(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-22
(54)【発明の名称】リン含有難燃剤の調製方法及びポリマー組成物におけるそれらの使用
(51)【国際特許分類】
C07F 19/00 20060101AFI20221215BHJP
C09K 21/12 20060101ALI20221215BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20221215BHJP
C08K 5/51 20060101ALI20221215BHJP
C07F 15/02 20060101ALN20221215BHJP
C07F 5/06 20060101ALN20221215BHJP
【FI】
C07F19/00
C09K21/12
C08L101/00
C08K5/51
C07F15/02
C07F5/06 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022522987
(86)(22)【出願日】2019-12-18
(85)【翻訳文提出日】2022-06-13
(86)【国際出願番号】 US2019067230
(87)【国際公開番号】W WO2021076169
(87)【国際公開日】2021-04-22
(32)【優先日】2019-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505006666
【氏名又は名称】ランクセス・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジュリア・ユエ・リ
(72)【発明者】
【氏名】サイモン・ジェイ・ボニハディ
(72)【発明者】
【氏名】チンリアン・ヘ
(72)【発明者】
【氏名】ラメシュ・シャーマ
【テーマコード(参考)】
4H028
4H048
4H050
4J002
【Fターム(参考)】
4H028AA12
4H028AA35
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4H048AA03
4H048VA80
4H048VB10
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4J002AA011
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4J002EW147
4J002FA048
4J002FD018
4J002FD019
4J002FD136
4J002FD137
4J002FD139
(57)【要約】
リン含有難燃剤は、反応混合物を調製する工程であって、反応混合物は、ホスホン酸と、ホスホン酸のための溶媒と、金属又は適切な金属化合物とを含む、工程と、ホスホン酸と金属又は適切な金属化合物を本明細書に記載の条件下で反応させる工程と、によって生成される。得られる難燃性生成物の化学組成は、優れた難燃性をもたらし、高い熱安定性を示す。現在開示されている難燃剤は、例えば、ポリマー組成物、特に高温にて処理される熱可塑性樹脂において、広範囲の用途にわたって有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン含有難燃剤を生成するための方法であって、
反応混合物を調製する工程であって、反応混合物は、
(a)非置換又はアルキル若しくはアリール置換ホスホン酸と、
(b)ホスホン酸のための溶媒と、
(c)ポリカチオンを形成することが可能な金属、又は式M
p
(+)y X
q[式中、Mは金属であり、(+)yは金属カチオンの電荷を表し、yは2以上であり、Xはアニオンであり、p及びqの値は電荷平衡金属化合物をもたらす]で表される好適な金属化合物と、
を含む、工程と、
反応混合物を、105℃以上の反応温度にて、リン含有難燃剤を生成するのに十分な時間加熱する工程と、
を含む方法。
【請求項2】
リン含有難燃剤を生成するための方法であって、
反応混合物を調製する工程であって、反応混合物は、
(a)非置換又はアルキル若しくはアリール置換ピロホスホン酸と、
(b)ピロホスホン酸のための溶媒と、
(c)ポリカチオンを形成することが可能な金属、又は式M
p
(+)y X
q[式中、Mは金属であり、(+)yは金属カチオンの電荷を表し、yは2以上であり、Xはアニオンであり、p及びqの値は電荷平衡金属化合物をもたらす]で表される好適な金属化合物と
を含む、工程と、
反応混合物を20℃以上の反応温度にて、リン含有難燃剤を生成するのに十分な時間反応させる工程と、
を含む方法。
【請求項3】
反応混合物が、反応温度より低い調製温度で調製される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
調製温度が、約15℃~約40℃の範囲である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
反応混合物の成分(a)及び(b)が、溶液の形態をとり、反応混合物を調製する工程が、成分(c)を溶液と混合する工程を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
反応温度が、約150℃以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
反応温度が、約140℃~約260℃の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
反応温度が、約60℃以上である、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
反応温度が、約60℃~約240℃の範囲である、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
反応混合物中の成分(a)対成分(c)のモル比が、約4:1~約50:1の範囲である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
溶媒が、水、スルホン、スルホキシド、ハロゲン化炭化水素、芳香族炭化水素、及びエーテルから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
溶媒が水を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
溶媒が非プロトン性である、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
反応混合物の成分(c)が、2+、3+又は4+ポリカチオンを形成することができる金属を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項15】
反応混合物の成分(c)が、式M
p
(+)y X
q[式中、Mは金属であり、(+)yは金属カチオンの電荷を表し、yは2、3、又は4であり、Xはアニオンであり、p及びqの値は電荷平衡金属化合物をもたらす]で表される好適な金属化合物を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項16】
yが3である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
Mが、Al、Ga、Sb、Fe、Co、B、及びBiから選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
Mが、Al又はFeである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
反応混合物の成分(c)が、好適な金属化合物を含み、好適な金属化合物が、金属酸化物、ハロゲン化物、アルコキシド、水酸化物、炭酸塩、カルボン酸塩、又はホスホン酸塩から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項20】
式M
p
(+)y X
qにおけるMが、Al又はFeである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
好適な金属化合物が、アルミナ、三塩化アルミニウム、三水酸化アルミニウム、アルミニウムイソプロポキシド、炭酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、酸化鉄(III)、塩化鉄(III)、鉄(III)イソプロポキシド、及び酢酸鉄(III)から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
非置換又はアルキル若しくはアリール置換ホスホン酸が、式(I)
【化1】
[式中、Rは、H、C
1~12アルキル、C
6~10アリール、C
7~18アルキルアリール、又はC
7~18アリールアルキルであり、アルキル、アリール、アルキルアリール、又はアリールアルキルは、非置換であるか、又はハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、C
1~4アルキルアミノ、ジ-C
1~4アルキルアミノ、C
1~4アルコキシ、カルボキシ又はC
2~5アルコキシカルボニルで置換されている]
によって表される、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
非置換又はアルキル若しくはアリール置換ピロホスホン酸が、式(Ia)
【化2】
[式中、Rは、H、C
1~12アルキル、C
6~10アリール、C
7~18アルキルアリール、又はC
7~18アリールアルキルであり、アルキル、アリール、アルキルアリール、又はアリールアルキルは、非置換であるか、又はハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、C
1~4アルキルアミノ、ジ-C
1~4アルキルアミノ、C
1~4アルコキシ、カルボキシ又はC
2~5アルコキシカルボニルで置換されている]
によって表される、請求項2に記載の方法。
【請求項24】
Rが、非置換C
1~12アルキル、C
6アリール、C
7~10アルキルアリール、又はC
7~10アリールアルキルである、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
Rが、非置換C
1~6アルキルである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
Rが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、又はt-ブチルである、請求項26又は27に記載の方法。
【請求項27】
実験式(III)
【化3】
[式中、Rは、H、アルキル、アリール、アルキルアリール又はアリールアルキル基であり、
Mは金属であり、yは2又は3であり、M
(+)yは金属カチオンであり、(+)yはカチオンに形式的に割り当てられた電荷を表し、
a、b、及びcは、化合物において相互に対応する成分の比を表し、電荷平衡方程式2(a)+c=b(y)を満たし、
cは0ではない]
の化合物を含む、
請求項1から26のいずれか一項に記載の方法により生成されたリン含有難燃剤。
【請求項28】
yが3であり、aが1であり、bが1であり、cが1である、請求項27に記載のリン含有難燃剤。
【請求項29】
(i)ポリマーと(ii)請求項27又は28に記載のリン含有難燃剤とを含む難燃性ポリマー組成物。
【請求項30】
ポリマーが、ポリオレフィンホモポリマー又はコポリマー、ゴム、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリイミド、ポリフェニレンエーテル、スチレン系ポリマー又はコポリマー、ポリカーボネート、アクリルポリマー、ポリアミド、又はポリアセタールのうちの1つ又は複数を含む、請求項29に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項31】
ポリマーが、スチレン系ポリマー又はコポリマー、ポリオレフィンホモポリマー又はコポリマー、ポリエステル、ポリカーボネート、アクリルポリマー、エポキシ樹脂、ポリアミド、又はポリウレタンのうちの1つ又は複数を含む、請求項30に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項32】
ポリマーが、ポリアルキレンテレフタレート、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、エポキシ樹脂、又はポリアミドを含む、請求項31に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項33】
ポリマーが、ガラス充填ポリアルキレンテレフタレート、ガラス強化エポキシ樹脂、又はガラス充填ポリアミドを含む、請求項32に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項34】
ポリマーが、ポリフタルアミドを含む、請求項32に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項35】
ポリマーが、ポリアミド46、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド4T、又はポリアミド9Tを含む、請求項32に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項36】
