IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中国石油化工股▲ふん▼有限公司の特許一覧 ▶ 中国石油化工股▲ふん▼有限公司上海石油化工研究院の特許一覧

特表2022-553217リチウム電池正極材料の前駆体、その作製方法、及びその適用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-22
(54)【発明の名称】リチウム電池正極材料の前駆体、その作製方法、及びその適用
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20221215BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20221215BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20221215BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20221215BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/62 Z
H01M4/131
C01G53/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022522945
(86)(22)【出願日】2020-10-16
(85)【翻訳文提出日】2022-06-14
(86)【国際出願番号】 CN2020121341
(87)【国際公開番号】W WO2021073583
(87)【国際公開日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】201910990467.8
(32)【優先日】2019-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201910989951.9
(32)【優先日】2019-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】509128052
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司上海石油化工研究院
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI RESEARCH INSTITUTE OF PETROCHEMICAL TECHNOLOGY SINOPEC
【住所又は居所原語表記】NO.1658 PUDONG BEI ROAD,PUDONG NEW AREA,SHANGHAI 201208,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】張同宝
(72)【発明者】
【氏名】汪碧微
(72)【発明者】
【氏名】朱▲イェ▼
(72)【発明者】
【氏名】高煥新
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AA05
4G048AB02
4G048AC06
4G048AD04
4G048AD06
4G048AD07
4G048AE05
4G048AE07
5H050AA02
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB01
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA10
5H050DA11
5H050FA17
5H050FA19
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA12
5H050GA26
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA10
5H050HA13
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
リチウム電池正極活物質の前駆体、その作製方法、及びその使用を開示する。前記前駆体はNiCo(OH)の化学式を有し、Mは、Fe、Cr、Cu、Ti、Mg、W、Mo、Nb、Zn、Sn、Zr、Ga、Mn、及びAlからなる群から選択される少なくとも1種の金属であり、0.3≦x≦1、0<y≦0.5、0<z≦0.3であり、前記前駆体は、板状単結晶と多面体単結晶粒子との凝集体を含む。前記前駆体のX線回折パターンにおいて、I(001)、I(100)、及びI(101)は、I(001)/I(100)が約1.5以上であり、I(001)/I(101)が約1.2以上である関係を満たす。前記前駆体を用いて作製されたリチウム電池正極活物質は、電気化学的特性が改善されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム電池正極活物質の前駆体であって、
NiCo(OH)の化学式を有し、Mは、Fe、Cr、Cu、Ti、Mg、W、Mo、Nb、Zn、Sn、Zr、Ga、Mn、及びAlからなる群から選択される少なくとも1種の金属であり、0.3≦x≦1、0<y≦0.5、0<z≦0.3であり、x、y、及びzの値は電気的中性則を満たし、
前記前駆体は、板状単結晶と多面体単結晶粒子との凝集体を含み、
前記前駆体のX線回折パターンのI(001)、I(100)、及びI(101)は、
I(001)/I(100)が約1.5以上であり、かつ、
I(001)/I(101)が約1.2以上である、
関係を満たし、
好ましくは、I(101)/I(100)が約1.3以上であり、
I(001)、I(100)、及びI(101)はそれぞれ、(001)結晶面、(100)結晶面、及び(101)結晶面に対応する、回折ピークのピーク高さでの強度を表す、前駆体。
【請求項2】
Mは、Mn、Al、及びMgのうちの少なくとも1種であるか、または、Mn、Al、及びMgのうちの少なくとも1種と、Fe、Cr、Cu、Ti、W、Mo、Nb、Zn、Sn、Zr、及びGaからなる群から選択される少なくとも1種と、の組み合わせである、請求項1に記載の前駆体。
【請求項3】
0.6≦x≦0.95、0.025≦y≦0.2、及び、0.025≦z≦0.2である、請求項1に記載の前駆体。
【請求項4】
前記前駆体のX線回折パターンのI(001)、I(100)、及びI(101)は、
I(001)/I(100)が、約1.8以上、好ましくは、約10以下であり、
I(001)/I(101)が、約1.3以上、好ましくは、約5以下であり、かつ
I(101)/I(100)が、約1.5以上、好ましくは、約5以下である、
関係を満たす、請求項1に記載の前駆体。
【請求項5】
リチウム電池正極活物質の前駆体の作製方法であって、
(1)金属塩溶液を沈殿剤溶液及び錯化剤溶液と混合して反応させる工程であって、前記沈殿剤溶液及び前記錯化剤溶液を反応系に連続的に供給しつつ、前記金属塩溶液を前記反応系に間欠的に供給する工程と、
(2)前記工程(1)で得られた生成物を固液分離及び乾燥処理して前記前駆体を得る工程と、
を含み、
前記金属塩溶液中の金属は、Ni、Co、及びMを含み、
前記金属Mは、Fe、Cr、Cu、Ti、Mg、W、Mo、Nb、Zn、Sn、Zr、Ga、Mn、及びAlからなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記金属Ni、Co、及びMのモル比は、約(0.3~1):(0~0.5):(0~0.3)、好ましくは、約(0.6~0.95):(0.025~0.2):(0.025~0.2)であり、
用いられるCo及びMのモル量は0でない、作製方法。
【請求項6】
前記金属Mは、Mn、Al、及びMgのうちの少なくとも1種、または、Mn、Al、及びMgのうちの少なくとも1種と、Fe、Cr、Cu、Ti、W、Mo、Nb、Zn、Sn、Zr、及びGaからなる群から選択される少なくとも1種と、の組み合わせであり、
好ましくは、前記金属塩は、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、塩化物、及びシュウ酸塩からなる群から選択される少なくとも1種であり、
好ましくは、前記金属塩溶液は、金属元素換算で、約0.01~5mol/L、好ましくは、約0.5~3mol/L、より好ましくは、約1~2mol/Lの濃度を有する、請求項5に記載の作製方法。
【請求項7】
前記沈殿剤は、NaOH、KOH、及びLiOHからなる群から選択される少なくとも1種であり、
好ましくは、前記沈殿剤溶液は、約0.02~10mol/L、好ましくは、約2~8mol/L、より好ましくは、約2~6mol/Lの濃度を有する、請求項5または6に記載の作製方法。
【請求項8】
前記錯化剤は、アンモニウムイオン供与体、エタノールアミン錯化剤、アミノカルボン酸錯化剤、ヒドロキシアミノカルボン酸錯化剤、及びカルボン酸錯化剤からなる群から選択される少なくとも1種であり、
好ましくは、前記錯化剤溶液は、約0.01~15mol/L、好ましくは、約2~10mol/L、より好ましくは、約2~6mol/Lの濃度を有する、請求項5~7のいずれか1項に記載の作製方法。
【請求項9】
前記工程(1)の反応条件は、約30~70℃、好ましくは、約45~60℃の温度と、約10時間以上、好ましくは、約24~72時間の反応時間と、約9~14、好ましくは、約9~12のpHと、を含み、前記金属塩溶液は、少なくとも2回に分けて、前記反応系に供給され、
好ましくは、前記工程(1)での混合は、撹拌下、好ましくは、約50~1000r/分の速度で、実施される、請求項5~8のいずれか1項に記載の作製方法。
【請求項10】
前記工程(1)は、
(1a)前記金属塩溶液、前記沈殿剤溶液、及び前記錯化剤溶液を反応装置に連続的に供給するし、それらを約2~12時間、混合及び反応させる工程と、
(1b)前記金属塩溶液の供給を約0.5~4時間中断する工程と、
(1c)前記反応が完了するまで工程(1a)~(1b)を繰り返す工程と、
をさらに含む、請求項5~9のいずれか1項に記載の作製方法。
【請求項11】
LiNiCoの化学式を有し、Mは、Fe、Cr、Cu、Ti、Mg、W、Mo、Nb、Zn、Sn、Zr、Ga、Mn、及びAlからなる群から選択される少なくとも1種の金属であり、0.9≦a≦1.2、0.3≦x≦1、0<y≦0.5、及び、0<z≦0.3であり、a、x、y、及びzの値は、電気的中性則を満たし、
少なくとも部分的に融合された一次単結晶粒子によって形成された、複数の単結晶の二次融合体の形態の、複数の粒子を含む、リチウム電池の正極活物質。
【請求項12】
前記一次単結晶粒子の平均寸法が、約0.2~3μmである特徴、
前記単結晶の二次融合体の平均粒径が、約0.5~15μmである特徴、及び
前記正極活物質が、層状の結晶構造を有する特徴、
のうち1つ以上を有する、請求項11に記載の正極活物質。
【請求項13】
Mは、Mn、Al、及びMgの少なくとも1種、またはMn、Al、及びMgの少なくとも1種と、Fe、Cr、Cu、Ti、W、Mo、Nb、Zn、Sn、Zr、及びGaからなる群から選択される少なくとも1種と、の組み合わせである、請求項11または12に記載の正極活物質。
【請求項14】
0.6≦x≦0.95、0.025≦y≦0.2、及び、0.025≦z≦0.2である、請求項11~13のいずれか1項に記載の正極活物質。
【請求項15】
前記正極活物質が、請求項1~4のいずれか1項に記載のリチウム電池正極活物質の前駆体とリチウム源との固相反応により得られる、請求項11~14のいずれか1項に記載の正極活物質。
【請求項16】
リチウム電池正極活物質の作製方法であって、
(I)リチウム電池正極活物質の前駆体を用意する工程と、
(II)前記前駆体をリチウム源と混合して固相反応させ、前記正極活物質を得る工程と、
を含み、
前記前駆体は、請求項1~4のいずれか1項に記載のリチウム電池正極活物質の前駆体である、作製方法。
【請求項17】
前記工程(I)は、請求項5~10のいずれか1項に記載の作製方法を用いて、前記リチウム電池正極活物質の前駆体を作製する工程をさらに含む、請求項16に記載の作製方法。
【請求項18】
前記工程(II)における、前記固相反応は、前記前駆体と前記リチウム源との混合物を焼成処理することにより行われ、
好ましくは、前記焼成処理は、第1焼成及び第2焼成を含み、
前記第1焼成の条件は、約300℃~600℃の焼成温度、及び約1~10時間の焼成時間を含み、
前記第2焼成の条件は、650℃~1000℃の焼成温度、及び4~48時間の焼成時間を含む、請求項16または17に記載の作製方法。
【請求項19】
前記リチウム源は、硝酸リチウム、塩化リチウム、炭酸リチウム、水酸化リチウム、及び酢酸リチウムからなる群から選択される少なくとも1種であり、
好ましくは、前記前駆体に対する前記リチウム源のモル比は、金属元素換算で、約0.9~1.2:1である、請求項16~18のいずれか1項に記載の作製方法。
【請求項20】
正極活物質、バインダー、及び導電助剤を含み、
前記正極活物質は、請求項11~15のいずれか1項に記載のリチウム電池の正極活物質であり、
好ましくは、約50~98重量%の前記正極活物質と、約1~25重量%の前記バインダーと、約1~25重量%の前記導電助剤とを含む、リチウム電池正極。
【請求項21】
正極、負極、電解質、及びセパレータを含み、
前記正極は、請求項20に記載のリチウム電池正極である、リチウム電池。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願への相互参照]
本出願は令和1年10月17日に出願された中国特許出願第201910990467.8号「正極活物質前駆体、その作製方法、正極活物質、及びその適用」、令和1年10月17日に出願された中国特許出願第201910989951.9号「正極活物質前駆体、その作製方法、リチウム電池正極、及びその適用」の優先権を主張するものであり、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
