-メチル-DL-チロシンのアルキルエステルの少なくとも1種の薬学的に許容される塩を投与される、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記塩が、α-メチル-DL-チロシンメチルエステル塩酸塩である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
- メラニン、メトキサレンもしくはメラノタンIIであるメラニン促進剤、またはメラニン、メトキサレン、およびメラノタンIIの組合せ物;
- 5,5-ジフェニルヒダントインであるp450 3A4促進剤、バルプロ酸、またはカルバマゼピン;ならびに
- N-[(2S,3R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-4-フェニルブチリル]-L-ロイシンであるロイシンアミノペプチダーゼ阻害剤またはラパマイシン
のうちの少なくとも1種を、前記患者に投与するステップをさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記医薬組成物が、皮下、静脈内、筋肉内、または経皮投与される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記医薬組成物が、水溶液である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記がんが、非小細胞肺がん、卵巣がん、乳がん、子宮頚がん、膵臓がん、胃がん、脳がん、肝臓がん、精巣がん、白血病、リンパ腫、虫垂がん、胆道がん、胆管癌、結腸がん、結腸直腸がん、胚芽細胞腫瘍、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、肺がん、神経芽細胞腫、前立腺がん、腎がん、肉腫、甲状腺がん、舌がん、扁桃腺扁平上皮癌、または尿路上皮がんである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
がんの処置のための追加の治療剤を、前記患者に投与するステップをさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
患者におけるがんを処置する方法において使用するための、α-メチル-DL-チロシンの少なくとも1種のアルキルエステル、または薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物であって、前記方法が、前記医薬組成物を前記患者に投与するステップを含む、前記医薬組成物。
【請求項11】
前記アルキルエステルが、α-メチル-DL-チロシンメチルエステルである、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記医薬組成物が、α-メチル-DL-チロシンのアルキルエステルの少なくとも1種の薬学的に許容される塩を含む、請求項10または請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記塩が、α-メチル-DL-チロシンメチルエステル塩酸塩である、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記がんを処置する方法が、
- メラニン、メトキサレンもしくはメラノタンIIであるメラニン促進剤、またはメラニン、メトキサレン、およびメラノタンIIの組合せ;
- 5,5-ジフェニルヒダントインであるp450 3A4促進剤、バルプロ酸、またはカルバマゼピン;ならびに
- N-[(2S,3R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-4-フェニルブチリル]-L-ロイシンであるロイシンアミノペプチダーゼ阻害剤またはラパマイシン;
のうちの少なくとも1種を、前記患者に投与するステップをさらに含む、請求項10~13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記医薬組成物が、皮下、静脈内、筋肉内、または経皮投与されるものである、請求項10~14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記医薬組成物が、水溶液である、請求項10~15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記がんが、非小細胞肺がん、卵巣がん、乳がん、子宮頚がん、膵臓がん、胃がん、脳がん、肝臓がん、精巣がん、白血病、リンパ腫、虫垂がん、胆道がん、胆管癌、結腸がん、結腸直腸がん、胚芽細胞腫瘍、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、肺がん、神経芽細胞腫、前立腺がん、腎がん、肉腫、甲状腺がん、舌がん、扁桃腺扁平上皮癌、または尿路上皮がんである、請求項10~16のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記がんを処置する方法が、がんの処置のための追加の治療剤を、前記患者に投与するステップをさらに含む、請求項10~17のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、2019年10月15日に出願の米国仮特許出願第62/915,177号の利益を主張する。