ポリマーが、ポリアミドMXD,6、ポリアミド12,T、ポリアミド10,T、ポリアミド6,T/6,6、ポリアミド6,T/D,T、ポリアミド6,6/6,T/6,I、ポリアミド6/6,T、又はポリアミド6,T/6,Iを含む、請求項32に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項37】
ポリマーが、ポリフェニレンエーテル/スチレン系樹脂ブレンド、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリ塩化ビニル/ABSブレンド、メタクリロニトリル/ABSブレンド、α-メチルスチレン含有ABS、ポリエステル/ABS、ポリカーボネート/ABS、耐衝撃性改質ポリエステル、又は耐衝撃性改質ポリスチレンを含む、請求項29に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項38】
(iii)追加の難燃剤、相乗剤、及び難燃剤補助剤から選択される1つ又は複数の化合物を更に含む、請求項29から37のいずれか一項に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項39】
1つ又は複数の化合物が、ハロゲン化難燃剤、アルキル又はアリールホスフィンオキシド、アルキル又はアリールポリホスフィンオキシド、アルキル又はアリールリン酸塩、アルキル又はアリールホスホン酸塩、アルキル又はアリールホスホン酸塩、アルキル又はアリールホスフィン酸の塩、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、シロキサン、ポリシロキサン、ポリフェニレンエーテル、メラミン、メラミン誘導体、メラミン縮合生成物、メラミン塩、金属水酸化物、金属酸化物、金属酸化水和物、金属ホウ酸塩、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属リン酸塩、金属ホスホン酸塩、金属リン酸塩、金属次亜リン酸塩、金属ケイ酸塩、及び混合金属塩から選択される、請求項38に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項40】
1つ又は複数の化合物が、トリス(ジアルキルホスフィン酸)アルミニウム、亜リン酸水素アルミニウム、ベンジルホスフィンオキシド、ポリベンジルホスフィンオキシド、メラム、メレム、メロン、リン酸メラミン、メラミン金属リン酸塩、シアヌル酸メラミン、ホウ酸メラミン、タルク、粘土、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸塩、中空管としてのアルミノケイ酸塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸ホウ素、モリブデン酸カルシウム、剥離バーミキュライト、スズ酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛、硫化亜鉛、ホウ酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、リン酸亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化水酸化アルミニウム、三水和アルミニウム、シリカ、酸化スズ、酸化アンチモン(III及びV)、酸化アンチモン(III及びV)水和物、チタン酸化物、酸化亜鉛、酸化亜鉛水和物、酸化ジルコニウム、及び水酸化ジルコニウムから選択される、請求項39に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項41】
1つ又は複数の化合物が、アルミニウムトリス(ジメチルホスフィン酸塩)、アルミニウムトリス(ジエチルホスフィン酸塩)、アルミニウムトリス(ジプロピルホスフィン酸塩)、アルミニウムトリス(ジブチルホスフィン酸塩)、メチレン-ジフェニルホスフィンオキシド置換ポリアリールエーテル、キシリレンビス(ジフェニルホスフィンオキシド)、1,2-ビス-(9,10-ジヒドロ-9-オキシ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド)エタン、4,4'-ビス(ジフェニルホスフィニルメチル)-1,1'-ビフェニル、メラム、メレム、メロン、及びジメラミンピロリン酸亜鉛から選択される、請求項40に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項42】
ハイドロタルサイト粘土、金属ホウ酸塩、金属酸化物、及び金属水酸化物から選択される1つ又は複数の化合物を更に含む、請求項29に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項43】
金属ホウ酸塩、金属酸化物、及び金属水酸化物の金属が、亜鉛又はカルシウムである、請求項42に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項44】
1つ又は複数の化合物が、メラム、メレム、メロン、シアヌル酸メラミン、ポリリン酸メラミン、メラミンポリ(金属リン酸塩)、ポリ-[2,4-(ピペラジン-1,4-イル)-6-(モルホリン-4-イル)-1,3,5-トリアジン]/ピペラジン、次亜リン酸アルミニウム、及びジアルキルホスフィン酸アルミニウムから選択される、請求項38に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項45】
1つ又は複数の化合物が、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、ポリシロキサン、カオリン、シリカ、水酸化マグネシウム、モリブデン酸亜鉛錯体、モリブデン酸亜鉛/水酸化マグネシウム錯体、モリブデン酸亜鉛/ケイ酸マグネシウム錯体、モリブデン酸カルシウム/亜鉛錯体、リン酸亜鉛錯体、及びメラミン-ポリ(リン酸亜鉛)から選択される、請求項38に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項46】
1つ又は複数の化合物が、メラムと、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛錯体、モリブデン酸亜鉛/水酸化マグネシウム錯体、モリブデン酸亜鉛/ケイ酸マグネシウム錯体、モリブデン酸カルシウム/亜鉛錯体、リン酸亜鉛錯体、及び酸化亜鉛から選択される任意の1つ又は複数の材料とを含む、請求項38に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項47】
1つ又は複数の化合物が、メロンと、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛錯体、モリブデン酸亜鉛/水酸化マグネシウム錯体、モリブデン酸亜鉛/ケイ酸マグネシウム錯体、モリブデン酸カルシウム/亜鉛錯体、リン酸亜鉛錯体、及び酸化亜鉛から選択される任意の1つ又は複数の材料とを含む、請求項38に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項48】
実験式(III)
【化4】
[式中、Rは、H、アルキル、アリール、アルキルアリール又はアリールアルキル基であり、
Mは金属であり、yは2又は3であり、M
(+)yは金属カチオンであり、(+)yはカチオンに形式的に割り当てられた電荷を表し、
a、b、及びcは、化合物において相互に対応する成分の比を表し、電荷平衡方程式2(a)+c=b(y)を満たし、
cは0ではない]
の化合物を含む難燃性材料。
【請求項49】
yが3であり、aが1であり、bが1であり、及びcが1である、請求項48に記載の難燃性材料。
【請求項50】
Mが、Al、Ga、Sb、Fe、Co、B、又はBiである、請求項49に記載の難燃性材料。
【請求項51】
Mが、Al又はFeである、請求項50に記載の難燃性材料。
【請求項52】
Rが、H又はアルキルである、請求項48から51のいずれか一項に記載の難燃性材料。
【請求項53】
Rが、C
1~6アルキルである、請求項52に記載の難燃性材料。
【請求項54】
Rが、メチル又はエチルである、請求項53に記載の難燃性材料。
【請求項55】
実験式(III)の化合物が、難燃性材料の少なくとも75質量%を構成する、請求項48から54のいずれか一項に記載の難燃性材料。
【請求項56】
実験式(III)の化合物が、難燃性材料の少なくとも90質量%を構成する、請求項55に記載の難燃性材料。
【請求項57】
(i)ポリマーと(ii)請求項48から56のいずれか一項に記載の難燃性材料とを含む、難燃性ポリマー組成物。
【請求項58】
請求項48から56のいずれか一項に記載の難燃性材料を、任意に1つ又は複数の追加の難燃剤、相乗剤又は難燃剤補助剤と共に、ポリマー樹脂に組み込む工程
を含む、ポリマーの難燃性を高めるための方法。
【請求項59】
請求項27又は28に記載のリン含有難燃剤を、任意に1つ又は複数の追加の難燃剤、相乗剤又は難燃剤補助剤と共に、ポリマー樹脂に組み込む工程
を含む、ポリマーの難燃性を高めるための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年10月18日に出願された米国仮出願第62/923,444号の優先権を主張し、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
非常に効果的であり熱安定性であるリン含有難燃剤は、反応混合物を調製する工程であって、反応混合物は、ホスホン酸又はピロホスホン酸と、ホスホン酸又はピロホスホン酸のための溶媒と、金属又は適切な金属化合物とを含む、工程と、ホスホン酸又はピロホスホン酸と金属又は適切な金属化合物を本明細書に記載の条件下で反応させる工程と、を含む方法によって生成される。得られる難燃性生成物の化学組成は、多くの実施形態において、1つ又は主に1つの化合物として生成され、優れた難燃性をもたらし、高い熱安定性を示す。現在開示されている難燃剤は、例えば、ポリマー組成物、特に高温にて処理される熱可塑性樹脂において、広範囲の用途にわたって有用である。
【背景技術】
【0003】
ホスホン酸塩、すなわち、次の化合物は、多くのポリマー組成物における公知の難燃剤である。
【0004】
【0005】
[式中、Rは任意に置換されるアルキル、アリール、アルキルアリール又はアリールアルキル基であり、pは典型的には1~4の数であり、Mは金属であり、yは典型的に1~4の数であり、M(+)yは金属カチオンとなり、ここで、(+)yはカチオンに形式的に割り当てられた電荷を表す]。
【0006】
米国特許出願公開第2007/0029532号に開示されている通り、ホスホン酸塩の分解は、ポリエステル及びポリアミドの処理中に生じる温度、例えば260又は270°Cを超える温度において、処理中のポリマーに損傷を与えることが公知となっている。
【0007】
米国特許第5,053,148号は、ホスホン酸塩を高温で加熱することにより、脆い耐熱性発泡体が得られることを開示している。
【0008】
米国特許第9,745,449号の比較例1及び2では、10~25質量%のメチルホスホン酸アルミニウム塩を含むガラス充填ポリアミド組成物が、高温にて処理された。ポリマーの劣化と一致して、配合中にトルクの低下が観察され、冷却時に脆くなり、粉砕後に粉末状になって成形できない最終生成物材料が生成された。ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)及び示差走査熱量測定(DSC)による配合材料の分析は、分解の追加の証拠を与えた。観察された所望のポリマー特性の喪失は、米国特許出願公開第2007/0029532号において示唆されたポリマーの劣化及び米国特許第5,053,148号において形成された脆い発泡体と整合する。
【0009】
したがって、単純なホスホン酸塩は、250℃、260℃、270℃以上等の高温にて処理されるか、その後高温にさらされる、多くのポリマーでの使用には適していない。それらのポリマーは、ポリマーに害を及ぼす処理を介してそのような温度において化学的変換を受けるためである。この化学的変換は、例えば押出機での配合中に、又は高温用途においてポリマー中に塩が存在する間に、発生する可能性がある。
【0010】
他方、米国特許第9,745,449号は、一般に他の材料がない状態で十分に高い温度にてホスホン酸塩を加熱すると、塩が、ポリマー基材に組み込まれたときに優れた難燃活性を示す、熱的により安定した別の材料に熱変換されることを開示している。熱変換された材料は、例えば、240℃、250℃、260℃、270℃以上等の高温にてポリマー組成物中で処理されたとき、高温で分解せず、ポリマーの分解も引き起こさない。これは、難燃活性を示すが処理中にポリマーを分解することが多い既知のホスホン酸塩に対する、重要な利点である。熱変換された材料は、実験式(IV):
【0011】
【0012】
により表される1つ又は複数の化合物を含むと説明されている。
[式中、Rはアルキル又はアリールであり、Mは金属であり、qは1~7の数値、例えば1、2又は3であり、rは0~5の数値、例えば0、1又は2であり、yは1~7までの数値、例えば1~4であり、nは1又は2、ただし、2(q)+r=n(y)である]。
【0013】
しかしながら、米国特許第9,745,449号の方法及び材料には課題がある。例えば、使用前に粉砕、ミリング、又は他のそのような物理的処理を必要とする、一般に固体塊の形態での生成物の生成;水溶性又は熱的に不安定な化合物を含有する生成物混合物の形成;得られた生成物のリン対金属の比を制御することの難しさである。更に、米国特許第9,745,449号の実施例は、ホスホン酸の中間金属塩が生成され、次に乾燥塩が200℃を超える温度にて加熱されるいくつかの工程でリン含有難燃剤を生成することを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0029532号
