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特表2022-553228バイオベースのEVA組成物並びにその物品及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-22
(54)【発明の名称】バイオベースのEVA組成物並びにその物品及び方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 210/02 20060101AFI20221215BHJP
   C08F 218/08 20060101ALI20221215BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20221215BHJP
   B32B 27/28 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
C08F210/02
C08F218/08
C08J5/18 CES
B32B27/28 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022522991
(86)(22)【出願日】2020-10-14
(85)【翻訳文提出日】2022-04-15
(86)【国際出願番号】 IB2020020061
(87)【国際公開番号】W WO2021074696
(87)【国際公開日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】62/915,464
(32)【優先日】2019-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514091253
【氏名又は名称】ブラスケム・エス・エー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジャンカルロス・デレヴァチ
(72)【発明者】
【氏名】オマール・ワンディアー・レンク
(72)【発明者】
【氏名】カルロス・オーガスト・マイア・ファリア
(72)【発明者】
【氏名】パウロ・ロウレンソ・ブリット・ハーマン
(72)【発明者】
【氏名】マルシアル・セザール・ヴィエイラ
(72)【発明者】
【氏名】パトリシア・マラ・デ・フレイタス・ホーシャ
(72)【発明者】
【氏名】マルセロ・フィオラヴァンチ・ダス・ネヴェス
(72)【発明者】
【氏名】ホジェール・ヒベイロ・マルメグリム
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
4J100
【Fターム(参考)】
4F071AA15X
4F071AA84X
4F071AF15Y
4F071AF16Y
4F071AF21Y
4F071AF23Y
4F071AF30Y
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4F071BC12
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4F100AK05A
4F100AK05B
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4F100AK06B
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4F100AK06E
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4F100AK63A
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4F100AK63C
4F100AK63E
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4F100AK68B
4F100AK68C
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4F100GB16
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4J100AA02P
4J100AG04Q
4J100CA04
4J100JA57
4J100JA58
(57)【要約】
ポリマーは、エチレン及び酢酸ビニルのコポリマーを含むことができ、このエチレン及び酢酸ビニルのコポリマーにおいて、エチレンの少なくとも一部は、再生可能な炭素源から得られたものであり、コポリマーの、ASTM D1238によるメルトインデックス(190℃/2.16kg)が、0.12~8.0g/10minの範囲である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン及び酢酸ビニルのコポリマーであって、
エチレンの少なくとも一部が、再生可能な炭素源から得られたものであり、
コポリマーの、ASTM D1238によるメルトインデックス(190℃/2.16kg)が、0.12~8.0g/10minの範囲である、コポリマー。
【請求項2】
酢酸ビニルの少なくとも一部が、再生可能な炭素源から得られたものである、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項3】
酢酸ビニルが、コポリマー中7~20質量%の範囲の量で存在する、請求項1又は2に記載のコポリマー。
【請求項4】
ASTM D2240によって決定されるショアA硬さが、ショアA77~95の範囲である、請求項1から3のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項5】
ASTM D2240によって決定されるショアD硬さが、ショアD22~55の範囲である、請求項1から4のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項6】
ASTM D6866-18のB法によって決定されるバイオベース炭素の含有量が、少なくとも50%である、請求項1から5のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項7】
ASTM D4703によって圧縮成形板から作製される厚さ2mmの試験片を用いてASTM D638によって決定される破断点引張強さが、12~40MPaの範囲である、請求項1から6のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項8】
ASTM D4703によって圧縮成形板から作製される厚さ2mmの試験片を用いてASTM D638によって決定される破断点伸びが、少なくとも450%である、請求項1から7のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項9】
ASTM D4703によって圧縮成形板から作製される厚さ2mmの試験片を用いてASTM D3418によって決定される融点が、75~105℃の範囲である、請求項1から8のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項10】
ASTM D1525によって決定される10Nでのビカット軟化温度が、58~90℃の範囲である、請求項1から9のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項11】
ASTM D882によって厚さ50μmのフィルムで測定される破断点引張強さが、機械方向(MD)において25~45MPaの範囲である、請求項1から10のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項12】
