(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-22
(54)【発明の名称】塩化チオホスホリル及びアセフェートを調製するプロセス
(51)【国際特許分類】
C01B 25/14 20060101AFI20221215BHJP
C07F 9/24 20060101ALI20221215BHJP
B01J 31/02 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
C01B25/14
C07F9/24 Z
B01J31/02 102M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523009
(86)(22)【出願日】2020-10-13
(85)【翻訳文提出日】2022-06-10
(86)【国際出願番号】 IB2020059584
(87)【国際公開番号】W WO2021074775
(87)【国際公開日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】201921042520
(32)【優先日】2019-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521257525
【氏名又は名称】ユーピーエル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】UPL LIMITED
【住所又は居所原語表記】UPL Limited, UPL House, 610 B/2, Bandra Village, Off Western Express Highway, Bandra (East), Mumbai, Maharashtra, India
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュロフ ラジュ デヴィダス
(72)【発明者】
【氏名】プラサド ヴィク
(72)【発明者】
【氏名】デサイ アムル マヌバイ
(72)【発明者】
【氏名】ワンケード ゴパルラオ アトゥル
(72)【発明者】
【氏名】カタリア リララム カマル
(72)【発明者】
【氏名】ティワリ ラージ クマール
(72)【発明者】
【氏名】アローラ ラージ クマール
【テーマコード(参考)】
4G169
4H050
【Fターム(参考)】
4G169AA06
4G169BE01A
4G169BE14A
4G169CB81
4G169DA02
4G169EE07
4G169FB14
4G169FB77
4H050AA02
4H050AC90
(57)【要約】
本発明は、アセフェート及びその中間体の調製のための、改善されたプロセスを開示する。より具体的には、本発明は、駆除剤及び薬学的に活性な化合物の商業生産に有用な塩化チオホスホリルを調製するプロセスに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩基の存在下において、塩化チオホスホリル中で、三塩化リンを硫黄と反応させることを含む、塩化チオホスホリルを調製するプロセス。
【請求項2】
前記塩基が、トリアルキルアミンである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記塩基が、トリブチルアミンである、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記塩基が、三塩化リンに対して0.01~0.08モル分率の範囲の量で使用される、請求項2に記載のプロセス。
【請求項5】
三塩化リンと硫黄とのモル比が、約1:1である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記反応が、100~150℃の範囲の温度で実施される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記反応が、60分未満の時間内で実施される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記反応が、常気圧で実施される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
反応混合物から純粋な塩化チオホスホリルを蒸留して、蒸留残渣を残すことを更に含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
前記蒸留残渣を、三塩化リンと硫黄との後続の反応段階に再利用して、塩化チオホスホリルを生成することを更に含む、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
第1段階後の前記再利用が、純粋な塩化チオホスホリルを生成するために、50サイクル超が実施される、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
塩基の存在下において、塩化チオホスホリル中で三塩化リンと硫黄とを反応させて、塩化チオホスホリルを得ることを含む、アセフェートを調製するプロセス。
【請求項13】
塩化チオホスホリル中における三塩化リンと硫黄との前記反応が、100~150℃の範囲の温度で実施される、請求項11に記載のプロセス。
【請求項14】
アセフェートを調製するプロセスであって、
a) 塩化チオホスホリルを調製することと、
b) 塩化チオホスホリルをアセフェートに変換することと、
を含む、プロセス。
【請求項15】
前記工程a)が、トリブチルアミン触媒の存在下において、三塩化リン、塩化チオホスホリル、及び硫黄を処理して、塩化チオホスホリルを得ることを含む、請求項13に記載のプロセス。
【請求項16】
反応混合物から純粋な塩化チオホスホリルを蒸留して、蒸留残渣を残すことを更に含む、請求項14に記載のプロセス。
【請求項17】
前記蒸留残渣を、三塩化リンと硫黄との後続の反応段階に再利用して、塩化チオホスホリルを生成することを更に含む、請求項15に記載のプロセス。
【請求項18】