[技術分野]
本出願はリチウム電池の分野に関し、特に、リチウム電池の正極活物質前駆体、その作製、及び適用に関する。
[背景技術]
リチウムイオン電池(本出願では「リチウム電池」とも呼ばれる)は高エネルギー密度、高出力電圧、低自己放電、優れたサイクル性能、メモリ効果がない等の利点を有し、携帯用電子製品、電動工具、電気自動車等の分野で広く利用されている。特に近年、各国政府の新エネルギー自動車普及政策が継続的に高度化されており、電力となるリチウム電池の急速な開発が促進されている。
【0002】
正極活物質はリチウム電池の鍵部品であり、リチウム電池のエネルギー密度のような鍵指標を決定するだけでなく、電池全体のコストの約40%を占める。電気自動車の耐久走行距離向上の要求に伴い、より高いエネルギー密度を有する三元系正極活物質が、乗用車用正極活物質として、次第に主流となっている。
【0003】
リチウム電池正極活物質の形態は、その電気化学的特性に重要な影響を及ぼす。現在、市販の三元系正極活物質には2つの主要な形態がある。1の形態は、ナノスケールまたはサブミクロンスケールの一次粒子の凝集によって形成される、ミクロンスケールの球状二次多結晶凝集体粒子である。このような形態を有する正極活物質の小さな多結晶粒子は、電解質と完全に接触されて良好な出力特性を提供し得るが、小さな多結晶粒子と電解質との間の副反応が容易に起こり、遷移金属を電解質に溶解させるおそれがあり、したがって、劣った電池サイクル安定性を示す。他の形態は、分散単結晶粒子であって、このような形態をもつ正極活物質は安定した結晶構造を持ち、充放電過程で電解質との相溶性が良く、サイクル過程で破断しにくく、良好な電池サイクル安定性を示すが、分散単結晶粒子は大型で容量・出力特性に乏しい。
【0004】
三元系正極活物質については、その形態はその前駆体によって実質的に決定される。現在、市販の三元系正極活物質前駆体の形態は、主にナノまたはサブミクロンスケールの一次粒子の凝集により形成される、ミクロンスケールの球状二次多結晶凝集粒子である。例えば、中国特許出願公開第107915263A号は、3.5~4.0μmの粒径を有するミクロンスケールの球形二次多結晶凝集体形態を有する前駆体を開示している。充放電過程において、このような材料の微小な一次粒子は電解質と接触して反応し得るため、多結晶材料の容量及び一次サイクル効率が比較的低く、電力電池での実用化の要件を満たさない。
[発明の概要]
先行技術において被る問題を克服するために、本出願の目的は、改善された電気化学的特性を示す、リチウム電池正極活物質の新規な前駆体、その作製、その適用、及び、この前駆体から作製されたリチウム電池正極活物質を提供することである。
【0005】
上記目的を達成するために、一態様において、本出願は、リチウム電池正極活物質の前駆体であって、
化学式NiCo(OH)を有し、Mは、Fe、Cr、Cu、Ti、Mg、W、Mo、Nb、Zn、Sn、Zr、Ga、Mn、及びAlからなる群から選択される少なくとも1種の金属であり、0.3≦x≦1、0<y≦0.5、0<z≦0.3であり、x、y、及びzの値は電気的中性則を満たし、
前記前駆体は、板状単結晶と多面体単結晶粒子との凝集体を含み、
前記前駆体のX線回折パターンのI(001)、I(100)、及びI(101)は、
I(001)/I(100)が約1.5以上であり、かつ、
I(001)/I(101)が約1.2以上である、
関係を満たし、
好ましくは、I(101)/I(100)は約1.3以上であり、
I(001)、I(100)、及びI(101)はそれぞれ(001)結晶面、(100)結晶面、及び(101)結晶面に対応する、回折ピークのピーク高さでの強度を表す、
リチウム電池正極活物質の前駆体を提供する。
【0006】
別の態様において、本出願は、リチウム電池正極活物質の前駆体の作製方法であって、
(1)金属塩溶液を沈殿剤溶液及び錯化剤溶液と混合して反応させる工程であって、前記沈殿剤溶液及び前記錯化剤溶液を反応系に連続的に供給しつつ、前記金属塩溶液を前記反応系に間欠的に供給する工程と、
(2)工程(1)で得られた生成物を固液分離及び乾燥処理して前記前駆体を得る工程と、
を含み、
前記金属塩溶液中の金属は、Ni、Co、及びMを含み、
前記金属Mは、Fe、Cr、Cu、Ti、Mg、W、Mo、Nb、Zn、Sn、Zr、Ga、Mn、及びAlからなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記金属Ni、Co、及びMのモル比は、約(0.3~1):(0~0.5):(0~0.3)であり、
用いられるCo及びMのモル量はゼロでない、
作製方法を提供する。
【0007】
別の態様において、本出願は、本出願に係るリチウム電池正極活物質の前駆体の作製方法により得られるリチウム電池正極活物質の前駆体を提供する。
【0008】
別の態様において、本出願は、リチウム電池正極活物質であって、
LiNiCoの化学式を有し、
Mは、Fe、Cr、Cu、Ti、Mg、W、Mo、Nb、Zn、Sn、Zr、Ga、Mn、及びAlからなる群から選択される少なくとも1種の金属であり、
0.9≦a≦1.2、0.3≦x≦1、0<y≦0.5、0<z≦0.3であり、
a、x、y、及びzの値は、電気的中性則を満たし、
前記正極活物質は、少なくとも部分的に融合された一次単結晶粒子によって形成された単結晶の二次融合体の形態の粒子を含む、
リチウム電池正極活物質を提供する。
【0009】
別の態様において、本出願は、
リチウム電池正極活物質の作製方法であって、
(I)リチウム電池正活物質の前駆体を用意する工程と、
(II)前記前駆体をリチウム源と混合して固相反応させ、正極活物質を得る工程と、
を含み、
前記前駆体は、本出願に係るリチウム電池正極活物質前駆体である、
作製方法を提供する。
【0010】
別の態様において、本出願は、本出願に係るリチウム電池正極活物質の作製方法により得られるリチウム電池正極活物質を提供する。
【0011】
さらに別の態様において、本出願は、正極活物質、バインダー、及び導電助剤を含むリチウム電池正極であって、前記正極活物質は本出願に係るリチウム電池正極活物質である、リチウム電池正極を提供する。
【0012】
さらに別の態様において、本出願は、正極、負極、電解質、及びセパレータを備えるリチウム電池であって、前記正極は本出願に係るリチウム電池正極である、リチウム電池を提供する。
【0013】
本出願に係るリチウム電池正極活物質の前駆体は、球状の多結晶凝集体形態を有する三元系正極活物質前駆体とは異なり、板状単結晶と多面体単結晶粒子との凝集体を含み、(001)結晶面及び(101)結晶面の露出領域がより大きく、従って、正極活物質の前駆体は、向上した電気化学的特性を示す。
【0014】
本出願に係るリチウム電池正極活物質は、球状の多結晶凝集体及び分散した単結晶粒子の形態である既存の正極活物質とは異なり、少なくとも部分的に融合した一次単結晶粒子によって形成された単結晶の二次融合体の形態の粒子を含む。前記正極活物質は、球状の多結晶凝集体形態を有する三元系正極活物質の利点と、分散単結晶形態を有する三元系正極活物質の利点の両方を有し、高い放電容量、高い第1サイクル効率、良好な出力特性及び良好なサイクル安定性の特性を示す。前記正極活物質を用いて作製されたリチウム電池は、206.9mAh/gの放電容量、92.1%の第1サイクル効率、0.1Cのレート、80サイクル後での96.1%の容量保持率、及び、10Cのレートで120mAh/gの放電容量を示し得る。
[図面の簡単な説明]
図1Aは、本出願の実施例1で得られた正極活物質前駆体のSEM画像である。
【0015】
図1Bは、本出願の実施例1で得られた正極活物質前駆体のSEM画像である。
【0016】
図2は、本出願の実施例1で得られた正極活物質前駆体のX線回折パターンを示す。
【0017】
図3Aは、本出願の実施例1で得られた正極活物質のSEM画像である。
【0018】
図3Bは、本出願の実施例1で得られた正極活物質のSEM画像である。
【0019】
図3Cは、本出願の実施例1で得られた正極活物質のTEM画像である。
【0020】
図3Dは、本出願の実施例1で得られた正極活物質の断面のSEM画像である。
【0021】
図4は、本出願の実施例1で得られた正極活物質のX線回折パターンを示す。
【0022】
図5は、本出願の実施例1の正極活物質を用いて組み立てられたリチウム電池の充放電曲線を0.1Cのレートで測定したものである。
【0023】
図6は、本出願の実施例1の正極活物質を用いて組み立てられたリチウム電池のサイクル容量保持曲線を0.1Cのレートで測定したものである。
【0024】
図7は、本出願の実施例1の正極活物質を用いて組み立てられたリチウム電池の、種々のレートで測定された容量結果を示す。
【0025】
図8は、本出願の比較例1で得られた正極活物質前駆体のSEM画像である。
【0026】
図9は、本出願の比較例1で得られた正極活物質前駆体のX線回折パターンを示す。
【0027】
図10Aは、本出願の比較例1で得られた正極活物質のSEM画像である。
【0028】
図10Bは、本出願の比較例1で得られた正極活物質のTEM画像である。
【0029】
図11は、本出願の比較例1の正極活物質を用いて組み立てられたリチウム電池の、種々の割合で測定された容量の結果を示す。
[符号の説明]
A 板状単結晶の凝集体
B 多面体単結晶粒子
[発明の詳細な説明]
以下、本出願を、その特定の実施形態及び添付の図面を参照して、さらに詳細に説明する。本出願の特定の実施形態は、例示の目的のためだけに提供され、いかなる方法においても限定することを意図しないことに留意されたい。
【0030】
本出願の文脈で説明される、数値範囲の終点を含む任意の特定の数値は、その正確な値に限定されず、前記正確な値に近いすべての値をさらに包含すると解釈されるべきである。さらに、本明細書に記載される任意の数値範囲に関して、範囲の終点間、各終点と範囲内の任意の特定の値との間、または範囲内の任意の2つの特定の値の間で任意の組み合わせを行って、1つまたは複数の新しい数値範囲を提供することができ、この場合、前記新しい数値範囲はまた、本出願に具体的に記載されていると見なされるべきである。
【0031】
特に明記しない限り、本明細書で使用される用語は当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有し、用語が本明細書で定義され、それらの定義が当技術分野における通常の理解と異なる場合、本明細書で提供される定義が優先されるものとする。
【0032】
本出願の文脈において、表現「電気的中性則を満たす/満たしている」は、対応する化学式中に存在する全ての元素の原子価の代数和が0であることを意味する。
【0033】
本出願の文脈において、用語「凝集体」は、物理的な相互作用(例えば、静電力、ファンデルワールス力など)によって一緒に凝集された複数の粒子によって形成された凝集体を指す。凝集体は、複数の粒子間の相互作用が弱いので、外力によって容易に分解され得る。
【0034】
本出願の文脈において、用語「融合体」は、複数の粒子を少なくとも部分的に融合させ、結合させることによって形成される統制された構造を指す。融合体は、複数の粒子が融合され、単一の本体となっているので、外力によって容易に分解され得ない。
【0035】
本出願の文脈において、「少なくとも部分的に融合する/融合している」という表現は粒子の本体の少なくとも一部が別の粒子の本体の少なくとも一部と融合し、それによって単一の本体を形成することを意味する。
【0036】
本出願の文脈において、「間欠的に供給する/供給している」という表現は、金属塩溶液が複数の(実施例、2、3、4、5、6等)部分で反応系に不連続的に供給されることを意味し、好ましくは、各部分が所定の時点に達するか、または所定の量の物質が添加されるまで、連続的な様式で、特に一定の速度で供給される。
【0037】
本出願の文脈において、明示的に記載された主題に加えて、記載されていない主題はいかなる変更もなしに、本技術分野で知られているものと同じであると見なされる。さらに、本明細書で説明される実施形態のいずれも、本明細書で説明される他の1つまたは複数の実施形態と自由に組み合わせることができ、このようにして得られる技術的解決策または概念は本出願の元の開示または元の説明の一部と見なされ、そのような組み合わせが明らかに不合理であることが当業者に明らかでない限り、本明細書で開示または予想されなかった新しい事項であると見なされるべきではない。
【0038】
本明細書に引用される全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0039】
第1の態様において、本出願は、
リチウム電池正極活物質の前駆体であって、
板状単結晶と多面体単結晶粒子との凝集体を含み、
前駆体のX線回折パターンのI(001)、I(100)、及びI(101)は、
I(001)/I(100)が、約1.5以上、好ましくは、約10以下であり、かつ、
I(001)/I(101)が、約1.2以上、好ましくは、約5以下である、
関係を満たし、
好ましくは、I(101)/I(100)は、約1.3以上、好ましくは、約5以下であり、
前記前駆体はNiCo(OH)の化学式を有し、
Mは、Fe、Cr、Cu、Ti、Mg、W、Mo、Nb、Zn、Sn、Zr、Ga、Mn、及びAlからなる群から選択される少なくとも1種の金属であり、
0.3≦x≦1、0<y≦0.5、0<z≦0.3であり、
x、y、及びzの値は電気的中性則を満たす、
前駆体を提供する。
【0040】
本出願によれば、前記前駆体は、板状単結晶と多面体単結晶粒子との凝集体を含み、好ましくは、前記前駆体は、実質的に、板状単結晶と多面体単結晶粒子との凝集体からなる。
【0041】
本出願の文脈において、用語「板状単結晶の凝集体」は、板状単結晶の一次形態及び板状単結晶の凝集によって形成される凝集体の二次形態を有する粒子を指し、用語「多面体単結晶粒子」は、多面体形態を有する単結晶粒子を指す。