ASTM D882によって厚さ50μmのフィルムで測定される破断点引張強さが、直角方向(TD)において18~38MPaの範囲である、請求項1から11のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項13】
ASTM D882によって厚さ50μmのフィルムで測定される破断点伸び(MD)が、450%を超える、請求項1から12のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項14】
ASTM D882によって厚さ50μmのフィルムで測定される破断点伸び(TD)が、500%を超える、請求項1から13のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項15】
ASTM D1709のB法によって厚さ50μmのフィルムで測定されるダート落下衝撃強さが、150~1200gFの範囲である、請求項1から14のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項16】
ASTM D1922によって厚さ50μmのフィルムで測定されるエルメンドルフ引裂強さ(MD)が、100gFを超える、請求項1から15のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項17】
ASTM D1922によって厚さ50μmのフィルムで測定されるエルメンドルフ引裂強さ(TD)が、150gFを超える、請求項1から16のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項18】
ASTM D1003によって厚さ50μmのフィルムで測定されるヘイズが、5%未満である、請求項1から17のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項19】
ASTM D2457によって厚さ50μmのフィルムで測定される角度45°における光沢度が、80を超える、請求項1から18のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項20】
請求項1から19のいずれか一項に記載のコポリマーを含む、フィルム。
【請求項21】
30~80%の範囲の量で存在するLLDPEと、3~65%の範囲の量で存在する請求項1から19のいずれか一項に記載のコポリマーと、15~50%の範囲の量で存在するLDPEと、20~40%の範囲の量で存在するHDPEとのブレンドを含む、請求項20に記載のフィルム。
【請求項22】
請求項20又は21に記載のフィルムを少なくとも1層含む、多層フィルム。
【請求項23】
- ブレンドの30~50質量%の範囲の量で存在するLLDPEと、ブレンドの0~20質量%の範囲の量で存在するEVAと、ブレンドの10~20質量%の範囲の量で存在するLDPEと、ブレンドの0~40質量%の範囲の量で存在するHDPEとのブレンドを含む内側層、
- ブレンドの50~70質量%の範囲の量で存在するLLDPEと、ブレンドの0~10質量%の範囲の量で存在するEVAと、ブレンドの40~60質量%の範囲の量で存在するLDPEとのブレンドを含む外側層、及び
- ブレンドの30~50質量%の範囲の量で存在するLLDPEと、ブレンドの5~20質量%の範囲の量で存在するEVAと、ブレンドの10~20質量%の範囲の量で存在するLDPEと、ブレンドの0~40質量%の範囲の量で存在するHDPEとのブレンドを含む中間層
を含み、
内側層、外側層又は中間層中の少なくとも1種のEVAが、請求項1から19のいずれか一項に記載のコポリマーである、請求項22に記載の多層フィルム。
【請求項24】
PEを含む第一層、
EVAを含む第二層、
バリア性ポリマーを含む第三層、
EVAを含む第四層、及び
封止材を含む第五層
を含み、
第二層又は第四層中の少なくとも1種のEVAが、請求項1から19のいずれか一項に記載のコポリマーである、請求項22に記載の多層フィルム。
【請求項25】
PEが、LDPE及び/又はLLDPE及び/又はVLDPEから選択される、請求項24に記載の多層フィルム。
【請求項26】
バリア性ポリマーが、PVDC、ナイロン及びEVOHから選択される、請求項24又は25に記載の多層フィルム。
【請求項27】
封止材が、LLDPE及び/又はVLDPE及び/又はLDPEから選択される、請求項24から26のいずれか一項に記載の多層フィルム。
【請求項28】
第一層が、多層フィルムの20~40質量%を占めており、
第二層が、多層フィルムの10~20質量%を占めており、
第三層が、多層フィルムの5~15質量%を占めており、
第四層が、多層フィルムの10~20質量%を占めており、且つ
第五層が、多層フィルムの20~40質量%を占めている、
請求項24から27のいずれか一項に記載の多層フィルム。
【請求項29】
厚さが、20~120μmの範囲である、請求項25から28のいずれか一項に記載の多層フィルム。
【請求項30】
PEを含む第一層、
EVAを含む第二層、
接着層を含む第三層、
バリア性ポリマーを含む第四層、
接着層を含む第五層、
EVAを含む第六層、及び
PEを含む第七層
を含み、
第二層又は第六層中の少なくとも1種のEVAが、請求項1から19のいずれか一項に記載のコポリマーである、請求項22に記載の多層フィルム。
【請求項31】
第一層及び第七層中のPEが、それぞれ、LDPE及び/又はLLDPE及び/又はVLDPEから選択される、請求項30に記載の多層フィルム。
【請求項32】
バリア性ポリマーが、PVDC、ポリアミド及びEVOHから選択される、請求項30又は31に記載の多層フィルム。
【請求項33】
第三層及び第五層中の接着層が、酢酸ビニル含有量が12~28質量%であるEVAを含む、請求項30から32のいずれか一項に記載の多層フィルム。
【請求項34】
第三層及び/又は第五層中のEVAが、バイオベースEVAである、請求項33に記載の多層フィルム。
【請求項35】
第一層が、多層フィルムの15~25質量%を占めており、
第二層が、多層フィルムの10~20質量%を占めており、
第三層が、多層フィルムの10~20質量%を占めており、
第四層が、多層フィルムの10~20質量%を占めており、
第五層が、多層フィルムの10~20質量%を占めており、
第六層が、多層フィルムの10~20質量%を占めており、且つ
第七層が、多層フィルムの15~25質量%を占めている、
請求項30から34のいずれか一項に記載の多層フィルム。
【請求項36】
厚さが、20~120μmの範囲である、請求項30から35のいずれか一項に記載の多層フィルム。
【請求項37】
PEを含む第一層、
バイオベースEVAと任意のLLDPE及び/又はLDPEとを含む第二層、並びに
PEを含む第三層、
を含む、請求項22に記載の多層フィルム。
【請求項38】
第一層が、LDPE及び/又はLLDPEを含む、請求項37に記載の多層フィルム。
【請求項39】
第二層が、最高で第二層の50質量%までの範囲の量でLLDPE及び/又はLDPEを含む、請求項37又は38に記載の多層フィルム。
【請求項40】
第三層が、LDPE及び/又はLLDPEを含む、請求項37から39のいずれか一項に記載の多層フィルム。
【請求項41】
第一層が、多層フィルムの10~30質量%を占めており、
第二層が、多層フィルムの40~80質量%を占めており、
第三層が、多層フィルムの10~30質量%を占めている、
請求項37から40のいずれか一項に記載の多層フィルム。
【請求項42】
厚さが、50~180μmの範囲である、請求項37から41のいずれか一項に記載の多層フィルム。