工程b)における前記変換が、
(i) 塩化チオホスホリルをメタノールで処理して、O-メチルホスホロジクロリドチオエートを得ること、
(ii) O-メチルホスホロジクロリドチオエートをメタノールで処理して、O,O-ジメチルホスホロクロリドチオエートを得ること、又は
(iii) O,O-ジメチルホスホロクロリドチオエートを塩基で処理して、O,O-ジメチルホスホラミドチオエートを得ること、
から選択された少なくとも1つの工程を含む、請求項13に記載のプロセス。
【請求項19】
無水酢酸の存在下においてO,O-ジメチルホスホラミドチオエートをアセチル化して、アセフェートを得ることを更に含む、請求項17に記載のプロセス。
【請求項20】
前記反応が、各工程生成物を単離することによって進行する、又は各工程生成物を単離することなく、連続プロセスとして進行する、請求項13~18のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項21】
塩化チオホスホリルが、少なくとも95%、好ましくは少なくとも99%の純度で得られる、請求項1~20のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アセフェート及びその中間体の調製のための、改善されたプロセスに関する。より具体的には、本発明は、駆除剤及び薬学的に活性な化合物の商業生産に有用な塩化チオホスホリルを調製するプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
ホスホラミドチオエートは、様々な環境において様々な虫に対する優れた殺虫活性が知られている。浸透殺虫剤であるアセフェートは、果物(柑橘類を含む)、ツル、ホップ、オリーブ、綿、大豆、ピーナッツ、マカダミアナッツ、ビート、アブラナ属、セロリ、豆、ジャガイモ、米、タバコ、観賞植物、森林、及び他の作物において、広範囲の咀嚼性及び吸汁性の虫、例えば、アブラムシ、アザミウマ、鱗翅類の幼虫、ハバチ、ハモグリムシ、ヨコバイ、ネキリムシなどを制御する幅広く使用されるホスホラミドチオエートの1つである。
【0003】
塩化チオホスポリル(Thiophosporyl chloride)は、農薬産業における有機リン化合物の合成に有用な出発物質である。
【0004】
ドイツ特許第1145589号明細書は、アルミニウム又はその合金を用いて、大気圧にて液相で、三塩化リン及び硫黄を処理することによって、塩化チオホスホリルが単体で又はハロゲンと共に得られることを開示している。触媒として金属ハロゲン化物を用いる同様のプロセスが、特許文献(米国特許第2715561号、同第2850354号、同第2850354号)に開示されている。
【0005】
米国特許第5464600号明細書は、第三級アミン触媒の存在下において三塩化リンと硫黄とを反応させることによる、塩化チオホスホリルを調製するためのプロセスを開示している。このプロセスにおける改善とは、触媒としての第三級アミン(芳香族及び脂肪族)の使用である。第三級アミンは、5-エチル-2-メチルピリジン、2-メチルピリジン、2,4-ジメチルピリジン、2,6-ジメチルピリジン、2,4,6-トリメチルピリジン、トリ-n-プロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン、トリス-[2-(2-メトキシエトキシ)エチル]アミン、及び1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンからなる群から選択される。実施例に記載されるように、反応混合物を、9時間(5-エチル-2-メチルピリジンを介して)、又は14時間(2,6-ルチジンを介して)、又は3時間44分(トリブチルアミンを介して)、又は19時間と17分間(N,N-ジメチルアニリンを介して)、又は1,8-ジアザビシクロ[5.4.0.]ウンデカ-7-エン(DBU)を介して15時間6分間加熱した(cooked)。
【0006】
米国特許第6251350号明細書は、触媒量の第三級アミンの存在下、及び触媒量の窒素酸化物フリーラジカルの実質的な存在下において、三塩化リンと硫黄とを反応させることによる、塩化チオホスホリルを調製するためのプロセスを開示している。ニトロソフリーラジカルは、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシ(「TEMPO」)である。この特許文献の実施例1は、塩化チオホスホリルを生成するために、第三級アミン及びTEMPOの存在下において約2時間8分にわたり実施される反応を開示している。
【0007】
活性炭は、一般に固相触媒として使用されることで、チオール化反応を促進し、定量的変換をもたらすことが観察されている。しかしながら、この触媒法は、使用中、商業生産における多くの問題に関連している。蒸留による生成物の単離中に、触媒は持ち越され、生成物の黒変などといった生成物の外観不良を生じる。直ちに挙げることのできる他の実用上の問題は、反応器ポット/HEELにおける発泡の問題及び固体触媒によるカラム内のフラッディング、触媒の枯渇などである。HEEL及び保持された触媒の、この高度に腐食性で二相の高粘性スラリー塊の充分な再利用、除去、及び廃棄の後に続くこの欠点とは、廃棄に対する主要な流出物の懸念、及び安全性欠陥であることが多い。したがって、このプロセスは工業的に実行可能ではなく、スケールアップに適していない。
【0008】
したがって、農薬産業における有機リン化合物を調製するための中間体として使用される塩化チオホスホリルの商業規模調製のために、簡単で、費用対効果が高く、迅速、かつ商業的に実行可能なプロセスを開発する必要性が存在する。本発明は、したがって、アセフェート及びその中間体塩化チオホスホリルの大規模調製のための、工業的に実行可能かつ費用対効果の高いプロセスを提供する。
【発明の概要】
【0009】
一態様では、本発明は、塩化チオホスホリルの調製のための商業的かつ迅速なプロセスを提供する。
【0010】
別の態様では、本発明は、高収率及び高純度で塩化チオホスホリルを調製するための連続プロセスを提供する。