【0042】
本出願の文脈において、I(001)は、(001)結晶面に対応する回折ピークの強度を指し、I(100)は、(100)結晶面に対応する回折ピークの強度を指し、I(101)は、(101)結晶面に対応する回折ピークの強度を指し、前記回折ピークの強度はその高さとして測定される。
【0043】
いくつかの好ましい実施形態において、前記前駆体のX線回折パターンのI(001)、I(100)、及びI(101)は、
I(001)/I(100)が、約1.5以上約10以下、例えば、約5以下または約3以下であり、
I(001)/I(101)が、約1.2以上約5以下、例えば、約3以下または約2以下であり、かつ、
I(101)/I(100)が、約1.3以上約5以下、例えば、約3以下または約2以下である、
関係を満たす。
【0044】
いくつかの好ましい実施形態において、前記前駆体のX線回折パターンのI(001)、I(100)、及びI(101)は、I(001)/I(100)が約1.8以上であり、I(001)/I(101)が約1.3以上であり、かつ、I(101)/I(100)が約1.5以上である、関係を満たす。
【0045】
特に好ましい実施形態において、前記前駆体のX線回折パターンのI(001)、I(100)、及びI(101)は、I(001)/I(100)が、約1.8以上約10以下、例えば、約5以下または約3以下であり、I(001)/I(101)が、約1.3以上約5以下、例えば、約3以下または約2以下であり、かつ、I(101)/I(100)が、約1.5以上約5以下、例えば、約3以下または約2以下である、関係を満たす。
【0046】
好ましい実施形態では、前記前駆体の化学式において、0.6≦x≦0.95、0.025≦y≦0.2、及び0.025≦z≦0.2である。
【0047】
好ましい実施形態において、Mは、Mn、Al、及びMgのうちの少なくとも1種、またはMn、Al、及びMgのうちの少なくとも1種と、Fe、Cr、Cu、Ti、W、Mo、Nb、Zn、Sn、Zr、及びGaからなる群から選択される少なくとも1種と、の組み合わせである。例えば、前記前駆体は、化学式NiCoMn(OH)、NiCoAl(OH)またはNiCoMg(OH)を有し得る。x、y、及びzは、先に定義された通りである。
【0048】
本出願の好ましい実施形態において、前記前駆体のSEM画像は、図1A及び1Bに示されるものであってよい。図1A及び図1Bから分かるように、本出願に係るリチウム電池正極活物質の前駆体は、板状単結晶と多面体単結晶粒子との凝集体を含む。図2から分かるように、前記正極活物質の前駆体は、約19.6°の2θでの(001)回折ピーク、約33.4°の2θでの(100)回折ピーク、及び約38.8°の2θでの(101)回折ピークを含む、少なくとも3つの回折ピークを有する。前記前駆体の回折ピークは鋭く、前記前駆体の結晶構造がよく成長していることを示す。(001)結晶面及び(101)結晶面に対応する回折ピークの強度は比較的高く、このことは、前記前駆体の(001)結晶面及び(101)結晶面、特に、(001)結晶面がより大きく露出していることを示す。前記リチウム電池正極活物質の前駆体は、球状多結晶凝集体形態を有する既存の正極活物質前駆体とは大きく異なる。既存の前駆体内の球状多結晶凝集体は、球状または球状形態を示し、それらの回折ピークの強度(特に、(001)結晶面及び/又は(101)結晶面の強度)は、本出願の前駆体のものより大幅に低い。
【0049】
本出願において、正極活物質前駆体の粒径(D50)は、動的光散乱によって測定して、2μm~12μmであることが好ましい。
【0050】
第2の態様において、本出願は、
リチウム電池正極活物質の前駆体の作製方法であって、
(1)金属塩溶液を沈殿剤溶液及び錯化剤溶液と混合して反応させる工程であって、前記沈殿剤溶液及び前記錯化剤溶液は反応系に連続的に供給しつつ、前記金属塩溶液を前記反応系に間欠的に供給する工程と、
(2)前記工程(1)で得られた生成物を固液分離及び乾燥処理して正極活物質前駆体を得る工程と、
を含み、
前記金属塩溶液中の金属は、Ni、Co、及びMを含み、Mは、Fe、Cr、Cu、Ti、Mg、W、Mo、Nb、Zn、Sn、Zr、Ga、Mn、及びAlからなる群から選択される少なくとも1種であり、Ni、Co、及びMのモル比は、約(0.3~1):(0~0.5):(0~0.3)であり、使用するCo、及びMのモル量はゼロでない、前駆体の作製方法を提供する。
【0051】
本願発明者らは、思いがけず次のことを見出した。すなわち、リチウム電池正極活物質の前駆体の作製において、出発材料を連続して供給することで得られる前駆体は、典型的には球状の多結晶凝集体形態を示すが、金属塩溶液を間欠的に供給すると、板状単結晶と多面体単結晶粒子との凝集体を含む前駆体が得られ、このような特殊な形態を有する前駆体は、改善された電気化学的特性を示す。
【0052】
好ましい実施形態において、前記金属塩溶液中のNi、Co、及びMのモル比は、約(0.6~0.95):(0.025~0.2):(0.025~0.2)である。
【0053】
本出願において、前記金属塩溶液は、リチウム電池正極活物質または正極活物質の前駆体の作製のために本技術分野で従来から使用されている任意の金属塩溶液であってよい。好ましくは、金属Mは、Mn、Al、及びMgのうちの少なくとも1種、または、Mn、Al、及びMgのうちの少なくとも1種と、Fe、Cr、Cu、Ti、W、Mo、Nb、Zn、Sn、Zr、及びGaからなる群から選択される少なくとも1種と、の組み合わせである。例えば、前記金属塩溶液中の金属は、Ni、Co、及びMnの組み合わせ、Ni、Co、及びAlの組み合わせ、またはNi、Co、及びMgの組み合わせであってよい。
【0054】
本出願において、前記金属塩溶液を構成する前記金属塩の種類は特に限定されない。好ましくは、前記金属塩は、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、塩化物、及びシュウ酸塩からなる群から選択される少なくとも1種である。例えば、Niの塩は、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、シュウ酸ニッケル、及び塩化ニッケルから選択される少なくとも1種であってよい。金属Coの塩は、硝酸コバルト、塩化コバルト、酢酸コバルト、及び硫酸コバルトから選択される少なくとも1種であってよい。金属Mnの塩は、硫酸マンガン、硝酸マンガン、酢酸マンガン、及び塩化マンガンから選択される少なくとも1種であってよい。Alの塩は、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、酢酸アルミニウム、及び硫酸アルミニウムから選択される少なくとも1種であってよい。金属Mgの塩は、硝酸マグネシウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、及び硫酸マグネシウムから選択される少なくとも1種であってよい。
【0055】
好ましい実施形態において、前記金属塩溶液の濃度は、金属元素換算で、約0.0~5mol/L、例えば、約0.01mol/L、約0.1mol/L、約0.5mol/L、約1mol/L、約2mol/L、約3mol/L、約4mol/L、約5mol/L、または、これらの任意の2つの値の間に形成される範囲内であり、より好ましくは、約0.5~3mol/L、さらにより好ましくは、約1~2mol/Lである。
【0056】
本出願において、沈殿剤の種類は特に限定されない。好ましくは、沈殿剤は、NaOH、KOH、及びLiOHから選択される少なくとも1種である。
【0057】
本出願において、沈殿剤溶液の濃度は特に限定されない。好ましくは、沈殿剤溶液の濃度は、約0.02~10mol/L、例えば、約0.02mol/L、約0.1mol/L、約0.5mol/L、約1mol/L、約2mol/L、約3mol/L、約4mol/L、約5mol/L、約6mol/L、約7mol/L、約8mol/L、約9mol/L、及び約10mol/L、または、これらの値中の任意の2つの値の間に形成される範囲内であり、より好ましくは、約2~8mol/Lであり、さらに好ましくは、約2~6mol/である。
【0058】
本出願において、錯化剤の種類は特に限定されず、水溶液中でNi、Co、及びMと錯体を形成できる化合物であればよい。好ましくは、錯化剤は、アンモニウムイオン供与体、エタノールアミン錯化剤、アミノカルボン酸錯化剤、ヒドロキシアミノカルボン酸錯化剤、及びカルボン酸塩錯化剤からなる群から選択される少なくとも1種である。例えば、アンモニウムイオン供与体は、好ましくは、アンモニア水、シュウ酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、及び水酸化アンモニウムからなる群から選択される少なくとも1種である。エタノールアミン錯化剤は、好ましくは、ジエタノールアミンである。アミノカルボン酸錯化材は、好ましくは、ニトリロ三酢酸トリナトリウム(NTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びその塩、並びに、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)から選択される少なくとも1種である。ヒドロキシアミノカルボン酸錯化剤は、好ましくは、ヒドロキシエチレンジアミン四酢酸(HEDTA)、エチレングリコールビス(β-ジアミノエチル)エチルエーテル-N,N,N’-四酢酸(EGTA)及びその塩、並びに、ジヒドロキシグリシン及びその塩からなる群から選択される少なくとも1種である。カルボン酸塩錯化剤は、好ましくは、シュウ酸及びその塩、酒石酸及びその塩、クエン酸及びその塩、グルコン酸及びその塩、カルボキシメチルヒドロキシマロン酸(CMOM)及びその塩、カルボキシメチルヒドロキシコハク酸(CMOS)及びその塩、並びに、ヒドロキシエチルグリシン(DHEG)及びその塩からなる群から選択される少なくとも1種である。
【0059】
本出願において、前記錯化剤溶液の濃度は特に限定されない。好ましくは、前記錯化剤溶液の濃度は、約0.01~15mol/L、例えば、約0.01mol/L、約0.1mol/L、約0.5mol/L、約1mol/L、約2mol/L、約3mol/L、約4mol/L、約5mol/L、約6mol/L、約7mol/L、約8mol/L、約9mol/L、約10mol/L、約11mol/L、約12mol/L、約13mol/L、約14mol/L、約15mol/L、または、これらの値中の任意の2つの値の間に形成される範囲内、より好ましくは、約2~10mol/L、さらに好ましくは、約2~6mol/Lである。
【0060】
本出願によれば、工程(1)において、反応条件は、好ましくは、約30~70℃、好ましくは、約45~60℃の温度、約10時間以上、好ましくは、約24~72時間の反応時間、及び、約9~14のpH、好ましくは、約9~12のPHを含み、前記金属塩溶液は、少なくとも2回に分けて(in at least two portions)、反応系に供給される。反応の温度及び/または時間を制御することによって、前駆体の結晶の成長を制御することができる。
【0061】
好ましい実施形態において、前記工程(1)はさらに、
(1a)前記金属塩溶液、前記沈殿剤溶液及び前記錯化剤溶液を反応装置に連続的に供給し、それらを約2~12時間、好ましくは、約3~8時間混合及び反応させる工程と、
(1b)前記金属塩溶液の供給を約0.5~4時間、好ましくは、約1~3時間中断する工程と、
(1c)反応が完了するまで前記工程(1a)~(1b)を繰り返す工程と、を含む。
【0062】
なお、さらに好ましい実施形態において、前記工程(1a)の持続時間は、前記工程(1)の総時間の約5/6以下、好ましくは、約2/3以下である。
【0063】
本出願によれば、前記工程(1)において、反応系のpHは、約9~14の範囲、好ましくは、約9~12の範囲に制御される。特に、工程(1a)において、反応系のpHは、約9~12の範囲、好ましくは、約10~11.5の範囲に制御される。
【0064】
本出願において、前記金属塩、前記沈殿剤、及び前記錯化剤の量は、広い範囲内で選択することができ、前記金属塩、前記沈殿剤、及び前記錯化剤のモル比は、典型的に、約1:(1.5~3):(0.5~6)としてよい。
【0065】
本出願によれば、各反応する材料の供給速度は、供給速度が工程(1)、特に工程(1a)における反応系のpHを所定の範囲内に維持するのに十分である限り、広い範囲内で選択してよい。一般に、反応装置の適切な容量(size)は、反応する材料の総量に基づいて選択してよく、次いで、適切な供給速度は、反応装置の容量及び反応時間などの要因に基づいて決定してよく、これは、本開示に基づいて当業者によって容易に決定することができる。
【0066】
本出願によれば、工程(1)の連続供給段階(例:工程(1a))において、前記金属塩溶液と前記錯化剤溶液との供給速度の体積比は一般に、約0.5~6とすることができ、前記沈殿剤の供給速度は、反応系のpHを所定の範囲に維持するのに充分なレベルに制御される。
【0067】
いくつかの好ましい実施形態において、前記金属塩溶液は、合計で1Lの金属塩溶液に基づいて、約10~200mL/時の速度で供給され、前記沈殿剤溶液は、合計で1Lの沈殿剤溶液に基づいて、約10~200mL/時の速度で供給され、前記錯化剤溶液は、合計で1Lの錯化剤溶液に基づいて、約10~200mL/時の速度で供給される。供給速度は、必要とされるpHに従って、当業者によって制御することができる。
【0068】
次のことに留意すべきである。すなわち、合計で1Lの金属塩溶液に基づいて、前記金属塩溶液の供給速度が約10~200mL/時であることは、反応装置の容量と反応する材料の総量を一致させた場合、前記金属塩溶液の供給速度は、前記金属塩溶液1Lあたり約10~200mL/時であることを意味する。例えば、前記金属塩溶液の総量が0.5Lの場合、前記金属塩溶液の供給速度は約5~100mL/時であり、前記金属塩溶液の総量が5Lの場合、前記金属塩溶液の供給速度は約50~1000mL/時である。