【請求項43】
ASTM D4695によって測定される穿刺抵抗試験において、最大荷重が、5~20Nの範囲である、請求項37から42のいずれか一項に記載の多層フィルム。
【請求項44】
ASTM D4695によって測定される穿刺抵抗試験において、破断点エネルギーが、50~300mJの範囲である、請求項37から43のいずれか一項に記載の多層フィルム。
【請求項45】
ASTM D5459によって測定される弾性回復試験において、保持力が、5~20Nの範囲である、請求項37から44のいずれか一項に記載の多層フィルム。
【請求項46】
ASTM D5459によって測定される弾性回復試験において、残留変形が、10~30%の範囲である、請求項37から45のいずれか一項に記載の多層フィルム。
【請求項47】
ASTM D5459によって測定される弾性記憶が、30~200%の範囲である、請求項37から46のいずれか一項に記載の多層フィルム。
【請求項48】
ASTM D5594によって測定されるバイオベースEVAの酢酸ビニル含有量が、4~20%である、請求項37から47のいずれか一項に記載の多層フィルム。
【請求項49】
バイオベースEVAを押出して、請求項20又は21に記載のフィルムを形成する工程
を含む、EVAフィルムの形成方法。
【請求項50】
押出する工程が、バイオベースEVAを少なくとも1種の他のポリマーとともに共押出して、請求項22から48のいずれか一項に記載の多層フィルムを形成することを含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
少なくとも1種の他のポリマーを押出して少なくとも1層の他のフィルム層を形成する工程、及び、
請求項20又は21に記載のフィルムを前記少なくとも1層の他のフィルム層と積層して、請求項22から48のいずれか一項に記載の多層フィルムを形成する工程
を更に含む、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
フィルム又は多層フィルムに電子線を照射する工程を更に含む、請求項49から51のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
エチレン酢酸ビニル(EVA)等のポリオレフィンコポリマーを使用して、フィルム、成形品、発泡体等を含む、多様な物品を製造することができる。一般に、ポリオレフィンは、広範囲の用途で汎用性があるため、世界中で広く使用されるプラスチックである。EVAは、例えば、高い加工性、低い製造コスト、柔軟性、低い密度及びリサイクル可能性等の特徴を有することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】米国特許第9,181,143号
【特許文献2】米国特許第4,396,789号
【特許文献3】米国特許第5,840,971号
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】「Selective catalytic oxidation of ethanol to acetic acid on dispersed Mo-V-Nb mixed oxides」、Li X、Iglesia E.、Chemistry、2007;13(33):9324~30
【非特許文献2】「The Production of Vinyl Acetate Monomer as a Co-Product from the Non-Catalytic Cracking of Soybean Oil」、Benjamin Jones、Michael Linnen、Brian Tande及びWayne Seames、Processes、2015、3、61-9-633
【非特許文献3】「Acetic acid bacteria: A group of bacteria with versatile biotechnological applications」、Saichana N、Matsushita K、Adachi O、Frebort I、Frebortova J.、Biotechnol Adv.、2015年11月1日;33(6 Pt 2):1260~71頁
【非特許文献4】「Biotechnological applications of acetic acid bacteria」、Raspor P、Goranovic D、Crit Rev Biotechnol.、2008;28(2):101~24頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
下記の発明を実施するための形態で更に説明する概念の選択を紹介するために、本概要を提供する。この概要は、請求項に記載されている対象の重要な又は必須の特徴を特定することを意図したものではなく、請求項に記載されている対象の範囲を限定する際の一助として使用することを意図したものでもない。
【0005】
一態様において、本明細書に開示されている実施形態は、エチレン及び酢酸ビニルのコポリマーであって、エチレンの少なくとも一部が、再生可能な炭素源から得られたものであり、コポリマーの、ASTM D1238によるメルトインデックス(190℃/2.16kg)が、0.12~8.0g/10minの範囲である、コポリマーに関する。
【0006】
別の態様において、本明細書に開示されている実施形態は、エチレン及び酢酸ビニルのコポリマーを含むフィルムであって、エチレンの少なくとも一部が、再生可能な炭素源から得られたものであり、コポリマーの、ASTM D1238によるメルトインデックス(190℃/2.16kg)が、0.12~8.0g/10minの範囲である、フィルムに関する。
【0007】
別の態様において、本明細書に開示されている実施形態は、エチレン及び酢酸ビニルのコポリマーを含む少なくとも1つのフィルムを含む多層フィルムであって、エチレンの少なくとも一部が、再生可能な炭素源から得られたものであり、コポリマーの、ASTM D1238によるメルトインデックス(190℃/2.16kg)が、0.12~8.0g/10minの範囲である、多層フィルムに関する。
【0008】
更に別の態様において、本明細書に開示されている実施形態は、バイオベースEVAを押出して、エチレン及び酢酸ビニルのコポリマーを含むフィルムを形成する、EVAフィルムの形成方法であって、エチレンの少なくとも一部が、再生可能な炭素源から得られたものであり、コポリマーの、ASTM D1238によるメルトインデックス(190℃/2.16kg)が、0.12~8.0g/10minの範囲である、EVAフィルムの形成方法に関する。
【0009】
特許請求の範囲に記載されている対象のその他の態様及び利点は、以下の説明及び添付の特許請求の範囲から明らかになる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
一態様において、本明細書に開示されている実施形態は、エチレン酢酸ビニル(EVA)コポリマーを含む組成物であって、当該エチレン酢酸ビニルコポリマーのエチレンの少なくとも一部が、例えば植物由来の材料等の再生可能な炭素源から得られたものである、即ち、バイオベースのエチレン酢酸ビニルコポリマーを形成している、組成物に関する。特に、本明細書に開示されている実施形態は、フィルム、特に多層フィルムにおける、斯かるバイオベースのエチレン酢酸ビニルコポリマーの使用に関する。
【0011】