【0011】
別の態様では、本発明は、本発明に従って調製された塩化チオホスホリルを用いてアセフェートを調製するための、簡単で時間のかからない商業的プロセスを提供する。
【0012】
別の態様では、本発明は、アセフェートの調製に使用される、中間体塩化チオホスホリルを調製するための商業的プロセスを提供する。
【0013】
別の態様では、本発明は、アセフェートを調製するための連続プロセスを提供する。
【0014】
以下のように要約される本発明の態様、有利な特徴、及び好ましい実施形態は、それぞれ単独で又は組み合わせて、本発明のこの目的及び他の目的の解決に寄与する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書に示される詳細は、単に例示として、かつ本発明の様々な実施形態の例示的な考察の目的のためのものであり、本発明の原理及び概念態様の最も有用かつ容易に理解される説明であると考えられるものを提供するために提示される。この点に関して、本発明の基本的理解のために必要なものよりも詳細に本発明の詳細を示す試みはなされておらず、説明は、本発明のいくつかの形態が実践において具現化され得るかを当業者に明らかにする。
【0016】
次に、本発明をより詳細な実施形態を参照して説明する。しかしながら、本発明は、異なる形態で具現化されてもよく、本明細書に記載される実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が完璧かつ完全になるように提供され、本発明の範囲を当業者に完全に伝える。
【0017】
別途定義のない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本発明の説明において本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、本発明を限定することを意図するものではない。本発明の説明及び添付の特許請求の範囲で使用されるとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が別途明確に示さない限り、複数形も含むことが意図される。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、それらの全体が参照により明示的に組み込まれる。
【0018】
したがって、「A continuous flow process for preparation of Acephate and its intermediates」と題される、本出願と同時係属中のインド特許出願第202021004454号は、あたかも出願公開、特許、又は特許出願が参照により本明細書に組み込まれることが具体的に示されたのと同程度に、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本特許出願及びその出願公開の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0019】
別途示されない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される成分、反応条件などの量を表す全ての数は、全ての場合において、用語「約」によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、反対に指示されない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本発明によって得られることが求められる所望の特性に応じて変化し得る近似値である。少なくとも、特許請求の範囲の範囲に対する均等論の適用を制限することを試みてはならず、各数値パラメータは、有効数字及び通常の四捨五入法の数に照らして解釈されるべきである。
【0020】
本発明の広い範囲を示す数値範囲及びパラメータは近似値であることにかかわらず、特定の実施例に記載される数値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら、いかなる数値も、それぞれの試験測定値に見出される標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を本質的に含む。本明細書全体を通して与えられるあらゆる数値範囲は、より狭い数値範囲が全て本明細書に明示的に記載されているかのように、より広い数値範囲内に入るあらゆるより狭い数値範囲を含む。
【0021】
本発明の追加の利点は、以下の説明に部分的に記載され、説明から部分的に明白となるであろうか、又は本発明の実施によって習得され得る。前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明はいずれも単に例示的かつ説明的なものであり、特許請求される本発明を限定するものではないことを理解されたい。
【0022】
驚くべきことに、本明細書に開示されるように改善された、塩化チオホスホリルを調製するためのプロセスは、再現可能な収率をもって効率的に高品質の生成物を産生する、大規模生産を安全に取り扱うことができる、スケーラブルな方法をより低いコストで提供する。
【0023】
本発明は、本明細書に記載の塩化チオホスホリルを調製するための、効率的、効果的、且つ安全なプロセスを提供する。
【0024】
一態様では、本発明は、触媒量の塩基の存在下における、塩化チオホスホリル中での三塩化リンと硫黄との反応を含む、塩化チオホスホリルを調製するプロセスを提供する。
【0025】
一実施形態では、本プロセスは、塩基の存在下における、塩化チオホスホリル中での三塩化リンと硫黄との反応を含み、この反応は、100~150℃の範囲の温度で実施される。
【0026】
一実施形態では、本プロセスはバランスがよく、所望の生成物への迅速な変換を確実にして、加熱時間を短くするのに充分である。
【0027】