【特許文献2】米国特許第5,053,148号
【特許文献3】米国特許第9,745,449号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本開示は、米国特許第9,745,449号に記載されているような中間塩の生成又は使用を必要とせずにリン含有難燃剤を生成しながら、上記で特定された課題に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本開示によれば、リン含有難燃剤は、(i)反応混合物を調製する工程であって、反応混合物は、(a)非置換又はアルキル若しくはアリール置換ホスホン酸と、(b)ホスホン酸のための溶媒と、(c)ポリカチオンを形成することが可能な金属(すなわち、式M(+)y[式中、Mは金属であり、(+)yは金属カチオンの電荷を表し、yは2以上である]によって対応するカチオン形態で表される金属)、又は式Mp
(+)y Xq[式中、Mは金属であり、(+)yは金属カチオンの電荷を表し、yは2以上であり、Xはアニオンであり、p及びqの値は電荷平衡(charge balanced)金属化合物をもたらす]で表される好適な金属化合物と、を含む、工程と;
(ii)反応混合物を、105℃以上の反応温度にて、リン含有難燃剤を生成するのに十分な時間加熱又は反応させる工程と、を含む方法によって調製される。
【0017】
リン含有難燃剤を生成する方法であって、(i)反応混合物を調製する工程であって、反応混合物は、(a)非置換又はアルキル若しくはアリール置換ピロホスホン酸と、(b)ピロホスホン酸のための溶媒と、(c)ポリカチオンを形成することが可能な金属(すなわち、上記の式M(+)yによって対応するカチオン形態で表される金属)、又は上記の式Mp
(+)y Xqで表される好適な金属化合物と、を含む、工程と、
(ii)反応混合物を、20℃以上の反応温度にて、リン含有難燃剤を生成するのに十分な時間加熱又は反応させる工程と、を含む方法も開示される。
【0018】
多くの場合、本発明の得られた難燃性生成物が反応混合物から析出するため、反応生成物はスラリーとして形成される。反応後に残っているホスホン酸、ピロホスホン酸、及び/又は溶媒は、ろ過及び/又は例えば水での洗浄によって、生じ得る任意の副生成物と共に除去され得る。多くの実施形態では、実質的に純粋な難燃性材料、例えば、本質的に難燃活性を有する単一の化合物又は本質的に活性化合物の混合物を含む難燃剤が生成される。金属又は金属化合物に基づく変換率は典型的に高く、生成物は、容易に単離され、必要に応じて任意に更に精製され得る。
【0019】
本方法は、米国特許第9,745,449号に見られる方法において観察された困難を克服する。なぜなら、例えば、水溶性又は熱的に不安定な化合物の生成が減少又は回避され、典型的には粉末又は小粒子として結晶化する難燃性生成物が、容易に処理可能な形態で、すなわち、粉砕、造粒、又は他のそのような物理的処理を必要とせずに又は伴わずに、生成され得るからである。更に、多くの実施形態において、本開示により生成された得られた難燃性材料は、本明細書で更に説明される通り、単純な金属ホスホン酸塩で見られるよりも高いリン対金属比を有する。生成された難燃剤中のリン対金属比率が高いと、効率が向上するため、難燃性材料を熱可塑性樹脂に配合する場合に、より低い負荷レベルが許容され得る。
【0020】
本開示の他の実施形態には、限定されないが、本明細書に記載の方法に従って生成されたリン含有難燃剤と;(i)ポリマー及び(ii)本開示のリン含有難燃剤を含む難燃性ポリマー組成物と;本開示の難燃剤をポリマーに組み込むことによりポリマーの難燃性を改善するための方法と;本開示の難燃剤を含む難燃剤組成物をポリマーに組み込むための方法とが含まれる。
【0021】
前述の要約は、いかなる意味でも、特許請求の範囲に記載された発明の範囲を制限することを意図するものではない。加えて、前述の概要説明及び下記の詳細な説明は、例示であり、例示のみを目的とし、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を限定するものではないと理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本開示の実施例1に従って生成された例示的な難燃性材料の熱重量分析(TGA)の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
特に明記されていない限り、本出願における「a」又は「an」という単語は、「1つ又は複数の」を意味する。
【0024】
本出願における「アルキル」という用語は、文脈上別段の指示がない限り、「アリールアルキル」を含む。
【0025】
本出願における「アリール」という用語は、文脈上別段の指示がない限り、「アルキルアリール」を含む。
【0026】
本明細書で使用される「ホスホン酸」という用語は、文脈上別段の指示がない限り、非置換又はアルキル若しくはアリール置換ホスホン酸を指す。
【0027】
本明細書で使用される「ピロホスホン酸」という用語は、文脈上別段の指示がない限り、非置換又はアルキル若しくはアリール置換ピロホスホン酸を指す。
【0028】
本開示の一態様によれば、金属又は好適な金属化合物と、非置換又はアルキル若しくはアリール置換ホスホン酸とが反応して、リン含有難燃剤を形成する。この方法は、(i)反応混合物を調製する工程であって、反応混合物は、(a)非置換又はアルキル若しくはアリール置換ホスホン酸と、(b)ホスホン酸のための溶媒と、(c)金属又は好適な金属化合物と、を含む、工程と;(ii)反応混合物を105℃以上の反応温度で、リン含有難燃剤を生成するのに十分な時間加熱又は反応させる工程と、を含む。反応において、金属は酸化され、式M(+)y[式中、Mは金属であり、(+)yは金属カチオンの電荷を表し、yは2以上である]によって、対応するカチオン形態で表され得る。好適な金属化合物は、式Mp
(+)y Xq[式中、Mは金属であり、(+)yは金属カチオンの電荷を表し、yは2以上であり、Xはアニオンであり、pとqの値は電荷平衡金属化合物をもたらす]で表され得る。
【0029】
別の態様では、金属又は好適な金属化合物と、非置換又はアルキル若しくはアリール置換ピロホスホン酸とを反応させて、リン含有難燃剤を形成する。この方法は、(i)反応混合物を調製する工程であって、反応混合物は、(a)非置換又はアルキル若しくはアリール置換ピロホスホン酸と、(b)ピロホスホン酸のための溶媒と、(c)上記の金属又は好適な金属化合物とを含む、工程と;(ii)反応混合物を20℃以上の反応温度で、リン含有難燃剤を生成するのに十分な時間加熱又は反応させる工程と、を含む。
【0030】
多くの実施形態において、反応混合物におけるホスホン酸又はピロホスホン酸の金属又は好適な金属化合物に対するモル比は、2:1より高く、例えば、約3:1以上、約4:1以上、約5:1以上、約6:1以上、約7:1以上、又は約8:1以上である。多くの場合、ホスホン酸又はピロホスホン酸の金属又は好適な金属化合物に対する、より大きなモル過剰、例えば、約10:1以上、約15:1以上、約20:1以上、約25:1以上、約30:1以上、又はそれらの間の任意の範囲が、反応混合物において使用される。金属又は好適な金属化合物に対して、大きなモル過剰なホスホン酸又はピロホスホン酸が使用されてもよい。例えば、モル比は、最大約50:1、最大約100:1、最大約300:1、最大約500:1、又はそれらの間の任意の範囲であり得る。ただし、理解される通り、処理効率は、特定の大きなモル過剰において低下する可能性があり、例えば、反応混合物からの生成物の析出が妨げられることがある。多くの実施形態において、モル比は、約4:1、約5:1、約6:1、約8:1又は約10:1~約100:1又は約50:1の範囲となり、例えば、約8:1、約12:1、約16:1、又は約20:1~約50:1又は約40:1の範囲となる。
【0031】
本開示の方法によれば、反応混合物は、難燃性生成物を生成するのに十分な時間、本明細書に記載の反応温度にて加熱される。本明細書で使用される場合、「リン含有難燃剤を生成するのに十分な時間、反応温度にて反応混合物を加熱する」等の工程には、限定されないが、反応混合物の成分(b)(すなわち、ホスホン酸又はピロホスホン酸の溶媒)のすべて又は実質的にすべてが、反応混合物を反応温度まで又は反応温度にて加熱する過程で、反応混合物から蒸発する実施形態が含まれる。したがって、本明細書に記載の「反応混合物」は、溶媒成分(b)のすべて又は実質的にすべてが反応温度まで又は反応温度にて加熱される過程で蒸発する場合であってもなお、反応温度にて加熱されると記述されることが理解される。
【0032】
本開示によるリン含有難燃剤を生成するための反応温度は、反応生成物中のモノアニオン性及び/又はジアニオン性ピロホスホン酸配位子の形成を促進するように選択されるべきである。ホスホン酸の場合、105℃以上の反応温度が使用される。特定の理論に拘束されることなく、脱水反応を介してピロホスホン酸配位子を生成するように反応温度が選択される。多くの実施形態において、金属又は好適な金属化合物及びホスホン酸は、105℃より高い温度、例えば、約115℃以上、約120℃以上、約130℃以上、約140℃、約150℃以上、約160℃以上、約170℃以上、約180℃以上、約200℃以上、約220℃以上、約240℃以上、約260℃以上、約280℃以上、又はそれらの間の任意の範囲で反応する。反応温度は、上記のものよりも高くてもよく、例えば、最大約350℃、最大約400℃、又はそれ以上であってもよいが、典型的には、ホスホン酸の沸点に満たないか、又はそれを超えない。多くの実施形態において、反応温度は、約110℃~約350℃、約115℃~約300℃、約125℃~約280℃、又は約140℃~約260℃の範囲である。脱水反応により水が形成され、望ましくない逆(加水分解)反応を引き起こす可能性がある。したがって、いくつかの実施形態では、反応系は、反応混合物からの水の除去、例えば連続的な除去を容易にするように設計される。例えば、反応温度は、反応に由来する水の少なくとも一部又は所望の量(例えば、大部分、実質的にすべて、又はすべて)を蒸発させるのに必要な程度まで、水の沸騰温度より高く選択することができる。反応系からの水の除去を容易にするために、ガスパージ、減圧、及び/又は他の既知の手段等の追加の手段が使用され得る。
【0033】
ピロホスホン酸の場合、20℃以上の反応温度が使用される。ピロホスホン酸については脱水が不要であるため、ホスホン酸について上記した温度よりも反応温度を低くすることができる。多くの実施形態において、金属又は好適な金属化合物及びピロホスホン酸は、20℃より高い温度、例えば、約40℃以上、約60℃以上、約80℃以上、約100℃、約140℃以上、約180℃以上、約200℃以上、又はそれらの間の任意の範囲で反応する。反応温度は、上記のものよりも高くてもよく、例えば、最大約300℃、最大約400℃、又はそれ以上であり得るが、反応温度は、典型的に、ピロホスホン酸の沸点に満たないか、又はそれを超えない。多くの実施形態において、反応温度は、約25℃~約350℃、約25℃~約280℃、約30℃~約260℃、約40℃~約260℃、又は約60℃~約240℃の範囲である。例えば、ピロホスホン酸と反応させるために使用される金属化合物に応じて、反応から水が生成され得る。上記の通り、いくつかの実施形態では、反応系は、反応からの水の除去、例えば連続除去を促進するように設計される。例えば、反応温度は、反応に由来する水の少なくとも一部又は所望の量(例えば、大部分、実質的にすべて、又はすべて)を蒸発させるのに必要な程度まで、水の沸騰温度より高く選択することができる。反応系からの水の除去を容易にするために、ガスパージ、減圧、及び/又は他の公知の手段等の追加の手段が使用され得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、溶媒はプロトン性溶媒(例えば、水)であり、反応系は、反応混合物の加熱中に、プロトン性溶媒の除去、例えば連続除去を促進するように設計される。例えば、反応温度は、反応混合物の加熱中に、プロトン性溶媒の少なくとも一部又は所望の量(例えば、大部分、実質的にすべて、又はすべて)を蒸発させるのに必要な程度まで、プロトン性溶媒の沸点以上で選択され得る。特定の実施形態において、溶媒は水であり、反応温度は、約110℃以上、約115℃以上、約120℃以上、約130℃以上、約140℃以上、約150℃以上、又は約160℃以上、例えば上記の例示的な範囲である。反応温度はまた、本明細書において更に記載される通り、ホスホン酸又はピロホスホン酸の融解温度以上で選択され得る。
【0035】
上記の通り、反応混合物は、リン含有難燃剤を生成するのに十分な時間、反応温度にて加熱されるか又は反応する。多くの場合、難燃性生成物は反応混合物から析出し、そのような析出を達成するのに十分な時間にわたり、反応が進行する。一般に、反応混合物中の金属又は好適な金属化合物に基づいて、難燃性生成物への少なくとも実質的な変換を達成するのに必要な時間は反応温度に依存し、温度が高いほど、一般に反応時間が短くなる。多くの場合、加熱又は反応は、反応温度にて、約0.1~約48時間、例えば、約0.2~約36時間、約0.5~約30時間、約1時間~約24時間、例えば、約1時間~約12時間、約1時間~約8時間、又は約1時間~約5時間行われるが、他の継続時間が用いられてもよい。