【0069】
本出願において、反応する材料を供給する方法は特に限定されず、供給は本技術分野で公知の任意の従来方法、例えば、滴下式で行ってよい。
【0070】
好ましい実施形態において、工程(1)における混合は撹拌下で行われ、より好ましくは、撹拌速度は、約50~1000r/分、例えば、約50r/分、約80r/分、約100r/分、約200r/分、約300r/分、約400r/分、約500r/分、約600r/分、約700r/分、約800r/分、約900r/分、及び約1000r/分、または、これらの値中の任意の2つの値の間に形成される範囲内、さらに好ましくは、約600~1000r/分である。
【0071】
本出願において、工程(1)で得られた生成物は、固液分離する前に冷却処理することが好ましい。冷却処理後、生成物の温度は、室温まで下げることが好ましく、例えば、約25℃であり得る。
【0072】
本出願において、工程(2)における固液分離は、得られる前駆体を分離除去できる限り、適宜な方法で行ってよく、例えば、ろ過または遠心分離を使用することができる。
【0073】
本出願において、固液分離により得られた生成物は、洗浄処理が施されていることが好ましい。
【0074】
本出願において、工程(2)における乾燥処理は、真空乾燥、空気乾燥、凍結乾燥またはオーブン乾燥など、本技術分野の従来の任意の方法で行ってよい。乾燥処理の条件は、例えば、約70~150℃、約4~16時間の広い範囲内で選択することが可能である。
【0075】
第3の態様において、本出願は、リチウム電池正極活物質の前駆体の作成方法によって得られるリチウム電池正極活物質の前駆体を提供する。
【0076】
本出願の第3の態様に係る、リチウム電池正極活物質の前駆体の特性は、本出願の第1の態様において上述した通りであるので、ここでは説明を省略する。
【0077】
第4の態様において、本出願は、
リチウム電池正極活物質であって、
少なくとも部分的に融合された一次単結晶粒子によって形成された単結晶の二次融合体の形態の粒子を含み、
前記正極活物質は、化学式LiNiCoを有し、MはFe、Cr、Cu、Ti、Mg、W、Mo、Nb、Zn、Sn、Zr、Ga、Mn、及びAlからなる群から選択される少なくとも1種の金属であり、0.9≦a≦1.2、0.3≦x≦1、0<y≦0.5、0<z≦0.3であり、a、x、y、及びzの値は、電気的中性則を満たす、
リチウム電池正極活物質を提供する。
【0078】
本出願によれば、正極活物質は、少なくとも部分的に融合された一次単結晶粒子によって形成された、複数の単結晶の二次融合体の形態の、複数の粒子を含み、好ましくは、前記正極活物質は、実質的に、複数の単結晶の二次融合体の形態の粒子からなる。
【0079】
本出願によれば、用語「一次単結晶粒子」は、正極活物質を構成する、一次粒子を指す。一次単結晶粒子は、一般に、多面体様の形態、特に、立方体様の形態を有する。一般に、一次単結晶粒子は、大きさ(size)が均一ではなく、材料のタップ密度を増加させるのに役立つ。用語「単結晶の二次融合体」は、上述した一次単結晶粒子を少なくとも部分的に融合させることによって形成される融合体を指す。単結晶の二次融合体は、通常、5個以上の一次単結晶粒子によって形成される。いくつかの実施形態において、単結晶の二次融合体は、その表面に複数の突起を有する不規則な形状の固体粒子として存在する。
【0080】
好ましい実施形態において、前記正極活物質は、層状結晶構造を有する。
【0081】
本出願の好ましい実施形態において、前記正極活物質のSEM画像は、図3A及び図3Bに示され、前記正極活物質の粒子形態は、少なくとも部分的に融合した一次単結晶粒子によって形成された単結晶の二次融合体である。特に、一次単結晶粒子は、立方体状の形態を有し、大きさが均一ではなく、5個以上の一次単結晶粒子が互いに融合して単結晶の二次融合体を形成する。前記正極活物質のTEM画像を図3Cに示す。図3Cはさらに、前記正極活物質の粒子形態が、少なくとも部分的に融合した一次単結晶粒子によって形成された融合体であることを示す。前記正極活物質の断面のSEM画像を図3Dに示す。図3Dは、前記正極活物質の粒子形態が少なくとも部分的に融合した一次単結晶粒子によって形成された融合体であることをより明確に示す。
【0082】
好ましい実施形態において、一次単結晶粒子は、約0.2~3μmの平均寸法(average size)を有し、単結晶の二次融合体は、約0.5~15μmの平均粒径(average particle size)を有する。本出願によれば、平均粒径は、動的光散乱によって決定することができる。
【0083】
好ましい実施形態において、前記正極活物質は、X線回折パターンにおいて、約18.6°、約36.5°、及び約44.3°の特徴的な回折ピークを有する。約18.6°の2θにおける回折ピークの強度と約44.3°の2θにおける回折ピークの強度との比率は、約1.5以上、より好ましくは、約1.7以上である。回折ピークの強度は回折ピークの高さとして算出される。
【0084】
好ましい実施形態において、図4に示すように、前記正極活物質の回折ピークは非常に鋭く、前記正極活物質の結晶構造が十分に成長していることを示す。回折パターンに不純物ピークが示されず、前記正極活物質の純度が比較的高いことを示す。図4に示す前記正極活物質のX線回折パターンにおいて、特徴的な回折ピークは、それぞれ約18.6°、約36.5°、及び約44.3°の2θに存在する。約18.6°の2θにおける回折ピークの強度と44.3°の2θにおける回折ピークの強度との比率は、約1.8である。そして、約65°の2θにおける回折ピークは明確に分裂しており、前記正極活物質が良好な層状結晶構造を有することを示す。
【0085】
第5の態様において、本出願は、
リチウム電池正極活物質の作製方法であって、
(I)リチウム電池正極活物質前駆体を用意する工程と、
(II)前記前駆体をリチウム源と混合して固相反応させ、正極活物質を得る工程と、
を含み、
前記前駆体は、本出願の第1の態様または第3の態様に係るリチウム電池正極活物質前駆体である、作製方法を提供する。
【0086】
本出願の第5の態様によれば、工程(I)で用意されるリチウム電池正極活物質前駆体の特性は、本出願の第1の態様または第3の態様で説明した通りであるので、ここでは説明を省略する。
【0087】
好ましい実施形態において、工程(I)は、本出願の第2の態様に記載されるようなリチウム電池正極活物質前駆体を作製する方法に従って、リチウム電池正極活物質前駆体を作製することをさらに含む。この好ましい実施形態において、リチウム電池正極活物質前駆体の作製方法の特徴は、本出願の第2の態様で説明した通りであるため、ここでは説明を省略する。
【0088】
研究中、本出願発明者らは思いがけず次のことを見出した。すなわち、正極活物質の作製において、本出願に係る板状単結晶と多面体単結晶粒子との凝集体を含む前駆体を使用する場合、または、金属塩溶液を断続的に供給することによって正極活物質前駆体を作製する場合、得られる最終的な正極活物質は、特別な形態を有し、正極活物質の粒子形態は少なくとも部分的に融合した一次単結晶粒子によって形成される単結晶の二次融合体であり、特別な形態は、正極活物質に改善された電気化学的特性を付与する。
【0089】
本出願で用いられているリチウム源は、特に、限定されず、リチウム電池の三元系正極活物質の作製に従来用いられている種々のリチウム源であってよい。好ましい実施形態において、工程(II)で使用されるリチウム源は、硝酸リチウム、塩化リチウム、炭酸リチウム、水酸化リチウム、及び酢酸リチウムからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0090】
さらに好ましい実施形態において、金属元素換算で、リチウム源と前記前駆体とのモル比は、約0.9:1~約1.2:1、例えば、約0.9:1、約1.0:1、約1.1:1、及び約1.2:1、または、これらの比中の任意の2つの比の間に形成される範囲内である。
【0091】
本出願において、工程(II)における混合は、前記リチウム源と前記リチウム電池正極活物質前駆体との均一な混合が可能であれば、ボールミル、せん断、研削、ブレンド等、特に限定されるものではない。好ましくは、混合時間は、約1~4時間である。
【0092】
本出願において、工程(II)に記載の固相反応は、リチウム電池正極活物質を作製するために本技術分野で使用される従来の方法によって実施されてよい。
【0093】
好ましい実施形態において、前記固相反応は、前記前駆体と前記リチウム源との混合物を焼成処理することによって行われる。焼成処理は、通常の方法で行ってよく、本出願において特に限定されるものではない。
【0094】
さらに好ましい実施形態において、焼成処理は、第1焼成及び第2焼成を含む。
【0095】
第1焼成の条件は、好ましくは、約300~600℃の焼成温度(例えば、約300℃、約350℃、約400℃、約450℃、約500℃、約550℃、約600℃、または、これらの値の任意の2つの値の間に形成される範囲内、より好ましくは、約450~550℃の焼成温度)と、約1時間~約10時間の焼成時間(例えば、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、及び約10時間の焼成時間、またはこれらの値の任意の2つの値の間に形成される範囲内、及び、より好ましくは、約4時間~約8時間の焼成時間)と、を含む。
【0096】
第2の焼成の条件は、好ましくは、約650~1000℃の焼成温度(例えば、約650℃、約700℃、約750℃、約800℃、約850℃、約900℃、約950℃、及び約1000℃の焼成温度、またはこれらの任意の2つの値の間に形成される範囲内、及びより好ましくは、約750~900℃の焼成温度)と、約4時間~約48時間の焼成時間(例えば、約4時間、約8時間、約12時間、約16時間、約20時間、約24時間、約28時間、約32時間、約36時間、約40時間、約44時間、及び約48時間の焼成時間、またはこれらの値の任意の2つの値の間に形成される範囲内、及びより好ましくは、約8時間~約24時間の焼成時間)と、を含む。
【0097】
好ましい実施形態において、第1焼成温度及び第2焼成温度へと温度を上昇させる昇温工程の速度は、特に限定されないが、好ましくは、約0.5~10℃/分、例えば、約0.5℃/分、約1℃/分、約2℃/分、約3℃/分、約5℃/分、約10℃/分、またはこれらの任意の2つの値の間に形成される温度範囲内である。
【0098】
本出願において、改善された電気化学的特性を得るために、第1焼成と第2焼成とを含む多段焼成プロセスを採用することが好ましい。これに替えて、単一の焼成を第2焼成で用いた条件下で直ちに行ってもよい。これによっても、良好な電気化学的特性が得られる場合がある。
【0099】
第6の態様において、本出願は、上記のリチウム電池正極活物質の作製方法によって得られる正極活物質を提供する。
【0100】
本出願の第6の態様に係るリチウム電池正極活物質の特性は、本出願の第4の態様に記載した通りであるので、ここでは説明を省略する。
【0101】
第7の態様では、リチウム電池正極の作製における、本出願に係るリチウム電池正極活物質前駆体または正極活物質の使用を提供する。
【0102】
リチウム電池正極活物質前駆体または正極活物質を用いてリチウム電池正極を作製する方法は、本技術分野において公知であり、その詳細な説明はここでは省略する。
【0103】
第8の態様において、本出願は、正極活物質、バインダー、及び導電助剤を含むリチウム電池正極を提供する。前記正極活物質は、本出願の第4の態様または第6の態様に記載した通りである。
【0104】
本出願において、前記導電助剤及び前記バインダーは、本技術分野で従来から使用されている種々の導電助剤及びバインダーであってよい。例えば、前記導電助剤は、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、導電性高分子物質などであってよい。前記バインダーは、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルアルコールなどであってよい。これらについて、詳細な記載は省略する。前記導電助剤及び前記バインダーの量は、本技術分野で従来から使用されている任意の量であってよい。例えば、前記正極の総量に対して、前記正極活物質の質量含有量は、約50~98%とし、前記導電助剤の質量含有量は、約1~25%とし、前記バインダーの質量含有量は、約1~25%としてよい。
【0105】
本出願において、前記リチウム電池正極は、当業者に公知の様々な方法により、特に限定されることなく作製してよく、当業者が必要に応じて選択してよい。例えば、いくつかの実施形態においては、前記正極活物質、導電助剤、及びバインダーを均一に混合し、塗布し、スライスして、前記リチウム電池正極を作製することができる。
【0106】
第9の態様において、本出願は、正極と、負極と、電解質と、セパレータとを備え、前記正極は、本出願の第8の態様におけるリチウム電池正極である。
【0107】
本出願において、前記負極、電解質、及びセパレータは、リチウム電池に従来用いられているものでよく、本出願において特に限定されるものではない。例えば、前記負極は、天然黒鉛、人造黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、メソフェーズ小球体、ケイ素、ケイ素/炭素複合体、リチウム等からなる群から選択されてよい。前記電解質は、液体電解質、ゲル電解質、固体電解質等からなる群から選択されてよい。前記セパレータは、ポリエチレンセパレータ、ポリプロピレンセパレータ、ポリエチレン/プロピレン複合体セパレータ、ポリイミドセパレータ等からなる群から選択されてよい。