【0002】
[0002]本発明は、概して、例えば、がんの処置におけるような、細胞増殖の低減のための組成物、キット、および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]がんは、米国において唯一心疾患に次ぐ、最も一般的な死因の第2位であり、4例の死亡例中1例を占める。毎日、約1600名のアメリカ人が、がんによって死亡すると推定されている。がんの医学的、感情的、および心理学的負担に加えて、がんは、個人および社会の双方に対する著しい財政的負担を有する。
【0004】
[0004]現在、がん処置には、手術、ホルモン療法、放射線、化学療法、免疫療法、標的療法、およびそれらの組合せが含まれる。がんの外科的切除は著しく進歩しているが、依然として疾患再発の可能性が高いままである。アロマターゼ阻害剤ならびに黄体形成ホルモン-放出ホルモンアナログおよび阻害剤などの薬物を使用したホルモン療法は、前立腺がんおよび乳がんを処置することにおいて、比較的有効であった。原体陽子線照射療法、定位放射線手術、定位放射線療法、術中放射線療法、化学修飾剤、および放射線増感剤の放射線および関連技術は、がん細胞の死滅に有効であるが、周囲の正常組織も死滅させ得るし、変性し得る。アミノプテリン、シスプラチン、メトトレキサート、ドキソルビシン、ダウノルビシン、および他の単剤ならびに組合せなどの化学療法薬は、その多くがDNA複製過程を変化させることによって、がん細胞の死滅に有効である。生物学的応答調節物質(BRM)療法、生物学的療法、生物療法、または免疫療法は、がん細胞の成長を変化させるか、または自然な免疫応答に影響を与え、インターフェロン、インターロイキン、および他のサイトカインなどの生物学的薬剤、リツキシマブおよびトラスツズマブなどの抗体、さらにはシプリューセル-Tなどのがんワクチンを患者に投与することを伴う。
【0005】
[0005]新規の標的療法は、がんに対抗するために開発されてきた。これらの標的療法は、がん細胞においてより大きな効果を持ち、化学療法が、がん細胞および正常細胞の両方を死滅させることによって作用することから、化学療法とは異なる。標的療法は、がん細胞の成長、分裂、および伸展を制御する過程およびがん細胞を自然に死滅させるシグナルに影響を与えることによって作用する。ある種類の標的療法は、トラスツズマブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、セツキシマブ、ダサチニブ、およびニロチニブなどの増殖シグナル阻害剤を含む。別の種類の標的療法は、がんが周囲の血管系および血液供給を増加させることを阻害するベバシズマブなどの血管新生阻害剤を含む。最後の種類の標的療法は、直接的ながん細胞の死滅を誘導することが可能なアポトーシス誘導薬を含む。
【0006】
[0006]これらの処置のすべてはある程度有効であるが、それらすべては欠点および限界を有する。これらの処置の多くが高額であるのに加えて、非常に不明確であることが多いか、またはがんがその処置に順応して、耐性を持つことが可能である。
【0007】
[0007]このため、さらなるがん処置に対する大きな必要性がある。特に、他の形態の処置に耐性を持つようになったがんに対する処置の必要性がある。
【発明の概要】
【0008】
[0008]本発明は、がんの処置と関連することを含み、過度の細胞増殖を低減させるための組成物、併用治療薬、キット、および方法を提供する。一態様では、本発明は、α-メチル-チロシンメチルエステル塩酸塩などのα-メチル-DL-チロシンの少なくとも1種のアルキルエステル(または薬学的に許容されるその塩)を含む医薬組成物を提供する。本発明は、少なくとも1種のチロシンヒドロキシラーゼ阻害剤;メラニン、メラニン促進剤、またはそれらの組合せ物のうちの少なくとも1つ;少なくとも1種のp450 3A4促進剤;少なくとも1種のロイシンアミノペプチダーゼ阻害剤;および場合により、少なくとも1種の成長ホルモン阻害剤をさらに含む医薬組成物も提供する。他の態様では、本発明は、適当な包装と共に、これらの成分を含むキットを提供する。同様に、有効量のα-メチル-DL-チロシンのアルキルエステル(または薬学的に許容されるその塩)、例えば、α-メチル-チロシンメチルエステル塩酸塩を単独でか、またはメラニン、メラニン促進剤、もしくはそれらの組合せ物のうちの少なくとも1つ;少なくとも1種のp450 3A4促進剤;少なくとも1種のロイシンアミノペプチダーゼ阻害剤;および場合により、少なくとも1種の成長ホルモン阻害剤と組み合わせて、それを必要とする対象に投与するステップを含む、細胞増殖を低減させる方法および/またはがんを処置する方法も提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[0009]本発明の主題は、本開示の一部を形成する以下の詳細説明を参照することによって一層容易に理解され得る。本発明は、本明細書において記載および/または示されている特定の生成物、方法、条件またはパラメータに限定されないこと、および本明細書において使用される専門用語は、単なる例として、特定の実施形態を説明する目的のためのものであり、特許請求された発明を限定することを意図するものではないことを理解すべきである。