驚くべきことに、塩基の存在下において、塩化チオホスホリル中で反応が実施される場合、反応時間は、実質的かつ有意に低減され得ることが見出された。理論に拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、出発塩化チオホスホリルが、反応構成成分をまとめるための自己溶媒として作用し、触媒塩基の存在下において、反応を促進し、反応時間を有意に低減すると考えている。
【0028】
したがって、本発明は、塩基の存在下において、塩化チオホスホリル中で、三塩化リンを硫黄と反応させることを含む、塩化チオホスホリルを調製するプロセスに関する。
【0029】
一実施形態では、触媒塩基の存在下、塩化チオホスホリル中の三塩化リンと硫黄との反応は、60分未満の時間内で実施される。
【0030】
一実施形態では、塩化チオホスホリルを得るために、反応は20~60分間加熱される。
【0031】
一実施形態では、塩基の存在下、塩化チオホスホリル中の三塩化リンと硫黄との反応は、20分間実施される。
【0032】
一実施形態では、塩基の存在下、塩化チオホスホリル中の三塩化リンと硫黄との反応は、30分間実施される。
【0033】
一実施形態では、塩基の存在下、塩化チオホスホリル中の三塩化リンと硫黄との反応は、40分間実施される。
【0034】
一実施形態では、塩基の存在下、塩化チオホスホリル中の三塩化リンと硫黄との反応は、60分間実施される。
【0035】
一実施形態では、触媒は、アルキルアミン、好ましくはトリアルキルアミンである。
【0036】
一実施形態では、触媒は、トリブチルアミンである。
【0037】
一実施形態では、触媒は、初期充填した三塩化リンに対して0.01~0.08モル分率の範囲の量で使用される。
【0038】
一実施形態では、三塩化リンと硫黄とのモル比は、約1:1である。
【0039】
一実施形態では、塩基の存在下、塩化チオホスホリル中の三塩化リンと硫黄との反応は、100~150℃の範囲の温度で実施される。
【0040】
一実施形態では、塩基の存在下における塩化チオホスホリル中での三塩化リンと硫黄との反応は、110~130℃の範囲の温度で実施される。
【0041】
一実施形態では、塩基の存在下における塩化チオホスホリル中での三塩化リンと硫黄との反応は、大気圧で実施される。
【0042】
一実施形態では、三塩化リン及び硫黄は、当量比で反応する。
【0043】
一実施形態では、三塩化リンとイオウとの反応は、所望の生成物を得るために、触媒量の塩基及び塩化チオホスホリルの存在下において、60分未満の時間で実施される。
【0044】
本発明によれば、塩化チオホスホリルを合成するための方法を示す反応の概略は、以下のように表される。
【0045】
【0046】
一実施形態では、触媒は、塩基である。塩基はトリアルキルアミンである。
【0047】
一実施形態では、塩基はトリブチルアミンであり、三塩化リンに対して0.01~0.08モル分率の範囲の量で使用される。
【0048】
一実施形態では、所望の生成物はPSCl3であり、高収率及び高純度で得られる。
【0049】
本発明によれば、残渣の5~7回の再利用後の生成物収率は、93~95%で安定化される。
【0050】
したがって、本発明により得られる生成物PSCl3は、95%を超える純度を有する。
【0051】
本発明により得られる生成物PSCl3は、少なくとも98%の純度を有する。
【0052】
本発明により得られる生成物PSCl3は、少なくとも99%の純度を有する。
【0053】
一実施形態では、本プロセスは、反応混合物から塩化チオホスホリル(PSCl3)を留去して、後続バッチで再利用される「HEEL(残渣)」と称される未蒸留残留物を残すことを更に含む。典型的には、残渣は、塩化チオホスホリル及び触媒を含む、未蒸留残留物/流体である。
【0054】
一実施形態では、本プロセスは、反応混合物から純粋な塩化チオホスホリルを蒸留して、蒸留残渣を残すことを含む。
【0055】
一実施形態では、本プロセスは、蒸留残渣を後続のバッチに再利用することを更に含む。
【0056】
一実施形態では、本プロセスは、少なくとも20~50サイクルで実施される。
【0057】
一実施形態では、本プロセスは、50サイクル超で実施される。
【0058】
一実施形態では、本プロセスは、約20~30サイクルで実施される。
【0059】
一実施形態では、本プロセスは、バッチ又は半連続操作モードのいずれかで実行されてもよい。
【0060】
一実施形態では、本プロセスは、三塩化リンと硫黄との反応段階で蒸留残渣を連続的に再利用して、塩化チオホスホリルを生成することを更に含む。
【0061】
本発明によれば、本プロセスは、バッチ反応又は連続反応のいずれにも非常に好適である。連続反応において、蒸留残渣は、硫黄と三塩化リンとが反応する一次反応器段階で連続して再利用され、この再利用は約20~50サイクル以上にわたり効果的に継続することができる。
【0062】
典型的には、三塩化リンは、触媒を保持する、塩化チオホスホリルを含む溶媒中又は蒸留ポット内の未蒸留残留物HEEL中で、硫黄により処理される。反応の完了後、混合物を蒸留に供し、それによって生成物を高収率及び高純度で分離する。
【0063】
典型的には、反応混合物は蒸留され、生成物として2つの流れ(残渣に再利用するための蒸留物-1、及び塩化チオホスホリルを含有する蒸留物-2)が回収される。主に塩化チオホスホリルを含有する反応生成物の蒸留中に得られた蒸留物-1が約95~98%であり、これはアセフェートを連続生成するための反応減速材(reaction moderator)として使用される。
【0064】
このシステムはバランスがよく、4つの構成成分からなる反応混合物の沸点範囲を高くして迅速な変換を確実にし、結果として加熱時間を短くするのに充分である。
【0065】
本発明にかかるプロセスの利点:
i) プロセス全体にわたり単相反応である。
ii) 反応中又は作業中の反応生成物に発泡が観察されない。
iii) 塩化チオホスホリル回収中の蒸気温度が低い。
iv) 充分に再利用した後の、HEELの商業的な簡単かつ安全な廃棄。
v) 生成物の品質が、無色の液体(異物ゼロ)として98%を超える。
vi) HEELの5~7回の再利用後における生成物収率が93~95%と高い。