【0036】
反応混合物は、(a)非置換又はアルキル若しくはアリール置換ホスホン酸又はピロホスホン酸と、(b)ホスホン酸又はピロホスホン酸のための溶媒と、(c)金属又は好適な金属化合物とを組み合わせるか又は混合するのに適した任意の態様で調製され得る。例えば、成分が同時に又は異なる時間に組み合わせられてよい。いくつかの実施形態において、金属又は好適な金属化合物(c)は、ホスホン酸又はピロホスホン酸(a)と溶媒(b)の溶液等の混合物に添加される。金属又は好適な金属化合物(c)は、一度に全部又は部分的に反応混合物に添加されてよい。同様に、ホスホン酸又はピロホスホン酸(a)、溶媒(b)、又はホスホン酸又はピロホスホン酸(a)と溶媒(b)の溶液等の混合物は、一度に全部又は部分的に反応混合物に添加されてよい。
【0037】
反応混合物を調製する際に、ホスホン酸又はピロホスホン酸(a)、溶媒(b)、及び金属又は好適な金属化合物(c)は、反応温度より低い調製温度にて組み合わされてよい。反応混合物は、その後、反応温度まで加熱される。調製温度は、例えば、ホスホン酸又はピロホスホン酸(a)の溶媒(b)への溶解を促進するか、そうでなければホスホン酸又はピロホスホン酸(a)と溶媒(b)の均質な液体又は溶液を形成するように、選択されてよい。調製温度にて、金属化合物(c)に応じて、反応混合物は、溶液、懸濁液、又はスラリー、例えば、均質又は実質的に均質な懸濁液又はスラリーを形成し得る。いくつかの実施形態では、例えばより高い調製温度では、反応混合物は溶液を形成し得る。多くの場合、反応温度に近い温度又は反応温度では、反応混合物は溶液として存在する。多くの実施形態では、調製温度は、約0℃以上であるが、多くの場合、150℃未満、例えば、125℃未満、115℃未満、100℃未満、85℃未満、又は65℃未満である。例えば、調製温度は、約0℃~約65℃、又は約15℃~約40℃の範囲であり得る。いくつかの実施形態において、反応混合物は、室温(例えば、約15℃~約25℃)にて調製される。いくつかの実施形態において、溶媒(b)は、調製温度に予熱され、ホスホン酸又はピロホスホン酸(a)及び金属又は好適な金属化合物(c)と組み合わされる。いくつかの実施形態において、溶媒(b)とホスホン酸又はピロホスホン酸(a)の混合物は、調製温度に予熱され、金属又は好適な金属化合物(c)と組み合わされる。
【0038】
或いは、反応混合物は、反応温度にて調製されてよい。すなわち、反応混合物は、(a)ホスホン酸又はピロホスホン酸と、(b)ホスホン酸又はピロホスホン酸の溶媒と、(c)金属又は好適な金属化合物とを反応温度にて組み合わせることによって調製される。例えば、いくつかの実施形態では、反応混合物を調製する工程は、溶媒(b)とホスホン酸又はピロホスホン酸(a)との混合物を反応温度に予熱し、金属又は好適な金属化合物(c)と結合する工程を含む。
【0039】
反応温度がホスホン酸又はピロホスホン酸の溶融温度よりも高く、残留ホスホン酸又はピロホスホン酸が、所望の変換、例えば、難燃性生成物への完全又は実質的に完全な変換が達成された後に、生成反応混合物中に存在する、いくつかの実施形態では、生成反応混合物は、残留ホスホン酸又はピロホスホン酸の融解温度超又は以上の温度に冷却されて、ホスホン酸又はピロホスホン酸が液体形態のままになることを確実にする。これは、加熱の結果として、ホスホン酸又はピロホスホン酸(すなわち、成分(b))のための溶媒のかなりの量が蒸発し、残りの過剰なホスホン酸又はピロホスホン酸が溶液から出てくる傾向が強くなることがある実施形態において、特に有用であり得る。過剰なホスホン酸又はピロホスホン酸及び存在する場合は生成反応混合物中の溶媒は、ろ過/洗浄により除去され、任意に回収され得る。回収された過剰なホスホン酸若しくはピロホスホン酸及び/又は溶媒は、例えば、金属又は好適な金属化合物(c)がホスホン酸又はピロホスホン酸(a)と反応する反応器に戻され再利用され得る。反応生成物に変換した後、過剰なホスホン酸又はピロホスホン酸を溶解させるか又はそうでなければ除去することを助けるために、溶媒成分(b)と同じである必要はないが同じであってもよいホスホン酸又はピロホスホン酸のための溶媒を任意に添加してもよい。難燃性生成物は、多くの場合、ろ過によって単離され、続いて任意に追加の仕上げ(例えば、洗浄、乾燥、ふるい分け等)が行われる。得られる難燃性生成物は、一般に粉末又は小粒子の形態をとり、容易に処理可能であり、すなわち、使用前に粉砕、ミリング、又は他のそのような物理的処理を必要としない。本開示の方法により難燃性材料を粉末又は小粒子として「直接」生成することにより、難燃性生成物を単離する(例えば、難燃性生成物を残りの溶媒から分離する)等の反応生成物の後処理(workup)が可能になることを理解されたい。この後処理には、例えば、ろ過、ふるい分け、洗浄、乾燥等による反応生成物の処理が含まれ得る。
【0040】
本開示の方法は、1つ又は複数の金属及び1つ又は複数の単座及び/又は二座ピロホスホン酸配位子を含む難燃剤を生じる。いくつかの実施形態において、ホスホン酸配位子を更に含む化合物が生成され得るが、すべての実施形態において、ピロホスホン酸モノアニオン配位子及び/又はピロホスホン酸ジアニオン配位子を含む化合物が得られる。
【0041】
本方法は難燃性化合物の混合物を生じ得るが、多くの実施形態において、本方法は、金属ホスホン酸塩の熱処理を含む先行技術の方法で得られる化合物の混合物とは対照的に、金属又は金属化合物に基づいて、少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、98%以上、又はそれらの間の任意の範囲等の高い変換率を有する1つ又は主に1つの化合物として難燃性材料を生成する。ホスホン酸配位子が難燃性生成物中に存在し得る一般的な実施形態では、反応は一般に、以下に示される通り進行する。
【0042】
【0043】
[式中、Mは金属カチオンであり、(+)yはカチオンの電荷を表し、例えば、Mはジ、トリ、テトラ、ペンタカチオン金属でありXは、金属に結合した1つ又は複数のアニオン配位子であり、MとXの化学量論組成(つまり、pとq)は、荷電平衡(charged balanced)金属化合物をもたらしRはH、アルキル、アリール、アルキルアリール又はアリールアルキルでありa、b、c、及びdは、反応生成物において相互に対応する成分の比を表し、y、a、b、c、及びdは、荷電平衡金属化合物をもたらす値であり、ただし、yは2以上であり、a又はcのいずれか1つのみが0であり得る(多くの場合、cは0ではない)]。いくつかの実施形態において、係数dを有する上記のホスホン酸配位子は、存在する場合、ジアニオンとして存在し得る。多くの実施形態において、dは0である。
【0044】
更なる態様において、本開示により生成される難燃性生成物は、典型的には粉末又は小粒子の形態をとり、実験式(II)
【0045】
【0046】
の異なる化合物の化合物又は混合物を含む。
[式中、RはH、アルキル、アリール、アルキルアリール又はアリールアルキル基であり、a、b、c、及びdは、化合物において相互に対応する成分の比を表し、aは一般に、0~8、例えば、0~6、0~4、又は0~2の数であり、cは一般に0~10、例えば、0~8、0~6、0~4、又は0~2の数であり、dは一般的に0~6、例えば、0~4又は0~2の数であり、Mは金属であり、yは2~5の数、例えば2、3又は4、多くの場合2又は3であり、M(+)yは金属カチオンであり、式中、(+)yは、カチオンに形式的に割り当てられた電荷を表す]。a、b、c、d及びyの値は様々であり得るが、電荷平衡方程式2(a)+c+d=b(y)を満たし、a又はcのいずれか1つのみが0であり得る。多くの実施形態では、cは0ではない。ジアニオン性ホスホン酸配位子が化合物中に存在し得る場合、電荷平衡方程式は2(a)+c+2(d)=b(y)になる。bの値は、それが前述の式を満たさなければならないという点でのみ制限されるが、多くの実施形態では、bは、1~4の数、例えば、1又は2である。いくつかの実施形態では、aは0、1、又は2(例えば、0又は1)であり、cは1又は2であり、dは0、1、又は2(例えば、0又は1)であり、生成物は荷電平衡している。
【0047】
多くの実施形態では、dは0であり、以下のようになる。
【0048】
【0049】
[式中、R、M、y、a、b、及びcは上記の通りであり、生成物電荷平衡方程式は2(a)+c=b(y)になる]。
【0050】
多くの場合、上記の式(II)及び(III)のcは0ではない(例えば、cは1~10、1~8、1~6、1~4、又は1若しくは2である)。
【0051】
本開示の方法によれば、驚くべきことに、多くの実施形態、例えば、ジカチオン性又はトリカチオン性金属を使用する場合において、上記の式のcが0ではなく、生成物が、当技術分野で記載されているリン含有難燃剤と比較して、難燃性をもたらすうえで、リン原子の金属原子に対する(すなわち、P対Mの)より好ましい比を有する場合に、難燃性化合物が生成されることが発見された。例えば、トリカチオン性金属(例えば、アルミニウム)及びジカチオン性金属(例えば、亜鉛)は、それぞれ、三置換及び二置換の電荷平衡化合物を形成することが知られている。当技術分野で明らかなように、リン対アルミニウム比が3:1であるトリスホスホン酸アルミニウム塩、及びリン対亜鉛比が2:1であるジホスホン酸亜鉛塩は、難燃剤として知られている。しかしながら、本開示のピロホスホン酸配位子形成によれば、特に上記の式のcが0でない場合、難燃剤生成物におけるリンの金属に対する比は、より高い。例えば、本明細書に開示される実施例に示される通り、本開示の方法を用いたとき、得られる難燃性生成物におけるリンのアルミニウムに対する比、又はリンの鉄に対する比は、4:1であった。このように高いリン対金属の比率は、高い効率につながり、熱可塑性ポリマーに配合されたときの負荷の低減を可能にする。
【0052】
特定の実施形態において、式(III)のyは2であり(すなわち、M(+)yは、本明細書に記載されるジカチオン性金属であり)、aは0であり、bは1であり、cは2である。特定の実施形態では、ジカチオン性金属Mは、Mg、Ca、又はZnである。他の実施形態では、式(III)のyは3であり(すなわち、M(+)yは、本明細書に記載されるトリカチオン性金属であり)、aは1であり、bは1であり、cは1である。特定の実施形態において、トリカチオン性金属Mは、Al、Ga、Sb、Fe、Co、B、及びBiから選択される。特定の実施形態において、トリカチオン性金属Mは、Al、Fe、Ga、Sb、又はBである。
【0053】
無機配位化合物と同様に、上記の反応における反応生成物並びに実験式(II)及び(III)の化合物は、反応生成物又は化合物が配位ポリマー、錯塩、特定の原子価が共有される塩等であり得るように理想化されている。
【0054】
例えば、多くの実施形態において、実験式(II)又は(III)は、本明細書に記載される通り、配位ポリマーのモノマー単位(すなわち、配位実体)を表し、それにより、拡張配位ポリマー構造が本開示の難燃性化合物を形成する。
【0055】
MがAlであり、yが3である1つの例では、実験式(III)の化合物は、以下の実験式(IIIa)に従って生成される。
【0056】
【0057】
ここに示す通り、実験式に下付き文字a、b、cがないことは、下付き文字がそれぞれ1であることを示し、成分の比が1:1:1(実験式(IIIa)の場合、ジアニオン性ピロホスホン酸配位子、金属原子、及びモノアニオン性ピロホスホン酸配位子の比が1:1:1)であることを示す。この例では、実験式(IIIa)は、配位ポリマーの繰り返しモノマー単位(すなわち、配位実体)を表し、それによって、拡張配位ポリマー構造は、本開示の難燃性化合物を形成する。
【0058】
多くの場合、実験式(II)又は(III)(例えば、(IIIa))の化合物は、多くの実施形態において、本明細書に記載の拡張配位ポリマーであり、難燃性生成物のすべて、実質的にすべて、又は少なくとも大部分を構成し、例えば、難燃性生成物の質量に対して、少なくとも75%、85%、90%、95%、98%又、若しくはそれ以上、又はそれらの間の任意の範囲を構成する。
【0059】
実験式(II)又は(III)(例えば、(IIIa))の化合物は、金属又は金属化合物に基づいて、高い変換率で、例えば、少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、98%以上の変換率、例えば、少なくとも70~95%以上の変換率で、生成され得る。特定の実施形態において、Mは、アルミニウム(すなわち、反応生成物は、アルミニウム又は1つ又は複数のアルミニウム化合物、例えば本明細書に記載されるものを使用して生成される)又は鉄(すなわち、反応生成物は、鉄又は1つ又は複数の鉄化合物、例えば本明細書に記載されるものを使用して生成される)である。
【0060】
本方法において使用されるホスホン酸は、式(I)
【0061】
【0062】
により表すことができる。