【0010】
[0010]本明細書において特に定義しない限り、本出願に関連して使用されている科学用語および技術用語は、当業者により一般に理解されている意味を有するものとする。さらに、文脈によって特に要求されない限り、単数用語は複数を含むものとし、複数用語は単数を含むものとする。
【0011】
[0011]以下の用語および略称は、上記および本開示の全体で使用されている場合、特に示さない限り、以下の意味を有することが理解されるものとする。
【0012】
[0012]本開示では、単数形「a」、「an」および「the」は、複数の参照物を含み、具体的な数値を述べる場合、特に文脈が明白に示さない限り、少なくともその具体的な値を含む。したがって、例えば、「1つの化合物」と述べる場合、1つまたは複数のこのような化合物、および当業者に公知のその等価物などを述べることである。用語「複数」とは、本明細書で使用する場合、1つより多いことを意味する。値の範囲が表現される場合、別の実施形態には、1つの特定の値から、かつ/または他の特定の値までが含まれる。同様に、前に置かれる「約」を使用することによって値を概数として表す場合、その特定の値が別の実施形態を形成すると理解される。範囲はすべて、包括的であり、組合せ可能である。
【0013】
[0013]用語「アルキル」は、その基中に1~12個の炭素原子(「C~C12」)、好ましくは1~6個の炭素原子(「C~C」)を有する直鎖または分枝鎖炭化水素基を指す。アルキル基の例には、メチル(Me、Cアルキル)、エチル(Et、Cアルキル)、n-プロピル(Cアルキル)、イソプロピル(Cアルキル)、ブチル(Cアルキル)、イソブチル(Cアルキル)、sec-ブチル(Cアルキル)、tert-ブチル(Cアルキル)、ペンチル(Cアルキル)、イソペンチル(Cアルキル)、tert-ペンチル(Cアルキル)、ヘキシル(Cアルキル)、イソヘキシル(Cアルキル)などが含まれる。
【0014】
[0014]本明細書で使用する場合、用語「構成成分」、「組成物」、「化合物の組成物」、「化合物」、「薬物」、「薬理学的活性剤」、「活性剤」、「治療剤」、「治療薬」、「処置剤」または「薬剤」は、本明細書において互換的に使用されて、対象(ヒトまたは動物)に投与されると、局所および/または全身性作用による所望の薬理学的作用および/または生理学的作用を誘導する、物質の化合物(単数または複数)または組成物を指す。
【0015】
[0015]本明細書で使用する場合、用語「処置」または「治療」(およびその異なる形態)は、予防的(例えば、防止的)処置、治癒的処置または対症処置を含む。本明細書で使用する場合、用語「処置すること」は、状態、疾患または障害の症状の少なくとも1つの有害作用または負の作用を軽減または低減することを含む。この状態、疾患または障害は、がんとすることができる。
【0016】
[0016]用語「有効量」とは、上記および本開示の全体で使用されている場合、投与量で、および必要な期間、関連する障害、状態または副作用の処置に関して、所望の結果を実現するのに有効な量を指す。本発明の構成成分の有効量は、選択した特定の化合物、構成成分または組成物、投与経路、および個体において所望の結果を誘発する構成成分の能力を有するだけではなく、疾患状態または軽減される状態の重症度、個体のホルモンレベル、年齢、性別、体重、患者の現在の状態および処置される病的状態の重症度、同時に行われる投薬またはその後に特定の患者が従う特別な食事、ならびに当業者が認識する他の因子などの因子も有し、患者ごとに様々となり、適切な投与量は、主治医の自由裁量であることを理解されたい。投与量レジメは、治療的応答の改善をもたらすよう調節されてもよい。有効量とはまた、構成成分のいかなる毒性作用または有害作用よりも、治療的に有益な効果が勝るものでもある。
【0017】
[0017]「薬学的に許容される」とは、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題となる合併症なく、ヒトおよび動物の組織との接触に好適な、妥当な医療的判断の範囲内で、妥当な利益/リスク比に見合う、これらの化合物、物質、組成物および/または剤形を指す。
【0018】