vii) HEELに保持された触媒は、後続の再利用バッチに利用可能である。その追加充填は50サイクル後にのみ必要とされ得る。触媒の枯渇は、反応を完了するための加熱時間の増加によって顕著に認められた。
viii) 三塩化リンの新しい充填間で反転すること;窒素ブランケット下におけるHEELに対する硫黄及び触媒(適宜);加熱時間を設けること(30~60分)、及び2つの流れを蒸留する(生成物としてHEEL&塩化チオホスホリー(Thiophosphory Chloride)に再利用するための蒸留物-1)による、半連続製造システム。
ix) 充分な再利用(50回超)の後、HEELは、廃棄のためにドラム内へ取り出するのが容易であることが観察観察された。最後に、HEELは、廃棄のために、苛性アルカリ水溶液で処理し、オフガスのスクラブ洗浄を行ってもよい。
x) この改善は、触媒としての液相塩基アミンと共に高ボイラ反応媒体を使用することを含み、これによって、高品質で高収率の生成物、操作容易性、高処理量、産業衛生及び安全性、並びに充分な再利用後の残留物の容易な取出し及び廃棄をもたらす。
xi) 有害なフリーラジカル副反応を避けるために、TEMPOなどの補助触媒の使用が回避される。
xii) 完了までの反応時間が有意に減少する。
【0066】
別の態様では、本発明は、殺虫剤、すなわちアセフェート(N-(メトキシ-メチルスルファニルホスホリル)アセトアミド)及びその中間体を製造するためのプロセスを提供する。
【0067】
一実施形態では、本発明は、塩基の存在下、塩化チオホスホリル中での三塩化リンと硫黄とを反応させて、塩化チオホスホリルを得ることを含む、アセフェートを調製するプロセスを提供する。
【0068】
一実施形態では、本発明は、アセフェートを調製するための、以下を含むプロセスを提供する:
1) 触媒量の塩基の存在下、塩化チオホスホリル中で、三塩化リンと硫黄とを反応させることにより、塩化チオホスホリルを調製すること;
2) 工程(1)の塩化チオホスホリルを用いてO-メチルホスホロジクロリドチオエート(モノエステル)を調製すること;
3) 工程(2)のモノエステルを用いてO,O-ジメチルホスホロクロリドチオエート(ジエステル)を調製すること;
4) 工程(3)のジエステルを用いてO,O-ジメチルホスホルアミドチオエート(DMPAT)を調製することと;及び
5) 工程(4)のDMPATを用いてアセフェートを調製すること。
【0069】
工程4)に記載のプロセスは、触媒性アルキル硫酸、例えば硫酸ジメチルでDMPATを処理してメタミドホスを形成することを含み、形成されたメタミドホスは、無水酢酸を用いるアセチル化反応に供されて、N-(メトキシ-メチルスルファニルホスホリル)アセトアミドを形成する。
【0070】
したがって、一実施形態では、アセフェートを調製するプロセスは、高収率及び高純度の塩化チオホスホリルを得るための、トリブチルアミン触媒の存在下、塩化チオホスホリル中での三塩化リンと硫黄との反応を含む。
【0071】
一実施形態では、塩化チオホスホリル中での三塩化リンと硫黄との反応は、100~150℃の範囲の温度で実施される。
【0072】
一実施形態では、アセフェートを調製するプロセスは、塩化チオホスホリル中の三塩化リンと硫黄との反応を、トリブチルアミン触媒の存在下において、120~150℃の範囲の温度で約60分未満実施して、高収率及び高純度の塩化チオホスホリルを得ることを特徴とする。
【0073】
本発明によれば、アセフェートを合成するための方法を示す反応の概略は、以下のように表される。
【0074】
【0075】
一態様では、本発明は、以下を含む、アセフェートを調製するためのプロセスを提供する:
a) 塩化チオホスホリルを調製することと、
b) 塩化チオホスホリルをアセフェートに変換すること。
【0076】
一実施形態では、工程a)は、トリブチルアミン触媒の存在下において、三塩化リン、塩化チオホスホリル、及び硫黄を処理して、塩化チオホスホリルを得ることを含む。
【0077】
一実施形態では、本プロセスは、反応混合物から純粋な塩化チオホスホリルを蒸留して、蒸留残渣を残すことを更に含む。
【0078】
一実施形態では、本プロセスは、蒸留残渣を、三塩化リンと硫黄との後続の反応段階に再利用して、塩化チオホスホリルを生成することを更に含む。
【0079】
一実施形態では、工程b)における変換は、以下から選択された少なくとも1つの工程を含む:
(i) 塩化チオホスホリルをメタノールで処理して、O-メチルホスホロジクロリドチオエートを得ること、
(ii) O-メチルホスホロジクロリドチオエートをメタノールで処理して、O,O-ジメチルホスホロクロリドチオエートを得ること、又は
(iii) O,O-ジメチルホスホロクロリドチオエートを塩基で処理して、O,O-ジメチルホスホラミドチオエートを得ること。
【0080】
一実施形態では、本プロセスは、無水酢酸の存在下においてO,O-ジメチルホスホラミドチオエートをアセチル化して、アセフェートを得ることを更に含む。
【0081】
一実施形態では、アセフェートを調製するためのプロセスは、以下を含む:
a) トリブチルアミン触媒の存在下において、トリブチルアミン触媒中で三塩化リンと塩化チオホスホリルと硫黄とを反応させて、塩化チオホスホリルを得ること;及び
b) 工程(a)で調製された塩化チオホスホリルを用いて、アセフェートを調製すること。
【0082】
一実施形態では、アセフェートを調製するためのプロセスは、以下を含む:
a) トリブチルアミン触媒の存在下において、塩化チオホスホリル中で三塩化リンと硫黄とを反応させて、塩化チオホスホリルを得ること;及び
b) 塩化チオホスホリルをメタノールで反応させて、O-メチルホスホロジクロロジチオエート(モノエステル)を調製すること;及び
c) 工程(b)で調製されたO-メチルホスホロジクロロジチオエート(モノエステル)を用いて、アセフェートを調製すること。
【0083】
一実施形態では、塩化チオホスホリルは、連続モードでメタノールと反応させる。
【0084】