[式中、Rは、H、アルキル、アリール、アルキルアリール、又はアリールアルキルである]。多くの実施形態において、Rは、H、C1~12アルキル、C6~10アリール、C7~18アルキルアリール、又はC7~18アリールアルキルである[式中、前記アルキル、アリール、アルキルアリール、又はアリールアルキルは、非置換であるか、又はハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、C1~4アルキルアミノ、ジ-C1~4アルキルアミノ、C1~4アルコキシ、カルボキシ又はC2~5アルコキシカルボニルで置換されている]。いくつかの実施形態において、前記アルキル、アリール、アルキルアリール、又はアリールアルキルは、非置換のC1~12アルキル、C6アリール、C7~10アルキルアリール、又はC7~10アリールアルキル、例えば、C1~6アルキル、フェニル、又はC7~9アルキルアリールである。いくつかの実施形態において、Rは、置換又は非置換のC1~6アルキル、C6アリール、C7~10アルキルアリール、又はC7~12アリールアルキル、例えば、C1~4アルキル、C6アリール、C7~9アルキルアリール、又はC7~10アリールアルキルである。多くの実施形態において、Rは、非置換のC1~12アルキル、例えば、C1~6アルキルである。多くの実施形態において、低級アルキルホスホン酸、例えば、メチル-、エチル-、プロピル-、イソプロピル-、ブチル-、t-ブチル-が使用される。
【0063】
アルキルとしてのRは、指定された数の炭素を有する直鎖又は分枝鎖アルキル基であってよく、非分岐アルキル、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、及び分岐アルキル、例えば、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、エチルヘキシル、t-オクチルを含む。例えば、アルキルとしてのRは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチ、及びt-ブチルから選択されてよい。多くの実施形態において、Rは、メチル、エチル、プロピル又はイソプロピル、例えばメチル又はエチルである。
【0064】
多くの場合、Rがアリールの場合、Rはフェニルである。アルキルアリールとしてのRの例には、1つ又は複数のアルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル等から選択される基によって置換されたフェニルが含まれる。アリールアルキルとしてのRの例には、例えば、ベンジル、フェネチル、スチリル、クミル、フェンプロピル等が含まれる。
【0065】
多くの実施形態において、Rは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、フェニル及びベンジルから選択される。
【0066】
本方法において使用されるピロホスホン酸は、式(Ia)
【0067】
【0068】
によって表すことができる。
[式中、Rは、式(I)について上記した通りである]。
【0069】
ピロホスホン酸及び好適な金属化合物を用いた一般的な反応スキームは、
【0070】
【0071】
と表され得る。
[式中、R、M、X、p、q、y、a、b、及びcは、本明細書に記載された通りである]。
【0072】
本開示の方法は、複数のホスホン酸、複数のピロホスホン酸、又はホスホン酸とピロホスホン酸の組み合わせを使用することができる。いくつかの実施形態において、ホスホン酸又はピロホスホン酸は、in situで生成される。例えば、反応混合物の調製は、高級オリゴマーのホスホン酸及び/又は環状ホスホン酸無水物出発物質の加水分解等による、ホスホン酸又はピロホスホン酸の調製を含み得る。
【0073】
溶媒(すなわち、成分(b))は、ホスホン酸又はピロホスホン酸成分(a)を溶解することができる任意の溶媒であり得、ホスホン酸又はピロホスホン酸(a)と金属又は好適な金属化合物(c)の反応に対して不活性又は実質的に不活性でなければならず、例えば均質又は実質的に均質な反応混合物を調製するために、他の反応パラメータ、例えば、調製及び/若しくは反応温度、又は金属若しくは好適な金属化合物の種類を考慮して、更に選択することができる。いくつかの実施形態において、溶媒(b)は、ホスホン酸又はピロホスホン酸のための溶媒の組み合わせであってよい。多くの場合、ホスホン酸又はピロホスホン酸(a)は、溶媒(b)中に実質的に又は完全に溶解する。例えば、ホスホン酸又はピロホスホン酸(a)及び溶媒(b)は、溶液を形成し得る。いくつかの実施形態において、ホスホン酸又はピロホスホン酸(a)は、溶媒(b)中に部分的に溶解し、部分的に懸濁又は分散し得る。ホスホン酸の所望の溶解レベルが得られるように、例えば、溶液中にホスホン酸又はピロホスホン酸を維持しながら、混合物中に高濃度のホスホン酸又はピロホスホン酸が得られるように、溶媒の種類、ホスホン酸又はピロホスホン酸に対する溶媒の量、及び混合条件を選択することができる。多くの場合、ホスホン酸(a)の溶媒(b)に対する比は、質量で約10:1~1:10、約5:1~1:5、又は約3:1~1:3の範囲である。ホスホン酸(a)が溶媒(b)中に部分的に溶解し、部分的に懸濁又は分散する、いくつかの実施形態において、調製温度又は反応温度は、溶媒に懸濁又は分散するホスホン酸を液化するために、ホスホン酸の溶融温度以上に選択されてよい。
【0074】
上記の通り、ホスホン酸又はピロホスホン酸のための溶媒(すなわち、反応混合物中の成分(b))の反応温度及び溶媒の沸騰温度に応じて、溶媒の少なくとも一部は、反応温度までの又は反応温度での加熱中に反応混合物から蒸発し得る。いくつかの実施形態において、溶媒(b)のすべて、実質的にすべて、又は少なくとも大部分は、加熱中に反応混合物から蒸発する。溶媒(b)は、高沸点(例えば、スルホラン若しくはジメチルスルホキシド(DMSO))又は低沸点(例えば、クロロホルム若しくはテトラヒドロフラン(THF))であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、溶媒は、反応温度以下の温度で蒸発し、反応混合物の加熱中に溶媒の少なくとも一部が蒸発し、例えば、すべて、実質的にすべて、又は大部分の溶剤が蒸発する。溶媒が蒸発するときに同じものが液体の形態で残ることを確実にするために、反応温度は、ホスホン酸又はピロホスホン酸の融解温度以上に選択することができる。このように、反応混合物中に、より多くの過剰なホスホン酸又はピロホスホン酸を使用することにより、ホスホン酸又はピロホスホン酸が反応物及び反応の溶媒の両方として機能することが可能になり得る。
【0075】
更に他の実施形態では、溶媒は、反応温度よりも高い沸騰温度を有し、生成反応混合物中に確実に残り、本明細書に記載される通り、生成反応混合物から、反応の難燃性生成物が単離され得る。いくつかの実施形態において、反応温度は、ホスホン酸又はピロホスホン酸の融解温度未満で選択される。
【0076】
好適な溶媒は、有機又は無機であってよい。スホン酸又はピロホスホン酸に適した溶媒の例には、水、スルホン、スルホキシド、ハロゲン化(例えば、塩素化)炭化水素、芳香族炭化水素、及びエーテルが含まれるが、これらに限定されない。例えば、いくつかの実施形態において、溶媒は、水、スルホラン、ジメチルスルホン、テトラヒドロフラン(THF)、ジメトキシエタン(DME)、1,4-ジオキサン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、1,2-ジクロロベンゼン、クロロホルム、四塩化炭素、キシレン及びメシチレンから選択されてよい。いくつかの実施形態では、溶媒は水を含む。いくつかの実施形態では、溶媒は水溶液を含む。いくつかの実施形態において、反応混合物は、水性反応混合物である。
【0077】
溶媒はプロトン性又は非プロトン性であり得る。多くの実施形態において、ピロホスホン酸のための溶媒は、非プロトン性溶媒である。
【0078】
いくつかの実施形態において、溶媒(b)は、式R1R2SO2[式中、R1及びR2は、C1~6炭化水素基、例えば、C1~3炭化水素基から独立して選択されるか、又はR1及びR2はSと共に、2、3、4、又は5個の炭素原子を有する環を形成し、これらの環は非置換又はC1~3アルキル置換されていてよい]のスルホンを含む。いくつかの実施形態において、R1及びR2はSと共に、ジ-、トリ-、テトラ-、又はペンタ-メチレン環を形成する。いくつかの実施形態において、R1及びR2は、C1~6アルキルから独立して選択される。いくつかの実施形態において、R1又はR2はC1~6アルキルであり、他方はC1~3アルキルである。いくつかの実施形態において、R1及びR2は、C1~3アルキルから独立して選択される。アルキル基は、分枝状又は直鎖状であり得る。いくつかの実施形態において、R1及びR2は、両方ともメチル、両方ともエチル、又は両方ともプロピルである。他の実施形態では、R1又はR2はメチルであり、他方はエチル又はプロピルである。他の実施形態では、R1又はR2はエチルであり、他方はプロピルである。いくつかの実施形態では、スルホンはスルホランである。
【0079】
本明細書で使用される場合、「好適な金属化合物」等は、式Mp
(+)y Xq[式中、Mは、ポリカチオンを形成することができる金属、例えば、2+、3+、4+、又は5+、典型的には2+、3+、又は4+のカチオンを形成する金属であり、Xは、金属Mとの荷電平衡化合物をもたらす任意のアニオンである]の化合物を指す。Xの好適な例には、金属Mと共に、酸化物、ハロゲン化物、アルコキシド、水酸化物、炭酸塩、カルボン酸塩、及びホスホン酸塩を形成するアニオンが含まれるが、これらに限定されない。pとqの値は、電荷平衡金属化合物、例えばアルミナ、Al2O3をもたらす。いくつかの実施形態において、非置換金属Mは、本明細書に記載される通り使用される。好適な金属(M)の例には、Mg、Ca、Ba、Zn、Zr、Ge、B、Al、Si、Ti、Cu、Fe、Co、Ga、Bi、Mn、Sn又はSbが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、Mは、Mg、Ca、Ba、Zn、Zr、Ga、B、Al、Si、Ti、Cu、Fe、Sn又はSbから選択される。いくつかの実施形態では、Mは、Mg、Ca、Ba、Zn、Zr、B、Al、Si、Ti、Fe、Sn又はSbから選択され、例えば、Mは、Mg、Zn、Ca、Fe又はAlであり得る。
【0080】
好適な金属化合物には、金属-酸素結合、金属-窒素結合、金属-ハロゲン結合、金属-水素結合、金属-リン結合、金属硫黄結合、金属ホウ素結合等を有する化合物、例えば、Mg、Ca、Ba、Zn、Zr、Ge、B、Al、Si、Ti、Cu、Fe、Co、Ga、Bi、Mn、Sn、又はSbの酸化物、ハロゲン化物、アルコキシド、水酸化物、カルボン酸塩、炭酸塩、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、ホスホナイト、リン酸塩、亜リン酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、ホウ酸塩、水素化物、スルホン酸塩、硫酸塩、硫化物等、例えば、Mg、Ca、Ba、Zn、Zr、Ga、B、Al、Si、Ti、Cu、Fe、Sn、又はSbの酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、又はアルコキシド、例えば、Mg、Ca、Ba、Zn、Zr、B、Al、Si、Ti、Fe、Sn、又はSbの酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、又はアルコキシド、例えば、Mg、Zn、Ca、Fe又はAlの酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、又はアルコキシドが含まれるが、これらに限定されない。
【0081】
いくつかの実施形態では、金属又は好適な金属化合物の金属Mは、アルミニウム又は鉄である。いくつかの実施形態において、好適な金属化合物は、アルミニウムのハロゲン化物、酸化物、水酸化物、アルコキシド、炭酸塩、カルボン酸塩及びホスホン酸塩から選択される。いくつかの実施形態において、好適な金属化合物は、アルミニウムのハロゲン化物、酸化物、水酸化物、及びアルコキシドから選択される。いくつかの実施形態では、好適な金属化合物は、アルミナ、三塩化アルミニウム、三水酸化物アルミニウム、アルミニウムイソプロポキシド、炭酸アルミニウム、及び酢酸アルミニウムから選択される。他の実施形態では、好適な金属化合物は、鉄のハロゲン化物、酸化物、アルコキシド、炭酸塩、及び酢酸塩から選択される。いくつかの実施形態において、好適な金属化合物は、酸化鉄(III)、塩化鉄(III)、鉄(III)イソプロポキシド、及び酢酸鉄(III)から選択される。
【0082】
いくつかの実施形態において、好適な金属化合物は、金属ホスホン酸塩である。金属ホスホン酸塩中の金属は、本明細書に記載されている通り、金属Mであり得る。いくつかの実施形態において、金属ホスホン酸塩は、初期金属化合物及びホスホン酸と、ホスホン酸のための溶媒(例えば、水)との反応から調製される。初期金属化合物は、本明細書に記載の好適な金属化合物による化合物であり得る。いくつかの実施形態において、初期金属化合物及びホスホン酸は、室温又はその付近の温度にて、又は約0~約20℃の範囲の温度にて反応する。次に、得られた金属ホスホン酸塩は、本明細書の本発明の方法により好適な金属化合物として使用され得る。例えば、ホスホン酸、例えば、上記のような1つ又は複数のアルキルホスホン酸、及び溶媒(例えば、水)は、攪拌されて、均質な溶液を形成し得る。溶液は、例えば、約0~約20℃に冷却されてよく、ホスホン酸と反応させるために、金属酸化物、ハロゲン化物、アルコキシド、又は水酸化物等の初期金属化合物が添加される。金属ホスホン酸塩が形成され、金属ホスホン酸塩は次に、本開示の方法に従って好適な金属化合物として使用される。
【0083】
特定の実施形態において、本明細書に示されるRは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル又はブチルであり、Mは、Al、Fe、Zn又はCaである。更なる実施形態において、Xは、酸素、ヒドロキシ、アルコキシ又はハロゲンである。