EVAは、エチレンと酢酸ビニルとを高温高圧下で重合して得られるランダムな単位の配列によって形成されるポリオレフィン系エラストマーのコポリマーである。EVAコポリマーは、他の熱可塑性プラスチックと同様に加工できる材料をもたらすが、柔軟性及び弾力性を有するゴムのような特性を示しうる。化石資源から得られた製品とは対照的に、天然資源から得られた製品の使用は、大気中の二酸化炭素濃度の上昇を抑えるため、温室効果の拡大を効果的に制限する有効な手段として、ますます広く好まれるようになってきている。このように、天然原料から得られた製品は、化石由来の製品と比較して、再生可能な炭素の含有量に差がある。この再生可能な炭素の含有量は、技術的なASTM D6866-18規格「Standard Test Methods for Determining the Biobased Content of Solid, Liquid, and Gaseous Samples Using Radiocarbon Analysis」(放射性炭素分析を用いて、固体、液体及び気体の試料のバイオベース含有量を決定するための標準試験方法)に記載されている方法によって認定することができる。再生可能な天然原料から得られた製品は、そのライフサイクル終了時に焼却することができ、非化石由来のCO2しか発生しないという特性も更に有する。
【0012】
本開示に係るポリマー組成物は、EVAコポリマー中のエチレンの質量パーセントが、60質量%、70質量%、75質量%、80質量%、82質量%及び85質量%のいずれかから選択される下限から、80質量%、85質量%、88質量%、90質量%、93質量%及び95質量%のいずれかから選択される上限までの範囲である、EVAコポリマーを含むことができる。ここで、任意の下限は任意の上限と対にすることができる。更に、このエチレンの全量のうち、そのエチレンの少なくとも一部は、再生可能な炭素源由来のものであると理解される。
【0013】
本開示に係るポリマー組成物は、様々な比率のエチレンと酢酸ビニルとを組み込んでいるEVAコポリマーであって、1種又は複数種の任意の追加コモノマーも更に含むEVAコポリマーも包含され得る。本開示に係るポリマー組成物は、コポリマー中のASTM D5594によって決定される酢酸ビニル含有量の質量パーセントが、5質量%、7質量%、10質量%、12質量%、15質量%、20質量%のいずれかから選択される下限から、15質量%、18質量%、20質量%、25質量%、30質量%又は40質量%から選択される上限までの範囲である、EVAコポリマーを含むことができる。ここで、任意の下限は任意の上限と対にすることができる。更に、この酢酸ビニルの全量のうち、その酢酸ビニルの少なくとも一部は、所望により、再生可能な炭素源由来のものであり得ると理解される。
【0014】
具体的には、1つ又は複数の実施形態において、EVAコポリマーは、ASTM D6866-18のB法(Method B)によって決定されるバイオベース炭素の含有量が、少なくとも50%である。更に、他の実施形態は、バイオベース炭素を少なくとも40%、50%、60%、80%又は100%含むことができる。上述したように、EVAポリマー中の全部のバイオベース炭素又は再生可能な炭素が、バイオベースのエチレン及び/又はバイオベースの酢酸ビニルからの寄与であってもよい。これらの点のそれぞれについて、順を追って説明する。
【0015】
例えば、1つ又は複数の実施形態において、再生可能な炭素源は、サトウキビ及びテンサイ、カエデ、ナツメヤシ、パーム糖、モロコシ、アオノリュウゼツラン(American agave)、トウモロコシ、小麦、大麦、モロコシ、米、ジャガイモ、キャッサバ、サツマイモ、藻類、果実、セルロース含有材料、ワイン、ヘミセルロース含有材料、リグニン含有材料、木、わら、サトウキビの絞りかす、サトウキビの葉、トウモロコシの茎・葉・穂軸、木材残滓、紙、並びにそれらの組合せからなる群から選択される、1種又は複数種の植物材料である。
【0016】
1つ又は複数の実施形態において、バイオベースのエチレンは、再生可能な炭素源を発酵させてエタノールを生成し、その後、脱水してエチレンを生成することによって得ることができる。更に、発酵により、エタノールに加えて、より高級なアルコールの副生成物も生成すると理解される。より高級なアルコールの副生成物が脱水時に存在すると、より高級なアルケンの不純物がエタノールと一緒に形成されうる。従って、1つ又は複数の実施形態では、エタノールは、脱水の前に精製して、より高級なアルコールの副生成物を除去してもよく、他の実施形態では、エチレンは、脱水の後に精製して、より高級なアルケンの不純物を除去してもよい。
【0017】
このように、バイオエタノールとして知られる生物由来のエタノールは、例えばサトウキビやテンサイ等の培養物から得られる糖、又は、同様に、例えばトウモロコシ等の他の培養物と関連して加水分解されたデンプンから得られる糖を発酵させることにより得られる。また、バイオベースのエチレンは、例えばわらやサトウキビの皮等の多くの農業副産物に含まれうるセルロース及びヘミセルロースの加水分解に基づく生成物から得ることができることも想定される。この発酵は、様々な微生物の存在下で行われるが、その微生物のうち最も重要なものが酵母サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)である。このようにして得られたエタノールは、通常300℃を超える温度での触媒反応によってエチレンに変換することができる。この目的のため、例えば、高い比表面積のγアルミナ等、多種多様な触媒を使用することができる。他の例としては、米国特許第9,181,143号及び米国特許第4,396,789号に記載されている教示が挙げられ、これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれている。
【0018】
一方、本開示のEVAコポリマーの1つ又は複数の実施形態において、バイオベースの酢酸ビニルを使用することもできる。バイオベースの酢酸ビニルは、エタノール(上述したように生成することができる)を酸化して酢酸を生成し、続いてエチレンと酢酸とを反応させることによりエチレンをアシルオキシ化して、目的とする酢酸ビニルを得ることによって製造することができる。更に、酢酸と反応させるエチレンは、上述したように再生可能な源から形成することもできると理解される。
【0019】
1つ又は複数の実施形態において、少なくとも1種のアルコール(エタノール又はエタノールを含むアルコールの混合物のいずれか)を生成するために、上述したものを含む再生可能な出発材料を発酵させることができ、所望により精製してもよい。アルコールは、2つの部分に分けてもよく、ここで、第一の部分を第一の反応器に導入し、第二の部分を第二の反応器に導入してもよい。第一の反応器では、アルケン(発酵の後に精製が行われたかどうかに応じて、エチレン又はエチレンを含むアルケンの混合物)を生成するために、アルコールを脱水して、その後、所望により精製して、エチレンを得ることができる。当業者であれば、精製が脱水の前に行われるのであれば、脱水の後に行われる必要はなく、その逆もまた然りであると理解できる。第二の反応器では、酢酸を得るために、アルコールを酸化することができ、所望により精製してもよい。第三の反応器では、第一の反応器で生成したエチレンと第二の反応器で生成した酢酸とを組み合わせて反応させ、エチレンをアシルオキシル化して酢酸ビニルを生成することができ、その後、単離して、所望により精製してもよい。エタノールの酸化による酢酸の生成に関する更なる詳細は、米国特許第5,840,971号及び「Selective catalytic oxidation of ethanol to acetic acid on dispersed Mo-V-Nb mixed oxides」、Li X、Iglesia E.、Chemistry、2007;13(33):9324~30頁を参照のこと。