[0018]本発明の範囲内では、開示化合物は、薬学的に許容される塩の形態で調製されてもよい。「薬学的に許容される塩」は、親化合物がその酸塩または塩基塩を作製することによって修飾された、開示化合物の誘導体を指す。薬学的に許容される塩の例には、以下に限定されないが、アミンなどの塩基性残基の鉱酸塩または有機酸塩;カルボン酸などの酸性残基のアルカリ塩または有機塩などが含まれる。薬学的に許容される塩は、例えば、非毒性の無機酸または有機酸から形成された、親化合物の従来の非毒性の塩または第四級アンモニウム塩を含む。例えば、このような従来の非毒性塩には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などの無機酸に由来するもの、および酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸などの有機酸から調製される塩が含まれる。これらの生理学的に許容される塩は、当分野において公知の方法によって、例えば、水性アルコール中に過剰の酸と共に遊離アミン塩基を溶解する、または水酸化物などのアルカリ金属塩基もしくはアミンで遊離カルボン酸を中和することによって調製される。
【0019】
[0019]本明細書に記載されている化合物は、代替的な形態で調製され得る。例えば、多数のアミノ含有化合物を使用することができるか、または酸付加塩として調製することができる。多くの場合、このような塩は、化合物の単離および取り扱い特性を改善する。例えば、本明細書に記載されている化合物は、試薬、反応条件などに応じて、例えばその塩酸塩またはトシル酸塩として使用され得るか、または調製され得る。同形結晶形態、すべてのキラル体およびラセミ体、N-オキシド、水和物、溶媒和物および酸塩水和物もまた、本発明の範囲内に企図される。
【0020】
[0020]ある特定の本発明の酸性化合物または塩基性化合物が、双性イオンとして存在してもよい。遊離酸、遊離塩基および双性イオンを含めた、化合物のすべての形態が、本発明の範囲内に企図されている。アミノ基およびカルボキシル基の両方を含有する化合物は、その双性イオン形態と平衡して存在することが多いことが当分野で周知である。したがって、例えば、アミノ基およびカルボキシル基の両方を含有する、本明細書において記載されているいずれの化合物もまた、その対応する双性イオンを述べていることを含む。
【0021】
[0021]用語「立体異性体」とは、同一の化学構成を有するが、空間における原子または基の配列に関して違いがある化合物を指す。
【0022】
[0022]用語「投与すること」は、本発明の化合物または組成物を直接投与すること、または身体内である等価な量の活性化合物もしくは物質を形成するプロドラッグ、誘導体またはアナログを投与することのどちらか一方を意味する。
【0023】
[0023]用語「対象」、「個体」および「患者」は、本明細書において互換的に使用され、本発明による医薬組成物を用いて予防的処置を含めた処置が提供される動物、例えばヒトを指す。用語「対象」とは、本明細書で使用する場合、ヒトおよび非ヒト動物を指す。用語「非ヒト動物」および「非ヒト哺乳動物」は、本明細書において互換的に使用され、すべての脊椎動物、例えば非ヒト霊長類(特により高等な霊長類)、ヒツジ、イヌ、げっ歯類(例えば、マウスまたはラット)、モルモット、ヤギ、ブタ、ネコ、ウサギ、ウシ、ウマなどの哺乳動物、および爬虫類、両生類、ニワトリおよびシチメンチョウなどの非哺乳動物を含む。
【0024】
[0024]用語「阻害剤」は、本明細書で使用する場合、タンパク質、ポリペプチドもしくは酵素の発現または活性を阻害する化合物を含み、発現および/または活性の完全な阻害を必ずしも意味するわけではない。むしろ、阻害は、所望の効果を生じるのに十分な程度および時間の、タンパク質、ポリペプチドもしくは酵素の発現および/または活性の阻害を含む。
【0025】
[0025]用語「促進剤」は、本明細書で使用する場合、タンパク質、ポリペプチドもしくは酵素の発現または活性を促進する化合物を含み、発現および/または活性の完全な促進を必ずしも意味するわけではない。むしろ、促進は、所望の効果を生じるのに十分な程度および時間の、タンパク質、ポリペプチドもしくは酵素の発現および/または活性の促進を含む。
【0026】
[0026]本発明のα-メチル-DL-チロシンのアルキルエステルは、そのDおよびL異性体それぞれのいずれかまたはその両方として存在し得る。本発明によるα-メチル-チロシンメチルエステルは、そのDおよびL異性体それぞれのいずれかまたは両方として存在し得る。好ましくは、α-メチル-DL-チロシンメチルエステル塩酸塩が使用される。α-メチル-DL-チロシンのアルキルエステル(およびその塩)は、単独でか、または他のがん治療剤と組み合わせて使用され得る。α-メチル-DL-チロシンメチルエステル塩酸塩は、単独でか、または他のがん治療剤と組み合わせて使用され得る。
【0027】
[0027]いかなる特定の作用の機序にも束縛される意図はないが、α-メチル-DL-チロシンのアルキルエステルは、がん細胞に(アルキルエステルまたは遊離酸のいずれかとして)蓄積すること、およびがん細胞が脂質またはヒアルロン酸のいずれかによる被覆を形成することを防ぐことによって機能する。がん細胞が脂質またはヒアルロン酸のいずれかによる被覆を形成することを防ぐことによって、がん細胞は、酸化ストレスに、より曝されやすくなると考えられている。