【0084】
本明細書に記載の反応は、減圧下又は真空下で実行することができるが、必ずしもそうする必要はない。
【0085】
本明細書に記載の反応から形成され、多くの場合、スラリーとして提示される生成反応混合物は、追加の溶媒と組み合わされてよく、この溶媒は、反応混合物で使用される溶媒と同じ又は異なる溶媒であってよい。追加の溶媒は、例えば、溶媒成分(b)について本明細書に記載されているものから選択されてよい。追加の溶媒/スラリー混合物は、形成された可能性のある凝集塊を破壊するために、必要に応じて攪拌されてよい。固体生成物をろ過により単離し、任意に洗浄及び乾燥して、粉末又は小粒子の形態の生成物を得ることができる。場合によっては、生成物をふるい分けして粒子サイズを細かくすることができる。
【0086】
本明細書に記載の反応は、任意に、播種材料により促進され得る。例えば、播種材料を使用すると、難燃性生成物への変換にかかる時間が短縮され、生成物の物理的特性の稠度が向上し得る。したがって、いくつかの実施形態では、反応混合物は、播種材料(d)を更に含む。多くの場合、播種材料は、反応温度までの加熱時又は加熱後に反応混合物に添加される。多くの実施形態では、難燃性生成物への変換及び/又は難燃性生成物の析出が起こる前に、播種材料が添加される。いくつかの実施形態では、播種材料は、本開示の方法に従って生成された難燃性材料、例えば、本明細書に記載の実験式(II)、(III)、又は(IIIa)の難燃性化合物を含む。播種材料は、所望の粒径を有するように選択又は精製されてよい。
【0087】
いくつかの実施形態では、好適な金属化合物はアルミナであり、難燃性材料は以下の通り生成される。
【0088】
【0089】
一例では、ホスホン酸、例えば、C1~C12アルキルホスホン酸(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル又はt-ブチルホスホン酸)と、ホスホン酸のための溶媒、例えば水と、Alの酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、アルコキシド、炭酸塩又はカルボン酸塩、例えば、アルミナ、三塩化アルミニウム、三水酸化物アルミニウム、アルミニウムイソプロポキシド、炭酸アルミニウム又は酢酸アルミニウムとを含む反応混合物は、本明細書に記載の反応温度、例えば、約115℃以上、約125℃以上、約150℃以上、又は約165℃以上に加熱される。典型的には、反応が進行するにつれてスラリーが形成され、固体難燃性生成物がろ過により単離されて、粉末又は小粒子の形態で生成物が得られる。固体生成物を単離する前に、生成物反応混合物の追加の後処理が実行されてもよく、例えば、生成物反応混合物を過剰なホスホン酸の融点超又はそれ以上で冷却し、本明細書に記載の追加の溶媒、例えば水と組み合わせてもよい。追加の溶媒/スラリー混合物は、任意に、上記の通り攪拌されてよい。固体難燃性生成物は、ろ過によって単離され得、任意に追加の溶媒で洗浄され、乾燥されて、粉末又は小粒子の形態での生成物を生じ得る。難燃剤生成物は、次の実験式に従い、リンのアルミニウムに対する比が4:1であるリンとアルミニウムを含有する。
【0090】
【0091】
更なる例において、上記の例は、鉄又は好適な鉄化合物、例えば、鉄のハロゲン化物、酸化物、アルコキシド、炭酸塩、又は酢酸塩、例えば、酸化鉄(III)、塩化鉄(III)、鉄(III)イソプロポキシド、酢酸鉄(III)を用いて実施される。難燃剤生成物は、次の実験式に従って、4:1の比率でリンと鉄を含有する。
【0092】
【0093】
多くの場合、上記の実験式の化合物(多くの実施形態では、本明細書に記載の拡張配位ポリマーである)は、難燃性生成物のすべて、実質的にすべて、又は少なくとも大部分、例えば、難燃剤生成物の質量を基準として、少なくとも75%、85%、90%、95%、98%、若しくはそれ以上、又はそれらの間の任意の範囲を構成する。
【0094】
更なる実施形態において、好適な金属化合物(c)は、以下の式の金属ホスホン酸塩である。
【0095】
【0096】
[式中、R及びMは上記の通りであり、pは2~5の数、例えば、2、3又は4であり、yは2~5の数、例えば2、3、又は4であり、そのため、M(+)yは金属カチオンとなり、式中、(+)yはカチオンに形式的に割り当てられた電荷を表す]。典型的には、金属ホスホン酸塩は電荷平衡している(つまり、p=y)。金属ホスホン酸塩は、当技術分野で公知の方法により調製され得る。
【0097】
一例では、ホスホン酸、例えばアルキルホスホン酸(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル又はt-ブチルホスホン酸)は、水と組み合わされ(例えば、質量を基準として約1:1)、撹拌され、室温未満に冷却される(例えば、10℃、又は10℃以下、例えば約0℃に冷却される)。初期金属化合物がホスホン酸と水の混合物に添加され、金属ホスホン酸塩が形成される。次に、金属ホスホン酸塩が、本開示の方法において好適な金属化合物として使用されて、粉末又は小粒子の形態の難燃性生成物を生成する。好適な金属化合物としてホスホン酸アルミニウム塩を含む実施形態では、難燃性生成物は、以下の実験式に従って、リンのアルミニウムに対する比が4:1であるリンとアルミニウムを含有する。
【0098】
【0099】
多くの場合、実験式の化合物(多くの実施形態では、本明細書に記載の拡張配位ポリマーである)は、難燃性生成物のすべて、実質的にすべて、又は少なくとも大部分、例えば、難燃剤生成物の質量を基準として、少なくとも75%、85%、90%、95%、98%、若しくはそれ以上、又はそれらの間の任意の範囲を構成する。
【0100】
本発明の難燃剤は、当技術分野で公知のように、様々な他の難燃剤及び/又は相乗剤又は難燃剤補助剤と共に使用されてよい。例えば、本発明の難燃剤には、
カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、シロキサン、ポリシロキサン;ポリフェニレンエーテル(PPE)、ホスフィンオキシド及びポリホスフィンオキシド、例えば、ベンジルホスフィンオキシド、ポリベンジルホスフィンオキシド等;
メラミン、メラミン誘導体及びメラミン縮合生成物、メラミン塩、例えば、限定されないが、シアヌル酸メラミン、ホウ酸メラミン、リン酸メラミン、メラミン金属リン酸塩、メラム、メレム、メロン等;
粘土を含む無機化合物、金属塩、例えば、水酸化物、酸化物、酸化水和物、ホウ酸塩、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、ケイ酸塩、混合金属塩等、例えば、タルク及び他のケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸塩、中空管としてのアルミノケイ酸塩(DRAGONITE)、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、HALLOYSITE又はリン酸ホウ素、モリブデン酸カルシウム、剥離バーミキュライト、スズ酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛、硫化亜鉛及びホウ酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛(又はそれらの複合体、例えばKemgard 911B)、モリブデン酸亜鉛/水酸化マグネシウム錯体(例えば、Kemgard MZM)、モリブデン酸亜鉛/ケイ酸マグネシウム錯体(Kemgard 911C)、モリブデン酸カルシウム/亜鉛錯体(例えば、Kemgard 911A等)、リン酸亜鉛(又はその錯体、例えば、Kemgard 981)、酸化マグネシウム又は水酸化物、酸化アルミニウム、酸化アルミニウム水酸化物(ベーマイト)、アルミニウム三水和物、シリカ、酸化スズ、酸化アンチモン(III及びV)及び酸化水和物、酸化チタン、及び酸化亜鉛又は酸化水和物、酸化ジルコニウム及び/又は水酸化ジルコニウム等
から選択される1つ又は複数の材料を配合することができる。
【0101】
特に明記しない限り、本出願の文脈において、「リン酸」という用語は、「リン酸塩」、例えば、金属リン酸塩、リン酸メラミン、メラミン金属リン酸塩等における一成分として使用される場合、リン酸、リン酸水素、リン酸二水素、ピロリン酸塩、ポリリン酸塩、又はリン酸縮合生成物のアニオン又はポリアニオンを指す。
【0102】
同様に、別段の指定がない限り、本出願の文脈において、「亜リン酸」という用語は、「亜リン酸塩」、例えば亜リン酸金属塩等における一成分として使用される場合、亜リン酸又は亜リン酸水素を指す。
【0103】
本発明の難燃剤はまた、他の難燃剤、例えば、ハロゲン化難燃剤、アルキル又はアリールホスフィンオキシド難燃剤、アルキル又はアリールリン酸塩難燃剤、アルキル又はアリールホスホン酸塩、アルキル又はアリールホスフィン酸塩、及びアルキル又はアリールホスフィン酸の塩を配合して製剤され得る。いくつかの実施形態において、難燃剤は、本開示による難燃剤と以下の式のホスフィン酸塩(例えば、トリス(ジアルキルホスフィン酸)アルミニウム)との混合物を含む。
【0104】
【0105】
[式中、R1及びR2は、独立して、本明細書に記載のRによる基であってよく、Mは本明細書に記載の金属(例えば、Al又はCa)であり、nは2~7の数、例えば、2~4、多くの場合、2又は3である]。
【0106】
多くの実施形態において、本開示による難燃性ポリマー組成物は、(i)ポリマーと、(ii)本開示の難燃性材料と、(iii)1つ又は複数の追加の難燃剤及び/又は1つ又は複数の相乗剤又は難燃剤補助剤とを含む。
【0107】
例えば、いくつかの実施形態において、難燃性ポリマー組成物は、1つ又は複数の追加の難燃剤、例えば、ハロゲン化難燃剤、ホスフィンオキシド難燃剤、アルキル又はアリールホスホン酸塩、又はアルキル若しくはアリールホスフィン酸の塩、例えば、トリス(ジアルキルホスフィン酸)アルミニウム、例えばトリス(ジエチルホスフィン酸)アルミニウムを含む。
【0108】
いくつかの実施形態において、難燃性ポリマー組成物は、1つ又は複数の相乗剤又は難燃剤補助剤、例えば、メラミン、メラミン誘導体及びメラミン縮合生成物(例えば、メラム、メレム、メロン)、メラミン塩、ホスフィンオキシド及びポリホスフィンオキシド、金属塩、例えば、水酸化物、酸化物、酸化水和物、ホウ酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、亜リン酸塩、ケイ酸塩等、例えば、亜リン酸水素アルミニウム、メレム又はメラミン金属リン酸塩、例えば、金属がアルミニウム、マグネシウム又は亜鉛を含むメラミン金属リン酸塩を含む。特定の実施形態において、1つ又は複数の追加の難燃剤、相乗剤又は難燃剤補助剤は、トリス(ジアルキルホスフィン酸)アルミニウム、亜リン酸水素アルミニウム、メチレン-ジフェニルホスフィンオキシド置換ポリアリールエーテル、キシリレンビス(ジフェニルホスフィンオキシド)、4,4'-ビス(ジフェニルホスフィニルメチル)-1,1'-ビフェニル、エチレンビス-1,2-ビス-(9,10-ジヒドロ-9-オキシ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド)エタン、メレム、メラム、メロン、又はジメラミンピロリン酸亜鉛を含む。
【0109】
特定の実施形態は、ハロゲンを含まないポリマー組成物を提供する。そのような実施形態では、ハロゲン含有難燃剤又は相乗剤は、可能な限り除外されるであろう。
【0110】
本開示の難燃剤は、追加の難燃剤、相乗剤及び/又は補助剤の総質量に対して、本発明の難燃剤の質量を基準として100:1~1:100の範囲の追加の難燃剤、相乗剤又は補助剤と組み合わされてよい。いくつかの実施形態において、本開示の難燃性材料は、追加の難燃剤、相乗剤及び/又は補助剤の総質量に対して、本発明の難燃剤の質量を基準として10:1~1:10の範囲、例えば、7:1~1:7、6:1~1:6、4:1~1:4、3:1~1:3、及び2:1~1:2の範囲の質量比で存在する。本発明の難燃剤は、多くの場合、そのような組み合わせの大部分の成分であり、例えば、本発明の難燃剤の質量比が、追加の難燃剤、相乗剤及び/又は補助剤の総質量に対して、本発明の難燃剤の質量10:1~1.2:1の比又は7:1~2:1の比であるが、本発明の材料はまた、混合物の微量成分、例えば、1:10~1:1.2の比又は1:7~1:2の比であり得る。
【0111】
本発明の熱的に安定な難燃剤は、ポリマーの物理的性質を変質させたり悪影響を与えたりすることなく、高温にて、高温ポリアミド及びポリテレフタレートエステル等の熱可塑性ポリマーに配合することができ、難燃活性は優れている。本発明の難燃剤は、他のポリマー、他の相乗剤、及び従来のポリマー添加剤と共に使用されてよい。
【0112】
本発明の難燃性組成物のポリマーは、ポリオレフィンホモポリマー及びコポリマー、ゴム、ポリアルキレンテレフタレートを含むポリエステル、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、スチレン系ポリマー及びコポリマー、ポリカーボネート、アクリルポリマー、ポリアミド、ポリアセタール、及び生分解性ポリマー等の、当技術分野で公知の任意のポリマーであってよい。様々なポリマーの混合物、例えば、ポリフェニレンエーテル/スチレン系樹脂ブレンド、ポリ塩化ビニル/アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)又は他の耐衝撃性ポリマー、例えば、メタクリロニトリル及びα-メチルスチレン含有ABS、並びにポリエステル/ABS又はポリカーボネート/ABS及びポリエステル又はポリスチレンに加えて、いくつかの他の耐衝撃性改質剤も使用されてよい。そのようなポリマーは、市販されているか、又は当技術分野で公知の手段によって製造される。