【0020】
ただし、酢酸の生成経路について、本開示は、それらに限定されない。むしろ、「The Production of Vinyl Acetate Monomer as a Co-Product from the Non-Catalytic Cracking of Soybean Oil」、Benjamin Jones、Michael Linnen、Brian Tande及びWayne Seames、Processes、2015、3、61-9-633に記載されているように、酢酸を脂肪酸から得てもよいと想定される。更に、「Acetic acid bacteria: A group of bacteria with versatile biotechnological applications」、Saichana N、Matsushita K、Adachi O、Frebort I、Frebortova J.、Biotechnol Adv.、2015年11月1日;33(6 Pt 2):1260~71頁及び「Biotechnological applications of acetic acid bacteria」、Raspor P、Goranovic D、Crit Rev Biotechnol.、2008;28(2):101~24頁に記載されているように、発酵による酢酸の生成は、酢酸生成菌によって行われる。更に、酢酸ビニルを生成するのに使用されるエチレンの生成は、その後酢酸ビニルと反応させて、本開示のEVAコポリマーを生成するためのエチレンの生成にも使用できると理解される。従って、例えば、重合させるエチレン及び酢酸ビニルの相対量に応じて、第一の反応器及び第二の反応器にそれぞれ供給するエタノールの量を変えることができる。
【0021】
本開示に係るポリマー組成物は、ASTM D1238によって、190℃で荷重2.16kgを用いる測定で決定されるメルトインデックスが、0.1g/10min、0.12g/10min、0.25g/10min、1g/10min、2g/10min又は5g/10minのいずれかから選択される下限から、4g/10min、5g/10min、6g/10min、8g/10min又は10g/10minのいずれかから選択される上限までの範囲でありうる、EVAコポリマーを含むことができる。ここで、任意の下限は任意の上限と対にすることができる。
【0022】
本開示に係るポリマー組成物は、ASTM D2240によって決定されるショアA硬さが、ショアA75、ショアA77、ショアA80、ショアA85、ショアA88又はショアA90のいずれかである下限から、ショアA90、ショアA93、ショアA95又はショアA100である上限までの範囲でありうる、EVAコポリマーを含むことができる。ここで、任意の下限は任意の上限と対にすることができる。
【0023】
本開示に係るポリマー組成物は、ASTM D2240によって決定されるショアD硬さが、ショアD20、ショアD22、ショアD25、ショアD30、ショアD40、ショアD45又はショアD50のいずれかである下限から、ショアD45、ショアD50、ショアD55又はショアD60である上限までの範囲でありうる、EVAコポリマーを含むことができる。ここで、任意の下限は任意の上限と対にすることができる。
【0024】
本開示に係るポリマー組成物は、ASTM D1525のA50法(Method A50)によって決定されるビカット軟化温度(Vicat Softening Temperature)が、45℃、50℃、55℃、58℃又は60℃のいずれかである下限から、65℃、70℃、75℃、85℃又は90℃のいずれかである上限までの範囲でありうる、EVAコポリマーを含むことができる。ここで、任意の下限は任意の上限と対にすることができる。
【0025】
本開示に係るポリマー組成物は、ASTM D4703によって圧縮成形板から作製される厚さ2mmの試験片を用いてASTM D638によって決定される破断点引張強さ(tensile strength at break)が、12~40MPaの範囲である、EVAコポリマーを含むことができる。破断点引張強さは、15MPa、17MPa、19MPa又は22MPaである下限から、25MPa、30MPa、33MPa、35MPa、35MPa又は40MPaである上限までの範囲でありうる。ここで、任意の下限は任意の上限と組み合わせて使用することができる。
【0026】
本開示に係るポリマー組成物は、ASTM D4703によって圧縮成形板から作製される厚さ2mmの試験片を用いてASTM D638によって決定される破断点伸び(elongation at break)が、450%を超える、EVAコポリマーを含むことができる。破断点伸びの下限は、450%又は500%のいずれかでありうる。
【0027】
本開示に係るポリマー組成物は、ASTM D4703によって圧縮成形板から作製される厚さ2mmの試験片を用いてASTM D3418によって決定される融点が、75~105℃の範囲である、EVAコポリマーを含むことができる。融点は、75℃、86℃、88℃、90℃又は92℃のいずれかである下限から、96℃、98℃、100℃、102℃又は105℃である上限までの範囲でありうる。ここで、任意の下限は任意の上限と組み合わせて使用することができる。
【0028】
本開示に係るEVAコポリマーは、バリアスクリューのL/Dが25:1であり、ダイ間隔が1.0mmである50mmブローフィルムラインにおいて、ブローアップ比2.3:1で加工される厚さ50μmのフィルムを用いて評価される、以下のフィルム特性を有しうる。
【0029】
本開示に係るEVAコポリマーは、ASTM D882によって厚さ50μmのフィルムで測定される破断点引張強さが、機械方向(machine direction)(MD)において25~45MPaの範囲でありうる。破断点引張強さ(MD)の下限は、25MPa、28MPa、30MPa又は32MPaのいずれかでありうる。破断点引張強さ(MD)の上限は、38MPa、40MPa、42MPa又は45MPaのいずれかでありうる。ここで、任意の下限は任意の上限と組み合わせて使用することができる。
【0030】
本開示に係るEVAコポリマーは、ASTM D882によって厚さ50μmのフィルムで測定される破断点引張強さが、直角方向(transversal direction)(TD)において18~38MPaの範囲でありうる。破断点引張強さ(TD)の下限は、18MPa、20MPa、22MPa又は24MPaのいずれかでありうる。破断点引張強さ(TD)の上限は、30MPa、32MPa、35MPa又は38MPaのいずれかでありうる。ここで、任意の下限は任意の上限と組み合わせて使用することができる。
【0031】
本開示に係るEVAコポリマーは、ASTM D882によって厚さ50μmのフィルムで測定される破断点伸び(MD)が、450%を超えうる。破断点伸び(MD)の下限は、450%、475%又は500%のいずれかでありうる。
【0032】
本開示に係るEVAコポリマーは、ASTM D882によって厚さ50μmのフィルムで測定される破断点伸び(TD)が、500%を超えうる。破断点伸び(TD)の下限は、500%、550%又は600%のいずれかでありうる。
【0033】
本開示に係るEVAコポリマーは、ASTM D1709のB法(Method B)によって厚さ50μmのフィルムで測定されるダート落下衝撃強さ(Dart Drop Impact Strength)が、150~1200gFの範囲でありうる。ダート落下衝撃強さの下限は、150gF、175gF又は200gFのいずれかでありうる。ダート落下衝撃強さの上限は、500gF、600gF、1000gF又は1200gFのいずれかでありうる。ここで、任意の下限は任意の上限と組み合わせて使用することができる。