【0108】
いくつかの好ましい実施形態において、本出願は、以下の技術的解決策を提供する。
1. 正極活物質の前駆体であって、
板状単結晶と多面体単結晶粒子との凝集体を含み、
前記正極活物質の前駆体のX線回折パターンのI(001)、I(100)、及びI(101)は、
I(001)/I(100)が1.5以上で、I(001)/I(101)が1.2以上である関係を満たし、
前記正極活物質前駆体は、NiCo(OH)の化学式を有し、Mは、Fe、Cr、Cu、Ti、Mg、W、Mo、Nb、Zn、Sn、Zr、Ga、Mn、及びAlからなる群から選択される少なくとも1種であり、
0.3≦X≦1、0≦y≦0.5、0≦z≦0.3である、ことを特徴とする、前駆体。
2. 正極活物質前駆体の作製方法であって、
(1)金属塩溶液、沈殿剤溶液、及び、任意に(optionally)錯化剤溶液を間欠的に滴下して、混合及び反応させる工程と、
(2)前記工程(1)で得られた生成物を固液分離及び乾燥処理して、前記正極活物質前駆体を得る工程と、
を含み、
前記金属塩溶液は、金属元素Ni、Co、及びMを含み、Mは、Fe、Cr、Cu、Ti、Mg、W、Mo、Nb、Zn、Sn、Zr、Ga、Mn、及びAlからなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記Ni元素、Co元素、及びM元素のモル比は、(0.3~1):(0~0.5):(0~0.3)であり、用いるCo及びMのモル量はゼロでない、ことを特徴とする、作製方法。
3. 前記金属塩溶液は、前記金属元素として、Ni、Co、及びMnの組み合わせ、または、Ni、Co、及びAlの組み合わせを含み、
好ましくは、前記金属塩溶液は、金属硫酸塩、金属硝酸塩、金属酢酸塩、及び金属シュウ酸塩からなる群から選択される少なくとも1種の金属塩を含み、
好ましくは、前記金属塩溶液は、金属元素換算で、0.01~5mol/Lの濃度を有する、前記項2に記載の方法。
4. 前記沈殿剤は、NaOH、KOH、及びLiOHからなる群より選択される少なくとも1種であり、
好ましくは、前記沈殿剤溶液は、0.02~10mol/Lの濃度を有する、前記項2に記載の方法。
5. 前記錯化剤は、アンモニウムイオン供与体、エタノールアミン錯化剤、アミノカルボン酸錯化剤、ヒドロキシアミノカルボン酸錯化剤、及びカルボン酸塩錯化剤からなる群より選択される少なくとも1種であり、
好ましくは、前記錯化剤溶液は、0.01~15mol/Lの濃度を有する、前記項2に記載の方法。
6. 前記工程(1)の間欠的添加工程は、
(1)前記金属塩溶液、前記沈殿剤溶液、及び任意に前記錯化剤溶液を、反応条件下で、反応釜中に同時に滴下する工程と、
(2)前記3つの溶液の2~12時間の同時滴下後、前記金属塩溶液の供給を0.5~4時間中断する工程と、
(3)反応が完了するまで工程(2)の間欠的な滴下を繰り返す工程と、
を含む、前記項2~5のいずれか1項に記載の方法。
7. 前記工程(1)における前記反応条件は、30~70℃、好ましくは、45℃~60℃の温度と、10時間以上、好ましくは、24時間~72時間の反応時間とを含み、
好ましくは、前記混合は撹拌下で行われ、
より好ましくは、前記撹拌の速度は、50~1000r/分である、前記項2または6に記載の方法。
8. 前記項1~7のいずれか1つにおいて規定される作製方法によって得られた、正極活物質の前駆体。
9. 前記項1~8に記載の正極活物質の前駆体とリチウム元素とを含み、
好ましくは、金属元素換算で、前記リチウム元素と、前記正極活物質前駆体とのモル比が0.9~1.2:1である、ことを特徴とする、正極活物質。
10. 前記項1または8に記載の正極活物質前駆体、または前記項9に記載の正極活物質のリチウム電池への使用。
11. 少なくとも部分的に融合した一次単結晶粒子によって形成された単結晶の二次融合体の形態を有し、
LiNiCoの化学式を有し、MはFe、Cr、Cu、Ti、Mg、W、Mo、Nb、Zn、Sn、Zr、Ga、Mn、及びAlからなる群から選択される少なくとも1種であり、0.3≦X≦1、0≦y≦0.5、0≦z≦0.3を満たすことを特徴とする、正極活物質。
12. 前記一次単結晶粒子は、0.2~3μmの寸法(size)を有し、及び/または、前記単結晶の二次融合体は、0.5~1.5μmの平均粒径(average particle size)を有する、前記項11に記載の正極活物質。
13. 正極活物質の作製方法であって、
(1)金属塩溶液、沈殿剤溶液、及び任意に錯化剤溶液を間欠的に滴下して、混合及び反応させて前駆体を得る工程と、
(2)前記工程(1)で得た前駆体とリチウム源とを混合し、固相反応して前記正極活物質を得る工程と、
を含み、
前記金属塩溶液は、Ni、Co、及びMの金属元素を含み、
Mは、Fe、Cr、Cu、Ti、Mg、W、Mo、Nb、Zn、Sn、Zr、Ga、Mn、及びAlからなる群から選択される少なくとも1種であり、
用いるNi元素、Co元素、及びM元素のモル比は(0.3~1):(0~0.5):(0~0.3)であり、用いるCo及びMのモル量はゼロでない、ことを特徴とする、作製方法。
14. 前記工程(1)における間欠的添加工程は、
(1)前記金属塩溶液、前記沈殿剤溶液、及び任意に前記錯化剤溶液を反応条件下で、反応釜中に同時に滴下する工程と、
(2)前記3つの溶液の2~12時間の同時滴下後、前記金属塩溶液の供給を0.5~4時間中断する工程と、
(3)前記反応が完了するまで前記工程(2)の間欠的な滴下を繰り返す工程と、
を含む、前記項13に記載の方法。
15. 前記工程(1)における反応条件は、30~70℃の反応温度及び10時間以上の反応時間を含み、
好ましくは、撹拌下での反応であり、
より好ましくは、撹拌速度は、50~1000rpmである、前記項13に記載の方法。
16. 前記工程(2)において、前記固相反応は、前記前駆体と前記リチウム源との混合物を焼成処理することにより行われ、
好ましくは、前記焼成処理は、第1焼成及び第2焼成を含み、
より好ましくは、前記第1焼成の条件は、300~600℃の温度及び1~10時間の焼成時間を含み、及び/または前記第2焼成の条件は、650~1000℃の焼成温度及び4~48時間の焼成時間を含む、前記項13に記載の方法。
17. 前記金属塩溶液は、金属元素として、Ni、Co、及びMnの組み合わせ、または、Ni、Co、及びAlの組み合わせを含み、
好ましくは、前記金属塩溶液は、金属硫酸塩、金属硝酸塩、金属酢酸塩、及び金属シュウ酸塩からなる群から選択される少なくとも1種の金属塩を含み、
好ましくは、前記金属塩溶液は、金属元素換算で、0.01~5mol/Lの濃度を有する、前記項13~16のいずれか1項に記載の方法。
18. 前記沈殿剤は、NaOH、KOH、及びLiOHからなる群から選択される少なくとも1種であり、
好ましくは、前記沈殿剤溶液は、0.02~10mol/Lの濃度を有する、前記項13~16のいずれか1項に記載の方法。
19. 前記錯化剤は、アンモニウムイオン供与体、エタノールアミン錯化剤、アミノカルボン酸錯化剤、ヒドロキシアミノカルボン酸錯化剤、及びカルボン酸塩錯化剤からなる群より選択される少なくとも1種であり、
好ましくは、前記錯化剤溶液は、0.01~15mol/Lの濃度を有する、前記項13~16のいずれか1項に記載の方法。
20. 前記リチウム源は、硝酸リチウム、塩化リチウム、炭酸リチウム、水酸化リチウム、及び酢酸リチウムからなる群から選択される少なくとも1種であり、
好ましくは、前記前駆体に対するリチウム源のモル比は、金属元素換算で、0.9~1.2:1である、前記項13~16のいずれか1項に記載の方法。
21. 前記項13~20のいずれか1項に記載の方法によって得られた正極活物質。
22. 正極活物質、バインダー、及び導電助剤を含み、
前記正極活物質は、前記項11、12、または21のいずれかに規定される正極活物質であり、
好ましくは、前記リチウム電池正極は、50~98重量%の前記正極活物質、1~25重量%の前記バインダー、及び1~25重量%の前記導電助剤を含む、ことを特徴とする、リチウム電池正極。
23. 前記項11、12、または前記項21のいずれかに規定する正極活物質、または前記項22に規定するリチウム電池正極のリチウム電池への使用。
[実施例]
以下、本出願を実施例を挙げて詳細に説明する。
【0109】
本出願の実施例及び比較例において、走査型電子顕微鏡(SEM)画像は、ドイツのZEISS社のZEISS Merlin走査型電子顕微鏡によって得られた。
【0110】
本出願の実施例及び比較例において、X線回折(XRD)パターンは、ドイツのBrukerCorporationのD8 Advance SS X線回折計によって測定された。
【0111】
本出願の実施例及び比較例において、透過型電子顕微鏡(TEM)画像は、米国Thermo Fisher社のFEI Titan Cubed Themis G2 300球面収差補正透過型電子顕微鏡によって得られた。透過型電子顕微鏡の試料作製工程は、次の通りである。少量の粉末試料をエタノール溶媒に添加し、140Wの出力で15分間超音波分散させ、上澄み液を吸引し、銅メッシュ上に滴下し、銅メッシュを乾燥させて溶媒を除去し、その後、観察のために試料ビンに入れた。
【0112】
本出願の実施例及び比較例において、前駆体及び正極活物質の組成は、米国アジレントテクノロジーズのバリアン725ES誘導結合プラズマ分光(ICP-OES)によって測定された。
【0113】
本出願の実施例及び比較例において、正極活物質の断面試料の作製方法は、次の通りである。正極活物質、カーボンブラック、及びPVDF(バインダー)を90:5:5の質量比で均一に混合し、得られた混合物をアルミ箔上に塗布し、80℃で6時間真空乾燥して、正極活物質を含む極片(pole piece)を得た。次いで、清浄なブレードを用いて前記極片を切断し、切断された極片を試料台に接着し、3イオンビーム断面モードで加速電圧5kVを用いて2時間処理し、走査電子顕微鏡観察用の平坦で清浄な断面を得た。
【0114】
以下の実施例及び比較例において使用した金属塩溶液は、すべて硫酸塩溶液である。
[実施例1]
実施例は、本出願に係る正極活物質前駆体及び正極活物質の作製、及び評価を説明するためのものである。
(1)正極活物質前駆体の作製
金属イオン濃度2mol/Lの金属塩溶液(ニッケル元素、コバルト元素、及びマンガン元素のモル比は8:1:1)を作製し、濃度4mol/LのNaOH溶液を作製し、濃度6mol/Lのアンモニア水溶液を作製した。
【0115】
作製した金属塩溶液、NaOH溶液、及びアンモニア水溶液を同時に反応釜に滴下し、撹拌しながら沈殿反応を行った。金属塩溶液の滴下速度は60mL/時、アンモニア水溶液の滴下速度は60mL/時とし、NaOH溶液の滴下速度を調整して反応系のpH値を11に制御した。これら3つの溶液を同時に6時間滴下した後、NaOH溶液及びアンモニア水溶液の供給を維持しつつ、金属塩溶液の供給を1時間中断し、上記の工程を繰り返した。
【0116】
反応工程では、撹拌速度を600rpm、反応温度を55℃、反応時間を48時間に制御した。自然冷却後、沈殿反応を停止し、得られたスラリーを真空ろ過し、脱イオン水で3回洗浄した後、120℃の真空乾燥オーブンで12時間乾燥及び脱水して、正極活物質前駆体を得た。
(2)正極活物質前駆体の評価
得られた正極活物質前駆体中のNi:Co:Mnのモル比は、0.799:0.100:0.101であった。得られた正極活物質前駆体のSEM画像を図1A及び1Bに示した。図1A及び1Bから分かるように、得られた正極活物質前駆体の形態は、従来の球状多結晶凝集体の形態とは明らかに異なり、板状単結晶と多面体単結晶粒子との凝集体からなる。
【0117】
前記正極活物質前駆体のX線回折パターンは、図2に示される。前記正極活物質前駆体の回折ピークは非常に鋭く、前記正極活物質前駆体の結晶構造が良好に成長していることを示している。(001)結晶面及び(101)結晶面に対応する回折ピークの強度は比較的高く、特に、(001)結晶面に対応する回折ピークの強度は他の回折ピークの強度より明らかに高く、前記正極活物質前駆体の(001)結晶面及び(101)結晶面、特に(001)結晶面がより十分に露出していることを示している。I(001)/I(100)の強度比は2.45であり、I(001)/I(101)の強度比は、1.45であり、I(101)/I(100)の強度比は、1.69である。
(3)正極活物質の作製
前記正極活物質前駆体10gを採取し、Li:(Ni+Co+Mn)のモル比が1.02:1となるようにリチウム源のLiOH・HOを添加した結果物を、2時間ボールミル粉砕し、均一に混合した後、るつぼに装填し、高温で多段に焼成した。第1段の焼成では、5℃/分の速度で室温から450℃に昇温し、6時間維持した。第2段の焼成では、5℃/分の速度で450℃から850℃に昇温し、12時間維持した。その後、結果物を自然冷却して正極活物質を得た。
(4)正極活物質の評価
前記正極活物質のSEM画像は、図3A及び図3Bに示す。図3A及び図3Bから分かるように、前記正極活物質の粒子形態は、少なくとも部分的に融合した一次単結晶粒子によって形成された単結晶の二次融合体である。前記正極活物質の一次単結晶粒子の平均寸法(average size)は、0.2~3μmであり、単結晶の二次融合体の平均粒径(average particle size)は、0.5~15μmである。前記正極活物質のTEM画像を図3Cに示す。図3Cから明確に分かるように、試料作製工程中の超音波分散処理の後、前記正極活物質の粒子形態は、少なくとも部分的に融合した一次単結晶粒子によって形成された融合体の状態をなお維持している。前記正極活物質の断面のSEM画像を図3Dに示す。図3Dからより視覚的かつ明確に分かるように、一次単結晶粒子は、互いに融合し、共に成長して、二次融合体の形で粒子を形成する。
【0118】