一実施形態では、塩化チオホスホリルは、バッチモードでメタノールと反応させる。
【0085】
一実施形態では、メタノールの代わりに他のアルコール、好ましくは低級アルコールもまた使用してもよい。
【0086】
一実施形態では、アセフェートを調製するためのプロセスは、以下を含む:
a) トリブチルアミン触媒の存在下において、塩化チオホスホリル中で、三塩化リンと硫黄とを反応させて塩化チオホスホリルを得ること;及び
b) 塩化チオホスホリルをメタノールと反応させて、O-メチルホスホロジクロロジチオエート(モノエステル)を調製すること;及び
c) O-メチルホスホロジクロロジチオエート(モノエステル)をメタノールと反応させて、O,O-ジメチルホスホロクロロジチオエートを調製すること;及び
d) 工程(c)で調製されたO,O-ジメチルホスホロクロロジチオエートを用いて、アセフェートを調製すること。
【0087】
一実施形態では、O,O-ジメチルホスホロクロロジチオエートを調製するためにO-メチルホスホロジクロロジチオエート(モノエステル)をメタノールと反応させる工程は、1~5時間、好ましくは2~3時間実施される。
【0088】
一実施形態では、アセフェートを調製するためのプロセスは、以下を含む:
a) トリブチルアミン触媒の存在下において、塩化チオホスホリル中で、三塩化リンと硫黄とを反応させて塩化チオホスホリルを得ること;及び
b) 塩化チオホスホリルをメタノールで反応させて、O-メチルホスホロジクロロジチオエート(モノエステル)を調製すること;及び
c) O-メチルホスホロジクロロジチオエート(モノエステル)をメタノールと反応させて、O,O-ジメチルホスホロクロロジチオエート(ジエステル)を調製すること;
d) ジエステルを水酸化アンモニウム及び水酸化ナトリウムと反応させて、DMPAT(O,O-ジメチルホスホルアミドチオエート)を生成すること;及び
e) 工程(d)で生成されたDMPATを用いて、アセフェートを調製すること。
【0089】
一実施形態では、アセフェートを調製するために、DMPATはアセチル化反応に供される。
【0090】
一実施形態では、アセフェートを調製するためのプロセスは、以下を含む:
a) トリブチルアミン触媒の存在下において、塩化チオホスホリル中で、三塩化リンと硫黄とを反応させて塩化チオホスホリルを得ること;及び
b) 塩化チオホスホリルをメタノールで反応させて、O-メチルホスホロジクロロジチオエート(モノエステル)を調製すること;及び
c) O-メチルホスホロジクロロジチオエート(モノエステル)をメタノールと反応させて、O,O-ジメチルホスホロクロロジチオエート(ジエステル)を調製すること;
d) ジエステルを水酸化アンモニウム及び水酸化ナトリウムと反応させて、DMPAT(O,O-ジメチルホスホルアミドチオエート)を生成すること;及び
e) アルキルサルフェート(alkyl sulphate)を用いてDMPATを異性化させ、続いてアセチル化反応を行い、アセフェートを調製すること。
【0091】
上記の工程で得られた反応生成物は、反応から単離若しくは分離されるか、又は当業者に知られている技術による追加の処理を行うことなく次の段階へと進められる。したがって、本明細書に記載の化合物は、従来の様式で反応混合物から回収され、精製され得る。
【0092】
上述したプロセスは、各工程の生成物を単離することによって反応を進行させてもよいし、又は各工程の生成物を単離することなく、連続プロセスとして進行させてもよい。
【0093】
一実施形態では、アセフェートを調製するプロセスは、トリブチルアミン触媒の存在下において、塩化チオホスホリル中で、三塩化リン及び硫黄を処理して、塩化チオホスホリルを得ることと、更にアセフェートへ変換することとを含む。
【0094】
本発明にかかるプロセスは、少なくとも95%、好ましくは少なくとも99%の純度で塩化チオホスホリルを提供する。
【0095】
一実施形態では、本発明は、記載された方法の工程による、本明細書に記載の塩化チオホスホリルの、本明細書に記載のアセフェートへの変換を提供する。一実施形態では、塩化チオホスホリルのアセフェートへの変換は、以下の工程を含む。
工程1:塩化チオホスホリルの調製。
工程2:O-メチルホスホロジクロリドチオエート(モノエステル)の調製。
工程3:O,O-ジメチルホスホロクロリドチオエート(ジエステル)の調製。
工程4:O,O-ジメチルホスホルアミドチオエート(DMPAT)の調製;及び
工程5:アセフェートの調製。
【0096】
上記で概説した一連の工程は、アセフェート生成のための全体的なスキームに統合することができる。そのような統合型プロセスは、概して、本明細書に記載される好適な反応条件下における、以下の工程からなる:
工程1:第1の工程は、アルキルアミン、例えばトリブチルアミン触媒の存在下において、塩化チオホスホリル中で、三塩化リン及び硫黄を処理することによる、塩化チオホスホリルの形成である。
【0097】
一実施形態では、反応は、100~150度の範囲の温度で、約60分間、好ましくは30~40分間実施される。
【0098】
一実施形態では、トリエチルアミン、n-プロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンなどのアルキルアミンもまた使用することができる。
【0099】
工程2:この工程では、-10~0℃の低温で約1~5時間、メタノールで塩化チオホスホリルを処理することによって、O-メチルホスホロジクロリドチオエートを調製する。
【0100】
工程3:この工程では、-10~0℃の温度で約1~5時間、O-メチルホスホロジクロリドチオエートを塩基の存在下においてメタノールで処理して、O,O-ジメチルホスホロクロリドチオエート(ジエステル)を得る。
【0101】
塩基は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、又はこれらの混合物からなる群から選択される。
【0102】