【0034】
本開示に係るEVAコポリマーは、ASTM D1922によって厚さ50μmのフィルムで測定されるエルメンドルフ引裂強さ(Elmendorf tear strength)(MD)が、100gFを超えうる。エルメンドルフ引裂強さ(MD)の下限は、100gF又は130gFのいずれかでありうる。
【0035】
本開示に係るEVAコポリマーは、ASTM D1922によって厚さ50μmのフィルムで測定されるエルメンドルフ引裂強さ(TD)が、150gFを超えうる。エルメンドルフ引裂強さ(TD)の下限は、150gF又は190gFのいずれかでありうる。
【0036】
本開示に係るEVAコポリマーは、ASTM D1003によって厚さ50μmのフィルムで測定されるヘイズ(haze)が、5%未満でありうる。ヘイズの上限は、5%又は3%のいずれかでありうる。
【0037】
本開示に係るEVAコポリマーは、ASTM D2457によって厚さ50μmのフィルムで測定される角度45°における光沢度(gloss)が、80を超えうる。光沢度の下限は、80又は90のいずれかでありうる。
【0038】
フィルム
本開示の1つ又は複数の実施形態は、単層構造又は多層構造でありうるフィルムを対象とすることができる。1つ又は複数の実施形態において、単層フィルム又は多層フィルムの少なくとも1層は、30~80%の範囲の量で存在する直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)と、3~65%の範囲の量で存在する、例えば上記バイオベースEVAコポリマー等のバイオベースEVAコポリマーと、15~50%の範囲の量で存在する低密度ポリエチレン(LDPE)と、20~40%の範囲の量で存在する高密度ポリエチレン(HDPE)とのブレンドを含むことができる。
【0039】
多層フィルム構造
産業用袋
本開示の1つ又は複数の実施形態は、本明細書に記載のバイオベースEVAコポリマーを、産業用袋において特定の利用可能性を有しうる多層フィルムに組み込んだものであり、この多層フィルムは、少なくとも3層形成された共押出多層フィルム又は積層多層フィルムでありうる。機械的特性(即ち、耐衝撃性改良剤として)及び接着性を向上させるために、バイオベースEVAを添加することができる。1つ又は複数の実施形態において、多層フィルムは、
- ブレンドの30~50質量%の範囲の量で存在するLLDPEと、ブレンドの0~20質量%の範囲の量で存在するEVAと、10~20質量%の範囲の量で存在するLDPEと、ブレンドの0~40質量%の範囲の量で存在するHDPEとのブレンドを含む内側層、
- ブレンドの50~70質量%の範囲の量で存在するLLDPEと、ブレンドの0~10質量%の範囲の量で存在するEVAと、ブレンドの40~60質量%の範囲の量で存在するLDPEとのブレンドを含む外側層、及び
- ブレンドの30~50質量%の範囲の量で存在するLLDPEと、ブレンドの5~20質量%の範囲の量で存在するEVAと、ブレンドの10~20質量%の範囲の量で存在するLDPEと、ブレンドの0~40質量%の範囲の量で存在するHDPEとのブレンドを含む中間層
を含むことができ、内側層、外側層又は中間層中の少なくとも1種のEVAが、本明細書に記載のバイオベースEVAである。
【0040】
食品包装
本開示の1つ又は複数の実施形態は、本明細書に記載のバイオベースEVAコポリマーを、食品包装において特定の利用可能性を有しうる多層フィルムに組み込んでおり、この多層フィルムは、例えば、少なくとも5層又は7層のダブルバブルプロセスによって形成することができる。収縮性や接着性をもたらすために、バイオベースEVAを添加することができる。
【0041】
1つ又は複数の実施形態において、多層フィルム構造は、厚さが20~120μmでよく、
- LDPE、LLDPE及び/又は超低密度ポリエチレン(VLDPE)等のPEの第一層であって、多層フィルムの20~40質量%を占めうる第一層、
- EVAを含む第二層であって、上記バイオベースEVAコポリマーを含むことができ、多層フィルムの10~20質量%を占めうる第二層、
- ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアミド及びエチレンビニルアルコール(EVOH)から選択されるバリア性ポリマーを含む第三層であって、多層フィルムの5~15質量%を占めうる第三層、
- EVAを含む第四層であって、上記バイオベースEVAコポリマーを含むことができ、多層フィルムの10~20質量%を占めうる第四層、
- LLDPE、VLDPE及び/又はLDPE等の封止材を含む第五層であって、多層フィルムの20~40質量%を占めうる第五層
を含むことができる。
【0042】
特定の実施形態において、第一層(最外層)は、フィルムの構造を担うことができ、以下の特性(上述したように厚さ50ミクロンで測定されるフィルム特性)を有するLLDPE及び/又はLDPEで製造することができる:ASTM D792によって測定される密度が0.915~0.925g/cm3である;ASTM D1238によって190℃及び2.16kgで測定されるメルトフローレートが0.5~3.5g/10minである;ASTM D882によって測定される破断点引張強さ(MD)が20~50MPaである;ASTM D882によって測定される破断点引張強さ(TD)が18~50MPaである;ASTM D882によって測定される破断点伸び(MD)が275%を超える;ASTM D882によって測定される破断点伸び(TD)が750%~の範囲である;ASTM D1709によって測定されるダート落下衝撃が75~1500g/F50である;ASTM D1922によって測定されるエルメンドルフ引裂強さ(MD)が125gFを超える;ASTM D1922によって測定されるエルメンドルフ引裂強さ(TD)が150gFを超える。グレードの例としては、EB853、EB852/72、TN7006、TS7006、Flexus 9212XP、Proxess 1509XP、Proxess 1809、Flexus 9211、Flexus 9200、HF2208S3、HF2207B5、LF0720/21AF、LF0720/20AF及びLF1020/21AFが挙げられ、これらはすべて、Braskem社から市販されている。
【0043】
第二層及び第四層は、例えば、上の段落に記述したバイオベースEVAコポリマー等のバイオベースEVAコポリマーで製造することができる。EVAコポリマー層は、バリア層と外部層との接着を担うことができる。特定の実施形態において、第二層及び第四層は、最終的な酢酸ビニル含有量が12~28質量%であるEVAコポリマーの組成物から形成される。1つ又は複数の実施形態において、EVAの組成物は、上記バイオベース(バイオ由来)のEVAと石油化学由来のEVAとの混合物でもよく、EVA組成物の最終的な酢酸ビニル含有量は、組成物の12~28質量%の範囲である。
【0044】
第三層はバリア性を担い、例えば、PVDC、ポリアミド(例えばナイロン等)及びEVOH等のポリマーで製造することができる。
【0045】