前記正極活物質のX線回折パターンは、図4に示される。前記正極活物質の回折ピークは、非常に鋭く、前記正極活物質の結晶構造がよく成長していることを示している。また、X線回折パターン中に不純物ピークが存在しないことから、前記正極活物質の純度が高いことが分かる。前記正極活物質のX線回折パターンにおいて、特徴的な回折ピークがそれぞれ約18.6°、約36.5°、及び約44.3°の2θに存在する。約44.3°の2θにおける回折ピークの強度に対する約18.6°の2θにおける回折ピークの強度の比が1.8である。約65°の2θにおいて、回折ピークは明瞭に分裂しており、前記正極活物質が良好な層状結晶構造を有することを示している。
【0119】
前記正極活物質の電気化学的特性は、次のように評価された。前記正極活物質10gを採取し、アセチレンブラック1.25gと質量分率10%のポリフッ化ビニリデン溶液(溶媒はN-メチルピロリドン)12.5gを加えて均一に混合し、混合物を塗布、スライスして正極片を得た。リチウム片を負極として用い、溶質、溶媒、及び添加剤からなる液状電解質を電解質として用いた。溶質は1.2MのLiPF、溶媒は体積比1:1:1のEC、DEC、及びDMCの混合溶媒、添加剤は1.5重量%濃度のVCとした。市販のセルガード2325ダイアフラム(米国)をセパレータとして使用し、上記の構成要素をグローブボックス内で組み立ててリチウム電池を形成した。リチウム電池の電気化学的性質を評価した。0.1Cのレートで測定した充放電曲線が図5に示される。この充放電曲線は、この材料が224.6mAh/gの比充電容量、206.9mAh/gの比放電容量、及び92.1%に達する第1サイクル効率を有することを示す。1Cのレートで測定したサイクル安定性曲線が図6に示される。このサイクル安定性曲線は、材料が80サイクル後、96.1%に達する容量保持率を有し、したがってサイクル安定性に優れていることを示している。出力特性の結果を図7に示すが、この結果は、この材料が高い10Cのレートでも最大約120mAh/gの放電容量を持つことを示している。
【0120】
放電容量、第1サイクル効率、及び80サイクル後の容量保持率の結果を表3に示す。
[実施例2]
本実施例は、本出願に係る正極活物質前駆体及び正極活物質の作製、及び評価を説明するために提供されたものである。
(1)正極活物質前駆体の作製
金属イオン濃度2mol/Lの金属塩溶液(ニッケル元素、コバルト元素、及びマンガン元素のモル比は18:1:1)を作製し、濃度4mol/LのNaOH溶液を作製し、濃度6mol/Lのアンモニア水溶液を作製した。
【0121】
作製した金属塩溶液、NaOH溶液、及びアンモニア水溶液を、撹拌しながら同時に反応釜に滴下し、沈殿反応を行った。前記金属塩溶液の滴下速度は60mL/時、前記アンモニア水溶液の滴下速度は60mL/時とし、前記NaOH溶液の滴下速度を調整して反応系のpH値を11に制御した。これら3つの溶液を同時に6時間滴下した後、前記NaOH溶液及び前記アンモニア水溶液の供給を維持しつつ、前記金属塩溶液の供給を1時間中断し、上記の工程を繰り返した。
【0122】
反応工程では、撹拌速度を600rpm、反応温度を55℃、反応時間を48時間に制御した。自然冷却後、沈殿反応を停止し、得られたスラリーを真空ろ過し、脱イオン水で3回洗浄した後、120℃の真空乾燥オーブンで12時間乾燥及び脱水して正極活物質前駆体を得た。
(2)正極活物質前駆体の評価
得られた正極活物質前駆体中のNi:Co:Mnのモル比は、0.903:0.048:0.049であった。前記正極活物質前駆体は、図1A及び図1Bと類似したSEM画像、ならびに図2と類似したX線回折パターンを示した。I(001)/I(100)の強度比は、2.37であり、I(001)/I(101)の強度比は、1.48であり、I(101)/I(100)の強度比は1.60であった。
(3)正極活物質の作製
前記正極活物質前駆体10gを採取し、Li:(Ni+Co+Mn)のモル比が1.02:1となるようにリチウム源のLiOH・HOを添加した結果物を、2時間ボールミル粉砕し、均一に混合した後、るつぼに装填し、高温で多段に焼成した。第1段の焼成では、10℃/分の速度で室温から500℃に昇温し、4時間維持した。第2段の焼成では、10℃/分の速度で500℃から750℃に昇温し、8時間維持した。その後、結果物を自然冷却して正極活物質を得た。
(4)正極活物質の評価
前記正極活物質は、図3A及び図3Bに類似したSEM画像、及び図3Cに類似したTEM画像を示す。
【0123】
前記正極活物質は、実施例1と同様に電気化学的特性を評価し、放電容量、第1サイクル効率及び80サイクル後の容量保持率の結果を表3に示す。
[実施例3]
本実施例は、本出願に係る正極活物質前駆体及び正極活物質の作製、及び評価を説明するために提供されたものである。
(1)正極活物質前駆体の作製
金属イオン濃度2mol/Lの金属塩溶液(ニッケル元素、コバルト元素、及びマンガン元素のモル比は3:1:1)を作製し、濃度4mol/LのNaOH溶液を作製し、濃度6mol/Lのアンモニア水溶液を作製した。
【0124】
作製した金属塩溶液、NaOH溶液、及びアンモニア水溶液を、撹拌しながら同時に反応釜に滴下し、沈殿反応を行った。前記金属塩溶液の滴下速度は60mL/時、前記アンモニア水溶液の滴下速度は60mL/時とし、前記NaOH溶液の滴下速度を調整して反応系のpH値を11に制御した。これら3つの溶液を同時に6時間滴下した後、前記NaOH溶液及び前記アンモニア水溶液の供給を維持しつつ、前記金属塩溶液の供給を1時間中断し、上記の工程を繰り返した。
【0125】
反応工程では、撹拌速度を600rpm、反応温度を55℃、反応時間を48時間に制御した。自然冷却後、沈殿反応を停止し、得られたスラリーを真空ろ過し、脱イオン水で3回洗浄した後、120℃の真空乾燥オーブンで12時間乾燥及び脱水して正極活物質前駆体を得た。
(2)正極活物質前駆体の評価
得られた正極活物質前駆体中のNi:Co:Mnのモル比は、0.602:0.201:0.197であった。前記正極活物質前駆体は、図1A及び図1Bと類似したSEM画像、ならびに図2と類似したX線回折パターンを示した。I(001)/I(100)の強度比は、1.59であり、I(001)/I(101)の強度比は、1.22であり、I(101)/I(100)の強度比は1.30であった。
(3)正極活物質の作製
前記前駆体10gを採取し、Li:(Ni+Co+Mn)のモル比が1.02:1となるようにリチウム源のLiOH・HOを添加した結果物を、2時間ボールミル粉砕し、均一に混合した後、るつぼに装填し、高温で多段に焼成した。第1段の焼成では、3℃/分の速度で室温から550℃に昇温し、8時間維持した。第2段の焼成では、3℃/分の速度で温度を550℃から900℃に昇温し、24時間維持した。その後、結果物を自然冷却して正極活物質を得た。
(4)正極活物質の評価
前記正極活物質は、図3A及び図3Bに類似したSEM画像、及び図3Cに類似したTEM画像を示す。
【0126】
前記正極活物質は、実施例1と同様に電気化学的特性を評価し、放電容量、第1サイクル効率及び80サイクル後の容量保持率の結果を表3に示す。
[実施例4]
本実施例は、本出願に係る正極活物質前駆体及び正極活物質の作製、及び評価を説明するために提供されたものである。
(1)正極活物質前駆体の作製
金属イオン濃度3mol/Lの金属塩溶液(ニッケル元素、コバルト元素、及びマンガン元素のモル比は8:1:1)を作製し、濃度8mol/LのNaOH溶液を作製し、濃度10mol/Lのアンモニア水溶液を作製した。
【0127】
実施例1と同様の操作を行い、正極活物質前駆体を得た。
(2)正極活物質前駆体の評価
得られた正極活物質前駆体中のNi:Co:Mnのモル比は、0.797:0.098:0.105であった。前記正極活物質前駆体は、図1A及び図1Bと類似したSEM画像、ならびに図2と類似したX線回折パターンを示した。I(001)/I(100)の強度比は、1.98であり、I(001)/I(101)の強度比は、1.42であり、I(101)/I(100)の強度比は1.39であった。
(3)正極活物質の作製
実施例1と同様の操作を行い、正極活物質を得た。
(4)正極活物質の評価
前記正極活物質は、図3A及び図3Bに類似したSEM画像、及び図3Cに類似したTEM画像を示す。
【0128】
前記正極活物質は、実施例1と同様に電気化学的特性を評価し、放電容量、第1サイクル効率及び80サイクル後の容量保持率の結果を表3に示す。
[実施例5]
本実施例は、本出願に係る正極活物質前駆体及び正極活物質の作製、及び評価を説明するために提供されたものである。
(1)正極活物質前駆体の作製
金属イオン濃度0.5mol/Lの金属塩溶液(ニッケル元素、コバルト元素、及びマンガン元素のモル比は8:1:1)を作製し、濃度2mol/LのNaOH溶液を作製し、濃度2mol/Lのアンモニア水溶液を作製した。
【0129】
実施例1と同様の操作を行い、正極活物質前駆体を得た。
(2)正極活物質前駆体の評価
得られた正極活物質前駆体中のNi:Co:Mnのモル比は、0.802:0.101:0.097であった。前記正極活物質前駆体は、図1A及び図1Bと類似したSEM画像、ならびに図2と類似したX線回折パターンを示した。I(001)/I(100)の強度比は、1.87であり、I(001)/I(101)の強度比は、1.39であり、I(101)/I(100)の強度比は1.35であった。
(3)正極活物質の作製
実施例1と同様の操作を行い、正極活物質を得た。
(4)正極活物質の評価
前記正極活物質は、図3A及び図3Bに類似したSEM画像、及び図3Cに類似したTEM画像を示す。
【0130】
前記正極活物質は、実施例1と同様に電気化学的特性を評価し、放電容量、第1サイクル効率及び80サイクル後の容量保持率の結果を表3に示す。
[実施例6]
本実施例は、本出願に係る正極活物質前駆体及び正極活物質の作製、及び評価を説明するために提供されたものである。
(1)正極活物質前駆体の作製
金属イオン濃度5mol/Lの金属塩水溶液(ニッケル元素、コバルト元素、及びマンガン元素のモル比は8:1:1)を作製し、濃度10mol/LのNaOH溶液を作製し、濃度15mol/Lのアンモニア水溶液を作製した。
【0131】
実施例1と同様の操作を行い、正極活物質前駆体を得た。
(2)正極活物質前駆体の評価
得られた正極活物質前駆体におけるNi:Co:Mnのモル比は、0.801:0.099:0.100であった。前記正極活物質前駆体は、図1A及び図1Bと類似したSEM画像、ならびに図2と類似したX線回折パターンを示した。I(001)/I(100)の強度比は、1.77であり、I(001)/I(101)の強度比は、1.33であり、I(101)/I(100)の強度比は1.33であった。
(3)正極活物質の作製
実施例1と同様の操作を行い、正極活物質を得た。
(4)正極活物質の評価
前記正極活物質は、図3A及び図3Bに類似したSEM画像、及び図3Cに類似したTEM画像を示す。
【0132】
前記正極活物質は、実施例1と同様に電気化学的特性を評価し、放電容量、第1サイクル効率及び80サイクル後の容量保持率の結果を表3に示す。
[実施例7]
本実施例は、本出願に係る正極活物質前駆体及び正極活物質の作製、及び評価を説明するために提供されたものである。
(1)正極活物質前駆体の作製
金属イオン濃度0.01mol/Lの金属塩溶液(ニッケル元素、コバルト元素、及びマンガン元素のモル比は、8:1:1)を作製し、濃度0.02mol/LのNaOH溶液を作製し、濃度0.01mol/Lのアンモニア水溶液を作製した。
【0133】
実施例1と同様の操作を行い、正極活物質前駆体を得た。
(2)正極活物質前駆体の評価
得られた正極活物質前駆体中のNi:Co:Mnのモル比は、0.799:0.103:0.098であった。前記正極活物質前駆体は、図1A及び図1Bと類似したSEM画像、ならびに図2と類似したX線回折パターンを示した。I(001)/I(100)の強度比は、1.71であり、I(001)/I(101)の強度比は、1.29であり、I(101)/I(100)の強度比は1.33であった。
(3)正極活物質の作製
実施例1と同様の操作を行い、正極活物質を得た。
(4)正極活物質の評価
前記正極活物質は、図3A及び図3Bに類似したSEM画像、及び図3Cに類似したTEM画像を示す。
【0134】
前記正極活物質は、実施例1と同様に電気化学的特性を評価し、放電容量、第1サイクル効率及び80サイクル後の容量保持率の結果を表3に示す。
[実施例8]
本実施例は、本出願に係る正極活物質前駆体及び正極活物質の作製、及び評価を説明するために提供されたものである。
(1)正極活物質前駆体の作製
滴下工程中のNaOH溶液の滴下速度を調整して、反応系のpHを12に制御したこと以外は実施例1と同様の操作を行い、正極活物質前駆体を得た。
(2)正極活物質前駆体の評価
得られた正極活物質前駆体中のNi:Co:Mnのモル比は、0.797:0.102:0.101であった。前記正極活物質前駆体は、図1A及び図1Bと類似したSEM画像、ならびに図2と類似したX線回折パターンを示した。I(001)/I(100)の強度比は、1.65であり、I(001)/I(101)の強度比は、1.25であり、I(101)/I(100)の強度比は1.32であった。
(3)正極活物質の作製
実施例1と同様の操作を行い、正極活物質を得た。
(4)正極活物質の評価
前記正極活物質は、図3A及び図3Bに類似したSEM画像、及び図3Cに類似したTEM画像を示す。
【0135】
前記正極活物質は、実施例1と同様に電気化学的特性を評価し、放電容量、第1サイクル効率及び80サイクル後の容量保持率の結果を表3に示す。
[実施例9]
本実施例は、本出願に係る正極活物質前駆体及び正極活物質の作製、及び評価を説明するために提供されたものである。
(1)正極活物質前駆体の作製
滴下工程中のNaOH液の滴下速度を調整して反応系のpHを9に制御したこと以外は実施例1と同様の操作を行い、正極活物質前駆体を得た。
(2)正極活物質前駆体の評価