【0028】
[0028]一態様では、本発明は、酸化ストレスに対するがん細胞の防御を変化させる併用治療薬を提供する。このような治療薬の1つのクラスは、がん細胞に対するフリーラジカル利用能を増大させる。このような治療薬の代表的なサブクラスは、チロシンヒドロキシラーゼ阻害剤、メラニンまたはメラニン促進剤、p450 3A4促進剤、ロイシンアミノペプチダーゼ阻害剤、および場合により、成長ホルモン阻害剤を含む医薬組成物の投与を伴う。別のサブクラスは、メラニンおよびチロシンヒドロキシラーゼ阻害剤を含む医薬組成物の投与を伴う。医薬組成物の特定の成分は、以下に記載される。
【0029】
[0029]本発明は、メラニン、メラニン促進剤、またはそれらの組合せ物のうちの少なくとも1つの使用も含み得る。このため、メラニンは使用され得るし、1種もしくは複数のメラニン促進剤は使用され得るし、またメラニンおよび1種もしくは複数のメラニン促進剤のいずれも(個別の剤形または同一の剤形のいずれかで)使用され得る。本発明によるメラニン促進剤は、メラニンの生成および/または活性を増大させる化合物である。代表的なメラニン促進剤は、メトキサレンおよびメラノタンIIである。
【0030】
[0030]一部の例では、α-メチル-DL-チロシンのアルキルエステル(またはその塩)は、同一の剤形中でメラニンと混合されている。一部の態様では、α-メチル-DL-チロシンメチルエステル塩酸塩は、同一の剤形中でメラニンと混合されている。ある特定の例では、メラニンは、当分野において公知の方法によって、可溶化剤中に可溶化され、その後、α-メチル-DL-チロシンのアルキルエステル(またはその塩)、例えば、α-メチル-DL-チロシンメチルエステル塩酸塩と混合される。この可溶化剤は、蒸泄、乾燥などの標準的な技術によって除去されてもよい。この可溶化剤は、過酸化水素または当分野で一般的に知られている他の可溶化剤などの非毒性可溶化剤であってもよい。前記メラニンおよび/または医薬組成物は、がん細胞における医薬組成物の効果を最適化するために、さらに処理される場合がある。別の態様では、医薬組成物は、追加の活性剤および/または医薬賦形剤を含んでもよい。
【0031】
[0031]本発明の方法は、p450 3A4促進剤を投与するステップを含んでもよい。「シトクロムp450 3A4」(これは、「p450 3A4」と省略され得る)は、酵素であるシトクロムp450スーパーファミリーのメンバーであり、身体内の生体異物の代謝に関与する、複合機能型オキシダーゼである。これは、シトクロムすべての最も広い基質の範囲を有する。本発明の医薬組成物中のp450 3A4促進剤の機能は、p450 3A4の発現および/または活性を増大させることである。増大されたp450 3A4の発現および/または活性は、患者におけるコルチゾンおよびエストロゲンレベルを低下させると考えられている。加えて、増大されたp450 3A4の発現および/または活性は、血液pHをわずかに低下させるが、これは、メラニン活性を保持するか、または増強するのに役立つと考えられている。代表的なp450 3A4促進剤は、5,5-ジフェニルヒダントイン(例えば、Dilantinとして市販されている)、バルプロ酸およびカルバマゼピンであり、これらは、p450 3A4酵素の発現を誘導すると考えられている。
【0032】
[0032]本方法は、ロイシンアミノペプチダーゼ阻害剤(代替として、ロイシルアミノペプチダーゼ阻害剤として知られている)を投与するステップをさらに含んでもよい。ロイシンアミノペプチダーゼは、ペプチドおよび/またはタンパク質のN末端において、ロイシン残基の加水分解を優先的に触媒する酵素である。代表的なロイシンアミノペプチダーゼ阻害剤は、N-[(2S,3R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-4-フェニルブチリル]-L-ロイシンおよびラパマイシンである。
【0033】
[0033]本方法は、場合により、成長ホルモン阻害剤を投与するステップを含んでもよい。成長ホルモン(例えば、膵臓成長ホルモンなど)は、細胞複製を誘導する。代表的な成長ホルモン阻害剤は、オクトレオチド、ソマトスタチンおよびセグリチドである。
【0034】
[0034]本発明の方法は、D-ロイシンを投与するステップをさらに含んでもよい。D-ロイシンは、ポリペプチドおよびタンパク質に組み込まれるロイシンの形態である、天然に存在するL-ロイシンの立体異性体である。D-ロイシンは、ポリペプチドおよび/またはタンパク質に組み込まれることができない。D-ロイシンの存在は、医薬組成物中での一層低い用量のロイシンアミノペプチダーゼ阻害剤の使用を可能とし得る。
【0035】