工程4:この工程では、工程3で得られたO,O-ジメチルホスホロクロリドチオエート(ジエステル)を、水酸化アンモニウムで処理して、DMPATを得る。反応は、20~30℃の範囲の温度で1~3時間、塩基の存在下において好ましくは実施され、この塩基は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、又はこれらの混合物からなる群から選択される。このようにして得られたDMPATは、塩化メチレンなどの好適な溶媒で抽出することによって混合物から単離される。
【0103】
工程5:この工程では、DMPATは、アルキルサルフェート、例えば硫酸ジメチルを用いて異性化されて、メタミドホスを形成する。反応は、好適な溶媒、例えば二塩化メチレン中で、30~50℃の範囲の温度で2~5時間実施される。溶媒中のメタミドホスを含有する反応混合物は、したがって、アセチル化によってアセフェートへと変換するために使用される。アセチル化反応は、高収率及び高純度の所望の生成物であるアセフェートを得るために、無水酢酸及び好適な酸、例えば硫酸を用いて実施される。アセチル化は、30~50℃の範囲の温度で2~5時間実施される。このようにして得られた最終生成物であるアセフェートは、好適な溶媒、例えば酢酸エチル又は二塩化メチレンを用いて結晶化することができる。
【0104】
有利には、アセフェートを調製するためのプロセスは、トリブチルアミン触媒の存在下において、塩化チオホスホリル中で、三塩化リンと硫黄とを処理して、60分未満で塩化チオホスホリルを得ること、及び本明細書に記載のプロセス又は当業者によって理解される従来の様式によって更にアセフェートへと変換することを含む。
【0105】
本発明のプロセススキームは、最終生成物の収率及び純度を有利に増加させる。
【0106】
本発明にかかるアセフェートの生成のための全体的なスキームは、迅速、単純、安価、堅牢、高速、例えば短いサイクル時間、並びに商業的及び工業的に実施可能である。
【0107】
ここで、本発明は、以下の実施例を参照してより詳細に説明され、これらの実施例及びその他の対応物が本開示に照らして当業者に明らかになるので、これらは決して本開示の範囲を限定すると見なされるべきではない。当業者は、上記の一般的な合成経路が、必要に応じて出発物質を変化させるための一般的な反応を示すことを理解するであろう。提供されていない特定の反応は当業者に知られており、そのような反応は当業者に周知であり、当業者の一般的な知識内にあると考えられる適切な条件である。
【実施例】
【0108】
実施例1
本発明にかかる塩化チオホスホリルの調製
オーバーヘッド撹拌機、反応塊用温度センサ、及び温度センサ付きオイルバス;蒸気温度;0℃に冷却した冷却器、窒素ブランケット、アダプタ及び回収フラスコ、並びにオフガスをクエンチするための5~10%の苛性スクラバー(caustic scrubber)を備えた1Lの4つ口丸底フラスコ内に、硫黄(2.53モル、81g)及び塩化チオホスホリル(450g)を加えた。次いで、トリブチルアミン(5g)をフラスコに加えた。反応混合物を連続撹拌下において徐々に加熱還流させた。三塩化ホスホリル(2.54モル、350g)をこの混合物に滴加した。反応を塊用温度センサによって監視し、徐々に130℃の一定温度まで到達させ、130℃の安定した塊温度に達した後、約1時間加熱した。三塩化リンの95%超が変換されたのを確認後、反応混合物を常圧蒸留に供した。三塩化ホスホリルの最初の留分(蒸留物-1、反応塊の前駆留分:約5%;45~50g)を回収し、次いで、塩化チオホスホリルの主生成物流(400~405g)を、純度98%超の蒸留物-2として回収した。反応器の底に残った残留物(残渣、430g)は、その後の再利用バッチに使用される。
【0109】
後続の再利用バッチでは、上記バッチからの蒸留物-1を溶媒/反応減速材として反応フラスコ中の残渣と混合し、上記と同じ様式で硫黄及び三塩化リンを充填して反応を開始する。反応塊を130℃で添加後1時間加熱し、反応完了についてGCによって監視し、蒸留した。
【0110】
反応実験の詳細を以下の表1に表す。
【0111】
【0112】
表2は反応の結果を示す。
【0113】
【0114】
実施例2
添加漏斗、TP、還流分配器、及び冷却器を取り付けた1リットルの4つ口ケトル内に、塩化チオホスホリル(430g)、トリブチルアミン(9g、0.048モル)、及び硫黄(90g、2.81モル)を加え、反応塊塊を120℃まで徐々に上昇させた。塩化リン(350g、2.55モル)を還流条件で添加し、この温度で30分間更に加熱した。反応の進行をGCクロマトグラフによって監視した。次いで、反応塊を常圧蒸留に供した。未反応の塩化リンを第1の画分で蒸留し、生成物である塩化チオホスホリルを、120~125℃の温度範囲で第2の画分にて蒸留した。混合物中に残ったチオホスホリル及びトリブチルアミンを含有する残留残渣(Heel residue)を、実施例1で提供された次の再利用反応にそのまま使用した。蒸留生成物を塩化チオホスホリルとして分析した(429.5g、99.6%)。
【0115】
実施例3
加熱時間を30分延長することによって生成物である塩化チオホスホリルを直接蒸留ること以外は、実施例2の記載されているのと同様の手順の下、第1の蒸留物を回避して、塩化チオホスホリル(429.4g、99.5%)を得る。
【0116】
実施例4
塩化チオホスホリル(6330Kg)及びトリブチルアミン(300kg)を反応器に加えた、反応塊の温度を徐々に120℃まで上昇させた。溶融硫黄(2083kg)及び塩化リン(8495Kg)を還流条件で反応器に添加し、この温度で40分間更に加熱した。反応の進行をGCクロマトグラフによって監視した。次いで、反応塊を常圧蒸留に供した。未反応の塩化リンを第1の画分で蒸留し、生成物である塩化チオホスホリル(10469Kg、99.7%)を、120~127℃の温度範囲で第2の画分にて回収した。反応器中に残ったチオホスホリル及びトリブチルアミンを含有する残留残渣を、再利用バッチ反応のために維持した。
【0117】
実施例5
加熱時間を90分まで延長することによって生成物である塩化チオホスホリルを直接蒸留し、第1の蒸留物を回避して、塩化チオホスホリル(10470kg、99.5%)を得ること以外は、実施例5に記載されているものと同様の手順ので実施した。