得られた正極活物質前駆体中のNi:Co:Mnのモル比は、0.791:0.105:0.104であった。前記正極活物質前駆体は、図1A及び図1Bと類似したSEM画像、ならびに図2と類似したX線回折パターンを示した。I(001)/I(100)の強度比は、1.68であり、I(001)/I(101)の強度比は、1.26であり、I(101)/I(100)の強度比は1.33であった。
(3)正極活物質の作製
実施例1と同様の操作を行い、正極活物質を得た。
(4)正極活物質の評価
前記正極活物質は、図3A及び図3Bに類似したSEM画像、及び図3Cに類似したTEM画像を示す。
【0136】
前記正極活物質は、実施例1と同様に電気化学的特性を評価し、放電容量、第1サイクル効率及び80サイクル後の容量保持率の結果を表3に示す。
[実施例10]
本実施例は、本出願に係る正極活物質前駆体及び正極活物質の作製、及び評価を説明するために提供されたものである。
(1)正極活物質前駆体の作製
滴下工程中の反応温度を70℃に制御したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、正極活物質前駆体を得た。
(2)正極活物質前駆体の評価
得られた正極活物質前駆体中のNi:Co:Mnのモル比は、0.800:0.098:0.102であった。前記正極活物質前駆体は、図1A及び図1Bと類似したSEM画像、ならびに図2と類似したX線回折パターンを示した。I(001)/I(100)の強度比は、1.86であり、I(001)/I(101)の強度比は、1.38であり、I(101)/I(100)の強度比は1.35であった。
(3)正極活物質の作製
実施例1と同様の操作を行い、正極活物質を得た。
(4)正極活物質の評価
前記正極活物質は、図3A及び図3Bに類似したSEM画像、及び図3Cに類似したTEM画像を示す。
【0137】
前記正極活物質は、実施例1と同様に電気化学的特性を評価し、放電容量、第1サイクル効率及び80サイクル後の容量保持率の結果を表3に示す。
[実施例11]
本実施例は、本出願に係る正極活物質前駆体及び正極活物質の作製、及び評価を説明するために提供されたものである。
(1)正極活物質前駆体の作製
滴下工程中の反応温度を30℃に制御したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、正極活物質前駆体を得た。
(2)正極活物質前駆体の評価
得られた正極活物質前駆体中のNi:Co:Mnのモル比は、0.805:0.102:0.093であった。前記正極活物質前駆体は、図1A及び図1Bと類似したSEM画像、ならびに図2と類似したX線回折パターンを示した。I(001)/I(100)の強度比は、2.02であり、I(001)/I(101)の強度比は、1.44であり、I(101)/I(100)の強度比は1.40であった。
(3)正極活物質の作製
実施例1と同様の操作を行い、正極活物質を得た。
(4)正極活物質の評価
前記正極活物質は、図3A及び図3Bに類似したSEM画像、及び図3Cに類似したTEM画像を示す。
【0138】
前記正極活物質は、実施例1と同様に電気化学的特性を評価し、放電容量、第1サイクル効率及び80サイクル後の容量保持率の結果を表3に示す。
[実施例12]
本実施例は、本出願に係る正極活物質前駆体及び正極活物質の作製、及び評価を説明するために提供されたものである。
(1)正極活物質前駆体の作製
反応時間を12時間としたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、正極活物質前駆体を得た。
(2)正極活物質前駆体の評価
得られた正極活物質前駆体中のNi:Co:Mnのモル比は、0.792:0.104:0.104であった。前記正極活物質前駆体は、図1A及び図1Bと類似したSEM画像、ならびに図2と類似したX線回折パターンを示した。I(001)/I(100)の強度比は、1.81であり、I(001)/I(101)の強度比は、1.38であり、I(101)/I(100)の強度比は1.31であった。
(3)正極活物質の作製
実施例1と同様の操作を行い、正極活物質を得た。
(4)正極活物質の評価
前記正極活物質は、図3A及び図3Bに類似したSEM画像、及び図3Cに類似したTEM画像を示す。
【0139】
前記正極活物質は、実施例1と同様に電気化学的特性を評価し、放電容量、第1サイクル効率及び80サイクル後の容量保持率の結果を表3に示す。
[実施例13]
本実施例は、本出願に係る正極活物質前駆体及び正極活物質の作製、及び評価を説明するために提供されたものである。
(1)正極活物質前駆体の作製
攪拌速度を50r/分としたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、正極活物質前駆体を得た。
(2)正極活物質前駆体の評価
得られた正極活物質前駆体中のNi:Co:Mnのモル比は、0.789:0.108:0.103であった。前記正極活物質前駆体は、図1A及び図1Bと類似したSEM画像、ならびに図2と類似したX線回折パターンを示した。I(001)/I(100)の強度比は、1.62であり、I(001)/I(101)の強度比は、1.24であり、I(101)/I(100)の強度比は1.31であった。
(3)正極活物質の作製
実施例1と同様の操作を行い、正極活物質を得た。
(4)正極活物質の評価
前記正極活物質は、図3A及び図3Bに類似したSEM画像、及び図3Cに類似したTEM画像を示す。
【0140】
前記正極活物質は、実施例1と同様に電気化学的特性を評価し、放電容量、第1サイクル効率及び80サイクル後の容量保持率の結果を表3に示す。
[実施例14]
本実施例は、本出願に係る正極活物質前駆体及び正極活物質の作製、及び評価を説明するために提供されたものである。
(1)正極活物質前駆体の作製
攪拌速度を1000r/分としたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、正極活物質前駆体を得た。
(2)正極活物質前駆体の評価
得られた正極活物質前駆体中のNi:Co:Mnのモル比は、0.800:0.100:0.100であった。前記正極活物質前駆体は、図1A及び図1Bと類似したSEM画像、ならびに図2と類似したX線回折パターンを示した。I(001)/I(100)の強度比は、2.41であり、I(001)/I(101)の強度比は、1.51であり、I(101)/I(100)の強度比は1.60であった。
(3)正極活物質の作製
実施例1と同様の操作を行い、正極活物質を得た。
(4)正極活物質の評価
前記正極活物質は、図3A及び図3Bに類似したSEM画像、及び図3Cに類似したTEM画像を示す。
【0141】
前記正極活物質は、実施例1と同様に電気化学的特性を評価し、放電容量、第1サイクル効率及び80サイクル後の容量保持率の結果を表3に示す。
[実施例15]
本実施例は、本出願に係る正極活物質の作製及び評価を説明するために提供されたものである。
(1)正極活物質の作製
多段焼成の第1段の焼成では、5℃/分の速度で室温から600℃に昇温し、1時間維持し、第2段の焼成では、5℃/分の速度で600℃から750℃に昇温し、48時間維持したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、正極活物質を得た。
(2)正極活物質の評価
前記正極活物質は、図3A及び図3Bに類似したSEM画像、及び図3Cに類似したTEM画像を示す。
【0142】
前記正極活物質は、実施例1と同様に電気化学的特性を評価し、放電容量、第1サイクル効率及び80サイクル後の容量保持率の結果を表3に示す。
[実施例16]
本実施例は、本出願に係る正極活物質の作製及び評価を説明するために提供されたものである。
(1)正極活物質の作製
多段焼成の第1段の焼成では、5℃/分の速度で室温から300℃に昇温し、10時間維持し、第2段の焼成では、5℃/分の速度で300℃から1000℃に昇温し、4時間維持したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、正極活物質を得た。
(2)正極活物質の評価
前記正極活物質は、図3A及び図3Bに類似したSEM画像、及び図3Cに類似したTEM画像を示す。
【0143】
前記正極活物質は、実施例1と同様に電気化学的特性を評価し、放電容量、第1サイクル効率及び80サイクル後の容量保持率の結果を表3に示す。
[実施例17]
実施例は、本出願に係る正極活物質の作製及び評価を説明するために提供されたものである。
(1)正極活物質の作製
室温から850℃まで5℃/分の速度で昇温し、12時間維持する単段焼成を行ったこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、正極活物質を得た。
(2)正極活物質の評価
前記正極活物質は、図3A及び図3Bに類似したSEM画像、及び図3Cに類似したTEM画像を示す。
【0144】
前記正極活物質は、実施例1と同様に電気化学的特性を評価し、放電容量、第1サイクル効率及び80サイクル後の容量保持率の結果を表3に示す。
[実施例18]
本実施例は、本出願に係る正極活物質前駆体及び正極活物質の作製、及び評価を説明するために提供されたものである。
(1)正極活物質前駆体の作製
沈殿剤として同濃度のKOH溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、正極活物質前駆体を得た。
(2)正極活物質前駆体の評価
得られた正極活物質前駆体中のNi:Co:Mnのモル比は、0.799:0.101:0.100であった。前記正極活物質前駆体は、図1A及び図1Bと類似したSEM画像、ならびに図2と類似したX線回折パターンを示し、I(001)/I(100)の強度比は2.43、I(001)/I(101)の強度比は1.51、I(101)/I(100)の強度比は1.61であった。
(3)正極活物質の作製
実施例1と同様の操作を行い、正極活物質を得た。
(4)正極活物質の評価
前記正極活物質は、図3A及び図3Bに類似したSEM画像、及び図3Cに類似したTEM画像を示す。
【0145】
前記正極活物質は、実施例1と同様に電気化学的特性を評価し、放電容量、第1サイクル効率及び80サイクル後の容量保持率の結果を表3に示す。
[実施例19]
本実施例は、本出願に係る正極活物質前駆体及び正極活物質の作製、及び評価を説明するために提供されたものである。
(1)正極活物質前駆体の作製
錯化剤として同濃度のジエタノールアミン溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、正極活物質前駆体を得た。
(2)正極活物質前駆体の評価
得られた正極活物質前駆体中のNi:Co:Mnのモル比は、0.792:0.105:0.103であった。前記正極活物質前駆体は、図1A及び図1Bと類似したSEM画像、ならびに図2と類似したX線回折パターンを示した。I(001)/I(100)の強度比は、2.42であり、I(001)/I(101)の強度比は、1.58であり、I(101)/I(100)の強度比は1.53であった。
(3)正極活物質の作製
実施例1と同様の操作を行い、正極活物質を得た。
(4)正極活物質の評価
前記正極活物質は、図3A及び3Bに類似したSEM画像、及び図3Cに類似したTEM画像を示す。
【0146】
前記正極活物質は、実施例1と同様に電気化学的特性を評価し、放電容量、第1サイクル効率及び80サイクル後の容量保持率の結果を表3に示す。
[実施例20]
本実施例は、本出願に係る正極活物質前駆体及び正極活物質の作製、及び評価を説明するために提供されたものである。
(1)正極活物質前駆体の作製
錯化剤として同濃度のエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、正極活物質前駆体を得た。
(2)正極活物質前駆体の評価
得られた正極活物質前駆体中のNi:Co:Mnのモル比は、0.805:0.097:0.098であった。前記正極活物質前駆体は、図1A及び図1Bと類似したSEM像、ならびに図2と類似したX線回折パターンを示した。I(001)/I(100)の強度比は、2.43であり、I(001)/I(101)の強度比は、1.55であり、I(101)/I(100)の強度比は1.57であった。
(3)正極活物質の作製
実施例1と同様の操作を行い、正極活物質を得た。
(4)正極活物質の評価
前記正極活物質は、図3A及び3Bに類似したSEM画像、及び図3Cに類似したTEM画像を示す。
【0147】
前記正極活物質は、実施例1と同様に電気化学的特性を評価し、放電容量、第1サイクル効率及び80サイクル後の容量保持率の結果を表3に示す。
[実施例21]
本実施例は、本出願に係る正極活物質前駆体及び正極活物質の作製、及び評価を説明するために提供されたものである。
(1)正極活物質前駆体の作製
錯化剤として同濃度のクエン酸ナトリウム溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、正極活物質前駆体を得た。
(2)正極活物質前駆体の評価
得られた正極活物質前駆体中のNi:Co:Mnのモル比は、0.800:0.102:0.098であった。前記正極活物質前駆体は、図1A及び図1Bと類似したSEM画像、ならびに図2と類似したX線回折パターンを示した。I(001)/I(100)の強度比は、2.43であり、I(001)/I(101)の強度比は、1.54であり、I(101)/I(100)の強度比は、1.58であった。
(3)正極活物質の作製
実施例1と同様の操作を行い、正極活物質を得た。
(4)正極活物質の評価
前記正極活物質は、図3A及び3Bに類似したSEM画像、及び図3Cに類似したTEM画像を示す。
【0148】
前記正極活物質は、実施例1と同様に電気化学的特性を評価し、放電容量、第1サイクル効率及び80サイクル後の容量保持率の結果を表3に示す。
[実施例22]
本実施例は、本出願に係る正極活物質前駆体及び正極活物質の作製、及び評価を説明するために提供されたものである。