[0035]同様に、酸化ストレスに対するがん細胞の防御における変化を引き起こす併用治療薬を含むキットが本明細書において提供される。対象とする適当なキットは、がん細胞に対するフリーラジカル利用能を増大させる併用治療薬を含む。代表的なキットは、α-メチル-DL-チロシンのアルキルエステル(またはその塩)、例えば、α-メチル-DL-チロシンメチルエステル塩酸塩を単独でか、または別のがん治療剤ならびに/もしくは上記の種類のメラニンおよび/もしくはメラニン促進剤、p450 3A4促進剤、ロイシンアミノペプチダーゼ阻害剤、および場合により、成長ホルモン阻害剤と組み合わせて、これらの包装と一緒になって含む。このキットは、1つまたは複数の個別の容器、分割器またはコンパートメント、および場合により投与に関する指示書などの情報資料を含むことができる。例えば、阻害剤または促進剤(または、様々なそれらの組合せ物)はそれぞれ、ボトル、バイアルまたはシリンジに含まれ得、情報資料は、プラスチック製スリーブまたはポケットに含まれ得るか、またはラベルで供給され得る。一部の態様では、キットは、複数(例えばパック)の個々の容器を含み、それぞれは、1つまたは複数の単位剤形の本明細書に記載されている化合物を含有する。例えば、キットは、複数のシリンジ、アンプル、ホイルパケットまたはブリスターパックを含むことができ、それぞれは、単一の単位用量の本明細書に記載されている化合物、または任意の様々なそれらの組合せ物を含有する。キットの容器は、気密、防水(例えば、水分または蒸発の変化に非透過性である)および/または遮光性とすることができる。キットは、場合により、組成物の投与に好適なデバイス、例えば、シリンジ、吸入器(inhalant)、ピペット、鉗子、計量スプーン、点滴器(例えば、点眼器)、スワブ(例えば、ワタスワブまたは木製スワブ)、または任意のこのような送達デバイスを含む。
【0036】
[0036]対象におけるがんを処置する方法も、過度の細胞増殖を低減させる方法として提供される。このような方法は、有効量のα-メチル-DL-チロシンのアルキルエステル(またはその塩)、例えば、α-メチル-DL-チロシンメチルエステル塩酸塩を単独でか、または酸化ストレスに対するがん細胞の防御における変化を引き起こす併用治療薬の一部として投与するステップを含むことができる。がんを処置する代表的な方法は、有効量のα-メチル-DL-チロシンのアルキルエステル(またはその塩)、例えば、α-メチル-DL-チロシンメチルエステル塩酸塩を単独でか、またはがん細胞に対するフリーラジカル利用能を増大させる併用治療薬の一部として投与するステップを含む。適当な方法は、有効量のα-メチル-DL-チロシンのアルキルエステル(またはその塩)、例えば、α-メチル-DL-チロシンメチルエステル塩酸塩を単独でか、または上記のチロシンヒドロキシラーゼ阻害剤、メラニンおよび/またはメラニン促進剤、p450 3A4促進剤、ロイシンアミノペプチダーゼ阻害剤、ならびに場合により、成長ホルモン阻害剤と共に投与するステップを含む。他の適当な方法は、有効量のメラニンおよびチロシンヒドロキシラーゼ阻害剤を投与するステップを含む。
【0037】
[0037]適当な方法は、α-メチル-DL-チロシンのアルキルエステル(またはその塩)、例えば、α-メチル-DL-チロシンメチルエステル塩酸塩とメラニンもしくはメラニン促進剤、p450 3A4促進剤、およびロイシンアミノペプチダーゼ阻害剤のうちの少なくとも1つ、これらのうちの少なくとも2つ、またはこれらのうちのそれぞれとの(各場合において、場合により、成長ホルモン阻害剤と共に)同時投与または少なくとも同時期投与を含む。所望の数の阻害剤および促進剤は、単一剤形で、または個々の剤形を含めた、任意の数の所望の剤形で供給され得る。
【0038】
[0038]代表的な剤形には、錠剤、カプセル剤、カプレット剤、滅菌水溶液剤または有機溶液剤、再構成可能な散剤、エリキシル剤、液体剤、コロイド状または他の種類の懸濁液剤、エマルション剤、ビーズ剤、ビードレット剤(beadlet)、顆粒剤、マイクロ粒子剤、ナノ粒子剤およびそれらの組合せが含まれる。投与される組成物の量は、当然ながら、処置される対象、対象の体重、処置される状態の重症度、投与方法および処方医師の判断に依存するであろう。
【0039】
[0039]α-メチル-DL-チロシンのアルキルエステル(またはその塩)、例えば、α-メチル-DL-チロシンメチルエステル塩酸塩の投与は、経口、鼻腔、皮下、静脈内、筋肉内、経皮、膣内、直腸内またはそれらの任意の組合せを含む、様々な経路を経由することができる。α-メチル-DL-チロシンメチルエステル塩酸塩は、好ましくは水溶液の形態で、好ましくは、皮下、静脈内、筋肉内、または経皮を含む非経口で投与される。経皮投与は、例えば、オレイン酸、1-メチル-2-ピロリドン、またはドデシルノナオキシエチレングリコールモノエーテルを使用して行われ得る。
【0040】
[0040]メラニン、促進剤および/または阻害剤の投与は、経口、鼻腔、皮下、静脈内、筋肉内、経皮、膣内、直腸内またはそれらの任意の組合せを含む、様々な経路を経由することができる。経皮投与は、例えば、オレイン酸、1-メチル-2-ピロリドンまたはドデシルノナオキシエチレングリコールモノエーテルを使用して行われ得る。