【0118】
実施例6
添加漏斗、還流分配器、及び冷却器を取り付けた1リットルの4つ口ケトル内に、塩化チオホスホリル(430g)、トリブチルアミン(9g、0.048モル)、及び硫黄(90g、2.81モル)を加え、反応塊を30分で120℃まで徐々に上昇させた。350g(2.55モル)の塩化リンを還流条件で添加し、この温度で45分間更に加熱した。反応の進行をGCクロマトグラフによって監視した。次いで、反応塊を常圧蒸留に供した。未反応の塩化リンを第1の留分として蒸留し、生成物を120~125℃の温度範囲で蒸留して、塩化チオホスホリル(429.5g、99.6%)を得た。チオホスホリル及びトリブチルアミンを含有する残留残渣を、再利用のために維持した。
【0119】
実施例7
比較例1:
塩化チオホスホリルの合成
塩化チオホスホリル(430g)を、添加漏斗、TP、還流分配器、及び冷却器を備えた1リットルの4つ口ケトルへ、残渣として添加した。活性炭(10.5g)及び硫黄(90g、2.81モル)をケトルに充填し、反応塊を120℃まで徐々に上昇させた。塩化リン(350g、2.55モル)を還流条件で添加し、この温度で60分間更に加熱した。反応の進行をGCクロマトグラフによって監視した。次いで、反応塊を常圧蒸留に供した。未反応の塩化リンを第1の画分として蒸留し、生成物を、第2の画分として120~125℃の温度範囲で蒸留して、塩化チオホスホリルを得た。塩化チオホスホリルは黒色で得られた。PCl3添加中の発泡及び生成物の蒸留もまた観察された。
【0120】
比較例2:
塩化チオホスホリルの合成
添加漏斗、TP、還流分配器、及び冷却器などを備えた1リットルの4つ口ケトルに、350g(2.55モル)の塩化リン及び硫黄(90g、2.81モル)を加えた。トリブチルアミン(9g、0.048モル)の添加によってわずかに発熱し、反応塊を90分で120℃まで徐々に上昇させ、この温度で240分間更に加熱して、反応を完了させた。反応の進行をGCクロマトグラフによって監視した。反応塊を常圧蒸留に供した。未反応の塩化リンを第1の留分として蒸留し、主要な留分として、生成物である塩化チオホスホリルを120~125℃の温度範囲で蒸留して、塩化チオホスホリル(429g)を得た。xii)。反応時間は有意に長く、したがって商業的に実施可能ではないことが観察された。
【0121】
実施例8
本発明にかかるアセフェートを調製するための工業的プロセス:
工程1- 塩化チオホスポリル(Thiophoshporyl chloride)の調製:
塩化チオホスホリル(6.33×103Kg)を反応器に加えた。トリブチルアミン(0.3×103Kg)を反応器に添加し、反応塊を120℃まで徐々に上昇させた。次いで、溶融硫黄(2.083×103Kg)を反応器に添加し、塩化リン(8.495×103Kg)の添加を還流条件で開始した。混合物をこの温度で60分間加熱した。反応の完了後、反応塊を常圧蒸留に供した。未反応の塩化リンを第1の留分として蒸留し、塩化チオホスホリル(10.47×103Kg)を120~127℃の温度範囲で蒸留物-2(99.7%)として回収し、次の工程における連続プロセスによるo-メチルジクロロチオホスフェートの調製のために使用した。チオホスホリル及びトリブチルアミンを含有する残留残渣を、再利用バッチのために使用した。
【0122】
工程2- O-メチルジクロロチオホスフェートの調製:
連続撹拌タンク反応器(continuous stirred tank reactor:CSTR)に、工程1からの塩化チオホスホリル((流量1.309×103Kg/時)、及びメタノール(流量1.129×103Kg/時)を、反応の滞留時間を3時間に維持しながら-5±3℃の温度で加えた。完了後、反応塊を冷却水でクエンチし、生成物を分離し、O,O-ジメチルクロロチオホスフェートを調製するために次の工程で使用するように保存した。
【0123】
工程3- O,O-ジメチルクロロチオホスフェートの調製:
メタノール(2.85×103Kg)をCSTRに加え、工程2で得られたO-メチルジクロロチオホスフェート(4.482×103Kg)を、温度-10℃で反応器に添加した。水酸化ナトリウム溶液(32%溶液、3.75×103Kg)を、温度-5±3℃を維持することによって混合物に添加した。完了後、反応塊を水で希釈し、生成物を分離し、O,O-ジメチルホスホラミドチオエートを調製するために次の工程で使用した。
【0124】
工程4- O,O-ジメチルホスホラミドチオエートの調製:
CSTRに、工程(3)で得られたO,O-ジメチルクロロチオホスフェート(流速1.058×103Kg/時間)を加え、23±2℃でのプレミックス(流量1.821×103Kg/時;プレミックスは、766×103Kg/時、32%苛性ソーダ及び1.055×103Kg/時のアンモニア水溶液(17%)である)の添加を1.5時間の滞留時間にわたって継続した。反応の進行をGCクロマトグラフで監視した。完了後、反応塊をジクロロメタンで抽出して、O,O-ジメチルホスホラミドチオエート(825kg/時)を取り出し、次の工程で使用した。
【0125】
工程5 アセフェート調製
上記の工程(4)で得られたO,O-ジメチルホスホラミドチオエート(4.54×103Kg)を、異性化のために二塩化メチレン(3.17×103Kg)中に取り入れ、2つのロットの35~49℃の硫酸ジメチル(0.546×103Kg)の溶液により処理し、反応塊を45~48℃で4時間加熱して、O,S-ジメチルホスホラミドチオエートを形成した。次いで、異性化生成物を、アセチル化のために別の反応器へと移した。
【0126】
次いで、無水酢酸(3.103×103Kg)及び硫酸(0.094×103Kg)の予冷混合物を、反応混合物中に35~45℃で1.5時間にわたって添加し、同じ温度で1時間加熱を続けた。得られた塊は液体アンモニアを用いて中和し、生成物をジクロロメタンで抽出して、所望の生成物であるアセフェート(4.826×103kg)を純度98%の白色固体として得た。
【国際調査報告】