(1)正極活物質前駆体の作製
前記金属塩溶液を、8:1.5:0.5のモル比で、ニッケル、コバルト、及びアルミニウムを含む2mol/Lの溶液としたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、正極活物質前駆体を得た。
(2)正極活物質前駆体の評価
得られた正極活物質前駆体中のNi:Co:Alのモル比は、0.802:0.153:0.045であった。前記正極活物質前駆体は、図1A及び図1Bと類似したSEM画像、ならびに図2と類似したX線回折パターンを示した。I(001)/I(100)の強度比は、2.44であり、I(001)/I(101)の強度比は、1.53であり、I(101)/I(100)の強度比は1.59であった。
(3)正極活物質の作製
実施例1と同様の操作を行い、正極活物質を得た。
(4)正極活物質の評価
前記正極活物質は、図3A及び3Bに類似したSEM画像、及び図3Cに類似したTEM画像を示す。
【0149】
前記正極活物質は、実施例1と同様に電気化学的特性を評価し、放電容量、第1サイクル効率及び80サイクル後の容量保持率の結果を表3に示す。
[実施例23]
本実施例は、本出願に係る正極活物質前駆体及び正極活物質の作製、及び評価を説明するために提供されたものである。
(1)正極活物質前駆体の作製
前記金属塩溶液を、8:1:1のモル比で、ニッケル、コバルト、及びマグネシウムを含む2mol/L溶液としたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、正極活物質前駆体を得た。
(2)正極活物質前駆体の評価
得られた正極活物質前駆体中のNi、Co、及びMgのモル比は、0.801:0.102:0.097であった。前記正極活物質前駆体は、図1A及び図1Bと類似したSEM画像、ならびに図2と類似したX線回折パターンを示した。I(001)/I(100)の強度比は、2.44であり、I(001)/I(101)の強度比は、1.55であり、I(101)/I(100)の強度比は1.57であった。
(3)正極活物質の作製
実施例1と同様の操作を行い、正極活物質を得た。
(4)正極活物質の評価
前記正極活物質は、図3A及び図3Bに類似したSEM画像、及び図3Cに類似したTEM画像を示す。
【0150】
前記正極活物質は、実施例1と同様に電気化学的特性を評価し、放電容量、第1サイクル効率及び80サイクル後の容量保持率の結果を表3に示す。
[実施例24]
本実施例は、本出願に係る正極活物質前駆体及び正極活物質の作製、及び評価を説明するために提供されたものである。
(1)正極活物質前駆体の作製
さらに0.02mol/LのTiSOを前記金属塩溶液に添加したこと以外は実施例1と同様の操作を行い、正極活物質前駆体を得た。
(2)正極活物質前駆体の評価
得られた正極活物質前駆体中のNi:Co:Mn:Tiのモル比は、0.795:0.101:0.104:0.009であった。前記正極活物質前駆体は、図1A及び図1Bと類似したSEM画像、ならびに図2と類似したX線回折パターンを示した。I(001)/I(100)の強度比は、2.32であり、I(001)/I(101)の強度比は、1.49であり、I(101)/I(100)の強度比は1.56であった。
(3)正極活物質の作製
実施例1と同様の操作を行い、正極活物質を得た。
(4)正極活物質の評価
前記正極活物質は、図3A及び3Bに類似したSEM画像、及び図3Cに類似したTEM画像を示す。
【0151】
前記正極活物質は、実施例1と同様に電気化学的特性を評価し、放電容量、第1サイクル効率及び80サイクル後の容量保持率の結果を表3に示す。
[実施例25]
本実施例は、本出願に係る正極活物質前駆体及び正極活物質の作製、及び評価を説明するために提供されたものである。
(1)正極活物質前駆体の作製
前記金属塩溶液に0.01mol/LのCr(SOを添加したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、正極活物質前駆体を得た。
(2)正極活物質前駆体の評価
得られた正極活物質前駆体中のNi:Co:Mn:Crのモル比は0.798:0.103:0.099:0.011であった。前記正極活物質前駆体は、図1A及び図1Bと類似したSEM画像、ならびに図2と類似したX線回折パターンを示した。I(001)/I(100)の強度比は、2.29であり、I(001)/I(101)の強度比は、1.47であり、I(101)/I(100)の強度比は1.56であった。
(3)正極活物質の作製
実施例1と同様の操作を行い、正極活物質を得た。
(4)正極活物質の評価
前記正極活物質は、図3A及び3Bに類似したSEM画像、及び図3Cに類似したTEM画像を示す。
【0152】
前記正極活物質は、実施例1と同様に電気化学的特性を評価し、放電容量、第1サイクル効率及び80サイクル後の容量保持率の結果を表3に示す。
[実施例26]
本実施例は、本出願に係る正極活物質前駆体及び正極活物質の作製、及び評価を説明するために提供されたものである。
(1)正極活物質前駆体の作製
前記金属塩溶液に0.02mol/LのFe(NO・9HOを添加したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、正極活物質前駆体を得た。
(2)正極活物質前駆体の評価
得られた正極活物質前駆体中のNi:Co:Mn:Feのモル比は、0.803:0.096:0.101:0.010であった。前記正極活物質前駆体は、図1A及び図1Bと類似したSEM画像、ならびに図2と類似したX線回折パターンを示した。I(001)/I(100)の強度比は、2.26であり、I(001)/I(101)の強度比は、1.47であり、I(101)/I(100)の強度比は1.54であった。
(3)正極活物質の作製
実施例1と同様の操作を行い、正極活物質を得た。
(4)正極活物質の評価
前記正極活物質は、図3A及び図3Bに類似したSEM画像、及び図3Cに類似したTEM画像を示す。
【0153】
前記正極活物質は、実施例1と同様に電気化学的特性を評価し、放電容量、第1サイクル効率及び80サイクル後の容量保持率の結果を表3に示す。
[実施例27]
本実施例は、本出願に係る正極活物質前駆体及び正極活物質の作製、及び評価を説明するために提供されたものである。
(1)正極活物質前駆体の作製
前記金属塩溶液に、さらに0.02mol/LのCuSO・5HOを添加したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、正極活物質前駆体を得た。
(2)正極活物質前駆体の評価
得られた正極活物質前駆体中のNi:Co:Mn:Cuのモル比は、0.801:0.100:0.099:0.009であった。前記正極活物質前駆体は、図1A及び図1Bと類似したSEM画像、ならびに図2と類似したX線回折パターンを示した。I(001)/I(100)の強度比は、2.09であり、I(001)/I(101)の強度比は1.45であり、I(101)/I(100)の強度比は1.44であった。
(3)正極活物質の作製
実施例1と同様の操作を行い、正極活物質を得た。
(4)正極活物質の評価
前記正極活物質は、図3A及び図3Bに類似したSEM画像、及び図3Cに類似したTEM画像を示す。
【0154】
前記正極活物質は、実施例1と同様に電気化学的特性を評価し、放電容量、第1サイクル効率及び80サイクル後の容量保持率の結果を表3に示す。
[実施例28]
本実施例は、本出願に係る正極活物質前駆体及び正極活物質の作製、及び評価を説明するために提供されたものである。
(1)正極活物質前駆体の作製
前記金属塩溶液に、0.02mol/LのZnSO・HOをさらに添加したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、正極活物質前駆体を得た。
(2)正極活物質前駆体の評価
得られた正極活物質前駆体中のNi:Co:Mn:Znのモル比は、0.797:0.104:0.099:0.010であった。前記正極活物質前駆体は、図1A及び図1Bと類似したSEM画像、ならびに図2と類似したX線回折パターンを示した。I(001)/I(100)の強度比は、2.13であり、I(001)/I(101)の強度比は、1.46であり、I(101)/I(100)の強度比は1.46であった。
(3)正極活物質の作製
実施例1と同様の操作を行い、正極活物質を得た。
(4)正極活物質の評価
前記正極活物質は、図3A及び図3Bに類似したSEM画像、及び図3Cに類似したTEM画像を示す。
【0155】
前記正極活物質は、実施例1と同様に電気化学的特性を評価し、放電容量、第1サイクル効率及び80サイクル後の容量保持率の結果を表3に示す。
[比較例1]
本比較例は、本出願によらない正極活物質前駆体及び正極活物質の作製、及び評価を例示するために提供されたものである。
(1)正極活物質前駆体の作製
滴下工程が、前記金属溶液、前記沈殿剤溶液、及び前記錯化剤溶液の連続滴下工程であり、前記金属溶液の間欠的な滴下工程がないこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、正極活物質前駆体を得た。
(2)正極活物質前駆体の評価
得られた正極活物質前駆体中のNi:Co:Mnのモル比は、0.799:0.102:0.099であった。得られた正極活物質前駆体のSEM画像を図8に示す。前記正極活物質前駆体の形態は、良好な球形を有する球状多結晶凝集体であることがわかる。
【0156】
X線回折パターンを図9に示す。(001)結晶面、(100)結晶面、及び(101)結晶面間の差が小さく、I(001)/I(100)の強度比は、1.19であり、I(001)/I(101)の強度比は、1.04であり、I(101)/I(100)の強度比は、1.14であることを理解することができる。
(3)正極活物質の作製
実施例1と同様の操作を行い、正極活物質を得た。
(4)正極活物質の評価
前記正極活物質のSEM画像を図10Aに示す。得られた正極活物質の形態は、ナノメートルまたはサブミクロンの一次粒子によって形成された、良好な球形を有する二次マイクロメートル球状多結晶凝集体であることがわかる。
【0157】
前記正極活物質のTEM画像を図10Bに示す。図10Bより明らかなように、試料作製工程中の超音波処理の後、前記正極活物質の二次マイクロメートル球状多結晶凝集体は、部分的に崩れて、別々の個体ナノ粒子を生じる。
【0158】
前記正極活物質は、実施例1と同様に電気化学的特性を評価し、放電容量、第1サイクル効率及び80サイクル後の容量保持率の結果を表3に、出力特性の結果を図11に示す。
【0159】
【表1】
【0160】
【0161】
【表2】
【0162】
【0163】
【表3】
【0164】
【0165】
表3に示す、比較例と比較した結果から次のことが分かる。本出願に係るリチウム電池正極活物質前駆体は、球状多結晶凝集体の形態を有する前駆体とは異なり、板状単結晶と多面体単結晶粒子との凝集体を含み、(001)結晶面及び(101)結晶面の露出面積がより大きい。一方、本出願に係るリチウム電池正極活物質は、球状多結晶凝集体材料及び分散単結晶粒子材料とは異なり、少なくとも部分的に融合した一次単結晶粒子によって形成された、単結晶の二次融合体の形態の粒子材料であり、より高い放電容量及び第1サイクル効率などの電気化学的特性が改善され、サイクル性能が改善されている。
【0166】
図7及び図11に示す、比較例と比較した出力特性の結果から次のことが分かる。本出願に係るリチウム電池正極活物質前駆体及び正極活物質は、大きく改善された出力特性を示し、高いレートで著しく高い放電容量を示す。例えば、10Cのレートにおいて、本出願の前駆体材料を用いて作製された正極活物質の放電容量は、比較例で得られた正極活物質の放電容量の約2倍である。
【0167】
以上、本出願を、その好ましい実施形態を参照して詳細に説明したが、これに限定されるものではない。本出願の要旨から逸脱することなく、本明細書に開示されたもの以外の任意の適切な方法で行われた技術的特徴の様々な組み合わせを含む、本出願に開示された技術的解決策に様々な修正を行うことができ、これらの修正及び組み合わせもまた、本出願の開示の一部と見なされるべきであり、すべてが本出願の範囲内に入る。
【図面の簡単な説明】
【0168】
図1A】本出願の実施例1で得られた正極活物質前駆体のSEM画像である。
図1B】本出願の実施例1で得られた正極活物質前駆体のSEM画像である。
図2】本出願の実施例1で得られた正極活物質前駆体のX線回折パターンを示す。
図3A】本出願の実施例1で得られた正極活物質のSEM画像である。
図3B】本出願の実施例1で得られた正極活物質のSEM画像である。
図3C】本出願の実施例1で得られた正極活物質のTEM画像である。
図3D】本出願の実施例1で得られた正極活物質の断面のSEM画像である。
図4】本出願の実施例1で得られた正極活物質のX線回折パターンを示す。
図5】、本出願の実施例1の正極活物質を用いて組み立てられたリチウム電池の充放電曲線を0.1Cの割合で測定したものである。
図6】本出願の実施例1の正極活物質を用いて組み立てられたリチウム電池のサイクル容量保持曲線を0.1Cの割合で測定したものである。
図7】本出願の実施例1の正極活物質を用いて組み立てられたリチウム電池の、種々の割合で測定された容量結果を示す。
図8】本出願の比較例1で得られた正極活物質前駆体のSEM画像である。
図9】本出願の比較例1で得られた正極活物質前駆体のX線回折パターンを示す。
図10A】本出願の比較例1で得られた正極活物質のSEM画像である。
図10B】本出願比較例1で得られた正極活物質のTEM画像である。
図11】本出願比較例1の正極活物質を用いて組み立てられたリチウム電池の、種々の割合で測定された容量結果を示す。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
【国際調査報告】