【0041】
[0041]メラニン、促進剤および/または阻害剤は、5~7日間、メラニン、促進剤および/または阻害剤を投与すること、ならびに1~2日間、メラニン、促進剤および/または阻害剤を投与しないことからなるサイクルの間に投与され得る。メラニン、促進剤および/または阻害剤は、少なくとも6回の前記サイクルの経過にわたり投与され得る。服用を容易にするよう、食間に約2時間、これらの構成成分を投与することが望ましいことになり得る。
【0042】
[0042]本組成物が投与される対象は、哺乳動物、好ましくはヒトであり得る。
【0043】
[0043]別の代表的な方法では、60mgのα-メチル-DL-チロシンメチルエステル塩酸塩が経口投与され、場合により、チロシン誘導体の2mg/mLの懸濁液0.25mLが皮下投与される;10mgのメトキサレンが経口投与され、メトキサレンの1mg/mLの懸濁液0.25mLが皮下投与される;30mgの5,5-ジフェニルヒダントインが経口投与される;および20mgのN-[(2S,3R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-4-フェニルブチリル]-L-ロイシンが経口投与される。
【0044】
[0044]代表的な方法は、がんが非小細胞肺がんである場合のそれらを含む。ある特定の実施形態では、非小細胞肺がんは、ステージIVの非小細胞肺がんである。他の実施形態では、がんは、卵巣がん、乳がん、子宮頚がん、膵臓がん、胃がん、脳がん、肝臓がん、精巣がん、白血病、リンパ腫、虫垂がん、胆道がん、胆管癌、結腸がん、結腸直腸がん、胚細胞腫瘍、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、肺がん、神経芽細胞腫、前立腺がん、腎がん、肉腫、甲状腺がん、舌がん、扁桃腺扁平上皮癌、または尿路上皮がんである。前記対象における前記がんの進行は、評価され得る。
【0045】
[0045]本方法は、開示された投与ステップだけではなく、前記対象における前記がんの進行および/または細胞増殖の範囲を評価するステップも含むことができる。評価するステップは、投与ステップ前またはその後に行われ得る。
【0046】
[0046]α-メチル-DL-チロシンのアルキルエステル(またはその塩)、例えば、α-メチル-DL-チロシンメチルエステル塩酸塩を含む医薬組成物は、成長ホルモン阻害剤をさらに含むことができる。前記成長ホルモンは、膵臓成長ホルモンであり得る。前記成長ホルモン阻害剤は、オクトレオチドまたはソマトスタチンであり得る。
【0047】
[0047]前記メラニン促進剤は、メトキサレンまたはメラノタンIIであり得る。前記p450 3A4促進剤は、5,5-ジフェニルヒダントインであり得る。前記p450 3A4促進剤は、バルプロ酸またはカルバマゼピンであり得る。前記ロイシンアミノペプチダーゼ阻害剤は、N-[(2S,3R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-4-フェニルブチリル]-L-ロイシンまたはラパマイシンであり得る。本発明の医薬組成物は、D-ロイシンをさらに含むことができる。
【0048】
[0048]有効量のα-メチル-DL-チロシンのアルキルエステル(またはその塩)、例えば、α-メチル-DL-チロシンメチルエステル塩酸塩を単独でか、または上記の薬剤のうちの1種もしくは複数と組み合わせて投与するステップを含む、対象におけるがんを処置する方法も提供される。ある特定の態様では、α-メチル-DL-チロシンメチルエステル塩酸塩および前記薬剤(例えば、メラニン、促進剤、および/または阻害剤)のうちの少なくとも2種は、同時投与される。他の態様では、α-メチル-DL-チロシンのアルキルエステル(またはその塩)、例えば、α-メチル-DL-チロシンメチルエステル塩酸塩および前記薬剤のうちの少なくとも3種は、同時投与される。α-メチル-DL-チロシンのアルキルエステル(またはその塩)のそれぞれ、例えば、α-メチル-DL-チロシンメチルエステル塩酸塩および前記薬剤は、同時投与され得る。前記投与は、経口、皮下、静脈内、経皮、膣内、直腸内、またはそれらの任意の組合せであり得る。経皮投与は、オレイン酸、1-メチル-2-ピロリドン、またはドデシルノナオキシエチレングリコールモノエーテルを用いて行われ得る。α-メチル-DL-チロシンのアルキルエステル(またはその塩)、例えば、α-メチル-DL-チロシンメチルエステル塩酸塩および前記薬剤は、5~7日間、前記成分を投与すること、および1~2日間、投与しないことからなるサイクルの間に投与され得る。α-メチル-DL-チロシンのアルキルエステル(またはその塩)、例えば、α-メチル-DL-チロシンメチルエステル塩酸塩および前記薬剤は、少なくとも6回の前記サイクルの経過にわたり投与され得る。前記メラニン促進剤は、メトキサレンであり得る。