【0113】
本発明の難燃剤は、高温にて処理及び/又は使用される熱可塑性ポリマー、例えば、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)を含むスチレン系ポリマー、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリウレタン、ポリフェニレンエーテル等において特に有用である。
【0114】
例えば、ポリマーは、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ビニル系樹脂、オレフィン系樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、又はポリウレタンであってよい。ポリマーは、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂であってよく、強化されていてよく、例えば、ガラス強化されていてよい。いくつかの実施形態では、ポリマーは熱可塑性ポリウレタンである。いくつかの実施形態では、ポリマーは熱硬化性エポキシ樹脂である。複数のポリマー樹脂が存在する場合がある。特定の実施形態では、ポリマーは、エンジニアリングポリマー、例えば、熱可塑性又は強化熱可塑性ポリマー、例えば、ガラス強化熱可塑性ポリマーであり、例えば、任意にガラス充填ポリエステル、エポキシ樹脂又はポリアミド、例えばガラス充填ポリエステル、例えばガラス充填ポリアルキレンテレフタレート、又はガラス充填ポリアミドである。
【0115】
ポリエステル系樹脂には、例えば、ジカルボン酸成分とジオール成分の重縮合、及びヒドロキシカルボン酸又はラクトン成分、例えば芳香族飽和ポリエステル系樹脂、例えばポリブチレンテレフタレート又はポリエチレンテレフタレートの重縮合によって得られるホモポリエステル及びコポリエステルが含まれる。
【0116】
ポリアミド(PA)系樹脂には、ジアミンとジカルボン酸から誘導されたポリアミド必要に応じてジアミン及び/又はジカルボン酸と組み合わせて、アミノカルボン酸から得られたポリアミド及び必要に応じてジアミン及び/又はジカルボン酸と組み合わせて、ラクタムから誘導されたポリアミドが含まれる。ポリアミドはまた、少なくとも2種類のポリアミド構成成分から誘導されたコポリアミドを含む。ポリアミド系樹脂の例には、脂肪族ポリアミド、例えば、PA46、PA6、PA66、PA610、PA612、PA11及びPA12、芳香族ジカルボン酸、例えば、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸から得られるポリアミド、及び脂肪族ジアミン、例えば、ヘキサメチレンジアミン又はノナメチレンジアミン、及び芳香族及び脂肪族ジカルボン酸の両方、例えば、テレフタル酸及びアジピン酸の両方から得られるポリアミド、及び脂肪族ジアミン、例えば、ヘキサメチレンジアミン、及び他のものが含まれる。これらのポリアミドは、単独で又は組み合わせて使用されてよい。いくつかの実施形態では、ポリマーはPA6を含む。いくつかの実施形態では、ポリマーはPA66を含む。いくつかの実施形態では、ポリマーはポリフタルアミドを含む。
【0117】
融点が少なくとも280℃であるポリアミドは、高温での優れた寸法安定性と非常に優れた難燃性を備えており、例えば電気及び電子産業向けの、成形物品の製造を可能にする成形組成物の製造に広く使用されている。このタイプの成形組成物は、例えば、いわゆる表面実装技術、SMTに従ってプリント回路基板に実装される部品を製造するために、電子産業において必要とされている。この用途では、これらの構成部品は、寸法の変化なしに、270℃までの温度に短時間耐える必要がある。
【0118】
このような高温ポリアミドには、ポリアミド4,6としてアルキルジアミンと二酸から生成される特定のポリアミドが含まれるが、多くの高温ポリアミドは、芳香族及び半芳香族ポリアミド、すなわち、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、又は芳香族基を含有するモノマーから誘導される高級ポリマーである。単一の芳香族若しくは半芳香族ポリアミドが使用され得るか、又は芳香族及び/若しくは半芳香族ポリアミドのブレンドが使用される。前述のポリアミド及びポリアミドブレンドが、脂肪族ポリアミドを含む他のポリマーとブレンドされることも可能である。
【0119】
これらの高温芳香族又は半芳香族ポリアミドの例には、ポリアミド4T、ポリ(m-キシリレンアジパミド)(ポリアミドMXD,6)、ポリ(ドデカメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド12,T)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド10,T)、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド9,T)、ヘキサメチレンアジパミド/ヘキサメチレンテレフタルアミドコポリアミド(ポリアミド6,T/6,6)、ヘキサメチレンテレフタルアミド/2-メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリアミド(ポリアミド6,T/D,T);ヘキサメチレンアジパミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンイソフタルアミドコポリアミド(ポリアミド6,6/6,T/6,I);ポリ(カプロラクタム-ヘキサメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド6/6,T);ヘキサメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンイソフタルアミド(6,T/6,I)コポリマー等が含まれる。
【0120】
したがって、本発明の特定の実施形態は、高温、例えば、280℃以上、300℃以上、いくつかの実施形態では、320℃以上、例えば、280~340℃で溶融するポリアミド、例えば上記のポリアミド4,6と芳香族及び半芳香族ポリアミドとを含む組成物、高温ポリアミドと本発明の難燃性材料とを含む物品、組成物を調製するための方法及び物品を成形するための方法に対するものである。
【0121】
本明細書に記載される通り、本開示の多くの実施形態において、難燃性ポリマー組成物は、(i)ポリマーと、(ii)本開示の難燃剤と、(iii)1つ又は複数の追加の難燃剤及び/又は1つ又は複数の相乗剤又は難燃剤補助剤とを含む。したがって、難燃剤(ii)だけでもポリマー系において優れた活性を示すが、(iii)他の難燃剤、相乗剤、及び補助剤から選択された1つ又は複数の化合物と組み合わせて使用されてよい。例示的な化合物(iii)には、ハロゲン化難燃剤、アルキル又はアリールホスフィンオキシド、アルキル又はアリールポリホスフィンオキシド、アルキル又はアリールリン酸塩、アルキル又はアリールホスホン酸塩、アルキル又はアリールホスフィン酸、アルキル又はアリールホスフィン酸の塩、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、シロキサン、ポリシロキサン、ポリフェニレンエーテル、メラミン、メラミン誘導体、メラミン縮合生成物、メラミン塩、金属水酸化物、金属酸化物、金属酸化水和物、金属ホウ酸塩、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属リン酸塩、金属ホスホン酸塩、金属リン酸塩、金属次亜リン酸塩、金属ケイ酸塩、及び混合金属塩が含まれる。例えば、1つ又は複数の化合物(iii)は、トリス(ジアルキルホスフィン酸)アルミニウム、亜リン酸水素アルミニウム、ベンジルホスフィンオキシド、ポリベンジルホスフィンオキシド、メラム、メレム、メロン、リン酸メラミン、メラミン金属リン酸塩、シアヌル酸メラミン、ホウ酸メラミン、タルク、粘土、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸塩、中空管としてのアルミノケイ酸塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸ホウ素、モリブデン酸カルシウム、剥離バーミキュライト、スズ酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛、硫化亜鉛、ホウ酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、リン酸亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化水酸化アルミニウム、三水和アルミニウム、シリカ、酸化スズ、酸化アンチモン(III及びV)、酸化アンチモン(III及びV)水和物、チタン酸化物、酸化亜鉛、酸化亜鉛水和物、酸化ジルコニウム、及び水酸化ジルコニウムから選択されてよい。例えば、1つ又は複数の化合物(iii)は、アルミニウムトリス(ジメチルホスフィン酸塩)、アルミニウムトリス(ジエチルホスフィン酸塩)、ア
ルミニウムトリス(ジプロピルホスフィン酸塩)、アルミニウムトリス(ジブチルホスフィン酸塩)、メチレン-ジフェニルホスフィンオキシド置換ポリアリールエーテル、キシリレンビス(ジフェニルホスフィンオキシド)、1,2-ビス-(9,10-ジヒドロ-9-オキシ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド)エタン、4,4'-ビス(ジフェニルホスフィニルメチル)-1,1'-ビフェニル、メラム、メレム、メロン、及びジメラミンピロリン酸亜鉛から選択されてよい。
【0122】
いくつかの実施形態において、難燃性相乗剤は、メラム、メレム、メロン、シアヌル酸メラミン、ポリリン酸メラミン、及びメラミンポリ(金属リン酸塩)(例えば、メラミンポリ(リン酸亜鉛)(Safire400))から選択される材料を含む。いくつかの実施形態において、相乗剤は、トリアジン系化合物、例えば、トリクロロトリアジン、ピペラジン及びモルホリンの反応生成物、例えば、ポリ-[2,4-(ピペラジン-1,4-イル)-6-(モルホリン-4-イル)-1,3,5-トリアジン]/ピペラジン(MCA(登録商標)PPM Triazine HF)を含む。いくつかの実施形態では、相乗剤は、金属次亜リン酸、例えば次亜リン酸アルミニウム(例えば、Italmatch Phoslite(登録商標)IP-A)を含む。いくつかの実施形態において、相乗剤は、有機ホスフィン酸塩、例えばジアルキルホスフィン酸アルミニウム、例えばジエチルホスフィン酸アルミニウム(Exolit OP)を含む。
【0123】
いくつかの実施形態において、難燃性ポリマー組成物は、ヒドロタルサイト粘土、金属ホウ酸塩、金属酸化物、及び金属水酸化物、例えば金属ホウ酸塩、金属酸化物、又は金属水酸化物から選択される1つ又は複数の化合物を含み、ここで、金属は亜鉛又はカルシウムである。
【0124】
ポリマー組成物中の本発明の難燃剤の濃度は、当然に、最終的なポリマー組成物に見られる難燃剤、ポリマー、及び他の成分の正確な化学組成に依存する。例えば、ポリマー製剤の唯一の難燃性成分として使用される場合、本発明の難燃剤は、最終組成物の総質量の1~50質量%、例えば、1~30質量%の濃度で存在し得る。典型的には、唯一の難燃剤として使用する場合、難燃剤は、存在する本発明の材料の少なくとも2%、例えば、3%以上、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上又は25%以上になる。多くの実施形態において、本発明の難燃剤は、最大45%の量で存在するが、他の実施形態において、本発明の難燃剤の量は、ポリマー組成物の40%以下、例えば、35%以下である。他の難燃剤又は難燃剤の相乗剤と組み合わせて使用する場合、必要な本発明の材料は少なくて済むことがある。
【0125】
任意の公知の配合技術を使用して、本開示の難燃性ポリマー組成物を調製することができ、例えば、難燃剤を、ブレンド、押出し、繊維又はフィルム形成等によって溶融ポリマーに導入することができる。場合によっては、難燃剤は、ポリマーの形成又は硬化時にポリマーに導入され、例えば、本発明の難燃剤は、架橋前にポリウレタンプレポリマーに添加され得るか、又はポリアミド形成前のポリアミド又はアルキルポリカルボキシル化合物又は硬化前のエポキシ混合物に添加され得る。
【0126】
本発明の難燃性ポリマー組成物は、多くの場合、当技術分野で頻繁に見られる一般的な安定剤又は他の添加剤、例えば、フェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)、紫外線吸収剤、亜リン酸塩、ホスホナイト、脂肪酸のアルカリ金属塩、ハイドロタルサイト、金属酸化物、ホウ酸塩、エポキシ化大豆油、ヒドロキシルアミン、第三級アミン酸化物、ラクトン、第三級アミン酸化物の熱反応生成物、チオ相乗剤、塩基性共安定剤、例えば、メラミン、メレム等、ポリビニルピロリドン、ジシアンジアミド、シアヌル酸トリアリル、尿素誘導体、ヒドラジン誘導体、アミン、ポリアミド、ポリウレタン、ハイドロタルサイト、高級脂肪酸のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアロイル乳酸カルシウム、乳酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、オクタン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、リシノール酸ナトリウム及びパルミチン酸カリウム、ピロカテコール酸アンチモン又はピロカテコール酸亜鉛、核剤、清澄剤等のうちの1つ又は複数を含有する。