特に、第五層(最内層)は、フィルムの封止を担うことができ、以下の特性(上述したように厚さ50ミクロンで測定されるフィルム特性)を有するLLDPE及び/又はLDPEで製造することができる:ASTM D792によって測定される密度が0.905~0.925g/cm3である;ASTM D1238によって190℃及び2.16kgで測定されるメルトフローレートが0.5~4.5g/10minである;ASTM D882によって測定される破断点引張強さ(MD)が20~50MPaである;ASTM D882によって測定される破断点引張強さ(TD)が18~50MPaである;ASTM D882によって測定される破断点伸び(MD)が275%を超える;ASTM D882によって測定される破断点伸び(TD)が750%~の範囲である;ASTM D1709 (A)によって測定されるダート落下衝撃が75~1500g/F50である;ASTM D1922によって測定されるエルメンドルフ引裂強さ(MD)が125gFを超える;ASTM D1922によって測定されるエルメンドルフ引裂強さ(TD)が150gFを超える。グレードの例としては、EB853、EB852/72、TN7006、TS7006、Flexus 9212XP、Proxess 1509XP、Proxess 1809、Flexus 9211、Flexus 9200、HF2208S3、HF2207B5、LF0720/21AF、LF0720/20AF及びLF1020/21AF、Flexus Clingが挙げられ、これらはすべて、Braskem社から市販されている。
【0046】
上述した多層構造は5層構造であるが、7層構造を使用してもよいことが想定される。従って、1つ又は複数の実施形態において、多層フィルムは、厚さが20~120μmであってよく、以下の層:
- LDPE及び/又はLLDPE及び/又はVLDPE等のPEの第一層であって、多層フィルムの15~25質量%を占めうる第一層、
- EVAを含む第二層であって、上記バイオベースEVAコポリマーを含むことができ、多層フィルムの10~20質量%を占めうる第二層、
- 接着層を含む第三層であって、上記バイオベースEVAコポリマーを含むことができ、多層フィルムの10~20質量%を占めうる第三層、
- PVDC、ポリアミド(例えばナイロン等)及びEVOH等のバリア性ポリマーを含む第四層であって、多層フィルムの10~20質量%を占めうる第四層、
- 接着層を含む第五層であって、上記バイオベースEVAコポリマーを含むことができ、多層フィルムの10~20質量%を占めうる第五層、
- EVAを含む第六層であって、上記バイオベースEVAコポリマーを含むことができ、多層フィルムの10~20質量%を占めうる第六層、及び
- LLDPE、VLDPE、mLLDPE等のPEを含む第七層であって、多層フィルムの15~25質量%を占めうる第七層
を含むことができる。
【0047】
特に、第一層(最外層)は、フィルムの構造を担うことができ、以下の特性(上述したように厚さ50ミクロンで測定されるフィルム特性)を有するLLDPE及び/又はLDPEで製造することができる:ASTM D792によって測定される密度が0.915~0.925g/cm3である;ASTM D1238によって190℃及び2.16kgで測定されるメルトフローレートが0.5~3.5g/10minである;ASTM D882によって測定される破断点引張強さ(MD)が20~50MPaである;ASTM D882によって測定される破断点引張強さ(TD)が18~50MPaである;ASTM D882によって測定される破断点伸び(MD)が275%を超える;ASTM D882によって測定される破断点伸び(TD)が750%~の範囲である;ASTM D1709によって測定されるダート落下衝撃が75~1500g/F50である;ASTM D1922によって測定されるエルメンドルフ引裂強さ(MD)が125gFを超える;ASTM D1922によって測定されるエルメンドルフ引裂強さ(TD)が150gFを超える。グレードの例としては、EB853、EB852/72、TN7006、TS7006、Flexus 9212XP、Proxess 1509XP、Proxess 1809、Flexus 9211、Flexus 9200、HF2208S3、HF2207B5、LF0720/21AF、LF0720/20AF及びLF1020/21AFが挙げられ、これらはすべて、Braskem社から市販されている。
【0048】
第二層及び第六層は、フィルムに機械的特性を与えることができる構造層であり、例えば上の段落に記述したバイオベースEVAコポリマー等のバイオベースのEVAコポリマーで製造することができる。
【0049】
第三層及び第五層は、バリア層と中間層との接着を担うことができ、例えば上の段落に記述したバイオベースEVAコポリマー等のバイオベースのEVAコポリマーで製造することができる。特定の実施形態において、第三層及び/又は第五層中のEVAは、酢酸ビニル含有量が、EVAの12~28質量%であってもよい。他の実施形態において、EVAは、バイオベースEVA及び石油化学EVAを含むEVA組成物であって、EVA組成物の最終的な酢酸ビニル含有量が、EVA組成物の12~28質量%の範囲である、EVA組成物であってもよい。
【0050】
第四層はバリア性を担い、例えばPVDC、ポリアミド(例えばナイロン等)及びEVOH等のポリマーで製造することができる。
【0051】
特に、第七層(最内層)は、フィルムの封止を担うことができ、以下の特性(上述したように厚さ50ミクロンで測定されるフィルム特性)を有する、例えばLLDPE、VLDPE及び/又はLDPE等で製造することができる:ASTM D792によって測定される密度が0.905~0.925g/cm3である;ASTM D1238によって190℃及び2.16kgで測定されるメルトフローレートが0.5~4.5g/10minである;ASTM D882によって測定される破断点引張強さ(MD)が20~50MPaである;ASTM D882によって測定される破断点引張強さ(TD)が18~50MPaである;ASTM D882によって測定される破断点伸び(MD)が275%を超える;ASTM D882によって測定される破断点伸び(TD)が750%~の範囲である;ASTM D1709によって測定されるダート落下衝撃が75~1500g/F50である;ASTM D1922によって測定されるエルメンドルフ引裂強さ(MD)が125gFを超える;ASTM D1922によって測定されるエルメンドルフ引裂強さ(TD)が150gFを超える。グレードの例としては、EB853、EB852/72、TN7006、TS7006、Flexus 9212XP、Proxess 1509XP、Proxess 1809、Flexus 9211、Flexus 9200、HF2208S3、HF2207B5、LF0720/21AF、LF0720/20AF及びLF1020/21AF、Flexus Clingが挙げられ、これらはすべて、Braskem社から市販されている。
【0052】
1つ又は複数の実施形態において、多層フィルムは、上述したようにバイオベースEVAで製造することができ、電子線照射で処理してよく、その後、食品を充填し、フィルム収縮のために熱浴に供してもよい。
【0053】
フードストレッチフィルム
別の実施形態において、バイオベースEVAコポリマーは、フードストレッチフィルムの製造に使用することができる。このフィルムは、厚さが50~180μmの範囲でよく、以下に詳述する3つの層:
- LDPE及び/又はLLDPE等のPEの第一層であって、多層フィルムの10~30質量%を占めうる第一層、
- バイオベースEVAと任意のLLDPE及び/又はLDPE等とを含む第二層であって、多層フィルムの40~80質量%を占めうる第二層、及び
- LDPE及び/又はLLDPE等のPEの第三層であって、多層フィルムの10~30質量%を占めうる第三層
を有することができる。
【0054】