別の適当な方法では、10mgのメトキサレンが経口投与され、メトキサレンの1mg/mLの懸濁液0.25mLが皮下投与される。前記メラニン促進剤は、メラノタンIIでもあり得る。前記p450 3A4促進剤は、5,5-ジフェニルヒダントインであり得る。別の適当な方法では、30mgの5,5-ジフェニルヒダントインが経口投与される。前記p450 3A4促進剤は、バルプロ酸またはカルバマゼピンでもあり得る。前記ロイシンアミノペプチダーゼ阻害剤は、N-[(2S,3R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-4-フェニルブチリル]-L-ロイシンであり得る。別の適当な方法では、20mgのN-[(2S,3R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-4-フェニルブチリル]-L-ロイシンが経口投与される。前記ロイシンアミノペプチダーゼ阻害剤は、パマイシンでもあり得る。前記成長ホルモンは、膵臓成長ホルモンであり得る。前記成長ホルモン阻害剤は、オクトレオチドであり得る。本方法は、有効量のD-ロイシンを投与するステップをさらに含むことができる。
【0049】
[0049]有効量のα-メチル-DL-チロシンのアルキルエステル(またはその塩)、例えば、α-メチル-DL-チロシンメチルエステル塩酸塩を単独でか、またはメラニンおよび/もしくはメラニン促進剤;p450 3A4促進剤;およびロイシンアミノペプチダーゼ阻害剤と組み合わせて、それを必要とする対象に投与するステップを含む、対象における細胞増殖を低減させる方法も提供される。細胞増殖を低減させる方法は、成長ホルモン阻害剤を投与するステップをさらに含むことができる。
【0050】
[0050]前記医薬組成物および併用治療薬を投与する代表的な方法も提供される。本発明の様々な態様は、がんの処置のために、医薬組成物または併用治療薬を、ヒト患者に投与する方法にさらに関する。本方法は、一般的に受け入れられている投与経路(例えば、経口、皮下、非経口、吸入、局所など)によって、医薬組成物または併用治療薬を投与するステップを含んでもよい。一部の例では、医薬組成物または併用治療薬は、経口および/または皮下投与されてもよい。一部の例では、医薬組成物または併用治療薬は、食間にヒト患者に投与されてもよい。
【0051】
[0051]本発明のある特定の例では、医薬組成物または併用治療薬は、1週間あたり5日間を6週間の期間、ヒト患者に投与し、30日間の処置のサイクルを1つ作り出すことができる。6週間の処置または1サイクルの処置後の転帰に応じて、医薬組成物または併用治療薬の追加サイクルが投与されてもよい。
【0052】
[0052]一部の実施形態では、本開示は、以下の態様を対象とする:
態様1.α-メチル-DL-チロシンの少なくとも1種のアルキルエステル、または薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物を、それを必要とする患者に投与するステップを含む、患者におけるがんを処置する方法。
態様2.前記アルキルエステルが、α-メチル-DL-チロシンメチルエステルである、態様1に記載の方法。
態様3.前記患者が、α-メチル-DL-チロシンのアルキルエステルの少なくとも1種の薬学的に許容される塩を投与される、態様1または態様2に記載の方法。
態様4.前記塩が、α-メチル-DL-チロシンメチルエステル塩酸塩である、態様2に記載の方法。
態様5.- メラニン、メトキサレンもしくはメラノタンIIであるメラニン促進剤、またはメラニン、メトキサレン、およびメラノタンIIの組合せ物;
- 5,5-ジフェニルヒダントインであるp450 3A4促進剤、バルプロ酸、またはカルバマゼピン;ならびに
- N-[(2S,3R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-4-フェニルブチリル]-L-ロイシンであるロイシンアミノペプチダーゼ阻害剤またはラパマイシン
のうちの少なくとも1種を、前記患者に投与するステップをさらに含む、態様1から4のいずれか一態様に記載の方法。
態様6.前記医薬組成物が、皮下、静脈内、筋肉内、または経皮投与される、態様1から5のいずれか一態様に記載の方法。
態様7.前記医薬組成物が、水溶液である、態様1から6のいずれか一態様に記載の方法。
態様8.前記がんが、非小細胞肺がん、卵巣がん、乳がん、子宮頚がん、膵臓がん、胃がん、脳がん、肝臓がん、精巣がん、白血病、リンパ腫、虫垂がん、胆道がん、胆管癌、結腸がん、結腸直腸がん、胚芽細胞腫瘍、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、肺がん、神経芽細胞腫、前立腺がん、腎がん、肉腫、甲状腺がん、舌がん、扁桃腺扁平上皮癌、または尿路上皮がんである、態様1から7のいずれか一態様に記載の方法。
態様9.がんの処置のための追加の治療剤を、前記患者に投与するステップをさらに含む、態様1から8のいずれか一態様に記載の方法。
【国際調査報告】