【0127】
他の添加剤、例えば、可塑剤、潤滑剤、乳化剤、顔料、染料、蛍光増白剤、他の防炎剤、帯電防止剤、発泡剤、滴下防止剤、例えば、PTFE等も存在し得る。
【0128】
場合により、ポリマーは、充填剤及び強化剤、例えば、炭酸カルシウム、ケイ酸塩、ガラス繊維、タルク、カオリン、雲母、硫酸バリウム、金属酸化物及び水酸化物、カーボンブラック及びグラファイトを含み得る。このような充填剤及び強化剤は、最終的な質量に基づいて50質量%を超える濃度で充填剤又は強化剤が存在する製剤を含めて、比較的高濃度で存在することが多い。より典型的には、充填剤及び強化剤は、ポリマー組成物全体の質量を基準として、約5~約50質量%、例えば、約10~約40質量%又は約15~約30質量%で存在する。
【0129】
いくつかの実施形態において、本開示の難燃性ポリマー組成物は、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、シロキサン、ポリシロキサン、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、アルミノケイ酸塩中空管(Dragonite)、ハロイサイト、リン酸ホウ素、モリブデン酸カルシウム、剥離バーミキュライト、スズ酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛、硫化亜鉛、ホウ酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛(又はそれらの複合体、例えば、Kemgard 911B)、モリブデン酸亜鉛/水酸化マグネシウム錯体(例えば、Kemgard MZM)、モリブデン酸亜鉛/ケイ酸マグネシウム錯体(Kemgard 911C)、モリブデン酸カルシウム/亜鉛錯体(例えば、Kemgard 911A)、リン酸亜鉛(又はそれらの錯体、例えば、Kemgard 981)等; 2、4、12、13、14、15族(半)金属の水酸化物、酸化物、及び酸化水和物、例えば、酸化又は水酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化水酸化物(ベーマイト)、三水和アルミニウム、シリカ、ケイ酸塩、スズ酸化物、酸化アンチモン(III及びV)及び酸化水和物、酸化チタン、及び酸化亜鉛又は酸化水和物、酸化ジルコニウム及び/又は水酸化ジルコニウム等;メラミン及び尿素系樹脂、例えば、シアヌル酸メラミン、ホウ酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリフェニレンエーテル(PPE)等;並びに粘土、例えば、ハイドロタルサイト、ベーマイト、カオリン、雲母、モンモリロナイト、ウォラストナイト、ナノクレイ又は有機修飾ナノクレイ等から選択される任意の1つ又は複数の材料により製剤される。
【0130】
いくつかの実施形態において、本開示の難燃性ポリマー組成物は、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、ポリシロキサン、カオリン、シリカ、水酸化マグネシウム、モリブデン酸亜鉛錯体(例えば、Kemgard 911B)、モリブデン酸亜鉛/水酸化マグネシウム錯体(例えば、Kemgard MZM)、モリブデン酸亜鉛/ケイ酸マグネシウム錯体(Kemgard 911C)、モリブデン酸カルシウム/亜鉛錯体(例えば、Kemgard 911A)、リン酸亜鉛錯体(例えば、Kemgard 981)、及びメラミン-ポリ(金属リン酸塩)(例えば、メラミン-ポリ(リン酸亜鉛)(Safire 400)から選択される任意の1つ又は複数の材料により製剤される。
【0131】
いくつかの実施形態において、ポリマー(例えば、本明細書に記載されるもの)及び本開示の難燃剤に加えて、難燃性ポリマー組成物は、メラム及びホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛錯体、モリブデン酸亜鉛/水酸化マグネシウム錯体、モリブデン酸亜鉛/ケイ酸マグネシウム錯体、モリブデン酸カルシウム/亜鉛複合体、リン酸亜鉛錯体、及び酸化亜鉛から選択される任意の1つ又は複数の材料、加えて任意に追加の添加剤、例えば本明細書に記載される添加剤を含む。
【0132】
いくつかの実施形態において、ポリマー(例えば、本明細書に記載されるもの)及び本開示の難燃剤に加えて、難燃性ポリマー組成物は、メロン及びホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛錯体、モリブデン酸亜鉛/水酸化マグネシウム錯体、モリブデン酸亜鉛/ケイ酸マグネシウム錯体、モリブデン酸カルシウム/亜鉛複合体、リン酸亜鉛錯体、及び酸化亜鉛から選択される任意の1つ又は複数の材料、加えて任意に追加の添加剤、例えば本明細書に記載される添加剤を含む。
【0133】
以下の実施例において、更なる非限定的な開示を提供する。
【実施例】
【0134】
(実施例1)
メチルホスホン酸(MPA)(3678.8g、38.3mol、30eq、75%水溶液)とアルミナ(130.2g、1.28mol、1eq)を室温にて混合したところ、限定的な発熱量(約2℃の上昇)が観察された。ポット温度を165℃に設定し、大気圧下で200RPMにて攪拌器を使用し、窒素パージ(4L/分)を行った。凝縮器において留出水が観察されなかったとき、本開示によるMPA及びアルミナから生成した難燃性生成物である1.0gの播種材料を任意に添加した。反応混合物を165℃にて3時間加熱した。次に、白色のスラリー生成物を含有する生成反応混合物を約130℃に冷却し、氷水浴中で冷却したビーカー内の1.5Lの水に注いだ。次に、白色のスラリーをろ別し、水(500mL×3)で洗浄し、乾燥させて、92%の収率で微細結晶を得た。この生成物は、次の実験式に従い、4:1のリン対アルミニウム比(ICP元素分析)を有していた。
【0135】
【0136】
上記の生成物の実験式は、純粋な結晶性生成物を形成する配位ポリマーの繰り返しモノマー単位(すなわち、配位実体)を表している。生成物の熱重量分析(TGA)を
図1に示す。
【0137】
(実施例2)
1Lフラスコに800mLのキシレンを入れ、ディーンスタークトラップを設置した。溶液を115℃に加熱し、メチルホスホン酸(MPA)(33.89g、0.35mol)を添加した。酸を溶解させ、温度を上げ、溶液が還流し始めるようにした。アルミナ(4.01g、0.039mol)を3時間かけて少しずつ添加した。還流を142℃にて一晩維持した。得られた固体生成物をろ過により単離し、DMF(100mL)及びEt2O(2x50mL)により洗浄し、乾燥させて微粉末(18.86g、収率71%)を得た。この生成物は、次の実験式に従い、4:1のリン対アルミニウム比を有していた。
【0138】
【0139】
上記の生成物の実験式は、純粋な結晶性生成物を形成する配位ポリマーの繰り返しモノマー単位(すなわち、配位実体)を表している。
【0140】
(実施例3)
メチルホスホン酸(MPA)(2216g、23.1mol、15eq、水溶液)と三水酸化アルミニウム(120g、1.5mol、1eq)を室温にて混合した。ポット温度を165℃に設定し、大気圧下で200RPMにて攪拌器を使用し、窒素パージ(4L/分)を行った。凝縮器において留出水が観察されなかったとき、MPA及び本開示による三水酸化アルミニウムから生成した難燃性生成物である1.0gの播種材料を任意に添加した。反応混合物を165℃にて3時間加熱した。次に、白色のスラリー生成物を含有する生成反応混合物を約130℃に冷却し、氷水浴中で冷却したビーカー内の1.5Lの水に注いだ。白色のスラリーをろ別し、水(500mL×3)で洗浄し、乾燥させて、約100%の収率で微細結晶を得た。この生成物は、次の実験式に従い、4:1のリン対アルミニウム比(ICP元素分析)を有していた。
【0141】
【0142】
上記の生成物の実験式は、純粋な結晶性生成物を形成する配位ポリマーの繰り返しモノマー単位(すなわち、配位実体)を表している。
【0143】
(実施例4)
【0144】
【0145】
メチルホスホン酸(MPA)(1412.6g、14.7mol、30eq、75%水溶液)と酸化鉄(78.2g、0.49mol、1eq)を室温にて混合した。ポット温度を約12時間130℃に設定し、大気圧下で250RPMにて攪拌器を使用し、窒素パージ(4L/分)を行った。続いて、反応混合物を165℃に12時間加熱した。次に、オフホワイトのスラリー生成物を含有する生成反応混合物を約130℃に冷却し、氷水浴中で冷却したビーカー内の1.5Lの水に注いだ。オフホワイトのスラリーをろ別し、水(500mL×3)で洗浄し、乾燥させて、92%の収率で微細なオフホワイト色の結晶を得た。この生成物は、次の実験式に従い、4:1のリン対鉄比(ICP元素分析)を有していた。
【0146】
【0147】
上記の生成物の実験式は、純粋な結晶性生成物を形成する配位ポリマーの繰り返しモノマー単位(すなわち、配位実体)を表している。
【0148】
(実施例5)
【0149】
【0150】
メチルホスホン酸(MPA)(1727g、18.4mol、15eq、75%水溶液)を、窒素流(1L/min)下の氷水浴中で5℃に冷却した。ポット温度を10℃未満に維持しながら、アルミニウムイソプロポキシド(250g、1.2mol、1eq)を少しずつ添加した。次に、ポット温度を165℃に設定し、250RPMにて撹拌器を使用した。165℃にて、本開示によるMPA及びアルミニウムイソプロポキシドから生成される難燃性生成物である4.5gの播種材料を任意に添加し、反応混合物を165℃にて3時間維持した。次に、白色のスラリー生成物を含有する生成反応混合物を約130℃に冷却し、氷水浴中で冷却したビーカー内の1.5Lの水に注いだ。白色のスラリーをろ別し、水(500mL×3)で洗浄し、乾燥させて、44%の収率で微細結晶を得た。この生成物は、次の実験式に従い、4:1のリン対アルミニウム比(ICP元素分析)を有していた。
【0151】
【0152】
上記の生成物の実験式は、純粋な結晶性生成物を形成する配位ポリマーの繰り返しモノマー単位(すなわち、配位実体)を表している。
【0153】
(実施例6)
【0154】
【0155】
エチルホスホン酸(EPA)(55.0g、0.50mol、30eq)及びアルミナ(1.70g、17mmol、1eq)を室温にて50mLの水と混合した。ポット温度を165℃に設定し、大気圧下で250RPMにて攪拌器を使用し、窒素パージ(4L/分)を行った。反応混合物を165℃にて3時間加熱した。次に、白色のスラリー生成物を含有する生成反応混合物を約130℃に冷却し、氷水浴中で冷却したビーカー内の100mLの水に注いだ。白色のスラリーをろ別し、水(50mL×3)で洗浄し、乾燥させて、76%の収率で微細結晶を得た。この生成物は、次の実験式に従い、4:1のリン対アルミニウム比(ICP元素分析)を有していた。
【0156】
【0157】
上記の生成物の実験式は、純粋な結晶性生成物を形成する配位ポリマーの繰り返しモノマー単位(すなわち、配位実体)を表している。
【0158】
(実施例7)
ポリマー組成物を調製し、UL-94試験下で難燃活性を評価した。上記の実施例1に従って生成した難燃剤を含有するポリアミド6,6のガラス充填ポリマー組成物について、0.8mm及び1.6mmの厚さにおけるUL-94V-0定格を測定した。
【0159】
【0160】
上記の実施例1、2、3及び5に従って製造した難燃剤を含有するポリアミド6,6、ポリアミド6、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、及び高温ポリアミドのガラス充填ポリマー組成物について、0.8mmにおけるUL-94V-0定格も測定した。
【0161】
【0162】
ガラス充填PA66、PBT、及びポリフタルアミド中に上記の実施例1、2、3及び5に従って製造した難燃剤と種々の相乗剤とを組み合わせたポリマー組成物を更に調製し、0.8mmの厚さにおけるUL-94試験下で評価した。結果をTable 3.(PA66)(表3)、Table 4. (PBT)(表4)、及びTable 5(ポリフタルアミド)(表5)に示す。本発明の難燃剤を含有していなかった製剤17、22及び24は、UL-94試験に不合格であった。
【0163】
【0164】
【0165】
【0166】
(実施例8)
PA66中に上記の実施例4に従って製造された難燃剤を含有するポリマー組成物を調製し、0.8mmの厚さにおけるUL-94試験下で難燃活性を評価した。結果をTable 6(表6)に示す。本発明の難燃剤を含有していなかった試料27は、UL-94試験に不合格であった。
【0167】
【0168】
本発明の特定の実施形態が例示され説明されてきたが、本開示の明細書及び実施の検討から、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変形を行うことができることは当業者には明らかであろう。したがって、本発明の真の範囲は以下の特許請求の範囲及びそれらの均等物によって示され、本明細書及び実施例は例示としてのみ考慮されることが意図されている。
【国際調査報告】