特に、第一層(最外層)は、フィルムの機械的特性を担うことができ、以下の特性(上述したように厚さ50ミクロンで測定されるフィルム特性)を有するLDPE及び/又はLLDPEで製造することができる:ASTM D792によって測定される密度が0.915~0.925g/cm3である;ASTM D1238によって190℃及び2.16kgで測定されるメルトフローレートが0.5~3.5g/10minである;ASTM D882によって測定される破断点引張強さ(MD)が20~50MPaである;ASTM D882によって測定される破断点引張強さ(TD)が18~50MPaである;ASTM D882によって測定される破断点伸び(MD)が275%を超える;ASTM D882によって測定される破断点伸び(TD)が750%~の範囲である;ASTM D1709によって測定されるダート落下衝撃が125~1500g/F50である;ASTM D1922によって測定されるエルメンドルフ引裂強さ(MD)が125gFを超える;ASTM D1922によって測定されるエルメンドルフ引裂強さ(TD)が150gFを超える。グレードの例としては、Flexus 9212XP、Flexus 9211、Flexus 9200、Proxess 1509XP、Proxess1806S3、HF2208S3、HF2207B5、TX7003、TS7003、TN7006及びTS7006が挙げられ、これらはすべて、Braskem社から市販されている。
【0055】
特に、第二層は、弾性挙動及び形状記憶を担うことができ、上記バイオベースEVAと、所望により、LLDPE及び/又はLDPEから選択されるPEとを含む組成物で製造することができる。1つ又は複数の実施形態において、中間層のバイオベースEVAは、酢酸ビニル含有量が4~20質量%の範囲であってもよい。1つ又は複数の実施形態において、LDPE及び/又はLLDPEは、最高で層の50質量%までの量で存在してもよい。LLDPE及びLDPEとしては、本明細書に記載の特性を有するものを挙げることができる。
【0056】
特に、第三層(最内層)は、フィルムの機械的特性及び封止を担うことができ、以下の特性(上述したように厚さ50ミクロンで測定されるフィルム特性)を有するLLDPE及び/又はLDPEで製造することができる:ASTM D792によって測定される密度が0.915~0.925g/cm3である;ASTM D1238によって190℃及び2.16kgで測定されるメルトフローレートが0.5~3.5g/10minである;ASTM D882によって測定される破断点引張強さ(MD)が20~50MPaである;ASTM D882によって測定される破断点引張強さ(TD)が18~50MPaである;ASTM D882によって測定される破断点伸び(MD)が275%を超える;ASTM D882によって測定される破断点伸び(TD)が750%~の範囲である;ASTM D1709によって測定されるダート落下衝撃が125~1500g/F50である;ASTM D1922によって測定されるエルメンドルフ引裂強さ(MD)が125gFを超える;ASTM D1922によって測定されるエルメンドルフ引裂強さ(TD)が150gFを超える。グレードの例としては、Flexus 9212XP、Flexus 9211、Flexus 9200、Proxess 1509XP、Proxess1806S3、HF2208S3、HF2207B5、TX7003、TS7003、TN7006及びTS7006が挙げられ、これらはすべて、Braskem社から市販されている。
【0057】
1つ又は複数の実施形態において、フードストレッチフィルムは、ASTM D4695によって測定される穿刺抵抗(puncture resistance)試験において、最大荷重(maximum force)が、5~20Nの範囲でありうる。
【0058】
1つ又は複数の実施形態において、フードストレッチフィルムの破断点エネルギー(energy at break)は、ASTM D4695によって測定される穿刺抵抗試験において50~300mJの範囲でありうる。
【0059】
1つ又は複数の実施形態において、フードストレッチフィルムの保持力(retained force)は、ASTM D5459によって測定される弾性回復(elastic recovery)試験において5~20Nの範囲でありうる。
【0060】
1つ又は複数の実施形態において、フードストレッチフィルムの残留変形(residual deformation)は、ASTM D5459によって測定される弾性回復試験において10~30%の範囲でありうる。
【0061】
1つ又は複数の実施形態において、フードストレッチフィルムの、ASTM D5459によって測定される弾性記憶(elastic memory)は、30~200%の範囲でありうる。
【0062】
添加剤
本開示に係るポリマー組成物は、ブレンド中にポリマー組成物に添加されると、様々な物理的及び化学的特性を改質する充填剤及び添加剤を含んでよい。そのような充填剤及び添加剤としては、例えば、加工助剤、潤滑剤、帯電防止剤、清澄剤、核形成剤、β核形成剤、滑り剤、酸化防止剤、相溶化剤、制酸剤、例えばHALS等の光安定剤、赤外線吸収剤、増白剤、無機充填剤、有機染料及び/又は無機染料、ブロッキング防止剤、加工助剤、難燃剤、可塑剤、殺生物剤、接着促進剤、金属酸化物、鉱物充填剤、流動促進剤、油、酸化防止剤、オゾン化防止剤、促進剤並びに加硫剤等の1種又は複数のポリマー添加剤が挙げられる。
【0063】
フィルムの形成
上述したように、本開示の1つ又は複数の実施形態は、単層フィルム及び多層フィルム等のフィルムを対象とすることができる。従って、1つ又は複数の実施形態は、上述したものを含むバイオベースEVAコポリマーを押出して、フィルムを形成する工程を対象とする。多層構造に関与する特定の実施形態において、押出は、バイオベースEVAを少なくとも1種の他のポリマーとともに共押出して多層フィルムを形成する工程を含むことができる。多層構造に関与する他の実施形態において、押出は、第一層(本明細書に記載のバイオベースEVAを含む)を押出し、少なくとも1種の他のポリマーを押出して少なくとも1層の他のフィルム層を形成し、2層以上のフィルムを積層して多層フィルムを形成する工程を含んであってもよい。更に、1つ又は複数の実施形態において、押出されたフィルム(単層又は多層)には、電子線を照射してもよい。
【0064】
その他の用途
本明細書に記載のバイオベースEVAは、一般に、共押出、冷却・冷凍食品包装、食品包装、高い機械抵抗を有する高透明フィルム、農業用温室を覆うための保温フィルム、農業用フィルム、ジオメンブレン、積層フィルム、封止材層、ストレッチフィルム及び射出成形部品に適用することができる。
【0065】
以上、いくつかの例示的な実施形態のみを詳述したが、当業者であれば、本発明から実質的に逸脱することなく例示的な実施形態に多くの改変が可能であることを容易に理解するであろう。従って、このような改変はすべて、添付の特許請求の範囲に定められるように本開示の範囲内に含まれることが意図されている。特許請求の範囲において、ミーンズ・プラス・ファンクションクレームは、記載された機能を果たすものとして本明細書に記載された構造に加えて、構造的な均等物だけではなく、均等な構造物をも包含することを意図している。従って、複数の木製部品を互いに固定するために、釘は円筒面を採用している一方、ネジは螺旋面を採用しているという点で、釘とネジは構造的な均等物ではないものの、複数の木製部品を固定するという環境においては、釘とネジは均等な構造物でありうる。本願請求項において関連する機能とともに用語「~のための手段」(means for~)を明示的に使用するものを除いて、いずれの本願請求項のいかなる限定に対しても、米国特許法(35 U.S.C.)第112条第6項を援用しないことは、本願出願人の明示的な意図である。
【国際調査報告】